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1962/06/14 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第24号
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1962/06/14 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第24号

#1
第043回国会 法務委員会 第24号
昭和三十八年六月十四日(金曜日)
    午後二時五十九分開議
出席委員
  委員長 高橋 英吉君
   理事 上村千一郎君 理事 小島 徹三君
   理事 田中伊三次君 理事 林   博君
   理事 坂本 泰良君 理事 田中織之進君
   理事 坪野 米男君
      稻葉  修君    岸本 義廣君
      早川  崇君    藤井 勝志君
      松本 一郎君    井伊 誠一君
      畑   和君    田中幾三郎君
      志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
 出席政府委員
        警視監(警察庁
        警備局長)   三輪 良雄君
        検事(刑事局長
        )       竹内 壽平君
 委員外の出席者
        専  門  員 櫻井 芳一君
    ―――――――――――――
六月十三日
 委員牧野寛索君辞任につき、その補
 欠として藤井勝志君が議長の指名で
 委員に選任された。
同月十四日
 委員猪俣浩三君及び片山哲君辞任に
 つき、その補欠として畑和君及び田
 中幾三郎君が議長の指名で委員に選
 任された。
同日
 委員畑和君及び田中幾三郎君辞任に
 つき、その補欠として猪俣浩三君及
 び片山哲君が議長の指名で委員に選
 任された。
同日
 理事猪俣浩三君同日委員辞任につ
 き、その補欠として田中織之進君が
 理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 暴力行為等処罰に関する法律等の一
 部を改正する法律案(内閣提出第五
 九号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 おはかりいたします。理事猪俣浩三君委員辞任により理事が一名欠員となっておりますので、この際理事の補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例により委員長から指名いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  (「異議なし」と呼ぶ者あり)
#3
○高橋委員長 御異議なしと認め、田中織之進君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○高橋委員長 本日の議事に入ります前に、坂本泰良君より発言の申し出がありますのでこれを許します。坂本泰良君。
#5
○坂本委員 たいへん恐縮でございますが、法務大臣、竹内刑事局長お見えになっておりますから、次の法務行政について御質問申し上げることについて、質問の要綱と、資料をお願いしておきたいと思います。
 それは、昭和三十七年六月二十二日、大阪地方検察庁に告訴されました告訴事件でありますが、告訴人は、元参議院議員並びに自民党群馬県支部長境野清雄氏、被告訴人は、近江絹綜会長丹波秀伯氏。その質問は、一、近江絹絲使い込み事件につき、中央から圧力をかけられて一年間も捜査が停滞しておるといわれるが、その点はどうかということであります。第二は、五千八百万円は政治献金してあるといわれておりますが、その内容は調べてありますかどうか。
 右に関しまして、資料として左のものを要求いたします。一、告訴状の写し。二、捜査経過の報告書、これはどうなりますかあれですが、一応捜査経過の報告書。三、政治献金の内訳。これは名前は私のほうでもわかっておりますが、特に現在秘しておきます。
 以上であります。
#6
○高橋委員長 これはいずれ坂本君の申し出のとおりに理事会でも決定になると思いまするけれども、事が重大ですから、一応理事会を開いて決定して、正式に申し出をすることになるかもしれませんが、あらかじめお含みの上に御準備していただきたいと思います。
 坂本君、理事会でこれが済んでからでも……。
#7
○高橋委員長 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますのでこれを許します。畑和君。
#8
○畑委員 私は、今回提案されておりまする暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案並びに裁判所法の一部を改正する法律案、両案につきまして質問をいたしたいと存じます。私、いままでの委員会に出ておりませんので、あるいはもうすでに答弁済みであったり、若干とんちんかんな質問をするかもわかりませんけれども、その辺はひとつ前もってお断わりをいたしておきます。
 今回、暴力行為等処罰に関する法律――これを今後私は暴力法というふうに簡単に申しますが、これの一部を改正する法律案が提案されたのでありまするけれども、その提案理由を見ますると、従来の暴力法をもっていたしては暴力団等の構成員のいろいろ暴力を防遇するに不十分だというようなことになっております。ところで、われわれ自身も暴力そのものを憎むということは人後に落ちるつもりはございません。その点では、暴力自体を否認するという点ではわれわれも見解は同じでございますけれども、そもそも、いままでのこの暴力法というのが非常に労働運動あるいはその他の民主的な運動に対する弾圧に使われてきたという事実、さらにそれを強化しようということでございますので、それに対する非常な不安がわれわれとしてはあるわけです。その点でわれわれ社会党では反対の態度をとっておるわけでございます。しかも御承知のように、政防法がこの前の国会で継続審議に二度なりまして、最後に流産ということに相なりました。大体日本における治安立法の成立への努力というのは、ずっと警職法以来続けてまいっておりますけれども、いつもこれが成功しなかった。それはどこにあるかという点はおのずからわかると存じます。そこで今度の暴力法の改正というのがやはり一連のそうしたつながりがあるというふうにわれわれは見ておるわけであります。今度の提案の理由が暴力団等の構成員ということにあって、しかも新聞紙上等にも暴力団対策というようなことで宣伝せられていままできております。暴力団が一般の善良な市民生活に対して非常な妨害になるということはだれしも認めるわけでありますけれども、しかしそれが同時に、法文の規定を見ますると、暴力団だけに対する規定ではない。われわれはこれは暴力団だけに限定されれば必ずしも反対ではないのでありますが、その辺のことにつきまして、今度の提案の理由の説明があったようでありまするが、それは私聞いておりませんけれども、この間総理の答弁をちょっと聞いておったのでありますが、あらためて法務大臣から、その辺の提案の大まかな理由を聞かしていただきたい、こう思います。
#9
○中垣国務大臣 お答えいたします。この暴力行為等の処罰に関する法律の一部を改正する趣旨につきましては、先回もお答え申し上げたのでありますが、全く最近におきまする暴力犯罪というものが事実の上におきまして非常な増加を示しておるというのでありまして、そういう暴力犯罪というものを大別をいたしまして、暴力団等の構成員、それからばく徒、テキヤのようなもの、売春、麻薬等につながる暴力団の団員、こういうものの構成員または仲間と言いますか、そういう人々による悪質な傷害、恐喝、暴行というようなものが非常に増加しておるのでございまして、政府といたしましては、かねてこれらに対する対策をいかにするかということを検討しておりまして、世論も、これらの暴力行為事犯の激増に対しましては、いろいろな形で政府を叱吃激励し、あるいは批判をしておったのであります。そういうことにかんがみまして、このたび、同じ暴力でも、銃砲、刀剣といったような凶器を用いた傷害、それから恐喝、暴行等に対しましても、常習的に行なっておる者というふうに非常に範囲を縮めまして、そういう対象を明確にいたしまして、これらの者の刑罰を引き上げようということになったわけであります。過去の例をいろいろ引用なさいましたけれどもこの法律改正につきましては、労働組合運動であるとか、大衆運動等に対しましての適用が一体この法律でなされるかと言いますと、さようなことは予想もつかないのでありまして、もしそういう御心配があるとしますれば全くの誤解ではなかろうかと思うのでございます。おそらく大衆運動あるいはそういう当然の労働組合運動というものが銃砲、刀剣というものをもって行なわれるということもないでございましょうし、また恐喝、暴行等をそういう組合運動の名をかりて常習的に行なわれるといったようなことはないと信じます。私が調べたところによりましても、いままでさような事犯で傷害罪が成立して起訴されたという事件は一件もないようであります。今後といえども、もちろん私はそうだろうと思うのでございますが、非常に整理をいたしまして、当初法務省が考えましたことをなお縮めまして、できるだけ簡明にしかも単純にこういう改正を行なおうとするのでございまして、御心配のような点は少しもない、かように考えておる次第でございます。
#10
○畑委員 いま大臣は、この改正案はもっぱら暴力団のばっこを押えるという目的であって、労働運動あるいは労働争議その他の民主的な運動に対して取り締まりを強化するという考えは毛頭ない、いままでの例からしてもそういうことは考えられない。こういうようなお話でございましたけれども、そのとおりであればけっこうですが、とかく法律というものは、きめてしまうと、よく言われるとおり一人歩きをするものでありまして、初めの立法の理由というようなこと、国会でのいろいろな答弁、そういったようなことと離れて、別な独立の解釈をされ、一人歩きをするというような例がいままでたくさんあったわけです。この暴力法自体が、御承知のようにそもそもできましたのは大正十四年ですか十五年ですか、そのころだったと思う。治安維持法ができたと同じときに、それまでにありました治安警察法の十七条というのが相当猛威をふるっておりまして、労働運動、労働争議等につきましては非常に取り締まりの効果があったわけであります。それが廃止をされて、そのかわり暴力行為等の処罰に関する法律と治安維持法が制定せられたのでありますが、御承知と思いますけれども、この立法がなされたときに時の司法大臣が、小作争議とか労働争議とかには毛頭これを使う考えはないということをはっきりと明言いたしております。ところが、実際にはそれがさっそく使われた例がある。しかも、その後現在に至るまで、この法律によって検挙をされ、また起訴されて裁判を受けた例がたくさんあるのです。今度の改正が銃砲あるいは刀剣を用いてやる暴力行為、それの刑を加重しようということ、それから常習的な暴力行為の刑を加重して取り締まりを強化しようということ、そうそうことは労働争議のほうの人たちがするはずはないのだから、したがってこれはそちらのほうとは関係ない、そういう弾圧をする意図は毛頭ない。こうおっしゃるけれども、いままでの法律自体がそうそうふうな運用をなされてきたということで、われわれはこの法律に対して、いままでがいままでだけに非常に危険な法律だというふうに考えておるのです。さらにそれが強化されるということについては、暴力団のほうも取り締まりを強化されるかもしれないけれども、反面もろ刃のやいばのようなもので、これが民主的な運動のほうに適用される懸念がわれわれの立場からすれば相当あるというふうに心配がされるのでございます。
 そこで、これは私の意見でございますから重ねて御答弁は必要ないのでありますが、これは事務当局のほうにお尋ねしたほうがよろしいかと存じますけれども、いままでの暴力法で、暴力団関係の犯罪の検挙の総数、それからそのうちの刑法犯、それからそのうちの本法、暴力法の違反、これをちょっと、何か表があったような気がしますけれども、ひとつ事務当局のほうから数字をあげていただきたい。
#11
○竹内(壽)政府委員 さきに委員会に資料といたしまして差し上げてございます「暴力犯罪関係統計表」というのがございますが、それの一五ページ第十一表というのに「暴力団検挙状況累年比較表」というのがございます。これによりまして概略のことはわかるわけでございます。その表に基づいて御説明をいたしてみますと、まず暴力団関係の検挙人員でございますが、昭和三十二年におきましては約五万、三十三年が五万九千、三十四年が五万五千、三十五年が五万六千、三十六年が五万八千という総計数になっております。その中で今回の改正と関係のございます罪名の一つとして傷害を拾ってみますと、いまの昭和三十二年が五万のうちの一万八千九百、約一万九千が傷害でございます。三十三年が二万、三十四年が一万八千四百、三十五年が同じく一万八千四百、三十六年が一万七千八百、こういう数字を示しております。暴力行為に関する法律違反の欄を見ますと、暴力団関係は三十二年が二千八百、三十三年が三千四百、三十四年が三千三百、三十五年が三千三百、三十六年が三千九百という数字々示しておるのでございます。その表の次の(その二)に各罪につきまして比率を出しておるのでございますが、これはいまの御質問の一つに答えられると思うのでございますけれども、全検挙人員の中で暴力団の事件がどのくらいの比率を示しておるであろうかということを示す表でございます。まず傷害について見ますと、これは三十六年の統計を基礎にして見ておるわけでございますが、五万八千の総数の暴力団の中で、その傷害は先ほど申しましたように一万七千八百でございます。そこで全部の検挙人員はどうかというと、八万五千ございます。これは傷害について見ますと八万五千、全体について見ますと三十八万あるわけでございます。三十八万の中で五万八千が暴力団関係の犯罪でございます。それから傷害について見ますと、八方五千の中で一万七千八百が暴力団関係の事件であるということがこの表によってわかるわけでございます。この二つの表によりまして、大体の御質問の点にお答えができておるかと思いますが、もし表をごらんいただきますならば、その次の(その三)という、検挙状況の累年比較表もあわせて、こらんいただきますと、各暴力団の団体がいろいろな種類の団体がございますが、どういう団体がどういう犯罪をより多く犯しておるかということがわかるのでございます。特に青少年不良団というような仲間のものの犯罪が非常に目立っておるということに御着目をいただきたいと思います。
#12
○畑委員 そうしますと、傷害が相当多いわけですな。それで暴力行為等処罰に関する法律で検挙されておる数字が、暴力団関係犯罪の総検挙数に比較しての数字は比較的少ないと思いますが、いかがですか。私の調べたのは、事件数で二・五%から、多いときで二・八%、人数で五・九%から六・八%ということになっております。
#13
○竹内(壽)政府委員 その一六ページの表をいまごらんいただいておると思うのでございますが、これはちょっとポイントの打ちどころが違っておるのでございまして、暴力行為等処罪に関する法律の全検挙人員は八千三百五十六人でございまして、そのうちで暴力団関係のものが三千九百二十六でございますから、その占めております比率は四・七%とありますが、これは四七%でございまして、大体半数が暴力団によって行なわれておるということがわかるわけでございます。
#14
○畑委員 それから昭和三十六年中の暴力法違反の事件の人数と件数、これも大体出ておると思いましたが、そのうち暴力団関係の占める数字は幾らか、三十六年のパーセンテージ。
#15
○竹内(壽)政府委員 三十六年のが先ほど申し上げた数字でございます。
#16
○畑委員 そうすると割合はどのくらいになりますか。
#17
○竹内(壽)政府委員 四七%になります。
#18
○畑委員 それでは一〇〇%から引いたもの、それは何になるのですか。
#19
○竹内(壽)政府委員 その他の約五十何%の事件は、一般の暴力団に所属しておりますものとはっきりしていないもの、以外のものの犯罪数でございます。
#20
○畑委員 それが相当数が多いのですが、それがほとんどあれではないでしょうか、労働関係や何かの検挙数ではございませんか。その点をお伺いしたい。
#21
○竹内(壽)政府委員 それは違いますので、いまそれを調べた統計表を持っておりますからちょっとお待ちください。――この関係は全国検察庁の受理人員で示した統計表でございますが、昭和三十六年度におきましては、暴力行為によりますものが一万二千四百六名でございますが、そのうちで公安労働関係の受理人員は三百四十八名でございます。この三百四十八名の暴力行為等処罪に関する法律違反でございますけれども、適条を見ますと、先ほど大臣がお述べになりましたように第一条の二項が常習の規定でございます。この常習の規定の適用を受けたものは一件もございません。これは三十六年たけでなくて、前にさかのぼりましても、私のほうで全部調べてみましたが、一件も適用を見ておらない。もちろん第一条第一項の罪として受理されておるのでございます。その数が一万二千四百六名のうちで三百四十八名、こういうことになっておるのでございます。
#22
○畑委員 それから先ほどの話にさかのぼるのですが、おもに暴力団関係を年令的に見まして、非常に青少年の不良団が多い、その他の不良団体はどうか知りませんけれども、非常に多いという話ですが、大体どのくらいの割合ですか。
#23
○竹内(壽)政府委員 これも表にございますが、先ほどあげました表の一七ページでございます。まず暴力団の団体を一応、ばく徒、テキヤ、青少年不良団、会社ゴロ、新聞ゴロ、炭鉱暴力団、売春暴力団、港湾暴力団、その他というような、これは社会学的に見るとこういうような区分ができるようでございますが、そういう部類に分けて検挙状況を調べてみますと、昭和三十六年について見ますと、ばく徒の関係で五万八千九百二十四件中の九千がばく徒でございます。それから七千五百はテキヤでございます。それから二万八百十三が青少年の不良団、会社ゴロが五十五、新聞ゴロが百十三、炭鉱暴力団が三百四十九、売春暴力団が七百九、港湾暴力団が二百七十四、その他が二万三十、テキヤのところを数字をはっきり申し上げなかったかもしれませんが、七千五百八十一でございます。こういう状況でございます。
#24
○畑委員 そういたしますと、暴力団関係の犯罪のうちで、青少年犯罪が非常に大きな部分を占めておる、こういうふうに考えられます。青少年につきましては、特に少年法も設けられておりまして、いまどこの国でもこの青少年の犯罪の対策が焦眉の急になっておりまするが、こういったものはやはり社会のゆがみ、政治のあり方、政治のいわば貧困、社会悪、こういったものから出ていることが多いと思います。したがって、これを直すこと自体が私は一番の根本の問題だと思うのであります。ただ刑罪を強くするというだけが能ではない。暴力取り締まりの中心問題ははたして何かといったことについて、そういう点でもう少し掘り下げて考え、施策をしてやる必要があると思うのです。その点について大臣はどういうふうに考えておられますか。
#25
○中垣国務大臣 青少年の非行対策につきましては、これは政府といたしましては総合的な対策を進める必要がありますので、昭和三十六年の二月の閣議におきましてそれらの対策要綱を示してあるのでありますが、その後におきましても、人つくり懇談会におきましてたびたび青少年の非行問題につきましては話題等にもなっております。法務大臣といたしましては、これらの青少年の対策の中で特に触法少年、虞犯少年等につきましての対策を検討しておるのでありますが、去る二十四日、全国の少年係検事を東京に集めまして、いろいろ現地における検事の考え方等も聴取いたしまして、刑事政策といたしましてのこれらの非行青少年に対する検察行政のあり方、そういうもの等から考えまして、現在の少年法等は一体これでいいかどうか、改正する必要があるるかどうかというような問題等につきましても、検討を進めておるのであります。私はきのうもお答えしたのでありますが、これらの特に少年非行につきましては、やはり社会的なよい環境をつくってあげる、それから道義が支配するような、そういう社会を実現するために努力をしていく、こういうことがやはり一つの大きな目標であろうと思います。やり方につきましては、いろいろあるでありましょうけれども、たとえば家庭教育、学校教育、社会教育等を通じての施策の立て方、あるいはまた政治的な、政治論といたしましての対策の立て方、また触法少年、虞犯少年等につきましては、少年鑑別所、少年院、少年刑務所等における管理のしかた、それから教護教化のいたし方と、それに携わる職員の数の問題、それから施設の問題、処遇の問題、いろいろあろうかと思うのでありますが、それらのことを含めまして検討をいたしておるのでございます。
#26
○畑委員 今度この法案が出される前に、法制審議会にかけて、そこで論議した。その際に、いろいろな議論があったようであります。特に常習暴力行為の条文についてその下限を一年以上とすることに対して、部会では、一応反対、否決ということになったようでありますが、その後、総会でまた逆になったというような話を聞いておるのですが、その辺の事情を承りたい。
#27
○竹内(壽)政府委員 これもお手元に資料として差し上げてございます法制審議会の会議録によって明らかになっておると思うのでございますが、御指摘のように、常習暴力行為の刑の最下限を撤廃することの可否につきまして採決がなされました結果、刑事法部会で賛成十、反対九ということで撤廃することが可決されたといういきさつがございます。その後、総会にその問題が持ち越されまして、総会で議論がなされました結果、総会におきましては、撤廃をせざることに、原案のとおりに賛成するというのが十六でございまして、原案どおり撤廃することに賛成する、つまり反対でございますが、反対が四で、結局部会の修正案は否決されてもとの政府原案の線に戻っておる、かようないきさつがございます。
#28
○畑委員 その前は九対十でしたけれども、そうすると、部会に出て修正ということに賛成した人が今度は総会に欠席したのですか、かわったのですか。
#29
○竹内(壽)政府委員 総会と刑事法部会との委員は重複しておる方もありますが、別の委員の方がございまして、委員の中には、自分の考えが変わってきたという方もありましたけれども、大体この総会というのは、常識的な考え方が出るような委員の選定になっておるように私は思うのでございます。それから部会のほうは専門家と言いますか、エキスパートの方でございまして、学者、裁判官、弁護士、検察官等もちろん入っておりますけれども、主として刑法の専門家でございます。それから総会のほうは、民法その他の民事法の権威もおりますし、もっと高い立場で文化人的な方もおられまして、かなり常識が支配した。その結果、そういったような変更が起こったわけでございます。
#30
○畑委員 私はそこが問題だと思うのです。結局常識が支配した、専門家はノーと答える人が多かったけれども、総会では、専門家でないいわゆる常識人がさらにそれを修正したというような話でございますが、その際に、その議事録を見てもわかりますけれども、法務省当局のほうでも、これがくずれるということでは、この法案を出した意味がなくなってしまうというようなことで、しかもこれは国会に提出するので非常に急ぐというようなことを言い、かつまた暴力団のほうに適用するのだ、こういうようなことで、そういうような説明があったので、常識的な人たちは原案のほうに賛成をしたというように見られる議事録になっておると思うのですが、その点はどうでしょうか。
#31
○竹内(壽)政府委員 議事録でごらんいただきますと、そういうふうにごらんになるかもしれませんが、政府側が諮問を発しまして、原案をつくったものの立場として、いま御指摘のように、会議録にも載っておりますとおり、政府側の意見を述べたことは事実でございますが、常識が支配して、常識どおりになったということは、政府原案そのものが常識的に国民の期待に沿うものであるという結果にほかならぬと思います。私もしばしばこの議場で、法律専門家だから、おまえはこまかいことを言うじゃないかというおことばをいただくわけでございますが、御理解をいただくために例をあげて申し上げますと、たとえば二週間の傷害を与えたというような事件を形の上から見ますと、それに対して徴役何カ月というような刑を盛れということは、法律家としてはなかなかむずかしいのであります。現に傷害罪の規定を見ましても、拘留、科料まであるわけなんで、そこの辺までの幅の中で傷害二週間というものにどういう刑を盛るかということは、法律専門家となりますと、形式にとらわれることは免れがたいところでございますが、もしその者が、傷はなるほど二週間であったけれども、傷害常習者であるということになりましたならば、たとえ傷は二週間でありましても、これに重い刑を盛って体刑で臨むということは社会の常識ではございますまいか。総会では常識が支配したと申し上げた意味は、そういうようなところに着眼をされまして、それはそのとおりだということで、これは十六対四でございましたか、数字の上でも明らかなように、これは圧倒的な多数をもって改正案に賛成をされたようないきさつでございます。
#32
○畑委員 竹内さんは、だいぶ勝ち誇ったようなことをいま言われたけれども、やはり専門家は専門家だけに非常にいろいろなことを心配する。専門的な立場で人権擁護ということを中心に相当程度考るというようなことが反対論の専門家たちの意見ではなかったか。したがって、銃砲、刀剣のほうも議論があったけれども、それのほうはまあまあそのままで、ただ常習というのが非常にあいまいな規定である。しかも暴行、脅迫あるいは器物損壊、それと傷害ですかを加えて、そうした一連の常習、いわゆる習癖ということで一緒に包括して考える。こういうようなことでもあるし、それが科刑の点で、暴力傷害を前にやった、今度は暴行をやった、それで常習ということで一年以上十年以下となるのは酷であるというような、ほかの犯罪との均衡ということも考え、しかも十年以下一年以上ということになると騒擾罪の首魁の刑と同じであるので、ほんとうの暴力団の始末に負えないやつなら別だけれども、やはり心配するのは、暴力団を中心として適用するのだと言いながら、まじめな労働運動の若干の行き過ぎというような場合も適用されるおそれがある。実際のところこういう可能性は考えられるのです。全然ないとは申せない。むしろ私は非常に心配になる。労働組合の執行部におる人、上部の機関におる人、そういうような人はあちらこちらの争議関係、あるいは民主的なデモ、そういったところにも参加をする。それで人の足を踏んだとかどうだとか、それが暴行あるいは傷害ということで一度やられた。それがまたほかの件のときにそういうことになるということになると、これが常習ということで、前には傷害であって今度は暴行、前が暴行で今度は傷害、そういう器物損壊、しかもこれは包括してやられるのですから、そうなると労働運動の場合も、民主的な運動の場合も非常に可能性がある。ないとは申せない。それが非常に懸念されるわけです。また専門家の人たちもそれを懸念して、そういうかわいそうな例があるのに、一年以上十年以下というのは、騒擾罪の首魁と同じ科刑じゃないかというようなことで、おそらく専門家は反対したのだろうと思う。しかし総会になってみると、非常に常識家がそろっているとあなたはおっしゃる。またそうでしょう。俗にいう常識でしょうけれども、しかし、それはやはり専門的なことを考えておらぬ。検挙された人の人権を考えずに、一般の人たちを暴力団に対する恐怖から防ぐというようなことを中心に考え、しかも暴力団に限って考えると、それはやはり一年以上のほうがいい、そのほうが常識的だ、こういうふうに考えているに違いないと思う。しかも当局としては、確かにこれが生命線だと思う。それだけに、これがなければ、これを提案する意味がないのだ、こう言われるか、かぶせられると、やはり常識家の人たちはそうかなということで、そういうふうに大勢が傾いたというふうに考えられるのですが、その点はどうでしょうか。
#33
○竹内(壽)政府委員 先生のお考えもごもっともな点もありますので、私は先ほどから敬意を持って伺っておったわけでございますが、私が常識を欠いたと申しますのは、その人がコモンセンスが欠けているというような意味で申し上げたのではございませんので、常翌性の認定の資料がどの範囲に及ぶものであるかどうかということや、今回改正したものと改正されないままである罪との刑の均衡とか、そういう問題に疑問があるならば、その疑問を明らかにして審議していただく筋合いでございますが、そういう点に疑問を差しはさみつつ、あまり重いことにならぬように幅の広いものに落ちつけておけというような議論が専門家の中である程度あったかのように私は見受けたのでございまして、そういう点は、むしろ専門家でありますれば、常習の点に疑問があるなら疑問の点を明らかにすべきであって、そのほうは、どうやら政府側の説明で満足されたけれども、何となくおかしいから下限のほうだけをはずしておいて、たいしたことのないようにしておけばいい、そんなことは専門家のやるべきことではないと思う。そういう意味で、かなり常識的でなかったということを私は申し上げたわけで、コモンセンスがないというような意味で申し上げたつもりはございません。
 それからまた学門的に見まして、常習認定の資料がどの範囲に及ぶものであるかということは、学問上も実際上も検討を要すべき問題が幾つかあると思います。しかし、その問題とその下限を取っ払うということを結び合わせて、何かイージーゴーイングに押しつけようとしたところが専門家らしくないという意味で申し上げたわけでございますが、別段専門家の方々も、とにかく九、十という数字でございますので、それは反対には反対の相当の理由があったと思いますが、ただここで申し上げておかなければならぬと思いますのは、九、十の数字でございますが、あとの総会のときにも部会長からその点の説明をして、会議録にも載っていると思いますが、実は部会長は委員でございますから、投票ができるわけでございます。投票しまして、その可否同数の場合には会長の定めるところによるわけでございますから、もしそのとおりにおやりになれば、これは十対十なので、部会長ははっきりと政府原案に賛成しておられましたので、そうすると、これは別に否決されなくて済む筋合いの数字であったわけです。しかし、部会長は会長で会議を指導しておいたので、投票に加わらぬということでやりましたので、結果においてこうなった。であるから総会におきましても、これを差し戻してもう一回部会で練るというほどのことはない、総会自身で採否を決定したらいいということになりまして、総会におきましても、もう一回部会に戻して審査をしてもらうということをせずして総会みずからが採決をした、こういういきさつでございます。
#34
○畑委員 法制審議会の話が出ましたから、ついでに聞いておきますが、そのときに裁判所構成法の一部を改正する法律、これは正式には諮問しなかったのですか。
#35
○竹内(壽)政府委員 これは諮問いたしておりません。
#36
○畑委員 これも竹内さん、あなたのたぶん説明か何かにちょっと載っけて、最後に裁判所構成法のほうも変えるのが適当と思います、こういうふうなことで説明を終わって、それでどこをさがしてもそれに諮問した模様がない。したがって私聞いたわけです。これなんかも諮問すべきだと思うのです。諮問しなければ、そう思いますというぐらいのことでは、合議制にするか単独にするか、被告人に対する個々の問題でえらく違ってくると思うのです。その辺はどうしてやらなかったのですか。
#37
○竹内(壽)政府委員 これは会議録に私の説明として、いまお話のように述べたことは事実でございます。これは諮問されておりませんものですから、それでことさら、全然言わないのもおかしいので、そういう考え方だけを表明したわけでございます。これをなぜ諮問しなかったかということにつきましては、私どもはどちらでもいいと言ってはなんですが、諮問をして一向差しつかえないのでございますけれども、問題は、諮問する事項そのものがほとんど問題にならないほど明白なことでありますれば関係者に諮問はしませんけれども、こういうことですという説明の程度でよかろうではないかというのが、当局の審議会の運営の事務に当たっておりました者の意見でございました。それにいたしましても、もちろん事前に裁判所当局ともこの取り扱いをどうしたものであろう、もし合議でやるほうがいいというならこれは合議もあえて辞さないところであるけれども、どうしたものであろうかということを内々相談してみたわけでございます。現に裁判所法の二十六条二項でございますか、これは合議制になっております。管轄の事件の中に当然入ります五年以上の懲役の強盗とか、そういうものも、事柄自体が、内容が簡明であって、三人の裁判官で審理を尽くさなくとも過誤はないという観点からこれも除外されておるという当時のいきさつも参酌いたしまして、傷害事件かどうか、強盗と比べてどうであろうかというような点をいろいろと検討してみましたところが、強盗にもましてこれは簡明なので、傷ができておる、それをやったかどうかという問題でございますので、事柄はすこぶる簡単でありますし、この種の事件を合議でやりますれば、慎重になるかわりにどうしても訴訟はおくれがちになりますが、こういう勾留されておる被告人が、おくれるために勾留が長くなるということもこれまた人権上適当でない。迅速に裁判をしてもらう。そして事柄自体がそう複雑でないということになりますと、これはやはり単独裁判でやるというほうが裁判所当局としてもよろしい。それからまた被告人の人権を尊重する点からいっても、少しもそれによって過誤を犯すようなことにはならないだろうというような関係者の意見でございまして、また法制審議会におきましてもそういう意味のことを私は発言いたしましたが、ぜひとも法制審議会にかけて審議をしなければならぬ問題だというふうな御意見も実は出ませんでした。そういうわけで暗黙のうちの御了解のもとにこういう措置がとられたわけでございます。
#38
○畑委員 合議制を排除することが裁判が迅速にやられたりして被告人のためだと言われるけれども、別の見方も大いにあるので、本来的な見方はそうでなくて、三人の合議制でやはり慎重にやる、下限がそうなっている以上は。それは強盗の場合もあります。強盗が単独でできるということに改正になった点もございますけれども、私はそういう点からそう簡単に問題を処理すべきではないと思う。しかし、これは議論していてもしかたがございませんので先へ進みます。
 それからいまの下限の問題ですが、それに関連して聞いておきます。下限を一年にしたということのねらいというのは、おもにどこにあるのですか。
#39
○竹内(壽)政府委員 これは先ほど私があげました暴力犯罪関係統計表をごらんいただきますとわかりますが、この種の暴力犯罪の裁判結果というものが非常に低い、罰金等で済まされるものが圧倒的に多いほかに、検察官としては公判請求をいたしまして、実刑をもって臨みたいという考えを表明した公判請求事件につきましても六ヵ月以下のところに集中しておる。この状況はひとり裁判官が悪いのではなくて、法を扱います者全体の一つの責任ではなかろうか。また常習犯の規定は現行法のもとにも第一条第二項にあるわけでございますが、これの運用状況は非常に悪い。それはなぜであるかというようなことを検討してみますと、先ほども私が例にあげましたように、形式的には非常に軽微な傷害事件のように見えますけれども、それが常習者と証拠によって認められる。そういう常習者が犯しておるにもかかわらず、結果の発生が二週間だというようなことから、あるいは罰金で処理されてしまう、あるいは体刑を求刑されましても執行猶予になってしまう。あるいは執行猶予扱いにしても懲役三月とか二月というようなことになっておるのが現状でございます。そこでその結果はどういうところにあらわれてくるか。刑務所に入れましても、これらの人に矯正教育を施そうとしても、ニヵ月や三ヵ月の者には矯正教育の施しようがない。刑務所の中においてあたかもなわ張り争いが、しゃばにおいてあるようなことが随所に起こっておるということを私どもは刑務当局から聞いておるわけであります。これでは私どもが学問的にいろいろ昔から聞いておりました短期自由刑というものが何らの意味を持たないということが、如実にこの暴力団関係のものについてはわかるわけでございまして、この際裁判官、検察官、警察官、この法をつかさどる方々に一つの行刑上の基準を示すように立法的にその問題を解決していく、これは非常に私は意味のあることだと思います。そういう意味でこの下限が定められたわけでございます。でありますから、先ほどの審議会の席でも申しましたように、これを取っ払って拘留、科料までやっていいのだということは、全然これはつくる意味がないではないかということを私どもは切望して言ったわけでございます。
#40
○畑委員 竹内さんの言われたこと、趣旨は一応わかるのですが、しかし十年以下ときめてある。したがって相当幅があるわけですね。だからひとつ求刑の基準を高くしているのだと思うけれども、求刑を引き上げてどんどん具体的事案に対処して、そうすることによって裁判官も世論にも押されるし、そういう暴力団事件に対してはだんだんと刑が重くなってくる、こういうことでいいんじゃないか。そういうことも反対の人たちの一つの理由になっておったと思うのですが、私もその点は同感なんです。
 しかも私の懸念するのは、あなたはねらいとしては、要するにいままで下限がなかったから、しかも罰金なんかあったので、あっさり罰金を食ったり、あるいは六ヵ月くらいで済んで、刑務所で改過遷善することもできぬというようなことで、やはり最下限をきめる、そうすることがまた結局裁判官のほうもそれに一応拘束されるから、それで高くなっていく、こういうねらいだと言われる。それも一応暴力団等に限っては私もわかるような気がする。
 ところが、私たちの懸念しているのはやはり労働問題、公安事件です。しかも、もう一つねらいがあったのじゃないか。これは御承知のように権利保釈を免れることができますが、それが大きな理由ではなかったか、この点はどうですか。
#41
○竹内(壽)政府委員 まず第一の運用の面で改善すべきではないかという御意見でございますが、先ほど大臣もお話し下さいましたように、昭和三十六年の二月に政府におきましては閣議決定で犯罪対策要綱が定められまして、その中で暴力犯罪につきましては特にきびしい態度で臨まなければならぬ。その対策はたくさんありますが、その中の一つとして、まずできるだけ運用でやってみよう、それでもいかぬということならば立法措置も考慮するにやぶさかでないという太い線を決定しているわけです。当時私どもは――もうすでにそれより前から、岸内閣の時代から三悪追放、暴力追放ということは言われておりまして、検察、裁判に携わっておる者としましては当然なことでございますので、鋭意運用の面の改善をはかってきておったのでございますが、先ほど申した閣議決定の次第もありまして、画期的に刑を引き上げることを検察官会同で指示をいたしまして、一斉に刑を引き上げることの処置をとったわけであります。それから私どもはずっとその刑を引き上げることでどういう影響が出てくるかを見守っておったわけでございますが、多少の改善はいたしましたけれども、これにはしょせん限度があるということをしみじみと私は統計の上で身をもって感ぜしめられてしまったわけでございます。このような体験、経験を経た上でこの立法措置に出たわけでございまして、決して運用の面を軽視してすぐ手軽にこの立法に飛込んでいくという態度をとろうとしておるものではないことは御了解いただきたいと思います。
 それから第二の問題といたしまして、権利保釈からはずして裁量保釈にすべきではないかということは世論としては相当強いものがありますことは私よりも先生のほうがよく御承知だと思うのでございます。検挙されて、つかまったかと思うと、もう出てきてしまって、出た者がまた前の裁判が済まないのに第二の犯罪をやるということを私どもは日常新聞紙上でいやというほどこれまた見せつけられておるのでございます。しかし、それは一つの社会現象として注意はいたしておりますけれども、であるから今度の改正の機会には何としても権利保釈からはずすような立法をせねばならぬという考え方は私はいたしておりません。のみならず、今度の改正をまたなくても、ある程度は権利保釈の点は運用でいける問題でございます。刑事訴訟法にお礼参りの規定もありますし、常習として犯したと認められるときには権利保釈から除外されておりますので、常習犯の規定をまつまでもなくこれはできるでありまして、結果的に見ますと裁量保釈ということになるわけでございますが、これをねらっての立法というのではなくて、反射的効果と言いますか、こういう立法をしました結果としてそういう面も出てきたということでございます。しかし、われわれとしては運用の面で先ほど申したように迅速に処理をしていくのが筋でございます。また裁判所におきましても裁量保釈で事件事件の適正な処理ができなくなるのではなくて、この法律ができましても、そういう裁判所の適宜な処置ということは可能でございまして、それが禁止されてしまうという筋合いのものではないという考えでございます。
#42
○畑委員 それが暴力団なら了解できるのだが、どうも常にこの法律が労働団体のほうにいろいろ使われておる。とにかくいままでの労働事件のうち一九・六%はこの暴力行為等処罰に関する法律を適用されている。傷害の場合は二〇何%、この法律の適用は第二位を占めているのです。この法律がわれわれの立場からすれば弾圧に使われていると考えざるを得ない。それにいま言った下限一年以上ということになると、保釈はなかなか裁量保釈で許されないということになる。それをねらっているのではないか、こういうのがわれわれの懸念なんです。あなたはとにかく暴力団中心でおっしゃるからどうも私も質問しにくいのだけれども、もろ刃の剣ということですね。どうもこれがわれわれのいつも頭からくっついて離れないことです。とにかくあなた方としては暴力団だけに適用するというわけにも言い切れぬでしょう。とにかくこの法律に違反するやつはだれでもやる、こう言わざるを得ないということになる。そうすると、最近の事例といたしましては労働問題、民主的労働運動等にこの暴力行為等処罰に関する法律が使われている。さらにこれが常習ということで、何かそういったことであいまいな要件で刑が加重される。いま言った保釈も権利保釈ができなくなる、裁量保釈になるということでは、ますますこれがそういった方面の弾圧に使われるおそれがあるということでわれわれは心配しておる。竹内さんのほうは大体暴力団のほうが中心の御答弁で、その辺はどうお考えになりますか。
#43
○竹内(壽)政府委員 御心配の点は私は杞憂だと思うのでございます。先ほどもちょっと数字を申し上げましたが、なお数字が出ましたので申し上げますと、昭和三十六年の統計を見ますと、全部の傷害事件は十二万七千五百四十九人でございますが、そのうちで公安労働関係の人の傷害事件というのは五百でございます。それから暴行につきましては全受理人員が四万九百三十四人でございます。そのうちで公安労働関係の人は四十三人。脅迫につきましては全部で五千七人ということでございますが、公安労働関係の受理人員はゼロでございます。それから器物損壊につきましては総受理人員が六千八百八十四人でございますが、そのうち公安労働関係は五十二人でございます。こういう数字を示しておりまして、私どもはこの数字をよく吟味いたしましてこの立案をいたしておるのであります。仰せのようにこの法律には暴力団に適用するということは一つも書いてないわけでございますから、先ほどのおことばにありましたように、法律が成立すれば一人歩きをして、私どもの説明とは違った方向へ運用されるじゃないかという御心配でございますけれども、私どもがこうやって御説明申し上げております解釈は、やはり裁判、検察を実施いたします場合の行政解釈のよりどころ、有力なる法源になると私は信じておりますし、第一この案をつくりますときに、よく御認識を賜わりたいと思いますのは、この第一条ノ二は本来刑法犯です。だから二百四条の次のところへ書くのが相当だと私は思います。これをそこへは書かないで、暴力行為等処罰に関する法律の中へ書きましたことは、この法律そのものが一つの暴力行為を取り締まる法律として生まれてきたわけなんです。その法律の中に書きますことは、暴力団を対象としたものだということが、その位置づけによりましてある程度御推測願える。それから労働運動に適用されておる法律は、いまの第一条の一項だけなのです。これは今度の改正ではいじっておらないのです。二項のほうは常習者なのです。でありますから、この常習者は組合の中にはいないのだ、私はそう信じます。
 もう一つ、資料を差し上げましたね、八百人ばかりの前科調書。あれはもう全部暴力団の者として報告のありました者について前科調べをしたのであります。あれをごらんいただきましてもわかりますように、常習という認定を受けますのは労働運動や大衆運動をなさる方じゃなくて、そういう方々の行なう傷害とか暴行とかいうものは越軌行為でありますから、暴行をやれば暴行の罪に当たりますけれども、常習暴害という認定を受けるなんということは、裁判例もありませんし、現実にもやっておらないわけであります。そういうところを立案の過程におきまして十分吟味して法案をつくっておるのであります。暴力団ということは条文に書きませんでしたけれども、改正の重くしようとしておるところなどが、そういう要所のところだけは上げてある。
 そのことは刑のバランス、ほかの建造物損壊と器物損壊の間の刑のバランスがくずれるじゃないか、器物損壊をやるなら建造物損壊もやったらいいじゃないかという御議論も法制審議会でございました。しかしながら、私はそれはやれない、やらぬほうがいいという考えを申し上げたわけでございます。もちろん、この器物損壊を重くすることによりまして、常習的な建造物損壊が、この法律の精神の照り返しによって、ある程度重く理解されようとするであろうことは私も否定しがたいと思いますが、改正案そのものとしてはそういうものはねらわないで、もっぱら暴力団の実態に即した改正ということでいたしたわけでございます。
#44
○畑委員 いま竹内さんの言われた全体の暴力事件のうちの労働運動の公安事件の数字は微々たるものだと思う。それはわかっているのです。私がその前に申し上げましたのは、公安事件のうちで暴力行為等処罰に関する法律が適用になったのは約二割だ、相当多くの部分を占めているということです。それは日本全国の暴力事犯に比べて労働関係の公安事件の検挙者がきわめて問題にならぬほど少ないのは、それは比較にならぬです。これはもうそうしょっちゅうあるのではございませんけれども、わりあいに多いのじゃないか。この法律が適用されるのは、公安関係にはきわめて多いということなのです。したがって、いままでも弾圧に使われておったから、今度はなお使いやすいのじゃないか。ちょうど警察庁もここに来ていますけれども、とにかくこれによって取り締まりがしやすくなる、これはひが目かもしれぬけれども、そういうように思うのです。私もいまの数字はわかっています。それは全体に比べたら、労働運動はうんと少ないに違いない。それはたくさん、二割、三割あったらたいへんですよ。それこそ日本の国は終わりだ。そういう意味で私は申したのです。
 それじゃ、その先へ進みます。先ほど常習のお話が出たのですが、常習の認定の基準ですね。これはいままで法制審議会でもいろいろ議論されたようです。またこの委員会でも、もうすでに議論があったと思うのでありますが、これはきわめてあいまいで、いままでの判例とすると一応ありますけれども、それは同じことを常時反復してやる習癖というか、そういうものがあればいいのだ、こういうことなんです。それについて、常習の認定の基準をちょっと言ってください。
#45
○竹内(壽)政府委員 仰せのように、常習犯というのは認定する側の主観的な要素が非常に強いのでございまして、ある裁判官はこれを常習犯にとり、ある者は見ないというようなことが起こりそうな解釈になっておるわけございます。そういう点から学者は大いに論ずるわけでございますけれども、実際にはたくさんな判例で、もうきまっておるわけです。理論としてはそういうふうになりますけれども、基準はきまっております。これは今までの暴力行為等処罰に関する現行法のもとでも、一条の二項にそういう常習の規定がございますので、その常習犯はどういうふうに理解すべきかということは、判例で出ております。昭和二年の判例、それ以来昭和三十年、三十一年の最近の判例に至りますまで、裁判所の考え方、解釈は一貫して少しも変わっておらないのでございます。それからまた、刑法百八十六条の常習賭博、それから盗犯防止法の常習累犯、窃盗の常習、それから最近問題になりました事犯として麻薬取締法の常習、あへん法の常習といったようなわけで、常習の規定に関する判例というものはたくさんありまして、それは理論を言いますと、習性とかいろいろ申しますので、何か一見不可解な、どういうようにでも認定されやすいように思えるのでございますけれども、これらの判例によって示された解釈というものはもはや一定しておりますので、常習という概念をここに持ってまいりましても、運用の面で乱用が起こったりあるいは逸脱が起こったりということは、私は絶対ないというふうに確信しておるわけでございます。
 そのことを前提といたしまして、常習とは何かということになりますと、ある犯罪を繰り返してやる習癖を持っておる、そういう犯罪、それを常習犯というわけでございます。したがって一番議論になりますのは、暴行の前科があれば、すぐ今回の暴行は常習暴行かという御質問が出てくる、学者もそういう議論をいたします。しかし、前の前科があるからといって、今度の暴行がすぐ常習暴行と言えるかどうかということは、先ほどの判例が言っておりますように、暴行の習癖のあるものでありまして、その前の前科一つで、その習癖の発露として今度の暴行が行なわれたのだということが認定できるかどうか、そこにかかってくるわけであります。でありますから、前科が何犯あれば常習となるとか、一犯ならば常習にならぬとか、そういう議論を幾らいたしましても、要は裁判所が積み重ねてまいりました幾つかの判例で示した線で常習というものを理解していくほかないわけであります。この線というのはかなりきびしいものでございまして、なるほど、第一条二項の現行法の常習の規定は、脅迫と暴行と器物損壊がそれぞれの罪の常習であるばかりでなく、その三つの罪が相互に包括一罪の関係でこれは一つの暴力行為だ、こういう暴力行為の習性があると見られるならば、今度の暴行、今度の脅迫も常習脅迫、常習暴行になるんだという趣旨の判例でございますので、相互に融通し合うようにも読めるのでございますけれども、それはあくまで習癖と見られるならばと、こういうことが書いてありまして、判例は暴行の前科をとって今度の暴力の常習を認定し、器物損壊の前科をとって今回の器物損壊の常習を認めるというふうに渋くきびしい運用になっております。ただ一つ違いますのは、傷害の前科がある者が今度は暴行の罪を犯した、この暴行の罪を常習だという認定を裁判所がしております。これは御承知のとおり傷害と暴行とは結果的加重犯の関係になりますので、これは同じ性質の罪でございます。でありますからこれらの、今度は傷害が入りましたので四つの暴力行為というものができるわけですが、それ以外の罪が、たくさん暴行、脅迫を含んだ罪がございますが、そういうものがすべてこの常習の認定の資料になるなどとは、理論として学者はいろいろ論じますけれども、いまの判例は決してそんなに広く認めるものではなくて、われわれの運用もそうじゃないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。
#46
○畑委員 その辺が、竹内さんのお話を聞きますとまことに明快のような感じがするのですが、判例の態度は終始一貫して同じことを繰り返し、習癖があるということで一貫しておる、こういうわけなんです。前科が何犯だとか何とかいうことはない。それだけに非常に乱用のおそれがあると私は思うのです。しかも先ほどうしろで言っておりましたが、肝心なのは警察官が最初につかまえるのですから、そのつかまえるほうがそういった程度の知識の人で、みんないま竹内さんの言われるような裁判官の判例を頭に入れたような考え方で末端の警察官までやればよろしいのですが、そうはいかないところに問題が私はあるのではないかというふうに思うんです。傷害も加えてこの四つの類型ですか、これを常習性のことで包括的に見るか見ないか、そういった問題もありましょう。それからまたそれ以外のものは、学者の説としては、たとえば公務執行妨害とか、強要、こういった同じようなものを手段として含んでいるようなもの、しかし理論としてはそれは考えられるかもしらぬけれども、実際の常習という中には入らぬ、こう言われるのですけれども、そこがまたなかなか私は実際問題として非常にあいまいなだけにあとで問題になりやせぬか、かように心配をするわけです。これはわれわれのほうで、先ほども申し上げましたように、労働運動に携わっておる人が、あちらの争議の応援に行き、今度はこちらの争議の応援に行く、あるいはこちらのデモに出て指図するといった場合に、前のときに傷害で起訴されて裁判を受けたというようなことで、また次もやったから常習だ、こう言われる危険性が多分にある、こういうので実は心配をいたしておるわけです。結局この点は、なかなかわれわれとしてはぬぐえない一つの心配なんです。その点だけを申しまして、この常習という点については質問を終わりたいと思います。
 それから今度の改正に銃砲、刀剣類というのがありますね、これは一体銃砲刀剣類等所持取締法ですか、あの規定の概念と同じですか、違いますか。
#47
○竹内(壽)政府委員 銃砲刀剣類等所持取締法第二条の銃砲刀剣類と、今回の銃砲、刀剣類を用いて傷害のこの銃砲、刀剣類とは、概念も範囲も解釈としては一致するという考え方をいたしております。
#48
○畑委員 それが場所によりますと、法制審議会での何か議論の際にも、それとちょっと違ったようなことを竹内さん言われたように私見たような感じがするのですが、その辺はいかがですか。
#49
○竹内(壽)政府委員 法制審議会の最初のときの趣旨説明をいたしました際に、御指摘のように解釈論として、いま私が述べましたのとややニュアンスの違う意見を述べたことは事実でございます。これは会議録にそのとおり載っておると思います。これは解釈論でございますので、いろいろな解釈を入れる余地があると思います。余地があると申しますのは、銃砲刀剣類等所持取締法は所持の禁止を目的とした行政取締法でありますので、その法律の目的に照らしてこの銃砲刀剣類というものを解釈することになるであろう。今回は刀剣類を用いて、これは手段になっておって、もとは傷害でございますから、そういう刑法犯に銃砲刀剣類ということばを用いた場合には、ほんとうはこの法律自体の銃砲刀剣類の概念というものはできるはずではないかという意味で、私は法制審議会の初めには、この法律独自の銃砲刀剣類の解釈というものが存在しなければならぬということを前提といたしまして、それでは銃砲刀剣類等所持取締法の銃砲刀剣類とどういうところが違うであろうかということで、大体は一致すると思うけれども、場合によっては飛び出しナイフなどというものは入らないんじゃないだろうか、と同時に、銃砲刀剣類等所持取締法では十五センチメートルというところに寸法に制限があって、それ以上のものでなければ禁止の対象になりませんが、傷害罪を犯す日本刀というならば十四センチ半の日本刀でありましても、ここにいわゆる刀剣類の中に入るという解釈が出てくるかもしれぬのではないか、こういうような意味におきまして、そういうちょっとニュアンスのある意見を申したのでございます。ところが、いろいろ審議をしていただいております過程において、また内閣法制局などとも私どもはこまかい議論を戦わしてまいりました結果、現時点において二つの法律があって、その二つの法律が全く違った目的のもとに制定された法律ならばともかくも、片一方は所持禁止しているのは、やはり危険な凶器だから所持禁止しておる。その危険な凶器を使って傷害を犯した、こういう場合でありますので、二つの法律が銃砲、刀剣類という言葉を使っておれば、その概念、内容というものは同じに解釈するのが、これは解釈の常織ではあるまいかというふうに私も感ずるようになりまして、それで法務省としましても、その考え方に統一していこうじゃないかということで、法制審議会の中ごろから以後におきましては、いま私が申したような意見を統一解釈として出しております。国会におきましても終始その意見を申してきておるわけでございます。
#50
○畑委員 そうすると、結局法務当局の統一解釈としては、銃砲刀剣類のあの法律の規定と同じというような解釈、いままでのお話でもわかるように、一たん法律ができますと、いろいろな解釈が出てくる。それでわれわれとしては心配になるわけです。これは銃砲刀剣類取り締まりのあの法律にいう銃砲、刀剣類だ、こういうふうにはっきり書いてあれば別ですが、そうでないので、いまの竹内さんの考え方の推移でもわかるように、いろいろ解釈が出てくる。そこでわれわれはそのあいまいさを心配いたしておるわけでございます。しかし、これはそういうような統一見解だというのでありますから、それが一応国会での答弁ということになって議事録になりますから、そういうことで承知いたすわけであります。
 その次に一つ聞いておきたいのですが、これには傷害の未遂というものが登場していますね。傷害の未遂というのはいままでの刑法の体系からいたしましても、私たちは学校で教わったことがないので初めてのことですが、それというのは、御承知のように傷害というものは暴行の結果犯をも含むということになっており、傷害に着手して遂げないものはすなわち暴行ということで、そういうふうな類型がなかった。新しく類型を設けられたわけです。こういったものはなかなかそう簡単に発明したり何かされては困ると思うのですが、どうしてもこれは新しい類型をつくらなければならなかったわけですか。説明などを見ますと、殺人未遂と傷害との中間とかなんとか言っておった。銃砲、刀剣類を使ってやった場合の未遂を特別に類型を設けて処罰しなければならぬ、こう言っておりますが、その辺はどうなんですか。
#51
○竹内(壽)政府委員 刑法三十八条に罪を犯す意のない行為は罰せずという、犯意が必要だという総則の規定があるわけでございまして、傷害の意思を持って傷害をする場合、これが原則であるわけでございますが、二百八条との関係で、傷害の結果に至らない永のを暴行とするということになっておるものですから、未遂のかわりに二百八条という規定がある。したがって傷害の意思のない場合も、暴行の意思にとどまるものも、傷害結果が出れば二百四条でいくし、傷害の結果が出なければ二百八条でいくという、これは現行刑法の解釈としてそういうことになっておるわけでございまして、たてまえとしては、やはり犯意のある行為を前提としているわけであります。
 ところで、今度の銃砲、刀剣類を用いてする傷害について犯意のない場合を考え得るであろうか、もし未遂ということになりますと、故意犯であることは前提でございますが、故意犯でない銃砲、刀剣類を用いる傷害というものがあり得るであろうかということも、ちょっと議論をしてみるとむずかしい問題でございまして、考えられないじゃないかというのが私どもの結論でございます。
 それから既遂と未遂とを刑法は同じ悪性の評価をしているわけであります。ただ未遂の場合には減刑することができるということになっておるのででありますが、しかし、犯す意思でもってある行為に出て、それが結果が発生しない、未遂に終わったというときに、その行為を非常に軽いものにしてしまうということは、これは非常に現行の刑法の既遂と未遂との考え方に抵触することになると思うのであります。もしかりに、この一条ノ二の規定の第二項の未遂を置きませんと、それでは銃砲、刀剣を用いて傷害に着手したのであるけれども遂げなかったという未遂の場合にはどういう罪になるかというと、二百八条の罪になるか、さもなければ凶器を示してやった暴行でありますから、現行の暴力行為処罰法の一条一項の罪になるか、どっちかだということになりまして、これは既遂と未遂とを同じ評価をしていこうという刑法の考え方に非常に隔たりができてくるわけでございます。そういう点を考えまして、この規定は結果的加重犯は含まない、故意犯だけであるという意味を明らかにいたしまして、そうして未遂の規定も同時に置くという立法形式をとったわけでございます。
#52
○畑委員 そうしますと、この未遂の点は、実行の着手の時期はいつですか、具体的例で……。
#53
○竹内(壽)政府委員 銃砲を用いた場合を考えてみますと、単に照準を合わしただけではまだ実行の着手があったとは言えないのでありまして、傷害の故意を持って引き金を引くということまでいって初めて着手がある、こう見るべきだと思います。その結果、弾丸が命中しなくてもこれは未遂で罰せられるわけであります。それから刀剣類につきましては、刀剣類を示しただけではまだ「刀剣類ヲ用ヒテ」というのには入らないので、着手にはならないかと存じますが、切りつける、あるいは突くという動作をいたしますと、これは着手、そうして結果が発生しない場合は未遂、こういうことになろうと思います。
#54
○畑委員 そうすると、殺人の未遂と着手の時間は同じですね。
#55
○竹内(壽)政府委員 全くそのとおりでございます。
#56
○畑委員 それでは次に、警察庁に来てもらっておるのですけれども、暴力行為処罰法の改正の問題に関連をして、具体的な点について質問をいたしたい。
 暴力団の暴力行為を取り締まるというような名目で今度の改正案が提案されたわけでございます。ところで、政府のほうが本気になって一体暴力団の退治をやっているのかどうか。暴力団にもいろいろあって、範囲が広いと思います。われわれのほうの労働争議などに非常に暴力団が使われておる。それに対する検挙その他、そういったことが非常に手ぬるいと思われます。一方で暴力団に対して刑を加重しなければならぬ、こう言っていながら、そういったスト破り等の暴力団、会社側と結託して労働運動を妨害するというか、そういった暴力団の訴えが絶えない、これはどうもおかしいと思うのです。いまの法律では軽過ぎてだめだ、加重しなければならぬ、ならぬと言っていながら、実際そういった暴力団まで政府のほうでやってないじゃないかというのがわれわれの側に寄せられる声なんです。それは三井三池のあの争議の問題でも、御承知のように、非常に大きな暴力団の団体がスト破りをやって、暴行、脅迫、あらゆる暴力行為をやっておるわけです。久保さんという人は殺されている。そういった事態まで出ておる。その点一体政府のほうでは、こういう点をやる気があるのかどうか。まず暴力団のほうの刑を加重するのだということでこの法律の改正案を出すのですが、その前にまだやってない部分がたくさんあるのじゃないか。その点はどういうふうに考えられておるか。ひとつ法務大臣のほうからまず最初にその辺の意見を承って、それから警察庁の方に具体的な事件について聞きたいと思います。
#57
○中垣国務大臣 暴力団等の暴力行為に対しましては、その暴力行為がいかなる形で行なわれましても、またいかなる背景の中に行なわれましても、取り締まりに差をつけたりすることはないわけでありまして、厳正公平な態度から取り締まりをすべきものであろうと考えます。また現実にそのように行なわれておると信じております。
#58
○畑委員 ところが、行なわれていないのですよ。あちらこちらからそういう訴えが出てくる。これから申し上げます事件なども相当長い争議でございますけれども、暴力団が会社と結託してスト破りをやっている。正当な労働運動を妨害しておる。こういうことを警察が取り締まろうというような気がないのではないかというふうに考えられる。この点は私は今度の改正案に関連をして実はきわめて不安な点です。どんどん取り締まりをやって、しかもこれでも軽いというのでやるならば別であるけれども、それをさっぱりやらぬでおいて、見過ごしておいて、一方では暴力行為の処罰を強めよう、こういうことはどうしても私は納得できない。しかし、その点いつまで議論しておってもしかたがない。もうだいぶ時間もたっておりますから、簡単にお聞きしたい。
 それでは警察庁の三輪さんにお尋ねいたします。具体的な事件で、これはかつて参議院で稻葉君から質問をされたと思うのですが、日本ロールの争議に関連してでございます。この争議は相当長く続いておる。非常に独裁的な社長が暴力団を使ってスト破りをやり、組合員の入っている寮に暴力団を守衛として雇い入れたような形をとって押し込んで、活動家を追い出すというようなことをやっておる。ついこの間、裁判所の許可を得て占有保全の仮処分をしたというふうに聞いておるのであります。具体的に私の知り得た点を申すと相当長いのでありますけれども、時間がございませんから詳しくは聞きません。この点について警察庁のその辺の争議に関する暴力団についての調査、それからまたどんな取り締まりをしているかという点を最初にお聞きしたいと思います。
#59
○三輪政府委員 日本ロールの争議につきましては、おことばのようにすでに参議院でもお尋ねがございましたわけですが、いままでの経過をごくかいつまんで申しますと、十月の半ばに組合ができまして、十二月の年末手当につきましては一応妥結を見て一月初旬まで休戦状態でございましたが、その後にまた交渉が始まっております。二月の初めに一つの山があり、三月の半ばに一つの山があり、五月の二十日ごろに一つの山があり――山と言うとおかしゅうございますけれども、三回ほどトラブルが起こっております。そこで組合員は千二百人ほどの従業員のうち三百人ほどでいわゆる第一組合ができまして、翌日六百人ほどで第二組合ができたと聞いておりますが、できまして、昨年の年末手当の要求、賃上げの要求等にからみまして、会社内で組合がデモをやるばかりか、十二月の十六日には千葉県の市川にございまする社長の自宅に行って、家に入って副社長でございますか、むすこに当たるようでありますが、それにけがを与えたというようなことがあったり、当初そういうことがありましたので、臨時守衛ということで、多いときには五十人にも及んだようでございますが、ただいま聞いたところによりますと三十四名くらいと聞いておりますが、そのくらいを雇っております。これはいま個々に職員として採用したような形になっておるようでございますけれども、武井組という組に属していた者が大部分のようでございます。そこで先ほど申した山というトラブルの大要でございますけれども、一つはピケを張っております。それが車の出し入れを妨げる、そうすると臨時守衛が飛び出してきて、ピケ隊に突っかかってくるというようなことにおけるトラブルもございます。またお話がございましたように、寮に入っておりまして、その寮の中でのごたごたもあったようでございます。
 そこで、いままで警察がそれを取り締まっていないのではないかという御疑問が述べられたのでございますけれども、現在までに発生をいたしましたこの行為に伴います不法行為でございますが、私どもの承知する限り二十件ございまして、十八件検挙をいたしておるのでございます。このうち第一組合員によりますものを四件検挙いたしておりますけれども、自余のものは、臨時守衛によりますものが十件発生して十件検挙をし、それから双方によります乱闘のようなかっこうになりましたものが六件ございまして、そのうち四件の検挙を見ておるということで、二十件発生いたしましたうち、十八件の検挙をいたしております。これを人数別に見ますと、第一組合のほうで二十四名、臨時守衛側で二十七名でございますけれども、これを強制でやりましたか任意によってやりましたかという区別にいたしますと、組合員二十四名中、任意でやりましたものが二十二名に対しまして、臨時守衛のほうは現場における不法行為等が多いのでございますから、二十七名中十七名が任意で、八名は強制でやっておるのでございます。人数はいま申しましたようなことで、五十一名検挙いたしておりまして、これらをいずれも送致いたしておりますけれども、ただいままでにその処置を伺いますと、地検から起訴されたものは一件一名、略式命令で処分がありましたものが二件二名、少年ということで家裁に送りましたものが四件四名と聞いております。これはいずれも臨時守衛に関するものだけでございます。
 そこで警察側といたしましては、事態が起こりますその予防のために、機動隊を含めて最大二百人ほど出しておりましたが、現在では機動隊が十一名一個分隊、地元小松川署が同様十一名ということで、二十二名毎日張りつけておるのでございます。これはその間問題が起こらないようにということでございます。また起こりましたものにつきましては、捜査の上、いまのようにそれぞれ送致をいたしておるわけでございます。また寮につきましては、組合員が入っております寮に臨時守衛を入れたいというようなことがあり、それがもとでトラブルが起こっておるのでございまして、四月十六日に会社側と組合側と両方に対しまして、小松川署長から、そういうことによる不法行為が、お互いトラブルが起こりませんように、協定を結ばせておると聞いております。つまり一階、二階に分けて、それが一緒にならないようにいたしますとか、あるいは六月の八日、ごく最近でございますけれども、寮の一つに、現在組合員が入っておるところに、さらに臨時守衛を入れようという会社側の動きがあり、これがもとで争いが起こるというようなことがございまして、この当該の寮などは、特に賃貸をいたしておるというようなかっこうもございますので、非常に強い警告をいたしまして、それらを入れないように措置をいたしたということも聞いております。そういうことで、地元の署といたしましては、できる限り事態が早期に解決をいたしますように、いままで何回も双方に話し合いの機会等を求め、事実上のあっせんのようなかっこうもやったようでございますし、また会社側に対しまして、その臨時守衛が暴力行為を、ことに初期において相当ありましたので非常に強い警告を繰り返しやっておるのでございます。それから、先ほど申しましたように、形の上では臨時と申しましても、職員として個々に雇用しているというかっこうでございますので、労働省側ともいろいろお打ち合わせをいたしてみましたけれども、労働基準法と申しますか、そういう意味の違反もにわかに立たないということでもございますし、また具体的に起こりました暴力行為については容赦なく処分をいたしておるということでございますので、地元警察がこれについて手をつかねておるというような御疑問は当たらないかと考えるのでございます。
#60
○畑委員 知っていて知らぬふりをしておるという意味でもないけれども、しかし、そういった暴力団が目に余る行為をしておるのに、敏速な手段でそれを防遏しようとしない、こういう訴えが強いわけであります。それで私きょう来てもらったのですが、大体この武井組という組は、私は一種の暴力団と思うのですが、その辺は調査してありますか。
#61
○三輪政府委員 興行などに関係をいたしております団体と聞いております。これは団体として警備を請け負ったという形ではございませんで、そこに所属しておった者が、ここに個々に雇用されておると聞いております。なお、その武井組というものの責任者とこの社長とが、何か非常に幼少のときからの知り合いだということから頼んだように聞いております。
#62
○畑委員 私は、その辺の調査がきわめて不十分だと思うのです。若いときの友だちだとかということ自体が大体くさいと思うのです。武井組というのは、何か最近よく何とかプロダクション、何とかプロダクションといって、ずいぶんいろいろと興行ですか、それをプロダクションという名前でやっている、いわゆる暴力団が非常に多い、それの一つだと思います。これは何か刑務所をつとめた刑余者、これの更生事業をやっているのだ、こういうようなことを看板にしているというようなことも聞いておる。相当警察にも顔がきくのだというようなことも言っておるようであります。また一説には、某国会議員の関係の院外団だというようなこともうわさがあるわけでありますが、その辺はどうですか。いま私の聞いたようなことについては、調査しておりますか。
#63
○三輪政府委員 お話のように、TKプロダククション友の会というような形であるようでございます。これは戦前は工務店をやっておった人のようでございますけれども、戦後は、先ほど申しましたように、芸能人等の興行あっせんをいたしておるということでございます。先ほど申しましたように、この組が組としてやっているというよりは、個々の雇用というかっこうになって、個々の違法行為があります者を処分いたしておるわけでございますので、この組が、御指摘のようにいろいろな意味の活動をいたしているのかどうか、ほかの点につきましては、ここでお答えをする資料を持っておりませんし、適当でなかろうかと思います。
#64
○畑委員 そういう点が、私はまだきわめて認識不足だと思う。大体個人的に雇用されているのだ、こういうことは、会社側はそう言いましょう。そうでなくて暴力団を雇っている、まとめて金を渡しているのだというようなことは、聞いたら言いませんよ。やはりそういう点をもう少し詳しく調べて、暴力団の本質をえぐるというような態度、これが基本でなければならぬと私は思う。ただ武井組に元所属していた人がそこへ頼まれていって、個人の契約で守衛になっているのだというようなことでは、これはだれが調査したか知らぬけれども、子供の調査みたいなものであります。それじゃならぬと私は思う。そういう姿勢だから、私は、こういった労働争議を妨害するために使う暴力団の取り締まりができないのだと思う。暴力団の取り締まりを強化すると言いながら、一方においてそれをさっぱりやっていないということでは、一体何のためにこの法律を改正して強化するのか、こう言いたくなる。そこできょうは、この法律の改正が審議されるにあたりまして非常にふに落ちないから、その点を聞いたわけです。
 さらに、ついこの間、いま言った自動車で、こちらのピケ隊がいるのを知っていて乗り込んだ、そして重傷を負わせているというような話も聞いております。これもまだそのままで、その後の処置がはっきりわかっていないようでありますが、こういう点もひとつ敏速にやってもらいたい。これを機会に、その暴力団の本質がどういうものかという、そういう立場でもう少し内偵をして、毅然たる態度で臨んでもらいたいということを、あわせて要望しておきます。
 だいぶ時間が長くなりましたので、以上で私の質問を終わりたいと思います。
     ――――◇―――――
#65
○高橋委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案について参考人の出頭を求め、その意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#66
○高橋委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 なお、日時は来たる二十日とし、人数及び人選は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#67
○高橋委員長 御異議なしと認め、さようお取り計らいいたします。
 次会は来たる十八日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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