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1962/08/23 第41回国会 参議院 参議院会議録情報 第041回国会 大蔵委員会 第3号
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1962/08/23 第41回国会 参議院

参議院会議録情報 第041回国会 大蔵委員会 第3号

#1
第041回国会 大蔵委員会 第3号
昭和三十七年八月二十三日(木曜日)
   午前十時二十分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     佐野  廣君
   理事
           柴田  栄君
           西川甚五郎君
           成瀬 幡治君
           渋谷 邦彦君
           永末 英一君
   委員
           太田 正孝君
           川野 三暁君
           高橋  衛君
           林屋亀次郎君
           日高 広為君
           堀  末治君
           森部 隆輔君
           大矢  正君
           佐野 芳雄君
           野々山一三君
           大竹平八郎君
           鈴木 市藏君
  国務大臣
   大 蔵 大 臣 田中 角榮君
  政府委員
   大蔵省主計局長 石野 信一君
   大蔵省主税局長 村山 達雄君
   大蔵省理財局長 稻益  繁君
   大蔵省銀行局長 大月  高君
   大蔵省為替局長 村上  一君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       坂入長太郎君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○租税及び金融等に関する調査
 (経済の現状並びに当面の財政金融
 政策に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(佐野廣君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 この際、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田中大蔵大臣。
#3
○国務大臣(田中角榮君) 私は、このたび、はからずも大蔵大臣の重責をになうこととなりましたが、その責任の重大さを痛感し、全力を尽くしてその職責を全うしたいと考えております。何とぞ、よろしく皆様方の御支援と御協力をお願いいたします。
 本国会において御審議を願うべく予定いたしております大蔵省関係法律案は、本国会に再提出いたすこととなりました産業投資特別会計法の一部を改正する法律案及び前国会から継続審議となっております国民金融公庫法の一部を改正する法律案の二件でありまして、いずれも当委員会において御審議を願うことに相なっております。
 特に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案は、すでにその基本となる条約と予算について議決を得ているのであります。
 この法律案は、米国との多年にわたる懸案でありましたガリオア等戦後の対日援助債務の処理に関する協定を発効せしめ、わが国の国際信用を維持する上において、かつまた、日本輸出入銀行、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫等に対し、政府が出資を行ない、輸出の振興、住宅の建設等、国の重要施策を推進する上において、必須の法案であります。何とぞ、政府の意のあるところを了とせられ、すみやかに御審議の上、御賛同あらんことをお願いするものであります。
 なお、この機会にわが国経済の現状並びに当面の財政金融政策について、所信の一端を申し述べたいと存じます。
 昨年九月国際収支改善対策を決定、実施いたしましてより最近までの経済の動向を顧みますと、その目標といたしました国際収支の均衡の回復については着実な改善を見つつあるのであります。
 すなわち、輸入は、本年初頭以後比較的落ちついた推移を示しており、一方輸出は、対米輸出の好調を中心にほぼ一貫して増勢を続けております。この結果、昨年一月赤字に転じ、同年六月には一億四千六百万ドルにも達した経常収支の赤字幅も次第に減少し、本年六月には四百万ドルにまでなっております。また、総合収支においては、外資の流入、特別借り入れなどによりまして、本年年初来四月を除き毎月黒字を続けております。
 これもひとえに国民各位の理解ある御協力のたまものと深く感謝いたしますとともに、御同慶にたえない次第であります。
 しかしながら、このような国際収支の好転をもって直ちにその先行きを楽観祝することはなお許されないのであります。
 すなわち、国内の輸出環境は、なお好調を続けることが期待されるのでありますが、現在その伸長に大きく貢献している米国景気の先行きに関し一、二懸念すべき兆候が現われており、その他の地域の動向をあわせて考慮すると、今後を安易に楽観することは慎むべきことと存じます。また、輸入につきましても、生産の動向、自由化の影響などもあり、その先行きを慎重に見守る必要があると考えます。さらに、この十一月以降におきましては、昨年秋から本年春にかけて行ないました総額三億二千五百万ドルに及ぶ米国市中銀行からの借款を返済するという問題もあるのであります。
 転じて、国内経済を顧みますと、個人の消費支出を中心といたしまして、底がたい基調を続けております。特に、消費者物価は、賃銀の上昇に伴うコストの増加と、所得の増大にささえられた消費の堅調などを反映して、依然、騰勢を続けております。また、鉱工業生産も消費財の活発な生産にささえられて、一進一退に推移いたしております。さらに設備投資につきましては、その先行きを示す機械受注は減少し、金融引き締めの影響もあって産業界の投資意欲にも減退傾向がうかがわれるのは事実でありますが、景気調整や国際収支の前途につき楽観的な見解が行なわれるにおきましては、企業における根強い投資意欲が再燃するおそれなしといたしません。
 以上申し述べましたようなわが国経済をまわる内外の情勢に顧みまして、政府といたしましては、今日まで順調に回復いたして参りました国際収支の均衡を持続的かつ本格的なものとすることをもって、経済運営の基本的な目標とし、あわせて、その他の経済の各面における均衡のできるだけすみやかな実現のために、財政金融政策におきましても既定の方針を堅持していく所存であります。
 同時に、経済に対する先行き不安を解消し、円滑にして秩序立った経済調整を達成するため今後とも細心周到の配慮を加えて参る考えであります。
 次に、当面の財政及び租税政策について一言いたします。
 昭和三十七年度予算及び財政投融資計画の執行にあたりましては、財政に課せられた責務の重大さに深く思いをいたし、本年度予算編成の方針に即しつつ公共投資の充実、社会保障の拡充、文教の刷新等長期にわたる国力発展の基礎を充実するため、その重点的効率的な実施に努めている次第であります。
 租税政策につきましては、戦後、相次いでの税制改正に伴い、国民の租税負担は総体として相当に軽減されてきていることは、現に御承知のとおりであります。特に、昭和三十六年及び昭和三十七年の両年度におきましては、税制を体系的に整備し、中小所得者の負担軽減を主たる目的として、所得税、法人税、酒税、物品税等にわたり、国税において二千四百億円の減税を行なって参りました。しかしながら、わが国の租税負担並びに経済の実情にかんがみますと、税制のあり方については検討を必要とする問題がなおきわめて多いのであります。
 政府は、これらの問題を審議するたわ、内閣に恒久的な機関として税制調査会を設け、長期的な観点から、わが国今後の社会経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方について検討を始めることといたしました。
 また、わが国の輸出振興及び国際的な経済協力を税制面からも推進するため、つとに東南アジア諸国を初めとして、諸外国との間に租税条約の締結を進めてきたのでありますが、今後とも一そう努力いたしたいと考えます。
 次に、金融政策につきましては、冒頭申し述べたような経済の情勢に顧みまして、なお引き締め基調を堅持して参る所存であります。ただ、昨今の資金需要から申しますと、今後は景気調整の秩序ある進展をはかろためには一そうキメのこまかい配慮が必要であると考える次第でございます。
 また、輸出のための金融につきましては、これが一そうの振興のため、極力意を用うべきは、当然のことでありまして、かねての施策に加え、最近、甘木輸出入銀行におきましては延べ払い金融の拡大、中小企業金融公庫におきましては輸出特別ワク融資の実施が行なわれましたほか、日本銀行におきましても、輸出金融優遇制度の改善をはかるなどの措置が講ぜられております。さらに、中小企業に対する金融につきましても、引き締めのしわ寄せを回避し金融の疎通をはかることが必要でありまして、政府といたしましては、さしあたり六月から九月の対策として、政府関係三機関に対する資金追加百五十億円及び市中保有の金融債の買い上げ百五十億円、合計三百億円に上る対策を実施しつつあるところであり、今後とも、金融情勢をにらみ合わせ、必要に応じ所要の対策を行なって参りたい考えであります。なお、わが国経済の健全な成長を確保するため、貯蓄増強の必要なことは言うまでもありません。したがいまして、政府といたしましては、今後とも貯蓄奨励のための施策を検討して参りたいものと存じます。
 最後に、国際金融及び対外経済政策について申し述べたいと存じます。
 第一に、貿易・為替の自由化でありますが、最近における欧州経済の急速な進展を契機として、今や世界の大勢は輸入に関する数量制限の撤廃から、関税の全面的引き下げに重点を移行しつつあるのであります。したがいまして、わが国といたしましては、諸外国に比し、なおおくれている貿易の自由化をすみやかに進めることが必要であり、来たる十月には自由化促進計画にのっとり自由化率九〇%を達成し、世界の趨勢に即応していくべきものと考えるのであります。
 なお、昨年のガット大臣会議の結果に基づき、近く関税の一括引き下げ案が検討される運びとなっております。わが国としても、国内的に種々問題をかかえてはおりますが、世界的なこの関税引き下げの動きに沿って互恵の精神に基づき輸出市場の開拓に努めるべきであると考えます。
 また、最近におけるわが国の貿易自由化の急速な進展にもかかわらず、いまだに、わが国に対しガット三十五条を援用するなど、差別的な輸入制限を課している国があることははなはだ遺憾でありまして、政府といたしましては、今後とも強力に差別待遇の早期撤廃のために努力する所在であります。
 次に、政府は、かねて国内金融の逼迫に伴う企業及び金融機関の外資の取りあさりを防止して、その秩序ある導入をはかるため、種々の指導を行なうとともに、去る六月には、外貨準備預金制度を創設して、短期外資導入の健全化をはかり、また情勢の変化に対応して適切に所要の調整を加え得る体制を整えることといたしました。さらに今回、外国投資家がわが国の株式社債等に対し投資した場合における元本の回収に関し、従来課せられて参りました外貨送金に関する二ケ年の据え置き期間を六ケ月に短縮いたしましたが、これは、国際資本交流の活発化に即応し、健全にして安定的な外資の導入を一そう促進して、わが国企業の資本の充実を進め、国民経済の発展に寄与せしめようとの趣旨に出たものであります。
 以上、わが国経済の現状と、当面の財政金融政策に関する所信を申し述べました。
 これから日本の経済政策の運営にあたっては種々むずかしい問題がありますので、できるだけ当委員会に出席いたし、各位の御意見を承り御協力をお願いいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
#4
○委員長(佐野廣君) ただいまの大蔵大臣の経済の現状ならびに当面の財政金融政策に関する所信について、質疑の要求がございます。御質疑の方の発言を委員長において順次指名いたします。成瀬幡治君。
#5
○成瀬幡治君 大蔵大臣に伺いますが、本来ならば、新しく内閣改造をされて、そうして臨次国会が召集されたので、私は本会議場で大臣の所信表明が行なわれるものと実は期待しておったのです。ところが、そういうことはなしで、総理だけになってしまった。しかも、現状は非常に成長政策の失敗で、国民が物価高あるいは金詰まり等で苦慮しています。ああいうときには、大臣が所信表明をすべきだと思う。国民に、こういうふうにするのだという所信を明らかにして、協力を求めるなら協力を求める、あるいはそれに対して手はこう打っておるのだということを国会を通しておやりになるのがあたりまえだと思うのです。なぜおやりにならなかったのですか。池田さんは、おれ一人でやる、おれにまかしておけという格好で、あなたこめやられちゃったのか、どうなったのか。まず、それを大臣に。
#6
○国務大臣(田中角榮君) お答えを申し上げます。
 これは総理にこめやられたわけじゃ全然ございませんで、国会の召集にあたっては、御承知のとおり、通常国会その他は、総理の演説及び外交、財政等の演説をいたすことが例になっておりますが、特別会、臨時会においては、財政演説を行なったこともあるようでありますし、外交に関する方針を述べたこともあるようでありますが、御承知のとおり、臨時会、それから特別国会等に対しては、両院の御意思及び各党のこの国会に臨む国会対策上の御要求を政府が受けまして、それによって所信表明をやるわけでありまして、私は、今成瀬さんが言われたとおり、お求めがあれば、ただいまも申し上げたような問題に対して本会議の議場を通じて述べることは一向差しつかえないのでありますし、場合によっては進んで申し述べるものであるとも考えましたが、各党で御了解になられて、会期も短いので、専門的な問題に対しては両院における専門委員会で述べるということにお話し合いがきまった結果、本会議での財政に関する所信表明を削除せられたものと考えております。
#7
○成瀬幡治君 その間の経緯は、私が申し上げなくても、大臣がよく御承知のようですから、私は、本来ならば少なくとも重要な財政、金融、税制政策等につきましても、大臣の所信というものは、絶えず行なわれるという慣行が望ましいものである、そういう考え方を持っておるから、そういう考え方に基づいて言ったわけです。今後、大臣もまた、党にお戻りになっても、重要なポストにおすわりになることだと思うのです。したがいまして、そういうときは、自民党さんのほうは、そんなことはやらないという意味じゃなくて、むしろ積極的にあなたおっしゃったような意味でやっていただくことに、私はそういう慣行というものを作ることに協力していただきたいということをお願いしておきます。
 続いて、次にお尋ねしたい点は補正予算の点がございますが、災害がございましたね。まだこれからがほんとうのシーズンだろうと思うのですけれども、これはないほうが好ましいことでございますが、今まであったのが、総額約二百億ないし三百億といわれております。人事院の勧善に対して、相当なお金が要るということもいわれております。しかも、これを五月から実施すべきであるという勧告がついておるのであります。そういうこと等と関連して、補正予算というものは必要じゃないだろうかというふうに考えておりますが、大臣、この点についてどういうふうにお考えですか。全然考えておいでにならないのか、これは通常国会との間にもう一ぺん国会を召集するという考え方もおのずからあると思います。今どういうふうにお見通しになっておるのか。目下検討中ということで、私は済まされぬ問題だろうと思います。特に公労法あるいは労働法の改悪の問題等と関連して、この問題は私は大事な点だと思います。政府はやはり今までのいろいろないきさつについて、私は公約としてぴしっと果たしていただかなければならぬと思います。あわせてそういうことに対しても、大臣の所見を伺っておきたいと思います。
#8
○国務大臣(田中角榮君) 補正予算の問題につきまして、まず根本的な考え方を申し上げますと、現存のところ、補正予算をこの国会で組まなければならないという考えは持っておりません。しかし、成瀬さんも言われたとおり、現在まで起きた災害は少額のものだけれども、台風期はこれからでありますから、九月から十月にかけての災害があった場合どうするかという問題、人事院勧告等の問題、また食管の問題も当然予想せられる赤字がございますから、こういう問題に対しての補正予算をどうするかという問題でございますが、現在政府の間でこれらの問題に対して鋭意検討を進めておるわけであります。
 災害に対しては、ただいま御発言がございましたとおり、本年度はまだ使用残の予備費は百八十億余残っておりまして、今まで起きた災害の本年度の手当はおおむね百億弱でまかなえるものでありますし、これも時々刻々の要請に応じて支出をいたすものでありますから、補正予算なしでおおむね現在のままでまかなえると思いますが、本年度災害がもうこれで終わるとは考えておりませんので、起きた場合の問題を予想しながら事務当局をして検討させております。
 人事院の問題につきましては、御承知のとおり、人事院は今度技術的にむずかしい勧告をいたしております。これは平均しますと、今度の勧告のベースアップ率は全部を入れて七・九%というようなことで私たちも受け取ったわけでありますが、こまかい内容をやってみると、七・九%ではなくて、現在計算中でございますが、八・何%になるのじゃないかというような非常にむずかしい技術的な勧告が行なわれております。この問題に対しても、政府は在来勧告を尊重するという建前をとっております。この基本的な態度はくずしておらないわけでありますが、景気もこのような状態であり、また物価問題、いろいろな問題等もあわせて検討いたしておりまして、この段階において、人事院勧告の総額が幾らになって、いつから、どういう方面に、どういう方法で適用するというような結論が、令すぐ出せる段階にはありません。ただ、一般会計、特別会計、地方の財政、その他を全部ひっくるめますと、大体三公社を除いて四兆五千億というような予算面から申しまして、その三分の一というところが人件費に近いものでありますから、これに対する七%、八%、九%アップになった場合に、一体逆算すればどの程度の数字になるかということは言い得るわけでありまして、それを適用する時期をきめるとすれば、相当財源に不足を来たすということも予測せられるわけでありますが、現存まだこまかい点までに対してはとても調査が行き届かない状態でございます。しかし、これに対しては誠意をもってピッチを上げて、これら勧告の内容に対しては検討を進めております。
 それから、食管の問題等もまあ当然出てくる問題でありますが、これに対しても現在の三十七年度の予算ベースで計算をしますと、御承知のとおり、米価が今度値上がりになりましたのであわせて千二百億近い赤字になるわけであります。でありますが、これも十月から十月末までに米審に対してお願いをしておるのでありまして、可及的すみやかに結論をお出し願いたいということで米審側に申し入れておるような状態でありまして、現在未確定要素であります。
 でありますから、今のような問題でひっくるめて申し上げますと、いつの日にか補正予算を必要とするだろうということは想定をせられますが、今日ただいまの段階において補正予算を提出するかどうかというお問いに対しては、この国会では提出する考えはございませんとお答えするほかにございません。
#9
○成瀬幡治君 私は、絶対に補正予算というものは必要である。このことが想定されるというのじゃなくて、もう断言していいと思う。しかし、提出時期等は、いろいろと時期等は問題になったと存じます。少なくとも予算の先食いとか、いろいろなことはできましょう。できましょうけれども、それもやはりこういう場合は追加予算を組んで、補正予算を組んでやるというのが至当なやり方だと思いますから、通常国会を待たずにもう一度国会を招集されておやりになる意思があるのかないのか。結論は、今検討中だ。で、結論が早く出たら、それにのっとっておやりになるような意思があるのかないのか。私は、大体おそくとも九月末ごろには結論を出さざるを得ないと思う。もっと早く出る、もっと早く出さなくちゃならぬと思いますが、そのように早く結論が出ましたら、おやりになる意思があるのかないのか。
#10
○国務大臣(田中角榮君) ただいまの状態では補正予算を提出する意思のないことを申し上げましたが、しかし、先ほど来申し上げておるとおり、いろいろな補正予算を必要とするような要素もあると思いますので、これらの要素が確定をして、当然補正予算を組まなければならぬということになれば、通常国会を持たずしてその支出に応ずるような態勢をとるべきことは当然であると考えますが、現在の段階では、いついかなる時期に臨時国会を開くという確定的なことを申し上げられません。
#11
○成瀬幡治君 次に、来年度の予算編成の基調の問題について、これもまあ検討中だと、考え方は目下検討中だと、こうおっしゃれば、それはまたそれまでだと思いますが、一体どんなふうにやっていかれようとするのか、大づかみな話をお聞かせ願いたいと思うわけです。
#12
○国務大臣(田中角榮君) 三十八年度、すなわち来年度の予算の基本的な考え方を申し上げるには時期が非常に早いと思いますが、しかし、御承知のとおり、過般行なわれました参議院の選挙に対して自由民主党が政策大綱を発表いたしました。私は当時自由民主党の政策の責任者でありまして、この政策は選挙政策というものではなく、おおむね昭和三十八年度の予算編成大綱として政府与党の合意のもとにこれを発表するということを言っておりますので、予算の建て方、方向としては、自由民主党が参議院の選挙に際して発表したような姿勢で予算を組まなければいかぬということだけは、これはもう確定的な事実だと考えております。
 しかし、予算が一体積極か、均衡か、緊縮かというような問題が前提になりますが、これは財政法の規定に基づきまして、八月の末日までに各省庁から大蔵省に対して来年度の予算概算要求が出されるわけでありまして、今各省で作業をせっかく通めておりまして、この期日である八月の末までには提出があるわけでありまして、大蔵事務当局としては、これを受けてこの内容を検討し、例年の例からいいますと、十一月の中ごろ以後において、来年の景気見通し、経済指標をきめて、今年度の実績にその指数をかけたもので大体の来年の予算規模が確定いたすわけでございます。この予算規模が確定せられた場合、その規模の中で何を重点に置くかという重点政策大綱をきめて、予算編成をおおむね年末までに終わりたいというのが例年の例でありまして、私たちも三十八年度予算編成に対してはこのような方針をとって参りたいということを考えております。
 財源等の見通しにつきましてどうかといいますと、これは私が申し上げるまでもなく、昨年九月から引き締め基調を続けておりまして、また、ことしの五月に御承知のとおりの統一見解等を行なって、景気も引き締め基調がようやく浸透しつつある状況でありますので、昨年度、一昨年度のように自然増収が多額に見込まれるというような現状でないことは御推察のとおりでございます。しかし、その反面、税収の伸びもなく、また財源等に対しては相当に窮屈であるという一面を持ちながら、九月の末をもって九〇%の自由化を行なうという基本的な方針も推し進めておるのでありますから、これに対していろいろな措置をしなければならないという事実も存するわけでございます。特に去年、一昨年以上の経済発達、過度の成長という現象がありまして、国内的には各業種間、地域間いろんなアンバランスの面がありまして、政府も党も国内均衡をあわせてはかっていくという政策を打ち出しておりますので、国内均衡をはかるための各般の施策も当然盛らなければならないわけでありまして、でありますから、来年は非常に財源があり余るほどにないし、また必要なものは今までよりも以上に必要な状態が考えられますので、来年度の予算は今までのようにそう簡単に――今までが簡単だというのではありませんが、来年度の予算編成に対しては非常に慎重に、しかも勇気をもって予算編成に当たらなければならないというふうに考えております。総じて今申し上げられることは、健全均衡という線を貫いて、将来長い目で見た日本の国際競争力の培養、国力の培養とかわれわれの生活そのものの向上が、長い目で一定の向上的なラインをたどるような状態で予算を組まなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。
#13
○成瀬幡治君 これは事務当局でけっこうですが、来年度の自然増ですね、大臣じゃなくて、事務当局がもしお見えになりましたら事務当局でけっこうですが、来年の自然増というようなものをどんなふうにお見通しになっているか、もし検討されて数字が出ておるなら、お答えをこの際願いたいと思います。
#14
○国務大臣(田中角榮君) こまかい数字は、主税局長が来ておりますから、後ほど答弁をいたしますが、引き締め基調がようやく浸透しつつあるということでありますので、三月決算は、われわれが考えておったよりも好況を反映して――好況というか、あまり引き締めがきいておらぬというか、いずれにしても決算上の利益は去年に引き続いて計上されておりますので、四−六月の税収に対してはそんなにわれわれが懸念しておるように減ってはおりません。がしかし、ほんとうにきいてくるのはこれからだというような見方もありますので、九月決算はある程度相当無理をする決算になるんだろう、実際の裸決算をすれば相当の税収は減るような状態ではないかというふうに考えられます。また、先ほど申し上げたとおり、相当長期の見通しを立て、昭和三十八年度の財政経済に対しては健全均衡という線、いわゆる引き締め基調をくずさないでいきたいという基本政策を推し進めていく考えでありますから、必要なものは出すけれども、できるだけ経済の過熱、設備投資の行き過ぎというようなものは今の姿勢で押えていきたいと思いますから、三十八年度の税収は三十六年度、七年度に比べては相当減ってくるのではないかと考えます。でありますから、今の四−六月の自然増収の数字だけを見て、九月決算もいいだろうという考えにはなれませんし、また九月決算は多少よくても、実際は六カ月とか八カ月先に相当なしわが寄るものでありますから、こういうふうに幅も広く、より深くなってきた日本の経済の状態から考えますと、三十八年度は三十七年度九月決算の数字を見ても、それよりも相当割り引いて考えなければ、三十八年度の実際の税収は予測できないというふうに考えておるわけであります。
#15
○政府委員(村山達雄君) 来年度の自然増収はどうかというお尋ねでございますが、大体ただいま大臣が申されたとおりでございまして、非常に見通しは困難でございますが、概して申し上げられることは、税の収入は経済指標の動きに対しまして大体半年おくれで出て参るわけでございます。と申しますのは、法人税で考えてみますと、決算が確定いたしましてから二カ月後に申告するわけでございます。しかも、その二カ月後の場合は、半分はその月に納めまして、残りの半分はさらに三カ月間の徴収猶予がございます。したがいまして、五カ月。大体期間は六カ月でございますので、中央値を取りまして、決算確定時までに約三カ月のズレがある。さらに申告間期は二カ月ございますから、それだけでも、単純計算しましても五カ月の徴収猶予を含めますと、最長八カ月のズレがあるわけであります。法人税が大体三分の一を占めますが、いろいろな経済指標の動きに対して五カ月ないし八カ月のズレがあるということを言わざるを得ないと思います。間接税にいたしましても、九月末納期でございますが、徴収猶予制度がございます。物品税でございますと、二カ月後に申告いたしまして、さらに徴収猶予一カ月で、三カ月ずれるわけであります。したがいまして、法人税におきまして大体半年のズレ、それから間接税におきまして二カ月ないし三カ月のズレがある、こういうことでございますので、来年度どういう税収になるかということは、かかって本年度の後半の経済指標、それから来年度上半期の大ざっぱに申し上げますと経済指標によって決定されてくる、こういう問題でございます。
 まだ、今年度の下期の経済指標がどういうふうに動くというようなところの予測がわかりませんので、今のところ自然増収の見込みは立たぬわけでございますが、過去との比較でいいますと、三十五年、三十六年の両年度とも非常に経済は活発に動いた年でございます。今年は大体調整期に入っておりますので、そういう常識的の観点から申しますと、過去二年のような自然増収はとうてい期待しがたいものであろう、かように考えているわけでございます。
#16
○成瀬幡治君 今の自然増は、あとの決算の見通し、これからあと半年くらいの見通しが立たないとわからない、こういうお話なのですけれども、そうじゃなくて、私どもとしては、大体後半はどういうふうに持っていくのか、あるいは景気の見通しにこの問題はからんでおりますが、ただいまいろいろ手を打っておりますね。したがって、たとえば経済企画庁で数字を発表しているわけです。なるほど経済指標はそう発表したけれども、生きものだからどういうふうに動いていくか、それはわからない、こうおっしゃられればそれまでと思いますが、ただ、わからないと、見なければわからないと、そういう不親切な答弁じゃなくて、おおよそこういうふうに見ておるのだということをほかのものではちらほらお目にかかることがあるわけです。これは政府機関で発表されたものじゃないとおっしゃられればそうなんですけれども、実際出ておるのですから、そういう数字は私はあまり技術的なことじゃなくて、あなたも所信表明の中でこれからひとつむづかしい問題だからよく出席するとおっしゃったが、もう少し田中大臣のざっくばらんなお答えを伺いたいと思うのですが、手固い答弁でなくて、こんなふうに見ているのだ、このくらいの数字になるのじゃなかろうかというようなことをおっしゃっていただいて、それは間違っておることもあるかもしれない、それは現時点の問題ですから。それらの点についてもう少しお聞かせ願うわけには参ませんでしょうか。
#17
○国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、政府は今年度、一月、上下通じての景気見通しを立てておりますが、その後の情勢に対応しまして、この間経済企画庁で試算数字を発表しております。三十七年度としては名目六%、大体実質四・五%という成長率を発表しておりますが、これは一月発表しました経済指標の変更ではなく、現在の時点における経済企画庁の試算数字であることは政府の申し上げておるとおりでございます。まあこの実質四・五%というもので逆算していけば、大体のものはわかるだろう。これは予測はできますが、今まで数字を出しますと、政府の数字はあまりにも信憑性がないという、どういう根拠をもってやっているのかということを間々言われますので、予測数字はなるべく立てないようにしようということで、非常に慎重を期しておるわけであります。
 しかも、ことしの自然増収というものが、四・五%、名目六%で逆算する場合はおおむね考えられますが、先ほど申し上げたとおり、四−六月にわれわれが考えたよりも生産指数が落ちておらない。しかし、今度は、このままでいくと八、九月もそんなに悪くないだろうというようなことが経済、金融にいろいろの影響を及ぼしまして、何か緩和政策が立てられるんじゃないかとか、そういういろいろのことは報道されております。事実、また、一部においては自由化に対してそういう動きもあるようであります。反面、六、七月から急にきいてきでおるというので、まあ石炭企業に対する一つの問題を見ても、また金属鉱山に対する一つの問題を見ても、調査会が二、三カ月かかって慎重に調査をした結果、対応策を立てればいいと考えておったような二、三カ月前のものは現在もう措置をしなければならぬというように、経済内容が急転直下しておるものもあるわけで、実際九月の決算を見ないと来年を予測することはほとんど不可能だと考えております。現在の状態で私が三十七年度の自然増収を最低見ても千二百億あるだろうと言ったということで、報道せられたことを見たことがありますけれども、私はこんな数字を外部に個人的意見として述べたことはありません。大体その当時の話として、四−六月が一カ月平均百億ないし百工、三十億の増収は続いておりますので、そういうものを十二カ月かげれば、下期は非常に悪い状態になるとしても、千億は割らないだろうというような想定から出た数字だと思いますが、現在の状態で今年度幾らの自然増収を見込めるということは、ちょっと申し上げられない段階だと思います。
#18
○大矢正君 ちょっと中座して、成瀬委員の質問の内容を詳しくつかんでおりませんから、あるいは成瀬委員の質問と多少ずれるかもわかりませんけれども、その点御了承いただきたいと思います。
 そこで、今大臣から、今年度の自然増収の見通し等について確たる将来に対する見通しを立てることはできないというお話がございました。私は、四月−六月の税収入の実績というものは統計数字となって今日すでに現われておるわけです。四−六月の実績だけを判断してみると、景気調整過程に入ったといいましても、それが法人税に関係のある会社の利益に極端に大きな影響を与えるわけではないということはこれによってわかるのでありますが、しかし、まあ考えてみますと、三月期よりは九月期になりますれば調整過程がさらに深刻になって参るでありましょうから、勢い法人会社の利益も少なくなるし、法人税が減ってくることは当然のことでありますが、しかし、日本の国が予算を編成したりあるいは税収入の伸びというものを検討したのはことしが初めてじゃなくて、長い間やはり行なってきているわけでありますから、勢いそれまでの間にはしばしば調整過程の段階においてそれが法人税にどういう影響を与え、それがまた所得税、酒税その他税の中心となる、大宗をなす税収入にどのような影響を与えるかということは実積のあることなんですね。たとえば昭和三十三年の調整過程においてそれが影響を現わした昭和三十四年のいわば税収の速報というものを具体的に拾い上げていくと、それがどういう形で税収の上に変化を現わしていくかということはおよそのことはつかめるはずなんです。これ、もしつかめないんだったら、主税局長、あなたはよほどわれわれに対して答弁をしたくない、そういう腹からお答えになっているとしか思われないわけなんです。私はそれはできると思う。
 それから、もう一つは、やはりこれもここ十年なら十年来、あるいは五年でもけっこうでありますが、長期のいうならば税収において一年間の月別の比率というものを調べて参りますと、それによって、大体四月は何%、平均して、五月は何%税収全体の中の収入比率があるかということがわかって参りますから、その計算から推していきましても、税の自然増収というものもある程度の見込みが立たないということは私はないのじゃないかということが一つあります。
 それから、もう一つは、この自然増のことを盛んに言われるけれども、自然増というものは昭和薫十八年の歳入に関係のある問題じゃないでしょう、これは。今の会計法の建前からいきますと、昭和三十七年の剰余金というものは三十九年でなければ使えないわけでありますから、原則的に使えないわけでありますから、その立場からいきますと、私は、自然増収の伸びを見なければ、これまた三十八年度予算の基本となる歳入の見積もりができないということも、これはまたおかしい話じゃないかと思うのであります。
 同時に、また大蔵大臣はしばしば三十八年度の予算というものは相当渋いものだし、シビヤーなものでなければならないということを強調されているようであります。これは毎年の行事としてそういうことをなされるならば、これはまた話は別でありますが、しかし、もっと深い根拠と考え方があるのじゃないかといわれているのであります。それならば、それの裏づけとなる考え方があってしかるべきじゃないかと思うのでありますが、しかし、先ほどの大臣の答弁を承ると、具体的にそういう点については何ら触れられないで、非常にぼかされた格好になっているのでありますが、私が今申し上げた数々の点について、大臣はもちろんのこと主税局長も、私のそういう考え方が誤っておるかどうか、お答えをいただきたい。
#19
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 税の予測が半年分も一年分も立たないのかという御質問でありますが、まあ普通ですと、大ざっぱに考えれば、過去のデータによって推算ができますし、また四−六月の実績で、このまま伸ばしていけば、まあ加えたり引いたりする面がありますが、おおむねのものは出るだろう、こういうことであります。これは一般論としてはそのとおりであります。しかし、今度は、御承知のとおり昨年度非常に減税を行なって、四−六月に旧税法でもって入るものもありますし、それから去年は間接税を重点的に減税をしましたので、国民消費の堅調という見通しが、実情は非常に国民消費が堅調でありますが、これが新しく七月、八月、九月というような経済情勢等を勘案しますときに、その売れ行きというのは一体どうなるのかというような問題に対して、一応のめどはつきますけれども、これを発表するほどの状態にないということは御理解願えると思います。これまた、こまかい問題については主税局長から御答弁申し上げることといたします。
 それから、来年度の予算の組み方、その点は先ほども申し上げたとおり、八月末に各省から予算が概算要求をされるのでありまして、普通でも十一月の末、おそい場合には、経済が非常に見通しが悪いときには、十二月の十日ごろ政府は予算編成大綱をきめておるのであります。その後予算提出と同時に、一月の休会明けまでに来年度の経済指標をきめるということをずっとやっておりますが、先ほども申し上げたように、今度は税収の伸びも期待できないけれども、そのほかに財政支出を要求せられるものが非常にたくさんあります。これは自由化に対応して国内的な均衡をはからなければならぬとか、地域業種間のアンバランスを是正しなきゃいかぬとか、大きな都市に過度集中をしているものを、一体こういう構造でいいのか、構造改善に対して思い切って一歩を踏み出さなければならないとか、もっと大きな問題として、自由化に対応した輸出振興というものを一体どうするのかというような問題が相当あります。そのほか、まだまだ言えば、運賃値上げとか、いろいろな問題が論議されておるときに、こういう問題は別な税制面及び別な一般会計からの投資を含めたいろいろな財政的な処置をすべきだというような相当むずかしい要請がありますので、これらの問題を勘案すると、例年のように今までのデータにある数字をかけてこの程度のものは見通せるのじゃないかというには、あまりにむずかしい段階であるという事実を披瀝申し上げておきます。
#20
○政府委員(村山達雄君) 先ほど成瀬委員のお話は、三十八年度の自然増収がどうなるか、こういうお話と承ったわけであります。御案内のように、いつも税収見積もりを当初予算の段階で立てますときには、その年度の実績見込みに対しまして政府の経済見通しに基づく経済指標の対前年度の伸び率により、これを中心にして積算するわけであります。そこで、今のところ三十八年度の自然増収いかんというときに、第一、ことしの実績見込みがはなはだわかりにくいという問題と、それから来年度の経済指標がどうなるか、三十七年度の経済指標に対してどういう動きを示すかということは、政府のほうで何ら発表していないわけであります。したがいまして、われわれのほうでそれを見通すことは非常に困難である、こういうことを申し上げたわけでございます。
 ことしの自然増収あるいはことしの税収見積もりはどうなるかということにつきましては、ただいま大臣からお答えを願いましたように、なるほど四月から七月末の実績を見ますと、去年の決算割合、去年の決算額を基礎にする四月のベース、これが全体の三〇・八%でございます。これに対しまして、今度の予算に対する七月末の収入済み額は三四・四でございまして、歩合で申しますと三・六%上昇を示しておる。単純に現在値でそうでございますから、かりに今後同じような順調さを保つとすれば、予算に対して三・六%増収が出るという算術計算は可能なわけでございます。もっともそんなに単純にも参りませんが、もしそういう計算をいたしますならば、七百億をちょっとこえるところの計算は出て参ります。しかし、それにつきましては、こういうことを申し上げておるわけであります。一つは、ただいま大臣も申し上げましたように、間接税の減税が本年度はございましたが、このうち物品税につきましては、四月から六月の収入は全く減税前の高い税率のときの収入が現われておる。七月だけが新税率による収入でございます。それから、三千億ばかりあります酒税につきましても、そのうちのビールは四月、五月、この二カ月は旧税率で入っております。それから、四月分と五月の半分が減税前の高い税率の収入でございます。そういう要素を考えますと、今日三・六%アップといっても、それを単純に見ることは問題がある、こう申し上げておるわけです。
 さらに、今年度の自然増収を考えますときに、決定的な問題は、九月決算はどうなるかという問題がございます。日本の法人税の収入は、全体の二兆四百二十一億に対して七千億を占めておる、約三分の一強でございます。そのうち三月、九月決算という法人の決算は実に二分の一を占めておるわけでございます。したがいまして、この九月決算がどういう推移になるかということを見ませんと、ことしの自然増収もなかなかむずかしい。伝えられるところによりますと、まあ日経とか各方面で現在見通しを立ててございます。あるものは対前期割合は九五になるだろう、あるいは一〇〇に行くかもしらぬというようなことを言っておるわけであります。ただ、先ほども御指摘がございましたように、過去の景気調整における型はどうであるか、もちろん全部調べておるのでございます。ただ、景気調整期は、二十八年とかあるいは三十三年、いろいろ型がございまして、必ずしも過去の型をそのままとるわけにも参りませんです。一番大きく響きますのは、景気調整期においては、もちろん売り上げはある程度推測できたといたしましても、利益率が非常に違ってくるという問題でございます。これは単位当たり収入に対する費用の割合が全く違ってくる。今言った稼働率の問題、あるいは人件費が上がるという問題、あるいは物価の動向――これは期首在庫、期末在庫にすぐ響きますから、こういう形で非常に違っておるわけであります。もっとも過去の例で典型的な例を申しますと、三十三年の調整期におきましては、前年度の利益を一〇〇とした場合に、実に八四%まで下がったわけであります。一%下がりますと、七千億でございますから七十億、一〇%下がりますと七百億違うことになります。そういう点がございますので、なかなか九月決算における、巷間いろいろ伝えられておりますけれども、われわれとしてはまだその見通しをつける場合には的確なことを申し上げかねる。ただ、先ほどのように、算術計算をいたしますれば七百億程度の計算はできますが、これとても今言ったような動きから申しますと、さらにもう少し経済指標の動きを見まして精査いたさないと、今の段階では確実なことを申し上げられない、こう申し上げておるわけであります。
#21
○成瀬幡治君 そこで、私は、もっと経済の見通し、あるいは物価の問題、いろいろの問題がございますが、最後にお尋ねしたいと思うのは、一番最初におっしゃいました国際収支の点でございますが、けさ新聞を偶然見たわけでございますが、新聞を見ましたら、あなたは今いろいろ輸出が順調にいきまして何か黒字だというお話でございますが、その計算の仕方なんですけれども、IMF方式を採用したら――こまかく出ております、若干IMF方式の説明は出ておりましたが、大ざっぱな数字しか出ておりませんでしたが、それを見て、今新聞の切り抜きを持ってくるといいんでしたが、なくて、本年一月−三月の計算のうちから経常収支では二億何千万ドルか赤字になっている。これは総合収支では借款等がございますから、あるいは外債等もやっておいでになる、あるいは外資導入等もあるから、総合収支では黒字になっておるけれども、経常収支は二億何千万ドル赤字になっておるところが出ておったわけです。実際統計のとり方やいろいろな点で私は問題があると思いますけれども、少なくとも正確な数字の上に立って、今後いろいろなことを推し進めていかないとたいへんなことになる。
 そこで、あなたがおっしゃった、これは僕は言葉を聞いたわけじゃなくて、衆議院の速記録を持ってきて、これと同じだという前提に立って御質問を申し上げるわけですが、経常収支は赤字で、「昨年一月赤字に転じ、同年六月には一億四千六百万ドルにも達した経常収支の赤字幅も次第に減少し、本年六月には四百万ドルにまでなっております。」と、こうなっておりますね。そうすると、ずっと赤字が減ってくるのだと、こうなっております。一月−三月が二億何千万ドルやら赤字だった、それがこの四月、五月、六月で減ったということになるわけか、どうもその辺のところわかりかねるわけですが、少なくとも私はIMF方式を大蔵省や日銀でおやりになって、最近おやりになった数字だと思うのです。しかも、大臣の最近の所信表明の数学なんですから、その数字の上に立ってのこれは御報告なのか、そうじゃないのか、その辺のところ、この赤字の国際収支の問題は正確な数字じゃないと、あと取り返しのつかないことになると思いますから、慎重にひとつしていただきたいという意味でお尋ねしているわけです。
#22
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
 私が答えましたのは、数字の上に立ってお答えいたしましたわけでございます。約一年前引き締めの政策を始めました当時には、十四億何千万ドルというところまで行ったのでございますが、この七月末には十六億三正正百万ドルでございます。その中で一年ばかり前からずっと経常収支と総合収支のしりを見て参りますと、今まで経常収支では非常に大幅な赤字であったものが、六月にはその赤字幅が四百万ドルというふうに非常に小さく縮まりました。同時に、七月、八月、九月の状況を見ますと、輸入も落ちつき、大体四十八億ドルの目標以内でおさめ得るというような状態も続いておりますし、それから輸出の四十七億ドルに対しては、多少四十七億ドルをこしていくだろうということになるわけであります。でありますから、政府が初め総合収支じりでもって一年間を通じて二億数千万ドルの赤字になるというふうに考えたものが、逆に、少なくとも一億ドル以上の輸出と輸入とのこの数字が逆になりますし、輸出好調でありますので、一億ドル以上は取り返すことができる。しかも、御承知の六月、七月、八月は輸出が伸びないときでありますが、ことしは六月、七月も輸出は順調に伸びて経常収支じりの赤字も狭まり、場合によれば黒字に転化するというような状態でありますので、例年の十月、十一月、十二月というふうな輸出好調期まで引き続いて輸出が伸びていくということになりますと、一月−三月の多少輸出が減るということを考えておる年度末においては、政府が発表した数字よりも相当黒字になるという方向はおおむね見当がつきますと、こういう趣旨で御答弁を申し上げておるわけであります。
#23
○大矢正君 今、成瀬委員から国際収支に関連して質問がありましたが、時間がありませんので簡単に質問しますが、聞くところによると、来月大臣はアメリカに行かれるらしいのですが、私が申し上げるまでもなく、昭和三十六年の一月−十二月ないしは四月から本年の三月までの対米貿易収支の実態をながめてみましても、ものすごい入超ですね。ようやく対米貿易というものが片貿易にならないで、どうやらバランスがとれそうだということになってきたところが、去年から急に対米貿易の入超が続いていることは申し上げるまでもないことですが、そこで、結局国際収支の赤字によって国内の経済政策が調整されなければならないということから考えてみると、やはり国内の経済政策の調整ということの原因にも、対米貿易、この対米貿易の入超ということが非常に大きな影響を来たしておることは言うまでもないと思います。ですから、私は、大臣はアメリカに行かれて、当然会議に出られるが、会議以外においても活躍をされることと思うのでありますが、特に国会は九月の百で終わってしまいますと、もう来年の大よそ二月、三月までは、私どもは正式に委員会で大臣に質問する機会というものはないのです。それで、言うならば、この機会が、この国会が最後ということになってしまって、その間何カ月間は空白ができるということになります。この際思い切って言いたいことは言っておきたいと思うのですが、大臣、今私が申し上げている対米貿易の入超問題について、あなたがアメリカに行かれるについて何らかの考え方はないですか。自分はどうしてこよう、新しい大蔵大臣の立場に立ってどういうように考えて、アメリカと折衝しようとか、どういう話をしようとか、公式、非公式、いろいろ会合があるでしょうが、そういう御努力をされて、たいへんな三十六年度の対米貿易の入超というものに対して改善策をとろうとする考え方か、これがあるかないかということが一つ。
 もう一つは、アメリカが、アメリカの資本を通じて日本の大企業と特定の産業に対して投資をする傾向、融資をする傾向が現われて、それによって日本の重要産業にかなりのいい意味と悪い意味の影響を与えていると思うのですが、同時にこれは、国民生活の消費面にも、最近の貿易自由化の傾向と関連して、アメリカの力というものは伸びてきております。こういう問題も国内的にはあるわけです。ですから、そういう全体的な対米関係という問題について、あなたはアメリカに行かれて、何らかの考え方をお持ちになって折衝されるお考えがあるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
#24
○国務大臣(田中角榮君) お答え申し上げます。
 対米貿易が入超になっておったということにつきましては、これは私が今度九月からアメリカに参りまして、日本になるべく入超にならないようにということを言うのはどうかと思います。これは対米貿易ばかりではなく、日本は輸出を伸ばす方向に努力をしておるのでありますから、入超であるから輸入品を押えるということだけではなく、必要な場合には原材料の買付その他でもって輸入がふえるでありましょうが、ふえた輸入よりは、よりよけいの輸出を伸ばしていくという方向で、輸出振興策ということに対しては、当然アメリカに参りましたときには意見の交換をしなければならないと思います。
 この輸入のふえたのは、去年六、七、八月が一番ふえたのですが、これはどうしてこんなにふえただろうというくらいに思い切ってふえているのです。これは当時公定歩合の引き上げとか、いろんな金融上の問題もありましたし、一体政府は九月一ぱいに九〇%自由化をやるのかやらぬのか、やるとすれば思い切って輸入してやらなければいかぬというような、相当な思惑輸入もあったと思うのです。私はそういう意味で、調整政策の基調を続けて参りましたが、現在は非常に大幅に昨年に比べては押えられておるわけであります。そういう意味で、輸入は、ただ国民の消費財だけが輸入ではなく、日本の輸出が活発になってき、生産を上げていくためには、原材料輸入は当然ふえるというわけでありまして、対米貿易に対しては、今まで順調に昨年に比べて今年度は一〇%以上も伸びてきておりますが、輸入が不可避であるならば、輸出はそれに倍して伸ばすような方向でいろいろ手だてをして参りたい、こういう考えでございます。
#25
○大矢正君 時間がありませんので、最後に、経済問題とは直接に関連がありませんが、あなたの御尽力をいただき、そしてあなたの御努力をいただいて、先般石炭産業に対する貯炭融資が、市中銀行との間に協調融資を得られるような一応の道だけはまあ作られたわけです。この点について、私も非常に大臣の御勢力に対して感謝をいたしたいと存じますが、ところが、どうもその政府みずからの考えた九十一億円の貯炭融資ということに対して、市中銀行はたいへん渋っておられるのですね。私はごく最近の正確な今日までの貯炭融資の状況や、それから、これから得られるだろう市中銀行の協調の内容等については明らかではありませんが、今の段階ではたいへん市中銀行が貯炭融資に対しては渋っておられる。当初政府、特に大蔵省その他と、それからまた石炭業者あるいは市中銀行とも話し合われた内容とは、かなり違ってきているように私は見受けているわけです。そのために最近の石炭企業の金詰まり、そしてそれが働く人々に与える影響というものはたいへん大きくなってきています。そこで、大臣としては、そういうような今日の時点に立って、あなたは具体的な石炭産業に対する貯炭融資の市中銀行からの協調というものに対して、どうお考えになっておるか。それから、どう対処されるおつもりなのか、この点についてひとつお聞かせを願いたい。
#26
○国務大臣(田中角榮君) 私は、石炭問題に対しては公平な見方で、ある意味では積極的な態勢をとって解決に当たっておるわけであります。こういう問題に対しては、ぎりぎり一ぱいまで大体持ってきて、国会で質問をされたら与野党の間で話をしながら政府の行動をうながすようなことばかりやっておったようでありますが、こういうものはだんだん日がたつにつれて、解決すべきものが合理的に解決ができなくなるというような問題も見られますので、だれが見てもわかる現象に対してはあらかじめ適切な手を打つようにということで、今度の国会が始まらない七月の夫までに一応の業者が納得する限度においての調整を行なったわけであります。あの中には中小鉱に対する融資及び中小鉱山町における商人その他に対する融資等までこまかい配慮をしたつもりでありますが、一番大きな金融面を占める市中銀行からの貸し出しというものが、救済としてどうにもならないものは当然やったと思いますが、コマーシャル・ベースで銀行の窓口が幾らかやっておるというような立場のために、われわれが考えた、また国会でも申し上げられると思ったということと、現状では幾らか開きがあるようであります。私は四、五日前から、この問題に対して一体どうなっておるのか、しかも、九月末に出されると言っておった有沢委員会の報告も出てから調整できるという、その有沢委員会からの報告書が、答申が出るまでの間に、暫定的にどうしてもこの程度まではやらなければならないということが的確にやられているのかということで、こういう考えで皆にいろいろなことを聞いたり、調査しておりますと、今言われましたとおりに、やはりやります、われわれとの間に話がつきましたと言っておったものが、いろいろな面できっとそごがあると思います。私は、この問題に対しても事務当局にも事情を双方から聞いて遺憾なき態勢をとるようにということを言っておりますので、時々刻々この問題はケース別にどういう処置が行なわれたかということだけは的確な調査をして参りたいという考えでおります。その後の情勢も相当逼迫して社会問題が起きそうだというような事実も私も承知いたしておりますが、これが双方が、金融団も、また石炭産業の責任者も、労働者側も、まあ一応暫定的にこれでいいだろうといった先の施策がすべて行なわれたけれども、情勢の変化によってこうなったというならわかるのですが、その最小限行なわなければならない措置さえも、幾らも行なわれないために大きな変動が起きたといえば、私たちにも一半の責任はあるわけでありますし、これらの問題に対してはケース別にひとつ、こまかく検討しながら遺憾なきを期して参るという態度は堅持しておるわけであります。
#27
○渋谷邦彦君 先ほど大臣からも所信表明の一端にございましたが、現在の景気調整期において当分金融の引き締めというものが続くと思われます。一番そうした点について被害といいましょうか、圧迫を受けているのは中小企業であろうと思います。先ほどのお話でございますと、そうした対策に対して逐次対策を立てていかれる。その中で六月から九月までについては百五十億の資金追加をもってこれに充てると、そうしたお話があったようでありますが、こうした点を考えてみますと、非常に急場しのぎのような感を深くするわけでありますが、中小企業の育成ということは目下の急務であると思うわけです。そうした点について、もっと根本的な抜本的な政府としての対策をお持ちでないどかうか、そうした点について具体的にお伺いしたいと思います。
#28
○国務大臣(田中角榮君) 中小企業問題につきましては、政府も従前から非常に意を用いておりまして、各般の施策を行なっておるわけであります。しかし、昨年度以来の調整政策を進めて参りましてからは、中小企業にしわが寄るのではないかという問題に対しては、深刻な思いをいたしまして、昨年九月の調整政策を決定すると同時に、昭和三十二年、二十八年当時の調整段階の例も十分勘案をし、資金的な措置としては当時のいわゆる二十八年、三十二年度において措置をした倍額に近いいろいろな措置をやったわけであります。でありますから、中小企業に対しては九月が非常にたいへんである、十月がたいへんであるといわれていたが、その期も過ぎ、年末の十二月も何とか年が越せるというような状態であったことは御承知のとおりであります。三月決算期においては非常にたいへんだろう、三月決算期から何らか手形を四月、五月にずらすとしたら四月、五月が一番たいへんだというような、これらの時期的な問題、各産業別の問題に対しても十分検討して、逐次あらゆる施策を行なって参ったわけであります。一方、国会においては下請代金支払遅延等防止法の改正も行なわれて、着々と施策が行なわれてきたわけであります。
 しかし、私たちも、まじめに考えて、中小企業というのは、これは世界的に見て特殊な存在でありますし、日本の産業の中に占めるウエートがこんなに大きいのは世界どこにもありません。しかも、日本の中小企業というものの、われわれの生活、国作り、産業経済面に及ぼす影響が非常に大きいので、自由化ということをやる場合に、今まで自由化が行なわれたものは別にし、場合によっては投資が過熱的に多くやられたわけでありますが、中小企業のほんとうの自由化対策である設備の改善その他はこれからやられるのでありますから、そういう面に対しても設備資金等いろいろな近代化資金等に対しても配慮をすべきだということで、今まで考えて参りました。先ほど申し上げたとおり、六月、七月から八月、九月に通じて約三百億の資金措置もやっておりますし、また三十七年度の予算においても御承知のとおり財政投融資計画のうち千百四十五億、対前年度に対しては三百五億円というふうに大幅な増額をいたしております。ですから、政府側から見ますと、非常に中小企業対策はよくやっているというふうにも考えられますが、しかし、中小企業があまりにも大きいのでして、今までのものよりも三百億多くやったからいいのだというような考えは私は持っておりません。だから、中小企業はほんとうの実情を的確に把握をして、いやしくも調整基調において黒字倒産が起きたり社会不安が起きたりすることのないように、その上なお自由化に対応する諸問題に対しても対処していけることを前提にして、資金その他あらゆる処置を講じて参りたい、こう考えておるわけであります。
#29
○渋谷邦彦君 大体今のお話でアウト・ラインはつかんだつもりでございますが、さらに現在の中小企業を圧迫するものとして、今も少しくお話のありました下請代金の支払遅延防止法であります。これは今日までの経緯を考えてみますと、事実上効果的な拘束力を持っていない。そうした点について非常に中小企業自体が思わぬところで苦況の目にあわされておる。しからばそうした防止法について相当効果的な拘束力を持つというような方向に改定が加えられておるのかどうか、またそれはいつごろの時期になされるのかどうか、こういう点についてお伺いしておきたいと思います。
#30
○国務大臣(田中角榮君) 御承知のとおり、前の国会で下請代金支払遅延防止法につきましては、一定の期限を経たもの、六十日だと思いますが、経たものに対しては法定利息を付さなければならぬ。これは日本の制度としては画期的なものだと思いますが、こういうものに対しての措置がなされたわけであります。その当時から銀行に対して、両建て、歩積みのできるだけ抑制とかいろいろなことをやっております。なお、今までは不動産担保ということで、あまり不動産銀行その他特殊な銀行以外はやらなかった担保に対して、中小企業は不動産しか持たないのでありますから、不動産や設備その他を、一般の法人が財産を担保としておる見方で、中小企業に対する融資については強力にやってもらいたいということを金融機関にも言ったわけであります。
 なお、中小企業は比較的今日まで、二十八年、三十二年の例に徴して比べると、何とかやってきたわけでありますが、引き締めはこれからきくのだというような考え方を持つと、実際たいへんなのはこれからだと思います。反面、非常に中小企業の資金源であった信用金蔵とか相互銀行とかは、二十八年、三十二年には政府余裕金を預託しなければならぬということでありましたが、今度は信用金庫は一兆四千億というふうに、非常に資金量が多いのであります。こういう問題に対して、どうすれば中小企業に対する貸し出し比率を落とさないで現在よりもより大きくできるかということに対して、大蔵省も一歩進めた考え方をしなければならぬし、金融機関に対して一体商工中金債は売れないのですが、こういうものをはくにはどうすればよいのか、また財政余裕金の活用等どうすればよいのか、また財政投融資計画を練り直さなければならぬのかというような各般の問題を現存検討いたし、時々刻々にこれらの金融界の方々とも意思の疎通をはかって、中小企業金融の逼迫犠牲を起こさないような適切な処置を考えておるのであります。
#31
○渋谷邦彦君 時間がありませんので、最後に一点だけお伺いしたいと思います。論点は全然別なんですが、開発銀行の融資の方針というものは、大体不況産業の再建というところに項目が置かれております。しかるにかかわらず、石炭業界の三十五年度の実績によれば、七十五億の融資、それに引きかえて国際観光の関係の融資に対して三十三億七千二百万円という多額の金が融資されておるわけであります。そうした方針の性格からいって、不況産業の再建という重点項目に相反するようなことが考えられはしないか。そうした点について具体的に御説明いただきたいと思います。
#32
○国務大臣(田中角榮君) 開発銀行は、ただいま御発言のありましたとおり、設立本来の目的としては、国にかわって行なわなければならない、場合によれば金融ベースにも乗らないようなものを対象にして、市中金融機関その他の補完的な任務で作られたことは御承知のとおりでありますが、しかし、これらの金融機関も、時代の変遷、時代の要請によって、投資の面等が変わってくる。また、銀行の性格そのものに対しても幾らか補正が行なわれるということは認められますが、ただいま言われたように、開発銀行設立の本来の目的を逸脱するようなものに重点が置かれているとすれば、問題であります。私たちが皆さんとともに、前々国会からだと思いますが、地方開発促進法とか新産業都市というようないろいろな立法の段階において、地方公共団体等が資金を必要としたり、特殊な任務を持つ低開発地の開発会社等が資金を得るのにどうすればいいのかということで、非常に検討したときに、一応北海道東北開発公庫のようなものを、西日本開発公庫というようなものの設立が必要ではないかといわれておったのですが、そのときは開発銀行の窓口を使う、開発銀行もこれに対して二百億の資金を持つということで処置を行なったのであります。時代の変遷をずっと見ると、開発銀行そのものは、新しい角度からもう一ぺん検討し、整備をしなければならない段階であることは言うをまたないと思います。私も、きのう衆議院の大蔵委員会でもそのようなことを申し上げたのであって、開発銀行が持つ――産業、特に不況産業とか国家としていろいろの処置をしなければならない産業に対しての開発銀行の責任というものに対しては、新しい視野、新しい角度、新しい立場から遺憾なきを期して参りたいと、こう考えます。
#33
○永末英一君 私どもは現在の、景気の調整期という言葉を使われておりますけれども、もう少し日本の経済を見てみると、戦後の日本の資本主義的な経済の再建転形期に入っていると私どもは思うわけであります。転形期に入りますと、特に資本側からの政府のいろいろな行動に対する要求が非常に強まってきている。これはあとで一つ一つ御質問申し上げますが、そういう場合に、過去二年間の池田内閣の所得倍増計画によっても、資本の要求に応ずればそのまま大衆に大きな負担がかかってくる。そこで、新しい大蔵大臣としては、大きく見て、これらの強く資本側の要求が来る場合に、どちらのほうに重点を置いてこれからの財政政策を進められるつもりか、伺っておきたい。
#34
○国務大臣(田中角榮君) 原則論としての御質問でありますが、資本にウェートを置くかどうするか、資本にウェートを置く場合には、当然こういうお話の裏には、きっと電力料金とかその他の問題、私鉄料金の問題をきっと含んでいると思いますが、まあこれは率直にいって、日本が将来健全な生活を確保していくためには、輸出を伸ばして、健全な経済成長をはからなければならぬことは、これは言うを待たぬと思うのであります。その意味で健全な経済成長をはかっていくためには、必要なものは第一にやはり資本の蓄積であります。
 日本は資本蓄積というものに対しては、先進諸国に比べて非常に弱いというのは、もう爆撃ですべてのものを使い果たして、工場も作らなければいかぬ、自分の家も作らなければならない、服も買わなくちゃいかぬ、すべてのものをある短い時間に十分充足しなければならぬというときでありましたから、資本蓄積という先行き投資がおくれていることは事実であります。そういう意味で、企業の健全化をはかっていくためには、どうしても資本蓄積に重点を置かなければならない。その意味で、開発銀行等の問題も今申し上げたわけでありますが、この資本蓄積が必要であるという大前提はくずさず、また資本蓄積の方向にすべての重点を合わせていかなければならぬと思いますが、具体的に一体資本蓄積の方向はどうするのか、一体国民の貯蓄をふやすのか、その貯蓄をふやさせるためには貯蓄増強方針にウエートを置くのか、また株式、社債を持つような方向にウエートを置くのか、一体外資を導入していくのか、政府が産業投資のための国債発行に踏み切るのか、また税をもって一般会計からの負担においてある程度をまかなっていくという方向をとるのか、減税政策上の特例のワクを広げていくのか。これは非常にむずかしい問題がたくさんあるわけでありますが、一つずつ別個に考えないで、私が大蔵省に参りましたときに、税の不均衡是正もよくわかるけれども、やはり税の特例処置に対しても、いろいろな非常に広い時代的要請、国家的要請という現実面からなるべく逃げないで、そういうものと正面から取り組んで、これらの問題を一つずつ解決してもらいたいということを言っておりますので、今までのように、各局ばらばらでもって議論するというよりも、銀行、為替、理財、絶えず一体となって議論してくれ、主税、主計は常に一体となって一つの問題に取り組んでくれと、こういう前進的な姿勢を打ち出すべく今努力をいたしているわけでございます。
#35
○永末英一君 今これらのむずかしい問題があるということを実は伺いたいのであって、公共料金の値上げ等も重大な問題でありますが、それはまた次の機会にしまして、たとえば資本蓄積をやらなければならない。戦後、日本銀行を中心にオーバー・ローンを行ない、そしてまたそのオーバー・ローンを受けたところが系列金融をどんどんやってきておる。そういうことでいわば資本蓄積がやられてきたと思うわけであります。したがって、現在のこれからの問題として、現実にこれらのオーバー・ローンを廃止して、あるいはまた系列金融をやめて、別途の金融秩序を作るべきではないかということが具体的に話題になっておるわけであります。あるいはまたこれに関連して、この際、公債発行をやるべきだ、公債発行によって資金を得るべきだ、こういう議論があります。この点についてどうお考えになりますか。
#36
○国務大臣(田中角榮君) 金融制度そのものに対しては、君は自由民主党の政務調査会長のときに、日銀法あるいは金融関係法の改正等を考えたではないかということを、この間、衆議院で言われたわけで、当時の考え方を、君は大蔵大臣になって完全にやめたのか。郷に入れば郷に従うで、そう朝令暮改では困るではないか。こういう手きびしい御批判がございましたが、私としては、金融制度そのものに対しても現行のままでいいという考えではございません。これは御承知のとおり、日本の金融制度そのものが理想的な形を追って、しかもその反面、戦後における非常な特殊事情の中で、相当、一面においては自由化、民主化の線を前面に打ち出しながら、また金融の中立性というものを前面に打ち出しながらも、ただいま言ったように、その機構のとおりにやっていく場合には、経済が大きくなり、国際経済の変動が直ちに日本の国内経済の各部門に影響するようなときに、一体野放しのままで財政金融の調整ができるのか、財政のワクだけで、はたして金融の調整が可能かというと、理論上これも大いに議論のあるところであります。でありますから、私は当時、これから調整段階に入るとすれば、またこれが不可避の状態であって、将来相当長い目で日本の均衡ある経済発展をはかろうとすれば、この金融制度というものを法制上、組織上の問題に対しても、国民は目をおおってはならない、こういう態度で発言をしておるわけであります。日銀法その他については、舟山試案等も出され、金融制度調査会等で現在検討せられております。私が新潟で発言しときでも相当ショッキングな発言としてとられたようだし、また、ただいまの答弁でも、こうやって発言しておれば、金融制度調査会は動かなければならんなということで影響のあることは仰せのとおりだと思います。そのくらい影響があるだけに、大蔵大臣としては言いたいことも言わないで慎重にと、こういう発言をしておる私の立場を御了解いただきたいと思います。私自身大過なく仕事をやろうという考えもございませんし、しかも金融機関も全く私企業ではありますが、公的性格も帯びておって、日本の経済そのもののほんとうの中枢機関でありますし、われわれの生活と全く切り離すことのできない大きな力を持っており、影響を持っておるのでありますから、まあ財政当局を督励しながら、お互いフェアな立場でこれからの日本の新しい立場に立った金融制度はどうあるべきかという問題に対しては、慎重にかつ勇気をもって対処して参りたい。こう考えております。
#37
○永末英一君 このごろの金融機関は、零細な大衆資金をあさることを非常にやっておる。これは証券界もそうだし、金融界もそうだし、銀行界もそうだ。特に銀行界においても、市中銀行、地方銀行、相互銀行あるいはまた信用金庫等々、法律のワクでいろいろな金融機関もあるけれども、実際ねらっておるところは、同じ大衆のふところをあさっておる。これが荷金利の問題やいろいろな問題を起こしておる。この点について手をつけられる御意思があるか。
#38
○国務大臣(田中角榮君) 基本的な性格の問題は、先ほど御答弁申し上げましたので、慎重にかつ――こういうふうに御答弁申し上げて、具体的な問題に対しては、なお影響するところが大きいのでありますが、大蔵事務当同としても、これらの問題に対しては検討をいたしておるようでありますし、しかも現実的な弊害があるならば、弊害を除去するという方向で検討を進めておるわけであります。
 それから先ほどの御質問でお答えをしなかった一点がありますからお答えを申し上げますと、外債その他、他に財源を求めるという点に対してどうか。現在のところ、国債を発行する、建設公債を発行するという考えはございません。これは明確に申し上げておきます。これは引き締め基調を堅持していくという姿勢の中からは、どうしてもそういういわゆる健全な状態で資本蓄積をはかるという態度をくずしてはならないということで申し上げております。今、一般論からいいますと、先ほどから申し上げておりますように、財政法の規定において、剰余金の二分の一が国債償還に充てられるというような規定やいろんな問題も、国債発行に対しての制限が非常に大きいというのも、戦後の特殊な事情で、日本がほんとうに健全な均衡ある財政をはかっていかなければ、日本自身が再建できないという情勢に対処せられて出たものでありますし、メモランダム・ケースのものもたくさんあるわけでありますから、新しい態度で検討を必要とするのでありますが、大蔵大臣一人の考え等で国債発行に踏み切れとか、建設公債発行に踏み切れとかいうにはあまりにも重大な問題でありまして、これは日本中の衆知を進めて間違いのない施策をとるべきだという考え方を申し上げておるわけであります。
#39
○永末英一君 私の割当も終わりましたが、あと三点質問があるのですが、質問の項目だけ申し上げて、最後に差し引いていただいてよろしゅうございますか。
#40
○委員長(佐野廣君) どうぞ。
#41
○永末英一君 それでは答えができれば答えをしてほしいと思います。一つは、安い金をほしいというので、特にこのごろ開銀、興銀、長銀などを一本にして、そこに政府資金などを導入して第二の産投会計を作れ、こういう御意見が非常に強まってきておる。こういうことに対して大蔵省はどういう検討をしておられるか、これが一点。第二点は、資本がほしいというので、外資をひとつ何とかして入れよう、これは先ほど大蔵大臣が言われたような措置になってきております。ところで外資を入れるということになると、それに対して日本の産業を守っていくためには、やはり何らかの規制がまた一方に必要であると思うのです。しかもまた、たとえば株式元本の送金の緩和をやりましても、それだけ日本の株式市場に、この約二十日間でありますけれども、多く来たかどうかということもあるし、今後の見通しもまた問題がある。したがって、そういう外資を入れるということについて、それをチェックするどういうような方針を考えておられるか。これが第二点。それから第三点は、この資本側の要求を入れて、成長政策なり、あるいはまた自由化に伴う日本の経済の構造変革をやっていくと、どうしてもやはり物価の値上がりということを機軸にしながら大衆の消費生活に圧迫がくる。私どもは端的に申して、過去三年間の実績を見ましても、民間の設備投資の伸び率、各年度、前年度比をとる個人消費の伸び率等を考えましても、個人消費が一割少し上回っておるのに比べますと、民間の設備投資は三割から五割程度であるということを考えましても、この数字だけでも、総体的に言えば、日本の国民の日常生活は経済の成長に見合わない状態であるとわれわれは判断をいたします。そこで経済成長の率を見込んで予算を作る場合には、必ず減税をやることがわれわれ必要だと思う。あなたはこの原則をお認めなさるかどうか、三点。
#42
○国務大臣(田中角榮君) 資金が資本蓄積上安くかつ良質であり、資金コストが安く低廉であり、長期の資金を得るという――いや安く質がよく長期な、こういうふうに訂正をさせていただきますが、そういう資金を得たいということは、これはもう事実そのとおりであります。そういう意味で長興銀の合併論も一部に散見をいたしておるようでありますが、私は長興銀を合併することが必ずしもいいと思っておりません。思っておりませんが、反対に、勧業銀行や日本興業銀行のような特殊なものが、戦後の措置によって、全部一般コマーシャル・バンクに直ってしまった。銀行自身も今そういう問題に対して考えておるのだろうと思うのです。中小企業の金融一つ見てもわかるように、また住宅金融のように、住宅金融公庫や住宅公団だけではなく、不動産担保でもって金融をしてもらいたいという零細な一般人が大半あるわけでありますから、そういう金融機関は一体必要としないのかというような問題、また、税収その他の窓口として日本銀行だけでいいのか、また外債だけでいいのかという問題が相当あると思う。そういう意味で、銀行自体に対しては、私たちが言うよりも、これらの方々も十分考えておるようでありますし、また金融制度調査会でも専門家をたくさん入れておりまして、皆何々博士ということで著書を持っておる人ばかりでありますから、こういう人の中からも、こんな質疑が国会で行なわれておれば、近いうちにそういう結論も出てくるだろうと私も相当期待をいたしておるわけであります。この問題に対しては第二産投を作るかという問題も一部にあったようでありますが、まあ産投会計としても議論がある、この委員会でも議論がなされると思いますが、そういう意味で産投会計というものに対しても別な角度から検討をしたり、これが資金の補完方法等も十分検討したいということを考えておるわけでございます。それから外資制限の問題でありますが、これは私は就任をして直ちに行なった一つの問題であって、外資を無制限に入れるために質の悪い外資が入ってくる、しかも株価が混乱をすると同時に金融界そのものも混乱させたりするのではないかというような懸念ももちろんあるわけでありますが、これは現在の日本において、二年を六カ月にしても資本蓄積という面から考えて妥当な処置であって、懸念せられるような面は十分排除し得る、こういう認定のもとに制限緩和に踏み切ったわけであります。これの一つの例は、今の日本で発行せられておる株式の総数が四百四十億株だと存じますが、外人の持っておる二億九千万ドル余の投資は株数でその一%であります。戦前、またその後の戦後の状況を考えましても、まだ外人が持っておったものの半分近い数でありまして、これが今までの平年度化した率くらいまで上がっても、これで日本の金融や株式界を混乱せしめられたり、早急に引き揚げられるというようなことは考えておりません。八月一日に行なって今日までの間、一体どうかというと、引き揚げが幾らかでも大きくなったというようなことではなく、いつでも引き揚げられるのだから、今まで二年前に出しておかなければ引き揚げられないから二年前に出しておこうといわれておったようなものが、六カ月ではいつでもというので、今まで申し込もうとしておったものさえもやめようという気分らしくて、全然そういう問題について引き揚げの顕著な例はございません。そうして同時に八月一日から緩和になったのだから、投資がうんとふえているかというと、そのような著増の傾向もありませんが、しかしアメリカやその他の国の海外に駐在をしている諸君や窓口に対しては非常に好感を与えておりますし、質のいいものに対してはどんどんとひとつ申し込もうという機運にあることだけは報告をせられております。それから国内でもって安い長期の資金が豊富に得られないために、外債というので、勝手にアメリカだ、スイスだ、どこだというふうな外貨あさりをしているものに対してはどうかということでありますが、これは御承知のとおり、調整過程において、大蔵省に窓口を作りまして、大蔵省と話し合いをした者以外は私のほうではOKしませんから、質のいいものを選んでもらいたいという窓口チェック制を採用いたしておりまして、現在、大蔵省と民間との間に混乱はありません。それから物価の問題に対しては、これはいろいろの御議論がありますが、なぜ物価が上がるか、これは一様の議論にはいかぬと思いますが、賃金水準の上昇、これによるコストの増加、消費と需要の堅調による需給のアンバランスとか、流通機構の立ちおくれとか、また東京のように年間四十万人も五十万人も短い期間に一ぺんに入ってくれば、どうしても流通機構がこれに見合わないという、いろいろな問題があります。また消費の質の問題もあります。また今まで七坪だったうちが十二坪になり、十五坪になり、二十五坪になり、木造より鉄筋のうちに入りたいというようないろいろな質の問題もありますが、しかし、これからの生活を考え、また経済成長の安定を考えていくためには、消費者物価に対しては重大な関心を持つとともに、適切な措置を講ずべきは論を待たないわけであります。しかし、そういう問題に合わせて、健全経済成長というような場合には当然減税をしろ、こういうお話でありますが、これもなかなかむずかしい問題ではありますが、私自身も二兎も三兎も追うというような立場に立たされるとは思いますが、しかし、まじめにこれらの問題には対処すべきが財政の責任者でありますから、その問題に対しても姿勢を正しております。減税は、来年できるかできないかは、今、税制調査会に諮問したばかりでありまして、私から申し上げる段階ではありませんが、一般論から言いますと、減税及び低所得者に対する負担の軽減は絶えず基本となるべきであるという態度はくずしておりません。
#43
○大竹平八郎君 時間がございませんから、総合的な問題につきましては後日にいたしまして、きわめて端的に三、四点伺いたいと思います。
 第一は、輸出振興に対する金融、税制措置の問題、その次は中小企業の金融の問題、それから第三点は金利の引き上げの問題、それから最後には、先ほど外資導入の問題がございましたが、これに関連をして端的に伺いたいと思いますが、まず第一の輸出振興に関する問題でございますが、御承知のとおり、昭和二十二年の八月の十五日にGHQによって民間貿易が許されて今日になった。したがって、飢餓状態の輸出入から最近は輸出が四十億ドル、輸入が五十億ドルというようにきわめて奇跡的な飛躍をしたことは御承知のとおりでございます。わが国の経済向上とか、あるいは民生の定安にこの貿易というものがいかに大きな貢献を持っているかということは言うまでもないと思います。また、政府といたしましても、あらゆる経済政策の基本として、この輸出振興という問題を取り上げていることは御承知のとおりでございます。そういう意味で、まず第一に経済外交の推進というような問題、これは所管が違うわけでありますが、こういう点、それから何といっても私はその中心になりますのは、金融あるいは税制措置でなければならぬ、ことに輸銀資金の強化、これらは私は振興のまず第一でなければならぬ。それからその他税制――現在でもやってはおりますが、今後そういう意味において私は金融税制措置というものが輸出振興においては非常に重要なる要素を持ってくるのじゃないかと思います。この点についてひとつ御意見を伺いたい。
#44
○国務大臣(田中角榮君) お答えを申し上げますが、輸出振興の重要であることはもう全くお説のとおりであります。輸出振興といっても、今言われたとおり資金を潤沢にすることと保険制度を拡充してやることと、それから税制上の優遇ということになるわけでありますが、これは三点とも努力をいたしております。しかし、この問題に対しては、ガットの制約とか、いろいろありますが、私は日本が輸出振興ということが国是であって、これ以外にわれわれの生活をよくするということは考えられないんだということを考えるときに、輸出振興という問題は外交上いろいろな制約はあるでありましょうが、制約の範囲内で許せる限度いっぱい、あらゆる措置を行なうべきだという考え方はお説のとおりであり、輸銀の資金の問題、保険制度の拡充の問題、その他各般の施策は緊急にして長期的固定的な施策を行なっていくべきだと考えております。
#45
○大竹平八郎君 その次に中小企業の金融問題でありますが、先ほどもちょっと発言があったようでございますが、御承知のとおり、前国会に民社党を初めといたしまして、社会党、それからおくればせながら自民党と、各三党それぞれの立場は違っておりますが、例の中小企業基本法案というものが出たわけでありますが、いずれも残念ながら廃案になったわけでありますが、政府としても、今度、通常国会に政府提案として出されるというふうに私ども聞いておるのですが、私どもは民社党の案に賛成をいたしまして、この前提出をいたしたわけでございます。しかし、各三党の案を見ましても、大企業との調整の問題とか、あるいは官需の中小企業への分布の問題とか、これはいろいろできると思うのでありますが、三党ともおそらく一番悩みの問題というのは金融問題だと思うのであります。そこで、従来今までお話がありまして、中小企業に対する金融の措置というものは歴代大蔵大臣が非常に力を入れ、また、総理もたびたび言明をして相当の措置はとっておるようでありますが、現在の中小企業の状況からいうと全く焼け石に水というような感じがいたすので、私ども、幸いにして来国会に政府は基本法をお出しになるということになると、やっぱり私は基本というものは金融問題でなければならない。そうすると、ただ単に、政府の今まで中小金融機関に政府が融資するというようなことだけでなく、もう少し抜本的な中小企業に対するところの金融機関というものができていいのではないかと思うのでありますが、まあそういう点について現在どの程度に基本法の問題についての政府提案が進んでおるかどうか知りませんが、この際ひとつ大臣の御答弁をお願いいたします。
#46
○国務大臣(田中角榮君) 中小企業に対しては先ほどからるる申し述べておるとおり、お説全く同感であります。中小企業の基本法に対しては、去る国会に各党提案が行なわれたわけでありますが、これに対しては、御承知のとおり池田総理の政府提案を行なうようにという強い指示がありまして、私も党の政策の責任者でありましたが、党にも非常に強い指示がありまして、できれば政府、党で調整をして政府提案として出すべきであるということでありましたが、時間もない関係上私たちは与党提案をいたしました。当時、社会党案も民社党案も提出せられておるわけでありますが、中小企業基本法に対しては総理もこの間の予算委員会かで御答弁になったとおり、その後選挙でも公約をしておる問題でありますし、時間もたっておる問題でありますから、次の国会、できれば通常国会に提案をいたしたいというふうに考えております。これは通産大臣の所管でありますから、私が通常国会に提案をいたしますということは申し上げられないのですが、大蔵大臣としても、通産大臣が通常国会に中小企業基本法を出されることに対しては賛成をいたしております。それから金融機関の問題、特に中小企業に対する金融の問題ですが、金融は、税制上の優遇でいろいろ言われておる危険負担、それから企業安定という意味で、税の延伸を認められないかとか、それから保留金制度というようなものを暫定特例法によってできないかとか、いろいろ今まで皆さんも検討してきた問題でありますが、結論を得ないで今日まできております。しかし、この間の税制調査会に対する諮問案に対しても、これらの問題に対しては各位の意見を戦わしていただいて、適切な御答申をいただきたいという政府の考え方も出してあるわけであります。現在、中小企業三公庫というのがありまして、ここからの融資が中小企業の政府関係機関の窓口になっておりますが、先ほど申したとおり、商工中金は原資に対してはいろいろ逼迫しております。それから国民金融公庫も二百七十万件、二百八十万件という申し入れに対して、処置なしというような状態でいるようでありますが、これは六、七月に急激にふえてきたので、今までは政府、大蔵当局が考えておったように非常に金融はうまく進んでいっておりましたが、六月から七月の末にかけて二百七十万件、二百八十万件という大きな申し入れがありまして、一人十七万円、これがほんとうに実際に動いている金額からみると、一件十万円じゃないかという問題もありまして、中小企業や国民金融公庫の資金の状態、融資の状態、返済の状態というようなものに対しても相当検討していかなければならないと考えます。同時に、資金の融通に対しては、先ほど申し上げた三公庫に百五十億、また中小企業の資金ワクが低下をしていかないように、より余計に、市中銀行からも資金が回るような措置として金融債の買い上げを百五十億やっております。これでいいとも考えておりません。こういう意味で非常に広範な中小企業層に対しまして、実態を十分把握しながら、三公庫を活用していくということはもちろんでありますが、先ほど申し上げたとおり、中小企業一般の金融を持っておった勧業銀行とか、そういう問題に対しては戦後必要であるのか、また必要ありというような考え方も強く言われておりますし、中小企業の資金元であった信用金庫や相互銀行が資金を余計持ちながら、いざという場合に日銀が、政府がめんどうをみてくれないという現状の場合に考えると、いわゆるバイブを通じてコールに流すというような実情も否定できない事実であります。こういうものをどこで調整すればいいかというような新しい問題に対しては真剣に検討して、金融関係機関の協力を得ながら、結論を出したいという考えでございます。
#47
○大竹平八郎君 御承知のとおり、中小企業が多く金融をあてにしているところは相互銀行、利子は高いがやむを得ない。それから民間二十万と称せられる金融団体、これが非常に多く利用せられるということでそろばんが合うということは、どだい間違っている。そういうわけで、私は先ほど申し上げました今度の基本法については、特に金融問題についてこのウェートをおいていただきたいということを特に要望をしておきます。
 それから金利の引き上げの問題でございますが、先ほど来、大臣からいろいろお話がありまして、国際収支が次第に改善されつつある。それからそれぞれの業界についても生産調整の動きが非常に全面的になっている、これは事実だと思います。それから輸出入の問題についても、輸出が相当伸びて輸入が押さえられているというのは、これはしかしあくまでも政府のいわゆる調整であって決して自然じゃない。そういう点に私は日本の全体に今まで経済に非常に不備がある。最近、鉄鋼初め繊維その他の状況を見てもみな操短操短で、きわめて不況の状況にある、こういうようなところから考えまして、政府としては今後さらに行政指導の強化とか、それから金利はすでに二回目の引き上げをやったわけでありますが、第三回目のあるいは引き上げというような措置をお考えになっておるかどうか、この点を一つ伺いたい。
#48
○国務大臣(田中角榮君) 金利問題もなかなかむずかしい問題で、どうも大へんむずかしいのであります。設備投資と融資を抑制するためには貸し出し金利を上げるということも一つでありますし、また同時に、資本蓄積を行なうためには一般預金者の金利を保護するために金利を逆に上げなければならぬというような問題もありますし、これは今でさえも国際金利からみますと非常に高いので、自由化をしていくということになれば、国際金利水準にさや寄せをしていかなければならぬ、こういういろいろな問題に今取り組んでおるわけでありますが、現在のところでは引き締め基調、いわゆる調整基調をくずさないで、そうして中小企業その他に対しては非常にきめのこまかい措置を行なっていきたい。また、国内銀行に対しても、各分野においてそのような措置をとっていきたいという態度でありますので、現在、金利をもう一ぺん上げるとかというような考えは持っておりませんことを明らかにしておきます。
#49
○大竹平八郎君 最後に、外資の対策についてなんですが、先ほどいろいろお話があったようでありますが、私はまた外資対策については別の考えを持っておるわけでありますが、ことに三十六年度の国際収支の面をみますと、御承知のとおり、十億ドルというような膨大な一応赤字になったわけであります。しかし、資本収支六億ドルという黒字があって初めて総合収支の面においては赤字が非常に少くなった、こういうことなのでありますが、これの大きな原因というものは、同年度、三十六年度に外資のいわゆる導入額が――これは私の調査ですが、六億二千万円余、前年度に比して約三倍強にもなっておる。こういうようなことで、ことにこの証券市場による外資の導入というものが大体一億を突破しておる。こういうようなことで、むしろ日本の国際収支を好転せしむるためには、進んでわれわれは外資導入、ことに証券市場に流す。それはいろいろ悪い面もあると思うのですが、そういう点で、どうしてもここに力を入れてもらわなければならぬ。そうして、一番悩みであったのは、御承知のとおり、元本の送金問題ですね、これは何か二年据え置きとか何とかというようなことで業界も非常に困った。それが八月一日になって六カ月というようになったということは、これは事務当局にはいろいろ問題があったと思うのですが、田中大蔵大臣がいわゆる第一のヒットを飛ばした、私どももそう思っておるのですが、私はこれだけでは、アメリカの今の景気の後退の問題とか、あるいはアメリカの最近の日本輸入品に対するいろいろな抑圧的な傾向、これは依然としてまだあると思うのです。そういう意味からいっても、われわれはもう少し、できるだけ外資導入についての積極的な措置をむしろ私はとるべきだと思うのです。単にそういった行政措置の二年を六カ月にしたというような、こそく的なことだけでなく、もう少し私は恒久的な措置というものをとっていただかなければならぬと思うのですが、この点を伺って私の質問を終わります。
#50
○国務大臣(田中角榮君) 外資導入が必要であるし、また外資導入もこまかく考えて良質の導入を行なうとすれば、一部にいわれておるような弊害は起こらず、われわれの目的が達せられ、いわゆる日本の企業、産業経済の発展に資する力は非常に大きいのであって、着目しなければならぬという考え方は同感であります。その意味で促進をするというので外貨送金制限を緩和いたしましたが、六カ月というようなのは、今、外資法もございますし、経常取引の自由化という問題と関連がありましたので、おおむね二年を六カ月というふうに、私としては相当思い切った処置をいたしたわけであります。しかし、これはアメリカや諸外国、先進国からいうとほとんど自由でありますので、日本の株式銘柄を外国で上場する場合でも、制限のある国のものはやらぬとか、いろいろな制限がありますので、そういう意味からは万全だとは思っておりません。思っておりませんが、早晩ILO会議とか、そのほかの会議とか、いろいろなところでこういう問題は議論になるものでありますので、私も就任日浅くして、まあ全廃に踏み切るには多少荷が重いというような考え方で、漸進的な意味で六カ月というような状態に踏み切ったわけであります。これはその後、国内における不安感も一部にありましたが、このごろはこの外資送金制限緩和に対する不安感も消えたようでありますし、外資導入のいい面だけをお互いがひとつ議論をして、悪い面がありとしたならば、適切な処置をとろうという態度に変わっておるようでありまして、私はそういう方向で外資導入に対しては対処して参りたいというように考えております。
#51
○鈴木市藏君 時間があまりありませんので、ほんとうは大臣の所信に対して今の経済の実態をどう把握するかという問題について申し述べたいと思っておりましたが、この点についても質問したいと思っておりましたが、時間がないので、これは保留して譲らざるを得ないと思います。ただ、今の実態をどう把握するかということは、その場限りの経済政策をやるのじゃなくて、少なくとも見通しを持った政策を立てようとする場合には一番大切な観点だろうと思うのです。で、この点についてしばしば政府は見込み違いをやっておりまするし、現実におきましても、今年度の予算期において物価上昇率を二・八%ととったにもかかわらず、八月の十日には、この特別国会向けとしての数字の手直しかどうかしりませんけれども、五%というふうにかえておる。おそらくこれまた十月か十一月ごろになるとまたかわるのじゃないかと思う。ですから、こういうふうな基調になるべきところのものがかわってくるということも、今の実態をどう把握するかという点に対する見通しを正しく立てることが必要だというふうに考えるわけです。だが、まあこの点については時間がありませんので保留をいたしまして、後ほど必要なときにぜひひとつこの問題についての質問をしたいというように考えております。
 そこで、経済の今の状態の中で何といっても大切な点は国民に力をつけるということだと思う。で、やはり国内の市場を制約している問題をどうしても取り除いていく必要があるというようにわれわれは考えておる。そこで、これは大臣自身が所管に関する問題、関連しないというような形で逃げないで、大臣自身としてお考え願いたいのは、第一の問題は物価の問題です。今伝えられるところによると、消費者米価、私鉄、あるいは電気等の物価を上げるといっています。一体これを上げるということについて、そういう方向でいくのか。それとも大臣自身はこの物価を引き上げない、抑制するという立場に立つのか、この点についてはっきりと、もうこまかいことはいりませんから、確認という意味でひとつお答え願いたいと思います。
#52
○国務大臣(田中角榮君) 物価問題につきましては、卸売物価と消費者物価があります。卸売に対してはもう議論がないようでありますが、消費者物価の問題は、これはもう緊要にして長期的かつ非常に重要な問題であります。政府は深く苦慮をしておるわけでありまして、今度の問題に対しては、ほんとうに効果のある処置をしていかなければならぬと考えます。しかし、この物価という問題に対しては、端的に申し上げますと、先ほど申し上げたとおり、物価上昇の要因はたくさんあります。ありますが、その中で、まあ要因とか、そういう問題を議論するのではなく、また、ここで私鉄や電力料金が上がれば物価と賃金との悪循環は当然また来るのであって、そういうものを一体押えるのか、押えないのか、理屈を言わないでそこを言え、こういうのが一番むずかしい御質問であります。私としては、政府がとっております基本的な態度は、公共料金に対しては抑制の態度をとる、こういうことをきめておるわけであります。これは参議院選挙を通じても、政府、与党もそういう態度で国民に訴えておるわけでございます。この一つの例としては、昨年の八月提出された私鉄運賃の値上げも今日まで押えておるという事実にも明らかなように、抑制の方向をとることは間違いありませんし、大蔵大臣としてもそのとおり考えております。しかし、抑制ということは上げないのかというふうに切り込まれると、いずれ御答弁申し上げますが、またいろいろな問題を申し上げなければならないと、こういうふうに考えております。
#53
○鈴木市藏君 公共料金の値上げをやるかやらないかということについて、端的にお答え願いたい。もうわれわれわかりましたよ、今までの議論でいろいろなことは。これを具体的に言いましょう。消費者米価、私鉄、電気料金の値上げをやるのかやらないのか、この点についてだけお答え願いたい。
#54
○国務大臣(田中角榮君) やるのかやらないのか、端的に短い時間で明確に答弁して下さいという、非常にむずかしいのでありますが、上げたくないのです。上げたくないのですが、一つずつのケースが一ちょっとお願いしたいのですが、これは電気料金の問題は、上げたくないという例の中に一つ東北電力の例を仮定としてとってみますが、東北電力で百三十億くらい年間上げたいという申請のようでありますが、上がった場合には、一体、政府も民間も考えておる大都会と東北、北陸のような低開発地区とのアンバランスはますますアンバランスになり、現在ある肥料工場その他の重工業、基幹産業というものは非常にみな赤字になってしまう。誘致をして、大都市から分散をしなければならない受け入れ側にあるところが、水がありながら、土地がありながら、労働力がありながら、ようやく現在の産業を維持しているのが、百三十億もカバーしていけない、こういう問題があります。そうすると、これを値上げしないならばどうするか、税制だけでやるかということは、一社だけでも百三十億ですから、九電力合わせると幾らになるか。東京、大阪のような消費の非常に大きい、また別にコスト・ダウンできるものまでカバーしてあげる必要はないじゃないかといっても、九州、四国はどうなるのか、中国電力はどうなるのか、たいへんな金額になるわけであります。税制上の優越措置でまかなえるのか、税制上の特例措置でやれるのか。もうすでに税制上の特例措置をとっているわけです。こういう問題に対して、いつどの地域に対してはどうカバーできるのかという問題も検討しなければならぬわけであります。なお、そのほかに、重力の広域運営ということで、九電力の再編成をやったらどうかという問題も議論されておりますが、再編成した場合には、カバーできる分は幾らあるのか。少なくともある部分に対しては、電源開発のような国策会社というような制度でもって幾らカバーできるのかという問題を十分検討しませんと、ただここで電力料金の値上げはしないというふうには端的にお答えができないわけであります。
 私鉄の問題になっても、もちろんそうでありまして、今のような私鉄の問題どうするかという、私鉄の経営の合理化、別なところでデパートその他兼業でもってうんともうけておるじゃないか、こういうものも全部入れて鉄道会計法の精神そのままで議論をすべきだ、こういう議論もありまして、内部の合理化というものも相当検討いたしておりますが、何しろ東京だけでも四十万人、五十万人年間ふえていく。しかも、所得がどんどん上がるためには、産業基盤が倍増々々ということになっていることを前提として考える場合に、地下鉄は建設費がどんどん大きくなってくるし、私鉄もそうでありますが、鉄道キロ当たり三千五百万円、もしくは山間僻地でも、一億三千五百万といえばキロ当たり鉄道構造物も全部入れてもできるわけであります。東京都における地下鉄は、キロ当たり十五億、二十億、三十五億という建設費がかさんでおる。それでもなお、ラッシュ・アワーのときに二十秒に一台ずつのダイヤを組まなければまだ輸送に応じられない。こういう事実をもとにして考えますときに、無制限にどんどんと東京や大阪に人口や産業を集中するという今の建前をとっていくと、これは公共投資だけでまかなえるものではない。そのときに何年後に、先ほど申されましたが、長期の産業分散、人口分散、人口の円分布というものが考えられて、先行き投資ではあるけれども、日本の人口を一億二千五百万、五年、七年になるときに日本の産業分布はこうなる、送電ロスもないから電力需給のバランスもこうとれるし、地下鉄や私鉄、国鉄とのバランスがこうとれるというような見通しのない――見通しはこれは政府が作って国会の審議を仰ぐわけでありますが、そういう長期の見通しをこまかく立ててからでないと、私鉄料金というものは今やっても、またすぐ何年後かに上げなければならないという問題になるわけであります。
 米の問題も、生産者米価を千百二十五円上げたからそのまま上げるという理論でいいのか、逆ざや減少のため四百億、四百五十億分だけ上げればいいのか、上げるということになれば生産者所得方式というものが、理屈でどういっでも、最終消費者に転嫁されることになりますし、そういう問題を十分考えていく。最後には食管の制度そのものまで言及せられるような大きな問題を一つずつ考えるときに、私は決して、あなたが御要求せられておるとおり、上げません、こう言えば私も非常にいい男になるのですが、まあ、そう言い切れない苦衷を――苦衷というか、実際の問題をひとつ御了解賜わりたいと考えております。
#55
○鈴木市藏君 時間がないので、与えられた時間が十分で、大臣がそう懇切丁寧な説明をしていると時間がなくなっちゃう。そこで、またそれは時間のあるときにやることにいたしまして、端的にひとつ次の点についてお答え願いたい。税金の問題です。前年度のときに所得税が税法上は減税になる。しかし、住民税が増額をされるということで、国民のふところ勘定からいえば、税は増収になるということの議論をしたのですが、そのときに大蔵省はそれは計算違いではないかというふうなことを言っておったけれども、事実において税収率はかえって強化されておる、実際問題として。ですから、特に住民税の増額、これはあなたは所管が違うということではなくて一体のものとして、どうひとつ考えておるか、住民税減税の意思があるかどうか、それから減税の政策はなお今後もとり続けていくかどうか、特に来年度予算の中ではっきりと減税をするという方向を示されるかどうか、この点についてもお答え願いたい。
#56
○国務大臣(田中角榮君) 減税に対する基本姿勢に対しては、先ほどから何回も申し上げておるとおりでございます。それから、住民税及び固定資産税と、地方税が非常に商い。それから、今度は直接国税ではうんとまけてもらったけれども、取られるところがまた地方税で多いので、逆に増税ではないか。これは理論上申し上げますと、釈迦に説法なんですが、税は現税制の体系内において減税をするかしないかという問題が論議せられておるわけでありまして、これは率を下げますから減税になっていることは事実であります。しかし、払うほうから見ますと、天引きされる源泉課税というものは、五千円ずつ取られておったものが三千円になって、二千円少なくなったのですが、これはあまりぴんと来ません。ところが、今まで千円しか来なかったものが、二期分納ですから、地方税は一ぺんに六カ月分、半年で五千円来ますから、今まで千円しか払わなかったものが五千円来た場合には、これは十二カ月に分けて考えてみると、確かに五千円、六千円減税されておるのですが、取られる側から見ると、これはたいへんな増税だ、こういうふうな事実が起こるわけであります。数字の上では確かに減税もされ実質的に減税されておりますが、感じの上で払うほうの側からいうと何か増税じゃないか、こういうふうに言われるわけであります。しかし、私は、こういうものの考え方に対しても国民の側に立って、納める側に立って税制は行なわるべきだという考え方からいって、そういうものに対して私は十分慎重に考うべきだと思います。
 しかし、これは地方税の問題は、大蔵省から減税すれば補てんしなければならないからというような安易な考え方で言っておるのではなく、これは野党の方々にもお願いをしたいのは、地方税の問題に対しては確かに金のない、収入のない人ほど税が重く取られているのです。この不合理をどうするかという根本問題をひとつやはり前提として考えなければいかぬ。これはなぜかというと、これは制度の問題であります。戦後日本のような小さい国において府県が憲法上の自治体だということがいわれ、一つの県では――これは委員長の県など申し上げてまことに申しわけありませんが、結局二百五十億の年間予算を組む場合、単独財源が幾らあるかということを考えれば、四十億か五十億しかない。こういうような情勢である県が三分の二以上あるのであります。宮崎県の例でも、鳥取県の例でも、東北、北海道、ほとんどすべてであります。こういうようなところに自治制度と地方財政の確立ということを要求せられておりまして、しかもその知事は全部公選であります。これは民主化の線において当然であるといっても、公選ですから、選挙前に来れば、学校の一つもよけいに作ろう、そういう考え方、これは当然に起こり得る現象でありますが、そういう意味で使うことばかり考えると、まあもらい得る、国から交付し得る額はおのずから法律できまりますから、くわ一丁、かま一丁にまあかかっていく。こういう現存の地方行政そのものの姿からひとつ検討していって、税の体系はどうあるべきかというところまで掘り下げて、この問題は合理化されなければならぬ問題だと考えております。
#57
○鈴木市藏君 時間がないから、簡単にという声がかかっておりますが、あと二つ三つあるのです。私は討論をするわけでもないから、あまり……。私自身の質問は簡単なんです。確認という意味でお答え願えればよろしいのです。
 それで、一つの問題は、きのう社会党の大原衆議院議員の質問に対して労働大臣が、失対事業の打ち切りに対して答えております。それは新聞に載っておりましたが、失対事業の打ち切りは当面そういう形では考えておらぬ、むしろ失対に働く者の賃金の引き上げを考えておるというふうなことを答弁しておられる。この点について、これは大蔵大臣は財布のひもを握っておるのですから、この大橋労相の答弁に対して十分財政的な処置を、裏づけをするはずになっているだろうか、この点についてお答え願いたい。
#58
○国務大臣(田中角榮君) 私は、緊急失業対策事業及び失業対策事業に対してまだ労働省から協議を受けておりませんが、大橋労働大臣の発言は新聞で承知しております。私が知り得る限りにおいては、三十七年度予算を編成しますときに、党及び大蔵当局との申し合わせは、失業対策事業に関しましては三十八年度の予算編成までに合理化を行なう、こういう考え方で申し合わせをしたと思います。私はそれ以外に、この問題に対してはまだ検討いたしておりません。しかし、当時は非常に好況の時でありましたので、失業人員の登録者は、政府が予定したものより非常に少なかった。その後の経済の変動等事情も変わって参りましたので、この問題に対しては、ただいまの御発言を契機として検討いたします。
#59
○鈴木市藏君 輸出市場の問題における社会主義諸国との貿易拡大の問題ですが、これもお答えは商用でけっこうです。今度の訪ソ経済使節間の成果を一体あなたはどう評価するか、伺いたい。
#60
○国務大臣(田中角榮君) 輸出を伸ばしたいということは政府多年の持論でありまして、共産圏諸国に対しても貿易をしていきたいという考え方をずっととっているわけであります。今度のシベリア調査団は、新聞によりますと、相当な成果を得て来たようでありますが、私は日本の貿易が伸張していくという立場から見て好ましいことであるというふうに考えております。
#61
○鈴木市藏君 あと一つだけ。それは、こういう情勢の中で、EECの問題、封鎖的のブロック経済を進めている中で、今の問題を考えてみて、世界貿易会議というようなものを進んで提唱して、その実現のためにイニシアチブをとるようなお考えはないかどうか。
#62
○国務大臣(田中角榮君) 非常に大きな御質問で、的確なお答えを短時間にはできないと思いますが、日本の輸出を伸ばしたいということは、全国民の願いであり、政府の大きな責任でもあります。しかし、世界経済というふうな大きなもののイニシアチブをとっていくというようなことは、これは平和に対する基本的な考え方と同じように、今すぐ政府がこの問題に対してイニシアチブをとるような発議をするかどうかというような問題に対しては、とてもそういう時期ではないと考えます。ただ、IMFとか世銀とかのお互いに話し合う場所があるわけでありますから、その土俵の上で、また随時お互いに外国諸国と交換交流の過程において、ただいま言われたような大きな問題に前向きの姿勢でいくべきだというふうにお答え申し上げます。
#63
○委員長(佐野廣君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#64
○委員長(佐野廣君) 速記を起こして。
 暫時休憩いたします。
   午後零時四十八分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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