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1960/03/04 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第12号
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1960/03/04 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第12号

#1
第038回国会 本会議 第12号
昭和三十六年三月四日(土曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第八号
  昭和三十六年三月四日
   午後一時開議
 第一 森林火災国営保険法の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 第二 国債整理基金に充てるべき資金の繰入れ
  の特例に関する法律案(内閣提出)
 第三 補助金等の臨時特例等に関する法律の一
  部を改正する法律案(内閣提出)
 第四 地方公共団体の負担金の納付の特例に関
  する法律を廃止する法律案(内閣提出)
 第五 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する
  法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参
  議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 昭和三十六年度一般会計予算
 昭和三十六年度特別会計予算
 昭和三十六年度政府関係機関予算
   午後十時四十三分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 昭和三十六年度一般会計予算
 昭和三十六年度特別会計予算
 昭和三十六年度政府関係機関予算
#3
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、昭和三十六年度一般会計予算、昭和三十六年度特別会計予算、昭和三十六年度政府関係機関予算、右三件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#4
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 昭和三十六年度一般会計予算、昭和三十六年度特別会計予算、昭和三十六年度政府関係機関予算、右三件を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
 昭和三十六年度一般会計予算
 昭和三十六年度特別会計予算
 昭和三十六年度政府関係機関予算
  〔本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
#6
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。予算委員長船田中君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔船田中君登壇〕
#7
○船田中君 ただいま議題となりました昭和三十六年度一般会計外二案につきまして、予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本予算三案は、去る一月二十八日予算委員会に付託され、自後、連日にわたる熱心な審議を経て、本日委員会において討論、採決されたものであります。この間、実質審議の日数は二十五日間、質疑の正味時間は実に百八十七時間に及ぶものであります。この間、委員会といたしましては、二日間の公聴会を開いて各界の権威者八名の意見を徴し、また、六日間の分科会を開いて、細目にわたって審査を尽くした次第であります。
 予算案の内容につきましては、過般の本会議において水田大蔵大臣より詳細なる御説明がありましたので、重複を避け、御報告を省略し、また、審議経過の詳細につきましては会議録によってごらんを願うことといたしまして、ここでは主として予算三案をめぐって展開されました質疑の若干を御報告するにとどめたいと存じます。
 まず第一に、政府の予算編成及び規模が問題になりました。政府の予算編成の基本方針は、国際経済の動向に即応しつつ、通貨価値の安定と国際収支の均衡を確保し、経済の適正な成長に資することを目途としながら、財政の健全性を保持する方針のもとに、国民所得の倍増を達成するため緊要とされる施策の推進をはかるというのであります。この方針のもとに編成されました予算は、その規模において、一般会計で歳入歳出とも一兆九千五百二十七億円でありまして、前年度の当初予算に比べて、三千八百三十一億円、二四・四%の増加となっております。国民所得に対する比率は、三十五年度の当初予算一五%に対して、三十六年度は一五・三%であります。特別会計は総数四十一、その総計は、歳入四兆四千六百四億円、歳出四兆一千八百十七億円でありまして、一般、特別両会計を通じ、重複分を差し引いた予算純計は、歳入四兆四百五億円、歳出三兆七千六百六十一億円であります。政府関係機関は総数十三で、その収入総計は一兆九千四百七十億円、支出総計は一兆七千七百八十八億円と、金額においてそれぞれ前年度より相当程度の増加を示しております。さらに、財政投融資の計画は、総額七千二百九十二億円でありまして、前年度当初計画に比べて、千三百五十一億円、二二・七%の増加であります。財政規模のこのような拡大を可能ならしめたのは、言うまでもなく、既往数年来の日本経済の著しい発展でありまして、政府は、この程度の財政規模は経済成長の現段階に見合ったものであり、決して過大なものでないとされておるのであります。
 委員会におきましては、「右の予算編成は、内外情勢に対するあまりにも安易な楽観的見通しを基礎としており、これではアメリカの景気後退を主因とした国際経済の変化に対応できないのではないか」との指摘がありましたが、これに対し、政府は、「決して手放しの楽観論ではなく、国際経済の動向は常に十分考慮しながらやっているから、今この予算をどうこうするというほどのことはない。もし、万が一非常の事態が起こったとしても、いかようにもこれを運営していける。アメリカの景気も、ケネディ新政権の積極政策により、本年半ば過ぎには、世界の人々も期待しておる通り、ある程度上向くものと考えられる。また、ドル防衛のわが国国際収支に及ぼす当面の影響は、当初の予想よりむしろ小さいと考えられる。しかし、国際収支の長期的見通しは、国際競争の激化によって決して安易な楽観は許されない。従って、民間のたゆまざる努力と政府の適切な誘導とによってこの困難を克服していかねばならない」との所信でありました。
 次に、財政支出の増大は、この予算そのものの中に織り込まれている鉄道運賃、郵便料金等公共料金の値上げと相待って物価騰貴に拍車をかけるのではないかという物価論争が、予算審議の一つの焦点とされました。質疑における論点は、「政府自体が公共料金を引き上げることによって値上がりムードを醸成する以上、他の諸物価の値上がりは必至であり、これでは所得倍増より前に物価の倍増がくるのではないか。消費者物価の中でも、毎日庶民の台所を潤す必需物資の値上がりは、政府統計の示す数字よりはるかに大きい。三十六年度の消費者物価指数一・一%の上昇という政府の予想のごときは、あまりにも庶民の感覚とかけ離れたものである。特に、減税や社会保障の恩典を受けない階層の人たちがこの予算から受けるものは物価値上がりの被害だけであり、その生活は一そう苦しくなるのではないか」というのであります。これに対する政府の答弁は、「国鉄等の公共料金引き上げは、産業の発展に伴う運輸部門強化の要請と、これまで低い料金に据え置かれていた等の特殊事情によるやむを得ざるものであるから、これを理由とする他の諸事項の便乗値上げは極力抑制していく。また、経済全体においては、需給面は大体バランスがとれており、しかも、一般的な労賃の値上がりは企業の生産性の向上で十分吸収することができるので、物価の基調をなす卸売物価は安定し、大体横ばいの状況である。ただ、消費者物価は、生鮮食料のごとく季節的に変動するものもあり、また、一般的な所得の増加に伴い、消費するものの質の向上、小売業やサービス業における従業者の手間賃の上昇等によるある程度の値上がりを来たしておるのは事実であるが、手間賃上昇による合理的なものは、所得倍増の過程において当然容認すべきものであり、しかも、消費者物価を全般的に見れば、物価騰貴を刺激し、インフレを招来する程度のものではない。また、物価が上がっても、それを上回る所得の増大があれば問題はないのであるから、特に下の方の所得が上の者より高い割合で増加するよう対策を講じていく。この関係において所得倍増計画を策定した次第である」とのことでありました。
 次に、本予算の三本の柱としてあげられておりますものは、減税と公共投資、社会保障の三項目でありますが、まず、そのうちの減税について申し上げます。
 すなわち、所得税、法人税を中心として、初年度九百二十五億円、平年度千百三十八億円の一般的減税がはかられております。ただし、この減税額は他面における租税特別措置の整理合理化、及び揮発油税の税率引き上げ、関税定率法等の改正に伴う増収額を差し引きますと、一般、特別両会計を通じ、初年度六百二十一億円、平年度七百四十四億円となります。これにつきましては、「四千億円にも近い租税の自然増収が見込まれておるのに、減税額はわずかにその一六%程度にすぎない。また、国民所得に対して、専売益金、地方税をも加えた租税負担の割合は、税制調査会の答申によれば二〇%程度が妥当であるとされているのに、今回は二〇・七%であり、しかも、税収の伸びを見込めば、この率は二二%前後にもなり、前年度を上回ることになる。これでは表看板の一つである減税もはなはだお粗末なものといわざるを得ないが、どうか」との質疑がありました。これに対する政府の答弁は、「大幅の歳入増加を見込み得たために、所得税、法人税において平年度一千億円の減税措置を講じた上に、さらに、財源を社会保障、公共投資等、所得倍増の基礎をつちかう重要諸経費の充実に振り向けたのであって、減税の公約は完全に果たしている。また、税制調査会の答申の二〇%という率も必ずしも固定的に考える必要はないと思われるが、減税は、なお、決して明年度限りのものではなく、経済の成長とともに、重要な施策の一つとして年々心がけていくつもりである」というのでありました。
 次に、社会保障関係費であります。
 社会保障関係の経費の総額は二千四百六十六億円で、全体の一二・六%、前年度当初予算に比較して六百三十六億円の増加、すなわち、三割二、三分の増加であります。これに関しましては、「社会保障関係費が大幅に増加したといっても、増加分の大半は、国民年金等の当然増的経費と、医療費引き上げに伴う経費で占められているのであるから、これによって社会保障が著しく前進したとは言い得ない。のみならず、医療費引き上げは、真に医療を必要とする零細所得者を保険診療から締め出し、基礎の脆弱な国民健康保険その他をゆさぶることになる。また、生活保護の基準や失対労務者の賃金単価を引き上げてはいるが、人間並みの最低生活を保障するに至っていない。いずれにしろ、所得倍増計画による十年後の社会保障の規模ですら現在の西欧諸国のそれに及ばず、ILOの最低基準にも達せぬようでは、はなはだ貧弱な施策といわざるを得ないではないか」との質疑がありました。これに対する政府の答弁は、「社会保障の内容はこれで十分とはいえないが、今回の予算の増加は確かに画期的なものである。医療費引き上げによっても、保険料を上げなくても済むよう特別の予算措置を講じておるし、また、生活保護費は、今までほとんど据え置かれていた生活扶助基準を一八%引き上げるとともに、勤労控除の拡大、ほかに住宅、教育、生業の各扶助基準の引き上げ、また、期末一時扶助の新設等、できる限りの措置がとられている。所得倍増計画による社会保障の拡大のためには長期的な計画を持たねばならないから、早急にこれに取り組むつもりである」というのでありました。
 最後に、所得倍増の中心課題として予算審議の一つの焦点となりました農業問題について申し上げます。
 農林関係の三十六年度一般会計予算の総額は千八百七十二億円で、前年度に比し五百五十三億円、すなわち、四二%の大幅の増加であります。質疑の要旨は、「日本の農業は、今明らかに曲がりかどに立たされている。第二次あるいは第三次の産業部門の著しい発展に比べてはるかに取り残された部門となり、しかも、この格差は所得倍増計画によって拡大するばかりである。すなわち、計画によれば、鉱工業の成長率は年々一一%であるのに、農業は二・八%にすぎず、しかも、計画の初年度たる三十六年度は、わずかに一%の伸びしか見込んでいない。また、十年間に十六兆円の行政投資のうち、農林関係はわずかに一兆円である。これでは、農民の所得は倍増できないのではないか。政府は、農業人口の減少を農業所得増加の大きな要素としているが、農業人口は減っても、農家戸数はほとんど減らない。現金収入を農業以外に求める第二種兼業農家がふえるという現象こそ、低賃金と農業低所得の原因でもあり、結果でもあると思われるが、いかん」というのでありました。これに対する政府の答弁は、「前年度より四二%も増額した三十六年度農林予算の中には、新農政を目ざした新規諸経費を相当程度計上している。新農政の眼目は、農業と他産業との格差を是正するにある。すなわち、構造の変化に即応して、生産を転換しつつ、農業の総生産を上げるとともに、農業従事者の生産を増大して他産業従事者の生活水準に均衡せしめんとするものである。これが今国会に提出した農業基本法の精神でもある。第一に、家族経営によって、しかも、自立し得る適正規模の専業農家を育成し、その農業の基盤を拡大していくことを中心に考え、これに対し資本装備その他近代化するに必要な施設を国において助成し、生産性の拡大をはかり、場合によっては、一部または全面協業によって近代化をはかるものに対して、同様これを助成することとし、一面、先進諸国におけるがごとく、農業労働人口が他産業に円滑に移行し、生産性が向上し、所得が増進するよう措置を講じていくつもりである。経済発展の過程において、農業生産の伸び率が他産業より多少おくれるのは、自然的または経済的制約によることが多い農業の本質上、やむを得ないと思う。貿易自由化、食糧管理、農産物の価格支持等の面において、一挙に急激な変革を加えることは、農業を破壊することにもなりかねないから、慎重にやっていきたい」とのことでありました。
 さて、質疑は、このほか、政治のあり方、国連外交、日韓、日中、沖縄の問題、文教の問題、科学技術、防衛、貿易、運輸交通に関する問題等、外交、内政の各般にわたって行なわれたのであります。また、政府の掲げる所得倍増計画については、審議を通じ、終始、質疑応答がかわされました。また、特に突発した右翼テロ事件に関連して治安対策について論議されたことを付言しておきたいと思います。
 かくて、本日、質疑終了後、日本社会党及び民主社会党よりそれぞれ予算の編成替えを求めるの動議が提出されました。その内容については、後刻本議場において説明されることと思われますので、省略させていただきます。
 次いで、討論に入り、採決の結果、両党の編成替えの要求の動議は否決せられ、本予算三案は多数をもって原案の通り可決されました。(拍手)
 私は、ここに、理事並びに委員各位の御協力によって本報告をなすに至りましたことを心から感謝申し上げ、委員長の報告を終わる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(清瀬一郎君) 昭和三十六年度一般会計予算外二件に対しましては、井手以誠君外十五名から、三件の編成替えを求めるの動議が提出されております。
    ―――――――――――――
#9
○議長(清瀬一郎君) この際、その趣旨弁明を許します。長谷川保君。
  〔長谷川保君登壇〕
#10
○長谷川保君 私は、日本社会党を代表し、政府提出、昭和三十六年度予算三案の撤回を求め、また、これの編成替えを求める動議を提出し、その提案の理由を説明せんとするものであります。(拍手)
 私が、昭和三十六年度予算を一見して、直ちに連想いたしましたのは、雑貨屋の店頭と肉屋の店頭でありました。なぜ私がこのようなおかしな連想をいたしたのでありましょう。
 御承知のように、池田内閣は、三十六年度予算編成にあたり、減税と社会保障と公共投資の三本の柱を立てたと言われたのであります。この三十六年度予算を組むために、政府は、三十六年度税収の自然増三千八百三十一億円と、産業投資特別会計の中から三十六年度分に振り向けられる二百四十億円と、これに減税分六百二十八億円を加え、計四千六百九十九億円の財源を用意し、この一三%余の六百三十六億円を社会保障費の支出増に、同じく一三%を減税に回したのであります。でありますから、世論は減税を細い柱だと言うたのであります。
 さて、社会保障費の増六百三十六億円でありますが、予算委員会における古井厚生大臣の答弁によりましても、このうち二百八十億円は当然増分であります。また、七十四億円は、医療費の一〇%アップによりまして医師のふところに入るので、いわば物価値上げで、社会保障の実体が何らよくなるわけではありません。(拍手)残りは二百七十億円でありますが、これからさらに医療費一〇%アップのはね返りである患者の自己負担分六十五億円と保険者負担分七十九億円を差し引きますと、残りは百二十六億円となり、もし今日伝えられるがごとく、結局において医療費のアップが一五%くらいに落ちつくとすれば、その国民へのはね返りを社会党の言うように全額国庫負担にしない限り、国民の側から見れば、この残り分も全部吹っ飛んでしまうのでありまして、社会保障費増額の六百三十六億円はなかったと同じであります。なるほど、今回の予算で生活扶助の保護基準を一八%上げる結果、標準五人世帯で一カ月千七百三十二円上がり、失業対策の労務者賃金が一日五十二円上がりますが、この間まで一本十五円であった大根が、このごろは六十五円、白菜一個七十円、魚の薄い切り身が七十五円にはね上がっております。池田さん、うそだと思ったら、家へ帰って奥さんに聞いてごらんなさい。牛乳が上がる。汽車賃が上がる。郵便料金が上がる。授業料が上がる。政府は、所得倍増でも消費者物価は一%しか上がらないと言うけれども、あっちでもこっちでもアップ、アップで、これでは土左衛門になってしまいます。(拍手)児童手当も母子年金も吹っ飛んでしまいます。
 精神病、結核、老人対策等、ごてごてと並べ立ててはいますが、精神障害者百三十万人、このうち、直ちに入院を要する者四十三万人に対し、三十六年度予算におきましては、わずかに八千八百ベッドを作ろうというのであります。老人対策にいたしましても、直ちに施設に入院を要する者三万九千人、しかも、この数は急に激増するというのに、老人福祉対策費、四百五十ベッド分、四千九百二十四万円しかありません。
 四月一日から皆保険になりますが、全国の一千百八十四の無医地区のために二十三台の診療自動車と二隻の船を、また、二千四百二十四の無歯科医地区にたった二台の歯科診療自動車を巡回させて診療させようという、この予算が千八百四十七万円なりであります。これでは、この地区の被保険者は年一回の診療も不可能で、一年のうち三百六十四日は一斉休診になって、保険料はただ取られるというのでありましょう。(拍手)
 同じ四月一日から拠出国民年金が始まりますが、厚生白書が示す通り、約八百五十万人の低所得階層の人々にとって、一世帯一年四千円の保険料を三、四十年にわたってかけ続けることは至難のことで、これは社会保障どころか、保険料のただ取りになりかねないでありましょう。(拍手)池田内閣の社会保障計画では、所得倍増の最終年、昭和四十五年においてさえ、今日の西欧諸国の社会保障の最低基準に達しない、と政府の厚生白書さえが書いております。これが池田内閣昭和三十六年度予算の社会保障の実体で、まことに雑貨屋の店頭のごとくに、ごてごてといろいろな生活必要品を並べてはありますが、どれもこれも、昨年のものに少し手や足をつけた、ほうきや、ちり取りや、紙くずかごや、足のかかとの皮をこする軽石のような、安い値段のものだけを並べたものであり、国民の目先を変えているにすぎないのであります。
 もう一本の柱、減税はどうでありますか。三十六年度予算、減税六百二十八億円、これについては多言を要しません。公共料金の引き上げが六百二十一億円、これだけで減税は差引ゼロになるのであります。ところが、大資本にとってはどうでありましょうか。予算委員会で、わが党の井手委員の質問に答えて、政府は、国税の租税特別措置による減税額は、三十五年度当初予算ベースで千四百七億円に上る見込みでございます、と、ぬけぬけと答えています。ところが、諸君、これだけではないのです。これは三十五年度当初予算の見込みで、その後の自然増収の伸び少なくとも千八百億円、これが地方税にはね返り、地方税の自動的減税四百億円、合わせて二千二百億円三十六年度はさらに伸びることは、火を見るよりも明らかであります。勤労大衆へは、片手で減税を出して、片手で公共料金のアップでこれをまた取り上げ、大資本に対しては、減税のげの字も言わないで、国民の目をかすめて、二千二百億円の大減税を今なおしているのであります。羊頭を掲げて狗肉を売るというが、勤労大衆には減税の羊頭を掲げて、犬の肉を食わせ、大資本には裏口からこっそり霜降り牛肉をただでくれる、これが、私が予算を一見して、肉屋の店先を思ったわけであります。池田内閣が吹きまくった社会保障と減税の二本の柱は、かくのごとき幽霊であるのであります。
 しかるに、残る一本の公共投資の柱は、太い太い丸柱のようです。公共投資三千五百七十九億円、財政投融資計画から公共事業へ回される二千二百三十三億円を加えると、五千億円をはるかにこすわけであります。三十六年度財政投融資の半分は、文教施設、厚生福祉施設、上下水道、住宅等、国民生活に直結するものだと、いかにも恩着せがましく吹聴しておられますが、そんなことは、あたりまえどころではない、まだこれでは足りないのでありまして、この資金の原資を見れば、労働者のかけた厚生年金や、零細な農民や自営業者がかけた国民年金の積立金、おかみさんたちのへそくりの郵便貯金や簡易保険が八〇%も占めている。道路や港湾を作り、運輸、通信、農林漁業や地域開発に使う、どれもこれもけっこうだし、この公共投資をてこにして、生産を興し、所得倍増の道を踏み出し、国民生活を改善するというのも、わからないではないが、その資金の公正妥当な配分が、独占資本のかいらいの池田自民党政府に、はたしてできるかどうか。東海道新幹線の線路がひん曲がって羽島駅ができたり、道路の整備でウエートの急減している沿岸輸送港を整備するために、復活折衝の増ワク分の四分の一を使う等、すでに選挙目当てや利権の臭気ふんぷんたるものも感ぜられ、この公共投資予算は、たとえていえば、だんなが男衆や女中さんたちのへそくりを巻き上げて、大きな待合、料理屋を建て、長火鉢の前にどっかりすわり、大もうけをし、ぜいたく三昧をして、お前たちもここで働けるからよいではないかというがごとき、大資本本位のやり方だと言って間違いないと思うのであります。
 そのほか、政府提出、三十六年度予算を分析してみますと、看板と内容とは大違い、至るところ不満だらけで、勤労国民大衆の結合体であり、勤労国民大衆の利益を守る社会党といたしましては、この三十六年度予算はいただけないのでありまして、これは組み替えを要求しなければならないのであります。しかし、選挙の直後でもあり、与野党ともに話し合いの政治をすると公約したことでもありますから、わが党は、忍びがたきを忍んで、どうやら憲法を満たす最低限度の社会保障費等の修正を申し入れ、両三日にわたり、党首会談までいたしたのでありますが、自民党は理不尽にもこれを承知いたしません。今は、正々堂々、ここに予算編成替えの動議を提出し、社会党の主張を明らかにし、諸君の御審議を願い主権者である国民諸君の審判を願う次第であります。(拍手)
 さて、わが党は、この予算組み替えによりまして、特に次の四大政策目標を達成しようと企図するものでございます。
 その第一は、国民の所得格差の根本的な是正であります。最近のわが国の経済は、かなりの速度で成長を遂げ、国民所得も増大しております。しかし、この過程で、所得格差、地域格差は拡大の一途をたどっています。政府が、経済成長によって生み出された租税自然増収等の財源を公共投資を最重点として支出しようとしていることは、大企業の成長のみを促進し、格差を一そう拡大させるという悪循環を生み出すものであります。よって、わが党は、特に大衆減税の幅を拡大するとともに、大企業、高額所得者からの正当な租税の徴収を強化し、これを社会保障、農林漁業や中小企業対策、文教の充実等に充てるのであります。
 第二は、防衛費を削減し、経済を平均的に改造せんとするのであります。わが国憲法の精神に基づき、防衛費を大幅に削減し、自衛隊を改編して平和国土建設隊を創設し、国土開発に関連する公共事業を重点的かつ効率的に施行しようとするのであります。
 第三は、消費者物価の安定であります。自民党政府の経済成長政策は、所得倍増ではなくて物価倍増をもたらしており、特に、その犠牲は低所得者階層に強くしわ寄せされています。よって、わが党は、特に、国鉄、郵便等の公共料金の引き上げを阻止するとともに、勤労大衆の立場からの消費者を守る行政を強化し、一般諸物価の上昇を防止しようとするのであります。
 第四は、財政投融資の運用方法の根本的転換をはからんとすることであります力財政投融資の原資は、国民の税金、郵便貯金、簡易保険、国民年金、厚生年金等、国民の零細な資金の積み立てたものであります。ところが、自民党政府は、この資金を開発銀行、輸出入銀行等を通じて大資本への長期低利融資に充てています。また、産業基盤の強化のためと称して、道路や運輸通信施設、工場敷地等の建設に向けておりますが、これも大資本の経済活動に奉仕せんとするものであります。これに対し、中小企業や農漁民への財政資金の供給はきわめて少額で、金利は高いのであります。勤労者福祉厚生施設への還元融資すらも、資本家の労務対策のために運用されています。本来、国民の資金たる財政投融資の運用は、全く転倒しており、国民の利益に合致しておりません。よって、わが党は、大資本への供給資金を国民生活向上のための資金に大きく転換させるとともに、その利子引き下げをはかり、また、財政投融資との関連で、民間資金の民主的規制を行なわんとするのであります。
 以上の四つの政策目標は、わが党の長期政治経済計画の方向に沿うものであり、また、こうした方向によってこそ初めて財政金融政策を確立することができると確信するものであります。(拍手)
 次に、組み替えの要綱を申し上げます。
 まず第一に、歳入につきましては、所得税は、基礎控除引き上げ、配偶者控除新設、扶養控除、給与所得控除の引き上げ、小規模事業所得者の特別勤労控除新設等により標準世帯課税最低限を、給与所得者四十六万円、事業所得者四十一万円に引き上げる。寡婦、障害者、老齢者、勤労学生等の税額控除を七千円に引き上げる。白色申告者も含め、農民、中小商工業者の自家労賃控除一人十二万円を認め、退職所得控除の限度額を五百万円に引き上げる。法人税は、中小法人に軽減税率を適用し、同族会社の留保所得課税の特例を廃止し、資本金一千万円以下の中小企業償却資産の耐用年数を一律三割短縮し、生活必需物資等の物品税を廃止する。大衆酒、入場税、通行税の軽減、教育、社会事業、科学研究等への寄付は課税所得から控除する。以上により、総額約千七百三十二億円の大衆減税を行ないます。また、所得税の税率を百四十万円以上累進度を強化し、所得五百万以上の法人税率を四〇%に引き上げ、大資本本位の租税特別措置等を整理し、ゴルフ税、富裕税を新設する等により、総額約二千百五十八億円の増収をはかります。
 第二に、歳出につきましては、防衛庁費のうち、人件費、物件費、施設費等を減額し、国庫債務負担行為並びに施設提供費を削除する。旧軍人恩給費につき、階級差の是正と受給者余命率により、交付公債による打ち切り補償を行なって、三十六年度支給額を節減し、公安調査庁、憲法調査会、国防会議、内閣調査室等の反動機構の経費を削除する。公共事業費の使用方法の改善及び平和国土建設隊の活用により、事業量を減ずることなく予算を節減し、国民年金費のうち、拠出制年金の施行を延期し、その負担金、交付金等を削減する。森林開発公団への出資を削除し、反動教育のよりどころとなろうとする教育会館設置費を削減する。以上によって総額二千六百七十二億円の支出の節減を行ないます。
 さらに、自衛隊の改編により平和国土建設隊を創設し、国土の大規模調査、土地利用区分の設定、この区分に基づく開発を実施するとともに、これを基幹として公共事業の能率的運営を確保する。この経費は防衛庁費の残額の一部をもって充当する。
 国民生活の安定と低所得階層の所得水準引き上げのため、生活保護基準を五割引き上げる。拠出制国民年金の実施を延期し、福祉年金の給付額を引き上げる。失業対策賃金を五割引き上げ、失業保険の給付期間を延長する。医療費引き上げの国民負担をやめて、国保、健保、日雇い健保の国庫負担を引き上げる。第二種公営住宅の建設戸数を増加し、未解放部落対策を飛躍的に強化し、また、社会福祉職員を増員して、その給与を引き上げる。原爆被害者対策の強化、母子福祉貸付金の増額、小児麻痺対策を強化する。これらに要する支出増一千六百八十三億円といたします。
 農林漁業の生産性を高め、農漁民の所得水準を急速に引き上げるため、国土の科学的調査により土地利用区分を定め、農地造成、土地改良、農地集団化等の農業基盤を強化する。農業経営の近代化、共同化を促進するため、農業サービス・センター、農業機械化ステーションを設置し、主要農畜産物の価格支持の強化と流通機構の整備、農業災害補償制度の抜本改正による農民負担の軽減と所得補償の原則の確立等を行なう。沿岸漁業振興のためのつきいそ、魚礁設置、魚価安定基金及び水産物販売購買事業団の設立出資、漁業サービス・センター等を設置する。また、農林漁業金融公庫の原資を五百億公募し、これに利子補給をするとともに、農協系統資金一千億円を農業経営近代化のため農業への還元融資に充て、これに利子補給を行なう。これら農林漁業対策に六百四十億円の増額支出を行ないます。
 中小企業対策強化のため、中小企業総合サービス・センターを設置して、小、零細企業への総合指導を行ない、中小企業近代化基金を設置して、新技術、新設備導入を促進し、勤労性事業の共同化による小組合の組織を進める。国民金融公庫、商工中金へ出資し、原資を増加し、また、貸出金利を引き下げる。これらに対して約二百四十億円増額支出する。
 教育に関連する父兄負担の軽減と教育の機会均等を進めるため、義務教育費の国庫負担を増額し、文教施設の整備、小、中学校、高等学校の増設をする。育英事業を拡充し、私学を助成し、授業料の引き上げを防ぐ。僻地教育の振興、教科書の無償配布、学校給食のパン、牛乳に対する補助の増額、また、果実給食の補助を行なう。これらに要する支出増三百四十五億円とする。
 東南アジア諸国との農業、中小企業の技術協力等に十五億円。科学技術及び発明の振興、発明開発公団の設立等のために七十五億円増額。石炭鉱業の総合開発、石炭流通の合理化、石炭離職者対策強化等のため百三億円を増額支出する。離島振興強化のため十億円増額。防犯のための街灯設置補助十五億円増額。公共料金の引き上げ防止のため、国鉄公社に対し公共負担分及び公募債利子負担分を繰り入れ、また、郵政特別会計に繰り入れを行なうための増額約二百八十七億円。地域的格差是正のため、後進地域開発のための調査及び事業調整のための支出増三十億円。三税収入の増に伴い、地方交付金の増額約二百四十四億円。各種の制度的改革に備えて、予備費約三十億円を増額する。一般公務員及び公企体職員のベース・アップ、生産者米価の引き上げについては、医療費の一割をこえる引き上げ要求とともに、労働者、農民等の戦いを支援し、必要な予算措置を追加することといたします。
 最後に、財政投融資の問題でありますが、国民の零細な積立金及び社会保険積立金等で構成されておる財政投融資の独占資本本位の運用を改め、これを地域、産業、階層間の不均衡是正や雇用の拡大等、国民の利益のための運用に転換いたします。
 まず、開発銀行、輸出入銀行、電源開発株式会社の原資のうち、資金運用部資金を四百二十億円削減し、これを中小企業金融公庫百億円、住宅金融公庫三百二十億円資金増額に充て、一般住宅融資及び農山漁村住宅改善融資それぞれ五万戸分に充てる。なお、開発銀行、輸出入銀行、電源開発株式会社等は、民間資金規制により、生保、損保の民間資金を公募して原資を補充する。農林漁業金融公庫は、農林中金、信連等の余裕金五百億円を吸収して原資を拡大するとともに、一般会計より二十億円を受け入れてその利子補給に充て、農業経営共同化に対する長期低利融資を強化する。国民金融公庫及び商工中金は、それぞれ一般会計よりの出資五十億円ずつを受け入れ、特に零細企業への低利融資を強化する。厚生年金及び国民年金積立金の還元融資については、労働金庫等を経由する被保険者の自主的運用の道を開く。国鉄の運賃を値上げせずに、新規建設分の資金を調達するため、民間資金の公募を三百五十億円増額するとともに、これに対する利子負担を軽減するため、二十五億円を一般会計から受け入れることとします。
 以上、勤労階層の結合体たるわが党の政策を明らかにしつつ、三十六年度の予算案の編成替えを求める動議提出の趣旨を明らかにした次第でありますが、何とぞ、自民党、民社党議員諸君におかせられても、この堂々たる日本社会党の組み替え案を御理解いただき、御賛成賜わらんことを希望いたしまして、私の趣旨弁明を終わります。(拍子)
    ―――――――――――――
#11
○議長(清瀬一郎君) これより予算三件に対する討論と編成替えを求むる動議に対する討論とを一括して行ないます。順次これを許します。愛知揆一君。
  〔愛知揆一君登壇〕
#12
○愛知揆一君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました昭和三十六年度一般会計予算外二件に対し賛成し、日本社会党提案の予算組み替え案に反対の討論を行なうものであります。(拍手)
 まず、私が本案に賛成いたします最も大きな理由は、わが自由民主党が昨年の総選挙において国民諸君に公約いたしました数多くの重要政策が本予算案においてことごとく実現を見ておるということでございます。(拍手)
 総選挙における公約の中心的課題は、国民所得の倍増を目ざす新しい経済成長の政策でありますが、わが党の考え方は、あくまでも自由経済の原則の上に立つものでありまして、計画を実現する原動力は、あくまでも国民であります。政府としての任務は、国民経済の持つ潜在的な成長力を正しく評価しながら、成長の要因を積極的に培養して経済の成長を促進し、一方、成長を阻害するいろいろの要因を排除して、何人にも明るい希望が持てるような環境を作ることであります。(拍手)しこうして、今日特に心すべきことは、国民の所得階層の間、農業と非農業との間、大企業と中小企業との間並びに地域相互間に存在する生活上及び所得上の格差の是正に努めなければならないことでありまして、もってわが国経済の底辺を引き上げ、国民全体の発展と向上を期するのが政治の責務であると考えるのであります。政府が、三十六年度予算の編成にあたりまして、社会保障、減税、公共投資を初めといたしまして、農林漁業の近代化、中小企業、後進地域の開発促進、文教と科学技術の振興、貿易の発展等に特に重点を置きまして最大限の予算措置を講じておりまするのは、わが党の右申し述べました基本構想にのっとるものでありまして、私どもの心から賛意を表するところであります。(拍手)
 これら重要な点について、以下、きわめて簡単に御説明をいたしたいと思います。
 まず、たとえば減税を見てみますならば、わが党の公約による減税額は、国税、地方税を合わせて平年度一千億円以上であります。本予算案においては、国税のみでも千百三十八億円に達しておるのであります。特に、中小所得者の負担の軽減や中小企業の体質改善と経営の安定に諸般の措置が講ぜられておることは、特筆さるべきことであると思います。
 第二は、社会保障であります。この予算における社会保障関係費の総額は二千四百六十七億円でありまして、これは前年度に比べて三五%の大幅な増加でありますが、各省所管の予算のうちで、低所得層対策の経費を合算いたしますならば、昨年度に比べて実に約八百億円という飛躍的増加を見ておるのであります。(拍手)特に、生活扶助基準を一八%という大幅な割合で引き上げ、かつ、勤労控除も大幅に引き上げたようなことは、最近の改定が三%程度にとどまったことを顧みますならば、いかに画期的なものであるか、特に強調に値するものと思うのでありまして、私どもは、こうしたことが、いわゆる防貧対策というものに巨歩を踏み出したものと信ずるのであります。そのほか、生別母子世帯の児童扶養手当制度が創設されるというような、各般にわたって、きわめてきめのこまかい施策が充実しておりますることは、たくましく成長する経済のらち外にありまする不幸な人々の前途に明るい希望を約束するものでありまして、私は衷心から賛意を表するところであります。(拍手)
 第三は、公共投資でありますが、いわゆる社会資本の充実は、政府のなすべき最も重要な役割であります。三十六年度においては、民間設備に比較してはなはだしく立ちおくれぎみにありました公共施設の整備拡充はきわめて促進され、ことに、道路、港湾においては新五カ年計画が策定されまして、巨額の行政投資が行なわれます。また、産業用地の造成と工業用水の確保についても顕著な前進を示しておるのであります。
 後進地域の開発について一言いたしますならば、公共事業費と公共投資の全般を通じて、まず、事業の配分に格段の配慮が加えられております。また、公共事業費の国庫補助率を引き上げ、地方負担率を引き下げ、いわゆる特例措置が講ぜられますことは、国税、地方税を通ずる工場進出のための優遇措置とともに、後進地域の所得の格差是正に対して多大の貢献をなすものでありまして、まさに、わが意を得たものでございます。(拍手)
 農林漁業におきましては、需要に適合した農産物の導入と近代化に重点を置いて、前年度に比べ四二%増の大規模な予算が編成せられております。麦の作付転換対策、畜産物事業団、農地信託制度、農協資金の活用による農業経営近代化資金の創設、これらは農林漁業の体質改善と近代化へ大きく踏み出したものでありまして、農業基本法が制定せられることとともに、私は、新味のあふれる施策の展開と申すべきものと思います。(拍手)私は、こうした政策は、コルホーズや人民公社方式を連想させるかのごとき社会党の政策とは全く対照的なものでありまして、農村に明るい希望を与え、また、農業が企業としてりっぱにやっていけるところの基礎を確立するものであることを確信いたします。(拍手)
 次に、財政投融資につきましては、本来、これは民間融資に依存すべき民間企業が、その資金の多くを財政投融資に依存するのは好ましいものでないのであります。ところで、三十六年度の計画におきましては、総額七千二百九十二億円のうちの実に八割以上は、生活環境の整備や、厚生福祉施設や、中小企業や、農林漁業や、国土保全や、あるいは後進地域開発等の国民生活の安定向上をはかる部門へ配分せられまして、従来より画期的に改善せられておりますことを、私は心から喜ぶものであります。(拍手)
 また、今回誕生いたしまする拠出制国民年金等の長期の社会保険資金は、一括して郵便貯金等と区分せられ、そうして、原則的に、国民生活の安定に直結した部門に配分せられることになりまするのは、きわめて妥当な企てであると存じます。(拍手)
 以上は、きわめて簡単でございますが、一覧いたしました本予算案の内容でございます。
 この予算の性格は、健全予算の性格を持ちます。歳出の一切は租税その他の普通歳入によってまかなわれ、赤字公債の発行や、過去の蓄積を食いつぶすがごとき措置はとられていないのでありまして、収支均衡を得たものであります。また、一般会計の規模は一兆九千五百二十七億円でありまして、前年度の当初予算に比べれば二四%の増加でありますが、補正を加えれば一〇・六%であり、国民総生産見込額に対比してみまするならば、その比率は一二・五%であって、前年度あるいは前々年度、あるいはその前数年に比べましても、むしろ低いとも言えるのでございます。(拍手)また、政府の財貨サービス購入の国民総支出に対する比率にいたしましても、一九・三%でありまして、前年度とひとしく、三十四年度よりは低く、実に昭和八、九年ごろにひとしいようなものでございまして、これは国民経済に対する財政の比重として、私は妥当なものと認めるのでございます。(拍手)
 私は、実は、原則論としては、予算の規模が実力以上に過大になるようなことは厳に慎むべきものであると考えまするが、かくのごとき状態でございますから、この予算案を目して、超大型であるから景気を刺激するおそれがあるなどという議論をする人がもしあるとするならば、それは、この予算の背景をなすところのわが国経済が近年著しく拡大されておるという事実に十分な認識を持たないか、あるいはまた、適正な評価を欠いておるものと申さなければならないのでございます。(拍手)事実、わが国経済は最近驚異的な成長を続け、さらに、三十六年度においても、個人消費の堅実な伸びと財政による適度な需要と相待って、九ないし一〇%程度の成長が可能と見込まれる反面、即売物価は弱含み横ばいで推移されるものと予想されておるのでございます。
 以上のような観点から、私は、本予算三案は、内容からいっても、規模からいっても、あるいは性格から申しましても、わが国の現状に顧みて最も適切な予算であり、希望に満ちたものであると確信をいたしまして、この三案に心から賛意を表する次第でございます。(拍手)
 ただ、一、二、政府にこの予算の執行その他について、この際御留意を願いたいところがございます。それは、一つは、行政を運営する面におきまして、その能率化をはかっていただきたいこと、それから、公共投資が増大するにつきましては、その運用の効率化が大切であると思うことであります。また、政府の目ざす経済成長率に見合うような民間の設備投資のあり方等について細心の注意を払っていただきたいと思うのであります。また、今次の予算におきまして、国鉄運賃等の一部公共料金の値上げが認められ、また民間におきましても、サービス部門の一部料金の値上げ等が行なわれておるのでございます。私は、従来不当に押えられてきた国鉄運賃の合理的改定のごときは、長期にわたる経済成長政策の達成上、これら公企業体が与えられた機能を円滑に遂行するため、むしろ当然と考えるのでございます。また、生産性の向上によって賃金の上昇を吸収し得ないサービス部門における手間賃等の適正な値上げは、これらの職業に従事する人々の所得の増加という点からも、これを容認するにやぶさかではございません。しこうして、これらが消費者物価に影響するところはきわめて僅少であります。このことは、最近数年間にわたる実績に徴し、わが国における国民所得の伸びが消費者物価の伸びをはかるに上回っておるのであります。政府の説明するがごとく、世界で最も安定しているといわれる西ドイツにおいてさえ、国民所得の伸びが四割に対し、消費者物価が九・九%上昇したその数年の間に、わが国の所得の伸びは四九%、これに対して消費者物価の上昇はわずかに四・一%にとどまったことによっても明らかでございます。(拍手)しかしながら、物価の問題は、統計や数字の説明だけでは必ずしも国民の実感に触れた共感を呼び起こすことは困難な場合がございます。政府におかれては、まず、物価に対する基本的な長期にわたる考え方を一そう明らかにし、国民に対し行き届いた解説に努めるとともに、生活の実感に触れるような適切な対策を常に用意しておく必要があろうかと存ずるのでありまして、慎重なる考慮を望むものであります。
 次に、日本社会党の組み替え案に対して検討を加え、反対の趣旨を明らかにいたしたいと思います。
 今回の予算案に関し、自民、社会両党首の会談が持たれましたことは、わが国政治史上画期的なことでありまして、両党首共同の談話にあります通り、この会談は国会を正常に運営していく上に大きな前進を示したものでありまして、皆様と喜びをともにする次第でございます。
 ところで、問題は、その修正の内容でございます。たとえば、社会保障の拡充はわが党の最重要政策であり、本予算案は、すでに詳しく述べたごとく、その経費を飛躍的に増額しておるのでございます。しかし、それにしても、かりに社会党との間に適当な財源措置に話し合いがつけば、さらに検討を加える余地がないでもなかったでありましょう。しかし、財源については、社会党は防衛費の削減を固執せられたのであります。防衛費の削減は、いわば社会党のお家芸でありましょうが、防衛費の対前年増加額二百億円は、給与費と国庫債務負担行為の歳出化等、義務的経費の増加によるものでありまして、これを削除というのは、自衛隊の機能をとめるものにほかならず、全く非現実的な提案であります。(拍手)そもそも、三十六年度における防衛費の総歳出に対する比率は九・一%であり、国民所得に対する比率はわずか一・四三%にすぎないのであります。しかも、こうした比率は、今年度は昨年度よりも低くなっております。昨年度は一昨年度よりも低くなっておるのでございます。三十五年度の総予算に対する比率九・八、国民所得に対する比率一・四八より本年は低下しておるのでありまして、安保改定後において、かえって防衛費に対する国民の負担割合が減少しているというこの事実を、私は、ここにあらためて指摘するものであります。(拍手)このことは、一つには、今日、本予算案のごとき輝かしき成長予算が、日米安保体制と最小限度の防衛費の可能の上にこそ初めて編成されていることを、何よりも明らかにしておるものであります。(拍手)
 さて、社会党は、一たび修正の話し合いが不調となりまするや、一転して、本来本質的に性格の異なる組み替え案を例によってここに提案せられたのでありまして、この態度は、終始一貫しない、矛盾撞着するものといわざるを得ないのであります。(拍手)社会党の組み替え案は、産業に対する大幅な増税、自衛力の廃止を前提とする防衛費の大幅削減等、現実と全く遊離した内容のものでありまして、実際の政治を責任をもって担当すべきものの財政政策としては、とうてい論ずる価値のないものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)また、組み替え案には、各種格差の是正、公共料金と消費者物価、財政投融資の運用等が問題にされておりますが、これらについては、政府原案において、総合的に、また、現実に即して可能なる限度で十分に組み入れられ、また、慎重に配慮せられていることは、すでに詳しく述べたところでありますから、これを繰り返す煩を省かせていただきます。要するに、組み替えの必要などは毛頭ないのであります。いな、絶対に組み替えてはならぬのであります。(拍手)
 私は、以上をもちまして、時間の関係もございますから、きわめて簡単でございますが、政府の原案に対し賛成をし、そうして、組み替え案に反対をするものであります。(拍手)
     ――――◇―――――
#13
○議長(清瀬一郎君) 本日は、時間の関係上、これ以上議事を進めることはできませんから、本日の議事はこの程度にとどめ、明五日午前零時五分より本会議を開き、本日の議事を継続することといたします。
 本日は、これにて延会いたします。
   午後十一時五十二分延会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小阪善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 古井 喜實君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        運 輸 大 臣 小暮武太夫君
        郵 政 大 臣 小金 義照君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 池田正之助君
        国 務 大 臣 小澤佐重喜君
        国 務 大 臣 迫水 久常君
        国 務 大 臣 西村 直己君
 出席政府委員
        内閣官房長官  大平 正芳君
        総理府総務長官 藤枝 泉介君
        労働政務次官  柴田  栄君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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