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1960/02/24 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第9号
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1960/02/24 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第9号

#1
第038回国会 本会議 第9号
昭和三十六年二月二十四日(金曜日)
   午前十時四十分開議
  ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和三十六年二月二十四日
   午前十時開議
 第一 下級裁判所の設立及び管轄
  区域に関する法律の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 第二 日本放送協会昭和三十三年
  度財産目録、貸借対照表及び損
  益計算書並びにこれに関する説
  明書
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、海外派兵についての松平国連大
  使の発言に関する緊急質問
 一、松平国連大使の発言問題に関す
  る緊急質問
 一、日韓会談における財産請求権問
  題に関する緊急質問
 一、沖繩基地長期保有についての米
  国防総省特別委員会報告に関する
  緊急質問
 一、割賦販売法案(趣旨説明)
 一、日程第一 下級裁判所の設立及
  び管轄区域に関する法律の一部を
  改正する法律案
 一、日程第二 日本放送協会昭和三
  十三年度財産目録、貸借対照表及
  び損益計算書並びにこれに関する
  説明書
  ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ─────・─────
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。海外旅行のため、岩沢忠恭君から十五日間、苫米地英俊君から八日間、また、二見甚郷君から病気のため六十六日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
   ――――・――――
#5
○森元治郎君 この際、私は、海外派兵についての松平国連大使の発言に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#6
○前田佳都男君 私は、ただいまの森元治郎君の動議に賛成をいたします。
#7
○議長(松野鶴平君) 森君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって、これより発言を許します。森元治郎君。
  〔森元治郎君登壇、拍手〕
#9
○森元治郎君 私は、日本社会党を代表して、松平国連大使の海外派兵の発言に端を発した諸問題について、政府の所信をただしたいと存じます。
 松平発言は偶然に起こったものではありません。これは、日本政府の対国連外交の一貫した方針の欠除と努力の不足によるものでありまするとともに、出先大使の感覚のズレ、また、民間人の国連大使起用のうわさに対する外務官僚の反発、出先、中央の意思疎通のないこと、加えて、過日、外務委員会において私の質問に対し、 コンゴーは何しろ遠い所なので、と答えられた小坂外務大臣の不見識と相まって、池田内閣の性格を暴露したものであります。
 そこで、まず第一に総理にお伺いしたいのは、国家に奉仕する者の綱紀の粛正についてであります。松平大使は、国連軍に対して日本も派兵することは、国連協力の根本をなすものだと言いました。そして、一部の者からかっさいを浴びて大へん気をよくしたらしいのでありますが、たちまち冷たい国民の感情の反撃に驚きまして、問題の記者会見の発言を撤回すると声明して、本日、早々と任地へ去っていくようであります。小坂外相は、厳重に戒告したと答弁されておりまするが、これで一切解決したのではありません。ここで私が心配するのは、国家に奉仕する役職にある者は、たとい、いかに苦しいことがあろうとも、不満があろうとも、その任にある間は、組織、規律を通じて自分の意見を述べるべきものであって、決して、外部に訴え、あるいは外の力を借りて自分の意見を通すということは、絶対に慎しまなければならないことであります。皆さん御存じのように、昔、関東軍というものがありました。中央の方針を守らないで、勝手に批判を事として、中央はまた、幹部連中は自分の保身のこともありましょう、いろいろな関係から、これを押えることをしないで、おだてたり利用したり、いいかげんにあしらっているうちに、とうとう戦争を引き出してしまったことは御存じの通りであります。これを思うとき、国家の公務に携わる者の綱紀を正しておかないと、外交上の大問題を起こすおそれがあると思いますが、総理はいかに善処されるかをお尋ねしたいと思います。
 第二点は、政府の国連というものに対する考え方、日本の国連協力のあり方及びその強化策についてであります。国連とうもいのは、政治、経済、軍事、社会、文化などの総合的向上発展によって、人類の安寧秩序、そして、幸福を達成しようという機関であります。にもかかわらず、国連をただ国際の平和と安全の維持をはかる安全保障の機関と期待し、事あれば、他国とともに命をかけ、血を流す姿勢をとらなければ国連協力ではないと思うのは、国連をほんとうに理解していないものだと思うが、この点、政府はどう考えられるか。国連を絶対の権威あらしめるようお互いが努力することは当然であります。しかしながら、今の国連憲章では、各加盟国の主権は平等と規定されております。従って、加盟国を拘束するような行動なり、協定を結ぶような場合には、必ずその国の憲法上の手続によってこれが批准されなければならないと明記してあります。国連への協力は、国の大小強弱に応じて、力を提供できるものは力を、金のあるものは金を、頭のあるものは知恵を出せばよろしいのであります。海外に兵力を供出しなければ加盟国の義務を怠っていると思うのは、大国のみえ以外の何ものでもありません。松平大使は、肩身が狭いとか言ったようでありまするが、日本はこれでも、吉田・アチソン交換公文によって、国連に加盟する以前から、基地や便宜を供与して国連協力をさせられているのであります。足りないのは、むしろ、国連への分担金であったり、頭の使いようにあるようであります。今回のコンゴーの事件にしても、できた事態にオブザーバーの派遣などを騒ぐ前に、コンゴーの民族主義が実際はまだ消化されておらない、固まっておらないうちに、単に形式的な近代国家のからを与えて今日の騒ぎをもたらしたのでありますから、もし、日本政府なり国連代表がしっかりしておるならば、こういう情勢をしっかり認識しておるならば、国連において堂々と、今のカサブブ政権の早急なる承認というような手を打つ前に、情勢を判断して慎重なる態度をとることができたと思うのであります。われわれはほんとうの見識を示す絶好のチャンスだったと思うのでありまするが、外務大臣はどうお考えになるか。
 また、米ソの谷間にあって、小さい国、弱い国、そして新興独立国ぐらい、国の安全と繁栄を国連に期待しているものはありません。世界の平和は、この戦争をおそれ平和を願う小さい国々の必死の願いや良識によって、国連の面目は保たれていると言っても過言ではありません。力の抗争によって国連にしばしば厄介をかけているのは、皮肉にも、国際の平和の第一次の責任を持っている安全保障理事会の常任理事国が多いのであります。これを押えているのは小さい国々の道義力の結集であります。日本は何ら卑下する必要はありません。昨年の国連総会においては、八十九九国の賛成、反対なし、棄権はアメリカ、イギリス、フランス、ベルギー、ポルトガル、これによって植民地宣言が可決されましたが、わが外交は、この間において大へんもたもたしまして、共同提案国にはならないが、宣言には賛成ということで、一方に英米の顔を立て、一方にアジア・アフリカ諸国のごきげんをうかがうというような、東西両陣営を足して二で割る方式をやっているような醜態であります。池田内閣も、やはり国連中心、自由主義陣営との提携、アジアの一員、これが外交の三つの原則になっているようでありまするが、国連中心主義とは一体どんなものか。この三つをいかに調整するのか。われわれの見るところでは、どうも自由主義陣営第一主義のようでありまするが、政府のお考えを伺いたいと思います。
 レバノン事件の際、日本が派兵を断わったため、出先大使は恥ずかしい思いをしたと言っておりまするが、これは日本が平和憲法の看板をうしろの方にしまい込んで、表に自衛隊を軍隊然と成立さしているから、外国からこういう誘いがかかるのであります。大使は、なぜあの際、堂々と日本憲法の制約を説いて、誤解の一掃に努めるとともに、また政府は、代表部にあらかじめ訓令して、予測される事態に迅速明確なる措置をとらなかったのか、この間の事情を一つ外務大臣から伺います。
 われわれは国連協力について、なかんずく、アジア・アフリカ諸国が、国連を通じて、ひものつかない後進国開発援助に期待している現状に目を開いて、大いに力を貸してやったり、国際通貨基金あるいは国際復興開発銀行の事業への協力態勢を強化すべきものであろうと思います。経済の安定は、平和に貢献するところは軍事力の比ではありません。また、これは国連の直接の機関ではありませんが、国連加盟国の大多数が加わっております今問題のILO条約の批准のごときも、一つの国連協力につながっていると思うが、外務大臣のお考えを伺いたい。
 次に、国連の強化でありまするが、政府の意図するところがよくわかりません。機構の改革をやろうとするのか、あるいは成案でもあるのか、民間から国連大使に大物を起用して陣容を強化すればそれで十分であるのか、この点を伺いたいと思います。
 第三点は、憲法と海外派兵との関係についてであります。政府は、憲法上自衛のため以外には兵を用いることはできないと言っている反面、警察行動をとる国連軍とか国際警察軍に兵を出すときには憲法違反にならないという点が問題であります。一体この二つの表現をどういう意味で使っているのか。国連には、すでに国連警察軍というものがあるのかどうか。外務大臣から明らかにしてもらいたい。というのは、国民には、国連の、しかも警察隊だから、加盟国はいやおうなくその持てる兵力を出さなければならないのではないか、いや、出すべきだと早合点をして、だから憲法も改正されなければならないのではないかという思い違いをさせるおそれがあるからであります。米ソの対立もなくなって、軍縮も大いに進んで、国連に常設の警察隊のようなものができるという情勢であるならば別でありまするが、現在のところ、たとい平和的任務、警察的任務であっても、自衛隊が海外で行動するためには、自衛隊法を改正しなければできないと思いまするが、政府は自衛隊法を改正する意図があるかどうかを伺います。私は、不確実未来を前提に、しかも憲法の拡大解釈によって生まれ、成長していく自衛隊の、いかなる海外派兵の可能性を云々する法律解釈の遊戯も、やめるべきであろうと思います。また私は、政府が、純粋の警察の目的というやわらかい響きを利用して、実力による平和維持の妥当性の宣伝は絶対にやめるべきであろうと思います。わが参議院は、かつて海外派兵禁止の決議を行なっております。政府は、ここにあらためて、一切の海外派兵はしない、また、まぎらわしい行動に出ないことを、本院にあらためて誓うべきであると思いまするが、総理大臣の所見を伺いたい。
 なお、松平大使発言に関連して、大平官房長官は、自衛隊の海外派遣も、世論が熟してくれば政府の見解を変えてもよいと言っております。これは裏を返せば、当面の政府方針としては国連軍への自衛隊派遣はしないが、将来は別であるということで、きわめて重大な発言であります。政府は、憲法改正の世論の喚起に努めるつもりか、あるいはその自然の醸成を待っているのか、この点、総理大臣からはっきり御意見を伺いたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。先般の松平大使の言動は、まことに遺憾でございます。本人も撤回いたしております。思うに、これは彼の個人的意見であり、また、多年国連におりました関係上、非常に狭い、エゴイスチックな考え方であったと思います。従いまして、私はこれに戒告を与えまして撤回させた次第でございます。
 次に、国連につきましてのお考えは、大体私も同感でございます。国連は、国連が真に有効な平和維持機構として育成発展するようにわれわれは努めなければなりません。ただ問題は、国連が単に国際間の紛争を解決するだけの機関ではないのでございます。社会的にも経済的にも、世界各国が、おのおの、何と申しますか、その堵に安んじて発展していくというふうなことも、国連の重大な仕事であると考えておるのであります。
 次に、自衛隊の海外派兵でございまするが、私は、憲法第九条に示しておりまするごとく、外国においての国家対国家の紛争を解決するためにわが国の自衛隊が出るということは、絶対に許し得られません。ただ官房長官が、将来は世論の動向によってというのは、これが憲法第九条に違反せずに、ほんとうに世界の治安維持機構として警察団体が設けられるというふうな場合におきましては、憲法第九条に違反しない範囲において警察関係に参加するということは考えられるのじゃないか、こういうことでございます。将来のことでございます。ただいまは、お話にあります通り、自衛隊法によりまして海外派兵はできませんし、わが内閣におきましても、厳に海外派兵はしないということを、ここで断言いたします。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(小坂善太郎君) コンゴーの問題に対して私が不見識であるというお話がございましたが、実はお言葉に引かれました、コンゴーは遠いということ云々は、私は、遠いコンゴーにおいて時々刻々に変化するあの情勢に一喜一憂するよりも、平和をいかにしてコンゴーにもたらすものか、いかにしてコンゴーの住民に豊かな平和な安定した状態を作り出すか、ということについての一つのプリンシプルをわれわれは持って、そのプリンシプルのもとにこの問題を考えるのがよかろうということを申し上げたのは、森議員も御承知の通りだと思います。
 次に、国連の警察軍の定義についてでございますが、国連憲章に定められた意味の国連軍、つまり安保理事会の決定によって侵略を排除するために行なう国連の集団措置としての四十二条に規定されておりまするところのものは、兵力の提供に関する安保理事会と加盟国との間の特別協定が締結されていませんので、いまだかつて編成されたことはないのであります。しかし、国連軍という言葉が、憲章にある国連軍という言葉ではなくて、朝鮮事変の際の国連軍あるいはスエズの国連緊急軍、あるいはコンゴーの国連軍は、いずれも憲章の規定に従って安保理事会または総会の決議によって設置されたものもございまして、このような国連軍を作るということは憲章の範囲内で可能である、こういうことでございます。一口に国連軍と申しましても、その場合々々によって、今までいろいろな範疇に分けられるものがあると、こういうことだと思います。憲章四十二条によるところの国連軍は、いまだかつてできておらない、こういうことに私は定義をしてよろしいと思います。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
#12
○森元治郎君 再質問いたしたいと存じます。
#13
○議長(松野鶴平君) 森元治郎君。
  〔森元治郎君登壇、拍手〕
#14
○森元治郎君 ただいまの総理、外務大臣の御答弁に関連して、二、三点伺います。
 第一点は、松平大使のあの発言というものが、彼のエゴイスチックな見解から出ているような御答弁でありましたが、エゴイスチックというものは、どういう響き、どういうむずかしいひどい意味があるかということは、帝大を出られた池田さんもおわかりになることと思う。これはやはり外国ならば当然名誉棄損であり、罷免に値する表現でありますが、一体、松平大使を罷免するかどうか。また、この際こういうエゴイスチックな者を国連にやって仕事ができると思うかどうか。よろしく罷免すべきだと思うが、これに対する総理大臣の所見を伺います。
 次に、憲法に違反せずして治安の維持のために設けられた警察軍には協力するというような何か御答弁がありましたが、一体、違反しない治安のための部隊というものはどういうものか、現在あるのかどうか。
 第三点は、外務大臣に対してでありまするが、国連軍というものは、先ほど、四十二条によるむずかしい意味の、ほんとうの意味の国連軍はできていない、あるのは俗称、その場合その場合の俗称であるということでありまするが、どうか。外国語では割合にはっきりいたしまするが、日本の漢字というものは非常に誤った印象を与えるので、いわゆる国連軍とか、はっきりその場その場のただし書きをつけていただけば、われわれ国民は迷惑をこうむらないで、もっと明確に話が進むと思いますが、いかがですか。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(池田勇人君) 松平大使は自分の考えが間違っておったというので、自発的に撤回いたしました。ただいま私は撤回させたと申したかもわかりませんが、それは誤りで川ありました。自分から撤回したのであります。それで、松平大使を罷免するかどうかということにつきましては、これは外務大臣の所管でございますが、私といたしましては罷免の要なしと考えております。
 次に、自衛隊が出て行くような場面が現在あるかということでございますが、今は私はそういうのはないと思います。従いまして、法律の規定によりまして、現在はそういうことは考えていないとお答えしたのであります、(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(小坂善太郎君) 私に対する御質問は、国連軍といってもまぎらわしいから、いわゆるとか、どうとかつけろという御意見であったようで、御質問はなかったように思いますが、その国連軍というのは、さっき申し上げたように、憲章四十二条によるところのものはできていない。しかし、緊急総会あるいは安保理事会の決定によって、その場でいろいろとその目的に従って国連軍というものは現に行動しているわけであります。しかし、将来の問題としていろいろな場合が考えられると思います。たとえば国境の画定の問題、あるいは選挙を国連の監視下でやるその場合に監視の者を派遣する、こういうようないろいろな場合があろうと考えるのでありまして、一がいに国連軍といっても一つの範疇のものだけでない、こういうふうに御理解願ってもよろしいかと思います。(拍手)
   ――――・――――
#17
○永末英一君 この際、私は、松平国連大使の発言問題に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#18
○前田佳都男君 私は、ただいまの永末英一君の動議に賛成いたします。
#19
○議長(松野鶴平君) 永末君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。永末英一君。
  〔永末英一君登壇、拍手〕
#21
○永末英一君 私は民主社会党を代表いたしまして、松平国連大使の発言に関して政府の所信をただしたいと存じます。
 去る二十一日、外交問題懇談会における松平大使の発言に端を発しました事件は、はしなくも、池田内閣がその外交の一枚看板として掲げて参りました国連中心外交の強化が、全く見せかけの張り子のトラであるということを、国民の前にみごとに示したものでございます。国連は確かに機関としては一つであります。しかも、過去十数年の経験から見まして、世界平和を守るための全世界的な唯一の国際機関であることは、その成果は別といたしましても、だれしも否定し得ないところであります。しかし国連の内部は種々雑多である。すべての加盟国は、それぞれの国家利益を追求しながら、いわば、くんずほぐれつ、世界平和維持の道がどこにあるかということを模索をしているのが現状であると存じます。そうであればこそ、各国はそれぞれ国連において何をするかということを、それぞれの国の重要な外交方針として掲げているのであります。ところが、わが国の場合、池田内閣は、国連中心とさえ唱えておりますと、それだけで、もうりっぱな何か外交方針ができたというように考えているのではないかと思われるふしがございます。国民が知りたいのは中身であって、その「がわ」ではございません。「がわ」ばかりの外交政策では、国民は、ありがたや、ありがたやなどとは言っていられない。一体何が出てくるか、これがわからないところに国民の不安がある。今回の松平事件は、まさしくこの国民の不安が事実であったということを示したものと言っても過言ではないと存じます。松平発言によってつけられた火に対して、周章ろうばいをいたしました政府は、火消しに大わらわであります。われわれは、しかしながら、火消しより、むしろこの火によってあけられた穴から見透かされている内容からっぽの政府の方針を埋めることが、より大切であり緊要であると考えまして、次の諸点をただす次第であります。
 平和憲法によるサク組みを持っておりますわが国にとっては、国連活動に寄与するあり方には明確な限界が考えておられなければなりません。ところがこの点について、松平発言の言うところは全く勝手気ままでございまして、政府のいうところも、またこの問題については、個別的、具体的でなければわからないという逃げ口上一点張りであります。逃げるばかりでは一体どこへ行くのかということはわかりません。わからないことが不安の基となります。われわれは、わが国の平和を世界平和の中で維持するためには、内に外国の侵略を防御する体制を整えると同時に、外には各国の軍縮の徹底をはかるとともに、国連において常設の警察軍を作り上げることが必要であると考えております。ところが、政府は、口では国連の普遍的集団安全保障体制を作り上げるようにするんだと言いながら、その実はアメリカとの間の共同防衛体制の強化に狂奔するだけであります。この点については、全く、一体どこへ行くのかということがはっきりいたしておりません、この常設の国連警察軍を作り上げるということが、一体、政府の国連の行動における重点となって働いてきたものかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
 さらに、将来この国連警察軍ができた場合、平和憲法を持つわが国が、これにどういう形で寄与できるか。その点についてどう考えているか。この点を憲法に照らして明らかにしていただきたい。
 また、現在作られている国連軍に対しては、何か、政府の答弁を聞いておりますと、現行法が許しさえすれば何らかの一つの参加をするとか、いや、変わった場合には参加ができるんだというように、参加することが政府の外交方針であるかのように受け取れるふしがございます。われわれは、そういうことだけが外交方針、つまり国連の行動に対する寄与協力であるとは考えません。はたしてそれが政府の真意であるかどうかを伺いたい。
 また、松平発言に対しましては、外相は、その発表の場所、方法が不適当、不用意であったので、同大使を戒告したというようなことを述べております。ところが、一体その内容についてはどうであったかということについては、語るところがございません。
 一体、内容が適当であるのかどうか、この点について政府の見解を明らかにせられたい。もし、内容についても不適当だと考えるのなら、そうした発言を起こさせたことが、政府の一体的な外交運営に欠陥があったことを国民の前に明らかにしたと言わなければならぬと思います。そういう政府と異なった考え方を持つ人物が国連大使として活動しておったということに対して、一体、外務大臣初め政府は、国民に対して責任を感じないのか、この点を明らかにしていただきたい。(拍手)松平大使は、二十一日の記者会見のときの談話については撤回したようでございますが、外交問題懇談会のときに語った内容については、ついに自説を翻すことなく、ニューヨークに帰任したようであります。こうした大使によって政府の国連外交が今後もうまくいくと考えているのか、政府の考えを伺いたい。
 政府は、さきに、国連外交を強化するために民間大使を起用するというような方針をきめたと伝えられておりますが、民間大使を起用しさえすれば国連外交が強化できるとでも考えているのか。私どもは、むしろ問題は、国連外交に対する政府の指導にあると考えております。国連の議事はまことに転変きわまりないものである。これに対処していくためには、むしろ国連代表部に大幅の自由裁量を認めていくというようにしなければならないと考えているのでありますが、政府は一体、具体的にはどのような措置をとってきたか、あるいはまた、とろうとしているかを、明らかにせられたい。
 また、国連に協力すると口では申しましても、一体その内容については、はなはだどうも不分明であります。私はこの際、具体的にコンゴーの問題を取り上げて政府の考え方を明らかにしたいと存じます。
 昨年七月以来のコンゴーの動乱は、世界の一局部に起こる平和の撹乱が世界全体の平和に強い脅威となることをわれわれに教えました。それだからこそ、世界各国はこの問題の解決のために懸命になっております。ところが、今わが国が安全保障理事会のメンバーではないとか、またコンゴー派兵国によって構成されておりますハマーショルド事務総長の私的助言機関である諮問委員会の一員ではないとかいうようなことを理由にいたしまして、コンゴー問題の解決には、外務大臣の言葉を借りますと、プリンシプルを探すだけであって、あとの具体的手段については知らぬ顔の半兵衛をきめ込もうとしているとするならば、とんでもない怠慢であると言わなくてはならぬと思います。一体、政府は、この具体的な点についてどのように国連代表部をして活動せしめてきたか、国連代表部が活動してきたかということについて、この際、国民の前に明らかにしていただきたい。また、一歩を進めまして、政府は国連代表部を今後どのような国連の場で活動せしめようとしているのか、方針があれば伺いたい。コンゴー問題は、外務大臣の言うような対岸の火事ではございません。この問題にわが国がどう取り組んでいくかということは、また直ちに極東アジアにございますラオス事件にもはね返ってくる。極東の安全のための紛争に巻き込まれるかもしれないわが国にとっては重大な問題でございます。このような観点から、政府は、コンゴー問題の処理について考え方を明らかにすべきであるとわれわれは考えます。
 二十日夜半、安保理事会は、セイロン・リベリヤ・アラブ連合三カ国決議案を採択いたしました。われわれは、国連が問題解決のために一歩を進めたものだという工合に考えまして、これに賛意を表しますが、政府はこの決議の内容に賛意を表するかどうか、明らかにしてほしい。しかし、この決議は、もし内政不干渉の原則というようなものに立つ限り、その実行にあたっては、いろいろな困難な事態が生まれ出ることが当然予想せられます。従って、これに賛意を表するとすれば、これを実行するについて、政府はコンゴー問題解決のために打つべき手を私は考えなくてはならぬと考える。この点について、はっきりと御解明をいただきたい。また、コンゴーに対しましては、国連から派兵以外にいろいろな形の援助が与えられております。政府はこの際、コンゴーに対する国連行動について、もし協力の用意があるというのならば、その内容を国民の前に明らかにせられたい。
 質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(池田勇人君) お答えいたします。
 国連警察軍ができた場合に日本がこれに参加するか、こういう御質問でございまするが、この国連警察軍というのは、その目的、機能、組織、いろいろございますので、私は、そういう問題につきましてはお答えできないと思います。ただ、国連が非常に進歩発達いたしまして、将来理想的な形でほんとうに国際社会の治安維持ということになれば、ただいまの憲法第九条に違反するものではない。しかし、出すか出さないかということは自衛隊法によってきまるものでございます。従いまして、御質問の内容が十分わかりませんので、はっきりしたお答えはできないと思います。
 また、松平大使に対しまする監督でございまするが、これは、彼は自分の考え方が狭かったというので撤回し、そうして政府の訓令に従うことは当然でございます。いましばらく私は罷免せずにおりたいと考えております。
 また、民間大使の問題につきましては、ただいま選考中でございます。私は、各国の例を見まして、できるだけ知性のある、そうして外交交渉のうまい、りっぱな民間人を採用しようと、今努力いたしておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(小坂善太郎君) 松平大使の発言の問題に関連いたしまして、すでに総理からお答えがありましたので尽きておりますけれども、若干つけ加えさしていただきますと、彼は個人の意見を公務以外の時間で述べたわけであります。すなわち、これは請暇帰省中に申したことでございます。そこで、この考えは別といたしまして、この場所並びに表現、これが不適当であるということでありまして、私は強く戒告いたしたわけでございます。しかし、その内容についてどうなんだということでございまするので、申し上げますと、私はその内容というものの問題になる点を聞いてみましたところが、彼の申しますには、コンゴーに派兵すべきだというようなことは、言った覚えはございません。すなわち、オブザーバーというようなものを出す方法も考えられるという程度のことは言ったけれども、海外派兵なんていうことは決して申しておりません。それからさらに、レバノンの場合のことは言いましたが、コンゴーの場合に関連して、自分がつらいとか何とか言った覚えはございませんということでありました。これは速記をとっておるわけではございませんで、私ども新聞記事に出て問題になっているので問題にしておるので、従って、こういうことになるようなことをすることは不適当である、こういうことで戒告したわけであります。ところが、松平君自身におかれまして、自発的にこの発言を撤回されたわけでございます。従って、国連の大使としまして三年四カ月の長い間にわたって日本に帰ってきたことのないこの人が帰ってきた。いろいろな意見を聞き、また体験をして帰ったのでございますから、その意味では、総理の言われるように、もうしばらくその体験を生かすのが、かえってよかろう、かような気持でおるわけでございます。これはすなわち、また、国連の強化にも通ずることだと考えておるのであります。
 それから国連警察軍については、総理からお答えがありましたので、もうこれで略しますが、さらにコンゴー問題についてのプリンシプルでございます。私は先般来、この国連の事務総長を三人制にすべしという考え、その考え方に基づいて来ましたところのハマーショルド事務総長に対するところの不信任というものは、これはいかん、われわれはハマーショルド事務総長を支持するということを申しました。そこで、国連のワク内において、国連の各種の機関、緊急特別総会あるいは安保理事会によって与えられた権限内において指示していくこのハマーショルドの指揮下にある国連のワク内で、コンゴーの問題を解決する、この方針をいち早く打ち出して、各国にも通知をいたしておるわけであります。そこで、どうしたら一体いいかというと、結局東西冷戦というものをコンゴーに持ち込まない。この原則によってこの問題を解決する以外にない。国連以外の国が、自分のひもをつけた武器や資金や資材を持ち込むということは、これはコンゴー問題にとって一番いけないことだ。それをやめる。外国軍隊を撤去せしめる。そして国連の経済援助をコンゴーに対してやる、これも国連を通してやる。日本は国の経済力の許す範囲内で、この協力をすでにやっておるのであります。しておらない国もございます。しかし、日本はやっておるのであります。そういう立場でコンゴー問題というものを考えたいと考えておりますが、先般の三国の決議というものは、これはりっぱな決議でございまして、われわれもこの決議の線に沿うて国連がこれを取り上げ、さらに足らない点を改善していくのがよかろう、こういう方針で申しておる次第でございます。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
   ――――・――――
#24
○大和与一君 この際、私は、日韓会談における財産請求権問題に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#25
○前田佳都男君 私はただいまの大和与一君の動議に賛成いたします。
#26
○議長(松野鶴平君) 大和君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。大和与一君。
  〔大和与一君登壇、拍手〕
#28
○大和与一君 私は日本社会党を代表いたしまして、当面、国民の最大関心事の一つである日韓会談の経過、内容、将来の具体的対策について御質問申し上げ、あわせて政府の所信をたださんとするものであります。
 本論に入る前に、本日の外務大臣の顔色は、ここから拝見いたしますと、よくないようであります。憲法違反の大失言をした松平大使のことや、ラオスやコンゴーなど、困難な懸案をお持ちでありますが、昨日の新聞を拝見しますと、外務大臣は、私のようなしろうとが法律解釈をするのは「がら」ではないとおっしゃっておられる。私は、はなはだ失礼な言い分で、まことに恐縮千万ではございますが、外交問題についても、しろうとであると思うのであります。しろうとにもよいところもあるが、最近外務省の中で、なぜか大臣に対する評判が悪いのであります。一体これは何が原因なのか、日韓問題なのか、省内行政なのか、その他なのか、私も心配しているのでありますが、総理大臣が御存じであればお答えいただきたいと思います。
 昨年九月、小坂大臣は韓国に参られましたが、韓国の国民は、謝罪使節として迎えたのに、いんぎんな態度はなかったではないかと、不満の意を表明いたしておるのであります。当時は、自民党の与党の中においても、小坂独走は横暴であると、こういう外相の渡韓について反対の意見のあったことを、私も承知いたしております。韓国政府とは、一体どんな打ち合わせのもとに、謝罪はどんなことをなさったのか、外務大臣のお答えを願います。
 また与党内では、最近、日韓問題はそう簡単にいかない。だから、在外公館設置くらいをやって、あとはぼつぼつ話をしていけばよいではないか。貿易の方はもうかるのだから、社会党も賛成しなさい。そういうような放言が、これまたもっぱらであります。結論はもう山が見えておって、こんなことになるのか。与党の総裁としての池田首相の御答弁を求める次第であります。
 さて、本論に入りますが、第一に、なぜ日韓会談の妥結をこのように急がれるのでありますか。十年もかかって話をしてきたが、まとまらなかったこの問題を、早急に解決しなければならぬ情勢の変化とは、一体何でありますか。私は、結論を先に申し上げますと、南北鮮の統一は、思いのほか国民感情を溶け込んでいて、数年ならずして統一ができる。それが困るのはアメリカだ。だからアメリカは早く日本に日韓会談をやってくれと矢の催促でありましょう。日本があえて火中の栗を拾うとは、一体何事か。根本的にその考え方を改めて、日韓会談を即時中止することが、日本国民の喝采を博するゆえんだろうと思いますが、総理大臣はいかようにお考えになっているか。
 現在の韓国の張勉内閣は不定安であると私は思うのであります。今年一月二十八日、韓国国務院の国民世論調査によりますと、全国から抽出した三千人に対して、三十七項目にわたって質問をいたしております。回答者二千三百九十三人の中で、対日国交回復反対が一七・五%、「時期が早過ぎる」が四・六%もあります。生活状態については、「革命前より悪い」が一四・五%、「同じ」が七三・一%で、国民生活も安定しておりません。電力にいたしましても、やっと十九万キロワットであって、朝鮮共和国の十分の一程度であります。終戦直後には、京城の町に電灯がつかなくて、八里離れている仁川という港に駆逐艦を三隻横づけにして、発動機を回わしっぱなしにして、やっと京城市の電灯がついておったのであります。在日朝鮮人商工連合会から出した「南朝鮮経済の破局と人民生活の零落」という資料によりますと、李政権のときの公式発表によれば、失業、半失業者六百六十万人、お米の豊庫といわれる南鮮に、糧食のない、絶量農民が三百万人もいると聞かされては、私は生き地獄ではないかと同情を禁じ得ないのであります。昨年の秋に韓国から帰った伊関アジア局長は、張勉内閣は、現状ではまだもろい、経済発展はその緒についていない。多かれ少なかれ李政権につながっている実業家は、汚職に対する国民からの追及が激しくて何もやっていないという、こういう意味のことを言われた。朝鮮共和国からの統一への働きかけは、自信満々として、経済交流を主眼にした連邦政府の具体的提案までしております。これに対して、国民の中だけでなく、保守党の中からも、この提言に耳を傾けるべきである、資源の豊富な北と手を握らなくては朝鮮民族の真の幸福はないとの声が強く起こっております。僚原の火のように高まってきたアジア、アフリカの自主独立ののろしは時代の大きな流れであって、このとき、この会談を、早急に無理じいに結論を出そうとすることは、全くの間違いであります。池田首相は昨年十二月十五日、兪韓国首席代表と会われて、日韓会談をこの際ぜひまとめたいという気持は同感であるが、両国間には過去長年にわたる複雑なこじれた問題があるので、急いでも無理であろうから、時間をかけてしっくり話し合いたいとおっしゃっておられます。それが真実であるならば、この際、大悟一番されまして、日朝両民族の永遠の平和の礎石を築くために、日韓会談は一応白紙に返して、南北朝鮮の統一への激しい胎動を正しく見ながら、慎重に善処するお考えはないか。明快な御答弁をいただきたいのであります。(拍手)
 第二に、財産請求権についてお尋ねいたします。
 一つには、政府は、衆議院外務委員会で細迫議員の質問に答えて、日本の対韓財産請求権の放棄は三十八度線以南の部分だと答えておられますが、朝鮮人民共和国には請求権があると考えているのか、これが第一点。
 二つには、放棄したのは南の部分だけである、韓国からの請求は全朝鮮だと認めておるのは全く矛盾であるが、法理論としての所見をお聞きしたい。
 三つには、日本では対韓財産請求権を放棄したとしているが、アメリカ占領軍が南朝鮮で日本の私有財産まで没収したのは、へーグ陸戦法規第四十六条の「私有財産ハ、之ヲ没収スルコトヲ得ス。」に明らかに違反しておるが、法律としての回答をしてほしい。
 四つには、かりに米占領軍が旧敵国人の私有財産を処分できても、処分された財産の所有者は、処分の結果生じた収益については請求する権利があると思うが一体どうか。
 五つには、放棄したという対韓請求権はどれくらいに一体見積もっておったのか。
 六つには、韓国からどれくらいの財産権を請求してきているか。
 以上六点の質問には小坂外務大臣にお答えをいただいた上で、それでは今日、朝鮮人民共和国から財産を請求してきたら一体どうするのか。これまた明快な、国民のだれもが納得する御答弁を総理並びに外相にお願いしたいのであります。
 第三には、日本からの経済使節団の韓国行きが羽田出発三十分前に中止になりました。前日には韓国政府の大臣が歓迎の言葉を発表したのに、これの真相は一体どうなのでありますか。韓国の国民は、日本の独占資本の進出をおそれることも大きな要素ではありますが、それよりも、南北鮮統一への悲願は、おそくも数年を出ずして達成されるであろう、それを一番おそれているのはアメリカであり、そのアメリカに追随しているのが日本であるならば、要らぬおせっかいはやめてもらおうじゃないか、朝鮮は朝鮮人の朝鮮であるという国民感情がほうはいとして起こりつつあると思うのでありますが、首相、外相の明快な御答弁をいただきたいのであります。
 第四には、朝鮮民主主義人民共和国政府に対してどのようにお考えになっておられるのでありますか。鶏三羽に三千万ドルの賠償をしたと、今でも国民が満々たる不信の念を持っているベトナムヘの賠償、その後ベトナム国の民族の統一に何一つもプラスにはなっていない実情ではありませんか。その反省は政府になければならぬし、朝鮮は、首相のきまり文句じゃありませんが、一衣帯水のかなたであります。日本とも歴史的に同種同文同俗であって、ベトナムとの比ではありません。一衣帯水は韓国だけではありません。人民共和国も同じであります。次官会議で勝手に北朝鮮とは貿易をしないときめたのだけれども、政府もその内容的には取り扱いとしては弾力はあるのだと認めておられます。まことにいいかげんな取りきめによって、貿易は香港経由で一部なされております。去る一月十八日、外務大臣は、わが党の成田政審会長と会われた際に、直接貿易がまだできぬということは非常に不利益だと、日本の不利益を十分に御自身でお認めになっておられます。この際、次官会議の申し合わせと今日の情勢も大いに変わっているわけでありますから、次官会議の決定をやめて、閣議で北朝鮮との貿易拡大の確認をやる御意思がないか。お答えを願います。あるいは一歩譲って、文化交流に、たとえば崔承喜舞踊団を呼ぶことや、あるいはメーデーに労働者代表が参加することや、経済交流のために経済使節団をこちらに呼ぶとか、かねて連絡要請があったと思うのでありますが、今年は一つ、首相の言う積み重ね方式、日中問題についてはそういうお考えもあるように承っておりますが、この朝鮮人民共和国との交流についても一つ一つ今年は実行する、したいという考えがあるかどうか、お答にいただきたいと思うのであります。
 共和国政府が、電力、鉄、金等に豊富な資源を持っておりますが、これに反して韓国は米だけと言っても決して過言でありません。北に工業が勃興し、水豊の発電、茂山の鉄、興南の窒素肥料、黄海の鉄など見るべきものがあります。そうして社会主義体制の、大金持のいない国であります。この資源と工業力のもとでは、国民生活は南と比べて一年ごとに発展をし、充実をすることは、火を見るよりも明らかであります。あなたの方の党の岩本信行氏の、率直な、驚いた報告も含めて、北朝鮮の国民生活の安定、政権の安定において大きな開きがあることを、常識的にも認めざるを得ないと思うのですが、首相、外相の御所見を伺いたいと思います。
 これを認めた上に立てば、日韓会談は急がずあせらず、当面の問題である李ライン、竹島、漁業等々の問題と真剣に取っ組んで話し合いをすることが、韓国民のためであり、日本のためであり、早急に解決をすることは、朝鮮民族の悲願である南北鮮の自主的な統一を妨害するものと断定せざるを得ないのでありますが、首相の明快な御答弁を伺いたいと思うのであります。
 第五に、新聞の報ずるところによりますと、日本の約四千六百八十九万ドルの貿易じり未決済、いわゆる焦げつきを当分の間たな上げすることになったと書いてありますが、ほんとうでありますか。どうしてこの債権を取り立てようと考えているのか。具体的な方法を外相から伺いたいと思うのであります。
 第六に、一九五二年二月六日の日韓会談において日本側が請求した金額と内容を詳細に御報告願います。それを請求したとたんに決裂をした、そういう因縁つきの会談であったからであります。第七に、一九五八年に行なわれた日韓会談において、韓国側は総額八千億円・米ドルにして二十二億二千二百万ドルを日本側に要求したようでありますが、ほんとうでありますか。違っておれば、その正確な金額及びその内容を御答弁いただきたいと思うのであります。その内容として八項目の条件があったようであります。たとえば太平洋戦争中の韓国人徴用労務者未払金及び弔慰金や旧朝鮮総督府鉄道局共済組合及び同在日財産返済についてなどのようでありますが、お示しいただきたいと思うのであります。
 第八に、首相は六月ごろアメリカの新大統領ケネディ氏に会いに行くようであります。これに関連して、
 一つには、それまでに日韓問題を調印をしておみやげとしなければならないのか。たとえば前例は、前岸内閣がアイク訪日と安保条約の強行採決を合わせたように、偶然ではないのでありますから、そういう考えを持っているのか承りたい。
 二つには、アメリカは、いつ終わるという見通しもないのに、毎年二億ドルもの経済援助を韓国に続けるのは、もうとてもやっちゃおられない、たえがたいと考えているようでありますが、これに伴って、ドル防衛措置とからんで、その肩がわりを日本にさせたいという内容を私は日韓会談は明確に持っていると思うのでありますが、ケネディ大統領と会って、この問題についてどういう態度であなたは話し合いをしようとしているのか、御所見を承りたいと思います。
 三つには、アメリカは三十八度線の冷戦の壁を守り抜くために、初めは日韓経済の取りきめをやってもらって、やがてはもう物理的に軍事同盟的性格に切りかえていく野望を持っていると、私は断定したいのであります。日本政府は、朝鮮の人民や国民から恨まれて、アメリカに何の義理立てをする必要があるのか。日本の自主独立外交とは一体いかなるものなのか。ケネディに会う首相の日本国総理大臣としての信念と日本の自主独立の外交の大原則について、私は明快な御答弁をいただきたいのであります。
#29
○議長(松野鶴平君) 大和君、時間が超過しました。
#30
○大和与一君(続) もう少しです。
 以上いくつかの重要な点について質問をいたしましたが、結論的にまとめれば、日本政府は、アメリカの対日援助費は償いとして返済する。そのかわりに、自由アジアにおいて日本がもっと積極的に歴史的役割を果たせるようにアメリカの支援体制を確立してほしいということであり、アメリカ政府は日本の債務支払いを援助と受け取ることはできないという立場をとり、極東における反共軍事体制に対し、日本がもっと積極的に、しかも恒常的に経済的負担を受け持つことをあらためて要求するものと思います。この場合に、日本政府の基本的な考え方は、平和の促進に役立つように動くか、戦争の道に引き入れようという方向に動くかで、日本民族の運命はきまるとも言えます。そこでお尋ねしたいのは、今年の最重要課題の一つである中国問題に対してどう取り組むかが、はかりを平和と戦争とのいずれの側に傾かせるかの「かぎ」であると思うのであります。中国との国交回復をするのが第一、中国の国連加盟に全力を尽すのが第二、貿易の窓口を思い切って拡大するのが第三の要諦ですが、首相の明快な御回答をいただきたいのであります。
 最後に、首相は大へん庭石に興味と熱意を持っておられるとのことであります。朝鮮人民共和国にある金剛山は世界の名勝であって、たくさんの岩があります。関東軍が命がけで追及探索をして捕え得なかった長白山の虎、金日成将軍が首相であります。昨年独立十五周年記念日に、五十万の人出の中で、金首相に対する警戒は目をみはるものがあろうと、私は注意深く見ていました。式典が終わって一台の自動車が参りましたが、運転手だけで、金首相は、ひらりと一人で乗って、群集の歓呼にこたえていました。人民からの絶対の信頼があると感ぜられました。白色テロの横行する日本の現状において、首相もボデーガードに囲まれて、われわれにすら護衛のつく始末ですが、この朝鮮人民共和国の金首相と頂上会談をして、庭石をもらったり、自主的な朝鮮の統一に大乗的な見地から虚心たんかいに胸襟を開いて語り合う度量と熱意があるか、お尋ねをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申し上げます。
 わが国と韓国との外交の正常化は、多年われわれが熱望しておったところであるのであります。しかるところ、昨年政変が起こりまして、張勉内閣は、わが国との国交正常化につきまして非常な熱意を持っておるとわれわれは伺ったのであります。従いまして、この機会に日韓関係の正常化をはかるため小坂外務大臣を行かせたのでございます。私は朝鮮の南北の統一を願うことは人後に落ちませんが、今の状態で日韓関係を置くよりも、やはり漁業権の問題、あるいは請求権の問題、在日韓国人の法的地位の問題等々、早急に解決することが、私は国民が願っておるところと考えまして、今後じみちにこの交渉を続けていくつもりでおるのであります。ただいまこれを中止するという考えはございません。
 なお、北鮮への賠償の問題は私は全然考えておりません。また北鮮との貿易につきましてはいろいろ考慮いたしておりまするが、たまたま日韓会談の交渉中でございますので、この点につきましては慎重に考慮しなければならぬ問題と思っております。
 私の訪米につきまして、日韓会談と関係があるか。――これは全然ございません。またアメリカが韓国への援助が苦しいから日本に肩がわりする、こういうことも私は聞いておりません。
 中共の問題につきましては、施政方針演説で申し上げた以外に進展しておりません。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(小坂善太郎君) 総理からお答えがありましたので、私からお答えすべき問題は、主として在韓日本人財産返還の問題かと思います。御承知のように、韓国にある旧日本人財産に対する請求権は、サンフランシスコ条約の第四条(b)項によって消滅いたしたものであります。しかし、この(b)項において在鮮米軍政府のとった日本財産に対する処理の効力を承認するというこの規定があるわけでありますが、韓国側においては、在鮮米軍司令官の出した軍令第三十三号によって、在朝鮮日本財産の所有権の移転がなされて、これがあとで韓国に引き渡されたものでございます。昭和三十二年末、日韓間に抑留者相互釈放及び第四次日韓会談開催に関する取りきめが成立いたしましたる際、サンフランシスコ平和条約第四条(b)項の処理の当事者である米国政府が、この項の解釈に対する覚書を示しました。その覚書の要旨は、在韓日本財産に対する請求権は、平和条約第四条(b)項によって消滅したけれども、この日本の請求権が消滅したという事実は、日韓間において、平和条約第四条(a)項に基づく請求権問題に関する特別取りきめをいたしまする際に、その交渉が行なわれまする際に、考慮に入れらるべきである、こういうことであります。すなわち、この覚書を日韓双方とも確認いたしたのでありますから、日本政府としては、今回の会談において、この解釈を基礎として請求権問題を処理していく方針であります。ヘーグの陸戦法規のお話がございましたが、これに関係いたしまして、結局サンフランシスコ平和条約第四条(b)項でこの処理を承認しておるのであります。こうした私有財産権はあくまで管理権が移るのであって、所有権は移るものでないという解釈は、へーグの陸戦法規によるところのものでありますけれども、そうしたことはすでにドイツに対しても行なわれておりますし、また他に平和条約第十四条並びに第十六条において、旧敵国並びに中立国におけるものまでも、さような規定がございまして、日本政府としてこれを承認しておりますので、この問題は平和条約とともに解決された問題である、こういうことを言わざるを得ないのであります。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
   ――――・――――
#33
○田畑金光君 この際、私は、沖繩基地長期保有についての米国防総省特別委員会報告に関する緊急質問の動議を提出いたします。
#34
○前田佳都男君 私はただいまの田畑金光君の動議に賛成をいたします。
#35
○議長(松野鶴平君) 田畑君の動議に御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よってこれより発言を許します。田畑金光君。
  〔田畑金光君登壇、拍手〕
#37
○田畑金光君 私は、民主社会党を代表し、去る十九日、ワシントンUPI報道による米国防総省特別委員会の沖繩長期保有に関する中間報告並びに沖繩施政権返還について、総理並びに外務大臣に若干の質問を行ないたいと思います。
 この報告書は、まだ全容は明らかでございません。しかし、これはケネディ大統領が一般教書に述べておりますように、米国の防衛戦略全体を再検討し、二月末までに中間的結論を出すように国防長官に訓令いたしておりまするが、当該報告を意味するものと考えます。新聞の伝うるところでは、二十日に報告書はマクナマラ国防長官に提出されまするが、ケネディ政権の基地再編計画が実施されるとしても、沖繩の長期保有は動かないことを指摘しております。この報道が沖繩現地住民に大きな期待はずれと失望を与えたことは言うまでもなく、また、われわれ国民にとりましてもはなはだ遺憾なことと言わなければなりません。かつてケネディ大統領はコンロン報告にも耳を傾け、そのブレーンであるボールズ国務次官も、同氏の論文において、沖繩人の立場に立って施策することを言明し、スパークマン上院議員はその報告書の中で、沖繩の日本復帰問題の重要性をあげていただけに、今回の中間報告の内容は各方面に深刻な波紋を投げかけております。政府は、近く公表されるであろう報告の内容が右のごときものであるとしますときに、どのようなこれに対処を考えておられるのであるか、伺いたいのでございます。仮定のことには答えられぬという問題回避は許されません。
 琉球立法院は二月一日、昨年秋行なわれました総選挙後、初の定例議会を開きまして、全住民の悲願である施政権返還要求決議案を満場一致で議決し、米国大統領その他に発送するとともに、池田総理に対し積極的な外交交渉を行なうよう要請してきております。琉球立法院は今日までしばしば施政権返還決議を行なってきましたが、今回は総選挙後初めての意思表示であり、しかもアメリカ新政権に対する初の意思表示であるということは、特別の意義を持つものと考えます。池田総理は、本決議案の趣旨を尊重し、アメリカに伝達するだけでなく、外交交渉を行なう意思があるかどうか、明確に承りたいと思います。
 次に、私は施政権返還問題を理解するため、対日平和条約と国連憲章との関係について若干政府の見解を承ります。すなわち平和条約第三条には、沖繩、小笠原諸島は、アメリカを唯一の施政権者とする信託統治制度に置くこととし、それまでの間、アメリカは施政権を行使する、こういうことになっておりますが、しかるに今日まで第三条の重要な部分は実行されないままに来ているわけでございます。これはなぜでございましょうか。その理由を承りたいと思います。
 信託統治制度については、国連憲章において信託統治制度のもとに置かれる地域について規定しておりまするが、一体、沖繩、小笠原の場合はいずれに該当しましょうか。従来、政府は憲章七十七条b項に該当すると説明しておりまするが、それでは日本は明確に領土権を放棄したことになります。しかし、第三条で日本に残存主権があることはアメリカも認めているところでございます。従って、平和条約第三条は憲章七十七条の精神に照らしまして適当でないと、こう私は考えますが、どうでございましょうか。このような無理があるにもかかわらず、沖繩を信託統治制度に置くことを予想したのは、沖繩の持つ戦略的価値から来ているものと考えます。第二次大戦にあたり、連合国は大西洋憲章やカイロ宣言において戦争目的を明示いたしまして、領土不拡大方針を明らかにとっております。そこで、特定の戦略的地域は保持したいが、領有することは許されない、このような目的と現実の調整から信託統治制度が生まれ、条約第三条になったと私は考えますが、どうでございましょうか。こういう立場から見ましても、基地保有とは当面切り離して施政権返還を求める十分な根拠があると考えまするが、政府の考え方を承ります。
 また憲章には信託統治制度の目的がうたわれておりまするが、沖繩の場合はこの目的、精神に沿わないと考えております。言うまでもなく信託統治の目的は、住民が自治または独立に向かって漸進的に発展することを促進することであります。歴史的に固有の領土であり、同一民族と文化を共通にする沖繩が、しかも国連加盟国は主権平等の原則に立っておりますが、日本の一部である沖繩が信託統治制度に置かれることは、歴史を逆もどりさせるものと言わなければなりません。この意味から見まして、条約第三条は憲章七十六条に違反するものと考えますが、政府の見解を承ります。
 また条約第三条が実行されないまま今日に及んでいることは、国際情勢の変化に基づきまして、事実上運営が困難に当面したからだと思います。憲章の予定する信託統治制度には、いわゆる戦略地区に指定された地域、安保理事会の監督を受けなければなりません。また一般的信託統治についても、信託統治理事会の監督のもとに、定期的視察を受けなければなりません。どの場合をとりましても、現実にはソ連の拒否権にあうか、またはその監査のもとに立たなければならなくなります。これはアメリカの好むことではないでございましょう。このように、戦後の微妙な国際情勢の変化が、条約第三条の主要な部分を空文化してきた最大の理由であると私は考えますが、政府の率直な見解を承りたいと思います。対日平和条約における最大の汚点は、私はこの条約第三条であろうと考えます。
 沖繩は第二次世界大戦に際しまして、十万余の人々を戦禍の犠牲に供しおります。終戦後は軍事基地としてあらゆる苦痛にさらされて来ております。日米新安保条約の発効以来、沖繩の戦略的価値は増大し、日本が沖繩に共同防衛の責任がないままに、アメリカは何らの制約を受けることなく、極東における最大の基地として保有し、強化しておるわけでございます。言うならば、沖繩は日本の苦痛の肩がわりをやらされておると言わなければならぬと思います。政府はこれらの点を考慮し、施設権返還に一そうの熱意を傾けるべきであると考えます。
 六月、池田総理は渡米すると伝えられておりまするが、施政権返還については、堂々とアメリカに交渉を進めるべきであると考えまするが、その意思があるかどうかを承りたいと思います。こうしてこそ真に日米友好関係は一そう緊密になるものと考えます。軍事関係によって政治的要素を犠牲にすることは両国のためではございません。また、このことが北方領土解決への大きな第一歩になると私は信じます。
 沖繩施政権問題とともに、私は沖繩の政治経済の現状について一、二伺いたいと思います。
 今日、沖繩における施政は、大統領行政命令の権威に基づき、現役軍人である高等弁務官が民政長官としての施政を担当しております。行政府主席も高等弁務官の任命であり、万事、軍事優先主義のもとに置かれております。これはアメリカ・デモクラシーの名誉のためにも遺憾と言わなければなりません。沖繩の自治権拡大について政府はどのように努力され、また今日まで対処されて来られたかを伺います。
 次に、経済面から見ましたときに、沖繩の貧困は事のほかはなはだしいものがございます。社会保障としては生活保護法と失業保険しかございません。人口は間もなく九十万に達し、人口密度は世界においても屈指の地域の一つに数えられております。一戸当たりの耕地面積は、軍用地接収、道路拡充等のため、戦前一戸当たりの約半分に激減しております。年間予算は、三十五年、八十三億円で、アメリカの援助額はプライス法により二十億前後にすぎません。人口において沖繩とほとんど同じである島根県の予算を見ますと、三十四年度決算によれば、予算規模百十三億であり、うち中央に依存する財源は八十二億、ちょうど沖繩の年間支出に相当する金額でございます。沖繩住民の生活環境の劣悪なことは、これによっても明らかに出て参るわけでございます。政府は今年度予算におきまして、沖繩援助費として四億二千万円を計上いたして努力の跡が見えますが、不十分であると言わなければなりません。特別立法によるか、また、毎年援助額を漸増してくれというのが、沖繩の要望でございまするが、政府の今後における財政、経済、教育にわたる具体的援助方針をこの際承りたいと思います。
 最後に、昨年の夏、太田主席来日の際に、日米琉懇話会設置の構想が明らかにされまして一月末政府もこれに参加することになっております。この構想は、米国側の理解のもとに、日本からの援助を積み重ねながら、実質的に日本復帰を実現しようとするものであるようであります。沖繩自民党は、この政策のもとに昨年秋の総選挙に大きな勝利を占めております。野党はこれに対しまして、住民の悲願をそらそうとするものであるとして、批判的でございます。しかるに、琉球政府与党の日米琉新時代というこの一枚看板は、過般キャラウエイ新高等弁務官の否定的な発言により、現地においては非常な窮地に立っておるようでございます。すなわち、米国側は、実質的に施政権返還に通ずるこのような機関は敬遠しておるわけでございます。ところが、日本政府は、今年度予算を見ますと、日米琉懇話会実施費として五十六万余円の予算を計上しておりますが、この懇話会は成立する見通しがありますかどうか。ないとすれば、政府はどんな措置をとられようとするのか。また、この懇話会の構成、性格等について、この際、承っておきたいと思います。
 以上で私の質問は終わりますが、沖繩の問題というと、最近ともすれば忘れられがちであり、また、よそ国のような受け取り方が一部に見受けられないでもございません。遺憾しごくでございます。政府の誠意ある答弁と今後の積極的な施策を強く訴えて、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 ケネディ大統領の国防長官への指令は、私はまだつまびらかにいたしておりません。しかし、御質問の沖繩施政権の返還につきましては、わが党が従来から多年主張してきておったのでございます。私も今後この交渉を続けていきたいと考えております。
 なお、沖繩の国民生活につきましては、お話の通りに非常にお気の毒な状態でございまするが、着々やはり国民全体の所得もふえていっておるようでございます。また、社会保障制度も、お話の通り、失業保険、生活保護でございますが、最近、医療関係あるいは年金等の社会保障制度も検討せられて、近く実現に向かう機運になっておるように聞いております。われわれといたしましては、日米琉の懇話会を中心とし、また、その他の点につきましても、極力沖繩住民の福祉の向上に努めたい。今年の予算では画期的にやっておるのでございますが、今後におきましても、これをふやしていきたいという考えで進んでおります。(拍手)
  〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(小坂善太郎君) 主として沖繩の法的地位についてお答え申し上げます。
 わが国が平和条約第三条によりまして、「北緯二十九度以南の南西諸島……を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」ということを約束いたしております。よって、こういう提案がアメリカ側からなされることがありますれば、わが国としてはこれに異議を唱えることはできない立場にあるわけでございますが、アメリカはこのような提案を、また一定の期間内に行なう義務を負うわけでもありません。従って、現在までこの地域が信託統治制度のもとに置かれていないからと言って、アメリカはわが国に向島を返還する法律上の義務はないわけでございます。しかし、このような提案が行なわれ、また実行されるまで、わが国は、アメリカがこれらの地域の「領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利」を認めておりまするが、潜在主権はわが方にあるわけであります。そこで、講和条約締結以来、引き続いてこの沖繩の返還の問題について、歴代の政府からその強い意思を言っておるのでありまして、これは、信託統治になるということは、そういう日本の意思を十分に先方もわかっておりまするから、おそらく、ならないのではないかと思います。また、そうならないように、私どもは一日も早くそうした返還がなされるように話し合っておるわけであります。従って、国連憲章第七十七条との関係をお言いになりましたが、なるほど、法的に見ますれば、その信託統括制度のもとに置かれる場合には、どこに該当するかといえば、七十七条一項bに該当するわけでありますけれども、信託統治がなされることはないと、今申し上げたように私ども思っておるのでありまするから、そういうことを懸念することはなかろうと思うのであります。そういうことのないように、これは外交交渉によって十分目的を達したいと思います。また、一方で、平和条約第三条は国連憲章に違反しているというお考えがありましたが、それはそうではないと思います。
 以上をもってお答えといたします。(拍手)
   ――――・――――
#40
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、
 割賦販売法案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#41
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。椎名通商産業大臣。
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(椎名悦三郎君) ただいま提案になりました割賦販売法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 わが国における割賦販売が、ここ数年来、急速な発展を遂げておりますことは、皆様御承知の通りでありまするが、このように割賦販売が国民経済上かなりの地歩を占めるようになりましたのは、それが一般消費者にとっては、消費支出の合理化を通じて生活水準の向上に役立つとともに、生産業者にとっては、国内における商品市場を拡大し、大量生産による生産費の切り下げを可能とするからでありまして、このような制度は今後もますます発展していくものと考えられるのであります。しかしながら、割賦販売は長期間にわたる継続契約であるために、割賦販売業者と購入者との間に紛争が生じやすい等、種々の問題がありますので、今後割賦販売の健全かつ合理的な発達をはかっていくためには、一般の購入者の保護、割賦販売業者の債権の確保、その他、割賦販売の健全化について必要な措置を講ずる必要があるものと考えられます。これが本法案を提案するに至った理由であります。
 次に、本法案の概要について申し上げますと、
 第一に、一般の購入者を保護するため、割賦販売業者に対して、現金価格、割賦販売価格等を明示する義務及び割賦販売契約の基本的な内容を記載した書面を購入者に交付する義務を課するとともに、契約の解除、損害賠償等に関して購入者を不当に不利な立場に置く契約条項は無効とすることにしております。
 第二に、割賦販売業者の債権の確保をはかるため、割賦販売された商品の所有権は、その代金が完済されるまでは割賦販売業者に留保されたものと推定することとしております。
 第三に、割賦販売の健全な発達をはかるため必要があるときは、主務大臣は、商品ごとに頭金の割合と賦払い期間とについて標準を定めてこれを公示し、それに著しく違反して割賦販売が行なわれ、割賦販売の健全な発達に著しい支障が生ずるようなときは、その割賦販売業者に対して販売条件の改善を勧告することができるようにして、割賦販売の健全化をはかることといたしております。
 第四に、商品の引き渡しに先だって購入者から代金を受領する前払い式割賦販売は、登録を受け、営業保証金を供託した者でなければ、業として営んではならないこととし、登録を受けることができる者を、資力、信用のある者に限ることによって、一般の購入者の保護をはかることとしております。
 第五に、信販会社、チケット発行団体等の割賦購入あっせん業者の発行する証票が大量に転々流通すること、及びその目的外使用により不健全金融が行なわれることを防止するため、それを譲り受け、あるいは資金の融通に関して提供させることを業として行なうことを禁止することといたしておりす。
 第六に、割賦購入あっせんは、登録を受け、営業保証金を供託した者でなければ業として営んではならないこととし、登録を受けることができる者を、資力、信用のある者に限ることによって、加盟小売店の保護をはかることとしております。
 以上が割賦販売法案の趣旨でございます。(拍手)
#43
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。岸田幸雄君。
  〔岸田幸雄君登壇、拍手〕
#44
○岸田幸雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました割賦販売法案について、二、三重要なる点に関し、政府御当局に対し質問を申し上げたいと存ずるのでございます。
 戦後わが国が直面していました幾多の難問題、経済的の困難を克服いたしまして、現在世界的にもまれなるほどの経済的成長をみていることは、実に喜ばしいことでございます。最近数年間のわが国民生活の向上の推移を見ますると、実に急激なる変化であり、すばらしい発展でありまして、衣食住いずれの面においても、消費革命とか、生活革新ともいうべき大変革が現に行なわれてきたのであります。その中で特に注目すべき現象は、耐久力のある物品、いわゆる耐久消費財の急激なる普及でありまして、戦前は、相当裕福な家庭でも、ラジオ、ミシン、扇風機ぐらいの耐久消費財であったものが、現在では、都市世帯においては、テレビ、カメラ、洗たく機等の消費財を優に二世帯に一台の割合で持っております。電気冷蔵庫や掃除機なども非常な勢いで増加しているのであります。しかも、この傾向は、さらに農村世帯の方にも浸透してきておる現状でございます。
 この耐久消費財の普及を促進した要因は、申すまでもなく、国民の所得水準の上昇と技術革新に伴う価格の低下、または性能向上による実質的なる価格の値下げであります。しかし、その購入を促進させたものは、一面において、戦後発達してきました月賦販売、割賦販売という事実を見のがすことはできません。最近の年間割賦販売金額は五千億円以上に上るといわれ、都市では、テレビ、ミシンの五割近く、また、電気冷蔵庫の三割、カメラの二割あまりは、実に月賦で購入している実情であります。この割賦販売は、今後も国民消費生活の向上に伴ってますます普及していくであろうことは、海外先進諸国の実例より見て疑う余地がないのであります。
 そこで、まず総理大臣にお伺いいたしたいことは、この割賦販売法を提案せられる第一の目的は、現内閣の新しい経済政策の旗じるしである所得倍増計画の内容をなす産業、特に中小企業の体質改善の一助ともなると考えておられるのであるかどうかという点でございます。
 次に、かくのごとき割賦販売の振興によって、わが国の各種商品の製造販売事業の体質改善をはかることがこの際必要といたしましても、振り返って考えてみますると、割賦販売は古く戦前からも行なわれてきた事実であって、別に戦後に発生した販売方法ではない。それを特に新たに法律を作って規制するというには、それ相応の理由がなければなりません。現状のままの成り行きにまかせておいてはいけないような事実が発生してきたのであるかどうか。販売業者または購入者の側に、割賦販売を悪用するような傾向が見えてきたのかどうか。あるいは両者の間に紛争が生ずることが多いのかどうか。まずこれらの点につきまして通商産業大臣にお伺いいたしまして、この法律案制定の直接原因に関する御説明を願いたいのであります。
 次に、割賦販売を行なっておりまするのは、欧米先進諸国で特に多いのでありまするので、欧米諸国の中に割賦販売に関する法律規制を持っておる国があると考えられまするが、それはいかような内容を持つ法律であるのか、今回のこの法案とはどういうような点が似ており、または違っているかということにつきましてもお伺いいたしたいのであります。それと同時に、欧米においてさような法律が施行された結果、産業界、特に小売業界にいかなる影響を与えたか、かような点もあわせて主管大臣にお尋ねいたしたいのであります。
 さらに、割賦販売は大企業に有利であって、逆に中小企業者が不利になるのではないかと一般に心配されておる面もございまするが、さようなことは単なる杞憂にすぎないかどうか、たとえば、これらの商品の製造業者でありまするが、割賦販売に適する商品は大量生産方式によって生産せられた耐久消費財が中心となって、目ざましい発展を見たことでもわかりまする通り、大資本を擁し、徹底的に機械化を行ない、大々的に広告を行なうような大企業の製品がよく売れまして、中小工業の同種製品はこれに圧倒されてしまうというような傾向が、割賦販売の発達によってさらに助長されるおそれはないのであるか。また、直接割賦販売に携わる販売業者といたしましても、割賦販売を行なうということは代金の延べ払いを許すわけでありまするから、それだけ大きな資本を持っておる業者、または運転資金を借り入れる力のある企業ということになりまして、結局、大きな商業会社あるいは大メーカーが有利な地位に立つのではないか。従って、割賦販売が広く行なわれるようになることは、中小商業者の事業範囲の相対的縮小をもたらすことになるのではないか、また、さような点に関しましては、中小企業対策に深い関心を持ち、現に適切なる施策を行ないつつある現内閣は、本法案と別に、この問題に関連する中小商業の対策を考慮しておられるのでありまするか。たとえば月賦販売金融公庫のようなものを設立する用意があるやいなやということにつきましても、この際お伺いいたしたいのであります。
 次に、この法律案が、一見いたしましても、割賦販売を奨励するとか抑制するとかいうことを目途としているわけではございませんが、いやしくも割賦販売が、一般消費者にとっては消費支出の合理化、生産業者にとっては国内市場の拡大、生産費の切り下げに役立つといたしまするならば、割賦販売の対象となるある種の物品については、積極的にこれを奨励することを考えてもよいのではないか。すでに機械類賦払信用保険法案なるものを通商産業省は用意しておられる由であります。これは特定機械の割賦販売を奨励し、これによって機械工業の近代化を促進しようとするものと聞いておりまするが、この機械類のほかにも、そういうような商品が考えられておるかどうかという点についても、あわせて通商産業大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。
 また一面において、月賦で買えるということは、しばしば、むだづかいをさせることになりがちで、ときには消費支出の合理化どころか、浪費の助長になることも多いのであります。割賦販売法の適用商品がどういうものになるか、浪費の危険のある商品については慎重に考慮を要するのでありまするが、それらの点について、政府は、このような浪費、むだづかいの傾向が強くなったと思われるときには、いかなる方法をとられるか、金融を引き締めるというようなこともやるべきでありましょう。この点に関しまして、財政金融並びに国民貯蓄の増強を主管せられる大蔵大臣の御答弁をお伺いいたしたいのであります。
 最後に、この法案の中で割賦購入あっせん業者の給付する証票いわゆるチケット販売に関しましては、現在、世上いろいろな問題があるのでございまするが、この法律案でも、この種あっせん業者に対する取り締まりを強化し、登録制度などいろいろの監督規定をも置いておりまするので、これに関し一、二お伺いいたしたいのであります。
 この割賦購入あっせん業者によるチケットで百貨店において販売できまするのは、千円以上の物品購入に限るということに百貨店側で自粛しておるのでありまするが、現金売りを建前とする百貨店の本質から見まして、チケット販売をすることはあまり感心しないという議論が多いのであります。この際、百貨店のチケット販売について、現在以上に何らかの規制、取り締まりを強化する御意図はないかどうか、その辺に関する政府の方針を主管大臣に何っておきたいのであります。
 いま一つは、チケット金融のことであります。法案第三十条によりますると、割賦購入あっせん業者の発行する証票を業として譲り受け、または資金の融通に関して提供を受けることを禁止することになっております。しかもこれには罰則規定もついております。ところが、聞くところによりますると、このチケット金融業者は東京都内だけでも五十軒以上ありまして、その貸付残高はゆうに五億円にも上っておるとのことであります。これを利用して金融を受けるものがどのくらいあるかは知りませんが、相当数の者がこれによってきわめて簡便に金融を受けておるのでありまして、これをただいま一挙に禁止してよいのかどうか、問題はないかと思われまするが、なぜ早急にこれを禁止せねばならないか。これも当局の御説明をお伺いいたしたいのであります。
 最後に、中小企業育成の振興は、わが自由民主党の重要施策でありまするがゆえに、このもろもろの施策がまた現に着々その成果をあげておりまする現段階において、今回のこの法案が、さらに一そうの中小企業の育成と発展の補強策となる方向に向かって政府の御当局が推進せられることを強く要望いたしまして、さしあたり以上の諸点について関係各大臣の御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(池田勇人君) 割賦販売法案の目的は、その第一条に示しておりますごとく、取引秩序を公正にし、商品の流通を円滑にすると、こういうことでございます。従いまして、その意味におきまして所得倍増計画に通ずるものでございます。何と申しましても所得倍増には生産の増加が伴います。これはまず輸出向け、そしてまた国内の消費の円滑健全をはからなきゃなりません。従いまして私は、割賦販売法案はこの際ぜひ必要であります。また世界先進国の状況を見ましても、おおむねこういうものを制定いたしまして、商品の円滑な流通に努めておるのでございます。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#46
○国務大臣(椎名悦三郎君) お答え申し上げます。この割賦販売は、すでに戦前においても相当行なわれておったのでありますが、戦後特に昭和三十年以降その伸びが非常に著しいのであります。で、国民生活に占めるウエートも非常に大きくなり、さらに今後ますます増大することが予想されますので、今総理が答弁されたように、割賦販売の流通秩序を公正にするためその必要性を認めたので、今回この法案を提出した次第であります。
 第二に、欧米における割賦販売の内容とその産業界への影響、この問題に関して申し上げますが、日本よりもその額は大きく、また国民経済上に占めるウエートも現在非常に大きい。従って、欧米諸国では割賦販売の取引秩序を確立するための法律がすでにあることは御承知の通りでありますが、ドイツにおきましては、すでに十九世紀の末に制定しておる。イギリス、カナダ、オランダ等におきましては一九三〇年代に制定しておる。米国は各州法においてすでに施行しておる。まあこういう状況でございまして、その目的は、取引条件の明示、購入者の保護、その他秩序を確立するということにあるのでありまして、これによって市場が拡大し、取引が健全化されておることは、どの国においても見られる効果であると存じます。
 第三に、中小企業に不利にならないかというお話であります。これは、法案は割賦販売の健全化をはかるための必要最小限度の法的の措置でございまして、これによって割賦販売というものを助長しようとか、あるいはまた特にこれを制約しようとかいうような特別の政策的目的を持ったものではないのであります。従って、この法律によって特に大企業が有利になるとか、小企業が不利になるとかいうようなことは、私は考えておりません。ただ、この割賦販売の伸長に伴って、中小商業者にいろいろな影響のあることは、これはまた否定し得ないところでございまして、これについては、中小商業者全般の問題として、その近代化あるいは共同化の推進、資金の確保等の措置をとりまして、中小商業者の育成を別途検討したいと、かように考えております。
 次に、機械類賦払信用保険等を考えておるが、これらの制度を他の商品について考えてないかというお話でございましたが、この点につきましては、ただいま産業合理化審議会の流通部会において研究中でございますから、その検討の結果に待ちたいと考えております。
 それから、法第九条の標準条件の制定は、これらの割賦販売に伴う弊害を押えるということになるかどうかというお話でありましたが、これは、割賦販売業者の間で過当競争が行なわれて、その条件をどんどん緩和するというようなことになると、ひいては全般の取引が混乱をいたしまして、消費者が非常に迷惑するということになるのでありますから、健全化をはかるためのこれは標準の条件の規定でございまして、その引き締め対策として用いる意思はございません。
 それから、百貨店のチケット販売の問題でございますが、まだ実施以来一年程度を経過したのでございまして、ただいまはうまくいっていると思いますが、その影響をよく見きわめた後に考えてみたいと思います。
 それから、チケット譲渡等を禁止する理由についてお話がございましたが、これは、不健全な割賦販売制度ということに結局追い込まれることになりますので、そのチケットの流通を禁止するということがこの制度を健全に育てる上において必要であると、かように考えておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(水田三喜男君) 割賦販売の制度、割賦販売におけるチケット制度等は、今の段階では、まだ国民経済に大きい影響を与えるようなところまでいっていないと思います。従って、正常な金融秩序を乱すというようなおそれは全然ございませんが、今回の法案によって、秩序を与えて、これを伸ばしていかせる過程を、もう少し推移を見守りたいと考えております。(拍手)
  ―――――――――――――
#48
○議長(松野鶴平君) 近藤信一君。
  〔近藤信一君登壇、拍手〕
#49
○近藤信一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案になりました割賦販売法案について、関係者大臣に若干の質問をいたします。
 提案理由にもありました通り、最近わが国におきまして、月賦などによる割賦販売がだんだん多くなっていることは事実であり、これに対して何らかの法律制度を確立しておく必要があると存じますが、それが池田内閣の一枚看板である所得倍増計画といかなる関係を持つものであるか、まずこの点をお伺いしたいと存じます。経済の成長には、消費の多くなることが必要である。従って、貧乏な消費者にもできるだけ買わせなければならない。それがはたして消費者の利益になるのかどうか、わからないような場合でも、消費者の購買欲をかきたてて月賦で買わせる、いわゆるデモンストレーション的な効果をねらって消費市場を拡大し、それによって大量生産をするもの、すなわち大企業の生産を伸ばそうとするものではないだろうか。大企業が大量生産を拡大するための手段として、割賦販売法が利用されるのではないかと思うのでありまして、昨年国会で審議未了になった本法案をここに再提出する真の理由がどこにあるか。政府の真意を総理から伺いたいのであります。
  〔議長退席、副議長着席〕
 次に伺いたいのは、本法が割賦販売のやり方についてのルールをきめたものであるということが、この前に提案されましたときに申されているのでありますが、法律そのものは、確かに割賦販売に対する取引秩序を定めることが主眼になっているけれども、この割賦販売というような制度をだれが利用するか、またこれを利用してもうける者はだれかといえば、これは、申すまでもなく、大企業であります。信用販売制度によって百貨店が利益をし、大メーカーが月賦販売をする。ことに大メーカーは、傍系の販売会社を作ったり、小売商を系列化して、大資本によって販路を拡張することができる。要するに、割賦販売で大きな利益を受けるのは大企業であることは事実であります。政府は、中小企業の保護育成を唱えておりますが、中小企業、ことに中小商業については、ほとんど対策を講じておりません。先般、小売商業調整特別措置法が生まれましたが、その効果が十分現われているとはいえない。そこへ、今度この割賦販売法ができるとして、これによって小売商はほとんど利益するところはないのであります。むしろ割賦販売を盛んにやれるのは大きな資本を持ったものだけだということになると、小売商はますます困ることになると思う。政府はさきに、産業合理化審議会の流通部会で、割賦販売について答申を得た後に、合理的な流通形態についても議論していただいているということでありましたが、それから約一年も経過しているので、何らかの結論が出たのではないかと思います。割賦販売法案を再提出するについては、一般の小売商対策についてもお考えが熟しており、そういう法案も一緒に提出されることと思ったのに、ただこの法案だけを出して来られたのはどういう意味か。この際、政府の持っておられる小売商問題についての総理の見解を伺いたいのであります。
 百貨店の割賦販売、ことにチケット販売については問題が多いことは、すでにしばしば言われているのであります。この法律がこれを規制したり助長したりするためのものでないことは明らかですが、先ほども述べました通り、割賦販売によって利する者がだれであるかは明らかなのであり、百貨店のチケット販売について政府はどう処置するつもりか。最低限度を引き上げる意思はないかどうか。この点もあわせて伺っておきたいのであります。
 割賦販売によって消費支出の合理化をはかるというのが提案の御趣旨のように存じますが、それは何という意味であるか。私どもは、月賦で買うのは、消費者にとって合理化でなく、不合理化だと思うが、いかがでしょうか。今、政府は、国鉄運賃、定期運賃を引き上げるそうですが、六カ月の定期を買う方が安い。それを一カ月ずつ買うのでは高くなる。消費者にとっては、六カ月買う方が合理的なのだが、金がないから一カ月ずつ買うのです。物を月賦で買えば高くつくけれども、金がないので、仕方がなく月賦にする。大資本は月賦で高く売って、その間、商品の販売でもうけ、貸しておくために今度は金利でもうける。これが割賦販売だろうと思うのであります。そこで大蔵大臣に伺いたいのは、消費者が月賦で高いものを買わなくともよいように、消費者に対する金融を考える御意思はないかということであります。銀行などは、零細業者、勤労者から預金を集めるけれども、決して勤労者に金を貸さない。大企業ばかりに金を貸す。勤労者はやむを得ず大企業の作ったものを月賦で、高い値段で買うということになるのです。従って、消費者のための金融なり信用保険制度というものをお考えになってよいのではないかと思いすますが、この点を伺います。
 法案の中身について伺いたいことの第一は、本法案に「割賦購入あっせん」等を入れたのはどういうわけか。法律の中心は、個々の商品の割賦販売で、このあっせん業者が行なっているのは、総合的な割賦販売である。従って、このあっせん業者による販売については、販売条件や書面の交付も問題にならないし、第五条の契約解除の制限も、第七条の所有権に関する規定も、そのままでは適用されないと思う。そういう異なった性質のものを本法に規定した意味はどういうことにあるか。通産大臣にお伺いいたします。本法は消費者保護に重点を置いて、悪質販売業者から消費者を守ることが目的だというのですが、それならば、なぜ不動産販売の月賦販売については、住宅難に便乗してかなり悪質のものがあると聞いているが、本法で規制しないとすれば、消費者はどうして保護されるか。政府はこれに対していかなる用意があるか、総理の御所見を伺いたいのであります。
 消費者を保護する規定として、第五条に販売業者が契約を解除するには、支払いがおくれてから十五日以上の期間を定めて支払いを催促して、それでも支払いがおくれた場合に限ることにしたのは、消費者、購入者にとってはありがたいことで、その間に月賦金を用意する余裕を与えられたことになる。しかし、勤労者の多くは、大体月給取りである。従って、十五日の余裕では短いことはないであろうか。ことに金額の多い品物であれば、十五日では短か過ぎるきらいがある。もっとも、法案は「十五日以上」とあるから、それぞれの場合に従って、もっと長くしてもよいわけだが、これを長くすることはできないのであろうか。かりに法律で「十五日以上」とあっても、実情に応じて長くさせるような指導をして、購入者保護を徹底させる用意がありますか。通産大臣にお伺いいたします。
 割賦販売の標準条件については、第九条に「割賦販売の健全なる発達をはかるため必要なときに、主務大臣がこれを告示する」としてあります。この条文と、第十条の勧告の条文は、販売業者間の過当競争があるときに行なわれるもののようであり、これは全く販売業者のための規定で、購入者の利益ではないように見受けられます。競争がどの程度まで激しくなればこの標準を示すつもりか。また、このような標準は、競争の適正化のためだけに行なうものか。それとも、池田総理が通産大臣として、第三十四回国会で答弁されたように、割賦販売が伸びていく場合は、これで金融調整の役割をさせようとしているのか。特に総理よりお答え願いたいのであります。
 前払い式割賦販売に登録制度をしくのは、この制度が消費者にとって心配なことが多いことからして当然と思いますが、この登録の条件として、法人であることを条件とし、個人企業が許されないのはなぜか。個人企業、中小企業の圧迫ではないか。法案によると、営業保証金を供託させることになっている。従って、法人であろうと、個人であろうと、保証金を積み立てておけば差しつかえないように思うが、いかがでしょうか。個人企業でも、営業の金額が少なければ、登録しなくてもいいというが、その販売金額はどのくらいで制限するつもりか。また、営業保証金については、どんな大企業でも、五十万円の保証金でいいことになっているが、少な過ぎるのではないか。悪らつな販売業者は、保証金の額などよりももっと多額の前払金を受けて、会社をつぶし、購入者に迷惑をかける心配がある。販売額または取り扱い商品によって、額を多くすることは必要ではないか。通産大臣のお考えを伺いたいのであります。
 いわゆるチケットによる金融を禁止した理由は何か。これはチケット金融業者の生活権を脅かすことにもなり、憲法で保障された営業権をも否定することになると思うが、この点はどうか。チケットは本人でなければ加盟店で物を買えない仕組みになっているので、従って、金を貸した者も、本来ならばそれを使えないわけだから、販売店でその規定を守りさえすれば弊害がないのではないか。また、このような金融を受けなければならない者、その多くは勤労者であるが、この金融が禁じられると困るようなこととならないか。大体こんな金融が行なわれているというのも、政府が勤労者に対して、月賦でなければ生活できないようにして、消費者金融なり厚生施設なりを十分に考えていないから起こることで、政府は、勤労者の消費生活を向上させるためにもっと配慮をすべきではないか。重ねて大蔵大臣のお考えを聞きたいのであります。
  〔副議長退席、議長着席〕
 最後に、私は、別にこの法案について、ここで賛否を表明する必要はないので、いずれとも申し上げないが、あれも月賦、これも月賦というような、見せかけの生活でなくして、勤労者は月賦でなく現金で買えるような真の所得倍増を考えてもらいたいと思いますが、総理の所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。〔拍手〕
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 所得倍増と割賦販売法案の関係は、先ほど申し上げた通りでございます。決してこれは不健全な消費購売力を育成するという意味ではないので、促進するのでもなければ、抑制するわけでもないのでございます。
 なお、中小企業対策はどうか。――これは割賦販売法案とは別個に考えるべき問題であると思います。
 また、これは動産の割賦販売であります。不動産には関係いたしておりません。不動産の分割売買につきましては、また別個に検討すべき問題と思います。
 また、割賦販売の金融調整手段、この問題は御承知の通り、先進国におきましては、金融調整は、中央銀行の公定歩合、預金準備金制度、そうして公債のマーケット・オペレーション、それに加うるにこの割賦販売の条件変更、この四つが金融調整のもとになっておるのであります。米、英、仏、独、皆そうでございますが、特に米英におきましては、公定歩合の変更と同じ程度、あるいはそれ以上に効果のあるものとして、割賦販売の条件変更を金融調整に使っておるのであります。竹本ではまだそこまで参っておりません。私は、今後の推移の状況によりまして、これはそうなっていくのが自然の勢いではないかと思うのであります。どうも月賦で買わなくてもいいように所得倍増をせよということですが、所得の多いところに割賦販売が行なわれておるということが、これはいかんせん事実であるということをお答えいたします。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(椎名悦三郎君) 割賦購入あっせんの規定を入れた理由についてまずお答え申し上げます。
 割賦購入あっせん業者の加盟小売店は、あっせん業者が発行する証票と引きかえに商品を売りまして、その代金はあっせん業者が取り立てて小売業者に支払うということになっております。従って、あっせん業者が倒産などした場合には、加盟小売店は非常な損害をこうむるということになっておるのであります。従って、そのようなあっせん業者は、資力信用ともにある、しかも法人格を持つ者に限ってこれを登録して行なわせるということにした次第であります。
 次に、契約解除の期間をもっと長くする必要はないかというのであります。一般の契約では、催告期間は三日程度でよいということになっておりますが、割賦販売につきましては、購入者の便宜保護を考えまして、十五日に延長をしたわけであります。これでも短か過ぎるという御意見でございますが、販売業者の立場を考えますというと、あまり長くなるということになりますと、そこに相当の危険を負担するということになるのでございまして、従って、十五日ぐらいが適当な期限であろうと考えたのであります。
 それから、前払い式割賦販売の登録制度は中小企業の圧迫とならないかというお話であります。商品の引き渡し前に代金が積み立てられるわけであります。従って、商品の引き渡し前に販売業者が倒産するとか、その他の事故のために購入者に不測の損害を与えるということがあるかもしれません。従って、この前払い式割賦販売におきましては、資力、信用ある法人に限って登録を行なうということにいたしたわけであります。しかし、年間の割賦販売額が一定額以下の小規模事業者につきましては、登録を受けないで営業ができるということに例外規定を設けておりますので、中小企業が不当に不利な立場に立つことはないものと私は考えます。
 それから、標準条件の目的は何かというお話でございましたが、販売競争が激化して、頭金の割合が不当に引き下げられ、あるいは賦払いの期間が不相当に長くなるというように、お互いにせり合うということになりますというと、貸し倒れその他割賦販売の健全な運営に非常な支障を生ずるということになるのであります。従って、特に必要がある場合には、適正な割賦販売条件を公示いたしまして、これを標準にして販売が行なわれるように指導いたしたい、かように考えておる次第であります。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#52
○国務大臣(水田三喜男君) 市中の金融機関は、最近になりまして消費者金融について一斉に研究を始めている際でございますので、大蔵省もこの研究に十分協力するつもりでおります。(拍手)
  ―――――――――――――
#53
○議長(松野鶴平君) 向井長年君。
  〔向井長年君登壇、拍手〕
#54
○向井長年君 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提出の割賦販売法案について若干の質問を試みたいと思います。先ほど同僚議員からも質問がございましたので、池田総理初め、各大臣は重複することは省略していただいてけっこうかと思います。
 本案は、昨年の第三十四回通常国会に提出され、衆議院商工委員会においては、数回にわたって審議が尽くされ、すでに採決寸前までに審議が進行したことのある法案であります。これが今回、第六条の契約の解除に伴う損害賠償等の額の制限の項に若干の変更が加えられただけで再提出されているわけであります。当時の本案提出の直接責任者であった池田通産大臣は、今日ここに総理大臣として出席されているのでありますが、当時より今日までの十カ月に近い長期間にわたって、政府原案について国会における審議の成果が何らくみとられていないのは、はなはだ残念であります。かつ、昨年より現在に至るまでの間に、大銀行は軒並みに、いわゆる消費者金融とも称すべき割賦販売に結びついた消費者金融に競争的に乗り出しているのでありますが 本案は、このような情勢の変化について、何ら具体的に受けとめようとしていない点に、われわれは流通秩序法規としても大きな不安を感ぜざるを得ないのであります。私は、このような観点に立って、本案の主要点について伺いたいと思います。
 私が伺いたい第一点は、本案が第一条「目的」において、依然として流通秩序法としての体系を固執し、結果としては大企業保護法としての効果をねらっている点であります。政府の所得倍増計画によれば、今後十年間に産業の高度化は進むが、消費需要に直接つながる末端流通部門やサービス部門は、その性質上、小経営としてとどまるものが圧倒的に多いと想定されております。すなわち今後十年間は、小売商業部門は、依然として小経営の担当分野であることを認めておられるのであります。かつまた、倍増計画には、一貫して諸格差の是正に努めねばならないとして、大企業と中小企業との間に、はなはだしい諸格差が横たわっている現実と素直に認められているのであります。そうであるならば、割賦販売という将来にわたって必ず発展していく商業分野において、何ゆえに中小商業者の立場を保護し、むしろ育成していく方向をとらなかったのか。政府は、本案の再提出にあたって、まずこの点を明らかにすべきであると思うのでございます。
 池田総理は、昨年四月十一日の衆議院商工委員会に出席されて、割賦販売を育成する必要がある。それは生産と消費の合理的方法を考えるだけではなく、進んでは経済、金融を調整する手段としても伸ばしたい。すなわち公定歩合と預金準備、割賦販売の利用と公債政策の四つで金融調整することが必要である、とまで言われております。私ども民社党は、池田首相と同じく、割賦販売制度を発展させ、消費者がわが国金融制度上大きな比重を占めるように引き上げるべきであるという見解に立っております。しかし、割賦販売制度の育成は、まず消費者と販売業者のそれぞれの利益を守り、割賦販売を健全な軌道に乗せることが先決問題であります。販売業者の利益を守ることは、政府の所得倍増計画によれば、まず中小商業者の利益を守ることでなければならないはずであります。政府は、私どもの反対を押し切って拠出制国民年金の実施を急いでおりますが、これを国民の福祉に役立てるよりは、まず財政投融資の新しい原資の確保という点に役立てようとする政府の意向は明らかなのであります。これと同じく、本案が消費者と中小企業者の利益を守る法規ではなくして、流通秩序法という体裁のもとに、実は大経営の割賦販売保護並びに大経営のための信用膨張という金融政策のための立法として提出されております。私たち国民は、こういう疑惑を持っておるわけでございますが、特にこの際、総理、通産大臣の明快な答弁を望みたいのであります。
 第二に私が伺いたい点は、政府は割賦販売を含む小売商業の機構をどのように考えておられるかという点であります。最近、消費者金融には大きな二つの流れがあります。その一つは、犬銀行とデパートまたは自動車会社等のタイアップによる消費者金融の拡大であって、これは定期預金と住宅建設との連携による割賦償還までが開始されております。第二は、卸売と小売の中間価格で小売する大企業直結の販売店がふえて、町の在来の小売商を圧迫している事実であります。このように、大銀行や大メーカーの金融または信用を背景にして、デパートや大メーカーの直売店または大企業の系列に入っている新しい小売商が続出しておりますが、商業機構は、メーカー、卸、小売が単純に配列されているのではなく、全機構にわたって大経営が大幅に進出してきているのが現在の最大の特徴なのであります。私どもは、この現実に対処するためには、政府が本案を提出した機会にこそ、全く構想を新たにし、大企業の進出が著しい商業機構の新しい調整に着手すべきであると考えるのであります。すなわち現行の小売商業調整特別措置法を改正して、メーカー、卸売業、小売業の各分野の調整をはかって、力さえあれば弱小者の営業権を侵害してもかまわないという現状をコントロールすべきであります。特に資本的人間関係において大資本の援護を持つ新しい小売業者の出現に対しては、このような援護を受けず、系列化されていない小売業を保護し得るような商業機構の確立に努めるべきでありますが、この点につき、通産大臣並びに長期計画を担当しておられます経済企画庁長官の見解を伺いたいのでございます。
 中小企業者保護に関連して第三に私が伺いたい点は、割賦販売業者のうち、中小企業等協同組合、商店街組合等の中小企業者の販売業者団体を育成し、それらに対して特に財政資金の融資、信用保険制度の活用、印紙税法や貸し倒れ準備金制度の改正などの税法上の保護について、政府がいかなる具体策を持っているかという点であります。政府は、昨年四月十五日の衆議院商工委員会において、大企業、強い方の企業の側の商業活動を制限するだけではなく、逆に中小の援助も何らか強化しなければならないという点も検討すべきである。たとえば中小企業者に対する割賦販売に伴う運転資金の補給あるいは中小商業者の顧客に対する信用調査の機構等を特に考えねばならぬと、こう答弁されております。この答弁があって後に昭和三十六年度予算が編成され、中小企業対策費、中小企業向け財政投融資がそれぞれ増額されたのでありますが、次期予算として、政府は自分の答弁を政策としていかに予算化し具体化したか、この点を伺いたいのであります。
 私ども民社党は、本案こそは消費者保護法であると同時に中小商業振興法であらねばならぬと確信いたしておりまするがゆえに、本案の中にはぜひとも一項目を設けて、中小規模の事業者に対する金融上の特別措置を行なうべき旨を規定するのが当然と思うのでございます。この点についても通産大臣並びに大蔵大臣の所見を伺いたいのでございます。
 私ども民社党は、本案の細部につきましては委員会で審議することにいたしまして、本議場におきましては、政府の政策大綱、基本方針についてのみ伺った次第でございますが、政府の明快なる答弁を希望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#55
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 昨年提案いたしました割賦販売法案と大体同じでございます。中小企業育成問題を兼ねてやるべきじゃないか。――私は中小企業の育成問題は別個に考究すべきものであると考えております。従いまして、今後の消費者金融、商業機構の問題等々は、今後この割賦販売法の施行に伴いまして研究していくべき問題と心得ております。(拍手)
  〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#56
○国務大臣(椎名悦三郎君) 大企業保護の効果だけをねらうものではないかというようなお話でございましたが、この中小企業の問題、特に中小商業者の問題につきましては、ただいま総理からお答え申し上げた通りでございまして、これはもう自然発生的な割賦販売というものに対して秩序を与え、これを健全に育成するというのであって、特に中小企業、中小商業者の立場を守り、これを育成するということは、別途に考えるべき問題と心得ております。
 次に、メーカー、卸、小売、その分野を画定していくべきものである、そういうお話でございますが、われわれといたしましては、小売商の経営指導の強化あるいは協同組合による組織化、金融面、税制面の措置を進めて参っておるのでありますが、今後もこの方針をとりまして、そうして小売商業等につきましては、その体質を改善するというところに基本的なねらいを置いて参るようにいたしたいと思うのでありますが、法律によって画一的な分野を設定して、そしてその分野の中においてそれぞれ経済活動をさせるということは、自由経済の立場をとっている現状に捌きまして、経済の流動性を失わせるものであって、この点は慎重に考慮すべきものであると考えている次第であります。
 なお、小売商業調整特別措置法の改正についてお話がございましたが、まだ施行後一年有余をたっているにすぎないのでありまして、ようやくこの法律の趣旨が浸透して参っております。しばらくこの効果を見詰めまして、ただいまのところでは現行法の運用で問題を処理して参りたいと、かように考えております。
 それから、中小の割賦販売団体を育成すべきである、財政的援助をすべきではないかというようなお話がございましたが、私に関する限りのお答えを申し上げます。従来からこの問題につきましては、商工中金あるいは信用保証協会等の活用によって、中小の割賦販売団体に対して融資をして参っております。この点は今後もさらに充実強化して参りたい、かように考えております。
 それから、割賦に伴う信用調査機関の整備でございますが、ただいまこの問題につきましては、産業合理化審議会の流通部会において真剣に検討中でございますから、その結論を待ちたいと考えております。
 法案に中小業者に対する金融上の特別措置を行なうべき規定がない、その点について、この法案は割賦販売を助長する積極的な政策的な内容を持ったものではないということは、先ほど来繰り返して申し上げております。これは秩序を立てる、消費者の保護を主たる目的とするものである、こう思うのであります。そこで、中小割賦販売業者に対する金融対策の問題といたしましては、これは一般の中小企業金融対策、その一環として別途この充実強化をはかって参りたい、かように考えております。
 それから、政府は割賦販売を含む小売商業の機構をどう考えるかというようなお話でございましたが、今日の小売商業が流通部面において占める地位はきわめて重要でございます。政府は従来から、百貨店法、小売商業調整特別措置法等によりまして、種々の調整を行なって参っております。また、組織化による共同購入、共同販売等の共同事業の助成、近代化等の推進をはかっておるという現状でございます。政府といたしましては、今後ともこれらの施策を一段と推進し、中小小売業の体質改善と競争力の強化をはかって、健全な育成をいたしたい、かように考えている次第であります。
  〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(迫水久常君) すでに各大臣より御答弁がありまして、私がお答えをする部面というものはないようでございますが、要するに、小売業というものは流通部面において直接消費者と接触する一番大事なところにいるものでございますので、そうして所得倍増計画におきましても、ずっと個々の部面では比較的小さい規模の経営が多く存在するであろうということを見通しておりますること、お話の通りでございます。従いまして、どうしても小売の部面というものは体質を改善していく必要があるわけでありますが、それには、ただいまお話のような百貨店との関係とか、あるいは比較的大きな資本の直売店とか、あるいは小売商相互間の不当な競争とか、なかなかいろいろ問題があるわけでありますが、それらにつきましては、いずれも通商産業省が主体となって、それぞれ法制的に、あるいは行政的の措置で、適当に指導して体質の改善をはかっていると考えております。経済企画庁といたしましては、こういう部面はあくまでも自由企業の立場を堅持するという立場に立ちまして、各省間の調整をいたして、小売商の健全な体質改善に努力いたしたいと思います。(拍手)
  〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#58
○国務大臣(水田三喜男君) 金融の問題と税法上の問題の御質問でございましたが、割賦販売を行なっております商店街組合とか、あるいは中小企業協同組合に対しましては、もう従来から、商工中金、信用保証協会等におきまして積極的に融資を行ない、また保証を行なっておりますが、今後この健全な発達に資するために、さらに、一そうの融資の円滑化に努めたいと考えます。
 税法上の問題は、販売業の課税は、本来ならば販売のときに販売金額全体をそのまま収入と見るべきでございますが、割賦販売につきましては、実情に合うよう、代金の支払期に分割して収入を計上するということをただいま認めております。また、今回の貸倒準備金の改正にあたりましても、貸し倒れの多い企業にとって有利となるような制度の改正を行なっておりますので、この点は割賦販売業の実情に即するのではないかと思っております。
 それから、お尋ねの印紙税におきましては、中小企業等協同組合の発する出資証券とか、あるいは預金通帳のようなものについては、印紙税を非課税として、協同組合には優遇を与えているという状況でございます。(拍手)
#59
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
   ――――・――――
#60
○議長(松野鶴平君) 日程第一、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず委員長の報告を求めます。法務委員長松野秀逸君。
  〔松村秀逸君登壇、拍手〕
#61
○松村秀逸君 ただいま議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につき、法務委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本法律案の趣旨は、第一に、青森県大湊、田名部市の名称を、むつ市と変更するに伴い、田名部簡易裁判所の名称を、むつ簡易裁判所に変更すること、第二に、土地の状況、交通の利便等にかんがみ、会津若松簡易裁判所ほか三簡易裁判所の管轄区域を変更すること、第三に、市町村の廃置分合等に伴い、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の別表について所要の整理を行なうこと、以上であります。
 法務委員会は、二月十四日政府当局から提案理由の説明を聴取した後、各委員から熱心な質疑がなされましたが、これが詳細は会議録に譲りたいと存じます。
 質疑、討論を終了し、採決いたしましたところ、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。以上御報告申し上げます。(拍手)
#62
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#63
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は全会一致をもって可決せられました。
   ――――・――――
#64
○議長(松野鶴平君) 日程第二、日本放送協会昭和三十三年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長鈴木恭一君。
  ―――――――――――――
  〔鈴木恭一君登壇、拍手〕
#65
○鈴木恭一君 ただいま議題となりました日本放送協会昭和三十三年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書について、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本件は、放送法第四十条の規定に基づいて、会計検査院の検査を経て内閣より国会に提出されたものであります。
 日本放送協会の昭和三十三年度末の資産総額は百五十三億七千余万円、負債総額は九十六億千七百余万円でありまして、昭和三十二年度末に比較しますと、資産につきましては五十一億六千三百余万円、すなわち五〇・六%の増加となっております。また、負債につきましては四十二億七千三百余万円、すなわち八〇%の増加となっております。
 次に、三十三年度の損益計算は、事業収入総額百六十六億二千九百余万円、事業支出総額百五十七億六千三百余万円でありまして、ラジオ関係においては差引剰余五千八百余万円、テレビジョン関係においては差引剰余八億七百余万円となっており、協会の事業収支の全体から見ますると、差引八億六千五百余万円の剰余となっております。これらについての詳細は説明書についてごらんを願いたいと存じます。
 本件に対する会計検査院の検査の結果報告は、「記述すべき意見はない。」というのであります。
 逓信委員会は、本件について郵政当局及び日本放送協会につき質疑を行ない、慎重審議の結果、全会一致をもって、本件については異議がないものと議決いたした次第であります。
 右御報告申し上げます。(拍手)
#66
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本件の採決をいたします。本件全部を問題に供します。本件は委員長報告の通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#67
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって委員長報告の通り決せられました。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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