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1961/10/19 第39回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第6号
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1961/10/19 第39回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第6号

#1
第039回国会 科学技術振興対策特別委員会 第6号
昭和三十六年十月十九日(木曜日)
   午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 前田 正男君
   理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君
   理事 西村 英一君 理事 山口 好一君
   理事 岡  良一君 理事 原   茂君
   理事 山口 鶴男君
      安倍晋太郎君    秋田 大助君
      佐々木義武君    塚原 俊郎君
      保科善四郎君    松本 一郎君
      西村 関一君    松前 重義君
      内海  清君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       山本 利壽君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局長)    杉本 正雄君
        文部政務次官  長谷川 峻君
 委員外の出席者
        科学技術事務次
        官       鈴江 康平君
        総理府技官
        (科学技術庁振
        興局長)    前田 陽吉君
        文部事務官
        (大学学術局審
        議官)     岡野  澄君
        文部事務官
        (大学学術局大
        学課長)    村山 松雄君
        参  考  人
        (日本科学技術
        振興財団副会長
        兼専務理事)  桑田時一郎君
        参  考  人
        (日本科学技術
        振興財団理事、
        事務局長)   津野田知重君
        参  考  人
        (東北大学工学
        部教授、同電気
        通信研究所長) 永井 健三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 科学技術振興対策に関する件(日本科学技術振
 興財団に関する問題及び研究者の処遇改善(学
 位制度のあり方等)に関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○前田委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 本日は、日本科学技術振興財団に関する問題、及び研究者の処遇改善に関し、学位制度のあり方等に関する問題について、それぞれ参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。
 本日御出席の参考人は、日本科学技術振興財団に関する問題については、日本科学技術振興財団副会長兼専務理事桑田時一郎君、及び同財団理事、事務局長津野田知重君の御両人、また、研究者の処遇改善に関する問題については、東北大学工学部教授、同電気通信研究所長永井健三君の方々であります。
 この際、参考人各位に一言ごあさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の調査のためわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 なお、参考人の御意見の開陳は、お一人約十五分程度にお願いいたしまして、そのあと、委員各位の質疑によりお答えを願いたいと存じます。
 それでは、まず、日本科学技術振興財団の最近における特別事業として、本部の科学技術館、産学協同センターの建設、テレビ放送局の開設設置計画、及び一般事業における研究活動、科学技術の普及活動の実施、地方本部等の現状について、初めに御意見を承りたいと存じます。それでは桑田参考人よりお願いいたします。
#3
○桑田参考人 私、桑田でございます。
 日本科学技術振興財団は、御承知のように、政府及び国会、経済界、学界等が各一致協力いたしまして、昨年の四月十五日に内閣総理大臣の許可を得まして発足したものでございます。すでにかれこれ約一年半ほど経過いたしております。この間にこの財団がどういう目標を掲げ、ねらって進んでおるか、また、どういうことをやってきたかということを、簡単に御説明申し上げたいと思います。
 本目的を達するために、寄付行為第四条の規定する事業を行なうにあたりまして、大体次のような五つの柱をお手元の綱領にも掲げてございますが、その五つの小委員会を設けまして、ここでそれぞれ検討しましたことを実行に移していくというような体制をとっております。
 まず第一は、調査献策委員会であります。これは丹羽周夫氏を委員長としております。次に、第二の柱は、団体連けい委員会であります。これは平山復二郎氏を委員長にしております。第三が、産学協同委員会、これは不肖私が委員長を兼ねております。第四の柱が、普及啓発委員会でございます。これは浜田成徳氏が委員長。さらに、第五の柱といたしまして、科学技術館建設委員会、これは田代茂樹氏が委員長を勤めております。
 それで、事業概況から申しますと、今日まで実施して参りましたものにつきまして、それぞれの今の柱の中においてどういうことをやってきたかということを申し上げます。
 第一の調査献策でございますが、これにつきましては、去る三十五年九月十三日に、科学技術振興に関する寄付金の税制上の優遇措置について、こういう要望書を関係方面に提出いたしまして、幸いに時代の要請と関係御当局の深い御理解を得まして、本件は昭和三十六年四月一日から実施されるに至っております。引き続きまして、同年の七月七日、試験研究準備金制度創設に関する要望書というものを作りまして、これを各方面に提出しております。
 第二の柱といたしまして、団体連携事業でございますが、これは科学技術に関係とております団体が相当数ございまして、それぞれ関連性を持っております。それで、これらの科学技術の振興を目的といたしまする諸団体、たとえば全国科学技術団体総連合あるいはエレクトロニクス協議会のごとき団体と密接な連携を保ちまして、科学技術の振興を目的とする事業につきまして、共催または後援を行なっております。今までやりました行事のおもなものといたましては、各種の講演会、それから映画会、振興大会、研究発表会等でございます。なお、その他日本科学界の文献収集、出版事業等につきましても援助を行なっております。
 第三の産学協同事業でございますが、これはその名の示すごとく、産業界と学界とが、さらにもっと密接な関係におきまして互いに理解し合い、そうして援助と合うということをねらいといたしております。そのために、現在、小田急沿線の成城学園前に、当財団の産学協同センター・ビルを建設中でございます。約二千坪の敷地、六百坪の建物ですが、ことしの六月に着工いたしまして、この十一月中には完成の予定でございます。その内部構造から申しますと、約三百名収容の講堂と、それから五十名収容の講義室、その他四教室、それから視聴覚教育の教室、図書資料室とか大小会議室、談話室等がございますが、現在の技術者不足のおりから技術者の再訓練、それから理工学系の各種の講習会その他一般の学術講演会、それから学校その他の研究室、産業界の研究所の研究発表会、それから各新製品が出ました場合にそれの解説あるいは発表会、また、科学技術関係の映画会、その他学界、官界、産業界の関係者によりまする協議会というものを開くことを目的として、この場所を利用するつもりでおります。
 第四の普及啓発事業でございますが、これにつきましては、次に述べます科学技術館、及び財団が目下最も力を入れております科学技術テレビジョン放送局の開設とによりまして、広範かつ大規模に、しかも、強力に実施することを企図いたしております。科学技術テレビジョン放送局の詳細につきましては、後ほど津野田事務局長から報告いたさせますが、マスコミのメディアといたしまして、強い訴える力と印象力を持つテレビを利用することが、国民一般に対しまする科学知識の普及、科学尊重の思想を培養することにきわめて効果的であるということは、多言を要しないところであろうと思います。今日まで行なって参りました普及啓発の事業といたしましては、NHKテレビを通じまして、産業映画のシリーズ、生活科学のシリーズというものを放映いたしております。また、第二には、科学技術週間行事の後援、第三は、防災の日の行事への参加、第四は、科学技術映画の優秀作品のフィルム・ライブラリーの設置並びに全国貸し出しによる巡回普及、第五は、工業技術のカタログ室を設けております。第六が、出版物によります啓発資料の作成と資料の配付等を行なっております。
 さらに、第五といたしまして、科学技術館の建設でございますが、これにつきましては、アメリカあるいはドイツの有名なる科学技術の会館を参考といたまして、これらが着々効果を上げておりますことにかんがみまして、特に青少年の教育を対象といたしまして、これの活用をはかろうとすることが目的でございます。工業技術の水準が高度に発達して参りましたわが国の現況におきましては、国民一般に対しまする科学技術教育の普及啓発をはかる一つのいしずえといたしまして、この種の科学技術館は当然必要であろうと考えられますので、多少の困難は承知の上で、その実現に努力いたしたいと考えております。幸いに、建設地は、千代田区代官町の東京都中央森林公園予定地内に確定いたしております。今年末かおそくとも明年二月には着工いたしまして、昭和三十七年度中に完成いたす予定でございます。館内に展示いたします内容は、お配りいたしました科学技術館展示施設概要のような内容のものといたしまして、斬新な展示方法を採用いたしまして、国際的にも恥ずかしくないものにいたしたいと存じております。これが設計者もすでに欧米に派遣いたしまして、博物館その他科学技術館等を視察して最近帰って参りました。シカゴあるいはミュンヘンの博物館等を参考といたしまして、大いにこれを取り入れることを期しております。
 以上、財団の事業につきまして概況を述べましたが、地方の組織といたしまして、簡単に触れておきます。
 財団の地方組織といたしては、昭和三十五年の四月二十二日に関西地方本部が発足いたしましたし、三十五年七月七日に中部地方本部が発足いたしまして、関西地方本部では、大阪に、関西地方の科学技術振興のセンターとなるべき大阪科学技術センター・ビルの建設に着手いたしております。また、中部地方本部では、名古屋市が市制施行七十周年の記念事業の一つといたしまして、市立名古屋科学館を建設いたしておりますので、財団といたしましては、同館内の各種展示施設を充実して参ろうとしてやっております。そのほか、各地方本部とも、それぞれの地域の特殊事情を考慮いたしまして、地方におきましての科学技術振興のセンターとして、その役割を果たすように努力いたしております。
 以上をもちまして大体事業の概要を御説明申し上げましたが、次に、この事業を行なうための資金の裏づけというものにつきまして、簡単に触れてみます。
 さきに申し上げました科学技術館、産学協同のセンター・ビル、さらに関西地方本部の大阪科学技術センター・ビル、中部地方本部の展示施設等、これらの要しまする費用が、合計いたしまして三十一億一千五百万円の予算でございます。このうち、すでに寄付として申込みを受けておりまする分が二十一億四百万円程度でございます。時節柄まことに寄付の集めにくいときに到達したのでありますが、何とか一つこの事業の必需性を認識していただきまして、奮発してこの寄付に応じていただきたいと努力いたすつもりでおります。なお、大蔵省からの国庫の補助金、それから地方補助金、それから民間法人からの現物出資等にいろいろ期待しておるのでございますが、国庫からは、皆様の御尽力によりまして、すでに昨年度は七千万円、本年度は一億円の補助金をちょうだいいたしております。また、財団の経常費につきましては、民間法人から賛助費として拠出していただいております。
 以上をもちまして、当財団の事業並びに資金計画の概況に関する報告を終ります。
#4
○前田委員長 次に、津野田参考人。
#5
○津野田参考人 私、津野田でございます。ただいま桑田副会長が御報告を申し上げました中の、テレビ局の免許申請につきまして、今日までの経過の概要を報告さしていただきます。
 科学技術の普及啓発を目的とします財団の事業のうちで、テレビを活用することが最も有意義であるということにつきましては、ただいま桑田から御報告があった通りでございますが、この考えに基づきまして、昨年の七月二日にテレビ局開設の免許申請書を郵政省に提出いたしました。当初の内容は、教育、教養合わせまして全放送時間の五八・七%でございましたが、その後さらに研究をいたしました結果、教育番組をもっとふやす必要を認めまして、同じく昨年の九月二十日に、教育、教養合わせて九二・四%という内容に訂正したものを再提出いたました。
 その後、本テレビの内容その他につきましてずっと研究を続けてきたのでございますが、今回の臨時国会に提出を予定されておりますと承ります学校教育法等の一部改正という法律案が成立をいたされることになりまするならば、通信教育というものを行なう通信教育専門の学校の設置が、可能であるということになるわけでございます。先ほど桑田から御報告を申し上げました代官町に建設を予定しております科学館の内容にもかんがみまして、これを視覚教育の実習の場として活用していくという着眼のもとに、通信教育によってこのテレビを活用していこうということに方針をさらに変えまして、検討いたしました結果を、本年九月の十六日に再提出をいたしたわけでございます。
 そこで、この九月十六日に再提出をいたしましたものの内容の概要を申し上げますると、通信教育というものが全部の時間の七一・八%、理工技術に関する教養二一・二%、こういう内容に組みかえたわけであります。この経営につきましては、通信教育専門の学校法人を当財団で持ちまして、高校卒程度の理工専門の技能者を飛躍的にこれでふやしていくという考え方でございます。現在のところ、これを従来の一般の民放のごとくに、広告による費用でまかなうという行き方をやめまして、現在各産業会社が、それぞれ自己の技能者の再訓練ないしは事務系、技術系の再訓練をしております費用を、特別協力費として財団の通信教育用に集めまして、これによって会社の再訓練も担当いたしますが、あわせて一般の理工専門の高校卒程度の技能者を養成しようという考え方でございます。これに要します経常の費用は、年間約六億ないし七億と予定しております。ただいま申し上げましたような特別協力費によって、これを十分まかなっていけるという見通しがつきました。
 当財団が希望しておりますのは、第十二チャンネルでございます。これは現在米軍が保有しておるものでございます。そこで、この十二チャンネルを、このような目的のために返還していただけるものかどうかということにつきまして、昨年の十月中旬ごろに在日米空軍のウエルス氏に会っていろいろ聞きましたところ、そのときの返事では、この十二チャンネルが必要であるというようなことに関しては、日本側当局から、公私ともにまだここ数年間聞いたことがなかった、そういう要望が出るならば、さっそく考えるというお返事をいただきました。今回、六月の下旬に私が渡米をいたしまして、国防総省の国際安全問題極東地域担当官のジョン・リーディ大佐と会いまして、いろいろと会談をいたしました結果は、当財団のごとき有意義な仕事をすることに使われるということであれば、非常にけっこうな話である、ただ、その権限は現在国防総省にはないが、できるだけの便宜をはかりたいというお返事をいただきました。その後私が帰朝いたまして後に、前のリーディ大佐の上官の、国防次官補ダブニー中河という人から手紙をいただきました。私がペンタゴンに行っていろいろ会談をした内容、及び当チャンネル問題について、近く日本側から返還の折衝が開始されるであろうということを在日米軍司令部あてに通達をした、この問題は、なるべくすみやかに日本側から合同委員会の議題に出すようにされたらいいのではないかという意味の書簡をいただきました。私どもの考え方といたしましては、ただいま報告をいたしましたような、意義のある教育専門用にこれを使用するという建前を堅持してお願いをしていただけるならば、アメリカは喜んでこれを返還してくれるのではないかという感じを持っております。郵政当局にもお願いをしておるという実情でございます。
 以上、概略を御説明いたしました。
#6
○前田委員長 参考人からのお話はこの程度といたしまして、質疑はございませんか。――質疑がなければ、本問題に対する参考人からの御意見の聴取は一応これで終わりたいと思います。
 次に、研究者の処遇改善に関し、学位制度のあり方等に関し、参考人永井健三君の御意見の開陳をお願いいたします。永井参考人。
#7
○永井参考人 私、永井でございます。本日私がお願いいたしますのは、科学技術者の優遇に関することでございますが、特に精神的な優遇に関するものでございます。
 科学技術者が科学技術の研究に精進いたしまして、学術の向上に貢献いたしました場合には、その研究結果をまとめて申請いたしますと博士号が授与される、在来はそういう制度がございました。これは科学技術者がある高いレベルに達したということの証明でございまして、本人の栄誉であることはもちろんでございますが、一家一門の名誉でございまして、これを目ざしまして研究して参りました者が今まで非常に多くて、その連中が新しい技術を発見いたしまして、科学技術を開拓した例は枚挙にいとまがないのでございます。博士号というものは、日本の科学技術の進歩に側面から援助したとも考えられますし、また、大きい役割を果たしたものであると私は考えております。
 この学位制度は、大正九年の勅令第二百号の学位令によって定まったものでございまして、二つの場合がございます。一つは、大学の学部研究科に二年以上在職して論文を提出いたしました後、これに合格いたしますと博士号が与えられる。これはただ二年間でございまして、二年間で博士号に達するというような高い研究が完成した例はあまりございません。若干ございますが、たくさんはございません。その二番目は、大学の研究科に入らないで、長年研究をいたしまして、その結果を論文にまとめまして、大学に学位請求をいたしましていただくものでございます。現在の大部分はこの二番目のものでございまして、これには学歴を問いません。たとえば極端な例としまして、中学校を出たばかりの者でございましても、長年研究に精進しまして、ある高いレベルに達しますと、その研究結果を論文にいたしまして、学位請求ができます。それが旧制の学位制度といわれるところのものでございます。でございますから、旧制の学位制度というものは、学歴を問わないというところに非常に大きい特徴がございます。それが提出されますと、それを学部研究科で審査をいたしまして、これがある高いレベルにあるということがわかりまして、学術の進展に寄与したと認められました場合には、文部大臣の認可によって学位を授けられております。これは大学の学部研究科がやるものでございまして、学部研究科がなくなりますと、旧制の学位制度というものは消えてしまいます。昭和二十八年の省令第二十号、従前の規定による大学の研究科の存続年限に関する省令というものによりまして、大学の学部研究科というものは、卒業した年から九年――歯科医科では六年でございますが、その九年経過する日まで存続することができることになっております。歯科医科は、去年の三月でこれは完了してしまいまして、学部研究科というものがなくなっております。それからほかの理学部、工学部、農学部その他は、九年では来年の三月三十一日でございまして、旧制の学位制度の最後の年になっております。従いまして、旧制学位制度が学歴を問いませんので、いろんな研究者が学位を希望いたしまして、申請する者が現在非常にたくさんございまして、私の奉職いたします東北大学工学部の例をとって申し上げますと、九月三十日まで論文の申請を引き受けましたところが、同日までに申請した者が、学部だけで百七十四人に達しました。もちろん、この論文の中には非常にりっぱなものもたくさんございます。中にはもう少しというものもございますが、非常にりっぱなものがたくさんございます。中には、あと数年研究を待てば、りっぱな論文になるだろうと思われるものがございますが、今年の九月までが提出の期限でございますので、無理に提出したものが若干ございます。また、一部には、とうてい期限に間に合わないというので、提出を残念ながら見合わせたという者も多数ございます。これら提出論文に対るす審査は、来年の三月三十一日までにすべて手続を終わらなければならないので、担当論文の審査を多くしなければならない教授は、きわめて多忙な毎日を過ごしております。私の例を引いて恐縮ですが、私は五十一の論文審査を来年の三月三十一日までにやれという命令を受けまして、一論文を三日ずつ読み上げるということにしても、半年はかかるという結果になっております。現在なお、旧制大学の卒業生で研究にいそしんでおる者もたくさんございまして、これらの方々は、新制でない旧制の学位制度の存続を強く要望しております。これらの要求にこたえるには、昭和二十八年の省令といいますか、九年しか存続しないという省令を改正して、もう少し研究科の存在を長くしていただくということができれば、これで間に合うのでありますが、現に研究科のなくなったところもございます。こういうものを復活させることができるかどうかは知らないのでございますが、あるいはむずかしいかもしれません。それで、旧制の最後の卒業生というのは昭和二十八年でございますから、それから八年たっております。八年間会社その他で実務について、かたわら研究をやっておりましても、八年では、なかなかこの若い連中が学位の高いレベルに到達することは、現在は困難だ。こういう若い連中の学位に対する道が閉ざされようとしておるのでございます。
 旧制学位にかわりまして、新制の学位がございます。新制の学位は、昭和二十八年の文部省令の第九号で定めてございまして、「独創的研究によって新領域を開拓し、学術水準を高め文化の進展に寄与するとともに、専功の学問分野について研究を指導する能力を有する者」、こういう規格がございますが、学術の水準を高めて、文化の進展に寄与した者ということで、これに学位が授けられております。これは、旧制でもこうはっきりした規定はございませんけれども、やはり学術の進展に寄与したというような高いレベルの者に与えるのでございまして、町の発明家のような者に授与するつもりはないのでございまして、その精神は在来のものと全く同じでございます。
 新制学位についても二つありまして、その一つは、大学院で五年間勉強して、五十単位の試験を受けて合格し、その上に、博士論文審査に合格した者となっております。これは五年間学校におりまして、五年間に徐々に試験を受けまして、五年間に五十単位――一単位と申しますのは、一時間ずつ一学期の講義が一単位でございます。毎週一時間ずつ講義をしまして、これを一学期間やる場合に一単位、その五十単位の試験を受けなければならない。
 その二番目のものは、これは町にいる人を拾うという意味だと思いますが、博文論文に合格して、前者と同等以上の学力あるものと認められた者に授与することになっております。第二のものは、いわゆる論文博士といわれるものでございますが、旧制博士と異なる点は、学力の認定試験、五十単位に相当する認定試験が要ることでございます。しかも、広範囲の試験がいるのでございます。
 昭和二十七年の大学院設置審議会の決定している学位に関する要綱では、新制の学位審査方法がきまっております。これによりますと、専攻学術に関しまして、大学院の五十単位相当の各種の試験が課せられまして、さらに、外国語については二種類の試験が原則となっております。大学院相当の試験をするということですから、かりに一科目が二単位としても、二十五の試験をシビアに受けなければならないということでございす。これは私ども、専攻分野に三十年間教鞭をとっておりましても、この枝葉末節のことまで試験を受けましたら、必ず落ちてしまう。試験に及第するには、大学院にいる者でもなかなか困難かと思います。この五十単位の試験というのは、大学院に在学中五年かかって受ける試験でございまして、これを短時日の間に受けるのでございます。しかも、外国語は二カ国語要るのでございますから、かなりむずかしいものでございます。特にわれわれのような、年とった研究生活多年という半白の老人には、なかなか困難と思います。大学院の基準の独創的研究によって、従来の学術研究に特に新らしい領域を加えて文化の進展に寄与して、専攻分野で研究指導する能力がありましても、これらの試験に合格することがなければ博士号は与えられないのでありまして、新制の学位は、旧制の大学の卒業生並びに大学院を出ない新制の大学の卒業生、あるいはその他独学で勉強した人たちにとっては、学位を得ることが非常にむずかしい制度になりまして、新制度では論文博士は望み少ないものと考えられます。従って、新制の博士号は、大学院で五年の学習に耐え得る、経済的資力がある者に限って学位が得られまして、経済力に乏しい者は博士号は得にくいという結論になります。もちろん、現在も育英制度はあります。大学院で、約三分の一から半数くらいの学生は育英制度がとられておりますが、入学前から開始されるかどうかということは疑問でございまして、資力に乏しい者は、大学院入学に相当な決心と決意が要ることと存じます。
 以上述べましたところは、新制度の学位を得るということは非常に困難だということ、特に論文によって学位を得ることは困難だ、五年間おりまして、ある研究をまとめて学位を得るということは割合簡単にできると思いますが、町にいて、あるいは野にいて新制の学位を得るということは、なかなか困難だということでございます。ですから、新制の大学の卒業生でも、研究が進んで、論文だけですぐれた学術的功献がうかがえるならば学位が授けられるようにするというようにいたすならば、学位が富裕階級のみの専有物であるというそしりも取り除かれまして、一石二鳥であろうと思います。以上が私の申し上げるところでございますが、旧制の学位制度をもうしばらく延長するか、あるいはそれができないならば、大学設置審議会できめました基準を変えまして、新制の学位が旧制と同じように取れるというようなふうに改正していただきたい、こう私は希望するものでございます。
 以上でございます。
    ―――――――――――――
#8
○前田委員長 この際、財団に関する参考人の方に御質疑がなければ、お急ぎのようでありますから御退席願うことにいたしたいと思いますが、御質疑はございませんか。
#9
○松前委員 財団の方でテレビをやるということは、これは科学技術教育、ことに通信教育としては最も重要なことであり、しかも、テレビ・チャンネルを科学技術財団に取るべしと主張したのは私であります。そういうわけで、今日までいろいろの方々がやってこられたと思うのでありますが、これはどうしても取らなければいけません。従って、この問題についてはもう議論の余地はないと思うのであります。これを科学技術の教育のために、あるいは一般的な科学技術知識の普及のために使うということになるのでありますが、これに対してはこの委員会において議決をして、逓信委員会にこれを持ち出して、そうしてできるならば逓信委員会でまた議決をする。われわれも努力をいたします。そうして政府をしてこの方向に、いわゆる科学技術財団にこの十二チャンネルを許可しなければならないようなふうに、ここに国会を通じてのワクをきめてしまう、これが必要だと思うのであります。この点について、委員長において取り計らわれんことを希望いたします。しかも、これはすみやかにやっておく必要があると、われわれは諸般の情勢から察知しておりますので、この点特に希望を申し上げるわけですが、これは一つ委員長の御答弁を願います。
#10
○前田委員長 ただいまの御意見に対しましては、本日の理事会において一つ御相談申し上げまして、善処するようにいたしたいと思います。
 それでは、財団に対する質疑はこの程度にいたします。
 財団に関する両参考人に対しましては、御多用中にもかかわらず、本委員会の調査のため御出席をいただきまして、貴重な御意見を御開陳下さいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。
 それでは次に、研究者の処遇改善に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。松前重義君。
#11
○松前委員 学位問題について、われわれも、今お述べになりましたことについては、全面的にその通りだと思うのでありますが、実情に対して少しばかり伺いたいと思います。
 新学位制度によって、論文を出して試験を受けて学位を取る道が開かれておる、だから学位を取る道が全然ふさがれておるわけでたない、しかし、それはなかなか困難な道である、こういうふうなことであります。ところが、その非常に困難な試験というものが行なわれる、それは大目に見て適当にやればどうにもなるでありましょうが、いずれにしても試験が行なわれる、その行なわれた例が今までありますかどうか、ちょっと伺います。
#12
○永井参考人 東北大学においては現在までございません。どういうふうに扱ったらいいか、まだ私は聞いておりません。ただ、私のちょっと仄聞するところによりますと、京都、北海道等一、二例があるように聞いておりますが、非常にめんどうな試験を一カ月くらいかかってしまして学位を授与する、全部の試験に及第しまして学位が授与されたということを聞いておりますが、これは非常な秀才だと存じます。東北大学にはまだ例がございません。
#13
○松前委員 それはどういうふうなことで試験をしたのでしょうか。具体的な試験のプロセス、経過等がわかりましたら……。
#14
○永井参考人 私、仄聞しているだけでございますから、正確なことはわかりません。これは文部省の方々の方がおわかりのことと思います。
#15
○岡野説明員 ただいまの御質問でございますけれども、私の方の統計を申し上げて、御参考に供したいと思います。
 新制学位授与件数、これは、ことしの七月十日までに報告のあったものでございます。全体で約二千件でございますが、論文博士の数は非常に少ないわけでございまして、そのうち百二十四件、ただいまの新制の論文博士に対する試験につきましては、各大学で実施しておりまして、必ずとも画一的な試験ではないようでございますが、いずれにしましても、御指摘のように狭いものであるということは、数からもわかるわけであります。
#16
○松前委員 そこが、一般の世論がわれわれのところに非常な悲観的な陳情といいますか、いろいろな要望を持ってこられる原困だと思うのであります。そのような新制度というものが、今お話しのように狭いものである。同時に、私どもから考えると、少とお年を召した方で長年研究に従事された方は、今さら大学にそういう論文を出して試験を受けるなどということは、もうできる話じゃない。ことに自分たちの研究した論文は、大学の教授にも理解できないくらいに深いものだ、その上にまた、いろいろなほかの試験までされたのでは話にならぬ、そんなにまでして学位は取らぬでもいい、こういう人がたくさんにおるのですね。だから、ああいう新制度というものが、狭き門であるというだけならばまだよろしいけれども、もうそんなにまで頭を下げて取らぬでもよろしいというような傾向にあることは、文部省としてお認めになりますか。
#17
○岡野説明員 ただいま狭き門とおっしゃいましたが、非常に数が少ないということは、あるいは現在まだ旧制の受理中でございますので、その関連において少ないということも考えられるわけでございます。しかし、ただいま永井先生のような御意見を各方面からも承りますので、これについて検討するという気持ではおるわけでございます。
#18
○松前委員 岡野審議官のお話によれば、文部省としても、新制度が非常に隘路であり、しかも、必ずしも民主的な制度でない、金持ちだけしか博士になれないということに対して、これをお認めのようでありますが、もしこれを改めるというならば、これは実行するかしないかが問題です。新制度が現在存在しておりますから、これに対して、一応旧制度を延ばして、それで新制度をもう少し合理化して、そうして狭き門でなく、しかも、金持ちだけがこれを通過し得るものでないようにする、あるいはまた、金持ちでない人が出した場合には、これは大へんな狭い門だ、やり方によっては、もうとんでもないことになるというようなことですから、これに対してどのような見解をお持ちになるか。この旧制度の存続、これを一応その通りにしておいて、そうして新制度が今のような欠陥を一応解消したときに旧制度を廃止する、こういうふうなことをお考えであるかどうか、文部当局の御答弁を伺いたい。
#19
○長谷川政府委員 先日来その議論が出ておりますことを私たちも承知しておりまして、部内でもだんだんの研究を、あるいは論議を続けておったところでございます。旧制度を延ばすことは、もうすでに旧制大学を廃止してしまったものですから困難だと思いますが、新制の論文博士の審査方法、たとえば今言われている試験を行なうかどうかということについては、あらためて検討の上で改善をはかりたいという方針でおりますことをお答えしておきます。
#20
○松前委員 旧制度を延ばすことは、やろうと思えばできますよ。あれは九年間ということになっておる。来年の三月三十一日で終わるのです。これを延ばしさえすればいいのです。九年を十年くらい延ばせば、十一年に延びるわけです。これは文部省令で出ているわけですから、あなたが、ちょこっと筆を加えればできるのです。法律ではないのだ。それをおやりになりませんか。
#21
○長谷川政府委員 旧制の問題については、もうすでに廃止してしまったものがあるんですね。ですから、新制の博士論文の問題は、せんだってから出ているように私たちも研究いたしますが、旧制の問題は、松前さんの言うように、私がすぐ九年のものを十一年に直すような格好には、ちょっといかぬように思います。
#22
○松前委員 旧制はまだ存続中なんです。廃止したところがあったって、その廃止したところは廃止したところでちっとも差しつかえない。存続しているところにこれを許しておけば、ちゃんとそこの大学に論文を出せばその道は開かれるのですから、そういう廃止したところまで、また作りなさいという必要は何もありません。一応政治は生きものですから、どんどん流れていくその事態に処して適切なる処置をとってほしいと私は思うのだが、その点は、もう少し政務次官は勇敢にやってもらわぬと、うしろの方の影響だけでは……。
#23
○長谷川政府委員 この問題は、私もだんだん研究しておりますが、何さま旧と新の深い関係などについては、さらにまた研究をする必要があると思います。新制度の中に、松前さんのおっとやったような旧制度を生かす道もあるんじゃないか。新制度の問題については、私の方で検討して、改善していこうという意思を持っておりますことを御了承いただいて、将来の善処――これは私の政治力になりますけれども、その上でまた御吟味いただけばけっこうだと思います。
#24
○松前委員 なかなか大臣以上の答弁でけっこうですが、別な角度から一つなにしましょう。
 大体、新制度の学位というものは、大学の教授の指導によって大学院を五年間勉強して、いろいろやって卒業して、そして博士になる、こういうのが一つ。第二は、論文が出てきたら、その大学なりで一つ適当に試験をして、その狭き門を通過して、論文が通過とたら博士もあげましょう。従って、その大学の名前を付した博士になるわけです。何々大学何々博士、こうなる。これは私は当然だと思う。というのは、その大学の教授というものは万能ではありませんから、ある点やはり特徴はあるけれども、その知識の範囲は狭いのです。狭いなりにそこでもって指導を受けて、その一つの学校の学門の風に従ってもらった学位というのは、それは私はそれだっていいと思う。しかし、外から、研究所あたりでうんと研究したもの、これは大学の研究よりはるかに上のものが多いのです。現在、日本の工業その他をプロモートしているところの大きな要素は、文部省の研究所じゃありませんよ。そのほかの研究所です。それらが今度は論文をこっちへ出す。論文を出したときには、これは何々大学の何々博士であるよりも、もっと広範なものでなくちゃいけない。だから、従来の旧制度でなければいかぬと私は思う。だから、そういう大学の名前なんかつける必要はない。これは文部大臣の認可を経て――文部大臣に届けて出て博士になるのが新制度ですけれども、認可を得て文部大臣の立場において一つの博士をやる。そのかわり大学の名前なんかつけぬ。その大学の卒業生でない人間に学位を出すのに、その大学の名前なんか冠してもらわぬでもいいです。だから私は、その二本建にすべきだと思う。だから、今のような御答弁ではどうしても満足いきません。もう少し、学位というものと、その彼らが研究した場というものと、それからその内容そいうものを、もっとまじめに、その人の立場を尊重して考えてやらなくちゃならぬものだと私は思う。あまり官僚的にしゃくし定木に物事を考えて、アメリカのだれが教えたか知らぬけれども、その通りにするということは、まことにこれは自主性のない話じゃないかと私は思うのですがね。旧学位制度は悪くありませんよ。そのために多くの人が輩出してきておる。野口英世にしても、あの人は日本の大学を出た人じゃないですよ。けれども、あれじゃありませんか。そういう人はちまたにたくさんおるのです。外国の例を申しましたならば、たとえばファラデーのごときは、あれは小僧からなっている。そして日本の現在の電気技術界のほとんど濫膓をなしておる、いわゆる最初の開拓者なんです。それがファラデーで、これは小僧上がりですよ。だから、そういう学閥的な風潮というものは、私はなくさなくちゃいけないと思う。同時にまた、学閥の中に入らなければ博士になれない、しかも、学閥の名前を上に冠するごときはもってのほかだ。文部省は、少なくとも学閥打破をやるべきだ。ところが、学閥擁護を今文部省はやっておる。それじゃ話にならぬと私は思う。この点についてどういう考え方をお持ちか、一つ伺いたいと思う。
#25
○長谷川政府委員 だんだんの議論の中に問題が深刻に解明されていきますので、私は、今松前さんがおっしゃったように、日本の学問が、日本の大学を出ない人によって非常に大きく学界に貢献している事実なども認めます。ここでこうして論議される間に、すでに新制の問題にいたしましても、私の方で検討しようというふうな話が出たことが一歩前進だと、こう思うのであります。そうした根本的な問題についても私たちの方でも大いに研究して、どういう点に隘路があるのか、日本の学界向上のために、大いに研究してみたいと思っております。
#26
○松前委員 この点について研究々々でのがれられるといけませんが、あなた方はどう思いますか。岡野さん、率直に言って下さい、言質をとろうというのじゃないから……。
#27
○岡野説明員 学位問題についての根本的なお考え方だろうと思うのでありますが、われわれとしましては、今定められた法規で実施しておるわけでございまして、それによりますと、学位は大学が授与することになっておるわけであります。現在そのワクの中で考えておるというわけでございまして、御指摘のような日本の実情に合わぬ点につきましては、先ほど来問題になります論文博士の運営の仕方等については改善を加えたいと思うのですが、先生のような根本的なお話になりますと、これはやはり全体の学界の意見を徴しまして、方向を定めなければいかぬという感じが個人的にいたすわけでございます。
#28
○松前委員 学界は学閥を作り出す、学界は学閥の本尊になっておる。そこへあなた方が諮問されたりいろいろされると、学閥の傾向を持った結論が得られる。それは私はよろしくないと思う。今のこの学位制度、新制度のようなものはまことに非民主的で、まるで少数の人間とある特定の関係以外は博士にもなれないというような、国民の多数に絶望感を与えるようなことになるのです。私は、もう少し政治的にこの問題は考えていかなければならぬと実は思う。やはり大学の先生は、自分の大学もかわいいし、自分たちの権力も伸ばしたいし、自分たちの藩屏を広げたいものだから、徒弟のような各格好で自分の育てた人間だけがかわいいということになる。そういう方向にだんだんいきます。それは文部省として、もっと見識ある態度をもって臨むべきだと思う。この点については、政務次官が将来ずっと政務次官をやってもらうと非常に都合がいいのだけれども、やっておるということにして、一つ答弁して下さい。
#29
○長谷川政府委員 先ほども申し上げましたように、この問題が、科学技術関係の方々から議論が出ましてから私たちも研究し続けておりまして、ただいま岡野君でさえも、個人的な意見を述べられたようなところにまで、大体持ってきているわけです。それをさらに煮詰め、また、大きな意味での松前先生の御意見なども、重大な参考の要素としてさらに研究してみたい。私は個人的に――まさにこれこそ個人的であります。けれども、やはり一般論といたしまして、松前先生のおっしゃる現在の大学制度の問題などについても、同感のところを持っております。その方向において問題を考えてみたい、こう思っておりますから、御了承願います。
#30
○松前委員 今の政務次官のお言葉、大臣の言葉と聞いてよろしゅうございますか。
#31
○長谷川政府委員 大臣がおりませんから、その通り御了承願います。
#32
○松前委員 しかし、この学位の問題は、非常に時間の問題がありまして、遷延を許さない、押し詰まっている、それで非常にあせっています。みんなあせりにあせっています。そんなあせりを持たせては悪いと思うから、何らかこれに対しては、政治的な、文部省としての表明が私は早急に必要だと思う。そういう人にも機会を与える。同時に、今までと同じような意味において、実力があるならば、大学の先生が万能な先生ならば別として、大体万能でないのですから、その辺でいろいろな試験をするとかへったくれとか言って、狭い門を作るようなことはしない。そのかわり、価値ある論文を出させて、価値ある論文に対してはどんどん学位をやる。そうしてその大学の名を冠しないなら冠しないというような声明を、あるいはまた、情報でもよろしゅうございますが、これを早急に流さないと、非常に絶望感を研究者に与える。私もチンピラ学位を持っておるけれども、何々大学はついていませんよ。そうすると、何々大学がつかない学位を持っておる連中は行方不明だ、何のことやわからぬ、そんなものは価値がないものになってしまうというような格好にもなるし、とにかく古い歴史というもはやはり尊重して、幾らアメリカが言うからといって、そっちの通りせぬでもいいじゃないか、私はそう思うのです。しかも、アメリカ的な行き方は、非常に学閥的な、非常に金持ちでなければ、長年勉学に耐える資金がなければ博士になれぬ、大体の線はそうなのです。この点については、時間の問題がありますので、特に一つ文部省の意のあるところがあるならば、早急にその方向を一般に知らせる必要があるのじゃないかというふうに、私は思うのですが、いかがでしょう。同時にまた、すみやかにこの結論を得てもらいたい。
#33
○長谷川政府委員 文部省として、非常に大事な問題でありますから、これは当委員会においてはっきり申し上げますが、早急に私たちの責任において結論を出して、学界に御安心をいただくように、学術の向上を期したい、こう思っております。
#34
○松前委員 どうも、元気のいい政務次官にしてはまだあまり役人的な答弁で不満足でありますが、いつまでにそれをやりますか。
#35
○長谷川政府委員 そこは一つ私を御信用願います。役人じゃありませんから、そう逃げませんから。
#36
○松前委員 長谷川政務次官の今の責任ある言葉で了承しますが、しかし、私は、私どもの背後にそういう気の毒な人がたくさんいるから、代表して言っているのです。だから、そのことを考えてもらいたいと思うのです。どうしてもこれをやらなければ私はいかぬと思う。これはほんとんに切実な要求です。これをやってごらんなさい。長谷川政務次官は、参議院の全国区に出馬したら当選確実です。これほど大きな影響を与えるものはない。そういうわけで、とにかく重要な問題として一つ取り上げてもらいたいと思います。特に事務当局の皆さんに申し上げておきますが、ただいまの博士の種類を検討する必要があると思う。その大学で勉強し、その大学の色彩を多分に帯びたものには、その大学の名を冠した博士をやってもいいじゃないかと思うが、外で研究して、全然大学の影響を受けない、みずからの力で開拓した人に対しては、その大学の名を冠する必要はないどころか、冠してはいかぬ、そう思います。そういう意味において、その大学の名を冠するから狭き門になってしまう。なかなか通さぬ。自分のはだ色に合わぬやつにはやらない。はだ色でいくのです。それではいかぬ。そういうような欠点を生み出す可能性がありますから、この点は特に問題にして、早急に取り上げてやっていただきたい。これは文部省としても反対はないだろうと思う。また、そうしなければ文部省の使命は達せられないと思う。一つお願いします。
#37
○前田委員長 ほかに御質疑ありませんか。――原茂君。
#38
○原(茂)委員 私は博士に関係のないしろうとですが、ちょっと聞きたいのです。
 今の博士号なんですが、ただ工学博士、医学博士という言葉だと、われわれには何の博士だかわからない。むろん、あまりこまかくてはいけないでしょう。ここに先輩の博士の先生方が一ぱいおるわけですが、たとえばお医者様にしても、盲腸を研究したから盲腸学博士というような、そこまでいってはいけませんが、内科とか外科とか、もうちょっと上のところでいいと思うのです。工学でも通信工学とか建築工学とか、何かそういう大別をして、下までおろした名前がつけられないものか。そういう点を研究したり、論議したが、何かの理由でそれはいけないことだときまったのか、そういうことを聞かしていただきたい。
#39
○村山説明員 現在の博士の種類は十七種類ございます。この十七種類にきまりますまでには、種々さまざまな、広くした方がいい、狭くした方がいいという論議を尽くした末に、十七種類に落ちつきましたわけであります。
 それから医学につきましては特殊な意見がございまして、基礎と臨床と分けた方がいいじゃないかという意見がございます。臨床につきましては、むしろ博士という形にせずに、内科とか外科とか、専門医というような形の特殊の資格にしまして、学位制度からはずした方がいいという有力な意見もございまして、現にございますが、それからも考慮いたしましたが、結局、医学につきましても、医学博士一本で現在の規定は行なわれている次第でございます。
#40
○原(茂)委員 その十七種類の博士号にきまるまでの論議というのは、いつごろですか。
#41
○村山説明員 これは昭和二十四年に新制大学が発足いたしましてから、博士につきましても、どうしたらいいかという議論を委員会その他いろいろな機会を通じて行ないまして、結論が出ましたのは昭和二十七年でございます。その結論に基づきまして、現在学位規則という文部省令が出て、具体的には省令に従って実施をされておるわけでございます。
#42
○原(茂)委員 松前先生がさっきからおっしゃっておることに全面的に賛成なんです。特にその中でも、学閥の名を冠するような博士号をつけるくらいなら、もっと先にもう一ぺん検討しまして、博士というものを学界の人だけが問題にするのではなくして、実は一般の大衆は、この博士号を見たときにいろいろウエートの置き方を変えていくわけですから、大衆の側から言いますと、もうちょっと一ランク落として分類をしてもらった方が、的確に深い信頼感が持てるといいますか、しかも、あの博士にこの問題は、こういう病気だったらあの博士に、という大まかな判断が、もうその博士号の名前でできるわけです。だから、もうちょっと大まかにわかるようにする。それから大衆から信頼を受けない博士号というのは意味ないわけで、大衆の信頼感が博士号ということに集約されていくわけですから、そういうものを考えたときには、学閥の名前なんかは断じてつけるべきではないのですが、それよりもむしろ、二つに分けるか三つに分けるか知りませんが、あまりこまか過ぎてはいけないと思いますけれども、そういう点をもう一度検討する必要はどうしてもあるだろうと私は思うので、長谷川次官が大臣にかわって研究されるそうですから、検討させるならそこまで検討させるように当局にも勉励をしていただきまして、ついでに、この次か何かの機会に先ほどの問題が解明されるときには、その問題も検討したがこうだという、はっきりした解明を私には与えてもらいたい。
#43
○前田委員長 他に御質疑はありませんか。――それでは質疑はこれにて終了いたしました。
 永井参考人には長時間にわたり貴重な御意見を御開陳いただきまして、本委員会の調査のため大へん参考になることと存じます。本委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。大へんありがとうございました。
 本日はこの程度とし、次会は、追って公報をもってお知らせいたします。
 これにて散会いたします。
   午前十一時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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