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1960/03/09 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第6号
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1960/03/09 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第6号

#1
第038回国会 法務委員会 第6号
昭和三十六年三月九日(木曜日)
   午前十一時四分開会
   ――――――――――
   委員の異動
三月八日委員赤松常子君辞任につき、
その補欠として棚橋小虎君を議長にお
いて指名した。
   ――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松村 秀逸君
   理事
           井川 伊平君
           大谷 瑩潤君
   委員
           後藤 義隆君
           林田 正治君
           栗山 良夫君
           棚橋 小虎君
           市川 房枝君
           辻  武壽君
  国脇大臣
   法 務 大 臣 植木庚子郎君
  政府委員
   法務大臣官房司
   法法制調査部長 津田  実君
   法務省刑事局長 竹内 寿平君
  最高裁判所長官代理者
   事務総局事務総
   長       石田 和外君
   事務総局事務次
   長       内藤 頼博君
   事務総局総務局
   第一課長    長井  澄君
   法務総局人事局
   長       守田  直君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   法務省大臣官房
   参事官     影山  勇君
   ――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する
 法律案(内閣送付、予備審査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (裁判所の司法行政に関する件)
   ――――――――――
#2
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 三月八日付、赤松常子君辞任、棚橋小虎君選任。
 以上であります。
   ――――――――――
#3
○委員長(松村秀逸君) まず、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題に供します。当所からは、裁判所から石田事務総長、長井第二課長、法務省から影山参事官の諸君が出席されております。
 これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○井川伊平君 当局にお伺いをいたしますのでお答えを願いたいのでありますが、当局の説明によると、本法案の要点の第一点は、第一審の充実をはかるための方策として、下級裁判所の裁判官の員数を増加し、裁判の適正迅速を期するということが述べられていますが、訴訟促進の面で将来実現を期せられている計画等があるならば承りたいと存じます。なお加えまして、このたびの裁判官の員数の増で十分にその目的を達せられるというのであるかどうか。あるいは事件が年々増加してきておる見通しの上に立ちまして、将来これでよろしいというのであるかどうか。その点もあわせてお伺いいたします。
#5
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) ただいまのお尋ねでございますが、裁判官増二十八名になっておりますが、実はこのような員数では、十分にまだ訴訟の適正は申すまでもありませんが、迅迷に進めていくということはできないのでございますが、遺憾ながら定員をふやしていただきましても、裁判官に充てるべき給源が今のところ十分ではございませんので、このたびは二十八名程度ならばこれは十分消化し得る実情にございますので、二十八名にとどめていただいたわけでございます。その他につきましては長井課長から御返事いたさせます。
#6
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) それでは、こまかい点について私から御説明申し上げます。審理期間を短縮いたしまして訴訟の迅迷化をはかるわけでございますが、この点につきましては、戦前の審理期間は、地方裁判所におきましては、昭和十三年から十五年の平均を見て参りますと、民事の第一審四・八カ月、刑事が一カ月程度でございましたが、昭和三十四年度におきましては民事が七・五カ月、刑事が三・九カ月と、いずれもかなり遅延しておる状況でございます。それでこれを約半減いたしまして、民事の方は五カ月、刑事の方は三カ月程度の審理期間としたいという計画を持っております。そしてこれは合議体の増強と同時に、全国の裁判所につきまして実施することが望ましいのでありますけれども、ただいま総長から御説明申し上げましたように、補充源等の関係もありまして、一町に実現は困難でございますので、まず大都市所在の裁判所から順次これを実現していきたいという計画を持っております。第一回といたしまして、六大都市の地方裁判所について、三年後に、ただいま申し上げました審理期間半減の目標に到達したいと考えております。そしてそのためには、判事百名の増員を必要とする計画でございますが、今年度判事に任官する資格を持っている者及びその他の補充源等を考えまして、二十八名という増員をお願いしたわけございます。
#7
○井川伊平君 次に、検察審査会の現状、その活動の概況につきまして説明を伺います。
#8
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 検察審査会法が施行されましたのは昭和二十三年七月十二日でございましたが、調査活動を実際に開始いたしましたのは翌二十四年の二月からでございます。検察審査会の数は当初二百三ございましたが、昭和三十年に奄美大島に名瀬検察審査会が新設されまして、三百四になりまして今日に至っております。検察審査会が活動を始めましてから昭和三十五年六月末までの間におきまして全国検察審査会の活動の状況について見ますと、受理件数の総数が一万八千八百四十五件に達しました。そのほかに建議、勧告のなされたものが四百二十七件となっております。当初は発足早々で、この制度がまだ一般に周知されておりません状況でございましたので、年間五百件に満たない少数の事件しかございませんでしたけれども、漸次この制度が国民の間に普及、認識されるにつれまして、審査の申し立て数もだんだん増加いたしまして、昭和三十六年には二千件に近い件数にまで増加いたしました。その後四年間やや減少の傾向をたどっておりましたけれども、昭和三十一年以後は大体二千件前後の件数を示し、件数においては横ばいの状態となっております。
#9
○井川伊平君 次に本改正法案は「第二条中「二万四十三人」を「二万三百三十七人(うち千四十二人は、検察審査会に勤務する職員とする。)」」と改め、附則第二項において、検察審査会法第二十条第一項に定める検察審査会事務官の定数を削除されているが、右のごとき形式による改正を必要とした理由はどこにあるのであるか、お伺いいたします。
#10
○説明員(影山勇君) この検察審査会法二十条から事務官の定数を削除いたしましたのは、もともと、この定数、定員をどういうふうな形で規定するかということにつきましては、やや古い形の法律では一々官職について定員を規定しているという形が多くございまして、検察審査会法もやはりその当時のもので、従って定数がここに規定されておりましたのございますが、その後、一々官職と定数とを一緒に規定するという方法が徐々に変わりまして、現在ではたとえば柳察庁の職員、行政機関の職員等についても、一括して定員をきめております。そういう関係で、ことにこの検察審査会事務官は裁判所の職員から任命されて、職員の内数というふうになっておりますので、そこで、職員定員法の中にそれを今度入れることにして、そうして事務官のみならず検察審査会職員全部についての数を明らかにするという意味で、この裁判所職員定員法の第二条の二カ三百三十七人という職員の内数といたしまして、検察審査会の方から事務官の定数を削ったわけでございます。
#11
○井川伊平君 右の改正により、検察審査会に勤務すべき検察審査会事務官の定数については付らの法的規定がないこととなり、将来においては、千四十二人のワク内で検察審査会事務官の数を現在の、五百四十人よりも減じ、雇いを増すというような操作もすることが許され、ひいては検察審査会の弱体化を来たすおそれがあるようにも思われるが、この点はいかがですか。
#12
○説明員(影山勇君) 事務官の定数を削りましたために、事務官について何ら規制がないこととなるという御質問でございますけれども、今の改正の理由について出しましたように、ほかの機関につきましても特に事務官何人というふうに規定をせず、一括して職員の規制をすることになっておるのが例でございます。これは、一つは特に事務官、雇と申しましても、仕事の差が、あるいは場合によっては名前の差という程度にとどまる場合が多い。で、実質的になかなか待遇その他が必ずしも画然と違うということでなく、やはり年数その他の関係で、まあいわば名称の差というふうになってきております。
 そこで御質問のありました検察審査会を弱体化するおそれがあるかどうかという点については、これはやはり裁判所の人事の運用のいかんによって十分補えるのではないかというふうに考えております。
 この点につきましては、なお裁判所の方からも御説明していただきたいと思います。
#13
