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1960/02/16 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 文教委員会 第5号
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1960/02/16 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 文教委員会 第5号

#1
第038回国会 文教委員会 第5号
昭和三十六年二月十六日(木曜日)
   午前十時三十九分開会
 出席者は左の通り。
   委員長     平林  剛君
   理事
           北畠 教真君
           近藤 鶴代君
           豊瀬 禎一君
   委員
           下條 康麿君
           野本 品吉君
           千葉千代世君
           矢嶋 三義君
           米田  勲君
           常岡 一郎君
           岩間 正男君
  国務大臣
   文 部 大 臣  荒木萬壽夫君
  政府委員
   文部大臣官房会
   計課長      安嶋  彌君
   文部省初等中等
   教育局長     内藤誉三郎君
   文部省大学学術
   局長       小林 行雄君
   文部省管理局長  福田  繁君
  事務局側
   常任委員会専門
   員        工楽 英司君
  ――――――――――
  本日の会議に付した案件
○教育、文化及び学術に関する調査
 (昭和三十六年度文教関係予算に関
 する件)
 (当面の文教政策に関する件)
  ――――――――――
#2
○委員長(平林剛君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 まず、委員長及び理事打合会の経過につき御報告いたします。一昨十四日の理事会で協議いたしました結果、本日は、まず、昭和三十六年度文教関係予算につき質疑を行ない、次いで当面の文教政策に関し調査を進めることに決定いたしました。
 以上、理事会決定の通り、調査を進めたいと思いますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(平林剛君) 御異議ないと認めます。
 それでは、昭和三十六年度文教関係予算を議題といたします。
 質疑のおありの方は順次御発言願います。
#4
○野本品吉君 私は予算関係のことのうち、この間の予算案概要説明の第三にあげられております、教育の機会均等の確保と人材の開発、この問題のうち、主として奨学資金についてお伺いをしたいと思っております。この説明にありますように、「優秀な学徒で経済的に困窮している者に対して国がこれを援助し、その向学の志を全うさせることは、きわめて重要なことであります。このため三十六年度予算案におきましては、特に育英奨学制度の拡充をはかり、特別奨学生の採用数を大幅に増加するとともに大学院にかかる奨学金単価を引き上げることといたしております。なお、沖縄在住の高等学校生徒に対しましても」云々とありますが、この前段のことについてお伺いしたいと思っております。予算でこれを見ますというと、先般文部省から提出されました事項別の表の教育の機会均等と人材開発というところに、育英会の事業といたしまして五十三億九千万というのが出ており、これは前年に比較して六億五千七百万円の増ということになっております。そのこまかい内訳もそこに示されておるのでありますが、私はこれでもまだ育英通学の方途は完全ではない、十分ではないと思います。将来ますますこの育英奨学の道を開いて、できるだけ優秀な、しかも経済的に恵まれない若者の向学心を満足させると同時に、それが日本の国の要請しておる、必要を満たすような人材として成長してもらわなければなりませんから、今後もこの制度の拡充発展ということにつきましては大いに期待しておるわけです。この奨学制度に対しまする私どもの希望あるいは期待が大きければ大きいだけに、すぐ私の頭に浮かんできます問題は、奨学金の返還の問題になってくるわけなんです。そこで、すでに新聞その他世論におきましても、奨学金の停滞ということが非常に遺憾なことであるということが論議され、指摘されております。また、文部省でもこの点にすでに着目されて、どうしたらば完全な返還業務が行なわれるかということについていろいろな方法を考えられておることを承知いたしておりますが、それにしても、この問題につきましてこまかくいろんな角度からこれを検討していく必要があると思って、若干の質問を申し上げたいと思うのであります。そこで、私は先般調査室の手をわずらわしまして、この奨学金に関する各種の調査をしてみました。お配りしました資料の最後のページについて私は目を通してみたいと思います。最後の六番目の項目で、各年度に返還を要する年賦額の返還状況調べがございます。そこで、昭和十九年ないし二十六年は九千五百九十五万何ぼということでありますが、当該返還額は、返されましたものが八千五百八十一万何ぼ、返還率は八九・四%、まだ返還されない額が一千万強あるわけでございます。そこで、その数字を年次別に読んで、目を通して参りますというと、私が最も残念に思いますことは、その返還の率が、二十七年度において八三.一%、二十八年が七八・二%、二十九年が七五・四%、三十年が六八%、三十一年が六〇・五%、三十二年が五四・二%、三十三年が四五%、三十四年が三一・七%、これを合計しますというと五一・五%、この数字を見て私どもが見落とすことのできないととは、年ごとに返還の率がきわめて悪くなっている。著しく悪くなっている。もし、この勢いを放任しておくというと、一体どういうことになるであろうかということを考えさせられざるを得ない。今までの要返還額が四十四億五千六百万に対して、返ったものが二十三億三千七百万、五二・五%、二十一億一千八百万というものが未返還額として残されているわけです。このことは、奨学金制度の前途というものは非常に暗い陰が予想されるのでありまして、明るいこの制度の前途は非常に暗いということを私は思わざるを得ない。それだけにこの奨学金の返還問題については、われわれも考え、当局も考え、それから当事者の理解と協力を求めて、これをどうしても百パーセント返還というところまで持っていく努力をしなければならぬと思う。この点について、文部省はすでに集金制度というようなものを考えられておりますが、これらの点についての文部省の大体の考え方、具体的な施策、これからどう進められようとしているのかということについて、一応の御説明をいただきたい。
#5
○政府委員(小林行雄君) 日本育英会の奨学資金の返還についてのお尋ねでございますが、ただいま表を示してのお尋ねでございますが、実はこの表は、これはお尋ねのございましたように、総額といたしましては、四十四億の要返還額に対して、現在までに返されたものが二十三億、従って未返還額が二十一億であって、返還率は五二%ということでございますが、実はその上の方に書いております数字でございますが、三十四年度に返るべきものが十一億に対して、返ったものが三億七千五百万円、従って三十四年度の返還すべき額につきましては、返還率は三一%ということでございますが、三十三年度に返るべきものがすでに四五%返ってきておる。三十二年度に返るべきものについては五四%返ってきている。以下順にずっと上の方に参りまして、昭和二十六年までに返るべきものは約九割が返ってきておる、こういうことでございます。従って、年々返還率が著しく悪くなってきておるということでは実はございませんのでございます。しかし、いずれにいたしましても、ただいまお尋ねのございましたように、私どもも返還率は必ずしもよいとは思っておりません。非常に悪い状況だと思っております。育英資金は御承知のように、返還されたものがさらに再び三たび資金の必要な者に再貸付されていくのでございますから、資金の効率的な運用という面からいたしましても、また奨学援護の本旨からいたしましても、やはり返還の促進を今後大いにはかっていかなければならぬと思っております。従来、大体文書督促というものを主にしてこの返還の督促をやっておったわけでありますが、今後はそれではもちろん足りませんので、先ほどお尋ねの中にもございましたように、本年度から集金制度を始め、来年度におきましては大阪にもこの育英会の支所を作りまして、貸与もいたしますけれども、返還の促進をはかっていきたい。将来はこういった支所を必要な各地に作りまして返還網を整備したいということも実は考えております。また、法的にもこの育英会の返還に関してはまだ整備されてない面がございますので、できればこの国会でこの育英会法の一部改正について御提案申し上げて御審議をいただきたいと考えております。なお、さらに一番根本になりますことは、やはり貸与を始める場合に、学生に対してよくその趣旨をPRしなければいかぬ、趣旨の徹底を従来よりも一そう徹底させるように努めていかなければならぬのじゃないかということを考えておりまして、最近いろいろな集まりにおきましても、大学の関係者にその趣旨を種々説明いたしまして、できるだけそういったこの育英資金の活用、効率的運用ということの面から協力してもらうという態勢をとっておるわけであります。今後この育英資金の返還につきましては、単に育英会のみならず、文部省としても十分努力をして参るつもりでございます。
#6
○野本品吉君 ただいまの御説明で多少私どもの理解の仕方に十分でない点があったようでありますけれども、そこでさらに聞きたいのは、返還の率ですね。傾向として最近ふえておるか、下がっておるか、その点をお尋ねいたします。
#7
○政府委員(小林行雄君) この数年、この二、三年の傾向といたしましては、少しずつでございますが返還の率は上がって参っております。大幅ではございませんけれども、やや上昇しておるという状況でございます。
#8
○野本品吉君 そこで、次にお伺いしたいのは、多少上がっておるということだが、現実にすでに返還の時期が終わったといいますか、経過したもので残っておる金額、それはどれくらいありますか。
#9
○政府委員(小林行雄君) それがこの表に出ておりますように二十一億、もう返還の時期がきておっていまだに返還されておらないのが二十一億という数字でございます。
#10
○野本品吉君 この数字には間違いない。それでさらにお伺いしたいのは、この返還が順調に行なわれたとしたならば、奨学金の貸与、奨学制度の運営の上において人員的にどういういい結果が生まれてくるかと、返還金額が順調に返ってきたとすれば、さらに奨学制度の運用の上においてどういうプラスの面が出るか、その金の効率的な利用。
#11
○政府委員(小林行雄君) 御承知のように、一般の奨学生につきましては、現在、月三千円が最高でございます。従って年間にいたしますと三万六千円の貸与をするわけでございます。それから特別奨学生、特奨制度におきましては高校が三千円であり、これから始めます大学関係におきましては自宅と、そうでない場合と分かれておりますが、最高月七千五百円ということでございます。金額によって差等がございますが、一般特奨三万六千円で計算いたしましても、もしこれが全部一般奨学生に貸与されるものといたしますれば非常に大きな貸与者が今後出るわけでございます。従って、現在の資格条件も相当緩和されてくるということも考えられるわけでございます。
#12
○野本品吉君 ただいまのお話によってもわかるように、この返還金が順調に返ってくれば、現在以上に相当多数の学生に奨学金貸与の便宜が与えられる、また別の角度からいえば、奨学金の額というものをふやすこともできる、こういうことになる。そういうふうに理解してよろしいわけですね。
#13
○政府委員(小林行雄君) はあ。貸与者の数ももちろん大幅にふえることでありましょうし、また場合によっては、この一人当たりの貸与金額をふやすということももちろん考えられるわけでございます。
#14
○野本品吉君 そこで、今までお伺いしたことを総合して、私どもに言えることは、返還金が順調に返らないということ、つまり返さない人があるために、後輩のためのこの奨学制度の便宜受ける機会が著しく奪われておる。問題は私はそこにあると思うので、私がこの問題を一応考えますのはそこにあるわけなんで、そこでどうしたらばそれでは返還が順調に行なわれるかということについてもまたいろいろ考えてみなければならぬと思うのであります。
 そこで、私は幾つか考えてみたんですが、一つは返還能力の問題、返還の能力というもののない者に返せ返せと言ったところで、なかなかそれは返すこともできないので、返還の能力があるかないかということをまず私どもは親切に考えてやる必要があろう。そこで、その一つの項目としてお伺いしておきたいことは、大学在学者といたしまして考える場合に、普通の奨学金を受ける学生は大学の在学年全期間を通じて貸与総額がどれくらいになるかということをまず考えてみたいわけなんです。どれくらいになりますか。
#15
○政府委員(小林行雄君) 一般の貸与の場合は月額三千円ということでございますので、年にいたしますと三万六千円でございます。これを四年間最初からおしまいまで在学の期間中貸与を受けたといたしますと十四万四千円、大体十五万程度でございます。これを現在の状況で言いますと、大体二十年賦程度で返還するという実情でございます。
#16
○野本品吉君 約十五万円の、一応悪くいえば借金を背負って出るわけなんです。そこで、その十五万円をなす方法ですが、月賦あるいは年賦による償還ということがあるわけですが、この月賦償還と年賦償還のどららが多いのですか。
#17
○政府委員(小林行雄君) 現在の育英会の制度といたしましては、大体年賦で返してもらうということにいたしております。月賦ということでありますと、非常に多くの貸与者から一々返還の手続事務等が出てくるわけでございます。従って月賦返還というものは行なっておりません。
#18
○野本品吉君 そうすると、十五万円を最長二十年間で年賦償還する、こういうことになりますね。
#19
○政府委員(小林行雄君) はい。
#20
○野本品吉君 そうすると、年間の返還額というものは、十五万円の二十年だから……。
#21
○政府委員(小林行雄君) 年にいたしますと七千五百円。月割りということをやっておりませんが、月割りにすると大体六百円から七百円という数字になるわけであります。
#22
○野本品吉君 そこで、年間にすると七千五百円程度のものが返せるか返せないかということが問題なんで、それをどう見るかということ。そこで、そういう能力をわれわれが見る場合に、もう一つ非常にこまかい点まで私は親切に考えてやらなければならぬと思って、こういうことを言うのですけれども、奨学金の貸与を受ける学生というものは、その制度の趣旨にもありますように、経済的に恵まれない家庭の子弟である。そこで、経済的に恵まれない家庭の子弟が就職して給与所得というものを得るわけですが、その際に、その恵まれない家庭に対する送金、親元へ金を送るといったようなことが一体どれくらいあるものだろうか、あるかないか、どうですか。
#23
○政府委員(小林行雄君) その辺のところまでは実は私どもまだ資料を持っておりませんが、大体大学を卒業した者の給与につきましては、御承知のように、労働省の方で調査をいたしております。その調査表によりますと、大体最低で、賞与等も入れまして、月々にいたしますと一万円以上の初任給を得ておるという数字が出ておりますので、特に病気その他、あるいは就職できなかったとかいうような場合、あるいは特別な事情で給与もそのレベルまでいってないというような場合には猶予をする、その返還の能力が備わるまで猶予をするということはやっておるわけでございます。
#24
○野本品吉君 もう一つ伺っておきたいことは、卒業の時期と就職の時期のズレの問題ですね。これは卒業後六カ月たってからということでしょう、返還は。それまでに就職しておらない者にとっては、すぐ返せといわれてもこれはなかなか骨の折れることなんですね。そこの辺のことはどうですか。
#25
○政府委員(小林行雄君) ただいまのお尋ねのように、六カ月の猶予期間がございます。六カ月たった後に開始して、それから一年間の間に返還を始めるということになっておりますので、実際始まりますのは一年半後ということになるわけでございます。その間には多くの者が就職できるという見通しでございます。
#26
○野本品吉君 年間七千五百円、月にするというと八百円にならない。七百円前後。これが返せないということになってくるというと、私どもが考えますことは、本人に一体返す意思がないのか、あるいは事務上の返還事務の上において欠陥があるかどっちかだ。あるいはその双方かもしれない。それをどういうふうにお考えですか。
#27
○政府委員(小林行雄君) 私ども率直に申しまして、従来は育英会の仕事といたしまして、比較的温情的に接しておりまして、取り立てるというような意識は比較的少なかったと思います。そのためもありますかどうかわかりませんが、貸与を受けた者の方でも返還の意識が比較的薄い場合も実はあったと思うのでございまして、そういう意味からも、先ほど申しましたように、貸与の始まります際に返還ということを十分意識してもらうように、私どもは趣旨の徹底をはかっていかなければならぬと思うわけでございます。現実に先ほど申しましたように、返還が困難な客観的な事情があるという場合には、これは猶予すべきものと私ども考えます。
#28
○野本品吉君 そこで、要するに、私は七百円前後のものが月々返せないとは思えないので、適当な刺激を与えて、そうして事務的にも適当な処理方法を考えるならば、この返還は相当促進されるだろうと、こう考えているわけですが、そこでその事務の問題ですが、一体これはだれが、どこで、どのように処理することになっているのか。
#29
○政府委員(小林行雄君) 従来は育英会と貸与を受けた返還者との間の契約でございまして、返還計画を立てて、その計画に従って返還をしていく。これは返還者、すなわち貸与を受けた者が返還をしていく建前でございます。この返還計画におくれます場合は、育英会の方で文書督促をするということでやって参ったのでございますが、それだけでは不十分であろうということから、先ほど申しましたような集金制度というようなものを始めまして、とにかくそれぞれの返還者の所在の確認、それから個別に訪問をいたしまして、忘れてもらわないように、返還を意識してもらうように刺激をする。実際、場合によっては、その場で返還のお金を受けてくるということにいたしたわけでございます。
#30
○野本品吉君 そうしますと、当面の返還事務の責任者は育英会ですね、そういうことになりますね。それと文部省との関係はどうなるのですか。
#31
○政府委員(小林行雄君) 文部省は御承知のように予算を年々計上いたしまして、この育英会の貸付金を組む。そうして計画に従って育英会は貸付をするわけでございます。それから返還につきましては、文部大臣が育英会の監督者という立場でございますので、返還の状況について報告を受け、それからできるものについては指導していくという立場にあると思います。
#32
○野本品吉君 そこで、さっきの集金制度の問題ですが、その集金制度というものは育英会の一事務として設けるわけですか、文部省が監督の立場から設けるのですか。どっちなんですか。
#33
○政府委員(小林行雄君) 育英会の制度といたしまして、育英会の職員中に集金に携わる者を定員を取って入れるということにいたしているわけでございます。
#34
○野本品吉君 そうすると、文部省は監督指導の立場にあるだけで、終始一貫してこの返還事務というものは育英会の担当事項である、こういうことですね。
#35
○政府委員(小林行雄君) さようでございます。
#36
○野本品吉君 そこで、私はだんだんこういう傾向になっているときに、育英会からは文部省の方へ、返還事務の現状、あるいはその他の諸件について定期的な報告をすべきであると思うんだが、その間の連絡はどうなっていますか。
#37
○政府委員(小林行雄君) 定期的にどうということでございません。年に一回は当然出てくるわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、私とも月に一度ずつ役員会にも出席をいたしまして、その際各月々の返還の状況について報告を受けるということをやっております。
#38
○野本品吉君 育英会自体としても返還金が完全に返らないことは、育英会の機能停止という結果に最悪の場合にはなるわけですから、従って育英会というものは絶えずこの点について十分注意し努力して、刻々文部省と連絡して進めらるべきだと、私はそう思うんですが、この点についての育英会の努力というか、積極的な熱意というものが従来欠けておったことがこういう結果を生んできたんじゃないかという見方もできないわけじゃないのですが、どうですか、その点。
#39
○政府委員(小林行雄君) 従来育英会の方針としては、もちろん返還の方にも力を注いでおったことは事実でございますが、まあ、私どもから申しますと、必ずしも十分ではなかったように思います。また、制度としても、実は四、五年前までは非常に不備な状況であったと思います。たとえば業務の方法等につきましても、整備されておらなかったように思います。ここ数年かかりまして育英会の業務方法その他につきまして、文部省の方からも積極的に働きかけまして、だんだんと整備をしたわけでございますが、先ほど申しましたように、現状なお私どもはこれで完全という事態に至っておらぬと思いますので、できれば育英会法の一部を改正するということを御提案申し上げまして、この改正法に従って、将来育英会の業務、ことに返還事務につきましては明確にいたしたい、かように考えておるわけでございます。
#40
○野本品吉君 私は、育英会というものはその本来の使命を完全に果たすために、育英会の機構、運営、それからいろいろな事務的な処理等において十分でないように私自身も感じておるわけです。いずれこれは育英会の当局から機構、運営、実際事務がどう処理されておるかということについては、別の機会に育英会の方から私はお伺いしたいと、こう思っております。
 それからもう一つ、返還事務を促進するという立場から私お伺いしたいのは、育英会に対しまして、この学生に奨学資金を貸与してほしいという内申を学校はするわけですね。
#41
○政府委員(小林行雄君) 学校を通じて本人から申請をするということにいたしております。
#42
○野本品吉君 その学校を通ずる場合に、学校の当局というものは、この学生に対しては貸与すべきである、また貸与の諸条件を整えておるというような、そういう意見というか、副申というか、そういうものはつくのでしょう。
#43
○政府委員(小林行雄君) さようでございます。申請がございましたものについて学校で審査をいたしまして、貸与の資格ありと認めた者について、学校から育英会の方へ申請を出してくるということにいたしております。
#44
○野本品吉君 そういうことになれば、自分の学校で勉強する学生のために、学校がこの者に奨学金を貸与してほしいということを言うわけですから、従ってその貸与に関係した学校としては、自分の学校の卒業生の貸与金返還の状況がどうであるかということについては、不断の関心を持つ私は責任があろうと思います。そういう点はどうですか。
#45
○政府委員(小林行雄君) 理論上、私も野本先生のおっしゃる通りだと思います。しかし、従来そういった面では、学校側でそういった雰囲気が比較的少なかったのではなかろうかということも考えられます。従って、私どもといたしましては、学校へ入学いたしまして、貸与金をこれから受けるという時期、いわゆる新入学の時期と、それから卒業いたします、いよいよこれから返還が始まりますという時期において、学校当局者が、貸与を受けた者に対して、返還のことを特に意識するように教育してもらいたいということを考えておるわけでございます。
#46
○野本品吉君 そこで、私はこの前資料をお願いしたわけなんです。大学別の学資貸与金の状況。それで、ここにいただきました資料によりますと、国立、公立、私立の三つに分類されて、おもな大学の貸与金返還の率がここに出ておるわけです。これを見ますというと、一番返還率の高いのは、東京理科大学の八五・六%、その次が東京工大の八〇・四%、その次が東北学院の六六・八%、一番悪いのが久留米大学の三一%。すると、返還率が八五・六%から三一%という、非常な較差というか、幅があるわけなんですね。そう見て間違いありませんか、この表を。
#47
○政府委員(小林行雄君) これは抽出の調査でございまして、全体をこれで見るということが適当かどうかわかりませんが、ここに出ました数字だけから申しますと、ただいまお尋ねのございましたように、非常に開きのあるのは事実でございます。
#48
○野本品吉君 そこで、こういう開きはどこから出てくるかということを考えますというと、先ほど局長からお話のあったように、貸与金に対する返還意識というものを、あるいは大学へ入って貸与金を受けるときから、あるいは卒業までの間に、その意識を高めるような努力をしておった学校が返還率が高くて、その努力に欠けておる学校が返還率が低いのじゃないかということを想像されても、これはやむを得ないと思うのです。従って、文部省当局としては、もうすでにお気づきになっていることではありますけれども、つまり、貸与に関係した学校当局の責任として、返還に際しても、従来以上の誠意を傾けて、返還業務に協力することを要請すべきであると思います。そういうことは従来なされておりますか。これから先どうお考えになりますか。
#49
○政府委員(小林行雄君) ここ数年、非常に私どももその点を育英会にも注意をいたしまして、育英会の方でも、大学にいろいろとその点の特別な協力を願っております。また、私どもも、育英奨学資金の貸与に関する関係官の集まり等もいたしまして、返還金の督促ということに特に心がげるように注意をいたしておるわけでございます。
#50
○野本品吉君 その点についての大学当局と文部省との連絡がつけば、これはその大学の名誉なことでもないのですから、私は学校当局も相当な熱意を持ってこういう問題を取り扱い、従って返還の実績というものが上がるようになるであろうと思いますし、またそれを期待するわけなんです。
 そこで、次に私はお伺いいたしたいと思いますことは、返還事務の最終処理といいますか、あるいは悪い場合に相当多額の、たとえば現在残っておる二十一億が焦げついてしまった――幾年たってもこれは返ってこない、そういう場合に、その最終責任というものはどこが負うのですか。
#51
○政府委員(小林行雄君) 先ほどの資料で見ましても、確かに当該年度には返還率は三分の一に達しないということでございますが、たとえばその後五年たちますと約七〇%近くは返還されてきておる。まあ、十年もたてば約九割は返ってきておるという実情でございます。決定的にこれが焦げつきの債権ということになるというところまで現在はまだ確認をいたしておりませんけれども、私どもといたしましては、たとえば悪質のような場合には、これはもう最終的なことでございますが、場合によっては民事訴訟法の訴訟をしなければならぬというような事態も起こらぬとはいえないと思います。しかし、どうしても返還できないような事情がある場合は、これは免除するということも実は考えられます。悪質のような場合には訴訟によってでも返還をしてもらうということも考えられるわけでございます。なお、決起的にこれは焦げつきであるということになりますれば、国の債権の方も、何といいますか焦げつき債権の処理ということで大蔵省の財政当局とも話し合いをしなければならぬ事態も起ころうと思います。
#52
○野本品吉君 私がそういう点をお伺いしますのは、今の二十一億が全部焦げつき債権になるというようなことでなしに、とにかくそういう焦げついてどうにも手がつかぬような事態も起こり得る――起こる可能性はあるわけなんですね。そういう可能性のある問題に対しては、好ましいことではないけれども、もしそういう事態が起こった場合にはどの機関がどういう責任においてこれを処理するという、最終責任がどこにあるのか。その最終責任者は、どういう方法でこれを処理するかということを考えておくことがやはりこれは大事なことだと、こう思うのですが、それはどうですか。
#53
○政府委員(小林行雄君) 先ほどお答え申しましたように、現在までのところそういったことについてとくとまだ研究はいたしておりません。しかし、確かにお説のこともございますので、財政当局とも相談いたしまして検討いたしたいと思います。
#54
○野本品吉君 そこで、これからの返還をどうするかという返還促進の対策の問題でありますが、これは私は結論として申したいことを先ほど局長から話がありましたのでくどく言うことは避けます。避けますが、育英会法、それから育英会の施行令、それを見て参りますと、どこにもその返還の義務づけを規定している条文が見られないように思うのですが、それはどうですか。
#55
○政府委員(小林行雄君) 育英会法、この法律におきましては返還に関しましてはこの第三章の「業務」の中で十六条の三というところで一部規定をしておるだけでございます。まあ返還ということは当然という建前で一部を規定したのかと思いますが、なお、との貸与金の債権の管理ということについては全然まあ規定がないわけでございますので、先ほどお尋ねにお答え申しましたように、債権の管理に関する規定をこの育英会法に私ども入れた方がいいのではないかということを考えて、他にももちろん改正点はございますが、そういう事項の挿入というととも研究しておるわけでございます。
#56
○野本品吉君 免除規定その他親切な規定はこの中にあるのでありますが、むろんこういう性格の法律ですから、最初から義務づけを強くして、罰則をどうだ何をどうするというようなことはお考えにならなかったのだと思うのですが、事態が今日のようになって、この返還業務が非常に遅滞しておるといったようなそういう現実から見ますというと、この育英会法に対しましてある程度の返還の義務づけ、返還責任の履行を要求することのできるような法的な規制を加えておく方がかえって貸与を受けた者に対して親切じゃないかと、私はまあそう考えるわけです。で、すでに文部省でこのことをお考えになっておるとすれば、これ以上深く申し上げることは遠慮いたしますが、とにかくそのことにつきましてはどうしたらば返還事務というものを完全に履行して、そうしてできるだけ大ぜいの者が奨学金の貸与という便宜にあずかることができるかという観点から今のようなことを十分御研究を願いたいと思います。そこで、先ほど小林局長から御説明がありましたが、文部省でもすでにこの点について研究中であり、適当な時期にこの育英会法の改正について国会の審議をわずらわしたいという御発言があったわけですが、現在文部当局としてお考えになっておられる育英会法改正の要点についてお話いただきたいと思います。
#57
○政府委員(小林行雄君) まだ実は最終的に確定をいたしたわけでございませんので、決定的なことは申し上げられないわけなんですが、たとえば従来は大学を卒業して義務教育の先生になった場合には返還を免除するというようなことがございます。しかし、教育の立場からいたしますならば、できれば義務教育に限らず、たとえば高等学校の先生になる場合にも免除してもらいたいという声が非常に強うございます。そういう要望がございますので、高等学校の先生になる場合にも、できれば返還免除というような制度を作りたいということを考えているわけでございます。それから、先ほど申しましたような返還その他の育英会の債権の管理についての基礎法と申しますか、基礎になる条項を挿入したい。それから明年度の予算案に計上いたしておりますところの琉球の学生に対する育英資金の貸与ということについても、この法律に条項を設けたいというようなことを考えているわけでございます。
#58
○矢嶋三義君 一つ関連して。会計経理支出を見ましても、育英事業費の四十七億三千万、三十六年度要求五十三億九千万ですか、これは国民の税金を最も効率的な使い方で、日本社会党も野党としてこの政策はどんどん推進して参ったものです。私どももこの国会における追及点の一点として、これはピックアップしておったわけですが、ただいま野本委員から質疑がなされましたが、それに関連して、話が先に進む前に二点関連して伺っておきたい。
 それは、この日本育英会というのは国庫から支出していますから、立法府の調査権の及ぶ範囲になっているわけです。監督権はあなたの方で持っているわけです。大学学術局長が所管局長としてこれを管掌しておるわけですね。そこで、抽出検査とは言いながら、いただいた資料によると、私の判断では、久留米大学・それから青山学院大学、岐阜大学、新潟大学、これには注意を喚起する書面を出してしかるべきだと思うのです。そうして育英会として償還業務を推進しようとすれば、年々歳々新たな奨学生を採用するわけですから、そのときの手かげん等によってもう少し精力的にやればできるはずだ。第一、育英会の償還金返還を良好ならしめるために人員をふやしてやる、そんなばかげたことはないですよ。要するに心がけの問題です。貸与を受けた人の中には、家計が苦しくなって出せない人があるでしょう。そういう人は免除すればいい。これは今までもやっているわけです。災害を受けた場合は免除する。これも今までやっているわけです。根本は貸与を受けた人の心がけです。それを人員をふやして、人件費を使って返還を催促するというこういう施策は愚の愚だと思うのです。とりあえず一点としては、抽出検査とはいえ久留米大学、青山学院大学、岐阜大学、新潟大学等には、立法府にこういう意向があったということを正式書面において注意を喚起すべきだと思う。所管局長として、日本育英会にそういう指示をする意思があるかないかというこの一点。
 もう一点は、野本委員も指摘しておられたが、三十五年九月三十日現在では、未返還金は約十九億五千万円だった。返還率は五六・八%だ。ところが、それが三カ月たった三十五年の十二月二十六日の資料によると、その未返還額は約二十一億二千万円にふえ、返還率は五二・五%に下がってきておる。好ましからざるカーブをたどっておることは事実なんですね。この点はあなたのところでしっかり監督指導いただいて、日本育英会もがんばってもらわなければならぬと思うのですが、第二点として伺いたい点は、国家公務員の中に、返還義務を持って返還していない人がおるかおらぬか、いないという答弁をする勇気があるかどうか。もう少ししぼって、文部省の公務員の中に返還義務を持っておって返還していない人がいるかいないか、いないということを断言する勇気があるかどうかということ、この局長の答弁。それから大臣には、もし政府の使用している国家公務員の中にこういう夫返還の職員がおったならば、これにどういう処置をされるか。閣議において、同僚の国務大臣諸公にどういう注意を喚起されるか。私は災害があったり、家計が非常に不如意になっている方に無理に返還義務を遂行させようという、そういう非人道的なことを言っているのじゃない、一般的な立場で言っているのです。だから、所管局長から二点の答弁と、それから大臣から一点の答弁をいただきたいと思います。
#59
○政府委員(小林行雄君) 育英会は、従来も長期の延滞者に対しましては、それぞれ出身の大学を通じて連絡し、注意を喚起いたしております。御指摘のございました、この表に出ております低い返還率の大学につきましては、御注意もございましたので、私どもからやはり注意を喚起するようにいたしたいと思います。
 それから第二点でございますが、国家公務員の中で返還の延滞している者があるかということでございますが、正確なことは現在私数字を持っておりませんが、国家公務員の中にもあると思います。文部省の役人は、これはちょっと確言はできませんが、ひょっとするといやせんかという感じがいたします。私どもも今後できればまず政府職員の返還か促進いたしまして、政府職員の中には未返還者がないようにしたいというふうに考えておりまして、場合によっては政府全体として御相談を願うというような措置もとりたいと思いますし、また民間の場合におきましても、たとえば職場単位に返還の組織をそれぞれ返還者の了解のもとに作るというようなことも、一つの促進の方法ではないかというようなことを考えているわけでございます。
#60
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 私がお答えすることを政府委員から申し上げてしまったような格好でございますが、これは国家公務員であろうと、地方公務員であろうと、あるいは民間会社、銀行等に入っている人であろうと、大学の先生になっている人でありましょうとも、大事な資金を融通を受けて、返すべきものを返さないという人があったら、これは同じ問題かと心得ます。ですから、育英会自体として当然なすべきことをなしてもらうことに主眼を置きまして、先ほど来申しておりますようなやり方も加えて、極力返還をスムーズにやっていくということに中心を置いて参りたいと思います。もちろん、公務員は一般民間に入っている人よりも直接的に、責任感と申しますか、そういう気持でいるべきことも、世間的に期待される立場の人であるはずですから、そういう意味で、一そう自発的に返還を努力するというふうに慫慂もいたしたいと思います。さらにまた要すれば、今局長も申しましたように、政府としての立場から、特に公務員に対して、そういう事例が相当ございますれば、適切な措置を通じまして御要望のような方向に持っていきたいと思います。
#61
○野本品吉君 今、矢嶋委員からも御発言があったのですが、これは新聞に書いていることですから遠慮する必要はないので、十月の十日の朝日新聞には、「コゲつき奨学金」という題目で今の公務員の問題に触れている。その中に、文部省には大体百人前後いるということが書いてある。その他の官庁にも相当いるであろうということが書かれている。そこで、私はやはり大臣がお見えになりましたから特に申し上げたいのでありますけれども、何といっても公務員は、その職責上、かような事実のあることによって、公務の厳正な執行を主張するという勇気を欠くような場合も私は出てくると思うので、従って、公務員の中にそういう方のいることはまことに遺憾なことでありますから、いろいろな事情があろうと思いますけれども、まずもって政府部内において、少なくも公務員関係においては貸与金の返還が滞っている者が一人もいないという事実をお示しになるように御相談を願いたいと思います。このことは単に公務員だけの問題でなしに、それが一般に与える影響というものは非常に大きいと思う。大臣からも今お話がございましたが、特に私はこの点につきまして返還事務の促進という立場から、まずもって国家公務員の中には一人もおらないぞ、それが地方公務員に当然黙っておっても波及して参りますし、民間につきましても波及して参る、こういうふうに考えておるわけです。そこで、返還対策の一つとして、私はそれを言おうと思っておったところへ、矢嶋委員から発言がありましたが、全く同感です、これは。そこで、もう一つの問題は、これもこれに関連してお話があったようですが、各事業所ごとにこれを一応御検討を願いたい、そういうようなことをなさることについて、これは文部省のお考えはどうですか。
#62
○政府委員(小林行雄君) 返還を促進するという意味から、できれば事業所単位に返還の事務を、育英会との間に契約をもって返還の事務を一部処理してもらうということを考えております。しかし、これは任意契約に基づくものでございまして、強制は私はできないのじゃなかろうか、かように考えております。
#63
○野本品吉君 以上、いろいろなことをお尋ねして参ったんですが、要するに私は育英会がもう少しこの問題について熱意を持って努力すべきであるということ、それからして育英会法に欠陥があるようにも思いますから、その点について御検討を願いたいということ、それからしてまずもって政府部内からこの実をあげていくように努力すること、それからして民間の事業所等の協力も求めること、それからして最初にも申しました学校側の協力を求める、こういうような協力態勢が総合的に打ち立てられて、それが有機的に動いていくようになれば、こういうような好ましくない事態というものを根絶することができるんじゃないかと思うのです。で、結局この返還が完全に行なわれないということは、別な角度から見れば、そのことによって先ほど来申しましたように、先輩である奨学金の貸与を受けた学生の返還義務を怠るということが、後輩のそういう便宜を受ける機会を奪っておるということになるんで、従ってそういうようなことのないようにということを、まあ返還を十分なされずにおる方々の自覚を促すことも非常に私は大事だと思っておるんで、この点は学校当局等においても十分考えてもらわなければならぬと思うのです。で、私が以上いろいろなことを申しましたが、すでに文部省もこの点について十分お気づきになられて、それれぞれの対策の樹立、法律の整備等について取り組まれておるようでありますから、これ以上こまかい点についてとやかく申すことを遠慮いたしますが、とにもかくにもこの相当額の未返還額が残っておるという事実の解消ということは、教育的にも非常に大事なことでありますし、また、それが解消できないということの社会一般に及ぼす影響ということも非常に大きいものだと思いますので、今後十分の御検討と御努力を希望いたします。
 私の質問は終わります。
#64
○千葉千代世君 育英会法の改正をなさるという用意があるように伺いましたけれども、その中で今までの貸費制度、これを給与制にしていくという、こういう意思はございませんでしょうか。
#65
○政府委員(小林行雄君) 従来、育英会、昭和十九年に育英会の制度ができまして、奨学金を学生に与えるということが発足いたしましてからずっと貸与でやってきております。もちろん外国等におきましては給与のスカラシップというものももちろんございます。そして国内でもそういう要望もございますが、現状ではこの貸与金をすべて給与に切りかえるということは困難じゃなかろうかと思っております。
#66
○千葉千代世君 今年度の予算の中で、約四百四十億ふえた、その予算の中で目立つものの中に、社会保障の一環としての育英事業とか、準保護児童の対策とか、そういう点について当局は非常に熱意を持っていることは了承いたしますが、もう一歩進めて、やはりこれは教育の機会均等の精神にのっとって進めていただきたい。御承知のように、憲法二十六条の中に示されている精神がことに現われたのだと、こう解釈いたしますと、やはり進学の希望があって毛家庭が貧困であったり、その他の事情によって就学困難な者に対して、国家が責任を持ってこれを援助していく、従ってその対象になるものは、社会的な地位とか門地によって差別されないとか、あるいは男女の差別をつけないとか、住居とか地域によって差別してはいけないとか、遺家族に対しては特に考慮を払うとか、こういうような国家的見地から、育英事業を進めていく、そういう趣旨にのっとっていきますというと、先ほどから各委員から述べられましたのですが、返還率が非常に悪い、この原因にもたくさんあるでしょうか、まあやはり初めから返すという約束で借りたものは、返していかなければならない、これは常識なわけなんです。なぜ返せなかったという事情を明らかにしていくとともに、やはりそれ相当の理由があるということも私わかるわけです。特に先ほどから公務員の問題に催促の問題が出たのですが、当然でございますけれども、公務員であれ、民間であれ、いずれもこれは同じだという考えを持っているわけなんですけれども、文部省の方としては、まず公務員とか地方公務員とか、それから民間という手本を示すという中で、特に事業所に設けて、団体保険並みの手数料のリベートを払っていくというようなことを聞いたのですが、そういう点いかがでしょうか。あと関連して質問いたしますが。
#67
○政府委員(小林行雄君) 返還を促進する一つの方策といたしまして、事業所等でこの返還事務に協力をしてくれる意思のあるところには、その返還事務を一部、育英会との契約によりますが委託をいたしまして、育英会のまあ何と申しますか、代理みたいなことをやってもらう、これはもちろん強制ではございませんで、任意的にやってもらうわけであります。そういった場合に手数料と申しますか、事務的な経費が必要ならば、そういうものも一部応援するというようなことも適当じゃなかろうかと考えております。
#68
○千葉千代世君 別の資料を調べた中に、昭和二十七年から三十五年までの返還率がございますが、三十五年九月三十日現在になっております。二十七年五四・一一%、二十八年五六・〇四%、ずっとこういきますと、多少の変動はあっても、三十五年九月三十日現在で五六・八八%、こういうふうに出ておるわけであります。そうすると、依然としてこれは返還率は同じだということになる。さっき野本委員から隘路について述べられましたのですが、やはりこういうふうな、二十七年からずっとこう続いておっていくと、これは払わなくてもいいんだという考えが出てくるわけです。本体として国が責任を持って給与制にしていって、そしてその学資を受けた者が最大限に国の生産に役立つように働く、こういう趣旨だろうと思うのです。ですから、払えなかった者に対する処置は、先ほど述べられたのですけれども、今後やはりこれは給与制にしていくのが一番いいんじゃないか。やっぱり国の計画に沿って生産技術、理工科系を充足するなら、その方面についてどれくらいのウエートを置くか。それから教育学部の学生に対してはあまりやらない方がいいというなら――やらないのじゃなくて、ウエートを教育学部じゃなくて、理工科系に置いて、英才教育に資していくという意見が出されたときに、やはりこれは教育学部の方の学生たちも同じ国の教育の中の一環だから出してほしいということがあったわけです。ですから、本体は、差別をしないでやっていく、で、給与制にしていく、こういうふうなやっぱり方向へいっていただきたいと思うのですが、特に局長さんから述べられたのですが、世界の奨学制度の一覧表、九つの国だけを調べてみたのです。すると、たとえばアメリカですというと、給与とそれから貸与とを別にしておって、そして貸与についても条件があるのですけれども……。イギリスですと、給与でやっておるとか、フランスへ行くというと、給与がほとんどであるが、貸与も入っておる。イタリーは給与、西独給与、東独給与、ソ連給与、中共給与、中華民国給与、こういうふうにずっとございまして、大学生を主体とするもの、高等学校生徒を主体とするもの、こういうふうにございますけれども、やっぱり国家が責任を持って次の世代の国民をほんとうによりよく育てていくという明確な責任所存を示しているわけなんです。日本では、いろいろ事情もあるのでしょうけれども、こんなに返還率が少ないというのは、単に督促の任方が悪いからとのみには言い切れないと思うのです。ですから、その辺は文部省としてはどのように考えていますか。払えるのに払わないというのが大体どれくらいあるのか。どうしても、家庭貧困であるとか、いろいろな事情で払えないというものがどれくらいあるか。たとえば残っております――二十一億円ですか、残っておりますですね、まだ払っていないものが四十三億のうちの二十一億円ございます。この中に大体どれくらいあるのでございますか。
#69
○政府委員(小林行雄君) 先ほどお答え申しましたように、外国の奨学金、アメリカなどではこれは大学それ自体がファンドを持っておりまして、学生にスカラシップを出しておるということでございます。直接国が国家責任でやるというようなことではございません。もちろん貸与の面もございますが、これはほんとうに一時の融資といいますか、金貸しということでございます。奨学金といたしましては、確かに、給与すべきであるということもいわれておりますし、一つの方向であろうと思いますが、わが国としては、先ほど申しましたように、発足以来貸与金でやっておりますし、現状を直ちにこれを変更して全部を給与に切りかえるということは私は困難ではなかろうかと思います。ただ、御承知のように、たとえば学校の先生になった場合、あるいは研究者になった場合に免除の制度がございます。この免除の幅を今後さらに検討するということは考えていかなければならぬ問題だと思っております。
 なお、実際に延滞者になっている者の中で、どれくらいが経済的に困難で返せないのであろうかというお尋ねでございますが、それは私どもまだ的確にはつかんでおりませんけれども、先ほど野本委員のお尋ねにお答え申しました集金制度――外務員の集金制度が昨年から東京で発足いたしました。その結果によりますと、外務員が直接返還者に会って返還の要請をいたしました結果では、大体八割程度が返還をしてくれておるという結果が出ております。これが直ちに全国的に当てはまるかどうかはわかりませんけれども、現在までで、私どもの得ました結果では、そういう実情でございます。
#70
○千葉千代世君 その八三%の返還率があったという、たとえば品川とか、そういう各区ごとに十名の外務員制度を設けて、それが取り立てに行っておる。会った人はほとんど返してくれるから、こういうふうにPRしていったらいいじゃないかという事業所の増額の問題だと思うのですけれども、その問題については後ほどまた予算の審議のときに触れたいと思いますが、私は給費制にしてもらいたいというのは、これはやはり学生、それから家庭の声じゃないかと思うのです。一つの例で申し上げますと、これは福島県にこの前行きましたときに調べてみたのです。福島大学の学生さんを調べてみたのです。そうすると、ほとんどアルバイトをしております。アルバイトは大体八〇%、しかもそれが全部自分の思うような希望のアルバイトはできないわけですから、収入もまちまちであって、食費に大体平均四千円ぐらいかかっておって、そうしてまた書籍代であるとか、交通費であるとか、それから自分の文化費、そういうふうなものを考えていった場合には何としてもやはり足りないというわけなんです。それで、ほんとうに才能がありながら、学費が足りないために勉学を全うすることができないという者はかなりいるわけなんです。そういうときに英才教育ということを主としてしまって、家庭が貧困であろうがなかろうが、まず英才教育なんだから才能の特別ある者だけを選び出してやっていこう、こういうふうな政府のお考えがあるやに聞いておったわけで、これは大へんだ、やはりこれは生活が困って進学の希望があって、その才能のある者という、こういう基準も今まであまり明らかでなかったために、希望した者は、その学校の裁量によってやっていた。その中で、結局公務員の子弟とか、それからそういうことがわかっておる者が希望していったという非常に較差があったということを聞いておるわけなんです。やはりこれらをなくしていくような手だてと一緒に、給費制の努力をしていただきたいと、こういうふうに要望しておきまして、あと育英資金の予算のときにまた質問したいと思っております。
#71
○委員長(平林剛君) この際、当面の文教政策に関する調査もあわせて議題といたしますので、御了承願います。
#72
○豊瀬禎一君 せっかく予算の審議が行なわれておりますけれども、大臣が午後予算委員会の方に御出席になるようですので、午前中時間を借りまして、ごく主要なる問題について二、三ただしておきたいと思います。
 私がこの質問をしようとしますのは、八月三十一日並びに九月一日、その後十月十五日等の委員会におきまして、大臣の見解をただし、その後資料を当委員会に配付していただきました倫理綱領を中心とする問題でございます。私は九月一日の委員会におきまして、倫理綱領を中心とする大臣の当委員会における御回答は、若干大臣の御見解の方が憲法に違反する危険性を持っておるということを指摘しておりましたが、基本的にはこういう観点に立って質問をいたし、大臣の見解をただしたいと思います。
 まず最初に、大臣は当委員会における就任のごあいさつの際にも、また資料として提出いただきました全国教育長協議会におけるごあいさつの際にも、そういう文教行政は「政党政派の別にかかわらず、その基本は不変」であるという見解をお述べになっております。このことは現在もなお同様の方針をとっておられるかどうか、お答え願いたいと思います。
#73
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 「政党政派の別にかかわらず……」その次の言葉をちょっと聞き取れませんでしたが……。
#74
○豊瀬禎一君 「その基本は不変」である。
#75
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りに思っております。
#76
○豊瀬禎一君 大臣のおっしゃる、その「基本」とは何をさしておるのですか。
#77
○国務大臣(荒木萬壽夫君) あくまでも政治から中立でなければならないという事柄をさしたつもりでおります。
#78
○豊瀬禎一君 文教行政の基本は政党政派の別にかかわらず、不変でなければならないという趣旨ですが、その文教行政の基本というものは、主として教育基本法に定められておる諸事項と具体的に判断してよろしいですか。
#79
○国務大臣(荒木萬壽夫君) もちろんそうでございます。従って、教育基本法の趣旨に従って制定された法律、制度も含むことも申し上げるまでもございません。
#80
○豊瀬禎一君 大臣の御見解の基本的な態度につきまして、教育基本法の中で主として関連のありますのは、第十条の、教育は不当な支配に服することなく国民全体に責任を負うという事柄だと考えて差しつかえないと思いますが、この教育に対する不当の支配の中でいろいろな態様があると思いますが、最も警戒すべき問題は、いわゆる国家権力を担当しておるところ、あるいは国家権力を担当しておる政党の支配というものは、不当の支配の中で最も警戒すべき問題だと考えますすが、大臣の御見解を聞きたいと思います。
#81
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 御指摘の通りと思います。そのことは、今も申し上げました通り、教育基本法なり、あるいは教育関係の法令によって、その筋道は定まっており、その線を逸脱することは適当でない、こういう考え方でございます。
#82
○豊瀬禎一君 古いことを持ち出して恐縮でございますが、昭和三十年十二月六日の衆議院の文教委員会におきまして、時の文部大臣清瀬氏は、「自分は党の番頭であるから、党の文教政策を推進するのは当然である。」、こういう言い方をされております。また、別の委員会におきまして、時の大達大臣は、「教育行政が党派的であるのは当然である。」、こういう見解を国会の中で披瀝しておられますが、文教政策が党にあるということは私認めますけれども、文教政策推進の際に党派的であるのは当然である、あるいは党の番頭として文教行政を推進していくという考え方は、今の教育基本法の趣旨からして好ましくない考え方であると私は判断いたしますが、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
#83
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 以前の所管大臣の名前が出てのお話ですから、どうお答えしていいかわかりませんが、私の認識はさっき申し上げた通りであり、また、清瀬さんが言われた御見解と大体私も同じ気持であります。
#84
○豊瀬禎一君 御見解と同じであるということは、文教行政推進の際に、党の番頭とかいう言葉は別としまして、党の政策にのっとって文教行政を進めていくという考え方である、こう判断してよろしいですか。
#85
○国務大臣(荒木萬壽夫君) そうじゃございません。党員でございますから、党員としておのずから党に従うことは当然でございますが、行政府の長として、さかのぼれば憲法に端を発しての教育基本法以下教育関係の法令そのものにたがってはいけない。かりに党からの要請がございましても、おのずから法治国である以上は、今申しましたもろもろの法律、制度に照らして、党の言うことがもっともであるならば、もちろんたまたま一致することではありましょうけれども、そうなることはあるであろう。しかし、あくまでもそれとこれは別だ、客観的にそれ自身が国民の納得を得る、あるいは憲法に従っておるという確信を持って行動すべきものと心得ております。
#86
○豊瀬禎一君 大臣のただいまの考え方ははっきりいたしましたし、また私も当然、大臣の御見解のように、文教行政推進の際に、委員会議事録で先ほど指摘しましたように、党の番頭である、あるいは党派的である立場に立って文教行政を推進するということは、明らかに基本法の禁ずるところであると思いますが、大臣の御見解はそうでないようでありますので、了承いたします。
 そこで、私は大臣が出されました資料に基づいて質問を進めたいと思うのですが、大臣は、倫理綱領に対しまして幾つかの具体的な事例をあげておられますけれども、大まかにこれを把握いたしますと、一つは倫理綱領が教育の中立を否定しているということ、それに基づいて日教組の行動が現行の憲法秩序を破壊する危険性がある、大体こういう二点にしぼられておったと把握いたしますが、間違いございませんか。
#87
○国務大臣(荒木萬壽夫君) おおむね御指摘の通りでございます。
#88
○豊瀬禎一君 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法というのは、昭和二十九年六月十三日施行になっておりますが、単にこの法律にかかわらず、すべての法律は遡及しないことを原則とするということですが、大臣はとの立場を認められますか。
#89
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 特別の例外を除いては、原則的にはお説の通りと思います。
#90
○豊瀬禎一君 ただいま私が指摘しました法律も、同様に遡及しないものとお考えでしょうか。
#91
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りでございます。
#92
○豊瀬禎一君 そうしますと、義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法以前に発行されましたあらゆる文書、あるいは言動というものは、当然この法律の適用外にあると、こう判断して差しつかえないですね。
#93
○国務大臣(荒木萬壽夫君) そうだと思います。
#94
○豊瀬禎一君 倫理綱領の制定の日付は、本法律よりも以前であるということについて御確認願えますか。
#95
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 承知いたしております。
#96
○豊瀬禎一君 続いて質問を進めていきたいと思いますが、九月一日の委員会の席上におきまして、大臣は私の質問に答えまして、ただいま指摘しましたいわゆる教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法の態様が、教員自身、教師自身の信念、政治的な立場、これを一切規制するものではない、こういうことは御指摘の通りでございます、そのように了解いたしますと御答弁になっておりますが、現在もなおその判断にお変わりございませんか。
#97
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 教職員といえども、個人としていかなる政治的な理念を持ち、政治的行動をするかということは私は自由だと思います。そういう気持は以前からむろん持っておりまして、多分そのときもそういう気持で申し上げたと思います。その用語等はむろん記憶いたしませんが、今御指摘のようなことであったろうと思います。
#98
○豊瀬禎一君 九月一日の答弁の中に、私が聞きました、教育の中立を否定しようとする意思、あるいは否定すべきであると表現をしている個所は全然ないと――そのものずばりで表現している個所は全然ないと私は考えておりますが、大臣はどうですかという私の質問に対しまして、御答弁としては、具体的な直接的な用語としてはないことは認めますとおっしゃっておりますが、その後、この資料を私に答弁された後に出されたのですが、この九月一日の委員会における御答弁には、現在もお変わりございませんか。
#99
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りでございます。
#100
○豊瀬禎一君 この教育の政治的中立の確保につきましては、私も全く賛成でございまして、あえてこの法律を犯すべきであるという観点に立っているものではございませんが、この法律に違反をするという判断をされる際には、少なくともこの法律が規定しておる諸条件、あるいは諸要素と申し上げましょうか、これがすべて具備さるべきものであると私は判断いたしますが、大臣のお考えは……。
#101
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その法律を適用するという具体的なことに関していえば、まさに御指摘の通りだと思います。
#102
○豊瀬禎一君 大臣もこの法律については、法律の個々のこまかな文章じゃなくて、大綱は御存じと思いますが、この法律の骨子は第三条でございます。まずその要素としましては、何人といえども、まず教育を利用する、そうして次には、特定の政党その他の政治的団体の政治的勢力の伸張または減退に資する目的を持たなければならない、第三には、学校の職員を主たる構成員とする団体の組織または活動を利用するということ、第四には、義務教育諸学校に勤務する教育職員に対してでなければならないということ、そうしてこれらの者が児童または生徒に対して、第五番目として、特定の政党を支持させ、またはこれに反対する教育を行なうこと、この五つのことを教唆し扇動した場合に、この法律は適用される。従って、このいずれかの主たる法律の構成要素が欠除する際には、この法律の適用は当然行なわれない、このように判断しますが、大臣の御見解も間違いありませんか。
#103
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りと思います。
#104
○豊瀬禎一君 大体今庄ではほとんど私の見解と一致しておることを非常に・幸いに思いますが、大臣の出されました資料によりますと、倫理綱領中、教育の政治的中立を否定する個所として幾つかの項目をあげておられます。そこで私、先ほど申し上げましたように、この倫理綱領そのものは、法律の制定数年前に日教組の大会において確認されたものであるし、日教組の大会において決定されたものは、これは説明的になりますけれども、倫理綱領の本文のみであって、解説は後日につけられたものでありますが、そのことについてあえて弁明をしようとするものではありませんけれども、従って、この倫理綱領そのものの文章はいかようなことが書いてあろうと毛、これが具体的な、先ほど申し上げました二十九年六月三日に制定されました政治的中立確保の法律の適用を受ける際には、まず倫理綱領そのものとしては、不遡及の原則によって当然問題にならない。これを適用していくとすれば、具体的な、先ほどあげました諸条件が具備されて、何人も教唆、扇動が行なわれた場合に初めて適用される、このように判断しますが、差しつかえございませんか。
#105
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りと思います。
#106
○豊瀬禎一君 倫理綱領を十分お読みいただいておると思いますが、倫理綱領の精神は総括のところにまず掲げておると思います。同時に大臣が出されました資料を見ましても、冒頭に掲げております綱領第一項の「平和の擁護、民族の独立、搾取と貧乏と失業のない社会の実現はわれわれに課された歴史的課題であり、民主主義を信ずるわれわれの不動の信念である。」、これが倫理綱領の全体を貫く精神でありますが、大臣は、九月一日の委員会におきまして、いろいろな角度から答弁が行なわれておりますが、この倫理綱領の全体に対する集約として、御提出の資料の中に三項目をつけておられますが、これが、この三項目が教育の中立を否定する個所であるという意味に解して差しつかえございませんか。
#107
○国務大臣(荒木萬壽夫君) おおむねそういうふうに御理解いただいてけっこうでございます。
#108
○豊瀬禎一君 そういたしますると、少なくとも教育の中立を否定すると御指摘になる以上、先ほど私が申しました、再びは申し上げませんけれども、中立確保に関する臨時措置法の中に定められている諸条件、これをすべて具備して倫理綱領そのものが教育の政治的中立を否定している、こういう御判断ですか。
#109
○国務大臣(荒木萬壽夫君) そういう意味ではございません。教育の中立を規定しております御指摘の法律に具体的に違反している、こういう考えでもなかったし、そう申し上げた記憶はございません。
#110
○豊瀬禎一君 倫理綱領が教育の政治的中立を否定している、その中で具体的な個所はこうである、こういう資料の御提出ではございませんか。
#111
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その通りでございます。
#112
○豊瀬禎一君 三十五年十月八日付で出されました資料は、題名として、「教師の倫理綱領」中、教育の政治的中立性を否定する個所」と明記されております。教育の政治的中立性を否定するという言い方は、先ほど冒頭に私が確認しましたところのあなたの所属される自由民主党の見解の政策としての政治的中立でもなく、また、私が所属している日本社会党の政策から立ったところの教育の政治的中立ではなくして、先ほど指摘しました義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法を基点においたところの中立の否定と判断すべきと思いますが、間違いございませんか。
#113
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 私が申しましたのは、教育基本法に、教育はあくまでも中立でなければならぬと規定してある、その一つの具体的な事柄を、条件を示して法律となったのが義務教育の政治的中立を確保する法律ということになっておるというだけであって、私は教育基本法の建前からいい、教育がいかにあるべきかという国民的な観念からいって絶対に中立であるべきであるにもかかわらず、倫理綱領に規定されているところを拝見しますると、その中立を侵すおそれありという意味において申し上げたと記憶いたします。今もそう思っております。
#114
○豊瀬禎一君 御指摘のように、教育基本法の主として第十条には、一つは教育行政に対する定めとして、「不当な支配に服することなく、」と、こういうことがありますね。これは教育行政のあり方を定めたものであります。もちろん教育基本法の前文にも、日本の教育の基本的な目標をおいております。しかし、具体的に教育の中立を侵すということの規制は、法律的には先ほど指摘しました政治的中立確保に関する臨時措置法が具体的な法律です。このことは認められますか。
#115
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 御指摘の法律は、それに掲げる条件が整った場合に、教育基本法にいうところの教育の中立が侵される場合の一つであるという意味において立法されておると思うのでございまして、その条件具備以外の他のもろもろのケースが政治的中立を侵すことがあり得ると思うので、そういう意味合いから教育の中立を侵すおそれあり、こういうことを申した次第でございます。今の法律を具体的に適用すべきだということではございません。
#116
○豊瀬禎一君 おっしゃる通り、この法律を適用して処分すべきであるとか、そういうことをおっしゃったことがないことは確認します。しかし、文部省が教育行政の担当主管として、一つの言論あるいは文章、あるいは団体の綱領等を教育の政治的中立に反しておると判断される以上は、当然、大臣と私が見解一致しましたように、特定の政党の政策に基づくところの政治的中立という解釈をとるべきでなくして、大きくは憲法、具体的には教育基本法、さらに具体的な個条としては、立法されておるものは臨時措置法だけですね。従って原則的なあり方としては、第八条に「(政治教育)」という題名のもとに、政治教育は当然やらなければならない。政治教育をやらなければならないという前提のもとに、学校は特定の政党支持、反対、これを禁止しておりますね。これは学校教育、――法律に定めるととろの学校です。このことにつきましては冒頭にいいましたように、教師自身あるいは一つの団体の考え方、学校教育として行なわれておるかどうかは別個の問題であるということも大臣御答弁になっておる。従って、基本原則としてのいわゆる特定の政党支持、反対、これは教育基本法。教育の具体的な中立の確保につきましては、私が先ほど申し上げましたように、諸条件を明記して教唆扇動することを法律は禁止しております。従って、教育の政治的中立を否定しておるという場合は、大まかにいえば憲法、教育基本法ということも考えられますけれども、法律では具体的には臨時措置法だけである。こういうふうに判断すべきであると思いますが、大臣はいかがですか。
#117
○国務大臣(荒木萬壽夫君) もちろん具体的法律という形での立法はお説の通りと思います。しかし、教育基本法の教育の中立という要請は、その具体的にきめた法律以外の中立の侵し方があってもよろしいということではむろんないのであって、その法律の適用以外に具体的に適用する法律という形のものはないにいたしましても、教育の場が、教育の中立というものが現実に侵されるということを欲しないという宣言的な教育基本法の中立要請はあくまでも守っていかなければならぬと思うのでございまして、おっしゃるように、法律の適用そのものに関する限りはお説の通りであろうと思います。ですけれども、それだけであってはいけないという意味合いから、教育の中立は侵してはならないし、侵すおそれがあっても好ましいことではない、こういう考えを申したつもりであります。
#118
○豊瀬禎一君 教育の中立を侵してはならないし、侵すことがあってはならないというのは、冒頭に大臣と私と趣旨の一致したところです。従って、具体的に教育の中立が侵されておるという判断の根拠は、私が先ほどから申し上げておりますように、これは少なくとも日本国憲法あるいは教育基本法、具体的には法律に定められておることをもって判断しなければなりません。もちろん法律に定められておる以外のことはやってよろしいという定めは、これは法律の態様としていたしません。しかし、すべて法律というものは、何らかの制限規定を設ける際には、道義的に、あるいは精神的に、いろいろな角度から好ましくないということであっても、法律で規制する場合には具体的に条件を明確にいたします。そこで大臣が、あるいは文部省が、一つの現象として生じておるものを教育の政治的中立を侵すと判断される際には、個人見解やいろいろなほかのものではなくして、法律の条文に照らして中立が侵されておるという判断をなさるべきだと思いますが、この基本的態度については大臣も同じでしょう。
#119
○政府委員(内藤誉三郎君) ちょっと委員長。
#120
○豊瀬禎一君 いや大臣に。内藤局長は答弁していないから・あらためて聞きますから。
#121
○国務大臣(荒木萬壽夫君) おっしゃる範囲内においてはそうだと思うのですけれども、教育の政治からの中立ということは、先ほども申し上げました通り、憲法の精神ないしはそれを受けての教育基本法に、同じ法律ではございますが、特に重大だからというので基本法と名づけ、宣言的規定をたくさん書いてある。そのことに源を求めて判断をさるべき事柄であると思うのであります。義務教育課程における教育の中立を規制する法律、先ほど来たびたびお話のこの法律は、政治的な経過を言えば、日教組による具体的な集団的な好ましからざる現象が随所に起こった。これでは大へんだ。政治的中立が侵されるおそれありという環境のもとに立法せられ、国会を通過した法律だと思います。教育の中立を侵すというケースは、この法律が予定すること以外に、政党そのものでなくても、あるいはたとえば右翼というがごとき勢力が教育の場に影響を与えることも想像にかたくない。あり得ることではある。もろもろのケースがあるのであって、御指摘の法律だけから見て具体的に条件を具備しているかいなかということ以外に、もっと抱括的な厳粛な気持での中立確保という観点から論ぜらるべきものと私は思っております。
#122
○野本品吉君 議事進行についてちょっと。ただいま内藤局長の説明に対して、大臣以外ではいけないような感じを受けたわけですが、私は豊瀬委員の質問の本旨がどこにあるかということは、やはり文部省のそれぞれの完全な答弁を通して初めてわれわれには理解されるわけなんです。従って、必要に応じて局長の答弁を許すべきであると、かように考えます。さようにお取り計らいのほどを委員長に対して希望いたします。
#123
○政府委員(内藤誉三郎君) ちょっと法律の問題でございますから、私から補足説明をさしていただきたいと思います。
 教育基本法第八条二項において、「学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」、この基本法の禁止規定に反して学校で偏向教育が行なわれた場合には、これは当然行政罰の対象になるわけでございます。ですから、当然これによって処分が行なわれるわけでございます。ただいま豊瀬委員から御指摘になりました義務教育諸学校の政治的中立の確保に関する臨時措置法は、教唆、扇動した人を処分する。この場合は刑事罰で処分いたしますので、具備要件が非常に厳重になっておる。ですから、根本は教育基本法の方で処置される事項なんです、学校で教育した人は。で、おあげになった政治的中立性云々の方は、あくまでも教唆、扇動した人を刑事罰をもって処分する、こういうことでございますので、この点を御理解いただきたいと思います。
#124
○豊瀬禎一君 大臣の先ほどの御答弁があったんですが、なるほどそれぞれ人に思想あり、望ましき姿というものは理想像として描けると思うのです。しかし、行政府が一つの対象に対して判断を下す場合は、当然法律に準拠すべきであると思うのです。その点については大臣も確認されたと思うのです。そこで、憲法を取り上げていくと長くなりますので、時間も午後に回っておりますから、できるだけ簡単に進めたいと思いますが、教育基本法では、先ほど言いましたように、八条に、主として政治教育という立場に立って、政党の支持、反対を否定しております、学校は。従って、これをたてにとられるとするならば、このことに具体的に学校が政党の支持または反対をするための政治教育その他の政治活動を行なうかどうかということが問題になってくると思う。しかし、倫理綱領の中に批判としてあげておられる個所というもの、あるいは総括して三つあげておられることについては、そういった具体的な法律の条章に基づいての判断でなくして、きわめて、何と言いますか、あいまいというか、包括過ぎると思います。そこで具体的な質問に移っていきたいと思うのですが、先ほど私は大臣にただしましたように、一番突き詰めていきますと、教師自身が教育の政治的中立を、いわゆる大きな立場で侵しておるという判断の際には、少くとも教育基本法八条の「法律に定める学校は」、という範囲内でなければならないと思います。労働組合あるいは職員団体、あるいは一定のサークル、その他政党、こういったところで具体的な思想を述べ、あるいは活動をし、思想を展開していくということは、憲法はこれを保障こそすれ禁止していません。このことについては、再度、大臣御確認願いたいと思います。
#125
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 日教組という全国組織の、広い意味での労働組合と申し得ると思いますが、職員団体と申しますか、地方公務員法も認めておるところでございますから、そのことを私はいまだかつて否定的に申し上げたことはございません、考えてもおりませんから。私がお尋ねに応じてお答え申し上げました趣旨は、その全国組織たる日教組の綱領が、いかなることがきめられましょうとも、そのこと自身に私なんかがかれこれ申し上げる資格はない。それも万々心得えております。ただ倫理綱領と「新しく教師となった人々に」という解説書を通じてうかがい得ますことは、この組合員たる教師に対して、組織体でございますから、その組合員を覊束する意味合いにおいて、綱領というものはできておると存ずる意味で、倫綱領綱の中に、歴史的課題の解決のための有能なるにない手として育成せねばならないと規定しております。そのことは、具体的にその綱領に従って組合員である教師が行動するとしまするならば、教育の場において教育の中立が侵されるおそれがあると私は考える。そういう意味において、倫理綱領は私は国民的立場においてそういう懸念を持っておるということを御忠告申し上げるということは私は必要である。こういう考えで触れてきておるのであります。
#126
○豊瀬禎一君 何度も指摘しますように、倫理綱領は日教組大会で採択されたものであります。日教組の綱領とは別でございます。このことをはっきり御記憶願いたいと思います。日本教職員組合の運動を規制するものは、日教組の規約の中に綱領というものがございます。そのことは別にして、倫理綱領といえども、教師の倫理綱領という問題を与えておりますけれども、教師自身の個人的な姿勢、かまえ、こういったものを労働運動として規制しておるということは、日教組の大会できまったという観点から大臣も御了解願えると思いますが。
#127
○国務大臣(荒木萬壽夫君) ただいまも申し上げました通り、制度上は任意団体である、また、広い意味の労働組合と考えて、日教組がいかなる綱領をおきめになりましょうとも、それは自由であることはだれしも否定しない。ただ、その中に今申し上げましたような、資料にも提示しましたような点はいかがであろうか。そのことが、組合員たる教師一人々々がその綱領に忠実であればあるほど、教育の場が、中立を侵される具体的な結果が現われるおそれがあるとだれしも心配しておると私は思うのであります。そのことを申し上げたのであります。
#128
○矢嶋三義君 関連して二、三点伺いますが、自民党所属の文部大臣として、与党自民党の文教政策を考慮するということは当然すると思うのですが、なるでしょうね。自民党の文教部会というのがありますが、そこへ参りますと、やはり党員の方々からいろいろ御注文が出るでしょうね。どうですか。
#129
○国務大臣(荒木萬壽夫君) もちろん出ます。
#130
○矢嶋三義君 その場合に、日教組はこういうことで困るからこうする必要がある云々と、そういう御意見も当然出られるでしょうね。
#131
○国務大臣(荒木萬壽夫君) そういうこともあるようでございます。
#132
○矢嶋三義君 先ほど豊瀬委員の質疑を伺っていたのですが、倫理綱領を非常にお詳しいようで、私もかつては日教組の組合員の一人だったのですが、私以上にお詳しいようですが、その解釈なり、それをどういうように運用をしているかという点について、日教組の代表からお聞きになったことがございますか。
#133
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 全然聞かないわけじゃございませんが、私自身、倫理綱領ないしは「新しく教師になった人々に」というものを取り入れまして、私自身で読んだことがあります。
#134
○矢嶋三義君 あなた、倫理綱領を読まれて、日本の教育の運用を非常に御心配になっておられるようですが、御心配をなさるのも当然かと思いますが、さて活字を見て、これ一体どういうふうに日教組を解釈し、これをどういうふうに運用していこうとしているのかということを責任ある人からお聞きになられたのですか、確かめてみたことがあるのですか、どうですか。
#135
○国務大臣(荒木萬壽夫君) それは日教組大会に列席したことはむろんありませんが。
#136
○矢嶋三義君 大会に列席しなくてもお聞きになっている、胸襟を開いて話し合ったことがあるのですか。
#137
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その要旨を新聞等で報道しております。それを通じてある程度のことは承知いたします。その意味で、倫理綱領についてもさらにこれを再確認するというがごとき線を出されておるということも新聞紙上で承知いたしております。
#138
○矢嶋三義君 間接ですね。それでもう一、二点聞きたいのですが、これはどうも中立性を侵すおそれがあるのじゃないか、だからここのところをこういうように直したらどうか。この運用はこう気をつけなければならないのじゃないかと、注意なさったことがございますか、どうか、責任者に。
#139
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 今申し上げたようなおそれありと私は信じておりますが。
#140
○矢嶋三義君 ただそれだけですか。
#141
○国務大臣(荒木萬壽夫君) それには、要れば、私は国民的立場、国民的気持を念頭に置きながら常に申しておるつもりでございますが、そういう角度から考えまして、少なくとも教師の団体たる日教組の組合員を覊束する目的を持っておるならば――それでないなら別ですけれども、そうであるならば、私が今申し上げたような意味でそのおそれがある。そのことを皆心配しておると思いますから、おそれのないようになすったらいかがであろうというふうなことは演説会等で申したことはございます。
#142
○矢嶋三義君 まことに失礼ですけれども、文部大臣、あなたのお子様が家で何か論文を書いているのをあなたが読んで、これはうちの子供がこんな論文を書いているが、思想的にどうなっているだろうと心配になられる場合、お子様に、これはどういう意味だというようなことをお聞きになられますか、それともおそれあり、おそれありということで、一切どう思っても御注意なさらぬと、家庭的で大へん失礼な質疑でございますけれども。
#143
○国務大臣(荒木萬壽夫君) そういう機会にぶつかりませんから。(笑声)
#144
○矢嶋三義君 われわれ笑いごとじゃないですよ。根本問題ですよ。特に文教政策のように六十万近くの教職員が働いているのですから、あなたは愛情というものを持たなくちゃならない。心配なさるおそれがあるなら、そのおそれが現実化しない場合は確めるし、それからそれに対して自分はこう思うがどうかということをやられなければ、血の通った文教政策、愛情ある文教政策とは言えないんじゃないですか。おやじがそういう場合に子供がすなおについて行くでしょうか。そこに根本問題があるんじゃ、ないでしょうか。その答えと、もう一点は、自民党の文教部会へ行けばいろいろ御意見があるということですが、はずみでやっぱりワクをはずすことがあるんじゃないですか。さっきから豊瀬委員に、政治的中立、政治的中立というが、そこに荒木ラインというのがあるのですか。その荒木ライン自身が中立性が保てるのかどうかということが、それ自体が問題だと思う。日教組が倫理綱領を作った事態は、それはやっぱり相手があってのことですから、あなたのところで勝手にラインを引いて、法律的に予算的にウルトラ的に研究をやれば、動あれば反動ありでやっぱり一方がこうなる。おやじががんとやれば子供もがんとやる。同じことで、自分だけが荒木ラインを引いておいて、そのポイントを、中立を侵す、中立を侵すと言って話し合いもしない、何もしないというのじゃ、これは議論にならぬじゃないですか。お答えいただきたいと思います。
#145
○国務大臣(荒木萬壽夫君) まあ党員としては政調会等に出ることもあります。今私は行政府におりますから、文教部会等に党員として列席することはございません。文教部会等で文教の諸問題を調査するから、政府側も参考に出てこいというお呼び出しを受けて行くことはむろんございますが、私が党員プロパーの立場ではない、党員であればこそ呼ばれるのでございますけれども、話の内容はそういう立場ではございません。文教の府をあずかる以前においてはいろいろ論議もいたしましたが、今日、常員の立場で文教部会で話をする機会はございません。
 それからさらに第二のお話でございますが、これは話し合ってどうだこうだということよりも、現に日教組として確認をされているものなんですから、それについての一応自分として客観的と判断すれば、教育をあずかる者として、教育をあくまで中立でなければならぬと思い続くべき立場において、そのおそれありという考えを述べることは、私は当然のことと心得て申し上げているのであります。
#146
○委員長(平林剛君) ちょっと速記をとめて下さい。
  〔速記中止〕
#147
○委員長(平林剛君) 速記を始めて下さい。
#148
○豊瀬禎一君 矢嶋委員の質問に答えられた大臣の答弁の中で、ちょっと尋ねておきたいことがあるのですが、私、時間がないので用語を割愛しながらしゃべっているのですが、先ほど申し上げましたように、日教組という組合の運動を基本的に規制するものは、日教組の綱領です。それは規約に明記されております。前回の委員会でも論議されましたように、たとえばILOの批准をいたしました個条につきましても、あるいは世界人権宣言的なものにいたしましても、やはりそれは一つの指標であり、理想とするところです。二十六年の日教組大会で倫理綱領が採択されました際に、私は当時、福岡県教組の委員長として、こういうものを大会において決定すべきものでないという意見を出したのですが、そのことは別にして、当時の議事録をごらんいただくとよくわかると思いますが、これは、このことに基づいて日教組の運動を体系的に規制するということでないので、一つの教師の指標として採択されたということを十分御認識願いたいと思います。このことにつきましては、時間がございませんので、きょうは触れません。一時までの時間の約束でございますので。本論に返りまして、大臣がたびたびおっしゃったのは、用語にこだわるようですけれども、「否定する箇所」としてありますけれども、大臣の御答弁では、否定するおそれがあるという答弁をしきりになさっておりますが、否定をすでにしているというのではないので、否定する危険性がある、可能性があるという御見解、いずれですか。
#149
○国務大臣(荒木萬壽夫君) もちろんおそれありということでございます。
#150
○豊瀬禎一君 そこでは私はもう一点だけにしておきたいと思いますが、前回の委員会におきましても、ILOに対する大臣の基本的な見解を私が尋ねました場合に、たとえば国内法と食い違った勧告が行なわれても、国際労働慣行上、これが望ましいということであれば、原則的にこれを尊重していくべきである、こういう御見解をお述べになりました。大臣は、先ほど私が触れました国連憲章、さらには世界人権宣言に対しましては、どういう基本的な御見解をお持ちでしょうか。
#151
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 詳しくは存じませんが、日本が国の意思として国連に加盟し、さらにはILOにも原則的にもう数十の条約を批准するくらいの態度をとっているということから考えましても、尊重すべきことは当然だという歩みを日本としてはしていると思います。私もむろんその例外であってはいけない。
#152
○豊瀬禎一君 そうしますると、国連憲章に言っております基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、一そう大きな自由の中で、社会的進歩と生活水準の向上とを促進するという宣言の精神、憲章の精神、さらには一九四八年に作られました人権に関する世界宣言の前文に、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と、平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」、同様に「諸国民は、基本的人権、人身の尊厳及び価値並びに男女の同権に関するその信念を憲章において再び確認し、且つ、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意した」という、このもの一つ一つの言葉ではなくして、この国連憲章の趣旨と、人権に関する世界宣言の趣旨につきましては御賛同願えますか。
#153
○国務大臣(荒木萬壽夫君) もちろんでございます。もちろんより以上のことを日本の憲法が日本人に保障していると心得ております。
#154
○豊瀬禎一君 次に、憲法の条章について論議しようとは思いませんけれども、憲法で、私の大まかに把握したところでは、二十一カ条にわたって国民の権利、義務を定め、主として基本的人権の享有について強く強調いたしておりますが、その中で、特に私がただいま世界宣言と国連憲章と関連しながら、教師の倫理綱領の中立を否定するおそれのある個所と指摘しておる文章と憲法で最も関連あると判断されるのはどこですか。
#155
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 憲法の条章そのものには明文的に関連は発見し得ないと思いますが、ただ第十二条、第十三条の基本的人権、自由権といえども乱用を許さない。世界公共の福祉に貢献する責任を負うのだという宣言的な規定がある。それにもいわば関連をしようかとも思いますが、もっと具体的には、先ほど来お尋ねに応じてお答え申し上げたように、教育基本法の中立確保の規定、それが最も身近かなものと考えております。
#156
○豊瀬禎一君 憲法の十二条並びに十三条は、個人としての尊重、生命、自由、そして幸福追求の基本人権を最大限度に保障したもので、これが適用の際の問題を述べたのですが、これを肯定されるとすれば、国連憲章の精神、世界人権宣言の理想とするところ、さらに日本国憲法が国民の権利義務として定め、同時に憲法の前文並びに制定の際の勅語等から判断いたしまして、私が冒頭に大臣の見解をただした倫理綱領のエキスともいうべき平和の擁護ということ、民族が他国の支配に屈せず独立をするということ、不当な利潤、配当がなくて搾取も否定され、貧乏と失業のない社会を実現していくということは、国連憲章においても人権宣言においても、特に日本国憲法は、このことについては前文その他の条章で強く主張いたしておりますが、これについて否定されますか。
#157
○国務大臣(荒木萬壽夫君) その限りにおいては否定する理由はないと思います。
#158
○豊瀬禎一君 そうすると、平和の擁護と民族の独立、搾取と貧乏と失業のない社会の実現は、われわれに課された歴史的課題であるという倫理綱領の精神は、原則論においては日本国憲法の精神であるという御答弁と解しますが、そうですか。
#159
○国務大臣(荒木萬壽夫君) おおむねその用語に関する限りは御指摘のように考えます。
#160
○豊瀬禎一君 日本国憲法の精神に盛られておる用語並びにその理想とするところが倫理綱領のエキスであるということも認めながら、なお倫理綱領が教育の政治的中立を否定する危険性があるとおっしゃるわけですか。
#161
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 倫理綱領及びその解説書のすべてを通読しまして、そう感ずるのであります。
#162
○豊瀬禎一君 時間がありませんので多く言いませんが、これは前回の委員会でも私が指摘いたしましたように、もちろん物事の判断というのは、群盲象をなでるようなことではいけないと思います。しかし、全体の精神、倫理綱領を貫くものはこういう精神であるということは前文に書いてあります。これはお読みいただいたと思います。これが倫理綱領を貫く精神である。そしてそのことは、先ほども触れましたように、日本教職員組合の運動規制のものではなくして、教師のあるべき一つの指標として採択をされた。この二つの角度から、そして倫理綱領の前文と同時に第一項の、しかもあなたの資料の中にはわざわざワクがはめてありますので、ここを重視しておるのだろうと憶測いたしますけれども、これは倫理綱領を貫く平和の擁護と民族の独立、搾取と貧乏と失業のない社会の実現ということは、先ほど大臣も指摘されたように日本国憲法の精神である。これに貫かれて教師たるものはこの指標実現のために、憲法の精神実現のために、こういう心がまえ、姿勢を持つべきであるという立場を掲げたものが、具体的にはそのことによって教師が教壇の中で、法律で定める学校の中で特定の政党支持、反対を教えたならば問題でしょう。しかし、教師のあるべき指標として採択され、しかも中心は日本国憲法の精神、大きくは世界人権宣言並びに国連憲章の精神を随所に、調べてごらんになるとわかると思いますが、取り入れてあります。これをしても教育の政治的中立を否定するおそれがあると大臣がおっしゃるならば、それは大臣の教育の政治的中立というものは、憲法や教育基本法ないしは私が先ほどあげた教育の政治的中立確保に関する措置法の立場でなくて、矢嶋委員も指摘された、あなたの所属される政党、あるいはあなたの個人イデオロギーに基づくものであるという判断を持つのですが、大臣の御見解どうですか。
#163
○国務大臣(荒木萬壽夫君) 先ほども申し上げましたように、倫理綱領とその解説書である「新しく教師となった人々に」というのを通読してみまして、青少年をこの歴史的課題解決のためのにない手として育成せよという要望をすること、そのことに集約された全体の総合的な判断からいたしまして、私はもし日教組に所属される組合員の一人々々がそれに従って現実行動せねばならない要請であるならば、政治的中立を乱すおそれありと判断いたすのであります。
#164
○豊瀬禎一君 大臣にお願いいたしておきたいのは、私が説明いたしましたように、二十六年に採択される際には、これが日教組の運動規制という形でなくて、教師の教科書というもの、参考書といいますか、指標として望ましいあり方として出されたということ、それから解説書というものは、大会において一切論議されていないということ、それから「新しく教師となった人々に」というのは、日教組の機関で一度も採択されたことでなくして、資料として配付された、たとえば矢内原忠雄先生が一つの教育に関する書物を出される、あるいは宗像先生が教育宣言というものを岩波から書いて出される、これを教師が購入して読む、これと全く同程度の意義を組織の機関としては持っておるものである。そこで大臣に、時間がありませんのでお願いいたしておきたいのは、もう一度、倫理綱領の本文を十分ごらんいただいて、もっとそれでもなお大臣が問題があるとおっしゃるならば、もう少し前般を通覧してみると、エキスは憲法の精神であるということを肯定されるけれども、全体を見るとそうでないという言い方でなくして、やはり九月一日、三十一日に再々指摘いたしましたように、具体的に、平和の擁護というのが何で教育の政治的中立を侵すものか。その他の文書につきましても再度御研究をいただいて、もう少し具体的に資料をもって御答弁をお願いいたしたいと思います。
#165
○委員長(平林剛君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#166
○委員長(平林剛君) 速記をつけて。
 本日はこの程度で散会をいたします。
   午後一時四分散会
ソース: 国立国会図書館
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