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1962/02/05 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 大蔵委員会 第4号
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1962/02/05 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 大蔵委員会 第4号

#1
第043回国会 大蔵委員会 第4号
昭和三十八年二月一日(金曜日)委員長の指名で、
次の通り小委員及び小委員長を選任した。
 税制及び税の執行に関する小委員
      伊藤 五郎君    大久保武雄君
      岡田 修一君    金子 一平君
      川村善八郎君    田澤 吉郎君
      濱田 幸雄君    藤井 勝志君
      芳賀  貢君    平岡忠次郎君
      堀  昌雄君    横山 利秋君
      春日 一幸君
 税制及び税の執行に関する小委員長
                川村善八郎君
 金融及び証券に関する小委員
      伊藤 五郎君    大久保武雄君
      岡田 修一君    鴨田 宗一君
      田澤 吉郎君    藤井 勝志君
      毛利 松平君    吉田 重延君
      岡  良一君    佐藤觀次郎君
      広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君
      武藤 山治君
 金融及び証券に関する小委員長
                伊藤 五郎君
―――――――――――――――――――――
昭和三十八年二月五日(火曜日)
    午前十時五十四分開議
 出席委員
   委員長 臼井 莊一君
   理事 鴨田 宗一君 理事 毛利 松平君
   理事 山中 貞則君 理事 吉田 重延君
   理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君
      安藤  覺君    天野 公義君
      伊藤 五郎君    宇都宮徳馬君
      岡田 修一君    金子 一平君
      川村善八郎君    久保田藤麿君
      田澤 吉郎君    田中 榮一君
      田中 正巳君    藤井 勝志君
      藤枝 泉介君    古川 丈吉君
      坊  秀男君    石田 宥全君
      佐藤觀次郎君    坪野 米男君
      芳賀  貢君    藤原豊次郎君
      武藤 山治君    横山 利秋君
      春日 一幸君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 大平 正芳君
        大 蔵 大 臣 田中 角榮君
        通商産業大臣  福田  一君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  原田  憲君
        大蔵事務官
        (理財局長)  稲益  繁君
        通商産業事務官
        (通商局長)  松村 敬一君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (経済企画庁調
        整局参事官)  羽柴 忠雄君
        専  門  員 抜井 光三君
    ―――――――――――――
二月二日
 委員春日一幸君辞任につき、その補欠として西
 村榮一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員西村榮一君辞任につき、その補欠として春
 日一幸君が議長の指名で委員に選任された。
同月五日
 委員岡良一君辞任につき、その補欠として石田
 宥全君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員石田宥全君辞任につき、その補欠として岡
 良一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員藏内修治君は辞任した。
    ―――――――――――――
二月一日
 昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特
 例に関する法律案(石田宥全君外二十四名提出、
 衆法第五号)
同月四日
 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第五六号)
 昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特
 例に関する法律案(内閣提出第五七号)
同月二日
 共済組合新法関係年金受給者の処遇に関する請
 願(石山權作君紹介)(第四一九号)
 戦傷病者中央更生指導所建設用地として市ケ谷
 旧陸軍省跡の国有地払下げに関する請願(高橋
 清一郎君紹介)(第四五一号)
 大村市水田住宅一、二区等の無償払下げに関す
 る請願(金子岩三君紹介)(第五六七号)
は本委員会に付託された。
同月五日
 昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特
 例に関する法律案(石田宥全君外二十四名提
 出)
は撤回された。
    ―――――――――――――
二月一日
 教育映画の入場税撤廃に関する陳情書(郡山市
 議会議長諏佐公平)(第一五号)
 国の会計年度を暦年制に改正に関する陳情書(
 北海道紋別郡滝上町長朝倉義衛)(第二九号)
 同(全国都道府県議会議長会長東京都議会議長
 建部順)(第一一九号)
 同(北海道市議会議長会長札幌市議会議長斎藤
 忠雄)(第二〇四号)
 同(東京都千代田区九段一丁目十四番地全国市
 長会長高山義三)(第二〇五号)
 在外資産補償に関する陳情書(徳島県議会議長
 伊東董)(第三〇号)
 同(下関市議会議長小西タカイチ)(第三一
 号)
 同(栃木県議会議長星功)(第三二号)
 同(湯沢市議会議長花立又吉)(第三三号)
 同(大分県議会議長小林政治)(第三四号)
 揮発油税の増徴反対に関する陳情書(東京都新
 宿区四谷三丁目二番地日本トラック協会長天坊
 裕彦)(第三五号)
 同(山口市朝倉中央通り山口県トラック協会長
 上田頴太郎)(第三六号)
 葉たばこ収納価格引上げ等に関する陳情書(全
 国都道府県議会議長会長東京都議会議長建部
 順)(第一一八号)
 地方債計画における縁故債に関する陳情書(全
 国都道府県議会議長会長東京都議会議長建部
 順)(第一二〇号)
 国庫支出金の早期交付に関する陳情書(全国都
 道府県議会議長会長東京都議会議長建部順)(
 第一二一号)
 積雪寒冷地帯における所得税の特別控除に関す
 る陳情書(北海道市議会議長会長札幌市議会議
 長斎藤忠雄)(第二〇三号)
 公用地として使用する場合国有地の無償譲与に
 関する陳情書(東京都千代田区九段一丁目十四
 番地全国市長会長高山義三)(第二〇六号)
 国有財産を市町村所有に無償交付に関する陳情
 書(東京都千代田区九段一丁目十四番地全国市
 長会長高山義三)(第二〇七号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特
 例に関する法律案(内閣提出第五七号)
 日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第五六号)
 関税に関する件
 金融に関する件
 外国為替に関する件
     ――――◇―――――
#2
○臼井委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#3
○臼井委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。大蔵政務次官原田憲君。
#4
○原田政府委員 ただいま議題となりました日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案に対する提案理由を御説明申し上げます。
 まず、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について御説明いたします。
 日本輸出入銀行は、昭和二十五年十二月、日本輸出銀行として設立されて以来、プラント輸出金融を中心として輸出入及び海外投資に関する金融を行ない、わが国貿易の振興並びに経済協力の推進に格段の寄与をいたして参りましたことは、御承知の通りであります。
 日本輸出入銀行の業況は、わが国貿易の進展に伴って着実に伸びてきており、その融資残高は、昨年十二月末において二千四百十一億円に達しております。今後も海外からのプラント輸出等の引き合いは、東南アジアを初めとしてさらに増加していくことが予想されますとともに、これら諸国との経済協力もまた一そうその実をあげていくことと思われ、日本輸出入銀行の融資を必要とする事案はますます増加する見通しであります。
 昭和三十八年度のわが国経済運営の基本的課題は、輸出力の増大をはかることであり、この施策の一つとして、輸出振興に重要な役割を果たしております日本輸出入銀行の資金の充実をはかることが緊要と考えられます。
 昭和三十八年度の財政投融資計画において、政府は、日本輸出入銀行の融資見込額を千三百億円と推算し、このため必要な資金として、同行に対して、新たに八百十億円の資金を供給することといたしております。
 このうち二百億円は、産業投資特別会計からの出資、六百十億円は資金運用部からの融資を予定しておりますので、これに伴い、同行の資本金九百八十三億円を二百億円増額して千百八十三億円とする必要があります。
 次に、昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
 この法律案は、昭和三十七年産の米穀につき、事前売り渡し申し込み制度の円滑な実施に資するため、米穀の生産者が同年産の米穀を政府に対し事前売り渡し申し込みに基づいて売り渡した場合において、従来と同様、同年分の所得税について、その売り渡しの時期の区分等に応じ、玄米換算百五十キログラム当たり平均千四百円を非課税とする措置を講じようとするものであります。
 以上、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案及び昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案につきまして、その提案の理由を申し上げました。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。
#5
○臼井委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。
#6
○臼井委員長 ただいま提案理由の説明を聴取いたしました両案中、昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案について議事を進めます。
 御質疑はありませんか。――御質疑がないようですので、これより討論に入ります。
 通告があります。これを許します。石田宥全君。
#7
○石田(宥)委員 ただいま御提案になりました昭和三十七年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案に対しまして、日本社会党を代表いたしまして賛成の討論を行ないたいと思います。
 本制度は、昭和三十年予約売り渡し制度実施以来今日に及んでおるのでありますが、時限法といたしまして、毎年々々法案が提案されて実施されて参ったわけであります。このいわゆる予約減税なるものは、昭和二十六年以来米の売り渡しについて諸般の奨励金その他を整理いたしまして、それが石当たり千四百円に相当するものといたしまして、千四百円を非課税とする措置がとられて参ったのであります。
 しこうして、この制度に対しては、税制調査会を初め大蔵省の事務当局の中には、かねてからこれが廃止の意向が強かったのであります。大蔵事務当局等の主張では、該当者がきわめて少ないので、大きな意義がないという主張でありますが、なるほど所得税に関しましては、その該当者も少なく、また税額もきわめて僅少でございます。しかしながら、最近地方税法の改正に伴いまして、所得税の対象になり得ない低額所得者に対しまする住民税の増額、さらにこれと関連いたしまして、住民税の所得割あるいはまた国民健康保険税の所得割等に及ぼす影響は、所得税の約五倍程度の影響があるのでありまして、そういう面からいって、きわめて低額の所得である米作農民に対する本制度は、存続されなければならないと考えるのであります。
 そういう意味におきまして、これをもし廃止するというようなことでありますならば、昭和三十四年に政府が閣議で決定をいたしましたように、当時これを廃止いたしますると、米売り渡し農家は、米一石に対しておよそ七十五円程度米価の引き下げになると同じ結果になるということにかんがみまして、廃止をするならば米一石について七十五円の値上げをするという案でございましたが、その案がきわめてずさんなものであったために、ついにこれを実施するに至らなかったという経緯もあるわけでございます。
 そういう事情にかんがみまして、さきに日本社会党は特に議員提出といたしまして同様の法案を提案しておったわけでありますが、今回政府からこれを提案されまして、まことに同慶にたえないところでございますが、ただいま申し上げましたような事情にかんがみまして、今後さらにこれは昭和三十八年以降にも存続すべきものであるという見解を持つものでございます。
 以上簡単でございますが、本案に対する賛成の討論にかえる次第でございます。
#8
○臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○臼井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#11
○臼井委員長 速記を始めて下さい。
 次に、金融に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。武藤山治君。
#12
○武藤委員 私は、日本社会党を代表して、特に今回提案されております財政投融資関係の点について大臣並びに企画庁その他担当事務官にお尋ねしたいと思います。
 本年の財政投融資総額は、御承知のように、昨年より二千四十五億円という大規模な財政投融資計画を出されておりますが、この一兆一千九十七億円という財政投融資の詳細について尋ねますると、大へんな時間がかかりますので、まず大蔵大臣に先に要点だけをお尋ねしておきたいと存じます。
 第一は、大臣の財政演説の中で、財政投融資計画は、時代の要請と現下の経済情勢に即応して、規模の拡大に努力したという演説がなされたわけでありますが、この「時代の要請と現下の経済情勢」というものを、大臣はどのように認識され、把握されておるのか、その点をまず最初にお聞きをしたいと思います。
#13
○田中国務大臣 お答えをいたします。わが国経済は、御承知の通り三年間にわたってきわめて高度の成長をいたしたわけでありますが、一昨年、昨年の事情も、御承知の通り国際収支の悪化という一面を露呈いたしましたので、これに対し国際収支改善対策を行なったわけであります。これが改善対策の実施の過程におきまして、急激な設備投資等が行なわれました両三年の経済成長率と比べまして、一昨年の後半から昨年一ぱいを通じて、設備投資は相当沈滞ぎみになって参っております。でありますので、経済全般から見ますと、国際収支改善の実も上がりましたし、また国内均衡も徐々にではありますが達成されつつありまして、両三年の高度の経済成長過程と比べまして、相当景気も沈静の状態であります。しかし、対外的な状態を見ますと、自由化の問題等、また国際通貨基金の八条国移行の問題等、もろもろの問題がありますので、外に対しては国際競争力をつけるために設備の改善、企業の合理化、その他を行なわなければならない状態であります。でありますので、要約して申し上げますと、対外的には国際競争力をつけるために、相当程度の設備資金の投入も必要でありますし、合理化、設備の近代化も必要であるという半面、御承知の通りの国際収支の改善過程における設備投資抑制という相反した二つの面を持ちながら、長期安定的な方向をたどりつつ、経済の正常発展を目ざしておるのが現在の日本の経済の実態でございます。
#14
○武藤委員 国際均衡の方はやや調整政策が浸透してきて、同時に今度は国内均衡ということにも重点を置かなければならないという、非常にむずかしい調整の段階だろうと思うのであります。だといたしますと、国際競争力をつけるためには、設備投資もある程度やむを得ないし、今度は国際収支の面から言うならば、設備投資を押えなければならない。そういうむずかしい調整をするのには、政府が発表した経済見通しを、経済運営の基本的態度として今後一年間をやっていく、こういう方針のようでありますから、政府の策定した見通しの設備投資よりも、べらぼうに設備投資がふえるというような場合には、政府としてはそれを押える、いわゆる見通しの線よりも設備がふえそうだという場合には押えるという方針ですか。それともさような場合には――まあ足りないという場合はおそらく予想されないと思うのですが、政府の予想しておる設備投資金額の、三兆五千億円というものを上回るというような傾向の際には、政府は設備投資を押えますか、その点はいかがですか。
#15
○田中国務大臣 非常にむずかしい問題でありまして、これから一年間を通じまして設備投資の実態、経済の現状等を的確に把握して、政府が考えておりますような方向に合致せしめていかなければならないというところに、非常に画一、一律的に三兆五千億を目標にして押え得るとも申し上げられませんし、またこれが伸び過ぎるような状態でも野放しにするというふうな考え方もございません。適切なということでございまして、事情をつまびらかに申し上げると非常にむずかしい問題でありますが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、外からくるあらしというのがございまして、これに対してはどうしても対応していかなければならない。国際競争力を培養していかなければならない一つの大きな命題がございますし、もう一つは、八条国に移行するのがいつになるのか、自由化というものの一二%残余のものを一体いつを目標にしてやるのかというような、これが実施の計画そのものに対しても、設備投資や設備の合理化、近代化というものが当然要請されるわけでありますし、また調整も必要なわけであります。同時に国内均衡の面において、いつでも御発言がございますが、中小企業等は大企業の設備投資過剰という面に比べて、設備投資が国全体としては非常に大きくなったというけれども、まだ業種間において設備投資をしなければならない、また設備の近代化をしなければならないという面が相当残っておりますので、これらの調整を国内的にもとっていかなければならぬというのが、設備投資問題に対する政府の一番の関心事であるわけであります。でありますから、業界の実情等十分しんしゃくをしながら、これが設備投資の実態を十分把握をし、逆戻りをしないように、また日本の産業政策に合致をするようにというような基本的な態度をとっております。でありますから、数字の面から最終的に申し上げますと、三兆五千億という設備投資計画に対しては、見通しを誤まることがなく、十分的確に把握をしながら合理的な設備投資をやっていかなければならぬという考えであります。私が大ざっぱに見ると、三兆五千億をこすという状況にはならないのではないかということで、政府が財政面その他で多少選別的にてこ入れをしていかなければならないような状態も看取せられるわけであります。
#16
○武藤委員 大臣は、設備投資がふえるような見通しはないという御判断のようでありますが、つい最近の日本経済新聞によりますと、設備投資は大へんな上向きの気配だということが報道されておるわけであります。たとえば合成繊維の業界におきましては、帝人などはおそらく昨年の二倍の百五十億円の新規設備拡充をやる。旭化成が二倍強の七十五億円の設備投資をやりたい。さらに自動車業界を見ましても、これまた互いに競って、日産、トヨタ、さらに日野自動車、これらがことごとく政府の期待するような設備現況ではなくて、非常な膨大な設備投資をするという報道がなされておるわけであります。さらに石油業界、石油化学、機械工業、こういう面における設備も希望額というものは大へん多いということが報道されておるわけです。こういう場合に、昨年よりも一千億円減という政府の設備投資の計画というものは、業界のかような趨勢を勘案してみたときに、私は非常に事実に一致しない計画ではないかというように考えるわけです。もしこの新聞報道のような数字が事実であるとするならば、設備投資が非常に多くなると私は思うのです。そういう際に大蔵大臣としては、設備をこの程度までで一つ押えよう、本年の経済を運営するにはこの程度がよかろうという目安があると思うのでございます。三兆五千億円というものが少し少な過ぎるというならば、業界の希望とあらばこの線までは持っていっても心配がなさそうだという目安というものを、あなたはどの程度に考えておりますか。
#17
○田中国務大臣 この見通しも非常に今微妙な段階でありますが、私の考えとしましては、三兆五千億を総体的な日本全体の設備投資として、これが上向いて三兆六千億なり七千億になるということはちょっと考えられぬのじゃないかということに基盤を置いて考えております。それは過去二年間で設備投資をやり過ぎて資本の圧迫を受けておる基幹産業等は、設備投資に対しても多少こりておるといいますか、世界的な情勢を十分考えながら、また自分の企業自体も合理化をしながらという、合理的な計画のもとに行なうという考え方に転換をしてきておる。設備投資をやる場合には、過去二年、三年の例を十分基盤にしながら、やむにやまれないという当然の要請からくる必然的な合理化、近代化という面に限られると思いますので、私は今の段階において大幅な設備投資が行なわれて経済を過熱状態に持っていくということよりも、逆に多少沈滞ぎみに推移をするのではないかという面に重点を置いて考えておるわけであります。特に三年前の状況を考えますと、通産省に設備投資計画を出しておったものよりも、実際は非常に計画よりも大きな規模が行なわれたようでありますが、今度は設備投資計画よりも、実際は資金措置を十分やって、可能なものに限って実施に移していくというような、業界全体でも非常に慎重な態度をとっております。また一面において統合、合併、合理化というものを絶えず考えながら、それを前提としての設備投資でありますので、一部の企業において設備投資計画が相当膨大なものが通産省に出されておるとしても、国全体として三兆五千億をはるかにこすような設備投資状況にならないと考えております。しかしなったらどうするか、これらの問題に対しては、先ほど申し上げたように、官僚統制の弊に陥らないということを十分前提に置きながら、業界と政府との間でも十分検討しながら、連絡をとりながら自主的な調整が行なわれるということを望んでおるわけであります。またその段階において、財政投融資や金融その他に対しても総合的な弾力的運営を当然はかるべきであるというふうに考えておるわけであります。
#18
○武藤委員 政府にそれだけの強い決意があるならば、すでにこういう、業界が当初計画した設備資金の倍額を拡張しようということが軒並みに出ておるのですから、こういう場合には、一つ直ちにこういう業界に対して適切な指導を政府としてはする必要がある。なぜならば、そういうことをしなければ、政府の経済見通しというものは全くおざなりで、ただ税収の見込みを見積もるために、国会の答弁をするために数字をつけたという経済見通しでは、私は意味がないと思うのです。この経済見通しがほんとうに、題に銘打ってありますように、経済運営の基本的態度とするからには、やはりこの数字の範囲内ぐらいなところに日本の経済のすべての面をつけていくという努力をしなければいかぬと思うのです。そういう点で、すでに設備投資をこれだけふやしたいという各社の希望というものはわかったわけですね。この新聞報道はうそなら別ですよ。しかしこの新聞報道が事実だとするならば、これはかなり膨大な設備資金です、ほとんどの会社が倍ですから。合成繊維やあるいは自動車、石油業界、石油化学、こういうものは国際競争力をつけるためにもつと設備を近代化し、拡充をするために、当初計画の倍も設備拡大をしてもいい産業であるかどうか、そこらの点の大臣の認識はいかがですか。
#19
○田中国務大臣 石油化学につきましては、石油コンビナートというような形態において各社が相当膨大な計画を進めたわけでありますが、国際収支改善の過程においてこれらの一部は継続し、一部はストップし、一部は計画を縮小いたしておるわけであります。これが例をとりますと、丸善石油の千葉県五井地区におけるようなものに対しては、新しい陣容ができ、新しい再建計画に基づいて最後の工事を仕上げるというふうな方向に進んでおるようでありますが、これが三、四年前のような状態で無規格に業者間で争ってまで設備投資をするというような状況にはないと考えております。それから政府もまたこれが調整に対しては十分配意をいたしたいということを考えておるわけであります。それから化学部門に対しましては、これは石油コンビナートの一分野でありますが、相当程度企業の合理化という面で新しい設備、新しい工場等の拡充を計画いたしておりましたが、これは肥料、化学その他はようやく再建計画もまとまりつつありますので、企業の合併とか、合理化とか、国際競争に対応するというおおむねのめどをつけての設備拡張というよりも、設備の合理化という態勢でありますので、私は過熱するような状態にはならないと思いますが、これらは政府に対しても、相当な財政資金等をもっててこ入れをしたり、またはうしろ向き政策を行なったりしておるようでありますので、政府、業界間において十分な調整ができ得るというふうに考えます。これはあなたが言われた通り、野放しに設備が拡大されていいなどという考え方は持っておりません。業界との調整をとりながら進めて参りたい、こう考えております。
#20
○武藤委員 大蔵大臣の答弁率直で、政府がこれから業界と話し合って過熱にならぬように、あるいは政府の経済見通しというものと合致するように努力をするという答弁でありますから、その程度にいたします。
 経済企画庁の羽柴参事官にちょっとお尋ねいたしますが、この経済見通しを策定するときに、あなたの方で予測調査あるいは関連指標等を定めるときに、三兆五千億円という数字の出た基礎というのは一体どういう予測調査から生まれてきたわけですか。それをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#21
○羽柴説明員 三十七年度が三兆六千億で、三十八年度が三兆五千億ということで、一千億減っておるじゃないか、こういう御質問だろうと思うのでございます。これにつきましては、三十六年秋の異常な高水準からだんだんと民間の設備投資というものが規模を縮小して参りまして、それで企業の投資意欲もかなり萎縮して参ったという現実にかんがみまして――年率で見ますと各半期ごとにだんだん設備投資の年率が減少しておる、こういうような三十七年度の実態にかんがみまして、三十八年度におきましては、まだ当初のうちは現在の意欲といったようなものがそう急に増大するということも考えられませんし、また企業収益もある程度減退しておるような情勢にかんがみまして、下期におきまして多少伸びて参りましても、全体を通算いたしますと、三十七年度の設備投資に対しまして、三十八年度の投資というものは若干落ちるのではないか、こういったような推測が根拠になりまして、民間の設備投資というものをはじき出したわけでございます。それからそれに基づきますいろいろな指標につきましては、法人企業統計等の過去の実績等を勘案いたしまして算定いたしておるのでございますが、何分この設備投資という問題はいろいろカバレージがございまして、全部の企業につきましての過去の実績というものを積み上げて計算することはきわめて困難でございます。そのカバレージを推測で今までの実績をはじき、そして全体の景気の動向というようなものを勘案いたしまして、将来の民間設備投資というものを算定いたしておるわけでございます。
#22
○武藤委員 今までの企業実績を勘案して算定をするわけでありますが、今までの統計の不備という点から、おそらく前年度、三十六年度のものを三十七年度に的確に実数をつかむことはできない現状にあろうと思うのですね。従って、三十七年のものを策定するときには、前年のものなどがはっきりつかめないで、もっと古い、二年、三年、四年前のものを基本に考えているから、経済の変動に対応した正確な予測が立たない。いつも見込みと実績というものが大へんな食い違いを起こす。そういう過去の統計の不備から、おそらく三十八年の経済見通しというものもそういう欠陥を持っておるのじゃないか。そういう点についてあなたはどう考えますか。
#23
○羽柴説明員 御説のように、確かに統計が完全なものであるということは困難かもしれませんが、かりにこれを三十六年度の実績について考えてみますと、三十六年度は四兆五百億というような設備投資であったわけでございますが、これも前のいろいろな実績見込みというようなものを勘案してみますと、そう大きな差は設備投資につきましてはないわけでございます。三十七年度につきましては、これを国際収支の改善という見地から相当改善いたしまして、八八・九%ということに設備投資が落ち込んでおります。そこでこの実績でございますが、これは三十七年度は、実績見込みということに相なっておりまして、三十七年度全体につきましての実績というものは、現在二月でございますので、もちろんまだ全部出ておりませんが、大体一半期から推定いたしてみましても、一半期からこの四半期にかけまして逐次設備投資の年率は落ちておる、こういうことは言い得るわけでございまして、三十七年度全体を通算いたしますと、大体三兆六千億程度におさまるのじゃなかろうか、かように考えております。今までの法人企業統計を全部シラミつぶしに集計いたすということはきわめて困難でございますが、現下の景気動向というものを勘案いたしまして、こういったようなものの実績見込みを推定いたしておるわけでございますが、その三十七年度の実績見込みのもとにおきまして、これに基づいて現在の景気動向並びに今後の景気動向を勘案いたしまして、三兆五千億、かような推定をいたしたわけでございますので、お説の通り、統計はきわめて完全だというわけには参りませんけれども、われわれとしては、全力をあげましてそれを完全に近いようなものにする努力を傾注いたしておるわけでございますので、御了承願いたいと思います。
#24
○武藤委員 設備投資の問題はいろいろむずかしい問題を含んでおりますし、今後の動向について適切に行政指導しないと、政府の意図するような方向に経済が運ばれないといううらみがありますので、一つ十分そういう点に気をつけていただきたいと希望を申し上げておきます。
 第二に、大臣は、財政投融資規模を非常に拡大したということをさも誇らしげに本会議場においても演説をしておりますが、この財政投融資計画の一兆一千億円というものが、経済の今日沈滞ぎみにある景気に対して、積極的にどんな役割を果たしますか、その点大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
#25
○田中国務大臣 財政投融資は、知の通り一般会計と民間資金との中間に位をする、こういう定義をしておるわけであります。今までは財政投融資というものに対しては補完的な意味を持つというふうにのみ答えられておったようでありますが、私は、ある意味においてもち一つ加えて、財政投融資の運用いかんによっては民間資金の活用、誘導の因をなし、またその前提になる、こういうふうにあわせて定義をすべきだというふうに考えておるわけであります。先ほども設備投資の問題で申されましたが、統計というよりも、テンポが非常に早いですから、実際の数字をつかんで、そういうところでお互いに官僚統制になるかどうか、政府が言い過ぎるとか、民間の言うことを聞かな過ぎるということでなく、民間と政府が一体になってやはり真摯な態度でもって合理的な方途を見出すべきだというので、一般会計及び財政投融資、民間資金というものがばらばらにならないように、私が昨年七月大蔵大臣に就任した当時すでに本委員会で申しましたように、国際的にも非常にむずかしい経済の情勢でありますので、これに対応して乗り切っていくためには、一般会計及び財政投融資、民間資金の効率的な総合的な調整のもとに資金運用せらるべきだ、こういう考え方を前提にいたしておるわけであります。そういう意味では、設備投資の調整等に対しても、きのうきょうの新聞等にも散見いたしておりますが、今までのようにばらばらでなく、大蔵省と日銀と市中金融機関と一つ懇談会等をつくって、設備投資や資金運用に対しても十分脈絡のある運用をしようじゃないかというふうに考えておるわけであります。でありますので、三十八年度の財政投融資の規模は、三十七年度の当初計画に比べて二二・五%ワクにおいてふえておるというよりも、これは運用を民間資金とほんとうに合わせて、お互いが十分納得できるような情勢で運用しようというところに新しい考え方があるのであって、適宜過熱を防ぎながら適切なる投資意欲を起こして参る、こういう面から大きな意義がある、このように考えておるわけであります。
#26
○武藤委員 いや、私が聞こうとしておるのは、そういう観点でなくて、財政投融資規模が一兆一千億円という膨大なものであるが、これが景気の浮揚力にどういう寄与をしておるか、そういう立場から、たとえば今経済が沈滞期であるから何とかもう少し上昇に向かわせたい、あるいは景気を出さなければならぬという観点から、政府需要というものを拡大するという気持はわかるわけです。それが具体的に、一兆一千億というものが経済全体のバランスの上から景気にどういう寄与をするのか、日本の経済の上昇にどの程度貢献させようとしておるのか、そのねらいは一体どの辺にあるわけですか。
#27
○田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、昭和三十七年度の推定見込み設備投資三兆六千億、来年度三兆五千億に、千億減るだろう、この民間設備投資が減る分ぐらいは財政投融資でまかなっていくというような考え方を持っておるわけであります。民間への資金の供給は総額一兆一千九十七億円の四三・二%も占めておりますので、これらの適切な運用によって民間設備が沈滞をすると予想せられる面は、財政投融資資金の活用によって埋め合わせていけるだろうというふうに考えるわけです。同時に、先ほども申された通り、どうも設備投資意欲がまた少しかき立てられ過ぎて、設備投資過剰に陥りやすいというような場合には、これが弾力的な逆な運用もはかろう、こういう考えでございます。
#28
○武藤委員 財投はただ単に設備投資に対する作用をするだけじゃないのですね。従って、民間投資の不足を財政投融資で運用の妙を生かして補うというだけじゃなしに、それ以外の効果というものはいろいろな面にあるわけですね。従って、財投全体を大臣として見渡した場合に、今年度の大規模にした財投のねらいは、経済に対してこういう寄与をするつもりで私は編成したのだ、そういう積極的な何かあるのじゃないですか。
#29
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、自由化に対応し、国際競争力をつけていく、また輸出振興に寄与するということとあわせて、国内産業の均衡をはかるという面に対してこまかく配慮いたしておるわけであります。この財政投融資規模が非常に大きい、こういうふうに感じると、政府も相当前向きの施策でもってやるんだなという精神的な面もございますし、同時にこれが実際投資を行なう時期、方法、また民間との割合その他によって相当調整機能も発揮できるわけであります。そういう意味で二二・五%アップというようなことを考えましたのは、少し沈滞ぎみなものに対して適切な投資刺激にもなるであろうという面を十分考えたわけであります。
#30
○武藤委員 財政投融資計画を立てる際に、最初にことしはこの仕事とこの仕事を一つ重点的にやろう、こういう仕事面を先に考えて計画を策定するのか、それともことしは郵便貯金がこのくらい集まりそうだ、簡易生命保険もこのくらい集まりそうだという原資の方を先に見て、これだけ金が入ってきそうだから、これで一つみな使ってやれ、こういう考え方で財投計画を立てておるのか、どちらを優先させておるのですか。
#31
○田中国務大臣 一般会計は健全均衡でありますから、これはまず原資を十分つかんでから、そのワク内で重点項目をきめ、一般会計の予算規模をきめるという基本的な方針を持っております。財政投融資もその意味においては一般会計に近い考えで、原資の範囲内でまかなうということは原則ではありますが、そういうことだけでもって運営をしておると、経済に対応できないわけでありますので、経済情勢またこれから一年間に行なおうとする政府の産業施策というものを十分検討し、重点的な項目をピックアップして十分検討しながら、財源が得られるかどうかという問題をあわせ検討しまして、三十八年度の財政投融資の規模をきめたわけでありますので、三十八年度の投融資計画を策定するにあたっては、施策が先行して財源を押しつけたというほどのこともありませんし、政府が考えた適切なる使途をまずきめてみたら、合理的に財源が確保できたということでありますから、二つのいずれにウエートを置いたかというと、フィフティ・フィフティというような考え方で考えておるわけであります。
#32
○武藤委員 原資の問題についてちょっと尋ねてみたいのでありますが、一兆一千億円の財投計画を立てるのに、国内の資金をフルに活用してもどうしても不足する、そういう考え方から外貨債をふやす考え方になったのですか。原資の不足から外貨債を発行することにしたのか、その点はどうですか。
#33
○田中国務大臣 原資不足のために外貨債を発行したのではありません。これだけは、国際的にも影響がありますので、政府の基本態度を明らかにいたしておきます。これは三十七年度に米国市場等で政保債その他の償還状況を見ますと、普通考えまして七、八千万ドルから一億ドル、一億一千万ドルくらいは国際的な市場において信用を確保、増大せしめながら外債が発行できるという考え方で、昨年九月から十分検討いたしたわけでありますが、今年度御承知の通り既往債三千万ドル程度の償還が行なわれますので、昨年の実績に幾らか市場における信用度の高まった部分をプラスし、それに日本が償還する三千万ドルを加えてみると、ちょうど一億二千万ドルないし一億二千五百万ドルという数字が出るわけでありまして、これは全く国際市場における金融の正常化の基本線を確保しつつ、そのワク内において外債発行をもくろんだわけであります。
#34
○武藤委員 国内の原資に不足しないという状態の場合には外債を発行しない方が好ましいのか、それとも国内で原資が間に合っても外債は発行する方が好ましいのか、財政運営の責任者としてどう考えますか。
#35
○田中国務大臣 赤字的なものであるならば、内国債、外国債を問わず、必要やむを得ざる状態以外には発行しない方がいいという原則を持っております。しかし自由化に対応していかなければなりませんし、同時に日本の国際的な地位をだんだん上げていかなければならないということを考えたり、またこれから正常な国際社会の中に伍していく場合、国際市場で金を全然借りないということも一つの考え方でありますが、また貸せるということになればなおいいとも思いますが、国際資本の交流というのは一つの行き方でありますし、戦後十七年間日本の経済の発展というものに対して国際市場は非常に敏感に評価をするわけであります。でありますので、適切なワク内における外債発行というものは国力を世界に評価せしめる一つの手段でもありますし、またこれが建設的なものであり、日本としてマイナスがないものでありますから、私は、適度に国際市場に外債を発行することは好ましいことである、こういう考え方に立っておるわけであります。
#36
○武藤委員 国際的な通貨の交流あるいは信用の高度化、そういう面から好ましいというのですが、外債発行というものにはやはり一つの限度があり、こういうものを好ましいという立場で発行していくということは、国内の通貨の問題や、インフレやデフレや、いろいろ経済操作をする上における政策的見地からやるならばよろしいと思いますが、ただ単に国際市場へ飛び出ることがかえって交流を深め信用を高めるんだという角度から外債発行をやることは、論理として非常におかしいと思うのです。そういう点で、もし交流が望ましいから外貨債を発行するとするならば、好ましい範囲というのは先ほど大臣がおっしゃった一億一千万ドル程度ですか。
#37
○田中国務大臣 三十八年度予算で御審議を願っております三十八年度中の外貨債の総額は、一億二千五百万ドルでございますが、この範囲は国際市場において信用を維持し、なお日本に対して適正な評価を確保しつつ、資金調達ができ得る範囲内の金額であるという考え方に立っておるわけであります。
 それから私が先ほど申し上げたのは、資金がないからそれにウエートを置いて、やむを得ず外貨債を発行したのじゃないということを強調しただけでありまして、また外国債を発行することが、国際信用を維持し、それを高めるための一つの手段であるということにウエートを置いて、それのみでもって発行したのでもございませんから、そこは一つすなおに評価をしていただきたいと思うのです。ただ外貨債の発行につきましては、内国債と違いまして、国際市場というものは限度がございますから、しかも先ほど申し上げたように、対日信用を維持、確保しながら、そのワク内における外貨債の発行であるだけに、おのずから限度がありますので、これが無制限に乱に流れるというようなことにもなりませんし、適切な外貨債の発行というものは、やがて国際通貨としての円の評価も当然計算においての発行でございますので、時期としては適切と言えるかどうかわかりませんが、普通の考え、すなおな考えで財投の一部資金を外国市場に求めた、こう御理解を賜わりたいと思います。
#38
○武藤委員 まあまあ情状酌量して、ただいまの答弁で納得はしませんけれども、やむを得ない大臣の答弁として一応留保しておきますが、ただ私が心配するのは、今まで中部電力や九州電力、八幡製鉄その他の会社が、昭和二十八年から三十六年までに、世銀から借款をしておる金額だけでも約五億ドルに近いのですね。こういうものはやがてはみな返済をしなければならぬ金であるわけです。従って、そういう民間が借りておる外国資金というものと、国が借りる資金というものとの関連というようなものも十分考えて、外貨債発行というものはしなければいかぬ。ただ単に、国が借りる場合と民間で借りる場合は全然違うのだ、国は国力を信用させるために、交流を深めるために外貨債を出すことくらいはいいのだ、そういう安直な考え方でやられると、民間で必要としておるこういう資金との関連から見た場合に、私は非常な問題が出てくると思う。そういう観点からの注意でありますので、十分こういう点を今後大臣も再検討すべきだ、こういう意見を一つつけてこの問題は終わっておきたいと思います。
 これから非常にこまかい質問に入っていきますから、時間を大へんとりますので急ぎたいと思いますが、次は原資資金の中で、生命保険会社からの借入金が二百九十億円、昨年は二百五十億円、ことしは二百九十億円で、四十億円ばかりふえておることはふえておるのですが、生命保険会社から政府が財投資金に借りるというねらいというか、目的は何ですか。どういうねらいから生命保険会社から資金を借りるわけですか。
#39
○田中国務大臣 生命保険や損保の資金運用につきましては、日本は比較的に自由であります。これは御承知の通りに、イタリア等はこれらの剰余金等に対しては法律をつくって相当強い運用を規定しております。それがために戦後十六、七年にわたりイタリア等の労務者住宅はいかにしてできたかということは、私が申し上げるまでもなく相当高率な適用範囲を法律で縛っておったりしておりますが、日本はその意味で戦後は自由ということを建前にいたしております。当然生保や損保に対しては法律に準拠した企業でありますし、最終的には政府も、これが加入者に対して責任を負うという原則的な体制にありますので、これが剰余金、資金の活用に対しては、政府が一部借り入れるということは、その企業の状態から見ましても、非常に合理的なことであるというふうに考えておるわけであります。
#40
○武藤委員 銀行局の方に保険のことでちょっとお尋ねしますが、現在の最も近い時点における生命保険会社の有価証券の保有額、さらに貸付金額、これはどのくらいありますか。銀行局の方おりませんか。――ちょっと古くなりますが、昨年三月三十一日現在で、生命保険会社の保有しておる有価証券は二千三百十六億、貸付金が五千八百五十八億ございます。かなりの金額であります。この貸付先を全部調べますと、これもまた基幹産業といわれる大会社中心の融資です。こういうような貸付金や有価証券というものをもっと公共的な、社会政策的な面に活用させる考慮というものは、私は当然必要だと思う。今大臣は生命保険会社から金を借りることは合理的で当然だということですが、私もそれは賛成なんです。これを大いに活用して、もっと社会的なものにこの資金を使わすということは、当然過ぎるくらい当然だと思うのです。日本はあまりその当然過ぎることを今までやらないでいる。従って、二百九十億円という資金を出させるということは、何か根拠があって二百九十億にしたのか、政府はこの程度でよろしいということで二百九十億ということにしたのか、あるいは生命保険会社の抵抗でこれ以上はとても融資してもらえないという限界なのか、そこらのいきさつはどうですか。
#41
○田中国務大臣 先ほども原則論を申し上げましたが、生命保険や損保に対しては世界各国がいろいろ法律をつくるなり、また余裕金の活用に対しても十分な配慮をしておるようでありますが、日本は自由企業の原則ということを前提にしながら、政府と生命保険会社とがすなおな気持で話し合いをしながら、将来損保、生保が大いに伸びていくということを前提にしながら、余裕金の活用に対してはお互いに話し合いを進めておるわけであります。これはただ法律をつくって、イタリアのように住宅だけに使うとか、そのかわりに税制面においては何十年も固定資産税を免除するとか、そこまで踏み切っておらないわけでありまして、自由企業の原則を守りながらお互いが十分話し合いをして、合意に達する範囲内においてだんだんと合理的な資金活用をはかろうということで現在まできておるわけであります。これは戦後御承知の通り、相当大幅な基幹産業に対する投資が行なわれたということでありますが、これも協調融資等をやりましたときに、開発銀行は幾ら、市中金融機関が幾ら、生命保険が幾ら、損保が幾らというようなことで協調融資をやってみたのですが、今日の段階になりますと、多少それが焦げついたり、一般の金融機関の資金を貸し付けたというよりも多少問題がありますので、や損保そのものも、貸付先に対しては新しい角度から検討をしなければならないという段階になっておることは事実であります。またこれが自由化に対して外国保険会社等の問題もありますので、一体日本の保険会社や損保はこれからどうすればいいのだという問題に対しては、現在非常に慎重に、しかも前向きで検討している段階でありますので、生保や損保の剰余金の活用に対しては、これからお互いに話し合いを進めながらいく、こういう基本的な考え方であります。特に生保が住宅公団やその他に貸付をしたり、また公団債や金融債に重点を置いて資金の活用をはかっておるという事実もありますので、お互いが話し合いをしながら、すなおな気持で前進的態勢をとろう、こういうのが基本的な考え方であります。
#42
○武藤委員 二百九十億円という額が決定された根拠は何ですか。
#43
○田中国務大臣 先ほど申し上げたように、お互いがすなおに合意に達した額が二百九十億、これは昨年度の二百五十億にプラスして約二割、こういうことで二割近い資金量の増額をきめてもらったわけでありますが、財政投融資全体の伸び率が二二・五%でありますので、これは両方とも異議なく、このくらいどうですか、いやお引き受けしましょう、こういう状態できまったものでございます。
#44
○武藤委員 この際ちょっと資料の提供を要求しておきますが、自治省に提出をされる政治資金規正法に基づく寄付金の内容を一つ資料として提出をするように願いたいと思います。特に財政投融資関係の恩恵を受けておる会社が政党に献金をしておるかどうかということを調べたいのであります。それを一つぜひ要求しておきたいと思います。
 生命保険会社からの財投へ出す金が二百九十億円というのは、あまりにも会社の資金保有量から見ても少な過ぎる、私はこういう見解であります。しかも利率が、大蔵預金部その他は六分五厘でありますが、生命保険だけ七分四厘という最高利率の資金を原資として使用しておるわけでありますが、これらは政党人として大臣に就任した田中さんの力に大いに期待をいたしますから、生命保険会社ももっと社会性を帯びたものに資金を大いに出すように、しかも利率もできるだけ政治的な立場に立って検討してもらう、こういうことで来年は現在の条件を直すような努力を大臣に要望しておきたいと思うわけであります。
 企業の原則とは申せ、そういう企業の原則を乱して、今日は経済に政治が干渉する分野というものは非常に強くなってきておるわけで、国の援助、助成、保護というものが企業にかなり濃厚に出ておるわけですから、そういう点から見ても、生命保険会社とか、あるいは損害保険会社とか、そういうものがもう少し社会性を帯びたものに資金を流すように、そういう考慮を十分させる努力を大臣に要望しておきたいと思うわけでございます。
 次に、大臣の財政演説の中で、来年度の財政投融資は特に重点を住宅に置いた、こういうことが書かれておるわけでありますが、もちろん住宅だけではないのでありますが、住宅、上下水道、生活環境の整備及び道路、国鉄、これに重点を置く、こういう演説内容になっておりますが、住宅は明年度民間以外に、戸数は幾らで、どのくらいふえますか。
#45
○臼井委員長 なお、ただいま武藤君より御要求のありました資料要求につきましては、後刻理事会でお諮りした上決定いたしたいと思います。
#46
○田中国務大臣 三十八年度政府施策住宅としては二万二千戸を予定いたしております。
#47
○武藤委員 二万二千戸の内訳を調べますと、年金福祉事業団、雇用促進事業団、そういうものも全部含めてさようになると思いますが、住宅以外の、大臣が重点を置いておるという予算の中身を見ますと、どうも私は、民生安定とかあるいは社会政策的な見地からの予算というものはそうふえておらない、財政投融資も、一口に言うならば重点はオリンピック対策だ、国鉄を見ても、道路を見ても、オリンピック対策というものに非常なウエートがかかっちゃって、地域格差を解消するというような配慮が欠けておる、こういう感じを持つのであります。この一つ一つの中身を調べますと、どうも都市中心で、オリンピック対策予算だというような感じを持つわけです。そういう点のうらみはありませんか。
#48
○田中国務大臣 財政投融資につきましては、国民生活に直結をする部分、すなわち住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教、中小企業、農林漁業、こういうものをあわせて総額の四九・一%、こういうことでございます。それから国民生活の基盤をつくるというもので、国土保全、道路、運輸通信、地域開発というようなものが総体の三三・一%・こういうことになっておりまして、これを合わせると八二・二%、こういうことでありますので、財投計画すべてを考えますと、国民生活に直接影響する面に対して相当の配慮を行なっておるつもりでございます。ただ、それはパーセンテージではそうだけれども、実際地域別、業種別、機関別に検討すると、大都市偏重だ、こういう論が起きますし、しかも大都市偏重よりもオリンピック中心じゃないか、これはちょうどオリンピックというのがあるのでありまして、これだけはどうしてもやらなければいかぬ。これはただオリンピックというスポーツだけではなく、やはり戦後の日本の世界に対する一つの大きな行事でありますし、これはやりかけて途中でやめるわけにはいかないものでありますし、また恥をかくようなことは日本としても相当マイナスがありますのでいやはりこれらはオリンピック施行の月までには完成をせざるを得ないのでございます。またそれがオリンピック対策だけではなく都市の環境整備であり、密集地の環境整備であり、当然上下水道や道路その他公共施設の都市事情の改善にもつながるものでありますので、オリンピックにだけ重点的にウエートを置いたということではございません。
#49
○武藤委員 いや、オリンピックに意識的に重点を置いたのでないにしても、地域的な配分、道路の直される場所、そういうのを検討していきますと、これはもう結果的にはオリンピック重点道路、重点鉄道、そういうようなどろなわ式な都市計画あるいは生活環境整備ということじゃないかと思うのです。どうも日本の政治家というのはその場になってこないと急いで施策をやらない。いなかの道路はもうほこりもうもうで、付近の住家などは石がはねてとてもガラス戸をたてておけないというほど日本の道路は悪い。ところが都市中心の行政で、中央だけはどんどんよくなっていくといううらみがさっぱり消えていかない。そういう地域格差を解消する意識的な財投計画配分なりあるいは予算の編成というものが現実にはなされてないのですよ。そういう配慮がことしの財投計画の中にも私は非常に欠けておると思うのです。たとえば地域格差解消と称して、北海道東北公庫にわずか二十五億円増額をした、あるいは開発銀行に四国、九州の地域開発のために二十五億円増額をした、五十億円だ。そんな程度で、これだけ細長い日本の地方政治というもの、地方行政というものの水準が改善をされるなんということは、ほんとうの夢ですね。そういう点で私は、もっと地方格差をなくすという点に政治の姿勢というものを直していく必要がある、これは多くの国民大衆の願いだと思うので、そういう点で本年の財投計画には欠くるところがあるのではないか、さように考えるわけです。
 それから第二のこまかい点に入りますが、新規に財投計画に入ってきた公団、たとえば私学振興は前からの懸案でありましたから問題はないのでありますが、鉄道網整備公団、これは一体どこの鉄道網を整備するのか、新たにまた屋上屋を重ねるような公団をつくろうとしておるのか、金属鉱物探鉱融資事業団こういうような新しいものが、また四つ、五つ対象に上がっておりますが、公団、事業団というものをどんどんふやしていって、国会の議決を必要としないで財投計画でやっていく。そうして古手官僚の失業救済場所のようにそういう事業団や公団がなっている。こういう屋上屋を重ねるような公団をみだりにつくっていくという傾向は好ましいですか、大臣はどう考えますか。
#50
○田中国務大臣 公団、公庫等は、御承知のように戦後の新しい傾向であります。政府としては、新設公団、等は機構の増大ということになりますので、努めてこれをつくらないということを原則にいたしておることは、歴代内閣その通りでございます。しかし、これは実際の問題として、一般会計で処理をするか、また補助金等、民間施設のままでもってやるのかということになると、財政投融資計画がつくられたように、時代の要請でこれらの公団、公庫が出てきておるわけでございます。これは一般会計でやるよりも性別会計がいいのだ、特別会計でやるよりも民間資金を入れるには公団、公庫がいいんだというふうにだんだんとなってきておりますが、原則としては、先ほども申し上げたように乱造は行なわない、こういう考え方でございます。しかし、今度三十八年度につくりました国立病院、私学振興、海外移住、鉄道整備、それから金属鉱山向けの公団というようなものは、必要やむを得ない処置としてつくったわけでございます。国立病院が現在のようにどうにもならない状態でも困りますので、これが内容整備を行ないたい、また行なわなければならない。やるならば、何らかの新しい機構が必要であるということで、このような処置になったわけであります。私学に対しては、先ほど申された通りであります。海外移住につきましても、現在のような状態ではどうにもなりませんので、何らか新しい機構等をつくって、一つ積極的なこれが業務の拡充をはかりたいということでございます。それから金属の探鉱、探査会社をつくることは、これは国会の議決に基づいてつくったのでありまして、国会はこれに対しては決議をされておりまして、当然な措置として国会の要請に応じたわけであります。また、自由化に対してこのぐらいの施策ではなまぬるいというぐらいに考えておるわけであります。
 問題は鉄道網整備公団でございますが、これは私が政治的圧力に屈したわけでもなんでもなく、これは必要なものである、今日までなぜつくらなかったかというくらいの気持でつくったわけであります。これは先ほどから申された通り、地方開発、地域間のアンバランスを是正するという施策の中で、政府が長期にわたってやろうということの姿勢を出したのは、鉄道網整備公団であります。こういうことで、この鉄道網整備公団を出したことによって、政府もいよいよ地方格差の解消に乗り出したんだなということが言い得るわけであります。国鉄は七十五億ないし八十億ずつで年々新線建設をやっておりますが、七十五億、八十億という金が使われたことはありません。何だかんだと言いながら、最終的には使われなかったということでありまして、都市に過度集中してきておることは、御承知の通りでございます。道路に比べても、もうすでに日本の一級国道、二級国道、また主要地方道等、総延長約五、六万キロでありますが、これらの事業費を検討いたしますと、鉄道と道路が一体キロ当たり幾らかかるか、また道路は無料公開の原則に立っております。鉄道はその間赤字が出ますけれども、これが地方開発、産業開発に稗益するところはどのくらいであるか。北海道の鉄道は赤字であるけれども、過去百年において北海道がどれだけりっぱに成長したかということを見れば、功罪おのずから明らかでありまして、こういう問題に対しては、地方開発を行なうために必要なものとして、鉄道網整備公団をつくったわけであります。特に、これははっきりいたしておきますと、与野党議員その他中立委員、学識経験者をもって、法律に基づいてつくられております鉄道建設審議会で、全会一致をもって建議をせられておるものでありまして、その建議を前提としてつくったものであり、これが内容の整備拡充をはかるべきであるという考えであります。
#51
○武藤委員 私は、これをつくること自体を悪いというのじゃないのです。たとえば、道路公団というものがあって、道路公団があれば、そこが総元締めになって、各地方へ出張所なら出張所、現場をつくっていけばいいけれども、みんななわ張り争いみたいに、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、それぞれ同じ建設省の仕事の中で公団を地域別につくっておるわけです。それだけの人件費と、かなりのむだというものはあるわけです。そういうものをもう少し効率的に金を使うということを考えるならば、あまりこういうものをみだりにつくるということは好ましくないと思う。たとえば、今の鉄道網整備公団にしても、ローカル線を専門にやるのだ、地方の鉄道や新線あるいは支線を中心にやるんだ、そういうねらいはわかります。決して趣旨は悪くない。しかし、今の国鉄がそういうものを今までやる能力がないのかといえば、今の国鉄当局だってやれることだと思うので、そういうものをみんな別に外郭団体みたいな形でつくっていくというやり方、これはやはり相当深く検討する必要がある。そういう点から新規のものについては十分中身を検討する必要があるのではないかと思う。
 次に、特定船舶整備公団なるものも本年四十九億円の予算でやるようですが、財投から四十一億円、これも本年は戦時標準船を五万六千トンつぶして、新しく四万三千トンの船をつくりかえるという事業団の資金でありますが、いつごろになったら、そういう戦時標準船はなくなるのですか。
#52
○稲益政府委員 お尋ねの戦標船の関係でありますが、一応現在の見通しでは、三十八年度でおおむね終わるのではないかという見通しであります。
#53
○武藤委員 おおむね終われば、以後財投では何も考えなくてもよろしいわけですか。
#54
○稲益政府委員 戦標船の関係は、ただいま申し上げたような事情でありますが、なお、国内で離島航路、そういった方面の船舶の建造を担当しておるわけであります。そういう関係の事業が残っております。
#55
○武藤委員 時間が四十分までですから急ぎますが、次に、日本航空会社に四十二億円公募債の発行を認めるわけです。財投から十二億円、どういう趣旨で日本航空会社にお金を融資するのですか。他に飛行機会社は幾つありますか。
#56
○稲益政府委員 日本航空は御承知のように政府出資をしておる会社であります。航空事業としましては、国内線をやっております全日空その他がございます。国際線をやりますのは、この日本航空だけであります。これに今年度十二億円の出資と三十億の融資を予定しております。この使途は、主として国際線並びに一部国内線にも使うわけでありますが、新たに航空機を整備いたしたい。そのほか、いろいろ地上施設その他の計器の設備資金が必要であります。そういうための資金を組んだわけであります。
#57
○武藤委員 政府出資ということが対象の一つの理由のようですし、さらにもう一つは、国際線だということですね。そうすると、国内線だけだとすれば、こういう対象にならぬわけですか。
#58
○田中国務大臣 これは今、御承知の通り、全日空という純民間機関もございますし、その後統合、合併等を進めておりますが、幾多の航空会社もあることは御承知の通りであります。これらと日本航空と、国内航空をやる場合は全然差がないじゃないかという立場で御質問になったと思いますが、歴史的に見ますと、戦後第一に政府出資会社として日本航空が誕生いたしたわけでありまして、日本航空に対してはちょうど民放とNHKというような関係で今日遇されておるわけであります。特に国際線は赤字でありますが、国際線は当然日本の代表航空会社として国際路線の確保に努めていかなければならない問題でありますので、今度の財政投融資の面における処置に対しましても、国際線に重点的なウエートを置いて行なうようにということであります。また特に国内航空において過当競争を行なっておる全日空等々の問題については、投融資をつけることによって新しい飛行機を買ってもっと競争を激化するというような問題に使ってはならないということは、私が日本航空の社長を呼んで厳重に言っております。それよりも一歩進めて、国内航空路線の競合部門に対しては、お互いに業務協定を行なって、同じ切符でもって両方乗れるようにというくらいな処置を行ないなさい、国内的にむやみに競争してはなりませんということを言っておりまして、私の発言に基づいて日本航空は全日空との間に協定を行なって相互が乗れるようにというような態勢まで持っていって、国内において競合や過当競争を行なわないという原則は確立しております。
 一部国内的に施設、人員養成その他に対しての費用に使われるようになっておりますが、これはちょうどNHKが電波に対して、FMやUHFに対しての新しい研究を行なっておりますように、新しい角度から国策会社として当然検討し、処置しなければならないという面に重点を置くようにという条件を付して財投に計上したわけであります。
#59
○武藤委員 そうすると、産投会計からの出資をしておるというねらいは国際航路の開発、そういう国際線ということがあるから特に日本航空に手厚い保護をしてきたと思うのです。
 そこでことしの融資の中から使われる事業内容は何かというならば、ダグラスという飛行機を二機、コンベアを三機買うというのですが、このダグラスというのは大体国内線に使うわけでしょう。そういう飛行機の購入費も政府の財投の中から出る資金で買うことは、全日空を刺激したり、これとの競合関係を一そう激化する、水をさすようなことになりませんか。これはどうでしょう。
#60
○稲益政府委員 具体的な問題でありますので私からお答えいたしますが、ダグラスを買う予定にいたしておりますのはダグラス8でありまして、ジェット機で、現在世界を飛んでおります長距離飛行の分であります。従いまして、国際線に使う分であります。
#61
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、国内線の問題については他の航空会社と競争したり過当競争をやったり、こういうことは絶対になりません、それよりも一歩進めて業務提携をし、場合によれば合併でもするように、もっと真摯な態度でお互いが歩み寄るようにということを示唆してありますし、航空会社も、一時は全日空がいじめられて困っておったのですが、非常にテンポの早いものですから、今度は日本航空が押されてきたというようなことによってちぐはぐな状態でございましたが、今度はそういうことは絶対にいたしません、両者とも非常に緊密な連絡をとっておりますので、これを三十八年度の財投に計上したことによって激化をするという懸念は全くないというように考えております。
#62
○武藤委員 今の局長の答弁で、ダグラスは国際線だというのはちょっと私の間違いですが、コンペア三機はどうですか。
#63
○稲益政府委員 これも今国際線の中での中距離と申しますか、シンガポール線でありますとか香港線でありますとか、現在では欧州線の南回りに使っております、大体国際線に使われておるものであります。場合によりまして一部国内線用のものが不足します場合には、国内での、たとえば東京――札幌とかそういった距離には使い得るといったような航空機であります。
#64
○武藤委員 しかし実際はコンベアは国内線に使おうという意図で計画をされておるのじゃないですか。完全にこの両機種とも全部国際線に出しますか。
#65
○稲益政府委員 先ほど大臣からお話ございましたように、日航、全日空との協定の問題は、別途お互いに線を侵さないという協定ができておるわけであります。その範囲内で一時――国内で全然使わないというわけではありませんが、主たるねらいは国際線に使うということであります。
#66
○武藤委員 かりに一歩譲って局長の言うことが事実とすれば、これは飛行機を買ってからわかりますが、これを五機買うことによって、従来の国際線を飛んでおったものが今度国内線に使われるということになれば、結果的には国内線をふやすために融通をしたことになるのですね。古いものが国内に入ってくるのですから、全日空との競合関係に入るわけですから、そうすればますます他の航空会社は、政府は少し不公平だということを言い出しますよ。財投でこういう恩恵を与えるのだったら、やはり国内の航空路線というものを開発するという意味ならば、両航空会社を政府は同じように取り扱え。国が中間に入って、十分競合関係で争いの起こらぬような協定をやって、国が補助をしてきた日本航空なら日本航空にがまんさせるなり、政府の発言権のある会社に対して、政府は一つ音頭をとるべきだ、そういう見解を私は持つのです。そういう点について今後どうしますか。
#67
○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、国際線に新しいものが使われるといっても、現在使われておるものが国内に使われて、全日空よりも早くなったり、サービスがよくなったり、機体がよかったりでは同じじゃないか、そういう意味では他の民間会社との競合部門に対しましては、連帯感情を起こして同じ切符を使えるように業務提携をやりなさい、こういうことを言っておるのでありますから、全日空やその他の航空会社との間には、財投に計上したことによっての問題はなくなるという前提に立っております。
 それから、日航に対して政府が財政資金を見ておるのだから、他の会社も見るべきだという問題は新しい問題でありまして、これも当然各国で考えられておる問題であります。しかし日航に対しては、これは先ほど申し上げた通り、戦後唯一の会社としてできたものでありまして、その当時から財政資金というよりも、政府が出資をいたしましてつくられておるわけであります。世界各国とも外国航空をやっておるような航空会社に対しては、政府は出資するとか、財政投融資でめんどうを見るとか、政府が相当大きなてこ入れをしておるというのは、これは世界共通の問題であります。日航に対して現在のままでいいのか、また増資をする場合のてこ入れとして政府がどういう措置をしなければならぬのかという問題も、十分過去にも検討された問題でありますが、三十八年度の要求額には満たないけれども、現在計上の措置をとったわけであります。日航にやるからには全日航にもやれという議論もあり、全日空からも幾らか財政投融資という問題もありましたが、これは全く民間会社でありますので、出すにしても他の金融機関から低利長期のものをというような措置をやるわけでありまして、とにかく狭い日本の中で幾つも会社ができてけんかをしないようにということに対しては、政府は特に配慮をいたしておりまするし、財政投融資に計上したことによって、より以上これらの争いが激化をしないということに対しては、運輸省とも十分連絡をとりながら適切な調整を行なって参りたい、こういう考えであります。
#68
○武藤委員 あと東北開発や石油資源、電源開発、航空機製造会社等についてもお尋ねしたいと思いましたが、本会議も始まるようでありますから、私の質問はこれで終わって、またいつかの機会をいただきたいと思います。
#69
○臼井委員長 午後三時五十分委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後零時五十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時五十七分開議
#70
○臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 関税及び外国為替に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。
#71
○平岡委員 わが国をめぐる国際環境は最近とみに著しい変貌を見つつあります。中でもEECへの英国加盟問題は、今後の世界経済の動向に大きく影響力を持つものとして、その交渉経過が重大な世界の関心事でありましたが、一月二十九日、その交渉中断が主として政治的理由によって宣告せられたのであります。EECの問題が今後いかに進展していくか、アメリカのEECの挑戦に対しての措置はいかなる方向をたどるか、通商拡大法によるアプローチが容易に成功し得るものかどうか、英国は英連邦並びにEFTAの再建に立ち戻るのかどうか、狂欄怒濤の中にありまして、わが政府はいかにその経済政策、通商政策を進めようとするか。EECをめぐる諸問題につきまして政府の見通しと所見を逐次承っていきたいと存じます。
 まず、ついこのごろ外務省は経済外交推進のため、欧州へ特別大使を派遣する意向といわれております。これはEECの統合理念と体制が強まるにつれまして、現在各国別に行なっているところの経済通商上の交渉が、EEC政府を窓口とする交渉に移行するという想定に立つものと報道されております。EECの大筋として少なくとも数週間前までは、かくのごとき一括方式に妥当性があったかもしれませんが、一月二十九日以降今日の時点では、しばらくこの一括窓口対応方式は見合わせ、従来通り各国別に各個撃破の交渉を推し進めるべきではないのか、私はさように思うのですが、その点が質問の一つであります。
 英国のEEC加入交渉拒否に露呈されたEECの脆弱性、すなわち意見の不統一から、EECの統合理念はしょせん幻想ではなかったのかという疑問が出ているからであります。むろんわれわれとしても、EECの統合理念を幻想だとは考えていませんが、当面の対EEC通商政策としては、EEC政府の活動活発化前に、統一的域外通商政策樹立の前に、各国ごとに通商交渉を推進することを至当としていたはずでありますし、いわんや一月二十九日の事態からは、EEC政府に対するよりは、国別交渉をいよいよ強化推進することが必要と考えられるのに、ことさらに特別大使派遣を打ち出した真意は何であるか、まずこの点につきまして、外務大臣のお考えをお聞きしたいのであります。
#72
○大平国務大臣 今平岡委員が言われるように、政府としてもただいままでの経済外交の進め方といたしましては、EECを統一体として交渉をすることよりも、欧州各国との二国間の問題で処理して参るということを原則にいたしております。英国との間には、御承知のように通商航海条約が署名になっております。フランス、ベネルックス三国、イタリア等とは、そこの所在の大使館を通じまして直接折衝いたしておりますばかりでなく、東京におきましても先方からの来訪を得まして、ベルギー等につきましては去年の暮から日伯間の問題の処理に精力的に当たっております。従いまして、日本政府の当面の姿勢は、今御指摘がございましたように、二国間に重点があるということでございます。しからば、ただいままでEECとの間にはそれじゃ全然交渉がなかったかと申しますと、去年、おととしと一おととしが第一次のいわば共通関税政策をEECが打ち出して、一方においてEECメンバー各国で、その共通関税政策以上の関税は段階的に下げていく。逆にそれより現行関税率が低いというものにつきましては段階的に上げていく、そして共通政策にミートさしていこう。これに対しましては、わが国は、先方が共通関税率よりは低い現行税率を上げていく場合には、それだけの代償をいただかなければなりませんので、その限りにおいて、おととしは交渉いたしたわけです。去年の交渉は、おととし目安にしておりました共通関税率というものを二〇%下げようじゃないかということです。これはEECの性格に関連いたしまして、EEC自体も外向きな意欲をもってやっておる証拠だと思うのです。去年はこの二〇%下げていくということに関連しての交渉はやったわけです。従いまして、ただいままでの仕事は現在の外交体制でこなせると思うのです。従って、特別にEEC専任の大使を置くとかいうようなことは、今まで私も慎んで参ったわけです。当面、英国の加盟が中断になりましたけれども、今の体制で、今までやってきておりましたペースで私はこなせると思うのです。今御質問がございました特別大使の派遣の問題は、ひとりEECばかりではないのでございまして、一つ考えておかなければならぬのは、今われわれはOECDに加盟の希望を表明いたしております。これはどのようになりますか、今のところ形勢を逆賭できませんけれども、同時にこの春にはガットの関税一括引き下げ交渉という閣僚会議が持たれるわけでございます。アメリカにおきましては、前国務長官のハ一ター氏が専担してこれに当たるという姿勢をとってきております。かたがた、こういう広域経済問題を現在の各国に在来からございまする公館の機能で十分カバーし切れるかどうかということが私どもの問題でございまして、まだこうすればいいというような成案は得ているわけではございませんで、御指摘がございましたような変革期になっておりますので、日本の経済外交の推進に支障があっては困るので、一体現在の仕組みでどこが困るのか、新しい機構をつくってどういうメリットがあるのか、同時にあわせてディメリットがあるのか、そういった点は十分検討しなければなりませんので、今具体的にこうするということをきめたわけではございませんが、外交姿勢としてどのようにあるべきかということを私どもの課題として今検討を始めておるということでございます。従いまして、予算委員会でお答え申し上げましたように、どういう時期に、どういう仕組みで、だれをそこに向けるかというような具体的なところまではいっていないということでございます。
#73
○平岡委員 たまたま一月二十九日の事態後に、特別大使を送るということを打ち出したのでちょっとおかしいなと思ったわけです。しかし今のお話では、現状においては各国別の交渉を基本として、その補完的な事柄等もあろうし、OECDの問題もあろうし、それからEECの動向を先見して、これを用意するということなら了解できます。ただタイミングとして、ちょっと逆な情勢のときに一括方式を打ち出したという印象でありましたので、そのことをお尋ねしたわけであります。
 次の質問に移ります。承りたいのは、EECの統合理念であります。このEECの統合理念をいかに把握しておられるかをお聞きしたいのであります。EECの中に統合理念について二つのカテゴリーが存在するように思われます。その一つは、ベルギーのスパーク外相をもって代表せらるべきものとも言えましょう。すなわちユナイテッド・ネーションズ・オブ・ユアロップを指向いたしまして、関税同盟から通貨の統合へ、さらに単一政治統合に向かって、域外に対しては一つの主権となるべきものであります。そこまで言い切っていいかどうか知りませんけれども、方向はそういうことであるようであります。言うならばアメリカ合衆国の欧州版を目ざす統合理念であります。彼の統合理念では、その領域もコンチネントにとどまらず、アングロサクソン国家イギリスをむろん排除いたしておりません。これがEEC正統派の立場でありまして、常識的な統合理念であろうと存じます。しかしこれとニュアンスの違うフランスのドゴールの立場の厳存していたことにもつと注目すべきではなかったかと思われるのであります。ドゴールによって代表せられるところの立場は、ユーロピアン・コンフェデレーションの思想であります。EECは関税同盟の実利の靱帯で結ばれた高度の連合ではありますが、各国は主権国家としての姿勢はくずしてはおりません。しかもこの統合思想はコンチネント内のより広い国家群にも及び、必ずしも現在の六カ国に踏みとどまるという限定はないのであります。フランスがEECに抱く統合理念は、せんじ詰めてみまするとヨーロッパの第三勢力の統合思想に背反しないものでなければならなかったはずであります。この点にわが政府の思いが至らなかったために、今回の一月二十九日の事態をまことに突発的な、異常なできごととして受け取らざるを得なかったのだろうと思うのでありますが、まず外務大臣はEECの統合理念につきまして、いかにこれを把握されておるかをお伺いしたいのであります。
#74
○大平国務大臣 EECの統合理念に、大まかにいって二つの考え方があるということは御指摘の通りのようでございます。そこで去年の秋、私が欧州各国を訪問申し上げたときに、各国の首脳に聞いてみたのです。そうしたら、今EECの政治委員会はイタリアの外務次官が主宰いたしております。その人には相当時間をかけて聞いてみたのです。そうしたら、要するに英国が加盟するかしないかということが今当面の問題だ、そして英国が加盟するとなれば、それなりにまた政治統合の理念も実体も変わってくる、従いまして、政治委員会の方は今当面この問題の成り行きを見ておるのでございますということでございました。各国の首脳も、つまり問題は、統合理念なんという問題を当面の問題としていなかったということ、関心の重点は英国の加盟問題に集中しておったという状況でございまして、EEC内部でこの問題の討議が前進しておるという段階ではなかったと思います。加盟中断後、御指摘の政治統合の問題が一体現実の討議の問題になって参るかどうかという点は、私にも予想がつきませんが、しかしいずれにいたしましても日本政府の立場といたしましては、形態のいかんを問わず、ヨーロッパの先進各国が相協力いたしまして、一つの共同体をつくっていくということは、自由世界の強化の意味から申しましても、歓迎すべきことでございまして、私どもはどちらの形態がいいとか悪いとかいう論評をする立場じゃございませんけれども、形態のいかんを問わず、共同体が内容、形態ともに固まって参るということは歓迎すべきことだと考えております。
#75
○平岡委員 抽象的な議論として二つの形態のどっちがいいかということではあまり意味がないと思うのです。質問の角度を変えますと、EECの今日の現実はどちらの統合理念により強く支配されているのかということであります。もっと具体的に言えばフランス、ドイツの枢軸的な二国の考え方に支配されているのか。これは理念としてはさっき言ったスパーク外相のような理念もあるけれども、現実にはこのフランスのドゴールの理念というようなものは相当の比重を持っておるということに判断をせぬと間違うのではないかと思うのです。大平ヨハネさんも池田キリストさんも、この点に見落としがあったのじゃないかということを言いたいわけであります。スパークの理念に幻惑されまして、ドゴールの力量、フランスの考えを軽視したところに米国、英国今回の失敗があり、悪いけれども大卒、池田のヨハネ、キリストのコンビが一転してセルバンテスのサンチョ・パンザとドン・キホーテになり終わった、こういう悲喜劇になったと思われますが、あなたがいらっしゃったおりに、ドゴールあるいはフランスの首脳に会われたときに、フランスの態度にあいまいさがなかったかということをお聞きしたいのであります。池田さんがまたどういうことを話されたか、寡聞にしてわれわれの知るところではありませんが、少なくとも公式的な御発言の中に、すなわち過般の予算委員会における小松幹君に対するお答えの中に、池田さんは、フランスも英国のEEC加入には柔軟な態度であったと言われておるわけなんです。イエスであったとは言ってないですね。柔軟な態度であったと言われておるわけです。この点について、池田さんを先導されたあなたにおいてどういう体験があるのか、この際明らかにしてほしいのであります。
#76
○大平国務大臣 今度の加盟中断という問題は、冒頭に平岡委員が指摘されたように多分に政治的なものがあった、私はそう考えざるを得ないわけであります。当面の事態から判断いたしますと、フランスの態度が決定的に影響力を持っておるというふうに判断されるわけです。しかし私は今度の事態はもう少し時間をかけてみないと正鵠な判断に至らないんじゃないかと思うわけでございまして、政府としてはもっと事態を見さしていただきたいと考えております。フランスの首脳がどのように言われたかというようなことは外交典礼上勘弁していただきたいと思います。
#77
○平岡委員 私がお聞きしたいのは、フランスは英国のEEC加入に柔軟な態度だったと言っていますが、池田さんはイエスととっておったと思うのです。フランスの態度をイエスととっておった。それが三カ月の間に急変して裏目が出たというのか、それとも池田さんがノーであることをイエスと聞き違えたかどうか、この点はどうです。
#78
○大平国務大臣 誤解のないようにお願いしたいのでございますが、フランスが公に申しておることはローマ条約に忠実であってくれということで、ローマ条約を忠実に信奉する以上イギリスの加盟を拒むものではない。それからイギリスはEECに加盟することによって工業品については低関税の利益を受ける、しかし農業産物につきましては過渡的でございますけれども、わがままを言う、これはどうも理屈が合わぬじゃないかというようなことをフランスは言っておりますが、根本はローマ条約を忠実に信奉してお入りいただくのは拒まないということはいつも言っておるわけで、今度の中断後においても繰り返し言っておりますし、在京フランス大使が私のところに参りましても同じような見解を言っておられるわけでございまして、フランスが絶対にノーだというような態度はフランスは終始とっていないのです。だからその点は誤解のないようにフランスのために弁明しておきます。
#79
○平岡委員 前後のお答えから、フランスはイギリスのEEC加盟に対してはパハップスと言っておるわけです。イエスか、ノーか、パハップスかと言えば、パハップスだと思う。御婦人の場合はノーと言われたってまだ脈がある。御婦人がパハップスと言ったらそれはイエスのことなんです。ところが外交の衝にある人の場合は違うのです、逆なんです。イエスと言ったってパハップスと聞かなければならぬ。パハップスということはノーということと知るべきなんです。そこらに池田さんの誤認があったと思う。そういうようにお考えになりませんか。
#80
○大平国務大臣 フランスの基本的な考え方は私が今申し上げたような考え方でおるということです。今度の中断という現象は、主として政治的な理由から起こったと見るべきだろうということについても、あなたと私は同感です。ただこの中断の事態に、その時点の動きだけを見て判断をするというのは、まだ少し即断じゃなかろうか。もう少し事態の推移を見ないといけないのじゃないかというように日本政府としては考えております。そういうことを申し上げておきます。
#81
○平岡委員 高次元の外交政策をプリンシプルにしている大平さんは、少し甘いと思うのです。きょうはとっつかまえて少しやきを入れようということで私の質問をするのですから、そのつもりで聞いて下さい。しかし時間がございませんから、次の問題に移りたいと存じます。
 次の問題といたしましては、EECへの英国加入中断の影響が具体的にどう現われるかを承りたいのであります。英国とアメリカは、なおEECに対する接近をやめないでありましょうが、今後どのような接近の方法をとると思われるかお伺いしたい。政治的、軍事的接近方法はここでは議論の外といたしまして、経済的接近の方法に焦点を置いてお答えを願いたい。またこれと関連をしまして、日本に与える影響がどんなものであるかお伺いしたいのであります。これは外務大臣、大蔵大臣から、通産大臣、まだとすれば、通商局長からも御答弁をお願いしたいのであります。
#82
○大平国務大臣 この交渉中断がいつ再開されるか、今のところ予想がつきません。従って、また同時に関係各国がどのような政策をこれからあみ出して参るかというような点も、予想がつきかねるのでございます。しかしフランス以外のEEC五カ国は、英国の加盟を断念しないで、依然として加盟を希望しておる。そういう閣僚会議をその直後も開くことにいたしておりますが、精力的に加盟の方向に進めていくだろうと思います。英国も断念するのではなくて、この間マクミランがイタリアに参りました共同声明で見られる通り、また英イ協力して当たろうという姿勢になっていることは御承知の通りでございます。
 そこでしからば、いつ再開されるかの見通しはともかくといたしまして、現実に関係各国はどういう政策方向を日本に対してとるだろう、それが日本に対してどういう影響があるだろうということを申し上げますと、経済というのは予想の作用でございますから、EECの加盟が確実だ、その基礎ができればこういう事業を始めようというようにもくろんでおられた英国の財界にとりましても、大きな衝撃であったと思うのです。従って、当面英国は、設備投資の不振等から決して楽でない事態に直面するだろうと思います。従って、英国は景気調整策のようなことを考える方向に行くのではなかろうかと一応考えられるわけです。
 それからアメリカはEECを相手取りまして、通商拡大法にもありますように、EEC条項を適用して大幅な関税引き下げをやる、あるいは関税をなしにして通商の拡大をうんとはかって、みずからのドル防衛にも寄与しようという非常に野心的なプログラムを持っておったのです。それが一頓挫を来たしたということは否定できないわけでございます。従いまして、私が予算委員会でも申し上げました通り次の手段として用意されているのは、関税の一括引き下げ交渉でございますから、これに力点がかかってくるのではなかろうかと思うわけです。
 そこで日本への影響を考えてみますと、いずれの場合にも日本は決して悲観すべき立場にいないと思います。と申しますのは、英国並びに英連邦各国は従前以上に日本への接近を深めてくるだろうと思います。それからアメリカもまたEEC条項で一頓挫を来たしたが、しかしみずからのドルは防衛しなければならぬし、通商は拡大の方向に持っていかなければならぬとすれば、これまた対日接近に進んでくると見ることは当然だろうと思うのでございます。それからEEC各国はもとよりことしから去年にかけても対日貿易は伸びてきておりますが、この趨勢は依然として続くし、英国の加盟中断によりまして、対日接近の度合いが減殺するどころか、逆に日本に対する接近は深まってくると見ておるわけでございまして、私はこの事態がしあわせであったか不幸であったかということは論評いたしませんけれども、経済の現実といたしまして、日本に対する世界先進各国の接近は強まってくると見て差しつかえなかろうと思います。
#83
○田中国務大臣 イギリスのEEC加盟に対する失敗ということは、原則的に考えて、EECの発展の過程をずっと見て参りますと、このようなことが予想せられることではないかという平岡さんの意見もわかります。これは先ほどの御質問でございましたが、EECがどういうふうにして発展をしてきたか、いろいろな人が言っておりますが、私たちが平たい気持で見る場合に、戦後西ドイツ、フランスを中心にして国境撤廃ということがデンマークに通じ、ベネルックス三国に通じ、だんだんとEFTA諸国も含んでいくような趨勢にあることは御承知の通りです。しかもこの国々は第二次大戦を契機として膨大な植民地を解放せしめられておりますし、新しい経済機構の中で共通の防衛体制をとらなければならないというような考え方でEECが発展的に今日まで来たわけであります。私は、そういう意味においてイギリスとの間にある程度のトラブルがあるということは予測できたじゃないかということもあとになっていわれますが、確かにこれは過程においてこのようなことは予想せられた、同時に中断せられたイギリスのEEC加盟の問題に対しては、私は、あくまでもこれは中断であって、EEC発展の過程を見て参りますと、やがてEECに英国が加盟するという事態はくると思います。これがEECに加盟できないという場合にどうなるかというと、OECDやそれからガットの場を通じまして、昨年の九月の一MF、その他世銀の総会等も非常にこれらの問題は強く各国の代表によって意見が出されたわけでありますが、やはり主要十カ国というものは何らかの形で団結をし、またお互いに一つの共同体のようなものをつくる必要がある、こういう非常に強い意見が出されました。これが一MFにおける主要十カ国の大蔵大臣会議になり、いろいろな議題になったわけでありますが、そういう機運はお互いにあるのでありまして、私はそういう方向というものは、一時中断したことをもって絶望的に考えることはないだろうと考えます。
 イギリスは確かにこの結果、英連邦諸国との特恵の継続強化というようなことをしなければなりませんし、それからEFTA諸国の結果も強化していかなければならぬと思うのです。それから米国が唱えておる一括関税引き下げという、いわゆるガットの場における交渉というものに積極的になって、EECに加盟したと同じような目的が達成せられるか、もしくはEECに加盟というイギリスの当初の目的が達成せられるような方向に対して動いていかなければならないだろうというふうに考えるわけであります。先ほど外務大臣が言われた通り、国内的にはなかなか大へんだと思う。ある意味においては景気刺激対策等もとらなければならぬと思いますが、現在のイギリスの状態で景気刺激対策はとり得るかどうかという問題は、これは常識的にもなっておりますし、それらの問題に対して相等困難な道をたどらなければならない場面が出てくるであろうと予想されます。米国は、先ほど外務大臣が言われた通り、イギリスがEECに加盟することを前提として通商拡大法も通したわけでありますし、これが中断したのは晴天のへきれきというふうには思わなかったでしょうが、失望しておるということは当然だと思うのです。私たちも九月、十二月と、二回アメリカに参りましたときに、まずイギリスが加盟し、それを中軸としてアメリカが一括関税引き下げをし、日本もそのあとにというような口ぶりでありましたが、池田訪欧を契機として面接EECとの接近をはかった成果に対しては、アメリカ側も十分に十二月の会談で認めておった事実に徴しても明らかだと思います。イギリスと同じように一括関税引き下げというような態勢で進むと思いますし、またEEC自体も、ジロンとの交渉によって明らかにせられておりますように、五カ年間で五〇%引き下げるというようなところまでいくかは別として、二〇%程度の共通関税引き下げということを打ち出した経緯もありますから、これらの情勢にかんがみて、アメリカもイギリスもEFTA諸国との連絡を密にしたり、またガットの場を通じての関税引き下げ交渉等をも進めていくだろうというふうに考えます。日本への影響は、私はさしてないのではないかと思うのですが、具体的な問題から言いますと、日英通商航海条約を締結しまして、これを通じてイギリスのEEC加盟のルートを通じて日本も非常に接近をしていくというような考え方であったのに対しては、ある意味で中断的な状態になったと言わざるを得ないわけであります。しかしEECの諸国は日本に対して相当好意的でありますし、日本の国際的な評価もだんだん上がって参っておりますから、日本は今まで通りの気持でEECに対する接近と対処していくべきだと思います。このイギリスのEEC加盟が中断したからといって、EECと日本との貿易が拡大の方向をたどっておりますが、これが激減をするとか、そういう現実的な問題は考えられない。ただEFTA諸国との実情等を考えますと、OECDの日本加盟という問題は、欧州がより結合しようというような機運の中にあるときに、必ずしも促進せられるかどうかという問題に対しては疑問があると思いますが、しかし世界の大勢としては、IMF総会の事情等を十分しんしゃくして考えますと、日本としては比較的に前向きの姿勢で今まで通りのラインでEEC接近がはかれるのではないか、こういうふうに考えます。
#84
○松村(敬)政府委員 通産大臣の出席がおくれておりますので、かわりまして答弁いたします。
 今、外務大臣、大蔵大臣からいろいろ影響をどういうふうに考えるかという御答弁がございましたので、特につけ加えて申し上げることはないと存じますが、一番はっきりいたしております違いは、今御指摘がございましたように、通商拡大法で考えておりましたEEC条項が使えなくなったということが、一番はっきりした結果であると存じます。しかしそれは使えませんでも、アメリカ及びイギリスは五〇%の引き下げの権限、新しく与えられました通商拡大法に基づくこの権限を利用して、アメリカ、カナダ、イギリスというようなところから関税交渉で一般的な関税一括引き下げを相当積極的にやろうという空気はなお強まってくるのではないかと考えております。EECに対しましては、イギリスが入らないことになりましても、日本のEECに対する貿易方法として特に新しい変わったことということはないかと存じますが、要するに、せっかく日本に対しまして、従来以上に好意的あるいは開放的になりかけておりますEECに対して、輸出秩序をますます強く確立いたしまして、日本の貿易を上手に伸ばしまして、せっかく日本に対する開放的あるいは好意的な空気を壊さないようにやるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
#85
○平岡委員 あんまり都合の悪そうな話は出なかったわけですが、私どもは、ちょっと数え上げても……。もともと米国の通商拡大法によるEECの接近は、EEC入超の羽状からしてEEC側ではあまり歓迎してなかったわけです。そうして今度のようなことがあればよけいこの点はデッドロックに乗り上げるであろうということも私は想像します。対EECの特恵的な関税取りきめがますます米国にとって困難となる。従って、米国のEECに期待したドルの防衛は当然くずれて参ります。そういうところからドル防衛のほこ先が日本へ回ってくるわけですね。日本への援助のカット、それから域外買付における日本品の除外、日本の対米関税の一括引き下げを強引に押してくる、まだこちらの体制が整わぬのに相当強引にやってくるであろうこと等をわれわれはおそれるわけであります。そういうことで、少なくとも対米関係は非常に警戒を要すべき事態になると私は思っております。
 英国の方は、これはフィアンセをそでにして他のやつにモーションをかけてそっちから袖にされた、前のフィアンセにまた頭を下げていくということで、これはなかなか容易なことじゃないと思います。しかしこれは英国自体のことですから、われわれへの影響それ自身とすれば、むしろ英国が困っておるから心理的に日本に接近してくるであろうという、そういうことで、むしろ日本に一そうのチャンスがあるかもしれません。まあ思いついただけでも悪い面もずいぶんあることを一つ肝に銘じて、御善処あらんことをお願いしたいのであります。
 さてもう一つこの際にお伺いしたいのは、EECは外向きか内向きかの議論でございます。先日の予算委員会における小松幹君の質問に対しまして池田首相は、外向きであるという意味の答弁をされましたが、これは事実に目をおおう答弁であると思うのであります。首相の答えは、昨秋訪欧した際に英国の加入に対して柔軟な態度であった、英国の加入が実現しなかったからといってEECが内向きであるという考えはとらない、こういう答えをしているわけであります。外務省のその後の分析も、首相答弁に符節を合わせるように、EEC自体はその内在的理由から外向きの態度をとらざるを得ないであろうといっているのです。この内在的理由はあとからお聞かせ願いたいのですが、これもわけのわからぬ御表明であると思っております。私はかように思うのです。御承知の通りEECの本領は関税同盟であります。関税同盟である限り域外に対して排他的である論理を内包することは当然なんです。ドゴール的理念の強い影響下にあって、EECはますます封鎖的性格が強いと見なければならぬと私は思うのです。よしEECがガットの指向する関税引き下げに対応する姿勢をとるにせよ、これは本来のEECの立場ではないのであって、そたは世界的な関税引き下げに相対的には対応していかなければならぬというだけの話であって、域外と域内とには差別をつけるというのが本来のEECの姿であるとむしろ観念すべきと私は思うのであります。特に英国のEEC加入交渉中断という今日の時点において、EECをもってなお外向きなりとする議論は通用しない議論であると私は思うのであります。結論は、EECが閉鎖的なものであるということを肝に銘じて今後の対策を立てる必要があること。政府にこれは異論はないと思うのですが、異論があったらばお聞かせ願いたい。その点どうですか外務大臣。
#86
○大平国務大臣 事柄が観念的にならぬために、EEC結成以来のEECとわが国の貿易を見てみますと、平岡委員も御承知の通り、一九五八年が一億二千三百八十万ドル、五九年が一徳三千三百八十万ドル、一九六〇年が一億七千四百六十万ドル、一九六一年は二億一千三百八十万ドル、そして六二年は十月まで、第三・四半期までですでに去年の実績を突破しまして、二億一千三百五十万ドルです。この事実をもってして、あなたがおっしゃるようにEECは閉鎖的であるなどというのは私は立論が立たぬと思うのです。問題は、あなたが御指摘されたように、関税同盟でございますから、域内諸国と域外諸国との取り扱い方に経過的に差別が出てくるというのは当然なことなんです。そのことを目してすぐ内向きだと即断されると、また立論が誤ると思うのです。なぜならば、EECの第二次の関税交渉は、それを現に二〇%下げるように努力しておるじゃありませんか。そしてその共通関税というのは域内諸国の平均をとっておるわけでございまして、特に上げておるわけではない。それを二〇%下げるべく第二次は努力したわけでございます。今度はまた五〇%の一括引き下げ交渉をやろうというわけでございますから、アウトワード・ルッキングにいかないとEECの発展がないわけでございまして、だから、平岡君は初めから少し思い込んでおられるのじゃないかと私は思います。あなたはもう少し事実を分析していただきたいと思います。
#87
○平岡委員 大平外相の言わんとすることもわからぬでもないのです。ただ私は、きょうの質問は教訓的な質問なんで、大平さんがEECにぞっこんほれているとか、それから昨秋大卒さん、池田さんが大いに成果を上げたということに警鐘を発するつもりなのです。現実に、日本が十月一日から八八%自由化をやった。それに対してフランスの場合が四五%、それからイタリアが少しは上がってきていますけれども、これまた六〇%の対日自由化率です、それから英国が七〇ないし七五%、ベネルックス、西ドイツがやっと八〇%、だからそういう現実を踏まえていただかぬと、そう楽観論ばかりは通らぬということを申し上げたいために申し上げただけです。
 そこで議論に終止符を打つならば、EECの性格はインワードネスであるということ、ただしアウトワード・ルッキング――見せかけということでどうですか。それ以上でもなければそれ以下でもないということで、この辺のところは結末をつけた方がいいと思うのでありますそういう意味において、EECの性格は、論理的には本来排他的なものである。ケネディは明快にも言ってのけております。ケネディはEECを挑戦者として年頭教書に断定しているのであります。日本もEECを挑戦者、競争者と断ずべきであります。しかして米国とフランスの欧州の主専権争いでEECその他の動揺しているこの際にこそ、一挙に国別に交渉を活発化すべきである。英国は一そう日本に迎合するであろうし、EEC各国とも強弱、程度の相違はあるにしても、門戸を開かせるのによい機会だと思います。米国すらもわが国の出ようによっては、従来のような一方交通的な傲岸不遜の態度を改めてくる可能性なしとはしないと私は思っております。今こそ日本経済外交は巻き返しに出る絶好のチャンスだと思っております。いたずらに次元の高いことを誇りとせずに、次元の高い外交よさようなら、がめつき経済外交よ今日は、この調子でいかなければいかぬと思うのですが、大卒さんいかがですか。
#88
○大平国務大臣 私は日本がEEC各国と競争相手にないなどと思っておりません。これは額面通り競争相手であり、また競争すべきものだし、そういう刺激がないと経済は沈滞いたしますから、私はEECは当然競争相手として大いにお互いに切瑳していくべきものだと思います。その過程を通じて双方の貿易は拡大しなければならぬものだと思います。
 それから、ケネディ大統領がEECに対するチャレンジを言うたということでございますが、私も英語は十分じゃございませんけれども、チャレンジという意味はあなたの言う挑戦という意味でなくて、これは重要な問題であるというように外務省としては解釈いたしておるわけでございます。
#89
○平岡委員 この議論を通じまして私が政府に注文せんとすることは、自主独立の経済外交を展開すべきだということを申し上げたいのであります。今回のヨーロッパの事態は、流動する国際情勢の変転の中で米国が不動の権威ではないということの立証をしたわけです。これが教訓です。ヨーロッパにドゴールのごとき――これはアップ・ツー・デートか、時代錯誤か、それは知りませんが、ドゴール信奉者は相当あるのですが、ヨーロッパにドゴールのごときどえらい根性のあることをまざまざと見せつけられたということです。この教訓から、日本は米国にも気がねすることなく、がめつく経済政策を進めるべきである。まず対英交渉、対EEC交渉では、大平外相の次元の高い政策はやめにしてもらわなければならない。たとえば三十五条援用撤回が、これは対英交渉でしたが、センシティブ・アイテムやセーフガードをそのまま存置して、これと引きかえで援用撤回が行なわれたということはナンセンスです。こういうことを少しかみしめてみる必要があるのではないか。センシティブ・アイテムを許し、それから英、フランス、ベネルックス等に相手国の満足するようなセーフ・ガードを認めて、わが国は忍従の精神をもって無差別に、一方的に自由化を行ない、ガット三十五条援用撤回を求めるべしとするのはこれはばかな話であります。ガット三十五条撤回を求めるのは、相手国に対日差別待遇をやめさせたいからであって、この期に及んで名をとって実を捨てるのでは、今までわが国が何のために必死になってガット三十五条援用中の各国と撤回交渉をやってきたか、さっぱりわけがわからなくなるのであります。外務省にこの反省はないのかどうか。また通産大臣はどうお考えか、お答え願いたいのであります。
#90
○大平国務大臣 あくまで事実に立脚して議論していただかないと困ると思うのです。センシティブ・リストをそのままにほうっておいて、名をとって実を失うようなことはしてはいかぬじゃないか。私どもふびんでありますけれども、そんなことはいたしておりません。セーフガードは双務的なことでありますから、双方援用できるわけでございますから、センシティブ・リストはこの間私は予算委員会でも御答弁申し上げた通り品目はうんと減らしてありまするし、また、その期間もこのままほっておいたら無期限なものを、数年間の間に対英関係においては期限をつけて、それから完全な需要を回復しましょうというきわめて堅実な行き方をとっておるわけでありまして、その限りにおきましては、私は平岡さんからおほめの言葉こそちょうだいすれ、今おっしゃったようなことは私はにわかに肯定できません。
#91
○福田国務大臣 平岡さんの言っておられる自主的外交、自主的経済ということには、私は大いに賛成でございます。また政府もそういう気持でずっとやってきておると思っておるのでありまして、決して貿易とかあるいは商売とかいうものは、そう次元が高いとかいう次元の問題ではないと私は思うのであります。要するに今考えなければならないことは、百万円今商売をして物を売ったというときに、来年は百二十万円売ろう、百三十万円売ろうといういき方でいくのか、そんな百万円単位なんというのはめんどうくさいから、一千万の単位で売り込め、こういうことになるのかということも考えてみなければなりません。私たちはやはり貿易でございますから、順を追ってやっていくということの方が、現実に合うと思っております。また自分ができもしないのに、まあ一千万を売ろうと思うには、少なくとも五、六百万円の資本金がなければいけない。その資本金がないのに一千万円も売ろうとしてえらい高利の金を借りて、あとでじゃないかというようなところがあって、そこのところは平岡さんのお気に召さないところだと思うのであります。そこいら辺はお互いわれわれの立場も一つ理解していただいて、これは後退しているならおしかりを受けるのは当然であります。今、外務大臣の言われたように、一歩々々前進しておるということで一つ御理解を賜わりたいと思うのであります。
#92
○平岡委員 量的に後退すればさたの限りなんです。そういうことを申し上げているのでなしに、外交折衝、経済折衝は商売のことであるから相互性を主張してくれるということなのです。あなたの言うことと僕の言うことが二律背反して矛盾することじゃない。この議論はこの辺で終始符を打たせていただきます。
 少しく質問の観点をかえまして、日本はみずから共同市場をつくり得ないことから国際的孤立感の焦燥に必要以上にかりたてられておる向きがないでもないと思います。米国、英国を含むEEC、それに日本の三本柱を組んで、そして枢軸的骨格づくりのもとに相互特恵的に通商を進めようとした池田さんも、ある意味でこの焦燥感を持っておられたと思うのであります。焦燥感の現われがこのように出たのだと考えられないことはないと思うのであります。また、今回の英国の拒否自体から反動的に何かPECですか、太平洋共同体とか、あるいは東南アジア経済共同体等の夢物語がまた出てこないとも限らないのでありますが、さような構想からは、現実にはいかなる有効な対策も生むことはできないと存じます。日本の持ち得べき共同市場とは何か、この際考えてみる必要があると思うのです。私はここにあえて、古い中国の詩人がうたったように、遠く春をたずねたが、遠くに春はなく、たずねあぐんだ春はわが庭前の梅の中にあったということを指摘したいのであります。日本の求める共同市場は、実は日本自体の中にあると判断すべきだと私は考えます。EECは一億七千万の人口の市場であります。アメリカは一億八千万の市場であります。わが国は一国で一億の市場であります。共同市場の最大の経済的なねらいというものは、近代工業が大規模な経済を実現し、能率的に運営できるに足る大きな市場を確保することであります。従って、一億に近い日本経済は、共同市場の条件をすでに具備しておると判断すべきであります。ここで量産体制化、製品品種の専門化、流通市場等における中小企業の産業分野の法的明定による確保、工業立地再配置、中央道開発による外部経済の均衡整備、コンビナート乱立の整理統合、一人当たり所得向上による経済成長の浮揚力の設定すなわち市場の質的増大、表日本偏重主義の排除など、内包的発展によりまして、近代産業的規模の経済を実現する余地は十分残されておると私は考えます。ただし、これは外国のスポンサーであれ、国内のスポンサーであれ、スポンサー筋に振り回される無計画な生産体制、流通体制であってはなりませず、もっと合理的な整合のために計画性を持たすべきではないか。所見を承りたいところであります。
 要旨は、日本国内を一つの共同市場と見て内を充実させる方策こそ、最も地についた今日的経済政策と思うが、政府の所見はどうであるかということであります。これは大蔵大臣、通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#93
○田中国務大臣 日本が人口の数において共同市場であるという考え方、これは一つの文書の上、演説の中では言い得ると思いますが、共同市場というのは、世界的な経済関係において、一つの単位として共同市場論が出ておるのでありますから、私は日本がEECやアメリカに匹敵をする共同市場であるというような考え方は持てないと思いますが、しかしEECやイギリスやアメリカを含めた主要十カ国というような関連において一つの有力な市場になり得るものである、またならなければならないということは考えております。
 それからもう一つは、国内生産を見ますと、御承知の通り貿易規模は国民総生産の九%もしくは一〇%でありますから、その意味で相当大きな消費市場であるということは言い得ると思います。ただ端的に申し上げますと、共同市場ということが今論ぜられておりますのは、貿易の上で日本がアメリカ及びEEC及びイギリスというような国々と積極的な貿易をして国力を培養しようというのでありますから、原材料のない日本が海外から原材料を輸入してきて、日本で製造したものを日本の国内で消費するということでは、経済理論上成り立たないわけでありまして、その意味ではEECのような共同市場であるという考えに立つわけにはいかないと思います。
#94
○福田国務大臣 ただいま大蔵大臣が御答弁申し上げたことで大体尽きておると思いますが、しかし平岡委員が言われるように、国内のいわゆる態勢の整備をし、またそれに伴う消費等々は、一つの大きな経済を動かす要素であるということは事実でございますから、従って、国外のことも重視しなければならないが、国内の問題も大いに目を注いで、そうして誤りのなきように措置をしていくべきであるというお考えには、私は賛成でございます。
#95
○平岡委員 さっきのわが庭前にありは一つの私の提案なんですがね。それはヨーロッパの共同市場に匹敵するに足る東南アジア共同市場というものを無理に考えても、これはもうお互いに工業力とか、そこにうんと差があるわけです。それから民度等も違うのですね。非常にそういうことで無理なわけです。ですから、むしろそういうことよりは、日本の国内市場それ自体を共同市場というような立場に立ってみなおす。たとえてみれば、ヨーロッパの場合の共同市場だったら南イタリアの開発というものは共同の一つの力でやっています。そういうことを、日本単一の共同市場――共同市場という言葉を媒介にして考えれば、やはり東北とかあるいは北越とかそういうところにも産業基盤がちゃんとできるような均衡をとった開発をしなければならぬのです。こういうことになれば、これは単なる企業の採算性からばかりでなしに、政府の意図としてはそういうところまでまんべんなく目を配るという心構えが出てきます。
 それから、たとえば米国がヨーロッパから締め出されて、資本市場を日本に求めてくる。企業の基地を日本に求めてくる。こういう場合に、これはIMFの規定によりますと、貿易為替に対しましては、自由化されれば、要するに経常取引においては制限することはできないのです。しかし資本の進出に対しては、IMFは各国がどういうように自主的にそれを規制しようと、それは制約を何にもしていないわけです。そういうときに、もしアメリカが、日本に企業を興すということで強引にきた場合において、東北とかあるいは宮崎県、大分県のコンビナートならば、アメリカの企業がきてもけっこうでございますと指定する、いや規約をつくることだってできるわけです。日本の企業では、それは企業家のオプションで場所の指定はできませんが、外資法とか日米通商航海条約をIMFの許容する条件一ぱい使えば、資本の日本への進出に対してはちゃんと制約できるのです。それほど日本に来たいのならば、どこそこでやってくれというような規定の持ち方も今から用意したら私はいいと思うのです。だからやはり日本を一つの共同市場だということで、きわめて現実的に考え得る、一つで共同市場もないものだというお話もあろうけれども、今一億の日本の市場自身というものを中心にして、意欲的な態勢を整えよということは一つの試案たり得よう、そういうことで申し上げたわけであります。
 このような基本的な立場に立って、がめつい海外折衝で、ときには自由化に伸縮性を持たし、それから外貨の日本進出は適当に押え、取捨選別を日本本位にやり、それからときには保護関税をすらとりつつ、世界じゅうのどの地域、どの国から自由な貿易の拡大を求められても、優位に立って応じ得る態勢を、大体向こう二カ年の間につくり上げてしまう、これをせぬといかぬと思うのです。例示してみれば、重化学工業の競争力の培養とか、これは一番必要なことであろうと思うのですが、その他対外通商政策の強化、自由化を武器にして自由化を求めるという一つの行き方、あるいは輸出の秩序化によって、相手国に輸入制限の口実を与えないという方針、こうしたもろもろの方法を動員して、意欲的な産業政策を行なおう。米国の驥尾に付してのEECの接近や、あるいは汎太平洋経済協力機構の創設とかOECDへの参加等は、日本としてはパハップス程度に扱っておいて、世界の自由化方式による通商に十分耐え、優位な地位を占める日本共同市場の態勢づくりこそが、日本の対外通商政策の根幹でなければならぬと思います。わが国におきましては、国内経済政策即対外経済政策になるはずだと私は思います。
 基本をここに置きますと、次に具体的にとるべき貿易拡大方式というものは、EECとの貿易拡大が一つあります。それから対ソ貿易の拡大があります。対中国貿易の拡大があります。いずれも重大な日本経済にとっての活路であります。今こそ日本にとりまして、多元的、自主的な経済外交路線を策定をすべきときでないかと思うのであります。私はそうした立場でやはり政府は取り組むべきだと思うのですが、経済担当の大蔵大臣、通産大臣御両者から、御見解を述べていただきたいと存じます。
#96
○田中国務大臣 経済外交を自主的に行なっておらないというような前提でお話がございましたが、しかし前にも外務大臣、通産大臣が答えられたように、自主的な立場で将来を見通しながら経済外交を進めておるわけであります。特に貿易の面から見ますと、対米貿易のウエートは非常に大きいというところの数字から見まして、何か対米従属だとか、いろんなことを言っておられるようでありますが、これは戦後の原材料の輸入と輸出の状況から見まして、対米貿易が非常に多かったのですが、対米貿易必ずしも悪いのではなく、このために日本は今日まで経済発展をしてきたのでありますから、これを重点的に考えていって一向差しつかえないということは当然だと考えます。しかしアメリカ景気に左右されたりいろんなことでもって、日本の貿易そのものが重大な影響を受けるというようなことでは困りますので、これに当然対応した貿易に進まなければならないということで、イギリスとの間に日英通商航海条約の改定を行なったとか、またEECに対して接近をはかったり、日本としては自由化を短い間に八八%までやった現状でありながら、関税一括引き下げ交渉にも応じよう、こういう前向きの態勢をとっておりますのは、日本がこれから貿易立国として立ち上がっていくためには、どうしてもそのような世界の主要工業国との交流、貿易をより活発にやらなければいけない。またその対象が広ければ広いほど、相手国の経済情勢その他によって日本がこうむるマイナス面がカバーせられるということで、これは当然自由化に処しては、そのような対象を広げて考えておるわけであります。
 この貿易も一つの手ですが、国内という問題でありますが、国内の問題に対しては、新産業都市をやったり、また低開発地の開発促進をやったり、それから地域間、業種間の格差解消ということで、これは思い切った措置をしなければいけません。それから北海道でも裏日本でも、南九州や四国でも、今までのスケールでは合わないという感じがあったかもしれませんが、純経済的な指数ではじいてみる場合、東京、大阪のように人口、産業の過度集中したところは、その企業単位で計算するとペイするかもわかりませんが、しかし国が投資をする公共投資、その他一切のものを計算をしてみますと、過去明治から百年間でつちかわれた主要工業都市が、これから合理的に安く産業が発達するとも必ずしも言えないわけでありまして、水の問題それからエネルギーの問題、労働力の問題、これらを総合的に勘案をして、日本の地域開発を行なって参っておるわけであります。今度財政投融資の中で外資を相当見込みましたのも、そのような方向を示唆するという政治的な意図も含んでおるわけでありまして、国内産業基盤の整備をはかるとともに、経済外交は全く自主的に、しかも世界の大勢に順応しながら、国際経済社会の一員として雄々しく立ち上がっていく、こういう態勢であります。
#97
○福田国務大臣 平岡議員の申された通り、自主的に経済をやり、外交をやるという場合も、自分に力がなくては、日本の産業に力をつけなければいけないのである、それがすなわち、産業に力をつけること自体が、ほんとうに自主的外交をやり、経済をやるゆえんになるというお説には、私は賛成でございます。従って、そういう方向で通産省といたしましてはその行政もやっておるつもりであります。
 なお、対ソ、対中国貿易について言及されたのでありますが、もとより、きょうは日ソ貿易の協定もできたようでございますし、われわれといたしましては、中国であろうがあるいはまたソ連であろうが、一応商売をするという建前で、もしその商売が日本のためになる、利益を生むという形であれば、もちろん外交問題等もありますけれども、政経は一応分離という形でやっていくという前向きの姿勢でやっておることは、おわかりを願えると思うのであります。ただ、残念なことに、中共にいたしましても、ソビエトにいたしましても、われわれが貿易をしようとすると、どうしてもいわゆる貸し売りが多くなり、あと払いが多くなる。(「貸し倒れが出る」と呼ぶ者あり)貸しが多くなる。そうしますと、貸し売りをしました場合には、それじゃ国内の会社はどういうことをしますかというと、物をソビエトへ売ったその代金は、輸出入銀行から一応借りておく、そして今度はまた保険をつける、こういうことをする。今貸し倒れという問題が起きましたが、貸し倒れになりましたならばそれは大いに損になりますが、いずれにしても、そういうような中共とかソビエトに認めた条件というものがすぐはね返ってきまして、東南アジアの諸国に対しても、あるいはまた場合によってはEEC等にも同じような条件で商売をしてくれというようなことが出てくるのでございまして、ここいら辺が実はわれわれの一番頭の痛いところでございまして、もしこれが現金取引であったならば、まだまだやってやれると思うのでありますけれども、いかんせんどうもあと払いとか延べ払いとかいうことで言われますので、実は非常に困難を感じておるというのが実情でございまして、決して私たちはソビエトであるからいやだとか、中共であるからどうだというような考え方ではなく、自主的に、西欧がやっておるような条件であるならば当然やらなければいかぬという考え方で、前向きに処理しておるということを御理解を願いたいと思うのであります。
#98
○平岡委員 田中さん御指摘の対米貿易を軽視はいたしておりません。中共とかソ連とでも採算が合えばやれということがわれわれの主張なのですから、逆な意味におきまして、対米とも、これは採算が合い、得ならばやれという建前なんですから、そのことで変な観念的な区別は私はせぬつもりであります。
 さて、大きく日本の貿易、輸出入関係を見まして、米国、日本、東南アジアの三角貿易は、現状全体の七割程度になっているわけですから、やはりそこにウエートが現実にあります。そこで、この現実の中から、このようなことが拾い出せるのですが、一つ御検討いただきたいと思います。対米入超の大幅改善をしなければならぬということ、これは自明の理であります。次に対東南アジアの輸出の停滞をどう打開するかということも、これはまた重要な案件になります。結局は――この間カナダと日本との通商のネゴシエーションを持ちまして、カナダが非常にうまいことをいっておりました。三角貿易――日本対カナダでは日本の入超であると、日本がその点を大いに主張して改善すべしということを言うたら、自由貿易の世界というものは多角的なものだということで、うまく非常にスマートに逃げております。私はそういう意味で東南アジアと日本とアメリカの間の現状の決済関係を、より一そう合理的に解決するということに手を染むべきだと思います。まず東南アジアの国々は決済手段を持っていないのです。そこでわが国は今後東南アジアに対しまして国際的規模での肥料援助を導入する、彼らの巨額の食糧輸入を逆に節約させるという手を使わなければならぬと思うのです。米と第一次商品の生産性を改善させることが緊急なことと私は思っております。かくして東南アジアの第一次生産品が良質かつ低廉になれば、日本の第一次商品の輸入をアメリカから東南アジアに転換できることになる。この方策の推進を阻害しておるのはアメリカの余剰農産物であります。この点についても日本はアメリカに対し何ら気がねなしにやっていくべきであると思っております。この一点にしぼりまして政府の今後とるべき態度はどういうことでありましょうか、御所見を伺いたいと思います。
#99
○田中国務大臣 対米貿易が相当なウエートを占めておりますことは御指摘の通りであります。また数字の上から見ましても、一九六〇年に輸出が十一億五千九百万ドル、輸入が十三億六千二百万ドル、それから六一年には輸出が十一億二千四百万ドル、輸入が十九億七千七百万ドル、それから六二年には輸出が十二億二千七百万ドル、輸入が十三億五千百万ドルというような状態でありまして、一時八億五千万ドルも入超であったときから、国際収支の改善対策をやったわけでありまして、今日では入超幅も非常に狭まってはおりますし、昨年の六月からは日本の輸出超過にようやくなってきておるというような状態で、貿易の状態は改善せられておることは御承知の通りであります。
  〔臼井委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
しかしアメリカと日本との貿易は、御承知の通りこれは昭和二十年から日本が独立をするまでの間非常にアメリカに世話になっておったということ、また対日援助見返り資金というような問題でアメリカとの貿易をしてきたという問題、しかも敗戦後日本がほとんど重工業施設も爆破せられたし、また相当の原材料をアメリカから輸入しなければならなかった、しかも日本の経済的な援助やその他もアメリカが相当大きくやってくれたということで、今日まで貿易のはしりはアメリカを中心にして出てきたわけでありまして、戦後十七年の今日、対米貿易は相当ウエートを置いているというのは、歴史的にも当然だと思うのです。そして今日アジア関係に対しては六一年でもって輸出が十二億ドル、それから六十二年で十一億ドル、輸入が六一年で七億九千万ドル、六二年で六億八千万ドル、確かにアジアは出超でございます。しかし、入超なところは金があるし、それから出超のところは金がない、こういうところで決済を三角関係でやれ、こういうことでありまして、これは日本としては自主外交上当然それらを研究したり交渉すべきであります。私は昨年九月及び十二月の日米経済閣僚会議のときにこの問題を相当強く発言をいたしました。これはアメリカがバイ・アメリカン政策、シップ・アメリカン政策というのをとっておりまして、これは対外援助費を削減するか、もしくは防衛費を削減するか、資本の自由流出を削減するか、三つのうちいずれか一つやらなければ、アメリカといえども無制限のドル保有国ではないので、やむを得ず、最良の策ではないけれども、アメリカが対外経済援助をして、自分が金を払うものに対してバイ・アメリカン、シップ・アメリカン政策をやっておるのです。これはやむを得ざることなのですというように向こう側は言っておりましたが、もう一歩進めまして三角関係を考えてみたらどうですか。アメリカが今イギリスに考えておること、アメリカがEECに接近しなければならない、また主要十カ国というものを中心にあらゆる問題を解決しなければ、経済的相互発展はできないということを言っていることを、そのまま日本が申し上げるとすれば、それはアメリカが直接東南アジアの低開発国にアメリカ製品を渡そうとすると、これは三輪車のほしい人にオートバイをやる、オートバイのほしい人に自動車をやるということになって、これは私は効率的な投資にはならないと思うのです。日本もかつて戦前バイ・日本、シップ・日本と同じことをやって、案外評判が悪かったので、結局アメリカのように最高度のものの貿易の対象というものは、EECやイギリスや日本です。それで日本やEECというものは、かつての植民地や低開発国との間に合理的な貿易をする方が、アメリカが直接貿易するよりも非常にいいのです。ただ問題は決済の問題でありますが、アメリカが低開発国に金をやって、そして最もその地域に合う日本やEECの品物を買うということで、それを製造するために日本はアメリカから原材料や大型機械を輸入するのでありますから、バランスをとってみれば一体どっちが得かわかりませんよ。お互いがもっと真剣にそういう問題を検討すべきであるということを事実をあげ、数字をあげて私は説明をして参ったわけでありまして、あなたが今言われた三角貿易は、単にフレミング氏が言われたカナダ、日本、アメリカという三角貿易というのでなく、より対日、対米貿易といろ現実を基盤にして考えましても、アメリカのためにもなり、日本のためにもなり、またそれがEECやイギリスとの主要工業国の連携を強化することにもなるのでありまして、そのような問題に対しては、前向きで積極的な考え方で進めて参りたい、こう考えます。
#100
○平岡委員 最後に日ソ貿易につきましてお伺いしたいのです。
 時あたかも今夕ソ連の使節団との間で調印が結ばれるそうでありますが、日本は日ソ貿易にやはり活眼すべきだと思います。これが飛躍的発展を展望される理由は、ソ連の大規模な東部開発プランであります。ソ連はこのプランを一九五九年から六五年の七カ年計画において実行中でございます。現在のところ一〇〇%の遂行率を示している。投資額は二千億新ルーブル、邦貨換算七十五兆億円、年率十兆億円余りであります。最重要部分はシベリア開発であります。その裏づけとなっているのがウラルと西部シベリア、それから東部シベリア及び極東における水力、鉄鉱石、石炭、石油、森林等の驚くべき包蔵力であります。この計画に要する機械設備技術は、ソ連国内でまかなうものもありましょうが、不足分はこれを外国から導入する方針と聞いております。しかしこれが導入には地理的、経済的条件から見て、わが国が最も有利な立場にあることは衆目の見るところであります。日ソ貿易は従来輸入超過と見られましたが、この開発計画で出超傾向が濃厚となったわけであります。数年後の対ソ貿易年間五億ドルの想定はきわめて現実的なものであります。鉄鉱石、石炭、木材は、ソ連東部の豊富な資源でありますが、それぞれの品質、積み出し設備、日本の需要量などに一定の限界がありまして、多くとも年間数千万ドルをこえないと思う点が欠点であります。そこで米国の石油カルテルの横暴の一角をくずすためにも、対ソ石油貿易を敢行すべきであると思うのであります。日本経済の自主性回復であることに間違いございません。
 かく見てきますと、わが国には対ソ貿易上きわめて恵まれた好条件がそろっていると見なければならぬのであります。言うなれば、対ソ貿易上の絶好のチャンスを今わが国は迎えているわけであります。そういうことですから、問題になっているソ連へのパイプ売り込みも逡巡する必要は私はごうもないと思います。こんなことをまともに論議するようでは、日本の経済外交が地についたものでないこととなると思うのです。この点は反省していただいていいと思うのです。米国とかNATOに別段気がねをする必要はないと思うのです。この課題に対しまして、政府はどう対処せられますか、お伺いしたいのであります。
#101
○田中国務大臣 対ソ貿易につきましては、政府が従来とっております施策に対しては十分御承知であろうと思いますし、先ほど福田通産大臣からもお答えをいたした通りでございます。ただ財政当局者から見ますと、一国に非常に長期の延べ払いというようなことで、日本の外貨保有にも限度がありますので、可能な限度でなければ、なかなか言うごとく簡単に輸出を伸ばすということもできないわけであります。今言われた通り、ソ連が非常に大きなシベリア開発の計画を持っておるということは聞いております。しかし非常にスケールが大きいだけに、大きなものをすべて動かすということは、これはまだ人類の歴史を見ても大へんな問題であります。原材料は非常に多いお隣の中国の工業五カ年計画、アメリカが、かつてやったテネシー・ヴァレーのようなもの、アマゾン開発、今ナセルがやっておるアスワン・ダムの計画とか、特に南方の諸国もみな原材料は持っておるのですが、これが工業化ということに対してはなかなか大へんなことであります。ソ連も三十数年間にわたってシベリアに対しての計画を進めておって、その計画が緒につき、相当大きな水力発電所等も建設せられておる事実も仄聞するのであります。そういう意味で東欧とEECとの間には四、五十億ドルの通商が行なわれておるようでありますが、ソ連とアメリカ、ソ連とEECとの間に対しても、地域的にも今申された通りなかなかシベリア開発に対する機械、器材等の貿易が行なわれるということはむずかしい状態でありますので、当然シベリア開発について日本に対して目を向けるということは、これは当然のことだと思います。また日本とソ連との間には貿易協定もあるのでありますから、ケース・バイ・ケースで今までは順調に貿易が行なわれてきたわけでありますが、現在の状態を見ますと、もう二億数千万ドルの貸しということになっておるんじゃないかというふうに考えます。こまかい数字はまたあとからお答えしてもいいと思います。でありますので、国際収支改善という面もございますし、また御承知の東南アジア諸国に対する賠償、経済援助というような問題もありますし、そういうような問題も考えながら業界の間で、対ソ貿易として今までのワクを広げていくというような考え方でやっておることに対しては、政府はそれを認めておるわけであります。これは今日でお互いが言うように、先行き投資であって、非常にいい市場であるというふうに、今すぐ踏み切っていくほどの資金的な余裕はないので、バランスを見ながら対ソ貿易を進めていくという考え――石油の問題は、これはいつでも出る問題でありますが、これは石油どころではなく、パイプの問題がこの前出ております。石油と同じくシベリアからパルプ材を引いたらどうかと言うのですが、これに対してはワン・セットでなければならぬということがあるわけであります。でありますから、石油の問題をやるにしても、またパルプの問題をやるにしても、これはセットですから、なかなかちょっとやそっとの投資で貿易ができるような問題ではないのであって、大体二十年、三十年という、いわゆる築港までやる、船もやる、鉄道も敷く、そこに対する設備もセットで投資しなければいかぬ。それが延べ払いになるか、現物でもって引き取ることになるか、そういう問題は中国に対する問題と同じであって、なかなか規模が大きい問題でありますし、今外交上の問題、その他今の自由化の問題もありますので、これらの問題は、今政府部内において慎重に検討いたしておるわけであります。
  〔吉田(重)委員長代理退席、委員
  長着席〕
#102
○平岡委員 長いこと大へんありがとうございました。以上の議論を通じまして、私の言わんとしたことは、英国のEEC加盟交渉中断から打ち出すべき日本経済と貿易の進路のための教訓は何かということであったわけであります。政府の通商産業政策は、あくまでも自主性に立ち戻ること、より深く日本経済の体質改善への道を歩むべきこと、また世界経済のイコール・パートナーとなるために、ここをがめつく立ち回って、欧米にキャッチ・アップ、キャッチ・オーバーする機会をつかむべしという主張であったわけでありますが、政府のこれに対しまするところの最後の御答弁を聞きまして、私の質問を終わりたいと存じます。
#103
○田中国務大臣 経済貿易政策でありまして、御議論のありますことは、非常に有益な御質問であって、傾聴いたしたわけであります。こういうような、今あなたが述べられたような問題をお互いが一つ一つ判断をして、これからの自由化に対応しての貿易経済外交政策を進めていかなければならぬことは当然でありますし、また国内的にも財政金融政策は、これは一体のものでありますので、これらに対しては十分の配意を重ぬべきだと考えております。方向としては、自主外交を行なうべきだということでありますし、イギリスのEEC加盟中断という問題も新しい世界の事態でありますので、これらの事態を的確に判断をして、自主的な経済政策を進めていかなければいかぬ、貿易政策を積み重ねていくべきであるという基本的な考えに対しては十分しんしゃくをいたしまして、誤りなきを期して参るつもりであります。
#104
○臼井委員長 次会は、明後七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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