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1960/05/11 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第13号
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1960/05/11 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第13号

#1
第038回国会 法務委員会 第13号
昭和三十六年五月十一日(木曜日)
   午前十時五十六分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
四月十八日委員井川伊平君辞任につき
その補欠として井野碩哉君を議長
において指名した。
四月十九日委員鈴木万平君辞任につ
き、その補欠として後藤義隆君を議長
において指名した。
四月二十日委員井野碩哉君辞任につ
き、その補欠として井川伊平君を議長
において指名した。
四月二十一日委員江藤智君辞任につ
き、その補欠として仲原善一君を議長
において指名した。
四月二十四日委員後藤義隆君辞任につ
き、その補欠として岡村文四郎君を議
長において指名した。
四月二十七日委員仲原善一君、岡村文
四郎君及び赤松常子君辞任につき、そ
の補欠として江藤智君、郡祐一君及び
基政七君を議長において指名した。
四月二十八日委員郡祐一君辞任につ
き、その補欠として後藤義隆君を議長
において指名した。
五月八日委員基政七君辞任につき、そ
の補欠として赤松常子君を議長におい
て指名した。
五月九日委員後藤義隆君辞任につき、
その補欠として大泉寛三君を議長にお
いて指名した。
五月十日委員大泉寛三君及び江田三郎
君辞任につき、その補欠として後藤義
隆君及び松本治一郎君を議長において
指名した。
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松村 秀逸君
   理 事
           井川 伊平君
           大谷 瑩潤君
   委 員
          大野木秀次郎君
           後藤 義隆君
           林田 正治君
           松澤 兼人君
           赤松 常子君
           市川 房枝君
  委員外議員
           千葉  信君
  国務大臣
   法 務 大 臣 植木庚子郎君
  政府委員
   法務大臣官房司
   法法制調査部長 津田  実君
  最高裁判所長官代理者
   事務総局事務次
   長       内藤 頼博君
   事務総局総務局
   第一課長    長井  澄君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選の件
○裁判所職員臨時措置法の一部を改正
 する法律案(千葉信君外一名発議)
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣送付、予備審査)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告申し上げます。
 四月十八日付、井川伊平君辞任、井野碩哉君選任。
 四月十九日付、鈴木万平君辞任、後藤義隆君選任。
 四月二十日付、井野碩哉君辞任、井川伊平君選任。
 四月二十一日付、江藤智君辞任、仲原善一君選任。
 四月二十四日付、後藤義隆君辞任、岡村文四郎君選任。
 四月二十七日付、仲原善一君辞任、江藤智君選任。赤松常子君辞任、基政七君選任。岡村文四郎君辞任、郡祐一君選任。
 四月二十八日付、郡祐一君辞任、後藤義隆君選任。
 五月八日付、基政七君辞任、赤松常子君選任。
 五月九日付、後藤義隆君辞任、大泉寛三君選任。
 五月十日付、江田三郎君辞任、松木治一郎君選任。大泉寛三君辞任、後藤義隆君選任。
 以上であります。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(松村秀逸君) 次に、理事の補欠互選を行ないます。
 井川理事が一時委員を辞任されたため、理事に欠員を生じておりますので、この際、理事の補欠互選を行ないたいと存じますが、互選の方法は、慣例により、その指名を委員長に御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(松村秀逸君) 御異議ないと認めます。
 それでは私から、井川君の補欠として井川伊平君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(松村秀逸君) この際、御報告申し上げます。
