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1960/03/16 第38回国会 参議院 参議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第7号
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1960/03/16 第38回国会 参議院

参議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第7号

#1
第038回国会 外務委員会 第7号
昭和三十六年三月十六日(木曜日)
   午前十時四十五分開会
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     木内 四郎君
   理事
           井上 清一君
           鹿島守之助君
           森 元治郎君
   委員
           笹森 順造君
           野村吉三郎君
           堀木 鎌三君
           加藤シヅエ君
           松澤 兼人君
           佐多 忠隆君
           羽生 三七君
           曾祢  益君
           佐藤 尚武君
  国務大臣
   外 務 大 臣 小坂善太郎君
  政府委員
   外務省アメリカ
   局長      安藤 吉光君
   外務省国際連合
   局長      鶴岡 千仭君
   運輸省航空局長 今井 榮文君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡辺 信雄君
  説明員
   外務省アジア局
   外務参事官   宇山  厚君
   外務省経済局次
   長       高野 藤吉君
   外務省条約局外
   務参事官    東郷 文彦君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○通商に関する日本国とキューバ共和
 国との間の協定の締結について承認
 を求めるの件(内閣送付、予備審
 査)
○日本国とフィリピン共和国との間の
 友好通商航海条約の締結について承
 認を求めるの件(内閣送付、予備審
 査)
○国際情勢等に関する調査(国際情勢
 に関する件)
○航空業務に関する日本国とベルギー
 との間の協定の締結について承認を
 求めるの件(内閣提出)
○航空業務に関する日本国とドイツ連
 邦共和国との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(木内四郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、予備審査として送付されております、通商に関する日本国とキューバ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、及び日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件の両件を一括議題といたしまして、提案理由の説明を承ることにいたしたいと思います。
#3
○国務大臣(小坂善太郎君) ただいま議題となりました通商に関する日本国とキューバ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、キューバの対日差別関税廃止及び戦後におけるキューバとの片貿易是正のため、機会あるごとにキューバとの通商協定締結に努力して参りましたが、昭和三十五年四月ラウール・セペーロ・ポニーリァ商務大臣を首席代表とするキューバ代表団が通商交渉のため来日いたしましたので、これと交渉を行ないました結果、妥結をみまして、同月二十二日東京におきまして署名を行なった次第であります。
 この協定の内容は、関税、輸出入規制、出入国、滞在及び事業活動に対する最恵国待遇並びに船舶に対する内国民及び最恵国待遇の規定を骨子としておりまして、日本が戦後締結いたしましたインド、マラヤ等との協定に類似しております。
 この協定の締結により、両国間の通商関係は安定した基礎の上に発展するものと期待されます。
 よって、以上申し上げました利益を考慮し、また、キューバ側におきましては、すでに昨年五月十九日に批准済みでありますので、この協定の効力発生のため、わが国も必要な手続をできるだけ早急にとりたいと存じ、ここにこの協定の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 フィリピン共和国とわが国との国交関係は、御承知の通り、昭和三十一年七月二十三日にサン・フランシスコ平和条約が両国間に発効することにより正常化をみるに至ったわけであります。それ以来政府は、両国間の貿易、通商関係を長期かつ安定した基礎に置くため、機会あるごとに通商航海条約の締結交渉の早期開始をフィリピン共和国政府に申し入れてきたのでありますが、フィリピンの対日感情も年とともに好転し、また、近年における両国間の通商関係の進展をみて、フィリピン政府も次第にわが国との通商航海条約締結の必要性を認識するに至りましたので、一昨年六月、日本側の条約草案を先方に提示して交渉開始を正弐に申し入れた結果、昭和三十五年二月から交渉が開始され、約十カ月の折衝の後十二月初旬案文につき合意をみて、十二月九日この条約及び議定書の署名調印をみた次第であります。
 この条約の内容は、入国、滞在、出訴権、財産権、内国課税、事業及び職業活動、為替管理、輸出入制限、関税、海運等の事項につき最恵国待遇を相互に許与することをその骨子としております。
 戦後わが国は、東南アジア諸国のうち、インド及びマラヤ連邦と通商協定を締結しておりますが、友好通商航海条約としてはフィリピンとの間の本条約が最初のものであり、また、フィリピン共和国にとりましては、独立後外国と締結する最初の友好通商航海条約でありまして、その歴史的な意義は深いものがあると思われます。
 この条約により入国、滞在、事業活動等の面において、両国間の関係が正常化するとともに、わが国の東南アジア貿易中重要な地位を占めている対比通商関係が円滑な発展を遂げるものと期待される次第であります。
 よって、この条約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(木内四郎君) 外務大臣もおいでになっておりまするので、国際情勢等に関する調査をも議題といたしまして御質疑を願いたいと思います。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
#5
○森元治郎君 例の共産圏に対する貿易統制、戦略物資の輸出禁止などについて、チンコムとかココムとかありますが、その現状を伺ってみたいと思います。
 ココムは五一年、チンコムは五二年にできたと思うのですが、その後だんだん禁輸品目をゆるめてきておるようですが、どのくらいゆるめて、残っているもので重要なものはどんなものか、それから、実際問題としては、輸出禁止だといいながらも、なかなか利口な国がたくさんありますから、適当にやっている国もあろうと思うので、その間の事情を伺いたいと思います。これは、中国との関係においても特に重要なので、簡単に要領よく御説明を願います。
#6
○国務大臣(小坂善太郎君) 私から大要申し上げまして、品目の内容等については、政府委員から補足さしていただきたいと思います。
 ココムは、御承知のように、一九四九年パリにおける会議で協定されて、初めて作られたのでありまするが、日本は一九五二年これに加盟いたしております。朝鮮戦争を機といたしまして、一九五二年チンコムという制度が設けられまして、若干ココムよりも粗い制限措置がとられたのは、御承知の通りであります。一九五七年に至りまして、チンコムの面でも、ココムの面でも、統制緩和の措置をとるに至りまして、五七年のこの改正を機といたしまして、ココム、チンコムの差はほとんどなくなっております。区別はほとんどないようになっておるのであります。一九五八年に至りまして、さらに緩和措置がとられまして、現在百六十五品目が禁止品目になっております。なお、三十八品目が監視品目ということになっておるのが現状でございます。なお、その品目のおもなるものは何かということでございますが、この京については、説明員から御説明いたさせます。
#7
○説明員(高野藤吉君) 補足して御説明申し上げます。
 今、大臣のお話にありましたように、一番制限が激しかった、五八年前には、禁輸品目が大体二百十六ございまして、それから監視品目が五十三ございましたが、これが現在百六十五と三十八に減っている次第でございます。それから五八年当時は、そのほかに数量で統制されている品目もございましたが、これは約二十五ございました。これは現在ございません。それから、現在禁止されている品目のおもなものは、大体軍需品、兵器関係でございまして、一般の通常の貿易関係の品目は含まれていない次第であります。
#8
○森元治郎君 きのうかおととい、やはりアメリカで、この問題について検討をしたらいいのですが、全体の傾向としては、こういう輸出禁止をすることによって中ソを縛っていこう、窮屈にしていこうという方針であったようだけれども、実際の効果は、今日においてはだんだん減りつつある。一時は効果が出たかもしらぬが、逆から見れば、当然入るものが入らなかったために、中ソの両国は、勉強、努力することによって、その苦痛をかえって緩和していっているような傾向にあると思うのですが、その認識はどういうふうになさっておられるか。大臣に伺います。
#9
○国務大臣(小坂善太郎君) やはり朝鮮戦争等を契機といたしまして、軍需物資をことさらに中国に対して締めていこうということで、チンコムという制度ができ、これがココムよりさらにきつい制限になったわけであります。従って、ココムにしてもチンコムにしても、そうした帆制ということによって、戦争能力というものを高まらしめないような基本的な考えのもとになされておるのだと思いまするが、現在これだけ緩和されて参りますと、実際、直接に兵器としての需要のあるものだけが問題になっているような現状でございまして、たとえば対ソ貿易が、日本の場合、ココムの制限はもちろんあるわけでありますが、どんどん伸びておりますように、それほどの通商貿易の障害にはなっておらぬように見られる現状になっております。で、アメリカあたりでも、これとバトル法とあわせて検討するというふうに伝えられておりまするが、これはどういうふうになって参りますか、今のところ、何らその見通し等については申し上げる段階にございませんけれども、やはりこれは全く無用のものであるというふうな認識に立って撤廃が行なわれるということにはならぬだろうと思います。私どもも、実はそういうふうに見ておるのであります。
#10
○森元治郎君 この東西間の緊張緩和という点からいけば、実際にだんだん、大して中ソ貿易の障害に――簡単にいえば、いじめる効果がなくなってきている、非常に減ってきているというような現状であるならば、こういうものを解消していくということは、大へん空気の緩和に役立つのだろうと思うのですが、政府としては、これに対して特に配慮をする、あるいは検討していくという気持があるのか。あるいは現在検討しておられるのか。私は、大いに気分的な緩和に役立つのじゃないかということに重点を置いて考えているわけです。
#11
○国務大臣(小坂善太郎君) どうでございましょうか。そのある品目が非常に緩和されてきて、非常に局限された戦争兵器だけに集約されてくるという状況でありましたら、その程度はいたし方ないんじゃなかろうか。これを撤廃したから、急にそれが東西間の感情の緩和に一気に役に立つというふうにも私は思えないような気がするのであります。むしろもっと根本的な問題で、東西緩和の問題は考えなければならぬというふうに思っておる次第であります。
#12
○森元治郎君 外交というのはやっぱり――アメリカがソビエトに対する、中国に対する態度で第一番に要求しているのは抑留者の釈放という、人数にしてはわずか五人でありますが、これが解決を強く迫って、もしこれが解決するならば、アメリカの対中共の気分も変わるだろうといわれるくらいの大統領の談話であったり、国務長官の談話であったりしているようなんでありますから、お前をこうやって外から経済的な圧迫を加えていくんだということははずしていくということが、大へん私は有用なんじゃないかと思うのです。大臣の御答弁では、無用のものとしては、撤廃するつもりはないということでありまするが、できるものならば、こういうものを撤擁していくイニシアチブをとるということは、あなたのおっしゃる弾力的な態度にもなるんだろうと思う。また、いつかの衆議院の質問に対して、自分は、いわゆる例の中共の三原則、これに反するようなことは日本はしてないんだと言うのなら、敵視するようなことはしないんだということの実証として、そういうイニシアチブをとられることは大へん有用だと、進んでそういうことをやられる方向に向かわれることを望みたいのですが、もう一ぺん一つ。
#13
○国務大臣(小坂善太郎君) 私の考え方は、こういう制限が今兵器にほとんど集約されてきている。そこで、兵器などというものは、できるだけ世界各国が作らぬことがいいのでありますから、望ましいのでありますから、そういうものは輸出入することを避けるという制限は、別にこれがあったのではどうしても緊張緩和はできないというほどの大きなものではなくて、本来そういうものを輸出入行為の対象とすることよりも、もっと実質的な面で緊張緩和の方法はあろうかと思います。まあそういう糸口として、このココム、チンコムの問題というものはそれほど効果がないものじゃないかというふうに思っているわけです。
#14
○森元治郎君 私の伺うのは、なかなか国会でわれわれがなんぼ伺っても、実質的には根本的な解決の方針すらも見せられないから、そこで、できそうなものからおやりになったらどうかと伺っているのです。どうですか。大きい、根本がなかなかできないので、この先まだ対策もできないで、前向き、弾力だけでもってわれわれを突っぱねておられるのですから、できそうなものからやっていったらどうか。
 それから、ついでにお伺いしますが、この残った兵器々々ということをおっしゃるのですが、どういう内容か、ちょっと御説明願いたい。
#15
○説明員(高野藤吉君) 大体原子力関係、それから兵器ではなんですか、それと最近の科学の進歩に伴って高度の精密な兵器、それから通信関係及びエレクトリックの関係のものが大体のおもなものでございます。
#16
○森元治郎君 この品目というのは、最初きめた、パリ・リストというのですか、何か、忘れましたが、最初にきめた品目にあとから付け加えたり、あるいは兵器の進歩に伴って、実質的に新しい品目になったというようなものはないのですか。
#17
○説明員(高野藤吉君) 先ほど御説明申し上げましたように、初めは相当ございましたが、だんだん各国が話し合いまして、技術の進歩に伴ってこれを減らしておるのでございます。これを一時廃止したらどうかという御意見でございますが、日本といたしましても、関係のない品目は大いに交渉し、がんばって、どんどん減らしてきておるのでございます。
#18
○森元治郎君 対中国関係で、この品目を解けばあるいは民間貿易の線で幾らか貿易にプラスになるというようなものがありますか。
#19
○説明員(高野藤吉君) 先ほど大臣から御説明がありましたように、日ソ間で貿易がこの三年来非常に進んでおるという点から見ましても、中国との貿易におきまして、このココムないしチンコムが廃止されましても、現在中共が要求しておるのは、総じて一般の経済、生産力を上げるための資本財が多いのでございまして、それに引っかかるような品目はございません。従って、これのあるなしにかかわらず、中共との貿易は、ほかの条件さえ許すならば、どんどん進んでいくと思うのであります。
#20
○森元治郎君 きょうはこの程度一応伺うだけにとどめて、日韓の請求権の問題をちょっと、大臣がおられますから、伺うのですが、事情がわからないから、まず第一に、大臣に具体的事実関係を伺っておきたい。
 問題は、例の三十二年に出されたアメリカの口上書をめぐってでありますが、そもそも講和会議のときには、講和会議の草案を持ってダレスが一九五一年の十二月に日本に来たときに、草案を日本政府に見せたときに、第四条の(b)項はなかったように政府は受け取った。ところが、講和会議に行ったら、韓国の切なる泣き言によって(b)項が入った、こういうことになっておるのかどうかを伺いたい。
#21
○国務大臣(小坂善太郎君) 政府委員から、当時の事情を御説明申し上げます。
#22
○説明員(宇山厚君) 請求権の問題につきましては、日韓会談の始まりました当初から、重要な議題の一つになっておったんでございますが、最近アメリカの解釈に関連いたしまして、この解釈の性格がどういうものであるかということが注目を浴びるようになったんでございますが、実は、韓国の請求権に関しましては、御存じのように、平和条約の四条の(a)項において特別の取りきめをすることになっておりましたが、その際、四条の(b)項におきまして、韓国において合衆国軍政府により、またはその指令に基づいて行なわれました日本国及びその国民の財歴の処理の効力を日本が承認いたしておりますので、従いまして、日本並びに日本の国民が韓国に持っておりました財産並びに請求権が、この日本と韓国との間の請求権に関する取りきめをやります際に、どういうふうな効力を持つかということが問題になって参るのでありますが、ただいま申し上げました四条の(b)項によって、アメリカ軍政府が在韓日本財産を韓国側に渡しております。この効力を承認しておりますために問題となった次節でございます。そこで、アメリカの解釈と申しますのは、この関連につきまして、日本は韓国に対して請求権を平和条約第四条(b)項で放棄しておる。しかしながら、韓国と日本との間で請求権に関する特別取りきめをする際には、この事実を考慮に入れて行なうということの解釈が明らかにされたものでございます。
#23
○森元治郎君 そういうことを伺っているのじゃなくて、何か出てくるかと思って、最後まで待っていたのですが、とうとう出てこなかったのですが、その夏にダレスが、かばんの中に、こういうものだと言って持って来たときには、この(b)項はなかったのじゃないか。ところが、その後韓国が泣きつき、それでは困る、韓国においてアメリカの軍司令官がとったこの措置を条約上で確認しておかなければとてもだめだというので、かわいい韓国のことだから一つ入れてやろうというので入ったのだというのが事実であろうと私は思うので、その事実はどうでございますかと伺っておるのです。
#24
○説明員(宇山厚君) その点につきましては、この四条の(b)項は、御浜知の通り、「日本国は、第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある」云々となっておりまして、朝鮮だけが問題になっておるのではないのでございます。二条の(a)項は朝鮮、それから(b)項は台湾及び澎湖諸島、(c)項は千島及び樺太、それから三条は、御存じのように、南西諸島及び南方諸島、こういうふうに、日本のかつての領土でありまして、平和条約によって日本が放棄した、こういう地域が並べてあるわけでございます。これらの地域におきまして、平和条約が成立いたしますまでに、合衆国軍隊がおりまして、問題となった点は、第二条の朝鮮と、それから第三条の南西諸島、南方諸島、こういうふうに、当然平和条約成立後に問題が起こり得ることが予想されたわけでございますから入ったものと了解しております。朝鮮の李承晩大統領の方からアメリカに泣きついたために、こういうものが入ったということは存じておりません。
#25
○森元治郎君 それから、事実関係を伺いますが、韓国に、五〇年の四月二十九日に、アメリカが第四条に関する解釈を通告した場合に、日本にも内報があったのですか、大臣。
#26
○国務大臣(小坂善太郎君) あったと承知しております。しかし、その内容は、今問題になっておりまするアメリカの解釈というものとは同一のものではないようでございます。
#27
○森元治郎君 そうすると、そのときはただ内報だけであって、それではわれわれの解釈と違うということをアメリカと大いに折衝をしなかったのですか。
#28
○国務大臣(小坂善太郎君) いろいろな日本側の意見の開陳もあり、韓国側の意見の開陳もあり、そうして昭和三十二年のぎりぎりに押し詰まりまして、新たなる解釈がその当時出されたものについて合点が成立したという経緯だと承知しております。
#29
○森元治郎君 そうすると、五二年に韓国に知らされたものは、こちらにも知らされておるが、従来の主張通り、対韓請求権はあるんだと、それから今日まで押してきたわけですね。
#30
○国務大臣(小坂善太郎君) 日本は、講和条約で一応の意思の表明をしておりますから、すなわち第四条(b)項で、「合衆国軍政府により、又はその指令に従って行なわれた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する」と、こう言っておりますので、五二年当時、これは私有財産に及ぶものではないのだという見解を表明して、大いに渡り合っておったわけなんです。どうもその解釈がやはり無理だということになって、五七年の十二月三十一日に、五七年になってから出されたアメリカの解釈というものを承認したことになっております。そのアメリカの解釈は、さっき説明員から申し上げて、その話ではないと、おしかりをいただいたのですけれども、日本の方が韓国にある財産の処理の効力というものを承認したと、合衆国軍令三十三号によって、日本の財産が収得し所有されたということを承認するけれども、またその事実というものは頭に入れて、一種の相殺的な考え方でもってこれに臨むということを了解した意味において、一九五七年の十二月三十一日の米中解釈の承認をしたと、こういう経緯になっておるわけであります。
#31
○森元治郎君 経緯をさらに伺いますが、われわれは方針を変更したと言うのに対して、政府は、いやかねがねこういうことがむしろ正しいのではないかという検討を続けて参りましたと、こういう苦しい答弁をしておる。そういうふうに、今まで突っぱったのが、いやこれはちょっと無理だと考え始めたのは何年ですか。
#32
○国務大臣(小坂善太郎君) どうも私は、前のことなんで、引き継ぎを受けておるわけなんですが、五二年主張しておる当事から、実は少し無理だという気持はあったけれども、しかし、そうかといって、まるまるただ差し上げてしまうのでは何だから、その態度を主張して、そうして結局出したことは十分考慮に入れるのだと、こういう解釈を確定させるために特に主張したというふうに聞いております。これは確かに、ハーグの陸戦法規の四十六条の効力をこえる解釈であるということは言えるわけであります。しかし、こういう解釈が、韓国における合衆国軍政府のやった行為だけについてとられるのかといえば、それはそうじゃないので、他にも、十四条とか十六条とか、連合国財産に対しても同様のことを、十六条においては、中立国の財産についてもやはりそういうことをしているというので、韓国だけについてこれをがんばるわけにもいかぬということなんです。
#33
○森元治郎君 そうすると、五十二年のもう第一回の交渉からそういうふうなお考えがあったのである。まるまるやっちまうのはいかがかと、少し突っぱれということでやってきたんだと、こういうふうに解釈をいたします。続いて、この三十二年十二月の、三十二年のこの解釈というものは、あらかじめアメリカがまん中に立って仲介して、四条の解釈をここまでまとめて、韓国を納得させ、日本を納得させて、こういう文書までになったのですか、三十二年のこの解釈は。あるいはアメリカが単独に、いや、両方から、日本から聞かれるからこういう回答をしたのか。
#34
○国務大臣(小坂善太郎君) まあ非常に日韓関係というのは、朝鮮独立以来感情的な要素が非常に多いわけなんです。まあ韓国側では、三十六年日本にひど目にあった、非常な精神的な苦痛まで損害として考えなければいかぬというふうな気持もあるわけですね。日韓交渉が四次にわたって非常に難航したという原因も、まあ一つはそれであるわけなんですが、そういう感情の激しい波の中にあって、この四条(b)項の解釈というものもなかなかこれむずかしい点があったろうと、私は当時おりませんので、外務大臣でなかったわけですが、想像できるわけです。そこで、アメリカが中へ立って、いろいろあっせんをし、その結果がこれになったということだろうと思います。
#35
○森元治郎君 そうですね。そうだろうと思う。こういう文書を出す以上、出して、今度は日本の方から突つかれたりされたんじゃ困るから、中へ立ってここまでまとめてきたんだろうと思います。そこで伺いたいのは、これは根本問題として、私は日本が最初から述べた主張が正しいんではなかろうかと思うんです。しかし、これを論争していても、なかなか大臣はやむを得ないということで逃げるでしょうから、これはまあ差しおいて、根本方針というものを、かけ引きだとか、あるいは商売取引をうまくやるためにこれを使ったというにはあまりに根本原則なんですね。この点は、やはり日本外交の権威を疑われる。またいつ日本は今度はったりでくるかしらぬ、こう外国に言われた場合には、なかなか引っ込みもつかないんですね。そういう御答弁を政府委員のしっかりした中川さん、あるいは伊関さんという偉い人が堂々と国会でお述べになるのには、少し盗人ただけしいというような下品な表現に当たるかと私は思うんです。これは、根本原則をがらっと変えちゃって、もともと前から、すなわち三十二年ごろから、第一回交渉のころから、おれはこっちが正しいと思ったんだが、お前があまり膨大なことを言うから、まるまるやっちまうのもおもしろくないからというんでは、これは外交として非常に残念なことだと思うんです。根本問題です。
#36
○国務大臣(小坂善太郎君) これは非常に残念なお言葉で、私は、それは非常に異議があります。これは、韓国日報というのが二月の二十三、四、五と、三日間にわたって書いておりますが……。
#37
○森元治郎君 いつのですか。
#38
○国務大臣(小坂善太郎君) ことしのですね。これは非常に、今でもこういう気持があるかと思うと、まあ日本もよほど考えなければならぬと思う、いろいろな意味で考えなければならぬと思うくらいのことなんですが、「日本は、と、カイロ宣伝の表現を借りるまでもなく、三十六年間にわたって韓国人民を奴隷状態で支配したが、日本帝国主義の残務はいまだに整理されていない」云々とか、それから「韓国海域の漁族滅亡をもたらすかもしれない漁業協定の交渉、換言すれば、平和線問題で韓国側に譲歩することのみを繰り返し要求している」云々と、まあ非常に激烈な調子で今なお書いておるのです。で、われわれとしては、この平和条約の第四条(b)項の解釈というものは、これは、この軍政府によって、その指令に従って行なわれた日本政府の財産の処理の効力を承認するということですから、これはやっぱりこの解釈を解釈としてとらねばならぬのですね。しかし、この解釈というものは、一応ヘーグの陸戦法規の解釈を越えておる、こう考えられるわけです。ですから、そのことにのっとって、主張し得るだけ最大限まで主張するのは私どもは当然のことだと思う。当然のことだ。決してはったりでやったり、相手が何か言うからどうこうということじゃなくて、当然の主張はするわけです。がその結果として、それは確かに越えている。だから、日本人の、日本の持っておった韓国における私有財産まで取ってしまうということは越えておるというその日本の主張も認めて、そのかわり、今度こっちの方においては、その事実を、今度日本から、つまり財産請求権に対しての話し合いをする場合に、日本が出すべきものについて、日本が十分出してあるという肝炎を頭に入れて交渉するのだ、こういうことになったわけです。全然、それがまるまる私有財灘というものに対しては日本が請求権がまだ残っておるのだ、こういう主張を承認させることは、これはできなかったけれども、その考え方というものはここでは残っておる。だから、全部承認させるということは、この条約を承認している第四条(b)項の解釈からすれば無理だ、その気持はこのアメリカ解釈で生きた、こういうことになっておるのでございまして、決して根本原則――インチキをやって参ったとか、はったりで主張したとかいうことでないのでございまして、日本の国会において、尊敬する森さんからそういうお言葉が出るのはきわめて残念です。
#39
○森元治郎君 そんなら、占領地における私有財産の没収というのは、政府の確立した答弁要領によれば、ヘーグの陸戦法規を越えるのだ、こういう言葉を作り出したわけです。どう越えたか、私よくはわかりませんけれども、違反と言わぬわけだ。われわれは違反と言うし、政府は越えるものだという解釈です。それならば、私は、あくまでもその陣戦法規に違反するのじゃないか、確立した国際法規に違反するのじゃないかという建前ですけれども、かりに一歩譲って、政府の立場になっても、われわれは残念ながらと、こういうこれこれの理由では、われわれは大いに主張し、がんばったのだが、泣きながらですが、ここに後退せざるを得ないというようなことであれば、少しは同情もできるのですが、いや、ちょっともとから考えていたのだが、押してみたということでは、国民に対して、国民の財産に関する問題でありまするから、ことに韓国もなかなか無理が多いので、われわれとしては政府の努力が足りないと、こう思うのですが、どうでしょう。
#40
○国務大臣(小坂善太郎君) いや、私はそう思いませんですね。
#41
○森元治郎君 泣き泣きですよ、これは。
#42
○国務大臣(小坂善太郎君) いやいや、やっぱり日本は、条約の解釈をしたり、国際的な取りきめというものを解釈する場合に、やはり一つのそうした全体の約束ごとというものを頭に入れて解釈しなければならぬ、日本だけはこう考えるのだから、あくまでもこれでいかなければいかぬという考え方では、私は国際社会というものは成り立たないと思う。そういう意味で、この講和条約に調印する前なら知りませんけれども、すでに調印したあとで、この第四条(b)項の解釈というものは、軍政府の指令により、または軍政府自身によって行なわれた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する、こう言っていることは、軍令第三十三号を見れば、軍政府は日本人の財産を取得し、所有すると書いてある。その取得し、所有したものを、四五年にそういうことをやって、四八年にこれを韓国に引き渡している。ですから、そうなると、その効力を四条(b)項で承認しておるのですから、これはもう私有財産に及ばぬと言っても、やっぱり通らぬところがあるのです。だから、そういう点はやはり了承していかなければならぬ、こういうことなんです。
#43
○森元治郎君 それは大臣の御答弁、お気持はよくわかるが、それほどものわかりがいいお方なら、初っぱなからあまり、従来のわれわれの伺っているような主張をしてきた建前からすれば、そういう強い主張をすると、強い主張をしてきたのを引く場合に、政府は引くとは言いません、妥当な解釈と言う、その解釈は妥当なものであります、かように解釈しますと言っているのですから、そこまでに引き下がるにあたっては、どうも残念ながら通らないというふうに御答弁になる方が、よほど問題を前に進めることになるんではないかというのが私の気持であります。
 先へ進みます。そこで、三十二年のこのアメリカが仲介に立ってできた、そこまではまとめ上げたといいますか、まとめ上げたものを、今度は発表をされたわけでありまするが、はたしてどうかというと、韓国の方では、どうもわれわれが期待した、あるいはこの文書に記載してあるものと違うという解釈をしている。日本はなるほど請求権は放棄したが、この事実は考慮に入れろというのが第二点。それから第三点は、(a)項によって交渉する場合には、どの程度請求権が消滅され、満たされたものかというのを交渉でやると、こういうことですな。ところが、向こうの方では。合意議事録で了解したと言いながら、おれの方では、もうとつくの昔にこういう気持を入れて要求しているんだから、一向これに拘束されない。同時に、今日韓財産請求権の小委員会が開かれておるようでありまするが、やはり政府の立場をとっても、この文書を確認し合っていかなければ今後できない、尊重していくんだ。向うの方じゃ一向関係ないと、こういう態度にきのうの委員会あたりで談話その他が出ているのですが、この食い違いは、これは大へんなスタートとして影響するところが多いと思うのですが、どうですか。
#44
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は、まだ小委員会の会談の内容を承知しておりません。しかし、会談の性質として、これは合意が前提になるのですね。ですから、見解が分かれていたらまとまらぬだけだと思います。
#45
○森元治郎君 向こうの言い分によれば、日本の言うように考慮されるんだ。(a)項によって特別取りきめをやるにあたっては考慮されるということを期待している。政府は、従来の方針を引き下げて、韓国に三十二年に与えたと同じ立場をとって、そして実際交渉にあたっては、この放棄したという事実が尊重されるんだということで期待したつもりが、相殺というような思想は適用されない、こういうふうに出てきておるわけです。何らの影響も受けない。これでは、せっかくの政府の国民に示したものは期待が全くはずれて、これはけしからぬとお思いになりますか。
#46
○国務大臣(小坂善太郎君) いろいろ話してみなければわからぬと思うのであります。両方とも言いたいことを言って、そうして何が一番妥当なことであるかということを双方が寛容と忍耐の精神をもってまとめ上げるというのが私は交渉だと思います。従って、その交渉の過程でどういう話が出たから、けしかるとかけしからぬということを今申し上げることはできません。
#47
○森元治郎君 大臣は、先ほど私の質問に対してはなはだ残念であると言いながら、韓国の二月の二十何日かの新聞記事をお読みになって、ぐっときたらしいようでありますが、それでもなおかつ、六月に京城へ飛んで、向こうで交渉をやるというようなことが新聞に出ておる。急ぐというふうに私は感ずるのですが、急ぐのですか、十分に一つ一つの問題を片づけていこうとするのですか、どっちですか。
#48
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は、韓国へ行って本交渉をやるということを一度もまだ言うたことはないと思います。しかも、六月行くなどということは、言った覚えは一度もありません。
#49
○森元治郎君 京城でやるということを……。
#50
○国務大臣(小坂善太郎君) ありません。交渉でありますから、事務的に十分話を詰めなければならぬと思います。しかもなお、いろいろないきさつがある問題ですから、あまり煮詰めないうちに話をきめて、あとで問題が起こるようなことをしては、せっかくの両国の親善関係にかえって阻害になるわけで、十分に話し合いを尽くしてまとめ上げる、こういう態度でなければならぬと思っております。
#51
○森元治郎君 そうすると、何月くらいまでにまとめたいというような時限はないわけですね。
#52
○国務大臣(小坂善太郎君) これはもう、十分に話し合いを尽くして……。
#53
○森元治郎君 そうして最終の目標は、正しい国交関係の設定、何か条約関係を作っていくというのが最終の目標なんですか。
#54
○国務大臣(小坂善太郎君) この条約関係については、専門化をして答弁させます。
#55
○説明員(東郷文彦君) 韓国と日本との関係は、平和条約の発効したときに、韓国に当時存在した唯一の合法政府であった大韓民国政府を日本が承認したという関係に発するわけですが、今度の日韓交渉でまとまってできるものは外交関係の新たなる設定と、こういうことになると思います。
#56
○森元治郎君 そうすると、問題はいろいろありまするが、しぼって一、二点だけ伺いますが、韓国政府は合法政府だという意味の政府委員の御答弁でありまするが、国連の一九四八年の決議にも、一つのアップルーヴド・ガヴァメントというのがありますが、これは、朝鮮人が多数居住する部分というただし書きがついておる。その上にくっつかっておる。朝鮮の人民が多数居住しておるところの一つの合法政府である、こういうようなことが出ておりましたが、合法、非合法はさておいて、一体韓国という国と条約を結ぶ場合に、政府の言うように、唯一の合法……言葉は忘れましたが、これは領土の問題がまずからんできます。三十八度線で現実に分かれておるのですが、一体領土は、台湾との条約のように、地域限定というあの異例の条約を結ぶようになると思うのですが、どうですか。
#57
○説明員(東郷文彦君) ただいまお話しの国連決議では、その点には触れておらないわけであります。これをかりにも二つの朝鮮国という考えをとらない限りは、やはり平和条約その他カイロ宣言で言っております朝鮮というのは、やはり一つの朝鮮である。そこで、従来の観念を厳密に適用すれば、そうして一つの国は一つの政府だということだけから言いますれば、この法律的、形式的にやかましく言えば、観念的には他にも及ぶのだというふうに言わざるを得ないわけだと思いますけれども、現に国連決議も、北の方には、ほかの決議その他では、北鮮政権というものはあるという形で言及はしておりますが、問題の四八年の決議には、その点は触れておらないわけなのです。そしてまあこれから韓国との間にどういうものができますか、これはまだ今後の問題でありますけれども、少なくとも従来の考えとしては、北の方にそういう政権が事実上あるということを念頭に入れてやっておるわけであります。
#58
○森元治郎君 もう大臣も御研究中の様子でありますが、日本が領土権の放棄をしたのは、平和条約の第二条、日本国は、朝鮮の独立を承認して、済州島、これこれの島を含む朝鮮に対する、こうなっておりますね。決して韓国というような言葉はどこにも出てこない。そこに条約を設定するということは、大へん大きな問題が予想されると思うのです。現実に国連においても北方政権を認めている段階では、朝鮮との国交をやる場合に、その領土はどの辺まで及ぶのか、あやふやなままにしておくつもりですか。もう一ぺん大臣から、私は、限定講和ということになって大へん問題を生ずるし、私としては、やはり統一朝鮮に向かって進んだ方がいいと思う見地からお伺いします。
#59
○国務大臣(小坂善太郎君) 統一朝鮮ということが一体いつできるかという認識にもよろうかと思いますが、まあ現在、御承知のように、国連では、国連監視下における統一選挙を行なえということでありまして、一九四八年の国連決議が今お話のようにできたわけであります。韓国政府の方では、国連監視下において統一選挙をしたいということを言っておるわけですが、まあ北鮮側においては、それはいかぬということでございまして、なかなかこの統一という問題については、そう簡単にいかぬのじゃないかというふうに思うのであります。一方韓国は、非常にわれわれと近い地理的な位置を占めておりますし、また歴史的に見ましても、非常に長い交流の歴史を持っておる。しかも、現実の事態によって、われわれはもう通商関係を持っておる。それから、これは司令部との関係でそのまま残置しておる機関ではございますけれども、韓国代表部というものがわが国にある。それからなお、韓国生まれの朝鮮人というものはたくさんわが国に実在しておる。従って、その法的地位を定め、それから通商関係というものも安定した基礎に乗っておる。それから漁業関係等も、これは同じ海を使うわけでありますから、その間にきちんとした協定を作っていくということは必要かと思うので、まあことに、新しい張勉政権というものは非常に親日的でございまして、従来韓国との関係といえば、李承晩ラインをめぐって、われわれの同胞漁民が拿捕される。それを釈放させるというような交渉ばかりが韓国との関係であったわけなのでありますが、まあそういうことは全然最近なくなってきておるわけであります。こういう関係をもっと法律的な基礎の上に乗せて、そうしてきちんと規制するということは、単純な法律論を越えての政治的な必要じゃないかというのが私の考えで、日本は善隣関係を進めていくということは、これは不動の方針でございます。可能なる善隣関係をできるだけ広めていく、こういう方針の一環として韓国問題を考えているわけであります。
#60
○森元治郎君 それならば、その善隣関係という立場から可能な限りとおっしゃるならば、この韓国代表部は、終戦のころ極東委員会に対して派遣されておる機関であって、まあ事実上の承認を得たようなことになっておりますが、日本はこの緊密な関係を持続をするというだけの言質ならば、朝鮮の唯一の政権としての承認というようなことはとんでもないことでありますから、やはりこちらも総領事館なりあるいは普通の代表部、これに見合うような代表部程度のもので十分ではないか。そして東西間もだんだん戦争がやりにくくなってくるのですから、新たにまた台湾と北京政府のような関係をこの半島に持ちきたさないために、それで当分進んで、やはりマンスフィールド上院議員が言ったような、何か統一朝鮮に向かっての努力をする、その余地を残しておく、南北の関係を固定化さしてしまわないことが一番大事じゃないかと思うのですが、どうですか。
#61
○国務大臣(小坂善太郎君) 朝鮮に関する関係は、われわれが一番よく知っている立場にあるわけです。アメリカの上院一議員が来られて、数時間の旅行で判断されることよりも、われわれの方がよく知っているという自信を持っていいと思うのであります。その報告にあるからこうしろといっても、なかなか実情に沿わぬ点があるということは、われわれ自身が承知しなければならぬと思います。そこで、今韓国との閥に国交を樹立するということになりますと、これは当然大使の交換ということになると思うのでありますが、これは、今の片務的な代表部がこちらにだけいるという関係でなく、代表部をこちらのを向こうへ置かせればいいじゃないかというお話ですが、それよりも、こういう方法にしたいと向こうが、言うのでありますから、この方がベターであると思います。そこで、韓国との関係ができれば北鮮との関係が将来できないのじゃないかという心配でありますけれども、私は、韓国が現に支配している地域というものが、支配権の及んでいる限界というものがあると思います。今交渉している問題は、当然財産請求権の問題を含むにいたしましても、これは、北朝鮮の方に交渉の及ぶべくもない範囲において交渉するということはできぬ、事実関係において。そういたしますと、韓国との関係がよくなったからといいましても、将来それが非常なヒットになるというようなことは私は考えられない。むしろその関係をよくしてこそ、次の関係がさらに現実の問題として具体的に考えられる、こういうふうに思うのであります。
#62
○森元治郎君 その前段の方は大臣に賛成であります。外国人が何時間散歩したか知りませんが、来て何か言ったことなんか一々聞いていられない、これはりっぱなお考えで、大賛成でありますが、どうか一つ、そういう意気込みでもってこれが日中関係の打開に当たる、あるいは台湾問題の処理、中共問題について、アジアの一員だという伝統的な自民党の外交政策が当然そのくらいの覚悟があれば、とっくに確立しているであろうと思いますが、どうかその前段の意気込みだけは大いにやって、国会において中国に対する態度を明確に打ち出してもらいたいと期待します。ただ、後段の方の大使関係を結んでいくということは、これは絶対にやるべきではない。北朝鮮との関係にもいろいろな面で、魚の面だ、あるいは海湾の面だというようなことで、通商上の問題で、だんだんに関係が深くなっていくのでありますから、そういうふうな台湾の二の舞をこの際とりたててやるということは世界の大勢に反している。台湾の問題は、もう新聞でごらんのように、アメリカでもどこでも、どうしてこれを処置するかというところに、中国の国連における代表権の承認というものは何らかの形で仕方がないということになる。さて、残る台湾をどうするか、解消するか、じゃ一つの中国、一つの台湾にするとか、この処置をみんなが考えているときに、新たにこの問題を提起していくということは、私は、絶対日本はとるべきではない、こう思うのでありますが、この御答弁を伺って私の質問を終わります。
#63
○国務大臣(小坂善太郎君) 遺憾ながらこの点は、私は森さんとは意見が違います。台湾の問題は、非常にむずかしい問題になっていることは審美でありますけれども、それでは、今までこの関係を結ばなくてよかったかといえば、これは結んだだけの歴史的な意義があり、そしてその間において、わが国としても非常に裨益する面が多かったということは、これはお認めになっていただけると思う。外交の問題というものは、こうした問題をどう現実に処理していくかという問題でございます。この韓国と北朝鮮の問題も、やはりそういう意味において、これは現実の問題になっておるわけです。ただ単にこちらの希望だけ言って、そして先方が一体どう考えるかという二とを全然考慮に入れないで、その希望だけでもって外交の方針を判断するということは、私のとらざるところなのでございまして、遺憾ながらこの問題については、森さんの一つお考え直しを願いたいと思います。
#64
○委員長(木内四郎君) この際、一言申し上げておきますが、外務大臣は、外交上の関係がありまして、十二時二十分ごろになると、どうしてもこの席をお離れにならなければなりませんので、その点をお含みの上お願いいたします。
#65
○曾祢益君 私、実は朝鮮問題について御質問申し上げるつもりもなかったし、また、申し上げるとすれば、かなり本格的に申し上げたいという気持もあります。でありますが、ただいま森委員と外務大臣との非常に興味のある応酬を聞いておって、私も若干の質問をしたいと思ったので、まずこれからお許し願いたいと思います。
 私、森委員のお話を聞いておりまして、実は一九五六年だったと思いますが、今、社会党の委員長になられました河上先生のお供をして、ちょうど朝鮮の停戦協定ができた直後だったと思うのですが、インドに行ってネールさんに会った。そのときに、まあわれわれ、当時右派社会党といっていたんですが、意見として、朝鮮の停戦協定ができたのは非常に喜ばしいことだが、だがしかし、停戦協定だけでは、これはまだ完全な平和状態でない、願わくは、停戦協定からさらに政治的な話し合いになって、そうして平和的に南北がすみやかに統一して、そして統一朝鮮が、付近の諸国によって、あるいはインド等も加わってくれればけっこうであるが、いわゆる中立的地位といいますか、四囲の諸国の保障によってその独立が確保されることが望ましいということを申し上げたわけです。それに対するネール首相の言葉が実に、いまだにきわめてくっきりと忘れられないくらいおもしろい。それは、「ザット・イズ・ア・パイアス・ホープ」と言ったのです。つまり、朝鮮の平和的統一なんかということは、まあ非常にけっこうなことには違いない、これは敬虔なる祈りといいますか、希望といいますか、事実なかなかそういうことはあり得ないんだということを、まあ僕らがネールさんから期待したような、理想主義的だというか、やや現実よりももう一つ次元の高い段階の国際秩序なり、朝鮮付近の国際平和のあり方を考えておるだろうという期待から見ると、やや肩すかしを食わされたような、きわめて現実的なネールの国際評価というものを聞いて、これは非常に興味があったわけです。非常にまあそういうことを申し上げて恐縮ですが、私は、そういう意味から、森委員あるいは森委員の同僚諸君の中に――それはもちろん、朝鮮の平和的統一が望ましい。ドイツについても同様だと思うのです。平和的統一、自由選挙を通じて、そしてできるならば、左右のいずれにも傾かない、独裁政権でない政権ができてくれて、安定してくれることが望ましいことにおいては、これは異議がない。ただ問題は、朝鮮の問題あるいはドイツの問題、中国の問題、それぞれ特色があろうが、やはり冷戦の所産として、近い将来において、その平和的統一が望ましいけれども、必ずしもそうすぐにできるものじゃない。しかも、日本の特に歴史的にも地理的にも文化的にも最も近い、中間が近いというけれども、何といっても朝鮮の方が近いのですから、よきにつけ、あしきにつけ、近い朝鮮との間にバイアス・ホープが実現するまでは、ただそのままに見送ってもいいのか、私はこういうことは許されないと思う。従って、なるほど非常にイレギュラーな形で、不正規な形であるけれども、特に南の、従って、地理的にも日本により近く、人口も多い韓国と日本との間の懸案を解決する。その懸案の解決の結果がいわゆる国交調整ということになっても、これは、だからそれはいけないという態度は、これは現実的でないじゃないか、従って、われわれは、そういう観点から、遺憾ながら森委員とはその点について根本的に意見を違えるのですが、その観点からいって、今の財産請求権問題の取り扱いは非常に重要だと思う。そこで私は、今外務大臣の御答弁を伺っていると、ちょっと心配になったことは、私の個人的な記憶をたどって、これは記録を見なければわからぬのですが、サンフランシスコ平和条約の解釈に関する当時の私ども野党と政府との間の質疑応答から見れば、今外務大臣が言われた、つまり日本が平和条約第四条(b)項によって朝鮮におけるアメリカ軍政当局の措置を認めるという解釈をとったことは、ただ単に、これは陸戦法規以上の問題である、そういう解釈だけでなかったと思う。といいますのは、私有財歴はもちろん原則として請求権があるのは当然だ、しかしいま一つ、公有財産といえども、つまり朝鮮に残した日本国の財産、これも、厳密なる国際法の解釈からいえば、日本から分離する国なのです。その分離する国は日本と戦争したわけでない。独立戦争をしたわけでない。そういう場合に、公有財産といえども、必ずしも無償で提供しなければならないという理屈はない。私有財産ならなおさら有償でなければならないという原則は、より明瞭である。しかし、日本が朝鮮半輪に残した公有財産といえども、これは、普通の国際法の解釈からいえば、必ず無償だという理屈にならない。従って、当時の政府のわれわれに対する苦しい答弁は、第四条(b)、項の解釈は、これはアメリカ占領軍がやってしまったつまり行為です。法的行為、自分の所有権にしてしまった。しかも、これを朝鮮政府に引き渡した。その法的行為を認めよう、つまり、もう一回あんなものを御破算にして、処分を無効にして、日本の所有権であることを認める、そういうもう一ぺん法秩序をひっくり返すようなばかなことはやめようというだけのことで、公有財産、私有財産にしても、従って、私有財産については、特にこれは、陸戦法規の関係からいって当然有償であるし、公有財産にしても、必ずしも無償であると思っておりません。当然第四条(b)項の解釈は、これはアメリカ軍が処分した効力は認める。効力は認めるけれども、これは請求権の問題とは別です。請求権はあるという解釈なのですというのが、これが政府の解釈だったと思う。また、今回発表されたアメリカのあれを見ても、なるほどそういう日本政府の主張をここに引用して反駁していると思われる節があるのです。つまり、ここに引用された第一〇一〇号在日米国大使の口上書の初めの方に、一九五二年の四月二十九日における平和条約効力発生のときにおける韓国に対する通告、それにおけるアメリカの解釈を述べた後に、その解釈は今日といえども依然として正しいということを書いてある。その中に、こういうことを言っているわけですね。「権原の所属の変更と補償の問題とを区別することは法的見地から可能であると認められるが、合衆国政府は、日本国の補償に対する請求権は、当該事情の下において、」云々と、こういう。「(b)の言辞、論理及び意図と両立しないものであると考える。」純粋に法律的にいえば、アメリカ軍のやったことの効力は認めることと、しかし請求権はあるということは、純粋に一般の法理、理屈からいえば両立する。しかし、この四条(b)項のあった場合においては事実上両立しないから、日本の請求権は放棄したものとしなきゃならない、こう言っておき、しかしながらあとで、まあ一種の相殺観念を持って、韓国が日本に対する財産請求権の場合に実際上部分的な相殺が行なわれるという解釈をしているわけです。これは私は、非常に重要なことじゃないか、もし今の外務大臣の答弁の中に、これは、私有財産に対する請求権を放棄したが、私有財産に関する部分だけが韓国の日本に対する請求権から相殺されると解釈するのか、日本が向こうに置いてきた公有財産についても、やはりそういう請求権は放棄しているけれども、別の意味で一種の相殺の対象になるかということは、これはもう絶大な、非常に機微なことだけれども、非常に大きな点だと私は思う。私は、決して何も国粋主義者じゃありません。だけども、普通の国際法の観念からいえば、外務大臣も御承知のように、朝鮮が日本に対して独立戦争をやって、日本が負けた。それから分離するときには、これは、日本が朝鮮に置いておったすべての公有財産、鉄道だろうが何だろうが、物的財産、全部公有のものは取られるのは普通です。そうでない場合には、これはやはり、公有財産についても普通なら請求権がある。しかし、第四条の(b)項によって請求権はないが、しかし、アメリカの解釈によって、これはあとで各国がそれを認めるか認めないかということは、確かに森君が追及されたように問題があるのです。あるけれども、日本の解釈、それからアメリカの解釈によれば、請求権は放棄しても、私は、公有財産も含めて、韓国に対してそれをその分だけ相殺を要求する権利はあると思う。こういう解釈ではないかと思うのですが、その点は一体どうなんですか。
#66
○国務大臣(小坂善太郎君) 私の言葉が足りなかったために、そういう誤解を生ずるおそれがあるかもしれませんが、非常に重要な点を指摘していただきまして、これは感謝をいたします。私は、私有財産までもという意味で私有財産という言葉を用いたのでございまして、これは当然公有財産を、これは一番大きな問題ですから、公有財産並びに私有財産という意味で申し上げておったわけでありますが、ただ、一般的な観念として、私有財産にまで及ばないというふうに、ハーグの陸戦法規はエンフアシースをそこへ置いているものですから、特にそういうことを申し上げた次第でございまして、重要な点を御指摘いただきまして、感謝いたします。
 私は、一つ心配いたしますことは、韓国側において、財産請求権の問題はあたかも賠償請求のような気持でもって取り扱うという流れが、一部でございましょうが、あるということでございまして、そういうものではないということをよく先方にも知らせることが必要だと存じます。先方の新聞について注意して見ておりますと、そういう点について誤解があってはいけないということを書いている主張もあるようでございますが、一方において、さっきちょっとお読み上げいたしましたように、非常に苦痛を与えられた。奴隷状態にされた。そこで請求するんだというような思想も一部にあるようでございます。その点をお含みおき願いたいと思います。
#67
○曾祢益君 韓国人の気持としてはよくわかるのですが、三十六年間の圧政に対する気持は穏やかでない。であればこそ、こういう異例の措置をとっていると思うのです。これは、厳密な法律解釈からいって、賠償ではない、賠償に関する請求権じゃない。これは、やっぱりそういう点ははっきりしておかないといけない。ほかのことで二点ばかりお聞きいたします。
 一つは沖縄問題なんですけれども、これは、全般的の問題を取り上げるつもりはない。ただ、この沖縄の同胞の気持からいえば、それこそ新アドミニストレーションができて、相当日本関係あるいは極東関係についても、新政府のもう少し、より現実的なといいますか、より住民の意思を忖度するような政策を期待しておったと思うのですが、存外やはりコールド・ウオーの現実というか、冷戦の現実下においては、かえって沖縄は、この冷戦状態の続く限りは、むしろがっちりとアメリカが握る地域だといわぬばかりのことがだんだん明らかになって、かなり大きなショックを与えたと思う。加えて、中距離誘導弾のメース基地がどんどん事実上今度作られた等々の問題がございますときに、今ちょうど沖縄立法院の議員で、沖縄社会大衆党の委員長平良氏もきておられましたが、非常に沖縄の諸君の気持も大いに同情に値するものがある。そこで、この平和条約の解釈論から、いつまでも、不特定な期限で、長らく、アメリカが実際上できもしない戦略的信託統治にするという目的のために、いつまでも立法、司法、行政の三権の全部または一部を行政しているという状態が許されるものとは思わない。これは、冷戦の結果居すわっているだけで、平和条約の純粋の法律の解釈からいって許されないと思う。従って、そういう意味で、池田首相がアメリカに行かれるときも、当然に日本世論に沿うには本格的な施政権返還への強い交渉がされると思う。またそうでなければならぬ。同時に、それはそれとして、そう言うと、いかにも強い立場を弱めるように解釈する向きもあるかもしれませんが、それはそれとして、現実を見つめるならば、やはりこの施政権返還についても、なしくずし的な方法も、これは理屈の問題として考えなければならぬ。そういう意味で、いろいろ施政権の返還をなしくずすのであるという方法については、それこそ、新アドミニストレーションがどういうものかは知らぬけれども、何かここに弾力性を発見する努力は当然すべきである。こういうことを日ごろ思っていたのですが、ちょうど去る日曜日の、これはもちろん日本の新聞に出ていたと思いますが、私、偶然ジャパン・タイムスのちっぽけなUPI電報だったか、APでしたか、覚えておりませんが、結局こういうことが出ていた。従来沖縄の島民は、少なくとも星条旗とともに日の丸を掲揚したいという希望があったわけである、従来は、アメリカの軍政府は、アイゼンハワー政権の支持を、バックを得て、これはどうも、そんなことをすると、アメリカのいわゆる施政権に水増しして薄めるような感じがするというので、常にこれを拒否した。ところが、新アドミニストレーションは、公共の建物に、星条旗のそばにあわせて日の丸を掲揚することを考えていいという方向に向かっておる。また、そのことの一つのあれとして、実はパナマ運河地帯において、パナマのティテュラー・ソヴァレンティー、名目上の主権を持つ租借地であるパナマにも、パナマの国旗を星条旗とあわせて掲揚することを認めることになったという、そういうことも、これは小さいようであるけれども、やはり八十万の同胞から見れば、一つの進歩には違いない。われわれは決してこういうことを軽視してはならない。またこれは、外務大臣に御質問申し上げることよりも、院として、議会として考えなければならないと思うのは、ドイツの例にならって、いまだ返らざる沖縄のための、立法院である衆議院、参議院に議席をとにかくとったらどうですか。シンボルとしてリザーヴして、これは沖縄の議席だということで、空席にしておくというようなことも決して私は軽視しちゃならないと思う。さらに最近は、やっと琉球政府の主席は、選挙で最大の投票を得た、立法院で勝った、つまり与党の推薦する者を事実上は指名する。任命権は軍政府にあっても、実際上はそうなっておる。しかし、それだったら、もう一歩進んで、結局軍政が続く限り、軍政官が一種の拒否権を持つことは、これはかりにやむを得ないとしても、完全な民選主席、公選でいいじゃないかというような、いろいろな私はニュアンスがあっていいのじゃないかと思う。そういうことに関連して、とにかくまず第一は、国旗の問題について、政府はいかにお考えになっておるか、どういうことをお考えか、伺いたいと思います。
#68
○国務大臣(小坂善太郎君) 沖縄の現実が、東西冷戦下にありまして、ああいう状態になっておるということは、これは、日本の領土がああなっておるということについては、非常に残念でございまするが、また、その施政権の返還要求をわれわれしんぼう強く、しかも熱心にやっておる状態でございまするが、現実の問題として、やはりこれは、日米間にお互いに共通する利益の問題として理解しなければならぬ点もあるわけでございます。そこで、沖縄の住民各位も、これは日本国民でございまするから、われわれとしましても、できるだけその福祉に、現体制下においても、できるだけその福祉に協力しなければならぬということで、この三十六年度の予算では、いろいろな配慮をいたしております。たとえば、テレ・コミのマイクロウェーブの計画であるとか、農業改良の計画であるとか、いろいろやっておるわけでございます。しかし、やはり一つのシンボルとしての国旗の問題というのは非常に重要だと思いまして、実は私も、昨年行って、この話をハーター長官に話したことがございます。先方は、実はあまりその点認識がなかったのでありまして、よく考えるということで、すぐに折り返して言って参りましたのであります。国旗は、実は一般の住民はむろん揚げられておるわけでありますが、問題は、公共建物をどうするか。
#69
○曾祢益君 ちょっと失礼ですが、住民はしょっちゅう揚げられないですよ。
#70
○国務大臣(小坂善太郎君) いや、祝祭日には揚げられる。そこで、一つ学校とか役場とかで、役場といいますか、政府の主席のおる建物に揚げさしてもらうようにできぬということを、私ども実はその後においても言っておるのでございますが、大体だんだんそういう気持に傾きつつあるやに私には感ぜられます。なお、この話については、十分してみようと思っております。われわれの方でも、これはやはり日本国旗を琉球に大いにやれと言う以上は、日本の方も、一つ日本の国旗を方々に立てるようなことをしなければならないというふうにも実は考えておるわけでありますが、今度は、これは何とかよく話をしてみようと思っております。
#71
○曾祢益君 変なところで逆襲されては……
#72
○国務大臣(小坂善太郎君) 逆襲するつもりはございません。
#73
○曾祢益君 私は、国旗に反対の意見は一つもありませんから、ウルトラ民族主義、国粋主義には反対ですけれども、日の火自身に反対しておる日本人はないと思う。
 最後に、これはまあほんとうに、純粋に国際情勢の質問になるわけですが、直接日本の政策に――直接というわけじゃありませんが、これまた新聞訂事の引用で恐縮ですが、きょう実はル・モンドの記者のロべール・ギラン君のインドシナを回って来ての報告が出ておる。非常に暗いけれども、確かな私はものの見方じゃないかと思う。つまり、ここ数年来の、特にまあアイゼンハワー放縦の末期におけるこれらの地力に対する政策の失敗がきわめて明瞭に物語っていると思いますと、これは非常に冷静な、感情を交えずに、しかし、非常な鋭い筆致で描かれておる。つまり、現在ラオスの問題等について、アメリカの新政権が無理な、いわゆる反共ということで無理押しをしようということに対する反省をして、そうしてほんとうの意味の中立ならいいじゃないかという線に政策を調整してきましたね。しかし、遺憾ながら数年間の失敗の累積は、今やラオスにおいては何といっても相当やや手おくれではないかと思われるくらい、パテト・ラオ的な共産勢力を強くしてきた。ラオスがそうであるのみならず、もっとアメリカとしては期存しておったであろうところの南ベトナムも、これはもう表面はゴ・ヅィェンディェムが政権を握っておる。それはますます無理な独裁政権、そうしてサイゴンの付近に至るまで共産党の力というのは非常に強くなっておる。非常に危険な状態、まあ一九六五年になったら、ほとんど全部共産化してしまうのじゃないかという、そこはまあ神様じゃなきゃわからないが、そういう状態です。私どももちろん日本として、ラオスで冷戦が熱戦になり、その熱戦が単なるラオス人だけでなくて、そうして東西両陣営がこれに加わった、いわゆる代理戦争から本格的な戦争になることをおそれます。そうでない限りは、しからば無関心であっていいのかどうか、私は決してそうじゃないと思うのです。まあ世界どこでもそうですが、特にアジアの地域において、それは、台湾にもそういう危険がありますがね。雷震事件が起こった。また南朝鮮においても、これはほんとうの民主的政権になるかかどうについて、われわれは決して対岸の火災視できないのじゃないか。さらに、左右いずれを問わず、独裁政権になる、これはわれわれとしては決して無関心じゃいけない。ことに共産勢力がどんどんふえていくということについて、これはまあ天命なり、宿命なりと、共産勢力がどんどん世界に蔓延していくということを思っている人はあるかもしれませんけれども、われわれ実はそうじゃないと思う。そうでないとすれば、戦争の手段によらず、共産勢力の夢死を一体どういうふうに避けるかというところに、やはりわれわれの、一本の外交というものを脅えなくちゃいけない。一体そういうインドシナあたりの事態について、政府はどういう情報を受け、どういうことを考え、しからばどういう施策をしようとしているのか。大まかな点でいいですから、その点だけ一つお示し願いたい。
#74
○国務大臣(小坂善太郎君) 同感でございます。外交関係ですから、人の名は言えませんけれども、ある権官がラオスに行ったときに、こっちに帰りに立ち寄ってもらいまして、いろいろ託をしました。私は、私の信ずるところを述べました。非常に先方も共鳴しておられたのですが、やはり東洋的な心理というものをもう少し理解しなきゃいかぬじゃないか。それには、やっぱりこの地帯の問題は、日本の意見というものをもっと聞いたらどうかというふうにお話したこともございます。私の見るところでは、こういう地帯に対するまず自由陣営側といいますか、アメリカとイギリスの考え方が違うとか、フランスがまあ相当元は力があり、経験も若干あったわけでありまするが、その意見も違うと、しかも、日本の意見というものを全然特に聞かれるようなことはないというような状態でもあるのじゃないかという点を事あるごとに指摘しているのであります。そういう点はずいぶん変わってきたように思っております。まあ伊関局長が香港で言った談話なんですが、ずいぶん今までからいうと相当ひどいことを、あんなことを公開の席で言わなくてもいいじゃないかというようなことを言われるくらいに話もあったわけでございますけれども、それにしても、そういうこともだからどうということでなく、謙虚にアメリカの方も聞いている実情であります。何といっても、力による全体主役の強権によるところの支配、これが低開発地帯においてはとかく受け入れられやすい状態にあるということはよほど頭に置いて、単に何か作ってやったらいいだろうというのじゃなくて、もっと民衆の心に食い入る政策というものを、それに作るにしても、食い入るような効果的の対策というものをもっと考えなければいかぬのじゃないかというふうに私は思っております。共産陣営というものは、非常に団結して、強く一本強権をもって力で押している。自由陣営の方は、個々ばらばらに、批評ばかりお互いにし合っているということではいかぬのじゃないかというふうに考えております。
#75
○委員長(木内四郎君) もう外務大臣は時間ですから。
  ―――――――――――――
#76
○委員長(木内四郎君) そこで、運輸省の今井航空局長にわざわざ初めから来てもらっているので、この前佐藤委員から御要求になりました、航空業務等に関する協定が二つありますが、これを議題にいたしまして、補足説明をちょっとしていただきたいと思います。
 それでは次に、航空業務に関する日本国とベルギーとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、以上本院先議の両案を一括して議題といたします。
 面案につきましては、先般提案理由の説明を聴取いたしておりますが、さらに、運輸省の今井航空局長から補足説明を聴取いたしたいと思います。
#77
○政府委員(今井榮文君) 航空局長でございますが、今般の協定締結に関連いたしまして、現在の特に日本を中心といたします国際空港の状況につきまして、簡単な御説明をいたしたいと思います。
 御承知のように、日本における国際空港は、現在東京国際空港を中心に運営されておりまして、大阪国際空港は、現在滑走路その他が狭隘のために、比較的小型の国際線の航空機がわずか離発着しておる状況でございます。
 東京国際空港の現在の施設の概要を申し上げますと、現在わずかに二千七百メーターの滑走路が一つと、それから、それと交差いたしまして、千六百七十六メーターの滑走路が一基あるだけでございまして、これに対応しまして、現在の飛行機が離着陸いたします場合に必要なエプロン、つまり通常バースと申しておりますが、こういったものの数は、現在は、三十五年度中の完成部分を入れまして、わずかに十四バースしかない現状でございます。現在東京国際空港に離着陸いたします航空機の状況を申し上げますと、昭和三十五年の暦年の統計によりますと、一月から十二月までの間に、国際線、国内線を合わせまして、大体ミトン以上、つまりビーチクラフト程度以上の大きさの飛行機の離発着の回数が四万九千回でございます。それからまた、それ以外の小さな、新聞社その他の単発の小型機をも合わせますと、大体この一年間に七万回程度のものが離着陸いたしております。こういうような状況でございまして、一般の旅客の大体の入出国並びに国内における羽田を中心とする旅客の動きを申しますと、国際線の年間の旅客の数は、昭和三十五年大体四十万四千二百人でございまして、一日に平均いたしますと、約一千百人が一日に乗り降りいたしております。それから国内線につきましては、日航、全日空等が主として運営いたしておりますが、東京国際空港の国内線関係につきましては、旅客数は六十万人、一日平均いたしまして千六百四十人という数字でございます。従いまして、現れこの東京国際空港を利用いたしております旅客の総数は、国際線、国内線を合わせますと、約二千七百四十人ということになるわけでございます。こういうふうな、非常に旅客の増加する傾向に対応いたしまして、現神羽田の拡張工事を急いでおりますので、現在羽州空洲の海域を埋め立てまして、新たに三千百五十メーター、幅六十メーターの滑走路を一基新たに作りつつございます。それから、これが完成いたしますと同時に、現在、先ほど御説明いたしました二千七百メーターの滑走路も、三千メーター、約一万フィートの滑走路にこれを延長いたします。そういたしますと、現在最大の旅客機でございますボーイング707あるいはタグラスのDC8という大型ジェット旅客機が十分な搭載量を持って完全に離着陸することができる滑走路が二基完成いたすことになります。また、エプロンの数にいたしましても、先ほど、三十五年度中に十五バースと申し上げましたが、大体において約その二倍、三十バースまでこれを増強いたす予定でおります。こういうふうにいたしますと、大体におきまして、私どもの観測によりますれば、今後国内線が約一五%から二〇%、それから国際線につきまして約一一%程度の旅客の増加が年々あると見込みましても、今後約十年間は、羽田の東京国際空港におきまして、十分に国際線並びに国内線の航空機の離着陸を消化できる。こういうふうに考えておる次第でございます。
 さて、この別際空港を中心にいたしまして、日本航空は現在どういうふうな国際線の運営をやっているかという点について、簡単に御説明いたしたいと思います。日本航空は現在、御承知のように、主としてアメリカの西海岸に参ります太平洋線と、それから東南アジアに対しまする各種の路線を含めまして、両方面に現在路線を運営いたしておるわけでございますが、アメリカに対しましては、お手元にお配りした資料にもございますように、シアトル並びにサンフランシスコ及びロスアンジェルスに対しまして、合わせて九便の運営をいたしております。それからさらに、それに対して貨物専用機を二機運航いたしまして、週二便をやっております。従いまして、アメリカに対しましては現在貨物専用便をも合わせまして、十一便をやっているわけでございまして、そのうちの貨物を除きます旅客輸送につきましては、昨年入手いたしました大型のジェット機でありますダグラスDC8を使用いたしております。東南アジアの方につきましては、お手元の資料にもございますように、東京、香港。あるいは東京から大阪を経まして、台北、香港。それからまた、東京から香港、バンコック、シンガポール路線。あるいは、東京から那覇を経由しまして香港、バンコック、シンガポール路線。それから、東京から大阪、那覇へ行く路線、それから、福岡から那覇へ行く路線というふうなものを合わせまして、約十便程度のものを運行いたしておるわけでございます。で、特に日航といたしまして最大の今印の課題は、北極回り欧州線を開設することと、それからまた、来年の一月ころに予定しておる南回りのヨーロッパ線の解説の準備ということが、今日の最大の眼目になっておるわけでございます。このために日航は、現在BC8を四機持って、先ほど申し上げました太平下線の運航をやっておるわけでございますが、それ以外に、本年にBC8をさらに一機入手いたしますと回田に、東南アジア線の運営と、それから、南回りのインド洋経由の欧州線の開設のために、コンベア880という、いわゆる中距離中型ジェットを三機購入することになっております。で、これが来年度の資金計画では、さらにコンベアの二機を入手いたし、それからまた、BC8をさらに一機追加するということでございまして、日航の国際線の機材計画は、現在のものと今後の入手手当をいたしておるものとを合わせまして、大型ジェットであるダクラスBC8を六機、それに中型ジェット機でございますコンベア脚型を五機というものが、現在の一応具体化しておる機材計画でございます。
 それから、日本に現在乗り入れております外国の会社は、お手元にお配りしてある資料にもございますように、現在日航を除きまして十五社の会社が現在日本に飛来してきております。その最大のものはアメリカのパン・アメリカンでございまして、アメリカ西海洋、並びにアメリカから欧州を経由して、インド洋を経由して東京へ入って参りますものを合わせまして、現在十便、それから、同じくアメリカのノウスウェスト会社の日本への乗り入れ並びに日本から東南アジア方面あるいは韓国方面に対する便数を合わせて、これが十七便、それから、イギリスのBOACが、サンフランシスコを経由して、太平洋を越えて東京へ飛来してきておりますものが三便、それからインド洋経由のイギリスからの東京への直行南回り便が六便ございまして、これが九便、それからエア・フランスが、現在北回り二便と、それから南回りが三便で、最近一便増便することが決定いたしておりますので、これが全体合わせて六便になるわけでございます。こういつたところが主たるところで、それ以外に、キャセイ・パシフィックであるとか、あるいはSAS、KLM、スイス・エアのSR、エア・インデア、豪州のカンタスというところが、それぞれ四便ないし二便というものを南北合わせてやっておる状況でございまして、全体を合わせまして、日本にやってきております外国航空会社の便数は、一週間に約七十という便数を数えておる次第でございます。従いまして、日航の東京を中心として運営いたしております便数と合わせますと、国際線について約百便程度のものが日本を今中心にして動いておる、こういうふうに言えると思います。
 それから、特に最近新しく加わりましたのはルフトハンザでございまして、今般外務省の方から協定の御審議をお願いいたしております内容の一つでございますが、ルフトハンザが、本年の一月の下旬から、フランクフルトを起点といたしまして、南回りインド洋を経由いたして参っております便が、週二便新たに加わっておる状況でございます。
 それから、特に今後外岡との関係で重要な問題と考えられまするのは、日航のこの欧州線経営後におけるアメリカ経由世界一周線の完成に対する今後のアメリカとの特に交渉関係でございますが、これは、特に外務省の方にもお願いいたしまして、でき得る限り早い機会に、日航のニューヨーク乗り入れ問題について、アメリカ政府と交渉を開始していただくようにお願いをいたしておるわけでございまして、ニューヨークの起点を日航が取り得ることが、日航としての世界第一流のキャリアになり得る最後の目標であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
 それから最後に、最近の国際航空界における非常に顕著な事例といたしまして、御承知のように、従来ダグラスの7Cであるとか、あるいは6Bであるとか、あるいはスーパー・コンステレーションであるとかというふうなプロペラ機、あるいはまたプロペラ機とジェットをコンバインいたしましたターボ・プロップという飛行機が、大体国際航空の機材としての主力を形成いたしておったのでございますが、最近は、非常に急激に大型ジェットがふえて参りまして、ICAOの統計資料によりますと、昭和三十三年の末に航空会社に引き渡されたジェット機はわずかに十二機であったのに対しまして、昭和三十四年の末までにはそれが百三十機になり、昭和三十五年の末にはすでに三百機に及んでおるという状況でございまして、昭和三十六年の末、つまりことしの終わりまでには六百機に達する見込みであるという状況でございまして、日本を中心といたします国際線につきましても、ほとんど全部が、本年末をもってジェット機に代替されるというふうな状況でございます。こういうふうなジェット機の傾向に対応いたしまして、ジェット機の一機の購入費が非常に高額であるということと、塔載量が非常に多いというふうな関係からいたしまして、各航空会社が、国際的に一つの共同通常の傾向を顕著に示しつつあるというのが非常に大きな最近の特徴でございます。これによって、機材の共同購入をやるとか、あるいはまた整備についても、共同施設を作るとか、あるいはまた運賃その他についても、両社でブール計算をやるというふうな傾向が非常に強くなって参りまして、日本航空が現在フランスのエール・フランスと事業提携をやっておりますが、欧洲の内部におきましては、このエール・フランス、ルフトハンザ、それからイタリアのアリタリア、それから、ベルギーのサベナ、この四社が共同いたしまして、西欧エア・ユニオンというものを形成して、今後一つの大きな制度になろうとしておるわけでありまして、現在日本航空がエール・フランスと提携しておりますことは、間接的に日本航空はこの西欧エア・ユニオンのグループと関連を持つというふうな形になってきておるわけであります。それからまた、イギリスのブリティッシュ・コンモンウェルスの系統といたしましては、BOACあるいはカンタス、エア・インディアというものがやはり一つの共同体を形成いたしております。それからまた、東欧でございますが、東欧につきましては、東独、チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、ユーゴスラビア、この六カ国が東欧ユニオンを今形成すべく計画をしているようでございます。それ以外に、中南米諸国においてもそういう動きがあるという状況でございます。機材の状況、また、そのジェット化に対応いたしまして、国際航空機は大きな一つの転換期に向かいつつあるということが言い得るのではないかと思われるのであります。
 簡単でございますが、以上をもって私の補足説明を終わりたいと思います。
#78
○佐藤尚武君 ただいまの航空局長の御説明で、非常によくわかったような気がいたしますが、航空事業の発達がどういう方向に向いているか、日本のまた航空問題がどういうふうに動くかというようなことを、しろうとの私たちにも了解ができたように思うのでありますが、それに関連しまして、もう少し二、三の点について御説明を追加してお願いしたいと思うのは、ただいまお話がありました中に、日本航空とエール・フランスとの間に結んである共同経営の協定が成り立ったというお話であります。これは、共同経営というのは、どういう意味で作られたものであるか。それが日仏両国に対してどういうような利益がもたらされて参るのであるかというようなことは、ちょっとわかりかねるのでありますが、聞くところによりますれば、エール・フランスの方で、むしろ非常に日本航空との提携を望んでおったというような話であります。日本において日本航空と全く同じ取り扱いをエール・フランスが受けるようになる、それがフランスのために大へんプラスになるのだというような話を聞いたのでありますが、むろん、その協定ができました以上は、日本航空も、フランス国内においてエール・フランスと同じ取り扱いを受けることになるのでありましょうが、一体それは、どういう点で相互により多くの便宜が与えられるのであるかというようなことについて、簡単に御説明願いたいと思います。
#79
○政府委員(今井榮文君) ただいまのエール・フランスとの提携についての両国それぞれの利益がどのようなものであるのかという御質問でございますが、エール・フランスが当初希望したということだけではなしに、日本航空の欧州乗り入れにつきましては、スカンジナビア・エア・ライン、あるいはまた、BOAC等も提携を希望しておられた。日本航空の代表者が欧州各地を回りまして、それぞれのエア・ラインの首脳部等という意見の交換をした結果、エール・フランスと提携することが、今後日航が欧州において伸びる最も有利な提携であるという判断のもとに帰って参りまして、政府筋と相談をいたしたわけであります。従いまして、まあエール・フランスのみが希望したのではなくして、希望は各社あったのでありますが、日航がエール・フランスを選んだという形になっております。なぜ日本航空がそういうふうな提携関係を希望したかと申しますと、日本航空の立場からしますと、欧州の非常に伝統的な、保守的なマーケットというものに対して、初めて極東の日本から大きな経済的な負担を耐えながら運営を開始するわけでございます。従いまして、現地におけるセールスの関係その他の関係からいたしましても、やはり相当強い提携者というものがなければ、なかなか運営はうまくいかないのではないかということから、日本航空としても、できるだけそういう強いエア・ラインとの提携を希望したわけでございます。両国の利益と申しますと、私、現実に昨秋欧州に参ったのでございますが、各地におけるオン・ライン・オフィスあるいはオフ・ライン・オフィスの創設あるいは人の雇い入れその他につきましては、エール・フランスが非常な援助を日本航空に対して与えておる現状でございます。ああいう現状を見ますれば、今後日本航空が欧州で極東向けの貨客の輸送についてのセールスをやる上において、やはり独力では非常にむずかしいという感じを実は私自身も抱いたのでございます。それからまた、エール・フランス自体の提携希望の点につきましては、これは、日本においては、御承知のように、先ほど申し上げました十五社になんなんとする外国会社が日本に集中いたしておりまして、しかも、それぞれが北極経由あるいはまたインド洋経由の南北両路線は極東路線を経由いたしておる状況でございます。従って、エール・フランスとしては、その極東の最も重要なポイントである東京におきましてのセールス活動なり、また今後の極東路線の強化というふうな面から、何としてもやはり日本航空との提携を希望するということでございまして、これがフランスにとって非常に利益といいますか、実質上営業上の利益をもたらすことは疑いないところではないかと思います。そういうふうな両国の利益がそれぞれ合致したというふうに私ども考えておるわけでございます。
#80
○佐藤尚武君 今の御説明で、日仏相互がこの提携によって利益を受けるということが理解ができたのでありますが、日本側からすれば、保守的な欧州方面に乗り入れるということが、これでできるようになったというようなわけで、むしろ日本側の方が恩恵をこうむることになったかのように考えるわけであり、また、当然そうであろうと、想像されるのですが、それにもかかわらず、単にエール・フランスばかりでなしに、スカンジナビア航空とか、もう一つどことかおっしゃいましたが、それらの航空会社からも進んで日本との提携を希望したということは、どういうわけなんでしょうか。日本に乗り入れをされるということは、 つまり競争者をふやすということになるわけでありますが、それにもかかわらず、日本との提携を望み、そうした日本に欧州の航空界に乗り入れをさせるということはどういうことから出発したか、ちょっとわかりかねますが。
#81
○政府委員(今井榮文君) BOACあるいはスカンジナビア・エア・ライン等が日航との提携を希望するという点につきましては、航空協定そのものは、これは外務省の所管でございますが、相互主義でございまして、すでにイギリスあるいはまたスカンジナビア諸国あるいはフランス等とは、日本に対する乗り入れについて、日本がすでに協定を承認いたしておるわけでございます。従いまして、日本の欧州への乗り入れというものについては、イギリスもスカンジナビア諸国もこれを拒み得ないという立場にあるわけであります。従いまして、かりに、提携するしないにかかわらず、日本航空は、機材的な手当をつけますれば、当然にいつの日にか欧州乗り入れが実現する、こういう立場にあるわけであります。従いまして、特に東京のポイントが最近非常に国際的に、重要な地位になりまして、現在ニューヨークあるいは欧州という大西洋路線というものが航空の黄金路線ということになっておりますが、逐次そういったような趨勢が太平洋に及んでくるというふうな状況に私どもは考えております。そういった状況下において、ナショナル・キャリアである日本航空との提携関係というものは、欧州のそれぞれのエア・ラインにとっては非常な魅力であるというふうに私どもは考えられるのであります。そういうことから、彼らをして日航との提携を希望するのは、極東における彼らの今後の便数あるいはまた貨客のセールスの拡大であるとかというふうな面において非常に有益であるという判断に基づいているのではないか。なお、もう一つの先ほど御説明申し上げました一般的な傾向から、一つの国際的なやはり共同運営化というふうな傾向というものも、そういった傾向に拍車をかけているのではないかというふうに考えられます。
#82
○佐藤尚武君 この配付された表によりますというと、アメリカ、イギリス、カナダ、欧州、中葉その他多くの国々の外国航空会社の日本への乗り入れというようなことについて、これらの国々とすべて航空協定ができておったのでありますか、どうですか。あるいは、終戦後これらの国々は、占領中に勝手に日本に乗り入れたという事実があって、そうして航空協定というものはそのあとからできたものでなかったかと、私は記憶しておるのでありますが、その辺の関係はどうでありますか。また、たとえばこのドイツとの協定は今度初めてできるわけでありますけれども、ただいまの御説明によるというと、もうすでに現実には、この一月からドイツのルフトハンザが乗り入れておる。こういうようなわけで、つまり協定がなくても、外国の航空会社は日本に乗り入れることができておるかのようにうかがえるのでありますが、その辺は、一体どういう根拠でもってそういうことができるのであるかどうか、ちょっと御説明願いたい。
#83
○政府委員(今井榮文君) 私は、あるいは御説明がちょっと足りなかったとも思うのでございますが、航空会社のわが国に対する乗り入れは、航空協定という正式な協定に基づいて乗り入れてきておる会社と、それから、単に行政上の取りきめによりまして暫定的に乗り入れておる航空会社と、二色ございます。戦争直後から乗り入れておったものがあるかどうかとのお話でございますが、戦争直後のことは、私、現在はっきり記憶いたしておりませんので、また調べました上でお答えいたしたいと思いますが、おそらくパン・アメリカン等につきましては、戦争向後、つまり日米間に航空協定が正式に締結されない以前から、パン・アメリカンあるいはノース・ウェストは、戦争直後からすでに乗り入れておったのじゃないかと思います。こういった乗り入れの権利につきましては、また別の法律関係だと思いますが、その後逐次協定を取りきめまして、中で、現在行政取りきめで乗り入れておりますものには、中華民国のCATといいますか、台湾航空、それからフィリピンは、現在行政取りきめだけはできておりますが、現実には、向こうの機材の都合で乗り入れて来ておりません。従いまして、十五会社の乗り入れの権利は、協定によって保証されておるものと、それから、行政取りきめによって乗り入れを許されておるものと、この二色がございます。
#84
○佐藤尚武君 もう一つ伺いたいと思うことは、ヨーロッパの航空界でありますが、先ほどのお話でもわかるように、ヨーロッパでは、二つも、三つも、各国の間で共同経営の話が進んでおるというようなことであります。そこで、私はあるいは問題となる点があるかと思うのでありますが、それは、ヨーロッパの経済共同体といいまするか、あのヨーロッパの六カ国の間で結ばれておる共同体があるわけで、それには、交通の方面ないしは、各般の経済活動、関税問題等々について、六カ国の間で、非常なお互いに便宜を供用するとか、あるいは進んでは、完全な共同体としての機構にまで進むかのように見受けられる。それに対して、イギリスを中心とするほかのグループが、自由貿易のグループがこれに対抗しておるかのような体制でありますが、この航空問題について、たとえば今度日本がフランスとの間の提携でもって、日本航空がフランスに乗り入れる。それからまた、スイスやらドイツやらその他、便宜それらの国々との間に日本が個々に航空協定をあるいは結んだものがあり、またこれから結ばうとしておるものがある。そういう場合に、今の欧州の経済協同体なるものと航空の方面でどういう関係になるかということですが、つまり、欧州の六カ国間の共同体の中では、航先方側においてもお互いに非常に便宜をはかっているだろうと思うのですが、それに日本が今度フランスに乗り入れる、そうしてまた、ベルギーだのドイツなんかの協定によって、六カ国の共同体の中に日本が進出していくというような形に、これからなっていくのだろうと思います。そうした場合に、六カ国側では、そういう日本航空の乗り入れに対して、どういう一体態度をとると予想されるか。この共同体の方から言えば、自分たちの共同体の中の航空を発達させ、お互いに便宜を供用するという建前から言うと、日本がそこに進出してくるということが非常に困難でもあるし、また向こうはそれを歓迎しないだろうというようなふうに感じられるのでありますけれども、その辺のお見込みはどういうことになりますか。お話を願いたいと思います。
#85
○政府委員(今井榮文君) 御質問の点、非常に重要な、また非常にむずかしい問題でございまして、私どものやや所管とはずれる点もあるのではないかと思いますが、欧州共同体につきましては、多少全体の経済的ないろいろな相互の関係というものと、それから航空活動というものとの間に、多少の違いが現実に見受けられるような感じも、実は航空の立場からすれば、いたすわけでございます。たとえばオランダのK・L・Mのごときは、本来から言えば、ドイツ、フランスあるいはベルギー、イタリー、こういうところと一緒になって、やはり西欧エア・ユニオンに加盟すべきものであるというふうに、観念的に考えられますが、実際におきましては、K・L・Mは、最近植民地その他の関係で、特にインドネシアその他との関係からしまして、オランダ航空の将来というものに対して、欧州内部におけるいろいろな路線の配分、その他の関係の折り合いがなかなかつきかねるというような、これは私どもの新聞記事その他で読んだ推測でございますが、そういうふうな関係もございまして、エール・フランスあるいはドイツのルフトハンザとの間に、意見が最終的な一致をみないということで、オランダ航空は西欧エア・ユニオンに加盟するという態度をとっておらないわけでございまして、最近の情報によりますると、スカンジナビア・エア・ライン、それからスイス・エアの両国の提携の中にむしろ一枚加わろうという空気が見えているような状況でございます、従いまして、経済的な一つの共同体的な観念とは、多少ニュアンスの違ったような動きを、航空そのものは示しておるような感じを、実は見受けるのでございますが、日本自体について見ますと、これは、欧州へ日航が乗り入れるということが、日本航空の今後の国際線の一流キァリアとして活躍するためのまず最初の重要な段階でございまして、ぜひ乗り入れなければならぬ、西欧諸国も、自分らのキャリアが日本に乗り入れている以上は、当然日本のキャリアを受け入れなければならないという立場にございますわけですから、従いまして、そこに日本とそれから欧州における何らかの企業との間の提携というものが生まれる素地があるのではないかというふうに考えられるのであります。
#86
○佐藤尚武君 最後に、航空機の問題について、全くしろうとの御質問でありますが、御説明願いたいと思うのは、日本の航空界は、その使用しておる航空機は、全部アメリカ製のものであることは承知しておるのですが、日本航空あるいは全日本航空等が、優秀な飛行機を使ってどうとかこうとか広告をしておりますけれども、これは、まるでアメリカの航空機の広告をしていると同じようなもめでありますが、一体外国ではどうなっておるのでありますか。イギリス、ドイツ、フランス等、おもな航空会社を持っている国で、その他オランダ、スカンジナビア等でありますが、イギリスは、自分の国で作っておる飛行機を使っておるのでありましょうか。ジェット機におきましてもでございます。それから、ドイツのルフトハンザなども、やはり自国製の機械を使っておるのでありますか。ないしはKLMであるとか、スカンジナビア航空であるとかいうところで使っておる機種は、どういうことになっておりますか。それをちょっと御説明を願いたい。
#87
○政府委員(今井榮文君) お答えいたします。
 機材につきましては、先ほどちょっと御説明申し上げましたように、非常に一機が多額の購入費を要するというものでございまして、従って、これを生産いたします場合にも、大体注文をとりまして、その注文は百機ないし百五十機、普通の場合、場合によっては二百機というような程度の注文がまとまりませんと、生産を開始しないというのが最近の大型ジェット機についての非常に大きな特色でございます。従いまして、好むと好まざるとにかかわらず、機種が非常に世界的に統一されてきておるわけであります。ですから、御指摘のありましたイギリスにつきましては、現在コメット4型、これはイギリスの自国機でございます。軍用機から発走した旅客機でございまして、四発のジェットでございます。有名なコメット4というのが、大体現在イギリスのBOACの主力機になっておりますが、そのイギリスですら、現在、先ほどもたびたび出ましたボーイング707という型を最近新たに入手いたしまして、太平洋線はそれで運営しておる状況であります。従いまして、アメリカで現在作っておりますボーイングの707、それとダグラスDC8、この二つが大体各国のエア・ラインが現在使っておる大型のジェット機材でございます。従いまして、オランダ航空にいたしましても、ドイツのルフトハンザにいたしましても、スイス・エアにいたしましても、スカンジナビアン・エア・ラインにいたしましても、すべてこのいずれかを使っておるというのが現状でございます。その各国とも自国機を作れないというのは、それだけの注文が集まらないと、生産ができないということで、技術があっても、なかなかああいうものをそれだけ消化する、だけの能力はないということで、世界的に注文が集まらないと作れないということで、そんなふうな状況になっておるわけでございます。
#88
○委員長(木内四郎君) それでは、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二分散会
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ソース: 国立国会図書館
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