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1961/10/18 第39回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
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1961/10/18 第39回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号

#1
第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第5号
昭和三十六年十月十八日(水曜日)
   午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 前田 正男君
   理事 赤澤 正道君 理事 西村 英一君
   理事 山口 好一君 理事 岡  良一君
   理事 原   茂君 理事 山口 鶴男君
      安倍晋太郎君    秋田 大助君
      稻葉  修君    佐々木義武君
      保科善四郎君    松本 一郎君
      石川 次夫君    西村 関一君
      松前 重義君    三木 喜夫君
      内海  清君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       山本 利壽君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局長)    杉本 正雄君
 委員外の出席者
        科学技術会議議
        員       内海 清温君
        科学技術会議議
        員       梶井  剛君
        科学技術事務次
        官       鈴江 康平君
        科学審議官   久田 太郎君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局計画課長) 高橋 正春君
        参  考  人
        (名古屋大学理
        学部教授)   坂田 昌一君
        参  考  人
        (名古屋工業大
        学名誉教授)  清水 勤二君
        参  考  人
        (旭化成工業株
        式会社常務取締
        役)      宗像 英二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 科学技術振興対策に関する件(科学技術基本法
 に関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○前田委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興に関する件について調査を進めます。
 本日は、科学技術基本法に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。
 本日御出席の参考人は、旭化成工業株式会社常務取締役宗像英二君、名古屋工業大学名誉教授清水勤二君及び名古屋大学理学部教授坂田昌一君、以上三名の方々であります。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の調査のためにわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
 本委員会といたしましては、過般来、科学技術を画期的に振興するためには統一的な指針が必要であり、科学技術に関する基本理念を明らかにと、総合的態勢を整備することを目途として、科学技術に関する基本法について、きわめて重大な関心を持って調査を続けて参っておる次第であります。
 本日ここに御出席の参考人各位は、科学技術振興については、産業界、学界においてきわめて熱心な関心をお持ちの方々でございますので、本日はそれぞれのお立場より、科学技術基本法に関する問題につきまして、忌憚のない御意見を承りたいと存じます。なお、参考人の御意見の開陳は、お一人約十五分程度にお願いとまして、そのあと、委員各位の質疑にお答えをお願いいたしたいと存じます。
 それでは宗像参考人よりお願いいたします。
#3
○宗像参考人 私、工場に長いことおりまして、その経験から科学技術の振興といこことを痛切に感じておるものでございます。どこも最近の導入技術が、国内で乱立、競合しまして、おそらくみんな共倒れになり、大きなきずがついて、そしてあるところで調整されて生き残るという格好になるのじゃないか。非常に残念なのですが、そのよって来たるもとを考えますと、実は私、八月の「化学と工業」という日本化学界の雑誌にちょっと短いものを書いてくれといわれるので書きましたが、昨年特許庁の外郭団体で発行しました日本発明家伝というものを見ますと、その中に二百七十人の人が載っておりまして、私はその最終学歴を調べますと、大学卒業の人が三〇%とかその中に入っていない。小学校を卒業している人が三〇%入っておる。それを書きましたものを持って参りましたが、十枚とか持って参りませんものですから、あとで……。そういうことで、大学を出た人がもっと発明に貢献していいはずじゃないかしらと思うのに、日本の現状では、小学校を出た人あるいは小学校中退という人と、ほとんど数の上では同じような貢献とかしていない。それを見ますと、大学を出た人といいますか、科学技術の社会教育というものの面で、何かやり方を考えなければならないというふうに私は痛感いたします。
 ちょうどそれより少し前に、ドイツで一八七六年――ちょうど八十五年くらい前ですが、そのころにジーメンスを作ったヴェルナー・ジーメンスがビスマルクにあてた、ドイツの化学工業技術をもっと高くしようじゃないかといった手紙をある方が訳されたのを見まして、今から八十五年前のドイツの状況が、導入技術、低賃金ということで、非常に日本の現状によく似たような状況だということを知りまして、その後の施策はいろいろあったと思いますが、そういうものをよくやったために今のような科学技術の水準の高いドイツができたということを考えますと、何か一つ、ここで日本の科学技術の水準を高くするようにしなければならないと私は思います。
 結局は、科学技術に次の代の人たちが関心を持つ、今の人たちが何かこまいことをしようというのでは、ほんの短い、いいかげんな施策しかできませんが、次の代の人が科学技術に興味を持つというようなものを作らなければならないのじゃないか、こう思っております。
 どの程度日本の科学技術の水準を高くしようかということについては、それは高いに越したことはないのですが、少なくとも世界じゅうの科学技術者の数のうち日本が占める割合、たとえばそれが一〇%であるならば、世界じゅうにある科学技術の新しい貢献、たとえば発明とか発見とか改良とかいうようなものが、やはり一〇%は少なくともあってほしい。ところが、現状では、おそらく人数は一〇%でしょうけれども、そういう貢献はとても一〇%いっていないという状況ですから、少なくともそこまでは上げなければいけない。それ以上になれば、それはすぐれた国になりますが、そこまでいかなければ、まことに残念だというふうに思うのです。
 世界じゅうを通じて、互いに尊敬し合えるものというのは、おそらく自然科学を含めて、やはり個人の頭脳の創造物がお互いに尊重と、尊敬し合うものに違いないと思います。そのうちで産業一般、人間の生活に直接関係を持っている産業に関係するものは科学技術でありまして、科学技術に関する頭脳の創造物というものを日本にたくさん作れば、やはり日本が外国からも尊敬されるということになるのじゃないかと思いますから、どうしても日本国民が科学技術を盛んにして、そして、ほかの国々から平和のうちに尊敬されるという状況にしたいということを願うのであります。それからまた、物の輸出というものは、おそらくある短い期間で行き詰まってしまうけれども、知恵の輸出というものは、知恵が少し進んでいればいつまでも続くのじゃないかということを考えますので、科学技術の振興を、その意味でも強調したいと思うのです。
 私は、科学技術の振興にあたって、科学技術基本法のようなものをお作りになって、何か、国の人たちに、こういう考えでいったらいいのだということを示される、その中にぜひ入れていただきたいと思うことがあるのです。
 その一は、発明、発見のような創意の成果は、少数支持の環境から芽ばえますから、少数意見の尊重、重視をぜひ強く言ってほしい。
 それから創造的な基礎研究は、自由な個人の手にまかせなければならない。しかし、開発研究、工業化等は、組織と集団の力が必要である。それから基礎研究というのは、オリジナルな研究でなければ、基礎研究ではないという思想。
 それから研究機関には、必ずインフォーマルな余裕を、組織にしろ、予算にしろ持たせて、ルートに乗っていない動き方を窮屈に縛らないようにしてほしい。また、創意は、私調べましたところ、三十五才以前のときに最も芽か出やすいという結果が科学の研究の場合にありますので、――これは広くサイエンスの研究の成果を調べたなにかあるのですが、そういう若い人が作り出した芽を踏みつぶさないように、ことに年配の上級者に警告をする、こういうことも一つ入れていただきたい。
 それからアイデアの尊重を強調して、これを保護するように努める。その具体的なやり方として、たとえば日本でも特許法をもっと改めて、物質特許を認めるとかいうようなことをする。ことに技術が、先進国よりも日本は今おくれていると見られますから、保護の程度を厚くして、進めることをしなければならないというふうに考えます。
 それから自由競争というのは、新分野開拓の場合にだけ許されるものであって、既開発の分野には、適当な統制をすることもしようがないという思想。こういうものを、ぜひ科学技術基本法の中には織り込んでいただきたいというふうに考えます。
 私は、イマジネーションということをもじって、イマジニアリングという言葉を作ったことがありますが、イマジニアリングの続けて生まれるようなものが、ここにおられる坂田先生が貢献なさった新学説などでして、確かに、夢を見てイマジニアリングを進められて得られた大成果に違いないと思います。私どものような、工場におりました者は小改良しかできない。これはバウンダリー、境界、領域のところを探して、そうして人がまだ手をつけてないところを探して若干の貢献をしたという程度なんでありますけれども、しかし、結局はその現象をよく見たり、実験をし、故障をよく見て努力をして真理に近づくということをすれば、必ず新しい道が開けるというふうに私は思います。道はあらかじめあるものでなくて、歩いたあとにあるものです。ですから、必ず歩くことをまずしなければいけない。それには科学技術基本法の中にフロンティア精神とか、あるいは敢行精神、それから独立心というようなことを強調して、科学技術の振興を促進したいというふうに考えております。
 以上であります。
#4
○前田委員長 次に、清水参考人にお願いいたします。
#5
○清水参考人 私は清水であります。昨年十月五日に答申されました「十年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策」、この答申の作案に参加いたしまして、第五分科会の主査をやりました。これは制度に関するものでございます。その答申の壁頭に、科学技術基本法を制定すべきであるということで、十五項目の参酌すべき事項を付しまして答申を出したのでございます。
 私が、科学技術基本法がぜひ必要であると考えました最も大きな理由は、ただいま宗像さんもお話しになりました、日本の科学技術、特に産業の技術が、模倣の域を脱して創造日本を建設する、こういうことに根本があるのでございます。内閣の統計によりましても、わが国の導入技術は、昭和三十三年の八十億円から、三十四年には一躍百五十億円、三十五年にはさらに二百何十億円という大きな額になった。これに対してわが国の輸出技術は、三十三年まで一、二億の線で、ようやく三十五年になって七億円、導入の二百億円に対して七億円という悲しい現状でございます。しかも、最近、特に設備の近代化あるいは所得倍増に対する設備の増強というようなことに対して、今宗像さんのお話のように、争って外国の技術を導入しようという実情にあるのでございますが、このような導入された技術は、三年、五年、あるいは最近ではもっと早く古い技術になってしまいます。そうすると、外国で創造された新しい技術を絶えず永久に輸入しなければならない。そうして、ミコヤンが来たときにもちょっと皮肉を言ったのであります。日本と商取引をするのはいいが、外国とのライセンスを考えなければならないということは一つの困難であるということを申したようでございますが、日本人の頭脳から創造された独自の技術というものが、一日も早く確立されなければならない。日本としては、基礎のしっかりした科学の上に根ざして、それがすみやかに産業の技術に移行して、そこに盛んなる技術の創造が行なわれる、そうして、産業経済を発展せしめるところの高度の工業国家に一日も早く成長させなければならないと私は確信いたすものでございます。
 このような高度の工業国家を作りますためには、ただいま宗像さんの発明についてのお話がございましたが、今後の大きな、あるいは画期的な発明というものは、どうしても基礎科学に基づくものでなければならない。最近の新しい世界の大きな発明を見ましても、ほとんど基礎科学あるいは固体論、量子力学を応用したようなものから出発したものが、相当に多いように考えられるのであります。このような意味から、科学技術は総合的に行なわれなければならない。そうして創造日本を打ち立てるために、日本として、国の力で何とか、日本全体の研究費は非常に少ない、研究の規模は小さいので、ぜひ科学技術の研究施設を充実し、りっぱな科学技術者を養成して、この念願を果たしたいと考えるのであります。
 このためには、小学校から大学に至るまでのすべての教育について考えなければならない。また、国民全体が、科学技術というものがほんとうに国の力で、もはや軍隊の力をもって国の力を争ったり、あるいはこれをはかったりする時代ではなく、科学技術が真に国の力をはかる、あるいは国の力を示すものであると私は信じて疑いません。従って、ここに科学技術基本法というようなものを作って、科学技術というものは何であるか、そして国として科学技術というものを盛んにするのだ、これによって模倣日本から創造日本に立ち直るのだという、しっかりした国としての政策、政府としてのはっきりした宣言をここにいたすことが、私は必要であると考えるものであります。教育に、研究に、行政機関がそれぞれセクショナリズムに立てこもって、総合的な行政が行なわれないというようなことでは、ほんとうのしっかりした科学技術行政は行なわれないと考えます。従って、この国家の大きな方針のために、各行政庁が十力協力し得るように、総合した方針をもって長期的な基本方針のもとに堂々と進み得るように、この科学技術基本法を作りたいと思うのでございます。
 私はただいまも、科学技術会議の科学技術基本法分科会の専門委員の一人として参加しておりますが、最初に問題になりましたのは、科学技術という以上は、人文、社会科学を入れなければならないという考えでございました。しかし、私は、科学技術というのは自然科学とこれを応用した技術、これを科学技術と称するのが社会の通念であり、常識である。科学技術の中に人文、社会科学を入れるということは、かえって混乱を来たすものである。従って、科学技術とは、自然科学及びこれを応用した技術、そしてその科学技術が、国にとって実に重大なものだということをはっきりと言わなければならない。しかしながら、社会の調和ある発達のためには、また、科学技術は人文、社会、あらゆる面に大きな影響を与えるものであり、現に世界でも、この科学技術というものが、いかに政治的にも、外交の問題でも大きな関心が持たれておるかということは、御存じの通りであります。従って、科学技術の進歩、発展とともに、人文、社会科学も、これを調和して発展せしめなければならないと私は考えるものであります。
 詳細の点は、いろいろ考えておるところがございますが、また御質疑に応じてお答えするといたしまして、私の考えの重要なポイントだけを申し上げた次第でございます。
#6
○前田委員長 次に、坂田参考人にお願いします。
#7
○坂田参考人 私、名古屋大学の坂田であります。私は基礎科学をやっております立場から、科学技術振興という問題につきまして、少し私の意見を申し上げたいと思っております。
 最近、科学時代とかいわれておりまして、あらゆる国で科学技術の振興ということが盛んに要望されておるわけでございます。今日、わが国におきまして、この科学技術基本法というようなものが作られるような動きがございますのも、この科学時代にふさわしいような、そういう新しい科学技術のあり方というものを示して、科学技術の画期的な発展をはかろう、そういうところに意図があるのだろうと思うのであります。従いまして、私どもは、まず、そもそも今日科学時代といわれておりますような時代というものがどういう時代であるか、そしてまた、この時代において、科学というものをわれわれはどういうふうにとらえなければならないか、そういうことを明らかにしておくことが必要なのではないかと思うのであります。
 ところで、現在の技術革新の特徴と申しますものは、たとえば原子力などに最も著しく現われておりますように、従来はほとんど役に立たない学問と考えられておりました基礎科学――基礎科学というのは最近の言葉でございまして、戦前はむしろ純粋科学というふうに呼ばれておったわけであります。この純粋科学の発展が、非常に短い時間の間に、全く予想できないようなそういう新しい技術を生み出してきた、そういう点が現在の技術革新の一つの大きな特徴だろうと思います。
 それから第二番目には、こういう大きな発展が、単なる新しい技術の発展ということだけにとどまりませんで、これが思想とか文化とか、あるいは経済とか政治とか、人間活動のすべての領域に非常に大きな影響を及ぼさずにはおかない、そういう点でございまして、言葉をかえて申しまするならば、非常に口幅ったい申し方かもしれませんけれども、この科学というものが今日世界を変えつつあるのだ、そういうふうにも言えるのじゃないかと思うのであります。ことにこの科学技術が悪用されました場合には、原子力等の場合のように、全人類が破滅するような、そういう危機をすら招く、そういう点を私どもは非常に憂えているわけでございます。この純粋科学というもの、あるいは基礎科学というものの上に応用科学が発展するということ、それからまた、科学というものはもろ刃のやいばと申しますか、そういうものであるという点、それはこの科学というものが本来持っている性格なんでありますけれども、今世紀に入りましてから科学の発展というものが非常に急速になりましたために、そういう性格というものが、特に著しく、大きく浮き彫りにされてきたというふうにも言えるだろうと思います。ともかく、今日、私どもがわが国の科学技術のあり方というものを議論するにあたりまして、この二つの点を十分基礎に置いて考えるということが重要であろう、そういうふうに考えるわけであります。
