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1961/10/27 第39回国会 参議院 参議院会議録情報 第039回国会 法務委員会 第8号
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1961/10/27 第39回国会 参議院

参議院会議録情報 第039回国会 法務委員会 第8号

#1
第039回国会 法務委員会 第8号
昭和三十六年十月二十七日(金曜日)
   午後一時四十七分開会
   ―――――――――――
本日委員大森創造君辞任につき、その
補欠として豊瀬禎一君を議長において
指名した。
   ―――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松野 孝一君
   理 事
           井川 伊平君
           増原 恵吉君
           亀田 得治君
   委 員
           青田源太郎君
           木島 義夫君
           徳永 正利君
           鳥畠徳次郎君
           林田 正治君
           加瀬  完君
           松澤 兼人君
           田畑 金光君
           辻  武寿君
           加賀山之雄君
  衆議院議員
           鈴木 義男君
           富田 健治君
           早川  崇君
           門司  亮君
  政府委員
   公安調査庁次長 関   之君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
   ―――――――――――
  衆議院法制局側
   第 二 部 長 川口 頼好君
   ―――――――――――
  本日の会議に付した案件
○政治的暴力行為防止法案(第三十八
 回国会衆議院提出)(継続案件)
   ―――――――――――
#2
○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 政治的暴力行為防止法案を、議題とし、前回に引き、続いて質疑を続行いたします。
 ただいま出席の当局側は、発議者衆議院議員早川崇君、同じく富田健治君、同じく門司亮君、衆議院法制局第二部長川口頼好君であります。
 御質疑のおわりの方は、順次御発言下さい。
#3
○田畑金光君 私は、提案者に、対して、まずこの法律の立法の経緯についてお尋ねしたいと考えますが、政治的暴力行為防止法案がなぜ提案されたかという経緯については、一応私なりに理解を持っておりますけれども、ただ、この種治安立法は、それを生み出す社会的なあるいは客観的な条件の成熟から生まれてきたということは、よく理解できますけれども、ただ、この種治安立法は、ときに国民の基本的権利に影響し、あるいはまた、労働運動とか大衆運動に対し、非常な運用によっては悪影響あるいは侵害をもたらす危険性があるわけでございます。ことに戦後の日本の社会の民主化の過程を振り返ってみますと、戦前戦後の日本の特殊な社会条件がそうさしたのでありますが、この種立法に際しては、国民も非常に敏感であり、警戒的であるわけです。ことにまた、今日この法律案に対しまっこうから反対する、団体や、あるいは批判する個人等においても、この種法案を正しく理解して、是非の批判をする前に、むしろ一つの社会的な環境から、あるいはムードから批判をする傾向も多々あるわけでございます。こういうことを考えてみましたときに、われわれといたしましては、この種治安立法というものが、あくまでも超党派的に、各党の意見の一致の上に立って提案されることが望ましいあり方であったと、こう痛切に感ずるわけです。その意味におきまして、先の通常国会においては、衆議院段階におきまして、社会党でもテロ行為処罰法案が提案され、民社党が政治的危害防止法案を提案し、また、与党におかれても法案を準備されたわけでございます。いろいろな経緯は経たでありましょうが、それが今日、自民、民社共同提案の政治的暴力行為防止法案、こういう形になったわけでございますが、今後の審議を進める上のまあ思想的な統一をはかる上において、そういう気持もありますから、衆議院段階においてこの治安立法を手がけた当時のひとついきさつを説明を願いたい。こう考えております。
#4
○衆議院議員(早川崇君) それでは、提案者を代表いたしまして、経過を御説明申し上げたいと思います。われわれ提案者の基本的な考え方は、終戦後得たわれわれ日本国民のただ一つの宝物は民主主義である、平和的な議会政治であると、こういう基本的な考え方に立ちまして、この民主主義をここ数年来暴力によって危機に陥れるという社会情勢が生まれて参りました。浅沼事件あるいは河上、岸殺傷事件、さらには、暴力的な集団暴力あるいは集団監禁というようなものが非常に激増して参りまして、せっかく得た宝である民主主義が脅威を受ける段階になりました。さらに、一般暴力に関しましては、非常なこれまた激増ぶりでございまして、政治的並びに一般暴力というものを何らかの意味でこの際排除するという以外に道はないと考えて参ったわけであります。そういう関係で、昨年の暮れにたまたま浅沼事件というものが起こりましたときに、共産党を除く三党によりまして、暴力排除に関する決議案というものが採択されまして、その趣旨にのっとりまして、われわれは、単に政治暴力のみならず、町の暴力をも排除しようというので、一方は銃砲刀剣類の所持禁止法の改正、政治暴力に対しましては政防法ということに進んで参ったわけでございます。次にお尋ねの、こういう法案は各党各派が一致するのが望ましいと、こういうことも、われわれも十分痛感をいたしまして、法務大臣も政府提案をいたさないで、政府提案でありました場合には、単独政府提案でありますので、議員立法という型を取ることを決意いたしまして、それ以来七、八回にわたりまして、社会党、民社党、自民党で協議を重ねたのでございます。その間いろいろ、自民党のほうも譲歩する、民社党も譲歩すると、議会政治は妥協でありまするので、譲歩に譲歩を重ねまして、最後に、社会党の方々も、この政治暴力防止の交渉委員に猪俣浩三君、中村高一君、坂本泰良君、それに、法務委員でありました畑議員と四名が交渉委員として出ておられましたが、この御四人も賛成されまして、世にいわゆる猪俣私案というものが三党の最大公約数として出て参りました。猪俣私案といりのは、御承知のように、国会乱入暴力行為を別建の法律にすると、それから政防法の中で、われわれはそう思いませんが、団体規制という面が入っております。これを乱用されるおそれがあるんではないか。法文にはそういうことはないわけでありますが、社会党並びにその背後の労組の御要望もありまして、団体規制を殺人のみに限定をいたしまして、その他は全部削除するともそれ以外は民社、自民で妥協いたしました原案によると、そうして三党で責任を持ってこの法律を通すということを決定をいたしたのが本年の四月下旬のころであったのでございますが、ところが、この交渉委員の猪俣提案といいますか、むしろ私は三党の交渉委員の妥結案と言いたいのでありまするが、この案に対しまして、自民党も党に持ち帰り、民社党も持ち帰りまして、この際、国民の強い暴力排除の要望にこたえて妥協したわけでありまするが、まことに残念なことには、三日後開かれました日本社会党の執行委員会におきまして、これを拒否するということになったわけでございます。そうなりました以上、われわれといたしましては、原案が、民社、自民で妥協いたしました案がいいと考えておるわけでありまするので、今お手元に出しましたような、もう一つ前の衆議院提案となったわけであります。その後、衆議院に提案されまして以来、参考人の御意見をお聞きいたしまして、その中で、これは恒久立法になっておりますが、そういう点、これを時限立法に直せとか、一昨日の委員会で申しました警察に対する通報義務とか、いろいろ聞くべき御意見もございましたので、そういった点も修正をいたしまして、参議院に回付されました原案になったわけでございます。
 さような経過をたどって参りましたが、われわれ提案者の意図するところは、政治目的のためには一切暴力をふるわぬようにしようじゃないか。日本では、言論の自由、選挙の自由、政治結社の自由があるわけでありますから、何がゆえに暴力に訴えにやならぬか。しかもそれは、殺人、傷害一切の暴力を排除するというのが、平和主義、民主主義に徹するゆえんではないか。これ以外に他意はないわけでありまして、一部で、これは労働者の弾圧とか、あるいは大衆の弾圧とか、治安維法だというようなことは、この法案をお読みいただきましたならば、どこにもそういう法文はないことを御理解願えるのではないか。以上がこの政防法の提案の経過でございます。
#5
○田畑金光君 今、提案者から御答弁がございましたが、日時の点等には、若干今御説明の内容と衆議院の審議の推移や三党の話し合いの日時の関係とをいささか混同している点もあるやにお聞きしたわけでございますが、と申しますのは、政治暴力防止法案が衆議院に出されたのが、たしか五月の十三日だと記憶しております。衆議院の法務委員会において、審議の過程において参考人の意見を聴取されて、その結果、六つの点の修正がなされたと聞いております。まあそういう過程を経て、最終的な段階において、今お話のような猪俣私案をめぐり、三党の話し合いがなされたと記憶しておりますが、経緯は今申し上げたとおりではなかろうかと、こう思います。
 そこで、私、今御答弁をお聞きいたしまして、もう一度念を押したいのは、いわゆる猪俣私案と、こう世間では呼ばれておりますが、この猪俣私案というのは、三党の折衝の結果、自民党においても共同提案である民社党においても、これをこの線で共同修正をやるということについては了承がついたのかどうか。ただ問題は、今お話のように、五月三十日に、社会党の中央執行委員会で猪俣私案がけられたということは、私は新聞で記憶しておりますが、三党の少なくとも出先の各折衝委員相互の中においては、猪俣私案というものは、社会党を含めて、これで行こうと、こういう確認の上に立って折衝は終わっておるのかどうか。この点をもう一度明確にお聞きしておきたいと思います。
#6
○衆議院議員(早川崇君) 先ほどの経過の御説明で、時間的に食い違ったようなお話、そのとおりでございまして猪俣私案の話し合いをしたのは、衆議院に提案されたあと並行的になったわけでありますから、今仰せのとおりでございます。三党の話し合いは、もちろん交渉委員として妥結したことは、はっきり申し上げられるかと思いますし、それが終わりまして、これは非公式でありまするが、特にお名前をあげると困るんでありますが、社会党の幹部の方にもいろいろお話し合いしたこともございます。そのときは、猪俣私案では、国会乱入の別法律と原案と、三党が共同して通すという申し合わせになっておるわけでございます。ところが、それ以外に、これは公式の御提案ではありませんから、そのつもりでお聞き願いたいのでありますが、私的には、幹部の方からこういうお話もあったことを御報告して、いろいろ御審議の参考にいたしたいのは、国会乱入以外はよろしいと。しかし、国会乱入のものは社会党としては賛成できないが、実力行使とか、審議をけるとか、そういうことをしないで、反対は反対だけれども、正規のルートでこれを採決するということであればよりよいんじゃないかという御提案も私的にはありました。しかし、もちろん三党の申し合わせでは、この猪俣私案、両建になっておる私案を三党が全部共同して賛成して通すという申し合わせになっておるわけですな。それを、国会乱入だけは、社会党としては、あの当時、安保のときに浅沼さんあたりが先頭に立って入られた経過もあるから、そういう経過も考慮して、反対は反対であった。しかし、正規の審議で採決するということの含みがあれば、より三党は妥協しやすいのではないかという御意見もございました。しかしながら、正式に三党といたしましてはあの話し合いで線が実は切れたわけでありまして、今日まで特に折衝をいたしました経緯は、提案者としては、自民党も民社党もなかったと申し上げる以外はございません。
#7
○田畑金光君 経緯はそういう経過を経たということで、一応了承いたしましたが、先ほど提案者から、猪俣私案の内容について二つの点の説明があったわけです。すなわち、国会乱入を別建にしようということと、それから、政治的暴力行為について、殺人行為以外については、団体規制からはずそうこういうような提案であった。しかも、これについては、提案者である自民党も民社党もその線でしからば話し合いをまとめていこうこういうことになったという御説明でございますが、この猪俣私案をかりに取り入れた場合に、それによってこの法を修正した場合に、あるいは二本建にした場合に、具体的に少し条文に入りますけれども、どういうような、第何条をはずし、あるいは政治的暴力行為の内容についてどのようにこれを改めようということになるのであるかどうか。この点について、まあ立法技術的な問題などにわたりますので、法制局でもけっこうでございますが、簡単にひとつ、猪俣私案を取り入れてこの法を修正したときはこういう形になるのだということを、簡単に御説明願いたいと思います。
#8
○衆議院議員(早川崇君) 詳細なる法文もそのときは、用意いたしましたので、現にできておりまするから、御必要であれば差し上げたいと存じまするが、大筋を申しますと、政治的暴力行為防止法案の第四条第一項第六号の、国会議事堂等への不法侵入を削除し、別に国会議事堂等への不法侵入行為の処罰に関する法律案を作成提案するという別法律になるということが一つ、二番目は、政治的暴力行為防止法案の第七条、第八条の団体規制の対象を殺人、傷害のみに限定し、他の政治的暴力行為については刑罰の加重のみにとどめるということ、この二点が中心でございます。
#9
○田畑金光君 御承知のように、この法律案は、参議院に送付されて参りまして、前国会の末期においては、松野議長のあっせんにより、五派会談において、この種治安立法については、各会派の意見の一致が必要と思われるから、無理に強行採決を避けて、継続審議にしよう、こういういきさつになったわけでございます。したがいまして、参議院においては、各会派とも、この委員会の審議を通じ、各会派の意見の一致を求めるために、これからさらに努力をしなければならない、こう考えております。その努力をするにあたっても、当然一つの基準に考えられるのは、衆議院段階において一応猪俣私案が出された。これが大きな基準になることも、これは必然だと考えております。そこで、社会党が執行委員会においてのまなかったから、自民党も民社党も猪俣私案を一応引っ込めて、以治的暴力行為防止法案は、最初の原案で提案をした。こういうお話でございますが、提案音といたしましては、今日の時点においても、参議院の各会派の話し合いにもちろんなって参りますが、あるいはもっと審議の過程において疑問点もあろうし、あるいはこの法律は非常に難解でございまして、そういう面において修正を加える必要もあるいは出てくるかとも考えますが、少なくとも猪俣私案の線でこの法律を修正するということについては、今でもその確信を持っておられるのかどうか、これをひとつ自民党並びに民社党の提案昔から、それぞれ見解を承っておきたいと思います。
#10
○衆議院議員(早川崇君) われわれの念願は、こういう治安立法は、刑罰を科してひっくくるのが目的ではございません。社会教育的効果で、一般国民が民主主義、議会政治、平和主義を守るために暴力という手段を行使しないんだという断固たる決意を国民に示す、抑制的教育効果を最も重視しておるわけであります。したがって、われわれは原案をベストと考え、その通過をお願いし、また正当性を確信いたしておりますが、しかしながら、一部にそういうことに対する疑問、不案もあるから、猪俣私案というものの修正案も出たわけでありまして、もし三党並びに各会派が一致して妥結案ができまして、最初申し上げました大きい、日本から政治暴力ムードをなくするということでありますならば、自民党といたしましては、さらに提案者といたしましても、妥協するに、決してちゅうちょいたさないつもりでございます。
#11
○衆議院議員(門司亮君) ただいまの御質問でございますが、われわれとしては、もとよりこの法案を提案するときにこの種の治案立法は、今、早川君からもお話がありましたように、刑法の一つであると考えても差しつかえないような法案であります。また、事実上刑法の一部を改正するような法律でもございますので、したがって、国民の基本的の権利と自由に非常に大きな影響を持つものでございますので、当初から、この法案は三党一致の形においてこれを出したい。暴力行為が次々に起こって参りまして、国民の世論といたしましても、これに対して何らか対処すべきであるとの世論が非常に大きいものでありましたので、それを反映して、国会でも全会一致の形で、いうならば、三党一致の形でこれを出したいということは、当初よりの念願でございまして、もう一つの問題は、したがって、この法案の審議の過程におきましては、世論に率直に耳を傾けて、そうして修正すべきものは修正をする。一応提案したからといって、今の考え方を決して固報するものではないという考え方を基本的な条件としておりましたので、したがって、審議の過程におきましても、公聴会等の意見は、ほとんど取り入れるべきものは取り入れて、六カ所の修正をいたしたような次第でございます。
 したがって、御質問の趣旨にあります、将来この法案の取り扱いをどうするかということについては、われわれは、今申し上げましたようなことが当初からの私どもの考え方であり、そういう態度で臨んでおりますので、当委員会におきましても、できれば全会一致あるいは三党一致した形において集約決定されますならば、われわれの考え方といたしましては、それに何らの異論もございませんし、むろんそういう形が望ましいのであるということを申し上げて、お答えといたします。
#12
○田畑金光君 先ほど御答弁の中にもありましたように、参考人の意見聴取を通じ、六つの点について修正をされたわけでございます。この党は、学者、法律実務家あるいは大衆運動の指導者、それぞれの意見を取り入れて六点の修正をなされたと、こう考えておりますが、それでもなおかつ、まだこの法案については、いろいろ疑問点や不安点が残されているわけです。残されているというのは、そういうような見方があるということです。ことに、この法律が実施されますと、大衆運動や、あるいは政治活動や、あるいはまた労働組合活動にただちに大きな影響があるかのごとく宣伝されている実情であるわけですが、そこで私、こまかなことは本日は質問をやる意思はございませんが、たとえば修正案の中で、第一条に、当初は「思想的信条」、こういう言葉が使われていたわけでございますが、その後「政治的信条」、こういうふうに直されているわけです。提案者が当初「思想的信条」、こういう言葉の中で考えられていたことはどういう内容であったのか。それが「政治的信条」、こう変わったのでございますが、これによってどういう不安が除去されたのであるか、この点をまず承っておきたいと思います。
#13
○衆議院議員(早川崇君) 「思想的信条」とありますと、宗教上の主義とかいう問題もございます。また、道徳的な確信によって、その結果遇発的に暴力行為に出るという面もありますので、できるだけこの目的を政治的な、政治目的を達するための暴力行為という意味に限定したほうがこういう治安立法はいいのではないかという趣旨から、「政治的信条」と、明確に修正をいたした次第でございます。
#14
○田畑金光君 第二の点は、第三条第二項「労働組合その他の国体の正当な活動」云々ということを入れられたわけでございますが、これは、当初この法律案にはなかったわけでございます。ところが、破防法第三条には、やはり労働組合の活動についてこれを乱用してはならない等々の規定があるので、そういうような批判等もあって、第三条第二項に「労働組合その他の団体の正当な活動」、これが挿入されたように聞いておりますが、当初どうして労働組合についての規定を置かなかったのであるのか。この点について、ひとつその辺の事情を説明願いたいと思います。
#15
○衆議院議員(早川崇君) この法律はこの立法の内容を読んでいただきますと、政治目的のための暴力行為に限定しておるわけですから、労働組合の団交なり、資本家と労働組合員との経済的闘争その他において暴力が起こりましても、適用にならないのは当然なんです。したがって、その必要を認めなかったわけでありまするが、なお念のためにこういうように入れたわけでありまして、当然のことを入れたというように御理解賜わりたいと思います。
#16
○田畑金光君 当然のことを入れたにすぎない、こういうことでございますが、これを挿入したことによって、労働組合あるいは大衆運動における不安が除去されたかというと、決してそうではないので、今日一部の労働団体あるいは政治団体においては、ますます政防法反対というのが強いスローガンとして掲げられてきておるわけです。特に最近、御承知のように、政策転換闘争というようなことで、労働運動の一つの闘争指標が掲げられておるわけでございますが、第一条に「政治上の主義若しくは施策」、この施策の転換ということが非常に取り上げられておるわけです。一部の組合の中には、たとえば警職法反対あるいは政防法反対、ILO条約批准促進、こういうようなこともできなくなるというような極端な曲解もありまするが、そういうことはさておきまして、この政策転換闘争という具体的な労働団体の運動が現実にあるわけでございまして、これがかりに行き過ぎて、デモから暴力行為が発生した、こういうことになってきます、あるいはまた、国会の周辺に押しかけて、それが第四条の第六号に相当するような行動に発展をした、こういうようなこと等も予測されないわけでもないわけでございます。あるいはまた、政策転換闘争に対して、対政府交渉その他政府機関との交渉の中で、あるいは暴力行為が発生する、逮捕、監禁あるいは面会強要、そういうような事態が発生することも予測されるわけでございます。そういう点から見ますと、確かに第四条の第一号、第二号の殺人、傷害、これは右翼テロ行為言いうことはよく理解できますが、一第三号以下等に、あるいは三号、四号、五号あるいは六号、こういう点になって参りますと、確かに、大衆行動に対して、その当時のこれは起きた事象によりますけれども、大衆運動に心理的な圧力あるいはこの法律の乱用によって正当な憲法上の行動が制約される、こういうこともおそれられないでもなかろうと考えておりまするが、今申し上げましたようなかりに説明において、第四条の項目に該当するような暴力行為が発生したような場合には、一体この法律の関係はどうなるのか。これをひとつ明確に示してもらいたいと思います。
#17
○衆議院議員(早川崇君) 政治目的のための一切の暴力を排除するわけでありますから、暴力行為ということ自体を取り締まるのでありまして、団体行動自体を取り締まるわけではございません。そこで、御質問の趣旨は、殺人と傷害のみに限定すべきではないかといろ御趣旨のように承るわけでありますが、われわれとしましては、逮捕監禁とか、あるいは暴行とかというようなものも、やはり一つの政治暴力でありますから、程度は違いますが、片一方は非常に重い刑罰でありますが、それ以外のものは、程度は違いますが、暴力行為とは差別をつけないという観点から、殺人、傷害だけに限定していないわけであります。
 それから、労働組合の政治闘争に対して非常な不安があるということでありまするが、これは、この条文を読んでいただきましたならば、労働組合が政治的目的のために運動することは、一切この対象にはなっておりません。にもかかわらず、共産党や一部の労働組合が発行しておりまする機関紙を見ますると、少しでも暴力行為をやったり、国会に乱入したり、そういうことで、すぐその団体は禁止されるとか、解散させられる、あるいはまた団体交渉などの場合において、暴力、強要、脅迫というようなことで、簡単に労働組合も解散させられるおそれもある、「アカハタ」九月十五日号に載っております。私は、そういうでっち上げのうそで、一部の労働者を、いかにもこれを弾圧法だということで、反対運動せしめている実情を非常に遺憾に思いまして、そういうことは全然ないわけであります。ただし、労働組合のみならず、一般の団体にいたしましても、団体の意思として、団体の主義主張で暴力をふるってもいい、そうして暴力行為が繰り返しなされたという場合にのみ、若干の団体規制をするというにすぎないのでございますので、そういう点は、この法律を読んでいただきましたならば、世上、労働組合その他の心配されておるような法文は、ほとんど、全然といっていいほどないわけであります。したがって、そういう点の御心配は、具体的に法文のどこだということで御指摘願いましたならば、納得のいくような御説明を申し上げたいと思うわけであります。
 それからもう一つ、団体示威運動だけが、この憲法上保障された権利である、だから、テロや傷害と違うのだという御議論も、最高裁の真野元判事なども中央公論で言っておりましたが、これは非常な誤りなんで、われわれとしては、政治テロと、それ以外の暴力行為を区別する理由はないわけでありまして、テロがなぜ悪いかといいますと、政治活動の自由というものは、これは憲法で保障されております。団体示威運動の自由も、これまた憲法の保障するところであります。ただ、政治活動の自由という憲法の権利を乱用して、これを殺人や傷害という暴力行為に訴えるからいけない。同じことは、団体運動の自由は、もちろん憲法上保障されていることは、政治的活動の自由と同じでありまするが、それを乱用して国会に不法に暴力的に乱入したり、人を逮捕監禁して、つるし上げして病気にさしたり、暴行を加えたりということが悪いのでありまして、そのこと自体は、刑法におきましても、殺人だけが暴力として刑罰の対象になってはおらない。逮捕、監禁、強要も、もちろん刑法の対象になっていることでもおわかりかと思うのであります。
 ただ、この機会に、しからば一部の評論家――長谷部さんでありましたかが、何かに載っておりしたが、テロと集団暴力を同一視するのじゃないかという疑問も出されておりましたが。この法案では、決して同一視いたしておりません。そして殺人とかテロ傷害に対しては、団体の解散とか、あるいはまた、非常に重い刑罰というところで、それ以外の逮捕監禁とか、集団暴行とか、国会の不法乱入とかいうものの団体規制並びに刑罰において格段の区別をつけておる。したがって、現在反対と言われておる方々の御意見に対しましても、この法案は十分たえ得る理論的根拠に立っておるということを御了解賜わりたいと思います。
#18
○田畑金光君 そこで、私、いろいろ長ったらしい質問で、また答弁も長かったわけでございますが、端的にお伺いしますと、労働団体がいかなる政治的なスローガンを掲げても、あるいは政治的な目標を掲げても、それ自体は本法とは何らの関係がないことであるまた、たとえば国家公務員あるいは地方公務員、公共企業体の労働組合、公営企業体の労働組合あるいは日雇労務者、これらは、いずれも直接間接、国の予算によって労働条件がきまるわけでありますが、その団体において政府の政策転換要求を主張することは、何らこれは差しつかえない、本法とは関係ない、警職法反対であろうとも、政防法反対であろうとも、ILO条約批准促進運動をやろうとも、それ自体は労働組合運動の当然のこれは政治的主張であり、本法とは関係がない、こういう運動からかりに暴力行為が発生しても、それは、規行刑法その他によって法の処罰の対象になるにすぎないのだ、こういうことだと、こう私は理解したわけでございますが、それでよろしいのかどうか。さらに私は、この法が規制の対象としておるのは、このような政治目標を掲げることは自由であり、当然のことであるが、ただ、そのような政治目的達成のためには、第四条の第一項以下掲げたもろもろの暴力行為、こういういかなる手段を弄しても政治目的を達成するのだ、こういう機関の決定に基づいて具体的に暴力行為が発生した場合においては、本法の適用の対象になるのだ、こういうようにこれは理解しておりますがそれでいいのかどうか、あらためてひとつ御説明願いたい。こう思うのです。
#19
○衆議院議員(早川崇君) 田畑委員の御質問の中の二点、われわれとしては是正申し上げたいと思います。第一の国家公務員、日雇労務者あるいはその他あらゆる団体が政府反対の政治運動をやっても、もちろんその点ではいいわけですが、その場合に、国家公務員の場合には国家公務員法の範囲内でと、こういうただし書きが必要かと思う。その点が第一点。
 それから第二点は、そういう政治運動、反政府的あるいはILO批准促進という団体運動の結果、たまたま起こりました傷害、暴行、器物破損、国会乱入、こういうことが起きた場合に、現刑法で処罰の対象としておるのかという御質問であったのでありますが、これは、政治目的のための暴力行為でありますから、それを犯した個人、現行犯の人は、この政防法によって刑罰が適用されるわけであります。しかし、その結果その団体の規制、たまたま組合員が出たところで団体規制にはもちろんなりません。御承知のように、この法律の第八条、第九条あたりでは、団体の意思として殺人その他の暴力行為が繰り返し反覆してやった場合という、しぼりがございますから、そういうことを団体の意思として決定して、計画的にやる団体というものではおそらくないように今御指摘された。ですから、その点は、その団体自身には何ら影響はないのであります。
#20
○田畑金光君 団体の意思として、機関の意思決定に基づき、あるいはいろいろ殺人団体であるならば、平素のその団体の性格やあるいは規約等に基づいて行動を起こして、それが暴力行為に発展した場合には、団体規制というようなこと等にもこれは発展するでございましょうが、私のお尋ねしていることは、機関の意思決定としては、別段暴力行為をふるって、あるいはいかなる手段を弄してもと、そういう機関の意思決定はないことを前提にして、たまたま労働団体等が政防法反対、こういうようなスローガンのもとに、国会前をデモした。その場合に、団体としては善意であり、健全な団体であったが、その団体構成の中にたまたまはね上がった者があって、第四条の第六号に該当するような住居侵入、こういう現に犯罪行為が起きた場合は、これは、刑法の住居侵入罪で処罰をするのであって、この第四条の「政治的暴力行為」としてこれを処罰するのではないというふうに解しているわけでございますが、そのような場合も、たまたまデモの中にそのような不心得者が出た場合、団体そのものは健全であったが、個人にはね上がった者があって、こういう行為に発展したという場合なども、第四条によって処断するのかどうか、適用するのかどうか、この点。
#21
○衆議院議員(早川崇君) 団体は何ら規制の対象にはならないことは、御了解いただいたと思いますが、暴力行為を行なった人自身は、むろん計画的に行なった場合もございましょうが、偶発的に行なった場合もございましょう。そのことは、同時に殺人、テロにもいえることだし、計画的にその団体の意思でなくて、何かの政治目的のための行動の場合に、かっとなって、偶発的に反対党の者を殺したという場合にも、その個人は政治目的のために殺人をしたということで、この政防法の規定によって処罰されるわけであります。また、政防法反対ということで、国会に不法に、かつ暴力的に、計画的に、あるいはまた、偶発的といいますか、その場合はむろん情状酌量して軽くなりますが、政防法の政治暴力行為として、その個人はこの法律の対象になるわけであります。さればこそ、刑法に比べまして、殺人の場合も格段に重くしております。それ以外の政治暴力行為も重くしているのでありまして、それによって抑制効果をわれわれは達成できると考えております。
#22
○田畑金光君 この第六条と七条と、それから第九条を読んでみますと、第六条は、団体のためにする行為の禁止あくまでも第六条は、個人の暴力行為、政治的な暴力行為、これを対象にしているわけで、第七条、第九条は、団体の活動の制限ないし解散ということを規定しているわけでございますが、団体の活動ということでございます。この団体の活動というのは、第四条の第四項に定義が載っておるわけでございまするが、「団体の活動」ということと、第六条の「団体の活動に関し」と、こういう非常に解釈のしにくい言葉になっておるわけでございますが、どのようにこれは違うのか。「団体の活動」ということと、「団体の活動に関し」、このこととはどのように違うのか。第七条を読みますと、「団体の活動として」云々、また第九条も、「団体の活動として」、団体の活動としてやる場合には、七条あるいは九条の適用があるわけです。「団体の活動に関し」と、こうなってきますと、個人的な犯罪行為、暴力主義行為、こういうようなことで、それぞれもちろん適用が異なってきまするが、まずお尋ねしておきたいことは、非常にこれは難解で、ございますが、「団体の活動として」「団体の活動に関し」、これはどのように読めばいいのか、これを一つ解釈願いたいと思います。
#23
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 率直に申しまして、第六条の場合と、それから第七条の場合とは、法文自体もそれから立案の動機においても、趣旨として若干の違いがあるということを申し上げた方がよろしいと思います。したがいまして、第四条の四項にあります定義は、第七条にはそのままあてはまる。しかし、第六条におきましては、「団体の活動として」とは書いておりませんで、「関し」とか「資するため」というような表現を用いておりますから、ニュアンスの上でも、それから、実質的な意味合いにおきましても、若干ゆるやかといいますか、柔軟性がある。第六条の解釈におきましては柔軟性がある。こう申していいと思います。
 なぜそうなっているかということでございますが、まず第七条というのは、これは、団体自体の活動を、四カ月ないし六カ月問機関紙の発行をストップしましたり、それから、集団行進その他をやめろというふうな、団体自体に対する制約でございますが、第六条というのは、おっしゃるとおりの意味がございまして、ある比較的まともな団体に、変んな、非常に飛ばっちりをしたような行動をしたメンバーが現われて、団体自体が迷惑をしておる場合も実はあるわけであります。今度は逆にたまたま一人か二人しか出なかったが、団体自体今のうちにその役員を排除しておけば、あるいは今度構成員を排除しておけば、団体自体としては公正といいますか、それほど悪くならないだろうというふうに、好意的に考えられることもございますので、したがいまして、第六条におきましては、これは俗にパージと考えてよろしいのであります。その団体にお前出入りするなと、簡単にいいましてそういうことでございますが、そういう意味の行政処分は、第七条の構成要件よりは、ゆるくしてよろしい、積極的に申しまして「関しとはどういうことかといいますと、これは、民法の不法行為にあります「業務に関し」とか、刑法で「公務に関し」とかというふうにいわれますのと同様でございまして、実質的に関連性を持っておれば足りるというふうに、つまり、団体の活動ずばりではなくて、それに関連性を持っておればよろしい、こういうふうに定義づけるものかと考えます。
 そこで、田畑先生の考えておられますのは、今申しましたことは、第四条の四項自体を詳しく説明申し上げてから、あとで申し上げた方がむしろいいかと思いますので、直接的には御質問がなかったのでございますが、若干敷衍して申し上げますと、第四条の四項におきましては、団体自体の責任を問う規定が七条と、それから(解散の指定)にございますので、ここでは非常に厳重な定義を下しまして、要するに、団体の機関意思の決定そのもの、あるいは団体の主義、方針、主張に従って、あるいは基づいてするメンバーの行動、こういうふうにしましたゆえんのものは、従ってとか、基づいてとかのゆえんのものは、先ほど早川先生から御説明がございましたように、ある団体がある政治目的のスローガンを掲げて、たまたま二、三のメンバーがとんでもない行動をしてくれた、こういうふうなものは排除する、つまり含ましめない意図でございまして、それは、団体そのものに責任を負わせる事柄ではございませんで、ここで申しておりますのは、団体自体が、例を申し上げますというと、たとえば、かっての球根栽培法というふうな、中核自衛隊というふうに、初めから暴力を肯定するような意思決定がすでに団体そのものの中で行なわれておりまして、それに基づいてそのメンバーが実力行使をした。こういうふうなものは明確な実例でございまして、しかし、普通に労働組合あたりで考えられまする、何か知らぬけれども、団体はただ政治的なスローガンだけを掲げていたが、たまたま派生的に、偶発的に、どこかで飛ばちった事件が起きたというふうなものは、これは、その行為自身は、先ほど早川先生からおっしゃいましたように、この政治暴力防止法案における特別なる犯罪として処罰されるとしましても、団体そのものの責任追及は、その第四条の定義からは当然出てこないわけでありまして、団体の活動制限というものは出てこないわけでございます。
 以上、補足して申し上げます。
#24
○田畑金光君 まあ大体わかったような、あるいはまだわからぬような感じがするわけですが、なかなかこれはむずかしいので、その第六条は、そうしますと、団体の活動に関連して、たまたま偶発的な犯罪行為が起きた。その場合は、団体に制限を加えるとかいうのでなくして、たまたまその不心得者を政治暴力行為として処罰の対象にしよう、こういうようなことになるのかどうか。その場合、その個人の、不心得者というものの主観的な意思というものは、一体要件として考えられるのかどうか。行為自体で、まあ客観的に一つの犯罪行為が起きたならば、第六条でこれは規制していこうとするのであるのかどうか、この辺ひとつ御説明願いたい。
#25
○衆議院法制局参事(川口頼好君) この六条は、七条と対照した意味におきましては、若干趣旨が違うというふうに先ほど申し上げましたが、そういう意味で、この「関し」とか、「資するため」とかという概念は、「活動として」という概念とは違いますと、こう申し上げたわけでございますが、しかし、たとえばある男が、こういう団体と関係のない男が、第三者が、何といいますか、取り越し苦労と申しますか、よけいなお世話で、自分がこういう行動をとったらあの団体が喜んでくれるだろう、こういうようなことのために、全部この団体の責任、第六条にかかってくるということは、これは不当でございますので、したがって、ここでいう「活動に関し」、「実現に資するため」というのは、一種の主観要素を言っているわけじゃございませんで、客観的に団体の活動と関連性がある、こういうふうに考えるべきであるかと思います。客観的な要件であると……。
#26
○田畑金光君 第六条の場合、まあ今のようなお話で、大体これはわかってきましたが、第六条のかりに第一項を見ますと、第四条第一項の第一号、これは殺人行為です。もしくは第七号に規定する行為、これは殺人の教唆、煽動でございますが、こういうような行為をやった場合に、この当該役職員あるいは構成員について六カ月、あるいは、その次を見ますと、四カ月の行為を禁止すると、こうなっておりますけれども、こういう行為自体が、あえて役職員や団体のための行為を禁止しなくても、これ自体がすでに刑法上の犯罪行為として当然処罰されるわけで、実際六カ月をこえない期間、あるいは四カ月をこえない期間活動をやめろと、こう言っても、この法律、この条文自体は無意味じゃなかろうか、なくてもいいのじゃなかろうかと、こういう感じもするわけですが、この点はどうでしょうか。
#27
○衆議院法制局参事(川口頼好君) 現に、今先生の御質問と同趣旨の御質問が、衆議院の段階でもあったわけです。しかしこれは、現在の破壊活動防止法の中にも、これと全く同じじゃございませんが、これとほぼ同趣旨の規定があるわけでございまして、今のお尋ねの要件は、結局本人は刑務所にぶち込まれるのだから、こんなことをわざわざしなくてもいいじゃないか、こういうような趣旨もあるのでございますが、具体的な問題といたしましては、たとえば、これですぐ起訴されまして、勾留されるというようなことで、実際上団体の活動に関与する余裕も何もなくなる場合が多うございましょう。そういう意味において、あるいは、何といいましょうか、これ自体が、直接的にこの条文がなければ非常に困るというほどのものではないかもしれません。しかしながら、常にそうだとは限りませんで、かつ、これはむしろ団体の活動に対する一種の、何といいましょうか、その団体の機能の上での非常な活動力といいましょうか、そういうものに対する影響というもの、実質的には非常に重要な影響を与えるわけでございまして、そういう意味におきましては、やはり団体自体に対する反省を求める意味と、それから団体の活動能力が、暴力というものに対して比較的無神経であったというようなものに対して、強い反省を求めるというふうな事柄におきましては、やはりこの条文は破防法と同様に必要である、こういうふうに考えております。
#28
○田畑金光君 時間が来ましたから、私はこの辺でやめます。
#29
○加賀山之雄君 最近といわず、私どもが非常に憂えておりますことは、暴力というものが非常に、何といいますか、随所に行なわれて、たとえば、人を殺傷するというようなことが非常に簡単に起きているように見えるのでございまして、私は、そういうことになって参っている社会的な背景と申しますか、そういうものに深く意を注いで、根本を突く必要があるというふうに考えておるものでございますが、特に政治的暴力が頻発した経緯にかんがみましてこの法律案が立案されたと理解しておりますが、その全般の、暴力全体についての考え方、またそれが現にいろいろの場所で、またいろいろのときに、集団であると個人であるとを問わず行なわれて、この社会的背景、そうして、それのよってきたる原因といったものについて、立案された先生方はいかにこれを理解されておられますか。そしてこれの根本的方策はどこにあるというふうにお考えになっておりますか。まずその点についてお考えをお伺い申し上げたいと思うのであります。
#30
○衆議院議員(早川崇君) なかなか大きい政治のお話でありますから、われわれ治安対策を担当する者としての範囲でお答え申し上げたいと思います。
 われわれはこういうように考えておるのです。終戦後ここ数年の暴力犯罪の増加は、戦前の三倍ぐらいになっておるわけであります。そこで、われわれといたしましては、戦前、昭和七、八年ごろが一番暴力の一般犯罪が多かったわけであります。そのときに、同時に戦争前に政治暴力が一番盛んであった。五・一五事件、二・二六事件、そのころは労働組合が弾圧されておりましたから、いわゆる左翼の暴力ということよりも、政治テロが一番多かった年が、同時に一般暴力犯罪が一番多かったということになり、統計上出ております。戦後の状況を見ますと、政治暴力が一番多くなりました昨年、一昨年のころには、同時に戦後の一般町の暴力犯罪がピークをなしているという歴史上の一つの教訓があるわけであります。したがって、われわれは、当時新聞紙上あるいは評論家の中で、政治テロだけを取り締まって、一般暴力はあと回しにしろという議論がありました。しかし私は、それはいかないので、いわゆるこの一般暴力犯罪のムードの上に政治テロ、左右を問わず政治暴力が発生しておるのだ。この認識がなければいかぬということで、われわれといたしましては、政治暴力を出す前に、一般暴力犯罪をどう減らしていくかということに一年間真剣に取り組みまして、所得を十カ年で倍増するならば、ひとつ、十年といわないで、五年で暴力犯罪を半減しょう、所得倍増、暴力半減というスローガンを立てまして、いろいろな施策を講じて参っておるわけであります。昨年の二月に、閣議で、暴力犯罪防止対策要綱を作りまして、いろいろな施策を講じてきております。また、内閣に犯罪防止懇談会を設けまして、いろいろな施策を講じておるわけであります。その内容はいろいろあるわけでありまするが、二、三の点だけを申し上げますと、治安面からいいますと、暴力犯罪に対しては、刑罰が軽過ぎるということです。御承知のように、英国では、殺人の場合には、九五%までは死刑なんですね。ところが、日本におきましては、強盗殺人は英国並みでありますが、一般の暴力に対しましては、平均三年という寛大な処置をとられております。したがって、一般の暴力団なんかの暴力は、三年すれば……、あるいは仮釈放、恩赦を入れますと、むしろこれはペイするのじゃないか、いわゆる殺し屋といいますかね。したがって、暴力が引き合うような日本の刑罰でございます。それでは話にならないというので、法務大臣もわれわれの意見をいれられまして、刑法の改正というのは行き過ぎだけれども、少なくとも検察当局の起訴条件は、法律にきめられました刑の最高限を暴力犯罪に対しては求刑しようではないか。ところが、問題は裁判所の判決でありますから、判決は、今の刑法の最下限にすべてが集中しておる。そのために暴力が引き合うような軽いものになっているということが、日本の暴力犯罪がなかなか根絶できない、治安面からいいましたら、一つの大きなガンでございます。この問題をどうするか。
 それから二番目には、思想的、教育的な法秩序無視の傾向を初めといたしまして、青少年のいろいろなエログロ映画、テレビその他のいろんな影響もございます。ただ、一般にいわれておるように、経済が豊かになれば暴力が減るという考え方は、この問題については逆の現象を呈しております。戦後国民生活は二倍、三倍に復興いたしましたけれども、一般の窃盗とかあるいは強盗とかという、貧乏ゆえの犯罪は激減してきております。これは、確かに第三条件が、貧乏がだんだん減ってきておるのと並行するわけであります。ところが、一般暴力犯罪に関する限りは、経済が豊かになるのと逆比例して、逆にふえてきておる。ここに大きい問題があるわけでありまして、一般暴力犯罪をやる誘惑と、そういうその条件をむしろ経済の繁栄が作ってきておるという面に統計上重要な問題がありまするので、むしろ、やはりもっと精神的な、あるいは教育的な、あるいは政治の姿勢を――池田さんが言われる政治の姿勢を正すとか、広範な対策を必要とするのではないか、かように考えておるわけであります。で、さしあたってわれわれ政治暴力防止法案を提案いたしておるわけでありまするから、それとの関連においては、われわれは、密接な関連ありという昭和七、八年の歴史の教訓を生かしまして、前の国会におきましては、一般暴力を少なくするために、銃砲刀剣類の取締法を提案いたしたのであります。飛び出しナイフの五センチの制限を撤廃する法案を提案申し上げたのでありますが、これは、残念ながら前の国会において廃案になりました。ここで、参議院の先輩並びに諸先生方にお願い申し上げたいのは、政治暴力が同時に一般暴力と密接な関連がございますから、この加害者ですね。暴力をふるっている加害者の人権を尊重する余り、殺されたり傷つけられたりする人が泣き寝入りと、殺された者は、永遠に生命は戻ってこない。殺した者は、わずか三年でしゃばの風を吸うというそういう誤った、悪い者の人権を尊重する余り、被害者の人権をあまりにも軽視しておるのですな。現在の刑事政策、あるいはまた一般の社会風潮、これに対して、多くの善良な国民は憤っておるわけであります。どうか、そういう点につきましても、ぜひひとつ御協力なり、また御指導賜わりたいと、かように思っておる次第でございます。
#31
○加賀山之雄君 治安対策と御専門にお取り組みなっておる早川先生が、主としてこれを治安対策、ことにまた取り締まりの面からこれを防止していこうというようなお考えなのは当然であり、ごもっともなことでもあると存ずるのでございまするけれども、私は、やはりこういった問題の根本、根源というものをよくきわめて、これをまず確かめて、そしてその上にあるいは法外、あるいは行政の面からこれを防止していくというような順序でいくのが大切だと思うのでございまして、突如として法律だけを持ち出して目的を達成しようといたしましても、これは私は、さように効果がすぐに上がるものではないというふうに考えるものでございます。私は、岸内閣時代から、暴力追放ということを非常に強く主張しておられて、これこそ、政治的責任においてもこれを実現されることを期待したのでございますが、不幸にして結果は逆でありまして、ますますふえる一途をたどっているような感じを受ける昨今でございます。で、この根源は、何としても私は、力というものでものを解決しようというこの考え方、これが根源になっている。これはまあ、きようも本院で、核爆発の実験をやめるべきだという強い決議案をわれわれは決定いたしましたが、世界の情勢も、さような力でもって解決するという風が見えるし、また、われわれ国会の中の工合を見ましても、私は、そういう気配がないとは言えないように思うのでございます。現に実力者というような言葉が平気で新聞に出ておりますが、力、これなんか、私はきわめておかしな言葉じゃなかろうかと思う。機関というものがあって、そうしてそれでみんなが民主的に話をしてきめていくべきことが、実力者の手によってどうにでもきめられるということがあれば、これはまことにおかしなことで、民主主義とは言えないと思います。まあ実力者という言葉があるから、また一方には実力行使というふうな言葉が出てくる。何でもこれをリーズンで解決しようとしないで、力で解決をはかろうという空気があまりにも強過ぎるのではないか。そこで、そういったものを政治なり、その中心である国会なりで、まずわれわれ全部が真剣にその問題を考えて反省をする必要があると、私はさように考えますので、これは、まあこの法律以前の問題でございますが、しかし、非常に重大な問題でございますので、この法律案にも非常に重大な関係ありと思いますので、立案者であられるどの先生でもよろしゅうございますから、私の考えがそういう点は間違いであるということなら、間違いでよろしいのでございますが、お教え願いたいと思います。
#32
○衆議院議員(早川崇君) 全く同感でございまして、刑法とか治安立法というものは、まあ必要やむを得ざる、好ましいことではないけれども、必要やむを得ない氷山の露頭でございまして、根本が、暴力を排撃して、すべて話し合いでいくということになることが前提でございまするが、しかし、これは個人の意見としてお聞き願いたいのでありまするが、同時に私は、イギリスがなぜ暴力が少ないかということを研究してみましたところ、義務教育では、おまわりさんを尊重しましょうと、それから税金を納めましょうという、実に端的なスローガンで義務教育をやっているわけでございます。そういった簡単なことで法秩序を守り、殺人や暴力行為には訴えないと、しかし、その場合には、法に服するという非常に味わうべき一つの基本があるのではなかろうか。したがって、そういう国民的教養が残念ながら日本ではできておらない。すぐ実力行使。言うこときかぬやつは暴力だということになるわけでありまして、これは、単に政治のみならず、教育全般において、法治国、議会政治という態勢になるには、年月をかけていかなければなりませんと思います。ですから、この政防法も、ほんとうに好ましくないけれども、必要最小限度のもの。私は、この間、東南アジア、ヨーロッパを回りましたけれども、日本ほど治安立法の少ない国といいますか、まあいわば暴力をふるう自由すらあると、あまりひどく罰せられないという国は残念ながらないので、インドの警視総監やみんなにずいぶんそれを逆に批判されまして、まことに恐縮したような経験を、この八月に東南アジアを回りまして感じたわけでございます。お説のとおりでございまして、好ましくないことの最小限度という意味で政防法も御審議願っているということは、御理解いただけると思います。
