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1960/04/01 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第18号
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1960/04/01 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第18号

#1
第038回国会 本会議 第18号
昭和三十六年四月一日(土曜日)
   午前五時五十五分開議
  ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第十七号
  ―――――――――――――
  昭和三十六年四月一日
   午前一時 本会議
  ―――――――――――――
 第一 昭和三十六年度一般会計予
  算
 第二 昭和三十六年度特別会計予
  算
 第三 昭和三十六年度政府関係機
  関予算
  ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、日程第一 昭和三十六年度一般
  会計予算
 一、日程第二 昭和三十六年度特別
  会計予算
 一、日程第三一昭和三十六年度政府
  関係機関予算
  ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。海外旅行のため、青木一男君から来たる四日から十二日間、辻政信君から同じく四日から四十日間の請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
   ――――・――――
#5
○議長(松野鶴平君) 日程第一、昭和三十六年度一般会計予算、
 日程第二、昭和三十六年度特別会計予算、
 日程第三、昭和三十六年度政府関係機関予算、
 以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長の報告を求めます。予算委員長館哲二君。
  ―――――――――――――
  〔館哲二君登壇、拍手〕
#7
○館哲二君 ただいま議題となりました昭和三十六年度予算三案の委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 昭和三十六年度予算は、内外の諸情勢に十分留意しつつ、健全財政のもとに、国民所得倍増計画の初年度として必要なもろもろの施策を推進することを基本方針とし、減税、社会保障及び公共投資を最重点として編成されたものでありまして、一般会計予算の総額は一兆九千五百二十七億円であり、前年度当初予算に比較いたしますれば三千八百三十一億円の増加であります。また、国民所得に対する割合は一五・三%でありまして、前年度当初予算の一五%に比しますればやや高く、前年度の最終予算の一五・四%に比較いたしますればやや低く相なっております。財政投融資計画の総額は七千二百九十二億円でありまして、前年度当初計画に対しまして千三百五十一億円の増加となっております。また、特別会計予算及び政府関係機関予算も右に準じて編成されております。これら各予算の細部につきましては、すでに本会議において、るる説明がありましたので、時間の関係上省略させていただきます。
 これら予算三案は、一月二十八日に国会に提出され、三月五日に衆議院から送付を受けたものでありますが、委員会といたしましては、すでに二月二日に大蔵大臣から提案理由の説明を聴取し、三月六日から本審査に入りました。自来委員会を開くこと十七回、その間二日間にわたって公聴会を、また四日間にわたって分科会を開くなど、慎重に審議を続けて参りました。
 しかるところ、昨三十一日阿具根委員から炭鉱災害防止に関する決議案が動議として提出され、全会一致をもって可決されたのでありますが、その案文及び政府の発言の要旨は最後に申し上げることといたしまして、以下、予算委員会における質疑応答のうち、主として予算に直接関連する若干の点について、その要旨を御報告申し上げたいと存じます。
 まず、予算編成の前提となっている内外の経済見通しにつきましては、「最近数カ月の国際収支は、総合収支は黒字であるとしても、経常収支は二カ月も続いて一億ドルに近い赤字であり、このようなことは明らかに基調の変化と見るべきではないか。外貨準備二十億ドルの大部分は短期資本などで不安定のものである。このような経常収支悪化の原因は、政府の世界経済に対する見通しの甘さと、高度成長政策にあるのではないか。下半期以降黒字にならない場合でも高度成長政策を続けるつもりか。政府はもっと広く輸出増進について打開策を講ずべきで、中共貿易についても、これまでのような消極的な態度を捨てて、さらに前向きの方法で対処する必要があるのではないか」などの質疑がありましたが、これに対しましては、総理、外務及び大蔵の各大臣から、「最近の国際収支は、経常収支は一月が九千九百万ドルの赤字、二月は九千三百万ドルの赤字で、三十五年度は経常収支の黒字の見込みが若干赤字になることが予想されるが、総合収支では六億ドルを相当上回る黒字となる見込みである。経常収支赤字の原因には、輸出の一時的な伸び悩みと輸入の政策的配慮などによる増加があり、不健全な要素が含まれていないし、下半期に世界景気の回復と相待って輸出政策を本格化し、設備投資などの行き過ぎを抑制すれば、三十六年度の国際収支二億ドルの黒字確保は心配ない。短期資本の流入を一がいに不安視するのは間違いであり、外貨準備が一時二十億ドルを切っても、長期的な観点に立って経済を伸ばしていきたい輸出増進策については、今後極力努力したい。日中貿易については、協定が政府対政府という形でない限りは推進していきたいと思っており、日中輸出入組合あるいはジェトロを通じて政府が補助するという形でできるならということで、前向きに対処したいと考えている」旨の答弁がありました。
 また、対日援助の返済問題につきましては、政府は近く対米折衝を始めるようであるが、一体債務と心得ている根拠は何か。阿波丸債権処理の際の吉田・シーボルト了解で債務と確認したのは、借款及び信用についてだけではなかったのか。米国商務省発行の文書にも、援助を贈与と借款に分け、ガリオアは贈与と書いてある。従って返済義務のあるものだけを交渉の対象とすればよいのではないか。また返済義務のあるものについても、日本は、戦後の困難な経済の中から四十七億ドルにも相当する終戦処理費を負担していることを考えれば、これを償ってもあまりあるのではないか。また差し引きはできないとしても、その中から占領目的以外に使われた部分あるいは南鮮貿易による債権四千七百五万ドル等は政治的な話し合いの対象とすべきではないか。また、その金を米国へ返すかわりに、低開発国の援助資金として日本が分担する分に充てることが認められないものか」などの質疑がありましたが、これに対しましては、総理及び外務大臣から、「債務と心得ている根拠は、援助物資受領の際の文書、米国政府関係者の国会における証言、阿波丸債権処理に際しての吉田・シーボルト了解などである。債務の額については、受領証の一々について精細にわたり検討中であり、従って援助を全部債務と心得ているわけではない。終戦処理費をそれと相殺することは権利として主張はできないと思うが、本来の目的以外に使われたもの、あるいは南鮮貿易に伴う対米請求権などは当然考慮してもらうべきものと考えている。低開発国の援助の分担金に回し得るかどうかの点については、慎重に検討の上対処したい」旨の答弁がありました。
 三十六年度予算と所得倍増計画との関係につきましては、「三十六年度予算は、所得倍増計画の第一年目の予算として高度成長政策をとっているが、三十六年度の生産能力の増加は、前年度における設備投資の増加額から推計すれば、総需要に対し約三千億円の過剰となり、生産過剰恐慌の危険がある。しかも政府は、金利の引き下げなど設備投資を刺激するような政策をとっているが、三十六年度の設備投資は政府の見通しをこえて三兆五、六千億円ぐらいになるのではないか。これは自由企業をもととした計画からくる矛盾で、このような事態をなくすためには、賃金水準の大幅な引き上げを中心とした消費の増大が必要ではないか。また格差の是正については、所得倍増計画では産業立地計画がいわゆるベルト地帯が重点になっており、開発に対する考え方も各省まちまちで、地方格差は拡大せざるを得ない状況になっている。また、減税、社会保障も後退しており、各種格差は拡大するばかりではないか」などの質疑がありましたが、これに対しましては、総理、大蔵及び経済企画庁長官から、「民間財界が日本経済の発展に確信を持ってきたので、設備投資が拡大する勢いのあることは認めるが、設備投資の膨張にもおのずから限度があるので、今後とも所得倍増計画を道しるべとして、行き過ぎのないよう努力していきたい。金利引き下げは国際競争力強化のためのものであり、投資を刺激するためのものではなく、特に過剰生産恐慌の起こる心配はないと考える。地域間の所得格差の是正に対しては、地方交付税の配分方法の改善、また後進県に対する公共事業補助率の引き上げなどにより努力しており、階層間の格差是正に対しては、成長政策による所得の調整と、減税、社会保障の強化などによって努力している」旨の答弁がございました。
 社会保障関係費につきましては、「生活保護基準の引き上げを二六%から一八%になぜ後退したのか。また医療費の引き上げは、予算を組んだあとで、一〇%以上の引き上げということで与党と医師会の間で妥結したが、七十四億というような予算のワク内で納まらない場合は補正予算を組むのか」というような質疑に対しまして、総理並びに関係各大臣から、「生活保護基準の引き上げは、民間の賃金、失対賃金、補助職員の俸給などとの均衡上一八%にとどめざるを得なかったが、一方、勤労控除の大幅引き上げ、期末手当、住宅、教育扶助などにより、実質上二〇%の引き上げとなっている。引き上げ率が低位にとどまったのは遺憾であるが、国民全体の所得向上のうちで段階的に解決するよりほかはない。医療費の問題は特殊な事態でやむを得なかった。引き上げの内容についてはこの予算の範囲内で措置されると思うが、ワクをこえる場合は財政措置が必要となる」旨の答弁がありました。
 農業問題につきましては、「政府は、農業と他産業との所得格差を縮める方法の一つとして生産の増加を考えているが、投下資本の量に対し収益が極端に少ない農業においては、所得を均衡させ得るような総合的な価格体系を先行させなければ、経営規模の拡大もできないし、従って所得の均衡もできないのではないか。農業基本法で言う農産物の価格の安定とはいかなる価格水準であるか」などの質疑がありましたが、これに対しましては、農林大臣から、「農業の生産性を上げるためには、資本、技術等、あらゆる面から近代化を進め、同時に、需要に見合った生産を行なうよう長期の見通しに立って指導していくことを第一に考えており、なおかつ、避けられないところの自由化などに対しては、保護政策を講じていく。従って価格支持は最後である。全農産物を生産費及び所得補償方式のような形で支持することは不可能であるが、最終的に農民に不利不安を与えないような合理的な価格を個別に考えていきたい」旨の答弁がありました。
 国鉄運賃及びガソリン税率の引き上げなどの物価に及ぼす影響につきましては、「国鉄運賃の値上げを中心とする公共料金の引き上げは、物価値上げのもとをなしていると思うがどうか。消費者物価の上昇率は一・一%の程度にとどまらないのではないか。物価抑制に対して今後どう対処するつもりか。国鉄運賃及びガソリン税率の引き上げは他に方法がなかったのか」などの質疑がありましたが、これに対しまして経済企画庁長官から、「貨物運賃の値上げは、過去の経験から見ても卸売物価に対する影響はなく、消費者物価に対する影響は〇・一%であるので、消費者物価の上昇率は政府見通しに大きな狂いはないと思う。最近の値上がりの中で、季節的要因によるものは別とし、需給の不均衡となっている木材や乳製品などの値上がりに対しては、緊急輸入により対処している。公共料金は当分値上げを認めない方針である」という答弁がありました。運輸大臣及び国鉄総裁からは「運賃値上げは、新しい五カ年計画の建設資金に充てるためであるが、一般会計から支出するのは、本年度から新線建設費の利子補給なども認められており、借入金も大体限度にきているので、やむを得ない程度の運賃引き上げを行なった」旨、また、建設大臣から、「道路整備計画はガソリン税という特定財源をもって充てる建前になっているので、各国の例を参考にし、物価などのはね返りの少ない程度の引き上げを行なった」旨の答弁がありました。
 さらに造船問題につきましては、「年間約五十万トンぐらいの建造目標で、どうして所得倍増計画における十年間九百七十万トンの建造ができるか。所得倍増計画は海運関係の国際収支悪化によって行き詰まるのではないか」との質疑がありましたが、運輸、大蔵、経済企画庁の各大臣から、「本年度の五十万トンは、海運業の現状から、償却前利益の建造方式をとって決定したが、本年度の建造量は何としても少な過ぎるというので、関係各省協議中であり、それに伴って金融などについても検討していきたい」旨の答弁がありました。
 公共事業関係費につきましては、「三十六年度の公共事業関係費は、道路計画などを初めとして膨大な額を予算に組んであるが、その具体的な内容や地域別配分はどうか。水資源開発公団の計画はどうなったか。また、資材、労賃の高騰、用地の取得難、建設技能者の不足等の現状で、はたして消化できるか」などの質疑がありましたが、建設、労働の各大臣から、「工事能力については、公共用地取得制度の改正、機械化の促進等により十分発揮できるものと考えており、資材等に若干の値上がりはあっても消化できる。建設関係技能者の不足に対しては、本年度は三万二千六百名の訓練を行なう予定であり、また建設技能者の養成を目的とした専門の職業訓練所も二カ所設置することになっている。道路については、五カ年以内に一級国道の全部及び二級国道の半分程度の改修舗装を行なうことになっており、今年度予算の使用方法については、予算成立後、閣議決定に付して明らかにしたい。水資源開発公団については予算に間に合わなかったが、慎重に検討中である」旨の答弁がありました。
 最後に、歳入ないし減税の問題について申し上げますが、これにつきましては、「三十五年度第二次補正後の増収の最終見積額はどのくらいか。三十六年度の自然増収額は三千九百三十億円となっているが、非常に過小見積りであることは明らかである。税制調査会の答申案作成当時より自然増収額がおびただしくふえていることから考えれば、純減税額六百四十七億円は少な過ぎはしないか」等の質疑がありましたが、これに対しましては、総理、大蔵各大臣から、「三十五年度の自然増収については八百億円程度の増収が期待できると思うが、これは経済が予想以上に伸びたためであり、三十六年度は三十五年度のようなことはないと思う。減税については大体税制調査会の答申通り実施したが、予想以上の増収分は社会保障費に回した」旨の答弁がありました。
 このほか、国連外交、日ソ、日韓問題、また防衛、地方財政、あるいは文教政策、労働災害対策、仲裁裁定実施に伴う財政措置などにつきまして熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。
 かくて、本日をもちまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して阿具根根委員が反対、自由民主党を代表して平島委員が賛成、民主社会党を代表して松浦委員が反対、参議院同志会を代表して森委員が賛成、日本共産党を代表して岩間委員が反対の旨、それぞれ意見を述べられました。
 討論を終局し、採決の結果、昭和三十六年度予算三案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。
 なお、委員会において可決された決議及び政府の発言は次の通りであります。
   炭鉱災害防止に関する決議
  本日参議院において炭鉱災害防止に関し決議が行なわれたのであるが、右決議に基く施策については、十分なる予算上、資金上の配意を必要と認める。よって政府は出来得る限り今国会中に予算上資金上の措置につき万全を期すべきである。
 右決議する。
 右の決議に対して大蔵大臣から、「ただいまの決議の趣旨に即してできる限りすみやかに予算上資金上の配意をする考えである。またその内容については現地調査の結果に基づいて措置するが、通産省から三十四億円の要求が出ているので、熱意をもって対処したい」旨の発言がありました。
 以上御報告申し上げます。(拍手)
#8
○議長(松野鶴平君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。阿具根登君。
  〔阿其根登君登壇、拍手〕
#9
○阿具根登君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十六年度一般会計予算等三案に対しまして、反対の討論をいたしたいと思うものであります。
 昭和三十六年度予算は、池田内閣として組んだ最初の本予算で、政府は、所得倍増計画の第一年度予算であるとか、公約満腹予算とか、超デラックス予算とか、そのほかいろいろな言葉で自画自賛されているのでありますが、私は、以下次の諸点より、本予算の不当であることを指摘して参りたいと思います。
 その第一は、本予算の持つ過度の刺激性と日本経済の置かれている内外の情勢についての政府の誤れる見解について。
 第二は、高度成長政策と物価の矛盾について。
 第三は、予算の配分の不当、特に社会保障費の後退について。
 第四は、公共投資と所得格差解消について。
 第五は、歳入見積もりの不当と減税について。
 第六は、防衛費を初め治安関係諸費の不当なる膨張について。
 最後に一予算編成過程における与党及び圧力団体の不当なる干渉についてであります。
 まず第一の点でありますが、昭和三十六年度の一般会計予算規模は、政府は一兆九千五百二十七億円であると申しておりますが、われわれは前二回の補正審議の際に明らかにしたように、このうちには明白に三十六年度の歳出となるものを含めており、これを合計した予算規模は一兆九千八百八十四億円であり、前年度当初予算対比四千百八十八億円の増となるのであります。この伸び率は二六・七%となり、政府の予想する国民総生産の伸び率を三倍も上回るのであります。また財政投融資計画も大幅な増加で、七千二百九十二億円を示し、さらに国家財政の膨張に伴う地方財政計画も一兆九千百二十六億円という膨大なものとなり、財政の規模といった場合は、一般会計、財政投融資計画、地方財政計画を通じ、重複分を除いた純計額で論ずべきであり、これを計算してみますと、実に三兆六千四百二十七億円となります。しかし、前年度も同様の計算をしてみますと二兆九千四百七億円で、七千二十億円という空前の膨張を見たわけであります。この予算が発表されましたとき、良識ある世論は、池田首相の積極財政の前途に危惧の念を表明いたしました。すでに爛熟期にある日本の景気の上に、さらに刺激的な膨大予算を実施することによって起こる結果は、産業界の投資意欲を一そうかき立て、無謀なる生産拡張に走らせ、機械設備の輸入や原材料の輸入がふえ、物価は騰貴し、輸出意欲は減退することを憂慮したのであります。これら憂慮された現象は、まだ予算を実施する以前の今日、すでに現実となってきておるのであります。民間設備投資の額は、三十五年度で政府が予想した二兆八千五百億円を上回り、おそらく三兆二千億円に迫ろうとしており、三十六年度は三兆五千億円あるいは三兆七千億円という勢いを示しております。これを反映して、国際収支の経常勘定が、一月九千九百万ドル、二月九千三百万ドルと、連続大幅の赤字を現出しております。政府はこの逆調を単なる季節的なものであると過小視せんとしておりますが、参議院の予算委員会に出席された山際日銀総裁の言によりましても、経常収支の赤字化の原因は、輸出の停滞と過度の投資を原因とする輸入の高水準にあるとし、事態をはなはだ重要視しておるのであります。輸出の停滞についても政府の見通しの甘さを指摘しなければなりません。池田首相は、高度成長政策を公約された後、重大化した、米国の経済恐慌、ドル危機とその防衛政策の影響についてもきわめて楽観的であり、日本経済に対する影響は少ないという見解を発表してきたのであります。しかし、事実はきわめて重大で、かりに、この春をもって米国景気の悪化が食いとめられ、立ち直りに向かったとしても、対米貿易の急速な好転化は望み得ず、他方、米国のドル支出削減政策の影響による世界の各市場の景気下向に加え、米国自体が今後三十億ドル目標に輸出増進策を打ち出しており、これは日本の輸出に大きな圧力となることは明らかであります。しかも、池田首相の考え方は、下村構想といいますか、輸入依存度を小さく見て、従って、輸出の重要性が過小に評価されており、池田内閣には積極的な輸出振興政策がないと評されてきたのであります。中共貿易の打開について、口では前向きの姿勢とか申されますが、実質は、岸内閣の中共警戒の静観主義と何ら変わるものがないのであります。以上申し述べましたように、池田内閣のこの積極財政にからむ輸出・金融政策は、いたずらに高度成長政策にこだわり、日本経済の前途を重大な混乱に巻き込むものであると断ぜざるを得ません。さらに昭和三十七年度に入りますと、生産力に対する最終消費の不足という生産過剰恐慌が発生する危険のあることは、さきにわが党の木村委員が数字的に指摘した通りでありまして、われわれは、このような事態の発生は、全く池田首相を初めとする政府当局の責任であることを強く指摘いたしておきます。
 第二点目は物価の問題であります。われわれは、政府の所得倍増計画が発表されましたとき、それがいかなる物価水準を前提として立案されてあるかに深甚の興味をもって検討をいたしたのでありますが、そのどこにも物価がどうなるかを示しておりません。物的生産がかりに政府の言う通り増加するといたしましても、その間に物価が上がれば、実質所得は上がらないことは言うまでもありません。政府は、昨年秋の総選挙に臨むにあたり、公共料金は上げない、消費物価の安定に努力すると公約し、あたかも所得倍増計画が物価騰貴を伴わずして実現し得るような幻想を国民の間にまき散らしました。しかるに、総選挙が終わり、予算編成期に入ると、突如として、国鉄運賃の引き上げや郵便料金の引き上げ、社会保険医療費の引き上げ、そしてガソリン軽油税率の引き上げ等々を続々と発表し、この政府の態度を眺めて、電力、私鉄、水道料金、ガス料金その他消費物資、サービス料金が一斉に値上げの態勢となりました。これこそ資本主義下の所得倍増計画の本質的矛盾を示すものにほかならぬものであり、政府は、世論の反撃に驚き、ろうばいして、いわゆる物価対策なるものを打ち出したのであります。しかし、政府みずから物価引き上げの範を示しながら、民間の価格料金の引き上げ要求を長く押え切れるものでは断じてありません。政府が真に価格安定を実施しようとする決意があるならば、政府事業の料金値上げは、一般会計の負担においてでもこれを抑制すべきであります。政府事業の料金引き上げは、民間に率先すべきではなく、民間のあとから最小限の引き上げにとどめる努力こそ必要とされるのであります。政府の言い分では、農産物やサービス料金の値上がりは所得均衡上やむを得ないのだと聞こえますが、それならば、他に積極的な物価を下げる政策がなければ、物価の安定はあり得ないことになります。物価を引き下げ得るものは、政府の専売品、高率の消費税や物品税を課しているもの、カルテルを結んで独占価格の低下をはばんでいるもの等でありますが、それらについて池田内閣は何らの考慮を払おうとはしておりません。この態度こそ、池田内閣が国民大衆の中に立っているか、一握りの独占資本の利益擁護の立場に立っているかを、明白に語るものであると信じます。そうして、このままでは所得倍増計画とは物価倍増計画の異名にほかなりません。
 第三点といたしまして、本予算の内容に入りまして、政府が三本の柱と称します減税、社会保障、公共投資への資金配分の問題であります。金額で申せば、減税が六百四十七億円、社会保障費の増が六百三十六億円、公共投資の増七百七十八億円となっており、公共投資の伸びに対し、減税と社会保障の著しい後退がその特徴とされておるのであります。池田内閣は、当初社会保障費の増額を最優先とし、一千億円をこれに充てるというふれ込みでありましたが、その後、だんだんと後退を続けて、わずか六割程度となっています。もちろん、これだけの増額でありますから、部分的には社会保障前進の跡を認めないわけではありません。しかし、今回増額せられた多くの部分というものは、独占資本のための強制貯蓄にすぎない拠出制国民年金制度発足に伴う経費とか、医療給付と関係のない保険医療単価引き上げによる増加経費が主であって、社会保障サービスの実質的改善に寄与する部分はきわめて僅少なのであります。憲法違反であると判決されました生活保護基準の引き上げにいたしましても、厚生省の主張した二六%引き上げは認められず、一八%にとどめられました。しかして、その理由は、二六%引き上げを認めることの財政負担というより、その引き上げによる失対賃金の引き上げ、公共事業の賃金、民間企業の労働賃金への影響をおそれて上げられないのだと説明しているのであります。言いかえれば、政府や独占資本の低賃金維持政策のため、生活困窮者の人権を無視してもかまわないという政策なのであります。(拍手)所得倍増計画では、所得格差解消のため、低額者の所得は三倍にも四倍にもするという池田首相の約束は、一体どこに行ったのでありましょうか。また現在の物価騰貴の状況や独占資本拡大のための積立金制度という重大欠点を持つ拠出制年金の実施については、われわれは、この根本的改善が施されぬ以上、強制実施に強く反対するものであります。
 第四点といたしまして、本予算において最も重点的に拡大された公共投資の問題であります。道路、港湾、住宅、国土保全、そのほか社会資本の充実の必要については、われわれもよく認めるところでありますが、一般会計の計上分、地方負担分、これに財政投融資の一部を加えれば一兆円を上回る巨額となるのであり、その施行は、一歩を誤れば、賃金、物価、土地価格の騰貴をあおる結果となり、予算の消化不能のおそれがあるのであります。われわれは、この莫大な公共投資の目的について、生産資本の効率を発揮させることが肝要と考えますが、同時に、かかる公共投資の実行により、低開発地域の生産基盤を強化し、もって所得水準の地方格差の解消に努むべきであると考え、予算審議にあたっても、本年度実施事業の具体的細目、地方的配分計画を示すことを要望しましたが、政府は何ら誠意ある答弁を行なわず、政府の予算要求が具体性を欠き、単なる派閥間の予算つかみ取りによって決定されたのではないかと疑わしめる点が多いのであります。地域格差の問題については、倍増計画では、太平洋ベルト地帯計画を優先せしめるように書かれており、後進地域の開発は、計画の後期あるいは次の十カ年計画で考慮することになっていて、地域格差解消の誠意は何ら認めることはできないのであります。さらに農業投資についてみれば、前年度より七十三億円ばかりの増額となっていますが、政府の農業基盤強化に対する考え方は、わが国の食糧自給があたかも生産過剰に瀕しているような幻想にとらわれ、全く熱が入っていないと言えるのであります。過日、参議院の予算委員会で並木公述人の指摘されたごとく、国民の所得水準の向上に伴い、食糧の画期的増産が必要であり、それには農地の造成と生産性の高い農家を育成することが急務と指摘されました。池田首相は、農業生産の五割増し、農家人口の半減で、農民の所得は二倍になると、簡単に言いますが、国家の農業投資を強化せずして、どこに経営規模の拡大や生産性の向上を期待し得るでありましょうか。池田首相の農業理論は、第二次産業拡大のため農村から労働力を引き抜くだけで、あとには老人と婦人が残され、日本農村の荒廃を招くものにほかならぬのであります。(拍手)
 第五点として、歳入見積もりの誤りと減税の過小であることを指摘したい。昭和三十五年度の歳入の見積もりに際し、政府が重大なる誤りを犯したことについて、われわれは再三指摘したところであり、首相も、ついに、歳入を過大見積もりすることも過小見積もりすることも、ともにいけない、これからは、あとう限り正直に歳入見積もりをやるようにすると言明いたしました。しかるにかかわらず、三十五年度第二次補正以後、なお八百四、五十億円の自然増収の出ることは、もはや明白であり、この三十五年度租税収入実績を基礎とするならば、三十六年度は、現税制のもとに最小限一兆八千五百億円の収入をあげることは可能であります。従って、前年度の当初と比較した自然増収額は、三千九百億円ばかりではなく、実に五千百億円前後となるわけであります。これに対して、今回提案されました減税はわずかに六百四十七億円で、自然増収額の一二%にしかすぎないのであります。毎年の自然増収額と減税とのつり合いは、従来の平均値によりますと、大体その三分の一ぐらいが妥当なところとみられております。政府が税制調査会に減税案の立案を諮問したころの明年度自然増収額というものは、せいぜい二千五百億円前後であったでありましょう。これに対して八百数十億円の減税案を答申した審議会を責めることはできませんが、今や五千百億円の自然増収となることの明らかな今日、わずか六百億円の減税でお茶を濁そうとする政府の態度は、全く不可解であります。われわれは、歳入の実情にかんがみ、もっと大幅の減税を要求する権利があると考えるのであります。今かりに、計上予算額以上に増収の確実な千二百億円が自由に使えるとして、五百億円を減税に充当し、四百億円を政府事業の値上げ回避の経費に充当し、残る三百億を社会保障費に使用するとしてみましょう。減税の拡大により、基礎控除の引き上げと相当額の間接税の引き下げが可能であろうし、鉄道運賃の引き上げはやらずに済み、医療費の引き上げによる患者負担の増加は避けられるのであります。われわれがさきに指摘した三十六年度予算の過度の刺激性や物価騰貴の危険は、このような措置をとることにより抑制され、拡大される生産に最終消費の購買力がついていき、物価騰貴に対する対抗措置が講ぜられるのであります。
 第六点として、防衛費を初め、公安調査庁費、内閣の情報調査費等、いわゆる治安費が今回もまた二百十一億円の増加で、千八百九十九億円の巨額に達していることであります。防衛庁費につきましては、わが党は、自衛隊の違憲性という立場から、これを認めないのでありますが、その論議はしばらく別としましても、三十六年度防衛庁費が二百億円も膨張する合理性を疑うものであります。自衛隊の第一次整備計画は三十五年度に完了しているはずであります。しかも、これに続く第二次整備計画はまだできていないのでありますから、無計画なでたらめ拡充予算の要求というよりほかありません。
 人員をとってみても、陸上自衛隊は、現在十七万人の定員に対し二万人をこえる欠員があるというのに、なお千五百人の増員を要求したり、航空機は整備されても、パイロットが間に合わず、目標に当たらない小銃、動かない戦車、弾薬や油の備蓄もない軍隊というものが、はたして何の役に立つというのでしょうか。これは保守党の諸君にも十分御考慮を願い、大削減を加えて、他の有用な費途に使用すべきであると思います。
 最後に、今回の予算編成過程について、一言政府並びに与党に厳重なる警告を発したいと存じます。それは、与党たる自民党の予算編成に対する介入が度を過ぎており、その間に、与党内の諸派閥の争いとか、それに乗じた外部の有力な圧力団体が暗躍し、予算編成権は、はたしてどこにあるかが疑われる状態にあります。その結果が、財政法違反の措置とみられる補正予算の提出を余儀なくせしめたり、つかみ予算や、ひもつき予算となるのであります。しかも、このようなぶんどり競争で一たん予算額がきまりますと、国会における予算審議の段階で、いかに適切な批判が行なわれ、改善の提案がなされようとも、絶対これに耳を傾けようとはされないのであります。一体、数十名の与党派閥や外部の圧力団体には実質的に予算修正権があって、国会の三分の一を擁する野党の合理的な修正提案にあえて耳を傾けないという態度は、はたして民主的と言えるでありましようか。(拍手)
 私は以上の諸点をあげて、政府並びに自民党諸君の反省を促し、全日本の勤労大衆の名において、昭和三十六年度予算三案に断固反対の意思を表明するものであります。
 以上をもって反対の討論を終わります。(拍手)
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#10
○議長(松野鶴平君) 平島敏夫君。
  〔平島敏夫君登壇、拍手〕
#11
○平島敏夫君 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十六年度一般会計予算外二件に対して、賛成の意を表明せんとするものであります。
 わが自由民主党は、昨年秋、国民所得倍増計画を策定し、経済の高度成長を維持することによって、将来十年間に国民所得を現在の二倍以上に増大させるという、意欲的な構想を発表いたしましたが、この政策は国民の間に非常な共鳴を呼び、その結果、昨年十一月の衆議院総選挙におきましては、わが党は国民の圧倒的な支持を得て衆議院の多数を制することができました。このことは御承知の通りであります。昭和三十六年度は、経済のこの高度成長政策実施の第一年度に当たりますので、従って、昭和三十六年度予算は新政策実施の初年度にふさわしい内容を盛ったものでなければなりません。
 政府提出の新年度予算の内容を検討いたしますと、まさにこの要請にこたえるものであることが明らかであります。昭和三十六年度一般会計予算の規模は、前年度当初予算に比べて三千八百三十一億円を加えて一兆九千五百二十七億円という大きなものであり、前年度当初予算に比し二四・四%の増加率であります。また、財政投融資計画も二三%を増加して七千二百九十二億円に達しております。この大型予算に対し、われわれは、経済の高度成長を目ざす政府の積極的な意欲を読み取ることができるのであります。しかも、一見過大な膨張であるかのようでありますが、収支は完全に均衡を保ち、積極的にしてしかも健全な財政、これが新年度予算の特色であります。
 これに対しまして、昭和三十六年度予算は、税の自然増収を精一ぱいに見積り、歳出面ではこれを全部はき出しているから、健全とは言いがたい、いわゆる景気の過熱を引き起こし、輸入の激増、国際収支の悪化から、政策の転換をはからねばならない危険性があるのではないかというような非難を耳にいたしますが、私はこれは杞憂にすぎないと思うものであります。なるほど、昭和二十八年度また昭和三十二年度にかような事態を経験いたしましたが、当時はわが国経済の体質が弱く、底が浅いためであったのでありまして、過去数年間の産業の合理化、近代化によって、日本経済の体質は著しく改善され、はるかに底の深い根の固いものとなっていることを見のがしてはなりません。ここ数年来、日本経済は安定した成長を続け、昭和三十五年度の国民一人当たりの所得は、前年度に比し実質一一%以上の増加となると推定されております。しこうして、この趨勢は昭和三十六年度にも続いていくことが確実に予想せられるのでありまして、過失一両年の実績にかんがみるとき、政府が発表している昭和三十六年度の経済成長率の見通し実質九・二%は、むしろ控え目な数字であって、実際はこれを上回るものと思われるのであります。今回政府は、新年度予算の編成に際して、わが国経済の実力を適正に評価して、経済の実勢に即応した予算の編成を行ないました。私はまずこの基本的な態度に対して賛意を表するものであります。
 次に私は、予算の内容に立ち入って、その重点とするところを検討してみたいと思います。予算の重点は、第一は平年度一千億円以上の減税であり、第二に社会保障の充実であり、第三に公共投資の大幅な拡充であります。
 まず、減税につきましては、政府は、国税、地方税を通じて、平年度約一千四百三十億円の減税を行なうことといたしております。国税の初年度の減税額は、所得税六百三十億円、法人税二百八十五億円、その他通行税等十億円、計九百二十五億円の減税と相なります。所得税におきましては、妻は単なる扶養家族ではなく、夫の働きの一部は妻の貢献によるものとの見方に立って、妻の座を高めるために配偶者控除を新設し、これによって妻も夫と同じく九万円の基礎控除を受けることとし、扶養家族の控除額を引き上げ、給与所得者について一万円の定額控除を新設し、ことに中所得者層の所得税負担が過重である点にかんがみ、年七十万円以下の課税所得に対する税率の引き下げを行なうこととしたのであります。また、事業所得者につきましても、白色申告者に新たに一人七万円の専従者控除を認め、青色申告者については、これまで一律八万円であった専従者控除を改めて、二十五才以上の家族従業者は十二万円に、二十五才未満の者も九万円に引き上げております。こうした措置によりまして、家族従業者の多い農家や中小企業者の税負担は、かなり軽減されるのであります。このように見て参りますと、このたびの税制改正による減税の恩恵にあずかることの最も大きいのは、年間所得三十万円から四、五十万円の比較的低い所得者層でありまして、経済の高度成長政策の一環である所得格差の解消に関する配慮が税制の面にも現われていることを認め得るのであります。
 次に、社会保障につきましては、単なる救貧の対策から防貧の対策へと質的な転換が要請せられ、国民生活の底を引き上げることが社会保障の中心的課題となっております。もとより、「ゆりかごから墓場まで」という理想郷を実現するには、今後なお幾多の改善を要するでありましょうが、国民生活の底を引き上げるという方向に政府が大きく踏み出したことは多とせねばなりません。新年度の予算においては、生活保護、社会保険、失業対策などの社会保障関係費は二千四百六十六億円が計上され、三十五年度に比べて六百三十六億円の増加となっております。その増加率は三四・七%に及び、画期的な増額と言えましょう。まず、生活保護の面におきましては、保護基準が一八%引き上げられたほか、期末一時扶助も五百円から千三百円に増額され、住宅扶助、教育扶助、生業扶助も改善されております。保護基準引き上げのほか、生活保護を受ける者が働いて収入を得た場合に扶助費から差し引く金額を少なくし、働けばかえって損だというような状態を改善することにいたしております。医療保障の面では、結核と精神病に対する給付を改善することとし、世帯主の結核や精神病患者に対する国保の給付率現行五割を七割に引き上げたほか、重症患者で命令によって療養施設に入った者に対しましては、医療費の全額を公費負担としております。医療保障のこのような強化によって、これまで経済的事情から家庭に放置されていた結核患者、精神病者なども、無料で治療が受けられることとなり、そうした家庭にとっては、非常な負担の軽減と相なります。また、母子対策といたしましては、死別母子世帯と同じ困難な条件にありながら、生別の母子世帯は手当等の保護を与えられなかった不合理を改め、生別母子世帯に対する児童扶養手当の制度を創設したことは、母子福祉制度の大きな進歩であります。失業対策においても、日雇労務者の給与単価を一五・六%引き上げ、また、産業構造の変化により離職者を出す産業のあることを考慮いたしまして、広域職業紹介によって、労働者の地域間、産業間の移動を容易にし、雇用を促進するため、雇用促進事業団を創設することも特筆に値するものであります。私がここにあげました諸点は、広範な社会保障制度の一部でありますが、これら二、三の例示によっても知られる通り、昭和三十六年度の社会保障が従来に比して格段の飛躍を遂げることは否定できません。
 昭和三十六年度予算の第三の柱は、公共投資の拡充であります。申すまでもなく、公共事業は、通常の企業的採算に乗らない治山、治水、道路などの事業を、国や地方団体の財政でまかなうことによって、経済成長の基盤をつちかうものでありますが、同時に、次々と有効需要を作り出すという点も見のがすことはできません。経済成長政策の一環として公共投資を拡充することは、きわめて適切な措置であります。新年度予算の公共投資関係費は三千五百七十八億円で、予算総額の一七・七%に該当し、これを前年度当初予算に比較いたしますと、六百八十九億円、二五%の増加であり、しかも、昭和三十五年度には災害が少なかった関係上、災害復旧費において九十三億円が減額されておりますので、実質的には七百八十二億円の大幅な増額となっているのであります。さらに、財政投融資からは、その三〇・六%に当たる二千二百三十二億円が公共事業に投ぜられることになっておりますので、これを加算いたしますと、昭和三十六年度の公共事業の規模は五千八百十億円の巨額に達するのであります。公共事業のうち最も重点とされているのは、道路整備事業であります。一兆円の規模をもって昭和三十六年度から実施された道路整備五カ年計画は、その後、自動車輸送の激増と経済成長政策の要請から見て、不十分であることが明らかとなりましたので、計画を再検討した結果、二兆一千億円の規模を持つ新五カ年計画が樹立せられました。この計画が完全に遂行せられましたならば、一般公共道路のうち、一級国道は五カ年間に、また、二級国道は次の五カ年計画と合わせて十年間に改良され、舗装もほぼ完成し、欧米諸国に比し著しく見劣りのするわが国の道路も一応恥ずかしくない程度には整備せられることとなりましょう。道路と並んで港湾の整備にも、また新たに五カ年計画が樹立され、二千五百億円の規模をもって三十六年度から実施に移されることになり、従来の特定港湾施設特別会計を改組拡充して、全港湾事業を含む港湾整備特別会計が設けられ、一般会計からの繰り入れも所要の増額を行なうこととしております。住宅建設の分野におきましても、一般会計においては、公営住宅を一種、二種合わせて前年度より三千戸を加えて五万二千戸分の予算を計上し、財政投融資においても、住宅公団の建設戸数を二千戸増の三万二千戸とし、住宅金融公庫の融資戸数を一万戸引き上げて十二万戸とするなと、いずれも拡充をはかり、「一世帯一住宅」の理想実現に向かってさらに一歩を進めているのであります。公共投資に関連いたしまして、地域間の格差是正という見地から特筆すべきことは、後進地域の開発に関する公共事業について、国の負担率または補助率を引き上げることとしている点であります。このことは、指定地域の新設または増設される工場について特別の償却を認めるという、地方の工業開発に対する税制上の優遇措置と相待って、地域間の格差を是正するに寄与するところ少なからざるものがあると思われます。
 以上、私は、新年度予算の三つの柱と称せられているものについて、例示的に若干の問題を検討して参りましたが、これらを通じて明らかな一つの特徴は、中小所得者の福利の増進、所得格差の是正、そして一般に国民生活の向上に関する配慮がこまかく行き渡っているという点であります。また、財政投融資において、厚生年金と国民年金の積立金の二五%を社会福祉部門へ還元融資することとしたのを初め、投融資総額の半分以上を住宅、上下水道、清掃事業、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業などに振り向けることとしているごとき、また、一般会計と財政投融資を通じて、中小企業、農林漁業のための経費資金が大幅に増額されているなど、いずれも中小所得者の福利増進、国民生活の向上に関する手厚い配慮を示すものであります。経済成長政策遂行上の重要問題は格差の是正であります。昭和三十六年度予算においてこの点に関する配慮が十分なされていることを、私は心から歓迎いたすものであります。
 以上、経済成長政策実施の第一年度の予算として、昭和三十六年度予算はきわめて適切妥当なものであると認めまして、一般会計予算外二件に賛意を表するものであります。
 これをもって私の討論を終わります。(拍手)
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#12
○議長(松野鶴平君) 松浦清一君。
  〔松浦清一君登壇、拍手〕
#13
○松浦清一君 私は、民主社会党を代表して、昭和三十六年度予算案に対し、反対の討論を行ないます。
 一兆九千五百億円という膨大な政府案の内容は、前年度に比べて、一般会計予算において約二四・六%の膨張であり、財政投融資においては二二・七%の膨張であります。これを一言で言えば、池田内閣の所得倍増計画の方針に沿い、大企業の保護と経済拡大のために精根を尽くされた大予算であります。それにもかかわらず、私どもはこれに賛成ができないのであります。私どもの言いたいことは、国の予算規模がいかに拡大されようと、それが国民負担の限度を越えず、その指向する考え方が大産業の育成に偏重せず、低所得層の生活水準を引き上げ、国民所得の格差をなくし、社会福祉の増進を中心としてなされる場合には、このような積極的な予算膨張も私どもは進んで賛成することもあるのであります。しかしながら、この予算案の性格は、わが国経済の弱点たる二重構造の矛盾を解決せず、社会保障費は不完全であって、減税もまた公約に届かず、貿易の自由化も準備が不足であります。
 以下、具体的に反対の理由を申し述べたいと存じます。
 反対の第一は、減税と物価の関係についてであります。池田内閣が公約した一千億円という減税は、所得税を中心として平年度正味わずかに七百四十億円にとどまったことは、予算編成期における自然増収の見込み二千五百億円が三千九百億円にふくれ上った今日においては、公約無視もさることながら、全く問題にならないのであります。その上、政府は、揮発油税の一五%引き上げ、地方道路税の一四・三%の引き上げ、軽油引取税三〇%の引き上げ、さらにまた国鉄運賃を初めとする一連の公共料金の値上げ促進は、物価値上がりの要因を政府みずからが作るものといわなければなりません。このことが減税や所得倍増計画の実現に先行して、国民生活を異常に圧迫しているのであります。
 反対の第二は、国際収支の関係であります。貿易の自由化や米国のドル防衛政策がわが国の経済に悪影響を与えないと、しばしば言明されながら、一方、実はアメリカの景気後退、西欧諸国の経済の動向等の影響を受け、他方、国際的な輸出競争の激化はわが国の輸出をはばみ、本年一月、二月と引き続いて国際収支は悪化の一途をたどっているのであります。このような輸出の後退に反して、所得倍増の手形は、いたずらに内需を刺激し、必要以上に消費景気をあおり立て、国民の所得と消費の均衡は破れ、やがて生産過剰、供給過剰を来たし、経済の行き先に大きな不安を感ずるのであります。私どもはこのような政府の国際収支や経済の見通しに対して信がおけないのであります。政府はみずからの失敗を認めて、三十六年度予算や所得倍増計画の改定を行なうべきであります。
 反対の第三は社会保障についてであります。三十六年度の社会保障関係予算は総額二千四百六十六億円で、その内容は、社会保障費、生活保護費、社会福祉費、失業対策費、国民年金費など、三十五年度当初より六百三十六億円増額されております。社会保障費の増額はまことにけっこうであります。しかし問題は、これだけふえることによって、社会の下積みになっている低所得層の生活がどれだけよくなるかということであります。この増額で潤おったのは、低所得層よりむしろ圧力団体であると疑われております。たとえば保険医療費の一〇%引き上げは患者の一部負担をますます過重にする結果となり、現在の一部負担でさえも是正さるべきであるにもかかわらず、それがさらに高くなったのでは、被保険者たる国民全体はますます困るのであります。医療費の引き上げがよし合理的であったといたしましても、それと同時に、被保険者が繰り返し要望しておりました患者の一部負担をこの際やめるべきであります。また生活扶助費についても、物価の値上がりに対応して適正額に是正すべきであるにもかかわらず、当初厚生省の要求した生活扶助基準二六%の引き上げは、大蔵省の非情な切り捨てに会ってわずかに一八%のアップにとどまり、これでは、被保護者六十万世帯、百六十万人の人たちは、物価の値上がりや一般的な生活水準の高まりの最低線に追いついていけないのであります。さらにまた、長い間のこの人たちの悲願であった生別の母子世帯や孤児たちに対し、新たに手当が支給されることとなり、この人たちに一点の光明を与えたことは、まことにけっこうであります。しかるに、これがわずかに予算額二億四千万円、しかも三十七年からの実施とあっては、福祉社会の建設を公言する政府の施策としては全くいただきかねるのであります。以上のごとく、一、二の点をとってみても、予算規模の大きさに比べまして社会保障はあまりにも小さく、悪評高い拠出制国民年金制にしても、じっくり考え直して出直すべきであると思うのであります。
 第四の反対理由は、公共投資並びに公共事業予算の編成についてであります。政府は、一般会計予算の二割に近い三千五百七十九億円、これに財政投融資からの二千二百三十三億円を加えると、五千億円をはるかにこえる金額をこれに充当いたしております。公共事業の中心は道路建設でありますが、政府案の特徴は、建設省の道路整備五カ年計画の一兆円を全面的に改定して、三十六年度を初年度とする新五カ年計画で二兆一千億円といたしております。国費負担の一兆四再六十一億円のうち、揮発油税九千六百一億円、一般財源八百六十億円でまかなうことになっております。公共投資を揮発油税のような大衆税的性格の税金にその原資を求めることは、まことに賛成ができぬのであります。また、先に補助金制度研究懇談会が指摘したように、一級国道の整備を固執するの余り、最も緊急度の高い工事が不当におくれているなど、予算規模のみ大きくても、その予算執行の効果についてきびしい反省のない点について、私どもはまず疑問を感ずるのであります。また、これが原資として揮発油税の税収を大幅に見込んでおるために、一たび景気の変動が起こると財源に不足を生じ、公債を発行する等の危険性をはらんでおるのであります。さらに、現在の値上がりムードが経済情勢の変化を生み出しまして、計画の規模も再び練り直さなければならぬ不安定性も生ずるのではないかと危惧の念を感ずるのであります。
 第五は、防衛費の関係についてであります。この予算の総額は総予算の一割に近い一千七百七十七億円にふくらんでおりますが、本年度の予算も昨年度と同様に膨大な国庫債務負担行為や継続費が計上され、その額は三百億円以上にも達しておるのであります。このことは、三十七年度の防衛費が自然に三百億円以上増額することを意味し、防衛力増強は来年度もまた必至の情勢にあります。立国の基本を、軍隊を増強して適時臨戦体制を整備するに置くか、または、社会保障制度の充実を一点の目標として平和な福祉国家の建設に置くかは、もはや議論の余地は心いのであります。力の均衡の上に平和を求めようとする論者は、原爆の洗礼という世界に比類のない日本の惨禍を忘れ、またしても軍備の拡充に狂奔しているのであります。私どもが過去の歴史を振り返ってよく考えなければならないことは、明治の初年、日本に近代的な陸海軍を創設したとき、だれ一人として、後世、軍人がこの国の政権を掌握し、中国に軍を進め、太平洋に国運をかけるというようなことを考えた者はなかったことであります。自衛に名をかり、自衛隊を年ごとに大きくして、再び悔いを後世に残してはならぬのであります。
 第六に、農政国会といわれるこの国会における農林関係予算についてであります。政府は、農林行政に力点を置いた予算だと称し、前年度に比べて四一%もふやしたと説明されておりますが、政府の総予算の伸びが前年比二四%増であるので、農業政策はいかにも充実したように見えるかもしれません。しかし、よくこの予算を分析してみると、その伸びた大部分は食糧管理特別会計への繰り入れ三百九十億円であります。言うまでもなく、食糧管理特別会計の赤字は政府の食糧行政の不手ぎわの結果であって、純粋な意味での農林関係予算とは言えないのであります。これを除くと、農林予算の伸びは、政府総予算の伸びに比べて二%も低く、農林予算はむしろ後退したと言うべきであります。また、その内容は、農業経営近代化資金三十三億円、麦作対策四十億円、畜産物価格安定事業団に要する費用五億円、大豆のAA制に伴う国産大豆保護対策費三十億円という内容でありますが、農業経営近代化資金はともかくとして、麦対策、畜産事業団、大豆のAA制等、これらの目新しい、また額も大きい予算は、すべて政府の農業基本法案が指向するところの、わが国の農業を貿易自由化の荒波にさらし、農民六割を切り捨てようとする方針のもとに編成されているのであります。私どもは、農業基本法案が持つべき内容は、農民と他の諸階層との生活水準の格差是正、農業と他産業との生産水準の格差是正に最重点を置くべきであると考えるのであります。明年度の農業予算こそは、まさにその第一年度予算であるべきにもかかわらず、政府案は、選択的拡大の名のもとに、自由化促進予算を編成しているのが最大の特徴なのであります。すなわち、麦予算は国内麦の価格引き下げと買い入れ制限を実現するための費用、大豆のAA制予算は国内大豆を値上げし外国大豆を自由化しようとするための予算なのであります。また、日本農業の唯一の成長部門として最も資金を要する畜産物の価格安定対策がたった五億円とは、ジェット機二機分にも当たらないのであります。日本国民の約四割を占める農民に対する予算額があまりにも少な過ぎる点こそは、政府が農民のための農業政策を真剣に考慮してない証拠であります。
 私ども民社党が、明年度予算をいかに編成すべきかについては、すでに衆議院段階において党の組みかえ動議に説明をいたしてありますから、ここでは繰り返して申しません。
 私が最後に申し上げたいことは、政府案は、せっかく豊富な財源に恵まれながら、国民の血税を大企業保護につぎ込み、税負担以外においても国民の負担を重加し、しかも国際収支を悪化する方向に向けられております。政府は今や率直に、所得倍増計画と明年度予算編成について、みずから再検討すべき時期に直面をいたしていると思うのであります。
 以上をもって私の反対討論にかえます。(拍手)
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#14
○議長(松野鶴平君) 森八三一君。
  〔森八三一君登壇、拍手〕
#15
○森八三一君 私は参議院同志会を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和三十六年度一般会計並びに特別会計予算ほか一件に対し、以下申し上げます諸条件について政府に強い要望を付して、原案に賛成するものであります。
 まず、その第一点は、予算規模の大きさの問題でありますが、三十六年度一般会計予算の規模は一兆九千五百二十七億円であります。さらに、昭和三十五年度予算補正第一号の公立中学校の校舎整備費四十億円、並びに同予算補正第二号の一般会計から産業投資特別会計へ繰り入れました三百五十億円は、実質上三十六年度予算のうちに包含さるべきものであります。なお政府は、公労協に対する仲裁裁定並びに炭鉱災害などに関して補正予算を組まなければならぬでありましょうから、かくては、三十六年度一般会計の歳入歳出の規模は優に二兆をこえる超大型予算とならざるを得ないのであります。しかも本年度予算には多くの景気刺激的要因を包蔵しております。よって政府は、三十六年度予算の執行にあたりましては、特に本年下半期における財政の運営にあたり、景気の過熱を避けるため、極力弾力的な運用を行なう心がまえが厳に必要であると思います。
 第二点は、最近における諸物価騰貴の趨勢に関してであります。この二十九日に日本銀行が発表したところによりますると、三月中旬の卸売物価指数は、本年初頭に比べて二%と大幅に上昇いたしており、三十三年十月の底値に比べますれば実に七・九%の値上がりとなっております。また、同時に発表されました小売物価指数は一〇八・五でありまして、前月のそれに比べて実に一・二%上昇しております。これに対し政府が繰り返し表明された見解は、これらの値上がりは主として季節的要因に基づくものであるから心配はないということでございます。また先般は、これが対策として、自今、公共料金の値上げを停止する措置がとられております。しかしながら消費者物価の値上がりは、こういう手段だけでは容易に抑制し得るものではありません。これらは一種の心理的なブームを形成して、次第に物価全般に漸騰の勢いを醸成するものであります。しかも、なさなければならぬことではありまするが、公労協の仲裁裁定が実施されますれば、それに引き続いて一般公務員のベース・アップが必至となりまして、さらにまた民間給与の賃上げがこれを追っていくでありましょう。勢いコスト・インフレを招来する危険はまことに明らかであります。政府は、昭和三十六年度予算の執行にあたり、物価の値上がり抑制について万全の対策を用意されんことを、この際、強く要望しておきたいと存じます。
 第三点は、国民負担の軽減についてであります。政府は、三十五年度の自然増収を当初二千八百億円と見込んで、一千億の減税を実施すると称しておりましたが、結局、所得税において六百三十億円、法人税において二百八十五億円、これに通行税等の十億円を加えて、計九百二十五億円の減税ということになりました。しかし、一方において、揮発油税、関税等の引き上げが行なわれ、それによる増税二百七十七億円を差し引きますると、実質的な減税はわずかに六百四十八億円にとどまっております。しかもその後自然増収は四千億円に達しております。あれこれを勘案いたしますると、三十六年度における減税は、まことに低きに失すると言わなければなりません。すでに税制調査会は、国民負担は国民所得の二〇%以内にとどむべきであると答申をいたしております。これに対し、三十六年度の国民の税負担は二〇・七%でございまして、政府としては、さらに一そう国民負担の軽減について格段の努力を払うべきであろうと思います。
 第四点は、米国のドル防衛強化のわが国経済に及ぼす影響でありますが、最近これを軽視する傾向がかなり顕著に現われております。しかしながら、これを軽視して安易な財政運営をとることは、まことに危険であると言わねばなりません。政府は、三十六年度予算の執行にあたっては、海外経済の動向と国民経済の情勢とを慎重に比較検討しつつ、弾力性ある運用に遺憾なきを期さなければならぬと存じます。
 第五点として、三十七年度以降の予算編成についてでありまするが、本年度予算が予想外に膨張いたしましたその結果、三十七年度以降の予算編成はきわめて困難であります。同時にまた、これを縮小いたしますることは、もはやほとんど不可能であると言わなければなりません。最近、政府与党の一部には公債発行論が行なわれておりまするが、これはまことに安易な考え方でありまして、政府は、将来の財政運営に関し、さらに慎重な考慮と真剣な努力とを払わなければならないと思います。
 最後に、第六点として、私は再三この本会議場において政府に御注意を申し上げましたごとく、予算編成の過程に見られる乱脈さは、まことに目に余るものがございます。ここにわざわざ憲法第七十三条を引用するまでもなく、予算編成権の内閣に属しますことは明らかであります。しかるに、最近の事例は、しばしばこれがあたかも実質的には与党が編成しているがごとき観を呈し、しかもその間に、選挙との関連もあってか、多くの圧力団体の暗躍跳梁が行なわれますことは、まことに遺憾の限りでございます。政党政治下とはいえ、政府は、今後内閣の予算編成権の確保並びに予算編成の公正に関し、格段の努力を払わねばならぬものと考えます。同時にまた、予算の執行にあたり、従来しばしば不正不当の乱用が摘発されましたが、会計検査院の検査報告によりますれば、被摘発件数の次第に逓減して参っておりますることは幸いでございまするが、しかしながら、なおいまだこれが跡を断たぬことは、まことに遺憾しごくと申さねばなりません。三十六年度予算の執行にあたりましては、政府はさらに一そう峻厳なる戒心が必要であると思います。
 以上の六点に関し、政府の誠意ある善処を強く要望しまして、私は本予算原案に賛成いたすものであります。(拍手)
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#16
○議長(松野鶴平君) 岩間正男君。
  〔岩間正男君登壇、拍手〕
#17
○岩間正男君 私は、日本共産党を代表して、昭和三十六年度予算案三件に対して反対するものであります。
 今や、われわれは、一兆九千五百二十七億円の本予算案の区々たる細目と金額が問題であるのではありません。私がまっ先に指摘したいことは、本予算案は、すでにその編成の過程において、そして参議院において成立せしめられようとするそのときに、予算案のよってもって立つ基盤そのものが大きく動揺し始めているという事実であります。池田内閣のいわゆる新政策の最大眼目は、アメリカ帝国主義との結託を深め、新安保条約を実現せんとするものであることは、天下周知のことであります。しかしながら、その新安保条約が対象としている地域全体にわたって深刻な変化が生じており、事態はまさにアメリカ帝国主義と池田内閣の思惑とは全く反対の方向に発展しているのであります。南朝鮮では、今やアメリカ帝国主義のくびきを脱して、南北の平和的統一をみずからの手でたたかい取ろうとする朝鮮人民の偉大な闘争は、燎原の火のごとく燃え盛っており、かいらい張勉内閣はまさに危殆に瀕し、これにてこ入れしようとする池田内閣と日本独占資本は、みごとなる平手打ちを食らったのであります。ラオスにおける事態の発展は、世界の平和愛好諸国民に支持され、ジュネーブ協定の原則を実施しようとするラオス人民の闘争によって、アメリカ帝国主義の干渉は次々に失敗し、今やケネディ大統領の声明とSEATO理事会の決議も、いたずらに空虚なる響きを伝えるのみであります。この事態を見抜けず、ラオスに武器弾薬を送り込み、日本をアメリカの軍事基地として許した池田内閣は、日本国民を危険にさらしているだけでなく、アジア諸国民からの新たなる不信と憎悪を買ったのであります。南ベトナムにおいてもまたしかりであります。世界と極東におけるこのような事態の急速な発展の中で、中国問題もまた、アメリカ帝国主義と池田内閣の二つの中国への陰謀を越えて、正しい解決に向かって日増しに進んでいるのであります。かくして、極東におけるアメリカの従属基地諸国の人民は、今やアメリカ帝国主義と池田内閣に対する共同のたたかいに立ち上がっており、この力は池田内閣の本予算作成の基礎たる施政の根本方針の実現をはばみ、これに大きな打撃を与えたのであります。
 翻って国内を見れば、池田内閣が所得倍増計画などと称し、社会保障、減税、公共投資を予算の三大支柱として、日本の経済の発展と国民生活の向上をはかるなどと国民をだましにかかってはみたものの、その思惑はみごとにはずれたのであります。減税、社会保障といっても、それは全くの見せかけだけのもので、実際は、物価の値上げとか、合理化による首切りとか、労働の強化、六割農政等で、国民の負担はかえって増大し、結局は独占資本のための資本蓄積、軍事産業の拡大とか、アメリカのドル危機の肩がわりということで、海外への経済進出の爪をみがくためのものであることを、すでに国民は見破っているのであります。安保をたたかって自覚と確信を深めたわが国民が、このような池田内閣の意図にやすやすと乗ぜられるわけはないのであります。それだからこそ、最近行なわれた朝日新聞の世論調査でさえ、池田株の急速な下落の一端を如実に示したのであります。
 池田内閣は、本予算案において、警察、公安調査庁、内閣調査室等、弾圧機関の予算を軒並みに増加させ、右翼テロの取り締まりに名をかりて、破防法の改悪をも計画しているのであります。加えて、自衛隊のおそるべき治安行動計画をひそかに実施しようとしているだけではなく、さらにまた、ILO条約批准に籍口して国内法の改悪と行政措置を強化することをもたくらんでいるのでありますが、これは今回の春闘における大量処分によってその正体を暴露しているところであります。池田内閣が、いわゆる低姿勢の衣の陰から、このようなこわもての弾圧政策の強化に乗り出そうとしているのも、日とともに不利になる内外の情勢の発展に対する動揺とあせりの現われにほかならないのであります。このような弾圧政策をいかに強化しようとも、今や国民の闘争とその力をいささかも弱め得るものではありません。日本の人民は、アジア諸国の人民と固く手を結んで、アメ、リカ帝国主義と日本独占資本、池田内閣の政策とその支配の基礎そのものをも粉砕するでありましょう。わが日本共産党は、本予算案に絶対反対するとともに、この人民のたたかいの先頭に立つことを、あらためてここに強調するものであります。
 これで私の予算案反対討論を終わります。
#18
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決をいたします。
 三案全部を問題に供します。表決は記名投票をもって行ないます。三案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行ないます。
  〔議場閉鎖〕
  〔参事氏名を点呼〕
  〔投票執行〕
#19
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
  〔投票箱閉鎖〕
#20
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
  〔議場開鎖〕
  〔参事投票を計算〕
#21
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数       二百五票
  白色票       百二十七票
  〔拍手〕
  青色票        七十八票
  〔拍手〕
 よって三案は可決せられました。
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名     百二十七名
      石田 次男君    村山 道雄君
      谷口 慶吉君    森 八三一君
      柏原 ヤス君    小平 芳平君
      田中 清一君    櫻井 志郎君
      加賀山之雄君    稲浦 鹿藏君
      大泉 寛三君    大竹平八郎君
      白木義一郎君    鈴木 恭一君
      白井  勇君    佐藤 芳男君
      吉江 勝保君    常岡 一郎君
      三木與吉郎君    苫米地英俊君
      田中 啓一君    山本 米治君
      佐藤 尚武君    天坊 裕彦君
      近藤 鶴代君    村松 久義君
      堀末  治君    藤野 繁雄君
      村上 義一君    北條 雋八君
      辻  政信君    太田 正孝君
      笹森 順造君    黒川 武雄君
      泉山 三六君    野上  進君
      山本  杉君    谷村 貞治君
      天埜 良吉君    米田 正文君
      鳥畠徳次郎君    金丸 冨夫君
      川上 為治君    徳永 正利君
      手島  栄君    大谷藤之助君
      鍋島 直紹君    石谷 憲男君
      増原 恵吉君    山本 利壽君
      佐野  廣君    後藤 義隆君
      中野 文門君    前田佳都男君
      最上 英子君    上原 正吉君
      岩沢 忠恭君    岡崎 真一君
      武藤 常介君    小柳 牧衞君
      宮澤 喜一君    谷口弥三郎君
      杉浦 武雄君    新谷寅三郎君
      紅露 みつ君    木内 四郎君
      石原幹市郎君    斎藤  昇君
      吉武 恵市君    下條 康麿君
      林屋亀次郎君    寺尾  豊君
      野村吉三郎君    大野木秀次郎君
      平井 太郎君    田中 茂穂君
      柴田  栄君    西田 信一君
      林田 正治君    木島 義夫君
      鹿島 俊雄君    植垣弥一郎君
      赤間 文三君    青田源太郎君
      安部 清美君    堀本 宜実君
      松村 秀逸君    松野 孝一君
      井川 伊平君    塩見 俊二君
      上林 忠次君    梶原 茂嘉君
      高橋  衛君    高野 一夫君
      前田 久吉君    河野 謙三君
      横山 フク君    平島 敏夫君
      館  哲二君    松平 勇雄君
      大谷 贇雄君    青柳 秀夫君
      井上 清一君    加藤 武徳君
      高橋進太郎君    小沢久太郎君
      古池 信三君    秋山俊一郎君
      安井  謙君    木暮武太夫君
      迫水 久常君    重宗 雄三君
      堀木 鎌三君    郡  祐一君
      一松 定吉君    青木 一男君
      木村篤太郎君    津島 壽一君
      野田 俊作君    大川 光三君
      岡村文四郎君    剱木 亨弘君
      西川甚五郎君    下村  定君
      湯澤三千男君    井野 碩哉君
      植竹 春彦君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名     七十八名
      竹中 恒夫君    市川 房枝君
      大森 創造君    野上  元君
      豊瀬 禎一君    千葉千代世君
      山本伊三郎君    武内 五郎君
      小柳  勇君    鶴園 哲夫君
      横川 正市君    鈴木  強君
      坂本  昭君    阿部 竹松君
      中村 順造君    松永 忠二君
      占部 秀男君    森 元治郎君
      鈴木  壽君    大河原一次君
      伊藤 顕道君    藤田  進君
      亀田 得治君    加瀬  完君
      阿具根 登君    大和 与一君
      大倉 精一君    小笠原二三男君
      中田 吉雄君    荒木正三郎君
      小酒井義男君    高田なほ子君
      光村 甚助君    加藤シヅエ君
      清澤 俊英君    千葉  信君
      小林 孝平君    松澤 兼人君
      岩間 正男君    須藤 五郎君
      米田  勲君    大矢  正君
      森中 守義君    北村  暢君
      永末 英一君    基  政七君
      安田 敏雄君    藤田藤太郎君
      田上 松衞君    木下 友敬君
      平林  剛君    秋山 長造君
      久保  等君    永岡 光治君
      片岡 文重君    相馬 助治君
      向井 長年君    戸叶  武君
      椿  繁夫君    矢嶋 三義君
      天田 勝正君    松浦 清一君
      岡  三郎君    佐多 忠隆君
      田中  一君    重盛 壽治君
      藤原 道子君    村尾 重雄君
      中村 正雄君    曾禰  益君
      近藤 信一君    羽生 三七君
      内村 清次君    野溝  勝君
      松本治一郎君    山田 節男君
      赤松 常子君    棚橋 小虎君
     ―――――・―――――

#22
○議長(松野鶴平君) 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前七時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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