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1962/08/24 第41回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第041回国会 運輸委員会 第3号
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1962/08/24 第41回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第041回国会 運輸委員会 第3号

#1
第041回国会 運輸委員会 第3号
昭和三十七年八月二十四日(金曜日)
    午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 木村 俊夫君
   理事 佐々木義武君 理事 鈴木 仙八君
   理事 高橋清一郎君 理事 細田 吉藏君
   理事 山田 彌一君 理事 井岡 大治君
   理事 久保 三郎君 理事 肥田 次郎君
      伊藤 郷一君    尾関 義一君
      川野 芳滿君    簡牛 凡夫君
      砂原  格君    關谷 勝利君
      中馬 辰一君    福家 俊一君
      増田甲子七君    石村 英雄君
      加藤 勘十君    勝澤 芳雄君
      島上善五郎君    田中織之進君
      松原喜之次君    内海  清君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 綾部健太郎君
 出席政府委員
        運輸政務次官  大石 武一君
        運輸事務官
        (大臣官房長) 廣瀬 眞一君
        運輸事務官
        (海運局長)  辻  章男君
        運 輸 技 官
        (船舶局長)  藤野  淳君
        運輸事務官
        (船員局長)  若狹 得治君
 委員外の出席者
        運輸事務官
        (船員局船舶職
        員課長)    鎌瀬 正巳君
        海上保安庁長官 和田  勇君
        気象庁長官   和達 清夫君
        郵政事務官
        (電波監理局航
        空海上課長)  三枝  豊君
        専  門  員 小西 眞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 船舶職員法の一部を改正する法律案(第三十九
 回国会内閣提出第五五号、第四十回国会参議院
 送付)
     ――――◇―――――
#2
○木村委員長 これより会議を開きます。
 この際、委員各位にお伝えいたしたいと存じますが、先般太平洋ヨット横断に成功いたしました堀江謙一君の父君が、昨日委員長をおたずねになりまして、先般の委員会の議事その他に関して、当委員会に対し深甚の謝意を表しに来られたのでございます。皆さんによろしくとのことでございますので、この際お伝えをいたしたいと存じます。(拍手)
     ――――◇―――――
#3
○木村委員長 この際、お諮りいたします。
 すなわち、海運に関する件について調査のため、参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 なお、参考人の人選、招致の日時とその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#6
○木村委員長 前国会から継続の内閣提出にかかる船舶職員法の一部を改正する法律案を議題として、審査を行ないます。
    ―――――――――――――
#7
○木村委員長 本案につきましては、前国会においてすでに提案理由の説明は聴取済みでありますので、これを省略し、直ちに質疑に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○木村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
#9
○木村委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
#10
○肥田委員 今、委員長のお話がありましたように、さきの国会で、これが衆議院においては、社会党は反対の立場でこの法案が継続審議ということになったわけです。従いまして、この反対の立場で質問を継続することになりますから、そういう意味で御答弁をいただきたいと思います。
 まず、この法案の趣旨について再確認をしなければ、この法律に対するわれわれは賛成の方向にどうしても向かない、こういうことを前提として考えておるのです。ですから、いうところの、今この法案の継続審議にあたっての再説明という点では省略をされましたが、ここで明らかにされておるところのいわゆる船舶職員法の一部を改正するほんとうの目的というものは、一体どこにあるのか、この点をさらに確認をしたいと思うのであります。
 それは、企業強化というために、その手段としていわゆる船舶職員の合理化をやる。このことについては、さきの質問の中でも、その通りだという答弁がされておるのですが、およそこの弱体であるところの企業を強化する、この目的だけのために法案を改正して、そうして乗員が少なくてもいい、こういうような法律のものの考え方というものには、どうしても納得できない。この点について、まず質問をいたしたいと思います。
 それから、これについては、大臣もお見えになっておりまするので、この法案の趣旨として取り上げられておるところの企業強化という目的、それから海上の航行の安全性を維持するという配意からするところのこの法案の改正、こういう点について、大臣からも一つ、こういうような趣旨で、この法案がはたして間違いなく運営できるものかどうか、この点についてのお答えをいただきたいと思います。
#11
○綾部国務大臣 私どもは、この海運界の不況を克服する一つの手段として、しかも船舶の就航に危険がないと考えて、この合理化を促進する意味において、この法案を提出した次第であります。
#12
○肥田委員 答弁があまり簡単過ぎて、われわれも理解がいきがたいのですが、この企業を強化するという手段だけに法律を改正するという、こういう本質的な問題について、実際これで企業強化ができるのかどうかということを聞いておるわけなのです。
#13
○綾部国務大臣 これのみをもって企業強化ができるとは考えておりません。これも一つの方法であると考えております。一手段であると考えております。
#14
○肥田委員 一手段と言われますけれども、この法案の前書きを読んでみますと、これが全部の目的になっておるように思えるのです。ですから、これはあと逐条的にお伺いしたいと思いますけれども、要するに、海運企業が非常に弱体だ。だから、その弱体なものを強化するという本来の目的が、たった一つ、いわゆる船舶通信士の乗員制限をやることによって達せられるのかどうか、私はこういう本質的な問題に触れたお答えをいただきたいと思うのです。
 御承知のように、前回の質問の中でも、その中で逐次これから触れていきたいと思いますけれども、たとえば電電あたりでは、運輸省の方から要請があったので、この法案の改正については云々と、要するに、言葉をわかりやすく言うと、運輸省の方から、これはぜひこうしたいのだということがあったので、おれの方は仕方がなしにそうしてやったんだぞ、こういう答弁がされておるように見受けます。そうすると、海運強化というものはほんの言いわけであって、ただ船舶通信士の人数を減らすだけの合理化手段にこの法案が改正されたのじゃないか、こういうふうに受け取れるわけなんです。だから、本来の目的と全く相反することが出てきておるのではないか、こういう考え方をわれわれは持っておるので、一つ説明をいただきたいと思います。
#15
○綾部国務大臣 さきにも申しましたように、ただこれは通信士を減らすというだけが目的ではありません。漸次こういういろいろな施策を講じまして、海運の強化をはかりたい、こういうことでございまして、これは一つの手段にすぎないと考えております。
#16
