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1960/05/17 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第11号
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1960/05/17 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第11号

#1
第038回国会 法務委員会 第11号
昭和三十六年五月十七日(水曜日)
    午後四時八分開議
 出席委員
   委員長 池田 清志君
   理事 長谷川 峻君 理事 林   博君
   理事 牧野 寛索君 理事 山口六郎次君
   理事 井伊 誠一君 理事 坪野 米男君
      宇野 宗佑君    浦野 幸男君
      唐澤 俊樹君    菅  太郎君
      岸本 義廣君    佐々木義武君
      楢橋  渡君    田中幾三郎君
      志賀 義雄君
 委員外の出席者
        議   員   富田 健治君
        議   員   早川  崇君
        議   員   坪野 米男君
        議   員   門司  亮君
        専 門 員   小太 貞一君
    ―――――――――――――
五月十六日
 委員一萬田尚登君、川島正次郎君、正力松太郎
 君、南條徳男君、馬場元治君、安井誠一郎君及
 び山村新治郎君辞任につき、その補欠として岸
 本義廣君、加藤鐐五郎君、佐々木義武君、首藤
 新八君、長谷川峻君、宇野宗佑君及び菅太郎君
 が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
 委員畑和君及び片山哲君辞任につき、その補欠
 として堂森芳夫君及び田中幾三郎君が議長の指
 名で委員に選任された。
同日
 委員堂森芳夫君及び田中幾三郎君辞任につき、
 その補欠として畑和君及び片山哲君が議長の指
 名で委員に選任された。
同日
 理事馬場元治君同月十六日委員辞任につき、そ
 の補欠として長谷川峻君が理事に当選した。
五月十五日
 政治的暴力行為防止法案(早川崇君外七名提出、
 衆法第三九号)
は本委員会に付託された。
同月十二日
 政治的危害行為の防止に関する法律案(棚橋小
 虎君外三名提出、参法第一二号)(予)
は撤回された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 参考人出頭要求に関する件
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男君外八名提出、
 衆法第一六号)
 政治的暴力行為防止法案(早川崇君外七名提出、
 衆法第三九号)
     ――――◇―――――
#2
○池田委員長 これより会議を開きます。
 この際、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 理事馬場元治君が委員を辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。
 これよりその補欠選任を行ないたいと思いますが、これは先例によりまして、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に長谷川峻君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#4
○池田委員長 これより、日本社会党提案にかかる坪野米男君外八名提出の政治テロ行為処罰法案及び自由民主党、民主社会党共同提案にかかる早川崇君外七名提出の政治的暴力行為防止法案の両案を一括議題といたします。
    ―――――――――――――
 政治テロ行為処罰法案
 政治的暴力行為防止法案
  〔本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
#5
○池田委員長 まず、両案について順次提出者より提案理由の説明を求めます。坪野米男君。
#6
○坪野議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました政治テロ行為処罰法案の提案理由について御説明いたします。
 まず第一に申し上げたいことは、社会党が何ゆえに本法案を提出しなければならなかったかについてであります。
 私たちは昨年十月、右翼テロの凶刃によって浅沼委員長を失い、その直後の臨時大会において、浅沼委員長の死を乗り越えて右翼テロを根絶することを誓ったのであります。
 さらにまた第三十六回臨時国会においても、満場一致で暴力排除の決議が採択されたのであります。しかるに、本年二月再び右翼テロによる嶋中事件の発生を見るに至り、右翼テロに対する国民世論はがぜん硬化して参りました。今国会においても、警察当局の警備責任、政府の政治上、行政上の責任についてきびしい追及がなされ、さらに右翼テロの背後勢力、また、右翼団体への資金源についてもきびしい究明が続けられましたが、必ずしも国民の納得する結果は得られなかったのであります。
 ところで一方、国会で右翼テロに関する質問をした国会議員に対してまで右翼の脅迫やいやがらせが続き、国会における言論の自由まで右翼テロによって脅かされ、ついには国会周辺や議員宿舎に制服警官が常時警備をし、また特定の議員に対して私服の警備がつくという異常な事態が出現したことは御承知の通りであります。わが国議会史上まことに忌まわしい汚点を残したものというべきであり、一刻も早くかかる異常な状態を解消しなければ、わが国の民主主義、議会政治の前途があやぶまれるのであります。
 およそ、相手方の言動が自己の政治上の主義、信条と相いれないからといって、その相手方を殺傷するがごとき政治テロ行為は、最も憎むべき、また最も凶悪な犯罪であり、民主社会の敵、国民共同の敵であると言わなければなりません。何となれば、政治テロは、民主主義の大前提である言論及び政治活動の自由を侵害し、民主主義の根幹をゆるがすものだからであります。
 かかる政治テロを根絶するには、何よりもまず生命は尊貴である。一人の生命は全地球よりも重いという最高裁判所判決に示された生命尊重の精神に徹し、いかなる動機、原因があろうとも、政治テロは絶対許さないという国民世論のかたい意志を表明する必要があります。
 右翼テロリストは、愛国の美名のもと、殺人も社会的に許容されるもの、少なくとも国民大衆の同情や共感が得られるものと盲信しているようでありますが、このような危険な、誤った盲想を打ち砕くためには、政治テロをにくむ国民世論のきびしい意志を明確に打ち出すことであります。本法案は、このような国民世論の表明として、政府に政治テロ根絶の決意を迫るため提案したものであります。
 元来、治安の責任を持つ政府や警察首脳にはたして政治テロ根絶の熱意ありや、いなや、はなはだ疑いなきを得ないのであります。もし、政府や警察首脳に政治テロ根絶の決意さえあれば、現行法令をもってしても、政治テロを取り締まり、予防鎮圧することは必ずしも不可能ではないのであります。ただ、政府与党にその熱意がなく、全く焦点のぼけた暴力対策を立案したり、テロもデモもともに暴力犯罪として公平に取り締まるべきだとか、テロ以外の一般暴力犯罪の防止も必要だとか、当面する政治テロ対策を一般の防犯対策の中に埋没してしまおうとしておりますが、これは政治テロ対策をごまかし糊塗しようとするものでありまして、責任ある政府与党の態度としては、まことに不可解千万であります。
 政治テロは言うまでもなく人を殺傷する行為であり、あらゆる暴力犯の中で最も凶悪な犯罪でありますが、これに反し、デモは言論、表現の自由として憲法や法令で保障された国民の基本的権利であります。ただ、デモの行き過ぎから派生的に器物を損壊する等の暴力事犯が発生することはありますが、このような違法な行為についても公正に取り締まるべきことは言うまでもありません。しかしながら、テロも悪いがデモも悪いとか、テロの原因は、違法なデモにあるんだとか、テロとデモとを同一次元で論ずることは、見当違いもはなはだしいと言わなければなりません。
 一般の暴力犯罪の防止はもとより必要なことではありますが、問題は、民主主義が危機に瀕している今日、最も凶悪な政治テロ犯罪をいかにして防止するか、これが根絶策いかんでありまして、政治テロに対して厳罰をもって臨まんとする本法案こそ当面の必要最小限の立法措置であると確信するものであります。
 社会党は政府、与党が政治テロ対策につき、治安の責を果たそうとしないので、やむを得ず責任ある野党として本法案を提出した次第であります。
 第二に申し上げたいことは、本法案は政治テロ根絶の抜本策でもなければ、長期対策でもなく、あくまでも当面の政治テロ防止策として緊急やむを得ない、最も現実的な立法措置であるということであります。
 政治テロを根絶するためには、テロを憎み、テロを断じて許さぬという強固な国民世論を背景としなければなりませんが、それと同時に、池田総理のいう政治の姿勢を正すことによって、テロを生み出す社会風潮の一掃をはからなければなりません。しかし、これは一朝一夕にしてなるものではなく、長期にわたる政府、与野党の努力に待たねばならないと信ずるのであります。
 さらに、現実的、総合的な政治テロ対策としては、政治テロの正当性、必要性を主張する団体、すなわち一人一殺主義を唱える右翼団体等に対する資金源を究明し、その政治資金を規正することも必要でありましょうし、また、政治テロを扇動する団体その他を規正することも必要であります。さらにまた、政治テロに走るおそれのある青少年に対する根本的な指導、積極的な対策が必要であります。単なる不良青少年に対する防犯、矯正等の消極的対策だけでは不十分であります。自分の生活に明るい希望の持てる、健全な社会人としての青少年育成策、これこそが、青少年をテロに走らせない根本策であろうと信ずるものであります。
 政府、与党がかかる根本策に手を触れず、単なる総合的防犯対策だけで事足れりと考えているならば、それは真の防犯対策とはなり得ず、いわんや長期の政治テロ根絶策とはとうていなり得ないものと言わねばなりません。
 本法案は、政府・与野党が話し合いによって真剣に政治テロ根絶の抜本策を樹立し、長期施策を講ずるまでの必要最少限の緊急措置として、とりあえず三年間の時限立法として立案されたものでありまして、刑罰の強化によって政治テロを防止するというのは、政策としては、下の下策でありますが、真にやむを得ざる現実的な措置であります。従いまして、社会党は、恒久的、根本法たる刑法の一部改正は軽々に行なうべきではなく、また、一般犯罪にも適用され、さらに乱用のおそれさえある警察官の取り締まり権限強化をはかる銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正、破防法その他の法令の改正はその必要がなく、左右を問わず政治テロのみを対象とした最少必要限度の単独立法で、しかも暫定立法で対処すべきものと考えるのであります。
 第三に本法案のねらいすなわちその目的について申し上げます。
 言うまでもなく、本法案は刑法の特別法として、テロ犯罪に対して刑罰を加重することによって、すなわち厳罰主義の威嚇力によってテロ犯罪の一般予防をはかろうとするものであります。死刑その他の極刑の威嚇によってテロ犯罪を一般予防しようとするものであります。私たちは、一般犯罪の防止策として現行刑法上の厳罰主義をとることには原則として反対であります。刑は刑なきを期することが刑事政策の理想でありまして、いたずらに厳罰主義をもって犯罪の防止をはかることは時代逆行のそしりを免れませんし、近代刑法理論の進歩に背を向け、刑罰緩和化の歴史にもそむくことになりましょう。しかしながら民主主義を圧殺し、文明を破壊せんとする政府テロに対しては、民主社会防衛のため、極刑をもって臨むことも真にやむを得ないところであろうと信じます。歴史の発展を阻止しようとする反動的な政治テロに対し、極刑をもって臨むことは、何ら文明の名に恥じないものと信ずるのであります。
 私たちは刑罰の威嚇力が絶対的なものとは考えませんが、相対的には相当の効果を期待し得るものと考えるのであります。また政治テロこそは最も凶悪な犯罪であり、強盗殺人犯以上の極刑に価することを政治テロ犯人に教育し、また一般国民や裁判官に知らしめるためにも、厳罰主義の法定刑が必要であると確信いたします。
 さらにまた、本法案の厳罰主義は、単なる報復主義に基づくものではないのであります。刑罰理論は、復讐刑から応報刑へ、さらに一般予防、特別予防から教育刑へと進んで参りましたが、刑罰の本質としては、道義的応報の要素は否定し得ないのでありまして、いわゆる罪の償いは当然しなければなりませんが、単に私的、感情的な報復観念に根ざすものであってはならないこと、言うまでもありません。
 次に、本法案に盛られた厳罰主義は、いわゆる確信犯人に対してはほとんど威嚇力を持たないのではないかとの疑問が当然起こるでありましょう。もとより確信犯、思想犯に対しては、刑罰の威嚇力は大きな効果を期待できないでありましょう。しかし問題は、政治テロ犯人ははたして確信犯なりやいなやであります。その政治的な主義、信条については、思想的な確信を抱いている者もありましょうけれども、自己の信奉する政治的主義の実現のために人を殺すことのできる正当性、必要性を確信する犯人は、はたして何人いるでありましょうか、いわんや自己の生命を犠牲にしても反対者を殺傷せねばならぬとの決意をもって臨むテロリストはきわめて少ないのではないかと考えられるのであります。
 主観的には崇高な目的達成のためには凶悪な手段も正当化され、少なくとも社会的には許容され、同情を受ける。また、裁判上も死刑だけは免れるとの甘い考えを持ったテロリストも相当多いのではないかとも考えられるのであり、テロ殺人実行の後、必ず死刑になるとわかっていて、なおかつテロ殺人を敢行する確信犯人は今日ではきわめて少なく、従ってテロ犯人に対しても死刑の威嚇力は相当大きな効果はあると考えるのであります。
 さらに、私たちは殺人の正当性や必要性を確信するごく少数の盲信者に対しては、殺人確信犯人であるからこそ、その犯罪に対して、社会防衛上、犯人を社会から永久隔離するため、無期または死刑をもって処断することもやむを得ないと考えるのであります。
 なお、私たちは、わが国の文化が高度に発達して、平和な民主社会が実現し、死刑の威嚇による犯罪の防止を必要としない時代の出現を待望しておりますが、現在は残念ながら制度としての死刑を廃止する段階には至っていないと考えるのであります。健全な国民感情は、凶悪犯人に対する死刑を少なくとも正義に合致するものとしてこれを是認していると確信するのであります。
 最後に、本法案の内容について簡単に御説明申し上げたいと思います。
 本法案は、わずか十二ケ条からなる刑法の特別法でありますが、本法に規定のない限り、刑法総則その他刑法理論が当然適用されることになるわけであります。
 そこで第一条は、この法律の趣旨を明らかにしたものであり、特に説明を要しないと思います。また第二条は適用の基準を示したものであり、特に、左右を問わず思想の自由、言論、結社の自由そのものを不当に制限し、弾圧するものではないことを訓辞的に規定しております。
 第三条は扇動と凶器の定義を明示して乱用防止をはかっております。特に扇動の定義は大審院判例以来確立した定義でありまして、教唆に近い概念でありますから、拡大解釈のおそれはないものと考えます。
 次に第四条ないし第十条は各種のテロ犯罪の構成要件と刑罰を規定したものでありますが政治テロ行為の基本的な構成要件は、たとえば第四条では、「自己の政治上の主義と相容れないことのゆえをもって人を殺した者」となっており、殺人の行為そのものは刑法上の殺人罪と異なるところはなく、ただ殺人の動機が自己の政治上の主義、信条に反する他人の言動を憎み、これを抹殺せんとして人を殺す場合にテロ殺人罪となるのでありまして、犯罪の動機によって特別に刑を加重せんとするものであります。
 なお、政治上の主義とは、たとえば資本主義、共産主義あるいは民主主義というように、政治によってその実現を企てられる比較的、基本的、一般的かつ抽象的な原理をいうものであり、政治上の主義、信条と解釈して差しつかえないと考えます。従って現実的、具体的な政策や、行政上の施策は含まないと解釈すべきであります。そこで第四条は、テロ殺人の既遂、未遂、予備、陰謀罪を規定し、刑を加重しておりますが、刑法の殺人罪や殺人未遂罪も最高は死刑となっているのであります。
 第五条は、テロ殺人の教唆、扇動者を独立罪として重く罰しております。ただ本条は正犯が殺人の実行に着手しなかった場合の規定でありますが、第十二条の規定により正犯が殺人の実行に着手した場合は、正犯に準じて最高は死刑に科することができるわけであります。
 第六条はテロ傷害致死罪の規定、第七条は銃砲刀剣等の凶器を準備し、これを用いてなすテロ傷害及びその未遂罪を規定しております。
 第八条は、情を知ってテロ犯人に凶器や金品等を供与した者を罰する規定であり、第九条は凶器を示してするテロ脅迫罪を規定したものであります。
 次に第十条は、テロ殺人犯人を公然と賛美した者を罰する規定でありますが、本条はテロ殺人の教唆、扇動ではないが、テロ殺人が敢行された後に、その犯人の殺人行為をほめたたえるがごとき不穏な言論はきわめて反社会的な言論であり、テロ殺人を助長するおそれがあり、憲法で保障された言論の自由の範囲を著しく逸脱したものとして、社会的にとうてい許容し得ない犯罪的言論であり、かかるテロ殺人賛美の言論は国民の法意識において言論犯罪として是認されるものと確信するものであります。
 なお、第十一条は、刑の減免の規定でありまして、事前の自首等によりテロ殺人や傷害が未然に防止できた場合に刑を減免する旨の政策的な規定であります。
 以上本法案の目的並びにその内容の概略について御説明いたしましたが、国民の基本的人権に関する重要な法案でありますから、何卒慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたしまして、私の提案説明を終わります。
#7
○池田委員長 富田健治君。
#8
○富田議員 ただいま上程になりました自由民主党並びに民主社会党共同提案にかかります政治的暴力行為防止法案の提案理由について、御説明いたします。
 今やわが国は、各方面において、異常な発展を遂げ、着々民主国家としての体制を確立しつつありますことは、御同慶の至りと存じますとともに、今後とも、政治の根幹を国民の自由と権利の擁護に置き、いよいよ民主主義議会政治の健全な発展と伸張をはからなければならないと存ずるところであります。
 しかしながら、最近の国内情勢を見まするに、浅沼事件、嶋中事件に見られるごとく、あるいは昨年の日米安全保障条約改定反対闘争に際しての暴力的国会侵入事件のごとく、個人、団体を問わず、自己の政治上あるいは思想上の主義、主張を追及するに急なるの余り、法秩序を無視し、暴力によりその主義、主張を実現せんとする傾向の見られますことは、まことに憂慮にたえないところであります。かかる行為は、わが国民主主義の確立のため重大な支障を与えるところであり、われわれは、この種事犯の防止のために、最善の努力を注がなければならないと存ずるところであります。すなわちかかる要請にこたえ、あらゆる政治的暴力行為を防止し、真に民主主義の確立を期するためには、在来の刑法、あるいは破壊活動防止法その他の取締法規のみでは不十分なところがございますので、ここに新たに政治的暴力行為防止法を制定し、これによって、有効適切にこの種政治的暴力行為を防止し、もって民主国家の健全な発展をはかる一助といたしたいと存じ、この法案を提案いたした次第であります。
 以下、この法案の内容の概略について御説明いたします。
 この法案は、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする暴力行為すなわち政治的暴力行為が、団体の活動として、または団体の活動に関連して行なわれる場合に、これを防止するに必要な規制措置を定めるとともに、これらの政治的暴力行為に対する刑罰規定を補整し、もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的といたしております。従って、この法案は、大別いたしますと、二つの部分に分かれるのでありましてその一は、前述の政治的暴力行為を防止するに必要な団体規制措置を定める部分、その二は、これらの行為に対する刑罰規定の補整を定める部分でございます。政治的暴力行為の防止のためには、単に刑罰規定の補整、すなわち刑罰の加重のみでは不十分でありまして、この種政治的暴力行為に出でる団体に対し、必要最小限度の規制措置を規定し、団体活動として、あるいは団体活動に関連して、政治的暴力行為に出でる危険を未然に防止する必要があるとするものであります。
 次に、この種団体に対する規制措置は、憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならないことは申すまでもないところでありますので、特に第三条において、この法律による規制及び規制のための調査は、第一条の目的を達成するためにのみ、行なうべきものと規定いたし、運用の慎重を期することといたしました。またこの法律による規制及び規制のための調査が、正当な集団示威運動、集団行進、集会その他の団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならないこともまた当然でありますので、特に第三条第二項にその趣旨の規定を設けた次第であります。
 なお、政治的暴力行為が、わが国の民主主義の発展を阻害するものであることにかんがみ、すべての国民が、その発生を防止するように努めなければならないものと考えますので、特に第五条にその趣旨の規定を設け、なお第六条に、だれでも政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知ったときには、直ちにその旨を警察署に通報しなければならないとする規定を設け、すべての国民の協力により政治的暴力行為の発生の防止に配意した次第であります。
 次に、第四条において政治的暴力行為の定義を掲げました。すなわちそれは政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってなされる次の諸行為であります。イ、殺人、ロ、傷害、ハ、逮捕監禁、ニ、強要、ホ、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項に規定する態様の集団的暴行、脅迫、器物損壊、ヘ、国会または総理官邸への暴行、脅迫その他暴力的手段による不法侵入、ト、特定の者が、殺人をなすおそれがあることを予見しながら、その者に対し継続または反復して、特定の他人を殺すことの正当性または必要性を主張する行為。ただし、その特定の者がその影響を受けて、殺人を実行するに至った場合に限ります。チ、殺人の予備、陰謀、教唆、扇動。傷害の教唆、扇動。国会等への侵入の教唆、扇動。この法律による政治的暴力行為は、以上の行為に限定されるわけでありまして、この法律においては、これらの政治的暴力行為が団体の活動として、あるいは団体の活動に関達して行なわれる特定の場合に、その団体に対する規制措置をとらんとするものであります。
 次に、この法律による団体規制措置は三種でありまして、その一は、団体の活動に関し政治的暴力行為を行なった役職員または構成員に一定期間当該団体のためにする行為をさせることを禁止する措置であり、その二は、政治的暴力行為を行なった団体の団体活動の制限であり、その三は、団体の解散の指定であります。
 団体のためにする行為の禁止については、禁止期間を殺人の場合は六カ月以内、その他の政治的暴力行為の場合は四カ月以内と規定いたしました。
 団体活動の制限については、破壊活動防止法による団体活動の制限よりさらに条件を重くいたしました。すなわち、殺人以外の政治的暴力行為の場合には、ある団体が継続または反復して政治的暴力行為を行ない、将来さらに継続または反復して政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがある場合に限定いたしました。すなわち、ある意味においては、政治的暴力行為を行なう常習性のある団体に対し、団体活動の制限をなし得るものといたしたのであります。ただし、殺人の場合には団体の活動として一回殺人を行なった団体が、将来さらに継続または反復して政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがある場合には、団体活動の制限をなし得るものといたしました。
 団体活動の制限期間についても、殺人の場合は六カ月以内、その他の場合は四カ月以内といたしました。
 制限される団体活動は、その政治的暴力行為が、集団示威運動等において行なわれた場合は、集団示威運動等を制限するものであり、機関紙誌によって行なわれた場合には、機関紙誌の発行を禁止するわけでありますが、このほか第九条に団体活動の制限を受けた団体の代表者等は、活動禁止期間中の団体の業務計画を公安調査庁に届け出なければならないといたしてあります。
 団体の解散は、事柄の重大性にかんがみ、第十条において厳格に殺人の場合に限定いたしました。すなわち、殺人関係の政治的暴力行為を行なった団体が、将来継続または反復して殺人を行なう明らかなおそれがある場合のみに限って団体の解散ができるものといたしたのであります。
 団体に対する規制措置は以上の通りでありますが、これらの規制処分を行なう権限官庁は公安審査委員会とし、規制に関する調査の権限を有する機関は公安調査庁とし、この法律による規制及び規制のための調査に関し、破壊活動防止法の諸規定を準用することといたしました。第十三条がこれであります。
 なお、規制原因行為としての思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人は、この法律第四条第一項第一号によって新たに規定されたところでありますが、政治上の主義または施策を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人は、破壊活動防止法第四条第一項第二号へに同法による規制原因行為として規定してあり、この点について両法が重複いたしますので、附則第二項において破壊活動防止法のこの部分を削除し、政治的殺人を行なう団体はすべてこの法律により規制することといたしました。
 次に、罰則についてでありますが、まず、その構想の概要を説明いたしますと、現行の刑法にすでに存する若干の犯罪類型の刑の加重を目的とする刑法のいわゆる特別法としての性格を持つものと、刑法等の現行刑罰法令には存しない新らしい犯罪類型を規定したものと大別することができると思います。すなわち、刑法の特別法としての性格のものとしては、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対するという、いわゆる政治上または思想上の目的をもってする殺人、傷害、国会または総理官邸への暴行、脅迫その他の暴力的手段による不法侵入、逮捕監禁、強要及び集団的ないし凶器を示してする暴行、脅迫、器物損壊等の六つの政治的暴力行為の類型が規定されたのであります。いずれもすでに現行の刑法において一般的に犯罪として刑罰が規定されているものでありますが、特に政治上または思想上の目的によるこれらの犯罪は、民主主義の基本原則ともいうべき思想、言論その他の行動の自由を抑圧する最も憎むべき犯罪であることにかんがみ、この際、刑法の特別法として刑を加重し、もってこの種の悪質な暴力の防止に資せんといたすものであります。なお、ここで特に一、二点につき言及したいと思います。
 その第一点は、政治的暴力行為の排除のために刑罰の強化のみに依存することは妥当でないばかりでなく、いたずらに極端な厳罰を規定して国民を威嚇することはかえって民主主義の根本理念に反するものではないかと考えられるので、本法案におきましては、この点につききわめて慎重な各般の配慮のもとに、各規定につき最も適正にして妥当な法定刑を規定することに努めたことであります。その
 第二点は、国会等への侵入と暴行、脅迫、器物損壊の二つの類型については、特に構成要件をしぼり、前者においては暴行もしくは脅迫をして侵入する場合、建造物もしくは器物を損壊して侵入する場合、またはさく、へいもしくは門を乗り越えて侵入する場合に限定し、適法平穏な請願、陳情その他の団体活動がいささかも制限を受けることのないように規定面自体において明確に立言をなし、また後者においてはいわゆる単純な個々の暴行もしくは脅迫または器物損壊をそのまま本法に取り込むことを避け、団体もしくは多衆の威力を示しもしくは凶器を示し、または数人共同してこれらの罪を実行する場合等に限定し、もって必要以上に苛察にわたらないよう万全の考慮を加えたことであります。
 さらに、新しい類型のものとしては、次の三つの規定があげられます。その一は、いわゆる政治上または思想上の目的の殺人または傷害を実行しようとする者に対し、凶器または金銭、物品その他の財産上の利益を供与してこれを幇助する行為をそれだけで処罰することとしたことであります。御承知のように、刑法上の幇助犯は本犯が犯罪を実行したときに初めて処罰の対象となるのでありますが、本法に規定するような殺人または傷害というがごとき凶悪な政治的暴力行為につきましては、本犯が犯罪を実行するのを待たずしてこれを規制しようとするものであり、いわゆる政治テロ行為を勧奨または支援することを許さずとする規定であります。しかしながら、この種の規定は他面において必要以上に拡大されて運用されるおそれがあることにかんがみ、いわゆる政治目的による殺人と傷害、二つの類型のみに限定するとともに、相手方がこれらの罪を実行しようとする者であることを要することとし、いたずらに拡大して解釈運用されることのないように要件をしぼっております。その二は、政治上または思想上の目的をもって殺人、傷害、国会等への暴力的手段による不法侵入の行為の一を教唆しまたは扇動する行為をいわゆる独立犯として処罰することとしたことであります。なお、殺人につきましては、教唆、扇動の独立犯のほかに予備、陰謀をも処罰することとしておりますが、これらの規定の必要性につきましては、この際特に説明を加える要はないものと信じます。その三は、政治上または思想上の目的をもって、特定の者がいわゆる政治殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して、文書もしくは図画または言動により特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をした者を、その特定の者がその影響を受けて政治殺人を実行するに至ったときはこれを処罰することとしたことであります。殺人の教唆、扇動をそれだけで独立犯として処罰することについては右に述べたところでありますが、この規定は教唆、扇動に至らない場合でも処罰の対象となり得る類型を新たに設けた点で注目に値するものと思います。いわゆる政治テロ行為の防止に役立たせたい趣意にほかならないのでありますが、との種の規定は立言のいかんによってはかえって言論の自由の制約になるおそれがあることにかんがみ、その点については最大限の考慮を払ったところであります。すなわち、政治的暴力行為の中で最もおそるべき行為である殺人のみに限定するとともに、殺人の正当性を主張しても、ただそれだけでは処罰の対象とはならず、その者がその影響を受けて政治殺人の罪を実行するに至った場合に、初めてこの犯罪が成立することとしたのであります。
 以上が罰則についての概要であります。
 最後に、本法案の重要性にかんがみ、附則において、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することといたしてあります。
 以上申し述べましたところが本法案の提案の理由でありますが、何とぞ慎重審議の上、すみやかに可決あらんことをお願いいたします。
#9
○池田委員長 次に本案について補足説明を聴取することにいたします。門司亮君。
#10
○門司議員 ただいま提案者であります富田健治議員から法案の提出の理由の説明が行なわれましたが、私はさらにこれを補足する意味におきまして、若干御説明を申し上げたいと思います。
 第一条、本条は本法の目的を掲げたものでございます。本法の目的は、究極において、わが国の民主主義の擁護に資することにあるのでございます。そのためには、政治上の主義もしくは施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする暴力行為を防止するために必要な規制措置を定めるとともに、これらの行為に対する刑罰規定を補整して対処することといたしたのでございます。
 政治上の主義とは、資本主義、社会主義共産主義のごとく、政治によって実現しようとする比較的に基本的、恒常的、一般的な原則を意味するものでございます。
 また、政治上の施策とは、国民皆保険のごとく、政治によって実現しようとする比較的に具体的、臨機的、特殊的な現実的方策を意味するものでございます。
 思想的信条と申しておりますのは、思想上の信念のことでございまして、憲法第十四条、第四十四条、国家公務員法第二十七条、労働基準法第三条に規定する「信条」より宗教上の信仰を除いたものと解されるものと考えておるのでございます。
 推進すると申し上げておりますのは、自己の抱懐する主義もしくは施策または信条についてその実現をはかることでございます。
 支持するとは、他人の抱懐する主義もしくは施策または信条についてその実現に協力することであろうかと思います。
 反対するとは、他人の抱懐いたしております主義もしくは施策または信条についてその実現を拒むことでございます。
 第二条、本条は本法の解釈適用について規定をいたしているのでございます。本法は、国民の基本的人権に重大な関係を有するものでございますから、民主主義の擁護に資する目的を達成するためにのみ適用すべきものであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならないことは申し上げるまでもございません。従ってこれを規定したものでございます。すなわち、本法の解釈適用にあたっては、健全な社会通念に従って、各条項を厳格に解釈適用しなければならないこととされているのでございます。
 第三条、本条は本法による規制及び規制のための調査の基準について規定をいたしたのでございます。すなわち、規制及び規制のための調査の基準を第一条の目的達成のための必要の限度において行なうことと定め、正当な団体活動及び適法な請願、陳情を制限するようなことがあってはならないといたしたものでございます。
 第四条、本条は、第一項に政治的暴力行為、第二項に扇動、第三項に団体、第四項に団体の活動の各定義を規定いたしたものでございまして、これらの定義は、本法の基礎観念でございます。
 本法は、本条に定める団体が本条に定める政治的暴力行為を一定の条件において行なう場合に、その団体に対し必要の規制措置をなすとともに、かかる政治的暴力行為に関する現行刑罰法令を補整いたしまして、これを犯した個人もまた取り締まることとしたのでございます。
 政治的暴力行為の観念は、行政上の観念で、刑事上の観念ではないと考えておるのでございます。すなわち、それは団体に対して行なう規制という行政処分の原因となる事実でございます。この観念は現行破壊活動防止法及び刑法その他の刑罰法規の規定する行為を基礎として、その教唆、扇動等、現下の情勢にかんがみ、本法の目的達成上必要最小限度の補整を新たに加えたものでございまして、本条第一項に掲げられております。すなわち、本条第一項の中で第一号より第六号までは、いずれも現行刑法その他刑事法により犯罪と定められている行為であるが、第七号と第八号は、第一号、第二号及び第六号に関し新しい取り締まり類型行為を定めたものでございます。この新しい類型行為は、他面、犯罪行為とし規定し、これを犯した個人を処罰することといたしておるのでございます。第一号は殺人、第二号は傷害、第三号は逮捕、監禁、第四号は強要、第五号は暴力行為等処罰に関する法律に定める行為で、特に説明を必要としないものと存ずるのでございます。第六号ないし第八号については、新しい規定でありますので、説明を加えることといたします。
 第四条第六号は、内閣総理大臣官邸及び会期中の国会議事堂並びにそれらの構内に暴行的手段により不法に侵入する場合を規定しておるものでございます。すなわち、不法侵入の形態として暴力もしくは脅迫をして侵入する場合、建造物もしくは器物を損壊して侵入する場合、さく、へい、もしくは門を乗り越えて侵入する場合に限定しております。しかも、このような侵入は、現行法でも当然犯罪となるものでございます。従って本規定自体よりして、平穏な請願、陳情その他適法の団体活動がいささかも制限を受けるものでないことを明らかにしたものでございます。
 本号の「不法に」と申し上げておりますのは、法律上正当な理由がないことを言うのでございます。
 「国会の会期中」とは、国会の常会(憲法第五十二条)、臨時会(憲法第五十三条)及び特別会(憲法第五十四条第一項)の会期中並びに参議院の緊急集会(憲法第五十四条第三項)中をいうのでございます。
 「建造物」とは家屋その他これに類似した工作物で、土地に定着し、人の起居出入に適する構造を有するものと解しているのでございます。
 「器物」とは器具物件をいいまして、本号の場合、建造物を除いたその他の物と解され、門、へいのごときはそれに当たるかと存じます。
 「さく、へい」はいずれも囲障であり、遮断の用に供せられるものでありまして、両者の相違をしいて求めれば、さくはもっぱら遮断の用に供せられるのに対し、へいは遮蔽の用をも兼ねている点があげられるかと存ずるのでございます。
 第四条第七号は、特定の者が政治上の主義、施策または思想的信条を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもって人を殺すおそれのあることをあらかじめ知りながら、その特定の者に継続または反復して、文書、図画または言動などの方法によりまして特定の他人を殺すことの正当なること、または必要なることを主張し、その特定の者がその主張の影響を受けて特定の他人を殺す行為の実行をなした場合を政治的暴力行為と規定しているのでございます。
 このように本号は、単に殺人の正当性または必要性を主張する行為だけを取り上げたものではなく、その主張の影響を受けて、特定の他人が殺人の実行をするという結果の発生を見た場合に限定して取り上げたものであるが、その発生した結果は殺人の既遂たると未遂たるとを問わないのでございます。「特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張」とは、特定の他人を殺すことが正しいこと、または必要であることを主張することで、これは現行刑法上教唆にも当たらず、また扇動でもなく、その行為の本質は宣伝行為と見るべきである。宣伝行為であるから、その解釈もおのずから一定の限界があることは申すまでもございません。
 また本号の「特定の者」とは、もちろん一人のみならず二人以上の多数者を含んでおりますが、要するに客観的にその他一般の人々と容易に区別され得る一人または人の集まりを意味していると解すべきであると思います。これも無制限でなく、人を殺す行為を行なうおそれのあることを予見しながらという条件がございまして、その範囲は限定されてくるものと解釈されるであろうかと存じます。また「特定の他人」とは、一人のみならず二人以上の場合も含まれているが、これも客観的にその他の一般の人との区別が相当具体的に明確化されていなければならないと考えられ、その明確化は殺人という行為の実行性との関連で定まってくるものと思います。
 「主張する」とは自己の意見として表明することでございまして、主張する方法としては文書、図画、言動をあげているが、行為として文書の頒布、掲示、図書の回覧、講演などが考えられようかと思います。
 第四条第八号は、殺人等についての予備陰謀、教唆、扇動を新たに規定いたしたものでございます。
 「予備」とは特定の犯罪の準備行為を言うのでございます。
 「陰謀」とは二人以上の間においてなされる特定の犯罪を行なうことの謀議でございます。
 「教唆」とは他人をして一定の犯罪を実行する決意を新たに生じさせるに足る行為をなすことを言うのでございます。本法案は教唆を独立行為として定めたものであるから、相手方が犯罪実行の決意をなし、または犯罪の実行に着手することは要しないのでございます。
 第四条第二項には、扇動の意義を規定してあって、これは破壊活動防止法と同様であります。
 第四条第三項は、団体の定義を規定してあって、破壊活動防止法と同様でございます。
 第四条第四項は、団体の活動の定義を定めたものであって、それは一つは団体の意思を決定する行為、二つは団体の意思に基づき、もしくは団体の主義、方針、主張に従ってする団体の役職員または構成員の行為ということでございます。
 この第四項の団体の役職員、構成員という概念も、破壊活動防止法のそれと同一でございます。
 第五条は、政治的行為がわが国の民主主義の発展を阻害することにかんがみまして、主権者である国民各自がその行為の発生を進んで防止するよう努めなければならない旨規定をしたものでございます。
 第六条は、第五条の趣旨を受けたものでございまして、政治的暴力行為が行なわれるおそれがあることを知った国民は、進んで警察署に対しこれを通報する義務を課した規定であります。しかし、この通報義務は、もちろん主権者たる国民の自発的意思に待つべきものであって、罰則をもって強制すべきものとは考えられないのでございますから、違反に対しては罰則は考えておりません。
 第七条は、公安審査委員会の行なう規制処分のうち、政治的暴力行為を行なった役職員または構成員に団体のためにする行為をさせることを禁止する処分の条件、内容及び効果について規定しているものでございます。すなわち、本条第一項は、団体の役職員または構成員が当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、殺人、同未遂、その予備、陰謀、教唆、扇動のいずれかの行為を行ない、または特定の者が殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し継続または反復して、文書もしくは図画または言動により、特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をして、その特定の者がこの影響を受けて殺人を実行するに至ったときは、公安審査委員会は当該団体に対し、六カ月をこえない期間を定めて、当該役職員または構成員に当該団体のためにする行為を禁止することができるものと規定したものでございます。
 第二項は、団体の役職員または構成員が当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、傷害、その教唆、扇動、逮捕監禁、強要、同未遂、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の集団的暴行脅迫、器物損壊または国会等への暴力的侵入、同未遂、その教唆、扇動のいずれかの行為を行なったときは、公安審査委員会は当該団体に対し、四カ月をこえない期間を定めて、当該役職員または構成員に当該団体のためにする行為をさせることを禁止することができるものと規定しているのであります。
 第三項、第四項は、右二項の処分の履行を確保するため設けられました規定でございます。この処分が効力を生じた後は、当該役職員または構成員は当該団体のためにする行為をなしてはならず、またそれ以外の役職員または構成員は処分の趣旨に反する行為をしてはならない旨を規定したものでありまして、処分の履行を確保せんとするものであります。ただし、当該処分の効力に関する訴訟に通常必要とされる行為をすることは、例外としてなし得る旨規定しているのであります。
 第五項は、右二項の脱法行為を禁止したものでありまして、当該団体の役職員または構成員は、いかなる名義においても右二項の規定による禁止を免れる行為をしてはならない旨を規定したのでございます。
 本条第一項の「団体の活動に関し、」とは、団体の活動に関連しての意でありまして、団体の活動としてなされる場合はもとよりこれに包含されるものでございます。「当該団体の目的の実現に資するため、」とありますのは、当該団体の目的の実現をはかり、または実現を容易ならしめるための意味でございます。また、「団体のためにする行為」とは、団体活動に参与する行為、すなわち団体の意思決定に参与することはもちろん、団体の意思決定に基づいて行ないまする団体活動に参加する一切の行為を言うものでございます。
 第八条、本条は団体に対する活動制限の処分について、その要件、内容及び効果を規定したものでございます。
 団体に対する活動制限の処分の要件と内容は、第一項と第二項の場合の二つに分かれておりまして、これは殺人に関する行為とその他の行為とを区別して取り扱ったものでございます。
 第一項は、殺人に関する政治的暴力行為に関する場合で、団体が第四条第一項に規定する政治的暴力行為のうち殺人及びその予備、陰謀、教唆、扇動または殺人の正当性、必要性の主張をする行為を行ない、または殺人の未遂を行ない、これに継続または反復して将来さらに団体の活動として何らかの政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときであって、この要件に該当するときは、団体活動の制限ができるものといたしたのでございます。処分の内容としては、すでに行なった政治的暴力行為の行為形式との関連において、六カ月の範囲内で集団示威運動等の集団行動や機関紙誌の発行を禁止することができることといたしたのでございます。
 第二項の場合は、殺人に関する以外の政治的暴力行為を原因として行なう場合について定めたもので、団体が継続または反復して本法第四条に規定する政治的暴力行為のうち、傷害、同教唆、扇動、逮捕監禁、強要、集団的暴行、脅迫、器物損壊、国会等への不法侵入、同教唆、扇動を行なうか、または強要、国会等への不法侵入の未遂を行ない、これに継続または反復して将来さらに団体の活動として政治的暴力行為を行なう明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときであって、この要件に該当するときは、団体活動の制限ができるものといたしたのでございます。処分の内容は第一項の場合と同様であるが、期間が四カ月以内に減定されておる点において相違があることを申し上げておきます。
 第九条、本条は第八条により団体活動の制限の処分を受けた団体に対する業務計画等一定の事項の届出義務の規定でございます。
 届出義務者は、活動制限団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者であり、届出の内容は禁止期間中の収入、支出を含む団体の業務計画その他の事項であるが、その詳細については政令の規定するところに譲ったのでございます。届出先は当該団体のおもなる事務所の所在地を管轄する公安調査局長または地方公安調査局長でございまして、管轄区域については公安調査庁設置法に規定されておるところでございます。
 第十条、本条の規定は、規制処分の一つである解散処分の要件を定めたものでございます。
 解散の要件は、団体が団体の活動として、政治上または思想上の目的をもって殺人を行なったかもしくはその未遂に終わった場合または政治上または思想上の目的をもって殺人の教唆、扇動をして現実に殺人行為を行なわせた場合、将来もさらに継続または反復して団体の活動として政治または思想上の目的で殺人行為を行なうか、その予備または陰謀をなすか、もしくは教唆、扇動をなす明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由のある場合でございます。解散の指定をなす機関は公安審査委員会でございまして、その手続については破壊活動防止法の規定を準用することといたしました。
 第十一条、本条第一項は解散処分の効果を規定したものでございます。
 解散処分の効果が生ずると、本条によって一定の行為が禁止されます。禁止される者は処分の原因となった政治的暴力行為が行なわれた日以後処分を受けた団体の役職員または構成員であった者で、禁止の行為は処分を受けた団体のためにするいかなる行為も含まれるのでございますが、例外として、処分の効力に関する訴訟または処分を受けた団体の財産または事務の整理に通常必要とする行為を除いたものでございます。団体のためにする行為とは、団体の役職員または構成員が直接団体の存続、発展、再建のために行なう一切の行為を申すのでございます。
 第二項は、第一項の処分の効果の脱法行為をあげたものでございまして、いずれも罰則を伴うものでございます。
 第十二条は、解散処分が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくなった場合の効果を規定したものでございます。
 第一項は、法人が訴訟手続によって取り消しまたは変更ができなくなったときに解散することを定めたものでございます。解散処分は公安審査委員会で決定され、官報に公示されると効力を生じますが、訴訟手続によって争う道が残されておりますので、本項は訴訟手続によって争い得ないことが確定した場合でございます。
 第二項では解散処分を受けた団体の財産整理義務を規定し、第三項では財産整理終了時における団体役職員のてんまつ届出義務を規定したものでございます。
 第十三条、本条では破壊活動防止法の一部の規定を準用することを規定するとともに、準用の場合の読みかえ規定を定めたものでございます。
 本法では、団体のためにする行為の禁止(第七条)のほか、破壊活動防止法と同様団体活動の制限(第八条)、解散の指定(第十条)の規定が置かれておりますので、これらの規制の手続を規定する必要があるが、規制の手続は破防法と同様公安調査庁長官の請求により公安審査委員会で行なうことになっているため、本法で再び破防法と同様な規定とすることを避け、すべての手続規定を準用して読みかえることといたしました。
 そのため、破防法第三章破壊的団体の規制の手続、第四章調査、第五章雑則(第十一条から第三十七条)の規定をすべて本法で準用することといたしたのでございます。
 破防法第三章破壊的団体の規制の手続に関する規定を準用することにより、本法の団体のためにする行為の禁止(第七条)、団体活動の制限(第八条)及び解散の指定(第十条)の処分をなす場合の手続がすべてこれによることといたしました。
 さらに第四章調査は、規制のための公安調査官の調査権などについて規定しておりまして、第五章雑則では、公安審査委員会の決定に対する裁判の提訴により委員会の決定が取り消されたとき、公安調査庁長官がその裁判を官報に公示する義務や、法務大臣の国会に対する規制状況の報告などを規定いたしたものでございます。
 さらに第十四条以下の罰則でございますが、本条から第二十一条までは、「政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的」をもってなされる殺人、傷害、国会等への暴力的手段による不法侵入、逮捕監禁、強要、集団的暴行等の六つの犯罪類型について同種行為についての現行刑罰法規の法定刑を引き上げた規定でございます。
 本条は、右のうち、殺人に関する規定で刑法第百九十九条の殺人罪の規定と比較すれば、まず禁錮刑が選択刑として加えられたこと、刑の下限が三年から七年に引き上げられたことが相違点としてあげられるのでございます。
 第三項の予備、陰謀は、破壊活動防止法から殺人に関する規定を削除して本法にこれを規定することといたした関係で、同法第三十九条の規定から殺人についての予備、陰謀、教唆、扇動に関する部分も削除されるので、その予備、陰謀の部分をここに規定したものでございます。
 なお、その教唆、扇動については、第二十三条第一号を参照していただきたいと思います。
 第四項は、本法に規定する目的をもってする尊属殺人については、本条を適用するのか、それとも刑法第二百条(未遂については第二百三条)の適用を見るのか疑いを生ずる余地もあると考えられますので、両法条の関係を明確にしたものでございます。
 第十五条につきましては、本条は傷害に関する刑の加重規定でございまして、刑法第二百四条(傷害)との相違点は、禁錮刑が加えられ、罰金、科料の二つの刑がなくなったこと及び刑の下限が一年となったことでございます。
 第十六条は、傷害致死に関する加重規定でございまして、刑法第二百五条第一項(傷害致死)との相違点は、禁錮刑が加えられたこと及び刑の下限が二年から三年に引き上げられたことでございます。
 本条第二項は、第十四条第四項と同様に、刑法第二百五条第二項の規定(尊属傷害致死)と本条第一項の規定との関係を明確にしたものでございます。
 第十七条は、刑法第百三十条前段の住居侵入罪の特別規定でございまして、同条との相違点は、前記の特別のいわゆる政治目的の存在を要件とするのみならず、対象を国会議事堂もしくはその構内(国会の会期中に限る)または内閣総理大臣官邸もしくはその構内に限定いたしまして、さらに侵入の態様も、暴行もしくは脅迫をしての侵入、建造物もしくは器物を損壊しての侵入、さく、へいもしくは門を乗り越えての侵入の三つに限定いたした上、法定刑を六カ月以上七年以下の懲役または禁錮(刑法第百三十条は三年以下の懲役または五十円――罰金等臨時措置法により二千五百円――以下の罰金)と規定いたしたことでございます。
 「不法に」、「会期中」、「建造物」、「器物」、「さく、へい」の意義については、第四条の説明を御参照願いたいと思います。
 「暴行若しくは脅迫をして侵入」、「損壊して侵入」という場合の暴行、脅迫、損壊と侵入との関連については、暴行、脅迫、損壊の行為が侵入の手段としてなされることを必要とするものと解せられるのでございます。刑法第九十八条加重的逃走を御参照願いたいと思います。
 第二項の未遂罪の成立に必要な実行の着手については、侵入行為自体について着手がなくとも、手段である暴行、脅迫、損壊の各行為について着手があれば足りるものと解釈するものでございます。
 第十八条は、逮捕監禁に関する規定でございまして、刑法第二百二十条第一項及び第二項に対応して、それぞれの法定刑を引き上げた上、禁錮刑を付加したものでございます。
 第十九条は、逮捕監禁致死傷に関する規定で、刑法第二百二十一条の趣旨にならい、本法の傷害(第十五条)及び傷害致死(第十六条)の罪の刑と同一の刑を規定したものでございます。
 第三項の規定は、尊属逮捕監禁致死についての刑法の規定と本条との関係を明確にしたものでございます。すなわち、本法に規定する目的による尊属逮捕監禁致死については、本条第二項の規定だけが適用されるのか、あるいは刑法第二百二十一条(逮捕監禁致死傷)の規定によって第二百二十条第二項(尊属逮捕監禁)の罪と、第二百五条第二項(尊属傷害致死)の罪とを比較した結果適用される第二百五条第二項の規定の適用を見るのか疑いを生ずる余地があるので、この間の関係を明確にしたものでございます。
 第二十条、本条は、強要に関する加重規定でございまして、刑法第二百二十三条第一項、第二項との相違点は、一年以上五年以下と法定刑の上限並びに下限を引き上げたこと及び禁錮刑が加えられたことでございます。
 第二十一条、本条は、集団的暴行、脅迫、器物損壊等に関する規定でございまして、単純な暴行、脅迫、器物損壊については刑法に規定が存するのでございますが、これらの罪が団体または多衆の威力を示し、団体もしくは多衆を仮装して威力を示し、または凶器を示し、もしくは数人共同してなされる場合には、暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項によって三年以下の懲役または五百円(罰金等臨時措置法によって二万五千円)以下の罰金に処せられるのであります。
 本条は、構成要件として右のような集団的ないし凶器を示してする方法による暴力行為に特別の政治目的を付加した上、刑の加重をした規定であって、右の暴力行為等処罰に関する法律の刑から罰金刑を削り、禁錮刑を加え、六カ月以上五年以下と法定刑の上限並びに下限を引き上げたものでございます。
 第二十二条、本条は、政治上または思想上の目的の殺人または傷害の罪を実行しようとする者に対し、凶器を提供し、または金銭、物品その他の財産上の利益を供与して、これを幇助する行為を、それだけで処罰することとしたものでございます。
 刑法上の幇助犯は、幇助された者が犯罪を実行するに至ったときに初めて成立するものでございますが、本条の幇助犯は、これと異なり、幇助された者が犯罪を全く実行しなくとも成立する。すなわち、独立犯としての幇助犯を規定したものであって、新しい犯罪の類型を規定したものと言えるのでございます。
 本条は、背後にあって、政治テロを勧奨または支援しようとする行為を規制するものであるが、実行しようとする者に対し、これを幇助する行為というのであるから、提供または供与を行なう者は、その相手方が、政治上または思想上の目的をもって殺人または傷害の実行を決意している者であることを認識し、かつ、その実行を容易ならしめる意思をもってすることを要するものと解するものでございます。
 幇助された者が犯罪を実行するに至ったときの本条と刑法総則の従属犯としての幇助の規定の適用の関係については、第二十五条を御参照願いたいと思います。
 第二十三条、本条は、政治上または思想上の目的で、本法第十四条の殺人及び刑法上の殺人、尊属殺、本法第十五条の傷害及び刑法上の傷害、本法第十七条の国会等への不法侵入等の罪を教唆し、または扇動する行為を、それだけで処罰することとしたものでございます。
 前条と同様、独立犯としての教唆犯または扇動犯を規定したものであって、教唆または扇動された者が犯罪を実行しなくとも、本条の犯罪が成立するといたしたものでございます。
 政治上または思想上の目的による殺人についての独立犯としての教唆犯または扇動犯の本条の規定の新設により、破防法第三十九条の規定から関係規定が削除されることになっているのでございます。附則2を参照していただきたいと思います。
 本条第一号または第二号において、本法の規定と刑法の規定とが合わせて掲げられているのは、教唆され、または扇動される相手方に政治上または思想上の目的があるかどうかを問わず、そのいずれの場合にも、これを教唆し、または扇動する行為を処罰する趣旨を明らかにしたものでございます。
 教唆された者が犯罪を実行したときの本条と刑法の規定の適用の関係については、第二十五条を御参照願います。
 次に、第二十四条、本条は政治上または思想上の目的で、特定の者が政治上または思想上の目的の殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し、継続または反復して文書もしくは図画または言動によって特定の他人を殺すことの正当性または必要性の主張をする行為を、その特定の者がその影響を受けて政治上または思想上の目的の殺人を実行するに至った場合に限って、これを処罰することとしたものであります。政治上または思想上の殺人を教唆し、または扇動する行為は、前条によって独立犯として処罰されるのであるが、本条は、教唆または扇動に至らない場合でも、これを処罰しようとするものであって、新しい犯罪類型を規定したものと言えるのであります。
 本条の要件は複雑であるから、これを分解して説明いたしますならば、第一に政治上または思想上の目的をもってすること、第二に特定の者が本法の殺人を行なうおそれがあることを予見しながら、その者に対し特定の他人を殺すことの正当性または必要性を主張すること、第三に継続または反復して、文書もしくは図画または言動により主張すること、第四に右の主張だけでは足らず、主張の影響を受けてその特定の者がいわゆる政治殺人を実行するに至ったときに処罰されることになること、この四点に集約されるのでございます。予見しながら殺人の正当性または必要性を主張することで足り、殺人を実行させる目的を必要としない点で教唆や扇動より広くなっているが、特定の者に対し特定の他人を殺すことの正当性等を主張すること、主張を受けた特定の者がその影響によって殺人の実行をするに至ったとき初めて処罰の対象となること等の点において、独立犯としての教唆や扇動より狭くなっているものと言えるでありましょう。
 第二十五条本法に定める独立犯としての教唆犯または幇助犯の規定と、刑法上の教唆犯または幇助犯の規定の適用の関係を規定したものであります。
 本法第二十三条に規定する教唆犯及び第二十二条に規定する幇助犯は、前述したように、独立犯であって、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に至らない場合でも成立するものであるが、刑法上の教唆犯または幇助犯はこれと異なり、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に出た場合に限って成立する。そこで、教唆されまたは幇助された者が犯罪の実行に至らない場合には、刑法上の教唆犯または幇助犯の成立の有無を論ずる余地はないが、教唆されまた幇助された者が犯罪の実行に至った場合は、刑法上の教唆犯または幇助犯に関する規定が適用されるのか、本法が適用されるのかという疑問が生ずるかと存じます。本条は、かかる場合において、「刑法総則に定める教唆又は幇助の規定の適用を排除するものではない。」と規定し、刑法上の教唆犯または幇助犯に関する規定の適用があることを明らかにしたものでございます。
 第二十六条は、政治上または思想上の目的の殺人の予備または陰謀をした者が、その罪の実行に至らない前に自首したときは、その刑を減軽し、または免除することを規定したものでございます。破防法第三十八条第三項、刑法第八十条等と同趣旨の規定であって、政治上または思想上の目的の殺人の実行を未然に防ごうとする政策的考慮に出た規定でございます。「罪の実行に至らない前」とは、罪の実行行為に着手する前を言うものであって、殺人罪の実行に着手した後に自首したときは、刑法第四十二条第一項の一般の自首の規定が適用されるものといたしたのでございます。
 第二十七条、本条は解散の指定を受けた団体の役職員または構成員であった者が、当該団体のためにするいかなる行為をなすことも禁止し、かつ、いかなる名義においてもこの禁止を免れる行為、脱法行為をなすことを禁止する第十一条の規定に違反したとき、この者を三年以下の懲役または五万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。第十条及び第十一条の説明を御参照願いたいと思います。
 第二十八条、本条は団体活動の制限の処分を受けた団体の役職員または構成員が、その処分の趣旨に反する行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においてもこの禁止を免れる行為、脱法行為をなすことを禁止する第八条第三項及び第四項の規定に違反したとき、この者を二年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。第八条の説明を参照願いたいのであります。
 第二十九条、本条は団体の役職員または構成員が、当該団体の活動に関し、または当該団体の目的の実現に資するため、一定の政治的暴力行為を行なった結果として、当該団体が当該役職員または構成員に、一定期間当該団体のためにする行為をさせることを禁止する処分を受けた場合に、当該団体の役職員または構成員が当該団体のためにする行為をなすことを禁止し、かつ、いかなる名義においてもこの禁止を免れる行為、脱法行為をなすことを禁止する規定に違反したとき、この者を一年以下の懲役または三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 第三十条、本条は退去命令違反の罪を定めたものでございます。すなわち、公安調査庁長官が本法による団体の規制の請求をなさんとするにあたり、団体の役職員、構成員及び団体の代理人は指定の期日に出頭して公安調査庁長官の指定する職員、受命職員に対し、事実及び証拠につき意見を述べ、並びに有利な証拠を提出することができる旨定められている、破壊活動防止法第十四条以下、これらの規定が本法第十三条によって本法による規制に関し準用されておりまするが、この期日において団体の選任する立会人及び新聞、通信または放送の事業の取材業務に従事する者が手続を傍聴するにあたり、弁明の聴取を妨げる行為をしたときは、受命職員はその者に退去を命ずることができ、この命令に違反した者を三万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 第三十一条は、団体活動の制限の処分を受けた団体の代表者もしくは主幹者または会計責任者が当該団体の活動制限期間中の業務計画その他の事項の届出義務に違反して、全く届出をしなかったかまたは虚偽の届出をしたとき、この者を一万円以下の罰金に処することを規定したものでございます。
 最後に附則でございますが、附則の第一項は、本法を公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行することを規定したものでございまして、第二項において、破壊活動防止法第四条に掲げる「暴力主義的破壊活動」より殺人、その予備、陰謀、教唆、扇動の各行為を削除し、さらに第三十九条中刑法第百九十九条を削り、破壊活動防止法で刑罰の補整がなされた政治上の主義もしくは施策を推進し、支持し、またはこれに反対する目的をもってする殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の罪を一応廃止することとしているのであります。
 これは本法第四条第一項第一号及び第八号により、殺人、その予備、陰謀、教唆、扇動が新たに「政治的暴力行為」として規定され、第十四条第三項及び第二十三条第一号により殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の罪について刑罰の補整がなされたので、これと重複する破壊活動防止法の規定を削除することといたしたのでございます。
 第三項は、本法の施行前にした破壊活動防止法第三十九条に規定する殺人の予備、陰謀、教唆、扇動の行為に関しては、なお従前の通り規制、処罰し得る趣旨を定めた経過規定でございます。
 第四項は、本法の施行に伴い、法務省の担当職務権限中に本法による団体の規制に関する事項を加えることを規定し、第五項は、公安調査庁の任務、権限中、本法の規定による団体規制に関する調査及び処分の請求等に関する国の行政事務を加え、総務部の事務に本法の規定による弁明の聴取及び処分の請求に関することを加え、調査第一部の事務に本法第四条第一項第五号及び第六号に規定する政治的暴力行為を行なった団体に関する調査事務、調査第二部の事務にその余の政治的暴力行為を行なった団体に関する調査事務をそれぞれ加え、さらに公安調査官の職務に本法の規定による団体調査事務を加えたものであります。
 第六項は、公安審査委員会の事務に、本法の規定による規制に関する審査及び決定の事務を加え、さらにその権限事項に、本法による団体のためにする行為の禁止処分、活動制限及び解散の指定の規制処分を加えたものでございます。
 以上で本法案に対しまする補足説明を終わりたいと存じます。
#11
○池田委員長 これにて両案についての説明は終わりました、
 両案に対する質疑は次会より行なうことといたします。
    ―――――――――――――
#12
○池田委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 理事会の申し合わせによりまして、ただいま審査中の両法律案について、参考人の出頭を求め、その意見を聴取することとし、その日時は来たる二十二日午前及び午後を通じ一日間、人数は八名、その人選につきましては、理事間の協議に基づいて委員長が決することと御一任を願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○池田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次会は明十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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