くにさくロゴ
1961/10/24 第39回国会 参議院 参議院会議録情報 第039回国会 法務委員会 第6号
姉妹サイト
 
1961/10/24 第39回国会 参議院

参議院会議録情報 第039回国会 法務委員会 第6号

#1
第039回国会 法務委員会 第6号
昭和三十六年十月二十四日(火曜日)
   午前十一時三十二分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
十月二十日委員大和与一君及び加瀬完
君辞任につき、その補欠として高田な
ほ子君及び江田三郎君を議長において
指名した。
十月二十一日委員青田源太郎君辞任に
つき、その補欠として金丸冨夫君を議
長において指名した。
十月二十三日委員金丸冨夫君及び高田
なほ子君辞任につき、その補欠として
青田源太郎君及び亀田得治君を議長に
おいて指名した。
本日委員泉山三六君、江田三郎君及び
大谷瑩潤君辞任につき、その補欠とし
て村松久義君、豊瀬禎一君及び加賀山
之雄君を議長において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松野 孝一君
   理 事
           井川 伊平君
           増原 恵吉君
           松澤 兼人君
   委 員
          大野木秀次郎君
           木島 義夫君
           天坊 裕彦君
           徳永 正利君
           林田 正治君
           村松 久義君
           大森 創造君
           亀田 得治君
           豊瀬 禎一君
           田畑 金光君
           辻  武壽君
           加賀山之雄君
  衆議院議員
           鈴木 義男君
           富田 健治君
           早川  崇君
           門司  亮君
  国務大臣
           植木庚子郎君
  政府委員
   法務大臣官房司
   法法制調査部長 津田  實君
   公安調査庁次長 関   之君
   労働省労政局長 冨樫 総一君
  最高裁判所長官代理者
   事務総局事務次
   長       内藤 頼博君
   事務総局人事局
   長       守田  直君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  衆議院法制局側
   第 二 部 長 川口 頼好君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○政治的暴力行為防止法案(第三十八
 回国会衆議院提出)(継続案件)
○裁判官の報酬等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付、予備
 審査)
○検察官の俸給等に関する法律の一部
 を改正する法律案(内閣送付、予備
 審査)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 十月二十日付、大和与一君辞任、高田なほ子君選任、加瀬完君辞任、江田三郎君選任。十月二十一日付、青田源太郎君辞任、金丸富夫君選任。十月二十三日付、金丸富夫君辞任、青田源太郎君選任、高田なほ子君辞任、亀田得治君選任。十月二十四日付、泉山三六君辞任、村松久義君選任、大谷瑩潤君辞任、加賀山之雄君選任。以上であります。
#3
○委員長(松野孝一君) 先刻の委員長及び理事打合会の申し合わせについて御報告いたします。
 とりあえず、本日の委員会の日程については、大体、午前中におきまして政治的暴力行為防止法案の質疑を行ないます。そのあとに、午後になりまして、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、それから検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、質疑をすることにします。なお、時間の余裕があれば、検察及び裁判の運営等に関する調査を行なうことにいたしました。
#4
○委員長(松野孝一君) 次に、政治的暴力行為防止法案を議題といたします。
 本案は、前国会に提出され、去る五月三十日に提案理由の説明及び逐条説明を聴取し、六月六日に衆議院における修正部分の説明を聴取した後、質疑を行なっております。
 本日は、これより質疑に入ります。
 ただいま出席の当局側は、発議者衆議院議員早川崇君、衆議院法制局第二部長川口頼好君、公安調査庁次長関之君であります。
 質疑のおありの方は順次御発言下さい。
#5
○井川伊平君 政治的暴力行為防止法案につきましては、先国会におきまして、わが自由民主党といたしましては、大川委員より相当詳細な質疑が行なわれた次第であります。しかし、なお若干取り残されている点もあるように存じますので、さような意味合いにおきまして、追補といったような意味合いをもちまして、以下順を追うて御質問を申し上げますが、提案者の中でどなたか適当にお答えを願いたい、かように存ずる次第であります。
 まず第一にお伺いいたしますことは、規制の基準、第三条につきましてお伺いいたしますが、「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条の目的を達成するためにのみ行なうべきであって、」云々と規定されております。そして破防法の第三条を見ますと、それには、「この法律による規制及び規制のための調査は、第一条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行なうべきで」あると、このように用語が違っており、一方におきましては、必要であるということのほかに最小限度というものをつけ加えておりますが、この破防法の第三条のこの部分と本法案の第三条のこの部分のこの用語の相違は、内容の相違を意味するものであるか、あるいは内容の相違はない、同じ意味であるという御解釈であるか、もし、そうであるとすれば、解釈上差異を生ずるおそれがあるとは考えないか、これらにつきまして、お考えを詳細承りたいと思います。
#6
○衆議院議員(早川崇君) 立法の趣旨におきましては、破防法の「必要な最小限度に」ということと、われわれの提案いたしました政治的暴力行為防止法案の「ためにのみ行なうべきであって、」、これはそれを拡大しちゃいかぬという趣旨でございますから、内容においては同じに考えております。
#7
○松澤兼人君 議事進行。ちょっと委員長にお伺いするんですけれども、この原案は、自民党と民社党の共同提案なんです。今、自民党のほうの提案者が見えておって、民社党のほうの提案者が見えておらない。そうすると、質問をしましても、やはりそれぞれ自民党のお考え……。
#8
○衆議院議員(早川崇君) 見えましたよ。
#9
○松澤兼人君 まあ見えたんですけれども、やはりこういうことはきちっとけじめつけてもらわないとしょうがない。
#10
○井川伊平君 私の質問につきましては、提案者のほうの党のどなたがお答え下さいましてもけっこうでございますから、適当にお願い申します。
 それから政治的暴力行為防止義務の点に関しまして、第五条の政治的暴力行為の発生の防止に関する規定ですね。これは衆議院原案第六条の通報の義務の規定と相待ってその存在価値があったようにも思われるが、通報義務の規定が削除された現在では、第五条の制定理由がやや不明瞭になった感を与え、かえって悪用される等の弊害を生ずるおそれがあるのではないかとも考えられるが、本条の必要性、六条が削除された後においてもなお必要ありとするところ、及び防止義務の性質、こういうことにつきまして、詳細に承りたいと存じます。
#11
○衆議院議員(早川崇君) 実は、衆議院におきまする原案におきましては、警察官えの通報の義務というものがございまして、政治暴力を防止いたしたい、こういう考えで原案はなっておりました。ところが、これに対しまして、公聴会あるいは社会党、共産党の諸君の中には、警察えの通報義務というものは何かスパイを働かすのじゃないか、全体主義国のスパイ制度を思わずのじゃないかという御意見がございまして、われわれ立法者の意図するところと逆の御意見もございました。したがって、民社党、自民党の提案者が相談いたしまして、審議の経過を尊重いたしまして修正をいたしたわけでございます。そういたしまして、当委員会に御提案申し上げました第五条は、あくまでこれは訓示的規定でございまして、憲法その他の法律にもありますように、当然民主主義が守られなければならぬ、政治暴力を防止しなければならぬという訓示規定でございまするから、具体的に法律的に義務づけるというものではございません。
#12
○井川伊平君 御趣旨はわかりましたが、訓示的規定ではあるけれども、存在は絶対必要だという根拠がありましたら承りたい。
#13
○衆議院議員(早川崇君) そもそもこの治安立法それ自身が、この法律でいろいろな刑罰を課するということが目的では実はないのでありまして、むしろ社会教育的抑制効果をわれわれはねらいまして民主主義というものには、政治目的に暴力を使っていかないという法案全体がひとつの教育的効果をねらっているわけでありまして、その法律の中でこういう訓示規定が盛られるということ自身は、国民一般に対して民主主義、議会政治を擁護さし、あるいはテロや、あるいは政治暴力を行なわさない効果は、やはり大いにあると考えまして、規定に盛っておるわけであります。
#14
○委員長(松野孝一君) 委員長からちょっと申し上げますが、ただいま発議者の衆議院議員の門司亮君、富田健治君も出席されております。
#15
○井川伊平君 次に、別の事項でありますが、法案の四条及び十六条は、政治的暴力行為としての建物――建造物ですね、建造物等への侵入について、国会に関しては会期中に限定しておりますが、これでは会期直前における行為が処罰の対象とならないと、あるいは閉会中の審議が行なわれている場合があること等を考慮するときにおきまして、本条の趣旨を全うできないことになりはしないかという不安がありますが、また、閉会中の行為もあわせて処罰の対象とするようにいたしますれば、何か大きな弊害でもあるというのであるか、この点につきましてお伺いをいたします。
#16
○衆議院議員(早川崇君) 国会の建造物を内閣総理大臣官邸と一応区別いたしましたのは、理論的には深い理由はないと思いまするが、行政府の場合には、しょっちゅう、年じゅう行政事務というものが行なわれておるわけであります。国会の場合には、開会中というしぼりをつけまして、普通の場合には、普通の建造物侵入という法律でいいのではないかという政治的な考慮も入れまして、できるだけしぼるということが立案者の意図でございまして、会期中と限定したわけでありまして、その上に、さらにわれわれは、単に入るというのじゃなく、暴行、脅迫という暴力行為を伴っておるという後段の配慮も、そういう配慮から、いたずらに平穏な国会請願とか、そういうものに刺激を与えない最小限度という意味で、実は、会期中も、さらに暴力行為をしてというしぼりをいたしました。その苦心のほどをひとつ御了解いただきたいと思います。
#17
○井川伊平君 御苦心はよくわかるわけでありますが、会期の直前等におきましては、予定のとおり会期を持ちますことが妨害されることになることにもなるのではないかと考えますが、かような点につきましては、特に御考慮の必要はなかったのですか。
#18
○衆議院議員(早川崇君) 実質的には開会中は審議を実はやっておりまして、開会前の場合は審議をやっておりませんので、その政治暴力を行なう対象としてウエートも考えまして、閉会中あるいは開会前までは、普通の建造物侵入ということに実はいたしたわけでございまして、別に根本的に理論的に、閉会中もいかぬという理由はないので、われわれは、民主主議、議会政治というもののシンボルでありますから、理論的にはもちろん、当委員会で開会、閉会にかかわらず、こういうものは政治暴力行為としてということの御修正があるならば、これはもう理論的にわれわれは反対する理由はないのであります。
#19
○井川伊平君 次に、別のことでありますが、団体の構成員が団体を脱退した後、政治的暴力行為を行なった場合において、当該団体を本法で取り締まることができるかどうか。もし、できないとすれば、過去の実例等に徴して考えまして、右翼のテロ等に対しては、本法案は無力になるのではないか、かような不安があるわけでありますが、こういう点につきましてのお考えを承ります。
#20
○衆議院議員(早川崇君) これは二重の、二点におきまして御理解いただきたいのでありますが、団体の構成員が団体を脱退した後も、その団体を脱党していると言いましても、それと因果関係の意思疎通があるならば、むろんかかるわけですね。それから擬装脱退も、実質的には意を含んでの擬装脱退、これもひっかかるわけであります。それは解釈問題になると思います。そこで川口法制部長から御答弁さしていただきます。
#21
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 提案者を補足申し上げまして少しこまかいことを申し上げさしていただきたいと思います。
 ただいま仰せの問題は当初から問題にした点でございまして、それならば団体から脱退してやれば何でもできるのじゃないかというのは非常に矛盾じゃないかという議論がもちろんございましたけれども、さればといって、団体から脱退した以後という状況で、法文としましては、団体員でない第三者も団体の活動として規制の対象になるのは、形式論理的には非常に矛盾する結果になりますので、これは書かなかったわけでございます。しかし、実質的には、それならばきのうまでやっていた者が、いざ犯罪実行のチャンスには、それならばすぐ脱退届を出してからやれば、少なくともまあこの法律の意味における迷惑を団体にはかけないで済むじゃないか、自分だけ犠牲になれば済むじゃないかという議論が当然起こると思いますけれども、そこは、今提案者から御説明ありましたように、その脱退が擬装的なものであれば、これは刑事法の一般の解釈の通例にならいまして、実質的解釈でいくべきでありまして、名目的に団体には脱退届を出したからといっても、実質的に団体員であるとみなすことが解釈上できるかと考えております。そういうことでありまして、法文といたしましては、御質問のように、形式論理的には、団体を脱退したものは団体規制の対象にはなりません。
#22
○井川伊平君 その団体の形式的な脱退と、それから本質的な、実質的な脱退との区別をしていかねばならぬことになる場合が、実際の事件になりますとできてくると存じますが、非常にむずかしい問題のように考えるが、その点はどういうようにお考えですか。
#23
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 今申しましたのは、一つの論理を申し上げたわけでありまして、まさに仰せのように、実質的にはその解釈の判断は非常にデリケートな問題になると考えます。しかし、従来のその犯人と団体との関係の緊密さの度合いとか、そういったことから推理しまして、事件直前に、それが、たとえば団体の幹部との意思の連絡その他がありまして、それを擬装するためというふうな反証をあげることは、そういうことを挙証することは検察官として可能だと思いますので、そういうことが挙証できますれば、これは実質的には単純なる擬装である、脱退というのはうそである、単純なる虚構であるというふうに論証できます場合には、先ほど申しました論理で解釈できると、こう考える次第であります。
#24
○井川伊平君 その実際の問題に逢着いたしまして、擬装であると思えるといった独断は案外楽にできるかもしれませんが、証拠の上でほんとうの脱退であるか、擬装であるかということをきめることは、私は非常な困難な問題になると思います。かりにですね、数日前に脱退したのでありましても、真実はほんとうの脱退かもしれない。相当長い間、脱退して経過はしておりましても、これは擬装である場合もあると存じますが、そうして、その間のいろいろの事柄は、証拠としてはつかみにくい点が非常に多いのではないかと思いますが、こういう点についての何か御苦心のところがありましたら、具体的にひとつ精細を尽くして御説明を願えますれば幸甚です。
#25
○衆議院議員(早川崇君) この問題は、逆にその団体を脱退した者が何ら関係なくやった場合にも団体をしばるという裏の弊害もございます。今、井川先生の言われましたように、しからば、団体と意思疎通しておった擬装の場合には挙証しにくいという問題全然矛盾した二つの問題があるわけです。ですから、法律上はそれはできないわけなんです。そこで、従来法制局と御相談のときには、実質的に解釈というところに落ちついたわけでございます。具体的例を言いますと、たとえば、ある右翼団体が殺人の正当性をどんどん主張しておったと、そこの党員がそれを脱退して、その影響でやったという場合がありますね。そういう場合には、因果関係の立証はむずかしいけれども、今度の法律は、いわゆる教唆扇動に至らなくても、反覆継続して殺人の正当性を主張する場合には、その団体は処罰の対象になり、この刑罰の対象になるという面では、相当、いわゆる従来の右翼テロですか、そういう面に対して大きい抑制的効果を別の法律で持っておるわけでありまして、今のこの法文自体においては、残念ながら、ずばりと法律でそれができないという技術上の問題でそういたしたわけでありまして、実際問題として解決をいたしていきたい、かように考えておるわけです。
#26
○井川伊平君 御趣旨はわかりました。
 次に別の問題法案の二十三条は、教唆にも扇動にも至らない行為を、教唆、扇動と同様に処罰しようとするものでありますが、こういうような立法は、刑法の一般原則に反するばかりでなく、言論表現に対して制限を不当に加える結果となるおそれがあるように思えますが、この点に関しまする御配慮はいかがでありますか。
#27
○衆議院議員(門司亮君) 私から便宜御答弁申し上げたいと思いますが、お尋ねの御趣旨は、私はもっともだと思います。現行の刑法にない新しい刑の類型を求めるものでございまして、非常に立案する当時におきましても、この点については議論のあったところでございます。しかし実際の問題といたしまして、現行刑法による教唆、扇動という解釈並びにこれの適用になって参りますると、先ほどの御質問にもございましたように、たとえば擬装脱党した諸君の行為、はっきり申し上げて参りまするならば、一つの団体の影響を受けて、そうして殺人あるいは――主として殺人でありますが、殺人を行なう場合には、単なるこの殺人の正当性あるいは必然性あるいは必要性というようなものが、特定の集まりでそういうことが強調される。そういたしますと、その特定の集まりの中から、必ずそういう行為に出る者があるだろうということが一応予見された場合を、ここに書いておるのでありまして、具体的に申し上げて参りますと、たとえば右翼の一人一殺主義というのは、ほとんどこういう形で私は実際的には出てきているのではないか。いわゆる行なわれているのではないか。だれにだれを殺せという扇動もしなければ、教唆もしない。しかし、その会合の雰囲気の中には、明らかに特定な限られた人たちの殺人行為というものの正当性、必要性、必然性というものが論じられておる、こういうことが今日までの多くの右翼のテロ事件を考えて参りますと出てくるわけでありまして、したがって、それらの問題は、いずれも現行刑法においては、これを処罰する対象にはなっておらぬのであります。先生のほうがよく御承知だと思いますが、だれにだれを殺せという明確な示唆あるいは扇動、教唆等については、現行刑法によってこれを取り締まることができるのでありますが、現在それが行なわれない。私どもは、この法律が、今、早川議員からも申し上げましたように、反社会的の行為に対して、これを抑制していこうという趣旨のもとに立案いたしましたその過程において、はっきり申し上げまするならば、たとえば山口少年が浅沼稲次郎氏を刺殺した。さらに小森少年が嶋中邸における殺傷事件を実行した。しかし、社会通念かち考えて参りますと、これらの少年諸君の考え方の中からああいう大それた行為がやはり出たものとはなかなか思量しがたい。同時に、その背後における団体の党首が、われわれの入手いたしておりまする範囲におきましても、かなりこうした行為について特定の集まりのときに、その正当性あるいは必然性、必要性ということを話しておる事実はございまして、したがって、右翼の一人一殺主義のこの誤った思想を抑制していこうとするには、今前段で議論をされましたように、現行の刑法の範囲内ではなかなか根絶することが困難ではないかという、こういう考え方に立ちまして、現行刑法におけるそれが直接の教唆、扇動ということに至らなくても、特定の団体に対して、これを自分がこう言えば大体こうなるであろうと、また、この中の人がこういう行為を行なうであろうということをあらかじめ予見して、そういう行動に出た人を取り締まろうというものでございまして、それの趣旨は今御質問のございましたように、私どもは、これによって大きく言論その他が阻害されるというようなことはないのではないかと。この対象になっておりますのは、あらかじめ予見して、殺人の必要性あるいは正当性、必然性というような反社会的の言動でございますので、これをこうした法律の形において処罰の対象にすることが必要ではないか、こういう意味で制定したわけでございます。
#28
○委員長(松野孝一君) 委員長から申し上げます。
 提案者として衆議院議員鈴木義男君も出席されております。
#29
○井川伊平君 いろいろと心を配られたところはよくわかりますが、しかし、教唆、扇動する方法は、その教唆、扇動を受ける者が犯行に至ることができれば目的を達するわけであるから、具体的な教唆、扇動をしないでも結局、その人が犯行に至る何かの示唆を与えれば、それは教唆にもなるのだと、私はこう思う。その教唆を受けた者が犯行をすることに全然関係のないことであったとすれば、その関係のないことを行なった者をいかなる意味合いにおきましても処罰はできないわけです。だから結局、具体的でない、どんなことであっても、その教唆を受けた人間が犯行に至るという事実があるとすれば、必要な程度の教唆は行なったものである、必要な程度の扇動は行なったものであると、こういうように考えられるのではないか。そう考えれば、今御説明になりましたような御心配のことは、やはり教唆、扇動のうちに入っておるのではないかと、こういうように考えますが、いかがなものでございましょうか。
#30
○衆議院議員(門司亮君) ごもっともな御心配と思います。したがって、法案の中には、いろいろな事情もございますので、そのことによって実行を、いわゆる犯行を犯したとき、いわゆる犯罪を犯したときだけにこの法律は限っておるのでありまして、決して言論や何かを抑圧したりすることもないと思いますし、それから同時に、法文にも書いておりますように、「特定の者がその影響を受けて同項の罪を実行するに至ったとき」と、かなりしぼって現実的の問題だけを処置していこうと、こういう考え方であることだけを御了承願っておきたいと思います。
#31
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 補足しまして。先生の御質問は、ここに今想定されておるような事柄は、実質的には立証の問題もあろうが、結局は教唆になるのじゃないだろうか、こういうようなお話でありますね。そこで問題は、あまり人名をずらっとあげて具体的な例を申し上げるのは差し控えますが、ただいまの門司先生のお話からほぼ想定されるような事案についてのことを一応対象として考えます場合に、この教唆には、やっぱり一番本質的な要素は、お前やってこいという、それから相手をしてだれだれを殺さしめようという意図、犯罪を実行させる目的というものが本質的な要素でございまして、それが立証できない限りは、教唆にはならないわけであります。ところで、先ほど来門司先生があげられたような例におきまして、はたして立証が可能であるかということが一番問題の要点じゃないかと考えるわけであります。したがいまして、この二十三条は、ごらん願いますと一見してわかりますように、相手がこういうアジテーションといいますか、演説をすれば、こういう強力な刺激を与えれば、このうちの何人か、だれとだれかは思い切ってやるかもしれぬ男だと、こういうふうなことの危険性を予想しつつ、そこまでは、その要件は必要であります。しかし、相手にそれを積極的に、たとえば浅沼さんを殺させようという目的というものまでは立証されない、こういう段階のものも、それはしたがって刑法の教唆犯には当たらないわけであります。それは現、実にそうした反社会的の危険性を考慮いたしまして、そのかどで処罰の対象にしよう、もちろん、ここであの扇動した者と同一の刑に処すると書いてございまするのは、それは理論的に犯罪の実質が扇動と全く同一だと言っておるわけじゃございませんで、刑の上で扇動と同一に処するという意味でございまして、したがって、提案者が考えておられますこの条文の意図は、そういう教唆にはならないようなデリケートな姿にそういうものを想定して、ここで新たに処罰の対象にする、こういう御趣旨だと考えております。
#32
○井川伊平君 なお、多少了解のできない点があるわけでありまするが、それは政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し「又はこれに反対する目的をもって」する、こういうようなこの事柄をはっきり認識して、そしてある行為をなした、たとえば演説をしたり……。そうすると、そういうようなその目的を達するためには、甲に対して 乙に対して、丙に対して、たとえば殺人傷害、そういうような、だれがだれでもいいのだ、甲という制限はしない、乙という人の制限はしないけれども、今申したこの目的を達するに必要なという大きなワクでしばりまして、そのうちのだれを殺してもかまわない、だれを傷つけてもかまわないのだといったような広い範囲に、この人の制限を、だれを殺すかという被害者の範囲を、甲または乙とかいうようにしないで、もっと広い範囲で目的達成に効果をもたらす何人かといったような事柄、それから、それを示唆を受ける者が、それはだれだれ、AとかBとかいうような、そういうようなことははっきりしないでも、その演説を聞いている大衆のうちのだれかがやるだろうという、だれかという確信がついた。ところが、はたせるかな、だれかがだれかをやった場合に、そういう場合には教唆にはならぬという御意見なんですね。教唆、扇動にはならないという御意見なんですね。
#33
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 今のお話は、まず二つ対象がありまして、自分の演説を聞いて興奮してテロをやり出す男がだれとだれだというふうに明確に特定していなくても、それから今度は片っ方で、たとえば〇〇政党のやつらはみな殺しにするのだというふうな言い方だけであって、そのうちの名前も何もあげない。被害者の場合にも、加害者の場合にも特定性がなくて、一般的、抽象的な場合にはどうなるかという御質問の趣旨だと思いますが、まず扇動につきましては、もともと扇動罪というのは、一般大衆に対するアジテーション、こういうものが犯罪の実行と密着する場合の犯罪類型でありますから、これは前の四条のほうに定義がありますように、「特定の行為を実行させる目的」というものだけでございまして、個々の加害者の特定性は必要ございません。そういう意味におきまして、この二十三条の正当性主張の態様の中には、あるいは教唆に該当する場合もありましょうし、あるいは扇動に該当する場合もあることを予想いたします。でありまするから、なおさらのこと、そのうちには、ここに書いてある行為を行なうおそれがあることを予見しながら、あるいは正当性を主張するという態様の中には教唆もあるだろうし、扇動もあるだろう。しかし、その入らない部分はここでこう扱うと、こういう趣旨で書いた規定でございまして、その正当性主張の中には、主張という類型はことごとくこの二十三条がなければ一切処罰できないと、こうは考えていないわけでございます。いろんな態様がありまして、教唆にも扇動にもなる場合もあるけれども、しかし、それで取り残される部分がある。その取り残される部分を二十三条で処理しよう、こういう考え方でございます。
#34
○井川伊平君 私どもは、その取り残される部分というのはどんなものかということをつかみ得ないのですね。
#35
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 議論が法律的なことになりますので、私から、条文の字句を厳密に申し上げますというと、このうちの要点は、まず加害者につきまして、自分の演説を聞いてこの青年が、もしくはこの男が、あるいはこれこれの男がある犯罪を断行する、つまり犯罪を行なうおそれがあることを予見しながらという要件が一方にございます。そして自分の主義主張のためには、殺してもいいのだという一種の大ざっぱな言い方がもう一つの要件でございます。そしてそこで抜けておりまするのは、犯罪を実行させる目的をもってという要件が書いてございません。そこが教唆、扇動と違う点でございます。つまり、こういう可能性があるかもしれないという予見性はございますが、積極的にこれでだれだれを殺さしめようというようなそこまでの立証ができなかった場合のことを考えている次第であります。そこで、それならば、こういう反論が当然生じます。そういうことまでも犯罪の対象にすることは行き過ぎではないかという反論に対しましては、もちろん、これは理論的な理由のある反論でございますから、そこで、そういうものに対しては、処罰要件といたしまして、その演説を聞いて興奮した者が影響を受けて同項の罪を実行するに至ったときにだけ処罰をする、こういう締めくくりでその調節をはかった次第でございます。
#36
○井川伊平君 今の点につきましては、なお私のみ込めない点がございますが、本日はこの問題はこの程度にいたしておきます。
 次に、最後にもう一つ承っておきますが、本法案の刑罰のうちには、禁錮刑もありますが、禁錮刑は、政治犯のように多少なりと犯人の名誉を尊重すべきものに課するという建前でもあろうかと思いますが、懲役と禁錮刑を区別する前提は、労働を卑しむ思想が入っており、時代の趨勢に沿わないものであると考えられるがどうか。また、実際の問題といたしましては、禁錮刑のほうでも、刑務所の中では労務をやっておるのです。そういうようなことで労務そのものが卑しむべきものだといったような思想を加えなければ、別にここに禁錮刑と懲役刑とをはっきり区別しなくてもいいようにも考えるのでありますが、この点に関しましてのお考えはいかがでありますか。
#37
