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1960/03/09 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 社会労働委員会 第10号
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1960/03/09 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 社会労働委員会 第10号

#1
第038回国会 社会労働委員会 第10号
昭和三十六年三月九日(木曜日)
   午前十時三十六分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     吉武 恵市君
   理事
           加藤 武徳君
           坂本  昭君
           藤田藤太郎君
   委員
           勝俣  稔君
           谷口弥三郎君
           徳永 正利君
           山本  杉君
           小柳  勇君
           藤原 道子君
           相馬 助治君
           村尾 重雄君
           竹中 恒夫君
  国務大臣
   労 働 大 臣 石田 博英君
  政府委員
   労働政務次官  柴田  栄君
   労働省労働基準
   局長      大島  靖君
   労働省職業安定
   局長      堀  秀夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   労働省労働基準
   局労災補償部長 村上 茂利君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○雇用促進事業団法案(内閣送付、予備
 審査)
○労働情勢に関する調査
 (一般労働行政に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(吉武恵市君) それではただいまから社労委員会を開きます。
 雇用促進事業団法案を議題といたします。
 提案理由の説明を願います。
#3
○国務大臣(石田博英君) ただいま議題となりました雇用促進事業団法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を説明申し上げます。
 最近の雇用失業情勢は、雇用者の増加、労働市場における需給状況の改善、失業保険受給者の減少等、全般的には改善を見ておりますが、その反面において、労働力需給のアンバランスが顕著になりつつあることもまた否定し得ないところであります。すなわち、まず、経済の発展と技術革新の進行に伴い、技能労働力が各種産業部門において著しく不足し、今後もこのような傾向がさらに増大すると見込まれるとともに、新規労働力に対する需要がますます高まり、求人難の事態が一部に顕著になってきているのであります。
 また、工業地帯においては、労働力の需給関係が逼迫し、未充足求人が漸増を見ております反面において、低開発地域においては依然として労働力過剰の状態にあり、さらに石炭鉱業等の例に見られますように、産業構造の変化等により、特定の地域においては離職者が集中的に発生しているのであります。
 この結果、全国的には雇用情勢の改善を見ております現在におきましても、なお高率の失業の存する地域が依然として見られるのでありますが、労働者が移転する際の住宅難、労働者の移転のための費用負担、求職者の技能の不足等により労働力の移動が円滑に行なわれがたく、これが労働力需給のアンバランスをさらに大きくしているのであります。
 このような事態に対処し、離職者の就職を促進してその生活の安定をはかるとともに、労働力の有効適切な利用をはかるためには、一面において労働力過剰地域における産業基盤を育成強化し、新たな雇用機会の造出をはかる等の施策を実施するとともに、他面必要な部門に必要な量及び質の労働力を充足して、労働者の福祉の増進と国民経済の発展をはかり、ひいてはさらに一そうの労働力需要の喚起を期するという発展的積極的な施策の推進を必要としているのであります。従って、今後の雇用政策は労働力に関する基本的な計画のもとに職業訓練の積極的拡充強化等の労働能力の開発向上のための施策と、全国的視野に立つ職業紹介体制の確立、転職訓練の強化拡充及び訓練期間中の生活の支援、宿舎の整備等労働力の流動性促進のための施策を軸として強力に進められるべきであると信ずるものであります。
 かかる見地から、今回、職業訓練行政機構の強化、公共職業安定所等の職業安定機能の整備、拡充をはかるとともに、これらの行政機関の活動と呼応して、きめのこまかい施策を一元的、計画的に実施するため雇用促進事業団を設立することといたしたのであります。
 次に法案の内容について、その概要を説明申し上げます。
 この法案は、労働者の技能の習得及び向上、地域間及び産業間の移動の円滑化、その他就職の援助に関し必要な業務を行なうことにより、労働者の能力に適応する雇用を促進し、もって労働者の福祉の増進と、経済の発展に寄与することを目的として雇用促進事業団を設立することとして、その組織、業務、財務会計等に関し、必要な事項を定めるとともに、これを伴い労働福祉事業団の業務の範囲を改正し、炭鉱離職者援護会を解散する等の規定を設けたものであります。
 すなわち、第一に、雇用促進事業団は法人といたしますとともに、その資本金は、従来政府の失業保険特別会計及び地方公共団体から労働福祉事業団に対して出資のあった額をもって設立当初の資本額といたしております。役員につきましては、理事長、副理事長のほか、理事、監事等所要の役員を置くものとし、理事長、副理事長、監事は労働大臣が、理事は労働大臣の認可を受けて理事長がそれぞれ任命することとしております。
 第二に、事業団の行なう業務といたしましては、総合職業訓練所及び中央職業訓練所の設置及び運営並びに事業内職業訓練の援助、職業訓練を受けろ者に対する手当の支給、公共職業訓練を受ける者のための宿泊施設の設置及び運営、移転就職者のための宿舎の静置及び運営、簡易宿泊施設その他の福祉施設の設置及び運営、移転就職者に対する移転に要する費用の支給、職業講習の開催、就職資金の貸付、身元保証、必要な調査研究並びにこれらに付帯する業務を行なうこととし、あわせて、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、国または地方公共体の委託を受けて、これらの施設を利用して、労働者の福祉の増進をはかるため必要な業務を行なうことができることといたしました。
 第三に、事業団の財務会計及びその監督につきましては、事業団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、借入金等について労働大臣の認可または承認を受けることを要することとするとともに、事業団は労働大臣の監督に服し、労働大臣は事業団に対して監督上必要な命令をすることができることとしております。
 第四に、雇用促進事業団は、従前労働福祉事業団が行なっていた総合職業訓練所、中央職業訓練所等の失業保険福祉施設の設置及び運営に関する業務を引き継ぐとともに、これらの業務に要する資産及び権利義務を承継することといたしております。
 第五に、炭鉱離職者臨時措置法に基づいて、従前炭鉱離職者援護会が行なっていた業務につきましては、雇用促進事業団が炭鉱離職者援護会から引き継ぐとともに、炭鉱離職者援護会の有する一切の資産及び権利義務を承継することとして、炭鉱離職者援護会は事業団成立とともに解散することといたしました。
 なお、炭鉱離職者臨時措置法に基づき行なう特別の対策としての業務につきましては、その業務の範囲、費用の負担等は従前通りとし、この業務にかかる経理については、他の業務にかかる経理と区分するため、特別の会計を設けて行なうこととし、また、その監督については労働大臣と通商産業大臣の共管といたしております。
 以上が、この法案提案の理由並びにその概要でありますが、御審議の上、何とぞすみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。
#4
○委員長(吉武恵市君) 次に、本法案の細部について政府委員から説明を願います。
#5
○政府委員(堀秀夫君) 雇用促進事業団法案の細部につきまして、補足説明を申し上げます。
 お手元にお配りしてございます資料の、提案説明の次についております雇用促進事業団法の逐条説明によりまして御説明を申し上げたいと思います。
 雇用促進事業団法案は、第一章総則以下、役員及び職員、業務、財務及び会計、監督、雑則、罰則の七章及び附則から成り立っております。
 まず総則でございますが、第一条は、雇用促進事業団は、労働者の技能の習得及び向上のための業務、地域間及び産業間の労働移動を円滑にするための業務、その他就職を容易にするための援助に関し必要な業務を行なうことによって、労働者の能力に適応する雇用の促進をはかり、労働者の福祉の向上と経済の発展興隆に寄与することを目的として設立するものであることを明らかにしております。
 第二条は、雇用促進事業団は、本法によって設立される特殊法人であること。
 それから第三条は、事業団の主たる事務所は、東京都に置き、従たる事務所は、労働大臣の認可を受けて、必要な地に置くことができる旨を規定しております。
 次に第四条は、事業団の成立時における資本金は、附則第五条の規定により、従前政府の失業保険特別会計及び地方公共団体から労働福祉事業団に対して、それぞれ出資のあった額の合計額とすることを規定いたしますとともに、必要に応じ、事業団の資本金を増加することができること、また、事業団の増資にあたっては、金銭以外に現物出資ができること、その価額は、時価を基準として第三者的な見地から評価委員が評価した価額とすること等を規定しております。
 第五条は、事業団の登記について、その登記事項、登記手続等について政令で定める旨及び登記事項については、すべて登記をもって第三者に対する対抗要件とする旨を規定しております。
 第六条は、事業団でない者が、雇用促進事業団という名称を用いることを禁止する旨を規定しております。
 さらに第七条は、民法第四十四条の準用によりまして、理事長その他事業団を代表する者または事業団の代理人がその職務を行なうにつき他人に加えた損害については、事業団がその賠償の責に任ずることとし、また、民法第五十条の準用により、事業団の住所は、その主たる事務所の所在地にある旨を規定したものであります。
 第二章は、役員及び職員に関する規定であります。
 まず第八条は、事業団の役員として、理事長一人、副理事長一人、理事六人以内及び監事二人以内を置くことといたしております。
 第九条は、理事長は、事業団の代表権を有し、その業務を総理し、副理事長は、理事長を補佐して事業団の業務を掌理するとともに、理事長が事故または欠員のときはその職務代理、職務代行をすること、理事は、理事長の定めるところにより、理事長及び副理事長を補佐して事業団の業務を分掌するとともに、理事長及び副理事長が事故または欠員のときはその職務代理、職務代行を行ない、監事は、事業団の業務を監査する旨を定めております。
 第十条は、理事長、副理事長及び監事につきましては労働大臣が、理事については労働大臣の認可を受けて理事長が任命する旨を規定いたしました。
 第十一条は、役員の任期について定めたものでありまして、通常の場合につきましては、任命してから四年ということにいたしております。
 第十二条は、役員の欠格条項、第十三条は役員の解任についての規定で、これは例文でございます。
 第十四条は、事業団の業務の公共性、公益性にかんがみ、役員の営利事業への参加を許さないことを規定しております。
 第十五条は、事業団と理事長との利害関係が対立する場合において、その事項については、理事長は代表権を有しないものといたしました。この場合には、監事が事業団を代表する旨を規定しております。
 第十六条は、従たる事務所の業務遂行の能率化をはかるため、その従たる事務所に関する外務関係上の行為をする権限を副理事長及び理事または職員に代理させる旨の規定であります。
 第十七条は、事業団の職員の任命については、理事長が行なう旨を規定しております。
 第十八条は、事業団の有する公的性格からいたしまして、役職員は刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす旨を規定しております。
 第三章は、事業団の業務に関する規定であります。
 まず第十九条でございますが、十九条におきましては、事業団の行なう業務について列記をいたしております。
 すなわち第一号は、総合職業訓練所、中央職業訓練所の設置運営を行なうこと及び事業内職業訓練を行なう事業主に対して、訓練施設の利用、職業訓練指導員の派遣、教科書、教材の提供その他の必要な便益を提供する等の援助を行なうことであります。
 第二号は、公共職業安定所の指示により職業訓練を受ける求職者に対して訓練手当を支給することであります。
 第三号は、職安の指示により職業訓練を受ける求職者が訓練を受けることを容易にするために寄宿舎の設置運営を行なうことであります。
 第四号は、職安の行なう広域職業紹介活動による就職を円滑ならしめるため、広域職業紹介にかかる公共職業安定所の紹介により就職する者のための宿舎の設置運営でございます。
 第五号は、日雇労働者等を対象といたしました簡易宿泊所、託児所、食堂、その他福祉施設の設置運営でございます。
 第六号は、職安の広域職業紹介活動により就職することとなった者が、住所を移転する場合の移転費用の支給でございます。
 第七号は、再就職のために必要な知識及び技能を習得させることを目的とする職業講習でございます。
 第八号は、職安の紹介により就職する者に対する就職資金の貸付及び孤児、片親児童等に対する身元保証を行なうことであります。
 第九号は、労働者の職業に対する能力、性格等の適応性その他職業の安定に関する調査、研究を行なうとともに、資料の整備を行なうことであります。
 第十号は、前各号の業務に付帯する広報その他の業務を行なうことであります。
 次に、第二項は、ただいま申し上げました業務のうち、第二号の手当の支給、第六号移転費の支給並びにそれらに付帯する業務以外の業務については、失業保険法の福祉施設として行なわれる旨を規定しております。
 第三項は、事業団は、総合職業訓練所、中央職業訓練所、その他事業団の設置する福祉施設を利用して、国または都道府県もしくは市町村から委託を受けて、技能検定の実技または学科の試験の実施その他労働者の福祉を増進するため必要な委託業務を行なうことができる旨を規定されております。
 第二十条は、事業団の業務方法書について定めたものでありまして、これに対する労働大臣の認可に対する規定、また、労働大臣が認可を行なったときは求職者その他の利用者の便益あるいは職安、地方公共団体等の関係諸機関との連絡、協力をはかるため、労働省令で定めるところにより、その旨を告示しなければならない旨の規定を設けました。
 次に、第四章は、財務及び会計に関するものでございまして、第二十一条は、事業団の事業年度は国の会計年度と同じく四月一日に始まり、三月三十一日に終わる旨を規定いたしました。ただし、事業団の最初の事業年度は、その成立の日に始まり、三十七年の三月末日に終わるものとする旨の例外規定が附則で設けられております。
 次に、第二十二条は、事業団の予算、事業計画及び資金計画の作成と、これに対する労働大臣の認可に関する規定であります。
 第二十三条は、事業団の決算について定めたものでありまして、毎事業年度の決算を翌年度の七月三十一日までに完結すべきものと規定しております。
 第二十四条は、財務諸表の提出義務等について定めております。
 次に、第二十五条は、事業団の決算における損益計算上の利益及び損失の処理の方法について定めました。
 第二十六条は、事業団は、労働大臣の認可を受けて短期借入金をすることができる旨を規定するとともに、短期借入金を行ないます場合には条件をつけておるわけでございます。
 第二十七条は、政府は、予算の範囲内で事業団に対し、第十九条第一項の業務に要する費用の一部に相当する金額を交付することができる旨を規定しております。
 第二十八条は、事業団の業務上の余裕金を運用する場合には、その運用による損失を招くことのないよう運用方法を具体的に規定しております。
 第二十九条は、事業団の財産の処分の制限について定めたものでありまして、原則として労働大臣の認可を必要といたすことになっております。
 第三十条は、事業団が役職員に対する給与、退職手当の支給の基準を作成、変更する場合には、労働大臣の承認を受ける必要がある旨を規定しております。
 第三十一条は、この法律で規定するもののほか、事業団の財務、会計に関し必要なことについては、労働省令に定めることといたしております。
 次に、第五章は、事業団に対する監督規定でありまして、まず第三十二条は、事業団の監督は労働大臣が行なうこと、及び労働大臣が事業団に対し監督上必要な行政命令をすることができる旨を定めております。
 第三十三条は、監督のため労働大臣が事業団に対する立入検査等の権限を有することを定めております。
 次に、第六章は雑則でありまして、まず第三十四条は、事業団の業務は、公共職業安定所及び地方公共団体の業務と密接な関連があることにかんがみまして、事業団は公共職業安定所及び地方公共団体に密接に連絡すること、また、公共職業安定所及び地方公共団体は、事業団に対し協力すること、さらに事業団の業務内容について、広くその利用者に周知させることによって、できるだけ多くの者が便益を与えるよう努めることを明らかにいたしております。
 第三十五条は、国税滞納処分によって差し押える場合を除いて、職業訓練手当及び移転資金を受ける権利の譲渡、担保、差押えを禁止して、その保護をはかったものであります。
 第三十六条は、もし事業団が将来解散いたします場合には、すでに発生している権利及び義務の処理、その他の残余財産の処分等について、法律上明らかにする必要がありますので、法律によって定めることを規定したものでございます。
 第三十七条は、労働大臣が事業団に対し、認可、承認等をする際に、それぞれ事項に応じ、大蔵大臣、建設大臣に協議する事項を定めたものであります。すなわち第一項は、労働大臣の大蔵大臣との協議事項、第二項は、労働大臣が、移転就職者用の宿舎の設置、運営に関し認可する場合に、建設大臣と協議すべき旨の事項、さらに第三項は、事業団の行なう業務を円滑ならしめるために、建設大臣は移転就職者に産業労働者住宅その他適当な住宅の確保に関して必要な措置をとる必要がある旨の規定でございます。
 第三十八条は、建築基準法その他の政令については、政令で定めるところにより、事業団を国とみなして、これら法令を準用する旨を定めております。
 次に、第七章は罰則でありまして、第三十九条は、事業団の役職員が第三十三条一項の規定に基づいて求められた報告をせず、もしくは虚偽の事項を報告し、または立ち入り検査を拒否、妨害もしくは忌避する場合には、三万円以下の罰金に処せられることを規定いたしました。
 また四十条は、この法律の円滑な施行を確保するため、本法に違反した事業団の役職員に対する所要の罰則を規定いたしました。
 四十一条は、事業団でない者が雇用促進事業団という名称を使用した場合には、一万円以下の過料に処せられることを規定しております。
 以上、罰則でございます。
 次は附則について、まず第一条は、本法の施行は公布の日から施行することといたしましたが、関係法律の一部改正を行なう附則第十八条以下の規定は、事業団の成立の日から施行する必要がありますので、これらは政令で施行日を定めることといたしております。
 第二条は、事業団の成立に際して、労働大臣は、あらかじめ事業団の理事長、副理事長、または監事となるべき者を指名することとして、これらの者は、事業団の成立とともに、それぞれ理事長、副理事長、または監事となる旨を規定しております。
 第三条は、労働大臣が設立委員を任命しまして、設立委員は、設立に関する事務が完了したときは、その旨を労働大臣に届け出るとともに、その事務を理事長となるべき者に引き継ぐことを定めております。
 第四条は、事業団の設立に関する規定でございます。
 第五条は、政府の失業保険特別会計及び地方公共団体から従来労働福祉事業団に出資された額は、それぞれの出資額面によって、事業団の成立時に事業団に出資されたものとすること、及び事業団の資本金額となったものとされた金額については、労働福祉事業団の資本金は減資する旨の規定でございます。
 第六条は、地方公共団体は、当分の間、事業団の増資に際しては、自治大臣の承認を受けて出資することができる旨の規定でございます。
 第七条は、従前労働福祉事業団で行なわれていた業務で、事業団に引き継がれるものにつきまして、その引き継ぎに関する規定を設けておるわけでございます。
 次に、第八条は、労働福祉事業団からの財産並びに権利、義務の承継等を定めたものでございます。
 第九条は、炭鉱離職者援護会が従前行なっていた炭鉱離職者援護業務に関する事務の引き継ぎ、それからその業務に関して、従来なされておった処分、手続等の効力について、雇用促進事業団に引き継がれる旨の規定でございます。
 第十条は、炭鉱離職者援護会は、業務が全部事業団に引き継がれることとなりますので、事業団成立のときに解散することといたしまして、解散の手続を規定しております。
 第十一条は、事業団が、労働福祉事業団及び炭鉱離職者援護会から財産、権利を承継した際の登録税、不動産取得税を非課税とする旨の規定でございます。
 第十二条は、従来、福祉事業団において総合職業訓練所等の失業保険福祉施設関係の業務にもっぱら従事しておる職員及び労働福祉事業団の本部の職員のうち、あらかじめ福祉事業団の理事長の指名のある者、それから炭鉱離職者援護会の全職員は引き続いて事業団の職員となる旨の規定でございます。
 第十三条は、引き継ぎの際の役職員の恩給等の特例の規定でございます。
 第十四条は、事業団でない者が雇用促進事業団という名称の使用を禁止されたわけでございますが、それについて六カ月の適用猶予期間を設けた規定でございます。
 第十五条は、先ほど申し上げました通り、最初の年度における事業年度の特別を規定しております。一第十六条は、事業団の成立年度における予算、事業計画、資金計画の作成と認可を受けることについては、事業団の成立後遅滞なく行なうことといたしております。
 第十七条は、炭鉱離職者臨時措置法の罰則の一部が削除されることに伴い、改正前の違反行為に対しては、当該罰則はなお適用されることとしたものであります。
 第十八条以下は、関係法律の改正もしくは読みかえの規定でございます。すなわち、第十八条は登録税法、第十九条は印紙税法、第二十条は所得税法、第二十一条は法人税法、第二十二条は地方税法、第二十三条は失業保険法、第二十四条は失業保険特別会計法、第二十五条は行政管理庁設置法、第二十六条は建設省設置法、第二十七条は労働省設置法、第二十八条は北海道開発法、第二十九条は土地収用法、第三十条は石炭鉱業合理化臨時措置法、第三十一条は地方財政再建促進特別措置法、第三十二条は、労働福祉事業団法、第三十三条は職業訓練法、等の改正もしくは読みかえに関する規定でございます。ただ、この労働省設置法の中におきまして、事業団の監督に関する事項を行なわせるため、労働大臣官房に、雇用促進事業団監督官を置くことといたしております。読みかえ、改正の規定につきまして例文等にございますので、説明を省略させていただきます。
 最後に、第三十四条は、炭鉱離職者臨時措置法の改正規定でございます。その内容は、まず炭鉱離職者援護会について定めた炭鉱離職者臨時措置法第三章について次のような改正を行なったわけでございます。それは大体四点ございまして、第一番目は、援護会の組織及び役職員について定めた第一節及び第二節を削除したわけでございます。第二番目は、援護会の行なっていた炭鉱離職者の再就職の促進及び生活の安定に関する援護業務については、事業団がそのまま引き継ぐこととする旨の規定でございます。第三番目は、事業団が行なう援護業務の財源については従来同様とするとともに、援護業務にかかる経理については、雇用促進事業団法に基づく業務にかかる経理と区分して特別会計を設けて行なわせることとし、その他の財務及び会計に関する規定は削除したわけでございます。第四番目は、援護業務及び特別会計に関する認可、承認その他の監督等につきましては、従来と同様労働大臣と通産大臣の共管とするため、雇用促進事業団法の特例規定を置いたわけでございます。以上のほか、炭鉱離職者臨時措置法について、援護会の役職員に対する罰則の規定を削除する等、組織の変更に伴う所要の改正を行なっております。
 以上は、雇用促進事業団法の大体の概要でございますが、これにつきまして補足説明を申し上げた次第でございます。
#6
○委員長(吉武恵市君) 本案に対する質疑は、次回以降にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないと認めます。
 ちょっと速記をやめて下さい。
  〔速記中止〕
#8
○委員長(吉武恵市君) 速記を始めて。
  ―――――――――――――
#9
○委員長(吉武恵市君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として、一般労働行政に関する件を議題といたします。
 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
#10
○相馬助治君 この際、けい肺の問題について石田労働大臣に若干の御質問をしたいと思うのですが、申し上げるまでもなく、けい肺は全く国の産業の伸展上出て参った犠牲であって、その患者に対しては、国は積極的にこれを見てやらなければならない義務があろうと、こういうふうに私は基本的に考えます。現行のけい肺を救済する法律が施行されて一年以上たちましたので、この際、政府として何かこの問題について現在考慮している点があるかどうか、それらの点についてまず第一に承りたいと思うのです。
#11
○説明員(村上茂利君) 私からお答えさしていただきたいと存じますが、先生御承知のように、昨年の四月一日から労災保険法の一部改正法が施行され、また一方、じん肺法が新たに制定されまして、それも昨年の四月一日から施行されておるわけであります。労働省といたしましては、この新しく制定されましたじん肺法及び労災保険法の一部改正法の施行につきまして、従来のけい肺特別保護法からの切りかえ事務が円滑に参りますように、大体今年度の上半期におきましては切りかえ事務の円滑なる実施につきまして鋭意努力したわけでありますが、それらの業務実施の面とは別に、問題を二つに分けて申し上げますと、一つはじん肺法に基づくところの粉じん対策の問題につきましては、都道府県労働基準局に粉じん対策指導員並びに粉じん対策指導官を新たに設置いたしまして、事業場におきますところの粉じんなどの測定、粉じんの発散防止または抑制などにつきましてさらに一そう徹底した技術的指導援助を行なうように努めて参りました。別にまた、事業場との関連におきましては、職場の粉じん防止講習会、あるいはじん肺防止研究会などを開催いたしまして、じん肺法に基づくところの対策の指導底を期して参ったような次第でございます。
 なお、粉じん対策につきましては、医学のみならず、工学面の協力も必要でございますので、医学関係者のみならず、工学関係者も含めましてじん肺予防研究班を設けまして、技術的な研究を進めておるような次第でございます。
 なお一方、じん肺患者に対しましては、たとえば就労施設を設置するなどの問題がございまして、それをいかようにすべきかという点につきましては、従来のけい肺審議会が新しくじん肺審議会に発展改組せられましたので、そのじん肺審議会におきまして、就労施設等の問題についても御審議いただくということで、この一年間そういった面についての調査審議をお願いして参った、このような次第でございます。
#12
○相馬助治君 けい肺の問題については、労働者をけい肺から守ってやるということが一つ大きな問題でありまするし、次の問題は、不幸にしてこの病気にかかった者、そうしてこの病気が不治の病であると言われているだけに、こうした病人に対して国の責任においてこれをどのように医療するかということと、二つ問題があると思うのです。私は二月二十三日に、自分の郷里でもありますので、鬼怒川のけい肺病院を視察いたしました。そこで強く感じたことは、国が、特に労働省がこのけい肺病院に対しては非常に積極的な考慮を払われているという点が、施設やそれから今作りつつある非常にモダンな病舎、そしてまた、石田労働大臣が肝いりでどこかのテレビ会社に話をつけられてテレビを寄付され、その気の毒な病人たちがそのテレビの前でいろいろなものを見たり歌を聞いたりして楽しんでいるというような、そういうふうなことを見て、今の政府のこの種の仕事は非常になっていない面が多いのだが、けい肺の問題についてはかなり積極的に考慮が払われているということを私は一応見たのでし。従って、患者もそのあきらめの中にも何といいますか、投げやりな気持は持っていないのです。着実にやはり国の立場もわかるけれども、われわれの立場もこうだというのでその意思を述べていたので、私は耳をかすべき言葉があると思うので、それらの点について具体的にお尋ねして、善処願いたいと思うのですが、まず第一の問題は、この不治の病といわれるけい肺病の患者が国の施設に一つにまとまっておる、ところが、療養給付の面につきましても、補償金の問題で御承知のように、六〇%支給されておりまするが、その六〇%の積算の基礎になる日当というのが、けい肺患者だから非常に労働力が落ちたときの賃金であって安いということと、それからその職場が千差万別で、具体的に述べますと、昭和電工から来ているという患者は国から六〇%もらい、会社自身がお気の毒だというので四〇%自発的に出しておる。従って、まあ裕福にという言葉は当たらないかもしれないが、不幸の中にも安心して療養している。この種の人は何と三万円近い。同じベットを並べている人で四千円の給付でやっているという方もある。こういうふうなアンバランスの面を見て私は強く感ずることは、何とかこの補償金を現行の六〇%から一〇〇%に引き上げられないものか、こういうことなのですが、これは大きな政治問題になろうと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
#13
○国務大臣(石田博英君) これはもう相馬さんも御郷里にけい肺を発生する事業場をたくさんお持ちでありますが、私自身もまた私の住んでおります近所に鉱山がたくさんありまして、幼少のころからいわゆるよろけという病気を聞いておりました。また、見ても参ったのであります。従って、けい肺対策については特段の注意をして参ったつもりでありまして、その部分をお認めいただいたことは非常に光栄に存じます。
 ただいま御指摘の問題は、実は私も方々から、その話を患者その他から聞いておりました。ただ、今御指摘のような極端な数字の違いがあることは実はきょう初めて伺って、あまりの相違に驚いているわけでございますのがただいまの心境であります。当然まあ多い方はけっこうでありますが、少ない方につきまして法律の改正がどうしても必要でございますならば、同じベッドを並べている同じような境遇の人がそういう毎日々々ひけ目を感ずるような状態がないように格段の留意をし、さらに検討を命じたいと存じております。なお、そういう事例につきまして具体的な御感想、御観察の結果等がございましたらばさらにお教えをいただきたいと思います。ただ、一〇〇%という問題になりますと、これは今ここでその数字についてすぐお答えを申し上げるわけには参りませんが、御趣旨を尊重いたしまして検討いたしたいと思います。
#14
○相馬助治君 大臣の誠意のある答弁でその言葉には満足いたしますが、まあ具体的に、どうか現行の六〇%はせめて八〇%程度には上回るように今後御努力を願いたいと思う点が一つと、もう一つは、私が発表した事例によって、特殊な会社が親心をもって足らない分を補給していることが何か別な方の問題から打ち切られてこういう患者が不利になることなんかは絶対ないように、一つ責任を持ってやっていただきたいと思うことがその二です。
 その次の問題は、けい肺病患者が併発して治療を受ける病気というのはまあ呼吸器系統に限っていて特殊なものなのですが、御承知のように、けい肺による身体消耗からくる病気というのはきわめて多い。さればといって、その病気によってはこの法律で見てやるというわけにもいかない種類のものもあろうと思うのです。しかし、大部分はこの身体消耗が原因になってきている病気でございまするから、この際、この病気を現行法の中に入れて救済する道を特段の考慮を願いたいと思っておるのですが、部長、この点はいかがですか。
#15
○説明員(村上茂利君) 御指摘の問題につきましては、通常いわゆる単純けい肺と申しますか、純然たるけい肺以外に結びつく疾病といたしましては、肺結核がその典型的なものでございます。それ以外に、どのような疾病がけい肺と医学的に因果関係があるかという点につきましては、非常に困難な問題がございます。私どもといたしましては、現在の医学水準から見まして、これこれの疾病がけい肺と医学的に見ても因果関係があるという基準が確立されますならば、そういった医学の進展と相待ちましてけい肺と結びつく疾病の範囲を検討するということについてはやぶさかでないのでございますが、問題はそういう純医学的な事柄でございますので、私どもといたしましては、従来からけい肺の専門医がございますもので、そういう方々につきまして、けい肺と結びつく疾病でどのようなものが業務上の疾病として扱うのが妥当であるかどいうことにつきましては、かねてこの改正とからみまして、数年前から御検討いただいておるような次第でございます。そのような基本的態度は今後も継続して参りたいと、かように考えております。医学的の方からの検討をさらに進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
#16
○相馬助治君 医学的に、また法制上から申せば、今、部長の答弁の通りであり、それのワクを出ることは困難なことだと思うのですが、具体的にこのけい肺患者が盲腸のようなものになる、そういう場合に、その手術料だとかその他のものというものは自己負担にならざるを得ない、こういうふうな問題になってくると、働く能力のない患者がそこで病気を併発している。医学的にはけい肺とはこれは関係あると言うことはこじつけであるとしても、現実には患者がそういう病気になっている。こういうデリケートな状況があるようでございますので、それらの実態に立って、けい肺という特殊の職業病であるという観点に立って、部長においても積極的に一つ善処されるように希望いたします。
 その次の問題は、部長が先ほど説明の中に、就労施設について考慮中だと申しておりますが、私の知る範囲では、昨年度も費用を計上したようだが、お使いにならなかったようだし、それからことしも費用を計上して下さったようだが、それをどういうふうに使うかということについては、まだ具体的にコンクリートされていないやに承っておるのですが、差しつかえなかったら構想を漏らして下さい。
#17
○説明員(村上茂利君) 就労施設につきましては、どのような施設が適当であるかという施設そのものの問題と関連しまして、実は他にいろいろな複雑な問題があるわけでございます。具体的に申しますと、一つの例としては、就労施設で就労している限りは解雇が行なえないようにすべきであるといったような問題、つまり解雇制限の問題が就労施設の運営と関連してくるというような複雑な問題がございまして、この問題は、従来はけい肺審議会、現在はじん肺審議会におきまして御検討願っておるのでございますが、そういった単に就労施設という物的な施設を作るということ以外に、その運用の過程におきまして、そこで働く労働者をどのようにして扱うかと、こういう問題がございまして、なかなか労使公益の意見が一致しないというような状態でございます。そこで私どもは、観点はやや別なんでございますけれども、たとえばけい肺病院に入院しておる患者が、これはまれでございますけれども、肺葉切除などの手術を行なって、活動性の結核がなおったというような方々が一応退院されるという場合がございます。そのような場合に、もし可能であるならば、再び就労できるような能力を付与するためにリハビリテーション施設を一つ設けたらいかがであろうかという考えから、現在鬼怒川のけい肺病院に病棟の改築と並びまして、職能回復訓練施設を試験的に設けまして、退院される患者に対する職業能力の付与という面からの一つの施設を運営して参りたい、これはおそらく来年あたりから運営されることになろうかと思いますが、かねて問題になっておりました就労施設という立場からではなくして、とりあえず就労施設の問題につきましては審議会でさらに御検討をいただくとともに、一方におきましては、今申しましたような職能回復訓練の施設をとりあえず設置して、試験的に運営して参りたい、かように考えておる次第であります。
#18
○相馬助治君 かりに回復してから事業主のところへ戻って行っても、旧職場への復帰というものはもうほとんど不可能だと患者がみんな口々に訴えているんですね。それで今おっしゃるように、就労施設といってみても、からだの丈夫なものですらなかなか一たん職を失ったものが就労することは困難なところへもってきて、アフター・ケアの施設的なものも加味したこの種の就労施設というものがそう簡単にうまくできるとは私どもも思っていないのです。これを担当する労働省としても、大臣としても、非常に大きな頭痛の種であろうことはわかりますが、しかし、若くて――最近は若くて入院して、ほんとうに職場に戻れるという希望を失っている患者がかなりの数いるんです。今から三年ほど前に会ったけい肺患者の印象というものは、私たちはなおらないのだ、もうここからは二度と出られないのだという考え方が強かった。今度行ってみて非常に私は喜び、同時に新しいこととして気づいたことは、もう一度職場に戻れるのだという希望にあふれた患者がかなりの数あるということなんです。従いまして、理想の案を求めることはけっこうですけれども、どうかせっかく取ったこの費用であるから、なるべくこの法律の趣旨を生かして、若干不備でも就労施設について善処されるようにぜひ労働大臣にこの点は強くお願いをしておきたいのです。いかがでしょう。
#19
○国務大臣(石田博英君) 今お話のように、職場復帰の希望が出て、また、その可能性が生じてきておるということは私ども非常に喜ばしいことだと思っておりますが、健康その他の、本人の主観的、主体的事情から前のような重い労働につけない場合というような際には、それに相応した、体力に相応した職場につけるような訓練あるいは準備等をいたさなければならないと思います。しかし、そうでなくて、その他の、本人の事情でない事情から復帰ができないという場合におきましては、経営者その他の反省を求めまして、そういう事態を排除するように努力をいたしたいと思います。何と申しましても病後でありますから、やはりアフター・ケアと一緒に相伴ってやって参らなければなりませんので、御指摘のように実はいろんな問題があって頭が痛いのでありますが、できるだけすみやかに、かつ実効の上がる措置を講じたいと存じております。
#20
○相馬助治君 この種の病気の障害年金と、それから長期療養給付の関連について、現行法によりますと、厚生年金の障害年金受給者は五七・五%に相当する額を長期給付金から控除されております。で、本来ならばやはり一貫した国の行政の中ではこういうふうなものが控除されるということは筋として当然であろうと私は思うのです。ところが、けい肺という特殊な病気であって、そうしてやはり国の大きな責任においてこれを見てやらねばならぬ義務を持っているこの場合には、何とかこれを完全に併給するわけには参らないものであろうか。この種の問題について厚生省並びに大蔵省等と話し合いが出た経緯があるかどうか、また、将来この種の問題が問題に供される可能性があるかどうか、それとも全くこのことは望むべくして達し得ないという条項であるのかどうか、私はこれに対して自分の意見というよりも、現状の御説明を聞き、労働省の心がまえといいますか、一つ考え方を参考に聴取しておきたいのです。
#21
○国務大臣(石田博英君) 詳細な経過は、労災補償部長から答えさせますが、基本的には御議論の点は十分よくわかるのでありますが、そのけい肺の特殊性あるいはそれに準ずる右へならえするものがどういう範囲のものがあるかということも関連して考えなければならない問題であります。そこで政府といたしましては、社会保障判度の総合調整をできるだけすみやかにいたさなければならぬのでありますが、その際に、他の一般の社会保障との関連において解決をいたしたい、こう考えておる次第であります。詳細な労災部長からお答えいたします。
#22
○説明員(村上茂利君) 御指摘の点につきましては、法律改正の際にもいろいろ御意見をいただいたわけでありますが、実は厚生年金法の適用を受けておるような労働者は、会社も比較的しっかりした会社でございまして、会社の方から退職金ももらう。それから厚生年金の障害年金ももらえる、こういう形になっておるわけでございますが、ところが、たとえば石工さんのようにこつこつ数人の者がやっておるというところでは厚生年金の支給も受けられないし、また、退職金というようなものもないということで、実に気の毒な状態になっておるわけでございます。そこで昨年法律改正の際にも、そのような同じけい肺患者と申しましても非常なアンバランスがあるという点からしましても、一種の均衡論的な考えがあったのでございますが、しかし、何もそのかわいそうな労働者を基準にして足を引っぱる必要はないのでございまして、単純な均衡論ではございませんけれども、この差引論につきましては、別な角度から同一の業務上の疾病に対しまして国と使用者が二重にその損失を補てんするというのは適当でないという二重損失補てんの理屈からこの差引を行なったのでございますが、今先生御指摘のような問題を考えます場合にも、厚生年金を受けられないほんとうに気の毒な石工などのような立場の人をどうするかという問題が存在するわけでございまして、そういった人々に対する措置を考えます場合に、単に厚生年金の差引をどうこうするというだけでは解決できない問題があるわけでございます。そういうような点から従来とも私どもは、大蔵省などもこの点について話しておったのでございまして、この問題の存在は大蔵省なりあるいは厚生省においても十分承知しておるというふうに私ども考えておるのでございますが、それを具体的に討議し、どのような形にもっていくかという点につきましては、労災保険法改正の際に、付則の十七条に規定が設けられまして、「社会保障に関する制度全般の調整の機会において検討するものとし、」云々、こういう規定がございまして、検討すべきことが要請されておるわけでございまして、そういった機会をも考慮しつつ、今後さらに検討を続けて参りたい、かように考えております。
#23
○相馬助治君 確かに今問題に供されているような下のところの、低収入の人のところに問題があるのであって、私は具体的な資料を持っていないのですけれども、非常に心配になることは、政府が今度は生活保護法を上げて下さいましたね。そうすると、せっかくこれほどの法律をけい肺患者のために用意しておいたのに、この法律で処置されるよりも、生活保護法の方で金をもらった方がわしは得だというような事例が出てきたら、これは大へんなことに私はなると思うので、その点も指摘して、今の問題については、部長にぜひ一つよろしく承知して考えておいていただきたいということをお願いしておきます。
 それから雇用関係の、発病して三年で打ち切られるのですが、これはもうちょっと延びないものでしょうか。もっとも私が今問題にしている以下の人たちもあるのです。大臣、あるいは御承知ないかもしれませんが、私のいなかの大谷の石山のところに一人親方という制度がある。自分が山を持って、自分が職人で、自分が親方で、石を切って、売っておる一人親方という制度がある。こういう人がけい肺病になって入ったときに、使用人であり、雇い主であり、こういう人に国の法律を何か適用させるとなると種々な矛盾と適用上の不合理を生じて全くお気の毒だ、そういう人もあるのです。総体的に大谷におけるこの種の問題は、現行法では解決し得ない。ないしは法律以前の社会問題、経済問題等を含んでいるところに大きな問題があります。あるのですけれども、それをしばらくおくとして、今の発病して三年で打ち切られるという現行法を、何とかもうちょっとならぬものでしょうかね。部長どうですか。
#24
○説明員(村上茂利君) 御指摘の点、非常に理論的にも問題の存するところでございまして、これは御承知の労働基準法第十九条の解雇制限条項等と関連しておる問題でございます。労働基準法第十九条におきましては、業務上負傷しまたは疾病のために療養しておる期間、それからその後三十日間は解雇してはならないという規定でございます。ただし、打切補償を支払った場合には、その十九条の解雇制限が解けまして、使用者は解雇できる。こういう建前になっておるわけであります。しかし、これは解雇できるという規定でありまして、解雇せよというわけではないのでございます。従いまして、先生御承知のように、会社によりましては、従来でも打切補償を支払って直ちに解雇するというような処置をとっておらないというような会社もあるわけでございます。そのような十九条の規定の建前をさらに延長して、五年とか、十年とかにするというような御要望はかねてあったのでございますけれども、そもそもこの十九条の規定の趣旨でございますが、これはもう先生御承知のところでございまして、あらためて申し上げるのは失礼でございますけれども、要するに、業務上の負傷、疾病によって療養しておる期間、その期間解雇することは、労働能力を失なった労働者に非常な残酷な結果をもたらしますので一療養中はもちろんのこと、療養後三十日間は解雇してはならない、こういう制限を設けまして、再就職のための期間の余裕を与える。あるいは職場復帰のための余裕を与える、こういうような立て方をとっておるわけであります。しかしながら、昨年の四月以来打切補償という制度は労災保険法上は廃止いたしまして、長期傷病者給付という形態にいたしたわけであります。すなわち病気がなおるまで、三年たっても病気のなおらぬ人は、さらに引き続いて病気のなおるまで療養を続ける、こういう制度ができましたので、使用者に対してさらに十九条によるところの解雇制限によっていわば縛りをかけるという必要はない。要するに、療養期間中は全部政府の責任におきまして、療養とそれから休業期間中も生活保障をする、こういう建て方をとりましたので、むしろ十九条の解雇制限はそのような場合には必要ないじゃないか、こういう考え方も出てくるわけでございまして、これは理論上も実際上も非常にむずかしい問題があるわけでございまして、法律改正の際に申したことを繰り返し申し上げまして恐縮でございますが、さような実情でございます。
#25
○相馬助治君 法改正によって患者のために長期療養給付になったことは非常な進歩だし、よかったと思いますが、このような気の毒なけい肺病の患者の場合には必ず貧困が伴っておる。それから家族の生活がこれに伴っているわけですね。そうしてこの病気の種類からきわめて絶望的な環境に置かれる。こういうところから私今指摘したようなことについて特にお願いをしたのですが、あまり時間もないことですから、患者が強く要求しておるあと三点だけ申し上げて、一挙に解決は不可能だと思いますが、御善処願いたいと思うのですが一遺族補償の一時金制度をやめて、何とか遺族の将来の生活を考慮して低額であろうとも年金制というようなものが考慮されないかということが患者の願いの一つなんです。それで患者が自分の病気をなおすということよりも、自分の病気のことをあまり話さずに、自分がなくなったあとの遺族のことに思いをいたして、法改正を望んでおるということはまことに痛々しいので、聞いていて強く胸を打たれた条項です。それから長期療養給付を二〇%ごとにスライドしているが、できたらこれを五%程度にしていただきたいということが二です。それから特別補償費というものが昔の制度であったのですが、これを現行法のもとにおいても、その時期に千二百日分ぐらいの特別な補償費をもらうということ、借金の整理の問題、それから自分が入院して、そのあと奥さんにミシンを買ってやって内職の態勢を整えてやるとかなんとか、いろいろな状況から特別補償費というものを千二百日分ぐらい何とか国でめんどう見てもらえないだろうか、こういうふうに今申しておるのでありますが、以上三つについて、いずれも金の要ることでありますから、一挙にということは困難と思いますが、総括的に大臣としてはこれをどのようにお考えでありましょうか。
#26
○国務大臣(石田博英君) まあいずれも実情は十分理解ができることで、同情にたえない問題でございますが、第一点の点になりますと、これはけい肺だけでは済まない問題に波及いたします。で、そういうことに関連して考えますと、予算を必要とする規模も非常に増大をすることになりまして、その関連性をどの辺でとめられるだろうかという問題等、やはりこれは目下の一つの大きな検討問題として私どもの方で現在研究はいたしておりますが、さらに十分、わかることでありますから、他の関連性、または右へならえする部分がどの程度までいくものであろうかということの相互関連において少しずつでも前向きに進むことができますように努力をしたいと思っておる次第であります。
  〔委員長退席、理事加藤武徳君着
  席〕
#27
○説明員(村上茂利君) スライドの問題につきましては、現行の二〇%というのは、従来労働基準法上採用されておりました休業補償のスライド率をそのまま採用したわけであります。従来要望としましては五%というような数字もあげておられたのでございますが、このスライド率があまり低くなりますと、実は一調査技術的に毎月の勤労統計を使っておりますので、調査上の誤差率にだんだん接近いたしまして、はたしてそれがほんとうであるかどうか、真なりやいなやというような技術的な問題もございますし、かたがた賃金が上がるときはけっこうですけれども、たとえば五%のようなスライド率にしていきますと、下がるときはまたときどき下がるというようなこともございまして、スライド率が低ければ低くなるほど逆スライドという場合に波及する点も多いわけでございます。そのような技術的な問題もございまして、私どもは従来採用されておりましたところの二〇%という率が大体いいところではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  〔理事加藤武徳君退席、委員長着
  席〕
 なお一番最後に、従来特別の補償費が出ておったが、それがなくなったので、労働者は非常に困るのだという点でございますが、従来御承知のように、労災保険法上の打切補償費を支払ったあとに、けい肺特別保護法に移行いたしまして、二年間療養給付と休一業給付を受けておったわけでございます。そこで保険法上の打切補償費が支払われますと、千二百日分の非常にまとまったお金が入ってくる。それが改正法におきましては、その打切補償制度を廃止いたしまして、それを全部吸収して長期傷病者補償制度を作ったという関係で、従来の打切補償によるところの千二百日分のお金を労働者がもらえない、こういうことになったわけでございます。その点を、おそらく従来は特別の補償費があった、こういうふうに労働者は申しておるんじゃないかと思いますが、法律的には、ただいま申しましたように、長期傷病者補償制度の中に吸収した、そこに従来の打切補償制度がなくなった、こういうことになっておるのであります。しかしながら、現実にたとえばたばこ屋さんをやりたい、あるいはささやかな養鶏場を作りたいとか、いろいろ患者によりましては不時の出費が、まとまった金の必要があるようでございます。そこで改正法施行の際に、これは労働者の個々の家庭の事情によって非常に差があることであるから、もしそういった問題のある労働者があるならば、労働基準監督機関によくその事情を聞いて、そしてできるだけ御相談に応ずるようにやっていくようにという指示はいたしておるのでございますが、われわれといたしましても、従来具体的にあまりそのような例がありませんので、できるだけそういったケースを把握しつつ、今後においてどのように対処していくかということを考えて参りたいと思います。
#28
○相馬助治君 私の質問は以上をもって打ち切りたいと思いますが、質問でなしに、この際特にお願いをしておきたいことは、私が患者と会った場合に、患者の大部分の人が貧困のために苦しんでいて、それでおっしゃることに、自分がなくなれば、ありがたい国の制度で葬祭料その他をもらえる、そこでその葬祭料その他を見合いにして、これを担保にして、国から融資してもらえないかという質問を私受けたので、私はさすがに返答に窮して、国が支払う金を見合いにして、それを担保にして国が貸すというわけにはこれは参るまい。私無責任なことを言うならば、それはけっこうなことであるから努力するとも言えるけれども、そういうことであると、私どもも国に対して要求するということが立法府にあるものとしていかがかと思ってちゅうちょされた。しかし、その窮状はよく大臣に訴える、そして何らか別途の方法で融資その他の道を講じてもらうようにこれは国会等で問題に供するのでなくて、お願いをしてみよう、こういうことで患者と別れたものでして、資料等を持っておりまするから、その資料を添えて、その問題は政治問題というよりも別途の問題として、労働大臣並びに事務局の方にお願いをするつもりです。要するに、本来けい肺病というようなものの発生する職場では働いてはならないわけなのであって、それを働くということは国の産業伸展上やむを得ず犠牲を強要したことにも筋上なると思うので、まあ大臣のたびたびの答弁のように、他との関連でにわかにそういう財政措置は困難な面もあるということはその通りであって、私もそのことはよく了解いたしますが、特にこのけい肺については、今申したような発生の事情、国の責任、そういうことを考えられまして、現行法の不備その他を調査されて、鋭意これが改善のために御努力下さると同時に、この若干不備であるといわれる現行法の適用に漏れている入院のできない患者の数も相当数いるということを考慮されて、大臣において、特に今後ともこのけい肺問題について積極的善処方を要請して、私の発言を終わります。
#29
○国務大臣(石田博英君) しばしば申し上げておりますが、特に最後のお話の中に、自分の生命を担保にして融資を要請するというような実情は、これは法律上の建前その他は別といたしまして、まことに同情にたえないところでございます。御趣旨に沿いましてさらに法の運営について十分配慮いたしますとともに、一そう法の内容の向上についても検討を進めて参りたいと存じます。
#30
○坂本昭君 相馬委員の御質問まことに当を得た御質問であると思います。特に昨年の労災法の一部改正以来、今審議せられた事項は当委員会でも非常に真剣に討論せられたところであって、ただいまの石田大臣の御答弁を承ると、前の労働大臣より若干前進をした御答弁をいただいたような感じを受けております。そこで時間の関係で簡単に二、三お伺いしたいのですが、まずその前に、今労災保険の積立金が幾ら大蔵省の資金運用部資金に預託されているか、概数だけちょっと説明していただきたい。
#31
○説明員(村上茂利君) 労災保険におきましては、制度上は積立金というのがございますが、いわゆる積立金は現在ございません。現在ございますのは支払い備金という制度がございまして、つまり当該年度で発生した負傷、疾病に対して今後継続して療養を行なわなければならない、そのための支払い備金というのがございますが、これは三十五年度末、本年度末で大体百三十二億程度になろうと思っております。そのうち大蔵省に預託しておる金額は約八十億と私は記憶いたしております。
#32
○坂本昭君 資金運用部資金の中に預託されている金が数十億に上るという一つの事実の前提のもとに少しお尋ねしたいのですが、先ほど相馬委員大へん労働大臣をほめられたのですが、ちょっとほめ過ぎじゃないかと思うのです。というのは、国は一体あの鬼怒川の病院に幾ら出しているかと私は聞きたい。出しておらぬのです。あれは労災保険の保険金でできた病院であり、そしてそれによって運営されている労働福祉事業団の病院である。国はそれほど、労働大臣がほめられるほどのことは私はしていないと思う。実際言うと、これは労災の立場から言うと、労働者の災害、疾病の責任はこれは企業主が負うべきだ、これは労働大臣も先回明確に答えておられたのですが、同時にまた、昨年の当委員会の審議で、労働者の災害、疾病の治療に対する責任を企業主が負うだけではなくて、それに伴うその労働者の生活並びにその家族の生活をも保障するというのがこれは今日のもう世界各国における労働災害の補償の実態である。そういう点から言うと、日本の場合は、今相馬委員がるるとして述べられたように、少しも保障されていないということなんですね。たとえば休業補償の面において、あるいは遺族補償の面において補償されていないから、今のような、実に聞いておっても涙の出るような悲惨な事実が訴えられてくると思う。そこで中の一、二点伺いたいのは、一体労働者の災害、疾病を補償するということに関連してですが、病院を建てるということと治療をするということと、これはずいぶん素朴な質問をするのですが、病院を建てるということと患者を治療するということとは、私は全然別の問題ではないかと思う。労働者の災害、疾病を治療し、そうしてもとへ戻すというこの治療をする責任が雇い主にあるということは、もうこれは世界の東西を問わず確定された事実なんです。が、日本の場合は同時に企業主が病院を建てておる。一体病院を建てなければならないのかどうか。これは非常に基本的なことなので労働大臣の御見解を承りたい。病院を建てるということも、これは一体労務災害を補償するということに関係があるか、この点一つ明らかにしておいていただきたい。
#33
○国務大臣(石田博英君) その御議論の趣旨はよくわかるのでありますが、労災保険という制度についても国費を一部負担しているわけであって、労災保険事業でやっていることが全部が事業主の負担ということは言えない。やはり国は労災保険制度の中に参与していると思います。
 それから労災保険法のやる事業の中に、必要な医療及び医療費の支給……労働基準法第八章の第七十五条の「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。」とあるのですが、その療養を行なうのには青天井で行なうわけにはいきませんから、療養を行なうということの中には当然療養をする建物も含まれると私どもは考えております。そこで全額法律上使用者の義務の中に規定されているわけですが、それでは国は全然手ぶらでいいのかどうかという問題になってくるわけですが、法律の建前としては使用者負担で差しつかえないと思うのですが、国が手ぶらでいいわけではないので、国は労災保険制度の中に参与している、こう考えております。
#34
○坂本昭君 今の問題またあとでもう一度お尋ねしたいと思いますが、先ほどの積立金、少なくとも大蔵省の資金運用部資金に預託された金が八十億ほどある。これは当然労働者が災害でこうむった被害の生活の保障の面で見てやるべきところの金額であって、資金運用部資金に預託されて、これが財政投融資に回される必要は私は全然ないと思う。従って、少なくとも先ほど来休業補償の問題について六〇%は少な過ぎるじゃないか、われわれは一〇〇%主張してきました。それからまた、この平均賃金のきめ方、労働基準法の七十条できめられている例の平均賃金のきめ方にしても、先ほど相馬委員がるるとして述べられた通り、非常に条件の悪いところで平均賃金をきめられる。しかもその六〇%、これは非常に残酷だと思うのです。だから私は、平均賃金のきめ方でももっと有利なところをきめるべきじゃないか、それからそれが今のところきめにくいならば、せめて六〇%でなく、一〇〇%にすべきではないか、現に八十億も預託された金があるのだから、もっとこれを有効に生活保障のために使うべきではないか、私はそう思うのですが、今の、先ほどの相馬委員のことに関連して、ことにこの預託金のことに関連して大臣の御答えを承っておきたい。
#35
○国務大臣(石田博英君) まあ保険経済というものを安定させ、健全にするためには、やはり支払い備金というものを一定額保証して持っていなきゃなりませんので、これはあとで、詳しく数字は事務当局から答えさせますが、今ございます百三十数億というものは、その本年度、昭和三十五年度における支払い備金の要請する額にまだ十億円ほど足りないように思うわけであります。従って、これは現在の段階ではやはり支払い備金として持っていなきゃならないものでありまして、それを越えた部分についてはこれは積立金というふうになってくる性質のものであります。ただ、実際の運営としてそういう支払い備金をどこへ預けておくかということになれば、結局まあ資金運用部に預けるよりしようがない、こういうことで、これは長期の金として運用されておるのじゃなくて、資金の性質上これはたしか短期の金として扱われておるのであります。ただ、今申しましたように、しかし、その保険経済を健全にしていくために一体そんなにたくさんの支払い備金が要るかどうかという問題になってくると思います。もっと効率的な、つまり労災保険の目的にもっと具体的に沿うような方向にこれを持っていって、もっと違った運用をしたらどうだという考えが、これは特に昨年度から労使双方に強く出て参りまして、私どもとしましては、災害が起こらないような施設を作るためにこれを運用するのが一番的確な措置と方法じゃないかというので、そういう制度について検討を開始いたしました。ただ本年度は、私どもの方にも準備不足な面があり、また、大蔵省のいわゆる金融の一元化という立場からもありまして、経過的な措置として中小企業金融公庫とそういう趣旨のものを扱うということで、本年度は様子を見ることになりました。まあそういう方法を考えております。そこで、先ほど相馬委員からのお話もあり、今のお話もありました支給額の問題、特にその基礎となります平均賃金の問題から先ほどのお話のように、非常な不均衡を生ずる。これは私どもが前から検討しておった結論ではありません。私は現在、日本の中小企業の賃金の状態というものを考えてみますと、どうしても最大限いろいろ運用上考えましても、かなり差が出てくると思う。そうして参りますと、それをできるだけ防ぐ方法はむしろ違った方法、たとえばその下限をきめてしまう、給与額の下限をきめる、そうしますれば率の問題で生じてくる不均衡というものが防げるのじゃないか。私はその下限をきめるという方法にその規模別賃金格差というものがなくなってくれば、それは率で解消すると思いますが、規模別賃金格差が現存いたしておる今日においては、格差のあるままのをそれにまた一定の比率をかければ差はそのまま残るわけであります。その差をできるだけ縮めるには下限をきめるという方法で検討したいというふうにむしろ私は考えておる。これは部内で検討した結果ではありませんが、私が考えておる考えとしては、下限をきめるという方法をもって検討したらいいのじゃないかと、こう思っておる次第であります。
#36
○坂本昭君 労働者の最低賃金に関する問題は、これは私は、欧米のいわゆる先進国の様子を見ますというと、大体最低賃金に対してまず六割程度が年金の額なんです。それから四割程度が生活保護の額なんです。ですから私たちが最低賃金八千円ということを言っております。そうすると、六割の四千八百円というのが少なくとも年金の最低額として扱わなければならない。また、四割の三千二百円というのは生活保護の基準でなければならないというふうな一つの計算が出てくるわけです。で、従来の生活保護を今度一八%上げましたが、われわれは五〇%引き上げなければならないと言ったのは、今のような最低賃金八千円が基準になって年金の額あるいは生活保護の額を具体的に出してくるという先進諸国の慣例に従った一つのこれが金額なんです。だから、今大臣がこうした労災で長期療養をしている方のその生活保障の下限をきめるということはこれは多分に、多分にというよりも実質的な年金的なものになってくると思うのです。従って、その年金的なものが、下限が明確に作られなければならぬということは、今のような最低賃金がはっきりできなければならないというわれわれの考えそのものにおいて少し接近してきたと思うのです。ただし、政府当局は、八千円でなくて、この間は広島の基準局で今度訴えられると聞いておりますが、五千円ぐらいの最低賃金制というものを作っておられる。これでは生活できない。少なくとも八千円以上、従って、長期療養される方の場合もその下限額というものは私は当然きめられなければならないと思います。これは私は、すみやかにお作りになっていただきたいのですが、ただ、皆さんの方では労災保険の金が少し預託されたら、余ってきたというので率を引き下げるというふうなことを聞いている。こういうことは労働者の側では一つも望んでいない。すでに健康保険の場合もあの率を引き下げるよりも内容をよくしてくれという要求が強い、今度労災保険についても、この料率をもちろんメリット制に従って引き下げるというふうな考えを聞いておるので、これでは内容をよくするということとはむしろ逆行してくると思う。どうかこの点、今の下限を決定して労災患者の生活を実質的に保障する具体的などういう対策を持っておられるかということと、それに関連して、今の率の引き下げについて、この際明確なお答えをいただきたい。
#37
○説明員(村上茂利君) 率の引き下げという点でございますが、おそらく保険料率の引き下げではなかろうかと思いますが、労災保険の保険料率につきましては、過去五年間の収支率を基準にいたしまして、事業ごとに料率を改訂する、こういうことになっているわけでありますが、従いまして、計算上過去五年間の収支率を見まして、たとえば安全努力を非常にいたしまして、災害が減ったというような事業につきましては、これを料率の引き下げという措置をいたしておるわけであります。これは法律の建前から労災保険の保険料率は他の社会保険と異ったかけ方になっているわけでございますが、そのような意味から若干の保険料率の引き下げをいたしているわけでございます。ただ別な意味の積立金と申しますが、支払い備金の運用の問題でございますが、これは先ほども大臣から申し上げました通り、法定額、一応法律で要求しております額は百四十八億程度になるのじゃなかろうか、それにまだ達していない百三十二億でございますから、下回るというような現状でございます。いわゆる積立金として余裕金の運用という問題につきましては、今後数カ年たちましてその支払い備金を上回るような積立金が生じた場合に、どのような対策を講ずべきであるかという角度から論議の対象になっております。ただ他の社会保険と違いまして、保険料率というものが固定したものではなくて、過去五年間の収支率を見まして改訂されるものでございますので、料率を固定されてどんどんどんどん積立金がふえて参るというような制度と同じように考えるわけにはいかぬだろうと思います。
 それから御質問の中に、休業補償の率の問題と平均賃金の額の問題が重なり合いまして、御指摘ございましたが、私どもも全くさように考えてみまして、率が上がりましても平均賃金のつかみ方自体が低ければ、率が幾ら上がりましても実額が少ない、こういうことになってくるわけでございます。率につきましては、基準法上の休業手当におきましてすでに六〇%という率を採用しておりますので、休業補償の面におきましても六〇%の率を採用するということは関連のある均衡のとれた措置なんでございますが、問題はけい肺におきまして平均賃金が非常に低く算定されるという傾向がありはしないかという点が心配されるわけでございます。この点につきましては、現在平均賃金の算定方法につきまして検討を加えております。何らか現実に合うような適正なる平均賃金の算定方法をとれないかということについて事務的に検討を進めておるような次第でございます。
#38
○国務大臣(石田博英君) まあ最低賃金の問題についてはもうわかって、最低賃金法提出以来いろいろ御議論を申し上げました、今日これを繰り返す必要はないと思います。私どもと社会党の方との間に残念ながら意見の相違があると思います。ただ、その後、現行最低賃金法が実施されて一年有余たちまして、これについての社会の理解というものもだんだん深まってきておりますので、あの法を立案提出いたしましたときと客観的な条件が違って参っております。本年度を初年度といたしまして、今後三カ年の間にこの適用対象労働者数を二百五十万にすることを目標といたしまして、現行最低賃金法の普及にまず第一段階として努力をしていきたい、そうしてこの努力を通じ、その行政効果を上げることに努めることを通じまして、一般的に最低賃金水準を上昇せしめるためにその法の精神の理解に努めまして、そうして私は御希望の線に移行し得る素地をこさえていかなければならない、こう考えておるような次第で、目標とするところについて私どもの意見と違うわけではなくて、そこへ到達します段階的な意味において私はただいま申しました方法をとることが現実的だと考えておるわけであります。ただ、先ほど広島の例をちょっと本題ではございませんが、おあげになりましたが、これはまあいずれ裁判の問題になりますが、裁判所の、これは御承知と思いますが、従来十五才二百円であったものを、二百三十円に上げてきめたことが、まあ憲法の規定する最低生活を下げたわけではなくて、上げたわけで、しかもそれは最低線の、しかも十五才であります。五千円とおっしゃいましたが、二百三十円でありますから二十五日稼働とすると約六千円になります。それが十五才、しかもこれは他の地域におきましては一やはり今度告訴された総評が参加しておる最低賃金審議会で、他の地域におきましては二百三十円より低い線で御同意を得て決定されておるところがかなりあるのでありまして、これはどうも私は実はまだ詳しい報告に接してはおりませんが、若干意外に感じるような次第であります。ただ、行政指導の上におきまして、今日では二百円以下の者は、新しくするのはもちろんのこと、古い時代にきめられたものでも二百円以下のものは二百円より上にするように努力をし、指導しなければならぬことを強く言って、最近決定されたものはほとんど二百二、三十円より上のものが多いのであります。これに実質の昇給率その他を換算いたしますと、だんだん実質的には十八才八千円という線に近づきつつある、近づくように努力をしていきたい、こう思っておるのであります。
#39
○坂本昭君 ちょっと取りまとめて一言だけ大臣の御答弁をいただきたいのは、結論的なことだけでお尋ねいたしますが、労災病院の設備投資に対して、三十七年度になりますが、国としてこれに積極的な資金を出す、そういう御意図が立法的にあるいは行政的にお考えになっておられるか。
 それから次は、先ほども問題になったアフター・ケアよりもリハビリテーション、これはいわば転職訓練だと思います。このリハビリテーションに対して同じように国自身がもっと強力に予算的な措置をおとりになるつもりがあるかどうか。
 それから三番目に、今の平均賃金の取り方の問題について、これは行政的になさるのか、あるいは立法的な措置でなされるのか、それに関連して労災法の一部改正を昨年やりましたが、さらに新しい大臣を迎えて前進的なまた改善をされるおつもりがないか、今の平均賃金の、取り方等を含めて。この三点だけをお答えいただきたい。
#40
○国務大臣(石田博英君) 第一点、第二点の問題は、これは今の先ほど申し上げました労働基準法の規定から問題を立てていくというよりは、先般坂本委員からお話がありましたが、利用者の中に労災保険対象者以外の者が半分以上いるんだという面からの検討をしてみたい、こう考えております。そういう面から一般会計の負担を要求するのは現実的にとりやすい筋だろうと私は考えておるわけであります。
 それから今の平均賃金の取り方でありますが、これはそういう平均賃金法の運用上、最大限にとり得るように運用上考えた方が実効が上がるのではないかと私は考えておるのでありますが、さらに先ほども申し上げました通り、現実に既往賃金が存在しておるのですから、しかも千人以上のものと十人以下のものとの間にはそれこそ十対三くらいの差があるわけです。そういう十対三の三の方をどうとらえてみても、なかなか救済手段というものはむずかしい問題が、先ほど相馬委員のお話の中に、生活保護との関連で、そういう相互関連の上において下限が悲惨なことにならないような措置を考究したい、法改正でやられるのかいうことについては、実効の上がるような方法を検討した上で検討したいと、こう考えております。
#41
○委員長(吉武恵市君) よろしゅうございますね。
 ちょっと速記やめて下さい。
  〔速記中止〕
#42
○委員長(吉武恵市君) 速記を始めて。
 本件に対する本日の質疑は、この程度といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○委員長(吉武恵市君) 御異議ないものと認めます。本日はこれにて散会いたします。
   午後零時二十一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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