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 補足的に御説明申し上げます。御質問にございましたように、確かに検察審査会事務官の定数について法的な規制がないことになりますので、弱体化するのではないかというような御懸念おありかと任じますが、ただいま運営の実情を申し上げますと、最高裁判所と
 いたしましては、事務官を減じて雇の数をふやすというような操作は全く考えておりません。逆に、昭和三十六年度の予算におきましては、お手元に配付しました参考資料の三にもございますように、雇の定数のうらから二百七十二名を事務官に組みかえていただきまして、事務官の数を八百十二名とふやしております点から見ましても、この点についての最高裁判所の人事運営の状況、態度を御了承いただけるものと思っております。
#14
○井川伊平君 裁判所事務官、検察審査会事務官と事務雇との職務権限及び給与上の相違点、並びに事務雇よりこれらの事務官に昇進するに必要な資格、条件、こういうことについてお伺いをいたします。
#15
○最高裁判所長官代理者(長井澄君) 裁判所事務官、検察審査会事務官と事務雇とは、職務権限におきましては、事務雇は、裁判所事務官または検察官審査会事務官等の事務を補助することを一般的職務内容としております。裁判所事務官または検察審査会事務官と区別されるだけで、両者間の職務内容の差異というものはございません。給与上異なる点もございません。事務雇から事務官への昇任の基準は、雇い入れ、大学卒業後六カ月、短大卒業後二年、その他の学歴のものは四年以上有するものの中から、選考によりまして事務官に昇任させるという運用をいたしております。
#16
○井川伊平君 近時、政府は行政機関職長定員法の廃止を計画されていると聞きますが、その内容と、右に伴って裁判所職員定員法の取り扱いをいかにされるかについて伺うのであります。
#17
○説明員(影山勇君) このたび行政機関職員定員法を廃止しまして、各調査機構等にその定員を増すとともに、国家行政組織等の一部改正によりまして一部改正法律案によりますと、第十九条ですが、「各行政機関の所掌事務を遂行するために恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤の職員の定員は、法律でこれを定める」というふうにいたして、そうして改正の要点は、「特別の事情により前項の定員を緊急に増加する必要が生じた場合において、同項の規定にかかわらず」「一年以内の期間を限り、政令でこれを定めることができる」という点にございますことは御承知の通りでございます。裁判所職員につきまして、さしあたりこういうまあ一年以内の期間を定めて何か非常に緊急に増加する必要を生ずるようなことは、普通の行政機関の場合と異なりまして職務の性質上、たとえば裁判官のような職務については、とうてい考えられませんし、その他の職務についても裁判所の事務の性質上、かような行政機関について政令で手当するような定員の緊急増というものが比較的少ないのではなかろうかというので、なお、その裁判所職員宝貝法については、現在のところすぐにこれに伴って改正する必要はないのではないかということで、なお慎重に検討をする、こういうことで、今回はこれに見合った改正の提案は申し上げないということになっております。
#18
○委員長(松村秀逸君) ほかにございませんか。――ほかに御発言もなければ、本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめたいと存じます。
 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#19
○委員長(松村秀逸君) 速記を起こして。
   ――――――――――
#20
○委員長(松村秀逸君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査の一環として、裁判所と司法行政に関する件について調査を行ないます。
 当局としては、裁判所から石出事務総長、長井第一課長、法務省から、大臣と刑事局長は今予算委員会に出ておりますが、間もなく出席の予定であります。
 御質疑のある方は順次御発言を願います。
#21
○栗山良夫君 私は今案件になりました、具体的には飯守スピーチの問題ですが、この問題は感情的に取り上げる問題ではなくて、すでに世論が示しておりますように、裁判の公正、中立、そこから司法の権威を守っていく、そういう立場で一段高い角度から事態を明白にすべきものだと考えます。特に飯守個人のことにつきましては、すでに成規の手続きを経て訴追委員会に持ち込まれておるのであります。従いまして、最終的には弾劾裁判所の問題になるかならないかは別といたしまして、そういう方面から進められるのでありますから、当法務委員会としては、その方面にまで具体的に深入りする必要はなかろうかと考えるのでありますが、そういう立場で、本件について
 二、三司法当局に対してお尋ねをいたしたいと思います。従って、お答えも私の考えておりますのはそういう点でありますから、末節にこだわらないで、率直に一つお答えを願いたいと思います。
 まず最初に、先月の二十四日赤尾事件の勾留決定の手続に関しまして、飯守氏が法規の定めるところによってそれを肯定をし、その直後に、いわゆる飯守発言なるものをされたわけであります。この飯守発言というものは、われわれは正確には何も知らないのであります。ただ新聞紙上を通じて知っておるだけであります。従って、いかなる発言をせられたのか、正確にここで一つお聞きをいたしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(石田和外君)
 ただいまいわゆる司法権と国会の点につきまして非常に御理解のあるお言葉を承りましたので、何ら懸念はないのでございますけれども、まあ申し上げるまでもなく裁判の独立、そのための裁判官の独立という問題は、民主政治成立の最も大事な一つの基本的なことだと思いますので、これは何人からも尊重せらるべきこと、国の機関である国会並びに政府からも尊重せられるべきことであろうかと確信いたします。つきまして、ただいまの御発言によりまして、この点を御理解いただいておることを非常に安心したわけでございますか、御質疑の内容いかんによりましては、あるいは裁判所側としてはお答えいたしかねる場合もあろうかと思いますから、この点はあらかじめ御了承をお願いしておきたいと思います。
 そこで、事柄の真相を知っていただきますために、裁判所側で調査いたしましたことに基づきまして、一応詳しく御説明を申し上げたいと思います。
 まず、感想発表の経過でございますか、飯守裁判官は昭和三十六年二月二十四日午後五時過ぎごろに東京地方裁判所刑事第十四部の裁判官室におきまして、被疑者赤尾敏に対する勾留状を発布いたしましたところ、午後五時二十分ごいに最高裁判所内の記者クラブから右裁判官室に電話がありまして、勾留状の発布につき聞きたいとのことでありましたので、同裁判官はこれを承諾いたしまして、右裁判官室で十数名の記者と会見をいたしました。同裁判官は記者の質問に応じて、赤尾敏に対する検察官の勾留請求は殺人等教唆及び暴力行為等処罰に関する法律違反の罪を被疑事実としてなされたが、検察官提出の資料だけでは教唆罪の方は勾留するに足る嫌疑がないものと認めて、勾留の理由から除外し、単に暴力行為等処罰に関する法律違反の罪だけを勾留の理由として認めた旨を述べて、記者団のこの問題に対する質疑は一応終了いたしましたが、さらに引き続いて右会見の直前に用意したメモに基づきまして感想を述べた次第でございます。この記者会見は約十分で終わったとのことでございます。感想の内容は、幸いメモがございます。そのメモによりますと、その内容は次のようでございます。
 最近続発した山口二矢、、小森一孝その他の一連のテロ事件の根本原因は、昨年米の集団暴力の横行に表われた破壊工作に依る。深沢七郎氏及び中央公論社の名誉毀損事件が直接の原因である。これらの原因を政府や国会が一つ一つ除いて行かなければ何等の解決にならない。警察責任者の辞任などで解決のつくことではない。解決の方向を誤まると却って政治テロの発生を助長し、益々混乱を来たし危機を招く。私個人の意見としては、当然、中央公論社の皇室名誉毀損事件について、正式の司法的措置を講ずべきであり、又テロ発生の原因となった集団暴力に対する必要な立法上の措置と現打法運用上の措置を講ずべきだと考える。政治テロに対する刑罰の強化も考えられるか、同町に集団暴力に対する取締強化を実施しなければ、片手落となり、却って危機を招来する。政治テロが原因で集団暴力が起ったのではなく、集団暴力に対する諸対策の足りなさから政治テロが起ったのである。蝋山政道氏が昨日(二月廿三日)の毎日新聞の夕刊の憂楽帳欄に『政治の喪失』という題で批評を書いておられたが、このような批評をされないようにしなければならないと思う。
 これが発言の内容でございます。いかなる意図でかような感想を発表したかということでございますか、これは飯守裁判官の報告するところによりますと、同裁判官は、かねてから民主日本確立の基礎条件ともいうべきいわゆる法の支配の確立を念願しているものであり、現下の左右両翼の先鋭な対立を心から心配し、最近続発したテロ行為を憂え、その原因について深く思いを払っていたものであるか、たまたま赤尾敏の勾留取り調べにあたっていよいよその感を深くし、従来から抱いていた感想を述べるに至ったものであります。そして、同裁判官は、右の感想を前記の勾留事件そのものの感想として述べたのではなく、これを機会に前記一連の右翼テロ事件についての一国民としての個人的見解として一般的な刑事政策上の意見ないし感想を発表したという次第でございます。
 以上でございます。
#22
○栗山良夫君 先ほどお聞きいたしました飯守発言というものは、飯守氏がメモにしたためましたもの、そのものございますか。
#23
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) さようでございます。
#24
