くにさくロゴ
1960/03/16 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第15号
姉妹サイト
 
1960/03/16 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第15号

#1
第038回国会 農林水産委員会 第15号
昭和三十六年三月十六日(木曜日)
   午前十時二十一分開議
 出席委員
  委員長 坂田 英一君
   理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君
   理事 小枝 一雄君 理事 小山 長規君
   理事 丹羽 兵助君 理事 石田 宥全君
   理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君
      安倍晋太郎君    飯塚 定輔君
      亀岡 高夫君    倉成  正君
      田口長治郎君    田邉 國男君
      舘林三喜男君    中馬 辰猪君
      綱島 正興君    中島隆太郎君
      内藤  隆君    中山 榮一君
      野原 正勝君    福永 一臣君
      藤田 義光君    本名  武君
      松浦 東介君    森田重次郎君
      八木 徹雄君    足鹿  覺君
      片島  港君    北山 愛郎君
      東海林 稔君    中澤 茂一君
      楢崎弥之助君    西村 関一君
      山田 長司君    湯山  勇君
      玉置 一徳君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        農林大臣    周東 英雄君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        農林政務次官  八田 貞義君
        農林事務官
        (大臣官房長) 昌谷  孝君
        農林事務官
        (大臣官房審議
        官)      大澤  融君
 委員外の出席者
        農林事務官
        (農林経済局統
        計調査部長)  久我 通武君
        専  門  員 岩隈  博君
    ―――――――――――――
三月十六日
 委員谷垣專一君辞任につき、その補欠として亀
 岡高夫君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 農業基本法案(内閣提出第四四号)
 農業基本法案(北山愛郎君外十一名提出、衆法
 第二号)
     ――――◇―――――
#2
○坂田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の農業基本法案及び北山愛郎君外十一名提出の農業基本法案を一括議題として質疑を行ないます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。芳賀貢君。
#3
○芳賀委員 昨日の総理大臣の答弁を聞いていると、だいぶ農政に関心を持たれておるようでありますが、そういう意味でまずお尋ねしますが、昨年、昭和三十五年における全国の米の実収高がどの程度であったか御存じですか、総理大臣。
#4
○池田(勇)国務大臣 数字にあたることでございますから、農林大臣から答えさせます。
#5
○芳賀委員 委員長、ちょっと申し上げますが、総理の予定時間は大体十一時ごろということになっておるわけです。ですから、本日は、主として基本的な問題ですから、総理大臣に質問をしたいと思うのです。それで、御答弁のできない点は、後刻ゆっくり勉強していただいて、次の機会に御答弁を願えれば差しつかえありませんから、そういう意味で、委員長の方も議事の進行をお取り計らい願いたいと思うわけです。
#6
○坂田委員長 でき得る限り総理の御答弁を願うけれども、農林大臣が同席でありますから、農林大臣から説明がありましたときには、同席の上でお答えしてもらうことにいたします。周東農林大臣。
#7
○周東国務大臣 昨年の実収高は千二百万トンでございます。
#8
○芳賀委員 総理大臣に申し上げますが、一国の総理大臣が、自分の国の農業に対して、主要なる農産物である米が総体においてどのくらい生産されたかどうかということくらいはわきまえておらないと、正しい農政を進めることはできないと思うのですよ。それで、特に問題になる点は、たとえば、基本法の構造からいきましても、自立経営農家を百万戸十年間に育成する、その基準というものは二町五反経営の自立経営農家ということになるわけです。そういたしますと、その二町五反の経営面積の中においてどの程度の単位生産をあげるかということが非常に基本的な問題であります。そうでありますからして、全体の総数がおわかりにならないとすれば、今農林大臣の答弁された昨年の実収高をもって、全国の米の一反歩当たりの平均生産高というものは大体どのくらいということは、しさいな数字でなくてもいいですから、一反歩たとえば何石とか、その程度の御答弁は願えると思うわけです。
#9
○池田(勇)国務大臣 米の昨年の生産高等につきましては、農林大臣からお答えになるのが適当かと思って、農林大臣から申し上げたわけであります。私も、大体千二百数十万トン、非常な豊作であることも知っております。昨年ふえたことも知っております。それから、四十五年、今から十年たった後には千三百万トン程度をこえるだろうというくらいのことは知っております。そうして、また、一反につきましてどのくらいの収穫高があるか、これは地方によってよほど違います。全国で一番反当たり収量の多いところは、やはり佐賀県あるいは筑後川近く、あるいは甲府、会津、奈良等が一反歩当たりの収穫が一番多いのであります。私は、昔土地賃貸価格をやりましたときに、全国の大半につきまして検討いたしました。しかし、四石五斗くらいとれるところもありましょうし、また、二石むずかしいところもありましょう。それは、同じ地方でありましても、山間地のサコ田と申しますか、そういうところと平地とは違う。大体千二百万トンを耕地面積で割ったら出ると思いますが、大体三石ないし三石五斗くらいが普通であることも知っております。
#10
○芳賀委員 たとえば三石平均とすると、二町五反歩を水田経営するということになれば、大体二町五反で三石平均ということになれば七十五石生産されるということはわかる。そうすると、一万円米価にすれば、これは二町五反歩の理想的な水田経営農家の場合においても粗収入が七十五万円ということになるわけです。米はとにかく一番収益性が高いということは、これは明らかになっておるのですからして、その程度の自立経営農家を育成するということは、はたして所得倍増十カ年計画の到達年次においてこの二町五反経営農家というものは好ましい状態に置かれておるかどうか、その点はいかがですか。なるたけ総理大臣からお願いします。
#11
○周東国務大臣 まあ、よく御存じですから、こまかいことは私の方から申し上げる方がいいと思います。
 今御指摘の点は、かりに二町五反というものが一つの理想形態であることは御指摘の通りでございまして、それからもって、米については御指摘のように七十五万円。しかし、それは裏作の問題も当然あります。農家一戸当たりの粗収入百万円というものを考えておりますのは、これは、土地を効率的に利用して、米及び裏作等を考えての問題でありますし、また、その裏作について何を作るべきかということは、今後の地方の状況を見てよく考えていきたいと思います。
#12
○芳賀委員 総理大臣にお尋ねしますが、昨日は、貧農切り捨てはやらぬ、そのかわり貧農切り上げをやるというような御意見がありましたが、下層農を切り上げるということになれば、それは、農業自体の中でさらにだんだん経営の内容というものを拡大させる方向に一番下の農家を農業の中で引き上げていくという、そういうお考えの貧農切り上げか、どうもその意味が不明だったので、もう一度貧農切り上げ論の骨子になる点だけを御説明願います。
#13
○池田(勇)国務大臣 経営の規模拡大、多角経営による合理化等によりまして、生産性の向上をはかるということでございます。
#14
○芳賀委員 そういたしますと、零細ないわゆる下層農家が今度は中農、上農という方に段階的に育成されていくということになると、一体、農業人口の削減というものは、貧農の面ではやらぬ、これは切り上げするということになりますと、農家の各階層の中でどこを中心にして整理されるかということになるのでありますが、その点はいかがですか。
#15
○池田(勇)国務大臣 どうも言葉が両極端になるようでございますが、われわれは統制計画経済じゃないので、切り捨てるとかなんとかという、力でどうこうというのじゃない。農民の方々の盛り上がる気持からでき上がってくる。その盛り上がる気持を道づけ、方向づけていこうというのがわれわれの政治であるのであります。私が想像するところでは、切り捨てるとかなんとかということは、そうじゃない。自然に変わってきたような状態を生み出そうというのがわれわれの政治であります。従いまして、中農が残るか貧農が残るか、――大農しか残らぬのじゃないかという考え方じゃない。農民の方方がおのずからそこにとけ合ってうまい形が出てくるようにしようと言っておるのであります。
#16
○芳賀委員 切り捨てには昨日は論及されなかったが、切り上げについては明らかに発言されたことは事実なんです。今日は時間の余裕がないからその点だけに固執しませんが、今後、最も適当な機会に、貧農切り上げの実態を、どういう政策のもとにおいて行なうかということは明らかにしてもらいたいと思うわけです。
 もう一つの点は、政府案の基本法によりますと、何ら内容というものはない。読んでみればみるほど内容の空疎なものであって、これはあってもなくても同じじゃないかということに結果はなるわけなんですが、一体、総理大臣としては、まじめに農業基本法をお作りになってこれを農業の基本的な方向の位置づけをなす基盤として今後進める考えであるか、あるいはまた、所得倍増計画にしても、農業の長期発展の見通しの上から言っても、池田内閣というものはそれほど十年も持つものではないのであるからして、とにかく当分の間農業政策上の宣伝として農業基本法案を出せばいいのだというような、そういう党利党略上の考え方で基本法案をお出しになっておるのか。その点が全国の農村においても非常に不満と不信感が強いわけです。ですから、その点に対しては御所信のほどを明らかにしてもらいたい。
#17
○周東国務大臣 お話でございますけれども、農業基本法に書いてある事柄は、将来における農業の生産性を高める、そして農業従事者に対する生活水準を他産業に劣らないようにする、これははっきりした目標であります。その問題に対しましていかなる策を行なうかということは第二条に書いてあり、その施策を行なうについては、立法的措置並びに財政的処置及び金融的処置を国は国として行なわなければならぬ、しかも、それらの政府の見通しに立って行なった施策について年々国会に報告させるということになっております。従って、それらの農政の具体的問題については、常に国会及び国民の批判を仰ぎつつより高く進めて参るということであって、これは、私は、一つの農業法という立場から法律的体系から言えば他の農業に関することと同じですけれども、しかし、それは一つの方向をきめていくということにおいて農業憲章というものに当たるのだし、この憲章においておのずから方向をきめれば、それに対して他の法制でもって義務づけをやるということは当然のことで、はっきりしておると思うのであります。
#18
○池田(勇)国務大臣 われわれが農業基本法を立案いたしまして国会の御審議を願うことに対しまして、私は、国民世論はこれを支持していると思います。ある程度内容は違うかもしれませんが、社会党さんが農業基本法につきまして関心を持っておられるということも、国民の認めておるところであります。私は、どちらの案がいいか悪いかは言いませんが、われわれの案につきまして一般世論並びに農民の方々が非常に期待を持っておられることは事実でございます。そして、池田内閣が十年続こうと続くまいと、われわれ自由民主党のこの政策は十年も十五年も続くことを私は確信いたしております。
#19
○芳賀委員 その点は、たとえば昨年の総選挙においても自民党の農村における支持票が相当減退しておる。一体どこに理由があったかということを私どもも与党の同僚諸君にも聞いたのでありますが、それは、池田総理の唱える農政論を選挙を通じてまじめにぶつと票が非常に減った、むしろ、池田さんは農政は知らぬのだ、酒屋のむすこで農政は知らぬということで、池田総理と違うことを農村において積極的に演説した者は案外落選しなかったという。ですから、この証左は、現在までにおける池田総理大臣の農業に対する施策の思想的根源というものについていまだに農村においては不信と不満感が相当強いということは、われわれが他党の立場で判断するよりも、自民党内部において十分分析御反省なさった点だと思います。従って、その後総理大臣も日に日に農政に対しては勉強を進められ、昨日のごときは農家のせがれであったというような経歴までお述べになったのですが、そこで、具体的なものがあるということであれば明らかにしてもらいたいのでありますけれども、たとえば、財政上の措置の点につきましても、一体政府としてはこの基本法に準拠して昭和三十七年度以降の予算の中においてどのくらいの割合を農業の政策実行の面に確保することができるか。三十六年度の予算の場合には、総体の予算規模に対して農林関係の予算はおよそ九%であります。昭和三十年程度では、これは一兆円予算の中で約一七%の割合を持っておりましたが、現在においては一〇%に達しておらない。ですから、この基本法は一つの憲章的なものだから、具体的にこれがすぐ発動することにはならぬとしても、これを基本として今後農業政策を進めるということであれば、今後国の予算規模の中において農業関係の予算の規模は毎年どの程度その比率の中において拡大するか。たとえば一五%にするとか二〇%にするとかいう目途というものは当然あると思う。昨日の総理の御答弁によっても、単に予算だけをとってごまかす気はない、財政投融資全体、それにまた関連する諸般の施策というものを全部措置という表現の中に包括されておるということであれば、せめて国の財政計画の中において一体予算の中の何割をこの基本法を根拠として今後確保される見通しであるか、その点を明らかにしてもらいたい。
#20
○池田(勇)国務大臣 さきの選挙で、池田が農政を知らぬからというので票が減ったというお話でありますが、三百名とったということは新憲法下で初めてのことであります。政党政治におきまして二回目でございます。私は、農民の方々がわれわれを支持して下さったということを確信いたします。
 しこうして、来年度の予算において農業関係をどうするかということは、昭和三十七年度の予算全体を見まして、できるだけ社会保障とか農業関係の方には力を入れたいと考えております。今何ぼの割合ということは申し上げかねます。
#21
○芳賀委員 この点は、たとえば、予算編成の場合、全体の規模の中で、社会保障費を大体どのくらいとか、自衛隊の経費をどのくらいとか、公共事業費をどのくらいとか、およそのめどはあるわけです。ですから、基本法が農業の憲章であって、これができたことによって財政的な措置というものが積極的に拡大されるとすれば、現在は九%だ、しかし数カ年後にはそれがだんだん比率がふえて、最終的には二割なら二割までいくならいくと、そういう程度の見通しは持っておらぬと、中身があるとは決して言えないと思うのです。その点をお尋ねしておるわけです。
#22
○周東国務大臣 これは、御意見でありますけれども、私どもは、あらかじめ予算の何%を向けていくというようなことをきめることがおかしいと思う。むしろ、今後における基本法の実行にあたって必要あれば%があなたのおっしゃるように二割なら二割に上がる年もあるでしょう。ある場合にはその計画によって下がる場合もある。これは、あらかじめ総予算の何%は向けるというような行き方はおかfしいのじゃないかと思うのです。もとより、政策あるいは予算を立てるについて、大体の大綱をきめて、それについてどのくらいのものはどうするということを政策的に閣議できめていくということは一つの行き方かもしれません。しかし、それはあらかじめ常に何%というようなことをきめるのはかえっておかしいと思います。
#23
○芳賀委員 予算の確保に対してはこの基本法は何も力がないということがそれで明らかになったわけであります。
 その次に、農業金融の面について、昨日も総理大臣は低利・長期でやりますやりますということを繰り返されたが、一体その低利というものは年何分以下を低利というのか、一体長期というのは何十年以上を長期というのかという点については何ら触れられていないわけです。ここで明らかにしてもらいたいのは、農業というのはその投資に対して収益性が非常に低いということは明らかであります。ですから、総理大臣の言われる低利というのは大体年五分以下くらいを低利と言うのですか、あるいは長期というのは三十年以上くらいを長期と言おうとしておるのか、その点、お考えがあれば明確にしておいてもらいたいと思います。
#24
○池田(勇)国務大臣 金利というものは常に動くものでございます。だから、これこれ以下が低利という定義をつけることは、私は、金融専門家はやらぬと思います。それは常識で考えるべきことであると思います。
#25
○芳賀委員 それでは、低利・長期についても何ら確信がない。しかし、低利といえばどのくらいとか、長期といえばどのくらいとかいう通念的な考えは農業政策上なければならぬが、これもお持ちにならぬ。そういうことになると、大よそ、この法律でうたっておる財政上の措置に対しては、この法律は何ら力と意味を持っておらぬということがここで明らかになったわけであります。
 その次にお尋ねしたい点は、戦後の農地改革によって確立されたいわゆる自作農経営方式、――自作農主義と言われますが、この自作農経営方式と、現在政府が基本法の中で唱えておる家族農業経営方式というものは一体同一のものであるか、または違うものであるか、その点に対しての見解を述べてもらいたい。なるたけ総理大臣にお願いしたいと思います。
#26
○周東国務大臣 これは大体同じだと私は思います。しかし、自作農主義という方が狭いと思います。これは、家族経営をやる場合にできるだけ自己のたんぼをもって自作農することが必要でありますけれども、時に一部小作地を借りて合わせてやるという場合も家族経営としては成り立つわけです。だから、自作農経営と家族経営というものは、その極点においては多少の違いはございます。
#27
○芳賀委員 総理大臣、いかがですか。
#28
○池田(勇)国務大臣 その通りでございます。
#29
○芳賀委員 今の答弁は全く逆でございます。耕作する農民が土地を所有することを原則にして家族を中心とした経営を行なうというのがいわゆる自作農主義なんです。今度の家族経営方式というものは、それをさらに狭義にした形の中で進めようとするところに問題があるのです。たとえば、二町五反歩の経営を目途にして家族三人がこれに専従するということが一つの基本になっているわけです。そうでしょう。その背後には、農地の相続制度についても、この法律は、有権的にこうするとまでは書いてないけれども、農村においては一子相続が好ましいということをうたっておる。そうなると、三人の専従経営ということになれば、たとえば年寄り夫婦とせがれ一人の場合の三人か、若いせがれたち夫婦と年寄り一人の経営参加による三人ということになるわけです。ですから、二町五反歩を中心とした局限された、いわゆる家族に限定された経営方式というものは、むしろ時代的に見れば後退の方向をたどるということに当然なるわけです。こういうものが日本農業の長期的発展の姿であるということは絶対に言えないとわれわれは考えておるのですが、政府の間違いを明らかにしたい。
#30
○周東国務大臣 どうも芳賀さんは一方的に断定してお話しになるので、はなはだ困ります。先ほど言っておるのは、自作農というものは土地を中心にして考えている、家族経営の方で経営の問題を言っておるわけです。これは、自作農として自分の土地をみずから耕すというのが一番理想的であるけれども、たまたま家族経営の方において一時預かっておる土地を小作するということが中へ入っておっても、そのこととはちっとも関係がない、こういうふうに申しておるのであります。ただいま御指摘の点について、私どもは、家族経営ということになりましても、できるだけその規模、面積を大きくし、そうして近代化させ、機械化させていくということになれば、人数が少なくなって能率が上がり、収穫は高まる、こう考えております。
#31
○芳賀委員 これは、社会党からも基本法案が出ており、政府からも出ておる。ですから、それぞれ提案した立場に立って質疑を行なわなければならぬのは当然です。しかし、政府は自民党だけの意思によって動くものではない。国民を代表したという広い立場にあるわけです。ですから、自己反省も何もないのなら、あなた方の答弁を聞く必要は何もないのですよ。何もそこへすわってもらう必要はないのですが、ただ、問題は、いかにも共同化を抑圧しなければならぬというような古い思想の上に立ってものを考えておるということについて、誤りを直されたらどうかということを老婆心ながら申し上げておるわけです。
 そこで、お伺いしたい点は、昨日総理大臣は果樹農業に一例をとられましたが、果樹農業を経営しておる農家というものは、農家の階層の中では比較的上位にある農家ですね。ある程度資本的な農家が果樹園芸農業を経営しておるということを言われたが、それはその通りだと思う。しかし、今日の実情から来る農業の経営の形の中では、共同化の方向に一番向いておるのはやはり果樹園芸地帯の農業なんです。それぞれの経営者の自主的な意欲によって、家族農業では限界があるからこれを共同化の方向へ進めなければならぬということで、それが急速に伸びておるわけです。昨日委員会を通りました果樹振興法にいたしましても、その指導方針というのは、果樹地帯においては共同化を指向して計画を立てさせて、これに対して政府が助長するということになっておるわけですね。そうなれば、政府のお考えは、むしろ資本的に力のある者はあくまでも家族経営農業にくぎづけさせる、それ以下の一段力の弱い階層の農家に対しては過渡的に協業を助長するということになっておるが、現実はそれと逆です。資本力のある農家がむしろ現状を脱却して共同化の方向をとろうというこの現実を一体どう考えてこの基本法というものをお作りになったか。しかも、どこまでも信仰に似たような気持で、神様や仏様を信仰するような気持で家族経営農業でなければならぬというようなことを唱えておるが、現実はそれと違うのです。ですから、きのう総理大臣は特に果樹農業に一例をとって指摘されたので、この現実と政府案との根本的な相違点というものに対してどう考えておるかということです。
#32
○池田(勇)国務大臣 われわれの考え方が、私は現実的だと思います。農民の土地に対する執着、作物に対する愛着の点から申しまして、家族農業が原則である。そうして、われわれは、要すれば、家族農業でやっていただいて、それだけでは足りないというときには協業ということを考えておる。あなた方の方は初めから共同経営というお話でございますが、その点の考え方が、われわれの方がちょっと広いのではないか。
 それから、昨日果樹園芸農業と言いましたのは、今まで果樹園芸の方がどちらかといえば米麦より生産性が高いために、それがだんだん資本がふえていって裕福な農家になった。そこで、私は、資産のあまりない、いわゆる小農業者につきましても、金融その他でりっぱな園芸家に育て上げていくように考えておる、こういうように昨日は言っておるのでございます。物事を小さく見ずに、大きく希望を持って見ようというのが、われわれ自由民主党の考え方でございます。
#33
○芳賀委員 われわれはむしろ池田さんよりも数倍大きな視野と情勢の展望の上に立ってものを言っていることは、これは明らかです。
 そこで、お尋ねしたい点は、それほどあなたが農民の土地所有に対する愛着と執着が強いということを強調されるならば、どうしてこの基本法の中でその農民が愛着の土地を手離さなければならぬようなことをお考えになっておるかという点をお尋ねしたいのです。社会党の場合は、明らかに法律の中で、土地は耕作する者の所有とするということを原則としておるわけです。しかし、政府案の場合は、二町五反以上の農家を百万戸育成するためには、どうしてもその一部分に農地の所有を集中しなければならぬという努力が行なわれなければならぬわけです。少なくとも現在より百万町歩をこえる農地というものが上層農の人々に与えられる状態が生れなければ、二町五反、百万戸の達成ということは絶対できないわけです。それを無理に進めるために、農業協同組合に農地の信託事業をやらせる。これは農地の集成なんですよ。こういうことをやらして、農業協同組合の中で力の弱い下の階層の組合員が農協に土地を信託して、究極には自分の愛着の土地を手離さなければならぬような状態に追い込む。しかも、その仕事を、農民の利益を守ることを一番の目的としておる農業協同組合にそのお先棒をかつがすような、こういうやり方は一番悪質な方法であるとわれわれは考えておるのですが、そういう状態にだんだん追いこんで、土地を手離さなければならないようにしなければならぬという根拠は一体どこにあるのか、その点を総理大臣から御説明願いたい。
#34
○池田(勇)国務大臣 われわれは、農民の土地に対する執着ということを考えておりまするから、やはり家族経営でやり、そして、それでなかなかむずかしいというときには、信託制度とか協業をやろうとしておるのであります。あなた方の方は、共同経営といって、いかにも法律で土地を持たすんだといっても、私は、それは実態に合わぬ、人情に沿わぬと考えておるのであります。詳しくは農林大臣から……。
#35
○芳賀委員 総理大臣は自分の法律もあまり読んでおらぬ。もちろん社会党の基本法は一ページも読んでおらぬでしょう。ですから荒唐無稽なことしか言えないわけなんですね。現実にはそういうことでは問題は違うのです。一体、日本の農地制度が十五年間にどういう変遷をたどってきたか、自作農主義が十五年たった今日ますます零細化、細分化されておることは、これは総理大臣も認めておる点だと思うのです。これを集中化しようということになれば、現在と逆な強い施策というものが当然行なわれなければ、そういう土地の所有の集中化ということは絶対できないのです。できないことを無理にしようとすれば、何かこれは権力的にやらなければならぬということに当然なるのであります。政府の基本法は、形だけは西ドイツの農業法をまねておるのです。精神はまねていないのですよ。形だけいかにも西ドイツの農業法をまねておるが、西ドイツの場合には、一九四九年から五九年までの十年間には、農地の零細、細分化というものは停止して、そして、その小所有がだんだん解消されて、所有の拡大というものが行なわれてきておるわけです。大体十年間に十ヘクタール以下の農家というものは二十万戸減少しておるのです。一割以上減少しておる。日本の場合には、この十五年間にむしろ零細化が進行して、その結果は、専業農家が極端に減って、兼業農家が増大しているということになっておるわけなんです。こういう現実というものを全く考えないで、今後二町五反経営の農家を百万戸育成しますということを言われても、これはどうしてやるという確信というものは何もないと思うのですね。政府の方で、もしこうやればやれるという根拠と具体的な方向というものがあれば、この際示してもらいたいと思います。
#36
○周東国務大臣 お話の点でありますけれども、先ほども御指摘になりました、農業協同組合の信託制度をしく、このことは零細農家から土地を取り上げるというような考えを持っておるのじゃないか、私の考えじゃないかというお話ですが、これは、私どもは、むしろ逆でありまして、いろいろな関係で土地を放棄してほかの方へ行かれようとする希望のある方の農地というものは、農地としてやはり使われるように、ほかの方に行かぬように預かって、そうして農地を農業をやっていく方の方へ持っていこうという立場で考えております。そういう形でありますから、これをこしらえたからすぐに零細農を追い出すという制度が中に入っているのだという御指摘は、少しきつ過ぎると思うのです。実体はそうでありません。
 それから、むしろ私どもの方が今日まで零細化されるのがだんだん多いという御指摘でございます。これは、一面におきましては、相続が均分相続になっておるということもございましょうし、また、いろいろの点で、みずからは兼業によって収入を得る方がいいという格好で、一部を減らして兼業農家がふえるということもございましょう。従って、私どもは、今後農業基本法において、一面においてはやはり家族経営農業に対して基盤を大きくしつつ、それで自立されるような農家を作るということ、反面には、零細農でそういうふうな土地柄が肥えてない場所においては、希望によって協業化を助長していこう。それに対しては、社会党さんの案の方にもいろいろ突き進んだ土地の問題についてもありますが、私どもの方も、やはり、国有林野等につきまして、必要な個所においてはこれを払い下げするとかその他の方法によって、牧野面積をふやすということも考えております。各地域的に土地はたくさん余っておるものじゃありませんから、理想的形態として二町五反・百万戸と出ておりますけれども、そういう問題を、地域的に、また必要な個所々々において増反その他のことによって土地の増加もやりますし、他の方に移転していく農家の方の土地もあわせて考えていく。これが一体となって基盤強化となっておるということは、よく御存じをいただきたいと私は思う。
#37
○芳賀委員 委員長にお尋ねしますが、総理は何時までおられるのですか。
#38
○坂田委員長 芳賀委員に申し上げますが、総理は、昨日からのお話の通り、やむを得ぬことでもう退席されまするので、引き続いて農林大臣にお願いいたします。
#39
○芳賀委員 それでは、総理にも一問だけお尋ねします。
 農業の発展の一つの大事な点で、工業化というものは総理も十分関心を持っておられると思うのです。農民が原料を生産して、農民の蓄積した資本をもって工業化をだんだん発展させるということは否定なさぬと思う。好ましいか好ましくないかということをあとで答えてもらえばいいと思うのです。
