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1960/04/11 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第28号
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1960/04/11 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 本会議 第28号

#1
第038回国会 本会議 第28号
昭和三十六年四月十一日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十一号
  昭和三十六年四月十一日
   午後一時開議
 第一 特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時
  措置法の一部を改正する法律案(建設委員長
  提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
 日程第一 特殊土じよう地帯災害防除及び振興
  臨時措置法の一部を改正する法律案(建設委
  員長提出)
 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
   午後一時十一分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(清瀬一郎君) お諮りいたすことがあります。
 議員川島正次郎君及び赤城宗徳君から、欧米各国の政治経済事情調査のため、四月十九日より五月二十二日まで三十四日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#5
○議長(清瀬一郎君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。国務大臣安井謙君。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#6
○国務大臣(安井謙君) 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 銃砲刀剣類等は、その性質上、人を殺傷する機能があり、往々にして犯罪の用に供される危険性がありますので、過去におきましても、危害防止の観点から、銃砲刀剣類等について、事態に即して必要な法的規制が講ぜられて参ったのであります。ところが、遺憾ながら、最近において、銃砲刀剣類または危険な刃物を用いて暴力犯罪を犯す傾向が高まって参り、社会不安を引き起こしていると見受けられるのであります。政府におきましても、さきに暴力犯罪防止対策要綱を定めて、暴力犯罪の根絶のため総合的な施策を推進することとしたのでありますが、その施策の一環として、銃砲刀剣類等の所持や携帯に関する現行法の規定を整備いたしますとともに、警察官が取り締まりをする場合の権限等につきましても、現行法の中に明確な規定を設ける必要を認めましたので、この法律案を提出いたした次第であります。
 次に、本案の内容について御説明いたします。
 その第一は、飛び出しナイフについて、これまで所持の禁止をしていなかった刃渡りが五・五センチメートル以下のものにつきましても、比較的危険性の少ない形状のものを除いて、その所持を禁止することといたしたのであります。
 第二は、銃砲または刀剣類の所持許可の申請がありました場合、申請者の同居の親族に人の生命、財産または公共の安全を害するおそれのある者がいて、その者がその銃砲または刀剣類を使用して人の生命、財産または公共の安全を害するおそれがあると認められるときには許可をしないことができるようにし、また、一たん許可をした後にこのような事情が生じて参りました場合にも許可の取り消しができるようにいたしたのであります。
 第三は、従来、業務その他正当な理由のある場合を除いて携帯することを禁止されていましたのは、あいくち類似の刃物となっておりましたが、今回、このあいくち類似の刃物にかえて、原則として刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物とし、携帯禁止の対象となる刃物の範囲を広めるとともに、その概念を明確にすることといたしたのであります。
 第四は、警察官は、銃砲刀剣類等を携帯し、または運搬している疑いのある者が、他人に危害を及ぼすおそれがあると認められるときは、銃砲刀剣類等と疑われる物を提示させ、またはそれが隠されていると疑われる物を開示させて調べることができることとし、また、現に銃砲刀剣類等を携帯し、または運搬している者が、他人に危害を及ぼすおそれがある場合に、その危害防止のため必要があるときは、それを提出させて一時保管することができることとし、あわせて、その一時保管の手続について規定いたしたのであります。
 以上が改正法律案の趣旨であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(清瀬一郎君) ただいまの国務大臣の趣旨説明に対して質疑の通告がありますから、順次これを許します。宇野宗佑君。
  〔宇野宗佑君登壇〕
#8
○宇野宗佑君 私は、自由民主党を代表いたしまして、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案に関し、政府に質問を行なわんとするものであります。
 さきに、政府は、最近にけおる一般暴力犯罪の激増並びに昨年来相次いで発生いたしました一連の政治的暴力事件の経緯にかんがみ、犯罪防止基本対策要綱を決定されましたが、確かに、現下の暴力犯罪の趨勢は、もはや一日も放置するを許さない段階にきていると思料されます。すなわち、昨年度における殺人、傷害等の暴力犯罪の激増ぶりは全く百鬼夜行の観を呈し、昭和二十三年度に比べ、一般暴力犯罪においては約三倍、青少年暴力犯罪においては約八倍、しかも、その間、あまたの政治的暴力事件が発生するなど、まことにおそるべき件数を数うるに至ったのであります。つまり、終戦直後における国民生活の極度の疲弊こんぱいが著しい社会不安をかもし出しておりました時代よりは、はるかに経済も繁栄し、社会保障もまた拡充されました今日の方が、皮肉にも、より多くの暴力犯罪を許しているという現状を思い合わせますとき、すみやかにその根源を断ち切ることが目下の急務と申し上げなければなりません。(拍手)
 しかるに、現在の社会には、法を無視する者、暴力をふるう者の人権を尊重するのあまり、その被害者である肝心の善良なる国民の人権を軽視し過ぎる向きが多々あることを、私は、はなはだ遺憾とするものであります。(拍手)従いまして、暴力を一掃し、不安なき社会の実現によって、いよいよ国民生活の安定とその向上を期せんがためには、むろん、総合的な暴力犯罪防止策の樹立が肝要であります。なかんずく、その最も手近な方策として、暴力に直接使用される凶器そのものをこそ、まず厳重に取り締まる必要があることも、また、私は大いに痛感いたすものであります。(拍手)この点、昨年末、政府が全国的に実施されました刃物を持たない運動が相当なる効果を上げ得ましたゆえんも、人命軽視の風潮を除去せんとする民間の共鳴と協力によるところ大であったことを思いますとき、今回提出されましたいわゆる刃物規制法案は、それ自体が現下社会の要望に率直にこたえたものとして、まことに時宜を得た措置であると信ずる次第であります。(拍手)と同時に、この法案が、浅沼、嶋中事件以来、いろいろと検討を続けて参られました数ある暴力対策中、初めて政府が本院に審議を求められました具体案であることを思い合わせますとき、その意義もとより重要なることは、今さら多言を要しないところであります。
 以上の見解より、私は、まず、この法案に関しまして、次の諸点を明らかにせられんことを望みます。
 その第一点は、新たに追加されます第二十四条の二における警察官の調査権についてであります。
 もっとも、その趣旨が、他人の生命または身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる者に対する取り締まりの強化にあることに関しましては、適当なる措置とは存じますが、その場合、いわゆる凶器とおぼしきものを提示させ、または開示させ、あるいは、それらのものを、危害防止の必要上、一時保管することができるという条項は、憲法第三十五条に違反するのではないかという一部国民の疑惑に対し、政府はいかなる見解を有しておられるや、この際、明らかにされたいと思うものであります。このことに関しましては、さきに政府が設けられました暴力犯罪防止対策懇談会におきましても若干論議がなされたことを仄聞するのでありますが、その節、政府側は、憲法第三十五条の捜索及び押収は司法の手続を規定したもので、行政目的による任意調査はそれに抵触しない、との見解を示されておりますが、さすれば、行政上の処分という名目で司法上の処分がなされる可能性は存しないのか、以上の点に関しましては、総理の明確なる御答弁をお願いいたしたいと存じます。
 次に、同じく第二十四条の二が警察官の任意調査権を規定しているとは申せ、各ケースの認定法が、いずれも警察官の主観によってなされる危険性がありはせぬか、との疑義についてであります。
 この点、一部には、現行警職法に基づく職務質問によってもそれくらいのことは可能なりとの意見もありますが、現行法におきましては、凶器所持の有無に関する取り調べは、その者が刑事訴訟に関する法律によって逮捕されていない限り許されないという規定があるがため、あたら尊い人命の保護に万全を期し得なかったという幾多の悲惨な事例を、われわれは厳粛にこの際想起すべきであると存じます。従いまして、改正案がその不備を補わんとする趣旨より出たことに対しましては、それを認むるにやぶさかではありませんが、しかし、こうした警察官の権限は、たとうれば両刃の剣であります。すなわち、強過ぎれば乱用の弊に陥り、弱過ぎれば事件の予防に役立たない。そこに中庸を保つべき警察官の教養と良識が常に問題視されるゆえんも存するわけでありますが、この点、二十四条には、主観的認定の危険性ありとみなす批判に対し、国家公安委員長の御見解を伺うと同時に、こうした警察官の権限は、それを定める一般法である警職法において規定するのが本義かとも存じますが、その点に関する御見解を、あわせお聞かせ願いたいと存じます。
 第三点は、この改正案が、ただいまも触れましたがごとくに、去る昭和三十三年秋に提出されました例の警職法の再現であるという見方についてであります。
 もちろん、ためしに両法案を詳細に比較検討いたしますならば、そこにおのずから歴然たる差を見出し、何人といえども、この法案が断じて警職法の再現ではないというくらいの認識がひとしく持たれなければなりません。にもかかわりませず、戦前の国家警察の幻影を追うのあまり、暴力追放の世論にこたえて提出されましたこの法案すらが、またしても第二の警職法として喧伝されるがごときことがありましては、せっかくの政府の努力が実らぬばかりか、ひいては、それが、激増する昨今の暴力犯罪をして、さらに堂々白昼わがもの顔にばっこせしめる因ともなりかねないことを、むしろ私は憂えるものであります。(拍手)もっとも、先ほども申し述べました通り、昨年末の刃物追放運動が画期的な効果を上げ得ましたことをあわせ考えますと、今回も同様、民間の理解と協力を必要とすること、また論を待ちません。この点、政府といたされましても、国民の間に、この法案の趣旨を、より広くより深く浸透せしめ、もって所期の目的を貫徹されることが肝要かと存じますが、いかなる御見解をもってその理解を深められようとするのか、総理の御所信を承ると同時に、あわせて、国家公安委員長よりも、この際、刃物追放運動の効果に関する御報告を賜わりたいと存じます。
 第四点は、この法律が実施されるに際しまして、直接、間接に相当なる影響を受けるであろうと思われます刃物の製造及び販売業についてであります。
 もっとも、この法案の趣旨は、新たに定められました第二条及び第二十二条の示す刃物の所持並びに携帯を禁止するものであって、その製造、販売を禁止するものではありません。しかし、それだけに、まず刃物業界の協力を必要とすることは申すまでもありませんが、現に、刃物追放運動においてすら業者圧迫の声があったことを思いますと、本法律の実施に伴う刃物業界の生産、販売に関する影響をいかにお考えになっているのか、この点、政府に何らかの御配慮がありますならば承っておきたいと存ずる次第であります。
 第五点は、法によって新たに幾つかの刃物の所持、携帯が禁止されましても、不健全な映画、演劇、放送、出版物等において、依然、刺激的な刃物による殺傷場面が謳歌され、あるいは暴力犯罪をつちかう不良有害環境が野放しにされておりましては、それが青少年に与える影響はきわめて重大なりと申さねばなりません。(拍手)現に、昨今の青少年犯罪、すなわち、十代、二十代の犯罪指数が総犯罪の七一・三%を占めているという事実にかんがみましても、わが国の犯罪撲滅対策はまず青少年問題より解決せねばならないとさえ言い得るわけであります。この点、総理も、去る二月初旬の嶋中事件に関するわが党佐々木議員の質問に対し、青少年教育の重要性を強調され、法務大臣また、少年犯罪の総合的研究調査の推進と、それに対するすみやかなる措置を約束されたのでありますが、その後約二カ月をけみしました今日、この問題に関し、いかなる検討を加え、また、具体策を得られましたか、総理を初め法務大臣、国家公安委員長、及び、今回は特に文部大臣に対しましても、本問題に関する学校教育、社会教育方面における御所信のほどをお伺いいたしたいと存じます。
 最後に、重ねて総理並びに法務大臣に対し、嶋中事件以来の宿題とも申すべき政治的暴力防止立法に関しお尋ねいたします。
 もっとも、政治テロは、よって来たる何らかの原因があるなればこそ起こるものであって、法的規制のみがそれを防止するすべてではないとは存じますものの、さりとて、今なお印象の消えやらぬ、あのなまなましい幾多の事件を思い合わせますとき、厳正なる根本立法が必要であり、この刃物規制法のみが唯一の立法措置ではないと思考いたします。特に、最近、社会党並びに民主社会党より、同趣旨に基づくそれぞれの法案が提出されましたことを契機といたしまして、世論も再びこの問題に関する政府の出方を注目するに至ったのであります。そこで、これが対策といたしましては、政治的暴力を規制いたしております唯一の法律とも申すべき現行破防法を厳格に適用するか、あるいはまた、現行破防法をもってしては不十分なりという見解がありとせば、それを改正するか、もしくは他に特別立法を考慮する、以上三つの方法が考えられるわけであります。これに関し、法務大臣は、過般、破防法改正の意向を漏らされたこともございましたが、ごく最近に至りましては、特別立法を考慮されているやにも承ります。もちろん、その過程においては、いろいろと慎重を期せねばならない重要問題もございましょうが、では、今日、ただいま、それに関し、法務大臣はいかなる見解と所信を抱いておられるや。この際、総理にも本問題に関する御所信をあらためてお伺いいたしておきたいと存ずる次第であります。
 続いて、総理に、さらに一言お尋ねいたします。
 最近の世論の動向を考えますと、事、治安立法、特に政治的暴力防止立法に関しましては、すべからく超党派的たるべしという意見が、急激に強まって参りました。確かに、暴力対策に関する多くの主張を見まするに、顧みて他を言う一面的な論議が多く、このことについてさえ思想の混乱、不統一を来たしていると思われる節が多々あります。しかし、その中から総合的、客観的にも中庸を得た対策を抽出してこそ、真に恒久的な暴力追放の実が上げ得られると存じます。特に、民主主義の敵とも申すべき政治目的のための暴力行為に関しましては、左右、個人、集団のいずれをも問わざる公平にして厳正なる規制があって、初めてその目的を達し得ると確信するものであります。(拍手)現に、池田首相、西尾民主社会党委員長はもちろん、最近就任されました河上社会党委員長も、互いに強く暴力追放の主張を繰り返し繰り返し叫んで参られました。およそ、善良なる国民たる以上、この御三人の主張にはだれしもが共感を覚えたことでございましょう。しかし、現実は、今なおその暴力の横行を許し、今や、わが国の民主主義は、それを撲滅し得るかいなかの重大なる試練に直面しているのであります。では、その試練にいかにして耐え抜き、また、それを克服するか、われわれに課せられた使命はまことに重要であり、そこには一片たりとも従来のマンネリズムに陥った党利党略があってはならないと確信いたします。(拍手)しかも、相互に、この議会制度、この民主主義を末長くわが国に保持し続けることを信条といたしております以上、暴力追放のためには、与党たると野党たるとを問わず、互いに虚心たんかい、従来の行きがかりを捨て、自我を折り、その主張の最大公約数的な結論を見出すことが緊急欠くべからざる要件ではないかと信ずるのであります。
 以上に関します総理の確固たる御決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#9
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 本法と憲法三十五条との関係でございまするが、御承知の通り、憲法三十五条は刑事手続に関するものでございまして、本法に定めておりますのは行政目的のための手続でございます。直接に関係はございません。しかし、事、強制的な権限を内容とするものでございまするならば、もちろん、憲法三十五条の規定を尊重しなければならない。本法は強制的権限を内容としておるものではないので、相手方の意思に基づいて物件の提示、開示、あるいは、要すれば提出を求めるもので、あくまで相手方の意思によることになっておりますから、憲法三十五条の規定の適用はないと考えております。
 なお、次に、本法の改正は警職法と同じものである、こういう疑問もあるかもわかりませんが、お話のように、よくごらん下されば、警職法とは違うわけでございます。この点につきましては、本会議あるいは委員会におきまして十分論議を重ねて、PRしていただきたいと考えております。
 なお、暴力犯罪につきましては、お話の通り、社会党、民主党からもすでに提案になっているのであります。私は、こういう各党の法律案の内容を検討しながら、私自身も十分検討いたしまして、りっぱな暴力犯罪防止についての法案の制定を期待いたしておるのであります。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#10
○国務大臣(安井謙君) 本法の二十四条の二の調査及び一時保管につきまして、警察官の乱用というような心配はないかという御質問でございますが、これは、あくまで調査は任意調査の限界を守ることにいたしまして、刃物を持つと疑うに足る人が、周囲の状況上他に被害を加えるという合理的な判断によって任意調査をやるのでございまするから、これは決して乱用になるようなことはあるまいと思っております。また、乱用につきましては、警察法の二条あるいは六十三条等で十分に戒めをしておるわけであります。
 なお、刃物を持たない運動の成果につきましては、昨年、一カ月の間に三万数千件の任意な刃物の提供がございまして、いろいろと効果を上げておる次第でございます。
 業者の圧迫にならないかという御質問につきましては、刃物そのものの効力を否定するものでないのでございまして、危険な方法において、危険な形のものを禁止するということで、この点は十分の留意をいたしておるつもりでございます。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#11
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。
 法務省所管におきまして、青少年問題について、その後具体的な何らかの対策を講じておるかという御質問が第一でございます。法務省の所管といたしましては、罪を犯した青少年の検察の問題、さらに、それの矯正保護の問題を取り扱っておるわけであります。こうした問題につきましては、もちろん、関係の機関、たとえば、家庭裁判所でございますとか、あるいは警察当局でございますとか、その他と密接な連絡をとりながら、常にその原因の探究をまず考える、そして、その原因に対して、今後とも一そうその原因除去についての施策を関係当局と手を握って対処して参りたい、かように考えておるわけであります。先般通りました予算におきましても、これらの関係の、たとえば、検察、矯正保護の各部門におきまして、皆様の御協力によりまして、人員の増加、経費の若干の増加、いずれも十分ではございませんが、われわれとしては、これらの措置によりましてその機能の強化をはかって、そうして、今後一そうの万全を期して参りたい、かように考えておる次第であります。
 なお、第二の御質問の、政治的な暴力問題その他一般暴力問題について破防法の改正を考えておるか、あるいは単独法の立案を考えておるか、という御質問でございましたが、この問題につきましては、ただいま御所見にもございましたように、それこそ大事な問題でありまして、でき得るならば、与野党を通じ、あるいは国民の皆様に、ほんとうに納得のいくような制度が好ましいと考えるのでございます。従って、これにつきましては、現行法の不備の点についても十分な研究もいたしております。新立法等についても研究をいたしております。しかしながら、これをいかなる方法によるかについての最後の決意は、ただいまのところ、まだできておらないことを、ここでお答え申し上げておきます。(拍手)
  〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#12
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 青少年犯罪が、戦後、ことに、最近非常に多くなっていることは、私もまことに遺憾に存ずるところであります。その原因はいろいろございましょうが、御質問の趣旨からいきますと、社会教育ないしは学校教育の場においてのあり方が相当の原因であろう、どう考え、いかなる対策を持つか、という御質問と承りました。
 私は、青少年犯罪の原因として、特に教育の場について考えてみますと、第一に、青少年が自分の行動を規律する正しい判断力と責任感を身につけていないといううらみがありはしないかと思います。第二に、戦後の学校教育に欠陥があったことも否定できないと存じます。(発言する者多し、拍手)特に、児童生徒の自主性を尊重するあまり、教師の指導力が十分に発揮されなかったうらみがないかということもその一つであります。(拍手)第三に、教職員の法秩序無視の組合活動が児童生徒に影響している部面がある……(発言する者多く、聴取不能)第四に、御指摘の通り、一般社会の道徳の頽廃、不良な出版物等のはんらん、不良な社会環境の放置、さらには、家庭教育における権威の失墜等もその原因の一つであると言い得ると思います。(拍手)
 その意味におきまして、まず第一に、学校教育につきましては、その一つに、小、中、高等学校の教育課程の改定を行なっております。第二に、特に小、中学校の道徳の時間、高等学校の社会科の時間、その他特別教育活動の時間におきまして、道徳教育を強化し、徹底をはかるつもりでございます。(発言する者多し、拍手)第三には、また、この教育課程の改定においては、社会科、道徳特別教育活動等の内容において、順法精神の徹底をはかっていくつもりでございます。(拍手)次に、なお、教師の資質の向上をはかる必要がございますから、そのための講習会等の機会をもっともっと多くいたしまして、教師の指導力の強化、充実に努めていきたいと存じております。(拍手)次に、社会教育もまた、その意味において、御指摘の通り、大事であろうと思います。従って、PTA、婦人団体、青少年団体等、各種の社会教育関係団体と協力しまして、読書、スポーツ等を通じて青少年の徳性の涵養と規律と責任観念を高めるように配慮して参りたいと思います。(拍手)さらに、テレビの影響に対する対策としましては、過ぐる三十三年度から、児童生徒、勤労青少年に対するテレビの影響調査を実施いたしております。その結果に基づきまして、放送番組の改善並びに利用指導等に資料として提供をいたしつつ、その対策を講じておる次第でございます。(発言する者多し、拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(清瀬一郎君) 松井誠君。(発言する者多し)――松井誠君。
  〔松井誠君登壇〕
#14
○松井誠君 私は、ここに、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案説明のありました銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案につきまして、池田総理並びに関係各大臣にお尋ねをいたしたいと思います。(拍手)
 さきに浅沼事件、近くはまた嶋中事件を契機にいたしまして、国民の間には、右翼テロに対する激しい憤りが盛り上がって参りました。そして、国民は、政府がこの怒りを正しく受けとめ、右翼テロ根絶のために抜本的な対策を立てることを期待し、かつ、要望をいたしたのであります。(拍手)ところが、その期待した国民の前に現われてきたその第一の措置が、警職法の事実上の一部改正である本改正案でございました。素朴にして善良な国民の右翼テロに対する怒りは今宙に迷い、その行きつくところを知らないのであります。(拍手)そこで、私は、まず、本法案提案の基礎になりました政府の治安対策についてお尋ねをいたしたいのであります。
 私の根本的な疑問は、最も重大な、そして、当面最も緊急を要する右翼テロ対策を、暴力一般に対する対策の中に埋没させているのではないか、という点でございます。(拍手)そして、それによって右翼テロの本質をおおい隠し、その対策の焦点をぼかしてしまうのではないか、という疑問でございます。
 言うまでもなく、右翼テロが犯罪を犯すのは、彼が刃物を持っておったからではありません。彼がテロの正当性を信じ、これを計画に移したからであります。かかる右翼テロに対する根本的な対策としては、私は、何よりもまず、これを民主主義の敵、国民の敵として排撃し、憎むという国民運動が激しく盛り上がらなければならないと思います。(拍手)そして、このような国民運動の基礎の上に、いろいろな具体的な施策が講ぜられなければなりません。特に、最近の一部の国家公安委員の言動にかんがみまするとき、このような政治犯罪に対して、警察が政治的な中立性を確保するために、国家公安委員の中立性を保障する具体的な措置も必要であると考えます。そして、これら根本的な施策に並行して、臨時応急の措置として、テロ規制の最小限度の立法措置も欠くことができません。しかるに、政府は、これら特別の措置を講じないばかりではなくて、この国民の中に盛り上がらんとする右翼テロに対する排撃のムードに水をかけ、はなはだしきは、右翼の勇気を鼓舞せんとさえしておるのであります。(拍手)たとえば、政府要人の中にさえも、右翼テロを安保闘争と関連せしめてこれを評価し、わが国民主主義の根幹をゆるがさんとする右翼テロに対する非難を割引せんとする者があります。ただでさえも警察は右翼に甘いといわれる雰囲気の中で、かかる言動が、右翼に対して、われ政府の与党なりという自信を与えることは、見やすい道理でございましょう。(拍手)
 最近新聞の報ずるところによれば、自民党の一部には、政治的暴力に対する立法措置として破防法の改正を行なわんとする意図がある由であります。そして、これに便乗いたしまして、民主的な大衆運動をもその規制の対象にせんとするやに伝えられております。しかしながら、はたして、民主的な大衆運動の中で、たとえば、数百万の国民が立ち上がったあの安保闘争の中で、一人でも岸首相の殺傷を目的とした者がございましたでしょうか。民主的な大衆運動は、大衆の力を信じ、大衆の未来を信ずるがゆえに、人間の殺傷を必要とせず、これを本質的に否定するものであります。(拍手)このような大衆運動と、人間の殺傷を欠くことのできない要素とする右翼テロとを同列に置こうとするがごときは、暴力というものに対する全く笑うべき色盲的感覚であるといわなければなりません。このように、焦点をずらし、混乱をした政府の右翼テロ対策を前にして、素朴にして善良な国民の戸惑いは、今や、政府に対する疑惑に転じつつあります。政府に対して有効な右翼テロ対策を求めることは、不可能をしいるものではないのか、木によって魚を求めるのたぐいではないのか、という疑惑が生じつつあります。(拍手)世に、いわゆるマッチ・ポンプ方式といわれるものがあります。右手のマッチで、公共料金を上げて、もって物価値上げに火をつけながら、左手のポンプでは、物価値上げを抑制するがごとき矛盾したゼスチュアを示すのをいうのでございましょう。(拍手)私は、政府の右翼テロ対策が、このマッチ・ポンプ方式に堕するのでなければ幸いであると思うものであります。
 かくして、私は、政府の治安対策なるものに多くの疑問を抱かざるを得ないのであります。よって、池田総理に数点お尋ねをいたしたいと思います。
 その一は、現在最も重大にして緊急を要する治安対策は、暴力一般に対する対策ではなくて、右翼テロに対する対策であると思いますけれども、その点、いかがお考えでございましょうか。その二は、右翼テロ対策として、いかなる具体的な措置をお考えでございましょうか。その三は、ただいまの質問者に対する御答弁にもありましたけれども、右翼テロに対する立法措置として、いかなることをお考えになっておられますか。これは、立法の方式ではなくて、社会党案のごとき、政治テロに限定をした特別立法というお考えであるか、あるいは、大衆運動までもその規制の対象にしようとする、破防法改正のごとき方式をおとりになろうとするのであるか、その基本的な考え方をお伺いいたしたいのであります。その四は、国家公安委員の中立性を確保するための具体的な措置、たとえば、現行の任命制を公選制に変更するがごときことにつきまして、いかなるお考えをお持ちであるか。以上の諸点についてお伺いをいたしたいのであります。
 なお、右のうち、右翼テロの立法措置については植木法務大臣、国家公安委員の点につきましては安井国務大臣に、あわせて御答弁をお願いいたします。
 質問の第二点は、改正法案中、第二十四条の二と、憲法三十五条の関係についてであります。
 改正法案によれば、警察官は、一定の条件のもとに、刃物等を携帯している疑いのある者に対してその提示を求めることができ、また、これを携帯している者に対してはその提出を求め、これを一時保管することができる旨を規定しております。一方、また、憲法第三十五条には、国民は正当な令状に基づかなくては、原則としてその住居に侵入し、捜索を受けず、または所持品等について押収、捜索を受けることがない旨保障されております。これは個人生活の平穏を保障する重要な基本的な人権であります。この精神は、犯罪捜査の刑事手続のみではなく、本件のごとき警察行政の手続においても十分尊重さるべきことは当然でございましょう。改正案の意図する警察官の行為は、強制を伴わない任意手続であるとされております。しかし、国家権力を背景にした警察官の任意手続は、一般国民に対し心理的強制を伴うことは、否定し得ない事実であります。そして、まさに、それこそがこの改正案のねらいでもあるわけでございます。加うるに、本条によって警察官の行動が発動し得る一定の条件は、第一線の警察官の主観的な判断にまかせられております。これは、本条が、元来、その構造において、すでに乱用の危険をはらんでおるということを意味するものであります。
 そればかりではなくて、われわれは、従来のいわゆる任意手続がいかに乱用され、いかにその本来の制限を逸脱してきたかということを考える必要があります。警職法に基づくいわゆる任意の職務質問が漸次拡張解釈をされ、ある程度の強制を伴う任意という矛盾した概念がすでに作り上げられつつあります。さらに、われわれは、あの安保闘争における、特に六月十五日における警察官の目をおおうばかりの暴状を決して忘れることはできません。(拍手)わが子、わが教え子の安否を気づかって街頭にたたずむ父兄や大学教授の頭の上に、たれかれの見境もなく、オオカミのように襲いかかった警察官の姿は、思い出すだけでも私は戦慄を禁じ得ないものがあります。(拍手)しかも、このような職権の乱用は、法律を不当に適用することと同時に、また、これを不当に適用しないことをも含んでおります。この、時にはオオカミと化するその同じ警察官が、同時にまた、特定の相手に対しては、公安維持の機能を停止し、羊のごとく従順になるのであります。かかる警察官に対し、今取り急いで与えられなければならないのは、真に民主主義を守る精神であり、決してその権限の強化ではございません。
 このように考えますと、本条は、その法律上の形式はともかく、その運用の実態においては、多くの強制を伴うことを否定し得ません。かくては、憲法三十五条が所持品等の押収、捜索について厳重な制限を設けた精神にはなはだしくそむくものといわねばならないのであります。私は、そこで、安井国務大臣に対し、本条をその運用の実態面からとらえて、憲法第三十五条との関係をいかに考えるか、御所見を承りたいのであります。
 最後の質問は、本条と、いわゆる警察比例の原則との関係であります。
 警察権力は、国民生活から障害を取り除くために、必要にして最小限度にとどむべきであります。このいわゆる警察比例の原則は、警察法並びに警職法に明らかに定めるところであります。本改正案は、携帯を規制する刃物の範囲を広げ、一般国民の日常生活に使用する多くの刃物もその中に含まれることになりました。従って、善良な一般国民が警察官の思わぬ追及を受けるという機会も多くなって参ることは必然でございます。本法は、一般国民がかかる迷惑を甘受しなければならないほど刃物取り締まりに効力を発揮し得るかどうか、残念ながら、いなでございます。本法案に基づく警察官の行動は、法律上は強制力を伴いません。従って、おそらくは、職業的暴力団などはこの法律の性格を大いに活用し、警察官の要求を拒否するでございましょう。しかし、善良な一般の国民にそれを期待することは不可能でございます。かくして、最も刃物取り締まりの対象となるべき者が対象からはずされ、災いが一般の国民の上にかかってくるのであります。もっとも、私は、本法案が単純な偶発的暴力事犯に対してある程度規制の効果を持つことを否定するものではございません。しかし、いわゆる非行青少年に対する対策と本条の規制との関係について、特に、先ほどの文部大臣の御答弁についてお尋ねしたいことが数多くあるのでございますけれども、時間の関係で、これを別の機会に譲り、本日は、残念ながら、省略せざるを得ないのであります。
 なお、ここで特に強調しなければならないことは、職業的暴力団に対する取り締まりは、現行の銃砲刀剣類等所持取締法その他の諸法令の厳重な活用によって、その気になりさえすれば、取り締まりは可能なのであります。これを怠り、暴力一般の対策に逃げ込まんとする政府の治安対策の欠陥が、この法案の効果にも遺憾なく露呈されておるのであります。私は、本条運用の効果の上から、警察比例の原則に重大な疑問を持つものでありますが、この点について、安井国務大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。
 以上、私は、国民の現在の重大な不安を解消するため、政府の治安対策並びに本改正案の内容についてお尋ねをいたしました。国民のため誠意ある御答弁を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#15
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 今回の法律案の改正は、暴力犯罪防止対策の一環として御審議願うことにいたしておるのであります。暴力は、その形態、原因のいかんを問わず、絶対に排除すべきものでございます。(拍手)それが右翼テロであろうと大衆暴行であろうと問いません。ただ、われわれは、最近の状況を見ますと、右翼テロにつきましては、暴力的な右翼団体あるいは人物に対しましては視察を厳重にいたしまして、テロの未然防止に万全を尽くしておるのでございます。
 なお、ただいま、憲法三十五条との関係について再度御質問がございましたが、私は、すでに御説明申し上げましたごとく、本法は行政目的の手続をきめた任意調査でございます。憲法三十五条に違反することはないと確信いたしております。(拍手)
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#16
○国務大臣(植木庚子郎君) お答え申し上げます。
 私への御質問は、政治テロを目標としての対策を考えておるか、広く暴力全体についての考え方でおるか、という御質問と拝承いたしました。私は、ただいま総理のお答えになりました通り、われわれとしては、暴力問題については、政治テロの排撃すべきことは申すまでもございません。しかしながら、やはり、集団的な暴力というものも、近年目に余るものがないとはいえないのであります。こうした問題につきましては、右であると左であるとを問わず、暴力全体について適切なる施策を立てたい、こういう考えで検討いたしております。(拍手)
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#17
○国務大臣(安井謙君) お答えします。
 国家公安委員会が政治的な中立を保っていないじゃないかという御質問でございますが、御承知の通りに、国家公安委員会は、国民のそれぞれの各層から代表されまして、しかも、国会の議決によって総理大臣が任命しているものでございまして、今はんぱな行動はないものと確信いたしております。
 さらに、選挙等によってこれを選出してはどうかという御意見でございますが、選挙をやりますと、やはり、政治的に巻き込まれるという危険もありますので、現行制度が一番よろしかろうと考えております。
 なお、憲法との関係につきまして、二十二条、二十四条の運用についての御質問でございますが、これは、先ほども総理の御答弁の通りに、憲法に背馳するものでは全然ございません。しかも、今日、警官の行動につきましては、警職法で、すでに警官の個々が合理的な判断と良識によって活動すべきものという規定をいたしております。警官自体に全面的に信用ができないということであれば別でございますが、私どもは、十分、警察法等で、一方、行き過ぎのないような規制を加えながら、しかも、質の向上によって本条の目的を達せしめるように指導したいと思っておる次第でございます。
 なお、常習的な暴力団等については、本法では効果がないんじゃないか、という御意見もおありのようでございますが、現在、常習的な暴力団につきましても十分内偵等もやり、さらに、この刃物を持っておるとか、あるいは危険を及ぼす状況にあるという場合には、あくまで尾行その他の実質上の警戒を続けることによりまして本法の目的を達したいと思う次第でございます。
 なお、警職法第二条にあるから要らないんじゃないかという御見解につきましては、こういった事例、特に、刃物を持っておることによって起こってくる犯罪が最近激増いたしておりますので、特別に単独立法として警官の行動の内容、限界を具体的に取りきめたものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(清瀬一郎君) 門司亮君。
  〔門司亮君登壇〕
#19
○門司亮君 私は、ただいま説明のございました銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案の内容について、総理並びに関係の大臣に若干の質問をいたしたいと思います。同時に、重複の点を避けて、できるだけ簡単に、率直にお伺いをいたしますので、当局も、大胆率直に、納得のいく御答弁をお願いしたいと思うのでございます。
 この法律は、最近における非常な殺傷事件というか、むしろ、私は、右翼テロ行為の取り締まり等の一環としてこういうものを出されたという説明がございましたので、この際明確に聞いておきたいと思いますることは、そうした思想的背景を持つ犯罪行為、いわゆるテロ行為に対する法案の準備が政府でなされておって、この国会に必ず提出されるかどうかということを、この機会に明確にしておいていただきたいと考えるのでございます。この点は池田総理から御答弁をお願いするものでございます。
 同時に、こういうことを私どもが申し上げておりまするのは、この法律では、そうした思想的背景を持ち、信条が異なる、あるいは政治政策が異なることによって、団体による一つの行動、さらに、これを示唆し、あるいは教唆するもののある行為、いわゆるこの法律では個人の行為だけしか取り締まることができない。そういう今日のテロ行為というものは、個人の行為ではないのでありまして、非常に大きな背景を持っておる。ことに、資金関係というような、実にめんどうな背景を持つこれらの行為に対してこそ、私どもは、厳重な取り締まりをしなければならないと思う。それに対してこの法律は何らの効果もないものではないかということを、私はいわざるを得ないのであります。単に一般犯罪として今日のテロ行為をすりかえようとするような政府の意図がもしあるとするならば、これは国民の期待に非常に大きく反するものとして、私はあえてさような質問を申し上げるのでございますから、どうか、繰り返して申し上げますが、総理は、はっきり、この機会に、そういう法案を出すということを御言明願いたいと思います。
 さらに、私は、案の内容について二、三質問を申し上げておきたいと思いますことは、この法律の内容を見てみますると、五条の改正が行なわれております。この五条の改正には非常に大きな問題が伏在をいたしております。従来の、この法律の五条は、本人が銃砲並びに刀剣等を所持することを警察に許可を願い出たときに、これを許可するかしないかということが、公安委員会の任務であった。ところが、この改正案を見ますると、本人だけでなくして、その家族、同居の親族にもし危険なものがあるとするならば許可しなくてもよろしいという、こういう規定になっている。この規定は、明らかに、本人が届け出れば本人だけの許可でよろしいが、家族にそういうものがあるかないかということを調査する権限を、だれに一体与えようとするのか。私は、住居の侵入あるいは不法な取り締まりの捜査を受けることがないという憲法三十五条に対して、この五条は、一体どういう角度から政府はお考えになったのか。これは、かつての警察官が戸口調査をしたようなことをしなければ、その同居の親族にそういうものがあるかないかということはわからぬでしょう。だれにこの調査権を与えるのか。単に二十四条だけでなくて、この五条の規定こそ、旧警察権力の、最も醜悪な、あの戸口調査を警察官に与えるものであるということをいわざるを得ない。今日、家庭の中に入って、警察官が権力をもってその家庭の実情を調査するということが、一体許されましょうか。この五条に対する明確なる御答弁をお願い申し上げたいと思うのでございます。
 次に、問題になって参りますのは、先ほどから申されておりまする二十四条の問題でございます。これについては、しばしば、任意捜査であるから、あるいは任意調査であるから、憲法三十五条の危険はない、と言われておる。しかし、およそ、警察権というものは、非常に限界がむずかしいのであります。いわゆる司法警察権であるか行政警察権であるかということは、学問的に考えて参りまするならば、これはきわめてはっきりした割り切り方ができる。いわゆる司法警察権は犯罪の捜査である。できた犯罪の捜査に対する権限行使でありますから、これはそれでよろしい。警察行政の問題は、いわゆる行政警察の範囲というものは、犯罪をいかに防止し、いかに犯罪を調査するかということの権限であって、学問的にはそれだけであって、きわめてはっきり割り切ることができる。しかし、一線の警察官は、この二つの権限を兼ね備えておるのであります。ある場合においては行政警察官としての行為を行なう、ある場合においては当然司法警察官としての行為を行なうのが、一線の警察官である。従って、警察官の行為というものは学問的に割り切れるんだ、この司法警察権と行政警察権とを、単に、任意調査であるからそれでよろしいんだというようなことで、逃げるということは、非常に大きな危険があると私は考えるのでございます。もし、政府がそういうことであるとするならば、なぜ、ここにもう一項、刑事訴訟法の規定によって、その意に反しては捜査を受けることがない、という条項を加えないか。この条項が抜けているでしょう。五条においても、何もこれを規制する規定を設けておらない。二十四条においても、こうした公然と憲法で許されておるわれわれの基本的権利を認めていないで、そのまま警察官にその捜査をゆだねておるところに、私は非常に大きな問題が伏在しておると考える。もし、この法律が通過し、このまま実行されて参りますならば、この五条ないし二十四条の拡大解釈による法律の乱用は、かっての警察国家であった時代を再起しないものであると何人も保証することができない、こういうことを私は憂えるものであります。(拍手)この点に対して、総理大臣並びに法務大臣はどうお考えになっておるか、その点を明確にこの際聞かせておいていただきたいと存じます。
 さらに、われわれは、この法律によりて、任意捜査という形の上で、これが今申し上げましたようなきわめて危険な状態に置かれるということを考え合わせますときに、政府の意図は、かつて、警職法改正を国会に出して、そうして、これが成立を見なかったということに基因して、警職法改正の焼き直し版であるということを、私どもは、はっきりとこの際いわざるを得ないのでありますが、この点について、そうではないということを言い切れるかどうかということを、安井公安委員長から明確に御答弁をいただきたい。
 さらに、この法律のもう一つの大きな問題点はどこにあるかというと、現行の銃砲刀剣類等所持取締法の適用、あるいは破防法の適用、さらに現行の警職法の適用等、現在あります法律の完全なる適用によって、今日政府が意図する一般犯罪に対する取り締まりは私は十分だと考える。ただ、一般犯罪の取り締まり法から逸脱して、そうして、取り締まりの非常に困難なのは、先ほどから申し上げておりまするような、いわゆる資金のルートがあって、活躍がある程度自由に行なわれる団体であって、指導者があって、そのもとに、教唆あるいは扇動によって、そうして、若い青年の諸君が軽挙盲動をして事を起こすという、この右翼テロといわれておりますきわめて危険な思想こそ、取り締まる十分な法律がないのであって、これに対しましては、私は、繰り返して申し上げますが、政府が、もしかくのごときものを意図するならば、私は、その取り締まりに非常に困難であるこの右翼テロの取り締まりこそ、目下の急務の問題として、国民にその所信を明らかにして、そうして、立法措置を講ずることによって、わが国の民主政治、わが国の平和主義を守っていくことのために寄与することが私は必要だと考えておりますので、重ねて、この点を、総理大臣から、そういう措置をとるということを明確に御答弁願いたい。今までの質疑応答では、私は、その点が明確になっておりませんので、この機会にそのことを聞いておきまして、残余の問題につきましては、いずれ委員会等におきまして詳細に当局にその意図を聞こうとするものでございます。(拍手)
  〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#20
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 団体等の暴力行為に対しまする取り締まり関係法令は、ただいま、わが党並びに内閣におきましても鋭意検討を加えておるのでございます。
 なお、五条の質問につきまして、本条の改正によりまして、従来ありました警察官の戸口調査は全然考えておりません。本人だけでなしに、同居の親族に対しましてもこういう規定を設けましたのは、客観的に見まして、どうしてもあぶないというときに、この条項を適用しようとするのであります。
  〔国務大臣植木庚子郎君登壇〕
#21
○国務大臣(植木庚子郎君) お答えいたします。
 右翼テロのごとく、団体でいろいろ規制をすべきものがあるじゃないか、単なる個人的問題だけでなく、その点について対策ありや、ということでございます。われわれといたしましても、この問題につきましても目下慎重に考慮をいたしておる次第でございます。従って、その問題についての結論を得次第、何らかの態度に出たい、かように考えております。
  〔国務大臣安井謙君登壇〕
#22
○国務大臣(安井謙君) 第五条によりまして、同居の親族があるいは危険な人物と目されるときに所持を禁止することは行き過ぎにならないかという御質問でございますが、最近の事例に、たまたま同居者に危険な人物がおったために警官が注意をしたにもかかわらず、こういった犯罪が起こったという例が相当出て参ったものでありますから、周囲の環境で、あそこにはどうも危険な人物がおるというふうに思われる場合には、たとえ所持の本人が非常に善良な人であっても、これは認めない、こういうふうに規定をいたそうとしておるものでございます。
 なお、第二十四条で行き過ぎにならないか、任意調査といいながら、行き過ぎになる危険はないか、警官の活動の範囲でございまするが、あくまで、警官は、刑事上の手続によるか、あるいは現行犯でなければ強制執行はやらないという建前にいたしております。従いまして、任意に十分に気をつけるという、非常に訓令的な規定を今度は設けて、全般的に良識と良意をもって行動するように今後もはかっていきたいと思っておる次第でございます。
#23
○議長(清瀬一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#24
○議長(清瀬一郎君) これより日程に入ります。
 日程第一は、委員長提出の議案でございますから、委員会の審査を省略するに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第一、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#26
○議長(清瀬一郎君) 提出者の趣旨弁明を許します。建設委員長加藤高藏君。
  〔加藤高藏君登壇〕
#27
○加藤高藏君 ただいま議題となりました、特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党の合意に基づき、成案を得て、国会法第五十条の二の規定により、建設委員会の提出にかかる法律案として提出されたものであります。
 以下、その提案の理由を申し上げます。
 本法案の目的といたしますところは、現行の特殊土じよう地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正して、同法の有効期限をさらに五カ年間延長しようとするものであります。
 同法は、去る昭和二十七年四月、議員立法として制定され、さらに、三十一年三月に期限延長の一部改正をいたしまして、同法に基づきまして特殊土壌地帯の治山、砂防、農地保全、土壌改良等の対策事業が実施されて参ったのでありますが、翻って、その進捗状況を見ますと、必ずしも満足すべき状態にあるとはいえないので、さらに、昭和四十二年三月三十一日までその有効期限を延長して、所期の目的を完全に遂行しようとするものであります。
 なお、本法案立案の過程におきましては、建設委員会において、二階堂委員より本法案提出理由の説明があり、政府の意見を求めましたところ、本法案の成立に賛成の意を表しました。
 以上、本法案の提案理由を簡単に御説明申し上げましたが、何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(清瀬一郎君) 採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
     ――――◇―――――
 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#30
○田邉國男君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#31
○議長(清瀬一郎君) 田邉國男君の動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#33
○議長(清瀬一郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長足立篤郎君。
    ―――――――――――――
  〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  〔足立篤郎君登壇〕
#34
○足立篤郎君 ただいま議題となりました国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、国有林野事業特別会計における一般林政事業に対する協力の方法の合理化をはかる等のため、国有林野事業特別会計法の一部を次のように改正しようとするものであります。
 すなわち、その第一点は、国有林野勘定におきまして、毎会計年度の損益計算上、利益を生じたときは、その利益をもって、まず前年度からの繰り越し損失を埋め、残余は、一部を利益積立金として損失の補てん及び国有林野事業の拡張のために積み立てるほか、別に、その一部を特別積立金として林政協力事業のために積み立てることといたしております。
 第二点は、国有林野勘定におきまして、毎会計年度、前年度から持ち越された資金で歳出の財源に充てることができるもののうち、右の特別積立金に対応する金額は特別積立金引当資金に組み入れることとし、この資金は、林政協力事業等の経費の財源に充てるものとして一般会計に繰り入れる場合に限り、予算の定めるところにより使用できることといたしております。
 そのほか、一時借入金及び融通証券の借りかえの規定を設けるほか、改正に伴う規定の整備、並びに、現存する損失補てん積立金を利益積立金及び特別積立金に分離する等、必要な経過規定を設けることといたしております。
 本案に対しましては、鴨田宗一君より、本案の施行期日が「昭和三十六年四月一日」とあるのを本法「公布の日」に改めようとする修正案が提出せられました。
 本案並びに修正案につきましては、本十一日質疑を終了し、討論に入り、日本社会党を代表して藤原委員より反対討論のあった後、採決を行ないましたところ、起立多数をもって修正議決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#35
○議長(清瀬一郎君) 討論の通告がございます。これを許します。有馬輝武君。
  〔有馬輝武君登壇〕
#36
○有馬輝武君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案について反対の討論をいたさんとするものであります。(拍手)
 私たちは、今次国会におきましても、日々日程に上る一つ一つの法案を通じて、池田内閣、すなわち、公約無視、庶民蔑視内閣の別名にほかならない事実を、露骨に見せつけられて参りました。所得税法など税三法の改正におきましても、三大公約の一つである減税が、いかに中小企業、農業者、労働者に縁の薄いものであったかは、すでに明らかにされたところであります。社会保障制度の後退、これまた言うを待ちません。池田内閣の金看板である所得倍増計画も、物価の安定と一定水準の所得の均衡を前提としない限り、庶民にとってこれほどむごい施策はないのであります。ところが、その基調である物価の安定は、運賃料金、電力料金の値上げを手初めに、次々と政府みずからの手によって破綻を来たしているのであります。池田内閣の、羊頭を掲げて狗肉を売る、勤労者階級の犠牲の上に独占資本に奉仕するの施策は、今や、とどまるところを知らないのであります。国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案も、また、この悪業を一つ積み重ねる以外の何ものでもありません。
 本法律案について、政府は、国有林野事業特別会計の一般林政事業に対する協力の方法を合理化するため、国有林野事業勘定における利益処分の規定を改め、特別積立金の制度を設けると称しております。ところが、この政府の説明に反して、本法律案がいかに世論を無視し、国会の審議権を侵して強行されようとしているか、また、いかに林野行政を後退させるものであるかが、審議を重ねれば重ねるほど明らかになって参りました。本法律案に関連する公有林野等官行造林法を廃止する法律並びに森林開発公団法の一部を改正する法律については、さきに、本院において、わが党の湯山議員が言及されたところでありますが、その矛盾と撞着は、幾たび繰り返して指摘しても足りないところであります。池田内閣がいかに農政に弱いからといって、わざわざ効果を上げつつある官行造林を廃止して、水源造林を、その負荷に耐えない森林開発公団にやらさなければならない理由は、ごうも存しないのであります。(拍手)与党の議員の表現を借りるならば、根まわしの足りない、このような法律案を上程するのでは、農民六割削減論の本質をさらに暴露する以外の何ものでもありません。これは、いわば、池田内閣のサディズム的林政、自虐的林政ともいうべきで、林野行政百年の大計を真摯に考える日本社会党の断じてとらないところであります。
 すなわち、反対理由の第一は、政府の林野行政が首尾一貫せず、これがまた、官僚の恣意と独断によって、さらに混迷と矛盾を深めていることであります。
 委員会審議の過程で、この驚くべき事実が次々と明らかにされました。林野庁は、本法律案はもとより、母法であるさきに述べた二法律案が国会に上程されない以前に、「水源造林のしおり」なるパンフレットを自治団体、関係団体に流し、各営林局署で、市町村長など関係者を集めて、その説明を行なっているのであります。この説明会で、契約解除、すなわち、既契約個所で新値未済地を拒否したならば、三十六年度は新植は行なわない、などとおどかしておるのであります。成立もしていない法の実施を、権力をかさに着て押しつけることは、全く言語道断であり、国会の審議権無視もはなはだしいものと申さなければなりません。
 さらにひどいのは、自治省と林野庁が結んだ覚書であります。官僚が、狭い視野で、政府の林野行政の指針となる林業基本問題調査会の答申を無視する覚書を勝手に結ぶとは、何事でありましょうか。覚書の内容は、第一に、分収歩合を引き下げよという答申の主張を否定するものであります。第二に、公有林野の縮小政策は原則としてとらないといって、答申の柱である実質部落有地の私権化、家族的林業の育成拡大も否定してしまっておるのであります。あまつさえ、政府は、委員会審議の際、根本的に相反する答申と覚書を一つの幅の中で調和させるよう努力いたしますなどと、おくめんもなく答弁をいたしております。このような官僚の独断と恣意を放置して指導も統制もきかないようでは、官僚内閣といわれる池田内閣の取り柄は何一つ残らないではありませんか。(拍手)
 反対理由の第二は、本法律案が世論の動向を全く無視しているということであります。
 池田総理の言う政治の姿勢を正すということの第一の要諦は、少なくとも、すなおに国民の声に耳を傾ける、このことでなければならなかったはずであります。国民が期待しておる政府とは、単に予算の額だけを云々するのではなくて、能率的で、民生の安定をはかる政府をこそ期待しておるのであります。たとえ十億の出資といえども、非計画的で、非能率で、山林ボスを肥やすすべしか知らない森林開発公団への出資など、国民は絶対に許せないのであります。この無謀な法律案上程のきざしが見えるや、地方紙、業界紙を通じて、賛成する記事が一つもなかった事実は、よく世論の動向を表わしております。全国の市町村を購読対象にしている時事通信地方行政版がいち早く取り上げて反対したのを初め、青森の東奥日報、熊本日日新聞、あるいは岩手日報、日本海新聞、宮崎日日新聞など、数え切れないほど、政府を批判するの記事が連日のように現われておったのであります。あるいはまた、各自治団体におきましても、きびすを接して反対決議をしていることが、この間の事情をよく現わしております。
 反対理由の第三は、林野行政において、林政と経営は切り離してならないものであり、また、その経営、すなわち、造林事業を担当するはずの森林開発公団がその負荷に耐えられないことが明瞭であるからであります。
 公団が行なう事業の賦課金の決定にいたしましても、賦課金の源泉は新たに発生する地代部分でありますが、受益範囲の決定について、あるいは林産物搬出と、これ以外の利用のバランスについて多くの問題を惹起していることは、熊野の前鬼林道、内原林道など、多くの事例で明らかなところであります。また、公団が行なった林道事業で、たとえば熊野の前鬼林道に見られまするように、計画、設計の変更、災害復旧等による単位長さ当たりの事業費の増大、あるいは事業量の変更など、地元民の不満がほうはいとして起こっておるのであります。前鬼林道の当初の搬出見込み量十五カ年間五十九万四千二百五十八石が、四分の一にも満たない十四万二千五百石と改定されていることなど、政府はこの間の事情をよく知っておるはずであります。このような過去の実績から見まして、わずか百五十名にも満たない公団の機構、人員に多くを期待することは、最初から無理な話であります。官行造林では、契約、管理、植栽、手入れ、間伐まで一貫した作業を行なっていたのでありますが、公団では、新植も、収穫も全然行なわないで、ただ契約と管理、指導だけになるので、計画的な造林保護など期し得べくもありません。林政と経営とはたての両面でありまして、一体不可分のものでありますが、今や、政経分離によりまして、国有林野事業は危殆に瀕しようとさえしておるのであります。
 反対理由の第四は、この法律案の施行によりまして、国有林野事業特別会計を破綻させるおそれがあり、木材業者あるいは森林労働者を犠牲に供することが目に見えておるからであります。
 本特別会計におきまして、昭和三十六年度における一般会計繰り入れば、公団出資十億、一般会計の支出に充てるもの四億となっておりまするが、これは今後公団への出資が継続する間は減額することのできないものであります。ところで、昭和三十六年末の特別積立金は五十億でありまするから、公団事業を継続するためには、特別積立金を平均年二十億程度補充していく必要があります。国有林野事業特別会計法施行令の改正案では、利益金の半額を特別積立金として積み立てることとしておりまするので、年平均四十億以上の利益を出す必要が生じます。四十億の利益目標は、従来の実績、たとえば、昭和二十六年から昭和三十四年までの年平均三十四億をはるかに上回るものであります。その結果、この利益ノルマをこなすためには、蓄積経理で損益計算の方法を改めるか、木材価格の引き上げを行なうか、労働者に対する締めつけ以外の方法はないのであります。今や、国有林野事業はもうけ本位の経営に徹し、営林局署は予定損益計算書による利益ノルマに追い回される結果、まさに国有林野事業の使命に逆行する仕事を続けなければならないように余儀なくされております。現在、すでに、経営合理化の名のもとに、直営生産をやめて立木処分に切りかえ、請負を導入し、作業員に対し、賃金ストップと、こま切れ雇用を押しつけておるのであります。今後、この傾向はますます拍車をかけられるでありましょう。所得倍増がかりに達成されるとするならば、作業員賃金だけで百四十億の経費増となり、一般会計繰り入れの余裕など全くあり得ないのであります。製材業者も建築業者も、現在、一週間先の見積もりはできないという前代未聞の原木高に苦しめられておりますが、四十億の利益ノルマを上げるためには、さらに木材価格を上げなければならないのであります。パルプ原木はあまり上げられませんから、製材原木や地元住民に対する薪炭原木の価格は、さらに引き上げられるでありましょう。政府のいう建築用材の価格安定策が成功すれば、逆に国有林野特別会計は破算するということを、政府みずからは肝に銘じておくべきであります。
 以上、反対理由の一端を申し述べましたが、政府並びに自由民主党は、急増する木材の需要にこたえて価格の安定をはかるためにも、これを裏づける造林を計画的、能率的に運営し、林業就業者の所得の均衡的増大をはかるためにも、すみやかに本法律案を撤回せられんことをさらに期待いたしまして、私の反対論を終わるものであります。(拍手)
#37
○議長(清瀬一郎君) これにて討論は終局いたしました。
 これより採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
#38
○議長(清瀬一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り決しました。
     ――――◇―――――
#39
○議長(清瀬一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時四十四分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        自 治 大 臣 安井  謙君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        法制局第二部長 野木 新一君
        警察庁保安局長 木村 行蔵君
        経済企画政務次
        官       江藤  智君
ソース: 国立国会図書館
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