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1962/06/24 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第26号
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1962/06/24 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 法務委員会 第26号

#1
第043回国会 法務委員会 第26号
昭和三十八年六月二十四日(月曜日)
   午前十一時十二分開議
 出席委員
   委員長 高橋 英吉君
   理事 上村千一郎君 理事 唐澤 俊樹君
   理事 小島 徹三君 理事 田中伊三次君
   理事 林   博君 理事 坂本 泰良君
   理事 田中織之進君 理事 坪野 米男君
      稻葉  修君    岸本 義廣君
      千葉 三郎君    馬場 元治君
      早川  崇君    猪俣 浩三君
      山田 長司君    田中幾三郎君
      志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中垣 國男君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁警備局
        長)      三輪 良雄君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
 委員外の出席者
        専  門  員 櫻井 芳一君
    ―――――――――――――
六月二十四日
 委員井伊誠一君及び片山哲君辞任につき、その
 補欠として山田長司君及び田中幾三郎君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員山田長司君及び田中幾三郎君辞任につき、
 その補欠として井伊誠一君及び片山哲君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第五九号)
     ――――◇―――――
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし審査を進めます。
 質疑の申し出がありますのでこれを許します。坂本泰良君。
#3
○坂本委員 警察庁のほうがいま見えておりませんから、その前に、法務大臣と竹内刑事局長が見えましたから、先日資料をお願いしていたことについて書面でいただきましたから、その点について一、二お聞きしておきたいことがありますから、それをやっておると見えると思いますから……。
#4
○高橋委員長 近江絹絲の問題は法務行政のときにゆっくりやってもらっては……。
#5
○坂本委員 いま警察庁がこないから、その前に、書面をもらいましたから、一、二点ちょっとただして、なお……。
#6
○高橋委員長 議題外だから簡単に……。
#7
○坂本委員 先日お願いしたあれを書面で竹内局長からいただきましたから、その点一、二お尋ねしておきたいと思います。
 問題は、いわゆる近江絹絲紡績株式会社横領事件の告発の問題でありますが、告発人は境野清雄、被告発人は丹波秀伯、同じく西村貞蔵、告発人は近江絹絲紡績株式会社の株主であります。被告発人は近江絹絲紡績株式会社の取締役であります。告発の年月日は昭和三十七年十月五日、大阪地方検察庁で受理されまして、その告発の事実の要旨は、被告発人丹波秀伯は昭和三十二年六月二十九日近江絹絲紡績株式会社取締役となり、同年八月二十二日より同三十七年四月二十日まで同社代表取締役として同社の業務を統括していたもの、同西村貞蔵は同三十二年六月二十九日より同社取締役として同社の経理業務を担当していたものであるが、昭和三十二年六月二十九日ごろから昭和三十六年五月三十日ごろまでの間、多数回にわたり被告発人両名が共同して業務上保管中の同社資金中より合計一億二千七十万五千七百四十五円を自己の用途または同社の業務目的以外の用途に充てるためにほしいままに引き出して横領したものである。罪名及び罰条は、業務上横領、刑法第二百五十三条。
 これに対しての捜査経過の概要は、一、本件告発は昭和三十七年十月五日、大阪地方検察庁に提出された。二、大阪地方検察庁においては、同月二十四日より捜査を開始し、まず告発人及び参考人の取り調べを行ない、次いでこれに並行して本年二月より被告発人西村貞蔵、三月より同丹波秀伯の各取り調べを行なっておる。この間近江絹絲紡績株式会社ほか同社の関係会社より関係証拠物を領置しておる。三、これまでの取り調べの結果判明した同会社の使途不明金約一億二千万円の使途の解明を中心として引き続き捜査中である。
 政治献金の内訳は目下捜査中である。
 こういう御返事をいただいたわけですが、この被告発人の丹波秀伯という人は、こんなのは問題ではない、すでに片づいたと豪語しておる。こういうことを聞いておるわけですが、やはり先般の書面のように、関係会社より関係証拠物を領置して捜査中であって、まだ解決はしていない、こういうふうに考えられますが、そのとおりであるかどうか。
#8
○竹内(壽)政府委員 そのとおりでございまして、やや選挙の取り調べ等でおくれておりましたが、これからさらに鋭意捜査を続けるというふうに報告を聞いております。
#9
○坂本委員 元警視総監の江口某という人が、大阪地方検察庁に行って圧力をかけておるから捜査がひまがかかっておるのじゃないか、こういうふうな風評を聞いておりますが、そういう点は、この報告ではないようになっておりますが、そのとおりかどうか。
#10
○竹内(壽)政府委員 さような話は聞いたことはございませんから、単なる風評ではないかと思います。
#11
○坂本委員 そこで関係証拠物を領置してありますと、使途について、金を支出しておれば領収書があるはずであります。その領収書は領置してあると思いますが、聞くところによりますと、五千八百万円の政治献金をした丹波秀伯は、四、五十人政治家を持っておるから、そういうのでやっておるから心配はない、こういうことを言っておるそうです。そこでこの使途不明の一億二千万円の中には、もちろん政治献金の内訳は目下捜査中とありまするが、やはりこの一億二千万円の使途不明の中に五千八百万円というような多額の政治献金が行なわれておるかどうか、内容は別でありますが、その点はいかがでありますか。
#12
○竹内(壽)政府委員 私のほうから書面で差し上げましたように、一億二千万円の使途の解明が捜査の中心になっておるようでございまして、ある程度捜査が進んでおるやに伺っておりますけれども、文字どおり捜査中でございまして、もう少し秘密裏に捜査をさせていただきたいというのが現地の希望でございます。御了承願いたいと思います。
#13
○坂本委員 大体わかりました。そこで幸いにこの近江絹絲紡績株式会社ほか同社の関係会社、これは数社あると思いますが、それから関係証拠物を領置してありますから、もし政治献金をしたならば、これは政治資金規制法で届け出があるはずであります。そこで五千八百万円という政治献金が届け出してあれば、これはわれわれのほうでもわかるわけなんですが、判明するわけです。また、領収証があって届け出をしていないというようなものもあるかと想像されます。したがって、こういう点については目下捜査中でございますから、ぜひひとつ厳正に捜査をしていただきたいと思います。わずかの金額でなくて、五千八百万という大金でございますから、まあそれだけあるかどうかは、これはうわさですが、ぜひひとつ捜査をしていただいて、正式な政治献金もあるいはあるかとも思います。それは届け出があるはずでありますから、そういう点について、ひとつ至急に大阪地方検察庁のほうで捜査を進めていただきたい。そうでないと、元警視総監なんかが行って圧力をかけてそれが延びているという誤解をされても、また、検察庁の体面にも関すると思いますから、そういうふうにお願いをしておきます。
#14
○山田(長)委員 関連して……。
#15
○高橋委員長 議題外のことは、簡単にひとつ……。
#16
○山田(長)委員 いま御答弁があったことに関連して、私、伺いたいと思います。
 それは、捜査が長引いているというお話でございますが、告発したのは昨年六月の二十二日なんです。ちょうど一年の歳月を経過しております。その点、その間に選挙違反等があって延びたという話でありますけれども、どうも理解に苦しむ点は、選挙違反等の捜査では、そう長引いて日子を費やすはずがないと思います。その間の延びたいきさつですね、もう少し明確に御回答願います。
#17
○竹内(壽)政府委員 告発の出されましたのは、六月ではなくて、十月五日に提出されて受理をいたしております。同月の二十四日から捜査に着手しておりまするので、私どもの一般的事件の処理状況から見まして、必ずしも遷延しているとは思えないのでございますが、御承知のように、今回の地方選挙におきましては、統一地方選挙だけでなく、昨年秋ごろからいろいろな各地で行なわれました選挙につきましては、細心の注意を払って捜査を進めるように指示をいたしておりますので、そういう関係でおくれてきておるのだということでございます。処理状況等から見まして、これもある程度やむを得ないことではないかと考えておりまするが、先ほど申しましたように、選挙も一段落というような形勢になってまいりましたので、今後は鋭意との問題の解決に力を注いでもらうように連絡いたしておる次第でございます。
#18
○山田(長)委員 もう一点だけ伺っておきます。告発月日の相違の点については了解しました。それから地方選挙等によって延びたということも了解しました。もう一点伺っておきたいことは、それではいつごろ着手して、これが捜査を開始されるのか、もう一点伺っておきます。
#19
○竹内(壽)政府委員 捜査に着手しましたのは昨年の十月二十四日からでございます。ここに書きましたように、基本的な取り調べを進めてまいりまして、本年二月から被告発人の調べに入っておるようでございますので、今後はこの事件の核心に触れるような捜査になってくるのでございまして、いつまでに終わるであろうといったような見通しは、ちょっと立ちにくいのでございますが、熱心に調べをしていただくということにおいては、全く現地もそのつもりでおりますので、御了承願います。
#20
○山田(長)委員 使途不明の金が一億二千万あるということだけは明確になっておるようにいまのお答えでなったわけですが、この一億二千万の中に、丹波氏の言われているところによりますと、いま坂本委員の御質問にありましたように、これが政治献金をしてあるので、この捜査はこれで打ち切りなんだということを公の席上で言っている事実があるわけなんです。そうなりました以上、遷延されておりますということは、何と考えましても了解に苦しむ点なのでありまして、この点が当局でお取り調べをされるに遅延されている原因であるとするならば、これはゆゆしい問題だと私は思うのです。金額まで、使途不明の金が明らかにされてきております以上、もっと速度を早めて捜査をしていただきたいことを要望いたします。どうぞひとつ……。
#21
○竹内(壽)政府委員 御趣旨の存しますことはさらに現地のほうへお伝えいたしまして、促進方をはかるように取り計らいたいと思います。御了承願います。
#22
○坂本委員 一番大事なことで、法務大臣より警察庁のほうに聞いておいてもらわなければならぬ点ですが、委員長のなにがありますから、なお見えてからまた足らぬことを聞くことにいたしまして、質問をいたしたいと思います。
 まず第一に質問いたしたいのは、法務大臣に伺いますが、法務大臣は、本法は全く暴力取り締まりに関する法律であって、労働運動、社会運動には関係のないものであるからという純真なお考えのようであります。そこで私は最初に御質疑申し上げたいのは、現行暴力法が大正十五年四月十日成立いたしたのでありますが、そのときの政治情勢と現在の政治情勢が、もちろん旧憲法時代と新憲法時代と変わってはおりまするが、この暴力法に対する労働争議あるいは社会問題、大衆運動等に対する情勢については、非常に同じじゃないか、こういうふうにも考えられるわけであります。そこでこのような、いわゆる法律ができるときはどういう情勢にあったかというやはり日本の現代史を振り返りまして、この前後の時期を見定めるということが最も重要ではないか、かように考えるわけであります。
 大正十四年に普通選挙法が通過をいたしまして、この時期は旧憲法下でありまして、非常な弾圧を受けておる中ではありましたが、小作争議、労働運動が急激に盛り上がった時代であります。普通選挙法は、これは多年の国民の要望でありまして、これがようやく大正十四年に幾多の犠牲、長年の要望によって達成されたわけであります。したがって、当時はわれわれはまだ青年でありましたが、当時の状態は、いまから考えるとおかしいくらいに政府の権力者が左翼革命を非常におそれまして、そうして小作争議、労働争議がともに社会革命につながるものではないか、こういう点を非常に政府権力者がおそれていたのであります。したがって、普通選挙法が通過いたしましたから、そのかわりに暴力法が出たとも言える、これはまたこれから申し上げますが、そういうような情勢にあったわけであります。当時は、御存じのように治安警察法がございまして、その十七条によって、同盟罷業を遂行するため労務者として労務を停廃せしめることを目的として他人を誘惑もしくは扇動した者は一月以上六月以下の重禁錮に処する――禁錮はあとで懲役に変わったわけでありますが、その法律があったわけでございます。これに対しては、こんな法律はないというので非常な廃止運動が展開されまして、これは大正十五年に廃止になったわけであります。いわゆる暴力法が成立した年に廃止になったわけであります。当時の日本政府は、国際的にはソ連邦との国交回復が迫られ、国内問題としては、先ほど来申しましたように、治安対策として小作争議、労働争議その他民主的な戦いに対する非常な弾圧をやってまいったわけであります。政府は、国民の要求に基づいて普選法をのむ代償として、大正十四年に治安維持法――いわゆるこれが日本を敗戦に導いた悪法であるとわれわれは国民すべて了解していると思いますが、この治安維持法と現暴力法を出したわけであります。暴力法というのは、大正十五年当時、世間を騒がせました一連の暴力団の犯罪が非常に多かった。これは現在の情勢と同じような情勢であったわけであります。したがって現暴力法は、この一連の暴力団犯罪の取り締まりを口実としてできたわけであります。したがいまして、治安維持法と暴力法が治安警察法のかわりに出たと言ってもいいじゃないか、こういうふうに考えられるわけであります。
 そこでこの暴力法の審議にあたりましては、やはり今度の暴力法の改正と同じように、しばしば大臣は第五十一帝国議会におきまして、との法律は労働運動、小作運動、水平運動などを取り締まる目的は毛頭ないということを繰り返して言明しておられるわけであります。ところが、委員会の審議を見ますと、政府当局は、労働運動、小作争議にもこれは適用する、こうはっきり言い切っておるわけであります。大臣の言うことと政府委員の言うこととは、しさいに検討すると違っていたわけであります。しかし、当時の帝国議会下における議員は、そこまではっきり認識しての法案の審議はやっていなかったんじゃないかこれは先輩に対してたいへん失礼でありますが、そういうふうに想像されるわけであります。そこで、今度の暴力法の改正にあたりましては、法務大臣、竹内局長は、もっぱら暴力団と言われて、労働運動や社会運動等には適用しない、そういうふうに申しておられますが、この第五十一帝国議会の前例を見ますると現暴力法が、いろいろあとで質疑をいたしますように、今度二ヵ条みえたわけでありますが、しかもそれが、法定刑は非常な厳罰になっておるわけであります。そういうことを考えますと、大臣や局長がこの審議にあたって言われましてもはたしてその保障ができるかどうかということについて非常に疑問を持つわけであります。先般畑委員も申しましたように、法律ができますと、やはりその法律の構成要件に基づいて法は適用されますから、その成立のときの点は、多少は考慮されましょうが、やはり法は、できれば一人歩きをするわけでありますから、そういう点から考えますると、この現暴力法のその後の適用の実態から見て、その保障について非常な疑問があるわけであります。さらに一言いたしますと、大正十五年の四月十日に成立いたしました現暴力法は、その成立の直後から治安警察法にかわりまして、詳しく申しますと、治安警察法第十七条にかわりまして、小作争議、労働争議等の弾圧に使われておるというのは事実であります。
 そこで、今回われわれ政治家が本改正について考えますことは、暴力法が成立した当時の全体的な政治情勢や成立の過程を見まして、今回も暴力団取り締まりという名目で改正案が出るということは、かつて日の目を見なかった政防法、警職法が形を変えてきたようなものである、これは在野の法律家はすべてこういうことを申しておるわけであります。われわれはこの法案の審議にあたりまして、やはり古きをたずね、新しきを見て善処しなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。大臣は、日本の現代史を振り返ってこの立案に当たられたかどうか、法務当局は、現暴力法をよく検討された上で改正に踏み切られたかどうか、この点についての御所見を承りたいと思う。
#23
○中垣国務大臣 お答えいたします。この法律が制定されました当時の大正十五年のころ、やはり暴力行為が非常に発生したということは私も聞いております。その当時の日本といたしましては、御意見のように、労働組合運動であるとか、大衆運動であるとかいうものには、何らこれを保護する法的規定もなかったわけでありまして、当時の官憲と申しますか、政府におきましては、それらの運動に理解を示さなかったということは、私もそうであったろうと思います。しかしながら、このたび一部改正をします理由といいますのは、全くそういうこととは関係がないのでありまして、特に政防法であるとか警職法であるとかいう問題等とは、何ら関係ない議論をいたしまして、当時の新聞等にもたびたび指摘されており、国民の要望がありました、暴力に対する科刑というものが軽過ぎる、これをもう少し引き上げるというようなことでなければ、国民としては承知できないという御意見が圧倒的であったことも御承知のとおりであります。そういう点等を考慮に入れまして、純粋の法理論的な立場に立って刑事局でこれを検討いたしました結果、大体の成案ができましたので、法制審議会の議を経まして本委員会に御審議をいただいておるわけであります。
 たびたび私繰り返して申し上げたのでありますが、現時における日本の社会運動や労働組合運動等に対しまして不法な干渉をするなどということができるものでないことは、これに明らかであります。特にこの銃砲、刀剣類を用いる傷害事件などというものは、どんなふうに拡大して考えてみましても、これが労働組合運動や大衆運動に適用されるという根拠も足場もひっかかりも何もない、こういうふうに私は信じております。それからなお脅迫、暴行等に対しましても、これはここに常習者という厳重な規定を設けておるのでありまして、単に組合運動もしくは大衆運動等におきまして、そこに突発的な問題が起きたとしますと、そういうときにこれを適用しようとするのではないのでありまして、常習癖と申しますか、常習性と申しますか、そういうようなものを具体的にここに明らかにしておる。こういう点からお考えをいただきましても、この法律が成立後に、いかにこれを悪用しようとしても、そういう組合運動や社会、大衆運動等にこれが適用されることは断じてない、私はかように考えております。
 以上のとおりでございます。
#24
○坂本委員 第一条ノ二と第一条ノ三、とれについては大臣は全然労働運動その他には関係がない、一に暴力だということを言っておられる。その点についての解明はあとでいたすわけでありますが、大正十五年の現暴力法成立当時の大臣は、やはりいま大臣が申されたと同じようなことで小作争議、労働運動あるいは水平運動等には一切適用しない、こう言明されておりまするが、それが実際は適用になってきているわけなんです。そこで従来の第一条の一項をそのままにして、そして二ヵ条を、銃砲刀剣と常習とをあわせ持ってきたというところに、あとで法的の問題については質疑をいたしたいと思いますが、疑問があるわけであります。ですから、しさいに調べますと、先ほど申しましたように、大正十五年の五十一帝国議会では、大臣はそう言われるけれども、委員会制度というのはいまとは少し変わっていたようです。その記録を見ますと、政府委員のほうでは、それはそういう適用をする場合もある、こういうようなことも見受けられる。それでその点について、審議に当たる議員そのものが、たいへん失礼ですけれども、ただ大臣の言われることを信頼して、政府委員の言われることまで気がつかなかったんじゃないかというふうにも考えられるわけですが、そういうようなことがあって実際は適用されておる。ことにきのうの吹田事件におきましても騒乱罪は無罪になりましたが、きょう新聞は忘れましたが、十五名のうちの十三名はやはりこの暴力法第一条が適用されて有罪になった。それ以外の者は、騒乱罪でない、威力業務妨害罪にならないということで大多数の被告は無罪になっておりますが、残されたこの十五名の中の十三名は、あの朝鮮戦争反対のデモンストレーションに対して、やはり暴力行為を適用しまして、そうして有罪にしておるわけです。そのほかにもあとでまたいろいろと重要な例をあげて質疑をしたいと思いますが、そういうような点から考えますと、やはり当時の世間に起こった暴力団を取り締まるのだという名目でこの暴力法ができて、そうしてその暴力法というものは暴力団にはあまり適用にならずに、小作争議、労働運動の弾圧に使われて、新憲法になってからもこの法律が廃止にならずに、そうして労働運動あるいは社会運動、政防法反対、破防法反対、あるいは日米安保条約反対の闘争に対しては多数適用されておるわけであります。それがちょうどいまの情勢と同じでありますから、いまの事態も浅沼氏があの立ち会い演説のところで暴力団に刺され、嶋中事件とかいろいろな事件が起きて、さらに先般の選挙でも暴力が使われて、これはあとでも質疑したいと思いますが、東知事選挙対策本部は小暴力にたくさんの金を出して、そうして選挙妨害をしておる。選挙運動にまで暴力がきておる。ところが、その暴力はちっとも取り締まられておらない。その暴力は一人も犯罪者が出ない。しかしながら、ちょっとしたことでも労働運動に対しては暴力法を適用する、こういうことでありますから、大正十五年の社会情勢と現在の社会情勢とはよく似ておるから、いかに労働運動、社会運動にこの法律を適用しないと言っても、やはりそれをする目的でやっておるのじゃないかという疑いが大いにあるわけです。ですから当時の政治情勢、社会情勢と現在の政治情勢、社会情勢を見合わせて、同じような情勢がきておるから、この点について改正すると、これはやはり社会運動、労働運動に適用されるためにこの法が改正されるのじゃないか。日本史をひもとき現在の政治情勢と大正十五年の当時の政治情勢とを考え合わせると、ぴたりそこにくるものですから、こういうような情勢があるわけだが、法務大臣はいかなる見解を持っておられるか、これをお聞きしたわけでありますが、さらにお聞きしておきたいと思います。
#25
○中垣国務大臣 この暴力行為等処罰に関する法律の改正されない面において労働組合運動あるいは大衆運動等についての暴力行為の適用があるではないかということでありますが、これは御承知のとおりに、その暴力に関しましては、第一条の規定は、一切の暴力に対する事犯を対象としたものであると考えております。このたびの改正の分は、先ほども申し上げましたように、適用するしないという問題を通り越しまして、そういう適用のしようがないというふうに私は考えております。適用をしたくても、そういうことがしようがない。と申しますのは、たとえばこの第一条ノ二の「銃砲又ハ刀剣類」のこれでありますが、そういう組合運動や大衆運動に銃砲や刀剣類等が用いられて人が殺傷されるというようなことがあり得るわけはございませんし、あとの二つの改正個所につきましては、これは暴力、脅迫等の常習ということでございまして、こういうことも私は大衆運動や労働組合運動でそういう常習的と申しますか、常習性のある犯罪がありようがない、私はそういうふうに考えておるのでありまして、特にそういう大正十四、五年当時のことを想像して、この際これをまた改正しておるのじゃないかということでありますが、さようなことは全然ないのでありまして、もっと純粋な意味におきまして国民生活と申しますか、市民生活を脅かしておる悪質の暴力については、その科刑をばもう少し引き上げることによって少しでも法の効果をあげていこう、こういう考え方でございまして、私もその大正十四、五年当時のことは詳しく調査はいたしておりませんけれども、戦前の日本と戦後の日本とでは根本的に組合運動や大衆運動に対する理解のしかたや考え方も変わっておりますし、また権利義務等に関する法の考え方も変わっておるのでありますから、そういう点は坂本先生の御心配のようなことは全然ないと私は信じております。おそらくこのことは、政府委員といえども私の考えと違っておるはずはないと思います。
#26
○坂本委員 法務大臣もだいぶ勉強されたようですが、この問題はまたあとでただすことがあろうと思います。竹内刑事局長にお尋ねしたいのですが、大正十五年当時のこの暴力法の制定当時は、政府当局のほうでは、これはやはり適用する場合もある、適用するんだ、こういうふうなことが見受けられるわけです。現在は局長は、いままでの当委員会における質問を聞きますと、全然そっちには適用しない、こういうふうに言っておられるが、はたしてそうかどうか。
 その御答弁を願う前にもう一つ申し上げておきたいのは、この法律は第一条ノ二と第一条ノ三というので、暴力行為のこのいわゆる法の改正だというふうに見受けられて、時限立法的な法律に対する改正だ、こういうふうにも思われて非常に誤解を招くようなんですが、この暴力法自体が、大正十五年当時は、当時の法務大臣の答弁そのままを受け取ると、暴力が多いからそれを取り締まるためにつくる、それから暴力がなくなればこれは廃止するんだというふうに時限立法的に見えるわけです。ところが大正十五年からずっと、日本があの敗戦をして非常に国体も変わった現在においてもやはりこれが残っていて、そして戦前よりも戦後のほうがかえってその適用率が多くて猛威をふるっておる。こういうふうに考えまするときに、さらにまた法の本質からいたしまして、これは刑法の一部改正だ、こういうふうに考えられるわけです。そうすると、刑法の改正といいますると、長年の間法制審議会においては審議が重ねられておって、ようやく昨年その草案が発表されただけであるし、さらにまた数年かかる。こういうような状態であるし、また刑法の改正に対しては慎重な態度をとって、諸外国でも刑法の改正は企画されておりますから、諸外国の刑法並びにその仮案を参考にしまして、そうしてやっておるわけなのです。ですから、いまあらためて一条ノ二、三の二ヵ条の根本的な刑法の改正になるような問題をここに持ってきてやる必要はない。もう少し慎重に考えて、やはり常習の問題にしても、このいかがわしい銃砲、刀剣類というような、こういう広がればどこまででも広げられて適用できるし、また純粋にやれば、その適用を厳格にすれば、現在の第一条の二項みたようで適用せぬでもいいというようなことにも考えられますけれども、そうでなくて、やはりこれは刑法の改正であり、それを時限立法的の方法で持ってくるところに、いわゆる公安事件等にとれを悪用する、弾圧法になるというふうに非常に懸念をされる。そういう点がありますから、政府としての、また事務当局としての労働運動あるいは社会運動にこれを適用せないという点についてのはっきりした御答弁を願っておきたいと思います。
#27
○竹内(壽)政府委員 大正十五年当時の社会情勢につきましては、私どもの理解しておるところによりますと、やはり今日と同じように暴力団その他暴力行為が社会に相当びまんしておったようでございまして、この暴力を取り締まりしていくことが社会生活に平穏を保っていく上に必要である。ところが現行刑法のもとにおいては、たとえば暴力のごときものは親告罪になっておりまして、すぐ取り締まりをしようと思っても、被害者が告訴する意思がなければ取り締まることもできないといったようないろいろな事情があったようでございます。そういう必要からこの法律ができたように私は承知しております。当時の政府がこの法律はそういう目的の法律であるということを申しておるのであります。それがひいて当時ほうはいとして起こってまいりました小作争議とか、労働争議等にこの法律が適用されるというようなことはねらっておるものではないということを申しておるのでございます。当時のことは、私どもも本法案を立案します過程において歴史的な事情等も十分検討をさしていただきました。今回もまたねらっておりますところのものは、暴力の中でもいわゆる暴力団といわれる部類の人たちによって行なわれる暴力、こういうものを取り締まりの対象として考えたわけでございます。それには刑法の規定に新たに規定を加えるよりも、そういう目的でつくった暴力行為の処罰に関する法律を手直ししていくのが一番法律の目的に合うというのが第一点でございます。
 それからまた当時と今日とを比較してみまして、なるほどねらいは当時暴力行為でありましたが、小作争議等にも適用を見、今日に至るまでとの法律がそのような運動に適用されておるととは事実でございますが、その適用の実態をよく調査してみますと、先般も申し上げましたように、一条一項が適用されておるのでありまして、一条二項の常習暴力につきまして適用を見た実例は過去において一件もございません。さらにまた大衆運動、労働運動等におきまして、いわゆる銃砲、刀剣類を用いての傷害というようなものも、これまた一件もございません。それに反して暴力団のほうは、前科者の調べをごらんに入れましたように、しばしば前科八犯なんというのもあるくらいでございまして、非常に常習的にこの種の暴力行為を行なっておるという実態でありますし、さらにまた暴力団同士の出入り関係を見ますと、しばしば空気銃が出たり日本刀が出たりピストルが出たりということで、この銃砲、刀剣類を用いての傷害事件が随所に起こっておるわけであります。そういう実態をあわせて考えますと、われわれが口先で適用するとかせぬとか、あるいは適用はあり得ないというような立法の趣旨を幾ら弁明をいたしましても、法律自体においてそういうことになっていませんと、いろいろ御心配の向きもあろうというふうに考えまして、一条一項には手を触れず、一条の別条を立てまして、銃砲、刀剣類を用いての傷害を一条として独立の条文に書き、さらにまた独立の条文として常習傷害等の暴力行為を規定する、こういったような立法上の配慮をいたしたわけでございます。政府はねらっていないということを申しておるので、適用するとかせぬとかいうことをわれわれが申し上げる筋合いでないことは、坂本委員もよく御承知だと思うのであります。(発言する者あり)法律の適用をするかせぬかということは、最終的には最高裁判所がきめることなんでありまして、そういうととをおっしゃっていただきましては、私ども法律家として困るわけであります。私どもは、そういうねらいを持った法律でもなく、そのねらいがないということを、立法技術の上でも条文の上でもこれを明らかにしていくということが、私どもの最善の努力でございます。私はさように考えて、この法律の立案に従事いたしたわけでございます。
#28
○坂本委員 警察庁来ておりますね。――私、警察庁を要望するのは、大体現行法の暴力法もそうですが、またかりにこの法律が出たといたしますと、銃砲、刀剣類の拡張解釈、あるいは常習、非常習の解釈は、これは裁判になってずっと上がってきたものは、これは裁判で弁護人もつくし、被告人の要望もありますから、いろいろと問題は解明できると思いますが、それでもやはり実際公安事件としては、警察官が取り締まって、そうして、これは常習のあれだといって引っぱっていくのですよ。これは銃砲、刀剣類のうちに入るのだというので巡査が引っぱっていくのです。そうして、われわれが警視庁に行って、釈放しろ、そんなばかなことはないじゃないかと言っても、面会もさせない。現在は、公安事件については、弁護人として憲法上許されておるから、まず取り調べる前に弁護人が行ったら、弁護人の届けをとって弁護届けをしなければならぬ。それを拒否して、そうして、あなたはだれの依頼でこの弁護人になるか、本人は何とも言っていないでしょう、本人の連絡があるのですか、こう言うわけです。だから、家族の人がいると、家族の人と一緒に行って、家族からも弁護の依頼ができるから、その依頼を受ける。しかし本人が頼まぬときにはどうしますと、下っぱの警視庁の巡査がそういうことを言うのですよ。でありますから、この法律ができて、これはあとからよくただしたいと思っておりますが、法務大臣とか竹内局長みたいな方ならいいですけれども、一巡査がこの法律の適用に入ってくる。そして労働運動でもストライキでもやっておる場合に、この法律の適用をするのだ、この法律にひっかかるのだといって、そういう委員長とか執行委員とかを引っぱっていく。そうすると、ともかく憲法上は労使双方対等の立場において、そうして不法にも使用者が聞かなかった場合はストライキ権を与えておる。そのストライキに対して巡査がやるのですよ。その親玉は警視庁でも課長です。課長にも面会しようといってもいない。その上の人はどこに行っておるかわかりゃしない。夕方引っぱっていくと何もできない。ですから、この法律の悪用は巡査にあるわけです。これは現行暴力法でも同じであるわけなんです。ですから、裁判になれば、その法律の構成要件がどうだということでやりますけれども、その大多数は、またこの法律を悪用するのは、現行法も悪用されておりますが、それは資本家に味方して、そうして労働者の団結による正しい労働運動、与えられたストライキを押えつけ、弾圧して、そうしてその効果をなくならしめるととろにある。そして、そのうちの数名が裁判にかかるときは、もうすでに労働運動は終わってしまって、労働者は全敗北をいたしておる。これはあとでも申し上げたいと思いますが、三井三池のあの事件がどうです。私は三ヵ月行っておりました。巡査が引っぱるじゃないですか。そうしてそれでもいま数百名の人が福岡の地方裁判所、熊本の地方裁判所、荒尾の簡易裁判所あるいは大牟田の簡易裁判所で裁判を受けておる。乱用するのは警察です。だから警察当局にもぜひ早く来てもらわなければならぬ。現行法が大正十五年に施行された当時を考え直して、この現情勢にいかに処すべきかということをわれわれは考えなければならぬ。そいう点で私は要望しておったわけです。
 やはりいま竹内局長の御答弁を聞きますと、目的はない、目的は純真でしょう。しかしながら、適用しないということははっきり言えないのですね。その適用を乱用されるからわれわれはおそれるわけです。一条を残しておいて、二項の常習、これを一条ノ三に持ってきて、一条ノ二は銃砲、刀剣類だと言っても、この二ヵ条がくせ者なんですよ。竹内局長は検事長とか検事総長になられて栄進されていくでしょうが、できた法律は働く大衆の生活の問題にひっかかってくる重要な法律であるわけなんです。だから、目的とはしていないけれども、適用はしないとも言っていない。目的はそうであっても、これがどんどん悪用されていったのでは国民はたまったものではない。ことに労働運動や、今後日韓会談あるいはいろいろな外交問題が出る場合に、やはり国民はあげて政府の施策に対して反対をしなければならぬものなのです。また、なるような情勢がいろいろ出てきておる。こういうやさきにこのような法律をつくる、改正をする、そうして法定刑を重くするというところに、私は非常な心配をしておるわけです。ですから目的とはしていないけれども、適用はしないということは約束できない、その点そうでしょうね。そうすると、その裏には、この法律ができれば、また当時の社会情勢あるいは政府の方針によって、警察がどんどんこの法律を悪用して、そして検挙もするし、懲役にもやる、監獄にもぶち込むことができる、こういうふうに予想されますが、その点いかがですか。
#29
○竹内(壽)政府委員 適用をする機関は裁判所でございますので、私は政府委員として、そういうことが不可能たことでありますから申し上げたのでありますが、この提案の趣旨に明らかにしておりますように、このわれわれの解釈は、やはり一つの法解釈の有力な法源になるわけであります。したがって、私どもは、この法律を運用します場合には、この説明を申し上げております趣旨に従ってこの法律を運用すべきことを、これは命ずることはできる。乱用にわたらないようにこの法律の趣旨に従って運用してほしいということは、この法律成立の暁におきましては、私どもは正式に通達を発しまして明らかにしてまいりたいと思っております。警察御当局におきましても、第一線の警察官の法運用の仕方というものにつきましては、それぞれ所要の通達を発せられることと思いますが、私どもといたしましても、検察当局に対しましてそういう趣旨の通達を発することは当然でございます。しかし、それと、法律を適用するかせぬかということを、何も適用する権限のない私にお求めになりましても、それは不可能なことでございますので、そういう意味で私はお答えができぬ趣旨を申し上げたわけでございますが、解釈につきましては、これは有力な法源でございますから、この趣旨に従いました運用をしてもらうように通達を発して誤りなきを期してまいりたいというふうに考えております。
#30
○坂本委員 警察庁のほうにもお聞きしたいのですが、もちろん、提案理由とか、こういうのを見ますと、暴力団だけのことしか書いてない。しかしながら、現行暴力法の大正十五年の成立以来の経過を見ましても、やはり第一線におる巡査がどんどん引っぱってやっておる。ですから、むしろ問題は、裁判所よりも警察のほうが問題なんです。先ほどもちょっと申しましたように、労働争議の場合に、その幹部をこれにひっかかるとして引っぱっていく。そういうことを現在までやっておるのです。三池の事件でも、熊本から行っていた警部が、労働組合の群集に対して、かかれと言って、こん棒で数百名の負傷者を出した。それを私たちは熊本地方検察庁に告訴しましたが、争議が終わって二年後に不起訴にしてしまった。かかれと言ってやったのをこの目で見ているのですよ。しかし、力の関係でああした弾圧となりまして、そして組合が負ければ、やった警察官はもうどこかに栄転して、感謝状をもらっている。ところが組合活動家なんというのは、自分がけつまずいて手をすりむいたかどうかわからない、それでも暴力行為、傷害という罪名で――私ここへ一ぱい例を持ってきておりますから、あとでも触れようと思うのですが、一審の判決では懲役六ヵ月、支部長なんかしている者は懲役八ヵ月で執行猶予もついておりません。そういうふうにしてどんどん引っぱっていく。目的は引っぱっていって、あとは不起訴になろうと、有罪になろうと、無罪になろうとかまわない。その当時の労働争議のその勘どころをこの法律を使って逮捕して、そうして留守にすれば勢力は百分の一になります。そうして、いまは独占資本ですから、資本家側が勝利を占めて、あとは弁護人なんかはほんとうの犠牲で、そういうたくさんの中から訴追を受けた人に対しては裁判をやっておる。最初は多数の傍聴人も来ますけれども、二年もかかって、いよいよ判決の言い渡しというときには被告と弁護人だけです。傍聴人なんかはもう来ません。忘れられてしまう。犠牲は労働者です。真剣にわれわれの労働者の生活権擁護のために、不法な搾取を打倒するためにストライキをやるのが、この法律があるがゆえに巡査がこれを乱用する、一部の幹部の指揮によってやるということで悲惨な状態におちいる。だから弾圧法だと言われている。ですから、竹内局長からそれが裁判になった場合の適用についてはどうこうということがあったのですけれども、大体こういう法律をつくるなら暴力団だけの法律をつくれ、暴力団には適用しなくて、この間の東京都知事の選挙のときに暴力をふるった暴力団には適用しないで平気でおる。当選した東君は、多少批判があっても、オリンピックの知事だなんて――いいですか。だからこの常習とか、刀剣類とか、第一条の適用の点から、またその警察官のやり方の点から見まして、とんでもない第一条ノ二、第一条ノ三ではないかとわれわれは思うわけです。第一条は廃止しなければならぬとも思っている。それにこういう法定刑のむごい特別犯罪をつくって、そうしてその弾圧に使おうとしているという心配が大多数の人にあると思う。労働者が労働運動を弾圧される。しかし、日本の平和と独立を獲得するためには時の政治権力に反抗して社会運動を起こして、真に日本国民のための戦いを政府権力に向かってやらなければならぬ場合がある。そういう場合に、持ってこいの事件である日韓問題とか、寄港問題――佐世保なんかにもきのう私は行けなかったですが、そういう問題を考えると、直ちにこれを持ってくるというような心配がここにあるわけです。そういうようなときに、はたしてこういうのを乱用して使わない保障ができるかどうか承っておきたい。
#31
○三輪政府委員 ただいまのお尋ね、幾つにも分かれておりますけれども、まず第一に、裁判になればいろいろ判断が十分なされるけれども、第一線の警察官がそれを適用するじゃないかというおことばでございますけれども、幾多引例をなさいました、その後裁判になって判決を受けて苦しんでいるというようなおことばは、これは実は検察官が公訴提起をし、裁判の結果そうなったわけでございまして、これはむしろ警察官がやるべきでないものをやったということにならなかったことになると思うのでございます。
 それからまた、今度の法律の改正ということに限って申しますならば、第一線の警察官は直ちにこの改正法を適用するというようなおことばでございますけれども、第一線の警察官は、その現場におきまして暴行が行なわれ、傷害が行なわれ、あるいは脅迫が行なわれ、器物が毀棄されるという現実の行為が行なわれるのを見まして検挙をいたすわけでございます。これに御心配のように銃砲なりあるいは常習なりという判断を加えて公訴提起いたしますのは、むしろ警察といたしましても幹部の判断ないし、また公訴を提起される検察官の判断になるわけでございます。ただ、おことばの中に幾つかございましたように、第一線の警察官でしばしば行き過ぎがあるではないかというような御注意もあったかと思いますが、個々のそういうケースにつきましては、その絶無を期するように従来とも教養いたしておりますし、またこの法律ができます暁には、刑事局長もお答えになりましたように、警察部内といたしましても、この立法の趣旨にかんがみて、いやしくも乱用されたのではないかと疑われるようなことが出ませんように、その適用を適正に行なうように通達をいたしたい、教養をいたしたい、かように考えておるのであります。
#32
○坂本委員 まだいろいろありますが、この程度にしておかぬと先に進みませんし、またほかの委員の方々も、いまの重大問題についてはいろいろと質疑もあると思います。私は少し先に進んでから、またあとでもさらに質疑したい点もあるかと思いますから、先に進みます。
 竹内局長は、現暴力法第一条の一項と今度加えました一条ノ二、三については全然別個である。こういうことを言われるが、われわれは別個ではない、今度は第一条を基盤に置いて、第一条ノ二、三が悪用される、こういうふうに考えておるわけであります。その点についてはあとで質疑いたしますが、まず現暴力法の適用の実態を見ると、第一条は一項と二項になっておりますが、この現行法の第一条の二項の「常習トシテ前項二掲クル刑法各条ノ罪ヲ犯シタル者ノ罰亦前項二同シ」これはちっとも適用されてないじゃないか、常習といっても乱用されていないということを竹内局長は先ほどこれを根拠にして言われたわけですが、常習として前項に掲げたのが罪が重ければ従来でもこれを適用してきたと思うのです。しかし、前項にまた同じだから、常習であってもなくても第一項が適用になる。なお、第二項を持ってきて常習だといって、犯罪構成要件に常習を持ってきてやる必要もないから、この第二項はいままでちっとも適用しなかったというのは、警察にしても検察庁にしても同じだと思います。いままでほとんど使われなかったというのは、第一条の一項でやりますから当然のことなんです。何も常習ということを立証してやる必要はなかった。ととろが、今度の第一条ノ三の常習というのは別個の犯罪構成要件になって、そうして重く罰せられておる。でありますから、それも一つでありますが、やはり第一条が基盤になって、第一条ノ二、三が乱用され、弾圧法に使われるという非常な懸念をわれわれは持っておるわけであります。
 したがって、ここでまず第一に聞いておきたいのは、第一条を見ますと、団体または多衆の威力により数人共同して暴行、脅迫、器物毀棄を犯した者、これは三年以下の懲役、現在では二万五千円以下の罰金になっておる。そして刑法の刑より重くて、その刑法の刑よりも構成要件の点において楽なものですから、大正十五年以来弾圧のために日常的にと言ってもいいくらいに使われた暴力法という罪名であったわけであります。そこで暴力団を対象としてその取り締まり法律ということを考えるならば、大体暴力団のやる行為は恐喝が多いと思います。従来の暴力団の統計を見ましても非常に多いのです。大体暴力団なんというのは労働運動なんかと違いまして、何かものにならなければやらないわけです。恐喝なんです。脅迫だけの場合もありますけれども、少ないのです。やはり脅迫する場合は、それによって物質上の利益を受けなければならない、暴力団としての生活をしなければならぬ、そういう点で必ず恐喝になるわけです。暴行、脅迫、器物損壊ということで、恐喝が含まれていない。これは従来われわれも非常に問題にしたわけでありますが、一条ノ二は傷害ですが、一条ノ三にしましても恐喝が入っていない。それはどういう点で恐喝を入れなかったか、その点をお聞きしたいと思います。
#33
○竹内(壽)政府委員 御質問の第一をお答え申し上げますが、現行法の一条二項を適用をしないのは刑が同じであるからなのではないかという御疑念でございますが、そういう面も否定できないと思いますけれども、しかしながら、なお現実に適用を見ておるものも現にあるわけでございまして、その数が少ない中においても、いまの労働争議等においては一件も適用を見たことがないということを申しているわけでございますが、やはり常習暴行者だという評価、これは非常に意味を持っておるわけでございまして、ただ単に刑が同じだから、めんどうくさいからやめておくといったような性質のものではなくて、やはり暴行の常習者だという裁判による評価、これは非常に意味があることだと私は思っております。
 それからなお恐喝について、なぜ加えなかったのか、なるほど仰せの通り暴力団による恐喝というのは、数におきましても非常に多いのでございますが、これは御承知のように恐喝は脅迫行為と財産犯とこの二つの罪の結合犯でございますが、これを入れませんでした理由は、その暴力行為の第一条第二項の規定は、暴行、脅迫、器物損壊、これが大正十五年以来三十数年にわたりまして、暴力行為の一つのグループとして理解されてきておるわけでございます。ただ傷害を特に加えて恐喝を除きましたのは、傷害というのは暴行の結果的加重犯というふうに、これも現行刑法制定以来そういうことで固まってきております。そこで新しいものをつけ加えることによって暴力行為の範囲を広げて、そして違った解釈を入れる余地のあるようなことにいたしますことは、法律運用上あるいは解釈上非常に問題がありますので、そういう点はすべて刑法の改正の際に慎重に考慮してもらうべき事柄といたしまして、今回の改正におきましては恐喝は取り上げませんでした。恐喝を取り上げるということならば、強盗のようなものはどうだとか、次から次へといろいろな問題が出てくるわけであります。一番わかりやすく最小限度の改正によって目的を果たすのにはどうしたらいいかということから恐喝はあえて割愛をしたわけでございまして、事件が、恐喝が相当多い数字を示していることは事実でございます。
#34
○坂本委員 いかに暴力団取り締まりと言われても、これは大臣も聞いておいてもらいたいのですが、暴行、脅迫、器物損壊、これを入れて恐喝を入れなかった点について、暴力団を取り締まる法だと言いながら、ここに暴力団に対する抜け道をつくっておる、こういうふうに考えられるのです。この表によりましても、恐喝の件数は昭和三十六年は二万八千四百四十三受理で、起訴が七千四百八十になって、器物毀棄なんかと比べると二番目か三番目ぐらいじゃないかと思われます。ですから、この恐喝を入れておかなければ、暴力団のやることはたいがい恐喝なんですよ。だから暴力団取り締まりと言いながら恐喝を入れてないのは、暴力団は抜けさせるんだ、こういうふうに思われておるのですよ。また、これから先に実際の適用にあたってそうなるのです。恐喝をいままでどおりにしておいて、ほかの暴行、脅迫だけ重く罰する、こういう点において恐喝を入れなかったのは、暴力団取り締まりの法律と一言いながら、暴力団を抜けさせているんだ、こういう疑念があるのです。だからその点についてもうひとつお願いいたします。
#35
○竹内(壽)政府委員 ただいまの御指摘の点ですが、これは非常に私どもといたしましては意外とするところでございまして、恐喝は大体十年以下の懲役でございまして、盛るべき刑に過不足はないわけでございます。ただ下限ですが、下がはずれておりますから、常習の恐喝者の場合に、下が六月以上とか三月以上とかいうしぼりがかかってきていないのでございますが、いま改正しようとしております暴力行為をかりに四つの罪に限定をいたしまして、それの下限を定めることによって、その法律の制定の趣旨というものは、暴力団が一番犯すであろう恐喝にも、法律の照り返しと申しますが、そういう影響があるわけでございまして、実際の運用におきましては、暴力団が恐喝を常習的にやっておるという場合には、常習恐喝という規定はございませんけれども、十年以下の懲役というこの法定刑の範囲内で十分これはまかない得るわけでございます。そういう点を御観察いただきますれば、あえて抜いてありましても、暴力団対策として支障がないということが御理解いただけるんじゃないか、かように考えるわけです。
#36
○坂本委員 いや、ちょっとも理解しません。これは、かりにこの法律ができた後において、暴力団は全部抜けてしまうのです。しかし、そういうことをやっておるとだんだん時間がたちますから、先に進みます。
 そこで、乱用はしない、ちゃんと通達をしてやるという警察の答弁もあったのですが、私、一つ二つ例をあげておきたいと思うのです。そうすると皆さん方了解されるんじゃないかと思うのです。それはさっきも申しましたが、ピケや団体交渉や集団行進などに際して、ちょっとでも警官隊や――このごろの労働争議には必ず第二組合が会社側からつくられるわけですが、この第二組合員、それから三池の事件に見られるように、暴力団が入ってくるのですね。そして、もみ合いをしたら、相手のからだに触れざるを得ないわけですね。警察のやり方は、人込みの中でちょっとでも肩がさわったということで、因縁をつけてすぐ引っぱるごとができるわけです。それから足を踏むのです。足を踏んだって実際わからぬけれども、足を踏んだじゃないか、これはもう暴行、傷害じゃないか、多数の威力でやったから暴力法だといって引っぱるのです。いままでの例があるわけです。
 そこで、そういうような例は、私が直接弁護に立ったのとそうでないのと、二つだけあげたいのですが、昭和三十六年三月に、全日赤の労働組合が賃上げと職場改善の要求をやって、日赤の争議になったわけです。日赤中央病院で、病院当局の副院長らと団体交渉を進めていたところが、副院長が一方的にもう団交はやめたと言って席を立って行こうとするから、組合員たちはそのあとを追いかけて、とにかく団交の席に戻ってくれ、その上で交渉がだめならだめで、責任ある処理をしてやろうじゃないか、こういうふうに申し入れたら、今度は副院長のほうでいやだいやだというので、それが問題になりまして、このときの組合幹部は監禁と暴力法違反で逮捕された。そうして起訴されまして、監禁については無罪になったが、暴力法違反の点については有罪の判決があったわけです。ですから、こういうような場合は警察が取り上げて、そうして今度検察庁が警察の調べをそのままにして調べて、暴力法と不法監禁の二つの罪名で起訴をする。そして裁判になって、監禁のほうは検察官の立証がつかなかったが、暴力法の点は、先ほど申しましたように、肩にさわったくらいあるいは足を踏んだくらいのことでも、団体または多数の威力によってそういうことをしたんじゃないかということで、普通の刑法と違って現行暴力法の第一条では全部有罪になってしまう。おとといの吹田事件も、私、内容はよく見ておりませんが、やはり同じような結果になっておると思うのです。これを聞いておるのは、あとで一条ノ一、二を質問する場合にも必要であるし、私が最初主張しましたように、やはり第一条を基盤にして二、三を乱用して弾圧に持っていくという点があるからお聞きしておるわけです。そういう点で、団交をやればいいけれども、いやだというのをもとに戻りなさいと言ってひっぱったら暴行になる、それから多数おるからというので足でも踏むとか手でもけがすると、もう傷害になる、それから不法監禁だ、こういうようなことで多数の組合幹部が起訴されて、結局組合側が敗北をきたす原因になっておるわけです。第一条がそういうふうにして現在乱用されておるから弾圧法だというふうに言うわけです。これがあとの問題に関係するから私はお聞きしておるわけですが、こういう実態がほかにもたくさんあるわけなんです。警察官が来てもみ合いをすれば、必ずそこに逮捕者が多数出て、そしてその中から多数の起訴者が出て裁判をやらなければならぬというのが現在の労働争議の現実なんです。これは例をあげればたくさんありますから、最後に例をあげようと思っておるわけですが、そういうように一条をもって適用しておる、乱用しておるというのが現実なわけです。そういう点について法務大臣は、労働運動なんかに適用しないという現行法が現在使われておるわけなんですが、それでもこの法は暴力団だけに使ってほかには適用しない、こういうふうに思われますか、どうですか。
#37
○中垣国務大臣 第一条の改正をしない部分につきましての適用は、これは一般のいかなる暴力に対しましても取り締まるという考え方でありますから、それを今度改正をしようとしたのではないのでありまして、銃砲、刀剣類を使うそういう悪質な暴力、それから常習的な暴行、脅迫、器物損壊といったようなことを取り出しまして、そうしてあらためてこれを……
#38
○坂本委員 私の質問に答えてもらいたいのです。銃砲、刀剣と常習の点はあとであれしますけれども、大正十五年にできたこの暴力法は、第五十一帝国議会で、特に時の司法大臣は、労働運動なんかには使わない、こういう言明をしているけれども、いまたくさん乱用されておる。だから、どう思われるかということをお聞きしておるのです。
#39
○中垣国務大臣 いま私が改正しようとしておる点につきましては、労働組合運動であるとか、大衆運動であるとかいうものに対して、この法律が直ちに適用されるというようなことは、私は断然ないと思います。それから前の大正十五年当時、その制定当時の国務大臣が、この法律は小作争議であるとか、大衆運動であるとかに使わないと言っておられるが、その後使ったではないか、こういうことでありましょうけれども、それは私は、特別に小作争議であるとか、大衆運動であるとかいうものにこれだけが適用されたのではなくて、やはり暴力そのものに対する適用がなされたのではないかと思いますので、いまここで、この暴力取締法が直ちに大衆運動や組合運動のためにできたものであるというふうには、私は考えておりません。
#40
○坂本委員 もう一つ聞いておきたい。ちょうど山田代議士がここにおられるわけですが、関東バス事件というのがあったのです。この関東バス事件に、佐野営業所の第二組合の問題で山田代議士が仲裁に行かれたら、これを不法監禁並びに暴力行為で、この法律で検察庁は起訴して、そうして裁判をやったわけなんです。第一審は体刑の有罪だった。第二審にいきまして、不法監禁は無罪で、そうして暴力行為はどうしても裁判官は無罪にし切らずに、罰金一万円というところでやったのですが、この事件なんかは、これはぜひひとつ聞いておいていただきたいのは、当時共済連事件というのがあった。昭和二十八年当時であります。当時は犬養法務大臣でありました。犬養法務大臣は、指揮権発動をされてから非常な悪司法大臣でしたが、その前は、なかなかいまの法務大臣と同じで、非常に純真でりっぱな法務大臣であった。中垣法務大臣もほんとうにりっぱです。ただうのみにされてやられる点は、まことにかわいそうだと思うわけでありますが、犬養法務大臣のときもそういうようなことだった。ただあれは、吉田さんが指揮権を発動させてから、とんでもないことをやったというので大臣をやめられたのですが、その犬養法務大臣の当時でしたが、栃木県で、農業共済組合連合会というのがありまして、その会長が元参議院議員で、この事件がありましてから、いま落選しておりますが、佐藤清一郎氏であります。これが町村からの水増しをして、そして県単位の水増しをして、そうして中央に持ってきたらそのまま認められた。金の使い道ができないようになったわけです。そうしてある村において、三千六百万円の水増しを使い道がないから、いろいろ悪く使った。この共済連の問題というのは全国的にもあったわけです。そこで当時の宇都宮の久保田検事正に百万円贈呈したということが県下に広がったわけです。この久保田検事正は、弁護士からなった検事正であります。そこで山田代議士が、昭和二十八年十二月決算委員会が開かれて、そうして犬養法務大臣に、この水増し事件を質問しまして、そうしてこの共済連事件に関連をして、久保田検事正の百万円の問題が大きく出ました。浜崎という会計部長、これを引っぱって調べて、そうしてこの久保田検事正にも及んだということで、決算委員会で問題になったわけでありますが、それによって浜崎会計部長その他は、これは有罪になったわけであります。そこでこの犬養法務大臣に対する久保田検事正の汚職の決算委員会の追及を根に持っていて、そうして翌年の二十九年三月、この関東バスの事件が起きたわけでありますが、第二組合の委員長になったのは、元警察の労働課長か何かしていた飯塚宇一という人でありましたが、その当時巡査もそこに立ち合って、問題がないからと言って帰った。その巡査が、次席検事の高橋検事が出張してわざわざ調べて、それに対して巡査がほんとうのことを言ったら、その巡査はすぐずっと山奥に飛ばされてしまった。そういうので、この高橋次席検事が調べて、何ら関係のない第二組合ができたら、話し合いをしてうまくやるために、選出の国会議員として山田代議士が行ったら、それを暴力行為取締法違反、不法監禁で起訴した。判決もここにあるのです。そういうふうで、権力者がその権力を持てば何でもできるわけです。巡査が法律を乱用して、そうして正しい労働組合運動に対して、その活動家を逮捕するというのは、これは大衆が見ているからわかっている。しかしながら、検察庁においてもこういうことがあって、そういう点を追及されると、根も葉もないことで、ただそこにいたというだけで裁判が始まる。裁判が始まれば五年かかる。第一審は懲役六ヵ月、執行猶予三年かの判決でした。これも、いま高等裁判所の部長をしている宇都宮の所長が、みずから裁判長になって、そうしてこの裁判を早くやらなければならない。高橋次席検事なんか立ち会っていろいろやったけれども、そう簡単にできない。これは労働運動に対するところの弾圧であると同時に、山田代議士ほか数名起訴されておりました。と同時に、検察内部における汚職問題が含まれておるというので、それで裁判を続けて判決をするときは、その所長の裁判長は、高等裁判所の部長に栄転をされて、そうして私なんかの後輩のへっぺけなのが判決をしている。実刑の判決を言い渡した。それで控訴をして、そうしてわれわれ弁護団としてはほんとうに全勢力をつけて、そうして実地検証もやり直してやっても、この暴力法だけは無罪にならずに一万円の罰金なんです。ですから、この暴力法によって巡査が取り上げ、そしてやはり取り締まりの関係でその上で、また検察庁でも正しいと思っても、巡査から持ってきたものをそうむげにこれを排除しちゃうと、ほかのいろいろなことでやはり言うことを聞かぬものだから、何としても検察庁は起訴するのです。特にこれなんかは久保田検事正の関係があったから不法な起訴をして、そうして五年間戦って無罪にならないのです。こういう検察庁に関連する問題はまれでありましょうが、一般大衆運動あるいは労働運動に対しては数限りないわけであります。私が関係しただけで、ここにふろしき一ぱい持っている。六千名の弁護人のうちのやはり二千名くらいは、そういう労働事件をやっている人があるから、二千個くらいこういうのがある。敗戦後の新憲法になってからの労働運動に対する裁判を見てもそうなると思うのです。山田代議士がちょうどここにおられたから、ここに判決があったから私は聞いたわけです。こういうようなこともこの暴力法の乱用によってできるわけなんです。涙ぐましい戦いをした。ですから、この暴力法の問題については、単にそういう目的でありますから適用は知りませんというような問題じゃない。やはりわれわれは多数の代表としてここにきている以上は、その審議は十分尽くして、そうして撤回してもらわなければならぬならば、堂々と法務大臣これはひとつ撤回してもらわなければならぬと思う。こういう乱用もございまするが、大臣の所見はいかがですか。
#41
○中垣国務大臣 法律は、暴力法に限らずそうでありますが、それは乱用することは厳に慎むべきことであることは当然であります。戦後におきましての労働組合運動や大衆運動におきましては、憲法上の権利義務あるいはまた労働組合運動等における法規による保護規定等があるわけでありますから、戦前の大衆運動や労働組合運動等のような一方的な弾圧を受けるとか、干渉を受けるとか、そういうことはあり得ないわけであります。したがって、この法律の改正される部分が警察並びに検察によりまして曲げられて適用されるということは私は断じてないと思います。
#42
○坂本委員 断じてないと言っても、断じてあるから言っておるわけです。私は大体十の質問を用意しております。いま第一が終わって第二がようやく始まるわけなんですが、休憩けっこうでございますが、そうしてもらわぬと、大臣すなおに受け入れられて犬養法務大臣みたいに指揮権を発動されてえらい失敗しますから、質疑をしてひとつ撤回すべきは撤回してもらいたい、こういう考えですが、ぜひひとつ委員長にお願いいたします。
#43
○高橋委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。
   午後零時五十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時四十七分開議
#44
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。坂本泰良君。
#45
○坂本委員 次にお聞きしたいのは、現暴力法は暴力取り締まりに役立っているかどうかということを考えますと、残念ながら役立っていないと言わざるを得ないと思います。
 そこで一九六三年版の警察時事年鑑によりますと、暴力団関係の犯罪を検挙するために暴力法が使われている割合は非常に少ない、暴力団の検挙は刑法上の犯罪が多数である、こういうふうに考えるわけです。と申しますのは、先ほど申しましたように暴力団の犯罪は恐喝が非常に多い。ほとんど暴力行為法で検挙せずに、普通の刑法上の犯罪、恐喝あるいは暴行、脅迫、器物損壊――器物損壊は非常に少ないようですが、こういう点で検挙されておるという点が多いようですが、この点についていかがですか。
 先般法務省から、恐喝事件の検挙人員に対する暴力団構成員等の犯した恐喝事件の比率という点で資料をもらったわけなんですが、昭和三十二年から昭和三十六年までありますが、三十六年を見ますと、検察庁における受理人員が二万八千四百四十三名、起訴人員が七千四百八十名となっておりますが、その中で暴力団等による受理人員は一万一千二百七名ですから、二万八千四百四十三名の半分以下ではありますが、受理されておるわけです。それからもう一つの資料の別表一によりますと、三十二年の全恐喝事件の検挙人員が一万八千七百二十三名、暴力団構成員等による右事件の検挙人員が八千八百十四名、四七・二%、それが三十六年になりますと二万六千九十九名で、検挙人員が一万二百八十七名、三九・四%こういうふうに下がっておりますが、いずれにしましても暴力団が恐喝事件で検挙されたのは一番多いと思うのです。そこで今度はそれじゃそれ以外と申しますと、三十三年は四七・二%ですからその他は五二・八%になるわけですね。三十六年は三九・四%ですから六〇・六%、これが暴力団以外の犯罪になるのです。私のほうでわからないのは、暴力団以外の犯罪でいわゆる公安事件、労働運動とかあるいは社会運動とかによって検挙されたのは何名あるか、その点がわからぬわけですが、もちろん労働運動、社会運動以外で暴力団構成員以外の者の恐喝も相当あると思うわけです。その内容がわからぬのですが、もし内容がわかりましたら御答弁願いたい。ここに掲げられたパーセンテージ以外がすべて労働運動、社会運動ということは申しませんけれども、いずれにしても相当このパーセンテージが多いわけです。その点について刑事局のほうから承りたいと思います。
#46
○竹内(壽)政府委員 ただいまお話のございました統計は警察統計に基づくものでございますが、仰せのように恐喝事件について見ますと、暴力団の恐喝事件というのは全恐喝事件の中で三九・四%という昭和三十六年の統計になっております。それじゃその他の恐喝はどういうものかということにつきましては、特に労働運動等における恐喝事件というのは、私は詳しくは存じませんが、あまりないのじゃないかというふうに思うのでございます。その理由といたしましては、これは暴力行為等処罰に関する法律違反でございますが、昭和三十六年を基準にして申しますと八千三百五十六人が全部の検挙人員でございますが、そのうちで暴力団関係が三千九百二十六人、その四七%を占めておるわけでございます。それじゃ残りの五三%はどうなっておるかという点で、労働運動等につきまして調査をしてみたわけでございますが、昭和三十六年は、労働運動等で検挙されましたものの一年間に新しく受理したものは二百八十五名にとどまっております。この二百八十五名も大体第一条の第一項の罪でございますので、一番多く適用を見ておると言われるこの二百八十五名が暴力行為でございます。恐喝なんというのは脅迫と財産罪とがくっついているものでございますので、そういうものが労働運動の越軌行為の過程において発生するということは、絶無じゃないかもしれませんが、非常に軽微な場合じゃないかというように思うのであります。したがいまして、この恐喝の一万が暴力団、残りの一万六千が全部労働運動等で起こってくる事件だというようなことはとうてい考えられませんし、おそらくは労働運動のほうにおきましては恐喝につきましてはほとんどないのじゃないか、そういうふうに私は見ております。
#47
○坂本委員 それで恐喝がこの暴力法に入らないという点について非常に疑問を持つわけなんです。ですからこの資料にもありますように、暴力団関係と申しますと、ばく徒、テキヤ、会社ゴロ、ごろつき新聞――きのうですか、今度の東京都の選挙違反でもごろつき新聞なんかは起訴されておるわけですが、こういうのも選挙違反に関連して非常に困ったものですが、こういうごろつき新聞、それから青少年不良団、炭鉱暴力団、売春暴力団、港湾暴力団、こういうのがあげられるわけですが、これらの暴力団は、先ほども申しましたように、やはり何かの金にならなければやらぬわけですね。賭博のテラ銭なんというのは性質が多少は変わりますけれども、何かの財物を取る、そうすると恐喝になるわけですね。ですから単なる暴行、脅迫にはいわゆる暴力団というのは関係ないじゃないか、したがって暴力団の暴行、脅迫等について検挙されることは、この暴力法では非常に少なくて、一般刑法の恐喝にいくのじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。ですから、恐喝がここに入らないところに大きな疑問を持っておるのです。先ほど申しましたとおりですが、この点についての御所見はいかがでしょうか。
#48
○竹内(壽)政府委員 暴力団としましては、いまお話しのように、何らかの利益を目当てに動く場合が多いのでございますから、社会現象としてこれを見ますときは、確かに仰せのようなことも考えられるわけでございます。したがいまして、その対策というようなことを議論いたします場合には、そういう点を十分実態をくんだ上で策を立てなければならぬと思うのでございますけれども、それらの構成員がどういう犯罪を犯すかということになりますと、これはまた別途の問題でございまして、試みにごらんを賜わりたいと思いますが、資料としていま先生のごらんになっております表の十六ページの第十一表をごらん願いたいのでございます。十一表のまん中辺に暴力団検挙総数中の各罪種の比率というのが、昭和三十六年の統計に出ておりますが、この比率で見てまいりますと、一番多いのは傷害の三〇・二%でございます。その次が恐喝の一七・五%、暴行が一〇%、脅迫が一・九%でございまして、暴力行為等処罰に関する法律違反というのが六・七%、こういうふうに数字が並んでおります。それをごらんいただきましてもわかりますように、恐喝が圧倒的に多いのではなくて、やはり一番多いのは傷害でございます。これは行動が狂暴的な面が、ここで犯罪として理解をします場合にはこういう形にあらわれてくるということがわかるわけでございます。したがいまして、暴力団であるからすぐ恐喝罪という罪が多く犯されているというふうには言い切れない統計上の数字になっておるわけであります。
#49
○坂本委員 多くはないけれども、傷害の次は恐喝ですね。それで暴行、傷害は、今度は労働運動、社会運動等にすれば、この法律にもちろん常習という制約はあっても入らないとも限らない。それが一般犯罪として第二位にある一七・五%が暴力法に入らないということが考えられると、いわゆる暴力団の恐喝はこっちのほうへ逃げてしまうのじゃないか。暴力法で重く罰するのじゃなくて、普通の犯罪として逃げてしまうのじゃないか、こういうふうに考えられるから、いわゆる暴力法は暴力団の取り締まり法律と言うけれども、実際はそうはならぬじゃないか、こういう懸念があるからお尋ねしたわけです。
#50
○竹内(壽)政府委員 その点でございますが、いま統計で見ております暴行、傷害、脅迫というのは、暴力行為の一条二項のそれをさすのではございませんし、もちろん一条一項のそれをさすのでもございませんが、現在の法定刑等の関係もございまして、暴力行為でいかないで、刑法の暴行、傷害、脅迫の規定の適用を受けるというのが、この統計の数字でございますが、もしこの法律が改正をされましたならば、傷害の三〇とか暴行の一〇等のパーセンテージのものが暴力行為等処罰に関する法律違反の適用を受けて、こちらのほうの数字に移行してくるということは当然考えられるわけでございまして、それ以上の他の罪が出てくるというようなことはちょっと想像がつかない。と申しますのは、この四つの罪だけを全部パーセンテージを寄せてみましても、大体暴力団の犯罪の七割くらいのものがこれらの四つの罪で占められていることがわかるからでございます。
#51
○坂本委員 いや、この四つで占められているものの二番目に大きい恐喝がはずされているということを懸念しておるのですが、この問題はそのままにしておきまして、いま暴力団の点についてはいろいろ七つですか、あげたわけですが、その中の青少年不良団、青少年不良団体が多くこの暴力取り締まりのこれにひっかかるのじゃないか、こういう考えが出るわけですね。その点いかがでありましょうか。
#52
○竹内(壽)政府委員 青少年不良団の検挙人員が非常に多くなっておりますことは、その次の一七ページの表でよくわかるわけでございますが、これは事柄が、青少年の青年のほうになりますと、前科を重ねた者も相当たくさん出てくると思いますが、少年のほうにつきましては、御承知のように、少年法の適用を受けます関係もありまして、直ちに常習傷害とか常習暴力といったようなふうに、この法律の適用の関係におきましては、そう多く出てくるとは考えられませんで、主としてこれらの法律改正によって適用を受けますのは、上のほうに並んでおりますばく徒とかテキヤとか売春暴力団とか麻薬暴力団とかいったような、いわゆるおとなの暴力団、成人の暴力団のほうに多くの適用を見るのではないかと思うわけであります。
#53
○坂本委員 そこでこの十一表を見ますと、その他が二万三千五百五、これは人数ですね。昭和三十二年から三十六年までありますが、人員ですから二万三千五百五名、このその他にはどんなのが入るか、その点をお聞きしたい。
#54
○竹内(壽)政府委員 これは警察の統計を借用しておりますが、この区分の仕方も一応代表的なものを並べてみたわけでございまして、その他の中には文字どおりいろいろな名前のついた、また団体の構成も複雑なものから単純なものに至るまであるようでございまして、その他の中には、御疑念になるだろうと思う労働組合とかなんとか、そういったようなものは全然入っておりません。暴力団と社会通念上見られるようなもので名前をつけるのにはつけにくいというようなものを一括してその他の中へ掲げてあるわけでございます。
#55
○坂本委員 いろいろ町のダニとか本来の暴力事件がこれに入っているのですね。
 そこで今後のこの暴力法の適用の問題から考えますと、青少年不良団が一番首位を占めて一万八千六百四十名になっている。昭和三十三年が二万六千百二十名、三十四年が二万三千九百三十五名、三十五年が二万二千五百二十五名、三十六年が少し減りまして二万八百十三名、こういうふうになっているのですね。そこで暴力法のこのような青少年の不良団の犯罪に対する適用が相当ふえると思うのですが、その点についての御見解はいかがですか。
#56
○竹内(壽)政府委員 若干はふえると思いますが、画期的にふえるというようなことはとうてい考えられないと思います。それは先ほど申しましたように、二十才に満たない者につきましては少年法の適用を受けます関係上、その大部分の者は保護処分になるわけでございます。それから逆送を受けまして刑事処分を受ける場合におきましても、常習の認定を受ける場合は比較的少ないのではないかというふうにも思われますので、この青少年不良団に対する対策としましては、もうこの法律の改正ということだけでは帯に短いのでありまして、もっと総合的な立場から対策を考えていかなければならぬというふうに考えております。
#57
○坂本委員 これは私が調査したわけじゃないのですが、昭和三十六年版の警備警察全書に、暴力犯罪取り締まりの課題についてということで警視庁捜査四課長の発言があるわけですが、それによると、暴力団の下部団体はほとんど青少年の不良団体で構成されている。これに後続部隊と見られる非行少年群が続いている。三十五年中暴力犯罪被疑者として検挙された非行少年は四千百四十名であり、暴力犯罪総検挙数の一万三千六百四十五名の三〇・四%に当たり、ばく徒やテキヤやその他暴力団にしても、その前身は不良青少年であり、非行少年であったはずであるから、暴力団関係犯罪の中心問題は青少年犯罪にあるだろう、こういうことがいわれておりますし、なお、こういう点からいたしますと、青少年不良団体、非行少年群が層をなして、本物の暴力団を包み込んでしまっておる。したがって、本物の暴力団は社会の奥深いところにがんばっていて、決して警察の取り締まりの手が伸びることはないし、かつて伸びたことはないと言ってもいい。そこで、この青少年とか不良少年が本物の暴力団の手先になってやるのであるから、いわゆる暴力団を検挙し、その暴力団をなくするという点から考えると、そこまではなかなか警察の手が届かない。表面に出た非行少年とか不良少年を手先にしてやる。またそれらはわずか一年かあるいは半年の刑で、一回行けば、それでその地位が、確保される。三犯、四犯とそれを重ねることによって、だんだん地位が上がって、ほんとうの暴力団の一味になる、こういうことが考えられる。ですから、本物の暴力団は、いかに暴力法をつくっても、その網にひっかからない、検挙できぬじゃないかと思う。と申しますのは、昭和三十五年の当時は、花村法務大臣でしたか、この大臣は、現職にありながら暴力団の親分の葬式に花輪を贈っておる。それからとれは中村梅吉法務大臣の時分でしたが、やはり暴力団の葬式かあるいはパチンコ屋の開業のときに花輪を贈った。それが新聞に出ましたから、法務委員会で問題になりそうになったわけですが、その場合は、中村法務大臣は全然知らなかった、秘書がこれをやったのだということで、われわれもあまりそういうことをあばいて、現職の大臣を云々するということもおとなげないということで、当委員会で大臣のそのような趣旨の説明で了承したわけです。三十五年の際は、花村法務大臣が暴力団の親分の葬式に花輪を贈っておる。したがっていわゆる暴力団のそういう地位の人は権力者とつながっておりまして、そうしてまたその権力も利用することがあるわけでしょう。知らないけれども、やはりその秘書の人が花輪をやり、あるいは葬式のいろいろなあれに表面に出るということは、その暴力団が、おれは法務大臣から葬式の花輪をもらった、そのあとがまはだれだれであるから、権力者とつながっておるから何もできないのだ。こういうことを考えますと、いわゆる第一線と申しますか、一番先に恐喝をやる、あるいは暴力行為をやるというのは、その不良少年であり、そういう者がやるのであって、ほんとうのものは、いかに刑を重くしましても、でんとして支障がない。私はこれが大きい暴力団の実態じゃないだろうか、こういうふうに思われるのです。そうしますと、いかに法をつくり、不良少年は常習者として法定刑を重くして、権利保釈もできないようにして、さらにまた単独の判事で裁判の迅速というようなことで、一回か二回でどんどん片づけていく。またその不良少年の被告は、一回刑務所の飯を食ってくれば、出てきた際にそれだけ地位が上がる。半年か一年がまんすればそれでいいのだということになって、犯罪を犯して刑務所に行き、処罰されるのはその不良少年であって、実際の暴力団の親玉、その有数の配下その他は大手を振って、その権力者の擁護のもとに市中を闊歩する。そうして大資本家以上の権力を持つ。さらには金力を持っているというのが実態ではないかと思う。そうすれば、こういう法律が法定刑を重く改正しても、ほんとうの暴力団の取り締まり、検挙、処罰については効果がないじゃないか。警視庁もこういう大きい親分に対しては手を入れ切れない。だから法はあってもなしと同じであって、末輩がこの法の適用を受けるのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
#58
○竹内(壽)政府委員 不十分ではございますけれども、私どもは、暴力団の実態と申しますか、そういう実情を過去数年間にわたってあらゆる機会に調査してまいりましたけれども、暴力団の手下、いわゆる若い者の中に青少年が集まっている、そういう者が手先となって暴力行為をしばしば犯していること等は、確かに御指摘のように私どもも同じ考え方をいたしております。しかし、暴力団の幹部、そういう者がなかなか検挙しにくいということも御指摘のとおりでございますが、それは権力の保護下にそうなっているのだというような見方を私はいたしておりませんので、むしろ、それよりもやはり暴力団は暴力団なりに組織の防衛というものがなかなか固いのでございまして、捜査をしていきます場合には、犯罪をたぐっていくわけでございますけれども、これには一つ一つの証拠によって裁判令状をもらうわけで、この証拠を積み重ねてまいりますこの捜査過程において、かたい防衛組織の中に割り込んでいくことがなかなかむずかしいということを理解するわけです。しかし、先年通過を見ました刑法の一部改正等によりまして、兇器準備集合等の罪ができましたために、かなり暴力団の実態というものは中まで明るみに出た事例が少なからずあるわけであります。そしてそういう実態から見ますると、やはり手先だけが問題ではなくて、その暴力団の親分を中心とする幹部の人たちというものは、いつぞやもここで御説明申し上げたかと思いますが、ほとんど暴力の前歴者をもって占めておる。いわば前歴者の集団というような感じのするものでございまして、そういう前歴者の幹部の人たちは、罪を犯すたびに刑務所に行けば短期で出てくる。出てくれば暴力団の中における地位が上がってくるということで、親分を中心としまして、その配下の中にそういったようなかたまりがだんだんできてくるわけでございます。そこで私どもが実際に取り締まって、何らかの刑政的な効果を考えるということになりますと、短期の自由刑というものが全く無意味であるのみならず、かえって暴力団を結果から見ると助長しているようなものにも見えないこともない。こういう点を考えてまいりますと、現実の姿としては、非常に短期の自由刑に裁判結果は集中しておりますけれども、これは何としても是正をしてまいらなければならない。刑務所における矯正教育というものの実をあげますために、また保護観察を活用してまいりますためにも、とにかくそういう親分を中心とした幹部の人たちの事実上の解体というところへわれわれは持っていかなければならぬと思うのでございます。それをただ解体を犯罪の検挙という面だけでやりましても、今度は違った形で集団ができることは、幾多のいままでの暴力団の結成の経緯に照らしましてよくわかるわけでございます。こういう人たちが、もはや暴力団として組織を維持することができなくなった場合に、その人たちが正業に転向していくような道も開いてやらなければいかぬ。現に暴力団と称せられる一部の団体の中には、親分はじめ幹部の人たち、手先の若い衆まで引き連れて正業に戻った実例もあるのでございまして、そういう面の総合的な施策の上に立って暴力団対策というものを考えておるわけでございますが、それにしましても、この刑の威力というものは無価値なものでは決してないということをしみじみ感ずるわけで、今回の改正もそういう趣旨のもとに御理解を賜わりたいと思うのであります。
#59
○坂本委員 警察庁のほうはどうですか。いわゆる法務大臣とか、あるいは自民党と言っては語弊があるかもわからぬですが、えらい政治家の人は、あの暴力団はあの人の手合いだとかなんとかいうことも巷間には言われておるわけであります。それが葬式に花輪をやるとか、あるいは何かビルディングをつくるというと、そのお祝いの花輪をやる。そういういわゆる大きい暴力団ですか、そういう資料があったら――いま検察庁あるいは警察庁のほうであげられておる暴力団が幾つあるか、これは資料も出ているかもわかりませんが、かりにこの法律ができたならば、この法律をもってそういう暴力団の親玉を検挙して、そうしてやるだけの自信がありますかどうか、いかがですか。これは法務大臣にもひとつお聞きしておきたいと思います。
#60
○中垣国務大臣 先ほど御指摘になりましたように、法務大臣がはっきりわかった暴力団のそういう関係者あるいはボス等に花輪等を贈ることはよくないと思います。そういうことをしてはならないと思います。それからいまのような、そういう暴力団の取り締まりにつきまして、この法律がかりに適用になったときに実際暴力団のもとまでやれるかということでありますが、私は、具体的な事例さえあれば、いかなる人といえどもやれるはずだ、またやらなければならない、かように考えております。
#61
○三輪政府委員 この暴力団そのものは実は直接所管をいたしておりませんけれども、先ほどのお尋ねでございますが、これは刑事局長から先ほど詳細にお答えがあったと同様でございまして、実は警察といたしましては、いかなる暴力団といえども犯罪事実をつかめばこれを捜査し、探求、追及していくのでございますけれども、遺憾ながら、たとえば麻薬を例にとってみましても、実際に売っておりますすぐ上くらいまでいきますと、その先がなかなか証拠として追及できない。これは組織防衛ということであろうかと思うのでございます。しかもそういうものが、現実に検挙をいたし、起訴をいたしていただくといたしましても、きわめて軽い罰金のような格好で出てまいります。そういうことでございますから、いわゆる親分を中心にした中堅幹部どころというものがかたい結束を守っておるという状態で、私考えますのに、今回のような常習性によって重い刑が科せられるということになりまようならば、警察の追及がたとえ直接にその中心にいきませんでも、その中核を押えて、それがこの法律によって相当長く刑務所に行かざるを得ないということになりますと、いわばその中心からそういう直接の防壁をはぎ取っていくということによって、私はこれは労力次第で、実際その者に追及の手が伸びるということに相なろうかと思うのでございます。ある団体に特定の政治家の方々からいろいろな花輪が出る、そういうことのために取り締まりができないのではないかという御心配でございますけれども、警察といたしましては、そういう団体でございましても、事実をつかみ、追及ができまする限り努力してまいるつもりでおるのでございます。
#62
○坂本委員 ですから組織防衛によって親分、親玉は網にかからないわけです。結局チンピラで不良少年とかあるいは非行少年等、こういうのが手先となってこの暴力法にひっかかって、そうして犯罪を犯すだけで、結局犯罪学校に行って――前科なんかも犯せば犯罪学校と普通いわれているのですが、もうまじめな人間になれないようになってしまう。しかし、それの糸を引いているものは親分でしょう。そうしてその親分の命令に従って第一線で手先をやっているやつがチンピラで犯罪を犯す。ですから問題は、この中心の暴力団を断たなければ、やはりその先のいわゆる小暴力はなくならないと思うのです。なくならないどころか、組織防衛でちゃんとした組織を持って、そうして大きいところはひっかからない。そうして大実業家以上の生活をやっている。犠牲になる者は非行少年であり、不良少年団体である、こういうことになるはずです。だから私は、この暴力法ができても、名は暴力法であるけれども、ほんとうの暴力の取り締まりとか、これを排除するということはできずに、逆に不良少年とか、不良少年団とか、あるいは非行少年に犯罪を重ねさせるだけではないか、こういうふうに考えられるわけです。ですから、これは法の運用の問題と思うのですが、労働争議とかストライキのすわり込みなんかの場合は、行って、そしてそのすわり込みなんか排除する、その過程で警察官にちょっと乱暴すれば公務執行妨害になる。ちょっとけがすれば傷害罪というので多数検挙されておる。そういうのは証拠がはっきりしているから直ちに問題になる。また件数によってその警察官の腕がいいとかなんとか言われておる。しかし実際は、そういう不良少年とか、そういう労働運動でそういうのを処罰してしまう。ほんとうの暴力団であり、この暴力団こそなくしなければ日本の暴力団の粛清ができないという暴力団には、遺憾ながら、この法律をいかに改正しても私は手が届かないと思うのです。ですから、法務大臣並びに検察庁は、なに、そんなことはない、今度この法律が通過したならば、これによって徹底的にやるのだというような確信がおありかどうか、重ねてお聞きしておきたい。
#63
○竹内(壽)政府委員 お手元に資料といたしまして配付してございます暴力団構成員による暴力犯罪関係事例集というのがございます。これは御審議の便宜を考えまして、全国の検察庁から暴力団関係構成員による犯罪として報告のありましたもの全部を収録したものではございませんで、その一部につきまして、さらに私どものほうから、その報告書を基礎にして、前歴の関係、裁判結果、使用凶器の種類、数量などをも調査をいたしまして明らかにしたものでございますが、この例によりましてごらんいただいてもわかりますように、大暴力団の親分というようなものはなかなか捜査上入りにくいという点は先ほども御説明申し上げたとおりでございますけれども、それは全部であるわけではなくて、やり得るものにつきましては、もちろん飛び込んで入って検挙、処罰まで持っていっておるわけでございます。この資料によりましてごらんいただいてもわかりますように、使用凶器の種類とか、前科の概況等を見ますと、こういう者に対してさらに矯正教育を徹底し、保護観察を徹底すれば、こういう暴力団も相当程度解消して正業のほうへ向けることが可能であろうという考え方がわいてくるのでございまして、その手段、方法としまして、常習暴力あるいは危険な銃砲、刀剣類使用による傷害というようなものを規定するのが最も効果的な方法であるということに私も確信を持つに至った次第でございまして、もちろん運用の結果を見なければわかりませんが、きわめて有効な立法措置であろうというふうに、全くてまえみそでなく、さように私は信じておるわけでございます。
#64
○坂本委員 そういうような答弁も承って、暴力団狩りをし、その大きい暴力団をやるためには、現在殺人罪にしましても、傷害罪にしましても、共謀、共同正犯という理論が認められておるから、この暴力法を重くして、それによって親玉の暴力団をなくすより、現行法の殺人とか、あるいは殺人教唆とか、あるいは共同正犯等、あるいはその他の犯罪の現行刑法によって検察庁あるいは警察がやる気があれば、私はできると思う。しかしそれをやらない。また現在の組織防衛の上においてはやれない、こういうような情勢であるから、やればやれるのを、やれないのだ。だからこの暴力法を特に重くしてやらぬでも、銃砲、刀剣等を特にしなくても、銃砲、刀剣なんか持ってきて殺傷をやったような場合は、これは殺人罪の共同正犯か、あるいは教唆あるいは従犯、こういうこと等で幾らもやり方がある。だから、それを現在の刑法によってやればやれるのを、やらずにおる。またやれずにおる。それにまたこの暴力法を、第一条ノ二、三をふやしたところで同じではないか。ただいたずらに不良少年の犯罪を多くするし、あるいはその他社会運動、労働運動の弾圧に用いて、そうしてそれにこの法を適用してそれによって件数をあげる、それくらいが私は落ちじゃないかと思う。根本的な暴力団の取り締まりはできないじゃないか。また、これを法改正しなくても、現行刑法の運用によって幾らもできる、私はそういうふうに思う。その点について、法務大臣どうですか、ひとつ御意見を承りたい。
#65
○中垣国務大臣 現行法においても暴力の取り締まりをやっておることは事実でございます。ただ問題は、最近に至りまして悪質の暴力事犯行為が非常にふえてまいった。特に銃砲、刀剣類による暴力行為、特に暴力団の構成員等の手によるそういう悪質犯罪を犯しても、どうも現行法による刑罰の規定が軽過ぎる、そういうことがこの法律の改正の趣旨でありまして、あとの脅迫並びに傷害等も同じでありますが、そういう特殊なものに対してこの際科刑を重くするという意味そのものがやはり暴力団の根絶に私はつながるものであると思うのです。と言いますのは、お手元にいままでの判決のそういう資料が出ておりますが、二月とか三月とかいう非常に軽い科刑のために、その機構をくずそうとしても、そういう防衛のために、むしろみずから買って出るような、そういうのがたくさんあるのではないだろうか。しかし、最低刑を一年に引き上げるなどということになりますと、おそらくそういう面からの機構防衛なんというものは完全に食いとめることができるのではなかろうか、そういうふうに考えた結果こういう改正案を出したのでありまして、私はこれは相当に効果的な取り締まりができるということを実は信じておる次第であります。
#66
○坂本委員 これは釈迦に説法かもしれませんが、この不良少年団とか、こういう少年犯罪については、いかに法定刑を重くしても、これではこの不良少年の救済とか、あるいは社会の改革はできないのではないかということは、世人の一致する意見なんです。ですから、こういうのは法律で取り締まらずに――刑罰を科してやっても犯罪学校に行くと同じであるから、やはりこれは保護処分でやらなければならない。この保護処分に対しては、いろいろこれは考えられておりますが、なかなか実があがらない。その実があがらないのに、今度は刑罰を重くして処罰する。これは刑法上の問題からいきますと、教育刑主義か応報刑主義かということになると思うのでありますが、現在のような独占資本のこの経済組織において、貧乏人がたくさん出るということは既定の事実なんですね。さらにまた、少年が職もなくてぶらぶらしておれば犯罪を起こすというのは事実だと思うから、そういう方面にもっと力を入れて、そうして法を改正して厳罰にして威嚇的に犯罪をなくすということは古い考え方であると思う。第一にやはり階級的の、差別的の現在の独占資本主義の経済の行き方を変えなければならない。そうしなければ犯罪の撲滅と少年の更生なんということは考えられないと思うのです。だから、そういうことはやってはおるけれどもなかなか効果があがらずに、そうして少年の犯罪が多い、暴力に関連する犯罪も少年の犯罪が相当多い。こういうことになりますと、この暴力法で少年の更生を期するどころではなくて、かえって少年の犯罪をふやすだけだ、こういうふうに私は考えられますが、その点について大臣はいかがお考えですか。
#67
○中垣国務大臣 これは全く坂本さんと同じ意見でありまして、単に犯罪の刑罰だけを引き上げればそれで事足りるということは考えておりません。特に非行少年につきましては、虞犯少年にいたしましても、触法少年にいたしましても、それらの問題にはおのずから原因があるわけでありますから、そういう家庭的な、社会的な原因を取り除くということにも政府としましては力を入れておるわけでございまして、人づくり懇談会等におきましても、非行少年に対する対策を根本的に立てて施策を行なう必要があるという、重要議題にも入っておるわけでございまして、すでに政務次官会議等におきましても、この問題につきましてはたびたび検討が行なわれております。近く具体的な政策を出すことができると思うのでありますが、そういう非行少年に対する対策を総合的に進めますとともに、やはりこういう今回の改正のようなものも必要である、こういうことではなかろうかと思います。一方、非行少年対策というものをおろそかにしておいて、これだけをやったらいいのではないか、そういう考えは私も実は全然持っていないのでございまして、同感でございます。
#68
○坂本委員 この問題は、今度の暴力法の改悪なんというのは、もし不良少年があったならば現行刑法の運用によってできるものである、この暴力法なんかは必要でない、いたずらに少年の犯罪をふやすだけである。また池田首相が人づくりと非常に言って新聞その他のマスコミも人づくりと言われておるけれども、現在のような独占資本の行き方で行ったならば、どんなに口で人づくりと言っても、特権的な一部の者はいいでしょうけれども、大多数の労働者や農民やその他の者については、現在のような経済機構、政治機構を改めない限り、人づくりをやると言っても焼け石に水ではないか、ただ人づくりということで人心をごまかしおくにすぎないのじゃないか。われわれはこういうことを考えておりまして、こういう点からも、この法律なんかの厳罰にしてというのは、特に一番対象となるような不良少年に対する問題等も考えると、必要じゃないのじゃないか、こういう考えを持つわけであります。
 なおたくさんありますからあれですが、五時までやることにして、もう一つだけ次にお聞きしたいのは、先ほども申しましたとおりに、政府の治安当局と暴力団との結びつきは、これは花輪その他の問題を例示したのでありますけれども、遺憾ながら結びつきがあると思えるわけです。最近の労働争議には必ず暴力団が登場してきます。いわゆるストライキをやれば、会社の守衛として暴力団を多数雇って、そうして純真な労働争議に対しての対立を示しておりますが、こういうので一番顕著なものは、昭和三十五年のあの三井三池の争議であったわけです。会社側は金を出して暴力団に守られる、警察は遺憾ながら暴力団と協力関係にあるわけです。こういうような状態にあって、さらに今度は、この間池田総理が見えましたとき、いわゆる小暴力団が選挙にまで出てきた、こういうような関係で、選挙にはまた暴力がつきものになっている。こういう状態になっておるわけでありますが、その事例として、私の経験としましては、いま申し上げた昭和三十五年三月の三井三池四山鉱業所正門前で、暴力団によって第一組合員の久保清さんが殺害をされたのであります。これは私、その日そこに行っておりました。それから昭和三十四年の主婦と生活社、あの争議があったわけでありますが、この際は暴力団を会社のほうで雇って積極的に労働組合と対立をして、そうして暴力をふるって、組合のほうは犠牲者が出て裁判になったけれども、暴力団は一つ毛処分も何もされておりません。次は新宿自動車教習所の争議というのがあった。これも暴力団を雇って、そして、そこにおる労働組合員を暴力団によって排除した。組合員に相当被害者が出た、一一〇番に電話をかける、電話をかけても、もう暴力団にさんざんやられたあと警察がやってきて、そうしてこの際も暴力団に対する法の適用というのは、処罰された者はなかったと思うのです。組合のほうでは処罰をされました。次は三光自動車興業、これもタクシー会社ですが、これは丸山委員長が殺害されたのです。三池の久保清さんの場合の暴団は、時期はおそかったですけれども、あとで検挙されて、熊本の地方裁判所で十何年かの刑に処せられた。ところが、この三光自動車興業の丸山委員長の殺害事件についてはまだ犯人があがっていないわけです。次に安保闘争のときの事件、あるいは浅沼委員長の暗殺事件等々を考えますときに、この政府治安当局と暴力団との結びつきがあるということは遺憾ながら否定することはできないと思うのであります。次に選挙違反の暴力でありますが、また交通違反の問題につきましても、これはある社長とかあるいは暴力団のボスというのがかかったらかえ玉をやる。これについては、やはり警察あるいは検察庁で暴露したものもございまして、二重捜査ということでやられておるのもたくさんありますけれども、私は、これをしさいに調べますと、交通違反についても相当かえ玉を使って、やはり金で雇われ、懲役一年に対して幾ら月給をやる、あるいは家族のめんどうを見るというようなことでやっておるのも、これは警察、検察庁は相当やっておられますが、まだそういうのがありはしないか、こういうふうに考えられるわけです。いろいろ私の弁護し、あるいはその争議に参りましてやった経験はその他たくさんありますが、時間がないから二つだけこの際暴力団問題で聞いておきたい。
 三井三池鉱業所というのは、三十五年三月の事件は、あの正門前に第一組合がピケを張っていたわけです。そうすると暴力団が大挙してやってきまして、そうしてそれには、そのさくの中から会社のいわゆる職制にある者から棒やその他を与えておるのです。みじめなものです。そうしてそこでなぐられて、そうして久保さんはなぐり殺された。殺害された。こういうような事件なんです。三池の問題では、三池海戦事件と申しまして、組合のほうでも船を借って、そうして人工島からの問題について合法的なピケでやった際に、この組合の諸君は、いま暴力、傷害その他で起訴されて、福岡の地方裁判所で裁判になっておるわけです。しかし、暴力団というのは何ら検挙もされないし、あの当時の警察はこの暴力団と協力関係にあったわけです。社宅事件なんかと申しますと、家庭の主婦が第二組合を反省させるために行った行為でも、やはり現行法一条のあの多衆の威力ということで裁判を請求されておる。三池争議の最初の段階では、警察、検察庁の理解があって、検挙したのでもすぐ釈放するとか、あるいは略式で罰金にするとか、傷害等というのがありましたけれども、あの三十五年三月の大争議以後は、その起訴した事件についても求刑が非常に重くなった。われわれは、全治三日間くらいのこの程度のものならば、あるいは罰金で済むだろうと思っていたのも、いまは懲役六ヵ月、八ヵ月、あるいは一年と求刑されている。そうして熊本の裁判所のごときは、困った裁判官がいて、弁護の際に、こういう人はふだんけんかをしたり傷害をしたりするものじゃない、労働争議というのが前提になって、三井三池の争議というのが前提になってこの事件が起きたのであるから、この争議さえなければこういう事件は起きるものじゃない。したがって、この争議がどういうふうに行なわれたか、第一次あっせん案、第二次あっせん案、それから第三次あっせん案でどうして行なわれたかという前提としての労働問題についての弁護人の意見、被告人の意見を聞いてもらいたいと言うけれども、いや、これは傷害事件だ、暴力行為事件だから、その構成要件があるかないかを調べればそれでよいんだということで、耳もかさない。しいてそれを冒頭陳述をしようというと、発言を中止する。やろうとすれば、法廷警察権で外に追い出す。こういうような情勢の中で労働運動の犠牲者は裁判を受けておるわけです。また、そういうのでない者も警察によってどんどん検挙されていく。そうしてその争議が価値のないようなものになっている。私、熊本だから熊本の例をとりますと、大体四千名ばかりが、あの一万数千名の三池の炭鉱の、いわゆる下に下がると申しますが、炭鉱の労働者として働いておるのです。この三井三池の争議に動員された熊本県の警官は約四千名です。それでここに資料もありますけれども、当時は九州全体は強盗、窃盗はやりほうだい、売春も出ほうだい。無警察状態で、全部三池に労働者が三万人集まっておる。熊本では百姓をし、商売ができずに、三池の炭鉱で働いておる人が約四千名あります。私の親戚なんかもたくさんあります。じいさんの時代から行って、いま孫の者もおる。だから私はあの大牟田の警察の前で、警察官一万名ばかりと労働者の一万名があそこで対立しましたときに、ほんとうに働いてここで生活する熊本県の労働者が四千名おる。また警察官も、わずか二万円そこそこの月給によって巡査としてここにかり出された熊本県の次三男が四千名おる。これがここに警察と労働者とけんかして、双方犠牲者が出て、そうしてもうけるのはだれか、三井資本家ではないか、これはよほど考えてやらなければ貧乏人同士が争いをし、けがをし、そうして犯罪者となる。金力と権力を持っておる三井は、日本政府と結託をして合法的弾圧をやってきておる。私は、この警官四千名、労働者四千名をニュースカーの上から見て、この貧乏人同士がここに相対立して犠牲者を出すかというと、涙が流れる。警察官諸君も少しは考えができるだろうと言ったら、多数の警察官の中ではうなずく者がおりましたよ。そうして灯をともす会とか、いろいろの暴力団の団体が、名前だけはいいのをつくって、そうして商工会議所は後援をするとか、本部は大牟田の商工会議所の中に置いておる。そうしてその金が資本家のほうからたくさん出まして、彼らが組織的に対立をしてきておるわけです。そうしてこの純真な久保氏も殺害をされる。これが三池のあの争議の実情であったわけなんです。そうしていまになって第三次あっせん案で処置をされる。第二組合はふえていく。しかしながら、あの三池の本部のりっぱな教養のあるお嬢さんの事務員が第一組合におるからといって、廊下のふき掃除をやらせる。本部の前の草取りをやらせる。しかしながら、お互い働く仲間であるから、組合員であるからやむを得ないというので、あの三井の本社に働くほんとうのお嬢さんがそれまでも働いてやるわけなんです。とうとう三ヵ月、四ヵ月後には会社側が音を上げてもとの職に戻した。争議のあとに働く組合員が、労働者がどういう苦痛の目にあったかということは、いまでもひしひしとわかるわけなんです。そうしてこの三井三池の争議で勝利を占めたあの円仏君が今度は大牟田の市長になったでしょう。そうしてどんどん理屈をつけてやっておる。こういうような殺害事件で、ここにもありますが、暴力、傷害で起訴されているのが大部分です。その数は、私、表を整理するのをあれしましたから、あとで申しますが、約三百名余りの刑事被告人が、先ほど申しましたように、福岡地裁、熊本地裁、荒尾簡裁、大牟田簡裁等で裁判が、一審が終わって、いま控訴に入っているのもたくさんある。普通ならば罰金で済むようなのが、六ヵ月、七ヵ月の求刑を受けて、そうして四山の支部長であるがゆえに暴力行為処罰法で八ヵ月の体刑を受けて、執行猶予がついていない。情宣部長であったがゆえに六ヵ月の判決を受けて、執行猶予がつかない。そういうように求刑も非常に重くなっておりますが、判決も重くなってきています。あまりに重いから、福岡の高裁で多少修正されておる点もあるわけです。執行猶予がつかないものについては、執行猶予がついた事件も相当あるわけです。そういうふうで、いわゆるかかれと言って、大ぜいの労働者の中になぐり込んだ警察官は一人も処罰されずに、三百数十名のものが処罰されておる。
 こういうような現状を見ますときに、やはり争議の中には――これはあとで一条ノ三のところで常習でただしたいのですが、現行法の一条の一項を基盤にして、この常習の一条ノ三を持ってくれば、さらに輪をかけて弾圧にこれが利用されるというふうにわれわれは考えるわけです。労働運動、社会運動にはこれは適用しないと言われても、やはりこれは実績からして適用される。こういうふうに思うわけですが、大臣の所見はいかがでしょうか。
#69
○中垣国務大臣 お答えいたします。警察官にいたしましても、検察官にいたしましても、厳正公平な立場で職務を行なうことは当然であります。先ほどるる御意見が述べられました中に、私は具体的な実例は存じませんけれども、労働争議に暴力団が介入しておる、特にその暴力団が警察と連携の上に云々というようなお話も承ったのでありますが、私はそういうことは実はないだろうと思うのです。政府が暴力団と相通じておると言われましたけれども、私は十一ヵ月国務大臣をやっておりますが、政府が暴力団と通じましてどうこうということも、私は断じてないと断言ができるのであります。そういうことはないと思います。いずれにいたしましても、合法的なそういう組合運動に対しまして、経営者並びに資本家側が暴力団を雇い入れたり、そういうものに介入するというようなことは、これはもちろん適当でないと思います。
 また最後に、この第一条を基盤として今度の改正条項が、労働組合運動や大衆運動に適用しないと言うけれども適用されるではないかということでありますが、私の率直な意見を述べますと、銃砲、刀剣類を持った組合運動や大衆運動というものは、いままでもなかったのでありますから、私は今後もそんなことがあるとは考えられませんし、もしそういうことによって人が傷害を受けたということでありましたならば、その大衆運動とか労働組合運動とかいうことのためにそういうものを受けるのではなくて、銃砲、刀剣を持ちまして人に危害を加えれば、これはこの法律の適用を受けるのは当然だろうと思います。それからなお、そのあとの一条の三もそうでありますが、やはり常習ということになりますと、先ほど刑事局長が答弁をいたしましたとおり、いままでこれによる労働組合運動の起訴者はおそらく一人もないということ、これは実は私信じておるのでありまして、そういうことは坂本先生が少し心配のし過ぎではなかろうかと思いますが、いかがなものでしょうか。今度の法律は決してそういう一般的なものではなくして、あまりにも線がはっきりされているのでありまして、銃砲、刀剣類ときめているということ自体、坂本先生の御心配のようなことではないのだ、私はこういうように固く信じているのであります。
#70
○坂本委員 いや、法律ができれば――常習は今後の問題ですけれども、その常習の問題と一条との関係は、この条文の内容に入ってから、大臣が思っておられるように全然離れたものではないということを、質疑の中で実証していきたいと思います。しかし、いまそこに入ると先に進みませんから、それはあとに譲りますけれども、しかし、何と法務大臣が言われても、大正十五年に暴力法ができる際法務大臣が、やはりいま大臣がおっしゃったようなことを言っておられるわけですね。その暴力法が新憲法になってから労働組合運動や社会運動に猛威をふるっているわけなんです。そうして今度は、不良少年その他にはどんどんやるでしょうが、労働争議で片方から雇われた暴力団のほう、あるいは第二組合はこの適用がないわけです。だから、法は用いようでしょうけれども、実際上やられている。いまこの法の改正については純真な気持ちでおられるでしょう。しかし、法ができた先のことは、やはり過去にそういうことがあるから今後もそういうことが考えられるのです。
 それから現行法の一条と、一条ノ二、三と関係はないと言われるけれども、これは関係大ありとわれわれは確信をいたしまして、これは具体的な質疑をあとでいたします。
#71
○高橋委員長 次会は明二十五日午前十一時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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