 去る四月十八日、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律案について、地方行政委員会と連合審査会を開くことを決定いたしましたが、その後、地方行政委員長と協議の結果、審議の都合等により、連合審査会開会は見合わせることとなり、四月二十七日、同法案は、地方行政委員会で修正議決されました。この点、御了承願います。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(松村秀逸君) 次に、裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 発議者から提案理由の説明を聴取いたします。
#7
○委員外議員(千葉信君) 裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
 現行の裁判所職員臨時措置法は、その題名の通り、公務員制度全般の再検討と裁判所職員についての基本法規の制定が終わるまでの臨時の措置として、昭和二十七年に施行されたのであります。しかしながら、その後、御承知の通り、公務員制度の改革についての検討は続けられておりますが、いまだに公務員制度全般が整備され、安定する時期に至りませず、従って、また、裁判所職員法とも称すべき基本法も制定されるには至っていないのであります。しかして、この臨時措置としての裁判所職員臨時措置法の運用の実情を見ますと、単に「人事院」を「最高裁判所」と読みかえて、国家公務員法、一般職の職員の給与に関する法律等の大部分をそのまま準用している結果、最高裁判所が当事者の立場にありながら、他面では第三者的立場に立たなければならないような事態がしばしば生じ、殊に職員の勤務条件に関する行政措置の要求に対する審査及び職員の意に反する不利益処分に関する審査については、そのたびに裁判所職員の権利保障の必要性が要望されてきたのであります。元来、これらの審査につきましては、特に公正かつ客観的な審査が必要とされるため、通例の場合におきましては、人事院、人事委員会、公平委員会等特別な第三者的な機関を裁決庁とするのが例でありますが、裁判所職員につきましては、最高裁判所が審査を行なうこととされており、また、職員の懲戒処分につきましても、最高裁判所が任命権者ではない場合でも、下級裁判所にかわって懲戒処分を行なうことができるようになっておりまして、はなはだ妥当性を欠くと考えられるのであります。
 この法律案は、以上のような諸点を改めますために、さしあたって、裁判所職員臨時措置法に所要の改正を加えようとするものであります。
 以下、この法律案の要点を申し上げますと、
 第一点は、新たに最高裁判所に五人の委員をもって組織する裁判所公平委員会を設け、その委員は、人格が高潔で、裁判事務の処理に理解があり、かつ、人事行政に関し高い識見を有する者で、裁判所職員以外のもののうちから、最高裁判所が任命するものとし、同委員会に裁判所職員の行政措置要求及び不利益処分の審査請求に対する審査と判定を行なわせることといたしました。
 第二点は、裁判所公平委員会は、行政措置要求のあった事案に対する判定に基づきまして、勤務条件に関して一定の措置を必要と認めるときは、その職員の所轄庁に対し、その実行を勧告しなければならないものとし、また、不利益処分の審査請求のあった事案に対する判定が、当該処分を相当でないと認めるものであったときは、当該処分を行なった者は、その判定に従い、直ちに必要な措置をとらなければならないことといたしました。
 第三点は、現在最高裁判所は、国家公務員法第八十四条第二項が準用されている結果、前述いたしましたごとく、任命権者ではない場合でも下級裁判所にかわって懲戒処分を行なうことができるようになっていますが、この規定は準用しないことといたしまして、懲戒処分は、任命権者のみがこれを行なうものといたしました。
 なお、以上三点の改正のために、裁判所職員臨時措置法の本則を第一条とし、新たに第二条を設けて裁判所公平委員会に関する事項を規定し、国家公務員法の準用規定に右の三点に関する所要の改正を加え、また、経過措置として、改正規定の遡及適用をするために、この法律施行前に最高裁判所に対して行政措置の要求または不利益処分の審査請求があった事案で、この法律施行の際、まだ判定が行なわれていないものについては、裁判所公平委員会がその後の手続を行なうものといたし、ただ、すでに判定があったものについてまで遡及適用をする必要もないと考えられますので、この部分については、なお従前の例によるものとする経過規定を設けております。
 以上が、この法律案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
#8
○委員長(松村秀逸君) 本案についての審議は、後日あらためて行なうこととし、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(松村秀逸君) 次に、訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 政府側より提案理由の説明を聴取いたします。
