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1960/02/03 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第6号
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1960/02/03 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第6号

#1
第038回国会 本会議 第6号
昭和三十六年二月三日(金曜日)午前
  十時三十九分開議
  ―――――――――――――
 議事日程第五号
  昭和三十六年二月三日
   午前十時開議
 第一 緊急質問の件
 第二 参議院予備金支出の件
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 緊急質問の件
 一、日程第二 参議院予備金支出の
  件
  ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ─────・─────
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、緊急質問の件。
 西郷吉之助君から右翼暴力事件に関する緊急質問、高田なほ子君から右翼テロに関する緊急質問、向井長年君から右翼テロ暴力事件に関する緊急質問が、それぞれ提出されております。これらの緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないものと認めます。順次発言を許します。西郷吉之助君。
  〔西郷吉之助君登壇、拍手〕
#5
○西郷吉之助君 私は、自由民主党を代表いたしまして、一昨夜、右翼と見られる一少年により幸して、嶋中中央公論社社長夫人及び同居の一婦人に重傷を負わせ、あるいは刺殺したるテロ事件に対しまして、政府の所信をただしたいのでございます。
 昨年、河上丈太郎氏に対するテロ事件に次ぎまして、岸前総理に対するテロ事件が起こり、さらに十月には浅沼社会党委員長がテロの凶刃に倒れる等、きわめて遺憾なる事件が続発いたしまして、国民はひとしくがく然としたことは、記憶になお新たなところでございます。かかる事態に対しまして、当時本院におきましても暴力排除に関する決議がなされ、「右翼テロの背景を厳重に調査し、その根源を一掃する云々」等の趣旨が述べられまして、政府もまた、これに対しまして最善の努力をする旨の表明があったのでございます。しかるに、その後、日ならずしてまたまた一昨夜のテロ事件が再発いたしましたことは、全く遺憾きわまるわけでございます。
 今回のテロ事件は、さきに深沢七郎という作家によりまして、「風流夢譚」の題名によってこれが中央公論十二月号に掲載されましたが、その内容が、夢物語とはいいながら、国家の象徴たる皇室を誹謗し、暴動を示唆扇動するがごとくに思われる内容でありましたために、特に過激な右翼団体等がこれに憤激し、厳重な抗議を中央公論社に加えておった事態にかんがみまして、かようなことがありましたために、治安当局においても嶋中氏の住宅等に対しましてはすでに警備の手配をしておったことと考えるのでございますが、その治安当局に対しまして、今回のテロ事件は、まっこうからこれに挑戦するがごとくに、警備のすきをねらって嶋中氏の宅に乗り込み、御主人の不在中に嶋中夫人並びに同居の一婦人が凶刃に倒れましたことは、全く遺憾に考えられる事柄であり、治安当局の責任もさることながら、かようなテロ行為の頻発は、法治国家といたしましてまことに国辱と言わなければならぬと思うのであります。理由や原因のいかんを問わず、かかるテロ行為や一切の暴力は、申すまでもなく民主主義の最大の敵であり、治安の確立こそは、あらゆるものに優先すべきものでありまして、言論、出版の自由がテロの脅威にさらされるようなことは、民主主義下におきまして最大の汚辱と言わなければならぬと考えるのであります。かような点に対しまして治安当局の御所見を拝聴したいと考えます。
 今回のテロ事件は去る一日の夜行なわれましたが、一月三十日に日比谷公会堂におきまして、今回の中央公論社に対する問題が論議されたと聞き及んでおりまするが、今回の小森少年のこのテロ事件はそれらと何らかの関連があったのかどうか。また、この少年の背後に、何びとかによって教唆扇動を与えたことの有無につきまして、並びにその背後関係を厳重に追及すべきものであると考えまするが、現在捜査の段階にあると思いまするが、こういう点につきまして国家公安委員長の所見をはっきりと承っておきたいと考えるものであります。
 なお、今回の中央公論社に対する脅迫、抗議等が右翼団体によってなされておったことは、当局においても事前に十分に承知していながら、今回嶋中氏宅においてかような事件が起きたことに対しましては、治安当局は現在行なったところの警備の手段方法等をいかに考えているか。なお、嶋中氏宅に対する警備の態勢を行なっておったとは考えるが、そのすきに乗ぜられたということは、今日までテロ事件が頻発している等の状況等も考え合わせまして、非常に手落ちがあったのではないかと考えますが、そういう点についても所見を承りたいと考えるものであります。
 次に伺いたいと存じますことは、言論、出版の自由についてでございまするが、もとより、との原則はきわめて重要な事柄であり、今回のテロ事件もこの原則にまっこうから挑戦するものでありまして、断じて許されないものでございまするが、現下のわが国の治安状況にかんがみまするときに、こういう出版、言論の自由ということは非常に重大なことでありまするが、私はこういう原則の基礎には、やはり社会的な良識というものがなければならんのではないかというふうに考えるのであります。特に、さように考えまするのは、今回の連続するところのテロ事件が、十七才というような若い世代によって行なわれる、こういう現状にありまして、彼らは年令から申しましてもいまだ十分な判断力もなく、きわめて感受性に強いわけであります。そういうことを考え合せますときに、どうしてもこういう自由の原則の根底には社会的な良識というものが必要ではないかと考えるのであります。特に、今日街頭を見ますると、映画等におきましても、自主的な映倫という機関があるわけでありまするが、なお街頭の映画の看板等を見ても、いかがわしいものが非常に多い。また、本屋の店頭を見るときには、諸君も御承知の通り、青少年に見せたくない、また、彼らがこれを見るならば非常に悪いショックを受けるであろうというようなものがはんらんいたしておるのであります。さような現況にかんがみまして、私は、こういう自由の原則は非常に必要なことでありまするが、その反面、わが国の現況から言うならば、社会的な良識というものが根底にないならば、今後とも未熟な青少年に悪い影響を与えまして、こういうテロ事件が誘発しはせんかということを非常に憂慮するあまり、かように考えるものでございまするが、非常に重大なことでございますので、こういう点につきまして池田総理大臣の御所見を拝聴したいと考えます。
 また、今回の一少年のテロ事件にいたしましても、また、山口二矢のテロ事件にいたしましても、かかる事件が頻発して参りますことは重大なことでございまするが、治安当局におきましては、こういう点に対しましても、根本的な、抜本的な対策を講ずべきものであると思いまするが、国家公安委員長並びに法務大臣におきましてはどういうふうな具体的な案を持っておられるか、その点を承りたいと存じます。
 なお、法務大臣に伺いたい点は、こういう事態にかんがみまして、今日まで常時監視をしておるところの団体等もあると思いまするが、今回の事件にかんがみまして破防法の適用を考えておられるかどうか。そういう点に対しましても明確な御答弁をいただきたいと存じます。なお、その他破壊主義的なまたは暴力的な団体等もあるわけでございまするが、その左右のいかんを問わず、取り締まり上の具体案はどういうふうに考えておられるか。前回本院の決議の趣旨もございますので、国家公安委員長の所見を伺いたいと存じます。
 さらに法務大臣に伺いたい点は、今日まで非常に右翼団体等によるところのこういうテロ事件が頻発いたしておりまするが、こういう凶悪な犯罪に対しまする裁判の実刑は、現在のわが国では非常に軽きに失するようなふうにわれわれには存ぜられるのでございまするが、たとえば英国等その他の先進国の実例は、こういう凶悪の犯罪に対してどういう実刑が課されておるか。そういう諸外国の例も引かれまして、こういう点についてもどうお考えであるか、所見を承りたいと存ずるのでございます。
 なお、最後に私が申し述べておきたいと存じますことは、わが党におきましても、最近の治安状況にかんがみまして、昨年来、犯罪防止基本対策要綱の策定に努め、ようやくその最終的な具体案の決定を見たのでございまするが、今後これに基づきまして、わが党においてもそれぞれ関係法案の立案を考えるべきものであると考えまして、その暴力排除の一環として、さきに治安当局において、刃物追放運動を推進せられました。この運動等も非常に最近盛り上がって参りましたが、やはりこの際、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正いたしまして、今月五・五センチ以下の小型の飛び出しナイフの製造は禁止されておりませんが、その後のこういう状況を見ますると、こういう小型の飛び出しナイフによる凶行が非常に多いことにかんがみまして、こういう小型飛び出しナイフの製造の制限等も考えるべきであると考えまするが、今日国家公安委員長においては、積極的にこの際こういう法律の改正等をお考えであるかどうか。そういう点に対しまして明確なる御所見を承りたいと考えるのでございます。
 なお、最後に、さきの山口二矢といい、今回の小森少年といい、いわゆる青少年の年令の者の凶悪の犯罪が非常に多いのでございまするが、今日青少年等に対しまする総合的な犯罪防止対策の樹立こそは非常に急務中の急務の事柄ではないか。また、特に今日はこういう若い人たちの道義的な気持も非常に薄らいでおる等にかんがみまして、今後早急にこういう青少年に対する犯罪の防止対策の樹立の必要性を痛感いたしますので、こういう問題に対しましても、この際、法務大臣の御所見を明快に伺っておきたいと考えるものでございます。
 以上をもちまして質問を終わりたいと存じまするが、良識ある国民は、今日のこういう続発するテロ事件に対しまして重大なる関心を持っておると存じまするので、この質問に対しましても、総理を初め関係大臣の明快率直なる御答弁を拝聴したいと存ずるものでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の事件はまことに遺憾千万でございます。われわれといたしましても責任を感じ、深く反省いたしておる次第でございます。
 私は、この問題は、単に治安対策という見地からばかりでなく、教育問題あるいは家庭の問題等として、今後こういう事件の起こらないように万全の努力をいたしたいと考えております。なお、言論の自由につきましては、これは民主主義の根本でございまするので、われわれは、言論の自由に挑戦するものに対しましては断固これを排撃いたしたいと思います。しかしまた、一方におきまして、その自由にはおのずから責任と節度があるべきであるということを、私は今後考えていかなければならぬと思っておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(安井謙君) 今回、嶋中鵬二氏のお屋敷におきまして起こりました不祥事件につきましては、われわれ心から遺憾の意を表しておる点、ただいま総理の御答弁の通りでございます。
 まず、今回の事件の概要につきまして御報告申し上げますと同時に、現在の取り調べの状況及び今後の方針等につきまして御答弁申し上げたいと存じます。
 本月の一日午後九時十五分ごろ、新宿区の砂土原町一の二、中央公論社社長嶋中鵬二氏方におきまして、嶋中氏の夫人と同家の手伝い丸山かねさんの二人が右翼少年に刺されました。丸山さんは即死し、夫人は二カ月の重傷を負うという事件が発生いたしました。犯人は小森一孝という十七才の少年でございました。事件発生直後より鋭意捜査に努めて参りました警視庁陣によって二日の朝逮捕されたのであります。犯行の状況は、同日午後九時十五分ごろ、同家の女中上野のぶ子さん、手伝い丸山かねさんの二人が応接間へ本を置きに行きましたところ、すでに室内に入っていた犯人は、「黙っておれ、主人はおるか」とおどかし、飛び出しナイフを突きつけたのであります。二人は驚きのあまりそのまま後退しながら、応接間より奥四畳半、居室の入口付近まで参ったのでありますが、犯人は同室にいた嶋中夫人に対し、「おれは右翼のものだ、主人はおるか。」「いない」と答えると、「隠しておるのではないか、お前が妻なら殺す」と言いながら、いきなり所持の刃物で夫人を突き刺し、これを制止しようとした丸山かねさんをさらに突き刺し、逃走したものであります。事件を目撃した上野のぶ子さんが隣家に飛び込み、同家の電話をもって急報いたし、その結果、二日の朝つかまった次第でございます。
 小森一孝は佐賀県の出身でございますが、昨年の夏、高等学校を中途退学して家を出まして、途中、名古屋、横浜等々を転々といたし、昨年の暮までは横浜で沖仲仕の臨時の仕事などをやっておりましたが、本年一月三日に日本愛国党の赤尾敏のところに参り、入党の申し入れをした由であります。赤尾敏はこれを仮入党の形で認めまして、自来愛国党の仕事に従事しておりました。本年のこの二月一日の日に自分で脱会を申し出まして、その当日の夜この凶行を演じた次第でございます。従いまして、愛国党と赤尾敏、この本人との背後関係が現在どういう関係になっておりますか、この点につきましては、現在鋭意捜査を進めておる最中でございます。また、中央公論に載りましたいわゆる「風流夢譚」が、本人の思想上あるいは今度の凶行上に大きな影響を与えておるというふうに受け取れますので、そういった点につきましても十分な捜査をいたしておる次第でございます。
 浅沼事件の後、政府といたしまして、国会の決議に基づき、一般の御協力を得て、暴力を排除する風潮のわき起こりますように努力をいたして参ったのでございます。たとえば、その一例といたしまして、特に青少年に刃物を持ち歩かないようにさせる運動、こういったものを昨年末以来広く展開をいたし、この点につきましては相当な効果もあげておったと存じておったわけでございます。また、あの浅沼事件以来、特に危険の右翼の団体に対しましては、十分の調査、監査も怠りなくいたし、また警視庁当局にも相当な右翼暴力団体関係の係員の増強もいたし、さらに本年四月一日からは右翼に対する新しい課を新設して、さらに警戒を厳重にいたそうという矢先でございました。また、襲撃を危険視されておるというような方々に対しましても、御本人と十分連絡をとりながら、その警戒に努めて参ったのでございます。特に、今度の嶋中さんの事件につきましては、右翼の行動が、相当抗議集会等を持って、いろいろ抗議をいたしておる状況もございましたので、これに対しても万全の策をとり、常にこの抗議集会等には事前の手配をいたしておったのであります。ただ、この抗議集会が常に中央公論社の本社で行なわれておりまして、嶋中邸へはほとんど参った実績はなかったのでございます。それで、従来も嶋中邸に対しましても、十数回の係官の訪問あるいは不穏事項はなかろうかといったような、いろいろの手配もいたしておったのでございますが、私宅の方にはそういったことは、ほとんどないというような状況でございました。数回にわたって抗議の行なわれ、いろいろ折衝の行なわれました中央公論社に対しましては、十分万全の措置をいたしておったのでございまするが、結果がこういうふうに相なりまして、この点は心から遺憾に思っておる次第でございます。
 なお、今後の対策でございますが、先ほど申し上げましたように、今後とも十分にこの右翼の暴力に対する態度を強化いたしまして、さらに監視を厳重にいたし、かかることの起こらないように万全を期したいと存じておりますが、同時に、ただいま総理もお話のございましたように、青少年を中心にいたしまして、思想の左右翼を問わず、非常に暴力に対して安易な風潮が流れておりますることは、まことに遺憾でございます。今までも、各種団体あるいは青少年協議会等を通じて、これが風潮の絶滅を期しておりますが、今後とも、先ほどお問い合わせの刃物所持の禁止法令を強化いたすとか、あるいは青少年対策を、補導、指導、保護という点から、さらに大きく手を広げて、今後珍事の起こらないように万全を期するつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいま御質問になりました第一点は、言論出版等に対して、暴力による抑圧と申しますか、自由の妨害というものが行なわれる傾向があるが、もってのほかではないか、これに対してどう考えるかという御質問であったと思います。今回の事件は、言うまでもなく、また先般ありました松葉会の毎日新聞襲撃事件、あるいは昨年の同じく浅沼委員長に対するあの残念な事件、こうしたものがいずれもこの言論抑圧に関するものの一例ではないかと思うのでありまして、こうしたことが最近ひんぱんに起こりますことは、非常に残念に存じます。暴力によって言論を抑圧するというような、こうした風潮は、仰せの通り、民主主義国家において許されない問題であります。従って、われわれ法務当局といたしましては、検察上におきましても十分峻厳なる態度をもって事案の処理にあたり、今後こうしたことが再び起こらないようにやって参りたい、かように考えます。しかしながら、他面、これまた言論にも出版の上においても、お互いに国民の良識をもって進んでもらいたい。これはわれわれ法務当局としても切に希望してやまないところでございます。
 第二の問題といたしましては、破防法の適用を受けるような右翼団体についての御質問でございました。破防法による団体の解散につきましては、同法に、御承知の通り、定められた一定の条件がございまして、その条件に該当するものについては、われわれとしては厳重に処断をして参りたい、こう考えております。条件と申しますのは、とれまた御承知の通り、その団体が、団体の活動として暴力主義的破壊活動を行ないまして、さらにこれを継続反復するおそれがある、かような場合に解散を命ずることができるのでございます。われわれといたしましては、近時の風潮にかんがみまして、十分に努力をいたしまして、こうした団体についての平素の調査研究もいたしているのでございます。ただいままでのところにおきましては、この破壊活動防止法を適用して解散を命ずべき団体ありという結論までにはまだ参っておりません。今後なお、今回の事件にかんがみまして、今回の事件に関係があるかないか、あるいはその関係の程度等について、十分厳正な態度で調査をいたして参りたい、かように存じます。
 次に、暴力犯に対する処刑が外国に比べてどうなっているかという御質問でございましたが、法定刑、法律で定められている程度におきましては、外国と比べまして特に日本の法令が軽いということではございませんが、実際の適用上の問題を調べてみますというと、どうもややわれわれの考えております程度よりは、最後の裁判の結果を見ますと、やや軽くなっているというように感じております。この点は、われわれもなお十分調査その他立証の上においても研究を続け、調査を密にして参りたい、そうして適正な処断が行なわれるように努めたいと考えます。
 最後に、青少年犯罪に対する御質問でございましたが、最近御承知のように、全く青少年犯罪が増加の傾向にあることは、まことに遺憾でございます。で、こうした点につきましては、ただいま国家公安委員長も若干触れられましたように、政府といたしましては、刃物を持たない運動についてあらゆる機関がこれに協力をしてやって参るのも、一つのこれは予防の方法であります。しかし、その青少年犯罪のよって来たる一番の根本は、私は教育の面におきまして十二分に研究をして参らなければならぬ。また社会全体といたしましても、これはいろいろと注意をしなければならぬ点があるのであり、また家庭におきましても、今回の犯罪は少年が家庭を離れておる間に行なわれております。こうしたことを考えますと、これまた十分お互いに子を持つ親は気をつけ、お互いにこうしたことの起こらないような注意を国民全体が一緒になってやる必要も十分にあるんじゃないか、こう思います。しかし、われわれ政府当局といたしましては、今後ともこれら青少年犯罪のよって起こる原因を、具体的の事件の場合にはもちろんのこと、一般的にも十分調査研究をいたしまして、そうしてこれに対して善処をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
 以上御答弁をいたします。(拍手)
  ―――――――――――――
#9
○議長(松野鶴平君) 高田なほ子君。
  〔高田なほ子君登壇、拍手〕
#10
○高田なほ子君 私は日本社会党を代表して、頻発する右翼テロ事件に関し、政府当局の見解をたださんとするものであります。
 質問に先立って、去る二月一日、おそるべき右翼の凶刃のもとで、けなげにも最後まで御主人をかばいながら、ついに母としての生涯を無惨に終わられた丸山かねさんに対し、心からなる哀悼の意を表するとともに、同じ刃のもとに重傷を負われた中央公論社長夫人嶋中雅子さんの一日も早い御全快を、皆様とともにお祈り申し上げたいと存じます。(拍手)
 昨年六月、右翼テロの凶刃は、日本社会党顧問河上丈太郎氏に対し、七月には岸前首相、続いて三たび、ついに浅沼委員、長は池田首相の眼前で右翼の凶刃に倒れました。この事態に対し国民は憤激し、国会は暴力排除の決議を行ない、政府は再びかかる事態の起こらないことを誓い、万全の措置をとることを国民の前に明らかにいたしました。しかるに、それからわずかに三カ月、政治テロは言論に対するテロにまで発展し、問題の中央公論の編集とは直接何らの関係もない無防備の女性二人までもが、山口少年と年令も同じ愛国党員の少年の手で殺傷されるに至りました。この事実は、あげて池田内閣の重大な責任といわなければなりません。(拍手)本事件の真相については一応の御報告をいただきましたが、しばしば私どもがテレビやラジオを通じて聞かれる一人一殺主義を奉じる右翼団体の存在というものが、はたして民主主義社会に許されるべき存在なのであろうか。御調査中であるといわれる右翼団体の現状は一体どうなっているのか。本事件に対しては、十分に危険が予知されたと想像できることに対して、こうした悲劇が起こったことに対しては、いかに弁解なさろうとも警備上の手抜かりの責任は免れないのではないかと存じます。治安維持に対する当面の責任を明らかにせられることを望むのであります。人を殺して問題の解決をはかろうとするこの種の暴力は、戦争という高価な犠牲の上に築かれた民主主義への挑戦であって、私ども断じて許すことのできない罪悪であると存じます。法秩序の維持を強調される池田内閣は、この頻発する右翼テロ行為の発生原因をいかように分析されておられるのか、その発生原因はどこにあるのか、またこの解決のためにいかような決意をお持ちになるのか、まず総理大臣に対して責任ある御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
 池田首相は、浅沼刺殺事件に際して、世論騒然たる中で、山崎国家公安委員長を辞任させ、総理みずからは直接政治責任はないと言明をされました。法律的にはあるいはかような解釈も成り立つかもしれません。しかし、かかる頻発する右翼テロ事件の失態に対して、だれが最高の政治責任を持つのでありましょうか。今日なおもって最高責任の所在さえ不明確な、あやふやな政府の態度こそ、政治不信の要因であり、右翼助長の温床をつちかっていることを、強く指摘しなければなりません。(拍手)憲法の六十五条は、明らかに行政権は内閣に属することを明記し、同じく六十六条は、また国会に対する内閣の連帯責任制を明記しております。内閣の首長たる総理大臣は、当然行政権の失態に対して最終の政治的責任を負わなければならないはずであります。しかるにこれらの責任を国民の良識に転嫁するがごときは、私どもの納得のいかざる点であり、政府の責任回避が、どこまで本気であるのかということについて、非常な疑問を持たざるを得ないのであります。人命の危機、社会の不安を一掃するために、本事件の最終の政治責任の所在をこの際明確にされることを要求をいたします。
 次に指摘したい点は、理由のいかんを問わず人命を殺傷する行為は徹底的に排除されなければなりません。判断力に欠ける少年に対して、テロ行為を教唆、扇動、幇助した憎むべき背後関係をうやむやにし、刑法上の共犯のあるなしをのみ重視し、捜査途中に単独犯を認定したり、この認定の直後に山口少年を自殺に追いやった浅沼事件の終結のごときは、私は当局の態度としてはまことにふに落ちないものでございます。(拍手)これらの当局の態度に対して、一番大いなる拍手を送っておる者は一体何者でございましょうか。本事件に関してもかかる失態のないことが明言されるでありましょうか。法務大臣の責任ある御答弁を望むものであります。一体このような複雑な背後関係を抜きにしては、どのような根本対策があると申しましても、何の解決のわざにもならないと思います。総理は全責任をもってあらゆる背後関係の究明に当たる用意があるかないか、この点をあらためてお尋ねをしたいと存じます。
 さらに、この種暴力を助長する要因は、右翼と政界、経済界との結びつきであります。昭和三十四年三月から六月まで、政治資金規正法に基づいて届け出た右翼団体の資金中には、八幡製鉄、小野田セメントを初めとする大手筋二十五社、回しく七月から十二月までに、同様大手筋の寄付は五カ月間に百九十三万八千円に上っていると伝えられております。さらに三十五年上半期には一そう増加して、大手筋五十二社にも上っております。あまつさえ、一部経済界では右翼ムードを賛美する声が聞かれておりますが、このおそるべきムードに対してどのような方策をおとりになるのか、関係大臣にお尋ねをいたします。
 なかんずく、首相にお尋ねをしたいことは、まことに申し上げにくいことでありますが、政界との関係についてであります。政治資金規正法に基づいて届け出たといわれる、一部に発表された資料によれば、昭和三十四年五月二十一日、自由民主党は護国団に一万円の寄付をしています。三十四年七月四日、自由民主党は治安確立同志会に十万円、同じく十一月五日、天皇中心会に一万円、同じく三十四年一月十二日、池田首相の後援会である宏池会が、大日本菊水会に五千円、四月十一日には頭山勢に五千円、四月二十八日には護国団広島本部、五月七日には大日本国民党、六月四日には綜合文化協会等、一連の右翼団体と目されるところに寄付をせられております。政界との暗い結びつきの一端をうかがうことができて、まことに暗然たる気持がいたします。何らかの事情はあったにしても、今日、結果として右翼横行の一翼をになったという総理の道義的責任は、きわめて重大であると言わなければなりません。(拍手)この際、はなはだ申し上げにくいことを私が申し上げましたのは、特に公党の名誉のために、この真相の釈明を求めるとともに、との根源を断ち切るために重大なる決意を求めるものでございます。公安調査庁の見解によれば、破防法に基づいて調査をしている右翼団体があるというが、いずれもその資金は篤志家のカンパで運営していると述べています。このカンパの出所及び渡し先をこの際明らかにせられたいのであります。昨年十二月、参議院法務委員会において、わが党の亀田委員の資金源追及に対して、内容は、関係者のうち選挙に立候補しておる者もあるので公表できないと、ついにこの点を明らかにしませんでした。また、法務大臣は、刑法上の罪を伴うような性質の金がむしろ大きな資金源になっておるのではないかと、はなはなだ示唆に富む答弁がありました。この答弁こそ問題ではないでしょうか。一体、刑法上疑問のあるような手段で金を集めるような行為そのものが白昼許されてよいものであろうか。当局がこれを放置してよいものであろうか。私はこの点について、特に政治資金規正法との関連において、法務大臣から十分なる理由をお尋ねするとともに、本問題に対する抜本的な対策をお尋ねするものでございます。
 次に、警察と右翼の結びつきについて、首相は、新たなる決意をもって臨むことを表明されておりますが、あらためて御所見をお伺いしたいのであります。昨年十二月十五日、殺人現行犯山口少年の国民葬に際し、警視庁の竹川、東海林の両警部は、香典を持って参列をしたと伝えられていますが、その真相はどうでありましょうか。かりに私上の交際だとしても、暴力の根絶を期さなければならない警察のあり方として許されてよいものでありましょうか。国家公安委員長はこの事態を何と解釈せられるのか。民主警察のあり方についての明快なる御答弁をわずらわしたいものであります。
 また、昨年の六月十五日、参議院通用門付近でデモ行進中のキリスト者、新劇人、一般人の静かな列の中に、こん棒をふるってなぐり込みをかけ、八十余名に重軽傷を負わせた維新行動隊と称する右翼暴力団は、その隊長石井一昌ら二十名が起訴され、現在公判が行なわれておりますが、その第八回公判廷での石井発言中に、「私は警察の手先をしたのだ」。中略、「われわれがこういうことをやるについては慎重に警察に連絡をした。事件の前日に警官を護国塾に呼んでビールを飲ませた。そのとき社会党の田中稔男代議士をやっつける了解ができたはずだ」、と発言して、世間をあっと言わせています。もちろん、これは審理中の問題でありますから、事の真意をこの場で追及しようとは思いませんが、もし、これが真実であるとするならば、まさに無警察、暗黒政治そのものではないでしょうか。警察の厳正中立、憲法を中核とした責任政治の確立こそ、治安維持の要諦でなければならないと存じます。この実現のための決意を首相にただすとともに、これの具体的方策について詳細なる御答弁を法務大臣及び国家公安委員長にお尋ねをしたいと存じます。
 最後に申し上げなければならないことは、もともと、性善なる少年が、愛情に恵まれない家庭のゆえに、あるいは絶望し、社会の冷酷さに抵抗して、あるいは苦悶し、反転し、こうした純真な少年たちが、これらの環境ゆえに、オオカミの手先になって凶刃をふるうおそれのある危険な環境に置かれている、いわゆる右翼暴力団の直接行動隊と目される十七才から二十五才までの青少年は、今日全国に千五百名を数えておりまして、今まさに罪の淵に立たされようとする、これらの社会の被害者である少年に対して、今直ちに政治は愛の手を伸べなければなりません。寸刻も許さず、これらの少年に対する具体的な補導の手が伸びなければなりません。私は、悪の背後の糾明とともに、現下のこの急務を忘れたのでは、決して池田内閣の愛情ある政治はないと考えるわけであります。本事件を前に心痛む全国の母親のために、将来のわが子の仕合わせを願う母親たちのために、政府はもっともっと青少年対策、なかんずく、青少年犯罪対策に対して、文部省における青少年犯罪対策費三十一万円というような、でたらめなやり方ではなく、本質的な取り組みを強く要望し、その具体策を詳細に御説明いただくことを要求いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の事件の原因は何かという御質問でございます。いろいろの点があると思いますが、私は、最近一部青少年に、人間の生命というものを軽視する風潮がある。反対に、暴力を賛美するというふうな風潮があることが認められるのであります。また、どうも今回の問題につきましても、新聞紙上、その他の情報から見まして、私は、どうも赤色革命が迫っているのだというような、ばかな、何と申しますか、われわれの想像のつかぬような青年がおってやっているのも、一つの原因じゃないかと思います。いずれにいたしましても、私は、こういう考え方を排除することに今後努力していかなければならぬと思います。
 なお、今回の問題についての責任の所在でございますが、御承知の通り、今の警察法におきましては、警察の中立性ということから考えまして、具体的な警察の運営につきましては、国家公安委員会がその責をとるということになっております。ただ、内閣総理大臣は行政全般につきましての責任をとるのでございまするから、この意味におきましては、私は、今回の事件につきまして、国民あるいは国会に対しまして政治上の責任はあると痛感しておるのであります。なお、背後関係につきましては、目下当局において糾明中でございます。いずれ御報告できると思います。
 また、右翼団に対しましての党並びに宏池会の寄付は、私が総裁になりましてから、党並びに宏池会からは一切出さないことを厳命いたしております。
 なお、青少年の保護、ことに犯罪防止についての手段につきましては、私は今後十分検討して実行に移したいと思います。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(植木庚子郎君) 浅沼事件につきましての当局の態度についての御質問が第一であったと思いますが、この事件につきましては、申すまでもなく、われわれ法務当局、検察当局といたしましては、厳正なる態度をもって今日まで進んできておるつもりでございます。その途上におきまして、御承知のような、山口少年の自殺等の問題が起きましたことはまことに遺憾でございまして、この点につきましての関係職員の責任については、それぞれ適当な処置を講じてございます。なお、この事件につきましても、今もなお捜査を継続中でございまして、調査の経過の状況に従いまして、また御発表申し上げる時期もくるかとも存じます。これが第一の御質問に対してのお答えであります。
 第二の右翼の資金ルートの問題でございますが、この点につきましては、検察庁あるいは公安調査庁等の諸機関を通じまして極力調査をいたしております。そうして、その活動状況につきましても十分に意を用いているのでありますが、浅沼事件や今回の事件の犯行につきまして、事前に察知し得なかったことはまことに遺憾に存じます。今後とも関係部局を督励いたしまして、十分に気をつけて参りたいと存じておる次第でございます。で、資金ルートの問題につきましては、今日までの調査によりますと、右翼団体の資金ルートは、一般的に申しますと、その団体への入会金でありますとか、会費、機関紙の購読料、広告料などの名義で収入に入っております。あるいはまた個人的な寄付を受けているものもあるようでございます。これらの事実は、政治資金規正法等によりまする届け出によってもうかがい知るところでございますし、われわれといたしましても、なお、でき得る限りの手配をいたしまして、調査に努めている次第でございます。浅沼事件に関連いたしまして、衆議院の委員会で、大日本愛国党その他六団体につきまして、その当時わかっておる事実を御報告いたしたことがございます。今日はこれ以上、今責任をもってお答えし得る材料を持っておりません。
 最後に、青少年犯罪の問題について、高田議員のいつも非常な熱心なる御心配、私、敬意を表する次第でございますが、この点につきましては、先ほども申し上げました通り、われわれ法務省におきましては、犯罪を犯した少年につきまして、鋭意科学的研究を進めて、それのよってきたるもとをただし、研究して参る、こういうふうに努めておるのであります。青少年自身の素質の問題もございます。あるいは家庭環境の問題、あるいは社会環境の問題、あるいは成人と少年との関係の問題等もございます。こうした問題につきましては、われわれなお今後とも十二分なる研究を続けて参りまして、そうしてこれに対して適切なる措置を講じたい、こう思うのであります。ことに、大切に感じられますのは、成人が少年の気持を十分に理解をいたしまして、そうして、あたたかい愛情でもってこれを導いていくようにすることが非常に大切だと考えられます。こうした問題は、必ずしも法務の範囲の問題ではございませんが、私はつくづくその点を痛感いたしておりますので、所懐の端を申し述べてお答えといたします。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(安井謙君) 先ほど事件の経過につきましては御報告を申し上げました通りでございます。今回の事件について、その発生がなぜ予知できなかったか、こういうお問いもございましたので、いま少し詳しく御報告申し上げます。
 深沢氏の「風流夢譚」が中央公論に掲載されまして以来、右翼の抗議活動は非常に顕著なものがございました。これらの抗議は、中央公論社に向けられるものが多く、直接社長に対しては、いずれも本社内において抗議が行なわれ、一々社長がこれに答えておられた状況でございます。警視庁はこれに対しまして警戒を厳にいたし、抗議のつど、あらかじめ情報を入手し、係員を派遣し、警戒に当たらせるとともに、嶋中社長の自宅に対しましても、所轄牛込警察署の公安係員及び受け持ち外勤巡査をして今まで十数回にわたり訪問をさせ、脅迫その他危険な動きの有無について連絡をさせるとともに、パトロールを強化しておったわけでございます。今まで自宅につきましては危険な動きはないとのことであったのであります。抗議には直接本社で社長も誠意をもって答えておられ、事態の急変は予測されなかった状況下におきまして、今回こういう事件を引き起こしましたことは、まことに遺憾にたえない次第でございます。
 なお、右翼の暴力につきましては、先ほども申し上げました通り、その理由のいかんを問わず、また、思想のいかんを問わず、これは今後とも徹底的に予防し、制圧し得るように、今後も強力に進めていきますと同時に、そういった暴力によって言論の自由を圧迫するということのないように十分の戒慎をいたしたいと存じております、
 なお、警察とのくされ縁という関係につきまして、十二月にありました山口二矢の慰霊祭の際、二人の警官が香典を持って場内へ入ったじゃないか、こういう御指摘がございました。これはまさに事実その通りでございます。当日、二人の警官が香典を五百円持って、その会場に入ったのでございますが、この事情は、警察官は御承知の通り、右翼の情報を収集して不法事件を未然に防止するために、右翼の集会に臨んだり、あるいは右翼の人物に面接をしたりしておりますが、その間にいわゆるくされ縁ができておるというようなことは断じてないと信じております。山口二矢の慰霊祭場に警察官が香典を出して入ったということについてでございますが、事の真相は、左翼担当の警察官が、この機会に右翼の大物の顔を知り、また右翼集会の雰囲気を知っておくことが、自分たちの仕事に利するところが多いと考え、入場に際し警察官たる身分を明らかにしないで、単に一般の参会者という形で香典を出す手段をとって入ったという事情であります。しかし、こういった方法が、はたして適切であったかどうかにつきましては、われわれも深く反省をいたしておりますが、動機と実情はこのような事情にございます。
 なお六・一五事件の石井一昌のデモに対するなぐり込み事件の際、石井が法廷等で、前日警官の了解を得たやの発言をいたしておる由でございましたが、これも厳重に昨年来取り調べをいたしておりました結果、あの十五日デモの際、これはいわゆる安保賛成のデモを石井一味がやる、こういう情報を聞きまして、先立という係官が当日事務所へ行って、不穏な行動のないようにということをさとした実績がございまするが、これに対して慫慂した、内諾をいたしたというような事実は、これは一切ございません。
 なお、お話の通り青少年問題につきましては、単に法律や警官の力だけではなりませんので、今後とも政府といたしまして、あたたかい気持で、この補導、指導あるいは観察保護、こういう点につきましても今後十分に万全を期して参りたいと思っておる次第でございます。(拍手)
  ―――――――――――――
#14
○議長(松野鶴平君) 向井長年君。
  〔向井長年君登壇、拍手〕
#15
○向井長年君 私は、民主社会党を代表いたしまして、一昨日起こった右翼少年による嶋中夫人並びに丸山さんの殺傷事件について緊急質問を行なわんとするものであります。
 最近における暴力事件の発生は年ごとに増加の一途をたどり、昭和三十四年では昭和二十三年に比しその数は三倍に達し、さらに昭和三十五年では昭和辛十四年のそれをはるかに上回る数字を示しておるのであります。特に昨年は、安保審議を中心に、六月には社会党の河上丈太郎氏傷害事件、七月には岸当時の首相傷害事件、十月には浅沼氏が殺されるという大事件を次々と生み、しかもこれらの一連の事件は右翼によって引き起こされるという特異なケースを生み出しておるのであります。この浅沼氏の殺人事件を契機に、国民は右翼に対する不安の念を新たにし、同時に、警察における右翼軽視の風潮並びに政府のずさんな警察行政の双方に対し、きびしい批判の声が上がったのであります。国会においても当然のことながら、この問題が大きく取り上げられ、地方行政、法務の合同委員会で徹底した論議が展開されました。そして十二月二十四日には、全く異例の措置として「暴力排除に関する決議案」が決議されたのであります。池田首相は、当時の国会でわれわれに対し、あるいは国民に対し、「この種事件は、今後は絶対に発生せしめないように、抜本的措置を講ずることを約束いたします。」と言明をいたしております。あなたの口からそのことが約束されてからまだ三カ月ちょっとしかたたない今日、またまた全く同じケースの事件が発生したのであります。あなたの約束した抜本的措置とは一体何でありますか。この点を明確に答弁を願いたいと思います。この事件の発生によって、われわれはあなたの約束が全くでたらめであったものであることを思い知らされたのであります。
 今日この種事件が再発した根本の原因は、第一に、池田内閣がさきの浅沼事件発生後、口に抜本的措置を講ずると言いながら、やったことは単に当時の国家公安委員長をやめさしただけで、何ら具体的措置を講じていなかったと断ぜざるを得ません。その第二は、国民からあれほどの批判を浴びた警察当局が、その後の右翼動向の把握、取り締まりについて、何ら積極的な手段を講じなかったことであろうと思います。その意味で池田内閣並びに警察当局の責任は重大であると言わなければなりません。まず今度の事件に対する責任の所在を、総理から再び明確にしていただきたいと思います。
 次に、今回の事件を顧みて、これら右翼の暴力が政治から言論界に移行してきたことを、私たちはきわめて重大視するものであります。言論の保障は憲法に規定する基本的人権であり、民主主義社会の基調であります。これらの保障のないところに福祉国家も国民主権も絶対にあり得ないのであります。われわれは、家庭の茶の間において、また公の場所において、みずからの言論を自由に発表する権利を持ち、国家はこれに対し全面的な保障を与えるところの義務を負わなければなりません。しかし現実は、今回の事件で明らかなように、これらについて何ら保障がないのであります。これで、はたして民主主義社会と言えるでありましょうか。われわれは、民主主義の浸透と並行して、これとは全く逆の、言論を暴力によって押えつけるという民主主義挑戦の行為が、特に岸内閣時代から、右翼が中心に根強く拡大し、あるいは強化されつつある現実に直面いたしております。暴力の根絶は、こうした一部の社会的風潮を是正し根絶することなしにそれを達成することは至難であるのであります。総理は、この風潮が何を原因として広がりつつあるか、またこの根絶をどのようにして行なおうとするのか、特に右翼の取り締まりをどのように具体的にするのか、その方針を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 なお、右翼団体の資金源の問題は、先ほど同僚議員からも述べられておりますけれども、特に私はここで法務大臣にお聞きしたいことは、昨年の浅沼事件発生の際、三十六国会継続の法務委員会において、先ほど高田議員からも指摘されましたが、当時の小島法務大臣は右翼団体の資金源について答弁をいたしております。特にこの中では、非常に重大な決意をもって小島法務大臣は答弁をいたしております。この内容は、こういうように出ております。「資金源のうちには、脅迫的の、刑法上の罪を伴うような性質の金の方がむしろ大きな資金源になっているのではないかということを、ここで言い切ったということは、私自身、自分でもって覚悟いたしております。」「私はそれ相当の覚悟を持っております。」――いろいろこういう重大な職を賭しての決意をして、しかもかかるような答弁を法務委員会でいたしております。しからば、その資金源の問題について刑法上のいわゆる問題になるというようなことがあるとするならば、その後なぜこれに対するところの捜査あるいは取り締まりをしなかったか、との点について私は特に法務大臣から答弁を願いたいと思うのでございます。なおまた、かかる問題について、今後資金源についてどういう取り締まり方法を具体的に持とうとするのか、この問題もあわせて法務大臣から答弁をお願いいたしたいのでございます。
 第三は、今回の事件をめぐっての警察の責任について、国家公安委員長にお尋ねいたしたいのでございますが、聞くところによれば、私たちの調査によりますと、今度の事件が発生する前に幾度か嶋中宅に脅迫の電話が加害者からかかったと私たちは調査をいたしております。これに対しまして警察当局に身辺の保護願いを出したにもかかわらず、当局は、単なるいやがらせであろうというところから、十分な適切な措置を講じておらなかったということ、さらに、事件発生当日加害者ら正名は愛国党から脱退し、従来の浅沼事件にあったような経緯からして、かかる事件の発生することが十分予知されながら、これに対して当局は何らの警戒も行なわなかったこと等から見まして、今回の事件は、単なる突発事件ではなく、前から予想でき得るところの状態であったにもかかわらず、警察がこれを未然に防止できなかったことは、明らかに警察側に重大な手落ちがあったと言わなければならないと思うのでございます。この点につきまして、特に公安委員長の具体的な解明をお願いいたしたいと思います。特に警察側に手落ちがあったことをお認めになるかならないか、また、この事件についていかなる形で責任をとろうとする用意があるか、その所信を明快にされたいと思うのでございます。
 第四に、昨年以来の相次ぐ右翼団体員の暴力事件よりして、これらの団体は、明らかに民主主義に挑戦する団体であり、今まで野放しにしておくことはきわめて危険であると考えるのでございます。暴力の完全な排除は、現象的に現われた個々の事件を解明し、その加害者を追及するにとどまっていたのでは、とうていその目的を達することは困難であると思います。この種事件の真の加害者は、むしろその個人ではなくして、当該加害者に一定の思想を吹き込み、事件を教唆扇動するこれら団体であると言っても決して言い過ぎではないと思います。従って、これらの団体の徹底的規制なくして暴力の根絶は不可能であると信ずるのであります。政府は、これらの明らかに破壊的な団体について、破防法等あるいはその他適切な法律を適用して、解散等の措置を講ずべきであると思うが、この点に関する政府の方針をお尋ねいたしたいと思うのでございます。
 以上の四点に対し、総理初め法務大臣並びに国家公安委員長の明確なる答弁を私は求めたいと思うわけでございます。今回の予想された場所にこのような事件を引き起こさせたことに対して、わが党は、今後再びかかるテロ行為の絶滅を期するため、政府の行政責任、警察当局の取り締まり責任を強く追及いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 浅沼氏の事件以来、私は、こういうテロの起こらないように警察当局に申しまして、警察機構の改善強化を命じておったのであります。だんだんその緒についておる間にこういうことが起こったのであります。先ほど申し上げましたごとく、これは治安対策ばかりではいけません。教育面その他各方面からこういうことのないようにしなければならない。私は常に政治の姿を正すということを申し上げておるのでございまするが、こういうことからも防止に努めなければならぬ。十分でなかったことは遺憾でございますが、今後この点につきまして格段の努力をいたしたいと思います。
 なお、今回の事件につきましての責任論でございます。先ほど申し上げましたごとく、警察行政の運営管理は、建前として国家公安委員会及び地方の都道府県公安委員会がその責任を負うことになっているのでございます。内閣はその運営につきまして指揮監督権はございません。ただ、総理大臣は行政一般についての責任者でございまするから、この意味において政治的の責任は私は感じておるのでございます。これは、国民並びに国家に対しまして政治的責任をとる立場になっておるのでございます。
 その他、取り締まり、破防法の関係につきましては、関係大臣より答弁させます。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。
 浅沼事件の資金関係についての御質問がございましたが、この問題は、先ほどもお答えいたしました通り、なお調査を継続中でございまして、その事態が明らかになりました場合には、適当な機会に御答弁申し上げる機会もあろうかと考えるわけであります。一般的に申しまして、前法務大臣が何と言われましたか、私は、速記録をまだ見ておりませんので、十分には存じませんが、こうした団体におきまして、調査の際に、それが刑罰法規に触れるような事態であるという場合には、当然これは処断をいたしており、適当な、起訴をするなり何なりの手続をとるべきことは申すまでもないと思うのであります。しかしながら、右翼団体の問題でありましても、犯罪に関係のない問題についてこれを明らかにすることは、これはいかがかと存ずる次第でございます。従って、犯罪に関係のある部分につきましては、捜査当局の調査の結果に基づきまして、支障のない程度で実態を明らかにして参りたい。かように考えておる次第でございます。なお、今後の方針につきましても、今申し上げた通りの態度で進んで参りたいと思いますけれども、なお別途に公安調査庁の調査の活動を期待いたしまして、これによってでき得る限り事態を明らかにして、そうしてこれが犯罪の遠因にならないようにして参りたい、また、不当な活動が行なわれないようにやって参りたい、かように考える次第であります。
 最後に、破防法の適用の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げた通りでございます。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(安井謙君) 向井先生の御質問に対しましては、いろいろ先ほどお答えをいたした通りでございますけれども、先ほど特に、今事件の発生前に嶋中氏宅に脅迫の電話があり、あるいは被害者から身辺保護の要請が出ていなかったか、そういったような具体的なお尋ねの件につきましてお答え申し上げます。
 嶋中社長の宅につきましては、先ほども申し上げましたように、所轄牛込署におきまして、昨年十一月二十六日に係官三名を連絡警戒員として同家を訪問し、警戒方法、右翼等の来訪時の通報等の連絡を行なっておったのであります。その後も係員は随時同家と連絡をして警戒に当たり、その回数も十三回に及んでおるようでございます。また、同家付近の派出所の勤務員及びパトロール・カーの乗務員も、同家を警ら要点として常に常時警戒に及んでおります。同家に対する外部からの働きかけといたしましては、ことしに入りまして、社長はいるかという電話が二、三回かかり、不在だと答えると、別にそのまま相手を確かめる間もなく電話を切ったということがあとでわかっております。脅迫的電話があったという事実はなく、また、これ以上特別の状況はございません。従いまして、被害者からの身辺の保護等の申し入れがあったという事実はない次第でございます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、そういう間にこの事件が起こったことにつきましては、心から恐縮をいたしております。
 なお、今回の事件についての責任問題でございますが、就任以来、私は暴力の排除を中心とする治安対策につきましては、特に強い措置を推進して参っております。しかしながら、今回の事件の発生はまことに遺憾でございます。今後さらにこの種の事件の絶滅を期するために全力を尽くすことが、私に課せられた責任を果たすゆえんであろうと考えておる次第でございます。(拍手)
   ――――・――――
#19
○議長(松野鶴平君) 日程第二、参議院予備金支出の件を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。議院運営委員長斎藤昇君。
  〔斎藤昇君登壇、拍手〕
#20
○斎藤昇君 ただまい議題となりました参議院予備金支出の件につきまして御報告を申し上げます。
 昭和三十四年度並びに三十五年度の予算額は、両年度ともそれぞれ五百万円でございますが、昭和三十四年度分は、前回の常会の初めに院の承諾を得ました三百二十四万円のほか、その後、百八万円が支出され、差引六十八万円が不用額となったわけであります。支出額の内訳は、在職中死亡された故議員石黒忠篤君の遺族に対する弔慰金であります。
 また、昭和三十五年度分は百八万円の支出となり、差引三百九十二万円の残となっておりますが、支出額の内訳は、在職中死亡された故議員桜井三郎君の遺族に対する弔慰金であります。
 これらの弔慰金は、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律第十二条の規定によりまして、その遺族に対し、それぞれ歳費一年分の弔慰金を支給いたしたものであります。
 以上申し上げました予備金の支出は、いずれもそのつど、議院運営委員会の承認を得たものでありますが、ここに本院の承諾を求めるものであります。(拍手)
#21
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。
 本件を問題に供します。本件は委員長報告の通り承諾することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって本件は承諾することに決しました。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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