○衆議院議員(早川崇君) この問題は、学者の一部に一般の強盗殺人とか、あるいは一般の痴情殺人と政治家に対する殺人、また政治的殺人とを区別するのはどうかという御意見のあることは承知をいたしておるわけであります。そういう関係からいいますと、禁錮の問題のみならず、これは社会党からの御提案が最も端的にあれであったのですが、殺人罪だけはうんと重くする、政治殺人だけをうんと重くするという思想とも関連するのですが現在の刑法の建前が、やはり一般の物取り殺人あるいは傷害と政治的な騒擾罪、内乱罪その他の刑罰と、やはり若干区別しておるわけでありまして、このこと自体については、いろいろ議論もありましょうが、われわれといたしましては、一応刑法の建前が、また各国のあれがそういうことになっておりますので、あえて禁錮刑という制度を挿入したわけでありまして、一部の法律学者には、政治犯だから特に禁錮刑ということはどうかという御意見のあることも承知いたしておりますが、今回は刑法のあれに平仄を合わせて禁錮刑というものを加えたというように御了解願いたいと思います。
#38
○井川伊平君 私の本日の質問、この程度にさしていただきます。
#39
○委員長(松野孝一君) 他に御質疑はございませんか。――なければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 午後一時半より再開することにし、暫時休憩いたします。
   午後零時二十五分休憩
  ―――――・―――――
   午後一時五十六分開会
#40
○委員長(松野孝一君) これより法務委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 十月二十四日付江田三郎君辞任、豊瀬禎一君選任、以上であります。
  ―――――――――――――
#41
○委員長(松野孝一君) 次に、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括議題といたします。
 ただいま出席の当局側は、植木法務大臣、法務省津田司法法制調査部長、最高裁内藤事務次長、守田人事局長であります。
 質疑のおありの方は順次御発言下さい。
#42
○松澤兼人君 ごく概論的な問題から質疑に入って参りたいと思うのですが、前回同僚の加瀬委員からもいろいろと質問がありました。裁判官の報酬あるいは検察官の俸給というものが一般職と別建てになっております。特に裁判官の報酬の問題について、一般職の給与の立て方と特に違うという点はどういうところにございますか。なお、超勤その他の手当、そういったもので一般職と裁判官との給与の立て方の相違ということを御説明願いたいと思います。
#43
○政府委員(津田實君) 裁判官の報酬につきましては、裁判官の報酬等に関する法律によって、その内容が定められているわけでございます。で、この内容につきましては、一般職の職員の給与に関する法律と立て方が違っておりまして、裁判官の区分に応じまして、それぞれ単一あるいは複数の号俸をきめて、給与をそれぞれきめておるわけです。で、これは一般職の給与の刻み方に比較いたしますれば、非賞にその号俸の刻みが少ないわけでございます。ただ、この特殊性は心ほり裁判官の職務と責任の特殊性から参ることでありまして、主として裁判官は、初任者でありましても、経験者でありましても、それぞれ重要な職責をここに命ぜられておるということからくる特殊性によって、当初以来、こういう形の号俸の刻み方になっているわけでございます。それで、裁判官につきましては、憲法に報酬という表現で定義を、相当額の報酬を支給する旨が示されておるわけでございまして、それに応じまして、いろいろ裁判官の特殊性を考えた給与を考えておるわけでございます。ただ、全般的に見ますると、裁判官の報酬といえども、一般職の俸給あるいは検察官の俸給と、その本質においては相違がない面があるのでありまして、したがいまして、それらの本質的な報酬、つまり一般職でいえば俸給に当たるわけでありますが、その俸給以外の手当等につきましては、大体におきまして、一般職に準じて支給できることになっております。ただ超過勤務手当、休日給、夜勤手当、宿日直手当等は、これを支給しないという法律の規定になっておりますが、これらは、その裁判官の職務の特殊性から見て、かようなものを一々手当として支給することは相当でなく、これらのものを念頭に置いて、裁判官の給与を定めるのが相当である。いわば裁判官の報酬額はそれらのものを念頭に置いて定めるのが相当であるというふうに考えて、このような規定が設けられているわけであります。その他、寒冷地手当、石炭手当、薪炭手当、扶養手当あるいは期末手当、勤勉手当等の手当、あるいは特別な調整額につきましては、裁判官にもそれぞれ一般公務員の例に準じまして認められているわけであります。
#44
○松澤兼人君 この中で、お話がなかったのですが、一般職の場合の管理職手当というようなものが裁判官の場合には入っていると思うのですが、それはどういう形においてでしょうか。
#45
○政府委員(津田實君) 管理職手当と申しまするのは、一般職の給与に関する法律におきましての、いわゆる特別の管理または監督の地位にある者についての特殊性に基づきまして給与する特別調整額ということは、一般職の職員の給与に関する法律で定められているわけであります。裁判官につきましては、これに準じまする給与ができるわけでありますので、それに準じます意味の特別調整額を、裁判官のある数については認めておるわけであります。しかしながら、管理、監督という一般職の場合の言葉そのままを適用することは相当でないと考えられますが、いずれにいたしましても、裁判官の待遇と一般職の管理監督の地位にある者との待遇に、不均衡を来たさない意味におきまして、裁判官に特別調整額を付するのが相当であるという意味において、現在の特別調整額が考えられているものと考えております。
#46
○松澤兼人君 そうしますと、裁判官の報酬が一般職の給与と立て方が違っているというのは、憲法において、法制上の特別の地位という、三権分立とかという、そういう憲法に規定されております法制上の地位からくる特殊性ということでありますか。あるいは勤務の内容か一般職とは違うということからくるのでありましょうか。その点のところをひとつ。
#47
○政府委員(津田實君) 憲法から参りまするところの裁判官の地位の特殊性と、それから裁判官の職務内容自体の一般職の場合と違った特殊性、この両者からきて、この特別の報酬制度が設けられておるものと考えております。
#48
○松澤兼人君 大体私もその二つは、裁判官の特別の報酬の立て方の重要な内容だと思うのですが、勤務年限等の問題はどうなんですか。
#49
○政府委員(津田實君) 本質的に申しますれば、裁判官は最も優秀な法曹、すなわち裁判官、検察官、弁護士あるいは法律学者を通じてのうちの最優秀、最適任者を裁判官に当てるべきだと思うのであります。そういう制度も、少なくとも英米においては考えられておるわけであります。しかしながら、日本の現在におきましては、新憲法下におきまして、やはり英米と同じような制度を念願に置いて裁判官の制度ができておるわけでありますけれども、現実の問題といたしましては、いわゆるキャリア、システム、つまり修習生から判事補になり、判事補から判事になるという制度を、今直ちに廃止するわけには参らないという実情があるわけであります。それが、この新憲法下の裁判官の制度ができましてからずっと今日まで続いている状況でありますので、そういう意味におきまして、裁判官に対しまして、どういう待遇を考えるべきかという問題が一番大きな問題になる。現実の問題といたしましては、その法曹一元化が実現した暁の理想的な裁判官の待遇という形には進んでいないと思いますけれども、少なくとも現状におきまして、裁判官なり、あるいは、ほぼ同様の職種にある検察官にいたしましても、優秀者を迎えて、適正な裁判なり、検察を行なう必要上、いかなる報酬を与うべきかということを念頭に置いて、この両法律の現想とすべきものと、こういうふうに考えて、これを改正をして参らなければならぬというふうに考えております。
#50
○松澤兼人君 法務大臣にちょっとお伺いしたいのです。この裁判官の特別の報酬の立て方につきましては、裁判所の内部においてもいろいろ問題があると思います。あるいは直接給与のきめ方等につきましては、法務大臣が所管しているわけではないと思うわけでありますが、将来の報酬の立て方としては、どういうことが現在問題となっており、また、どういう姿が望ましいとお考えでございましょうか。この点ひとつ。
#51
○国務大臣(植木庚子郎君) 裁判官の報酬の問題につきましては、いろいろと従来も一般職の給与改善のときに、それに準じて上げて参っておりますが、そのやり方で、いいかどうか、さらに根本的には、現在の報酬の制度そのものの立て方がどうかということについて議論があるように承っております。それにつきましては、現在のような制度じゃなしに制度そのものについても、根本的にやはり制度に即応したような給与制度にしなければならぬ。裁判官の任用その他の制度についての建前と、給与の制度が合うようにしなければならぬということが、もちろん根本にあるだろうと思います。ただいま政府委員からもお答えいたしましたように、現在のあるがままの裁判官の姿は、御承知のように、修習生から入りまして判事補になり判事補から判事になるというようなキャリア、システムというシステムにおいてやっておりますから、これを一挙に、たとえば英米等においてありますような姿に直すということは、なかなか困難が伴うというので、研究の事項にはなっておりますけれども、まだそれが実現の運びに至っておらないのが現状でございます。私どもとしましては、法曹一元化という問題からの裁判官、検察官、弁護士、この三者についての相通ずる一つの大きな体系を、もっともっと考究いたしましてそうして、その三者の間における人の交流等も、もっと自由にできるような格好に持っていかにゃならぬじゃないかというような問題等もございます。あるいはまた英米流にしますと、裁判官の数が現在の日本の裁判所におけるがごとくたくさんにおらないのであって、少数の裁判官でやっている。したがって、給与も非常に高いものを出しても、比較的国の負担としても少なく済んでいるというような問題もございます。それやこれや、非常に問題の範囲が広いので、しかも、それが単に給与の問題だけじゃなしに、任用その他の制度そのものにさかのぼってどうするかという問題があるものでございますから、なかなか結論が今出にくくて、困っているというのが実情だと存じております。
#52
○松澤兼人君 裁判所のほうからちょっとお伺いしたいことがございます。先日、横田最高裁長官が関西のほうに今も行っておられるようでありまして、その記者会見の記事によりますというと、最近、百三十人ほど弁護士、法曹界から判事に推薦してほしい、こういう話を持ちかけられたところわずか四人来ただけである。その次が問題なんですけれども、これは待遇が悪いからであるというようにはっきり割り切って最高裁長官は言っておられるのであります。したがって、その報酬の問題については、別途何か協議会のようなものを作って、そこで十分に検討してもらいたいものであるという発言をされております。そういう報酬全体の問題について、裁判所の中に、他の人々もまじえて報酬の問題の根本的な検討をしてもらうというような動きがあるのですか、その点。
#53
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 弁護士約百四十名ぐらいの人たちに対しまして、弁護士連合会を通じて、裁判官に志望されることを慫慂してもらいましたが、結局、ただいま言われましたように、四名程度の志望者しか来なかったということは事実でございます。そしてその理由としますことは、結局、いろいろな事情もございますが、報酬が低いということも――弁護士の実際の収入に比較して報酬が低いということも一つの大きな理由になっておるというふうに弁護士会のほうから承っております。なお、その報酬が低いということと関連しまして、現在の裁判官に適用されております退職手当制度、それから退職年金制度、これらは一般の政府職員に適用されている同一の法律でございます。同一の制度でございます。それによりますれば、結局長い間勤めなければ、退職金も相当な額にならず、退職年金も相当な額にならない制度になっておるわけでございます。ところが、弁護士から裁判官になりますと、たとえば、憲法で規定されております十年間の一任期を裁判官として勤めましても、期間が短い関係で退職手当も少ないし、また退職年金も少ないということになりまして、弁護士としての地盤を捨てて裁判官になって、一任期過ぎたころには地盤は失っておる。退職金及び年金は少ないのですから、地盤を回復するまでには。非常に困窮しなければならぬといったようなことも、そこに手伝いまして。希望者が非常に少ない、そういったようなことがあるわけでございます。ですから、弁護士から裁判官に誘致することについての一つの大きな問題点は、この退職年金や退職手当制度をも含む報酬の、給与の定め方、これが一つのガンをなしておるということが言えるかと思います。
 で、現在最高裁判所で民間人その他を含めました一つの制度を作っておるか、そしてそこで考究しておるかというようなお尋ねでございますが、現在は、まだ最高裁判所におきまして事務的に諸般の検討を加えなお弁護士連合会などといろいろ協議をしながら検討を加えている段階でございます。ただ、昨年の臨時国会にベース・アップがあったわけでございますが、そのことに引き続きまして、政府との間に連絡会を設けまして、裁判官の報酬につきまして、検討を遂げておるということは言い得ると思います。以上でございます。
#54
○松澤兼人君 それならば、ちょうど逆の場合ですが、裁判官から民間法曹のほうに毎年どのくらいの方々がお入りになるか。つまり裁判官を退職されて弁護士を開業しようという方々はどのくらいございますか。
#55
○最高裁判所長官代理者(守田直君) ただいま手元に全体の裁判官の資料はございませんが、裁判官のうち、その中心となるべき下級裁判所の判事から弁護士になる数はわかりますので、それを申し上げますと、判事は、多いときは昭和三十二年に二十人ほどございましたが、昨年は九人、今年度は八月末までに八人といったような数字を示しておりまして、大体平均いたしますと、昭和二十八年以降十人前後になっております。
#56
○松澤兼人君 前回も質問があったかと思うのですが、それで、本年司法修習生から判事補になったのは何人ですか。
#57
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 八十一人でございます。
#58
○松澤兼人君 横田最高裁長官はこんなふうに言っておるのですけれども、まあ明治十二年ということですから、ずいぶん古いわけですが、から比べると、現在では民事は二倍、それから刑事は十二倍になっておる。これに比べて裁判官の定員は、現在千七百十二人であるから、七十年間にわずか二百人しかふえていない、こういう発言をされているわけですが、実際はこの数字のとおりなんですか。
#59
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 現在の裁判官の定員は千七百名ばかりでございます。これがいわゆる判事、判事補でございまして、このほかに、現在は簡易裁判所判事という、これは旧制度になかったのがあるわけでございますけれども、旧制度におきましてやりましたものの判事、今度の制度に改まりまして判事、判事補というのは現在千七百名ばかりになっております。したがいまして、その観点に立ちますと、旧制度と比較いたしまして、ただいま御指摘のような増加にとどまっているということは申せるのでございます。
#60
○松澤兼人君 先日も質問がありまして、事件の遅延の問題が、やはり裁判所の問題につきましては大きな問題だろうと思うのですが、先日、私どもが国会から地方へ視察に参りましたときに、ある高裁でお聞きいたしましたときには、裁判の遅延ということはほとんどないと、こういう話を聞いたわけなんです。ところが、横田最高裁長官は、遅延がはなはだしいというようなことを言っておられますけれども、定員がふえていない、事件は非常にふえているということで、だれが考えましても、一応、裁判の遅延ということが考えられるわけなんです。しかし、現実にある高裁関係のところで、裁判の遅延ということはほとんどないと、こういうお話を聞きますと、どうもぴんとこないわけなんです。裁判の遅延ということは、全国的に見てどういう状態になっておりますか、お知らせ願いたいと思います。
#61
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判の遅延の問題は、ただいまも御指摘がございましたように、事件の増加、そしてそれに伴うところの人員の増加が得られないために、全国的に遅延の状況にあると申すことができると存じます。こまかい数字について、ただいまちょっと用意がございませんのでお答えいたしかねますけれども、私ともが統一上見まして、現在心配いたしますのは、事件の審理期間、これが、平均いたしますと、平均数としては、それほど長いのではございません。しかし、特殊な事件について非常に長くかかっておるということがあるわけでございます。
 それからもう一つ問題になりますのは、平均の審理期間が毎年少しずつ伸びるということでございます。これは未済事件が毎年全国的にだんだんふえていること、それから審理期間が、平均して年々伸びているということ、これが現状でございまして、これについては、人員の増加の面において、あるいは手続の面において、いろいろ検討を加えまして改めなければならない問題があるわけでございます。
#62
○松澤兼人君 審理の促進をやる具体的な方法というのは、今お考えの方法というのはございますか。
#63
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 結局、ある制限された裁判官の数におきまして、今日だけの事件を処理しなければならぬということになるわけでございます。これにつきましては、やはり第一審、第二審、第三審それぞれの工夫を加えまして、最も能率的な処理ということを考えることになるわけでございます。現在、刑事につきまして、特に公判における審理の充実と申しますか、事件の公判における審理を、一定の時間に十分に充実した審理をいたしまして、最も能率の上がる審理、真実の発見ということに努める工夫がなされております。公判の期日前に、検察官、弁護人に、十分に準備をしてもらいまして、公判期日にむだのないように審理できるような方法でございまして、これは、ただいま最高裁判所におきまして、そういう規則を作りまして、実施の準備をいたしております。これは現に試みとして、東京地方裁判所その他におきまして実施されて、相当な成績を上げておりますが、この規則が昨年の一月一日から施行されまして、全国的にそういった方法で、まず第一審の能率的な処理ということが実現できることと期待しておるわけでございます。一方、民事におきまして、御承知のように、民事の事件は、主としてやはり大都会の裁判所で遅延するわけでございますが、これにつきましては、東京あたりにおきまして、専門の部を作りまして、たとえば、手形部であるとか、無体財産の事件を扱う部であるとか、そういった特殊の部を作りまして、そういった専門の裁判官によりまして、能率的な処理をはかるように、これは最近、本年度から実施に手をつけておりまして、手形事件など相当な成績を上げておるように聞いております。
#64
○松澤兼人君 具体的にいえば、一審の強化ですね、一つは。それから集中継続審査ということですね。具体的にいえば、そういう形になりますね。
#65
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 現在、私どもが最も力を入れているのは、ただいま御指摘のような一審の強化ということでございます。刑事における集中審理ということになるわけでございます。
#66
○松澤兼人君 関連いたしまして、私どもが別途提案いたしております裁判所法の一部改正ですか、これについてはどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
#67
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 裁判官が不足をしております現状におきまして、先般、裁判所法の改正をお願いしたわけでございます。それによりまして、現在書記官が裁判官の補助機関といたしまして、法令、判例その他裁判官の命によりまして、必要な調査を行なうことになっております。書記官は、御承知のように、相当の高い任命資格によりまして任命いたしまして、さらに研修を行ないましてその資格が与えられているわけでございます。したがいまして、書記官はそれだけの能力、資質ある者が書記官に任命されて、ただいまのような特に裁判官を補助するところの権限が与えられたわけでございます。しかし一方におきまして、現在のそういう書記官になり得る実際の人員が少ないために、書記官補に、ある程度の範囲で書記官の代行を命じているわけでございます。ただいま御質問のございましたのは、その代行の制度の問題だと存じますが、現在の人員、現在の事件の負担の現状におきましては、やはり代行の制度によって、書記官の事務の補充をいたすほかはないと考えております。