#10
○国務大臣(植木庚子郎君) 訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
 この法律案は、訴訟費用等臨時措置法の規定による証人等の日当の最高額を増加しようとするものであります。御承知の通り、民事訴訟における当事者及び証人の日当、刑事訴訟における証人の日当並びに執行吏の実施する執行事件における証人及び鑑定人の日当につきましては、民事訴訟費用法、刑事訴訟費用法及び執達吏手数料規則においてその規定があるのでありますが、現在、その額については、訴訟費用等臨時措置法の定めるところによることとなっているのであります。
 まず、民事訴訟における当事者及び証人並びに刑事訴訟における証人の日当につきましては、その最高額は、従来、一般職の職員の給与に関する法律に規定する行政職俸給表(一)による七等級以下の職務にある者が出張した場合における日当の定額を標準として、出頭又は取り調べ一度につき二百三十円と定められているのでありますが、民事、刑事の裁判における証人の機能の重要性等にかんがみるとき、その額が低きに失して実情に即しないうらみがありますので、今回若干の改善を行なうこととし、訴訟関係者の負担の点等をも考慮した上、その最高額を三百円に改めようとするものであります。
 次に、執行吏の実施する執行事件において、執行吏が立ち会わせる証人及び執行吏が高価な物の競売を行なう場合にその評価をさせる鑑定人の日当につきましては、その最高額は、これらの証人及び鑑定人が民事訴訟における証人及び鑑定人とはその性質を異にする等の点から、従来、証人については百二十円以内、鑑定人については二百七十円以内と定められているのでありますが、民事訴訟における証人等の日当の最高額の増加に伴い、執行吏の実施する執行事件における証人の日当の最高額を二百円に、鑑定人の日当の最高額を三百五十円にそれぞれ改めようとするものであります。
 以上が訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。
#11
○委員長(松村秀逸君) これより質疑に入ります。
 政府側の出席者は、法務省より植木法務大臣、津田司法法制調査部長、最高裁判所より内藤事務次長、長井第一課長であります。
 御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
#12
○井川伊平君 法務大臣その他適当な方からのお答えでけっこうでございます。従来、訴訟事件の証人の日当の最高領を、公務員の最下級の日当と同額にされているようでありますが、こういう格づけをいたしました根拠はどういうところにあったのでありましょうか、お伺いいたします。
#13
○政府委員(津田実君) 公務員の日当と、証人の日当につきましては、これは過去におきましてずいぶんいろいろな変遷がございます。最も長い期間行なわれておりましたと思われます大正十年から昭和十九年までの間におきましては、証人の日当は二円でございました。それに対しまして、公務員の日当の最低額が二円五十銭というふうになっておりました。その後、終戦前後若干の変遷がございましたわけでありますが、昭和二十三年におきましては、証人の日当は百二十円以内と定められていたのに対しまして、公務員の日当は、大臣以下全員一律に百六十円と定められておる。ところが、それは昭和二十七年七月九日までそのような状態でございまして、昭和二十七年七月十日からは、証人の日当が百八十円以内となり、それから公務員の七等級以下の者の日当が百八十円、ここで初めて同額になったのであります。その後、昭和三十一年五月十六日に改定がございまして、証人の日当二百三十円に対しまして、公務員の七等級以下の者につきまして二百三十円というふうになったわけでございますので、昭和二十七年以来同額ということでございますが、これが絶対の標準であるということではございません。
#14
○井川伊平君 公務員の日当が改正されないのに、今回証人の日当が増額改正されるというに至りました特別の事情をお伺いしたいのです。
 なお、今回のこの増加額は、いかなる基準によってこのように改正されたものであるか、そういうことをお伺いします。
#15
○政府委員(津田実君) 今回の改正をいたそうとする額を三百円といたしましたに対しまして、国家公務員の七等級以下の職員の出張の場合の日当二百三十円は、依然として据え置きになっておるわけでございます。何ゆえここで一方は据え置きにし、一方は三百円に改めようとするかという問題でございますが、これは、元来証人の日当と国家公務員の出張の場合の日当とは、性質を異にしておるわけでございまして、もちろんその一部、つまり国家公務員の出張の場合でも、出張によりまして平常の生活と違った生活をする、それに要するいわゆる雑費、あるいは昼食代であるとか、その他の雑費を補償するという意味で、国家公務員には日当が与えられておるわけでございます。証人の場合も、日常生活と違った生活をその出頭によってするわけでありますので、それに当然雑費を要するわけでありますので、その雑費を七等級のものを標準にして考えると
 いうことは当然考えられるわけでございますが、証人につきましては、そのほかに、人によりましては所得補償を要するということが考えられる。つまり出頭による損失に対する補償の性質を証人の日当には含ませなければならないという要素があるわけでございます。その意味におきまして、本質的には、証人の日当と国家公務員の出張の場合の日当とは、やはり一部は要素がダブっておるが、違った要素が証人の場合には加わっておると言わざるを得ないわけであります。そこで、従来二百三十円と定められておることは明らかに低きに失するわけでありますが、その意味におきまして、これを三割程度増額するということになったわけであります。この点につきましては、最高裁判所におきましては、本年度の歳出見積りにおいて、日当最高額を三百円とするということを要求いたしまして、それに基づいて本年度予算額が決定されておりますので、その予算額の決定された経緯に従いまして、法務省といたしましては三百円の案をもって提出いたした次第であります。
#16
○井川伊平君 ただいまのお答えによりますと、弁当代、車馬賃といったような、実費弁償的な問題のほかに、自分のやっておる職業等を休んで出席するというような、損失の補償金的性格をも含めて増額したのであると申されますが、そういうことだといたしますると、今日の経済状態、あるいは社会状態、こういう面から考えて、あまりにも少ない額のように考えられる。給料をもらっておる公務員が、単に証人に出ましても、これはまあ収入の面には影響がない。支出の面で弁当代とか車賃が要るだけでありますけれども、そうでない、他に民間の職業を持っております者にいたしますれば、一日まるつぶれ、あるいは少なくとも半日まるつぶれ、こういうようなことになるわけでありますから、そういう点を考えれば、三百円を最高としたということは、あまりにも非常識的と申しますか、現在の世相に合わない金額ではないかと思いますが、この点はいかがでありますか。
#17
○政府委員(津田実君) その点につきましては、まさにお説のような考えが当然成り立ち得ると思うのでございます。従いまして、法務省当局といたしましては、いろいろ折衝もいたし、いろいろ検討もいたしたわけでございますが、本年度歳出見積もりにおいて、最高裁判所当局が要求した額が最高額三百円ということでありまするので、御承知の通り、最高裁判所の予算は、最高裁判所が大蔵省と折衝して定めるわけでございます。その最高裁判所がきめました予算額の範囲を越えて法律案を作成することは、非常に困難を伴うのみならず、将来の運用に相当問題点を残す。つまりこの法律の運用に問題点を残すというような意味におきまして、そういう点を考えあわせまして、お説の通り、額についてははなはだ不満足であるとは考えられまするけれども、この額をもって提案いたした次第でございます。
#18
○井川伊平君 証人に出る人の社会的の地位を考えますと、非常に社会的地位の高い人もあるし、また低い人もあろうと存じます。しかるに、大体において公務員の最下級の人の出張と同列にきめてしまうということは、その証人の社会的地位を全然無視したと、こういうような考え方のように思われますが、この点についての御考慮はいかがでありますか。私をして言わしむるならば、最高の額をきめるのだから、地位の低い人には、それは公務員の七等級でもいいかもしれないが、非常な地位の高い人にこういう金では御無礼になるかもしれぬと思う。だから最高の額をきめておいて、裁判所が適当にそうした証人の社会的の地位を考えてあんばいをするのがいいのじゃないかと思いますが、なぜそういうように最下級にくぎづけせねばならぬというのか。その点をお伺いしておきます。
 なお、そういうようなくぎづけをして、最下級にしておけば、これをもって最高額とするということは、これ以下のものもあり得るということになりましょうが、何かその辺に矛盾をお感じにはなりませんか。
#19
○政府委員(津田実君) 証人の日当の趣旨につきまして、いかような点を考えるべきか。要するに、日当の要素は何であるかということは、これは考え方は種々あり得ると思うのでございます。で、先ほど申し上げましたように、つまり大正十年から昭和十九年まで、長年行なわれておりましたところの証人の日当額は、二円以内ということになっております。今日卸売物価指数が三百五十五倍ということになっておりますから、その二円をその物価指数で換算いたしますると、約七百円余りということになると思います。なるほど今日の社会状態におきましては、七百円という額はそれほど大きな額ではございませんし、現に国会におきまする証人につきましては、もっと多額に定められておるわけであります。しかしながら、この証人は、つまり民事、刑事の裁判に協力するという、一つの国民的な義務というようなものもあるわけでございまして、その意味におきまして、その人の所得と申しまするか、収益に対する損失補償を全面的に行なうような額を最高額にきめるということは、必ずしも妥当ではないのではないか。要するに、その人の最低生活を保障する程度の額は、その人がそれによって損失をこうむったならば、それは与えるべきではあるけれども、所得の面から申しますれば、それは一日数万円の方も数十万円の方もあり得るわけでありますが、それを最高額にきめるということは必ずしも妥当ではない。その点は、やはり国民としての裁判に協力する義務というような点から、やはり言い得るのではないか。従いまして、しからば最高が幾らがよろしいかという問題は、非常に問題になるところでございますが、その人が、その一日に自分の業務につけなかったために損失をこうむって、しかも、その人の最低生活が保障できる程度の額を基準とし、それに、さらにその人が出頭に要する雑費、すなわち食事代というような雑費を加えたもの、こういうことを考えて、その額を定めるのが相当であるのではないかというふうに考えております。外国の立法例によりましても、たとえば西ドイツにおきましては、勤務につけない時間、一時間に対して〇・五マルクないし三マルクを与えるということになっております。それからイギリスにおきましては、大体、通常の証人につきましては、三十シリングを与えるということになっておりまして、これを現在の為替相場で換算いたしますると、マルクにつきましては約八十五円なんでございますから、〇・五マルクは四十三円に当たり、三マルクが二百五十七円に当たるわけでございます。そういたしますると、勤務につけなかった時間一時間あたり四十三円ないし二百五十七円の範囲内において裁判所が定めると、こういうことになっております。イギリスにおきましては、先ほど申し上げました一日大体三十シリングでございますから、約千五百円ということになるわけでございます。大体そういうことに定められておりますので、たとえばイギリスにおきまして三十シリングという額は、それほど高いものではないと思われますが、一応いかなる地位があり、いかなる収入のある人でも三十シリングということに考えますれば、やはりこれと日本の生活程度を比べ合わして考えるというのが一つの方法ではないかというように考えられるわけでございます。
#20
○井川伊平君 現在、訴訟事件の証人に対しましての実際上払われておるところの日当というものは、これに最高とか最低とかいう、いろいろ等差がありますか。あるいはそうではなしに、法によってきめられておる最高の額をすべての者に与えておるというのが通常ではありませんか、いかがでありますか。
#21
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 実際に証人に払っております日当の額は、ただいま御指摘になりましたように、今日の金額では最高の二百三十円、それを払っておるのが実情でございます。
#22
○井川伊平君 その通りだと私も考えておりましたが、この法律をきめまして、最高を三百円というようなことにいたしますと、最高という言葉は意味をなさないのでありまして、結局三百円を一律に、すべての者に三百円を払うということになるのじゃないかと存じますが、そういうことではなしに、午前中で帰る証人もありましょうし、一日おられなければならぬ証人もありましょうし、あるいは午前中の最初に調べられた証人のごときは、午前中の仕事も自分の家に帰ってできるであろうと、かように存じますから、最高の額はずっと上げておいて、実際その証人がどれだけ裁判所で証言をし、あるいは控室で待ったと、従って、仕事ができなかったというような点を裁判所でよく勘案いたしまして、適当な額を与えるというようなふうに仕向けていくことが、最高の額をきめる趣旨であって、何でもかんでも同じ額をやるのだというような、文句だけは最高のものを書いておくということは、死んだ言葉ではございませんか。この点いかがお考えになりますか。
#23
○政府委員(津田実君) その点は、お説まことにごもっともでございます。その点につきましては、十分最高裁判所当局と折衝し、討議をいたしたわけでございますが、本年度予算につきましては、最高三百円として、歳出見積もりを提出したという制約があるということによって、さような運用はできがたいというふうに最高裁判所の意向がきまっておりましたので、法務省といたしましては、やむを得ずと申すのはおかしいようでございますが、やむを得ずという意味におきまして、最高額に定めた次第でございます。
#24
○井川伊平君 先ほども私申し上げましたように、証人の社会的地位が非常に複雑であり、従って、非常な社会的に上層に属します人が証人に出る場合もあるのでありますから、こういう場合のきめ方としましては、最下級の公務員の日当を標準とするというのではなくして、むしろ弁当代、車馬賃というような実費弁償的な考えの点からのみいたしましても、これは公務員の最高級の人を標準にとりまして、そして来た人によりまして、それより以下の段階に実際の支払いをするという、標準を公務員の最高級に証人の日当もとっておくことがふさわしいものの考え方のように思われるのでございますが、いかがですか。
#25
○政府委員(津田実君) その点、そういうお説も確かに立ち得るわけでございます。現に、公務員の最高級につきましては、内閣総理大臣が日当の最高で五百二十円ということになっております。通常の公務員、つまり十五級職の者が四百二十円ということになっております。これはいわゆる雑費の方でありますが、雑費をどの程度に考えるかということと、もう一つは、従来の訴訟費用法の考え方におきまして、それほど裁判所がその実情を把握して額に差等をつけているという運用になっているとは考えられないわけであります。これは戦前におきましても、たとえば二円の場合におきまして、二円、一円五十銭、一円という程度ぐらいの差等しかつけていなかったように記憶しているのでございますが、そういう意味におきまして、やはりその額が相当額に押え得るという運用上の自信と申しますか、そういうものについては、裁判官に格段の配慮をしてもらわなければならぬと思うのでありますが、現在は、従来の惰性等もありますが、すべて最高額に持っていくことが妥当であるかどうかという点については、やや疑いを持っているわけでございます。
#26
○井川伊平君 予算の関係があるから三百円にしたというお話しがありましたから、それは実際支給の面におきましては、裁判官の方にそういうことにするようないろいろな手配も適当かと存じますけれども、法としてきめる以上は、実費弁償の点から、最高という点は、公務員の最下低にぐぎづけをするのではなくして、もっと上の方に最高額をきめる、それから、得べかりし利益を失う、言いかえれば、自分の職業につけないという時間のごときも、一日八時間つけない、そしてそれが相当の収入のある人があるというところに標準を置いて、そうして実際支給する場合におきましては、三百円限度あるいはそれ以下でもよろしいかと思いますけれども、法律のきめ方といたしましては、実費弁償においても、得べき利益の損失におきまして、もっと上にきめておいて、実際の支給はもっと下にするという、こういうような構想は持てなかったのですか。
#27
○政府委員(津田実君) 先ほども申し上げましたように、立案の過程におきまして、法務省当局におきましては十分さような考えを検討いたしたわけであります。何分にも先ほど申し上げましたように、最高裁判所における予算の決定の経緯に照らしまして、やむを得ずこういう結果にいたしたわけでございます。
#28
○井川伊平君 それでは、まあその点はそれ以上お伺いをしませんでもお気持はわかりましたから、おきますが、別の点に触れまして一点だけ伺っておきます。
 およそ国家が公務のために国民を使役する場合においては、その役務に相当する待遇を与えることこそ民主国家の要請であると考える。証人の責務は裁判所の真実発見の任務に直接寄与すべきものでありまして、その協力なくしては裁判所の目的を達成することは望み得ない、こういう点から、証人の出頭は強制力をもっても確保すべく、また、その不出頭に対しては刑罰をもって臨むことが規定されておることは言うまでもないことであります。こういうことから考えてみますれば、現下の社会事情、経済情勢に即応しない日当額をもって証人を待遇するということは、司法作用に対する協力の熱意を証人が減退することになり、ひいて訴訟の促進あるいは裁判の適正に累を及ぼすというようなことのおそれがあるのではないかと私は思いますが、こういう点についてはどうお考えになっておりますか、お伺い申し上げておきます。
#29
○政府委員(津田実君) ただいまのお説まことにごもっともでございまして、少なくとも証人が損失を受けることなく裁判に協力をするというふうにできるだけすべきであると思うのであります。ただ、非常に多額の所得のある人の損失につきましては、はたしてそれを全額補償すべきかどうかということは問題があると思うのでありますが、これは一定額にきめられなければならないと思うわけです。なお米国におきます証人につきましては、コンモン・ロー等におきましては、証人には手数料を支払わなかったというようなことがありますので、本質的には要求して支払いを受けるべき性質のものでないというふうな考え方もあるようであります。そういう考え方も一面にはあり得るというような点も考慮いたしまして、やはり日当の最高額は相当額を定めるべきであるというふうに考えております。
#30
○井川伊平君 今の私の質問の内容の一部をなすものでありますが、現在、刑事事件では少ないようでありますが、特に民事事件で、証人が、呼んでも出て来ない、そのために公判を延ばすという事例が非常に多いと私は思いますが、この点はいかがですか。
#31
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 証人の不出頭によりますことに民事訴訟の期日の変更の問題でございますが、これは証人の出頭率が最近は多少上がっておりますけれども、お話しの通り十分ではございません。大体におきまして私ども理解しておりますところでは、呼び出しの六〇%余りが出頭しておるように聞いております。最近はこれは上がりまして、七〇%近くなっております。これらのいろんなことが影響しておりますので、必ずしも日当の額ばかりが原因とは申せないとは存じますけれども、日当の額におきましてもなお十分の手当をして、証人が遺憾なく出頭するようにしたいということは、私ども今後努力して参りたいと存じます。
#32
○井川伊平君 この証人の日当の額が非常に少ない。ところが自分で日当の請求書を書くということは、文字を書けない人もありましょうし、あるいは裁判所でごつごつ調べられて興奮して手がふるえるということもございましょうが、従って、司法代書人に書いてもらって請求書を出す、この書き賃が非常に高い、だからほんとうに証人のふところに入るのはわずかしかない。だから全然めんどうくさいと言ってこれを受け取らないで放棄する者も私は相当あるんではないかと存じますが、これは金が要らないで放棄するのではない。少ないから、ものの役に立たないから放棄するのだと存じますが、そういう意味合いで実際は日当を放棄する者はどのくらいあるのか、多少あると存じますが、いかがでございますか。
#33
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいまの御質問の証人の日当の放棄の率でございますが、これはちょっと手元に資料がございませんので、お答えいたしかねますけれども、相当の数の証人が日当を放棄しておる実情は、私ども承知いたしております。これは金銭を扱います関係上、手続が相当厳格になっておりますので、すぐ右から左に現金が渡るようにはこれは参らないのであります。一定の書式によりまして請求するようにいたしております。しかし、その書式は今日はできるだけ簡素化いたしまして、まあ代書によらないで、裁判所が作りまして、証人がそれに判を押せばいいというような方式にはなっております。ただ、何んと申しましても金銭の扱いでございますので、すぐ簡単に銀行の窓口のようにすぐ払い戻せるというものではございませんので、その点は裁判所の金銭の扱いの性格上、ある程度やむを得ないと思っております。
#34
○井川伊平君 証人に対して、実費弁償的な意味あるいは仕事ができなくなるという、得べき利益の損失を含めてものをきめるとすれば、もらう方の証人側におきましても、そういうものなんだという、だからそこまで国が考えておるのならば、十分に協力しなくちゃならぬというように考えるように、証人の側から考えても十分金銭的の価値を、経済的の価値を感ずる程度に何とかしなければ、なに、裁判所に行ったって詰まらないと電話で断わられる。あるいは仮病をこしらえて電話をかけておけばいいというようなことになってくるというふうがあるとすれば、非常に悲しいことだと思う。それが訴訟遅延の原因にもなり、裁判の適正なる判断の支障にもなるとすれば、これはゆゆしき大事であると存じますが、この証人に対します待遇の問題につきましては、もう少し考え直すということが私は必要であろうと思う。この点につきまして最後的に御意見を承っておきます。
#35
○政府委員(津田実君) まことにお説ごもっともでございまして、この問題につきましては、今回いろいろ問題になった点があるわけであります。ただいま申し上げましたいろいろな考え方もあり得るわけでありますが、いずれにいたしましても、現在の額が非常に低額に失するということは、もう何人も認めておるのでございます。将来の問題といたしまして、最高裁判所当局も予算折衝等において十分努力をするように私どもは聞いておりますが、法務省といたしましてもこの問題の本質につきまして、まあ外国法制もある程度調査をいたしておりますし、現在の訴訟費用等臨時措置法のままの格好では十分でありませんので、やはりそれぞれの訴訟費用法を本格的に改正をいたしまして、所得補償の点についても十分考慮するような額をその額とするような改正に、できる限りの努力を払いたいというふうに考えておりまして、現にその作業を始めておるわけであります。
#36
○委員長(松村秀逸君) ほかにございませんか。――本法案に対する質疑は次回に続行することとし、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時三十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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