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1960/05/12 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第42号
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1960/05/12 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第42号

#1
第038回国会 農林水産委員会 第42号
昭和三十六年五月十二日(金曜日)
   午後二時九分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     藤野 繁雄君
   理事
           秋山俊一郎君
           櫻井 志郎君
           亀田 得治君
           東   隆君
           森 八三一君
   委員
           青田源太郎君
           植垣弥一郎君
           河野 謙三君
           重政 庸徳君
           田中 啓一君
           高橋  衛君
           仲原 善一君
           堀本 宜実君
           北村  暢君
           清澤 俊英君
           小林 孝平君
           戸叶  武君
           北條 雋八君
  国務大臣
   農 林 大 臣 周東 英雄君
  政府委員
   農林政務次官  井原 岸高君
   農林大臣官房審
   議官      大沢  融君
   農林省畜産局長 安田善一郎君
   水産庁次長   高橋 泰彦君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○農業基本法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○農業基本法案(天田勝正君外二名発
 議)
○農業基本法案(衆議院送付、予備審
 査)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、伊上三案を一括議題として質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言をお願いします。
#3
○戸叶武君 農林大臣に対しまして、所得倍増と農業人口の削減並びに自立経営農家と農業共同化の問題及びこの農業資金としての農林予算と農業投資、この三点にしぼって質問を展開したいと思います。
 池田内閣の一枚看板は所得倍増論でありますが、経済成長率を九%と見ての所得倍増といっても、農業は二・八%ないし二・九%で、すなわち三分の一であるから所得も従って倍増でなく、その三分の一であるはずです。ところが池田首相は、本会議における私の質問に対して、他産業のように倍とか倍半にはならないが、五割程度ふえると答えておりますが、この見解は周東農林大臣も同様の御見解だと思いますが、その根拠をお示し願いたいのでです。
#4
○国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点ですが、これはたびたび今までもいろいろな場所で御答弁いたしておりますが、農業に関しては他の鉱工業生産と違った関係上、その成長度合いも、年年の伸びというものは御指摘のように低いのであります。二・九%というものが、農業だけについて考えてみればそういうような形でございます。従って、これをそのまま伸ばして参りますと、大体十年で四〇%前後ということになりますが、私どもは一面において、農業の生産性というものをこれに織り込んで考えていきたいと思っておるわけです。従って、結局各農家、農業労働者というものに対する所得の増、従ってそれから起こる生活程度というものを均衡せしめるというねらいからいいますと、農業それ自体の伸びというもののほかに、各農業従事者の生産性向上による所得の増というものを考えていきたいと思っておるわけでございます。との面から見ますると、現実の状態として、最近におきましては、御承知のように年々農業労働人口というものが、三十五万ないし四十万というものが他産業の発展に伴うてその方に吸収されて参ります。こういう点は、私どもはその現実には着目しつつ、そうしてこれを有効に生かしつつ残った農村における農業者の所得を上げていくと、こういうことが一つのねらいでございます。その面からいたしますと、伸びていく量というものは年年やはり二・八%ずつでありましたか、なっております。この両面から考えあわせますると、農業の一人当たりの所得というものの伸び率が他と相当均衡を得て、その格差というものを縮小して参る、かように考えておる次第であります。
#5
○戸叶武君 私は相当の伸びとか、格差を縮小するというのでなく、具体的にこの農民の所得が倍増はしないが五割程度伸びるという、その五割というところの点を承っているのでありまして、農業の基本対策の答申では、当初日本の経済成長率を七%と見て、その中における農業所得全体の成長率を三%とし、農業人口の減少を二%という建前から、事業者一人当たりの農業所得成長を五%としてはじき出したのですが、その考え方は一応捨てて、池田さんの九%の成長率というものに改めながらも、依然として前の数字を根拠としてこの五割程度の伸びがあるという点を総理大臣は答えておりますが、数字に明るいといわれる池田さんが、この数字の面ではずいぶんあいまいな答弁になっておりますけれども、農林大臣は自分の担当、所管ですから、もう少しこの点をはっきり答えてもらいたいと思います。
#6
○政府委員(大沢融君) 倍増計画ではじいております数字は、農業生産額につきましてはただいま農林大臣からお話がございましたように、年率二・九%で伸びております。三十二年が基準になりまして、目標の四十五年には約四五%伸びると、こういうことになります。ただ、今お話がございましたように、就業人口の減ということもございますので、農業所得として一人当たりの所得といたしましては年率五・八%ずつ伸びるということで、基準年次に対しまして、目標年次は一人当たりにいたしますと二倍少々の所得になる、こういうことでございます。
#7
○戸叶武君 どうも今の答弁は納得いかないのですが、池田首相は農業の就業人口の減ることが一人当たりの農民の所得をふやすゆえんであるというふうに答えておりますが、やはり農林大臣も、農業人口を減らすことが農民の所得を増加させる要因であるというふうに認定しますか。
#8
○国務大臣(周東英雄君) お尋ねに対してお答えいたしますが、原則は農業それ自体における生産を拡大し、これが大きく伸びるということが一つの目標であります。しかし私は、今の質問の中にありましたように、農業人口を減らすことが、ということは、意欲的に農業人口を減らすというふうにとれますが、そういう意味でなくて、私は農業というものは、農業の部門内部だけでその生産性を高めるということは、これは困難なんじゃないか。これは日本の農業というものも他の産業との一体の中において相助け、相補いつつ日本の国民経済を発展させることが必要であり、そのことによって初めて農業の伸展もある、また農業の発展によって他産業の発展も出てくるわけであって、その点は相互依存関係にあると思う。たまたま第二次、第三次産業部門における非常に成長の高い、発展の現状において、その方において労働の吸収というものが行なわれております。その事実を見つつ、従来から農村における過剰人口、過剰労働投下、それが過小農の土地に行なわれるということを改善、発展させて、われわれが意図する農村もまた近代的な農業を営ましめる方向に持っていけるいい契機になっておると私は思う。そういう意味合いにおいて当然農業も考えなければならぬ、生産性の向上ということは取り上げていかなければならぬし、その意味においてそういう結果が出てくると、こういうことであります。
#9
○戸叶武君 農業就業人口は現在一千四百五十万ですが、今後十年間にどれほど減るか。下村治博士及び池田首相は、当初はその三分の一減ると言い、現在は六割削減というふうに改めておりますが、六割削減としても、池田さんの見解の通りにいくと九百万人も減るということになっておりますが、基本問題調査会及び経済企画庁あたりでは四百万人程度しか減らないというような見方をしておりますが、農林大臣はこの数をどのように考えておりますか。
#10
○国務大臣(周東英雄君) 大体これは、今御指摘のような、審議会の答申によりますと、大体千四百五十万人が千万人ないし千百万人ということになるので、大体三割強の減少と見ております。この点は池田首相においても私は何ら変わっておらないのです。よく言われまする六割削減論という言葉をお使いになりましたが、これはたびたび各方面に言っておるように、そういう意味が全部農業を削減するというのじゃなくて、これは総理の考え、意図するところは、できれば農業におきましても農業だけを行なって、そうしていわゆる専業農家ですね、行なって、それで人並みの生活のできるように引き上げていきたい。そのことは、今日、兼業農家というものは二つに分かれて、第二種兼業の方がだんだんふえ、そうして専業農家もふえていく、中間が上下に分かれるという格好になっておる。そういう面も実際のものから将来引き伸ばして見ると、大体これにある程度の施策を加えて、将来農業だけでやっていくものが大体五割程度前後になるのじゃなかろうかということが、何か非常に誤り伝えられ、利用されて、四割くらい残り、あとはみんなやめさせるという意味にとられたのですが、私はそうではないと思っております。大体兼業農家として残るものが三割ぐらい、また、専業農家で残るものが四割くらいということでありますが、たまたま、非常に強く農業だけで成り立ち得る農家というものが、将来四割くらい、あるいは五割弱できる。あるいはまた、兼業農家といっても、農外所得で主たる生計を営むということになって、農業の部分はごくわずかの形になるから、社会的に見てもそれを農業といわれぬかもしれぬというようなことが表現に出て参りまして、兼業農家の世話はせぬということが論ぜられておりますが、これはたびたび総理が言っておりますが、兼業といわず、専業といわず、その行なう農業部面に対してはそれぞれ必要なる保護助長の政策をとっていこうと、こういうことを考えておるわけでありまして、私は総理の言ったことと、審議会等において見ておりまする農業人口の減の見通しというものは、そう違っておらないと思います。
#11
○戸叶武君 今の農林大臣の答弁だと、農業人口は三割強減少する程度であり、そうして専業農家を四割、兼業農家を残りの三割というふうな配置になっていくのだというような御見解のようでありますが、それは農林大臣の御見解ですか、池田首相とも一致した見解ですか。
#12
○国務大臣(周東英雄君) これは総理との間に意見の食い違いはございません。
#13
○戸叶武君 池田さんの七割削減論が六割削減論となり、さらに三割削減論となって、君子豹変すで、倍増どころかだいぶしぼんで参りましたが、そこで政府は、十年後には二・五ヘクタールの自立経営農家を百万戸作るというふうに言っておりますが、それは二・五ヘクタールで粗収入百万円と踏んで、農家の所得六十万ないし七十万、すなわち、現在の一・五ヘクタールで三十万ないし三十五万程度の自立経営農家では所得倍増できないから、そういうふうに持っていくんだという考えに基づいてのそれは施策でありましょうか。
#14
○国務大臣(周東英雄君) 所得倍増計画においての一つの試算として現われたことは、これはあくまでも一つの構想であります。で、これはもう戸叶さんも現実は御承知と思うのですけれども、まあ普通、面積から言って、特殊な農業経営というものに対する近代化とか何かやる場合に、土地だけふやせば、ある程度粗収入百万円程度のものはとれるということは一つの試算であります。しかし、私どもは、現実に即して見ましても、一町五反でも相当それはやっていける部面もありますし、最近これは全国的に、それが全部とは申しませんけれども、全国の4Hクラブ、農村の青年によって組織されておる若き人の農村改良計画ですね、これは大体4Hクラブに属する者は二十五万人と聞いておりますが、その約一千人が代表として東京に参りまして、実際の経験といいますか、実験に基づく、実績に基づいての報告から見ましても、徳島県その他におきましての報告、一々ございますが、これはむしろ反別に見て八反歩ぐらいで、粗収入は百五十万円を得ておるということの実績報告がございます。私は面積だけに固執する必要はないが、しかし、場所によっては面積を拡大し、反当たりの生産量が少ないから面積を広げることを必要とする場合もございましょうし、ところによっては、内容の経営形態というものの近代化、高度化をはかるという方面なり、これに畜産をどう入れていくかという経営の内零を考えていった場合には、必ずしも面積にとらわれる必要はないと思います。ただし、御指摘のように、所得倍増計画という構想が出ておりますが、これは一つの構想でありますし、ところによってはそういうことが必要であろうし、それに対する土地をいかに増加していくかということも考えていかなければなりませんし、この土地の流通というものに対するやり方の円滑化をはかるために法律改正もいたしておりますが、一面においては、今後は経営の内容に改善を加えつつ、面積が拡大できぬところでも、これは粗収入を上げていくような方向に持っていく、これが私どもの考え方であります。
#15
○戸叶武君 政府は所得倍増の構想において、現在の農家戸数六百万戸が十年後には五百五十万戸、すなわち、五十万戸減ると推定しておりますが、この六百万戸の農家のうち、百万戸が自立経営農家となるとしても、あとの五百万戸、そのうち五十万戸減るといたしましてもそうすると、四百五十万戸のあり方はどういうふうになっていくというふうに見ておられますか。
#16
○国務大臣(周東英雄君) これは先ほども労働人口について申し上げましたが、現在、御承知の通り、農家戸数によって分けて見ますると、現に専業農家がやはり三分の一ぐらいの二百万戸前後でしょう。それから第一種兼業農家、農業所得によって主たる生計を営み、兼業収入が従になっておるものが大体三分の一でございます。第二種兼業農家、主たる収入が農外所得であって、農業所得が従たる関係になっておるものがまた三分の一ぐらい。これが先ほど申しましたように、まん中の層が上下に分かれておるようであります。従って、将来の見通しとして、先ほど申し上げましたように、農家戸数としましても、兼業農家の方が、第二種兼業がふえて、第一種兼業が減る、一部は専業農家の方へ私は行くだろうと思います。その中から、先ほどの倍増計画に出ております一つの構想は、土地から見れば二町五反、百万戸ということでありますが、私が今申し上げましたように、土地の大きさによらず、一町でも、農業経営のやり方いかんによっては、粗収入は百万円、百五十万円上げることに行くことは、やはりそれぞれの農家に対する所得を大きく引き上げることになると、かように考えております。これらの施策は、これからの法律通過後における各地方におけるそれぞれの形態に即して私どもは指導及び実施をしていきたいと思います。
#17
○戸叶武君 現在の自立家族経営と目される一・五ヘクタール以上の農家が五十九万戸にすぎないという現状のもとにおいて、今度は二・五ヘクタールのものを百万戸作るというのには、耕地を拡大しなければ、また、耕地の所得がスムーズにいかなければそういうことは実現できないのですが、耕地もそれほど拡大しようという努力を政府はしないし、それから資金の裏づけも十分やっておらなくて、どうやってこの二・五ヘクタールの農家が百万戸でき上がるか、その奇跡の種あかしを農林大臣から一つ手品師のようにやってもらいたいと思います。(笑声)
#18
○国務大臣(周東英雄君) 奇術師にされましたが、私は別にその種あかしをするような奇術を持っておりません。しかし、これはただいまもお話いたしましたように、二・五ヘクタールというものは一つの構想であります。しかも全国の各地において全部二・五ヘクタールなくても、粗収入を百万円なら百万円以上上げ得る農家が現にあります。先ほど私が申しましたように、若き二十才以内の青年が現実に即してやっておる実態というもの、それ自体はわれわれの農業基本法制定よりも一歩進んでおるといってもいい。こういう面からいたしまして、必ずしも面積にこだわらないと申しましたが、しかし一面におきまして、場所的には土地の所有農地の拡大ということも必要でございましょう。従って、それに関しては、農地の移動に関して、これのしやすくなるためには、あるいは農協法の改正によって土地の信託制度なりを設ける。これは売却のため、あるいは使用権設定のために信託制度を設けるという制度、あるいはこれに関連いたしまして、資金面におきましては、今日でも自作農資金というようなものが一部ありますが、私どもはこれは将来、現実に即し将来どういうふうな形に成長農産物というものを奨励していくか。しかもそれは地域的に、それぞれの適地においてどういうものを伸ばすかということと関連いたしまして耕地の造成というものは当然考えていくつもりであります。ただ、私どもは抽象的に基礎なくして何ぼということの増加計画は立てられませんので、本法制定後におきましてはすみやかに各費目に従ってどういう農産物を増加する、地方別にどう考えるか、どういう開墾あるいは造成の余地があるか、またそれに対しては水の利用というものをあわせ考えつつ、水はどういうふうになるかということを考えつつ、適当な土地を、ある場面においては造成に関して積極的に計画を進めるつもりであります。いずれも将来の見通しの上に立って着実に必要量をきめ、それに関して必要な土地造成に関する財政並びに金融処置を講じたいと思います。
#19
○戸叶武君 農林大臣の答えは質問といつもそらして自分のペースで書いてある答弁書を読んでいるようですが、なるたけ質問に対して的確に答えてもらいたいと思うんです。現在この〇・五ヘクタールないし、一・五ヘクタールの農家戸数が二百九十四万戸、北海道をもちろん除きますが、それから〇・五ヘクタール以下の農家戸数が二百二十二万戸、さらに四ヘクタール以下が二百五十万戸、こういうふうな形でこの完全非自立家族経営に属する面積や就業人口というものが相当の数に上っておるし、また兼業農家の問題ですが、兼業農家は三百九十四万戸という数字が出ておりますが、この農家戸数六百万戸の六五%にも当たるところの兼業農家のあり方というものは非常に重要な問題でありますが、政府は自立経営農家というものだけにばかに力こぶを入れて、そうしてこの小農、零細農及び兼業農家には農政の愛情の手が届かないような、今までも三割農政といわれたので、現実的には冷たい処置をしているんですが、今度はもっと冷たい農政を遂行しようとしておりますが、これらの階層に対してはどういう具体的な手を打とうとしているのでしょうか。
#20
○国務大臣(周東英雄君) 私はあなたの御質問よく聞いて、別に書かれた答案書を読んでおりませんから御承知を願います。私は今のお尋ねでございますが、先ほども私はその点に触れて答弁いたしております。私どもは一つのねらいは家族経営の自立経営農家というものを育成をするということが一つの大きなねらいでありますが、だからといって兼業農家を捨てるのでございません。兼業農家の農業を営む部分についてはそれを効率的に引き上げる必要がある。従来は、ともすると、戦後における兼業農家の中には食糧確保のため土地を持っているという兼業農家がかなりある。そういう問題の土地は最も効率的に使われていないのじゃないか。むしろそういう面については、同様に専業農家の行なう農業についても、兼業農家の行なう農業についても、ともにわれわれの今後の農業政策を展開していこうと思っております。従って、それらについては、技術の高度化が必要ならばそういう面に対して必要な措置をとりますし、また機械化ということが必要な部分については、その兼業農家の持つ農地の過小ということからいたしまして、そういう場所におきましては、農業経営に関しては共同利用設備、組織についての共同利用化、あるいは進んで協業経営というところまでいくか、いずれにしてもそうした各面を考えつつ助長し、必要なる財政あるいは金融の助成をいたしたいと考えております。
#21
○戸叶武君 答弁が非常に抽象的になって、必要なる措置というような点で言われておりますが、この農業基本法の、やはり農業憲章であるという名のもとに非常に抽象化されて、具体的な内容というものをうたわずにこの骨抜きのような政府案を出しておりますが、西ドイツで一九五五年に農業基本法を成立させた動機というものは、地方における労働君が、工業と農業とに従事する者では所得が三〇%の違いがある、この所得格差の是正というものがその動機であったと思うのです。ところが、日本では都市と農村との所得格差が現在三対一といわれております。これは国連の年鑑でも、ILOの年鑑でも、日本政府の統計が載っているので、世界中で日本という国はおかしな国だというふうにこれは奇異の眼で見ているのでありますが、政府の農業基本法は、その第一条で、「農業の自然的経済的社会的制約による不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向上すること及び農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、」というふうにうたっておりますが、もう少しこういう何かへっぴり腰で逃げたような表現じゃなくて、もっと積極的に農民の所得を増大することができるという裏打ちがどうして政府はできなかったのでしょうか。その間における、この法案だけ読んでいちゃわかりませんから、農林大臣の御心境を承りたい。
#22
○国務大臣(周東英雄君) 農業従事者の所得を増大して、その生活の格差を解消する、均衡せしめるという言葉は、はっきりと所得の増加を意味しているわけであります。ただしかし、生活を他の産業の従事者に均衡せしめるということは、その一番大きなねらいは、所得の増大であることはもとよりでありますけれども、生活の均衡ということの中には所得の増大だけでは足らない各般の問題がありますので、特にそう書いてありますが、その生活の均衡を得しめる内容のおもなものは、所得の増大であることは言うまでもございません。しこうして一面におきましてはその所得の増大をなさしめるについては生産性の向上ということがなければならないのでありまするので、かように書いてありますが、この点で当然に所得の増大ということを意味しているわけであります。
#23
○戸叶武君 かつてイギリスのエコノミストの記者が日本には潜在失業者が七百万人程度あるということを指摘したことがありますが、総理府の就業構造基本調査によっても六百七十七万人の不完全就業者があり、そのうち農民は六百五十万に及ぶといわれております。この潜在失業者をどう解決するかという問題が農業基本法においても相当問題になると思うのでありますが、現在労働者が生産に従事しても、それを償うだけの所得を得てないというのが日本の現状でありまして、これは統計学者の人々によってもいろいろ指摘されておりますが、都市の労働者の人たちと比較しても、非常に農民の労働に対する報酬が低いといわれております。労働報酬が全国平均一日当たり八百円くらいといわれているのに、農民の方では三百円前後じゃないか。米の場合は別だが、他においてはそういう低いところにあるのじゃないかといわれておりますけれども、これだと日雇い労働者程度の所得しか得てないことになっているのですが、これに対して具体的にどういうてこ入れをやろうとしておりますか。
#24
○国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねですが、私どもは労賃の比較によっての均衡ということをねらっていないのでして、先ほども申しますように、生活における水準の均衡ということであります。しかし、その中にはもとより収入というものが中心にたります。その収入に関して農業所得というものを、その中に入っておる農業労働の対価と申しますか、報酬をいかに見積もるかということについては私ども十分に今後とも考慮はしていかなければならぬのですが、ただ一つ一つの米について何ぼ、野菜について何ぼというような意味じゃなくて、それらの生産に関する総所得の上において他と均衡を得しめたい。それは生活に現われる面においてという考え方であります。
#25
○戸叶武君 農民が農業生産に従事するところの労働力に対するところの報酬、それは所得と結びつくものですが、そういう問題を米の問題に対して、あるいは米作地帯でなく丘作地帯においてはどうなっておるか、すべての産業に対してメスを入れて、そしてこの農民の生産に従事するところの所得というものをどの程度につり上げ、そして安定さしていかなければならないかというのがほんとうは農業政策の基本的な問題です。そういう問題を回避して、ただ生活の均衡というけれども、生活というものは所得との結びつきなしに生活のささえはないのでありまして、農林大臣がそれを何でもないような形で回避するということはおかしなことだと私は思うのですが、どうも農林大臣の考え方あるいは池田さんの考え方にもあるのですが、日本農業の自立性というものに自信を失って、結局第二次産業なり第三次産業に依存して、そこの面から農業人口というものを吸収してもらい、それのお情けでもって所得の倍増論と結びつくような形の、一つのビールのあわのようなものでしょうが、そういうものを作り上げようというような一つのねらいのようですが、農林大臣は日本の農業に対して、農業の自給態勢、それは戦時中における自給態勢とは違いますけれども、いわゆる政府が相当に力を入れるならばもっと自給度が高まるということが明らかですが、この自給度を高めようとしないで、農業人口を他産業に吸収するということだけに力点を入れているようにしか私たちには印象づけられないのですが、その間の関係はどうなっておるでしょうか。
#26
○国務大臣(周東英雄君) 私は戸叶さんのお言葉ですけれども、農業の生産に関して所得をはかるときに、その価格というような問題、いろいろ問題が出てくるということは私は全くお説の通りだと思う。その際に、あなたのお話を聞いておりますと、この際農業基本は価格をつり上げておくということが農業者を保護するゆえんではないかというふうに言われる。
#27
○戸叶武君 そんなばかなことは言いません。
#28
○国務大臣(周東英雄君) 私はそういうことは考えません。私は今度のケネディの教書を見ましても、私ども決して、農業を他産業に従属せしめるというお尋ねですけれども、そんなことは考えておりません。私はそういうふうに、農業は他産業の従属とも考えないし、また他産業が農業の従属者とも考えませんが、農業と第二次、第三次産業、いずれも相互に相助け相補いつつ発展していくものであって、あなたも御勉強になってケネディの教書をお読みになっていると思いますが、これなんかは、農業は他産業によって発展し、他産業も農業があって発展する。農業の生産物を拡大されて、その市場がよりよくなるということは農業者の購買力もふえて他産業も栄えるし、また他産業の方がだめになれば農業の方も困るというふうに、これは相互に助け合わたければならぬ。しかもその間における価格というものを、所得にも関係するが、消費者所得の関係の問題についてはやはり一つの標準の価格で取引されていかなければならぬし、一面、生産者の方を今お話のように価格をつり上げてというようなことになっても、これはもちろんあなたも不当にということは決してお考えになっていませんと思いますけれども、やはり標準価格で安定させるということが消費者に対しても私は必要なことである。それが不当に標準価格を下回るような形で農家の方がまた買いたたかれないようにするのにはどうするかということが、今後の農業基本法の制定後において私たちのやらなければならない施策の要点だというふうに思いますが、そういうふうに私たちは考えております。従って今の最後のお話でありますが、決して私どもは農業を他に従属せしめ、ほかの産業の発展によってこちらの発展を考えるということは思っておりませんが、これは全産業一体として考えた場合に、他の産業の発展によって当然農業も利益を得、農業の発展によって他産業も潤うということであれば、現在の日本の高度成長しておる第二次、第三次産業発展に必要な農業労働移動という現実を冷静にながめつつその方向へ持っていく。農家の二、三男等につきまして、よりよき職場を得て、所を得て収入を得るようにし、それが必要なら職業の訓練なり、職業紹介、技術訓練もやって、よりよき職場を縛るように努力をするということの政策はとらなければならぬ。あなたが先ほどお話しになった、そういうふうに言っても、最低賃金とか賃金が悪くてだめじゃないかと言われるが、それは現実において今日までそういうことはあったかもしれませんが、今後は今日の高度成長に伴ってその賃金体系についてもあわせて考えていくことが農業の発展にも役立つと私は考えております。
#29
○戸叶武君 私は価格問題には触れないで、所得の問題だけを言ったのですが、どうも農林大臣は少しそのところをピントを故意に欠いていると思うのですが、ケネディの教書の動機となったのでも、これは農林大臣は御存じと思いますが、今までの共和党の拙劣なあの二割生産削減によるソイル・バンク――土地銀行の施策というものが、この七年間において農民の所得を減退したという具体的事実を基礎として、これを撃破しながらあの選挙にも勝ってきたので、その上に立って、一九二九年の世界経済恐慌に次ぐ、今アメリカには経済不況が襲うておるというきびしい認定のもとに、要するに、アメリカの農業生産物をいわゆる押えるという方向よりは、外にどうやって売りつけるか、貿易の自由化とドル防衛の名によって、アメリカの農産物が日本にどう殺到してくるかというのに、われわれはどうこれに対応するかというので、アメリカの立場とこっちの立場とは、攻める者と守る者との違いですから、どうかアメリカのことと日本の農業政策とを混同しないようにお願いしたいと思うのです。
 そこで、次に、自立経営農家の育成か、農業共同化の促進かの問題でありますが、この政府並びに社会党の農業基本法をめぐっての政策論争というものが問題の焦点になっているようでありますが、農業構造の改革に関して、政府案では第十五条において「国は、家族農業経営を近代化してその健全な発展を図るとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずるものとする。」としるしております。ところが、政府案は、十年後に二・五ヘクタールの自立経営農家百万戸を達成するといっているのですが、それすらも数字の根拠が明確でなく、農林大臣は、何も二・五ヘクタールというものに関係なくて、一ヘクタールであっても、酪農やあるいは果樹栽培や、いろいろなものによって農家経営が成り立つようにすればいいんだというふうに言っておりますが、それとこれとは違うのでありまして、ここの、要するに「できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成する」と、六百万戸のうち、どのくらいの程度が自立経営になるように育成できるというお考えですか。二・五ヘクタールの百万戸以外に、どのくらいできてると思っておりますか。
#30
○国務大臣(周東英雄君) それは先ほども言いましたように、農業だけで自立して家族経営でやっていける農家を一つ考えていこう。それは先ほど言ったように、だんだん、いろいろな統計から考えましても、大体将来目標としては四割弱のものがその方向に進めるのじゃないかと思います。あなたは今、十五条の関係からいって、これをやるのには二・五ヘクタール百万戸じゃないかと、こういうお話でございますが、これは自立し得る農家というものを作るということであって、それはもとより、お話のように、一つの構想としての面積からいって、二・五ヘクタールなくちゃならぬ所もございましょうし、それ以下でも経営の内容のやり方によっては、面積はそれだけなくてもやれるものもありましょう。いずれにしても、いかなる形にか自立経営農家を作ろうというのが私どもの趣旨であります。しこうしてあれは参考と申しましたけれども、さらに私どもは、あくまでも今後における――今アメリカのことをおっしゃった、あれと日本は同じ立場にあるとは思いません。しかし、日本としては、やはりいかなる場合でも、作ったものが売れていくためのものを作っていくということでなくちゃなるまい。これが農家に最も親切なことであります。そういう意味において、今後における需要の伸びるものを作っていくのについて、どれだけの土地がどれだけに足らぬか、どういうふうな形でいくのかということに沿いつつ、たとえば今の構想であります百万戸、二・五ヘクタールを持たせるのがいいのか悪いのか、それに対する必要量はどうかということは当然考えていきます。いきますけれども、ここに書いてある十五条の規定そのものが常にあなたのお話のように二・五ヘクタール、百万戸のものをここに考えているという条文ではございません。
#31
○戸叶武君 私は、それですから、百万戸以外にどういうふうに具体的に、自立経営農家を育成すると言うが、育成するのかということを聞いているので、しかしそれも、前から言ってものれんに腕押しですから、これは避けますが、農業基本法の目的とするものは、やはり社会党案の第一条において示しているように、「この法律は、わが国農業の構造改革を通じ、その生産力を飛躍的に拡充して農畜産物の自給度を高め国民経済の発展に寄与せしめるとともに、農民の所得及び生活水準が他産業に従事する者のそれと同一水準になるように高めあわせて農村と都市との生活文化水準の格差を解消することを企図し、そのための基本原則を定めるものとする。」という規定の方がどうも政府のものよりはりっぱにできていると思うのです。これは比較してみて、冷静に見ても、軍配はやはり社会党案に上がると思うのですが、この政府案の方には、本会議における代表質問の方も、自給度を高めるという点にどうも力が入れてないじゃないかという点を心配しているようですが、今までの答弁を聞きましても、他産業との総合的な関連において――これは一国の国民経済は当然のことでありますが、他産業との総合的な関連の上に立つのにしても、隷属でなくて、農業自体の自立性というものがなければ、農業政策というものが、今の政府の政策のように骨抜きの農業政策になるのです。で、この政府案は、農業経営の自立経営について「正常な構成の家族のうちの農業従事者が正常な能率を発揮しながらほぼ完全に就業することができる規模の家族農業経営で、当該農業従事者が他産業従軍者と均衡する生活を営むことができるような所得を確保することが可能なものをいう。」というような説明をつけて第十五条の中に概念規定をやっておりますが、このような概念規定のもとに自立経営というものに力を注ぐのはけっこうですけれども、非常に農政というものがこれじゃぼけてくるじゃないかと思いますが、これに対してどういうお考えを持っておられますか。
#32
○国務大臣(周東英雄君) なるほど「自給度を高め」という言葉が書いてないから、どこに目標を置くのかということでありますが、この自給度向上、国内においてできるだけ必要なものを作るということは、これは当然なことだと思います。その点は、ただし戦争中にあった、これはやむなき仕儀であったかもしれませんけれども、この経済の不合理性というものをもそのままにしておいて、何でも国内で作ればいいというようなアウタルキーのような思想、これは今日の段階ではとるべきでないと思うのです。しかし、私どもはそういう意味でなくて、政府は、第八条におきまして、重要な農産物につき、需要及び生産の長期見通しを立て、これを公表し、第何条でしたか、この長期見通しをもとにして生産性を高め、生産を増大するということは、とにかく第九条でありましたかにこれを書いておるわけです。あくまで今後の問題は長期見通しを立てて、需要に応ずる供給をし、その供給は可能なる限りは国内でやらせるということはこれは当然だと私は思います。それよりも今後の問題は、その当然の問題は八条、九条に表わし、そうして第十五条では、主として個人の生活というものを他産業に優先均衡せしめるためにはどうするかという一点において、まずその農業自体における生産性を高めることが、農業というものを、他の産業に対して、あるいは国民経済に寄与すること大ならしめると同時に、それによって個人の農業従事者に対する所得も上がるから、生産性を高めようというのが一点であり、同時にそれによって生活水準を均衡せしめる、こういうことであります。
  〔委員長退席、理事櫻井志郎君着席〕
#33
○戸叶武君 この政府案は農民の保守性というものに迎合して、その保守勢力の温存ということに力点を貫いてものを考えているようでありますが、今まで農林省でも、経済企画庁でも農業の生産性所得が非農業に比べて低いのは、農業の経営が家族労作的な零細農耕であるからと日本農業の現状の弱点を率直に指摘してきておったのであります。しかるに政府案がいわゆる六百万農家のうち百万戸の自立経営農家育成というものに重点を償いて農業の二重構造を解消し、その停滞性を救おうとする勇気と見識を欠いておりますが、こういう態度では旧態依然たる家族経営農家中心主義の考え方から日本農業は抜け出すことができないし、またこの零細化されている農業というものを克服することができないのじゃないでしょうか。私はやはり政府が二・五ヘクタールの百万戸、そのほかにもいろいろあるといいますけれども、今までの三割農政が今度は六分の一農政となって、少数の富農層だけにしか結びつかない農政として突っ走っていくのじゃないかという疑義があるのですが、農林大臣はそういう御心配は抱いておられませんか。
#34
○国務大臣(周東英雄君) 私はそんな心配は抱いておりません。ことに日本の農家、農業の保守性にとらわれているのじゃないか、相変わらず脱却できないのじゃないかという御質問には私は少し誤りがあるのじゃないかと思う。今日私どもの考えておるのは、農業の実体からいって、自分が土地を持ち、自分が耕すということはこれは農村農民の一つの希望であり、行き方であることは、日本のみならず欧米先進国も同様であります。ただしかし、その同じ家族経営でやっておったとしても、その経営のやり方について大きくものを考えてみたらどうかということであります。その意味においては私どもの方といえども、まず個人で、家族経営を進めるにいたしましても、今までの零細生活を脱却するために基盤を拡大していくということは、これはなかなか困難であることは御指摘の通りでありますが、これを一つ広げることも考えていこう。しかし、さらにそれらが協同組織をこしらえて、トラクターや、スピード・スプレアというものを数人で持って、あるいは農協で共同利用せしめる設備を置いて、農業の生産性の向上のために協業形態をとるということをどんどん進めていこうと思うのです。そういう面においてはちっとも私は否定もしなければ、予算的措置もこれも積極的にやっていこうとするのであります。さらに必要な問題として、所により、事業によっては農業の形態が一歩進んで、協業組織が進んで、協業経営といいますか、つまりたびたび出ますけれども、土地なりあるいは家畜なり機械というものを個人の手から離して法人に移し、経営の実態は農家でなくて法人に移るということの徹底した形において、私は個人々々といいますか、農家の希望によってそれをやられるならば、それに対して必要な資金面なり機械その他の補助もいたしましょうということでありまして、その点においては家族経営農家というものが農家の実態に即した行き方であり、日本の実態としてはそれは認めるが、それがさらに進んで経営の内容にあたってどういうふうにしたらいいかということは、大きく進んで協業組織の拡大、さらに協業経営にまで入っていくということについては、各人の希望に沿うてそれを助長していこう、こういうことですから、決して従来のように小さい農家でいつまでも小さくやっておれ、そうして収入が少なくても、人間をどれだけ多く――そこにたくさん過剰労働の投下をやっておっても、それでよろしいということはちっとも私は言っておりません。
#35
○戸叶武君 ただいま農林大臣の説明の中に、共同化あるいは協業の促進という点を力説されましたが、政府案は十七条において、「国は、家族農業経営の発展、農業の生産性の向上、農業所得の確保等に資するため、生産行程についての協業を助長する方策として、農業協同組合が行なう共同利用施設の設置及び農作業の共同化の事業の発達改善等必要な施策を講ずる」云々と述べておりますが、ここで協業といい、共同化といっておりますが、言葉は違うが、中身は何ら変わるところが別にないのじゃないかと思いますが、もう漢字もだんだん制限し、言葉もなるだけ簡単になっていこうという傾向のときに、一つの官僚的なテクニックかあるいは一つの共同化というものには、社会主義的なものが含まれているというふうにでも考えてか、何か協業などという字をことさらに使いますが、少しぎょうぎょうしい表現じゃないかと思いますけれども、こういう協業と共同化のどういうところが違うのか、一つ大臣からこの機会に御説明を願いたいと思います。
#36
○国務大臣(周東英雄君) これはたびたび出て答弁をいたしておりますが、言葉の持つ意味というものについては、いろいろこれはありますが、学者の言うところに従って、一面においては、協業というのは、これは民社党さんの出している協同、コーポレイティブというものの協同、あの協を使っております。協業というのは、やはり心を合わせて、そうして同志的に結びついて協同して物的施設を利用しようということで、精神的な面が含まれているという意味で、協業の方がよかろうということで、したわけです。ただ単に共に同じという共同の方は、どちらかといいますと、その物的施設の共同利用というものに大体使われているわけです。精神的の心持の共同というものが表われていない。その意味においては、民社党の表わしておりますコーポレイティブの方は、やはり同志的な心を合わせて仕事をやり、そうしてそこに協同して利用しようということでありますが、むしろ精神的の方面が強く出ていると言われております。
 そこで、今日私どもは、両方合わせて協業という字を使いましたし、また一面において産業組合の協同組織による、従来もやられている物的施設の共同利用ということも進めている、その点においては助長するということで、十七条の中には、協業という字を使っております。そういうことから今度の内容に協業という、字を使ったのであります。
#37
○戸叶武君 これはおそらくは二、三年過ぎると、笑い話の種になると思いますが、日本に第一次欧州大戦後においてデモクラシーの風潮が入ってきましたときに、当時東大の政治学者であったところの吉野作造博士はデモクラシーを民本主義と訳したのです。今ではデモクラシーはだれでも民主主義という言葉を使っていますが、当時は天皇制のもとでありまして、うっかり民主主義などというと、天皇がお上だぞ、人民が主権者じゃないぞというので、右翼の暴力団なんかから襲撃される場合があるので、吉野作造先生はさすがに学者であるから、言葉をいろいろ考えて、昔の天皇のみことのりの中に、民をもって本とするというのがあるから、これならひっかからないだろうというので、民本主義と訳したのですが、民本主義も民主主義もデモクラシーを翻訳したのに違いないのです。一体この協業は英語じゃ何と言うのですか。これが英語にかわったときに、国際的に協業というものをほかに説明するときには、どういうふうな注釈をつけるのですか。そんなばかな世界を相手に自由化が行なわれているというような時代に、その官僚のひま人がひまにあかせてひねり出したような文字をやたらに使うというところに、もうすでに農業基本法の古色蒼然たるものがあると思うのですが、
  〔理事櫻井志郎君退席、委員長着席〕
これは一つ農林省にはひまな学者がずいぶんあるようですから、ちょっと説明願いたいと思います。
#38
○政府委員(大沢融君) ちょうど共同それから協同、協業、ただいま大臣が、また過去においてしばしば言われたところ、その通りなのでありますが、共同という場合には、今言われたように心を合わせてというような意味がないわけです。むしろ協同、それからここで使っております協業、その協というところにやはり精神的なという、心を合わせてやるという意味が出てくると思う。それじゃ協同でなくて、なぜ協業を使ったかと申しますと、協同という場合には、むしろ心を合わせてという意味がありますけれども、業務なり作業という面についての意味が希薄だということ、それからもう一つは、この基本法で使っております協業という内容といたしましては、たとえば協業経営のときに、生産協同組合だけではございませんで、たとえば有限責任会社ですとか、合名会社、合資会社というようなものが、社会党の言われる共同経営をやるというような場合も含んでおるわけです。そこで、これを協同ということを言いますと、協同組合だけというような印象もございますので、幅を広げた意味で協業と言いました。さらに気持といたしましては、今までの単純な分業というようなことでなくて、今後は生産行程において専門的な技術を持った形での分業、そういう意味で協業を大いに進めていきたいという、古い意味じゃなくて、新しく踏み出した意味で協業という言葉を使ったわけでございます。
#39
○戸叶武君 農林官僚の知恵者は、瑞穂の国に生まれただけに、神主も勤まるような一つの文字の解釈が達者ですが、これはおそらくは進歩的な農林官僚の隠れみので、社会党の共同化とは同じだが、共同化というと、わけのわからない保守のがんこな連中が不消化のままでのんでくれないから、協業といえば、大ていオブラートに包んであるからのむだろうというので、苦心惨たんして作った言葉かもしれませんが、これはあと二、三年過ぎると、世界中から物笑いの種、茶話のいい材料になると思いますが、問題は協業という表現でなければ具体的な表現が十分でないような、そういう言葉で内容を説明する法律なんというものはすべきでないのであって、一々法律に――今明治時代じゃないですよ、一々法律論に入ったときに、協業とは何ぞやなどというところから解釈しなければ解釈できないようなのは人民の法律じゃないです。こういうことは今後、ばかも休み休みやることで、こういうばかげたことは今後はあまりやらないでもらいたい。これは社会党の方がこの点は歯に衣を着せずにはっきりものを言っているから、社会党の案の第十条を読むと、農業経営の共同化についてもはっきりしていると思うのであります。社会党の方は、一項に「国は、わが国農業における過小農経営を克服するため、農業生産組合その他の農民の共同組織を育成しなければならない。」これが新しい農業構造の眼目でなければならないのであります。さらに二項に「国は、農業経営の共同化を促進するため、全額国庫負担による農用地の造成、土地改良及び集団化により農業生産基盤の整備を図らなければならない。」このところもきのうあたりは農業経営の共同化を促進するため全額国庫負担による農用地の造成ということを変にゆがめて食ってかかっておりましたが、この古いドイツ風の官僚養成学校で育てられた旧官僚上がりの政治家というのは、いまだに新しい憲法の読み方を知らない、上杉慎吉流の憲法解釈から一歩も出ておらないのでありまして、そういう私は頭の洗脳をやらなければ農業基本法には取っ組んでいけないと思います。第三項には「国は、農業生産組合を農業協同組合の下に育成するものとし、そのため、農業生産組合に対し、その事業及び施設につき指導、助成、機械の貸付け、長期低利資金の貸付け、税法上の特別措置等の措置を講じなければならない。」こういうふうな具体的な裏づけがなければ農業基本法の効果はないのです。これは全く自民党の農業基本法は香水みたいなものでありまして、においだけはぷんとするが、五分もたつとにおいが逃げていってしまう。(笑声)これは薬にすればトンプク的でありまして、胃病ですらもなおすこともできない、私は肩のこりぐらいは精神的な心境の変化によってこれがなおったという程度にしかならないと思うのであります。こういうことはやはりはっきりしなくちゃならない。四項は「国は、農業経営の共同化及び近代化を促進するため、農業協同組合の活動を活発ならしめるよう必要な措置を講じなければならない。」と規定しているのです。こういうふうに私は農業基本法というのは基本法だから、農民憲章だから、なるたけ抽象的に――抽象的なら結婚式に読むところの神主ののりとが一番簡単にできておりますが、ああいうようなのりと的な憲章は、この人民主権の国におけるところの法律としては体をなさない。憲法はその国においては一つしかないのだ。農業憲章と言っても、農民憲章と言っても、農業基本法と言っても憲法とは違うのです。憲法に次ぐ農業政策の基本的方向を決定づけるものなのに、それを農業基本法という名前をいろいろなふうに解釈して、農業基本法というものは、いろいろなことを具体的に規定する必要はないのだというようなことを答弁しているようなこともあるようですが、一体政府は、農業基本法は絵に書いたぼたもちのように一つの抽象的な文字で羅列したところの農業基本法でいいと考えているのですか、農林大臣もこれには少し不満だと思いますが、御意見を伺いたい。
#40
○国務大臣(周東英雄君) 戸叶さんは非常に御勉強家だと思っていましたが、きょうはだいぶ毒舌家だということがわかりました。しかし、問題は、これはいわゆる実体の問題、でありますから大いに鞭撻してもらうことはけっこうでありますが、今お並べになりました農業協同組合においてかくかくかくするというようなことは、これは基本法の第十七条にはちゃんと書いてある。一体われわれが今日まで政策をとって参りますについて、農業の発展をはかるために、農業者の団体みずから立て、その共同を助長していかなければならぬということは、今日までもう長い間とってきた私どもの政策であります。これはわかり切っている。しかし、これらの問題は、さらに今度農業基本法ができれば、もっと前一歩進んで推進しなければならぬということを十七条に書き、しこうして第二条第一項各号においてそれらに必要なる施策を法制的に、あるいは予算的に立てるということを書いてある。これははっきりしている。それはやります。あなた方の方もこう書いてあるからはっきりしろというけれども、具体的にやるためには、さらにもう一ぺん法制制度を作らなければ、書いたからすぐできるものではないと私は考えるわけであります。そういう点で、私は必ずしも社会党の案がいいとも思っておりません。
#41
○戸叶武君 政府並びに自民党は社会党の案に対して毒舌どころか虚偽な悪意に満ちた宣伝をやって全国にPRを行なっていますが、その一つの例は、たとえば社会党の第九条の「農地は、これを耕作する者に所有せしめることを原則とし、」と書いてあるのをこれを読まないで、その下の方だけの「農地に関する権利は、自主的に共同的保有に移行させるように指導するものとする。」社会党の農業基本法が通ったならば、所有権は否定され、自作農は否定される。ソ連のコルホーズ、ソホーズ、中国の人民公社のように持っていかれるのだぞというようなことを、白昼公然、まるでお化けのようなものはなくなった時代においても、そういうばかげた逆宣伝をやっている。これは毒舌よりも悪意に満ちたもので、私は憤りを持っておる。こういうふうに、今、農業基本法が、私たちがこれは慎重審議しなければならないのは、少なくともねらいというものが、ほんとうに冷静に虚心に語り合うならば、そう違うところにいくべきじゃないのですけれども、この政府案というものが、何か農業基本法というものだけを、自分たちがこれを作ったのだぞといって、中身を十分にしないで、そうして通過させようというようなやり方は、衆議院段階においても反省されたから、参議院じゃよもやないでしょうから、これは繰り返してだめ押しする必要ないですけれども、社会党はがむしゃらに共同化を推し進めようというのではなくて、大臣も心得ているはずなんです、今の日本の農業の悲劇は、過小農業だ。これを何とか克服しなければならぬということが農業近代化の眼目であって、これなしには機械化も生産性の向上もコストの引き下げもできないというところの絶対の壁にぶち当たっているのですが、すでに農民自体が共同化の方向へ前進しつつあるので、これを手助けしてそれを伸ばしていかなければならないというのが社会党の方の考えですけれども、政府は依然として自立経営農家育成第一主義でもって、共同化の方は、協業化ですかな、あんなことを言って、いいかげんにごまかしておいて、積極的に共同化に協力しようという気持はないのでしょうか。
#42
○国務大臣(周東英雄君) 先ほどから戸叶さんの質問に答えてその点言っておりますがね。たびたびお話がありますから重ねて申し上げます。私どもは、農家の気持を察しつつ家族経営の自立経営をなし得る農家を育成することを第一眼目といたします。しこうしてその自立経営農家をさらに発展させる上において、また全部が急激に自立農家になり得るものでもございませんし、また現況の形、零細な形から急激にいかんとすれば、その間に協同組織による協同経営というものがあり得るわけです。その中にもう一歩進めれば、土地、家畜、機械等の所有権を法人に移して農業の経営も協同してやっていくという部門が入ってくるわけですね。一口に共同々々と言っても、何もかも一緒に話しては物事が間違ってくると思う。だから、その第一段階におけるやり方というものが、各地方におきまして、トラクターなりその他の機械についての共同所有をする、あるいは農業協同組合においてあるいは組合組織によらずして共同でもって、これを共同に使って、耕すだけは耕して、あとの土地は自分が持って、耕耘、播種、刈り入れをやっていくのです。そういうところまでをやることはどんどんやっていい。これは大きく家族経営農家の所得を上げ、近代化するに役立つものなんですね。それからもう一つ進めて、土地を、先ほど言ったような形に所有権、権利を移転してやる協業経営の姿はやはり農家の希望によってやらなければならぬ。その点は先ほど引きましたが、もう一ぺん別に引きますと、全国のあなたは全部の農家がそう言っておるとおっしゃいますけれども、4Hクラブに属する二十五万の中堅青年ですが、これが来ての報告は、徹底したる協業経営というものは、やはり時期を待ち、段階を経なければならない、これを急に急いではならない、こう言っておる。そこで、そういう時期が来、それについてやるということについては、その農民の方々の希望に沿って、やっていいということになれば、私はそのときはどんどん政府においてそれに対して助成をしていこう、こういう段階でやります、こう申し上げておる。あなたの方は、その九条をお引きになりました。社会党に対する悪意に満ちた云々とおっしゃいましたが、そういうことはわれわれの同志は言っておらないのです。ただこれは家族経営というか、土地の所有は原則として耕作する者にとおっしゃいますけれども、あなた方の、法律に現われない、選挙用に対するいろいろな指導要領がございましょう、私拝見いたしました。その中には大体六百万町歩の既耕地プラス三百万のものを増加して、それを大体百万単位もしくは八十万単位の組織にしてそこに全部包含しようというのが一つの原則のようですが、これはあなたの方から出た冊子によって私は勉強したのですから、これを御否定なさらないと思う。そうなって参りますと、原則はそうだけれども、大体そういう形に持っていくということについていろいろと批判が出ておるのは無理もないわけです。私は別にこれがコルホーズだとか何とかいうことを言っておるわけじゃございません。そういう点はたんかいに、端的に両方の内容というものをよく話し合ってみたいと私は思います。
#43
○戸叶武君 今の農林大臣の資料を、私の方にあとでよこして下さい。それはおそらくは正確な表現じゃありません。そのことは別な機会にまたあとで究明しますが、政府案は第二条及び第九条において農業生産の選択的拡大という文字を使っておりますが、これは何を選択するのか、重要な問題ですけれども、選択的拡大はよいにしても、農林大臣は、将来の需要の見通しの上に立って、需要のあるものを、売れるものを選択していくという指導をするのだという答えを国会においてやっておりますが、この選択的拡大という名はよろしいのですが、今まで政府の指導で、責任をとらない選択的拡大の指導がずいぶんあって農民は迷惑しています。繭の値が上がった、桑を植えろ、繭の値が下がった桑を抜け。豚が足りない、値が高くなった、豚買えと言ったって、豚の値が高くなると押えて豪州から豚を買ってくる。値が今度は下がった。お百姓は政府のいうことを聞いていると一生うだつが上がらないというふうに、あべこべのことをやっていた方が大体いいなあと言って、いなかの諸団体などにおいて政府不信の言葉が出ているぐらいですが、これというのも、たとえば酪農を盛んにしろ、豚を買え、蚕を買えというようなときにおいても、まあ蚕なんかに繭糸価格安定の法律ができてはきておりますけれども、もっと重要産業に対してのおざなりの支持価格というのでなくて、もっと明確な価格支持がなされなければ、農民というものは安定できないのではないでしょうか。特にたとえば米麦以外に、タバコだとかあるいはビートだとか、ビール麦だとか、こういうのが、タバコにおいては、五、六年前にアメリカから二年分もよけいに葉タバコを買って以来、今度は規格がうるさくなって、ずいぶん値段が買いたたかれております。ビール麦なんかも規格がむずかしくなって、そして不合格品を多く出して、その値をたたいてビール会社が買っておりますが、ビールの値段の方は一つも安くしておりません。そういうふうに、しわ寄せが農民の方にきて、このタバコでもビートでもビールでも、そういうふうなものを作るところの農民というものが、価格決定に対して、少なくとも米や麦の場合における、米の場合の米価審議会のような権威のあるところの機関をもって、そうして生産農民が自分たちの生活に大きな影響のあるところの価格決定に対して発言の場を持ち、場合によっては団体交渉でもなし得るというような方向に持っていかなければ、このままでいくと独占資本にほんろうされていくだけではないかという心配があるのですが、この酪農における、たとえば牛乳の値段の上がり下がり、豚の値段の上がり下がり、このビール麦の問題もそうですが、こういう問題に対して、農林大臣は具体的にどういうふうに善処しようと考えておられるのか。
#44
○国務大臣(周東英雄君) この点はお説、私は同感です。とにかく今後成長していく農産物、これを作らしていこうというのでありますから、これに対して農家が損なさらないようにいろいろ政策指導をやっていく必要がある。それについて私は第一の問題は、やはり将来にわたっての長期の見通しを立てて、それに需要に応ずる供給をだんだんふやしていくという形が第一にとらるべきであると思います。従来ともすればばらばらな施策を立て、そして生産がなされたというところに御指摘のようなことが起こったこともあると思いますが、今度は農林省は全体一体として今後の農村における、総合的に、あるいは畜産、あるいは果実、あるいはテンサイというようなものをどのくらい将来国内における自給度を高めるためにふやしていかなければならぬのかということの上に立って見通しを立て、それによってどの地域に何をどの地域に何をというところまでほんとうは指導していく。その際における指導というものは、農林省が一体となって総合計画の各部門を各回が担当するような形に、同じ方向に向かって指導していきたいと思います。次には、それらのでき上がったものはやはり生産を助長いたしますについても、ばらばらにわずかずつの生産を地域的に分散してやらせることは不利であります。畜産等については主産地形成と申しますか、まとまった地域に多頭飼育をさせて、集荷において加工において、まとまったものは容易に運賃、手数料、集荷料も高くとらないで済むような方向をとっていくことが必要であろうと思います。そういう飼育方法を考えつつ、しかも次には、これは農家の共同団体による出荷、進んでは農家が出荷して農業協同組合によって加工工場を持って商品化率を高めてこれを売って加工料を手にするというところまで進んでいくことが必要であろうと思います。かくのごとくしつつ需要に合わせ、さらに取引上の不利を是正する措置を講じ、加工についても奨励をしていきますが、この現実はあなたもすでに御承知かと思いますが、埼玉県における畜産加工工場の例のごとく、岩手県における畜産公社、これは農業団体の組織における畜産公社、こういうものは作られつつある。取引にも加工においても一手に引き受けて損のないようにしようということで進んでおります。そういう形をとって生産並びに取引形態を考えていきたいと思います。同時にそれをやりましても、御承知のように農産物の耐久性の弱い物だとか、あるいは腐敗性品というものがございます。それらに対して不利益な価格変動というものが起こった場合においては、必要ならそれぞれの品目について価格支持の政策が必要なものについてとっていくことは従来と同じであります。あたかもわれわれの農業基本法は価格支持政策を何もやらぬがごとく言われておりますが、現に米その他重要農産物については形は違いますけれども、農産物価格安定法に基づいてやっておりますが、今あなたがお話中に御指摘になった繭糸価格安定法においても、また今度とろうとしている畜産事業団においても支持価格制度においていずれもやっておる。これらはそのおのおのについて必要性を考えて適当な措置をとっていきたいと考えております。
#45
○戸叶武君 これは先ほど農業基本法の立会演説会を広島で行なったときに、自民党の代表者の演説を拝聴したのですが、それによると、デンマークだとかアメリカあたりにおいては、農業共同化ということが行なわれてないのだという珍説を拝承しまして、なかなか現地をあまり見ないけれどもああいう珍説があるかと思ったんですが、この意見は別問題として、問題はデンマークやアメリカと日本の農業の実態が違うという一番基本的な問題が頭に入ってないから、こういう笑い話の種をやはり御披露するんだと思いますが、デンマークでは御承知のように農家が平均一五・七〇ヘクタールで、一ヘクタール未満は五%、大体二〇ヘクタール以上、一戸が五十ヘクタール、百ヘクタールというものも多いおけですし、アメリカにおいても平均一一八・三八ヘクタールといわれておりまして、アメリカの農家の農業規模の大きさというものは、飛行機で米や肥料をまくところもあるので想像に余りがある。こういうところにおいては、日本の今問題になっているこの農業共同化という、ようなものと違う形において大体機械化、近代化がやり得るんです。日本の問題は、一つは零細農家によるところの零細農耕によるところの生産性の停滞、これをどうやって払拭していくかということが一番の問題点、それのために非常に荒っぽい池田構想というものも生まれたと思いますけれども、それじゃ私たちは、やはりもちろん自立経営農家のあり方というものは尊重しなくちゃなりませんけれども、機械化なり、あるいは近代化なりといっても、共同化というものを相当に促進しなければやっていけるものじゃない。この所得倍増計画の案の中にも水田協業は経営面積二十ないし四十ヘクタール、畑協業は四十ないし六十ヘクタールということを打ち出されておるが、社会党の正式でないものを引用して農林大臣は文句を言っていますが、これは正式な経済企画庁の印刷物の中にもあるのですけれども、一体この協業化なり共同化なりをやっていくのに、今のような形において自立経営農家というかみしもを着、よろいを着て、身動きのできないような状態にしておって、ほんとうに農業の近代化なり機械化なりができると思うですか。どうも農林大臣に同じようなことを幾たびも聞くのは、どうもはっきりしないので、いろいろなことを農林大臣言っていますけれども、私らにぴんとくるものがほしいのですが、一つぴんとくる答えをお聞きしたい。
#46
○国務大臣(周東英雄君) ぴんとくる答えをしますが、私が先ほどから言ってているのが、どうして戸叶さんにわかっていただけないのかと思う。あなたは共同化をやらなければ近代化もできないじゃないかとしきりにおっしゃいますが、私ども否定していないのですよ。しかし、あなたの頭には全部法人化した協業経営までやらなければだめだと頭に出ているようです。今日私ども果樹なり畜産をやらせるについて、たとえば害虫の共同防除、これを広い面積にわたってやっていかなければならない。小さい農家の一つ一つが自分の手できゅっ、きゅっと駆除するようなものをやってもだめだ。スピード・スプレアというものを共同で持って、共同に消毒なり予防をやっていく、あるいは田畑を耕すにしても、深く耕せば生産に影響します。中型トラクターというものを使うに際して、全部土地まで所有権を移転して法人を作らないでも、これを農業協同組合が共同利用施設でもって、深耕をなすについて共同でやっていく実例を私ら見ているのですよ。だから、そういうことは、全部所有権の移転までいくような協業経営の形にいかぬでも、協業組織でいけるのじゃないか、それはちっとも否定していませんよ。家族経営をやりましても、もっと機械化、近代化するについては、そういう形をとって参りますということを、たびたび申し上げておる。これがおわかりにならなければ意見の相違です。そういう意味において、法人経営にいくのは、先ほど申しましたように、その地方々々において土地の地力とか、あるいは働く度合い、よほどいろいろな点を考えてやらなければいけませんので、お急ぎになってはいかぬ。われわれは必要性を認めるが、ものによって、地方によって、時期的に考えなければならぬということを言っておる。しかし、これは私は全部とは申しません。一例を申し上げておるだけで、私どもそういう話を聞きつつ、私たちの話を進めていきたいのであります。決してあなたの方も全部強制的にやるとおっしゃっていませんから、いやだというものをやらないだろうし、家族経営を認めるとおっしゃっているから、そうなるとやり方は私たちとそう違わないじゃないか、こう言えると思うのです。それは私ははっきりしていると思う。
#47
○戸叶武君 問題は、政府が金を出すか出さぬか、その農業基本法というラブレターだけで、中身を持つか持たぬかというところに農業基本法の分かれ道があるので、西ドイツの農業基本法第六条に「連邦資金が必要とされる限り、連邦政府はこれについての所要金額を慎重に検討して、それぞれの会計年度に応じて連邦歳入歳出予算案に計上する。」と明示していますが、政府案は「施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」また「必要な資金の融通の適正円滑化を図らなければならない。」どうも表現として受け身で、いやいやながら、この何とかしなければならぬという程度でお茶を濁しているという印象しか出てこないのです。社会党案のように、これも予算の確保、社会党案の六条にありますから私は読むのを省略いたしますが、それから資金の確保、第七条に出ていますが、こういうふうに明確な条文をもってしないと、政府が一体いろいろなことをいうけれども、農民のために予算なり公共投資の金を出してくれるのだろうかどうかという点が、農民が今一番心配している点ですが、農林大臣、あなた金を出すつもりですか、農民が満足する程度に。
#48
○国務大臣(周東英雄君) この法律ができまして、今御指摘のような条文をお読みになりましたが、こんな法律は今までありません。法律の中に、第二条第一項各号に関する「必要な施策を総合的に講じなければならない。」となっております。そうして第四条で「政府は、第二条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」こういう例は今までないですね。法律に国家の義務を書いてあるのですよ。今連邦政府の、ドイツの例をお引きになりましたけれども、これは予算上に連邦政府は組まなければならぬと書いてある。どれだけ組み、何が必要な施策であるかということはこれから出てくるわけです。その必要な施策が決定すれば、出さなければならぬという法律を置いているわけでしょう。しかもこれだけじゃありませんよ、第六条においては「政府は、毎年、国会に、農業の動向及び政府が農業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。」こういうことを書いている例もありませんね。これを出しますことは、もし政府の施策が間違っていたというならば、国会を通じて農業者というものは大きく批判し、これに対して施策を新しく申請し、要望するところのこれは機会が与えられるのですね。このことが私は一番大事なことだと思うのです。今あなたの方で、社会党においては、実施に必要な予算を確保しなければならぬ、何が必要かということは、やはりこれからやっていくのですよ。これはやはり一つの基本でございますから、私は書き方について予算と書いたからはっきりした、財政的措置と書いたからはっきりしない、こういうことじゃなくて、何が必要な施策であるか、それに対して必要な予算というものをどう盛るかということがこれからの問題で、これをはっきりと政府は義務を受けているわけであります。それで一日も早くこれを通して、そうして農家の方々なり、あるいは議会の皆様方の御要求は一体何であるのだ、政府は、これがことしは必要な施策といったが足らぬじゃないか、こういう予算を組むべきじゃないかというような、今までのような、ただ抽象的な個別的な政策に対する批判でなくて、政府はこの第六条等によって出しまする義務としての報告に基づいて、私は総合的な批判ができるということに大きな農業に対する私は政策、農政における大きな前進があると私は思うのであります。
#49
○戸叶武君 われわれ農民の利益を代表して戦っている社会党としては、今まで政府から苦い目にあっているので、その不信感からやはりそういう発言も出てくるのですが、日本の農林予算は三十六年度の予算におきましても国の予算の九・六%です。農民の数は三六・九%であるのに、農林水産関係の予算というものは一割以下です。昭和二十八年度はいろいろな災害や何かもありましたけれども、あのときには二十七年度の食糧自給計画というものがバックになっておったので、バック・ボーンが若干残っておった、それで一六・五%という農林予算が組まれているのだが、翌年の二十九年から一一・二%に落ち込み、漸減して三十四年度には七・四%まで落ちていった。これというのは、昭和一十八年にMSA協定並びに余剰農産物協定を受け入れて以来、日本の食糧自給態勢というものを放棄して、日本の食糧増産に使う金があるならば、アメリカの食糧があり余っているからこれを買ってくれというような結びつき方によって、そうして年々歳々農林水産関係の予算の中においても、削減されたのは食糧増産費、特に土地改良費を削られてきたのです。こういうふうな形において、農林予算というものが年々歳々削られて、今日のようなみじめな状態になっておるので、私たちはこれが急に、農業基本法を政府が作ったからには責任を持つのだと農林大臣が言うふら、それで安心できるかというとなかなか簡単には安心できないが、しかし、西ドイツでは、農業基本法が成立いたしましてから、農林予算というものは増大しました。一九五五年度に比して一九五六年度は一・八倍、一九五七年度は二・五倍伸びましたが、日本でもその程度の成果を得られるという見通しが農林大臣はあるかどうか、それをお答え願いたい。
#50
○国務大臣(周東英雄君) まず、西ドイツのことをお聞きになりましたから。私も勉強しておりますが、ただ形式的に二・五倍になったということをお引きになることは戸叶さんらしくもないと思います。総予算においてそういうことになっておりますが、最近それを修正しておりますことは御存じだろうと思う。しかし、そういうことはあまりこまかい問題です。ただ倍近く、それで横ばいになっておりますことは認めます。しかし、日本の問題については、私は、この法律ができますれば、今までのややおくれておる予算措置その他については伸びると思いますが、ただ、私は、その点については、基礎的にいかなるものが必要であり、今まで足らなかったか、新しい農政を展開するについてどういうことをやるべきかということの上に立って、合理的な形に整えていこうと思います。ただ数量だけを倍にするというだけでは、満足はできないのであります。政策というものの内容に関してどういうことが必要な施策であり、それをやることが農業者に対して必要なことであり、その必要な部門に対しては最善の努力をいたしたいと思います。
#51
○戸叶武君 せめて一五%前後、三千億円ぐらいな農林予算並びにこれに見合う公共投資というものがなされなければ、立ちおくれている日本の農業というものの腰抱きがなされなければ、日本農業の生産基盤というものは私は培養されていかないと思う。そこで、これに関連して政府と社会党の間で論争になっているのは、先ほども農林大臣が指摘したような、社会党が農用地三百万ヘクタール拡大を考えているという点に対する御批判めいた御意見の開陳がありましたが、政府はこの農用地を現在の六百万町歩で大体とどめていこうというお考えのようでありますが、社会党が未開墾地五百万町歩、これは政府の発表の数字ですが、そのうち三百万町歩、その内訳は、二百万町歩は牧草地、百万町歩は畑地ということになっておりますが、この辺を拡大していかなきゃならないというのに対して、政府側は反対のようですが、いかなる理由のもとにおいて反対か、その具体的な御意見を承りたい。
#52
○国務大臣(周東英雄君) 私どもは、先ほどからたびたび触れておりますが、農地及び水の有効利用及び開発について必要な施策をとるということを、二条第一項の第二号にありますが、掲げております。こういう点からいたしましても、将来におきましても日本の農業をどの程度まで発展せしめるかということは、これから長期の見通しに立って品目別にきめるということを先ほど申しました。それに関連して耕地あるいは牧野、草地というようなものがどれだけ必要になるかということの基礎の上に立って拡大するという必要がありますから、その必要なる数量に応じて土地の造成なり、同時にそれに関して必要な水の施設を考えていきたい、こういうように考えております。決して土地の造成はやらないのだというようなことだとか、反対だとかいうようなことではございませんけれども、私どもはあくまで政府の責任のある地位におきまして、必要な場所に必要な数量をどれだけという形の上に立って農地の造成、草地の造成を考えていきたい、かように考えております。
#53
○戸叶武君 社会党は三十六年度予算の組みかえ案において、国土調査費十億円、農業基盤整備費二百五十億円計上し、農業生産組合の助成のための農地造成、土地改良、農地集団化の全額国庫負担というようなものを主張しましたが、今の農林大臣のお話だと、この社会党の趣旨には全面的御賛成ですか。
#54
○国務大臣(周東英雄君) それが合理的な基礎の上に立つものであるならば、順次これが実現に努めるにやぶさかではございません。私はあくまでも、ただ何万町歩どうするということではなくて、それが畜産の経営、畜産の増加に対してどういうふうに牧野、草地を造成していったらよろしいか、しかもこれは地域的にものを考えなきゃならぬですから、そういう問題を考えつつ、合理的な基礎の上に立って必要な程度に応じてこれを造成していくつもりであります。
#55
○戸叶武君 自民党の福田政調会長でしたかどなたか、党の代表者の人が、社会党の三百万ヘクタールの農用地拡大といっても、それは傾斜地だとかあるいは林野だとかいうので、農家に付属したところでないから、何にもならないんじゃないかというようなことを、どっかで座談会か何かでやっているようでしたが、この考え方が、今後日本のようないろんな制約を受けている国における酪農振興に対する基本的な考え方がまだ足りない差から来る一つの見解だと思うのですが、スイスでは御承知のように山岳酪農を行なっております。私はスイスに行って実地にいろいろこまかくも見て参りましたけれども、五二%の農用地を持っておりますスイスの土地利用は、土地利用地が七六・四%で、その中でこの牧草地が二三・八%、牧場、草原が二二・四%、森林が二三・七%、畑ブドウ園が六・五%となっておりますが、うちの近くで宅地内に二十頭、三十頭ぐらいの乳牛を飼っている。それから、そこのうちの主婦や子供たちの小づかい銭かせぎに大体鶏を飼っている。そして傾斜面にブドウが植えられて、その上に牧草地が、さらにその上に森林がある。さらにその上の問題は、日本でいえば、私のうちは栃木県ですが、日光あたりでいえばクマザサや灌木地帯、そういうようなものを整理しまして牧草地帯にしておるのです。北海道に行くと、私は農林水産委員長の時代に、あの冷害で全道を視察しましたが、クマザザやかしゃっ葉がはえている。何の役にも立たないかしゃっ葉のはえている地帯というのは膨大なものです。どうしてああいう地帯を牧野にしないのか。こういう点において、日本より山国で、日本よりも険阻な山を持っているスイスにおいて、大体山岳酪農、夏季酪農を行なう場合におきまして、山のふもとまでトラックでもって乳牛を運んで、そうして山の上の涼しい所で夏飼育するという方式で、いろいろな協同組合が連合して協力してやっておる。そういうやり方が日本なんかにおいては当然取り入れなければならない。ドイツにおいても、そういう協同化が行なわれておる。今の日本の山林行政というものは、国有林とはいうが、林野庁の上の方のボスの食いものになってしまうような、林野庁の長官を一年やれば二、三千万円は黙っていても秋田、青森あたりの材木屋から資金が流れてくるというような仕組みになっておる。こういうようなやり方では地元民は太らない。しかもこの山の中で、国土が狭いといわれながら、何にもならないかしゃっ葉やクマサザや灌木が生えておる。こういうところを私どもはやはり国の費用で整理して、そうして国にプラスになるような面に活用されなければならないと思っておるのですが、それをやるのには、さっき私が引用したように、社会党が言っておるように、具体的に国土調査費十億円なり、農業基盤整備費二百五十億円なりというものを計上してやっていかなければ、どこから始めようか、どうしたらよいのかわからないと思いますが、政府の方ではそういう積極的な意図は、ただ御自分としていろいろ考えているだけで、積極的な御意図は持っておらないんでしょうか。持っておるとすれば、具体的な予算面においてはどのような面で今出していますか、それを承りたい。
#56
○国務大臣(周東英雄君) だいぶあちらこちらを御勉強になり、非常に敬意を表しますが、私もスイスの農業を見ております。あなたの見たユングフラウの近くまで行って、途中における酪農経営も見ております。また、先ほどのデンマーク農業も親しく、前でありますが、私は見ております。例の国民高等学校のやり方も見て参っておりますが、それは別として、日本におきましても八ケ岳、その他岩手県における山岳地帯における農業というものも見ております。しかし、あなたのおっしゃいますように、決して私は間違っておらないと思いますけれども、ただクマザサのはえているところをほうっておいてはいかぬから牧野にしたらどうかと言うが、そういうわけにもいかぬので、そこらに対する調査も必要でありましょうから、私どもは林野においての混牧林その他放牧草地になっている原地、入会を許しているようなところを一体どうするかというような問題から調査をいたして、私どもは今後の放牧採草地等に関する施設は考えていきたいと思いますし、それからまた、開墾のできるような適地があれば、それに対して、一体山岳地帯に対してどうしたらよいか、気候、風土、水の問題が必要です、あなたは十分御承知でしょうけれども。一体高原地というものは非常にいいけれども、岩手県の山岳地帯における、あるいはあの高原地におけるところの水をいかにして取るかということが大きな問題だったのです。そこらの問題を苦労せにゃ解決できないと思います。ただクマザサのはえているところを牧野にするとか放牧問題がどうとかいっても、やはり水というものとあわせ考えた行き方をしていかなければいかぬので、これは適地というものの調査の上に立ってやりたいと思っております。そうして国土調査に関しては、これは私ある程度賛成です。現に少ないながらも一億五千万円から今度計上してこの面積調査をいたしておりますが、これでもまだ足らぬとは思いますが、現実にそれで着手しておると思います。そういう科学的基礎の上に立って、私はその適地にどのくらいふやしていき得るかということを考えていきたいと思いますが、その点については一部あなたのお考えには同感の点もあります。
#57
○戸叶武君 私、時間が参りましたから、最終結論をいたしますが、デンマークでもイギリスでも、十九世紀の後半におきまして、特にアメリカの縦貫鉄道やカナダの鉄道が完成して、アメリカやカナダから安い小麦がヨーロッパ市場に入ってきた。それにつれて穀物の値段がたたかれてしまって、四〇%ぐらいのところまでたたかれてきた。酪農においてはたしか七〇%ないし六〇%でとどまった。それが主となって、このデンマークの国民高等学校の運動というものの教育活動を通じて、協同組合の防波堤を作って一つの酪農への転換というものが来たので、イギリスでも、御承知のように、今の牧草地帯の下にはかつて小麦を作った跡というものがみな残っているほどです。今、日本は貿易の自由化なりアメリカのドル防衛の津波を受けて今後ゆすぶられようとしておりますが、この脅威を受けまして、その中において日本の米麦本位の農業から酪農、果樹への転換をしなければならない。政府もそれをはっきり言っている。けれども、問題は近代化資金三百億をえさとして、だいぶ農民が全部借りられるようなつもりでおりますけれども、今のようなやり方なら、少数の富農層が利用できるくらいで、私は大した効果はないのじゃないか。この日本の農業の革命ともいうべき歴史的な波動の中にあって、災いを転じて福となすというような大転換が思い切ってなされなければならないときに、政府案というものも、あまりこだわらないで、やはり社会党が持っておる、社会党の案は少し穏健過ぎるほど穏健なんですが、そこいらのところまで来て、そうして超党派的な、その意味なら超党派も可能であるでしょうから、その立場で歴史的農業基本法を作るというくらいのところまで踏み抜けてもらわなければだめだと思うのであります。農林大臣はだいぶきょうの御答弁ではわれわれに近いような意見も少しあるようですから、少しその辺はもっと拡大して、今のような低調な政府の農業基本法を是正していってもらいたいと、こういうふうに思います。これは私のお願いです。
#58
○清澤俊英君 二分ばかりでいいのですが、この問題と離れた漁業問題、ごく簡単な問題ですから、あなたの考えだけをちょっと知らしていただきたい。と申しますことは、昨日、サンマの、大体二十センチくらいのサンマですが、それをイワシの目刺しのように五本刺して、今年からこういうものを売るのだ、非常によく売れる、こう言って私のところに持ってきた。それを見ましたときに、今漁業調整法ができて、資源法まで出ておる際に、こういうものを見た場合、直観的に農林大臣はどう考えるか、それだけ一つお伺いしておこう、こういうことです。
 いずれこれは、いろいろの問題で、それは私の質問する材料になる。だから、こういうものを見た場合、直観的にどう考えるか。現物を持ってくるのを忘れましたが、幅は約二センチから三センチぐらい、ちょうどこのくらいのやつが、万年筆のさやをつけたくらいのやつが、今年初めてこれを売り出した、よく売れる、こういうことですが、その点一つお聞かせ願いたい。
#59
○国務大臣(周東英雄君) ちょっと今質問が那辺にあるかよくわかりませんが、今聞いてみると、サンマの小さいものをとって売りに出しておるということになると、将来困ることにならぬかということで……。
#60
○清澤俊英君 困るとか困らぬとか、そういうことを聞いておるのではない。そういうものを見ましたから、農林大臣は、そういうものを今売り出しておるやつを、今現に漁業調整法を出しておいて、サンマ、サバ、アジ、イワシ、イカに対する調整法を同時に資源法まで出して、これに対する関心を高められているときに、これを見た瞬間に農林大臣はどう考えられるか。私には考えがあるけれども。
#61
○国務大臣(周東英雄君) どうもむずかしいので、私は見ておらぬからわからぬのだけれども、しかし、私は漁業の調整法というのが出たのは、あまりたくさんとれ過ぎて腐敗製品等が市場へ氾濫してはいかぬから、これをある場合には冷蔵庫に入れて市場で調整するとか、サンマがよけいとれるときに陸揚げする場所を調整して有利に売らせようとか、あるいは漁獲を調整していこうとかというようなことがあれの目標だと思う。もし今のようなものが、資源保護の立場上小さいものをとっちゃいかぬ、何かそういうものについてアユのような解禁――禁漁区を設けるというようなことが出てくるなら別ですけれども、しいて言えば新しい需要方面の開拓ということで、必ずしも今の漁業調整法には触れないのではないかと思うのですが、ちょっと私はよくわからないので、よく調査しまして……。
#62
○清澤俊英君 今日露の漁業交渉でだいぶいろいろなことを言われておるようです。私は言いませんよ。ここでは言いません。だから、そういうようなことを総合的に考えたら、少なくとも農林大臣の頭の中へこういうものを見た瞬間にどうという考えが入っておらなければ、問題にならないと思う。私はそうだと思う。これは重大な問題だと思う。いや、それでけっこうです。
#63
○委員長(藤野繁雄君) それでは、本日はこの程度で散会いたします。
   午後四時九分散会
ソース: 国立国会図書館
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