#33
○加賀山之雄君 御説のごとく、わが国は、かなり国民として、世界各国に比較してみまして、言論その他行動の自由を享受しておることは確かだと思います。しかし、その自由が高じますと、不幸にして、力でもって解決をはかるのである、これも自由だということに通じますと、この点は、立法の面から防止をしていく必要は確かに私はあろうと思うのです。そこで、いろいろお考えになって、本法を御提案になったと思うのでございますが、先ほど田畑委員から御質問になりました、この御提案のときの経緯につきましては、先ほど承ったのでございますが、私といたしましては、どう考えましても、社会党の案がいわゆる猪俣私案として出て、そうして三党で申し合わせまでされて、そしてこの修正案が用意されて、具体的になっているのを拝見いたしておるのでございますが、私は、確かに社会党の持ち出した修正の御意見ももっともなことであり、もっともなことであるから、三党でおそらく一致されたんだと思う。そして特に国会議事堂等の不法侵入行為の処罰に関する法律案というものを別立てにされたということも、この案よりも法律体系としてははるかに合理的であってそのせっかく同意見に達せられた法律が、どうしてもう少し掘り下げて、そしてお話し合いによって、これが一致した国民の信念として法律化されなかったということを、きわめて私は不思議にも思い、遺憾にも思っているものでございますが、その間の事情について、もう少しお聞きできますれば、お聞かせいただきたいと思うのでございます。
#34
○衆議院議員(門司亮君) 私からごく簡単に御報告申し上げたいと思いますが、今質問のございましたように、社会党さんのほうから提示された案といいますか、修正案がございまして、それを一応出先におります代表員と申しますか、構成員と申しますものは、三党とも了承いたしまして、しかし、政党であります関係から、出先だけでこれをきめたからというわけには実は参りませんので、おのおのこれを持ち帰ったということに大体いたしまして、ちょうど時限にして二日ばかりであったかと思います。社会党さんのほうでは、委員長もおられないし、同時に、二日後に中央執行委員会が開かれるので、出先としては一応話をまとめることができましたが、その結果を待っていただきたいという、こういうもっともな事情もございまして、しかし、私ども民社党といたしましても、自民党といたしましても、一応持ち帰ってこれを相談をいたしまして、大体社会党さんから提示されました、今御指摘の国会周辺並びに総理官邸、さらに裁判所を加えた、いわゆる日本の民主主義の三本の柱というのがあくまでも厳正であるべきであるという、こういう建前で、これを別の法律にする、これは、参考人の意見の中にもこういうことがございまして、この参考人のそのあとの意見の中にありましたが、参考人の方からそういう意見があったことも事実でございます。同時に、殺人、傷害、いわゆる四条の一項、二項にあたる行為に対する団体の規制等は一応認めてもよろしいが、それ以外のものについては、個人に対する刑罰の加重はよろしいとしても、団体等については、いろいろ誤解を招く危険性もあるし、将来の取り扱いについても、あるいは行き過ぎがないとも限らない。いわゆる法の乱用等も考えられるので、お互いがここで了承しておっても、法文の中にも、明確にすべきところは明確にすべきであるということで、団体規制だけを除いたらどうかという趣旨のものであったのでございまするが、われわれも、各党とも一応相談いたしまして、自民党さんの方にも了解ができたと思いますし、またわれわれのほうも了解いたしました。したがって、一応そういう案がまとまっておったのでありますが、不幸にして、社会党の中央執行委員会におきまして、たとえ社会党からそういう提案がなされたといっても、すでに外郭的には、この法案に対する党としての態度等が発表されており、同時にいろいろな反対運動等も盛り上がってきておるというような諸般の事情も私はあったかと思います。これは私の想像でありまするが、と思いますが、そういう意見もあったかと思いますが、究極においては、執行委員会ではそういう案は認めがたいという返事が参ったということが、大体今のお尋ねに対しまするお答えでございます。
#35
○委員長(松野孝一君) 委員長からちょっと申し上げますが、ただいま発議者の衆議院の鈴木義男君が出席しております。それから、発議者の早川君が、よんどころない事情で、三時二十分ごろ退席したいということでございますから、御了解願います。
#36
○田畑金光君 ちょっと一言だけ。さっき私の同じ質問に対して早川さんから御答弁がありましたが猪俣私案の内容に関する資料ですね。もし要求があれば出してもよろしいと、こういうお話でしたが、配ってもらえたのですか。その資料があったら、ひとつ配ってもらいたいと、こう思うのですがね。
#37
○衆議院議員(早川崇君) 今ございますから、お配りいたします。
#38
○加賀山之雄君 一応承りましたが、この自民、民社両党でも、それを持ち帰られて、殺人あるいは傷害以外のことについては、団体にこれを関係を持たせるということはやめるということも一致されたということでありますならば、この法文にも規定を書いてございますが、団体規制というものについては、何でもかんでも団体を規制するつもりじゃないということがはっきり表明されているというふうに私は解釈するのですが、そうならば、一番心配されている一つの点が、この法律について心配されている点が非常に明確になる。
 そこで、私が伺いたいのは、その当時出先機関が賛成された。しかし、党へ持ち帰って、もちろん党は、執行機関あるいはもっとより大事な決定機関があるわけでございます。最高機関もあるわけでございますから、出先が何でもかんでもきめるわけにはいかないことはもちろんでございましょうけれども、しかし、国会運営の立場から申しますならば、やはり出先機関の言説あるいは行動というものは、公党としては十分に私は責任があるというべきであるというふうに考えるものでございまして、出先機関がせっかくそれに賛成されて、それをひっくり返される以上は、これに対して確たる理由が、私はこういうかくかくの理由によってということが明らかにされなければならないと思うのでございますが、今、門司先生からのお話によると、と思うが、であったと思うがという程度に承ったのですが、非常にそこらが、もう少し確たる理由があって、それをやむを得ないと考えられたのか、提案者としてどうお考えになったか、伺いたい。
#39
○衆議院議員(門司亮君) その点につきましては、直接、今私が申し上げましたような理由もあったかと私どもは想像するのでございますが、そういう理由を付して実は正式に私ども返事を受けたわけではございませんで、執行委員会に諮ってみたら、やはりそれは拒否するというのもおかしいのでありますが、取り入れるわけには参らぬという、これだけの返事を承っておりますので、私ども、それ以上御返事を申し上げることはできないわけでございます。
#40
○加賀山之雄君 御承知かと思いますが、前国会におきまして、参議院におきましては、この問題を真剣に審議いたしましたが、期日も足りなく、また、各派の意見としても、まだ調整が十分とれるだけの余裕もございませんで、参議院議長のあっせんによりまして、政防法については各会派の意見の一致が必要であると思うから、このため継続審議とする、こういう申し合わせになりまして継続審議となり、引き続いて本国会で審議を始めているわけでございます。で、一致が必要であるる、この意味は、これは当時の議長のあっせん案でございますから、議長が必要であると思うから、という字句になっておりますが、もちろんこういった重要な案件につきましては、国民の確信として、法律として出される必要があろうと思う。一方で非常な反対があって、いけないと、まあこれは、どの問題もあるいは賛成、反対はございましょうけれども、しかし、国民として了承納得できることが一番必要でございますから、そのためにはやはり各党各派の意見の一致が望ましいということは明らかでございます。議長もそれを考えられて、あっせん案を出されたと私は理解している。実は、議長あっせんの場にも私はおったのでございますが、これは私は、そのせっかく出た、それで修正まではかられたこの法律案を今後どう持っていくかということの非常な重要なポイントになるべきものではないかというふうに考えるわけでございます。
 そこで、その後ようとして、もう糸が切れたままおられるのが現状でございましょうけれども、これは、われわれの今後の審議におきまして、これをいろいろ苦心をし、工夫を重ね、努力を願わねばなりませんが、今後さらにに、提案者自体とされましても、この問題、つまり一致点を見出すということについての御努力をされるおつもりがあるかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
#41
○衆議院議員(早川崇君) 今のところは、われわれは提案者として考えておおりませんが、各党各派の一致ということは、むろん拒否権を認めたというものではないと信じますので、われわれとしても、譲る点はできるだけ譲って、また、社会党の方々も、行きがかりや面子にとらわれず、ほんとうに政治暴力を日本からなくすという意味で提唱するならば、一致する道があろうかと私も信じております。だれが折衝するかという問題は、党の問題であります。提案者といたしましては、原案をベストとして出しておりますので、今直ちに提案者側から折衝するという気持はないのでありますけれども、しかし、そのないという意味は、そういう意味に御理解賜われば非常に欣快に存じます。
#42
○加賀山之雄君 もちろん、提案者として苦心をされて立案されたわけでございますから、本案を最上のものと考えられていることは、私も当然であろうと思います。しかし、その後のいろいろの日本国内の世論なり、あるいはこの院内におきましても、両院においていろいろの見解があることも御存じになっているわけでございますから、提案者として、自分の趣旨、この法律の精神をほんとうに生かそうというお気持であるならば、私は、この最初に考えたことがベストだから、今ももちろんベストということで考えているということでなしに、私は、提案者みずから胸を開いて、どういうところをでは直したらいいか、そういう点に苦心されるのが提案者としてさらに良心的な行き方じゃなかろうかと思うわけでございます。これは、まことに失礼な言い分になるかもしれませんが、私はそういうふうに考えるのでございますが、もう一度、早川先生からひとつお考えを承りたい。
