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1960/02/03 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第5号
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1960/02/03 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第5号

#1
第038回国会 本会議 第5号
昭和三十六年二月三日(金曜日)
    ―――――――――――――
  昭和三十六年二月三日
   午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 嶋中事件に関連して暴力根絶に関する緊急質問
  (佐々木秀世君提出)
 言論を圧迫する右翼の暴力事件に関する緊急質
  問(猪俣浩三君提出)
 右翼テロに関する緊急質問(鈴木義男君提出)
   午後一時十七分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 嶋中事件に関連して暴力根絶に関する緊急質問(佐々木秀世君提出)
#3
○田邉國男君 緊急質問上程に関する動議を提出いたします。
 すなわち、この際、佐々木秀世君提出、嶋中事件に関連して暴力根絶に関する緊急質問、猪俣浩三君提出、言論を圧迫する右翼の暴力事件に関する緊急質問、及び、鈴木義男君提出、右翼テロに関する緊急質問を順次許可せられんことを望みます。
#4
○議長(清瀬一郎君) 田邊君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 まず、嶋中事件に関連して暴力根絶に関する緊急質問を許可いたします。佐々木秀世君。
  〔佐々木秀世君登壇〕
#6
○佐々木秀世君 私は、自由民主党を代表いたしまして、一昨日発生いたしました嶋中事件に関連して、暴力根絶に関する緊急質問を政府に対して行なわんとするものであります。(拍手)
 さきに、一右翼少年が、三党首立会演説中の浅沼前社会党委員長を、白昼、大衆の面前において刺殺するという不祥事件を発生せしめ、世間に一大衝撃を与え、その悪夢のさめやらぬ今また、年令も同じ十七才の少年が、中央公論社社長嶋中鵬二氏宅を襲撃し、罪とがもない、無抵抗の女性で、何のかかわりもない、丸山かねさんを刺し殺し、さらに、嶋中氏夫人に重傷を負わしめるという、重ねての不祥事件を発生せしめましたことは、まことに遺憾にたえないところでありまして、犠牲になられましたお二方に対しましては心からなる御同情を申し上げ、かかる行為は、いかなる困難があろうとも、断じてこれを根絶しなければなりません。(拍手)
 本院は、昨年十月二十四日、浅沼事件の発生にかんがみ、各党一致の上、暴力排除に関する決議を行ない、その冒頭において、「最近続発せる右翼のテロ行為にかんがみ、政府は、その動機、背景その他を厳重に調査し、この種不祥事件が再びくり返されないよう万全の措置を講ずべきである。」として、政府の厳重なる措置を要望してきたのでありますが、その後わずか三カ月余にして、再びこのような不祥事件の発生を見ましたことは、まことに返す返すも残念にたえないところであります。(拍手)私は、まず、政府に対し、浅沼事件以後、暴力取り締まり、特に右翼テロの防遏に対しいかなる措置を講じてきたかをお伺いしたいと存じます。(拍手)
 次に、今回の事件の真相は、当局の取り調べの終了を待たねばその真相は明らかにはなりますまいが、諸情勢から判断いたしまして、おそらくは昨年十二月号の中央公論誌上に掲載された深沢七郎氏の「風流夢譚」に端を発したものであることは、容易にうかがうことができるのであります。それがために、最近、右翼団の活動が活発となり、新聞紙の報ずるところを見ましても、中央公論社を初め、嶋中社長並びに作者深沢七郎氏に対しても、たびたび右翼関係者のいやがらせの電話や脅迫状が舞い込んで、嶋中氏や作家の身辺に危険を感ぜられるので、警察は、一月十二日、管下全署公安課長会議を開き、依然右翼テロの危険があるから情報収集を強化するよう指示したと、警視庁の石岡公安、高橋警備両部長が語っておるのであります。なおまた、嶋中氏宅に対しても、所轄警察署ではパトロールを繰り返し、最近では一日十数回にわたって警戒をしていたとの警察側の言明を聞いたのでありますが、しかりとするならば、この事件はあらかじめ予測されたる惨事であり、不可抗力の言いわけは、この際断じて許さるべきでないと考えられるのであります。(拍手)まさに、警戒の虚をつかれた事件でありまして、警備の手落ちであり、かつまた、警戒の疎漏の結果であったといわざるを得ないのであります。このような警察の警備状況では、ますます社会不安はつのる一方であり、国民は一日として安らかな生活を営むことはできません。治安の本義は市民の生命と財産を守るにあることは、今さら言を待たないところであります。今回、かかる警備上の不備があり、手落ちがあって、このような事件の発生を見たとするならば、その責任は当然警備行政の担当者にあると考えられるのでありますが、政府は、その責任についていかなる措置をとらんとするものであるか、また、政府としての見解をあわせお伺いしたいのであります。(拍手)
 私は、さきの浅沼事件といい、今回の嶋中事件といい、いまだ法律上十分な責任能力のない少年が、このようなおそるべき行動に出るについては、直接間接これに影響を及ぼす背後関係のあるやを感ぜざるを得ないのであります。もし、しかりとするならば、国民の関心は実に重大でありまして、右翼団体の行き過ぎた行動とともに、資金源に対してもきびしい批判と抗議のあることを忘れてはなりません。(拍手)これらについては、政府は今後いかなる措置をとらんとするものであるか、これに関しても政府の明快なる見解をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 また、最近最も憂うべきものは、他人の人権や人命を無視したり、無軌道の行動に出がちな青少年の風潮や動向であります。これには、社会環境や戦後の教育その他によるところが少なくないとは存じますが、私どもは、最近頻発する青少年犯罪を根絶し、その憂うべき傾向を是正するためには、政府はこれら青少年対策についていかなる方途を講じようとするかについても、政府の所見をお伺いいたさなければなりません。(拍手)
 今回の事件は、一少年の凶行ではありますが、総体的に見るとき、言論の自由、表現の自由に対する挑戦であるともいわれましょう。このような暴力によって言論の自由が脅かされるようなことは、民主主義の発達の上からきわめて遺憾に存じますが、ここで問題となりますことは、言論・出版の自由についてであります。もとより、この原則はきわめて重要な事柄ではありますが、今回のテロ事件の直接原因とも見られる深沢七郎氏の「風流夢譚」のごとき読みものは、日本人としてまことに不愉快きわまりないものでありまして、いかに言論の自由が尊重されねばならぬとはいいながら、あくまでも、自由の原則の基礎には、おのずから社会的良識と責任とが伴わなければならないと確信いたします。(拍手)もし、さにあらずして、この自由の原則が、ただ単に野放しに行なわれたとするならば、社会不安をかもす大きな原因ともなり、まことに憂慮にたえないところであります。これらに関しても総理大臣の御所見と御決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#7
○国務大臣(池田勇人君) 今回の嶋中事件が発生いたしましたことは、まことに遺憾のきわみでございます。
 浅沼事件後、国会の決議に基づきまして、一般の協力を得て、暴力事犯の起こらないよう、また、暴力追放の風潮がわき起こるよう、いろいろ努力して参ったのであります。最近におきまする刃物持ち歩き防止運動も、その一環でございます。われわれは、こういう運動を起こすと同時に、警察機構の改善充実をはかって参りまして、これを未然に防ごうといたしておるのでございます。しかし、それも十分でなく、今回の事件を起こしたことは、まことに痛恨の至りでございます。
 なお、責任論でございますが、御承知の通り、警察行政の中立性という建前から、こういう警察の運営、管理につきましては、国家公安委員会がその責めに任ずることになっておるのであります。ただ、私といたしましては、行政全般につきまして総理の責任がございますので、私は、この行政一般についての政治的責任は国会並びに国民に対して負うことにやぶさかではございません。
 なお、資金源のこと等につきましては関係大臣よりお答えいたさせます。
 また、こういう事件を未然に防止するためには、もちろん、警察機構の改善をはかることは当然でございますが、やはり教育面その他あらゆる面から考えていかなければならぬ重要な問題と私は考えております。
 なお、言論の自由は民主主義の根本で、あくまでこれは守らなければなりませんが、およそ、そこには、やはり良識と責任と節度があることを、われわれは留意しなければなりません。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#8
○国務大臣(植木庚子郎君) 私への御質問は右翼団体の資金源の調査の問題についてであったと存じますが、これらの団体の資金関係の問題につきましては、先般の浅沼事件を契機といたしまして、犯罪の内容について峻厳なる調査を進めるとともに、資金源の問題につきましても、あとう限りの方法をもって調査をいたしております。しかしながら、その資金ルートにつきましては、捜査当局の調査の結果、まだ十分に結論を得るに至っておりません。この問題につきましては、調査の進行するにつれまして、適切なる時期において御説明申し上げる機会もあろうかと考えるわけであります。(「怠慢じゃないか」と呼ぶ者あり)ただいまなお調査研究中でございますから、いずれ、判明次第、これについてお答え申し上げます。
 また、次に、少年犯罪の問題につきましては、そのよって来たるところを十分に調査する必要がございます。従いまして、われわれ当局といたしましては、具体のあの事件について十分なる調査を進めますると同時に、一方、わが省内における総合犯罪研究所におきましていろいろと一般的な研究をも進めまして、そうして、これに対しての措置を考えておる次第でございます。もちろん、こうした問題は、単に役所だけの問題で措置し得るところではなく、その縁由するところは非常に広範でございます。そうした広範な問題についての調査を進めて、これに対しての適切なる対策を立てようと考えておる次第でございます。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#9
○国務大臣(安井謙君) 先ほど総理からも御答弁申し上げました通り、今回、右翼の一少年の手によりまして中央公論社長嶋中夫人等の殺傷事件が引き起こされましたことは、まことに遺憾に存じておる次第でございます。
 浅沼事件以来、政府といたしましても、一般の協力を得まして、暴力を排除する風潮のわき起こりますよう努力をいたし、たとえば、その一つの具体化として、特に青少年の刃物を持ち歩かぬ運動が今日効果を上げつつあるところでもあったわけであります。(発言する者あり)危険な右翼の対策といたしましては、警察として右翼の係員を増強いたし、特にテロ行為に出るおそれのある右翼団体及び右翼的人物の視察を厳にいたしますとともに、さしあたり、右翼の攻撃の目標となるおそれのある方々の警護を十分に行なうこととして、テロの未然防止に当たることにいたしておったのでございます。(発言する者あり)特に警視庁におきましては、さっそく係員を相当数増強いたし、また、近く独立の一課を設け、これが対策を講じつつあったわけでございます。
 今回の少年の犯行の動機は、お言葉のごとく、「風流夢譚」を掲載したことに対し、中央公論社長嶋中氏を刺さんとしたものであります。この「風流夢譚」に対する右翼の抗議は顕著でありましたが、その抗議は中央公論社に向けられるものが多く、直接嶋中社長に対しては、いずれも本社内において抗議が行なわれ、一々社長がこれに答えておられた状況でございます。警視庁は、これに対し警戒を厳にいたし、抗議のつど、あらかじめ情報を入手し、係員を派遣して警戒に当たらせるとともに、嶋中社長宅に対しましても、所轄牛込警察署の公安課員及び受け持ち外勤巡査をして今まで十数回にわたり訪問させ、脅迫その他危険な動きの有無について連絡をさせるとともに、パトロールを強化し、警戒をいたしておったのでございますが、かかる状況下にもかかわりませず、にわかに今回のごとき不祥事件を引き起こしましたことは、まことに遺憾にたえません。
 また、本少年は、昨年九月ごろ、長崎の某高校二年在学中、家を飛び出し、自来、名古屋、横浜等を転々とし、一月三日大日本愛国党の塾に入所し、ビラ張り等に使われておりました後、自供によれば、二月一日朝、帰郷すると称して脱党し、同夜事を起こしたのでございます。(発言する者あり)その少年が入党した事実は把握いたしておりましたが、脱党を事前に把握し得なかった状況でございます。以上のごとき状況下に発生した事件でありまして、結果はまことに遺憾でございます。警備の実際につきましても、さらに詳細検討中でございます。
 この事件が、浅沼事件に続き、またしても思慮の浅い十七才の少年によって敢行されましたことにつき、その背後関係には徹底した捜査を行なうとともに、いかなる理由があろうとも、暴力を振う行為に対しましては、今後徹底的な処置をとる所存でございます。
 今日の世相といたしまして、思想のいかんを別にして、暴力を安易に考える風潮がびまんしておることは、まことに憂うべき現象でございます。少年、青年の非行化を防止するため、総合的な諸施策を確立し、その強力な推進をはかることが肝要でございます。政府といたしましては、中央青少年問題協議会を中心とし、関係各省庁が密接な連絡をとり、総合施策の推進に力をいたしておるのであります。特に、青少年犯罪を未然に防止するための活動を強化し、非行少年の企業への補導、少年保護に関する諸施設の整備充実を期するとともに、青少年の犯罪を助長し、青少年に悪影響を与える環境を浄化し、少年の福祉を害する犯罪の取り締まりを強化し、不健全な映画、出版物などの自粛方についても積極的な協力を求め、暴力肯定的社会風潮の是正をはかっていきたいと思っております。
     ――――◇―――――
 言論を圧迫する右翼の暴力事件に
  関する緊急質問(猪俣浩三君提
  出)
#10
○議長(清瀬一郎君) 次に、言論を圧迫する右翼の暴力事件に関する緊急質問を許可いたします。猪俣浩三君。
  〔猪俣浩三君登壇〕
#11
○猪俣浩三君 あまりに事柄が重大であり、質問すべき点が多々ありまするが、私に与えられました時間は十五分でありますので、ごく筋書きだけ御質問を申し上げたいと存じます。
 ただいまの総理大臣並びに各省の責任者の御答弁を聞いておりますと、全くの無為無策、何らこの白色テロを根絶する決意が見受けられません。(拍手)遺憾千万に存じます。
 そこで、その中心は、やはり、池田総理大臣の責任論において、はなはだ私は理解をしておらない点がある。池田さんは、浅沼刺殺事件のときに、本壇上におきまして、自分には責任がないのだという答弁をなさった。時の山崎国家公安委員長を罷免することによって責任のすりかえをなされた。(発言する者あり)しかし、私は、これは総理大臣に責任があるのじゃないかということを、昨年の十月二十四日の委員会で、よく池田総理大臣の意思を確かめたのでありますが、そのときには、最後に、政治上の責任があるような答弁をいたされましたけれども、私は、やはり、警察行政につきましては、わが国の憲法上及び法律上の責任が内閣総理大臣に確固としてある。この理念に立ちませんと一国の治安が保たれない。内閣総理大臣が治安関係、警察関係に対して責任があるようなないような御態度でありますると、一国の治安は保たれない。
 そこで、私は、なおあらためてお尋ねしたいと思いますが、わが日本国憲法の第六十五条並びに第六十六条によりますならば、行政権は内閣に属し、なおまた、国会に対しましては内閣が連帯責任を負い、その首長が内閣総理大臣である。行政権のうち、最も強力なる行政権は警察権であります。この警察権を行なう内閣の首長が内閣総理大臣といたしまするならば、憲法上の警察行政の最高の責任は総理大臣になければならない。かような憲法上の責任、及び、警察法を見まするならば、いわゆる国家公安委員長、国家公安委員及び警察庁長官、警視総監、これらの人事に対して、内閣総理大臣は、あるものは任免権を有し、あるものは承認権を有し、最も決定的な発言権を持っているわけであります。行政作用におきまして、人事権を握っている者ほど強力なものはないわけです。(拍手)かような国家の警察行政における最高の機関に対しまして、警察法上ことごとく人事権に対して強大なる発言があるといたしまするならば、いわゆる法律上の責任、警察法上の責任が内閣総理大臣にあるということは、当然のことであります。国家公安委員会の主任大臣は内閣総理大臣であることは、警察法並びに総理府設置法に明白に書いてあることでございますがゆえに、憲法上、法律上の責任が内閣総理大臣にあると思うのであります。ただし、私が今ここで責任論を申しますることは、責任があるからやめろということではありません。責任があってやめることによって責任を果たす場合と、責任を自覚して鋭意その責任を果たす場合と、いろいろ責任を尽くす方法があるのであります。私は、内閣総理大臣が、憲法上及び法律上最高の警察責任があることを自覚せられまして、そうして、徹底的なテロ防遏の政策を遂行してもらいたいという意味において、この責任論を展開しておるわけであります。(拍手)さような意味におきまして、あらためて私はお尋ねをします。
 すなわち、内閣総理大臣は、憲法上、法律上責任があると思われるのか、ないと思われるのか、これが第一点であります。
 第二点といたしましては、浅沼刺殺事件以来、委員会において、本会議において、これが国会において相当審議せられました。池田総理大臣も、万全の策を施してテロ防止に当たるという答弁をなさっておる。そこで、その後、国会において暴力排除の決議もなされておるのでありまするが、内閣総理大臣はどういうことを今までやってこられたか。私は具体的に提案しております。破壊活動防止法の適用、政治資金規正法の改正、あるいは少年法、少年審判の問題、こういう具体的問題について質問をいたしましたときに、これは検討して善処する。大いに改善する。ことに、右翼暴力団体に対する警察の取り締まりが機構上からも不備である、そういうことを具体的に指摘いたしましたときに、やはり、これも善処する、そういう答弁をなさっておるのでありますが、今日まで、具体的に一体どんなテロ防止に対する対策をおとりになったか。詳しい内容は所管大臣あるいは事務系統の人でございましょうが、どういうことと、どういうことに対して調査を命じ、どういうことを検討中であると云うことだけを具体的に言っていただきたい。千編一律に、万全を期する、いや、大いにこれは取り締まりを強化するという、ただ言葉だけで申されましても、私どもは納得がいかないのでございます。この点について、私は具体的に質問し、具体的に答弁なさっておるのでありますから、政治資金規正法の改正はどうした、破壊活動防止法の適用の問題はどうした、少年法の改正はどうした、そうして、なお、今質問がありましたが、財閥と暴力団との関係、あるいは保守政党と暴力団との関係、こういうことも徹底的に調査してもらいたいということを私は要望しておるはずであります。こういうことに対して、一体、どういう検討を進められ、どういう成果を得られたかを、本会議場において明らかにしていただきたいと思います。
 それから、なお、総理大臣に第三点といたしましてお尋ねいたしたいことは、巷間、浅沼刺殺事件以来、どうも、左右の暴力を排撃する、こういうふうな観念を唱える者があって、いや、テロは悪い、しかし、デモも悪い、テロも悪いが、デモも悪いのだという言説をなす者がある。この観念は、明確なるテロ行為に対する容認思想である。かようなことを言って帳消しすることによって、このテロ行為という、天人ともに許さざる、民主政治下における許すべからざる凶悪犯罪を弁護する。それは頭の悪い人だけがそういうことを考える。(拍手)よく考えてごらんなさい。デモ行為とテロ行為とは次元が違う。全く様相が違うわけだ。もちろん、デモ行動の行き過ぎに対しましては異議を申しません。これは十分取り締まるべきことでございましょう。しかし、このデモの行き過ぎということと、テロ行為ということとは、全く違う範疇に属しておるものでありますから、浅沼刺殺事件のようなとき、こういうことをことさら申すことは、これはテロ行為をほめることに結局なるわけであります。戦前、どうでありますか。財閥が血盟団事件等によって倒されましたときに、いや、あのテロも悪いけれども、財閥も腐敗しておる、政治家も腐敗しておるというようなことを言って、結局これはテロ団を容認したことになって、その後、五・一五事件、二・二六事件と発展した。かような思想こそが、われわれはテロの容認思想である、こう考えるわけでありますが、一体、人の生命を奪う、一人一殺、人の知らざるうちに無防備の人間に突如襲いかかって命を奪うというような、こういう凶悪犯罪と、集団行動としてのデモの行き過ぎとを、同じ範疇においてこれを論ずるということが、はたしていかなる結果を来たすか。これは結局テロの奨励思想であると私は申さなければならないと思うのであります。(拍手)この点について、一体、池田総理大臣はどうお考えになりますか。今度のごときは、嶋中さんの奥さんが負傷し、お手伝いさんが惨殺せられておる。こういうテロ行為を、やはりデモと連関せしめて、一般の暴力だということで皆さんは一体処理されるつもりであるか。かようなことならば、第二、第三のテロが出てくることは明らかであります。この点につきましての総理大臣の御答弁を私は要求するわけであります。
 なおまた、第四点といたしましては、こういうテロ行為とデモ行為との連関性、これを強調しておりまするところの国家公務員がある。こういう国家公安委員は、こういうテロ横行時代の国家公安委員として、私は適性を欠いておると思う。こういうことに対して、内閣総理大臣は罷免権があるのであるからして、これは罷免していただきたい。こういう頭の古いところの連中が国家公安委員なんかやっておりますから、なかなかテロは根絶できないと思う。そこで、国家公安委員に対する罷免権の発動の意思があるかないか。
 それから、第五点といたしましては、これは主として法務大臣にお尋ねいたしまするが、刑法では殺人教唆にならぬところでも、破壊活動防止法第四条によれば、刑法の殺人の扇動ということに該当されるやに規定せられておる。これは、刑法の教唆扇動罪よりも広範囲に破壊活動防止法の規定を置いてある。まあ、この立案者は、左翼のものに大きな網をかけようという魂胆で、刑法よりも広く扇動というものの範囲をきめたと思います。その当時も、おれは左右いかなる勢力に対しても破壊活動防止法を適用するのだと立案者は言っておられましたが、今日、再三にわたってテロ行為があり、しかも、それが同じような団体に所属したことがある人物で、同じような訓育を受けて、そうしてテロ行為に出たということになりますると、そのテロをやった人物も、それを指導、扇動した人物も、ともに破壊活動防止法第四条の適用があると思う。これに対しましては、私は、すみやかにかような個人に対して適用するのみならず、かような危険なる団体に対し、それこそこの破壊活動防止法を適用いたしまして、この際断固たる処理をとるべきじゃないか。(拍手)そうしないと、いつまでたっても、このテロの行為はやみません。
 ある評論家は言うた。このテロ犯人は、戦争中の予科練みたいなもので、ここに基地があって、そこで徹底的な訓育を受けて、そうして、ある一定の目標を与えられてそこへ飛び立っていく。だから、その人間だけを処罰しても、その訓練の基地をなくさなければテロはなかなかやまらない。(拍手)そこで、もし内閣がテロに対しまする根絶の対策を持っておいでになりまするならば、こういういわゆる昔の軍事基地のような、予科練の基地のような団体に対してメスを入れるべきである。ここで奇矯なる訓育を施して、そうして扇動をやっている。今度の小森何がしが属した愛国党なるもの、これが一月三十日、日比谷公園でどういう演説をしたか。昨日のテレビを見ましても、この愛国団体の道場において、一体どういう扇動が行なわれているか、相当大衆にも明らかにされている。こういうことに対して何ら手を入れないという法はないと思う。私は、たびたびのテロ犯人に対しましても、簡単に、背後関係がないような発表がなされておることを遺憾千万に思う。今回は、徹底的にその背後関係を糾弾していただきたい。(拍手)これは総理大臣の決意及び法務大臣の決意もお聞きいたしたいと思うのであります。
 それから、その次といたしましては、国家公安委員長にお尋ねいたしまするが、この右翼団体と警察との関係、これは昔からいろいろのことがいわれておりました。私たちもいろいろのことを聞いておりまするけれども、昨年のいわゆる六・一五事件のときにデモ隊になぐり込みましたところの維新行動隊、その隊長が石井一昌という人でありますが、この人が暴力行為で裁判になっております。この人が法廷でどう言うているか。わしらがなぐり込みをかけたのは警察の誘導だと言っている。警察に指導されてやっておるのに、今、われわれだけを処罰して、警察は知らぬ顔をしている。それだから、きょうは真相を発表するんだ、ということを言っております。(拍手)一体、かような事実関係に対して、これがあるのかないのか、法務大臣並びに公安委員長の責任ある答弁を要求いたします。私の方には相当の証拠が入っておりまするが、この両所管相の答弁をお聞きしたい。
 なおまた、新聞を見ますると、この愛国党の本部へ捜査隊の刑事が行って、赤尾敏氏に対して、先生々々と呼びかけている。(拍手)先生々々と係官が丁重に呼びかけ、気まずそうに「先生また」と言って捜査令状を出した、こういうのであります。人を敬うということはいいことでございまするけれども、捜査の対象に対して先生々々と刑事が言うということは、どういうことであるか。(拍手)これは、要するに、警察と暴力団の親玉と非常に密接な関係が平素からあったということの証拠で、かようなことは平素私も聞いておった。今日、新聞に明らかにそれが出てきているわけであります。こういうことがいいことであるか悪いことであるか、私どもはこれをお尋ねしたいと思うのであります。
 そこで、警察と暴力団の関係、それから、暴力団と財閥の関係は、さきに法務大臣がわかったようなわからぬような答弁をなさったのであるが、こんなものは調べれば容易にわかると思うのであります。天下公知の事実なんだ。きょうは時間がありませんから一々具体的に指摘いたしませんけれども、これはぜひ明らかにしていただきたい。次の委員会におきましては、具体的に私どもは名前をあげて質問するつもりでございまするから、この関係は、法務省におきましても、警察におきましても、徹底的に調査していただきたい。何となれば、浅沼テロ事件が起こりましたときに、経団連の会長は、山口二矢の考えもわからぬではないなんということを言っておられる。どうもはなはだ危険千万な存在が財閥にあるのじゃないか。いつかおのれの頭にかかってくることを知らずして、こういうテロを育成強化するようなことをやっておりますと、大へんなことになりまするから、こういうことにつきましても徹底的な調査をしていただきたい。
 以上、私は、総理大臣に対しましては、その憲法的及び法律的責任、及び、その責任に基づいて、テロ防遏に対していかなる具体的な施策を下僚なり各省担当大臣に指示してこられたのであるか、その具体的な内容、及び、このテロ行為と集団デモ行進の行き過ぎとを同一範疇、同一次元においてとらえて考えておられるのであるかどうか、そういうことがテロの容認思想になるのではないか、これに対するところの総理大臣の所信を承りたい。なおまた、国家公安委員の中に、かようなテロ事件とデモ事件とごっちゃにして、ややもすれば、デモの行き過ぎのみを頭に置いて、テロ事件を容認するような委員がいるが、こういう者に対しては罷免する意思があるのかないのか、及び、このたび重なるテロ犯人を出した所属団体に対しまして、破防法を個人的にも団体的にも適用する意思があるのかないのか、また、警察と右翼団体との関係、これがどうなっておるのであるか、石井維新行動隊長の法廷における供述が全く虚偽であるかどうか、なお、こういう右翼団体の領袖と警察は平素いかなる交際をやっておるのであるか、かようなことにつきまして、法務大臣並びに国家公安委員長の御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#12
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点は、内閣総理大臣と警察行政についての憲法上、法律上の関係についてでございます。行政権は一般に内閣にございます。しかし、その行政権の一部を独立の行政委員会に委任するということは憲法上認められておるのでございます。しこうして、警察行政は、政治的中立性を確保するという意味から、警察の運営、管理につきましては、国家公安委員会及び地方の都道府県公安委員会の責任とされております。運営、管理は公安委員会の責任とされておるのであります。従って、内閣におきましては、その運営につき指揮監督をする権限はないものと私は考えております。従って、具体的警察運営につきましては責任を負う立場でない。ただ、内閣総理大臣は、行政全般につきまして責任者であるのであります。こういう意味におきまして、警察行政につきましても、政治的責任は国会並びに国民に対して負うべきものと考えております。
 第二の、浅沼事件以来、テロ行為撲滅、暴力排除に対していかなる措置をとったか、この点についてでございますが、私は、テロ、暴力が民主主義の絶対の敵であることを確信いたしまして、いわゆる刃物持ち歩きを防止する運動を助成するとか、あるいは警察におきまして、その機構並びに運営の能率化をやるとか、いろんな方法をとり、他面、青少年の教育や社会問題改善につきましても努力いたしておるのであります。また、具体的に、政治資金規正法、これは、私は、選挙公営の関係とともに検討を加えております。破防法の適用、少年法の改正につきましても、関係大臣に検討を加えさしておるのであります。
 第三に、デモ行為とテロ、私は、デモとテロとを比べるべきものではないと思う。合法的なデモは、私は何ら差しつかえないと思う。ただ、これが行き過ぎて暴力になるということになりましたときに初めて暴力排除に入ってくると思うのであります。また、行き過ぎた暴力を伴うデモ、そしてテロの問題につきましては、観念的な問題ではございません。具体的にやはり検討して、ともにともに絶対排除しなければならぬものだと考えております。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#13
○国務大臣(植木庚子郎君) 昨年の不幸なる浅沼事件以後にとりました処置につきましては、御承知の通り、厳正なる態度をもって事の真相を究明するように努めております。従いまして、たとえば、資金源等の問題につきましても、今もなお引き続き調査をいたしておるのでございますが、今日の段階におきましては、ここに御説明を申し上げ得る程度に至っておらないということを申し上げておきます。
 また、第二の、破防法の適用の問題についてでございますが、右翼団体等が最近こうした問題に関係があるのではないかという疑いがございます。従いまして、われわれといたしましては、つとに、この問題についてそれぞれ調査はいたしておったのでございますが、昨年のあの不幸なる事件を契機といたしまして、さらにその方面の陣容を整備し、あるいはいろいろ研究を重ねて、深く各種団体の内容等についての調査を進めております。しかしながら、今日の段階におきましては、これが解散を命ずべき程度の事態がありとはまだ思えないというのが、今日の段階でございます。
 背後関係の有無は、申すまでもなく、この種団体とのことを十二分に究明して参り、そうして、これによって適切なる対策を立てて参りたいと考えておる次第でございます。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#14
○国務大臣(安井謙君) 私にお尋ねの点につきまして御答弁申し上げます。
 警察と右翼団体との関連でございますが、警察といたしましては、右翼団体には、内偵をいたし調査を進める関係上、係員が出入りを常にいたしておることは事実でございます。しかしながら、そのために右翼団体との腐れ縁を持つ、いかがわしい関係を持つということは断じてないことを確信いたします。
 なお、六月十五日の安保反対デモになぐり込みをかけました石井一昌の事件につきまして、当時、この状況を探索に参りました巡査が、前日事務所で本人とこのデモ事件について内通をいたしたというような供述が公判廷であったようでございますので、これは、本人を厳重に取り調べました結果、本人が六月十五日の前日にこういったデモのあることを聞き、その事務所へ内偵に参り、石井等と会って会談をいたした際に、暴力等にわたることのないようにということをさとして帰った事実はございまするが、これを強要したというような事実は絶対にございません。(「ビールはどうした」と呼ぶ者あり)ビールにつきましては、当時、事務所の前でビールを出されたので、職務中であるからといって断わったそうでございますが、あまりにもしつこく勧められるので、つき合い上一、二はい飲んだことは事実のようでございます。
 赤尾敏の家庭捜査のときの巡査の態度につきましては、私は、現在聞き及んでおりません。およそ常識を逸脱しないように、今後も十分に心していきたいと思っております。
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 右翼テロに関する緊急質問(鈴木
  義男君提出)
#15
○議長(清瀬一郎君) 次に、右翼テロに関する緊急質問を許可いたします。鈴木義男君。
  〔鈴木義男君登壇〕
#16
○鈴木義男君 私は、民主社会党を代表して、同じく今回の事件について、政府に対し緊急質問を行なうものであります。
 今回の嶋中邸刺殺傷事件も、古くは安保反対デモの際にふるわれた右翼団体の数々の暴行、河上氏、岸氏等に傷害を与え、ついに浅沼氏を倒した、いわゆる右翼テロと同一水脈に属するものであることは明らかであります。(拍手)昨年十月二十四日、わが衆議院は、大衆政治家浅沼稲次郎君を失った深い悲しみと憤りのうちに、満場一致、暴力排除に関する決議を通過せしめたことは記憶に新たなるところでありまするが、その後、政府は、右翼テロの防止に対して具体的にどういう手を打たれたのでありましょうか。何もなすところがなかったというのが真相ではありますまいか。
 浅沼事件のとき、池田総理は、山崎国務相を辞任させ、その政治的責任を明らかにしたようでありまするが、実は、それで事足れりとして、右翼テロに対する実際的な対策を怠ったのであります。その証拠には、今回の嶋中夫人を刺し、女中を殺した右翼の少年は、浅沼氏を刺殺した人物と、その背後関係においても、その年令、傾向においても、さらに、その団体を擬装脱退している点、あいくちやナイフなどを持って人を刺殺することについて相当練習をしていると目される点等、全く同一に近い人物だということであります。また、山口二矢を英雄にする運動が公然行なわれていたこと、右翼の間では山口に続けということが、一つの合言葉になっているということも、公知の事実であります。
 浅沼事件は、いわば政治の自由に対する挑戦であり嶋中事件は、言論の自由に対する挑戦であります。民主主義社会は、民主主義を是認する人たちにとっては、自由であり寛大であることは当然でありまするが、民主主義に挑戦する者に対しては峻厳な態度をもって臨むことが必要であり、これこそが民主主義社会の原則であります。いわゆる右翼団体と呼ばれるものの多くは、民主主義社会を破壊に導かんとする団体であり、これは一部の敵ではなくして、日本国民全体の敵であると断言しても過言ではないと存ずるのであります。(拍手)
 政府は浅沼事件以後、いゆわる右翼に対しどういう態度をとったか。昨年の地方行政、法務両委員会の連合審査会におきまして、時の公安委員長周東国務大臣は、われわれは今後重ねてこのような不祥事件が起こることのないよう新たなる決意をもちまして治安の万全を期する所存であります、と、はっきり言い切っておるのであります。その通りやられましたか。わずかに数カ月を出ずして再びこの憎むべき事件が起こったのであります。今度は、問題の小説とは何の関係もない、また、無抵抗な婦人に対して、狂暴きわまる挙に出たのであります。被害者から見れば、通り魔というか、まるで狂犬にかまれたようなものであります。今度は、私の知る限り、この無分別なテロ行為に対して怒り心頭に発しない者は一人もないのであります。政府は、浅沼事件以後、こういう右翼テロの防止策について何をしたというのであるか、総理並びに公安委員長の責任ある回答を承りたいのであります。
 あるいは、今回のことは、突発的で、どうにも仕方がなかったというようなことを言われるかもしれませんが、そうは言わせないのであります。すでに、先日、あるところにおいて、別の右翼の一派が、中央公論撲滅国民大会なるものを開催して、すこぶる派手にやった。これに対して、別派は、心平らかならざるものがあって、ひそかに動いておるということは、われわれの耳にも情報は入っておったのであります。本件の起こる数日前から、中央公論社に対しても、また、嶋中氏私邸に対しても、ひんぱんと、いやがらせや脅迫の来客や電話が連日かかってきていたということでありまして、連絡によって警察もこのことは知っていたのであります。しかるに、何の手も打っておらない。また、われわれの得ておる情報によると、犯人小森とともに、なお数人の党員がこの日脱党をしていたということであります。ちゃんと予鈴が鳴り、続いて本鈴がなったのでありまして、偶発とか突発だというようなことは言わせないのであります。(拍手)しかるに、何のなすところもなかったということは、驚くべき警察の怠慢であります。少年に刃物を持たすなという運動が展開されて、だいぶ善良な少年の刃物は取り上げたようでありまするが、最も取り上げなければならないはずの者からは取り上げていないのであります。(拍手)
 また、予想しなかったと言うが、本件が起こって、警察は、写真帳を持ってきて、暴行を働いたのはこのうちのだれであるかと聞いているのであります。嶋中家の尋常六年の女の子が、直ちに小森を指さして、この男だと申しておるのであります。これだけの予備知識がありながら未然に防止できなかったということは、驚くべき怠慢といわなければならぬのであります。(拍手)
 浅沼氏の場合にも公安委員長は責任をとって辞職したのでありまするが、今回は、なお一そう強い意味において、公安委員長以下全委員が国民の前にその責任を明らかにすべき場合と信ずるのであります。(拍手)法と秩序とを主張する政府としては、この無警察状態に対して深く恥じなければならないはずであります。少なくとも国会に対して直接責任を負う公安委員長たる安井自治大臣は、その責めを明らかにすべきものと存じまするが、その用意があられるかどうか、お伺いをいたすものであります。(拍手)
 また、国家公安委員会、東京都公安委員会、そのもとに警察運営の任に当たっている警察庁長官以下の警察公務員、警視総監以下の警察官の責任問題であります。警察中立の原則に基づきまして、これらの警察官が国会に対して政治上の責任を負うものでないことは了といたしまするが、といって、どんなに怠慢があり、職務の懈怠があっても、行政上の責任も負わないでよろしいというものではないはずであります。国家並びに東京都公安委員会は、すべからくこれらの責任を明らかにすべき責務があると信ずるのであります。浅沼事件のとき、公安委員長だけの引責辞職でケリをつけたのでありまするが、それは警察中立の原則のはき違いであります。現業員たる警察職員は、公務員として、別にその職務の怠慢、過誤等に対して行政上の責任があることは、理の当然であります。これを不問に付する公安委員会は、国民から強く指弾せらるべきであります。
 元来、左翼にはきびしく右翼には弱いというのが、わが国行政府並びに警察の伝統であります。真に民主社会を建設しようとするならば、あらゆる種類の暴力に反対するのはもちろん、左右の全体主義に対しても、断固として、きぜんたる態度をとらなければならないのであります。しかるに、わが警察は、右翼に甘いだけでなく、かえってこれを懐柔し、これを利用するために、これに乗ぜられておるというのが真相であります。猪俣君が指摘いたしました、有名な維新行動隊長石井一昌は、東京地方裁判所の法廷で、明らかに、昨年六月十五日の安保反対デモを混乱に陥れ、警察干渉の口実を作るために利用された、すなわち、警察官は、その前の晩一緒に酒を飲んでおる、そして、当日は、あそこへ突っ込め、こっちへ突っ込めということを指図されてやっておったということを告白しておるのであります。(拍手)右翼の人々と警官が一緒に弁当を食べておるのを見たという報告もあるのであります。今回問題となっている大日本愛国党の党首赤尾敏氏らは、取り調べのあと、警察側がいろいろな情報を教えてもらうという恩恵もあるのでありましょうか、署長や次長は玄関まで送って出てくるという事実もあるそうであります。このような右翼に対する甘い態度こそが右翼テロを続発させる真の原因であると存ずるのでありまするが、政府はどうお考えになっておるのであるか、承りたいのであります。(拍手)
 また、右翼団体は、右翼的思想のつながりだけから成立するものではありません。右翼団体に資金を供給するものがあって右翼団体の存続が可能となるのであります。従来、この点についてお尋ねをいたしても、明確なお答えがない。取り調べ中とばかりお答えになっておるのであります。何年かかったら取り調べが終了するのでありまするか。思うに、取り調べが不可能なのではなくして、あえて言うことをはばかるもののようであります。世間では、自民党の一部にも右翼と密接な関係があるということを広く信じているのであります。(拍手)こういう点をはっきりさせなければ、自民党の近代化などということも、百年河清を待つごとく、砂上の楼閣にすぎないと存ずるのであります。(拍手)われわれは、右翼に資金を供給している背後の勢力を明らかにしなければならないと信ずるものでありますが、公安委員長は、こういう背後関係をどういうふうに認識し、どういう方法で調査し、どうしてこれを絶縁させようとしておるのであるか、この点をはっきりお述べ願いたいのであります。
 私どもの得ている情報によれば、いわゆる「風流夢譚」掲載後、執拗に中央公論社になされたいやがらせは、結局金の要求であったということであります。世故に通じている人々は、幾らかの金を出して円満解決をはかってはどうかと勧めたようでありますが、嶋中氏の正義観は、こういう妥協をいさぎよしとせず、正道を踏んだために、今回の奇禍を招いたようであります。社会進歩のための一つのとうとい犠牲であるのでございますから、われわれは、この犠牲をむなしくすべきではないと存ずるのであります。
 私どもは、問題となった小説「風流夢譚」に必ずしも高い価値を置くものではありません。これは見る人によって異なるでありましょうし、毀誉すでに半ばしているのであります。これを軽べつする者は遠慮なく批判すればよろしい。すでに多くの新聞、雑誌の上でそれはなされているのであります。しかし、文章は文章をもって攻撃すればよろしいことであります。いな、筆は筆をもって争うのが民主社会であります。思想、言論、出版の自由は、言うまでもなく、憲法に保障されたわれわれの基本的権利であります。これらの自由を保障することは、いわゆる所得倍増よりももっと緊要なことと申さねばなりません。われわれ政治に携わる者は、常に個人の尊厳と自由とをより拡大する方向に努めなければならないと信ずるものであります。
 そこで、最後に、総理並びに法務大臣、公安委員長にそれぞれお尋ねをいたしたいのは、今後右翼テロを絶滅するための方策いかんということであります。
 第一は、防犯政策という点であります。世界的に見ても、この通り魔的テロに従事する者は、十七、八才くらいの激動期の少年に圧倒的に多いのであります。山口二矢しかり、小森何がししかりであります。これは犯罪心理学の問題であり、また、犯罪社会学の問題であります。政府は、一般非行少年に対するものとは別に、根本的に掘り下げてその対策を立てなければならないと存じます。この点の所見いかんというのであります。
 第二は、犯人そのものよりも、公然、テロはやむを得ない、正しい手段だと公言するような団体に対して、公共の福祉の見地からこれを取り締まり、いやしくも法治国であるならば、そういう黒い団体の存在は許さるべきはずはないのであります。憲法は、いかに寛大であっても、そういう黒手組のようなものの存在をも、言論、結社の自由の名のもとに、その存在を許すほど寛大ではないのであります。破防法は、元来、左翼にだけ向けられた法律でありますが、これを最大限度まで右翼にも活用さるべきことは当然であります。しかし、法の解釈はおのずから限度がありますから、こういう団体の取り締まりについては別個の法律を制定する必要があるのではないか、こういう今後の対策について、政府はどういう所見を持っておられるのか、承りたいのであります。
 モンテスキューは、民主主義政治の要諦は、国民がすべて、平静な心、トランキュリテ・デスプリを持って、すなわち、安心して生活ができる環境を作ることだ、と喝破したのでありますが、これは千古不磨の鉄則であります。生命、身体の安全の保障のない国は、われわれは、これを法治国とはいわないのであります。政府はこの根本問題に対してどういう対策を持っておられるか、この点についての責任ある答弁を期待して、私の質問を終わるものであります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#17
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 浅沼事件以後政府のとりました方策につきましては、先ほどお答え申しましたごとく、警察行政の強化改善、暴力排除運動の推進、青少年の教育、また、根本的に生活環境の改善等につきまして、各方面から努力を重ねておるのでございます。
 なお、右翼テロ排撃のための処置は、お話の通りいろいろございます。私は、先ほど申しました教育問題、あるいは環境の改善、これが一番であろうと思いまするが、破防法の解釈、あるいは別個の法律をどうするかという問題については、所管大臣より答弁いたさせることにいたします。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#18
○国務大臣(安井謙君) 今度の少年の暴行が予見されておったはずじゃないか、これに対して警察が具体的にどういう行動をとったかという点につきまして、先ほど概括的に申し上げましたが、いま少し具体的に御報告申し上げます。
 中央公論社の所轄の中央署におきまして、本年一月二十六日、中央公論十二月号所載の「風流夢譚」に関して右翼団体が攻撃しておるとの情報がありましたので、係員が同社におもむき、抗議等があった場合の連絡方法について打ち合わせを行ない、警戒態勢をとるとともに、社長、編集長の自宅を管轄する牛込署、作者深沢七郎氏宅を管轄する北沢署に対し、それぞれの警戒方を連絡したのであります。その間、十一月二十八日に大日本愛国党、十一月三十日に誠忠報国隊、今年一月二十八日に護国団、一月三十日に愛国党等がそれぞれ本社に参り交渉いたしております際には、すべて係官を差し向け、未然に暴行を防いでおるわけでございます。また、社長宅の警戒につきましては、先ほども申し上げました通りでございます。なお、愛国党に所属しております小森一孝につきましては、警視庁といたしましても、初めから写真等につき十分の警戒をいたしておったのでございますが、一日に脱党いたした点につきましては、こちらで手配漏れであったわけであります。
 なお、今後の方策につきましては、総理のお話の線に沿いまして、今後とも、暴力の係官の要員を増加し、その態勢を整え、徹底的な制圧をいたすつもりでございます。
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#19
○国務大臣(植木庚子郎君) 暴力犯罪、ことに右翼によるテロ行為等の頻発にかんがみまして、今後の対策いかんというお話でございますが、この点につきましては、われわれは、あくまでも具体の案件の捜査、検察にあたりまして、十二分の厳正なる態度をもって真相をきわめて参りたい、かように考えておるのであります。のみならず、また、先ほども触れましたように、一昨年七月から、われわれ法務部内において、議会の御承認を得て、総合犯罪研究所が設立せられております。この部局におきましては、こうした暴力犯は言うまでもなく、また、青少年の犯罪等につきましても、最近の傾向にかんがみまして、特にその面の研究にも意をいたしておるわけであります。あるいはまた、破防法の運営にあたりまして、その方面に重点的なる努力をささげまして、これによって善処して参りたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
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#20
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時三十一分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        自 治 大 臣 安井  謙君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        警察庁長官   柏村 信雄君
        法務省刑事局長 竹内 壽平君
        公安調査庁次長 關   之君
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ソース: 国立国会図書館
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