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1962/05/28 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第16号
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1962/05/28 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第16号

#1
第043回国会 法務委員会 第16号
昭和三十八年五月二十八日(火曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 上村千一郎君 理事 唐澤 俊樹君
   理事 小島 徹三君 理事 林   博君
   理事 松本 一郎君 理事 猪俣 浩三君
   理事 坂本 泰良君 理事 坪野 米男君
      小川 半次君    小金 義照君
      竹山祐太郎君    赤松  勇君
      井伊 誠一君    田中幾三郎君
      志賀 義雄君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
 委員外の出席者
        検     事
        (刑事局刑事課
        長)      羽山 忠弘君
        検     事
        (刑事局参事
        官)      長島  敦君
        検     事
        (刑事局付)  吉田 淳一君
        専  門  員 櫻井 芳一君
    ―――――――――――――
五月二十八日
 委員片山哲君辞任につき、その補欠として田中
 幾三郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として
 片山哲君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 理事田中伊三次君及び牧野寛索君同日理事辞任
 につき、その補欠として上村千一郎君及び松本
 一郎君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の辞任及び補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第五九号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 この際、参考人出頭要求の作についておはかりいたします。
 法務行政に関する件(人権擁護及び再審制度に関する問題)について参考人の出頭を求め、その意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高橋委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 なお、日時は来たる六月六日とし、人数及び人選は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○高橋委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。
     ――――◇―――――
#5
○高橋委員長 この際おはかりいたします。
 理事田中伊三次君及び牧野寛索君より理事辞任の申し出がありますので、これを許可することとし、この際その補欠選任を行ないたいと思いますが、これは先例によりまして委員長において指名することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、上村千一郎君及び松本一郎君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#7
○高橋委員長 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。林博君。
#8
○林委員 刑事局長にお尋ねいたします。法案の質疑に入る前に、暴力犯罪の実態等についてまず数点お尋ねいたしたいのであります。
 まず、この説明によりますと、本案はさしあたりの応急措置として、刑法の全面改正が行なわれるまでの間に必要最小限度の措置を講じようとする趣旨のものであるということを言われておるのでありますが、刑法の全面的な改正作業は現在どのように進行しておられますか、まず、この点についてお伺いしたい。
#9
○竹内(壽)政府委員 刑法の全面改正につきましては、去る五月二十日、法務大臣から法制審議会に諮問が発せられましたので、会長が審議会総会を開きまして 正式に審議をいたしました。その結果、法制審議会におきましては、議事を効率的に進めてまいりますために、刑法の全面改正のみを目的とした特別部会を設置することにきまりました。その特別部会は、六月になりましたならばまず第一回の部会を開く、こういうことで、全国的に刑法の専門学者を広くお願いし、かつ学識経験者その他各界の権威を集めることに、ただいまいろいろと私どもの方で関係者の人選を急いでおる段階でございます。
 こういう手続で、もはや進行を始めておると申して過言ではございませんが、刑法全面改正につきましては、すでに林委員も御承知のように、法務省といたしましては、戦後の社会事情、新しい憲法の規定等にかんがみまして、明治四十一年から施行されております現行刑法につきましても、すでに戦後におきまして、何回も一部改正あるいはほとんど重要な部分の改正を経て、さらに一部改正を重ねてまいっておるわけでございまして、この際、学問上の学説等の進歩もありますし、現憲法下最も国情に合うようないい刑法をつくりますことがきわめて緊要であるというふうに考えておるのでございます。特に現刑法に規定を欠いております点で、すでに昭和十五年の仮案においても指摘をされておりますような刑事政策の面における保安処分とか、あるいは宣告猶予制度、常習累犯者等に対する保安処分を兼ねての不定期刑といったような問題等が、諸外国の立法例に比べましてきわめて立ちおくれておるのでございます。そういう点をカバーしながら、かつまた責任主義罪刑法定主義の徹底といったようなを考慮いたしまして立案をしたいとう考えから、昭和三十一年でございしたか、刑事局の部内に小野博士を長として刑法改正準備会を設けまして、自来五年にわたりましての成果でき上がりましたので、昭和三十六年の十二月に、これを理由書をつけまして、国内はもちろん、外国にもドイツ語あるいは英語に直しましたものを広く公表いたしまして、各界からの御批判を受けておるわけでございます。幸いにいたしまして、国内におきましては、学界、言論界はもちろんのこと、各方面から個人的にもいろいろな意見、批判を多数寄せられて、私ども裨益をしておるわけでございます。一方外国におきましても、過般検事総長が外遊されました際に、各国の法律専門家から、刑法の改正につきまして激励も受け、かついろいろと有益な意見も聞かしてもらっておる状況でございます。
 私の考えをつけ加えて申し上げますと、もちろん刑法だけが改正されましたならば事が済むのではございませんで、この刑法の考え方、行き方がきまってまいりますと、これに付随いたしまして、刑事訴訟法の部分的な改正あるいは相当大幅な改正も必要かと思いますし、さらに監獄法あるいは保護法等の拡充強化、改正がやはり付随的に必要になってくると思うのでございます。特別部会の進行の状況に応じまして、あるいは監獄法、保護法等の諮問も発せられるかもしれぬ、かような見通しのもとに、法務大臣の総会に対する希望といたしまして、大体三年くらいで成果が得られれば非常にしあわせだということを申しておるのでございます。かような次第でございまして、いまや刑法改正の問題は、単なる希望でではなくて、現実の日程に上ってきた、私どもはそういうつもりでございまして、部内の関係の各局の者はもちろんのこと、当局におきましても、これに参画いたします参事官室を強化いたしまして、何としてもいい刑法をつくり上げることに最善の努力をいたしてまいりたい、かように考えておるような次第でございます。
#10
○林委員 刑法改正の作業については大体わかりましたが、本案の立案にあたりまして、刑法の改正によらずして、暴力行為等処罰に関する法律の一部改正という形でした理由はどういうところにありますか。
 いま一つは、特に今回の改正をする目的ですね、どういうところにその必要性があったのか。一部においては、こういう改正は必要がないじゃないかというような意見もかなり根強くあるように承っておりますので、この改正の必要性が実際上どういうところにあったのか、そういう点についてお伺いいたしたいと思います。
#11
○竹内(壽)政府委員 純粋に刑法学者等の学問的な立場から申しますと、暴力行為等処罰に関する法律は、なるほど刑法の特別法でございますけれども、実質は刑法の一部をなす法律でございまして、先ほど申しましたような全面改正についての具体的な日程表をつくって進行しておる際でございますので、この段階で特にこれを取り上げて改正をする必要はないではないかというような意見も学者の中にはないわけではないのでございます。しかしながら、法律を執行いたしますいわゆる実務家という立場からこれを見ますると、刑法の全面改正には今後どうしても数年を要するのでございまして、暴力団に対する対策といたしまして、この数年を待っておれないというふうに観察されるわけでございます。
 〔委員長退席、上村委員長代理着席〕
そういう次第で、全面改正を待たずに、部分立法でございますけれども、応急的な改正を遂げて、そうして暴力団対策に画龍点睛と申しますか、はっきりした態度を示してまいりたい、かように考えたのでございます。
 そこで、実務家の立場からなぜそうであるかということは、お手元に配付いたしております暴力犯罪関係統計表を御一覧願いたいのでございますが、ごくあらましを申しますと、統計表の第四表でございますが、第四表の数字を見ますると、たとえば傷害というような罪をとってみましても、非常に科刑が軽い。この第四表の四ページのところにあります表を見ていただきますと、これはいわゆる暴力事犯と称するものの公判請求をした事件の第一審裁判結果調べでございまするが、これによりますと、昭和三十五年の傷害の総数は五千九百六十一でございますが、その中で一年以上になっておりますのは千二百でございまして、一年以下のところへ大部分集中しておる。四千五百以上のものがこの一年未満のところに入ってきておるのでございまして、その中の三千余りが執行猶予になっておる、こういう状況。これは傷害に限らず暴行、脅迫、器物毀棄、暴力行為等処罰に関する法律違反につきましても同じような傾向が見られるのでございますが、この表のもう少しあとのほうを見ていただきますと、たとえば七ページのところに、主要暴力事犯の通常第一審有罪被告人の前科調べというのがございますが、この表の傷害のところを見ていただきまして、昭和三十五年の例をとってみますると、前科のあります者と初犯の者が区別してありますが、有罪判決を受けた六千九百のうちで初犯者が二千五百で前科者が四千四百、こういう数字になっております。この四千四百の中身をさらに左のほうから右のほうへと目を移していただきますと、二度というのが七百、三度以上というのが七百八十九、六度以上というのが百五十一、これは実刑の分でございますが、そう見えますし、罰金のところを見ましても、三千三百八十のうちで一度が千三百、二度が八百十七、三度以上が九百六十九、六度以上が二百五十六、こういう数字になっております。
 さらにまた暴力その他の犯罪につきましても同じようなことが言えるのでございますが、十一ページの犯罪時にどういうものを犯罪の用に供しておったかという凶器の種類をながめてみますと、殺人に拳銃を使うということは当然あり得ることでございますが、殺意のない傷害事件につきまして、下から二番目の欄でございますが、傷害の欄を見ますると、拳銃を使ったもの、猟銃、空気銃、日本刀、あいくち、飛び出しナイフといったような凶器を使っておるものが相当たくさんある。次のページは、それを具体的に数字等をあらわしたものでございます。もう一つ先のほうへ参りまして、一体こういう犯罪をどういう人たちがやっておるかということを見ますると、十五ページ以下のところに暴力団検挙状況累年比較表というのがございますが、暴力団と称せられる団体の構成員あるいは準構成員というような人たちが、どのように傷害その他の犯罪を犯しているかという数字を見ますと、傷害だけについて見ましても、昭和三十二年には一万八千九百、昭和三十三年には二万、昭和三十四年には一万八千四百、三十五年が一万八千四百、三十六年には一万七千八百、こういう数字が出ております。これをその他の犯罪につきまして見ていただきましても、大体こういうふうに見えるのでございます。
 さらに十七ページの最後のところでございますが、暴力団の検挙状況の累年別の比較表がございますが、暴力団というのは、ここに区分してありますように、ばく徒、テキヤ、青少年の不良団体、会社ゴロ等々でございますが、これらの団体から昭和三十二年には五万、三十三年には五万九千、三十四年には五万五千、三十五年には五万六千、三十六年には五万八千という人たちが検挙されておる。こういう実態を見てまいりますと、とうていこの数年間の全面改正を待って処置いたしましたのでは、暴力団対策としまして不十分である。こういうふうに考えまして、この法案は、もっぱらこういった組織的な暴力団の構成員等によって特に多く行なわれる犯罪のみを最小限度取り上げまして、これの刑罰の強化等を主たるねらいとして立案をいたした次行でございます。
#12
○林委員 ただいまの御説明によりますと、大体この法案は、暴力団対策として刑法の全面改正まではとても待っておられない、そこでこれをやるのだ、こういうことだと思うのでありますが、ただ、この法案で改正しますと、対象になるのは必ずしも暴力団だけではないわけです。その他の暴力団以外のものでも、たまたまこの構成要件に当てはまればこの法律が適用されるという形になってくるわけなんですが、暴力団の犯罪を取り締まるというような立法形態というものはできないものなんでしょうか。
#13
○竹内(壽)政府委員 仰せの通り、法律のていさいといたしましては、この構成要件に該当いたします場合には、暴力団の構成員でなくてもこの法律の適用を受けますことは当然でございますけれども、当初事務当局としましては、暴力団ということばを持ってまいりまして、そうして暴力団の構成員ということで団体を規制するという考えや、そういう規制するという意味は、暴力団に加入する行為を罰するとか、あるいは暴力団の中へ入って何か活動する行為を罰するとかいうような意味の暴力団それ自体を法律の表面に出して刑罰的に規制する方法はないものかということでいろいろ研究をいたしたのでございますが、アメリカ等にそういう例はございますけれども、それはいずれも連邦の最高裁判所で憲法違反だという判定を受けているような結果になっております。フランス、ドイツ等の立法例にも、古く沿革を探ってみますとそういう例もあるのでございますが、それは結局使えない。なぜ使えないかと申しますと、暴力団という常識的な言葉はわかるのでございますけれども、法律の概念として暴力団ということをきめることはすこぶるむずかしいということでございまして、結局その方面の努力は効を奏しない、成果がなかったのでございます。そこで、暴力団の実態を十分検討いたしまして、暴力団の人がやる犯罪とはどういうものであるかということをまず考えまして、そのような犯罪を特に刑を上げるようにしたならば――形の上はひとしく法律でございまして、暴力団という言葉は使ってないのでございますけれども、個々の構成要件を見ていただきますと、まさしく統計その他によって示されております数字、それに焦点を合わしてこの法案をつくったということによりまして、これは暴力団をねらったそういう規制の法律であるというふうに私どもは考え得ると思うのでございます。
#14
○林委員 暴力団を取り締まるということはわかるのでございますが、今度の法律は最下限を設けて刑を非常に重くしておるわけなんですが、これは実際には、いままでの法律でも、運用の面で暴力団を重く処罰しようというような考えのもとに、検察官あるいは裁判官がそういうことを運用の面でよく理解した上ですれば、これは処罰でき得ると思うのです。それが運用の面で非常に低い罰金だとか、あるいは非常に軽い刑が言い渡されておるというのが実情なんで、これは運用の面で多少考え方を変えていけば、今までの法律でも十分できることではないかという考え方もあると思うのですが、そういう点についてのお考えはどうでしょう。
#15
○竹内(壽)政府委員 その点は全く仰せのとおりでございまして、考えようによりましては、実体法としましては、法定刑を引き上げるということをしなくても、運用よろしきを得ればいいではないかという考え方もあるわけでございます。私ども暴力対策には、数年来の問題となってまいりまして以来、立法的には第二段と考えるにいたしましても、何はともあれ運用の面でできるだけのことをすべきではないかという考えのもとに、関係機関として、裁判所はともかくも、行政機関の立場にあります検察庁はもとより、警察関係の機関、そういうものが総力をあげまして、それぞれの立場で、できるだけ現行法のもとで暴力団対策の実をあげるような努力を試みたわけでございます。たとえば、検察庁の面におきましては、暴力団に対する科刑、求刑の引き上げというような問題を特に刑事部長会同を開きまして取り上げて申し合わせもして、その科刑の引き上げに努力したのでございまして、これは私はある程度成果をあげてきたというふうに思うのでございます。しかしながら、それはある程度でありまして、これにはおのずから限界があるということをしみじみ感ぜざるを得なかった。先ほど御説明申し上げました資料等を見ましても、長嘆息を禁じ得ないわけでございまして、こうなりますと、やはり法定刑の下限を引き上げることによって科刑の基準というものをわれわれが持つということが、裁判の現実の量刑の上にも引き上げのことになりますし、これを執行します検察官もやはり法定刑を基準にして考えていく。それからさらにまた効果が大きいと思いますことは、このようなことによりまして、暴力犯罪全般についてのこれをにくむ気持ちを国民全体が持つということによりまして、暴力対策の刑罰面からの効果が期待される。こういうような考え方に変わってまいりまして、この法案をつくることにいたした次第でございます。
#16
○林委員 いわゆる暴力団の実態について、その構成員または仲間と称する者は、現在どのくらいおるのでしょうか。
#17
○竹内(壽)政府委員 これはものの本に書いてありますところや、警察庁等でいろいろな角度から集められた資料を基礎にしたものでございますが、先ほど申したばく徒、テキヤ等の昔からあります暴力団と称せられる団体のほかに、青少年不良団体、会社ゴロあるいは売春暴力とか公安暴力とかいろいろな形の暴力団がありますが、そういう団体数は約五千、昭和三十六年末の推定では四千九百七十団体あると言われております。それの構成員等は十六万二千四百五十名と推定されております。私どもは五千団体、十六万人の構成員、こういうふうに理解をしております。
#18
○林委員 この昭和三十三年に刑法の一部改正によって新設されました凶器準備集合罪の規定、二百八条ノ二ですが、その後の適用について、実情はどうなっていますか。
#19
○羽山説明員 お答えいたします。統計といたしましては、先ほど刑事局長が説明中に引用されました暴力犯罪関係統計表の四表に三十三年、三十四年、三十五年の一審裁判結果の統計が出ておるわけでございます。それが大体お手元に差し上げました統計では数字が出ておる資料でございますが、御承知のように、刑法を改正いたしました趣旨は、凶器準備集合等、結集を取り締まるために規定いたしたわけでございますが、その後の運用の概況を申し上げますと、御承知のように、暴力団と申しますのは、繩張りと申しますか、朝から晩まで暴力をふるっているというのはあまりないのでございまして、多くの場合生業、たとえば土建、運送、興行師、キャバレー、露店、行商その他生業を一応持っているものと、それから全然生業でない賭博、売春というようなものをやっておるものとに大別されるわけでございますが、その共通の特徴はわりあいに人手がかかる、たとえばキャバレーといたしますと、接待に出るとかいうようなことで人手がかかる、あるいは貸しボート屋、あるいは新聞業というようなことで、人手を要する仕事が多いわけでございます。この人手になる要員、これはいろいろなことばで言っておりますが、通常いわゆる若い者というのが暴力行為の要員となっておるわけでございます。
 どういうときに暴力行使が行なわれるかと申しますと、ただいま申し上げましたように、暴力団には昔から繩張りとかシマとかいうようなことがあるようでございまして、そこの一定の地域に地域的な独占を主張しておる、その独占を荒らすというようなときに組織対組織の闘争が起こるわけでございます。
 それから近時の傾向でございますが、暴力団の中に幹部が一応飽和状態になっておりまして、だんだん若い者が幹部になってくる。大ぜいの幹部をいつまでもかかえ込むわけにまいりませんので、これをどこかに新しい地域を求めて出してやらなければいかぬ、出してやるということになりますと、そこに出されるほうの地域との間に闘争が起きるわけでございます。最近の顕著な一つの例を申し上げますと、御承知のように、紀州のほうに勝浦という温泉がありますが、紀州の鉄道が通りましたときに、かねて姫路のほうの暴力団が幹部をかかえて困っておりまてし、紀州のほうにヌードスタジオを出す、もちろん地元の暴力団の了解を得ずにヌードスタジオを経営いたしましたために、ヌードスタジオを出された地元のほうが慣慨いたしまして文句をつける。そういたしますと、乗用車ほとんど百台にいろいろの凶器を積みまして姫路を出発いたしましてなぐり込みに行く。これなどは交番の駐在巡査が非常に多数の自動車が参ったために連絡いたしまして、それで闘争にならずに未然に検挙いたしたのでございますが、集団的な闘争という形態が典型的な闘争形態でございます。刑法に凶器準備集合の罪をつくりましたのは非常に時宜に適した改正であったと考えておるのでございますが、なおもう一つ刑法の改正の予想以上の効果と申しますか、この罪ができましたために、集合いたしました者がそこで一ぺんに検挙になりまして、だれがどの程度の地位におるというようなことがわりあいに容易に判明いたしまして、これは犯罪捜査とは別に、暴力団の組織の解明に非常に役立っておる、こういうような実情に相なっておるのであります。
#20
○林委員 ちょっと外国の立法例についてお伺いしたいと思うのです。第一条ノ二、三の銃砲刀剣類を用いる傷害罪、常習犯罪に対する外国の立法例はどうなっておるか。ことに科刑の点について本法と比較して、外国の立法例は非常に重いものであるか、あるいはこの法案のほうが非常に重いのか、こういった立法例があるのかどうか、そういうような点についてお伺いします。
#21
○長島説明員 お答え申し上げます。お手元に暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案に関する参考判例・立法例というものがまいっておると存ずるのでございます。その中に、十九ページ以下から凶器等による傷害罪についての立法例というのがございまして、三十三ページ以下に常習犯人または累犯者の刑を加重する立法例が掲げてございます。これらを後刻ごらんいただければおわかりになると存ずるのでございますが、傷害罪につきまして各国の立法例でうかがわれますのは三つございまして、一つは重い結果が発生いたしましたことを刑の加重の要件としておる立法例でございます。もう一つは手段、方法ということで、たとえば凶器を用いますとか武器を用いますという場合について刑を加重しておる例でございます。もう一つは累犯的あるいは常習的な犯罪につきまして刑を加重するものでございますが、こういった三つの類型があるわけでございます。その刑の加重の程度はいろいろでございますが、一般的に申しますと、非常に危険な傷害あるいは重大な傷害の結果を生じたというような罪についてはかなり高い刑がきめられておるわけであります。今回の凶器を用いての傷害といいまするのは、二つの点を実はねらっておるわけでございまして、凶器の範囲が限定されておりますことからいいまして、外国の立法例では凶器といいますと非常に広い範囲でございますので、何と申しますか、用法上の凶器というようなものも入るわけでございますが、今回の案におきましては、この範囲を非常にしぼっておりますので、このような凶器をその用法に従って使用いたしますと、方法自体が危険であるばかりでなく、結果として非常に重大な傷害が生ずるということが考えられるわけでございまして、実は非常な重大な結果の生ずる傷害、及び手段が危険であるという両面に着目いたしまして刑を考えておるわけでございます。一般的に申しますと、日本の刑法の十年以下の懲役という刑は、長期自体について見ますと、必ずしも軽い類型には属しておらないわけでございまして、比較法的に見ましてもむしろ重いほうの類型かと存ずるのでございますが、現在の刑法におきましては、刑法自体があらゆる形の傷害を予想しておるわけでございまして、一生涯かたわになるとか、あるいは一生涯両腕がつぶれてしまったとかいう傷害も十年でまかなっておるわけでございまして、そういうわけで長期が十年というふうになっておるのでございます。今回の改正案におきましても、長期はさようなことでございまして、動かしておらないのでございますが、短期につきましては、こういった危険なあるいは重大な結果の生じます傷害ということにつきましては、一般の場合と区別してこれを高くするというのに十分の理由があると考えた次第でございます。
 なお、常習的な犯罪につきましては、各個の罪の中にさような規定がございますほかに、刑法総則の中に常習的な犯罪あるいは常習的累犯者に対する加重規定が見受けられるのは近代の刑法の一般の例になっておるわけでございまして、これはそういった非常に常習的な行為によってあらわれてまいります性格の危険性ということに対しての考慮ということと、一方は、そのような犯人に対しまして相当長期間にわたりましてこれを改善更生するための方法を見つけるという両面から、こういう常習犯あるいは常習累犯というものに対する刑の加重が考えられておるのでございます。そういう趣旨から今回常習犯の改正というものが考えられたのでございます。
#22
○林委員 具体的に法案についていろいろお伺いしたいと思いますが、本案第一条ノ二の銃砲刀剣類というのは、銃砲刀剣類等所持取締法二条にある銃砲刀剣類と同じ内容である、このように説明で承ったのでありますが、たとえば同条に該当しない刃渡り十五センチ以下の刃物及びあいくち類似のものは本件の刀剣類には入らないのですね。
#23
○竹内(壽)政府委員 さようでございます。この点は理論的にはなかなかむずかしい問題があると思いますけれども、解釈論といたしましては、銃砲刀剣類というのは銃砲刀剣類等所持取締法の第二条に掲げてあります銃砲刀剣類をさす、これが常識的な解釈であるということに私ども検討の結果なりまして、これでいけるという感じを持っておるのでございます。
#24
○林委員 ちょっとと私は疑問に思うのですが、私は法制審議会の議事録を拝見しまして、今度の提案説明と多少御説明が違っておるのじゃないかと思うのです。法制審議会の答弁では、いわゆる銃砲刀剣類等所持取締法二条と本条の銃砲刀剣類とは多少の出入りがあるのだという御説明をなさっておる。たとえば飛び出しナイフの問題ですね、こういう点についてもおのの法規の目的からその解釈がなされるので、大体において一致するかもしれないけれども、その法規のたてまえ上多少の出入りがあるという御答弁があるように思うのです。その点はどうなのでしょうか。これがはっきりしませんと、いろいろ解釈が移動しますとたいへんなことになると思うので、その点をお尋ねしておきます。
#25
○竹内(壽)政府委員 その点確かに、法制審議会のときに最初の解釈として私ども事務当局の説明は、御指摘のように、大体において一致するであろうけれども、多少の出入りが起こってくるのではあるまいかということを申しました。そういうことを申しましたのは、いまもお話がございましたように、この法律は特別傷害の規定でございまして、もとより刑法犯でございます。したがって、その使います凶器が銃砲刀剣類という非常に危険な武器を使った場合、用法に従って使った場合、こういうことになりますので、これはあくまで刑法犯の傷害罪として考えなければなりませんし、その使いました武器は、客観的にきまっておるものでなければならないじゃないかということを考えました。ところが、一方の取締法のほうは、所持を禁止しようという法律でありますために、現に過去何回かにわたって改正されておりますし、特に飛び出しナイフにつきましては五・五センチメートル以下のものは許されておったものが、昨年の改正で許されなくなった。こういうふうに所持を禁止しようという取り締まり目的によって中身が変わることがあり得るわけであります。刑法犯の中身が取締法の消長によって伸びたり縮んだりするということはどうしても解釈上おかしいではないかということを実は考えたわけであります。そういうことからいたしまして、端的に申しますならば、五・五センチメートル以下の小さい飛び出しナイフのようなものはここにいわゆる刀剣類というふうに解釈されるかどうかやや疑問である。と同時に長い方の十五センチメートル以上のものでなければ取締法の対象にはなりませんが、十四・五センチメートルで、半センチばかり小さかったら、これはもう銃砲刀剣類に当たらないかということになりますと、これまた刑法の解釈論としましてはいかがなものであろうか、こういったようなことから、大体は一致するであろうけれども、多少の出入りがあるかもしれぬというような感じを実は持ったので、そのような答弁を法制審議会でいたしたのは事実でございます。
 その後、内閣法制局ともいろいろこの問題について長時間にわたって論議を重ねたわけでございますが、現時点において考えました場合に、刑罰法令の用語、概念というものはできるだけ共通でなければならぬ、銃砲刀剣類等所持取締法にいういわゆる銃砲刀剣類が、今度の法律の銃砲刀剣類と内容が違うのだというような解釈はとうてい許されない。やはり取締法も――なるほど取締法と刑法の規定ではありますけれども、なぜ取り締まるかといえば、危険な凶器であるから取り締まるというのであって、結局は、そういうものが行使されることから起こってくる危険を防止しようという趣旨に出ておるので、そのねらいは刑法であろうが取締法であろうが同じである。そうだとすれば、その内容を同一に解釈するのが法律解釈論としては正しい態度ではあるまいかというようなことが、実は長時間にわたりまして論議の結果、なるほどそうだろうということに私どもも考えが変わってまいりまして、そして法制審議会の後半におきましては、その趣旨を訂正いたしまして、私どもも銃砲刀剣数等所持取締法二条に掲げてあるような銃砲刀剣類がすなわちここにいう銃砲刀剣類であるという解釈にいたしたわけでございます。
 もしこの刀剣類が、将来取締法が改正されて、もっと短いものまで、あるいは何かほかのものがつけ加わってきた場合にどうなるであろうかということにやや疑問を感ずるわけです。でありますから、審議会におきましても、この定義規定を、ここへ銃砲刀剣類等所持取締法二条にいう銃砲刀剣類であるということを条文の中に書き込んでも同じじゃないか、それはその通りです。
 〔上村委員長代理退席、委員長着席〕
しかしながら、書き込んだ方がいいか、書き込まぬ方がいいかということは、これまた法制審議会でも議論になりまして、実はそういう動議も出たわけでありますが、これは少数で否決されました。その理由は、もしもそういう規定を書きますと、将来変わってきた場合に、これがスライディングシステムみたいなことで取締法の規定によって刑法の中身が変わってくる、こういうことはたいへんおもしろくないのじゃないか。こういった刑法の規定が取締法によって左右されるというような結果を招来するのはおかしいじゃないかということが、やはり多数の委員の方々の御意見でありまして、もしここで本法独自の定義を書くならば、それによって将来確定した形になっていきますが、銃砲刀剣類等所持取締法の二条をここに引っぱり込みますと、二条の改正によってスライドしていく、これもおもしろくない。やはりこれは現時点において解釈されるものを基礎にして、これでむしろ確定して形を整えていくほうが、法律論としてはいいし、刑法の現定のていさいからいいましてもそのほうがいいということで、動議は一人か二人でございましたかのきわめて少数で否決されて、そのままの状態で、解釈論としては二条のとおりということでいけるという結論になったわけでございます。
#26
○林委員 銃砲刀剣類等所持取締法の二条にあるものをいうのだということを明文を設ければ、これはスライドしていくと思うのですね。ところが、明文を設けなくても、現在内容は同じなんだ、こういう御説明なんですが、それでは現実に銃砲刀剣類等所持取締法の二条が将来改正になった場合に、本案の銃砲刀剣類の解釈というものは、やはりスライドしていくことになるのか。あるいは本案独自の立場から、現在の銃砲刀剣数等所持取締法二条の時点における解釈が将来も維持されていくのか、あるいはそれにスライドしていくのか、その点が明確でないと思うのです。その点のお考えはどうでしょうか。
#27
○竹内(壽)政府委員 これは裁判所の態度がどうなるかということはわかりませんけれども、私どもの論議をいたしました過程におきましては、定義を書いておきさえしなければスライドしないということでございまして、おそらく判例で銃砲刀剣類という解釈が出ますれば、それがこの法律のいわゆる銃砲刀剣類ということで、この時点において考えられておりますもので固定していくのじゃないか、こういうふうに考えております。
#28
○林委員 私は、法律論としてはきわめて不明確だと思うのです。銃砲刀剣類等所持取締法二条に規定しておるものと内容は同じだといま言って、それでそれが改正されればスライドはされない、また現時点の考え方でいくのだということなんですが、また判例に待つのだということなんですが、これは判例なり検察官の解釈でいろいろに解釈されていくということは非常に危険なことではないかというふうに考えますので、なるほど立法形態としては、銃砲刀剣類等所持取締法二条と同じものなんだという条文を挿入することはいろいろ弊害があるかもしれないけれども、本法がそういう独自な解釈でいくならば、本法は本法として、本法にいう銃砲刀剣類とはこういうものなんだという定義規定を設けるべきではないかというふうに私は考えるのですが、この点はいかがでしょうか。
#29
○竹内(壽)政府委員 それは先ほど申しましたように一つの考え方でございまして、決してそれが悪いと申し上げる考えはございません。ただ、最初に私どもが考えました理論としては多少の差異がありそうな気がするということを申したわけです。この理論的に見た出入りというものと、銃砲刀剣類等所持取締法二条に掲げてあります刀剣類の定義と申しますか、これは純粋の意味の定義じゃありませんが、これもやはり日本刀とは何だということは判例できまっておるわけです。やはりこの判例の解釈を借りませんと、二条の銃砲刀剣願も内容が明確にはならないわけであります。そこでもし定義がうまく書けるのなら、それは書いた方が一そうわかりがいいと思いますが、理論で出入りがあると言うと、いかにも不明確なようでございますが、その出入りというものはほとんど差異がない程度のほんとの理屈の上の差異でございまして、現実のものとしましては、わかりやすく言えば同じだと言ってもちっとも差しつかえない程度の差異じゃないか。ちょっと理論的に見ますと、いま言ったようなひっかかりを感ずるわけでございますけれども、二条そのものが判例の解釈によって補充されて定義というものが成り立つので、あの二条そのものもずばりと定義を定めたわけではございませんので、定義がうまく書ければいいと思いますが、事務的にいろいろなことを考えてみたわけですが、適当な定義のしかたがないということでこの案に固まってきておるわけでございます。
#30
○林委員 判例に待つのだというお話もあるのですが、判例も、銃砲刀剣類等所持取締法の二条の解釈の判例と、それから本法のいわゆる銃砲刀剣類の解釈の判例と二つ出てくるのじゃないかということも考えられるわけです。そうしますと、いま局長の説明せられました、内容は同じなんだということは、どうもたまたま内容が同じだという解釈をとっておるだけであって、実体はやはりその法律の趣旨から見て解釈すべきことなんだ、また判例もつくられるべきものなんだという理論的な根拠に立っておられるのじゃないかというふうにとられるわけです。その点がどうもちょっと御説明がはっきりしないように思うのです。
#31
○羽山説明員 少し御説明がこまかくなって恐縮でございますが、御疑問の点は、法制審議会の説明と国会における説明とが食い違っておるじゃないかという御質問でございますので、少し御説明させていただきたいと思います。
 銃砲刀剣類等所持取締法を見ますと、「この法律において「銃砲」とは、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮ガスを使用するものを含む。)をいう。」こう書いておるわけです。それから二項におきまして、「この法律において「刀剣類」とは、刃渡十五センチメートル以上の刀、剣、やり及びなぎなた並びにあいくち及び四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフをいう。」カッコ書きで御承知のように除外例が規定してあるわけであります。
 まず一項から申しますと、「「銃砲」とは、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃をいう。」ということになっておりまして、あとは装薬銃、空気銃とは何であるかということは銃砲刀剣類等所持取締法自体においてもはっきりしておらぬわけです。
 それから二項を見ますと、刃渡り十五センチとか四十五度以上に開刃するということははっきりしておりますが、あと刀、剣、やり及びなぎなたをいうというのでありますが、刀、剣、やり、なぎなたとは一体何をいうのだということははっきりいたしておらぬわけです。それから解説にもございますが、あいくちというのには刃渡り十五センチという文句はかかっておらないわけであります。したがって、あいくちにつきましては、刃渡りにかかわらずあいくちは刀剣になるというふうになっております。ところで、そのあいくちとは一体何であるかということも銃砲刀剣類等所持取締法上ははっきりいたしておらない。なぜこれを、こういう所持の規制をする法律でそもそもはっきりしなかったのか、それはこれをはっきりいたしますと脱法手段を生むわけです。それから、もしこれを非常に厳重に書きますと、ほうちょうその他いろいろなものが入ってまいりまして、実生活に非常に不便を来たす。そこで、結局、これは最高裁判所の判例にもあるわけでございますが、この銃砲刀剣類というものはしょせん社会通念によって決するよりしょうがない、そしてまた、その社会通念によって決するということは、一面においては罪刑法定主義の要請を満たすと同時に、一面においては人権保障の要求を満たすということになるのだろうと思うのでございます。
 そこでこの法律立案当時、法制審議会等におきましては、こちらは御承知のように一年以上十年以下という法定刑、特に危険なる刃物による傷害ということを考えまして、したがいまして、こちらのほうの所持取締法上にいう所持を規制されるところの対象という考えと、こっちは傷害という対象ということから、どうしても少し出入りがあるのじゃなかろうか。しかしながら、その出入りと申しますのは、たとえばここに鉄砲がございまして、その鉄砲の撃心が折れております。現在たまは出ないわけでございます。あるいは現在撃ちますと非常に性能が悪くて、金属性のたまは飛び出すわけにはいかぬけれども、コルクのたまは飛び出すというようなものがあったとしますと、判例上、簡単に修理ができるようなものは銃砲と考えなければいかぬ、したがいまして、それを持っておりますと銃砲刀剣類等所持取締法違反になるわけでございます。簡単に修理ができて、手を加えればすぐりっぱな役に立つというものは所持の規制対象になる。ところが、こちらは傷害でございますから、たとえばここでいま簡単に修理ができるような鉄砲でコルクのたまでもって撃った、そうしてコルクのたまでけがをさせたというような場合には、われわれがいま考えておりますこちらの法律のほうでは、この一条ノ二を適用するわけにはいかないのじゃないか。そういうふうに所持の規制と傷害という観点からの規制という意味において出入りはあるのじゃなかろうか、こういうふうに考えたわけでございます。その他多少出入りがあるのではなかろうかと考えて、法制審議会におきましてはああいう御説明を申し上げたわけでございますが、ただいま局長が申されましたように、法制審議会におきます説明段階におきましては、いまだ内閣法制局と十分打ち合わせが済んでおりませんで、内閣法制局との議論の結果は、同じことばを使いながら多少出入りがあるということではちょっとつらいということになってまいったわけでございます。
 そこで一応、政府の解釈といたしましては、ただいま申し上げましたように本体は社会通念できまるものでございますし、その出入りと申しましてもそれほど大きな出入りではないのでございまして、それほど食い違いがあるとは思いませんが、一応これは銃砲刀剣類の二条と同じであるという――どこが同じかと申しますと、結局刃渡り十五センチとか、四十五度というだけについて同じであるということになってきたのでございますが、その考え方といたしましては、刃渡り十五センチとか、あるいは四十五度というところに着目をして所持の規制をいたしておりますのは、やはりこれが大きな傷害の結果をもたらす危険かあるからであろう、この法律がそういう所持の規制をいたしましたのは、やはり危険なものであるという考えに立ってこれを規制しておるのであろう。そこでこれを基準としていまこれからの法案も考えていかなければいけないのではないか。しかしながら、御指摘のように、もし将来こっちがさらに四十五度というのが五十度になり、あるいは三十度になるということになりますと、この法律は刑法の付属法典というような考え方で、現時点におきましてそういう考えに立ってつくっておりますので、将来こちらの行政取り締まり法規が変わることによって変わつていくというのでははなはだまずいのであって、やはり法定刑その他を考えますると、現時点においてこれが一応の解釈の基準になるにとどまるのでございまして、これがふらふら動くときに、こちらがまたふらふら動くということでは、はなはだ穏当ではないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
#32
○林委員 内容が同じであるとは言いますが、どうもそこのところはまだ釈然としないのでありまして、ただいま現時点において大体一致しておるということであって、本法は本法独自の解釈ができるのではないかというふうにどうも思われるのであります。したがって私としては、やはり定義規定を設けるべきではないかという結論にならざるを得ないというような感じがいたしますが、この点はしばらく保留いたしまして、なお研究をさせていただきたいと思います。
 次に第一条ノ二の二項で未遂罪を設けておりますが、その未遂罪を設けた理由につきましてお伺いをいたしたいと思います。ことに本条の着手未遂と銃砲刀剣類を用いた暴行脅迫との関係、たとえば銃身で殴打したり、銃砲刀剣類を示して脅迫をした場合にはどういうことになるか、そのような点いかがですか。
#33
○竹内(壽)政府委員 御承知のように刑法の傷害罪というのは、結果的加重犯、故意のあります場合はもちろん、故意がなくても暴行の意思で暴行を加え、その結果として傷害を発生した場合をも含む、こういう解釈になっておりますことは御承知のとおりでございますが、今回の危険なる刃物による傷害というのは、暴行の意思でやって、その結果として傷を受けたといういわゆる結団的加重犯を考える余地がない、またそういうものは排除するのだという考え方をいたしております。したがいまして、危険なる刃物による傷害は故意犯だけであるということの表裏をなすものとしまして未遂の規定を置いたわけでございます。もし未遂の規定を置きませんと、未遂になった場合にはどうなるのかということになりますと、未遂と既遂とは刑法の評価としましては同じでございます。ただ未遂減刑をすることができるというだけであって、価値判断におきましては未遂も既遂も同じ評価を受けるべきものであるにもかかわらず、もし未遂の規定を置きませんと、未遂の場合には単なる暴行に終わるか、現行法の一条一項のつまり凶器を示して暴行を加えたというそういったような罪になるのがせいぜいでございます。そうなりますと、一項と二項との間に非常なアンバランス、つまり既遂の場合と非常にアンバランスが起こってまいりますので、未遂を置いて両者の関係をはっきりさせた、しかもそれは故意犯だけに限るのだということも間接に明らかにいたした次第でございます。
#34
○林委員 本案は、現行の暴行、脅迫、器物毀棄の常習犯についてその法定刑を引き上げているほか、常習的傷害罪、銃砲刀剣類を用いてする傷害罪の規定を新設して、その法定刑を引き上げておるわけでありますけれども、労働組合の団体交渉、労働争議等の際に、たとえば集団的脅迫等の外観を呈することもあると思いますし、また刀剣類という概念の拡張解釈が行なわれますと、いろいろな場合が本案の対象とされるということも考えられるのですが、元来は先ほども申されたように、これは暴力団を取り締まる法律だということなんですが、構成要件にさえ当てはまれば必ずしも暴力団だけでない。いろいろな部面にこれが適用になってくるわけですが、この法案が健全な労働運動に乱用されるようなことがあってはならないと思うのですが、その点についてお伺いいたします。
#35
○竹内(壽)政府委員 お説のとおり、暴力団そのものを対象とする法律規制をいろいろ研究をいたしたのでございますが、先ほど申しましたように、外国の立法例におきましても成果をあげておらない状況なので、やむを得ず一般的な通常の形の立法にしたわけでございますが、いずれにいたしましても、ねらっておりますのは、先ほど刑事課長から御説明した、ああいったような実態の暴力団を対象にしたわけでございまして、そういう趣旨があらわれますようにするにはどうしたらいいかということで、これは私非常に苦心をいたしたつもりでございます。もし、この危険な刃物の範囲が非常に広まって、こん棒やなんかにまで及んでいくのだということになりますと、これはたいへんなことで、暴力団だけじゃなくて、広く労働運動等の越軌行為にも結びついていくわけでございますが、そこで凶器を用いて傷害というような形は避けまして、危険なる刃物、銃砲、刀剣類、これは普通使う刃物じゃなくて、全く殺人用の武器とでも申すべきものでございますので、そういうものだけに限定し、しかも用いてということばの解釈は、自然にそうなるわけでございますが、用法に従ってやった場合で、銃の台じりでぶったような場合は、これに入らないことは当然でございます。そういうような構成要件をつくりますことによって、そういうものをやれば、それはだれでも当たりますが、労働運動や大衆運動をやっておられる人たちがそういうような形の暴行などをするとは私とうてい考えられないし、また実例から言いましても、そういうものはないと思います。そういう意味でこの危険なる刃物による傷害が暴力団以外のものに広く適用を見るなどということは想像もできない、こういうふうに私は考えるわけであります。
 それから傷害の常習という規定を設けましたが、これは暴力団の構成員の幹部というような人たちの実態を見ますると、多いのは、まだ三十歳余りの者で前科十八犯というようなものがございます。これらを見ますると、傷害、暴行、脅迫などという、まさに暴力行為に該当するような行為の前科の連続でございまして、いわば前科者の集団というような感じがするのでございまして、こういったような実態を見ました場合に、常習傷害という規定を暴力行為の中の一つに加えますことは、これはやむを得ない。当然それをやらなければならぬと思いますが、このような行為が、労働組合運動や大衆運動をやる際に、いま御指摘のように暴行、脅迫めいたことが間々ありますが、この暴力行為等処罰に関する法律の適用状況、そのような大衆運動、労働運動の越軌行為にどのように適用されておるかという実態を見ますると、一条一項はしばしば適用を受けておる。ところが現行法の一条二項のほうは一件もありません。私は調べました。そこで私は、一項のほうは全然手をつけない、二項のほうだけを直すことによって、これがそういったようなものをねらったものでない、暴力団の構成員をねらったものだということが構成要件自体からもおわかりいただけるのじゃないかということで、申さばてまえみそでございますが、非常に苦心した条文の構成になっておると思います。そういう意味において、そのようなものに広く乱用されるということは決してありませんということは、申してはばからぬと思うのであります。
#36
○林委員 本法で一番問題になりますのは、私が先ほど言った銃砲刀剣類の解釈と、いま一つは常習という概念だと思うのです。この点について次にお尋ねしたいと思いますが、判例にあらわれた常習性の認定の方法、資料などについて、具体的に御説明願いたいと思います。
#37
○竹内(壽)政府委員 常習性でございますが、私どもの理解しますところによれば、ある犯罪を反復してそれが習癖になる、その習癖の一つのあらわれとしてある犯罪が行なわれたという場合に、その犯罪を常習的に犯した、こういうふうに私どもは理解をいたすのでございます。そこでこの現行の暴力行為の取締法第一条第二項のいわゆる常習につきましては、昭和二年に大審院の判例がございまして、この判例はずっと今日まで、最高裁判所になりましてからも一貫して裁判所がとっておる態度でございます。したがいまして、この判例は、私どもは暴力行為の常習性に関する基準となるべきものであるという考えをいたしておりまして、この判例を前提としてこの案をつくったわけでございますが、現行法では三つの罪、今度もし傷害を入れますと、四つの罪が、通常一つの暴力行為という範疇に入る特殊な犯罪類型である、こう見ておるわけであります。その暴行を犯した者が次にまた暴行の罪を犯すということになりますと、前の前科、前歴を常習認定の資料にすることはできる。これがミックスして、前が脅迫であって今度は暴行だという場合に、脅迫の前科を認定資料として暴行の常習を認めることができるかどうかというような点に一つ理論的に問題があるわけであります。しかしながら、昭和二年の判例をよくよく見ますと、それは包括して考えるべきでありますので、それらは混合して相互に認定資料となり得るというように考えられます。しかしながら、それは理論でありまして、判例もちゃんと条件がついております。それが、今度の常習性を認める犯罪で、その犯罪が常習だという習癖のあらわれであると見られる場合に限って、その三者がミックスしてお互いに常習認定の資料になり得るということを言っておるわけであります。そのような解釈を基礎にいたしまして、今度の法案におきましても、常習認定の資料は前科を参考としてやり得るわけでありますが、常習認定は、賭博につきましてもありますし、盗犯防止法にもありますし、特別法では麻薬取締法などにも、常習というのがありまして、それぞれ判例もあるわけでございますけれども、判例の常習認定の資料として使いますのは、もちろん前科、前歴だけではなくして、行為が反復て行なわれるといったような諸般の環境その他いろいろな角度から見るべきものだというふうには言っておりますが、客観的な資料として普通一番認定の資料に供せられておりますのは前科でございます。その前科の範囲を、いま申したように習癖のあらわれとしてその前科が参考になるかどうかというところを考えてきめる、こういうこでございます。なお、実務の上から一条二項の常習を認めた各裁判所の判例などもしさいに検討してみました。ところが、理論はそうでございますが、実際問題としては、暴行の前科があって、今度の暴行の場合にはその前科を参考として常習性を認定するということで、暴行は暴行、脅迫は脅迫、器物損壊は器物損壊というふうに、それぞれの罪について認めるのが原則のようでございます。さらにまた、傷害の前科がある者が今度は暴行をやった場合、傷害の前科で暴行の常習性を認定した事例がございます。これは暴行と傷害とが結果的加重犯というような形に理解されております。本質が同じの罪でございますので、そういうふうに広がっている点は、これは学者も当然のことだとしておるわけでございます。実際の運用におきましては、認定の前科が非常に広がっていくというようなことは実務の上では見られないと思うのでございまして、そういう意味から言いますと、理論と実務との間に、理論のほうがやや行き過ぎておって、実務は非常に慎重な態度をとっておる、こういうふうに言っていいかと思います。
#38
○林委員 いまの御説明では、暴行だとか、脅迫だとか、器物棄損、傷害、それぞれの罪についての常習性だけではなくして、それらのものを包括した暴力行為の常習性をも意味しておるようなんですが、このように常習性を広く解すると乱用のおそれが出てくるのではないか。たとえばいま言った四つだけではなくして、さらに強要罪だとか公務執行妨害罪の前科、このようなものもたとえば暴行の習癖のあらわれだというふうに見れば、これは認定の資料になってくるというふうな場合も考えられる。また建造物損壊というような場合も考えられる。これらの前科をどのように解釈するか、その点について伺いたい。
#39
○竹内(壽)政府委員 その点は、いま御指摘の建造物損壊とか公務執行妨害とか強要とかいうものは、その犯罪の要素の中に手段として暴行脅迫というものが入っておる場合に、その手段に着目をいたしまして、それが今回の常習を認める資料となるかどうかという御質問かと思うのでございますけれども、この点につきましては、私どもの理解では、理論的に詰めてまいりますと、絶対ないというふうには言えないと同じように、また同じ罪であっても常にそれが常習認定の資料になるとも言えない。それと同じような意味において、はっきりとだめであるというふうには言えないかと思いますけれども、手段はそうでありますが、でき上がった罪が公務執行妨害という罪でありますので、その公務執行妨害という罪と暴行という罪とは、必ずしも一致していない、本質が違うという見方が強いようでございまして、大部分の九九%は、公務執行妨害の前科というものは、暴行の常習を認める資料には供すべきでもありませんし、供されないであろうという考え方をいたしております。
#40
○林委員 私ども一番本法で問題にしますのは、先ほどの銃砲刀剣類の定義規定を設けるべきではないかということと、ただいまの常習性の認定について客観的な基準を設けるべきではないかという二点じゃないかというふうに考えておりますが、改正刑法の準備草案に常習累犯という概念を新設しておるということなんですが、この常習累犯というのはどういうことであるか、本法の立案にあたってそういうことが考慮されたかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
#41
○竹内(壽)政府委員 常習累犯という考え方が準備草案の総則の中に規定してございます。これは私どもも立案の過程において考えたところでもございますし、また法制審議会におきましても、一部の委員からそういう動議が出されたのでございます。常習累犯という考え方は、これは一つの考え方でございまして、外国の立法例などを渉猟してみまして、一体累犯と常習犯とはどこが違うのだということをいろいろ研究してみました。累犯という考え方は、思想的には常習犯も累犯もやはり加重事由として考えられるし、危険なる犯罪者の性格をあらわしたものとして評価されておる。そういう点では同じ範疇に入る考え方だと思いますが、近時の考え方になってまいりますと、その間に概念分析がだんだんできてまいりまして、ただいまドイツ国会に提案されております法律案等によってみますと、やはり累犯というのは、前の刑が何らの効果がなかったというような評価を受ける、そういう行為に対して累犯加重がやられるのだという考えのようでございまして、つまり前の刑がちっとも意味がなかった、そういうことに対する犯人の処遇という観点から、累犯というものを考えていく。それから常習犯というのは、かりに累犯になりましても、その人の行為が常習性の、つまり習癖のあらわれと見得ないようなものであるならば、累犯の加重は受けても、常習犯とは認められない。こういう場合でございまして、あくまで犯人の主観的な常時属性と申しますか、そういうものに着眼して、これは社会防衛というような観点から、このような行為を、そのような危険なる性格を持った犯人、こういうことでこれを処遇していこうということにだんだん概念分析ができてきておりますが、英米系のではそこら辺がごっちゃになっておりまして、累犯的なものと常習犯的なものとが、あたかも累犯のほうは法律で推定されておるような法定の常習者だといったような考え方などもございまして、概念がまだ必ずしも分化しておりません。
 そこでわれわれが常習累犯ということを考えます場合に、累犯者であってしかも常習者だ、こういうことになると、どっちにしても危険なものが両方そろって危険だということになるわけで、これはすこぶる危険な種類の犯人であるというので、総則で、そのような犯罪を犯した犯人、そういう累犯にもなり、しかもその者が常習者と認められるような、そういった危険なる犯人については、準備草案では、不定期刑というようなものをもって、社会防衛の実をあげるというふうに持ってきております。この両者は区別されないで発達してきた考え方でございますが、いまや概念的にある程度区別されてきておる。そこで常習累犯というような考えを持ち込んでまいりますと、われわれの準備草案等の考え方からすると、一年以上十年以下といったようなものじゃなくて、ある期間を定めて、その間の刑は定めないで、処遇の成績いかんによって出すか出さぬかをきめるというような、ある意味ですこぶる重い処遇というようなことになるような形態のものでございますので、今回は常習累犯というような考え方はとらずに、従来の判例によってほぼ確定しております考え方に従って、常習犯というだけで事を解決したいというふうに考えたわけであります。
#42
○林委員 時間の関係もありますので、少し質問をはしょりたいと思いますが、本案には強要罪や建造物損壊常習犯について規定しておらないわけです。ところが、たとえば刑法二百二十三条の強要罪は、二百二十二条の脅迫罪よりも刑が重いのに、常習性を帯びてきた場合は、脅迫罪のほうが強要罪よりも刑が重くなるので不均衡ではないかというような問題が出てくるわけです。また、暴力団による強要罪だとか建造物損壊罪というのは、実際にはその例が非常に多いのじゃないかというふうにも考えられますが、この点はいかがですか。
#43
○竹内(壽)政府委員 刑の不均衡の点は、法制審議会においても一部の学者の委員の方から指摘されたところでございまして、詰めてまいりますと、確かにそういう面がないではないと思いますが、実際の運用におきましては十分調整ができるのじゃないか、ある場合には、この観念的競合によって認め得る場合もありますので、そうなれば十分まかなえるのじゃないかということで、実務の運用によって、その点の不均衡は具体的な量刑において是正し得るということを申し上げてきたわけで、ただいまもそういうふうに信じております。
 それから建造物損壊、これも一部の委員から、相当暴力団によって犯されておるのじゃないかということで、実例について、実際の検察庁の受理事件について調査をしてみたのでございますが、一、二の例がないわけじゃありません。しかし、数字をもって、こんなにたくさんありますというようなのはないわけなんで、むしろ暴力団は、建造物損壊だとかなんとかいうようなことじゃなくて、常習犯で認められておるのを見ますと、ガラスも破る、それからさらもたたき割るというようなことで、建造物ではなくて、その建造物の中にあります器物のほうに大部分の事件が集中しておることが実例の示すところでございまして、御心配の点は、そうたくさんはない、これが実情になっております。
#44
○林委員 次に、傷害常習犯に対して、現場において勢いを助けた者は刑法二百六条の傷害助勢罪の適用を受けることになるのですか、また二百七条の同時傷害の規定の適用についてはどうですか。
#45
○竹内(壽)政府委員 助勢、同時傷害いずれもこの一条ノ二の、危険な刃物を使ってやる場合の傷害にも適用がある、こういうふうに私どもは考えております。
#46
○林委員 常習犯に対する非常習者の共犯関係について刑法第六十五条二項が適用されて暴行、傷害、脅迫、器物毀棄の刑が科されるのですか。
#47
○竹内(壽)政府委員 ただいまの点は、これは常習というのが身分であるかどうかということは学問上一つ問題はありますけれども、学者の大部分の説も、身分に準じてというか、同じように取り扱うべきであるということでございまして、身分なき者がこうこうしたというような形、身分ある者と身分なき者との関係、刑法総則の規定によりまして、常習者である者が共犯であって、実際にやった者が常習者でないという場合でありましても、共犯のほうは常習犯の適用を受ける。その逆の場合は普通の傷害だけでやるということになります。
#48
○林委員 器物損壊の常習犯に対する処置については告訴を要しないわけです。常習者でない共犯者に対してはやはり告訴を要するのですか。
#49
○竹内(壽)政府委員 そのとおりでございまして、共犯に関する告訴はひとしく共犯全体に及ぶというのでございますが、事柄はその逆のような運用になりますけれども、告訴というものは、器物損壊につきましては一つの起訴条件といいますか訴訟条件になっておりますので、それを欠きますものについては起訴できないことは当然でごさいますので、共犯もひとしく及ぶという議論は、この場合は逆に適用ないというふうに考えております。
#50
○林委員 正犯が暴行、障害、器物毀棄等の常習犯でない場合に、それらの罪を教唆幇助した者が常習者であるときには、教唆幇助者に対しては本案が適用されるのでしょうか。
#51
○竹内(壽)政府委員 これは適用があると積極に解しております。これは単に私どもがそう解釈するだけでなくて、賭博罪につきまして、すでに判例も積極の判例がございます。
#52
○林委員 あと二点ですが、本案の常習犯は、法定刑が引き上げられておるので、刑事訴訟法八十九条の権利保釈の対象になっておらないわけなんです。そこで被告人の人権保障の面についてどのようにお考えになっておるか。この点は特に日本弁護士連合会からも格別の配慮を必要とするという意見が当法務委員会に参っておるわけなんです。そこで、その点に関する御意見を承りたいと思います。
#53
○竹内(壽)政府委員 お話のように、日本弁護士連合会にも、この案の立案の過程において、私どもから御説明を申し上げていろいろな御批判を受けたわけでございますが、この法案につきまして御賛成の意を表されるとともに、いま御指摘のような点について深甚な考慮を払ってほしいという御要望がございました。これは刑が重くなりましたので、その必然の結果として権利保釈の対象外になるというわけでございますが、従来からも、この犯罪としては、常習犯という犯罪のあれはありませんでも、常習として行なったと認められる場合には、刑事訴訟法の規定によりまして権利保釈から除外をされておったわけでございますし、さらにお礼参りのようなものにつきましては制約を受けることは、これまた刑事訴訟法の定めるところでございます。この権利保釈からはずそうというのがこの法案のねらいではなくて、刑を引き上げます結果として、副次的効果と申しますか、そういう結果になったわけでございます。しかし、これは抽象論で申しますとそういうことになりますが、具体的の事例におきましては、そのケースごとに情状はあるわけでございますので、検察官の立場からいたしましても、人権保障の点で十分考慮を払っていきたいと思いますし、そのために審理がおくれたり勾留が長くなったりというようなことは極力避けなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
#54
○林委員 最後に伺いますが、本案は、各常習傷害の罪にかかわる事件をいわゆる法定合議事件からはずしておりまして、その理由として、この種事件は、その性質にかんがみ、通常審理が容易であること、審判の迅速をはかる必要があることなどをあげておりますが、この種事件については、人権保障の面を考慮して合議制により特に慎重に裁判されなければならないということも考えられるのでありますが、この点に関するお考えを承りたい。
 なお、裁判所法は、裁判の構成に関する基本法であるから、本法のように、刑法の全面的改正をされるまでの暫定的立法によって裁判所法を改正するのはどうかと思うわけでありますが、この点に関する御意見を最後に承っておきたいと思います。
#55
○竹内(壽)政府委員 ただいまの点でございますが、現在、強盗事件につきましても、これは法定刑が五年以上という重い罪でございますが、これにつきましても単独裁判官で裁判ができるような仕組みになっております。この種の傷害事件につきまして、常習と見るか見ないかということは、運用上もなかなかむずかしい問題でございますが、すでにこれも判例で、先ほど来申し上げておりますように確立した態度というものができておりますので、この点もむずかしいといえばむずかしいのでありますが、さほど困難を感ずるものではないというふうに思いますし、それから傷害の犯罪、罪体に関する部分につきましては、これはむしろ犯罪としては、被害者があるわけでありますから、明白な、わりあいに証拠のはっきりしたものでありますから、そういう点から言いまして、審理にさほど困難を感ずるものではないということと、日本弁護士連合会等からもお話がありましたように、勾留がいたずらに長くなることは困るわけでございまして、合議事件になりますと、どうしても審判の時間が長くなるわけでございます。遅延しないように早く処理してまいりますためには、単独の裁判官でやっていただくのが相当だということで、これも裁判所当局とも事前に十分打ち合わせまして、裁判所側も異論がないということでございましたので、かように処置をいたしたわけでございます。この法律改正に際しまして、あまりほめた立法の仕方ではありませんが、一つの法律を改めます際に、他の法律をも、附則等にそれを書き込むことによって法律改正をはかるというようなことも、その他の法律につきましても間々やっておる点でございまして、いずれは整理してはっきりさせなければならぬ点でございますが、とりあえずこういう立法形式を従来の先例にならいましてやらせていただいたわけであります。
#56
○林委員 刑事局長に対する質問は一応この程度で終了いたします。
#57
○高橋委員長 それでは、これで本日は終わりまして、次会は来たる三十日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
  午後零時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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