 それから、もう一つ、これを大きく進める場合には、今までのような形の小さいちゃちな農村工業ではだめなんです。少なくとも最低何億とか何十億というような、そういう施設の農村工業でなければ、他の民間企業とは対抗できないと思うのです。それから利潤もそこからあがらないと思うのです。それで、一応考えられることは、それでは農民が生産した原料を主体にして今後どういうような大規模な工業化が望まれるかということになるのですが、たとえば、畜産農業の発展の中で乳業というものは相当期待が持てるわけですね。あるいは、政府は大麦は、はだか麦の転換を考えておるが、たとえばビール工場なんかは、これは、ビール麦は大麦ですから、どんどん農民が生産して、その農民の資本でビール工場を建てれば、今よりまだまだ安い値段でビールをお茶がわりに飲ませることができると思うわけです。それからまた、ビート工場にしても、せっかく農民が努力してビートを生産しておる。しかも農民の資本で工場を建ててコストが安いビート糖を生産して国民経済に貢献しようとする場合には、政府は奨励しなければならぬと思うのです。ところが、現在まではこの反対ですよ、総理大臣。たとえば、北海道において現在八つの会社が工場新設を競争していますが、これが、四人農林大臣がかわったけれども、なかなかきまらぬ。最近では北海道におけるビート新設工場の政界地図というものが出ておる。その申請しておる会社ごとに政界の実力者が全部裏に控えておる。そういう地図があります。総理大臣に端的に言うのは失礼でありますが、これは総理大臣という肩書はついておらぬが、十勝、根室において申請されておる名古屋精糖については、この大きな政治的バックは、池田勇人君、益谷秀次君、大平正芳君、この三人が、いわゆる政界地図によると、名古屋精糖新設に対する最大のしり押し勢力。いろいろ全部あるのですが、時間がないので申し上げませんが、それと同じ地区に、今言った農民資本によるところのホクレンが自分の力で工場を新設したいということで、隣り同士で対峠しているような状態です。ところが、十勝の西十勝というものが、いろいろな条件から見ると一番先に建てなければならぬ。ですから、こういう障害を打破するためには、原則をきめて、今後の農業発展のためには、工業化のためには、農民の生産した原料を主体にして、農民の蓄積した資本によってこういう企業というものを盛んに興してやれる場合には、それを助長するということが一番とるべき方策であると思いますが、これを阻害するいろいろな要因があるわけです。ですから、この点に対しては、御退席前に、ぜひ、農業の発展の一つの要素となる工業化の問題については、農民が原料を生産して、蓄積した資本でこういう規模の大きな近代的な工業化を進めるという意欲に対しては、政府は全幅の賛意を表してこれを積極的に進める御意思があるかどうか、聞いておきたい。
#40
○池田(勇)国務大臣 方向としては賛成でございます。農家が自分の生産物を加工し、加工工業に進んでいくことは、望ましいことであります。また、農家ばかりでなしに、協同組合等が出資して、そしてこれをともどもに育成していくことも賛成でございます。ただ、現実の問題として、今すぐできるかできぬか、これは実態に沿って検討しなければならぬ。方向としては賛成でございます。
 つけ加えて申し上げますが、ビート工場に対して私は今まで全然関係しておりません。その点だけはっきり申し上げておきます。
#41
○芳賀委員 この点は大事な点です。今後の甘味資源の国内の増産態勢を進める場合にこれは一番の序の口になるけれども、北海道においては、ビート工場の新設問題は焦眉の急ということになっておる。一番先に片づけなければならぬのは、今私が総理大臣にただした十勝の西十勝において名古屋精糖とホクレンの申請が両立しておることです。今総理大臣が答弁したような趣旨でこれを解決するとすれば、おのずから問題は解明されるわけですが、そうでない方向にこれを持っていく気になると、これは基本法が全く泣きますよ。ですから、この点は総理大臣としても十分腹におさめて、総理大臣は、しばしば、私はうそは言いませんということを言っておるから、今の答弁通りやるかもしれませんが、その趣旨を農林大臣も体して、このビート工場問題に対しては正しい方向にやる勇気があると思いますが、いかがですか。
#42
○周東国務大臣 重ねてのお尋ねでありますが、私は、正しい判断のもとに、資料を集めて最後決定をいたすつもりであります。
#43
○坂田委員長 暫時休憩いたします。
   午前十一時六分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時四十九分開議
#44
○坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出の農業基本法案及び北山愛郎君外十一名提出の農業基本法案を一括議題として、質疑を続行いたします。倉成正君。
#45
○倉成委員 昨日総理大臣に対しまして国民経済における農業の位置づけについて御質問申し上げたのでありますが、およそ、その国の農業の基本の政策は、国情、時代によってその目標が定めらるべきであると信ずるのでありますが、今次の農業基本法は、近時農業従事者の生活水準ないし所得が他産業に比して格差が広がってきたことと、経済成長に伴う農業収容人口の減少、また国民の食生活の向上に伴う農産物の需要の変化ということがその背景にあるかと思いますが、これらの理解のもとに第一条が掲げられておるのでございます。この第一条の中に、農業の生産性の向上という、いわゆる経済の合理性を追求する項目と、もう一つ、農業従事者の所得が増大して他産業の従事者の所得の水準と均衡するといういわゆる社会福祉的な目標とが同時に掲げられております。この二つの目標は、ある面においては一致する面があるかもしれませんけれども、西欧諸国の例をとりますと、生産性が向上しましても、必ずしも所得水準が上昇しないという実情にあることは御承知の通りでございます。従いまして、この生産性の向上と同時にあげられました生活水準の均衡、この二つの概念をどのような形で調和されるつもりか、まずお伺いしたいと思います。
#46
○周東国務大臣 お答えいたしますが、今日のわが国農業の現状から見まして、これが新しい農業政策の実行によって農業の生産を上げていくということに関しましては、何と申しましても、根本は生産性を引き上げることであります。この点は、生産性と申しますと、あくまでも、農業収容人口一人当たり、ときに一時間当たりということも言われますが、その能率ということであります。これを引き上げるということが何よりも日本の農業としては必要だと思います。しかし、御指摘のように、農業の生産性を上げましても、またそれによって生産の増加をはかりましても、これだけでなかなか生活水準の均衡ということは得られないことは御指摘の通りであります。ことに、私どもは、昨日でしたか、社会党の方のお尋ねにもお答えいたしましたが、農業生産の所得だけで生活水準というものがよくならない、当然、それには、生活環境、生活、文化、あるいは交通、あらゆる面において農村を都会地と近似した形にまで引き上げることによって、これと合わせて生活水準の向上ということでなくちゃならぬと思います。その間におきましては、御指摘の、どちらを主にしどちらを従にするとか、その間の調和をどうするということじゃなくて、生産性を向上させつつ生産を増加し、あわせて他の所得関係以外の生活環境というものの改善によって生活水準を上げる。その間におのずから調和をとっていくようにするつもりであります。
#47
○倉成委員 生活水準の向上と生産性の向上と、いろいろな政策によって調和をとっていくというお話でございましたが、まず、言葉の厳密な意味から申しまして、農業の生産性の向上ということが非常にわかり切ったことのように使われておりますけれども、もう少し詳しく、生産性の向上というのは一体何を意味するか、生産性とは何を意味するか、また、生産性の向上ということがどういうことによってできるかということをお伺いしたいと思います。
#48
○周東国務大臣 お答えいたしますが、生産性の向上と私がここで言っているのは、何と申しましても、労働に対する収益と申しますか、労働に対する報酬というものを生産性と言っております。もとより、生産性というものは、倉成さんのおっしゃったように、土地に対する生産性というものもありますし、資本に対する生産性ということもありますが、ここで私が最も考えなくちゃならぬのは、従来、日本の農業というものは、御承知のように、過剰労働投下という形であって、かなり労働に対する生産性というものは閑却されておったのじゃないかと思われるのであります。今日、私どもは、何としても農家の一人当たりの生産を上げる、わかりやすく言えば、能率を高めるということであると思います。
 どうやってやるかということでありますが、もとより、大きな問題は、ただいま申しました過剰労働の投下によって生産が低かった、これをどうするかということ。しかし、これをむやみに他の方面への就労の機会がないままに農家を減すということは、私ども考えておりません。幸いなことと申しますか、これが日本の力強い経済の発展だと思いますが、全産業、第二次、第三次産業における成長が非常に著しいものでありまして、このことは当然日本の経済の発展でありますが、それに沿うて労働者の吸引ということが起こって参ります。そこに農村における人口の移動というものが現に起こっている。そういうことから生じて参りまする景気はこれを善導しつつ、その方へ行きたいという方々に対しては、できるだけよい機会に恵まれてよい就業をなし得るように、雇用の機会が求められるように、技術訓練も教育訓練もやろう、あとに残った少数の者に対しては、一面におきまして少数ではどうなるかという心配がありますが、ここに初めて農業の近代化をなし得る素地ができてくるわけであります。そこに機械化あるいは高度の技術化を行ないつつ生産を高め、一人当たりの生産性を高める。こういうふうに考えております。
#49
○倉成委員 労働生産性を中心として考えるという大臣の御説明は了解できるのでありますけれども、生産性の向上というときには、一定の技術条件のもとにおきまして、人的、自然的資源を最高度に効率を発揮させるということでありまして、労働のみならず土地、資本の流動性を確保いたしまして、これらの限界生産力が一致いたしますときに最高の収益が出ると理解するわけであります。なぜこういう理屈っぽいことを申すかと申しますと、労働の移動あるいは資本の移動、土地の移動、この三つがうまくいかないと生産性は上がってこないわけでありますから、当面の目標として労働の生産性ということを考えましても、施策として考えるときにはこれらのことをはっきりしておかなければならないから、特に申し上げておきたいのであります。日本の場合には、土地の生産性は非常に高い、しかし労働の生産性は低いというふうに言われておりますが、資本の生産性ということについて御検討になったことがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
#50
○周東国務大臣 ただいま私がお答えした中にも、生産性を論ずるときには、土地に対する生産性、また資本に対する生産性というものは当然考えられなければならないが、今までやや顧みられなかった労働の生産性を特に取り上げて高めるということがねらいであるということを申しております。もとより、土地については、少ない土地を最も効率的に使い、集約的に使って生産を高めるようにしたい。資本についても、御指摘のように、私どもは、いかにして農業に投下される資本というものを有効に回転率を早めて資本の効率的な生産性を高めることをやるべきかということについては、今後とも考えていかなければならないと思います。おのずから農業というものの持つ本質から見まして、今まで資本回転率というものもかなりおそいわけであります。そこに資本に対する生産性も低いということもありましょうが、今後の農業におきまして、どうしても土地を対象としている農業生産力、自由に時期的に生産に弾力性を持たすことのできないものとしてはそこに限度はあると思いますけれども、今後、作物対象によりまして、あるいは畜産物のごときものにつきましてはその点はかなり改善し得る余地があるのではなかろうか、かように考えております。
#51
○倉成委員 資源の有効利用をはかるために、各生産要素の移動が自由であることが前提になるわけでありますけれども、労働の生産性について特に強調される意味はよく理解できるわけであります。そこで、明日社会党にもお伺いしたいと思っておりますけれども、生産力という言葉を使わないで特に生産性ということを掲げられた理由はどういうところにあるか、お伺いしたいと思います。
#52
○周東国務大臣 私ども、現在の日本農業のあり方からいたしまして、労働に対する生産性というものをいかにして高めるかということは、これは最も大きな中心課題になると思っております。社会党の生産力を上げるという中には、おそらくこれは生産性を無視してはいらっしゃらないと私は思いますが、しかし、字の持つ意味が、単に生産の増大ということだけにとられては、私はいかぬと思います。生産の増大も必要でありますが、その増大される生産というものの内面で、労働力の生産性が高められて総生産が上がっていくという形でなければいかぬと私は思うのであります。むしろ、現在の日本農業としての一番閑却されておった農業就業者に対する生産性を高めることが一番大きな問題になると思って、はっきりとこれを書いたわけであります。
#53
○倉成委員 単なる物量的な生産が上がっても、生産の能率が上がらなければ何もならない、だから、生産の能率の上がる結果として物量的生産が上がることは望ましい、こういうお考えでありますか。――そういうふうに理解いたしまして、次の問題に進んで参りたいと思います。
 生産性の格差の是正ということがここに掲げられておりますけれども、生産性の格差、特に他産業との生産性の格差ということを言う場合には、先ほどお尋ねすることを省略しておりますけれども、生産性という概念は通常物的な概念だと思います。そういたしますと、他産業との生産性の格差ということになりますと、比較の部門で価格の概念がこの中に入ってくる。また、他産業と農業の生産性を考える場合に、所得の場合には、農業の場合には家族ぐるみの企業でありますし、他産業では、勤労所得、あるいは個人の賃貸料、個人利子というような工合に、企業の中が分解して参っておりますので、これらの格差の是正というのはどういう意味であるかをお伺いしたいと思います。
#54
○周東国務大臣 これは、あなたのお話の通りでありまして、生産性の格差を論ずる場合において、物的の考え方でありますが、しかし、それはなかなか比較がむずかしいので、でき上がった物について、これを価格に見積もって双方を比較するということになることは御指摘の通りだと思います。もとより、その場合における比較にいたしましても、第二次産業、第三次産業における所得関係につきましては今後研究しなければなりませんが、今のところは法人所得が大体そのまま入っております。また、農業に関しましては、家族経営における多数の家族が全部そこに包含されているということは、今後における比較考量の場合に再検討してみる必要があると思います。ことに、農業に関しましては、時間的にどれだけ農業に集中して従事したかという人間だけとる場合と、学校に行きつつこれを手助けをしたというものも統計によっては入っておるという問題、こういう点は時間的に比較するということが一番正しいかと思うのであります。こういう点については、将来いかなる形にこれをとって比較考量するかという点について、同じスタンドに立っての比較をしたい、かように考えております。
#55
○倉成委員 まず、他産業との生産性を比較する前に、農業について、海外諸国の労働生産性、これと比較してみたいと思うのでありますが、海外諸国での労働生産性が農業の場合にどういうふうになっているか、大臣でなくてもけっこうですから、お答えをいただきたいと思います。
#56
○周東国務大臣 事務の方からお答えをいたさせます。
#57
○倉成委員 あとでお答えいただくとしまして、実は私の方で数字はわかっておるのですが……。
#58
○大澤政府委員 お配りいたしました資料に載っておりますが、一般的に見まして、反当土地面積の生産性、これは各国に比べて低いということはないのでありますけれども、労働当たりの生産性ははるかに劣っておるというような数字が出ております。
#59
○倉成委員 海外諸国での労働生産性のとり方にはいろいろあろうかと思いますけれども、この他産業との格差の是正という前に、農業の生産性の向上ということを掲げる以上、少なくとも海外諸国での労働生産性との比較ということがある程度大きな課題になってくるかと思いますが、アメリカ、イギリス、こういうところは格別としまして、大体海外諸国との生産性の格差をどの程度までつづめることができるか、御自身があるか、承ってみたいと思います。
#60
○周東国務大臣 これは、労働生産性の上から言えば、一時間あたりとか一人当たりということの能率関係になりますけれども、しかし、英米独の方面におきましては、農業の形態がだいぶ違っております。大体資本経営で大きな面積をやっておる。そういう点で、直ちに比較することはいかがかと思いますけれども、ただいまも申し上げましたように、単位当たりの生産性というものは日本の方がいい。従って、その面におきましては、何といたしましても向こうは少数経営であります。こちらは家族経営で、しかも、先ほど申し上げましたように、過剰労働投下という格好になっておる。この形をある程度変えていくということが日本農業に課せられた大きな中心課題だと思います。その点につきましては、先ほど申しましたように、今日こちらから強制的に出すのでなくて、現実に、他産業の発展に沿うて、大きな経済成長の伸びに沿うて労働移動が行なわれておりますから、その点、ある程度改善していくということは、一つの外国の生産性に近寄っていくものではなかろうか、かように考えております。
#61
○倉成委員 海外の問題はその程度にしまして、この一条の中には、社会党案で見ますと自給度の向上ということがいろいろ掲げられておりますが、自給度の向上ということをなぜこの一条に掲げてないかということをお伺いしたいと思います。
#62
○周東国務大臣 これは、私は、終局においては、やはり将来の日本における各農産物の需給の見通しに立って、そうして、それを作るについて生産性を向上させ、そうして、それらの需給に見合った形において必要なる農産物を増産拡大していくということが必要であり、その結果でき得る限り自給していくということが望ましいと思う。当然のことだと思うのです。ただ、往々にして間違われるといけませんのは、この前の戦争中のように、これはやむを得なかったことでありますが、経済の問題を無視して何でもかんもでアウタルキーの考えで日本国内でも自給せよという考えは、私は持たないのです。おそらく、その点は、社会党さんの案といえどもそこは考えてはいないと思いますが、当然のことであって、私どもは、むしろ需給に見合った生産をあげ、それをやるについて、繰り返しますが、生産性の向上によってやっていく、こういうふうに考えております。当然のことだと思っております。
#63
○倉成委員 自給度を高めるということは生産性の向上の結果出てくるものであって、生産性を無視して何でも増産をしていくという考え方には反対だという大臣の御意向には、私も賛成でございます。同時に、角屋委員から総理並びに農林大臣にお尋ねになって、必ずしも質問も答弁も明快ではなかった点がございますので、私からあらためてお伺いしたいと思いますが、所得均衡ということを言わずして生産水準の均衡ということをなぜ言っているかということでございますけれども、他産業では、できるだけ多く一人で働いて収入を得ておる。ところが、農業の場合には、二人も三人も働いて生活ができておるということになって参りますから、これが生活が均衡しましても、労働強化によって生活が均衡するということになってくるわけです。こういった点、どうして生活均衡と言って所得均衡と言わなかったかということを一つお伺いしたいと思います。
#64
○周東国務大臣 それは私どもたびたび申し上げておる生産性の向上ということにかかってくるわけであります。所得の均衡ということも、農業生産というもの自体からあがる所得によってこれを同じにすることはなかなか困難だと思う。これは、社会党さんの方できのうも言っておられたが、特殊な施策をとって、しまいには売れても売れぬでも、価格で相当大きな幅に上げれば、これは所得の均衡ということができるかもしれません。私どもは、そういう形をとらずに、一人当たりの生産性を上げつつ、しかも経営単位というものを一つの理想単位に置きかえまして、今までの多数の人によってやるという形をとらないことがよろしいと思っております。そういう意味において、所得均衡という言葉は出しませんでしたけれども、生活水準を均衡させるということは、先ほども申し上げましたように、所得をだんだんふやしていくということも生活水準の均衡の一つの要素にはなりますが、しかしながら、生活水準の均衡ということになりますと、そのほかに、繰り返して申しますけれども、生活環境、たとえば上水道、下水道、無電地域に電灯をつけるとか、あるいは無医村地域において医療施設を設けるとかいうような事柄によって進歩させるというようなことが、あわせて全体としての生活の水準を均衡せしめることになるので、これの方を私どもは主としてとらえてかくのごとく書いたわけであります。
#65
○倉成委員 農業の場合にはたくさんの人が働いておる。それで生活は一応何とかやっておる。他の産業の場合には、通常世帯主が一人働いておりますので、これによって生活がささえられておる。ですから、生活だけを比較して均衡を得ましても、ほんとうの意味での均衡とは言えないと思うのでありまして、やはり、将来は、急には無理であるにしましても、所得の均衡というようなことを目標としながら近代的な経営を作り上げていくことが必要ではないか、そういう意味で御質問を申し上げておるのでございます。
 そこで、農業の所得と非農業の所得とを比較する場合に、一体、農業のいかなる部門と、他の産業ではいかなる産業の従事者とを比較していくかということが非常に問題になろうかと思いますが、この点についてお伺いしたいと思います。
#66
○周東国務大臣 これは各地域においても私は違って参ると思います。一律に全国的にきめることはなかなか困難だと思いますが、大よその考えといたしましては、よく米価算定の基礎になる生産費補償方式の中に出てくる家族労働というものをいかなる労働賃金と比較するかという問題が出て参ります。そういうふうな面におきましても、大体、私ども、米価算定に関しましては、たとえばこれは全国の製造工業における従事者の平均賃金ということをとっております。これは一応の考え方でありますが、今後における農業者と非農業者との所得についての比較というようなことは、ただいまお尋ねの点につきましては、これは一律一体にいかぬ点がずいぶんあると思うのです。農村におきまして、大体農村近郊の都市の問題と比較することが妥当な場合もございましょうし、また、大都会近効における農家との比較という場合にどれをとるかという問題がありますが、おのずから私はそこに妥当するものを見出し得る、かように考えております。
#67
○倉成委員 ただいまの御答弁では必ずしも明確でないのですけれども、少なくとも、目的に、他産業との生産性の格差の是正ということと、他の産業の従事者と均衡する生活ということをうたった。そういたしますと、当然これはグリーン・レポートの部門に現われてこなければならないということですから、どうしても、心がまえとして、農業の部面ではどういう階層の農家を中心として考えるか、他の産業についてはどこを大体対象とするかという、農業全般についてはやはり考えておく必要があるのではないかと思うのであります。この点、もう一度お伺いしたいと思います。
#68
○周東国務大臣 目標としては、家族経営農家を中心として、それが自立し得る農家を作るという問題であります。それからの農家と、大体、先ほど申しましたように、一応の目安は、たとえば全国における製造工業における労働者賃金の平均というものが考えられてしかるべきだと思いますが、なおこの点についてはもう少し深く掘り下げて研究したい点が残っております。
#69
○倉成委員 この点は、さらに深く御検討いただきまして、早急に結論を出していただきたいと思います。同時に、農業所得と非農業所得とを比較する場合に、農業所得の中では、地代あるいは借入金の利子というようなものが控除されないでおるのじゃないかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになっておりましょうか。
#70
○大澤政府委員 先ほど大臣からお話がございましたように、他産業の従事者と農業従事者との生活の均衡をはかっていくという目標として、どういうものをどういうふうに比べるか、こういうお話だったと思います。そこで、均衡という言葉でございますけれども、つり合いをとるということでございますので、農業従事者とつり合いがとれるべきものとつり合いをとる、こういうことになります。比較の対象といたしましては、最終的には年次報告で生活水準の問題を論ずるときに農政審議会等の御意見を聞いてきめることになりますが、都市の勤労者ですとかあるいは生活環境を同じにする町村の勤労者の生活と比べるということは考えられます。生活は福祉の観点から見る問題ですから、方法としては消費水準を比べるということが考えられるのではないかと思います。
 そこで、今お尋ねの、農業従事者が所得としてとる中には、地代部分もあり、あるいは利子利潤の部分もあるというお話でございますが、その通りでございます。そこで、比べます場合には、わが国の農業経営は、先般来からいろいろお話がございましたように、家族農業経営という形でやっておりまして、今御指摘のような要素所得というようなことが経営の中で実現しておりません。そこで、無理にそれを擬制的に分けるというようなことも実態に合わないと見ておりますので、混合所得という形でとらえて、消費水準、消費生活を他の産業部門の勤労者と比較をするということになります。
#71
○倉成委員 西ドイツあるいはフランス、こういうものにつきましては、御承知のように、労働報酬と生産管理者報酬あるいは利子というふうに分けて年次報告に出ているわけでございますけれども、日本の場合に混合所得をとる、これは今日の日本の農業の現実からあるいはやむを得ないかもしれませんけれども、その中で特に地代をどう考えるかということは、米価審議会等でもいろいろ問題になることでございますが、土地の価格と地代をどういうふうに評価するかということが今後非常に重要な問題になるかと思いますので、地代について現在の統制小作料を一応前提としてお考えになっているのじゃないかと思いますけれども、一体これが現状のままでよいかどうかという点をお答えいただきたいと思います。
#72
○周東国務大臣 小作料が現在のままでいいかということのお尋ねでございますが、かなり土地の収益性の上がっておる今日から見ますと、これはもう一度再検討する必要があるとは思っております。
 それから、何ぼにするかというようなことは、まだこれから研究の結果、収益性の状態を見まして地代小作料について決定をいたすことが妥当であろうと思っております。
#73
○倉成委員 私は、小作料を幾らにしたらいいかということよりも、小作料の評価によって農業所得の考え方が非常に変わってくる、そういう意味で申し上げたわけでございますけれども、その問題はさらに御検討いただくことにいたしまして、自立農家と他の産業と比較するということが一応の目標でありますが、そうなってくると、自立農家になり得ない農家は均衡することはできないということで、非常に零細な農家が困ってくる。この点についてどういうお考えを持っておられるか、お伺いいたしておきます。
#74
○周東国務大臣 倉成さん御承知のように、将来の農家のあり方を構想してみまするときに、私どもの助長して参りたい点は、たびたび申しましたように、家族経営農家の自立し得る農家ということを対象としております。しかし、いろいろな事情で急速に参りませんで、その間に零細な農家が一面兼業農家としてふえて参ります。そういう面から見ますると、一面において、これらの農家の所得比較ということになりますと、農業からあがる所得と、もう一つは兼業収入、農外所得というものが合わさって一つの農家の収入ということになります。そういうものと他の産業の労働者との比較ということになって参ると思います。
#75
○倉成委員 これらの点は、構造改善の部門でもう少し掘り下げてお伺いしたいと思いますけれども、その前に、構造改善等をやる前提として生産の選択的拡大ということをここに掲げてございますけれども、選択的拡大というのは一体どういう意味か、お伺いいたしておきます。
#76
○周東国務大臣 将来日本の農家に指導して作らせていくというものは、何としても需要の伸びるもの、また、外国から輸入しておるものの国産化と申しますか、外国からの輸入商品に対抗して競争力を強めるようにする農産物。また、逆に、今度は、需要の減るようなものについてはこれを転換させつつ持っていくというような形で今後の指導なり助長をしていきたい。そういう意味において、農家に対して、将来の需給見通しを立てつつ、将来需要の伸びるもの、あるいは輸入農産物の国産化ということから見て、そういうものを選択して作らせる、こういう意味であります。
#77
○倉成委員 農業の生産物の中で成長財と非成長財と分けていくという御趣旨のようでありますけれども、農家の収入の半分を占めておりますのはお米であります。それから、特に西日本地区等におきましてはカンショがかなり大きなウエートを占めておるわけであります。これらの米並びにカンショについては、成長財とお考えになりますか非成長財とお考えになりますか、お伺いしておきます。
#78
○周東国務大臣 成長財という言葉の意味でありますが、将来ともなお需要が伸びていくというものから言えば、米もやはり同じ考え方に入りますけれども、最近における所得の増大に伴って、需要の増大するものと減少するものとあります。わかりやすく言えば、一人当たりの需要がだんだんふえていくものと、一人当たりにすれば需要は減るけれども絶対量としてはまだまだ生産が伸びるものと、二つあります。そういう意味から申しますと、米あたりは、少し変わって参りまして、これは需要構造がだんだん変化して参りますので一人当たりはやや減っていく傾向にありますが、これに比べて畜産物あるいは果樹、てん菜というようなものは、やはり将来伸びていく。そういう意味においては、これは狭い意味における成長財ということになりましょう。御指摘のイモですか、これは、今、日本における甘味資源の対策として増加していこうという格好であります。十年計画を立ててやっております。澱粉から糖化する、こういう問題から言えば需要は伸びていく。しかし、一人当たりの消費量はどうなっていくかというと、これもやはりふえて参ります。そういう意味から言えば、狭い意味における成長財と見て差しつかえなかろうと思います。
#79
○倉成委員 米あるいは麦、イモ、これらの重要な農産物については、将来の需要をいかに見るかということが政策の中心になるかと思いますので、これらの点については、さらに最近の需要弾性値等につきましてもいろいろ従来の考え方を修正しなければならぬ面が起こってきておるようでありますから、御検討いただきたいと思います。
 次は、今度の基本法の中心課題であります構造改善についてお伺いしたいと思いますが、政府案の第四章十五条以下の構造改善の基本的な考え方についてまず大臣にお伺いしておきたいと思います。
#80
○周東国務大臣 これは、第一には、就業構造として、今後の理想の形態は、家族経営農家で自立し得る農家というものに対する就業者を大体二ないし三というような形に考えて参っております。これは一つの理想形態であります。しこうして、この生産基盤としては、理想形態としては二町五反というふうに考えております。これは、よく誤解がありますが、一応の計画目標であります。今日、日本全国を見渡しまして、大体一町五反以上の農家の生活というものは、満足ではないにしても、ある程度立っていっておるわけであります。これは地域的にも違って参りましょう。一つの理想形態として二町五反、それに対して就業人員は二ないし三というものを考えております。これらの構造改善に関しましては、これをやるについて必要な経営に関する機械化あるいは技術の高度化ということが農業構造には大きな関係を持つわけであります。こういう面を考えつつ、それが実現しやすいように、各般の施策をこれに合わせていこうというのが農業基本法の考え方であります。しこうして、家族農業だけでいけないもの、零細農というものは、これをそのまま捨てておくのではなくて、一面においては兼業農家としていくものがございましょう。また、兼業農家と兼業せざる農家というものが共同して協業体制をとるということも一つの考え方であります。
#81
○倉成委員 昨日も総理大臣に質疑を申し上げたのでありますけれども、今後の構造改善の中心課題が、自立農家を作ることにあることはもちろんでありますけれども、その前提としては、やはり、高度の技術を研究してこれを実践に移していくということが非常に大事なことではないかと思うのでありますが、これらの点については今後とも十分御検討をいただきたいと思います。
 そこで、先般からいろいろ家族農業経営あるいは協業ということについて質疑が行なわれましたけれども、まず、協業ということの意味について、これは社会党案では共同というふうに言われておりますが、どういうふうに意味が違うのか、お伺いしておきたいと思います。
#82
○大澤政府委員 協業と申しますのは、英語でコーオペレーションという言葉でありますが、同一の生産行程、あるいは生産行程が異なりましても相互に関連のある生産行程で相ともに相並んで労働が行なわれる、そういう形態を協業と申します。
#83
○倉成委員 共同との差異を伺っておりますから……。
#84
○大澤政府委員 協同組合法などで使っておる協同と、ここで今回使っておる協業と、そう大きな意味の差異はございませんけれども、協業と申します場合には、主として生産行程について力をあわせてやる形態というように、その点で意味が強くなるかとも思います。
#85
○倉成委員 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、家族農業経営と協業というのが何か全然相反するもののような印象を与えておる。これは非常な間違いでありまして、家族経営の中にも協業を取り入れていく、そのある者は自立農家になるし、自立農家にならない者が協業にウェートを置いていくというふうで協業と家族経営というのが非常に交錯しながら相補いつついっておると思うのですけれども、この点、明快にお答え願いたいと思います。
#86
○周東国務大臣 これは倉成委員の御指摘の通りであります。ただ、私どもは、これに対してあくまでも農家の自発的な意思に従っていこう。しこうして、国の方向としては、従来から農村につちかわれております家族経営という体制、これは世界各国と同じように日本もまたそれでありまして、この家族経営というものをもっと近代化し、あるいは装備を持たせるように基盤も拡大していくことが一つの指導の原則であって、また、自立経営農家といえども、従来からやっております生産物を共同加工し、あるいは農機具の共同利用という体制があるわけであります。こういう体制はもとよりやらせることが必要でありますし、これに対して助成もいたしまするし、進んでまた、特殊の果樹園経営というようなものについて、一部農業それ自体の共同経営ということをやる場合もあると思います。また、お話のように、零細農あるいは兼業農家が協業ということをやる希望のあるものは、当然われわれはこれを助長して参るつもりであります。
#87
○倉成委員 自立農家を作って参ります場合の前提として、耕地の集団化、また耕地の規模の拡大ということが非常に大きな問題になります。耕地の集団化については、本年度の予算においてもある程度芽を出しておるようでありますけれども、これはもっと積極的に大規模にやらなければ、今日の日本の農業の現状から見ますと、生産性を向上していくということも無理ではないかと思いますので、耕地の集団化についてどのようなお考えを持っておられるか、大臣にお伺いしたいと思います。
#88
○周東国務大臣 これについては政府といたしましても積極的に助長指導して参るつもりでおります。どうしても技術の高度化並びに機械化ということが進んで参ります。また、それをやらなければ生産性を高めることもできない。そういうものが必要になるとすれば、どうしても耕地というものは小さいもので各人がばらばらにこれを利用しておる格好では効率的でないと思います。そこに耕地の集団化ということが必要になって参りますので、私ども積極的に指導して参るつもりであります。
#89
○倉成委員 耕地の拡大の場合に、耕地を取得する、あるいは農協の信託によってかなり広げていく、いろいろ方法があろうかと思いますが、現在やっております開拓地の中で、現在土地を国が買収しておりますけれどもまだ開拓に着手していないところがたくさんあるわけであります。これらの地域の中で、地元増反をやるならば相当自立農家ができていく、政府案のいわゆる自立農家ができていくという地域が、私の知っております九州でもたくさんあるわけであります。そういったものを、従来の開拓のようにただ新規入植でなければいけないというような考え方を中心としないで、もっと地元増反を積極的にやって既存の農家の経営規模を拡大していくということをお考えになったらいかがかと思いますが、この点について基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
#90
○周東国務大臣 それは全く同感であります。私ども、開拓政策というか、開墾政策について、地元増反というものをこれからは原則として進めたい。お話のように、国有となっておる土地で未開墾地で適地があれば、これを払い下げ、あるいは国で開墾してこれを分ける。とにかく、地元増反の方向へ向かって考えていきたいと思っております。
#91
○倉成委員 ただいまの大臣の御言明を単なる言明でなくして早急に実施に移していただきたいと思います。具体的な事例はたくさんあるわけでありますから。本日は時間の関係上申し上げませんけれども、特に御要請を申し上げておきます。
 なお、自立農家を考える場合に、地域ごとの営農類型というのが非常に問題になって参ります。どういう資本装備を持ってどういう営農形態でやっていくかということを明らかにしなければ、自立農家ということを申しましても、これは抽象的なものになってしまいます。これらの点について、営農類型について一つの試案でもお示しになるつもりかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
#92
○大澤政府委員 自立農家の育成をはかる一つの手段といたしまして、地域ごとの、あるいは経営形態ごとの営農類型というものがありますことは、国といたしましても、あるいは農家といたしましても必要なことだと思います。が、これは地域あるいは経営形態によりまして一口になかなか言えないものでありますので、私どもといたしましては、本年度も予算をとっておりますが、試験場等を中心といたしまして営農類型のはっきりしたものを作り上げるということに努めていこうと思っております。
#93
○倉成委員 なお基本的な方針を伺いたいのですが、大臣から一つ御答弁をいただきたいと思います。昨日の総理に対する質問でも出たのですが、どうしても地域によって農業は非常に差がありますし、農業外に職を求めようとしてもなかなか行くこともできない低所得の農家、これらの農家をどうするかということは、世界各国におきましても、アメリカでは大統領、その他におきましても最高の責任者が一つの施策の重点に置いている事柄であります。これらの点について、農林大臣は、たとえば低所得の農家に対する資金の援助とか補助金ということもさることながら、改良普及事業を例にとりますと、そういう地域については普及員をたくさん出してやり、そして特別優秀な普及員をここに派遣するというような具体的な施策が必要ではないかと思うわけでございます。私は、かつて長崎の部長時代に、対馬には最も優秀な普及員を派遣したことがございまして、非常な効果をあげたのでありますが、これらの施策を国の施策として遂行されるおつもりがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
#94
○周東国務大臣 自立経営農家を目途として新しい農業政策を実行するということ、これはもう抽象的にははっきりしておりますが、御指摘のように、これを各地域にいかなるものをいかなる形でということについては、なかなか容易ならぬものがあると思います。それにつきましては、政府といたしましても、各地域ごとに営農類型を確立し、これをもとに指導していくという格好をとるために、積極的にもっとそういうことをやっていこうと思いまするし、また、これらの新しい施策を実行することはあくまでも農家の方々にその深い理解を得なければなりませんので、片や営農類型の設置によって指導すると同時に、なおこれら普及員等の指導または助言によってそういう方向へ持っていく必要がある。これにつきましては、ただいまお話しのように、全国的に見ましても従来の農業改良普及員というものはやや片寄っております。今後におきましてことに畜産、果樹というようなものが中心になっていくとすれば、それらに対する経営の方向というものにはかなり技術的な面が多く取り入れられなければならぬと思います。その意味におきましては、改良普及員等に特技を教えさせるという意味において、まず改良普及員の特技の修得に関して施設を考えております。これはここ数年来手をつけておりますが、その上に、農業者自体に対しても、ことしは全国十五、六府県になりますが、これの各農業試験場等においてまとめて指導をやるというようなこともしております。従って、そういうような面から全国を考えると同時に離島に対しあるいは山村の深いところ等に対し特殊な指導をやったらどうかということについては、私どもも特にそういう面に意を用いて今後助長いたしたいと思うのでございます。
#95
○倉成委員 政府が政府案におきまして協業の助長を言い、その裏づけとして農業協同組合法の改正、農地法の改正が、行なわれるようでありますけれども、この中の農業生産法人と現在の農業協同組合との関係、これは非常に将来いろいろ大きな問題が出てくるんじゃないかと思うのであります。たとえば、生産法人がどんどん大きくなりまして販売、流通その他の面にまで入って参りますと、これらの農協とどういうふうな調整をとっていく方針か、大臣にお伺いしたいと思います。
#96
○周東国務大臣 これは、私ども、今度の農協法の改正によりまして農協の中に生産法人的なものを作るということをまず考えております。こういう形にいたしますことによって、従来の農協との間における連絡を密にできると思います。あくまでも、生産法人ができても、その他の仕事に関して農業者として法人が他の法人農業者と同じ形において農協を利用していくという形に持っていくことが原則であると思います。ただ、このたびの生産法人の中には、合名、合資というような形のものが従来からあり、そういうふうな事柄についてはこれもあわせて認めておりますが、こういう点は、原則的に、農協の育成と関連して農協との連関は密にさせていきたいと思います。
#97
○倉成委員 次に、価格政策についてお伺いしたいのでありますが、時間の関係上、ごく基本的な方針だけをお伺いしておきたいと思います。
 価格の問題が今日の農家の経営にとりましても日本の農業全体の構造にとりましても一番大きな問題の一つであることは御承知の通りであります。ある意味において、価格は、農家の所得に対する影響もありますと同時に、消費者の立場においても考えなければならないという点もございますし、構造の問題にも価格政策のかじのとり方一つで大きな影響をしていくということでありますが、ここでお伺いしたいのは、特に政府案による価格政策の考え方によりますと、いろいろな要素を加味して考えていく、だから、早く言えば、需要のあまりないようなものについては価格の高くなるのをある程度押えていくという考え方のようでありますが、そうなってくると、どうしても所得の面で大きなギャップが出て参る。ですから、この価格政策と所得政策とのギャップをどういうふうな形で埋めていくかということが政策の大きな課題になってくるかと思います。これらの点を、社会保障の面でなくて農業政策の範囲でどういうことを考えられるか、一つお答えをいただきたいと思います。
#98
○周東国務大臣 農家の所得を確保する上において価格問題が重要な点になることは、御指摘の通りであります。しかしながら、私どもは、価格を安定させる問題といたしましては、まずこの生産に関して将来の需給の見通しを立てて生産をさせて指導していくということが一番大きな問題だと思います。
 しかし、かくいたしましても、農産物というものの自然的・経済的・社会的な不利がありますから、それを補正する意味におきましては、生産事情あるいは経済事情から来る結果というものを是正して、この価格を安定させるつもりでおります。従って、いろいろの考え方、また実行の仕方があることは倉成さんの御承知の通りであります。米のごとく、従来生産費及び所得補償方式という形で一つの計算をしておるものもありますし、あるいはまた、農産物価格安定法による農産物についてはパリティ計算その他で考えていくという問題もあります。また、繭糸価の安定については、上下の幅をきめて、需要関係から見て安定さす方向をとっていく。このことは、農産物というものは、御承知の通り、各種各様、生産条件も異なりますし、いろいろ違っておりますので、これらの問題を一律に一つの体系におさめて価格をきめるというわけには参らぬと思う。しかし、私どもは、あくまでも、農産物というものについて農家に損をさせないためには、ことに、法律に書いておきましたように、重要農産物については、特にその生産・消費の見通しを立てて、これによって指導して作らしていく、それに自主的な生産調整というものも起こる、それからまた、流通過程においても考えられる生産流通対策というものを考えて、なお不利を国が是正するために必要なる処置を講じて安定さしていこうというのが私どもの考え方であります。
#99
○倉成委員 農産物の価格が所得に格別の深い関係を持っておりますから、価格をどうきめるかということは農家にとって死活問題であります。そこで、この価格が現在の水準から多少でも下がってくるということになりますと、農家としては期待しておりました価格が得られないで所得が減少してくるということになりますから、そのギャップを価格政策ではなくしてほかの手段で補う配慮がやはり何としても必要になって参ります。それは、もちろん、流通機構の合理化であるとか、いろいろな面がありましょうけれども、さらに、需要の換起をいたしまして、たとえば牛乳等につきましては、学校給食等も、今日やっておるような中途半端なものではなくて、もっと画期的に学校給食をやって牛乳の消費をふやすというような問題、あるいは不足払いをいたしまして農家の所得の補てんをする、あるいは、農業政策の分野からはずれますけれども、そういった場合には税金については特別な考慮をしてこれを減免するというような総合施策を講ずることによって、価格政策には筋を通すけれども、そのギャップはほかのあらゆる施策を講じてこれを補ってやるのだということが農林大臣として大切なことではないかと思いますが、これらについてどういう御見解と御決意を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
#100
○周東国務大臣 それらの点につきましては、今度の農業基本法に書いてあますように、十三条によって、自然的・経済的不利を制するために価格安定の措置を講ずるということを書き、また、それらの事情の実感がどうなっているか、価格安定においてとった処置がどうなったかという事柄を国会に報告するようになっております。こういう点からいたしまして、これらに対して必要な施策というものは当然考えられることでありまして、ただいまおっしゃいました、あるものについてもしいろいろな手を打っても、なおかつ下がるというような場合においては、あるいは不足払いということも研究の対象になると思いますし、また、税金等の問題も、それらを総合的にどうやるということはもとより考えていかなければならぬと思います。
#101
○倉成委員 ただいまの大臣の御言明を一つ強く実行に移していただきたいと思います。同時に、価格政策で非常に大事なことは、今後の需要が伸びていく、いわゆる成長農産物なり畜産、果樹につきましては、将来の需要が伸びていくということについてはわれわれも大体正しいと思うのでありますけれども、はたして畜産、果樹が将来とも収益性を保ち得るか、経営の安定を得るかということについては、まだ相当大きな問題が残されているのではないか、どうしても、この畜産物、果樹については、価格の安定の方策を講じなければいけないというふうに考えるわけであります。これについては、今年度の予算にはある程度畜産の事業団その他の構想が出ておりますけれども、この程度のことではとうてい将来の畜産物あるいは果樹についての価格の安定を期し得られないのでありますから、将来一つ強くこれらの点を御推進いただきたいと思います。
 最後に、ガット並びにIMFとの関係をお伺いしたいと思います。御承知のように、欧州共同体におきましては、共同体の中の各国も農産物についてはある程度の関税の問題等を考えているようでありますが、最近の資料を見ますと、農産物についてもだんだんその壁をはずしていこうという傾向にあると聞いているわけであります。そうなって参りますと、ガット二十五条のウェイヴァー条項、いわゆる義務免除の条項等を日本が申請しましても、なかなかむずかしい問題がこれから起こってくるのではないかということが予想されるわけであります。もっと端的に言えば、かりに日本がウェイヴァー条項を申請しましても、これが認められないということになって参りますと、外国の農産物が日本に入ってくるということになって参りまして、いかに農業基本法に政府案、社会党案で規定をいたしましても、これが空文化していくというおそれなしとしないと考えるのでありますが、これらの点のお見通しはいかがなものか、伺いたいと思います。
#102
○周東国務大臣 お話のように、ガットの関係はIMFの支配をかなり受けるわけでありますが、この国際通貨基金の会議等におきましては、御承知の通り、国際収支の関係から見て輸入制限とか関税の問題についてはだんだんとこれははずされている。ことに、日本等におきまして最近外貨準備も非常にたまってきたことに対しては、かなりきびしい批判をしておることは御承知の通りであります。国際収支の関係から見ても輸入制限なり関税の問題についてはあるいは一応日本もはずされることになるかもしれないが、しかし、御承知のように、二十五条なんかでこれが承認を要求した場合において、私は甘くはありませんけれども、これはかなり主張もいれてもらえると思うのです。そのことは、英国、ドイツ、フランス等におきましても、大体農産物について、米、麦、畜産製品というものがやっぱりはずされておるということであります。こういう意味においては、十分日本も十三条の規定によって国際競争をやり得る程度に日本の生産性を上げ、生産の改良をやるという努力、また価格支持政策等いろいろな施策をやって、なおかつ値下がりがして非常に困るという場合においては、当然私はIMFの承認を得つつやっていけるもの、かように考えております。
#103
○倉成委員 これらの問題については、見通しの問題でありますから、これ以上申し上げませんけれども、最近の世界経済の動きあるいは欧州市場の動き等を見ますと、あまり甘く見るわけにはいかないのじゃないか。ですから、異常な決意をもってやはり考えておかないと、案外経済の動向というのが強く日本にも影響してくるんじゃないかということを考えますので、これらの点については慎重な御検討をいただきたいと思います。
 時間がございませんから、最後に御要望申し上げますが、今日の日本の農村の中には、非常に暗い面だけではなくして、与えられた条件、あらゆる悪条件の中でも相当な収入をあげてどんどん伸びつつある経営があるわけであります。これらの経営が困っておるというのは、ちょっとした制度上の問題で、金融上の問題で困っておる。これらの阻害条件を除去してやりますならば、まだまだ伸びる余地があるし、そんなに暗いものではない。これらのひとりでどんどん伸びつつある農家の姿を正しく認識していただきまして、これらの農家がもっともっと伸びるように、また、これらの農家と同じようにほかの農家もまた伸びていけるように、一つ大臣は御配慮をいただきたいと思うのであります。試験場の技術等も、これらの実際やっております農家の姿を参考にしていただきまして、これから日本の新しい農村を建設していただきたいことを御要望して、一応私の質疑を終わります。
#104
○坂田委員長 次は、玉置一徳君。
#105
○玉置委員 昨日午前中におきまして池田さんがおいでになりまして、総理は、農業には格別の留意を払うのだ、工業やその他の産業に比べておくれておるから、二倍、三倍の力を入れるのだというお話がございました。私も民社党を代表いたしまして農業基本法につきまして若干の質疑を試みたいと思っておりましたが、いずれまた時期もあるだろうと思いますので、本日は若干の問題につきまして農林大臣その他の皆さんに御質疑を申し上げまして、お答えをいただきたい、かように思う次第でございます。
 そこで、まず第一に、政府の農業基本法の施策の目標でありますが、他産業従事者との格差をなくして、他産業従事者と均衡する生活の享受を目的としているのは、その第一条に掲げられているわけであります。ただいま倉成先輩議員からも御質問がございましたが、若干重複いたしますけれども、所得の均衡というような端的な表現を用いずに、わざわざあいまいな生活の享受というような表現をお用いになったのは、その理由は一体どこにあるのか。所得の均衡ではなかなか達成がむずかしいからお避けになったような感じがするのであります。それと同時に、この均衡はどういうようにして比較を測定されるのか、政府ははたして数字でよくこれを比較し表現する御自信があるかどうか、この問題につきまして農林大臣の御答弁をいただきたいと思います。
#106
○周東国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、所得だけの均衡を是正していくということでは、私どもは狭いと思います。御承知のように、生活環境あるいは教育の施策あるいは医療費の問題、あるいは電灯設備とか上下水道とかいうことは、つまり、所得というものとは直接関係なく、しかもそれは農村の人々に対してはぜひ必要だ、それがないために都会の人々とも生活上非常に違った環境にあるということで、むしろ所得プラスそういう生活環境というものを含めて、生活全体にわたって均衡を得せしめるように差を縮めていこう、こういうことが私どものねらいであります。
#107
○玉置委員 所得の格差を縮めていくだけでも並み大ていのことじゃありません上に、まして、いわんや、僻地僻村の農家の環境まで含めて変えていこうというようなことは、非常に覚悟はけっこうでございますけれども、なかなかむずかしい問題だと思うのでありますが、そういうように一つ御努力をいただくことを希望いたしまして、次に移りたいと思います。
 これもただいまお話がありましたので重複いたしますが、問題の出発点になりますのでもう一度お答えをいただきたいと思うのですが、基本問題の答申では、都市的要素を除いた地方町村の勤労者の家計支出と農民のそれとを比較することに大体傾いておったように思いますが、首相もまたたびたび本会議、予算委員会等でこのようにお話をされたと思うのですが、ただいまもそういうように話されたと思いますけれども、政府部内においても若干意見があるように聞いておりますが、最後の明快なお答えを一ついただきたいと思います。
#108
○周東国務大臣 これは別に政府部内は違っておらないのでありまして、一つの中心は、先ほども申しますように、比較さるべきものは、農村の農業者とあるいは全国の製造者の従事員との賃金比較、収入比較というものが一つ大きく考えられます。しかし、いろいろな点において問題もたくさんありますが、最終的には、それらは、今度できまする法律に基づく審議会等において、各種の資料に基づいて、最も妥当なところで決定をしていきたい、かように思っております。
#109
○玉置委員 どういうところが妥当であるかどうかはそのときの話にいたしまして、次に、農業基本法の目的でございます。
 農業というものは、いわゆる農業外の産業との均衡をはかる、その農業経営というのは、ほぼ一町五反あるいは二町五反、場所によって異なりますが、自立経営農家の農業経営を政府は示しておいでになると思います。これ以外の経営は、先ほどからいろいろお話もありましたが、構造政策で自立経営に達し得るもののほかは、兼業を含めまして一定の所得を付与する産業政策を考えることが困難であるという理由で、基本問題の答申ではこれを政策対象から除外されておいでになるというようにいわれておりますが、この点は事実かどうか、御所見を承りたいと思います。
#110
○周東国務大臣 これは、玉置さんのは誤解でありまして、私は、農業として見る場合においては、いわゆる自立経営農家の営む農業も、兼業農家の営む農業も、これを最も効率的にその生産を高めるように努力して、同じように持っていきたい。ただ、これは、農業だけで暮らしていけるような農家を一面育成することが一つの目標でありますけれども、だからといって兼業農家の営む農業は捨てておくということではございません。当然これも育てていかなければなりません。ことに、私ども、兼業農家の農業部門について協業ということが行なわれるだろうと言っておるのは、われわれもその点についてはしっかりした助長政策はとります。そうしないと、兼業という形に現われた農業というものは、とかく、ほかの方の収入が多ければ、形式的に自分の食糧だけ取ればいいという格好になって、非常に非効率的なものになる。そういう意味において、同等な資格で農業自体については育てていきたいと考えております。
#111
○玉置委員 兼業農家も同等な資格で育てていきたいという御答弁でございますが、御承知の通り、昭和三十五年の農業センサスにおきましては、五百八十万農家のうち、専業農家が三四・三%、第一種兼業農家が三三・六%、第二種兼業農家が三二・一%を占めております。しかも、年々第一種兼業農家は第二種兼業農家の方へ増加していくというのが統計の示すところでございます。この専業農家三四・三%の中にも非常に零細な農家も入っておると思います。ただいま大臣から、兼農業家も同等に重く見ていくのだというお話がございますけれども、一番大事な生産性を高めるという問題、日本の農業を近代化するという問題につきましては、兼業農家が全部育っていくようなことでは、政府の御期待に反するのではないか。政府は、なるべく兼業農家は転職をしてくれて、人口の減ることをこいねがっておるように文章では見えるのでありますが、もう一度この辺につきましてお答えをいただきたいと思います。
#112
○周東国務大臣 私はそういうことを申しておるのじゃなくて、兼業農家といえども将来農業に関しては効率的にその農業を行なえるように指導していくということを先ほども申しております。別個の意味において、農業だけで立ち行く自立経営農家を作るというのが一つの方針である。しかし、それに対する指導なり方針というものは、兼業農家を効率的に育てていこうということとそれは同じだろうと思います。お話のように、さらに専業農家にも小さい方がおられる。これはできるだけ規模を拡大しつつよりよくしていこうということが入っております。ただ、統計の示すところは、玉置さんのお話のように、ちょうどまん中の第一種兼業は規模の大きい方に移るのだ、上下ということはおかしいのですが、第二種兼業に移動するものと専業農家に移動するものと二つに分かれて、中間が減ってきつつある現況です。こういう面におきましては、一面には労働人口として外へも出ましょうし、ある場合には、半分は専業農家の方へ移って、自分は農業外所得と合わせて所得をとろうという希望もありましょう。いろいろその点はあるのでありますが、政府は、各人の意思に沿うてこれを育てていこう、こういうことを考えておるわけです。
#113
○玉置委員 そこで、だんだんわからなくなるわけですが、政府は、農業の成長率は年々二・八%、人口の減少を考えて二・九%から五・八%というように御説明を承っておるわけであります。非常な部分を農業構造の改善というところにおかけになっておるのは今のお話の通りでありますが、そこで、兼業農家そのものがそのまま、あるいは零細農家がたくさん自立を希望するということは、近代農業構造を打ち立てようと思われ、生産性を高めて所得を均衡化されようと思われる政府の施策と食い違う、と言っては言葉が悪うございますけれども、若干希望しないところじゃないかということは言えると思うのですが、この問題は、言いにくい問題だと思いますので、このくらいにしておきます。
 昨今の農業統計の示すところによりますと、就業人口は他産業の高度成長の影響を受けましてどんどん減って参りますけれども、農家戸数はその割には減っていかない。ここ十年もたてば思い切って減る段階があるいは来るのかもわかりませんけれども、農地信託とかそれくらいの施策では、先ほど申しましたような政府の期待にこたえるほど減らないのじゃないかというように思われます。そこで、先ほど申しました、何と申しますか、専業も兼業農家も同等に農業自体としては考えていくけれども、農業経営としては減った方がいいのだという御意見ですが、政府は、現実にはあと十年近くはその農家戸数の八割くらいを好むと好まざるとにかかわらず現有するであろうと思われる兼業農家もしくは零細農家に対して、この基本法でどういうふうに位置づけておいでになるのか、どういうふうに対処しておいきになろうとしておるのか、御所見を承りたいと思います。
#114
○周東国務大臣 先ほど申しましたように、兼業農家についても、一ぺんに基盤を増加して自立経営農家にするということも、これはなかなか困難があります。また、地域的にも困難があります。そういうものについては、一つは協業形態というものも、希望されればそれも指導して参ります。できるだけ農業経営の規模において、農業自体に関する共同というところまでいかなくても、それらの農家の生産物の共同加工、共同販売というところまで進めていくことが必要である。また、それらの農家の持つ農地に関する土地利用並びにそれに対する機械化、あるいは技術の導入ということは、これは同様に考えていかなければならぬわけで、これらによって生産を高めるということは当然考えていっていいわけであります。また、それに対して必要なる資金の融通ということも考えていくわけであります。今、玉置さんは、ときどき、減ることが希望であろうというお話ですけれども、私どもは決して計画的に何ぼ減らそうというのじゃない。要は、この点は私は国民としてこの認識の上に立たなければいかぬと思うのは、全産業の高度成長のもとでいかに農家の収容人口一人当たりの生産を高めるかということは、今まで過剰労働投下のもとにあって零細の土地を耕していくというところに一人当たりの生産性が低かったのでありますから、その点を社会党さんの方も皆さんもお考えになっていただきたい。農業の近代化、機械化、合理化ということを言われるけれども、人がたくさんおってはできない。しかし、今までは、私どもほんとうに農村に対して近代化、合理化をした形に持っていきたかったのですけれども、何らの就労の機会も与えずしてそういうことをやりましては、それこそほんとうに農民のことを考えないことになります。私は、現在の日本の経済の高度成長のもとにあって、国民経済の発展から見て、自然に動いていくことに対しては助長していくことがよろしい。その契機をとらえてほんとうに農業に対する近代化を行なうことが農村に対する政府としての親切な行き方だと思います。外へ出ることは日傭取りになることじゃないかということがよく言われますが、私は、その辺はよく考えていかなければならないと思います。ほかへ動いていく場合には、できるだけ就労の機会を与え、その方の賃金政策を考えていくこと、これは私ども農林省だけで考えるのでなくて、すべての関係省が軌を一にして考えていこう、こういうふうに思っておるわけであります。
#115
○玉置委員 そこで、お尋ねしたいのは、ことに僻地でありますが、土地反別が少ない割に農家が外へ出ようにも出にくいというところが多いと思いますが、こういうところの零細なしかも専業農家が自立を希望するようなときに、全部が自立を希望する、あるいは多くの部分が自立を希望するということでは、非常に小さい反別しか渡らぬ。こういうときにはおそらく酪農をその他の企業別の専業農家ということをお考えになるのだろうと思いますが、こういうものの選考基準というものが、みなが希望したときには、今のお話のように希望によってということになると、どういうことになるか、なかなかむずかしい問題だと思いますが、時間の関係でこれは省略いたしましょう。
 そこで、問題は、政府の基本法における考えは、いわゆる安定した自立経営農家を作ろうということがねらいなのか、あるいは、今の僻地でわかりましたように、基盤の完全に整備された拡大された圃場を持ちまして、そこで安定した近代農業を打ち立てようというのが主目的なのか、その点について御意見を承りたい。
#116
○周東国務大臣 将来の方針としては安定した農業を打ち立てたいということであります。その経営形態においては、家族農業をまず原則的に考えていきたい。そして、ものにより、地方により、希望によりまして、協業形態も考えるということであります。あくまでも目標は安定した農業を打ち立てるということであります。
#117
○玉置委員 自立経営の問題は最後に譲るといたしまして、これら自立経営農家の目標に到達していない専業農家が農地を入手せんとして非常にたくさんの資金が要ると思うのです。いわゆる自立経営の目標である場所によって変わります一町五反ないし二町五反というような反別をその人々が入手するにつきましては、きょうまでの自作農創設維持資金とか、あるいは農地の信託というようなものを倍にするくらいの施策では、とうてい及びもつかないと思います。従って、こういった農地の移動にどの程度の資金の需要が想定され、これをどのような方法で調達して農家の用に供しようとしておいでになるのか、大臣じゃなくてけっこうでございますから、わかっておいでになりましたら、一つ教えていただきたいと思うのです。
#118
○周東国務大臣 ただいまのところは、今の自作農創設の維持資金に関しましては、御承知の通り、本年度予算は百三十億のワクを百六十億に広げております。また、これらの農地の取得関係におきましては、お話のように、農業協同組合に信託制度というものをしきました。これは、別にこれによってできるだけ農地を取り上げるという意味でなしに、みずからほかの方へ行くという場合に、農地の移動に関して容易にするため、及び、その間にある程度時間がかかりましょうから、農地を農業協同組合に預けて、そうして使用させつつ金を払うというような機会も作ったらいいじゃなかろうか、こういうことを考えておるわけです。しかし、私どもは、この金だけで十分であるとは思いません。ことに、農地の造成等に関しましては、たびたび野党の方々からお尋ねもあり、また与党からもその点を心配して尋ねておりますが、これらは、今後におけるしっかりした土台に立って、さらに将来における各農産物の需給の見通しの上に立って、土地改良、開墾、干拓がどれだけ必要であるか、ことに、畜産につきましては、耕地と違って草地という関係におきましてはある程度粗放的な土地でもいいわけで、この点、よく野党の方が、外国では日本と比べて農地というものがパーセンテージにおいて多いという話ですが、これはかなり粗放的な牧野が非常に多いのでありまして、こういう面につきましては、私どもも、新しい施策の実行にあたって、必要なる草地の造成その他については十分に考えて、これを実行に移したい、かように考えております。
#119
○玉置委員 ただいま自作農創設維持資金のお話がございましたが御承知の通り、これが三十万円増額されるわけですが、五反歩、一町歩というようなものを入手しなければその目標に到達し得ないような農家が多いと思います。自作農創設維持資金のごときものでは九牛の一毛にもすぎないような格好でございまして、これだけの巨大な需要をまかなうのには、系統金融機関の利用というようなことではほど遠い、こういうように思います。さらに、資力のある富裕農家にしか貸せないような今の形態では、富農を助長するだけでありまして、ますます格差が開いて、階層分化が促進されるだけじゃないかということが心配されるわけです。そこで、私は、いつかもお尋ねいたしましたが、これだけの巨額な資金の需要に応じるのには、発券銀行でありますような土地の不動産を対象とする土地銀行というのを作って、これの資金の調達をはからなければ、しかもそれは不動産担保によって現在の中農でも小農でも借り得るような仕組みにしてあげなければ、とうていこの大事業が遂行できないと思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
#120
○周東国務大臣 農地担保金融制度を確立したらどうかという声はいろいろの方面からも聞くのでありますが、これはよほど慎重に考えたいと思うのであります。一面においては農地を担保にすることによってかなり金融の面がうまくいく場合もありますが、従前農地担保金融というものがあって、それがため土地を失った者がたくさんある。これは、あまり融通を便にしておくと、また農地を失うというようなこともありまして、私どもは、農地担保金融制度の確立については十分慎重な態度をとって研究したいと思います。
#121
○玉置委員 それでは、次に生産性の向上についてお伺い申し上げたいのであります。政府は、国の農業政策の目標の中で、他産業との格差が是正されるように農業の生産性を向上させるということをうたっておいでになるのでありまして、これが大きな柱の一つだと思います。そこで、先ほども話がございました通り、政府は、自由貿易の促進ということを認めながら、その前提にお立ちになりましてこの基本法をお考えになっておいでになるわけでありますから、この生産性は、ここにうたう国内他産業との格差の解消だけでは、政府の意図するところが十分じゃないのじゃないか。主要な食物につきましては、おそらく外国のそういうものとの格差を縮めることもお考えになっておると思いますが、御所見を承りたいと思います。
#122
○周東国務大臣 その点はお話の通りであります。私どもが、国際的競争に耐え得るように農産物の生産性を高め、生産コストを引き下げていく、そして農家の手取りをよけいにするということをねらっておるのは、その点でありまして、あくまでも国際競争に負けぬような生産性の高いものを作っていこう、こう思います。
#123
○玉置委員 大臣からそういうようにお答えをいただきましたので、それに関連して、続いて二つ、三つお伺いしたいのですが、日本農業の生産性の低いのは先ほどからも御説明があった通りでありますが、この解決がなかったら、生活の向上も、ここで基本法のいう所得の均衡も全く考えられない。この解決が大前提だと思います。
 そこで、お尋ね申し上げたいのですが、過小農地の解消と分散農地の解消のための基盤整備がまず近代化の前提となっていることでありますが、ある程度の基盤整備の可能面積は日本の約何分の一程度で、これをすみやかに実施せなければ所得の均衡も絵にかいたもちでありますが、約十年間に実施するとすれば、どのくらいの資金を必要として、大臣はこれだけの資金を計画の中に組めるだけの御決心があるかどうかということにつきまして、お答えをいただきたいと思います。
#124
○周東国務大臣 お尋ねは二つだと思いますが、第一の、今後日本の土地で可耕地として変更し得るものはどのくらいあるかということでございますが、これは今調べて事務当局の方から答弁させます。しかし、私ども、その一つに関連してお答えいたしたいことは、可耕地にかえ得る土地がどのくらいあるかということは、即それだけを農耕地あるいは牧草地にかえろということにはならぬと思います。これは玉置さんもそういうお考えではないと思います。私どもは、ただいま所得倍増計画の中に現われました農耕地造成ということに関しましては、ただいまの一応の構想という関係では、一兆円投下して、現在大体六百何十万町歩、それを三十万町歩ぐらいふやす。このことは、絶えずお話し申し上げておるように一応の構想でございまして、私、この職を奉じまして以来、今日農業基本法を提出いたしますまでに、いろいろ、畜産その他について伸ばし、果樹を伸ばす、こういう新しい構想のもとに、今後いかなる地域にこれをふやしたらよろしいか、また、現在のままでの土地改良その他土地の生産性を高めることによってまかない得ないのか、こういう問題を慎重に考慮しまして、さらに新しい構想のもとに必要なる土地面積というものを考えて、それに相当する財政的措置を考えていきたいと考えております。
#125
○玉置委員 先ほどの問題はあとでお知らせをいただくといたしまして、そこで、基盤の整備の前提であります土地改良のためにも、また、ここにうたいます土地の集団化のためにも、現在やっておいでになります交換分合の促進や、今度の農地の農協への信託程度では、とうてい所期の目的を達し得ないと思うのです。しかも、その間に第二種兼業がかなり多く数を占めておりますし、基本法案でも、またこれら兼業農家、零細農家に対する施策でも、離農を希望するのみで、何ら積極的なあたたかい気持を示しておるようには見受けられないわけであります。現行法のもとでは、なおさら、この大きな圃場を作るというような土地改良が困難じゃないかと思われる。そこで、大臣は、これに対して、現行土地改良法を改正して、一定地域においでになります方々が自発的にある数以上の数でもって希望なさるときは土地改良、基盤整備というものが行ない得るというような改正をなさるような決意があるかどうか、お伺いしたいと思います。
#126
○周東国務大臣 土地改良法についてこれを改正する意思があるかということは、この間も社会党さんの方からお尋ねがありました。私ども、これには相当再検討してメスを入れる必要があると思います。御指摘のように、現在の土地改良法でやっております国営、県営の土地改良がなかなか進捗せず、また、せっかくできましても、負担問題等でまだ最終的にうまくいっていない。また、多くの場合、国なり県の計画に基づいて、農民の方々の御意思と違った形において進められておるということもあるやに聞いております。ただいま玉置さんのお尋ねのように、地元農民の方々がかくすることがよろしいと地元農民の方々の盛り上がる気分の中から出て参ります線に沿うて、国、県がどういうような処置をとるかということによってやっていくということは、一つの行き方かもしれません。これらについては、よく検討いたし、土地改良法についての改正ということは必要であり、また、やっていきたいと思っています。
#127
○玉置委員 同じく、基盤整備の前提についてでありますが、先般お伺いしましたところによりますと、でき得れば一圃場三十町歩くらいな程度にまで拡大したい、トラクターも利用して大いに近代農業を打ち立てたいというようなお話を承ったのでありますが、今の小さい一筆一所有の形ではこの基盤整備にも非常に阻害を来たすのじゃないか、かように思われるわけでありますが、共有権というような形態もあり得るわけで、何らか所有権に対する法制上の規制をされるような、あるいは新たな形を創設されるようなお気持はないかどうか、お伺いしたいと思います。
#128
○周東国務大臣 これは、私ども、先ほど申しましたように、土地の利用効率を上げるということにおいて、共同耕作する場合において深耕という問題でトラクターを利用するというような場合に、小さい面積では非常に経済効率が悪い、資本を寝かせるというようなことで、そういう場合を考えつつ農業協業というものも考えておるわけであります。また、場合によりましては、今度、麦作等に関しまして、労力節約という立場から、必ずしも法人の形にならなくても、耕作、深耕ということについて、所有権は別々であっても、まとめて耕していくというようなこともできるのじゃないか、こういうことが今トラクター等の利用について考えられている点であります。いずれにいたしましても、ただいまの労力節約及び大きな機械を入れるに関して、分散している農場あるいは各個別々に小さい農場でやるという経済的な不利というようなことを考えて、これをどうしたらよろしいかということについて、集団化あるいは法人化、あるいは各人の所有を別々にして耕作を協同組合等で機械を置いてやるというような、いろいろな点を考えておるのであります。
#129
○玉置委員 ただいまの御答弁のような集団化あるいは農家の個々の自発的な意思というだけではなかなかむずかしいのじゃないかと私は思いますので、慎重な御配慮をいただきたい、かように思います。
 そこで、次に、これだけの大きな基盤整備を思い切ってやらねば、近代化も、生産性の向上も、ましていわんや所得の均衡などというものはとうてい望むこともできないわけでありますが、従来の補助率でもってこれを実施しようと考えても、とうてい現在の農家がついてこないだろう、こう思います。昨日も、池田首相は、農業のごとく成長のおそいものには格段の力を入れるのだというようなお話がございました。この点は、社会党さんや私の方も言うておりますが、国の責任において、この基盤整備だけは、きょうまで食糧増産にしりを叩いてやらしてきたのだから、これだけはしてやるのだというお気持があるかどうか。もし万々一、それでは工合が悪いのだ、補助率でやるのだというようなお話でございますと、思い切って補助率を引き上げるだけの決意がおありになるかどうか。この点につきまして大臣の御決意をお伺いいたしたい、かように思います。
#130
○周東国務大臣 この点につきましては、今後の土地造成に関連いたしまして、財政的処置として、その種類別によく検討して参りますが、ただいま何はどうするということをまだ申し上げる段階に至っておりません。
#131
○玉置委員 池田総理大臣並びに農林大臣の御努力をお願いしておきたいと思います。
 次に、関連しまして、近代化資金でございますが、これも、基盤整備と同じで、非常に大きな資金が要ると思います。池田さんも同じようなことをきのうおっしゃっておいでになりましたが、そこで、お尋ねしたいのですが、装備の近代化にはどのくらいの資金が要って、どこからどういうように調達しようという御計画ができておるのかどうか。これこそ資金の調達は系統機関の利用が必要でありまして、これには金利の引き下げのために利子補給の制度もお考えいただきましたが、この程度では、与党議員からも御意見がございました通り、とうてい現在の農家には無理だと思います。そこで、もし昨日池田首相の言われたことがほんとうに心の底から出ているものであるとすれば、中小企業近代化資金になされているごとく、無利子五カ年間の制度がございますのは、農林大臣も御承知の通りだと思います。そういうような意味では、農業の近代化資金は無利子十カ年というものを作るのでなければ、この均衡がとれないと思いますが、これについての農林大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#132
○周東国務大臣 この点については、農業改良資金というものについては同じようなことが実行されておる。しかし、それは農業基本法の制定前のことでありまして、これから皆さんの御審議を得まして農業基本法ができますので、当然、私どもは、資金面についてはさらに現在の行き方に検討を加える必要が出てくると思います。できるだけ安い金を長期にということは、一般の希望であると思います。しかし、その点は、私はこの間も参議院でも申しましたが、現在の池田内閣としては、全体の金利というものに対して、これを国際水準にまで引き下げていくことが、すべての生産、また輸出等に関連して必要なことであるということで考えております。そういうことに関連いたしまして、農業に関す金融並びにそれに対する金利というものについては、十分今後とも考えていきたいと思っております。
#133
○玉置委員 一つ十分の御努力をお願いいたしておきまして、次に、農機具、飼料、肥料その他の農業用資材でありますが、ことに、農機具は、メーカーが作りまして、これを宣伝して農家に売りつける。従って、土地柄若干合わないようなものもあり、あるいはまた耐久力の非常に乏しいもの、あるいは数年にして次の大型に変わっていかなければいけないというものが多々あるわけですが、先進国でもやっておりますように、こういうものは、国立試験場その他で試験をされて、土地々々に応じました規格をお定めになりまして、資材その他をよく吟味された上、これを大量生産をして、コストを下げていく、そして政府のお思いになっているような農業の生産合理化に資されることがいいと思うのですが、これに対しての御所見と、なお、これに関連しまして、農家の使用する農機具、飼料、肥料その他のいわゆる若干意味は違いましょうが関連産業は、できるだけ農家の団体をして行なわしめ、その施設の指導、助成ということをおとりになることが望ましいと思うのでありますが、しかも、にわかに実施し得ないような場合には、これに経営参加、あるいは運営参加というような制度を開いてお置きになることが望ましいと思いますが、以上の点につきまして大臣の御所見を承りたいと思います。
#134
○周東国務大臣 今後の農業に関して、機械化ということを促進しなければなりません。その意味において、私も機械の問題については特に関心を払って今後施策をしたいと思います。現在におきまして、政府には鴻巣試験に優秀な技術官がおって、機械の研究もやり、検査もいたしております。しかし、よく言われるように、どうも今日機械メーカーというものはずいぶんたくさんあって、ことに小機械に至っては毎年々々変わっていく。これはそう変わらなければならぬものか。あまり目まぐるしい変化をやって、農家はその宣伝に迷う、そうして資本が寝るというようなことは、経営上非常に考えなければならぬ。そういう面について、むしろ国が鴻巣試験場等の規模を拡大して、その土地、地方によって、どういうふうな土壊の関係においてトラクターにしろどういうものが一番いいのかということまでのたとえば研究を進めつつ、しっかりした研究の結果を取り入れて製作させて使わせるという方向にいくことが望ましいと思うのです。しかし、別のものをもってやるということは、ちょっと現在の自由経済のもとではいきません。そういう問題についてどうするかということについても十分考えて参りたい、かように考えております。
 肥料とか農薬等に関しての御指摘であります。これは、現在、配合肥料等については、農業者団体が行なっておるところもありますし、あるいは一部製造工業に出資の形で参加しておるところもありますが、これは微々たるものであります。しかし、農業団体が設けることも、施設の関係においてなかなか急に参りませんし、むしろ、今日においては、三肥料、硫安肥料、燐酸肥料、カリ肥料等において、できるだけ生産コストを低くし、生産を合理化して、安い肥料を供給させるように、目下硫安については農林省からある案を示しつつこの方向に向かっております。近く結論が出ると思いますが、これは、従来と違った形において、いつまでも合理化で延びているばかりではだめだ、一定の年限を限って合理化をして、しかもその合理化というものが如実に価格に現われるようにしてもらいたい、それ以上合理化ができなければ安い硫安を輸入したらいい、こういうところまでの決意をもって臨んでおります。カリ並びに過燐酸肥料は、ともに原料が外国で、日本にありません。それで、これらについては進んで必要量の輸入増加をはかっていきたい、かように考えております。
 農薬等についても、製薬会社、これはだいぶこのごろ特許が高いようです。そういうような面について、どういうような形に持っていくかということは、研究させております。特許料がだいぶ高いので、これが価格の大きな部分を占めておりますが、こういう点について何らかの対策を見出したいと思っております。
#135
○玉置委員 生産と流通につきまして一言御意見をいただきたいと思うのですが、政府は、需要及び生産の長期見通しをうたいまして、この上に立ちましていわゆる成長財の選択的拡大生産を言っておられるわけであります。それぞれ市場価格により農産物の価格の安定するよう操作することになっておりますが、なるほど、安定基金その他でもって価格の支持をおはかりになってはおいでになりますけれども、以上のような生産方式と価格流通方式をとられておいでになります制度では、せっかく作った農産物の生産費を償うような価格でもって安定せしめるということはなかなかむずかしいことじゃないか、かように思います。従って、私どもが言うておりますように、長期需要の見通しのもとに長期生産計画を立てまして、成長財につきましては、フランスのごとく、あらかじめ長期にわたり予示価格を示すぐらいの思い切った施策が示されなければ、なかなかむずかしいのじゃないか。しかも、これを農協の系統機関を利用して計画出荷せしめ、市場も、農協にやらせるか、やむを得ない場合においても経営に参画せしめるくらいの思い切った流通機構の改革をやらなければ、またまた従来通り農家は豊作貧乏から脱却することができないのじゃないか、かように思います。政府は、この選択的拡大ということと、それから市場の自由な需給価格の制度とでよく農家所得を確保していくだけの自信がおありであるかどうか、御所見をお伺いいたしたいのと、ついでに、最近巨大資本が陸の面に上がってきたり、酪農の面に進出したりしてきておりますのは、きのうもきょうも問題になっておりますが、こういう工合では、農民はいつまでも素材を提供するだけで、利益はほかの者が取っていくという形が続くのじゃないかということを心配いたします。基本法ができまして農家所得の向上のために思い切った手を打っていこうという御決意のある政府は、何らか、これを規制するなり、逆に違う方を思い切った奨励策をとるなりする御決意があるかどうか。この二点について大臣の御所見をお伺いいたしたい、かように思います。
#136
○周東国務大臣 御心配の点はまことに私は同感であります。かるがゆえに、農産物につきまして、農業者団体の積極的な団結力による生産の自己調整なり出荷の調整によってこれに力をつけることが必要であり、そのために、私どもは、農業協同組合等の助成、あるいはそれに必要な措置はとるつもりであります。私は、これこそ農村がやらなければならぬ第一の仕事だと思います。いたずらに外の関係だけをけしからんと言っているよりは、みずからの力を強めてそれに対抗するくらいの覚悟がなくちゃならぬ。それに対して政府は大きく農協等の助成はいたしていくつもりであります。一面、かくのごとくいたしましても市場に関する不公正な取引、この間からときどき新聞をにぎわしております、たとえば農産物取引市場においてどうも仕切りの改ざんが行なわれているというようなことは、監督制度が抜けていると思う。こういう面については将来とも徹底した監督を行なうと同時に、中央市場等についても市場法の改正をする必要もありましょう。また、それらの市場における需給関係の情報センターといいますか、通報機関というものを置いて、協同組合等が出荷する態勢において常に市場を見て出荷するという方向で持っていかなければならぬ。もう少し農村も農業協同組合が価格的に動くという形になるように、私どもは指導して参りたいと思います。
 それから、第二点のお尋ねは、どうも、大資本が出てきて、せっかくやろうとする成長農産物に先に手をつけやせぬかということであります。これは社会党の方も大変心配しておられますが、私どもも心配しております。しかし、これもやはり、生産者団体がしっかりしてもらう、その上で私どもは指導していきたいと思う。これはできることです。ことに、伸ばそうとする畜産物に対して一番大事なことは、生産管理、あるいは出荷についての調整、行く行くは生産者団体において加工段階くらいまでやるようにすることが必要だと思います。それがために、やりやすいように、ことしの予算等において指導することは、主産地養成というような言葉を使っておりますが、畜産物におきましては、豚を飼うにいたしましても、わずかずつ飼っておるものから集荷していくことは集荷費用を高めることになりますので、むしろある地帯においては相当まとまって飼育させるような方法をとる、多頭飼育をさせていく、そこでまとまって生産をあげて、市場と対抗するということでなければ、わずかずつ作っておる者はたたかれます。こういうことをやらせるということが、私ども意欲的な将来の生産者団体に対する措置であります。こういうことをやりつつ、なおかつ価格が下落するという場合には、畜産については畜産事業団の設定によって買い上げ・売り渡しをやっていくということを考えておるわけであります。
#137
○玉置委員 だんだん終わりに近づいたのでありますが、政府の基本法において一番目立つのは自立経営でありますが、ここにいう自立経営とは、今のような自立経営をお考えになっておいでになるのか、自立経営そのものが今までと変わってくるのではないか、こう私は思うのですが、これに対する御所見をいただきたいのと、農村から離脱いたします離農者に生活保障の制度を立てていただかなければ、職業の訓練等だけでは、これからだんだん年輩層に移って参りますと、だんだんむずかしくなるのではないか。家族の問題もございます。そのことにつきましての御所見をお聞かせいただきたいのと、それから、先ほど大臣もおっしゃいましたように、これは、政府が上から渡すべきものではなくして、下から盛り上がった力でこの農業改革を遂行していかなければ、とうてい所期の目的を達することができないのではないか。いわば農家の精神革命とも言うべきものでありますので、これをどういうように持っていこうとお考えになっておるのか、御意見を承りたいということと、それから、いずれにいたしましても、基本法は宣言立法でありますので、詳しくは関係法案が出そろった後でなければ十分な審議はほんとうはしにくいのではないか、こういうこともお考えいただいて、早く関連法案をお出しいただきたいと思うのですが、その見通しと、最後に、この基本法の思想に流れておるのは、合理主義なのか、農本主義なのか、社会主義なのか、それのごっちゃにしたものなのか、その点についての大臣の御所見を承りたいと思います。
#138
○周東国務大臣 第一点は、現在の形の自立経営をやるのか、変わるのかというお尋ねであります。私はちょっとその御質問の趣旨をとりかねるのでありますがおそらく今のような過小農形態のまま自立させるのかというお尋ねかと思います。これは当然できません。私どもは、基盤も拡大しつつ、しかも近代化ということが大きな問題だと思っております。そうして、各農業就労人口の一人当たりの生産性を高めていくということが必要であります。このことはどうしてもしっかりした柱として立ててやらねばならぬと思います。そういうことをやりつつ、しかも就業構造、農業構造というものも改善しつつ、そうして生産性を高め、そうして生産の増大をやる、その増大は成長生産物というものに拡大していく、こういうことによって自立し得る農家を作りたいということであります。今の形態のままで行こうとは思いません。
 第二の点は、離農者に対して生活保障をされないかということであります。これは、私どもたびたび申し上げますように、別に弁解でも何でもないのですが、こちらから積極的にお前やめろということで計画的にやめさせるのではありません。そういうことをやれば、これは何とかしなければなりません。どこにも就業させないのに職を離すということになれば、補償を考えなければなりませんが、しかし、現在の動きに沿うて当然他産業に移動していく場合に、その移動していく人々に対して、あらかじめ、より有利になるように職業訓練なり技術訓練なりをしつつ、離農しやすいようにしてあげようということでありまして、今直ちに補償というようなことは考えておりません。
 それから、新しい農業経営関係等に対して、下から盛り上がるということが必要だと思うが、どういうふうにやっていくかというお尋ねであります。これは、あくまでも私どもは自発的にという言葉を言っておりますけれども、私どもは、将来における各農産物についての需給の見通しを立てて、かくあるべしという一つの見本を示すわけであります。それに対して、それはその通りであるという納得をさせるためには、十分これらの理解を求める必要があるし、それをやるについて、畜産あるいは果樹等につきましては、先ほどお話ししたように、ただ単にこれを今やれと言ってもむずかしい。また、事実できないのであります。それにはどういうふうにするのがよろしいかというと、当然一つの目標に基づいて農業改良普及員を使うつもりであります。特技を十分おさめさせつつこれを指導していき、一面には農業者に対しても畜産、果樹等の技術の修得をさせていきたいと思っております。それらを修得させ、いろいろな理解のもとにこれはやっていこう、こう私は思っております。
 宣言立法であるから、いろいろ関連立法を早く出してくれということですが、大体、今国会におきましては、必要な法制は農業災害補償を除いて全部出ております。むしろ必要なのは、法律が通った後において、各種の施策を政府がやるということを言って、これに対して法制上の義務をつけておりますから、この法制が立法化されていくことによって、農村はよりよく発展していくと思います。これらにつきましては、法制のできました後におきまして、それぞれの必要に基づいて進めて参るつもりでございます。
 最後のお尋ねは、農本主義か、合理主義か、社会主義かという問題ですが、これは、農本主義でも重農主義でもない、日本経済全体として考えて、農業はその全体の発展の中で他におくれをとらぬようにこれを発展させるということが私どもの趣旨であります。ほかの産業はどうなってもよろしい、農業だけが進めばよろしいということじゃなく、全体の産業発展の中で農業はそれにおくれをとらぬように発展させる。それには、農業自体においてやらねばならぬこともあり、他の労働関係あるいは賃金関係においてやっていくこともあるし、あるいは医療制度、社会保障制度によって救うていく。これは一方に片寄っていくことのないようにいたしたいと思います。
#139
○玉置委員 私が自立経営と申しましたのは、今の自給自足のにおいの非常に強い自立経営と誤解されるおそれが非常に多いのではないかということを思いましたので、ああいうことを質疑したわけでございます。
 長時間にわたりまして御答弁をいただきまして、ありがとうございました。
#140
○坂田委員長 明日午前十時より農業基本法案に対する質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三分散会
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト