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1960/05/30 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第17号
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1960/05/30 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第17号

#1
第038回国会 法務委員会 第17号
昭和三十六年五月三十日(火曜日)
   午前十一時九分開会
    ―――――――――――――
  委員の異動
五月二十三日委員後藤義隆君辞任につ
き、その補欠として宮澤喜一君を議長
において指名した。
五月二十四日委員宮澤喜一君辞任につ
き、その補欠として後藤義隆君を議長
において指名した。
五月二十六日委員岡村文四郎君及び近
藤信一君辞任につき、その補欠として
木島義夫君及び千葉信君を議長におい
て指名した。
五月二十七日委員青田源太郎君辞任に
つき、その補欠として横山フク君を議
長において指名した。
五月二十九日委員横山フク君辞任につ
き、その補欠として青田源太郎君を議
長において指名した。
    ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     松村 秀逸君
   理事
           井川 伊平君
           大川 光三君
           高田なほ子君
   委員
           青田源太郎君
           木島 義夫君
           後藤 義隆君
           林田 正治君
           大森 創造君
           千葉  信君
           松澤 兼人君
           赤松 常子君
           市川 房枝君
           辻  武寿君
   衆議院議員   富田 健治君
           門司  亮君
           早川  崇君
  政府委員
   警察庁保安局長 木村 行蔵君
   法務省刑事局長 竹内 壽平君
   労働省婦人少年
   局長      谷野 せつ君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       西村 高兄君
  説明員
   警察庁保安局防
   犯少年課長   綱井 輝夫君
   厚生省公衆衛生
   局環境衛生課長 城戸 茂夫君
   厚生省薬務局細
   菌製剤課長   中原竜之助君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○政治的暴力行為防止法案(衆議院送
 付、予備審査)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (少年問題に関する件)
    ―――――――――――――
委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 この際、委員の異動について御報告します。
 五月二十三日付、後藤義隆君辞任、宮澤喜一君選任。
 二十四日付、宮澤喜一君辞任、後藤義隆君選任。
 二十六日付、岡村文四郎君辞任、木島義夫君選任。近藤信一君辞任、千葉信君選任。
 二十七日付、青田源太郎君辞任、横山フク君選任。
 二十九日付、横山フク君辞任、青田源太郎君選任。
 以上であります。
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松村秀逸君) 早川崇君外七名提出の政治的暴力行為防止法案を議題といたします。
 ただいま門司亮君、富田健治君が御出席になっております。
 まず提案理由の説明を聴取いたします。
#3
○衆議院議員(富田健治君) 自由局主党並びに民主社会党共同提案にかかります政治的暴力行為防止法案について御説明申し上げます。
 今やわが国は、各方面において、異常な発展を遂げ、着尺民主国家としての体制を確立しつつありますことは、御同慶の至りと存じますとともに、今後とも、政治の根幹を国民の自由と権利と擁護に置き、いよいよ民主主義の健全な発展と伸張をはからなければならないと存ずるのであります。
 しかしながら、最近の国内情勢を見まするに、浅沼事件、嶋中事件に見られるごとく、あるいは昨年の日米安全保障条約改定反対闘争に際しての暴力的国会侵入事件のごとく、個人、団体を問わず、自己の政治上あるいは思想上の主義、主張を追及するに、急なるのあまり、法秩序を無視し、暴力によりその主義、主張を実現せんとする傾向の見られますことは、まことに憂慮にたえないところでございます。かかる行為は、わが国民主主義の確立のため重大な支障を与えるところであり、われわれは、この種事犯の防止のために、最善の努力を注がなければならないと存じます。すなわち、かかる要請にこたえ、あらゆる政治的暴力行為を防止し、真に民主主義の確立を期するためには、在来の刑法、あるいは破壊活動防止法その他の取締法規のみでは、不十分なところがございますので、ここに新たに政治的暴力行為防止法を制定し、これによって、有効適切にこの種政治的暴力行為を防止し、もって民主国家の健全な発展をはかる一助といたしたいと存じ、この法案を提案いたした次第でございます。
 以下、この法案の内容の概略について御説明申し上げます。
 この法案は、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする暴力行為すなわち政治的暴力行為が、団体の活動として、または団体の活動に関連して行なわれる場合に、これを防止するに必要な規制措置を定めるとともに、これらの政治的暴力行為に対する刑罰規定を補整し、もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的といたしております。従って、この法案は、大別いたしますと、二つの部分に別れるのでありまして、その一は、前述の政治的衆力行為を防止するに必要な団体規制措置を定める部分、その二は、これらの行為に対する刑罰規定の補整を定める部分でございます。政治的無力行為の防止のためには、単に刑罰規定の補整、すなわち刑罰の加重のみでは不十分でありまして、この種政治的暴力行為に出でる団体に対し、必要最小限度の規制措置を規定し、団体活動として、あるいは団体活動に関連して、政治的暴力行為に出でる危険を未然に防止する必要があるとするものであります。
 次に、この種団体に対する規制措置は憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならないことは、申すまでもないところでありますので、特に第三条におきまして、この法律による規制及び規制のための調査は、第一条の目的を達成するためにのみ、行なうべきものと規定いたし、運用の慎重を期することといたしました。またこの法律による規制及び規制のための調査が、正当な集団示威連動、集団行進、集会その他の団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならないことも、また当然でありますので、特に第十三条第二項にその趣旨の規定を設けた次第でございます。
 なお、政治的暴力行為が、わが国の民主主義の発展を阻害するものであることにかんがみ、すべての国民が、その発生を防止するように努めなければならないものと考えますので、特に第五条にその趣旨の規定を設け、なお第六条に、だれでも政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知ったときには、直ちにその旨を警察署に通報しなければならないとする規定を設け、すべての国民の協力により政治的暴力行為の発生の防止に配意いたした次第であります。
 次に、第四条において政治的暴力行為の定義を掲げました。すなわちそれは政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってなされる次の行為であります。イ、殺人。ロ、傷害。ハ、逮捕監禁。ニ、強要。ホ、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に規定する体様の集団的暴行、脅迫、器物損壊。へ、国会または総理官邸への暴行、脅迫その他暴力的手段による不法侵入 ト、特定の者が、殺人をなすおそれがあることを予見しながら、その者に対し継続または反復して、特定の他人を殺すことの正当性または必要性を主張する行為。ただし、その特定の者がその影響を受けて、殺人を実行するに至った場合に限ります。チ、殺人の予備、陰謀、教唆、扇動。傷害の教唆、扇動。国会等への侵入の教唆、扇動。この法律による政治的暴力行為は、以上の行為に限定されるわけでありまして、この法律においては、これらの政治的暴力行為が団体の活動として、あるいは団体の活動に関連して行なわれる特定の場合に、その団体に対する規制措置をとらんとするものであります。
 次に、この法律による団体規制措置は三種でありまして、その一は、団体の活動に関し政治的暴力行為を行なった役職員又は構成員に一定期間当該団体のためにする行状をさせることを禁止する措置であり、その二は、政治的暴力行為を行なった団体活動の制限であり、その三は、団体の解散の指定であります。
 団体のためにする行為の禁止については、禁止期間を殺人の場合は六カ月以内、その他の政治的暴力行為の場合は四カ月以内と規定いたしました。
 団体活動の制限については、破壊活動防止法による団体活動の制限より、さらに条件を重くいたしました。すなわち殺人以外の政治的暴力行為の場合には、ある団体が継続または反復して政治的暴力行為を行ない、将来さらに継続または反復して政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがある場合に限定いたしたのであります。すなわち、ある意味においては、政治的暴力行為を行なう常習性のある団体に対し、団体活動の制限をなし得るものとしたのであります。ただし、殺人の場合には、団体の活動として一回殺人を行なった団体が、将来さらに継続または反復して政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがある場合には、団体活動の制限をなし得るものといたしました。
 団体活動の制限期間についても、殺人の場合は六カ月以内、その他の場合は四カ月以内といたしました。
 制限される団体活動は、その政治的暴力行為が、集団示威運動等において行なわれた場合は、集団示威運動等を制限するものであり、機関紙誌によって行なわれた場合には、機関紙誌の発行を禁止するわけでありまするが、このほか第九条に団体活動の制限を受けた団体の代表者等は、活動禁止期間中の団体の業務計画を公安調査庁に届け出なければならないといたしてあります。
 団体の解散は、事柄の重大性にかんがみ、第十条において厳格に殺人の場合に限定いたしております。すなわち、殺人関係の政治的暴力行為を行なった団体が、将来継続または反復して殺人を行なう明らかなおそれがある場合のみに限って団体の解散ができるものといたしております。
 団体に対する規制措置は以上の通りでありますが、これらの規制処分を行なう権限官庁は公安審査委員会とし、規制に関する調査の権限を有する機関は、公安調査庁とし、この法律による規制及び規制のための調査に関し、破壊活動防止法の諸規定を準用することといたしました。第十三条がこれでございます。
 なお、規制原因行為としての思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人は、この法律第四条第一項第一号によって、新たに規定されたところでありまするが、政治上の主義または施策を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人は、破壊活動防止法第四条第一項第二号へに同法による規制原因行為として規定してあり、この点について両法が重複いたしますので、附則第二項において破壊活動防止法のこの部分を削除し、政治的殺人を行なう団体は、すべてこの法律により規制することといたしました。
 次に、罰則についてでありますが、まず、その構想の概要を説明いたしますと、現行の刑法にすでに存する若干の犯罪類型の刑の加重を目的とする刑法のいわゆる特別法としての性格を持つものと、刑法等の現行刑罰法令には存しない新らしい犯罪類型を規定したものと大別することができると存じます。
 すなわち、刑法の特別法としての性格のものとしては、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対するという、いわゆる政治上または思想上の目的をもってする殺人、傷害、国会または総理官邸への暴行、脅迫その他の暴力的手段による不法侵入、逮捕監禁、強要及び集団的ないし凶器を示してする暴行、脅迫、器物損壊等の六つの政治的暴力行為の類型が規定されたのであります。いずれもすでに現行の刑法において一般的に犯罪として刑罰が規定されているものでありますが、特に政治上または思想上の目的によるこれらの犯罪は、民主主義の基本原則ともいうべき思想、言論その他の行動の自由を抑圧する最も憎むべき犯罪であることにかんがみ、この際、刑法の特別法として刑を加重し、もってこの種の悪質な暴力の防止に資せんとするものであります。なお、ここで特に一、二点につき言及いたしたいと思います。
 その第一点は、政治的暴力行為の排除のために刑罰の強化のみに依存することは妥当でないばかりでなく、いたずらに極端な厳罰を規定して国民を威嚇することはかえって民主主義の根本−理念に反するものではないかと考えられるので、本法案におきましては、この点につききわめて慎重な各般の配慮のもとに、各規定につき最も適正にして妥当な法定刑を規定することに努めたことであります。
 その第二点は、国会等への侵入と暴行、脅迫、器物損壊の二つの類型については、特に構成要件をしぼり、前者においては暴行もしくは脅迫をして侵入する場合、建造物もしくは器物を損壊して侵入する場合、またはさく、へいもしくは門を乗り越えて侵入する場合に限定し、適法平穏な請願、陳情その他の団体活動がいささかも制限を受けることのないように規定面自体において明確に立言をなし、また後者においてはいわゆる単純な個々の暴行もしくは脅迫または器物損壊をそのまま本法に取り込むことを避け、団体もしくは多衆の威力を示しもしくは凶器を示し、または数人共同してこれらの罪を実行する場合等に限定し、もって必要以上に苛察にわたらないよう万全の考慮を加えたことであります。
 さらに、新らしい類型のものとしては、次の三つの規定があげられます。その一は、いわゆる政治上または思想上の目的の殺人または傷害を実行しようとする者に対し凶器または金銭、物品その他の財産上の利益を供与してこれを幇助する行為を、それだけで処罰することとしたことであります。御承知のように刑法上の幇助犯は本犯が犯罪を実行したときに初めて処罰の対象となるのでありますが、本法に規定するような殺人または傷害というごとき凶悪な政治的暴力行為につきましては、本犯が犯罪を実行するのを待たずしてこれを規制しようとするものであり、いわゆる政治テロ行為を勧奨または支援することを許さずとする規定であります。しかしながら、この種の規定は他面において必要以上に拡大されて運用されるおそれがあることにかんがみ、いわゆる政治目的による殺人と傷害二つの類型のみに限定するとともに、相手方がこれらの罪を実行しようとする者であることを要することとし、いたずらに拡大して解釈運用されることのないように要件をしぼっております。その二は、政治上または思想上の目的をもって殺人、傷害、国会等への暴力的手段による不法侵入の行為の一を教唆しまたは扇動する行為をいわゆる独立犯として処罰することとしたことであります。なお、殺人につきましては、教唆、扇動の独立犯のほかに予備、陰謀をも処罰することとしておりますが、これらの規定の必要性につきましては、この際特に説明を加える要はないものと信じます。その三は、政治上または思想上の目的をもって、特定の者のいわゆる政治殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により、特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をした者を、その特定の者がその影響を受けて政治殺人を実行するに至ったときは、これを処罰することとしたことであります。殺人の教唆、扇動をそれだけで独立犯として処罰することについては右に述べたとこでありますが、この規定は教唆、扇動に至らない場合でも処罰の対象となり縛る類型を新たに設けた点で注目に値するものと思います。いわゆる政治テロ行為の防止に役立たせたい趣意にほかならないのでありますが、この種の規定は立言のいかんによってはかえって言論の自由の制約になるおそれがあることにかんがみ、その点について最大限の考慮を払ったところであります。すなわち、政治的暴力行為の中で最もおそるべき行為である殺人のみに限定するとともに、殺人の正当性を主張しても、ただそれだけでは処罰の対象とはならず、その者がその影響を受けて政治殺人の罪を実行するに至った場合に初めてこの犯罪が成立することとしたのであります。
