くにさくロゴ
1960/06/01 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第19号
姉妹サイト
 
1960/06/01 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 法務委員会 第19号

#1
第038回国会 法務委員会 第19号
昭和三十六年六月一日(木曜日)
   午前十一時六分開議
 出席委員
  委員長 池田 清志君
   理事 田中伊三次君 理事 長谷川 峻君
   理事 林   博君 理事 牧野 寛索君
   理事 山口六郎次君 理事 赤松  勇君
   理事 坪野 米男君
      宇野 宗佑君    上村千一郎君
      浦野 幸男君    唐澤 俊樹君
      菅  太郎君    岸本 義廣君
      小島 徹三君    佐々木義武君
      富田 健治君    楢橋  渡君
      早川  崇君    藤井 勝志君
      阿部 五郎君    飛鳥田一雄君
      井伊 誠一君    猪俣 浩三君
      中村 高一君    畑   和君
      春日 一幸君    志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
 出席政府委員
        警  視  監
        (警察庁警備局
        長)      三輪 良雄君
        検    事
        (刑事局長)  竹内 寿平君
        公安調査庁長官 藤井五一郎君
 委員外の出席者
        議     員 富田 健治君
        議     員 早川  崇君
        議     員 田中幾三郎君
        衆議院法制局参
        事(第二部長) 川口 頼好君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政治テロ行為処罰法案(坪野米男外八名提出、
 衆法第一六号)
 政治的暴力行為防止法案(早川崇君外七名提出、
 衆法第三九号)
     ――――◇―――――
#2
○池田委員長 これより会議を開きます。
 政治テロ行為処罰法案並びに政治的暴力行為防止法案、政治的暴力行為防止法案に対する修正案を一括議題といたします。
 質疑を継続いたします。阿部五郎君。
#3
○阿部委員 できるだけ時間を節約いたしまして御質疑をいたしたいと思いますが、この法律案が前段では団体規制、後段では刑罰法規の整備ということになっておりますので、まず団体規制の部分からお尋ねをいたしたのであります。
 ところで、団体規制は大体において三条になっておりますが、三条のどれをとりましても、みんなあらかじめ一定の政治的暴力行為がすでに行なわれたということが条件になっております。少なくとも一回以上はそれがなかったならば、団体規制はしない、こういう定めになっております。そして一面この法律ができたとしまして、その施行は附則の第一項によりまして「公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。」こうなっておりますから、この団体規制をやるのには、この法律が可決され、公布せられて、さらに一カ月たって、それから後に政治的暴力行為が行なわれたということが必要になってくるのでありましょうか、それとも団体規制というものは、目的は将来そういうことが発生するおそれがあるから団体規制をするのであるから、その団体規制をするにあたっては、この法律が施行される以前にもすでに暴力行為が行なわれておる団体に対しては規制してもいいのだ、こういうお考えなんでありましょうか、まずその点を明らかにしておきたいと思います。
#4
○早川議員 前者の考えであります。
#5
○阿部委員 そういたしますと、すでに浅沼を殺すとか嶋中を殺すとかいうような事件が起こっておりますけれども、それらの事件を起こしておる団体は直ちには規制の対象にはならないもの、そうしてこの法律が制定せられてから後一カ月たって、それ以後にああいう事件を起こした団体でなければ規制の対象にはならない、かように解釈すべきものでございましょうか。
#6
○早川議員 その通りです。
#7
○阿部委員 それでは次に伺いたいのでありますが、この団体規制のための調査をなさることを予想しておられますその調査は、公安調査庁が当たるように思いますが、すでに政治的暴力行為を行なったか行なっておらないか、こういうことをまずきめて、そして行なっておる場合に初めて規制という問題が起こってくるのでありますから、すでに行なっておるかどうかということを確定してかからなければ、この法律の施行にはかからないわけです。そのすでに政治的暴力行為を行なったかどうかということをきめるのは、一体どういう条件が満たされたら行なったとするのであるか、またそれを決定するのはどういう機関がするのであるか、こういう点がちょっと疑問になるのであります。過般各派の懇談会で承っておりますと、そのすでに政治的暴力行為を行なったということは、判決が確定してからきめるんだ、こういうふうな御意見も出たやに聞いております。もしそうすると、こういう重大な事件でありますから、この法律が施行せられて、一カ月たって、その後に政治的暴力行為が行なわれて、それが判決を受けるということになると、二年や三年かかる、こう見なければならないし、判決があって、初めてそれが行なったものと確定して団体規制にかかるということになると、これは非常な迂遠なことにも受け取れるのでありますが、そのほかに、判決はなくとも、こういう条件があれば行なったものと認めてよろしいか、そう認めるのはどの機関が認めるのか、こういう点に疑問があるのでありますが、いかがでございましょうか。
#8
○早川議員 阿部君の言われましたように、裁判が確定してからではなくて、そういう事実行為が行なわれて、その認定を公安審査委員会がきめれば、それは一つの調査対象になりまして、団体の規制の対象になるわけであります。なお技術的には法制局からお答えいたします。
#9
○川口法制局参事 補足して申し上げます。
 この問題は、似たような問題で、たとえば刑法の解釈についても同様な問題がございまして、犯人を隠匿する、隠し立てするという罪につきまして、現在の判例は、犯人とは何ぞやという概念規定につきまして、その本犯の方が最終判決で犯罪が確定しないうちは、その隠匿罪の方は成立しないという問題に対しまして、そうではないのであって、並行的に手続は進めてよろしい。従いまして、本犯の方が罪人だということの確定判決は得ませんでも、一方の方は犯罪が成立する。これと同様な考え方をとっておるわけでございまして、この団体規制の問題につきましても、本罪の方が、長い場合には最高裁までいきまして教年を要することもございましょう。それでも、しかしながらそういう犯罪事実という客観的なものを行政庁たる公安調査庁が調査いたしまして、それの批判機関でありますところの公安審査委員会がそれの認定をいたしまして、そして並行的に手続は進め得る。ただし、それがもちろん最終決定になるわけではございませんで、本法案で準用しておりまするところの破防法の規定によりまして、その公安審査委員会の認定自身もまた訴訟にかかりましてするわけであります。従って最終的な憲法上の保障はあるわけでございます。
#10
○阿部委員 そういうお話でございますと、それはそれとしまして、そういうことになりますと、こういう法律が世間でも大へん問題になり、われわれもこれを重大視するゆえんのものは、単にこの団体の規制そのもの、あるいは刑罰法規の処罰そのものよりも、この規制のための調査あるいは処罰の前提としての検察庁並びに司法警察官の捜査、こういう段階において人権をそこなうという危険が多分にあるというところで、われわれはこれを重要視するのであります。この団体規制の三カ条の条文を発動するにあたって、その前提になっておるところの暴力的政治行為を行なったかどうか、こういうことを決定する機関が公安審査委員会であると言われましたが、この公安審査委員会が決定するためには、その前提として、公安調査庁が調査をなさる、その調査の段階において基本的人権が侵害される危険をわれわれは感じておりますし、世間もまたこれを危険視するからこそ、こういう法律案が出ましたときには、世間がこれを非常に重視して、ややもすると相当騒ぎも起こるわけなんであります。その前段、一番初めの段階の公安調査庁が調査活動をする時分に公安調査庁の一体だれがこの団体はすでに暴力的政治活動を行なった疑いありという嫌疑をかけていくのか、それは出先の一調査官、そういう人が認めてもいいのであるか、あるいは公安調査庁といいましても、長官から一出先の調査官まであるわけなんで、それを、だれがそういう疑いをかけて調査活動に入るかということは、人権保護の見地から相当重大視しなければならぬと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
#11
○早川議員 ここに書いておりまする第四条の政治的暴力行為は、それ自体重い犯罪でございますから、その犯罪については、警察それ自身もすでにこれは刑法に引っかかる――これはほとんど全部がそうでありますが、そういうことで、そういう犯罪だということが認定され、それをもとに、その事実行為をもとにして調査しますから、乱用のおそれはございません。またこれを司法処分にしないで行政処分といたしましたのは、テロやあるいは政治暴力を防止するためにしたのでありまして、二年、三年後裁判が確定してからというのでは意味をなさないわけであります。そういう政治暴力防止という法律の立法趣旨からも当然のことであります。
#12
○阿部委員 私がお尋ねしたのは、その出先の一調査官が、この団体はすでに政治的暴力行為をやったことのある団体だ、こう判断して初めて調査にかかるのです。その一出先の機関がやつても、その判断の権限を持っておるのかどうか、こういう点でありまして、これは提案者がお二人あるようでありますから、どうぞお二方のお答えを願いたいと思います。
#13
○早川議員 その決定は公安審査委員会でございます。
#14
○阿部委員 公安審査委員会というのは、公安調査庁が調べて、そして公安調査庁の調査に基づいて調査官が処分を申請して初めて判断をするのであります。私の聞いておるのは、そうではないのでありまして、その正安審査委員会の判断する前提となるところの公安調査庁が調査をするにあたっても、この団体はすでに政治的暴力行為を行なったという嫌疑をまず持って、それから活動にかかるわけなのでありますが、その判断、それが出先機関の一調査官で判断ができるという権限を与えておるものであろうかどうか、これなんであります。
#15
○早川議員 あくまでそれは公安審査委員会で、この団体は団体規制をやるという決定をするための事務的な仕事でありまして、その公安審査委員会で出先の人の認定が誤っておれば、団体規制をしない権限は当然審査委員会にありますから、あくまでも事務として見ていいのではないかと思います。
#16
○阿部委員 私たちが、私たちのみならず、社会の問題にするのは、公安審査委員会が団体に対する処分をするその行為も問題にしますけれども、そこへいくまでの公安調査庁の調査活動、これがあたかも検察庁や司法警察官の犯罪捜査活動の途中におけると同じように、国民の基本的人権を侵害するおそれがあるのであるから、その点を問題にしておるのでありまして、それを単に一事務にすぎないから出先機関の一調査官でもこの国体はすでに政治的暴力行為を行なっておると判断してかかることを許すということは、これはどうも事をあまりに軽く見ておられるのではないかと思いまして、私は決して正当なる御答弁とは思われません。そこで共同提案者であられる民社党の御見解を承りたいと思います。
#17
○田中(幾)議員 本法の第十三条に準用規定がございます。この準用規定によりまして、破壊活動防止法の第十一条から三十七条までの規定を準用することに相なっておりますから、この破防法の第四章の「調査」というところを見ますと、第二十七条以下公安調査官の調査権についての規定があります。この調査官がこの規定に基づいて調査をするのでありますから、その行き過ぎ等について人権じゅうりん等のことがあってはなりませんから、本法の第三条によりまして、「この法律による規制及び規制のための調査については、」かくかくという、訓示規定ですか、制限規定を出しておるのであります。また調査官の行き過ぎの制裁についは、これも破防法の規定がありまして、調査官に行き過ぎ等の事実があれば、その調査官が法律によって制裁を受けることが当然でありますから、調査官自身に対するこの調査のことについては、乱用するというようなことはないと存じます。
#18
○阿部委員 それは私は破壊活動防止法までは十分研究してはおりませんが、聞くところによると、破壊活動防止法においては、破壊的国体というのをまずきめてかかって、それの活動について調査を進めるということになっておると承っております。この法律においては、この団体は破壊的であるとか、この団体は破壊的でないという判断はもちろんないのでありまして、あらゆる団体が公安調査庁の係官、調査官によって一応嫌疑を持たれても仕方がない、調査官はそういう嫌疑を持って調査にかかる権限があるのだ、こういうことに承っていいのでございますか。
#19
○田中(幾)議員 もちろんただいま申しましたように破防法の準用規定でありますから、調査官は破壊活動をする団体に対してはその団体を対象として調査をいたしますし、本法は破壊活動ではなくして暴力行為をする団体を規制する法律でありますから、おのずからそこに調査の対象が異なってくるわけでありまして、調査官はこの規定によって厳格に調査するものと思っておるわけであります。
#20
○阿部委員 どうもわかったようなわからぬようなことを言われるのです。それでは私もあなたと同じように、どの団体も調査をするのではなくて、この法律によってある団体がすでに暴力行動をとったという事実がまずあって、その団体に対してのみ調査活動はすることができるのである。第七条以下の各三カ条において団体規制を定めておるのは、そういう団体ばかりなのであって、いまだかって暴力行動をとったことのない団体は、規制しようにも初めからできない。こういう規定なのでありますから、すでに暴力行動を行なったことのある団体だけが調査活動の対象になるものである。これはこの条文を読んでも当然のことでありますが、問題は、その団体がすでに暴力行動をとったかどうかということを決定して、とったものならば、それに対して調査活動をする権限があるけれども、とったことのない団体であれば調査活動はしてはならない、権限逸脱で処罰の対象になるというあなたの御答弁と思いますが、私が聞いておるのは、ある団体がすでに暴力行動を行なったかどうかを認定する、行なっておらなかったら調査活動もできないはずなんですから、それを一体だれがどういう材料によって決定するのか、こういうことを聞いておるのであります。
#21
○田中(幾)議員 これは何も煙のないところを歩いて調査するというのではなくて、調査官の調査権というものは、おのずから権利の限界もありますし、そこに義務もあるわけでありますから、そういう事実の調査については、この規定に従って、公安調査官の調査権によって調査をするわけであります。
#22
○阿部委員 そういうことをおっしゃいますと、大へんなことになると思います。この調査の対象になる暴力行動というものの中には、単に扇動というようなもの、すなわち言論の行動というものも含まれておるのでありますし、そこで出先の一調査官が一片の機関紙とか、あるいはパンフレットとか、そういうようなものを見て、これが扇動になるかならないか、こういう判断をして、なると判断をしたら、この団体は、団体の構成員がすでに第四条に定める暴力的政治的活動を行なったものである、こう判断して、その団体が将来継続、反復して行なったならば、これは団体規制の対象になるものだ、こう判断して、出先の一調査官が自由なる判断のもとに調査活動を開始することができる。こういうことになるように思われます。それではまことに国民に不安の念を与えるのではないかと思うのでありますが、それでいいのでございますか。
#23
○田中(幾)議員 この法律によって準用されまする破防法第四章第二十七条以下に調査官の調査のことが規定してあるのでありまして、この規定に基づいて調査官が調査をいたしまして、その調査官が自己の意思によって決定するのではなくて、やはり準用されております第十一条の規定によりまして、公安調査庁長官が処分の請求をいたしまして、最終的には公安審査委員会が決定するのであります。しかもこの規定の適用にあたっては、非常に戒めた規定になっております。先ほど申しましたように、調査官に対する制裁の規定もそのために設けておるのでありまして、御心配のような点はないと存じます。
#24
○阿部委員 御答弁はまことに不得要領でありまして、私には納得がいかぬのでありますが、この点にいつまでもひっかかっておるわけにいきませんから、先に進みたいと思います。
#25
○飛鳥田委員 関連して――今田中先生の言われた破防法の第二十七条を見ますと、「公安調査官は、この法律による規制に関し、第三条に規定する基準の範囲内において、必要な調査をすることができる。」こう書いてあるわけであります。従って、これは今回の法律の第三条の精神的な訓示規定の範囲内において活動すればよろしいということであって、調査をいつ始めるという限界を示していないわけです。調査をいつ始めなければならぬか、いつ以前にやってはならないかという限界を示していない。だから従って阿部先生の御心配のような、広範な、単なる「おそれ」という公安調査官の主観的な認定によって調査を開始することも可能なわけです。その団体が現に暴力行為を行なったとき以後に調査が限定せられなければならないという法律的な根拠は一つもないのです。これは当然ですから、あらためて御質問をいたしませんが、そこで、それでは今早川君が述べられたように、暴力行為が現に行なわれたとき以後にしか調査権がないとするならば、それ以前に行なった調査に対しては、破防法第四十五条の適用がありますか、これを伺っておきたいと思います。そうでないと、お説は少しも論理的な基準を持たないわけですから。
#26
○田中(幾)議員 第四十五条は、御承知のように「公安調査官がその職権を濫用し、人をして義務のないことを行わせ、」云々と書いてあるのでありまして、この職権を乱用することは、自分の調査することのできないことを調査することもまた職権の乱用でありますから、おのずから調査官の調査権の限界というものは、この法律に従ってやらなければならぬことは……。
#27
○飛鳥田委員 何条ですか。
#28
○田中(幾)議員 いや、この暴力行為を行なった場合の処罰規定があるのですから、本法に反する行為をやった団体であるかいなかを調査するのが調査官の職権の限界となるのが当然でありまして、それ以外のことをやれば、これは職権乱用になることは当然だと思いますので、やはり本法に規定する犯罪の構成以外のことを調査するというようなことに相りましたならば職権の乱用になる、さように考えております。
#29
○飛鳥田委員 それでは、「おそれ」というのは、いつから具体的な調査対象になる「おそれ」となるのでしょうか。その定義を示していただきたい。「おそれ」という言葉が再々書いてありますが、この「おそれ」を具体的に定義していただかない限り、「おそれ」という言葉を基盤にしていつでも調査を始められるということになるのじゃないでしょうか。やはり調査がいつ始められなければならないかということを明確に示した条文がない以上、それは調査官の主観的なものにゆだねられると考えていかなければならぬわけでしょう。しかもそのやたらな調査というものが、どんなに国民の自由を侵していくか、あるいはそれを脅威していくかということが今非常に問題になっているところでありますから、この点について、法は明確にお示しにならなければならぬはずです。田中先生はそう解釈をなさるでしょうが、法律は一ぺんでき上りますとひとり歩きをいたします。公安調査官はそれを独自に解釈していくでしょう。
 衆議院の法制局に伺いますが、この公安調査官の調査権の発動というのは、いつから始まらなければならぬかということは、一体この法律のどの条文にどういうふうに表わされておりますか。
#30
○川口法制局参事 条文について申しますと、破防法の今先生がおっしゃいました条文を準用いたしておりまして、向こうに「この法律」と書いてあるのは、こちらの政治的暴力行為防止法、こういうふうに読みかえておるわけであります。従いまして、具体的には第七条、第八条の字句を根拠として今の問題は考えるよりほかございません。第七条をごらん願いますと、要するに、すでに行ない、それから将来の蓋然性と申しますか、「おそれがあると認めるに足りる十分な理由」云々ということがございます。それから第八条については、同様な文句で、なお第七条よりも厳格に縛ってある文句がございます。従いまして、問題は、破防法第四十五条の公安調査官の職権乱用罪の規定、これは刑法の職権乱用罪よりも刑の上限を重くし 特別な規定でありまして、そこにいうところの「職権を濫用し」、とは一体どういうことかということに結局法律論として落ちつくと考えます。そこで今提案者から御説明がありました通り、職権の乱用の中には、この職権そのものの中に入っておらない、とんでもないことをしでかしたということ、それから、形式的には職権の中に入るが、内容的にそれが人権じゅうりんその他の行為になったという二つの概念を包摂しておると解するのがほんとうだと思います。
 そこで、これは実施官庁ではございませんので、私からそういう厳密なことまで申し上げるわけには参りませんが、そういう判定基準のもとに、なお本法の第二条および第三条で外回りから人権じゅうりんをしてはならないという趣旨の規定がありますから、それらの規定との勘案におきまして、おのずからなる調査の字句の限定というものが考えられるものと考えるのであります。従いまして、これは司法警察の捜査におきましても同様でありましょう。いつからということをおそらく法律で機械的に書けない問題でもあるし、さればといって限界がないというのは、これはいけません。従いまして、おのずからなる制約があるでしょう。ただし、機械的にどの時点から始めなくちゃならないとか、どの時点から始めたあとは、全部職権乱用罪になる、こういうふうに割り切った基準はちょっと申し上げかねると思います。しかしながら、それの一般的、理念的な基準はないかという趣旨に御質問を解しますならば、それはございましょうというふうに申し上げるよりほかないと思います。
#31
○飛鳥田委員 田中先生、よくお聞きだったと思います。結局法制局の法律的な御解釈をいただいても、おのずからなる限定があるとおっしゃるだけであって、しかも理念的な範囲があるだけだ、こうおっしゃるわけです。しかしそういう理念的なもの、おのずからなるものというのは、いつでも権力によって拡張解釈されてきたのが今までの日本の法律の歴史だろうと思います。そういうことはもう私が申し上げるまでもなく御存じだろうと思います。そこで一例を示してお伺いをいたしますが、そういうおのずからなるとか、理念的な制限しかない立法をなさる以上、公安調査庁は今までどのようなことをやってこられたか、あるいはこれと情報を交換せられる警察の情報収集というものについてどういうことをやってこられたか、これは相当詳しく御存じのはずだと思いますが、御存じでしょうか。よけいなことを言って恐縮ですが、たとえば、それでは具体的に伺いますが、田中先生の民社党は、警察あるいは公安調査庁が秘密工作とか特殊工作とかいうものをやってこられたことを御認定、是認なさいますか。それとももっと具体的に申し上げれば、往々にして問題になります、今回もその結果は、けさの新聞に報道せられておりますが、たとえば十仁病院に隠しマイクがつけられておったというような話も出ております。警察がいわゆる隠しマイク、そういうものを特殊工作用具として現実に使っておるという事実を私たちは否定できないと思うのです。そういう秘密工作の中で隠しマイクを使っている、こういうような事実を民社党は是認せられるのでしょうか。そういう調査方法、工作方法、情報の収集の仕方、これをあなたはよろしいとおっしゃいますか、これから伺いましょう。
#32
○田中(幾)議員 私はそういうことは、屋内の集会のときにそういう設備をしてやるようなことがもしあるとしますならば、それは認めることができません。
#33
○飛鳥田委員 お認めにならない。しかし現実には行なわれているのです。そういう警察なり公安調査庁なりの調査方法を前提としてあなたはこの法律をお出しになるのですか。非常に矛盾してはいませんか。私は少なくとも秘密マイクが使われておるなどというような事実をだれも否定できないだろうと思うのです。ここに皆さんいらっしゃいますが、皆さん御自身だって御否定にならないだろうと思うのです。そういうことをやっておる警察、公安調査庁に調査を一切ゆだねてしまう。そうしてその調査はいつ始めていいのか、こういうことも法律自身の中に明確に定めていないとすれば、ますますそういう人権じゅうりんを拡大することに民社党はお手伝いになる、こういうことにしか考えられないのですが、いかがでしょうか。
#34
○田中(幾)議員 破壊活動防止法の適用については、社会党も対象としてこの破壊活動団体にされておるのではないかという疑いを持って、私も法務委員会で質問をしたことがあります。このときには、これは破壊活動をやっておるのは、大体共産党を対象としてやっておる、社会党は対象にしないということで私もその点は了承したわけでありますが、本法は破壊活動をするという、国家の基本的な基礎を破壊するという団体を対象としていないのでありまして、御承知の通り、暴力行為を行なうというこの暴力行為を対象としておるのでありまして、おそらく公安調査庁としても、暴力団体という、暴力そのものを是認し、暴力そのものをある程度明らかに主義、綱領のうちに書いたような団体は、あるいは対象になるかもしれませんが、普通の団体は――暴力行為そのものをやろうという団体は、私はおそらく非常に限られておるのではないかと思うのでありまして、あなたのおっしゃるようなまだ暴力行為を行なっていないのに、あるいは暴力行為を行なうおそれありとして、そういう団体を対象として調査をしていくというようなことは、私はないと確信しております。
#35
○飛鳥田委員 はなはだ恐縮ですが、確信だけで問題が片づくものではないのです。現実をよく見て、今の現実の上に立って立法をしなければいけないのじゃないですか。なるほど人はどのように確信することも御自由です。しかし、その確信が御自分一個の行動を規律する範囲にとどまっておりますならば、これはそれでよろしいのです。だが立法というような場合には、少なくともその法律が大ぜいの人々に影響を及ぼす、こういうことを考えなければなりませんので、立法なさる方は、現実の事態を正しくとらえて、その正しい認識の上に立って、初めてこの法律がどう運用されていくだろうかという配慮までしていただかなければならぬわけです。この法律が暴力主義団体、暴力行為団体を目標としておるというお説は再々伺いました。今阿部先生が伺いましたのは、そういう本法の目的ではなしに、本法を実行して参りますにあたって、その実施官庁である公安調査庁あるいは警察等が、調査と称してどのようなことをやるかわからぬじゃないか、その調査それ自体が国民の自由を侵害する可能性がある。そうして今までもあった、だからこの調査というものは厳重に考えていただかなければならぬだろう、こういうことを阿部先生は申し上げたわけです。そうして、なるほど条文を見ますと、破壊活動防止法第二十七条を見ても、調査の始期――始まる時期というものは明確に規定をせられておりません。だからおそれがあるということで、公安調査庁は、あらかじめ調査を開始するだろう、それを職権乱用罪で取り締まることは現実人にはできないのではないか。これは今法制局の方がほぼそういうことをおっしゃったと思います。そうだとすれば、調査々々という形でかえって国民の権利が侵害せられる、こういうことを申し上げておるわけです。ところがただそういう人権をじゅうりんしたり、自由を侵害したりするような調査というものはあり得ないものと信ずるとおっしゃるから、現実にあり得る事態を一つあげてごらんに入れたわけです。警察も公安調査庁も少なくとも盗聴器などというものを使っておるわけです。このことは否定できません。あなたはそのことについて御否定になるかならぬかも御答弁がなかったようでありますが、少なくとも否定はできません。もし否定をなさるというのならば、委員長の許可をいただいて、証人でも証拠でもたくさん出しましょう。否定はできません。一本盗聴器というものは、これはプライバシーの権利を侵し、そうして捜査の方法としても違法であるということは、これも田中先生御承認のことだろうと思います。ですから、私冒頭に民社党は盗聴器使用を是認なさるのかといって伺いましたら、是認しない、こうおっしゃるのです。一方において是認しないとおっしゃりながら、現実にはそれを堂々と使っている公安調査庁や警察に対して、この重要な法律の調査権をゆだねてしまおうというのは、精神分裂じゃないでしょうか。私はこう思わないわけにはいかない。一体田中先生は、この法律の立案者の一人として提出をなさり、通そうとなさるのであるならば、今後警察や公安調査庁が盗聴器などを使って、国民の自由を侵害することを断じてやめさせてみせる、絶対やらせない、こういう保障をしていただけるのでしょうか、これを伺いたいと思います。
#36
○田中(幾)議員 私は一議員としてこの法案を提案したのでありますけれども、私の力でそこまではお引き受けすることはできませんが、しかし悪いことは悪いのでありますから、私ども一議員として悪いところは改めるという方向に持っていきたいと思います。
#37
○飛鳥田委員 しかし、いいかげんじゃないでしょうか。私は法案を提案したけれども、そこまでは保障できないと言われる。しかしその保障できないというところに問題が一番あるわけでしょう。そうして大ぜいの人々が、私は隠しマイクをかけられたとか、私はスパイにつけ回されたとか、私は買収されそうになったとか、いろいろなことを言うわけです。そうして現実に私自身の経験でも、たしか三年ぐらい前だったと思いますが、私の家で私が親しい友人数人と話しておりましたら、私の家のへいのところに寄りかかっている一人の男がおりました。前の家から、飛鳥田さん、あなたの家の前に変な男が立っていますよと電話で知らせて参りました。出ていって取っつかまえてみると、公安調査庁の人でした。私などの、中学時分の友人と話して、仲よくこれから一ぱいやろうかなどという話をしているのさえ一々聞くくらいな現実を、私自身が経験しているのですよ。私は特に怪しいとにらまれたのかもしれません。これは私の不徳のいたすところですから仕方がありませんが、ともかくそういう形でやられていくんですよ。それをそこまで取り締まれません、あとは野となれ山となれでは、たまらないのは国民だけじゃないでしょうか。そういう点にこの法律に対する非常な疑惑を多くの人が持っているわけです。たしか三輪さんでしたか、あるいは柏村さんですかが国会でお答えになったのによりますと、国家警察の中でいわゆるこういう係の警察官というのは八千人くらいおる、こう国会でお答えになっています。そうしてそういう人々が情報提供者、いわゆるスパイに対して与える報酬というものは二億円をこえると警察の責任者がおっしゃっているのです。そしてそういう人たちは隠しマイクをかかえたり、あるいは望遠レンズを持ったり、あるいはひどいのになると潜望鏡などを持ったりして日本全国を毎日かけ回っているのですよ。田中先生がそれをやらないからいいだけの話で、そういうことを一つぜひ考えて、もっと厳重なこの調査官の活動というものに対する制限をあなた方の方からも御提案になる意思はないですか。野放しでいいですか。もう一度伺って、僕の質問は関連質問ですから打ち切ります。
#38
○田中(幾)議員 野放しにしていいとは断じて考えません。それから、先ほどから申しました通り、この法律の対象になる団体というものは、暴力行為を行なう団体を規制することになっておるのでありますから、あらかじめそういう大がかりな捜査をするようなことはわれわれはやると申しておりませんし、またさせてはならないと思っておるのであります。
#39
○飛鳥田委員 対象になる人でさえそういう違法な調査は許されないのですよ。対象になるやつは何でもいいとお考えになっちゃ困ります。どんな大きな事件を起こした被疑者といえども、被告人といえども、やはり日本の法律が認めた適法な手続によらたければならぬのです。一体隠しマイクなどというものは日本の法律で認めた適法なものですか。これは少なくとも許されていないものだ、こう私は思います。そういう人々に対してすらそういうものは許されないのだということをはっきりおなかの中に入れておいていただきたいと思います。言葉じりをとるわけではありませんが、どうも国民の自由なり権利に対する意識が薄いように思いますので、ここで申し添えておきます。
#40
○阿部委員 だいぶ時間が切迫しましたから急いで質問しますが、第七条、第八条、第十条、こういう団体の条項でありますが、そのうちで例を殺人に関して見ますと、構成員が殺人をした団体、これに対して規制するのには、第七条でありましたならば、その人の団体活動を停止する、第八条でありましたならば、団体に対して集団行動、集団行進、集会あるいは機関紙誌の発行などを停止する、そして最後に第十条ですか、その団体を解散する、こういうことになっております。ところが、初めの第七条でありますが、人を殺した人間、それに対して団体活動を六カ月間禁止する、これはどういう意味になるのだろうか、こういう疑問がわくのであります。人を殺しておるのですから、その人間に今さら団体活動を停止してみたところで、一向これは意味のない話であります。それから次に、その殺人という行為が集団行進の中で起こったとしましても、また機関紙などで扇動してその結果起こったといたしましても、それだからといって集会や集団行進を停止する、あまりきき目のある団体規制とも思われません。解散というのは、これはもう極刑でありまして、人間なら死刑であります。死刑でありますけれども、殺人を犯すような団体、そういうものに解散というものが大体どういう効果を持つものであろうか。殺人でありますから、一回の殺人でその団体は目的を終わったということはないにしましても、そういう目的を持った団体を解散させたところで、意思の連絡が続けば、あまり大して痛痒は感じないのではないか。一体どういう意思のもとにこういう規定を作っておられるのであるか、こういう疑問であります。お答えを願いたいのであります。
#41
○早川議員 殺人の場合には、この法案全体といたしまして、殺人した人自身、御承知のように刑法の三年以上死刑まである規定をさらに強化いたしまして、社会党さんの極刑まではいきませんけれども、それによって処罰されるということで、テロ行為に対する威嚇的な要素も取り入れておる。さらに団体行動として殺人を行なったものは直ちに解散しろという御主張のように聞かれますけれども、われわれは団体規制というものの重一要性にかんがみまして、破防法にありまするように、一回やって将来反復してやるというおそれのあるというしぼりを、破防法と同じように考えまして、団体活動制限のワクをはめたのでありまして、もちろん今阿部君の御質問のように、直ちに解散しろという御意見も確かに一つの御意見だと思います。
#42
○阿部委員 だいぶ私の言うたことを誤解しておられるようでありますが、私は殺人をやった団体をすぐに解散しろと言うておるのではないのであります。ある団体の構成員が政治的な殺人をやった、ところが第七条によると、その団体に命令して殺人行為をやったものの団体活動を停止する。これはナンセンス以外の何ものでもないように受け取れるのであります。何の意味があるか。それからまた、その行動が集会などで行なわれ、あるいは機関紙などの扇動のもとに行なわれたとしましても、殺人を行なったのに対して、集会を催すことを禁止したり、集団行進を禁じたり、それで一体団体規制としての意味があるか、こういう点を伺うておるのであります。
#43
○早川議員 第七条の殺人を行なったものの団体活動の制限は意味がないじゃないかという御意見でございます。もちろん刑罰の強化によりまして懲役になっていれば団体活動はできないですから、そういう意味ではむろん意味がないとは言えませんけれども、それは服役したあとということになりますが、しかし第七条の中をごらんになりますと、殺人だけを言っているのじゃないのであって、正当性の主張、あるいは教唆、扇動、殺人の予備、陰謀ということを含めまして第七条を規定しておるので、特に殺人をのけるという必要もないじゃないでしょうか。
#44
○池田委員長 阿部君、質問中ですが、ちょっと息を入れましょうか。
#45
○阿部委員 それではもう一つ聞きますが、この団体規制は、こういう三カ条の規定がございます。ところが、団体といいますけれども、団体にもいろいろ種類があるわけでありまして、それを大別しまして、いわゆる大衆団体として、自民党とか、社会党とか、あるいは労働組合、農民組合というような大衆的な団体と、暗殺なんかをやるところの精鋭主義といいますか、少数精鋭で、言論出版などという活動はまどろっこしいので、むしろ大衆団体、社会党などに対しては、単に口舌の徒にすぎない、こういうふうに軽べつしてかかるという種類の団体もございます。私たちが思いますのに、この三カ条を見ますと、最初の分は団体活動の制限、これが規制があります。第二の分は集団行進その他の団体行動や、それから機関紙その他の出版の停止、最後の一番極刑になるのが解散であります。ところが、これにこういう団体規制を受ける団体というものの性質によって、いわゆる大衆団体というものがこういう規制を受けましたならば、これは大打撃を受けるのはいうまでもありません。ところが一方少数精鋭主義の、口舌をもってせず、実力行動等、こういうふうな暗殺などをやるような団体は、かりにこの第七条の規制を受けたとしましても、やった者は大ていその場合には行方をくらましておるか、あるいは監獄に休んでおるか、それを今さら団体行動の停止をやってみたところで意味がない。またそういうことをする団体は、普通は、団体行動というこの集団行進、集会、大衆的な演説会のごときもの、あるいは出版によって道理を説くというような活動には重きを置かない団体であるのが普通であります。そういう団体に対して第八条の規制を加えてみたところで、大した意味はないのではないか、最後の極刑である解散においてすら、大衆団体が解散せられたならばもう命はそれまででありましょう。ありましょうけれども、こういう少数精鋭主義の、たとえば一人一殺という戦前において行なわれたような団体、構成員はおそらく十人か二十人か、多くても三十人以下でありましょう。そういう団体が意思を通じて、一人が一人ずつ殺そうと、こういうような計画を立てておるものを、一人が実行した、その団体は解散を命ぜられた、こうしたところで、意思の連絡は依然として残っておる。あまり痛痒を感じないのではなかろうか。そういう観点から考えましたならば、この団体規制というこの条文のねらいどころは、そういうふうなテロ団体、少数精鋭主義の、人を殺すような危険性のある団体ではなくて、むしろそういう危険性の少ない、大衆行動などで偶発的にたまたま国会のへいを乗り越えたり、あるいは傷害などの起こる可能性がないともいえない労働組合、農民組合、社会党のごときものをねらいとして定められておるのではないか、こういう疑いが起こるのは私は当然だろうと思います。それに対して提案者のお二方、おのおのどういうお考えで提案なさったか、この点を伺いたいと思います。
#46
○早川議員 昨日坪野君にお答えいたしましたことを繰り返すだけでございますが、決してそうではございません。それからこの第七条第八条を見ましても、たとえば右翼団体も団体として傷害行為をやる例がずいぶんおありのことは御存じの通りでございます。また阿部君が言われる、たまたま派生して暴力行為をやったもの、たまたま派生してやるような労働組合などは対象にならないのです。団体の意思として、継続、反復してそういう集団暴力といいますか、逮捕監禁するのは悪いのですよ。ですからその点について、そういうことが悪くないというようなニュアンスがあるならば、われわれと見解が異なると申し上げたのでございまして、政治テロの場合には、御承知のように解散までできるので、これは非常にきついのですよ。それから第七条でも第八条でも、正当性の主張をするのは右翼団体で、第八条の第一項にひっかかる。第八条の傷害をやる場合には、右翼団体もあれば左翼団体もありましょう。しかし御懸念のような、健全な平和的な労働組合が、団体の意思として継続、反復して逮捕監禁するとか傷害するということは、われわれは信じられないのです。それをたまたまこうなったものでひっかかるということを御懸念のあまり、そういう健全な組合まで弾圧するものというのは、あまりにもこの法文を歪曲し、誤解している考え方ではなかろうか、どうか一つそういう点は誤解を解いていただきたいと私は思います。
#47
○田中(幾)議員 大体、早川さんの御説明で尽きたと思いまするが、この第十条は、ごらんになればわかるように、「団体の活動として」といっておる。ここが肝心なところで、団体の活動として、殺人を目的とするような団体は、民主団体の中にはおそらくなかろうとわれわれは考えております。団体の活動として殺人をやるという、殺人を目的とした団体なんというものは、私は民主団体の中にはおそらくなかろうと思っておるのでありまして、現在のテロそのものを目的とした最近のいわゆる右翼の団体が多く出てきたということから見れば、おのずからそこに御判断が願えると思うのでありまして、御心配のようなことは決してないものと私は考えております。
#48
○池田委員長 午後一時続開することとし、休憩いたします。
   午後零時七分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時十八分開議
#49
○池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を継続いたします。阿部五郎君。
#50
○阿部委員 私は午前におきまして、この団体規制について、政治的暴力行為をするその行為をあげて、殺人またはその予備とか扇動とかいうものと、傷害以下の逮捕監禁その他のいろいろな暴力行為とを分けて、殺人及びその関連の部分についてお尋ねをしたのでありますが、御答弁がややもするとほかの部分、すなわち傷害以下の部分に及んで混乱を生じておりますので、どうぞそれをはっきりと分けてお答えをいただきたいと思います。
 これからは傷害以下についてお尋ねを申し上げます。この傷害以下の政治的暴力行為をした団体に対する規制は、これは第七条と第八条、こうなって団体に対する解散を含んでおるところの第十条は関係はございません。そこでまず疑問に思いますことは、この傷害以下逮捕監禁、強要その他国会乱入というようなことについての規制については、これは第八条などにおきましては、この条文に書いてあります通りに、団体の活動としてやらなければならぬ、あるいはすでにそういう行為が継続、反復しておらなければならない、こういう規定があるのであります。そして一面では第三条において、規制のための調査は第一条の目的を達成するためにのみ行なうべきものであって、憲法の保障する国民の自由と権利を制限してはならない、こういうような規定もあるのであります。そうすると、午前においてお尋ねいたしましたところの公安調査庁の調査権の発動ということは、殺人の場合では事が比較的明確であります。もちろんそれについての教唆、扇動などということは相当複雑なものも含んでおりますけれども、比較的明確でありますから、それで調査官の判断によって、そういうことがすでに行なわれておる、こう判断をして、将来も行なわれる危険があるかどうか、こういう調査を始めるということ、これもそういうことをなさるというふうな御答弁があったのであります。ところがこの第八条において、しかも傷害以下の行為となりますと、行為そのものが相当複雑でありますのみならず、すでにそういう政治的暴力行為をやっておるばかりでなく、それを団体の活動としてやっておらなければならない、さらにそれを継続、反復してやっておらなければならない、こういうようなむずかしいことを第一線の調査官が判断して、そうしてそれによって調査活動に入る、こういうことです。このむずかしい判断を午前に御答弁があったように調査官にまかしてしまうということは危険性があるのではないか、こういう疑問であります。早川さんは午前においてもその判断は公安審査委員会がするのだ、こういう御答弁もあったくらいなのでありますから、それでこういう複雑なことにおいてはなおさらそういうことが必要であろうかと思うのでありますが、文面では明らかでございません。この点いかがでございましょうか。
#51
○早川議員 逆に言えば、継続、反復して政治的暴力行為が行なわれるということ、並びに団体の活動としてということは、なかなか団体制限を軽卒にできないということでございまして、従って公安調査官の調査する人もそれだけ多くむしろ制約を受けて、簡単な判断ができないということになるのでございまして、そういう意味ではむしろ乱用を防ぎ得るのではないか、かように思っておるわけでございます。
#52
○阿部委員 これは全く反対のお言葉でありまして、こういう複雑なことをまず判断して、そして調査活動に入らなければならない。どんな団体でもいきなり調査活動に入られてはたまらぬのであります。それでこの第八条第二項は、傷害以下のことが問題になっておるのですが、その場合にはあらかじめその団体が団体の活動として継続または反復して政治的暴力行為を行なっておらなければならない、それがはたして継続し反復して行なわれておるのであるかどうか、あるいはまたすでに行なわれております行動でありますれば、団体活動として行なわれておるのか、その人間の個人の活動であるか、こういう判断をしなければならぬ。それをした上で、あくまでそれは団体の活動である、また継続、反復しておるのである、こういう判断ができて初めて調査活動に入るのであって、それの判断もなしに調査活動に入ったならば、それは第三条にいう越権である、制限を越えていたずらに国民の権利、自由をじゅうりんするおそれのある行為である、こういうことになるわけなんであります。そのむずかしい判断――現に反復、継続などということは、これはきのうの委員会においても法律の専門家がたくさんおって、それでなおかつ疑問になって、提案者自身も御協議の上でようやく結論に達した、こういうようなものであるにもかかわらず、それをいきなり第一線の調査官の判断によって調査活動に入ってもいい、こう理解していいということであったならば、これはなかなか大へんな問題であろうと思うのでありますが、いかがでありますか。
#53
○早川議員 阿部委員の言われるむずかしい問題というのは、集団監禁とか傷害とかいう事実行為ですね。これは司法警察がやりますからむずかしくないのです。むずかしいのは、むしろ団体活動としてやっているかどうかという認定がむずかしいんですね。ですから、団体活動としての認定という点になりますと、なかなかこれはむずかしいので、この法律案においては第四条第四項におきまして、団体活動というものを明確にきめておるわけです。ですから、御心配のように、これが乱用されて、構成員がちょっと――国鉄で一部の人が集団監禁したという例がありますね、そういった例が直ちにこの国鉄労働組合全体の団体制限になるというような御心配はない。いわばこれは、はっきり言えばなかなかかかりにくい法律なんですね。ですから、乱用する危険を極力しぼっておりますから御心配はないということを申しておるのでありまして、しかも公安調査庁の人がそれぞれしぼっておりますから、簡単にこれで団体規制するということを事務当局側も公安審査委員会へ持ってくるはずは私はないと思うのです。ですから御心配は要らない、かように思います。
#54
○阿部委員 提案者の言われる、めったにこの規定では団体規制が行なわれるものではないということ、これは私もさように思うのであります。その点で心配しておるのではないのであります。私が心配しておるのは、その一つ前のことであって、団体規制のための調査活動に入る、これは犯罪行為の場合も同じことであります。捜査活動に入る、こういう場合、一定の条件が備わらなかったならば捜査活動に入っちゃならぬと、こうなっております。調査活動に入っちゃならぬ、その入ってよいか悪いかの境目というものは、この第八条第二項では、その団体が団体の活動としてすでに以前にやったかどうか、また継続、反復してやったかどうか、この判断をしなければならぬのであります。その判断を第一線の調査官にまかしてしまう、午前の答弁はそれでありました。そういうことをして、それで国民は安心ができるのであるか、こういう疑問なんであります。そしてそれがむずかしいということは提案者自身もお認めになりました。そうして第四条の第四項で団体活動という定義をきめてある、こうおっしゃったのでありますが、これについてはまたさらに大きな疑問があるのであります。
 そこでまず、第一線の調査官にこういうむずかしいことを判断させて、そして調査活動に入らせて、それで誤りがないであろうかどうか、こういう疑問にお答えいただきたいのであります。
#55
○早川議員 だれかが調査をしなければなりませんので、公安調査官の職員はよく上官と連絡をとりながら乱用のないように調査する以外に方法はないわけです。それを乱用いたしますと、破防法による三年以下の懲役ということになります。それから破防法と違いまして、この破壊活動の容疑団体の場合、包括的に指定された団体の場合には調査ができるのです。これは一切そういう規定がありませんから、具体的に暴力行為を行なったという明確なことに関連してより団体の調査をやる以外方法はないわけですから、御心配の点は私はないと思います。
#56
○阿部委員 これは将来の見込みとかそういうものではないのでありまして、すでに行なわれた過去の事実を認めるかどうかということなんであります。しかしそれはむずかしい点がある、団体行動であるかないかというむずかしい判断が必要である。それを第一線の調査官に認定をさせる、ここに疑問があるのでありまして、午前にちょっとお答えになったように、あらかじめそれが公安調査委員会で判断をされておって、それに基づいてこの団体はこういう破壊活動をやっておるものであると公安審査委員会が認めて、将来もおそれがあるから調査活動に入る、こういうのなら一応うなずけるのであります。しかしそれがないのであります。提案者の早川さんは初めはそういうふうになるものと思っておられたような答弁があったのであります。ところが文言を読んでみるとそうなっておらない、ここに疑問があるのであります。それをめったに適用がないことだから安心しろと言われましても、ちょっと安心ができにくいと思いますが、いかがでしょうか。
#57
○早川議員 たびたび申し上げましたように、公安調査官のだれかが調査しなければなりませんので、その事務的調査をもとにいたしまして、公安審査委員会はそれが正しければ団体規制の対象に採用するし、正しくなければこれを却下する。公安審査委員会も軽率に決定できないのでありまして、司法裁判の道は開かれておるわけであります。ですから事務として調査することまで御心配だというならば、これは私の答弁する限りではないと思います。
#58
○阿部委員 同じ御答弁でありますから、ほかの問題に移ります。
 それではこの第八条の第一項の規制の要件、すなわち過去において破壊活動をやったかどうか、こういうことと、第二項の要件の間に差を設けておられるようであります。一方は団体の活動としてこれこれのことを継続、反復してやった、こういうことが条件になっております。第七条の場合においては、やはり傷害以下の問題の規制も含んでおるわけでありますから、この場合においては、「当該団体の活動に関し、又は当該団体の目的の実現に資するため」、こうなっております。すなわち団体の活動としてやったのと、団体の活動に関してやったのと、あるいは団体の目的実現に資するためにやったのと、こういう言葉の使い分けがあるわけでありますが、この間に一体いかなる意味の違いがあるのでございましょうか。これは第四条の第四項においてちゃんと明文をもって定義をきわめておられるようであります。ところがこれを読んでみますと、「この法律で「団体の活動」とは団体の意思を決定する行為」――これからか問題でありますが、「又は団体の意思に基づき若しくは団体の主義、方針、主張に従ってする団体の役職員若しくは構成員の行為をいう。」とこうなっております。そうすると第七条の行為も、これは団体の役職員または構成員がその団体の目的実現に資するためにやった行為であります。だれかその構成員が団体の目的実現に資するために行為をやったならば、これは前の定義によって直ちに団体の活動に見られてしまうというおそれが多分にあると思いますが、その点はどういう差があるのでありますか。
#59
○早川議員 第八条は「団体の活動として」という、第四条第四項のことを言っておるわけであります。従って団体として意思決定をして政治暴力をやった場合でございます。ところが第七条はその個人が自分の意思によって団体の活動に関連する事項あるいはまたその目的のためにやるという場合に、その個人自身を団体行為の制限の対象にいたしておる。根本的に相違があります。
#60
○阿部委員 今のお話しでは、第四条第四項の団体の意思に基づいて役職員と構成員が活動すれば、これは団体活動になることは疑いの余地はないと思うのです。ところが書いてありますのはそればかりではないのであって、団体の主義方針、主張に従ってする構成員の行動は団体の活動とする、こういう定義をきめてあるのであります。そうすると第七条にいう「構成員が、当該団体の活動に関し、又は当該団体の目的の実現に資するため」、こういう活動とどういう違いがあるのでございますか。この当該団体の目的の実現に資するための行動といえば当然に団体の主義、方針あるいは主張に従ってする行動であろうと思いますが、構成員の一人がそれをやれば直ちにそれは第四条第四項の規定によって団体の活動という定義にはめられてしまう、こういうふうにも思えるのであります。その点いかがでございますか。
#61
○早川議員 実は立法者といたしまして、団体活動の制限は必要最小限度にとめたいという意思が現われておるのがまさにここなんです。第四条第四項の「団体の主義、方針、主張に従ってする」――そういう団体の主義、方針、主張に従ってするということは、これは何でもいい主義、主張じゃない、その団体には無過失責任というものは適用されませんから、団体のいわゆる暴力行為をやるような内容を持った主義、主張あるいは方針というもののことを意味しておるわけです。ですからそれに従って暴力行為をやるという場合のみ適用されるという無過失責任論からそうやっておるのでありますから、こっちの場合は、たといその団体の主義、主張が暴力主義でない場合においても、その目的をやるために何か自分で暴力行為をやったというのが引っかかる。そこまで細心の注意を払っておりますので、立法者の趣意を一つ御理解願いたいと思うのであります。
#62
○阿部委員 これはこの間うちの私の方の坪野委員の質問に対しての御答弁とはだいぶ違って参りました。そのときの御答弁では、団体にして暴力行状をやるような主義、主張や方針を示すような団体はないものだ、こういう御答弁がありました。そこで私は――私のみならずこの法律すなわち第四条第四項を読んだ人は、これはどの団体にしろ、たとえば社会党とかあるいは自民党とかいうような主義、方針、主張、こういうものも当然含んでおるものと解釈するよりほかに道はないのであります。この主義、方針、主張はどんな主張であろうと、暴力主義的な主張である、方針であるというような文言はどこにもないのでありますから、一般の政党とか労働組合とかあるいは農民組合などの掲げておる主義、方針、主張、これが当然みんな入るものでありましょう。そう思うほかはありません。ただいまの御答弁は、この主義、主張が一定の限度があるように、団体の活動となるためには、団体の活動としての暴力行為になるためには、一定の限度があるようなことを仰せられますけれども、一体それは何を根拠に言われるのでありましょうか。これはお二方に、民社党の御意見も承りたいと思います。
#63
○早川議員 この団体活動の制限の第八条に関する問題でございまして、団体の活動として、社会党や労働組合の掲げておる普通の主義、主張、方針というもので、たまたまその構成員が政治活動をやっておって、暴力行為をやったという場合に、団体制限までやるということは明らかに無過失責任、団体の責任に無関係なことで、それを制限するということは当然できないのです。従ってここにおける団体の主義、方針、主張に従ってそういう暴力行為をやるという場合には、はっきりそれは人を殺せという主義、主張、方針を掲げておらなくても、目的のためには手段を選ばないというような、いわゆる暴力を肯定するような内容が明らかにわかる場合に、初めて第八条の団体の制限がかかると解釈するのが穏当なところでありまして、われわれ立法する場合にはずいぶんその点は解釈を統一してやったのでございますから、さよう御了承願いたいと思います。
#64
○阿部委員 早川さんのお気持はよくわかるのであります。わかるのでありますが、その主張が暴力主義的なものでなければならぬと、こういうふうなことはどこにも文言に現われておらぬのでありますから、まことに無理な御説明のように思われてはならぬのであります。そこでこの点特に田中さんに御説明をいただきたいと思います。
#65
○田中(幾)議員 早川議員の説明と同一になるのですけれども、先ほど来御質問を聞きまして、個人の行動がいかなる場合に団体としての結合体としての活動になるかということに相なるのだろうと思います。そこで団体の構成員が自分の行動をやったときに、それが個人の行動が団体としての活動になるかということは、ここの第四条の第四項に団体の活動ということの定義をしてあるのですが、団体が一つの事項を決定いたしまして、団体の意思がそこででき上がる、その意思に基づいてやる行動は、これはもちろんずばりと団体の活動になると思います。決定したことによって、その決定を実行する行為ですから、これは団体の活動になると思います。それから団体の意思を決定すること、これはもちろん内部の関係ですから、意思を決定する行為はこれは団体の活動である。それから、団体の主義、方針、主張に従ってする団体の役員もしくは構成員の行為でありますけれども、これはやはりこの暴力行為を処罰するのでありますから、暴力行為をするということがやはり焦点になると思います。団体の活動として、正常な主義、主張をして、演説会をやるとかあるいはビラをまくとかということは、これは別に犯罪行為でも何でもないのですから、問題になるのは、団体の活動として暴力行為をふるったときに、これは団体が責任を負うのかどうかということでありますから、そこでこの第四条の第四項の団体の主義、方針、主張に従って暴力行為を行なうというようなことは、たとえば団体の構成員がその団体の主義、主張に従った活動をしておって、それが暴力行為になったという場合は、これは私はこの規定の中に入らないのだと思います。「主張に従って」ということは、主張の中に暴力的なことを是認することが含まれていなければ、この構成員の行動というものは、団体の責任にはならない。こういう意味でございます。
#66
○阿部委員 一つ御注意願いたいのですが、これは過日来の御答弁とよほど違うのであります。過日来は、いかなる団体でも、主義、方針、主張などに暴力主義的なものを掲げるものはなかろう、こういう御答弁なんです。私も当然そうだと思います。いかなるテロ団体でも、テロを方針にするとか、あるいは主張にするとか主義にするとかいうものは、私はあるまいと思います。ところがそれでも主張を実現しようとする勢いのあまりに、こういう破壊活動、政治的暴力行為防止法というようなものが必要になるほど、住々にしてこういうことが起こるのであります。そこでこの主義、方針、主張というものは、普通の主義、方針、主張に従って政治活動をやっておってそれが逸脱して暴力行為になる、これが普通の形であります。ところが一構成員がそういう行動をとったならば直ちにそれが団体の活動になり、そして規制を受ける、こういうふうに思うほかにこの文面は読み方がないと思いますので、その点非常に無理な御説明だと思いますが、そうではありませんか。
#67
○田中(幾)議員 たとえば愛国者団体がある。われらは国を愛するのであって、わが党の主義を実行するためには挺身でいけ、命をささげていけ、そしてわれわれの意に反するものは排除しなければならぬ、このような、暴力殺人を是認するような主義と申しますか、綱領と申しますか、そういうものを掲げておって、その綱領に従って、挺身して暴力行為をやるということは、党議によって決定しなくても、党の活動としてやったことになる。それからもっと一歩進んで、われわれの主張を貫くために、一人一殺主義でいこうではないかということをかりにある団体がきめたとすれば、これは暴力行為を党議によってきめたことでありますから、これはやはり党の活動として暴力行為をやったと、こういうふうに考えております。
#68
○阿部委員 もし田中さんが御説明になるような御趣旨であったならば、この第四条第四項に政治的暴力行為の定義を定められ、そして定められるにあたって、この第四条第四項の団体の活動というところにあるこの「団体の主義、方針、主張」というようなものは、暴力行動を肯定するような主張に従ってと、こうお書きになっておったならば、私たちもおっしゃる通りに理解ができるのであります。ところが、これに書いてあるのは、単に「主義、方針、主張」と、こう書いてあるので、これはいかなる団体といえども、みな主義、主張、方針は持っております。そうしてこれをこの法律に適用できる
 団体の活動になるためには、すなわち団体の暴力活動になるためには、この主義、方針、主張が暴力行為を肯定するようなものでなければならぬ、こういう御説明をせられたならば、――私たちはいたずらにあなた方が民意を瞞着して、通ったらいいという御説明の仕方だと思うほかはないのであります。そんなことを言いましたならば、もしこれが国会を通って独立して法律となってしまったならば、あなたの方の御解釈のようなものは、ひどくいえば、三文の値打ちもなくて、適用する裁判官、検察官がみんな独立してこれを適用なさるのであります。その適用なさるときにあたっては、主義、方針、主張というようなものについて、別にそれが暴力活動を肯定するような主張や方針だとはお読みになってくれないのであります。その点は一体どうでございましょうか。
#69
○田中(幾)議員 御承知のように、この第四条には暴力行為の定義をいたしております。その暴力行為が団体の活動としての、暴力行為になるかならないか、個人の暴力行為であるか、あるいは使ったその暴力行為が団体の暴力行為活動であるかということは、この第四条と、それから第四条の第四項と結びつけて初めてこの暴力行為活動が団体としての暴力活動、こういうふうに考えるのであります。
#70
○阿部委員 どうお尋ねしても要領を得ませんから、これを執行する立場におられる法務省の御意見をお聞きしたいと思います。
#71
○竹内政府委員 私ども検察の仕事をしておりますものの立場から、この団体活動の定義を解釈的にどういうふうに解釈するかという点を申し上げますと、やはり私は結論的には前の両先生がお述べになりましたような解釈になると思います。「主張に従って」という「従ってする団体の役職員」の行為を言うのでございまするので、従わない行為、その行為がたまたま暴力行為でありましても、団体の主張、方針、主義に従わない場合には、個人の行為であって、それは団体の活動とは言い得ないのでございます。従いまして、それから見て参りますと、もしもその構成員の行為が同時に団体の活動であるというふうに見ますためには、逆にごらんになればわかりますように、団体の主義、主張、方針というものに暴力的要素がなければ、主義、主張に従ったことにはならないわけでございますので、それはこの条文の読み方といたしましては、そう読まざるを得ないと私は考えております。
#72
○阿部委員 まことにどうも驚き入った御答弁をなさいます。去年大へん騒がれました安保条約改悪反対、これは政府側では改善とお考えになっておられるのですが、要するに安保条約を改定することに反対というのは社会党などの主張でありました。そうしてこの法案を提案する動機を作ったところの政治的暴力行為というのが起こっておるのであります。そういうことは、たとえば社会党の党員もあるかもしれませんし、あるいはいろいろな団体の構成員がそういう行為に出ておるのであります。それらの行為はみんなそれらの団体が別に暴力主義的な主張や方針を出しておるわけではなくて、単に安保条約を改めることに反対する、こういう主張を出しておるにすぎないのであります。そうすると、ああいう問題を差しはさんでの争いというものは、かりにどう暴力的なものに発展しましても、それは団体の活動にはならない、こういう御答弁と承ってよろしいのでありますか。
#73
○竹内政府委員 それは一がいに理屈で割り切るわけにはいかないと思います。この団体の主義、方針、主張というものは、証拠に基づく事実の認定として暴力主義的なものを含んでおるかどうかということにかかるわけでありまして、もちろん綱領の中に暴力を肯定するような団体はないと思いますが、なくても、その主義、主張の中にそういうものがうかがわれるという証拠をもって事実が認定できます場合には、それはこの主義、主張を実行したということに認定としてはなろうかと思います。しかしながら、今お示しのような幾つかの大衆運動がすぐこれに当たるかどうかということは、事実がそういう暴力主義的なものを含んでおるかどうかにかかるわけでありまして、この第四項の団体の活動の解釈としましては、先ほど申しましたように「従って」というこの文字からそういうふうに読まざるを得ない、そういうふうな解釈に落ち着かざるを得ないと考えておるわけであります。
#74
○阿部委員 どうも実に驚いた御答弁でございます。こういうことではわれわれは納得ができないのでありますが、時間もあまりございませんから、せっかく大臣がおいでになっておるのでありますから、私が個人としての疑問なんでありますが、この点を伺って御意見を聞いておきたいと思うのでございます。
 それは何かといいますと、この法律の第一条並びに第二条であります。これは読んでごらんの通りに「政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもってする暴力行為を防止する」これが趣旨であります。一方の目的であります。ところがその防止するのは何がゆえに防止するかといえば、「もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的とする。」こういうのであります。これは一見当然のことのように思えるのですが、わが国の民主主義、こういいますと、これは最初にこの法律は「政治上の主義若しくは」とこういっておる。この主義とやはり同じものになってくるわけであります。すなわち政治上の主義はいろいろだくさんありまして、日本は民主主義を採用しております。それは疑いの余地はありません。しかし政治上の主義はいろいろあるのであって、民主主義といっても民主主義もまた人によって理解が違っております。そこでそのうちの民主主義の擁護のために、ほかの主義のもとに暴力行為をすることを弾圧する、刑罰法規をもって弾圧する、こういう定め方をするということは、これはいたずらに政治上の主義の争いを激化させるおそれがあるのではないか、こういう心配なんであります。しかもその第二条には、「この法律は、前条の目的を達成するためにのみ適用すべきものであって、これを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」こうなっております。そうすると、民主主義にはいろいろありまして、たとえば、アメリカにおいて二、三年前にはマッカーシズムというようなものがあって、どれもこれも民主主義に反する、こういう主張のもとに糾弾を行なったという事実もあるのであります。そこで何かのことがあったならば、国民の一部では、この行為は民主主義に反するものではなくて、民主主義をかえって擁護するためのものであるから、これは処罰してはならないものである、この政治的暴力行為防止法を適用してはならないのである、こういうような主張が当然起こってくるものと思わなければなりません。現にこの法律案が国会で審議されておるという事実のもとに、反対の民衆運動が起こりつつあります。いたずらに政界に紛争を持ち込む種になるのではないか、こういう危惧の念を抱かざるを得ないのであります。しかもこれが政治上の争いか具体的な施策の争いというようなことであれば明確でありますけれども、観念上の主義の争いということになってきますと、ほとんど底止するところを知りません。かつてソ連においてはスターリン主義というのがしょうけつをきわめて、どれもこれも自分の気に入らぬものはスターリン主義に反するというので弾圧する、アメリカにおいてはマッカーシズムという、これも民主主義かは知りませんけれども、民主主義の一種の特別なもの、そしてそれの気に入らぬものはどれもこれも民主主義に反するというのでやっつける、こういう風潮が政界に起こりましたならば、非常に苛酷な、寛容ならざる政治に堕するおそれがあると思います。そして、この民主主義というのは、かりに民主主義以外に、民主主義に反する、たとえば全体主義とか共産主義とかいうものでも、それが国民の安全を脅かさない限りは、それすら包容していくという非常に腹の大きな寛大な性格を持っておるものであるはずだと思うのでありますが、それを民主主義擁護のためにはほかの主義をやっつけるのだ、こういう形を法律の上にまで表わしてくるということはどうかと思うのであります。同じ性質を持っております破防法でさえ、そんな文句は使っておらない。公共の安全を保持するためにというような文句で表わしております。私はその方が妥当なのではないかと思うのでありますが、大臣の御意見はどうでございますか。
#75
○植木国務大臣 ただいまの御質問につきましては、私はおっしゃる第一条と第二条の関係から、いかにも第一条のしまいの方にありまする「もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的とする」という問題と、第二条の「前条の目的を達成するためにのみ適用すべきであって、」云々というこれとを主として比較論説されたのだと思うのであります。しかし、私はこの条文を拝見しまして思っておりますのは、この第一条にありますところの「もってわが国の民主主義の擁護に資することを目的とする」というのは、これは申すまでもない。しかしながら、その意図しておられるところの一番の目的はどこにあるかといえば、この中ほどにございますとこの「政治上の主義若しくは施策又は思想的信条を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもってする暴力行為を防止する」−暴力行為の憎むべきことは、社会党の皆様もまた御質問者のあなたも全く御同意見であると思うのであります。お互いに主義主張が違っても、あるいは政治的信条が違っても、それを自由に主張し、あるいはその自分の考え方を述べていく、あるいはそれに同調する者をふやそうということの自由は何らここで防いでおるのではないと思います。ただそういうことをやる場合に、推進、支持あるいは反対するために暴力行為をやることをとめようじゃないかということが私は第一条の主眼としておられる一番の精神だろうと思います。その意味におきましては、「もってわが国の民主主義の擁護に資する」というのは、なるほど仰せのように民主主義という言葉にもいろいろな定義もありましょうし、あるいはその言葉でもっていろいろ変わった内容を意味される場合もあろうと思いますけれども、しかし、それを主張し、あるいは支持し、あるいは反対するのに、暴力をやることはよそうじゃないかということが第一条の私は趣旨だろうと思います。もちろんここに書いてある条文全体を読みますと、初めの方の「目的をもってする」という言葉、あるいは「防止するための」という「ため」ということもやはり一つの目的になりますが、あるいは一番最終の結論に出ておる「民主主義の擁護に資することを目的とする。」というこの言葉、いずれも目的、目標であることはわかります。わかりますが、私は第一条の主眼とせられる精神はどこにあるかといえば、暴力はお互いにやめようじゃないか、そうして民主主義を擁護していこうじゃないかというところにあるのだ、私はかように解釈しておるのであります。
#76
○池田委員長 阿部君に申し上げます。法務大臣は午後四時に公務のため退出したいという申し出がございますから、御如才なく……。
#77
○阿部委員 委員長に申し上げます。私が疑問とするところは、そのうちのほとんどわずかしかお伺いすることはできませんで、まずたくさん疑問が残っておりますので、法務大臣並びに提案者に対しては御質問を保留しまして、きょうはこれで……。
#78
○池田委員長 本日はこの程度にとどめ、明日は午後十時理事会、十時半委員会を続行いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時七分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト