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1960/05/16 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第14号
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1960/05/16 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第14号

#1
第038回国会 法務委員会 第14号
昭和三十六年五月十六日(火曜日)
   午前十時四十五分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員松本治一郎君辞任につき、そ
の補欠として戸叶武君を議長において
指名した。
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松村 秀逸君
   理 事
           井川 伊平君
           大川 光三君
   委 員
           青田源太郎君
           木島 義夫君
           後藤 義隆君
           松澤 兼人君
           赤松 常子君
           市川 房枝君
           辻  武壽君
   委員外議員
           棚橋 小虎君
  政府委員
   法務省司法法制
   調査部長    津田  実君
  最高裁判所長官代理者
   事務総局事務次
   長       内藤 頼博君
   事務総局総務局
   第一課長    長井  澄君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○会社更生法の一部を改正する法律案
 (向井長年君外三名発議)
○労働関係訴訟における労働組合の当
 事者適格に関する法律案(棚橋小虎
 君外二名発議)
○訴訟費用等臨時措置法の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送
 付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 会社更生法の一部を改正する法律案を議題といたします。本法案について、発議者から提案理由の説明を聴取いたします。
#3
○委員外議員(棚橋小虎君) 提案者を代表して、会社更生法の一部改生案の提案につきまして、その理由を説明いたします。
 会社更生法は、窮境にあるが再建の見込みのある株式会社について、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生をはかることを目的としております。
 本法におきましては、第百二条によって、会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権は、更生債権と規定しております。この更生債権のうちには、本法第百十九条によって、特に共益債権として、更生手続開始前六カ月間の、会社の使用人の給料、並びに更生手続前の原因に基づいて生じた会社の使用人の預かり金及び身元保証金の返済請求権を含むことを規定しております。
 今回、本法について改正を提案する点は、第一に、この共益債権の範囲内の一定範囲の下請代金を含め、第二に、会社の使用人の退職手当として従来から共益債権に入るものと認められていた範囲を拡大する点にあります。
 第一の改正点は、下請事業者の従業員の生活擁護に資するため、下請代金支払遅延等防止法に規定する下請事業者が親会社から支払いを受けるべき同法規定の下請代金であって、その支払い時期が更生手続開始前三月内であるものを、共益債権として認める点であります。現在、下請代金支払遅延等防止法によりまして親事業者の下請事業者に対する取引の公正化と、下請事業者の保護がはかられているのでありますから、国の法律として、会社更生法におきましても、下請代金の保護に当たるのは当然なのであります。この改正によりまして、下請事業者である中小企業者、並びに、そこで働いている従業員の賃金が正当に保護されるのでありまして、この改正はぜひとも必要なのであります。
 第二の改正点は、更生手続開始前の原因に基づいて生じた会社の使用人の退職手当について、その一部を共益債権として請求することができるようにしたことであります。すなわち、
 (イ) 会社の使用人が更生手続開始前に退職したときは、その退職手当の額を共益債権として請求することができるようにいたしました。ただ、この場合におきましても、その額が退職当時の給料の月額の六倍に相当する額をこえるときは、そのこえる額を除くことといたしました。
 (ロ) 会社の使用人で更生手続開始後引き続き会社の使用人であった者が退職した場合において、その者の受け得る更生手続開始後の会社における在職期間にかかる退職手当の額が、退職当時の給料の月額の六倍に相当する額に満たないときは、その不足額に相当する額を、更生手続開始前の会社における在職期間にかかる退職手当の額のうちから、共益債権として請求することができることといたしました。
 右の改正は、いずれも退職当時より六カ月の生活を保障するに足る退職手当を共益債権として確保せんとするものでありまして、これも本法第百十九条後段に規定している使用人の権利の確保の精神と一貫する当然の措置であります。
 なお、この二つの改正案は、いずれも公布の日より、周知期間として一カ月間を置いて施行するものとし、経過規定としては、この改正案の施行前にすでに更生手続を開始している会社には適用しません。
 このように、本法の改正点は、いずれも中小企業対策並びに労働者保護対策として緊急必要な措置でありますから、どうか本案を慎重審議の上、賛成あらんことを希望いたします。
#4
○委員長(松村秀逸君) 本法案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
#5
○委員長(松村秀逸君) 次に、労働関係訴訟における労働組合の当事者適格に関する法律案を議題といたします。発議者より提案理由の説明を聴取いたします。
#6
○委員外議員(棚橋小虎君) ただいま議題となりました労働関係訴訟における労働組合の当事者適格に関する法律案の提案理由を御説明いたします。
 現行民事訴訟法におきましては、訴訟上の当事者となる適格は、原則として法律関係の実体上の主体がこれを有することとなっております。従いまして、賃金の請求や解雇の効力等に関する訴訟につきましても、当該法律関係の実体上の主体である個々の労働者がそれぞれ訴訟の当事者適格を有するのあります。
 しかしながら、同一事情のもとにある企業の労働者につきましては、これら法律関係は、大量的に発生するのが通例であり、そのような同種の大量な法律関係を個々の労働者がそれぞれ別個に訴訟上の当事者として実現しようとしますと、訴訟手続は著しく複雑となる上に、相手方及び裁判所の労力ははかり知れないものがあるのであります。その結果、個々の訴訟はもちろん、全体としての訴訟も著しく遅延することになるのであります。
 かような場合に、個々の組合員たる労働者のために、労働組合にこれら法律関係の訴訟上の当事者となることができるようにしますことは、当該組合員たる労働者の訴訟上の権利の実現を全うすることができますとともに、事件の訴訟経済と訴訟促進をはかることができるのであります。なお、従来は、労働組合の当事者適格についての実定法上の根拠がないため、それに対して種々の見解があり、判例も否定、肯定の立場をとるものがほぼ同数に至っておるのであります。この際、これらを立法上統一化することも必要であると思うのであります。
 以上のような理由によりまして、労働契約に基づく労働関係上の権利義務を目的とする訴訟について、組合員のために労働組合に当事者適格を付与することが妥当であると思いまして、この法律案を提出した次第であります。
 以下この法律案の要点を御説明いたします。
 まず第一に、この法律案で当事者適格を付与する労働組合は、労働組合法の規定に適合する労働組合、公共企業体等労働関係法の規定に適合する公共企業体等の職員に関する労働組合及び地方公営企業労働関係法の職員の労働組合とし、また、これら労働組合は、それぞれの規約に当事者適格についての規定を含んでいなければならないこととし、この法律案の適用を受ける労働組合の範囲を明確にいたしたのであります。
 第二に、労働組合が、労働契約に基づく労働関係上の権利義務について、組合員のために訴訟を提起したときは、当該組合員は判決の確定するまでの間は、その訴えの全部または一部に反対である旨を申し出ることができることとし、法律関係の実体上の主体である組合員個人の訴えに対する意思を尊重する立前をとったのであります。
 第三に、組合員の訴訟承継の制度を設けたことであります。労働組合が労働契約に基づく労働関係上の権利義務について訴えを提起しまたは組合員に対する請求について被告として訴えを提起されたときに、当該組合員がみずから訴訟の追行を欲するときは、その訴訟の係属中、当該訴訟の承継を裁判所に申し出ることができることとし、この申し出がありますと、当該組合員に係る請求についての訴訟は、組合員に承継させることとしたのであります。
 第四に、個々の組合員が労働契約に基づく労働関係上の権利義務を目的とする訴訟の当事者である場合において、当事者適格を有する労働組合は、当該組合員の同意を得て、その訴訟の係属中当該訴訟を承継することができることとし、当該組合員の訴訟追行上の便宜をはかることにしたのであります。
 そのほか、これら訴訟手続の特殊性にかんがみまして、それぞれ必要な規定を設けたのであります。
 以上がこの法律案の提案理由及び大要であります。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかにご可決あらんことをお願いいたします。
#7
○委員長(松村秀逸君) 本案に対する質疑も後日に譲ることとし、本案の審議は、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(松村秀逸君) この際、の異動について御報告いたします。
 五月十六日付、松本治一郎君が辞任、戸叶武君が選任。以上であります。
    ―――――――――――――
#9
○委員長(松村秀逸君) 次に訴訟費用等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。ただいま出席の政府側は、最高裁内藤事務次長、長井第一課長、法務省津田司法法制調査部長であります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#10
○井川伊平君 本法案に対しましては、先般の本委員会におきまして、いろいろと質問をいたし、お答えをちょうだいしたわけでありますが、その際、御質問をいたしておりません一、二の事項につきまして、これから質問をいたしたいと存じます。
 執行吏の制度については、従来よりいろいろの論議がかわされているところでありますが、これが改正につき、いかなる考慮がなされているか、改正作業の方向と、その進行状態について伺います。また、改正作業が現在進捗していないとすれば、その理由はどういうわけであるかを承ります。
#11
○政府委員(津田実君) 御承知のように現在の執行吏制度は、明治二十三年に制定されました旧裁判所構成法及び執達吏規則によってその基礎が定められておりまして、その後ほとんど実質的な改正は加えられずに今日に及んでおります。時代の変遷と、また各分野における法律制度の改革によりまして、今日実情に適さない部分が少なくないことはすでに各方面から指摘されておりまして、この制度の改善の要望がなされていることは御承知の通りでございます。
 そこで政府におきましては、つとにこの制度の検討に着手しておりまして、裁判所、検察庁、弁護士会、学界等の各方面から改善意見を徴しまして、執行吏制度の運用に関する調査を行ない、また、各国への法制の研究も行なう等のことをいたして調査研究を進めて参ったのであります。また、それと同時に、昭和二十九年七月に、法務大臣から法制審議会に対しまして、執行吏制度の改善に関する諮問が発せられまして、法制審議会においては強制執行制度部会同小委員会が設けられまして、同時に諮問されました強制執行及び競売に関する改善の問題とともに調査審議を続けているのでありますが、何分にも何分にも、執行吏制度をいかにするかの問題は、強制執行及び競売の基本構造の問題と、裁判所の組織の問題と一体をなすきわめて困難な問題でありますため、いまだその結論を得るには至っておりません。しかしながら、この問題は早急に解決を要するものでありますから、法務省といたしましては、法制審議会の審議の下準備のための会議をひんぱんに開催しております。ことに昭和三十四年以降は、法務省、最高裁判所、学界等の関係者の間に、ほとんど毎週一回以上の会議を開催し、もっぱら問題を、執行機関の構成、権限、執行処分に対する不服申し立て等に関する改正、及び、これらと直接の関連を持つ強制執行、競売手続の改正にしぼって鋭意作業を進めているわけでありまして、遠からず結論を得ることができるかと考えております。で、政府といたしましては、できる限りすみやかに成案を得ました上、所要の改善を行ないたいというふうに考えておるのが現状でございます。
#12
○井川伊平君 大体の要領はわかりましたが、執行吏の地位というものにつきましては、現在のままでよろしいという考えか。あるいは、そうではなしに、一般の公務員としての取り扱いをする給料制度にすべきであるか、こういう点についてはどうお考えになっておりますか。
#13
○政府委員(津田実君) ただいまも申し上げました通り、現在、法制審議会において審議を進められておりますと同時に、政府におきましても、その下準備の作業をいたしておるのでありますが、いまだ結論というものは得ておりません。で、御指摘の執行吏の執行機関としての地位をどのようにするのが適当であるか。現在のように、執行の区分に応じまして執行裁判所と執行吏とをそれぞれ独立の執行機関とする二本立の制度を維持すべきか、あるいは、執行の権限を裁判所の執行官あるいは裁判所に置く執行局に一元的に集中すべきか、また、執行の椎限を執行裁判所に一元的に集中し、執行吏または執行官はその補助機関とすべきかというような問題があるわけでございますが、いずれの問題につきましても、いろいろ問題点がたくさんありまして、現在の状態においては、まだどのような地位にすべきかということについては成案を得ていないわけでございます。
#14
○井川伊平君 結局、地位にも関係がありますが、現在執行吏はどのくらいの収入を持っておるか。一般の官公吏並みの収入と比べてみた場合にどうなるかという点をお伺いするのであります。
 なお、それに関連をいたしまして、現在の執行吏は、多くは裁判所の書記官等を勤めた方が多いようであって、その結果、そういう方面の恩給をもらいながら執行吏をやっておる。従って、執行吏の手数料のほかに、恩給の収入がある、こういうような現状でもあるようでありますが、それらの収入関係についてお伺いいたしたい。
 なお、これの地位を一般官公吏の取り扱いにするということになりますると、その収入の面が非常にけた落ちになってしまう。というのは、現在の手数料よりも少ない俸給になり、そのほかに、今までもらっておるところの恩給ももらえなくなる、こういうことになるのではないか。そういうことについて、現在の執行吏はどういうようなことを考え、かつ陳情しておるか。
 もう一つ考えることは年令の問題でありますが、現在執行吏は一般の官公吏並みではありませんために、定員法が官公吏のようなふうにしかれていないために、相当老齢の方がやっておる事実もあるが、これを改正して一般官公吏ということに取り扱いをかえていくということになると、年令の点で非常に現在の執行吏というものが、何と言いますか、失業せねばならぬというようなふうに追い込まれるのではないか。あるいはそういうような年令に達しておる執行吏でありましても、十分に執行の目的を達しておる。さらに進んで言えば、若い官公吏である執行吏というのであるのよりも、年をとった、老齢になっておる、経験豊かな執行吏の方が執行の際に非常に成果を上げておる、こういう事実があるかどうか等に関してお伺いいたしたいと思います。
#15
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) まず執行吏の収入の程度でございますが、調べたところによりますれば、金額はいろいろになっております。地域において違いますし、人によって違うようでございますが、最も多い人で年収二百万をこえる人もおるわけでございます。しかしまた一方に、非常に収入の少ない人もございまして、年収十四万二千円に満たない場合には、国庫の補助を受けるわけでございますけれども、その支給を受けておる人たちも十数名おるわけでございます。平均いたしますと、その手数料収入が一人平均年間五十八万九千円ばかりになります。なお手数料のほかに、旅費であるとか宿泊料であるとか、そういった一切の収入を含めまして、一人平均年間百万円余りになります。もっとも、ただいま申しました百万円余りの一人平均年間の収入は、これは収入だけでございまして、このほかに、これに伴うところの支出があるわけでございまして、これが純粋の収入になるわけではございません。支出につきましては、執行吏の役場の維持費であるとか、出張の旅費であるとか宿泊費であるとか等、負担すべき費用が出るわけでございます。その支出につきましては、現在、正確の数字をつかんでおりませんので、これはただいま照会いたしまして、実態を調査しておる段階でございます。
 それから恩給でございますが、恩給は執行吏をやはり十七年在職することによりまして、十四万二千円の国庫補助額を基本といたしまして恩給金額が定められるわけでございます。十七年未満が退職いたします場合には、一般公務員のような一時恩給は支給されません。従って、十七年在職しなければ年金はないわけでございます。執行吏の中には、ただいま御指摘もございましたように、書記官の前歴のあるものが相当ございます。それはいずれも書記官の恩給にあわせて支給されるわけでございます。現在、執行吏を退職いたしまして恩給を受けておるものは約八十人ぐらいあります。書記官をやめまして執行吏になりまして、執行吏の在職中に書記官の恩給を受ける問題でございますが、これは一定額以上の収入を得ますと恩給がとめられるわけでございまして、これは執行吏の収入の少ない人たちだけが書記官の恩給を受けておるわけでございます。
 年令につきましては、確かに執行吏の中に相当高い年令の人たちもおるわけであります。中には七十才をこえて執行吏をしておる人たちも若干おるわけでございますけれども、定年の問題は、将来の、これも執行吏の地位をどう定めるかによることでございますが、もし将来公務員に定年制がしかれるような場合に、執行吏の地位が一般公務員と同じような地位になるとすれば、定年について、執行吏について特段の定めをする必要があるかどうか。これは必ずしも特段の定めが必要であるとも考えられないのでございます。確かに、ただいまお述べになりましたように、年令が高いために、その仕事になれて、能率を上げておるという面もございましょうけれども、将来の新しく予想されます制度のもとにおける執行吏の職務といたしましては、必ずしも年令にそういった違いがなければならないとも考えられないのでございます。そういった場合に、現在の年令の高い執行吏をどうするかということになりますが、そういう点までのまだ検討は経ておりません。もちろん、これは十分に検討すべき問題で、何らかの経過的措置は必要だと考えられますが、まだそこまでの検討はいたしておらない段階であります。
#16
○井川伊平君 さらにお伺いいたしますが、執行吏の事務、仕事が非常に停滞して困る。そのために依頼者が迷惑する、こういう事実が相当あるように思いますが、さような事実があるかないか、あるとすれば、どういう面にあるか。
#17
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 私ども若干そういうことを耳にいたさないわけではないのでございますけれども、多くの場合、それは大都会などにおいてそういう事態が起きるものと存じますが、やはり執行吏の数が比較的少なくて、相当一人の負担件数が多いためにそういうことが起きるというふうに感じられるのであります。
#18
○井川伊平君 お説の通りだと存じますが、大都会では執行吏の収入というものが非常に多い。平均をすれば先ほどのお話しのようになりましょうが、大都会の執行吏の収入は非常に多い。そうして仕事はつかえておる。なぜ人員の増をはからないか、こういうことです。人員増をはかれば一方の人の収入は減るであろうけれども、債権者の立場で申しますと、非常に助かることになります。なぜ大都会あるいは事件の非常に多い所で増員の計画を実行しないか、この経過をお伺いいたします。
#19
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 執行吏の数に不足がございましても、やはり執行吏の収入の面も考えなければなりませんので、まあ必ずしも期待できるようなだけの充足ができないような現状でございます。しかしこれにつきましては、執行吏の実際の収入支出の状況を調査いたしまして、そういった問題の解決をしたいと存じます。ただいま申しましたように、現在執行吏のそういった実態につきましての調査をいたしているわけでございます。
#20
○井川伊平君 今のお話しは、私は逆でないかと思うのです。あの制度は、国民のうちの、権利を持っておる者の権利の伸張の一つの機関としてあるものである、それが仕事がつかえて十分に権利の伸張ができない、こういう場合において、その執行の機関の人をふやせばその目的は達するのにかかわりませず、収入の面に重点を置いて考えるから、その機関をふやし、執行吏をふやしていかないのだということになりますと、執行吏の生活が主になって、国民の権利の行使の方が従になるようなことに考えられるが、これはどういうものでありましょうかな。
#21
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいま申し上げましたのは、執行吏の収入を主として考えるためにではございません。執行吏の執務全体についてのやはり調査をいたしました上で、そういう措置を考えるということを申したわけでございます。現在実際におくれます場合に、事件の困難であるとか、それからあるいはいろいろなそういう状況もございますので、そういった実態を十分調査いたしました上で考慮いたしたいということを申し上げたわけであります。
#22
○井川伊平君 事件の数多くして渋滞しておる事実は、年久しいものがある。ゆえに、今研究してから問題とするというのは少しおそすぎるように思う。今日まで投げておいたということが、やはり国民の権利の伸張という点について十分の考慮が払われていない結果でないかと私は思いますが、別の言葉でいえば、少し怠慢のように考えますが、いかがです。
#23
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 執行吏の仕事の実際にはいろいろ問題がございまして、確かに御指摘のような欠陥があることも、その通りだと存じますけれども、執行吏制度が、先ほど政府の方からも御説明がございましたように、いろいろな問題、批判があるのでありますが、やはりそういった問題が根本的にあるわけであります。従いまして、やはり結局は執行機関制度を考えなければならぬのも、そういった理由があるわけでございまして、直ちに人をふやすだけで措置ができるような問題でもない、いろいろな複雑な問題がそこにあると考えておるわけでございます。
#24
○井川伊平君 そういたしますと、基本的な、抜本的な改正を将来に行なおうと考えておると、それには月日も要することでありましょうが、その前において、現在渋滞しておるところの事務に一つの流れを通すために執行吏を増員するという考えは毛頭ないというおつもりですか。
#25
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 増員の考えは毛頭ないという趣旨ではございませんけれども、私どもといたしまして、やはり執行制度の根本に考慮を加えまして、そういった上で抜本的な解決をしたいというのが私どもの基本的な考えでございます。
#26
○井川伊平君 事務渋滞のために迷惑をしておるから何とか措置をしてほしいということは、全国の各弁護士の連合会、これは日本全国に七、八カ所あろうと存じますが、そういう連合会が、毎年のように何か決議をいたしまして陳情している事実がありませんか。
#27
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) そういった事実はないと存じますが、事務の渋滞につきましては、ただいま申し上げましたように、根本的は解決が一つと、それからもう一つは、やはり日常の執行吏の執務につきまして、さらにそういうことがないように努めたいということは考えているわけでございます。先ほど申し上げましたのは、基本的な解決は、どうしてもやはり制度の改正をいたさなければならないということを申し上げたわけでございますけれども、しかし、それまでに、やはり裁判所としてそういった事務の渋滞につきましては、できるだけ措置をしたいというふうに考えております。
#28
○井川伊平君 根本的な改正を行なうという御希望はあるようでありますが、それは非常な遠い将来という意味でございますか。あるいは今すぐというわけではないけれども、およそ近い機会においてという御趣旨でありますか、承っておきましょう。
#29
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) ただいま政府の方からお答えがございましたように法制審議会で検討中であり、早晩その結論が得られるものと期待するというふうなお答えがございましたけれども、私どもとして同様に期待しているわけでございます。
#30
○井川伊平君 もう一点お伺いしておきますが、現在の執行吏の方々から、現在きめられておるところの手数料でございますが、これが少し安過ぎると、非常な古い時代にこしらえた率であって安過ぎると、これを値上げしてほしいというような、いろいろ陳情等があるのではないか、陳情はなくても、そういう点をお気づきであるのではないか、こういうことを一つお伺いいたします。
#31
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 執行吏の方面から、ただいまお話しのございましたような希望がございますことは、私どもも聞いている次第でございます。この点につきましては、私どももやはり手数料の相当の改正ということが必要であろうとは存じておりますわけでございますけれども、それにつきまして、十分の資料を整えまして結論を得たいと存じております。先ほど申し上げましたように、執行吏の執務の実態につきまして、まだ調査が十分に済んでおりません。ただいまその実態を調査いたしております。これも結論を得まして、いずれかの措置をとりたいというふうに考えております。
#32
○井川伊平君 研究をして結論を得たいというお話しはわかりますが、そういう問題は、さしあたって最近の問題じゃない。いわば非常に古くから続いている問題だから、今までなおざりにして全然顧みないというのが真相でないかと思うのでありますが、もう少し熱意を持って真剣にお考えになりますれば、そういう古い問題がそのままになっておるはずがないと思うのでありますが、御研究になって、真剣に、根本的な改正はさることながら、さしあたってのこうした問題がもし不十分なものがあるとするならば、そういう問題に是正を加える、そうすれば、非常に執行吏の収入がふえるということになれば、人を増しましても、十分に執行吏のい方々の生活でき、そうして権利者の権利の擁護にも欠くことがなくなると存じますが、こういう問題を、基本的な問題の解決まで投げておくというのじゃなしに、もう少し何とか考えようはございませんか。
#33
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 手数料の改正の点は、確かに基本的な改正を待つまでもなく、その間の措置として当然しなければならないというふうに考えております。ただ、これにつきましては、一体どういう程度の手数料が適正であるかということを検討しなければならないのでありますが、手数料は究極的には債務者のいわば負担になるわけでございますし、各方面の執行吏の実態を調査いたしまして、さらに各方面の意見を徴してその結論を得たいというふうに考えているわけであります。
#34
○井川伊平君 最後にもう一点お伺いいたしておきますが、執行吏の手数料が一定の金額に達しないときは国が補償しておりますね。補償をしているのはごく少数の人であるようでありますが、この補償をする金額及びその金額の割り出しの基礎は、これは何から出ているか、お伺いいたしておきます。
#35
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) これは先ほど申し上げましたように、現在十四万二千円ということになっております。これに手数料収入が満たないものは国庫の補助を受けるようになっているわけでございます。これが基準でございます。これは三十五年の十月からその金額になったわけでございます。この基準をきめます標準と申しますか、見合うものは、やはり公務員の俸給でございまして、八等六号に見合っているわけでございます。従いまして、昨年の十月にベース・アップがありましたのに伴いまして、この国庫補助の基準額もやはり増額になったわけでございます。
#36
○委員長(松村秀逸君) ほかに御質疑はございませんか。
#37
○赤松常子君 この参考賃料を拝見いたしまして、今さらのように証人の人々の日当の低いのにちょっと驚いたわけでございますが、今度増額されまして後、総額はどのくらいになるのでございますか。一人にはこの増額でございますが、総額はどのくらいの予算のワクをとってあるのでございますか。
#38
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 証人日当の予算総額は二千四百万ばかりになります。
#39
○赤松常子君 それで一人二百三十円のが三百円ということになるのですね。
 それから、この前、あまり日当が少ないから証人の出頭がずいぶん少ないと伺いましたが、全事件の中で、そういう故障から事件が進まないというような割合はどのくらいあるのでございますか。
#40
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 証人の出頭率であるとかあるいは不出頭の原因については、若干の調査もいたしておりますけれども、必ずしも証人の不出頭が日当が少ないためばかりと申せないいろいろの事情がそこにからみ合っているわけでございまして、それぞれの証人の都合があったり、あるいはいろんな事情からその人が出られないということで出ない場合が多いわけでございます。従いまして、その中で証人の日当が少ないために出ないという率については、ちょっと私どもも資料を整えかねているわけでございます。
#41
○赤松常子君 そういう事例もあることはあるわけでございますね。
#42
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) まあ私どもむしろ常識として、やはり日当が多くなければ、どうしても証人出頭の率が悪いということは考えているわけでございます。
#43
○赤松常子君 そういう点、どのくらいあるかということも予想できませんでございますか。私は、非常にそれで訴訟が渋滞するということを、何んと情けないことだろうかと思うのでございますが、どのくらいございますのでしょう。
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君)
 ただいま申し上げましたように、日当が低いという理由で不出頭ということは、実態はなかなか突きとめられませんので――。ただ何と申しますか、裁判所から証人に呼ばれて、必ずしも喜んで出るような場でもないのに、しかも非常に日当が低いというのでは、これはなかなか出にくい、気持が自然にそうなるだろうということは推測されるわけであります。ただ、先ほど申し上げましたように、証人不出頭は、そこにいろいろ原因や要素が加わっておりますので、それも総合して考えなければならないというふうに考えております。
#44
○赤松常子君 そういう場合には、日当についての苦情と申しましょうか、意見というものが公に出たことはございませんでしょうか。
 それからもう一つ。やはり証人にお出になる方々が相当収入もある方があって、それを犠牲にしておいでになるというような場合、そういうことに対する不平とか、そういうような代償がほしいというような声も出たことはございませんでしょうか、 いかがでしょうか。
#45
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 一般の批評としましては、確かに御指摘のように日当が低過ぎるということがいわれているわけでございます。これは私どもとしましてもその点はそういうふうに考えるわけでございまして、年々予算も要求しているわけでございますけれども、ただ、個々の場合に、証人がそういう意味で不平を言うとかあるいは抗議するとかいうようなケースは聞いておりません。
#46
○赤松常子君 その所得の多い方が何かこういう声をおあげになったことはございませんでしょうか。その犠牲にたえられないことを理由に、おっしゃったことはございませんか。
#47
○最高裁判所長官代理者(内藤頼博君) 具体的にそういうことは聞いておりません。
#48
○委員長(松村秀逸君) ほかに御質疑はこざいませんか。――なければ、本日の質疑はこの程度にとどめます。
 ほかに御発言もなければ、次回は五月十八日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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