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1961/10/05 第39回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号
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1961/10/05 第39回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号

#1
第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第2号
昭和三十六年十月五日(木曜日)
   午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 前田 正男君
   理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
   理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君
   理事 山口 好一君 理事 岡  良一君
   理事 原   茂君 理事 山口 鶴男君
      安倍晋太郎君    秋田 大助君
      池田正之輔君    稻葉  修君
      佐々木義武君    西村 関一君
      三木 喜夫君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       山本 利壽君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局長)    杉本 正雄君
 委員外の出席者
        科学技術事務次
        官       鈴江 康平君
        総理府技官
        (科学技術庁振
        興局長)    前田 陽吉君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   杠  文吉君
        総理府技官
        (科学技術庁資
        源局長)    黒澤 俊一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○前田委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興に関する件について調査を進めます。
 まず、三木国務大臣より、科学技術行政に関する所信を承りたいと存じます。三木国務大臣。
#3
○三木国務大臣 私は、このたび科学技術庁長官の重責をにない、このほど国際原子力機関の総会にも列席いたし、かつ、その機会に、西欧諸国における原子力の開発利用状態を中心といたしまして、科学技術の目ざましい進展を見て参り、わが国がこれら先進国に伍して経済と文化の向上を実現するためには、科学技術水準の画期的な向上をはかることがまさに刻下の急務であることを痛切に感じて参った次第であります。
 政府といたしましては、従来とも科学技術振興を重要施策の一つに掲げて参りまして、その強力な推進に努めて参ったのでありますが、私は、科学技術がわが国繁栄の基盤であるとの確信のもとに、わが国情にふさわしい科学技術振興施策を確立し、その具体化に努力して参る所存であり、当面、次のごとき諸施策を強力に推進して参りたいと存じております。
 まず、科学技術を画期的に振興するためには統一的な指針が必要でありますので、科学技術に関する基本理念を明らかにし、総合的基本的態勢を整備することを目途として、研究のあり方、国のとるべき施策、科学技術振興計画の策定等の内容を盛り込んだ科学技術に関する基本法を制定すべきであると考えて、科学技術会議の答申もあるはずになっておりますので、それともにらみ合わせて法案の作成を進めていきたいと存じます。
 次に、国立試験研究機関は、技術革新の目ざましい進展に即応して、そのあり方を再検討し、その内容を刷新充実することが必要であり、過般そのための方策を科学技術会議に諮問いたした次第であります。
 第三に、最近、国が強力に取り上げなければならない重要研究の分野が増加して参っております。まず、近年、産業の発展と都市の膨大化は、大気汚染、水質汚濁、騒音等の災害を惹起してきており、これらの災害を防止し、さらに、国民の生活環境の積極的向上をはかる科学技術に関する研究は、国が早急に取り上げなければならない重要研究でありますので、その積極的振興をはかりたいと存じております。次に、台風、集中豪雨、地震等各種災害もまた毎年繰り返され、被害はかえって累増する傾向すら見受けられますが、これら災害の予知、予防及び対策に関する研究は、国として強力に推進しなければならない重要研究でありますので、・従来にも増してその推進をはかりたいと存じております。
 さらに、国として先導的に行なわなければならぬ研究として、宇宙科学技術、海洋科学技術、電子科学技術等があり、いずれもこれを重要研究として推進して参る所在でありますが、特に宇宙科学技術につきましては、最近の諸外国の宇宙科学技術の急速なる発展にかんがみ、わが国に即応した宇宙開発に関する科学技術を一段と促進するよう措置していく所存であります。
 第四に、わが国技術の海外依存体制からの脱却をはかり、国産新技術を育成するためには、民間の研究活動を促進強化する必要があります。これがため、民間の研究意欲を助長する諸方策、なかんずく税法上の優遇措置を講じて参りたいと存じますが、特に研究法人制度を創設し、科学技術に関する研究を行なう研究法人に対しては、税制上の優遇等、強力な助成措置を講ずべき研究法人法案の作成についても検討を進めるとともに、すでに発足いたしました新技術開発事業団の強化充実をはかりたいと考えております。
 なお、中小企業における技術水準の向上につきましても、共同研究の促進、技術指導の強化等の措置を推進する所存でありますが、特に科学技術情報につきましては、従来ややもすれば大企業に利用される傾向がありました日本科学技術情報センターの情報提供業務を拡大し、中小企業に対し、これにふさわしい情報の普及をはからせたいと考えております。
 第五に、科学技術者の不足は今後ますますその逼迫度を加えることが予想されますので、科学技術者の養成につきましては、青少年に対する理科教育の充実から始め、質、量両面から教育における長期的計画的対策について文部省に積極的に協力するとともに、当庁自体としても再教育等の面でできる限り努力をいたしたい所存であります。
 なお、研究公務員が安んじて研究に没頭できるよう、その処遇の改善につきましては、従来にも増してこれを推進していきたいと考えております。
 第六に、原子力の平和利用につきましては、本年二月原子力開発利用長期計画を新たに策定し、長期的開発利用の展望を明らかにいたしましたが、この新計画の円滑なる推進をはかるため、従来の研究、開発の上に立って基礎及び応用面の拡大強化をはかる所存であります。すなわち、既定計画に基づく動力試験炉、遮蔽研究炉の建設、燃料再処理、プルトニウム燃料及び原子力船等の分野における研究開発の活発なる推進を期するほか、明年度は特に放射線化学中央研究所を新設して、この分野における研究開発の画期的な進展を期したいと存じています。
 なお、放射線に対する安全対策についても、一そうの充実をはかる所存であります。
 第七に、科学技術の国際交流につきましては、科学技術研究が今や国際的規模において行なわれるべき時代となり、科学技術に関する国際交流はますますその重要性、必要性を増しつつあることは、今回の海外出張を通じましても特に痛感させられるところであります。従いまして、今後とも国際機関の行なう研究には積極的に参加し、科学技術者の交流及び技術援助の推進をはかり、国際会議への参加を積極化するとともに、科学技術に関する国際会議のわが国における開催を大いに推進する所存であります。
 私が今回の国際原子力機関総会においてアジア・アイソトープ・センターの設立を提案いたしましたのも、この趣旨に基づくものであります。
 第八に、科学技術に関する普及啓発、情報活動の強化についてであります。国民各層に対する科学技術思想の普及啓発を行なうため、日本科学技術振興財団に力強い援助を行ない、科学技術情報の収集提供の中枢機関としての日本科学技術情報センターの機能の増強をはかるとともに、地方発明センターの増設につき助成をはかる方針でありますが、その他経済の高度成長と技術革新による資源利用構造の変化、公害の拡大等の諸問題については、資源総合利用の観点からの調査活動を強化し、発明奨励活動の充実等につきましても十分配慮いたして参りたいと存じております。
 最後に、上述いたしました諸般の施策を強力に推進して参りますためには、科学技術行政体制の強化をはかる必要があります。そもそも近年科学技術の著しい発達は、一面において専門の細分化をもたらすとともに、他方、研究の総合性を必要としております。このような情勢にかんがみ、特に第三の項で申し述べました大気汚染、水質汚濁、防災、宇宙、海洋、電子等の、国として強力に推進しなければならない重要研究は、いずれも各部門の協力を必要とする総合研究でありまして、その総合的計画的推進をはかることが緊要であります。従いまして、科学技術庁の総合調整機能の強化充実をはかるため、研究調整局を新設し、特別研究促進調整費制度を拡大する等所要の措置を講ずるとともに、諸般の重要問題について、必要に応じ関係閣僚会議を開催し、関係省庁間の緊密な連絡のもとに当庁の任務推進の万全を期したい所存であります。
 以上、当面の施策の大綱について明年度の予算編成の構想とも関連せしめつつ申し述べた次第でありますが、わが国科学技術振興施策の重要性にかんがみ、その施策に微力ながら全力を傾注して参りたいと考えております。委員各位の御支援、御協力を切にお願いしてする次第であります。
#4
○前田委員長 以上をもって、三木国務大臣の所信表明は終りました。
 この際、山本科学技術政務次官より発言の申し出がありますので、これを許します。山本科学技術政務次官。
#5
○山本政府委員 先般の政務次官更迭にあたりまして、私が科学技術政務次官に就任することに相なりました。三木長官のもとで最善の努力を尽くしたいと考えておりますが、ひとえに皆さん方の御指導と御協力をお願いする次第でございます。
 簡単でございますが、ごあいさつといたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○前田委員長 次に、三木国務大臣の所信表明に関し質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
#7
○齋藤(憲)委員 新任三木長官の所信表明を承ったのでありますが、この所信表明に対しましての質問は、今後委員会開催のつど、私の方でも、科学技術振興に対する想を練って御質問を順次申し上げて参りたいと思うのでありますが、本日は臨時国会における本委員会の最初の日でございますので、希望をまぜて御質問を申し上げたいと思うのであります。
 まず、劈頭に委員長に一つお願いを申し上げておきたいのは、従来、科学技術振興対策特別委員会の委員の出席率はきわめて低調であります。長官の御所信にもございました通り、科学技術が国の繁栄のための基盤であるということが真実であるといたしますならば、国家最高の機関における当委員会の委員の出席率は、またこの国会において最高の率を示さなければその職責を果たし得られないのじゃないか、こう思うのであります。そこで、委員長におかれましては、その意味を十分盛った通牒をお出し下さいまして、委員各位の出席率が従前と比較いたしましてよくなるように、一つ特段のお取り計らいをお願いいたしておきたいと思うのであります。
 私は、この臨時国会は、科学技術庁としては何も提出すべき法案を持たないということを承ったのでございますので、この機会を利用いたしまして、長官の御所信にもございます通り、科学技術の振興が国家繁栄の重大な基盤であるという建前から、日本の科学技術の振興はいかにあるべきかということに対して、各委員とともに徹底した論議を重ねていきたいと思うものでございますので、この点も、一つ委員長、当局ともに御了解を願いまして、十分な時間をおさき下さることを、これはつけ加えてお願い申し上げておきたいと思うのでございます。
 過去の日本の科学技術振興が、一つの行政機関を基盤として出発をいたしましてから、すでに満五カ年を経過いたしております。もしも科学技術振興に第一次、第二次の計画性があるものとすれば、まさに、この臨時国会を期して日本科学振興第二次計画の年次に入ったんではないかと私は思うのでございます。従来、いろいろな法制上の関係から、この重大な科学技術の振興を担当する長官は、常に兼任の長官、大臣であった。わずかに、先輩中曽根さんが専任長官を勤められただけで、あとはおおむね兼任長官であった。従って、行政面においても、また、国会の論議活動においても、幾多ふに落ちない、また、欠けるととろがあったのでありますが、今回、三木長官がみずから買って科学技術長官の職を担当されて、そうして所信表明の中には、科学技術が国の繁栄のための基盤であるとの確信の上に、日本の科学技術振興を具体的に推進していくという所信を述べられましたことは、まことにわが意を得た、適切な所信の御表明であり、また、今後その力を強力に集中せられまして、過去においておくれをとっておる日本の科学技術振興のために一段と御努力をせられんことを、冒頭においてお願いを申し上げる次第であります。
 御所信の第一に掲げられてございます、この基本法の策定に関する問題でございますが、これは御承知の通り、従来も、日本の科学技術の最高会議であります科学技術会議の問題ともなっておりまして、あらましの骨子は、答申書の中にも一つの考え方として現われておるようであります。聞くところによりますと、順次実質的な作業にも従事をしておられるということでございますが、私の考え方からいたしますると、この基本法の策定の内容いかんによって、法体系といたしましては決定的な、日本の科学技術振興のあり方がきまるきわめて重大な法案だと思うのであります。特に繰り返し申し上げまするが、長官のお考えによる、科学技術の振興が国家繁栄の基盤であるという点から考えますと、この科学技術振興基本法というがごときものは、実に国家の運命を左右する一つの大きな法律となるものだと考えるのでありますが、これに対しまして、実質的に、どういう方法をもって次の国会に科学技術基本法を作成して御提出になるおつもりであるか、大体の御構想がございますならば、ほんとうのアウトラインだけを――まだ内容はこれからの問題だと思うのでございますが、どういう考え方でその基本法の策定をなさるおつもりでおられるのか、これを一つ、大体でけっこうでございますから、承っておきたいと思うのでございます。
#8
○三木国務大臣 今、齋藤委員の御発言のごとく、この法案は非常に重大な内容を持つ法案でありますので、これは科学技術特別委員会の委員各位のいろいろなお知恵も拝借したいと思っておるのであります。今は科学技術会議でいろいろ検討願っておるわけでありますが、役所の方においてもこの問題に対しては十分な検討を加えて、そうして委員各位のいろいろなお考え方も御研究を願いまして、みなで協力して、そうして、基本法を作るならばこれはりっぱな基本法にしたい。その目標とするところは、結局科学技術の振興にありますので、十カ年計画、十カ年の見通しなども科学技術会議なんかで出ておりますが、とにかく来年度は、もっと短期間的にどういうことをやるかというような具体的な目標を立てて、科学技術会議等が中心になってそういう策定をするでありましょうが、それに対して政府も予算的な措置を講じて、その答申に従って科学技術振興のための政府自身も責任を持ち、予算的な措置を講じてやるというような、いろいろ原則的な問題はありますが、具体的には、科学技術振興の具体的プログラムとそれに対して政府は責任を持つ、こういうことがやはり中心になっていくと思うのです。具体的には、その基本的な理念とかいろいろなものはありましょうが、具体的な立法の基礎になるものは、一つの具体的なプログラムの策定と、これに対して政府が責任を持ってこれを予算にも組んで推進していくということが、この基本法の具体的な面における一つの使命になっていると私は考えておる次第であります。
#9
○齋藤(憲)委員 私は、法律の制定等に対しましてはきわめて知識も経験も浅いものでございますが、いやしくも基本法と名がつく以上は、これによって科学技術振興の国家百年の大計も定められるという、遠大な理想が一つなければならない。と同時に、ただいま長官のおっしゃられたような直前、現実の問題を、国家予算をもって具体的に解決していくという面も持たなければならない。そうでなければ、眼前、直前の問題のみを解決していく、プログラムを強力に盛るだけでは、基本法の体系は半面を持つだけであって、これはあまり効果的でない。百年の大計の基盤をなす大きな構想も、やはり盛られなければならない。むしろ、私の希望からいたしますと、憲法の中に、科学技術振興に関する基本的な国民総体の観念というものが盛られてしかるべきであるとさえ考えておるものでありまして、そういう意味合いから、この基本法の構想に対しましても十分な御勘考をお願いしたいと思うのであります。
 それにつきまして、一つ長官にお尋ねを申し上げておきたいことは、国家最高の機関とせられておる立法府において、かくのごとき重大な法律を制定いたしまする場合には、これはむしろ、行政当局から法案の骨子が出るのではなくして、議員の中から議員立法としてこういうものが浮かび上がっていくということが、議会政治、立法府としての本筋ではないかと考えられる向きもあるのであります。この点に対しましては、世界的な大問題でございます原子力に関しまして、原子力基本法が、議員立法として両院を満場一致通過した歴史もあるのであります。しかし、今ここに長官の御所信として、来国会には科学技術振興に関する基本法を制定するお考えであるということが表明されましたから、あえてわれわれは、議員立法という形をとることなくして、当局が熱心にこれを策定されて、通常国会に御提案になることを希望するものでありますが、これにつきましては、単に科学技術会議の意見を聞くとか、それから民間有識者の考え方を盛るとかいうことだけでなく、選ばれた科学技術振興対策特別委員各位の科学技術振興に対する構想と情熱をよくこの委員会においてまとめられて、それを十分に織り込んで基本法の作成をしていただきたいと思うのでありますが、重ねて、長官のお考えを一つ伺っておきたいと思います。
#10
○三木国務大臣 今齋藤委員の言われるように、あるいはこの法案は、議員立法の方がもっと気宇広大なものになるのかもしれません。しかし、科学技術庁としても、責任官庁としてこれを十分に研究をしなければならぬので、研究はいたしますが、最終的にはどういう形が適当であるかは、まだ私もきめてはいないのでございます。せっかくこういう基本法を作る以上は、これが理想的なものにならなければなりませんので、これは当委員会の委員の方々の非常な御協力を願って、最終的にはどういう形にするかということは、十分皆さんとも御相談をいたしたいと考えておる次第でございます。
#11
○齋藤(憲)委員 最初の委員会でございますから、なるべく簡潔に第一回の御質問を申し上げて、終わりたいと思います。
 今回、長官が国際原子力機関総会に御出席になりましたことは、まことにわれわれとしても同慶に存じておる次第でございます。その席上、アジア・アイソトープ・センターの設立を提案せられまして、各国の強力な支持、反響を呼んだということは、アジア全体といたしまして、まことに慶祝するに値するものだと喜んでおる次第であります。私も、最近、わずかの期間でございましたが、二、三の東南アジア諸国を回りましたときに感じたことは、やはり将来の東南アジア総団結をはかって、お互いの繁栄を画策するには、現実の問題を処理していくこともまことに大切でございまするけれども、いずれは人類社会は原子力時代になるということは、これは当然の帰結でございまして、こういう二十年、三十年の将来に思いをはせまして、日本が中心となって原子力平和利用の強力な推進態勢をはかっていくということは、日本がとるべき一つの大きな政治問題であると、私はさように考えておるのであります。これが、勢い、東南アジア全般の繁栄と平和を確立する原動力になるだろうということを確信しておるのであります。アジア・アイソトープ・センターの設立を提案いたされまして各国の反響を呼び、新聞の伝えるところによりますと、長官談として、これはおそらく実現可能であろうという御感想のようでございますが、ぜひともそれに対しましては最大の努力を傾けられまして、一日も早くアジア・アイソトープ・センターの設立を見るように一つお願いをいたしたいと思うのでありますが、それにつきまして、私が歩きましたときに感じましたところは、日本の原子力問題は国内に閉塞をしておって、国外に一歩も足が出ていないような感じがいたすのであります。いやしくも、日本の原子力平和利用に関するわれわれ先輩、同僚の熱情は、過去五年間において相当なものであった。そのために、原子力に関する予算も数百億を今費やしておるのであります。その結果、外人が見えて驚嘆の眼を見開くほど――まぁ内容はどうか知りませんが、東海村における原子力研究所あるいは原子力燃料公社、または千葉県下における放射線医学総合研究所、今コールダーホールが建設をされておる、これだけの基盤を持って、東南アジア全域に対して、将来の原子力平和利用の中核体たらんとするいろいろな働きかけが行なわれていないということは、私は非常に残念だと、こう考えて参ったのであります。従いまして、私は、昭和三十七年度の予算において、日本が中心となってアジア全諸国の原子力に関する協議会でもよろしいし、懇談会でもよろしいし、何かそういう会合を一つ持って、将来の人類社会を支配する原子力平和利用に関して、今から、日本が中心となって強力にそれを推し進めていく態勢を作っていただきたい、さように考えておるのでありますが、これに対して長官はどういうお考えをお持ちになっているか。
 もう一つは、東南アジア諸国の若き層であります。若き層の中には、やはり私と考え方を同じゅうしておりまして、将来は人類社会は原子力の時代になるのだ、おれたちは勉強をしたいのだ、しかし、おれたちの国には何ら勉強するところの設備もなければ、教える能力も持っておらぬ、一体、なぜ日本は、こういうことに対して広く手を伸ばして、東南アジア諸国の若き優秀な青年を吸収して、この点を推し広めていかないのかという声を私は旅行中に聞いて参ったのでありますが、こういう点に関するところの予算措置に対して、どういうお考えを持っておられるか、この二点をお伺いしておきたいと思います。
#12
○三木国務大臣 今お話しのように、日本は、アジアとともに生きていく一つの宿命を持っておるわけであります。そういう意味においてアジアに寄与しなければいかぬ、アジアの一員一員といっても、何も寄与しない一員というのは意味がないわけであります。そういう意味において、これは原子力に限らず、いろいろな分野があると思います。しかし、原子力もまた一つの重要な一面であることは、お説の通りであります。そういう点で、私は、アジア・アイソトープ・センターを日本に置いて、それは主として、若きアジアの青年諸君の、そのセンターを通じて一つのトレーニングをするということが大きな目的になるわけでございますから、アジア原子力会議というのも、何か具体的な目標を持って招集をしたい。だから、このアイソトープ・センターというものがもう少し具体化するならば、その問題を中心として、アジア諸国の、原子力に関係する人々の会議を開きたいと考えておるわけであります。むしろ、問題を具体化してそういう会議を開いた方が、開く場合も効果があるということで、これが具体化の促進をはかり、それを中心としてアジアの原子力関係者の会議を開きたいという考えであります。
 また、お説のように、アジアのいわゆる原子力関係に対する留学生といいますか、そういう制度は、これは多少はそういう関係者も来ておりますが、まだ十分とはいかないので、今後この点はカを入れていかなければならぬ問題の一つであります。アジア・アイソトープ・センターなども、こういうものができますとかなり大量に留学生を受け入れるわけでありますから、お説の目的にもこれは沿うものだ、ぜひ実現をさせたいと考えておる次第であります。
#13
○齋藤(憲)委員 アジア・アイソトープ・センターの内容につきましては、私はまだ詳細に承っておりませんから、あるいは私の考え方と重複をしておるのかもしれません。ただ、私といたしましては、このアジア・アイソトープ・センターというものの設立を国際原子力機関に提案をされまして、それが直ちに来年度においてその成立を見て、その実現がはかられるというならば、これは別問題でございますが、これが一体いつ実現を見るかというようなことも、なかなか時間を要する問題ではないか、こう思うのであります。それでありますから、そういうアジア・アイソトープ・センターを設立するという構想があればあるほど、その事前的処置として、東南アジア諸国の原子力問題に関する懇談会を年々開催していく、と同時に、今までの海外から来ております原子力関係についての若き人々は、これは研修的な目的を持ってやってくるので、聞くところによると、わずか二カ月か三カ月で帰ってしまう。あの膨大な、しかも将来性のある原子力問題が、研修生的形をもって二カ月か三カ月日本に来たって、これはほんとうに見物に来るだけであって、私は効果はきわめて薄いと思う。そういうことでなく、ほんとうに原子力全体にわたって勉強をして、帰ったならば、みずから立って自国の原子力平和利用に推進するという若き人々の養成というものをやらなければならぬではないか。そういう意味において、昭和三十七年度においては東南アジアの諸国を網羅したところの原子力会議を開く予算措置を講ずる、また、一人でもよいし、二人でもよい、とにかく、そういう東南アジア諸国からの若い原子力研究に燃えておるところの人々を収容する予算措置を講ずるということは、現下において、私は、緊要にして最も適切な予算措置ではないか、そういうふうにも考えられるのでありますが、重ねて一つ長官の御所信を伺いたいと思います。
#14
○三木国務大臣 明年度の予算の要求の中には、お互いに、このアジアの関係は、事情をわれわれは知っておるようでもありますけれども、現地の事情は各国によっていろいろ違いますし、そういうことで事情は十分に承知してない面もありますので、まず、来年度の予算要求の中には行政官――政府のそういう方面に携わっておる行政官の会議というものを開いて、そうして、どういう面で日本と東南アジア諸国との原子力、あるいは科学技術の面で協力関係を作ることが、受け入れ側としても好ましいかということを十分検討したいと考えまして、まず行政官の会議を明年度は開きたいという考えで、予算的な要求もいたしておる次第でございます。齋藤君のお話とは、少し、一歩手前にあるようでありますが、とにかくもう少し各国の事情、各国自体の受け入れ態勢等も考えまして、それはもっと効果的にやりたいという趣旨から、そういう段階をとったものでございます。
#15
○齋藤(憲)委員 まあこれは、新任の長官にこういうことを申し上げてもどうにもならぬと思うのでありますが、私が先ほども申し上げました日本の原子力体制というものは、国内に閉塞しておって国外に一歩も足が伸びておらぬという感じがしたので、私はそいううことを申し上げておる。今まで五年の歳月を経ておって、東南アジア諸国がいかなる原子力体制にあるかということがわからぬから、予算処置も行政官の集会にとどめておくというそのことが、今まで原子力関係が、海外に一歩も足が伸びておらぬということの実証だと思うのです。五年の間に東南アジアの原子力体制が当局にわかっておらぬという、そんな原子力体制というものは尊敬するに足らないじゃないかと思っておる。だから、それを急速にわからせる意味においても、この際、日本が立って広く呼びかけて、衆知を集めて、お互いが手を握って、東南アジア諸国における原子力平和利用を推進していこうじゃないかという態勢を確立することは、焦眉の急じゃないかということを申し上げておるのであります。このことにつきましては、私の先輩諸公なども心配しまして、いろいろ東南アジア諸国を回って、資源的にも、あるいは技術的にも打つべき手を早く打たなければいかぬじゃないかという忠告も、ずいぶん過去においてなされたことも聞いておるのでありますが、私は不幸にして落選をしまして、ニカ年半閉塞時代があったわけでありますが、ニカ年半たってやってきますと、一つもまだ原子力問題というものは海外に手足が伸びてない。鞠躬如として国内対策に没頭して、この人類社会を支配すべきところの運命にあるものを等閑に付して、そしてアジア全体、共同的な将来の繁栄態勢を確立すると言ったって、これは、私は議論にならないのじゃないかと思っておるわけであります。でありますから、この際、長官新任の大抱員の中に、即時東南アジア諸国に向かって原子力平和利用の態勢を確立する、そのために三十七年度予算に原子力平和利用に関するところのいわゆるアジア的な会議を設ける予算措置を講ずるという、もう一歩踏み込んだ構想をお待ち願いたいと思うのでありますが、この点については、また一重ねて御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。きょう御即答願えなければ、よく一つ事務当局と御相談の上、次会に御答弁を願えばそれでもけっこうだと思います。
#16
○三木国務大臣 齋藤委員の言われる趣旨もよくわかるわけでございますが、そういう原子力関係のアジア会議というものは、これは来年度中開かないということではない、私は、それを開く場合には、もう少しアイソトープのセンターの問題が具体化するならば、目鼻がつくならば、どうしてもアジア諸国とも相談しなければなりませんので、そういう会議を持ちたいと考えておるわけでございまして、何か会議を開くときに具体的な問題があることが好ましい、そういうことで、この進展によってそういう会議を開きたいと考えておる次第でございます。どうしても開かぬというものではない、もう少し問題を具体化して開きたいと考えておるわけでございます。
#17
○齋藤(憲)委員 その問題はまあその辺でお預けにいたしておきますが、もう一点だけ、これは気にかかっておりますから、お伺いしておきたいことがございます。
 それは、日本の原子力平和利用は、初段階を進みまして、次の段階に入っております。それでありますから、事はきわめて専門的になっておって、いずれ原子力委員会あるいは原子力研究所、燃料公社等の当事者から、詳細に説明を承ってから日本の原子力体制に対しての質問をいたしたい、こう思うのでありますが、ただいま承りたいと思いますことは、原子力船の問題です。原子力船を作るということはきまっておるけれども、どういうものを作るかということは、まだきまっておらぬということを承っておるのでありますが、原子力委員長として、この第一回に作るべき日本の原子力船に対してどういう御構想をお持ちになっておりますか、もしおありでございましたならば御表明を願いたいと思います。
#18
○三木国務大臣 御承知のように、今部会もできて検討をされておりますが、これはどうしても急なわけにはいかない。まあ今後十カ年ぐらいの年月をかけなければならぬと思っておるのであります。もっと短縮できれば好ましいでしょうが、大体それくらいの期間をかけなければならぬと思っております。私は、できるならば一万トン・クラスのもので貨客船、こういうものを考えてみたらどうか、これは私の個人的な考えでございます。具体的な設計等は、今年度から本格的にかかるわけでございます。その専門家の検討を待たなければなりませんが、私自身としては、そういう考えでございます。
#19
○齋藤(憲)委員 これは、御当局のお考えでは当事者の御協議によって決定されることだと思うのでありますが、私がかれこれ意見を述べる筋合いでもないと思うのでありますけれども、この原子力を利用して客船ないしは貨物船を作るということも、これは一つの考え方じゃないかと思うのであります。しかし、旅客船並びに貨物船というものは、これはどうしてもコマーシャル・ベースを前提として考えていかなければならない。そうなりますと、長官の仰せのように、期間が十年かかるか十五年かかるかということになるわけであります。私は、原子力船というものはそういう前提のもとに考えらるべきものではない、こう思うのであります。というのは、日本独自の立場において、原子力を利用した船というものはどうあるべきかという結論を出すために、第一回の船というものは作らるべきものである、もちろん、それはコマーシャル・ベースというものは考えないでやるべきである。ですから、その目標というものは、コマーシャル・ベースに関係のない目標を選ばなければならない。しかも、これあるがために国家というものに非常にプラスになるという目標を選ばなければならないのではないかと私は思うのであります。私も、アメリカにおきまして、原子力船に関していろいろ知識人の意見を徴したのでありますが、この原子力によって貨物を運ぶとかあるいはお客を運ぶとかいう、いわゆるコマーシャル・ベースを目標とした原子力船というものは、実現に非常な時間がかかる。それはなかなかむずかしい問題だ。しかし、アメリカにおいて必要な原子力潜水艦、あるいはソビエトにおいて砕氷船、こういう特殊な任務を帯びており、それによって果たされなければあと方法がないという問題を選んでやるというと、これはきわめて大きな国家的な力を持つものであるという話を聞いたのであります。日本にもそういう分野というものは、私はたくさんあると思う。あえて客船とかあるいは貨物船を第一に選んで、そうしてその設計をどうしたならば値段が安くなるか、そんなことをやっておったならば、十年も二十年も原子力船は作れないということになる。一万トン内外の原子力船を作るという構想が浮かんだならば、そういうコマーシャル・ベースを度外視した他に何か国家利用、これなくしては国家の活動が阻害されるという目標が、私はあるに違いないと思う。そういう問題をお選びになって、第一回の原子力船を御建造なさることが、原子力平和利用を推進する上においてきわあて重大な方法ではないか、こう思うのでありますが、この点について長官はいかにお考えになっておりますか。
#20
○三木国務大臣 お話の通りで、これはこれから設計にかかろうというのでありますから、いろいろ齋藤君の御意見などもあり、そういう部会もあるものですから、最初の第一船というものは、みな衆知を集めた方がいいわけであります。日本も、日本独得のそういう使命を持った原子力船ができれば、それは好ましいと、今のところ常識的に考えておるのですけれども、あるいは日本の場合、常識を打ち破る方が適当かもしれぬ、こういうことで、まだ固まったわけではないのでありますから、大いに皆さん方の意見もこの中に反映していただいて、日本にふさわしいような原子力船の第一船であることが好ましいと考えておるわけで、固定した、こうだというものではないのでございます。
#21
○前田委員長 次に、中曽根康弘君。
#22
○中曽根委員 まず、私は、今回三木長官が自分の積極的な御意思で科学技術庁長官、原子力委員長というポストをお選びになりまして、国務に尽瘁されることになりました御信念に対しまして、敬意を表するのであります。いわゆる実力者といわれる方々は、このような科学技術を推進するというポストに着目される機会もあまりなかったように思います。それを、今の新しい文明の型や国家の歩みというものを考えて、一番基本的な、あまり派手ではないけれども、しかし、日本をプロモートしていく上において非常に重要なポストであるということを自覚されまして、このポストに積極的に御就任になりましたことに対して、われわれは心から感謝して、敬意を表するものであります。
 次に、ただいま御表明になりました御所信について、私は具体的に、簡潔に御質問申し上げたいと思います。
 まず第一は、基本法の問題でありますが、いかなる制度を作っても、いかなる法律を作っても、問題は人間にある。問題というよりも、むしろその局所に当たられる政治家のリーダーシップにあると私は考える。今まで日本の政界や官界において、ややもすれば、その人間の持っているリーダーシップというものが軽視されている。組織や機構にたよる、あるいは安定性や安全性ばかりを考えるという癖がありましたけれども、こういう激動する時代にあっては、その局所に当たられる方の良心や責任感、愛国心、それに伴うリーダーシップが非常に大事だと思うのであります。このことは、最近アーサー・シュレジンガーその他が言うておりますけれども、私もその点については共鳴するのであります。そういう面から見ると、岸内閣の時代と今日の池田内閣の時代とを比べると、科学技術に対するリーダーシップが私は欠けているように思うのです。岸さんは、たとえば、外国から帰ってきて羽田で、あるいは新聞記者会見等のときにおいては、常に科学技術のことが必ず言われておった。これは常に念頭にそういうことがあったからだろうと思います。あるいはまた、嵯峨根博士や茅博士等を招いて朝飯会を開いて、常に学者の意見を聞いておった。そのことをどの程度実行したかどうかは別です。しかし、そういう心がまえで自分が進まれておったということは、最高トップ・レベルに立つ政治家として、私は非常に重要だと思います。今度実力者内閣ができて、池田総理は、経済政策に非常に重責をになわれて一生懸命やっておるので、その部分は三木長官に譲られたのだろうと思います。そういう点から見て、これから三木長官は、リーダーシップを大いに発揮することをやっていただきたい。それがまた、実力者の実力者たるゆえんを発揮することだと思うのです。実力者内閣ができたというけれども、世の中にはこういう言葉があるのです。結局、総裁公選や何かが次に控えておるから、御身御大切になって、これは三すくみ内閣になるであろうということもないとは言えない。これははなはだ遺憾なことでありまして、国民の期待に沿わないゆえんであります。そういう面から見て、この科学技術基本法を作るということがその一つの転機です。今まで、いわゆる基本法ばやりという言葉が言われておって、各分野で基本法を作ろうということが進められておりますけれども、科学技術に関しては、私は別の意味があると思うのです。農業には農業の基本法の要請があり、中小企業には中小企業の基本法の要請があると思いますが、それらをすべて含めた底辺にある推進力というものは、科学技術にあるわけであります。そういう点から、今度作る科学技術基本法というものは、いわゆる国会に報告を出すとか、あるいは各省の調整をするとかいう体のものではなくて、政治の中枢にメスを入れる体のものでなければいけない。言いかえれば、今日の時代を考えると、科学や労働という問題が国の中枢にあるべき問題なのであって、その政治の中軸に科学技術という太いパイプが入ってくるという体のものでなければならない。そういう基本法が出てくると、各省は、自分の権限を侵されるとか、今までの行政的秩序を乱されるとか、必ず反作用を起こす。しかし、そういう意味のものを作らなければ作った意味がない。従って、私は、自民党としてそういう構想を持っておりますが、政府がいかなる所信を持って、いかなる基本法というものを作ろうとしているか、聞きたいところであります。その点を、まず三木長官にお尋ねいたしたいと思います。
#23
○三木国務大臣 齋藤委員からも同様なお話があって、とにかく基本法というのが、日本で農業とか中小企業とか各部門においていろいろ論じられておりますが、科学技術というものになってくると、農業や中小企業とも違って、かなり全般の国民生活にも影響を持つものでありますから、基本法の性格がよほど違ってくる。私は、基本法の制定については拙速主義ではないのであります。必ずしも、次の通常国会というふうに、期限を切ってこの問題は考えていない。でき得べくんば、これは日本の体質から変化をもたらすようなものであってほしい。また、抽象的なものばかりでもいけませんから、具体的に、その立法によって科学技術振興というものに貢献するものでなければいかぬが、一方においては、そういう大きな理想を持ったものでなければいけない。そういう意味で、少し時間をかけてこの問題は検討をしたい。単に科学技術会議とか科学技術庁とかいうばかりでなく、これは衆知を集めて、後世においてもこれが日本に対して非常に画期的な意義を持った法案にしたいと考えておりますので、そういう意味において、科学技術特別委員会の各位においてもこの問題に御協力を願いたいと思っておるのでございます。
#24
○中曽根委員 次に、日本の今までの政治のあり方で非常に遺憾に思う点は、内閣に所属する委員会や科学技術庁に所属する委員会の成果と政治との結びつきの問題であるのであります。非常にりっぱな方々が審議会や委員会を作られて、非常にりっぱな報告が出されるけれども、それが現実に政治に取り上げられるという点は、非常に濃度が薄いと考えます。私はかつてその職にあったときに、そのことを意識して一生懸命やったつもりでありますが、力及ばず、十分成果を上げることができなかった。幸いに、今回三木さんのような実力者が内閣にお入りになって、その衝に当たられることになったので、学者や有識者の持っているそのレポートの成果を、余すところなく政治で実をあらしめていただきたいと思う。それは閣議その他を通じておやりになると思いますが、たとえば、宇宙開発審議会やその他がいろいろな審議会の結果を作ってくる、あるいは科学技術会議が第三回目の答申をしてくる、いろいろ出て参ります。しかし、それが政治家の机の中に眠っている状態、あるいは国会図書館の一隅に放置されているということでは何の意味もなさないのであります。その点に対する三木長官への期待は非常に強いのでありますが、具体的にいかなるお考えでありますか、承りたいと思います。
#25
○三木国務大臣 お話の通りで、いろいろな審議会があり、審議会で答申されていることと政治的な結びつきが非常に弱いという点は、同感であります。今後、そういう点で、幸いに私も科学技術庁専任であるわけですから、そういういろいろな役所以外と申しますか、民間等のいろいろな考え方を政治の上に反映するために、最善の努力をしたい考えであります。御指摘の通りだと思います。
#26
○中曽根委員 今まで御質問申し上げた程度と同じぐらい重要な問題であると思いますことで、個別的な問題を一つ私は申し上げます。
 それは、文部省令の改正によって、博士号の授与の方式が今切りかえられつつある。従来は、大学院を出るとか、博士課程を通るとか、語学の試験というものをなくして、たとえば、民間の試験所におった者でも役所の研究室におった者でも、あるいはドイツ語やフランス語ができなくとも、その部面において輝かしい学問的成果を上げた人間は博士になれたわけです。しかも、その論文は、東大へ出そうが、早大へ出そうが、慶応へ出そうが、自由であったわけです。しかし、今回の改正によると、大体大学院を出るとか、博士課程を通るとか、あるいはそういう課程を通らない人でも、論文を出したあとで今度は試験がある。そしてニカ国語以上の外国語を通らなければ、博士になれないというシステムになっているようです。今まで学問のない者や、あるいは民間の試験所その他にあって大学に行けない、あるいは学校卒業後も大学院なんかに行けないが、しかし、非常にすぐれた頭脳と着想を持っておって、新しい理論や発明をする者が出てくるわけです。産学共同ということをわれわれが叫ぶならば、単にその象牙の塔だけの学問の成果というものを期待すべきではない。むしろ象牙の塔にある者はごくわずかであって、大部分は、民間や官庁へ流れていくサイエンティストが多いのです。そういう面から見れば、今のような博士号の授与ということは非常に不合理である。むしろこれからは、新しい適用や新しい着想というものが尊重される時代に入ってくるのであって、この点は、至急内閣としても取り上げて検討を要すると思うのでありますが、いかがでありますか。今のようなシステムでいくならば、たとえば牧野富太郎博士のような人は永久に博士になれないでしょう。それが正しいかどうか、私は正しくないと思うのであります。
#27
○三木国務大臣 私も初めて承ったのでございます。そういうことは、言われたようないろいろな不合理な点もありますので、内閣として検討をいたします。
#28
○中曽根委員 次に、具体的に、個別的に承りたいと思いますが、防災基本法の問題であります。
 私は、いつかラジオで、日本という国は、戦争と台風がなければ地上の楽園であるということを言うたことがある。そういう意味で、戦争問題は別として、台風災害を防ぐということは、非常に重要であるわけです。そこで、二年前に伊勢湾台風がありましたときに、防災基本法という法律を作ろう、あるいは基本法でなくても、それに対する措置法を作ろうというので、われわれは各省を集めまして成案を作ったりいたしましたが、その後、去年になってもことしになっても、まだ議会には出ておらぬ。非常にこれが手間取っておる。これは非常に遺憾なことであります。その間に台風は何回かきておる。しかし、それは行政措置によって若干の彌縫的措置は講ぜられておるけれども、国としての要撃体制は整っていない。これは非常な怠慢であると思うのでありますが、一体どういうことになっておりましょうか。
#29
○三木国務大臣 お説のように、災害、これをどういうふうに防止するかということは重大な問題でありますので、内閣としても、防災基本法を出すことに決定をいたしておるわけでございます。近く出すことになると思います。
#30
○中曽根委員 次に、宇宙科学の問題でありますが、宇宙開発審議会というのができて、兼重さんが会長で、いろいろ今努力されておるわけです。私が役所におりましたときに、宇宙開発は、大体三つの方向をつけまして、第一は、東大生産研を中心にする宇宙飛翔体の開発、つまりロケットの開発、それから第二が、郵政省の電波研究所を中心にする三十メートルのパラボラ・アンテナを中心に、アジアの国際宇宙通信センターを作ろう、そういう構想、それから第三が、そのほかいろいろな宇宙物理、これはオゾンあるいは電離層の問題、宇宙線の問題、そういうあらゆる面に関する宇宙科学の分野というふうに大体考えたわけであります。最近、宇宙開発審議会が何をしておるか、私よく知りませんが、伝えられることは、機関車がないようであります。それで貨車が非常に多過ぎて、一時間の速度というものが非常におそくなっている。兼重さんが自分で告白していることによると、中曽根さんがいたときはあんまり機関車が走り過ぎるので、私はブレーキのつもりで入った。しかし、その後は、兼任長官その他になってしまって、ブレーキだけ残っちゃったから、進まなくなっているのですと言われた。これはおせじで言われたのかどうか知りませんが、その点は、私は個人的に非常に心配しておるのであります。そうして、やはり依然として東大生産研を中心にするあの宇宙飛行体の開発と、それから電波研究所を中心にする通信の開発と、それから各大学を中心にする宇宙物理の解明というものは非常に重要な問題であると思うのでありますが、この点について、三木さんは原子力機関車ぐらいの推進力があると思うのでありますが、どういうお考えであの審議会を推進し、その成果を取り上げていかれるか、お聞きいたしたいと思います。
#31
○三木国務大臣 なかなかあの審議会も、その苦心話は承っておるわけでございますが、しかし、とにかく宇宙開発ということは重大な問題になって参りましたので、役所の方としても今回窓口というものを一ぺん設けてやる、そして宇宙の審議会等とも、もう少し強力に行政の面からもこれが連絡をとり、推進のできるような体制を整えて、一段と強化できるような方向に持っていきたいと考えております。
#32
○中曽根委員 その点については、すでに東大生産研のロケットもカッパー十を飛ばせる段階になって、相当大規模なものに成長しつつある。また、電波研究所を中心にする研究も、外国との提携その他で非常に複雑になってきておる。あるいは科学技術庁には航空研究所があって、これも、風洞の利用からロケットその他にも移る可能性がないとは言えない。そういういろいろな点から考えてみると、もうそろそろ科学技術庁に宇宙開発本部というようなものを作って、各官庁等の仕事を総合する必要があると私は思うのです。各官庁ばらばらでやっておったのでは、もういけない段階になりつつあると思うのです。しかし、何も宇宙開発本部というものは、そういう法律をもってぎょうぎょうしく作る必要はないので、たとえば南極探検の問題にいたしましても、文部省を中心にあの本部があります。とりあえずはそういう形で、科学技術庁を中心に総合体制をしく必要があると思うのでありますが、長官はいかにお考えになりますか。
#33
○三木国務大臣 今回の予算要求の中にも、新しく部局を設けたいということで要求してあるのでございます。お説のように、科学技術庁が中心になって、こういうものをもっと総合的に成果を高めることを考えなければいかぬので、そういう点で予算要求もしてある次第であります。
#34
○中曽根委員 単に科学技術庁にそういう部局を設けるだけではなくて、たとえば、閣議決定とかあるいは閣議了解程度のもので、南極探検に相応するような宇宙開発本部という機構も作る必要があると思うのでありますが、いかがでありましょうか。
#35
○三木国務大臣 十分に検討いたしたいと思います。
#36
○中曽根委員 次に、国産技術の保護の問題でございます。
 貿易自由化に伴うて一番大きな問題は、外国技術が際限なく流入してくるという問題であります。しかし、これは必ずしも悪いとは言えないのです。国産技術のみじめなものは、みんなこれは放逐されていくのは実力の前にあたりまえのことであって、そこでふるい立って、最もいい、外国製品に対抗できるような国産技術が日本に培養されていかなければ日本は伸びないのでありますから、日本の科学技術というものは、一つの試練に遭遇しつつあるのであります。むしろ、喜んで迎えるぐらいの心境が私はほしいと思うのです。しかし、政治家として、そればかりを期待するわけにはいかない。戦前を見ても、国産技術を開発しておったのは、日立製作所が一番努力しておったようでありますけれども、あの程度の力になれば、ある程度伸びます。しかし、あそこまでいかないで、ようやく若葉を出し、芽を出した程度というものも、かなりあるわけです。それをいかにして守るかということが、政府の責任でもあると思うのです。しかし、ガットやそのほかいろいろな国際条約等から見ると、通貨的理由を除いて、保護政策をとるということはなかなかむずかしいようであります。しかし、たとえば硫安なんかの問題については、農民に補助金を与えるという形によってそれをうまく逃げているという形もあり得ます。そういう点は、国産技術の保護、奨励という点についても参考になると思うのでありまして、なお、貿易自由化に伴って国産技術をどういうふうにして育成、保護していくか、長官のお考えがあれば承りたいと思います。
#37
○三木国務大臣 これは政府の関係もありますけれども、そういう国産技術を育成していこうという民間の機運というものがなければ、なかなかそのようにも参らぬわけでありますので、そういう意味で、何とかして、民間が外国の技術にたよらないで、国産技術を開発しようという意欲を持たしめることに何かいい方法はないかということで、研究法人等も考えてみたい、そうして、みなが会社の経営と分離して新しい技術に対して研究を積むような、そういう機運も助長したいということを考えておるわけでございます。また、技術導入についても、国産の技術で開発できるようなものに対しては、今後多数厳重に考えていきたい、かたがた、民間の方にはそういう機運を助長したいと考えておる次第であります。
#38
○中曽根委員 次に、人材養成の問題で承りたいと思いますが、この点については文部省は非常に低調であって、今までの既成のワクとか、あるいは今までの計画の秩序というものにとらわれて、しかも、その既成のワクと計画の秩序というものは合理的なものであるかといえば、時代の進展に伴って合理的なものであるとは必ずしも言えない。むしろ、民間側において伸びよう伸びようとする芽を、既成の秩序の理由のもとに押えつけているというのが、文部省の態度であったと思うのです。それは、文部省の今までの伝統からすると、新しい科学技術時代の文部省というよりも、明治の寺子屋から出てきた文部省の意識がまだ残っている。これをたたきこわす以外には、日本の人材養成を開拓していく方法はないと思います。その意味において、前任者の池田長官が文部大臣を相手にしてけんかしたということは、なかなかりっぱなことでありまして、おそらく全国民相当数が拍手を送ったと思うのです。そういうことを新長官もぜひ受け継いでいただきたいと思うのです。たとえば、一つの具体的な例を申し上げると、原子力講座を置くという問題について、たとえば名古屋大学、京中地区からこの間陳情がありました。あそこに原子力計装あるいは原子力炉工学の問題について、二講座を置いてくれという陳情がありました。名古屋の事情を見ると、九州とか北海道は、石炭に近いところでありますから、むしろ原子炉やそのほかの必要は割合に少ない。一番遠い名古屋地区というものは、原子力発電その他を考えてみると、将来一番大事な点であって、しかも、将来のバック・グラウンドの非常に広いところであります。ですから、今のうちに技術者を養成しておかなければならぬ地帯であると思う。そういうところから二講座をふやしてくれという陳情が出てきたけれども、文部省は、三年計画があるので途中から入るわけにはいきませんといって、今までの東京大学、東京工業大学、東北大学、京都大学、大阪大学、これだけを優先させて、名古屋は割り込ませないという考え方をとっておる。これは非常な間違いです。地元からふやしてくれという要望が出れば、よくして下さいましたといって、文部省が一緒に大蔵省に行くのが、文部省の態度でなければならないのです。それを、既成秩序を乱すというような、自分の間違った考え方を基準にしてあしらうという態度は、非常な間違いです。そういう考えがあるから、人材養成が進まない。民間に対しておおらかに受け入れるとか、再考をするという精神がないわけであります。これは具体的な例を今申し上げたわけでありますが、この点について、長官は文部省に対していかなる対策をおとりになるか、承りたいと思います。
#39
○三木国務大臣 今お話しのように、池田長官は、人材養成について非常に熱心な勧告を数回お出しになっており、その効果は相当に現われており、高く評価する次第でございます。そういうことで、文部省も人材養成については相当意を用いて参っておるわけであります。閣議等においても、高等工業学校なども相当各地に作ることを決定しておるわけです。私どもは、これは全国各府県に一つぐらいは至急にやってもらいたい、作るについては、それに伴う教員の養成の問題もありますが、過渡期には多少の民間側等のやりくり等もしなければならぬ、そういうことで、今後人材養成には一段と注意をして参りたいと考えておる次第であります。
 具体的な名古屋のお話、これは教授陣営等の具体的な問題としてはいろいろな事情があるでしょうが、原則としては中曽根委員の言われる通りです。しかし、個々の大学等についてはいろいろな関係等があるのですから、個々の問題については具体的に検討してみなければなりませんが、原則論としては御説の通りと考えております。
#40
○中曽根委員 この前の池田長官のときは、ともかく文部省の今までの型を破ることについて非常に勇敢に積極的に努力された。こういうことは適当な言葉かどうかわかりませんが、政治家の格からいったら、文部大臣と池田前長官は同格ぐらいの格であった。にもかかわらず、よく健闘してその一角を破ったと思うのです。しかし、三木長官は、今の文部大臣から比べれば比重ははるかに大きい。ヘビー・ウエートである。相手がライト級かフェザー級ならば、あなたはヘビー級の政治家なんでありますから、鎧袖一触ぐらいにいけるだろうと思う。その点を私たちは大いに期待するわけ工あります。
 次に、原子力の問題で二点伺いますが、コールダーホールの炉を許可するときに非常にやかましい議論がありまして、放射線許容量の問題やその他について、学界その他からずいぶん御注意がありました。われわれはその御注意を十分に聞いて、万遺憾なきを期すといって許可したわけであります。今建設が始まっておる。この建設の過程をホローするということは非常に重大なんです。そこで、当時、関係各省、科学技術庁が中心になって、通産その他との混合の委員会のようなものを作って、設計、施工の過程を忠実にホローして、単にできたときの竣工検査をするだけでなくて、その過程がうまくいっているか、正しくいっているかということをホローして、これを監督するということを私たちは言ったのであります。その方向で科学技術庁はやっておると思うのでありますが、その実際の建設過程の監督というものを関係各省の間でいかに協力してやっているか、具体的にお示し願いたい。
#41
○三木国務大臣 原子力局長からお答えいたします。
#42
○杠説明員 私の方といたしましては、規制課というものがございまして、検査をいたすのでございます。ところが、その規制課のみならず、核燃料課というものがございまして、これは燃料の検査をするのみならず、いろいろ世話をするところでございますが、この両課も一緒になりまして、また、通産省には発電課というものがございますが、その発電課と密接な連絡をとりながら、常時監督していると申しましょうか、あるいは発電会社との間には、監督のみならず、研究というようなこともいたしております。また一方、その建設過程を映画に撮影して、完成してしまった暁においては、わからないととろの部署につきましても、そのつどわからせていくというようなふうにいたしております。そのように、関係個所におきましては十分な連絡をとってやっていっておるわけでございます。今後とも、お話の通りに十分に連絡を密接にしていき、ぜひ、第一回の発電炉であるという意味を生かしていきたいと考えておるわけでございます。
#43
○中曽根委員 その程度のことではいかぬのであります。その程度のことは、今までの行政的秩序の中でも当然やらなくちゃならぬ問題なので、それ以上のことをやる必要があるというので、あのときわれわれはいろいろ発言したのです。だから当然原子力委員が長になって――委員長である人が必ずしもなる必要はないでしょうが、原子力委員が長になって、通産省その他関係各省の人間を集めて、委員会を作って、そして総合的な監督をしなくちゃいかぬのです。片一方では、なるほど燃料の検査、燃料の問題を一生懸命やっておるが、片一方においては、炉の設計というものが出てくる。炉の設計と燃料というものは、混合して一体とならなくちゃならぬ問題であって、それを別々に監督して成果が出るなんということはとうてい考えられない。そういう意味で、関係各省が一体となって、混合委員会というようなものを作って、月一回ずつ関係者を呼んで、あれはどうなっているか、これはどうなっているか、必要があれば実地検証をして、注意してやらなくちゃならぬ。私はそういうことをやるようにお願いをして役所を去ったのでありますけれども、今聞いていると、そこまでいってないようであります。これは非常に遺憾なことです。あれだけあの当時騒がれたことであるから、万遺憾なきを期して、戦々きょうきょうとして工事の過程をやらなければならぬ、この点について三木長官の御所信を承りたい。
#44
○三木国務大臣 お説ごもっともな点でありますので、そういう機構を作る作らぬは別として、もっと総合的な監督をいたすようにいたしたいと思います。
#45
○中曽根委員 それは総合的な監督をする以上は、機構を作る以外にはないのです。今までのような既成秩序でやろうとしたら、必ず分離してしまう。そして国民の期待には離れることになる。だから、ここでそういうような総合的な機構を作るということを言明していただきたい。それを言明しない限りは、必ず今まで通り、役所というところはルーズであって、そうなってしまう。だから私は申し上げる。
#46
○三木国務大臣 機構を作るという機構というものの解釈でありますが、連絡会議のような形のそれを機構というならば、そういう機構を作ることに同意いたします。
#47
○中曽根委員 最後にもう一つ承りたいのは、原子力施設地帯の整備法の問題です。
 これも、前から問題が提起されて二年になったけれども、まだ実を結んでこない。しかも、首都圏整備を中心に、関東地方その他を中心とする地帯は非常に計画が進んでおる。東海村だけを考えても、そういう特殊立法が必要であって、保険衛生あるいは研究、教育、あらゆる面について総合計画のもとに原子力都市あるいは原子力地帯というものは建設されなければならぬ。それがない限り、コールダーホールの建設あるいは次の動力炉の建設というものは、必ずネックにひっかかってくると私は思う。この原子力施設地帯整備の立法をどういう速度でお進めになるか、お尋ねいたしたいと思います。
#48
○三木国務大臣 今原子力のああいう東海村のような地域、これに対して十分な都市計画と申しますか、それは必要でありますので、原子力産業会議等も、これは具体的に検討を進めておるわけでございます。連絡をとってああいう原子力センターの整備、環境の整備ということに対しては、今後検討を加えていきたいと思います。
#49
○中曽根委員 多数部門の研究の問題で、最後に一つお尋ねをいたします。
 いろいろアイテムが出ております。出ておるが、一つ出てない問題がある。それは人工降雨の問題です。人工降雨の問題を私たちが騒ぎますのは、これが集中豪雨対策になる。たとえば雲が出てきたときに、先に雨を降らせるとか、分散させて降らせれば、諌早のような悲劇はなくなる。あるいは旱魃で困ったときに、北九州その他も去年あたりは相当な成果を上げている。あるいは渇水に困ったときに、ダムに水をためておくという問題も出てくる。そういう意味で、これは各方面に非常に影響のあるいい研究であって、しかも、昨年の例を見ると、大体雲の中へ飛行機を突っ込まして、水滴を散らして、雨の降る率というのは三割から五割くらいに及んでおる。ことしの例を見ましても、五割以上に及んでおる。そういう点を見ると、これは大体見当がつきつつある非常に有望な研究であると思う。そういうような成果が実りつつある研究がアイテムの上に出てきていないのは、軽視しているのではないか。ほかの騒音の問題とかいろいろの問題は出てくるけれども、それ以上に今取り上ぐべき問題である。この点について三木長官のお考えを承りたい。
#50
○三木国務大臣 これは重視いたしているわけでございます。昨年度もやっておったので、引き続いてやるということで、おもに新しく取り上げる問題をここに羅列したのであります。決して軽視ではないのであります。相当な金額の予算も要求しておることを付言いたします。
#51
○前田委員長 西村関一君。
#52
○西村(関)委員 私は、さきに御質問せられました齋藤委員、また、ただいまの中曽根委員のような長年のベテラン、またその担当の国務大臣をしておられた方というような経歴はございません。ただ一介のしろうとでありますが、しろうとの立場から、一委員として三木国務大臣に御質問をいたしたいと思います。ただいま長官の所信表明を承りまして、率直に申し上げまして、私は大臣のお考えになっておられまする事柄について、全面的に賛意を表したいと思うのであります。その一つ一つにつきましてはなお若干の意見もあり、希望も疑問もございますので、よく専門家の意見も逐次お伺いして、今後きめのこまかい御質問をいたしたいと思いますが、本日は第一回の委員会でございますから、全般的にわたりまして二、三の点をお伺いいたしたいと思いますから、率直にお答えをいただきたいと思います。
 第一点は、第二のところに述べられておられまする国立試験研究機関の問題と、第五の点に述べられておられまするところの科学技術者の養成の問題でございますが、私は、全体として国の試験研究機関が非常に弱いと思うのでございます。これは施設の内容から申しまして、予算の面から申しまして、諸外国に比べて科学技術の国の試験研究機関が、ほかの各省の試験研究機関も同様でございますが、非常に弱いと思うのであります。こういう点につきまして、来年度の予算編成等にあたりまして、大臣の構想と関連をいたしまして、どういう充実をはかろうというお考えでございますか。
 また、技術者の養成につきましては、これは中曽根委員もお触れになりましたが、機構や組織ができましても、結局は、これを動かすところのものは人でございます。ただいま大臣のリーダーシップということについて触れられましたが、私は、全体としての技術者に人を得、それぞれの機構なりそれぞれの機関なり、また、それぞれの地域に、国の科学技術を推し進めて参りまする中核となる技術者を配置するということが、非常に大事だと思うのでございます。ところが、今日の状態から見ますると、たとえば大学教授の俸給にいたしましても、また、一般の各試験研究機関の技術者の待遇にいたしましても、これは非常に低いと思うのでございます。これは給与の問題でございますから、技術庁の問題と離れるのではございますが、国務大臣というお立場に立って、技術者を大事にする、技術者を優遇するということが伴わなければならないと思うのでございます。私は、生涯をささげてこの一つの技術のために打ち込む、後顧の憂いなく研究に従事するというような体制を組んでいくということこそ、これは政治の面に携わる者のお互いの責任ではなかろうかと思うのでございます。まず、この点につきまして、大臣のお考えを承りたいと思います。
#53
○三木国務大臣 第二の項目で私が述べました国立研究機関の刷新強化という考え方の根底には、こういう考え方があるのであります。現在、国立研究機関が各省の管轄にまたがって、どうもセクショナリズムというものがあるわけであります。タコつぼに入ったような状態に置かれるような弊害もある、もう少し国立の研究機関が相互に連絡のとれるような体制にしなければいけない、あるいはその場合には、再編成等も必要になってくる場合があると思うのでございます。しかし、何分にも、これをよその官庁が所管しておる研究所もあるわけでありますから、科学技術庁の権益の拡大というようなことであっては目的を達成できませんので、科学技術会議に、約一年この問題と取り組んで、実地にも見て、単に国立研究機関ばかりでなくして、地方の工業試験所などもありますから、国及び公共団体の研究機関について、将来の科学技術振興のためにはどういうあり方がいいのかということを研究してもらいたい、そうして答申を出してもらいたい、そういうことで国立研究機関並びに公共の研究機関の刷新強化をはかりたい。また、今お話のありましたように、国立研究機関が、諸外国は軍事的な、いわゆる軍事予算の面からも相当に出ておりますから、日本のような平和利用と申しますか、平和ということに制約された国立研究機関ということになれば、諸外国とは予算の上においても差がつくことはやむを得ない。しかし、今後そういう体制の整備と相待って、民間ではどうしてもできないようなことを国立研究機関がやる使命があるわけでありますから、施設の老朽化されておるものもありますし、こういう点で体制の整備と相待って、国立研究機関というものの内容についても充実をしていきたい、こういうふうに考えておるのが、私の第二の項目で触れた趣旨でございます。
 それから技術者の養成につきましては、これは何としても学校教育と結びつくわけであります。むろん、各私企業の上においてその技術的な訓練をするものもありますけれども、要は、やはり文科系統と理科系統の比重というものが、日本の場合は少し文科系統に偏し過ぎておる。だから、どうしても今後は理科教育の系統の学校施設というものをふやして、理科、文科系統学生の比重をバランスをとらす、大体に五十、五十のような状態になっておるのが諸外国の状態でありますが、日本もそれに近づけていく、学生などに対する文科、理科系統のバランスをとる、そういう点で、科学技術振興に関して、文部省に関係する問題が多いのでありますが、単に科学技術庁の予算に関係するとかしないとかいうことではなくて、できる限り技術者の養成については文部省に援護射撃をしまして、画期的にそういう技術者を多く育成していきたいという考えでございます。
 また、そういう技術者の待遇改善につきましては、今日の給与体系のもとにおいてはなかなかむずかしい。何かこれに対して特別な方法はないかということを考えるのでございます。あるいは研究機関などは、特殊法人というようなことを考えるのも一つの方法かと思います。まだ結論に達したわけではありません。今日の給与体系のもとでは、特に非常なアクセントをつけるということはなかなかむずかしい。人事院の今回の勧告の中にも、研究公務員などに対しては多少の配慮をされてはおりますけれども、まだ十分なものではないのでありまして、これは今日の給与体系のもとでいかに技術者を優遇するかということは、皆さんも一つお考えを願いたい。私が非常に頭を痛めておる問題の一つでございます。
#54
○西村(関)委員 次は、第三の点に触れておられまする中で、台風、集中豪雨、地震等各種災害の予知、予防、対策に関する問題でございますが、この点も先ほどの質問の中にも出ておりましたが、災害の常襲地帯ともいうべきわが国におきまして、これらのことが、従来、毎年々々各方面から叫ばれておりますのにかかわらず、充実してない。先般の梅雨前線集中豪雨災害のときにも、科学的な施設、科学的な配慮がもっとなされておったならば、災害はより少なくて食いとめることができただろうと思うような点があったと思うのであります。たとえば雨量計の設置なども、長野県あたりを歩いてみましても非常に少ないし、そうしてそれが予算の関係でできないといったようなこともあるし、いろいろな点につきまして、これは災害対策は別の特別委員会において取り上げられる問題でございますけれども、科学技術の問題と非常に密接な関係がございますから、こういう点につきましては、大臣は先ほどお述べになっておられましたが、格段の今後の御努力を願わなければならない点ではなかろうかと思うのでございます。
 それから、その第三のところの後段に、宇宙科学技術、海洋科学技術、電子科学技術等は先導的に行なわなければならないところの研究の分野であるという点が書いてございます。私はそれは他意はないと思いますが、第三の災害の問題の後段にこれをお述べになっておりますけれども、やはりこれは一つの項を改めて重点的に取り上げなければならない題目ではなかろうかと思うのであります。そういう意味で、ただナンバーが打ってないというだけで他意はないと思いますけれども、この点は非常に大事な点でございますから、重ねてお伺いをいたしたいと思う次第でございます。特に宇宙科学の問題につきましては、先ほど中曽根委員もお触れになりましたし、齋藤委員もお触れになりましたから、私は重ねて申し上げませんが、その次にございます海洋科学技術の問題につきましては、これはわが国におきましては非常におくれておると思うのでございます。今日、北方海域におきましては、ソ連の制約等もありまして、なかなか思うように仕事をすることができないという状態になっておりますときに、太平洋海域の問題、特に海低の問題あるいは海洋の海水の中の問題というような研究が、ほとんど未開拓の状態になっておると思うのでございます。私は先般アメリカの加州大学の海洋研究所を訪れましたが、あそこの専門家が申しておりましたところによりましても、まだ太平洋の中は九五%くらいはわからないということを述べておりました。わが国におきましては、海洋科学の問題につきましてはどの程度の研究が進められておるか、また、今後これに対して大臣はどのような御抱負を持っていらっしゃるか、これらの点についてお伺いをいたしたいと思います。
#55
○三木国務大臣 今お話しになりました、順番によって比重は、これは比較することはなかなかむずかしい。防災のごときも、ある意味においては一番大事かもしれぬし、いろいろな意味で、順番は書いた順序ではない、いずれもやはり重要な問題として申し述べたわけでございます。海洋科学あるいは宇宙開発等は新しい分野である、新しいといっても、海洋科学などは先進国ではよほど進んでおるようであります。そういう点で日本のおくれておる部面であって、科学技術庁としてもこの問題を重点的に取り上げて今日までやって参っておりますが、具体的な問題につきましては政府委員からお答えをいたします。
#56
○黒澤説明員 ただいまの海洋科学技術に関しましては、今回新たに総理府に海洋科学技術審議会が設けられまして、それが二つの諮問を受けております。第一は、海洋科学技術に関する重要事項いかんということ、第二は、当面の重要問題は何かということでございますが、当面、明年度の予算に特に関係のある分につきましては、十月末を目標といたしまして、ただいまほとんど連日会議を開きまして審議中でございます。ただいまお話しの海底の問題あるいは海水中の成分の問題等もそれぞれ含まれておりまして、遠からず答申案が出てくることになっております。
#57
○西村(関)委員 小さいことですが、私の申し上げたのは順番のことではなくて、順目が一つ起こしてないということを御指摘申し上げたのでございますから、この点御了解をいただきたい。
 その次の問題は、少し大事だと思うのでございますが、三木長官は、先般行なわれました国際原子力機関第五回総会におきまして非常に有力な御演説をなさったのであります。われわれといたしましても、まことに意を強くしたのでございます。この演説の中におきまして、長官は、広島の問題に触れておいでになります。「広島では、十六年後の今日といえども、原爆症で死んでいく人が絶えません。それだけに、このたび、ソ連の先発によって、核実験競争が再開されましたことは、日本国民にとって非常なショックでありました。」というふうに触れられまして、「唯一の、そして最後の被爆国民であらしめよ」という日本国民の全人類に対するところの切なる訴えをせられたのであります。そのような立場から、日本国民が原子力問題、これの平和利用に対する大きな期待を持っているということを強調せられたのであります。この点につきまして、われわれは、長官が日本国民の真情を代表して国際会議でお述べになったことに対して、敬意を表するものでございます。と同時に、私は、このような観点に立てば立つほど、放射線の被害に対する研究ということが、わが国に与えられているところの大きな課題ではなかろうかと思うのでございます。放射線化学中央研究所を新設されるという構想をここで述べておいでになりますが、この内容につきまして若干お答えをいただきたいと思うのでございます。
 なお、私は、今日原子病と申しますか、白血病と申しますか、放射線によるところの被害、人体に及ぼすところの被害がますますふえてきておる、原子病の患者が続々ふえていっておる、今正確な統計は持っておりませんが、この現状に対してどのようにお考えになるか。これは、死の灰の谷間ともいわれておりますわが国にとりましては、重大な問題でございます。これは科学者は、その原子病、白血病がただ単に放射線によるところの死の灰の影響からくるものであるかどうかということにつきましては、その原因がわからないし、その病気の根本的な治療策が出ていない現在におきましては、はっきりと立証することはできないのでございます。しかし、今日なお続々として広島、長崎の被爆者の中から原子病のために倒れていく者が絶えない。また、さらに広島、長崎の被爆者でない人たちにまで原子病が非常にふえてきておるというこの現状に対しまして、日本としては、特にこの問題に対しては重点的に取り組まなければならない。これは政府としても国民に対する責任があるし、また、世界に対して唯一の原爆被災国であるところの日本としては、これは光栄ある責務ではなかろうかと私は思うのであります。同時に、この点は、日本の科学技術にのみたよらずして、あるいはアメリカの科学技術、ソビエトの科学技術というものをも総合いたしまして、国際的な協力のもとに、たとえば日本が提唱いたしまして国連においてこの問題を取り上げ、この問題を国連の機関において討議をして、できれば広島にそのような国際的なセンターを作るというようなところまで、意欲的な施策を進めていただきたい。このことが、私は、原爆の唯一の被災国であるところの日本として、世界に負うところの大きな光栄ある責務ではなかろうか。そのことによって、私は、国連における日本の大きなウエートというものがより確立されていくのではないか、かように思うのでございますが、その点いかがでありましょうか。
#58
○三木国務大臣 いろいろな施設もむろん必要でありますけれども、日本が世界に対してまず訴えなければならぬことは、原爆の実験を阻止せなければならぬということ、――それの被害によっていろいろなあとの病院を作ったりするよりも、前提として、核保有国が、これだけ放射能の被害ということが科学的に立証されておる段階で、あえて原爆の実験を再開しようという合理性は、私はないと思う。だから、日本は、あらゆる機会に原爆の実験をやめろという声を強くすべきだと思います。私が原子力の国際機関において言ったのもそういう意味であるし、政府が国連においてその決議案を出そうというのもそういう意図であります。まず第一番に、これは日本が一番言う資格を持っておるわけでありますから、こういう点で世界の世論を喚起する必要がある。しかし、現に核実験も再開されたりして、放射能の被害ということも現実の問題でありますから、それに対しても対策を講じなければならぬ。いろいろ放射能の被害については測定もしておるわけでありますが、万全を期する意味において、放射能の対策というものについては、いろいろな分かれておる機関をもう少し総合的に連絡会議のようなものを常置的に作りまして、対策を講じたい。それから放射能をすでに受けた人に対しては、科学技術庁の監督下に放射能医学総合研究所というのが千葉県にあるわけであります。これはラジオ・アイソトープなどの利用もありますけれども、すでに放射能の被害を受けた人々の治療もやっておるわけでございます。広島に置けという御提案に対しては、にわかに、私の所管でもございませんので、これをとやかく申すわけには参りませんが、そういう点では、われわれの所管のもとにある放射能医学総合研究所などの機能は強化して参りたいと考えておる次第でございます。
#59
○西村(関)委員 私の申し上げようと思っておったことを長官から言われたのでありまして、実験再開に対する国民的抗議は申すまでもないことでございまして、今度、来週の本院の本会議におきましては、三党共同提案によるところの決議案が上程せられることになっておるのであります。これはもう当然過ぎるほど当然のことであって、そのことについては、本委員会において私はことさらに触れなかったのでありますが、長官からお言葉がありまして、まことにそれはその通りだと思うのであります。この実験をやめろということを強く世界に呼びかけるとともに、この放射能によるところの被害をどうしたらなくせるかということについて、これは世界のどの医学も放射能の人体に及ぼす影響については、これを根治することができない現在の状態にあるわけです。これはただ死の灰による被害だけでなくて、いろいろなアイソトープその他による研究中における被害というものもありまして、各国ともこれについては、ほとんどその完全な対策が立たないという現状でございます。こういう面に対して、科学技術庁としては特別な配慮を払っていただかなければならぬ。ただ千葉にあるところの放射能医学総合研究所ですか、それがあるからというだけでなしに、そういう問題に対して特別な配慮をしていただきたい。また、そうすることが、放射能の被害を受けておる人たちに対する務めであるばかりでなくて、これは世界の科学技術に貢献するゆえんであるし、また、日本が指導的な立場に立って、世界各国のこの方面の医学的な、科学的な技術を総合した施設を唯一の原爆被災国である日本に打ち立てさせる、こういう働き、こういう努力を、国連等の機関を通じてやっていくということが大事ではなかろうか、私はかように思いますので、重ねて大臣のお考えを伺いたいと思います。
#60
○三木国務大臣 御趣旨は同感であります。なかなか日本の声だけでこれを阻止できないのです。その現実というものの上に立って、放射能の被害から国民を守ることは、政府の責任の大きな問題の一つでございますので、従来もやっておりますが、私は特に力を入れていって、この問題については、従来よりももっと放射能の被害から国民を守る対策を強化していきたいと考えております。
#61
○前田委員長 岡良一君。
#62
○岡委員 科学技術庁の長官は、最近は専任の方が御就任をいただいております。特に今も中曽根君が申されたように、三木長官はウエルター級のチャンピオンということでありますが、おそらく科学技術に関心を持つ国民も大きな期待を持っておると思います。願わくは、どうかこの期待にこたえ得るだけの足跡をぜひ踏み固めて残していっていただきたいということを切に希望いたす次第でございます。
 そこで、個々の科学技術政策については、いずれまた行く行くこれからの委員会でいろいろお尋ねをいたしたいと存じますが、きょうは、御所信の特に前文に触れて、きわめて抽象的ではございますが、原則的な若干の問題について長官の御所信を承りたいと思います。
 今、はやり言葉と申しますか、うたい文句のように、内閣は常にその重点施策として科学技術の振興ということを申しております。しかしながら、現代政治における科学技術のウエートというものをどういうふうに評価しているか。実際に現われてくる政策を見ると、重点施策として取り上げられながら、きわめて弱体なものを見るだけでございます。私は、まずこの点、三木長官は現代政治における発展した科学技術というもののウエートをどういうふうに評価しておるか、ここを一つ伺いたい。
#63
○三木国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますが、お説のように、やはり日本の政治に限らず、一般的に言って科学技術というものが、日本の社会の基盤の中に占めるウエートが私は少ないと思う。そういう点で、特に科学技術振興が叫ばれるゆえんもそこにあるわけであります。そうしてやはり科学技術から教えられるものは、きわめて合理的な精神が貫かれている点でございまして、そういう政治の面におきましても、とかく東洋的な考え方の中には合理性を欠く面がある。世界に通用のしない言葉が通用する面もある。しかし、今やこういう国際的にも世間が狭くなって参りましたし、科学技術というものは文明の基礎になっているわけでありますから、やはり日本の政治の上においても、科学技術の持っている合理性が貫かれなければならない。そういう点は、単に政治の上においては自民党が言うばかりではなく、社会党も全部の政党も含めて、そういう点で科学の持っている現実性、合理性、こういうものは近代政治の中に取り入れなければならぬ問題である。まだウエートは非常に低い段階にある。そういう意味において、今後科学の持っている精神を近代政治の中に取り入れていくことが必要である、こう考えておる次第でございます。
#64
○岡委員 私は、今の長官の御所信には納得しがたいのでございますが、もちろん私のお尋ね申し上げた趣旨もきわめて抽象的でございますので、いたし方がないと思う。この機会に、私は率直に申し上げたいと思います。発展をした現代の科学技術というものは、もはや政治の外の力になっておる、政治を動かす力になっておる。あるいは経済の外の力、経済を動かす力になっておる。私は、現代の科学技術というものを、政府も、政党も、政界も、そういうスタートゥスで把握するということが、この科学技術振興の施策の基本でなければならないと思います。申し上げるまでもなく、核ミサイルが完成をされた。おそらく米ソ両国は、相手を打ち負かすために核ミサイルを完成したのでありましょう。しかし、いよいよできてみたら、もはやこれで戦ったのでは共倒れであるというので、米ソの指導者は、今度は戦争を断念して、平和に踏み切ってきた。平和共存に踏み切ってきた。科学技術が核ミサイルという高い水準の兵器を作ったために、大国の指導者をして戦争から平和へ動かしていったということ、科学技術がここまで発展をしてくると、政治を動かす力になる、あるいは科学技術は、経済の分野では巨大な生産力となって現われてきておる。現在、設備投資の問題が非常にやかましく論議されておりますが、四兆億にも近い設備投資の中でも、筆頭は電力です。電力では高い熱効率の新鋭火力ができて、しかも、発電容量は三十五万キロワットをこえておる。新しい技術がこのような新しいエネルギー供給を作り出す。あるいは次の設備投資は鉄でありますが、どの鉄会社も純酸素吹工の転炉で、しかも、一基で五十万トンから七十万トンの生産をやろうとしておる。これは化学繊維についても、自動車工業についても、あるいは電子機器メーカーについても言えることでございます。非常に巨大なる生産力として立ち現われておる。従って、この巨大なる生産力を政治が何らかの形でコントロールしないならば、非常にドラスチックな影響をわれわれは受けざるを得ないというのが、現段階における科学技術の経済の上における一つの現象ではないかと思う。そういう意味で、科学技術は政治外、経済外の力として非常に大きな発展をしておる。これを、科学技術振興の政策というものがいかに調整をし、いかに規制するか、また、それを本来の目的にどう役立てていくかというところに、科学技術振興政策の基本的なスタートゥスがなければならないと思うのです。
 次には、基本法の問題も出ておりますが、私は、今申しましたように、日本における科学技術の政策というものは、まず平和に貢献するということを何よりもはっきりとうたい上げねばならないと存じますが、長官の御所信を伺いたい。
#65
○三木国務大臣 岡委員の言われるように、私は、やはり日本の政治が持っておる国民に対する第一番の責任は平和の維持だということであります。従って、一切の日本の施策は、平和の維持ということの限界において考えるベきである。戦争を再び考える、われわれはそう考えることすらも――日本は憲法の上でもそうでありますし、また、実際の国民感情からもそうでありますから、原子力の利用にしても、きわめて厳格な意味においてこれは平和利用というものに制約されなければならぬということは、お説の通りだと考えております。
#66
○岡委員 しかしながら、政府の施策の中には矛盾が見出されるものもあります。現に、今科学技術の重点目標として宇宙開発がございます。ところが、宇宙開発と切っても切れないミサイルの研究のためには、ここ四年ほどの間に防衛庁では三十五億をこえる予算を計上しておる。ところが、平和目的のための宇宙開発の予算は、おそらく三億五千万円程度の予算ではないかと思う。こういうところに、はたして日本の科学技術の振興というものが、平和の目的のためにほんとうに力こぶを入れておるのかどうかという点に、私どもは若干納得のいきがたい点を見出すのでございます。願わくは、長官とされましては、宇宙開発を掲げられる以上、やはり大規模な予算をもってぜひ宇宙開発を推進していただきたい。
 その次にお尋ねをいたしたいことは、科学技術外交ということでございます。これは、最近まで原子力外交という言葉が通念になっておったようであります。今日、他国との折衝においては、科学技術の協力というものが重大な課題になっておる。一体科学技術外交について、基本的に長官はどういう方針をとろうとされるのか、この点をお尋ねいたします。
#67
○三木国務大臣 今日の段階になって参りますと、科学技術はこれは世界のものである、国際的なものでありますから、お互いに科学技術の国際交流というものは積極的にやらなければいかぬ。その国としてはいろいろな専門もありますし、特徴もあって、科学技術の開発に対しては限界があるわけでありますから、国際的な交流を盛んにする、科学技術というものの国際的協力という面が非常に出てきたと思います。もう一つは、今後の世界政治の大きな課題は、結局後進国に対してどうするのか。今、ベルリン問題等に目を奪われておりますけれども、世界政治における問題点は後進国にある。こういう後進国の急速な経済発展をはかるためには、その夢を満たすものは科学技術である。そういう点で、後進国に対する経済協力の中核は、やはり技術的な援助である。そこで、今後後進国に対するいわゆる科学技術面からの先進国の援助、これは非常に重大な問題になってくる。全体的な国際協力と後進国に対する技術援助、こういうことを強力に推進していくために、日本のみならず、外交というものの新しい使命がある、私はかように考えておるわけでございます。
#68
○岡委員 今、長官の御所信は、私もその通りだと思います。ところが、政府の施策を見ておると、長官の御所信とは若干違う面がございます。もちろん、後進国援助についてはその通りでございますが、私どもは、やはり常日ごろ、科学技術というものはこれは人類の共有の財産だ、国境を越えておるものだ、であるから、日本の国際協力というものが、その国の政治体制のいかんを問わないで強力に率直に進んでいくべきだ、こういう主張をいたしておるわけであります。しかしながら、御存じのように、原子力の分野だけを見ましても、原子力における協定というものは、ほとんど自由主義陣営の国に限っておる。今ソビエトとの間に科学技術に関する協定ができかかっております。三年越しでございます。私は、こういうようなことではなく、あくまでも、科学技術は国境を越えた人類の共同の資産である、であるからして、よきものを摂取するという立場においては、相手国の政治体制ということは問わない、虚心たんかいにこの科学技術を摂取するというおおらかな建前をもって科学技術外交を推進すべきである、これが科学技術外交の大きな原則ではないかと思います。ぜひ長官もこの心組みで今後とも御努力をお願いいたしたいと思います。
 それから、この項目については、先ほど来中曽根委員あるいは西村委員も申されましたが、台風でございます。台風については、先般の第二室戸台風の場合でも、現地について聞きますと、たとえば奄美大島、名瀬、種子島、室戸岬、ここのレーダーは、風が激しいために、風の最中に回転が非常にゆるくなる、大阪のレーダーは、水が入ってモーターが故障を起こして、レーダーが回転しなくなったということを気象庁の人が申しておりました。こういうようなことで、科学的な防災対策というものがこの一事を見ても非常に力がございません。台風の観測のために重要な台風の目に突っ込んでいくのにも、飛行機で突っ込んでいっておるようでありますが、これも米軍機の協力に待っております。もっと広く言うならば、定点観測が現状のままでいいのか、もっと台風圏に岸を並べておるアジアの国々との間における情報交換等についても、はっきりした取りきめが必要じゃないか。小さいことで言えば、集中豪雨などは、特に特別なレーダーがなければならない。あるいは高層観測気球なり、あるいはまた、気球ゾンデなどというものがなければこの予報はできない。雨が降っても、現在のようにロボット雨量計があのようなことでは、なかなか洪水の予知については、警報を出すにも責任が持てないと申しております。こういうことは気象庁の仕事である。だから、台風についての防災科学をいかに科学技術庁が叫んでも、実施機関は気象庁になっているということからして、われわれとしては常に隔靴掻痒の感を持っておるわけであります。ここには、中小企業についても科学技術の技術水準の向上をはかるべきだとおっしゃる。さて、それでは、一体具体的に何を科学技術庁はやるかと申しますると、ここにも指摘されておるように、あるいは科学技術情報センター、あるいはまた、先般できました技術事業団、こういうようなことです。これではきわめて限られたものである。これでは中小企業の技術水準を高めることもできない。ところが一方、本年度においても、中小企業の近代化資金というものが四十五億出ております。これは通産省です。何にやるべきかということは、通産省がきめるというようなことで、科学技術庁はたかだか調整的な機関としての役割を果たし得るかもしれないが、実施的な権限というものが足らない。これは私ども非常に日ごろ物足りなく思っておるわけでございます。もちろん、科学技術庁の長官は国務大臣でございまするから、やはり閣議等においても厳重に力強く御発言を願って、でき得べくんば、こういう問題については、先ほど中曽根君も申されたように、実施本部のようなものでも作って、どんどん科学技術庁の意見というものを実施の面に実現させ得るような、そういう体制をぜひ作ってもらわぬと、いい意見がただ意見として葬られ、いい資料が学問的な統計として葬られるというようなことでは、この日本のほんとうの意味の科学技術振興というものは期待できない。こういう点について格段な御努力をお願いしたいと思うのでございまするが、重ねて長官の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
#69
○三木国務大臣 お話しの通り、実施官庁としての機能は少ないわけであります。これは将来行政機構の改革ということも取り上げなければならぬ問題の一つではありましょうが、現在のところでは、現在の行政機構のもとで最善を尽くさなければならないのでありますから、まあ国務大臣としての一つの役目もあるわけで、私どもの科学技術振興に対する考え方を、そういう国務大臣としての立場から強力に推進して参って、この行政機構上におけるいろいろな矛盾というものを埋めていきたいと考えておる次第であります。
#70
○岡委員 最後に、先ほどお述べになりました、日本独自の自主的な国産技術の確立ということでございます。これも御存じのように、貿易自由化が急がれておるというような事情からいたしまして、通産省ではいよいよ技術導入については寛大な方向にいこうとしておるようです。ところが、われわれの考え方からすれば、国際的な経済競争においては、やはり自分の国で作った自分の国の技術というものが最後の勝負のきめ手じゃないか。だから、国産技術を確立しなくては、ほんとうの意味で自由貿易には立ち向かえないのだという考え方です。そこに、いわば外資導入、技術導入についての政府の考え方が非常に不統一だと思うのです。こういうものをどう調整するのか。外資法あるいは外資審議会などもございます。科学技術庁の事務次官も御出席のようでございますが、どれだけのいわば規制力を科学技術庁として持っておるかということになりますと、これまでの実績から見ると、私は非常に疑問に思う。私は、やはり外国技術の導入については、外資法に特別措置の法律を新しく作るか、何かそういう立法措置でもやって、真に国産技術の確立という方向を法律で規定するというふうなところまで持っていかなくては、今の状態では、科学技術庁では国産技術の確立ということを言う、しかし、貿易自由化に備えてという民間会社の要請の間に間に、通産省では技術導入のワクを広げて、ますます自由にしておるというような矛盾した状態が出ておるじゃないか。私は、どういう点についても、これは今返事をいただくわけではございませんが、やはり長官として、巖としてとるべき態度、措置をぜひとっていただきたい。
 何はともあれ、長官が御就任になってから、私も科学技術庁の役所へ行きますると、役所の諸君の顔色を見ると非常に明るい。非常に笑顔も多いようであります。これは、やはりあなたに役所自体が協力をしようという意欲もあるようでございまするから、一つ科学技術庁一体となって、私どもの希望、私どもの要望を実際に施策の面に実現していただくことを心からお願いをいたしまして、私の質疑にかえます。
#71
○齋藤(憲)委員 議事進行。この長官の所信表明につきまして、私は委員会を開催するたびごとに全般にわたって御質問を申し上げて、日本の科学技術振興に対する基盤の確信を握りたい、そういう意欲に燃えている一人でございますが、第一に、「科学技術に関する基本理念を明らかにし」という言葉がありましても、一体その科学技術というものに対する基本理念は今までどこに出ているか。まあ科学技術庁設置法、これにも科学技術とはと書いてありますし、また、過日科学技術会議から答申せられました答申の中にも、科学技術というものの概念が書いてあります。それをそのまま受け取ってわれわれは論議を進めていいかどうかという点になりますと、ここに「基本理念を明らかにし」という言葉が明らかにあるから、まだこれから明らかにされるのだということも考えられるわけです。そういう点からいきますと、一々そういう論議を戦わしておりましたのでは、広範多岐にわたる科学技術全般にわたっての質疑応答は、朝から晩まで毎日委員会を開催されてもこれは時間的に足りない。そうなりますと重大な支障がくると思いますので、私が委員長を通じてお願いいたしたいのは、こういう広範多岐にわたる膨大な資料は、われわれ読む時間もないし、また、読んでもわからぬところがたくさんある。たとえて申しまするならば、今日の科学技術庁の行政機構は一体どうなっておるのか、局と課はどういうふうに分かれておるのか、これに配属する人間が何ぼずつあるか、どういうものをつかさどっておるのか、あるいは科学技術庁の現在指向しておるところの現実の問題は、各局、各課においてどういうところに重大指向性があるのか、そういう資料を一つ提出していただきたい。同時に、原子力研究所、原子燃料公社、放射線医学総合研究所、金材研、それから理化学研究所あるいは航空技術研究所、こういうものの機構は今どうなっているか、それから、どういう研究を重点的にやっているか、こういう資料を、なるべく簡明な文章でもって一つ提出していただきたい。その提出された資料に基づいて各担当責任者からこの委員会において説明をしていただいて、それに向かって質問をして参りたい。それが非常に時間的にも、われわれにとっても便利でありますから、委員長を通じて、一つそういう資料をなるべくたくさん出していただいて、そうして、結論として総合的な科学技術振興の基盤というものを一つつかんでいきたい、さように考えますから、どうか一つよろしくお取り計らい願います。
#72
○前田委員長 ただいまの齋藤委員の御要望は善処するようにいたしたいと思います。
 この際、御報告をいたしたいと思います。去る三日の理事会におきまして協議いたしました当委員会の今後の審査日程についてでございますが、委員会の定例日は毎週水曜日及び木曜日とし、一応両日とも午前十時より開会することといたしました。
 次の定例日に当たります十一日は、部屋の関係で午前、午後未定でございますけれども、十一日は科学技術基本法に関する問題について、十二日は原子力行政一般について、その次の週になります十八日は科学技術基本法に関する問題について、十九日には日本科学技術振興財団に関する問題及び研究者の処遇改善に関する問題について、それぞれ調査を進めて参りたいと存じます。委員各位の御了承をお願いいたしたいと思います。
     ――――◇―――――
#73
○前田委員長 次に、参考人の出頭要求の件についてお諮りいたします。
 科学技術振興対策に関する件、すなわち、科学技術基本法に関する問題、原子力行政一般に関する問題、日本科学技術振興財団に関する問題及び研究者の処遇改善問題に関し、それぞれ参考人より意見を聴取いたし、その調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#74
○前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 なお、参考人の人選、日時等については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#75
○前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。
 次会は、来たる十一日開会することとし、科学技術基本法に関する問題について調査を進めます。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後零時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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