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1960/05/17 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第44号
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1960/05/17 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第44号

#1
第038回国会 農林水産委員会 第44号
昭和三十六年五月十七日(水曜日)
   午後一時二十七分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     藤野 繁雄君
   理事
           秋山俊一郎君
           櫻井 志郎君
           亀田 得治君
           東   隆君
           森 八三一君
   委員
           青田源太郎君
           石谷 憲男君
           植垣弥一郎君
           岡村文四郎君
           重政 庸徳君
           田中 啓一君
           仲原 善一君
           堀本 宜実君
           北村  暢君
           小林 孝平君
           清澤 俊英君
           棚橋 小虎君
           千田  正君
           北條 雋八君
  国務大臣
   国 務 大 臣 周東 英雄君
  政府委員
   農林政務次官  井原 岸高君
   農林大臣官房審
   議官      大澤  融君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○農林水産政策に関する調査
 (日ソ漁業交渉に関する件)
○農業基本法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○農業基本法案(天田勝正君外二名発
 議)
○農業基本法案(衆議院送付、予備審
 査)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(藤野繁雄君) ただいまから、農林水産委員会を開会いたします。
#3
○東隆君 私はこの機会に日ソ漁業交渉に関連をして、農林大臣にお聞きをいたしたいと思うわけであります。
 日ソ漁業交渉は、まさに百日会談の相貌を呈しておるのであります。近日ピリオドを打つようにも聞いておるのでありますが、日本側はまさにネコがネズミをもてあそぶような、そういうような形でいじめつけられておるように私どもは見ざるを得ないのであります。そういうような状態のもとにおいて、非常に政府では苦労をされておるのではないかと思いますが、私は、本年は奇数年次に相当をいたしておりますし、従って豊漁の年に該当をしておる、こういうふうに聞いております。特別小委員会等におけるところの話し合い、そういうようなものも、ことしは豊漁の年に相当しておるのだからというわけで、決して昨年の数よりも総漁獲量において減るような、そういうようなことはない、こういうようなことが、前もってそういうようなことが報告をされておるにかかわらず、現在においては昨年度よりもかえって減るのではないか、こんなような風評さえも出ておる始末であります。私はこういうような点を考え、またソ連側においては、昨年度よりも一万トン増量をすると、こういうようなことも言われておる。そんなようなことを考えあわせてみますと、実にソ連側の言い分は、私はむちゃな言い分を通そうとしておるのではないかと思います。しかも、それに引っかけて、期日が非常におくれた関係から四十五度以南の方面のものが出漁いたしましたのを、非常にたてにとって、そして今回の交渉を非常に困難に陥れておる、こういうふうにも考えられます。そういうふうなことは、これは私は今までの本年まで続けた第六回までの会談において、私は日本のやり口において非常に下手なやり方をやっておる、こんなような点が見受けられてならぬのであります。たとえば、規制区域の問題にいたしましても、私は規制区域をふやすことと漁獲量を増加させる、こんなようなことを一時的にやっている。こんなような歴史を繰り返しておるように見えて、はなはだ残念に思っております。今回の交渉においても、また規制区域の拡大、こんなようなこともほぼ見えて、それとあわせて漁獲量の問題を妥結をさせようと、こんなふうにも見えておりますので、これははなはだ今後の漁業をやっていく方面においても、私は非常に大きな問題で、悔いを残すようなことになろう、こう考えますので、これらの点についても私は強力に主張して、そういうばかげた取引をするような形でもって妥結をしてはならぬ、こういうふうに考えておるのであります。私はさらに今までの交渉その他においては、私どものこの委員会においても秘密会合を開いて、懇談会の形でもって話をしてきた。こんなような形でもって北洋漁業に関する限りは、国民は完全につんぼさじきに乗せられたような点もあろうと思います。従って、私は今後もし問題においてはなはだしく不利な状態に進むような、そういう問題があるとするならば、私は断固としてこんなものは排撃すると同時に、今までのやり方を変えて非常に国民をバックにした形でもってこの交渉を進めていかなければならぬと、こんなようなことも考えるわけであります。そういうような点で、私は今回ピリオドを打とうとするその段階においては、私は主張すべきものを強力に主張していただいて、そうして悔いを残さないような形に進めていただきたい、こういうことを希望いたしますので、この段階において農林大臣のお考え、その他をこの際明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。
#4
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。東委員の御心配の点、まことに感謝をいたす次第であります。私どもも従来からの日ソ漁業の交渉というものは、とかくどうも筋を通さないで、力によって年々不利な形に追い込まれていくような格好は、何とかしてこれをはねのけて筋を通していく交渉にしたい、こういうことで今年は交渉に臨むに先立って、関係委員等とも打ち合わせたしたわけであります。ことに、ソ連が従来から主張しておりますことは、資源論、サケ、マスの資源の状態を見て、その資源を減らさないようにお互いに気をつけて取ろう、その資源の上に立脚して漁獲数量等をきめていきたいというような考え方を述べておりますので、これは私ども賛成だ。しかもそれに関しては、今までの調査というようなものが不完全でありますので、今後においての調査方法、あるいは調査時期等、いろいろな具体的な調査に関して共同に一つ立案して、そうしてその方向に進もう、こういうことまでも言っておったわけであります。
 しかも、今年は漁業交渉は、いつかもお話し申し上げましたように、一月二十三日から始まる予定でありましたが、モイセーエフ団長が病気で一月近く日本へ来るのがおくれまして、その間にじんぜん日を空費しないように科学技術委員会を召集して、その委員会においてサケ、マスの資源を論争をしたわけでありますが、その委員会の同意いたしました結論というのは、御指摘のように、本年は豊漁年である、もちろん一昨年の豊漁年に比べるとやや悪いけれども、昨年の不漁に比べるとよろしい、こういうことが一致したわけであります。しかも、これを本会議において確認をいたしております。従って、そういう状態から見ますると、去年よりも漁獲数量等において減るというのはおかしい。これも一つの筋であるということで考えておったわけであります。
 しかも、御承知のように漁業交渉については常に問題となるのは、皆さん御指摘のように、いわゆる規制区域、それは日本の母船式鮭鱒漁業の入るところでありまして、その他の区域はソ連カムチャッカ沿岸及びその領海においてとるサケ、川に上るサケ、これを取るのはソ連の漁業計面によって自由にきめられる。また、母船漁業の行なわれる以外の区域、すなわち、四十五度以南の太平洋及び日本海等におけるサケ、マス漁業は、これは日本の政府が自治的に繁殖方法を考えて、規制しながら自由に出漁を認められる区域であります。従って、漁業交渉が問題になるのは、常に母船式漁業でありまする四十五度以北、東経四十五度以西、それと陸等によって囲まれた地域ということであります。オホーツク海はもちろん禁漁区でありますから別でありますが、その範囲に限られておるわけであります。
 ところが、ことしはどうした関係でありますか、初めから四十五度以南の日本政府が自由にきめることができる区域も規制区域の中に入れて、漁業交渉の中で数量等をきめる、こういう問題にしたいという希望が出て参りましたが、これは筋が違うということで、いろいろと談合いたしておりました間に、四十五度以南の流し網、はえなわが出る時期が切迫し、おくれましたので、御承知のようにこれの出漁を許可したのです。これを世間に往々強行出漁と申しますが、強行でも何でもない、日本の政府の自主権の範囲内であります。これを出した。これがなかなか、自後における交渉に多少感情的になっているのじゃないかと思いますが、これは私は筋が違うのじゃないかと思うのであります。それを出しました。
 それから、その間に、カ二の漁業につきましても非常にぐずついておりましたけれども、これも昨年通り、カ二の繁殖上減っておらぬという委員会の決定に基づいて、ことしおくれましたが、これは昨年通り日本の船を出しました。ただ漁場が多少変わりまして、従来ソ連の漁場であったのが日本に、日本の漁場であったものがソ連の漁業になった、こういうふうに交換したのですが、なかなかおもしろいことに、かえって日本の漁場が今度やっぱり漁獲はいいようであります。こういうふうな状況で、四十五度以南の流し網、はえなわによるサケ、マス漁業もきまり、出漁し、カニ漁業も出ておるわけであります。
 残された問題が、今の母船の区域でありまする四十五度以北の海面であります。これにつきましては、昨年は御承知の通り六万七千五百トン日本が取っております。ところが、ことしはそれを五万トンしか許さんというのでして、どうも私どもは納得がいかん。おまけにこの海面におきましていわゆる制限区域といいますか、禁止区域ではありませんが、制限区域を新たに追加して参りました。これも私どもは困る。こういうことで折衝いたし、幸いにして、この新しく設けられる制限区域が三つありましたが、二つはこちらの主張をいれて取ってしまいました。あと一つ南が残っております。これが今の段階であります。ところがどうも漁業の方は、いろいろやっておりましたが、向こうが五万トンを一歩も出ません。私どもの方もそれでもまだ日が何しますので、涙をのんでと申しますか、筋は少し通らぬけれども、いろいろな事情で急ぐこともありますので、昨年よりも五千トン増の七万二千五百トンというものを出して要求を出しましたところ、向うでは五万トンを五千トン上げて五万五千トンにし、最近さらに二千五百トンを増加して五万七千五百トン、ただいま五万七千五百トンと七万一千五百トンが対立している格好であります。
 私どもはこの関係は、もう日本がもっと減らせとこういうことでありますが、私どもはあくまでも今日までは、ことしの繁殖状況なり資源状況が悪くないのだから、それに先ほど御指摘のようにソ連の方は漁業計画において、自分の方は七万トンを一万トンふやして八万トンにしておりますから、日本が五千トン去年よりふやすということは最小限度の行き方であって、これを譲ることはできぬと、こういうことでただいま話を進めておりますが、しかし一面に、昨年は十八日にきまって十九日に出ておるという格好で、それから申しますと非常に追い詰められた格好になっております。そこら向こうはなかなかむずかしいような主張をいたしておりまして、あくまでもいろいろ考えてもっとふやすつもりであったけれども、四十五度以南の区域をこっちの言うように中に入れないから、もう今は御破算であるというようなことで主張しているようであります。
 幸いにしてあとに御質問になりましたように、もっと世論とともに言ったらどうかという点は、ことしはかなり新聞、世論というものは私どもの行き方を支持してくれまして、日本の主張が筋が通っておるということで支持してくれております。私どもが十二日に、にもかかわらず七万二千五百トン出したら新聞からだいぶたたかれました。筋を通すと言いながら、また陰で妥協しているではないかということで責められたのでありますが、これも現実にやむを得ざる事情でございまするが、そういう形でございますので、私どもとしては、日本としてはいろいろにやっていまして、なかなかきめ手がないのですが、あくまでこれは世論というものと一緒に進めていくということがよいと存じます。今後とも御指摘のような日ソ漁業のごとき対外的な問題については、一番世論を代表する国会の皆様方に相当ある程度話を申し上げまして、御援助をいただくことがよかろうかとかように考えております。
 ただいまさような状況でありまして、少しつばぜり合いになっております。どうもやはり業界の方がいろいろ弱いことを言うので、私も困っておりますが、もうここ数日の間激しいつばぜり合いが続くと思います。
#5
○千田正君 関連して。今の東君の質問に対して、農林大臣からお答えがありましたが、これほど漁業の問題が、北洋漁業の問題がせっぱ詰まってきても、世論が十分沸かないというのはどういうことかということを、私は非常に心配するのです。ということは、ややもするというと、北洋漁業は資本漁業が多く、資本漁業の傘下の独航船等がやる仕事であるから、零細漁民と関係がないのだ、こういうような考え方を持っておる人がある。ところが、現実の問題はそうではなくて、向こうを締め出しを食うというと、必然的に沿岸漁業あるいは零細漁民の方に影響を及ぼしてくるわけであります。また、これは単なる資本漁業のみならず、日本の北洋におけるところの権益を確保するかしないか、国際漁場においての日本の権益が後退するか前進するかというような大きな問題をかかえておりながら、世論が少しも沸かないということはどういうととか、私は非常にその点に疑問を持っているのですね。水産庁あたりは参議院の農林水産委員会に来ましても、これは秘密会議だから、これは秘密だからというふうに、もう扉を閉ざして、大して秘密でもないようなことを秘密のようなふうにお話しになっている。こういうことであっては、ちっとも世論の背景にはならぬし、日本の国民の要望というのはどこにあるのか、日本の国の権益というものは後退するとかいうようなことを国民に植えつける何物もないのであります。ですからせっかく農林大臣は、このつばぜり合いの段階にきまして、相手をやはり押し通していけるか、あるいはこちらが押し沈められるかというこの問題にきて、やはり一番大切なのは、皆後におけるところの日本国民の世論というものを盛り上げて、その力によってもっと日本のつばぜり合いを向こう側の方へ押し進めていくという必要があるのじゃないか。そういう意味においてはどうも世論が沸かない。その原因は奈辺にあるかという点を、一つ大臣もお考えになっておられるでしょうから、その御態度、同町にまたかりにそういうことはおそらくないと思いますが、大臣の御声明によるとないと思いますが、これが七万トン以下になった場合に、当然これは失業者が出てくる、あるいは漁船の調整という問題が出てくる。そのしわ寄せが必ずこれは沿岸漁業あるいは零細漁民、そうして大臣御存じかどうか知りませんが、北洋漁業に行って働いておる労働者というものは、これは沿岸の漁民じゃないでしょう、大部分は山間地帯におけるところの農民、ここの農業基本法に現われてくるところの他産業に従事すると称せられる対象の人たちが、大部分があの船に乗ってそうして行っている。沿岸の漁民は三分の一あるかないか、ほとんどの大部分というのは、山間地帯から北洋に行っておるということを御認識願って、この問題と合わせて今農業基本法という大きな問題をかかえておりますが、同時に将来漁業におけるところの基本法も政府として考えておかれる必要があると思いますから、合わせて御答弁をいただきたいと思います。
#6
○国務大臣(周東英雄君) 御指摘のように、日ソ漁業の交渉というものは、何か脹れ物にさわるような気持で従来はややもすると、隠された形で動いておったということではないでもないと私は思う。これは私はこういうことこそ大きく世論の盛り上がりを願って、その援助ということが必要だと思います。私このたびはかなりそういう面に向けて、御承知のように、この一ヵ月間近くにおける日本の新聞紙の動向は、論説におきましてもまた社会面におきましても、その点はかなり支持をしてくれたと思うのですが、まだ十分とは思っておりません。そういう点が最も私は大切だと思うのであります。今後ともそういうものについては善処をいたしたいと思います。
 それからあとの問題は、これは御指摘の通りで、私も独航船というものの乗り組み員は青森、秋田、山形、岩手等の農業者の方が季節的にその方へ出ておるということは、昔ながらの通りであります。それであるがために、私は必ずしもこれは資本漁業というものばかりじゃなくて、ことに戦後における独航船の経営者と母船の経営者と分離されておることにおいて、一そうその感が深いのでありますから、そういう面も合わせて向こうには主張をいたしておるわけであります。まあことしはだいぶ引き締めてかかっていきましたが、どうも内輪からいろいろ分かれたような意見が出るので大へん因っております。今日までは幸いに一致団結しましたが、どうもこう切迫して参りますと、ここではこのぐらいでいいのだとか、あすこではこのぐらいでいいから早くまとめろなんというのは、そういう点はみんな向こうで利用される。本来の姿はそうでないといってもいかぬようであります。もう一息であります。最善の努力を尽くしていくつもりであります。
#7
○東隆君 委員長、私は今の農林大臣のお話等を伺いまして、当委員会で一つ政府を激励する必要がある、こういうふうに考えます。そこで、この委員会で一つ後刻でようございますけれども、決議をして、そうして一つ政府を激励いたしたい、こういう考え方、これ一つ委員長の方でお取り上げを願いたいと思います。
#8
○委員長(藤野繁雄君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#9
○委員長(藤野繁雄君) 速記つけて。
  ―――――――――――――
#10
○委員長(藤野繁雄君) 続いて、農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)以上三案を一括して議題として質疑を行ないます。
 御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いします。
#11
○千田正君 私は先般池田総理並びに周東農林大臣に質問いたしましたが、そのほかに若干残っておる点がありますので、それを補足してお伺いいたしたいと思います。それはあのとき農林大臣及び池田総理大臣からもお答えがありましたが、私は農民は寸土といえども手放したくないという考え方、この考え方をどういうふうに、しからば政府が考えておるように二町五反以上百万戸といういわゆる理想の姿に持っていくか、これはなかなかむずかしいのじゃないかという点を申しましたところが、それに対して農林大臣は、また総理大臣もおっしゃっておりましたが、農民といえども日本国民なのだから、だから政府が農民のためによかれとはかったことに協力しないはずはないのだ、こういうお答えでありますけれども、私はあの翌日私の県の農民諸君と会ったのです。そのときの話には、こういうことが出てきたのですね。農業の歴史は日本の歴史と同じように歩んできておる。ところが、いつの時代でも、たとえば戦国時代においては群雄割拠のもとにわれわれはいじめられてきた。ざらにその後幾多の変遷をへていわゆる明治、大正、昭和、こういう時代に進んできて、先般は有史以来の敗戦で日本が国土を失った。国土を失ったけれども、同時に失われた国土に住んでおられた人たちは引揚者として、焦土と化した東京あるいはその他の戦災者が農村地帯に入り込んできた。第一番に何を求めたかというと食糧である。その食糧を求めるためにその人たちは何を手放したかというと、自分の身につけておったすべてのものをほとんど手放すようにして求めたものは食糧である。そのときに、われわれはつくづく感じたのは、どんなことが起きてもわれわれはこの土地だけは放したくない、金は一文もなくても、めしとそれから野菜だけは、太陽のかがやいている限りにおいては、お天とうさまはわれわれを見捨てないのだ、この食糧にしがみついて、われわれの永遠の生命というものを確保するのだ、この大地に根づいたこの思想は、とてものことには簡単には、皆さんの政策のようなこういうりっぱな名文を掲げても、そう動かないと私は思うのであります。
 そこで、この間そういう会合の席上で、しからば諸君は何を求めているのだ、政府は諸君のために幸福な農業形態の中に幸福な生活を送るようにという意味で、この農業憲法あるいは農業憲章と称すべきものを出したのだが、これに反対なのか賛成なのか。反対も賛成も今言えないのだ。そこで実際においてほんとうに政府の提案が農民の幸福を考えるとするならば、農民が寸土も放さないというこの思想に対して、前進するところの政策、なるほどという納得のいくところの政策がこの法案に盛られておるかどうかということを考えまして、私はいろいろ検討しておりますけれども、農民が土地を手放してまでも政府の政策に協力するというような段階まで来ておらないのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、この点に対してどういうふうなPRをして、どういうふうにして一体農民諸君の考え方を政府のこの名文にあるような方向に近づけさせようとするかという大体の大きな大づかみのところでよろしゅうございますから、大臣から所信のほどを承っておきたいと思います。
#12
○国務大臣(周東英雄君) ごもっともな御意見でありまして、土地さえ持っておれば、いろいろ悪い場合でも食べ物には不自由せぬという気持で土地を大事にして手放さないという傾向は、私はあると存じます。これは戦争後における食糧難の時代における状況を見て、食糧だけ自家用食糧確保のための農家というものができたことを見てもわかるわけであります。ただ私は法を流れる一貫した考え方というものは、だから日本の農家というものはみんながよくならないで、みんなが小さいままに固まって貧乏を続けなければならぬ状態にあるのだ、その意味におきまして、しかし強制的に離農を進めるわけじゃありませんが、だんだんと現在の経済成長の高度発展に伴いまして、他産業に移動する者ができてきておる。その際になるほど就業労働者の方が主であって、家族をあげて戸数の減はまだ少ないのですけれども、問題は、日本の農業の実態が小さい土地に多数集まってみんなが貧乏しあってやっている形態は変えなければならぬのだ。それについては他に移動すべき第二次、第三次産業の方面がよりよくなって、その方へ行ってもところを得て収入が確保されるのだという形態、私はそれが必要だと思うのです。この点がなければよく社会党さんの方の御質問を受けますが、ごもっともの質問である。現在の状態において移ったって日雇い労働者じゃないか、そういう形態ではかわいそうだ、本職にいけるのかという御質問がありましたが、これはまあ現状においては、いろいろ御質問のような点がありますが、高度発展に伴って、やはりその方面に行ってところを得た職につくについては、職業上の訓練なり、ことに技術訓練というようなものが私は必要であって、正当の場所に技術を持って、そうして雇われるようにしむけていくし、片っ方においては高度成長できた産業面においては十分にその労働者のことも考えてこれを収容する考え方をとっていって、ほかの方に行ってもこれは安全に生活が確保できるというような形を整えることが必要だと思うのであります。これはしかし、口で言うはやすく、実際は困難でありますけれども、日本の農業の零細実態を見ますと、やはりそういう方向に持って行くことがよろしい。これには、私ども何としても鉱工業方面の発展に伴っての技術訓練、職業訓練もやりますが、同時にやり方についてまず最初考えられることは、工場の農山村への移動、つまり都市の分散化計画、未開発地域における工場の誘致、これに関しての特例の法律を作って、今回も議会の御審議を願っております。こういうこととあわせて考えて、農村に居住しながら、その農外所得の得られるように、他の産業に従事しても、しっかりした生活が得られるような賃金が得られるような形もあわせていきたい。これは今度の国会に出しておるのはその一部でございますが、やはり将来としては、私どもはそういう方向で積極的に施策を行なって、ああいうふうなことができたらそっちに行った方がいい、安定できるのじゃないかというような魅力といいますか、施策というものを実際に示すことが必要であろう、こういうように考えております。なかなかむずかしいことでありますが、農村の現在をよりよく発展させるためには、何らか、からを破って新しい方向に進めていきたいと、かように考えておるわけであります。
#13
○千田正君 それで今度は農村の実態ですが、この兼業農家の諸君並びに自作農諸君にぶつかって聞いてみたところが、現実の問題として、今持っておる土地は放したくないのだ、今持っておる土地はこのままにしてもらいたい。そのかわり、政府はこういう施策をしてもらいたい。こういう非常な熱意で言っていることは、新しく国営開墾、あるいはその他の原野の開墾に対して、一部落あるいは、たとえば三十戸とか五十戸とかという集団で、余剰能力を使って、そうして政府のいい果樹園の経営あるいは酪農の経営、そういう方面に協業をやれというのに大賛成なんです。こう言うのですね。自分らの土地は放したくないのだ、自分らの土地はあくまで自分らで確保しておいて、そうして国営、たとえば林野の開放であるとか、あるいはそういう面の新しい土地の造成に対しては、政府の施策に協力して近代化をやる、協業化といいますか、共同化といいますか、お互いの共同耕作によって、お互いの配分を求める方向にいきたい。ただ、自分たちが持っている土地は放したくない。こういう感情なんですね。こういう考え方に対しては、どういうふうにお考えになっておりますか。
#14
○国務大臣(周東英雄君) その点は、私どもは、そういうふうな希望が地域的にあり、またその地域には開放するといいますか、払い下げをしたり、あるいは使用権の設定をしていくような場所が、適地があれば、これはそういうふうな方向へ導く。またそれがために協業経営までいくというならば、その一部経営について、これは助長していくことは、ちっとも差しつかえないと思っております。
#15
○千田正君 これは私の県に限ったことではないと思いますが、特に私の県は特異性を持っておって、まあ四国四県と比較するというと、わずかに十六平方キロですか、それだけ少ないだけの大県でありますが、その大部分が山林地帯なんですね。山林地帯であるがために、国有林と、それからいわゆる山林所有の地主が、大きな面積を占めておる。それでその山岳地帯に住んでおるところの山村農民、農民と一緒くたにいわれますけれども、農民という範囲からいえば、いろいろな分析がありますが、その農民と称せられる、そうした国有林であるとか、あるいは地方の大地主、一千町歩、二千町歩と持っているその地主のもとに、長い間、徳川時代から生活しておるところの人たちは、この終戦によって土地開放というようなことをされても、その恩恵には浴していない。今もってその地主の所有土地にすがって生活しておる。ことに今度の農業基本法というような、農業憲法が、かりにこれが実行されても、そういう人たちは、その恩恵には浴さない。相変わらず他人の土地を借りて、そうして、その人が貸さないといえば、死ななければならないような苦しい生活である。しかも薪炭をやる、炭焼きと称しますが、これによって生計を立てておる諸君には、おそらくこの農業基本法というものは徹底しないでしょう。かりにこの人たちが共同して、それならば酪農をやりたい、こういうことを言っても、その自分らの生息している周囲の大部分というものは、大地主によって所有されて、山林開放どころの話でない。新しいところの山林行政に基づいて、逆に大地主の方は植林をする。おそらく一反歩も自分らの手に戻るような土地がないという現状にあるのでありますが、こういう山村における、一括すれば農民と称せられながら耕地さえ持てない、こうした人たちに対する施策は、何をもって一体あなた方の施策が徹底するような方法があるか、これは何をもってやります。
#16
○政府委員(大澤融君) 農業構造改善ということで、現状の農家をりっぱなものに引き上げていこうということを、この基本法もうたっておるわけでありますが、それは今の農業のワクの中だけじゃなくて、これは基本法の第四章の第二十二条に書いてございますけれども、農業構造の改善をする場合に、たとえば今御指摘がありましたように、山村での問題といたしましては、農業だけでいわゆる自立経営にならないというようなものは、林業とかみ合わせて、農林一体となって、農業だけで自立経営になり得るものと同じような生活ができるようにということで、国有林等について、国土保全というような立場から差しつかえのないところは、そういうところに土地を提供していこら、山を提供していくというようなことを、今後やろうということで、検討しているわけでございます。
#17
○千田正君 大澤さん、それはほんとうですか。僕は、あなた、画にかいた餅じゃないかな。実際に言うと、まだ徳川時代そのままのものが生息しているのですよ、農地開放というかつての、今から十五年前の、終戦当時行なわれた農地開放さえもやられてない、山村におけるところの人たちは。大地主の人たちに、しからばそういうふうに、自分のところに、三十戸、四十戸として山林の中に点在している農家の人たちに、それならば政府の言う通り、私の所有山林を開放します、そうして新しいそういう人たちに、今の酪農なら酪農をやらせましょうというふうに、一体、地主が頭を切りかえているかどうか、おそらく切りかえないだろうと私は思う。それから現在あなたのおっしゃったように、国有林を開放するって、ほんとうにそれはできるか。今までも国有林の開放ということは、おそらく地方公共に寄与するというような問題じゃなけりゃ、なかなか国有林など開放してくれなかったじゃないか。それをどういうふうにして、国有林の開放というところまで進めていく考えであるか。あなた、この法律になって、あくまでこの法律を施行するということになると、相当これは問題ありますが、その点はどうなんです。
#18
○政府委員(大澤融君) 林業の基本問題と申しますか、基本対策と申しますか、これは農業よりおくれた形になっておりますけれども、この農業基本法案の政府案の第一、十二条に、「国は、農業構造の改善に係る施策を講ずるにあたっては、農業を営む者があわせて営む林業につき必要な考慮を払うようにする」ということで、その思想をうたっているわけであります。林業問題の基本的な対策、基本的な方向の問題につきましては、今後検討を進めていくわけでございますが、そうした場合に、ここに書いてありますような考え方で、農業のみならず、農林一体となって、自立経営になり得るようにという構造改善の方向をいろいろ検討して参る、こういうことを申し上げているわけであります。
#19
○国務大臣(周東英雄君) 今大澤審議官が申し上げましたが、国有林の問題ですが、これは私は、今後の農政をこれからやっていくについて、土地造成との関係において、地域ごとによく調査の上、ことに牧町、草地の設定というようなものに関して、国有林もある程度一役買うということで、私は研究を進めているわけであります。一律に何でもかんでも、治山治水と関係もないようなところを、ただむやみに払い下げるということではないのでありますけれども、やはりここに新しい農政を考えるときに、そういう面については、新しい考え方をもって処置し、あるいは必要な場所に差しつかえない限り、使用権の設定をしていくこともよろしいし、場合によっては払い下げということもあっていい。ただ、その間におきまして、林野を払い下げたあとは、もらったからすぐ伐採して、あと植えないということになれば、治山治水上大きな問題であります。今日国有林としてあることの非常によいことは、それが国のものであるだけに治山治水上切ったら必ず植林をしているということにある。こういうことは、山というものの公共性から見るとやっぱり切ったら植えるというような形をとるような形に調整していかなくちゃいかぬと思います。そういう面を考えて、しかも牧野、草地の必要量造成ということについては今後考えなくちゃなりませんので、そういう点において新しい見地に立って、非常な条件もつくでありましょうが、払い下げなり使用権設定というようなことについて考えたらよかろうということを今申したわけであります。
 それから御指摘のように、私は事実を知りませんけれども、私有地で、大地主が山を持っておる。これは別に強制的にどうこうするわけにいきません。しかしそういう点も、ある程度話し合いの上において、日本のその地域にぜひとも一つ共同でもって牧野を作らした方が畜産の上においても役に立つといえば、それは勧奨するということも考えていかなくちゃいけない。強制的にどうするというわけにいきませんけれども、これは私有地と国有地とまた違います。かように考えます。進んでは部落有林野というようなものにつきましても、それをいつかもお話が出ておりましたように、個人に分散することだけが私は必ずしもよいとは思いません。しかしそこらに共同使用の形において新しい農政の用に供する、その地域における農業者のために供するということも一つの考え方であろうというようにこの前も申しておりましたが、これを全部何か分割して払い下げるということは必ずしもいいとは思いませんし、これは地域の町村あるいは部落で持っておったままで使用権の設定をして、その部落の農民のためにはかるということも必要であろう、こういうことをこの前申しておったわけであります。
#20
○千田正君 構造の点については、あとから、これは逐条審議になりますから、あとの問題にしますが、もう一点承りたいのは、との零細漁民、御承知の通り零細漁民と称するものは、これはもう農業と兼業なんですね。全国で約三百万と称せられる零細沿岸漁民と称するものは、ほとんど大部分農業と漁業の兼業である、こういう、面にも今度の農業基本法としての考え方はもちろん及ぶだろうと思うのですが、この点はどうですか。
#21
○国務大臣(周東英雄君) もちろん、兼業農家に対してその行なう農業に関しては同様に取り扱うことは他の産業の兼業者と同じであります。
#22
○千田正君 これは今のところそういう問題も含めてこの案が出されておりますからですが、当然私は漁業の問題になるというと、農業と漁業と兼業であるとすれば、これの裏づけとしてやはり漁業の基本法のようなものが出て初めて農業と漁業の兼業農家というもの、あるいは零細漁民というもの、また一面においては零細漁民であり零細農民であるこの二つのかまえのもとに生活しておる人たちを救う一つの案も出てくる。でこれは将来において、今出ておりませんが、漁業の、沿岸の漁民に対する基本法のようなものは出す御意向があるのですか、どうなんですか。
#23
○国務大臣(周東英雄君) これはぜひ出したいと思っております。これには大きく漁業というものは農業と違った特質を持っているところに、特質のある基本法的なものを出したいと思っております。ただいま法制局でその暫定措置として出そうとしておりますものを実は審議中であります。この国会にできるだけ間に合わせたいと思いますが、もしおくれるようなことがあれば、当然このたび漁業制度調査会が答申をしております案に沿ってどうしても漁業権制度、許可漁業権を入れて考え直さなければならんかと思いますが、これは沿岸漁業に影響するところが大きいのであります。これがおくれておりますが、ようやくこれがことしの三月に答申されております。これらの問題と合わせて適当な法案を将来準備をいたしたいと思います。
#24
○清澤俊英君 ちょっと関連して。ただいま漁業基本法を出す準備が進められている。こういうお話でした。それは間違いないのですか。
#25
○国務大臣(周東英雄君) 根本の問題についてただまだ漁業権制度の形が、制度が確立しておりませんから、不完全ではありますが、ただいま法制局において沿岸漁業振興法という名前のものが審議中であります。
#26
○清澤俊英君 それは基本法という形とはちょっと違うのですか。それだけ聞いておけばいい。
#27
○国務大臣(周東英雄君) ちょっとその点については多少違っております。そこでもし今度の関係、一部出たといたしましても、追っかけて次の機会には漁業権制度の問題が確立するに従って、それと合わせてもっと基本的なものを出したいと思っておるのであります。
#28
○千田正君 最後に私は一点。この間お尋ねいたしましたけれども、お答えがなかった点があるのです。それは外国産の農業産物が将来日本に輸入される。それで政府の案としては大体十年後には三千数百億というふうに、私は物の本で読んだ記憶をしておりますが、これは十年後においては一体どれくらいの外国産農産物が国内に入ってくるか。その点であります。
#29
○政府委員(大澤融君) 十年後にどの程度の農産物が外国から入るかということは今後の問題になりますので、非常に見通しがむずかしいわけでありますが、培増計画でみております数量、それを基準年次の価格で計算をしてみますと、今おっしゃったように約三千二百億という程度のものになります。
#30
○千田正君 十年後に三千二百億という膨大な外国産の農産物が入ってくる。それと競争しないように、まあ第二条にはそういう意味のことをうたっておりますね。外国産の農産物が三千数百億十年後には入ってくる。それと競争しないように国内においては別な面においてそれを育成する。それはいずれ各省においての構造その他について、あるいは流通経済、価格調整等の問題が出てくると思いますが、そのときお伺いするとしまして、これに対処するだけの十分な施策の準備があるわけですね。これはどうですか。その点だけお伺いいたしておきます。
#31
○政府委員(大澤融君) ただいま申し上げましたのは倍増計画で言っている見通しでございますが、もちろん基本法の考え方といたしましては、十三条にもありますように、また第二条にも書いてございますように、外国産農産物に対しては競争力を持ち得るように国内での生産の合理化をやっていく。そういう方向で物事を考えております。現実の問題といたしましては、たとえば大豆の問題にいたしましても、あるいは菜種の問題にいたしましても、あるいは小麦の問題にいたしましても、そういう方向でいろいろの施策をやっておるわけでございます。
#32
○千田正君 そういう意味における防衛策といたしましてこの間も他の委員、たとえば江田君の質問だったと思いますが、かりにこの前の生糸の問題のときのように、生糸はまあいわゆる国際貿易の問題からいって、まあ日本の中で十分だからこれ以上ふやしてはまずいから、それで桑の木を一つ抜いて別な力に切りかえよう。それで当然桑畠を縮小する計画を立てられてその通りやったわけです。ところが今度は逆に生糸が高くなった。それに対処しようと言ってももう間に合わない。そういうようないわゆる国際間の貿易というものとうらはらになって動いてくるところの国際的商品、いわゆる農業産物というようなものに対しては、よほどこれは注意深く考えてやらないというと、せっかく農民のために十分な施策をしたつもりでおっても、逆に農民からうらまれるようであってはいけない。これは前もってこういう法案を出す際に十分考えていただきたい、これは希望でありますから、この点だけ申し上げて私のきょうの質問は終わります。
#33
○北村暢君 私は大臣が三時ごろまでいいんですか……、それでは大臣のおられる間にごく大ざっぱな問題についてお伺いいたしますが、まずこの基本法の性格といいますか、ずっとこう見せていただきますと、この法律のねらいというものはいわゆる農業の憲法だと、こういうふうに言われておる。また農民も農業の他産業における産業構造の中における農業の地位というようなものをはっきりさせて、安心して農業が営めるように、いわゆる従来の農業政策というものが、いわゆる農業を中心として行なわれてきましたが、やはり農民というものを主体に考えて、そして農民の経営なり、あるいは所得なりこういうことが今日問題になってきた、こういうふうにねらいが変わってきているのじゃないか。しかも、そういう考え方から出てきておりますので、農民の要望としてはやはり農業の憲法である半恒久的な国民経済なり、民族社会における農民の地位、こういうものを安定してもらいたい、こういうふうにこの希望というものがあったと思うのです。ところが、この基本法を見ますというと、当面する高度な経済成長下における農業の果たすべき役割、こういうごく何といいますか、現状に即したような基本法になっているのじゃないか、内容を見していただいても全部そういうふうになっている、こういうふうに思うのですが、一体この基本法の、農政の基本を示すこの基本法の性格が、一体どういうところに基本的な目的なり何なりというものを置いているのか、半恒久的に改正を要しなくてもいいものを考えたのかどうなのか。ここら辺の受け取り方、立案の基礎になっているもの、これを一つお伺いしたいと思います。
#34
○国務大臣(周東英雄君) 農業基本法の中には、これはいつまでということを、施行の期日をきめたものでありませんので、その意味からいえば恒久的な立法とも言えるわけであります。しかしてその方向としては、現下の事態に即して農業の新しいあり方をどっちに向けていくかということの方向を示したものでありますが、しかしこの方向づけによって、あり方はきめられてありますがその方向づけに従ってとるべき施策というものは、それぞれ各条に書いてある施策であって、その施策についての関連法律というものは、そのときによって変化が起こってくると思いますが、まず大体においてこの基本法自体は、その方における変化対策というものが関係法により出てくるのであって、一応現在の法制そのものは、いつこれが変化するとか何とかいうことは考えておりません。しかし大きくまた現在のような現状に即して農業の進むべき方向をきめておりますが、これが非常な社会的あるいは経済的変革が起これば、これは永久に補正も修正もしないというものじゃなかろうと思いますけれども、一応今日の段階においては、これは見方によっては、これは基本法であり、半恒久的なものだと見ても私は差しつかえないと思います。
#35
○北村暢君 ただいまの大臣の御答弁ですが、私は、昨日先議の小林議員の逐条審議の模範例が示されましたけれども、その中でも論議があったのでございますが、この第一条のところをよくよく見るというと、国民の農業に関する政策の目標はいろいろあるのだが、最後のところではやはり「農業の発展と農業従事者の地位の向上を図ることにある」のだと、こう言っておるのですよ。これは農業の政策の目標は「農業の発展と農業従事者の地位の向上」というのは、これは今さらいう必要がない、あたりまえのことですね、これは。でありますから、そのためだったならば、ことさらに基本法を制定する必要はない。従って今度の基本法が今申したようなことであれば、憲法との関係あるいは今度の基本法の中で半恒久的な、今おっしゃられるようなことであれば、まあこういうばく然たる、もっともの、当然のことを書くということもわかるのですが、実際は今度の基本法の目標というのはそうではなくして、やはりこの基本法にとりかかる最初の行きがかりといいますか、それはこの前文でもうたっているように、「経済の著しい発展に伴なって農業と他産業との間において生産性及び従事者の生産水準の格差が拡大しつつある。」これがやはり今度の基本法を取り上げる、基本法を制定しなければならないという農民の要求の最大の眼目でなかったか、こういうことが考えられるのです。従って、半恒久的とはいいますけれども、一体この農政の曲がりかどに来たといわれている時期におけるこの基本方針というものは、この法案のほんとうの眼目というのは一体何と何なのか、これを一つお示し願いたいと思います。
#36
○国務大臣(周東英雄君) これは、前文、第一条の前に書いてありますように、現在の経済変動の中にあって、農業及び農業従事者というものが他産業の関係と格差のある生産性、格差のある生活というようなことになっておるものを直すために法律を作り、その直すための目標は第一条に書いてあります。しこうして、その第一条の目標を達成するために、二条以下がこの施策を掲げておるわけです。基本法の基本法たるゆえんというものは、一面においては、目標、農業の発展、農業従事者の地位の向上ということ、それは北村さんのおっしゃるように、必然じゃないか。その当然が当然でなく今まで、あったのです。それをはっきり掲げ、しこうして、それに対する必要な施策をこういうものはやらなければならぬということを書き、それに対して国が義務づけられて、法制上、金融上、財政上措置をとる。しこうして、それらのことは毎年国会に報告して、国民とともに直し、修正し、あるいはよりよく高くしていくということが、基本法の基本法たるゆえんだと、かように考えております。従って、まあよくお話しのように、いろいろ変化するであろうということは、その施策の内容が関連法律、関連制度として現われる場合においていろいろ変化することはあっても、その方向、そのやり方、かくのごとく考えるということについては、私はやや恒久的なものだろうと思います。
#37
○北村暢君 そうしますと、今おっしゃられるように、この基本法を制定しようと、実際なくても、施策を具体的な法案でやっていけばできないこともないわけですね。この基本法は、全く第一章第一条から三十条までどれをとっても抽象的で、この法案がなければどうしてもできないというものは何もないわけです。ごく抽象的に書かれてあるわけですね。それかといって、法律でありますから、他の法律の上にあってこの法律によってこの法律が出るんだと、こういう性格のものではない。対等ですね、法律という点からいけば。対等であるわけです。でありますから、そういう点から言えば、抽象的なことでも、とにかく農民に安心させる、農民の地位というものを安定するための安心させるものである。非常に抽象的な法案です。従って、法律技術的に言っても、前例のない法律であって、非常に立法的にも苦労されている法律だと思うんです。ところが、それじゃこの法律を制定する直接の動機また最大の眼目というものは、やはり他産業との均衡をはかる、こうおっしゃるのでありますから、一体それじゃその均衡をはかる目途というのは、何年くらいを目途においてこの均衡をはかられようとするのか。これは基本問題調査会の答申案並びにその後における所得倍増計画、それから一カ年間かかって検討を続けたこの基本法、こういう基本法が出るまでに至りました経過において、一体どのような考え方で、どのくらいを目途に均衡をとろうとするのか、この点についてお答えをいただきたい。
#38
○国務大臣(周東英雄君) これはできるだけ早く均衡を得せしめるように施策を実行いたしたいということでございます。それについては、一つの目標としては、参考指針といたしておりまする所得倍増計画における行き方から考えると、十年後ということが一つのさしあたっての目標になります。しかし、農業というものはむずかしい点でありますから、十年でなかなかできない点もありましょう。また逆に、地方によってはすみやかに早く二、三年でもやる所もありましょうが、一応の目標というものは、所得倍増計画というものが一つ指針になり、また、農業基本問題調査会の答申を見ましても、これはいつまでということをはっきりとはうたっていないんですから、あくまでも施策を総合的に立てて、現在おくれている農業というものをできるだけ早く他産業に均衡を得せしめるように努力していこうというのが、基本法のねらいであります。
#39
○北村暢君 そうしますと、できるだけ早くということですが、一応、この所得倍増計画で考えておる十カ年ということにおいて均衡のとれるようなところに目標を置いて、いろいろな作業が進められているように私は理解しておるんです。しかし、この点についてはいろいろ論議があるところですが、池田総理も答弁されておって、所得倍増計画はその通りかどうか。あれはまあ経済合理三義によっているので、政治とは違うんだという答弁でございまして、私はその答弁には納得はしないんですけれども、しかしながら、今の大臣の答弁をお聞きしても、大体十年くらいというものを一応の目標に置いて他産業との所得の均衡というようなことを考えておられるのじゃないか、このように思うんです。しかも、それが今度の基本法の中に流れているやはり思想だと思うんです。あらゆる施策を見ましても、とんでもない高遠な理想というようなものを掲げて、そしてまあ将来何年かかるかわからないけれども、その理想に向かっていくんだ。こういうことではなくして、総則の第二条の施策を見ましても、一応現実に今後の施策として実施していく、それもやはり十年というようなところを目途に置いている。しかも、池田総理も言っているように、せっかく計画を立てても三年で修正しなけりゃならんかと、そのくらい移り変わりが激しい、従って、とんでもない遠くを見通しても話にならない、こういうようなことのようです。従って、この法案からずっと見ますというと、やはり一応この所得倍増計画で考えている十年というのが目途でないか。それすらも長期に見通し過ぎるのではないか、まあ五、六年の見通しなら立つかもしれないけれども、十年の見通しというものはなかなか立たないのじゃないか、こういうようなことすら言われておるんです。そういう式でありますから、私はやはりこの基本法の制定の考え方というのは、やはり今言ったようなまあ多くて十年、こういうところに目標を置く。そうだったとするならば、私はやはりこの基本法というのは、もう少し具体的に書かれるべきでなかったか。非常な理想の、憲法に類するような高遠な考え方であったとするならば、抽象的でもいいけれども、少なくともここ十年くらいを目標に置いて具体的な施策としてやるというこういう考え方であったとするならば、この基本法はもう少しやはり具体的でなければならなかったのじゃないか、こういうふうな感じがするのです。こういう点について一つ大臣の見解をお伺いいたします。
#40
○国務大臣(周東英雄君) それはただいまも私がお話をいたしたように、所得倍増計画と基本法とからんでいるようにとられますけれども、大体考え方としては別なんです、ほんとうは。これはむしろ私どもは二年半前から調査研究を進めて、これを立案することにかかったのです。私はその当面の責任者であったのです、党としての。それについては必ずしも所得倍増計画とは別に進んでおったわけです。たまたまああいうものが出ましたので、混同しているけれども、一つの目標はそこにあるように見えます。しかし、私は農業と他産業というものは駸々乎として進んでいるわけです。こちらが遊んでいくと向こうもさらに進んでいくという形で、何も十年間で近づけるということで立ててみたところで、それ以後また遊んでいくのです。ですから常に農業というのは他産業との比較において均衡するように努力を続けて、そして絶えず国家は農業のために施策を講じつつ、常に劣らないような方向に持っていくということが一つのねらいです。その点は私は一つの理論として絶えずそういう方向に努力する。従ってこの法案にも書いてありますように、常に農業の生産その他に関しては上長期の見通しを立てていく。これは長期、十年というのではなくて三年ないし五年ぐらいで少しずつ立てて、それを議会に報告しながら修正していくというような形で、常に変更し、その変更に応じつつ農業の発展をはかっていこうという、大きな私は理念的なものがこの農業基本法だと思うのです。
#41
○北村暢君 この点はまあ非常に抽象的な論議ですから、あれですが、ただ私は今後のやはり逐条審議をやっていく上において、この点はやはり大事だと思いますからお伺いしているのですが、小林先輩の昨日の均衡の論議はあったのですが、これはまたあとから小林委員がやられると思いますから、これに直接は触れません。しかしながら、他産業と農林業という原始産業との生産における格差、それからこれに従事する農業従事者と他産業の従事者との所得の格差、生活の格差、この格差を縮小しようというのが、今度の基本法の非常に大きなねらいである。これはまあおっしゃった通りです。基本法を制定する動機もここにあるわけです。でありますから、この格差というものを私はやはりどういうふうに認識するかということがやはり大きな問題だと思うのです。これに対して一体どのようにこの格差を縮めていくのか。そのためにできた法律でありますから、その点がやはり私は明確になってこなければならないのではないか。そういう点からいって、昨日の第一条の論議の中においても比較するところがあいまいもことしておるというふうな点については、私は非常に遺憾であるし、基本問題の答申案というものが昨年の五月に答申が出されて、これをどのように消化をし、そして基本法の中にどのように明確にこれを打ち出すかということは、非常に大きな議題であったはずであります。それがこの基本法が出されて、なおかつまだどこと均衡をとるかわからないということでは、大体この基本法を制定する根本の問題がぼやけている、こう言わざるを得ない。従って私は昨日来答弁されておるのでありますが、基本問題調査会の答申による所得政策というところでもって相当時間をかけて、相当な資料を用意して検討がなされて、所得政策というものについて一応の答申がなされているわけです。しかし、この答申においても、明確に所得はかくあるべしとは答申はなされておらないわけです。一体この基本法を制定するにあたって、この所得政策の答申のあったものをいかに消化されて、この基本法に所得政策をどのように考えられて打ち出されておるのか。どのように検討されてきたのか、この点を一つ明確にして、それと同時に所得という問題と生活水準という問題とが、きのうも論議になっておりまして、比較をするということになれば、これは所得でないと比較はできないのではないかという小林委員からの意見があったわけです。で、この基本問題調査会の答申についても相当ページをさいてこの所得政策というものについて答申をしているのでありますが、実は生活水準その他については、抽象的になっておって、それについてはあまり触れられておらないのです。論議はされておらない。やはり答申は、所得政策というものについて論議をしているわけです。これをいかに消化されるかということをお答え願いたい。
#42
○政府委員(大澤融君) 北村先生がおっしゃいますように、基本問題調査会の答申では、所得について答申を行なっているわけであります。大体基本法の考え方も、この答申の考え方に準拠して考えているわけです。と申しますのは、基本問題調査会の答申の中で所得政策といたしまして、所得の目標について、あるいは価格政策ということについていろいろ考え方を述べているわけでありますが、ここにあります所得目標、これは農業全体についての所得目標、あるいは農業経営についての所得目標ということを論じておりますが、いわば農業経営についての所得目標と申しますのは、家計支出をとるということもいいのではないかという思想もございますが、生活の福祉の問題として、農民の福祉の向上という問題として基本法の中の一つの目標に掲げ、農業全般についての所得目標、これは能率の問題として農業の生産性の向上の問題としてとらえておるわけであります。また農業所得目標についての検討をすべきだというような答申もございますが、これを私ども受けて、たとえば年次報告の中でそういうことをやって、検討を続けていくというようなことで、基本問題調査会の答申は、大体これに準拠して物事の考え方をまとめているわけであります。
#43
○北村暢君 それではお伺いいたしますが、所得の格差というものをなくしていく手段として、この基本法は所得の格差がある、他産業との間の格差がある。こういう点で、しかもこの所得政策というのが大きく取り上げられて、所得の格差をなくするために農業の生産性を考える。これは生産性を向上しなければ、所得というものは上がらないのだ、こういう考え方で基本法は貫かれておる。これは第一条に従って生産性の向上と所得の均衡ということと二つうたわれておるわけですね。でありますから、それじゃ所得の格差というものをどうやってなくしていくか、これの考え方が一体どのように考えておられるか。
#44
○政府委員(大澤融君) 基本法全体が第一条の目標、つまり生産性の向上の問題と生活の向上の問題、この二つの目標を実現するために第二条以下に諸般の施策が述べられており、その施策のうち、特にこういうあり方がいいのだということについては、第二章以下に述べてあるわけでありまして、そういう意味でこうした考え方で諸般の施策を進めていくということ自体が、今の生産性の向上あるいは生活の向上をはかるということにつながると、こういうふうに思います。
#45
○北村暢君 そういう抽象的なことでなくして、倍増計画において、これは今大臣も言われるように倍増計画と基本法とは違うんだ、関係ないんだ、こうおっしゃられますけれども、これは所得倍増計画として一応発表はなされて、しかも国としても大きな予算をかけて所得倍増計画というものがPRもされておるわけです。その中に倍増計画を決定する場合に、特に農業近代化小委員会というものを設けられて、この基本問題との関連も十分考慮しつつ、あらゆる計数が当たられて、それで一応の所得倍増の目標というものが立てられておる。こういう中で一応発表されたものによるというと、これは第一次産業の農業の成長率、これは農林業、水産業合わせて二・八%である。そうして他産業第二次産業、第三次産業あるいは運輸、通信、公益事業、こういうものの成長率が、第二次産業が九%で、第三次産業が八・二%。それから運輸、通信、公益事業というのが八・八%。それでこれを平均して七・八%の成長率だ、こういうことになっておるわけです。ところでそれをさらに池田総理は九%にする、こういうことですね。九%になった場合において、それじゃ第一次産業である農林業、水産業というものの成長率は上がるかというと、これは上がらない。従って九%の場合、第二次産業九%になっているのが、これが一〇何%にならなければ平均して九%にならないわけです。そのように現状において農業の経済の成長率というものは低い。低い中でこの成長率が固定しておるのでありますから、今生産性を上げるといっても第一次産業の生産性とは問題にならないわけです。従って所得の均衡をとるためには就業人口を、幸いなるかな農業人口というものが移動して減ってきている、こういうことで一人当たりの労働生産性というものが、伸び率というものが五・六%になった、こういうことが所得倍増計画で一応計算されておるわけです。従って今大澤審議官から答弁のありました農業の生産性を上げていく、そのことによって農家の生活水準というものは上がっていくのだ。これはまあその通りでしょう。しかし、そういう抽象的なことではなくして、農業の生産性を上げていくということは、その内容とするものは一体どういうものを含んでいるのか。これは第二次産業、第三次産業と農林業というものは生産性を向上する内容というものは非常に違うのじゃないか、私はこのように思うのです。従って、この所得格差を縮めるという考え方の中に、生産性を向上していく上に一体他の産業と変わったどういう要素を考えておられるのか、この点について一つ御説明をいただきたい。
#46
○政府委員(大澤融君) 基本法の考え方といたしましては、第二条に書いてございますけれども、ただいまもやっておりますように、土地、水等の農業生産基盤を整備する、あるいはそこに適用されるような技術を高度化していく。たとえば土地を集団化して大機械が入るようにして能率を上げていくというようなこと、さらにそのためには、ここで申し述べておりますように、構造改善というようなことを取り上げまして、経営規模を拡大する、あるいは今申し上げた集団化あるいは機械の導入というようなこと、あるいはまた農地保有の合理化、農業経営の近代化というようなことで農業構造も改善していって、生産性の高いにない手として農業経営を発展させていこうという考え方で生産性を上げていく、こういうことでございます。
#47
○北村暢君 今言ったようなごく普通の生産性の向上、機械化するとか何とかということで農業の生産性なんていうものは、そう簡単には上がっていかない。逆に機械を入れたために過剰投資になって、生産性が上がるどころか、かえって苦しくなっているという農家だってざらにあるんですよ。でありますから、機械化すればそれで生産性が上がるなんていう簡単な考え方ではいかない。その機械化もし、構造政策も考え、あらゆることをやって成長率は大体二・八%、答申案でも二・八%か、二・九%しかならない成長率しかないんでしょう。この年率二・八%と九%というのは、現在と十年後と一体どのように考えているか。これは年率であるから、今日からやっていく成長率というものが、十年後の成長率と現在の成長率とどのように考えられるか。この年率二・八%なり九%なりというものが、今大澤審議官の言われたように、機械化し、何かし、構造政策も考えていけば、二・八%が七%も八%もほかの産業と同じようにいくのか、いかないのか、これについてはどうなんですか。
#48
○政府委員(大澤融君) 倍増計画での数字をおとりになって御議論をされているようでありますが、倍増計画では、確かに生産の成長率としては農業は年率二・九%、つまり基準年次から四十五年までの間に年々これくらいずつふえていくだろうという見通しを立てているわけであります。しかしその反面、倍増計画では就業人口が農業では同じように二・九%ずつ毎年十年間に減っていくだろうということで、生産性向上といいますか、生産所得の伸び率としては両方の足したものが五・八%ずつ年にして伸びていく、その結果は今の他産業が、第二次産業がその間に一人当たりの生産所得、つまり生産性としては二倍足らずであるものが農業は二倍以上になる、そういうことで生産性の格差はこの間に縮まっていくだろうというような見通しを立てておるわけであります。しかし、これは一応の見通しでありまして、私どもは今後農業の生産性がどういうふうになっていくかということは、農業自体の中のいろんな変化の問題もございましょうし、それから農業外の就業人口の変化の状態、いろいろありましょうから、必ずしもここでどうなるということは見通せないわけでありますが、それらの内外の条件がどうなるかということに相対応して農業基本法にあるような考え方で具体的な手を打って生産性を上げていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
#49
○北村暢君 もう少し所得倍増計画、そういう都合のいいときだけ所得倍増計画使わないで、もう少し具体的に説明してもらいたい。基本問題の答申案において、一体この成長率というものはどのぐらい見ておられるのか、それから倍増計画の考え方の就業人口の減っていくということがやはりこの所得を上げるということに非常に大きな役割を果たしておる、基本問題だってそれを計算に入れているはずなんです。従って、農業基本法は農業人口が少なくなる、就業人口が少なくなるということを計算に入れなくてもただばく然と生産性の向上なんだという、こういうことで所得の格差が縮まっていくと、このように考えておられるのですか。
#50
○政府委員(大澤融君) 基本問題調査会での試算では、御承知のように成長率、生産の伸びとしては年率三%ぐらい見ております。就業人口の方は逆に年率二%ずつ減るということで、全体としては五%の伸びになる、こういうふうに見ております。
#51
○北村暢君 そこで、基本法ではどういうふうに考えておるのですか。
#52
○政府委員(大澤融君) 基本法は今後こういう考え方で、今申し上げました、農業を取り巻く諸条件がいろいろこれから変化するわけです。あるいは農業内部でも技術とかいろいろ変化するわけです。そういうものに対応して具体的にこういう考え方で手を打っていくということでやるわけでありまして、今後の見通しとしましては、基本問題調査会でいわれたのも一つの参考にもなりましょうし、また倍増計画でいっておりますのも一つの目標的なものにもなり得ようと思いますけれども、今後の、基本法でこうするのだというようなことはここで蓄えないと思います。ただ、基本法が通った場合には、生産なりあるいは需要の長期見通しをするということはございますので、そういう意味では見通しがまた出てくる、こういうことだと思います。
#53
○北村暢君 私は基本法では、今おっしゃったように、今後の年次報告なりあるいは施策なりでやっていくのですから、従って私はその何%減っていくとか何とかいうことを答弁してくれということを言っているのではないのです。少なくとも大きく見て、農業の伸び、生産の伸びと第二次産業の鉱工業の空席の伸びとではとんでもない差があるということは、現実の問題としてわかっているわけですね。しかも、それではその伸び率について差のあるものについて、そういう点から所得の格差も出てきているのだから、実際問題として農業の出産人口はどのくらい減るかわかりませんけれども、減るということを前提に考えなければ所得の均衡はとれないのじゃないのですかと、そういうことを聞いているわけなんです。
#54
○政府委員(大澤融君) 所得の均衡と言われますが、生産性の問題だと思いますが、今おっしゃる通りです。少ない労力を使ってよけいの物を作っていくというふうに持っていかなければ生産性の向上というのはないわけです。そういう意味で今後現実に就業人口が今減っているわけです。今後もこの傾向は、諸外国の例を見ましても、現状から見ましても続くと思います。そういう意味で、より少ない人間でよりたくさんの物を作るという意味で生産性が伸びていくというふうに考えます。
#55
○北村暢君 今の御答弁であるように、農業の生産人口は減っていく、こういうことは、現在も減っているし、将来も減っていくであろう、この見通しに立っているということは、これは今の答弁で明確だと思います。しからばこの所得倍増計画と、それから答申案の付表の考え方、答申案の付表の百九十六ページの「農業就業人口の見通し」というところでもって、この昭和四十四年の推定、農業就業人口というものを見通している。それは六つかに分かれて、こういう場合はこう、こういう場合はこうという検討がなされているわけですね。従って一様ではもちろんございません。ございませんが、大体四十四年の推定、農業就業人口というものは一千百四十八万ぐらいから一千三百万というのもありますね。また一千二百五十万というのもございます。いろいろこの取り方によって違ってくるというものが一応推定として検討を加えられた幾つかの例が載っているわけです。ところが、所得倍増計画におきましても、この農業就業人口の四十四年の推定がなされているわけです。これは昭和四十五年で倍増計画の方は千五十五万ということで見通しを立てておる。ここにこの答申案の場合の推定と所得倍増計画の推定と、まあ私どもから言えば相当開きがある。百万からの開きがあるわけでございます。従って、この基本法を考える場合に、現在も減っているし、将来も減っていくであろう、こういうことが一応考えられて、その数字は明確でないが考えられているといった場合に、一体この計画を立てる場合においても、今後の農業というものを考える場合においてもこの問題とやはり相当真剣に取り組まないというと、今後の農業の生産性なり、構造政策なり、生産政策なり、あるいは所得の格差なり、農業の近代化なりというものについて非常に重大な影響を持ってくる、このことは私はもう否定できないと思うのです。従って、これらのすでに推計されているものに対して一体どのような考え方を持っておられるか、これを一つ。このようなものでいくであろうと、相当、ほぼ確実にそういうふうにいくのでないかというような見通しに立っておられるのか、これはもうとてもこういうようなことにはならないのじゃないか、いろいろこれは見方によって違うわけなんですね。従って、この点は一つお答えをいただきたい。
#56
○政府委員(大澤融君) 倍増計画での就業人口の見通しと、基本問題調査会でやりました見通しは、大体、方法論、考え方としては同じ、ただ、やった時期が違うものですから、多少の数字の食い違いございます。が、これはそれぞれ見通しでございます。いろいろの材料を使っての見通しであって、こういうふうにしようという計画ではない。過去のいろんな条件を将来に当てはめてみたということでございます。私どもとしましては、将来どうなるか、これをお前、正しいものと思うかどうかというような御質問ですと、将来のことですから非常にお答えしにくい、わからないというようなことを申し上げるのがほんとうかと思いますけれども、大体、こういうふうに基本問題なり倍増計画でやりました考えで、将来、十年後には一千万ないし千百万ぐらいになるんじゃないだろうか、という程度の見通しを持っております。
#57
○北村暢君 そうしますと、大体是認されるような御答弁。これはまあ私は、前提は不確実だということを前提にして……。しかしながら、そういうふうな傾向をたどって減っていくであろう、それを首を切るんでなくしてね。池田さんじゃないけど、首を切るんじゃなくして、他産業の成長の点からいってそういうふうになるだろう、こういうことのようですが、一体、この現状の農業就業人口、まあ千四百五十万といわれているが、もう昨年のことですから、おそらくそれが減っているかもしれません。減っているかもしれませんが、一体これの就業人口の内容ですね、満十五才から六十才までの就業人口の男女別の区分からいって、構成比からいって大体、今年度で一体どのようになっておるのか。やや半分というものは婦人労働者ですね。
#58
○政府委員(大澤融君) お説の通り大体、手元にあります数字が三十四年の数字でございますけれども、家族就業者のうち大体半分が男、半分が女ということでございます。
#59
○北村暢君 そうしますと、今後、他産業へ移動しようとする農業就業人口のうちの大部分は新規学卒者、これが大部分を占める、そういう状態。従って、先ほどの見通しからいくというと、年間の新規な若い労働力というものが移動していって、そして残るのは婦人と老人だけだと。このことが、この前農林白書が出たときにも、五つの赤信号というものを掲げて、こういう農業の就業構造であっては、日本の農業というものは、そのにない手が婦人と老人になって、これは大へんなことだ、そしてまたそういう傾向が非常に強いということがいわれている。従って、今後他産業へ移動していく就業人口というものは、対象者は一体どういうものが考えられるかというと、他産業においても私はやはり、要求している、農村に期待している、移動してくる対象のものというのは、やはりこれは若い、主として男子の労働者というものが要求せられている、今後生活が向上し何かしていけば、婦人労働者というものはだんだん減ってくるのではないかという感じがします。これは傾向としてどういうふうになっているか、私は今現実にはわかっておりません。農村からはけていく、移動していくものというのは、私はやはり第一番目には、婦人労働者が早く行くということはまず考えられない。そして農村の就業人口の半分は婦人である、こういうことでしょう。ここに私は、先ほど大澤審議官は今の状態でいけば、十年後においてもそういう見通しに立つのではないか、こう言われているようでございますが、答申案を検討せられた時期と、所得倍増計面の近代化小委員会で検討せられた時期と、農業基本法を今国会で審議している現在と、私は相当やはり事情が変わってきている、このように思うのです。農林大臣は一体四月、十月の農繁期における農業就業人口はどのくらいおるのか、これは御検討になったことがありますか。
#60
○国務大臣(周東英雄君) こまかい数字のことでございますから、政府委員からお答えさせます。
#61
○政府委員(大澤融君) ただいま調べてすぐお答えいたします。
#62
○北村暢君 四月、十月の農繁期の就業人口というのは大体一千九百万なのですよ。
#63
○政府委員(大澤融君) 三十四年から五年にかけての数字でございますけれども、三十四年の四月は千三百四十九万人、それから十月は千四百三十一万人、こういう数字になっております。これは農林省の農林漁家就業動向調査でございます。
#64
○北村暢君 それは雇用労働は入っておりますか。
#65
○政府委員(大澤融君) もちろん入っております。
#66
○北村暢君 そうしますと、私の読んだ文献では、そうはなっておらないわけです。農繁期の就業人口というのは非常にふくれて、大体千九百万ぐらいになる、こういうふうにいわれている。これは文献で読んだんですから、私はその文献が間違いであればこれは私の考えが違うのですけれども、私の読んだのにはそうたっております。それで今日、農家就業人口の移動の非常に大きな問題というのは、農繁期をいかに合理的し、いかに克服するかということが大へんな農業生産人口を減らす大きな問題になっているんですよ、これは。これを無視して、安易に農家の地産人口が減っていくということは考えられない。今の農業の形が構造政策によって、とんでもない変わっちまえばどうなるかわかりませんけれども、今の形というものが、ここ二、三年の間にとんでもない変わるというようなことはおそらく考えられない。その場合に、実は農業の生産人口がどんどん若い者が減っていって、農村においてはこの前の法律案の審議の中でも出ておりましたように、山においては造林をする地元の労務者を募集するのに四苦八苦です、農繁期とぶつかる、そういう状態にある。農業労働においても雇用労働を求めても、農業労働には今非常に集まらない状態ですよ。従って現状ではぼやぼやするというと、田植えと刈り取りはできないような状況になりつつある、これは現状なんです。従って所得倍増計画なり答申案において農業生産人口がどんどん移動していくというのも事実ですし、またそういう傾向だといったことが今日、この検討せられた当時と基本法を論議している現在とでは非常に変わってきている、こういうことについては、一体大臣はそういう私の言ったようなことはないんだとおっしゃるのか、どうなんでしょうか。
#67
○政府委員(大澤融君) ただいまお話ございましたように、農業就業人口がいわば老齢化するあるいは婦人化する、そして若い人がどんどん農村を出ていってしまうんじゃないかというようなこと、そういう傾向は確かにございますけれども、他面、中学校あるいは高等学校を出まして農村に残る人々が過去においては四十万人くらいあったものが、基本問題調査会で当初検討していたころは二十数万だったというものが、昨年あたりは十二、三万、こういう非常な勢いで減少傾向があることも事実でございますけれども、しかし、その中をよく探ってみますと、私ども老齢化、婦人化といってそれほどど騒ぎ立てないでもいい面もあるわけです。と申しますのは、たとえば大学あるいは短大を出て農村へ戻る人というようなものは、むしろ絶対数も相対数もふえつつあります。あるいはまた農業高等学校、高等学校の農業課程を終えて農業へ残る人というものは大体多少は減っておりますけれども、横ばいです。むしろ農業の中で大いにやってやりましょうというような有為な方々が残っている面もあるわけです。私どももうそういうことはとの基本法の考え方でいろいろやって、農業全体を近代化して、青年に魅力のあるものにしていくということ自体とともに、ことにありますように人材を確保していくという諸般の施策もやって、いい人が残るようにということに努めるわけでございますが、今の農繁期の問題でございますが、確かに刈り取り時期、先ほど言われたように、就業人口が月によって大きな差ができておるのも事実でございますけれども、これも見方によっては労力配分を合理的にしていくということで、ピークがくずされているというようなこと、あるいは今後そういう面での機械化が進むということでくずされると思います。ことに田植え時期の非常に忙しい時期、これなどは、これは最初にお配りした資料の中にもございますけれども、ある一定時期だけにかたまっておったものが、田植えの時期など幅広く広がりになっているというような、労力的にも合理的に配分をするというようなことが、現実に行なわれております。今後もそうした方向をいろいろなことで考えていく、合理化をして参るということで手がふえると、こう思います。
#68
○北村暢君 それはまあそういうことにならないというと、この基本法が成り立たないから、そういうふうな答弁になるのですけれども、これは堀本委員が質問されたように、農業高校を出たけれども、実際農業をやらないでほとんどほかの方向へ行っちまう、これは与党の委員である堀本さんがこの前質問されておった通りなんです。実情はそういうところなんです。今の御説明だというと、農業高校を出た者はそのまま農村にとどまるようなことを言って、減っているということはないとおっしゃるけれども、現状はそういうところもあるでしょう。地域によって非常に違うのです。でありますから、とんでもないこの東海道なり何なりのいわゆるベルト地帯においては、ものすごい勢いでやはり移動をして、東北や四国や、南九州というようなところは、移動はもちろんしているけれども、もう一時とどまった、こういうような状況も出ている、ただ、今大澤審議官がおっしゃっておられるようなことが、じゃそう心配ないのだということになるというと、あなた方の言っている生産農業人口が、今後四十五年に一千万から一千百万ぐらいまで減るだろう、こういう想定をしているということと非常に矛盾してくるのですよ、矛盾してくる。大体要求されているのは、先ほど言ったように若い人なんです。今実際に生産のにない手でやっている、また農業経営の実際のにない手というものが、どんどんどんどん都市に移動して行っているわけではないのです。従って私はやはり現実の問題として、農村における農業の生産人口が一千万から一千百万ぐらいまで減っていく、確かに減っていくということは、私どもも否定はいたしませんけれども、その見通しが見通しですから、そうなるかならないかわからないということであれば、そういう点にもなりますけれども、これは論議してたって水かけ論なんで、いや減ると思うというのと、いやそうはいかないだろうというのとの差ですから、これは論議したって意味ないんですけれども、しかしながら、先ほど私が言っておりますように、この答申案を審議している時期と、所得倍増計画を立てた時期と、すでにこの数字が、先ほど審議官が言われたように違ってきているわけですね。三十万ぐらいずつ減っていったものが十七、八万になり、十二、三万になってきている。こういう事実は、もうはっきり出てきているわけですね。でありますから、この見通しが、やはり相当今後の農業の生産政策なり、構造政策なり考えていく上における基本的な要素をなす問題なんです。それでありますから、考え方としては、やはり非常に重要な問題でないか、このように思うのです。でありますから、これはやはり生産性が上がって、機械化されて、そういうものが進んでいくと同時に、また労働生産性が上がっていくのですから、人間が要らなくなっていくのですから、そういう問題と、農業の進歩と、農業の人口というものは比例して減っていく。これは当然わかるわけなんですけれども、しかしながら、現在の考えられておる農業の成長財なり、何なりというものを、生産政策というものの考え方という面からいくというと、今の東北の水田農家が、とんでもない構造改革ができて、生産政策をとられて、とんでもない労力を省く、いわゆる省力栽培とか何とかいう言葉が出てくるくらい、人間のかからない栽培に、革命的にできるか、できないかという問題、これは非常にむずかしい問題だと思うのです。従って先ほど来言っておるように、地域的においてもこれは非常に大きな差が出てくる問題でありますから、これらの点についての展開というものが、やはりもう少し基本法というものを制定する場合において慎重に考えられるべきでないか、このように思うのですが、一説には生産年令が三十年として、第二の地すべりで、現在より以上に跡継ぎがほとんど都市にそのまま残ってしまうというような説をする人もおりますけれども、農林省の中にもおるわけです。しかしながら、そういう見通しというものが、先ほどの外国の例、その他もあげられましたけれども、しかし日本の農業構造というものが、基本法ができたからといって、簡単に構造が、とんでもない欧米先進国のような形になるということは、おそらく考えておらない。与党の諸君ですらも、三年後を見て、わあわあわあわあ騒ぐけれども、何にも変わっていやしないじゃないかということになりかねないと言う人すらあるのです。そういう状態なんです。従ってこの農業就業人口の問題は、これは大へんな問題だと思いますが、今大澤審議官の言われたようなことで、一体そういう見通しに立っておって楽観をされていいものかどうか、私は非常に心配がある、こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。
#69
○政府委員(大澤融君) 先ほども、また今も北村先生からお話がございましたように、当初の見通しは、それほど減らないのじゃないかというようなときに、もっと減っていたというようなこともあるいは事実かと思います。ですから、私どもとしましては、そういうふうな条件の変化に応じて手を打っていこう、こういうことでございます。当初予定しておりましたよりは、さらに就業人口が減るということは、就業人口の減ということが、構造改善の一つの契機にもなるわけでございますから、非常に重要なことだと考えます。残った少ない人でさらにより多くの物を作っていくということに大いに力を入れてやっていかなければいけないと思います。その事柄自体、最初の倍増計画なり、あるいは基本問題調査会で見ておった一応の見通しと現実の動きとは必ずしも一致して動くとは私は思いませんので、そういういろいろの条件の変化に応じて、個々的にいろいろ手を打っていこうというのが、この基本法の考え方であります。
#70
○国務大臣(周東英雄君) 補足しますけれども、北村さんのまじめな御研究、私は必ずしもあなたの御意見を否定するものじゃありません、むずかしい点において。しかし、人口の増減というものが年によっても違ってくるのです。増よりも最近減ですが、農村において違っています。またそれを今後相当に減らして、それだけで生産性を上げるということも御指摘のようになかなか困難です。計画は総合的にいかなければならぬと思います。どうしても私どもは一面においては、毎年三十五万ないし四十万減っている現状を見つつ、しかもそれらには技術なり職業教育を与えて、外でよくしていこう、一面においては、あなたの御指摘のように機械化、あるいは高度技術化を取り入れて、そうして少数の人間でもやり得る指導を農村に持っていきながら減に対処するし、またある意味においてはそういう形が出てくると、おのずから婦人でも、あるいは若い人でもやっていけるようになる。これは私は全面的にしかりとは言いませんけれども、ヨーロッパのドイツあたりの農業の実態を見ましても、婦人農業就業者でやっておるのは、必ずしも悪くない場所があります。それは婦人自体がその機械を動かすということを修得してやっていくということであります。日本がその通りになるということを言うわけじゃありませんけれども、やはり機械力を利用し得る技術の修得ということが、やはり将来における農業構造を改善していく大きな点でもあろうと思います。こういうことが、両方から相寄り相待って、やはり従来過剰の労働を狭い農地につぎ込んでいった農業の実態は変えていかなければならないという一つの意欲的な面を持ち、一面減じていく現状に即応した形をとっていこう。こういうのが私たちの考え方です。一足飛びに、常に二、三年のうちに変わってしまうということもこれは御指摘の通りなかなかむずかしいことでありますけれども、一つは実態に即し、一つは意欲的な施策をとりつつ、より高い農業に持っていこうというのが、私どもの考え方であり、農業基本法の志向する問題点だと思います。
#71
○北村暢君 所得均衡の問題は、均衡そのものが問題になっておるのですから、私はまたの機会にこまかくこの問題には触れたいと思うのですが、きょうはまあ所得というばく然たる抽象論議に終始しておるわけなんですけれども、そういうことで、もっとこれの理論的な比較の仕方なり何なりという問題については、まだこれを小林さんの質問で結論出ていないところですから、私はあまりそれ以上こまかいことは触れないでいきたいと思う。ただここで考えなければならないのは、この第二条の一項の八の最後のところに、「婦人労働の合理化等により」と書いてあるのですが、「婦人労働の合理化等により農業従事者の福祉の向上を図ること。」こういうことがあるのですが、この婦人労働の問題なんです。私は先ほど言いましたように、農業における就業人口の半分は婦人労働者である。してこの婦人労働者というものによって、逆に言えば、非常に大きな日本の農業というものが負担せられておる。これが私は非常にやはり問題ではないか。このように思うのです。それはなぜかというと、今度の基本法の考え方の中に、大きな要素である自立経営農家、これの正常な構成ということを考えておるわけですね。この正常な構成というものの考え方の中には、夫婦とあと一人ぐらいの労働者、こういうことが考えられているわけです。従って、これはもう当然婦人労働というものは農業に従事するんだ、こういうことで考えられているようなんですが、この婦人労働の合理化ということは一体どういう考え方をこの基本法では考えておるのか。この点を一つ。
#72
○政府委員(大澤融君) 北村先生も今おっしゃったように、日本の農業での婦人労働のウエートは確かに高いわけです。諸外国の例を見ましても、アングロサクソン系のアメリカですとか、イギリスでは少ないのですが、ドイツあたりでは大体率としては日本と同じぐらい働いておるということがございますけれども、農村での婦人労働が過重なものになっている。農業労働のみならず、家事施設が不十分なために、家事労働の面でもオーバー・ウエートになっているというような面が確かにあるわけです。そういうものを、労力配分を合理化したり、あるいは先ほど大臣が言ったように、機械によって労働を控えていくとかいうようなこと、あるいは家事施設を合理化して、その面から婦人の家事労働の合理化をはかっていくというようなことを考えておるわけでございます。
#73
○北村暢君 若干の労働の軽減というようなことは考えられておるけれども、農業の就業労働者として婦人を対象に考えていることについては間違いないんじゃないですか。どうなんですか。
#74
○政府委員(大澤融君) 不合理な労働からの解放をいっております。そこで自立経営農家でいっております正常な家族の構成で考えている普通の労働力としては二、三人のものを考える、二ないし三人以下のものを考えるわけでございますけれども、その場合にはもちろん婦人の、配偶者の労働も考える。しかし、その労働が不合理なものであってはならないという考え方をここにいっているわけでございます。
#75
○北村暢君 不合理なものであってはいけないというけれども、私はなぜ婦人労働のことを聞くかというと、第二条の一項の八のところにしか婦人の労働の合理化というのは出てこないのですよ。ほかには出てこない。大体のものはみな出ているけれども、婦人労働を合理化するという内容はこのあとの方に出てこない。それで私は聞いているのです。第二条の方については、国の施策については私は一つ一つ聞きたいのですが、これは全部あとに出てくるのです。ですから、逐条審議で私は聞きたいと思いますから、きょうは第二条のところは実は触れないでいるわけです。ただ、あとに出てこないのは――婦人労働の合理化というのは出てこない。あとのところに出てきていないのでありますから、まあ何といいますか、今大津審議官のおっしゃられた考え方はごく抽象的ですが、これは農村の実態というものについて婦人がいかに過重労働であるか、農業生産の上においてとんでもない過重労働になっているか。これはあなた実態は知らないわけじゃない、知っているだろうと思うんですね。これは現状をどうするかということで大きな問題なんです。と同時に、基本法の中で、私は、この婦人労働というものを合理化するとおっしゃるけれども、これはドイツ等において婦人労働が多いというのは、あのナチスのときの行き方が世襲農業としてやはり家族労働というものが残ってきているから、やはりそういう、何といいますか、習慣といいますか、そういうものが続いてきているのですよ。これは日本の農業だって同じことなんです。それで、ここで画期的に基本法を出していこうといった場合に、私はこの婦人労働というものを、農村における婦人労働というものを合理化といろ言葉で簡単に解決する――まあ、こう言えば岡村さんあたりから怒られるのじゃないかと思う。百姓のおかみさんは働くにきまっているんだ、それでも働いても働いても食っていけないのだ、それなのに遊びが多くなってくる、そんなばかな話はあるかと怒られるかもしれませんけれども、やはりこの基本法の考え方から言えば、私はこの婦人労働の合理化ということが一体どの程度に真剣に考えられているかということが私は問題でないかと思うのです。もう少しやはり婦人労働の問題については、これは得票数から言っても半数あるんだから、自民党は婦人のことを非常に考えているということで相当宣伝されておるんだが、ここら辺は少しやはり考えたら、与党の方からいってもいいんじゃないかと思うのですがね。どうも今の、画期的な基本法と言いながら、婦人労働に対する考え方が、どうも婦人議員がおらないから私は代弁して言っているのだけれども、そういう感じを受けるのですが、どうなんでしょう。
#76
○政府委員(大澤融君) 真剣に考えてないというお話ですが、私ども先ほども申し上げましたように、男は家事労働から解放されているのに、婦人は農業労働のみでなく不合理な家事労働にも従事しなければならないという、非常に大きなウエートがかかっております。そういうことがあるからこそ、私どもはそれを合理化しなければいけないということで第二条の施策の一つとして掲げたわけでございます。それから、第二条に書いてあって、あとに書いてないというようなお話がございましたけれども、あとに書いてありますとか、ないとかということがそのことの重要性をどうこうという問題ではなかろうかと思います。
#77
○北村暢君 とにかく自立経営農家の正常な家族構成の中には明らかに婦人労働というものを考えているのですよ、あなた方はね。ですから、これを考えないというと、日本の農業はやっぱり成り立たないということですね。これはやはり私は、今度の基本法という法律が、従来の農業関係の法律と非常に違うところは、所得等の問題についても、農家の所得ということは考えておらないのですよ。対象になっておらない。農業の従事者個人の所得というものがどうなるかということが考えられている、そうでしょう。この法案の中に農家の所得ということは出てこないのですよ。出てこないというのは、農業従事者の所得という、やはり労働者というか、勤労農民というものの、個人というものの所得というものを非常に重視しているわけなんですよ。これは従来の農業立法から比べるというと、非常にやはり違う点なんですね。従って、昨日の小林委員の質問の中にも所縁の均衡をひとしくするという問題について、これは生活ではなくて所得でないのかということをしつこく言われておったのも、家族が全体で全部働けば、そうして家族としての、家としての所得が高ければ、食えるような所得であれば、それでいいかというと、そういう概念ではこれはないと思う、所得の考え方というのは。従って、きのうは東さんからも経営と家計というものは分離すべきではないか、この理論からも当然出てくる理論であって、嫁さんなり、おかみさんが月給をとってもおかしくない時代なんです。そういう時代の感覚からこの基本法というものは、私はこの所得という問題について、農業に従事する者ということで個人をやはり考えておる。個人の所得というものを考えておる。労働に対する生産性向上ということも、労働生産性ということも、当然その働いた人の所得ということを考えておる。そういうように非常にこの法律の考え方というものが出てきておる。そこで、私はこの婦人労働の合理化という問題にやはりもう少し抜本的な考え方というものが出てしかるべきではないか。これは農業従事者の地位の向上ということをいっておる。農業に従事する者の個人の地位の向上、農家の地位の向上ということはいっておらぬ。従って、農業経営の中における従事者の婦人労働というものの地位の向上ということも非常にこれは考えられなければならない。農業労働のほかに家事の労働があり、育児の労働がある。こういうことで、婦人の労働を合理化していかなければならない、もう過重になっておる。これは、今度の基本法の中で、私は一条を設けて、特筆大書して日本の農業の近代化ということをうたう上において非常に重要なことでなかったかと思う。従って、ここに第二条のところにあって、うしろの方にないから軽視したということではなくて、ここに合理化ということで十分考えておるのだというふうにおっしゃるけれども、そうはなっていないでしょう、やっぱり。私はそういう感じがしておるのです。でありますから、これは後の逐条審議の中に出てきそうもないから、きょうは特別にこの問題について御質問したわけです。どうですか、その考え方は。私の考え方は誤りでしょうか、どうですか。
#78
○政府委員(大澤融君) 婦人労働を合理化しなければならないということは、力説される北村委員のお考え方通りだと思います。私どももそういう気持で基本法の施策の一つとして特に掲げたわけです。農業あるいは農業経営を近代化するということ自体が婦人労働の合理化でもあるわけでありますが、特に、先ほどから申し上げましたような問題がございますので、施策の一つとしてこういうことを掲げたわけでございます。
#79
○北村暢君 それでは私は第三章総則の第一条については、この中でもお聞きしたいことはあるのですが、小林委員も保留されておるようでございますから、この点は私はきょうは質問を省略をいたします。
 それから第二条につきましても、第二条のほとんど大部分のものは、あとの第二章以降に出て参りますので、第二条についても私は質問を省略いたします。
 そこで、第六条と第七条の年次報告とそれから年次報告にかかわる農業の動向を考慮する施策を明らかにしたところの文書の提出、これは毎年行なうわけですが、この問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、ドイツの農業法においても、根幹をなすのはグリーン・レポート、グリーン・プランが中心になっておったように思います。先ほど来の御説明、答弁を聞いておりましても、第二章の農業年産の需要及び生産の長期の見通し、これは長期の見通しはなかなか立たないようでございますが、とにかくこれに基づいて、毎年国会に農業の動向並びに政府が農業に対してやって参ります施策に関する報告書を提出する、こういうことになっておるのでありますけれども、これは私は構想からいっても非常に重要になってくるのではないか。はっきり言えば、このことによって、農業基本法に、昨日来の質問にもありますように、一体政府の責任というものがどういうふうにとられるのだ、この基本法に対する責任というものは、一体どういうふうにとられるのかというととが盛んに質問されておりますけれども、私は政府の責任というものが、この第六条、第七条によって、もう毎年々々これは責任も負わされるし、またやったことが明白に出てくる。そういう点からいって、これはきわめて重要な施策であるし、従来の農業政策の中でもなかったところの画期的な施策でないか、このように思います。従って、私はこの第六条の報告というものが、先ほど来、私が最初に申し上げたように、この基本法が非常に抽象的にできておるのですけれども、この報告の内容なり何なりというものは、もっと具体的であるべきでなかったか。どういう点とどういう点とどういう点についてはこの報告をしなければならないということを、私はこの基本法の生命としてやはり規定をしていく必要があったのではないか、こういうことこそ、具体性を欠いたのでは報告にならない。抽象的な報告では次の施策というものは出てこない。従って、この報告の内容というものについては、私はやはりもっと具体的に規定をしておくべきであったと思うのですが、一体この報告の内容等についてどのようなことをしなければならないというようなことを検討が加えられたのかどうなのか。また、この法律が通ったならば、どのようなことを、農政審議会にかけようとする案があるのかないのか。こういう点について一つ答弁をしていただきたい。こう思うのです。
#80
○政府委員(大澤融君) ここでは、農業の動向、あるいは政府が農業に関して講じた施策というものについて年次報告をするわけでありますが、たとえば農業の動向というような場合には、農業出産の動向、あるいはまた、価格、流通の事情であるとか、あるいは農業構造についての動向、あるいは農家経済についての動向というようなことについて、いろいろ統計資料等も用いて報告をするわけでありますが、その中で最も肝心な、第一条で目標に掲げておりますような、生産性と農業従事者の生活、この問題について、最も重要な柱でございますので、その点については特に第六条の二項にそういうことを掲げたわけです。そうしてこういうことが農政審議会で議論されて、さらに国会に報告されるということになりますので、これが議論されて、またこれがもとになって翌年度その次に施策をとるわけでありますから、生産性あるいは農家の生活がどうだ、これでは不十分ではないかということでいろいろ施策が積み重ねられて行なわれていくということに、これで、なると思います。
#81
○北村暢君 それでは第二条の第二項において、「前項の施策は、地域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して講ずるものとする。」、この「自然的経済的社会的諸条件」というのは、これは問題のあるところで、きのうも、これは一体どういうことかということでいろいろ質問が出たのですが、とにかくこの地域性を考えていくのだ、施策の中で、ということがうたわれておるのですが、この六条の方は、「農業の生産性及び農業従事者の生活水準の動向並びにこれらについての政府の所見が含まれていなければならない。」、こういう非常にばく然たる表現になっておりますが、この報告というものは、農業の生産性が幾ら上がったとか、あるいは農業従事者の生活水準が若干上がったとか下がったとか、上がるような傾向にあるとかないとかいうようなことを、政府の所見をつけて出してみたところで、私は、グリーン・レポートとしての報告というものにはならないのじゃないか。これは国会に対する報告ですからこういう抽象的なことになっておるのでしょうが、国会に報告するということは、農業の従事者、国民に対して報告する。従って、これは農業の従事者が使える報告でなければ私はならないと思う。どうでしょうか、そういう考え方は。
#82
○政府委員(大澤融君) もちろん、国会に提出するというととは、国民の批判をこう、こういうことでございますから、そういうことができるような報告をしなければならない、こう思います。
#83
○北村暢君 これは西ドイツあたりのグリーン・レポートの検討も加えられたと思うのですけれども、一体どのようになっておりますか。こういうような抽象的な報告でいいことになっておりますか。
#84
○政府委員(大澤融君) グリーン・レポートの法文自体は、わが国のと大同小異で、抽象的ということが言えると思いますけれども、報告の内容、これは私どもが今後やる場合には、いろいろ統計的な数字を使い、地域的な問題も解明してやるということになろうと思います。
#85
○北村暢君 ですから、この点は私は、こういう抽象的なことではなしに、私はある程度具体的なことをあげる。それでなければ農民は、こういう報告を受けても、その現実の農業経営に生きてこないのですよ。判断のしようがない。しかもあなた方は、この基本法そのものではあまり考えておられないようだけれども、この間総理大臣も、そういうような点で、経済合理主義だの何だのということではなしに、政治的に考えるのだというような答弁がありましたけれども、現実に生産性を向上するとか、あるいは所得を均衡さして上げていくとかいうことは、農本問題の討論の中においても、従来の農業生産というものが、非常に非近代的な、非経済的なものであった。これを経済合理性に基づいてやっていかなければならない。相当、農民の判断によって、しかも自主的な判断によってやるのだ。上からの官僚的な押しつけの農政ではなくして、真に農民の自主的判断によって、生産性なり合理化なりしていこう、そういうものに役立つグリーン.レポートでなければならない。私はそう思うのです。従って農業の経営の規模であるとか、経営の形態であるとか、経営の組織であるとか、経済地域別の分類をなされたところの報告というものがなされないというと、全国一本の生活水準が、生産性が何%上がったから何だからといったって、農民にはわからないのですよ、こんなことを報告されてみたところで。あるいは農業従事者の生活水準の動向がどっちを向いたとか何とかいうことを、国会議員に報告するつもりで出されるようなグリーン・レポートであったならば、これは何にも役に立たない、私はそう思うのです。しかしながら、ここに書いてあることは抽象的であるけれども、実際に報告するものは具体的にするのだ、こういう答弁のようでございますが、そうであったならば、もう少しこれはやはり親切に、この法案というものは、こここそ私は具体的にやはり規定をしておくべきではないか、こういうふうに思うのです。この考え方はどうですか。
#86
○政府委員(大澤融君) そういう考え方もあろうかとも思いますけれども、個々具体的にいろいろのことを並べるというようなことではなくて、年次報告というものは、毎年々々積み上げていくもので、そのときどきの情勢によって新しいこともつけ加わりましょうし、私どものいわゆる気持としては、真に国民の批判を受けて、今後の政策はどういうことをやるのだというようなことの批判を受けて、そういうところに持っていけるようなものの報告にしていきたいという気持でおります。
#87
○北村暢君 この法律が通ったならば、農政審議会の意見を聞くというのですが、白紙で意見を聞くわけじゃない、あなた方は一体どういうものを国会に報告するかという案を持たなければならぬ、少なくともそういうものについて、これからあなた方は一年間準備をして来年の国会に報告する準備をしなければならない、そういう具体案があったらこの法案の審議の過程において出していただきたい、出せますか。
#88
○政府委員(大澤融君) 年次報告をどういうものにするかということは、今申し上げたようなことでございますけれども、法案が通過した上は、そういうものを来年まで今後年次報告すべき時期までに固めて参りたい、こう思っております。
#89
○北村暢君 現在は案は何もないんですか。
#90
○政府委員(大澤融君) 先ほど申し上げましたように、農業動向という場合には、たとえば農業生産の動向でありますとか、それを言われるように地域的にどういう作物がどういう生産になっているかということですとか、個個具体的に農産物の価格、流通の事情がどうなっているとか、あるいは地域的に農家経済の収支の状況がどうなっているとか、あるいは農業構造の問題として土地の移動なり就業構造の変化なんかがどうなんだというようなことを具体的に検討して報告の中に盛りたいというふうに考えております。
#91
○北村暢君 一体そういうことが、現実に農民がこの報告を聞いて、今後の農業生産に役立つようなものになっていかなければならないわけでしょう、あなた方は施策を講じて実施したその実施の状況について報告するわけですね、今度の七条の点についても文書でもってこの施策というものを、報告に基づいて、こうやった経験の中から、来年の政策はこれですといって国会に出さなければならない、こういうことになっている、その施策というものは、従ってこれは生産農民に対して直ちに影響してくる問題ですよ、それが基本法の論議をしている中において何だかわけのわからない抽象的な答弁で、それであなた今後検討するんですなんということだから、農民は基本法が通れば何となくよくなるだろうと思っているんですけれども、通ってしまえば何が何だかわからないということに、具体性が一つもない、少なくとも今後の農業政策の施策として今いろいろ項目を第二条であげたようなこと、こういうようなことについて具体的にグリーン・レポートにはこういうことを考えている、そのやった結果がどうだった、こうだったということでなしに、どういうこととどういうこととどういうことを報告させ国会に提出するんだ、そのくらいのことはあなたわかっていないというと、一体農民はこの基本法を見て何が何だかわけがわからないじゃないですか、抽象的なことばかりで。ですから、こういうことこそはやはり具体的にしておかなければならないんじゃないかという私の意見なんですけれども、それが今文書はこうなっておるけれども、法律上の用語としてはこういうふうにせざるを得なくしたけれども、もっと具体的にだってできないことはないんです、あまりにもこれは抽象的ですよ、抽象的です。こういうことこそ抽象的で……実際にやるものは具体的にやるんだというならば、その案をそれじゃ示していただきたい。案はないんでこれから検討するんですというんじゃ、一体何を根幹に審議をすればいいか、信頼がおけないじゃないですか。そういう感じが私はしますがね、どうなんでしょう。
#92
○政府委員(大澤融君) 重ね重ね申し上げておりますように、法文の書き方は確かに法文でございますから、抽象的ですけれども、農業の動向等については具体的に数字をあげて、それによってまたこうした施策についてもそういうことを見て今後の政策というのはこうあるべきだというようなことが判断できるような具体的な報告を作りたい。特にその中には二項にありますように、農業従事者の生活水準でありますとか、あるいは生産性の問題を特に重要なことであるからこの条文にも書いてございますように、こういうことも含めてさらにそういうことは政府がどういうふうに見ているんだ、それでいいのか悪いのかというような所見も加えて出すのであります。そういう所見についても御批判がありましょうし、さらに報告自体を具体的な数字をながめて批判もございましょうし、そういうことから第七条にいっておりますような施策が現われてくるわけです。そういうことができるような報告を作り上げていきたい、こういうふうに思っております。
#93
○北村暢君 これは私は最初に言った農業の憲法としてもうほんとうに理想的なことで数個条書いて、そうして農業の方向というばく然たる理想的なことを掲げる農業憲法だったらそれでもいいかもしれません、しかしながら、最初に私が質問したように、今後激動する、この経済の変動する中で、しかもそれにその経済の変動に役立つ農業の経営というものを今後考えていこうということになれば、もっと具体的な――象的なことでなしに具体的な規定をしなければならない、しかも十年くらいすればこの基本法案と今考えているような形でいって所得も倍増し均衡もとれたということになると、この法律の大部分は、要らなくなってしまう、まあおそらくそういうことにならないんだろうと思いますが、それで十年たっても二十年たっても所得はまだ均衡も残っておる、残っておるということで続いていくんであったらば、そういう意味のこの基本法が抽象的に書いたというならば、これはごまかしにしか私はならなんいじゃないか、少なくとも十年くらいの見通しにおいて今の日本の農業の構造から、出産の形から所得の均衡まではかろうという法律であったとするならば、これはやはり相当具体的に規定をしないと、私はしかもどこもかしこもやれというのではなくして、最も重要な示唆をする報告なんです、一年々々日本の農業をグリーン・レポートなり、グリーン・プランによって方向というものを農民に与えていくという非常に重要なことでしょう、それはやはり私は非常に具体的に規定すべきだと思うんです。ですから、この問題については私ずいぶん論議をやっておっても、これは解決しませんから、直すとも言わないしね、ですから私の考え方だけを申し述べておきますが、それで終わりたいと思いますけれども、とにかくこれは私はこの基本法を審議している間に構想を――構想でいいです、構想を示していただきたいと思いますがね、それもできませんか。
#94
○政府委員(大澤融君) 繰り返して申し上げますように、先ほど言ったような考え方で政府の立場からするならば反省の材料、国民や国会の立場からすれば批判の材料、それに十分価するものに作り上げて参りたい、こう思っております。
#95
○北村暢君 私どもは政府のやったことを批判だけしておればいいのじゃない。農民に国会の批判だの論議だのというのを聞いても笑われちゃうですよ。農民がそんな批判なり何なりして、よかったの悪かっただの批判してそれで事足りるという問題じゃない。とにかく生活して豚なら豚飼う、牛なら牛飼う、これは批判して間違いございませんからといって、それで事足りるというようなものでないですよ。農家としては批判なんという問題じゃないです。実際の農業経営に役立たなければならないんですよ。それをあなた損するものはしてもいいなんという、それはしたときはしたときで批判すればいいじゃないですか、直せばいいじゃないか、それではいけないんです。それは出産性の向上の方をどのくらい見た、経済の成長を三%見たやつが二・九%なり八%なら、それは批判でもいいかもしれないけれども、そんなことでないですよ。そういうことも重要ですけれども、実際に先ほど言った経営規模なり、経営形態なり、あるいは経営組織なり、組織と経済の地域別の分類されたところの報告がなされて、そして実際に農家に役立つプランでなければならないと思うのです。そうは思いませんか。批判の材料か何かでいいという考え方ですか。
#96
○政府委員(大澤融君) お言葉を返すようでありますが、今申し上げましたような動向なり何なり報告をして、それは政府の立場から言えば、今までの農業動向、特に生産性なり、生活の問題はどうなったということを検討して、それをさらに改善をしていくといろ施策を生み出す反省の材料、こういうことであります。その農家にとって不十分ならば、さらに施策をして参ろうということを、この報告をもとにして第七条で講ずべき施策ということでやっていくわけでございまして、私ども考えておりますやり方も、北村委員が言われるのとそう大きな開きがないんじゃないかという気がいたしますが、第六条、第七条と相待ってそういうことになるというふうに御理解いただきたいと思います。
#97
○北村暢君 これは私が今さら言うまでもなく、ドイツの農業法を見てもらえばわかる。このドイツの農業法の中核は、やはりこのグリーン・レポートですね、グリーン・プランですよ。これはドイツの農業法の中核をなしていると私は思っているんですがね。それくらい重要な中核をなしているものだと思うのでありますから、私はこれ以上言いませんけれども、どうもその構想すらも国会審議中に出すとは言わないわけです。何ぼ押しても言いませんからね、しかし私は非常に大事だと思いますよ。どういうことをやろうとしているのか、どういう構想でやろうとしているか、そういうことすらもわからないで、この法案が通っていくということは、私は農業の動向、農業に関してこういった施策に関する報告を提出しなければならない、その報告には農業の生産性、農業従事者の生活水準の動向並びにこれについての政府の所見が含まれていなければならない――こういう程度のもので、はあさようでございますかといって、この法案が通っていくということについては、あまりにもこれはお粗末過ぎる。もう少し内容というものをやはり実際に出していただいて、いいとか悪いとかということくらいは聞かれて、それもこれをそういうふうにきめるだけではなくして、農政審議会の意見を聞かなければならないのですから、その農政審議会に出す案くらいは、ここにやはり出されるべきではないかと思います。これが無理な意見かどうかわかりませんが、私は決して無理でないと思っております。
 それから政府は第七条でもって、第六条の「報告に係る農業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を提出」する。これは文書を提出するというのですが、との文書が農業基本法のように非常にわかりにくい文書であってはもちろん困る。このことは実際に地域農民が使っていくものですから、これについても私は一応の構想というようなもの、こういうものをやはり示していただきたかったと思います。
 それから最後に、きょうはもう四時半までということですから、最後に一つ……。これはまあ第十一条はまだ入りたくないのですけれども、十一条のところに出てきている価格の安定のために「結果を公表しなければならない。」こういうことになっているわけですね、この点とグリーン・レポートなり、グリーン・プランとのつながりについて、どんな考え方を持っておられますか。
#98
○政府委員(大澤融君) 第三章第十一条についての御質問だと思いますけれども、第十一条の二項で「政府は、定期的に、前項の施策につき、」これこれとこういうことでございますが、先ほど申し上げた第六条なり、第七条の問題では、価格政策というものは、そう短期的に毎年どうこうというような問題ではないのでありますから、そこでグリーン・プラン、あるいはグリーン・レポートというものに匹敵するような、六条、七条で直ちに扱えない部面が多いおけです。そこで二年なり、三年の期間にわたって、価格制度、価格政策がどういうふうな機能をしたかということを、こういうような観点から検討いたしまして公表する、こういうことです。価格政策の特殊な性格からこういうことを考えたわけでございます。
#99
○北村暢君 この十一条の論議は十一条にいったときにやりますが、だからきょうはこのグリーン・レポートの中において、具体的なことを規定するといったことも、一つは価格の問題で私は聞いて一おきたかった、というのは、この前からも質問なり、意見なりが出ているように生産性なり、あるいは従事者の生活水準の動向なり、何なりというものもあれですけれども、予示価格というものをやはり示すべきではないか。そのことによってあなた方は予示価格をやって、それよりか値段が下がったり、上がったりして農民が損害をこうむったときに、補償しなければならないという問題が起こるから、これは予示価格というものはできないのだ、こういう考え方もあるようですが、今後の農林施策を示す上において、農民は価格というものについて非常に大きな関心を持っているのですよ。従って、相当長期といっても、五年も十年もというわけにはいかないかもしれませんが、少なくとも二年や三年先の予示価格というものをやはりこの施策の中に入れるべきじゃないか。そのことによって、農業の生産というものについて農民が非常に安心をして、あるいは一つのその目標に向かって価格というものを考えながら、自分の経営をどういうようにあるべきかということで考えていく、こういうような点からいっても、この予示価格というものを当然示すべきじゃないか、こういう意見を持っているのです。従って、この第六条なり、第七条の施策の中で、一例をあげればこの予示価格の問題ですね、こういうようなことも、実はこの第六条なり、第七条の中で一体どういうことをやるのかということが私どもは具体的にやはり知りたかったわけです。これは一例としてこの予示価格の問題を出したわけなんですけれども、この点について一体どのような考え方を持っているのか。
#100
○政府委員(大澤融君) 言われる予示価格の意味がどういう意味か必ずしもはっきりいたしませんから、具体的にお答えすることはちょっとむずかしいかと思いますけれども、たとえばフランスでやっておりますような、先の値段をあらかじめきめておく――何年か先の値段をきめておくというような制度は、価格政策としても、また第二章でいろいろいっておりますけれども、生産政策としても、今後検討をしていかなければならない問題だと、こういうふうに思っております。
#101
○北村暢君 私は、時間が来ましたから、きょうは質問を終わりますけれども、この第六条と第七条のグリーン・レポートとグリーン・プランの構想くらいは、一つ理事の間で検討していただきたい、そのことを注文をつけて、きょうの質問を終わっておきます。
#102
○委員長(藤野繁雄君) 本日はこの程度にいたします。
 これにて散会いたします。
   午後四時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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