 以上が罰則についての概要であります。
 最後に、本法案の重要性にかんがみ、附則において、公布の日から起算して一月を経過した日から施行することといたしてあります。
 以上申し述べましたところが本法案の提案の理由でありますが、何とぞ慎重御審議の上、御賛成賜わりまするようお願い申し上げます。
#4
○委員長(松村秀逸君) 以上で提案理由の説明は終了いたしました。
 引き続き政治的暴力行為防止法案について補足説明を聴取いたします。
#5
○衆議院議員(門司亮君) ただいま富田議員から提案理由についての説明がございましたので、以下、これに対しまする補足説明を申し上げたいと思います。補足説明は逐条的に申し上げて御了解を得たいと思います。
 第一条は、本条は本法の目的を掲げたものでございます。本法の目的は、究極において、わが国の民主主義の擁護に資することにあるのでございます。そのためには、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする暴力行為を防止するために必要な規制措置を定めるとともに、これらの行為に対する刑罰規定を補整して対処することといたしたのであります。
 政治上の主義とは、資本主義、社会主義、共産主義のごとく、政治によって実現しようとする比較的に基本的、恒常的、一般的な原則を意味するものでございます。
 また、政治上の施策とは、国民皆保険のごとく、政治によって実現しようとする比較的に具体的、臨機的、特殊的な現実的方策を意味するものでございます。
 思想的信条と申しておりますのは、思想上の信念のことでございまして、憲法第十四条、第四十四条国家公務員法の第二十七条、労働基準法第三条に規定する「信条」より宗教上の信仰を除いたものと解されるものと考えておるのでございます。
 推進するとは、自己の抱懐する主義もしくは施策または信条についてその実現をはかることでございます。
 支持するとは、他人の抱懐する主義もしくは施策または信条についてその実現に協力することでございます。
 反対すると申しておりまするのは、他人の抱懐する主義もしくは施策または信条について、その実現を拒むことでございます。
 第二条は、本条は本法の解釈適用について規定をいたしているのでございます。本法は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものでございますから、民主主義の擁護に資する目的を達成するためにのみ適用すべきものであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない旨を規定したものでございます。すなわち、本法の解釈適用にあたっては、健全な社会通念に従って各条項を厳格に解釈適用しなければならないことといたしているのでございます。
 第三条は、本法による規制及び規制のための調査の基準について規定をいたしております。
 すなわち、規制及び規制のための調査の基準を第一条の目的達成のための必要の限度において行なうことといたしまして、正当な団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならないといたしたものでございます。
 第四条は、第一項に政治的暴力行為、第二項に扇動、第三項に団体、第四項に団体の活動の各定義を規定したものでございまして、これらの定義は、本法の基礎観念でございます。
 本法は、本条に定める団体が本条に定める政治的暴力行為を一定の条件において行なう場合に、その団体に対し必要の規制措置をなすとともに、かかる政治的暴力行為に関する現行刑罰法令を補整し、これを犯した個人もまた取り締まることとしたものでございます。「政治的暴力行為」の観念は、行政上の観念で刑事上の観念ではございません。すなわち、それは団体に対して行なう規制という行政処分の原因となる事実でございます。この観念で現行破壊活動防止法及び刑法その他の刑罰法規の規定する行為を基礎としてのその教唆、扇動等、現下の情勢にかんがみ本法の目的達成上必要最小限度の補整を新たに加えたものがございまして、本条の第一項に掲げられたものでございます。すなわち本条第一項の中で第一号より第六号まではいずれも現行刑法その他刑事法により犯罪と定められている行為であるが、第七号と第八号は、第一号、第二号及び第六号に関し新しい取り締まり類型行為を定めたものでございます。この新しい類型行為は、他面、犯罪行為とも規定し、これを犯した個人を処罰することといたしているのでございます。
 第一号は殺人第二号は傷害第三号は逮捕、監禁、第四号は強要、第五号は暴力行為等処罰に関する法律に定める行為で、特に説明を必要としないと思います。
 第六号ないし第八号については、新しい規定でございますので説明を加えることといたします。第四条第六号は、内閣総理大臣官邸及び会期中の国会議事常並びにそれらの構内に暴力的手段により不法に侵入する場合を規定しているものでございます。すなわち、不法侵入の形態として泰行もしくは脅迫をして侵入する場合、建造物もしくは器物を損壊して侵入する場合、さく、へいもしくは門を乗り越えて侵入する場合に限定しております。しかも、このような侵入は現行法でも当然犯罪となるものでございます。
 従って、本規定自体によっても平穏な請願、陳情その他適法の団体活動がいささかも制限を受けるものでないことは明らかにしたものでございます。
 本号の「不法」にと申しておりますのは、法律上正当な理由がないことを言うのであります。「国会の会期中」とは、国会の常会(憲法第、五十二条)、臨時会(憲法第五十三条)、及び特別会(憲法第五十四条第一項)の会期中並びに参議院の緊急集会(憲法第五十四条第三項)中をいうのでございます。「建造物」とは、家屋その他これに類似した工作物で、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものをいうのでございます。「器物」とは、器具物件をいい、本号の場合、建造物を除いたその他の物と解され門、へいのごときはそれに当たるかと存じます。「さく、へい」は、いづれも囲障であり、遮断の用に供せられるものでございまして、両者の相違をしいて求めれば、さくはもっぱら遮断の用に供せられるに対し、へいは遮蔽の用をも兼ねている点があげられるかとも存じます。
 第四条第七号は、特定の者が政治上の主義、施策または思想的信条を推進し、支持し、またこれに反対する目的をもって人を殺すおそれのあることをあらかじめ知りながら、その特定の者に継続または反復して、文書、図画または言動などの方法により、特定の他人を殺すことの正当なること、または必要なることを主張し、その特定の者が、その主張の影響を受けて特定の他人を殺す行為の実行をなした場合を政治的暴力行為と規定しているのでございます。
 このように本号は、単に殺人の、正当性または必要性を主張する行為だけを取り上げたものではなく、その主張の影響を受けて特定の他人が殺人の実行をするという結果の発生を見た場合に限定して取り上げたのでございますが、その発生した結果は、殺人の既遂たると未遂たるとは問わないのでございます。「特定の他人を殺すことの正当性又は必要性の主張」とは、特定の他人を殺すことが正しいことまたは必要であることを主張することで、これは現行刑法上教唆にも当たらずまた扇動でもなく、その行為の本質は、宣伝行為とのみ見るべきでございますが、宣伝行為であるから、その解釈もおのずから一定の限界のあることは申すまでもございません。
 また本号の「特定の者」とは、もちろん一人のみならず二人以上の多数者を呑んでいるが、要するに、客観的にその他一般の人々と容易に区別され得る一人または人の集まり意味していると解するものでございます。これも無制限でなく、人を殺す行為を行なうおそれのあることを予見しながらという条件がございますので、その範囲は限定されていると解すべきであると思います。また「特定の他人」とは、一人のみならず二人以上の場合も含まれているが、これも客観的にその他の一般の人と区別が相当具体的に明確化されていなければならないと考えられ、その明確化は、殺人という行為の実行性との関連で定まってくるものと解するものでございます。
 「主張する」とは自己の意見として表明することでございまして、主張する方法としては、文書、図画、言動をあげているが、行為として文書の頒布、掲示、図書の回覧、講演などが考えられるのでございます。
 第四条第八号は、殺人等についての予備、陰謀、教唆、扇動を新たに規定したものでございまして、「予備」とは、特定の犯罪の準備行為を申すのでございます。
 「陰謀」とは、二人以上の間においてなされる特定の犯罪を行なうことの謀議でございます。
 「教唆」とは、他人をして一定の犯罪を実行する決意を新たに生じさせるに足る行為をなすことをいうのでございまして、本法案は、教唆を独立行為として定めたものであるから、相手方が犯罪実行の決意をなし、または犯罪の実行に着手することは要しないのでございます。
 第四条第二項には、扇動の意義を規定してあって、これは破壊活動防止法と同様でございます。第四条第三項は、団体の定義を規定してたものでございまして、破壊活動防止法と同様でございます。第四条第四項は、団体の活動の定義を定めたものでございまして、それは一つは、団体の意思を決定する行為、二つは、団体の意思に基づき、もしくは団体の主義、方針、主張に従ってする団体の役職員または構成員の行為をいうものでございます。この第四項の団体の役職員、構成員という概念も、破壊活動防止法のそれと同一でございます。
 第五条は、政治的暴力行為がわが国の民主主義の発展を阻害することにかんがみまして、主権者である国民各日が、その行為の発生を進んで防止するよう努めなければならない旨を規定したものでございます。
 第六条は、第五条の趣旨を受けたものでございまして、政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知った国民は、進んで警察署に対し、これを通報する義務を課した規定でございます。しかし、この通報義務は、もちろん主権者たる国民の自発的意思に待つべきものであって、罰則をもって強制すべきものとは考えられないから、違反に対しては罰則は考えていないのでございます。第七条は、公安審査委員会の行なう規制処分のうち、政治的暴力行為を行なった役職員または構成員に、団体のためにする行為をさせることを禁止する処分の条件、内容及び効果について規定しているのでございます。
 すなわち、本条第一項は、団体の役職員または構成員が、当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、殺人、同未遂、その予備、陰謀、教唆、扇動のいずれかの行為を行ない、または特定の者が殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により、特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をして、その特定の者がこの影響を受けて殺人を実行するに至ったときは、公安審査委員会は当該団体に対し、六カ月をこえない期間を定めて、当該役職員または構成員に当該団体のためにする行為をさせることを禁止することができるとの規定をいたしたのでございます。
 第二項は、団体の役職員または構成員が、当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、傷害、その教唆、扇動、逮捕、監禁、強要、同未遂、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の集団的暴行脅迫、器物損壊または国会等への暴力的侵入、同未遂、その教唆、扇動のいずれかの行為を行なったときは、公安審査委員会は、当該団体に対し、四カ月をこえない期間を定めて、当該役職員または構成員に当該団体のためにする行為をさせることを禁止することができる旨を規定したものでございます。
 第三項、第四項は、右二項の処分の履行を確保するため設けられました規定でございまして、この処分が効力を生じた後は、当該役職員または構成員は、当該団体のためにする行為をしてならず、またそれ以外の役職員または構成員は、処分の趣旨に反する行為をしてはならない旨規定し、処分の履行を確保せんとするものでございます。ただし、当該処分の効力に関する訴訟に通常必要とされる行為をすることは、例外としてなし得る旨の規定をいたしてあるのでございます。
 第五項は、右二項の脱法行為を禁止したもので、当該団体の役職員または構成員は、いかなる名義においても右二項の規定による禁止を免れる行為をしてはならない旨を規定したものでございます。
 本条第一項の「団体の活動に関し」とは、団体の活動に関連しての意でございをして、団体の活動に関連しての意でございまして、団体の活動としてなされる場合は、もとよりこれに包含されるものでございます。「当該団体の目的実現に資するため」とは、当該団体の目的の実現をはかりまたは実現を容易ならしめるための意でございます。また「団体のためにする行為」とは、団体活動に参与する行為、すなわち、団体の意思決定に参与することはもちろん、団体の意思決定に基づきなす団体活動に参加する一切の行為をいうのでございます。
 第八条は、団体に対する活動制限の処分につきましてその要件、内容及び効果を規定したものでございます。団体に対する活動制限の処分の要件と内容は、第一項と第二項の場合の二つに分けられておるのでございます。これは殺人に関する行為とその他の行為とを区別して取り扱っているものでございます。
 第一項の場合は、殺人に関する政治的暴力行為に関する場合で、団体が第四条第一項に規定する政治的暴力行為のうち殺人及びその予備、陰謀、教唆、扇動または殺人の正当性、必要性の主張をする行為を行ない、または殺人の未遂を行ない、これに継続または反復してさらに団体の活動として何らかの政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときでございまして、この要件に該当するときは、団体活動の制限ができるものといたしたのでございます。処分の内容としては、すでに行なった政治的暴力行為の行為形式との関連において六カ月の範囲内で集団示威運動等の集団行動や機関紙誌の発行を禁止することができることといたしました。
 第二項の場合は、殺人に関する以外の政治的暴力行為を原因として行なう場合について定めたもので、団体が継続または反復して、本法第四条に規定する政治的暴力行為のうち傷害、同教唆、扇動、逮捕、監禁、強要、集団的暴力、脅迫、器物損壊、国会への不法侵入、同教唆、扇動を行なうかまたは強要、国会等への不法侵入の未遂を行ない、これに継続または反復して将来さらに団体の活動として政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときであって、この要件に該当するときに、団体活動の制限ができるものでございます。処分の内容は、第一項の場合と同様であるが、期間が四ヶ月以内に限定されている点において相違があろうかと存じます。
 第九条は、第八条により団体活動の制限の処分を受けた団体に対する業務計画等一定の事項の届出義務の規定でございます
 届出義務者は、活動制限団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者でございまして、届出の内容は、禁止期間中の収入、支出を含む団体の業務計画その他の事項でございますが、その詳細については政令の規定するところに譲ったものでございます。届出先は、当該団体の主たる事務所の所在地を管轄いたしまする公安調査局長または地方公安調査局長であるが、管轄区域については、公安調査庁設置法に規定されているところでございます。
 第十条は、規定処分の一である解散処分の要件を定めたものでございます。
 解散の要件は、団体が団体の活動として、政治上または思想上の目的をもって殺人を行なったかもしくはその未遂に終わった場合、または政治上または思想上の目的をもって殺人の教唆、扇動をして、現実に殺人行為を行なわせた場合、将来もさらに継続または反復して団体の活動として政治上の目的で殺人行為を行なうか、その予備または陰謀をなすかもしくは教唆、扇動をなす明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由のある場合でございます。解散の指定をなす機関は公安審査委員会でございまして、その手続については、破壊活動防止法の規定を準用することといたしました。
 第十一条、本条第一項は解散処分の効果を規定したものでございます。
 解散処分の効果が生ずると、本条によって、一定の行為が禁止されます。
 禁止される者は処分の原因となった政治的暴力行為が行なわれた日以後処分を受けた団体の役職員または構成員であった者で、禁止の行為は、処分を受けた団体のためにするいかなる行為も含まれるのございますが、例外として、処分の効力に関する訴訟、または処分を受けた団体の財産または事務の整理に通常必要とする行為は除かれておるのでございます。「団体のためにする行為」とは、団体の役職員または構成員が、直接団体の存続、発展、再建のために行なう一切の行為をいうものでございます。
 第二項は、第一項の処分の効果の脱法行為をあげたものでございます。いずれも罰則を伴うものでございます。
 第十二条は、解散処分が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくった場合の効果を規定したものでございます。
 第一項は、法人が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくなった時に解散することを定めたものでございまして、解散処分は公安審査委員会で決定され、官報に公示されると効力を生じるが、訴訟手続によって争う道が残されているのでございます。本項は訴訟手続によって争い得ないことが確定した場合でございます。
 第二項では解散処分を受けた団体の財助産整理義務を規定し、第三項では財産整理終了時における団体役職員のてん末届出義務を規定したものでございます。
 第十三条は、本法では破壊活動防止法の一部の規定を準用することを規定するとともに、準用の場合の読みかえ規定を定めたものでございます。本法では団体のためにする行為の禁止(第七条)のほか、破壊活動防止法と同様、団体活動の制限(第八条)、解散の指定(第十条)の規定が置かれているので、これらの規制の手続を規定する必要があるが、規制の手続は破防法と同様公安調査庁長官の請求により公安、審査委員会で行なうことになっているのでございますため、本法で再び破防法と同様に規定することを避け、すべての手続規定を準用して読みかえることといたしました。そのため破防法第三章破壊的団体の規制の手続、第四章調査、第五章雑則(第十一条から第三十七条)の規定をすべて本法で準用することといたしたのでございます。破防法第三竜破壊的団体の規制の手続に関する規定を準用することにより、本法の団体のためにする行為の禁止(第七条)、団体活動の制限(第八条)及び解散の指定(第十条)の処分をなす場合の手続はすべてこれによることといたしました。
 さらに第四章調査は、規制のための公安調査官の調査権などについて規定しておるのでございまして、第五章雑則では、公安、審査委員会の決定に対する裁判の提訴により委員会の決定が取り消されたとき公安調査庁長官が、その裁判を官報に公示する義務や法務大臣の国会に対する規則状況の報告などを規定したものでございます。
 第十四条から第三十一条までは、「政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的」をもってなされる「殺人」、「傷害」、「国会等への暴力的手段による不法侵入」、「逮捕監禁」、「強要」「集団的暴行等」の六つの犯罪類型について同種行為についての現行刑罰法規の法定刑を引き上げた規定でございます。
 第十四条は、右のうち、殺人に関する規定で刑法第百九十九条の殺人罪の規定と比較すれば、まず、禁固刑が選択刑として加えられたこと、刑の下限が三年から七年に引き上げられたことが相違点としてあげられるのでございます。第三項の予備、陰謀は、破壊活動防止法から殺人に関する規定を削除して本法にこれを規定することとした関係で、同法第三十九条の規定から殺人についての予備、陰謀、教唆、扇動に関する部分も削除されるので、その予備、陰謀の部分をここに規定したものでございます。なお、その教唆、については第二十三条第一号を御参照願いたいと思います。第四項は、本法に規定する目的をもってする尊属殺人については本条を適用するのか、それとも刑法第二百条(未遂については第二百三条)の適用を見るのか疑いを生ずる余地もあると考えられまするので、両法案の関係を明確にしたものでございます。
 第十五条は、傷害に関する刑の加重規定でございまして、刑法第二百四条(傷害)との相違点は、禁固刑が加えられ、罰金、科料の二つの刑がなくなったこと、及び刑の下限が一年となったことでございます。
 第十六条は、傷害致死に関する加重規定でありまして、刑法第二百、五条第一項(傷害致死)との相違点は、禁固刑が加えられたこと、及び刑の下限が二年から三年に引き上げられたことであります。本条第二項は、第十四条第四一項と同様に、刑法第二百五条第二項の規定(尊属傷害致死)と本条第一項の規定との関係を明確にしたものであります。
 第十七条は、刑法第百三十条前段の住居侵入罪の特別規定でございまして、同条との相違点は、前記の特別のいわゆる政治目的の存在を要件とするのみならず、対象を国会議事堂もしくはその構内(国会の会期中に限る)または内閣総理大臣官邸もしくはその構内に限定いたしておるのでございます。さらに侵入の態様も、暴行もしくは脅迫をしての侵入、建造物もしくは器物を損壊しての侵入、さく、へいもしくは門を乗りこえての侵入の三つに限定した上、法定刑を六月以上七年以下の懲役または禁固(刑法第百三十条は三年以下の懲役または五十円−罰金等臨時措置法により二千五百円以下の罰金)と規定したことでございます。「不法に」、「会期中」、「建造物」、「器物」、「さく、へい」の意義については第四条に説明しましたので参照願いたいと思います。「暴行もしくは脅迫をして侵入」、「損壊して侵入」という場合の暴行、脅迫、損壊との関連については、暴行、脅迫損壊の行為が侵入の手段としてなされることを必要とするものと解せられるのでございます。刑法第九十八条「加重的逃走」を御参照願いたいと思います。第二項の未遂罪の成立に必要な実行の着手については、侵入行為自体について着手がなくとも手段である暴行、脅迫、損壊の各行為について着手があれば足るものと解しておるのであります。
 第十八条は、逮捕監禁に関する規定でございまして、刑法第二百二十条第一項及び策二項に対応して、それぞれの法定刑を引き上げました上、禁固刑を付加したものでございます。
 第十九条は、逮捕監禁致死傷に関する規定で、刑法第二百二十一条の趣旨にならない、本法の傷害(節十五条)及び傷害致死(第十六条)の罪の刑と同一の刑を規定したものであります。
 第三項の規定は、尊属逮捕監禁致死についての刑法の規定と本条との関係を明確にしたものでございます。すなわち、本法に規定する目的による尊属逮捕監禁致死については本条第二項の規定だけが適用されるのか、あるいは刑法第二百二十一条(逮捕監禁致死傷)の規定によって第二百二十条第二項(尊属逮捕監禁)の罪と第二百五条第二項(尊属傷害致死)の罪とを比較した結果適用される第二百五条第二項の規定の適用を見るのか疑いを生ずる余地があるので、この閥の関係を明確にしたものであります。
 第二十条は、強要に関する加里規定で、刑法第二百二十三条第一項、第二項との相違点は一年以上五年以下と法定刑の上限並びに下限を引き上げたこと及び禁固刑が加えられたことでございます。
 第二十一条は、集団的暴行、脅迫、器物損壊等に関する規定でございまして、単純な暴行、脅迫、器物損壊については刑法に規定が存するのでございますが、これらの罪が団体または多衆の威力を示し、団体もしくは多衆を仮装して威力を示しまたは凶器を示しもしくは数人共同してなされる場合には、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項によって三年以下の懲役または五百円(罰金等臨時措置法によって二万五千円)以下の罰金に処せられるのであります。本条は構成要件として右のような集団的ないし凶器を示してする方法による暴行行為に特別の政治目的を付加した上、刑の加重をした規定でございまして、右の暴力行為等処罰に関する法律の刑から罰金刑を削り、禁固刑を加え、六カ月以上五カ年以下と法定刑の上限並びに下限を引き上げたものでございます。
 第二十二条は、政治上または思想上の目的の殺人または傷害の罪を実行しようとする者に対し、凶器を提供し、または金銭、物品その他の財滝上の利益を供与してこれを幇助する行為を、それだけで、処罰することといたしたものでございます。
 刑法上の幇助犯は、幇助された者が犯罪を実行するに至ったときに初めて成立するのでございますが、本案の幇助犯は、これと異なり、幇助された者が犯罪を全く実行しなくとも成立する。すなわち、独立犯としての幇助犯を規定したものであって、新しい犯罪の類型を規定したものといえるかと思います。
 本条は、背後にあって政治テロを勧奨または支援しようとする行為を規制するものでございますが、「実行しようとする者に対し」「これを幇助する行為」というのであるから、提供または供与を行なう者はその相手方が、政治上または思想上の目的をもって殺人または傷害の実行を決意している者であることを認識し、かつ、その実行を容易ならしめる意志をもってすることを要することは申すまでもございません。
 幇助された者が犯罪を実行するに至ったときの本条と刑法総則の従属犯としての幇助の規定の適用の関係については、第二十五条に規定しているのございます。
 第二十三条は、政治上または思想上の目的で本法第十四条の殺人及び刑法上の殺人、尊属殺、本法第十五条の傷害及び刑法上の傷害、本法第十七条の国会等への不法侵入等の罪を教唆し、または扇動する行為を、それだけで、処罰することとしたものでございます。
 前条と同様、独立犯としての教唆犯または扇動犯を規定したものであって、教唆または扇動された老が犯罪を実行しなくとも、本条の犯罪が成立するものといたしました。
 政治上または思想上の目的による殺人についての独立犯としての教唆または扇動犯の本条の規定の新設によりまして破防法第三十九条の規定から、関係規定が削除されることになっているのでございます。附則の2を御参照願いたいと存じます。
 本条第一号または第二号において、本法の規定と刑法の規定とが合わせて掲げられているのは、教唆されまたは扇動される相手方に政治上または思想上の目的があるかどうかを問わず、そのいずれの場合にも、これを教唆しまたは扇動する行為を処罰する趣旨を明らかにしたものでございます。
 教唆された者が犯罪を実行したときの本条と刑法の規定の適用の関係については、第二十五条を御参照願いたいと存じます。
 第二十四条は、政治上または思想上の目的で、特定の者が政治上または思想上の目的の殺人を行なうおそれがあることを予見しながらその者に対し、継続または反復して文書もしくは図画または言動によって、特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をする行為を、その特定の者がその影響を受けて政治上または思想上の目的の殺人を実行するに至った場合に限って、これを処罰することといたしたものでございます。
 政治上または思想上の殺人を教唆し、または扇動する行為は、前条によって独立犯として処罰されるのでございますが、本条は、教唆または扇動に至らない場合でも、これを処罰しようとするものでございまして、新しい犯罪類型を規定したものと言えるかと思います。本条の要件は複雑でございますので、これを分解して説明いたしますならば、第一に、政治上または思想上の目的をもってすること、第三に特定の者が本法の殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、特定の他人を殺すことの正当性または必要性を主張すること、第三に、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により主張すること、第四に、右の主張だけでは足らず、主張の影響を受けてその特定の者がいわゆる政治殺人を実行するに至ったときに処罰されることになること、この四点に集約されるであろうかと存じます。
 予見しながら殺人の正当性または必要性を主張することで足り、殺人を実行させる目的を必要としない点で教唆や扇動より広くなっているが、特定の者に対し特定の他人を殺すことの正当性等を主張すること、主張を受けた特定の者がその影響によって殺人の実行をするに至ったとき初めて処罰の対象となること、等の点において独立犯としての教唆や扇動より狭くなっているものと言えようかと存じます。
 第二十五条は、本法に定める独立犯としての教唆犯または幇助犯の規定と、刑法上の教唆犯または幇助犯の規定の適用関係を規定したものでございます。
 本法第二十三条に規定する教唆犯及び第三十二条に規定する幇助犯は、前述いたしましたように、独立犯であって、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に至らない場合でも成立するのでございますが、刑法上の教唆または幇助犯は、これと異なり、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に出た場合に限って成立する。そこで、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に至らない場合には、刑法上の教唆犯または幇助犯の成立の有無を論ずる余地はないが、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に至った場合は、刑法上の教唆犯または幇助犯に関する規定が適用されるのか本法が適用されるのかという疑問が生じてくるのでございます。本条は、かかる場合において、「刑法総則に定める教唆又は幇助の規定の適用を排除するものではない」と規定し、刑法上の教唆犯または幇助犯に関する規定の適用があることを明らかにしたものでございます。
 第二十六条は、政治上または思想上の目的の殺人の予備または陰謀をした者が、その罪の実行に至らない前に自首したときは、その刑を減軽し、または免除することを規定したものでございます。
 破防法第三十八条第三項、刑法第八十条等と同趣旨の規定でございまして、政治上または思想上の目的の殺人の実行を未然に防ごうとする政策的考慮に出た規定でございます。「罪の実行に至らない前」と申しておりますのは、罪の実行行為に着手する前をいうものであって、殺人罪の実行に着手した後に自首したときには、刑法第四十三条第一項の一般の自首の規定が適用されるものと解しているのでございます。
 第二十七条は、解散の指定を受けた団体の役職員または構成員であった者が、当該団体のためにするいかなる行為をなすことも禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免れる行為、脱法行為をなすことを禁止する第十一条の規定に違反したとき、この者を三年以下の懲役または五万円以下の罰金に処することを規定したものであります。第十条及び第十一条で説明を申し上げました通りでございます。第二十八条は、団体活動の制限の処分を受けた団体の役職員または構成員が、その処分の趣旨に反する行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免れる行為脱法行為をなすことを禁止する第八条第三項及び第四項の規定に違反したとき、この者を二年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 第二十九条は、団体の役職員または構成員、当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、一定の政治的暴力行為を行なった結果として、当該団体が当該役職員に、一定期間当該団体のためにする行為をさせることを禁止する処分を受けた場合に、当該団体の役職員または構成員が当該団体のためにする行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においても、この禁止を免かれる行為脱法行為をなすことを禁止する規定に違反したとき、この者を一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 第三十条は、退去命令違反の罪を定めたものでございまして、すなわち公安調査庁長官が本法による団体の規制の請求をなさんとするにあたり、団体の役職員、構成及び団体の代理人は指定の期日に出頭して公安調査庁長官の指定する職員、受命職員に対しまして、事実及び証拠につき意見を述べ、並びに有利な証拠を提出することができる旨定められているのでございます。破壊活動防止法第十四条以下、これらの規定が本法第十三条によって本法による規制に関し準用されているのでございますが、この期日において、団体の選任する立会人及び新聞、通信または放送の事業の取材業務に従事する者が手続を傍聴するにあたり、弁明の聴取を妨げる行為をしたときは、受命職員はその者に退去を命ずることができ、この命令に違反した者を三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 第三十一条は、団体活動の制限の処分を受けた団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者が、当該団体の活動制限期間中の業務計画その他の事項の届出義務に違反して、全く届出をしなかったかまたは虚偽の届出をしたとき、この者を一万円以下の罰金に処するこりを規定したものでございます。
 次に附則でございますが、附則の第一項は、本法を公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することをした規定でございます。第二項においては、破壊活動防止法第四条に掲げる「暴力主義的破壊活動」より殺人、その予備、陰謀、教唆、扇動の各行為を削除し、さらに第三十九条中刑法第百九十九条を削り、破壊活動防止法て刑罰の補整がなされた政治上の主義もしくは施策を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の罪を一応廃止することといたしたのでございます。
 これは本法第四条第一項第一号及び第八号により殺人、その予備、陰謀、教唆、扇動が新たに「政治的暴力行為」として規定され、第十四条第三項及び第二十三条第一号により殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の罪について刑罰の補整がなされたので、これと重複する破壊活動防止法の規定を削除することといたしたのであります。
 第三項は、本法の施行前にした破壊活動防止法第三十九条に規定する殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の行為に関しては、なお従前の通り規制、処罰し得る趣旨を定めた経過規定でございます。
 節四項は、本法の施行に伴い、法務省の担当職務権限中に本法による団体の規制に関する事項を加えることを規定し、第五項は、公安調査庁の任務、権限中本法の規定による団体規制に関する調査及び処分の請求等に関する国の行政事務を加え、総務部の事務に本法の規定による弁明の聴取及び処分の請求に関することを加え、調査第一部の事務に本法第四条第一項第五号及び第六号に規定する政治的暴力行為を行なった団体に関する調査事務、調査第二部の事務にその余の政治的暴力行為を行なった団体に関する調査事務をそれぞれ加えまして、さらに公安調査官の職務に本法の規定による団体調査事務を加えたものでございます。第六項は、公安審査委員会の事務に本法の規定による規制に関する審査及び決定の事務を加え、さらにその権限事項に本法による団体のためにする行為の禁止処分、活動制限及び解散の指定の規制処分を加えたものでございます。
 以上が本案各条に対しましての一応の御説明でございます。
#6
○委員長(松村秀逸君) 以上で補足説明は終了いたしました。
#7
○大川光三君 議事進行について。
 ただいま政治的暴力行為防止法案について、提出者の富田、門司両氏から提案理由説明並びに逐条説明が詳細に行なわれたのでございますが、承るところによりますと、本法案については、衆議院の法務委員会において多数参考人の意見を聴取せられました結果、その意見を取り入れて一部修正が加えられたようでありますが、この際、提出者より、その修正点の概要の御説明をわずらわすことができますれば、本委員会としても法案審査上好都合かと存じますので、委員長においてしかるべくお取り計らいをお願いいたしたいと存じます。
#8
○委員長(松村秀逸君) 修正条項の御説明できますか。
#9
○衆議院議員(富田健治君) ただいま大川委員から御発言ございましたが、御承知の通り先般自由民主党と民主社会党と共同提案で修正案が、先ほど説明いたしました法案に対して出されました。それにつきまして、修正点の概要を付加して御説明申し上げろということでございますので、六点修正点がございますが、以下、付加して御説明さしていただきたいと思います。
 第一点は、法案中に「思想的信条」という字句が、第一条以下数カ所に出ておるのでございますが、その「思想想的信条」という字句を「政治的信条」に改めたのであります。ちょっと御説明を申し上げまするが、先ほど門司委員からも説明がございました通り、「思想的信条」という字句の解釈といたしましては、提案者といたしましては、宗教上の信仰は入らないというふうに考えておりました。また、そういう解釈も学説上もできるようでございまするが、一部に宗教上の信仰も入るじゃないかという御意見あるいは学説等もあるようでございますので、この際、はっきりこれをいたしたいというので、「政治的信条」というふうに「思想的信条」を改めようというので、これが修正点の第一点であります。
 それから第二は、この法案の第三条二項でございますが、この第三条二項に「労働組合その他の団体の正当な活動」こういう字句を入れたいという修正でございます。第三条の二項は「この法律による規制及び規制のための調査については、いやしくもこれを濫用し、正当な集団示威運動、集団行進、集会その他の団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならない。」いわゆる一種の訓示規定で、当然な規定でもあるのでございますが、こういう規定を設けております。さらにそれに対しまして、今回の法案が、労働組合の正当な活動を制限するものじゃないかというような一部に誤解もあるようでございますので、全然そういうことは立案者も考えておりません。また法の内容から申しましてそういうことは考えられないのでございますが、この際、こういう点をはっきりいたしたいという要望もあり、われわれの考えもございまして、この第三条第二項のうちに「労働組合その他の団体の正当な活動」という字句を挿入いたしたいということになって、修正案が出されております。
 第三点は、本法案の第六条でございますが、第六条は、これは警察署への通報を規定したものでございます。いわゆる一種の道義規定と申しまするか「政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知ったときは、直ちにその旨を警察署に通報しなければならない。」そういう訓示規定と申しますか、道義規定なんでございますが、これに対しましてまた誤解もございまして、あるいはこの規定によってスパイ活動を奨励するものであるという誤解あるいは懸念も一部にあるようでございますので、そんなことはわれわれ全然考えておらぬことでございますから、この際、はっきりとこれを削除したらということになりまして、第六条は削除することに修正いたしました。これが
 第三点でございます。第四点は、本法案第二十二条でございますが、この第二十二条の一番頭に「情を知って」という字句を挿入いたそうという修正でございます。第二十二条は、ここに表われておりますように」第十四条第一項若しくは第三項又は第十五条の罪を実行しようとする老に対し、凶器を提供し、又は金銭、物品その他の財滝上の利益を供与してこれを幇助した者は、五年以下の懲役又は禁錮に処する。」という、いわゆる資金源に関する罰則でございまするが、先ほど説明がございました通り、「情を知って」ということ法文上当然の規定になるのでございます。しかしながら、これも明確にいたします黄味で「情を知って」という字句を挿入するのがよかろう、こういうことになりまして、「情を知って」という字句を挿入さしていただく修正案を出しました。
 第五点は、内閣総理大臣官邸及び国会議事堂への侵入罪については、先ほども御説明がありました通り独立犯としての教唆扇動罪を規定いたしているのでございまするが、大衆運動に対して少しこれが広すぎるのじゃないだろうかというような御懸念もあるようでありまするので、この際、独立犯としての教唆扇動界を規定をいたしておりましたこの規定を削除する。そこで、申すまでもなく刑法総則によります本犯が成立した場合での教唆犯というものが成立をするわけでございますが、その独立犯としての教唆扇動罪は、この規定の削除によりましてなくなるということに相なりました。これが修正点の第五でございます。
 それから第六は、これはいわゆる限時法にしたらどうかというような御意見もずいぶんございました。そこで第六の修正点といたしましては、本法施行後五年を経過した後、本法を存続させるかどうかについて、政府は国会の議決を求めなければならないこととする――おおむね今日の電源スト規制法の場合と同じような時限法にするということでございます。なお、この結果本法が失効した場合においても、従前の犯罪については処罪される易を明記するというのが、第六の修正点でございます。
 なお修正につきましては、この限時法の一つの例を申しましても、時限法の問題でございますが、本法はあくまでも最近のこの暴力テロ、また、それに時期的に先立ちます集用不法暴力、これに対しまして、これを今日の世上から除きたい、予防いたしたいというのがわれわれの念願でございまして、それでこういう法案が出されたのでございまするが、あくまでもこれは時限的な臨時的なもので、われわれの信念といたしましては、こういう法案が通過することによりまして、この法律によりまして暴力を防止いたしたいという趣旨でございます。従いまして、われわれの確信は、また念願は、こういう法律が一日も早くなくなることでございまして、そういう法律によって規制される犯罪行為が、暴力行為が、世の中からなくなるということでございますので、考え方におきましても時限的なものでございます。そこで、この第六点の時限法という考えを明確にここにうたった方がいいじゃないかというので、こういう修正を出したのでございます。
 その他、修正提案に至りました経過につきましては、ただいま申しますような趣旨でございましたので、また、議員立法の趣旨から考えまして、何とかいたしまして各方面一致した法案といたしたいということで、今日までも努力をなお続けておるような次第でございます。また、あらゆる面の世論と申しますか、先般衆議院におきましては、九名の参考人のおいでを願いまして、異例でございましたが、二回にわたりまして、三日間にわたりましてその参考人の陳述を拝聴いたしたのでございます。そうしてその参考人等の御意見も聞き、また新聞社の各方面の論説等も聞き、世論にも聞きまして、この六点の修正点をもって修正いたすことが適当である、妥当である、かように考えまして、共同提案で以上のような修正案が出されたような次第でございます。
 以上、御説明申し上げました。
#10
○松澤兼人君 今提案理由の説明を聞いたばかりで、それに対しての僕は大川理事の方から御希望があって修正意見を拝育したわけですが提まだ委員会においていろいろと意見の調整をやっているという段階らしいのです。私たちもまあ社会党の方面としましていろいろと意見があるように考えるのです。ちょっとこういう修正に対するまとまったものでないのをここで聞くこともどうかと思うのですが、これ以上ちょっと今の段階で直ちに私は質疑に入るということもどうかと思うのですが、もう少しまとまったような形になってから質疑をやった方が、たとえば今のスパイ行為というようなことが原案のままであれば、これは重大な問題として私たち論議しなければならないと思っていたわけなんですけれども、それが今の修正意見としては、これを省いてしまうということなんですが、もう少しまとまった段階になってから質疑に入るということが妥当だと思うのです。一応この段階において委員長、理事打合会等においてもう一ぺん直ちに質疑に入るかどうかということを御検討いただくとけっこうと思います。
#11
○委員長(松村秀逸君) ほかに御意見ありますか。ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#12
○委員長(松村秀逸君) 速記を始めて。
 本案の審議は次回に続行することとし、本日はこの程度にとどめます。
 午後一時半から再開することとして、これにて休憩いたします。
   午後零時二十九分休憩
    ―――――――――――――
   午後零時二十九分休憩
#13
○委員長(松村秀逸君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査中、少年問題に関する件を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
 なお、ただいま出席の政府側は、警察庁綱井防犯課長、厚生省中原細菌製剤課長、武藤養護課長、法務省竹内刑事局長、長島青少年課長であります。
#14
○高田なほ子君 前回の委員会で未成年者が酒席にはべった、そういう違法を犯したものについて、いろいろ実情をお伺いして当局の対策などをお伺いしたわけですが、きょうはその続きをお伺いしたいと思いますが、まず五月十四日の産経新聞では、暴力団のわなに落ちて少年たちが数十人客引きに使われ、そのあげくの果てに血を売らせられたか売ったかと、こういうような新聞の記事が出ておりました。で、先般厚生省から担当の方がお見えにならないために、この問題についての実情をお伺いする機会がなかったわけです。これは警察庁の方にも本問題についての実態をお調べいただきたいということを前もってお話しを申し上げておりましたのでまず、警察庁の方から「血を売る家出少年数十人」この産経の記事について、その実情はどういうふうであったのか、この点をまずお尋ねし、そしてその次に、厚生省側の方に本問題についていろいろ具体的にお尋ねをしたいと思います。
#15
○説明員(綱井輝夫君) 御指摘の新聞記事に関連する事案につきまして、二、三の検挙事例とその概況を御説明いたします。
 一人の少年の場合ですが、この少年は中学を卒業後工員として職場に勤めていたのでありますが、途中仕事がいやになりまして家出をする、従ってお金に困りまして今年の四月九日ですが、本田の方にあるいわゆる血液銀行に血を売りに行きましたところ、中年の男に誘われましてあるアパートを世話してもらって、仕事としては何かといえば、映画の案内であるというようなことで連れて行かれました。その後浅草の公園の方で、これはいわゆるわいせつ映画のポン引きとして立っておるというところを警察官につかまりまして、本人は家庭裁判所に送致になったわけであります。
 また、もう一つの事例でもほぼ同様のケースでありますが、やはり夜遊びが過ぎて家を飛び出し、これは十九才の少年であります。そういう者が四月の四日日赤の血液銀行に売りに行ったところ、五十年配の男に誘われて仕事の手伝いをしろということで、またアパートを世話してもらったといいますか、指定されてそこに住んでおる。そうして今年の四月十七日に浅草で公園の六区でわいせつ映画の勧誘中に警察署に保護された、こういった数個の事例があるわけであります。こういった事例は、主として浅草方面に相当数見られるのであります。おおむねあるいは血液銀行とかあるいは繁華街でいわば身なり、動作、挙動等からして、そういった家出とかあるいは若干不良性を帯びているというような少年を拾って、こういったわいせつ映画とかあるいは売春の勧誘の手先として使っておるというふうに見受けられるのであります。最近非常に組織が巧妙になったといいますが、取り締まりの手を逃がれるために相手の成人の本名というものはなかなかわからない。またすぐそういった場所に案内するのじゃなくて、途中で非常にリレー式となっておりますので、そういったものを本体というものを目下捜査中でございますが、最近の事例からしますと、四月中にこういった少年を五、六名補導いたしております。大体浅草署の管内で月平均四、五十人いわゆる客引きといいますか、ポン引きを検挙したのでありますが、そのうちの一割くらいが少年であります。かつ、そのうちの約半数がそういった血を売った経歴を持っておる、そういうような状況でございます。ほかの方面にも非常にあるかと思って調べてみたのでございますが、ほかの地区ではこういう検挙事例がない、ないし非常に少ない、そういうふうな状況でございます。
#16
○高田なほ子君 大体御説明があったのでございますが、この新聞の記事によると今御説明のあった一、二例のも含めて四十人が血液銀行で暴力団のわなにがかった少年たちであるという。この暴力団のわなにかかって、血液銀行で血を売っておった、こういうのですが、今のお話しでも過半数の者がこの客引きでつかまって、その過半数の者が血を売っていたということになると、他に例がない、浅草以外には例がないということを言われましたけれども、こういうような傾向が今あるのではないかということは、あなたの方でおつかみになっていらっしゃるわけでしょうね。
#17
○説明員(綱井輝夫君) 相当他の方面にもあるかと思って調査してみたのでありますが、少なくとも検挙事例として今日までにはつかんでいない。また客引きに少年が使われているという事例はあるのでありますが、現在のところ、そういう血を売る少年の事例というのが発見されていないという御返答を今したわけでございます。あるいは警察の視線外でそういうことがあるかもしれないと思いますが、今後十分一つこういう面に注意をして取り締まりをやっていきたい、かように考えております。
#18
○高田なほ子君 何者かが家出少年たちに客引きをさせ、 エロ写真を売らせ、あげくの果てには血を売らせてその分け前を彼らは取っていた傾向がある。新聞の中には見られるようです。これこそ吸血鬼で、おそるべき人物です。このおそるべき人物は、今捜査中だということでありますが、一例もこれはつかまっておらないのですか。そういう吸血鬼は。
#19
○説明員(綱井輝夫君) 私どもの知っている範囲では、そういう血液銀行または血を買う所へ行って、そういった者が少年を探しているようでありますが、そういう少年たちに血を売らせているという話しは、まだ聞いておらないのであります。
 それから一例もつかまっていないかというお話しでありますが、本件に関する事柄は目下捜査中でございますが、こういったエロ映画ないし売春、さらに進んで暴力売春、そういった事例としてたくさんの男が検挙されているわけでございます。大体どういxtuだ方面の人間であるかという見当ももちろんついているわけでございますが、具体的な証拠というものを目下捜査中でございます。
#20
○高田なほ子君 どうもきのうきょうあたりの新聞で、かなり暴力団が手入れをされているようですね。暴力団の資金かせぎ、浅草で十五人逮捕、ぐれん隊十四人逮捕、新宿の暴力バー、キャバレーで五カ月で百五十三人検挙、大半の店は経営にやくざを使っている、こういうような記事がここ二、三日の間に各新聞でこういう問題が報道されている。これを見ると、大体暴力団の名前がここに出ているわけです。しかも彼らは常套手段として少年たちを使っている傾向がかなり出てきている。こういうようなものを締め上げていくと、今言うような吸血鬼、人の血を、子供の血を売らせて、それで自分が甘い汁を吸っていこうという、ほんとうにこれは許すことのできないような吸血鬼も、この中から私は出してくることができるのじゃないか。どうも警察は暴力団についてはかなり最近きびしい態度をとっているようですけれども、とことんまでの追及というものがされているのか、されていないのか、大へん疑問に思う点もあるわけなんです。特に私はこの血を売る問題を重視したのは、その組織が単に個人の問題ではなくて、必ずこれは暴力団の組織につながってこういうことをやっておる最も悪質な吸血鬼というものを徹底的にやはり探し出していただかなければならぬ、こういうような観点からこの問題を実は取り上げておるわけです。どうなんですか。何とか団、かんとか団という名前もだいぶんあがっておるようですが、これはとことんまでお調べになるつもりでおられるわけですか、どうなんですか、これは。
#21
○政府委員(木村行蔵君) 暴力団に関しましては、警察といたしましては最も重点を置いてその取り締まりに力を注いでおります。今お示しの新聞の暴力団についても、それぞれの団体の名前は警視庁でわかっておるわけでございます。暴力団の組織については、それぞれ名簿を作りまして非常に内偵その他の点でマークしておる。今度の事案についてもおそらく徹底的に警視庁は根源を突くために力をいたすということは間違いないと思います。
#22
○高田なほ子君 今度浅草署であげられた堀切組とか山春組とか、こういうような人たちは、これは昭和二十七年ころからこういう忌まわしい問題を繰り返してきているようです。そこには少年が巻き添えになったかならないかということについては内容が出ておりませんけれども、昨年の二月にはこれらの暴力団は殺人事件まで起こしておる。こうしてこの中に少年たちが巻き込まれていくという一つのケースとして取り上げなければならぬ。その中に今言うように血を売るような問題が出てきておるのではないかという疑問がさらに高まってきたわけです。これは一つ徹底的にこの問題は追及をされたい。
 そこで、この血る売る方の側ですが、わが党の坂本委員は、社会労働委員会で、しばしば血液銀行の問題等についても政府当局にただしておるようでありますが、私も六法全書をずっと調べてみましたけれども、売血行為についてのいろいろな基準といったようなものは見当たりませんでした。しかし、今警察の方の御報告にもありましたように、十六才とか十八才とかというような、まだ年端もいかない少年たちが血を売っているようでありますが、厚生省当局としては、少年の売血行為というものに対してどういうような基準を設け、その基準を守るためにどういう方法を講ぜられているのでしょうか、この点を一つ。
#23
○説明員(中原竜之助君) いわゆる供血者の保護につきましては採血及び供血あっせん業取締法、これによりまして供血者の保護をはかるようになっております。この供血者の保護は、もつ。ばら重一点は、いわゆる供血者が血を出すことによって健康をそこなうのを防止するというところに置かれているのであります。従いまして、供血者が血液銀行に参りますと、そこに次姉がおりまして、医師がその者を診断をして、血液をとっても差しつかえないというその診断のもとに、初めていわゆる採血がされるわけです。もちろんその際にはいわゆるカルテというものを作成しましてやっております。それで、結局健康上の問題ではありますけれども、さらに省令、規則によりまして健康上のみでなくて、年令的にも制限は一応されております。満十六才未満の者及び満六十五才以上の者からはとってはいけないように年令的にはなっております。その他は大体におきまして健康上の問題が主になっております。
  〔委員長退席、理事大川光三君着
  席〕
#24
○高田なほ子君 年令制限が一応言われているようですが、これはあなたはこの前の委員会に御出席にならないわけですが、十五歳未満の子がダンスホールとか、ナイトクラブに行って客席にはべったという事実をこの間あげたのですが、こういうような場合にも、家出少年が血を売ると金がもうかるということになると、年令証明書も何も持っておらなければ一応形式的には十六歳未満の供血は禁止されるように今お話しがあったけれども、必ずしもそ
 のことは守られておらないのではないかという疑問が出てきますが、年令制限そのことを実際にやらせるために、特段の方法というものは何かあるのですか。
#25
○説明員(中原竜之助君) 年令の問題につきましては、私ども実は特に年令的にどういうふうであるかということについては、いわゆる他の貧血の問題に比べましては、いわゆる注意が薄いと申し上げるほかないと思います。
 しかし、これをごまかすという場合に一体どうするかという問題になって参りますと、なかなかむずかしい問題になって参ります。と申しますのは、先ほど高田先生から社会労働委員会の方でもいろいろ御質問があってというようなことを申されましたけれども、事実私はその点に頭を悩ましているわけでございまして、いわゆる血液銀行においては偽名を用いるというような者が往々にして多いのでありまして、それをいかにして発見していくか、そうしてその採血を防止するかということにつきまして、私どもも血液銀行側に注意をいたしますとともに、血液銀行側としても、できるだけ注意するように、たとえば前に肺の病気をしたことはないか、あるいは目じるしをつけておいて近く採血した者が来ていない等、その発見ができないかということに苦心をしております。
#26
○高田なほ子君 貧血についてのいろいろの条件についてはかなり心配されてきたことも実は坂木委員から伺っております。しかし、実際問題として坂本委員が議員という身分を隠して血液銀行の実態を潜行してお調べになったところによると、今あなたが苦心を語られたごとくにその採血の基準というものは必ずしも励行されておらない。特にこれから注意していただかなければならないことは、このような吸血鬼がいるということです。厚生省の医務局と何局ですか。
#27
○説明員(中原竜之助君) 昭薬務局でございます。
#28
○高田なほ子君 薬務局が想像も及ばないような、鬼のような悪魔があって、そうして少年達の血を売らせて自分はその分け前を少し取っている。こういうような吸血鬼が今この社会に、現実に数十人の子供の血を売らせた記事が新聞の片すみに載っている。私はこれを重視する、血液銀行のいろいろな基準はあるにしても、お医者さんのカルテで大体判定するだけにとどまっているが、その盲点をついて子供たちに血を売らせるという悪魔がここにいるという場合に、血液銀行等においてもこういう事実を、最小限度に妨ぎ、そうして青少年たちをこのような被害から守るために、単に医者のカルテだけではなくて、もう一段これについて何か監督のできるような方法というものが講じられなければならないように思います。
 これは今直ちにどうしろということを私は申し上げるつもりはございませんが、これは一つ考えていただかなければならない。年端もいかない家出少年を、法の盲点をついて血を売らせて、そうして生きているという悪どい者から少年を守るために、単に貧血をしない程度に健康を守る程度だけではなくて、この社会悪をどういうふうにして血液銀行としても防いでいかれるかということについて、もうちょっと研究願いたいと思うので、きょうあなたにおでまし願ったわけです。
#29
○説明員(中原竜之助君) 私ども今の血液銀行につきましては、いろいろのここに社会問題を控えておるということは重々身に感じておるわけです。何とかしてこういうものをなくして、そうしてその血液というものが一般のいわゆる病人の命を救うために供せられるように、こういうふうに今後ともできるだけない知恵をしぼりまして努力したい、こう考えております。
#30
○高田なほ子君 警察の方にお尋ねいたしますが、これは一つの事態を一新聞が取り上げたにしかすぎない、見方によってはほんとうにこれは新聞の片すみをちょっと拝借した程度のものであるかもしれない。しかし、どうもこの血液銀行の実態というものは、坂本議員が潜行して調べられたところによると、かなりやはりひどいものらしい。これは当局からの御説明では、別に監督機関もないらしい。だからそれを適切に運営していくことは、今直ちにできないかもしれないけれども、どうですか、血液銀行のまわりに吸血鬼がうろついておる。そうしてこういう所に来た少年たちをうまいこと言ってさっさとやっているらしいが、ときには血液銀行の現場あたりに警察官もたまには見回りに行かれて、この被害を最小限度に防ぐくらいの親切ができそうな気もしますが、この点はどうですか。
#31
○政府委員(木村行蔵君) 坂本先生が専門家の立場でごらんいただいてそういう事実があるとすれば憂うべきことでありますので、よくいろいろ実態調査をしまして、中には、そういう血液銀行でいかがわしい者が、あるいは情報として出ると思います。そうすればそういう今おっしゃった点についても方法としては考えられる。
#32
○高田なほ子君 あまりに警察権が拡大されて、どこにもここにも警察官がぶらぶらすることを、実は私好まないのです。好まないのですけれども、現実にこういう問題があるとすれば、少なくとも血液銀行の出入りの状況等については、一度やはり目を開いてごらんになる必要があるのではないかと思う。ここらあたりはあまり警察は関与されておらなかったと思いますから、一つここらあたりにも、一応盲点として、を向けられる必要があるのではないかと思う。中までお入りになってどうこうなさることはいかがかと私は考えられますから、これの出入りの状況等については、ここしばらくごらんになる必要があるのではないか。同町に厚生当局でも、年令の制限があるわけなんですから、この年令の制限が実施できるように、実現できるように、特段の一つ考慮を払っていただきたいと思いますが、血液銀行に対する監督権はどこが持っていらっしゃいますか。
#33
○説明員(中原竜之助君) 都道府県、それから厚生省が持っております。
#34
○高田なほ子君 厚生省の何課が具体的にどういう監督権をお持ちになっておりますか。
#35
○説明員(中原竜之助君) これはいわゆる薬事監視員としての監督権でございます。
#36
○高田なほ子君 それでは医者のカルテが正しいか正しくないかということを書面検査するだけで、今問題になっている少年たちを守るための監督椎というものは具体的にはないわけですね。
#37
○説明員(中原竜之助君) これは、そこの血液銀行の岩がどうしておるかということについていろいろ開きただし、調べることはできると思います。
#38
○高田なほ子君 それ以上ちょっとお伺いするのもやはりお門違いのような気がする。厚生省ということになれば、やはり公衆の保健衛生というところに主眼を置いていかれるわけです。そのことのために供血する人が貧血しないように、あるいは十六歳未満の子供はこれはいけないとかいうことはあるかもしれない。十六歳未満の少年が血を売るという事態になったときに、これを監督権をもって制限をするような措置を講ぜよといっても、これはいささか無理があるように思いますが、せめて十六歳の年令制限ということが実施されるように、監督庁にある方は、この事件を契機にして、当局に対しても注意の指示くらいはなさるべきではないかと思う。御注意の指示くらいはお出しになることができるのではないか、この点どうですか。
#39
○説明員(中原竜之助君) 努めたいと思います。
#40
○高田なほ子君 努力するということと、なさるということはだいぶニュアンスが違いますけれども、あなたの権限でお答えになれませんか、この委員会で。
#41
○説明員(中原竜之助君) 注意をいたすことはできます。
#42
○高田なほ子君 非常に消極的な方法きり私も今見出すことができないのですが、ぜひ一つ、これは当局の監督椛という内容に含まれる問題だろうと思いますから、遠慮なさらずに、少年たちが悪魔の被害にかかるのを防ぐためにも協力をしていただきたいわけです。せひこのことはさっそくに実行していた、だきたい。
#43
○後藤義隆君 ちょっと関連して。今の十六歳未満の者から採血することはできないというのは、何できまっておるのですか。
#44
○説明員(中原竜之助君) これは採血及び供血あっせん業取締法施行規則第八条にございます。
#45
○後藤義隆君 それは十六歳でなしに、未成年者ということに引き上げるわけにはいかないのですか。
#46
○説明員(中原竜之助君) この問題は、おもに健康上の問題から大体できておりまして、これがいわゆる売血であるかあるいはそうでなくて一般に輸血のために血液を出すという問題であるかという問題、いろいろございますんれども、要は、血液を出すことによって身体上の障害を起こさないということが主眼になってきめられておりますので、私どもいわゆるほかの方面からの問題になって参りますと、今ここで私としてはどうというふうに申し上げられないと思います。
#47
○後藤義隆君 しかし十六歳ということでもって一広制限してあると、世間には、十六歳以上の者なら当然差しつかえないような感じを与えますかね。ところが未成年者が血を売るというようなふうなことは、人道上からいってもあまり好ましいことじゃないと思うのですがね。健康上だけのことではなくて、その他の意思決定をすることについて十分な能力を持たない者が、自分勝手に行って血液を売るということは好ましいことではないが、それを何とかして未成年者はいけないというふうに引き上げることはできぬでしょうかね、あなたの方の考えでは。それで、むしろそういう十六歳未満というふうなことを、もう全部のけてしまう、そうして何歳以下の者はいけないとかいうようなことは、ほかの機関でそれはきめることにして……。
#48
○説明員(中原竜之助君) この問題は検討いたしたいと思います。
#49
○後藤義隆君 その点についてちょっと竹内刑事局長にお聞きしますが、未成年者、ことにまた十六歳未満が、かりに十五歳の者でも勝手に行って血を売るようなふうな場合に、買い受けても差しつかえありませんか、刑事問題として。年令的に何か刑事問題として差しつかえないのですか。それを買い受けて採血することは、ある一面からいったら傷害みたようなことになるのですか、未成年者から血を買う、また、十六歳という制限がしてあるらしいんですがね、ところが十六歳以上の者はどうか、十六歳未満の者はどうかときめてある、十六歳ということのそういう規則で刑事責任を排除するだけのそこに効力があるのですか、どうですか。
#50
○政府委員(竹内壽平君) ただいまお尋ねの点でございますが、刑罰法令の観点から見ますと、行政上の行為として制限をすることは、これはまた行政目的に沿って幾多の法律にあり得ると思いますが、刑罰という観点からしますと、問題は犯罪能力、意思能力、責任能力、そういう観点からいたしますと、刑法は、御承知のように十四才以上をもって刑事責任能力に入っておるという立場をとっておりますので、自傷行為になるわけでございますが、みずから傷をつけるということについて責任がない年令ではない、十六才という人たちですね。なお、十六才は御承知のように、少年法で刑事責任についての制約、つまり家庭裁判所に送致をした場合、逆送を許さないというような制約もありますが、今の責任能力という点から申しますと、責任能力なしというふうな解釈を入れるような刑罰法規はちょっと見当たらないように思います。
#51
○高田なほ子君 今の問題で、ちょっとまた私も疑問が出てきたので、なるほど刑事局長のおっしゃるように、責任能力の問題についてはそういうことになるかもしれません。しかし労働基準法等によれば、年少者の労働というものを極度に注意をして、慎重に親切に取り扱っているわけです。労働基準法では、年少者を使う場合には、十八才未満の場合は戸籍証明書もなければならない。また両親の同意がなければならない。おまけに就学の便もこれに与えるような証明がなければならないというように、十八才未満の者については、労働自体についても、それだけの保護がされているわけなんです。ですから自傷行為についての刑罰の責任能力についてはそうかもしれませんが、子供を保護するというような建前から考えたときに、労働基準法との関連で、今、後藤委員から御発言があったようなことは、将来検討されてもよいのではないかという気もするわけなんです。そういう気持もするわけなんです。ですから刑罰との関係を年少者の保護という面から考えた場合に――ちょっとお門違いになりますけれども――保護という面から考えたときに、法律というものは単に人を取り締まるだけでなくて、保護するためにこうなければならないということになれば、法律的にも保護するという建前から、この十六才という年令制限をむしろ十八才くらいまでに引き上げる方が、あるいはそれ以上に引き上げることが妥当ではないかという説も成り立つような気もするわけです。この点は、御意見を承るにとどまるかもしれませんが、どうでしょう。
#52
○政府委員(竹内壽平君) 刑事責任の点は先ほどお答え申し上げた通りでございますが、その際に申し上げましたように、行政目的に従いまして制約をつけますことは、今先生から御指摘のように労働問題につきましては、十八才というところでいろろいろな条件を付することによって、その労働が合理的になされるように、そうして反面において年少者の保護をはかるように規制されておるわけでございます。この血の問題につきましても、同じような行政的な保護措置を講じますことは考えられてしかるべきことだと思うのでございます。で、今十八才までに引き上げてはどうかという、これにつきまして十分責任をもってお答えできないのでございますけれども、厚生省当局が考えておられますように、健康上の点から言えば、十六才以下は健康上疑問があるが、それ以上ならばいいというお考えも一つありましょうし、あるいはまたフレッシュな、新鮮な血液というような意味で、年寄りよりも若い方がいいというような考え方もあるかもしれませんが、その辺のことは科学的に見きわめませんと、私どもが、単に法律を執行するものの立場でのみ解釈はできませんけれども、その他の、少年保護の労働立法その他から見ますると、今言ったような吸血鬼も伴うような盲点があるわけでございますので、親の証明書なりあるいは的確な証明書を付加して、そして医者がそれの健康的な立場から判断して、カルテを作って血を買うというような処置をとることも、きわめて合理的な方法だと思うわけであります。
  〔理事大川光三君退席、委員長着
  席〕
#53
○高田なほ子君 まあ今のは、これは一つの研究問題として厚生省の方でも一つ御研究いただきたい、こう考えます。血液の問題はいろいろあと問題もありますから、このくらいにとどめたいと思います。次に、実はきようは労働省の方から少し責任のある方に出席をしていただいて、この前足りなかった問題を続けたかったのですが、きょうは御出席いただけないで非常に残念に思うところですが、せっかく婦人少年局長の谷野さんもお見えになっておられますから、これは問題が少しですから、先に御質問を申し上げてみたいと思います。
 先般婦人少年、特に少年を守るために格段の努力をされているお話しが開陳されたわけですが、婦人少年局の調査員、この調査員の権限というのは、どういうような権限をお持ちになっておるか。つまり、労働茶準監督官のような、司法警察官に匹敵するような権限をお持ちになっておるものなのか、それが一つと、それから調査員の現員、現在いらっしゃる員数はどのくらいあるのか。また一説によると、調査員が調査をなさる場合に、なかんずく風俗営業等に関する調査については、塩をぶっかけたりするような悪らつな、業者ではないけれども悪らつな人物もおって、なかなか調査員の仕事は苦労が絶えないということも一説には伺っておるわけです。最近十五才未満の少女等を客席にはべらせて、あくどい金もうけをしておるような事態があがってくれば、相当この調査員の仕事も重要な役割を持ってくるように考えられますので、この際、以上御質問申し上げた三点についてお答えをいただきたいと思うわけです。
#54
○政府委員(谷野せつ君) 婦人少年局の調査員制度は労働基準法の中にきめられておる制度でございますが、これは労働芸準法の施行に対して、婦人少年局長が勧告、援助を行ないます必要上、基準法の施行に伴う労働条件、その他の調査をするために調査員が設けられておるわけでございます。この調査員の権限につきましては、労働基準監督官が行ないます臨検、調査と同じような権限を持っているのでございますが、司法警察権の方は監督官だけに与えられているわけでございます。従いまして、労働条件について調査をいたしました結果、婦人少年局長に報告をするという責任があるわけでございます。現在この調査員は、地方の婦人少年局の室長に調査員証を与えておるのでございます。従いまして、四十六名調査員が設けられておるわけでございます。なお、この調査員が事業場を臨検、調査をいたしまするような場合に、婦人少年局の人員の構成上非常に地方の室が、婦人が少ないものでございますから、本省の平常のいわゆるこの臨検、調査のみではなく、ただの個別調査などの調査もこの調査員がいたしておりますために、非常に調査事務がたくさんございまして、この臨検、調査のためにはあまり十分にその能力が発揮されるだけの実力になっていないことを私といたしましては大へん残念に思うわけでございます。しかし私どもの調査員は全部女性でございますので、やはり一般の風潮から、今日のように男女同権になりましたとは申しましても、やはり調査、などの場合に、社会通念上、帳簿の臨検その他に一向差しつかえがあるわけではありませんが、やはりいろいろな社会的な威圧などを受ける場合がたまにはございまして、困難を感ずるようなこともございます。しかしそれにもかかわらず、私の方の室員は非常によく調査をしてこの機能が十分進められるようにやってもらっているわけでございます。私どもといたしましては、調査機能をもっと進めるようにいたしたいと考えております。
#55
○高田なほ子君 婦人少年室長というのは、法律で室長の職務内容というものはちゃんと書いてあるわけです。その室長がまた今言うような調査員としての兼任をしているというこういう実情、しかも加えて四十六名というこの少ない数で、最近のなかんずく風俗営業のでたらめな営業、年少者を害するような業態が各所に見られるときに、大へん人数も少なく気の毒な状態でございます。このことは要求する方が大へん無理であることは百も承知であって、これはまあどんどん機構を拡大するようにわれわれ国会としても考えていかなければならないところだと存じます。ただ一つ、風俗営業等で婦人の深夜営業等は一応禁止されているけれども、しかし現状ではそんなのは空吹く風である。こんなようなことを実際にやはりお調べいただいて、法を守るようなことを業者にしていただくためには、婦人少年調査官の活動というものは大いに期待されなければなりませんが、今言うように塩を、ぶっかけたり、いやがらせに妨害するというようなことも実際あるように私は地方で聞いております。今局長も具体的にはおっしゃらなかったけれども、かなり困難のあることは言外に汲み取ることができるわけです。こういう場合に、調査官は風俗営業法の四条で善良の風俗を害するというようなこういうような解釈を刑事局長、少しこれは解釈を拡大して、調査に行った者に塩をぶっかけて帳簿も出さないというようなそういう業者に対しては、営業取り消しの条件を備えたものとしておきゅうをすえることも必要ではないかと、こういうことは法解釈としてできますでしょうか。
#56
○説明員(綱井輝夫君) 風俗営業には御承知の通り行政処分等、第四条で規定が定められておるわけでございますが、御指摘のように対象のいかんによって、善良な風俗を害する、この法律でなく他の法令に違反して、その結果善良な風俗を害するおそれがあるというような場合には行政処分はできるわけでございますから、それに該当する場合もときにはあろうかと思います。さらにまた職権を持ったそういった公務員の必要な調査に対して、調査を妨害するというような行為があれば、おそらくそれぞれの法令においてその違反に対する罰則が定められておるはずでございます。その場合御指摘のようにすべて行政処分の対象になるかどうかということは研究の余地があろうかと思いますが、しかし、なる場合もあろうかとそのように解釈いたします。
#57
○高田なほ子君 どうも当局は、キャバレーとかバーなんというものに手ぬるいですよ。やり口が私は非常に手ぬるいと思うのです。これから手ぬるいところはあと質問していきますが、婦人少年局の調査官が調査に行く、そうすると、うるさいものだから塩をぶっかけて帰してしまう。こういうような暴力的な行為というものは、どんどんあげていく必要がある。単に業態そのものだけあげるのではなくて、調査官に対して塩をかけることは何も傷害にならないし、暴行になりませんよ。ならないからといって、そういうことが放置されているということ自体が私はまずいと思う。婦人の調査官だから、彼らはばかにしてそういうことをやる。そういう場合には一つ大いに協力をして、塩をかけたぐらいのことでなんだというようなことではなくて、これに対してはやはりきびしい、きぜんとした態度で婦人調査官の活動というものを援護するようなことをやってもらうというのが私の意見なんですよ。できますね、そういうことは。
#58
○政府委員(木村行蔵君) 婦人少年室の調査員が正当な権限に基づいてやることでありますので、これは当然関係行政庁といたしましては、警察の力におきましても、そういう場合については連絡を密にして正当な権限が行使できるように協力をいたすべきだと私は思います。
#59
○高田なほ子君 谷野局長に御要望申し上げますが、とかくまだまだ婦人の調査官の活動は人数が足りないところへもってきて、今のような悪い条件も加わっておるわけです。どうかこのような不逞な業者の圧迫に対しては警察と十分に御連絡下さいまして、善良な風俗を害する行為に当たらなくとも、こういうところからてきぱきとやっていただけるように十分な御連絡を取っていただくように御要望申し上げます。それで婦人少年局長に対する御要望、質問はこの程度にいたします。いかがでしょうか。
#60
○政府委員(谷野せつ君) 年少労働者の保護につきましても、また風俗営業に働く婦人の保護につきまして、従来から婦人少年局といたしましては、警察と非常に緊密な連絡を取りまして、警察の御援助をいただきながら、法律の施行ばかりではなく、困っている人の世話にも婦人少年室の職員が非常に働いて参っているわけでございます。今後も一そう警察の御援助をいただきながら私どもの仕事を遂行するために努力をして参りたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
#61
○高田なほ子君 次に移りたいと思いますが、この間の質問の警察側の結論は、未成年者が酒席にはべったり、それからそのことのために社会悪を醸成するようないろいろの問題が派生しているが、問題は少女の側にもある、それから業者の側にもある、こういうような点が指摘されたわけなんですね。そこで業者側について少しお尋ねをしたいのですが、厚生省の方から聞くと、城戸環境衛生課長がおいでになっておりますから、業者側の問題を少しここでお齢尋ねしておきたいと思うのです。
 厚生省は業者側の経営が円滑にいくように、また消費者側の立場も守るようにというようなことで先般いろいろ問題がありましたけれども、環衛法が通ったわけですね。その環衛法に基づいて、業者側に対しては、その業態等については指導されることになっておりますが、先般の当委員会で取り上げて指摘された点は、特に風俗営業に関する業者は、十五才未満の子供を使うということは、これはいけないということを知っておっても、知っておりながら、あるいはまた労働基準法を知っておりながら、児童福祉法のあることを知っておりながら、なおかつ酒席にはべらせるようなことをしている。にせの年令を言われても知りながら平気でこれを使っている。こういうような実態。環衛法に基づいて厚生省側はこれに対する指導ができることになっておるわけでありますが、風俗営業に関する環衛法による指導というのはどういうような指導を今一体してきておるのか、この点を一つ聞きたい。
#62
○説明員(城戸茂夫君) ただいま御指摘の点でございますが、御指摘のように環境衛生適正化法は三十二年九月から施行になったわけでございまして、
これに基づきまして現在中央の適正化基準が理容、美容、クリーニング及び興行場につきましてすでにでき上がっているわけでございます。この中央の連合会の申請に基づきまする各業界ごとの適正化基準に基づきまして、都道府県の段階で適正化基準ができるわけでございます。現在、ただいま申し上げましたような中央の基準ができましたもののうち弐界を除きます三業態につきまして規程ができて参って、公取との協議を経ました上で都道府県知事によって認可されていく形でございます。従いまして、今御指摘になりましたようないわゆる風俗営業でカバーされております領域の部分につきまして一は、これには十七ほど業種がございますが、まだ基準ができ上がっていないという状況でございます。ただ、今御指摘になりました中で風紀の問題と申しますか、そういう問題と若干関係がございますものといたしましては、興行場の適正化基準がございまして、この興行場の適正化基準におきましては、青少年の映画との関係における問題として自主規制を作りまして、一つとしましては、文部省それから中央児童福祉審議会、映倫管理委員会が青少年向けとして推薦した映画と、映倫管理委員会等が非少年向きとして指定したいわゆる成人映画との併映をしない。それから窓口の見やすい所に組合が定める掲示を掲げないで、いわゆる成人映画を上映しない。それから成人映画を上映する場合には十八才未満の者を入場させないこと、こういうこと及び映倫の審査に合格していない映画を一般興行場として原則として上映しない、こういうような事項を入れております。ただいまの段階ではそういうような状況になっております。
#63
○高田なほ子君 なお、映画の方では今あなたのおっしゃったことがありますが、問題にしているのは風俗営業の問題、お話のようにまだ十分基準等についてもきめられていないというわけでありますが、ただしかし、厚生大臣は常業方法の制限等について命令する権限を持っている、環衛法ではそういう権限を厚生大臣は持っているわけです。ですから、風俗常業等に対する基準がまだできておらないと言われるけれども、この間の警察庁からのお話によると、まだ年端もいかない少女たちを酒席にはべらせるというような傾向がだんだんとふえてきている、五割増しのようにふえてきている。こういうようなときでありますから、営業方法の内容になるわけです。営業方法の制限問題については当然これは厚生大臣が一つの権限を持っているわけでございますから、環境衛生課長はあなたの職責においてこの風俗営業等についてこのことは制限をしなければならないというような事実をお認めになった場合には、大臣にも御相談をされて、今言うようなふらちな業態を防ぐような努力をしていただかなければならないと考えるのです。業者はなかなかそういうことをきつくきめるとめんどうくさいものだから、きかないでずるずるべったりに持っていくようなおそれもなきにしもあらず、だから、一方厚生省は先に手を打って、十五才未満の者は必ず年令証明書を見なければ雇っちゃいけないとか、こういうようなことを指示されて、酒席に少女をはべらせて、そうしてあくどいもうけをするような業者を命令でもってとめていかなければならない、こういうふうに考えておりますが、あなたの方では風俗営業の業態等については相当やはりお調べになっているのではないかと思いますが、その辺はどうですか。
#64
○説明員(城戸茂夫君) ただいま御指摘になりました中で、厚生大臣がそういうような風俗営業を含めましての環境衛生関係営業につきまして、営業方法等について命令の権限があるということでございますが、この点は実はこの環境衛生過正化法は組合の行ないます自主規制を定めた法律でございまして、自主規制でどうしても効果をあげ得ない場合に、ある条件のもとに厚生大臣は規制命令を出し得るという権限を与えているわけでございます。ただいま申し上げましたように、御指摘のような業種につきましては現在のところ中央の適正化基準も出ておりませんし、また適正化規程ももちろんできていないという状況でございますので、そういう意味合いにおきまして、営業方法を中身としました規制命令を出すということは、現在のところ全然考えられないわけでございます。ただ、今御指摘のようないろいろな問題があります場合に、それをはたしてそれでは適正化規程、あるいはその基準となります適正化基準の中身に取り入れてくることができるかどうか、あるいはそういう意味におきましては私どもとしてどういう指導をするか、こういう問題として今御指摘の点は。ポイントがあるわけでございますが、その点につきましては、この法律の目的がいわゆる業界の過当競争によりまして衛生措置を阻害され、あるいは阻害されるおそれがあるということにこの法の目的はしぼられているわけでございますから、そういう法律により与えられました目的に照らしまして、具体的な業界の実態を照らし合わせまして、はたしてそれを自主規制の形として、取り上げることが適当かどうかということがきめられるべきものだと思います。ただその際今の申し上げました映画の自主規制におきましては、いわゆるこういうような青少年を対象として、どういうような判断の定義をするかということは、いわば法律に何ら定めのない領域でございますが、ただいまの青少年の保護につきましては、労働基準法によりまして十八才未満、あるいは十五才未満というように、それぞれ保護の方法が定められているわけでございます。それとの関連も検討する必要があるかと存ずるわけでございます。
#65
○高田なほ子君 あのね、衛生的な方法だけを考えてこの法律はきめられたわけじゃもちろんないです。やはり公共の福祉を守るという建前もこの法律の裏にある。だから映画についての適正基準というものも自主的にお作りになっているわけです。それに対する監督権は厚生省がお持ちになったいらっしゃる。こうなってくれば、風俗営業の業態の中で児童福祉法に禁じられているようなことが現に平気でやられているということは、これはやはり衛生だけではなく、営業方法という広範な解釈をして、そして厚生省が未然に指導をされるということは、これはできるはずなんです。しょうと思えば幾らでもできるはずなんです。ですから営業方法というものを単に衛生関係だというふうにこれを狭く解釈なさるのではなくて、児童福祉法の関連においても風俗営業等は大へん問題のあるところなんですから、少し解釈を広げられて、この営業方法等については特に指導をなさる必要がある、こういうふうに私どもは考えているわけですが、この点はどうですか、
#66
○説明員(城戸茂夫君) ただいま御指摘になりました点でございますが、この環境衛生適正化法は目的としてはあくまで過当競争による衛生措置の阻害ということが目的になっているわけでございます。ただその過当競争のあり方としましていろんな形が存在するわけでございまして、それを過当競争、衛生措置阻害の事実との結びつきを具体的な業界の実態に照らしまして、映画の場合はああいうような三つの条件に該当する行為をさせないというようなこと、あるいは映倫の審査に合格しない映画を一般興行用として上映しないということをきめたわけでございます。従って私どもの考えといたしましては、衛生措置阻害の事実に連なる過当競争の問題と関連がない事項につきましては、これは環衛法の適用外のものでございますが、それに関連する範囲におきましては、ただいま御指摘のような点も十分に考慮して、業界からの申請がございますれば中央の審議会に諮問いたしまして、審議される。それでまたその答申を得ましたものにつきまして厚生大臣が認可し適正化規程を作る、こういう形になるわけでございます。
#67
○高田なほ子君 二、三の問答ではっきりしたことは、環衛法では公衆衛生に関する以外の問題についてはあまり熱意を持たないことが大体わかってきた。そうなってくると、一体この風俗営業がせっかく組織化されて、衛生の点ではある程度それはよくなるかもしれませんけれども、それと呼応しながら、社会の、公共のために役立つ組織でなければならないのに、これは単にその衛生の面での過当競争を防ぐためのものであるというようなことでは、風俗営業の組織を通して、その組織に対して、厚生大臣がその業務内容が正しく行なわれるような、もちろん衛生もそうだけれども、公共の福祉を阻害するような行為をしてはならないというようなことまでも指導をなさるということは、これは何だかむずかしいのじゃないかという気がしてきた、あなたの御答弁によると。それでは過当競争ということになると、最近きわどい広告なんかをやたらに使っておりますが、環衛法並びに厚生育ではこのきわどい広告なんかについてはこれは何も規制できませんか。これは業態に入りませんか。
#68
○説明員(城戸茂夫君) ただいま先生から御指摘がございました点でございますが、私が申し上げておりますのは、この環衛法の立法の趣旨が過当競争によりまして衛生措置を阻害することがないようにという趣旨でございまして、その過当競争のあり方としていろんな形があるわけでございまして、そのあり方がどういうものを私どもば岡、趣とし、どういうものは私どもは問題としないという趣旨ではございませんで、それが業界の過当競争につながり、それがその過当競争の結果衛生措置が阻害されるという因果関係が認められる限りにおきましては、私どもできるかぎりただいま御指摘のような公共福祉と申しますか、そういう線に沿って運営いたしていけると思うのでございます。ただ私が申し上げましたのは、こういう過当競争の問題とそれから衛生措置阻害の問題がつながらないところにおきましては、これは環衛法によりまして調整規程の内容として料金あるいは業務方法の規制ということをやっておりますが、その業務方法の中で取り上げていくということはできないだろうということを申し上げたわけでございます。
#69
○高田なほ子君 料金等についてはやはり規制をされておりますか。
#70
○説明員(城戸茂夫君) 料金につきましては、さきに申し上げました四つの業界の中で、美容業、理容業及びクリーニング業につきましては中央の基準もできまして、規程のできておる業界、あるいはこれから作っていく業界もある状況でございますが、興行場につきましては、当初営業方法だけの中央の基準ができまして、それに基づきまして営業方法、だけを含みます適正化親和が愛知、東京で認可され、愛媛県でさらに公取との協議もつけまして認可の直前にある状況でございます。ただ料金につきましては、現在さらに連合会からの申請に基づきまして料金を含めまして適正化基準を作るように、すでにあります適正化基準の改正が諮問され、審議されている段階でございます。
#71
○高田なほ子君 連合会からの申請に基づくだけではなく、営業方法自体についての制限というものを厚生大臣はつけることができる権限があるわけなんです。連合会からの申請といえば、連合会の都合のいいことばかり言うんじゃありませんか。それを規制するために厚生大臣は営業方法の制限を命令で定めることができるようになっている。
#72
○説明員(城戸茂夫君) ただいま御指摘の点でございますが、この法律はあくまでも業界の自主規制を精神としましたものでございまして、その自主規制で十分目的を達し得ません限られた場合におきまして、この法律の五十七条で組合からの申し出に基づきまして規制命令を発する、こういうような建前になっておりまして、従って自主規制の段階を飛び越えまして、命令するということは許されませんし、またそれから組合の申し出に基づきまして初めて規制命令を出す、こういう制度の立て方になっているわけでございます。
#73
○高田なほ子君 組合の中から違反者を出した場合には解散命令を出せる、しかしその営業の中身がきわめて不当であるという場合に、厚生大臣は組合からやるまでは、べらんとして見ておっていいという、そういう法律の建前ではないはずです。
#74
○説明員(城戸茂夫君) ただいま私が申し上げました一般的な規制命令等の関係におきましては、申し上げましたようにそういうような制度の仕組みになっているわけでございます。ただ適正化規程の内容は、たとえば必要最小限度の規制の範囲を越えるとか、あるいは利用者、消費者の利益を不当に害するとか、そういうようないろいろな条件に該当するというような場合には、組合に対して厚生大臣が変更の命令あるいは認可の取り消しがでるという権限がございます。一般的に適正化規程の中身として認可しましたところの事項につきましては、あくまで組合の自主的運営によってやっていって、それがどうしても自主規制でやれないという特定条件のことにおいてのみ厚生大臣が規制命令を出し得る権限を持っている、こういう法律の立て方でございます。
#75
○高田なほ子君 アウトサイダーについてはどうですか。
#76
○説明員(城戸茂夫君) ただいま申し上げました規制命令というのは、そのアウトサイダーを含めました業界の全員に対します命令でございます。
#77
○高田なほ子君 最近キャバレーとか、バーとか、ナイトクラブではテーブル料というものを取っている、そのほかに特定のきれいな女の子に名ざしをすると名ざし料というものを取られている。その名ざし料は半分は業者が取って半分はその女給さんに渡す、こ、ういうようなことになっておりますが、これば料金の部類に嘱しますか。環衛法の中でこういうことは問題になったことはありませんか、そういうことは聞いたことはありませんか。
#78
○説明員(城戸茂夫君) 適正化につきましては、ただいま申し上げましたそういう業界につきまして、現在まで全然連合会からの基準の申請も出ておりませんし、連合会そのものもまだできておらないという状況でございますので、そういう形につきまして、現在まで特に私どもの方まで問題として提起されてきた事実はございません。
#79
○高田なほ子君 今言ったようにテーブル料というものが一応上取られている、常識的に取られるようですが、私ども女から見ると、特定の女の子のだれそれさんを呼ぶというと、名ざし料を六百円とか八百円とか取って、そのうちの半分を業者が取っている。このような不当なものに対して厚生省は何にもできないということであったならば、これはずいぶんおかしなものであると思う。これも一つの業態の中に入ると思いますが、おそらく業者からはそういうことをやめたらいいでしょうか、続けたらいいでしょうかなんていう申請はないであろうと思う。そういうところへ行く民族もどうかと思いますが、男の弱点を突いて不当な搾取をしている、この事態に対してもあなたの方は何にもできないのですか。
#80
○説明員(城戸茂夫君) ただいま申し上げましたように、環境衛生適正化法の法律の建前、施行の状況の問題からいたしますと、特に現在の段階では、私どもの行政の一環として続けていくということは、そういう段階ではないと思っております。
#81
○高田なほ子君 それでは具体的に伺いますが、名ざし料というものは賃金制度がらいっても営業の方法からいっても、これは妥当なもの、だというふうにあなたはお考えになりますか。
#82
○説明員(城戸茂夫君) 風俗営業と私どもの行政との関係でございますが、環境衛生営業につきましては、その中の一部が、特殊の形態のものが風俗営業として風俗営業の取り締まりの対象になっているわけでございまして、ただいまのような御指摘の点につきましては、風俗営業の問題として実は問題であるかどうかは別といたしまして、私どもの環境御生関係の特に適正化基準の規定との関係におきまして、そういうものが過当、競争との関係におきまして何らかの形で適正措置阻害の事実と結び付いてくるときに初めて問題になること、だと思います。
#83
○高田なほ子君 その賃金、テーブル料、お名ざし料と衛生というものは何にも関係ないじゃありませんか。そうすると何にもできないということになるじゃありませんか。
#84
○説明員(城戸茂夫君) そういうことでございます。
#85
○高田なほ子君 最近業態の中でもこういうのがあるそうですね、軍隊キャバレーというのがあるそうです。それで軍装の格好をしたのが入口のところにいて、ビールを運んでくるのが下士官の格好できて、すべて軍隊の調子でやって、女給はみんな看護婦だそうです。酔っぱらうと、その看護婦が看護をするというような大へん勇ましいような業態で、過当競争の中に出てくる。しかしこれは衛生と何にも関係がないわけですね。過半競争の中で、これは看護婦なんという名前で看護婦の服装をさせて、看護婦のことをやらせるというのは、ずいぶんおかしなものだと思うのですが、こういうような業態等についても、厚生省の方は何にも衛生と関係がなという理由で、これは、ずっと見逃がしていかれることになるわけですね。
#86
○説明員(城戸茂夫君) 過当競争の結果、適正措置が阻害されるという事態に至りますような意味合いにおきます過当競争の一環としての形態であります以外につきましては、この環境衛生適正化法との関係におきましては、私どもの立場で取り上げていくべき筋合いのものではないと思います。
#87
○高田なほ子君 刑事局長にこういう点をお尋ねいたしますが、過当競争の中で出てくる問題なんです。これは十五才未満の少女を酒席にはべらせるというようなことも、これも過当競争の中から出てくる一つの悲劇なんです。そういうことのほかに、今申し上げたような軍隊キャバレーというようなものが出てきて、女給さんは看護婦の格好をして酔っぱらいを看護するというようなどういう看護をするか知りませんですけれども、広告は広告としてはなはだ人の目をそそるような広告を平気で出されておる。そういう中で判断のない子供たちが刺激されている。こういうものを何とか排除したいという私は熱意を持っておるわけです。しかし厚生省では、衛生関係でなければそういうものは一向対象にもならない、こういうようなことであっては、これは一体国としてどこに、だれがこういうことの責任を持つということになるわけです。どうも私は不敏にしてその責任の所在をつきとめることができませんので、迷っているわけです。こういう点どうですか。
#88
○政府委員(竹内壽平君) ただいま厚生省から御説明がありましたのを聞き、かつ今、条文を私も見ておったわけでございますが、環境衛生適正化法の問題として厚生省のなし得る行政措置というものは、今御説明があったもので、どうも法律を見ておりますと、その域を脱し得ないのではなかろうか。むしろ今高田先生の御心配になっておるような問題は、その中の一部を占めております風俗営業取り締まりの問題であるのじゃなかろうか。そうだといたしますると、各都道府県の条例によりまして、善良な風俗を害する行為を防止するための必要な制限ということによって行政措置を講じていくべきものではないかという感じがいたします。これはあくまで行政措置でございまして、これをめぐりましてあるいは強要罪とかあるいは売春防止法に違反するような問題があるということになりますと、これは警察並びに検察の面において罰則で取り締まっていくという観点で理解をすべき問題ではあるまいかという感じがいたしておるのでございます。
#89
○高田なほ子君 確かに法律的にはそういうことになるだろうと思うのです。しかし国の行政というものは、私はなわ張りではなくて、特に子供を守るためにこうなければならないというようなことであれば、やはりいろいろの機関がそれぞれの方法を講じながら子供を防衛するものを強めていくという建前をとらなきゃならないと思う。なるほど環衛法ではそういう解釈も法律的には成り立つかもしれませんけれども、どうも営業の方法というような中身の中に、社会の福祉という問題も幅を広げて解釈をしていく、こういうようなこともやればやれないこともないような気もするわけです。今までも風俗営業法があって、ほんとうは別に問題は起らないはずなんですが、毎年々々問題が幅広くなってしまって、ますます子供たちがこのことのために被害をこうむるということを非常に私悲しんでおる。そこでこういうしつつこい質問を繰り返してきたのですが、時間の関係もありますから、先に問題を進め、また私もこの点について研究をさせていただくことにいたします。次に、今度は警察の方にお尋ねをしていきたいのですが、キャバレーで検挙した四月の実績があげられましたが、その中で、未成年の者が客席にはべつたというものが四十四人、四十四人の中で三十人の家出人があった、こういう説明でありました。私は家出人という問題でお尋ねしたいのですが、東京都の統計では、三十四年で約七千人の家出人があったと報じられておりますが、この家出人の中で未成年の家出人はどのくらいの率を占められておるのか、しかもその家出人はどういうふうに処理されていっておるものか、これについて数字を一つ説明をしていただきたい。
#90
○説明員(綱井輝夫君) 昨年度における家出人に関する警察活動の概況について御説明申し上げますと、ちょっと手持ちの表には――もう現在わかっておるのでありますが、昨年の上半期のものしか手元にありませんので、それについて申し上げますと、昨年の一月から六月までの間に、警察へ捜査願いが出された家出人の総数は四万二千八百三十八人ということになっておりまして、三十四年度に比べて三%増加しております。また二十八年の同期に比べますと二七%の増加ということになって、逐年増加の傾向にあるということが言えます。その次に、家出人の六四%が青少年であります。二十歳未満のものが四四%、二十歳以上から二十五歳未満が二〇%というふうになっております。家出人の概況はそのようであります。
 警察といたしましては、家出人の保護取り扱い要綱というものを制定いたしまして、これに基づいて家出人の届けがありますれば、心当たりの警察、場合によっては全国に手配いたしまして、それぞれの場所で警戒すると同町に捜索に努める、北見した場合にはすみやかに保護する、そういう手段を講じておるわけであります。
#91
○高田なほ子君 客席にはべる未成年者の中の半分はこの家出人である。それを伺うと、今あげられた数字というものを見まして、何かぞっとするような気がするわけですね。家出人はなかなかお探しになるのも容易でないことがわかりますが、この家出をした者の精神状態というようなことまでもずっとお調べになったデータはございますか。性格異常であるとか、家庭の大へん事情がまずかったとか、社会的の環境からこんなになってきたとかいうような、そういう最近のデータというものはお持ちになっておられますか。
#92
○説明員(綱井輝夫君) 家出へは警察といたしましては保護の対象でございまして、保護して帰る先があればすみやかに帰すというようなことでございますので、綿密な調査というのはいたしておりませんが、一応家出の原因というものについて調べがあるので御報告申し上げますと、これは昨年の上半期の四万二千八百三十八人、これについての調査の結果、家出の原因が家庭関係にあるもの、これが一万四千二百五十八名、学業関係、勉強が非常にできないとか、あるいは上級の学校に行きたくてというようような者が千二百三十三名、事業関係、事業に失敗した、あるいは仕事がいやになったというような関係が五千六百丑十一人、病気の関係、病気で人生を悲観してというのが四千八百九十八人、約五千入、その他が一万六千七百九十八人いわば家出の直接の原因調べではそういう結果になっております。
#93
○高田なほ子君 憎むべきは、これらの家出人が全部が全部とは言いませんけれども、六四%を占める家出青少年をあやつるブローカーというものは、かなり問題だろうと思います。このブローカーの実態というのはお調べになっておられますか。おられましたら、この家出人と対応してあげられた怪しげなブローカーの姿というものを数字的にどういうふうにおつかみになっておられますか、これを伺いたいのです。
#94
○説明員(綱井輝夫君) 家出人をそういう何といいますか、誘拐するといいますか、そういったブローカーの数字というものは直接にはないのでありますが、たとえば上野駅というようなところは、東京でいえば家出人が一番多く出てくるところでございまして、もちんそこには警察官も多数おもむいておりまして、常にその発見と保護に努めておるわけでありますが、しかしまた一方、そういった暴力団ないしいかがわしい仕事に従事しておる者の手先というものが多く俳回しておる。そうして甘言をもって多くの少女あるいはまた少年等を誘って、最初のうちは非常に親切にする、そのうちお前のために金も要ったと、何か一つ働いてくれというようなことで、逐次転落の過程をたどっていくと、そういう事例は多く承知をいたしております。
#95
○高田なほ子君 公安調査庁等では、対象は違うけれども、ずいぶんああいうところには国はお金を使うけれども、そしてまた人員は整備するけれども、実際にこの家出人をあやつるブローカーがあるということを警察はつかみながら、その実態までも押えられないというところに何か欠陥があるんじゃないかという気がする。これはもう商売でやっておるのがずいぶんあるらしいのですね。そういうものはマークされておるのですか。マークすることができないのですか。どういうところにこれはあげることができないという欠陥があるのですか。この点を一つ……。
#96
○説明員(綱井輝夫君) もちろん御指摘のようなそういう不良の徒輩、いわば人間として最も憎むべき存在でありますが、そういう常連と、それをやりそうな人間というものは、警察としても絶えず注目をいたしており、視察をいたしておるわけですが、家出の行為自体が何ら犯罪行為でもないと、それからそういった家出の人たちとそれらの者との間に行なわれる取引、それ自体もやはり直接には犯罪行為になりにくい。もちろん警察といたしましては、常時監督を厳重にし、それらの事前の予防なり、あるいはその者の手から引き離すという努力はいたしておるわけでありますが、いずれの場合にも、法律だけを申しますと、本人が拒んだ場合は保護できないというような事情もあるわけです。多くはそういった警察官の目を盗んでそういうことが行なわれておる。警察としては決してそういった努力をなおざりにいたしておるとか、あるいは監視を十分やっていないというのではございません。
#97
○高田なほ子君 このブローカーは、そのときの現象ではちっとも犯罪行為ではないのだからあげることはなかなかそれはむずかしい点もあるでしょう。家出そのものも犯罪行為ではないからもちろんお説の通りですけれども、とにかく少年少女がどういう事情か家を出てきて、そのブローカーにあやつられて転落していくという、この道筋を考えるときに、ブローカーというのは社会悪なんだ、悪党なんだと、これはちょっときめつけ方がひどいですが、そういう社会悪をやることが、平気であるということに対して、やはりうんと規制するような方法というものが研究されなければならないのじゃないかという気がいたします。どうもこういうことに対する、社会悪に対する制裁というものが軽過ぎるような気がするのですね。これはまあ刑事局長にもやがてお尋ねしたいことですが、松本事件というのは、あれは判決が下ったようですが、二十四人の小学生から中学生、看護婦の学校の生徒までも強制的に売春をさせた、これも悪魔です。この悪魔たちが、どういう判決を受けておるのか。ここらで一つその実情を報告していただきたい、松本事件の。
#98
○政府委員(竹内壽平君) これは古い事件でございますけれども、大体は御承知いただいておると思いますが、鹿児島市内の旅路松本を経営する松木道生とその妻の松本田鶴枝、そのほか関係者が多数ございますが、実態といたしましては、この二人が主体となりまして洋行の勧誘及び児童福祉法違反の事件を起こしたものでございます。なお御指摘のように、この対象になりました婦女の中には、売春の経験のない者も多数おります。それからなお売春に関連いたしまして贈収賄の事件もございます。それからまた公正証書の原本不実記載詐欺といったような刑法犯も伴っておるのでございまして、なお売春をさせられました、強要させられました者の一人が申したことに憤慨して、その子供をわずかな期間ではありますが一室に監禁したというような事件もございまして、その出町識者の耳目を聳動した事件でございます。その後裁判にかけられまして一審、三権、上告を絡まして、いずれも事件は確定しておるわけでございますが、最も犯状重いと見られております松本本人につきましては、懲役二年、その他の者につきましては、あるいはいずれも懲役刑、無罪になった者も若干ございますが、大部分は有罪でございまして、易くは執行猶予、あるいは罰金等になっておる者もあるわけでございます。
 この別決を見まして、高田先生も痛感されておると思うのでございますが、私も全く同感でございまして、これらの犯罪の評価につきまして、当時今日のような青少年問題がやかましくなっていない時代のこととはいいながら、その処置につきまして、もっと厳粛な態度で臨むべきではなかったかということを私ども痛感いたしておる一人でございます。しかし一方におきまして、この種の事件はあるいは今日でもわれわれの目に触れないところで多数あるんじゃないかと思うのでございまして、この事件が鹿児島の僻遠の地で起こったとはいいながら、とにかくこの実態を徹底的に洗い出した、そして世間の人にこういう事件があるんだということを知らしめたという意味におきましては、非常に効果があった事件だとは考えておりますが、その処置、特に量刑につきましては、もっときびしい態度で検察官も臨むべきであったし、裁判所の刑をもっときびしい態度で臨むべきではなかったかというふうに、今日になりまして反省される事件でございます。
#99
○高田なほ子君 全くこれは私も同感なんです。これは裁判所の判決のことをここであれこれ言う必要はもちろんないと思いますが、全くこのことは遺憾でございますが、一般に青少年の福祉を零した者に対する制裁というのは軽過ぎるんじゃないでしょうか。たとえば十五歳未満の子供を酒席にはべらした児帝福祉法の違反は一年以下の懲役または二万円以下の罰金と、こういうことになっておりますが、この間の委員会でも個々の例をあげて懸命にそれを迫っておられるわけですけれども、これもまた罰金一万円くらいのところでおしまいになってしまうんじゃないか、こういうような気もするわけですけれども、もう少しこれは法改正等によって児童の福祉を守るというような柿板政策をとる必要があるのではないかという考え方を私持ちますが、にわかに御答弁におなりになれないかもしれませんけれども、意見として私は聞かしておいていただきたい。
#100
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの御意見は私も全く同感でございます。青少年の犯罪原因を探求して参りますと、大部分はその環境に根ざすものが多いことは、今日では何人も否定し得ないところでございますが、その悪い環境の中には、単に映画とか言論とか、いろいろそういうものがよく指摘されるのでございますけれども、われわれの立場からこれを見ますと、この悪い環境の中には、確かに青少年を毒するような、その福祉を害する成人の犯罪、これを見逃すわけにはいかないのでございます。これは少年法に五つの種類の法律が掲げられてございますが、私はそれだけじゃないと思うのでございます。そしてなお青少年の福祉を害する犯罪というふうに見た場合に、形式的にのみ理解すべきではないのであって、実質的に害する犯罪というものは非常にその範囲が広いのでございまして、面接青少年の人権、そういうものに触れる犯罪もございますが、あたかも何の関係もないようなことでありましても、子供の面前で成年なりおとながおくめんもなく軽微な犯罪でございましても、青少年にとっては非常に良心に響くような犯罪が日常茶飯事のごとく行なわれているという、こういう現象についても青少年保護の立場から目を向けて、その取り締まりには今申しましたような観点からもう一回この事件を見直すという心がまえがなければならぬと思うのでございまして、検察の面におきましてもそういう心がまえで事件を検討もし、処置をして参りたいという考えで、実は昨日も私どもの省で全国の少年係検事の会同をいたしまして、大臣の訓示にもその点は触れましたが、私からも詳細その点についての考え方、並びに事件処理の方法といたしまして、そういう点を詳細に指示いたしました次第でございますが、その点は私も深く過去の実績に徴しまして反省をしている点の一つでございます。
#101
○高田なほ子君 小学生のバー勤め問題も浅草で業者の二軒が送検されたことが報道されていますが、これはどうやら営業停止というような処分になるらしいのです。しかし、今日までこれらの悪質な業者の営業停止に関して公開をしてこの聴聞を行なった、こういうような事実を寡聞にして私知らない。大体書類あたりで適当にやっているのではないかという気もするわけです。今まで公開による聴聞を行なって厳重に営業停止の行政措置を講じたというようなことはやっておられるのですか。この点はどうですか。
#102
○政府委員(木村行蔵君) 風俗営業に関しまして行政処分を必要といたします場合には、特に営業の取り消し、あるいは一定期間以上の営業の停止については全部公聴会に、聴聞にかけることになっております。都道府県の公安委員会で聴聞いたしますが、実際は公開でやっておりますけれども、聴聞に当該関係者は参りますけれども、一般の方は見えていないのが実情であります。しかし全部聴聞いたしております。
#103
○高田なほ子君 聴聞の方法等については若干研究する余地があるように考えられますので、この点についても一つ御研究を願いたい。
 それからもう一つ。この小学生のバー勤めのときには、年の偽称ですか、偽称をそのまま受け取って業者がやっておったわけです。ですからこれは虚偽の条件があった場合でも、法律ではこれは罰せられるということになっているわけですが、現在の労働基準法等でも大体五千円以下くらいの罰金にしかならないようですね、労働基準法違反というそういうことは。そうすると五千円以下の罰金を払うならば、若いういういしい娘を使ってもうけた方がよっぽどもうかる。これは五千円以下の罰金なんというのはあまり軽過ぎるのじゃないか、こういう気もするのであります。こういうような悪質な業者が出てきているときには、それに対する制裁というものもしぼってやはり考えていかなければならない点もあるように思うのです。この点については竹内刑事局長から総括的なお話しがありましたが、労働基準法の違反、なかんずく未成年を偽ってこれを勤めさせたというような場合には、法改正までこれは持っていく必要があるのじゃないかという気もしますが、その点についてはどうですか。
#104
○政府委員(竹内壽平君) 刑は必ずしも重い刑が課せられておらないのでございますが、この法律は労働省の所管の法律になっておりますので、たとえ罰則でございましても、私どもの立場から適不適につきまして申し上げることはいかがと存じますけれども、取り締まりをいたします立場の者として考えました場合に、なおこれは法定刑を引き上げる必要もあるんじゃなかろうかという感じもいたしておる次第でございます。
#105
○高田なほ子君 最後に、先ほどの木村局長からのお話で公開聴聞の場合、たいがいあれは営業停止のときにそういう方法をとっておるわけですが、その方法に今問題がある、こういうことでございましたが、公開聴聞の結果、一年以下の体刑に処することもできるわけなんですね。ところが大体は営業の停止、しかも期間を限っての停止という大へん軽い処分なんですね。たまには体刑くらいやって、それで反省を促すというようなこともあってもいいんじゃないかと思うが、私はあまりそういう例を聞かない。大体営業の期間的な停止処分くらいでもってお茶を濁している。これではやはり社会悪は防げないと思うのですね。今後やはりこの一年以下の懲役というような問題についても当局としては相当お考えになってもいいんじゃないかと思います。そうでなければとてもこの過当競争の中で子供たちを守っていくということはむずかしいんじゃないかという気がする。毎年やはり映倫にも触れるし、悪質なブローカーをあげることもできない、情報を知ってもなおかついい加減なもので、業者はもうけるために幾らでも子供を犠牲にする、まかり間違っても二カ月の営業停止で済ます、場合によれば五千円くらいの罰金で済ます。そうじゃなくて、やはり懲役一年という体刑が課せられていくという、社会防衛の見地からこういう刑罰があるんだから、ときにはそういう例も作って、そうして業者の反省を促していく、これでなければ子供を守る建前にはならないような気がします。懲役一年という体刑はあまりないようですが、この点どうですかね。
#106
○政府委員(木村行蔵君) 正直に申し上げて、大体風俗営業違反の者は罰金の場合が多いのでございます。それから営業停止、それから営業の取り消し、こういう行政処分は相当あります。これは業者にとっては相当手痛いものでありまして、これは相当きついおきゅうになりますが、ことにその一年の体刑ということがまあ私手元に資料がありませんから責任をもって正確にお答えできませんが、体刑が全然ないとは言えない。若干あると、私の記憶ではあるという気がいたしますけれども、しかしその数字はきわめて少ないということは申し上げることができると思います。
#107
○高田なほ子君 結論を私申し上げたいのですが、これらの業態と警察のつながりというものが、しばしば指摘されてきたと思います。私もまたその忌まわしいことを信じたいとは思いません。だから警察はこれらの風俗営業の中で子供が阻害されるというような現状が、暴力問題とともに最近の新聞をにぎわしているときに、一そうこれは風俗営業等の取り締まり等について勇気をお持ちになって、悪質なものについてはどんどん規定の刑罰を課して、悪の根源を断ち切っていくというこの勇気こそが必要なときではないかと思う。はなはだ残念ですが、松本事件が二十数名の娘をきずものにして、たった懲役二年、これはもう殺人行為と同じです。それが懲役二年、それと共謀した者ば執行猶予ということで、今や大手を振ってそれらの者はこれからだってまた何やるかわかったものじゃない。まことに残念です。どうか一つ警察当局は風俗営業の違反問題については手きびしく取り締まられて、子供たちを悪の手から守られるように御心配いただくとともに、竹内刑事局長は、せっかくそれらの法規についても御研究のように承りますので、一つ督励をされて、またの機会に私どもも問題を提起したいと思いますので、お力添えをしていただきたいと思います。それだけです。
#108
○委員長(松村秀逸君) 他に御発言はございませんか。――なければ本件に関する本日の質疑はこの程度にとどめます。次回は六月一日午前十時より開会し、政治的暴力行為防止法案及び政治テロ行為処罰法案の審議を行ないます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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