くにさくロゴ
1962/06/11 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第43号
姉妹サイト
 
1962/06/11 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 社会労働委員会 第43号

#1
第043回国会 社会労働委員会 第43号
昭和三十八年六月十一日(火曜日)
   午前十時四十分開議
 出席委員
   委員長 秋田 大助君
   理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君
   理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君
   理事 柳谷清三郎君 理事 大原  亨君
   理事 河野  正君 理事 八木 一男君
      安藤  覺君    井村 重雄君
      伊藤宗一郎君    上村千一郎君
      浦野 幸男君    木村 守江君
      久保田円次君    久保田藤麿君
      田澤 吉郎君    田中 正巳君
      古川 丈吉君    前田 義雄君
      松浦周太郎君    松山千惠子君
      森田重次郎君    米山 恒治君
      淺沼 享子君    小林  進君
      五島 虎雄君    島本 虎三君
      田邊  誠君    滝井 義高君
      中村 英男君    長谷川 保君
      吉村 吉雄君    井堀 繁男君
      本島百合子君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 大橋 武夫君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (経済企画庁調
        整局長)    山本 重信君
        労働事務官
        (職業安定局長)三治 重信君
        労働事務官
        (職業訓練局長)村上 茂利君
 委員外の出席者
        議     員 島本 虎三君
        議     員 田邊  誠君
        議     員 吉村 吉雄君
        専  門  員 安中 忠雄君
    ―――――――――――――
六月十一日
 委員松浦周太郎君及び米田吉盛君辞任につき、
 その補欠として安藤覺君及び木村守江君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 委員安藤覺君及び木村守江君辞任につき、その
 補欠として松浦周太郎君及び米田吉盛君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 最低賃金法案(勝間田清一君外十二名提出、衆
 法第二二号)
 港湾労働者の雇用安定に関する法律案(島本虎
 三君外十一名提出、衆法第二八号)
 家内労働法案(吉村吉雄君外十一名提出、衆法
 第三〇号)
 職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第八九号)
 政府に対する不正手段による支払請求の防止等
 に関する法律を廃止する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第一五九号)
     ――――◇―――――
#2
○秋田委員長 これより会議を開きます。
 勝間田清一君外十二名提出の最低賃金法案、島本虎三君外十一名提出の港湾労働者の雇用安定に関する法律案及び吉村吉雄君外十一名提出の家内労働法案、以上三案を議題とし、審査を進めます。
#3
○秋田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。田邊誠君。
#4
○田邊(誠)議員 私は日本社会党を代表いたしまして、最低賃金法案の提案理由を説明いたします。
 本法案を提出いたします理由は、第一に現行法の内容、その雇用状況を見ましても致命的な欠陥があることであります。第二に、社会党案が最低賃金制の本来の精神、すなわち憲法第二十五条、労働基準法第一条、ILO第二十六号条約及び第三十号勧告の趣旨に立脚するものであるということであります。社会党が最低賃金法案を提案する理由は、右の二点に集約されるのでありますが、特に本法案が現実的に要請される理由は最近の労働情勢より見て、若年労働者の不足、臨時工の増大、中高年齢層の就職難という雇用状況から見て明らかであります。
 第一の理由、つまり現行法の致命的な欠陥を具体的に例示いたしますと、大体次の五つの点に要約できると思うのであります。
 一は、現行法が労使対等の原則を無視しているということであります。ILO第二十六号条約及び第三十号勧告を見れば明らかなように、最低賃金制の運営にあたっては、労使が対等の立場で参加すべきことを規定しております。最低賃金制の趣旨が、労働者の最低生活を保障しようということにある以上、このILO第二十六号条約及び第三号勧告の言うところは当然守られなければならないものであります。しかるに政府は、いまなお第二十六号条約を無視して批准しようともせず、またこの条約に違反する現行最低賃金法の運用によって、わが国の低賃金構造が温在されるという欠陥がはっきりと実証されているのであります。
 二は、現行最低賃金法の運営による実績を見ますと、最低賃金額を算定するにあたって、労働者の生計費が全く考慮されていないという欠陥であります。現行最低賃金法第三条は、最低賃金は労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならないと規定されております。この規定は、最低賃金決定の規準として国際的通念となっている三原則、すなわち前述いたしました労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力の三原則を総合的に勘案しなければならないこととは一致しているのであります。しかるに最低賃金額を実際に決定するにあたっては、三原則のうちの一つ、つまり企業の賃金支払い能力のみが優先的に考慮されている実情でありますために、類似の業務に従事する労働者であっても、企業の規模が相違するというだけで賃金に非常な格差があるのでありますし、さらに労働者の生計費を無視した企業本位の業者間協定による最低賃金額でありますために、最近の異常な物価騰貴により実質賃金はますます低下いたし、その結果、若年労働者を大企業に独占されて、労働力の不足に悩むという自家撞着におちいっているのであります。このようなことになる理由としては、監督行政が予算不足のために確保されておらないということもありましょうが、根本的な理由は、現行法の運営が全く企業本位となって行なわれているからであります。
 三は、現行法が労働者の組織化を妨げる役割を果たしているということであります。周知のように、諸外国における最低賃金法制定の動機を考えてみまするに、最も大きな動機の一つとして、労働者の組織化の促進ということがあげられているのであります。この諸外国のあり方と比較いたしますときにわが国の現行最低賃金法の運営は、全くこれと逆行する傾向を示しているのであります。たとえば大企業労働組合が労働協約を結び、その協約下に未組織の労働者を組織しようと努力している最中に、低い賃金の業者間協定を結んで、労働者の組織化の努力を水泡に帰せしめるということ、これはまことに遺憾なことでありますが、数多くの事実としてあげられていることであります。本来労働行政の目的は、労働者の組織化を育成し、それによって労働者の生活の向上をはかることにあるのであります。この労働行政本来の目的に違反して現行最低賃金法が運営されている限り、私どもは根本的立場から現行法の廃止を要求せざるを得ないのであります。
 四は、現行の最低賃金制度が最高賃金制化しつつあるということであります。このようになる理由は、現行の最低賃金協定が、過当競争の排除と求人難の打開ということに基づいて決定されている実情の中にあると思うのであります。過当競争を排除するために業者が協定し、一定の賃金以下は支払ってはならないことを決定はするが、一たんその事態が回避されれば、この決定した最低賃金額が標準賃金として固定化し、結局頭打ち賃金としての作用を持ってきているのであります。このことは、現行最低賃金額が業者本位にきめられている当然の帰結でありまして、このような事態が一般化する傾向を私たちは深く懸念するのであります。
 五は、現行法が右にあげたような欠陥を持ちながらも運営されていくことは、結局全国一律の最低賃金制は成立し得なくなることであります。
 右の五点はごく大まかに見た現行最低賃金法の欠陥でありますが、このような欠陥を持つ最低賃金法は、むしろわが国の低賃金構造の維持に役立つものでありまして、私どものとうてい容認し得ないものであります。したがって現行最低賃金法成立以後の施行状況を見ますと、昭和三十八年一月末現在で、業者間協定による最低賃金の締結数は千百二十件、適用使用者数十三万一千人、適用労働者数は百九十三万人であります。このうち、最低賃金法第九条及び十条(業者間協定による最低賃金決定方式)による最低賃金の決定状況を見ますと、この適用労働者は百八十五万人に達するのであります。この実態から見ましても、現行法の適用数が雇用労働者全体に占める割合は、きわめて微少の部分にしかすぎず、これは実質的に現行法が、わが国の低賃金構造の維持の役割を果たしていることを如実に物語っているのであります。このような認識に立ちますとき、私どもは現行法を廃止し、本来の意味の最低賃金法を成立されるほかないと考えるわけであります。ここに日本社会党があらためて最低賃金法を提出し、わが国の低賃金構造を打破し、労働者の健康にして文化的な生活を実現しようとする現実的な要請があるのであります。
 次に私は、日本社会党提案の最低賃金法案の目的と、法案の内容の概略について申し上げたいと思うのであります。
 まず本法案の目的は、わが国の低賃金構造を打破し、労働者に対して憲法第二十五条に規定する健康で文化的な最低限度の生活を営むことを可能ならしめることにあります。
 周知のように、池田内閣はこの高度成長政策の失敗は、国民生活にはかり知れない悪影響を及ぼしているのであります。特にわが国の実態を見ますときに、最低限の生活すら維持できない貧困者が六百万人をこえて存在するのでありまして、これを雇用労働者の賃金の面から見ますと、最低限の生活をするに必要な賃金すら得ていない不完全就業者が六百万人もいるのであります。そして池田内閣の高度成長政策の失敗による激浪は、社会の最下層に呻吟するこれらの貧困者、低賃金労働者に対して、最も深刻な結果をもたらしているのでありますが、それに対して何らの救済措置も講ぜられていないのであります。これは道義的に見ましても、また社会保障政策の上から見ましても重大な問題でありますが、このような低賃金労働者を一掃しない限り、わが国の全般としての賃金水準の上昇はあり得ないのであります。そしてこの低賃金構造打破のためには、全国一律の最低賃金制がまず必要であり、これなくしてはわが国の賃金実態を正しい方向に向けることはできないと思うのであります。
 要するに日本社会党の最低賃金法案の目的は、日本の低賃金構造の実態に目を向け、その構造打破が急を要するとの観点に立つとともに、またILO第二十六号条約及び第三十号勧告の精神をもくんで提案されたものであります。
 次に私は、日本社会党の最低賃金法案のおもな点について、法案の趣旨を説明いたしたいと思うのであります。
 第一に、本法案は労働基準法第二十八条第二項に基づいてつくられたものであります。御承知のように現行法の成立の際、第二十八条は修正され、第二十九条から第三十一条までは削除されております。
 社会党案は附則において労働基準法第二十七条を削除し、第二十八条から第三十一条までを修正して復活しておりますが、その意図は次の点にあるのであります。
 すなわち労働基準法の最低賃金の規定は、憲法の精神を受け継いで具体化し、労働者の最低賃金を保障すべき立場からつくられたものであります。しかるに政府は、この憲法の精神をじゅうりんし、労働基準法の最低賃金規定を骨抜きにした現行最低賃金法をつくったわけでありますが、私どもは、現行最低賃金法は、憲法、労働基準法、ILO第二十六号条約及び第三十号勧告の精神にもとるものであると深く憂慮するのであります。ここに私どもが、憲法、労働基準法の精神に沿った、正しい意味の最低賃金法案を提案する理由があり、労働基準法第二十八条から第三十一条までを復活させた重大な意義があると信ずるのであります。
 第二は、最低賃金額決定の基準は、生計費 一般賃金水準、その他の事情を考慮して定めることといたしました。これは、現行法の欠陥のところで述べましたように、監督行政の不行き届きと関連して、業者の賃金支払い能力があまりに優先する企業本位の偏向を防止し、正しい意味の最低賃金額を決定させることにあるのであります。
 第三に、雇用されている労働者は、原則としてすべて一律に、一ヵ月最低一万円を保障されることにいたしました。現行法の運営による業者間最低賃金においても、その絶対額が最低生活費に及ばないのみか、同業種間においてすら最低賃金額に格差があり、労働者の団結、組織化を阻害していることにかんがみまして、全国一律の最低賃金額を法定いたしたのであります。
 第四に、最低賃金の定めを含む労働協約が、一定の地域の事業の大多数の労働者によって結ばれた場合、この協約をその地域の他の同種の労働者にも拡張適用できる道を開いたものであります。ここで一定の地域とは、全国または府県、あるいは一行政上の単位をも含むものであります。これは、最低賃金についての業種別、規模別、地域別の格差を解消し、労働者の組織化を促進し、労働者の生活安定と向上をはかろうとすることにほかならないのであります。
 第五に、この協約の拡張適用の場合、適用を受けるほうの労使に異議申し出の権利を認めたことでありますが、この異議申し出が賃金審議会で認められた場合、その意味に基づいて一年の猶予と、一年の範囲内で別段の定めをすることができる道を開いたことであります。
 第六に、本法案では中央賃金審議会に勧告権を与え、スライド制を規定し、労働大臣がこの勧告を受けた場合は必要な措置を講ずべき義務を規定いたしたのであります。
 以上はごく概略の本法案の内容説明でありますが、何とぞ慎重審議の上、本法案の精神である普遍妥当性を理解
 され、本法案を御採決されんことを望むものであります。
#5
○秋田委員長 次に島本虎三君。
#6
○島本議員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました港湾労働者の雇用安定に関する法律案の提案理由の説明をいたします。
 戦後における日本の経済は、資本主義のメカニズムとしての不可避の起伏を経ながら、矛盾を内包しつつも一応発展の一路をたどっているのであります。またこの経済発展と密接に関連する国際貿易においては、対米依存の不安定な貿易構造でありながらも、貿易量は年々増大しているのであります。
 ところが、わが国の港湾労働者の労働条件は、前近代的な諸慣行のもとに置かれて、職安行政の不備による手配師等の存在によって、労働賃金のピンはねは常識化し、就業の不安定となって悲惨な生活環境に呻吟しているのであります。このような生活環境に対する不満、抵抗が、昨春の例を引くまでもなく、港湾労働者の陸上労働への逃避となって、港湾労働力の不足という現実を招いたのであります。このように経済変動の波を直接に受ける港湾労働者は、好況の場合には労働力不足が起こり、不況の際には失業と低い労働条件とに追いまくられているのであります。
  一例として横浜港における港湾日雇い労働者の生活状況を見ますと、本人以外の家族のいない者が全体の四五・三%を占めているという事実が示されております。これを一般の日雇い労働者と比較してみますと、一般日雇い労働者の場合、本人以外に家族のいない者は一六・四%となっており、港湾日雇い労働者の生活がきわめて特殊なものであることを如実に示しているのであります。港湾日雇い労働者の大半が家族を持ち得ない根本の理由は、結局これからの労働者の賃金収入、就業の不安定にあると考えられるのであります。この事実を常用と日雇いとに分けて、不就労日数で見ますと、常用の場合、五日から九日までの不就労日数の者が四四・七%、四日以内が三八・六%ということになっております。ところが日雇いの場合を見ますと、五日から九日までの不就労日数の者が三五・五%、十日から十四日の者が二八・四%を占め、日雇い労働者の就業の不安定が明らかにされているのであります。このように就業の不安定である結果、賃金収入が少なくなってくるのは当然であります。これを月額収入で見ますと、七千円から一万円の者が一四・六%、一万円から一万五千円までの者が五八・一%で最も多く、二万円以上はわずかに二・四%で、常用の場合では五三・八%であるという事実に比較して、きわめて低いことが立証されるのであります。
 このようなわが国の港湾労働者の労働条件の現実を重視した世界の港湾労働者は、国際的な連帯のもとに、去る三月十五日を国際港湾労働者連帯行動日として、わが国の港湾労働者の労働条件の向上と生活の安定を目標に総決起大会を開くに至ったのであります。つまり世界の港湾労働者が統一行動に決起し、世界の各港における日本貨物船のボイコットに立ち上がるという事態が発生したのであります。これはわが国は言うに及ばず、世界各国の経済、国民生活に異常な影響を与えたであろうことは明らかであります。
 世界の港湾労働者が、このような形で抗議せざるを得ないことは、ひとえにわが日本政府及び港湾事業者が、港湾労働者対策をおざなりにした結果にほかならないのであります。ここにわが党が本法案を提案する第一の理由があるのであります。
 第二の理由は、国際収支の面から見て、港湾作業料を低く押えることに問題があると思うのであります。御承知のようにわが国の海運事業は年々発展の一途をたどり、その年間取り扱い量も増大し、今日では年間四億トン以上の取り扱い量を示しているのでありまして、海運業の発展がわが国経済の発展にとって主要な部分を占めていることが明らかにされております。しかし問題は、わが国の政府が港湾作業料を低額に押える政策をとっている事実にあると思うのであります。これは国内の一般料金とは異なり、対外的な問題でありますとともに、国際収支面にも大きな影響を与えるものであります。たとえば諸外国の港湾作業科を見ますと、トン当たり平均で、日本の場合二百円、世界各国において低いといわれているフィリピンにおいてすら五ドル、これは千八百円であります。さらにアメリカにおいては九・五ドルでありますから三千四百二十円で、わが国とは雲泥の差があるのであります。一方、年間取り扱い量四億トンのうち、二億トンが外国船取り扱いとなっているのでありまして、結局一トン当たり四ドルの損失と見ましても約八億ドルの損失をこうむっているのであります。政府が港湾作業料を低く押えるという方針をとっている結果、国際収支面でこのような問題を生じているのであります。この事実を私どもはきわめて重視し、対外的な方針の是正と、わが国海運業の正しい将来のためにも、本法案を提出する第二の理由があるのであります。
 第三に、本法案はILOの内陸運輸委員会においてなされました港湾労働者の雇用恒常化に関する決議の趣旨に、全く合致すものでありまして、国際的見地から見ましても、本法案の成立が必要となってきているのであります。
 以上三つの理由が本法案を提出いたしました理由でございますが、これらの理由の根本に、わが国の低賃金構造の問題があることを強調しておきたいのであります。御承知のようにわが国の労働者の賃金はきわめて低いのでありますが、それは結局ここで取り上げている港湾日雇い労働者のような低賃金労働者が無数に存在しているからであります。したがってわが国の低賃金構造を打破し、正常な労働関係を樹立するためには、これらの低賃金労働者への対策を確立し、雇用の近代化と生活の向上をはかることが必要であると思うのであります。ここにも私どもが本法案の成立を重視し、その成立を期する理由があるのであります。
 次に、本法案の内容を簡単に説明しておきたいと思います。
 第一に、日雇い港湾労働者の不安定性の除去し、計画的な雇用を促進するために、日雇い労働者の登録性を実施することにしました。
 第二に、港湾労働の計画的雇用を推進するために、中央港湾労働委員会と地方港湾労働委員会を設けることにしました。
 第三に、この港湾労働委員会が常に港湾労働事情の実態を調査し、港湾運送事業の合理的、総合的計画を立て、それによって各港湾ごとに必要な労働力の定数を定めることにしました。
 第四に、この必要な労働力に比して、常用港湾労働者数が不足する場合は、登録港湾労働者の中から不足せる労働者数を指定し、指定した労働者を優先的に雇用する義務を雇用主に課することにしました。
 第五に、この指定労働者が万一不就業の場合は、不就業手当を支給することにし、不就業手当は原則として雇用主負担とし、その一部を国庫が補助することができるとしました。
 右が本法案の趣旨並びに内容の簡単な説明でありますが、つけ加えておきますと、世界のほとんどの海運国は一九四七年ごろ港湾労働法を制定しております。一九四九年にはILOも港湾労働者の雇用恒常化に関する決議を採択して、各国に港湾労働法の制定を促しているのが実情であります。
 以上が港湾労働者の雇用安定に関する法律案の提案理由の説明でありますが、何とぞ慎重審議の上、本案の採択を望むものであります。
#7
○秋田委員長 次に吉村吉雄君。
#8
○吉村議員 私は日本社会党を代表いたしまして、家内労働法案についてその提案理由及び内容の概要について御説明いたします。
 わが国の労働基準法は、雇用関係にある労働者に対象とするものでありまして、商社工場または問屋等の業者から委託を受け、そのものの製造等を目宅等で行なう家内労働者に対しては、法の適用がないのであります。
 わが国の家内労働には陶磁器、漆器の製造業、西陣織をはじめとする織物業の伝統的技術による手工業的生産の専業的なものと、竹製品、わら工品等の農家の余剰労働力を利用して発達した副業的なもの、さらに主として未亡人、半失業者、低賃金労働者の家族等によって行なわれている被服、手袋、造花、玩具等の製造に見られる家計補助としての内職的なものがあり、これらは資本制工場生産の時代になっても社会の最下層労働として沈でんしているのであります。
 これらの家内労働者は、労働保護法はもちろん、社会保険立法の恩恵の外にあって、報酬は業者の恣意にゆだねられ、作業の繁閑、景気の変動の危険も全部負担せしめられているのであります。
 その労働報酬の劣悪なることは、中小企業の工場労働者のそれに比較してもなお格段の相違があり、しかも作業環境も衛生上きわめて不良にして、これら健康上必要な最低水準にもはるかに達しない劣悪な労働条件をこのまま放置することは全く社会的問題であり、これが解決はきわめて緊要であると考え、ここに本法案を提出した次第であります。
 諸外国におきましても、このような事情にかんがみ、家内労働者を保護するために、最低賃金法の中で規定し、あるいは単独に家内労働法として制定し、あるいは若干の業種の家内労働の禁止をする等、その労働条件の改善につとめてきているのであります。
 また本法案の制定は、最低賃金法案との関連において必要性を有するのであります。最低賃金法のみを実施いたしますと、同法は前述したごとく雇用関係のある労働者を適用の対象とする関係上、一般中小企業の労働者と、家内労働者との労働条件の格差はますます拡大され、このことは、企業間の競争をきわめて不公正にし、かつ経営者は工場を解体し、機械器具を分散して労働者の自宅に持ち帰らせ、家内労働に逃避する危険すら考えられるのでありまして、最低賃金制度の実効をあげるためにも、企業間の公正競争を期する見地からも、本法案は必要であると考えるのであります。
 本法案は大企業労働者、中小企業労働者、零細企業労働者、家内労働者と並ぶわが国の低賃金構造の最底部にあるこれらの労働者の最低報酬を保障するものであって、最低賃金法と相まって、わが国労働者の生活水準を引き上げ、労働者の生活の安定と資質の向上をはかり、わが国経済秩序の確立をはからんとするものであります。
 以上が本法案を提出する理由でありますが、次に本法案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、家内労働者とは委託を受けて物品等の製造などに従事し、これに対し報酬を支払われるものをいうと規定いたしまして、その最低労働報酬額は都道府県労働基準局長が物品ごとに決定することにいたしました。
 第二に、最低報酬額決定の基準は、最低賃金法に定める時間労働賃金に当該物品等の製造などに要する標準所要時間を乗じて得た額とすることにいたしました。
 第三に、労働時間の制限その他作業環境の規制等の問題がありますが、労働の実態から規制することは事実上困難でありますので、これらは今後の研究にまつことにいたしました。
 第四に、機構といたしまして、最低報酬額その他を審議するため、中央家内労働審議会、地方家内労働審議会を設け、監督組織といたしましては家内労働監督官を置くことにいたしたのであります。
 本法の施行は最低賃金法と同じく一ヵ年後でありますが、調査の必要上家内労働審議会のみを公布と同時に発足いたしますことにいたしたのであります。
 以上が本法案のごく概要でありますが、何とぞ慎重審議の上、本法案に御賛同賜わらんことを望みます。
#9
○秋田委員長 各案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
     ――――◇―――――
#10
○秋田委員長 内閣提出の職業安定法及び緊急失業対策法の一部を改正する法律案、及び政府に対する不正手段による支払請求の防止等に関する法律を廃止する法律の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
#11
○大原委員 それではこれから野党質問に入るわけですが、社会党といたしましては、この法律案は、日本の失業問題をどうするかという、そういう政策の特徴的な問題を含んでおりますから、したがって私ども社会党といたしましても、社会党の政策や方針が失業と貧乏をなくしていく、あるいは資本主義の害悪である貧乏と疾病や社会悪をなくしていく、こういう基本的な政治の課題として取り組んでおりまして、私は第一陣で質問をいたすわけでございますけれども、これから引き続いて十二名の同僚委員と、さらにそれぞれの専門家の出席を求めまして、社会党といたしましては、各方面から徹底的に審議をいたしたいと思っておるところであります。
 委員長にお願いをいたしておきますが、与党の出席についてはもちろん、五名の発言者があるわけですが、これらの発言者につきましても、私どもといたしましては、十分尊重いたして議事運びをいたしてまいりたいと思っておりますから、野党の質問につきましても、十二名プラスアルファにつきまして十分尊重されまして、そうして議事運びをお願いいたしたいと思いますし、私のほうからは、質問におきましては、できるだけ重複を避けて、質問やその他におきまして疑問のある点につきましては、三回でも五回でも繰り返してやりますけれども、質疑応答における時間延ばしなどのそういう質疑につきましては、一切これを回避いたしまして、模範的な失対二法案につきましての審議を進めてまいりたいと思いますから、与党の委員諸君におかれましても、レギュラー・メンバーをきちっとそろえて――そのときどきに顔を出すようなことをいたしますと、ニコヨン法案にニコヨンを動員するということになりまして、おかしいことになりますから、失対事業の、政治の基本に関する問題といたしましての基本的な取り組み方を、ひとつ御要望申し上げたいのであります。
 私は、澁谷委員が先般御説明になりましたような宣伝めいたことは一切省略をいたしまして、直ちにこれから質問の本旨に入りたいと存じますが、きょうは経済企画庁の長官をも御出席をいただくことにいたしておりましたが、企画庁長官がいま支障があるようでございますから、政府委員が出席をしておられるようでございますので、企画庁長官に対する質問はあとに回しますけれども、私のほうから逐次御質問申し上げたいと思います。政府のほうにおきましても、懇切しかも簡潔な答弁をひとつお願い申し上げまして、議事の進行について御協力をいただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、社会党の政策は、失業と貧乏をなくすることであると思っておるのであります。これなくしては、国民生活の安定と、その上に立った向上を期することはできない。そういう意味において政策を総合的に、体系的に組み立てていくことが、政治の一番大切な点であるというふうに考えておるのであります。そういう私どもの政策に対峙いたしまして、池田内閣の政策は高度成長政策を今日まで掲げられたわけでございますが、総理大臣に対する質問は後といたしまして、国務大臣である労働大臣、労働者保護の立場にある大橋労働大臣に、池田内閣を代表いたしまして、私は高度成長政策は今日非常に大きな曲がりかどにきておって、そして失業と貧乏を解決する政策の上において一大転換をはからなければならぬという、そういう局面にきておると私は思うのでありますが、その高度成長政策の今日最も端的にあらわれておる欠陥、そういう問題等を含めて、ひとつこの際政策の転換をはかるべきではないかという点に対する大橋労働大臣の御所見を、まず第一にお伺いをいたしたいと思います。
#12
○大橋国務大臣 池田内閣の高度成長政策によりまして、日本の経済は発展し、また労働者の諸君をはじめ国民の生活が非常に向上をいたしてまいりましたということは、世界のひとしく認めておるところでございます。この政策は基本的には正しいものであると考えておるのでございます。ただ当初の政府の見込みと異なりまして、若干成長のテンポが早過ぎたということがございまして、これがために景気調整の施策を必要とするに至ったということは、これはまことに残念であったと思うのでございます。しかしこれもとにかく乗り切ってまいったのでございまして、今後従来の計画に従いまして、この高度成長の方向へさらに力強く進んでいくべき時期であると思います。ただ御承知のごとく高度成長に伴います低賃金の是正、すなわち労働界におきます二重構造の是正ということに伴いまして、中小企業、原始産業あるいはサービス業等におきましては、労働賃金の非常な引き上げが行なわれました。これは私どもは高度成長の結果必要となる労働力を調達するためにはやむを得ざるところであり、またそのこと自体、二重構造の是正、賃金格差の是正に役立つものであると考えておるのであります。ただしかしながらこれらの面におきましては、従来賃金の高騰を解消するだけの企業の合理化というものが進んでおらなかったために、一部物価の高騰の原因になっておる面がございますが、この点は今後政府の政策によりましてできるだけ除去しつつ、この政策を進めていくべきである、かように考えておる次第でございます。
#13
○大原委員 ただいま大橋労働大臣の御答弁の中で、高度成長政策の結果、国民生活の水準、つまり平均が上がっていったという御答弁を前提といたしまして、いろいろな付随いたしました御説明があったわけであります。机の上で計算をいたしますと、平均値というものは、一応一つの側面から見てみますと、そういう現象も出ておるわけでありますが、しかしながら高度に発達いたしました資本主義の形態の中で、たとえば欧州などと比較いたしますと、ここで私は時間をかけて議論をいたしませんし、別の角度からまたこの問題は取り上げてみたいと思いますが、これは賃金も平均値をとりましても上昇をいたしていなわいけであります。特に私が申し上げたい点は、平均値が上昇をいたしましても、全体の水準が国際的に低いだけでなしに、貧富の格差がやはり依然として私は日本の経済や政治の中において問題であると思うのであります。
 この高度成長政策は失敗であるという端的な一つの例といたしまして、わが党において取り上げておりますのは、物価の問題であるのであります。昭和二十八年から神武景気その他を繰り返してまいりましたが、物価は逐次上昇を重ねながら、特にこの三年来、物価は平均いたしてみまして六%以上上がっておりまして、本年も六%を下らないという実情であるのであります。この物価が上がるということは、低所得階層にとりましては貨幣価値の下落であって、非常に切実な、低い収入が物価のために食われるということは、決定的に貧乏人をいじめる政策であるのであります。しかもこれはきょう宮澤経済企画庁長官の出席を求めて、大橋労働大臣との間において議論されました問題を含めて、私どもの見解を申し述べたいと思っておったのでありますけれども、宮澤経済企画庁長官の見通しやあるいは意見によりましても、この物価の上昇というものは、日本の高度成長政策、資本主義の構造に基づくところのそういう根強いものであって、これは短期的なものではなくて、長期的な物価の上昇が予想されるというふうに政府の経済企画庁長官も申し述べておるのであります。これらのことは、統計上あとで逐次指摘をいたしてまいりますけれども、低所得階層のそういう具体的な生活に対しましては、耐えがたい圧迫となっておるのでございまして、このことは貧富の格差を拡大いたしておるところの一つの大きな、机の上の計算を離れました問題点であるというふうに思うのであります。物価がじわじわ上がって、ここ三年来は急ピッチに上がっておりますが、さらにこの物価が上昇をしていくという、そういう観点から見てみまして、日本の高度成長政策は、これは貧乏人いじめの政策であって、貧富の格差をますます拡大するものである。私はこういう観点から、労働行政や低所得階層対策の上からも看過できない問題であるというふうに考えますけれども、物価問題に対する大橋労働大臣の所見を一つ明確にしていただきたいと思います。
#14
○大橋国務大臣 経済成長に伴う物価の高騰というものは、これはいろいろな面から考えられると思うのであります。元来経済成長の基礎には、企業の合理的な経営ということがなければならぬのでございまして、これは労働賃金の吸収が物価にはね返る以前に、生産の過程において吸収をしていくという面があるわけでございます。特に大企業の生産におきましては、かような面が考えられるのでございまして、この面においては物価の高騰というものは、必ずしも予想されるものではないと思います。しかしながら原始産業とかあるいはサービス業等におきましては、合理化によって賃金の高騰がコストにはね返ることを調整する範囲が少ないのでございまして、この面から物価の引き上げというものはある程度避けがたいのではなかろうか、こう思うのでございます。しかしいずれにいたしましても、最近数年間年々六%以上物価が高騰しつつあるということは、これは政府といたしましても予想しなかった点であり、この点においては今後大いに施策によりまして、これを避けるような努力をしなければならない、かように考えておるわけであります。すなわち、いろいろな物資の生産並びに流通面における徹底的な合理化に、今後踏み出さなければならないのではなかろうか、かように存ずる次第でございます。
#15
○大原委員 引き続いてお尋ねいたしますが、宮澤経済企画庁長官が発表いたしました将来の構造的な物価の上昇、長期的な物価の上昇、こういう問題につきましては、大橋労働大臣としてはどのような見通しや見解を持っておられますか。
#16
○大橋国務大臣 宮澤長官のそのことにつきまして、私は直接まだ長官からお話を伺っておりません。したがってそれについて、いまここでお答えをするということはいかがかと思います。
#17
○大原委員 私は演説はいたしませんけれども、物価が上昇して、これが構造的な上昇になりつつあって、低所得階層労働者、労働者でなくても俸給生活者その他に対しまして非常な圧迫となっておる。その中身は逐次不完全就業の問題失業問題に関連をいたしまして指摘をいたしたいと存じますけれども、そういうふうになっておって、高度成長政策の最後の目標である生活の安定と向上、そういう目標からはずれて失敗をしておる、こういう点を私はまず第一点として指摘をいたしたわけです。
 大橋労働大臣の御答弁によりますと、問題は、日本におきましては中小企業が労働者の分野におきましても、あるいは生産の分野におきましても、輸出産業の分野におきましても、非常に大きな分野を占めておるわけでございますが、その零細企業や中小企業やサービス業の労働賃金が上がることが物価にはね返る、こういう指摘でございます。その内容につきましては別ですが、そのこと自体は、私は物価にはね返るということは、弾力性のない中小企業の経営から考えてある程度当然であると思います。これに便乗いたしましたり、思惑等を伴う施策が物価の上昇化政策として、あるいはそれぞれの中小企業その他の一般の空気といたしましてぴまんいたしておることは、これは悪循環でありまして、政府の政策の失敗でありますが、その点はともかくといたしまして、弾力性のない中小企業や零細企業やサービス業における労働賃金の上昇が、コスト高となって物価に反映するということは、大企業の場合とは違ったそういう点においては了解するわけです。しかしながら、私はこの問題について基本的な論争はいたしませんが、指摘をいたしたい点は、そのウエートをたくさん占める中小企業に対する池田内閣の政策というものが、高度成長政策の中で上のほうだけ引っぱり上げる、特定産業だけを引っぱり上げる、大資本を強化して、税制上、金融上あらゆる点において利益をはかっていくという方式であるために、経済成長は高速度にいったけれども、その内部の矛盾やひずみというものが今日非常に出てきておって、そうして中小企業自体が近代化するという道をはばんでおる。そういうことが、今日非常に重要な局面にまいっておりますけれども、中小企業における労働者の賃金やあるいは物価の問題に反映をしておる。したがってこれは、高度成長政策が大資本にウエートを置き過ぎて、成長々々でパーセンテージだけを世界一だというふうに誇ること自体が政策の間違いであって、そういうことの結果が、あとで指摘するように今日の物価高の一つの原因になって、それが逆にはね返って低所得階層を圧迫している。そういう政策を是正することなしに、今日の失業あるいは潜在失業、低所得階層の問題を解決することはできない。池田内閣の政策は大資本擁護の政策であり、それに基づく高度成長政策の失敗が、今日弾力性のない中小企業の将来性につきまして大きな問題をもたらしておるのだ、そういう点を私は指摘いたしたい。その点は労働問題、賃金問題、物価問題と関係が深いので、経済企画庁長官、労働大臣と一緒に大いに論争いたしたいと思っておりましたが、これはおりませんので、私は池田内閣の政策の失敗といたしまして指摘をいたしますから、その点に対する労働大臣の所見があれば、労働問題の観点からでもよろしいから御答弁いただきたい。
#18
○大橋国務大臣 中小企業の近代化が、大企業の驚異的な発展に比べて多少出おくれておるのではないかという点につきましては、私は現状においてはあるいはそういう見方も成り立つのではなかろうかと存じておるのであります。しかしながら政府といたしましても、この点につきましてはすでに留意をいたしまして、中小企業基本法をはじめ、中小企業に対する融資の問題、また経営指導の問題、労務対策の問題、また特に中小企業に必要な求人問題の打開についての施策、あるいは技術労働者の訓練等の面から、できるだけ中小企業の近代化、合理化を進めていくように努力を行なっておるのでございます。今後一そうの力を入れていかなければならぬと思っております。
 また物価の重圧が、低所得者階層の生活を脅かしている、これはその通りでございます。しかし働く人全体について一般的に考えまするならば、総理もたびたび申し上げておりますように、物価の高騰の率よりも、全体の平均としては賃金の引き上げの率のほうがこれまで大幅に推移してきておる。したがって生活の実情においては着々改善の実があがっておるということも、お認めいただいてよかろうかと思います。しかし低所得階層の問題は、かような一般的な問題とは違いまして、生活の面においては物価高騰の影響を切実に、また深刻に受けておられることでございますので、これらにつきましては政府といたしましても、いろいろな面から考えてまいるようにいたすつもりでございます。
#19
○大原委員 これは私どもは決してあげ足をとるというわけではないのですが、とにかく最低賃金制を確立した上で賃金水準を引き上げていく、こういうことによって初めて底を上げながら全体の生活水準を上げていって、安定と向上があり得るのだという基本的な考えに私どもは立つわけですけれども、遺憾ながら先ほどから申し上げているように、私が今まで申し上げて質問いたしました点は、池田内閣の経済成長政策は大資本に集中をされておって、その結果というものが物価上昇になり、そして中小企業の経営の圧迫となって、そのことがはね返って非常にたくさんの分野を占める不安定雇用というものが、今日おもな局面に立っておるという点について、科学的に実態に即応して分析しなければ、今日の失業問題や雇用問題は論議することはできない、こういうふうに私どもは基本的に考えるわけです。
 大橋労働大臣はいま御答弁になりましたけれども、池田総理が言っておられるように、賃金がどんどん上がって、そしてコスト・インフレにもなりかねまい、こういうことを私は結論づけては指摘をいたしておりませんが、コスト・インフレにもなりかねない、それほど賃金がどんどん上がっているという数字をちょっと示して下さい、事務当局でもよろしいから。
#20
○三治政府委員 三十五年を一〇〇といたしまして、毎月勤労統計では三十七年で二三・三%上がっております。それから先ほど低所得者の階層のことをいろいろ御議論になりましたが、最近三十七年度の就業構造基本調査の結果が発表になりましたが、それによりますと、月平均一万円年十二万円前後の雇用者の数が三十四年には三七・二%ありましたのが、今度の三十七年度の調査では一七・一%、実数で四百十一万八千人というふうに非常に低下しております。なお自営業主につきましても、自営業主のうちで三十四年では月平均一万円未満のものが四一・七%あったのが、三十七年では二九・四%、実数で二百八十七万六千人。もっともこの賃金所得の調査は、賃金構造調査とかいうふうな正確なものではないと思いますけれども、そういうふうに非常に改善されております。
 なお規模別、産業別の賃金の格差におきましても、全産業を一〇〇とした場合に、運輸通信業や金融保険では、三十三年の場合には一二四%から一二六%の高さ、製造業では九一・九%、卸小売り業では八三・一%のものが、三十七年度におきましては、製造業の九一・九%が九五・一%、卸小売り業の八三・一%が八四・二%、金融業の一六・一%が一二〇・二%になった。運輸通信業では一二四・三%が一一八・八%というふうに、産業間の平均賃金の動きも、平均が格差が少なくなっております。
 それから規模別にまいりますと、千人以上を一〇〇とした場合、三十三年では五百人から九百九十九人が八一・二%、それが八七・三%に三十七年度はなっておる。以下同じ要領で申し上げますと、百人から四百九十九人では、三十三年に七〇・一%だったものが七一・六%、さらに下がって十人から二十九人の間では、前者では五五%であったものが七一・七%というふうに、格差が縮小されております。年齢別の格差におきましても、二十歳から二十五歳を一〇〇とした場合に、大体三十三年の場合におきましては、五十歳以上の平均が一七一・八%というのが、五十歳から六十歳で一七三・三%で、これはあまり変わりませんが、十八歳未満では五二%から五五・八%というふうに変わっております。二十五歳から三十歳では二七・三%から一二八・一%、三十歳から三十五歳では一六九・九%から一五五・四%というふうに、この賃金の場合におきましても、産業別におきましても、年齢別におきましても、企業規模別におきましても、今度の就業構造調査やその他の最近の統計を見まして、相当の縮小、格差の是正があるというふうに言えるのではないかと思います。
#21
○大原委員 この格差の是正は、特に若年労働者はべらぼうに低かったので、若年労働者に求人難が集中している結果、そういう賃金が上がったということと、その結果に基づく企業間の賃金の差についても、ある程度の開きの是正は認めるわけですが、しかし私が質問いたしましたのはそういうことではなしに、それはあとで逐次質問いたしますけれども、昭和三十五年以来二三%賃金が上がったというふうに指摘をいたしまして、この調査表にもございますけれども、そういうことは物価の上昇、実質的な賃金の上昇を考えてみましたときには、たいした上昇ではないわけです。一年あるいは瞬間的に見てみまして、生産性との関係が出てくる場合にそんなものが若干はあるでしょうけれども、しかしそういうことでなしに、実質賃金が着実に上昇して伸びていく見通しがあるかどうかという問題と、そうして私が指摘をいたしました点は、労働大臣が御答弁になりましたことに関連をいたしまして、いまや物価高がそういう構造的な要素を帯びていることは、日本の中小企業、二重構造、そういう経済構造の中における経営と労働との関係において、今日大きな曲がりかどにきている。そういうことから考えてみまして、平均値や統計上の問題でございましたら、若干の数字は出るわけでございますけれども、しかしながら実際の生活というものは、安定をしたり向上したりという観点から見てみますと、これはそう前進はないし、あるいは国際的な常識から考えてみましても、まだまだこの格差は非常に大きい、べらぼうに大きいわけです。そういうことが今日の日本の集約的な失業問題や低所得階層問題の一つの問題点である。物価が上がっておる原因の中には、構造的な中小企業等の経営と労働の問題があって、この問題が今日大きな経済的、政治的な課題に直面をしているのだ、こういう点をはっきりつかんでいかないと、格差がだんだん是正されておりますというだけでは、あるいは賃金が若干上昇しておりますということだけでは、問題は解決しないであろうと私は思う。
 そこで問題を進めてまいりますけれども、これに関連いたしまして、生産性と賃金の問題につきまして、労働大臣は宮澤経済企画庁長官との間において意見調整をされたというふうに新聞は報道しておりますが、その内容を労働大臣の立場に立って――労働大臣の主張は前にも出ておったわけです。あるいは労働省事務当局の賃金部の資料も出ておったわけですが、それに対する労働大臣の調整云々に関連しての所見をひとつ明らかにしてもらいたい。
#22
○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、経済成長のテンポ、ことに生産設備の拡張のテンポが、当初の予想以上に急ピッチで進められたというようなこともございまして、物価が非常に上昇をいたして、ことに消費者物価が上昇を続けておることは、先ほど来お話のとおりでございます。したがいましてこれに関連いたしまして、いろいろな面から物価の上昇を抑制する措置を考えなければならぬということで、経済企画庁において研究並びに作業を進めておられるのでございますが、特にこれに関連いたしまして賃金の高騰の問題が、その一つの原因であるようにも考えられる点がございます。したがって労働対策といたしましても、いろいろ考究すべき問題点があるわけでございますので、それらの点につきましては今後企画庁において労働省と十分に連絡をとって、双方考え方の食い違いのないように調整をしながら、企画庁の作業を進めていっていただく、こういうことにいたしました。その御相談をいたしたことが、意見調整というふうにいわれたのでございます。意見の調整というよりは、むしろ今後企画庁が諸般の作業を進められるにあたりまして、特に労働に関連する問題については労働省と従来以上に緊密、一体となって作業を進めていこうじゃないか、こういうことを申し合ったわけでございます。
#23
○大原委員 二重構造を温存して、潜在失業者をかかえたままで、低賃金構造をもって外国に輸出を伸ばしていこう、こういう考えが根強く財界にはあるわけです。政府の中にもそういう意見があるわけであります。しかしそのことは国際的に見てみましても非常識な問題でありまして、私どもはそういう観点は絶対に間違いである。賃金を安定的にしかも向上させていくことによって、国内市場を開拓しながら、輸出を伸ばしていく、こういう政策をとっていかなければならない、そういう観点からいいますと、賃金は底を上げると一緒に、全体の水準をさらに上昇させていくということが、日本の高度成長政策によって失敗をいたしておりますこのひずみを調整していくためには、絶対に必要な方向でなければならぬというように思いますが、労働大臣の見解をひとつお伺いしたい。
#24
○大橋国務大臣 労働賃金につきましては、従来からとかく日本が低賃金であるやに外国では宣伝されておった節もございます。それはともかくといたしまして、今後経済成長政策に伴いまして賃金が引き上げられ、労働者の生活が向上していくということは、これは当然に考えなければならぬ点であります。先ほどお述べになりましたことにつきましては、趣旨としてはそのとおりに考えるわけであります。したがって労働省といたしましても、最低賃金の普及には努力しなければならぬと思っておるのでございますが、特に現在の最低賃金法が業者間協定を中心にしてできております。かような業者間協定というやり方だけで、はたして最低賃金法の目的を達成できるかどうか、この点にはいろいろの問題があるのでございまして、少なくとも補完的なやり方といたしまして、職権による最低賃金というような方向に進む必要がありはしないかという点もございます。この点はただいま中央最低賃金審議会において検討してもらっておるような状況でございます。
#25
○大原委員 今日、賃金労働者を中心といたしまして低所得階層や自営業者、そういう人々の生活が安定し向上しているか、こういう問題は政治の課題の中心ですし、これから失対事業についていろいろ議論する際においての、政策の一つの大きなポイントになるわけです。大切な問題ですから、私はそういう観点でしつこく聞いているわけです。
 私は別の観点から質問いたすのですが、今日低所得階層に対しまして耐えがたい圧迫になっておるのは、物価高が一つです。その中で住宅難と家賃が高いということです。そこで技術革新や目まぐるしい交通地獄や、そういう社会に対応するような生活の安定ができるわけはありません。澁谷委員も私が指摘した点は賛成だと言われましたけれども、今日住宅問題くらいべらぼうなことはないわけです。私も先般ちょっと二、三の外国を見てきましたけれども、住宅政策は国民や労働者の大きな関心であるだけでなしに、どこでも政治の中心課題です。しかしながら日本では六畳間にテレビをかかえて、しかも五人も六人もおって、六千円も七千円も家賃をとられておる。あるいは権利金が要るというようなことで、住宅の移動もできない。しかも消費ブームをあおられ、いろいろな借金や月賦等によって消費購買がそそのかされておって、実際には今日の、私は一千万というふうに自営業者を含めて言いましたけれども、その階層の生活は非常な火の車であるというふうに考えなければならぬと思う。だからそういうところから今日、ぐれん隊とか暴力団とか売春とか麻薬とか遊び人とか小暴力とか殺人とか、そういう社会悪が次から次へとふえておる。その社会悪はやはり貧乏や不安定な失業と結合いたしておると思う。だから今日の雇用情勢が、職安法と緊急失対法の改正の一つの前提や目安になっておりますが、雇用情勢がだんだんとよくなってきて、そして生活が安定しておるなどというふうな、そういう机の上で独断をするならば、これは非常に大きな社会問題となるということを、直ちに失対問題に関連して言うわけではありませんけれども、低所得階層、完全雇用対策と関連をいたしまして指摘をいたすわけでありますけれども、そういう社会悪が統計上もどんどん増大をいたしておるということは、日本の高度成長政策なり政治というものが決して成功してない。選挙違反だって、その中の悪質の買収だって、貧乏と結びつきがないとは言えない。そういう観点から考えてみましても、社会悪がどんどん増大をしているという実態は、今日の生活の不安定、あるいは消費ブーム、いろいろなゆがんだそういう問題等と一緒に、今日の社会悪の禍根がここにある。これはやはり高度成長政策の産物だと言ったらあまりにも直接的ですけれども、しかしその結果であることには間違いないと私は思うのであります。だからそういう手放しの、雇用がよくなっているというふうな見通しについては、一つの社会悪の問題だけを指摘いたしましても、断じて納得できませんけれども、労働大臣はこの点についてどういうお考えでありますか。
#26
○大橋国務大臣 私どもが生活の安定が加わりつつあると申しておりますのは、労働者の所得が経済成長に伴いまして増大し、しかも実質賃金の引き上げが行なわれ、その生活水準が向上しつつあるという点に着目し、この点から生活の安定度が進みつつあるということを申しておるわけであります。もちろん生活ということになりますと、かような物質的な面だけでなく、精神的な面、いろいろな方面もあるでございましょう。そうした面からいいまして、社会悪の発生ということは生活安定ではないじゃないかというお話の意味もよくわかるのでございます。私どもが生活の安定と申しましたのは、これは生活水準、生活の物質的な内容というものに着眼したものであり、そしてそれも相対的意味において申し上げておるのでありまして、過去に比べて今日では実質賃金が増大した結果、生活内容がそれだけ豊かになっておるということを申し上げておるわけでございます。
#27
○大原委員 少々賃金が上がりましても、統計上千円上がった、二千円上がったというようになりましても、実際上は、今日の消費生活や物価高の中においては、ほとんど意味がないわけです。特に家賃の問題を指摘いたしましたけれども、これはまたなんですが、どろぼうがいないというのは、社会主義の国で言われておって、中国は昔はどろぼうがいたのに、いまはいない、こういうことが言われておるのですが、それはいろいろな問題があるでしょう。この間スイスへ行ってみましたところが、北村労働省書記官がおりましたが、自動車に乗っても、自動車のキーをかける者はおらぬと言う。実際にかけないです。やはりある程度生活が安定しておりますと、どろぼうなんかして、世間から非難をされ、つまはじきされるようなことは、大体みんな回避するものです。それが、どんどん犯罪がふえる、小暴力がふえる、どろぼうがふえる、汚職がふえる、そういう実態というものは、もちろん精神的な側面もありますけれども、やはり生活の安定ということが私は基本だと思うのです。政治家はそこを考えないで、上のほうばかり理屈を言っておる。荒木文相なんかもその一人だけれども、そういうことでは政治家の責務を果たせないと思うのです。表面づらだけなでておいて、机の上で平均の数字だけいじったって、実際の生活の実感に触れない政治というものは政治ではない。どろぼうなんというものは、そういう社会悪なんというものは、できるだけすまい。自殺だって何だってふえるはずがない。それがどんどんふえておるということは、どうなんですか。そういう暴力やいろいろな犯罪がふえておるというのは、どういうことですか。やはりそういうぐれん隊が発生する社会的な基盤がある。そういうことは、政治の問題もございますけれども、生活の安定の問題です。日本の生活は安定の方向に向かっておって、好ましい方向に向かっておる、失業と貧乏が解消する方向にあるなどということは、私は実態を離れた議論であると思うのです。この問題は、もう少し時間をかけて総合的に議論しなければなりませんけれども、ひとつこの点について、労働大臣は国務大臣といたしましてよくお考えをいただきたいと思う。今日一万や一万五千円もらっておる労働者は、ちょっと上がったといいましても、ほとんど家賃に食われておる。あるいは消費生活や子供の費用に追われておる。実際にあしたどうしようかという人々がたくさんある。そういう中から社会悪が生まれているのだという、そういう実態を考えなければ、政治家といたしましては非常に欠けたところがあるのではないか。池田さんの数字もけっこうです、平均数字もけっこうですが、そういう点において、いまの池田内閣の政治においても、根本的に人づくり云々と言われますけれども、私はそこに反省すべき問題があると存じます。大橋労働大臣に、これはしいてはお尋ねをいたしませんけれども、所見があれば伺わしていただきたい。
#28
○大橋国務大臣 私は賃金の問題というものも、たどりたどっていけば、今日のいろいろな犯罪少年の増加ということと結びつけて結びつかないことはないと思いますが、しかしいずれにしてもこの問題は、生活の安定の問題よりも、今日やはり人づくりの問題、すなわち精神的、道徳的ないしは教育的な面に力を入れる必要がより多くある問題だというふうに考えておるわけでございます。
#29
○大原委員 ぐれん隊にいたしましても、遊び人にいたしましても、どろぼうにいたしましても、これは一応の社会的な関係、人間関係ができておって、そして生活についての見通しが立つようになれば、そういうことはないはずなんです。それがだんだんと大きなそういう風潮になって、それが増大をしているという事実を、あなたは否定されぬでしょう。やはり将来に対する希望とか、いろいろな問題に関連をいたして、精神的な側面がありますけれども、私は政治の貧困の問題であるというふうに政治家は考えるべきである。そのことをたなに上げておいて、心がまえが悪いなどということを言うのは政治家の資格がない、私はそう思います。私はこういうことについて議論をするのが筋ではありませんが、社会悪の根源というものは、社会の貧困にある、生活の不安定とか、そういう一つの問題にある、こういうふうに私は信じておりますか、私はこの点につきまして議論をいたすのが本旨ではありませんから、質問を続けてまいりたいと思うのであります。
 その次に私のほうから御質問をいたしたい点は、低所得階層の実態の問題ですが、労働省の経済指標の中にも、完全失業者についてはございます。私は完全失業者についてあらためてお聞きしたいのですが、完全失業者というのは、この三十万、四十万、五十万という人は、どういう人を対象にしているのか、もう一回私は念のために聞いておきます。それから不完全失業者というのはどういう概念を規定をしておられるのか。こういう二つの点をまず明らかにしていただきたい。
#30
○三治政府委員 政府の統計の、完全失業者として公表されております、いま申されたような数字は、労働力調査によって、各月末日に、終わり一週間におきまして全く就業せず、就業を希望し、求職活動を行なっている者を完全失業者というふうにとっております。不完全就業の問題につきましては、明確に定義することはまだ固まっておりませんが、従来いろいろ言われております内容は、就業時間とか所得水準、または就業の希望意識等の種々の基準によって一応の推計が行なわれております。たとえば総理府統計局の就業構造基本調査によって、就業の緊要度が高いと思われ、転職または追加就業を希望する就業者で仕事がおもな者及び本業とし就業を希望する無業者、そのうちで求職活動を行なっている者を見ますと、三十一年の七月には二百七十八万人でありましたのが、三十七年の七月では二百一万人となっておりまして、当時に比べまして相当減少しております。定義といたしましては、そういう完全失業者の定義は調査によって明確になっております。不完全就業者につきましては、いま申し上げましたような就業構造基本調査によって、そういうふうに定義された数字が政府が従来使用しているものでございます。
#31
○大原委員 自分が希望して一週間に一時間も働かないという人を対象にして、完全失業者というもののそういう統計のとり方をしているところが外国にありますか。完全失業者の数字がよく出ておりますが、そんな常識は国際的にも通用しないのじゃないですか。
#32
○三治政府委員 アメリカの労働力調査のやり方は同じようにやっております。それからILOの国際労働統計家会議でも種々議論されておりますけれども、この測定の基準につきましては今後検討していくというふうになっております。
#33
○大原委員 アメリカで七百万、八百万、九百万の失業者がおるというが、それがこういう根拠と社会的実態かといえば、私はそんなことは当たらないと思うのです。常識から考えたって、外国だってそんなにずさんなことを完全失業者についてやっているところはない。きのうも話がありましたように、そんなことであればこれは完全雇用です。形式上は、労働者が自分が行く職場を自由に選べるという状況にある完全雇用の数字です、だからこれは全く実態から離れておる数字になるのです。この数字というのは完全雇用に近い摩擦失業です。三十万が五十万になりましても四十万になりましても摩擦失業にしかならぬです。つまり先ほど言ったように、自分が希望するところへはどこへでも行ける、現在の職場が不満であれば他の職場へもかわれるという状況にある完全雇用の数字ですけれども、実態は全くそうではありません。日本の労働情勢、経済情勢はそうではありません。だからこれは完全失業者の統計のとり方というものがずさんきわまるものであって、一応そういう観点からの統計もあるでしょうが、私は完全失業者の統計のとり方について再検討すべき問題だと思う。それでなければ失業対策というようなものは出てこない、いかがですか。
#34
○三治政府委員 この調査によりますと、失対事業に就労されている方は完全失業者ではなくて、就業者に出てくるわけであります。先ほど申し上げましたように、各月末に終わる一週間において全く就業せずということになっておりますので、現在の失対適格者の就労状況から見まして、その失対適格者は完全失業者には出てこなくて、就業者として出てくるわけであります。もちろんこの統計につきましてはサンプル調査でございます。従来も実態に合うように改正を数回行なってきておりますが、いままでいろいろの調査を検討し、改善をしておりましても、この完全失業者の数字につきましてはあまり大差がない数字が出ている。しかし先生のいわゆる常識はずれの数字とおっしゃるけれども、景気変動によっての増減は従来も見られているところであります。
#35
○大原委員 私は、完全失業者、不完全失業者についての考え方を統一することが、政策の出発点だと思うのです。不完全失業者の問題につきましてもそうですけれども、いまの完全失業者につきましても、失対の登録者が完全失業者でないなどということはおかしなものです、完全失業者ですから。それをどういう観点で、失対の労働者は失業対策事業として働いているのに、完全失業者でないというのですか。その点いかがです。
#36
○三治政府委員 この調査はいわゆるアクチュアルな調査で、実際就業したかしないかということからいろいろの分類をして、統計をとっておるわけでございます。したがって就職の対象者が、政府が雇用をお世話しなくてはならない対象者の数という問題とは違う。あくまで過去の実態、その調査時のアクチュアルな実態を調査するということから、こういうことになっておりますので、失対労務者を民間就労あるいは安定雇用につける、その対象者は何人というふうな政策目標を掲げる数字は、また別個の観点から政府としてはいろいろ計画をしていく、こういうことになるのではないかと思います。
#37
○大原委員 不完全失業者の概念、考え方ですけれども、総理府の統計上の問題は言われましたが、不完全失業者というのは一体どういう概念であり、あるいは具体的にはどういう分野を示しておるのか。私は、そのことをやっていないところに、日本の政治の中には完全雇用のための政策がないと言われているのだと思う。完全雇用のための政策、これは裏返してみると不完全失業者、潜在失業者は、失対事業との関係は、社外工であるとか、あるいは臨時工とか、あるいは日雇い、土建の労働者と実際上はダブっている、こういう関係にあるわけでありますけれども、それは失対事業を考える場合には全く不離一の因果関係というふうに考えなければならぬと思うのです。そこが政策の中心だと私は考えるのでありますが、潜在失業者と不完全失業者とにおいては、概念に若干ニュアンスの違いはありますが、不完全失業者に対する概念、具体的にはどういう範疇に入る人を不完全失業者と見るというのか。こういうことを基礎としながら、その基礎の上に政策を立てていく、こういうことが私は絶対に必要だと思うのです。だから、その不完全失業者というのは労働省として統一見解はありませんか。
#38
○三治政府委員 労働省としては、この総理府統計局の就業構造基本調査あるいは労働力調査、年一回臨時的に行なう調査、こういうふうないわゆる統計をとる場合に、政府として思想統一をいたしまして、本人の就業の希望あるいは転職希望というふうな、本人の現在の就業よりなお自分の能力と比較して現在が不満である、したがって自分の能力に適した職に転職したい、あるいは完全な就業をしたいというふうな希望を調査いたしまして、しかもそれが本業として、それで自分が生活をしていくようなものにしたいということを基本にしてとる、こういうことで、われわれのほうとしてはここにその不完全就業者を規定しているわけであります。もちろん、追加就業をする者でも副業的に追加就業をさせたいという者もとっておりますが、われわれが従来御答弁申し上げております数字は、本業として就業を希望しておる、あるいは仕事がおもな者というものをとっておるわけでございます。
 なおこの点につきましては、先ほどちょっと触れようと思いましたところでございますが、雇用審議会で前にいわゆる所得基準を設けまして、その一定の所得基準から低い者を不完全就業者――これは単に雇用労働者ばかりでなくして、農林業関係、その他自営業関係も含めまして、そういうふうな所得の基準をもって不完全就業者ということになるというふうな一応の試算をいたした場合もございますけれども、これはやはりそのときによって、その所得基準をどういう理由できめるかというところに、一つの基準としての測定に問題点があるのではないか。しかもこのときの場合におきましても、雇用者についてはいわゆる人事院の独身男子の標準生計費未満の者、農林業者につきましては所得二十万円未満、この基準のところにどういうふうな一つの客観性を持たすかというところに問題点があるのではなかろうか。一つの研究としてはわかりますけれども、こういうふうな所得の基準を各年度ごとに設けて、それによって不完全就業者を規定するというのも一つの見方ではあろうかと思いますが、われわれが従来とっております先ほどの御説明のような方法は、ILOにおきます不完全就業者に関して、国際的にどういうふうにやったらいいかという国際労働統計家会議の不完全就業の計測に関する決議を見ましても、先ほど申し上げましたように今後の検討にゆだねられております。しかし一応顕在的な不完全就業者というものは、不本意に正常な労働時間未満の時間、たとえばパートタイムというものしか働いていない者、労働時間が非常に短いパートタイムで、しかも本人はフルタイムの就業を希望しておるというような者は、顕在的不完全就業者である。それから非顕在的不完全就業者というものは、労働時間はそう短くはないけれども所得が低い者、またはその職業では自己の能力または技能を十分に発揮できない者、これは回偽装的な不完全就業者である。それから生産性が非常に低い企業者または経済的単位に雇用されている者が、いわゆる潜在的不完全就業者というふうになっておりますが、この非顕在的な失業の問題があるということはわかるけれども、それをどう計測するかというこの計測のやり方につきましては、さらに今後専門家会議を開いて検討していくというふうになっております。したがって一つの分類のしかた、見解というものは、一応こういうふうな専門家会議でも出ておりますけれども、それを各国、各社会の実情に応じてどういうふうに計測をするかという問題の計測方法については、今後検討をするということになっております。
#39
○大原委員 失業者、潜在失業者のそういう対象を明確に科学的に実態を把握しないで、政策は立てられないと私は思う。日本のいまの政治の中で一番おくれている面は雇用政策ですが、そういう雇用政策が全然ない。その対象がはっきりしない、概念規定がはっきりしないのに、その実態がつかめるわけはない。日本の実態に即して賃金やあるいは就業時間等の各方面から問題点を出して、不完全な就労者に対して対象を明確にすることはできると思う。その対象を明確にして、そうして政策を立てる。私はその中で失対労働者の対策もあると思う。私はそういうことがあり得ると思う。部分的に政策がいいからといって、組み立て方が悪ければ、これは政策の意図とは逆の結果になることなんです。したがって私はそういう点から考えて、完全失業者と潜在失業者の実態を把握してこの問題の対策を立てるということは、これは私は今日の失業問題、雇用問題の対策の根本として絶対に無視できない問題だと思う。なおこの問題については吉村委員が関連質問を予定しておりますので、ひとつお願いしたいと思います。
#40
○吉村委員 関連質問をいたします。これは雇用促進事業団法の審議の際であったと思いますが、現在の雇用問題の中では、潜在失業者というものをどう把握するかということが一番大切である、こういう角度から政府の見解を追及してまいりました。ところが潜在失業者、言いかえますと不完全就労者に対する考え方というものが、雇用審議会の考え方と労働省自体で調査をしておる考え方というものが非常に異なっておる。異なった方法を採用するのはいいといたしましても、結果として把握される数字というものが異なっておる。雇用審議会で把握する数字は、大体昭和三十四、五年であったと思いますけれども、当時において約六百万ないしそれ以上、こういうことでございますが、労働省の方法でやりますと、先ほども少しお話がありましたように二百四、五十万、しかも本年の一月ごろの状態でありましたか、時期は少しずれるかもしれませんが、百四十四万というような話が出ました。これでは非常に差があり過ぎるのではないか。雇用審議会は御承知のように総理大臣の諮問機関である。したがって政府機関である雇用審議会が把握する数字と労働省で把握する数字の違いが五万、六万ということであるならば、私はそう問題はないと思います。しかしあまりにも差があり過ぎる。これでは雇用政策というものを立てようと思っても、立て得るはずがないというふうに指摘をいたしました。ところが労働大臣は、そのことについては何らか専門的な機関をつくって、最終的に雇用審議会の考え方と労働省の考え方というものを一致させて、潜在失業者とはどういうものかという定義あるいは概念を統一する、こういうことを答弁いたしましたので、その当時私はそれが早急に実現することを期待して了承をいたしておったわけでございますが、いま大原委員の質問に対しまして、いろいろ労働省によるところの意識面を中心とした調査の方法、あるいはILOにおいてもまだどういうものだという基準決定をしていない事情等の説明がございましたけれども、いま失対法の問題あるいは完全雇用の方向をめぐって、一番大きな問題は雇用問題であり、その雇用問題を解決するための前提として把握しなければならない潜在失業者の問題について、いまだに明確な基準なり概念というものの統一がなされないということでは、私は失対法の審議というものには非常に大きな障害になるのではないかというように思います。なぜならば私の考えでは、今日の失対事業にあらわれておる多くの問題というものは、失対事業それ自体にあるのではなくて、実はその周辺に根本的な問題がある。その周辺の問題というものが解決されるならば、失対事業に見られる多くの問題というものは、自然解消するはずだというふうに私は思います。これはかっての調査研究会の先生方の意見の最終結論にもありましたように、社会保障の充実とか、あるいは完全雇用とか、あるいは最低賃金法というものが完備すればということがつけられているのは、そのことを実証しておるのではないかと思うのです。この場合、いまの場合にこれを当てはめて考えてみますると、完全雇用の方向というものがやはり明確に打ち出されなければならない。完全雇用を打ち出していくためには、潜在失業者というものがどういうふうになっているのかということが不明確なままでは、これは解決し得ない問題であるように思います。したがって関連質問でございますから、私は前の私の質問とあわせてこの際明確にお尋ねをしておきたいと思いますけれども、あれからたいへん日にちもたっておるのでありまするし、しかも潜在失業者、いわゆる失業対策の重要問題として論議されておるこの失対事業法の改正あるいは職安法、こういうものを提案するのにあたって、政府の統一的な潜在失業者に対する見解、雇用審議会と統一された見解というものを明確に出し得ないような状態では、さらにまたその統一見解に立っての今日の潜在失業者がどの程度になっているのかということが不明確なままでは、これからの職安法なり失対法の審議というものは非常に困難であろうというふうに思いますので、専門委員会とかいう話がありましたけれども、一体それはどういう構成で、どのくらいに作業が進んでおるのか、こういうこともあわせて明確にしていただきたい、このように考えます。
#41
○三治政府委員 その問題につきましては、この前御答弁のあと雇用審議会に連絡いたしまして、この審議を進めてもらうように下打ち合わせをいたしました。ところが有沢会長もなかなか忙しくて、とりあえず五人未満の失業保険の適用の問題を取り上げる。それと関連してこの問題にも入っていきたい。とりあえずは五人未満の失業保険の適用の問題で小委員会がつくられた。それと関連してこの問題も検討していくということでございまして、実質的にこの特別委員会が開かれたというふうにまだ報告できないのは残念でございますが、雇用審議会が四月の下旬から五回にわたって、そういう五人未満の事業所の失業保険の適用、そういう零細事業場の労働実態から入っていきたい、こういう御意見でございますので、いましばらく時間をかしていただきたいと思いますとともに、この三十四年の答申につきましても二年有半かかっております。各産業についてどういう所得基準でやるか、各種の調整をやる場合には、やはり一年なり二年は雇用審議会におきましてはかかるのではないかと思います。しかしながら不完全就業の問題につきましては、大体におきまして世界的にも、先ほど申し上げましたILOの労働統計家会議におきましても、日本が行なっております就業希望の程度という、いわゆる転職、就業を希望するというふうな就業の緊要度というような問題からの調査が支配的でございまして、これ以外に現在のところ、そういう所得基準あるいはそういうものをやる場合には、随時フォローしていく統計とはならない。ある一定の時点をきめて各種の統計を総合調整してきめていく場合には、そういうのが所得基準さえ一応判断が出ればできるわけでありますが、こういうような客観的な統計として、逐次年次累計的にその推移を見ていくような統計としては、そういうものはできないのではないかというふうに考えております。この不完全就業の問題につきましては、労働省としても重要な問題と思いますので、今後とも鋭意検討を進めていきたいというふうに考えております。
  〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
#42
○吉村委員 関連ですからこれでやめておきますが、とにかく失対事業の問題がたいへん各方面から議論をされるような段階になってから、もう数年たっておるわけです。具体的に調査研究会に調査を依頼をしてからも、もう一年にもなっておる。この場合にやはり問題になっておったのは、不完全就労者のことがたいへん問題になっておったことも事実だと思います。したがって私はそういうことを予測をしたわけではございませんけれども、完全雇用を目ざしていく以上は、今日の不完全就労者といわれる者の実態はどうなっておるのか、これについての明確な把握、政府機関の統一的な見解、そういうものがなされない限りは、政府としての完全雇用政策は樹立しようがないじゃないかという角度から、この前はいろいろ質問をいたしたのでありますが、非常に残念なことは、あれからもう二、三ヵ月たっておるのにもかかわりませず、雇用審議会の考えておるところの所得を中心にしたところの把握のしかた、それから労働省が今日までやってまいりましたところの意識面からの把握のしかた、その二つの方法は結果として非常に差があり過ぎる、こういうことではたいへん問題だということで労働大臣もお認めになって、早急に何らか専門機関をつくって、政府として統一された方向を打ち出すということを言明されたのでありますが、失対の問題、潜在失業者の問題というものが非常に大きな問題になっているのにもかかわらず、それがまだ手がつけられていないということは、私は非常に残念なことであると思うのです。言いかえますと、どうも労働省は潜在失業者の問題は手を触れたがらないのではないか、こういうふうに言っても私はいいのではないかと思う。先ほど大原委員が今日の完全失業者の数字をあげて、この数字であったならば完全雇用国であるという話がありました。まさにこの数字であったなら、その上に超が二つくらいつく、超々完全雇用国が日本の状態だといっても、数字の面から言うならば私は問題がないと思う。しかし現実にはそうなっていないというところに失対の問題もあり、その周辺の問題がある。こういう状態ですから、こういう問題についてほんとうに完全雇用ということを目ざしていくという、あの所得倍増計画の中に書いてあることを真剣に、その実現をはかっていこうとする気持が労働省にあるとするならば、私は潜在失業者の問題というものに、もっと真剣に取り組む必要があると思うのです。しかも委員会において二、三ヵ月前に、その点についてはこういうふうにいたしますということを大臣が答弁をして以来三ヵ月を過ぎておる今日においても、それらについてまだ手がつけられませんでしたでは、決して完全雇用のために真剣にやっているというふうには考えられない、こう言っても過言ではないと思うのです。先ほども申し上げましたけれども、この失対事業法の問題や職安法の問題というものを審議する上にあたって一番大切なことは、むしろ前提ともなるべき問題は、潜在失業者がどういう状態であるかということを、政府が責任を持って統一的な見解、その把握された数字、こういうものを明確にしない限り、非常に大きな障害になるということをつけ加えておきたい、こういうふうに思います。関連でありますから、もし大臣がその点について意見があるならば意見を承っておきたいというふうに思います。
#43
○大橋国務大臣 お説はまことにごもっともでございます。この不完全就業者というものの定義、また理論的な分析ということになりますと、先ほど政府委員から申し上げましたるごとく、これは世界の労働統計家におきましていろいろ論議をいたしておる最中でございます。まだこの論議は当分結論に達しないのではないかというふうな実情でございます。したがいまして労働省といたしましては、今日失業問題に対する資料としての統計を、この論議が完了するまで安閑として待っておるわけにはまいりません。失業の問題は現実に存在する問題であり、また失業対策事業の改善の問題は差し迫った仕事でございますので、これには労働省として、従来からありまする調査、これは理論的な意味においては不完全かもしれませんが、しかし当面の失業問題の処理にあたりましては、指針として差しつかえない数字である、こういうふうに考えまして、先ほど来局長の申し上げたような現実の数字を基礎として、いろいろな対策を進めておるような実情でございます。
#44
○大原委員 それで、いままでの質疑応答によりまして、完全失業者の概念規定は明確ではありますけれども、完全失業者のそういう実態、日本のその概念から出ておる実態というものからは、失業問題の本質を把握することはできない。不完全失業者については概念そのものも支離滅裂であって、ILO云々がございましたけれども、しかしながら日本において完全雇用政策を進める上において、どういうふうに対象を科学的に把握するかという問題から見れば、日本独自の問題があるわけです。したがって私どもはそういう点から考えてみまして、失対労働者は、政府の統計では潜在失業者の中に入るわけですけれども、完全失業者の中に入らぬというふうな奇妙な現象になっておりますが、そういう政策というものを総合的にやはり進めていかなければ、失対だけをつついても、これは政策としての意味がないのではないかと思います。部分的によろしい政策はあるでしょう。あるでしょうけれども、しかしその問題はあとで逐次私は議論をいたしてまいりますが、その組み立て自体に科学性や合理性がなければ、社会的に大きな効果を発揮することはできない。私はそういう観点に立って、いままでも質問を続けてまいりましたが、これから逐次質問を具体化していきたいと思うのであります。したがっていま吉村委員と私のほうで指摘いたしましたその対象、概念を明確にすることと、その中身、たとえば臨時工、社外工、そういう範囲等でもよろしゅうございますが、日本の雇用構造の中における政策の対象となる問題点を明確にすること、特に不完全失業者の問題は、雇用審議会がしばしば指摘しておりますように、失業の質の問題といたしまして非常に大きな、日本の雇用政策の中心点でありますから、その点につきましては、私どもはいまの政府の答弁では納得ができません。この問題は、きょうそれ以上のことを追及いたしましてもできませんので、日を改めて、あした以降の日におきまして、さらに具体的な政策との関連において私どもは明確にしていきたいと思っておりますから、そういう点についてできるだけ、不完全就業に対する各方面の角度からの資料と、そして労働省は省議をお開きいただきまして、これに対する統一見解を明確にしていただきたい。私はそのことが、この問題の政策的な議論の一つの大きなポイントである、全部ではありませんが、ポイントであるというふうに思います。つまり失対労働者は、地域によってその労働の質が違うということが特色ですけれども、しかし失対に登録をしておりながら、たとえば造船工業やら、あるいは自動車工業その他の工場の社外工で、請負主、親方に雇われている。職業安定法の違反ですけれども、そういうことが公然と行なわれている。
  〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
そういう実態等もあるわけです。そういうことで失対法からたとえば二万円の支度金等で、非常に生活に困っているところにこれを出しますと、そういうところに移るという現象もあるでしょうけれども、これは決して失業問題の解決にはならないということは明らかであります。同じ器の中で場所をあちらこちらに動かして、その結果国費を使うだけでは意味のないことでありますから、そういうことから考えてみましても、不完全就業との関係はきわめて重大な問題であります。
 私は質問を逐次進めてまいりますが、臨時工や社外工は、最近私どもの認識や判断では増加の傾向にあると思いますけれども、その点に対しまして政府委員のほうからでも、その実態につきまして資料を御説明いただきたいと思います。
#45
○三治政府委員 就業構造基本調査で調査しております臨時雇用者というものは、一ヵ月以上一年以内の期間を定めて雇われている、こういうふな基準で臨時雇用者数をとってみますと、三十一年以来三十七年までいずれも九十六万人程度で横ばいをしております。しかしながらその間に雇用者の総数が非常に増加しておりますので、三十一年の場合には全雇用者に対する率は五・四%でありましたのが、三十七年には四%と比率が低下をしております。また今度は、労働省で労働移動調査というのを毎月勤労統計に付帯してやっておりますが、この労働移動調査による臨時日雇い――これは名義でございます。この定義は、雇用期間の定めのある労働者のうち、三十日以上の期間を定めて雇用されているという者でございますが、そういう名称を使った雇用形態の臨時労働者は、三十六年ごろからは非常に増加がとまりまして、三十七年には三十六年に対しまして二三・五%の減少を示しております。したがって総雇用者に対して占めます比率は三十六年では六・三%というのが、三十七年には四・八%に減っております。大体製造業がわりあいに従来の慣例から多いようでございますが、製造業だけをとってみましても、七・九%から六・二%に減ってきております。この傾向を考えてみますと、この常用雇用の増大によりまして、労働力の需給関係が改善されたために、そういういわゆる臨時工という名義の希望者が少なくなって、そのために臨時工から本工への登用制――いわゆる本工に直さないとほかへ移ってしまって、自分の希望する労働者が得られないというような状況から、こういう臨時工名義の雇用が減ってきたというふうに考えられますが、こういうふうなことを通じてみましても、やはり今後とも身分の安定、賃金その他の労働条件の向上というものが逐次なされていくものと考えます。
#46
○大原委員 いまの点は、量はふえているけれども率は下がっているというお話ですが、これはまたあとで議論いたします。
 社外工につきましての実態をひとつ御答弁願いたい。
#47
○三治政府委員 この社外工関係は、おもに造船からよく言われているわけでございますが、造船業における社外工として就業している者が、運輸省の統計によりますと三十五年の十二月で三万九千八百五十七人というふうになっております。
#48
○大原委員 登録日雇い労働者、これはどういうふうになっておりますか。
#49
○三治政府委員 登録日雇い労働者は、三十五年の月平均で五十四万五千人、三十七年で五十万三千人というふうになっております。
#50
○大原委員 それで私はこれから質問を予告しておきますが、雇用審議会の答申、主として昭和三十四年を基礎にいたしたいと思うのですが、これから逐次不完全失業者の問題と対策につきまして、私どもの考えを述べていきますが、そのことを中心にいたしまして、質問を進めていきたいと思います。これは若干時間を要しますから、ちょうど区切りのよいところでと理事のほうからおすすめがございましたので、ここで切ります。
#51
○秋田委員長 本会議散会まで休憩いたします。
   午後零時五十三分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時二十七分開議
#52
○秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続けます。大原亨君。
#53
○大原委員 午前中から失業問題とそのうらはらの完全雇用政策の問題を考えながら、質問を逐次進めてまいったのでありますが、午前中から申し上げておりますように、われわれといたしましてはいまの日雇い労働者、失対労働者の問題は、実際に人間的なつながりから言いましても、低所得階層の中の潜在失業者、そういう部面と非常に密接な関係にあるわけでございますから、そういう日本の失業問題での最も重要な問題である完全就業者に対する実態の把握と対策、こういうことがこの政策の非常に大きな柱にならなければならぬ、こういう観点で質問を続けておるわけでございます。
 きょうの政府委員の御答弁によりますと、臨時工と登録日雇い労働者の実態につきまして私が質問を申し上げましたところが、これは昭和三十五年を起点といたしまして、漸次減っておる部面もある、こういう御答弁でございました。そこで私はもう一つ具体的な例をあげまして、これはあと同僚委員からも触れるところでありますけれども、社外工の問題につきましてひとつ質問を続けていきたいと思うのですが、最近八幡製鉄等におきまして、いわゆる労働下宿、タコ部屋を中心といたしまする人権問題が、大きな問題になったというふうにいわれておるわけであります。私もその事情を聞きまして、八幡製鉄のような非常に近代的な産業の中に、社外工という職安法をもぐっているような違法な、しかも人権じゅうりんの事実があるというようなことは、これは日本の労働政策の中におきましては、まことに恥辱であると私は思うのであります。社外工の問題は、造船の職場等において今日までいろいろと論議されたのですが、八幡製鉄のような日本の成長産業の――最近は若干違いますが、言うならば中心にあるようなそういう産業において、労働下宿、いわゆるタコ部屋の問題をめぐりまして、人権問題が起きているというような事態があったようでありまするが、私どもは不安定雇用の、そういう人権もじゅうりんされるような社外工の問題等に対しましては、はっきりした対策を立てるべきであると思うのです。そういう社外工はたいていどこでもそうですが、日雇いに登録しておいて、そこにかせぎに行ったりするような組織も、やはり貧乏でございますからつながりがあるわけでございます。そういう実態につきまして労働省としてはどのようにお考えになっているかという点を、まず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
#54
○三治政府委員 そういうタコ部屋とか、昔いわれた監獄部屋という問題の処理監督という問題は、労働省の中では基準局でやっておるわけでございます。あとで基準局から御答弁があると思いますが、われわれといたしましても、そういうところへの就職あっせんその他がないようにということで注意してまいりたいと思いますが、後刻基準局の関係者が参りましてから御答弁させていただきたいと存じます。
#55
○大原委員 午前中に御質問いたしましたところが、昭和三十四年の運輸省の資料をお出しになったわけでありますが、これはいつも三十五年を基準にして、それ以後の今日までの資料を出されるのですが、社外工などというふうなものについては、労働保護の問題といたしましては基本的な一つの問題であって、日本の労使関係においてはあってはならぬ問題でありますが、そういう問題について労働省においては対策を立てておられるかどうか、こういう点についてお尋ねしたいのですが、いかがでしょうか。
#56
○大橋国務大臣 臨時工問題並びに社外工の問題につきましては、従来から雇用対策の上の大きな問題として、いろいろな面で論議をされておったのであります。私も昨年労働省に参りまして以来、この問題につきましていろいろ検討をいたしてまいっておるのでございますが、従来までの労働省の処置といたしましては、この問題に積極的に取り組むような態勢には十分なっておらなかったのであります。しかしながら私どもいろいろ相談をいたしました結果、今後労働省といたしましては、この社外工の問題と臨時工の問題、これは労働基準法の立場からばかりでなく、労務供給対策の一つといたしましても、労働政策の上で見のがすことのできない重要な問題である、これがすみやかなる解決をはからなければならぬということになりまして、最近この問題に取り組む態勢を整えつつあるような次第でございます。したがいまして今日までのところ、十分な資料をもってお答えすることのできないことは遺憾でございます。労働省といたしましてはただいま力を入れておる問題でございますから、近く何らかこれに対するはっきりした方針を打ち立てまして、また御相談をお願いする機会もあろうと存じます。
#57
○大原委員 いまの八幡製鉄の社外工の問題につきましては、あとでひとつ関係政府委員がお見えになりましてから質問いたしますが、けさ三治政府委員のほうから御答弁がありましたが、臨時工の問題ですけれども、私の手元の労働経済の分析、昭和三十六年の資料によりますと、昭和三十四年の臨時工が七・七%、常用工が九二・三%、それから三十五年になりまして七・八%の臨時工に対しまして常用労働者が九二・二%、三十六年は七・九%にふえておりまして、常用労働者が九二・一%ということになっております。三十七年、三十八年につきましては、私の手元の資料にないのでありますが、労働省の資料の御答弁によりますと、だんだんとパーセンテージも減っておるというふうな御答弁でしたけれども、この問題は重要であると思いますので、ひとつ念のために御答弁いただきたいと思います。
#58
○三治政府委員 午前の御答弁で申し上げたときに最初にお答えしましたのは、就業構造基本調査での調査ということで、そのパーセンテージを申し上げたわけでございます。それからその次に、今度は労働移動調査による名義の関係、臨時、日雇いという名義の雇用、そういう名前で雇用された労働者の場合というのを申し上げたのであります。三十七年は減っておりまして、三十六年七・九%、三十七年六・二%、これは臨時、月雇いという名義の常用労働者、それから毎年就業構造基本調査で調査しておりますのは、臨時雇用者として一ヵ月以上一年以内の期間を定めて雇われている者、その雇用期間をそういうふうに定めたものを臨時雇用者として定義をして調査をしておる、こういうことでございます。
#59
○大原委員 職安の登録日雇い労働者の数につきまして、私の手元の資料によりますと、昭和三十五年が五十四万二千で、昭和三十五年を大体ピークといたしまして、それまでは昭和三十年以来ずっとふえておりますが、昭和三十年に四十四万であったものが、三十五年に五十四万になりまして、三十六年に、数はたいしたことありませんが、五十三万人というふうに減っておるようでありますね。この資料の数字はいかがですか。全体としてみますと、昭和三十五年からぽっととると問題ですけれども、やや長期にとってまいりますと、日雇い登録労働者は決して減っていないという資料が出るのじゃないか、こう私は思いますけれども、いかがでしょう。
#60
○三治政府委員 三十一年は四十七万一千、それから三十四年は五十三万五千人というふうになっております。
#61
○大原委員 私はこのことだけについてとやこう言うわけではございませんけれども、しかし全体といたしますと、昭和三十年以来、二十八年ごろを一つの境としていろいろ統計を出しておるわけですが、最近は三十五年が起点になっておりますが、いろいろな景気の変動等もございましたけれども、ちょっと長期的に見てまいりますと、非常に不安定雇用が必ずしも減っておるというわけではないと思います。いま申し上げました数字からいいましても、とる基準にもよるけれども、私はふえておるというふうに考えております。特に中小企業の場合は、臨時工ということで雇わないで、実際には簡単な形で採用いたしまして簡単に首を切っている。特に五人未満の事業所等におきましてはこれがはなはだしいわけでありますが、中小企業の雇用はほとんどが臨時工的な性格であって、これにささえられておるところの日本の雇用形態も、いわゆる不完全就業者として問題となる点ではないかと私は思いますが、これは不完全雇用の対象として、相当部分について考えるべきではないかという私の意見に対しまして、労働省のほうではどのような御意見を持っておられるのか、伺っておきたい。
#62
○三治政府委員 大企業、ことに中堅企業以上の大企業につきましての臨時名義の雇用というのは、急速に発展した企業についてどれだけが安定雇用か、自分の会社として通常雇用者としてどれだけの規模をそういう本工という名で、いわゆる終身雇用制度にすべきかという必要性を満たすまでということで臨時工名義の採用があって、私も昨年各地で大きな会社の実態を聞いてみますと、そういう景気変動を予想して必要なだけそのつど全部本工にすると、いわゆる景気変動による雇用というものを安定することができない、したがってその弾力的なものとして臨時名義の雇用をやっているのだ、しかしそれは臨時工を特別虐待するということではなくしただ従来の慣例からいうとそこに身分上の差別がある、しかしこれが安定してくれば逐次本工に切りかえていく。もう一つは新規学卒が思うように採れない、したがって中高年齢者あるいは新規学卒から数年たった以後の方々を採用する場合に、一応臨時工名義で採って、そうして逐次本採用にしていく、いままでは新規採用で逐次本工の養成をやっておったというふうなあれがあります。
 それから中小企業につきましては、そういうふうな固定的な定員管理の観念があまりありません。したがって本工とか臨時工とかいうものより、むしろ日給月給とか、出来高払いとかいうふうに、仕事々々によって賃金の支払の形態が若干違う。しかしいずれにしても、賃金はわれわれの経験からいきますと、半年ないし一年たって中途採用の者には相当賃金を上げる、初任給は中小企業では必ずしも高くない、こういうことで、石炭の転職者を見ましても、中高年齢者になりますと、一年たちますと大体二〇%以上賃金を上げております。これもいまおっしゃるように臨時工、本工という区別が中企業ではあるところとないところ、零小の企業ではほとんどない。したがって臨時工という問題の場合でも、いろいろめ観点からその性格が違うのではないかというふうに感じております。
#63
○大原委員 もう一つ、最近の特徴的な情勢の中の一つは、雇用問題で考えなければならない点は、先ほど申し上げました八幡製鉄の例もそうなんですが、合理化、技術革新をやってまいりますと、それに伴う人員整理、臨時工の整理、あるいは学卒者に対する採用延期や帰休制、こういうふうなものがこの二、三年来問題となっておりましたけれども、そういう合理化、技術革新に伴う雇用の変動、整理、こういうふうな問題について労働省としてはどういうふうに把握しておりますか。
#64
○三治政府委員 昨年の鉄鋼の急激な操短によりまして、新規学卒が、これは高等学校でございますが、八幡、富士、東海製鉄、日本鋼管で相当採用延期になりました。そのときいろいろ関係会社に、どういう事情かということで調べたところ、採用時期を延期した場合には、いつから採用して就業させるというふうな契約がはっきりしていなかった、逐次採用というふうに、採用だけ決定したというふうな契約になっておったわけであります。しかもこれが急激な操短で、とりあえず来年の三月、つまりことしの三月までには完全に吸収雇用するからということで、初めは一たん採用ときめたけれども、ほかにいい就職口があるならば、かわってもらってもいいというふうな口吻があったわけですが、せっかくそういう企業に選ばれて採用ときまって、本人が待機している。しかもそういう新聞記事が出ましたら、さっそく職安のほうへ、そんなに大企業がいますぐ要らぬのを持っている必要はないじゃないか、われわれのほうへ職安のほうであっせんしてくれという希望が、八幡製鉄で千二百名採用延期をやりましたが、その二倍くらい職安に求人申し込みがきた。それで福岡県の各職安が当該採用予定者に聞いてみたところ、いずれも、少しは待ってもいいから入りたい、八幡製鉄にいきたい、あるいは富士製鉄にいきたいということでございますので、そういう求人の受理はストップしておるわけであります。ただその中で東海製鉄だけが、あれは新設工場でございましたので、会社のほうからも、できれば若干安定所であっせんしてもらってもけっこうだ、ちょうど名古屋は当時非常な求人難であったわけであります。それも関係会社へ配転できた、そういうことで本年の新規採用までに採用した。したがって今後会社のほうは、新規学卒については必ず採用時期を明示して、そういうふうな社会の非難を受けることのないようにしますということの約束で、そういう指導をやったわけであります。今後ともこの新規学卒につきまして雇用の時期を明示して、そういうトラブルのないように指導していきたいというふうに考えております。
#65
○大原委員 八幡製鉄以外に、基幹産業と思われるようなそういう事業体におきまして、臨時工の整理とか学卒の就職延期その他の問題等は、全体的に起きておりませんか。
#66
○三治政府委員 昨年では製鉄会社の八幡、富士、日本鋼管、東海製鉄というところで、それ以外も調べましたのですが、ございません。ただ臨時工名義の採用のところで、あるいは若干整理があったところもあるかもしれませんが、それが大量整理になったというのはございません。むしろ会社そのものの経営不振とか不渡りのために、会社が整理に入ったというような例はございますけれども、全般的にそういうふうな特殊の社会問題を起こすような事例というものは、一般的にはなかった一というふうに承知しております。
#67
○大原委員 それから最近御承知のように農村や漁村におきます高度成長政策の中におきましての構造改善、そういう中におきまして兼業農家が増大をしたり、あるいは零細農漁民がだんだんとその農村や漁村を離脱する、特に漁村等においてはコンビナートその他臨海工業地帯等の影響もありまして、そういう潜在失業者の造成される条件というものが、地域的に指摘をすればはっきりいたしますけれども、無視できない傾向にあると思うのであります。この点いかがでしょう。
#68
○三治政府委員 農業政策における農林業から非農林業への就業者の転換、これが相当行なわれているのは、先ころの農林省からの国会への報告にも明らかでございますが、これには二つ種類があるわけでございます。一つは新規学卒として農村にとどまらず、都会へ就職する。これは戦前からずっとある傾向です。そのうちでも特に問題になりましたのは、農家のあと継ぎである長男まで出てしまうということが一つの問題。それから農業の兼業の一つとして、在村しておって、交通の便がよくなり、あるいは工場や事業場ができたということで、男手が都会の工場のほうへ通う。従来の農業関係はあとの家族従業者がやるという兼業農家、しかも農業所得よりか、そういう他の雇用関係からの所得のほうが多い。第一種、第二種のうちでも、ことに第二種兼業農家が非常にふえてきた、こういう現象。それはすなわち農業だけに従業した所得よりか、そうしたほうがその農家にとってより所得が多いし、より所得水準が上がるということから、自然に行なわれていくわけでございます。いわゆる農業政策から見れば、また別個の観点からいろいろと問題があるでしょう。しかしながら農家における所得増大、あるいはそういう農林業からの離脱という部面につきましては、そういう現象がある。しかしながら現在の状況から見ますと、挙家離村、いわゆる一家をあげて農地を売り払って全部都会へ出る、農家の減少という現象はわずかであります。農家の戸数が減るのは、ほとんどわずかであるというふうに承知しております。
#69
○大原委員 この数字をいろいろと第二種兼業その他から検討してみればいいのですが、そういうこまかな質問をしましたら政府委員の人が困りますから、私は理解ある立場で話を進めてまいります。しかしこれはやはり農村から二反百姓、三反百姓で、家族を残して出かせぎに出る、働きに出る、通勤する。零細企業においてあるいは不安定雇用がありましても、相当これが潜在失業者の一つのよりどころになっている。そういうことが、安定雇用でない働き先でございますけれども、音を立てて雇用情勢が変わっておる一つの事態であります。
 特にその中で無視できないのは、タコ部屋のことについて質問しましたけれども、土建業のそういう労働下宿、タコ部屋、そういうところにおける労働供給源が斜陽化しつつある構造改善の中の農村あるいは漁村という面に多いし、あるいはそういうところに失対事業というものがだんだんと今日まで必要に応じて起きてきたという事実があります。近辺に中小企業その他がない場合には、そういう事態があるわけであります。この問題は失対事業の地域的な特殊性の問題で、後に集中的にひとつ議論をいたしたいと存じますけれども、雇用情勢一般の問題といたしましては、やはり土木建設業が、今日公共事業費その他の増大、道路、橋等の増大によりまして、相当の人口を吸収いたしておるわけであります。その中には無権利状態やあるいは非人道的なるタコ部屋等の問題が実際上あって、これがいろいろな社会問題の根源にもなっておると思います。これらは農村から出かせぎに行ったりした人も、相当数農村の情勢変化の中においてあるわけでありますが、建設業界におけるそういう不安定雇用、局面はいま一千円その他の若干の賃金はもらっておりますが、きわめて不安定な雇用で、しかも季節的にあるいは時間的に長期に雇用安定を期しがたい、こういうようなところに手っとり早くいくという、これからの失対事業の行くえでありますけれども、そういう問題等とも関連をいたしておるわけであります。
 土建の問題につきましては、先般の労働災害防止に関する法律等でも立法化されたり、あるいは議論になりましたけれども、そういう土建業界における雇用の形態、雇用の実態、そういうものについて不安定雇用という観点から、私どもはこれをとらえる必要があるというふうに考えておりますが、その雇用の形態や実態を――これはこの前労働災害防止法で、これは基準局関係ですが質疑いたしましたので、これはなまなましい記憶であると思いますからお尋ねするのですが、どういう実態でございますか。これは不安定雇用あるいは潜在失業者に類するような実態があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょう。
#70
○三治政府委員 そういうこともいわれておりますが、最近のこの東京付近の工事をごらんになってもわかりますとおり、著しく機械化されて、一月たつとまた全部新しい機械が入るくらい、したがって現在の工事量をそういうふうに全部農村やまた潜在失業的な雇用に求めていたならば、とうてい現在のようなこの東京だけを見ても、オリンピック関係の工事はとてもできない。それで非常に機械される、その機械をつくる工場が発達していろいろ機械産業ができておる、こういうふうな関係になっております。建設省関係のいろいろ担当者に聞いてみましても、大体工事量が相当ふえても、この機械化によりまして工事に直接携わるいわゆる土工、純作業人夫数というものは、工事量の増加に比較しては増加をしないという関係になるのではないかと思います。全体としては、もちろん公共事業費それから民間建設というものが急激にふえておりますから、増加をしておりますが、その工事量の増加と比較してはわりあいに少ない。実際を申し上げますと、建設業の雇用が、三十六年の平均が二百五十五万、三十七年で二百七十万というふうになっております。増加率は三十五年に対して三十七年が一五六・二%というふうになっております。
 それから雇用の形態でございますが、建設業界にもいろいろわれわれのほうで検討し、相談もしておりましたいままでの状況から、また一昨年は一部建設業労務者の実態調査もいたしましたが、最近ではそういう機械のオペレーター、これは大体常用工として大中を問わずやっていかざるを得ないということでござます。それから土工、重作業という問題につきましては、これはやはり下請に流して、最終段階の下請のほうでいろいろ道具を提供するということになります。それから建設関係におけるいわゆる内部工事関係、配管とか電気、そういう特殊工事工というものは、それぞれ中小企業が相当発達してまいりまして、これについては近代的な雇用が非常にふえて、配管とか塗装、こういう関係につきましては、常用工として、そういう工事別の専門会社が相当中堅事業として発達してきているわけでございます。
#71
○大原委員 昭和三十七年が二百七十万というお話ですけれども、オペレーターや配管工等の常用工、本工に対しまして、下請というか、つまり労務者を集めてそれを請け負う職業紹介の仕事ですけれども、それを合法化しているのがこの間の労働災害防止法でけしからぬと私は言ったのですが、その問題を議論しておりましたら、またもとの法律に返りますから議論いたしませんが、とにかくそういう常用工と臨時工、下請工、こういう実態というか、比率は大体どういうものですか。
#72
○三治政府委員 労働力調査によりますと、三十八年の二月で総数二百十二万のうちで、常用工百十八万、臨時が四万……
#73
○大原委員 常用が何万ですか。
#74
○三治政府委員 常用が四万、日雇いが二万というふうになっております。この労働力調査による常用の雇用者というのは、雇用期間について別段の定めもなく雇われて、給料、賃金などをもらっておる者及び一年をこえる期間を定めて雇われている者という定義によっての調査のものでございます。
#75
○大原委員 四万と二万と足したら六万にしかなりませんが、いま二百七十万と言われたけれども、全然数字の根拠にならぬじゃないですか。
#76
○三治政府委員 この二月の総数では二百十二万になっております。
#77
○大原委員 やはり失対から流動していく場合には、事実上は土工、人夫という場合が多いわけです。現在失対にいる人で若干体力のある人ということになりますから、土工、人夫という状況が多いのですが、家を離れて場所を移っていく、職場が固定していない、あるいは社会保険やその他の保障がない、あるいは雇用安定の保障がない。私どもは建設関係の労働関係法を、港湾労働法と同じようにつくるべきであるという基本的な立場に立って、建設関係の雇用問題は考えていくべきであると思っておるわけです。言うなれば今後道路建設、橋やあるいはコンビナートや臨海工業地帯のそれらの諸公共土木事業をめぐりまして、こういう労働の分野というものは非常に大きなウエートを占める。産業の全体から見てみますとこれは花形です。経営から見てみますと、大きな土建屋というものはもうかっていて、これは花形産業である。しかしながらその中における雇用形態というものは、いわゆる花形産業でありましても非常に前近代的な、封建的な労使関係であります。そういうところに出ていけといいましても、なかなか入ってこれないという仕組みであるかどうかということについては、大いに議論いたしますけれども。そういうふうに安んじて出ていけない。しかも安定した職場ではない。しかも最も似通った職場であるというふうなことから考えてみましても、私はこれに対する政策がなければ、最低限度の政策といたしましても足りないと思うのでございます。
 たとえば建設業関係の前近代的な雇用形態は、何とか近代化していかなければなりません。そういう観点からいたしまして、大工、左官屋さん等は一部組織ができて、社会保険の適用等も行なわれつつありますが、社会保険の適用もないというような無責任な、だれが雇ったか知らぬというような、仕事をもらったらその日に金をもらって帰るというようなことでは、私は安定雇用なんというものは、臨時工と名前がついておろうがおるまいが、もってのほかであると思うのです。したがって私はそういう建設業関係の二百数十万を占める労働者の、これからもどんどんふえていく、そういう面における労働者保護の対策、そういうものがなければならぬのではないかと私は思う。大臣、いかがですか。
#78
○大橋国務大臣 従来の労働行政におきましては、労働基準法というものを中心にいたしまして、各産業を通じての労働条件の維持改善ということを目標といたしてまいっておったのであります。しかしながら、すでに先般安全問題につきまして御審議をいただきましたごとく、労働条件の維持改善ということは、あらゆる種類の労働を通じて一律にやっていくということだけでは徹底することはできないのでございまして、今後はいろいろな産業に従事する労働者ごとに、その労働の特性、またその労働環境、またその労働についての特有の労働条件、こういった点を個別に取り上げ、その一つ一つに対してきめのこまかい配慮を持って、労働条件の向上をはかっていくということにいたさなければならないものと考えておるのでございます。特に御指摘になりました建設業の労働関係のごときは、港湾等における労働関係などと同様に、最もすみやかに近代化してまいりたいと考えるものでございます。
#79
○大原委員 もう一つ、雇用の中で不安定雇用の問題といたしまして問題となる点は、自由化に伴う、たとえばエネルギー革命とか、いろいろ言われてきた問題であります。これは不可避的なものであるか、あるいは政府の政策によって立ち直ることができるような問題であるか。あるいは外国の例等を引きまして、今日まで論議のあったところでありますが、それはともかくといたしまして、この点については、さらに詳細に同僚委員から質問があるはずでございます。
 私からお尋ねしたいことは、特に九州地区、福岡県等を対象として御答弁いただけばよろしいと思いますが、石炭産業が今日のような実情にございまして、ここ二、三年来今日まで石炭の離職者は、一体どのくらいの数に上っておるのか。これは中小炭鉱等を含めまして、社会保険のない分野等もあるかと思いますけれども、可能な限りの正確な資料と、その中で就職指導をどのようにされて、たとえば職業訓練に入所した者は何人であって、退所後どういう職場に行っておるか。そういう人々の再就職の場におけるところの大きな障害は何であるか。これは私は鉱山や、その他自由化に伴う他の産業の分野につきましてもお聞きしたいところですけれども、特徴的なものとして私は石炭を取り上げまして、そういう離職者や、あるいは訓練の実情、あるいは再雇用の実情について、ここで概括的に知りたいと思いますので、御答弁をいただきたいと思います。
#80
○三治政府委員 石炭鉱業からの離職者に対しましては、去る四月初め、三十八年度の合理化に伴う再就職計画をきめたわけでございます。これにつきましては安定所による紹介の就職者が約一万九千、それから政府機関の採用が一万九千の内数でありますが二千八百人、それから産炭地域の振興事業による就労者が同じ二千八百人、それから会社あっせんによる就職者数が九千、それから自己就職、自営その他を加えまして五千百人、合計就職者数が三万四千二百人の計画でございます。
 それから本年度におきましては、大体三十七年度の三月において実績がほとんど三十七年度の計画になったわけでございますが、約三万人の合理化解雇者が再就職をしております。この内訳は、安定所の紹介が一万五千人、会社の就職あっせんが八千人、自己就職、自営等が約七千人でございます。三十八年度の合理化解雇による炭鉱離職者の数が三万四千人、このうちには三十七年度にはこの再就職計画に入っておりませんでした職員及び組夫の数字が入っております。三十七年度と同じような対象の石炭の労務者だけに限りますと、約二万九千余でございます。その他は職員それから組夫で、今度新法律によりまして炭鉱離職者として雇用計画の対象に入れたために三万四千人にふえる、おおむねの再就職計画は、いま申し上げたような次第でございます。
 それから具体的な一、二の再就職の困難あるいは苦労の話の実例ということでございますが、私のほうもそういういい事例を集めて、最近東京地区におきましては労働大臣の表彰も行なったわけでございますが、三和銀行なんかは、やはり銀行としても相当数採っております。それから中小の事業、ことに機械工業のほうで、最近数年間に非常に膨張した、しかも新規学卒、若年齢者を入れてずっと膨張したけれども、年齢構成が非常に片寄っている。したがって雇用の安定をはかるためには、やはり中高年齢層を相当入れたほうがいいというケースで、中高年齢者を相当高給の二万五千円から三万円で雇う事例が、機械工業の部面で非常に多くございます。理由を聞くと、急激に一千人なり二千人近くの従業員になる、しかしどうも年齢構成が片寄り過ぎる、したがって年齢構成をある程度一般会社並みにするためには、中高年齢者を入れて雇用の安定をはかったほうがいい。実際に入れてみたところでも、そういうふうなのが安定している。それから弱電その他、いわゆる若い女子の従業員を多数雇って、しかも寄宿舎管理に非常に意を用いている企業で、炭鉱離職者を雇って、寮の舎監、寮母というふうにしている。最近岐阜県におきましては、やはり新規学卒が非常に採りにくい、したがってその代替雇用というわけではございませんが、新規学卒ばかりにたよっておっては、自分たちの企業の生産が軌道に乗らない、したがってここで計画的に炭鉱離職者を雇っていこうというふうに、岐阜県の商工会議所あたりが決議をして、集団求人をやっております。したがってこういうふうな空気からいけば、炭鉱離職者のうちで相当就職意欲があって、しかもある程度の条件ならば挙家移転をちゅうちょしないという部面については、非常に就職ができると思っております。事実、福岡県においては、求職適格者に対する求人が相当殺到しておりますが、現地は、いまのところ四月のいわゆる求職手張の受付事務、それからあとの求職手当の支給事務という問題の処理に追われておりまして、各需要地からの求人に対して、若干その選考関係がおくれているという事情もあるくらいでございますので、これが軌道に乗れば相当の成果があると思います。また三十七年度から三十八年度へ一万八千人ほどの繰り越し滞留者があるというふうに計画しておったわけでございますが、現在のところ、約一万人が求職手帳の申請をしておりまして、そのうちで失業保険が切れて、求職手当をもらう段階におられる方が約千六百人というところでございます。
#81
○大原委員 職業訓練を受けて再就職できた人でさらに舞い戻ってきた人もあるし、あるいは安定した人もあるでしょう。いろいろな成功したケースもあるでしょう。それを一々やりましたら時間がかかりますし、同僚委員も質問いたしますので、私はこういう資料をひとつ要求いたします。石炭についての離職者の中で、職業訓練を受けないでいま言われたようないわゆる就職あっせんを受けた人、それから職業訓練を受けた人で再就職した人、その中で三十五年以降今日の段階で安定をしている人、こういう状況についてひとつ資料を別にお出しいただきたいと思います。これはいろいろとこれから議論をする際に大切な点であります。
 そこで私は一般的な問題としてお尋ねしたいのですが、高齢失業者の就業、再就職が困難である企業側の理由はどこにあるとお考えになりますか。
#82
○三治政府委員 一つはいままで新規学卒を使うものと慣習的に思い込んでいること、しかもいままでそういうふうに使ってきておることが一つ、したがって新規卒業に対する求人意欲が非常に強い。名古屋の中小企業あたりは、新規学卒の一定割合は中小企業に振り向けるように、割合をきめてくれというような要望も非常に強いような状況でございます。それから最近、昨年から中小企業に就職する新規学卒のほうが大企業に就職する新規学卒より、これは中学でございますが、平均賃金はかえって百円ぐらい高くなっているというふうな実際問題も起きてきているくらい、新規学卒に対する要求が強く、それがいわゆる若年者に対する急激な賃金の上昇になっているわけでございます。
 それを中高年齢者にかえなさい、新規学卒はどうしても求められませんというのは、われわれのほうとして非常にPRもしているのですが、しかしそれだけではなかなか応じないと思います。したがって五人新規学卒を求人する場合には、二人くらいは何とか世話しましょうが、あとの三人は中高年齢者を雇うように考えてもらいたいということを、いわゆる求人者に対して指導、勧奨して、いわゆる抱き合わせ求人の指導をやっております。事実関西経営者協会においては、こういうふうなこともやるべしという決議を最近しているような状況でございます。それから何といっても零細企業においては、中高年齢者だと子供に払う賃金よりそう安くは払えない。家族を持ってい者には、その家族を養う賃金としても、最低限度のものは払わなくちゃならないという観念がどうしてもあるわけですから、新規学卒よりは賃金を相当高く払わなければならないということになろうかと思います。
 それから中堅企業では、いままで新規学卒を求人して十分入れておる。しかし昨年来少なくなった。これをどうしたらいいかという問題で、最近炭鉱離職者をいわゆる製品の管理、製品の蔵出し、蔵入れ、それから原材料の蔵出し、蔵入れというふうな、いわゆる工場の前の整備の関係に入れて、ここ二、三年来採って各所に配置した中で、そういうところに使っておった人を百五十人ほど、セールスのほうに転換する計画を持ってこられた。それに応じて百五十名炭鉱離職者を、これは電気関係の会社でありますが、そういうふうな関係に入れる。そうしますと去年、ことし採れなかった新規学卒の穴埋めとして、二、三年前に採用した人をそちらのほうに回して、中高年齢者にかえる。これには大体五千円から七千円の賃金差がありますけれども、新規学卒を得られないということから見れば、十分がまんできるというふうな事例もございますので、いわゆる求人者側に対する啓蒙宣伝、やはり実際の必要によって、そういう方面に指導していくということもわれわれのほうで計画しておるわけであります。
#83
○大原委員 高齢者の再就職の壁というか、障害は、いまお話のように、新規学卒者のそういう技術やあるいは会社、工場の経営の中に溶け込みやすいというふうな、そういう問題等と対照的に、労務管理や人間関係がむずかしい、こういうことも一つの大きな障害であるというふうに言われておるわけですが、私はその他に、いまお話がございましたように家族をかかえておりますから、低家賃住宅の問題があると思います。したがって家族をかかえておりますから、当然賃金を高く要求するわけでありますが、そういう点等が問題でございまして、技術の訓練所に入れまして訓練をすることだけが再雇用の条件を、ある一部においては開拓するけれども、今日の技術革新の時代において、古くさい道具で若干の技術に熟練いたしましたからといって、これは適応性ということになれば、年齢と一緒に、五十歳以上になりましたならばほとんどないわけであります。したがってそういう点に障害があるという点ですから、職業訓練ということは一これはまあ法案に入って議論しているわけではございませんが、一般的にいいまして高齢者の就職問題から考えてみましたならば、ウエートのきわめて軽いものではないか、私はこういうふうに思いますが、いかがですか。
#84
○三治政府委員 いまの御質問、ごもっともで、従来労働省でやっております新規学卒あるいは若年者の学校の延長式職業訓練、まず講義をやって実習をさせる、講義をやって実習をさせるといった一つの学校の延長的職業訓練をやると、やはり飽きる。これは炭鉱離職者の職業訓練をやってみまして、どうも机に向かって講義を聞いて、本を見たり読んだり、ノートをとる、そういう勉強は非常に退屈に感ずる。むしろ作業現場で一々その手順を教えていったほうが効果が十分あがる。したがって訓練所の指導員のやり方としては、新規学卒では口や図面や本で覚えることを、中高年齢者は材料を使って実技で覚えていく、それでもけっこう間に合うのだということになるわけであります。したがって炭鉱離職者の職業訓練には実習経費を、職種によって違いますが、一般の訓練所の経費より約二割から三割ふやしておりますが、まだまだ実際問題としては足らないと言われているくらいでございます。そういうふうにして、われわれのほうとしては一般の公共職業訓練でも、中高年齢者に対する職業訓練は、若年者に対する職業訓練のやり方とやり方を変えるということは、これはもう基本的にきめて、その実際の教科書からやり方も、指導員についての最終的指導も、そうやっております。
 しかしそれだけでは、おっしゃるとおり問題がございますので、われわれの今年度、また今後考えていきますのは、委託訓練、たとえば自動車の運転手が現在非常に足らない、引っぱりだこでございます。そういう場合に、中高年齢者が家族をかかえて離職した場合に、たとえ二ヵ月といい、一ヵ月半といえ、自動車学校へ通う授業料と生活費が困る。これについては授業料も払いましょう。それからいままででいけば、公共職業訓練所へ入ったときだけ失業保険の給付の延長がある。それを今度は自動車学校へ行っても、委託訓練制度として、そういうふうな自動車学校へ行く場合でも失業保険の給付をやりましょう。さらに会社、工場でやはりいま技能工が――機械の生産ばかりやっているところはいまおっしゃるとおりでございますが、溶接とか配管とか自動車整備というふうな問題になりますと、技能習得が六ヵ月ないし九ヵ月は必要なわけでございます。そういうようになりますと、今度はそういう特別技能者養成をいままでやった経験のある事業場、そういう設備をかかえている事業場は、いま新規学卒者が足りないために、そういう設備が余っておるとか、さらに人が足りないために、そういう技能者養成的施設をつくって、そういう中高年齢層でも引き受けてやりたいという希望の会社等が、ことに自動車関係の下請けの中堅企業に非常にたくさんございます。これは相当精度を要しますので、自動車のいわゆる相当の部品をつくる中堅工で、そういうようにしますと、そこでどうしても相当な技能工が必要でございます。したがってそういうふうな場合に、職場適応訓練といって、六ヵ月ぐらい訓練費を支払って職場で訓練していく。ここには会社の生産に携わっている、いわゆる相当な指導員がいるわけでございます。そこへ入っていった場合に、失業保険の給付の延長もやりましょうということで、その後その企業に雇われてもよし、またそれだけの技能をおさめた場合に、ほかの企業に行ってもいいというふうに考えております。さらに隔地間の紹介で訓練所へ入る場合も、卒業しても雇用が非常に不安定だから入らぬという意見があったので、雇用予約制度を今年始めております。これによって、たとえば配管工を三十名というふうになれば、それが福岡へ求人として行って、訓練所で六ヵ月配管工の訓練を受けて、修了すれば雇い先の企業が給料を払う。それで現在配管工と自動車運転士が、相当数雇用予約で訓練に入っております。したがって、そういうふうな新しいいろいろの制度や手段を考えていきますならば、いま中堅企業界でも、相当雇用不足を訴えている面があるけれども、これがさらにその実例がわかってくれば、企業経営者としてそういう雇用をやって、企業を発展させようという経営者が相当数あらわれてくるかと考えております。
#85
○大原委員 政府委員の答弁の中で、私どもが大体常識的に理解できる点は、運転士の訓練です。これは自動車がどんどんふえておるし、需要もふえておりますから、そういう点では確かにうなずけるのですが、しかし四十あるいは五十を過ぎてから運転を習いましても、事故が多くてなかなか好ましいことはないのじゃないですか。これは運動神経も鈍くなっておりますし、目も薄くなっておりますから。大体運転士が足りないということは事実だし、運転免許をとりますと、働く場所はあるけれども、しかしこれは大都市とか地域によりまして需要もまた違ってくるし、衝突とかその他の問題等もござまいして、必ずしも、現在自分の家族をかかえて、高齢者が居住している地域から離れまして、この問題を非常に大きなウエートをもって解決することも困難ではないか。
 私が指摘いたしたい点は、後に逐次同僚委員からも専門的にそれぞれやりますけれども、やはり家族を含む、いわゆる賃金の保障の問題や、あるいは人間関係、労務管理等で、どうも忌避される傾向が強くて、やはり再訓練だけをもって事足れりとするような、そういう就職指導というものでは、これは足りないのじゃないか。問題の解決はできないのじゃないか。特に私が午前中も指摘をいたしましたけれども、低所得者に対する問題点は、低所得者のいわゆる住宅難や住宅費の高いという、まあ住宅残酷物語であります。これは非常に大きな問題でありますが、労働省は広域職業紹介とか、あるいは紹介事業の流動化とかいうことで、いろいろと今日まで方針をきめてまいりましたけれども、そのための労働者住宅の確保について、全体的に職業訓練やその他広域職業紹介と関連づけて、どのくらいに住宅政策を考えており、実際にやってきたのでありますか、その点を明らかにしてもらいたい。
#86
○三治政府委員 移転就職者用住宅として、賃貸宿舎として五千戸を三十八年度つくっております。それから簡易宿舎として、これはパイプハウスでございますが五百人分と、それから雇用促進融資として約五千戸分、これは事業主に住宅資金を融資してつくってもらう。それから炭鉱離職者のために住宅確保奨励金一万二百戸分、さらに追加して簡易宿舎を、一千人分のものをいまつくりつつあります。それから金属鉱業の離職者のために、九百四十戸分の住宅確保奨励金を出すことになっておるのであります。
#87
○大原委員 これはほんとうの意味でスズメの涙でありまして、これは広域職業紹介の裏づけをするには、私は足りないと思います。もちろん公営住宅、低賃金住宅等とも関連しておりますけれども、住宅政策は雇用問題を解決する際に、言うなれば一つの社会保障というか、住宅保障の問題は非常に大きな問題であります。家族保障の問題と一緒に、中高年齢層の職業紹介を円滑にするための、非常に大きな条件であると思うのであります。
 そこで質問を進めてまいりますが、いまいろいろと申し上げましたけれども、渋谷委員等に対する答弁などでも出ておりますし、あるいは今日までのいろいろな質疑応答で、雇用情勢が非常によくなった、政府側が書いた原稿は読まないと言っておこった人があるそうですが、雇用状況が非常によくなっているという、そういう見解もあるわけです。私はいままでるる問題点ごとに述べてまいりましたけれども、日本の失業問題、雇用問題は、それほどではないという点を具体的に指摘をいたしましたが、私が申し上げたい点は、こういう点です。つまり求人と求職の対比の数字が出ておったのでありますが、数年前においては三対一で就職難であったけれども、今日では一対一に近くなったというふうな御説明があったわけです。しかしこれはいまのいろいろな質疑応答の中でも、若干事態は明らかになっていると思いますが、これはすれ違いの求人と求職であります。つまり大企業の非常に安定した職場に対しては、求職者が殺到いたしているわけであります。不安定雇用等におきましては、これは実際上求人を要求する側は若い人を要求する。いわゆる若年労働者にとりましてはこれは求人難、中高年齢層にとりましては就職難、こういうことですれ違いであります。大企業に対しましては殺到率が高いのであります。したがってこれは機械的に求人と求職が一対一であるがごとき、そういう机上の空論的なる議論というものは成り立たないというふうに思いますけれども、それに対しまして御見解をお伺いしたいと思います。
#88
○三治政府委員 確かに渋谷委員に対する答弁の求人対求職の割合が三十一、二年当時には四倍であったのが、最近ここ一両年では一倍になっているというのが平均でございます。若年者については求人三人に対して求職者一人、中高年齢者で五十歳以上になると、六、七人に対して求人者一人というふうな中身の変動はございます。したがいましてそういう状況であるから、われわれは中高年齢者についてその就職難を打開するために、新しい法体係をつくり、予算措置もとり、安定機関も拡充してやろうとするのが、失礼な言い方かもしれませんが、われわれが意図した今度の法改正でございます。それ以外他意はないわけであります。
#89
○秋田委員長 この際十五分間休憩いたします。
   午後四時四十二分休憩
     ――――◇―――――
   午後五時十九分開議
#90
○秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続けます。大原亨君。
#91
○大原委員 休憩になります前に、三治政府委員から一方的な答弁がありまして、そのままになっておるわけですが、私がるる申し上げているのはこういう点であります。つまり答弁がありましたように、求職と求人とは一対一であるというふうに形式上いわれておるけれども、高齢者については六対一、七対一である。こういうことで求職のほうが多いわけでございますけれども、実際にそういうすれ違いがあるわけですが、そのためにこそ職業訓練をやるのだ、こういう切り返したような答弁でございましたが、私がるる申し上げておりますように、高齢者の就職難の原因はたくさんあって、その中で家族をかかえて生活費がたくさん要る。あるいは移動のために住宅がない。家族との別居においては安定をしない。あるいは年をとっておるから、人間関係、経営者の立場に立つならば労務管理がむずかしい。陶冶性がない。こういう問題等が障害であって、技術の訓練をするといいましても、たとえば運転手にいたしましても、最も手近な訓練ではございますが、目が薄い、あるいは手足が思うようにならない、こういうことで大体なかなか十分な一人前の技能労働者になることがむずかしいわけです。したがって職業訓練だけに限定をしながら、あるいは限定しないまでもこれを中心的な雇用政策とするような、そういう政策の中において、中高年齢層の雇用問題を解決するというようなことは、就職できなかった場合には個人の責任、お前が悪いからであるというふうな、個人に責任を転嫁する結果になるのではないか。したがってこの問題については逐次同僚委員から制度全体に関連をいたしまして指摘をいたしますが、私はきょうは質問を能率的に進めていく上におきまして、三治政府委員の御答弁に対しましては絶対的に承服できない。こういう点で私が問題点を理非をただして指摘をいたしておくところであります。
 そこで質問を進めてまいりまして、今日の失業問題、潜在失業、いわゆる不完全失業を含んでの問題を、私はけさほどから終始質問をいたしておるわけですが、これはひとつ政府の見解や見識のほどをお伺いをしたいのだが、この失業の中には摩擦失業と、それから構造的な失業がある。そういう二つの内容を正確に把握した上で、日本の雇用形態や産業の実態に合わせたところの、実態に即した就職指導や雇用指導をしなければならない。そこで摩擦失業とは一体日本においてはどの分野であって、どういうことがそれに対する対策であるか、構造的な失業は日本においてはどういう分野であって、どういう対策をすべきであるか、こういう二つの失業の中身の中心点の問題に触れまして、政府側の見解なり、それに対する対策を私はお聞きいたしたいのであります。
#92
○三治政府委員 経済理論の労働問題として、摩擦失業、構造的な失業と分けられておりますが、現在の状況では大体において、主として近代的雇用関係におきましては摩擦的失業の状態だというふうに考えております。構造的失業は、昭和二−四年ごろのいわゆる一般的なパニックというふうなもの、それから戦後のいわゆる敗戦による軍需産業の壊滅ということによる雇用の場がなくなった場合、こういう場合に構造的な失業。現在において構造的な失業として若干指摘できるのは、石炭産業がいわゆるエネルギー革命によりまして、集中的に一定地域において失業が生まれる。これは雇用の場を移さなければ再就職できないという面において、地域的に構造的な失業ということが言えるのではないかというふうに考えております。摩擦失業という場合には、やはり失業の、産業構造の暫時な変化ということによって、これは先生御承知のように、失業保険でいわゆる摩擦的失業に対処する。ところが構造的な失業に対しては、やはり完全雇用と申しますか、購買力増強、いわゆる生産増強のほうに持っていって、雇用の場の拡大をしなければならない。それが構造的失業という現象を起こさせないということが、いわゆる完全雇用政策、戦後における先進国の各国が行なう完全雇用政策というものに、概念的につながるのではないかというふうに考えております。
#93
○大原委員 いまの点は、十点満点で点をつけるならば二点か三点であります。全然点数になっておりません。そういうことでは失業問題や雇用問題の解決はできません。つまり私の見解を言いますと、摩擦失業というのは物理的な空間的な失業であって、政策としては失業保険等でつないで、次の再雇用の職場がある可能性の失業であります。構造失業というのは、これは日本の資本主義の、特に高度成長政策でそのいびつなゆがみが露骨になっておりまするけれども、つまり二重構造だといわれている面からきているところの問題も含むのであります。もちろんいま言われたように、エネルギー産業やその他万般の問題がございまするけれども、日本の中高年齢層を中心とし、あるいは地域的ないろいろな条件の違う、いわゆる労働の需要と供給のアンバランスによる、あるいは質的な労働の需要と供給のすれ違い、いま指摘いたしましたすれ違い、そういう問題を含めましての失業の問題を、構造的な失業というのであります。したがってこれはやや将来にわたって失業保険などでつないでおけば、就業の場があるというような、そういうものではないのであります。したがってこれに対しては、そういう失業者の実態に即しながら政策を科学的に立てていかなければいけない。その点ではいまの三治政府委員の御答弁は、非常に粗末な答弁である。これはまぎれもなくそうである。かくのごとく政府は完全雇用の政策がないわけです。完全雇用の政策がないということをこれは実証している、裏づけておると思うのであります。これは一三治政府委員の答弁だけがまずいとかいいとかというものではない。これは雇用政策がない。完全雇用政策がない。日本の半失業の、不完全失業の実態が正確に分析をされていない、それに対する科学的な政策がない、こういうことであって、そういう中において失業問題の解決はできない。そこで、そういう観点で社会党の考えや政策というものを直接これに対比して、それぞれの問題についてわれわれの考えを述べながら追及していけばよろしいのですが、しかし時間も相当たっておりますので、能率的に進める意味におきまして、これから結論的に、いままでけさほどから申し上げている点についてただ一点、日本の失業問題の中心的な課題といたしまして論議いたしましたことについて、政府に対する施策を要求する問題でございまするから、政府がつくっておりまする雇用審議会の有沢会長がやっておりまする雇用審議会の完全雇用に関する答申、昭和三十四年の五月三十日に出しておりまするその答申に基づきまして、私がけさほどから質問をいたしておりまする点について、私はこれから総括的に質問をいたしていきたいと思うのであります。
 つまり雇用審議会は完全雇用に関する答申をいたしまして、明確に日本の雇用、失業問題は、その量的な側面よりも質的な側面、不完全就業の問題です。そこに問題があるのである点を指摘いたしておることは、これは御用機関に類するような機関であるという批判もある雇用審議会といたしましては、問題の把握はこの点については的確であります。非常に的確です。その改善が経済発展にだけまかせていては容易にやれるものではないという点を指摘いたしております。つまり池田総理が言っているように、高度成長政策で大きな資本が恩恵を受けますと、そのおしめりが下へたらたらっと浸透してくるのだというおしめり論ですが、そういうことでは、この日本の失業の質の問題は改善ができない、こういうことを明確に指摘をいたしておることは、さすがにこの答申を書いた人々にもやはり日本の失業問題を科学的に分析する見解と見識があった、こういうことになりまするが、その改善が経済発展にだけまかせていては、容易に得られないことであるから、それに対する対策を特に強調いたしまして、そして問題点をあげておるのであります。したがってその対策といたしまして掲げてある問題につきまして、私は一つずつこれから質問をいたしまするから、政府といたしましての見解と、それからそれに対する政策につきまして御答弁をいただきたい。
 つまり、昭和三十四年に答申しておるのです。それを今日漫然と時間を過ごしまして、日本の失業問題に対するピントはずれの認識の上から、こういう問題につきまする正確なる対策をなしていないのではないか、こういう点が問題点でございまするから、私は逐次指摘をいたしますると、第一といたしまして、雇用者の所得を、家族を含めた最低生活をまかない得るものとし、家計補助的な不完全就業の必要を緩和するようにすること、こういう一つの項目があるわけであります。この答申に対しまして、私が質問をいたしましたことを含めまして、政府としてはどのような見解を持ってこれを受けとめ、そしてこれに対してどのような具体的な対策を立てたのか。単に税金を使って審議会をつくっただけではだめです。結局はこれに対しまして、この審議会の機能を生かさなければだめです。第一項につきまして、私が質問いたしましたことに対しまして、明確にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#94
○大橋国務大臣 御質問の要点は、労働者の所得の増大のためにいかなる対策をとっておるかということだと存じます。政府といたしましては、労働賃金の引き上げをいたしますためには、労働生産性の拡充が当然伴わなければ、その賃金水準の安定ということは困難であると存じまして、労働生産性の拡充のために努力いたしております。それは現在の所得倍増政策の推進でございます。同時に現在の労働者の異常に低い賃金は、これを相当程度に引き上げる措置が相伴わなければならぬと存じまして、最低賃金法に基づく最低賃金の普及、及びその質的充実に努力いたしておる次第でございます。
#95
○大原委員 つまり就業構造の二重性を指摘をいたしまして、雇用審議会はそれを解決する対策として、私が申し上げたことを対策として答申をいたしておるわけですが、私は大臣の言うなれば答案をすらっと書くような御答弁に対しましては、御答弁だけでは納得いたしますけれども、実際にはいままでの質疑応答のように、実のある政策がなされておるというふうには理解することができません。
 第二番目は、失業中、社会保障によって最低の生活が保障され、不完全就業に転化して潜在化しないようにすること、つまり失業というものを顕在化しておいて、はっきり表面に出しておいて、これに対する失業保険や失業手当の保障制度を明確にしていく、そしてその次の雇用政策を立てるようにしなさい、こういうのです。つまり潜在失業者の中にぶち込んで家族も働くということになって、支離滅裂になる。新しい就職はあきらめる、自分の本来の就職はあきらめる、そういうふうな投げやりな結果にしないで、失業状況を顕在化しておいて、潜在失業者にならないような政策を立てなさい、こういう意味であります。これは非常に大切なことでございまして、いまの失対事業を再就職させるという問題以上に、この問題は大きな問題です。この問題につきましてどういうふうな見解を持たれ、これに対してどういうふうな対策を昭和三十四年以来立ててこられたか、こういうことにつきましてひとつ質問をいたします。
#96
○大橋国務大臣 この点は、労働政策といたしまして、特に失業に対する問題のうちでは重要な点であると存じまして、政府といたしましても特に力を入れてまいっておるところであります。すなわち失業中の生活を保障いたしますために、まず第一には失業保険の拡充を行なっておるのでございます。この点につきましては、先般当委員会におきましても御審議をいただいた次第であります。
 それから失業保険に関連をいたしまして、失業中の生活保障をするということが必要であると思われます。これは失業中におきましては、保険の期間延長等の措置を講ずるのでございますが、失業保険の切れた後に、再就職するまでの期間の生活保障を考えるという方向が指示されるわけであります。これに対しましては、まだ一般的にさような失業手当的な制度を提案するまでには至っておらないのでございまするが、しかしさような方向への政策の一端といたしまして、石炭離職者に対する就職促進手当でありますとか、またこのたび議題になって御審議中の失対事業の改善におきましては、訓練後の再就職までの就職指導手当というような新しい制度も、提案をいたしておるような次第なのでございます。
 さらに重要なる点は、これらの失業者が不完全就業に入り込むことのないように、どこまでも指導をしていくということが必要であると存じまして、このためには職業再訓練に力を入れておりますことは、すでに御承知のとおりでございます。
#97
○大原委員 私が質問しないことまで答弁していただいたのですが、私が言っているのは失業保険と失業手当その他の問題です。つまり潜在化しないような政策の一つといたしまして、特に中年層、高年層の失業問題、雇用問題が大きな問題ですから、たとえばもう一つは、私が言うのは、こういう場合には中高年齢層の教育や訓練につきましても非常にむずかしいのですから、政府が雇用の造成をすることが必要なんです。たとえば失業対策事業を本来の意味で改善をいたしまして、無権利と低賃金の実情を克服いたしまして、家族の生活を含むようなそういう事業を地域において興していく、そしてそれと一緒に民間の事業間においてもこのことができるようにする。つまり私は失業対策事業を、本来の意味において政府の責任における雇用の造成として顕在化をして、これを改善しながらやっていく。いま各論について御答弁がありましたけれども、私はこの問題は各論については触れませんが、政府の大まかな政策の筋は何かというと、政府の今回の対策は失業者を顕在化するのでなしに、潜在化して、私が申し上げた潜在失業者の中にばらまくというような政策であって、この項目の趣旨とは反対ではないか、こういう点を私は指摘をしておきます。
 第三、不完全就業的な自営業主に移行する道が狭められていること、これはおそらくいわゆる半失業者が小売り商になる、あるいは日本においては五十五歳で定年ですが、平均年齢は七十何歳にふえておる。女の人が七十二歳で男が六十九歳、男のほうが行儀が悪いから早く死ぬわけです。それはともかくとして、平均寿命が七十歳ぐらいと非常に延びているわけです。寿命が延びているのに、五十五歳で定年である。しかも老後の保障がないから失対に出る。あるいはいろいろなところで働く、小さな退職金をもって小商売を始める、そういう不完全就業的な自営業主に移行する道を狭めることとなる。つまりどういうことかというと、昭和三十四年以前とは確かに情勢が変わっておる。そういう小商売をやっても、はっきり損することはわかっている。やみ商売も成り立たぬ。しかしながら五十五歳で定年ということは、教育費からいっても、生活費からいっても、老後の寿命からいっても、子供にたよることができない現在の情勢においては、非常に大きな生きていく上の不安があるわけです。そういう意味においては、問題が依然として潜在失業者の中にある。定年制の問題は、雇用問題で重要な問題ですが、これは完全雇用とも非常に関係の深い問題ですけれども、ともかくそういう問題を指摘いたしておきます。
 ここで一つだけ聞きたいのは、定年退職の五十五歳というふうな制度は、どこに行ってもないと私は思うけれども、ともかくも働き盛りの五十五歳でその職場を去っていくということは、そういう力がなくなっても費用は要るということで、現金収入を得なければならない。年金や恩給で生きていくわけにいかない。出費はかさむが、子供にたよるわけにいかない。こういうことで、社会保障とも関連して大きな潜在失業者の問題を提起しておると思うのですが、定年退職の問題について、労働省は労働政策としていかように考えるか。こういうふうに、問題を現在の時点に引き直して質問をいたしておきます。
#98
○三治政府委員 定年制の見解につきましてはいましばらくおきまして、勤務延長者及び再雇用者に関する実態調査を日本経営者団体、関東経営者協会で調査されたことが、ございます。定年制の有無につきまして回答会社四百社中、定年制度のあるものが三百八十七社、結局ほとんどあるということになっております。定年年齢がどういうふうなきめ方をしているかというと、一律定年制というものが二百七十九社、男女別の定年制が七十社、職員、労務者別に定めているのが十社、そのほか二十社というふうになっております。さらに一律定年制では五十五歳が二百四十八社、六十歳が二十一社、その他十社、最高が六十五歳で最低が五十五歳、しかしながらこの定年延長につきましては、最近五年間におきまして部分的に延長したものが二十四社、一般的に延長したものが十四社というふうになっております。またさらに定年は一応定年でやるけれども、さらに定年後新しい形で勤務の延長を行なうのが百二十一社というふうになっております。経営者関係でもこの点は相当問題にしております。もちろん現在の年功序列、いわゆる一般的な年功序列型賃金の改正とともに、こういうふうな定年延長につきましては、いま経営者団体の調査でもおわかりになるように、われわれの寿命が延びて働く期間が長くなるとともに、こういうことは当然考慮されていくと思いますし、今後とも雇用政策としても、中高年齢者の雇用対策という部面から言っても、全体の雇用構造というものをさらに検討いたしまして、こういうふうな定年制の延長、定年後の再雇用について所要の対策を講じていくべきである、こういうふうに考えております。
#99
○大原委員 たとえば一方では厚生年金を六十歳にしようというふうに延長しながら、定年制とのつながりがない。こういうところに日本の雇用政策や社会保障政策が全く支離滅裂である、こういう事実を示しておる。これは論議をすれば数限りがありませんし、これに対して的確な政策がないということはまことに遺憾ですが、その点を指摘するにとどめて、いままで申し上げた三つの点は、当面の政策目標の重点を不完全就業の状態をなくすることにおく、こういう雇用審議会の前提、そういう方向の中で、三つあげられた点です。さらにそれに追加をいたしまして、答申の中におきましては、そのための直接的対策といたしまして、最低賃金制の確立、賃金体系の改善、労働時間の短縮、雇用形態の改善、社会保障の充実、労働の可動性の増進などを示しております。この中で雇用形態の改善の問題は臨時工、社外工の問題です。そういう問題を指摘をいたしておるわけでございまして、この問題は一つ一つ私は私摘をいたしまして、そうして日本の不完全就業を解決するために三つの大きな前提と、それからこういう直接的な対策を勧告をいたしておるのですが、その実行こそが、潜在失業者の問題を含めて失対問題の解決の政策自体である、それらのことが書いてあるのです。
 そういう面におきましてこれは重要なる問題でありますが。この際私はきようの不完全就業の問題に関連をいたしまして、自由化とか合理化、あるいは臨時工とか社外工とか、登録日雇い労働者の実態とか、あるいは農林漁業のそういう構造改善に伴う失業の問題などについて、住宅問題等をからみまして、今朝以来指摘をいたした点でございますが、政府の不完全雇用政策、日本の失業の本質に触れた対策といたしまして、最低賃金制の確立について、たとえば一万円以下の労働者を国あるいは経営者が雇ってはいけない、それ以上で雇わなければならぬ、そういう社会的な道義的な責任を明らかにすることが、これは私は公共の福祉という点からも当然で、そういう点から考えて、最低賃金制の確立とか、あるいは労働時間の短縮とか――その他の問題は他の委員が触れますから、私は触れません。そういう問題等について指摘をいたしておりますが、この問題を解決いたしますると、失対事業で訓練をしたりあるいは自分で就職をいたしましたのが、一定の保障をされた雇用の中に入っていくということになって、雇用における不完全就業の悪循環を断ち切ることができる。そういう政策なしに、失対事業を小手先でいらったところで、これは問題解決にならぬ。そういう意味において、最低賃金制と時間短縮に対する政策問題について、この際労働省といたしましても、政府といたしましても、その構想をまとめて、その中で何年計画かによって失業をなくしていく、不完全就業者をなくしていく、そういう総合政策を立てるべきものである。したがって最低賃金制の確立とそれから時間短縮の問題の二つの点に、私は問題を一応この中から限定をいたしまして、それに対する将来の政府としての政策の目標をこの際明確にすべきだと思う。これが明確にされない限りは、私はこの政策はほんとうに砂上の楼閣にすぎない、中身のない机上のプランであるというふうな点を指摘せざるを得ない。したがって私はたくさん問題がある中で、最低賃金制と時間短縮の問題に対して、政府はいかなる構想を持って、どのくらいな展望を持って、この問題を本格的に解決しようとするのか、こういう問題につきまして、私は厳粛に政府に対しまして、問題点を指摘して一応答弁を要求いたします。
#100
○大橋国務大臣 最低賃金制につきましては、政府といたしましては最低賃金法の運用によりまして、現在の賃金水準というものにふさわしい最低賃金をすみやかに、できるだけ広い範囲にわたって決定するようにいたしたいと考えておるのであります。古い時期に定められました最低賃金の実額は、今日の実情に適合しないものもございますので、これらにつきましては、行政指導を通じまして、その金額を現状に合うように改善せしめつつあります。また現在の最低賃金法は、業者間協定を一応のたてまえといたしておるのでございますが、この方式だけによって最低賃金制度の全面的な普及ということを期待することは、必ずしも適切でないと存じまして、必要に応じて、職権によって最低賃金を決定できるような方式も運用をするようにする必要がある。これらの点につきましては、すべて現在その基本的な方針につきまして、最低賃金審議会に諮問をいたしておるところでございます。
 次に労働時間の問題でございますが、労働時間につきましては、すでにILOの勧告といたしまして、四十時間という目標を定め、それを実現するために努力すべきであるというふうに申されております。しかしながら今日の日本の産業労働界の実情から見まして、直ちにこの四十時間を実行の目標として打ち出すことは、今日はたしていかなるものであろうかという点に問題がございます。しかし少なくとも現在の労働基準法が、四十八時間という法律上の限界を示しておるにもかかわらず、現実の労働時間は週平均五十一時間以上というような実情でございますから、ここ一、二年のうちに、少なくとも労働基準法の考えております程度まで、労働時間を実際縮めていく必要があるのではないか。そして一応その目標に到達したる後におきましては、また逐次産業労働界の実情に応じまして、それ以上の短縮に進んでまいるようにいたしたい、かように考えておるのでございますが、詳細なスケジュール等につきましては、まだここで申し上げる段階にはございません。できるだけ今国会が終わりました後に、これらの問題を十分真剣に検討をいたし、できるだけ早くスケジュールをつくるようにいたしたいものだ、かように存じております。
#101
○大原委員 私はけさほどから日本の失業問題につきまして、いろいろと各方面から質問を続けてまいったのであります。日本の失業問題は、表面に統計上あらわれた完全失業者の問題でなしに、不完全就業者の問題である、そういうことにつきまして各方面から問題点ごとに指摘をいたしたのであります。たとえば社外工とか、臨時工とか、あるいは日雇いという場合は、ある場合においては、全面的に企業の形態によりましてはやむを得ない場合もあるでしょうけれども、これはしかし港湾労働とか建設労働とか、法律によって国が保障して、安定させるという政策等も必要でありまして、そういう社外工とか、それから臨時工というようなものは、雇用形態といたしましては、国の責任あるいは経営者、雇う側の一つの社会的な責任といたしまして、人権を尊重するたてまえからも、今日のゆがんだ高度成長政策を是正する意味からいたしましても、この点は直ちにやめることができるのであります。
 さらに最低賃金制の問題にいたしましても、国会が済んでからだんだんと構想を立てていきたいというお話ですが、大橋労働大臣は、いままでの労働大臣よりも一歩進めて、最低賃金制の現在の業者間協定に対する欠陥やあるいは将来のあり方については、積極的な発言をされておるわけでありますから、私どもといたしましては、不完全就業者解消の問題に対しまして期待をいたしておったところですが、しかしいまの答弁では期待はずれであります。したがって私は、こういう最低賃金制の問題を議会が済みまして後に構想を立てていきたいというふうなことで、すべて不完全就業者を解消する問題は、これは将来に残された問題であるわけでございまして、私どもといたしましては、これらの問題を解決することが、今日の失対事業を解決する問題ではないかと思います。失対に登録して働いておる諸君は、決して今日の失対事業が自分の一生の仕事であるとか、孫子に対しても失対事業に働かせたい、こういう気持ちの者は一人もないのであります。そういうことは確実であります。あたかも安住をして惰眠をむさぼっておるような発言をする人人がしばしばございますけれども、しかしながらそうではなしに、幾多の精神的な痛苦を忍んで、何とか働いて生きていきたいという、そういう人間としての願いで、たくさんの社会悪の中に没入をしないで、巻き込まれないで、とにかく働いて生きておる人々であります。したがってこの問題は、職業訓練ということも、事自体としては私はけっこうであると存じますが、これをもって問題の解決をするということは、いままでの質疑応答の中で明らかにいたしましたように、これはできないと私は思うのであります。したがって私は、けさほどから指摘いたしました点は、そういう点で不完全就業者の問題に限定をいたしまして、きょうは質疑応答を重ねてまいりましたけれども、そういう点を中心としながら、後に同僚委員がそれぞれ各方面から指摘をいたしまするそういう各種の観点からいたしまして、日本の失業問題に対する科学的な的確なる判断の上に、ほんとうに前向きの政策を立てていただくように私は要望をいたしたいのであります。
 したがって私の質問は、これをもちまして――全然この職安法と緊急失対法の中には入っておりませんが、しかしこれから逐次入っていくところでございまして、(「十時までやれ」と呼ぶ者あり)御希望があるならば、八時でも九時でも十時でもやりますけれども、とにかくそういう点におきましては、ぜひひとつ早目にやめてはどうかという御意見もあったようであります。でありますから私といたしましては、問題を将来に保留いたしておきまして、私の質問はこれから本論に入るところでありますから、ほんの序の口でありますが、以上をもちましてきょうの私の質問を終わることといたす次第でございます。これで終わります。
#102
○大橋国務大臣 これは速記録を見ていただければわかるのですから、わざわざ申し上げる必要はないかと存じますが、ただいま私のお答え申し上げましたことは、最低賃金の問題につきましては、すでに最低賃金審議会に御検討をお願いしておるということでございます。国会が済んだら早くやりたいというのは、労働時間短縮についての考え方は大体きまっておりますが、スケジュールのこまかいことを御質問でございましたので、その点は早くこの法案を通していただいて、議会が終わった後にできるだけ早くその方に全力を集中いたしまして、スケジュールを早くきめたい、こういうふうに申し上げました。その点御了承をお願いいたします。
#103
○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十二日午前十時委員会、委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会いたします。
  午後六時二分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト