くにさくロゴ
1960/01/31 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第4号
姉妹サイト
 
1960/01/31 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第4号

#1
第038回国会 本会議 第4号
昭和三十六年一月三十一日(火曜日)
  午前十時三十六分開議
  ―――――――――――――
 議事日程第三号
  昭和三十六年一月三十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第二日)
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第二日)
  ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。江田三郎君。
  〔江田三郎君登壇、拍手〕
#4
○江田三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、総選挙後最初のこの通常国会にあたり、池田首相の所信をただしたいと思います。
 まず第一は、昨年五月十九日以来失われた議会の権威をどうやって回復するかであります。議会政治が権威を保つための第一の条件は、選挙が正しく行なわれることであります。私は、選挙中の三党首討論会におきまして、悪質な買収事犯の明らかなものは、司直のさばきを待つまでもなく、進んで党として処断しようではないかと提唱いたしましたが、残念なことに、池田首相からは、自分個人の選挙は公明選挙だという、答えにならない答えを聞かされただけであります。すでに幾人かの当選議員が悪質買収事犯として取り調べを受け、中には、過去の選挙において選挙取り締まりの先頭に立った経歴の者もありまして、国民をあぜんとさせているのであります。(拍手)首相は、国民が議会政治にどんな不信感を持とうと、何年かかるかわからない裁判の確定まで手をこまねいて見ておられるのかどうか。また、こうした事態の根本解決のため、金のかからぬように選挙法を改正せよということは、強い世論となっております。首相の頼みとする財界にあっても、経済同友会が経済再建懇談会解散を提唱いたしております。すでに審議会の答申は出ており、直ちに本国会において、このことだけでも法律改正をすべきであります。必要なことは、あらためて審議会を作ることではなく、池田首相の決意であります。(拍手)正しい選挙のためには、人口数に比例するよう定数を改正することも必要でありますが、とりあえず、金のかからない、金の使えないための改正を行なうべきであります。首相は、最近、自民党を近代的組織政党に脱皮させると言明されました。われわれは、このことが、から手形に終わらないことを期待するものであり、同時にその第一の試金石は選挙法改正であると考えて、首相の所信を承りたいのであります。
 国会が権威を保つため第二に必要なことは、国会と国民の間にパイプが通るということであり、野党の主張が正しく反映されるということであります。首相は野党に対して寛容と忍耐で臨むと言われますが、さきの臨時国会の清瀬議長選挙を振り返ってみれば、首相の寛容と忍耐ということは、あらかじめ結論をきめておいて、ただ若干の時間を野党に与えるということに尽きているのでありまして、単なる議会運営のテクニックにすぎないのであります。議会政治の正しいあり方は、審議の内容が結論を左右することであり、動かさない結論をきめておいて見せかけの審議をすることではないのであります。(拍手)この点について首相のお答えをいただきたい。
 次に、私は、日本の平和と繁栄のため、外交についての所信を伺いたいのであります。
 池田内閣は岸内閣の新安保条約を受け継いだのでありまして、本年は条約実施の第一年目であります。新安保条約の骨格は、第一にはアメリカと結んでの共産圏との力の対決、第二には日米経済協力であります。しかし、最近の世界の動きは一体どうなのか、お互いに冷静に判断しなければなりません。昨年末から今年にかけてのラオスに起こった事態は、まさに一触即発の危機を示し、アメリカは反共政権支持のために積極的な武力行使をもあえて辞せない方向をとろうといたしましたが、平和を求める世界各国の動きに牽制されて、ケネディ大統領はラオスの中立化を求める方向に大きく転換いたしました。ラオスは第二の朝鮮半島にならなかったのであります。イギリス、インドを初め、世界の各国は、平和の道を切り開くために、多方面に触手を伸ばし、機を失わない敏速な行動をとったのであります。翻って、日本の政府は一体何をしたのか。ラオスが不幸にいたしまして第二の朝鮮となれば、新安保条約によって、日本にあるアメリカの軍事基地は作戦基地となり、日本は戦争の共犯者となる危険性を持つのであります。新安保条約によって日本の危機は倍増されているのであります。イギリスよりも、どこよりも深い関係を持つ日本の政府は、ただ事態を傍観しておったのか。政府は、基地使用について、アメリカとどのような交渉を行なったのか。ラオスの両軍は、ともに日本製の軍服を着て、ともに日本製の弾丸を撃ち合っていると伝えられており、戦争をおそれる国民の不安にこたえて、以上の点を明らかにしていただきたいのであります。
 今や、戦争はだれの利益にもならないばかりか、人類が共に滅びる危険を持つことが明らかになりました。ケネディ政権の門出にRB47の乗員釈放が行なわれましたことは、一九六〇年代の第二年目の出発にあたって最も象徴的なできごとでございます。まさに六一年のニュー・フロンティアは平和共存の開拓にあるのであります。歴史の舞台は大きく回っており、いつまでも昔の歌を繰り返しているときではございません。
 しかし、平和はひとりでやってくるのではございません。戦争の危険性はどこにもころがっており、平和共存を世界の大道とするためには、人類のすべてが、どんなささいなことをもゆるがせにしない努力を重ねなければなりません。他国の指導者に頼み切るのではなくて、たとえ小さくとも、われわれにできることを積み重ねなければなりません。このことは、戦争放棄の憲法を持つ日本が世界の平和のために果たさなければならない光栄ある務めでございます。(拍手)池田首相は、この平和への責任を、アメリカの力をかり、その意向に沿わなければ果たし得ないとされているようでございます。われわれは、そうではなく、アメリカの軍事勢力と一体になった新安保条約こそ、日本を取り巻く国際緊張を高めており、憲法の精神に逆行していると確信いたすものであります。(拍手)しかし、かりに池田首相の立場に立つとしても、あなたまかせではなく、冷戦の一方の当事者であるアメリカを平和共存の方向に大きく引きずる決意と行動が伴わなければ、平和憲法に忠実な態度とは言えないはずであります。少なくとも極東の緊張緩和、そのための日中国交回復のためには、日本が進んで新しい条件を生み出さなければならないはずであります。このことがない限り、大国でないばかりか、独立国とも言えないのであります。(拍手)首相は、国連を重視し、日本の国連代表陣を強化されると言いまするが、独自の方針を持たない者が何人ふやされても、何の意味もないことであります。(拍手)
 池田首相は、中国との懸案解決について、気象と郵便の協定には用意があるが、政府間貿易協定については承認とつながるために踏み切れないと言明をされました。しかし、今や中国の国連加盟は時間の問題と言われ、ケネディ政権の外交担当者の見解も同様であります。何ゆえ承認につながることをおそれられるのか、その理由をお聞きしたい。また、同じく政府間協定でありながら、気象と郵便と貿易とではどれだけ本質的な違いがあるのか、また、臨時国会で言明された気象や郵便についての政府間協定に、具体的にどういう折衝なり努力をされたのかを明らかにしていただきたいのであります。
 中国問題について首相がアメリカ待ちの態度をとられるのは、現在の日本の貿易構造において、アメリカの持つ比重があまりに大きいからだと思いますが、一本の柱に寄りかかる貿易構造そのものが日本の地位を不安定にしているのでありまして、アメリカ、西欧、共産圏、AAグループというように、柱の数をふやすことが、安定した貿易構造なのであります。しかも、今後の共産圏貿易は大きく拡大する見込みであり、アメリカのドル防衛措置が強行される今日、中国との貿易を軌道に乗せることは緊急の課題となってきたのであり、私は、国民大多数の意向もここにあることは間違いないと思うのであります。昨日の衆議院における加藤質問に対する首相の答弁からしても、われわれは、池田首相にわれわれの中立主義外交を直ちに理解してもらうことの困難なことを知っております。しかし、中国との政府間貿易協定だけなら、今日の平和共存の大勢の中で、対米関係を悪化させるはずはないと思うのであります。これを直ちに対米関係の悪化と考えるのは、自民党の長い間のアメリカに対する伝統的コンプレックスの表われだと思うのであります。(拍手)さらに忘れてならないことは、中国との国交を回復することは、さきの戦争で中国人民に、はかり知れない損害を与えた日本国民として、一日も早く果たさなければならない道義的責任があるということであります。(拍手)また、これによってアジアの緊張をゆるめることは、アジアの日本として、世界の平和のために背負った責任でもあります。こうした点について首相の見解を承りたいのであります。
 政府は、中国との問題には足踏みをしながらも、韓国との国交回復には大きな熱意を示しているようであります。一体、日韓交渉はどこまで進展しているのか。政府は、韓国の政権を安定した政権と認めて、長期の借款を与えるのかどうか。このことがNEATO結成につながるという見方も流れておりますが、首相は、将来、NEATO結成の意思があるのかどうか。われわれは、朝鮮半島の事態は、まさにラオスの事態と似通った状態にあり、真の安定は南北朝鮮が中立国として統一されることにあると考えます。中立を求める声は韓国内部にも高まっており、今、日本が韓国とだけ国交を回復することは、悲しむべき分裂の事態を固定化させ、朝鮮民族の半分を敵に回すことにほかならないと思うのであります。最近北鮮側から三千万ポンドの貿易の申し出がありましたが、現在北鮮貿易は、わざわざ香港を経由するという世界にも例のない不自然な形をとっているのであります。われわれは一方的な日韓交渉に深入りするのではなくて、当面、南北それぞれと政府間貿易協定を締結して、一歩前進すべきものと思うのでございまして、この点、首相の見解を承りたいのであります。
 次にお尋ねしたいのは経済政策についてであります。ことしは、池田内閣にとって経済の高度成長政策の第一年目でありますが、この政策の出発は、新安保条約第二条による日米経済協力強化を背景としたのであります。ドル防衛の措置が強力に行なわれるようになった今日、私は、条件は出発のときとは異なっていると思います。従って、当然この高度経済成長政策は改定されなければならぬと思うのであります。それとも、首相はこのことあるを予想して計画を立てたのか、あるいは影響はないというのか、この点を明確にしていただきたい。
 もし、何ら影響されることがないというのであれば、池田内閣の三つの柱である公共事業投資と減税と社会保障は、それぞれ当初の構想と変化はないのか。首相は、総選挙前、税の自然増収を二千五百億円と見込んで、一千億減税を唱えられました。ところが、自然増収は四千億円と大幅に引き上げられたにかかわらず、減税は、ガソリン税の増収を差し引くと、わずかに六百二十一億円であります。国民所得に対比しての税負担も、税制調査会答申の二〇%をこえ、昨年度の負担をもこえ、二一%近くなったこの事実を、公約通りの減税を行なったと言われるのかどうか承りたい。
 さらに社会保障の面は一体どうか。なるほど社会保障関係費の総額は増額されましたし、生活保護基準も一八%引き上げられました。しかし忘れてならないことは、今日一般世帯の生活水準に比べて、被保護世帯の生活水準はわずかに三九・七%という事実であります。池田首相は、昨年秋、食えない生活保護は憲法違反だとして、政府が裁判に敗れたことを忘れてはおられないと思うのであります。われわれは、保護基準の五割引き上げを主張し、厚生省でも最少限二六%の引き上げを主張したのに対し、予算ではわずか一八%であります。この諸君には減税の恩典はありません。あるのはこれからの物価の引き上げであります。また、社会保障の名によって新たに始まる国民年金の掛金であります、社会保障の名によって医療費の引き上げられたことに伴う健康保険掛金の引き上げであります。一八%はどこかにすっ飛んでしまい、一そうの生活の苦しみが始まるのであります。ケネディ大統領は、ドル防衛の苦しい中から、就任後の施策第一号として、貧困階級への食糧増配を断行いたしました。池田首相は、空前の満腹予算の中で、貧しい同胞に生活苦を与えるのであります。また、被保護世帯とのボーダー・ラインにある人々は、いささかも与えられるところなく、もっぱら奪い取られるのであります。まさに昭和の残酷物語というほかはございません。(拍手)多くの国民が要求している国民年金の改善も、何ら手を打とうとはされておりません。首相は、日本は大国であると言われますが、大国であるためには、国民全体のつり合いがとれていなければならないはずでありまして、その政治は、最後の人々に常にあたたかい手が差し伸べられていなければなりません。首相は、今後公聴会など広く世論を聞いて、この社会保障の内容を改める気にはならないのか。一たんきめた以上は、与党の多数の力にものをいわせて、強引に押し通そうと言われるのか。もしそうであれば、話し合いの政治とは一体どういうことなのかを聞きたい。総選挙における自民党の得票率は全体の六割であります。四割の野党の声、国民の声は、実質的に何ら顧みられないのがこれまでのあり方でございましたが、私は、これはどこか大きな間違いがあると思うのであります。話し合いの政治を唱えられた首相としては、また同時に党の総裁としては、何かこれまでと違った態度がなければならぬと信ずるのであり、お答えを願いたいのであります。
 私は、この政府予算は、当初高度経済成長を立案したときとは内容が大きく違っていると思うのであります。すなわち、予想しなかったドル防衛に直面して、輸出の伸びによる需要増大が狂ったために、その埋め合わせを国内需要に求めて、このために減税や社会保障に回す額を大きく削って、公共事業投資に振り向けたと思うのであります。しかも、それだけではなお成長の裏づけに不足をして、公共料金の引き上げを行なったのでありますが、今日満員電車に乗せながらの国鉄運賃の値上げには、国民ひとしく腹を立てております。(拍手)これは、事業拡張資金であり、当然政府出資なり借入金でまかなうべきでありまして、国民は、高度成長政策の恩恵を受けるのではなく、そのしわ寄せを受けるのであります。しかも、との料金値上げは必ず他に波及せずにはおきません。私鉄もガスも電力も、競って値上げ競争を展開するでありましょう。首相は消費者物価は下がっていると言われますが、家庭の主婦は毎日違った感じで台所生活を送っているのであり、首相自身も、資本家の別荘に自動車を飛ばす道すがら、小田原のかまぼこが十円上がったことにびっくりされたはずであります。数字の魔術というものはいいかげんにしていただきたいと思うのであります。首相は、もし年間の消費者物価水準を、企画庁が案として出した一・一%、私たちはこの一・一%の引き上げにも反対でございますが、かりに企画庁案の一・一%を上回った消費者物価の引き上げがあったときには、いかなる政治的責任をとられるのか、明らかにしていただきたい。(拍手)
 その上、さらに金利の引き下げまで行なうのでありますから、景気は過熱にならざるを得ません。西欧の景気は下半期下降に向かい、アメリカの不況回復は長引くと見られております。きのうのケネディ大統領の教書を見ましても、アメリカの経済危機がいかに深いかを示しており、この点に関する首相及び政府の見解の甘さを物語っていると思うのであります。しかも、アメリカのドル防衛により、世界の貿易競争は激化し、日本の貿易収入は、首相の言われるような特需の一億二千万ドルの減少ではなく、もっと深刻であり、すでに最近の輸出貿易が下降線にあることが、最近の通産省発表ではっきりとしているのでありますが、首相はこれを一体どう見るのか。われわれの見解では、日本の景気は過熱であり、国際経済の動向とはすれ違いであり、やがて経済政策は設備投資過大による大きな破綻を来たさざるを得ないと信ずるのであります。このとき、破綻を打開するために残されたただ一つの道は公債発行だけとなるのでありますが、首相は、将来、少なくとも今明年の間、公債発行は行なわないと言明できるのかどうかをただしたいのでございます。
 このように見ていきますならば、本予算は明らかに独占の強化のためのものであり、さらにつけ加えられるのは、日米経済協力の名のもとにアメリカのドル防衛に協力する予算でもあります。すなわち、貿易自由化を押しつけられ、軍備の予算をふやし、やがてはアメリカにかわって韓国に借款を与え、ガリオア、エロアの返済を始めようとし、ドル防衛への積極的協力の方向が現われた予算でございます。これらの犠牲は広く国民にかぶせられ、二重構造と所得の格差は一そう広がるのが必至であります。これをわれわれは新安保体制と呼ぶのであります。世界の外交の方向も、アメリカの経済の実態も、安保改定の当時とは大きく変わっているにもかかわらず、池田首相は、情勢の変化に目をつぶって、イノシシのように突進しておられるのであります。首相は、経済のことはこの池田にまかせよと、こう言われます。しかし、池田首相は、かつて一千億減税、一千億施策の失敗の経験を味わった人であります。昔のことだけではございません。過ぐる臨時国会には、第二次補正は組まないと言明をされながら、今回四百億をこえる補正を出そうとしておられるのは、無責任というか、見通しがきかないというか、とうていこの池田首相にだけはまかしておけないと言わざるを得ないのであります。(拍手)われわれは、もう一度誤りを重ねようとせられるその池田首相に声を大きくして警告するものであります。しかも、この失敗の重荷の全部は、労働者、農民、中小企業者に転嫁されるのが必至であるだけに、われわれは、単に警告するだけではなくて、この方向に大きく抵抗する国民運動を展開し、強く政策転換を求めるものであります。
 次に、私は、こうした犠牲者の中で今日最も大きな不安にさらされている農村の問題について、首相の見解をただしたいと思います。首相の農業人口六割削減論に対しては、おそらく、農業を軽視するのではなくて、行き詰まった農業を採算のとれる農業に再編成するのが真意だと弁明されるでしょう。そのためには、農業基本法も用意したし、農林予算も大幅にふやしたと言うでございましょう。しかし、われわれは逆に、政府の農業基本法や農林予算そのものが農業軽視であることを指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
 まず第一に、農林省の農業基本法草案は、その目的として、「農民と他産業従事者との所得の均衡」という点を取り上げておりますが、この他産業従事者というのは具体的に何をさすのか。基本問題調査会の答申では、「都市的要素を除いた農村地域の勤労者」となっておりまして、このことは、農民の所得を農村の低水準に固定することになるのであります。われわれは、農村と都市との生活文化水準の格差をなくすることを明確な目標にしなければならず、均衡の対象は都市労働者でなければならぬと考えるのであります。首相の考え方からいたしますならば、この目標達成のためには、まず農業の経営規模が大きくならなくてはならず、そのために、第二次、第三次産業が発展して、農村人口を吸収するというのでありましょうが、最近の高度経済成長により、村の若い労働力が他産業に流れていることは事実でありますが、他面、農家戸数が減っていないということも事実であります。このことは、これらの労働力が主として臨時工や社外工という低賃金労働者なのであり、その収入だけでは家族を養うことができない、農業という副収入を手放すことができないということであります。これでは日本農業の経営規模の拡大には役立たないし、また、このような副業農業は、若い働き手を欠いたおくれた経営内容でありまして、農業全体の生産性の向上に足かせとなって、ただいたずらに低賃金の温床を固めることにしかならないのであります。(拍手)
 農業基本法が第二に目標としているのは、経営の近代化であり、農林省の構想では一町五反以上の農家を近代生産に向上させようというのでありますが、一体、一町五反や二町歩の農家の経営をどう近代化してみたところで、今後の国際農業との競争にどうやって立ち向かうというのでありましょう、国際競争に耐える近代化は大型機械を中心とした共同化以外にはあり得ないのであります。農林省の基本法草案は、依然として自作農主義に閉じこもって、共同化の道をとろうとはしない、協業という消極的な態度しか上っておらないのでありまして、これは農業の発展を指向するのではなくて、農村の古い思想を温存して保守党の基盤を守ろうとするにほかならないのであります。(拍手)共同化によってこそ、第二種兼業農家の副業的農業をも近代経営のワクの中に入れ込んで、日本農業全体を前進さすことができるのであります。
 さらに、このようにして経営が近代化したところで、どういう価格が保障されるかということが問題であり、この点からして一番重要なことは、農畜産物の貿易自由化をどういうテンポで行なうのか、主要農畜産物についてどのような価格支持政策をとるのか、すなわち生産費及び所得保障方式でいくのかどうかという点でありまして、この点の首相のお考えを承りたい。農民の多くは、今回の麦に対する措置からして、近い将来、米はどうなるのかという不安を持っており、同時に、選択拡大とか何とかいっても、貿易自由化になれば息の根をとめられるのだという、前途に希望のない毎日を送っているのであります。池田首相の農村人口政策というものは、農民をこのような絶望状態に追い込んで、当てもなく都会に追い立てようとするのかどうかをお尋ねしたいのであります。農林予算がどのように増大されましても、基本方向が正しく設定されないでは、ただいたずらに四百をこえる補助金団体のボスを育成するだけのことに終わりまして、自民党の農村支配網の確立にはなっても、農民の幸福にはならないのであります。(拍手)
 最後に、私が今まで質問をして参りました議会政治の民主化、選挙法の改正、平和中立の外交、社会保障を初め生活向上の問題、あるいは共同化による農業の立て直しなど、これらのすべてのことは、憲法を尊重し、憲法を完全に実施するかどうかにかかっているのであります。国の政治にとって何が大切なことか、何が価値のあるものなのか、経済政策はだれのためのものなのか、幸福とは何かということが、絶えず追求されなければなりません。われわれは特別に変わったことを申しておるのではないのであります。今の日本国憲法の中身を完全に誠実に実行しようというのであります。池田首相はこの憲法をどうしようとされておられるのか。文部大臣のILO発言などを聞きますというと、憲法の保障する労働者の諸権利に対して、まさに戦前的な感覚しか持ち合わせないことを露呈したものでありまして、(拍手)国民の多くに不安を与えているのであります。池田首相の国政に処する基本的姿勢の表明を求めて、一応私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点の選挙の公明でございまするが、民主主義を完全に打ち立てていきます場合におきまして、公正な選挙が行なわれることは当然でございます。私は選挙法の改正につきましていろいろ考えております。従来、調査会によりまして答申が出、これを与野党で審議いたしましても、なかなか結論に達しないのであります。私は、新たに相当権威のある調査会を早急に設けまして、そうしてその結論によって、できるだけ早い機会に改正をいたしたいと考えておるのであります。
 なお、寛容と忍耐についてでございまするが、私は、政治につきましては、与野党と議会運営につきましては十分話し合いをしていかなければなりません。また、政策につきましても、私は国会において十分論議していただきたいと思うのであります。従いまして、予算案その他の法案につきましては、野党の御批判を十分喜んで受けるのであります。その結果におきまして、私は修正する必要があるならば国会で修正なさることに反対するものではございません。
 次に、ラオスの状態でございまするが、関係各国の努力によりまして、私は御心配のような事態は起こらないものと認めております。また、従来ともそういう方向で関係国と協議をし、できるだけの努力をいたしておるのであります。
 なお、中共との政府間貿易でございまするが、私はこの政府間貿易が中共承認になるようにとられることはただいまの情勢としてとれない。従いまして、私は今まで通りの積み重ね方式で行って、世界の情勢を見ながら適当な措置をとっていきたいと考えておるのであります。
 次に、韓国に対しての問題でございまするが、わが国といたしましては、一衣帯水の間でございますので、韓国と国交の平常化をしていきたいと考えております。なお、お話の韓国への借款とか、あるいはSEATOへの参加、こういうことは考えておりません。(「NEATOだ」と呼ぶ者あり)
 次に、経済問題でございまするが、高度成長とドル防衛の関係につきましてお話し申し上げます。私は、日本が高度成長をいたしまするには、貿易・為替の自由化が絶対必要であると数年前からその考えで進んでおったのでございます。しかもまた、世界の経済の伸展に、アメリカがドルを持ち過ぎておるということも世間でいわれておったのであります。だんだん私の予想通り、また各国民が期待しておりまするように、アメリカの世界経済における地位はドルの減少によりましてだんだん低くなり、西欧並びに日本の国際的な力が強くなってきたのであります。しかして、今回のドル防衛につきまして、私は高度成長を変える考えはないのであります。変えなくても、昨日申し上げました通り、われわれが貿易の伸長をはかっていくならば、また国内の生産態勢を指導強化していくならば、これを克服できると考えておるのであります。
 また、税の自然増収でございまするが、さきの国会におきまして、大体千五百億をこえる自然増収を見ました。しかし、あのときも申しておりましたごとく、年末における法人税の収入、あるいは年末の賞与、あるいは間接税収入によりまして、今のところはこれが適正でございまするが、将来はまだわかりませんと答えておいたのであります。従いまして、一月の状況におきましては、相当の予想外の自然増収が出ましたから、適当な措置を講じたのであります。
 また、社会保障の関係でございまするが、お話の通り、私は今で十分とは思いません。しかし、減税につきましては、調査会の答申通り、平年度千二百億円程度、初年度、所得税、法人税で九百二十五億円程度の減税をいたしたのであります。大体予定通りの減税をいたしておるのであります。しこうして、社会保障制度あるいは公共事業につきましては、経済の伸び、また、今の状況から考えまして、私が当初考えておった以上に社会保障費は予算を計上することができたことを申し上げておきます。まだこれでも十分ではないということは先ほど申し上げた通りでございます。
 次に、消費者物価の問題でございまするが、企画庁の調査は大体妥当なものと思います。われわれは、今後物価政策におきまして、あの線を守るように努力していきたいと思いますが、何分にもこれは見込みでございます。従いまして、経済は生きものでございますから、これが動いたときには責任をとるか、これは私はそういう責任をとらずに済むように努力していきたいと考えております。(拍手)
 また、貿易の状態でございまするが、御心配の点はわかりまするが、一昨年におきましては、日本の輸出入貿易は二割ふえました。昨年でも一割五分以上、一割七分くらいふえておるのであります。今年におきましては、大体一割以上ふえる見込みでございまして、これは私は達成できるものと考えておるのであります。従いまして、国際収支におきましても、大体二億ドル程度の黒字を見込んで差しつかえないと考えておるのであります。従いまして、今後、今明年中に国債を発行するという考えは、ただいまのところございません。
 なお、私が石橋内閣のときに出しました千億減税、千億施策は、失敗ではなかったかと、こうおっしゃいますが、私は今日の高度成長のもとをなした予算でございまして、決して失敗とは考えておりません。あの積極政策があったからこそ今日のような状態ができたことを私は確信いたしておるのであります。数字をあげて申し上げればおわかりと思いますが、これは、はぶきます。
 なお、農村につきましてのお考えでございまするが、私は、農村の方々の所得を、他の産業の方々の所得と見合うようにしたい。農村における他の人人の所得ではございません。全体的に農村の所得を上げまして、他の一般産業との格差を少なくしていこう、だんだんなくしていこうというのが、私の農村に対する政策でございます。従いまして、私は農業基本法その他財政金融措置を講じまして、そうして、また工場の地方分散等を行ないまして、ほんとうに全産業が均衡のとれた発展を促すよう、万般の措置を講ずる考えでございます。
 なお、憲法につきましてのお考えでございまするが、憲法はわが国の最高法規でございます。われわれはあくまでこれを尊重し、そうしてこれに従って行動しなければなりません。御承知の通り、憲法調査会におきまして、憲法を改正する要ありや、また改正する要ありとすればどの点について改正する要あるかということを検討させておるのであります。この結果を見て、その結果に国民大多数の結論が出ましたときに私は考えたいと思っております。(拍手)
#6
○議長(松野鶴平君) 江田三郎君。
  〔江田三郎君登壇、拍手〕
#7
○江田三郎君 首相は、昨日の衆議院の加藤質問に対しましては、まことに威勢のいい答弁をなさったのでありますが、本日は全く精彩を欠いた答弁になり、しかも、内容のぼけた答弁でありまして、私は、若干再質問をしたいと思います。
 選挙の問題については、あなたの党に、何人かの悪質な買収事犯、しかも、中には、さきに検察の首脳にあったというような人が出ているのを、これを裁判の確定までほうって置くのかどうかということであります。同時
 に、もう一つは、もう選挙法の改正は、今さら審議会を作るのでなくて、答申案の出ている部分はすみやかに立法化するかどうかという点なのであります。この点の答弁をいただきたい。
 それから、ラオスの問題が心配される方向に行っていないというととは、私が申しましたように、すでにケネディ政権も、これを中立化の方向として認めて、転換をしたのであります。ただ、その間、日本は何をしたのかということを私は聞いているのであります。ただ、韓国の問題について、韓国に借款を与える気持はないと言われたことは、私ははっきり記憶にとどめておきます。
 それから、アメリカの世界経済における地位が、西欧、日本に比べて低くなったのは、私の予想通りということは、池田首相が、今後アメリカに対してコンプレックスをはねのけたものと考えていいのか、それとも勇み足であるか、ちょっと注意しておきます。
 税制問題について、あなたは税制調査会の答申通りやったと言われるが、税制調査会は、国民所得に対する税負担は二〇%を適当としたのであります。今日の税負担は二一%になろうとしているのでありまして、明らかに違っているのであります。あるいは経済問題について、経済のことはこの池田にまかせろ、こういう経済問題について、物価の値上げについては、企画庁案の一・一%で押えるつもりであるが、それが狂ったからといって責任をとるとは言わないところに、やはりあなたの物価値下げ言明というものは、数字の魔術といわなければならぬのであります。公債発行についても、ただいまのところというようなあいまいな言葉しか使われないところに、ほんとうにあなたがこの経済高度成長について自信があるかどうかを私は疑わざるを得ないのであります。
 最後に、農村問題について、農村における他産業との均衡ではなしに、農民と、農村以外の他産業との所得の均衡をとると言われましたことは、農林省の基本問題調査会の答えとは違うのでありますから、もしそういう方向でいくならば、価格についても、生産費及び所得保障方式でいかなければならぬ結論になるのでありまして、この点はその通りに解釈していいのかどうか、念を押しておきます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(池田勇人君) さきの選挙におきまして、選挙違反を起こした人についてどういう処置をとるか。――私は司法当局の措置にまかす考えでおります。党といたしましてこれをどうこうすることは、私は行きすぎであると考えております。
 また、選挙法の改正につきまして、今まで答申案が出ている。その答申案によって立法化するかという御質問でございまするが、私は、御承知の通り、今までの答申案によりまして与野党で協議いたしましても、なかなかととのわなかった。従って、先ほどの選挙の結果を見まして、新たに強力な調査機関を早急に設けまして、早急に結論を出してもらって、そうして私は立法化いたしたいと思います。その結論が今国会中に出まして、そうして今国会中に提案した方がいいと思ったら、今国会中でも提案いたします。
 次に、米国の経済の逆調についての御質問でございまするが、江田さんは御承知の通り、もう数年前からドルがアメリカに集まり過ぎておる、これをヨーロッパ、日本、こういうところが輸出貿易によってこのドルの集中を避けよう、そうして世界全体がよくなろうということは、私ばかりではございません。ヨーロッパの政治家、学者の言っておったことであるのであります。そのことが実現された、ただその程度が早く、大き過ぎるというだけでございます。従いまして、ドル不足になりましたら、アメリカの状態をわれわれは考えて、お互いに助け合っていこうという結論に到達しつつあるのであります。(拍手)
 また、税負担は調査会のいうことを聞いていないじゃないか、こういうお話でございますが、これはこまかい問題で、大蔵大臣から御答弁するのが適当かと思いまするが、私の見るところでは、所得税、法人税につきましては、大体、調査会の意見を聞いております。ただ問題は、調査会は課税所得百八十万円まで相当の軽減をしろというのを、課税所得七十万円、すなわち総所得百万円程度の減税をしただけで、大体におきまして税制調査会の意見を聞いておるのであります。ただ国民所得に対しまして何パーセントがいいかというのは、これでなければならぬという答申ではないのであります。これは二〇・五%がいいか、あるいは二〇%がいいか、いろいろ問題がございます。今回の税負担につきましても、私は大体二〇・五、六%で大体妥当なものと考えておるのであります。
 なお、公債の発行は三十六年度はいたしません。三十七年度も私はその必要はないと思いまするが、(拍手)経済は生きものでございますから、再来年のことをとやこう言うことは差し控えますが、今の状態では、国債発行をしなくとも、高度経済成長で相当の予算が盛れると考えておるのであります。
 なお、農民の所得の問題でございまするが、私の理想は、農民の方々が農村における他の産業の方々と一緒になることで満足いたしておりません。農村の人も都市の人も、とにかくその所得格差を少なくし、だんだんなくすることを私は理想として進んでおるのであります。
 ラオスの問題につきましては、私は外務大臣より、ジュネーブの国際監視委員会によりまして、イギリスあるいはインドが相当努力しておる、日本もそれに話をし合って、そうしてお互いに熱い戦争にならぬように努力しておりますと、外務大臣から報告を受けております。詳しいことは外務大臣からお話をいたさせます。(拍手)
#9
○議長(松野鶴平君) 小柳牧衞君。(「議長、外務大臣の答弁がない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
 小柳君、少しお待ち下さい。小坂外務大臣。
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(小坂善太郎君) わが国といたしましては、ラオスにおきます状態が一日も早く静ひつに復しますように考えまして、ただいま総理大臣からお答えがありましたように、関係のありまする各国との間に、これをおさめるという方向で、いろいろ通常の外交ルートを通じて話をし合っておったのであります。先ほど、インドやイギリスが非常にやっているのに日本は何をしているのかというお話がございましたが、これは御承知のように、国際監視委員会、ジュネーブにおきます国際委員会の当事者がインドでございますので、そういう関係もありまして、これらの国が非常に活発にやっておりまして、われわれはわれわれなりの考え方で動いておるわけでありますが、これを、外交の問題を必ずしも日本が先頭に立って派手にやるということがいいとも限りませんので、(拍手)やはりその時の情勢に応じて一番適切な方法をとったこと考えておる次第でございます。
 なお、安保条約との関係のお話がございましたのでありますが、ただいま米軍が日本をベースとしてラオス問題に介入するということは、資本をベースとして考えているということはございませんのでございますし、将来もこういうことはちょっと予想されないのでございます。従いまして、安保条約にございまする事前協議の問題というものは必要ない、かような状態でございます。幸いにいたしまして、非常に平静化の方向に関係国際各国の努力によって行っておりますので、どうぞ一つ御安心を願いたいと思っております。(拍手)
  ―――――――――――――
#11
○議長(松野鶴平君) 小柳牧衞君。
  〔小柳牧衞君登壇、拍手〕
#12
○小柳牧衞君 私は自由民主党を代表いたしまして、池田総理並びに関係閣僚に質問いたしたいと存じます。
 昨佃、池田総理並びに関係閣僚まり施政方針の概要について承ったのでありますが、さらに一そう明確に承っておきたい問題があります。
 その第一は、総理の国際情勢に対する認識、判断についてであります。申すまでもなく、わが国の国際上における立場よりいたしまして、この判断はあらゆるわが国の施政の基調となるからであります。それでお尋ねいたしたいことは、アメリカ外交の基調についてであります。アメリカの政権がアイゼンハワーよりケネディに移ったとはいえ、元来、超党派外交を基調としていた国柄たけに、外交の方針がにわかに一変するとは思いませんが、対共産圏外交にはやや変調を生ずるのではないかという一般の見方でございます。アイゼンハワー政権には、過去八年間に積み重ねられた行きがかりがあって、問題の解決を困難ならしめていた面があったのは事実でございまするが、こうした一画は、ケネディ政権になってかなり払拭されるだろうと期待されているのであります。われわれはこの変動によりまして、あるいは自由貿易の問題や、あるいはまたドル防衛の問題等についても関係の大きいことを感ずるのではありまするが、それらの中でも、最もわれわれが注意を払わなければならぬ問題は対中共政策の変化でございます。ケネディ大統領は、中共が必要ならば食糧を送ってもいい、こういうようなことも言っておりますが、対中共政策の将来はどういうふうに展開していく可能性があるか、この問題に関連いたしまして、政府の日中貿易に対するお考えも承りたいと考えるのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、所得倍増計画と物価政策についてであります。所得倍増政策は、わが党新政策の核心でありまして、これを遂行することは池田内閣の最も大きな使命でございます。所得倍増計画が絶対にインフレを起こさぬ理由及びこれに対する周到なる政策については、昨日それぞれ説明があったのでございまして、われわれはそれを了承するものでありますが、しかし、申すまでもなく、政治はあくまでも理論に立脚いたしまして、しかも、その実行にあたりましては、人心の機微を察しまして、そのおもむくところに任意をしなければならぬことは当然でございます。それでありまするから、われわれは、この観点よりいたしまして、いわゆるインフレ・ムードに注意を払わなければならぬと思うのでございます。それで、第一に考えなければならぬことは消費の増大の問題でございます。企画庁長官の言うごとく、今後の経済成長をささえる主要要因は個人消費支出の増加にあると思います。しかし、消費について静かに考えなければならぬことは、今日国民一般が好景気を安易に受け取りまして、消費の面においてなかなか旺盛であり、消費は美徳であるという言葉さえも横行して、消費革命を謳歌している現状でございます。私は、消費をあながちとがめるものではありませんが、実力を越えた消費生活は結局において国民生活を不健全にするのみならず、所得倍増政策の大きな障害となるとさえ憂えているものであります。現代はムード時代といわれるほど、一たん燃え上がったムードの火というものは、枯野を走る火のように、なかなか容易に消えないものと思うのであります。従って、消費の増大を慎重に考慮し、明確適切な物価政策を堅持して、需要供給の調整をはかる必要があると思うのでありまするが、この点についての政府の所見をお尋ねいたす次第であります。
 次に、減税についてお伺いいたします。減税につきましては、政府は法人税、通行税などの間接税合計千百三十八億円の減税を断行することとし、三十六年度には千五十億円程度の減税を見込んでおります。だが、一方におきましては、先ほども指摘のあったように、ガソリン税の増税あるいは租税特別措置の整理と相待ちまして、三十六年度の純減税額は六百二十八億円となっております。今、減税の額と税の自然増収額とを比較いたしまするというと、昭和三十二年の一千億減税が自然増収額の二五%に上っていたのに対し、三十六年度の減税は自然増収見込額の一六%程度にとどまっております。これは、申すまでもなく、きわめて高率の経済成長から出た三千九百億円という空前の巨額な自然増収を対象とするからであります。世間では、三千九百億という巨大な自然増収がある以上、減税はさらに大幅であってしかるべきだという意見もあるようでございます。昨年春に税制調査会は、国民の租税負担率は国民所得の二〇%程度にとどむべきであるという意見を提出しておりまするが、昭和三十五年度の租税負担率は国民所得の二〇・五%であります。三十六年度は、予想でありまするからわかりませんが、あるいは大体そういうことになるのではないかと思われるのでありまするが、税制調査会が、申すまでもなく、あらゆる角度から慎重な検討を加えた結果出された意見は、十分にこれを尊重すべきものであると考えるのであります。従って、今後引き続いて大幅な減税を行なっていく場合に、税制調査会の意見の通り、国民の租税負担率を国民所得の二〇%に押えるように努めるということは適切な措置であると考えまするが、政府はこれに対してどういう御所見でありまするか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、公共事業についてでありまするが、道路、港湾、治山治水等、経済活動の基盤を整備するために、大幅な予算の増額を行なったことは、国民所得倍増計画の線に沿うものでありまして、きわめて当然の措置であります。しかし、過去の道路計画あるいは治山治水計画など、一たん立てられた計画がその実行面において必ずしも予期の成果をあげていないことを考えますると、すなわち、あるいは官庁間の権限の立場からいたしまして仕事がおくれるとか、あるいは、はなはだしきに至っては、その工事が目的に沿わないというような立場からしまして、会計検査院等より指摘されたこともあるのでありまするが、政府としましては、今後生じ得べきあらゆる隘路を打開する対策がなければ、この計画というものは成果をあげ得ないと思うのであります。
 それで、伺いますることは、まず第一に、わが国の工事能力の問題であります。従来わが国の土木事業は、主として人の力によりまして、機械力によらないというような特色を持っておりましたが、そのためにきわめて低能率でありました。近来はよほど改善されたのでありまするが、はたしてこの大きな計画を十分に消化する能力があるかないか。その点についての政府の御見解を承りたいと思うのであります。なお、これに関連いたしまして、特に都市等におきましては、土地収用の関係のためにずいぶん仕事がおくれておる実情でありまするから、いわゆる土地収用法の運用について十分に注意をしなければならぬのでありまするが、これについての御所見を承りたいと思います。
 なお、この公共事業をやりまする上におきまして、地方財政に直接間接に大きな影響を及ぼすことは当然でございまして、すでにこれらの仕事が地方負担の困難より適正に遂行のできなかった実例もあるのでありまするから、この大きな公共事業を遂行する上におきましては、地方財政に対しましてどういう注意を払っておるのか、その点につきまして当局の御意見を承りたいと思うのでございます。
 次に、私は社会保障についてお伺いしたいと思います。昭和三十六年度の社会保障関係費は二千四百六十六億円でありまして、その増加率は三四・七%に達しております。まさに社会保障の画期的躍進といわなければなりません。このように社会保障制度が著しい拡充を見たとは申しながら、国民一人当たりの社会保障費の額、あるいは予算総額に占めるその比重などの点におきましては一わが国は先進国に比べてまだ低い水準にとどまっております。私は、所得倍増計画と並行し、いな、その一環として、社会保障拡充の長期計画があってしかるべきだと考えるのであります。わが国の社会保障制度は今後十年間にどの水準まで向上させるのか、そうした目標を定めて、逐次その目標に向かって努力を重ねることが大切であります。社会保障の長期計画に対する総理の御所見を伺いたいと思います。
 次に、社会保障のうちで、当面の重要なる問題の一つは、医療費の引き上げの問題であります。諸般の事情からして、医療費の引き上げはやむを得ないといたしましても、医療費の負担が今後無視することのできない大きな社会問題となる可能性があると思うのでありまして、政府はこの点をどうお考えになっておられるかを承りたいと思います。また、医療費の増高は、国民健康保険を所管する市町村の財政にも少なからぬ影響を及ぼすことは当然でございます。これに対しまして、いかなる対策を政府は持っておられるか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
 次に、私は、農業政策についてお尋ねいたしたいのでありまするが、農業政策は、今や転換の時期にさしかかっておることはしばしば言われる通りであります。戦前における農村人口の状況と今日の趨勢とを考えてみまするというと、そのことが十分に了解できると思うのでありまするが、実に、昭和三十年と昭和三十四年を比較いたしまするというと、約百五十万の減少を示しております、こうした大規模な人口の移動は、いろいろの理由もありましょうが、その根底には、都市と農村との生活水準の開き、農林業と他産業との所得の格差ということがあって、この傾向を生み出したといえるのでございます。今後、日本の経済が高度の成長を続けるにつれまして、この傾向はますます増大するでございましょう。かくては、農林業と他産業との所得の格差は縮小するどころか、むしろ拡大するおそれがあるかもしれません、都市に比較しまして著しく低い農村の生活水準は、いつまでもその差を縮めることはできないでございましょう。従って、今後の農林業は、より少ない労働力をもって飛躍的に大きな収益をあげ得るように経営形態を進めて、それによって農林業者の所得を都市勤労者のそれと匹敵するほどに向上させなければなりません。それがためには、農業の体質改善、その近代化が必要でありますが、これが所得倍増計画の一環としての今後の農業政策に課せられた最も大きな問題であると思うのであります。私は、政府が、農林業の体質改善、その近代化について、いかなる施策をするお考えであるか承りたいのであります。
 次に、中小企業についてお伺いいたします。中小企業は大企業と対立的に考えられるのでありまするが、しかし、中小企業の業種を見まするというと、大企業には必ずしもそのものがあるというわけでもないのであります。かくのごとく見まするというと、わが国の中小企業というものは、産業上特殊の存在であり、しかもきわめて産業上重大な役割を演じておるのであります。従って、中小企業に対するいろいろの問題は、最も力強く考えてみなければならぬと思うのでありまするが、この二つの見方からして思われることは、まず第一に、大金業と中小企業の所得の格差を少なくするということが所得倍増の方針であるといたしますならば、政府はいかなる方法でこの格差を縮めるというお考えでありまするか、その方途をお尋ねいたしたいのであります、次に、かくのごとく社会的にも、また、産業的にも重大な企業である中小企業の振興につきましては、従来とも設備の近代化あるいは減税、財政投融資等、いろいろやっておりまするが、所得倍増計画に伴いましてさらに一そうこの点について力を入れなければならぬと思うのでありまするが、主としてどういう方面に最も力を入れる考えでありまするか、その方策を承りたいと思うのであります。
 最後に、私は治安対策についてお伺いいたします。治安問題は、一方においては産業振興の基盤をなすものでありまして、所得倍増を期するためにも根本的に考慮をすべきものと存じます。しかるに、最近、政治的、社会的現象のうちで最も憂慮にたえないものは、自己の主張を貫くために、法秩序を無視して、暴力をもって事を決しようとする風潮であります。このような考え方は、その動機や理由のいかんを問わず、また、個別的たると集団的たるとを問わず、ひとしく民主社会の基礎を破壊するものでありまして、断じて排除しなければならぬのであります。このような暴力の排除には、一般国民の間に、あらゆる暴力に対して勇気をもって断固これを否定する気風を喚起することが不可欠の条件であります。世上一部には、自分の目的のために手段を選ばず、あるいは悪法は法にあらずとして法秩序を無視し、ひいては暴力を肯定するがごとき考え方があるということは、まさに遺憾のきわみでございます。このような雰囲気を社会より一掃することが最も根本的な問題であると思うのでありますが、この点について、総理はいかなる所信をもっておるのか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、最近における犯罪の傾向を見まするというと、数年来の経済の繁栄と社会生活の向上にもかかわらず、犯罪の発生は年を追うて増加するとともに、犯罪が悪質化、暴力化の一途をたどり、特に青少年の犯罪が激増しつつあるということは、まことに憂慮にたえないのであります。これらの根本的解決は、結局広義の教育の振興に待つのほかはないとは思いますが、従ってまた、道徳教育というようなことにも関係をもっておると思われまするが、特にこの青少年の犯罪増加について教育の面より文部当局の意向を承りたいと思うのでございます。さらに、治安を維持し、犯罪を少なくするためには、警察、検察、裁判の機能の強化充実、裁判の独立性の保持、警察官の職務の尊重とその資質の向上等、所要の措置をとる必要があることはもちろんでありますが、また、犯罪は単に刑罰取り締まりの対策にとどまらず、広く社会福祉対策として考えなければならない面も多いのであります。犯罪の温床となる不良生活環境の一掃をはかるとともに、保護矯正施策を徹底し、広く社会福祉的立場から総合的な犯罪防止対策を立てる必要があるのであります。また、言論、出版、映画等、広くマスコミの協力を得ることが犯罪防止の風潮を浸透させる上にあづかって力があると思うのでありまするが、これらの点について関係の大臣はいかなる所信を持っておられますか、お伺いいたしたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点の、新しいケネディ政権が中共に対していかなる政策をとるかという問題でございまするが、私はただいまいろいろの資料によって判断いたしまして、前の政府とそう変わった、急に変わった政策をとることはないだろうと今のところは見ておるのであります。しかし、人がかわってくるのでございます。また、世界の情勢も変わって参りますから、相当弾力的な政策をとると私は思っておりますが、根本的な非常な変わりはないと考えております。
 また、所得倍増計画とインフレの問題でありますが、私は、過去の状態から申しましても、所得は非常にふえております。十年間に倍になりました。また、最近の四年間に四九%、すなわち五割増をいたしておりまするが、物価は安定いたしまして、インフレの徴候はございません。従いまして、私は御心配はないと思います。
 なお、消費生活につきましていろいろ御意見がございまするが、私は、日本の消費生活はただいまのところ非常に合理化されつつあると思います。すなわち、日本人の貯蓄性向、貯蓄心は、外国のそれに比べまして非常に高いのでございます。大体パーセンテージで申しますと、先進国の倍近くの貯蓄性向を持っております。これが日本の経済の発展をささえておるのでございます。そうしてまた、私は、国内経済の発展ということは、一つには輸出貿易でございまするが、生産したものの大部分というものは、八割五分から九割近く国内消費に向けることは、世界の情勢でございます。従いまして、輸出を盛んにすると同時に、国民大衆がその生活を豊かにするために生産されたものを消費していくということが、経済の発展のもとでございます。一方におきまして、世界一の貯蓄率を持ち、一方におきまして、大衆がこの文明あるいは生産増強を自分らで享楽するということが、文化国家への道だと考えておるのであります。
 次に、私から申し上げることは、社会保障制度の将来でございます。あるいは減税が少なかったと、いろいろ御非難も御意見もありましょうが、私としては、所得倍増のために、そうしてまた、こういうふうに経済の発展したのを、まず第一にだれに潤おすかといったら、お困りの方々に潤おすことが第一だと私は考えるのであります。しこうして、減税につきましても、高度成長によりまして毎年相当やる。どれを一番先にするかといったら、やはりお困りの方々に少しでも早くあたたかい手を伸ばすことが政治だと考えておるのでございます。将来、社会保障と減税、公共投資につきましては、十分に経済情勢を見ながら考えていきたいと思います。
 また、農林関係の所得の問題は、農林大臣よりお答えすることにいたしまして、中小企業は、通産大臣がおられませんので、私からお答え申し上げまするが、中小企業の育成につきましては、多年いろいろの手をやって参りました。今回の予算におきましても、設備近代化につきましては、ほとんど前年の倍近く増額いたしております。また、団地奨励、すなわち都会の中心から郊外に移っていく中小企業に対しまして、合理化のためでございまするから、特別の補助をやることを、ことしからやっておりますし、また、商工会によりまして中小企業の指導育成をやる予算もふやしております。また、金融につきましても増額しておりますし、また、金融関係三行の貸付金利を三厘下げる。あらゆる方面からいろいろの手を尽くしておるのであります。
 なお、治安問題につきましては、お話の通りでございまして、教育問題、順法精神の普及の問題等々、われわれがお互いに共同生活の秩序を守るということをやっていかなければならぬと考えておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(小坂善太郎君) 日中貿易に対する所見をお問いになりましたのでございますが、昨日申し上げましたように、私は、日中双方の国民経済の観点から、その必要を満たすための貿易は大いに歓迎するところであると、かように考えております。そうした目的のために、昨年の秋以来、強制バーター方式を改善したりいたしまして、取引を容易にするという措置を講じておりますから、今後一そうその方面の拡大をはかることに協力いたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(水田三喜男君) 減税の規模が小さかったではないか、税制調査会の答申通りやればよかったではないかというような御意見でございましたが、大体税制調査会の答申案通り今度は行なったつもりでございます。税制調査会の答申は、平年度大体千二百二十億円の減税をするのが至当だという意見でございましたが、今度の政府案では千百三十八億円の減税でございます。九十億円程度税制調査会の答申よりも減税が低かったのでございますが、これは先ほど総理から答弁されましたように、課税所得百八十万以下の減税をやれというのが税制調査会の意見でございましたが、大体所得百万円以下の納税者が今九五%でございますので、九五%の納税者の減税をすることがいいのではないかということで、百八十万円以下という税制調査会の意見はとりませんで、課税所得七十万円以下の所得者を中心にして、そうして法人税、所得税を中心に、内容は全部税制調査会の意見通りにいたしました。そうしますというと、この三十五年度の当初予算から見ますと、国民負担は二〇・五%という予想でございましたが、御承知のように、この三十五年度は非常に税の自然増収が多うございましたので、実際は国民所得に対して税負担が二一%にいっておると思います。今度のこの減税によりまして、昭和三十六年度は二〇・五%前後の国民負担になろうかと思います。大体予定通りの減税をやったのでございますが、最後の閣議でガソリン税の値上げということをきめましたので、これが増税になっておりますし、特別措置の整理もいたしましたが、これは大体大企業への増税ということで、増税部門が二百七、八十億円ございましたので、さっきお話の通り、六百四十七億の減税で少ないような感じはいたしますが、そうじゃなくて、実際は中小所得者中心の大きい減税をやっておるということには変わりございませんで、私どもは、大体今度の減税案は適当な規模ではないかと今思っておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣中村梅吉君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(中村梅吉君) 公共事業関係についての御質問にお答えいたします。
 土木工事能力につきましては、御承知の通り、近年非常に機械化が進んで参りまして、工事能力のために繰り延べを行なうというようなことはほとんどございません。多くは、御指摘のありましたように、用地取得難ということで、用地の取得ができませんために繰り延べをせざるを得ない理由が御存じの通りある次第でございます。しかし、三十六年度は公共投資の増強が非常に行なわれることになりましたので、土木工事についての工事能力の増進ということについては、機械化についての促進、あるいは建設技能員の養成等につきまして、特段に力を入れて参りたいと思うのでございます。建設技能員につきましては、建設省独自といたしましてもいろいろな手段を講じて参りますが、あわせて労働省の職業訓練とも相連携いたしまして、若干の予算措置も講じられましたので、大いに努力をいたしまして、工事能力の上から公共投資の遂行に支障があるようなことは絶対ないように、十分努力して参りたいと思うのであります。
 公共事業の一番の隘路は、御指摘の通り用地の取得でございます。これにつきましては、建設大臣の諮問機関として、官制によりまして公共用地取得制度調査会というものが設けられまして、目下非常に熱心に用地取得制度の改善方法について調査御審議をいただいておるわけでございます。近くその答申を得られると思いますので、答申を得ました上で十分善処するようにいたしたいと思います。
 なお、公共投資の増強に伴いまして、地方負担も自然増加することに相なります。これにつきましては、自治省もいろいろ御苦労されておるようでございますが、国の直轄事業の地方負担分につきましては、直轄事業債というものを認めることにいたしまして、直轄事業がふえたことによって地方財政が直ちに影響を受けるようなことのないように措置して参りたい。また後進県に対しまする国庫負担の引き上げ等も考慮されておりまするので、そのほかの処置と相待ちまして、公共投資の増強によりまして地方財政が圧迫されることのございませんように十分配慮して参りたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(安井謙君) 国の公共事業の増額に伴いまして地方の負担の影響についての御質問がございました。ただいま建設大臣のお話にもありましたが、大体推定いたしまして四百二十億程度に地方負担がなろうかと思っております。地方税もあるいは交付税も相当額ふえておる今日でございますので、今の負担の特別措置あるいは起債等と相待ちまして、財政運営上支障がなかろうと存じております。
 なお、国民健康保険の同じく値上げに伴います地方団体、いわゆる市町村のこの保険者団体の負担につきましても、これは大体二十五億程度と推定されておりますが、そのうち十五億程度のものは国庫負担に回わすことに相なっております。これも大体運用上支障はないと思います。
 なお、警察関係の犯罪防止につきましても、この際一括して御答弁申し上げますが、御説の通りに、今日青少年を中心にいたしまして暴力事犯というものが相当ふえて参っておりますことは、非常に憂慮にたえません。私どもは、これは環境を浄化いたしまして、また共同社会の秩序を守り、法を正しく守るという運動を大きく広げて参りたい、こう思っております。また一般に正しい業務を遂行しておる警官に対する国民の認識、理解を十分に深めてもらい、この社会的な犯罪の温床をなくしていきたい、こういう点で十分な努力を今後とも払っていきたいと思っておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(周東英雄君) 都市と農村の所得格差を縮めるにはどうするかというお尋ねであります。
 第一には、私ども量的に生産を増加することはもちろんでありまするが、しかし、これにつきましては、今日における食糧事情等の変革から考えまして、将来はやはり、内外ともに需要の増加するもの、国内の需要が増加するもの、輸出のできるもの、または輸入農産物を国産化する方向へ向かって進むことが必要でありますので、その意味におきまして、たとえばこのたびも大、裸麦の作付けを大きく転換させつつ、これに対して補助金を出して経過的措置をとりつつ、将来に備えようとしているのがこの現われであります。
 第二は、生産性の向上であると思います。農業生産の生産性の向上でありますが、それには、土地、物的設備からくる生産性の向上、すなわち農地の生産性を向上する、土地改良等によって生産性を向上する、あるいは近代化、高度化によって機械化農業を進めるということ、こういうことは大きく取り上げなければならぬ点だと思いますが、同時に、先ほど御指摘のように、最近における旺盛な工業の方面における労働需要の実績は年々三十万ないし四十万の労働移動が出ております。こういう事態を観察いたしましても、強制ではなくて、その事態をよく導いていくために、移動希望に対しては、職業転換、職業訓練等の施設によって、よりよき職場に送るということが一つであると同時に、それらの持っておる土地を希望によって残る人に渡すというならば、それは一つの基盤の増加であり、そういう形において生産性というものが大きく上がっていくということも、これは見のがすべからざることだと思います。私は、農業人口の問題並びに設備の問題、その他あわせて生産性の向上をはかっていくことが一つの問題だと思います。
 第三は、先ほど江田さんも御指摘がありましたように、近代化、高度化を行なうと申しましても、個人の費用でやりにくい点があろうと思います。現在農村において、中小農家というものが、個人々々には直ちにやり得ないという場合において、これらが共同いたしまして農業の協業を行なう、そこに必要なる近代化設備を設ける、あるいはその共同の力によって必要なる信用を得るとか、資本的設備をするとかいうような形において、生産を上げるということも一つの方法だと思います。私どもこれらに対して、それぞれ三十六年度予算を計上しておりますが、問題はそれらの生産だけの問題でなくて、大きくは農村における環境と設備が改善されるというようなこと、あるいは社会保障制度がこれに伴っていくということは、あわせて農村における所得と都市における所得の均衡を得せしめる重要な点だと考えて、さように施設するつもりでおります。(拍手)
  〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(古井喜實君) 医療費の引き上げと国民負担の問題についてお答え申し上げます。
 医療費の引き上げは、お話のようにやむを得ないということで、今回計画をいたしておるのでありますが、一方、今の負担の方面がありますので、幅を考えますにも、そういう点も考慮して、たとえば医師会などの方面では三割の値上げ等の要望があるのでありますけれども、負担する側の立場を考えて一〇%程度にしたというようなわけであります。これにつきまして、患者個々の負担、これは一部分は患者が持つということであります以上は、その部分はどうにもこれはまあ処置の仕方がないと思うのでありますが、一方、保険団体が値上げのために保険料とか掛金を増徴するということは極力避けたい、こういう考え方で、普通ならば保険団体が負担すべき経費につきましても、特に今回は二十億余の国費を支出いたしまして、保険料や掛金を増徴しないで済むような措置を大体構じたようなわけであります。国保の関係もかねがね財政が窮屈ではありますけれども、どうやらこれでやっていけるではないかと考えております。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えを申し上げます。
 最近特に青少年犯罪が多くなって、そのことが非常に心配だが、これに関して教育の面から文部省としてどう考えるかというお尋ねであったと思います。なかんずくそれに関連して、学校における道徳教育が特に必要であるというお話でございまして、私も同感でございます。御案内の通り、終戦の年、昭和二十年の十二月にアメリカの占領軍から、修身、道徳の教育をしてはいけないという厳命が下されて、そのまま子供たちは、道徳、修身の、何がいいか悪いかの判断力を学校で与えられないままに最近まで参りました。そういうことではいけないというので、小中学校におきましては、一昨年の九月から道徳教育を実施することになりましたことは、私は子供たちのために非常に適切であったと思います。ただ遺憾なことは、日教組の幹部諸公が、道徳教育は絶対反対だといまだに言い続けることは遺憾であり、不可解であると思っております。
 なお、新しい教育課程が高等学校においては再来年から実施される予定でございますが、高等学校におきましても倫理教育をやろう、こういうことにいたしておる次第でございます。予定の通り実施するつもりであります。
 さらにそれと合わせて、何と申しましても、先生方の言行が感じやすい子供たちに非常に微妙な影響を持つことは申すまでもありません。その意味で、教師の資質向上のために、たとえば研修をもっと充実いたしましたりすることによって、学校の先生が子供たちに、もっともっといい影響を与えていただくようにお願いいたしたいと思っております。この点に関しては私はもう一つ申し上げねばならないことは、これまた日教組が実力と称する暴力をふるったり、あるいは授業放棄をしたりということは、そういうことは私は子供たちにいい影響を与えない。(拍手)だからそういうことは少なくとも今後はおやめ下さいと勧告をいたしておる次第であります。
 そのほかに、向学の熱意がありながら、経済的条件もしくは自分の置かれた立場のゆえに、その向学心が満足できないということも、これまた気の毒であり、残念であることは当然でございます。従いまして、従来以上に育英奨学のことに力をいたしますと同時に、あるいは定時制ないしは青年学級の充実にも一そう力を入れまして、青少年の期待にこたえたいと思っております。
 同時に、PTAないしは婦人団体にお願いをいたしまして、学校外における青少年の健全な校外生活を指導し協力していただくために、今後も強力にお願いし、働きかけていきたいと思っておるような次第でございます。
 (拍手)
  ―――――――――――――
#21
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
  〔曾祢益君登壇、拍手〕
#22
○曾祢益君 私は民主社会党を代表いたしまして、昨日行なわれました政府の施政方針に対して若干の質問を試みたいと存じます。
 最初に、首相の国際情勢に関する認識と、わが国の外交について伺いたいと思います。
 首相は、きのう、今や世界は大きな転機にさしかかっていると思うと言い、また東西二つの体制の間に根深い対立があるが、東西を引き離すよりはむしろ双方を結びつける方向に、より多くの関心を払うべきときであるとも言われました。まことに同感であります。ケネディ新政権の出現とフルシチョフ路線の確立という二つの新しい要素を含んで、ことしはまさに東西交渉の再開に期待が持たれる年でございます。だが同時に、もしこの東西の話し合いの企てが失敗に終わるならば、世界は原水爆とミサイルの使用を伴う、人類がともに滅びる大戦に向かって進む絶大な危険があるのでございまして、この意味からするならば、世界はまさに戦争か平和かの分かれ道に立たされているといってもあえて過言ではないと存ずるのであります。従いまして、私どもは、総理の国際情勢の認識が、単に表現や修辞ではなくて、真にこの情勢にふさわしい切迫感を持って、重大な転機と考えられているか、この点をまず問題にしたいと存ずるのであります。
 ところが、首相の演説によりますると、この新しい局面に処するわが国の外交としては、単に、わが国が平和と繁栄の増進のため何をなし得るかということをはっきりつかんで、日米安保体制を守って自由諸国との緊密な提携をはかる、この以外には何も考慮をされておらないのであります。
  〔議長退席、副議長着席〕
換言すると、首相は一応大きな転機とかあるいは東西接近の気運を認めておきながら、日本みずからが何をなすべきかを語らず、現状のまま推移することを考えるという、矛盾と無気力を示されているのであります。むろんわが国のなし得る限界がございます。しかし、わが国が冷戦緩和に向かってなし得る分野も決して狭くはないのであります。私は、さしあたり、この冷戦緩和の方向において日本がなし得る、またなさねばならない問題は、次の通りであると信ずるのであります。
 まず第一に、軍縮を効果的に実現するため、核兵器の保有国を現在以上広げないことが絶対必要であることについては、米ソの見解も一致しておるのであります。ゆえに、ことしこそ核実験停止協定を成立させ、次いで核兵器禁止を含む軍縮に向かって前進すべき、あるいはこれが最後ではないかと思われるチャンスの年であります。この意味からして、政府は核兵器及び軍縮問題について積極的な努力を傾けるとともに、その前提といたしまして、日本、中国の両国があくまで核武装をしないことを貫くことが肝要と存ずるが、総理の所信を伺いたいのであります。
 次に、中国問題は、このような核武装とか軍縮の観点からいたしましても放任を許さない段階になりましたし、本年の国連総会においては、中国の国連代表権の問題は、もはやたな上げを許さない情勢になっているのでございます。中国問題が、単なる日中関係だけの視野からでなく、東西間の関係調整の観点からこれを取り上げる必要があるという総理の意見には同感であります。しかし、単にわが国が傍観的な受け身の立場をとるのではなくて、進んで東西の間の和解に貢献する意図を持って、中国の国連代表権は、これを人民共和国――中共に認めるように、並びに、あわせて台湾問題もこれを国連の場において解決するように、積極的に日本が努力すべきと思うが、いかがでございますか。なお、このような努力と並行いたしまして、日中国交の回復の努力が、政府間の貿易協定締結を含めて、日中間の交流の促進の形をとりながら進められるべきと思うが、総理の所見を伺いたいのであります。
 さらに、日米関係につきましては、ケネディ政権の弾力的な態度と相呼応いたしまして、首相は、日米安保体制は、これをほおかぶりするという従来の態度を改められて、冷戦の解消と国連の世界的安全保障機能の充実を目途としながら、日米間の軍事的でない友好の増進と並行して、日米間の軍事的な結びつきはこれを薄め、冷戦緩和に伴ってこれを解消する方向に踏み出すことが肝要と思うのであります。また、具体的には、日米安保条約については、再改定のために再交渉を開始すべきだと思うが、渡米を前にしての池田首相の所信を伺いたいのであります。私どもの申す再交渉のめどとしては、いわゆる常時駐留はしない、少なくとも極東のための駐留は行なわない。また、第三条、第五条のような、いわゆる軍事同盟条項は、はずす。また、核兵器の持ち込みは絶対的に禁止する。事前協議についてはあらためてこれを条約化する。期限は短くする等がこの要点になろうと思うのであります。
 次に、私は政治全般についての首相の見解をお尋ねしたいのであります。
 まず、首相は、政治の姿勢を正すことと、寛容と忍耐をもって話し合いによって紛争を解決することをしばしば述べておられます。また、演説の中において、国会の円滑な運営のため、相互の良識と寛容の精神をもって、審議に委曲を尽くして堂々と事を決すると言っておられます。私は、この言葉自体にあえて反対する理由はございませんが、これはさきに、選挙末期におきまして、わが党の西尾委員長が提唱した、多数党は絶対に単独審議を行なわない、少数党は絶対に暴力を用いないという趣旨を無条件にお認めになるのか。どうも言葉の表現からいいますると、委曲を尽くしてからあとに堂々と事を決するというようなところに、何とはなしに、やはり事を多数決ですればいいんじゃないかという趣旨が現われているかと思うので、念のためにこれを伺っておきたいのであります。
 次に、今般の選挙を通じまして、金のかからない選挙、公明選挙の緊要性が強く国民の中に叫ばれておりまするが、首相は、これがために、一、完全公営を目ざした公営の拡大、二、比例代表制を前提とした小選挙区制の採用、三、政治資金の規正と罰則の強化、四、国会議員を含まない選挙法改正審議会の設置と、審議会の答申は国会がこれが尊重することを要旨とする選挙法改正に決意するお考えはないかどうか、あらためて伺いたいのであります。
 そもそも、政治のモラルの振興は、まず与党の選挙公約の完全実施から始まらなければなりません。しかるに、今回の選挙における自民党の公約の最大なもの、すなわち、一千億減税、一千億の社会保障の増額、この公約は完全に無視され、減税はネットの六百二十八億、社会保障は六百三十六億にとどまった。首相は、これに対していかなる責任をおとりになるお考えであるか、明らかにされたいのであります。
 また、今度の予算編成にあたりまして、与党は内閣の権限を侵し、予算案決定に不当に介入し、はなはだしきに至っては、与党の政務調査会長が、大蔵大臣と各省大臣との予算折衝に公然立ち会うような風景を露呈しました。しかも、与党議員の裏ではあらゆる圧力団体が活躍し、思うままに予算のぶんどりをし、組織された強力な圧力団体は、わがもの顔に横行する反面、声なき組織なき消費者大衆の利益は完全に無視された。かくして、政治のモラルは地に落ち、代議制度の危機が訪れたといっても過言ではない。この問題に対する首相兼与党総裁たる池田氏の明快なる所信を披瀝願いたいのであります。
 私は、次に、今回の予算案に現われた油田内閣の現実の施策に焦点を合わせながら、その所得倍増計画、高度経済成長政策の本質について議論を試みたいと思います。
 まず最初に、今度の予算の総括的評価でございまするが、編成の経過から見て、これは不明朗、不合理、強い者ぶんどり予算であり、その規模においては空前の放漫、その質においては、不健全な、景気刺激的、物価引き上げ的、格差増大的な予算であり、政治的には公約無視の予算だと思うのであります。公約無視の第一番は減税でございましょう。一千億減税が、増税との差引純減税においてわずか六百二十八億にとどまったことは、自然増収三千九百三十億に比してあまりに僅少であり、税制調査会報告の国民所得に対する税負担二〇%以下という標準から見ても納得できないことは、すでに同僚議員が指摘された通りであります。しかし、池田税制の特色は、減税の絶対類の少ないことよりも、減免税を通じて所得の格差をなくすことに対する努力に欠けている点であります。すなわち、個人所得税に対する減免税はきわめて渋く、一方、企業利潤に対しては甘いところに、池田財政の大企業奉仕の姿がはっきりと見えているのであります。私は、首相並びに蔵相に対しまして、高度経済成長と所得倍増論が、もし政府の説くように、所得の格差是正を意図するものであるならば、税制を通じて、少なくとも次のような措置を講ずる用意をお持ちであるかどうかを具体的にただしたいのであります。それはまず、五人家族、年収六十万円までの免税を目途としながら、さしあたって四十二万円までの免税の即時実施。次に、所得税、相続税の高額所得に対する累進率の引き上げ。三、物品税の廃止、高級品税の創設。
  〔副議長退席、議長着席〕
四、財産税、土地増価税の創設。五、大企業偏重の租税特別措置法の大幅改廃。以上について池田総理のお考えを伺いたいのであります。あわせて蔵相のお考えを伺いたい。
 次に、社会保障について質問いたしたいと存じます。首相は、社会保障の拡充を公約し、社会保障予算を画期的に増大したと言っておられまするが、これは単に六百三十六億円の金額にとどまり、しかも、その半数は当然増によって占められておるのが実態でございます。しかも、今回の予算増のもとに一番潤おうのは低所得階層ではなくて圧力団体であることは、すでに申し上げた通りであります。政府が厚生白書でみずから語っておりまするように、わが国には、生活保護を受けている人々が、あるいはそれに近い生活をしている人々が、およそ九百万に達しております。これらの人々に対する生活保護費の基準額の引き上げは、厚生省原案の二六%に及ばず、ついに一八%に押えられてしまっております。また三十六年度から国民健康保険が全国に完全普及されまするが、この保険に加入している人は、同時にほとんど全部が本津四月より実施の予定である拠出制国民年金に強制加入させられる人々でございます。従って、四月からは一世帯当たり月額二、三百円の国民健康保険料金と、夫婦二人で月二、三百円の拠出制年金掛金との両方とも支払わなければならない。生活保護予算が少ないゆえに、その適用を受けていない六百八十万の人々は、四月からこの二つの義務負担を負わされているのであります。しかも、国民健康保険、日雇い保険などの低所得層の人々が利用する医療保険が、他の保険に比べて最低の給付水準でございまして、うっかり歯も入れられない、うっかり注射もしていられない。保険料は取られたままで、診療を受ける患者負担に耐えられない人の多いことは御承知の通りであります。この現状にもかかわらず、今回政府が意図している医療費引き上げは、被保険者の自己負担も平均約一割を予定しているのであります。私は、従いまして、池田内閣の言われるところの格差是正、あるいは社会保障推進は、全くのから宣伝にすぎない、かように考えるのでございまするが、以下具体的に数点に分けて御意見を伺いたいと思います。
 まず、政府はなぜ生活保護基準額を、少なくとも二六%という厚生省案の最低限の底上げを百六十万の極貧層に対してなされなかったのか。それでも福祉国家を云々する資格があるか。また昨年東京地裁の朝日判決に見られるように、政府みずから憲法にそむいていると思わないかどうか。明確なるお答えを願いたいのであります。また、極貧層と税金を払う階層との中間に位するボーダーライン六百八十万こそが、今回の税制、社会保障制度から完全に見捨てられ、物価高にあえぐ最大の被害者ではないかと思うのであります。これでは一体所得格差の是正とは全くたわごとではないか。次に、医療費一〇%値上げの結果起こるところの患者の負担増をいかに考えられるか。いかにこれらを押えていくか。また保険財政の基盤の弱い健保をどう守っていくのか。また厚生大臣として、また総理として、診療費に関する関係諸団体の紛争をいかに解決する成算がおありであるか、明らかにされたいのであります。次に、国民健康保険、健康保険につきましては、国家負担を七割程度に引き上げる、また福祉年金につきましては、支給額をそれぞれ月三千円程度に引き上げること、あわせて拠出制国民年金については、しばらくこれが実施を延期することについての具体的なお考えをお述べ願いたいのであります。
 次に、私は農業についてお尋ねしたいのであります。首相は、選挙前に農民六割切り捨て論を唱え、これがはなはだ不評であったこと、なかんずく自民党内からの強い反撃にもあったことからかと思いますが、今回の演説の中には所々方々に農業尊重の美辞麗句が並べられております。しかし、その結論は、「経済成長に伴って高度化する食糧需要の変化と他産業の旺盛な労働力需要の増大」の二つの条件があるから、農業の格差是正ができるかのような、無責任な楽観論を述べるにとどまっております。これは言いかえるならば、米麦の保護政策はもうやめにする、農村から若い労働力が都会に流出する、そこで貧農が自然に淘汰されるという、例の六割貧農切り捨て論と何ら変わっておらないのではないか。首相の演説に力説されたところの、抽象的な、農村近代化のための農政、財政、金融、労働、産業教育、工場の地方分散などの施策云々ということをあげられておりますが、予算に現われたところでは、全体として米麦増産対策や救貧政策から一向脱却していないばかりか、きわめて総花的なぶんどり予算の跡が歴然であります。首相の真意は、一体、農業基盤整備費増額なとはもう反対なんだ、大麦、裸麦の減産はもうすぐやれと思っておられるのではないか。自民党農村議員の圧力に屈してそれができなかったのかどうか、それを明らかにされたい。首相は、もっと思い切った選抜的成長政策や農業構造改善促進対策などを推進するお考えであるのかないのか。また大農本位でない、進歩的な農業基本法をほんとうにお考えであるならば、その構想をここに示していただきたい。
 一体、農業の近代化、適正規模化、協同化、機械化、しかして零細農保護を中心眼目とする方針を立てずして、ただむやみに進められる高度経済成長策は、事実においてやはり貧農切り捨て政策以外の何ものでもないではないか。はっきりとした御返事を願いたいのであります。
 次に、私は中小企業について伺いたいのであります。私は、おそらく今度の予算を見まして、首相の格差是正に対して誠意のないことが一番計数的に現われている、はっきりしているのは、中小企業予算ではないかと思います。総予算の〇・二五%で、これでどうして中小企業の大企業に対する格差の是正ができますか。首相は一体、この程度の設備近代化、補助金の増加と中小工場地帯振興資金ぐらいで、あるいはそれにプラスするに若干の財政投融資の増額ぐらいで、ほんとうに中小企業の近代化や、これと大企業との格差是正が可能だと思っておられるのかどうか。またこの予算によれば、零細企業対策は皆無である。若干の中以上の企業は潤おっても、零細企業に対しては何らの施策がない。従って、私はここにただ二点ばかり伺いたいのでありまするが、中小企業の産業分野を確保し、大産業から中小企業の産業の分野を守ることを法定する法律、さらに、国、地方団体、公共企業体などがその需要する物資、サービスの調達にあたって、二割は中小企業に充てることを法律できめるような、かかる中小企業対策をお考えであるかどうかを伺いたいのであります。
 最後に、私は物価と国際収支について伺いたいのであります。政府は、商品の小売物価やサービス料金については、大体、物価全般の騰貴に至らないと楽観的に断定し、また公共料金については努めて押えると言われておられます。従って、政府の言葉によれば、警戒すべきは値上げムードだということになるのであります。ところが、この値上げムードの発頭人は、ほかならない池田首相その人であり、池田首相自身の積極論であり、また、今回の予算全般がこの値上げムードの最大の発頭人でございます。鉄道運賃、郵便料金、電力料金などの公共料金の値上げ、拠出制国民年金の掛金の徴収の開始、医療保険の被保険者負担の平均一割増加、ガソリン税率の引き上げなど、財政政策に基づく国民家計負担の増加が強行されるに伴いまして、これらの政府の措置に影響を受けて、民間のもろもろのサービス料金、もろもろの価格は、コスト高を理由に引き上げになることは、すでに明らかであります。政府は、旅客運賃の値上げは一般世帯の家計支出に対し〇・一%の増額をもたらすのみであるというような弁明をしておられますが、今回の公共料金値上げは、いずれも各商品のコスト、各家庭の家計に直接影響があり、これらの影響が相寄って、コスト高に耐えられない面から値上げをしてきて、これがさらに他に波及する傾向を持つことは、過去の経験から見てきわめて明らかでございます。
 これに加えて、最近大企業の企業活動で見逃し得ない事実は、商品の値くずれを防止するために、業者間の価格協定が次々に生まれてくる情勢であります。政府が現在のままに企業活動を放置するならば、現行法規の範囲内において、堂々と卸売価格の低下防止が、業者間協定の名において、あるいは貿易自由化の隠れみののもとに、次々と実施される危険があるのであります。われわれは、現在の鉄道運賃、電力料金等が、いずれも大口需要に対しては割安、零細需要に対しては割高の料金構成で大企業に奉仕している事実に反対いたしまして、公共料金の再編成を断行するように政府に要請いたします。また、大企業が独占的に各産業間で価格維持をはかる独占禁止法違反行為に対して、厳重なる取り締まりを政府に要求いたします。私はこの二つの施策が物価政策の基本方針であると信ずるのでございまするが、総理並びに経企長官の所見を伺いたいのであります。
 最後に、政府は本年の国際収支についてきわめて楽観を装っておられまするが、昨年中の国際収支じりは、短期資金の受け入れ超の割合が黒字の八割を占め、貿易収支面では黒字が減少しております。ところが、国内の設備投資の伸びから見ますると、鉄鋼業生産はさらに増産となり、原材料輸入をふやさなければならない、製品は輸出をしなければならないという、双方の要請は高まらざるを得ないでございましょう。ドル防衛や貿易為替の自由化のために輸出競争がさらに激しくなる本年において、政府は所得倍増計画に基づいて、簡単に輸出は一割ふえると割り切った予想をしておられますが、これを実現することは容易ではないし、従来のように輸出の伸びを経済成長の大きな要因とみなすことは困難になっておるのであります。この面から見ましても、政府の国際収支の見通しは甘過ぎる。また、この甘い経済見通しに乗った予算の膨脹が、甘い見通しのささえを最高の任務としている点に、国民はこぞって池田内閣の虚勢を張った膨脹予算に大きな危惧を抱いているのであります。総理の所見を伺いたいのであります。
 これを要しまするに、われわれ民社党は、健全野党の立場から、転換期を迎えた国際情勢に即して、冷戦緩和、自主独立の外交を政府に要求するとともに、内政においては、政治のモラルの振興をはかり、高度経済成長を通じて、均衡と平等の、そうしてあらゆる格差のない社会を作ることを目的としてたたかうものでございます。この目的に照らしまして、正しい方向の施策に対しては政府にこれを督励し、あるいは政策の是正を求めるとともに、いやしくも反動的な政策に対しましては国民とともにあくまで反対することを明らかにして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 世界情勢の見方につきましては、曾祢君は大体私と同じような考え方のようでございます。ただ問題は、政府はいつどうするかと、今後の方針につきまして御質問がございました。
 第一の、核武装はしない。これはもう前内閣よりわれわれは、はっきり申し上げておるのでございます。ただ、これに中国を入れるか入れぬかという問題でございます。われわれは中国も核武装しないことを望んでおりまするが、これはただいまのところ強制するわけには参りません。ただ、核兵器禁止を含む軍縮につきましては努力することをここで誓います。
 第二の、中共に対しまして国連における代表権を認め、また台湾問題もこの際、国連で処理すべきではないか、こういうお考えでございまするが、これは昨日申し上げましたごとく、私はこの問題に対して、ここに具体的に方針をどうこうということを申し上げることは早過ぎると思います。中共貿易につきましては、たびたびお話し申し上げた通りでございまして、われわれは積み重ね方式でだんだん拡大することを望んでおります。
 日米の安保条約に対しましては、再改定を申し出る気はないか。――ただいまのところございません。
 外交問題につきましてはこの程度でございまして、次に、単独審議は行なわないか。――これは私は、テレビで申しましたごとく、単独審議は行ないません。と同時に、私は、審議放棄、暴力行使をやめてもらいたい。これに変わりはないのであります。
 次に選挙に対しましての、選挙の公営、あるいは比例代表、あるいは政治資金規正法と罰則の強化、あるいは審議事項につきまして国会議員をどうするか、こういう御質問でございましたが、選挙の公営、私は賛成でございます。ただ、これにも完全公営かどうかの問題はございます。やはり選挙の自由という観点から、完全公営ということにつきましては、私は直ちに賛成はできません。しかし、公営を拡大していくということにつきましては賛成でございます。政治資金規正法と罰則強化、これも私は同感でございます。次に比例代表ということにつきましては、私は今の状態からいって、直ちに賛意を表するわけには参りません。十分検討しなければならぬ問題と思います。また調査会を設けまして、――大体三十数名の調査会の予定でおりまするが、この調査委員に国会議員を入れるかどうかという問題につきましては、いろいろ議論がございます。ただ私は、審議事項の関連において、具体的の問題のときに考えたらどうかという一応の考えは持っておりまするが、まだ結論を出しておりません。
 次に経済関係でございまするが、千億減税、千億の社会保障、こういうことを選挙の公約にしたとおっしゃいまするが、これは誤解ではないかと思います。平年度千億円以上の減税ということは公約いたしました。社会保障を千億とは私は公約いたしておりません。これは御承知の通り全体の社会保障が千八百億ぐらいなのに、一年間に千億もふやすということはなかなか困難でございまして、私は、初めから千億という、いわゆる純粋の狭い意味の社会保障では、千億は初めから無理と考えております。しかし、六百三十八億に加うるに、他の関係の狭義の社会保障費を入れますると、相当の額に上っております。また、広義の社会保障ということになりますると、これは、千億以上であることはもちろんでございます。
 次に、予算編成の手続でございまするが、御非難を受けまして恐縮に存じまするが、大体当初のワクにはさわっていない。われわれは、予算の編成権は内閣にあることをはっきりつかんでおりまするが、政党政治という実際上の立場から、党の意見を聞くことは私は当然だと思います。従いまして、全体のワクは動かしておりませんが、各関係事案につきまして、やりくりの点は、ある程度党の意見を聞くことは、私は今の制度として当然のことと考えております。
 次に、千億減税の問題で、中小企業に対しての減税は非常に少ないとおっしゃいますが、ただいま大蔵大臣から言ったように、中小企業を主として減税する方針でいっておるのであります。これは所得税につきましても、税制調査会の課税所得百八十万円ということを七十万円、九割五分のいわゆる所得の下の方の方々に対しましての減税を多くしようとしたのであります。また法人関係でも、中小企業法人につきましては特段の減税措置を講じまして、私は今回の税制改正くらい中小企業に力を入れた税制改正はないと考えておりますが、詳しくは大蔵大臣からお答えいたします。
 なお、社会保障の関係でございまするが、これは、所管大臣から答えまするが、この一八%の引き上げでは少ないということ、私も十分ではないと思っております。しかし、これは、今後においてこれをふやしていきたい。ただ、過去の状況をお考え下さいますると、昭和二十六年ころから始めておるのでございまするが、今回は、一躍東京の五人家族では千七百円ふやしております。今まで一番ふやしたのは、昭和三十二年に六百円をふやしたのでございまするが、今回千七百円、その他の都市においては百円とか二百円程度だったのを、今回は千七百円ふやしたことを御了承願いたいと思います。
 それから農業関係の問題でございまするが、いろいろ御注意の点でございます。しかし、この農業問題は、先ほど申しましたように、難事中の難事でございます。これを一挙にどうこうというわけにはいきません。農業基本法を御審議願いまして、そうして長い目で農業所得の他産業に負けないような拡大強化をはかっていこうといたしておるのであります。
 また、中小企業につきましての予算がどうこうというお話でございまするが、もともと中小企業に対しまする一般会計からの歳出は、御承知の通り非常に少ないのでございます。非常に少ない。昨年度の予算と今年度は、従来のそれに比べまして画期的に増加いたしておることをお認め願いたいと思います。また、中小企業に対しましての育成は、一般会計の予算というよりも、財政投融資の方が中小企業関係には非常に重要なことでございますので、この点につきましては従来にも増して努力しております。また、零細企業に対しましての指導育成は、昨年度から始めました商工会法の施行によりまして、いわゆる中小企業ことに零細企業の指導に対しましては格段の予算を組んでおるのであります。
 なお、中小企業対策といたしまして、政府の買い上げ等を二割強制的にというお考えがあるようでございまするが、今後検討してみたいと思います。ただいまのところなかなか困難と思うのであります。
 次に、値上がりムードの問題でございまするが、私は、自由主義経済のもとにおきましては、国鉄運賃あるいは郵便料金――国鉄運賃が上がりましても、これは大体生産性の向上によって吸収し得るのではないか。昔、曾祢さんなんかがおやりになったように、物価体系をきめ、あるいは物価安定帯を置いて、そして鉄道運賃が上がったら価格がこうなるのだから、その上がった分がはね返ってこうなる。それは政府の方で税金で補助する。ああいう考え方は私は日本には合わないと思いまして、二十四年から自由主義経済にいったのであります。従いまして、二十八年、三十二年に二度国鉄運賃を上げました。しかし、そのときの物価はどうであったかとごらん下されば、決して値上がりムードで波及するということはない。生産性の向上で吸収しておるのであります。私は、高度成長によりましてこれを吸収し得るものと、卸売価格におきましては考えております。絶対にインフレのようなことはないと思います。また、値下げを押えているというお話でございまするが、私は値下げを押えておりません。たとえば鉄にいたしましても、昨年は上げております。また繊維関係におきましても、私はこれははもう自由な姿にしておりまするが、大体卸売物価が横ばいしておりまするが、今は材木あるいは建築資材が非常に上がっておるのでございまして、他の物資は下がり気味であるのであります。卸売物価から見ますると、そういう状況でございまして、大企業に特にどうこうということはいたしておりません。また、大企業に対しまして料金が低い。電力料につきましては、従来から関係がございまして、大企業につきまして電力料を引き下げておる昔からのしきたりがございます。今後はだんだんこれは改めていくようになると思うのであります。
 次に、国際収支の問題で御心配のようでございます。われわれも十分検討いたしましたが、この国際収支の見方は、今まで役所で見ておったのは非常に誤りが多かった。いつも見込みより違っておるのであります。私は十分検討を加えまして、ほんとうに今までの誤りのないようなことでいっておるのであります。全体といたしまして、資本取引の方は二億近く黒字になりますが、それ以外の輸出入貿易関係の方は大体とんとんということでいっておるのであります。この程度は私は十分見込み得ると考えております。何と申しましても、本年度末において二十億ドルの外貨を持つ状態でございます。私は、当分の間、今の健全財政でいくならば、国際収支に対して心配はないと考えておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(水田三喜男君) 御承知のように、税制調査会は、ただいま税の全般的な体系的な改正について審議中でございます。ですから、税制の改革は決して今回の答申だけで終わるものではございません。今後順を迫って逐次改正を行なっていくつもりでおりますので、その間、ただいま御指摘になりましたような相続税、物品税、財産税というような各種の税制につきましては、今後十分検討することにいたしたいと思っております。(拍手)
  〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(古井喜實君) 生活保護基準の問題は、先ほど総理からお答えをいたした通りでございます。国民生活の底を引き上げる問題でありますので、この問題はまあ日本の進歩の問題でもありますし、極力これから先も力を入れていかなければならぬと思っております。なお、総理のお話にはありませんでしたけれども、扶助基準一八%引き上げのほかに、生業補助とか勤労控除とかいうふうな面にも相当今度改善が加えられましたことを申し上げておきたいと思います。
 なお、朝日判決のことについてでありますが、これは昭和三十一年の事実についての争いであるわけであります。司法事件として軍法に違反するかどうかは最後的に結論を得るほかはないと思います。
 次に、低所得階層、ボーダー・ライン層の対策についてでありますが、これは重要でもあれば、困難でもあり、広範な対策を必要とすることは甲すまでもありません。大きくは経済の成長、雇用の増大、賛金の上昇等に待つべきものでありましょうけれども、私どもの扱う範囲においても、世帯構成とか、母子福祉資金の運用とか、あるいは病気に対する対策とか、きめのこまかい策を講じていかなければならぬわけであります。極力そういたす考えであります。
 医療費の引き上げの問題でありますが、そのために保険料とか掛金を増徴することを避けたいと、こういう考え方で、先ほど申し上げたように、普通ならば、保険団体が負担するはずの経費に対しましても、二十億五千万という国からの援助をすることにいたしております。国が当然持つべきものが二十五億ということに対して、二十億五千万という特に団体のために金を出すわけでございまして、国保の団体も、あるいは組合の弱小団体もこれで大体やっていける、保険料の大きな増徴をしないでもやっていける、こういうふうに考えております。なお医療費の引き上げ問題をめぐって関係団体にいろいろ意見の対立を起こしております。これは今後の手続などによってそれぞれ理解、納得を得て、円満な結末を得たいと思っております。
 次に、国保の内容をもっと改善しろ、国庫負担七割とおっしゃっておりましたけれども、たぶん給付率を七割くらいにしろ、個人負担を三割程度にしろというお話だろうと思います。これにつきましては、今度、結核、精神病につきましては、すでに御承知のように、七割給付にいたすわけであります。しかし、将来、結核、精神病に限らず、また世帯主に限らず、この給付率を引き上げする方向にぜひ進みたいものだと思うのであります。
 最後に、国民年金につきまして、福祉年金の金額を三千円に引き上げろと、こういう御意見でありました。できることなら早くそういうところまでいきたいものだと思います。拠出制の国民年金は延期して考え直してみろという御意見でありますが、この内容が十分満足なものとまでは思いませんけれども、こういう社会保障というふうな進んだ制度のことでありますから、できるだけ改善し、拡充し、前進させる道をとっていくのがよいことだと思いますので、延期して考え直すというふうな考え方は持っておりません。(拍手)
  〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。
 ただいま曾祢さんは総理の施政方針演説をお引きになりまして、相変わらず貧農切り捨てではないかという御意見でありましたが、これは非常にお考え違いかと思います。すなわち、今日における経済成長下にある食糧構造の変化、あるいは他産業への大きな労働需要のあることからの移動というものを考えれば考えるほど、かくのごとき状態にあって、今後の農村の所得を増加し、均衡ある所得を得させるには、いかなる作物を指導していくかという問題であります。また労働力の減少に伴う農村の農業というものをいかなる形に近代化し、機械化し、能率化して、生産コストを下げて収入を上げるかという問題になる。その意味において、あの施政方針演説がなされており、従って、それに対処するために、財政、金融、あらゆる方面から総合的に考えると申し上げた次第であります。かくのごとき状態でありますから、曾祢さんが御指摘になりましたように、何で相変らず米麦中心にとらわれないで選択的作物の生産を推進することをやらないのかというお話はごもっともであって、今度の政策予算におきましては、まず第一に、大裸麦のごとき需要状況の変化したものにつきまして、いつまでもこれを生産させておくよりは、これを畜産にかえ、あるいはテンサイにかえ、あるいは輸入しております小麦を国産化する意味においてこれを変化させていこう、ここには大きな政策の前進があるのでございます。従って、大裸麦の転作につきましては、離作料のごときものを与えつつ、しかも、転作をやらせまして所得を上げよう、こういう方向に進んでおることは御承知をいただきたいと思います。
 さらに、ただいまのお話によりますと、かなり大農中心になるのではないかという御心配は、今度、農業基本法等を提出いたしますが、今度の予算等に現われましたものも、われわれは今のような状態におきまして、大きなものも小さいものも含めて近代化するのには、これを協業の方法によって、耕作の協業から生産物の商品的価値の造成というようなことまでもいたしますにつきましては、協業化を進めるための法人化の問題を進めておりますが、こういうことは決して大きなものだけをねらっておるのではなくて、われわれのねらっておる農業者の全体にわたって、これは専業農家も兼業農家もともに含めて、農業自体の面からいたします所得増についての生産を上げ、生産コストを引き下げつつ所得を増加する方向へ向かって、私どもは政策を一歩進めて参りたいと、かように考えております。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(迫水久常君) 私から御答弁いたしますのは、国際収支の点と物価の問題でありますが、総理大臣より御答弁申し上げましたことを補足的に申し上げます。
 国際収支の見通しにつきましては、今回は特に慎重にいたしまして、経常収支の面におきまして、貿易の面では、昭和三十五年度には船舶の輸出が相当にあったのでありまするが、その船舶の輸出を昭和三十六年度においては見積もらない、ICA関係の輸出で落ちてくるであろうと想像されるものは、これを全部落としまして、しかも、そういうことで計算をいたしまして、貿易上の経常収支においては一億二千万ドルの輸出超過になる。ただし、貿易外の経常収支におきましては、貿易の幅の拡大によりまして海外支払いがふえますし、また、円セールその他のいわゆる特需関係の受け取りが減になりますのを見込みまして、ほぼ一億二千万ドルのこれは赤が出る。従って、経常収支においては収支ほぼ相償う格好になるであろうが、ユーザンスの期間の延長等を見まして、最小限度、資本収支において三億ドルくらいの黒が出てくるものと、こういうきわめて慎重な見積もりをいたしましたので、甘過ぎるということはないと思います。
 物価の値上がりの問題につきましては、昨日私は、ここで私の話の大部分をその問題にさいてお話を申し上げたので、御了解を願えると思いますけれども、要するに、きょうのお話の中では、物価の値上がりのムードの張本人は池田内閣の積極政策であるとおっしゃいましたが、私はその話はある意味において正しいと思います。というのは、もし池田内閣が消極的に消費を節約する政策をとりましたならば、おそらく物価は下がる傾向にありましょうけれども、それでは、甘木の国民経済を拡大し、これを高度成長に導いていくことはできないのでありまして、私は、高度成長政策をとる場合においては、そういうムードの起こってくるということは、一つの現象としてやむを得ないんだと思います。問題は、どうして全体の経済をこわすような値上がりが起こらないようにするかというところが問題であるのでありまするが、きょうの曾祢さんの御議論を拝聴しておりまして、それから、また先ほど江田さんの御議論も拝聴いたしまして、私は、物価、すなわち、労務の対価の向上による若干の物価の値上がりがある間に、めいめいの所得がそれよりも幅大きく増加しつつあるということを、全然見過ごしての御議論が多かったように思うのであります。(拍手)その点につきましては、またよく御了解を願いたいと存ずるのであります。(拍手)
#28
○議長(松野鶴平君) 質疑は、なおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十二分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト