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1961/10/30 第39回国会 参議院 参議院会議録情報 第039回国会 外務委員会 第8号
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1961/10/30 第39回国会 参議院

参議院会議録情報 第039回国会 外務委員会 第8号

#1
第039回国会 外務委員会 第8号
昭和三十六年十月三十日(月曜日)
   午後二時十三分開会
   ―――――――――――
  委員の異動
十月二十七日委員相馬助治君辞任につ
き、その補欠として曾祢益君を議長に
おいて指名した。
十月二十八日委員苫米地英俊君辞任に
つき、その補欠として宮澤喜一君を議
長において指名した。
   ―――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     近藤 鶴代君
   理事
           井上 清一君
           鹿島守之助君
           木内 四郎君
           森 元治郎君
   委員
           草葉 隆圓君
           笹森 順造君
           杉原 荒太君
           永野  護君
           堀木 鎌三君
           加藤シヅエ君
           羽生 三七君
           曾祢  益君
           佐藤 尚武君
  国務大臣
   外 務 大 臣 小坂善太郎君
  政府委員
   外務政務次官  川村善八郎君
   外務大臣官房長 湯川 盛夫君
   外務省経済局長 關 守三郎君
   外務省条約局長 中川  融君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       結城司郎次君
  説明員
   外務省経済局外
   務参事官    佐藤 日史君
   ―――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本国とフィリピン共和国との間の
 友好通商航海条約の締結について承
 認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
○関税及び貿易に関する一般協定に附
 属する第三十八表(日本国の譲許表)
 に掲げる譲許を修正し、又は撤回す
 るためのアメリカ合衆国との交渉の
 結果に関する文書の締結について承
 認を求めるの件(内閣提出、衆議院
 送付)
○関税及び貿易に関する一般協定に附
 属する第三十八表(日本国の譲許表)
 に掲げる譲許を修正し、又は撤回す
 るためのドイツ連邦共和国との交渉
 の結果に関する文書の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
○第二次国際すず協定の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出、衆議
 院送付)
   ―――――――――――
#2
○委員長(近藤鶴代君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る二十七日相馬助治委員が辞任され、その補欠として曾祢益委員が選任されました。また二十八日苫米地英俊委員が辞任され、その補欠として宮澤喜一委員が選任されました。
   ―――――――――――
#3
○委員長(近藤鶴代君) 次に、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件(衆議院送付)を議題といたしたいと存じます。本件は、去る二十六日衆議院から送付されまして、本付託になりましたから、念のために申し上げておきます。
 本件につきましては、先般提案理由の説明を聴取いたしましたが、さらに補足説明を外務省当局から聴取いたしたいと思います。佐藤経済局参事官。
#4
○説明員(佐藤日史君) 日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約につきまして補足御説明申し上げます。
 サンフランシスコ平和条約が昭和三十一年七月に日本国とフィリピン国との間に効力を発生いたしました。両国の関係は、一応平和関係に入った次第でございますが、遺憾ながら、フィリピン側におきまして、わが国に対し著しい差別待遇が存在いたしました。この差別待遇と申しますのは、両国間関係の基本的事項、すなわちわが国民のフィリピンに対する入国及び滞在、わが国民及び会社のフィリピン国内における事業活動、さらにわが国のフィリピンに対する貿易、これらの基本的事項につきまして、なお著しい差別待遇が残存いたします。したがいまして、政府といたしましては、平和条約効力発生後の機会あるごとに、フィリピン政府に対しまして、これら差別待遇の撤廃方、そのために両国間の友好通商航海条約を締結したいという希望を表明いたして参りました。それとともに、これらの事項につきまして、各個別に、できれば差別待遇を除去せしめたい、廃止せしめたいという考え方から先方に交渉を行ないまして、昭和三十三年一月には、まず貿易につきまして、両国政府間に暫定取りきめを締結いたしました。これによりまして、従来行なわれましたわが綿製品のフィリピン輸入に際しての輸入禁止というような事態は、一応防がれることになったわけでございます。
 さらに、同年八月には、入国及び滞在につきまして、貿易に関する暫定取りきめと同じような方針で、両国政府間におきまして、入国、滞在手続の簡易化に関する暫定手続を取りきめました。これによりまして、不十分ながら、従来フィリピン国内において存在いたしましたわが国民の入国、滞在に対する極端なる差別待遇が軽減されまして、一年三百五十人のワク内で、しかも、最初、期間六カ月以下の短期旅行者に対しまして、短期入国者に対しまして、三百五十人のワク内で手続が簡易化されることになった次第でございます。
 しかしながら、これらの暫定取りきめは、あくまでも暫定取りきめでございまして、その性質においてもまことに不十分、内容的にも、先ほど冒頭に申し上げましたわが国民及び会社の事業活動に関する差別待遇というものは、この両取りきめによっては、なお除去されなかった次第でございます。したがいまして、これらの両取りきめが成立いたしました後にも、政府といたしましては、引き続きフィリピン政府に対しまして、全面的な友好通商航海条約の締結を一日も早く開始いたしたいということを申し込んでおりましたのですが、ようやく気運も熟しまして、昭和三十四年六月に、わがほうが正式にその案文を提出いたしまして、先方も快くこれに応じまして、わが案文の研究に着手いたしました次第でございます。先方はこの案文に研究を加えること実に八カ月余りにわたりまして、昨年二月二十三日から、ようやく本件条約の締結に関する交渉がマニラにおいて開始されました。その後四月十八日からは、東京に舞台を移しまして交渉を継続し、実に九カ月余にわたりまして交渉をいたしました結果、きわめて友好的な雰囲気のうちに交渉を継続いたしまして、昨年十二月九円に至って、ようやく署名を見るに至った次第でございます。この条文は、全文十カ条よりなっておりまして、先ほど申しておりますとおり、入国、滞在、事業活動、為替、通商、海運等の事項につきまして、最恵国待遇の許与を骨子といたしております。戦後わが国が締結いたしましたこれらの種類の条約のうち、東南アジア諸国と締結いたしましたものといたしましては、インド、マラヤ連邦及びパキスタンと締結いたしましたものに次ぐものでございます。なお、本格的名称からいいましても、友好通商航海条約、この種条約の通常含まれます内容を網羅しておるという、本格的な友好通商航海条約といたしましては、わが国といたしまして、戦後東南アジア諸国と締結いたしましたものでは最初のものでございます。これはまた、フィリピン側としましては、独立後の最初の友好通商航海条約であることもちろんでございまして、英明なるガルシア大統領閣下が、旧敵国であるわが国を最初の友好通商航海条約の相手として選ばれたということは、まことにその識見に対しまして、われわれは深い敬意を表する次第でございます。この条約によりまして、わが国の国民、また会社に対しまして存在いたしました従来からの差別待遇というものは、全面的に撤廃されることになりました。日比両国間の関係は、ここに名実ともに正常化することは、まことに御同慶に堪えない次第でございます。
 ここで、目を日比間の貿易関係に転じますと、一九五七年から現金決済になりまして、年々その貿易の規模を拡大いたしております。昨一九六〇年のわが輸出総額は、為替統計によりまして、約八千万ドル、その主要なる輸出品目は、鉄鋼及び鉄鋼製品、繊維製品、機械類となっております。また、わが輸入総額は、昨年、一九六〇年におきまして約一億一千万ドルということでございまして、その差額は約三千万ドルのわが入超となっております。主要なる輸入品目は、木材、 マニラ麻、銅鉱石及び鉄鉱石ということになっております。この往復約二億ドルに達します貿易規模というものは、わが国の東南アジア貿易、これについて見ましても、香港に次いで第二位の貿易規模でございまして、わが貿易の相手国といたしまして、全世界的な規模から見ましても第六位、すなわちアメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダ、香港、フィリピンということで、第六位に位しております。
 さらに、フィリピンの貿易において、わが国に対する輸出入貿易がいかなる地位にあるかということに目を転じますと、フィリピンは、御承知の通り、アメリカから独立した国でございますので、その歴史的事情によりまして、対米貿易の比重が第一番であるということは当然のことでございますが、最近の傾向といたしましては、次第にアメリカの比重が減少いたしておりまして、それにかわりまして、わが国の比重が増大を示しておるということは、まことに注目すべき点ではないかと存ずる次第でございます。すなわち、若干数字で申し上げますと、フィリピンが輸入する分について申し上げますと、一九五九年、フィリピンのアメリカからの輸入額は、同国総輸入額の四五・五%でございます。ところが、六十年に至りますと、これが四二・三%に減少しております。一方、同期間におけるわが国との貿易、フィリピンがわが国から輸入した額、これを見ますと、一九五九年一七・六%であったものが、六〇年には二六・四%に増加しております。絶対額で申しましても、わがフィリピンに対する輸出額、一九五八年には六千八百万ドル、これが、五九年には七千九百万ドルに増加し、さらにこれが、昨一九六〇年には約八千万ドル、正確には八千四百万ドルでございます。さように増加を示しております。ごく最近の数字を申し上げますと、一九六一年、本年の上半期、これが昨年同期といかなる変化を示しておるかということを申し上げますと、わが対比輸出、フィリピンに対する輸出を申し上げますと、本年上半期、一月−六月の分は、昨年同期に比べまして、二九%の増加を示しております。したがいまして、この傾向によりますと、昨年に存在いたしました約三千万ドルのわが入麺額というのは、おそらく本年末にはなくなるのではないかと考えられる次第でございます。このように、貿易がわが方に非常に有利に進展いたしております傾向といりものは、先ほど来申し上げました、この条約が発効いたしまして、わが国に対する差別待遇がなくなり、わが国民が入国、滞在につきまして、いかなる第三国にも劣らない待遇を受ける、したがいまして、今までのような最初六カ月、三百五十人という制限された入国の仕方ではなくなって、この条約に基づいて貿易その他に従事する者は、三年間第一次の期間として入国することができるわけでございます。そういう状態になり、かつ、事業活動にあたって従来存在いたしました制限、差別待遇が撤廃いたされますと、わが国民の投資、フィリピン会社との合弁事業並びにわが会社の支店の設置、こういう活動がすべて今後は許されることになるわけでございます。そういう状態になりますと、今申し上げましたような日比間貿易の傾向というものは、さらに好転するのではないかということは、当然のことではないかと思う次第でございます。
 なお、フィリピン側におきましては、この条約は、批准手続を進められておりません。それは、大統領閣下がしばしば言明されておりますように、本年は、あたかも同国の総選挙の年に当たりまして、政治情勢がきわめて微妙であるということで、大統領は、今年は通さない。しかし、来年一月末に始まりまする通常国会には、もちろん提出して批准するものであるということでございますので、わが政府といたしましても、その言明に信頼いたしまして、わが方側の批准手続を進めておる次第でございますが、もともとこの経緯から申しましても、わが国がフィリピン国から受けている差別待遇を撤廃するために、累次の機会をとらえまして、しばしばこの条約を推進してきた経緯もありますので、この際、わが方からこれを批准いたしまして、大統領閣下の言明を信頼して、向こうの出方を待つということが、フィリピン側の批准手続を推進するゆえんではないかと思う次第でございます。
 以上、右のとおりでございますので、どうかすみやかに御審議の上、御承認賜わらんことをお願いする次第でございます。
#5
○委員長(近藤鶴代君) 質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
 なお、第二次国際すず協定の締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表に掲げる譲許を修正し、又は撤回するためのドイツ連邦共和国との交渉の結果に関する文書の締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表に掲げる譲許を修正し、又は撤回するためのアメリカ合衆国との交渉の結果に関する文書の締結について承認を求めるの件、以上四件を議題とし、質疑を行ないたいと思います。四件について質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
#6
○羽生三七君 今のフィリピン共和国との友好通商航海条約との関係ですが、御説明にあったこの条約は、日本にとっては好ましいので、すみやかに批准の促進をやることは、もちろん異議はないのですが、相手国のフィリピンが大統領選挙の関係があって、政情が微妙なものだと言われておるんですが、本来政治的なものでないこの種の通商航海条約で、政治的微妙というのは、どういうことを意味するのか。しかし、これはいろいろ微妙な問題があると思うので、御説明にも限界があろうと思いますが、工合が悪かったら、速記をとめてもいいですから、少し事情を説明してもらいたい。
#7
○説明員(佐藤日史君) 大統領の従来の再三にわたる御言明から判断いたしますと、これは、先ほど申し上げましたとおり、フィリピンにとりまして、独立後最初の友好通商航海条約であるということでありますので、ぜひとも公正かつ慎重な審議を十分徹底的にやって、国民はもちろんのこと、各方面納得づくの上で、このりっぱな条約の効力を発生させたい。もちろん、大統領自身が、昨年六月わがほうが案文を提出いたしまして、いよいよ交渉を始めるというときに、先方がきん然としてこれを受諾したと、先ほど申し上げましたが、決断はもちろん大統領が下された次第でございまして、大統領といたしましては、あくまでこの条約の批准までは邁進するということは、再三言っておられることでございますが、ただ、時期の判断といたしまして、ただいま申し上げましたように、今年は公正かつ十分な審議をするには十分ではないという御判断があったようであります。来年選挙の終わったあとの一月には必ず出すのだということは、再三申されている次第でございます。
#8
○羽生三七君 その程度の理由は、先ほどのことでわかるんですが、重ねて申し上げますけれども、お尋ねしますが、政治的なものでないこの種の通商航海条約で、しかも、なおかつ問題がある、慎重を要するという事情がなかなかのみ込めない。その間、今御説明程度のことなのかどうか。その辺を重ねてお尋ねをするわけです。
#9
○森元治郎君 ちょっと付け加えれば、もっとやさしい、庶民的な言葉を使えば、これは神奈川条約ではないかというようなことをフィリピンの民衆から突っつかれやせぬか。あまりけっこうな条約であって、何か、フィリピンが損したのではないかという感じを庶民は、反対派は持っておるのではないか。そういうこともあわせて答弁になれば、羽生さんの御質問に沿うのではないかと思います。
#10
○説明員(佐藤日史君) 一番の問題、大統領がおそらく判断しておられると思いますのは、先ほどもちょっと触れた次第でございますが、日本はフィリピンにとって旧敵国である。旧敵国である国となぜ最初に結ばなければならないかということで、非常に微妙な点があるのではないかと考えております。
#11
○永野護君 今の羽生さんの質問も……これは速記をとめて下さい。
#12
○委員長(近藤鶴代君) 速記をとめて下さい。
   〔速記中止〕
#13
○委員長(近藤鶴代君) 速記を起こして。
#14
○森元治郎君 日本のほうでは、この条約はまことにけっこうで、成功したものだ。だから、国会をさっさと通った。こういうことになると、一方フィリピンのほうでは、反対派は、待っていましたとばかり、それはけしからぬ、こんなものは結ばぬということになるおそれはないのかどうか。その辺の配慮はどうなんですか。
#15
○説明員(佐藤日史君) 先ほど来申し上げました入国、滞在、事業活動、貿易、これらの基本的事項につきまして差別待遇が撤廃されましたということは、もちろんわが国として喜ぶべきことであって、それらの点に関する限りは、わがほうが交渉の目的を一応達したというわけでございますが、しかし、御承知のとおり、二国間の交渉と申しますと、日本側の原案だけを押し付けるわけには参りませんので、フィリピン側の代表団も、自国の利益を守るためには非常に奮闘されまして、われわれも、それには率直に敬意を表した次第でございまして、結局でき上がりましたものは、今申し上げた諸点につきましては、日本側に対する差別待遇は撤廃されましたけれども、その他の点につきまして、日本側が当初わがほうの原案に入れておりました点で達成されなかった点が多々あるわけでございます。そういう点から申し上げますと、これは、結局互譲によって成立した条約である。あらゆる条約の交渉がそうであるように、日比双方の互譲によって成立した条約であって、フィリピン側にとっても、十分彼らの最小限度の利益は守り得た条約と考えております。双方とも最小限度の利益を確保したという点において妥結した次第でございます。念のために申し上げますと、たとえば船舶条項、これは、国際海運自由の原則というものをわれわれは振りかざしておりまして、あらゆる国と通商航海条約の交渉をする場合には、必ずそれを達成するように努力するわけでございます。フィリピンの場合にも、この原則に従いまして、海運事項、船舶の港内における取り扱い、荷物の積み取り権、あるいは旅客の秘み取り権というものにつきましては内国民待遇、フィリピン船舶と同じ待遇を日本船舶にもらいたいということを主張した次第でございますが、これは、先方の政策としまして、国海運の育成段階にある、そのためには、フィリピン側は、議会の将来に対する立法椎を確保しておきたいということで、強硬に政策の対立が展開いたしまして、残念ながらわが国の目的が達成いたしません。これは、まことにわれわれといたしまして申しわけないと存ずる次第でございますが、したがいまして、今申し上げました海運事項の諸点につきましては、内国民待遇は確保できなかったわけで、この点はフィリピン側の勝利、わが国の敗北、率直に申せばそういうことになる。そのほかにも、職業活動の相互主義、一応職業活動につきましては最恵国待遇ということになっておりますけれども、さらに議定書におきまして、相互主義にかけることができると書いてあります。この意味は、フィリピンの国内法におきまして、非常に多くの職業活動、医者とか看護婦とか弁護士とか、そういうものが相互主義にかかっておる。すなわち、相手国が許す場合に限ってフィリピン側も許すのだという建前に法律上の規定がなっておりますので、われわれも、そういう相互主義にかけるという規定を置かないように努力したのでありますが、残念ながら、これはとうとうそれをのまざるを得ませんでした。従来職業活動につきましては、無条件の最恵国待遇を許すのが例でございますが、日比の場合には、フィリピンの国内法の建前を否定することができなかったものでございますので、相互主義にかけるということになっておるのもその一つの例でございます。
 それから、条約の有効期間、これはあまり大きな問題でないかもしれませんけれども、通常は五年、わがほうの原案も五年、せっかく友好通商条約を作る以上は、長期安定した基礎の上に両国関係を置くという目的で、五年を主張した次第でございますが、フィリピン側は、これは最初の友好通商条約であって、まずしばらくの間は短期の条約として、この成果を見たいという強い希望を表明いたしましたので、残念ながら、五年の主張も、われわれは貫徹することができなかった次第であります。そのように、いろいろやはりわがほうとして譲らざるを得なかった点がございますので、フィリピン側は、大統領閣下以下、決してこれは日本側だけの一方的勝利でないということは十分御承知であられる。その点は、今、国内において、先方の首席全権としまして交渉に当たられたラウレル元下院議長その他国内を奔走されておりまして、そういう点、国民に徹底しておられますので、その点も、次第に国民の間に徹底するのじゃないかと考えております。
#16
○森元治郎君 私は専門家でないが、今政府委員が言った、海運政策が第六条の三項に掲げてあるものだと思うのだが、海運関係で、人と貨物の輸送に関しての内国民待遇というのは、これは一般的原則なのですか。ここでは、最恵国待遇でこの条約はできているのだけれども、内国民待遇というのが普通なんですか。これはあなたに伺うのだが……。
#17
○説明員(佐藤日史君) 一例をとりますと、日米通商航海条約、戦後最初に締結されました、これは最も典型的な海運条項を含んでおります。それから、その後マラヤ連邦と昨年締結いたしました通商協定、これにも、最も完全な形で航海条項がなっております。それらには、いずれも貨物及び旅客の輸送につきましては、積み取りにつきましては、内国民及び最恵国待遇という規定が載っております。したがいまして、それがわがほうの実は原案に、大体東南アジア諸国に原案を提出いたします際にも、そういう内国民かつ最恵国待遇、両方の待遇をつけまして、結局相手国の船舶にも劣らない、しかも相手国がそれよりよい待遇を第三国に与える場合にも、なおかつそれに均霑し得るという、防備十分の建前をとって申し込むわけでございますが、それがわがほうの建前でございまして、フィリピンの場合は、それが貫徹しなかったのはまことに遺憾であるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。
#18
○森元治郎君 そこで、私は心配なのは、向こうでは、いろいろな深い事情があり、こっちでは、それに対して早目に条約を国会の承認を得て待っておるという結果になる。もしフィリピンの議会において、来年の選挙の結果にもよりますが、これが提出されても通らないというような事態が起こらないとも限らないと思うのだが、その点についての配慮というものは現在持っておられるかどうか。こっちでは、国会の承認を得て、いっでも批准書の交換をする態勢をとりながら、向こうは、下手までつけば、国会提出もおろか、出せば否定されるということになれば、一体宙に浮いてしまうということがあり得ると思うのですが、そういう点について、考えを深くされたことがあるかどうか、お伺いします。
#19
○説明員(佐藤日史君) 主としてそういう事態は選挙の結果にかかるわけでございますが、この見通しは、先ほど一応御返答申し上げましたが、ガルシア大統領閣下の率いられるナショナリスタ党というものがまた勝つのではないかという見通しでございまして、現在、フィリピンの議会の建前といたしましては、条約は、上院がこれを承認する権限を持っておるわけでございます。上院の三分の二の多数で承認を与えることになっておる。上院の議席が二十四でございまして、三分の二と申しますと十六でございます。現在すでに与党のナショナリスタ党は、その十六、三分の二を擁しております。これも、われわれが収集いたしました情報によりますと、選挙の結果も、その十六は動かないということでございますので、われわれといたしましては、わがほうが、この批准手続を完了いたしました際に、むろん、一月におきまして、フィリピン側のこの批准手続において、今われわれが希望しますような事態が起こらないというような事態ではないのではないかという確信を持っておる次第でございます。
#20
○森元治郎君 交渉に当たられた、御苦労された湯川元大使、現官房長、政府委員がここにおられるが、これはどうなのか、同時国会提出ということはあり得ないだろうか。向こうもかけ、こっちもかけ、同じ態勢で進んで行く、こういうことが普通じゃないかと思うのだが、その点どう考えますか。
#21
○政府委員(湯川盛夫君) ただいまの佐藤参事官の御説明に少し補足させていただきますが、これは、非常にむずかしい問題でありまするので、いろいろな機微な関係もありますし、速記をとめていただきたいんですが。
#22
○委員長(近藤鶴代君) では、速記を止めて。
   〔速記中止〕
#23
○委員長(近藤鶴代君) 速記をつけて。
#24
○森元治郎君 向こうからもらった日比間の友好通商条約の説明書第十項、アメリカ・フィリピンの特恵、米比特恵の協定の内容というものはどういうものか。
#25
○説明員(佐藤日史君) 米比特恵の内容を順々に申し上げますと、まず、天然資源の開発及び公益事業の運営というものはフィリピンの憲法に規定がございまして、これは、フィリピン人及びフィリピンの会社に限定されておるわけでございます。それが、一九五五年九月六日の米比協定によりまして、その六条、第七条でございますが、アメリカ人にもその特恵が与えられることになった。それが第一点でございます。
 次に、フィリピン国内の単行法によりまして、銀行の頭金業務というものは、これはフィリピン法人たる銀行に限るということになっておりまして、それが、その法律ができます前から、ある外国の銀行につきましては、既得権が認められておりますが、そうでないもの、その法律ができました以後、現在もすでにそうでございますが、外国銀行が預金業務に従事することができないという限定がございます。それにはアメリカ人はその制限には服さないということになっております。それが第二点でごいます。
 それから第三点といたしましては、これもやはり単行法に基づくわけでございますが、小売業、フィリピン国内で小売業に従事する者、この小売業に従事する権利というものはフィリピン人に限られておる。これがフィリピン人第一主義というフィリピン政府の大きな方針の一つでございます。そういうもの、これもわがほうが譲らなければならなくなった一つといえば、そういう点でございます。これも、フィリピンの立場というものをわれわれといたしましても了解いたしまして、そういうものについては、アメリカ人はその特恵が均霑しておりまして、アメリカ人及びアメリカ人の会社は、したがって、フィリピン国内で小売業に現在といえども従事することができるわけでございます。日本人はそのアメリカ人の特恵に均霑しないということをわがほうといたしましても納得いたしました。これも、わがほうが譲りました点の一つでございます。
 それからもう一つは、沿岸貿易でございますが、これはちょっと性質が違いますけれども、これも、フィリピン人の所有する船舶でなければ従平することができない。これにつきましても、アメリカ人かアメリカ人の会社が所有する船舶というものはできるということで、これは、ほかの第三国民には、及び第三国の会社には詐されておりませんので、これもアメリカに対する特恵の一つになる次第でございます。
 以上申し上げましたのは、現在アメリカに与えられている事業活動につきましての特恵でございまして、そのほかに、先ほど申し上げました米比協定によりまして、関税に関する特恵というものがアメリカに与えられておる。これは、終期は一九七四年の七月の三日でございます。それまでの間に、次第に現在亨有しております特恵税率というものがだんだんに逓増して参りまして、今申し上げました七月三日にはそれがパーになる。一般税率と同じになるということで、率が漸増していくわけでございます。現在なお、アメリカの産品というものがフィリピンに輸入される場合に、現在のところ七五%、一般税率の七五%、つまり二五%の特恵率をかけておるわけでございます。
 以上でございます。
#26
○森元治郎君 十項の「並びに」のころ、「わが国が旧領土及び南西諸点に与える特別の利益については、」いうのを説明して下さい。
#27
○説明員(佐藤日史君) これは、わがほうが先方に要求しましたものでございまして、最近の通商航海条約には、いずれもこれがあるわけでございます。その内容は、(a)、(b)と議定書の十項の(2)の項がそれに当たるわけでありますが、この(2)の(a)でございますが、「サン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第二条の規定に基づいて日本国がすべての権利、権原及び請求権を放棄した地域」というのは、すなわち朝鮮、台湾等でございますが、これらの出身者であって、もっぱらこれらの地域が日本から分離したために日本国民でなくなったというものは、従来日本国民として享有していた権利を引き続き認められることがございます。たとえば、朝鮮人であって終戦前から滞在していたものは、日本国内にあったものは、在留資格が不要である。しかも、在留期間が無期限であるというような点は、ほかの第三国人と違いまして、ほかの第三国人は、日本に滞在する場合には、留学生であるとか永住資格を持っているとか、何かの新聞報道に従事しているような、それぞれ在留目的がございまして、その在留目的による資格、在留資格によりまして滞在期間もきまって参るわけでありますが、終戦前におりました朝鮮人については、そういう者は在留資格は不要になっております。これは一つの特恵でございまして、フィリピン人がそれに均霑しょうとしてもだめだということを例外規定としてここに掲げているわけでございます。
 それから(b)項のほうへ参りまして、「同平和条約第三条に掲げるいずれかの地域に対する行政、立法及び司法に関し」云々の点、これは、主として琉球その他南西諸島に対してわが国が与えている特恵、そういうものにフィリピン人を均霑させないために設けられた規定でございます。その具体的内容と申しますと、沖縄などの産品が日本に入って参ります場合には、関税を現在免除されております。それから、同じく沖縄産品については、自動承認制が適用になっている。こういう特別の待遇を受けておりますので、フィリピンとの間の貿易について、それがフィリピン人によって均霑されないということを確保するために設けた規定でございまして、先ほど来申し上げましたとおり、戦後の通商航海条約におきましては、すべてこの留保をなすことになっております。
#28
○杉原荒太君 議事進行について、ちょっと発言したいのですが、委員長は、最初両案をとり上げるというふうな御宣言があったのだが、あとで理事からの発言で、また違ってきている。それはそれとして、まあどうこう言いませんけれども、一体きょうのこの委員会では、どういう議事運営をやられるのか。これは、各委員もそういう点を承知の上でこの委員会にやっぱり臨んだほうがいいと思うのです。発言にならぬ方でも実はそう思っておられると思うのですよ、その点ひとつはっきりしてもらいたいと思うのです。
#29
○委員長(近藤鶴代君) 委員会の最初に、委員長理事打合会の様子を御報告すべきであったのを失念いたしましたことを申しわけないと思います。きょうは、委員長理事打合会におきましては、ただいま一括して御質疑を願っております四件の法案の審議をまあ終局までやっていきたい。そしてあと請願を整理しようということになっておるわけでございます。
#30
○杉原荒太君 終局といいますと、採決までですね。
#31
○委員長(近藤鶴代君) 採決は、ちょっとそこまでは行けないのです。
 ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#32
○委員長(近藤鶴代君) 速記をつけて。
#33
○井上清一君 第二条で、裁判を受ける権利が最恵国待遇になっているのがありますね。内国民待遇でないわけなんだ。これは、どうして一体こういうふうな規定になったのか。内国民待遇にしちゃ、向こうが都合が悪いのかどうか。また、実際問題として、最恵国待遇になっているということがちょっとおかしいんじゃないかという感じがするのですが、これらのいきさつを承りたいと同時に、法律上裁判を受ける権利が内国民待遇と最恵国待遇とどういうふうに違ってくるのか、具体的にはどういうふうに違うのかということを御説明を願いたいと思うのです。
#34
○説明員(佐藤日史君) 裁判を受ける権利につきましては、内国民待遇を規定しなかった次第でございますが、これは、先ほど来申し上げておりますとおり、内国民待遇――自国民と同じ待遇をこの条約によって日本人に与えるということは、フィリピンの一般的な条約に対する考え方というものと矛盾いたしまして、実際問題といたしましては、フィリピンの憲法によりましても、わがほうと同じように、つまり日本憲法におきます法の前に平等であるという規定と同じような考え方が、やはりアメリカから独立いたしましたフィリピン、アメリカ式の考え方であるフィリピン憲法というものについてもあるわけでございまして、したがって、それなら内国民待遇を与えてもいいのじゃないか、なぜ条約に書かないのだという御質問が出るのは当然のことでございます。われわれ自身も、そういうことについて疑問を持った次第でございますが、やはりこれを条約に書かなかったことについて説明をする場合、国民に対する反響の点から、内国民待遇ということを書かなかったということで、これは落ちたわけでございまして、実際問題といたしましては、全然裁判を受ける権利につきまして、フィリピン人といかなる外国人との間にも、差別待遇は現在フィリピン国内法においていたしておりません。したがいまして、内国民待遇をこの条約において規定し得なかった次第でございますが、それによって日本国民が何か不利益を受けることはない次第でございます。ただ、条約上書けば、なおさらそれは確実であることはもちろんでございますけれども、その点になりますと、最恵国という言葉すら、彼らは、先ほど来官房長が御説明申し上げましたように、疑問を持つ者があるということでございます。ましてや内国民待遇、フィリピン人と同じ待遇を日本人に与えるということを正面切って条約に書くということについて彼らが好まなかったという事情によるのであります。
#35
○井上清一君 将来外国人が裁判を受ける権利について、国内法で立法すればできるわけなんですね。
#36
○説明員(佐藤日史君) その場合に、もちろん日本人だけということでなしに、一般的に外国人について差別するということになれば、残念ながら最恵国待遇でありますからいたし方ないわけであります。
#37
○井上清一君 ほかの外国が通商航海条約を結ぶときには、これがおそらくお手本になるだろうと思うのですが、どうもやはりこういうふうなことは、承知しないのじゃないですか。
#38
○説明員(佐藤日史君) 内国民待遇にしないというようなことを、ほかの外国といたしましても、わがほうが最初に申し上げましたとおり、やはり内国民待遇を要求するだろうと思いますが、しかし、今申しましたとおりのフィリピンの政策でございまして、これはとうてい、フィリピンといえども、日本に拒否したものを外国に許すということはないとわれわれは確信いたすものであります。
#39
○井上清一君 それから、ほかの国との通商航海条約で、こんな規定のあるところはございますか。
#40
○説明員(佐藤日史君) わが国の場合、アメリカとの日米通商航海条約には、内国民待遇を規定してございますが、その他の東南アジア諸国との最近の例におきましては、いずれもやはりフィリピンと同じような事情にございまして、同じような主張を先方がいたしまして、わがほうといたしましても、最恵国待遇で満足いたしております。
 なお、補足いたしますと、もしフィリピンが、万が一日本と違う待遇を第三国に与える、第三国に裁判権について内国民待遇を与えるというような事態がかりに生じましたといたしましても、この条約で最恵国待遇は規定をしておりますので、この場合、当然それはわが国にも及ぶわけでございます。
#41
○委員長(近藤鶴代君) 暫時休憩いたします。
   午後三時十八分休憩
   ――――・――――
   午後四時四十一分開会
#42
○委員長(近藤鶴代君) それでは、休憩前に引き続き、委員会を開会いたします。
 なお、念のために申し上げておきますが、条約四件を議題とし、質疑をいたします。
 質疑のおありの方は御発言を願います。
#43
○羽生三七君 私の外務大臣に対する質問は、別にいわゆる国際情勢ではないのであります。審議しておる四つの案件に関連をして、二、三きわめて簡単にお尋ねいたしますが、その最初はガット三十五条に関連して、日本がこの三十五条の援用を受けて直接的に不利をこうむっておる場合と、また、直接的に三十五条の援用をしなくとも、実質的に通商の差別待遇によって不利をこうむっておる、これらの点で、日本以外の国でこういう取り扱いを受けておる国の例も若干あるようですが、日本の場合が例としては一番多いように思うのです。それで、なぜこのように日本だけが特別な不利を招くのか、その根本的な原因が一体どこにあるのか、その点を最初にひとつお聞かせいただきたい。
#44
○国務大臣(小坂善太郎君) そのものずばりで申しますと、私は、日本が戦後の外交に出おくれたということがやはり原因の一つになると思います。やはり戦後の諸外国間の感情が、日本の説明を受けないままに、一方的に進みまして、日本が入った国際間の交渉に外交関係を持つに至る時期までに、ある程度の感情が普遍的なものになっていたということが言えるのじゃないかと存じます。それからもう一つは、そういう形で日本に対してガット三十五条の適用、あるいはその適用しない国においても差別待遇しているということは、結局、日本商品の流れるルートを非常に狭く規定しているわけであります。そこで、日本の商品としては、その狭いルートに対してのみ入っていく以外に方法がない。そうすると、非常にそれが数量的にわずかなものであっても、いかにも多くのインジュアリーを与えるような幻想を先方に抱かせる。私は、あえて幻想と申したいのですけれども、そういうようなことがあるのじゃないかと思います。そこで、そういう関係で、主としてヨーロッパ諸国が多いわけでございますが、それらの国がそういう態度をとった。そこで、それらの国がそのコモン・マーケット的な考え方、EECだとか、EFTAとかいうものができたのであります。そうすると、それらの国として域内貿易を考える場合に、やはりほかの国が日本に対してそういう差別待遇をやっておれば、その一番悪いところへ、とつ先にある差別のきびしいところへ準拠しても、その域内においては特別の批判を受けないわけでありますから、どうしてもそういうことについてしまう。そこへもってきて、今度新しく国が独立して参るわけでございます。この新しく、たとえばまあある国の植民地であった国が独立したとすれば、そうすると、そのかつての母国が適用していた条約関係というものは、そのまま引き継ぐということは何ら差しつかえないわけでございます。そうしておれば、日本が、これをやめてくれ、こういうことを言っていくわけです。そうすると、やめてやってもいいけれども、何かないかということになる。やはりそういうものをやっておるほうが、今度は日本と交渉する場合に有利であるというような地歩を占められる。こういうような気持を持ってしまうので、だんだんそれが拡大されていくという傾向になっているのじゃないかと思うのでございます。もちろん私どもは、それに対して非常に遺憾の意を表しておりまして、これらに対して個々別々に差別待遇の撤回を求める折衝を続けておりまして、最近に至りまして非常にこれが理解されておりまして、ガットにおいても、三十五条の関係の調査委員会というものを特に開きまして、この日本に対するガット三十五条問題を論議いたしておりますし、それから、ガットの全体の会議においても、三十五条というものは、ガットの精神からいって、どうも適当なものじゃないのじゃないかと、こういうような考え方が順次まとまりつつありますし、国別に申しましても、今国の名前をあげることははばからしていただきますけれども、非常にこの点について理解を持って、撤回してもいい。しかし、日本の品物が一ぺんにフラッドしてくるということを防ぐ何かのセキュリティを政府側と持ちたいというようなことを言っている国がございまして、それらの国の要望をある程度聞きつつ、三十五条の撤回をするということが必要だと思っております。そういうふうになりますと、今度だんだん欧州の各国が大きな共同市場的なものに固まりつつまたあるわけでございます。どうしても、この際それをやらないと、今の時期を逃がすと、これは、ちょっとあとなかなかそういう時期が来なくなるのじゃないか。今、その意味で非常に大切な時だと考えておる次第でございます。
#45
○羽生三七君 それと関連して。このOECDが日本の加盟を拒否したことは言うまでもないことですが、この機構の発足が、経済の高度に発展した国、特にそういう欧州諸国と、それにアメリカとかカナダを加えて、いわゆる先進諸国の経済結合体であるOECDが、これが実際に発足して進んでいった場合には、ガットそのものが骨抜きになるのではないかという見解もあるわけですね。ですから、これとの関連で、日本はこの加入を拒否されたわけだけれども、実際問題として、まあガットの会議に直接的に発言して、今、大臣がお話のような諸方策をやるとともに、個別的にも各国にやらなければなりませんが、このOECD自体に対して何らか、この日本に対する制限撤廃、差別待遇撤廃の特別の処置なり配慮を必要とするのじゃないか、こう思うのですが、その点はどうでしょう。
#46
○国務大臣(小坂善太郎君) 日本がOECDの加盟を拒否されたということは、少しまだ断定するには早いのでございまして、私どもは、この問題は有望なりというふうに考えておるのです。発生的に申し上げますと、御承知のように、OEECというものは、ヨーロッパの国に対して、このマーシャル・プランで、アメリカが資金、現物を供与しておったわけです。そこで、ヨーロッパの結合体として発足したわけでございます。ところが、今度アメリカとカナダが入って、今度はOECDになり、今までの欧州経済協力機構というものから、経済開発援助機構というものになったのでございます。そして元のDACといっておった時代の委員会がOECDの下部機構になりましたわけでございます。したがって、なぜ援助機構ということにしたかというと、結局、低開発国のための援助というものをこの機関において大いにやろうということでございまして、このDACI低開発国援助委員会のほかに、通商委員会とか経済政策委員会というのがほかにあるわけでございます。でありますけれども、何といっても一番大きな委員会はDACであります。日本はDAGに入っておりました関係上、DACのほうにはOECD発足と同時に入ったわけでございます。そこで、日本としては、この援助に関する問題については、常にこのOECDの機構の中に出席して意見を述べることになっております。その他の問題についても随時意見を述べてくれ。ただし、投票権は、今正式なメンバーでないから、与えていないけれどもと、こういう立場に現在のところなっておるわけでございます。しかし、開発援助機構というものを強化するためには、今お話のように、ヨーロッパあるいはアメリカというような、いわゆるその西欧の工業国がそれをやるのじゃなくて、やはりアジアにおいての先進工業国である日本というものを除外してそういうものを考えることは、いかにも局部的な機構になるのじゃないか。しかも、日本として言わせれば、経済協力とか援助というものについては、このDACのメンバーとして負担はさせられるわけです。負担は、今のところ、法制的に先般問題になりました国民所得の何パーセントということはきめましたけれども、それにしても、そういうことをして対等の協力をしておるわけです。ところが、上部機構になると全然排除されるということは、われわれとしては負担をすることに疑問を持つ。国民もそんなことをされたから怒っておるのだというお話を逐次いたしておるわけでございます。非常にその点は理解されまして、今発足をした直後なのだから、日本の立場は今のオブザーバーでがまんをしてくれ、ところが、日本だけなのでございます、オブザーバーになっておるのは。したがって、日本も、オブザーバーとして何回も会議をやるうちに、もうそろそろ入れようじゃないかということは出るわけです。今のできたての窓口をあまり広げますと、OECDそのものの動きが活発にできなくなるから、そういう意味において若干閉鎖的であるけれども、日本の特殊性を認めてオブザーバーとして出しておるのですから、時期を見て日本を迎え入れるということはできることじゃないか、また、われわれとしても、ぜひそうしなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
#47
○羽生三七君 実は何か、先般OECDの事務総長というのですか、それから拒否通告があったという記事があったからお尋ねしたのですが、特にDACでは、この前の会議では、日本が一番力を入れたように記憶をしておるので、そういう場合に、加盟ができないことは非常にどうかと思っていたからお尋ねしたのですが、その場合に、ガットが実質的に骨抜きになるような、これは、ずっと関係国を見ていくと、そういう感じもするので、この部面における加入を促進するとともに、中における加盟ができた場合の役割が重要だと思いますので、この点は、さらに一そうの御努力を願うわけです。
 それから続いて、先ほどの問題に関連して、直接的にガット三十五条を援用しておる国、それから間接的に同条を援用しなくても差別待遇しておる国、その中の名前はあげません。特定の国。それに対して、これは商工委員会等では問題になったかと思いますが、何らかの、言葉で言えば悪い言葉ですが、報復処置というような言葉で言われておったのですが、それに対する何らかのこれに対して対抗的処置をとる用意も日本にあるように言われておるのですが、言葉はちょっと今のところは悪いと思いますが、具体的にはどういうことなのか。そのどういう用意をされているのか、その点をひとつ。
#48
○国務大臣(小坂善太郎君) 今お述べになりました問題については、国別にいろいろ貿易交渉を現在いたしております。そして先般私もヨーロッパに行きました機会に、混合委員会を作って、この問題をさらに討議しようという提案をして、先方の同意を得たりしておりますので、現在そうした委員会で作業をいたしております。ただ、日本がこれから自由化を進めていくわけでございますが、やはり何と申しますか、相互主義の手前、先方が非常に差別するのに、日本はひたすらに無差別というのもどうかという議論もあるのでございます。議論もございますけれども、今言葉は悪いとおっしゃいましたけれども、私も羽生さんと同じ気持を持つのですが、こちらは大いにそういう差別待遇をなくそうという立場で問題を解明しようとして努力しておるわけでございますので、こちらがそういう態度をとれば、先方は、そうかと、それではもうこれは今までどおりということになってしまいますのが人情だろうと思いますので、そういう点は、非常に賢明な方途を講じながら行かなければならないと、今だんだん日本に対する理解というものも深まっておりますし、このたびございまする日米貿易経済委員会等においても、やはり日本人が言う話を聞く西欧側の聞き方と、アメリカを通じて聞く聞き方とは、やはり何といっても今までの歴史的な因縁等もございますので、若干アメリカ側からも十分これを言ってもらうことは意味のあることだと考えますので、そういうことも話題になろうかと思っております。
#49
○羽生三七君 私のこれからお尋ねする一点は、これは、通産省の本来所管のことで、これを外務委員会でお尋ねするのはどうかと思いますが、おそらく経済局関係ではもちろんおわかりになっておると思いますからお尋ねをしますが、今、大臣も言われたことに関連して、日米の貿易の場合、自由化が来年一月一日九〇%ということになる場合、その九〇%、この間、通産大臣の予算委員会における話を聞いておると、日本のつまり国際商品競争力といいますか、それに見合ってだんだん自由化していって、それが来年の十月一日現在で九〇%と、こういう表現で答弁されておるわけですが、そうすると、来年の十月一日に九〇%自由化された場合に、その九〇%は完全な国際競争力ができたと、コストの点で、そう見ていいのかどうか。それとは別に、他のいろいろな諸条件もあって九〇%ということになるのか、コストの点で完全な競争力ができるのかどうか、これを外務省にお尋ねするのはどうかと思いますが、経済局関係ではおわかりになっているのじゃないかと思いますが、その点どうですか。
#50
○国務大臣(小坂善太郎君) どうも、私からお答えするのはあるいは不適当じゃないかとも思うのでございますが、われわれ主観的には、この自由化は世界の要請であるけれども、やはり日本の国の経済が大事でございまするから、そのために、日本の国内で非常な打撃を受けるということには、これはもう非常に慎重な考慮をしながらやっていかなきゃならぬかと存じます。ただ、自由化をするということになりますと、また、それ相応の競争力も出てくる場合もございます。その点じゃ、日本の産業界というのは非常に強靱な弾力性を持っておりますから、一面において冷たい風に当たるであろうという予想が、その風を受けても耐えられるという体質を作ることにもなりますので、その点は、両々相待って考えていかなければならないことだと思いますが、根本的には、自由化は世界の要望でございまして、日本も、輸出貿易をふやそうとすれば、やはりその世界の要望に沿わねばならないと思いますが、さりとて、その声にだけ迎合して、自分自身を忘れるということは、これは避けるべきことであろう、そんなような気持を持っておりますが、これは、適当な機会に通産大臣等からお答えを願いたいと思います。
#51
○羽生三七君 私のは、原則論でなしに、先日来の通産大臣なり総理の答弁が、十月一日九〇%自由化ができる場合は、その進めていく過程で、競争力と見合ってこれを進めていくというお答えがあったので、そうすると、来年の十月一日九〇%自由化ができたときには、日本が国際商品の競争力においてその裏づけができた、完全にできたうらはらの問題としてそれを考えていいのかどうかという点なんですが、これは、まあ御用意がなければ、また他日機会を見て、詳しくひとつ聞かせていただきたいと思います。
 それから続けてお尋ねをしますが、特にやはり貿易に関係した問題ですけれども、きょうも本会議の緊急質問にあった日米経済合同委員会に関連するのですが、数字的に見ると、この一九五五年から六〇年までの収支が、日本の対米輸出の約五十八億ドルに対して、輸入が約百十八億ドルで、入超が約六十億ドルということになっておる。それで、今度日米の会議で話し合われる問題は、この種の問題にも触れられると思いますけれども、一番重点を置いてお話しになる問題は何でしょう。私は、予算委員会の際にも、特にこの問題は大上段に振りかぶって、非常な、何といいますか、高度な原川船ばかりやるのでなしに、地道な話し合いになるだろうと思いますけれども、特に実際に成果を上げようという意味で、重点を置く問題は何だろうか、あのたくさんの議題の中で。それに非常に私は関心を持っておるのですが、今申し上げてきたような、この経済的な諸情勢、特に日米間の貿易問題等を中心に、これはもう十分御検討を願わなければならぬと思いますが、最重点の討議議題はそもそも何であるか。
#52
○国務大臣(小坂善太郎君) これは、国際的な慣例としまして、こういうことを言うんだということを前に言いますことは、非常に避けることになっております。しかし、私ども国会議員としまして、御質問に対してそういう答弁だけでこの場を糊塗するというようなこともいかがかと思いますので、あえて申し上げるわけでございますが、そういう意味でお聞き取り願いたいと思います。私は、やはり対米貿易というのは、日本の貿易の中では非常に大きなウエートがあるのでございますが、これは、昨年度において初めて日本が出超になった。わずかですが、出超になりました。しかし、日本が出超になったという経緯においては、飛躍的に対米貿易が伸びたわけでございます。今年に入りまして、日本が自由化に備えていろいろな施設を強化するために、非常にアメリカの重機械類が日本に多く入った。あるいは綿花の自由化をしたというようなことで、買い付がふえたというような経緯もございまして、今、非常に対米貿易はわがほうの入超になっております。本年度の末あたり、人によっていろいろ見方が違いますけれども、まあ七億ないし八億ぐらいの入超になるのじゃないかというふうに思われるわけでございます。しかし、これはわれわれにしては非常に残念なことであって、われわれがたくさん買っておるのに、日本の商品というものがことさらに多くのエンジョイを与えるようなことをいわれるが、これは先方にしてみれば――どうもどこの国でもそうですけれども、日本へ輸出してもうかっておる連中はだまっておって、日本から入った品物によって競争を受ける人は、ことさらに声が大きい。そういうことはどこにもあるわけでございましょうけれども、そういう点は、日本はこれだけアメリカから買っておるのだという実績をよく認識してもらうことが必要だ。その意味で、やはりアメリカも日米の地位というものを、非常に関係を大事にしておることからいって、もう少し実態について、政府として、あるいは業界あるいは労働組合等に対して、この実情をよく話す、その気分にほんとうになってもらうということが必要だと思いまして、そういう意味で、商務長官とか農務長官あるいは労働長官が見えますので、よくその日本の実情というものを認識して、日本のファンになってもらうといいますか、そういうふうに持っていく必要があろうと思います。そういうふうな下話で十分認識を固めておきますならば、実際外交ルートで個々の問題を交渉します場合にも、非常に先方に理解の下地が強くできておるということは、今後において何かと便利だろうと思うのであります。
 それからもう一つは、日本の貿易に大きな関係のあるのは、この東南アジア諸国との関係でございます。で、われわれはやはり東南アジアの国の市場というものをもっと大きなものにしなきゃならぬ。それにはやはり東南アジアの諸国において経済をもっと繁栄せしむることが必要でございますが、それには、何としても日本からの若干のクレジットを与えて、その上でその生産を拡大させて、そして日本との間の貿易を拡大していくということが必要でございますが、そのクレジットを与える資金というものは、やはり対米あるいは対西欧との通常の貿易によって得たものによって初めて日本はそういうことができるわけなんですから、そういう点をもっとアメリカは認識してもらわなきゃならぬかと思うのです。それから、どうしても東南アジアの関係で申しますと、一次産品をこちらは買ってある程度やらなきゃいかぬわけですが、これは日本の場合、非常にむずかしい問題である。一次産品といいますと、アメリカの場合ですと、中南米を考えると、ココアとかコーヒーとか、そういうものになるわけです。日本の場合には、米とか綿花とか、こういうアメリカにもあるもの――一次産品が問題になる。そういう点に対して、アメリカの十分の協力を促す必要があろうかと思います。
 それから中南米に対して、アメリカは非常に大きな計画を持っているわけでございますが、そういうものに対しても、これはやはり中南米において消費される品物で日本品が適当だと思われるものがたくさんあるわけでございますから、そういう問題はもっと大きな目から見て考えて、両方でこの点についての認識を深めて、今後の経済拡大を考えていくということは非常に必要なことだと思います。まあ私の立場としては、そんなようなことが大きいと思います。
 個々の問題は非常にたくさんございますが、この限られた時間で若干申し上げると、そんなようなことかと思います。
#53
○羽生三七君 もう一つ、これは直接協定に関係したことではないのですが、今の問題に関連して、この日米会議では、もちろん経済中心の会議だと思うのですが、それ以外の政治問題等も出るのですか。出るとすれば、それは小坂・ラスク会談とか、そういうことになるのか。あの経済会議の中でも政治問題に触れることもあるのか、その点はどうですか。
#54
○国務大臣(小坂善太郎君) 一般的に貿易経済会議でございますから、議題を発表いたしましたが、ああいうふうな経済問題中心になろうと思います。ただ、顔を合わせて、全然政治問題に触れないかと言えば、これはやはりお互いの考え方を、世界平和に対して自分らはどういうふうなことで考えておるというようなことは、これはお話はあってもいいことだと思いますが、その結果、どういう点に合意したとか、どういうふうな結論を出したとか、そういうようなことは、これは会議以外のことでございますので、そういう点は、むしろお互いの認識、理解を深める個人的な話し合いということはあろうかとも思いますが、今そういうことは必ずあるというふうに申し上げることもいかがかと思います。
#55
○羽生三七君 ボナー法の問題は、あれは引っ込めたのですか。やはり今度の議題に入っておりますか。
#56
○国務大臣(小坂善太郎君) 包括的な通商関係全体の問題として議題はございます。その中でやはり、シップ・アメリカンの問題というものは、こちらとしては当然言わなければならない。その中にボナー法の問題というものも含まれると思います。
#57
○委員長(近藤鶴代君) 速記をとめて。
   〔速記中止〕
#58
○委員長(近藤鶴代君) 速記を始めて。
#59
○曾祢益君 ちょっと直接関係ないかもしれませんが、この際、大臣にお伺いをしておきたいのですれども、最近日本の労働組合の幹部の方が、よく労働組合としての国際的な会議等がございまして、諸外国、特に西欧が多いと思います、アジアもございますが、に行くのですね。そういうときに、日本の労働団体だから特別に尊重しろということを言うんじゃありませんが、どうも労働代表等に対する在外公館の取り扱いが、諸外国に比べて、少し日本としてまずいのじゃないかという感じがするのです。これは大臣に対して釈迦に説法になりますけれども、たとえば国連の代表なんかでも、アメリカを初めとして国の国連代表に労働団体の大物を任命している。あるいはガット問題等については、特に労働側から日本のソーシャル・ダンピングなんかを切り込むためにも存外一致して、そういう場合には政府のほうから頼んで労働代表を入れておる。そういったふうにかなり労働団体を尊重し、また、ある意味では協力を得ておると思います。ところが、どうもわが国のほうのやり方は、簡単に言えば、資本家代表が行ったときには、大いにサービスするけれども、労働代表が来ても、あまり相手にしない。そういうけちなソーシャル・ファクションのことを言うんじゃありませんが、たとえばブラッセルあたりで、国際自由労連の本拠がありますが、よくああいうところに日本の労働代表が行くと、それは政府の役目でないだろうけれども、そういうときには、ブラッセルの大使館のほうで、ついでに日本の労働代表を中心として外国の労働代表を呼ぶというようなこともあっていいのじゃないかと思います。どうもそういうことに対して、私はある程度当たっている不満というものがあると思います。単なる不満だけではなくて、外務省としても、日本の経済外交ということをよく言われますが、たとえば労働代表なんかの使い方がまずいのじゃないかと思います。これは私は、特にいわゆる全労の諸君と個人的にも親しいもので、相当強い苦情を聞くのです。むろん、それは全労の関係だけではなくて、総評の諸君にもあろうと思いますが、何かそういう点について、外務省の運営、それから重要なところには、労働アタッシェぐらい、方々に出しておられると思いますが、そういう点について、労働代表を外交上もう少し活用し、その役割りに即応する待遇を積極的に与えていくべきだと思いますが、たいへん議題からそれて恐縮でございますが、大臣のお顔を見たのでひとつ伺っておきたいと思います。
#60
○国務大臣(小坂善太郎君) 御趣旨は、私もよくわかりますので、必要に応じて、十分御不満のないようにしたいと思いますが、曾祢さんよく御承知のように、外交団あるいは外交陣営の人数も少ないものでございますから、時と場合によって、なかなか手の回わりかねることもございますが、その精神においてはできるだけ日本から来られた方に御便宜をはかるようにするということで指導したいと思います。
#61
○曾祢益君 ほんとうに世話を親切にしてあげるとかなんとかいうこともあろうと思いますけれども、そういうことよりも、積極的に日本の政府の施策の一環として活用するという気持で御考慮願いたいということを、その点誤解のないように。
#62
○国務大臣(小坂善太郎君) よく研究させていただきます。
#63
○羽生三七君 先ほどの日比通商航海条約に関連して、日比の賠償並びに経済協力の今日までの経過。
#64
○説明員(佐藤日史君) フィリピンに対する賠償の実施概況について、まず御説明申し上げます。
 日比賠償は、一九五六年七月二十三日に発効いたしました賠償協定に基づきまして二十年間に五億五千万ドル、千九百八十億円でございますが、これを支払うことになっております。現在は賠償第六年度に入っております。賠償開始以来本年八月末現在、支払い済み額は四百三十一億円、約一千二百万ドルに達しております。おもな賠償品目といたしましては、船舶二百億円、機械類七十億円、鋼材三十億円、セメント工場、紙パルプ工場、製材工場等のプラント類八十億円、各種役務九億円となっております。そのほかに消費材というものはほとんどございません。
 次に、賠償に伴う経済協力という点をこの際申し上げますと、これは二億五千万ドルの経済開発借款というものがございまして、その実施促進方について、フィリピン側から申し入れがございましたので、本年四月に東京において日比会談が行なわれたことは皆さん御承知のとおりでございます。わがほうといたしましては、現在までにこの協定のワク内で行なわれました約七千万ドルの対比借款供与の実績があることを指摘いたしましたが、先方は、この実績がすべてこの協定に基づくものとはみなしがたい、しかし、いずれにしても、検討するということを約束いたしました。また、今後の実施につきましては、フィリピン側から具体的な借款対象を明示いたしまして、個々に借款供与を申し入れてくれば、わが方といたしましては、ケース・バイ・ケースでその借款の日比両国経済に及ぼす影響、効果、支払い保証の程度等、借款供与上考慮すべきいろいろの問題があるわけでございますが、それらの要件を検討いたしまして、これらの要件が同一ならば、ほかの国に比較して不利でない取り扱いをするということを説明いたしまして、先方もこれを了解いたしました。
 次に、賠償引当借款というものがございますが、これも賠償に関連する問題でございますが、これは電気通信計画というものがフィリピン側の計画にございまして、初年度分の契約、これが約六百五十万ドルでございますが、それは認証のためにすでに日本政府に提出されております。また御承知のマリキナ多目的ダムの建設計画も入札が始まっております。近く実施の緒につくのではないかと考えております。さらにマニラ鉄道の延長契約、これはただいまマニラから北の方、サンホセまで行っております鉄道を、さらに北方カガヤン渓谷まで延ばしまして、北の方にツグェガラオという町がございますが、そこまで延ばす計画でございますが、これに対する借款五百八十万ドルの供与ということにつきましては、ごく最近、十月十四日交換公文の署名が行なわれた次第であります。
 以上が賠償及びそれに関連する借款の問題でございます。
 次に、経済協力の点について御説明申し上げます。フィリピンに対するわが国の経済協力は、大きく分けますと、まず、民間会社が、先ほど来申し上げておりますように、現在わが国の会社はフィリピンに投資活動を許されておりません。しかし、その限られたワク内で、融資によりまして、フィリピン側の会社に融資を与えることによって一種の経済協力を行なっております。それが第一点。それから、今も申し上げました経済開発借款、これは賠償にもひっかかる問題、両方関連するのですが、これが第二。第三に、これは今申し上げました賠償引当借款。最後に技術協力、この四種類の経済協力にあると思いますが、最初に申し上げました民間の会社による融資の形態による経済協力、これは主として先方の銅鉱山、鉄鉱山の開発に関連いたしまして、わが方の三菱金属その他の会社が融資を与えておるという問題で、ただいま約十件ほどの民間融資が行なわれております。これはなぜ投資の形をとらないかということは、ただいま御説明いたしましたとおり、フィリピン側がわが国に差別待遇を現在与えておりまして、わが国の投資活動を認めていない。これは条約が発効いたしますれば、それがなくなることは、先ほど来御説明申し上げましたとおりであります。
 次に、経済開発借款、これも今賠償のところで申し上げましたので省略いたします。
 その次は、賠償引当借款、これもすでに申し上げましたが、さらに詳細について申し上げますと、マリキナ多目的ダムの建設計画、これはマニラの北東約三十キロのモンタルバン峡谷に高さ百八十メートル、幅百九十メートルのアーチ式ダムを建設するものでございまして、その建設によりまして、容量九億トンの貯水池を作り、年間一億四千万キロワット時の発電、二億七千万トンの水道用水、及び六千二百町歩の水田の灌漑用水を、確保する。しかして、水田を二毛作化して、毎年推定二百五十万ドルの水害を防止する。いろいろな目的、すなわち多目的のために建設される計画でございます。この所要工費が約五千四百万ドル、そのうちわが国からの機械、資材及び技術、役務の調達に要する三千五百五十万ドルに対し、延べ払い輸出の形で信用を供与するということになっております。
 次に、いわゆるテレコミ計画と申しますか、電気通信施設の拡張、改良計画でございまして、これはフィリピンの重要都市に自動電話及び通信設備を設けまして、全国的電気通信網を完成し、公共事務、民間商業取引を促進しようとするものでございまして、フィリピン国の通信事情を画期的に的善しようとするものであります。この総工費は二千四百万ドルと見積もられておりますが、わが国からの機械、俗材及び技術、役務の調達に要する千二百三十万ドルに対しまして、延べ払い輸出の形で信用を供与することとし、昭和三十四年九月、交換公文の署名を行ないました。しかし、その後フィリピン政府は、この借款の初年度分をカガヤン鉄道建設、この次に申し上げます――先ほども若干触れましたが、カガヤン鉄道建設計画に振りかえるよう希望するということを表明して参りました。したがいまして、テレコミ計画につきましては、六百五十万ドル分のみをこのテレコミ計画として承認を求めて日本政府にただいま提出されております。残余の分は、カガヤン鉄道建設の計画のほうに回わされるわけでございます。このテレコミ計画自体のほうは、マニラ市及び周辺の電話施設拡充が主体になっております。
 次に、最後のカガヤン鉄道建設計画でございますが、これは先ほど申し上げましたとおり、マニラ鉄道をツグェガラオまで延長するということでございます。その延長が約三百三十キロ、なおその一部につきましては、すでに賠償第二年度にわが国の賠償役務により路線の測量を行なった事実がございます。これは、先ほどから申しておりますどおり、テレコミ計画の借款から五百八十万ドルをカガヤン鉄道計画のほうに振りかえまして、そのための交換公文が十月十四日に署名されたことは、すでに申し上げましたとおりであります。この工事は約七年を要する予定でございます。
 最後に、技術協力というのがございますが、これは民間ベースによる技術協力というのは、機械の輸出に伴うものが大部分でございまして、常時フィリピン国に百数十名に及ぶ技術者、技能者が現在滞在いたしている実情でございます。その活動分野は、鉄鋼、製糸、織物、陶磁器、ガラス等広範囲に及びまして、機械の設置、運転から生産に至る一切の技術指導に当たっている次第でございます。
 なおこのほかに、わが国のほうから、民間ベースによりまして、フィリピンの研修生を受け入れて、機械の取り扱い、その他について教育をほどこしているという実例もございます。
 なお、一つつけ加えますと、マニラのわが大使館に技術協力室というものが設置されておりまして、今申し上げましたような技術協力をさらに円滑に推進させるように、成果を大ならしめている次第でございます。
 以上、賠償及び技術協力の経過、現況について概要を申し上げました。
 それからこれらが、ことに賠償が貿易に及ぼす影響でございますが、先ほど……。
#65
○羽生三七君 いや、それでついでに、どうも時間もあれしていて皆さんも少ない人数の中でやっているのはどうかと思いますが、今の貿易に関係してくるのですが、その場合、通常の貿易との競合ということも、賠償の協定を作るときに一番問題になったと思うのですが、その後の過程において、それがどういう関係にあったか、それからまた現状においてはどうか、その辺はどうですか。
#66
○説明員(佐藤日史君) 本件条約は、先ほど申し上げました補足説明のときに、貿易状況に触れた次第でございますが、その際に申し上げました最近のわが輸出の増進傾向ということは、この統計は為替統計でございまして、したがいまして、賠償は入っておらない次第でございます。賠償を除きました以外におきまして、非常にわが輸出が増進する傾向にある。一九六〇年では、わがほうは約三千万ドルの入超であるものを、本年度内にはその入超がなくなるものと考えられるということを申し上げましたが、それによって御推断願いたいと存じますが、賠償というのは決して通常貿易を阻害しておりませんで、むしろ傾向としては、わが国の輸出が非常に近年、さらに今年も増進する傾向にあることを申し上げておきます。
#67
○委員長(近藤鶴代君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#68
○委員長(近藤鶴代君) それでは速記を起こして。
 暫時休憩いたします。
   午後五時三十一分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
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ソース: 国立国会図書館
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