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1962/07/04 第43回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第043回国会 科学技術振興対策特別委員会 第16号
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1962/07/04 第43回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第043回国会 科学技術振興対策特別委員会 第16号

#1
第043回国会 科学技術振興対策特別委員会 第16号
昭和三十八年七月四日(木曜日)
   午前十時四十四分開議
 出席委員
   委員長 寺島隆太郎君
   理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君
   理事 山口 好一君 理事 岡  良一君
   理事 西村 関一君 理事 山口 鶴男君
      赤澤 正道君    齋藤 憲三君
      坂田 英一君    保科善四郎君
      前田 正男君    石川 次夫君
      原   茂君    内海  清君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       内田 常雄君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   森崎 久壽君
        総理府技官
        (科学技術庁研
        究調整局長)  芥川 輝孝君
        総理府事務官
        (科学技術庁振
        興局長)    杠  文吉君
        厚生技官
        (医務局長)  尾崎 嘉篤君
 委員外の出席者
        文部事務官
        (大学学術局審
        議官)     岡野  澄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 科学技術振興対策に関する件(科学技術行政に
 関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○寺島委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 まず、閉会中審査に関する件について、順次おはかりいたしたいと思います。
 まず、閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。
 本特別委員会は、閉会中もなお科学技術振興対策に関する件について審査いたしたい旨、先例により、文書をもって議長に対し申し出を行ないたいと存じますが、これに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。
    ―――――――――――――
#4
○寺島委員長 次に、閉会中の委員派遣に関しおはかりいたします。
 閉会中審査を行なうにつき、委員を派遣して実地調査を行なう必要がありますので、その場合には派遣委員の数、その選定、派遣地及びその期間並びに議長に対する承認申請の手続等は、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
#6
○寺島委員長 次に、現に設置されております科学技術の基本問題に関する小委員会は、閉会中も存置することにいたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。
    ―――――――――――――
#8
○寺島委員長 次に、閉会中における理事並びに小委員の辞任及び補欠選任に関する件についておはかりいたします。
 本件につきましては、そのつど委員会においておはかりすることなく、その決定を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
#10
○寺島委員長 次に、閉会中審査のため、委員会及び小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生ずることも考えられますので、その人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  「異議なし」と呼ぶ者あり」
#11
○寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
    ―――――――――――――
#12
○寺島委員長 なお、当委員会に参考送付されました陳情書は、科学技術行政機構の強化に関する陳情書一件でございますので、念のため申し添えておきます。
     ――――◇―――――
#13
○寺島委員長 科学技術行政に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
#14
○岡委員 この委員会で特に原委員、齋藤委員から熱心に御討議があったガンの研究体制の問題でございますが、まだこのガンの研究体制については、委員会としても結論を出しておりません。まあ私ども別に専門の学者ではございませんから、学説の是非を言うのではございませんが、政策の問題として、やはりガンの研究体制というものができるだけ総合的に、国際水準におくれないように進められなければならないということについては、委員会としても大きな責任を持っておるわけでございます。そういうことから、いまのカンの問題――おそらくガンの問題は、その国の生物化学の水準をはかり得るような重大なテーマになってきておるわけでございますが、わが国におけるガンの研究体制というもの、あるいは診療体制をも含めて、国はいかなる措置を講じておるのであるか、この点を実は率直に関係当局からこの際お聞かせを願いたいと思います。
 なお、厚生省からは、特にガンによる死亡率、あるいはガンにもいろいろ種類がありますが、その種類に関しての若干の統計的な御報告なども、あわせて承れればけっこうかと思います。まず厚生省のほうから、ガンの現在の実態並びに厚生省としての対ガン政策という点について、予算を含めてひとつ御答弁を願いたい。
#15
○尾崎政府委員 厚生省におきましてのガンの対策は、一般の問題といたしましては公衆衛生局のほうで所管しておりまして、あるいはきょうの全般的の体制につきましての御答弁は公衆衛生局長が参りまして御答弁を申し上げるのが正しかったのじゃないか、こういうふうに思います。私ども医務局のほうは、そのうちの医療機関の整備の問題を大体引き受けておるわけでございます。
 ですが、ただいま私の存じておりますことをちょっと申し上げますれば、ガンの患者数は、これはなかなか全体的にはつかみにくい問題でございますが、現在死亡者といたしましては毎年ふえておりまして、昨年が九万七千くらい、大体十万に近くなっております。あるいはそろそろ十万を突破するというような状態でございまして、そのうち特に胃ガンが日本は多い。これは世界でチリ等と並んで、ガンの死亡者のうちで一番胃ガンが多いということでございます。そのほか、婦人では子宮ガン、乳ガンというようなものが多い。これは世界と同じでございます。なお、最近におきまして、肺ガンの死亡数がふえてきております。ただ、この肺ガンの数は、まだイギリスとかアメリカに比べまして数はそれほど多うございませんが、しかし、その上昇率は諸外国の上昇率をずっと上回っておるような率でふえておる。こういうような状態でございまして、公衆衛生局のほうで、この両三年ガンの患者がどれくらいおるかというような問題を、医療機関を通じまして実態調査をいたしまして、地域的の差、たとえば東北地方等にガンが多いというような地域的ないろいろ差があるというふうな問題等を調べ、疫学的にいろいろ解明をやっておるところでございますが、その詳しいデータは、もし必要がございますれば、あとで公衆衛生局から委員会のほうへ差し出すようにいたしたいと思います。
 なお、医療機関の関係といたしましては、従来国立病院に、ある程度のガンの診療の機能を発揮するという立場で、がんセンターというのをつくりまして、コバルトを入れるとか、その他専門家を組織、強化するという立場をとっておりましたが、世の中の進運ではこれでは足らないというので、四年前だったと思いますが、予算をお願いいたしまして、築地に日本全体の中枢になるというような立場で国立がんセンターをつくりました。これは病院と研究部門と、その両者を運営していきます運営部、この三つの構成を持っておりますが、それをつくりまして、病院が大体外来四百五十くらい、入院も四百五十、五百くらいのものを予定しておりますが、現在その機能を三分の二くらい発揮しておるところでございます。それから、研究部のほうも十二の部門、病理、生化学、化学療法、生物学、薬効試験部、生物物理、内分泌、血清、放射線、疫学、ビールス、集団検診というような部を予定しておったのでございますが、現在開設いたしておりますのは病理、生化学、化学療法、生物学、この四部、本年から薬効試験と生物物理、内分泌、この三部を三十八年の九月か十月ごろから開設するという予定でございまして、引き続き三十九年に拡大を企図しておる状態でございます。
 なお、国の中枢的ながんセンターだけでなく、さらに各ブロックにガンの診療機構をつくって強化していかねばならないというので、ブロックごとに第二次的センターと申しますか、こういうふうなものをつくろうと考え、これは国で何もつくることはないというので、府県でやれるところは府県にお願いしょうという立場で、現在大阪と名古屋、これは東海地区と近畿地区のセンターというのを両県でつくってもらっておるのに、国からも一年間に、はなはだ少額でございますが、一カ所当たり二千万円くらいずつ二カ年間いま補助をしております。あとは起債等でするというふうな状態でございます。
 なお、このほかに今度府県ごとにもある程度、ガンの第三次と申しますか、府県の中枢をつくっていくというような形で、それも自発的にやっていきますところには多少の援助をいたしたら、こういうような考え方でいま進んでおります。
 これが医療機関でございますが、これに対しましてもいろいろ専門家の養成という問題も要りますしするので、その関係も、大学等でやっておりますものに対して、さらに厚生省でも組織的に、いまの国立のがんセンター、東京のがんセンターを利用いたしまして、養成等もいまから始めていかなければならない、こういうふうな考え方をしておる状態であります。
 なお、研究部門に関しましては、基礎的の研究は、どちらかといいますと大学関係、文部省関係でやってもらう。基礎と応用というものにもいろいろありますが、厚生省関係はどちらかといいますと治療とか診断とかいうような面と、行政にからめました面の研究をやっていったらという考え方で大体区分けをしておりますが、この両者の区分はなかなかむずかしいところだと思います。いまお話し申しましたように、ガンセンターの中でも基礎的部門をやられておるということになっておりますが、一緒になって協力していきたい、こういうふうに思っております。
#16
○岡委員 ガンは生きて動く疾病でありますから、そして本質的にもなぜガンが起こるかという発生機転の究明とガンの治療とが不可分だと思うわけです。いまお話を聞けば、厚生省では主として臨床的な分野に重きを置いておられる。厚生省の機関ではさらに集団検診等をやっておられるという事実も聞いておりまするが、集団検診となれば、ガンがビールスによって起こるかどうか、そうすれば免疫というものも考えられるわけであるが、こういうものとも不可分になると思うわけです。
 そういう意味で、文部省では、最近ガンについては各大学等において一体どういう研究体制をとっておられるか、この際御報告を願いたい。
#17
○岡野説明員 ガンの研究につきましては、社会的な関心も非常に高いわけでございまして、実は文部省は昭和三十年にガンの研究の体制をどうしたらいいかということを、専門の学者を集めまして御審議いただいたわけでございます。文部省に国立大学研究所協議会という協議会がございまして、そこでこのガンの研究の問題を取り上げていただいたわけであります。それについて、その協議会から御答申をいただきました。この立案に当たられたのは田宮猛雄博士でございました。その結論を申しますと、――ガンの研究の成果を画期的に向上させるためには病理学、生理学、生化学、微生物学、血清学の専門分野の研究者が、臨床部門と密接な連携を保って長期間協力して、複雑困難な研究が行なわれなければならない。非常に広範な専門分野を網羅する総合的な研究所を設置することが望ましいけれども、現在各地にあってそれぞれ特色のある研究に従事しておる研究者を一カ所に集中することは困難である。したがって、具体的には、長期にわたる予算的な裏づけのある研究組織を確立するということが第一。第二は、このような研究組織を目に見えない研究所というように考えて、研究目標を確立して、統一的な計画に基づいて運営することが望ましい。――こういう御意見をいただいたわけでございます。すなわち、中央に大研究所をつくるというよりも、各地にありまして特色のある研究をやっておるその部門部門を強化して、全体を目に見えない研究所とするという構想のほうが能率的であり、実態に合うということでございました。
 この答申をいただきましたので、文部省といたしましては、昭和三十二年度から昭和三十七年度にかけまして、全国各地で特色のある研究を行なっております大学に対しまして、研究部門の整備をいたしました。その間、十六の研究部門を各地に新設したわけでございます。部門と申しますのは、わかりやすく言えば講座でございます。北大、東北大学、東大、京都、千葉、金沢、広島、名古屋、これらの大学に、それぞれ特色を持っている研究を伸ばすために、研究部門をつくったわけでございます。さらにそれの裏づけといたしまして、この研究部門は要するにそこにおる教授の席、助教授の席を確保することでございまして、いずれも定員を取りまして整備したわけでございます。
 一方、文部省の予算に計上しております科学研究費というのがございますが、これにつきましても昭和三十二年度から、ガンについては特別のワクを設けまして――ワクと申しますか、特に推進する分野としてガンを取り上げておりまして、今日まで七年間に約四億の研究費を出したわけでございます。本年度、三十八年度におきましては、ガンの研究は、医学的な研究のみならず、生物学、生化学、微生物学、薬学など関連諸領域の研究を総合してガンの本体を究明し、ガンの治療、予防を目標とする研究を対象とするのがこのガン研究でございますが、特に三十八年度では、細胞分裂及び細胞分化の研究、ガンとビールスに関する研究、発ガンの研究、ガン生態の研究に重点を置くという方針で、本年度科学研究費から一億一千二百万円ほどガンの研究に充当したという状況でございます。
#18
○岡委員 田宮先生を中心とする委員会が昭和三十年に発足をして、各大学においてそれぞれ特色のある専門的な研究をお進めになっておる、それに科学研究費を支出になるということは、これは一応わかりますが、それでは、ことしはガンに対する予算はどの程度、これらの特殊な各大学におけるガンの研究のための支出は、どの程度になっておりますか。
 それから、ことしの研究テーマの中にはビールスに関する研究あるいは免疫に関する研究、こういう研究に対する支出、あるいはまた、こういうテーマは一体幾つありますか、全体として幾つのテーマで、その中で幾つそういうものがありますか。
#19
○岡野説明員 ただいま申しましたように、科学研究費を一億一千万円ほど充当しておりますが、これはいろいろブランチが分かれておりまして、全部で二十七の項目になっております。その代表的なものを申し上げますと、発ガン性個体の自家免疫に関する研究というのを北大の武田教授が分担されております。それから、ガンとビールスとの関係に関する研究というテーマで、京都大学のウイルス研究所の天野教授が分担をされております。それから、ビールスと細胞遺伝から見た発ガン機構に関する研究、こういう事項で福島県立大学の粟野教授が分担されております。この研究組織には各地の専門家が網羅的に入っておる体制になっておる次第でございます。
#20
○岡委員 実は私も医科大学で若干研究をした経験があって、その経験から率直に申し上げるのでございますが、どうも大学の研究体制というものは非常に封建的な傾向が強いということ、いまでもそういう傾向が強く残存しておることを、私は痛感しておるわけです。いまの講座制というような制度にいたしましても、これはおそらく明治年間に設定された、何か太政官令に基づくものだというようなことを聞いておりますが、とにかく進歩しておらぬ。私はこのガンのような問題は、その大学における微生物関係も、あるいは病理関係も、生化学関係も、すべての方々が一体となってやってくれないと、ただ教授の好みのまにまに、専門分野と称してそこに予算が投入されるということでは、効率的な研究の成果が上がらないのじゃないかと思うわけです。そういう点について、大学における現在の講座制、またそういうものにともすればゆがめられようとする大学のガン研究体制というものについて、文部省は何か積極的な対策を講じておられるのか。また、そういう現状に対してどういう御見解を持っておられるか、この点をお聞きしたい。
#21
○岡野説明員 多少私の説明があるいは誤解を招いたかと存じますが、先ほど私が御説明申しました研究施設と申しますのは、従来の医学部の講座を増したということではございませんで、その医学部に特に研究施設ということで、まあいわば小さな研究所でございますが、そういうものを付設したということでございます。北海道にガン免疫病理の研究施設を置いたというようなことでございます。金沢大学には制ガンについてのガンの研究施設を設けた、こういう意味でございます。そこにそういう研究施設を置きましたのは、北大なり金沢大学で非常にその方面の優秀な業績があがっているからつくったわけでございます。
 講座制の問題については、それが教育、研究の最秒の単位であるというような仕組みに現在なっておるわけでございますが、現在学界の要望といたしましては、現在の講座の構成は、教授一、助教授一、さらに助手が二名というのがワン・セットになっておりますが、その点が不十分ではないか、むしろ教授一、助教授二、助手四というようなピラミッド型にする必要がある、そうしないと研究が進展しない、こういう御要望を承っておるわけでございます。
#22
○岡委員 それでわかりました。
 なるほど、私どもの近くにも癌研があって、若い方もみな一生懸命やっておるようです。ところで、こうして国際的にガンの発生機転などに対する研究も大きく変化し上うとしているというか、新しい学説も生まれようとしているような時代に処して、日本の大学における研究がどういう方向にいくべきであるかという判断をする、その判断に基づいて所要の研究施設というものがつくられていかなければならないと思うのだが、こういう判断をする組織があるのか。だれが一体そういうことをきめるのか。その点について、文部省の人はどういうようにお考えですか。
#23
○岡野説明員 ガンの研究につきましては、学術会議に癌研究連絡委員会というのが設けられておりまして、これが一面日本のガン研究の国際的な窓口の役割りを果たすと同時に、そこでいろいろな御計画が考えられるわけでございます。それで、私のほうは、専門家の実際、学問の実態を御存じであり、学問の価値判断ができる方々の御意見で研究費を配分するというたてまえをとっておるわけでございまして、先ほど御説明申し上げました研究費の配分は、学術会議から御推薦になりました審査員に全く御判断をおまかせする体制でございまして、その結果、ただいま申し上げたような、特に三十八年度では細胞分裂あるいは細胞分化の研究、ガンとビールスに関する研究、発ガンの研究のようなものに重点を置いてやるということにいたしておる次第でございます。
#24
○岡委員 そうすると、ガンの研究体制は、大学における研究体制、特に新しくガンの研究所を設けるというようなことは、学術会議に一任をしてある、テーマも一任をし、予算に関しても配分を一任してある、こういうことですか。
#25
○岡野説明員 いま申しましたのは、科学研究費の配分については、いま御説明したようなことで、科学研究費の審査委員会にお願いし、その委員は学術会議の御推薦による委員で構成する、こういうたてまえになっております。
 先ほど御説明申し上げました、どこの大学にどういう研究施設をつくるかという問題でございますが、これにつきましては、各大学からいろいろな御要求があるわけであります。これを全部いれるのが一番よろしいわけですが、事実上財政的な裏づけが十分できない結果も出てまいりますので、これにつきましては、先ほど御紹介申し上げました国立大学研究所協議会という協議会を持っておりますので、そこにおいて御意見を承って処理するというやり方をしているわけであります。
#26
○岡委員 癌学会の運営を一昨年、昨年、私どもSICを中心に新聞のニュースで見聞しておるのですが、そういう姿の中に私どもが感ずることは、何か古い体制というか、古い考え方というものが、新しい、開拓者的な若い意欲というものを押えているんじゃないという懸念があるわけです。私ども一番懸念するのは、ガンという問題がいよいよ非常に広い、しかもそれぞれ専門分野にわたって研究を進めていけばいくほど、あらゆる分野を総合した、これを底辺とした、その頂点にガンという一つの生命現象が起こっておるわけです。この探求というものは、そういう古い、私どもが大学に学んだころのガンの学説なりガン発生機転ではとても処理できない段階にきている。ところが、現在大御所といわれている人の考え方が、われわれの三十年前の学生時代とあまり違わないような考え方が、一口に申しますと、幅をきかしている。そういう点にやはり、癌学会の運営といいますか、大学協会か何か知らぬが、やはり旧態を脱した飛躍的な、若い研究者の意欲をもっと伸ばすような指導がいまおっしゃった協会でやれるかどうか。癌学会なんかの姿を見ておると、なかなか容易なことじゃないというような気もするが、その点見通しがありますか。
#27
○岡野説明員 これは文部省がお答えできる問題かどうか存じませんが、一般的には学説の紹介は、研究者の自発的な集団である学会にまず発表をされまして、そこで相互の情報が交換され、研究が自発的に進展するという体制でございます。これは御承知のとおりであります。私どもは、最近の学会の動きは、非常に若い層がエネルギーを高めておりまして、学問の進歩が非常にスピーディーになっておりますので、若い学者の批判というものが、いろいろな学問分野で非常に高まっておるような印象を受けるわけでございます。そういう学会内部の批判というものが、相当きびしくなっておるように感ぜられるわけでございます。
#28
○岡委員 私どもが初めて国会に出ましたときには、結核問題が焦点になっておった。病床が足りないというので、各地に療養所をつくり、あるいは病床の増設をする。その当時、一体どうして結核をなおすかという問題においては、日本の学会は、化学療法というものにほんとうは否定的であった。ところが他の国におきましては、どんどん化学療法を進め、研究をどんどん進めておった。日本では、その化学療法に対してはむしろ非常におくれておった。その後進性を取り返すには、数年かかった。おそらくその間に結核患者で、生命というかけがえのない大きな犠牲を払ったたくさんの患者があっただろうと思う。
 こういう観点から見まして、ほんとうにあなたが言われるように、批判的勢力としての若い研究者がおるとしても、それが真に学会に対しての声として、その諸君の意見が用いられておるのかどうか。まだやはりピラミッドの頂点には、ともすれば旧態依然たる一種のボス的な支配があるのではないか。もしそういうものがあるとすれば、ガンの研究はその壁でとまってしまう。そしてわれわれが結核問題で味わったと同じような失敗を、また再び繰り返さなければならない。こういう点にやはり文部省としては十分目をつけて、ただ、若い人たちの研究意欲と、同時にまた批判的精神が高まっているというだけでなく、文部省がというよりも、一体だれがこういう新しい国際的なガン研究の時点に即応したような指導を続けていけるかというところに問題があると私は思う。そういう機構があるかないかというところに、今後における日本のガン研究の一番大きな一つのめどがあると思うが、この点あなたはどう考えるか。
#29
○岡野説明員 御意見が的確につかめませんで恐縮でございますか、最近一般的に、研究の方法、手段が非常に変革しているわけでございます。電子顕微鏡をはじめ、超遠心分離機とか、いろいろな精密な機械を駆使してこまかい研究が行なわれておるという状況でございまして、率直に申しますと、もう老先生方では間に合わないというような時代がまいっておるというのが現状でございます。したがって、御指摘のような大ボスの支配というようなことは、学会内部において批判され、淘汰されていく過程にあるのではないかというふうにわれわれ見ておるわけでございます。そういう問題はやはり学会の自主的な判断、批判ということを確立することが先決ではないかというふうに考えておるわけであります。
#30
○岡委員 ことしのあなた方の、特進分野と俗にいいますね、あの課題を私若干調べていますが、いまあなたのおっしゃったようなビールス関係、制ガン、発ガンの機転の問題、それからガンの免疫――免疫は即早期診断、集団検診というようなことにもつながるわけですが、こういうテーマには非常に弱いのじゃないかと思われますが、どうでしょうか。
#31
○岡野説明員 あるいは御指摘のようなこともあろうかと思いますが、一つにはやはり、そういう新しい分野でございまして、研究者の層が薄いということが一つの原因かと思います。
#32
○岡委員 研究者の層が薄いということに私は問題があると思うんだが、なぜ薄いかということですね。薄いままに放置しておいたのでは困ると思う。これは私が若干調査したところによると、発ガン、制ガンの分子生物学としての立場からの検討、あるいはガン・ビールスの検討というようなものは、アメリカやソ連、フランスなどでは非常に進んでおる。私は日本のガン学者、ガン研究者は、能力においてはちっとも劣らないだけの素質は持っていると思う。しかし、層が薄いということは、そういう新しい分野へ進んでいこうとする研究意欲を閉ざすものがある。そこに私は問題があるのじゃないかと思うのです。こういう点を打開をして、いま厚生省がおっしゃったように、年に十万も死んでいるというような、国民病ともなってまいったガン対策というものを、診療のために不可分な基礎研究としてのガン発生機転の研究というものは、一種のタコつぼに入ったような閉鎖的なワクをはねのけた形で、総合的な研究体制を進めていかなければならないのではないか。同時にまた、国際的な水準に劣らないだけの特進分野をあなた方がおつくりになるならば、特進分野においてはやはり、国際的な研究の動向にマッチするようなものをできるだけ取り上げていくという努力が必要だ。これがなく、現状のままにきめられていくから、いま申し上げたような発ガンあるいは制ガンにおける分子生物学的研究、あるいはガン・ビールスの問題、それと不可分な免疫の問題、そういうようなことがおくれてきている、私はそう思うのです。あなた方の率直な御意見をお聞きしたいと思います。
#33
○尾崎政府委員 少し出過ぎておるかもしれませんが、私のほうの厚生省でもがんセンターを持っておりまして、研究部門を持っております関係から、厚生省の立場でのいまの考え方を申し上げてみたいと思います。
 お話しのように、ガンの研究につきまして、形態病理学と申しますか、そういうような関係の研究だけでは、ある一定の限界があるのじゃないか。それで生化学的の面、もう少しさらに入った生物物理学的な面の探究、これがやはりガン研究の将来の方式ではないか、こういうような考え方を入れまして、厚生省のほうでも、診断とか治療のほうをやはり主にするとは言いながらも、そちらのほうにかなりの重点を考えながら、やはりそれを解決するためには、ガンの本体である発ガン機構があるのじゃないかという立場で、いまのような考え方を入れましてがんセンターでは研究をやっております。
 先ほど機構でもお話がありました生化学的な面とか、生物物理学的な面とか、また遺伝の面、血清の面、ビールスの面というような面に相当重点を置いて、できるだけその研究者にも若い人を採用し、それも医者だけでなくて、物理単者だとか純粋化学者とか生物学者というような人たちにどんどん入ってもらうようにして、新しい面を発展さすように、いま重点をそちらに置いてやっておるような状態でございます。
 それから、化学療法の面につきましても、いまガンの学界では手術と放射線療法が効果のはっきりした療法だということにせられておりますが、将来は化学療法の問題がやはり大きな希望を持てる分野ではないか、こういうふうな考え方から、化学療法部だとか薬効試験というふうなものをつくっておりまして、そのほうの探究もやっておる。薬の関係も、従来アメリカでやっておりましたあらゆる薬をどんどん調べてみるというふうな方式も考えましたが、その方式ではどうもアメリカでも行き詰まりがあり、金ばかりかかって効果がないというような立場から、化学構造なんかとやはり関連づけ、量子物理学的な見地からあわせて考えていくという立場で、きくような薬を探していく。また化学療法のきくかきかぬかの判定につきましては、臨床実験をできるだけ計画的な共同研究で発展さす。自分のところだけでなく、国立病院その他の体系を使いましてやっていく。こういうふうな考え方でございまして、こういう組織はもうすでに三年くらい前から動いておりまして、イギリスで最近できましたのよりも、少し日本のほうが先に動いておる。結核の化学療法の研究は少し日本がおくれたというお話がありましたが、ガンではそういうことがないようにいたしまして、イギリスより日本のほうが、ガンの薬のきくきかぬの判定方式では、世界的レベルの体系を先につくっておるつもりでございます。この結果、いま一部出ておりますのでは化学療法の、ある薬、名前はちょっと控えさしていただきますが、その薬は手術と併用いたしますと、初めの一カ年間くらいは一〇%くらい治癒率のいいところがあるけれども、しかし二年目三年目になりますと、そう差がなくなってくるというふうな、ちょっとおもしろいデータが出てきておる状態であります。
#34
○岡野説明員 ガンの研究につきましては、最近の動向としましては非常に核酸の研究等に関係しております。そういう分野の研究が非常に盛んになっておるということは言えるわけでございまして、そういう分野に関係する方は非常に若い研究者が多いということは申せるかと思います。
#35
○岡委員 最近ガンの分野に力こぶを入れておる薬物学や生化学について見ると、もう昔の測定器がなくなってしまって、全く最近のエレクトロニクスをどんどん装置の中に取り入れておる。これは、病理学といっても、広口びんの中に胃ガンの標本を入れているというような状態は全部なくなって、完全にビオ・エレクトロニクスを考えておるという方向に行く。物理学者でもやはりビオ・フィジックというものがあるけれども、こういうものがガンの発生機転を究明する上において重要な役割りを持っておるようであります。
 いずれにしましても、そういう方向へもっともっと進んでいかなければならぬのに、厚生省のほうは別として、文部省のいわゆる特進分野の選定とかいうような体制の中に、私どもとすれば、何かもう一つ突き破っていってもらいたいなという希望を実は強く持つわけなんです。そういう嘆きを実際研究者から私聞くわけなんです。こういう点で、どうしたらいいかというようなことを、こういう打ち明けた委員会で率直なところを聞かしてもらいたいと思うのです。
#36
○岡野説明員 このガンの研究は、いまや医学者ばかりでは十分でないということでございまして、こういう研究班には医学関係者以外に生物学者、物理学者が関与するような仕組みになってまいりました。したがって、そういう他の分野の研究者が参加することによって、古い学風というものが漸次転換していくという期待を持っておるわけでございます。
#37
○岡委員 科学技術庁のほうでは、ガンが重点目標にもなって、日米協力委員会でも取り上げられておるのですが、具体的にどういう段階に来ておるのですか。
#38
○芥川政府委員 科学技術庁といたしましては、ガン対策の重要性という点を重視いたしまして、そこで科学技術全般のうちから、総合重要研究といたしまして八項目拾っております。その例を申し上げますと、防災科学技術、環境科学技術、海洋科学技術、電子技術、都市交通、対ガン科学技術、宇宙開発技術、航空技術、この八項目でございます。これを総合重要研究といたしまして、見積もり方針の調整その他におきまして各省連絡会も設け、あるいはテーマによりましては、こまかな連絡会を設けて研究を進めておるという状況になっております。
#39
○岡委員 どうなんでしょうか。先般この委員会で公害、パブリック・ニューサンスの問題を取り上げた。これは厚生省にも関係し、煙突の煙は通産省にも関係している。しかしまた、脱硫あるいはろ過というようなことになってくると、科学技術庁にも関係している。最近の技術革新が進められれば進められるほど、これまではあるお役所のもとに管理されておった問題が、日本の官庁機構そのものが技術革新の時代にふさわしくなくなってきたという形で、相互に協力をする体制を科学の発展自体が求めてきておるというのが現状ではないかと思うのです。
 ガンの問題にも、私はそういう傾向が非常にあると思うのです。厚生省のほうでは、いまおっしゃったように進んだ研究体制をとろうとしており、特進分野も文部省は決定しておる。その中ではやはりおくれた研究、と言っては失礼だけれども、考え方の基礎はまだ古いものにとらわれておる。大体大学へ行けば、大学というのはそれこそ封建主義の権化といってもいいような明治年代の太政官布告式のものを採用して、そこで人もおらず金もないということで、金もなく人もいなければもう少し協力体制をとって、人の力と資金の力を合理的に使ってもいいと思われるような問題がたくさんあるように思うのです。こういうことを全体的総合的に進めて、ガンというものの発生機転に取っ組んでいけないかということが、私どもの強い要望なんです。
 そういう点で、これは内田さんの専門外のことだから御無理かもしれませんが、何かできないだろうかということを、私どもはこの委員会でいろいろ御討議があったときに、いつも感じているわけです。これは私の意見でございますが、ぜひ開発的な精神に燃えておる若き研究者の意欲を満たし縛るような方向に、学会の運営もやってもらいたい。また、大学の現在の講座制についても、やはりある程度批判をする必要もあるし、また行政指導をする必要もあるし、厚生省は別途にがんセンターというようなことで、センターの中には研究施設を設けておるが、これと文部省のこれとはまたあまり緊密な協力関係がないように思うのです。また科学技術庁のほうでは、重点課題としてガン研究を取り上げているが、何をしていいかということになると、なかなか心もとない。こういう各省別々に歩んでおられる道、いずれもガンの原因を究明し、発ガンの機転を究明し、これを制ガンあるいは予防あるいは治療にと持っていく。ガン関係の分野で研究しておる方々全体が協力して、すべて官も民もなくやっていくというような体制を、少しでも早く打ち立てることが必要ではないか。日本の科学者自体の素質も決しておくれているものではないから、やはり皆さんがその気になって進めていこうということで討議をされながら、十分に成果をあげ得るような――もうあげるべき条件はできておると思うのです。だから、一体だれがやるかということになれば、厚生省にはたしかガンの診断と治療に関する委員会とかいうことで、各地の大学の教授なんかもときどき集めて、意見を聞いておられるようだが、何か中央審議会と言っては少しぎょうさんに聞こえるが、センターをつくって、大学の研究も、厚生省のがんセンターのネットワークのものを治療に出す場合も、また集団検診をなさる場合も、全部が研究を実地に生かしながら、臨床と研究を結びつけてガンというものに取っ組んでいく体制が、私は日本で欠けているように思う。この点をやはりお互いに検討し反省しながら、もう一歩突き進んでいきたい、またいくべきではないかということを考えます。
 これは私の質問と申しまするより意見でございまするが、いずれまた委員会としての態度についても御検討願いたいと思います。そういうことを痛切に思っておりますので、皆さんもぜひひとつ、予算や人の問題はもとより、問題は、もっと全体が協力して、世界の水準を押しのける程度まで日本の進んだ科学者の意欲を伸ばしていけるような体制をつくっていただきたいということを心からお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
#40
○齋藤(憲)委員 関連質問でありますから簡単に申し上げますが、科学技術に関する日米科学委員会ですか、あれが毎年連続して行なわれることになっておるわけでありますが、ことしもこれはやるのですか。
#41
○内田政府委員 日米科学委員会でございますが、ことしはすでに三回目で、三回目の会合を先月、六月日本で行ないました。その際に、齋藤さん並びに岡さんからもお話が出ましたガンに関する問題を日米共同研究の課題にしようということで、取り上げられております。ただ、その共同研究課題として取り上げられた結果、いかなる人々を集めて、どういうパネルをつくって、どういう進展の状況を示しているかということは私つまびらかにいたしませんが、ことしも取り上げ、また来年もさらに細目に入って取り上げるという方向にあります。
#42
○齋藤(憲)委員 日米両首脳者が話し合いのもとに、日米科学委員会というものを設けて、そうして重要テーマを取り上げて共同研究をやる。私は、これは予算を伴うことでありますから、一体どこの主管事項で、どういうような組織をもってやるのかということをたびたび質問してあるのですけれども、まだ的確な行政的な責任体制というものができてないように考えられるのですが、やはり従来どおりあいまいな状態でこれはやっているのかどうか、何かはっきりした体制が整いつつあるのか。これをひとつ簡単に御説明願います。
#43
○杠政府委員 お答え申し上げます。日米科学委員会は、そもそもが条約に基づいてないものでございますので、したがいまして、国内の法制的な体制というものがしかれておりませんが、この事務機構といたしまして、科学技術庁と文部省とが当たり、その中でも科学技術庁では一般的な事務を取り扱うという分担をいたしておりまして、連絡調整会議というものを設けております。それは関係のあります各省の局長の方々にそのメンバーになってもらっておりまして、科学技術庁の事務次官がその連絡調整会議を主宰するということにいたしております。それにまた、日米科学委員会の議長を三回にわたりましてつとめておられますところの兼重博士が参加しておられますし、また東大の茅先生も三回にわたりまして日米科学委員会の委員でございますので、この方にも御参加願う。また現在防災センターの所長をしておられます和達博士も、同様の理由から御参加願っておりまして、そのお三方をまじえた連絡調整会議において諸般の問題を取り運んでいくというふうにいたしております。
#44
○齋藤(憲)委員 主務大臣はどこで、予算はどういうふうになっていますか。
#45
○杠政府委員 予算はその連絡調整会議の費用だけでございますので、ほんのごくわずかでございます。
 その主務大臣ということでございますけれども、連絡調整会議を事務次官が主宰しておりますので、したがいまして、主務大臣というようなことになりますと、科学技術庁の長官であろうと考えております。
#46
○岡野説明員 補足して申し上げますが、結局日米科学委員会というのは、日米両国の科学協力を促進しようという趣旨の国際会議でございます。そこでどういう問題を取り上げたらいいかということは、両国の科学者が共通の関心を持ち、日米協力が非常に望ましいという分野を取り上げるわけでございます。こういうテーマで共同研究をしたいという勧告が、政府に来るわけでございます。そうしますと、それは外務大臣に報告されまして、それが政府におりてくる。その場合、いま局長のおっしゃったような連絡調整会議というものを政府部内に置きまして、そしてこの問題はどこの省が主として担当するということをきめまして、そしておろされた省がその世話をする、こういうことになっておるわけであります。共同研究の段階でございますと、政府機関そのものが関与するというよりも、大学あるいは科学者のグループが関与するケースが非常に多いのでございまして、現段階ではそういうテーマが非常に多いのでございます。したがいまして、自然、文部省関係の科学者が関与することが多いので、昭和三十八年度にこのために一億五千万ほどの経費を計上いたしまして、これを、日本学術振興会という団体がございます。これは昭和八年にできました財団法人でございますが、そこに補助金を出しまして実施に当たらせるという体制をとっておる次第でございます。
#47
○齋藤(憲)委員 いやしくも日米両国間における両首脳者の話し合いが原因となって、今日永続性を見た日米科学委員会というものが開かれて、そして共同研究の重要テーマを決定して、これをお互い両国において研究を実施するという勧告を行なう。結局勧告を行なえば、その勧告に従って共同研究がなされる。そういう問題に対して、はっきりした主務大臣というものがなくして行政措置ができるかどうか。
 それから、予算の面においては、いまお話を承るというと、それを遂行する予算というものは、何か外務省からも来るような点もあるし、特に、委員の任命権というものは一体どこにあるのか。それから、文部省からもそういうものを遂行するための金も出ている。何かわれわれから見ると、きわめてあいまいもこたるものが日米間における科学技術の重要テーマをリードしていくという形になるわけです。
 そういう点に関しては、もっとはっきりした体制をつくってやったらどうかということを、前々からこの委員会を通じて私は当局に希望しておるわけであります。それが一向にはっきりした姿が出てこない。そういうことで、一体、何がどこから、どこに属しているのか。あのパーティーなんかに行ってみると、外務大臣が主宰している合同委員会のように、そこに何か科学技術庁長官が伴食大臣みたいなかっこうでまたやったり、さっぱり内容がわからない。しかも勧告をするというのだが、一体どういう勧告をいままでなされて、その勧告がどういうふうに具体化しているかというような報告がない。
 だから、私としては、せっかく日米科学委員会というものができて、そして重要テーマがなされておるのでありますから、そこでは、先ほど岡委員からも御意見がありましたとおりに、たとえばガン問題ならガン問題に対しては、両国の最高のガンに対する対策というものが提示されて、それが両国のエキスパートによって意見が戦わされて、人類社会に対する貢献というものが顕著にあらわれていく。科学技術に関する日米共同委員会があって、そこでガンという問題を取り上げられたら、これに対しては日本が主張し得るととろのガン問題に対する最高の意見というものが出ていく、その最高の意見を出すために、国内のガン対策というものにある一つの系列的な検討が加えられていくという形でなければ、私は何にもならないのではないかと思う。その勧告に対してどういうように対応する考え方を持っているのか。具体的に、日米科学委員会でもってガン問題を取り上げる、これに対して一体日本はどういう具体的な方法をもって最高の日本の意見というものを出していくか。そういうことは一体考えておるのか。
#48
○岡野説明員 ガンの問題につきましては、両方でこの問題を、日米協力して研究できる分野として適当な分野だろうということにいたしたわけでございます。それで具体的には、ガンのスクーリング・センターを日本で設けたらいいだろうというお話が出ているわけであります。しかし、具体的にどうするかということは、なお両国の科学者が打ち合わせる必要があるということで、日米科学委員会の勧告に従いまして、昨年十二月、日本に向こうのNHKのガン研究の担当者が参りまして、日本の学者とシンポジウムを開いたりいたしております。具体的な共同研究をやることになりますと、実はわれわれも予想しないようないろいろな困難な事態が出るわけでございまして、やはり共同研究となりますと、こっちからどういうメンバーが参加し、向こうからどういうメンバーが参加し、どういうテーマで、どういう方法でやるかと、きっちり合うまでになかなか時間がかかるのが実情でございます。御承知のように、太平洋の問題につきまして地球物理学的な問題、生物学的な問題が取り上げられておりますが、これが非常に細分化されておるわけでございまして、地球物理学関係でも十七項目くらいに分かれておる。生物につきましてはさらに分かれるというような状況でございます。現状を申しますと、その共同研究として両方の科学者が合意に達したものから実施に移すという体制をとっておるわけであります。なかなかそれまでにひまがかかるというのが正直なところでございます。
#49
○齋藤(憲)委員 私の申し上げておるのは、ガンという問題を共同研究のテーマにとるということはきまっているわけなんです、それに対していかなる共同研究をやるかということは、あなたからお話しがございましたとおり、アメリカはアメリカでもって広範囲にガンのいろいろな研究はやっている、日本でもこれに劣らざるガンの研究をやっている。それを一々取り上げて、アメリカと日本の専門家が同じ実験室の中へ閉じこもって顕微鏡をのぞいたり、いろいろなことをやる必要は私はないと思う。そんなことをする必要は何もないと思う。ただ、そうでなくして、日本で知らざるところのアメリカの臨床実験ないしは学説、それからアメリカもまだ知らざるところの日本の臨床実験ないしは学説、あるいはラボラトリーにおける実験というものが出ていったときに、これを議題として、それではこの問題に対して一体日本はどういう検討をいままで加えているか、アメリカもこれに対しては注目すべき価値ありと認めるから、これをアメリカに持ち帰って、アメリカでも実験するという、いわゆるアメリカと日本における新しい角度に立ったガンの対策、研究というものを交換して、お互いの国がお互いの国の持てる力を使ってそれに対して検討を加えていくというなら進歩があると思う。そうでないならば、岡委員から申されたとおりに、いつまでたっても明治、大正のいわゆる堅牢なるかきねの中に巣くって、そうして大御所気どりでおる人の勢力下に全部が葬り去られてしまうと私は思うのです。
 ですから、私らの一番期待をかけていることは、日米科学委員会というものができて、両国がガンならガンという問題を取り上げたということは、ここに両国の力を合わせて新しい境地を開こうということなんです。古い境地に眠っておるというなら、こんなことは要らない。金がかかるだけで、やめたほうがいいのだ。そういう問題に対していかなる具体策をいま考えておられるかということを聞いておる。なければない、あるならばあると言っていただければいい。
#50
○杠政府委員 いま御指摘のとおりに、日本では吉田富三さんがパネルのリーダーということで参加しております。アメリカでは、エンディコットという人がパネルのリーダーとして参加しておる。そのシンポジウムを十二月二十日、二十一日に東京で開いた。両者のどういうふうな協力の方式を打ち立てようかということで、いま岡野説明員から御説明申し上げましたように、スクーリング・センターというものを日本にまず置いたらいいのじゃないかということに相なっております。しかし、この点につきましては、ただいまのところは、吉田富三さんというような人が個人として考えられておりますけれども、これに厚生省等がどのような立場で参加してもらおうかということは、まだ検討の途中でございまして、ここで厚生省はどういうふうなこのパネルの中への入り方をするということを申し上げる段階に至っておりません。
 それから、私先ほどお答えしました中で、主務大臣のお尋ねがございましたが、日米科学委員会はもちろん外務大臣が主務大臣でございますが、一般的な庶務をあずかっているという立場におけるものとしては科学技術庁の次官がやっているものですから、長官にあるのではなかろうかということを申し上げたのでございます。
#51
○齋藤(憲)委員 さっき岡委員が申されたように、一体新しい境地を切り開かんとする問題に対して、これが価値ある実験であるとか、価値ある理論であるとか、価値ある臨床であるとかいうものを、一体だれがきめるかということなんだ。いま吉田何がしという方が、個人的だか何だかわからないけれども担当しておって、これに厚生省がどういう形で入っていくかまだ検討中だとあなたは言われる。さっき岡委員の希望的御意見として申し述べられたのは、やはり審議会でもつくって、そこへあらゆる人が自分のいままで研究した実態を出して公平なる検討を加えていって、そしてそれを日米科学委員会にでも提示して両国の検討を受けるというならいいけれども、一個人がリードするような、そんなことをやったら、また鼻くそ論というものが飛び出さないとも限らない。そういうことをわれわれは考えておるから、期せずして岡委員の言われるとおりに、公平な立場に立って、すべて新しい分野を開拓せんとする問題に対して審議会制度でも設けて、その審議会において甲論乙駁せられたものは全部公開するという立場に立って、正々堂々たる体制における日本の意思統一をやって、日米科学委員会に持ち込むというならばわれわれも賛成できるけれども、われわれの知っている限りにおいても、はなはだしい学閥その他のいわゆる派閥抗争に明け暮れているその中で、一人、二人のリーダーが出てきて、それでもって、これは鼻くそだの、これは香水だのときめられたのでは、とてもたまったものではないと思うのだ。そういうことを聞いているのですよ。どういう構想を持ってこれに対処せんとしているか。
#52
○岡野説明員 吉田先生のお話がありましたが、もちろん吉田先生は委員として個人でございますけれども、そのバックにはやはり、学術会議の研究連絡委員会というものがうしろにおいていろいろ問題をあげておられるわけでございます。したがって、日米科学委員会で取り上げられた問題は、やはり相当学界から出た問題が取り上げられているというふうに考えるわけでございます。
#53
○齋藤(憲)委員 私のは、一党一派に偏せざる審議会をつくれ、こう言うのですよ。それは、一党一派に偏したところの審議会をつくったのでは、一党一派の主張というものが許可されるだけで、何も私は進歩はないと思う。
 全く対照的な、たくさんのガンに対する意見というものがあるでしょう。たとえばガン細胞を構成する造血説にしても、骨髄造血説があるとすれば、腸の絨毛造血説がある。骨髄で血ができるのだという従来の学説に対して、腸の絨毛で血ができるのだといって、一方では、これは天動説に対するコペルニクスの地動説だといって張り切ってやっている。だんだん骨髄造血説に対して腸の絨毛造血説というものが力を得て、いま盛んに論議を戦わせております。もしもいままでのように血は骨髄でしかできないのだ、腸では血ができないのだということから言えば、いや、そうではない、清潔な血は腸の絨毛によってつくられるのだという説が正しいとすれば、これはまさにコペルニクスの地動説に類するかもしれない。
 だから、われわれの希望するところの生命に対する進化というものを考えて、公平な、対照的なあらゆる問題が消化されるところの審議会でもつくってやるなら、われわれとしても納得できるが、ガンというものは早期発見をして、これを剔抉してコバルト六〇を照射する以外に治療法はないのだという一派が立てこもったら、あとはそれ以上に進歩発達というものがないわけでしょう。そうかというと、血というものは骨髄でつくられるときにはもうすでに病的な血しかできないのだ、健康な血というものは腸以外にできないのだという一派が審議会を占領してしまえば、いままでの学説というものは全部異端だということになってしまう。
 だから、そういう点で行政指導というものが最も公正なる新境地を開くべきものであるというたてまえから日米科学委員会というものができ上がって、それにわれわれは非常に大きな希望をつなぐわけなんです。そういうことを岡委員が言っておられるのだろうと私は思うのです。いままでのような体制では、一歩も進んでおらぬじゃないか。厚生省の発表によれば、年々ガンの死亡率が上がるじゃないか。ガン対策が進歩して、そうして実効を示すなら、一体なぜガンの死亡率が上がるのだ。それは何も進歩していないということなんです。しかも、胃ガンが多くなったと思ったら、今度は肺ガンが多くなってきている。しまいに何百種類と数知れざるところのガンができてきて、見るもの聞くものみんなガン患者になってしまったら、一体どうするのですか。ガン対策だ、ガン対策だと一生懸命になって、国会でも世間でもガン対策を口にしていながら、ガン患者の死亡率が上がるということは、ガン対策が何らの進歩も示していないということなんです。それを一体どうするかということを言っておるのです。もっと真剣になって対策を考究されたらどうか。その具体策があるならば示してもらいたい。厚生省でもいいです。厚生省なんか、あまりガンをやりたくないような立場におるようだけれども……。
#54
○尾崎政府委員 いまお話がございましたが、ガンの数がふえておる原因は、全般的に日本の人口のうち老人の比率が多くなってきておるために、ガンという病気は御承知のとおり老人に多いというところから、全体として人口比率としてふえてきておる、こういうふうに理解しております。
 それで、いま胃ガンの問題がお話にございましたが、これは日本人の食生活等に関係があるのではないか。日本人と、たとえばアメリカ、ハワイとかカリフォルニアにおります日系の方の胃ガンの死亡率等を比較してみるというようなことで、これは食生活その他の生活全般の問題があるかもしれませんが、研究をしてみる。そうすると、食生活を変えていけば胃ガンが減るのではないかというふうな根本的の問題、また、日本の地質の関係があるのじゃないかとか、いろいろ疫学的な立場での研究と同時に、日本でまだ胃ガンの診断が早くつかないので手術が十分できない、化学療法はまだいいものがありませんし、そういうようなところにも問題があるのじゃないかということで、早期発見を一生懸命にやろうじゃないかという対策をいま打ちつつあると思いますが、年齢別に見ますと、胃ガンの関係はそれほどふえていないように私は理解しております。
 肺ガンの問題は、これは世界的現象でございまして、先ほど申し上げました、日本ではまだたしか十万対十以下ぐらいのところで、上がってはおりますが、アメリカとかイギリスに比べてずっと少ない状態でございます。これもたばこの関係とか、大気汚染の関係とか、自動車の排気ガスの問題、いろいろな点が言われておりますが、この点を究明して、環境衛生全般を変えていくということもからんでくるし、さらに診断の問題もからんでくるだろう、こういうふうに存じております。
 全般といたしまして、まだふえておることは事実でございまして、われわれもこれを一生懸命やらなければならないのでありまして、決してサボるつもりはないのでございますから、よろしくその点を御了解願いたいと思います。
#55
○齋藤(憲)委員 最後の質問をやりますが、ガン問題です。私、ガン問題をこの委員会で云々しておりますのは、医学的な立場とか、あるいは医療対策的な立場でもって言っておるのじゃないのです。純然たる科学技術の立場からこの問題を考えておるわけなんです。ですから、いまお答えを願っておきたいのは、個人的に、たとえばガンに対する新しい角度からの理論的な組み立て、または従来の臨床実験、そういうもののデータがあった場合に、日米科学委員会にその検討を申し入れて検討願えるかどうかということ。日米科学委員会がガン対策を取り上げておるのだから、それに対して検討をしてもらいたいということを申し入れたならば、それは検討してもらえるかどうかということです。
 それからもう一つは、いま対世間的に非常な疑問を呼んでおる問題、私がたびたびここで質問をして当局の決断を迫っておるSIC培養の適正であるか適正でないかという問題。これに対して相当信頼すべき機関が、その実験に対する是非を判定したいから研究をさせてくれという申し出をした場合には、科学技術庁の研究調整費をこれに分け与えるだけの余地があるかどうか。この二点についてひとつ御回答願います。
#56
○内田政府委員 ガンの問題がわが国におきまして非常に重要でありますことは、私ただいま岡先生並びに齋藤先生のお話を承りまして、一そうその感を深くいたしましたが、同時に、科学技術庁でこのガンに対する総合研究を八つの大きな総合研究の課題の一つとして取り上げておりながら、科学技術庁としてはその総合研究の総合調整の有効な手段を持っていないということを、私は痛切に感じております。というのは、先ほどからのお話でもわかりますように、ガンに対する研究が、その大半は学界、ことに大学の研究所における問題になっておりまして、科学技術庁の権能が大学の研究室における研究の調整に及んでおりませんから、科学技術庁といたしましては、ガンに対する総合研究を総合研究課題の一つとして取り上げましても、それによって行なわれる各省の連絡会議というものは、結局科学技術庁と厚生省との二人の連絡会議的なものに終わっておるというようなかっこうにあるのではないかと思うのであります。
 また、SICが制ガン剤として有効か無効かという判定の問題を離れまして、SICにかかわらず、ガンに対する研究というものはこれから幾らでも進歩させなければならぬ問題でありますので、各省や学者がそれぞれ権威主義と申しますか、そういう陰に隠れて進歩発展を妨げるというようなことは非常に遺憾でありますから、たとえば、できるならば、厚生省のがんセンターも、東大の付属のガン研究所も、金沢大学のガンに関する研究施設、これらのものを全部集め、そして科学技術庁所属の航空宇宙技術研究所のように、あるいはまた他の科学技術庁所属の基礎研究所のようなことをやったといたしましても、おそらくいまの段階では一つにまとめられた研究所を支配する学界の流れというものをそこできめることはできないような気持ちが私は実はいたしておりまして、一つの矛盾を感ずるのであります。
 私は、これは結論として申し上げるのじゃありませんが、岡先生が先ほどから熱心に言われますように、何かそれらを一まとめにして一つの方向づけをする機関、機構、たとえばいま科学技術会議というものがありますが、この中に一つの分科会か専門部会のようなものを設けて、これには文部省も参画しておりますから、各大学の各派閥を代表する先生、あるいは厚生省方面の各種類の施設を代表する方々にも加わっていただくことができると思う、そういうような機構がいいのか。あるいはまた、先ほどからたびたび問題に出てまいりますところの日本学術会議の中にある特別委員会、学術会議は先般来問題になっておりますように、政府の機関でありますから、その学術会議の特別委員会みたいなものの構成、運用によって何らかの目的を達し得るか。あるいはさらに、日本癌学会というような学会の機構がある、これに対して何か文部省から指導的な立場をとってもらうということで解決できるか。それらの問題をもあわせて考究すべき問題ではないかと思いまして、これはこのままにせずに、ガンに対する総合研究の進歩のために、科学技術庁もさらにより高い立場でぜひ考えてまいりたいと思います。これはあるいは私の個人的見解になるかもしれませんが、私の意見として申し述べさしていただきます。
 齋藤先生のただいまの第二点でありますが、SICの制ガン剤としての有効か無効かを判定するために科学技術庁が研究調整費を使うということは、これは適当でないが、あなたの言われるように、たとえばガン患者の血液から取った血漿を無菌培養して、その菌の状態が変化をしていく過程というものが実際あるかどうかというような、そういう全く技術的な研究というものは、SICの有効、無効から離れて、これはその研究を押えておる必要はないのでありますから、厚生省とも十分相談して、民間のある種の団体にそういうことをさせて研究調整費を出すまでもなく、厚生省にはがんセンターもあるでしょうし、あるいはその予防衛生研究所もありましょうし、その他の厚生省の国立病院付属の研究施設もありましょうから、そういうところでどうしてやれないかということを、さらに私どもは厚生省とも十分打ち合わせをいたし、これがどうしてもやらない、やれないという場合には、齋藤先生のおっしゃるように、民間の信用ある団体の、これも一つじゃなしに、複数のそういう研究機構を選んで、それらに複数のいまの血漿無菌培養の研究をしてもらうということを考えてもいいじゃないかという気持ちもいたしますので、さらにこの点につきましては、いま申し述べますように、厚生省方面との打ち合わせを続けさしていただきたいと思います。
 それから、日米科学委員会においてこのガンの共同研究を、いまのようなSICにからまる問題を直ちに日米共同研究の課題として取り上げるかどうかということは、これはいましばらくこの日米科学委員会において、ガンに対するパネルの検討にゆだねてまいりたいと考えております。
#57
○齋藤(憲)委員 御答弁、ひとつよろしく御実行をお願いいたしたいと思います。
 実は私は、別段SIC云々を言うているのじゃないのです。実験過程が正しいか正しくないかということを言っているのであって、政務次官のおっしゃるとおり、それをひとつ追求してもらいたいと思う。昨今、私のところにいろいろなことを言ってくるのです。SICはインチキだから深入りするなとか、SICの実体を日本で追求できないならば、すぐアメリカに持っていけとか、いろいろなことを言うてくるのです。おそらく私は、SICの研究者も、日本でらちがあかないなら、アメリカその他で特許を申請しているのでありますから、その実体をアメリカに持っていって、アメリカによって解剖しようということを考えているのじゃないか。そうなると、科学技術のたてまえにおいて、こんなつまらないことを日本で解決できなかったという国際的な恥辱を受けるようなことがあったら、私は非常にいやな気持ちがする。日本の科学技術というものは、一ぺんアメリカに洋行してくれば博士になるのです。日本で用いられないものでも、アメリカへ行ってこれはすばらしいものだということになると、今度は日本人はこれを博士として迎えて、だれも彼もそのもとに行って頭を下げるというくせがある。最初からこの問題をアメリカへ持っていって、アメリカの検討を受けてしまえば何もかも問題はないわけなんですけれども、しかし、これは国際的な科学技術の恥辱だと考えているから、私はあえてそういうことはなるべくやらないほうがいいというたてまえをとっているわけなんです。それで、私はこの問題を早く解決してくれということを要求しているのであって、この問題を早く解決してもらってももらわなくても、私のごとき健康体は一文も損得はないわけなんです。ちっとも関係ない。ただ、純然たる科学技術のたてまえから言っている。かくのごとき簡単なものは、日本の力で解決しようと思ったらすぐ解決できる。それを解決できないという理由のもとに、アメリカに行ってひとつこれを検討してくれなんということになったら、科学技術の国際的な恥辱だ、だから早くやりなさいと言っている。さっぱりやる行政庁がないというに至っては、この一事から見てもいかに日本の行政が薄弱であるかということがよくわかるのじゃないか、もっとしっかりしてもらわなければいかぬ、私はこういうことを言っているのでありますから、くれぐれも誤解のないように。このくらいの問題は早期解決ができるのでありますから、なるべく早く解決していただきたい。これだけお願いしておきます。
#58
○寺島委員長 岡良一君。簡単に願います。
#59
○岡委員 簡単に一言。私いま齋藤さんのお話を聞き、内田さんのお話を聞き、思いついたことですが、日本という国はいわば非常に村の多い国で、飛行機から見ればあらゆるところに村がある。政党へ入るとまた村がある。学問の世界にも村があって、みんなタコつぼを尊重しておる傾向がある。これは人間性の問題かもしれないが、それを打破していくためには、それにふさわしき組織をつくる必要がある。
 そういう意味でいま内田さんは、大学の研究の中に科学技術は立ち入れない、学問の自治というような問題が非常に大きな障害になっていると言われたが、私はドイツのマクス・プテンク・ゲゼルシャフトを研究してもらいたいと思うのです。これの経営資金は、会員である民間会社が持っている、国も出す、州政府も出す。しかし、研究のテーマの選択は、これを運営する理事によって決定する。だから、国が要求しても必ずしもやらない。教授が興味がなければ、やらないと言ってきちっと断わる。それではその教授はマクス・プランク・ゲゼルシャフトの専任かというと、そうじゃない。それは各大学のちゃんとした専任教授なんです。しかも、ガンの問題は、私が先ほど申しましたように、単に医学の問題じゃなくて、物理学の問題でもあり、化学の問題でもある。この間マクス・プランク・ゲゼルシャフトから来ておるレポートを見ると、いまけい肺と取っ組んでおるらしい。ゲッチンゲンの純粋物理学の教室と純粋化学の教室がけい肺と取っ組んで、血液なり、あるいはガス代謝について報告を出している。こういう形で一つのテーマをきめると、大学の先生ではあるが、しかしマクス・プランク・ゲゼルシャフトの研究所のメンバーとして、一つのテーマに向かって総力をあげている。そういう形でドイツの持っておる科学の実力、水準が支えられている。戦前はカイゼルヴィルヘルムス・インスチチュートが支えておった。いまはマクス・プランク・ゲゼルシャフトが支えている。日本でもガンのように、医学の分野をはみ出して、物理、化学、すべての問題の総合的な研究、検討の上に最終的な解決ができるような問題については、科学技術庁としてマクス・プランク・ゲゼルシャフトのあり方のごときものも十分にひとつ検討していただきたい。そういうところは、大学の教室も、あるいは厚生省の施設も、いろいろなものが総合的に協力し得るような体制ということを示唆しているのじゃないかと私は思うので、御検討を願いたいと思うのです。
#60
○寺島委員長 次会は公報をもってお知らせすることといたし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十分散会
ソース: 国立国会図書館
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