#68
○松澤兼人君 すでに国会に提案されておりますわれわれの法律案は、その書記官補に書記官の仕事を代行させろという期間を、「当分の間」というのを「昭和三十七年の三月三十一日」ですか、という期限を明示いたしまして、それまでに官補代行の制度というものをなくしてしまうということが中心になっていると思うのです。これについては、裁判所側としては、どういうお考えなんですか。やはり予算だけの問題ですか。制度上、そういうことをすることは非常に危険だとか、あるいは資格において不十分だとかいうようなことをお考えになっていらっしゃいますか。
#69
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 御承知のように、書記官は書記官補から順次昇進させております。書記官補から書記官に昇進させるにあたりまして、新憲法下における裁判所書記官としての知識並びに実務の能力といったようなものがどの程度にあるべきかというようなことを考えまして、裁判所書評官研修所という制度を設けまして、そこで年間百五十人ずつ入所せしめまして研修をして、それを終わると書記官にしておるわけでございます。それと同時に、書記官昇任試験といったようなものをいたしまして、同じ程度で順次書記官に昇任させていく。それからさらに書記官の職務を一部行なっておる書記官補でありまして、その代行の期間が非常に長く、実務の経験が相当十分にある者につきましては、これは基礎的な、法律学的な知識がやはり欠けておりますので、それを短期間につけてやるという意味で特別の研修をいたしまして、順次書記官に昇任さしておるわけでございます。現在、代行書記官として千六百人ほど残っておりますが、これらの書記官補につきましても、実務の点はある程度できますけれども、基礎的な学力がありませんので、応用するような力というものは、どうしてもそこに十分とは言いかねるわけでございまするので、こういう人たちをそれぞれ研修所へあるいは試験に、あるいは特別の研修によりまして順次上げていこうというふうに考えておるわけでございます。最高裁判所といたしましては、この代行書記官というものが全部書記官になることを希望しておるわけでございまして、そういった代行書記官が一人もなくなるということは、やはり最高裁判所としても望んでおるわけであります。しかしながら、御提案の法律案のごとく、来年度におきましてすべてその代行を廃止するということになりますれば、現在の状況では、代行書記官を全部書記官にするというようなことはできないわけでございます。といいますのは、最高裁判所の研修能力からいいまして、年間約八百人程度が、もうフルに活動してその程度でございます。でありますから、その残りの数が、一度に代行書記官を廃止してしまって、書記官補だけにしてしまうということになりますれば、現在の裁判所の状況といたしましては、書記官の事務に手不足を来たす、結局、訴訟遅延を来たす結果にならざるを得ないわけでございまして、来年度におきまして、来年の三月終わりに廃止になるということは、最高裁判所としては非常に困るということを結論せざるを得ないわけでございます。しかしながら、また、そればかりじゃなく、特別の研修をいたしまして、相当の実力をつけて書記官にいたさないと、書記官は、従来の書記官の仕事のほか裁判官を補助して調査や研究などをいたしますので、そういう能力のない代行書記官がとたんに書記官になるというようなことにもなりますので、これも、この点からいいましても、何ら研修を施さずにいきなり書記官にしてしまうということにつきましては、危惧の念を持つわけでございまして、いろんな点を考え合わせまして、最高裁判所といたしましては、やはり書記官補は研修をして書記官にしたいという意向でございますので、そういった点から申しまして、来年三月に代行書記官を廃止してしまうということは、賛成いたしかねる次第でございます。しかし、結論といたしまして、代行書記官というものはなくなって、全部が書記官になるということについては、もちろん望むところでございまして、その趣旨自体には賛成でございます。
#70
○松澤兼人君 もう少し御説明願いたいと思うのですけれども、一時に書記官補をなくしてしまうということは、研修等の関係で手不足になると、こういうことなんですか、あるいは素質が――素質がといいますか、資格が不十分であるから困るということなんですか。その点をさらに説明していただきますと、どういうことになりますか。
#71
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 素質が書記官の程度まで達しないから困るということでございます。それがちょっと、もう少しくだいて申しますと、先ばしって申しまして恐縮でございましたが、代行書記官を廃止してしまうということは、今代行書記官として書記官の仕事の一部分をしておりますので、廃止してしまいますというと、代行書記官の仕事ができなくなる、したがいまして、書記官事務がそれだけ手薄になる、そういう関係で訴訟上困るということになるわけでございます。
#72
○松澤兼人君 それでは社会党が提案しているように、来年三月三十一日まで日を区切られると困るけれども、書記官補をなくすとか、あるいは書記官の代行をやらせている現在のような制度は、将来なくなったほうがいいということだと思うのですけれども、もし、われわれの言うように、日限を切って一挙にしてこういう官補の制度をなくすということが実際上困るということであれば、この官補をなくすために、あなた方御自身が計画して、実施してなくすためには、もうどのくらいの期限があったらよいですか。
#73
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 官補の定員を書記官の定員に組みかえていくということは、これは相手方のあることでございまして、私どもとして、年間裁判所の研修制度をフルに利用いたしましても、八百名程度しか研修ができない状況でございます。したがいまして、その八百名ずつ財政当局が承認をいたしますならば、それは、このほかに事務官、本官で書記官補の仕事を兼ねておる者もございますので、大体三年くらいで――三年ないし四年ぐらいでは解消するのではないかと思いますけれども、何分相手方のあることでございますので、何年ということは、ここで申し上げられないと思います。
#74
○松澤兼人君 予算のことをおっしゃいましたけれども、予算の関係はどういうことになるのですか。一応は書記官補として給与をもらっていると、それが書記官になると、そういう点で多少給与はもちろんよくなると思うのですけれども、かりに八百人もし研修させて問題なく官補から書記官になったといたしまして、その限りにおいては、どのくらい予算がふえるということになりますか。
#75
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 最高裁判所といたしましては、現在代行書記官の中から八百名、それから事務官で書記の資格を有しまして、現に書記官の仕事を兼ねてやっております者が約七百人ぐらいございますので、昭和三十七年度要求予算には、この事務官の本官で書記官の仕事をしております書記官七百名と、それから代行書記官のうち八百名、合計千五百名を書記官の定員に組みかえることを要求いたしておる次第でございます。で、それに要する予算額は約六千万円程度でございます。
#76
○松澤兼人君 そうしますと、この代行している書記官補八百人と、事務官でそういう仕事をやっておられる七百人、千五百人が代行的な立場から書記官というものに任用されて、ふえる金額が六千万円ということですか。この中に、従来からもらっている給料というものが含まれているわけですか。その点はどうなんですか。
#77
○最高裁判所長官代理者(守田直君) いや、新たに切りかえることによって要する経費でございます。
#78
○松澤兼人君 それでは、この裁判所法の一部改正の法律案は、また別個に出ておりますので、この点は別の機会にお尋ねすることにいたします。
 そこで、一番先の、裁判官と一般職の給与の立て方の問題でありますけれども、法曹一元化ということは、たいへんりっぱなことでありまして、優秀な民間の法曹人が裁判所に入って、その経験と知識とを生かしていくということは、裁判所自身の内容も豊かにかりますし、また、裁判に誤りのないことを期することができると思うのですが、その理想といいますか、あるいは、その希望というものは一応了解できるといたしましても、先ほどお話がありましたように、弁護士の収入というものと、それから裁判所の裁判官の報酬というものとが、あまりにも開きがあり過ぎるということは、これはもう本質的なものであって、裁判官の報酬というものを弁護士の収入に合わせていくということは、おのずからそこに限界があるような気がするんですけれども、本質的な、弁護士の収入とそれから裁判官の報酬との間にはならしてならせる問題ではないように思うのですけれどもこの点はいかがですか。
#79
○政府委員(津田實君) ただいま御指摘のとおり、弁護士の実質上の所得と裁判官の報酬等による所得とに、相当の開きのあることは現実でございます。また、お説のようにこれを全く弁護士の平均所得と申しますか、それと裁判官の所得を同じくするような制度を設けることは、非常に困難であるとは思うのであります。しかしながら、弁護士から裁判官になりますることをはばむといろいろな要素があると思うのでありまするけれども、その要素はいろいろあると思います。報酬の問題はかなり大きな内容を占めておると思うのでありますが、同時に、裁判官の職務内容について、弁護士からやはり魅力のあるものにしなければならない。あるいは裁判官におきましては、正当の理由があれば、任地におもむかなければならぬ。要するに一定の自分の好む場所に定住することができない。したがって、子弟の教育に困るというような問題もある。これは職業上の、そういういわゆる国家公務員である場合と、自由職業との非常な違いでありまして、さような点にも、やはり弁護士から裁判官になることをはばむ要素があると思うのであります。しかしながら、そういうようなすべての点をいろいろの方法によってなるべく解決をいたしまして、弁護士から優秀な裁判官を得られるようにしなければならないということが考えられるわけです。そこで、この報酬の問題のみならず、退職金の問題、あるいは年金の問題、あるいは子弟の通学寮を設けるとか、あるいは宿舎の問題とか、いろいろな問題を総合いたしまして、裁判官の待遇をよくして、それでその裁判官の待遇に見合うところの裁判官の地位と申しまするか、裁判官に対するあこがれというようなものを育成いたしまして、それによって弁護士から裁判官を迎えるということにならなければならないと思うのであります。しかしながら、何と申しましても、非常に余裕のある給与と申しますか、報酬を得ているわけではないわけでありますので、そういう面の事柄が、かなり大きな要素になるという意味におきまして、報酬の問題は重要と考えますから報酬の問題についても、やはり裁判官をしてある程度の余裕あらしめるような額を与えることによって、その面の欠点と申しますか、を少なくしていくというのが方策ではないかというふうに考える次第でございます。
#80
○松澤兼人君 先ほど私が引用いたしました最高裁の長官の記事によりますると、もうはっきりと割り切ってしまっていて、裁判官の報酬というものが全くなってないから、法曹界から来手がないんだと、こういうようなきめつけ方をしますと、それではということで、それに対して反対の意見を申し上げなければならなくなる。そうでなくして、裁判官が愛せられるといいますか、あるいは尊敬されるといいますか、非常にあこがれの的であるといったような、まあそういう社会的地位あるいは権威あるいは待遇、さらには恩給の問題、こういったような諸般の条件の一部として、その中で比較的報酬の問題というものが重要性を持っているんだということであれば、われわれとしても納得ができるわけです。的にいえば、この席にも弁護士の方がおられますけれども、まあいいときには弁護士は非常にいいです。しかし、必ずしもいいときばかりではないわけでして、それはおそらく弁護士という一つの仕事もたいへん――そういう言い方をすることが適当であるかどうかわかりませんが、社会的正義だとか、あるいは、社会のためということ、そういうこともあるんでしょうけれども、しかし、やはり計算の上に立って、弁護士という仕事が引き合う仕事であるという、そういうことで弁護士の方方が考えていらっしゃるという面もあると思うのです。それはやはり仕事でありまするから、いい場合もあるし、悪い場合もある。悪い場合には民間から裁判所に入ってこられる方も多いし、こういうことは一がいに法曹一元化という、そういう理想論で片づけることもできないのではないかというふうに思うわけなんです。先ほども恩給の問題が出ましたけれども、弁護士をやっている限りにおきましては、もちろん恩給というものはない。これは裁判所に勤めているということによって、他の一般公務員と同じような恩給の制度というものがあるわけですから、そうい点につきましては、やはりならしてある程度まで裁判官の地位を引き上げ、あるいは待遇をよくしていくということと同時に、やはりおのずから彼我検討して、あまり一般職の給与の体系というものと異なった体系を作るということは、いろいろ問題があると思うのですけれども、これは私の意見をある程度まで申し上げたわけで必ずしもこれを裁判所なり、そちらの方に賛成してもらいたいというわけではない。こういうにらみ合わせといいますか、かみ合わせといいますか、そういうものは、いかがでございますか。
#81
○政府委員(津田實君) 現在の裁判官のある姿と申しまするのは、法曹一元化を実現いたしましまして、法曹の中から最も優秀な、その任に適する方方を選んで裁判官にするという理想を実現しているわけではありません。したがいまして、現在の裁判官は、まあ憲法上の制度はともかくといたしまして、キャリア・システムに事実上なっているわけです。そこで、そのキャリア・システムと申しますことになりますと、これは一般職の職員の給与とのやはり均衡ということは、ある程度考えざるを得ないという問題になると思うのであります。しかしながら、法曹一元化を実現して、最優秀者を法曹の中から選ぶということになれば、これはそういう問題から遮断された問題ではないかというふうに考えるわけであります。やはり裁判官というものは、結局、その供給源になるのは法曹なんでございまして、今日の一般職の制度でございましても、初任給をいろいろ調整するということ、ことに理科系統の人について、初任給を高く調整しなければならぬということは、要するに理科系統の人から役人になる者を補充することができないという現実に対する妥協といいますか、ということで、そこに理科系統の者が文科系統の者よりも高い給与を与えなければならぬという必然性はないと思う。したがいまして、そういうやはり現実に法曹から裁判官を供給できないという現実をやはり相当見なければならぬ。ことに一日もゆるがせにできない仕事でありますので、なおさらそういう点を考えなければならぬといたしますると、一般職との比較ばかりを考えているわけにはいかないというのが、現状であろうと思うのであります。
#82
○松澤兼人君 本日でしたか、やはり横田最高裁長官が、裁判の秩序を維持するために、警察官の導入をしても差しつかえはないというような発言をされております。また。先般大阪に行かれまして、すぐに記者会見をやられまして、そのときには、裁判官という地位でなく、一般市民ということであれば、極端に言うと、どういう発言をしてもかまわない。しかし、時期であるとか談話の形式であるとかいうものは慎重に考えなくちゃいかぬ、こういうようなふうに言われているのですが、何となくどうも裁判所が外のざわざわした動きにつられまして、戦闘的というか、あるいは攻勢的というか、ば九に力みかえって発言をされているよらな様子が見えるのですけれども、これはあれですか、横田長官の個人的な意見なのか、あるいは裁判所の意見なのか、その辺のところ、だれかおわかりの方はありますか。
#83
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまの記者会見のことは、私まだよく読んでおりませんけれども、おそらく、私どもいつも裁判所として考えていることが、たとえば法廷に警察官を導入するということ、これはきわめて望ましくないということは、私ども考えているのでございます。しかし、法廷の秩序はあくまでも厳正に保たなければならない。その厳正に保たれなければならない法廷に、あるが場合に、非常な何と申しますか、混乱起きて秩序の維持が裁判所の手において保ち得ないということも起こり得るわけでございます。こういった真にやむを得ない場合には、警察官を法廷に導入することもまたやむを得ないと申されましたものと存じます。私ども裁判所として、そういうふうに考えているわけでございまして、長官の言われました御意見も、その趣旨であろうと存じます。
 また、裁判官が一市民として何を言おうと、それは自由であるけれども、発言の内容に至っては、裁判官として、やはりその時期、場所、方法等を考えなければならぬということを言われたのも、まさにそのとおりだろうと存じます。私どもも裁判官といたしましては、やはり同じことを言うにいたしましても、その時期、場所によりましては、いろいろ誤解される場合もございますし、あるいは裁判官としての事件の処理に直接影響をするような印象を与えることもございますので、私どもとしては、当然それは慎まなければならぬことと考えておる次第でございます。
#84
○松澤兼人君 そういう最高裁長官の非常に積極的あるいは戦闘的な立場が反映しているのかどうかわかりませんけれども、最近東京における裁判所の中で、一部の人たちが組合のビラをはがして、その上に、家裁の所長であるとか、あるいは地裁の所長などに面会を求めてくる。そして組合の立場というものは中立公正でなければならないのに、一方的なポスターを張っている、けしからぬじゃないかと、こういう抗議があった。それに対して、地裁だったか、あるいは家裁だったかの所長は、組合側に自重反省を求めてきたというような事例があるのですけれども、こういう事実は実際にございましたか。
#85
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 御指摘の、右翼とおぼしき者が裁判所の構内に入りまして、そして職員組合の掲示板に張られたポスターをはいだということは、事実のようでございますし、知っております。ただ、その際、所長と面会して、所長との間にどういう話があり、また、所長が組合員諸君に、どういう話をされたか、これは報告を受けていないのでわかりませんが、おそらく、危険だから自重するようにというようなものでないかと推察されます。
#86
○松澤兼人君 そこで問題は、一部の人たちが抗議をしに行けば、直ちにその所長が、職員組合に対してその反作用があるわけです。組合が厳正、公正でなければいけないと、こういうことは一応わかります。そうすると、所長だってやはりそういう態度で臨まなければいけないと思うのです。一部の人たちが抗議に行ったら、すぐにそれが組合へ来まして、ただいまお話のように、まあ危険だから自重しなさいと、こういうことになる。しかし、それは言い方、受け取り方によりまして、そういうことをするのはけしからぬ。一部の人が言うように厳正、公正でありなさい、こういった訓示的な発言を組合自身が受け取らなければならぬということであれば、これは相当重大な問題だと思う。この問題については、また、この委員会で審議している間に、裁判所のほうから実情を調査して御答弁願いたいと思います。
#87
○亀田得治君 関連して。最高裁長官の談話の問題ですが、ああいうものは、ちゃんと長官のほうで原稿をお作りになって、そうして記者会見をされる、こういうふうなことになっておるのでしょう、どうでしょう。
#88
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 場合により、事柄によると存じます。場合により、ある程度の用意がされる場合もあるかと存じますけれども、用意された以外に、その場のいろいろな質問に応じて答えられることもあるかと存じます。
#89
○亀田得治君 裁判所と警察というのは、いろいろな意味で非常に関係が重要なわけでして、警察のやったことを裁判所がさらに上から、大所高所から見ていくといったような性格も一面にあるわけですね。そういう立場にある者が警察官の力を借りて裁判をやる。それは、なるほどそれだけの理由が若干あるでしょうが、これは容易にちょっと発言してはならぬことなんです。どういう事情があろうと。発言する以上は、すべての人がやはり納得するように、ちゃんとした原稿も作り、そういうものでなければならぬと私は思うのです。それで今回のやつは、そういう原稿などを整備された発言であるのかないのか、その点、どうなんでしょう。
#90
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 今回のその点に関する長官の発言につきましては、私承知いたしておりません。
#91
○亀田得治君 これは、ひとつ、非常に重要なことでありますので、確かめていただきまして、そういう原稿などを用意されて発表されたものであれば、ぜひ御参考に、その原稿を資料として出してもらいたいと思います。いいでしょう、いいですか。
#92
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) かりに何か原稿と申しますか、メモと申しますか、おそらくこの場合、用意されていないと私は推察いたしますけれども、かりにメモなり用意されているといたしましても、それは御発表いたす限りでないと思います。
#93
○亀田得治君 御発表いたす限りではないというふうに言われるのですが、私はこれは、何も最高裁が今扱っておる具体的な事件について、国会が関与する問題でもありませんし、最高裁長官としての姿勢をいう問題は、これは国会が関与していい国政上の問題だと思うのですが、最高裁長官の考え方が、長官としてふさわしくないというようなことがあれば、それに対して、私たちがそれに相当な行動もとっていいわけでしょう。裁判に具体的に私たちが干渉するとかせぬとかの問題と違うと思うのですが、事は裁判制度なり、あるいは警察の制度、そういう制度上の問題に私たちが関心を持っていり。そういう立場からのわれわれの関心であり、発言であるわけなんです。裁判官のことは、何でも関与される限りでない、そんなことは絶対ないでしょう。それは裁判については、むやみに関与しちゃならぬ、これはわれわれもその原則は守ってきておる。あるいは国会議員の場合だって、ちゃんと憲法なり、法律上きまったひとつの特権というものはある。あったって、それは国会議員の職務上のことなんです。だから、ああいう一般的な立場で発言されたことについて、また、国会議員がそれに関心を持つのはあたりまえなんでして、制度に関心を持つからその発言にも関心を持つ。限りじゃないというのは、私はちょっとはなはだもって行き過ぎた答弁だと思うのですが、本人がそういうことをおっしゃるなら……、本人はおそらくそんなことはおっしゃらぬと思う。それはむしろ喜んで、こういう考え方なんだとお示しになると思う、私は。どういう意味なんですか、そんなことは示す限りじゃないというのは。
#94
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 先ほど御質問がございました、今度の記者会見に一体メモがあったか、どこか、あったとしたらどうかということの御質問にお答えしたわけでございまして、それ以外のことについて申し上げているわけではございません。
#95
○亀田得治君 そこで私が要求しましたのは、そういう何か用意された原稿があれば、それを見せてもらいたい。それに対して、あなたのほうは、そんなことは見せる限りではないというようなふうに私は言われたようにとったわけなんです。それは、私はおかしいというのです。最高裁長官の全く個人的な問題でもないし、それかといって、そういう裁判に直接関係した問題でもない、具体的なケースについて。そうであれば、全体の国政をあずかる者は、それについて関心を持ち、したがってまた、長官の意見は、新聞なりではなしにはっきり知りたい。これは考えるのはあたりまえです。出さぬとおっしゃるなら、それは何らかの方法で、こっちも要求した以上は、それは出してもらうようなことを考えなければならぬです。そんなことは、こっちの言うのが、無理ですか。長官の発言を正確に知りたいから、新聞やそういうものだけのことで簡単に批判をししやいかぬから――もっともなことじゃないですか。
#96
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 先ほどお答え申しましたのは、そういうメモみたいなものを用意したかどうか、私にはわかないということと、それから、もしかりにあったと仮定した場合の意見を申し上げたわけでございまして、先ほどのお答えで私の申し上げたことは尽きていると思います。
#97
○亀田得治君 いや、尽きているといって……、あってもそんなことは出す限りじゃないと、端的に言ったらそういう意味ですか。
#98
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 先ほどお答えしたとおりでございます。
#99
○亀田得治君 これは委員長、ちょっと少し注意してもらいませんと、先ほどお答えしたとおりというようなことを言ったつて、一字一句間違わぬようにこちらが聞く場合もあるし、多少ちょっと聞き漏らす場合もありますし、それはこちらは意味がわかるように二、三回繰り返してお尋ねしておるわけですから、ちゃんとあらためて、同じことであっても答えてくれたらいいのに、先ほどのお答えは、何かはなはだ、そんなことは必要ないと、出しませんというような意味にとれたから聞いておるので、そういう意味でないというのならない、いや、亀田委員のお尋ねのような意味で言うたんだというのならそれでもいいし、中身を一回や二回、簡単なことだから繰り返して言うたって何の不都合もないでしょう。
#100
○委員長(松野孝一君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#101
○委員長(松野孝一君) 速記を始めて。
#102
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) お話の記者会見の場合に、長官がメモのようなものを用意いたしましたか、どうか、私としては存じないわけでございます。長官が帰りました上で、まあその点が明らかになると存じますけれども、かりにメモがあったといたしまして、私としては、それを御提出するということは、この場でお約束いたしかねるわけでございます。
#103
○亀田得治君 せっかく理事の皆さんが適切に御指導になったと思ったのに、また最後のほうで妙なことがつけ加わりましたが、御提出願うのは、これは長官に私たちお願いしているわけなんです。だから、あなたとしては、自分が何も出すとか出さぬとかと、そういう意味じゃないのでして、だから、こういうことをやはり長官にそのまま伝えてほしいわけなんです。それで長官が、いや、それは出す限りしゃないと言うのならそのことをお伝え願ったらいいわけでして、そうしたら私たち、長官に対してまた適当な態度をとればいいわけでして、自分が途中で何かそう言うところを見ると、何かあなたがちょっと、長官が出すと言うても、出さぬでもいいようにするような、何かそういう気持があるものだから、ちょっと出るのと違いますか、そういうことが。
#104
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 決してそういう気持でお答えしているわけではございませんが、私としては、この場でお約束いたしかねると申し上げたわけでございます。もちろん、それは長官の意向によってきめることでございます。
#105
○亀田得治君 まあその程度にしておきましょう。
 それから、さっきの東京の裁判所における掲示板の問題ですね。これは私たち聞いていて、非常に不愉快に思っているんです。基本的人権、言論を守っていく府だと裁判所がいわれておるのに、一方は言論活動をやっているわけでしょう。それに対して、右翼とおぼしき者が文句をつけてくる。それをはがす。で、ついでに所長に文句言うてきた。それをまた受けて立つと、そんなばかげたことないですよ。それは、はがすのは向こうの勝手かもしれぬけれどもね。むしろそれ自体を、何でそんなことをするのだということで処理すべき問題でしょう。政防法でも、そういう力でもって押しちゃいかない。これであなた問題が起きているわけでしょう。だから、はなはだこれは遺憾なことでして、至急調査してもらいたいのです。そして、一体いかなる掲示物をはいだのか、これを明確にしてほしい。いかなる掲示物をはいだのか、そうして所長の応対の事情ですね。これもやはり微妙な点もあるでしょうけれども、文書でやっぱり報告してほしいのですな、しっかり聞いてもらって、私たち納得いかなければ。これは全く司法行政上の問題ですから、もっとわれわれとしても、今後こういうことのないように、――こんなことをあなた放置しておいたら波及していきますよ。けしからぬ話だ、これは全く。それだけのことは明確にしていただけますね。掲示物と、それとその……。
#106
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 承知いたしました。
#107
○井川伊平君 関連して。告知板に張って差しつかえないものもあるかもしれぬし、張ることははなはだしく非常識なものもあるかもしれぬから、その内容を知らぬでは議論ができないから、調査をするということには私も賛成です。
#108
○亀田得治君 これはもう二、三日あれば私は可能だと思いますので、できるだけひとつ至急出してほしいのです。この国会中にやはり起きた問題ですから、処理したい。これは私たちの希望ですから、あすかあさってぐらいにでも出るようにひとつお願いしたい。二日間でできますか。
#109
○委員長(松野孝一君) 委員長から申し上げますが、ただいま亀田委員の要求する調書、どういうものを張っておったか、それからその人が、所長などに会ってどういうことをし、それから所長がそれについてどういうことを言ったか、その内容を調査して文書で御報告願いたいと思います。
 ちょっとあなたにお伺いしますが、いつごろまでにそれはできますか。
#110
○最高裁判所長官代理者(守田直君) 二、三日あればできると思います。
#111
○委員長(松野孝一君) ちょっと速記とめて。
   〔速記中止〕
#112
○委員長(松野孝一君) 速記をつけて。
 暫時休憩いたします。
  午後三時二十四分休憩
   〔休憩後開会に至らなかった〕
  ―――――――――――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト