くにさくロゴ
1962/05/16 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第12号
姉妹サイト
 
1962/05/16 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第12号

#1
第043回国会 法務委員会 第12号
昭和三十八年五月十六日(木曜日)
   午前十時五十八分開議
 出席委員
   委員長代理理事 林 博君
   理事 唐澤 俊樹君 理事 田中伊三次君
   理事 坂本 泰良君 理事 坪野 米男君
      安藤  覺君    小川 半次君
      岸本 義廣君    小金 義照君
      竹山祐太郎君    谷垣 專一君
      千葉 三郎君    中曽根康弘君
      松本 一郎君    田中幾三郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
 出席政府委員
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 津田 實君
        検    事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
委員外の出席者
        判     事
        (最高裁判所事
         務総局総務局
         長)     桑原 正憲君
        判     事
        (最高裁判所事
         務総局第一課
         長)     長井  澄君
        専  門  員 櫻井 芳一君
    ―――――――――――――
五月十六日
 委員上村千一郎君、馬場元治君及び片山哲君辞
 任につき、その補欠として谷垣專一君、安藤覺
 君及び田中幾三郎君が議長の指名で委員に選任
 された。
同日
 委員安藤覺君、谷垣專一君及び田中幾三郎君辞
 任につき、その補欠として馬場元治君、上村千
 一郎君及び片山哲君が議長の指名で委員に選任
 された。
同日
 理事井伊誠一君同日理事辞任につき、その補欠
 として猪俣浩三君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
五月十四日
 北方地域における不動産登記事務の取扱いに関
 する陳情書(札幌市南一条西十一丁目千島歯舞
 諸島居住者連盟理事長山下亮輔)(第六一三
 号)
 皇室の尊厳をお守りするための法律の制定に関
 する陳情書外二件(船橋市本郷町二百九十四番
 地新日本協議会船橋支部松井庄太郎外三十九
 名)(第六六五号)
 水戸法務局出島出張所の整理統合撤回に関する
 陳情書(茨城県新治郡出島村議会議長川島武)
 (第六七六号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第一四三号)
 (参議院送付)
 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関
 する応急措置法案(内閣提出第一六〇号)
     ――――◇―――――
#2
○林委員長代理 これより会議を開きます。
 本日は委員長が所用のため欠席いたしますので、理事の私が委員長の職務を行ないます。
 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題とし、逐条説明を聴取いたします。竹内刑事局長。
#3
○竹内(壽)政府委員 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案の逐条説明を申し上げます。
 第一条は、この法案の趣旨を明らかにした規定でございます。すなわち、この法案は没収制度が抜本的に整備されるまでの間の応急措置として、被告人以外の者つまり第三者の所有物が刑事手続においてあやまって没収されるのを防止するため、没収されるおそれがある物の所有者に対し、被告事件の手続に参加して自己の権利を主張する機会を与えますとともに、あやまって第三者の所有物が没収された場合には、裁判確定後に十分な権利の救済を保障しようとするものでございます。
 第二条は第三者の所有物を没収する必要がある場合、その第三者に被告事件の手続への参加を促すため、告知または公告の手続をとることを検察官の義務とする趣旨の規定でございます。告知または公告すべき事項は、第一項第一号ないし第七号に列挙されておりまして、第四号の没収の理由となるべき事実と申しますのは、被告人の犯罪事実、これと没収すべき物との関係及び所有者が悪意であった事実など、没収の要件に当たるすべての事実が含まれるのでございます。
 第一項の告知は、直接本人に告知することが事実上可能である場合、すなわち、告知すべき第三者が特定し、しかもその所在がわかっている場合に行なわれるのであります。通常は、検察庁または裁判所に出頭した第三者に告知の書面を手渡しするか、あるいは告知の書面を配達証明つき書留郵便に付して郵送することになるのであります。告知の効果は、第三者またはその同居の親族等が告知の書面を受け取ったときに生ずるのであります。
 第一項による告知ができない場合、すなわち、第三者を特定することができない場合、その所在がわからない場合、第三者が外国にいて告知の方法がない場合には、検察官は、第二項に規定する公告の手続をとらなければならないのであります。すなわち、告知すべき事項を十四日間検察庁の掲示場に掲示するとともに、これを官報及び新聞紙に掲載するのでありまして、これらの手続が完了したときに公告の効果が生ずるのであります。ただし、価額が五千円に満たないことが明らかな物につきましては、官報及び新聞紙への掲載を省略することができることとなっております。
 第三項は、告知または公告の手続をとったことを裁判所に知らせるための規定でございます。
 第三条に参りますが、この条文は、刑事事件において没収されるおそれのある物を所有する第三者が被告事件に参加するための手続を定めた規定でございます。
 第一項は、参加の申し立てをすることができる者の範囲、申し立ての方式及び申し立てをすることのできる期間を定めております。参加の申し立てをすることができるのは没収されるおそれのある物を所有する第三者でありますが、真に所有者であるかどうかは審理を待って初めて明らかになることでありますから、申し立ての段階におきましては、所有者であることを主張すればよいことになります。ただし、没収すべき物と全く関係のない第三者の参加によって訴訟の遅延すること、及び混乱が生ずることを防ぎますため、第三項は、没収すべき物が申し立て人の所有に属しないことが明らかであるときは申し立てを棄却することといたしております。また、没収されるおそれのある物に関する限り、第二条の告知または公告を受けたかどうかにかかわりなく、参加の申し立てをすることができるのでありますが、没収すべきでないことが明らかな物についてまで参加を許す必要はございませんから、第四項ただし書きは、その物の没収をすることができないか、またはこれを必要としないという検察官の意見を裁判所が相当と認めましたときは、申し立てを棄却することができるものといたしております。
 第二条の告知または公告がありましたときは、参加の申し立てをすることのできる期間は、告知または公告があって後十四日間でございます。期間経過後になされた参加の申し立ては、第三項の規定によって棄却されますが、同項ただし書きは、それが申し立て人の責めに帰することのできない理由によるものと認められますときは、第一審の裁判があるまでに限って、裁判所の健全な裁量によってなお参加を許すことができるものといたしております。これに反しまして、告知または公告がなかったときは、第一審の裁判があるまで参加の申し立てをすることができるのであります。
 上訴審におきましては、もはや参加の申し立てをすることが許されないのでありまして、略式手続または交通事件即決裁判手続におきましては、略式命令または即決裁判があった後でも、検察官または被告人が正式裁判をすることのできる期間内及び正式裁判の請求があった後通常の公判手続による第一審の裁判があるまでは、告知または公告後十四日間を経過していない限り、なお参加の申し立てをすることができることになっております。
 第二項は、被告事件が告知または公告された裁判所から他の裁判所へ移送された場合、移送前の裁判所への参加の申し立てを移送後の裁判所への申し立てとして取り扱うことにするための規定でございます。
 第三項及び第四項は、参加の申し立てを棄却する裁判及び参加を許す裁判の要件を定めております。第五項は、参加を許す裁判の取り消しの要件を定める規定でございます。
 第六項前段は、参加に関する裁判の手続と方式を定めておりまして、同項の後段は、これに対する不服申し立ての方法を定める規定でございます。
 第七項は、参加の取り下げの方式を定める規定でございます。
 次に第四条に参りますが、本条は、参加人の地位を明らかにする原則的規定でございます。刑法は、没収が被告人に対して料せられる付加刑であるという原則をとっておりますので、没収手続に関する応急的な措置といたしましては、たとえ第三者の所有に属する物を没収するのでありましても、被告人に対する刑事裁判手続から独立した別個の手続でその言い渡しをするとか、被告事件の中へその第三者を独立の当事者として加入させるというような方法をとるのは適当でないと考えられるのであります。そこで、この法案は、没収すべき物を所有する第三者を参加人という資格で被告事件に関与させることといたしますとともに、実質的には当事者に近い訴訟上の地位を参加人に与えることといたしておるのでございます。
 そこで第一項でございますが、参加人が原則として被告人と同一の訴訟上の権利を有することを定めた規定でございます。ここで「権利」と申しておりますのは、刑事訴訟法、刑事訴訟規則等において明示的に被告人の権限とされるものに限らないで、裁判所、検察官その他の訴訟関係人の義務を定める規定の反射的効果として被告人が有する利益な地位をも含むという解釈でございます。この規定によりまして参加人が有する権利のうちで最も重要なものは、公判期日に出頭して自己の意見を陳述し、証拠調べを請求し、証拠調べに立ち会い、特に証人等を尋問し、裁判に不服であれば上訴をする等の権利でございます。「被告人と同一」の訴訟上の権利と申しますのは、被告人が本来持っている権利と同じ権利という意味でありまして、具体的な場合に被告人が行使することのできる権利だけをさすのではないのでございます。したがって、被告人がある権利を放棄し、またはこれを行使しないという意思を表明している場合でありましても、参加人は、その権利を独立して行使することができるということになるわけでございます。しかし、その効果は参加人だけについて生ずるのではなく、被告事件そのものについて生ずるのでございます。たとえば、参加人の請求によって取り調べられました証拠は、証拠能力があります限り、被告事件そのものの証拠となるということでございます。
 参加人の有する訴訟上の権利は、原則として被告人の権利と同一でございますが、これには二つの重要な例外がございます。その第一には、当然のことでございますけれども、参加人の権利は、その所有物の没収に関係する限りにおいて認められるにすぎないということであります。それから第二に、この法案の第四条第二項及び第五条から第十一条に規定してありますように、参加人の地位及び権限に関する特例を定める規定になっております。その限度で参加人と被告人とが異なった取り扱いを受けることはいうまでもないのでございます。
 次に第二項は、参加人に証人適格があることを明らかにする規定でございます。すなわち、没収は、被告人に対する付加刑であり、参加人にとっても不利益な処分ではございますが、憲法第三十八条第一項にいう「不利益な供述」というのは、刑事訴追または刑事責任を受けるおそれのある供述に限られるので、参加人には、被告人が有するのと同じ意味での黙秘権を認めないで、これを証人として取り調べることができるものといたしておるのでございます。
 次は第五条でございますが、本条は、参加人の公判期日に出頭する権利、没収の原因となるべき事実について告知を受ける権利等を定める規定でございます。
 その第一項は、参加人が公判期日に出頭する権利は有するが、出頭の義務を負わないことを明らかにする規定でございます。参加人が自己の権利を十分に主張するためにも、必ずしもすべての公判期日に出頭する必要はございませんし、他面、勾引または勾留することのできない参加人の不出頭によって訴訟が遅延することは好ましくないので、参加人に出頭の義務を課さないことといたしますとともに、参加人が出頭しなくても公判手続を進めることができるようにいたしておるのでございます。
 第二項は、参加人の所在がわからなければ、公判期日の通知その他訴訟書類の送達をする必要がないものとし、訴訟の不当な遅延を防ごうとする趣旨の規定でございます。
 第三項は、裁判所が、公判期日に出頭した参加人に対し、没収の理由となるべき事実の要旨、その参加前の公判期日における審理に関する重要な事項その他参加人の権利を保護するために必要と認める事項を告げまして、さらにかつ、没収について陳述する機会を与えることとする規程でございます。これによって、参加人は、いかなる事項について主張及び立証をすればよいかということを理解し、自己の主張を十分に述べることができると考えるのでございます。
 次に第六条でございます。本条の第一項は、参加人が憲法第三十七条第二項にいう証人審問権を有しないことを前提といたしまして、参加人の参加によっても、証拠能力に関する刑事訴訟法の規定が影響を受けないことを明らかにする規定でございます。すなわち、被告事件においてもともと証拠となる証拠は、参加人にとって伝聞証拠であっても証拠とすることができるし、他面、参加人との関係では伝聞証拠の例外に当たる場合であっても、被告人との関係で証拠とすることが許されなければ、証拠とすることはできないということになるわけでございます。
 第二項前段は、伝聞証拠の取り調べによって生ずる参加人の不利益を除き、さらに実質的な証人審問権を保障しますために、刑事訴訟法第三百二十条第二項本文、第三百二十六条または第三百二十七条の規定によって参加人の意思に反して伝聞証拠が証拠とされる場合には、裁判所は、参加人の請求によって、その権利の保護に必要と認める限り、原供述者を証人として取り調べなければならないものといたしております。さらに、本項の後段は、参加人の参加前に取り調べられた証人の再尋問についても、同様の趣旨を規定しておるのでございます。
 次に第七条でございますが、本条は、没収すべき物を所有する第三者が参加人として被告事件の手続に関与することができなかったときは、原則として没収の裁判をすることができないものとする趣旨の規定でございます。これに対する例外といたしまして、所有者が被告事件の手続に参加しなくても没収の裁判をすることができますのは、所有者が参加人となる機会を与えられたにもかかわらず、参加の権利を行使しなかったと認められる場合でございます。すなわち、第一に、第二条の規定により検察官が告知または公告の手続をとったにもかかわらず、没収すべき物の所有者が参加の申し立てをしないで参加申し立ての期間を経過した場合、第二には、所有者による参加の申し立てが法令上の方式に違背するという理由で棄却された場合、第三には、所有者が参加を許された後にみずからこれを取り下げた場合でございます。これに反し、第三者が適法に参加の申し立てをいたしましたにもかかわらず、没収すべき物がその第三者の所有に属しないことが明らかであるとか、その物の没収をする必要がないとかの理由で参加が拒否されました場合には、あらためて告知の手続がとられない以上、その第三者の所有に属する物を没収することはできないのであります。
 次は第八条でございます。本条は、上訴審における参加人の地位及び参加人がした上訴または正式裁判の請求の効果を明らかにする規定でございます。参加人にも上訴権及び正式裁判請求権がありますことは第四条第一項の規定によって明らかでございます。
 さて本条の第一項は、上訴審における参加人の地位を明らかにする規定でございますが、二つの意味を持っておると思うのでございます。すなわち、まず、検察官または被告人が上訴をしましたときは、上訴をしなかった参加人も、自動的に上訴審における参加人の地位を取得するのでありますが、他方、たとえ参加人がみずから上訴をしましても、上訴審におけるその地位は、あくまでも参加人であって当事者になるのではないという点であります。
 第二項は、参加人だけが上訴した場合におけるその上訴の効果を定める規定であります。すなわち、検察官及び被告人が原裁判の中心部分たる主刑について上訴をしないにもかかわらず、付随的な没収の部分について参加人に不服があるからといって、被告事件の全部を未確定の状態におきますことは、迅速な裁判を受ける国及び被告人の利益と全く相いれないのであります。そこで本項は、参加人だけが上訴をした場合には、主刑に関する部分を確定させまして、没収に関する部分だけが上訴審に係属するものといたしておるのでございます。
 第三項は、参加人のみが上訴した場合における被告人の地位を明らかにする規定でございます。第二項の規定により、原裁判中没収に関する部分だけが上訴審に係属することとされる場合でも、被告人はなお事件の当事者でありますが、原審の裁判に何ら不服のない被告人に対し被告人という地位から生ずる訴訟上の権利及び義務をそのまま認める必要はありませんので、本項は、上訴審及びその後の審級の手続においては、被告人に出頭義務を免除することといたしておりますとともに、これに国選弁護人を付せず、また、被告人及び弁護人が出頭しなくても開廷できることといたしておるのでございます。
 第四項は、略式命令または交通事件即決裁判に対して参加人だけが正式裁判の請求をした場合にも、裁判の確定及び被告人の権利義務に関し、上訴の場合と同様に取り扱う趣旨の規定でございます。
 次は第九条でございますが、本条は、この法案の規定により被告事件の手続に関与する第三者の訴訟能力を明らかにし、訴訟能力がない場合においてこれを代表または代理する者を定める規定でございます。
 次は第十条でございますが、本条は、没収されるおそれのある物について所有権を主張する第三者が弁護士たる代理人によって参加の申し立て及び参加人としての訴訟活動をすることができることを定めるとともに、参加人には弁護人の選任及び国選弁護に関する刑事訴訟法の規定の適用がない趣旨を明らかにする規定でございます。
 次に第十一条、訴訟費用の関係でございますが、本条は、参加人の参加によって生じた被告事件の訴訟費用に関する規定にとどめております。
 第十二条本条は、第三者所有物の没収に関してこの法案の第二条から第十一条までに定める手続が刑事訴訟手続の一部にすぎず、これから独立した特別の手続でないことを明らかにいたしておりますとともに、この法律に特別の規定がある場合のほかは、刑事訴訟法の規定がそのまま適用されるものであることを定めた規定でございます。
 最後に第十三条でございます。本条は、没収物の所有者である第三者が、自己の責めに帰することのできない理由により、被告事件の手続に参加することができなかった場合に、その第三者に対し、没収の裁判が違法であったことを理由にその取り消しを請求する権利を与える趣旨の規定でありまして、取消し請求の要件、請求に対する裁判手続及び取り消しの裁判の効果を定めているのであります。申すまでもなく、第二条から第十二条までの規定によりますれば、第三者の所有物について没収の裁判が行なわれまするのは、原則として、検察官がその第三者に対して告知または公告の手続をとった場合に限られ、しかも、告知または公告を受けた所有者は、被告事件の手続に参加して十分に自己の権利を主張することができるのであって、自己の所有物の没収に関して告知、弁解、防御の機会を与えられるという第三者の権利は、これらの規定により十分に保護されているものと申さなければならないのであります。しかし、検察官及び裁判所が没収すべき物の所有者を誤認している場合には、真の所有者に対して告知または公告の手続がとられないままで没収の裁判が言い渡されることもあり、また、たとえ告知または公告の手続がとられたといたしましても、第三者がその責めに帰することのできない理由により参加の手続において自己の権利を主張することができなかったという場合もないわけではございません。これらの場合におきまして、所有者が事前に主張及び立証の機会を与えられなかったため、実体法上没収の要件が存在しない物について没収の裁判が言い渡されたのであるときは、その裁判によって侵害された第三者の権利を回復する方法がなくてはならないのであります。
 第一項は、没収の裁判の取消しの請求の理由、請求権者、請求期限及び請求手続の管轄裁判所を定める規定でございます。取消しの請求の理由は、法律上没収することのできない物について没収の裁判があったこと、すなわち、実体法上違法な没収の裁判があったことであります。例えば、犯人の所有物しか没収できないとされておりますのに、所有権の誤認によりまして犯人以外の者の所有物が没収された場合、所有者が犯罪行為について情を知っているのでなければ没収できないとされているのに、情を知らない善意の第三者の所有物が没収された場合などであります。取消しの請求をすることができるのは、没収の裁判が確定した時における没収物の所有者で、被告人であった者以外の者に限られるのであります。請求人が没収物の所有者かどうかは、没収の実体法上の要件にも関係しますので、請求に対する終局的な裁判において判断されることになりますが、第三項の規定によりまして、没収された物が請求人の所有に属しないものであったことが明らかであるときは、決定によって請求が棄却されます。没収物の所有者でも、自己の責めに帰することのできない理由により被告事件の手続において権利を主張することができなかった場合でなければ、取消しの請求をすることはできないのであります。この点は、具体的な事件について個別に判断するほかないのでありますが、第二条の規定による告知または公告を受けた所有者については、特殊な例外の場合を除きまして、事前に権利の主張をすることができたものと認められるのであろうと存じます。参加手続による権利の主張が可能であったにもかかわらずこれを怠った者については、第三項の規定により、請求が棄却されることになろうと存じます。取消しの請求は、請求権者が没収の確定裁判を知った日から十四日以内、かつ、裁判確定後五年以内にしなければならず、この期間が経過した後にされた請求は、第三項の規定によって棄却されることになります。
 第二項は、請求の方式を定める規定であります。趣意書には、請求の理由となる事実、すなわち、請求人の所有物についてなされた没収の裁判がどういう理由で違法であるかを明かに示しておかなければならないのであります。
 第三項は、決定による請求棄却の形式裁判をする場合及びその手続を定め、これに対して即時抗告が許されることを明らかにする規定でございます。
 第四項は、請求に対する実体裁判に関する規定でございます。すなわち、没収の裁判が正当であるかまたは請求人が没収物の所有者でないときは、請求を棄却し、法律上没収することのできない物について没収の裁判があったと認められますときは、これを取り消すことになるのであります。これらの裁判は、判決でされますが、これに対しては、検察官または請求人から上訴すなわち控訴または上告をすることができるのであります。
 第五項の前段は、審判の範囲を定める規定でありまして、裁判所は、請求人の差し出した趣意書に包含された事項について、当事者の意見を聞き、証拠の取り調べをしなければならないとしておりますが、趣意書に包含されていない事項でありましても、没収の裁判を取り消すかどうかに関係があると認められる限り、当事者の申し立てまたは職権によって調査することを妨げる趣旨ではないのでございます。同項の後段は、参加人が正当の理由がなく出頭しないときには、不出頭のまま公判手続を進めることができるようにする規定でございます。
 第六項は、訴訟費用に関する規定であります。
 第七項は、請求に対する裁判手続に関し、参加の取り下げの方式を定めた第三条第七項、参加人に公判期日の通知等をしなくてもよい場合に関する第五条第二項、参加人の訴訟能力に関する第九条、代理人に関する第十条並びに訴訟費用に関する第十一条第二項及び第三項の規定を準用するとともに、この法案に特別の規定がある場合のほかは、刑事訴訟の例によることを明らかにする規定でございます。刑事訴訟の例によるという意味でございますが、刑事訴訟に準じた手続で審判するという趣旨でございます。本条第二項から第六項まで、第八項及び第七項中準用部分に特別の規定がありますので、刑事訴訟法の規定がかなり大きな修正を受けた上で適用されることになります。主として適用されるのは、裁判、書類及び送達、証拠等に関する総則の規定、公判期日、証拠調べ、弁論等に関する公判手続の規定及び上訴に関する規定などであろうと存じます。
 第八項は、第七項が請求に対する裁判手続は刑事訴訟の例によるとしていることに対する重要な例外といたしまして、請求人に証人適格があることを明らかにし、伝聞証拠でも証拠とすることができるものとする規定でございます。伝聞証拠でも証拠とすることができるといたしましたのは、請求人が参加人と同じく憲法第三十七条第二項の証人審問権を有せず、これに刑事訴訟法第三百二十条から第三百二十八条までの規定を適用する必要はないからであります。
 第九項は、没収の裁判が取り消された場合の効果を定める規定であります。没収の執行による刑事補償に準じて補償するものとしております。すなわち、刑事補償法第四条第六項は、没収の執行による補償に関しまして、没収物がまだ処分されていないときは、その物を返付し、すでに処分されているときは、その物の時価に等しい額の補償金を交付すると定めておりますし、同法第六条から第二十三条までは、補償請求の手続を定めております没収の裁判の取り消しの場合の補償についても、これらの規定を全面的に適用する趣旨であります。
 最後に附則でございます。この附則の第一項は、この法案の施行期日を公布後二十日を経過した日とする規定でございます。この法案のうち第二条から第十二条までの規定は、その性質上、施行日前に第一審の裁判が言い渡された事件には適用されないが、施行日までにまだ第一審の裁判がない事件において第三者の所有に属する物を没収する必要があれば、これらの規定による手続をとらなければならないことになるのであります。
 次に第二項でありますが、これは確定した没収の裁判の取り消しに関する第十三条の規定が遡及して適用されることを明らかにし、施行日前に確定した没収の裁判によって不当に自己の所有物を没収された第三者に救済を与えようとする趣旨の規定でございます。本項による取り消しの請求の期間も、原則として、確定裁判を知った日から十四日間ではありますが、この法案の施行前に確定裁判を知った者につきましては、本項の後段により、十四日の期間をこの法案の施行日から起算することといたしております。
 以上、条を追ってこの中身を御説明いたした次第であります。
#4
○林委員長代理 これにて逐条説明は終了いたしました。
 本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。
     ――――◇―――――
 本案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。
#5
○林委員長代理 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際おはかりいたします。本案に対する質疑はこれで終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○林委員長代理 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終局いたしました。
 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#7
○林委員長代理 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 おかりいたします。ただいま可決せられました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○林委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#9
○林委員長代理 おはかりいたします。
 理事井伊誠一君より理事辞任の申し出がございます。これを許可するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○林委員長代理 御異議なしと認め、同君の理事辞任を許可いたします。
 つきましては、同君の理事辞任に伴う補欠選任を行なわねばなりませんが、この選任は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○林委員長代理 御異議なければ、委員長より猪俣浩三君を理事に御指名いたします。
 次会は明十七日午前十時三十分理事会、十一時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト