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1960/05/22 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第28号
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1960/05/22 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 本会議 第28号

#1
第038回国会 本会議 第28号
昭和三十六年五月二十二日(月曜日)
   午前十一時二十三分開議
  ―――――――――――――
 議事日程 第二十七号
  昭和三十六年五月二十二日
   午前十時開議
 第一 政治的暴力行為防止法案及
  び政治テロ行為処罰法案(趣旨
  説明)
 第二 会計法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
  ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 政治的暴力行為防止
  法案及び政治テロ行為処罰法案
  (趣旨説明)
 一、日程第二 会計法の一部を改正
  する法律案
  ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
   ――――・――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、政治的暴力行為防止法案及び政治テロ行為処罰法案(趣旨説明)、
 両案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めます。衆議院議員早川崇君。
  〔衆議院議員早川崇君登壇、拍手〕
#4
○衆議院議員(早川崇君) ただいまより、自由民主党、民主社会党共同提案にかかる政治的暴力行為防止法案の趣旨について御説明申し上げます。
 今やわが国は、各方面において、異常な発展を遂げ、着々民主国家としての体制を確立しつつありますことは、御同慶の至りと存じまするとともに、今後とも、政治の根幹を国民の自由と権利の擁護に置き、いよいよ民主主義の健全な発展と伸張をはからなければならないと存ずるのであります。
 しかしながら、最近の国内情勢を見まするに、浅沼事件、嶋中事件に見られるごとく、あるいは昨年の日米安全保障条約改定反対闘争に際しての集団的国会乱入事件のごとく、極右、極左を問わず、個人、団体を問わず、自己の政治上あるいは思想上の主義主張を追求するに急なるのあまり、法秩序を無視し、暴力によりその主義主張を実現、せんとする傾向の見られますことは、まことに憂慮にたえないところであります。暴力こそは、民主主義、議会政治の最大の敵であり、われわれは、この種事犯の防止のために最善の努力を注がなければならないと存ずるのであります。かかる要請にこたえ、あらゆる政治的暴力行為を防止し、真に民主主義の確立を期するためには、在来の刑法あるいは破壊活動防止法その他の取り締まり法規のみでは不十分なところがございまするので、ここに新たに政治的暴力行為防止法を制定し、これによって、有効適切にこの種の政治的暴力行為を防止し、国民の不安を一掃し、もって民主国家の健全な発展をはかる一助といたしたいと存じ、この法案を提案いたした次第であります。
 以下、この法案の内容の概略について御説明いたします。
 この法案は、政治的暴力行為が、団体の活動として、あるいは団体の活動に関連して行なわれる場合に、これを防止する必要な規制措置を定めるとともに、これらの政治的暴力行為に対する刑罰規定を補整し、もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的といたしております。従って、この法案は、大別いたしますと二つの部分に分かれるわけでありまして、その一は、前述の政治的暴力行為を防止するに必要な団体規制措置を定める部分、その二は、これらの行為に対する刑罰規定の補整を定める部分であります。
 政治的暴力行為の防止のためには、単に刑罰規定の補整、すなわち、刑罰の加重のみでは不十分であって、この種政治的暴力行為に出でる団体に対し必要最小限度の規制措置を規定し、団体活動として政治的暴力行為に出でる危険を未然に防止する必要があると存ずるのであります。
 次に、この種団体に対する規制措置は、憲法の保障する国民の権利と自由を不当に制限するようなことがあってはならないことは申すまでもないところでありまするので、特に第三条において、この法律による規制は、第一条の目的を達成するためにのみ行なうべきものと規定いたし、運用の慎重を期することといたしました。また、この法律による規制が、正当な集団示威運動、集団行進、集会その他の団体活動、及び、適法な請願陳情を制限するようなことがあってはならないこともまた当然でありまするので、特に第三条第二項にその趣旨の規定を設け、乱用の危険を除いた次第であります。
 次に、第四条において政治的暴力行為の定義を掲げました。すなわち、それは政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもって行なわれる「殺人」、「傷害」、「逮捕監禁」、「強要」、「暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に規定する体様の集団的暴行、脅迫、器物破損」、「国会または総理官邸への暴行、脅迫その他暴力的手段による不法侵入」、「特定の者が、殺人をなすおそれがあることを予見しながら、その者に対し継続または反復して、特定の他人を殺すことの、正当性または必要性を主張する行為」。ただし、その特定の者がその影響を受けて殺人を実行するに至った場合に限ります。「殺人の予備、陰謀、教唆、扇動。傷害の教唆、扇動。国会等への侵入の教唆、扇動。」以上の行為に限定されるわけでありまして、この法律においては、これらの政治的暴力行為が、団体の活動として、あるいは団体の活動に関連して行なわれる特定の場合に、その団体に対する規制措置をとらんとするものであります。
 次に、この法律による団体規制措置は三種でありまして、その一つは、団体の活動に関し政治的暴力行為を行なった役職員または構成員に一定期間当該団体のためにする行為をさせることを禁止する措置であり、その二は、政治的暴力行為を行なった団体の団体活動の若干の制限であり、その三は、団体の解散の指定でございます。
 団体のためにする行為の禁止については、禁止期間を、殺人の場合は六カ月以内、その他の政治的暴力行為の場合は四カ月以内と区別いたして規定いたしました。
 団体活動の制限期間についても、殺人の場合は六カ月以内、その他の場合は四カ月以内と区別して規定いたしました。
 団体の解散は、事柄の重大性にかんがみ、第十条において厳格に殺人の場合に限定いたしました。すなわち、殺人関係の政治的暴力行為を行なった団体が、将来継続または反復して殺人を行なう明らかなおそれがある場合のみに限って団体の解散ができるものといたしたのでございます。
 次に、罰則についてでありますが、まず、その構想の概要を説明いたしますと、現行の刑法にすでに存する若干の犯罪類型の刑の加重を目的とするものと、刑法などの現行刑罰法令には存しない新しい犯罪類型を規定したものとに大別することができると存じます。
 すなわち、第一のものといたしましては、政治上または思想上の目的をもってする「殺人」、「傷害」、「国会または総理官邸への暴行、脅迫その他の暴力的手段による不法侵入」、「逮捕監禁」、「強要」及び「集団的ないし凶器を示してする暴行、脅迫、器物損壊など」の六つの政治的暴力行為の類型が規定されたのでございます。いずれもすでに現行の刑法において一般的に犯罪として刑罰が規定されているものでありまするが、特に政治上または思想上の目的によるこれらの犯罪は、民主主義の基本原則ともいうべき思想、言論その他の行動の自由を抑圧する最も憎むべき犯罪であることにかんがみまして、この際、刑法の特別法として刑を加重し、もってこの種の悪質な暴力の防止に資せんとするものであります。
 次に、新しい類型のものといたしましては、次の三つの規定があげられます。その一は、いわゆる政治上または思想上の目的の殺人または傷害を実行しようとする者に対し、凶器または金銭、物品その他の財産上の利益を供与してこれを幇助する行為を、それだけで処罰することといたしたことでございます。御承知のように刑法上の補助犯は本犯が犯罪を実行したときに初めて処罰の対象となるのでございますが、本法に規定するような殺人または傷害というごとき凶悪な政治的暴力行為につきましては、本犯が犯罪を実行するのを待たずしてこれを規制しようとするものであり、いわゆる政治テロ行為を勧奨または支援することを許さずとする規定であります。しかしながら、この種の規定は、他面において必要以上に拡大されて運用されるおそれがあることにかんがみまして、いわゆる政治的目的による殺人と傷害の二つの類型のみに限定するとともに、相下方が「これらの罪を実行しようとする者」であることを要することとし、いたずらに拡大して解釈運用されることのないように要件をしぼっております。その二は、政治上または思想上の目的をもって「殺人」、「傷害」、「国会などへの暴力的手段による不法侵入」の行為の一を教唆しまたは扇動する行為を、いわゆる独立犯として処罰することといたしたことでございます。なお、殺人につきましては、教唆、扇動の独立犯のほかに、予備、陰謀をも処罰することといたしておりますが、これらの規定の必要性につきましては、この際特に説明を加える要はないものと信じます。その三は、政治上または思想上の目的をもって、特定の者がいわゆる政治殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により、特定の他人を殺すことの正当性または必要性を主張した者を、その特定の者がその影響を受けて政治殺人を実行するに至ったときは、これを処罰することといたしたことでございます。殺人の教唆、扇動を、それだけで独立犯として処罰することについては右に述べたところでありまするが、この規定は、教唆、扇動に至らない場合でも処罰の対象となり得る類型を新たに設けた点で、注目に値するものと存じます。いわゆる政治テロ行為の防止に役立たせたい趣旨にほかならないのでございますが、この種の規定は、立言のいかんによっては、かえって言論の自由の制約になるおそれがありますることにかんがみまして、その点については最大限の考慮を払ったところでございます。すなわち、政治的暴力行為の中で最もおそるべき行為である殺人のみに限定するとともに、殺人の正当性を主張しても、ただそれだけでは処罰の対象とはならず、その者がその影響を受けて政治殺人の罪を実行するに至った場合に初めてこの犯罪が成立することとしたのであります。
 以上が罰則についての概要でございます。
 これを要するに、本法案の立案に当たりまして特に考慮をいたしましたことは、第一に規制される政治的暴力行為の対象を左右いずれにも偏せず公正に規定したこと、第二には、刑罰の加重については刑法との均衡を失わないように慎重に考慮したこと、第三には、団体の規制については必要最小限度にとどめ、いやしくも、結社、言論等の自由を侵害しないように十分配慮を払ったことでございます。
 最後に、本法案の重要性にかんがみまして、附則において、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することといたしてあります。
 以上申し述べましたところが本法案の趣旨でございます。(拍手)
  ―――――――――――――
#5
○議長(松野鶴平君) 衆議院議員坪野米男君。
  〔衆議院議員坪野米男君登壇、拍
  手〕
#6
○衆議院議員(坪野米男君) 私は日本社会党を代表して、政治テロ行為処罰法案の提案理由について御説明いたします。
 まず第一に申し上げたいことは、社会党が何ゆえに本法案を提出しなければならなかったかについてであります。
 私たちは昨年十月、右翼テロの凶刃によって浅沼委員長を失い、その直後の臨時大会において、浅沼委員長の死を乗り越えて右翼テロを根絶することを舞ったのであります。さらにまた、第三十六回臨時国会においても、満場一致で暴力排除の決議が採択されたのであります。しかるに、本年三月再び右翼テロによる嶋中事件の発生を見るに至り、右翼テロに対する国民世論は俄然硬化して参ったのであります。今国会においても、警察当局の警備責任、政府の政治上、行政上の責任についてきびしい追及がなされ、さらに右翼テロの背後勢力、また右翼団体への資金源についてもきびしい究明が続けられましたが、必ずしも国民の納得する結果は得られなかったのであります。ところで、一方、国会で右翼テロに関する質問をした国会議員に対してまで右翼の脅迫やいやがらせが続き、国会における言論の自由まで右翼テロによって脅かされ、遂には国会周辺や議員宿舎に制服警官が常時警備をし、また、特定の議員に対して私服の警備がつくという異常な事態が出現したことは、御承知の通りであります。わが国議会史上まことに忌まわしい汚点を残したものというべきであり、一刻も早くかかる異常な状態を解相しなければ、わが国の民主主義、議会政治の前途が危ぶまれるのであります。
 およそ、相手方の言動が自己の政治上の主義信条と相いれないからといって、その相手方を殺傷するがごとき政治テロ行為は、最も憎むべき、また最も凶悪な犯罪であり、民主社会の敵、国民共同の敵であるといわなければなりません。何となれば、政治テロは、民主主義の大前提である言論及び政治活動の自由を侵害し、民主主義の根幹をゆるがすものだからであります。
 かかる政治テロを根絶するためには、何よりもまず、「生命は尊重である。一人の生命は全地球よりも重い」という最高裁判所判決に示された生命尊重の精神に徹し、いかなる動機原因があろうとも政治テロは絶対許さないという、国民世論の固い意思を表明する必要があります。右翼テロリストは、愛国の美名のもと、殺人も社会的に許容されるもの、少なくとも国民大衆の同情や共感が得られるものと盲信しているようでありますが、このような危険な誤った妄想を打ち砕くためには、政治テロを憎む国民世論のきびしい意思を明確に打ち出すことであります。本法案は、このような国民世論の表明として、政府に政治テロ根絶の決意を迫るため提案したものであります。
 元来、治安の責任を持つ政府や警察首脳に、はたして政治テロ根絶の熱意ありやいなや、はなはだ疑いなきを得ないのであります。もし、政府や警察首脳に政治テロ根絶の決意さえあれば、現行法令をもってしても、政治テロを取り締まり、予防鎮圧することは、必ずしも不可能ではないのであります。ただ、政府、与党にその熱意がなく、全く焦点のぼけた暴力対策を立案したり、テロとデモをともに暴力犯罪として公平に取り締まるべきだとか、テロ以外の一般暴力犯罪の防止も必要だとかいうことで、当面する政治テロ対策を一般の防犯対策の中に埋没してしまおうとしておりますが、これは、政治テロ対策をごまかし、糊塗しようとするものでありまして、責任ある政府、与党の態度としては、まことに不可解千万であります。(拍手)政治テロは、言うまでもなく、人を殺傷する行為であり、あらゆる暴力犯の中で最も凶悪な犯罪でありますが、これに反し、デモは、言論、表現の自由として、憲法や法令で保障された国民の基本的権利であります。ただ、デモの行き過ぎから派生的に生ずる器物を損壊する等の違法な行為については、公正に取り締まるべきことは言うまでもありません。しかしながら、テロも悪いがデモも悪いとか、テロの原因は違法なデモにあるんだとか、テロとデモとを同一次元で論ずることは、見当違いもはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)一般の暴力犯罪の防止はもとより必要なことではありますが、問題は、民主主義が危機に瀕している今日、最も凶悪な政治テロをいかにして防止するか、これが根絶策いかんでありまして、政治テロに対して厳罰をもって臨まんとする本法案こそ、当面の必要最小限の立法措置であると確信するものであります。社会党は、政府、与党が政治テロ対策につき治安の責を果たそうとしないので、やむを得ず、責任ある野党として本法案を提出した次第であります。
 第二に申し上げたいことは、本法案は、政治テロ根絶の抜本策でもなければ、長期対策でもなく、あくまでも当面の政治テロ防止策として緊急やむを得ない、最も現実的な立法措置であるということであります。政治テロを根絶するためには、テロを憎み、テロを断じて許さぬという強固な国民世論を背景としなければなりませんが、それと同時に、池田総理の言う政治の姿勢を正すことによって、テロを生み出す社会風潮の一掃をはからなければなりません。しかし、これは一朝一夕にしてなるものではなく、長期にわたる政府、与野党の努力に待たねばならないと信ずるのであります。さらに、現実的、総合的な政治テロ対策としては、政治テロの正当性、必要性を主張する団体、すなわち一人一殺主義を唱える右翼団体等に対する資金源を究明し、その政治資金を規正することも必要でありましょうし、また、政治テロを扇動する団体その他を規正することも必要であります。さらにまた、政治テロに走るおそれのある青少年に対する根本的な指導、積極的な対策が必要であります。単なる不良青少年に対する防犯矯正等の消極的対策だけでは不十分であります。自分の生活に明るい希望の持てる、健全な社会人としての青少年育成策、これこそが青少年をテロに走らせない根本策であろうと信ずるものであります。政府、与党が、かかる根本策に手を触れず、単なる総合的防犯対策だけで事足れりと考えているならば、それは、真の防犯対策とはなり得ず、いわんや長期の政治テロ根絶策とはとうていなり得ないものと言わなければなりません。
 本法案は、政府、与野党が話し合いによって真剣に政治テロ根絶の抜本策を樹立し、長期施策を講ずるまでの必要最小限の緊急措置として、とりあえず三年間の時限立法として立案されたものでありまして、刑罰の強化によって政治テロを防止するというのは、政策として下の下策でありますが、真にやむを得ざる現実的措置であります。従いまして、社会党は、恒久的根本法たる刑法の一部改正は軽々に行なうべきではなく、また、一般犯罪にも適用され、さらに、乱用のおそれさえある警察官の取り締まり権限強化をはかる銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正、破防法その他の法令の改正はその必要がなく、左右を問わず政治テロのみを対象とした最小必要限度の単独立法で、しかも暫定立法で対処すべきものと考えるのであります。
 第三に、本法案のねらい、すなわちその目的について申し上げます。
 言うまでもなく、本法案は刑法の特別法として、テロ犯罪に対して刑罰を加重することによって、すなわち厳罰主義の威嚇力によってテロ犯罪の一般予防をはかろうとするものであります。死刑その他の極刑の威嚇によってテロ犯罪を一般予防しようとするものであります。私たちは、一般犯罪の防止策として現行刑法以上の厳罰主義をとることには原則として反対であります。刑は刑なきを期することが刑事政策の理想でありまして、いたずらに厳罰主義をもって犯罪の防止をはかることは、時代逆行のそしりを免れませんし、近代刑法理論の進歩に背を向け、刑罰緩和化の歴史にもそむくことになりましょう。しかしながら、民主主義を圧殺し、文明を破壊せんとする政治テロに対しては、民主社会防衛のため極刑をもって臨むことも真にやむを得ないところであろうと信じます。歴史の発展を阻止しようとする反動的な政治テロに対し極刑をもって臨むことは、何ら文明の名に恥じないものと信ずるのであります。
 私たちは、刑罰の威嚇力が絶対的なものとは考えませんが、相対的には相当の効果を期待し得るものと考えるのであります。また、政治テロこそは最も凶悪な犯罪であり、強盗殺人犯以上の極刑に値することを政治テロ犯人に教育し、また、一般国民や裁判官に知らしめるためにも、厳罰主義の法定刑が必要であると確信いたします。さらにまた、本法案の厳罰主義は、単なる報復主義に基づくものではないのであります。刑罰理論は、復讐刑から応報刑へ、さらに一般予防、特別予防から教育刑へと進んで参りましたが、刑罰の本質としては、道義的応報の要素は否定し得ないのでありまして、いわゆる罪の償いは当然しなければなりませんが、単に私的、感情的な報復観念に根ざすものであってはならないこと、言うまでもありません。
 次に、本法案に盛られた厳罰主義は、いわゆる確信犯人に対してはほとんど威嚇力を持たないのではなかろうかとの疑問が当然起こるでありましょう。もとより、確信犯、思想犯に対しては、刑罰の威嚇力は大きな効果を期待できないでありましょう。しかし問題は、政治テロ犯人は、はたして確信犯なりやいなやであります。その政治的な主義信条については、思想的な確信を抱いている者もありましょうけれども、自己の信奉する政治的主義の実現のために人を殺すことの正当性、必要性を確信する犯人は、はたして何人いるでありましょうか。いわんや自己の生命を犠牲にしても反対者を殺傷せねばならぬとの決意をもって臨むテロリストはきわめて少ないのではないかと考えられるのであります。主観的には崇高な目的達成のためには凶悪な手段も正当化され、少なくとも社会的には許容され、同情を受ける、また、裁判上も死刑だけは免れるという甘い考えを持ったテロリストも相当多いのではないかとも考えられるのでありまして、テロ殺人実行の後、必ず死刑になるとわかっていて、なおかつ、テロ殺人を敢行する確信犯人は、今日ではきわめて少なく、従って、テロ犯人に対しても死刑の威嚇力は相当大きな効果はあると考えるのであります。さらに私たちは、殺人の正当性や必要性を確信するごく少数の盲信者に対しては、殺人確信犯人であるが故にこそ、その犯罪に対して、社会防衛上犯人を社会から永久隔離するため、無期または死刑をもって処断することもやむを得ないと考えるのであります。
 なお、私たちは、わが国の文化が高度に発達して、平和な民主社会が実現し、死刑の威嚇による犯罪の防止を必要としない時代の出現を待望しておりますが、現在は、残念ながら制度としての死刑を廃止する段階には至っていないと考えるのであります。健全な国民感情は、凶悪犯人に対する死刑を少なくとも正義に合致するものとしてこれを是認していると確信するのであります。
 最後に、本法案の内容について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 本法案は、わずか十二カ条からなる刑法の特別法でありますが、本法に規定のない限り、刑法総則その他刑法理論が当然適用されることになるわけであります。
 そこで第一条は、この法律の趣旨を明らかにしたものであり、特に説明を要しないと思います。
 また第二条は、適用の基準を示したものであり、特に、左右を問わず、思想の自由、言論・結社の自由そのものを不当に制限し、弾圧するものではないことを注意的に規定しております。
 第三条は、扇動と凶器の定義を明示して乱用防止をはかっております。特に扇動の定義は、大審院判例以来確立した定義でありまして、教唆に近い概念でありますから、拡大解釈のおそれはないものと考えます。
 次に、第四条ないし第十条は、各種のテロ犯罪の構成要件と刑罰を規定したものでありますが、政治テロ行為の基本的な構成要件は、たとえば第四条では、「自己の政治上の主義と相容れないことのゆえをもって人を殺した者」となっており、殺人の行為そのものは刑法上の殺人罪と異なるところはなく、ただ、殺人の動機が、自己の政治上の主義信条に反する他人の言動を憎み、これを抹殺せんとして人を殺す場合に、テロ殺人罪となるのでありまして、犯罪の動機によって特別に刑を加重せんとするものであります。なお、政治上の主義とは、たとえば資本主義、共産主義あるいは民主主義というように、政治によってその実現を企てられる、比較的、基本的、一般的かつ抽象的な原理をいうものであり、政治上の主義信条と解釈して差しつかえないと考えます。従って、現実的、具体的な政策や行政上の施策は含まないと解釈すべきであります。
 そこで第四条は、テロ殺人の既遂・未遂・予備・陰謀罪を規定し、刑を加重しておりますが、刑法でも殺人罪や殺人未遂罪は最高は死刑となっているのであります。
 第五条は、テロ殺人の教唆・扇動者を独立罪として重く罰しております。ただ、本条は、正犯が殺人の実行に着手しなかった場合の規定でありますが、刑法総則の規定により、正犯が殺人の実行に着手した場合は、正犯に準じて最高は死刑に科することができるわけであります。第十二条は、このことを注意的に規定したものであります。
 第六条は、テロ傷害致死罪の規定、第七条は、銃砲刀剣等の凶器を準備し、これを用いてなすテロ傷害及びその未遂罪を規定しております。
 第八条は、情を知ってテロ犯人に凶器や金品等を供与したる者を罰する規定であり、第九条は、凶器を示してするテロ脅迫罪を規定したものであります。
 次に第十条は、テロ殺人犯人を公然と賛美した者を罰する規定でありますが、本条は、テロ殺人の教唆、扇動ではないが、テロ殺人が敢行された後に、その犯人の殺人行為をほめたたえるがごとき不穏な言論は、きわめて反社会的な言論であり、テロ殺人を助長するおそれがあり、憲法で保障された言論の自由の範囲を著しく逸脱したものとして、社会的にとうてい許容し得ない犯罪的言論であり、かかるテロ殺人賛美の言論は、国民の法意識において言論犯罪として是認されるものと確信するものであります。
 なお、第十一条は、刑の減免の規定でありまして、事前の自首等によりテロ殺人や傷害が未然に防止できた場合に刑を減免する旨の政策的な規定であります。
 以上、本法案の目的並びにその内容の概略について御説明いたしましたが、国民の基本的人権に関する重要な法案でありますから、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたしまして、私の提案説明を終わります。(拍手)
#7
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。高田なほ子君。
  〔高田なほ子君登壇、拍手〕
#8
○高田なほ子君 私は、日本社会党を代表して、自由民主党並びに民主社会党の共同提案にかかる政治的暴力行為防止法案に対し、提案者並びに池田総理大臣、植木法務大臣に対し、質問をいたしたいと存じます。
 昨年、安保条約改定をめぐる政府の無策は、次々とおそるべきテロ行為を誘発し、十月には、ついに日比谷公会堂の燈上において浅沼委員長はテロの凶刃に倒れました。第三十六臨時国会では、満場一致で、かかる暴力排除の決議がされたにもかかわらず、本年二月嶋中事件が起こり、テロの凶刃はさらに言論界にまで波及し、世論はあげてこの不祥事の絶滅を期待したのであります。当時私は、頻発するテロ事件について、池田総理に対し、その政治的責任の所在を明らかにするとともに、すみやかな具体策を国民の名において要求いたしました。首相はこれに答えて、すみやかなる抜本的善処方を公約せられたのであります。しかるに、自来七カ月、政府は社会不安を一掃するための積極的な社会政策を打ち出すことなく、国会の運営もまた多数を頼んで独裁的傾向を強めながら、ただ国民に対してのみは順法精神の高揚をキャッチ・フレーズとして、大衆運動の取り締まりを強化し、今日に至って、ようやく議員立法によってその責任をすりかえるがごときは、まことに承服いたしかねるところであります。政府のテロ防止に対する熱意をきわめて重要視した日本社会党は、ただいま提案のように、幾多の討議を重ねた末、最も憎むべきテロ行為に対してのみ、当面の必要最小限度の時限立法を去る三月二十日提案いたしました。一体、最高の責任を負わなければならぬ政府が、なぜ、議員立法に先んじて具体的な施策が講ぜられなかったものか、その理由はいかなるところにあったものか、この際、この間の経緯を明らかにせられたいのであります。
 元来、治安立法は、一たび成立するならば、立法者の善意のいかんにかかわらず、いかなる名目であろうとも、強大な権力を背景に、警察の実力行動を伴うものであって、人権の侵害に及ぶ危険性なしといたしません。従って、この種の重大な立法については、その立法手続においても、法制審議会の慎重な議を経て、その内容においても必要やむを得ない最小限度の線にとどめることは今日の常識であります。しかるに、本案は、希代の悪法として全国民の抵抗を受けた破防法をはるかに上回るものでありながら、これを議員立法にゆだね、法制審議会の議をのがれ、あまつさえ、わずかに数日の審議でこれを押し通さんとする意図がうかがわれるようでありますが、提案者はこの事実をいかようにお考えになっておりますか。また、政府はかかる治安立法の手続がはたして妥当なものであると考えられるのか、その所信を伺いたいと思います。
 次に、本法案の性格及び本案成立の要因となった請願デモについての見解をただしたいのであります。安保改定阻止第八次統一行動は、請願デモと呼ばれ、政府、自民党は、これは集団の示威によるものであり、国会構内に侵入したものであって、かかる行為は処断すべきであるという政府見解に基づいて、国会周辺のデモ規制法が、過般、自民党議員立法の形で提案されましたことは、皆様の記憶に新しいところであります。しかし、国民の強い反対にあって流れたことも、これまたわれわれの肝に銘ずるところでありましょうが、本法案は、テロの防止に便乗をして、悪法国会周辺デモ規制法の復活成立をねらうものであります。私どもは、このような意図を断じて許すことはできないのであります。請願については、憲法第十六条において、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と、主権者たる国民が国会に対する意思表現の自由の権利を認めているのであります。旧明治憲法では、「相當ノ敬礼ヲ守り別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ爲スコトヲ得」とうたっており、臣民としての国民に対して、請願の強い規制を命じておるのであります。今日、国民は、国の主権者としての立場から、請願の対象となる事項は、現行憲法では何らの制限をつけず、ただ、その方法が平穏であることを述べているにとどまりております。まして、ここには人数の制限が付されていないということは、これまた当然のことであります。今日、国民が主権者として、憲法下に成立している国会という機構を認めて安保改定の取りやめを要求した請願は、国会が、国民に対して忠実であることを求める方法としての当然の示威活動であって、議員に対する脅迫や暴行とは、全く異質の性格を持つものであります。しかるに、政府、自民党は、この示威行動そのものを、あたかも国会を否定する行動なりと曲解をして、これを封じようとする意図を持っておるようでありますが、本法第三条にいう「適法な請願」とはいかなる内容を持つものであるか。提案者にその所見をただすとともに、国民の請願権を国会自体が規制することの妥当性について、大きな違憲性の内容をはらむものとして、この点の所信を総理に伺いたいと思います。
 第二に伺いたいことは、本法の違憲性についてであります。提案者は、頻発するテロ行為を初めとして、一切の政治的暴力行為を排除して民主国家の発展を期すとして提案されておりますが、驚くべきことには、全文三十一条中、第四条の政治的暴力行為の内容が破防法と違うだけで、他は全く破防法と同一条文のものであります。しかも、破防法に上回る第五条、第六条、第九条を新たに挿入して、団体規制のワクを一そう強化拡大するとともに、革新政党の活動を初めとする一切の団体活動に対して強い規制を加えんとするものであります。団体の中にただ一人の悪意ならざる不法行為者があったとしても、ただ一人の行為のゆえに、その団体はもちろん、団体の支部、団体の下部組織である分会、すべての下部組織にまでも解散権が及ぶという、おそるべき内容を持ったものであります。もし、問題の五条、六条、九条以外に、破防法と異なる字句、条文があるとするならば、明らかに条文を示して、その差異を明確にせられんことを提案者に要求するものであります。
 第三に重要な点は、本法によって、国民が最も願う、一人一殺の右翼テロを、その危険団体を、並びに憎むべき殺人の主張を排除することができるかという問題であります。なるほど殺人及び殺人の予備・陰謀はここに規定されておりますが、浅沼事件、嶋中事件にもその例を見る通り、政治上の主義主張の異なるゆえをもってする人殺しは、当人が、その決行前に団体を脱会して、団体への影響を防いでおるのが今日の現状であります。従って、暴力行為と無関係な団体の規制は、いかに提案者の言うごとく、法文できびしく縛ろうとも、この団体の処分ができないということは明白の理であります。一人一殺を主張する団体の存在が合法化することが、はたしてこの民主社会に許されていいものか、この点をお伺いしたいと思います。
 次に、本案は、第四条の七項に、人を殺すことの正当性・必要性を主張する行為を一応禁止しているかに見えますが、実際は、殺人の行為がない限り、だれだれを殺さなければならないとか、だれだれを殺す必要があるなどということを主張することは、少しも禁止されない建前になっております。地球よりも重い人の生命を断つことが正当であるという主張が、いつ、どこでも自由にできるということは、はたして言論の自由な範疇に入るものでありましょうか。むしろテロ行為を助長する結果を招くおそれなしとしないのに、提案者は、社会党の殺人に対する賛美処罰を言論の弾圧であると非難されておりますが、このような主張を喜ぶ者は一体何者でありましょうか。人命の尊重と言論の自由との関係について、特に首相並びに提案者にお伺いをしたいのであります。
 また、テロを助長するおそれのある団体等に対して、資金源を断つことは緊急の問題であることを強く指摘されておりますが、本案には、提案者の言われるごとく、この点の解決を明確にした点が含まれていないのではないか。危険な団体に対する資金源を断つために、法務大臣はいかような措置を今までおとりになってきたのか。届出制によっても、なおかつ取り締まれないものが、何でこれらの規定で取り締まることができますか。提案者に、もし明確に規定があるとするならば、条文を示して、詳細な条文の説明を願いたいと思うものであります。
 次に、団交権に関する問題点でありますが、本法第四条では、提案者の言うごとく、殺人、傷害、逮捕監禁、強要、暴行、脅迫、公文書毀棄、私文書毀棄、建造物破壊その他の器物破壊、首相官邸、国会議事堂に対する不法侵入並びにこれに対する予備、陰謀、教唆、扇動を政治的暴力行為として規定しております。これは法文として認めますが、しかし、今日の団体交渉の場に見られるように、理管者側は、あらかじめ団交の時間、人数を制限し、極度に団交権をしぼっています。時には荒い言葉も出るでしょう。ここは脅迫という言葉が、法規が該当するかもしれない。若干の時間の延長があり得るでしょう。ここは監禁、自由の拘束という法文が生きてくるかもしれない。時には、誤って文書が破れるようなこともあるでしょう。この場合には公文書の毀棄に該当するでありましょう。このようにして、権力がねらう団体を一網打尽処罰の対象にすることが可能であります。しかも、この団体交渉権は、ただ一人の悪性でない違法行為があったとしても、その処断を免れることができないという、きわめて厳重なるものなのであります。この場合、団結権、団交権の侵害に対する保障はいかようにされているのか、条文を示して説明されたいのであります。提案者は、おそらく三条あるいは七条三項の説明をされるでありましょうが、ここで示されている不当な行政処分に対する不服は、確かに裁判所に申し立てができることになっております。しかし、処分執行停止の申し立ては、いつでも、政府、首相の異議によって阻止されるので、裁判の結果、よし無罪になったとしても、その間、公開の集会、集団示威行進機関誌の発行は停止され、団体役職員は排除され、団体は事実上の解散に瀕するのであります。この重大な基本的侵害についていかようとも救済の道はありませんが、もしあるとするならば条文を示して説明をされたいのであります。しかもこの場合、裁判は百日裁判が規定されておりますが、わが国においては百日裁判は今日まで一例もないのである。法務大臣はいかようにしてこれを実行に移さんとするか、法務大臣の見解をただすとともに、提案者にこの間の御説明を願いたいと思うものであります。
 要するに、本法のねらいは、最も国民が要望するテロ防止に抜け穴を作って、破防法に洩れている革新政党の政治行動を含む一切の団体行動を徹底的にかつ一網打尽に排除するねらいを持つ希代の悪法なのであります。このような重大な内容を持つ法の審議を早急に多数をもって通過させんとするがごときは、わが党の断じて了承し得ないところであり、悪法破防法の審議でも三カ月の審議を要し、参議院法務委員会はその経過においてこれを否決し、ようやく修正議決をしながら幾多の疑問を残して実行した法律、しかも破防法を上回るような本法を、三回や四回の審議でこれを強行するというような建前は、これは絶対にとってはならないものであって、治安立法に対する提案者の気持、並びに、池田総理大臣は治安立法に対する政府の心がまえとしていかようなものをお持ちになっておられるかを御質問申し上げまして、幾多の条文の残りに対する質問は後日委員会等においてお許しをいただくことにして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  〔衆議院議員早川崇君登壇、拍手〕
#9
○衆議院議員(早川崇君) 第一は、何ゆえ議員立法にしたか、しかも短期間に国会を通そうとしているのはどうか、こういう御質問でございます。われわれは、政治的暴力あるいは政治的テロ防止法というものは、できれば超党派的にこれを成立させたい、こういう考え方に立ちまして、二カ月以上にわたりまして民主社会党並びに社会党と七、八回にわたって実は懇談したのであります。その結果、民主社会党とは一致をいたしました。ただ社会党とは残念ながら、最後の国会その他に対する不法暴力の点で妥結いたしませんでしたので、二カ月かかりましてやっと国会に提案いたしたのであります。突如として政府提案のようにいたしたのではございませんので、従って、大新聞の論調を見ましても今国会で成立させろ、これは国民一人々々の要望である、大新聞が世論を代表してわれわれに望んでおるのであります。従って、短期間の審議ではございません。
 第二に、テロと国会不法乱人を同一に扱っておるではないか。――われわれは、政治的暴力行為といたしまして、少なくとも国民の半数以上の人が、テロは憎むべきだ、しかしながら、同時に不法な暴力的な集団暴力行為もいかんのだと言っている、素朴な国民感情を尊重しなければなりません。それがテロ誘発の全部の原因ではもちろんありませんが、テロ誘発の一部の原因になっているということも事実であります。従って、われわれは、本法においては、テロ殺人と国会の不法暴行乱入とは刑罰の面においては差をつけております。しかし、政治的暴力行為としては同じように扱っておって、こうしなければ、国民の八割、九割の支持を得ることができないのであります。
 次に、請願における適法ということでございまするが、これは憲法で保障された第十六条の平穏な請願というものを何らしぼっておるものではないのでありまして、第三条において明確に規定いたしましたのもそういう意味でございます。
 四番目に、高田議員は、各団体の支部まですぐ解散されるではないか。――とんでもない誤解でございます。この法案をお読みになっていただきまするならば、団体を解散できるのは、殺人を団体行為として行なったもの、しかも、継続反復してやるもののみを団体解散できる。ちょうど破防法の規定をそれだけ移しておるのであります。それ以外の傷害とか集団不法侵入とかいろいろなものは、継続反復してそういった政治的暴力行為をまずやるということが条件、しかも、継続反復してやって、しかも将来継続反復してやるという場合においてのみ六カ月ないし四カ月という短い期間を限って団体制限をするのでございまして、すべての団体が殺人以外の政治暴力行為をやっても直ぐ解散されるということは、条文をお読みになっていただけば直ちに誤りであるということがお気づきになると思います。
 次に、団体を脱退した者が殺人行為その他をやった場合が出るのじゃないか、浅沼あるいは嶋中事件がそうではないか。――しかし、本法におきましては、団体を脱退いたしましても、実質上その団体の役職員のような行為をしておりますならば、これは裁判所の認定において団体の活動としてみなされるようになっておるのでございます。さらに、その団体が脱退した者に対して教唆扇動の行為がありましたならば、その団体が処罰されることになっておるのでございまするから、その点の誤解のないようにお願いいたします。
 第六に、殺人の正当性の主張の問題にはしぼり過ぎておるのではないか。――これは重要な問題でございます。社会党案では、過去に殺人をした者を賛美した者にすら三年以下の懲役に処す。いなかのお百姓さんが山口は偉かったと言っても、社会党案ではひっかかるのであります。そうすると、何千人、何万人、すべての人が三年以下の懲役になるということは、憲法における言論の自由から申して行き過ぎである。(拍手)そこでわれわれといたしましては、殺人の正当性、必要性の主張に対しましては、できるだけしぼりにしぼって、世論の要望にこたえながらも、憲法で保障された言論の自由というものを抑止しないように細心の注意を払ったというのが第二十四条の規定であります。
 第七に、資金源の面はどうか、この規定がないのではないかという御質問でありまするが、あります。第二十二条におきましては、殺人行為を行なう者に対して、そういうものに金品その他を供与いたしましたならば、現在の刑法におきましては本犯が成立しなければ罰せられない。ところが、新たに二十二条を設けまして、本犯の殺人行為が行なわなかった場合にも、政治的目的のために人を殺すために金品を供与した場合には、本犯を待たずして三年以下の懲役になるというような規定を独立して設けましたことは、いかにそういう面を考慮しているか、この点は社会党の御提案のあれと全く同じでございます。社会党案にもそれ以外に何ら規定はございません。さらに民社党とわれわれの案におきましては、第九条におきまして、暴力的な団体として制限を受けた団体に対しては四カ月ないし六カ月の期間の間には金品の収支を報告しなければならぬ義務を課しております。社会党案にはそういうことも載っておりません。
 最後に八番目の労働問題、団交にまで適用になるかという御質問でございまするが、本法は、労使間の労働問題には適用する法律ではないのであります。本法は、政治的目的、思想的目的のための法律でございますから、労働問題において団体交渉するものを制約するものではございませんので、本法の立法の趣旨が政治的な目的で、労働問題は断じてこの法案の対象外でございますから、御心配は要らないと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 治安の確保は民主主義発達の根本でございます。われわれは常にこれが万全を尽くすべく努力を重ねてきているわけであります。たまたま、社会党初めわが自由民主党あるいは民社党から、いろいろりっぱな法案が出ているようでございます。私は、国民を代表せられる議員がこういう問題につきまして法案をお出しになることは、民主主義の建前からいってけっこうだと考えているのであります。
 なお、言論の自由につきましては、憲法が保障しておりますと同時に、その言論の自由には公共の福祉に反しないという条項があるのでございます。何が公共の福祉に反するかということは法律で定めらるべきことでございます。しこうして、政治的暴力行為防止法案は、何が公共の福祉に反するかを定めようとする法案でありまして、すみやかに御審議、御通過を願ってやまない次第であります。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇、拍
  手〕
#11
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。
 テロ対策として政府は何をやっておったかというお話でございますが、この御質問に対して、われわれは今日まで、まず現行法の適切なる運営という問題について、熱心に研究もし、これを実際にまたやっております。一例を申しますというと、たとえば量刑の問題等につきましても、全国の関係者を集めまして、そうして従来の量刑の適切でなかった点がありはしないかについての検討を遂げ、これの強化をいたしているのも一例であります。あるいはその他、目下衆議院で御審議願っておりますところの刃物所持に関する規制の問題等もその一つであります。しかし、いずれもこれらは現行法に対する若干の改正でございます。今回の社会党案、あるいは自民党、民社党の共同提案にかかる法律の問題等につきましては、われわれ政府といたしましても熱心に研究を続けております。その過程におきまして、それぞれ出ましたその案を拝見いたしておりますというと、われわれの今日においてなし得る一つのりっぱな案をそれぞれお出しになっております。そうしますというと、ただいま総理からもお答え申されました通り、われわれとしては、この共同提案になる案につき、あるいは社会党の皆様にも、なお一そう御研究を願い、この国会において議員の皆さんから国会の意思でもってこしらえていただくことがなお適切ではあるまいかというふうに考えたことでございます。もちろん、高田議員の仰せになりましたように、法制審議会等の議を経て、十分熱心な研究、深い探求を続ける必要があることは言うまでもございませんが、これは今回の場合におきましては間に合いません。従いまして、今回は議員が提案になったこの案がわれわれとしてもまず賛成をし得る当面の急に処する適切な案ではあるまいかと、かように考えている次第でございます。
 団体規制の問題につきまして、たとえば百日裁判のような適当な規定を渇いて早く処理すべきではないかという御意見でございますが、これはなるほど一つの御高見であると考えます、あたかも公職選挙法にありますように、こうした問題については早くその事態の解決をはかる必要がありますけれども、今日はその点が案に載っていないようでありますけれども、これは今日の段階としてはやむを得ないことかと考える次第であります。
 資金規正の問題につきまして、資金源の規正についてのお話がございました。これについては、現行法におきましてはやり得なかった部分も今回の提案においてはなされておるようでありますから、われわれとしてもその趣旨に賛成の意を表する次第であります。
 以上お答え申し上げます。(拍手)
#12
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
   ――――・――――
#13
○議長(松野鶴平君) 日程第二、会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事上林忠次君。
  ―――――――――――――
  〔上林忠次君登壇、拍手〕
#14
○上林忠次君 ただいま議題となりました会計法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 国が行なう売買、貸借、請負等の契約の制度については、会計法及び予算決算及び会計令に規定が設けられているのでありますが、会計法上は第二十九条に契約方式の原則のみを規定しているにすぎなく、かつまた、これらの規定は、旧会計法当時の内容をおおむね引き継いだもので、実情にそぐわない面もありますので、本案はその整備をはかろうとするものであります。
 内容を要約して申し上げますと、
 第一点は契約方式についての改正でありまして、現行会計法は一般競争を原則とし、指名競争及び随意契約を例外方式としながらも、実情は一般競争に付する事例がきわめて少ないという結果になっておりますが、一般競争方式は公正及び機会均等の確保の面からも国の契約方式としては最も適当な方式でありますので、契約の性質または目的により、一般競争に付することが不必要の場合及び不利と認められる場合は指名競争に付し、競争を許さない場合及び緊急の場合には随意契約によるものとし、それ以外の場合は一般競争によることとしようとするものであります。
 第二点は、競争契約の場合の落札方式についての改正でありまして、歳入原因契約については最高の、歳出原因契約にあっては最低の価格の入札者を、従来通り落札者とすることを原則としていますが、一定額以上の請負工事の場合に、入札価格が著しく低いために適正な工事がなされないおそれがあると認められるとき、またはその者と契約を締結することが公正な取引秩序を乱すこととなるおそれがあって著しく不適当であると認められるときは、次順位の入札者を契約の相手方とすることができるようにしようとするのであります。
 第三点は、契約の履行に際しての検査及び監督について必要な規定を設けるほか、監督及び検査の民間委託や、目的物について相当期間保証がある場合の監督及び検査の一部省略についての規定を設けようとするものであります。
 第四点は、電気、ガス、水の供給や電話の役務提供のごとき長期継続の契約について、手続を簡素化するための必要な規定を設けようとするものであります。
 そのほか、契約書の作成、入札保証金、契約保証金等、従来、予算決算及び会計令に規定されております事項につき、内容を若干整備してその法律化をはかり、また契約事務の担当者等の任命や責任についても規定の整備明確化をはかろうとするものであります。
 委員会におきましては、参考人より意見を聴取するほか、委員外議員の発言もあり、慎重に審議いたしたのでありまして、特に、今回改正に踏み切った根拠は何か。一般競争を強化しようとする理由は何か。改正趣旨は実情に距離があり、矛盾があるのではないか。一般競争の参加資格の制限は政令でどのように規定するのか。また、それが官需から中小企業を締め出すことにならないか。契約制度の運用上、請負工事の競争契約参加者の資格基準として、建設業法に基づく客観条件による資格の判定を、各省各庁は今後どのように活用するのか等の諸点について、熱心な質疑がなされましたが、それらの詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終了し、討論に入りましたところ、天田委員より、今回の改正は、現行制度を若干でも改善するものであるので賛成するが、たとえば国有財産等の不法占拠のごとく、会計法規をいかに改正しても一向に是正されない事例もあるので、審議中に指摘した諸点については、政府においても今後十分検討するよう要望するとの意見か述べられ、須藤委員より、今後とも、指名競争、随意契約の比重が高まることが予想され、特定業者の利益を増し、中小企業者の利益を減ずることとなるので反対するとの意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
 右御報告いたします。(拍手)
#15
○議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
 本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#16
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十二分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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