○肥田委員 それじゃもう一つお伺いしたいのですがそういうふうに今ほんの序の口なんだということになります。と、先のことについていろいろとお伺いしなければならぬのでありますけれども、これはまたあとにいたしまして、大ざっぱに言って、しからば海運強化ということについて、どういうふうにお考えなのかということも聞かしていただかなければならぬと思います。ただ、継続審議になっております。ところの海運基盤強化の法案がありますから、この中でも当然そういうことになるかと思いますけれども、考えてみても、われわれはどうもその内容がなかなか理解できがたい、たとえば海運基盤強化ということにおいても、ただ手先のことに終始をして、実際に本質的な海運基盤強化をやるような、そういういわゆる金の対策、資金的な対策、というようなものが不可能なんじゃないかという気がするのです。実は私は、この問題は別な問題としてはっきり一つお伺いをしたいと思っておりましたけれども、幸い気象庁長官がお見えになっておりますから、これはそれと関連したことを伺いたい。要するに、運輸省というものがある一つの目的を持っていることは事実だけれども、しかし、いろいろな本質的な問題を解決するについての対大蔵折衝というものが非常に弱いのではないか。十二号の台風が東京にくるぞ、東京にくるぞということで、これがとうとうしあわせにもそれてしまった。ところが、これについて、ラジオの放送だとか気象庁の情報発表をしておられる人の話が、こういうふうに伝えられております。もっと気象庁の気象を観測する状態が整備されておったら、こういうことは的確に報道ができただろうというふうに言われております。ですから、それが的確にできないために、来ない台風がくるような幻想のもとに、これに非常に巨大な、莫大なところの費用を投じて、いわゆる台風が来た場合の処置をやった。これは当然やらなければならない問題だと思いますけれども、これが来ないということがわかっておれば、そういうむだをしなくても済むということにもなるわけです。ですから、一部では、この重要な任務を持っておる気象庁に対して十分金が出ないような、そんな運輸省におっても仕方ないではないか、どこか金がたっぷりもらえて、ほんとうに気象庁の任務が果たせるようなところへ行くべきではないか、こういうようなことまで新聞に書いておるような状態であります。ですから、本質の問題がいつもなおざりにされて、小手先に終わってしまうというのが、運輸省の従来のやり方ではないかと思います。大臣がお見えになって、われわれ非常に大きな期待をしておるところは、海運基盤強化という問題についても、あるいは今私が取り上げたところの気象庁の整備の問題にしても、こういう問題についてはこれは、金がなければできないのですから、ほんとうに運輸大臣が力を持って折衝されれば、こういうことはできる可能性が非常に強い問題ではないか、こう思うのです。ですから、今取り上げたのは気象庁整備の問題ですけれども、これは翌年の予算編成にあたって非常に重要な問題だと思いますから、運輸省から出ていって、どこかよその省に行って金をとってもらいたいというようなことは、これは全く運輸省としては面目失墜これに過ぎたものはないというような気がいたしますし、こういう関連について、ほんとうに運輸省が管轄するところの各局の整備の問題について、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
#17
○綾部国務大臣 ただいまの御質問は、一新聞に何か出ておったようでありますけれども、気象庁は、戦前は、御承知のように文部省の管轄であったのであります。それが戦時中運輸通信省の所管に移りまして、その後運輸省所管となって現在に至っておるのでありまして、気象庁は、運輸省所管のもとに、別段の支障なくその機能を果たしておると私は確信いたしております。そういう次第でございますから、来年度は思い切った予算の要求を実はいたしております。今後大蔵省との折衝の結果いかになるか、これは予断を許しませんが、私としては、あなたのお説と同じように、気象庁をよその役所と一緒にするというような意思は毛頭ないのみならず、これを拡大強化することに全力を尽くしたいと思います。
 なお、御参考までに申しますが、どこの諸外国の例を見ましても、気象庁がほかの役所にあるというようなことは、大体ありません。航空、航海等の交通関係省に所属しておるのが、世界の例であります。たとえば、アメリカは商務省、運輸関係が所属しておる省です。イギリスは航空省、フランスは公共事業及び通信省、ドイツは交通省、カナダは運輸省、インドは運輸通信省、また、交通関係以外の例としては、ソ連の閣僚会議、イタリアの国防省にあるというくらいが例外でございまして、あとはもう全部運輸関係の仕事をつかさどる省に所属しているというのが、世界の大勢でございます。
 それから、この間の台風につきまして、予報が的確でなかったじゃないかとおっしゃることは、私もある程度同感でございますが、それは昼夜を分かたず、一生懸命でやっているのです。実際このごろの天気予報その他気象通報は、私はよく当たっていると思っておりますですがね。その点、この間のは、幸か不幸か当たらなかったので、幸いに当たらなかったという方へ一つ御了解を願いたいと思います。
#18
○肥田委員 たまたま話が気象庁の方にそれまして、大臣も今一言ありましたけれども、私も、あれは気象庁の任務が十分達成せられておらないから、情報がああいうことになったというふうには考えていません。もう最大限の努力をされて、用心に用心をされた予報であったということは、われわれもその通り信じております。それから、大臣もおっしゃいましたが、気象庁の任務は、これは私の聞き違いか知りませんが、十分に達成せられているというふうに今お話があったように思われましたが、そういうふうに言われましたか。そうですね――これは大臣、予算をとる前に、何もかけ引きをどうこうということで私はよけいなことを言うわけじゃありませんけれども、任務が十分達成されておるという、それはその限度もありますが、私は、そういうことには実はなっていないのじゃないかと思うのです。任務が達成されておるというのは、気象庁の職員が、最大限の努力をして身を粉にして働いておるから、不十分な機械で任務がやっと達成されておる。今の設備でもって気象庁の任務が十分達成されておるということじゃなかろうと私は思うのです。人為的な面が非常に大きく貢献をして、そうしてそれで何とかかんとか間に合わしておる。つまるところは予算なんですね。だから、所属は、私は、よその所属がどうこうというような問題に一言も触れようというような気はないのです。しかし、少くとも、運輸省で金がとれないのならどこへ持っていけというような、こういう声が起こるということは、運輸委員会に所属するわれわれとしては、何としても残念な気がいたしますから、従って、予算については、これはもう過去において出された予算がいつも大幅に削られているというようなことがないような、一つ腹がまえをしておいていただかなければならぬ必要があるのではないか、こういうことを考えたわけなんです。これはちょっと話がよそにそれましたけれども、何でしょう、予算というものはとらなきゃ何にもならないわけなんで、幾ら準備をして要求をしてみましても、どうにもならないわけなんです。特に日本の気象庁というものは、われわれがしろうと目に見ても、いうようにただ単に一般気象という仕事をしておるわけではない。日本には地震、雷というよけいなつきものがあって、それにもってきて台風がくっつくのですから、日本の気象庁というものは、ほとんど台風と地震のために気象庁が大きな仕事をしなければならぬというような面がある。その他の仕事は世界各国並み、こういうふうな条件になるだろうと思うのです。そういう意味で、ことしの予算については、われわれも大臣の力量に信頼をしておりますので、その点、どうか一つがんばっていただきたいと思います。
 そこで、本論に戻りまして、前回に久保委員の方から質問された中で、まだ十分その後の経過がわかっておらない面、そういうものについて二、三お伺いしたいのですが、その前にもう一つ、若挾局長お見えになっております。ね。――これは先ほど大臣にもお伺いした内容と若干重複いたしますが、この目的というものは、局長も、久保委員の質問に対して、いわゆる基盤強化、合理化の手段だというふうに言われております。これは大臣のときにも私が申し上げたように、合理化の手段ということが、ほんとうにこの法律改正の精神なのかどうか。お伺いしたいと思うのです。
#19
○若狹政府委員 船舶の通信につきましては、もちろん多数の人間が乗り込んで通信することが一番いいことは、当然のことでございます。ただ、現在の海運企業が、先ほど大臣から御説明がありましたように、非常な窮境に陥っていることは、先生も御承知のことでございますけれども、海運企業の現状ということに着目して、われわれは、この法律案をそれだけのために出しているわけではございません。最近通信機器が非常に発達して参りまして、また、船舶自体につきましては、機関のオートメーション化というような情勢が出て参りまして、船舶の乗組員全体をできるだけ減少していこうというのが、今日の世界的な傾向でございます。そういう面から、無線部関係につきましても、人員の節減ということをやっていかなければ世界の傾向についていけないという情勢が出ておるわけでございます。そうしてそれを裏づけるものといたしまして、通信機器の発達の状況というものがあるわけでございます。また、半面、昨年度、一昨年度から通信士の需給状況が非常に逼迫して参りまして、とうてい法律できめられた通信士の獲得ができないというために、安全のために通信士の乗り込みを強制しておるわけでございますけれども、むしろその法律があだとなって、無線局を閉鎖するといりような状況が出てきているわけでございます。せっかく船に積み込んでおります。ところの無線機械を使わないで、全くつんぼのままで走るという船が出てきたわけでございます。こういうことでは、われわれは航海の安全のために船舶職員法に通信士の定数をきめておるわけでございますけれども、その目的がかえってあだになっているという状況でございます。しかも、日本の法律は、外国は一名の通信士の乗り込みを強制しているにすぎないのに、三名の乗り込みを強制しているということで、国際水準よりもはるかに上回った状況でございますので、そういうふうな要求を掲げながら、しかも片一方では、その需要がまかなえない、そういう状態が出て参りましたものですから、この改正に踏み切ったというような状況でございます。
#20
○肥田委員 局長にお伺いしますが、今言われた中で、これはどういうふうに理解したらよろしいのですか。現在航行しておる船に、通信士が足りないから無線局を閉鎖して航行しておるという船は、ほんとうにあるのですか。そうすると、結局、それは二つの考え方が生じるわけなんです。今言われるように、外国との競争に負けないために、いわゆる通信士を減らして、そうして人件費を減らそう、そのために機械化を完備するんだ、こういうことなら、賛成、反対はとにかくとして、企業合理化という一つの方法としてはあると思うのです。ところが、私は、ずっと局長の答弁をされておる内容を見てみましたら、それと相矛盾するところが出てくるのです。それは極端に言うと、今言われるところの一つの問題、それは、現在の法律でちゃんと通信士を乗せなさいといっておる。ところが、その通信士を乗せずに、無線局を閉鎖して走っておる船がある。こういうことになると、そういう状態を合理化してやるための法律の改正だ、こういうふうになるのですが、どうなんでしょうか。
#21
○若狹政府委員 今例にあげました無線局を閉鎖した船舶は――船舶安全法によりまして、近海区域の航行資格を持っておる船舶及び遠洋区域の航行資格を持っている船舶については、船舶通信士の乗り組みを強制いたしておるわけでございます。ただ沿海区域の航行資格を持っている船舶につきましては、法律上の義務はないわけでございます。しかしながら、船主は、航海の安全のために、沿海区域を主として航海する船舶におきましても、無線機を積んでおるわけでございます。しかし、法律上の義務はないわけでございます。従って、通信士の需給状況が円滑に推移していた当時は、通信士を乗り組ませまして、そうして運用しておったわけでございます。それで本年の四月ごろ現在の集計では、沿海区域に資格を変更いたしまして無線局を閉鎖した船舶は、約十七隻というふうに私は記憶しております。なおその後におきましても、近海区域の航行資格を沿海区域に変更したという船舶が、数隻出ておる状況でございます。
#22
○肥田委員 私は、この法案を審議していまして、実は二つの矛盾を感じておるんです。だから、これは私は、いずれがどうこうということではなしに、われわれが矛盾を感じておる、この矛盾に対して解明をしてもらいたいというのが、質問の要点にもなります。が、今そういう実情が現実にありますね。ところが、もう一つの面で、若狹局長はこうおっしゃっているんです。これは前の記録を読むと長くなりますから省略をいたしまするが、とにかく一つの重大な理由としてあげられておるのは、要するに、毎年六百名ぐらいの通信士を必要とするんだ。半分に見ても三百名だ、しかるに、これの補給状況というのは百二十名ないし百三十名しかないのだ、こういうふうに言われておるんです。ですから、ここでも非常に大きな矛盾を感じるんです。これは必要な数が足りないからということになるのでしょう。必要な数は六百ないし、三百要るんだ。ところが、それを補給するいわゆる供給能力というのは百二、三十名しかないのだ、こういうことが言われておるんですね。そうすると、この法律の改正の趣旨というものは、何か現実にどうにもならない問題がそういうふうに出てくるから、それをまず法文によって合法的にしていこう。だから、海運基盤強化というような本来の目的というものは、この中から出てくるところはどこにもないんですよ。ただ、合理化を合法的にというか、あるいは現在のとにかくどうにもならぬ実情を合法的に認めてやるための法文改正、こういうふうな印象しか受けないわけです。そういう形で法案の改正というようなものが行なわれていいものかどうか、一つお答えをいただきたいと思います。
#23
○若狹政府委員 ただいま船舶通信士の需給関係についての御質問がございましたけれども、この前の国会でも申し上げました通りに、現在の海運界におります船舶通信土の減耗の補充というだけでも、毎年三百名は必要でございます。それ以上に新しい船ができて参りますので、その新規需要をさらにまかなっていかなければならないという状況でございます。しかも、この船信舶通士の供給源でありますところの電波高等学校、それから電気通信大学を卒業した者で海運界へ参りますものの人数は、年々減少して参っております。本年度の状況を見てみますと、新規卒業者の採用人員数は五十数名というような状況でございます。この前の国会では、百二、三十名何とか通信士を集めることができると申し上げましたけれども、これはあらゆる手段を講じまして通信士を探してようやくその程度の数字になるであろうということでございます。従いまして、これを放置するということになりますと、外航船の大きなところは、何とかやり繰りをして人間を集めてくる。しかし、そのしわ寄せは、内航船あるいは小さい、先ほど申しましたような沿海の航行資格を持っておるというような船にくるわけでございまして、そういうところがかえって危険にさらされてくるのじゃないだろうか、あるいその船をとめるという情勢も出てくるだろうということを、われわれとしては心配いたしておるわけでございます。同時に、海運企業の強化の面から見ましても、先ほど申しましたように、通信士の問題だけではなしに、船舶の乗組員全体の合理化を今後やっていかなければならない。やらなければ国際競争についていけないという状況でございますので、その両面をあわせまして、この法律を提案いたしておる次第でございます。
#24
○肥田委員 今年度は五、六十名しかないというようなことになると、もう全く船に無線士は要らぬのだということにならなければとうてい問題は解決しないような状態じゃないかと思うのです。ですから、企業合理化というような大そうな文句は使ってあるけれども、ほんとうはそうじゃなくして、船舶のオペレーターが足りないから、その足りないのを合法化するということにしかとれないということは、前に言った通り。ですから、もし今ほんとうに心配をする焦点というものが、この状態だと、五、六十名しか年補給できないような状態になる、こういうことになると、だんだん減ることはもう間違いないのですから、そうすると、この通信士を補給する方法をまず考えるということが先になってくるのじゃないですか。
 それからもう一つは、船舶に対する無線通信士を減らすことよりも、法文の改正の主点になるものに、各船舶に対して、それぞれ完全ないわゆるオート・アラーム、もっとそれを複雑にした機械、こういうものの設置を義務づけるような法律を先につくらなければならぬのじゃないか。人を減らしてあとを何とかやっていこうということじゃなしに、人が足りないということがわかっておるのですから、あらゆる機械設備を先にやらるておいて、そうしてその上で、今度は機械が完備されたから人は少々減ってもよろしい、こういうことになるのなら、これはものの順序だと思うのです。今問題の焦点になっておるオート・アラームなんかも、全く功罪相半ばするというのですか、いい面もあるけれども、まだまだ不安定な面もたくさんある。こういう報告もされております。ですから、この機械だけじゃたよりないぞということは、われわれも大体常識的にわかりました。それをそういうものをくっつけながら、まず人を先に減らしてもよろしいということをやっていこう、こういうものの考え方は、本質的にこれはあべこべじゃないか、こういう気がするのですが、やはりこの通りでおやりになろうということなんですか。
#25
○若狹政府委員 まず、通信士の需給を確保するためにどうしたらよいかという問題でございますけれども、端的に申し上げますれば、通信士の待遇を改善する。たとえば陸上での労働条件よりさらに高給を出すということになれば、あるいは現在陸上の方へとられておる通信士が海上へ帰ってくるかもしれないということも考えられるわけでございますけれども、通信士の給料を引き上げるという問題は、船内全体の給与体系の改善ということを前提としなければ、とうてい考えられない。しかも、現在の海運企業の現状から申しまして、そういう給与の改善ということにとうていたえることができないという状況でございますので、そういう給与の面から、現在の法律をそのままにしながら需給の面を緩和していくということは、私は、とうていできないのではないかというふうに考えるわけであります。しかも、先ほどオート・アラームの問題が出ましたけれども、これは現在の電波法におきまして、五千五百トン未満千六百トン以上の船につきましては、オート・アラームを備えつけたものについては、八時間の間はそのオート・アラームを使って聴守してよろしいという規定が、すでに電波法にあるわけでございます。従いまして、オート・アラームの信頼性を今から問題にするということではなしに、われわれといたしましては、五千五百トン以上の船舶につきましても、オート・アラームによる聴守により人間を減らしていくということがいいのではないか。そして、それを減らせない理由として考えられるものは、たえば船舶との通信量が一体どの程度あるだろうかというような問題でございます。これは船舶から発信するものについてはオート・アラームは役に立たないわけでございますので、どの程度の発信量を持っているかというような点でありますけれども、この点につきましても、われわれは十分調査いたしました結果、一人の通信士をもって十分に処理できるという確信を持っておるわけでございます。従いまして一人の人間が八時間働きますので、それ以外の時間については、現在電波法で五千五百トン以下のものについて認めておりますオート・アラームによる聴守によってかえていこうということを考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、国際的にもオート・アラームというものは、長い三十年間の経験を積んだ機械であります。国際条約においても認められておるわけでございますので、この点については、われわれとしては、国際水準から見て問題はないというふうに考えておるわけでございます。
#26
○肥田委員 オート・アラームの信憑性については、これは専門家じゃないので議論はいたしません。むしろ私が本質的に納得できないのは、たとえばこういうオート・アラームをつけるということについても、本質的に、それをつけたから今度は人間をある程度の時間休養させてもよろしい、これはやはりものの順序だと思うのです。ただ、こういう法案を作る際には、そういう機械の設置について、あるいはまたそれに対する融資の対策、こういうようなものがやはり並行していかなければ、なかなかうまくいくものじゃない。それがいわゆる通信士の待遇というような問題について影響を与えなくても済むようなことになるだろうということも考えられますが、これは横道にそれますから、これ以上は質問いたしません。
 ただ、今局長の言われた通りに解釈すると――局長の思っておられることを私はどうこう言いませんけれども、しかし、今局長の言われておること、それから前に局長の久保委員に答弁された点、こういうものを総括してみますと、私はさっきから言っているように、どうしてもあべこべな印象を受けて仕方がない。
 そこで運輸大臣にお伺いしたいのですが、運輸省の将来のこういう場合の法案改正のものの考え方として、私はこれはどうも納得できないから、こういう場合にはどういうふうな考えをお持ちになるかということをお聞きしたいわけなんですが、陸上輸上についても同じように、いろいろな条件が出てきます。国鉄にしたって、それから私鉄にしたって、バスにしても、同じような状態が出てきます。踏切警手というのは、いわゆる鉄道の従業員の中では、従来までは最下層の職階に属しておるように世間も思っておった。なかなか就職希望者がなくて困る。だから、何らかの方法を考えて、いわゆる踏切警手というものの身分が逐次上昇するような、こういう方策をとりながらやってきておるわけなんですね。バスの車掌でも、最近は減ってきました。とにかく希望者がないのですから、何とかやりくりをして、年令も減らして、バスの車掌を何とかして補充をしておる、こういう状態です。これは先ほど言われた、無線通信士が待遇が悪いから来ないというような条件と同じような条件なんです。こういう際に、この踏切警手やバスの車掌だとか、こういうふうなどうしてもなくてはならないようなものでも、何か機械をつければそれがなくてもいいような法の改正ということを業者から働きかけてきた場合には、やはり前例をつくればやらなければならぬことになると思いますが、重大な人命を預かりながら、そういう輸送は実際にできるものではない。こういうような他に影響を及ぼすような、同じ関連性を持つところの一つのケースではないか。ですから、こういうことが起こる場合に、同じような形が起こってくることが予想される際に、これは大臣、こう言っては何ですけれども、お聞きしたいのは、そういう際には、やはり今の通信士を減らすという重要な条件になっておる、人が要るのだけれども、人の需給がなかなかうまくいかない、うまくいかないから、人を減らす方法を先に考えておいて、それからというような、あべこべな手段にそういう際になるのですか、どうなんでしょうか。
#27
○綾部国務大臣 この場合と今おっしゃる陸上の運輸の場合も違うと思います。私は、陸上の場合にはまださような考えは持っておりません。
#28
○肥田委員 簡単におっしゃいますけれども、それは違うというのは、今現実にそういう問題が表面に出ていないだけなんですよ。みんな何とかやりくりをしておるという現実は、至るところにあるのです。だから、政治というものは、表面に出てきたときに、どうにもならぬようになったときに、おそまきながらこれに対して何とか手を打たなければならぬということも、これも政治の一つの手段だろうと思う。けれども、私の聞いておるのは、そういう問題ではない。本質的にそういう問題が至るところにあるじゃないか。これは人間の社会である限り、そういう問題は常に出てくる問題なんです。船だけに限った問題ではないのだということを私は言っておるのです。そういう際にも、現実にそれが出てこなければ、お答えとしてはそういうものになると思いますか、そういう思想でやられるならば、何でも反対になってくると思うのであります。先ほどの気象庁の問題でも、これが国民の声として気象庁に今までの要求通りの予算を出してやるということになれば、本心ではどう思っても、表向きには出さなければいかぬ、これが政治の姿だから、文句を言うわけではないのです。しかし、そういうことになるまでに、手を打たなければならぬ問題があるのじゃないか。海上保安庁だってその通り、保安庁が救難のために船がほしいといっても、一年に一ぱいくらいしか新しい船がない。こんな金で何ができるか。そういう問題と実は似たような形なんです。たくさん問題がある。そのときが来るまではということでなしに、そういう海上の問題だけではなしに、陸上輸送の問題でもそういう問題がある。そういう際には、やはりいざというときには、窮すれば法律でこれをごまかすような、そういうものの考え方をお持ちなんですかということを私は聞いておるわけです。
#29
○綾部国務大臣 さような考えは持っておりません。
#30
○肥田委員 それでは先ほど局長の話にありましたことについて、具体的な面で一つお伺いしたいのですが、久保委員が質問しております電波の割当問題です。
 これについて、郵政省において割当の電波を増加することを現在決定しておるというふうにお答えになっておりますが、これはその後の問題なんですか。現在何らか具体的なこれは対する対策として、その後変化がありましたか。
#31
○若狹政府委員 御承知のように、船舶通信士を一人にいたします場合には、同じ時間に通信が輻湊してくるという問題が起きますので、新しい電波を船舶通信のために割り当てるという問題が出てくるわけでございます。この問題につきましては、郵政省において検討いたしておられるわけでございますけれども、最近、電波の割当の問題については、ある程度見通しがついたというふうにわれわれは聞いております。詳細なことは私は存じませんけれども、見通しがついたというふうに聞いております。
#32
○肥田委員 われわれも詳細をということじゃないのですが、見通しがついたということは、ただ見通しなんですか。たとえば現実の問題として、それの具体的な実現はどういうふうになるのか。
#33
○三枝説明員 お答えいたします。
 電報の一定時間に輻湊します緩和策としまして、いろいろなことを考えておりますが、電波法自体で、制度的に裏時間を使うというようなこと、それから船主の方で、電報の通数について、社用電報の減少をはかるとか、外国電報を極力利用するとかいうこと等と合わせまして、電電公社がその通信能力の増大をはかるということ、そういうことによりまして、電報の一定時間への輻湊の緩和のめどがついたということであります。
 それはこの職員法も同様でございますが、三カ年の経過期間がございますので、その間に――電波の短波の周波数というのは、これを探し出すことはなかなか困難でございますけれども、これを早急に探し出す。現在それの数波の増波は目安がついておりますので、それを電電公社が実験的に出してみ、そして三年の間にはこれを設備する、こういうことになっております。
#34
○肥田委員 引き続いて局長にお伺いしますが、この前の久保委員の質問に対して、いわゆる通信士の作業分担の内容についての若狹局長の答弁が、ここに出ています。結局問題になるのは、ここにも書いてありますように――これは時間がかかりますから何ですが、一体幾つあるのかということで私読んでみましたら、遭難信号、緊急通信、安全通信の発受信、気象通信、それから発信及び受信、傍受信号の受信、無線方位の測定、衛生情勢の受信、入出圏通知、港務通知、このほかに無線の設備の整備だとかなんとかと、ずいぶん無線機械に対する保守作業というものがありますが、これはわれわれよくわからないのですが、この無線局のこういう仕事は、日本とよその国とでは、実際には少しやり方が変わっておるようです。日本の場合には、何でもかんでも一人の通信士に仕事をかぶせていまして、戦時中に三人おったのは実は多いのだというような解釈があるようですけれども、実際はこれだけのたくさんな仕事があるのですから、無線局を維持していこうと思えば、やはりこのくらいな人数は必要なんじゃないんですか。われわれは、実はどうもこれはとてもじゃないけど一人ではどうにもならぬというふうな印象を受けるのですが、これだけのたくさんの仕事があれば、もう機械がこのごろはよくなったから、ほんとに人手は要らないのだといっても、作業率というものがありますから、これはあとで聞きますけれども、これだけたくさんの責任分担があるのに、法案の変化のない方は別ですが、無線局を持っておる以上は、最低限どのくらいでいいとお考えになっておるのですか。
#35
○若狹政府委員 船舶通信士の職務といたしましては、今先生がお読み上げになったものを処理いたしておるわけでございます。しかし、この処理に要する時間という関係は、非常に短時間でございまして、たとえば電報を一通、公衆通信を一通発信するのに要する時間は何分であるかといような計算も、郵政省にお願いして見当をつけていただいて、その上で、いかなる大型船におきましても、一名の通信士をもって十分処理できる業務量であるというふうにわれわれは考えたわけでございます。なお、船舶によりましては、必ずしも八時間の作業量がない、四時間なりというような船舶も当然出てくると思いますけれども、外航を航行する大型船におきましても、一名の通信士をもって十分処理できる事務量であるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
#36
○肥田委員 十分にやっていけるというふうにお考えでなければ、この法案は出せないと思うのですけれども、しかし、実際作業をするについて、こういうことが起きやしませんか。私は、作業の内容が何も平均ということに限られているとは思わない。これはだれもそういうふうな表現はできないと思うのですがね。輻湊するときもあるし、閑散なときもある。これはもう常識上の問題ですよ。平均すればあるいはそれでいいというなにが出てくるが、時間的に二十四時間あるいはもっと時間の和によるところの時間数ということになると、わかりませんよ。ところが実際にここにちょっとありますけれども、これはどういうふうに理解したらいいのですか。たとえば通信を一通話処理するのに何分だとかなんとかいうような機械的な測定――測定というよりも機械的な所要時間の判定ということが、実際できますか、これは常識上の質問ですから、一つ安心のできるような答弁をしてもらいたいのです。たとえば、いうところの一人で足りるのだという限界点が、われわれは知りたいわけです。一人でできないものがあるじやないかという解釈をわれわれはとっておりますから……。
#37
○若狹政府委員 法律はもちろん最低限でございますけれども、最低限ということでわれわれは考えているわけではございません。最低限で十分処理できるかどうかということをわれわれとしては検討いたしたわけであります。
 それで、先生から通信士の職務内容についてお読み上げになりましたけれども、たとえば入出圏通知あるいは港務通知というような問題、あるいはいろいろな連絡の通信というようなものが、一挙に同一の日に全部が起こるという場合はほとんどないわけでございまして、通常の業務といたしまして行なうものは、公衆通信が、大体一日四通というのが、われわれの統計として出ておるわけであります。この四通を処理する時間といたしまして一通五分、あるいはその相手の海岸局との連絡に要する時間というようなものを十分計算いたしまして、そうして一名で十分間に合うということを確信を持ってこういう法律を出しておるわけでございます。
#38
○肥田委員 私も、弱電、微電の方はあまり知らぬのです。ですから、こういう質問はどうしてもはなはだとんまな質問になるかと思いますけれども、しかし、今言われたように、大体こういう通信で一通どれくらいということの理解はできるとしても、それじゃ一つお伺いしたいのは、大体四通話程度だというようなことだが、ここにいろいろと種類がありますね。実際こういうものは、どういう数字になるのでしょうか。遭難信号。これはあまりないだろうと思います。しかし、緊急通信、これは相当ありますね。それから安全通信、気象通信も相当ある。その他のいわゆる通信作業というものは、相当あるでしょう。一般通信とその他の通信、これらについての通信総量といいますか、回数といいますか、こういうものはどういうように理解をしたらいいんですか、大体どれくらいのものだという理解をするためには…。
#39
○若狹政府委員 具体的な船舶につきまして、あらゆる通信の状況を調査した実績がございますけれども、今資料を取り寄せますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
#40
○肥田委員 これはそういう際に、どういうふうに計算といいますか、どういうふうにいわゆる予備時間をとっていますか。いろいろな海上条件、空中条件というものがありますね。最近では、いわゆる放射能のために電波が撹乱される。こういうことでいろいろ障害も起こってくる。さらに、いろいろ不測な、いわゆる宇宙条件が変化するとか、そういう際のことは機械的にどういう影響を与えるかということ、それから機械的にどういう対策があるかというようなこと。それは、要するに通信十一人でそういうことに対して対処できるがどうか、この点について一つお知らせいただきたいと思います。
#41
○若狹政府委員 私の専門の分担でございませんけれども、結局いろいろな空中状態その他に対応するように通信機をいかに綿密に整備していくかという問題であろうかと存じます。そういう整備の時間及び通信自体に要する時間というものを、われわれといたしましては十分検討いたしまして、八時間で十分処理できると考えておるわけでございます。
 なお、先ほど御質問になりました実際の船舶無線局の業務状況でございますけれども、私の方で調査いたしました外航の船舶でございますけれども、その一日当たりの平均の件数は、公衆電報送受が、二・四件、気象電報送信が〇・七、安全通信等が二・七、出入圏通知が〇・七、一括呼び出し聴守が十四・四、気象放送受信が六・六、その他の放送受信四・二、遭難通信等の非常通信が〇・一というような平均が出ておりまして、これらを処理するためにどれだけの時間が必要であるかという点も検討いたしまして、この法案を提案いたしておるわけであります。
#42
○肥田委員 それからもう一つお伺いしたいのは、無線通信士が、こういうこと以外に、いわゆる緊急通信のために待機をしておるというような必要は、これはどういうふうにお考えになっておりますか。
#43
○若狹政府委員 その点につきましては、オート・アラームを装備するということになりまずければ、当然オート・アラームによってかえるわけでございまして、聴覚によって直接通信士が聞くという場合は、一日八時間あとの十六時間につきましては、オート・アラームがそのかわりをするいうことになるわけでございます。
 現在は、大型船につきましては、二十四時間の三直制をやっておりますので、二十四時間人間が通信機のそばについて聴守をしておるという状態であります。従って、緊急通信あるいは通信の発受という問題につきましては、現在は問題はないわけでございます。従いまして、これはオート・アラームになりますと、十六時間はオート・アラームでもって処理するということになるわけでございますが、緊急通信を発信するという場合は、これは非常事態でございますので、勤務時間外でありましょうとも何でありましょうとも――通信士が勤務時間外でありましても、これは行なわなければならぬことは当然でございます。
#44
○肥田委員 通信士の作業任務の限界というのですか、これも全然しろうとですから一つ念のために教えてもらいたいと思うのですが、通信士が一人の場合に、航海中に公然と休息をとるというのは、結局何時間くらいかということですね。それからオート・アラームを設備している際には、結局その間は全然部署を離れて差しつかえないのかどうか、こういう点はどういうふうに考えられておるのですか。
#45
○若狹政府委員 一名の場合の休息時間につきましては、大日八時間の労働以外のものについて休息があるわけでございますので、普通の他の船員と変わったところはございません。
 それからオート・アラーム自体につきましては、緊急通信が――他の船からSOSが入って参りますと、無線室とブリッジ、それから通信士の寝室に警報が鳴るという仕組みになっているわけでございます。従いまして、夜寝ておりましても、SOSが入って参りますと、大きなベルが鳴るということになっておるわけでございます。
#46
○肥田委員 そうすると、一日のトータルの作業量というものは、大体これくらいだということには納得ができますけれども、しかし、実際に拘束をされているのは全航海期間中だということになるでしょう。一人の場合には……。この点は、これはどこでも起きる問題ですが、なかなか大切な問題だと思うのです。全航海期間中拘束をされて、そして責任を課せられて、その責任の評価は一日八時間だ。こういう評価の仕方でいくとなると、おのずから待遇上の条件というものも問題になってきます。何だ、お前一日八時間しか働いていないじゃないか。いや、八時間じゃない、おれは二十四時間拘束されているじゃないか。寝ている間も起こされるじゃないか、こういうことになるのですが、なかなかむずかしい問題ですけれども、改正法文の中では、結局拘束というようなことは全然考慮されないで、ただ、お前らの仕事の量は八時間あったらたっぷりできる仕事だ。大体通話の回数も、ここでさっきお聞かせいただきましたけれども、この通話の回数自身が問題じゃなくて、二十四時間、いわゆる航海中絶えず乗員勤務者として拘束されているのだという概念を、どう説明、区分するのか。この点についてお聞かせ願いたいと思います。
#47
○若狹政府委員 二十四時間の拘束というお話でございますけれども、これは船舶の乗組員全体について言えることでございまして、具体的に申し上げますと、たとえば他船からSOSが入ったという場合は、他の乗組員も当然その救助に向かわなければならぬというわけでございます。従いまして、この拘束の問題は、通信士だけの問題ではなくて、乗組員全体の問題でございまして、それに相応する給与になっているかどうかという問題につきましては、海上の労働者の賃金というものがどの程度であるべきかというような検討も、今までいろいろされております。また、現在の陸上の給与に比べて高いということも、事実でございます。ただ、その高いのが、高さが適当であるかどうかという点については、いろいろ議論がございますけれども、そういう点が考慮されて現在の給料というものができておる、われわれはそういうふうに了解しておるわけでございます。
#48
○肥田委員 船員局長と私は少し解釈が違いますが、あなたの考えておられるのは、それは全船舶の乗員は同じ条件に置かれている。これは大ざっぱにいえばそういうことになるかもしれません。けれども、実際のそれぞれの担任部署がありますから、交代制もある。片一方は一人だということになるのじゃないか。一人ということは、これは複数でやっている条件とは非常に異なる。ですから、他の全乗員が、船に乗った以上は同じ条件に置かれている。これは少し解釈が適当じゃないと私は思うのです。五人あるいは十人一団になっておる、この作業内容のものは、それぞれで交代制がとれるし分担制がとれるし、ということになりましょう。ところが、通信士が一人だということになればたとえば羅針盤を見ている人が一人だということになれば、警戒といったものが一人だということによって、これは交代者がないのですから、極端な表現をすると、たとえば目の前に敵が現われるか現われないかということは、一日に一回か二回しかない。それなら、ずうっと立っていたって、お前の任務の時間はこのくらいだという判定をされているということになるでしょう。これは私は適当じゃないと思うのです。そういう性質の作業じゃないと思うのです。要するに、絶えず緊張をして、そうして自分の任務を自覚しながら二十四時間を過ごしておる、こういう条件に置かれた中で、それぞれの命令された仕事をやっていく。二つの仕事の面を控えているのじゃないですか。通信士というものは実際にはどうなんでしょう。
#49
○若狹政府委員 もちろん、無線の整備その他について、通信士が一人で責任を持たなければいかぬ。それから、そういう点につきましても、一人で責任をとるということは当然でございます。ただ、船舶は、非常に限られた狭い設備の中で合理的に物を運ぶというために、人間の居住等についても非常な合理化が行なわれておるわけでございます。余剰な人員をその上に乗せるということは、世界各国とも行なっていないわけでございます。かけがえがないと申しますれば、船長も、機関長も、同じようにかけがえがないわけでございまして、ことに、船長などは、勤務時間というものがないわけでございます。そういう職種に属する人間でございますので、二十四時間中船の運航について責任を持つという体制になっておるわけでございます。通信士につきましても同様なことでございまして、この拘束時間という問題につきましては、船員全体の問題であるというふうにわれわれは若えております。
#50
○肥田委員 これに対しては相当考え方が違います。拘束という概念は、いろいろなケースがあるのですから、その拘束という概念を十ぱ一からげにして、船上勤務者はもうみんな同じだということではいけないと思うのです。通信士のような場合、特に通信士が一人になるという場合には、これは当然そうなるのです。かわってくれる人がいないのです。ほかには複数でかわってくれる人があるのですから、同じ拘束といっても、その拘束の密度が違います。だから、そういうことで、一人で十分だという考え方は成り立たないと思うのです。それから作業量にしても、これで適当かどうかということは、要するに平常の場合であって、一朝事があるときにはどうにもならない。だから、この船舶の航行の安全性という問題が主文にうたわれておりますが、この航行の安全性という問題が必要になってくるようなときには、非常事態のような条件にあるときだ。そういうときに、ほんとうに事が一人で足りるのか。そうなってくると、当然正規の通信士は一人だけれども、それに対する補助者というようなものを当然つけなければならぬようになってくるのじゃないか。結局表向きの看板は減らしたけれども、裏でつける人間は同じだ、こういうようなことも、私は現実に出てくるだろうと思うのです。それは経過的に起こってくるだろうということを私は考えます。だから、その点についての拘束という解釈は、通信士に関する限りは、他のものと同一じゃないというふうに御理解いただかなければならぬと思います。
 それから、これはまたちょっとあと返りいたしますが、これはもう少し議論をしておく必要があると思うのです。けれども、ほんとうに将来の船舶の通信士対策として、改正されようとしておるところのこの法案の中で重要な部分となっておるところの、通信士が補給できないということに対しては、具体的ないわゆる需給対策というものは、どういうふうにお考えになっておりますか。というのは、これが需給対策が思わしくないということになってくれば、これは企業経営者の通念として、機械化をしていって、そして人を減そう。これはもう当然なことなんです。だから、どんどん機械化をしていく。機械化に文句を言うわけじゃないけれども、機械にかける金は幾らかけてもよろしい、人件費だけはまっぴらだという概念が、経営者にはありがちなんです。だから、皆さんの方では、通信士の補給に非常に困るのだ、困るのだということが、ここに現われてきております。どんなにしてみても、なかなか十分な補給ができない、こう言っておられる。そういうような条件の中で補給の道を考えないで、そして足りなくなれば足りなくなったような絵をかいていく。そういうことになってくると、一体どこが終着点になるのか。当該通信士にしても困るだろうと思う。しまいには、ほんとうに通信学校に行く者がなくなってしまいますよ。これに対してどういう対策をお考えになっておりますか。若狹政府委員 需給の問題では、先ほど申しましたように、電波高等学校等の学校を卒業する者は、年々ふえておるような状況でございますけれども、海運会社に就職する者は年々減ってきておるわけであります。従いまして、電波高校でもっと大量養成したら、あるいはくるかもしれないというようなことも考えられますけれども、むしろ他の陸上産業と比べて遜色のないような給与の体系に直したらどうかという問題が、まっ先に出てくるわけであります。陸上産業よりよい給料を支給すれば、あるいはきてくれるかもしれないというような問題があるわけでありますけれども、先ほど申しましたような海運企業の現状から見まして、なかなかそういうことが困難であるということと同時に、現在の法律が、国際水準以上に乗り組みを強制している。しかも、現実の業務の内容は、われわれが一々こまかい業務の内容につきまして検討した結果から見ましても、一人で十分処理できる事務量であるというようなことを考えますと、まず、国際水準並みに法律を改正していただくということが前提となって、その後の需給問題が解決されるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
#51
○肥田委員 私はちょっと口をすべらして、通信学校に行く者がないようになると言ったのです。私が言ったのは、そうじゃなしに、乗る者がだんだんなくなるということですね。乗る者がなくなるだろうということは、局長の方も十分お考えになっておることなんです。ですから、問題は、しぼっていけば、やはり法文を改正して人が三人のところを一人にする、二人のところも一人にする、こういうことじゃなしに、これはあなたが言われた通りに、いわゆる通信士の待遇という問題が需給関係に響いておるのですから、これはきわめて明瞭な現象なのです。そのことをむしろ対策として指導されることが、先決条件になる、この前の答弁の中でも言っておられるように、非常に困難なということは、もう明瞭なんですね。待遇が悪いから船に乗る人がだんだんなくなってくる。しかも、国際船に乗る者はあっても、内航船に乗る者がなくなってくるという明瞭な事実があるわけです。これらについても、待遇が改善されない限りは、さっき言ったように、これらに就職を求める人はなくなってくるのはあたりまえのことなんです。だから、こういうことに対する対策として、やはりそこをどういうふうに考えておるか。結局待遇条件となるでしょう。待遇条件に対して適当な指導を与えて、そうしてその通りにやらす。そうすれば、機械は間違いがあっても、人間と機械とを併用すれば、その機械の間違い、人間の間違いを少なくすることは、わかり切っておるのですから、そういうふうな処置を講ずべきなんです。人が来なくなるだろうということで、その対策として人件費をどうこうというような問題については省としては、口出しができない。だから、そのしのぎとして人を減らしてもよろしい。これはやはりほんとうのあり方じゃないと思う。一番簡単な道は、待遇を陸上あるいはその他の条件と同等で待遇するような指導をしてやる。それから企業の内容がそれに耐えられぬようなものについては、それこそ国策上の保護を与える、当然こうなるべきなんです。
 それからもう一つの条件を、外国と同等という表現を使われておりますけれども、私は外国と日本の船舶乗員通信士等の待遇というものには、ただ表面だけを比べてみて、外国より日本がいいというような、あるいは労働時間とかその他の問題は、比較する基準がどうもわからぬのです。外国の場合には、従来から何十年もわれわれの先進国として、機械的な設備もはるかに進んでおる。それが経験に経験を重ねた状態を今日まで保ってきているのです。だから、そういう結果が、そういういわゆる完備した設備の結果が、人を減らしてもいいという結果になって生まれてきておる。自然現象として生まれてきておる。こちらは外国よりも条件がいいから人が多いから、その人を減らそう。機械の設備も、これからだ、三年後なんだ。三年後には何とかなるだろう。ならなかったらならなかったで、またそのときに方策を立てればいいじゃないか。こういうふうな形では、どうしてもこの法案にわれわれは賛成するわけにはいかない、その点について、たとえばもっと積極的な業者に対する指導、こういうものについては、どういう処置を考えておられるのでしょう。お聞きしたいのです。
#52
○若狹政府委員 機械の設備の問題でございますけれども、日本の無線機器が外国のものに比べて劣るということは、決してないわけでございまして、現状におきましては、むしろ日本の船舶の方が、外国の船舶に比べてより強力で、よりりっぱな機械を積んでいるわけでございます。従いまして、無線機器の関係で日本が劣っているから、通信士を外国よりよけい乗せて補うという必要は全くないわけでございます。
 それから先ほど待遇の問題が出ましたけれども、船舶乗組員の給与体系というものは、いまさら申し上げるまでもなく、乗組員の経験年数、あるいは技術の程度、そういうものによって決定して参りますので、船内全体の均衡というようなものによって通信士の待遇条件というものを考えなければならぬわけでございます。従いまして、通信士だけの給料の引き上げを行なうということは、私は非常に困難であるように考えるわけでございます。
 従いまして、先ほどから申しておりますように、機械設備の点につきましても、国際水準に劣るものでもございませんし、まず、乗組員を構成いたしております法律を国際水準に合わして、しかる後に、その後の需給条件によって待遇その他を考慮すべきものであると考えるわけでございます。
#53
○肥田委員 待遇の条件という問題については、そう簡単な表現ではお答えはもらえないと私も思います。しかし、こういうことは局長、どうでしょう。内航船についての通信士が不足するというほんとうの条件というものは、どこにあるんですか。それを聞かしてもらえませんか。ただここに抽象的に、来ないんだ。来ないんだ。そうして苦労しても来ないから、このような表現が使われておりますが、それで私は、簡単な条件として、今一つ、二つの質問をしたんです。ですから、もっとほかのものが何かあるんですか。
#54
○若狹政府委員 単に給料の問題だけでなしに、何か他の条件によって考えて高校卒業者が海運界に来ないのではないかという御質問だと思いますけれども、根本的に海上労働というものは、家庭から離れて生活するというようなものでございますので、なかなか人が得がたいということは、事実でございます。それから陸上よりも相当有利な条件でなければ来てくれないということも事実でございますけれども、昨年あたりの陸上産業のいんしんの状況から見まして、相当の高給をもって陸上産業は船舶通信士を募集いたしておるような状況でございます。
   〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕
それを上回るものを考えるということは、先ほどから申しますように、現在の給与体系その他から見まして、とうてい困難であるというように考えるわけでございます。従いまして、根本的に海上労働というものに対する認識の仕方が、電波高校を卒業する若い人々にアッピールするものが弱いのではないかというような問題も、背後にあるように考えるのであります。
#55
○肥田委員 私は、今のあとのお答えですか、御意見は、多分そうだろうと思います。海上勤務のいわゆる船舶の乗員全体が、最近では需給が非常にうまくいかない、こういうことになるんですか。これも一つ参考のためにお伺いしたいのですが、内航船はどういう状況なのか、外国船舶の状態はどうなのか、そしてそれらに対してどういう理由か。今言われておるように、日本の海運ということに対する一般の認識が低いために、そうした海上勤務を希望する人がなくなってくる。それが響いてきて通信士にも現われてきているんだ。こういう一般的な問題なのか。通信士だけの問題なのか。特殊な作業種だけの問題なのか。そういう点も一つ知らしておいていただきたいと思います。
#56
○若狹政府委員 海上の労働に対する魅力が少なくなってきたということは、全般の問題でございまして、たとえば商船大学あるいは商船高等学校等の学校の志望者も、だんだん減少しているという状況でございまして、また、商船大学を卒業いたしまして、海運会社でない他の産業に就職する者も増加したというような事実もございます。従いまして、単に通信士の問題だけでなしに、船舶乗組員全体について、漸次その志望者が減少しつつあるという状況であると考えます。また、国際的に見ましても、他の諸国におきましても、船舶乗組員の獲得には非常に苦労をいたしておりまして、従って、この乗組員定数の合理化、減少ということについて、各国とも非常な努力を現在行なっているわけでございます。
#57
○肥田委員 これははなはだ申しわけないですが、海上勤務者というものに対しては、各国ともそういう現象ですか。それで、各国のそれに対する打開策というのはこれは、教育だけじゃいかぬわけですが、どうすれば海上労働というものに対する魅力を感じさせるようなことになるのか。そういう面は、これは一体どこがそういう指導については責任を持つことになるのですか。やはりこういう本質的な問題は、私らも大いに勉強したいと思うのです。そうでしょう。この重要性を説きながら、片一方では、海運基盤強化という、船をつくらなけれればいかぬ、そしてさらに企業を強化していかなければならぬ、こういう法案も準備されておるのです。ところが、実際海上勤務者というものは、年々減ってくる。需給の見通しもつかない。こういう現象が、実際世界的に起きているのでしょう。これはどうなんですか。一つこの点、局長のうんちくのあるところをお聞かせ願いたいと思います。
#58
○若狹政府委員 これは、先ほど御説明いたしましたようなことで、世界的な傾向でございまして、たとえばアメリカにおきましても、マリナー型の船舶の定員につきましては、現在五十数名乗り込んでおりますけれども、これを二十名以下にしたいということで、国費を投じて相当の研究をやっておるわけでございます。また、ノルウエー等におきましても、機関部の定数を九名以下にしたいというようなことで、現在船舶の設計も行なっておるというようにわれわれ聞いております。また、イギリスにおきましても、同様な状況でございます。従いまして、わが国におきましても、徹底的な船舶のオートメーションということを実施いたしまして、それによって乗組員数を減少し、減少することによって、船員の生産性の向上と申しますか、それによって海運の改善を実施していく、これ以外に方法はないというようにわれわれ考えております。
#59
○久保委員 関連して。一番大事なことでありますから、ちょっとお尋ねしたいのですが、ノルウエーとかアメリカとかいろいろ例をあげられまして、船舶の近代化によって船員費を減らすというか、節約をしていくという傾向は、世界的な傾向だということは、その通りです。それはそうでしょう。だが、今肥田君からお尋ねしているのは、結局いわゆる船員に成り手がない、だんだん減ってくるということについては、世界的傾向なのかどうなのか、こうお尋ねしているのですよ。しかも、先ほど来お話を聞いております。と、待遇についてはそう悪いわけではないというような意味ですね。船員費全体についても、あなたの方から先般出された資料によりますれば、日本の船員費というか、船員の給与といいますか、それは、外国のそれに比べればはるかに低いのであります。そういうことを考えると、なるほどアメリカ等においては、船員費の助成までしてもなかなか船員が集まらぬという傾向はあります。これはアメリカそのものの特殊な事情もあると思うのです。これと日本の事情は、大へん違うと思うのです。さっきから肥田委員からもお話があったように、結局、無線通信士に成り手がないという事実は、この法案によっては解決できない。だから、この法案を妥当と見ても、この現実はどうして解消するかという問題を今お尋ねしておる。だから、まともにその点を一つお答えいただきたいのであります。結局、問題は、待遇の問題が大きな問題の一つじゃなかろうか。なるほど、陸上で勤務した方が海上よりいいという一般的な風潮は、これは否定できません。しかし、それをカバーして余りあるような待遇条件ならば、これは成り手は相当あるだろう、こう思うのです。それから、もちろん、陸上におけるところの最近における異常な経済の成長、これに伴うところの人的のいわゆる配置が不適正であるということからきている。そういう問題はあげて、船員局長だけでは残念ながら解決できない。日本におけるところの経済に見合ったところの労働力の適正配分、これは政府そのものがやはり高い視野において解決しなければならぬ。これはさておいても、少なくとも待遇の問題については、船員局長は海運行政を預かる一人として、考えるべきだと思うのです。だから、先ほど肥田委員から言ったように、この企業者自体がこれと解決し得ないのが今日の海運の企業の状態ならば、これに対してやはり適切な、国家が介入するというならば、この法律によって介入するのじゃなしに、他の財政的な面からもこれは解決しなければならぬ。それをさておいて、法律を現実に合わせるというのじゃ、これは芸がなさ過ぎる、こういうことなんであります。
 それからもう一つ、私ついでに申し上げますが、少なくともこの法案を無理やりに通すというならば、将来に、これは今肥田委員の言ったように問題がたくさん出てくる。収拾がつかなくなる。だから、ただ単にわれわれは労働者だけの側に立つだけではなしに、大きく海運の立場に立っても、これは問題なんです。だから、ここで解決の糸口を、今言ったような問題について真正面からこたえてもらう、それに応じたところの法律というか、制度というものを確立することが、前提じゃなかろうかと思うのです。それに対する答えはどうですか。
#60
○若狹政府委員 船舶乗組員の希望者が減っておるということは、先進国においては、世界各国とも同様な状況でございまして、現在後進国からの船員を募集してようやくその定員をまかなっているという状況でございます。ただいま久保委員からお話のありました問題につきましては、われわれはまず国際水準の定員をもって船舶の定員の減少、合理化を行なって、そうすることによって企業の合理化を促進する。同時に、なお足りないところについては、政府の施策も必要というふうに考えますけれども、その定員の問題につきまして一番根幹となりますところの、法律をもって強制しているところの国際水準以上のものを取り去っていきたい。そうしてほんとうに国際水準に立った定員の合理化を実施して、その後において政府の施策を要求すべきであるというふうに、われわれは考えておるわけでございます。従いまして、単に人間を減らすことによってこれだけでもってこの問題がすべて解決するということではございませんし、われわれは、むしろ政府の海運に対する一般的な施策というものと相待って、この問題を解決していただくべきものであると考えるわけであります。
#61
○久保委員 一言言っておきますが、今最後の御答弁のように、私が言うように、海運全体の立場から解決することである、こういうお話であります。その通りだと思う。そうだとするならば、今日提案のままになっております。いわゆる基盤強化の法律というか、そういうものもひっくるめてこの際海運全体に対する対策を立てて、その一環としてこれをどうするかを考えなければならぬ時期だと思うのです。時期的に見ると。これ一つだけで、そのうち逐次やっていこうということだけでは、当然うまくいかぬと思うのです。今いろいろあるようでありますが、海運全体に対する政策というものを具体的にお立てになっておやりになった方がいいし、よってこの法律は、この会期中に撤回されるなり審議未了にして、そうして出直した方がよかろうと思うのであります。そうでないと、一つくらい出していっても、うまくいくはずはありません。基本を正さずして枝葉末節をやっても、全体としてよくならないと思いますから、そういう意味で、せっかく出されて御苦労なさっておるようでありますが、これは私は引っ込めた方がよさそうに思うのでありますが、肥田委員からそれぞれ御意見があると思いますから、私は意見だけを申し上げておきます。
#62
○肥田委員 先ほどの乗船希望者が減ってくるということについて、私はごく常識的な問題として聞きたいのですけれども、これは海賊船時代じゃないけれども、船長が奥さんを連れて乗っておるような時代が昔ありましたね。
   〔高橋(清)委員長代理退席、委員長着席〕
これは近海だけでなしに、いわゆる外航船も同じですけれども、少なくとも船内勤務者が船を自分のすみかにできるような、そういう指導というものはできませんか。海上労働を忌避するという本質的な問題としては、やはりその根本的な対策を立てなければならぬ。幾ら愛国心を説いて、海上輸送の重大性を説いてみても、その人の生活を潤すものがなかったら、愛国心も、それから海国日本のそういう情感も、何もわいてこない。船に乗ることの魅力、そうして自分の生活に対する希望、こういうものが並行して出てこなければ、幾ら努力してみたって、私は、いわゆる船舶勤務者の需給ということは困難になる一方だと思うのです。ですから、本質的な解決策がなければならぬ。どうして一体船に乗るのをみんないやがるのか、船舶労働というものをだれがいやがるのか。一時は、とにかく船舶に乗ることを非常に人生の希望とした時代もあった。そのいいところを取り入れる必要がある。それから近代的な進歩した状態の中における人間感情というものを取り入れる必要もある。要するに、船をすみかにして、そこで自分の労働ができる、自分の生活と希望が持てる、こういう条件を整わすことを考えることが、重要な一つの要素じゃないかという気がするのです。減ってくる、減ってくるということだけが問題じゃなしに、そういうことについては、どうなんでしょう。実際に指導せられていて、そんなことができるというふうにお考えなんでしょうか。どうでしょう。
#63
○若狹政府委員 船内の労働条件の改善という問題でございますけれども、具体的にはわれわれは、たとえば熱帯地方を長く航海する船舶については、冷房装置をつけるというような施策を、現在法律によってやっておるわけではございませんけれども、実際上の指導と申しますか、行政措置によって、そういうような指導を行なっておるわけでございます。今後船舶の船内の生活をできるだけ快適なものにしていこうという努力につきましては、今後とも行なっていきたいと考えておるわけでございますけれども、何分船舶の経済性という問題につきましては、国際的な競争力を基準として考えていかなければならない問題でございますので、いたずらに船内の設備を快適にするということだけを目標として行政を行なうということが、できない状態でございます。しかしながら、定員を減少することによって経費も生み出せますし、また、船内のそういう設備をつくるだけの余地も生み出して、そうすることによって待遇の改善をしていくということを考えておるわけでございます。
#64
○肥田委員 これは海運政策の一つの重要な部分ですから、そう簡単に返事がいただけるとは思いませんが、実際に船員局長として、そういうことに対して指導の必要性をやはり考えておいでになるでしょうか。さらに、ほんとうにこの海運強化ということが問題になる場合に、ただ単に乗員を減らして、機械化して、オートメーション化した船舶を走らせることだけでは、事は足りないと思います。そういう際にでも、根本的の問題になるのは、いわゆる船舶労働者の待遇ということになる。この待遇という問題が、一つの企業競争の中で成り立たないというような懸念があるとするならば、根本的ないわゆる日本の現在の海運企業そのもののあり方というものを検討しなければならぬ。公団にするか、あるいは企業整備をして航路の整理とかそういうものの一切の調節を行なった上で、ほんとうに外国と太刀打ちできるような、いわゆる海上輸送の企業体というものを新たにつくり直すか、そういうことまで手を伸ばさなければ、本質的な問題の解決はできないだろうという気がするのであります。私は、この法案について先ほど幾つか申し上げましたが、この法案そのものは、全く一つの手段にすぎない。その手段たるや、当面の問題を解決することには何にもならない。ただほんの一時しのぎをつけようという言いわけの法案にしかすぎないと思います。ですから、これに対する私の意見というものは、さらに機会を改めて言いますけれども、時間の関係もありますから、先ほどの件を一つお答えいただいて、そうしてさらに日を改めてこの質問の継続をいたしたいと思います。
#65
○若狹政府委員 今お話のありました通り、船員の待遇改善につきましては、われわれといたしましては、まず合理化を行なって、しかる後に、海運企業だけの力でもって国際競争に太刀打ちできないものについては、政府の施策をお願いしたいというように考えておるわけでございます。従いましてこの法律をまず成立させていただきまして、それによって船内の合理化を行ない、それによって待遇改善もやっていきたいというのが、われわれの念願でございます。
#66
○肥田委員 私は、もうこれで質問をやめようと思ったのでありますが、まず法律を通すことを前提として、それから先のことだ、こういうふうに船員局長に言われてみると、これは私らの方としては困るのです。この法律は必要がないから、もっとも先のことがわかるならば、これが合理性があるかないかということをその上で検討しよう、こういう立場をわれわれはとっておるわけであります。ですから、そういう意味できょうは一応これで質問を打ち切りまして、あらためて質問の継続をいたしたいと思います。
#67
○木村委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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