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1962/06/11 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第22号
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1962/06/11 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第22号

#1
第043回国会 法務委員会 第22号
昭和三十八年六月十一日(火曜日)
   午前十時五十八分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 上村千一郎君 理事 唐澤 俊樹君
   理事 小島 徹三君 理事 林   博君
   理事 松本 一郎君 理事 猪俣 浩三君
   理事 坪野 米男君
      小川 半次君    岸本 義廣君
      小金 義照君    竹山祐太郎君
      早川  崇君    赤松  勇君
      井伊 誠一君    田中幾三郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
 委員外の出席者
        専  門  員 櫻井 芳一君
    ―――――――――――――
六月十一日
 委員竹山祐太郎君及び片山哲君辞任につき、そ
 の補欠として早川崇君及び田中幾三郎君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として
 片山哲君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第五九号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますのでこれを許します。小島徹三君。
#3
○小島委員 先日の委員会で、猪俣君だったか坪野君だったかの質問に対する答弁で、この刑罰について下限を上げて、上限については同じだというお話がございましたが、そうでございましたか。私の誤解ですか。
#4
○竹内(壽)政府委員 今度の改正では下限を上げまして、上限は現行法どおりでございます。
#5
○小島委員 下限だけを上げて上限を押えておくということの理由については、私ちょっとふに落ちない点があるのでお聞きしたいのですが、先般当委員会でいろいろ従来の暴力事犯に対する刑罰についての統計的なものをお示し願ったときに、非常に軽い刑罰で処置されているということをおっしゃっておったのですが、その点とこの下限を上げたということについて、何らか関連性があるような気がするのですが、そうですか。
#6
○竹内(壽)政府委員 そういう点も考慮いたしまして改正案をつくりました。
#7
○小島委員 そういう点もとおっしゃったのですが、そのほかにどんな点がございますか。どういう理由で下限を上げたのですか。
#8
○竹内(壽)政府委員 刑罰を引き上げます場合に、刑が重いか軽いかということは、上限が高いか低いかということがまず第一の基準でございます。同時に、下限の高いか低いかも重いか軽いかをきめる基準になるわけでございます。そして暴力団の実態を調査をしてみますると、これらの暴力団が軽い刑で処分されますために、彼らに改悛の機会を与えることがほとんど不可能であるという現状にかんがみまして、いわゆる短期の自由刑というものが意味をなさないということを刑事学者が申しておりますが、暴力団の構成員等の場合にはまさにこれが当てはまるのでございまして、それもあるということを申しましたのは、裁判の現状は一年以下の刑で処分されておりますのが八〇%近い七十何%でございます。これにつきましては、上限がまだ十年まであるわけでございますので、実務の面におきまして、政府機関はもとより、裁判所に対しましても、あらゆる機会に刑の引き上げをはかってきたのでございますが、運用にはおのずから限度があるということからしまして、刑の効果を意味あらしめるためと、現状がそういうことになっておるという点等を考えまして、刑を加重する場合の加重条件として考えますのは、結果が重大な結果を発生するというような場合もありますが、今回は手段の点で加重条件、そういう点に着目いたしまして刑を加重いたしたわけでございます。
#9
○小島委員 私自身の考えが少し行き過ぎかもしれませんけれども、そういう考え方のもとにこの暴力行為に関する刑罰の改正がされているということになると、どうもその腹の底には、裁判官が今日のこの暴力行為事犯に対する認識というものが足りないんだという、現在の裁判官に対する一つの不信の念というものがどこかにあるのじゃないでしょうか。実際においていまの刑罰でかりに六カ月なら六カ月とか、あるいは罰金で済ましてよいものも、もうそうはさせないぞ、全部一年以上だぞというふうに締めくくってしまわなければならぬというような考え方を出さざるを得なかったというところに、何らか裁判所に対する一つの不信感というものが横たわっているのじゃないかということを私はおそれるので、そうだとすれば、これはよほど考えてみなければならぬ点があるのじゃないかと思うものですから、ちょっとその点を聞きたかったのです。
#10
○竹内(壽)政府委員 そういう考え方は私はいたさないのでございます。なるほど、裁判の結果の統計に基づいて御説明いたしますと、いかにも裁判の結果だけが批判されているように見えますが、そうではなくて、法律を執行しますその全体のものさしをここで立法上明らかにしていこう、こういう考えに理解しますのが正当であろうと私は思います。なるほど裁判所は裁判の形において刑を言い渡すのでございまして、それには検察官の情状の立証、検察官の意見というものがその前提となっておりますことは当然でございます。また検察官がどのような事件を取り上げて裁判所に持ち出すかということは、捜査機関である警察官が暴力団に対してどの程度のメスを入れていくかというような考え方とも関連をするのでございまして、暴力団ということを前提として、これらの者に対して国家機関がどういう立場でどういう考えのもとにやるか、そうしてそれについての刑はどういうものであるかということを、法を執行します者の心がまえ、基準、そういうものを示す意味を法定刑というものが持っておると私は思います。そういう面と一般他戒の効果、両々相まって刑法のいわゆる法定刑というものの意義があると思うのでありまして、裁判に対する不信ということではない。裁判はそれぞれの具体的事件についての言い渡し刑でございますから、これは当、不当を直ちに論断するわけにはいかないのでございまして、情状は千差万別でございますから、私は個々の事件について不当な裁判であるというような考え方はいたしておりません。しかしながら、全体として見ました場合に、いま言ったような執行者全体の責任と申しますか、そういう面で下限に集中しておるというこの実態は着目して見なければならないことでありますし、これを改善いたしますには、やはり法をつかさどる者の必がまえ、基準を示すものとして法定刑が示されるということは適正な運用に役立つもの、かように考えておる次第でございます。
#11
○小島委員 いまの竹内さんのお話を承りまして、私は、私の先ほど申し上げたような杞憂は全然ないのだということを信じまして安心いたします。
 私の質問はこれで終わります。
#12
○高橋委員長 猪俣浩三君。
#13
○猪俣委員 この改正法の第一条ノ二でありますが、「銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ人ノ身体ヲ傷害シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス」これは刑法の規定より非常に重くなっております。これはいわゆる暴力団、こういうことを常習としておる暴力団のみならず、偶発犯、たまたま偶発的にこういう銃砲または刀剣類を用いた者にも適用になるわけでありますか。
#14
○竹内(壽)政府委員 法律の規定のたてまえといたしましては、偶発的に犯した場合でありましても、銃砲刀剣類を用いて傷害を犯した場合には適用になります。
#15
○猪俣委員 そうすると、夫婦げんかなんかの場合に、妻君でも何でも逆上して出刃ぼうちょうをもってけんかしたというような場合もこの中に当てはまって、結局は権利保釈ができないという御解釈ですか。
#16
○竹内(壽)政府委員 その点は違いまして、出刃ぼうちょうはあいくち類似のものとして裁判で認められておりますが、本条におきましては、あいくち類似品は入らないのでありまして、出刃ぼうちょうを持ち出してやりました場合には、刃物を用いた傷害ではございますが、これは一般の刑法二百四条によって処断されることになるわけであります。
#17
○猪俣委員 そういう出刃ぼうちょうなんかは入らないということはどこの規定になっておりますか。
#18
○竹内(壽)政府委員 それは凶器を用いてというのではなくて、銃砲、刀剣類を用いて傷害をしたとき、こう構成要件ができております。そこで銃砲、刀剣類とは何かということでございますが、これは銃砲刀剣類等所持取締法第二条に銃砲、刀剣類のある程度の定義が掲げてございます。この法律に定めております銃砲、刀剣類がすなわち本条の銃砲、刀剣類と範囲が同じであるという考えに立って立案をいたしておりますので、その銃砲、刀剣類に入らないいまのお話の出刃ぼうちょうのようなものは、本条からは除外されて、通常の傷害罪の刑で処罰される、こういうことに相なるわけであります。
#19
○猪俣委員 そこで、この「銃砲又ハ刀剣類を用ヒテ」というのが一条ノ二にありますが、一体この「銃砲又ハ刀剣類」というのは何をいうかということの規定が本法にはないが、これは解釈上銃砲刀剣類等所持取締法と同じものだということになるのですか。
#20
○竹内(壽)政府委員 さようであります。現時点におきまして、なるほど銃砲刀剣類等所持取締法は行政罰則でございまして、本法は刑法犯でございます。そういう立法の趣旨は異なりますが、銃砲刀剣類等所持取締法がなぜそのような定義を掲げてそのようなものの所持を禁止しているかというと、その所持は直接には傷害、殺人には結ばれませんけれども、所持することからしばしば傷害、重傷害あるいは殺人というような重大危険犯を犯す前提的な行為でございますので、これを所持禁止という形で取り締まっておるわけであります。そうしますと、一つの法律で銃砲、刀剣類といっております場合には、同じ系統の取締法の中におきましては、同じ概念で考えるというのが、法解釈上の基本的な立場でございますので、別段の事情がない限りは同じように解釈していくということが相当であろうというふうに考えるわけでございます。
#21
○猪俣委員 それはしかし厳密な法概念としては間違いではないかと思うのですね。立法目的が違うわけでしょう。銃砲刀剣数等所持取締法と本法とは立法目的が違う。たとえことばが同じくとも、立法目的及び取り締まりの範囲及びその行為それ自体がおのおの違っておるわけです。それを別に準用するという規定も何もなしに、すぐさま銃砲刀剣類等所得取締法の定義と同じものであるというふうに解釈することがどうも無理があるのではないか。立法の目的が違っておる。立法の目的が違っておる法律に、準用規定も何も置かずして、ほかの法律の規定そのままをそのとおりなんだという説明は、これは――ところが、裁判所がそうではない、あるいは検察庁がそうではないというふうな解釈をせられますと、必ずしもあなたの答弁が通らないわけなんだ。法律自体に規定がないのだから、提出者は、銃砲刀剣類の取締法と同じ概念だとあなたはここで説明になるけれども、一たんこの法律ができて、生きた法律として裁判問題になった際には、検事は、国会では政府はそんな答弁をしたかもしれぬが、しかしわれわれは司法解釈としてはこういうふうに解釈する。裁判所は裁判所で、裁判所の解釈としてはこうだ、こう言われると、法律それ自体に規定がないものは、どうもここでの政府の答弁だけでは、はたしてそのとおり、それが検察なり裁判に行なわれるかどうか疑問があるわけです。なぜなら法律が違うのです。違う場合に、この法律の解釈を、定義そのままをやはり同じ定義だとするなら、どこかやはり法律の中に入れなければならぬではないのですか、その点はどうですか。
#22
○竹内(壽)政府委員 猪俣先生のおっしゃること、非常に法律論としてごもっともでございまして、そこのところは非常にむずかしい問題を含んでおると思います。あいまいだという意味で申し上げるのではございませんで、解釈論としてどういう解釈が裁判所でなされるであろうかという観点から見ますと、猪俣先生のおっしゃるような考え方がここに存在することは間違いないのでありまして、私どもも当初そういう考え方をもちまして、法制審議会の最初の際にはそのような趣旨で実は答弁をいたしたわけでございますが、議論をしてまいりますうちに、そういう解釈、猪俣先生のいまおとりになるような立場で解釈をした場合と、私がいま政府で統一見解みたいなことで、内閣法制局とも話し合いの上で打ち出した一つの解釈、つまり取締法二条にいう銃砲、刀剣類がそのままここの内容をなすものだという解釈、この間にどれだけの差異があるかということを考えますと、結論としてはほとんど差異がないということになるようでございます。しかし、理論は理論として存在するわけでありまして、なるほど取締法は所持を禁止しようという行政目的を果たすための銃砲、刀剣類でありますし、本法は刑法犯の銃砲、刀剣類で、しかもそのようなものをもってする傷害という罪を取り締まろうとするのでございますから、立法目的は異なるのでございますけれども、しかしながら、非常にひどく異なっておるのではなくて、やはり類似の関係において理解すべき二つの法律でございますので、相互に関係を持たせて理解するほうが相当だという実は結論になったわけでございます。
 ただ国会審議の便宜上付加して申し上げますと、この定義を掲げるほうがいいか悪いかという問題は、これは私どもも事務的に十分検討をいたしてみたわけでございますし、法制審議会でも同じようなことが議論をされたのでございますが、結局議論の末は置かないほうがいいという結論になったわけなのでございます。なぜ置かないほうがいいかというと、もしこの銃砲刀剣類等所持取締法二条にいう銃砲、刀剣類であるというふうに定義をこの法律の中に書いたといたしますと、将来銃砲刀剣類等所持取締法が改正になりまして、二条の内容がかりに拡充をされてまいりますと、いまは飛び出しナイフだけについて申しましても、五・五七ンチメートル以下のものはいままで自由であったのが、昨年の改正でそれもいけないということになりましたが、将来さらに加わったり内容が変わってまいりますと、それに従ってその刑法犯である傷害の内容が変わってくるというような不当な結果になるわけでございます。
 そこで、それでは本法自身に定義規定を置いたらどうかということになります。そうしますと、銃砲、刀剣類を用いて人を傷害した者はというふうな書き方をかりに書いてみますと、銃砲、刀剣類の中の銃砲についてはともかくも、刀剣類については、刀剣とは何かということは、これまた結局は判例の解釈によってきまっておるわけなので、日本刀といい、剣といい、なぎなたといっても、社会通念によってこれが刀であり、剣であり、なぎなたであり、あいくちであるということを法律できめられないわけです。それは判例できまっておるわけでございます。そうしますと、いまその定義を書きますと、取締法には「十五センチメートル以上の」というのがありますが、本法で十五センチメートルというような境をつけることは、刑法犯の規定としてはおかしいのでありまして、十五センチが十四センチでありましても、危険な刀剣類であることに変わりはない。それが十五センチならば重い刑になるが、十四センチならば差しつかえないのだという議論も、これはおかしいわけでございます。そうなりますと、そこで十五センチという限界がはずれてしまう。そのかわり飛び出しナイフというようなものは、また同時にはずれるかもしれません。そういうような内容のものになるかと思いますが、そうなりますと、常識的にはきわめてはっきりしてわかっておるのでございますが、法律的には、傷害するときに寸法をはかって、一センチ足らないからこれはこの法律でひっかからない、これは一センチ長かったということの認識がなければいかぬといったような問題が起こりまして、実務の上ではあまり効果がないのじゃないか、そういう議論はむだな議論であって現実に沿わないことになるのじゃないかというようなことで、この定義規定を置きますことの可否につきましても慎重に論議をいたしましたが、このままにしておいて、解釈は、銃砲刀剣類等所持取締法第二条の定義を使ってこの内容を規定できるのだという解釈にしておきまして、裁判所がどう出るかということは裁判所にまかしていっても、われわれの解釈と裁判所の解釈の間で理論の立て方は若干違うことが起こってくるにしましても、実体においてはほとんど変わりないということは、法制審議会の各委員も一致した意見でございます。反対をしましたのは一人だけで、あとは全部これでいいのだという意見に落ちついたようないきさつもございまして、この解釈の問題は非常にむずかしいところでございますけれども、実情に合った解釈としまして、私どもとしてはいま申したような解釈に落ちついた次第でございます。
 御参考までに申し上げます。
#23
○猪俣委員 本法は町の暴力団対策として打ち出され、われわれもそういう意味においては根本的に反対する何ものもないのみならず、進んでこういう暴力団なるものの存在を抹殺しなければならぬと考えておるわけでありますが、ただ実際の場合におきましては、この委員会あるいは国会において審議をいたしまして、議員と提出者である政府委員との間の一問一答で明らかになっておる解釈が、必ずしも検察庁、裁判所に通用しない場合があり得る。これは私、この前も申したのでありますが、政治資金規正法に関する違反事件で、札幌の地方検察庁で、現に立ち会いの検事から言われたことであります。法律は、それは国会がつくるかもしらぬが、できた以上は、これを運用し解釈するのはわれわれ司法部の責任である。国会で政府委員のこういうふうな答弁により、議員はこういうふうに解釈してこの法律ができたと言っても、われわれはそれを守る義務はないのだと、明白に論告でもってその検事は私の議論に反駁したのであります。結局、法律の規定の中に明白に条文化しておらなければ、含みのある、ただ政府委員の答弁だけを司法官であるわれわれが守る必要はないのだと、非常に大胆な意見を発表され、穗積重遠先生もそういう意見を発表されておる、こう言うて、政治資金規正法第四条ですか、それに関する国会の質疑応答速記録を全部私は出したけれども、それに一顧も与えない態度をとられました。それ以来、私は国会の審議というものについて相当の疑惑ができてきたわけですが、もちろんこういう検事は、およそ民主政治というものがどんなものであるかを理解せざる、検察ファッショ的な検事であることは明らかであります。民主政治というものはいかなる国家機関にも浸透しておらなければならぬ。検察庁も裁判所ももちろんのことである。国会における提案者の説明、議員の質問、一問一答が、いわゆる立法者の意思として非常に尊重せらるべきことが当然である。しかも国の最高機関と憲法上規定せられている国会の審議であります。それにもかかわらず、そういう議論をする者がありますので、そこで私ども念を入れて考えなければならぬ。正直に申しますと、今日、本法について、いわゆるわれわれの進歩的陣営、総評その他の陣営から相当の反対があります。われわれに圧力がかかっているわけであります。だから、町の暴力団対策それ自体については何ら反対をするあれはないのでありますが、こういう政府の提案の精神あるいは国会がこれを審議し通過せしめた精神と違ったような解釈をする検察官なり裁判所があるがために、私どもそこに危惧の念があって、念には念を入れて質問しているわけであります。
 いまの御説明によりまして、たとえばこの法律に、銃砲、刀剣類とは銃砲刀剣類等所持取締法によるものであるというような準用規定を置かれなかった理由はどこにあるわけですか。
#24
○竹内(壽)政府委員 先ほどもちょっと触れたことでございますが、もし銃砲刀剣類等所持取締法二条にいう銃砲、刀剣類を意味するのだという準用規定、定義規定をこの中に設けたといたしますと、将来取締法の改正によりまして銃砲、刀剣類の範囲が広がったり縮まったりすると、それにスライドするようにこの法律解釈の中身が変わってくる。このような、所持を禁止する法律ではなくて、そういうものを用いて傷害を犯すという刑法犯の内容が、取締法の改正によって増減、変更してくるところに、刑法犯の規定としましては不適当、不都合である。こういう感じを持っておるのでございまして、そういう意味でその規定をここへ持ち込みますことは適当でないという結論でございます。
#25
○猪俣委員 あなたの説明はわかるが、その議論というのは少し矛盾しているのだ。だから、取締法でない本法は、立法目的が違うのだから、本法自体に独自な定義を掲げるべきじゃなかったか。それを掲げないでおいて、解釈は取締法の解釈なんだというふうにすることが何かすっきりしない。私はそこに矛盾したあれがあると思うのです。これは取締法じゃない、刑法犯の取り締まりである、しかるに取締法の定義によって左右されることは本末転倒である、その議論はわかります。しからば、何がゆえにこの法律にきちっとした定義を掲げなかったのか。先ほど法制審議会の問題になって、定義を掲げないほうが妥当だという結論になったというのでありますが、どうもその辺に少し私どもふに落ちないところがあるわけであります。しかし、これは先ほどの御説明で尽きておりますから、重ねて答弁を求めませんけれども、いまのあなたの御説明は、それ自体として少し矛盾するような気がするのですが、それはいかがですか。
#26
○竹内(壽)政府委員 矛盾していると言われると、実は少し私もひっかかりを感じるわけなんで、良心的に言いましてひっかかりを感じますが、しかし解釈論としまして、それでは本法の中に、援用するのじゃなくて本法自身に、銃砲、刀剣類ということばを、あの解釈のように、刀とか、なぎなたとか、やりとか、あいくちとかいうふうに明示して規定をするしかたが考えられると思うのです。そういたしますと、そのような凶器の範囲が一面狭まりますとともに、他面また広がることも考えられると思うのです。このことがどうであろうかと実は考慮もいたしたわけでございます。広がったり縮まったりするという意味は、もしあいくちということにしますと、これはあいくち類似のものは入らない。これは判例できまっておりますから、あいくち類似は入りませんが、そのかわり飛び出しナイフははずれてしまうであろうということも考えられる。しかし十五センチという限定ははずれてしまって、これは十三センチでも日本刀は日本刀だということになるのじゃないか。そういうことの利害得失をいろいろ考えてみますと、現行法にあるこの銃砲刀剣類等所持取締法二条の規定を現時点ではそっくりそのままこの場合にも考えて、解釈の基礎にして、いまのままの状態であとは裁判所の良識にまかしていって、判例を積み重ねていくというやり方のほうがいいじゃないかというふうに私は思うのでございます。純粋に理論を申しますと、さっきも申しましたように、猪俣先生の御疑問の点はごもっともでございまして、私もひっかかりを感じながらいるわけではございますが、いかがなものでございましょうか、私はそういう解釈でいけるのじゃないかというふうに思うわけでございます。
#27
○猪俣委員 そこで本法は、暴力団の近来目にあまる行為を取り締まるという、何人でも首肯でき得る立法でありますけれども、先ほども触れましたが、この第一条ノ二は、そういう暴力団だけを対象にしたのではなく、一般偶発的犯罪に対しても適用される。そうすると、夫婦げんかの場合に銃砲、刀剣類の凶器を用いたなら、直ちにこの一条ノ二によって権利保釈もできない。実は私が取り扱いました事件で、社長の奥さんが社長を猟銃で射殺した事件がありまして、いま裁判中であります。しかし、これは十日間勾留されただけでいま保釈になって出ております。それはそれだけの事情があるからです。ところが、この本法が適用になると、そういうものも一般的に権利保釈ができないような慣習ができるのじゃなかろうか。凶器を用いてやった者は一切権利保釈から除外するというふうな取り扱い方に変わってくると、偶発的な犯罪、何かの感情のもつれからかっとしてやった場合においても、いやしくも凶器を用いた者は全部権利保釈からはずされてしまうというようなことが起こる心配がある。これは偶発的犯罪に対して少し酷過ぎやせぬか、こういうふうな心配があるわけですが、それはいかように御解釈になっておりますか。
#28
○竹内(壽)政府委員 いまお尋ねのような偶発的な犯罪の場合にも、いやしくも銃砲または刀剣類を用いてやりました場合に、この構成要件に該当します場合におきましては、この条文の適用を免れ得るものではございませんが、しかし、事件はケースごとに事情があるわけでございまして、いま御指摘のような偶発的である、あるいは家庭内のできごとである、あるいは暴力団とは何の関係もない発作的なものであるとか、いろいろな事情によりましては、場合によっては検察官は起訴猶予にすることもできます。公判請求をいたしました場合においても執行猶予もできます。それからまた権利保釈から除外されると申しましても、そういう情状がありますれば、検察官の請求で保釈をすることも裁判所は認めることができるわけであります。裁判所の裁量保釈までも奪ってしまう趣旨ではございません。したがって、そういう暴力団以外の問題で起こってきたこの種のケースというものは、検察官も裁判所も十分考慮して具体的に妥当な処置をとるであろうということは、これは十分信頼していいことではないかと思うのでございます。でありますから、暴力団の暴力につきましては、これはもう何で権利保釈を許すのかわけがわからぬという世論の強い声もあるわけでありまして、そういう者について権利保釈が結果においてはずれてきておるわけでございますが、私はそれは当然いいことだと思っておるわけであります。そういう者までも権利保釈することができると、保釈をしてもらって、その保釈中にまた次の殺人を犯したというような事例もあるわけでありまして、そういうような者に対して対処できるような体制がこの法律によってできれば、これは立法的に副次的なことではございますけれども、非常に大きな効果があるものというように思うわけであります。
#29
○猪俣委員 私どもの念願は実は暴力団の退治にあるわけであります。ところが、この一条ノ二は、刀剣類を用いると、いま言ったように偶発的な行為者までも権利保釈を奪うことができるように非常に広くなっておる。それで暴力団につきましては刑事訴訟法八十九条によってすでに権利保釈が停止されている規定がある。だからもし暴力団退治ということを念頭に置きますならば現行法で十分なはずである。それをこういう一条ノ二を入れたのは、暴力団それ自体よりも広く網を張ろうということになるかと思う。これは暴力団退治を目的にしたのだという提案者の説明で、世人はこれを了とし、われわれもこれを了としておるのでありますが、しかるに実際を見ますと、もうすでに暴力団に対しては刑事訴訟法八十九条で立法措置ができているのに、なおこういう規定を置いたのは、暴力団以外の一般犯罪にもこれを適用しよう、そういう考え方でつくられたと思うのですが、いわゆる暴力団と思われる者以外の者にも権利保釈を制限しなければならぬような社会現象があるのだろうか。お礼参りとか、その他の暴力団が常套手段として使うそれを防ぐために刑事訴訟法の規定ができているわけですが、いわゆる偶発犯罪、夫婦げんかその他の偶発的な場合においても、なお権利保釈までも奪わなければならぬ社会現象があるでしょうか、それを伺いたいと思います。
#30
○竹内(壽)政府委員 刑事訴訟法の八十九条の五号、いま御指摘のお礼参りをするような者に対しては権利保釈から除外されるという規定、これも暴力対策の一環として先年御審議をわずらわして通過した法律でございますが、これはお礼参りという特殊なケースについて権利保釈から除外されたのでございまして、しかし、一年以上の刑に当たるものは単にこの法律だけじゃなくて一般的に権利保釈から除外されておりますが、これはそのような罪を犯す、重大犯罪を犯す犯人の悪性というような点に注目してこのような処置がとられておるのでございまして、本法の改正によりまして短期が一年になったのでありますが、これは権利保釈からはずれるというのは、権利保釈からはずすためにそうやったのではなくて、八十九条との関係において結果的にそうなったというふうに御理解いただきたい。私どももそういうふうに理解をいたしておるのでございます。
 それから偶発犯というお言葉がしばしば出たのでありますが、私どもは、この暴力団の実態がいかようなものであるかということにつきましては、猪俣先生もこれを厳重に取り締まっていかなければならぬという点について異論があるはずがないわけで、この点を私はいま長くは論じませんが、このような暴力団の構成員等をねらって立案をいたします場合に、考え方が二つあると思うのです。直接暴力団そのものを法文の上にあらわしてこれを取り締まるということになりますと、暴力団以外の者にはこの法律は適用されないということが明らかになるのでございますけれども、そういう刑事罰をつくりますことは非常にむずかしい。現にアメリカでもそういう法律がありますが、これは違憲の判決を受けておるのでございまして、フランス、ドイツの例等を見ましても、暴力団そのものを法文の上にあらわして対象として取り締まる規定を設けることはむずかしい、困難、不可能に近いというふうに申して差しつかえないと思います。それではもう一つの方法は何かといえば、これは暴力団の実態をよく調べまして、暴力団の常時行なわれておる犯罪類型から、その中の特に暴力団だけがあって一般の偶発犯のようなものは少ない、そういう場合、そういう暴力というものを特に取り上げて刑を引き上げるというやり方をすることがもう一つの対策であろうと思います。この今回の改正は第二の形をとってその実現を企図したものでございまして、一般の偶発犯人のほうに及ぶというのは、法律そのものの持つ性格としてそうなるというだけで、理論の問題でございまして、実際問題として適用を受けますのは、暴力団以外の者にはほとんど及ぶ余地はないというふうに思うわけでございます。
#31
○猪俣委員 大臣がお急ぎのようでありますから逐条審議をこの程度にして、法務大臣にお聞きいたします。
 実は本法については私どもも根本的に反対するあれは何もないと思います。暴力団のばっこそのものは何よりもわれわれは身にこたえておる。これに対する断固たる政府の方針に対しては賛意を惜しむものではないのでありますけれども、どうも立法というのは両刃のやいばに相なりまして、その施行する人の考え方によって非常に危険なことにもなるわけであります。そこで、実は相当進歩的な弁護士の団体、いろいろありますが、この法案に対して非常に反対をいたしておりまして、連日われわれのところに陳情に来ている始末であります。それはこの法案は、やはり組合運動を頭に置いて、その対策として考えられたものだ、先年政防法が出たが、これがつぶれた、今度は形を変えてなるべく人の食いつきやすいような形にしておいて、実は労働運動を弾圧する用意なんだというふうに、しきりにわれわれに迫ってまいるわけであります。そこで、そういう心配がないのだと申しましても、過去の暴力行為等処罰に関する法律のときにも、提案者は、労働組合運動なんぞには適用しないということを口をきわめて説明しているが、事実は非常にこれを悪用して労働組合運動に適用しておる。こういうことを実例をあげて迫ってきているわけであります。
 第一条ノ三を見ますると、「常習トシテ刑法第二百四条、第二百八条、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者人ヲ傷害シタルモノナルトキハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処シ其ノ他ノ場合ニ在リテハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス」。もちろん、いかに労働運動といえども人を傷害するようなことはけしからぬから、これは一年以上十年以下の懲役にする、権利保釈を許さぬと言われればそれまででありますが、労働運動の実際を知っている者から見ますると、そういう意思が全然なくとも、いわゆる刑法の暴行、脅迫というものに当てはまるような外観を呈するわけでありますし、何かもみ合っておってちょっと足の皮をひんむいたといっても傷害ということになる、そういう判例があるのです。大ぜいもみ合ったり談判をやっている際に皮をすりむいたというようなことが起こる可能性があるわけです。そうすると、これは傷害をしたのだ、そして労働運動なんかはしょっちゅう繰り返してやっていますから、常習として傷害したというようなことで、全部パクられて権利保釈を許さぬ。実は第一条ノ三が政府のほんとうのねらいであって、これによって労働運動を弾圧するのだ、正面切って人を傷害したやつはしかたがないじゃないかと先般の答弁にも見えていますが、その傷害と称するものが、刀でもって深く右腕を切ったとか、左足を切ったとかいうのと違うのでありまして、皮をすりむいても傷害になるわけであります。ですから、この法律をいわゆる保守反動的な検事が、あるいは警察官が、組合の幹部を弾圧しようとして使えば、幹部ですから常習になる。そして何かちょっとかすり傷ができてもすぐこれを傷害だということになりますと、これはたいへんな弾圧の法規に変わるわけであります。そういうことを、総評系の弁護団その他が実際の裁判の経過から心配してわれわれに陳情に来ているわけでありますが、これは第一条ノ二のように銃砲、刀剣類を持ってきて傷害を与えたというような場合はやむを得ませんが、一条ノ三は、いわゆる銃砲、刀剣類でなくても、こういう暴行、脅迫、これは労働運動にはつきものであります。これは労働運動といったって暴行、脅迫はけしからぬじゃないかといいましても、強い談判をやれば脅迫にもどっちにでもとれるわけです。そういう団体交渉その他において強い態度をとると、これは脅迫だ、あるいは机をがたがたいわしても暴行だというふうに、意地悪くとればみんなとれるわけです。しかも労働組合の幹部なんというものは、大体常習というふうにみなされやすい。あるいは大ぜいでやっている間にそこらのかきねがこわれたとかなんとかいうことが起こるかもしれません。そうすると、みなこの一条ノ三にひっかけられますと、権利保釈もできないということになるわけでありますので、この点について、右翼のいわゆる御常連、そういうものを処罰する意思なんだということが明白になれば、われわれも反対はいたしませんけれども、どうもこの法文からはそれが書き分けられない。いま局長の御答弁のように、暴力団というものの定義が困難のためにそうなるのでありますが、ただ私どもとしては、立案者から、そういうことを頭に置いてやっているんじゃないというふうな明白な御説明をひとついただきたい。それは労働者といったって、刑法の規定に違反すればそれは当然じゃないかとおっしゃられると、ここに私どもの心配が出てくる。というのは、いま繰り返して言うようなもので、どうにも労働運動の団体交渉というようなものには、いわゆる法律でいえば器物毀棄、非常に重大なことであっても、かきねが破れても器物毀棄になるわけです。ちょっと何かやっても、かすり傷が出るかもしれません。そうすれば傷害だ。労働者ですから荒っぽい強いことばで言えば、脅迫だと言えば言えるわけです。そこに実に心配が労働組合側にある。労働組合側といえども、暴力団に対しては徹底的に憎んではおりますが、どうもいまの政府の性格を信用しないわけです。暴力団体と称しながら、政防法に肩がわりするようなものをひょっと出したんじゃなかろうか、こういうふうに受け取られている。それで私ども実は難渋しているわけです。法律常識を持っている者は、そんなことはあり得ないということで説明はしておりますけれども、非常な反対運動があるわけです。
 そこで、これは政府がほんとうにそういう意思がないならば、くどいようでありますが、法務大臣から、そういう心配は絶対するなという御説明をいただきたい。ただ、いや、労働組合だって人を傷害すればしょうがないというような説明だと、労働組合とか、団体交渉とか、多衆行動の中には、そういう意思がなくても、思わずそういう結果が発生するおそれが十分あるわけなんです。これを一切静粛に、紳士的になんていって要求するのは、それはいまの労働交渉の実態を知らざる机上の空論でありまして、そういうわけにいかぬわけです。そこで、その点についての法務大臣の御説明をいただきますれば、法務大臣は十二時から御用があるようですから、御退席いただいてけっこうです。
#32
○中垣国務大臣 お答えいたします。ここ数年間の暴力行為によりまして、暴力犯罪が飛躍的に増加しつつあるということは統計によっても明らかなのでありますが、このことにつきまして、政府といたしましては、そういう暴力による市民生活の不安というものをいかにして除去するか、特に暴力行為というものをいかにして取り締まっていくかということにつきまして、いろいろ真剣に考えました結果、本法案を立案したわけでありますが、この法案の目的といたしておりますところは、すでに刑事局長からも詳しく答弁がなされ、私もまた提案理由の説明におきましても、先回の委員会の御質問に対してもお答えしたのでありまして、純粋な意味で銃砲、刀剣類を使う、そういう傷害、もう一つは暴力、恐喝等の常習者、いわゆる前科者によるそういう暴力あるいは傷害、こういうことに焦点をしぼりまして、少なくとも国民にこの法案の立案の趣旨に誤解を生ぜしめてはならない、また、その運営の結果からくるそういう誤解を起こすような点があってはならないということに、法務省といたしましては非常に苦心をいたしまして、できるだけそういう誤解やあるいは不安を残さない明快な、しかも単純な形におきましてこの法案を立案したのであります。
 労働組合運動であるとか、大衆運動であるとかいうものに対しまして、これが今度の改正によりまして何らかの形で干渉されていくのではないかというような御心配でありますが、さようなことは全然考えておりません。法制審議会における審議の経過等も御承知のとおりであります。また、法務省が資料といたしまして委員の皆さま方に配付をいたしましたいわゆる常習者とみなされるような、そういう事犯者の一覧表、それにも大衆運動であるとか、労働組合運動の際の常習傷害、恐喝というようなものは、実は一人もないのであります。そういう点等から考えましても、この法律が成立をいたしまして、適用される範囲は、ほんとうに暴力団等の構成員が、ほんとうの銃砲、刀剣という凶器を用いる場合と、あるいはまた繰り返し常習的に傷害や暴力を行なう、そういう違反者等に限りまして適用されるような、そういうことに重点を置きまして立案されておるのでございますから、御指摘のような、この法案が成立後に組合運動の弾圧やあるいはまた大衆運動等の弾圧にこれが曲げられて利用され、運営されるというようなことは、私は万が一にもないと確信をいたしております。先回のときに、そういう運動の中にそういう事犯者が出れば当然適用されると申し上げましたのは、その前提として、私が知る限り、労働組合運動や大衆運動に銃砲や刀剣を持つ傷害事件というものはいままでもなかった、おそらくそういうものがこれからもあってはなりませんし、ないと思います。そういうことを考慮に入れまして、もし組合運動等の中で銃砲、刀剣を持って行なうような、そういう傷害事件が発生しましたら、やはりこの法律の適用を受けることはやむを得ないという意味でございまして、ただいま言われましたような、板べいがこわれたとか、あるいは机がこわれたとかいったようなことを、直ちに常習傷害、常習恐喝、常習の器物損壊というような判断を下すということは、私はこの法律の表面、裏面あるいは体系から見ましても絶対にあり得ない、かように信じておる次第でございます。
#33
○猪俣委員 大臣の説明によりますと、労働組合は銃砲、刀剣類なんかを用いてやりはせぬからという答弁ですが、この一条ノ三は、銃砲、刀剣類を必ず用いて暴行、脅迫、傷害を与えた場合じゃないわけです。常習としてやった場合を規定されておるのですから、労働組合が銃砲、刀剣類を持ってなぐり込みに行ったとかなんとかになれば、これはもちろん私どもも問題外だと思うのです。そうじゃなくて、この一条ノ三は、常習として暴行、脅迫、傷害、そういうものを起こした場合に処罰する。そうすると、労働組合の幹部というものは大体選挙できまりますけれども、二回、三回当選する人が多いのでありまして、そういう人たちが交渉の任に当たる場合に、激高して机をがたがたいわしたり、場合によってはそこらのさくをこわしたり、これはいいことではないでありましょうけれども、非常に若い人が多いので、熱情のあまりにそういうことに立ち至る。いままではそういう場合には、ちょっと来いで引っぱられていっても保釈となって出てこられたのが、今度は出てこられぬ。常習としてというのがあると、おもに今度は幹部ということになるわけです。そうすると、労働組合の指導者階級を一網打尽にして、これを権利保釈も許さないということが起こってくるわけです。あなたのいまのお話のように、銃砲や刀を持って乗り込んできたら、これはもう問題外でありますが、そうじゃない場合がある。さっき申しましたように、傷害といっても、簡単なかすり傷を負わしただけでも傷害と言えば言い得る。そうなると、労働組合の団体交渉あたりの実情から見ますと、ぱくられて、しかも権利保釈もできないような者が出てくる。それがいやだったらお前たらはおとなしくやればいいじゃないか、こうおっしゃるならば、要するに労働組合の団体交渉なんというものの勢いをそぐ目的でやったというふうにも解釈されるわけです。いま私が申しましたのは、そういう凶器を持った場合じゃない。この一条ノ三は凶器を持った場合じゃないでしょう。刑事局長、どうなんですか。
#34
○竹内(壽)政府委員 大臣の御説明に付加いたしまして私の意見を申し上げてみたいと思いますが、昭和三十三年から三十七年までの期間に、全国で労働運動あるいは大衆運動等に派生して起こった傷害事件あるいは暴行事件あるいは脅迫事件あるいは器物損壊事件、こういったようなもので、傷害はとにかくとしまして、暴力行為等処罰に関する法律一条二項の常習犯の適用を受けた例があるかどうかということを全部調べてみました。一件もございません。のみならず、常習として暴力行為を犯すという考え方でございますが、これは前科があるからすぐ常習者だというような認定じゃなくて、常習という習癖を持っておる者が、その習癖のあらわれとして暴力行為をするというところに問題があるわけで、労働組合の幹部の方々は、労働運動につきましては非常に熱心でございましょうけれども、暴力行為の常習者であるなんということはとうてい考えられないことであります。そういう意味から申しましても、統計の示しておるところはまさにそれを裏書きしておるのでございまして、猪俣先生の御心配の点は私は杞憂であろうというふうに信ずるわけでございます。
#35
○猪俣委員 もう一点だけ。そこで、いまのような御趣旨であるならば、そういう心配をする一連の人たちもあるわけですから、その心配をなくするようなしぼり方をしてはどうか。そういう意思が法務大臣おありかどうか。と申しますのは、破壊活動防止法は、僕らは悪法として今日も支持しておるものじゃありませんが、これは全国の世論を反映いたしまして非常なしぼりをかけてあります。このために破壊活動防止法違反事件というものはほとんど成立しない。検事が起訴しても無罪が多数になってきているわけです。この破防法の二条を見ますと、「この法律の解釈適用」として、「この法律は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであつて、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあつてはならない。」第三条には「規制の基準」といたしまして「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであつて、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあつてはならない。」こういうふうに厳重なしぼりをかけておりますがために、相当検事が起訴をいたしましても、裁判所ではみな無罪になっているわけであります。ですから、いま御説明のように、町の常習犯としての暴力団に対して、これはまことにけっこうなことでありますが、それがもろ刃のやいばにならぬように、それにはこういう先例があることですから、厳重な規制を置いたらどうだろうか、こういうふうに思いますが、大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
#36
○中垣国務大臣 この国会にこの法案を提出いたしましたのは、現下の事態に対しまして緊急に対処する必要がある、そういう法的な立場に立ちましてこの措置をとったのでございまして、法制審議会等の答申によりましても、この法案の意図するところは実に明らかに答申されておるのは御承知のとおりであります。特に私申し上げたいのは、いろいろ御心配なさっておられる成立後におけるこの法律の運用というものが、今日ここに出されておるような意味でなく、ゆがめられて運用されるのではないか、そういう御懸念からのお尋ねかと思うのでありますが、先ほど来申し上げますように、そういう懸念は少しもない。むしろ、今度の措置こそは国民の皆さまに非常に支持を得ておるというふうにも考えておりますので、提案者たる政府といたしましては、進んで何らかの規制をするという考え方は持っておりません。
#37
○高橋委員長 田中幾三郎君。
#38
○田中(幾)委員 大臣はもし御用があればけっこうです。
 この改正案は、刑事局長の御説明にもありますように、また法制審議会の刑事法部会第二十三回の会議録にもありますように、趣旨は暴力団の構成員もしくは暴力団を取り締まる趣旨からきておることは明瞭であります。それを取り締まることに対しては、先ほど猪俣委員が申されたとおり、われわれもその趣旨に対しては別に反対するものではありません。ただ改正案の第一条ノ二によっては、暴力団の構成員のそういう犯罪もしくは暴力団の犯罪を取り締まるということの趣旨はすぐには出てこないと思うのです。ただ第一条ノ二には、手段として銃砲、刀剣類を用いて人を傷害したという単純な規定がありますね。ですから、多くは暴力団の構成員もしくは暴力団が銃砲、刀剣類等をもってやるかもしれませんけれども、あるいはそうでない者がこれらの手段を用いて犯罪を犯す場合もあり得る。それらも十ぱ一からげでこの規定によって処罰されるわけですね。そこに刑罰の量刑について少し疑問が出てくるわけです。ですから、もし暴力団の構成員もしくは暴力団を取り締まるということならば、第一条は少しも改正されていないのですから、この第一条のこういう方法でやる中において、銃砲もしくは刀剣類を用いてやった場合を特に重くする。すなわち暴力団の構成員、暴力団のこういう犯罪を取り締まるというそのワクをもう少し厳密にしてこの第一条ノ二を考えたらいいのじゃないか。そこにちょっと心配があるわけです。審議の中においてそういう御議論があったか、あるいは刑事局長はこれについてどういうことをお考えになっておるのか。
#39
○竹内(壽)政府委員 仰せのとおり、第一条ノ二を見ましても、これが暴力団を対象としたものであるということが一般的にわかりにくいのじゃないかという御疑念でございますが、これは暴力団の実態を申し上げないとわかりにくいわけなのです。私どもの考え方としましては、さきに御審議を経て立法化されました凶器準備集合罪、これは準備の段階で暴力団の機先を制して行動を抑止するという効果を持っておりますことは、その後の幾多の実例によって明らかになりましたが、それからさらに進んで、その凶器の中で銃砲、刀剣類というような殺人あるいは重傷害をもたらす危険性のきわめて高いものをもって傷害に及んだ場合の規制の条文がこの第一条ノ二になるわけでございまして、あの凶器準備集合とこれとが相表裏いたしまして――暴力団の移動変更がいま非常に行なわれつつあるようでございます。この暴力団のなわ張り争い、勢力の拡張、そういうものにからんで起こってくる傷害がひいて若い者たちに悪い影響を与え、青少年犯罪にも影響を与えておるこの現状を直視いたしました場合に、この「銃砲又ハ刀剣類ヲ用ヒテ」というこの傷害罪が暴力団を対象としたものであることは、暴力団の実情のわかっております者にはきわめて明瞭に理解されるところでございまして、この法律をもって適用しますものは警察官なりあるいは検察官なり、国家機関の訴追機関のほうの側に立つものでありますが、こういう人たちにとりましては、この条文はまさにはっきりした考えのもとに執行できる筋合いの規定だと私は思っておるわけでございます。
#40
○田中(幾)委員 一般的にはそうも考えられないこともありません。がしかし、農家あたりに猟銃なんか置いてあって、たまたまこれを使って傷害するというような場合も、やはりこれだけ幅が広いと、それもひっかかってくるわけですから、暴力団を対象として取り締まるということでありますならば――もとの条文には「兇器」といって非常に幅を広くしてありますね、これは罪は軽いのですから「兇器」でいいのですが、むしろ暴力団のようなかっこうに見えるような範囲でこの一条ノ二を入れたならば、もっと暴力団取り締まりに対して効果があるのではないかと思いますが……。
#41
○竹内(壽)政府委員 お答えを申し上げるつもりでちょっとその点を落としておりまして申しわけありませんが、もしこの一条ノ二のような規定を現行法の一条一項の中に入れまして、もともとこの法律は暴力団を対象としたねらいの法律でありますので、一条一項を改正して目的を果たすということも私ども立案の過程において考えたのでありますが、これは私はっきり申し上げますけれども、一条一項のほうはしばしば労働運動や大衆運動の越軌行為に現実の問題として適用されておるわけであります。ここを直しますことは、私どもは暴力団をねらっておるのだと幾ら申しましても、条文の上で適用のある法律を手直ししていくということになりまして、猪俣先先の杞憂の点に十分お答えできない。不十分かもしれませんが、それはそのままにしておいて、そういう労働運動や大衆運動をなさる方の行なわないであろうというものであって、しかも暴力団が主としてやるであろうというような行為の類型を取り上げて、その分の刑の強化をはかる、これは不十分かもしれません。不十分かもしれませんが、そうすることによって次善の暴力団対策として価値を持つのではないか、そういう考えから一条の一項には手を触れませんで、二項のところの常習の規定を拡充したわけでありますが、同時に、年間約千件くらいあろうかと思いますこの種の事件を目標にいたしまして、特に一条ノ二を別の条文に立ててこの条文を置いたわけであります。別の条文に立てます意味は、これはいろいろ立法技術上の問題でありまして、現行法の一条の中に一条ノ二に相当する条文も入れることがいいかどうか、これは罪質がかなり違いますので、立法技術として別条文に立てたわけでございます。一条一項を拡充しないで一条ノ二に特別規定を設けました趣旨は、そういう配慮をいたした結果でございます。
#42
○田中(幾)委員 そこで一条ノ二の犯罪というものが、傷害そのものがずばり目的なわけです。あるいは物取りという犯罪の範疇に属する目的をもってやるかもしれません。傷害それ自身が犯罪であり、その犯罪そのものを目的として活動する団体もありましょう。しかし猪俣委員がおっしゃったように、団体行動は犯罪行為でない、適法な労働運動であるというふうに、目的自身が違うわけですね。ですから、第一条の中のこういう処罰の規定を置くと、暴力団ならばずばりとその目的――犯罪を犯すという目的でやるでしょうし、許された労働組合のような団体の行動は、犯意を判定するのが非常にむずかしいわけですね。おそらく故意でやるということはなかろうと思うのです。未必的故意と言いますか、犯意が非常に薄らいでくるわけですね。ですから、そこで猪俣君の心配されるようなことが起こってくるのだろうと思うのです。ですから、私は暴力団そのものの活動、暴力団そのものは犯罪そのことを目的としておるのですから、そういうものの中に特にこういう凶悪な手段を用いるものを処罰するということをはっきりしておかないと、いまの猪俣君の心配するようなことが出てきやしないか、こういうように考えるわけです。その点はいかがですか。
#43
○竹内(壽)政府委員 本来第一条ノ二は刑法の中に書いたほうが体系的にはいい。刑法の二百四条の特別法という考えでございますから、刑法の中に書いたほうがいい条文でありまして、それをなぜ暴力行為等処罰に関する法律の中に書いたかと言いますと、これはいまの暴力団を対象としておるのだということが、この条文に書くことによってある程度客観的に理解できるのではないかということも、私配慮しておるわけなんです。本来は第一条ノ二は刑法の中に書くほうがいいんだ、それを刑法の中に書かないでこの法律の中に書きましたのは、そういう趣旨が法文自体の中に解釈上客観的にうかがえるような条文の位置づけをいたしておるわけでございます。
 それから同時に、第一条の中から一項とははずしまして、第一条ノ二として別の条文に立てましたのは、一条一項とは直接関係がないのだということをまた明らかにしておるわけでございまして、これらの条文の置きどころ、その場所が占めております位置づけからも、客観的に見て暴力団を対象とした法律であるということがわかるように、できるだけくふうをしたつもりでございます。
#44
○田中(幾)委員 それで私どもの態度としてもはっきりときめかねておりますが、そういうことでありますならば、刑法の改正の作業が進んでおる今日、急いでこれだけをこうやってぽつんと入れておくことがいいのかどうか、こういうことについては、非常に最初から疑問を持っておるわけでありまして、そのことだけを申し上げておきます。
 それから、この暴力団体もしくは暴力団体の構成員の取り締まりと言いますか、刑事政策の上から言えば、明らかに暴力団は暴力を行なうということだけで、これはおそらく存在しておるのです。中にはパチンコの景品を買うとか、あるいはその他いろいろな利益を得るという目的がありましょうけれども、手段としては暴力を用いなければ明らかに目的は達せられないのですから、存在そのものがすでに悪なのです。これに対する刑事政策の上からは、取り締まりの問題でありますけれども、破壊活動防止法の団体の活動については、御承知のように公安調査庁のほうからいろいろ資料もきておりますし、かなり緻密に、かなり力を入れて取り締まっておるようですけれども、この調査によってもわかりますとおり、ある程度暴力団の組織の存在というものがお調べのうちにわかっておるだろうと思いますが、それらに対する取り締まりと言いますか、刑事政策の上から見ての犯罪防止の方法はどういうふうに配慮されておるか、その点を伺って私の質問を終わります。
#45
○竹内(壽)政府委員 暴力団の対策といたしましては、御承知のように昭和三十五年十月の例の浅沼事件、それから三十六年二月の嶋中事件を契機といたしまして、社会党と民社党の中からこの種の政治暴力を一掃すべしという強い御主張がありましたし、また与党の自民党におかれましてもその必要を認めまして、去る三十八回国会でございましたか、民社党並びに自民党共同提案の形式で、いわゆる政防法案を提案されたわけでございますが、この御提案の趣旨はその後もずっと続いておりまして、私はそういう必要性がなくなったというのではないと思うのでございます。
 一方われわれ政府当局の者といたしましては、それと、いわゆる町の暴力というものは昭和三十四、五年を境にいたしまして非常に目に余るものがあったわけでございます。これも自民党としては、政防法もさることでありますけれども、この町の暴力を一掃することによって市民の私生活の安全を担保していこうという考え方が強くありまして、党内でもいろいろ御議論があったところでございますが、政府としましても、そういった空気を反映いたしまして、一昨年の三月だったと思いますが、暴力対策といたしまして、犯罪防止基本対策を定め、閣議決定をいたしたわけでございます。この閣議決定の線は、当時新聞にも報道されましたように、非常に広い角度から、強い言い方をするならば、政治そのものが暴力対策になるようなそういう広い観点からの暴力対策、犯罪対策というものを考えて、それをそれぞれの機関において実施をすることにいたしたわけでございます。また現にその線に沿って私ども検察の面におきましてもその仕事をいたしてきておるわけでございますが、その対策要綱の中でも示されておりますように、暴力犯罪、特に大暴力と言いますか、この種の暴力団の暴力行為と、それからいわゆるチンピラ等が町かどで行なっておるようなゆすり、たかりのようなたぐいの小暴力に至るまで、この暴力を何とかして一掃しなければならぬというために、運用の面で、取り締まりの面で、検察の面で、公訴維持の面で、やり得ることはあらゆる手段を尽くして、その対策に貢献するような施策を講じていこうじゃないか、しかし、それにしても、なおかつ科刑の点で、量刑の点等で現行法に不備なところがあるというので、われわれ研究を命ぜられてきたわけであります。
 その趣旨に従いまして、私どもは全国検察庁で処理いたしております暴力団事件の実態の調査をいたしてみますと、過般委員会に資料として差し上げましたいろいろなデータによりまして御認識をいただいておると思いますが、これはまさしく暴力団にはある種の法的措置が必要であるということに私どもとしては確信を得るに至りました。したがいまして、本法案のようなものを立案するに至ったわけでありますけれども、一方において、この種の規定は刑法犯でございますので刑法の改正の際に考えてもいいわけでございます。一時は刑法改正によってまかなうということも考えなかったわけではない、部内で議論をいたしたわけでございますが、何と申しましても、刑法改正事業というものは今後数年ないし十年近くもかかる大事業でございまして、この暴力の刑罰補正の問題をたなに上げておいて今後十年も放置するというようなことは、責任あるわれわれ当局の者としましては責任を果たさないことに相なろうかと存じますので、刑法改正後におきましては、あるいはこの法律は無用な法律になるかもしれませんが、現時点において考えました場合に、やはりこの法律が必要だということで、この改正をいたして急遽国会に提案するということになった次第でございます。内容的に申しますと、先ほど申したような暴力団を対象としていくということがこの条文自体でわかりますように、条文の位置づけ、特に取り上げた類型等から、この程度最小限度の改正はやむを得ないんじゃないかということになったわけでございます。
#46
○高橋委員長 次会は来たる十三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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