 こういうふうな観点に立ちましたときに、まず第一に言えますことは、先ほどからお二人の方々が仰せられましたように、この基礎科学の重視ということが、新しい科学のあり方というものの中で、どうしても行なわなければならないことであろうと思います。この点は、実際今日、東西のあらゆる国におきまして、そういうようなやり方というものがやられておるわけでございますし、先ほど清水先生がお触れになりました科学技術会議の答申等においても、従来、基礎科学の研究というものがぜいたく視され、あるいは閑却されるような傾向にあった、そういう状態というものは非常に憂うべき状態であって、まず、これを徹底的に是正するということが第一の重要な観点だろう、そういうふうに指摘しておられますが、それは非常に正しい態度であろうと思うのであります。ただ、日本で、基礎科学と申しますと、まだ一般的には何か既成の、すでにでき上がってしまった技術の基礎研究をする学問であるというふうに受け取っておるような人が多いわけでございまして、これは先ほど宗像さんがお触れになりましたように、明治以来の科学技術政策というものが、外国からの導入による技術偏重の開発方式というものを柱にしてきたためかと思いますが、今日では、たとい外国からの技術を受け入れるというような場合におきましても、基礎科学というものが日本でしっかりしていないと、結局形だけをまねてしまって、これをほんとうに使うことができないと思います。それからまた、科学技術という言葉は、先ほど、人文科学を含んでいないということが日本では通念になっているというような清水先生のお話もございましたが、日本では、とかく科学技術と申しますときに、科学という方はお留守になっておりまして、基礎科学というものが、やはり軽視されるような傾向が通念では強い。従って、基礎科学重視の政策というものを実行するためには、科学と技術というものを、何か一応分離した形で、一応分離いたしました上でこれを結びつける。科学というものは科学のための科学であってはなりませんし、技術というものは科学の上に花咲くものでなければいけないわけでありますけれども、しかし、これをほんとうの意味で結びつけるためには、そして正しく発展させるためには、一応二つのものに相対的な独立性を与えた上でこれを正しく結びつける、そういう方式をとらなければ正しい振興というものはできないのではないか、というふうに考えられます。これはそもそも科学と技術というものの性格の違いからきているわけでございまして、基礎科学あるいは純粋科学というのは、これは自然自体の構造を明らかにする、こういうことを目標として進むのでございますので、その中にあまり実用主義的な見地というものが入って参りますと、正しい発展が阻害されてしまう。基礎科学というものをほんとうに振興させるためには、学問自身の内面的な要求と申しますか、自立的に発展の論理というものを持っておりますから、それに合うような性格というものがとられなければならない。これに対しまして、技術の方は、国民の幸福でございますとか、あるいは産業の発展といったような、外部的な要求にこたえるということが本来の役目でございますので、もちろん、内面的な要求というものもございますけれども、これと同じ程度の比重で、外部的な要望というものを考えに置くことが必要になってくるわけであります。従いまして、体制について申しますならば、基礎科学の体制というものと、それから科学技術の体制というものを一応切り離して、お互いに相対的な独立性を与えた上で結びつける、そういう体制が最も望ましい体制であろうと思われる。
 それから基本法の問題にいたしましても、科学技術基本法というものの中でそういう点を明確にして下さるのもよろしいかと思いますけれども、しかし、科学技術ということに対しましては、現在すでに日本である種の社会通念ができておりますので、むしろ科学技術基本法というものとは独立に、科学研究基本法といったようなものをこれと並行して作る、あるいはこれに先行して作る、そういうことをやらないと、基礎科学というものがほんとうに振興されないのではないかというふうに思うわけであります。こういう点は、私どもの属しております日本学術会議等においても現われております意見でございますが、私もそういうふうに考えるわけでございます。
 それから、今申しました基礎科学の万をどういう理念で振興させていくべきか、そういうことを科学研究基本法という方にはおもに考えなければならないと思うのでございますが、この点については学術会議で考えたことがございますので、もし時間がございましたら、あとでちょっと申し上げます。
 それから次に、第二に重要な観点といたしましては、科学技術と同時に、人文、社会科学の振興ということをやはり別個に考えることが必要である。科学技術がどういうふうに人類の幸福に役立つか、そういう問題は、もちろん私ども自然科学者にも責任があるわけでございますけれども、本来、社会科学者の任務となっておるわけであります。また、人類の物質的な福祉がどのように栄えましても、結局、精神的なものがこれに伴わない限り無意味になるだろうと思います。この点は、純粋科学というものは、一面では基礎科学という面も持っておりますけれども、やはり人文科学などと同じように、それ自身として、人類の精神文化として重要な意味を持つ、そういう意味もあるかと思うのです。従って、今の科学研究基本法という方には、基礎科学と人文、社会科学とを一緒に考えていただくのがよろしいのではないかというふうに思います。
 それから第三番目に重要な観点――観点と申しますよりも、むしろこちらにお集まりの政治家の皆様方に対するお願いというようなことになるかもしれませんけれども、最近、先ほど申し上げましたように、科学の発展というものが、政治、経済、思想、文化その他すべてのものに対して古い考え方から脱皮せねばならないような、そういういろいろな影響を与えておるわけでございますから、私たち科学者の声をなるべく聞いていただきたい。きょう私がこちらにお呼びいただきましたのも、そういう点から非常にありがたいのでございますが、日本には、幸いに日本学術会議というものができておりまして、こちらに日本の科学者の意見というものが集められております。日本学術会議の意見というものに対してなるべく耳を傾けるような、そういう態度をとっていただきたい。ことに、基本法等におきましても、そういう点を明確にしていただきたいと思うのでございます。この点は日本の国内のことだけではございませんで、国際的にもこういう点は非常に重要な問題だと思うのでございます。これは原子物理学者等の間の動きでございますけれども、アインシュタイン等の要望に始まりまして、全世界の科学者が、最近パグウォッシュ会議という国際会議をずっと続けて開いておりまして、そこで科学時代において人類が生きていくのにはどうすればいいかということをいろいろ考えておりまして、これについて各国の首脳者等にいろいろ意見を申し述べております。これは核実験等の問題もこれに含まれておりますが、もう少し広い観点からいろいろな問題が議論されております。この議論の結果というものは、数年前にウイーンで開かれましたときに、ウイーン宣言というふうな形で述べられておりますが、このウイーン宣言の中に加わりました原子科学者は、アメリカあるいはソビエトの政治にかなり大きな影響を与え得るような科学者がたくさん含まれておりますので、最近ケネディとかあるいはフルシチョフの動きの中にも、このウイーン宣言の要望というものがかなり強く出てきておるように思うのであります。どうか日本におきましても、そういう日本学術会議等を通して科学者の声を十分聞いていただきたい、そういうことを第三点として申し上げたいと思うのでございます。
 それで、まとめますと、科学技術基本法というものと並んで科学研究基本法といったようなものをお作りいただいたらいいのじゃないか。それからその際に、科学技術基本法にしても、あるいは科学研究基本法にしても、学術会議の意見というものを十分尊重していただく。この学術会議の意見といたしましては、特に科学研究基本法に関係ある問題といたしましては、この春の総会におきまして基礎科学振興のための五つの要綱というものをまとめまして、これを内外に声明しております。この声明を今申し上げる時間がなくなってしまいましたか、これは声明でございますので、政府にも伝わっておらない点もあるかと思いますが、この委員会の皆様方には適当な機会にお配りするようにいたしたいと思います。私ちょうどおとといまで、金沢で学会がございましてそっちに行っておりまして、学術会議に連絡することができませんでしたので、それをお配りすることができませんが、基礎科学の振興のための五要綱というものがまとめられております。この内容を盛り込んでいただけたらと思います。それからもう一つは、これは政府に勧告として出ておるわけでございますが、人文、社会科学振興についての勧告というものがあります。この点も、もし科学研究基本法というようなものを同時にお作りいただいて、そこには人文、社会科学も入れてやっていただけるとしましたならば、この勧告の線というものをその中に入れていただけたらと思うのであります。
 基礎科学の原則についてもしゃべっておる時間がなくなったわけでありますが、前に原子力基本法ができますときに、たとえば三原則といったようなものがその背景になっておるわけでございますが、大体原子力三原則の線というものを、もう少し一般化したようなものでございます。いずれ詳しいことは、時間もなくなりましたから申し上げる時間もありませんが、この声明を皆様方のお手元にお届けしたいと思います。
#8
○前田委員長 以上で御意見を伺うことは終わりました。
    ―――――――――――――
#9
○前田委員長 次に、質疑の通告がありますので、順次これを許します。三木喜夫君。
#10
○三木(喜)委員 今三人の先生方から有益なお話をお聞きいたしたわけでありますが、私たち科学技術振興に関する基本法を制定するにあたりまして、どうしても心配なことは、やはり二つの要素があると思うのであります。それはすでにお三人のお話の中でも触れておられましたので、私はもう少し突っ込んで、その点についての先生方の御意見をお伺いしたいということが一つ。それからもう一つは、これと関連いたしまして、私も最近まで初等、中等教育に従事しておりましたので、教育の面と結合さして科学技術振興ということを考えてみたい、こう思うのであります。両者とも十分言い古されておることでありますけれども、あらためてここに提起して、先生方の御意見をお聞きしたいと思うわけであります。
 先般まで私は文教委員会に所属しておりましたが、文教委員会で非常に論議された問題は、一つは、科学技術の振興を非常に求めるために、いわゆる企業界、産業界の要請が急なために、ややもすれば人文科学といいますか、そうした方面、人間的な教養を主とするところのものを軽率に取り扱う傾向がある。特に例の高等工業専門学校、高専法を審議しましたときに、この点が非常に問題になりました。インスタントに技術者を作るということは非常に危険である。人間的な教養を十分に積んだ上において、それを基礎にした上での科学技術ということが大事ではないかと盛んに言ったわけであります。今の政治の動向というものが、所得倍増計画と高度経済成長ということを念願するために、産業界の要請が非常にきついというところから、そうした傾向に政治的な動きがあるというようなことについて考えてみなければならないと思うが、この点どういうようにお考えになるかということをお尋ねしたいと思うわけであります。先ほどの清水先生のお話の中で、小学校から大学に至るまで、教育を考え、国の力を示すべきである。軍隊の力でこういうものが推進されるということは非常に邪道であって、これは困るというようなお話がありました。私は、今申し上げましたように、産業界の要請によって技術の端に走るというような考え方が出ておるということを、このお話とあわせて非常に心配するわけでございます。
 それからもう一つは、教育と研究と行政関係というものが、お互いのセクショナリズムに閉じこもることなく、科学行政をうまくやっていくというような立場をとらなければならないということをおっしゃっておりましたが、私ども全くその通りだと思うのであります。そこで、私は、軍事科学というような方面に要請されてくる部面が、今後日本の一つの矛盾の中に出てくると思うのであります。核実験禁止ということを一方で言いながら、核兵器を持ち込もうとするような考え方、こうした大きな世界の流れの中に日本の国があるということが、ひいては科学技術の研究の向かう方向というものが、しどろもどろになるのではないか、こういうような考えを持つわけでございます。この点、はっきりとした対処すべき方策をとるべきだと思います。この点が第二点でありますが、この点についても御意見をお聞かせ願いたいと思います。
 第三には、先ほど申しました教育の問題でありますけれども、教育の方面で私が一番心配しておることは、科学技術をこれだけやかましくいわれておるにもかかわりませず、小学校から中学校、高等学校の教育の動向というものが、今までの実用主義といいますか、物に即して教育をするというような考え方から、ペーパー・テストとか知育偏重の教育、詰め込み教育、暗記教育というような方向に、好むと好まざるとにかかわらず、大きな流れとして動いておる。これは非常に、私は心配すべき教育の動向ではないかと思う。その点につきましても、あとからまた私の意見なり質問を申し上げたいと思うのですが、主としてこの点によくお触れになっておりました清水先生の方から最初御意見をお聞かせ願い、他の先生方もこれにつきまして御意見がおありでしたら、お教えいただきたいと思います。
#11
○清水参考人 ただいま三つの点についてお尋ねを受けましたが、第一の教育において科学技術教育を重視するのあまり、人間的な、あるいは人文社会的な方面が軽くなるのじゃないかというお考えのようでございます。私は長い間教育に携わって参りましたけれども、たとえば、このたび新たに制定されました工業高等専門学校の問題にいたしましても、人間的基盤を作る、あるいは人文社会の教養を十分にするということを忘れたならば、必ず失敗するであろうと考えます。科学技術というものも、しっかりした人間的基盤に立ってこれを使って、初めてその効果を現わすものである、人間というものを離れて科学技術というものはあり得ない、従って、すべての教育について私はそう思いますけれども、人間的基盤をしっかり作る、その方法は別といたしまして、これはもう根本の問題であると考えております。また、科学技術の教育の中にも、その人間的教育というものを織り込むということは、考えなければならない問題であると思うのであります。
 それから第二の、科学技術を平和に利用するといいながら、世界の情勢に押されて軍事科学というような方面に進む危険はないか。これは相当に政治的な問題であり、むずかしい問題でございますけれども、私は科学技術基本法は、あくまで人類の平和とそれから平和におけるわが国の繁栄、幸福、福祉を願って、それをしっかりうたわなければならない基本的問題であると考えております。
 それから、ただいまの教育について御心配があったようでありますが、戦後受け入れましたアメリカの教育が主流となっておりますけれども、その後いろいろ考慮されまして、現在の教育の方針は、科学技術に関してはそう間違っていないんじゃないか。ただ、扱う先生がこれを十分に扱いかねておる。これは私直接携わっておりますが、理科の先生などは、絶えず接触してやっておりますのでわかりますけれども、先生の教育、あるいは戦前の師範学校、戦後の学芸大学あるいは学芸学部等における教育にしましても、科学技術については非常に不徹底なところがあるように考えます。従って、教師の問題と教師の養成の問題ということは、非常に大きな問題であろうと考えております。
#12
○三木(喜)委員 今教育の問題についてお話がありまして、全く私もその通りだと思うわけです。ただ、小学校の場合におきまして、理科教育振興法、この振興法にのっとりまして各学校に理科備品を整備して、それは国から補助金を出して充実をしていく。しかしながら、この取り扱いにつきまして、私の知っておる範囲では、非常に管理がきびしいために、それを使用せずして、そうして保存して置いておくことが主体になってしまって、使うことを考えない。理科教育振興法によるところの理科備品、国の補助対象になったもののいろいろな会計上の監査というようなものが非常にきびし過ぎて、そのような傾向になっておる。私は問題だと思うのです。このような初等教育における理科振興というものが、こんな形の上の傾向を持っているということは非常に心配だと思う。
 それが一つと、先がたおっしゃいました中で、このことも取り扱う教育者の取り扱い方によるというようなお考えもあったわけなんですが、ペーパー・テストとか知育偏重とかいうような問題です。私も教員の採用試験をやってみて、そして教育大学を出てくるところの生徒が、電気の実験で電池をつないで電灯をともす、これが実際にできない。理屈ではそれがわかっておって、できない者がたくさんあった。こうした教師が、科学技術を振興するというような考え方から、初等教育に従事しても問題だと思う。理屈だけ教えてしまって、実際とはそぐわない。この中には科学技術振興の芽はないと思うのです。それがどこからきておるかというと、やはり高等学校の試験、ひいては大学の試験等にペーパー・テストが多い、知育偏重が多いというところからきているのじゃないか。教師の態度いかんということも問題でしょうけれども、そうしたところから、そういう大学の試験を受けて入った教育大学の生徒が教育者になる場合には問題だと思うのですが、その点どういうふうにお考えですか。
#13
○清水参考人 お話しの実情は、相当あるんじゃないかと考えますが、それがペーパー・テストの結果であるかどうか、あるいは入学してからの教員の養成において不十分なところ、あるいは科学技術方面を軽視しておる点があるというようなことに原因するかということは問題でございますが、一つは、必ずしも科学技術をよく知らぬでも、先生は勤まるというような安易な考えが相当にありはしないか。ことに小学校の先生の場合においては、すべての教科に携わりますために、そして何か自分の得意を持つというようなことがありますために、あることに熱中して、他はあまり考えないというような傾向の先生も相当にいられるように感ぜられますが、そこにおいて科学技術基本法というようなものでも出て、すべての人が、科学技術というものは、国民のものとして大いにやらなければならないものだというはっきりした自覚を持って立てば、だいぶ違うのではないかという考えも持っております。
#14
○前田委員長 次に、岡良一君。
#15
○岡委員 科学技術会議の議員の方がお見えでございますので、お尋ねをしておきます。
 基本法も、この通常国会あたりには、いよいよ国会で正式に論議をされようという事情になりつつあるようでございますが、この基本法は、国会に出る手続として、どういう姿が一番妥当であると思われますか。
#16
○梶井説明員 今、基本法も通常国会くらいには出せるつもりでやっておるだろうというお話でありますが、そのつもりでやっております。やっておりますけれども、非常にこの法案がむずかしい法案であり、また、重要なものでありますから、十分に審議していきたいという考えでありますので、案外時日を要するんじゃないかという心配を持っております。そうしますと、あるいは通常国会に間に合わないようなことになりはせぬかという心配があります。
#17
○岡委員 科学技術会議は、諮問を得て答申をするということでございますが、そうすると、内閣総理大臣が基本法のかなり精緻な要綱について提出を求めるというか、諮問をする、そして会議の方では、ワーキング・グループを作ってその作業をなさる、これを答申として政府に出される、そういうことになるわけですか。
#18
○梶井説明員 基本法は、第一号答申の中にすでに関連して出ております。そしてその基本法につきましては、政府においてもぜひ検討して、成案を得ていただきたいということを言ってあります。しかし、審議会の方から申しますと、そういうことを答申しておるのですから、審議会にももちろん責任がありますので、審議会といたしまして原案を作るべく、現在努力して参っておるわけであります。原案ができましたら、もちろん議員でありますところの四大臣並びに総理大臣も入られますから、本会議において審議されることでありますから、十分政府としても審議されるわけであります。
#19
○岡委員 基本法を作るべきだという御趣旨は、先般の答申の末尾にもありました。そしてその骨子が十五、六カ条ありました。しかし、それは文字通りの骨子でございまして、あれをやはり政策的に血を通わせ、肉をつけなければならぬ。こういう作業を、答申を受けたのだから、ほんとうは政府がやるべきである。そして政府が提出をする。あるいはまた、与党なり野党の側においてもこの基本法の必要を痛感する、そこで議員が提出をする。原子力基本法はそういう形をとったわけです。こういう幾つかの手続があるわけですが、どういう方法、手続を踏むのが一番妥当と思っておられるか、この点をお聞きしておるわけです。
#20
○梶井説明員 もちろん、答申の際にも、政府において御研究願いたいということを申しました。しかし、政府と申しましても、その原案を作るところは結局科学技術庁でありまして、科学技術庁が科学技術会議の事務をとっていただいておりますから、究極は科学技術庁と両方が協力して一つの案を作るという結果になると思っております。それをどういう形において作るかということについてずいぶん論議をしましたが、最近において、科学技術の憲章になるような基本法をまず作ろう、その後に、さらに科学技術の振興になるような付属法律を作ろうというような段取りで今日まで参っております。
#21
○岡委員 宗像さんにお尋ねしますが、実は科学技術の振興ということで、みな一生懸命になっております。しかし、最近のいわゆる技術革新という時代になりますと、科学技術の振興が日本の産業構造の中に大きなひずみを起こす、言ってみれば、中小企業あるいは零細企業と大企業との間における技術水準の落差というものがますます顕著になる。私どもは、この基本法というものを考えてみる場合に、こういう落差というものをどう解消するかということが、一つの大きな課題になってくるわけです。たまたま、宗像さんは産業人としても特に研究に大きな関心を持っておられますから、科学技術のもののあり方から見て、こういう現実の事態をどうすべきか、何か具体的に御所見がありましたら、お話しいただきたいと思います。
#22
○宗像参考人 私は、こう考えております。よく大企業々々々といわれます。しかし、大企業の中にも新しくできてくるもの、その中には、ずいぶん小さいときから育ててきたものもあります。その小さいときから育ててくるものは、私も経験がございますが、必ずしも初めからそう大きなしかけでなくても、たまたま大企業のところにあって、そこで育ったものであります。従って、それと同じようなことを、もしも熱心な個人の方が、いわゆる小企業といわれる中でおやりになれば、やはり育つわけです。現に、小さい個人の力でできて、大きなものになったのが、御承知だと思いますが、たくさんあります。ですから、科学技術振興という公式的な言い方をしないでも、ある方が創意に目ざめて、熱心に道を追及されたならば、その人は、初めは小企業でしょうが、大企業になるという例も、日本の有数な大企業の中にあります。こういう世の中になると、大企業でなければおられないとよくいわれますが、絶対にそうではありません。現実に例がたくさんあります。それは結局、努力するかどうかです。科学技術というものは、よく本に書いてあり、あるいはかなり程度の高いもののようにお考えの方がありますが、おそらく何かなさった方は、観察に、あるいは実験に、必ず人一倍の努力をしておられます。努力をするからこそ、そこに何か出て参りまして、それを見ておれば、自然に育つ道がわかるわけであります。それを育てていけば、中小企業の人でもその道はあります。ただ、それは、えてして少数例であります。少数例でありますと、つい多数のものでないとなかなかそれを多くの人たちが支持しませんから、少数例は例外だというふうに言われるのは、私もそこのところをどういうふうに説明していいのかわかりませんけれども、しかし、小企業に希望はないということは、私は絶対ないと思います。それだけは、非常に観念的な申し方をいたしましたけれども、実例もあることでございますから、ぜひそういうふうなお考えで、中小企業の方が特徴あるものをお作りになるということさえなされば、やがては大企業に通じるのじゃないか。要は、中小企業の方でも特徴あるものを作れるかどうということになるのじゃないかと私は思っております。
#23
○前田委員長 関連して、石川次夫君。
#24
○石川委員 今の中小企業と大企業の問題でありますが、なるほど、宗像さんのおっしゃるような見方もあると思います。私は、大企業中の大企業の日立の出身でありますからよくわかるのですけれども、大体大企業と中小企業では、採用する技術陣営それ自体に相当の格差が開いているという問題が一つある。それから一億円ぐらいの中小企業では、一つの大きなアイデアがあっても、それを実験段階あるいは応用段階まで移す、実用化に移すというところまで思い切った費用をつぎ込むことは、不可能に近い場合があります。しかし、大企業でありますと、一つの研究に大体二億なり五億なりという金を思い切ってつぎ込むことができるというような違いは、やはり認めないわけにはいかぬと思う。従って、それは歴史的形成から言いまして、日本の中小企業は、日本の産業それ自体が資本主義の段階であまり長い期間を経ておりませんから、後進国として出発をして、まず大きなものを政府の政治的な形で作っていって、それに隷属した形で中小企業は発達してきているという、こういう経緯は無視するわけにいかぬ。従って、外国のように、中小企業それ自体からだんだん発展をしていくという形とは、日本の場合はちょっと発展の過程が異なっておったというふうにも思うわけです。そうしますと、宗像さんのおっしゃることは、なるほどそういうこともあり得るし、また、そういうふうに努力をしなければならぬということはよくわかりますが、現実の日本の現状では、やはり大企業の方には、ちょっとしたアイデアでも思い切って応用化の方向まで持っていけるが、技術陣それ自体が非常に違うということがあって、中小企業が努力をするということだけでは、とても格差を埋めていくことは不可能ではないかという気がするわけです。今度の科学技術基本法で、格差の解消という問題も触れていかなければならぬ、平和の問題もその他の問題もたくさんありますが、これも一つのテーマとして科学技術基本法の中に盛り込んでいかなければならぬというふうにわれわれの立場で考えておるわけで、今の御説明だけでは、そういう点、大へんお言葉を返すようで恐縮でございますけれども、努力をするということだけではなかなかこれを解決することにはならない。かといって、これを基本法に盛り込んで、一挙にこの穴を埋めていくということもなかなかむずかしい問題だというので、特に権威者の皆さん方においでを願って、御意見を聞いているわけであります。その点、一つ何か御意見がありましたら、重ねてお伺いしたいと思います。
#25
○宗像参考人 今のお話に対しまして、先ほど私が、科学技術基本法にぜひこういうことを入れてほしいということを申し上げたことに関連いたしますが、私の申し上げました中で、自由競争は新分野開拓の面でやり、既開発の分野には適当な統制もやむを得ぬという考え方、これはぜひ考えてほしい。これは新分野開拓、人が全然道を開いていないところには、個人でも何でも乱暴なことをやってもかまわない。しかし、交通整理をしなければならぬところでわがままをすることは許されないということを、日本のような競争の激しいところではぜひ何かの形で入れてほしい、こういうことが今のお考えに、私の考えております点では、若干通ずることがあるのじゃないかと思います。
 もう一つは、創意を尊重して、たとえば物質特許を認めるとか、そのほかのことをやって創意を尊重して、それを侵されないようにする施策を作る、これも考えていただきたい。中小企業であろうと、大企業であろうと、ものがほんとうに初めの芽を出すのは、よくこのごろ、組織が新しいものを作るように考えられますが、ほんとうの一番初めは個人であります。その個人の創意を尊重する。そしてその思想がうんと強くなれば、おそらくあらゆる人が、機会均等に科学技術振興に関係ができるのじゃないか、この思想を強く日本の科学技術基本法には入れてほしいわけであります。先ほどお話のありましたように、大企業だと無理をしてでも押し通せるというようなふうに私は解釈いたしました点がございますが、確かに、大企業の方が何かしら無理を通すことがありますが、そういうところは何か少し制限をするというような思想は、なければいけないだろうと思うわけです。現実に見ます、大企業的なものだけが勝手に導入技術をたくさん入れて、そして少しそうでないものの方が迷惑しておるというような状況、しかも、乱立がはなはだしく、競合がはなはだしいというような状況、しかし、持久戦になると大きなずうたいの方が長持ちするというような状況は、何か調整しなければならぬというふうに思うわけでございます。
#26
○清水参考人 同じ問題で、私の関連しております事柄で……。
 私は名古屋におりまして、中部地方の産業界に接触いたしております。ただいま宗像さんの言われましたように、ことに生産性チームが外国へ経営者をたくさん派遣いたしまして、経営者が外国の科学技術あるいは経営方法についていろいろ感激して帰りまして、経営者が、何とかしてやろうとして工程から、製法から、部品やあるいは鋳造方法、その他いろいろ改良いたしまして、中小企業が非常に発展をいたしまして、現在では、ある特定の親会社のものだけを引き受けておったのが、全国的な会社に展開いたしまして、非常に伸びておる会社が相当の数ございます。この間、アメリカの国際協力局から印刷物を送って参りました中に、日本の生産性チームが渡米して、帰ってどんな成果をあげたかということを、中小企業だけについて述べたジャパン・スモール・インダストリー・グロース・アップという印刷物を送って参りました。これを見ますと、特に中部地方における中小企業が、非常に大きくなった実例をたくさん書いてございます。しかし、お話しのように、中小企業で研究するということは非常に困難な面がございます。そこで、私は、今度通産省で出されました研究組合法を中小企業にできるだけよく適用をして、中小企業でも高度の研究ができるように、協力研究あるいは産学共同の研究で、そういうことができるようになったならばと考えておる次第でございます。
#27
○松本(一)委員 関連して。先生方から大へんけっこうな御高説を拝聴いたしましたが、一、二お尋ねしたいと思いますことは、いわゆる科学技術の基本法を作るというわれわれのねらいは、日本が非常におくれておる科学技術の水準を先進国並みに引き上げたい、また、できることならば、民族自体の頭脳は優秀なんですから、国の行政措置あるいは教育、国民全体の心がまえではこれは決して不可能じゃない。しかし、残念ながら今の段階ではなかなか容易じゃない。理想としては、技術導入よりむしろ外国に技術をどんどん売りつけて外貨を獲得することは、今後相当年月はかかるかもしれぬが、不可能ではなかろう、こう私は考える。そこで、一応科学技術の積極的な推進をはかるために、基本法というものを作ろうというねらいです。ところが、日本学術会議においても、承りますと、自然科学、あるいは人文、社会等の精神的科学と、両方織り入れた科学基本法を作ったらという御意見があるということを聞いております。先ほど坂田先生のお話にも、総合的科学研究基本法を作ったらというように私聞き取れたわけです。そういうお考えであられるのか、そうでなく、自然科学だけを一つこの際大いに発展させるというねらいで、基本法というものをお考え願っておるのかという一点を、まずお伺いしたい。
#28
○坂田参考人 私の意見は、先ほど申し上げましたように、日本の科学技術というもの、ことに技術という面で、今おっしゃったように、日本が自立し得るような、そして外国の水準に競争していけるような形にまで進めるためには、やはりどうしても基礎科学というものをかなり発展させなければならない。基礎科学を発展させるのには、今まで科学技術といつも一緒くたにして振興がやられますと、清水先生のお言葉だと、社会通念からしまして、とかく技術の偏重になりがちなんです。そうしますと、ほんとうの技術を振興するということにもなりませんので、科学技術会議等でも、基礎科学重視ということを第一の重要観点にするということを言われておるわけでございますが、これを具体的に裏づけるためには、何かこれを切り離して――切り離すのがいいか、結局最終的にはそうしないといけないと私は思うわけでございますけれども、科学技術基本法と並んで科学研究基本法、あるいは科学の憲章のようなものでもいいから、そういうようなものを確立して、実質的に日本の科学技術というものを基礎からどういうふうに育てようか、そういうことを確立しないといけないのではないか。ですから、学術会議等で考えております基礎科学の五原則においても、最初に研究費の国民総所得に対する割合を画期的に高めるということ、これが日本の科学技術の健全な発達のためにも絶対に必要でありますけれども、それにさらに加えて、基礎科学とそれから技術的な応用研究との比重をどの程度にすべきか、少なくともこれを外国水準並みに、外国の平均並みに維持するような何か対策が立てられなければならない。外国の統計の結果出ております数字が何%と申し上げても、統計の仕方であまり信用が置けないかもしれませんけれども、しかし、少なくとも現在の基礎科学に費やされておる研究費に比べれば、基礎科学、応用科学の比率というものは、かなり基礎科学の側に高める必要がある。もちろん、応用科学も全体としての研究費が少ないので、まず全体を高めるということが必要でございます。そのほかに、そういう対策を講じなければならぬ。そうすると、それに見合ったような内容が、この基本法の中に盛られなければならぬ。これにはどうも今までのように一緒にやったのではまずいのではないか、従って、分離して二つにした方がよろしかろうという意見が、これは学術会議全体の意見とまではまだなっておらないと思いますが、かなり強い意見として出ておるように思います。分離した方がいいかどうかは別といたしまして、少なくともそういう考え方を実現するようにしないといけない。
 それから人文科学の方は、科学技術というものを人類の幸福に役立たせるためにもほうってはおけない問題でございますので、こちらの方も振興を考える必要があるわけでありまして、この点は基本的な科学憲章というようなものを考える、あるいは科学研究基本法というものを分離して考える場合には、当然その中に入れなければならぬ、そんなふうに考えます。
 これは先ほど申したことを繰り返して申し上げたわけでございますが、私の考え方は大体そんなところであります。
#29
○清水参考人 同じ問題で、これは科学技術会議の分科会でも問題になりました。委員の間にはいろいろ意見がございますが、私はこういうふうに考えております。
 坂田さんのような御意見が学術会議にあることは承知いたしておりまして、そのお考えもごもっともでございますが、基本法といたしましては科学技術全体を総合したもの、また、科学技術会議が取り上げる問題としては、総合的なものとして取り上げる、そしてその総合的な基本法に基づいて、たとえば今の基礎科学の研究基本法というようなものでございますれば、これは学術と称する範疇に入るもの、これは文部大臣の所管でございますので、文部省等からそれだけを取り出して、別の振興法なり適当なる法律が、それからまた生まれてくるというようなことであってよろしいのではないかというふうに考えておるのであります。
#30
○松本(一)委員 その根本の問題ですが、いわゆる自然科学と人文、社会等の精神的な科学とを一つの基本法の中にこれを織り込むということは、私はこれは不可能だろうと思うのです。また、現在のわが国の要請、現実から見ても、これは常識上少しくおかしいのではないか。でありますから、当面わが国は少しでも科学技術を振興して、国民一人々々の所得を豊かにする、また、経済的に、物質的に、なるべく平和にして豊かな生活を営むということがとりあえずの要請なんです。大へんおくれておるのは、残念ながら精神的の科学です。これはひとり日本だけではありません。ソ連もそうなら、アメリカもそうなんです。原水爆などを作って、しかも、実験をして世界じゅうに迷惑をかけておるということは、よほど後進国のすることなんです。けれども、これは今急にどうというわけには参らぬと思う。結局こういう問題は、いわゆる心理学、倫理学、あるいは哲学あるいは易学または宗教あるいは心霊学、あらゆる、きわめてもきわめてもなおきわめ切れないような、しかも一部の人がかりにきわめても、これを国民大衆の心にまでどう溶け込ますかということがむずかしい問題であります。こういうことは別の精神科学的な基本法でも一つ作って、それぞれ専門家あるいは政治家もこれに参加して、少しでも人間の心がまえをよくするにはどうすればいいか、これは社会学のすべて根源なのですから、こういうことは別に一つ考えるということにして、とりあえずは、わが国のおくれておるところを取り返さなければならぬ。自然科学、ことにその中にはいわゆる基礎科学もありましょう、応用科学もありましょうと思いますので、基礎科学、応用科学をきわめても、結論というものは技術がこれに伴っていかなければならぬ。ですから、結局基礎科学あるいは応用科学、技術というようなものを総合した一つの物質科学、自然科学を一つ大いに進歩さすということに学術会議もお考えを願って、基本法の制定に御協力をいただきたい。
 そしていま一つは、研究と同様に、これは行政が大事でありますので、私どもが願っておるのは行政機構の改革ですけれども、しかし、基本法ができますと、これも非常にやりやすくなる、こう実は思います。科学技術庁をなるべく早く科学技術省に昇格さす、そして具体的には、気象庁だの特許庁だの、あるいはその他の役所に散在しておる研究機関というものをみな統合する、そしてセクショナリズムをなくしてしまう、これには相当な研究費をみなつける、あるいは技術者を特に優遇するとか、また、教育の面においても同様です。いずれにしても、一つこの際基本法を作って、さあいくぞ、さあやるぞという体制を整えたい、こういうことでございますので、今後一つせいぜい御研究を、また、私どもも教えていただきたい、こう思います。終わります。
#31
○前田委員長 次に、松前重義君。
#32
○松前委員 先ほど御説明がありました中で、基本法の柱となるものは、科学技術振興と憲章の問題だというようなお話がありましたが、これ二つが科学技術基本法の柱であるかどうか、そのほかにまだ大きな柱としてお考えになっているかどうか、伺いたいと思います。
#33
○梶井説明員 この基本法を作りますのにいろいろと説がございまして、最初は、憲章的なものと振興的なものとをみな一緒にしてやったらどうか、ちょうど農業基本法と同じような形に作ったらどうだろうかというような説もありました。しかし、やはり事柄を明らかにするために、基本的な理念並びに大きな方針をきめるものは憲章的なものとして作った方がいい、それからさらに、具体的に予算その他全体的な問題になるものは、これを振興法というふうにした方がいいというふうに一応はなっております。従って、最初一つの基本法だけでいこうとしたのを、二つに分けたというところまで今きておるのでありまして、今後科学技術は進歩するものでありますから、勢い二つの法律だけでは済むとも思われません。さらに他の法律にも自然影響してくると思いますので、とりあえずは、今のところ二つの法案でいくという考えでおります。
#34
○松前委員 そうすると、基本法は、科学技術者の憲章に関するものに限るということになりますか、今までお考えになっておるところでは。
#35
○梶井説明員 実は科学技術会議設置法第二条第一号に、「科学技術」にカッコして、「人文科学のみに係るものを除く。」ということが明記されてしまっているのです。ですから、科学技術会議で取り扱うものは、自然科学並びに技術だということに限定されておる。ただし、もちろん自然科学並びに技術というものが、人文科学、社会科学にも自然ある程度つながりがありますから、それに関係しておるものはもちろんこの中に入れなければならぬが、人文科学だけのものであれば、これを除くということを規定されてしまっておる。従って、一応われわれの考えといたしましては、自然科学並びに技術ということに今進んでいっておりますけれども、しかし、人文科学その他との関連はどこで線を引いてよいか、なかなかむずかしいものでありますから、憲章の前文に、われわれといたしましては、自然科学ばかりではない、人文科学、社会科学もやはりくつわを並べて進歩しなければ、正しい文化国家になり得ないということを書こうと今考えております。
#36
○松前委員 大体科学技術基本法の制定に対して、人文科学の問題が問題になるという理由が多少わかりました。私は、科学技術基本法を作るならば、むしろ自然科学に限定してやらなければ、現在の当面の急場の役を果たし得ないというように考えております。もちろん、この人文科学的なものを含むというような理想案については不賛成ではありませんけれども、現実の問題としては、これはどうしても、科学技術基本法というものは自然科学に限定して早く作って、どんどん予算もとり、研究所もどんどん増強しまして研究をやらなくちゃならない、こういうように思うのであります。しかし、ただいまのように科学技術基本法の含む内容というものが、いわゆる学者の発明者とか、あるいはまた、研究者の憲章ということになりますと、これは学者全体は及ばなければならないというような格好になってくるのでありまして、当然人文科学という問題がこの中に入ってくる、また、入れろと言われても、ノーとは言えないような格好になっておると思うのであります。これは二本建になさる、いわゆる科学技術振興法と基本法の二つにお分けになるということになると、ただいまのような基本法の方には人文科学の方が入ってくるということになるので、また、そういうふうなことを拒否できない。同時にまた、入れた方がいいのではないかということになるのではないかと思うのですが、そこのところはどういうふうにお考えでありましょうか。
#37
○梶井説明員 おっしゃるような御意見もありました。しかし、元来、学術会議から科学技術会議の設置法案ができますときに意見具申がありまして、人文科学、社会科学の問題に科学技術会議は触れては困る、そうすると、自由を束縛されるから困るという抗議がありまして、「科学技術」にカッコがついて、「人文科学のみに係るものを除く。」というふうに法律ができてしまった歴史があるわけです。でありますから、今から学術会議が人文科学も入れろと言われても、前に自分らが忠告したことと矛盾したことをまた言われるということになりまして、どれがほんとうかわからなくなってしまう。だけれども、われわれとしましては、おっしゃる通りに、日本における現状から見まして、欧米との間に著しく差異があるのは自然科学並びに技術である、精神文化においては必ずしもそんなに劣っていはせぬ。ですから、まず振興を必要とするものは、自然科学並びに技術であるということが社会的に常識になっているとわれわれは思います。ですから、勢い憲章を書き、振興を書きましても、主体はやはり科学技術の方に重点を置かなければいかぬが、しかし、研究ということに対する理念であるとか、心がまえということになりますと、直接人文科学の方に触れることが出てくると思います。しかし、大部分は自然科学の方だと思います。
#38
○松前委員 今お話しのような実情は承知してはおりますけれども、政府全体から見れば、そういうふうに科学技術庁があるのですが、総理大臣に質問するときには、これはもう少し広範にお考えになったらいいんじゃないかという感じを私は持ちました。言いかえると、科学技術基本法なるものの性格は、大体お考えになっている内容はわかりましたが、原子力基本法には、基本法という言葉が非常に入り過ぎましたが、農業基本法だとか、いろいろなところに基本法ばかりが雨後のタケノコのように出て参りました。教育基本法に出発したものがだんだん原子力基本法、あれはわれわれが作ったわけですが、だんだん方々に基本法の根がはえてきた。そこで、この基本法なるものの包含しておるところの基本ですが、やはり精神に出発しなければならないということになってくる。原子力基本法というものを作ったときに、最初にわれわれは、原子力は平和の目的にのみ研究すべし、研究した成果は必ず公表しよう、その研究というものは民主的な、いわゆる秘密研究でやってはいかぬ、こういうふうな精神をまず最初に織り込んだのであります。そういうことになると、やはりこれは基本法というべきものじゃなかろうかと思うのでありますが、ただいまのお話から見ると、科学技術憲章法というようなことに、基本法という名前を作るだけの話で、憲章法というような意味の方が適当じゃないかという感じがします。たとえば原子力基本法のような平和の目的にのみこれを研究すべし、あるいはまた、民主的にやれ、あるいは秘密はいかぬ、公開にしろ、こういうふうな原則が原子力にはございますが、あまり基本法なんというむずかしい名前をつけますと、結局その辺にさわる。その辺にさわると、政党の立場からいろいろな論議が出てくる可能性があって、これはとても、憲法の改正ができないと同じように、うまくいかぬのじゃないかという感じも持つ。そうすると、基本法でなくて科学技術憲章法というような格好の方が、かえって当たりさわりがなくて可能性が出てくるのじゃなかろうかという感じを、現実問題として私は持つのでございますが、どういうものでございましょうか。
#39
○梶井説明員 今のお尋ねの辺に参りますと、私らとてもわかりませんです。憲章法にすべきか、基本法にすべきか、あるいは基本法そのものにも一定の定まった型は、いろいろな基本法を見ていきましてもないようであります。でありますから、従来できておる基本法のうちで、比較的憲章的なものを参考にしてやっていこうというだけでありまして、憲章法という、そういう法案は今日までございますでしょうか。
#40
○松前委員 新しく作るのです。
#41
○梶井説明員 新しく作るのだと、ますます国会できゅうきゅう言わされます。従来の基本法がすでに幾つかできておりますから、なるべくならばその基本法でやっていった方が、一番皆さま方の御賛同を得るのじゃないかと思っております。
#42
○松前委員 大体御趣旨はわかりました。しかし、基本法というせっかくの名前をおつけになりまして、これを国会に提案しようという御意図でありますならば、これは科学技術の振興に関する問題も、この中に含まれないといかぬじゃないかという感じがするのです。たとえば研究法人に関する問題であるとか、研究法人のごときは前から問題にしてやっておりますが、科学技術庁は勇気がなくて、なかなかお出しにならなかった。科学技術会議のできる前に問題にしておりましたが、なかなか勇気をお出しにならなかった。結局大蔵省あたりの圧力に押されて、研究法人の税制的な保護とか、あるいはその他の、たとえば通産省の問題とかで、セクショナリズムに押されてなかなか出ませんでした。ですから、せっかく基本法を制定するというならば、研究法人に関する問題、すなわち、研究法人というものを作るというようなこと、そしてその研究法人というものは別に制定する研究法人法によるというような意味で、別法律に譲っても、基本的な課題だけは基本法の中に全部を含めておく必要があるのじゃなかろうか。それなら、一応基本法と言っても差しつかえないんじゃないかという感じがするのであります。もう一つは、科学技術者の待遇の問題とか、あるいはその発明の保護の問題、研究の保護の問題、特許権に対するところの、何かそれに対する具体的な褒賞をやる、あるいはまた、予算の問題、あるいは税制の問題、こういうふうな問題でそれぞれ単独法を別に作るにしても、いわゆるその法律の糸口だけはここに一応並べて、そして科学技術の振興のためにこれだけの基本の法律を、スクラムを組んで今後前進するのだというような形にした方がいいのじゃないかと思うのですけれども、どんなものでございましょうか。
#43
○梶井説明員 今おっしゃられましたような条項は、一応基本法にみな入れました。人材の養成、予算の問題あるいは法制上の問題、科学技術が振興されるように法制も措置をしなければいかぬというふうに、みな書いてあります。ですから、大綱だけはこう書きまして、むしろ具体化するときに振興法の方に入れようということで、憲章のことは、今仰せられたことはほとんど入っております。
#44
○松前委員 そうすると、私はさっき誤解しておりまして、憲章だけしか基本法の中に入れないという話のようだから、憲章でやったらいいのではないかということを申し上げたのですが、それはわかりました。
 そこで、これの運び方の問題ですけれども、これまた、私は急いでやるべき仕事だと思うのです。こういうことはやはり潮どきというものがありまして、すなわち、盛り上がったときに押しまくらないと、なかなか周囲の壁は厚いものですから、その壁を破壊して前進するのには、やはり潮の満ちたときにやらぬと堤防を破壊できない。台風じゃありませんけれども、とにかく台風的にやらないととてもできない。あまり長くかかると、場合によるとしり切れトンボになる可能生があると思うので、せっかく、有能などと言うと失礼でありますが、強力な議員の方々がおいでになるときに、一つ徹底的にそれを推進する、そうして通常国会に政府をして提案せしめるまでお願いしたいと思うのです。そうしませんと、次の国会あたりになったら、これはちょっとさめてしまいます。この際徹底的に太鼓をたたいて、進軍ラッパを鳴らしていかないと、なかなかこの壁はくずれない。これは非常にたくさんの問題、税制の問題にしても、予算の問題にしても、あらゆる問題で今まで悩みに悩んできた、このために日本の科学技術振興ができなかった。政府自身が科学技術振興を妨げてきた問題を解決しようというのですから、この点は、国会のわれわれもヤジウマで大いにやりますから、おみこしをかつぎますから、一つ早急にこの問題を解決する意気込みでお願いしたいと思うのですが、いかがでございますか。
#45
○梶井説明員 私どもも、全くそういうふうに重要なものであり、かつ、急がなくてはならないものであるということは、よく承知いたしております。それでありますから、できますならば、今度の通常国会にぜひ出したいという気持で目下努力しております。しかし、何といっても、こういう科学技術基本法というものを日本で初めて作るし、また、世界各国にもあまりその例がないのであります。でありますから、よほど慎重にやりませんと、あとでかれこれ物議を起こしてもいかぬからというので、相当慎重に研究しております。ですけれども、今松前委員の言われました通りに、やはり潮どきというものがあるものですから、ぜひ通常国会に出せるように努力いたします。なお、出す際には、ぜひ議員の方方の御援助をいただきますように、この機会にお願いを申し上げます。
#46
○松前委員 その点は一つよろしくお願いしたいと思うのですが、ただ、先ほど岡委員から質問がありましたように、今までの体験からして、これは普通にやっておったのでは、なかなか困難だと私は思っております。科学技術庁や原子力基本法を作るときでもだいぶ生みの苦しみを続けてきた。だから、やろうと思えば多少傷つきます。デマも飛ぶし、いろいろ盛んに妨害するのであります。そういうのが、やはり月給をもらっている政府の中におるのです。だからして、そのためにこういうのが非常にレタイアをするおそれがある。先ほど岡委員が質問されたのはその点だと思う。やり方だと思う。これは普通に次官会議にかけて、すべった、ころんだでやっていたのでは、絶対できません。次官会議なんかにかけたら、どんなことがあってもできません。技術のわかる次官は一人しかいないのですから、これはとてもできやしません。とにかくこのやり方については、科学技術会議といういわゆる最高機関もありますから、もう次官会議なんというのは、あんなものはすっぽかして、そして科学技術会議で決定したものを直ちに閣議で了承して、すぱっと持っていくというふうにでもしないと、とても通らないだろうと実は思うのです。あまりまじめ――と言うと語弊がありますが、何とか従来のしきたり通りに事務的な折衝の上に築き上げようというのは、これは普通のときはそうであっていいでしょうけれども、私はこの場合は、そうはなかなか通らぬだろうという感じを持つのです。この点は御留意願って、特にこれは科学技術庁の官房長の腕前にかかっておるのですが、官房長いかがですか。
#47
○島村政府委員 先ほど来お話がございましたように、昨年科学技術会議からの御答申もございまして、科学技術庁といたしましてもその線に沿って、――何分昨年出ておることでありますから、今度の通常国会あたりにはぜひ政府提案ということにいたしたいと考えております。しかし、科学技術会議自体でさらにこれに補足したような追加答申を行なうという意向を表明せられまして、もっぱら御努力なすっておられるところでございまして、科学技術庁といたしましては、科学技術会議から、できるだけすみやかにさらに追加答申をいただくのをお待ちしておるわけでございます。先ほど来、参考人の方々もこういったものの必要性を述べられておりますし、議員の方々も非常に熱心に努力しておられますので、私どもも及ばずながらそれについて参りまして、御答申が出ますれば、最善の努力を払って提案に持って参りたい、かように考えておるわけでございます。
#48
○松前委員 これは進行過程においての問題になりますけれども、あの科学技術庁を作るときも、実は議員立法で科学技術庁設置法案を出したのです。それでだんだん政府が、まあ追い詰められたかどうか知らぬが、とにかく作らなくちゃならぬようなことになって、大体の骨子ができたものだから、政府提案にさしてくれというので、名義だけ政府提案で、法案の内容は全部議員で作ったのです。その他の原子力に関する法案も、全部議員で作ったことは、あなたの御承知の通りです。そういうふうにして押しまくったから、科学技術庁にしても原子力委員会にしてもできた。ですから、われわれは微力ですが、科学技術庁としては、国会というものを相当に利用する――と言うと語弊があるが、そういう一つの援護というか、密接な連携の上にこれを押しまくるということに特に留意していただきたい。場合によっては、議員立法でいかなければだめだという心がまえで、そうして議員立法で通りそうになったら、政府が取り上げてやってもかまわない。その辺のところは、できさえすればいいから、適当に幅広く考えて、一つ戦闘体制を整えてもらいたいと思いますが、どうですか。これは特にあなたの出身の通産省に非常に問題がありますから……。
#49
○島村政府委員 原子力関係の法律、特に原子力基本法ができました当時の経緯等は、松前委員がおっしゃるまでもなく、私もよく存じているわけであります。その後における科学技術庁設置法の通過した事情も、よく存じているつもりでございます。先ほど来お話がございましたように、科学技術基本法につきましても、従来、国会側でも非常に熱心に要望せられておった事情もございます。その間のことも承知しているつもりでございますが、何分にも、現在まで科学技術基本法の考え方というものが非常に分かれております。私どもとしましては、科学技術会議で速急にお認めいただきますことを期待しますと同時に、その過程においても、国会方面の御意見等が十分織り込まれますことを期待しているわけであります。問題は進め方でございますが、現在のところ、どういうようになるかということについては、事情も変わっておりますし、政府部内でも科学技術そのものに対して相当熱心な態度に変わってきておりまして、初めから政府提案では絶対にできないというふうにきめてかかる必要もなかろうかとも考えております。しかし、従来の経緯を見ますと、非常にむずかしいことは当然予想せられますので、今後、初めからこれはとてもできないから、議員立法でやっていただくつもりであるとかいうことを決してきめているわけではありません。今後の推移によりまして、また、国会の方の御意向も十分伺いながら進めて参りたい、このように考えております。
#50
○松前委員 これはあなたの試金石ですから、一つしっかりやって下さい。
#51
○前田委員長 これにて質疑は終了いたしました。
 参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本委員会の調査のため、きわめて大なる参考になったものと思います。委員会を代表して、私から厚くお礼を申し上げる次第であります。
 本日はこの程度とし、次会は、明十九日午前十時より、日本科学技術振興財団に関する問題及び研究者の処遇改善に関する問題について、それぞれ参考人より意見を聴取いたします。なお、委員会散会後理事会を開会いたします。
 これにて散会いたします。
   午後零時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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