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1960/02/01 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第5号
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1960/02/01 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第5号

#1
第038回国会 本会議 第5号
昭和三十六年二月一日(水曜日)
 午後三時十五分開議
  ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十六年二月一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
  (第三日)
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、常任委員長辞任の件
 一、常任委員長の選挙
 一、日程第一 国務大臣の演説に関
  する件(第三日)
  ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。海外旅行のため、泉山三六君から十四日間、宮澤喜一君から十一日間、請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
   ――――・――――
#5
○議長(松野鶴平君) この際、お諮りいたします。
 大蔵委員長杉山昌作君、文教委員長清浄俊英君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
   ――――・――――
#7
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
#9
○光村甚助君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
#10
○前田佳都男君 私は、ただいまの光村君の動議に賛成いたします。
#11
○議長(松野鶴平君) 光村君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 よって議長は、大蔵委員長に大竹平八郎君を指名いたします。
  〔拍手〕
 文教委員長に平林剛君を指名いたします。
  〔拍手〕
   ――――・――――
#13
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。矢嶋三義君。
  〔矢嶋三義君登壇、拍手〕
#14
○矢嶋三義君 私は日本社会党を代表いたしまして、持ち時間二十三分半にわたって質疑をいたします。説き起こし説き去るところ、いつ、いかなる大臣に、どういう質問が向けられるかわかりませんので、よくお聞き取りの上、親切にして適切なる答弁を、まずもって御要望申し上げておきます。
 さて、首相並びに蔵相、経済企画庁長官に伺いますが、弱い犬はよくほえると申します。あなた方の演説並びに答弁を承っておりますと、物価並びに減税に関して、るる述べられておりますが、きわめて楽観的な論で終始されております。ほんとうにそういうお考えでいらっしゃるのか、そうだとするならば、私は重大なる反省を促さなければなりません。従来、予算の拡大率の最高であったのは昭和三十三年の一五・三%、これがマキシマムであります。本年度の一般会計は二四・五%の膨張を来たしておりまするが、第一次、第二次補正予算を入れるならば、実質二兆八十四億円となり、実に二八%の超大型予算と相なっているのであります。その上に、財政投融資計画は約二三%ふくれ、それに各種公共料金の値上げ、さらには金利の引き下げ等をなさっておられるわけでありますが、資本の成長だけに目を向け、反面を見落としている点が非常に強いと思います。景気を刺激し、設備投資をあおって、その結果として国際収支の悪化を招来するおそれはきわめて大きいと思うのであります。もちろん、皆さん方は、所得倍増計画を実施していくのだ、また各国民の所得は上がりつつあると、かように申しておりまするが、これは一部にすぎません。確かに所得が倍増した人はおります。その一人が、池田さん、あなたであります。あなたは、九月まで本俸十一万円であったのが、十月一日から二十五万円と相なっております。実に十四万円上がって、その率は一二七%で、所得倍増はとっくにお済みなわけであります。しかるところ、この俸給引き上げで最も少ない人はわずか八百円、全公務員平均にして一二・四%でありまして、八百円しか上がらなかった人と総理とを比べますと、総理の引き上げ率は実に百七十五倍という数字に相なるのであります。総理は政治の姿勢を正すということを言っておられます。私は政治の姿勢を正す意味において総理にお伺いします。生活保護基準を一八%、あるいは日雇い労務者の賃金を約一五%上げたと言われておりますが、この程度ではとても物価の値上がりというものに即応することはできません。よって、思い切ってここで初任給の引き上げを適正にやる、そしてこの低所得階層にあたたかい思いやりのあるところの政治を行なう必要があると思うのであります。この物価値上がりの呼び水となる要因が非常に重なって参っておりまするから、これらの引き上げの時期を若干ずらす等、配慮しなければ、あなた方の申される楽観論で通していくならばゆゆしき事態が起こると、かように思います。もちろん、迫水長官は、米、英、西独の国民所得の伸びと物価上昇率の数字を引用して説明をいたしておりまするが、私は納得できません。ここで、時間がございませんので、数字をあげて反論はいたしませんが、決してあれでは説得できるものではございません。
 さらに、あるいは減税をやったから云々と言われまするけれども、これはきわめて重要な問題を含んでおります。御記憶がございましょう、総理。昭和二十七年から三十四年の間は、その年度当初における税の自然増収見積もりの平均三八%の減税をずっと実施してきた。三十五年度の自然増収、御存じでしょう、約四千五百億円という。従来の例にならえば、約千七百億円の減税をやらなければ、減税をやったということにならない。また、三十六年度の自然増収の見込みは三千九百三十億円というわけでありまするから、従来行なった減税の比率からいうならば、約千五百億円の減税をやらなければ、減税をやったということにならないのです。ところが、わずかに六百二十八億円の純減税しかやっていない実情でございましょう。時代は違いまするけれども、昭和九年から十一年、このころの税率は国民所得の一二・九%でありました。ところが、本年度予算案においては実に二〇・七%となっておるわけでありまして、減税は完全に公約を果たしたと言われまするけれども、これは重大なる公約違反でありまして、私はその責任を追及せざるを得ません。(拍手)もし、この矢嶋の所論に反論ができるならば、あとで承りましょう。
 次に申し上げたいことは、総理は少し日本の経済力を誇示し過ぎると思います。背伸びをしてはいけません。極貧層が約千万人になっています。昨年度の自殺者が実に約三万二千人です。あなたのように経済力を誇示しますというと、今後アメリカから、自衛力の増強への負担増、さらにドル防衛への協力というものがのしかかってくるでございましょう。また他面、アメリカにおいては実に五百五十万人という失業者があって、景気は後退いたしております。ドル防衛施策を推進しようとしております。海外市場における輸出競争はきわめて激化しようとしているところであります。こういう時期でありまするから、私は、三十六年度の予算を組むにあたっては、三十三年度の予算において四百三十六億円という経済基盤強化資金というものをもってたな上げをして、弾力性のある予算を組んだわけでありまするが、そういう予算を私は組むべきであったと思うのであります。かくのごとく財政が膨張する、金融がこれに合わさる、公共料金を上げる、こういうような予算を組んでおいて、そうして池田にまかしておけというようなことでは、どうしても不安でならないわけでありまして、私は、今後の財政運用について厳粛なる注意がなければならないと思うのであります。その点、私は重ねてお伺いいたします。
 特に私は、水田、迫水両大臣に伺いたいのでありますが、あなた方お二人は人間としては非常にりっぱです。私は敬意を表しております。しかし、両大臣は、政治家として、この予算案を編成するにあたって十分責任を果たしたとは考えません。経済企画庁の経済の見通しはそのつど変わって参っております。また、大蔵大臣は予算編成権の所在さえ明確にしていない。その責任を私はただしたい気持であります。水田、迫水の両水は、池田の田――池田に通ずるとでも申すのでしょうか。(笑声、拍手)私は、同じ内閣で皆さん方が仲よくやっていただくことはけっこうでございますが、それぞれ大臣は政治的責任を明確にして、信念に基づいて政治をやっていただかなければならない。もしその結果が国民生活を脅かすことになりますならば、きわめてその責任は重大でございますので、特に反省を促し、御所見を承る次第でございます。
 次は荒木文部大臣、あなたは去る一月二十日、記者会見において、ILO脱退云々の発言をされておりますが、この発言は国際的にいかなる影響があるとお考えになりますか。あなたは、そもそもILOの何たるかを知って御発言になられたのか、疑わざるを得ません。善処を要望するものであります。総理に伺いますが、内閣にILOの何たるかもわからなくて発言するような大臣がおられて、国際信用上大丈夫でしょうか。(拍手)あなたは各大臣の任免権を持った任免権者であります。善処を要望いたす次第であります。
 さらに、文部大臣に伺いますが、日教組が政府を相手どり、ILOに対し、団交拒否、団結権侵害などについて提訴した件について、あなたの方ではその反論書面を送るということでありますが、その反論書面の内容はいかなる内容のものであるか、御説明いただきたいと思います。私は、教育の場においては相互の信頼が一番大事だと考える。昨日、あなたは本会議場で、日教組の幹部を罵倒しておりました。そういう対立関係では私は教育はできないと思います。今の教育界における雰囲気というものを私は改めなければならないと思う。文部大臣は地方教育について責任があるわけでありますから、教育の振興のために文部大臣と日教組の代表が会うということは必要です。当然です。あなたはぜひともかように態度を改めていただくことを、日本のために、日本の子供のために、また、あなたのために、強く要望いたす次第でありまして、御答弁いただきたいと思います。
 ILO問題に関連して、労働大臣に伺います。ILO八十七号条約の批准を早くしなさい。国会に提出して下さい。国内法整備云々というようなことでこれを延ばすことは許されません。国際的信用を確保する意味においても、早急に国会に提出をしていただきたい。この批准に便乗して国内法を改悪するというようなことでは、政治の姿がこわれて参りますので、一刻も早くILO八十七号条約を国内法と分離して国会に御提出下さるよう強く要望いたします。
 次に、総理にお伺いいたしますが、伝えられるところによりますと、総理は近く渡米されるということであります。この渡米の目的並びに時期を一つお答えいただきたい。あなたが渡米する場合には、問題になるのは、ガリオア、エロアの問題、第二次防衛計画の問題中共政策の問題、これは最も大きな問題として、政府としては態度を決定してからでなければ、あなたはアメリカに行くことはできないと思うのでありますが、いつ、どういう態度をきめようとされておられるのか。
 この点について一、二私見を述べてあなたに伺いたいのでありますが、ガリオア、エロアというものが債務であるかないかということは、ここでは論じません。問題は、金額の問題があります。また支払い方式の問題がございます。それから、国内的にはどの会計から支払うかという問題がございます。ここでは、私はあなたにお伺いいたしたい点は、昨日の本会議場において、ガリオア、エロアの問題はドル防衛とは無関係だと、こういう発言をされておりますが、もしそうだとするならば、西独方式というものは、御承知のごとく六二・五%を切り捨てている。しかも償還期限は三十五年ですよ。アメリカはドル防衛政策の一環として日本に即時払いを要求しているのではありませんか。無関係だとするならば、西独方式にのっとって、六二・五%の切り捨てで、それから償還期限を三十年あるいは三十五年とする態度を堅持していただきたい。この点を明確にお答えいただきたいと思うのであります。
 さらに賠償の問題についてちょっと関連して伺っておきますが、賠償義務の確定した金額は実に三千七百四十四億円、国民一人当たり約四千円となっておりますが、あのビルマ賠償の再検討にあたっては、純賠償増額の態度をとらないというのが岸内閣の公約でありました。ところが、最近ビルマ賠償の再検討条項の発動によって、約四千万ドル実質上純賠償増額の形をとると承っておりますが、はたしてそうなのか。そうだとするならば、これまた重大なる自民党内閣の公約違反でありますので、明確にお伺いをいたしたいと思います。
 次に基地の問題について、総理、防衛庁長官、外務大臣にお伺いをいたします。最近の米国のドル防衛政策に基づく海外基地縮小の政策並びにミサイル兵器等の飛躍的発達による戦略変更等からして、ケネディ政権発足を機会に、在日米軍基地は、沖繩、フィリピン、台湾、グアムの線に下がる可能性があると判断されます。政府は時機を逸せず基地の全面返還に努力すべきであります。行政協定から新地位協定にかわってから、真に日米対等の立場に立って日本国民の声を十分に反映して基地問題を処理しているかどうか、お答えをいただきたい。
 特に外務大臣にお伺いいたしますが、沖繩にいるところの米軍が、日本に上陸したとたんに在日米軍となって、日本のたとえば富士の演習場を使い得るということは、私はおかしいと思う。もしそうだとするならば、かりにラオスにおいて米軍の飛行機が戦闘して、その後、福岡の板付に着陸したとたんに、これが在日米空軍となるとするならば、安保条約の適用上から重大な問題が起こると思います。在日米軍というもものは、組織されて常時駐留するものでなければならないと思います。従って、沖繩にいる米第三海兵師団は富士演習場を使う資格はないと思うのであります。この点についてお答えをいただきます。
 さらにお伺いをいたしますが、東富士、北富士演習場は、三十六年の三月ごろまでに全面返還をする見込みがある。努力をする。そして住民の入会権は尊重する。これらは前江崎防衛庁長官の確約でありました。この確約はどうなったのか。近く全面返還がなされるのかなされないのか。なされないとするならば、いかなる理由に基づくのか、明確にお答えをいただきたい。もしもこの全面返還ができないとするならば、これまた内閣の重大なる公約違反だと、私はその責任を追及いたします。
 さらに、これに関連して伺いますが、無契約のままに演習場を米軍並びに自衛隊が使っているということは重大だと思います。たとえば北富士演習場の新屋、大分県の日出生台演習場、これらは何百町歩という広さを無契約のまま米軍並びに自衛隊が使っておりますが、即時改めていただきたい。そしてこれらの使っている演習場地に対しては、適切なる補償をすることを強く要求をいたし、御答弁をわずらわす次第であります。
 次に首相、防衛庁長官に、防衛問題について伺いますが、去る一月十三日の国防会議において、第二次防衛力整備計画案は、防衛庁においてすみやかに作成し、国防会議で慎重審議の上決定すると、今後の問題に残されました。この理由は、全く米国の政権交代による新戦略体制、ドル防衛政策に基づく海外基地の縮小、対日援助額減少の見通しいかんとの関連と判断されます。自衛隊の自主独立性というものはどこにあるのでありますか。一体、いつ第二次防衛力整備計画をきめようとされるのか、お伺いをいたします。今まで、日本の自衛隊は、国費約九千五百億円を使い、さらに明年度の防衛関係費は約千七百八十億円となっております。それ以外に、正確に計算してみますと、明後年度以後、国庫債務負担行為として将来歳出化を義務づけられる分が千二十億円ございます。多額であります。さらに従来マップによる援助を受けてきた装備のほとんどが更新の時期に参っております。国民生活の同上を非常に圧迫しつつあります。憲法違反を繰り返しております。今やアメリカの対外軍事政策は変化しつつあるのであります。共産陣営を仮装敵視国とするアメリカとの共同防衛ばかりに重点を置いたわが国の国防政策というものを、抜本的に検討することを要求し、関係大臣の御所信を承る次第であります。
 さらに、具体的に、今次国会に防衛二法案を提出しようとしておりますが、との防衛二法案は、第二次計画がきまらないのに、十三個師団への編成がえ等を内容とするものとなって提出されようとしておりますが、特にこれが「狭い国土に即して一単位の兵員規模を縮小する一方、機動力を持たせて云々」と、かような理由を掲げております。最近国内治安政策の警備力の強化という理由でこの法案を出されようとしておられまするが、まことに言語道断だと思います。この改編は、アメリカ陸軍が原子戦下に備えてペントミック師団化してきたことに範をとるものでありまして、核武装をしないというわが国で、かような防衛二法案というものは許されないと思うのであります。師団、艦隊、戦車というような改称を行ない、旧軍隊化をほからんとする防衛二法案の提出を断念することを強く要望いたします。
 さらに防衛庁長官に伺っておきますが、防衛庁として文官優先、シビリアン・コントロールは固く保持されなければならないと思いますが、現状認識はどうか。また、その対策もあわせて伺いたいと思います。
 次に、文部大臣にお伺いをいたします。学校給食費、この補助金は第一次査定で打ち切られて、その後復活をいたしましたが、私が正確に計算してみますると、この給食用小麦の輸入によって、食管会計は約二十一億円利益をあげております。何がゆえにこの学校給食の補助を打ち切ろうとされるのか。子供は池田のおじさんはこわいといっております。ということは、昭和二十六年、あなたが大蔵大臣のときに、吉田総理と一緒になって、貧乏人の子供と金持ちの子供が同じものを食べるのは経済原則に反するという方針のもとに、二十六年に補助打ち切りを提唱されましたが、今次再び問題となり、復活はいたしましたけれども、この一年限りということでありまして、学校給食の教育的効果から、今後も補助を継続するということを、ここで明確にお答えをいただきたいと思うわけであります。
 次にお伺いいたしたいことは、中共の核武装問題についてでありますが、私の調査では、中共では数基の原子炉をすでに動かしております。核分裂物質の生産、核兵器の開発の速度は非常に進んで参っております。ここ一両年にして中国が核兵器保有国と相なると思いますが、そのときにおいても、わが国は、小型核兵器といえども保持しないという原則を貫くのかどうか、明確にお答えいただきたいと思います。日本が日米安保体制を推進し、また中共を国連の外に置いている。こういう政策を続けるならば、私は、中共をしてフランスに次いで第五番目の核保有国たらしめる促進剤と相なると思います。この際われわれのとるべき態度は、中共の国連加盟、軍縮会議への参加の実現のために努力すべきだと思いますが、御所見をお伺いいたします。
 次に総理にお伺いをいたしますが、教育基本法は憲法にのっとってできている法律でありますから、憲法調査会の結論が出るまでは教育基本法の検討には手を触れないということが妥当だと思いますが、御所見を承っておきます。
 次に、科学技術庁長官に一つお伺いいたします。フランス、中共、ソビエト等の科学技術振興には、非常にスピードがある、速度があります。ところが、竹本のはマンマンデであります。だから、ある程度開発したときにはほかの国はすでに次に進んでいるという、こういう状況です。だから、抜本的に科学技術の振興をはからなければならない。研究費等若干ふやされましたけれども、戦前に比べればわずか六〇%程度です。かつて中共を訪れたある英国の科学者は、日本の科学者は非常に悲惨なほど冷遇をされている。あれでは十五年後には中共の大科学国に全くおくれをとるであろう、というような論文を発表いたしておりまするが、池正のふろしきの大きさと強さで通っておられるところの池田科学技術庁長官は、ここで大きな強いふろしきを広げて、抜本的な科学技術の振興策を立てていただきたい。その所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
 最後に、総理にお伺いいたしますが、総理は施政演説で、政治の姿勢を正すということを述べられております。全く賛成です。非常にいいことだと思います。ところが、私調査してみましたところが、宏池会という団体があって、この宏池会には昨年約二億五千万円の政治資金が入っているわけでありますが、この宏池会という団体はどういう団体なのか。私は、政治の姿勢を正すためには、総理がまずもってこの会を解散することが、日本の政治に非常にプラスになると思うのでありますが、御所見をお伺いいたしまして、一応私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(池田勇人君) お答え出し上げます。
 まず御質問の第一点は減税のことでございます。過去のいろいろな各年における減税額と自然増収の割合についてお話になりましたが、過去におきましては、必ずしもお話のような割合で毎年いっているわけではございません。昭和二十五年には御承知の通り、あの予算で千五百億の減税をいたしております。二十六年にも千億、二十七年にも千億、こういうようにずっとやっておりますが、二十九年、三十年は非常に少のうございました。三十二年のときには千億減税を私はいたしました。しかし、三十三年、四年につきましてはほとんど減税しなかった。今回ああいう減税をいたしたのでございまするが、わが国の経済基盤の強化と発展から見合いまして、そうしてまた、将来の発展と社会保障を考えまして、この程度が適当だと、また、税制調査会もそういうふうな答申をしておるのであります。私は、経済あるいは国力の実態において考えていくべき問題だと思っております。
 第二に、ILO問題に対しまして、文部大臣の発言につきましては、文部大臣からお答えをすることにいたします。文部大臣は一応遺憾の意を表しておるのであります。私は、この問題で罷免権があるからといってこれを行使しようとは考えておりません。
 私がアメリカを訪問することについての問題でございまするが、いつどういう目的だとまだきまっておりません。向こうの都合を聞いておる状況でございまして、もし参りましたなら、両国に共通する重要な諸問題につきまして活をしてみたいと思います。いろいろな問題を言っておられましたが、私は今ここで会談に持ち込む案件を申し上げる段階に至っておりません。
 次に賠償の問題でございまするが、これはビルマについては、まず賠償をきめた関係上、再検討条項がございます。ビルマにおきましては、この再検討条項を援用いたしまして、今、外務省と話し合いをしておるのであります。この点詳しくは外務大臣からお答え申し上げます。
 なお、基地の問題につきましては、北富士の問題もただいま折衝中でございます。
 それから第二次防衛計画は、これは今、防衛庁で検討いたしておるのでございまして、編成がえは何もアメリカのペントミック師団にならう関係でやったのではございません。また、第二次防衛計画はアメリカ大統領の更迭と何ら関係はございません。われわれは自主的にきめる考えでございます。
 なお、中共が核兵器を持ったら日本もどうかといいますが、中共が持つ持たぬにかかわらず、日本は従来通り核兵器は持ちません。
 なお、教育基本法につきましては、これはわが国の将来を左右する重要な問題でございます。従いまして、私は、成立の過程、また、教育の現状等を考えて慎重に検討いたしたいと思いますが、今これを変える変えないという結論は出ておりません。
 なお、宏池会のことで御質問がございましたが、宏池会はもっぱら私の政治活動を支援することを目的とした後援会でございます。なお、会員につきましては、政治家は入っていないのでございます。政治資金規正法によりまして会計は政府の方へ届け出る等、明らかにいたしておるはずでございます。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(水田三喜男君) 予算の編成につきまして無責任であるというおしかりを受けましたが、予算の編成権は言うまでもなく政府にございます。政党内閣でございますから、政策に関して与党の意見を聞くべきことは当然でございますし、また、閣僚全員の意見も統一されなければなりませんし、その間にありまして、予算編成の当事者として、私は及ばずながら責任を果たしておるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(迫水久常君) 経済の見通しを作りましたのにつきましては、私は、先日の御説明でも申し上げました通り、わが国経済の実力を十分に評価するという立場をもって、信念を持ってこれを作りました。従って、この見通しは決して何人にも迎合したわけでもありませんで、私どもの作りました見通しは、かりに当たらなくても決して遠くはない、こう信じておる次第でございます。
 また、今回物価がいろいろ上がってきて、結局低所得者層の生活を圧迫するのではないかという御質問でございますけれども、私は、現下の物価の問題は、これをインフレーションの問題として理解すべきではなく、また、論ずべきではないと考えております。すなわち今日における物価の問題というのは、消費者と直接接触する部面における労務の対価の上昇、すなわち一般的な所得の増加に比例をもって、そういう部面におけるところの労務の対価の上昇の問題として考えるべき、また、対策を講ずべき問題だと考えております。もっと象徴的にいうならば、これはサービス等の料金の上昇の問題が中心となるべき問題だと考えておるのでありまして、そういう趣旨においてわれわれも対策を考え、また、その具体的方法についても論議をいたしたいと思っておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答えを申し上げます。
 第一に、去る一月二十日、私が文部省の記者クラブとの会見におきまして、私の発言の中で、話がはずみ過ぎたとは申しながら、その用語において穏当を欠いた個所がありましたことは、率直に言って適切を欠いたものでございまして、まことに遺憾に存じております。ILOは、正義と人道と世界の恒久平和を確保するため必要な労働条件の改善を目的とする公正な国際機関であると承知いたしております。
 円教組の申し立てに対する政府意見は、求められております限りにおいては提出をいたしました。その内容は、日教組の申し立てにおける事実の誤謬を指摘するとともに、法律上の問題について政府の見解を述べたものであります。もっと詳しく御報告をすべきことは承知いたしますが、承りますと、この問題の政府回答は、一定の時期まで外交上の秘密扱いということに慣例がなっておる趣きでございますから、時が参りましたならば新聞発表もいたしたいと思っておる次第でございます。
 第二の問題は、私が日教組の幹部と会わないが、会ったらどうだという御忠言でございます。私が日教組の幹部と話し合いをしない理由は、第一に、文部大臣が日教組と交渉しなければならない義務も権能もないという法律上の理由のほかに、第二には、教師の倫理綱領等の文書に表明されている日教組の考え方が児童生徒に及ぼす悪影響、及び日教組と会見することが、従来法秩序を無視し暴力的な反政府運動を行なってきた日教組の代表の考え方を、あたかも日本政府が是認しているような誤解を国民に与えることを考慮して、現状におきましては、日教組幹部と交渉のために会う、あるいは事実上会見するということが無意味であるばかりでなく、むしろ有害と判断しておるからでございます。(拍手)倫理綱領に立脚する団体としての日教組幹部にお会いしませんことは以上の通りですが、そういうことを離れまして、五十かと称せられる絶対多数のよき教師の人々と、現場の体験に基づく建設的な御意見を聞かしていただく限り、いつ何どきといえどもお目にかかる用意を持っております。
 第三には、学校給食は続けるかどうかということでございますが、学校給食を通じまして、学童の健康を保持する、改善する意味において、今までの経験上きわめて有意義であることを認めておりますから、もちろん今後も継続し、さらに普及度を高める考え方でございます。この学校給食に充てる小麦の輸入に関連して、もうけておるじゃないかというお話でございますが、計算上は一応四億円ばかりもうけておると言えば言えないこともないと思います。ですけれども、この問題は、御承知の通り、安く小麦を輸入して高く売っておる、そのさやが食管会計の経理上まあ利用されておるという角度からのお話でございますれば、よくわかりますが、ことさら学校給食の小麦を通じてもうけるためにもうけておるというわけじゃないことは、矢嶋議員もよく御承知のところでございまして、私どもは、その点は以上申し上げたように理解いたしておるわけでございます。(拍手)
  〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(石田博英君) ILO八十七号条約は、ILO諸条約の中でも基礎的なものの一つであると認識をいたしておりまするので、所要の手続と準備を急ぎまして、目下努力をいたしておるところであります。できるだけ早く提出したいと存じております。
 なお、これに関連して国内法を改悪するなという御意見でありましたが、一昨年の二月に労使公益三者で構成されておりまする労働問題懇談会が、この問題について批准すべきものと答申をいたしました際、国内法の整備と労使双方の団体が国法を守ることを建前としなければならないということが言われておるのでありまして、この答申を尊重いたしまして、国内法の整備をいたしております。改悪をしようとしているのではなくて、改正整備に努めておるところであります。(拍手)
  〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(西村直己君) お答えを申し上げます。防衛庁関係のおも立った点は総理大臣から回答申し上げたのでありますが、二、三残されたる部分につきまして矢嶋議員に御回答申し上げます。
 第一は、米軍基地の返還交渉、全面返還を迫ったらどうか。――まさにその点について、われわれ必要な面もあろうと思います。地元の住民の利害というものは、われわれ日本人としても痛切に感ずる部分もあります。しかしながら、一面におきまして、米軍に対してまた基地を供与するという条約協定上の義務も存するのでありまして、従って、ケース・バイ・ケースにおきまして、米軍側の必要限度、利用度、同時にまた地元民の要望等をかね合わせまして、十分にわれわれは誠意をもってこの問題の処理に当たって参りたいと考えております。特に、東富士、北富士の問題につきましては、すでに御存じのとおりの交渉経緯になっておりますが、なお、米軍あるいは地元、自衛隊等の使用の諸種の条件等におきまして話し合いのつかない部分がございます。今後さらに誠意をもって折衝に当たって参りたいと考えております。
 もう一つ、無契約のままで使用している演習場があるではないか。――北富士に一件ございます。これは占領期間中から引き続いて地主の同意を得てはきましたけれども、三十四年度分以降その話し合いがつかないままになっておりますが、これはできるだけ年度内に解決をいたしたい、こういう考えでございます。
 それからいま一つ、防衛庁において、文官と申しますか、文民優位の原則、いわゆるシビリアン・コントロールの原則は堅持されているか。――政治の軍事に対しまする優先ということは、民主主義の国家におきましてはきわめて大事なことでありまして、これにつきましては、私ども文民優先の原則は格段に重視し、今後も堅持して参りたい考えでございます。
 それから防衛二法案の問題でありますが、これは、内外の情勢から考えまして、防衛庁といたしましては、国力に応じ国情に応じた漸増主義はとって参りたい。この意味から、自衛隊の質的改善等をはかる意味で、やがて防衛二法案等は国会において御審議願いたい考えのもとに、ただいま手元におきまして案を検討中でございます。
 以上お答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。
 第一点は、総理からお答えがありましたが、ビルマ賠償の問題で補足して申し上げます。ビルマ賠償につきましては、再検討条項に基づきまして一昨年四月要求して参りました。ビルマ側は、この賠償額がフィリピン及びインドネシアに比較いたしまして少な過ぎるから、これを増額してもらいたいということでございますが、わが方は、この賠償額は他の求償国に対しまして決して均衡を失していないという立場で、両者の主張は平行線をたどっておったのでございます。しかしながら、こういう案件が非常に長期にわたって、身近な友邦でありますビルマとの間に係争問題になっておりますことは、わが国のアジアにおける地位からいたしましても、あまり好ましいことではないということで、今後さらにこの友好を深めていく観点からいたしまして、できるだけすみやかに解決をはかりたいということで考えまして、かたがたビルマ側が従来示しておりましたわが国に対する好意にもかんがみまして、今般ビルマに対しまして経済及び福祉に対する有効な協力をする、しかもこれを無償で供与する、かような方針を固めました次第でございます。こういう協力を行なうにあたりまして、ビルマ側は賠償再検討条項というものを落としまして、今後これに基づく要求は出さない、かような方針にいたしておるのでございまして、これは賠償の増額ではない、かような建前で話をしておるのでございます。
 第二点は、沖繩の米軍が富士演習場を使用することについての御質問でございましたが、私ども従来とっております解釈は、また今後もさように考えております理由は、在日米軍の指揮下に入って演習するのでございますから、この演習する部隊の滞在期間が短くても長くても、これは指揮下に入っている以上この演習場を使うことは正当である、かような考え方でございます。(拍手)
  〔国務大臣池田正之輔君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(池田正之輔君) ただいまの矢嶋君の私に対する御質問は、むしろ私に対する叱咤激励と承知いたしております。まことに御同感でございまして、わが国のおくれた科学技術の水準を世界の一流国にまですみやかに達成させるべく、微力を傾倒いたしたいと考えております。(拍手)
#23
○議長(松野鶴平君) 矢嶋君。
  〔矢嶋三義君登壇〕
#24
○矢嶋三義君 先ほどの私の発言の中に、ガリオア、エロアの項の所で、西独方式ならばそれを承認するやに受け取られるような発言があったかと想定されますので、この点については西独方式といえども認めない態度でありますから、議長においてしかるべくお取り扱い願いたいと思います。
 総理に一つだけ再質問いたしますが、文部大臣は先ほどの答弁のように、日教組とどうしても会わないというのですね。フルシチョフとケネディ両氏さえ会おうというのではありませんか。話し合いの政治をすると申されております。地方の教育というものは文部大臣にも責任があるのです。教員定数の問題にいたしましても、校舎建築の問題いたしましても、教科の問題にいたしましても。従って地方教育のために文部大臣と先生方の代表が会うということは必要なのであります。そうでなければならないのであります。ところが、かたくなな文部大臣はああいうことを言っておられますが、あれでは日本の教育は興りません。あなたは五高以来の親友だということで文部大臣に任命されているようですが、日本の文部大臣として、先生の代表と会って日本の教育を進展させることができるようにお取り計らい願いたい。あなたの内閣を代表しての御所見を承って再質問を終わります。
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(池田勇人君) 文部大臣が日教組の幹部と公式に会わない理由は、前からも聞いておりますし、ただいまの答弁でも一応私は了承し得るのであります。しかし、いろいろの事情もございましょうから、再度私は膝をまじえて文部大臣の意見を十分聞きまして、そうして善処いたしたいと思います。(拍手)
  ―――――――――――――
#26
○議長(松野鶴平君) 辻政信君。
  〔辻政信君登壇、拍手〕
#27
○辻政信君 私は外交と防衛につきまして池田内閣の施政方針をただしたいと思います。
 一九六一年の国際情勢を展望しますと、ケネディ新大統領の登場によりまして、緊張をやわらげる空気がかすかに認められますが、米ソの対立は根強いものがあり、世界の至るところに火花を散らし、それが偶発的な過失から常識では考えられない全面戦争に拡大する危険がないとは保証できないのであります。このような国際情勢に処する日本の態度として、池田総理は、東西の双方を引き離すよりは結びつける方向に多くの関心を払われ、外務大臣もまた緊張緩和を外交の根本方針として示されたことは、岸内閣では見られなかった態度として、高く評価するものであります。以下、この大方針を実現するために日本が何をなすべきかについて、具体的にお伺いをいたしたいと思います。
 第一は、国際間における中立の動きについてであります。最近の国際情勢で顕著な特色は、米ソ対立の渦中に入ることを避けるため、中南米及びアジア・アフリカ諸国に中立の動きが高まっていることであります。この傾向は、思想的に共産主義と自由主義の中間に立つイデオロギーの中立ではなく、外交または軍事の方面においてのみ米ソいずれの陣営にも片寄らない政策をとるものであります。主義に中立はなく、政策に中立があることは明らかであり、中立主義と中立政策とを混同するところに、議論の混迷があり、与野党の対立があると考えるのであります。具体的に二、三の例をあげますと、アラブ連合は、国内におきましては共産党を激しく弾圧しながら、米ソの間に民族的中立政策をとっております。またスエーデン、スイス、オーストリア、インドなどは、思想的に自由主義であり、西欧側に立ちながら、外交と軍事において中立政策をとり、またユーゴスラビアは、思想的には共産主義でありながら、外交、軍事上は中立の政策をとっておるのであります。このような動きが国連外交の舞台におきまして一つの大きな国際世論として結集せられ、大国の横暴を制する力となりつつあることは、第二次大戦前には見られなかった特色であります。この現象を、池田総理は緊張緩和に役立つものとごらんになるか、それとも対立を激化するものとごらんになるか。もし、この動きが緊張緩和に役立つとの見解をとられるならば、それを外交の根本方針とする日本としては、このような中立国家群と歩調を合わせるべきであり、役に立たぬとの考えであれば、中立政策を否定すべきであります。総理の今までの御答弁によりますというと、この緊張緩和の方針と中立問題について少し国民に誤解を残しておるようでありますから、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 第二点は、国内における中立の動きについてであります。国際的な動向が国内にも反映いたしまして、中立論争が盛んになってきました。その内容を分析いたしますと、共産党及びその同調者は、共産革命を容易にするための中間目標として日本の非武装中立を唱えております。その他の革新陣営及び知識層の中には、思想的には自由主義であり、少なくとも共産主義との間に一線を画しながら、原爆の被害国として、戦争反対の国民感情から、ばく然たる中立を希望するのであります。この二つの型は、きびしい国際情勢の現実を無視したものであります。しかし、私は、これらの中立論とは本質的に異なり、日本の自衛中立について政府の御見解をただしたいと存じます。
 その内容を端的に申し上げますと、アメリカは日本の領域から全兵員を引き揚げて、その兵器、装備、施設の一切をそのまま無償で日本に引き継がせることであります。まず、軍事的な観点からその可能性を検討いたします。ケネディ大統領が昨日発表された一般教書を見ますと、国防の再編成について三つの着眼を示しているのであります。その第一は、空輸能力の強化により、米大陸の兵力を地球上のいかなる地点にも迅速に使用できるようにすること。第二は、ポラリス潜水艦の整備を急ぐこと。第三は、ミサイル計画の促進についてであります。これはアメリカの戦略に大きな変化が起こるということを示唆しているのであります。その意味から、海外における米軍基地の価値を判断いたしますと、急速に低下することはきわめて明らかであります。
 次に、国際政治上から見ますと、世界各国に起こりつつある民族運動、それは海外における米軍基地の引き揚げを迫っております。米軍が昨年アイスランドから撤退し、最近また、モロッコにおける大空軍基地と海軍基地を一九六三年までに撤去することを声明しているのであります。
 さらにまた、経済上から見ますと、アメリカは、ドル防衛のため、海外基地の縮小整理を迫られております。
 このように、戦略的、政治的、経済的な方面から総合して観察をいたしますと、日本における米軍基地もまた例外ではなく、日米両国が相互信頼の上に立ってその必要度を再検討する時期に達したものと考えますが、池田総理の御見解をお伺いいたします。
 第三に伺いたいことは、自衛隊の能力についてであります。かりに、アメリカ軍が日本の基地を返還するとして、そこにあった一切の兵器、装備、施設を現状のままで無償で自衛隊に引き継がすとした場合に、訓練された二十数万の自衛隊は、それを使いこなして、祖国をみずから守る自信があるかどうか、その点について西村防衛庁長官よりお答えを願いたい。
 第四は、日本の国力から見て、自衛中立が可能かどうかという点であります。政府は、安保条約を必要とする理由といたしまして、国力が小さいために、独力では日本を守れないから、アメリカと協力するという見解をとっておられるのであります。太平洋戦争直前と現在における日本及びアメリカの国力を、重要産業の面から比較いたしますと、
 鉄において、戦争直前の日米比率は五千百万トン対六百八十五万トンで、八対一でありましたが、現在は八千五百万トン対二千三百三十万トンで、三・五対一になっております。
 石炭では、戦前の四億五千万トンに対し四千五百万トンで、十対一でありましたが、現在は八対一となっております。
 電力では、戦前の千四百六十五億KWHに対し二百六十七億KWHで、六対一でありましたが、現在はこれに対し八対一となっております。
 石油の年間消費量を見ますと、戦前は二億トン対五百万トンで、四十対一でありましたが、現在は五億トン対三千万トンで、十八対一になっております。
 自動車の保有台数を比較いたしますと、戦前はアメリカの三千万台に対して日本は十三万台で、二百三十対一でありましたのが、現在は七千万台に対して二百五十万台、二十八対一となっているのであります。
 その他の産業技術面から見ましても、少なくとも戦前よりは現在の日本の対米国力比は、はるかに上昇していると見られるのであります。池田総理もまた、その施政方針でこの点に触れて、日本経済の成長と発展は世界の驚異であるとお述べになっていらっしゃいます。にもかかわらず、国力が小さいことを理由にして、日本自体の防衛さえもアメリカに頼まねばならぬということは、あまりにも卑屈ではないかと考えます。スエーデンは人口わずかに七百万でありながら、年々二千億円以上の防衛費を社会党政権のもとで負担し、有事七十五万を動員することができる自衛体制を整えております。その上に百数十年にわたるスエーデンの平和と中立が保たれましたことを、日本の現状と比較されましたらいかがでございましょう。かりに、日米共同防衛体制を当分くずさないとしても、日本だけの防衛は日本が担任し、日本以外のアジアの防衛をアメリカが担任する、そこで初めて集団防衛体制内における両国の分担使命が明らかになり、それに基づいて第二期防衛計画が立てられるものと考えられますが、総理及び防衛庁長官の所信を承りたいのであります。
 第五に伺いたいことは、この構想がもたらす効果であります。アメリカが日本領域における軍事基地を引き揚げて、現状をそのまま自衛隊に移管することができるとしたならば、アメリカにとりましては、日本の防衛力を低下させることなく、在日五万の兵員を本国に引き揚げることによって経費を節約し、外交上では、中ソを刺激することなく、アジアの緊張を緩和し、沖繩、小笠原の施政権を回復することによって、千島の返還をソ連に要求できる根拠となり、また、国民感情の上からは、反米運動をなくして、日米友好を一そう強化できる結果となり、両国にとりましては、まさに一石数鳥の効果をおさめ得るものと確信いたしますが、池田総理大臣の御見解を承りたいのであります。
 次は、日本の防衛努力についてであります。このような画期的な転換を摩擦なく実行するためには、アメリカとの完全な了解が前提であり、赤旗を立てた反米闘争では、沖繩、小笠原の返還は望めないだろうと考えます。それには、まず日本の防衛について、日本自身がさらに真剣に努力をなすべきであります。残念なことに、施政方針には一言も触れられておりませんが、自衛隊は軍隊にあらずというようなごまかしではなく、堂々と憲法を改正し、国防省を作り、国防軍として、軍事に関する秘密保持の法制化を急ぐなど、一連の施策を必要とすると考えますが、池田総理並びに西村防衛庁長官に、その御用意があるかどうかを承りたい。
 第七は、安保条約の修正についてであります。米軍を日本領域から引き揚げるためには、外交的な措置としては安保条約を改正することであります。具体的に申し上げますと、第三、第五、第六、第十条の削除並びにそれに伴う修正であります。最近、アメリカ上院議員で、ともに外交委員会の権威でもあり、また民主党議員でありますマンスフィールド氏及びスパークマン氏は、ともに、日本側から希望があったならば、アメリカは喜んで安保条約の再修正に応ずべきことを議会に報告しているのであります。池田総理が近い将来渡米される機会には、このような根本問題について、ひざをまじえて新大統領と会談される御用意がありますかどうか。
 第八は、中共の国連加盟についてであります。昨年の総会におきまして、中共の国連加盟たな上げに賛成した国は、日本を含めて四十二カ国であります。これに反対したものが三十四カ国、その差がわずかに八票に迫りました。棄権した二十二カ国の多くはアフリカにおける新興国家であります。コンゴー、アルジェリア問題などに関連いたしまして、アフリカ諸国に対する中ソ両国の活躍は西方側をはるかにしのぐ勢いがあることを見ますと、今年の国連総会では、わずかの差をもって中共の加盟が認められるのではないかとも考えられ、この点につきましては、アメリカのラスク国務長官及び新国連大使のスチブンソン氏も率直に認めているのであります。池田総理は、本年はこの問題への接近が一つの課題でもあるとして重視をなされ、与えられた条件のもとにおいて可能な友好関係を立てたいと述べられておりますが、その条件は、他から与えられたものではなくして、日本が自主的に条件を作為して、世界の緊張緩和に道をお開きになることができないかどうか、総理の御見解を承りたいのであります。
 第九は、日米関係と中ソ関係の調整についてであります。昨年モスクワで開かれました共産圏首脳会談で、中ソ両国の間に激しい議論があったことを西欧陣営では重視しまして、中ソ離間の可能性があるかのように観測する向きもありましたが、もとより、中国はソ連と異なりまして、アジア的性格を持っており、また六億のマンモス国家があまりに強くなることはソ連の警戒するところでもありましょうが、国際情勢の現段階におきましては、中ソ両国が自由陣営を共同の敵とする限り、またフルシチョフ政権と毛沢東の地位が安定している限り、中ソ両国の理論闘争は現実外交の歩調を乱すものではなく、むしろ根本的には完全に手を握って、外交のかけ引きにおきまして、ソ連は微笑外交をやり、中共はこわもてとなって、自由陣営の歩調を混乱させることさえあると私は考えるのであります。従いまして、中共問題の解決には、中ソ両国の結合をそのまま認める、同時に日米両国の関係もそのまま認めさせて、それをお互いに尊重しながら、ソ連と結んだ中国が、アメリカと結んだ日本と友好を回復することにより、日中両国の背後にある米ソ両国の対立を緩和できるし、また緩和させなければならない、これこそが平和外交の道であると考えますが、このような考え方に対する総理大臣及び外務大臣の御見解を承りたいのであります。
 第十は、北京と台湾の関係についてであります。台湾政府を中国全体の代表であると考えているのは蒋介石総統だけであり、また周恩来総理が台湾問題を中国の内政問題であると主張していることも、現実を無視した議論であります。この論争にとらわれている限り、中共問題の解決は不可能であります。それを打開するには、中共の国連加盟をまず実現し、そのあとで、台湾問題は国連外交の舞台において、台湾島民一千万の自由な意思を尊重して、最終的な帰属を決定すべきものと考えますが、小坂外務大臣の御見解を承りたいのであります。
 第十一は、アジア外交と日米協力の関係についてであります。敗戦後の十五年間、日本の外交が、社会党の片山内閣も含めて、一貫して対米友好の基本線を堅持しましたことは当然であります。また将来も相当長期にわたって続けられるものと信ずるのであります。それは、敗戦の荒廃から立ち上がった日本に援助の手を差し伸べたのがアメリカであり、共産陣営からは一握りの援助も受けていない歴史によるものであります。他国の援助に感謝する国民の気持が、その国の外交方針を決定する一つの要素であることは当然でありますが、しかし、今後の日本はそれだけではなく、さらに一歩を進めて、アメリカの対アジア外交を誤らしめない積極的な態度を打ち出すべきではなかろうかと考えます。アジアに位置する日本は、アジアの繁栄の中に日本の繁栄を求めるべき宿命を持っているのであります。その観点から戦後のアメリカのアジア外交を見ますというと、ことごとく失敗の歴史であり、その一半の責任は日本の消極的な態度にもあったのではないかと考えます。戦いに敗れた日本は、他国を支配した立場から、他国に支配される立場に置かれ、その点ではアジアの諸民族と共通の悩みを持つに至ったのであります。アメリカの失敗は、敗戦の経験がなく、アジアに物を与えて、アジアの心をつかみ得なかった結果であります。少なくとも、事アジア外交に関する限り、日本はアメリカ外交を好意をもってリードし、いたずらにアメリカに追随をしてその後塵を拝すべきではないと考えますが、これについての池田総理のお心がまえを承りたいのであります。
 第十二は、共産陣営に対する自由陣営の基本的な態度についてであります。私が昨年の八月から九月にかけて、全学連の学生たちを連れまして、インドを振り出しに、米ソ両陣営の焦点をたどりながら、十六カ国を視察旅行して、その内部を比較検討させた結果によりますと、あの安保騒動で国会に突入した学生たちも、共産陣営に対する認識を根本的に改めたようであります。西ベルリンが共産圏の中に完全に孤立しながら、戦後十五年にわたり健在している事実は、何よりも雄弁にそれを立証しているのであります。東ドイツには二十二個師団のソ連軍が現在なお常駐しているのに、そのまっただ中に、西ベルリンはわずかに二万足らずの連合軍がおまじないのように駐留しているだけであります。二百四十万の市民は、この二万によって守られているのではありません。経済的にも、政治的にも、思想的にも、東に比べて格段の安定と明るさを持っているために、ドイツ人は共産主義をおそれず、その誘惑を受けつけないのであります。この経験を全体に及ぼすべきであり、共産主義をおそれずに、貿易、旅行などの一切の制限を一日も早く完全に撤廃することによって、いずれがよりよき社会であるかをお互いに認識させるとき、おそらく鉄のカーテン内に閉ざされていた人民は、より高い生活と自由な社会を西欧陣営の中に見出すでありましょう。その結果、共産陣営の内部から、独裁政治、全体主義を批判する声が起こるであろうことを信じて疑いません。それによって、武器を用いず、戦争に訴えないで、共産陣営の態度を平和共存の方向へ導くことができると信じますが、このような見方に対する総理の御見解を承りたいのであります。
 最後に、外交に対する与野党の態度についてであります。自民、社会の両党が、国の外交方針について相反する立場をとられ、平行線をたどっておられますことは、きわめて危険であります。イギリス、アメリカはもちろん、スエーデンや西ドイツなどの諸国でも、事、外交に関しましては、常にせとぎわでその論争を打ち切っているのであります。私は、無所属の立場で静かに両党の態度を見ますと、自衛を認める自民党は、さらに一歩を進めて、祖国の防衛を他国に依存しない、きぜんたる態度をおとりになるべきであります。また、中立を唱える社会党は、国際情勢の現実から、中立を守るための自衛の必要を、すなおにお認めになるべきであります。その意味で、自衛中立こそが、対米友好をくずすことなく、世界の緊張をやわらげて、戦争を防止し、最悪の場合にも日本を戦争の渦中に入れない国民の悲願にこたえ得るものであり、これこそ両党の共通の広場であると信ずるものであります。池田総理は、自民党の総裁であるとともに、全国民の総理であります。自衛中立を政策の中心として打ち出され、国民に方向と希望と勇気を与え、また、野党との間に共通の道をお開きになる御決意があってほしいと、心からそれを念願し、最後にその所信を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 世界の緊張緩和につきましては、今お話の中立政策をとっておる国々のみならず、両方の側におけるものも、みんな緊張緩和に努力いたしておるのでございます。私は、この努力が全体的に実を結ぶことを念願いたしております。
 第二に、基地の縮小問題でございます。私の得ました情報では、ケネディ大統領は必ずしも基地を縮小すると言っていない。アイゼンハワーはある程度基地の縮小を言っておりましたが、最近の情報ではそうでないようでございます。この問題は、しばらくアメリカの出方を見るべきでございましょう。もちろん、基地が少なくなるということにつきましては、世界の情勢の推移等によることでございます。私は、両者の相互の理解の上にこの問題を片づけていきたいと思います。
 また、日本が自分の力で日本を守るという問題につきましては、これはなかなか今の状態ではむずかしい問題だと思います。私は、やはりアメリカと共同体制のもとで日本を守り、その間に日本の国力を増進して福祉国家を早く建設することが適当な近道だと考えておるのであります。従いまして、憲法を改正する気持はただいまのところございませんし、また安保条約につきましても、ただいまのところ、どうしても変えなければならぬとは考えておりません。またマンスフィールド氏も、安保条約につきまして相当の意見があるというだけで、辻さんのような結論は私は出していないと承知いたしておるのであります。
 なお、次の中共の国連の代表権問題でありますが、今の数字は、代表権問題を問題に提供するかしないかの数字でございます。問題を討議するということになってから、また認めるか認めぬかの問題もございますし、またスチブンソン氏にいたしましても、先月二十八日の国連総会に出席した場合の記者会見では、なかなかお話のような結論を出しておりません。初めの言葉とおしまいとは違っておるようでございます。またラスク国務長官もお話のような結論にはまだいっていないと思いますが、私は施政方針演説でも申し上げましたごとく、東西の緊張緩和につきましては、微力ではございますが、できるだけの努力をいたしたいと考えておるのでございます。
 また、日米関係と同様に中ソが今いろいろな評判になっておりますが、あれを改めたらどうか。――私は中ソの外交関係につきまして批評を加えることは差し控えたいと思います。
 台湾問題につきましてお話のような意見と似た意見は、今の国務次官ボールズ氏が野にあったときに言っておった意見と似ておるようでありますが、これとて、なかなか実行にはむずかしい点があると思うのでございます。私は施政演説で申しましたごとく、世界の情勢の推移を見ながら緊張緩和に努力を続けていくとお答えする程度にしか、今結論を出しておりませんし、また、自分の気持がありましても、ここで申し上げることは早過ぎるのではないかと思います。
 また、アジアの繁栄のうちに日本の繁栄があるのだ。これはもう至言でございまして、そのつもりで今後努力いたします。またアジアの繁栄のうちに世界の繁栄もある。こういう意味で、日米のみならず、西欧諸国とも話し合って協力していく考えでおるのであります。
 共産主義対策、一つの理想でございましょう。御意見として承っておきます。
 また、日本の外交が与野党一致して超党派外交になることを念願いたしておるのでございますが、いかんせん、まだそこまでいっておりません。私は、外国におけるがごとく、外交についての争いは水ぎわまでということにしたいと、今後努力を続けていきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣西村直己君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(西村直己君) ただいま総理から大体意を尽くしてございますので、私からあえて付加するものもないと思いますが、特に基地の問題につきましては、防衛庁といたしましても、日米安保条約のもとにおきまして、相互信頼の上、でき得る限り不断にその価値を検討いたして、地元民の要望、国民の要望、アメリカ側の要望等を調節して参りたいという考え方でございます。なお、辻議員から、かりに、自衛隊は一切の武装をもらったらやれるか。もちろん、現在の自衛隊は、その任務に向かって絶えず訓練し、規律を厳正にさせておるわけでございますが、日本の青年がアメリカの青年に劣るという考え方は毛頭ないのでございます。ただ、わが国といたしましては、総理大臣から申し上げましたように、集団安全保障体制を堅持しながら、施政方針演説にも明らかにその面は出ておるのでありますが、そのもとにおいて自衛隊の質の改善をはかって参りたい。国力に応じた漸増をはかって参りたい。従って、その限度におきましては、防衛努力は真剣に果たして参りたいという考え方でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。
 中ソ等の対立、緊張の緩和の問題につきまして、また、台湾等の問題につきまして、総理大臣からお答えがございましたから、私から付加することはございませんが、最後にお述べになりました、わが国はアジアの国としての自覚に徹しなければいかぬ、そうしてアジアを知ることが必要である、またアジアから知られることが必要である、かくすることによって諸国の尊敬をいよいよ高めることができるというお考えには、全く同感でございます。敬意をもって拝聴いたしました。(拍手)
  ―――――――――――――
#31
○議長(松野鶴平君) 加藤正人君。
  〔加藤正人君登壇、拍手〕
#32
○加藤正人君 私は同志会を代表して、経済問題を中心に若干の質問をいたしたいと存じます。
 まず第一に、池田総理、大蔵大臣並びに通産大臣に対し、三十六年度予算案についてお伺いしたいと思うのであります。
 今次の予算案は、編成の当初、いわゆるイクサナシ予算としてまず大蔵者原案が組まれたのでありますが、例年のこととは申しながら、各省及び与党が復活財源の争奪をめぐって、イクサナシどころか、激しいぶんどり合戦を展開し、その間、陳情団、圧力団体までもが加わって、予算ぶんどりに一役を演じ、大詰めに来て、数字なしの、大筋だけの閣議決定という異例の措置を経て、やっと決定を見るに至ったのであります。そもそもかくのごとき予算編成に際しての難航の因は、重要施策に関する政府の態度がきまらぬままに予算編成方針が打ち出されたととろにあったと言えるのであります。今次予算案が次年度への考慮も欠けているところ、いかにも場当たり的、無定見のそしりを免れ得ないのも、これは当然の帰結と言うことができるのであります。政権担当者としては、重要政策費の決定にあたっては、政治的かけ引きによることなく、また、いかなる圧力にも屈することなく、政策的見地より重点的に決定すべきであることはもちろんであります。かりそめにも圧力団体のごね得を許すならば、勢い予算は著しくゆがめられるのが当然であります。この点については、過日来同僚議員諸君も指摘されたところであって、政府は、今後一そうこの点に心をいたされたいと思うのであります。予算編成の混乱にかんがみ、この辺から政府の姿勢を正すべきであると思うのであります。以下、今次予算案に関して若干の問題点について伺いたいと思います。
 第一の問題は、三千九百三十億円と見込まれた租税及び印紙収入の自然増収についての取り扱い方であります。従来の歳入過少見積もりを改めて、成長率九・二%の前提に立って、多額の税の自然増収を見込みながら、減税額を圧縮し、残りの八五%近くのものを全部歳出増加財源に振り向けたことに問題があると存ずるのであります。予算の規模は、三十五年度当初予算に比して、一般会計において二四・四%の増、財政投融資計画において二二・七%増と膨張し、九・二%の経済成長率をはるかに上回ることになったのであります。また、三十五年度当初予算の膨張率、一般会計一〇・六%増、財政投融資計画一四・三%増に比して、今次予算の膨張率はきわめて大きいものと言わざるを得ないのであります。例年のごとき隠し財源を持たず、当初から歳入を一ぱいに見積もった、思い切りのよい、いわゆるたっぷり予算となったのであります。収入の均衡が維持されたという意味合いにおいては健全予算と言い得るでありましょうが、いま少し明年度の情勢変化に備えて弾力性のある予算を組むべきであって、たとえば、景気調整のための資金を多少でも留保して、財政の長期策定に資すべきであったと思うのであります。
 第二の問題は、減税の規模があまりに小さ過ぎないかということであります。これは、同僚議員がすでにたびたび指摘されたところであります。多額の自然増収を精一ぱい見積もりながら、減税額の規模が税の自然増収総額のわずかに一五%程度という小規模なものにとどめられたことであります。租税の国民所得に対する割合が、税制調査会の指摘いたしました二〇%以内が適当であるとの見方に対しまして、結局は二〇・七%ないし二〇・八%と、税の負担率は増大するに至ったのであります。そもそも租税の自然増収に対する基本的な考え方は、国民に優先的に還元する建前であらねばなりません。所得税、法人税等のより一そう軽減をはかることにより、個人所得の向上と企業資本の充実に資すべきであると思うのであります。今次予算は、国民所得倍増計画の初年度という事情も手伝って、あまりにも九%の成長率に固執したきらいもなきにしもあらず、減税は、意欲的な成長施策費の要求に抗しきれず、やむなく後退せざるを得なくなったのではなかろうかと思うのであります。
 第三の問題は、貿易振興に関する予算措置についてであります。高度成長のための前提条件は、申すまでもなく輸出の伸張にあるのでありますが、米国のドル防衛措置、これに関連したわが国の貿易為替の自由化の促進、その他、国際環境の動向等、一連の要素は、今年度の輸出の伸びに微妙な影響を与えるでありましょうし、国際収支の悪化に懸念ありとするならば、輸入面よりも輸出の伸び率の低下に危惧が持たれるのであります。今次予算の貿易振興費として、一般会計において、前年度に比し、貿易振興及び経済協力費十億円増、海外経済協力基金として五十億円増、財政投融資計画において輸銀への融資二百十億円増と、それぞれ増加を見たのでありますが、この程度では、輸出伸び率の停滞懸念が持たれつつある今日、予算面よりの配慮にまことに遺憾なき知と思うのであります。
 第四の問題は、公共料金の値上げと、それに続く一連の物価上昇気運と、今次の積極予算との関連の問題であります。現下のわが国経済は、はたして、財政面よりの性急なてこ入れなくしては、経済成長は伸び悩み、不況に転落すると予測せられるのでありましょうか。意欲的な積極成長を遂げんがための景気刺激的要素を加味した今次予算が、一連の物価上昇気運に火に油を注ぐ結果になりはせぬかと、大いに憂慮するものであります。もちろん公共料金が諸物価に比し低過ぎるのも事実でありますが、かかる予算のはだ合いからして、一般的な物価騰貴への誘因となり、かつ、それがもとで、派生的物価の値上がりによる家計へのはね返りの程度によっては、必ずしも楽観を許さず、それが賃上げの足がかりとなって、コスト・インフレにまで発展する公算はかなり大きいと思うのでありますが、この点に関する各大臣の御所見を伺いたいのであります。
 次に、池田総理並びに経済企画庁長官に対し、経済成長論における輸出伸張の保証について伺いたいのであります。池田内閣のスローガンは、今後の日本経済は三年間年率九%で成長するということであります。特に池田総理の経済ブレーンと伺っておる某氏の所論によりますと、向こう十年間最低九%、当分の間は二%ぐらいで成長し、五年先くらいから成長率が鈍化して、逐次一〇%から九%くらいに低下して成長することができるといわれているのであります。しかも、私の理解する限りにおきましては、某氏は、国民総生産が年率約一〇%で増加するとき、輸出が一〇%で伸びていけば、国際収支は黒字であると述べられているのであります。この点に関して、輸出産業担当者として大きな疑問を寄せざるを得ないのであります。経済成長の主軸である輸出の伸び率が一〇%から一三%ないし一四%の高率を今後十鶴間も続けることができるとは、どうして立証せられるものでありましょうか。思うに、過去の世界経済の伸び率は大体四%ないし五%であります。そのときに日本の輸出は一一・七%で伸びているのでありますから、日本は世界貿易の大体二ないし三倍の割で伸びてきたことになるのであります。某氏は、世界の貿易は今までも大体三%の割合で伸びてきたのであるから、今後も一二%くらい、控え目に押えても一〇%は大丈夫、この調子で進めば年々三千万ドルの黒字は確実との太鼓判を押されているようであります。むろん池田内閣の長期構想は、必ずしもその某氏の案をそのまま写しとったものでないことは認めます。しかし、今後の経済成長をささえる輸出の伸びが従来の傾向をそのまま延長したかのごとき考え方で、はたして不安を伴わないかどうか。かつまた、世界経済の変調や、米国、欧州共同市場などの日本品輸入制限の気運などのマイナスの要因を、どの程度に所得倍増、経済成長論に織り込んでいるものであろうか、これを承りたいのであります。当初に輸出増進を酩打ってはみたものの、結局、内需の人為的拡大に逃げ込まざるを得ない羽目に追い込まれ、あげくの果ては輸入の増大から国際収支の悪化という、おきまりの悪循環コースを招く懸念がなければ、これは小生の杞憂というものでありましょうが、この点について総理及び経済企画庁長官の御所信を承りたいのであります。
 次に、わが国綿製品の対米輸出規制の問題について、池田総理、通産大臣、外務大臣等の明確なる御所信をただしたいのであります。一月二十四日、ジョージ・W・ボールズ新米国務次官が上院外交委員会で、日本綿製品の対米輸出に従来加えられた自主規制措置には疑問があるとして、この際、再検討の意向があることを明らかにしましたが、それがはたして日本のためであるかいなかは不明でありますが、おそらく楽観が許されないものと思うのであります。すなわち、来たる二月六日、上院に、繊維問題の保護政策を検討のために、パストア委員会が特に公聴会を招集して、同様に米国輸入綿製品に対する措置検討を始め、国内繊維産業の保護策についてケネディ大統領その他各閣僚に問題の重要性を大いに反映せしめ、あらかじめ一石を打つ手はずであると聞いているのであります。元来パストア議員は国内産業保護派の一人であり、新商務長官ホッジス氏も同様で、彼は繊維業界出身者と聞いているのであります。かような状況下において、私の質問せんとする本問題のタイムリーな重要性についてあらかじめお含みおきを願いたいのであります。
 さて、対米綿製品の輸出規制をめぐる本年度の交渉が、ケネディ新政権成立後の諸行事が一段落したころに開始の運びとなるはずでありますが、この際、自主規制が始まってから四年間における経過、状況の変化、並びにわれわれの主張点などにつきまして、ごくかいつまんで説明を申し上げたいと思うのであります。
 日本が米国向け綿製品を自主規制した当時から昨年までの日本の輸出実績を香港などの諸国と比べてみますと、衣料関係につきましては、各品目とも、五七年当時は、日本が香港の三、四倍と優位にあったのでありますが、五九年から逆転して、ついに六〇年には香港が三、四倍に増加し、また、一次製品についても、量的に日本は激減したのであります。特に衣類とメリヤス類では、寄港の急増が目立ち、一九六〇年上半期に至りましては、香港積み出しの衣服類が完全に日本を押えるに至ったのであります。一昨年ごろ騒がれた香港の対米自主規制問題は、その後不思議にも立ち消えの形となり、依然として無規制のまま輸出続進の姿であります。また、協定ワク自体の不備、あるいは一次製品と二次製品の振りかえのきかぬこと、未達残高の翌年度繰り越しすら認められぬままになっているのであります。現状の規制内容自体に大きな欠陥と矛盾をはらんでいるのであります。一九五七年以降、当時の日本業界は、内部的に相当の反論異見があったにもかかわりませず、米国繊維業界に不測の混乱、刺激を与えることは、彼我双方の親善関係よりしておもしろからずとの政府当局の意向もあり、忍ぶべからざるを忍んで、日本は名実ともに自主規制に移行し、その後は忠実にこれを厳守してきているのでありますが、その間、香港等は、これ幸いと跳梁して、日本の重要市場をやみ討ち的に蚕食しつつあるのが現状であります。すなわち、結果から見て、日本は友邦の国内事情を顧慮し、正直に自主規制を続けてきたために、自己の大切な市場を理不尽にも奪取されたことになったのであります。総理並びに政府当局は、この実情に対しいかに思考せらるるや伺いたいのであります。常に正義公正を口にするアメリカ政府に対して、この際、断固として公平適正な措置を強く要請されたいものであります。対米規制は、御承知の通りこの六一年度をもって最終年度となるのであります。来年以後、すなわち、六二年度の措置をいかにするか。目下国内同業者間では、過日来自主規制存廃の可否をめぐってごうごうの論議がたたかわされているのであります。いずれにしましても、本年の対米交渉を通じて、当方の要求点を積み上げながら、日本の正しい主張を貫徹する必要がある。いわば、ことしは来年に備えての布石と見て、十分の方策が確立せられねばならないものと思考するものであります。繰り返して強調しておきたいことは、一九五八年度の米国における綿布輸入量の七一・七%は日本の手に当時掌握されていたのであります。それが一九六〇年度ではわずか一八・三%と激しい転落を見せているのであります。このことは、裏を返せば、日本のばか正直な自主規制を足場として、香港初め諸国が不逞の対米進出を遂げたことになるのであります。一昨日、外務大臣は、この壇上におきまして、外交の要諦は正しいと信ずることを相手方に堂々と主張することだと言われました。この際われわれは、政府の適切果敢な外交施策に訴えて、これに多大の期待を持つものであります。
 最後に、総理並びに大蔵大臣に対し、企業の体質改善の施策の必要性について伺いたいのであります。
 日本経済は、過去二、三年来、高水準の成長を遂げ、本年以降も、池田総理を初め、経済企画庁などの長期構想からすれば、これまた九%は確実であろうとの予測が立てられました。外貨手持ちの増加と相待って、世銀当局の言葉を借りるならば、もはや日本も卒業生のクラスに転入を許されるようになったことは、その限りにおいては、まことにおめでたいのであります。しかしながら、最近の海外情勢を見まするに、米国の景気は今や明らかに防衛的なとびらを固めつつあり、欧州経済もようやくその成長度が峠を越すに至った感があります。かような微妙な段階に処して、われわれが最もおそれるのは、日本経済が高度成長を急ぐのあまり、経済の体質改善がおろそかになることであります。経済企画庁の見通しによりますと、設備投資の勢いは依然としてきわめて旺盛であり、同時に、本年度の輸出入見通しも、輸出四十三億ドル、輸入四十一億ドルと、これまた強気の見込みでありますが、とかく威勢のいい議論は自然過剰投資を招き、景気を過熱化し、国際収支を破綻に導いて、ひいては経済の成長をくつがえす結果を招くものであります。かような意味合いからすれば、安定なくして経済の健全な成長はあり得ないのであります。このことは、国家的には、健全通貨体制の確立と健全財政の確保が前提となりますが、企業的には、申すまでもなく、企業の資本充実、体質改善が先決問題であります。とかく今次の予算を見ましても、池田内閣の表看板である成長促進にとらわれて、社会的間接資本の充実をあせるのあまり、企業資本の充実を軽視する傾向が所在に看取せられるのでありますが、これは自由経済の本質に照らして本末転倒の議論であると言わねばなりません。わが国の企業の実態を見て、その体質が健全であるなどと言い得る者はまずありますまい。米国投資家団の指摘を待つまでもなく、何よりも、まず耐用年数の短縮化と修正再評価の早急実施などにより、企業の体質改善をはかることが、高度成長のための緊急要件であると思うのであります。
 私は、参議院に籍を置きまして以来、常に論旨の一半を企業体質の改善施策の必要性にさいて参ったのでありますが、幸い池田総理は、歴代の総理のうちでは最も産業界の現況に明敏であろうかと存じますが、私はこの機会に、あえて、企業資本の充実が経済成長の最大要因で、投資の拡大を招来するための前提条件であることを特に強調いたしまして、償却制度の前時代的な姿の是正に努められんことを希望すると同時に、総理並びに大蔵大臣の所見をただすものであります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。予算編成につきましては大蔵大臣に譲りまして、私は、貿易の振興と経済成長、並びに企業体質改善、これについて申し上げます。
 大体私は、経済の成長というものは過去の実績によっておるのでございまして、だれの意見に動かされることなく、自分で考え出したことでございます。昭和二十四年から今まで、そして最近では三十年から三十四年の状況をずっと見まして、大体九%といっておるので、これを出したのでございます。私が九%と出しました昨年の今ごろ、昭和三十五年の総生産を十三兆六千億と見まして、そして九%の上昇率で、将来三年間に、三十六、三十七、三十八、三十八年は十七兆六千億と見たわけであります。十三兆六千億円の九%で十七兆六千億と見たわけであります。しかるところ、三十五年度は十三兆六千億の予定が十四兆二千億になりました。こうやって、そして三十六年度は十五兆六千億でございますから、一五%の上昇をすることになります。私は、これはずっと実績で現われると思います。しかし、三年間を九%としたのは、通常、新規労働人口は百万前後でございますが、三十七年は百七十万、三十八年、三十九年はおのおの百八十万ずつ出てくる。これを見まして十年間で倍というのだが、この三年間は、これに対してだけでも経済の基盤強化をしなければならぬというので、九%の過去の実績をとった。すなわち、昭和三十四年は前年に対して一七%、三十五年は一五%、こういう上昇をしているにもかかわりませず、私は九%でいっているのでございます。私は、これは国民の努力で達成できる、決して無理はいたしておりません。腹八分目くらいのつもりでいるのであります。
 輸出の問題につきましては、三十四年はアメリカに対しての輸出が五割ふえました。前年の七億ドルくらいが十億ドルを越している。御承知の通り、対米輸出は五割ふえている。しかし、昨年アメリカの輸出はそう伸びませんが、ヨーロッパに対する輸出は、共同体とか貿易連合というのがございます。ヨーロッパの共同体、貿易連合があるにもかかわらず、西ヨーロッパには五割の輸出増であるわけであります。従いまして、三十四年は世界に例のない輸出入二割余りの増、昨年も一割五、六分の増、私は、船の輸出がちょっと減るとか、いろいろの問題を考えまして一割余りとしております。日本の貿易の伸びが、世界貿易の平均上昇に対し、大体二倍ないし三倍であるということは、加藤さんも御存じと思います。世界の貿易が今後衰えるということは、各国の政治家は考えていない。どんどん貿易は伸びていくというのが趨勢でございますから、私は、大体一〇%くらいの上昇が見込まれるのではないか。またわれわれが、先ほどお答えしましたように、低開発国に力を入れ、そしてヨーロッパと共同してアメリカを引き込んでやるということによって、世界の平和、民族の生活向上があるのでございますから、極力それをやっていく。そしてわが国の貿易に対する力の入れようも、私は、例年よりもよほど力を入れていると思います。また、財界で問題になった見本市船なんかも私は着工いたしたいと、あらゆる方法で新興国家への貿易の基盤を作ろうと考えているわけであります。私は、大体あまり心配は要らない、また心配のないようにやっていく覚悟でいるのであります。
 綿製品につきましては、御承知の通り、一九五七年から五カ年間に、一九六二年、来年は改定になるので、加藤さんのおっしゃるように、自主規制をやったためにほかが伸びて、幾何級数的に伸びていくアメリカの綿製品の輸入を、日本はそのままでいっておったものですから、お話の通りに、アメリカの輸入量の七一%が一八%になっておることも承知しておりますが、今度の交渉で一つ外務大臣にうんと働いていただきたいと思います。
 なお、企業体質の改善、これはごもっともでございます。私は日ごろからこれを言っておるのであります。まず第一に、これは税制の改正からこなければならぬ。従って、戦前は自己資本が七割で借入金が三割、それが今は逆になって、自己資本が三割で借入金が七割、この三割を今切ろうとしておる。これはやはり税制からくるのであります。配当金というものを利益処分にしたから、利益処分に対して三八%の税率をかけることからきておる。借入金にすれば税金がかからない。これからきております。税制改正につきましても、だんだん配当する金額は利益処分として税を課さず、配当金の分はだんだん無税にしようという考えで進んでおります。従いまして、配当する金額につきましては、従来三八%かけたものを来年度から一〇%、徐々に配当金の課税をやめていくような方向でやっております。償却も年限を大体二割程度あれしておるのであります。ことに金利の引き下げ等々、私は、何と申しましても経済成長のもとは企業の体質改善でございます。この点につきましては、今後とも十分やって努力していきたいと思っております。
 なお、ドル防衛の問題について、昨年はいろいろ心配された方が多いようでございますが、私の見るところでは、いろいろな情報では、アメリカはやはり自由貿易主義を貫ぬいていく、為替管理はしない、もちろんドルの引き下げはしません。あまりわれわれが心配しておったようにはならぬようであります。ICAの問題も全部なくなるというようなことは私はないと思います。減り方も少いのではないかくらいに今のところ考えておるのであります。各国とも、経済の上昇、貿易の自由化ということにつきましては努力しておりますから、日本としては、やっぱり自由経済ということで日本が伸びると私は考えておりますので、各国とともに交流を盛んにして、経済をお互いに発展さしていくよう努力いたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(水田三喜男君) まず、今年度の予算規模が非常に大きくて、たっぷり予算であるために、景気調整的な考慮をすべきではなかったかという御質問でございますが、私どもは、今度のこの予算規模はそう膨大なものというふうには考えてはおりません。一兆九千五百二十七億円の規模と申しましても、昨年の当初予算はなるほど一兆五千六百九十六億円でございましたが、御承知の通り非常に大きい自然増がございまして、第二次補正を行なった後の歳出歳入は一兆七千六百五十一億円ということになりますので、三十六年度の予算ワクの増加はわずか一千八百億円足らずでございまして、一〇%前後の膨張ということでございます。国民所得に対する比率を見ますと一五・三%ということでございますが、これは今までの、去年、おととし、例年の比率とほとんど同じでございますし、また政府の財貨サービス購入と国民総支出との比率を見ますと一九%少しでございまして、これもほとんど例年と変わっておりません。ですから、経済が伸びて増加が見込まれるこの普通歳入の範囲内で、要するにこの歳出をまかなおうとする方針でこの予算を組んだものでございまするので、これが不当に膨大だとも考えませんし、また景気の過熱を誘発するような要因がこの予算の中にあるとは私ども考えておりません。せいぜい昨年より一千八百億円の増加でございますが、もしこれが税制の特別措置による整理合理化を行なわなかったり、今度の減税をかりに行なわなかったとすれば、二千億前後の増大でございますが、二千億円前後の自然増のうちで、私どもの考え方は、御承知のように平年度一千百億円以上の減税をしようとしてこれを行なっているのでございます。一方、特別措置を整理することによる増税分、ガソリン税の引き上げというようなものがございましたので、実際の純減税額が六百億円台になり、そうして予算のワクが昨年に比べて千八百億円前後の増になったということでございますので、その比率から考えてみましても、今度の政府案による減税案はそう過小な幅ではないと私どもは考えております。で、国税ばかりでなくて、地方税を通じて考えますと、平年度千四百億円以上の減税となるわけでございまして、先ほど御質問の際に御指摘されたような状態ではないと考えております。
 それから総理からお答えがございましたが、さっき企業の体質問題につきまして、再評価積立金の問題について触れられておりましたが、再評価積立金をなるたけ早く資本に組み入れるようにしたい。この促進の措置につきましては、ただいま具体的に検討中でございまして、近く成案を得る見込みでございます。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(迫水久常君) 輸出の問題につきましては、前に総理大臣からきわめて詳細に御答弁がございましたので、私は若干それを補足いたしたいと思います。
 国民所得倍増計画におきましては、輸出の伸びはおおむね年率一〇%と予定いたしまして、目標年次におきまする輸出額を通関ベースで九十三億ドル、こう予定をいたしておるのでありますが、これも、前提といたしましては、一九五〇年から五九年の間の世界貿易の伸びは六・二%であったけれども、今後十年間には、おそらくそれは四・五%くらいに減るだろう。しかし、日本の輸出国際競争力というものは非常に強くなっておるし、今後の輸出努力をすることによりまして、昭和三十四年度の国際世界貿易における日本のシェアは三・四%であったが、それが五・六%くらいにはふえていくであろうというような見通しから、今後十年間は一〇%ずつ輸出が伸びていくと、そういうふうに国民所得倍増計画では想定をいたしておるのであります。平均の伸び率をとりますと、一九%ということになっておるのでありますが、これはもちろん戦後における回復過程の数字でございますから、これは比較にはなりませんけれども、こういうことから、これの半分に当たるということから考えましても、決して一〇%の成長、伸びというのは、無理ではないと判断いたしているわけであります。しこうして昭和三十六年度の経済見通しにおきましては、通関で、輸出については九・四%の増、輸入については一一・六%の増と推定をいたしております。この輸出の算定につきましては、本年ありました船舶の輸出についておおむね七千万ドル、それから特需関係の輸出について六千万ドル、この一億三千万ドルというものをもろに落とした数字でございます。従って、ただいま加藤さんのおっしゃいましたように、輸出というものの見方が多過ぎるのではないかということではなくて、おおむねこの程度の輸出は可能なること確実である、こう考えておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(小坂善太郎君) 対米綿製品の輸出につきまして、アメリカのボールズ国務次官の証言に関連して御質問がありました。この問題は、先ほど総理大臣から詳細にお話がございましたが、若干補足いたしますと、ただいま御指摘のようなことは非常にわれわれといたしましても強く何とかせねばならぬことだと思っておりまして、ちょうどケネディ新政権ができました機会に、アメリカ政府といたしましてもその貿易政策全般を検討する時期でございまするから、政府としましても、タイミングをはずさないで、との時期に十分わが方の意向をアメリカ新政府に反映せしめるように交渉をいたしたいと考えておる次第であります。御承知のマンスフィールド報告の最終の結論のところにありまするが、あの報告の特に重点としておるところは、日本との関係は大切である、そのためには日本の経済的な繁栄をアメリカとしては阻害しないようにしていかなければならぬ、そのためには特に日本からの品物の輸入を阻害することのないような考慮をしなければならぬというのが、あの報告の主要な結論であったと私は思っておるのであります。そういうこともございまするから、この際、公平にして適正な措置をとってくれるように、確固たる態度をとって強く臨む方針でございます。
 われわれは、この交渉をいたしますにあたりましては、輸出調整措置をできるだけ取引の実態に合わせるように、また弾力的な運営ができまするように考えるのでありまするが、と同時に、アメリカの国内産業に被害を与えない限度においてわが国の輸出を伸ばすのだ、こういう主張でもって、その市場におきまする日本国の綿製品の割合をできるだけ拡大する、そういうふうにいたしたいと考えておる次第であります。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
  ―――――――――――――
#37
○議長(松野鶴平君) 鈴木壽君。
  〔鈴木壽君登壇、拍手〕
#38
○鈴木壽君 私は、日本社会党を代表いたしまして、首相の施政方針演説に関連をいたしまして若干のお尋ねをいたしたいと思いますが、特にこの際、昭和三十六年度予算と池田内閣の公約という点につきまして、それを中心にお尋ねをいたして参りたいと思います。
 三十六年度予算案について私どもは大きな関心を持って注目をいたしておったわけでありますが、それは、池田首相の三つの公約であります減税、社会保障、公共投資の三本の柱がどのように打ち立てられるであろうかということであったのであります。ところが、いざ、ふたをあけてみますと、公共投資はともかくとしまして、国民の最も期待をしておりました減税も社会保障も、公約と比べて著しく後退をいたしておりました。全くおざなりのものになってしまっておったのであります。あれほどテレビやその他で、私はお約束をいたします、私はうそを申しませんと国民に誓い、去る特別国会におきましても、一千億以上の減税、画期的な社会保障の拡充、三十六年度予算を見ていただきたい、こう大みえを切っておった首相は、このことについて、国民に対し、われわれに対して、どのような御説明をなさるつもりであろうか。ところが、首相は、これは公約を十分に織り込んだ画期的な予算であり、わが国財政史上空前のものと誇っておるのであります。心臓の強さもここまで来れば、また何をか言わんやといわなければなりません。しかし、これは私が言うまでもなく、全くの詭弁であり、国民をあざむく以外の何ものでもないのであります。
 まず、減税から見て参りましょう。所得税、法人税、通行税の減税額の合計が、三十六年度において九百二十六億円、平年度一千百三十八億円となっておりますが、
  〔議長退席、副議長着席〕
一方、租税特別措置の整理による増収、三十六年度百十八億円、平年度百六十五億円があり、さらにガソリン税一五%増税分が三十六年度において百八十億円、平年度二百十七億円あるから、結局差し引き計算をいたしますと、三十六年度では六百二十八億円、平年度で七百五十六億円の減税となるのであります。かりに租税特別措置分を別といたしましても、ガソリン税の増税によって三十六年度七百四十六億円、これしか減税にはならぬのであります。これをもってはたして公約が実行されたと言い得るでありましょうか。一体、減税の問題を取り上げる場合に、一つのものの減税額だけを取り上げて、同時に行なった他のものの増税は、これは別扱いであると、こういうふうにたな上げをして、減税額だけを振り回して公約通りであるというようなことで、一体いいものであるかどうか。われわれは、国民の税負担の現状から、また税の自然増収が約四千億円も見込める現段階においては、公約に忠実に、いな公約以上の大幅な減税を行なうべきであったし、そうしてそれは可能であったと信ずるものであります。
 昨年八月、税制調査会の中間答申において、現在の自然増収その他の見通しのもとでは、中間報告の趣旨に沿って、平年度一千億円以上の減税を実施すること、こう述べられてあり、さらに中山会長は、一千億円以上というのは、一千億円から一千六百億円までの幅のある意味である、地方税についても積極的減税を行なう含みであると、こういう談話を発表しておるのであります。当時の自然増収の見込みは、二千億から二千五百億円程度であったことから考えまして、すでに述べたように、四千億円もの自然増収が確実だと見込まれる今日、さらにまた国民の租税負担率を国民所得の二〇%以内にすべきであるとの同会の結論を尊重するということからしても、一千億を大幅に上回る減税を行なうべきであったのであります。自然増収は結局、税の予定以上の取り過ぎであります。その取り過ぎ分は、全部とは言わないけれども、納税者に返すべきであります。租税負担率からいっても、三十六年度における二〇・七%から、これをかりに二〇%に引き下げるとすれば、その〇・七%分だけでも、三十六年度国民所得の見通し十二兆七千三百億円を基礎にして計算しますと、実に八百九十一億円の減税が可能となるのであります。さらにまた、大衆課税の性格の強い間接税の減税も当然行なうべきであったのに、これもまた見送られておるのであります。政府は今回程度の減税で、はたして公約を果たしたと思っておるのか、特にうそを言わない池田さんのお考えを聞きたいと同時一に、今後の減税に対する考え方をもあわせて明らかにしていただきたいと思うのであります。当然の減税も行なわず、税の取り過ぎ分もこれを返すことなく、さりとて、これを社会保障の拡充、民生安定等に思い切って投入するということもなくして、軍事費の増強や、あるいは公共投融資をふやすことによって、経済成長の名のもとに、特に大企業、大資本を潤おすような結果となって、一方また、租税特別措置の整理合理化についてもすこぶる気乗り薄であります。
  〔副議長退席、議長着席〕
税負担の公平を期さねばなりませんこの措置の整理合理化がはなはだぼやけてしまったことも、結局は国民大衆に背を向けて、ひたすら企業を保護することによって経済の成長拡大に役立たせようとするからであります。このようなことは早急に改められなければならないと思うのでありますが、この点についてもあわせてお考えを承わりたいのであります。
 次に、社会保障について見て参りまして、これに関連をして二、三のお尋ねをいたしたいと思います。三十六年度の社会保障費は二千四百六十六億円で、三十五年度のそれと比べますと六百三十六億円の増、三四・七%の増加でございます。この数字だけから見ますと、それは確かに相当の前進を示したものとも言えるかもしれません。首相が誇らしげに言っておるように、財政史上空前のものだということも、あるいはこの数字からだけならば言えるかもしれません。しかし、社会保障費と予算総額との比、三十五年度が一一・六%、三十六年度が一二・六%であるが、予算全体の伸びと社会保障費の伸びを比べてみますと、わずかに一六・六%、また国民所得と社会保障費との割合が三十三年度一・六、三十四年度一・六、三十五年度一・七、三十六年度一・九、さらに国民生活安定のための費用と予算総額との比、三十五年度においては三〇・八%のものが、三十六年度においては二〇・四%となっている。こういうことからして必ずしも大きな前進を示したとは言い得ないのであります。しかも数字の内訳において、国民年金等の経費に見られるいゆわる当然増が二百五十億程度入っている。さらに医療費の一〇%引き上げのための国庫負担の額、七十四億円が加わっていることを考えてみますと、明年度の新たな施策としてふえた分は大体三百億か三百十億円程度であります。これをもって画期的な拡充というようなことは、これは義理にも言えたことではないのであります。医療費国庫負担分七十四億円の計上は、このまま見ますと、いかにも医療行政拡充のためのもののように考えられますけれども、しかし実はこれは医療費一〇%値上げに伴うものであって、しかも反面に、保険料や患者負担の増加約二百億円、平年度三百億円となって国民にはね返ってくる、こういう性質のものであります。しかもまた、一方、保険財政への大きな圧迫となるようなこういうものでありますから、国民にとってはむしろ迷惑な社会保障の拡充であるとも言えるのであります。さらに、内容について見ますと、児童扶養手当その他こまかい、あまり目につかないような施設等に、不十分ながらあたたかい手が施されていることは、これはほめられてよいことであると私も率直に認めましょう。しかし、肝心の生活保護基準の引き上げが一八%にとどまったことは、何といってもこれは致命的な弱点であります。厚生省の引き上げ率二六%の要求といえども不十分であり、これが五〇%程度の引き上げがなされなければならぬということは、保護世帯の生活水準が一般世帯のそれと比べて三九・七%、所得最下層のそれと比べてもなお五七%のところにあるという、こういう数字的な調査を今さら示されるまでもなく、すでに世人の常識になっているところなのであります。しかも一般世帯との格差が年々大きくなって、とうてい憲法に保障する最低生活を維持できないことは、かの朝日判決を引き合いに出すまでもなく明らかなところであります。こっけいなことには、毎年予算参照書の生活保護費の説明に、「憲法第二十五条に規定する理念に基づき、生活に困窮するすべての国民に対し必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともにその自立を助長する必要がある。」こう書かれておりますが、何という白々しい説明でありましょう。社会保障における中心的な柱として考えられなければならぬものは、いわゆる低所得層に対する対策であります。従って、この生活保護対策は社会保障拡充のいわばバロメーターとも言うべきものなのであります。池田内閣の施策におきまして、われわれの最も注目していたものが実はこの点であったのであります。医療費の引き上げ、軍人恩給の増額等にすさまじいまでの熱意と努力を傾けたにもかかわらず、この問題には、圧力団体もなかったせいか、ついに一八%アップにとどまって、期待はずれに終わってしまったことは、あるいは池田内閣の性格そのものの表徴であったと見るべきであるかもしれない。かりに厚生省要求の二六%が、かりに、せめてものぎりぎりのところであるとしましても、それを引き上げるのに必要な経費は約四十八億円で足りるという話でありますが、この程度の金すら一体出なかったのであろうかどうか。三十六年度予算が圧力団体や与党内の各グループから圧力をかけられまして、ぶんどりほうだいにされた結果でき上がったたっぷり予算だといわれる、満腹予算であるといわれる、たたけば、押せば、じゃらじゃらと出るパチンコ予算だともいわれております。こういうことからしまして、熱意さえあれば、出す腹さえあれば、十分これは捻出できたはずであります。なかったのは金ではなくして、この誠意と熱意であったのであります。(拍手)池田内閣の一枚看板である経済成長政策、いわゆる所得倍増計画の進行が、逆に、所得の格差、生活の明暗の差をさらに深めつつあるという矛盾をさらけ出してきているのでありますが、この矛盾、不合理は、池田内閣の責任においてやはり取り除かれなければならないのであります。すなわち社会保障制度を確立し、広い分野にわたって国家による所得再配分政策を進め、すべての人が最低生活を保障され、いかなる人も生きる権利を尊重されるように、社会全体の力でこれを守ることに施策の重点が向けられなければならないのにもかかわらず、この自覚と熱意を欠いているところに、このようなごまかし政策、継ぎはぎ政策に終始せざるを得なかったところがあるのであります。一体、総理大臣、厚生大臣は、この生活保護基準の引き上げについてどのように考えておられるのか。そうしてまた、今後どのようにこれを引き上げていくおつもりなのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
 いま一つ医療費の問題につきまして、私は、一体今回の一〇%の引き上げがいかなる根拠といかなる合理的な割り出し方をしたために出てきたのであるかということも、ここではっきりしていただきたい。しかもこれが中央医療協議会等の議を経ておるものなのであるかどうか。合理的な引き上げは私どももちろん否定しておりません。ある程度の引き上げは必要であるというふうに考えておるけれども、一体その根拠となるものが明確でない今回のこの引き上げは、まことに私どもは納得ができないのであります。しかもこの引き上げ分の配分についてもまだはっきりしておらない。一体どのような方式によってこれを配分するのか、単価の引き上げをするのか、あるいは点数改正をするのか、こういうこともまだ結論を出しておらないのであります。まことに変則的などんぶり勘定式な引き上げと言わなければならない。これを一体どういう形でケリをつけてやるおつもりなのかも、あわせてお答えをいただきたいと思います。さらに、このたびのこの医療費の値上げが国民にしわ寄せされないような方法をとるべきであったのに、これを欠いたのは一体どういう考えであるのか。こういう際であるから、そうしてまず、さきに私が述べたような点から、国民にできるだけしわ寄せさせない形において、これは処理されなければならない問題であります。国民健康保険はことしでいよいよ国民皆保険といわれるようになるわけでありますけれども、これを機会に七割給付の全面実施に踏み切るべきであるというふうに私どもは考えるけれども、この点に対して一体政府はどのように考えておられるのか。また、一方、国民の負担軽減と国保財政の確立という点も、これはぜひ考えていかなければならない問題であると思いますが、これについてもどのように考えておられるのか。拠出制の国民年金は四月から開始せられることになっておるわけでありますけれども、これにはすでにわれわれが指摘をいたしておりましたような幾多の欠陥があるわけであります。保険料の掛け捨てになること。拠出期間が長過ぎ、開始年令がおそいこと。保険料が均等かつ高額である反面、給付が低いこと。経済変動に対するスライドが明確になっておらないこと。積立金の運用制度がいまだ明らかにされておらないこと。こういうことについての改正を行なってから実施すべきが当然であり、そのためには、四月に実施するということを一時延期をいたしまして、こういう思い切った改正をすべきであるというふうに思うけれども、特に私は首相のこれに対するお考えをお聞きしたいと思います。
 最後に、この問題について、将来のあるべき社会保障の構想のもとに、医療、年金あるいは生活保護のみならず、完全雇用、最低賃金等とあわせて検討いたしまして、総合的な保障制度というものを立てなければならんけれども、こういうことについて一体どのようにお考えになっておるかということも聞きたいと思います。
 次に、私は政府の物価対策について承りたいと思いますが、昨年来の消費者物価の値上がりに引き続きまして、今年になっても多くの物が値上がりを示しておることは御承知の通りであります。そうして昭和三十六年度予算を編成するその過程において、郵便料金の値上げや国鉄運賃、あるいは医療費、ガソリン税等の引き上げがされておるために、最近はクリーニング代が大幅に上がってくる。また教科書の用紙代も六%も値上がりされる。公団公営住宅の家賃もあるいは固定資産税も引き上げられるであろう。果ては葬儀料金まで大幅に値上がりをする。これでは全く死ぬにも死ねないというような声まで出てきておるのであります。さらにこの次に控えておるのが電気料金や私立学校の授業料の引き上げ、国鉄運賃が上がれば私鉄の運賃も上がるであろうし、ガソリン税の引上げによって、バス代、ハイヤー、タクシー、トラック代の値上げもこれは必至である。その他いろいろの点について将来のこの物価値上げの心配が、実は単なる杞憂でなしに、現実の問題としてここに起こってきておるわけであります。迫水さんは値上がりムードが困るとかというようなことを言っておりますが、これはもう値上がりムードとか値上げムードというようなことより、さらに進んで値上げモードになってきておる。やがては値上げブーム、値上げラッシュということが来かねない情勢であるわけであります。(拍手)政府の今までの楽観的の放任の態度、さらに今度は一方、自分自身の手で公共料金やガソリン税を引き上げる、そういうことから起こってくる、これは必然の結果でございます。池田さんは卸売物価が安定しているから心配はないと、こうおっしゃっている。サービス料金くらいの値上がりは、これはやむを得ないと、こう言っておられる。経済企画庁長官は先だっての演説の中に、諸外国の消費者物価の上昇と日本のそれを比べておりますが、肝心の昭和三十五年度でどのくらい上がったかということを示しておらない。昭和三十五年においては三・二%上がっている。東京だけでいえば三・八%上がっている。さすがに経済見通しもこれはこのままではいかぬというので、昨年の末作ったばかりのものをつい先だってこれを改定いたしまして、その上昇率を〇・七%から一・一%に引き上げざるを得なかった。しかし、これでとまったのではないと思う。また再び三たび修正をしなければいけない事態がくるのではないかということを私どもはおそれるわけであります。今、私は数字的のことを申し上げましたけれども、このような数字的のものよりも、むしろ私は、具体的に国民生活にどう影響しているかということをもっと考えていただきたいと思う。
 一体、減税するからいいんだというけれども、わずかばかりの減税では役に立たなくなってしまいます。たとえば夫婦、子供三人、こういういわゆる標準家庭で、月収四万円の人の今度の減税額は月五百十五円でございます。物価が一・五%程度上がればこれはもう吹き飛んでしまう。おそらく二%あるいは三%の上昇を示すであろう、こういわれておりますから、そうなりますと、減税分というものは吹き飛んだほかに、なおかつマイナスということになってくるわけであります。しかも減税の恩恵を受ける人はまずいい。減税の影響を受けない、所得の二十万以下の低い人たちは五百七十万世帯あるといわれている。扶助を受けている世帯が六十万、百六十六万人。ボーダーラインにある者が百六十万世帯、六百八十五万人。こういわれておりますが、こういう人たちは減税の恩恵も受けることなしに、値上がりによる圧迫だけを受けるわけでございます。生活保護基準が一八%上がったといっても、これは何の役にも立たないということになりかねないのであります。
#39
○議長(松野鶴平君) 鈴木君、時間がきましたから結論を急いで下さい。
#40
○鈴木壽君(続) 従って、私はこの際、政府の物価上昇に対する対策をお聞きしたい。
 第一に、公共料金の値上げは、これは極力阻止しなければならぬと思うのでありますが、これに対して一体どういう考え方を持っているのか。特に近く予想せられます電気料金の引き上げに対してどう対処するのか。私鉄やバスの料金の値上げ申請にどうこれを対処していくのか。一方、価格の引き下げ得るものは、これは引き下げなければならぬけれども、それに対して政府は一体どういう態度で臨むのか。便乗的な値上げは許されない、こう言っておりますけれども、はたしてそれを政府がきちんと押え得るかどうか。場合によっては、独禁法の運用強化、環境衛生法の悪用を監視するというようなことも、これは、はっきり考えておかなければならない段階にきていると思うのでありますが、これに対する政府の明確な方針をここに明らかにし、国民をして安心せしめる答弁を私は願いたいのであります。
 時間がございませんから、これをもって私の質問を終わるわけでありますが、国民生活に重大な関係のある問題を私は取り上げたつもりでございますが、これに対するはっきりした考え方をここに示していただきたいということを要望して終わることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 私の公約の三つの点、減税、社会保障あるいは公共投資、公共投資はよかったが、あとはだめだというお話でございますが、私は、減税につきましては、調査会の答申に大体近い線、すなわち、課税所得の二百万円程度のものの減税につきましての分は調査会の答申よりも違っておりますが、その他の点につきましては、あの通りをやりました。そうしてまた、ガソリン税というものも、これも税に違いはございません。ただ、今の状況から申しまして、道路交通をこのままにしておくことはできないという緊急な状態ですから、目的税である関係上、これを引き上げることにいたしたのであります。なお、税は、自然増収は返すべきものだという議論があります。私も、もちろん、自然増収は相当部分を返すべきものだと考えておりまするが、しかし将来の減税を考えますと、やはり経済基盤強化に金を使いまして、将来、より大きい減税をするもとを作るべきだというのが私の考え方でございます。なお、間接税につきましては、税制調査会から答申がきておりませんし、今後の問題として検討し、できれば間接税もやりたい。ただ、ここではっきり申し上げられることは、私は、経済を成長さして、今年以上の減税をできるような素地を作ろうというのが私の考えでございます。
 なお、社会保障制度につきましては、画期的ではないとおっしゃいますが、昭和三十四年度の予算が前年に比べて二百億円、三十五年が前年に比べて三百億円、今年は六百三十六億円、しかも、文教その他の点におきまして社会保障制度を相当見込んでおります。こういうことを考えて、画期的であるかないかは、これは世間の批判に待たなければなりませんが、私は画期的であると考えておるのであります。ただ、問題の生活保護費につきましては、私も、できるだけこれをふやしたい。しかし、これにいたしましても、五人家族で千七百円、東京では千七百三十円でございます。今まででこんなにふえたことはございません。昭和三十二年に私が石橋内閣でやったときは、生活保護費を東京で六百円上げたのであります。今度は千七百円でございまするから、これは上げ方が少ないという批判はあるかもわからぬが、画期的な上昇だということは言えると思います。
 それから拠出制年金でございますが、これはやはり法案も通っておりますし、いろいろの御意見は十分入れまして、改正して、やはり早く施行した方がいいという考え方を持っております。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(水田三喜男君) 私への質問は、大体総理からお答えになったようでございますが、私もこれは画期的な増加だと思っております。そこで、経済成長の目標を達成するために、政府はいろんな施策を総合的に展開するということにしたわけでございますが、この施策をどうして実現するかという点につきましては、これはひとり予算上の財政措置だけでは不十分でございます。従って、いわゆる財政金融一体化、この原則によって対処することがいいと考えまして、特に今度の予算では、この財政と経済の一体化という点を配慮して編成したつもりでございます。例をあげますと、今の社会保障費の問題も、予算額では六百三十何億というふうに、それだけでも画期的な増額でございますが、この部門における財政投融資の増加はどのくらいになっているかと申しますと、昨年より四百億円以上の増加になっておりますので、この二つを合わせますというと、昨年度に比べて施策としては一千百億円以上の施策になっております。また公共事業の点を見ましても、ことしの予算は、昨年にふえた部分よりも、実質的には災害費が少なくなった部分が実質的の増加になりますので、これを入れますと八百億円近く増加していることになりますし、ここに対する新しい財政投融資の増加を入れますと、これもことしは昨年に比べて一千百億円以上の強化ということになっておりますので、例年に比べて重点主義の編成であり、特に三本の柱というものは全部一千億円以上をもってそろえたという画期的な予算であると私も思っております。(拍手)
  〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(古井喜實君) 第一に医療費の問題についてお答えをいたします。
 まず、今度の引き上げ一〇%の根拠はどうかということでありますが、これはただ目の子のつかみ金ではありませんので、昭和二十七年の三月に、御承知のように医療の実態調査をいたしたわけであります。これをもとにして、その後における賃金あるいは物価、生計費などの上昇率とか、あるいは従業員数とか、患者数とかの変化、そういうことを織り込んでこの診療所における収支を測定いたしまして、そしてこの程度医療費に無理があると、こういうところからこういう数字を出しているのであります。そこで、これは欲を申せば、その後医療の実態調査をいたしたかったのでありますけれども、医師会の協力が得られないためにやれないで来ておりますので、二十七年を基礎にいたしたのでありますが、これはやむを得ないのであります。そういう根拠でこれは出したものでありますから、十分理由があろうかと思っております。
 そこで、これをどういうふうに具体的にあるいは単価、点数というものに当てはめていくかということが次に残る問題でありますが、これは医療協議会という制度がとにもかくにもあるわけでありまして、これの意見を聞かなければなりませんので、これにも諮りまして、そうして適切な結論を得たいという考えでいるわけであります。なお、医療費の引き上げに伴って、負担を増すのではないかという点でありますが、この点につきましては、この引き上げのために保険料とか掛金とかいうものを増徴することは極力したくないと、こういう考え方で今回も財政の措置をいたしたのでありまして、そこで国がこの医療費の引き上げ関係で保険関係四十六億余の予算を支出することにいたしておりますが、その中で、当然に国の負担がふえる分二十五億六千万円のほかに、本来ならば保険団体等が負担すべきものに対して二十億五千万円を特に国が支出して、それによって保険税とか掛金の引き上げをしないようなことにいたしたいと、こういうわけでありますので、このために負担が非常にふえるということはないと考えております。
 次に国民健康保険の給付率引き上げの問題でありますが、御承知のように今度は結核と精神病だけについて給付率を七割に引き上げるわけでありますが、これは今後結核や精神病だけに限らず、それからまた世帯主だけに限らず、給付率を引き上げていく方向で十分検討していきたいと思うのであります。
 なお、国保の財政のこともお話がありましたが、これはまことに今まで窮屈でありまして、赤字すれすれのあたりを全体としては歩いておるわけであります。今度も特に事務費に対して基準を引き上げる措置も講じまして、そうしてなるべく財政に無理をなくしたいと、こういう措置を講じたわけであります。
 次に拠出制国民年金の問題であります。これにつきましては、なるほどいろいろ改善を研究すべき点もあると思います。そこで、今回も、たとえば例の掛け捨て、あれがなくなるように、死亡一時金を出すとか、あるいは六十五才未満でも繰り上げ支給をするとか、あるいは母子年金を準母子世帯に広げるとか、そういうふうな改善を今回いたしたいと考えておるのでありますが、私どもの考えとしては、これが十分満足なものと、きょうの姿で思っておるわけではありませんけれども、だんだんに改善を加え、内容も拡充し、よいものに育て上げていくのが道だと思っております。で、こういうふうな社会保障などという新しい進んだ制度は、やめたり、あとずさりはいけない、改善し、拡充し、前進するのがよいことだと思うのであります。
 最後に、社会保障について総合的な計画を考えるべきではないかという御意見は、まことにその通りだと思います。場当たりの思いつきのようなことでこの社会保障の今後を考えるべきではないと思います。とにもかくにもここまできた段階でありまして、昭和三十一年にやっと社会保障の経費が一千億にきたのであります。それから急激にこの経費もふえまして、きょうでは二倍以上になっておりますが、とにもかくにもここまできましたので、体系的な整備、それから計画的な前進を考えて完璧を期する、そういう行き方をすべき段階にきたように思いますので、この点は十分検討していきたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(迫水久常君) 消費者物価の上昇の傾向があるということにつきましては、私も、鈴木さんと御同様に、非常に心配いたしております。もっとも、心配と申しましても、鈴木さんのように、これがむやみに上がって、とめどなく、どうにもならなくなるというような心配ではありませんでして、消費者物価の上昇の問題というのは、先ほど申し上げました通り、インフレの問題ではなくて、消費者と直接接触する部面におけるところの労務の対価の上昇をどう処理するかという問題であるのでありまして、正当なる限度においては、お互いにみなが所得が上がる世の中であるから、その分、自分も所得の上がってくる部分の中から出し合って、その部面で働いている人たちの労働対価も一緒に上がることに協力するというのが一つの態度ではないかと考えておるのであります。
 ただいま鈴木さんのお話の中で、減税はふっ飛ぶとおっしゃいましたけれども、われわれの経済の見通しでは、来たるべき三十六年度においても、給与、個人収入のベースは、可処分所得でおおむねやはり一〇%程度は上がっていくものと想定をいたしておるのでありまして、かりに一・一%の消費者物価の上昇がありましても、それはまあ許容せられるべき限界ではないかと考えておるのであります。ただ、先ほどおっしゃいましたように、公共料金のいろいろな値上がりの問題が若干時を同じうして現われましたことは、私としても非常にいやなところでありますけれども、これにつきましては、先般のお話でも申し上げましたように、それぞれの所管省におきましても、一応、当該事業が、公の立場において、経営がうまく行き、そうして国民経済において担当している役割を正当に果たし得る。そういう限界において、料金を上げる必要があるなら上げるということを担当省において、一応計算をいたすでありましょうが、経済企画庁におきましては、消費者の立場において、さらにそれに検討を加えて、できるだけこれを抑制していく方針をとろうと思っております。
 なお、この前の私の話の中で、諸外国と比較をしまして、物価の上がり方と所得の上がり方の比較を申しましたときに、三十五年を言わなかったということについて特に御指摘がありまして、何かわざと言わなかったようなふうにもおっしゃいましたけれども、これは、諸外国でまだ三十五年の統計は出ておりません。日本でも三十五年のものは確実なものがございませんので、確実を期する意味において申し上げなかったのでありますけれども、かりに、三十五年はなるほど三%ばかりの若干の大きな値上がりをいたしておりますけれども、これを通算いたしましても、所得の方におきましては五〇%をこえる増加にもちろんなります。消費者物価の値上がりはおおむね六%前後と推定をいたしますから、世界において最低であることは依然変わりはないことを申し添えておきます。(拍手)
  ―――――――――――――
#45
○議長(松野鶴平君) 野坂参三君。
  〔野坂参三君登壇、拍手〕
#46
○野坂参三君 私は、日本共産党を代表して、池田総理大臣及び小坂外務大臣に対し、次の三つの点だけについて質問したいと思います。
 その第一は、日韓会談を即時打ち切ってもらいたいということです。政府は、今、日韓会談の成立を非常に急いでおりますが、その相手の南朝鮮内部は深刻な政治的経済的危機に直面しております。確実な報道によると、南朝鮮では、おとなの半分以上が失業状態で、人民の窮乏は想像をこえたものがあるといわれております。その結果、釜山の労働者の大規模のストライキを初め、ストやデモの波が全国に広がり、警官さえもデモに参加しております。兵隊の逃亡と徴兵忌避は続出しております。それだけではありません。北朝鮮からの呼びかけに応じて、全朝鮮の自主的平和的統一を目ざし、南北協商、南北交流を要求する国民の運動が、今、南朝鮮に大きな勢いで進んでおります。南北統一のために、多くの政党や社会団体によって共同戦線が作られ、それには郭尚勲民議院議長、徐任伍副議長までが参加しております。全朝鮮の統一と南朝鮮の民主化は、もはや動かしがたい大勢となっております。このような事態に対して、張勉政権は施すすべを知らず、ただ弾圧をもって臨んでいるだけであります。従って、政府に対する反対の火の手は、革新政党はもちろん、与党内部からも公然とあがっております。政府の世論調査を見ても、張勉に対する支持は、驚くなかれ、わずかに三・七%にすぎないというありさまであります。今日の南朝鮮は李承晩政権の崩壊する前夜をほうふつさせるものがあります。そこには独立と民主主義の新しい革命が急速に進展しているのであります。このような極度の不安と動揺、いわば崩壊寸前にある張勉政権と、どんな理由で池田内閣は交渉の成立を急いでいるのか。それは言うまでもなく、ドル危機にあえぐアメリカに日本の独占資本が肩がわりして、張勉政権にてこ入れし、南北の統一を積極的に妨害し、朝鮮の分裂を固定化し、冷戦体制を維持しようとするためにほかなりません。そしてまた、日本の独占資本が再び朝鮮に進出し、ここに新しい侵略の拠点を築き上げようとしているためであります。これが日韓会談の真のねらいであり、これこそ事実上のNEATO結成への条件を作るものであります。以上のことが日韓両国人民の利益に反し、アジアの平和を脅かすものであることは言うまでもありません。朝鮮で最近反日闘争が激しくなってきたのは、朝鮮人民がはっきりと日本の侵略的意図を見破り、アメリカ帝国主義の抑圧と日本の独占資本の侵略にまっこうから反対しているからであります。私がここで政府に要求したいことは、このような意図を持っている日韓会談を即時打ち切るべきであるということであります。これについての総理と外相の答弁を求めます。もし政府があくまでも日韓会談を推し進め、よしんば会談が妥結したとしても、そのときにはすでに、当の相手は消えてなくなっているかもしれない。総理は、はたしてこのことを計算に入れておられるかどうか、この点についてもお聞きしたい。
 質問の第二は、「二つの中国」の策謀をやめてもらいたいということであります。最近財界首脳が中心になって日華協力委員会を開き、総理や外相がそれを激励した事実があります。また、他の財界人の一行が台湾に飛び、川島前幹事長や自民党幹部もまた蒋介石と密談をこらした事実もあります。これら一連の事実は、政府が対中国政策の若干の転換を口にしながら、実際には蒋介石一派との結びつきをあらためて強化しようとするものであり、明らかに二つの中国への策謀の具体的な現われであります。このことは、中国の国連代表権承認が間近に迫った事態に直面して、ケネディ新政府がとろうとしている「二つの中国」政策に日本政府が追従協力しようとするもの以外の何ものでもありません。台湾は、申すまでもなく、中華人民共和国の一部であります。それをアメリカ帝国主義が、かいらい政権を作って、不当に占領しているのであります。「二つの中国」政策は、とりもなおさず、このアメリカの台湾占領を合理化し、恒久化しようとするものであり、中国への露骨な内政干渉であります。これは日中国交の正常化を積極的に妨害するものであると言わなければなりません。総理は、日中関係の改善をはかることは今年の課題の一つであると言っておられますが、もしそれがほんとうならば、まず何よりも、この「二つの中国」の策謀を中止すべきであります。
 総理に聞きたいことは、第一に、台湾政府の承認を取り消し、中華人民共和国政府を中国人民を代表する正当な政府として認める意思があるかどうか、またその一歩として、政府間貿易協定を結ぶかどうか、この点をここではっきり答えていただきたい。また、国連での中国の代表権問題が本年末の国連総会に提起されることは必至であります。そのとき日本政府はどういう態度をとるつもりであるか、賛成か、あるいは反対か。総理は、昨日以来、日中問題については、情勢待ち、ケネディ待ちの態度を続けておられますが、しかし、この問題は、日中両国の歴史的関係からいっても、特に中国人民に対する日本軍国主義の犯罪的な侵路を繰り返した事実を顧みても、今日なお将来の情勢を見なければわからぬなどといって済まされるものかどうか。私は総理のはっきりした態度の表明を求めます。
 質問の第三は、ラオスから手を引いてもらいたいということであります。ラオスの動乱は、アメリカ帝国主義の内政干渉に端を発し、今日なお拡大していることは、世界周知の事実であります。すなわち、昨年八月プーマ政府が成立して、中立と民主的な政策をとり始めるや、アメリカは第七艦隊の出動を命じ、南ベトナム、タイ、蒋介石その他の軍隊を動員するとともに、反動ノサバン一派に大量の武器を投入して内乱を拡大させたのであります。このアメリカの行動に日本が一役買っているのも周知の事実であります。今後事態がさらに発展するならば、新安保条約によって、日本がこれに本格的に巻き込まれる危険も十分あります。私は、日本の安全とアジアの平和のために、政府はアメリカに対して、ラオスヘの内政干渉の即時中止を要請すべきだと思います。総理にはそのような意思があるかどうか、お聞きしたい。また、どんな名目であれ、ラオス干渉のために日本の基地を利用させるということを拒否しなければなりません。総理に、この壇上からそれを声明することができるか、この二点について明確なる答弁を求めます。
 次に、ラオスに日本製の武器が大量に送り込まれていることも明らかであります。この際、いかなる経路をとろうとも、日本からの武器弾薬その他の軍需物資の提供を禁止する措置をとるべきであると私は考えますが、総理はその措置を講ずる意思があるかどうか、あわせて答弁を願います。
 以上のように、池田内閣の朝鮮、中国、ラオス政策は、すべて一本の太い線によって貫かれております。それは、アメリカの世界制覇政策の破綻と、その孤立化、後退の中で、日本がアメリカに協力し、それに便乗しながら、政治的、軍事的、経済的にアジアのいゆわる盟主になろうとする、池田総理のあの思い上がった大国意識と侵略主義の現われでなくて何でありましょうか。これこそが、新安保条約が具体化され、発展させられている今日の姿にほかなりません。しかし、池田内閣のこのような諸政策は、日ならずして必ず破産するでありましょう。なぜならば、わが国民はもちろん、アジアの諸国、人民が、極力それを警戒し、粉砕するために立ち上がっているからであります。わが党と人民は、一そうこの力を結集して、アジア、特に南北朝鮮、中国、ラオス、その他関係諸国の人民とかたく提携しながら、共同の敵アメリカ帝国主義と日本の売国的な独占資本に対して断固としてたたかうものであります。
 これで私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 日韓交渉は、これを即時やめるという考えはございません。
 台湾政府の承認を取り消す、私はそういう考えは持っておりません。
 日中の政府間貿易協定はまだ早いと思います。
 ラオスに対しまして、銃砲弾薬を出したことはないと私は承知しております。なお、ラオスの問題で、米軍の日本基地を使用する問題は、今のところ起こっておりませんから、お答えする範囲でございません。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(小坂善太郎君) 御質問中、一点、二点については、総理からすでにお答えがありました通りであります。ことに、他国の内政を批評するごときことは、政府としてはとらざるところであります。
 第三点のラオスの内乱につきましては、私どもはラオス国民の援助の一環といたしまして、医療品その他を送っておりまするが、内乱に関与するようなことは絶対にいたしておりません。なお、武器弾薬を送っているという話でございましたが、これは総理大臣からお答えの通り、そういう事実はございません。朝鮮動乱以後、アメリカ軍に日本におきまして武器弾薬を調達した事実はございません。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
#49
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時二十四分散会
   ――――・――――
 出席者は左の通り。
       議長  松野 鶴平君
       副議長 平井 太郎君
  議 員
   杉山 昌作君  石田 次男君
   牛田  寛君  村山 道雄君
   谷口 慶吉君  森 八三一君
   小平 芳平君  鳥畠徳次郎君
   田中 清一君  加賀山之雄君
   原島 宏治君  横山 フク君
   大竹平八郎君  加藤 正人君
   中尾 辰義君  前田 久吉君
   白井  勇君  下村  定君
   吉江 勝保君  常岡 一郎君
   竹中 恒夫君  岩沢 忠恭君
   苫米地英俊君  三木與吉郎君
   佐藤 尚武君  天坊 裕彦君
   市川 房枝君  館  哲二君
   村松 久義君  堀  末治君
   藤野 繁雄君  村上 義一君
   大谷 瑩潤君  北條 雋八君
   辻  政信君  千田  正君
   黒川 武雄君  野上  進君
   山本  杉君  谷村 貞治君
   天埜 良吉君  鍋島 直紹君
   岸田 幸雄君  北畠 教真君
   川上 為治君  徳永 正利君
   仲原 善一君  鈴木 万平君
   手島  栄君  松野 孝一君
   柴田  栄君  中野 文門君
   増原 恵吉君  平島 敏夫君
   小幡 治和君  山本 利壽君
   勝俣  稔君  前田佳都男君
   秋山俊一郎君  武藤 常介君
   西郷吉之助君  近藤 鶴代君
   紅露 みつ君  小山邦太郎君
   木内 四郎君  斎藤  昇君
   吉武 恵市君  永野  護君
   野村吉三郎君  田中 茂穂君
   江藤  智君  西田 信一君
   林田 正治君  石谷 憲男君
   村上 春藏君  鹿島 俊雄君
   赤間 文三君  堀本 宜実君
   松村 秀逸君  井川 伊平君
   上林 忠次君  塩見 俊二君
   後藤 義隆君  梶原 茂嘉君
   鈴木 恭一君  河野 謙三君
   大川 光三君  佐野  廣君
   松平 勇雄君  剱木 亨弘君
   青柳 秀夫君  井上 清一君
   加藤 武徳君  小沢久太郎君
   小柳 牧衞君  谷口弥三郎君
   西川甚五郎君  堀木 鎌三君
   郡  祐一君  一松 定吉君
   木村篤太郎君  野田 俊作君
   野上  元君  千葉千代世君
   山本伊三郎君  小柳  勇君
   横川 正市君  鈴木  強君
   坂本  昭君  阿部 竹松君
   中村 順造君  最上 英子君
   占部 秀男君  鈴木  壽君
   大河原一次君  伊藤 顕道君
   大谷 贇雄君  重政 庸徳君
   藤田  進君  加瀬  完君
   阿具根 登君  大和 与一君
   大倉 精一君  高橋進太郎君
   石原幹市郎君  中田 吉雄君
   小酒井義男君  高田なほ子君
   光村 甚助君  植竹 春彦君
   加藤シヅエ君  清浄 俊英君
   吉田 法晴君  木村禧八郎君
   千葉  信君  小林 孝平君
   松澤 兼人君  岩間 正男君
   野坂 参三君  須藤 五郎君
   米田  勲君  大矢  正君
   森中 守義君  北村  暢君
   永末 英一君  基  政七君
   安田 敏雄君  田上 松衞君
   田畑 金光君  木下 友敬君
   平林  剛君  秋山 長造君
   久保  等君  永岡 光治君
   片岡 文重君  相馬 助治君
   向井 長年君  戸叶  武君
   権  繁夫君  矢嶋 三義君
   成瀬 幡治君  天田 勝正君
   東   隆君  松浦 清一君
   岡  三郎君  佐多 忠隆君
   村尾 重雄君  栗山 良夫君
   近藤 信一君  羽生 三七君
   内村 清次君  野溝  勝君
   松本治一郎君  山田 節男君
   棚橋 小虎君
  国務大臣
   内閣総理大臣  池田 勇人君
   法 務 大 臣 植木庚子郎君
   外 務 大 臣 小坂善太郎君
   大 蔵 大 臣 水田三喜男君
   文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
   厚 生 大 臣 古井 喜實君
   農 林 大 臣 周東 英雄君
   運 輸 大 臣 大暮武太夫君
   郵 政 大 臣 小金 義照君
   労 働 大 臣 石田 博英君
   建 設 大 臣 中村 梅吉君
   自 治 大 臣 安井  謙君
   国 務 大 臣 池田正之輔君
   国 務 大 臣 小澤佐重喜君
   国 務 大 臣 迫水 久常君
   国 務 大 臣 西村 直己君
  政府委員
   内閣官房長官  大平 正芳君
    法制局長官  林  修三君
    法制局次長  高辻 正巳君
  総理府総務長官  藤枝 泉介君
ソース: 国立国会図書館
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