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1962/02/19 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第4号
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1962/02/19 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第4号

#1
第043回国会 法務委員会 第4号
昭和三十八年二月十九日(火曜日)
    午前十時三十六分開議
 出席委員
   委員長代理 理事 林   博君
   理事 田中伊三次君 理事 牧野 寛索君
   理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君
      稻葉  修君    上村千一郎君
      小川 半次君    竹山祐太郎君
      千葉 三郎君    馬場 元治君
      松本 一郎君    猪俣 浩三君
      久保田鶴松君    志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
 出席政府委員
        法務政務次官  野本 品吉君
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 津田  實君
        検     事
        (民事局長)  平賀 健太君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        法務事務官
        (入国管理局
        長)      小川清四郎君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (条約局法規課
        長)      小木曽本雄君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
二月十八日
 委員飛鳥田一雄君及び久保田鶴松君辞任につき、
 その補欠として渡辺惣蔵君及び小松幹君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員小松幹君及び渡辺惣蔵君辞任につき、その
 補欠として久保田鶴松君及び飛鳥田一雄君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
二月十八日
 皇室の尊厳をおかす者を処罰する法律の制定に
 関する請願外十四件(田中伊三次君紹介)(第
 九八一号)
 鹿児島地方、家庭裁判所川内支部の甲号昇格に
 関する請願(池田清志君紹介)(第一二七〇
 号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第三号)
 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第四号)
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第五九号)
 法務行政及び検察行政に関する件
     ――――◇―――――
#2
○林委員長代理 これより会議を開きます。
 本日は、委員長が所用のため出席できませんので、理事の私が委員長の職務を行ないます。
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を一括議題とし、逐次提案理由の説明を聴取いたします。
#3
○林委員長代理 中垣法務大臣。
#4
○中垣国務大臣 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。
 政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしましたことは御承知の通りであります。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じてその給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第であります。
 この両法律案は、裁判官の報酬等に関する法律の別表及び第十五条に定める裁判官の報酬並びに検察官の俸給等に関する法律の別表及び第九条に定める検察官の俸給の各月額を増加することをその趣旨とするものでありまして、改正後の裁判官の報酬及び検察官の俸給の各月額を現行のそれに比較いたしますと、その増加比率は、一般の政府職員についてのこれらに対応する各俸給月額の増加比率と同様となっております。
 なお、両法律案の附則におきましては、一般の政府職員の場合と同様、この報酬及び俸給の月額の改定を昭和三十七年十月一日から適用すること等必要な措置を定めております。
 以上が裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
 次に、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 近年における暴力犯罪の実情を見まするに、その数において依然減少の傾向を示さないばかりでなく、特にいわゆる暴力団すなわち博徒、暴力テキ屋、青少年不良団、売春、麻薬暴力団その他の暴力的不良団体の構成員またはその仲間ともいうべき人々による悪質な暴力犯罪が増加の傾向を示しておりますことはきわめて憂慮にたえないところであります。もとより政府におきましては、このような事態に対処するため、さきに昭和三十三年には刑法等の一部改正について、また、昨年三十七年には銃砲刀剣数等所持取締法の一部改正について、それぞれ国会の御審議をわずらわし、法律としてこれらを逐次実施に移しますとともに、法の運用面におきましても、関係政府機関において緊密な連携のもとに暴力犯罪の防圧に努力して参っているのであります。しかしながら、いわゆる暴力団の構成員等が依然として常習的に暴行、傷害等の暴力犯罪を繰り返し、また、その犯行の手段としてしばしば拳銃、日本刀等きわめて危険な凶器を用いていることは顕著な事実でありまして、この際、この種の社会不安を惹起する暴力犯罪に対して、より一そう強力かつ適切な対策を講ずるために必要な法改正を行ないますことは、単に強い世論にこたえるというばかりでなく、国家の刑政からみましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。これが本法案を提出することといたしました理由であります。
 この法律案の骨子は次の通りであります。
 第一点は、銃砲または刀剣類を用いる傷害を特別の犯罪類型として一般の傷害罪より重く処罰する規定を新設しようとすることであります。この規定を設けます理由は、銃砲または刀剣類を用いる傷害がきわめて高度の危険性を持つ悪質な犯罪であるばかりでなく、すでに述べましたように、この種の危険な傷害が暴力団の構成員等によって多く犯されている実情から見ましても、当面、特にその必要性が認められるからであります。なお、本罪については、その犯罪の性質にかんがみ、未遂罪を処罰するとともに、日本国民の行なう国外犯をも処罰することが相当と考えられますので、その趣旨の規定を設けることといたしたのであります。
 第二点は、常習的暴力行為に関する規定を整備、強化しようとすることであります。すなわち、現行の暴力行為等処罰に関する法律第一条第二項に規定されている常習的暴力行為に対する法定刑を引き上げるとともに、現在でも右の常習的暴力行為に含まれている暴行、脅迫、器物損壊のほかに、新たにこれに刑法第二百四条の傷害を加え、傷害を含む常習犯について通常の傷害罪より重い刑を定めたことであります。その趣旨は、暴力団の構成員等の多くが暴行、脅迫、器物損壊のみならず、傷害をも含めた暴力犯罪を常習的に繰り返している現状にかんがみ、一面において、この種の常習犯に対する法定刑を引き上げその強力な防止をはかるとともに、他面、この種の常習犯人に対して相当期間にわたる適切な矯正処遇等の措置を講じその改善更生をはかることが、当面最も緊要と考えられるからであります。
 最後に、裁判所法の一部改正は、右に申し述べました暴力行為等処罰に関する法律の一部改正によりまして、短期一年以上の懲役にあたることとなる罪にかかわる事件については、事案の性質等にかんがみ、地方裁判所は原則として、一人の裁判官でこれを取り扱うこととしようとするものであります。
 以上が暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
#5
○林委員長代理 次に、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案の逐条説明を聴取いたします。竹内刑事局長。
#6
○竹内政府委員 暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正法律案の改正点につきまして、逐条的に御説明を申し上げたいと存じます。
 まず第一条でございますが、「第一条第一項中「第二百八条第一項」を「第二百八条」に改め、同条第二項を削り、同条の次に次の二条を加える。」という部分でございます。
 第二百八条第一項を二百八条に改めますのは、昭和二十二年の刑法改正によって第二百八条第二項は削られているので、当時本法第一条第一項についても、右改正に伴って条文の整理をいたすべきであったと考えるのでございますが、本法改正のこの機会にその整理を行なおうとするものであります。本法の第一条第二項を削りましたのは、これを第一条ノ三に含めて規定したために整理を行なったものでございます。
 次に、第一条ノ二でございます。本条は新設の規定でございます。まず第一項は、銃砲または刀剣類を用いる傷害が高度の危険性を持つ悪質な犯罪であるばかりでなく、現在この種の危険な傷害が、いわゆる暴力団の構成員などによって多く犯されている実情にかんがみまして、これを特別の犯罪類型として、通常の傷害罪より重く処罰しようとする趣旨の規定でございます。本罪の行為は「銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害」するということであります。ここにいう「銃砲」または「刀剣類」とは、銃砲刀剣類等所持取締法第二条にいうところの「銃砲」または「刀剣類」とその内容を同じくするものでございます。「用ヒテ」というのは、その本来の用法に従って使用することをいうのでありまして、銃砲にありましては弾丸を発射すること、刀剣類にありましては刃または切先によって切りまたは突くことを意味するのであります。従いまして、銃身で殴打しまたは日本刀で峰打ちを加えるようなことは「用ヒテ」には当たらないと解しております。刑法第二百四条の傷害罪について学説及び判例は、暴行の結果的加重犯の場合を含むと解しておりますが、本条の罪はこれと異なって、銃砲または刀剣類を用いるという特殊な方法による故意の傷害罪として規定したものであり、あとで申し述べますように、本条第二項においてその未遂罪を罰することとしておりますのも、本罪が故意犯であることを前提としているのであります。実際上も銃砲または刀剣類をその本来の用法に従って使用しながら傷害の故意を欠くという場合はないものと考えられるのであります。本罪についての法定刑を一年以上十年以下の懲役と、一般の傷害罪の法定刑よりも重く規定いたしましたのは、前に述べましたような本罪の特殊性、すなわち人の身体に対し重大な傷害を加え、ひいては死の結果をも招来する可能性が大であることを考慮したためでございます。
 本条第二項は、第一項の罪の未遂罪を処罰する趣旨の規定でございます。前に申し述べましたような第一項の罪の特殊性にかんがみますれば、いやしくも銃砲または刀剣類を用いて人の身体を傷害しようとした者は、たとい傷害の結果が発生しなかった場合にも、未遂犯として処罰するのが相当であると考えられるのであります。もし未遂犯処罰の規定を置かなければ、たまたま未遂に終わったということで、刑法第二百八条または現行の暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項によって処罰されることとなろうかと思うのでございますが、これは相当でないというふうに考えられる次第であります。
 本条第三項は、刑法第三条において刑法第二百四条傷害の罪が日本国民の国外犯とされておりますこととの均衡上、日本国民が国外で犯した本条第一項及び第二項の罪をも国外犯として処罰する趣旨の規定であります。
 次に、第一条ノ三について申し上げます。本条は、常習的暴力行為に関する規定を整備強化しようとするものでございます。現行の暴力行為等処罰に関する法律第一条第二項も常習的暴力行為に関する規定でございますが、判例は、この規定の解釈といたしまして、それが暴行、脅迫、器物損壊のそれぞれの常習犯を規定したものでありますとともに、暴行、脅迫、器物損壊の罪を包括した暴力行為をも規定したものといたしておるのであります。この改正案は、この判例の見解を基礎といたしまして立案したものでございます。
 改正の要点は、従来の常習的暴力行為に対する法定刑を引き上げたこと、及び右の常習的暴力行為の中に新たに刑法第二百四条の傷害罪を加え、傷害を含む常習的暴力行為について、より重い法定刑を定めたことの二点でございます新たに傷害を加えましたのは、暴力団の構成員等がしばしば暴行、脅迫または器物損壊の罪とともに傷害の罪をも反復累行している事実を考慮したためでありますが、理論上も傷害はしばしば暴行の結果附加も犯として成立するものでありますから、これを加えることが相当であると考えるからでございます。本条に言う常習とは、本条が掲げる傷害、暴行、脅迫または器物損壊の各個の罪の常習性のみをさすのではなく、これらの犯罪行為を包括した暴力行為を反復累行する習癖をも意味するものでありまして、右の再癖の現われとしてなされた行為は数個であっても、包括して集合的一罪となるという解釈でございます。本条の罪につきましては、場合を二つに分け、それぞれについて法定刑を定めております。その一は、「人ヲ傷害シタルモノナルトキ」すなわち、本宋の常習犯が、刑法第二百四条の傷害の罪のみからなる場合、または第二百四条の罪と第二百八条の暴行の罪、第二百二十二条の脅迫の罪もしくは第二百六十一条の器物損壊の罪とからなる場合であって、これらの場合には、法上刑は一年以上十年以下の懲役でございます。その二は「共ノ他ノ場合」、すなわち、本条の常習犯が傷害の罪を含まず、暴行、脅迫、器物損壊罪のいずれかの一または二以上からなる場合であって、その場合の法定刑は三カ月以上五年以下の懲役でございます。
 右のように重い法定刑を定めました理由は、この種の常習犯は、たとえたまたま現われた犯罪自体は軽微なものでありましても、習癖に基づく暴力行為の反復という悪質な犯罪であるばかりでなく、特に暴力団の構成員等によって多く犯されて、平和な市民生活に暫しい不安をもたらしている現状にかんがみまして、重い法定刑をもって臨むことによって、その強力な防遏をはかる必要があるとともに、他方、この種の常習犯人に対しましては、相当期間にわたって犯罪習癖の矯正、環境の是正、仮釈放後の保護観察等の適切な矯正、保護の措置をも講じなければ、その改善更生を期し得られないと考えられるからであります。
 次は、裁判所法の一部改正についてであります。
 暴力行為等処罰に関する法律の一部改正によりまして、短期一年以上の懲役に当たることとなる同法第一条ノ二第一項もしくは第二項または第一条ノ三の罪にかかる事件を、裁判所法第二十六条第二項第二号の地方裁判所の裁判官の合議体で取り扱うべき事件、いわゆる法定合議事件から除外することとしようとする趣旨の規定でございます。その理由は、この種の事案は、その性質等にかんがみまして、通常、審理が容易であることと、羅判の迅速をはかる必要があることなどの点から、通常の傷害の罪と同様に取り扱うことが相当であると考えるからでございます。
 次に、附則でございます。附則の第
 一項は、本法がその公布の日から起算して二十日を経過した日から施行されることを明らかにしたものでございます。第二項は、罰則に関する経過規定であり、改正前にした行為については、改正後においても新法を適用せず、旧法を適用することを明らかにしたものでございます。
 以上をもって説明を終わります。
#7
○林委員長代理 これにて提案理由の説明及び逐条説明は終了いたしました。
 志賀義雄君。
#8
○志賀(義)委員 暴力行為取締法の一部を改正する法律案について、内容には入りません。提案理由の説明がありましたので、それについて伺いたいと思います。
 法制審議会のこの問題に関する議事録については、参議院の方からも法務委員会で請求がありましたし、これは出されるのかどうか、参議院では出すということをたしか答弁されていると思っておりますが、こちらではどうなっているのですか。お出しになりますかどうか。その点伺いたいと思います。たしか自民党の方からもなにがありましたが、あらかじめ言っておきますが、出さずに審議はできませんよ。
#9
○中垣国務大臣 お答えいたします。法制審議会の審議の内応につきましては、原則としましては、秘密会をもって行なっておるのです。しかし、御要望がございますので、要旨につきまして委員会に御報告を申し上げたい、かように考えております。
#10
○志賀(義)委員 参議院では、要旨ということにはなっていなかったでしょう。参議院には議事録を出すが、衆議院の法務委員会には要旨を出すとは何事ですか。
#11
○坂本委員 ちょっと関連して……。これは、ずっと以前の理事会で、出してもらうことに委員長から話してもらうということになっているのです。その後、参議院の委員会においては、社会党の稲葉委員が質問をしまして、それで、それを出す、こういうことを約束された、こういうことをわれわれは聞いておる。ですから、その要旨とかなんとかいうことでなくて了承しているわけです。間違いなくしてもらいたい。
#12
○志賀(義)委員 今の私の質問と坂本委員の質問によってお答え願いたいと思います。
#13
○野本政府委員 参議院の委員会には私が出席しておりました。そして答弁を申し上げました。稻葉さんの御要求に対しましては、差しつかえない範囲において、でき得る範囲において御要望にこたえるように努力します、こういう旨の返事をしておりましたので、法制審議会の記録自体を出すとかどうかということは一切申し上げておりません。
#14
○志賀(義)委員 差しつかえない範囲に出すというのはどういう意味か。
#15
○野本政府委員 そのことは、私もかねがね法制審議会の審議は秘密会に属することでございますから、公開したことの前例は聞いておりません。従って、それらの点については、今までの経過につきまして事務当局とも十分話し合いの上でなければ全部の御要望に応じられないという考え方を持っております。
#16
○志賀(義)委員 僕は法案を審議するのですからね。どういう案が出てきたかということを、法制審議会の議事録があれば、よく審議ができるのです。それからまた、今野本さんのお話では、できるだけ御要望に応じる、それと要旨を出すということとは、日本語でも必ず同じではありませんよ。いつの間に要旨になったのか。
#17
○野本政府委員 稻葉さんの御要求には、暴力行為等に関しますいろいろな統計等の御要望もありました。それにつきまして……。
#18
○坂本委員 委員長はきょうおられぬけれども、お聞きしたいのだが、前々回ですか、理事会では、もしあれだったら法務委員だけに見せてもらうように配慮してもらいたい、そういう経過にこっちはなっておるわけです。そこで私がお願いしたいのは、そういう範囲でもこれはやむを得ないと思うのですが、法制審議会のことは、われわれは知らぬけれども一般の人は十分知っておりますから、そういうような点をあわせて、これは一般にできなければ法務委員だけに出してもらいたい、こう思うのです。たしか前回か、その前ですか、法務委員だけでも見せるように配慮してもらいたいというので、委員長が法務省の方に話をしてもらう、こういうことになっておると思うのです。そこでそれがわからずに今日まできて、今志賀委員の質問でここまで進んだわけですが、われわれの要望としては、法務委員だけでも見せてもらいたい、こういう要望です。
#19
○志賀(義)委員 とにかくこれは重大な法案でありまして、いきなり法務委員会に持ってくるのでなく、本会議にかけて質疑応答があって後に法務委員会に付託されてしかるべき改正案なのであります。
 そこで私が申し上げるのは、法制審議会でいろいろとやった、それが法務委員会に十分趣旨が徹底するならば、正しい結論を出すことができる、こういう意味でお願いしたいのです。法制審議会をやった、お前たち勝手にこの範囲でやれというのでは困ります。ですから、その点については十分御配慮願いたい上に、ここには、ただいま趣旨説明がありましたが、裁判所法の改正という重大な問題も含まれております。これは一体法制審議会の刑事部会に、この法案を出すときに一緒にかけられたものかどうか、その点を一点あなた方が答弁して下されば、なぜ私がこの議事録を出して下さいということを要求するかということがはっきりして参ると思いますが、裁判所法改正の部分は法制審議会刑事部会にかけられたのでしょうか、どうでしょうか。
#20
○津田政府委員 お答え申し上げます。裁判所法改正の部分につきましては刑事部会にはかけておりませんのみならず、法制審議会の総会に諮問はいたしておりません。こういう事柄につきましては、従来法制審議会に諮問いたしておらないわけでございますので、その点は今回もやらなかったのであります。
#21
○志賀(義)委員 これは先ほど坂本委員からも関連の発言がありましたが、当法務委員会の理事会でも、これを委員長を通じて請求しようということになっておりました。残念ながら、きょうは高橋委員長がどこに行かれたか、このごろとかく不在でありますのでよくわかりません。これは林さんから高橋委員長にもよく注意を願いたいと思うのでありますが、どうもこういう重要な問題が、ただいまの御答弁にもあるように一向はっきりしない。重要な問題をはらんでおりますので、一つあと理事会でこれをはっきりして下さい。委員長はそれを請求するということで約束されているのですから、こんなものを出さずにいいかげんにしておくと、私どもはそれを実際にここに持ち出して質問しなければならなくなりますよ。前にそういう例もあります。ことにこの暴力行為取締法の問題については、とかく今後の法務委員会で慎重にならなければならないのは、戦後――中垣さんはそういうことはおありになるとはまだうわさに聞いておりませんが、ここにあげられた暴力テキ屋、それの葬儀その他に花輪を出された法務大臣が何人かおられるのですから、そういう心がまえでこういう法案を出してきても何にもなりませんから、だからそういう点もあわせてこの点はっきりさしていただきたいと思います。法案の内容ではなくて、これだけを趣旨説明されたについてはっきりと伺っておきます。善処を願います。
#22
○林委員長代理 この問題については後刻理事会で協議をいたします。
     ――――◇―――――
#23
○林委員長代理 次に法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますのでこれを許します。猪俣浩三君。
#24
○猪俣委員 日韓間の外交交渉に伴いまして、韓国人の法的地位というものがやはり協議されたと思いますが、もちろんまだ結論は出ていないでございましょうけれども、今日までの経過を御説明いただきたいと思うわけです。どなたからでも適当な方から大体の御説明をいただきたい。
#25
○小川政府委員 お答えを申し上げます。ただいまの御質問の趣旨は、最初からの日韓交渉の経緯を含めてという意味合いかとも思いますので、少し長くなりますけれども、最初からの経緯をかいつまんで申し上げたいと思います。
 木交渉は、昭和二十六年の十月から予備会談と第一次会談が開催されまして、その後第二次、第三次等を経まして、第六次会談が一昨年の十月二十日から行なわれました。その間、いろいろ韓国の事情等もございまして、交渉が大へん遷延して参っておった次第でございますが、昨年の十月三日に第六次会談の継続と申しますか、第七次会談が行なわれるようになりました。そして法的地位に関する委員会は、日本側は民事局長と私が主査になっております。韓国側は李天祥という弁護士の方と、その他の方々が代表で、今回も東京で引き続き交渉を行なっておる次第でございます。昨年の十月以降すでに十数回を重ねておりますが、この問題点といたしましては、在日朝鮮人の法的地位という問題でございまして、御承知のように昭和二十七年の法律第一二六号に基づきまして終戦前から引き続き日本に在留しております朝鮮人につきましては、その在留資格なくしてずっと引き続き在留を認めております。その在留資格をどういうふうにきめるかと申しますと、特殊な立場にございます在日朝鮮人の法的地位をどういうふうに優遇するかという問題でございます。それから在日朝鮮人のどの範囲まで、そういった特殊な優遇された在日資格を与えるかという問題、範囲の問題、それからいかなる場合に退去強制をすることができるか、退去強制事由の問題、これはただいま申しましたように、やはり特殊な地位にございますので、それに基づいて特殊な退去強制事由――普通一般の入管令上の退去強制事由をずっとしぼろうという問題でございます。それから、そのほかはいわゆる社会的な処遇の問題でございまして、たとえば教育の問題、あるいは生活保護の問題とか、あるいは持ち帰り財産の問題とか、そういった面で種々特別な待遇を与えようというふうなラインでずっとやって参っております。しかしながら、幾多の問題につきまして、まだ日韓双方で合意に達しておりません問題も相当ございますので、目下引き続き合意に至るべく努力をいたしておる次第でございます。
#26
○猪俣委員 今在日朝鮮人、ことに北の方の人たち――不幸にして朝鮮は韓国と民主主義人民共和国と二つに分かれておりますが、この北の民主主義共和国に属する人たちは、非常に何か心配をしておるようであります。これは前にもお尋ねをいたしたわけでありますが、心配するのも無理はないのでありまして、韓国の方では、どうも代表部と称する妙なものが存在し、とにかくこれが世話をやっておる。しかし、北朝鮮の方はそういうものがないのみならず、そういう世話をやりまする朝鮮総連と称する団体は、破防法の対象にされておる。こういうことですから、彼らは日本政府に対して非常に心配をするわけであります。この日韓会談の進展に伴って、韓国人と北朝鮮に所属する者との間に何か差別をするのじゃなかろうか、こういう心配をしているのでありますが、これは交渉の経過において韓国側からさような提案があったかどうか。あるいは日本政府がさようなことを考えておるかどうか。これは北も南も一視同仁、朝鮮人としてその法的地位を考えているのであるかどうか。これは大臣及び局長から御答弁いただきたい。
#27
○中垣国務大臣 在日朝鮮人につきましては、前回の委員会でも猪俣先生にお答えしたのでありますが、従来の朝鮮人の処遇につきましては、文字通り北も南も差別等はなかったわけであります。私は、その交渉に当たっております入管局長並びに民事局長に対しまして、常々言っておることは、処遇上の差別等があるような日韓協定の内応にならないように十分注意してもらいたいということを実は言っておるわけでございまして、最初から日本政府側が一つの意図を持ちまして、韓国人と韓国人でない在日朝鮮人に処遇上の差をつけようというような考え方の交渉等は断じていたしておらないと思います。これはどの委員会でもでございますが、私が行きますと、非常にそういうお尋ねが多いのでありますから、若干御質問の内容と違いますけれども、この際私の考え方を明らかにしておきたいと思うのでありますが、日韓協定が成立するかどうか、これはわかりませんけれども、かりに成立をいたしました暁に、もちろん日本と韓国は外交関係の代表を取りかわすわけでありますから、韓国の大使なり公使なりが日本に置かれると思うのです。そういうときに、韓国の出先の公使館なり大使館なりが韓国人にどういう保護管理をするかということは、日本政府には別に関係のないことでありますけれども、そういうことが予想されるのです。でありますから、そういうところから起きてくるところの韓国人と韓国人でない朝鮮人との取り扱いというものは、向こうの政府なり向こうの政府の権限の及ぶところの問題としてはあるかもしれませんが、日本政府といたしましては、私は、そういう差別処遇をしたくない。これはもう衆議院、参議院におきまして、あらゆる機会に申し上げてきたところでございます。特にいつも猪俣さんから御指摘の通りの人道上の問題等におきまして、たとえば義務教育の問題とか、あるいは生活の問題とかいうようなことにつきまして、これは日韓協定成立後の問題でございますが、韓国人並びに在日朝鮮人につきまして、日本政府は処遇上の差別等はいたしたくない。こういう考え方を基本としてやっておるのでありまして、そういう点はいつも御指摘をしておられますように、また御要望になっておられますように、そういう線に沿って展開しておると私は固く信じております。
#28
○猪俣委員 局長さんにちょっとお尋ねいたしますが、韓国側からそんなような区別するようなことを提案されたことはありますか。
#29
○小川政府委員 ただいままでのところ、すなわち昨年の十月に再開されましたこの委員会におきまして、ただいままでのところ、韓国側からそういうふうな趣旨の話はまだ出しておりません。
#30
○猪俣委員 大臣の所信のあるところはわかりましたが、実はくどく何べんも念を押すゆえんのものは、どうも大臣の答弁と実行が少し伴わないところがあるのじゃないか。と申しますのは、韓国難民問題を私は再三当法務委員会で取り扱った。密入国した者を送還することは当然であるといたしましても、国際連合の難民の条約の精神にのっとって、韓国の今の政情のもとに帰すと危険なような人物は帰すべきじゃないということを再三要求いたしまして、大臣もそれを御答弁になっておるわけであります。人道主義に基づいてやる。しかるにこの二月八日、大村収容所から百五十六名の密入国者が送還されましたが、上陸と同時に七十八名が逮捕せられておるわけです。これはいろいろの理由がありましょうけれども、これは韓国における東亜日報という大新聞に報道せられておる。百五十六名のうち七十八名、半分逮捕されてしまった。逮捕されてどういう処遇を受けておるかわかりませんけれども、こういう大量の逮捕が出ておる。これは、はたして百五十六名の中にかような逮捕を予想せられるような人間が多数いたのではなかろうか。それを審査せずして十ぱ一からげで送ってしまった。そこでこういう現象を起こした。もちろん、この中には政治亡命者――難民的なものじゃない者もあるかもしれませんが、とにかくこういう実情であります。これを日本政府は御存じあるかどうか。そして、この七十八名の逮捕がいかなる理由に基づいて逮捕したものであるかどうか。そういうことを調査なさっておるであろうかどうか。それをお尋ねいたします。
#31
○小川政府委員 最近送還いたしました朝鮮人のうち、現地に上陸するやいなや逮捕されたかどうかということにつきましては、まだ調査をいたしておらないのでございますが、そういう事実がございますかどうか、一応私どもといたしましては、韓国代表部なり何なり通じましてよく調べてみたいと存じております。予想されますことは、もし事実であったといたしますならば、おそらく韓国の密出国に関する取り締まり法規にあるいは触れておるかもしれないと存じます。しかしながら、私どもが送還をいたします前には、十分に一人々々につきまして個人的によく事情も調査して、そして送り返しておるのでございまして、はたしてどういう者がどういう罪でつかまっておるかにつきましては、まだはっきりいたしておりませんので、取り調べた上でお答え申し上げたいと思います。
#32
○猪俣委員 もうすでに国会におきまして大臣が人道主義に基づいて処理するということで、これは韓国人に相当安心感を与えたのでありますが、しかるに直ちにかような現象が起こっておる。これはわが国の政府に対する不信の念を与えるものでありますので、これはよほど調査していただきたいのです。御存じのように、国際連合の難民に関する高等弁務官の規約にあたります難民は、その本国の法律保護を受けられない、つまり上陸するなら直ちに逮捕せられるというような人間は、これは難民と称することが精神でありますことは申し上げるまでもないことです。そこで、送還者の半分も逮捕せられるというようなことは、私どもは、どうも当国会におきまする大臣の答弁と少し違っているのではなかろうか、この点についてまた調査なさっておらないということも、どうも日本政府はあまり口で言うほどじゃない、みんなめんどくさいものは帰してしまうという方針を変えていないのではないかという不信感を今相当引き起こしてしまっているわけであります。今、小川局長は、至急調査すると申されておりますので、外国に起こったことでありますから、なぜわからぬかという質問も強硬にはできませんが、しかし、これは政府が調査する気になれば調査できることだと思います。それを参考といたしまして、次の送還者に対しては、やはり政府の人道主義に基づいて処理するというその答弁を重んずるような送還の仕方をしていただきたい。そういう答弁をする口のもとから半分も逮捕せられてしまうということは、政府の不信を買うだけであります。これは御注意あってしかるべきものじゃないかと思うのでありますが、これは強く要望だけして、質問を打ち切ります。
 次に、帝銀事件の平沢貞通という被告に対しまする処分につきまして、これは大臣の御決意のほどを承りたいと思うわけであります。これは非常に多く論議せられておる問題でありますので、しかも裁判所の問題として持ち出されておる問題につきまして、委員会がとやかく言うべき筋合いではない。ある程度裁判所にまかせるということになろうかと思いますけれども、しかし、これはとにかく大臣が執行を命じなければ死刑の執行はできないことであって、平沢貞通の運命は一に中垣法務大臣の握っておる判にあるわけであります。そこで私は法務大臣に訴えるのでありますが、死刑廃止論というものも世界的にあることは大臣も御存じであります。しかしながら、私どもは、必ずしもこの死刑廃止に賛成でもありませんし、現行法はそうでもありませんけれども、死刑廃止論が唱えられ、現に廃止をしておる国もある現状におきまして、とにかく死刑の執行というものは、どんなに念を入れても差しつかえない問題だと思うわけであります。中垣さんが判を押さなければ平沢は生きておるわけでありますので一しかし、どんな凶悪犯罪にも大臣として判を押さぬというわけにはいかぬ。それは非常に気持が悪かろうとも、職責としてやらなければならぬのでありますけれども、平沢のごとく、非常に問題があり、そうして本人がほとんど畢生の努力をもって自分の無実を訴えておるような問題につきまましては、慎重の上にも慎重に執行命令を出すようにしていただきたい。
 これはいろいろの問題が出てきておるわけです。第一は、他に犯罪人があるのだという説でありまして、その犯罪人の一人はなくなったが、しかし、他にもう一人それと違う犯罪人があるのだということを相当の大新聞社でも調査しておる人があるわけであります。それは生存しておる人であります。かように真の犯人が他にあるということ、これは法務省の人権擁護局で相当調査をして鑑定までしておる事件で、荒唐無稽の話ではない。何ゆえが法務省は、その人権擁護局長に対して、帝銀事件の調査はやめろという命令を出され、そこで打ち切られてしまったわけでありまして、それに関係した人は相当転出させられておる。こういう事情は、いかなることでそういうふうになったかは今ここで申しませんが、とにかく法務省の人権擁護局が相当熱を入れて調べておる。そうして東に東畑あり、西に大村ありと称せられまする大阪市立大学の大村博士、わが国の鑑定の二大双壁の一人が鑑定しておるわけであります。ですから、ただいたずらにこれを荒唐無稽のことだとは言い切れないものがある。今私は詳細にここに述べませんが、真の犯人が他にあるという説が相当行なわれておるわけであります。
 第二には、この死刑判決の基礎をなしましたる検事の調書、出射検事の調書が偽造であるということを平沢は主張いたしました。これも法務省の人権擁護局で相当調べ、さっき申しました大村博士が鑑定しております。なおまた当時平沢を収監しておりました刑務所長の証明書も、人権擁護局人権擁護委員あてに答弁しておるところを見ましても、はなはだ奇怪なことだと思います。この点につきましては、先般赤松委員が質問されまして、当局はそれを軽く否定されておるようであります。こういう点は、裁判所の再幕申し立てをいたしましたところが、大体当局の考えは、検事というものはそんな偽造なんてするものではないということが常識だ、だからそんな理由では取り上げられないということが、再審申請の却下の理由にもなっておるようでありますし、また竹内刑事局長の委員会における答弁のようでもあります。しかし、この点は、ただ相手が検事であるから偽造なんてあるものじゃないという答弁は直ちにいたしかねる。われわれも検察権の威厳のためにさようなことは信じたくありませんけれども、先般、私がここで質問いたしました松川事件のあの門田判決の中にも、検事の調書偽造、変造が高等裁判所で指摘され、しかも職権乱用でもって準起訴手続され、検事を調べましたる福高地裁の裁判官の決定を見ましても、はなはだ疑惑に満ちた決定の趣旨になっておるのであります。かようなことがありまするから、検事にさようなことが一体あり得るものじゃないということで一蹴せられることは、はなはだふに落ちないわけでありますが、とにかくこういう容易ならざることが主張せられておるのであります。
 なお、新たに東京大学の脳研究室の教授をやっておりまする先生が、この第一零当事の平沢の精神鑑定は間違っておったという研究を発表せられておりまして、これは中垣法務大臣のところにも、朝日新聞の記者が、その鑑定書をつけて上申しておるはずでありまして、中垣さんも御存じのはずだと思う。と申しまするのは、今から十数年前のいわゆるコルサコフ病というものの研究が、その後十年間に非常に進歩発達して、いろいろの脳波その他を物理的にも検出せられるようになってから、そこから振り返ってみると、十数年前のこの鑑定は間違っておった。コルサコフ病にかかると、ほとんど心神喪失の状態になるものであることが近ごろになって相当はっきりしてきた。かようなことを東京大学脳研究室の白木博士が主張せられておるわけであります。精神再鑑定の必要があることが主張せられておる。
 もちろん私はこういうことを微に入り細に入り今質問する気はありませんが、私は大臣に訴えたいことは、以上相当の疑惑があるわけです。そこへ持ってきて今度は帝銀事件に対しまして、警視庁の刑事であって、この事件の主任捜査官でありました人が、「ライト」という雑誌に詳細に書いておるのであります。なお、四月号か五月号の「日本」という雑誌に詳しく、これは平沢でないということを、自分が捜査当時の実際の実情から見て発表すると言っている。成智英雄という人であります。これは元警視庁の警視である。そうして平沢事件の主任をやっておった。これが実に専門的に詳細に平沢でないことの理由を書いておるのであります。彼は、なお今日その確信を持って、ある雑誌の四月号に詳細にその論文を発表すると言っているそうであります。かように大学のその道の専門家、捜査に当たっておりましたその道の専門家が、いずれも、一つは、もし当時平沢がやったといたしましても、これは心神喪失の状態にあったのが事実であるということを立証いたしますし、一つは、当時のあの殺害の状況からして、平沢というような絵かきがやれるはずがないということ、これは満州において七百三十一部隊として勇名をとどろかせた細菌戦術の石井部隊の関係者でなければできるはずがないということを詳しく論証しているわけであります。
 かような幾多の疑点が今日出てきておりますが、これは宮城刑務所へ送られたのは死刑執行のためではないかなんという巷説が相当行なわれたのでありますけれども、とにかく裁判は、判決が確定いたしておりましても、そうして日本の再審制度に不備があって、これは再審開始がなかなか容易ならぬものでありましても、たといこれが間違った議論かも存じませんが、かような議論が相当の責任ある人から発表せられている今日におきまして、私は、大臣は死刑の執行に対して判こを押さぬように願いたい。平沢も七十を越した老人であります。私は、今無理やりに死刑を執行しなければならぬというものではないと思う。とにかく日本の裁判手続、再審制度から見て、彼を救う道がないようになっておりますけれども、今なおかような――これは、ただおもしろ半分のデマ雑誌のあれではありません。成智という人だって警視庁の警視までやった、しかもその主任捜査官であります。この人が実に堂々たる論文を書いております。なお東大の脳研究室の白木博士、この人も、十年以前の鑑定は間違いであるということを、その後の科学の進歩によって立証しておる。なお、これも人権擁護局の人たちが研究しまして、どうもこの出射検事が刑務所へ行って平沢を取り調べたことに疑惑がある。刑務所長が、照会されるまでの間、平沢は房から出たこともなければ、検事が出入りしたこともないということを答弁し、四カ月もたってから、その検事が出入りしたことがないということは、出入りしたかどうかはっきりしないという意味だなんという訂正書を出しておりますけれども、これはおかしいのです。これはただ簡単にお片づけなさらずに、相当考慮しなければならぬ問題であって、私どもも、これは国会において国政調査権に基づいて徹底的に調査してもらいたいと思うのでありますが、人権擁護委員に対しまして、東京拘置所長の大井久さんが公文書をもってちゃんと回答しておる。「入所後四、五日中に身柄を他所に移監した事実はない。」「右期間内に検事及び事務官の取調べを受けた事実はない。」ということをちゃんと昭和三十二年十二月十三日に法務省の人権擁護委員のところへ回答しているのです。ところが、その後数カ月たって、前項の期間中、検事及び事務官等の取り調べを受けたことありや――これは質問でありますが、受けたことがないということは、受けたかどうかが判明しないことであるというふうに訂正してきておりますが、これはおかしいのであります。そうすると、出射検事がほんとうに調べたかどうか疑問であるのみならず、大阪の市立大学の大村博士の鑑定というのが、この三回にわたった調書の拇印はみんな一ぺんに押してしまったものだという鑑定になっているわけです。これも、そんなばかなことがあるか、検事というものは神聖なんだという答弁では過ごされないわけであります。私は、今この一つ一つについてあなたに答弁を要求するのじゃありませんが、どうかこういう実情ですから、死刑の執行は当分あなたは考慮していただきたい。そこであなたの覚悟を承りたい。これは大臣として重大な権利であり、義務であるのでありますが、かようなときに、あっという間にあなたが判こを押されると、これは世論がおさまりません。事がいいにしろ悪いにしろ、やはり一般の人が納得する線を出した上でないと、そして裁判が済んだ、判決が確定しているじゃないか、検事はそんなばかなことをやるかという官僚式の考え方だけでは、これだけの人がこれだけの意見を発表している以上は、それだけでは国民は納得いたしません。そこで私はあなたに、この死刑執行を急ぐべからず、これに対するあなたの所見を承りたいのであります。
#33
○中垣国務大臣 平沢のことにつきましては、前もお答えしたのでありますが、目下高等裁判所におきまして再審の審理中でございます。法務大臣としての覚悟のほどということでお尋ねになったのでありますが、私は、前回申し上げました通りに、最高裁判所の判決というものにつきましては、これを尊重し、またこれを行なうということが私の重要な任務の一つであります。しかし、今いろいろ指摘されましたが、その指摘されました内容についての、いいとか悪いとか、それが真実であるとか、あるいは間違っておるとかいうことを私も申し上げることはできませんので、その問題は私も触れたくないのでありますが、単に平沢が犯人ではない、ないというようなことだけでなくして、猪俣先生は専門家であられて、もう救う道がないと言われましたけれども、私はまだいろいろあると思うのです。現に再審の要求に応じまして審理中であるということもその一つのあれでありますが、そのほか検事や裁判官に対しましてはいろいろな――たとえば検事が適正であるかどうかということを審査する委員会もありますし、また裁判官等が間違った判決をするならば、そうした人に対しましては弾劾をする機関もあるのでありますから、国会の法務委員会の中で、法務大臣と猪俣先生とがこの問題の真偽を争うとしても結論がつかないのでありまして、私も人間の命が大事であるということはほんとうに御指摘の通りに思いますので、そう軽々に死刑執行の裁決をする考えはございませんけれども、ただ世論がこうであるからということで、またこれを遷延するという考え方も実は持っておらないのでありまして、慎重の上に慎重を重ねて参って、そうして最後私の所信を断行したい、こういうふうに実は申し上げるほかはございません。私は、平沢を救う道は、どんな新しい事実が現われても、もうないのだという、そういう考え方には立っておらないのでございまして、この主任弁護士でありますか、担当の弁護士か知りませんけれども、磯部弁護士に対しても、私はそういうことを申し上げまして、新しい事実や証拠があったならば、そういうことをもって法廷で主張することは十分主張すべきじゃないかということを申し上げておるのでございまして、そういうことのすべてが尽くされた上、なおそれを世論がどうであるとか、救援会の活動がどうであるとかいうようなことで、ただこれを延ばすというようなことは、私は大臣の責任のあり方というものから見まして、それはどうもむしろ猪俣先生のお考えとは逆ではないだろうか。死刑執行の裁決をする瞬間まで慎重に慎重を――あらゆることを検討いたしまして、しかる後にやはり死刑執行すべきものはするんだ。こういう考え方こそ、私は今日の制度における大臣の職責の感じ方でなければならぬ、かように実は考えておるところでございます。しかしながら、御指摘のように、この問題につきましては非常に慎重を要する問題であるという、私もそういう程度の認識は持っておるつもりでございます。
#34
○猪俣委員 私はその御答弁を聞きたかったのです。今中央更生保護審査会にも特赦の申請をしておるようでありますし、再審の申し立てもしておるようでありますが、しかし、すでに判決が確定しておるとすれば、あなたの権限で執行できるわけです。それですから、巷間相当そういう心配をする人もあるので、あなたの御所見を承ったわけであります。万策尽きた際には、これは法務大臣の職権としてやむを得ないかもしれませんが、しかし、それはよほどの考慮の上でなさっていただきたいということを申し上げたわけです。今御答弁によりまして、全く自分はまだ万策尽きたと思っていない、まだ救う道があると思っておる、それを全部尽くした上でなければさような執行をするようなことは考えておらぬという御答弁、それで私はけっこうだと思います。どうぞそのおつもりでやっていただきたいと思います。
 それから次にお尋ねしますことは、韓国におきまする政情が不安であって、今度朴という人が大統領選挙に出ないとかどうとかいうことを発表しておるわけでありますが、昨日の夕刊を見ますると、その朴議長が声明の中に、「私はこの機会に国民から現在の政府が疑惑を受けているいくつかの問題について、徹底的に調査し、その真相を究明して、責任の所在を明らかにすると同時に、国民の前にその真相を公開することを約束する。」こう発表されておる。一体国民から現在の政府が疑惑を受けておる幾つかの問題というのは何であるかを御存じであるかどうか。と申しますのは、私どもの調査したところによりますと、もちろん純然たる向こうの内政問題であることについては、われわれかれこれ言うあれはありませんけれども、どうも中には、日本の商社が関係しているのじゃないかと思われるふしもあるためにお尋ねするのであります。これはどなたからでもお答え下さい。
#35
○小木曽説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。現在外務省といたしましては、韓国の政情の安定を慎重に見守っている段階でございまして、今の段階で、どういう問題で現在韓国政府が国民に疑惑を持たれているかということについて、はっきりした認識もございませんし、また、それに言及するのも適当でないと思います。
#36
○猪俣委員 私がこういうお尋ねをいたしますのは、日本の政府は請求権あるいは賠償五億ドル、こう答弁しておるけれども、韓国の新聞には六億ドルだというふうにみな報道されておる。そしてその一億ドルというのは政府からじかにくるのじゃなくて、民間に何か金融をして、その民間会社から韓国の民間へそういう利益を与えるという形でやるのだ。だから政府は五億ドルと言うけれども、実は六億ドルだ。そこで、そうなると、その一億ドルを民間から向こうの民間にやる形式でやるということに、私は問題があると思う。今回、あなたは答弁できないでしょう。外務省の役人としては無理もないかもしれませんが、こんなものは向こうの新聞にみな出ておる。金鍾泌というあの情報部長をやっておった人物が、新しい政党をつくるために相当金集めをやった。これが今およそ三点で攻撃されている。一つは、東洋一と言われるウオーカー・ヒル、つまり賭博場ですが、これをつくることについての汚職、一つは証券のつり上げ工作をやった、それに関する汚職、これは向こうの内政でありますからあれですが、一つはわが国にある有名な自動車会社が保税加工制度を取りつけて韓国に進出をはかった、それに関して汚職が行なわれている。これはやはり日本の業者に関する問題であります。贈賄したか収賄したか、いずれにかかわらず、これが今韓国で相当たたかれている問題であります。そういう際に、表面は五億ドルと言いながら、実は一億ドルは民間と民間の受け渡しでやるのだというような賠償の方式をとりますと、ますますもってこういう日本の財閥と向こうの役人との間に何か汚職問題が起こるのじゃなかろうか、もう今そのはしりが現われてきているのじゃないか。日本政府はそういうことを知っているのだろうか、そういう心配が実はあるわけです。それでお尋ねしたのです。きょう外務大臣も条約局長もおいでにならない。あなたとしては御答弁できないのは無理もないと思いますが、一体日本の法務省は、こういうふうな日本の業者が向こうの汚職に関係があるような調査はできていますか。
#37
○中垣国務大臣 お答えいたします。ただいま御指摘の三点の問題につきましては、何も実は存じていないのでありまして、初めて実は聞いたような次第でございます。閣議等におきましての日韓交渉の中間報告等によりまして、そういう民間の投資と申しますか、そういうことが交渉の話題の中に入っておったというような報告は一ぺんも受けたことはございません。
#38
○猪俣委員 これは向こうの野党がみな公に政府攻撃に向けている論点であって、向こうの新聞に出ているわけですが、やはりこれは法務省に望むのは無理かもしれませんが、外務省あたりがこれを知らぬというのもおかしな話です。その問題が、こういう朴議長の声明なんというものが出るようになった大きな原因であります。金鍾泌は与党をつくろうとして金集めをやった、その中に日本の業者も巻き込まれているということは今後十分警戒をしなければならぬことじゃないか。他国の役人まで汚職に巻き込むというようなことは、隣国としてもやるべきことじゃない。しかも今大臣は御存じないようでありますが、どういうわけだか向こうの新聞にみな書いてある。五億ドルではないのだ、六億ドルなんだ。その一億ドルはやみ取引みたいな印象を受けるのです。そうすると、日本の業者から向こうの役人なり業者に一億ドル払うというようなことになるとしますと、ここにいろいろな問題が起こってくると思うから、日本の法務省としては十分警戒の目をつけておらなければならぬじゃないか。これは私ども民間人としての情報でありますから、正確であるかどうかわかりませんから、その自動車会社の名前はここに発表しません。ただある有名な自動車会社です。それは向こうの新聞にみな出ているのです。それは調査をなさればすぐわかる。ここから部分品を送って向こうで保税加工工場をつくっている、組み立て工場をつくっている。これに金鍾泌が関係しているのだということで、今野党である民主党が非常に調査を要求しているのであります。これはやはり法務省としてもお調べになっていただきたい。こういうことは今後ある問題でありますので、大臣は、一億ドルは知らぬとおっしゃらればそれまででありますが、向こうの新聞にはみな出ているので、これは私は、日本の法務省としても非常に注意しなければならないことだと思います。大臣の御決心を承りたい。
#39
○中垣国務大臣 今御指摘の通りに、日本の業者が韓国の政府要人並びに公務員等に対しましてそういう贈賄等の行為があるということでありましたならば、これはよくないことでありますから、今後十分注意して参りたいと思います。
#40
○猪俣委員 外務省のあなたは、こういうことは全然御存じないですか。
#41
○小木曽説明員 ただいま御指摘のありました点については、私は全然聞いておりません。
#42
○猪俣委員 それでは、外務省の役人の方から大臣によく伝えておいていただきたい。(「共産党のデマ宣伝だよ」と呼ぶ者あり)デマならなおけっこうなことですが、そうしたら朴がどうしてこういう声明を出したか。「私はこの機会に国民から現在の政府が疑惑を受けているいくつかの問題について、徹底的に調査し、」という、これもみな――そうすると、読売新聞というのは共産党の機関紙かな。そこまで言うなよ、幾ら反共でも。そこまで言うと、かえってひいきの引き倒しになる。この新聞記事、どの新聞にもみな出ております。朴はこういう声明をした。そうすると、向こうにこういうことがあることは事実じゃないか。私たちが調査すればそういうことが出てきた。私たちが調査できることを皆さんがわからぬことはないと思うのだが、しかし、政府として公に言明なさることを、あえて私は強要するわけではございませんが、十分御注意していただきたい。そのことだけを申し上げておくわけであります。
 それから、あまりごちゃごちゃいろいろなことを出しましてもあれだけれども、ついでですから。そのかわりあとは楽になりますから、聞くだけは聞いてもらいたい。きのうだかの朝日新聞ですか、見ますと、臨時司法制度調査会にかかっている法曹一元問題について、検事総長を急遽外国視察に派遣するということが書いてある。これは中垣法務大臣が特にそういうふうにしたというふうに書いてあります。実は私も臨時司法制度調査会の委員をやっているわけですが、検察庁からもそうそうたる人が出ています。裁判所からも出ている。弁護士会、それから国会及び学識経験者というもので構成されている。そうして、ことしの十月、アメリカ班及びヨーロッパ班に分けまして視察することになっているわけです。これは予算も請求しておりますから、大臣御存じだと思う。そういう際に、その検察官の代表として馬場義続、高等検察庁の検事庁で最も有力者、それから長部謹吾、これは最高検の次長検事、そうそうたる人が出ているのです。そうしてこれはやはり臨時司法制度調査会として調査に出ることに決定されておるのに、どうしてこう検察庁だけが急遽検事総長を調査に差し向けたのか、その理由を承りたい。
#43
○中垣国務大臣 お答えいたします。法務大臣といたしまして、法曹一元化に非常に関心を持っておりますことは事実でございますが、このたびの清原検事総長の欧米出張の目的は、実は猪俣先生御承知の通りに、私はできるだけ近いうちに刑法改正草案を法制審議会に提案しようと考えておるわけでございまして、そういう刑法改正等の作業が各国ではどういうふうに行なわれておるのかということが、まず出張目的の一つであります。それから第二には、検察行政のあり方等について、主要欧米各国を十分に見てきてもらいたい、これが第二でございます。それからなお司法の全般につきましても、この際ぜひ見てきていただきたいというようなことで、これは外務省に、出先出先の大使館、公使館等を通じまして、いろいろお世話になりますので、そのときの旅行目的等にもそのことを明らかに書いてあるわけでございまして、臨時司法制度調査会の資料を得るためにのみ、そういうことが主なる目的で実は出張させるのではないのでございますから、その点若干誤解があると思いますので、御了承いただきたいと思います。ちょうどここに一つの資料がございます。これは外務省の方に私どもの方から便宜供与につきましてのお願いをしましたときに出しました公文書がありますから、ちょっと読んでみます。「欧米各国における司法、特に検察制度の調査並びに刑法等の改正作業の現況等について調査するために出張いたすものであります。」これが出張の目的でございますから、御了解をいただきたいと思います。
#44
○猪俣委員 この朝日新聞の二月十七日のトップに出ております。「検事総長、異例の欧米出張法曹一元化を調査」こうなっておる。あなたの言うのは、これはほんのちょっとつけ足しで、そうではないのだというのだが、新聞では大きく出ておる。そこで私は今質問するようになった。大体そういう調査に行くなんていうのは、検事総長が行くというようなことは、私どもあまり今まで聞いておらないのですが、そういう実例が前にたびたびあったでしょうか。検事総長が、今大臣が言ったような一般司法制度を調査に、相当の期間東京を留守にして出かけるというようなことは、今まで聞いておらぬのだが、何か検事総長を出さなければならぬ特別なる調査の目的が一体あったのじゃなかろうかと私どもは思ったわけですが、今まで、ただそんな司法制度や刑法や刑訴法改正のために、視察に検事総長が東京を留守にするというようなことはたびたびあったでしょうか。これはどなたでも御答弁下さい。
#45
○中垣国務大臣 さようなことはたびたびはございません。全然なかったことはありませんが、ずっと前でありまして、最近ではなかったと思います。御承知の通りに、刑法改正というようなことは、これは法務省といたしましてはほんとうに大事業でありますし、私は若干自分でも考えるところがありまして、法制審議会に提案する前に、一応欧米各国の刑法改正の作業等について一つぜひとも勉強してきてもらいたい、こういうことを考えまして、司法の権威者と申しますか、私ども法務省といたしまして最高の権威者であり、責任がある検事総長を出させて、そうして私がその報告書を得まして、それを法務大臣としてのいろいろな法務行政全般についての一つの参考資料にしたい。かように考えまして、特に私から頼んで出張していただくというようなことになったわけでございます。
#46
○猪俣委員 今大臣のような趣旨で、刑法なり刑訴法の改正、司法制度改革の資料というような場合は、大体やはり法務省にそうそうたる中堅どころの専門家が相当おるわけでありまして、また、そういう人がほんとうに徹底的によく調べるわけです。検事総長というのは検察権の最高の地位にある人で、そう任地を離れて歩くということは容易ならぬことだと思うのです。ことに今日相当治安問題もあなた方が心配しておるような状況であるといたしますならば、その最高責任者である検事総長――検察権の行使に対しては法務大臣は非常に制限せられておる、だから最高の直接の責任者は検事総長なんですよ。一国の検察権の最高の責任者か、そういう制度を調べに外国を回って歩くなんていうことは、どうも私は穏当を欠くと思うのです。それは検察権の最高の地位というものを、あなたがちょっと理解されていないのではないかと思う。法務大臣は一般の検事の指揮権はないのです。だから、何といっても検察権の最高の責任者は検事総長であり、検事総長に対する責任としては法務大臣が出てくるわけでありますけれども、具体的事件について、法務大臣というものは何らの指揮命令権が一般的にないわけです。指揮権発動というような場合には法務大臣がやりますが、しかし、そんなことをやると犬養さんみたいにやめなければならぬ。だから、ほんとうは検察権の行使に対しては検事総長は大事なのです。だから松川事件のような問題については、検事総長から委員会へ出てきて答弁してもらいたいと思うくらいでありますが、これはやはり三権分立、司法権の独立から考えて法務省が答弁の任に当たっておるのでありますけれども、検事総長と法務大臣の立場というものは非常に違うと思うのです。実際具体的事実に対する検察権の行使そのものの最高責任は検事総長でなければならぬ。この人が制度を調査に行こう、各国を回って歩くなんということは僕はおかしいと思うのです。ただこれはおかしいというだけでなしに、あなたもお聞きかどうか存じませんが、法曹一元化の問題をめぐって臨時司法制度調査会、これはまだ調査でありますが、だんだん進んでいきますと、まず裁判所側の代表と検察官出身の代表とが相当の激論を戦わす空気がもう出てきているし、それをまた官僚陣を相手にして弁護士会あるいは学識経験者という側から相当の対立論が出る形勢もあるわけです。国会側も、私はあまりしゃべらぬつもりですけれども、相当にしゃべる者も出ておる。これは来年の九月までに結論を出さなければならぬのですが、そういう際に、検事総長という高い地位の者が、まず法曹一元化の調査に乗り出すというようなことが新聞に出ただけで非常な問題をはらんでおると思うのですが、こういうことを考慮されてなお出したのかどうか、あなたの出された心境を承りたい。
#47
○中垣国務大臣 私は、わざわざ新聞に出したわけでもないのですが、私がいろいろ雑談しておるうちにそういうことを言って、それが新聞に出たのだろうと思います。
 それから清原検事総長を海外に出張させますことにつきましては、いろいろなことを考えました上で、どうしても私は最高責任者である、しかも権威者である清原さんに一つ行ってもらいたい。これは私の方から注文しまして、私がお願いをして出て行ってもらうのでございまして、私がしろうとであるものですから、私に対しましていろいろ協力をしてもらうと申しますか、そういう意味でも本人の目で見て、また本人が直接行っていろいろなことを確かめて来てもらいたいというようなことを考えました結果、実は出張させることにしたわけであります。
#48
○猪俣委員 清原さんはいつ定年になられるのですか。
#49
○中垣国務大臣 たしか来年じゃないかと思います。
#50
○猪俣委員 定年前に外遊させたいという親心もわかるのですけれども、検事総長という地位に対しては少し軽はずみじゃないかと思うのですけれども。しかし、大臣は善意の人ですから、私は悪意にあなたを責める気持はちっともないわけですけれども、これは非常に大きなことです。検事総長を海外に出してしまって、しかも制度を調査して歩くなんというのは異例なことだ。こういうことは僕はあまり感心しませんから、考慮の余地があるならば一つ御考慮願いたいのです。そうして今言ったような法曹一元化ということになりますと、これはわが国の司法制度の非常な変革になるので、まじめな熱心な裁判官、検察官、弁護士であればあるほど、この問題について相当やはり議論するようになると思うのです。そういう際に、何か検察の方では早手回しをやってしまって――早手回しをやる一つの作戦ではないかなどということを弁護士会で心配してきているのがある。だからどうも私は時期がよくなかったと思うのです。清原さんにいろいろなことを調べさせるのもあれですけれども、こういうことは、もう定年間近い人よりも、やはり長く検察庁の指導者となっていく人を差し向けることが適当ではないかとも考えるのですが、まあそんなことは第二のことで、私どもが心配しますのは、検事総長という重大な責任ある者が東京を離れるということは非常に重大な問題だと思うのです。それをどうも大臣は少し軽く考えて、ちょっとあっちもこっちも見てといったようなことになったのではないかと思いますがね。そこで検事総長という地位に対する認識が非常に乏しいのではないか、私どもはそこを心配したのです。あなたはうっかり新聞記者に言ったと言うけれども、結局、腹の中をさっと言ってしまった。これは本音であったが、さてこれが問題になるので、委員会ではそういう答弁をなさっていると思うのです。これもあまり大して意地悪くあなたに追及するということもないと思うのですが、相当これは誤解を生みますから御注意をしていただきたいと思います。
 私の質問はお約束通りこれで終わります。
#51
○林委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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