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1960/05/26 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 商工委員会 第26号
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1960/05/26 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 商工委員会 第26号

#1
第038回国会 商工委員会 第26号
昭和三十六年五月二十六日(金曜日)
   午後二時二十二分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
五月二十四日委員野田俊作君及び新谷
寅三郎君辞任につき、その補欠として
岸田幸雄君及び鈴木万平君を議長にお
いて指名した。
五月二十五日委員江田三郎君辞任につ
き、その補欠として吉田法晴君を議長
において指名した。
本日委員千葉信君辞任につき、その補
欠として近藤信一君を議長において指
名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     剱木 亨弘君
   理事
           川上 為治君
           古池 信三君
           椿  繁夫君
           牛田  寛君
   委員
           赤間 文三君
           大泉 寛三君
           岸田 幸雄君
           斎藤  昇君
           山本 利壽君
           近藤 信一君
           吉田 法晴君
  国務大臣
   国 務 大 臣 池田正之輔君
  政府委員
   科学技術庁原子
   力局長     杠  文吉君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       小田橋貞壽君
  説明員
   科学技術庁原子
   力局政策課長  井上  亮君
   労働省労働基準
   局労災補償部長 村上 茂利君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○原子力損害の賠償に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○原子力損害賠償補償契約に関する法
 律案(内閣提出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(剱木亨弘君) これより商工委員会を開会いたします。
 本日は、原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案の審査を行ないます。
 初めに、委員の異動について報告いたします。
 五月二十四日、野田俊作君及び新谷寅三郎君が委員を辞任、補欠として岸田幸雄君及び鈴木万平君が委員に選任され、昨二十五日、江田三郎君が委員を辞任、補欠として吉田法晴君が委員に選任され、また、本日、千葉信君が委員を辞任し、その補欠として近藤信一君が委員に選任されました。
  ―――――――――――――
#3
○委員長(剱木亨弘君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま本委員会において審査中の原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償契約に関する法律案について、理事会において協議いたしましたところ、参考人の出席を求め、意見を聴取することに意見が一致いたしました。本件について、右の通り決することに御異議ありませんか。
 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(剱木亨弘君) 御異議ないと認めます。なお、出席を求める日時は、三十日午前十時とし、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(剱木亨弘君) 御異議ないものと認めます。よって、さように決定いたしました。
  ―――――――――――――
#6
○委員長(剱木亨弘君) それでは原子力損害の賠償に関する法律案、原子力損害賠償契約に関する法律案、以上二案を一括議題とし、質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○吉田法晴君 あるいは順序が前後するかもしれませんけれども、お許しをいただいて、質問を進めたいと思います。この前、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の審議の際に、これは大臣もかわっておりますし、それから局長もかわっておられるようですが、今度提出せられました法律案の件について、質疑等が行なわれているのですが、あの規制に関する法律で、万全を期すると、こういう建前になっておるわけでありますから、あの原子炉規制に関する法律の、その後の実施状況というものを、まずお尋ねをしなければならぬのですが、詳細は資料でお願をすることにして、大要でけっこうです。
#8
○政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。原子炉規制法の改正をいたしましたが、御承知のごとく、その改正のおもなる点は、臨界実験装置というものを原子炉同様に扱うということにいたしております。その後、臨界実験装置につきましては、原子炉審査専門部会というものが原子力委員会の一つの部会としてございまして、その部会におきまして審査を依頼しているという状況でございます。そのほか原子炉等の審査につきましては、新しくその後の状況として審査にかかっているものはございません。現在までには立教大学等を含めまして、すでに十基の原子炉の審査を終わっております。そのような状況でございます。
#9
○吉田法晴君 そういう規制の対象になる原子炉その他ができた云々ということをお尋ねをしているのではなくて、あの法律の審議の際にお話が出ました保安規定あるいは早期発見、配置転換の計画等を立てるとか、あるいは地震、火災等の危険の場合の措置をきめるとか、あるいは賠償措置、今度のにも関連がありますが、賠償措置等についてきめる、こういうお話がございましたが、それらの点について、詳細は資料でいいですが、大要どういうことになっているかということです。
#10
○政府委員(杠文吉君) どうもちょっと御質問の要旨を取り違えまして、まことに恐縮でございます。
 保安規定の関係でございましたら、保安規定は、規制法改正後の状況にかんがみまして、目下日本原子力研究所に据え付けられました炉につきましては、再申請を要求しているという段階にございます。資料によりましてその保安規定の詳細につきましては後日差し上げたいと思うわけでございます。それからまた、地震等に対するところの措置でございますけれども、その措置は、すでに現行の規制法、すなわち改正前の規制法におきましても十分に留意いたしておりまして、たとえば原子力発電会社の東海におけるところの炉におきましても、関東大震災のおよそ三倍に近いところの大震災にもたえるところの炉の設計というような観点から審査いたしております。その他、この保安規定を十分に守っているかどうかというようなことを検査いたしますために、検査官を、現在原子力局において、七名任命いたしております。そして、その七名が常時検査するという態勢を整えております。以上でございます。
#11
○吉田法晴君 後者の方は、まあ安全基準という問題についてお答えになりましたけれども、あの規制に関する法律の際に言われておったのは、地震、火災等の危険時の措置をどうするか、こういうことをきめるというお話でしたから、それをお尋ねしたわけでありますが、安全基準の問題はあとからお尋ねをいたします。
 それから、その保安規定の中に、たとえば先ほどちょっと触れましたけれども、早期発見したものの配置転換云々というものも入るわけでしょうか。保安規定のほかについては、答弁が少し質問に的はずれでしたが……。
#12
○政府委員(杠文吉君) 地震、火災等に対処するところの処置についての改正ということでございましたが、本国会においてお諮りいたしました規制法の改正におきましては、そのような改正はいたすことに相なっておりません。それからまた、早期発見という点も同様でございまして、規制法の関係におきましては、原子力被害の、すなわち従業員の被害の方が主だろうと思いますが、それについての、早期発見の処置をとるというような改正は、規制法の中にはございません。
#13
○吉田法晴君 あまり時間をとりたくないと思っているのですか、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正の際に、保安規定のお話は、これは今速記録を持ってきていないからわからないのですけれども、配置転換の計画、あるいは地震、火災等の危険時について万全の措置をとりたい云々という話がありましたから、そういうものが、それでは法律の中に、何といいますか、規定にあるわけではないけれども、関連をして、そういう措置をとりたいという話でしたから、そういうものについて、どういう措置というか、あるいは準備がされているか、こういうことを伺ったわけです。
#14
○政府委員(杠文吉君) すでに先ほどお答え申し上げました通り、今回の改正におきましては取り上げておりませんので、従来危険時の措置といたしましては、核原料物資、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律におきまして、第六十四条というものが設けられまして、そのような際の措置をいろいろ取り決めております。おりますが、その関係で申しますと、たとえば第二項におきまして、地震、火災、その他の災害が起こった、その「事態を発見した者は、直ちに、その旨を警察官又は海上保安官に通報しなければならない。」というような規定等がございますが、そういうことはよく徹底するように、原子力研究所、あるいは燃料公社等につきまして指導を強化いたしております。
#15
○吉田法晴君 指導を強化するというようなことだけでは、これは工合が悪いでししょう。鉱山について鉱山保安法があり、あるいは規則があるように、その危険時の措置主あるいは配置転換についても、やはり計画がなければならぬと思う、早期発見と、それから配置転換の、そういう措置、あるいは法的な、あるいは規則にしても、あるいは計画にしても主そういうものができておりますかというお尋ねをしたのですが、あまりないようですね。
 それから原子力災害保際の今までの実施状況について概略承りたい。これも資料でいただきたい。
#16
○委員長(剱木亨弘君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#17
○委員長(剱木亨弘君) 速記を始めて下さい。
#18
○政府委員(杠文吉君) 原子力研究所といたしましては、五億円ということを保険金額といたしておりまして、保険料は暫定でございますが八百三十万円でございます。
 それから先ほどお答え申し上げました折に、多少言葉が足りませんでございましたから補足さしていただきたいのでございますが、危険時に対するところの規制法上の措置といたしまして、モニタリング・システムという方法をとっておりまして、原子力研究所構内におきましては、厳に毎日々々放射能の状況を測定いたしております。また原子力の研究所周辺につきましては、県の方におきましてモニタリング・ステーションを置く計画を進めておりまして、原子力局におきましても、常時密接な連絡を保ちつつ、ぜひその実現方をはかりたいということで目下努力中でございます。
 以上のような状況でございますし、またそのほか原子力研究所におきまして、万一の場合に備えまして防護隊という組織を持っておりまして、約二百人の人が防護隊員としてすでに訓練を終えております。防護服をつけて万一の際にその人たちが第一線の措置に当たるということにいたしております。
#19
○吉田法晴君 保安規定あるいは配置転換計画あるいは地震火災等の危険時の措置、これらのものを核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の審議の際には、整えて万全を期したいということでした。それに対して今モニタリング・システムあるいはステーションあるいは防護隊等の説明がございましたが、それも一つの何と言いますか、保安規則なりあるいは体制には間違いありませんけれども、あの審議の当時言われたのは、それぞれの研究所だけでなくって、あるいは原子炉について、あるいは実験炉その他について十全の保安規定を作り、あるいは早期発見、配置転換の計画を立てたい、あるいは地震、火災等の危険時については万全な体制と規則を作っておきたいと、こういう話であったと思いますので、その点についてはなお当時の言明と今の答弁と比べてみて不十分な点があるようですから、これは災害が起こったあとのときの保険とか救済とかいうことでなしに、私は損害賠償というものも一つの損害が起こらないような制裁的な機能と申しますか、あるいは命令的な機能を持っておると信ずるのですが、十分のそうした損害の起こらない措置について万全を期してもらいたい。当時の言明からすると、まだ不十分な点があると思いますので、これはお願いをしておきます。
 それから保険について五億、あるいは保険料がこれは研究所の八百三十万円ということですが、他のあれについてはまだないのですか。その当時これも規制に関する法律の審議の際に落ちておって、全体的な保険なりあるいは保障の制度は法律として出しますが、考えられる保険の総額は十五億あるいは五十億、六十億にもなりましょう。資本金積立金の数パーセント、これは数字が出ておりませんが、数パーセントということになりましょう、こういう話でしたが、それらの点がその後実際にどういうことになっておるかということをお尋ねしたいのです。
#20
○政府委員(杠文吉君) お答え申し上げます。現在動いております炉が日本原子力研究所の炉だけでございますので、そのほかの炉につきましては建設中でございまして、早いものにおきましては、本年の末ころにも動くのが出て参ろうかと思います。その折に、日本原子力研究所における保険料率というものが参考にざれまして、保険料がきまっていくだろうというふうに考えられます。そこでまだ稼動しておりませんものですから、保険料がきまっていないというのが現在の状況であります。
#21
○吉田法晴君 それでは研究所の八百三十万円というのは何パーセントですか。
#22
○政府委員(杠文吉君) 五億円に対する保険料でございます。
#23
○吉田法晴君 幾らになりますか。
#24
○政府委員(杠文吉君) 保険金に対しまして一・六%になっております。これはあくまでも暫定でございます。
#25
○吉田法晴君 大学の研究施設等で、衆議院の審議の段階で十ほど含んであげられたのですが、それを全部含んでまだ動いていないのですか。
#26
○政府委員(杠文吉君) そうでございます。
#27
○吉田法晴君 約款のことはあとで伺います。賠償法によりますと、原子力損害が発生した場合に、被害を受けた第三者に対する原子力事業者の損害賠償責任については、これを無過失責任とする、しかも原子力事業者以外のものはその損害の賠償する責任を負わない、こういうことになって、保険の集中制がとられておりますが、第一に伺いたいのは、原子力事業者の責任を無過失責任としたのは民法上の不法行為責任とどういう関係になるのか伺いたい。
#28
○国務大臣(池田正之輔君) これは御承知のように、何と申しましてもまだ原子力は未知数の面が非常に多いので、従って、故意あるいは過失がなくとも、そういう損害が起こると、起きないという保証はできないのであります。そういう場合を想定いたしますと、現在の民法の一般原則だけではこれは被害者の保護が十分とは考えられません。そこで、そういう場合を想定いたしましたのが今度の法律の趣旨でございます。
#29
○吉田法晴君 法律的な関係は学者に伺うことにして、ただ関係者一応出ておられますから簡単に聞いておきたいと思うのですけれども、それは国際条約草案の第三条一項の(a)ですか、運営者は自己の設備の事故、事故はまあアクシデントですが、事故から生ずる核損害、またはその設備から取り出されもしくは流出する核危険物質に伴う核損害について責任を負うと、こう案文がなっている。そうすると、設備の事故から生ずる核損害、あるいは設備から取り出されもしくは流出する核危険物質に伴う核損害について責任を負うと、こういうことで、設備の事故からと、それから材料と申しますか、核危険物からの損害、そのほかに考えられますのは運搬がある。それから操作等がございます。民法七百十七条との関係はないという一応説明、しかし、国際条約の草案を見てみまずと、設備の事故から云々ということで、設備との関連があります。これは設備ということで、民法七百十七条の工作物の瑕疵と関連がある。こういう質問を、論議をいたしますのは、実益がないわけじゃない。というのは、何でもかんでも無過失責任だと、こういうことにしますと、その避止義務というものが、あるいは回避義務というものがなおざりにされる。そこで先ほどちょっと触れましたけれども、その安全基準という問題とそれから責任というものとは、これは関連があるし、それから無過失で填補ということになりますと、その填補の責任が限定ざれるということにもなる。これは理論的な問題にも関連いたしますけれども、そこでこの瑕疵あるいは過失がどこにあったか、あるいはどこから原因するかということは、責任をはっきりいたします場合に、その瑕疵あるいは過失を防止するという意味で回避義務を課するということを法上はっきりすることは意味があると思う。そこでお尋ねするわけですけれども、条約案にあります設備の事故から、あるいは材料からこういったようないろいろ原因はあるけれども、原因の瑕疵なりあるいは過失なりがあった場合には、それは必ずしも全部わからぬから、そこで過失を推定する、あるいは法律で擬制をする、こういうごとに考えるべきではなかろうかと私は思うのです。これは産業災害について、労働災害については無過失賠償責任を言われた村上さんの著述も拝見いたしました。無過失責任ということで責任は制限されることは当然だという理論ですが、そこら辺に少し関連があるのですけれども、原子力災害についてわからぬところもある。わからぬところもあるが、回避義務あるいは避止義務というものも否定をしてしまって、全部が無過失責任である、こういうことには少しやはり問題があるのじゃなかろうか、こういう感じがするのですが、いかがでしょう。
#30
○政府委員(杠文吉君) 確かに御指摘の通りのこともございます。しかしながら、先ほど大臣からも御答弁申し上げたように、原子力というものが未知の分野が非常に多うございますので、その現在の段階におきまして、その挙証を被害者の方にさせるということはきわめて困難な場合が多うございます。従いまして、御指摘のあることはございますけれども、被害者の保護に非常に重点を置くという立場からいたしまして、挙証責任を負わせることなしに、原子力事業者の方にすべて損害賠償の責任を集中しようということでございます。
 ただ、いろいろ例をおあげになりました瑕疵担保の関係でございますが、瑕疵担保につきましては、もちろん当然に民法の適用がございまして、瑕疵あるものに対するところの損害賠償の請求はなされ得ることは当然でございますが、ここに規定しますのは、第三者に対するところの損害の賠償でございます。瑕疵担保は当然民法に譲るという建前になっております。また、たとえば、いろいろ資材等を提供いたしまして、その資材等に基づいて損害が発生する、第三者に損害が発生するというような場合におきましては、その損害というものが第三者の故意または過失によって生じたということがはっきりいたします折には、原子力事業者には、一たん第三者には賠償いたしますけれども、その賠償いたしたところの原子力事業者が故意または過失を犯したところの資材の提供者等に求償をするという規定が第五条として設けられております。そのような仕組みになっておりますので、決して原子力事業者がすべてがすべて、今度は逆にいいましたら、被害者を泣き寝入りさせず、原子力事業者もすべてがすべて泣き寝入りさせないという建前にもなっております。その点は避けられるようになっております。ただ被害者が回避の面等があって、回避しなくちゃならぬじゃないかというような規定まで設けますのは、これは多少酷ではなかろうか。先ほどから御説明申し上げておりますように、原子力が未知の分野があるだけに、どういうふうな回避の仕方をしたらいいかというようなこともまだはっきりと確定いたしておりませんので、それを義務づけるということは多少無理ではなかろうかということから、そのような措置をとっていないということでございます。
#31
○吉田法晴君 今の答弁の中で幾つも問題がありますが、はっきりしている方からお尋ねしましよう。
 五条に、材料の提供者については、故意、過失がある場合に求償権を行使することができると書いてあるということですが、材料の提供者というのは、おそらくこれは現在の場合、外国、たとば五条の2の……資材の供給をした者は――これはただし書き、供給をした者は故意があるときに限り云々ということですが、これは供給者全部について、今材料提供者について故意、過失があればあるいは求償権を認める、こういうお話でしたが、それは外国の部分を含んでですか。
#32
○政府委員(杠文吉君) その通りでございます。ただ外国の分を含んでございますが、その通りでございます。その通りでございますが、故意、過失という過失は、もちろんただし書きの関係は入りませんでございますが、御指摘なさった通りに、故意だけでございますが、その前者の場合、すなわち一般第三者の場合には、故意または過失ということは入るわけでございます。従いまして、後者につきましては、外国関係は故意に限りまして、過失ということは除かれておりますが……。
#33
○吉田法晴君 この辺は、先ほどの答弁は不正確だ。
#34
○政府委員(杠文吉君) 失礼いたしました。それで主また供給者という場合に、すべてが外国ではございませんので、現在国産一号炉というものを東海研究所に建設中でございますが、この場合などは国産一号炉というように、国内のメーカーが材料を提供して建設することもございます。
#35
○吉田法晴君 国内の一号炉の材料は国産だ云々というお話しでしたが、あるいは燃料公社で作ります材料かもしれませんが、今の材料というのは、私は、何といいますか、原子燃料というか、のことだと思ったのですが、その一号炉はこれは建設資材でしょう、言われたのは……。
#36
○政府委員(杠文吉君) 燃料も含みますけれども、現在の燃料、これは第一次、第二次と御承知の通りに燃え切っていきますと、また燃料を詰めかえるわけでございますが、現在の燃料は外国製を使う国産一号炉でございますね、になっておりますから、建設資材関係と御了解願いたい。
#37
○吉田法晴君 そうすると材料も、先ほど言われた材料というのは、それは燃料だけじゃなくて資材も含む。ここには「資材の供給又は役務の提供により生じたものである」云々と書いてあります。それから、そういう意味で国産云々ということを言われる。それから燃料も、あるいは再生といいますか、一度使ったものを再生する場合には、国の国産と、こういう理解で材料が外国ばかりではない、こういうこと、そういう意味であったのですか。
#38
○政府委員(杠文吉君) 原子炉の建設資材とそれからまた燃料におきましては、第一次、すなわちこれから入れようという燃料は外国製でございますが、二回以後におきましては国産の燃料を使いたいという計画でございます。それからまた、それらすべてを含みますが、また、ただいまお尋ねの燃料につきまして、日本で使ったやつもまた再生するというようなお話でございましたが、その最初の事業はまだ残念ながら日本ではできておりません。しかし、法律の対象としてはもちろんとらえておりますけれども、現実にはまだ最初の事業は行なわれていないという状況でございます。
#39
○吉田法晴君 第三者の故意、過失という意味で、先ほども言われましたが、材料の中の資材を残して、燃料については提供を受けておるのは現在のところ外国、従って、五条のただし書き末項のところは、これは外国から提供される部分に該当するが、供給をしたものは、あるいは従業員に故意があるときだけに限る、過失は除く。それから、それ以外の第三者については故意、過失から生ずる、こういう答弁であったわけです。これは整理をしたわけですが……。
 そこで今問題は、材料の供給者、燃料について、これは国際条約にもございますが、まあ買うのに条約といいますか、協約といいますか、これは動力協定で免責されているから、いわばこれは輸送中の事故についてももちろん責任を負うということでなければ供給されない。そういう段階だという点はわかります。しかしこの前も――これは大臣ではなかった、高碕さんが大臣のときに阿部君等も問題にしておったのですが、今のままの状態を永久にとにかく続けるという点はいかがでしょうか。ですから、そういう意味からいうと、動力協定等について、運搬については、これはその協定に従うという点はわかりますけれども、その点については将来改められるかもしらぬというか、法律の中でこれをはっきり供給者については、故意だけに限って、過失は除くという規定を永久のものとして規定をするということはどうだろうか、こういう感じがするのですが、この点は局長及び大臣いかがでしょうか。
#40
○政府委員(杠文吉君) それは私からお答え申し上げますが、先ほども申し上げましたように、この法律の目的がまず一人の被害者も泣き寝入りさせないということにあるのでございまして、その点からいたしまして、やはり故意に限るというふうにした方が被害者を迅速に救済することができるのではなかろうかというのが第一点。
 また第二点におきましては、原子力事業の健全な発達をはかっていきたいという目的もございまして、その意味からいたしましても、法律関係が非常に複雑になり過ぎますことは、問題が起こりました折りの解決が非常に遷延いたしまして、迅速な解決ということができがたいうらみもございますので、過失ということを除きまして故意に限ったというような事情でございます。たとえば外国におきまして過失がいかにして行なわれたかというようなことを調査いたしましたりすることが、きわめて困難な事情がございます。それですから、なるべく原子力事業者に責任の集中化をはかった以上は、その線に沿いまして法律関係はできるだけ簡単にしていきたいという考え方でございます。
#41
○吉田法晴君 それは答弁になりませんよ。前で無過失責任と責任の集中を規定をして、そしてあとで求償権の問題として五条が作られておる。今説明されたのは前の三条、四条の無過失責任とそれから責任の集中で十分です。故意だけ求償権を認めて過失は求償権を認めない。挙証の困難といえば、過失も挙証は困難です。だから今の答弁では答弁になりませんよ。それで大臣、あなたは下ばかり見ておられるが、国際条約草案にあることも知っております。これは今言われる集中なりあるいは権利関係をはっきりしたい、とこういうことでしょう。ところが今までは免責条項を作らなければ売らぬというのですから仕方がなかったかもしれませんけれども、それを動力協定には受け入れたけれども、法文に永久に残しておくことは、永久の法律として残すことはいかにも屈辱的な条項ではないか。向こうの言いなりになっている段階を、それを固定化することではないか。だからその点は法律で認めなくても、あるいは動力協定なら動力協定をそのまま認めるという規定の仕方をすればいいではないか。こういうことが言えるのですが、どうですか。
#42
○説明員(井上亮君) お答え申し上げます。ただいまの御質問は、第五条の求償権のただし書きの問題でございます。第五条におきましては、最初に第一項といたしまして、これは一般的な原則でございますが、一般原則といたしましては、損害の起こりましたときに、その損害が第三者の故意または過失によって損害が起こったというような場合には、その損害賠償をいたしました原子力事業者は、その第三者に対しまして求償権を持つ、これは従来の法律的な考え方でございます。ところでこの本法におきましては、ただし書きをもちましてこの原子炉の運転等の用に供される、つまりサプライヤーに対しては、そのサプライヤーに何らかの過失があったために損害が起こった、その者に対する求償権につきましては、故意だけに限ったわけでありますが、限りました趣旨は、結局これをもし過失ということにいたしますと、結局あらゆる場合に――故意ということは、事業者の故意はめったにないわけでございまして、ただ過失ということは、往々にしてあり得るわけでございますので、従いまして、もしかりに関係が非常に広いサプライヤーについての過失にまで求償権を追求いたしますといたしますと、結局なんというか、責任関係あるいは危険負担の関係、そういった点が広範囲な関係者にまたがるわけでございます。この点は局長が申しました通りでございますが、そこでそういたしますと、無数に関係するサプライヤーがそれぞれとの原子力災害についての損害が起こりましたときの求償に備えて何らかの担保措置をせざるを得ないという事態になるわけでありまして、たとえば日立製作所が日本原子力発電会社の原子炉を作るというような場合に、日立製作所は、そういう法律でもあれば国の補償契約でめんどうをみてもらう、保険に入る、いろいろ措置をとらなければなりません。同時に発電会社の方も求償ができる場合はいいですが、対象が自分の関係、自分の故意、過失で損害が起こった場合には、自分が支払らわなければいかぬわけですから、自分が保険措置なり、あるいは何らかの措置を講じなければいかぬ。サプライヤーとしては日立製作所だけにとどまりませんで、日立製作所が下請業者を使います場合には、下請業者の過失によってそれが原因で事故が起こった場合には、日立製作所が下請業者に追求するというような関係にもなるわけであります。そういった複雑な法律関係をもう少しすっきりすべきではなかろうか。つまりこれは第三条にも第四条にも精神においては関連いたすわけでありますが、責任は絶対責任を原子力事業者に負わせまして、この原子力事業以外のものは責任は負わない。しかも原子力事業者は絶対責任だけでなくて青天井の、制限のない……先ほど吉田先生がちょっと御指摘のありました一般の法律概念でいきますと、やはりこういった強い責任を課しますときには、やはり責任の限度の議論があるわけでございます。この法律では、責任の限度はございません。あくまでも青天井の責任を負わせる、しかも無過失の絶対責任を負わせるという立て方をいたしておるわけでございまして、そのかわりやや従来の立法的な考え方では過酷と思われるような責任を負わしておりますので、その事業者に対しましては、あとの条文にもありますような、損害賠償措置を講じますときに、保険の措置とかあるいは保険でカバーできないときは国が補償契約で、その損失を補償してやるとかあるいは損害額五十億以上になりますときは、国が事業者に援助をしてやるというような措置をとって、法律的なバランスをとったというようなことでございまして、この五条の故意だけに限りましたのは、そういった意味合いが法律的にはございます。
 それからなお一言補足さしていただきますと、このただし書きは決して外国のサプライヤー保護という見地だけではございません。御承知のように、たまたま日米協定とかあるいは日英協定におきましては外国を日本政府が免責する、先ほど先生が御指摘されました通りでございますが、従いまして思想的にはまさに合っておりますけれども、しかしそれだけを意図したわけではございませんで、日本のサプライヤー関係につきましても全く同じ趣旨で、この過失というところまでは責任を負わせないで、責任を負わせれば当然サプライヤーはみずから保険指貫なり何なりをさせなきゃいかぬというようなことになりますので、その関係を簡素化した。それから第三点にはやはり現在の商慣習が原子力関係につきましては、特にこういう資材の提供あるいは役務の提供をされる側にとりましては、やはり万々一の事故ということもございますので、やはり故意だけに限りたいということが世界的な立法の趨勢でもございますので、そういった考え方もあわせてとったということでございます。
#43
○吉田法晴君 この問題、またやる機会がありましょうから、そのとき伺いますが、ただこういう疑問が残るんですが、この国内の分はいいです。それは集中ということで求償権が残る、それから二項で特約を妨げないということですから、故意にといっても、重大な過失等について求償権を行使し得る道も残されるでしょうし、それはいいんですが、燃料の供給者が外国である場合、炉もそれから材料もそれから使用済み後の燃料の、何といいますか、かつては何かそれも相当放射性物質を伴うものあるいは軍事力にも使えるというものを返すということになっている、そうすると、運搬の途中での責任、これは運搬の責任は運搬者に負わされないで、それは経営者、事業者になっている。そうすると、それじゃ供給を受けてもらったときだけでなくて、持って帰るときあるいは返すとき、途中で事故が起こった場合には、この責任はだれが負うか、これは事業主が負うといえばあれですが、それについて故意、過失があった場合に、その故意、過失について責任を問う何らの法的余地も残っていないということで問題が起こる、もし起こった場合、これは原子力損害それ自身について、危険率が少ないけれども、もし万一の場合に備えて手当をするわけですが、その場合にどうなるのですか。
#44
○説明員(井上亮君) 運送中の責任の問題でございますが、運送中の責任の問題につきましては、御指摘されましたように、この法律では第三条の二項におきましてその燃料物質を受け取る人、受取人である原子力事業者が賠償責任を負うわけでございます。で、さらに国際輸送の場合はどうなるというような点を御質問になったわけでございますが、国際輸送の点につきましては、これはやはり輸送契約によってきめられると思います。いわば第五条二項の特約的な契約によってきめられると思いますけれども、この場合には現在保険制度によってカバーするという考え方でおります。特に航海中の責任というようなややこしい問題もございます。ございますが、これは現在保険によってカバーするという考え方をとっております。
#45
○吉田法晴君 そうすると、この受取人が日本の研究所であるとか何とかという場合には、その原子力事業者としての研究所が責任を負う、ところが返送する場合には、これは受取人はないわけですね、そうすると、今の保険にかけるというような話ですが、それは通常の保険になりましょう。
#46
○説明員(井上亮君) この法は日本の国内法でございますので、まあ相手側が外国の、原子力事業者でありまする場合は、これは三条二項は適用いたしませんので、従いまして相手に、使用済み燃料を日本から英国へ送る、あるいは使用済み燃料をアメリカに送り返すというような場合には、受取人はアメリカなりイギリスの事業者ということになるわけでございますが、その場合にはその契約がある、その際これはどっちに責任を負わせましても、どちらかが結局保険でヘッジしなければいかぬ、カバーしなければいかぬわけであります。かりに日本で考えております受取人主義というような点、こういった考え方を米国、英国の関係業者も納得いたしますならば、同じく受取人であるアメリカの業者イギリスの業者が責任を持つわけでございますが、その場合にはアメリカなりイギリスの使用済み燃料の受取事業者は、やはり保険に入らなければならぬと思います。当然保険に入ると思います。そのかわりその再処理料が割高になるという姿で日本にはね返ってくるというふうに考えます。そうでなくて、今度はこの原則とは違いまして、日本側が責任を負うというような契約になりました場合には、日本側が保険に入らなければいかぬということになりますので、再処理費用そのものは安くなるかもしれませんが、結果としては、日本の業者が保険料を負担するという形で、いずれにいたしましても、双方保険でヘッジし合おうという態勢でございます。
#47
○吉田法晴君 その保険でカバーするとしても、この法律によると、受取人である原子力事業者がその損害を賠償するということになりますし、その賠償責任を保険それから国の補償、それからそれを超すものは援助、こういうことになりますから、その保険の、とにかく受取人である原子力事業者が損害賠償する責任が、その返送中の事故について責任を負いますか、この条文では負えないで、普通の保険ということになる。たとえばイギリスなりアメリカなりが保険にかかって契約によって向こうが責任を負うということになりますと、それが日本の領土、あるいは領海、あるいは近海で起こった場合、それ以外のときにはこれは外国人が被害を受けるんですから、イギリスに請求しようと、あるいはアメリカに請求しようと、これはかまいません。それからその保険の関係がどうなるかということは、まあ知ったことじゃないとは言いませんけれども、直接私どもには関係がない。しかし、日本の領土で、あるいは領海で、あるいは日本人が出漁しておる海域等で事故が起こった場合には、これはじゃあ国際裁判によって、アメリカなりイギリスにとにかく訴えてみなさいと、こういうことになる。そうすると、この法律では、原子力損害を日本人が受けた場合に救済の道はないじゃないか、こういうことになりはしないですか。
#48
○説明員(井上亮君) 私の御説明がやや舌足らずであったわけでございますが、日本の領土領海を通過する際の責任はだれが負うかという問題が一つございます。つまり返送する場合ですね。で、私は公海上のことまで包括的に申し上げてしまったわけでございますけれども、領土領海内におきましてはこの第二項の問題、さらにさかのぼりまして第三条の一般原則にのっとりまして、原子炉の運転等により原子力損害を与えたときには、原子力が業者が責任を負うわけでございます。従いまして、領土領海中におきましては、先ほどの保険とは別に、向こうが持ってくれるという契約があれば、もちろん向こうに持たせるような措置もとるわけでございますが、少なくとも領土領海中の責任の所在は、これはあくまでも日本の原子力事業者にございます。で、これはちょっと条文上読みにくいわけでございますが、「原子炉の運転等により」損害を与えた、この「運転等により」というのは、今度さらに第二条にさかのぼりまして、第二条の定義で「運転等」とはの定義があるわけでございます。この運転等の定義に核燃料物質の運搬、貯蔵、廃棄まで含めておるわけでございまして、従いまして、第三条をちょっと読みかえますと、核燃料物質の運搬により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等にかかる原子力事業者がその損害賠償の責めに任ずるということになるわけでございますので、絶対責任は日本側の原子炉メーカーにあるということでございます。ただし、契約によって、相手方にさらに日本の事業者が持たせるということも可能です。
#49
○吉田法晴君 そうすると、先ほどの答弁は訂正をされて、領土領海中の運搬は、第二条の定義によって、運搬も原子炉の運転の中に含まれるから、そこで、たとえその運搬の請負が外国の商社であろうとも、あるいは外国人であろうとも、それは原研なり、日本の原子炉の運転事業者、この法律で言う事業者の責任の範囲内にある、こういうことですか。
#50
○説明員(井上亮君) その通りでございます。
#51
○吉田法晴君 こまかいことはあとからまた開くことにして、一番問題のさっき青天井と言われましたが、青天井でないところを伺ってみることにいたします。
 この事業主の、事業者の責任の範囲、それから保険でカバーするもの、それから保険がカバーしないで、国が補償契約によって補償するもの、それから、それ以上の五十億以上の点は国の援助ということになるわけでありますが、先ほど政策課長なり、あるいは局長は青天井と言いました。なるほど思想の上では青天井かもしれません。しかし、五十億以上の点については、実際には国の援助ということで、これは法的な責任がないんじゃないですか。これは大臣にも一つ聞いてもらいたい。五十億をこす分については国の援助ということであります。そうして国会の議決、それから政府がこの法律の目的、言いかえれば第三者保護と、それから原子力事業の発展をはかる、こういう意味で国が措置をする。それで足りぬと思われたことは、原子力委員会の勧告ですか、国会に対する意見というものを出される。こういう建前になっておりますけれども、五十億まではこれははっきりしておる。しかし勧告なり、それからこの前の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の説明のときには、これは国が責任を持ちますと、こういうことだったけれども、責任を持ちますという、国の補償ということにならないで援助ということになる。その援助をどうするかは、そのとき起こってから、国会の議決なり、あるいは政府の措置、その政府の措置は予算のワク、予算上資金上可能な範囲でということになるでしょう。それからけしからぬのは、そのほかに預金部資金のあっせん、あるいは市中銀行の融資のあっせんということがある。これは全責任を負うということじゃないですよ。予算の範囲内でできるだけのことをやりましょう。あるいは財政投融資にしても、預金部資金の話にしても、これは貸すんです。事業者に貸すんです。あるいは市中銀行にしてもそうです。借りて、とにかく全責任を果たすかというと、なかなかそうはならないで、金がこれだけあるから、この中でとにかく分けなさい、こういうことになる心配が私は法上残っておると思う。法律的な義務、責任ではありませんよ。そうすると今まで言ってこられた国が補償されます今の青天井、青天井だけれども、青天井にすべき保証がない。あるいは国の責任が法上明確に書いてない。この点はこの法律の最大の欠陥の一つです。今まで政府は責任を持って補償すると言います、それから青天井と言われるが、実際にはそうなっていない、どうですか。
#52
○国務大臣(池田正之輔君) これは御指摘の通り、法律的には五十億円以上は補償ということにはなっていない。しかし、この法律に盛られている考え方、一貫した思想は、あくまでも国がある程度これは責任を持ってやっていくというのが考え方であります。従って五十億以上と申しましても、五十億という限界は、御承知のように、イギリスの場合は五十億になっております。大体それ以上のことはあまり想像つかないので、それ以上のことは、とにかく国会の意思を尊重してやるということになっておりますが、たとえば五十億を一億こした場合あるいは五十億こした場合、百億こした場合、いろいろなケースがあるわけなんです。その場合に考えられることは、たとえば五十一億になるんだということになりますと、一億くらいのものは、これは投融資や何かのあっせんでやっていっても、事業者はそれほど苦痛なしにやっていけるんじゃないか。これは多い場合には、従ってそういう軽微な措置ではこれはできないことなんで、その場合は、当然にこれは国会の意思にはかって、そうして考え方としては、あくまでも国がこれをめんどうを見ていく、責任とまではいかないかもしれませんけれども、めんどうを見ていくというのが、この法律の精神だと思います。
#53
○吉田法晴君 五十億、五十一億というお話がありましたけれども、これは「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」、これは出された正式の書類です。原子力産業会議に委託をして試算をさせた結果です。この中には、十の五乗キュリーの放散の場合には十億から二百億ということだけれども、十の七乗キュリーの放散の場合には、損害は一兆円以上に達すると書いてある。これはあなたのところにあるでしょう。五十億とか五十一億だけでなくて、二百億あるいは一兆にも達し得る場合がある。これは可能性ですけれども、これは五十億の可能性あるいは二百億、一兆円の可能性がある。そのどういう場合が起ころうとも心配をかけない、国が責任を持とうというぐらいに従来言ってこられた。それに、まああなたは正直だから認められますけれども、法的な責任はないということですよ、五十億以上は。これはやはり従来の言明からすれば、法案は援助ということでなくて補償ということにならなければならぬと思うのですが、科学技術庁長官としての、技術者の養成とかのように、一つ明確に御答弁を願いたいと思います。
#54
○国務大臣(池田正之輔君) 現在の段階では、とにかく五十億以上の損害というものは実際は想定ざれないのです。
#55
○吉田法晴君 そんなことはない、ちゃんと書いてある。
#56
○国務大臣(池田正之輔君) それは学者が――そういう場合は万々が一であって、絶対にないということはこれまた保証できない。しかし、それじゃ、一体そういうことがしばしばあるかというと、それはおよそなかろう、ないというのが建前で、またあっちゃ困るので、そのために非常に安全性を確立していくということが前提になっていますので主従って、アメリカその他の国の場合を見ましても、それほどの金額を補償していない……。(吉田法晴君「アメリカの場合は違う」と述ぶ)アメリカは違います。イギリスの場合ですよ。
#57
○吉田法晴君 法的な責任がないという点は認められましたから、これはまたの機会にいたしましょう。
 少しこまかいことになりますけれどもお尋ねいたしたいのですが、損害ですから、この点は民法上の因果関係論が援用されるのだと思うのですけれども、直接損害であると、間接損害であるとを問わないと思うのですが、この点いかがでしょうか。
#58
○政府委員(杠文吉君) 直接損害、間接損害を闘いません。
#59
○吉田法晴君 それから精神的な損害についても同様ですね。
#60
○政府委員(杠文吉君) その通りでございます。
#61
○吉田法晴君 この地震、噴火、正常運転、後発的損害、これが保険で填補しない中に入っておる。それの点は、これは法律がきまって、保険の約款がきまったのではなくて、約款が先にきまって、法律があとからそれを規定したのであると、こういう格好に実はなっているように思うのです。正常運転とか、あるいは後発的損害等を除くべき理由はどういうところにあるのか、まず承りたい。
#62
○政府委員(杠文吉君) 御指摘の通りに、やはり法律がきまって保険の約款がきまるということではございませんので、保険約款上どうしても見れないというものが、ただいま御指摘になりました地震、噴火、正常運転、後発的障害等でございまして、従いまして、その穴うめをする意味におきまして、国は原子力事業者と補償契約を結びまして、それで被害者の損害賠償に充てるという措置でございます。保険約款においてそのような点をなぜ認めないかということでございますけれども、地震、噴火につきましては、やはり保険の一般慣行と申しましょうか、保険の保険能力を出るところの事態であるというふうに考えられます。次に正常運転ということは、原子力関係において初めて現われてくるという事項でございますが、この点は、正常運転をやっているならば損害の発生ということはあり得ないというのが常識でございますけれども、原子力は、何べんも申し上げますように、その常識というものがまだ確定いたしておりません。常識を破るような事態が起こり得ないとも限りませんので、正常運転というものは保険では扱いかねる。すなわち、正常運転をやっているようなものについて保険がなぜめんどう見なくちゃならぬ、しかしそれがめんどう見ないというと困りますから、見ない分は補償契約の方に移しましょう。それから後発性障害につきましてはやはり保険は見ます。見ますけれども、そこにも規定してございますように、十年間というふうに限って保険は対象をとらえております。これを永久的にいたしましたならば、保険としてのやはり負担能力をこえるところの事態であるというふうなことでございまして、しかしなが、補償契約におきましては、それでは後発性障害の被害者はほうっとくのが、要するに十年後のものについてほうっとくのがいうことでございますので、補償契約の対象としてはとらえますというような規定のいたし方をしたわけでございます。
#63
○吉田法晴君 地震、噴火、これもとにかく普通のもの、超異常災害というか、巨大な天災地変または社会的動乱というのは、これはだれも見ない、国が援助をするだけ、いわば普通の場合の何といいますか、救助みたいなもの、法的な点からいえば救助、そうするとその程度が知れていると私は言うわけですけれども、そうすると地震、噴火についても普通なもの――あなたたちは安全基準の点からいわれると、原研といいますか、これからのとにかく原子力電発のウオーター・ボイラー型にしても、関東大震災の二倍、三倍の強い地震があっても大丈夫と、こう言われるから、それはあっても、まあ普通ここでいう地震、噴火というのはその以内のものでしょう。言いかえれば、巨大な天災地変でもない、そういうものも、それ以内の普通の地震、噴火によるものも、これは保険が見ない。それから正常運転をやっておる間に事故が起こるかもしれない。それからウインズケールの例ではありませんけれども、あるいは運転手引を渡していなかった、あるいは知らないで、何といいますか、新しい黒鉛を急速に加える云々ということで起こった、そういうものについても見ない。後発性障害、それは平生積み重なってそれが十年後に起こってくる、それも見ないということになると、保険は大体何を見るのか。保険料だけとって、見るものはない。こういうことに私はなるような気がするのですが、どうですか。
#64
○政府委員(杠文吉君) 誤操作によるところの過失等は、相当広範囲にわたって起こり得る事態であると思うわけでございまして、そのようなものは保険の対象としてとらえます。ですから、ただいまおあげになりました、すなわち法規でも規定しておりますところの、普通の常識からいたしまして地震、噴火というようなめったに起こり得ないと申しましょうか、たとえば地震による、地震があることはもちろん当然のことでございますが、地震によるところの原子炉の崩壊、崩壊を起こすほどの地震または噴火ということは普通には考えられない。それから正常運転も考えられない。後発性も十年後のものはめったに考えられない。そういうまれに見るものだけははずされております。それ以外のものは、すべてただいまあげましたような誤操作によるところの損害等もすべて保険でカバーいたします。
 それからまた異常に巨大な天災地変または社会的動乱、これは見ないというのは、いわば超不可抗力のものでございまして、全く想像を絶するような事態であると考えるわけでございまして、そのような際には見ないと申しますけれども、特別の立法等、その他の措置が行なわれるものと考えております。そういうことを予定しております。
#65
○吉田法晴君 今の答弁に関連してもう少し詳しく聞きたいが、それは具体的な事例をあげないと明らかにならないでしょうから次の機会に譲ります。
 もう一つのこの法の欠陥であると考えられます、これは正常運転による損害と関連するのですが、従業員の原子力損害――せっかく村上労災補償部長に来ていただいて大へんお待たせをして恐縮です。この法律によりますと、従業員の原子力災害は除かれております。そして普通の労災法によってまかなう、こういうことになっております。ところが、おそらく原因の中であげられておる正常運転による私は被害というものが大部分だろうと思うのですが、従業員については。ところがこれが事故の問題に関連を持って参りますが、障害を知った、そして補償を請求する、いわゆるこの法律でいう原子力損害の中には入らぬ、普通の労災、こういうことになりますと、これは衆議院段階でも論議されておりますように、治療の方法も、これはけい肺なり何なりと同じようにというか、あるいはそれ以上に治療の方法がまだ見つかっていない。それから長期療養を要する、それからあるいは薬品にしても、普通の療養のようにこれとこれをやっておけばいいというわけには参らぬでしょう、おそらく。たくさんの治療方法を試みる。そこで費用の点についても、療養の給付の内容についても、労災でまかなえないものがあるだろうと思います。それからその療養の長さ、あるいは休養の長さ、あるいは労働能力の喪失の程度についても、これはまだわからぬところが大部分である。今までの広島、長崎なり、あるいはビキニの水爆の影響による、これはまあ原子力災害とか、あるいは放射能の災害等から見てみても、そこでこれは何とかするということですけれどもね。何とかするということでは私は済まされぬと思うのです。第三者災害について五十億をこす部分についても、これはもっとはっきりしなきゃなりませんけれども、少なくとも従業員の損害については、はっきりした方針が示されない限り、私ども安心してこれで対策十分でございますというてこの法律を通すわけにはいかぬように思う。従来衆議院でも答弁をしてこられましたけれども、欠陥があることは御承知のところだと思います。どういうおつもりでありまするか、一つ伺いたいと思います。
#66
○説明員(村上茂利君) 御質問の点、大きく分けて二つあるように私拝承したのでございますが、第一点としましては、第三者の場合と労働者の場合とで差があるじゃないかという問題。それからいま一つの点は、労災保険で補償するとした場合に、その補償内容についていろいろ技術的にむずかしい点がありゃせぬかという問題であると承ったのであります。
 まあ第一の点につきましては、この法律が作られました際、いろいろ私どもも御意見承ったのでありますが、従業員につきましては、既存の制度として労災保険がある。一応業務上の負傷、疾病ということでございますれば、労災保険法によって補償する道があるわけでございます。かつまた、制度的に見ますると、純然たる第三者と違いまして、いわゆる災害補償法につきましては、団体交渉その他によりまして、さらにプラス・アルファを獲得するということが、労働組合という組織を通じまして制度的に一応考えられるところでございます。そういう点が、一般の第三者が民法の不法行為の場に裸でさらされておるのとはだいぶ違うというような点から見まして、第三者に対しましては特にこのような法律を作ったのだというふうに私どもは承ったのであります。で、労働者の受けた損害について、まあ言うなれば青天井の最大限の損害を補償すべきである。賠償すべきである。こういうような議論もありますけれども、ただいま申しましたように労災保険法による災害補償と、さらに労働協約などを通じまして上積みが可能であるという、その制度を考えました場合に、必ずしも第三者より全体として不利であるかどうかという点については議論の存するところと存じまして、私どもは本法案につきまして、政府部内で検討いたしました際に賛成をいたしたような次第でございます。
 で、問題は、さてその労災保険法で補償する場合に、技術的な幾つかの問題が御指摘のようにございます。第一に問題になりますのは、業務上の疾病になるかどうかという具体的な認定基準をどうするかということが非常に困難でございます。しかし、これは他の職業病にもあることでございまして、現に私どもニトログリコール中毒につきまして従来認定基準がなかったのでございますが、最近専門医の御協力をいただきましてニトログリコールの認定基準を作成したような次第でございます。同様な手段によりまして、結局は専門医の御協力を仰ぎまして、業務上の認定基準をいずれ作成せざるを得ない、こういうふうに私ども考えておる次第でございます。また、業務上の疾病であるとして補償する段階に至りました場合、どのような療養の内容を行なうかどうかという点につきましても、これはもっぱら医学的な問題に属しますので、私どもは専門医にもさらにお願い申し上げまして、医療内容につきましても、かつてけい肺におきまして医学的な対策なしというふうに一般にいわれておりましたものが、最近化学療法その他によりまして漸次成果を見ておるようなこともございますので、将来さらにその点について努力をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
#67
○吉田法晴君 期間の問題については、休業なり、あるいは療養の期間の問題については答弁が落ちましたが、しかし、これはあなたは政府部内で検討して、これでいいと、こういうことになったというお話ですけれども、過去の記録をたどってみますと、たとえば原子力規制に関する法律――放射能物質及び原子炉の規制に関する法律の際にも原子力災害というのが問題になって、そうしてまず災害を受けるのは従業員である、それは議論を待つまでもなく、われわれが考えてみてもそうです。これは今までの例からいっても、災害の出たもの、事故は九件と書いてあるけれども、いただいた資料を見ますと九件でなくて二十何件ある。その中で外に出たものはこれはうなずけるのですけれども、従業員が死んだり、あるいは被災をして云々という点は、これは数十件ある。数十件と言われなければ二十何件の中の大半がそうです。そうすると、これはそういう大きな事故であるが、あるいはあとから出てくるあれかもしれないけれども、十年あるいは二十年のうちには被災をする、累積していきますから。こういうことは明らかです。まず従業員が被災するだろうということはだれも認める。従って原子力災害問題については、従業員の手当はまず最初にやるべき問題だ、こういうことが言われて、それは質問だけでなくて答弁もそうされている。そこで、じゃ、この法案が出てくるときに、従業員の方はどうなっているかという点は、第一に聞くべき問題です。それに過去の言明にかかわらず、政府としては、これは大臣その他からの言明にかかわらず、新しい手だてというものは何ら労災の中に、こういうことにいたしますという点はないわけです。そこでお尋ねしているわけですけれども、問題は認定基準の問題でしょう、それからそれは早期に発見をし、そうしてあるいは転換をするということも防止の一つの方法でしょうが、それについてもまだはっきりしていない。それから災害が起こって、第三者損害については保険――これは労災については労災保険があると言えるかもしれません。しかし、労災保険以上の国の援助という点については、これは労災保険について、原子力損害について限ってみても、あるいはその他についても、私は考える必要があると思うのだけれども、あなたの言われる生活の保障という点からいえば国の援助ということも必要だと思いますけれども、特に原子力災害の、従業員災害の場合には、第三者損害については五十億を限っているけれども、国の補償というものがある。それからそれをこしたものについては援助もある。その国の補償なり援助というものを従業員の同じ原子力災害についてなぜ考えないのか、これが疑問です。それから療養の内容についてもですが、療養の内容、それからその給付の期間、休業補償を含んで、あなたの言われる生活なり何なりの保障を含んで、これは今までのような、昨年労災保険を改正して打切補償の分を引き延ばしたというようなことでは、これは工合が悪いので、これは千二百日以後の分については国が二分の一なり、あるいは四分の三なり、国家負担行為がありますけれども、こういうものが、この原子力災害の場合には、第三者損害にあるのだから、当然考えられなければならぬ問題だと思うのです。そこで欠陥は、おそらく御存じであろうと思うのですけれども、原子力損害について従業員に対する補償といいますか、手当をまず先にやらなければならないと言われてきた政府の従来の言明からすれば、これは原子力局といいますか、科学技術庁と、それから労働省と相談をされて、少なくとも審議を終わるまでにはその大綱を私はお示しを願わなければ、安心をして原子力損害について万全の措置がされた、心配をしなくてもよろしいのだ、こういうことにはならない。その御用意がおありになるかどうか。これはせっかく大臣がおられるのですから、労働省と科学技術庁との共管事項ですけれども。
#68
○国務大臣(池田正之輔君) 御承知のように、これは吉田さんのおっしゃられる御心配の点もよくわかりますが、外国等の例を見ましても、たとえばイギリスあるいはドイツ等におきましても、労災補償と、それから原子力の損害と、その形は二本建になっておりますけれども、実際は労災でこれは扱っておるというのが現状だと承知いたしております。従って、これはわれわれとしても、これで万全だということは決して言っていないので、今後これをやっていく上において欠陥がもしも発見されて、改正しなければならぬ、あるいは不備だというような点がもし具体的に指摘され、あるいは事実上それがわかった場合には、いつでもこれを改正するという心がまえでおるのが私は妥当だと、かように考えております。
#69
○吉田法晴君 外国の例も、第三者についての原子力災害の補償と労災とは別になっておると言われるけれども、外国の場合は労災を備えておりますが、社会保障制度について日本と格段の相違がある、外国の場合には。これは私はけい肺の問題について外国の実例等も調べて参りましたが、これは心配ない。ところが、日本の場合には、あるいは労働能力を喪失した、あるいは解雇をされたあと、とにかく衆議院の審議段階でも認められておるように、それをその生活を保障する、あるいは見てくれるというのは十分な保障がない。生活保障がない。これはあなた方認められているところです。
 それからもう一つは、衆議院段階で附帯決議がついておる二つの大事な点は、この従業員の補償の問題とそれから第三者損害補償の五十億をこす欠陥は、衆議院の審議を通じても明らかになっておる問題は、附帯決議にするか、あるいは修正にするかという問題だけが残っておる。だから審議をして最後にお尋ねをすることも、せっかく大臣も来ておられるし、労災補償部長も来ておられるから、十分でないということが従来の審議でも明らかになっておるのだから、それについて手当をする用意があるかないかという最後の質問をこれは冒頭からやっておるわけです。そこで十分でないという点がおわかりにならなければ、もう何時間もやらなければなりませんが……。
#70
○国務大臣(池田正之輔君) これはいろいろ衆議院段階では御議論のあったところでございますが、今の段階でそれじゃどういうふうに一体これを修正するかというような具体的な問題になってきますと、これは相当に慎重に検討する必要があるので、そういう意味で附帯決議になり、また附帯決議をされた趣旨だと考えます。その趣旨に従って私どもは今後なお十分にこれは慎重に検討していきたい、こういう考えであります。
#71
○吉田法晴君 これからやってみて足りないところがあれば直していきたいというようなことでこれは済まされる問題ではありません。明らかにとにかく足らないところがある。少なくとも第三者損害について国の補償というものが、その補償も全的に補償するという言葉が出てこなければならぬ、しかし、そこに若干の欠陥がある、若干の欠陥があるのはわかりますが、それはとにかくとして、国が補償をしておる第三者損害については、その補償を全からしめるために、国が補償する。この従業員の場合には、補償も何もない。
 その点については、原子力局長どうですか。
#72
○政府委員(杠文吉君) 従業員といえども、いわゆる業務上でない場合、その原子力施設の周辺等に住んでおりまして、そうして災害を受ける場合は、もちろん特別に第三者損害としての扱いがございますが、業務上受ける、すなわちまっ先に従業員が損害を受けるのではなかろうかということでございますけれども、原子力損害によるところの第三者補償というものが五十億以内の場合におきましては、保険あるいは補償契約等において、またそれ以上の場合においては国の援助ということで、国が十分な援助措置をとるということに相なっておりますが、一人々々、すなわち損害者一人々々ということを比較してみました折に、従業員の労災によるところの救済措置と、第三者としての損害賠償の救済措置とが、必ず一致するかどうかという、そういうようなことにつきましては、なお十分に検討を要するのではなかろうかという考え方でございまして、もしも従業員について、第三者救済よりも手薄であるというようなことが検討の結果出て参ります折には、何らかの従業員についての措置を、労災保険法の上において、あるいはそれ以外の措置において考えていかなければならないのではなかろうかということでございまして、そういう事態が起こった場合に考えでいくということもさることながら、そういう事態の起こる前におきまして、衆議院の付帯決議の線に沿いまして、直ちに原子力委員会におきましては、部会等を設けまして検討していきたいという用意をいたしております。それが現状であります。
#73
○吉田法晴君 そうすると、局長なり大臣にお尋ねをいたしますが、今の答弁によると、従業員については、労災一時金でなくて、療養を相当長年にわたって給付する、実際の療養の期間、あるいは給付の期間を見てやる。そうすると第三者に対して見るのは、それは一時金で、療養に必要な全部を見るというわけじゃないのですか。完全補償しないというのですか――。先ほどは、直接損害だろうと間接損害だろうと、あるいは精神的な苦痛であろうと、全部について補償すると言われておる。
#74
○政府委員(杠文吉君) もちろん完全補償をいたします。ですから、申し上げたのは、一時金をやって、それで終わりとするという考え方ではございません。ございませんから、おそらくは労災と同じような措置になっていく場合もあろうかと思うのでございますけれども、いわゆる労災の穴になっておる部分が、どのようにあるだろうか、第三者損害におきまして取り扱った場合、そういうことは、なお十分に検討していきたいということをお答え申し上げておるわけであります。
#75
○吉田法晴君 まあ、ある程度でやめたいと実は思うのだけれども、穴があったらと、こう言われるのだけれども、第三者損害については、完全賠償をやりたい、あるいは完全補償をしたい、そのために国の補償なりあるいは援助もしよう、こう言われるのです。
 そうすると、労災の場合には、原則的には労災の掛け金でまかなっていく、それから三年を過ぎて、あるいはそれはけい肺――石炭だけじゃなくて、塵肺についても、あるいは一級以上のものについても、それは国が幾らか援助すると言うけれども、全体については労災保険だけでまかなっていく、労災保険は、これは事業主負担で、いわば原子力損害についていえば、保険でかけておる、保険が見ている部分だけを原則的には持つ、あとは例外だ。だから、それは療養の給付については、内容が違ってくるし、あるいは期間については長くなることがはっきりしているから、国が補償をする部分――第三者損害について国が補償し、あるいは援助する部分に相当するものは、この従業員補償については、従業員の労災保険についてはやるべきではないか、これは当然でしょう。原子力損害の特質にかんがみて、従業員の損害より先にやります、先に万全を期しますということを言われてきた。国の援助なり補償については、労災については、今のところないじゃないですか。そうしたら、その穴が論理的にそれがどのくらいになるかということは、やってみなければわからぬことでしょう。穴であることはわかっている。国の援助なり補償がない。従来から約束されてきたのは、援助じゃなくて補償ですよ。これは援助になっても、補償と同じような完全なものをやりたい、こう言われる。そういうものが、この従業員損害の分についてはないじゃないか。原則的に金額は幾らになるかしらんけれども、国で補償に参加をして、労働者の原子力損害については補償をいたしますという方針が出るなら、これは私の方では、納得しないこともないけれども、今のままでよろしいのだと、こういうことになると、それはやっぱり問題ですよ。
#76
○説明員(村上茂利君) 労働者の業務上の災害でございますので、私どもとしましては深甚なる関心を持っているわけでありますが、問題は、労働者が業務上の災害を受けた場合、その補償の内容は何かということだろうと思います。
 先ほど外国の例示に比較して劣っておるというお話がございましたが、誤解を避けるために申し上げておきたいのでありますが、業務上の疾病で病気になったという場合の補償は、第一に療養を行なうことである、しかもその療養はなおるまで、五年でも十年でも二十年でも、なおるまで長期にわたって療養をするというのが第一であろうと思います。その点につきましては、労災保険法で、昨年の改正をいただきましたので、なおるまで、なおらなければ死ぬまで療養するという体制がおかげさまでできましたので、原子力従業員につきましても、なおるまで療養するという体制ができるわけでございます。
 問題は、その療養の内容について、医学的にいろいろ問題があるという先ほど御疑念がございましたが、それは事実上、その器の中に盛るべき内容を、どうするかということで、これは法律問題とは別じゃなかろうか。一応体制としては、必要な療養費を全額国が、労災保険が持つという体制ができております。療養の面では、一応世界的な水準に達しておる。あとは、いわゆる休業手当的なものについての問題になろうかと思います。無過失賠償の責任によるところの青天井の災害補償と申しましても、要するに療養の費用であるとか、あるいは家族の生活費であるとか、あるいは慰謝料とかいったような問題になろうかと思います。労災は、慰謝料は考えておりませんが、その点につきましては、民法の無過失賠償責任の範囲より狭いといえば狭くはございますが、しかしながら、一方青天井だと申しましても、損害賠償の範囲をどうするか、額の算定につきましては、裁判技術上のいろいろ問題があるようでございまして、これが、はたして青天井で非常に多額のものが補償されるかどうかという点は、具体的にこれは裁判にかからなければわからないと存じます。
 そういう点、労災保険は定額でございますけれども、簡易迅速に、しかも定額を支払う。逆に裁判上の損害賠償の算定をやりましたならば、労災保険の額よりも下がることがないとはいえないのでありまして、そこらは、もう裁判上の手続を要せず、定額で労災保険で処理するというのが、一つの長所であろうかとも存ずるわけであります。
 従いまして、本法案の立案の過程におきまして、われわれとしましても、外国のこの災害補償法制がどうなっているかということについて、まあできる限りの調査をしてみたのですが、遺憾ながら大多数の国は、一般の災害補償保険で処理しておるのが大部分でございまして、そういう特殊な立法は、ほとんど私ども寡聞にして資料を入手することができなかったわけでございます。そういう点から、一応理論的には、さらにもっと何か完璧を期する必要があるんじゃないかという点につきましては、私どもも、そういうような感じを持っておるのでありますが、しからば具体的に、どのような内容の制度なりあるいは法律案を考えるかということにつきましては、具体的な内容がなかなかできない。これは、もう偽わらざるところでございます。従いまして、将来の問題について、どうするかという点につきましては、衆議院を本法案が通過いたします際に付帯決議がつけられたのでございますが、必要に応じて立法その他の措置を講ずるという趣旨の一項が付されておりますが、その点につきましては、将来必要がございますれば、私どもは、かつてけい肺等の経験もございますので、いろいろ真剣に研究をしてみたいと考えております。ただ、現時点において具体的な内容が、なかなか見出しがたいという実情でございます。十分誠意を持って当たる所存でございます。
#77
○吉田法晴君 労災と、それから民事上の訴訟による損害賠償との長短は、今お話の通り。ところが原子力災害の場合に、これは間接損害のみならず、間接損害の中に精神的なもの、慰謝料も含めて完全賠償をする、その完全賠償のためには国が補償をし、あるいは援助する、全面的な協力をする、こういうお話であります。で、あなたはまあ労災以上に……、普通の労災にまかされて、その内容等もわからぬし、それから特別な労災保険なり補償の方法がわからぬものだから云々と言われるけれども、論議の過程を見てみても、論理的に、国の補償が原子力災害の場合についてあるかないかという点を考えると、国の補償、援助がないという点は明らか、これはさっき、去年の労災保険法の改正で、国の援助が無限にできるようになったと、こう言われるが、それでは、二分の一なり、あるいはけい肺の場合は四分の三、けい肺の場合は四分の三ですよ、普通の場合二分の一、それは基礎は、千二百日分を引っ張った云々という点もありますから、三年たったら解雇ができる――解雇制限が撤廃される、その辺に、従来のやはり打ち切り補償の観念も残っておれば、あるいは労災の中の療養給付の何というか、三年による制限というものがなくなったかもしらぬけれども、内容は同じ、それから水準、あるいは休業手当に至っては、これは不十分な点があることはあなたもお認めになる通り。そうすると政府として、従業員の災害補償を第一に完備して臨みたいと言われた点からいって、それらの点が、決議を待ってやるというのでなくて、審議の際に出てきてなければならぬ。それは科学技術庁でありますとか、あるいは科学技術庁が、労働省に相談をされた上かもしれませんけれども、これは従来の法案提出の責任からいって、科学技術庁にあったでしょう。それから国の補償あるいは援助、それから休業手当の分は今認められました。それから、あるいは解雇制限等の問題についても、これはおそらく外国にあるところじゃないでしょう。三年間なら三年間で打ち切り云々という制度が、そのまま残っているから、三年たったら、解雇制限がなくなる、労災の程度がどのくらい違うか云々というお話がございましたけれども、私は社会保障を含めて、日本の場合よりも、外国の方が心配ないようになっておるという点は、これは私も認めているが、村上さんもお認めにならざるを得ないだろうと思う。第三者損害に比べて国の補償なり、援助がない点、具体的に療養給付なり、あるいは休業手当なり、あるいは解雇制限なり、第三者損害について直接損害、間接損害を含んで全部補償をするという、そのあり方が、労災なら労災の上にも、具体的な数字はともかくとして国の補償はするのだ、あるいは援助をするのだ、あるいは療養の給付について本内容を高めると、あるいは休業手当なり、あるいは生活保障の面についてもっと、二分の一、あるいは四分の三でなくて国が援助、補償すべきだというこの項目については、そういう原則については、これはお認めにならざるを得ないのじゃないですか。
 そういうものが具体的にきまって、項目についてもきまって出てこられるなら、それは、できるだけのことをして、ここに臨みましたということになるけれども、これから研究して云々ということでは、これは科学技術庁長官なり、あるいは科学技術庁、あるいはその相談に乗られた労働省の態度とも私は思えない。
#78
○説明員(村上茂利君) いろいろ御指摘がございましたが、実は労災保険法まで申し上げますと、原子力災害の従業員のみについて、他の産業に従事する労働者より労災保険法上特別に見なければならないという理論的根拠その他いろいろあるわけでございます。そういう理論も背景にございますが、しかしながら大筋の考えとしましては、すでに池田大臣からも御答弁があったようでございます。できるだけ手厚い保護を加えたいという基本的な精神のもとに、どうあるべきかということを検討して参りたい、遺憾ながら具体的に何をどうすべきか、補償するとすれば、どうすべきかというような具体的内容につきましては、私どもも、いま少し外国の場合なども参考にいたしまして研究したいと存じますので、はなはだおくれて申しわけないことでございますが、いましばらく時日をかしていただきたい、かように存じておる次第でございます。
#79
○吉田法晴君 これはまあ書かれたものは、個人で責任は負えないということですけれども、村上さん個人ではない、これはやっぱり労働省と相当御相談になったことと思うのですけれども、多少公式ではないかもしらぬけれども、労働省の労災部長なり、あるいは労働省の中の意見の一部を反映すると見て私はまあいいのじゃないかと思うのですけれども、労災なり、労災保険の現状が、生活保障あるいは生存権の保障という点からいって足りないという点は、お認めになっているのじゃありませんか。
 それから先ほど来、去年の労災保険法の改正がございましたが、それで療養の給付は無限になったといわれるけれども、その負担率は国や普通の場合に二分の一、それから塵肺等について四分の三、こういうことで二分の一なり、あるいは四分の一の事業主の負担というものは、これは千二百日分の延長という建前でしょう。そうすると、あなたのいわれる、これはまあ論理的に足りない、足りないといわれるかもしらぬけれども、実際問題として千二百日分の延長に、それから若干の、これは人道的な立場といいますか、あるいは災害の特殊性といいますか、長期療養の深刻さというものが考えられたのでしょうけれども、苦手の国の援助がある、そうすると労災自身としても、療養の給付なり休業手当の支給、あるいは生活保障の点から考えなきやならぬ点があるという点は、これは個人の意見だけでなくて、労働省として考えなければならぬと思う。で原子力災害の第三者損害については、国の補償というものがあるんだから、あなたとしては、私どもこれだけ質問をするのに、いやそれは、とにかく十全でございますといって、予防線を張らないで、労働省の立場――労働省から言えば、あるいは労災部長から言えば、それは労災補償について完全を期するためには、国の援助というかあるいは補償というものを、もっとこれは強化しなければならぬ。外国に比べてみて、外国の社会補償の点から言ってみて、それは努力をすべき問題の一つだし、幸いに原子力損害について、第三者については国の補償なり援助があるんだから、それは労働者の原子力災害についても援用して、あるいは移して十分な補償に資したい、こういうのが、私は村上さんの態度でなければならぬと思う。
#80
○説明員(村上茂利君) どうも議論にわたって恐縮でございますが、昨年の労災保険法の改正を機といたしまして、療養補償がなおるまで継続して行なわれるという点については、もちろん世界的水準に達しております。休業給付につきましても、これは国々によって違いますけれども、決して低いというわけではございません。むしろ問題は、遺族給付等、労働者自身が受けるべきものよりも、むしろ遺族給付等に問題があるのでございまして、そういった問題については、過般労災保険法の改正のとき付帯決議もございましたので、事務的にはいろいろ研究をしておるような次第でございます。
 従いまして、災害を受けた労働者自身が著しく補償が少ないとかいうことにつきましては、私は国際比較におきましては必ずしも言えない。外国の例として、おそらくイギリスの例を引き合いに出しておられるのじゃないかと思いますが、こういった労働者の業務上災害につきまして、国が金を出しているという例はごくまれで、フランス、ドイツ、それからたとえばソビエトにおきましても、企業が業務上の災害については、全部金を出すということになっておりまして、使用者が全額負担するといろのが、ほぼ各国共通の原則でございます。従いまして、昨年の改正を機として若干の国庫負担がついたのでございますが、それをさらに強化すべきであるという点につきましては、使用者の災害補償責任等の問題とも関連いたしまして、いろいろ問題があろうと存じます。
 私は、この際議論にわたりますので、是非の問題は避けたいと思いますが、いずれにいたしましても、将来の課題として、さらに内容を充実すべきであるということは、一般的にいえると思うわけでございます。たまたま原子力従業員について、どうするかという問題がございましたが、それをどのような形でなすべきかという点については、なおしばらく、研究のための時日をかしていただきたい、かように申し上げるわけでございます。
#81
○吉田法晴君 最後に、これは村上さんと私の間では初めての問題かもしれません。しかし、国会に対する政府の態度としては、原子力災害については、まず従業員の補償の措置を完全にし、それから第三者損害についても、国家補償を含んで心配なからしめる措置を講じたい。これは関西その他での原子炉設置についての反対運動もあったせいもありましょうけれども、心配ない万全の措置を講じて、次の補償法の際にはお願いをしたい、こういうことを言っておられるのであるから、これは初めての場合ではない。それから私に尋ねられてから、答弁さるべき性質のものではないので、政府として部内打ち合わせて、原子力損害の賠償に関する法律の審議の際には、こういたします、こういうことで出てこらるべき性質のものである。
 従って、きょうはこの程度でやめますが、法案が通ってから協議するというのじゃなくて、次の機会までには協議を願って、こういうことが対処していきたい、あるいは万全を期したい、こういう点を出してきていただくことを希望しまして、同じような議論をする煩を省くために、この次の機会までに相談をしていただくようにお願いをしておきます。
#82
○委員長(剱木亨弘君) 他に御質疑はございませんか。――他に御発言がなければ、両案の質疑は、本日は、この程度にとどめます。
 本日は、これにて散会いたします。
  午後四時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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