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1960/05/18 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第12号
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1960/05/18 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第12号

#1
第038回国会 法務委員会 第12号
昭和三十六年五月十八日(木曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 池田 清志君
   理事 田中伊三次君 理事 長谷川 峻君
   理事 林   博君 理事 牧野 寛索君
   理事 山口六郎次君 理事 井伊 誠一君
   理事 坪野 米男君
      宇野 宗佑君    浦野 幸男君
      唐澤 俊樹君    菅  太郎君
      岸本 義廣君    小島 徹三君
      佐々木義武君    首藤 新八君
      早川  崇君    阿部 五郎君
      猪俣 浩三君    畑   和君
      鈴木 義男君    志賀 義雄君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        公安調査庁次長 關   之君
 委員外の出席者
        議     員 富田 健治君
        議     員 早川  崇君
        議     員 坪野 米男君
        議     員 門司  亮君
        衆議院法制局参
        事
        (第二部長)  川口 頼好君
        検     事
        (刑事局公安課
        長)      川井 英良君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
五月十八日
 委員徳安實藏君及び片山哲君辞任につき、その
 補欠として早川崇君及び鈴木義男君が議長の指
 名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男君外八名提出、
 衆法第一六号)
 政治的暴力行為防止法案(早川崇君外七名提出、
 衆法第三九号)
     ――――◇―――――
#2
○池田委員長 これより会議を開きます。
 日本社会党坪野米男君外八名提出の政治テロ行為処罰法案及び自由民主党、民主社会党の共同提案にかかる早川崇君外七名提出の政治的暴力行為防止法案の両案を一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。
 質疑者にこの際お願いをいたします。質問の初めに答弁者を指定してから御発言を願います。菅太郎君。
#3
○菅委員 今回自民党及び民社党両党の有志議員の提案によりまして、いわゆる両党共同提案といたしまして政治的暴力行為防止法案が提出をされました。またさきに社会党の有志議員諸君から政治テロ行為処罰法案が提出されておりまして、ここに議員提出の両法案が並行して本委員会の審議を受けることになりましたにつきましては、まず最初にまことに御同慶の至りであると考えるのであります。
 そもそもわが国会は、憲法の規定によりますと、国権の最高機関、唯一の立法機関と規定されておりますけれども、御承知のように、実際は政府提出の法案の審議に明け暮れておるのでありまして、議員みずからが立案し、国会がイニシアチブをとって提出された法案というものがまことに少ないことは、遺憾であります。ことに重要法案と目せられますような法案について、その感が特に深いのであります。しこうして、この議員提出法案は、もとよりひとり与党側から提出されるばかりでなく、できれば与野党の各派が共同して提案されることが最も望ましいと思うのであります。国会は話し合いの場であるし、各党が共通の広場で十分に話し合いまして、小異を捨てて大同について、相協力して立法活動を展開するということが、議会制度本来の面目であろうと存ずるからであります。もし与野党三党全部の共同ということができぬ場合には、そのうちの二党だけでも共同して共同提案の運びにすることがよろしいと思うので、それがまず一歩の前進であると考えるのであります。そういう意味で今回自民党と民社党両党が本法案の共同提案をいたしましたことは、まことに意味のあることとして心から敬意を表する次第であります。また共同提案に参加できない、これは野党の場合が多いと思いますけれども、この場合におきましても、その党が他党の提案を、ただ反対者、批判者ないしは傍観者として批判論議するばかりでなくて、みずからも進んで建設的な独自の法案を出して、両案が並行して審議せられるように運ぶということが、これは次善的ではありますが、望ましいことであると思うのであります。そういう意味におきまして、社会党の今回の御提案につきましても敬意を表する次第でございます。しかも今回出ましたこの法案は、その性格から言いましても、内容におきましても、またこれの提出に至りました歴史的背景あるいは政治的背景というものから見ましても、すこぶる重要なる法案と言わねばならぬのでございまして、そういう意味で、今回の議員提案の意義はまことに大きくて、わが国の議会政治進歩の上に一つの時期を画したものと思うのであります。この意味におきまして、私が質問に入りまするその劈頭を借りまして、いささか喜びの意を表した次第でございます。
 さて、私は主として、この自民、民社両党提案の政治的暴力行為防止法案について質問をいたしたいのでございます。質問をお受け願いますのは、もとより提案者でございますが、必要に応じましては提案者のお許しを得て、衆議院の法制局、法務省、公安調査庁等の専門権威筋のいろいろな御説明をも一つ承りたいと思うのでございます。
 社会党の案につきましては、私の質問の最後に、結びのところで一言お願い方々質問をいたします。社会党案に対する詳細なる質疑は、後刻あらためて同僚委員からいたすことにいたしたいと存ずる次第でございます。
 さて、いよいよ質問に入ります。まず第一に、提案者にこれはお聞きをいたすのでございますが、両党の提案になっておりますが、しかしこの立法、審議の過程においては、社会党に対してもいろいろお働きかけが行なわれたように聞いております。お差しつかえのない限り、この三党の協議の経過をまず承りたいのでございます。本案の審議につきましてこれは重要なる参考になると思いますから、劈頭にこれをどうぞお願いいたしたいと思います。
#4
○早川議員 菅委員の御質問の三党折衝の経過の概略を申し上げまして、この立法ができました推移を簡単に、大要だけを御説明申し上げたいと存じます。
 昨年来の安保闘争また浅沼刺殺事件、嶋中事件等、政治的暴力がわが国の大きい風潮になりまして、これが防止対策というものが世論の要望となって参りました。そこで、社会党からも法律案が出される、また民社党からも出される、自由民主党からは御承知のように、法案は出ておりませんが、要綱がすでに決定をいたしまして、二カ月ほど以前に三党の案が出そろったわけでございます。そこで、われわれといたしましては、こういった問題は超党派的に、政治暴力を根絶するという点では、議会民主主義を奉じておる三党であるから、必ずや一致できるものであるという立場から、民主社会党の呼びかけに呼応いたしまして、三党間の折衝を始めたわけでございます。それ以来自民党は、民社党とは七回、社会党とは五回にわたりまして、詳細に腹を割って折衝をいたしたわけでございます。ところが、その過程におきまして、連休前に一応の各党の考え方がわかって参りました。そこで、最後まで残りましたのは、国会その他のいわゆる不法暴行侵入という問題でございます。この点につきましては、すでにお手元にある法案にありまするように、自民党といたしましては裁判所をのけましたし、しかも国会、総理官邸に対する不法な、しかも暴力を行使したり、脅迫したり、器物を破損したり、さくを乗り越えたりというような犯罪事実の侵入を規制するというところで、民主社会党と自民党は妥結をいたしたのであります。ところが、社会党の方とは、その問題につきましてついに連休あけの最終会談におきまして妥結に至りませんでした。そこで、私は、社会党に対しまして、こういう提案をいたしたのであります。坪野君並びに中村高一君でございますが、国会乱入その他の政治暴力行為をこの法案の中に盛り込まないならば――別の法律でこれを提案したらどうかという社会党の御要求でございましたが、そこで、私たちといたしましては、しからばここに盛られたと同じようなことを別の法律で出した場合には、社会党は賛成するのかという詰めをいたしたのであります。社会党の方では、それは約束できない、こういうお話でありましたので、やむなく二党の提案に臨み切りました。しかしながら、これは決裂ではないのでありまして、社会党の方も、政治暴力を防止するという点には変わりはないから、委員会の審議は協力をして、その過程においてまたいろいろ直す点があるならば御相談しようではないか、言葉を変えて言えば、決裂ではなくて、友好的物別れということで別れておりまするので、本法案の審議にあたりましても、反対は反対でけっこうですし、また、修正の場合は修正の案を出していただきたいが、それはそれとして、一つ審議並びにこれの実現に協力してもらいたいということにつきましては、中村高一君並びに坪野君も十分御了承賜わったような経過になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、三党共同にならなかったのはまことに残念でありますが、今申し上げましたような経緯で、やむなく御提案申し上げました次第でございます。その間二カ月間にわたりまして、詳細にこの問題点を話し合いましたのでありまして、従来の政府提案のように、野党の方が知らないで突如国会に出たというような性質のものではございません。そういう点では、法文の一字々々におきましては十日ほど前にお示ししましたのでありますけれども、法案の大要につきましては、慎重に社会党の方々も御検討賜わった、かように思っておるわけでございます。
#5
○菅委員 昭和二十七年以来、破防法はわが国の刑罰法規体系の中に重要な地位を占めております。ことに治安法規体系の主座を占めておると言ってもいいのじゃないかと思いますがゆえに、本法の制定にあたりましては、本法と破防法との関係を明らかにする必要があるだろうと思うのでございます。それで、この点につきまして私見を申し述べつつ、御質問をいたしたいと思うのであります。
 両方の内容を検討して見ますると、一面大いに共通、類似の点があります。すなわち、その目的とするところでは、政治上の破壊的、暴力的活動を防止するという共通の目的を持っております。また、その目的達成の方法としては、団体の規制やあるいは刑罰補整、加重をはかっておる点がまことに類似をいたしております。しかし他面、静かに検討してみますると、見のがせない差異の存することを発見いたすのであります。すなわち、規制の原因となりまた処罰の対象となる活動、行為、これの類型と申すか性格と申すかについて相当の差異があり、従って、両法がそれぞれ守ろうとする法益が違っておるのでないかと思われるのであります。すなわち破防法におきましては、内乱、外患あるいは政治的目的をもってする騒擾、放火、列車転覆、激発物の破裂、爆発物の使用、凶悪なる公務執行妨害など、大は国家の存在を危うくする、国家の基本的体制を脅かすという、いわゆる反逆罪的なものから、小は公共の安全を害し、社会の秩序を乱すというようなものまで含めまして、要するところ破防法は国家社会の安寧秩序を乱すというか、第一条の言葉をもって言うならば、公共の安全を侵害するという性格を持っておる。いわが国家的、社会的重大性と申しますか、あるいは公共的凶悪性というものを多分に持っておるように思うのであります。本法ではそれが異なりまして、政治的目的をもってする殺人、傷害、逮捕監禁、強要あるいは集団的暴行、脅迫、器物損壊、また政治的中枢への暴力的乱入というようなことでありまして、これは国民の政治活動の安全及び自由を侵害する行為でありまして、憲法の保障する政治上の基本的人権を脅かす活動、これが主たる性格のように思うのであります。従いまして、破防法の対象としております行為に比しますと、国家的、社会的重要性が低いということも言えるでありましょうが、しかし反面におきましては、実際には国民なかんづく政治活動をする者にとりましては、日常の政治活動の安全と自由とを脅かされるという意味では、むしろこの方が身近でありまして、深刻痛切な脅威、危害感を感ずるのであります。従って、またこの方が発生の機会もはるかに多いのではないかと思われるのでございます。
 以上のように、両法が、規制の原因なり、また処罰の対象となる行為の類型とかあるいはその性格を異にするのでありますから、本法の立案にあたりましては、これを破防法の一部に組み入れて、破防法の改正の形でやるという方式をとらないで、つまり本法の各法条の扱いを、破防法の延長であるとか、またその副次的なものと考えないで、本法は破防法と並立して独自の重要性を持つ法律として提案されることになりましたことは、私はむしろ妥当でないかと考えるのであります。また本法第一条に本法の目的を規定しておるのでありまして、破防法の場合にはこういうふうに書いてある。「もって、公共の安全の確保に寄与する。」これに対しまして、本法の目的のところには「もってわが国の民主主義の擁護に資する」と規定してあります。この「わが国の民主主義の擁護に資する」という言葉は舌足らずの感がいささかあると思いますが、おおむね妥当の感じがいたすのであります。この点に難くせをつけるのは、昨日の言論に見ましても、共産党の志賀君くらいでございまして、それこそあえて歯牙にかける必要はないと思うのであります。さらにまた破防法とは別の独立の法といたしましたが、前に申し上げましたように、法目的達成の方法には多分に共通類似の点があります。従って、たとえば本法の団体の規制の部分を大体破防法の例にならって規定をしたとか、また団体規制の手続、調査等では破防法の各条項を準用するようにしたというのも、私は当然だと思うのであります。
 以上こういうことはまことに粗雑なしろうと論でございますけれども、これらの点に関して提案者の御所信というものを伺いたいのであります。特にこの立案の過程において、一時本法は破防法の改正によって行なうべしという議論が相当強かったということを漏れ聞いておるのであります。お差しつかえなくばこれらの点についても一つ率直なるお話を聞かしていただくと大へんな参考になると思うのであります。
 また、この点に関しましては、本法の附則において、破防法の中から殺人に関する規定を抜きまして、本法の中に一本に統一してまとめてありますが、これも今申し述べましたような根本的方針に沿うて行なわれたものであるかどうか、あるいはそれともそれ以外の何か特別な法制技術的な意味があったものかお聞きをいたしたいのであります。
 なお、本問題は本法制定の基本的問題でございますから、ぜひとも御列席の法制局、法務省、公安調査庁等、専門権威筋の御意見を一つ専門的に、的確なところを伺いたいと存ずる次第であります。
#6
○富田議員 私からお答え申し上げます。ただいま破防法と別に今回の法案を出したことに対しては賛成である、しかし、その経過等につきましていろいろお尋ねもあり御議論の点もあったようでありますので、一応立案をいたしました提案者の一人としてお答えをいたしたいと思います。
 ただいま菅委員からお言葉もありました通りに、目的は、破防法も今回の政治的暴力行為防止法案も実は同じかと思います。すなわち民主主義擁護という点におきましては、言葉の点、文字の点、立言の点においては多少の相違もございまするが、民主主義の擁護、ことに具体的には議会主義を守りたいという国民の熱望にこたえる意味においては全然同じかと思うのであります。ただいまお話がございました通り、破防法におきましては、その対象が、内乱であるとか、外患誘致であるとか、騒擾であるとかいうような、比較的重い罪と申しまするか、そういうものでございます。今回は、これに対しまして、殺人、逮捕監禁、暴行、傷害、強要、それから国会、総理官邸への侵入というようなもので、比較的軽いというと語弊がございまするが、犯罪対象としてはやや第二級的なもの、こういうようなものが今度の防止法の対象になっておるかと思うのであります。
 そこで今お尋ねもあったのでございまするが、最初は、法律技術の上から申しましても、破防法を改正いたしまして、第二級的な今回の防止法案の対象としたものを加えるのも一つじゃないか、従って破防法を改正したらどうか、加えたらどうかというような議論もあったことは事実でございます。しかしながら、これを分けるということも全然法律技術として不当である、非常に間違っておるということも申せません。のみならず、一方におきまして、先ほど提案者の早川議員からも説明がありました通りに、社会党からも政治テロ処罰法案が出されておりますし、民社党からもすでに出ております。こういう関係もございまして、これはいずれも単独立法になっておりまするから、自民党といたしましても、これと先ほど申したように話し合いをなるべくつけたい。そうして菅委員も御賛成になりましたが、共同提案になるべくならしたいというような、またもっと大きな政治的意味もございまして、自民党からも一つの案を出そう、すなわち単行法で規定しよう、破防法というものの改正でなしに単行法でいこう、こういうようなことも実はこの法案ができる過程においてはあったような次第でございます。こういうことで、今回の独立単行法が起草されたというような経過に相なっておるのでございます。
 それから、詳細なことは専門家の意見をというお話でございましたので、いずれ法務省、公安調査庁その他からお話があると思いますが、殺人の行為を破防法から抜きました。これは私どもの考えております範囲では、少なくとも法律技術上の問題でございまして、破防法の中に殺人がある、同じものをまた今度の単行法の中に入れるのはどうであろうか、そこで殺人の問題は破防法から抜きまして、そうしてこの単行法の今回のこの法案のうちに入れた、こういうことになっておるかと了承いたしております。
 なお補足して申し上げたいと思いますが、一応お答え申し上げます。
#7
○川口法制局参事 ただいまの提案者の御答弁を若干補足いたしまして、技術的な見地から御質問にお答え申し上げます。
 第一点の破壊活動防止法と本法案との法律構成上の関係いかん、あるいは差異いかんという点でございますが、御質問の中にも、あるいはまた、ただいま提案者からお答えになりました中にも、主要な点は尽きておるのでごさいますが、なお私どもといたしまして、立案に関与いたしました関係で痛感しました点を申し上げますと、もうすでに御承知の通りでございますが、破壊活動防止法においては、今仰せになりました犯罪の類型が、本法案で取り上げている類型とは異にしている点が第一点。
 それから第二点の、一番大きな点は、これはきわめて重要だと思うのでございますけれども、破防法におきましては、団体規制ということが主でありまして、犯罪そのものに対する問題はわずかに、扇動罪、教唆罪の独立罪を規定したというだけでありまして、おのおの刑罰の罰則そのものにつきましては、一般の刑法のそのものの量刑において何ら変更していないのであります。この法案におきましては、民主主義の基底を破壊するそれらの日常的な犯罪の重要性にかんがみて、その犯罪の評価そのものを立法者が特にこの際重要な評価を加えられて、それに刑の量定そのものを加えられた、これが一番大きな点かと考えております。
 それから第三点の、この法案の附則におきまして、破壊活動防止法の殺人関係だけを向こうから抜きまして、この法律案の中で処理するという問題は、これは今富田先生からお話がありました通り、純粋に技術的な見地からなされたものでございまして、一つの条項が二つの法律によって重複して適用されますことは、論理的な障害がございますので、それを避けますために、向こうからこちらに取り入れる、こういう趣旨でしたのだろうと考えるのでございます。
 以上申し上げます。
#8
○竹内政府委員 法務省の立場から、立法政策上あるいは立法技術的な観点から、この案を拝見いたしまして感じましたことを申し上げたいと存じます。
 この法案の性格に関する、ただいま菅委員のお述べになりましたことは、私も全く同感でございます。
 破防法とこの法案との関係でございますけれども、破防法は御指摘の通り非常に重大な事態に対処するための法律と理解いたしておりますが、最近の事態は、そのような事態から、むしろ民主主義の危殆というような観点から、民主主義を擁護していこうという必要を痛感してきておると思うのでございまして、そういう事態に対処します法案といたしましては、破防法は何と申しましても牛刀をもって鶏を裂くというような感じがないわけではないのでありまして、おのずからその機能が異なると思うのでございます。しかしながら、それに対処する方法としましては、活動を規制する、あるいは刑罰を補整加重するというその方法、手段におきましては、破防法も本法案も同じところをねらって、同じような方法で実現を期しておるわけでございますので、そういう観点からいたしますと、あるいは破防法を改正してその範囲を拡大するということも、まさに立案の御審議の際においてお考えになったことは当然だと思うのでございますけれども、今申しましたように、対象になります行為は非常に違うのでありまして、もしも今の単行法に定められておりますこの内容を破防法の中に持ち込みますと、破防法はすこぶる性格の違ったものになって参りますし、立法技術的に見ましても、いろいろ構成要件の立言の仕方その他におきまして非常にむずかしい問題が出てくるのであります。これは立法技術的に見た面でありますが、事態がすでに違っておるのでございますので、その違った事態に対処しますものといたしましては、破防法を改正するという線ではなくて、単独の法律によってこの事態を的確につかんで対処していくという立法政策が当を得たものと私も考える次第でございます。
 なお、破防法と本法案との中に、両者にまたがっております殺人に関する部分につきましては、法制局からも御答弁がございましたように、一つには、実質的には、対象として、殺人、政治テロという問題、これに対処するという理由もございますし、立法技術的には、今申しましたように一つの行為が二つの法律の中に相またがっておるというこの部分でございますから、これを立法技術的にどちらに処置していくかということははっきりさせる必要がございますので、むしろこの法案の中に取り込んで対処していくのが、現下の情勢に対処する方法としましては適切であるというふうに考えるのでございます。その意味におきまして、技術的な調整として一方をはずし、この中に取り込んでこの法律一本で処置していくという考え方を明らかにしたものと理解いたす次第でございます。菅委員の御見解に全く同感の意を表する次第であります。
#9
○關(之)政府委員 私から申し上げることもございませんが、御参考までに私の考えているところを、数点に押えて申し上げたいと思います。
 このでき上がった法案を拝見いたしますと、第一の問題は、結局これを必要ならしめた客観的条件が違っておる、こういうことが私は根本の問題だろうと思います。御承知の通り、破防法につきまして私も立案に若干参加いたしましたが、そのときの情勢は、二十六年、二十七年の要するにある種の団体がまさに革命を起こさんとするようなある危険性があった。そういうような国家のいわば朝憲紊乱的な事態があった。その事態に対処いたしましてこれを防止するということが破壊活動防止法のねらいであったのでございます。従って、それ以外の問題につきましてはしばらくおくというような考え方であったのであります。その考え方の結果といたしまして、破防法第四条第一号の類型、すなわち内乱類型、そしてまた第二はそれに近いような騒擾その他の重大な社会を混乱させるような大きな問題を取り上げているわけであります。ところが、今日におきましてでき上がったこの法案と立案の経過のことを伺いましての感じは、やはりその事態というものが若干違ってきた。現実にはそのような行動は表面的には確かに平静になっているように見えますが、さればといって、それ以外の日常の政治的な各種の活動がありまして、それらが現実的に各種の不安を起こしておる。それをどうするかということが問題になって、このような法案になったものであろうかと考えるのであります。
 そこで今までの各御答弁申し上げた方々がお話しにならない一点がございます。それは、この法案の中では思想上の信条ということが取り上げられてきておるという点が一つの特徴であろうと私は思うのであります。御承知の通り、破防法におきましてはすべて政治上ということでありまして、思想上ということは当時考えていなかったのであります。もちろん思想のあるものは当然これは政治上というものに含まれまして、場合によってはダブってくる場合もありましょうけれども、着眼点としては思想的なものが政治上の問題以外にあるわけでございます。それが現在の社会において相当問題を起こしてくるということも疑い得ないところであります。そこで法案の性格として単に政治上の問題じゃなくて、思想上の問題をお取り上げになっておるところが、破防法とは一つの重大な着眼点として考えている範囲が違ってきた、こういうふうに私は考えるべき問題であろうかと思うのであります。従って第四条におきましては双方とも取り締まりの類型行為を列挙しておりますが、破防法の方は純乎として政治上の範囲だけの問題であります。ところが本法案の第四条は、政治上のほかに思想上の目的を持ってこのような行為をいたした場合に取り締まりの対象になる、こういう点が大いに注目すべき一つの問題であり、現下の社会自体がそのようなことを必要ならしめておる。これは健全なる民主主義の発展の上から見れば考えるべき問題かと思うのであります。
 それからこれは法案の内容にわたりまして恐縮でありますが、破防法とこの法案との一つの規制の仕方などの根本の違いといたしまして、破防法におきましては過去において破壊活動を一回いたした団体があって、それが継続または反復していたしたならば規制する、こういう大体の考え方なのであります。それも単純に思いつきで一回だけやったのじゃなくて、やはり継続、反復ということを一応破防法でも取り上げておるわけであります。しかしこの法案の第四条は、今までの菅委員の御説明の通り、破防法第四条よりは比較的身近な問題が多いわけであります。従って、破防法以上に厳格になっておる。継続、反復したものがさらにまた継続、反復ということになっております。そうなりますとやはり破防法より以上に、こういうような犯罪行為をすることがその団体を一そう性格化しておるというふうに考えるべきである。対照上そうなるわけであります。これはもちろん私はそうでなければならないと思う。こういう身近な行為が一回限りということは考えられないのであります。その点は立案者が大へん御苦心されたところと思って、私は法律の立法技術の上から見てまことに敬意を表する次第でございます。
 以上のことを補足的に申し上げまして、御参考に供したいと思います。
#10
○菅委員 次にお尋ねをいたしたいと思いますことは、社会党案におきましては、時限法となっております。また本法案の立案の経過の途中におきましては、これを時限法にしようかという御意見もあったようでございますが、それによらないで普通の恒久立法とされておるのでございます。この点に対する立案者といいますか、提案者の忌憚のない御所信を伺いたいと思うのであります。
#11
○富田議員 時限法の問題でございますが、立案の過程においてわれわれが論議しましたことを率直に申し上げてお答えといたしたいと思うのであります。
 ただいま菅委員のお尋ねもございましたが、こんな立法はなるべくならばわれわれいたしたくない、またこういう事態がないような、すなわち民主主義、議会主義に対する非常な侵害というものがないような世相になることをわれわれは期待いたしております。またそうあり得ると思うのであります。そういう場合においては、時限立法であろうがなかろうが、すみやかにこれを廃止すべきものである。これはわれわれ立案をしました者たち一同が固く信じ、固く希望した点であります。従って、そういう点から申しますと、一体時限法ということをやること自体が非常に信念のないことで、もし必要がなくなればすみやかにこれを廃止したい、こういうようなことから、大きな意味で時限法としなかったということが申せるかと思うのであります。
 それからもう一つ、これはこまかい問題になると思うのでありますが、実際問題でもあるようでありますが、あるいは社会党の案では三年という時限法、民社党の最初お出しになりました案では五年というようなことがあったかと思うのであります。三年、五年といいますと、こういう事案につきましては、かりにそれが裁判の問題になりました場合に相当年月を要する、そうしますと、三年の時限にいたしまして、裁判所にかかりましてこれが四年も五年もかかるというようなことになりますと、裁判自体が非常におもしろくない。すでに法律が廃止になってから裁判が行なわれておるというような、すなわち裁判途上であるというようなことが起こりまして非常におもしろくないことも従来考えられたようであります。そういうことも率直に申しますとございまして、やはり時限法にしない、しかし同時にこういう必要がなくなれば一日も早くすみやかにこれをなくする、これが当然だ、そうしたい、こういう意味で時限法という規定をいたさなかった次第であります。
#12
○菅委員 私はこれを時限立法にしなかったという点についてもう少し積極的な意見を持つ者でございまして、申し上げて御提案者の御批判を得たいと思うのであります。
 本法は破防法と並び立つ重要な法律だと私は思うのであります。対象の類型、性格から見ましても、またその起こってくる頻発度の点から申しましても、あるいはまた規制の方法、処罰の補整加重のありさまなどから見ましても、これは堂々たる押しも押されもせぬ法だと思いますが、こういう法を作るのには、よほど信念がなければならず、これを時限法として出して数年で引っ込めるというごとき、そもそもこの法案自体がそういう性格を持っていないと私思うのです。そういう意味でこれは時限法にしてはならぬと思うのであります。またこれは社会党さんの案のように時流を戒めると申しますか、一時の世相を戒める意味で極端なる厳罰主義をとられるというような法律でございましたら、これは時限立法にしなければならぬかと思うのでございますが、そうでなくて、他との刑罰法規の均衡も得て独自の重大な分野を占めて、りっぱに大法律として成立する、従って他の刑罰との均衡もよくとってやるという、こういう立法におきましては、私は恒久立法にするのが当然だと考えるのであります。また今回の本法案の対象になっておりますような政治的暴力行為というものが、一体一時の流行であるのかどうかということにつきましては、私はあまり楽観的見解を持っておりません。わが国の民主主義発達の状況、それから国民の考え方その他いろいろな社会状況、政界の状況、思想界の状況等を見ますと、この法律の対象になるような政治的暴力行為は、遺憾ながら相当長期にわたって存在をするものであって、これに対処する側も、一つ腰を据えた持久戦のかまえをもってする必要がある。それから、必要がなくなれば撤廃するのではありますけれども、しかしそういう意味ではかなり恒久的な対策を必要とするように残念ながら日本の現実はそういうふうに判断をいたすのでありまして、そういうもろもろの意味から本法は時限立法などで処置をすべからざる本質的な必要があるというふうに思うのでございますが、思い過ごしでございましょうか。提案者の御所信を伺いたいのでございます。
#13
○富田議員 菅委員の御所信でありますが、そのお考え方の御趣旨は私はよくわかります。ただ、私、先ほど申しましたのは、今日菅委員とこれは多少ニュアンスの違いはあるかと思いまするが、私はみんなが話し合って、国民全部が、また従ってその代表であるわれわれ国会議員があくまでも話し合いの場を持っていこう、あくまでも民主主義、議会主義を守ろうという信念を持って先頭に立つという心持があるならば、私は昨年から最近にかけて起こっているようなあの暴力行動また暴力行為というものはとめることができるのではないかと思います。ますますこれがしょうけつして、とめることができないというふうには私は考えません。また私と同じような考えは、立案者のうちにも相当あったかと思うのであります。そういう意味におきまして菅委員のお考えはよくわかります。またそういうおそれが、われわれの今申しましたような考えと違った事態が起こるかもしれません。あるかもしれないと思いますが、また一面、そういう確信を持ってこの法案を作り、そして一日も早く民主主義が確立されて、こんな法律の必要のないようにするということも必要ではないか、かように思いますので、時限立法でなくなったことにおいては、結論は同じことでごさいますので、何とか一つ御了承を願いたいと思います。
#14
○菅委員 次に、論点をかえまして、この法案につきましては妙な先入感というか、一種の俗論が行なわれておるのであります。すなわち、この社会党案はもっぱら右翼テロを対象としたものである、こういう考え方、言い方で、本法案の方は、一般的な条項は右翼対策であるが、第十七条の首相官邸、国会議事堂への暴力的不法侵入の処罰が左翼集団暴力対策である、こういうふうに二つに分けて割り切って考える考え方、言い方が非常に流行をいたしております。これは非常に世論をまどわすようにしておるように思うのであります。どうもこれは全くの誤りではないかと考えるのであります。およそ本法の各条項を見ますと、その対象たる犯行が、一体右翼より行なわれたのか、左翼から行なわれたのかの予見は全然いたしておりません。これは刑罰法規としては当然だと思いますが、立案者の御意図もかかる偏向はないと信ずるのであります。またそれが個人的に行なわれようが、あるいは集団的態様をとって行なわれようが、区別はつけていないはずであります。ただ二十一条にあります暴力行為等処罰に関する法律を適用しておりますこの限りにおいては、これは話は別である。本法は単純暴行、脅迫などは初めから取り入れようとしておりませんので、この程度のものは、集団的なもの――凶器で団体の威力を示すというようなものだけを取り上げておるのでございますから、これは集団性はございますが、そのほかの大部分のものはいささかも集団的態様のものをどうするとか、個々的な行為をどうするとかいうものはないものと信ずるのであります。この点を一つはっきりしておきませんと、世間の妙な俗論と申しますか、そういうものが行なわれておりますので、提案者のこの点に関するはっきりとした御所信を伺いたいと思うのであります。
#15
○富田議員 ただいま菅委員のお尋ねでございましたが、そのお尋ねのうちにもありました通りに、われわれは右翼とか左翼とか考えておりません。すなわちその犯罪が個人的であると集団的であるとを問いません。いずれにしても、今日のこの民主主義を破壊する不法な暴力、これを一つ防止いたしたい、根絶いたしたい、なくするようにいたしたい、こういう意味での立法と確信をいたしておるのであります。
 また法案の内容につきましていろいろお話もございましたが、最近の傾向を見ますと、個人的な殺人テロと申しますか、それは右翼という方面に現われておる。それから集団的な国会襲撃というような事態は、たまたま左翼と申しますか、そういう方面に出ておる。こういうところから俗論的には今お話しのように自民党は左翼を目標にしておるのだとか、また社会党案は右翼を目標にしておるのだというようなことでおのおの批判があるようでございますが、これは当たっておりません。私個人のことを申し上げて恐縮ですが、ちょうど第一次欧州大戦後のドイツにおきましては、むしろ集団的暴力は右翼において行なわれておった。ナチスその他において行なわれ、個人的なテロはいわゆる左翼によって行なわれたというような状況でございまして、そういうこともございますので、日本においても必ずしもそういうことがないとはいえないと思うのでありますが、そういうことから申しましても、右翼とか左翼とかいうようなことを言うのはどうか。とにかく暴力を何とかしなければならない、不法な暴力を一つ防止いたしたい、これが根本の考え方であったと思いますので、この点は明確に一つお答えをいたしておきたいと思うのであります。
#16
○菅委員 本法は民主主義体制下の政治活動の安全及び自由を守るという大目標を持っておって、政治的暴力行為を防止せんとするものでありますけれども、それ自体が、政治活動に対する制限、拘束を加えようとする部分が相当あるのでありまして、従って憲法で保障された基本的人権に関することが多々含まれておるのであります。従いまして、政治活動の自由及び権利を害せぬように特に適法平穏な政治活動あるいは請願、陳情あるいはもろもろのデモ行進その他の団体活動などを阻害しないように、慎重、周到な立法及び法の執行の上においての注意が必要であると思うのであります。従いまして、この点について、本法を立案した場合に、この法条全般にわたってどういう点に工夫がしてありますか、考慮が払ってありますか、法の全体にわたって要点をお示しを願いたいと思うのであります。
#17
○富田議員 何と申しましてもわれわれ民主主義、議会主義を守りたいというところから出ておるのでございますから、その民主主義の基本である個人的人権、基本的人権をもしその法律によって阻害するというようなことがあったらとんでもないことであります。そこでこの法律案におきましても一条、二条、ことに三条等におきましては明確にそれをうたいまして、これに反することのないようにということが根本原則である、基本原則であるということをうたっておることは御承知の通りでございます。またこの法案を起草いたしまする過程におきましても、起草者の一同の庶幾いたしましたことは、一番基本として、起草の根本的立場として考えました一番の問題は、大衆行動、示威行進、集団行進、そういうものに対して少しでもこれを押える、弾圧するというようなことがあってはならない、そんなおそれがあることさえいけない、ただ問題は、不法な集団的な行動、不法なことを何とかして食いとめたい、防止いたしたい、そうしてほんとうの議会主義、民主主義、話し合いの政治に持っていきたい、こういうことが一番基本である。こういうことからこの点は非常に皆が力を入れた点でございます。この点は一つ基本的な態度としてぜひ皆さんに御了承願いたい、皆さんのお力によりまして国民の各層にも一つ御了解を願うようにお力添えを賜わりたいと思うのであります。そういう趣旨でできておりますので、たとえば団体の規制につきましても、解散というような重い問題については、反復、継続してやられた場合、それも殺人の場合に限るというようなことにいたしております。また、団体の構成員の規制にいたしましても、非常に重い反復、継続、こういうことを考えております。それからまた制限の期間につきましても、六カ月のものと四カ月のものと区別するとか、いろいろこの点は詳細に配慮いたしたつもりでおります。
 なお、御注意の点もあれば御指摘をいただきまして、そういう趣旨からできた法律でございますので、完璧な法律にいたしだいとわれわれ心から念願いたしておる次第でございます。この点も御了承願いたいと思います。
#18
○早川議員 ちょっと関連して補足いたします。
 菅委員の御質問の団体活動その他の制限にならぬようにということをいかにこの法案で配慮しているかという実例として、第八条を御参照いただきたいと思います。第八条では団体活動の制限ということがございますが、殺人以外の政治的暴力行為につきましては、まず一回だけではだめだ、継続、反復してそれをやったという既成事実がなければならぬ、さらに将来継続、反復してやるおそれがある、そういういわゆる政治暴力常習犯というところにならなければ、四カ月を越えない期間の団体の制限というようなことはやれないという配慮をいたしておるのでありまして、こういうことは破防法にはなかった。そういう意味で、いかにそういう点に必要以上といいますか、慎重に配慮しているかという証明の一端として御了承願いたいと思います。
#19
○菅委員 戦前の治安立法を見まして、またそれが驚くべき乱用をされました実績に顧みまして、こういう法律の用語というものは、あいまいな拡張解釈をされるような用語をできるだけ避けることが必要だと思うのでございます。戦前たとえば国体を変革するとか、時局に関して流言飛語を飛ばすとか、風俗を壊乱するとか何とかかんとか、いろいろな言い方がはやりましたが、ああいう抽象的な文句が一番おそるべきものだと思うのでございます。今回政治的暴力行為の定義を与えられるにあたり、あるいはまたあとの各処罰の法条の規定をせられるにあたりまして、こういう点についてはどういう御配慮をなされましたか、立案者にお尋ねいたしますとともに、専門筋の皆さんがごらんになりまして、今回の立法におけるそういう字句、用語、表現等について、今の危険なきやいなやの点について、どういう御所見を持っておられますか、承りたいと思うのであります。
#20
○富田議員 先ほども申し上げました通り、たとえば治安維持法などは、国体の変革あるいはその目的遂行のためにというような、非常に行き過ぎと申しますか、深刻な規定になっておったと思うのでありますが、これと今回の法案――第二級的な破防法とも先ほどだれかが申されましたが、それとは非常に違いがあると思います。ただその各条につきまして専門的な相違点等につきまして御質問があるようでございますが、これはあるいは法務省当局から言っていただいた方が公正ではなかろうかと思いますので、そういうようにさせていただきたいと思います。
#21
○川口法制局参事 御指摘の点で、私ども立案に際しまして心がけました点を御参考までに申し上げます。
 そういった点で全般についての話はただいま提案者の方からお話しになりましたが、たとえば国会乱入の行為の条文について申しますと、これは多数たると少数たるとを問わず、あるいは個人たると団体たるとを全然問うてないわけでありまして、いわゆる暴力をもって入るという点に集中して、政治の中枢、首相官邸と国会議事堂に対する乱入を規定しておる。もちろんこれに書いてあります以外の問題は、刑法によりまして普通の住居侵入として処罰されるものでございますから、本条によって特別扱いをするのはそういう特別に限った態様だという意味では、比較的厳密な用語をもって定義されておるものだと考える次第でございます。
 第二点は、扇動につきましては、従来の教唆という刑法の規定以外に扇動罪というものを規定した点では破防法とこちらと同様でございますが、その扇動の定義につきましては、今さら私どもが申し上げるまでもなく、非常に厳重に解釈されまして、ほとんど教唆と差がないようになっておりまして、その字句をそのまま移しただけでありますから、特に問題はないだろうと考える次第であります。
 第三点は、本法案で特色のあるものとされておりますところの、第二十四条の、政治上の主義、主張のためならば人を殺してよろしいのだといったようないわゆる正当性主張、この規定についていろいろ論点があるかと存ずるのでございますが、これについては、言論をする人自体に刑事責任の従来の刑法の体系を不当に拡大することのないように、最大の注意を払って字句を整備したつもりでございます。
 その他の点につきましては、また今後御質疑に応じまして申し上げたいと思います。
#22
○關(之)政府委員 破壊活動防止法は今日まで八年になりますが、私どもの実施の経験と対比いたしまして、この法案が人権の保障という観点からどうなるかという問題について私見を申し上げてみたいと思うのであります。
 大体の構成といたしましては、第二条、第三条として、これは破防法にもあるのでありまして、この種の規定は単なる倫理規定で、何にもならぬじゃないかというお言葉でございますが、さて実際の法の運用ということになりますと、この二条、三条という規定がやはり私どもの非常に順守すべき規定なのであります。私どもが勝手にできるわけではないのでありまして、特に国会などでいろいろの点において国政調査という観点から御叱責をいただき、お調べをいただくという点からいいますと、常に二条、三条にかんがみてみて、われわれの行動ははたして申し開きが立つかという観点が、実は私どもの運用の一つの基準になると思います。従って、本法において第二条と三条とをこのように設けられるということは、この法案がかりに成立いたしまして実施いたすと相なりますと、これは私はやはり非常にきいてくるものと実は思うのであります。
 次の問題といたしましては、第四条の規定の仕方で、ただいま菅委員は拡張、乱用されはせぬかというお言葉でありましたが、私はこの点につきましては破防法と同じような工夫がここにこらされてある、こう申し上げたいのであります。それはどういうことかと申しますと、破防法におきましては、要するに第四条の暴力主義的な破壊活動に刑法の各条項を援用しておるわけであります。刑法第何条の罪、第何条の罪、第何条の罪と、こういうふうに援用してあるわけであります。このことはどういう配慮かと申しますと、要するに刑法と申しますのはすでに判例がある。さらに学説によって不動のものとなって、私どもが勝手な解釈によって拡張ができない、こういう規範に相なっておるわけであります。その観点からいろいろ苦心いたしまして、刑法の各条文の援用というところに私どももようやくたどりついて、ああいう条文をあげたのであります。
 さてそこで、本法案の第四条は破防法第四条に対すると全く同じ考え方でありまして、第一号の「人を殺すこと。」と申しましても、これは刑法の規定をあげなかったというだけのことであって、刑法に規定があることであります。二号の「人の身体を傷害すること。」これも刑法の規定上、人を傷害することはどういうことであるかということがきまっておるわけであります。また、問題になりますところの六の規定も、今日から申しますとこれは住居侵入罪になるわけでありまして、それ以上にこれが拡張されるということはとうてい考えられないわけであります。そういう点におきまして、刑法のがっちりした規定というものを基礎に置きまして、それにさらに教唆、扇動、予備、陰謀というものを若干包含したということが、第四条の全体の取り上げ方でございます。従ってこれが、最高裁判所の判例の示す範囲以上に不当に拡張せられるということは、とうてい考えられないということを私は申し上げたいのであります。また私ども破防法八年間の運用の結果から見ましても、判例できまり、また学説でほとんどきまっている問題につきまして、われわれが勝手に拡張することはできない。今お話になりました、かつての治安維持法は、刑法と異なった概念を使っておるのであります。国体を変革し、または私有財産を否認する、またその目的遂行の行為をする者等の規定があったわけであります。その規定は刑法のいずれの規定にも当たらない規定でありますが、実はこの規定が拡張されたのであります。そこで、その規定の拡張乱用をいかにして防止するかという最後のわれわれのよりどころは、刑法の条文を援用するに限る、実はこういう結論に相なったわけであります。そこで、そのような考え方で本法案をおとりになっておるのでありまして、私は、これが実際の法案となってこれを見ますと、実施の責任は私どもの方にあるように拝見しますが、規定も、刑法ないしは判例、学説等できまっているので、それ以上に勝手に私どもが、犯罪でないものを犯罪とするようなことはとうてい不可能である、こういうふうにこれは御了解いただいてけっこうだと思います。
 それから次の問題といたしまして、ただいま早川さんから御説明があったように、規制の条件が全体として破防法以上に厳格である、破防法の一応の考え方としては、そういうことをやることが一応性格になったということで、思いつきで一回やったというようなことは破防法の対象にはならないのであります。しかし、本法については、継続反復性ある団体が、さらに継続反復するということになりますと、いわばこういうことをやることが常習性ともなるというふうに考えられる団体と相なると考えられるのであります。そういたしますと、たとえばこの規定のあれが、どんどん刀を振り回して、団体に対しまして制限処分ないしは解散ができるかというと、私はどうも破防法八年の経験から見て、ただ常習性的に暫時反復し、さらに反復累行するというような立証はなかなか困難なものであり、そしてその意味において、そう御心配のような点はないのではないかというふうに私は考えるのであります。
 なおそのほかに、この法案全体は、破防法の手続規定を御援用になっているようでありまして、この点もそうやみくもなことができないような規定になっている。破防法におきましては、団体規制は、公安調査庁において調査してから公安審査委員会に規制処分の請求をいたす、こういう考え方に相なっているのであります。従来のわが国の過去の例あるいは外国の例からいいまして、調査する機関が自己のところで処分ができるということになると、右手で調査し左手で処分するということになりまして、一人の人がやるわけでありますから、そこに専断が行なわれる。これはかって、過去の日本にあった例でありまして、それをどこで防止するかというと、権限を分かつに限る。すなわち調査する機関と処分する機関と二つに分けてしまうに限るという考え方であったのであります。
 そこでこの法安も、その点をとってこられまして、私どもが公安審査委員会に送り込みますと、公安審査委員会は準裁判官的な独立性を持って自用独立に、いかなるものにも拘束されずに審理をいたす。この審査委員会は、いわば準裁判官的な身分の保障がありまして、また構成員は政党所属について制限がありまして、一党の系統の人は勤めることができないような組織になっておるわけであります。そういうふうに権限が分かれておりまして、私どもはこの審査委員会に解散処分の請求をするだけで、あとのことは何もできない。あとは審査委員の皆さんが自由独立におやりになる、こういう考え方になっておるわけであります。
 それから、実はこれを拝見いたしますと、公安調査庁の私どもに調査権をお認めになっておらないようでありまして、これは破防法のときにおいても、この法案の性格にかんがみて、強固な調査権は調査庁にはやれないというのが国会の御意思でございました。今度のも、これを一度拝見いたしますと、全く任意の調査が原則のようであります。それでさてこの法案が実際に成立して、そうして私どものところに参りまして、さあ実施いたすといたしましても、相当しぼりがあっちこっちにかかっておりまして、その意味において人権の尊重ということは、そうむやみ勝手に、戦前の各種の法律のごときことはやれない。やはり刑法の解釈その他の厳重な制限によって行なわれるというように私どもは考えざるを得ないのであります。御参考までに申し上げました。
#23
○菅委員 次は少しくこまかくなりますが、第四条の政治的暴力行為の定義のところで、さきにちょっと関さんがお触れになりましたが、新たに「思想的信条」というものが入って参りました。「思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的」をもってこういう暴力行為をやりますと、これにひっかかるのでありますが、この「思想的信条」の中には、宗教的信仰は含まないということでございますか。その点をあらかじめ一つはっきりしておきたいと思うのであります。なぜかならば、最近、ある宗教などにおきましては、折伏その他と称しまして、信仰を普及する上においてかなり本法の条項に触れそうな、すれすれな活動をしておるものがあるように聞いておるのでありまして、そういう宗教布教上本法が適用される危険性があるかないか、非常に微妙なところでありますが、一つはっきりしていただきたいと思うのであります。
#24
○富田議員 「思想的信条」という字句についてのわれわれの考え方でありますが、起草者といたしましては、この「思想的信条」の中に宗教上の信仰は入らない、こういうふうに考えております。ただ具体的に申しまして、今のような御心配、現実の宗教団体における行き過ぎについてどうかという御心配があるようでありますが、これは私は、信仰とか思想的信条ということが問題ではなしに、むしろそれから出てくる暴力行為、他の犯罪行為が問題になるかと思います。いずれにいたしましても、起草者といたしましては、宗教上の信仰は、この「思想的信条」に入れておりません。さように御了承願いたいと思います。ただ、政治上の主義、施策というほかに、新たに「思想的信条」という条項を加えましたゆえんは、政治上の主義というほかに、たとえば国家のためであるとか、愛国心の発露としてというようなことは、どうも政治上の主義ということに入らないのじゃないかというように思われるのであります。そういう意味で「思想的信条」、われわれは思想上の信念とでも言うべきかと思っておるのでありますが、そういう類型のものを一つ「思想的信条」という中に入れたいという考え方でありまして、この点を一応申し上げておきます。
#25
○菅委員 次に、団体規制の問題について少しお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、破防法が制定されましてから今日まで、団体規制の処分を行なわれたことがありますかどうか、お伺いいたしたいのであります。
#26
○關(之)政府委員 今日までございません。
#27
○菅委員 その点に関しまして、本法の制定につきましても、せっかくこういう厳重な要件を設けてございますけれども、団体規制の処分が規定されておるのでございますけれども、これがいわば宝の持ち腐れといいますか、実際における団体規制というものは行なわれないのではないかという、相当そういう考え方があるわけでございます。この点に関しては、破防法の実績を検討してみる必要があると思うのでございますが、この破防法ができました当時、昭和二十六、七年ごろは、さきにもお話がありましたように、非常に世相が不穏でございまして、はっきり申しますと、共産党が武装蜂起の指令をあっちこっちに出しておりまして、朝鮮半島においてはああいうふうな非常な戦争状態があり、国内におきましてはいろいろ治安を乱るような騒擾とか放火とか火炎ビンを投げるとか殺傷が行なわれるとかいう不安な状態がございました。しかしその後数年にして、共産党の活動方針もまだ愛される共産党に転向したようでございますし、いろいろな意味もあって、世の中がだいぶ穏やかになりましたが、一体これは破防法ができて破防法の予防的効果があったと見られるのか、それともそうでなくて世の中のいわゆる世相と申しますか、それがよくなり、共産党の方向転換などがありまして、そうしてここでつまり対象の方がだんだん引っ込んでいった結果、この破防法の適用の余地がなくなったのか、そこは一体どういうふうにお考えになりますか、つまり破防法を適用したいとは思う対象もあるのだけれども、あまりに乱用をおそれるためにと申しますか、非常に厳重に要件を規定したため、身動きができなくて、適用ができなくて、みすみす対象をのがしてしまったのか。本件の実効があるかどうか、この条項の実効があるかどうかということを考えますについて非常に参考になりますので、その点に対する御所見を伺いたいのでございます。
#28
○關(之)政府委員 ただいま菅委員の御指摘の通り、わが国が独立をいたし、その後における二十六、七年のころの状態を基礎といたしまして破壊活動防止法ができたのであります。特定二、三の団体が、内乱、騒擾を教唆し扇動し、国際的関連をもってまさに革命を進めんとするというような、こういうような現実的な行動がここに地下組織として観察されたのであります。さてそれをどういうふうにいたすかという考え方が根本になって、その破防法がどういうふうになっておるかということは、そのときの会議録をごらんになればおわかりになると思います。そこで今日まで破防法が実際適用されなかった理由がどこにあるか、そこにつきまして私が考えておりますのは、第一には客観的情勢が少し変わってきた、こういう点が一つの大きな理由であろうかと思うのであります。破壊的団体におきましても、戦術の転換をいたしまして、長期にわたる平和的共存ないしは平和競争をやり、あるいは一揆的な暴力的な行動はまずかったという反省が加えられまして、そういう行動には出なくなった、そういう傾向が漸次今日まで参りまして、しかも今日におきましては国際的な一つの考慮、すなわち一九五七年のモスクワ宣言ないしは昨年の暮れの八十一カ国の国際共産党の声明などを見ましても、大体の傾向としてはそういう方向に戦術が転換してきているわけでございます。そこで事態は破防法に規定するようなことがだんだん起こらなくなってきた、こういうことが一つの事態であったろうかと思います。そうかといって、しからばそれらの破防法に触れるような行動が少なくなったのは、客観的事態ばかりであるかと申しますと、私はどうもそうは思われないのであります。主管の役所である私が破防法の効果として大いに宣伝いたすことは、やや手前みそになりますのでその点は遠慮いたしたいと思うのでありますが、たとえば若干の破壊的団体において、破防法にこう書いてあるからここは発表するのに注意したらよろしい、そういうようなことが情報として出て参っておるのであります。内乱の正当な必要性、あるいは文書の作成というようなことを中心といたしまして、その内部通牒ないしは通達あるいは宣伝文書というようなものにつきまして、この点はどうも注意しようというような意図をもって書かれておるのであります。そういたしますと、やはりこの破防法の存在というものがある意味で行動の基準を示しておる。ここから以上いけばやられるのだ、こういうような規制を受けるのだという意味において行動の基準を示しておる、それが少なくとも二十六、七年以降において、破壊的な各種行為がだんだん影をひそめてきた一つの大きな理由であろうと思うのであります。もちろんこれらをすべて破防法の原因に帰するというのは正しい認識ではございません。けれども、少なくとも行動の基準、ここまでいけば破防法が動いてくるぞという、こういう頭をもって行動しているということだけは、どうも情報上においてはっきりここで申し上げることができるわけであります。
 さてそういった観点から見まして、この法律ができてやはり破防法と同じように何も運用されないのではないか、こういうようなお考えが、破防法との関係において、そこに起きてくることも考えられるのであります。私はこの点につきまして、この法律が出まして、そしていろいろな客観的その他の情勢で、この法律で規制するような各種の行為がなくなってしまえば、この法律は適用されないわけでありますから、一にかかって今後の事態のいかんということにあると考えるのであります。ただ破防法と根本的に違う点は、さっきも申し上げたように、法律の性格が、破防法は政治上という一点でありましたが、これは政治上のほかに思想上も含めておる点、これが一点であります。それから第二の問題といたしまして、本法第四条に規定しておりますところの政治的暴力行為の類型が破防法よりは一段下がっておると申しましょうか、内乱的なあるいは朝憲紊乱的な行為よりも、もう少し日常的に、ある意味においては起こりやすい一つの行為という意味であるわけであります。
 そこで、それらの関係から見て、破防法よりはあるいは適用される可能性があるかもしれないというようなふうに考えるのでありますが、しかし、これも一にかかって今後の事態の発展、このような暴力的な政治行動が行なわれるかどうかということの今後の事態の発展にかかっていることかと存ずるのであります。
#29
○菅委員 団体規制の処分は、結社の自由の根本に関するところでありまして、非常にこれは慎重な要件を必要とするのであります。さっきからいろいろ御説明がありましたように、本法はその対象が破防法に規定するものよりもいわば程度の軽いものでございますから、それだけに具備すべき要件はより厳重になっておるようにいろいろ承っておるのであります。これは当然のことと思うのでありますが、その点にかんがみまして、こまかい点でありますが、一つお伺いしたいと思うことは、解散の規定につきまして、破防法第七条後段には、明文をもって、解散の指定のことがあります。団体活動の他の制限をやっても、それだけでは不十分だと思われるときに、最後の宝刀を抜いて解散にいくという、こういう明文があるのでありますが、本法には故意にお抜きになったのか、あるいはうかつに抜けたのかそれは知りませんが、この明文がございません。これは解釈上同様に適用をするものでありますかどうか、その点伺いたいのであります。
#30
○川口法制局参事 立案の字句に関係しますので、私から申し上げます。
 その点の解釈は、今仰せのように、当然のことだと思って書かなかっただけでございまして、この法律の特に第一条、第二条、第三条というふうなもの及びこの条文の配列その他の観点からいたしまして、あまりにも当然なことではなかろうかと考えて落としたものでございます。他意はございません。
#31
○菅委員 法の体裁の上におきましては当然でありましょうが、こういう規定は挿入した方がいいんじゃなかったかと思うのでございますが、これからの審議の過程においていろいろまた御相談をいたしたいと思うのであります。
 もう一つこれに関連してお聞きしたいと思いますことは、破防法第四十五条に公安調査官の職権乱用を罰する規定がありますが、本法にはそれがございません。ございませんが、破防法の規定を読んでみると、破防法の適用についてのみ乱用処罰をするというふうに表現してございませんから、破防法の職権乱用の罪というものは本法の適用についても当然かかってくると解釈をすべきであるかどうかであります。
#32
○川口法制局参事 この点は、条文の字句について申しますと、破防法の方でたとえば「この法律の施行については」というふうな字句がありました場合は、これはどういたしましても、本法についても「その職権執行にあたっては」と書かなければ不正確でございます。しかしそういう字句は使っておりません。向こうの職権行使については一般的に乱用はいかぬぞと書いてありますから、ここに付加されましたところの公安調査官の職権につきましても、当然に向こうの方に書いてある条文は適用になるのであって、それは言うまでもないというふうに解釈いたします。
 なお、この点は重要でありまして、将来の刑罰法の解釈にも関連しますので、私どもの解釈を法務省の方でも同調下さるかどうか、法務省の御意見も徴された方がいいかと思います。
#33
○菅委員 今の二点は解釈上ということで押せぬこともございませんが、すこぶる重要でございますので、今後の審議においてなおいろいろと御質疑もしたり、御相談もいたしたいと思うのであります。
 もう一つ団体規制の問題につきましてお尋ねしたいと思います。きわめて重要な点と思うのでありますが、活動を制限されました団体、ことに今回は、さっきからお話しのように、常習的暴力団体という非常にたちの悪い政治的暴力団体が多いと思いますが、そういう活動制限をされた団体が資金を獲得したり、これらの団体に資金を提供したりするそういう行為を禁止して、そうしていわゆるこれらの団体の資金源を断つことが非常に重要であるという議論はかなり強く行なわれておるのでございます。この点に対して、この法案全体にどういう配慮がしてございますか。私これは非常にむずかしいと思いますのは、活動の制限は解散ではないのでありまして、団体の活動を全面的に停止することではありませんので、ことにこの厳重な要件を付して制限しておりますから、一定の期間一定の活動のみを禁止するのでありまして、他に広範な活動は残っておりますから、こういう制限団体、性格的に暴力的常習があると認められる団体だからといって、資金の獲得ないし供給を全面的に断つわけには参りません。これは結社の自由、結社活動の根本を阻害すると思いますのでそうは参りませんと思いますが、しからばといってこれも野放しにもできぬと思うのであります。ことに資金の獲得なり供給がすぐにその団体の行なう政治的暴力活動とつながるというふうなおそれのある資金の獲得の仕方、供給の仕方などは、これは手放しにはしておけません。どういうふうにして本法におきましてはそういう点に対して危険の予防の御配慮が行なわれておるか、承りたいのでございます。専門の方からもこれは伺いたいと思います。
#34
○富田議員 専門の点につきまして、詳細は関係当局の方からお答えいたすと思いますが、ただ一般論といたしまして、ただいま菅委員のお話のありました通り、この政治的暴力行為を行なわせるもとが資金源であるということは、みな非常に心配をいたしておるところでありまして、われわれも法案起草の上で非常に感じた点でございます。しかし同時に、ただそのおそれがあるというふうな意味で暴力行為を行なうおそれがあるという点だけとって、これに重点を置いて資金源を断ち切ってしまうということは、これはまた憲法で認められた個人の自由権、財産権と申しますか、これにも非常な問題がある。ことがお話の通り非常に苦心した点でございます。そこで、一面においては金品の供与についていわゆる資金源を押えるという規定も御承知の通り設けてございますが、同時に、あまりこれの息の根をとめるということは、かえってまたいろいろの反発的な問題もあるいは起こるのではないだろうか、また憲法上も問題があるのじゃないだろうかというようなことを考えまして、そこで制限を受けた団体、規制を受けた団体についてのみ、しかも制限を受けた場合六カ月とか四カ月でございますが、その制限期間内に限って届出をやらせる。これは会計の収支につきましても業務計画の報告をさせる、届出をさせる、そういう点で今のような考慮も満たし得るじゃないか、これならば憲法上の問題もないじゃないか、息の根をすっかり押えてしまうということにもならぬじゃないか、しかも今のようなおそれを除くことにもなるじゃないだろうかというような配慮をいたしまして立案いたしたような次第であります。詳細はいずれ専門家から御答弁をいたします。
#35
○早川議員 ちょっと関連して。ただいま富田さんからお話があった以外に、非常に重要な点で考慮いたしております。それは第二十二条の項目でございます。政治的暴力行為、殺人、傷害等を行なおうとする者に対して金銭、物品その他を提供した者は五年以下の懲役または禁錮に処するとなっております。これが非常に重要な点でありまして、現在の刑法では幇助罪というものがある、幇助罪は殺人が行なわれなかった場合には刑罰の対象にならない。ところがこの第二十二条によりまして、独立してそういうことをする、暴力行為につながって金銭、物品の供与をした者は五年以下の懲役または禁錮というふうに非常に重い特別規定を設けましたので、先ほど富田議員の申しました以外にもそういう点も非常に重視いたしまして、しかも法律上解散された団体に対するそういう金品供与はむろん罰せられます。破防法の通りであります。制限されただけでその団体自身に対して金品供与を禁止するということになりますと、団体の事務員が飯が食えなくなる、これはいわゆる憲法上の問題になる。そこに非常に苦心をいたしましてこういう規定になったということでございますので、御了承願いたいと思います。
#36
○川口法制局参事 非常に重要な点でありまして、実は考え方といたしましては、ある危険の団体もしくは個人にその財政的な援助をうしろで与えるという問題に対して、法律がこれをどういうふうに対処するかというこのことを憲法に関して申しますと非常にむずかしいのでございまして、黒なら黒とはっきりそのことがきまった人間に対して金をやっちゃいかぬ、こういうふうに法律では書かざるを得ない。そうしませんと、まだ黒に至らないまん中のもも色かなんかくらいの程度で金をやっちゃいけないと書きますことは、一応合法的に、適法に生きておる人間もしくは団体に対して金銭の上でつき合いをやっちゃいけないということになりますので、憲法上の疑義が相当にある。そこで今度はまた矛盾した話でございますが、それならば、黒だときまってから金をやってはいかぬ、こういうふうに書いたらどうかということになりますと、これはまたせっかく書いてみましてもナンセンスになりまして、そんなことはあたりまえのことだというふうなことからしまして、これは非常に党の方の御苦心もございましょうが、私どもといたしましても、立法技術的にも苦労をいたしまして、ようやく今早川議員からお話しになりました第二十二条の条文及び第九条の団体活動の制限期間中の収入支出の届出制度というものを挿入いたしたわけでございまして、特に第二十二条につきましては、ただいま提案者から御説明の通り、これは刑法の幇助罪ならば、正犯が実行しなければ処罰にならないのでございますが、ここにはほかの条文の教唆扇動と同様に、正犯が実行いたしませんでも、それだけで独立して処罰できるという点にきわめて重要な法律的な意味があるわけでございます。
 なお活動制限期間中のことにつきまして、この点をもう少し詰めて申し上げますと、これは活動制限をする手段、行動を一定期間中やってはいけないとか、あるいは機関紙の発行を関連のある限度においてやってはいけないとかいう禁止事項を厳守させますための実行手段として、それを確保しますために、そういう意味でこの条文が、届出制度というものが設けられたと私はそんたくしておりますので、そういう意味で特に憲法云々の問題は起きないだろうと考える次第でございます。
 以上補足いたします。
#37
○菅委員 もう一つ、この届出の違反に対して、どういう罰則がついておりますか。
#38
○川口法制局参事 一万円以下の罰金でございます。
#39
○菅委員 当今一万円以下の罰金というのは、どうも低過ぎるように思うのでありますが、いかがなものでございましょうか。
#40
○川口法制局参事 それは政治的感覚と法律技術的感覚とのずれかもしれませんが、私どもから見ますと、届出制度というものは一種の行政手続上の手段にすぎませんので、法律的にはこれに体刑を加えるとかいうふうなことは行き過ぎでありまして、普通の行政罰、その中でも比較的軽い罰金刑で臨むのが、絶対とは申しませんが、穏当であろうと考えて、こうやった次第であります。
#41
○菅委員 なお引き続きまして刑罰関係の数点の御質問をいたしたいと思いますが、時間でございますから……。
#42
○池田委員長 午前中はこの程度にとどめまして、午後は一時半から再開したいと思います。その間に本会議が開かれましたら、本会議終了後と御了承願います。
   午後零時二十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時三十六分開議
#43
○池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を継続いたします。菅太郎君。
#44
○菅委員 ただいまからは刑罰関係の部分につきましてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。こまかな点もございますので、昨日逐条説明をしていただきました門司議員からも、そういう逐条の問題についてお答えをいただきたいと思っております。
 第十四条以下刑罰の規定がずらりと並んでおりますが、政治的目的というものが加わることによって一定の暴力行為が新しい犯罪の類型に法定をされたり、あるいは既定の暴力的犯罪の刑罰が加重されたりしておるのでございます。こういうふうに目的が加わることによって刑罰が加重をせられるということは、既存の法体系の中にもあり得ることだと思いますが、その他の立法例にそういうことがありますかどうか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。専門の筋の方から御説明をいただきましてもけっこうであります。これが第一であります。
 それから、こういうふうに政治的目的が加わることによって加重をいたすということは、本法の刑罰部分における立法政策上の最大の問題だと思います。これが本法の最大特色とも言えるのでございますが、この点について、政治的目的が加わることによって加重されるということは、何でもないようでもありますが、考えてみるとこれははなはだ大問題でございます。つきましては、この点について、立案者、提案者の皆さんから、確固たる信念を承りたいのであります。いいかげんなことでこういう重大事をやられてはかなわぬと思いますので、特に御所見を承りたいと存ずる次第でございます。
 一言私見を申し述べますれば、戦前の実情を見てみますと、なるほど治安維持法の適用などというものは別にいたしまして、いわゆる愛国的動機によって行なわれました殺傷のごときは、刑罰の法定の問題ではございませんが、裁判の量刑においてあるいは刑の執行の上においてしばしば寛に失しており、そういう傾向の諸君が甘く事態を見て次々とそういうことが起こる。五・一五事件のような集団的なものもありますし、個人的なものを見ますと、遠くは星亨、原敬、井上準之助、浜口雄幸、團琢磨、これら先輩がしばしば凶刃に倒れておりますけれども、これは刑の量刑とか刑の執行の部分に多く当たるのでありましょうけれども、非常に災いを残しておることを考えてみますと、従いまして政治的目的あることによって軽くするという考え方がいけないことははっきりいたしますが、さりとて政治的目的が加わることによって刑が重くなる。これをこういうふうにずらりと並べて法定するということにつきましては、これはこれでまたよほどの確信がなければやらぬことだと思うのでございます。なかなかこういうところは立法政策上むずかしいのでございますが、確たる御所信を承りたいと思う次第でございます。
#45
○早川議員 本条は刑事特別法でございまして、現在の社会情勢、国内情勢が、いわゆる政治目的または思想目的のために、民主主義憲法の基本的な民主主義というものを破壊するという、きわめて重大な影響、被害を与える行為を規定した刑事特別立法でございますから、特に政治上、思想上の目的をもってする殺人その他政治的暴力行為を、刑罰におきましても若干加重するという措置をとったのでございます。こういうことは他にもいろいろ例のあることでございまして、ただ社会党の案と違いまするのは、あくまで現在の刑法とのバランスをとらなければなりません。特にそういう目的のために非常に大きく離れました過重な刑罰となりますと、これが逆にまた国内に威圧感を起こしまして、国民大多数にあまりにこの刑罰の差がひど過ぎるではないかということになりますると、角をためて牛を殺すということになりますので、その点につきましては、御承知のように、民社、自民党共同の提案は十分妥当な刑の加重にとどめておるという次第でございます。
#46
○川口法制局参事 目的罪を規定しておりますのは、刑法自体に、御承知のようにたとえば内乱の目的を持って云々ということは、一般的な例でございますが、刑法自体に目的が加わることによって刑が加重されるという例は幾らでもございます。そこでこれは刑法自体は一種の基本的な犯罪として書いてあって、それ以外の立法形式としてこういうものをやった例があるか、こういう意味で御質問を解釈いたしますならば、たとえば爆発物取締罰則という法律がございますが、これは暴発物を治安を害する目的を持って使用したる者というかどで、刑法よりもうんと重い罰にしてございます。そのほかには例の日米相互防衛関係につきましての防諜関係の法律というのが最近では例がございます。なお外国にもドイツの刑法にもこういう趣旨の憲法の規定、秩序を害する犯罪につきまして特別に重刑をもって臨むという立法例があるそうでございますが、その詳細は法務省当局等でおわかりのことだと考えます。以上、立法について申し上げました。
#47
○竹内政府委員 目的をつけ加えることによって刑が加重されるという立法例でございますが、これは目的をつけますことによって、一般的な行為ではなくて、その目的を持った行為に限定するという意味において、特殊な行為、そういう意味が一つあるわけでございます。そういう趣旨の立法例は、今法制局からもお答えがありましたように、その例はたくさんあるわけでございます。今ドイツ刑法のお話が出ましたが、ドイツ刑法の九十四条第一項を見ますると、「人がドイツ連邦共和国の存立を侵害し、第八十八条に記された憲法上の諸原則の一つを撤廃し、その適用を除外し、またはその基礎をつがえし、またはこのような運動を促進する目的を持って」以下ずっと条文が並べてございます。むろん傷害だとか公の秩序を撹乱する罪だとか礼拝を冒す罪だとか、文書偽造、器物損壊のようなことまでずっと並べて刑を加重しておる立法例があるわけでございます。
 もう一つの御質問の御趣旨は、そういう目的を付加することによって加重されることのもう一つの理由として、その目的自体は何ら違法なことではないのじゃないか、そういう目的がつけ加えられることによってどうして刑が重くなるのだという点をはっきり、というような御質疑のように承ったわけでございますが、これは従来の目的罪について見ますると、目的自体も違法な目的、それにプラスして違法の行為がつく、両々相待って、いかにも悪いのが重なって刑が重くなるというように見られるわけでございますけれども、本法案の目的は、破防法の場合と同じように、政治上の目的、思想上の目的、こういうものがつけ加えられる。思想上の目的、政治上の目的は、それ自体としては御指摘のように何ら違法なものではない。しかしながら、目的自体が違法だとかあるいは不当だという評価をして、この罰が重くなっておるというふうには、ちょっと理解いたしかねるのでございます。よく考えてみますると、このような目的は本来議会を通じあるいは正当な言論活動等によってその達成をはかるのが民主主義の基本原則でありますのに、殺人とか傷害等の暴力行為に訴えてその目的を達しようとするというようなことは、どうしてもこれは民主主義の根幹である思想、言論その他の行動の自由を抑圧するものでありまするからして、一定の暴力行為について、そのような目的でやる暴力行為につきまして、その目的そのものは別に悪いという意味を含んではおらないけれども、それがくっつくことによりまして、民主主義の根本を破壊するに至るという点におきまして、その行為の危険性、そういうものは一般の場合とは比較にならないものがあるという意味におきまして、その目的が付加されることによって刑が加重されるということは十分理解されることだと私は考える次第でございます。
#48
○菅委員 ただいまの御説明によってやや納得をしたのでございますが、今お説のごとく、この政治的目的自体は何ら違法ではございません。多くの目的罪は、違法な目的が加重するすることによって、加重をされていくのが原則であります。目的そのものは何も違法でないもの、政治活動の目的は何も違法ではない、思想活動の目的は違法ではない、それが加わることによってその本体のものが加重されるというのでありますから、ここに私は非常な意味があると思うのであります。このことを高調するのでなければ、本法の趣旨がはっきりしないと思うのであります。これは私は民主主義擁護法の本質からくるのだと思うのであります。民主主義そのものは、要するに民主主義というものは、政治的目的を実現する手段というものを非常に重んずる。つまり一定の政治的目的を達成するのに、あくまで話し合いでいく、暴力に訴えず話し合いでいき、合法手段でいき、議会制度を通じて実現するというところに民主主義の本質があるのでありまして、これは目的は正しくても、政治目標と結びつくとその手段というものは非常に重要視されてくる。それは民主主義擁護の法律であるから、その目的のための手段部分の違法性が非常に加重されてくるのだ、こう解釈するよりほかにないと思うのでございますが、こういう法律はほかに類例はないはずであります。これは本法が第一条に言っておりますように、もってわが国民主主義を擁護するという民主主義擁護法制の特質ではないかと思うのでございますが、全法律体系の中において本法を理解するにさように解してよろしゅうございますか、法律の専門家にお聞きをいたすのであります。
#49
○竹内政府委員 全く御指摘の通り私も理解いたしておるのでございまして、そういう趣旨で、言葉は足りませんでしたが、先ほどお答え申し上げました。
#50
○菅委員 次に、これらの刑罰の加重についてでございますが、他の刑罰法規に規定された刑罰との均衡を保持する必要があると思うのでございます。十分配慮が払われておるのだと思いますが、具体的にどういう配慮を払われたか、一、二実例としてどれかの法条について御説明をいただきたいのであります。この点については、社会党の案というものが非常に極度の厳罰主義を採用されております。まことに失札でありますけれども、いわゆる革命裁判の威嚇主義を思わせるような、日本の法曹界があぜんとしたような極刑主義をもって臨んでおられるのに対しまして、本法案の法定刑の刑量ははるかに穏健妥当だとは思いますけれども、それでもまだ過重ではないかということについては、あくまでこれは慎重なる考慮を要すると思うのでございます。特に下限六カ月以上、一年以上というようなのがぼつぼつ現われておりますが、こういう点については他の刑罰との均衡上どういうふうな御考慮をつけられましたか、お尋ねをいたしたいのでございます。
#51
○門司議員 刑の分量につきましては、いろいろ御議論もあろうかと思いますが、先ほどからいろいろ御議論になっておりますように、この種の犯罪がいわゆる民主主義社会としての健全なる国家の発展を大きく阻害する一つの目的を持つ行為でありますことにかんがみ、一般の刑事犯罪よりこれを重くしても必ずしも違法でないと考えております。従って、たとえば殺人の犯罪にいたしましてもこれに禁錮刑を加える。その裁量については選択制を設けておる。もとよりこの種の犯罪は、その犯罪の動機、それから犯罪の目的達成後における――今日まで幾つかたくさんありましたものを総合して参りますと、大体目的を達すれば、その行為をした者も同じように自分の生命をなげうつというきわめて険悪なものであることになっておりますので、ことさらにこれに対しましては普通の刑法だけでこれを矯正するわけには参りませんので、従って普通の刑法の刑量よりもやや加重されたものをみんなほとんどと言っていいほど、私はっきり申し上げておきますが、つけ加えております。ことに刑法百九十九条の殺人の行為について禁錮刑を設けましたのは、できるだけ反省の機会――こういう言葉を使うことはよろしくないのでありますが、実際からいいますと、直ちに死刑をもって臨むといたしましても、その死刑自身というものが行為を行なった本人には大して苦痛にはならないのではないか、むしろ反省の機会を与える期間を長く置いた方がかえって彼らにはよろしいのではないかということが一応考えられますので、刑法百九十九条の殺人の行為の中にも禁錮刑を入れたというようなことからいたしまして、一応刑量については加重はいたしておりますが、この種の犯罪に対して実刑を課すということについては相当な配慮を払ったつもりでございます。
#52
○川口法制局参事 ただいまの御質問は、各条項につきまして逐一申し上げるのが正確でございますが、それは煩にたえませんから、気のつきました重要な点について二、三申し上げますと、たとえばただいま門司先生からお話がありましたように、殺人罪につきまして、刑法は三年以上でございますが、本法案におきましては、こういう特殊の、先ほどのお話の手段としてこういうものが用いられるという点に重点を置きまして、七年以上の禁錮ということでありまして、これが一番強いのであります。そのほかの部分の比較的軽微な犯罪につきましては、こういうふうに思い切って上げたものはないと考えます。刑の下限につきましては、あるものは六カ月といい、あるものは一年といいというふうにしておりますが、これは刑法で最下限が三カ月でありますものを六カ月に上げる、あるいは刑法自体ですでに六カ月になっておるものを一年に上げるという程度のことでございまして、そう飛躍的な加重はいたしていないつもりでございます。なお上限だけを上げまして下限の方は何ら規定してないものもございますが、これは犯罪の性格の態様がいろいろの場合があろうと考えられますものについては、そういうふうにしてあるわけであります。大体申し上げます。
#53
○菅委員 さきの午前中のお話にも、どなたかちょっと触れられたと思いますけれども、破防法の場合は、破壊活動の正犯たる実行行為については刑罰の加重を行なっておりませんで、ただその予備、陰謀、教唆、扇動などについてこれらを新しい類型の犯罪と決定したにとどまっておったわけであります。本法案ではそういうふうなことにとどまらず、そういう面もございますが、正犯の実行者に対して政治目的が付加することによって、どんどん加重をやっておるわけでございます。その点どういうふうに考えたらよろしいのか、特に専門家の方にお尋ねをいたしたいのでございます。
#54
○早川議員 非常に重要な御質問でございますから、私からまずお答え申し上げたいと思います。破防法におきましては、犯罪対象になるものがすでに内乱とか外患誘致とか殺人強盗とか、それ自体もう刑法の最高限に近い刑罰が課せられておるわけであります。従ってその刑罰自体につきましては刑法に譲りまして、そのかわり団体規制の面におきましては、破防法は全部解散というところまでいけるわけであります。ところが、本法案におきましては、それよりも低い段階の犯罪――殺人はこれを移しましたから同じことでありますが、低い段階のものがあります。しかもそれは団体規制においては解散までいかない、刑罰も最下限がない、非常に低い犯罪も多いわけであります。そこで今度の政治暴力防止法案におきましては、その間の調整をいたしまして、刑罰も若干の刑の加重と、団体規制におきましては解散まで至らない制限あるいはまた団体活動の役員停止という程度が、そういった政治暴力を防止するためには最も妥当であり有効適切であるという考えから、立法をいたしたわけでございます。
#55
○菅委員 それでは今度の刑罰法上におきまして、新しい形のものがぼつぼつできておりますので、それにつきましてやや詳細にお尋ねをいたしたいと思う次第でございます。
 第一番は本法第十七条でございます。いわゆる不法侵入罪の規定でございますが、本条におきましては、首相官邸または開会中の国会議事堂、この両者の構内を含めてこれへの不法侵入を一般の住居侵入罪に比して重く罰しておるようでございますが、これは一般の住居侵入罪に対する特別罪と理解してよろしいのかどうか、これが一つでございます。
 それからもう一つ、一般の住居侵入罪において設定されております法益、守らなければならぬと考えられます法益は、住居の安全平穏ということだろうと思うのでありますが、この加重されております第十七条の場合、首相官邸または国会議事堂の侵入の場合は重く罰せられるのでありますが、一般の住居の安全平穏という法益とはまた別にもっと重い何かの法益がここにあるはずである、どう説明したらよろしいか、何か守らるべきより大いなる法益があるからこれだけ加重をしたのだと思います。もちろん暴力手段を使っておりますから、それが一つの加重の理由かと思いますが、それ以外に何かあるようでございますが、どういうふうな法益を設定しておるのであるか、それをお聞きいたしたいのであります。
#56
○早川議員 住居侵入罪の特例でございまして、それ自身犯罪類型といたしましてはすでに刑法にある住居侵入ということになると思います。
 そこで、それの法益でありますが、一般の住居侵入は、個人の生活の安寧ということでございますけれども、国会並びに総理官邸の場合におきましては、まず国会の場合には、御承知のように、国権の最高機関、しかもその審議を守るという大きい法益を守っていくということ、総理官邸におきましては国の最高の行政権というものの執務の法益という、二つの重要なものが加わるわけであります。さらに本法は先ほど申されましたように政治暴力防止法ですから、裏を返せば民主主義、議会政治擁護法であります。こういった議会政治あるいは民主主義の最高の機関、最高のシンボルに対する不法なる暴力的な侵入というものは、単に住居侵入よりも刑を加重して重く見るということが、この第十七条のみならず、一般の殺人、暴行、傷害と同じように特殊なかぶさりが出ることによって刑が加重される、こういう考え方に立っておるわけであります。
#57
○菅委員 そうといたしますと、こういうふうに理解してよろしいのでありますか。民主主義体制下における政治活動の安全及び自由を擁護するということが本法全体を通ずる一つの概念だと思うのでありますが、その政治活動の安全及び自由という中で、特に日本の政治の中枢である国会、それから行政の中心である総理官邸、この両政治の中枢運営の安全及び自由というものは、やはり特に重い法益と見て守らなければならぬのだ、こういうふうに理解してよろしいのか。そうであるならば、国会侵入、首相官邸侵入というこの条項は、ほかのもろもろの条項とは全然異質の、木に竹を継いだようなものをとって加えたと俗論は言うのでありますが、特に社会党さんはそういう御批判をなさるが、しかしこういう理解をすると、やはりこれは同系列の法益を持ったものであって、これに入ってくるのに何の矛盾もありません。民主主義体制下における政治活動の自由及び安全を守る、特に首相官邸及び国会の活動の自由及び安全いうのは重要だから特に入れたんだということである、異質のものを挿入したという非難は何らないと私は思うのであります。ことに本条においては、侵入行為を三つの種類に分けてここに書いてございますが、どれをとってみても暴力的行為であります。つまり暴力的侵入であり乱入である。こういう乱暴ろうぜきなる闖入ということ自体で一つ要件が加重しておりますけれども、その面から見ましても、本条は、他の暴力をもってする殺人、傷害、強要、逮捕監禁、ずらずらと並べてみて、これらはいずれも暴力行為である、これも手段においても一連した行為である、守らるべき法益においてもずっと一連した行為であって、本条が特別妙なものが入ったんだと言われる一般の批評は当たらぬと私は信ずるのであります。大体同系列のものをずっと並べておる、その一つであると私は解釈する。この解釈が通れば、社会党方面の反対はほとんど根拠を失うのではないか。これはそういう意味の法であって、何らデモ規制でもないし、団体活動抑圧の法条でもないということがはっきりすると思うのでありますが、提案者の皆さん、それから専門の方々に、こういうふうに理解してよろしいか、お伺いいたします。
#58
○早川議員 全く菅委員のお説の通りでございます。本来暴行脅迫、建造物を破損すること、さく、へいその他を乗り越えるということ自体が犯罪行為でございます。そうしてこれが建造物破損の場合に五年以下、住居侵入の場合には三年以下ということになるのでありますが、単に住居侵入以外に暴力がさらに加わるわけであります。暴力が加わって、さらに国会の審議、総理官邸の行政の執務という法益を害するということがかぶさるわけであります。従って、これが民主主義、議会政治に甚大なる脅威を考えるものでございますから、傷害その他いろいろな暴力行為が民主主義、議会政治に重大なる脅威を与えると同じような意味におきまして、民主主義、議会政治擁護法という基本精神から申しますと、若干の刑罰の加重をいたしまして、しかもこういうことを反復継続して行ない、さらに将来行なうおそれある場合には若干の団体規制を――もし団体がそういうことをやりますならば団体規制を受けるということも、これまた議会政治、民主主義を信奉するものといたしましては当然のことであると私は考えるわけであります。一部の俗論といたしまして異質なものであるという考え方は、根本的にわれわれの考え方と異なるわけであります。
#59
○菅委員 まことにくどいようでありますが、この点が本法案の中における最大の問題の一つでありますから、もう一つ念を押しておきたいと思うのでありますが、本条は集団活動特にデモを規制するというようなことはどこにもないのでありまして、そういう本質はどこにも持っておりません。規制さるべきものはデモであったり個人的侵入の場合もある。将来は右翼の暴力的侵入も考えられぬことはないし、過去議会にもぐり込んでビラをまいて乱暴した右翼もあるのでありますから、これを左翼的集団活動抑制の法条と考えることは全然当たらぬと思います。これは特に集団活動抑制のものではございません。この構成要件を読んでみても、「多衆聚合して」とか「共同して」とかいう要件は一つも書いてないのであります。従って、数人一緒に、あるいは集団となって国会議事堂や首相官邸の構内に入ることがありましても、正当な理由があり不法でなければ何ら罪にはならない。現に多くの人が連れ立って集団で陳情もやっておる、請願もやっておる。平静にやれば何でもないことであります。またかりにこれがゆえなく不法に入って、つまり衆議院で申せば、議長の許可がなく、衛視の制止も聞かず、暴力まで用いなくて、ゆえなく入った場合であるならば、これは一般の住居侵入罪で罰せられるかもしれませんけれども、何ら本法の適用を見るのではないのでありまして、本法の適用を見るためには、今、早川議員もおっしゃいましたように、とにかく何らかの意味の暴力的な乱入という形が必要なのであります。従って、本法の規定は、社会党方面が言われますように、つまり集団活動仰制の範疇には属しない、やはり暴力行為抑圧の範疇に属する、これはもうはっきりしておるのであります。デモ規制でもないし、集団活動抑圧の系列のものでもないのであります。あくまで暴力行為を取り締まるというずっと他の法条と同じ系列のものだと私は理解をするのでありますが、さように解してよろしゅうございますか。
#60
○早川議員 非常に重要な点でございますから、条文で御説明いたしますと、不法に入るということだけでありました場合には、たとえば管理者である議長が入ってはいかぬというものを入ってくるという場合には、この住居侵入罪三年以下の懲役に該当するわけであります。不法に、しかもここに暴行、たとえば衛視が阻止するにもかかわらず暴行し、また脅迫をし、入ってくる。それからさくを乗り越えたり、あるいは門をこわしたり、建造物を破損して入った場合に初めて七年以下の懲役または禁錮になる、こういう規定になっておるわけでございまして、それ自身デモの制限とは全然関係のないものでございます。
#61
○菅委員 かくのごとき法条であるとしますなら、一つ問題があるのでありますが、三権分立の建前から裁判所を入れなかったということの可否でございます。最近のいろいろな事例を見ますと、法廷内外の無秩序によって神聖なるべき裁判、公正なるべき裁判というものが乱されるのではないかと憂えられるようなことが方々に起きておるのでございますが、そういう意味におきまして、この裁判所というものも、決して今日その内外の秩序を維持するという必要性からのがれるものではなくて、特にこれは重要ではないかと思うのでございますが、これをおはずしになったということについてのお考え方を承りたいのであります。
#62
○早川議員 こういった規制法は最小限度にとどめるのが妥当だと考えるのであります。政治的目的には、国会あるいは総理官邸、そのほかに、たとえば在外公館、各県庁、あるいは裁判所というものが考えられます。性質からいいまして、最高のものだけという理論的根拠はないわけでありますが、しかしながらこういう政治的暴力行為防止法におきましては、最小限度にしぼっていくというのがわれわれの立法の根本精神であるわけです。そういう観点から申しますと司法の最高機関である最高裁判所というものに対しましても、理論的には政治的目的を持って不法暴行侵入ということは考えられるのであります。しかしながら、一面におきまして、裁判の不当、正当という面でいく場合には、はたしてこれが政治目的であるかという点につきましては、なお検討の余地がある。大きくいえば、一部の共産党やあるいは一部の極右的な団体の人たちが、現在の国家秩序の権威をそこねるという大きい政治目的はありましょう。しかしながら、そういう意味から申しまして、政治目的で入る場合もあり得ますけれども、今申し上げましたように、必要最小限度にしぼったわけでありまして、当委員会におきまして、司法の最高機関も入れろというのであれば、われわれは決してこれに反対する何らの理由を持ちませんのであります。提案者といたしましては、そういう意味で必要最小限度にしぼったのでありますが、理論的には、その他のものも、委員会におきましてお入れになれというのであれば、われわれは反対する論拠は何一つ持ち合わせておりません。
#63
○菅委員 御趣旨は大体同感でございますが、まず米英流のものの考え方といいますか、必要なものから規定していく、ことにこういう重い罰の法規でございますから、そういう行き方をするということもけっこうだと思いますが、むしろ早川さんのおっしゃったもう一つの問題がやはり法の体系の問題としては非常に重要じゃないかと思うのでございます。あくまで民主主義政治の擁護といいますと、やはり政治中枢そのものの法益は非常に重んじますが、裁判所というと少し違うような、今おっしゃったような点があるかと思うので、この点はやはり裁判所をはずしたということの一つの有力な理由としてはっきりさせておいた方がいいのじゃないかと思うのであります。裁判所に対する抗議運動は、これはある種の政治団体からすると政治目標がありましょう。また革命の予行演習としてこれを大いにやってみるとか、大いに治安撹乱の意味においてやるというようなことをやる傾向がありますが、一般にいいますと、やはり裁判の当不当、判決に影響を及ぼそうとするような意味での裁判所に対する働きかけが多いと思うのでございまして、そういう意味で、政治中枢への乱入ということはいささか区別して考えた方がいいのじゃないかというところに、これをはずした理由を強く求めていいのじゃないかと思うのでございます。ことに裁判というものは、政治から超然としておる。政治と司法との独立という意味からいって、裁判は政治の圏外に立つという何とない伝統的な一つの社会的信念がありますので、それに合わせる意味からも、むしろこれを除いた方がよかったのじゃないかというふうに私は考えるのでございます。こういう考え方をしてよろしいかどうか、特に司法当局にお尋ねをいたすのであります。さりとて、法廷内外の秩序維持はきわめて必要と思います。現状において、法廷内外の秩序の維持は、法制としてこういうものがあるか。それで十分とお考えになるか。将来これに関して何らかの立法の御意思があるか、あわせて承りたいのであります。
#64
○竹内政府委員 御指摘のように、裁判所の周辺において、裁判の権威を失墜せしめるような行動の頻発いたしましたことは事実でございまして、これがそのまま放任されていいと私どもは考えておらないのでございます。何らかの方法で処置をして参らなければならないのでございますが、これには、御承知のように、現行法のもとにおきましても、法廷秩序に関する法律、あるいは裁判所法等にもそれぞれ苦千の事項につきまして規定があるわけでございまして、一応それで裁判所としては強力な態度でその法律の適正な執行をしておるという現状でございます。しかし、だからといって、今の裁判に対する抗議といったような形で現われてくる裁判に対する威迫、こういうものは厳に排除していかなければならぬと思うのでございます。私どもも新聞紙上で、この案のもとの案におきましては、裁判所というような文字があったように私記憶するのでございますが、これが現在の法案におきましては削除されておるのでございまして、その点は、ただいま菅委員が仰せになりましたように、政治中枢に対する暴力行為、こういう観点から理解をいたしますときには、私も裁判所は入っていない方が、法律の体系として筋が通るというふうに感ずるのでございます。従いまして、私自身もこの第十七条の規定は、この法律に異質なものがここに入ってきたというふうには理解しないのでありまして、今の裁判所の規定等がはずれておるところから見ますと、体系としましても筋の通った体系であるというふうに考える次第であります。
#65
○菅委員 こまかなことを一つお聞きしたいのでございますが、本条の未遂罪は罰せられることになっておりますが、着手は、どこで着手になりますか。つまり手段としての暴行脅迫に着手をして初めて未遂になる、あるいは建造物、器物の損壊を始めて、実行を果たさない、まだ乗り込むところまで至らぬが、手段としての行為に着手をしたときにすでに本罪の着手がある、従ってそれをし遂げないものは未遂罪と認めてよろしいのか、本来の行動である侵入行為に着手しなければ未遂にならないのか、それを伺いたいのであります。
#66
○川口法制局参事 本条の構成は、これこれの態様をもってする侵入という考え方でございまして、従って文字としては、ここに書いてありますへいを乗り越えとか、暴行を用いたとかいうことと侵入という言葉とは、文字としては別々に概念上分析し得ますけれども、ほんとうのロジックは一体として観念さるべきだと思うのであります。従いまして、その結論は、この暴行の着手があれば、本罪の未遂は成立するものと考えております。侵入そのものというふうに分離しませんで、一体としてものを考えるというのが正しい解釈ではないかと考える次第であります。
#67
○菅委員 司法当局の御見解も同じでございますか。
#68
○竹内政府委員 ただいま御説明申しました通りでございます。
#69
○菅委員 それでは問題を進めまして、第二の新しい型の犯罪についてお聞きをいたしたいと思うのでございます。本法の第二十二条、政治的殺人または傷害を実行しようとする者がおって、それに対して凶器を提供し、または金銭、物品等を供与するという方法で幇助した者は、それだけで独立犯として、つまり正犯の実行があろうが、なかろうが、それだけで独立犯として処罰されるという新しい型ができてきた、つまり幇助というものが独立して処罰されるという法律がここに出てきたのでありますが、こういう立法例というのはございますか。これを第一にお聞きをいたしたいのでございます。何かほかにそういう幇助罪自体が独立罪になったものがございますか。
#70
○川口法制局参事 ちょっとただいまのところ思いつきません。
#71
○菅委員 普通ならば、これは幇助の形で規定するのでなくて、凶器提供、金銭、物品等の供与罪、これで構成要件がきまるわけでありますが、これは、その方法をもって幇助をしたと書いてある。この趣旨というのは、こういうことになりますか、幇助者自身に政治的目的が必要であるのかどうかということであります。幇助される者、本人は政治的目的がなければならぬことは明瞭でありますが、幇助する者もやはりここに書いてあります政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、一幇助をせねばならぬのかどうか、これが一つの問題であります。もう一つは、幇助でありますから、幇助される本人が犯行の決意があることの認識を幇助者が持っておらなければならぬのであるか、つまりどういうことになりますか、専門的にいいますと、幇助の意思というものがはっきりなければならぬ、幇助する者の故意というものが、専門的にはよくわかりませんが、それはどういうことが故意になるのか、ならないのか。犯罪構成要件について御説明をいただきたいのでございます。新しい類型のものをここに持ってきて、立法例がないとしますと、よほどこの点を明らかにしておかぬといかぬと思うのであります。
#72
○早川議員 刑法の幇助罪の規定の意味の幇助罪でありますから、司法当局に刑法の幇助の解釈を御説明を願います。
#73
○竹内政府委員 第二十二条の御質問の第一は、幇助をする人が政治目的が要るかどうかという点でございますが、幇助する人はそういう目的は要らぬ、そういう目的を持った人に幇助するということでございます。
 それから幇助すると書いてありますが、独立犯にするという問題はしばらく別としまして、普通は、実現の仕方として、金品を供与することが幇助の内容であるわけでございます。それを特に金品を供与した者は幾ら幾らにするというふうに書かないで、金品を供与してこれを幇助した者、こう書いてございますので、幇助の意思を持って金品を供与する、こういうことでないと、犯意があるというふうには言えないと思うのでございます。本条につきましては、一般の幇助罪と違いまして、独立犯とされている点と犯意の中に幇助する意思が必要だという点においてかなりしぼられた構成要件になっておるように理解いたします。
#74
○菅委員 どうもはっきりせぬのですが、幇助する犯意というものは、どういう犯意でございますか。つまり幇助すると書かなかった場合、単なる供与者と書いた場合、どう違いますか。議員立法で、しろうとの思いつきでいろいろなものを書いて、専門の法学者がごらんになると、何だかわからないものが出てきたということでは困るわけです。大体私のしろうと考えですが、幇助というのは従犯というのですか、正犯が実行しなければ罪にならぬものでございますか、そういう型のものを独立罪として、正犯の実行いかんにかかわらず罰しようということでございましょう。それを幇助する意思というものはどういうことでありますか、ちょっとわからぬのです。
#75
○川口法制局参事 先ほどの立法例につきまして、刑法の内乱罰に幇助の特別規定がございます。第七十九条でございますが「兵器、金穀ヲ資給シ又ハ其他ノ行為ヲ以テ前二条ノ罪ヲ幇助シタル者ハ七年以下ノ禁錮ニ処ス」というのがございます。なお暴力行為等処罰ニ関スル法律にはこういう幇助という言葉がございませんで、こういう前二条の罪を犯させる目的をもってこうこうこういうことをやった者はというふうに書いてございまして、この二つは論理的には違う表現の仕方をしておるわけであります。そこでとの法案における条文の書き方は、今の刑法の内乱罪の規定にならったと言うことができます。
 そこで、幇助というのは、結局正犯の実行、下手人の実行を容易ならしめるということが幇助の内容でございますから、およそ刑事罰則におきまして、何ら犯意がないのに処罰するということはあり得ないわけでありまして、従ってその幇助の意思、これは最小限度必要になる。そういうつもりで幇助ということを書いておきませんと、ただこれこれな犯そうとする者に対して金を出した者はというふうになりますと、これは友達がおつき合いで金を出す場合もありましょうし、ほかの原因で出す場合もあります。みんな入ってしまって、大へんなことになるおそれがあります。従って、幇助の意思というものは最小限度必要である。その詳細の解釈については刑事当局に、むずかしい法律論でございますから、お聞きを願いたいと思いますが、そういうつもりで書いたのでございます。
#76
○菅委員 一つこの点は慎重御研究を願いたいのでありますが、そうするとこの幇助は、つまり政治的目的を持たぬ犯罪がここに一つ入ったわけでございますか。しかるがゆえに第四条の定義の中にはこれが書いてない、こう解釈してよろしゅうございますか。それは確たる解釈、つまり確信をもってそう解釈しているのか、たまたまここにそういうのが入ったからそう解釈するというこじつけ的でなくて、そう堂々と解釈をしてよろしいのか、こういうことであります。
#77
○川口法制局参事 その御質問に対するお答えの前提といたしまして、この罰則の条文の解釈そのものは、これは第十四条の罪を犯した云々と書いてございます。本犯は仰せのように政治目的を持って人殺しをしようというふうなことに考えてないわけでありまして、そこで幇助ということの内容の解釈になりますが、その意思はどの程度のものかということを分析いたしますならば、少なくともこの金を出すものの方で、政治上の主義を推進し云々の目的は不必要でございます。そういう意味では不必要でございますが、しかしこの男は政治上の目的を持って人殺しをしようとするものだという、そういう認識は、少なくとも必要ではないかと私は考えております。従って積極的に金を出す方で、自分の政治上の主義を推進する云々の目的は不必要でありますが、そういう意味における一種の認識は必要なのでございます。それにしましても、第四条の各号の中にこれを入れませんでしたところの理由につきましては、そういう意味でまっこうから金を出すものの方に政治目的ということは言うことができません。そういう意味で除外したのでございまして、それははっきりいたしておるつもりでございます。
#78
○菅委員 一応納得をいたしました。
 それではもう一つ第三条の新しい型の犯罪でございます。大体本法を見ておりますと、破防法の場合と同じように、予備、陰謀、教唆、扇動というものを、政治目的があるゆえにだんだんそういうものも広げて、新類型の犯罪にしようとする大体根本的傾向を見るわけでありまして、すでにこれがそうです。第二十三条がとれで、教唆、扇動の範囲を広げておる。かつ刑罰を拡充しておる。つまり殺人、傷害、それからさっきから問題になっております暴行的不法侵入、そういうものの教唆、扇動が独立罪としてここに規定されております。これはわかります。よくわかるし、また破防法の例もあるからわれわれしろうとにもわかる。問題は第二十四条、これは新しい型の犯罪でありますが、まことにしろうとにはわかりにくいのであります。ある特定の者に対して政治的目的をもって、特定の者を殺すことの正当性または必要性を継続または反復して主張した者は、主張の相手方がその影響を受けて人を殺すに至ったときは、つまりその主張する行為、いわば宣伝行為が教唆または扇動の程度に達しないときでも扇動と同一の刑に処する、こういうまことに珍妙な法文であります。珍妙と申すのは、初めの方の要件を言うのではございません。教唆または扇動に至らなくても、この罪を扇動したと同一の刑に処する、これであります。つまり教唆、扇動にあらざる扇動というものを認めたのでございまして、まことに異例な犯罪構成要件の立て方だと思います。そこで異例であればあるだけ、この要件をはっきりさせておく必要があると思うのでありますが、これもまたお聞きしたいのですが、何かこういう立法例がございましょうかどうか、これを第一にお聞きしたいのであります。
 それから第二に、こういうふうに扇動の範囲を、つまり扇動にあらざる扇動というふうに持っていくわけでありますが、一種の、かくのごとき種類の宣伝行為が扇動に至らざるとも扇動として罰するという、こう拡大してきますと、大体教唆扇動というものは多くの場合言動活動が主であります。あるいはまた表現活動が主でありますから、こう拡大の方針でいきますと、政治活動上非常に重要視されております言論表現というようなものが非常に侵害されるおそれが非常にあるのであります。従いまして、その乱用がないようにどういうふうに構成条件をしぼっておりますか、るる書いてありますが、わかりやすく御説明をいただきたいとお願いするのが第二でございます。
 第三には、特定の者に対して働きかけて、特定の者を殺すことの正当性、必要性を力説するのでありますが、この特定というものはいかなるものか。もちろん複数の場合も特定の場合があり得ると思うのであります。一体、複数の場合などでは特にどの範囲までが特定であるか。たとえば某政党の幹部を殺せ、まことに具体的例を引いて悪いのですが、日本社会党の幹部を殺せということの正当性、必要性を主張した場合、これに当たりますかどうか。また働きかけるものが特定である、たとえば某団体の団体員のみをもって組織される講習会の席上に行って、それは百人おるか、三十人おるか、あるいは七、八人おるかしれませんが、その団体員のみの講習会の席上で、こぶしを振り、涙を流さんばかりに、今のようなことを言ったら、これも働きかける相手は特定といえるのでございましょうかどうか、この点をお聞きしたいと思うのであります。
#79
○川口法制局参事 第一に、こういった趣旨の立法例はというお尋ねにつきましては、ございません。新例でございます。
 それから第二点におきまして、これの犯罪の構成要件についてどういうふうなことが特色かという点につきましては、第一には本犯に犯行を実行させる目的をもってというような言葉は書いてないという意味では、教唆や扇動よりも広がっておるわけでございます。他方におきまして、純粋の独立犯ではないという意味では、つまりその影響を受けて本犯が実行した場合に処罰するという意味では、教唆扇動よりも狭いわけでございます。限定されておるわけでございます。そこで、これの立案の基礎となります前提といたしましては、刑法の教唆の概念というものが基底的にありまして、それに昔から扇動という新しい定義が創案されまして、それが国家公務員法やその他現在はいろいろ例がございますが、破壊活動防止法にもございます。この定義の解釈自身が非常にデリケートでございまして、そういう刺激を与えることをいうとこの第四条に書いてございますような定義を与えましたが、これも現実の裁判の実例におきましては、かなりデリケートであって、教唆の区分がどの程度かということはなかなか困難な問題だそうでございます。そこで、第二十四条の立法趣旨は、あっさりここに書いてございますように、教唆または扇動に至らないが、そこまでぴしゃりとは言えない場合であろうけれども、しかしやはり影響力を与える、こういうものを言論の弾圧にならない程度に犯罪構成要件とするにはどうしたらいいかと、右からしぼったり左からしぼったり、非常に難渋を重ねてこういう条文になった次第でございます。
 そこで第三点の具体的事例についての考え方でございますが、「特定の」ということでしぼりましたのは、まず個人だけという意味ではございません。複数でもかまわないと解釈いたします。しかしその複数が無限に広がりますと意味をなしません。しからば「特定」とはどのようなものかという非常にデリケートな解釈になるわけでございますが、先生が引例として用いられましたところの某政党の幹部をやっつけろという程度、たとえばその言葉通りに言ったと仮定して議論をしますならば、その程度のことではやはり特定にはならないのではないかと私は考えます。さらにもう少し限定的に例をとってはなはだ恐縮でございますが、某政党の三役をやっつけろ、これくらいになりますれば特定と言い得るだろうと思うのでございます。それから、一般の公開の席上で、たとえば公会堂等で不特定多数の人が入るような席でこういうことを言った、これは当然「特定」には入りません。従って聴講生がある塾で何十人といて、自分が全部の名前も知り動向も知っている、こういう場合には当然この下手人の特定の意味には入ると考えます。要は自分がしゃべったことに対して相手に与える影響力を、自分の一つの発言の関連におきまして責任が持てるかどうかというのに現在の社会通念上おのずから犯意が特定されるはずでありまして、そういうものがこの「特定」の文字の解釈になるかと考えております。
#80
○關(之)政府委員 ただいまの第二十四条の川口部長の御説明に付加しましてちょっと御説明申し上げて、御参考にいたしたいと思います。
 第二十四条で、このでき上がった条文を拝見してやはり一番問題になるのは、正当性、必要性の主張はどういうことになるかということに相なるわけであります。正当性、必要性はすでに立法例はあるわけでございまして、破壊活動防止法の第四条第一項一号の二に、「刑法第七十七条、第八十一条又は第八十二条に規定する行為を実行させる目的をもつて、その実行の正当性又は必要性を主張した文書又は図画を印刷し、頒布し、又は公然掲示すること。」という規定がすでにあるわけでございます。これは破防法の中の第四条の破防法による取り締まりの類型行為の中では、内乱だけについてこの規定を書いているわけでございます。この考え方は、これは教唆でもなければ扇動でもない、その以前の段階の一種の宣伝行為である。そのこと自体は教唆にもならぬ、またもちろん扇動にもならぬ。ならないということは、相手方に新たに犯意を作らせる、あるいは既存の犯意を強化するとか、正当性、必要性の主張はそういうような性格のものではない、また主張する御本人もそのつもりでやっておるものではないというようなことがあるわけであります。しかしそうかといって、破防法の内乱の問題に関しては、すでに内乱を起こすことの正当性、必要性ということは、それ自体はきわめて危険な言動であるといって、教唆でも扇動でもない、もう少し教唆、扇動の前にある段階の行為をとらえて、破防法上の破壊活動の
 一類型といたしてその言葉を持ってきておるわけであります。
 そこで問題になりますのは、たとえば第二十四条で殺人の問題が重要である、個人的テロがきわめて重要であるから、それに対する一切の言説はどうかということになりますと、殺人の正当性、必要性を主張したものという形で書きっぱなすことも一つの考え方になるわけであります。また拝見いたしましたところ、社会党の案には「賛美」という、まだそれの前の言葉があるわけであります。
 そこで、この考え方は、正当性、必要性ということも言いっぱなしでは処罰しない。要するにそれが一回、二回、三回というふうに積み重なって参りますと、それを聞いておるものが、だんだん聞いておるものの方においてある犯意を作るかもしれない。一回ではなかなか聞かないけれども、二回も三回も四回も繰り返しやっておるうちに犯意を作り上げるというような可能性が出てくる。しかしそうかといって一々を見ると教唆でも扇動でもないのでありまして、正当性、必要性の主張ということに帰するわけであります。そういうようなところが第二十四条の問題の中心で、そのしぼり方として前段階において、「特定の者が第十四条第一項に規定する行為を行なうおそれがある」ということをまず予見しております。これがまず大きな問題になりますが、なかなかむずかしい点だと思います。最近の情勢から見て、若い者がこんなことをやるのではないかという大体の予見を持って、その上教唆、扇動するつもりではないけれどもやっておる。やった結果として、それらの何回か繰り返した正当性、必要性の主張によってその特定の者が影響を受けて罪を実行する、こういうことが客観的事実としてあり得ると考えられるのであります。
 そこで、それらのものはその罪を扇動したものと同一視する。結局効果は同じ事実がそこにできる可能性があるわけでありまして、そういうふうに単なる言葉を言葉として処罰せず、言葉が影響して実際の行為が行なわれたという両方の前段階にしぼっておるわけであります。これは拝見しましたところなかなか苦心の策のようでありまして、そういうふうに考えるのであります。
#81
○菅委員 苦心をされて非常に微妙なことになりましたが、かえって芸がこまかくなり過ぎてわかりにくいという感じが、率直に言うといたすのでございます。おそれあることを予見しながらあることをなすというのは、法律の専門的立場からいうと、故意になるのでありますか。おそれあることを予見しながら働きかける、ある働きかけをする。つまり実行せしめるというほど強くはないが、犯罪の故意という中に入るのでありますか。
#82
○川井説明員 故意の一部になると思います。本条は構成要件が非常に難解と申しますか、広範になっておりますので、予見をしながらということも故意の一部になる、こういうふうにお考えいただいてけっこうであります。
#83
○菅委員 「影響を受けて」という言葉がございますね。働きかけられたものが影響を受けてあることを、つまり殺人を実行することに至る、そうなると影響を受けてということは、主張をした主張と、その影響を受けてその犯行をした人の行為ということ、主張と犯罪の実行ということとの間の因果関係は、どう考えたらよろしいのでありますか。たとえばその本人がいよいよ殺人を決意した。しかしそれは自発的に決意したのである。教唆されたのではない、その人から言われたからやるのではない、自分は独立の立場から決意した。たまたまこういうことを執拗に継続して反復して言うから、副次的、第二次的に影響を受けたにすぎない、教唆、扇動した者は他にある、その上にもう一つ補助的な意味で影響を与えた場合、本条は当たるのでありますか。
#84
○川井説明員 大へんむずかしい御質問でございますが、理論的には、「その影響を受けて同項の罪を実行するに至ったとき」というふうに書いてございますので、影響を受け、正当性または必要性の主張をしたことと殺人行為が行なわれたという事実との間に、法律上のいわゆるある程度の因果関係があることは必要だろうと思います。従ってもしこの犯罪が行なわれた際に公訴を提起するというふうな段階になれば、その因果関係があったということの立証は検察官がしなければならないと思います。
 それと別問題で考えなければなりませんのは、正当性または必要性を主張した人が、その影響を受けて犯罪を実行するのだということまで認識があることが必要かどうか、言いかえてみれば、法律的にはそれは本条の故意になるわけでありますけれども、その本条の故意がそこまで及ぶかどうかということについては、私は疑問があるように思っております。
#85
○菅委員 非常に芸のこまかな新しい犯罪構成要件をお立てになったのですが、御勉強に敬意は表しますけれども、なかなか問題が多いと思いますので、これは本委員会のこの質疑応答その他の研究を通じてもう少し明確にしてもらいたいというような気がいたすのであります。まことに率直なことを申して恐縮でございますが、この程度で本件のとまかな質問は終わりたいと思います。
 しかし、さっきからいろいろ承っておりますと、ちょっとこういう感じがして参りました。破防法におきましては、破防法の法体系の中で主座を占めるものは内乱――あるいは外患誘致等も入るかもしれませんけれども、内乱で、従って破防法の中においてもやはり幇助罪を独立罪として見たり、正当性の主張を罰したりしておる。この政治的暴力行為防止法の方では、だんだん論議をしておると、やはり内乱にからむ殺人のような気がしますね。この法案で王座を占めるものは殺人であって、これについては非常に綿密な規定がしてある。今言ったように、予備、陰謀から教唆、扇動から正当性の主張から幇助罪まで、それをめぐるものについてはやかましく規定する。大体お話を聞いておると、本法の主たる花形というか、中心の犯罪行為はテロ殺人であろうということはだいぶはっきりしておるように思うのであります。ちょうど破防法の中における内乱、外患というものを非常に重く見て、いろいろとこまかに規定をしたような感じがいたすのであります。これは所感を述べただけでございまして質問ではございませんが、そういう感じがして参りました。そういうふうにこれからものを説いていっていいかどうか、これはもう少し勉強したいと思いますが、御研究をいただきたいと思うのであります。
 さて、私の質問はこれで大体終わるのでありますが、最後に社会党さんに一言だけお願いを兼ね、質問をいたしたい。質問を兼ねお願いと言った方がいいかもしれませんが、社会党の方に一つお願いをいたしたいのでございます。詳細は明日同僚議員からお尋ねをいたしますが、それで明日以後社会党案につきましても十分質疑をいたし、真剣にいろいろと討議をし、慎重に審議をいたすつもりでございます。ただ社会党側におかれましても、本法案の提出がおくれた関係もございますが、一つ十分に御検討いただきまして、十分御理解をいただきました上で最後には賛成、御同調をお願いしたいと思うのでございます。
 特に申し上げたいのは、すでに臨時立法、時限立法としてやろうとすると、多少の威嚇主義が過ぎてもいいじゃないかという気持が私どもの気持として起こるかもしれませんが、しかしこういうふうに恒久立法として法律体系の中に安定した地位を持った、しかも重要な内容を持った法律として安定せしめるのだということになりましたら、どうしてもこれは刑法理論の常識により、また他の刑罰法規できめた刑罰との均衡を見て法定刑の量定をやらなければいけませんから、この社会党さんが臨時立法によって威嚇主義でいくというふうなことは、こういうふうな考えにちょっと姿勢を変えていただければ御同調を願えると思うのであります。
 それから第二に社会党さんが問題としておられますところは、やはり第十七条の首相官邸及び審議中の国会に対する暴力的乱入だと思いますが、それはさっきからの質疑応答の間で明らかになりましたように、これは集団活動の規制の系統のものではない、適用はされるかもしれぬが、それをねらったものではなくて、今の暴力的乱入というところに重点があるのだとはっきり判明いたしましたので、もはやこの点についてはおこだわりになりませんように、デモ禁反対一本やりのがんこさでは、これがあまり過ぎますと、色めがねとかいろいろ言われますから、それにあまりこだわらないで、さらりと御理解願って、さらりと態度を改めていただくことが望ましいのであります。
 それから第三に、社会党方面で非常に御心配になっておりました団体規制の点でございますが、今いろいろと質疑応答をいたしてみますると、団体規制の処分は破防法におけるよりももっと要件が厳重に狭められております。しこうして、破防法の適用は同法制定以来、一件もないということは、先ほどからいろいろ質疑応答をいたしましたが、しかし一つはこの破防法における団体規制の要件というのが非常に厳重に縛られておりまして、ある意味において金縛りで手も足も出ないということが一つの原因ではなかったかと思うのでございます。本法はさらに要件を厳重にしておりますから、さらに動きにくいことになっておる。しかしこの団体の解散を命ずるとか重要な活動を制限するとかいうようなことについては、これくらい厳重なワクをはめておくということは私は必要だと思いますから、本法の方針は堅持すべきものだと思っておりますが、そうだとすると、社会党の方面でこの団体規制を非常に神経にお病みになる必要はないと思うのであります。あれこれ考えてみますと、社会党方面の御警戒とか御心配は大体杞憂ではないかというふうに質疑応答の過程を通じて考えられるのでございますが、一つそれらの点をよく御勘考いただきまして、最後にはぜひ御回調いただきまして、そうして三党共同でこの画期的な法案を通す、日本議会政治史上に一つのエポックを画するというふうな御努力を一つ願いたいと思うのであります。
 以上御返事は要りませんから、お願いをいたしまして、これをもって私の質問を終わります。
#86
○池田委員長 菅君の質問に関連して林博君から発言を求められておりますから、これを許します。林博君。
#87
○林委員 私は社会党案を中心としてお尋ねしたいと思うわけですが、すでに時間が五時になっておりますので、一言だけお伺いいたします。きょうは質問する意思はありませんが、ただ一点だけ、あす御答弁願う関係で、場合によってはお調べ願わなければなりませんので、その点だけ伺います。
 それは、昭和三十一年に、たしか社会党提出だと思うのですが、刑法の一部改正案が出ているわけです。その中に死刑の廃止ということが入っていると思います。この死刑の廃止の中には、確か内乱罪に対する死刑も入っていたと思います。これは御承知だと思いますが、この点についてあすいろいろお尋ねしたいと思いますので、その点をお調べ願いたいと思うのであります。その辺調査が行き届いておりますかどうか、その点だけお伺いいたします。
#88
○坪野議員 社会党の法案に対する態度その他については、明日の林委員の質問並びに本日の菅委員の御要望に対してお答えしたいと思いますが、ただいまの社会党が三十一年に刑法一部改正または死刑廃止法案を提出した事実はよく承知いたしております。そこで本法案を立案するに際しても、そのことは十分論議をいたしました。こういう法案を提出した詳細については明日討議いたします。
#89
○池田委員長 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#90
○池田委員長 この際お諮りいたします。
 ただいま審査中の両法律案に関する参考人につきまして、理事間の協議によりまして一名を追加し、その数を九名といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○池田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。
 次会は明十九日午前十時から開会いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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