○栗山良夫君 法務大臣がおいでになりましたので、法務大臣にはこのことにつきましてあとで二、三お尋ねいたしたいと思いますが、過去の経過を一通りお伺いいたして参りたいと思いますので、しばらくお待ち願いたいと思います。そこで、そういう発言がありまして、司法部内でも問題になりましたことは私も承知しております。それから国会でも問題になる、また政府部内においても問題になる、世論も大きく取り上げる、いわば国内あげて一つのショッキングな問題としてこれに注目した。それについて司法部内として、今日までにおとりになったいろいろの処置、これを詳しくお述べ願いたいと思います。
#25
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判官に対しましては、裁判所法八十条という規定がございまして、監督機関が明足してございます。飯守判事のように地方裁判所に属している判事につきましては、その監督機関は地方裁判町、高等裁判所、破局裁判所――今申しました裁判所というのは、実質的には裁判官会議を意味するわけであります。最高裁判所の裁判官会議が最終的な監督機関になっておるわけであります、か、この問題の世間に及ぼしましたいろいろな影響を考えまして、急遽二月二十七日に裁判官会議を招集いたし、さらに三月一日その裁判官会議を続行いたしまして、慎重に審議をいたしました結果、結論を出しまして、すでに新聞紙等でも御承知だと思いますが、裁判所法八十条の規定に基づいて飯守裁判官に注意をいたすということになったわけでございます。その理由といたしますところは、「裁判官は個人的な感想を発表するに当たってもその地位と職責の重大性にかんがみ世人に与える影響などを考慮しその時期および方法について慎重であり、とくに裁判官の公正を疑われるような誤解の起こることのないように注意しなければならないところ、貴官はこの点の配慮を欠き右感想の発表を拘置決定の質疑終了直後、しかも裁判官室でしたため、あたかも右の公正について疑いを起こさせるような誤解を招いたことはきわめて遺憾である。」というふうな文言で表示いたしておる次第でございます。
#26
○栗山良夫君 まだそのほかに、東京地裁の横川裁判長は、何か、本件に直接関係はありませんけれども、裁判廷で発言をせられておるところがあると思いますが、その点はどうですか。
#27
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 私の聞いておりますところによりますと、三月二日だったかと思いますが、横川裁判官が裁判長として審理しております国会デモ事件の公判廷で、弁護人並びに被告の方々からその裁判官に対して、不安と不信を覚えるというようなことを発言いたしましたのに対しまして、横川裁判官から、さようなことは絶対ない、また不信を抱くなんということはもってのほかのことであるという趣旨のことを申したそうでありますが、要するに弁護人、被告人側からそういうふうな発言がございましたので、それに対して横川裁判長がさような趣旨の答えを答えざるを得なかったと申しますか、答えたということであります。
#28
○栗山良夫君 ただいまの横川裁判長の発言は、これもわれわれはつまびらかにはしらないのでありますか、新聞紙の報道するところによりますというと、内容は相当核心に触れた、司法のあり方を明らかにして、今おっしゃったようなことを述べておられますが、その点は正確なものはお持ちでございますか。
#29
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 少し長くなりますけれども、何か文書によるものがございましたから…。これは東京地方裁判所の所長代行の新関判事から松田所長にあてた文書でございますが、これを説み上げることにいたしましょう。
 この本日と申しますのは三月三日のことでございます。
  本日午前九時半横川判事が刑事八部の担当事件被告人志水速雄、糟谷秀剛、陶山健一等にかかる昭和三五年四月二六日突発のいわゆる全学連の国会侵入事件(四、二六デモ事件)の三月二日の公判廷において、裁判長として発言した経緯及び発言内容等について、同判事より次のとおりの報告を受けましたので、委細を報告します。
   一、開廷前の状況
  三月二日午後二時から前記事件に
 つき証人調を実施する予定になって
 いたところ、開廷直前、松尾弁護人
 から飯守発言に関連し、被告人等よ
 り法廷において発言したい旨の申出
 があり、被告人等にも会い事情を確
 かめたところ、被告人等の表情にも
 常ならぬものがあり、裁判所のこの
 問題についての十分な説明がない限
 り、爾後の審理には応ぜられない旨
 申出で、思いつめた状況なので同判
 事は、公判審理を適正迅速に処理す
 べき観点から一応法廷で被告人等の
 陳述を聴くこととしたが、次の点に
 ついてはこれを厳守するするよう中
 渡した。
 (1)法廷を政治的発言の場として
  利用することは許さない。
 (2)発言は本件と関連ある事項に
  限局する。
 (3)当裁判所に対する釈明要求
  は、不穏当であるから許さない。
 (4)飯守発言自体については、本
  件と関連がないから、当裁判所とし
  はて、これについて、何も言わな
  い。
 二、法廷における状況
 (1) 弁護人の発言
 松尾弁護人は開廷冒頭、次のとお
 り発言した。「飯守発言以来被告人
 等は裁判所に対する不信を抱いてい
 る。被告等に意見を述べさせてもら
 いたい」
 (2)検察官の意見
 金吉検事は同判事に求められて、
 本件に関連性のない発言は許すべき
 でないと発言した。
 (3)裁判長は関連性の有無につい
 て弁護人に確かめたところ、被告人
 等は十四部で勾留されたものであ
 り、集団暴力犯の嫌疑で起訴されて
 いるのだから、本件の審理方針に関
 連し、裁判所の見解を明らかにして
 おいて貰いたい点があると応答した
 ので、被告人等の発言を許した。
 (4)被告人等の陳述内容
 被告人等は裁判長から、三人で合
 計三十分間だけ発言を許すとの指示
 に従い、礼儀正しく、冷静に発言し
 たがその発言中、裁判長は不安があ
 るというのはよいが、不信という言
 葉は穏当でないと注意した一幕はあ
 ったが、おおむね時間を守って陳述
 を終った。その内容は次のとおりで
 ある。
 (イ)飯守裁判官は当部の裁判官
 と同じ東京地方裁判所に所属してお
 り、拘置部の部長判事としてわれわ
 れの拘置に間接的に関与した。
 (ロ)飯守発言は右翼テロは左翼デ
 モに原因すると述べているが、これ
 はわれわれの被告等の行為がテロの
 原因だったとするものだ。
 (ハ)当部の裁判官に対しても不信
 と不安の念を抱かざるを得ない。
  三、横川判事の発言内容
  同判事は被告人等の意見陳述を聴
 いた後陪席裁判官と合議の結果次の
 とおり裁判所側の所信を述べた。
  要旨は次のとおり。
  「本件の被告人等の間に裁判一般
 に対する不安の念を抱いている者が
 あるのは遺憾だ裁判の公正は裁判の
 生命であり、絶体に守られねばなら
 ない。本裁判所は、今でも、今後も
 憲法と法律とに基づき、法廷に出さ
 れた証拠のみによって審理を進めて
 行く。このようなことをここで言わ
 なければならないのは残念である」
  四、その後の状況、右発言後同判
 事は五分間の休憩を宣し、何等のこ
 ともなく、三時より予定の証人調を
 実施し、六町半頃終了したが、前記
 の経緯は概ね二町から三時迄の間に
 起ったものである。
 こういうふうに報告がございました。
#30
○栗山良夫君 司法当局とさてれは、ただいまの横川裁判長の所信ですね、所信は公正妥当なものとお考えになっておりますか。横川裁判長のただいまお読みになりました所信ですね、裁判廷において発表された所信というものは、公正妥当なものとお考えになっておりますか。
#31
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 私個人といたしましては妥当であると思っております。
#32
○栗山良夫君 この横川裁判長の所信については、今事務総長のお考えはわかりましたが、そのほか問題になって――これを肯定する否定する、いずれの立場からも問題になっているということはございませんか。
#33
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあある事柄がありますと、めいめいいろんな意見が出ますので、いろいろな意見はあるようでございますが、別に問題になっているというほど程度の高いものではございません。
#34
○栗山良夫君 それから経過としまして、飯守氏の処分――処分という言葉が妥当かどうかわかりませんが、一応不当な発言であったというので裁判所法の八十条による監督権を発動されておりますが、われわれが承知しているのは、四十九条のいわゆる分限の問題であります。従って分限懲戒処分によらないで監督権を発動して行政処分にされたわけでありますが、そのどちらが正しいとか、そういうことはわれわれが言及すべきことでないでありましょうが、問題は、四十九条の懲戒と八十条の行政処分と、いずれがきびしいかということですね。同じ処分にしてもいずれがきびしいかということがわれわれは判断がつかないわけです。これは司法当局はどちらの方がきびしいとお考えになっておりますか。
#35
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判所法の四十九条によりますと、分限の懲戒の理由といたしまして、結局、職務上の義務に違反した、あるいは職務を怠ったあるいは品位をはずかしめたという三つの場合があるのでございます。それで、懲戒の理由があるといたしますと、これは裁判所法八十条で監督権を持っております裁判所、今の場合で申しますと東京地方裁判所、東京筒等裁判所、最高裁判所、いずれもその裁判所が分限申し立てを請求する権能を持っているわけであります。分限の裁判は御承知の通りだと思いますが、東京高等裁判所に分限裁判所というのがございまして、今の八十条で監督権限を持っている裁判所から分限の申し立てをいたしますと、分限裁判が開始されるわけであります。それで分限裁判が開始された結果、これはもう裁判でございますから、どういう結論になるか、何人もわからない。それから分限は一万円以下の過料または戒告、この三つだけでございます。まあ、さような関係を御勘案になりまして、どちらが軽いか、重いかというようなことを御判定していただくより仕方がないので、どちらが軽いか重いかということは、ちょっと簡単には表現いたしかねる次第でございます。
#36
○栗山良夫君 手続の問題ですが、その八十条で行政処分がされた後も、第四十九条によって懲戒処分の分限裁判にかけて行なうということは可能なわけですか。
#37
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) それはまあ可能でございますね。かりに最高裁判所が申し立てをしなくても、高等裁判所、地方裁判所が申し立てをすることも考えられるわけでりあますが、今回は最高裁判所としては、分限申し立てばしないという大体方針でございます。
#38
○栗山良夫君 なぜそういう疑問が起きたかと申しますと、この問題が起きるといち早く司法部内で問題になりまして、最高裁でこれを取り上げて行政処分にされたわけですね。ところが四十九条の分限の問題は、今あなたが申されたように、地裁の方から上げてこなくちゃならない。これは同じ時点で同じところから行為が起きておれば疑問は起きないわけですけれども、そこにちょっとわれわれとして理解のできないところが一つあったわけです。地裁の方の空気というものは、懲戒を望んでいたのか。あるいは八十条による行政処分を望んでいたのか。そういう連絡が十分でなくて、最高裁で八十条の決定をなさったわけですね。この辺のところがちょっと私わからないのです。
#39
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 東京地裁でかりに結論を出すといたしましても、裁判官会議のメンバーは百六十名くらいおりますが、なかなか簡単には結論は出ないと思います。百六十名の裁判官が、いろいろ考えは違いましようから、なかなかこれはまとまりにくいと思います。
 もう一つは、新聞に非常に大きく報道され、取り扱われましたので、これが社会的に巻き起こしている反響の重大性等も考えまして、やはりこれは天下に隠れもない事柄でございますから、最高裁判所としては早く処理すべきであるという観点から、緊急裁判官会議が開かれたわけでありまして、別にその点、地裁の方が先とか、高裁が先とか、そういう順序も何もございませんので、御疑念も氷解するのではないかと思います。
#40
○栗山良夫君 ただ、国民が受けた印象は、これは注意という行政処分をされたことによって全部問題は終わってしまった。訴追委員会の問題は別ですが、国会の……。終わってしまったという印象を与えた。それでいいのかということで、いろいろまだ意見も各方面から出ておるようですから、そういう意味で、私は裁判所法のいろいろの行政処分――裁判官は非常に高度の身分保障をされております関係上、普通の公務員のような工合にはいきませんから、事情はわからないではありませんが、国民として、まだ十分に理解し得るところにまでいっていないのじやないかという点を私はおそれるから申し上げたのであります。そこで問題は、国民が理解し得るかしないかということは、その行政処分の注意を受けたときの飯守判事の心境とか態度とか、そういう点に私は問題があると思いますが、この点は、注意を最高裁で処分決定をして発せられたとき、どういう態度であったか。この飯守発言をされたときには、なかなか高姿勢で、新聞に出ておるいろいろのものを読みましても、信念きわめて固いところを示しておられますが、しかし、それはあくまでも飯守氏の個人的信念であって、今天下の世論は大体きまり、しかも司法部内においてもこういう結論が出た。そういう直後における飯守氏の心境、態度はどういうところであったか。これは国民が知りたいというところでもありましょうが、一こうに公になっておりません。その点はいかがでしょうか。
#41
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 注意いたしました点も発言の内容云々ということではなくて、時と場合の慎重さを欠いておったという点に重点があったわけでございます。それは先ほど申し上げました注意の理由の表示するところによっても明らかでございます。それで、横田長官が飯守裁判官に注意いたしましたとき、私も立ち会っておりましたけれども、その時と場所に対するああいう場合にああいったことを言ったという点につきましては、飯守判事も慣しみを欠いておったということは十分に認めておるわけでございます。発言の内客、それについては触れておりませんが、これは何ともお答えする限りではございません。
#42
○栗山良夫君 まあわかりましたが、そうすると、その後、飯守氏の動静はどういうふうになっておりますか。新聞によりますというと、事件が起きてから裁判所に出て公務はとっておられぬというようなことがちょっと新聞に出たことがありまが、これはどういうことになっておりますか。
#43
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) その点は何ら普通と変わりがございません。
#44
○栗山良夫君 そうすると現在公務執行中ということですね。
#45
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) ええ、もちろんそうでございます。
#46
○栗山良夫君 その次に、飯守氏の経歴をここでお聞きするのが妥当であるか、ちょっと私は迷っているのですが、しかし、’具体的に申し上げますと、すでにほかにも出ているかどうかわかりませんが、週刊朝日等には相当こまかく経歴が出ておりますが、こういうものは司法当局としては前から御存じになっていたのですか。
#47
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあ経歴と申しますか、概括的なことは申し上げても少しもかまわないと思いますが、昭和五年の三月に東大の法科を卒業しまして、昭和去年の六月に司法官試補になりました。それから昭和七年の十月に判事に任官いたしました。昭和十三年の九月に満州国審判官となり、参事官等もいたしました。それで終戦になりまして、終戦と同町に失官いたしまして、以後シベリアあるいは中共等で抱留生活約十一年を経ました後、昭和三十一年の八月一日に舞鶴上陸、つまり帰国いたしましたわけであります。それで同判事の同僚等もたくさん司法部内におるわけですが、つまり昭和五年の六月に司法官試補になった人がたくさんおりますが、その友人等の間でも決して悪いような評判はございませんし、まあ人柄も学識も、非常にりっぱな裁判官でございます。それで帰国いたしました後、これをあたたかく司法部内に迎えましたことは、これは当然のことでございますが、まだ心身疲れておりましたから、三十一年の八月二十三日に、最初は簡易裁判所判東として少し責任の軽い仕事をしてもらっておったわけでございます。その後心身の回復を認めましたので、約一年ばかりほど簡易裁判所判事を経た後に、昭和三十三年の四月八日に判事に任命の手続をとりました。そして現在に至っているという、そういう次第でございます。
#48
○栗山良夫君 私が手元に持っておりますのは、これは三月十日の週刊朝日ですが、そこに「飯守重任という裁判官」、「彼のものの考え方の遍歴」と書いてあります。私もおもしろいものですから最初読んでみますというと、共産党のだれかが書いているのかなあと思うような文書です。それを読んでみるというと、これは飯守氏が中共抑留中に書いた手記なんですね。われわれ社会党ですが、社会党なんかでもこんなことは言いませんけれども、ずいぶんはっきりしています。共産党員が書いた、はっきりしたものです。そういう手記のものを書かれている。しかもそれが書かれているかと思うと、飯守氏その人は満州国に渡るというと、「治安維持法の立て役者」で、彼が自分で満州国時代にやったことのざんげの記録が載っている。たとえば「中国人民を一千七百名も死刑に処し、約二千六百名の愛国人民を無期懲役その他の重刑に処している。」そういうような、満州国においては要するに当時の弾圧の急先鋒であったということが書いてある。そして帰ってくると、今度は途中一ぺん転向して共産党のようなことになって、また右翼礼賛になった。こういうような遍歴をしたものだから「彼のものの考え方の遍歴」と、こう書いてある。これによりますと、元第五十九師団長の藤田茂という元中将は、この人は戦犯当時ずっと一緒らしかったのですが、その人が、大へんけしからんことだといって書いております。そしてその一番おしまいのところでは、これはいつごろだかわかりせまんが、これは抑留中のことですが、「千余人の日本人を前にして、演壇の上で自分の「罪悪」を語り、みんなの感涙をさそったあの飯守君の涙は、そら涙か。」と書いてある。それからさらに、「飯守君は」「日本に帰れば、環境も変わる。まして生活のためには、いうことも、思想も、変わろう。じゃが、ヒューマニズムの一点だけで、過去を反省し、平和のために、つくしたいと誓ったわれわれの涙にウソはなかった。飯守君は、もう一度、満州時代の立場に逆もどりしようというのだろうか。そして今後、また時代が変われば、『あのときは職務上やむをえなかった』と、もう一度弁解するつもりじゃろうか……」と、こう書いております。これは藤田元中将の批評ですね。こういうものを読んでみますと、信念は非常に固い人だということが言われておりますけれども、この信念というのは一体どういうものなのか。浦島太郎説、モンテクリスト説、佐倉宗吾説とか書いて、いろいろ批評してありますが、いわゆるわけがわからない。本人は満州国の手記を書いたのに対して批評をされたときに、こういうことを言っておられるようですね。これは昨年の八月発表されたというのですが、あなた方手記の全文をお読みになっているかどうか知りませんが、そのときに飯守裁判官は反論を加えて、私が手記の中で、かって私は帝国主義の手先だったと言ったのは、中共を欺くためだったと述べた。そういう工合に書いてある。またここの中にも、「犬死にするのもつまらないと思いまして、自分の宗教的な主張だけは保持して、向こうのいいなりに作った作文ですよ」と、こう言って平然としている。こういう、思想的にその局所々々では信念が固かったかもしれぬが、全体の思想を通じて、そのときどきによって右にでも左にでも、どこにでも行こうというような人、こういう人が裁判官でいるということは、国民に私は非常に不安を与えていると思うのですね。そういうことをさえ司法部内では重きを置かないのかどうか。裁判官といえども思想の自由があります。その自由はけっこうですが、その自由が、ときどきの情勢によってどっちへでもぐらついて、そしてそのぐらついたまま裁判にそれが現われているということであれば、これは大へん信用できないことです。国民に最裁を通じて不安を与えるということになりますが、その点はよろしゅうございますか。
#49
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) ただいまの週刊誌は私もざっと目を通しましたし、それから抑留i時代に書いたという手記は、一年ほど前にアカハタにも大きく載っておったのを見たことがございます。しかし裁判官の身分というものは憲法で保障されてありまして、先刻来申し上げました通り、八十条の監督に服しますし、それから分限も懲戒のあれがあれば懲戒と、これは分限法の規定がございまして、これは法律ではっきりきまっておるわけでございます。さらに著しく職務を怠ったり、あるいは職務の内外を問わず著しく裁判官としての威信を失墜したという場合には弾劾の事由もあるわけでございますが、結局御趣旨を拝聴しておりますと、裁判官の思想いかんによっては、裁判所の当局者が何か圧力を加えたらどうかというふうな御趣旨のように響くわけでございますが、裁判官の地位というものは、さような、何と申しますか、軽いものではございませんので、憲法が厳然と保障しております。さればこそ裁判官に信頼が置けるわけでございます。ただいまの週刊誌にございます藤田元中将という方は、だんだん伺いますと、何か飯守判事を訴追請求をしている方だそうでございます。これは弾劾の事由があると考えれば、何人も訴追請求できますから、何ら問題ではないのでございますか、結局訴追請求をしている方で、何か特殊のそういうことをおっしゃらなければならないような関係でもおありになる方かと思うのでございますが、まあ今の罷免の事由に当たるというふうなお考えの方があれば、それは訴追請求、弾劾の道が開かれておりますので、ただいまの御質問に対しましては、私裁判所側としてはお答え申すべき限りではございません。
#50
○栗山良夫君 誤解があるといけませんからつけ加えておきますが、私は特定の思想の持ち主に対して好ましくない裁判官であるからしかるべく司法部内において圧力をかけるべきであるとか、そういう意味のことを申したのではございません。私は裁判官の尊厳というものはあくまでも守っていかなければならない。それがくずれたら、日本の司法の権威がなくなるでしょうから、そういう意味で私は申しているわけでございます。ただ、ここまで問題になり、彼が戦前から戦後を通じて、これだけ日本一の発行部数を誇っている巷間の印刷物を通じて報道されて、そういうことについて国民がひとしく不安を持つ、こういう人が果たして裁判官であっていいのか。ときどきによって時々態度を変えて、しかるべくその時流に乗っていくということでいいのかという不安を持つようなことがあれば、これはあなたに申しても何ともしょうがないと思うのですが、良識ある人、本人みずからが裁判官として適当であるかどうかということを御判断なさるべきだ、私はそういう工合に申し上げた。訴追委員会とか弾効裁判所とかいうような、そういう成規の手続の俎上に乗らない前に、みずから判断して決せられるべき問題ではないか。これが良識ある日本国民としての私は態度であるのじゃないか。そう私個人は考えているわけです。どうも、まんざらこれはうそのことを書いているわけではないと私は思いますが、そういうものを読んでみれば、何としてもこれは釈然とし得ないものがあると思うのです。
 そこで、大体わかりましたが、次に一番重要な問題として、飯守裁判官への行政処分上の注意というものは、発言の内容にまでは及んでいない。失言をした時期と方法がいけなかった、これが裁判官としてあるまじき行為であったから注意処分を行なった、こういう工合に御答弁ございました。そこで、私どもとしては発言内応そのものが時期、方法が悪かっただけじゃなくて――内容そのものがいけないのだという考えを持っております。その一つは赤尾敏の問題に関係しまして、検事から殺人教唆の疑いをもって勾留決定の申請がなされた、暴力行為はもちろん入っておりますが……。ところが、殺人教唆の方は疑いがないと、こういう工合に――まだ裁判上じゃないわけですね。裁判の過程後ならばもちろん問題はありませんが、勾留決定するかしないかというときに、裁判官がそういう断定をしてしまった。しかも証拠として出されたのは、検事から出された書類でありましょうが、赤尾敏氏に会って、赤尾敏氏の意見を聞いたら、どうも違うというような言い回しか書いてあります。そういうような、ある意味において軽率な断定でこういうことをしてよろしいかどうかという問題が一つあります。これは法務省に直接関係ありません。裁判所の部内の問題でありますけれども、このことについて、私は裁判所の方が内容に触れていないとおっしゃったことについて、いささか合点がいかないのですか、それは、もっとも裁判所の方は、この今私が発言しておる問題について、当否をおっしゃっておりませんからね。従って意見を私が述べるわけにはいきません。殺人教唆の問題を抜いたことがいいか悪いかということは、一言も今事務総長は述べておられませんからね。ただ、内容に触れなかったということだけをおっしゃった、だけですから、問題はありませんが、この点もあとで御意見を伺っておきたいと思います。
 それから法務大臣に伺いたいのは、いろいろ問題がたくさんありますが、たとえば皇室に対する名誉棄損として、正式な司法的措置をとるべきである、こういうことをおっしゃっておる。これはおやりになるとすれば総理大臣ですね、しかし総理大臣はやらないとおっしゃっておる。それに対して、とるべきであると、こう言っておる。これは立法、行政、司法はお互いに三権分立で、ある線を堅持しながら、ともに侵してはならぬ問題です。侵してならないのにかかわらず、飯守裁判官が政府の最高責任者である池田総理大臣の意向と全く反対の意見を堂々と述べるということは、これは行政に対する侵犯じゃないか。私は、その点は、法務大臣として、やはりはっきりした所信を表明せられるべきではないか。裁判官が言うべきでないことを言ったじゃないか。政府の行政に関する行政権の行使の問題を裁判官が云々するということはけしからんじゃないか、こういうことは、やはり明らかにしなければ、国の秩序というものは保たれないじゃないか、そういうことを私は考えておりますが、これについてのお考えはどうであるかということですね。それから国会デモのような集団暴力を徹底的に取り締まるために、立法的措置を講ずる必要があると、これは立法府である国会のことであります。国会に対する干渉です。そういうことが必要であるかないかということは国会が判断することです。そういうものを一裁判官がやるということは、あなたは国会に籍を置いておいでになるわけでありますから、国会議員として、国会の府におる者として、国会の権限に対して侵犯されている、そういうことをお考えにならないか。この点を御意見伺いたいと思います。
#51
○国務大臣(植木庚子郎君) ただいま二点についての御質問でございますが、法務大臣の立場といたしましては、この飯守裁判官が個人的意見だがということを断わってお話しになったあの発言について、今かれこれ私の立場として批判なり感想なりは差し控えたいと考えておる次第でございます。ことにただいま御質問の中に総理が今回の夢譚事件におきまして告訴をしないというふうにきめておるような御発言であったかと思いますが、この点につきましては、かつての席でも申し上げました通り、総理は今皇室のあり方あるいはその他諸般の情勢を慎重に考慮して最後の決定をしたいと、こういう態度でおりますので、まだ告訴をしないときめてしまっておるわけではないことをちょっと申し上げさしていただきます。
#52
○栗山良夫君 ただいまの法務大臣の御答弁は、今ここで私は本件について所信を述べることは差し控えたいとおっしゃったのですが、それはどういう意味ですか。所信をお持ちになっていないという意味ですか。所信があるが述べられないという意味ですか。どういう意味ですか。
#53
○国務大臣(植木庚子郎君) 私は私としての考えを持っておりますけれども、法務大臣の立場としてこの国会の席におきまして飯守発言についての批判を申し述べることを、差し控えたいと、こういう意味なのでございます。
#54
○栗山良夫君 一般論としまして、司法部内から行政に対して干渉がありましたときは、あなたはどういう態度をおとりになりますか。
#55
○国務大臣(植木庚子郎君) 非常に抽象的な御質問でございますから、なかなかお答えがしにくいのでありますが、それが司法権の当局としてはっきり言われている場合と、あるいは個人的にいろいろな帝で言われる場合と、いろいろ場合によって違おうと思うのです。そういう意味におきまして、私は、正式に司法権の立場で行政権を侵すとか立法権を侵すというようなことが行なわれますと、これに対しては当然公の席において反論もしなきゃなりませんでしょうし、意見も述べなきゃならぬことは当然だと思います。しかしながら、そうじゃなしに、個人的発言にわたっていろいろな批判をされた、それに対してまたこちらで批判をし返すというようなことは、私は避けた方が穏当である。かように考えておるのでございます。
#56
○栗山良夫君 私どもの伺うところでは、飯守裁判官は法廷において記者会見をすると、そうして、一応記者会見が終わったあとでわざわざ記者を呼びとめて――これは石田事務総長、もし間違っているといけないからお聞きいただきたいのですが――一応記者会見が終わってから、また記者を呼びとめて、そうしてあらかじめ用意しておったメモを発表した。こういう具合に私ども聞いておるのです。これは念が入っているのですね、念が。しかも、法廷においてこの勾留処分のことを決定して、その直後に記者会見をした。そこであらかじめメモを用意して述べて、そのメモが今申し上げましたように、メモの内客が行政に対して注文をつけている。こういうことは、行政の侵犯になりませんか。私はどうもその点、法務大臣として明確にせられるべきだと思うのですがね。
#57
○国務大臣(植木庚子郎君) 先ほど事務総長からお答えがありましたように、私どもの承知しておりますのは、裁判官室において云々ということで、法廷とは聞いておらないのでございますが、しかし、裁判官室のその場所がよくなかったとか、あるいは時が当を得ておらなかったじゃないかということについては、司法当局でも注意なさっておることでございます。従いまして、われわれの立場として、これはかれこれ口を差しはさみたくないというのが私の心境なんでございますから、御了承願いたいと思います。
#58
○栗山良夫君 いずれこの問題は、飯守判事個人に対することについては、成規の手続をとって訴追委員会にかけられておるわけでありますから、おそらくその委員会で徹底的に真相が調査をせられ、また各意見が述べられて、集約されて結論が出ることと思いますから、私はこれ以上は深く触れたくないと思いますが、もう非常にショッキングな事件として、国全体があげて心配をしておることでありますので、やはり法務大臣としては、今すぐということは大へんお困りの点わからぬこともありませんが、適当な機会に、やはりはっきりせらるべきだと私は思います。そうしませんと、国会にも注文をつけ、政府の方にも注文をつけ、これは八つ当たりですよ。そういう八つ出たりを、まあ私先ほど法廷と申しましたが、それが間違っておれば裁判官室でもよろしゅうございますが、裁判官室において、もう新聞記者会見が終わって、新聞記者が帰ろうとしているのに、わざわざ呼びとめて、そうしてメモを発表するなんて、実際不謹慎である。しかもその人の思想傾向といえば、先ほど申し述べた通り。こういうことでは、裁判の権威というものを守るしにおいて私は非常に不安だと思います。たまたま東京地裁の横川裁判長が、ああいう法廷で若干弁護人、被告人から発言があって、それを収拾し、さらに裁判を維持するためにきわめて明快な所信を表明せられた。しかもその所信表明は、先ほど石田事務総長の話を聞きますというと司法部内でも別に問題になっていない。肯定、否定どららの立場からも、判事個人々々のことはわからないけれども、司法という組織内部においては問題になっていないから、そのことは是認されておると見ていいわけでしょう。そういうことで一応安堵はしている。安堵はしたと思いますが、しかし飯守判事そのもののことについては、一こうに解決しておりません。また、今伺うところによると、ずっと公務執行中と言う。私どもの聞いたのは、あの事件が起きたあとは、発表のときはばかに元気がよかった、質問にも堂々と答えられた。そういうことだったが、その後世論が悪くなって、注意処分を受けてから非常にうなだれて、俗な帯言葉で言えばしょげておられる。役所にも当分出ないということらしいということが新聞等に書かれてあった。ああ、そうであったかと思っていたのですが、今聞くと全く違いますね。堂々と公務執行中だと、そういうことでは、国民としては納得できない。ですからこれ以上触れませんけれども、法務大臣としては、やはり適当な機会に所信を表明せられたい。また立法と申しましても、これは日本の国会は、ほとんど立法の大部分は行政府でおやりになって原案を作るわけでありますから、そういう意味でもやはり行政に対する一つの問題点を残しておりますから、十分に御勘案をいただきたい。こういうことを強く要請をしておきます。
#59
○委員長(松村秀逸君) ほかに御発言ございませんか。
#60
○棚橋小虎君 最高裁の事務総長に最初お伺いしたいのですが、先ほどお読み上げになりました三月一日付の飯守判事に対する最高裁の長官の注意という書面ですね、これはつまり最高裁判所側としては、一応これはあの事件に対して最終的の結論と、こういうふうになるわけですか。
#61
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) ただいまのお尋ねにお答えいたします前に、先ほどの栗山委員の御質問に私が答えました点で、ちょっと間違いがございますので、訂正してよろしければ訂正させていただきたいと思ます。
#62
○委員長(松村秀逸君) どうぞ。
#63
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 失礼でございますが、さっき飯守判事のシベリアにおいて手記の問題のときに、藤田とかいう中将の方が訴追請求をしておられるというふうに申しましたが、これは少し私の青葉が足りませんで、そういううわさを耳にいたしましたという趣旨でございますから、御了承いただきたいと思います。
#64
○栗山良夫君 議事進行で……。それから先ほど私三点あげました中の第一点の殺人教唆ですか、あの問題を抜かれたことについて、少し不当ではないかということを申しましたが、それについての見解。
#65
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) これは全く裁判の内容にわたりますことで、全然これはそれ以外の人からはとやかく言えないことであります。
 それから、お尋ねのことでございますが、結局最終的なことになろうかと思います。最高裁判所といたしましては、一応分限申し立てばいたさないという方針になっております。
#66
○棚橋小虎君 そうすると、つまりこの件については、裁判所法の第五十二条とそれから四十九条、こういうものが今後発動されるとか、そういうことは今のところは考えておらぬ、こういう意味ですね。
#67
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 最高裁判所といたしましては、分限申し立てはしない。八十条で、先ほど申しましたように注意をいたしたわけでございます。あと飯守判事に対しましては、東京地方裁判所、高等裁判所等も監督権限は持っておりますし、また分限の申し立てをする権能を持っておるわけでございますが、まあおそらく最高裁の処分に同調されるのではないかというふうに考えてはおりますけれども、その点はどうなりますか、私どもにもわからないわけでございます。
#68
○棚橋小虎君 それでは一応こういう結論というようなものが出ておりますから、この注意書というものをもとにして二、三お伺いしてみたいと思うのですが、これは最高裁としては、この飯守の談話というものは裁判官としての発言と、こういうふうにお考えになっておるのか。それとも裁判官たる飯守個人の談話、こういうふうにお考えになっておるのであるか、どちらでしょう。
#69
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判官である飯守重任君個人発言、意見というふうに考えております。
#70
○棚橋小虎君 これはちょっとわれわれ一般の人が考えますというと、場所は裁判所で、裁判官室で発言した。それからそのときは決定をした直後にやった。それから発言をした主体は、その事件を取り扱った裁判官、しかし裁判官でもほかの事件か何かで言ったのならまた別ですが、その内容は、その決定を与えた事件に関してである。そうなってくるというと、常識で言うと、これは裁判官としての発言ととれますが、どういうわけで個人の発言ということになるのですか。
#71
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 先ほど御説明をしたのでございますが、あの事件に関して述べた意見ではないのでございます。先ほども御説明いたしましたときにお耳に入らなかったのかと思いますが、あの事件に対する感想ではないのでございます。ともかくしかし裁判官といえどもいろいろなことを考えて、それを発表することは自由だと思いますが、ああいった場合にああいった内容のことを言う、裁判官としての地位にあるものが発言するということは、これはやはり穏当を欠く、その点が不穏当だということで注意ということがなされたわけでございます。
#72
○棚橋小虎君 裁判官が裁判のことについて話をするといたしましても、その事件が片づいてだいぶ日がたってから、あるいは裁判官が自分の自宅か何かでああいう話をしたとか、あるいはまたその事件はだれかほかの人のやった裁判について批判的な意見でもどこかで述べたとか、こういうことであれば、それは個人としての意見、談話ということになるでしょうが、こういう場所と時とそれからして自分のやった事件について発言をしている。これはどうも個人の発言で裁判官の発言ではないんだということは、ちょっと牽強付会のように思いますが、どうでしょう、一般の常識には反することだと思うのですが……。
#73
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) あくまでも個人の意見でございますが、ああいった場合にああいった内容のことを言うのは、裁判官として節度を破ったんじゃないか。その点は同じ趣旨になりますが、発言の内容自体は、あれは国民の間でもすでに各方面で述べられていることでもあり、また発言の内容については、それを受ける人によってずいぶんいろいろな感想があろうかと思いますが、最高裁判所といたしましては、別に発言の内容については触れておらないわけでございます。
#74
○棚橋小虎君 どうもその点、私ども一般のものから考えるというと、少しふに落ちない御答弁でありますが、それでは、この注意書に判事の言動はきわめて遺憾である、こういうことを言っておいでになりますが、これはどういう点が遺憾なんですか。
#75
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判官という立場から考えまして、結局何か中止を疑われるような、あるいは公正を疑われるような誤解を招くような態度がいけない。せんじ詰めればそういうことになります。
#76
○棚橋小虎君 裁判官の公正を疑われるという点が遺憾であるというのは、どういう点が公正を疑われるのですか。その点を少し分解して。
#77
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) あの発言の内容は、結局、今、いわゆる国会を中心といたしました政治的な方面でいろいろ論議になっておる場合でございます。その際に、どちらかの側に組するようなふうにとれるような愚見であったわけでありますから、その点が裁判官として誤解を受けはしないかと、そういう趣旨でございます。
#78
○棚橋小虎君 そうするというと、談話の内容が裁判の公正を疑わせるような点があると、こういうことになるのですか。
#79
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 談話の内容自体の評価は、これは先ほども申しましたように、内容自体は別に不穏当なことではないんではなかろうか。内容自体はこれは人によってずいぶん評価が違いますけれども、しかし、ともかくかりにそういうことでも、ああいう機会に裁判官がああいうことを発言するということが感心できない、こういうわけであります。栗山良夫君今のは、石田事務総長ちょっとロジックが合わないところがありませんか。あなたは今の棚橋委員の御質問で、遺憾とは一体どういうことか、公正を欠くとは一体どういうことか、こういうふうにだんだん質問が続いていくと、今政治問題になっておる右翼と左翼の問題等、あるいは夢物語、そういう問題について片方に片寄ったような発言があったことは公正を欠く、こうおっしゃったでしょう。そうすれば、これは発言の内容について、先ほどあなたは発言の内容につては問わないとおっしゃった。今も繰り返しおっしゃった。しかしそういう場合にあなたがおっかぶせておっしゃることが、こまかい質問があるときには、ほんとうのことをおっしゃる。それはあなたはどんなにしてもつなぎがつきませんよ。やはり発言の内容が不穏当であったればこそそういう問題になったのではないか。私はもうその点は、あなたも石田事務総長としての立場がありますから、そういう工合におっしゃる以外に道はないのだと、こう思って、先ほどは質問しませんでしたが、今あなたは棚橋委員の質問に答えて、ほんとうのことをおっしゃった。それは速記録を見て下さい。ほんとうのことをおっしゃった。それは発言の内容について不穏当であった、こういうことになっておる。その点の食い違いというのはどういうことですか。
#80
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) あるいは私の表現の仕方がまずいのかもしれませんが、とにかく趣旨は先刻申し上げたと同じで、私自身ではおかしいとは思いません。
#81
○栗山良夫君 速記録を読んでごらんなさい。おかしいですよ。何としてもおかしいですよ。
#82
○棚橋小虎君 そうするというと、発言の内容でなくて、裁判の公正を疑わせるような点が遺憾であるというのは、それは発言の内容でなくて、ただその発表し時とかあるいはその方法が穏当を欠いておるために裁判の公正を疑われる、こういうことですか。
#83
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 裁判官という立場にありながら、ああいった場合にああいうことを、ああいう発言をああいう場所で発言をしたことは慎みを欠く……
#84
○棚橋小虎君 どうもそこが私は……。ただそういう談話をした時、それから方法がまずかった、この注意書を見ても、ちょっとそういうふうにとれるのですが、それで内容についてはあまり言っておらぬけれども、ただ時と方法が悪かったというなら、東京地方裁判所の横川裁判長が、この被告人から、裁判の公正ということについて疑う、こういうことを言われて、そうしてそれに対して釈明をしておる。裁判長が被告人に裁判の公正について釈明をして裁判所を信頼するようにというようなことを言ったということは、これは実に驚くべきことだと思うのですね。前代未聞のこれはことだと思う。裁判の威信、裁判の威信と言うけれども、こういうことを一々被告人に対して言わなくちゃならぬということでは、裁判の威信というものはどこにあるかということになる。横川裁判長がそういうことを釈明したということについては、態度については議論がありますけれども、これは私は今言わないが、横川裁判長がこういうことを言わなきゃならぬようになったということは何のためか。ただそういうことを飯守判事が言った時と場所、方法が悪かったというだけでは私はないと思う。談話の内客が、裁判の公正を疑わせるようなことを言ったから、その内容について被告人はこういうことを言っているのじゃないですか。その点どうお考えになりますか。
#85
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) それは、あの横川裁判官の法廷で、被告がどういう気持でああいうことを釈明を求めたかは私にはわかりませんが、ただ被告人あるいは弁護人から、法廷の審理の際にそういう発言がありますれば、裁判長としてやはりそれに一応答えて、そんなこと心配は要らないんだということを言っただけのことで、あるいはそういうことには応じないで、審理を進めていく方法もあるかもしれませんが、横川裁判官の場合は、一応被告人あるいは弁護人の方からそうした作為がありましたので、それに対しまして一応の答えといいますか、態度を明らかにして裁判所を信頼すればいいんだということを言っただけで、たまたま被告側からどういう質問をされたかはわかりませんが、そういう発言があったので、横川君もああいう発言をしたということにとどまることかと考える次第であります。
#86
○棚橋小虎君 被告がどういうことをかりに言ったとしましても、裁判所の裁判はあくまでも公平であるし、すべての裁判官はそういう態度でやっているのだということについて強い自信があれば、被告からこういうことを言われて、一々それについて釈明をするというような必要は私はないだろうと思う。ところがあの場にあたって、横川裁判長は、そういうことを言わざるを得なくなったんだろうと思いますが、それは、やっぱり裁判の公正ということについて疑われているのだという、自分でも自信がなかったからこういうことを言ったんじゃないですか。
#87
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) かりに飯守事件があったといたしましても、何もそれを横川判事に対してまで不安だとか公正を疑うとかいう必要はなかろうかと思いますが、あの場合は、たまたまどういう意図をもってかどうかわかりませんが、被告側からそういうあれがありましたので、それに対して横川判裁長はああいう訴訟指揮をしたわけでございます。この訴訟指揮のやり方についてはいろいろ批判はあると思いますが、横川裁判長がした訴訟指揮でございますから、これはそれ以上申し上げる必要がなかろうかと思います。
#88
○棚橋小虎君 そうすると、あなたのお考えでは横川裁判長がああいう釈明をしなくちゃならなかったというのは、ちょっと考えられないことですが、今までかってないことです。裁判所が被告人からああいうことを聞かれて、そしてそれに対して裁判長が裁判は公正なものだと言って被告に釈明をしなくちゃならぬ。何のためにあんなことを言ったとお思いになるのです。どういう原因で……。
#89
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 事件によりましては、被告人あるいは弁護人の方から、いわゆる法廷戦術として、非常にこれは残念なことでありますが、いろいろなことをいたしますが、あの場合も、かりに飯守事件があったとしても、桃川判事掛当事件の被告が横川判事にああいう釈明を求める必要は何らないと考えられますが、たまたまそういう発言がありましたので、それに対して横川裁判長は、その訴訟指揮としてああいう態度に出たというだけのことであります。
#90
○棚橋小虎君 それは飯守談話の影響じゃないですか、原因は。動機はそこにあるんじゃないですか。
#91
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 口実にはなったと思います。被告側が飯守事件を一つの口実と申しますか、きっかけとして、ああいう発言をしたとは思いますが、原因というと、少し原因とは認めかねると思います。
#92
○棚橋小虎君 私が言っておるのは、被告がああいうことを言ったという動機を聞いておるのではないので、横川裁判長が被告に対してそういう釈明をしなければならなかったようになったその原因はどこにあると聞いておるんです。
#93
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) それは被告側の発言ですね、法廷における。
#94
○棚橋小虎君 長句説は被告がそう言ったから、そういう釈明をしたければならなかったたのだから、原因は被告の質問にあると。これはきわめてわかりきったことですが、しかし質問を幾ら被告がしても、何と言っても、そんなことは取り上げる必要はないわけだ。今までかつてそんなことを裁判所がやったことはなかった。それをやらなければならなかったというのはどこに原因がありますか。これはわかりきったことじゃないですか。
#95
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 横川裁判長がですね、まあああいう訴訟指揮をしたわけでございますが、これに対してはいろいろまた批判はあるわけですね。それで、そういう発言があれば、それに対してああいう釈明をやらなければならないという、そういう必然的なものでもないかと思います。
#96
○井川伊平君 ちょっとお伺いいたしますが、いろいろ承っておりますと、どうも答弁の方に私は御無理があるように考える。それは飯守発言の内容には触れないんだ。時と所が悪かったからとおっしゃるが、そう言い切ることに無理があるんじゃありませんか。時と所で何にも言うことができない町と所もあるかもしれない。しかしこの場合は、この飯守発言のような内容でなく、全然別のことを発言したのでは差しつかえない。しかしこういう内応の発言をしたので悪い。ただそういう機会に発言したから悪いんで、その内容は、どこでやっても悪いという内応ではない、こうは言えましょうが、この場合、発言した時のこの内容は悪いということは、言えるのではありませんか。民間におきましても、お通夜の晩に発言して悪いことがある。おめでたいときに発言して悪いことがある。それは内容が悪いからでございましょう。ところが、全然別の機会には発言してかまわないことがある。そういう意味合いから申しますと、この時、この場所において発言をした。この発言の内容は、その時としては悪いのであるということにならなけりや、話がつかないのじゃありませんか。
#97
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあ、結局私の申し上げた趣旨もそういう趣旨なのでございます。
#98
○井川伊平君 それならわかる。
#99
○棚橋小虎君 そこで私はちょっとお聞きしたいことは、裁判官の公正、裁判をする場合には裁判官は良心に従ってやらなければならぬということを言っておるのですが、この飯守判事は、まああの自分の談話の内容に盛られておるような、ああいう信念を持った人ですから、飯守判事としては、あの決定を与えたような裁判は非常に自分の良心に忠実に従ってやった裁判だ、こういうふうに私らは見るのだが、しかし、それではなぜ自分の良心に従ってやったことが問題になったり、それでは世間からいかぬと言われたり、最高裁の長官がわざわざ注意をしなければならないか、横川裁判長もああいう釈明をしなくらやならないというわけでああいうことになっていると思うのです。そこをお聞きしたい。
#100
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) ちょっと御趣旨が了解いたしかねますが……。
#101
○棚橋小虎君 つまり、ああいうふうにいろいろ問題になってくるのは、飯守判事個人としては、おそらく自分の信念に忠実に、良心に従ってやったというふうに信じておることに違いないと思うのですが、ところが、それが世間には非常に問題になってくる。最高裁の長官も、それはいかぬといって注意をする、横川裁判長もああいうことをしなければならぬということになってきたのは、どこに原因があるわけですか。
#102
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 良心云々というお言葉がございまましたが、これは裁判をする場合の心がまえでございますが、あのいわゆる飯守発言は、これは裁判とは関連なく、それがこういう送るという手続が済んでしまった直後、個人的な意見として述べたという点でございますが御趣旨がちょっと私にのみ込みかねるのでございますが……。
#103
○棚橋小虎君 それじゃ、ちょっとここでほかの方面から申し上げてみたいと思うのですが、同じことですが、憲法の第七十六条でございますが、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」こういう規定があるわけなんですかね。この良心というのはどういう良心なんですか。
#104
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) これは裁判官として持つべき、まあ客観的な良心というふうに理解しております。棚橋小虎君 裁判官として持つべき良心というものは違っているのですね。普通の良心とはどこに違いがあるのですか。そこをもっとお聞きしたい。
#105
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) かりに裁判官も人生観や世界観、あるいは考えていることがあっても、それを、それに従って裁判をしてはいけないということになるわけでございます。
#106
○棚橋小虎君 まあ人間はだれでも思想上の主義というようなものがあるでしょうし、信仰というようなものもあるでしょうし、一口に言って、その世界観というものを皆持っているわけですね。で、飯守判事は、この自分の個人の世界観に立脚して裁判するということを、談話で私は言っていると思うのですね。そうじゃないのですか。それをただ端的に現わしたというだけのことじゃないですか。
#107
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) いや、そういうことは本来申してはおらないと思います。あれは裁判とは何ら関係がないことと思います。
#108
○棚橋小虎君 これはどこまでいっても平行線で同じことを言っておられるようですが、私は飯守判事のああいう談話の内容というものは、つまり言えば、自分の個人的な世界観というものを露骨に出している。裁判官の良心というものは、自分がどういう世界観を持っておっても、裁判官としては一応そういう個人的な世界観というものと離れて、そうして白紙の心況になって、憲法や法律の規定だけを基準として裁判をしなきゃならぬ。これが憲法第七十六条の良心ということだと思うのですね。ところが、あの飯守判事の談話が、裁判の公正というものを非常に疑われるようなということになったということは、つまり言えば、飯守判事が、自分の個人の世界観というものをなまのまま出してきて、そうして裁判をするような疑いを抱かしたという点に私は問題があると思うのですが、この点、どうお考えになりますか。
#109
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあ少なくもそういう疑いを持たれるようなおそれがあるというので、それで最高裁でも八十条に基づきまして注意をいたしたわけであります。
#110
○棚橋小虎君 じゃ、それをお認めになるならば、結局飯守判事の談話の内容が公正を疑われたということになったのだということになるじゃありませんか。その点はどうですか。
#111
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあその内容だけに限定するわけにもいきませんので、結局ああいう時期にああいうことを言ったことがそういう結果になった。あくまでもこれはやはりああいう時期と場所と、それが関連して、その内容、その発言が批判をされることになった……。
#112
○棚橋小虎君 ああいう公正を疑わせるような疑惑を抱かしたということは、もちろん時と方法にもよりますけれども、単にそれだけじゃないのです。談話の内容が、ただいま申し上げたような個人的ななまの世界観というものを露骨に出したものだから、しかもそれが、時と方法の配慮を欠いて出したものだから、大勢の人に、国民に裁判の公正を、疑わせるようなことになった。だから、ただそれは、そういう談話をした時と方法だけでなくて、内容もいけなかったのでしょう。そういう事実はお認めにならないですか。
#113
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) まあ裁判官としての立場と、それから時と場合と、やはりいずれとも関連して内容が批判された。そう考えております。
 (笑声)
#114
○棚橋小虎君 そういうことになってくるのだ。これはまあこれでいいのですけれどもね。
 そうすると、私はこの件というものは、裁判所法の第五十二条とか、四十九条とかいうことは、まあこれで打ち切りになるかもしらぬが、一体、飯守判事の裁判に臨む態度とかというものは、憲法の第七十六条の精神に反しているということになるのじゃないかと思うのですがどうでしょう。
#115
○最高裁判所長官代理者(石田和外君) 飯守判明の発言は、裁判自体とは関連ございませんので、御趣旨は認めかねるのでございます。
#116
○棚橋小虎君 同じことを何回言っておっても同じだと思いますが、結局私は最高裁としてももう少し率直に飯守判事の談話の内容というものを検討される必要があると思うのですね。ただ形式的に、こういう談話をした時と方法が悪かった、こういう形式的なところへ持っていってしまって、そうして飯守判事の談話、いわゆる世界観というものを露骨に、それによって裁判をするような疑いを抱かせているというその内容まで最高裁は考えておられないのじゃないか、この注意書を見たときに、ちょっと私はそういうところが非常にあいまいになっておるのじゃないか、こう思うのですが、これは最高裁としてもお認めになる方が世間一般の考えに合致するのじゃないか、注意という一つの書面は、いろいろお考えになって、ずいぶん苦心惨たんされたあとは十分に私はわかるけれども、しかし、やはりそういう談話の内容というものについても卒直にこういう点をお認めになるということの方がむしろいいのじゃないか、こう思うのですが、これは裁判所のことですから、私は何もかれこれ言いませんが、あくまで事務総長のようにおっしゃるということは、かえって逆効果じゃないか、こういう感じがするわけなんです。先ほどからいろいろ申しましたのは、そういう意味なんですから……。
#117
○委員長(松村秀逸君) ほかに御質疑はこざいませんか。――ほかに御発言もなければ、本件に関する本日の調査はこの程度にとどめたいと思います。
 以上をもって本日の審議は終了いたしました。
 次回の委員会は三月十六日午前十時から開会する予定であります。
  本日はこれをもって散会いたします。
    午後一時十三分散会
   ――――・――――
ソース: 国立国会図書館
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