#43
○衆議院議員(早川崇君) 最近、この左右の政治暴力がなくなったじゃないか、政防法というものは、立案当時と社会情勢が変わったんじゃないかという人がおりますが、私は、逆に考えます。政防法が継続審議になっておる、これが大きい抑制効果になりまして、この一年間政治暴力というものが一応鎮静しておるわけでありまして、もし政防法がうやむやになって、国会が政治暴力というものに対して何ら手を打たなかった、あるいは廃案になったというような事態を考えまするならば、左右を問わず、テロ、殺人、傷害、あるいは背後関係を問わず、必ずやそういう政治暴力が続出するということを私は最も憂えるがゆえに、先ほど申し上げましたように、原案をベストと考えますが、少なくとも国会が、政治暴力というものを政治目的に使わないという断固たる決意の表明を国民にして、社会教育効果として抑制するということが保たれる程度の修正案なり妥協案というものを作るのは、原案を成立させていただければこれほどうれしいことはありませんが、われわれ国会議員なり提案者に課せられた重大な使命と思っておりますので、加賀山委員の御意見を十分われわれ提案者も傾聴いたしたい、かように思う次第でございます。
#44
○加賀山之雄君 仰せのとおり、私どももそういう点は非常に心配しているものでございます。社会党は、独自に考えられた政治テロ行為処罰法案にいたしましても、その中の最も大事な点を取り上げて、これを法律化しようとされたんでございますが、この法案にもしものことがあって、これが廃案になってしまったといった暁には、そういった政治テロ行為等までが、これは国会ではどうすることもできなかったということになるおそれは、私はやはり心配しなければなるまいと思うのでございます。その意味におきまして、私は、この法律案がさらに疑問点を究明いたしまして、そうしてとことんまでひとつ各会派の一致した意見としてこれが結論を出すということにすべてのものが最善を尽くすんだと、ただ表面に現われた賛成だ、反対だということでこの問題を片づけてしまうと、これはまた、先ほど私が申して参りましたように、日本の今の社会的背景等から見まして、非常に私は心配があるというふうに考えるのでございます。
 そこで私は、多少この内容なり形式についてお伺いをいたしたいと思うのでございますが、本法案の中身を見ますると、もちろんその要点は出ているわけでございますが、たとえば、破壊活動防止法等を広範に準用しておりますし、その中に現われる字句がそのまま使われている場合も非常に多い。ただ、処罰の面が加重されている。これは、法体系から見まするならば、破壊活動防止法と同じような内容を持ちながら、一つは軽く、一つは重いというような感じを受けるんじゃないかとさえ考えるのでございまして、どうしてこの破壊活動防止法等と結びつけて、あるいはこれら等の改正ということで問題を解決することはできなかったんだろうかというような疑問を持つのでございます。つまり特別法として本法を制定しないで、破防法の内容にさらにこの政治的暴力排除の規定を加え、そして改正をいたしまして、同じように目的が達せられ、法体系も、そのほうが二元化するよりは合理的なような感じを持つのでございますが、その点について、立案者としてはどうお考えになりますか。
#45
○衆議院議員(富田健治君) お答えをいたします。
 お承知のとおり、ただいまのお考えのようなことを最初われわれも考えたのであります。すなわち、破防法の改正ということを考えたわけでございます。ただ、特別法を作りますることになりましたことについては、二、三点の考慮が払われたわけでありますが、一つは、破防法の成立の過程にいろいろいざこざもございまして、それで破防法の改正ということになると、それをまた蒸し返すといいますか、また、いろいろ問題が起こるということもいかがかということを考えたのも実際上は一つの問題であります。
 それから、破防法は、御承知のとおり、内乱、外患誘致あるいは列車の転覆とかというような重罪と申しますか、非常に社会不安、場合によっては国家転覆というようなことにもなるような重罪を規定いたしております。ところが、政防法になりますと、内容は、殺人は別といたしまして、傷害、逮捕監禁あるいは、集団的な暴行、脅迫、器物損壊、こういうような、少し二級的と申しますか、少し軽い犯罪内容を持っておる、そういう意味で、第一の破防法に対して第二級的な破防法というようなものも考えられるんじゃないかということ。それからいま一つは、これも御存じのとおり、ここ一両年、集団暴行と申しますか、暴力事件、また個人的テロというようなものも、たびたびございまして、そういうことから考えまして、何とかしてこういうものをなくしたい。それについて、昨年の十一月ごろでございましたか、三党の暴力排除の共同決議がございまして、そうしてその間、今申しましたような暴力事件もあったのでございますから、いち早く三、四月ごろには、社会党のほうから、政治テロ行為処罰法案というものが出され、また民社党からも、政治的暴力行為防止法案、こういうものをお出しになりました。その当時、自民党もかねてから考えておったのでございまするが、結局、昨年秋の三党の暴力排除の共同決議もございますし、また各党すでにお出しになっておりますから、何とかわれわれも考えるべきじゃないかということを考えまして、そこで、先刻来経過を詳細加賀山委員からも御報告されましたが、いろいろお話し合いをいたしまして、ここに政治的暴力行為防止法案というものが出たのであります。不幸、その経過の途中におきまして、社会党さんの御同意を得ることができなかったのでありますが、そういう経過が政治的暴力行為防止法という特別法になったゆえんでございます。ちょっと申し上げます。
#46
○加賀山之雄君 たとえば、そのために破防法とは多少――そのまま破防法と同じにいくとは私は考えないのでございますけれども、別体系にいたしますためには二重の立法になりますために、たとえば団体活動の制限というようなことが出てきました場合に、破防法に基づく団体の解散は、団体活動の制限は暴力主義的破壊活動を有効に除去することができぬ場合にのみ許されるという建前になっていることは御承知のとおりでございますが、本法案によりますと、要件がかなり緩和をされておる。保護せんといたしまするところの法益がつまり大きくなっておる、こういうふうに理解されるのでございますが、それのみならず、先ほどの罰則にいたしましても、破防法が国としては非常に重要な事柄を含んでいるというように言われましたが、刑罰規定を見ますると、かえってこの法律によるほうが加重をされているように見受けるのでございまして、そういうような点を考えましても、そこに矛盾なりあるいは撞着が出てきはしないかというふうに考えるのでございますが、私は一、二の例を申し上げただけでございますけれども、それらの点について、もちろん御研究になっておると思うのでございますが、御意見を承りたいと思います。
#47
○衆議院議員(富田健治君) まず刑罰の加重の問題でございまするが、あるいは中には加賀山委員の御心配になりましたような、少し重過ぎるじゃないかというような点もあるかもしれませんが、その点はなるべく重過ぎないように、しかも、暴力排除の目的を達するような意味での加重ということを考えたつもりでございます。
 それから団体規制の問題でございまするが、破防法では、御承知のように解散というものを、最終段階だけが規定されておる。こちらは、その前の一つ段階といたしまして六カ月あるいは四カ月の団体規制をする。殺人の場合に限りまして解散というのでございまするが、これはやはり破防法の規定よりはよほど軽くと申しますか、なっておりますのは、そういう点を考慮いたしたつもりでございます。
#48
○加賀山之雄君 私は、この罰則が強過ぎるという工合に申し上げたのじゃございませんで、破防法というのが現に現存する法律でございますのでその内容形式は必ずしも一つではございませんけれど百、そこに一つの何と申しますか、統一と申しますか、観念の統一と申しますか、そういうものがないと、これは二重立法で矛盾撞着をになって、かえっていわゆる治安立法という趣旨から見ましても、非常に妙なものになるおそれがありはしないかということを申し上げたのでございまして、その点について、先ほどの法益の問題あるいは罰則の問題について、先ほどの御答弁では私は納得できないのでございまして、これらの点についてこれは矛盾がないと、こう考えたから重くなっておる、これだからこれは法益が広いのだ、矛盾はないのだということならそれでよろしいのでございまして、そういう点からお答えをいただきたいと思うのです。
#49
○政府委員(関之君) 破防法との関係で、刑罰の加重の問題につきましてお答えいたしたいと思います。破防法の建前は、当時の、と申しましょうか、現行刑法を基礎といたしまして、それに若干の拡充をいたしまして、それを大体現行刑法の基礎において刑罰を新しいものに加えた。こういう形でありまして、一般的には現行刑法の刑罰の加重をしたという形はないわけであります。ところが、ここで特に御指摘申し上げたい点は、破防法の規定は、御承知のとおり、内乱であるとか、あるいは殺人であるとか、非常に重い犯罪でありまして、したがって、現行刑法におきましてもかなり重く、その点につきましては手を入れる必要のない重い刑罰がそこに盛られているわけでございます。
 さて、政防法の問題になってみますると、破防法のその問題との関連で考えてみますと、取り締まりの対象としている違法行為の内容が、破防法の場合よりは一般的に見ると、少し軽い行為と思われる行為が内容として取り上げられている。したがって、刑なども、刑法の建前から参りますと、少し軽く一般に規定されているのであります。そこで、その軽いのはこのままでよろしいかどうか。現在の政法的暴力行為を取り締まるのがこのままでよろしいかどうかというような観点から考えてみました場合に、やはり若干の加重をするのが正当ではないか、こういうふうに考えられるのでありまして、そういうような考えの上からこのような刑が盛られたものと考えるのでありまして、法律の趣旨、立法の目的というものから考えまして、私どもとしましても、現行法の法体系の規定のほうから見ても、えらい異論とすべきものではなくて、立法の目的から見て、この程度のことはこの程度に拡張しても相当ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
#50
○加賀山之雄君 時間があればもう少しその問題についても承りたいのでございますが、なお逐条的にもたくさん伺いたいことがございますが、きょうは時間がないようでございますので、もう一点伺いたいと思うのでございます。不法国会侵入行為、これを防止しなければならないことは当然でございまして、いわゆる俗にデモ禁止法ということで、国会周辺の集団行動については、これは一般の場所とは違った国会審議を正常に平穏にやるという非常な重要な意味がございますので、私は必要であろうというように考えて、本院でもこれを審議いたしたことがございますが、いまだこれは立法化されておりません。そこでこの問題は、今度の法律によりますと、この法体系の中に取り入れられておるようでございますが、これは私はまさしく社会党が考えられたという別体系にするということが正しいように理解するのでございますが、また政治的暴力行為というように考えましても、いわゆる政治的デモ等とはこれは性質が違うはずであります。しかし、暴力行為とすればこれを防止しなければならぬことは確かでございますけれども、他の政治的暴力行為とは範疇がまた違うような気がするので、そういう範疇が違うならば、これは別体系の法にするということが正しいんじゃないかというふうに解釈をいたすのでございますが、その点について、どうしてもこれは一本にしなければならないものなのか、もしそうだとすれば、その理由を承りたいと思います。
#51
○衆議院議員(富田健治君) ただいま加賀山委員のお考えと同じような考えも提案の前の過程では持ったわけでございます。ただ一面、政治暴力という点においては、ただいまお話もございましたけれども、同じようなものだ、そこで一方は集団暴力である、また一つは個人的な暴力である、だから政治暴力というものを対象とする意味で一つの法規にするのも全然誤っておるということも言えないじゃないか、立案の過程においてはそういう考えで実はしたようなわけであります。したがいまして、猪俣私案では、先ほど来のお話もありましたとおりに、加賀山委員とやや同じお考えだったんじゃないかと思いますが、別にしたほうがいいんじゃないか、筋が通るんじゃないかというお話がございましたから、あえてこれは反対をするような筋でもないというので、それでこの政治暴力排除の法案が成立いたしますならばけっこうだというので、話し合いでそれを受けたというようなことに相なっておるような次第であります。
#52
○加賀山之雄君 これは、見解の違いになるかもしれませんが、立案者であられる諸先生方も、社会党の提案を受けてそうしてもいいというところまで考え直されたということでございますし、それから私は確かに、いかなる暴力であれ、その現われ方がいかなるものであれ、集団であれ個人であれ、政治的に暴力を加えようという考え方なり行動は、これはもうひとしくこれを防遇しなければならぬことは当然でございます。しかし私は、そのよって起こる起こり方あるいはこの態様、形式、動機、いろいろな点から見まして、たとえば浅沼前委員長の不幸な御逝去なんかと比べてみてどうしても違う面がある。そうするならば、これはやはり法体系としては、別建てにして、そうして、私はさらに進んで、侵入だけでなくて、国会周辺を騒がしてそれでもって国会の審議に圧力をかけようという行動自体も、私は非常に国会としては迷惑がらなければならないのじゃないかというふうに考えるものでありまして、そういう意味から申し上げているので、これは私は、どう考えましても別体系が正しいのじゃないかという考えが抜け切れないのでございます。これは今、富田先生からお話を承りましたが、民社党の門司先生でも鈴木先生でも、ひとつお考えがあれば承りたいと思います。
#53
○衆議院議員(門司亮君) それじゃ、私から補足して申し上げますが、今の加賀山委員の御意見も非常にもっともでありまして、立案の過程におきましては、富田さんからお話もございましたように、かなり論議もされた点でございます。しかし、一応政治目的が違うからということでも、暴力としての範疇から考えるならば、まあこういうものもどうだろうという、こういう考え方で原案は作成したのでございますが、しかし、社会党さんからもその点のお話があり、さらに公聴会におきましても、前の最高裁の判事でありました真野先生からもやはり御同様な意見がございまして、したがって、私どもといたしましては、今、加賀山委員のお話のように、これをこの法案から抜き取ってそうして別個の法案として成立させることが可能であるとするならば、私どもはそれで何ら異存はございませんが、ただ問題になりますのは、この法案の審議の過程におきましては、不法の侵入ということにこれをしぼったのでありまして、国会周辺におけるこのデモと申し上げておりますものも、集団行進についての基本的な権利、あるいは請願陳情の権利というものは、憲法においてこれを認めておりましてしたがって、憲法に書いてあるとおりに静粛に行なわれるというようなものは、端的にこれを禁止すべき筋合いでもないのじゃないかということが考えられるのでありまして、この点は憲法との関連において私は非常にむずかしい点だと思いますが、しかし、お尋ねの趣旨のこの法律から国会並びに首相官邸への不法侵入を抜き取って、そうして別個の法律として提案すべきであるという御意思については、私ども別に異論があるわけじゃございません。
#54
○衆議院議員(鈴木義男君) きのうの補充的な答弁を申し上げたいと思います。答弁はなるたけ統一を保つために一人の人にお願いするようにしてあるのでありますが、何か私の意見が名ざされて亀田委員から昨日質問があったそうですが、私はやむを得ない用事で席におりませんでしたので、この機会にちょっと補充的に述べさせていただきたいと思います。同じ質問を二度繰り返えしていただくことは恐縮でありますから、もし私の理解が間違っておれば御訂正願いたいと思います。つまり、議会内におけるいろいろな行為については、議長に警察権があるのであって、議長の告発を待たなければ、検察官が独自に起訴すべきものでないというような考え方、私も持っておるのかという御質問があったように承ったのですが、そうでしょうか。もしそうならば、その点はそのとおりであります。できるだけ議会の、ことに三権分立の場合に、自律権を尊重しなければならない。国会は議長の警察権のもとにあるので、そしてまた議会の規律を守るために、御承知のように懲罰制度があるのであります。もし暴力行為等やむを得ずしてふるった場合でも、これは懲罰に付せられることはやむを得ないが、議会において懲罰に付した以上は、これを検察庁において問題にする場合には、議長の告発を待ってすべきもの、かように考えておるわけでありますけれども、それは国会を構成するメンバーについて申し上げておるのでありまして、国会を構成しないべてまでここは治外法権の場所ではないのでありますから……。構成しておる人でも現行犯の場合は、いかんながらそのまま議長の許諾を得ず逮捕せられましても仕方がないと考えておるのであります。いわんや、構成外の人が、単に議会の構内において乱暴なことをした、たとえば前年の安保闘争のときのように、トラックをひっくり返して、火をつけて燃やす、私は大体こういう法律、猪俣私案に現われた別にせよというような法律、これはなくもがなと願っておる一人でありまするが、あの映画に写った光景を見て、これはどうもやむを得ない。まあ二度と再びあってはならぬことであるが、やむを得ない。どうか二度となからしめるためにも、この法律はしばらく作っておくことが必要である、かように考えたわけであります。静々と行なわれるデモ行為について弾圧をするとか、そういう気持は毛頭ないわけであります。また、その後はデモがきわめて静粛に行なわれておる、まことに賀すべきことと思っておる次第でございます。それで今の議会の自律権、ことに議員に対して与えられておる不逮捕特権、そういうようなものにからみまして、議会は独自の自律権を持っているのだということにつきましては、私は亀田議員のお考えと全く同じであります。法廷においてもそれを主張したとおりであります。ただ、わが国の判例としては、まだ確立したという段階にいっていないことを遺憾に感じております。
#55
○亀田得治君 ちょっと、これは予定ではなかったのですが、ちょうど鈴木さんから昨日の私の質問に対するお答えがありましたのでちょっと聞きますが、鈴木さんのお答えでその点は了承いたしますが、昨日富田さんのほうは、ひとつ検討してみるという意味のことを言われて終わっておるわけですが、これは一日しかありませんが、御検討なり、あるいは自民党としてのその辺についての考え方、こういうことが今表明できました明らかにしてほしいと思います。
#56
○衆議院議員(富田健治君) 実は、率直に申し上げますが、まだ検討の途中なんで、自民党の中で一応やはり話し合いました案は持っておるのでありますが、まだ話し合いをいたす際に、鈴木委員から御見解が発表になったのであります。大体今お話しになったことは私も賛成でございますけれども、非常に事重大でございますし、亀田さんも重要だと思ってお尋ねになったことだと思いますが、統一見解といえば今のような見解になっております。いましばらく御猶予を願いたい、かように申し上げたいと思います。
#57
○委員長(松野孝一君) 他に御発言はございませんか。――なければ、本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。
 次回は十月三十日午後零時五十分から委員長及び理事打合会を、午後一時より委員会を開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   牛後三時五十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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