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1960/04/25 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第33号
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1960/04/25 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 農林水産委員会 第33号

#1
第038回国会 農林水産委員会 第33号
昭和三十六年四月二十五日(火曜日)
   午前十一時四十一分開議
 出席委員
  委員長 坂田 英一君
   理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君
   理事 小山 長規君 理事 田口長治郎君
   理事 丹羽 兵助君 理事 石田 宥全君
   理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君
      安倍晋太郎君    飯塚 定輔君
      金子 岩三君    亀岡 高夫君
      川村善八郎君    小枝 一雄君
      田邉 國男君    舘林三喜男君
      谷垣 專一君    中馬 辰猪君
      綱島 正興君    内藤  隆君
      中山 榮一君    野原 正勝君
      福永 一臣君    藤田 義光君
      本名  武君    松浦 東介君
      八木 徹雄君    米山 恒治君
      片島  港君    北山 愛郎君
      東海林 稔君    中澤 茂一君
      楢崎弥之助君    西村 関一君
      山田 長司君    湯山  勇君
      稲富 稜人君    玉置 一徳君
出席政府委員
        農林政務次官  八田 貞義君
        農林事務官
        (大臣官房審議
        官)      大澤  融君
委員外の出席者
        専  門  員 岩隈  博君
    ―――――――――――――
四月二十五日
 委員亀岡高夫君、米山恒治君及び淡谷悠藏君辞
 任につき、その補欠として福永一臣君、綱島正
 興君及び東海林稔君が議長の指名で委員に選任
 された。
    ―――――――――――――
四月二十二日
 水産物の価格の安定等に関する法律案(角屋堅
 次郎君外二十三名提出、衆法第二九号)
 農産物価格安定法の一部を改正する法律案(芳
 賀貢君外十一名提出、衆法第三〇号)
 飼料需給安定法の一部を改正する法律案(芳賀
 貢君外十一名提出、衆法第三一号)
同月二十一日
 農業基本法案(内閣提出)反対に関する請願(
 足鹿覺君紹介)(第二七七七号)
 同外八十六件(川上貫一君紹介)(第二七七八
 号)
 同(川俣清音君紹介)(第二七七九号)
 同外八十六件(志賀義雄君紹介)(第二七八〇
 号)
 同(東海林稔君紹介)(第二七八一号)
 同外八十五件(谷口善太郎君紹介)(第二七八
 二号)
 同(吉村吉雄君紹介)(第二七八三号)
 同(中澤茂一君紹介)(第二八六四号)
 農業災害補償制度改正に関する請願(岡田修一
 君紹介)(第二七八四号)
 同(永田亮一君紹介)(第二七八五号)
 同(河本敏夫君紹介)(第二八六二号)
 同(福永一臣君紹介)(第二八六三号)
 国有林払下げに関する請願(池田清志君紹介)
 (第二七八六号)
 麦対策に関する請願外一件(久保三郎君紹介)
 (第二七八七号)
 農業協同組合合併助成法案に関する請願(松本
 一郎君紹介)(第二七八八号)
 同(山手滿男君紹介)(第二九八〇号)
 大豆価格及び豆腐業安定に関する請願(大野市
 郎君紹介)(第二七九〇号)
 同外百七十一件(田中榮一君紹介)(第二九八
 二号)
 同外三十件(福田篤泰君紹介)(第二九八三
 号)
 酪農経営安定策確立に関する請願(中澤茂一君
 紹介)(第二八六五号)
 同(松平忠久君紹介)(第二九八四号)
 公有林野等官行造林地の森林開発公団に移管反
 対に関する請願外八件(小松幹君紹介)(第二
 八六六号)
 同外五百四十三件(下平正一君紹介)(第二八
 六七号)
 同外十件(高津正道君紹介)(第二八六八号)
 同外三件(二宮武夫君紹介)(第二八六九号)
 同(森本靖君紹介)(第二八七〇号)
 同外百六件(山本幸一君紹介)(第二九八一
 号)
 同外四十四件(有馬輝武君紹介)(第三〇〇〇
 号)
 同(岡良一君紹介)(第三〇〇一号)
 同外二百六十四件(角屋堅次郎君紹介)(第三
 〇〇二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付し案件
 農業基本法案(内閣提出第四四号)
 農業基本法案(北山愛郎外十一名提出、衆法第
 二号)について派遣委員より報告聴取
     ――――◇―――――
#2
○坂田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農業基本法案及び北山愛郎君外十一名提出、農業基本法案を一括して議題といたします。
 この際、右両案審査のため札幌、仙台、福岡、大阪の各市において実施いたしました委員派遣による意見聴取の状況について、順次その報告を求めることといたします。
 まず、第一班班長田口長治郎君から報告を願います。田口長治郎君。
#3
○田口(長)委員 第一班の調査報告を申し上げます。
 第一班の派遣地は札幌市と仙台市でありまして、派遣委員は、私のほか、中馬、藤田、八木、米山、石田、北山、山田、淡谷、稻富の九委員でありますが、仙台市においては飯塚委員が中馬委員にかわって調査に参加されました。札幌市においては本名委員が、そうして仙台市においては日野議員と西宮議員がそれぞれオブザーバーとして出席されました。
 以下両市における調査報告を申し上げたいと思います。なお、報告の順序は、日程に従い、札幌市、仙台市の順に報告いたします。
 まず、札幌市における調査の報告を申し上げます。
 札幌市における会議は、四月二十二日の午前十時より北海道庁の近くの北農会館大会議室において行なわれ、私のあいさつ、班員及び意見陳述者の紹介、並びに議事運営についての説明を行ないましたのち、道立農業研究所長渡辺以智四郎君、東鷹栖村農業協同組合長工藤勇君、ホクレン農業協同組合連合会会長小林篤一君、酪農大学学長黒沢酉蔵君、中札内村農業協同組合長梶浦福督君、当麻町長安達利淳君、北海道農民同盟常任執行委員溝口喜久男君、北海道農業協同組合中央会会長高橋雄之助君、北海道農村連盟事務局長吉田明正君、北海道大学教授矢島武君、北海道農業会議会長鹿野恵一君、以上十一名の意見陳述者から参考意見の陳述を聴取し質疑を行なったのでありますが、各陳述者の陳述及び質疑によって明らかにされた意見を、発言順に、かつ個人別に概略御報告申し上げます。
 まず、渡辺以智四郎君の意見は、北海道では、昨年五月に北海道農林漁業基本問題審議会を設け、その農業に関する答申が十月二十五日になされたのでありますが、その答申の基本は、第一に自立経営の育成であり、第二に畜産、ビート園芸等成長財の生産拡大である、まず、自立経営は、中央のそれと類似の定義となっているが、これを北海道の具体的な経営に当てはめてみると、地域により経営様式によって異なってくるが、水田経営では三町歩、畑経営では七町歩、主畜経営では十町歩くらいが標準であると思われる、そうして、現在このような自立経営は全体の二〇%くらいしかないのであり、残りの八〇%をいかにすれば自立経営になし得るかが問題である、次に、前述のような成長財をいかにして伸ばしていくかである、特に、畜産振興は全国的にも重要な問題であり、北海道はその重要な一翼をになっているはずである、これは容易なことではない、答申では経営面積の拡大、飼料基盤の整備、多頭飼育等と言っておるが、畑作、特に畜産に関する施策はこれまで特に手薄であったので、これらの点について中央でも特段の配慮をお願いいたしたい、また、大豆、菜種、バレイショ等の北海道の特殊作物については、国際関係から見ても国内の関係から見ても容易ならざる情勢にあるので、コスト・ダウンとともに、特別の助成等が必要である、以上のような点にかんがみ、昨年十一月に政府の農業基本対策の樹立とその運用にあたっての北海道としての要望事項を提出したのであるが、それは、一、北海道農業の実情に即した経営構造対策の確立、二、成長財の生産振興のための生産基盤の強化に関する行財政措置の充実、三、畑作・畜産の振興をはかるための試験研究と普及体制の強化、四、畑・畜産物の価格流通対策の拡大強化、五、実情に即した金融措置の実施、六、畑作災害補償制度の拡大、七、農政審議会委員に北海道の代表者を任命することの七項目であった、そうして、政府の基本法案には大体以上のことが盛り込まれていると考えるので、各党話し合いの上可及的すみやかに成立させるようとの意見でありました。
 次に、工藤勇君は、内閣の基本法案は、前文で基本法の立法の精神が述べられており、その趣旨には好感を持っているが、その具体的な条文の内容は前文の趣旨とずれがあり、なまぬるい、農民は、生命の根源たる食糧生産を行なっているのに、経済的に他産業より低い位置に置かれてきたのであり、これを他産業に均衡せしめることもさることながら、農は国のもとという考え方から、むしろ他産業より優先さしてしかるべきではないか、このような観点から特に重視したいのは農産物価格政策であるが、政府案では、「生産事情、需給事情、物価その他の経済事情を考慮して、その価格の安定を図るため必要な施策を講ずるものとする。」となっており、これは市場の成り行き相場を見て政府が格づけするように読める、このようにあと回しで価格を定めるのでは農民は不安で計画的な生産ができないので、社会党案のように生産費及び所得補償方式によることを明記すべきである、次に、農政審議会は非常に重要であると思う、従って、委員の構成について、政府案のように単なる学識経験者のみでは真に農民の声を聞く審議会たり得るかどうか疑問であり、また、社会党案のように「農民を代表する者」でも不十分である、農業従事者の中から委員を出すことを希望する、また、農政審議会の委員の定数も、政府案の十五人以内、社会党案の二十人以内ではいずれも不満であり、これを二十五人以内として、その三分の一以上は農業に実際に携わる者を選んでいただきたい、以上のような観点から、結論として、基本法の立法の精神についての内閣の基本的考え方はうなずけるが、法案の内容としては社会党案を支持するとされ、関連法案とあわせて慎重に審議すべきであって、いたずらに成立を急ぐべきではないという意見でありました。
 次に、小林篤一君は、各党の基本法案はいずれも大同小異であって、そう違っていないと思うので、政府並びに各党はよく話し合って一本にまとめていただくことが望ましいし、それが可能であると思う、むしろ関心は運用にあり、今後農家がよくなるかならないかは、基本法の運用次第であるとされ、基本法の目標は結局農業者の収入の増大であるが、その方法は生産を高めることと価格をよくすることに尽きると思う、ところが、生産面では米も麦も澱粉も望みがないというし、農民が何を作ったらよいのか明らかでない、また、価格についても、国は農産物価格を下げることばかり考えているが、下がったときは少しも心配してくれない、生産性の向上や流通過程の合理化もけっこうだが、まず価格を心配してくれるべきであり、価格さえよくしてくれれば畜産物の増産などはわけなくやれる、さらに、かりに値段を上げなくても、農民の作ったものは農民が加工して商品価値を高めて売るとか、農民の使うものは自分で作ることによって支出を少なくして所得は高まる、現在の農家にそれをやる力がないのなら、やれるようにするのが政策であり、いわゆる協同会社案のように他人におんぶするような考え方には反対である、また、農産物や農業資材の貿易は農民みずからでやれるようにすべきである、以上のような問題を基本法の運用にあたって十分考慮されたいとされ、関連法を全部そろえてからと言っていたのではいつまでたってもきまらないので、基本法の一日も早い成立を望むということでありました。
 次に、黒沢酉蔵君は、どんなにりっぱな基本法ができ、どんなに至れり尽くせりの施策が行なわれでも、農民自身がしっかりしなければだめである。それは農民教育の問題であるが、幸い三党案ともりっぱな規定が設けられているので、敬意を表するとともに、これが空文に終わらないことを期待する、特に、現在の農業高校は、十分の一に減らしてもよいから、真の農業教育をやるように、法案を生かして根本的な改革をしてもらいたいとされ、各党の案は法文上は七割、八割同じであり、いずれも敬意を表するし、政府案も完璧に近いと思うが、問題は運用である、第一に、政府も農地の拡張について草地資源の開発を中心に社会党のように積極的に考えるべきである、第二に、生産共同経営はよほど慎重に準備しないとうまくいかないと思う、社会党案は理想に過ぎるように考えられ、現段階ではデンマークのように自立経営を強化するための協同組織の整備拡充の方向に進むべきではないか、第三に、兼業農家対策は現実に沿って進めていくべきであり、むしろ、リクリエーション農業あるいは職工農家として思想的にも健康的にも健全な勤労者の育成の方向に補導していくべきであるとされ、関連法案も含めて一体として制定するか、まず農政の大筋としての基本法を先行させるかは、それぞれ一理あろうが、私個人としては後者の行き方に賛成するという意見でありました。
 次に、梶浦福督君の意見は、現下のわれわれ畑作農民の最大の悩みは、借金に追い回されておることと、農村青年には嫁が来ないため優秀な青年が農業に残りたがらないことであるとされ、基本法は百姓にもわかるように書いてもらいたい、むずかしいこと、回りくどいことは言わず、貧乏をなくすること、労働条件をよくすることによって、他産業並みの豊かな明かるい暮らしをさせることを明らかにすべきである、政府案は間口は広いが中心がぼやけているように思うとして、一、政府案は、農地の造成開発、農産物価格、財政金融、機械化等について政府の責任が明確でない、特に、価格政策について、価格が生産費を補償することを明確にすること、二、構造問題については、すべての農民が自立経営になろうとして努力している、しかし、家族経営ではどうにもならないということから、だれに指導されたわけでもなく農民が工夫し探り当てたものが法人化や共同化である、家族経営や自立経営を強調するあまり農民の近代化しようとする足を引っぱらないようにすべきであること、三、僻地対策に触れていないのが不満であること、四、農政審議会の委員は三十人くらいにして、地域別・経営組織別に実際に農業をやっている者を入れること、五、関連法案の内容いかんでは生産向上を阻害するので、農地法、税法、農業協同組合法等に関し、法人化、近代化を妨げないように配慮すること、六、団結権・団体交渉権などむずかしいことは言わないが、農民の自主的組織が盛り上がるようにすべきであることを述べられ、農業基本法案に対しては農民は期待と不安を持っている、各党案にそれぞれよい点があるので、話し合って一本にまとめ、後世史家に高く評価されるりっぱな基本法を成立させるべきであり、意見不一致のままで無理に成立させるべきではないというものでありました。
 次に、安達利淳君は、基本法は、各党のムードに差はあっても、その対象とする農家は一つである、従って、意見の一致が望ましいが、次善の策としては、一日も早くこれを成立させ、これを足がかりとして具体的施策を展開させることが一般農家の気持であると思う、基本法はいわば憲法で、それだけで直ちに生活はよくならない、その意味で付帯法案や具体的措置が重要であると述べられ、一、農業団体もいろいろあるが、事務に手数を要することが多く、ために指導的な面が手薄である、農家に嫁が来ないのは農業をやっている青年の質が悪いからでもあること、二、町村行政、特に産業係を強化すべきこと、三、わが国は地域によって非常に条件が違うので、地域の特性に即した行政を行なうため、都道府県に大幅に権限を委譲して自主性を強化すべきであること、四、米が余るなら、加工や新規用途の研究を真剣に考えるべきであり、飼料価値としてもほし草よりも有利である、百年でも連作のきく米について、その適地で将来とも米が作れるようにしないことは日本農業の将来を真剣に考えないものである、こういうことを述べられたのであります。
 次に、溝口喜久男君の意見は、法制定の考え方について、政府案と社会党案は、従前農民が置かれてきた地位についての認識は同じであるが、政府案は、今後もこれまでと同じ位置に置こうとするのが不満である、また、農業の不利を補正するのは当然だが、施策の内容にそれが一貫しているか、本気でやるつもりであるかが不安であるとされ、一、生産については自給度の向上に基盤を置くべきであり、政府案のように貿易自由化によって農業を世界市場にさらけ出し、その中で農民が選択的に生産していけというのでは適地適作をくずす、貿易自由化は宿命とは考えないこと、二、価格政策は、政府案は時の相場で価格をきめるというふうに読めるが、所得確保のためには社会党案のように生産費及び所得補償方式によるべきことを確約すべきであり、需給均衡価格を言うなら、あの強権供出時代にもそうすべきであった、三、農業構造の問題は、人間の手でどうしようとすべきものではなく、そのときそのときの生産手段によって自然にきまってくるものであり、この点は政府案も社会党案もおかしいと考える、四、地域対策について具体策が示されていない、本道の農家負債発生の原因は地域差を無視した全国一律行政の結果であるから、災害対策、系統金融、新農村建設事業等、いずれも本道の特殊性を考慮すべきこと、五、開拓農家に転業または経営確立の方途を講ずべきである、六、農民に憲法第二十八条の勤労者として団結権を保障すること、七、農政審議会に真に農民の代表を入れるとともに、その結論について米価審議会のように無視しないこと等を述べられ、結論として、社会党案の方がわれわれの要求に近いように思われる、そうして、関連法案の内容が明らかにされるまでは納得できないから、強行採決などすべきでないとのことでありました。
 次に、高橋雄之助君は、各党それぞれイデオロギーがあることはわかるが、目標は、農民が明るく健康で文化的な生活を営めるようにしようとする点は同じであるから、わが国の国民性や国民感情を十分取り入れて慎重に検討してもらいたいと述べられ、一、農業近代化のためには、土地利用の高度化、開発技術その他の対策についての国の財政措置が十分に必要であること、二、農業近代化資金は画期的だが、現在考えられておる程度の金利その他の条件では農業近代化にどれだけ役立つか疑問であること、また、北海道では、百億以上もある負債を整理しないで新しい制度を作っても画餅にひとしいこと、三、農産物価格政策が不明確である、基本法が農民のためのものであるというなら、公正な立場に立った機関が計算した生産費を補償することを明確にすべきであること、四、基本法を実際に行なうのは農民であるから、農協組織の強化、特に末端部落組織から積み上げる方式がぜひ必要であること等を述べたのであります。
 次に、吉田明正君の意見は、統計調査の整備がまず重要である、現在の統計が不正確であることには農民も責任があるが、政治や行政に口をはさまれないような権威ある統計調査機構、たとえば統計省のようなものを作るべきである、二、農業近代化のためには農民の頭の切りかえが必要であり、そのため、科学的、精神的対策が最も必要である、補助金や融資にのみ関心を持つ他動的・依存的農民では、基本法ができてもりっぱな農業はやれない、三、政府の基本法にも一応林業のことに触れているが、もう少しく農・畜・林一体として考えることを本道の特殊性として強調したい、四、共同化は自分の経験によっても一朝一夕にはいかないのであり、この点社会党案は疑問に思う、土地の共有など北海道農家で賛成する人はないと考えること等を述べられ、結論として、政府案が一番農民に近いもの、農民の現状をよく把握して立案されたものと思う、関連法案もできるだけ早く成立することが望ましいが、全部そろわなければ通さないというのでは二年も三年もかかるから賛成できないというものでありました。
 次に、矢島武君は、三案ともりっぱな法案で敬意を払っている、そうして、話し合いによってまとまる可能性を持っていると思うので、早く話し合って一本化してもらいたいと述べられ、一、基本法案では農業については基本計画を立てることをある程度言っていただきたい、政府案は需要と生産の長期見通しを立てると言っているが、単なる見通しでは試行錯誤になってしまう、また、地域別の計画を原則として立てることにすべきであり、政府案のように「必要に応じ」では不十分である、また、基本計画を立てるについては、まず土地利用計画を立つべきである、二、構造改善に関し農地価格に対する対策を規定すべきである、自立経営の育成といっても、現在の収益に比べて高過ぎる地価ではどうにもならないこと、また、経営の細分化防止については、相続について政府案の十六条に規定しているのであるが、相続による細分化はむしろ二次的であること、さらに、これに関連して、農地法は農地の流動性を高める方向で改正すべきであり、信託制度は一歩前進であること、また、同法の農地の権利取得のための最低保有面積制限は、北海道の特殊性として漁業の体質改善のために漁家が陸上に上がることを阻害しておるから検討を必要とすること、三、政府案には農業構造の改善と林業という規定があるが、農業の体質改善をはかるについては水面利用も土地利用の一つと考えて農林漁業一体化して考えてもらいたいこと、四、農政審議会に学識経験者として学者が入ることはけっこうだが、ある専門の人やある地域の人ばかりが集まってはいけない、五、教育の問題を基本法で重視していることはけっこうだが、教育の内容とともに教育の制度や普及組織を改善することを考えるべきこと等を述べられたのであります。
 最後に、鹿野恵一君の意見は、三案とも本質的な差はないと考えるが、これらについて系統組織の意見を聴取したところ、政府案におおむね賛成であるから、これを骨子として基本法の早期成立を期すべきであるという意見が大部分であったと述べられ、価格政策について農民の間には支持価格制度維持の要望が強いが、単純な価格支持ではかえって農業の体質改善をおくらせるおそれがあるから、経済全体の中で幅を持った対策が必要であること、二、本道は他産業の就業機会が少なく、農業人口の減少率も低いので、特に土地対策が重要である、幸い未利用地がたくさん残されているので、これを強力に進めるべきこと、三、農業委員会を農業構造改善事業を推進する機関として活用することを希望すると述べられたのであります。
 次に、仙台市における調査報告を申し上げます。
 仙台市における会議は、宮城県議会議事堂において四月二十四日午前九時より行なわれ、札幌市における場合と同様に、私のあいさつ、班員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営についての説明を行ないました後、宮城県新農村建設連絡協議会会長佐々木敬一君、全日農常任委員新妻忠直君、山形県農協中央会会長大山不二太郎君、東北大学教養学部助教授菅野俊作君、岩手県花巻市長八重樫利康君、山形県農民組合連合会副会長守谷吉男君、農業細川為輔君、岩手県たばこ耕作組合金野茂君、新潟県農業会議議員岡村淑一君、青森県りんご協会顧問渋川伝次郎君、秋田県農協中央会副会長小林喜久也君、以上十一名の意見陳述者から参考意見の陳述を聴取するとともに質疑を行なったのでありますが、各陳述者の陳述及び質疑によって明らかにされた要旨をこれまた陳述順に申し上げますと次の通りであります。
 まず、佐々木敬一君は、各党の案は大同小異であり、これを一本化してすみやかに成立せしめられたいとして、政府案は広く他産業との関連を考えているが、社会党案は、農村内部で問題を解決しようとするのは現状に合わない、開拓についても安易に考えてはならず、漫然たる規模拡大よりも生産基盤確立のためのより効率的な財政投融資が必要である、また、共同化については、農村にのみ社会化の線を強く出すことは混乱を招くので、共同化を軽視してはならないが、漸進的に推進すべきである、価格政策は保護政策の固定化にならないように運用すべきである、農政審議会は強化して勧告権を持たせ、価格流通対策なども強力に進められたい、また、法の執行運用面で東北の自然的地域条件を十分配慮し、稲作を中心として果樹・畜産でカバーすることが望ましく、関東中心の農政にならないこと、基本米価を一本とし、生産費・所得補償方式を堅持すること、財政投融資を効率的な面で確保し、長期・低利の融資を強化すること、公共団体の財政力を強化することなどを要望して、法案審議にあたってはいたずらに時日を空費せずすみやかに農民の期待にこたえるよう述べて、政府案に賛成せられました。
 次に、新妻忠直君は、政府案は所得倍増計画に基づき成長の格差を人口削減を前提として均衡させようとしておる、これは農村部落の中に対立を生じ、秩序を破壊するものである、また、価格の安定、所得の確保と言うが、どのような水準でどう安定させるかがはっきりしない、具体的には麦作全農民の反対している麦対策を打ち出していることから見ても、政府案は歓迎し得ない、さらに、政府案は、誤った政治による農民収奪の結果である今日の農業の姿を今後においても期待している、二重構造、独占資本支配の中で他産業と同様に農業の生産性を向上させることはできない、また、生産性向上が所得向上に結びつかないことは農民も経験しておる、この点政府案は自信のない表現である、社会党案は所得の均衡をはっきりうたっておる、所得均衡の媒介として最大のものは価格政策であるが、需給事情を参酌するというのは貿易自由化を前提としており、食管法でも需給事情とは言っていないのを、改悪し、統制撤廃を企図するものである、さらに、自立経営育成と言うが、一割程度の農民が均衡し、九割の農民は低所得に甘んじ、兼業を余儀なくされ、低賃金、低農産物価格の悪循環に苦しめられる、要するに、政府案は農民の立場のものでなく、独占資本の立場のものであり、農業を収奪下に組み入れるものであるとして、政府案に反対の意見を述べられました。
 次に、大山不二太郎君は、多数の農民の意見を代弁したいとして、政府案を一日も早く制定せられたいが、運用の面で関連法案に強く関心を持っておる、国の施策全般がなければ効果を期せられないので、各省の関連法についても改正を考えること、長期見通しが誤ったとき農民の受ける損失を補償する措置を具体的に考慮すること、災害補償制度を抜本的に改正すること、価格政策として生産費・所得の補償を原則とすべきこと、工場分散について一段と強力な措置を講じ、運賃の特別割引なども行なうべきことなどを要望せられました。
 菅野俊作君は、政府案は抽象的であり、具体的の方策をどうとり、その結果にどう責任をとるかが明らかでない、曲がりかどの認識について、他産業との格差の拡大、消費構造の変化、農村人口の流出を指摘し、不利の補正をうたっているが、日本農業の零細性を耕地面積に対する人口圧迫と見る考えは時代おくれの見方である、零細性の原因は、長きにわたる資本の作用の結果であり、従って、今日の資本投下は、生産物市場として農村を取り入れ、農村支配をやろうとするものである、この意味で農林省原案がはるかに筋が通っていた、選択的拡大は由自化を前提としているし、規模拡大は人口移動による戸数減に期待する他力本願である、人口移動には所得格差拡大がなければならない、格差解消をうたいながら格差拡大による人口流出を期待する基本法の貫徹は困難である、政府案は資本の要請から出ているものであり、農民の立場に立っていない、国有林開放、工場分散、地価の規制、価格安定等、関連法をどうするかということともに慎重に検討すべきであると述べられました。
 次に、八重樫利康君は、政府案の早期成立を望むとして、両案は表現の差はあるが共通の点が多い、生産性向上は農業にとっても当然のことであるし、自給度向上も当然である、選択的拡大は一段と進んだ考えであり、指導を誤らないようにすべきである、構造改善は農家自身がすでに試みていることで、財政投融資面で十分の配慮を望みたい、農業高校の教育を改善し、後継者育成の対策を確立すべきである、経営形態については政府案の方が現実的である、価格政策については、あまり神経質にならず、所得・生産政策とあわせ考えるべきであろう、また、関連法が重要であり、基本法はいたずらに論争に空費せず、農学栄えて農業の滅ぶことのないようにせられたい、地域的条件の特段の配慮、地方公共団体の財政力強化にも留意せられたいと述べられました、
 守谷吉男君は、政府案は貿易自由化が根本前提であり、格差はますます拡大する結果となるのに保護措置はあいまいである、自由化が実施されれば、国際競争力の低い農業は、共同化で多少生産性が高まっても、またたく間に崩壊するだろう、これに対しては、関税調整、輸入制限を明らかにすべきだが、政府案はあいまいである、また、自給体制の確立が必要であるのに、これを軽視している、山林原野の開発なくして畜産・果樹は振興し得ない、価格政策としては、生産費と労働に対して正当な補償がなければ不利の補正もできず所得の増大もあり得ないのに、政府案はこの点あいまいであることは最大の欠陥である、さらに、国の責任についての配慮を欠いており、自立可能、国際競争可能の農業とするには、徹底した財政投資が必要である、青年に魅力ある農業を確立するための基本法を制定するよう慎重に審議されたいとして、社会党案に賛成の意を表せられました。
 次に、細川為輔君は、経営の改善向上には技術革新が最も必要である、畜産・果樹の振興も、米作の労働生産性向上により労働力を生み出すことが準備として必要であり、その技術普及をさらに徹底し民主化すべきである、不健全な購入飼料依存の多頭飼育でなく、一町前後の不安定兼業農家の経営を合理化して多頭畜産をやらせることが、工場誘致のむずかしい地帯での重要な方策である、試験・研究は官の独裁でなく、民間先進者の創意を活用するとともに、展示圃を設けて技術の浸透をはかるべきである、また、適地適産の全国的調整をはかること、長期・低利資金を拡充すること、開拓よりも既耕地の徹底的な改良により立体的な土地利用をはかり、所得中心で自立農家を育成すること、転業農家の行く末を保障し、最低賃金を確立すること、農産物の最低価格を保障することなどの必要について主張され、結論として政府案に賛成するが、一字一句修正しないというのでなく、農政審議会に農業従事者を含むこと、草地開発を積極的に行なうことなどは、民社党、社会党案を取り入れることも考慮しつつ、協調して基本法を成立せしめるようと述べられました。
 金野茂君は、成立を急いで百年の大計を誤ることのないよう慎重な審議を望み、農民を単に保護するという考えでなく、国民平等の立場に置くという考えでの立法化を主張されましたが、国内自給度の向上、農産物需用の増進により消費生活を向上させるため、特に東北の事情を考慮しつつ、財政の裏づけを強調するとともに、近代化資金の利子、期間をさらに有利にし、農家負債のたな上げ、国有林の開放による飼料自給度の向上、米の統制の維持、価格支持を要望され、さらに、たばこ耕作について、財政専売より公益専売に切りかえるため、たばこ専売法を関連法として検討すべきことに言及されました。その他、市場の公営化、農民による加工事業、畜産物事業団のあり方、任意共済の農協への一元化、労働力の劣弱化に対し農業を魅力あるものとすると同時に、職業訓練を充実すること等にも触れ、当面必要な措置を十分にとりつつ、基本法は慎重に検討すべき旨を述べられました。
 岡村淑一君は、両案とも大同小異だと思うが、いずれも抽象的であり、広く解釈し得るので、あとにとるべき方策を誤ると方向を間違えるおそれもあるが、超党派的に十分審議し、政府案を中心としつつ急速に成立せしめられたいとし、構造改善について、完全共同化は非常にむずかしいものであるから、強く出し過ぎると強制されるのでないかとの不安を与えると指摘されたほか、開発については、戦後の失敗を繰り返してはならないが、農用的に利用し得る山林はまだまだ多いから積極的に進めるべきであること、選択的拡大については、新潟のごとき米の適地は米作を強力に推進すべきで、世界的立地条件からも最適地である、転換を要請するならば立地条件を整備する土地改良を強力に行なうべきである、地域格差の縮小のためにも、積雪寒冷の悪条件下にある地帯の農業を確立することが必要であるとせられたのであります。
 渋川伝次郎君は、リンゴ栽培の経験に基づき、現在の労働集約農業は消費・流通と深い関連があるが、これを改善するための研究は不十分であり、二町五反の自立経営といっても過小経営にすぎず、労働集約から免れない、経済合理主義のみで、日本の特殊事情を考慮することが薄く、人口削減の考え方にも賛成しがたいとし、経営改善のためにはあらゆる面で資金が必要であるが、果樹振興資金、近代化資金等、いずれも内容は期待に反する、基本法の具体化は、国の投資がよほど行なわれない限り、蓄積のない農民の現状ではむずかしいのではないか、価格・流通面の対策もおくれており、市価中心の考えでは所得増大は期待できないし、中央卸売市場制度も不十分で、生産地市場対策が、オランダの例なども見て検討さるべきである、国鉄の運賃割引制度も不満である、法の施行に伴う官僚化は厳に排除しなければならない、農政審議会には農民の直接の声が反映すべきであり、農政が東京のみで作られてはならない、これを要するに、合理主義に貫かれ、農業の特殊性、日本の特殊性の配慮の薄い基本法では、まだ知識の低い農民に淡い期待を与えるだけであり、早く成立したからといって農民の救われるような基盤はない、拙速主義はとらないとして、早期成立には反対の意向を表明せられたのであります。
 最後に、小林喜久也君は、今国会で早急に成立させるべきであり、政府案が適切であるが、なお他党の案の長所も生かし、要すれば強力な付帯決議を付することが望ましい旨を述べられたのであります。
 以上をもって第一班の調査報告を終わりたいと思うのでありますが、両市における現地調査は、道、県当局の絶大なる御協力により、きわめて静粛かつ真摯に行なわれた次第であります。この機会に関係者各位に対しましてあらためて深甚の謝意を表し、私の報告を終わる次第であります。(拍手)
#4
○坂田委員長 午後一時半より再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後二時二十八分開議
#5
○坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、農業基本法案及び北山愛郎君外十一名提出、農業基本法案についての派遣委員よりの報告聴取を続行いたします。
 第二班は角屋堅次郎君から報告を願います。角屋堅次郎君。
#6
○角屋委員 農業基本法案に関する第二班の福岡及び大阪における調査の結果について、坂田班長にかわり御報告申し上げます。
 福岡市における会議は、二十二日午前十時から福岡県農協会館で、また、大阪市における会議は、二十四日午前九時から大阪府立体育館別館で開催されましたが、派遣委員は、私のほか、坂田委員長、寺島隆太郎君、舘林三喜男君、金子岩三君、亀岡高夫君、芳賀貢君、片島港君、西村関一君、玉置一徳君の十名、意見陳述者としては、福岡市では、福岡県農協中央会副会長鬼木文雄君、長崎県農業会議会長横山貞雄君、九州大学教授田中定君、熊本県精農家工藤誠一君、福岡県南筑酪農組合長小宮市太郎君、鹿児島県農業会議副会長椎原敬四郎君の六名が、また、大阪市では、京都大学教授渡辺庸一郎君、京都府農業協同組合中央会長小林良雄君、大阪市立大学教授硲正夫君、兵庫県精農家近藤正君、日農大阪府連書記長梅原昭君、京都大学教授桑原正信君、岡山県農業協同組合中央会前参事原田歳男君、徳島県農業会議会長吉成俊二君、日農鳥取県連副会長遠藤寿雄君、鳥取県農業会議会長高橋英夫君、愛媛県土居町農業委員会委員石水伴清君の十一名が参加されました。
 坂田班長より会議開催の趣旨、議場の秩序保持等について説明が行なわれた後、直ちに意見の陳述に入りました。
 以下、簡潔にこれを御報告申し上げます。
 福岡においては、まず鬼木文雄君は、第一に、兼業農家の問題について、社会、民社両党案とも共同化を通じて解決しようとしているが、現在の農家の二分の一を共同化するとしても、農業内部の施策のみで実行できるかどうかという点に不安がある、一方、政府案では、この点について何ら触れられていないが、何らかの方針を明らかにすべきものと考える、第二に、宅地化、工場敷地化に伴う地価の高騰が原因となって、福岡の場合でも良い耕地が年々縮小している、一般経済と農業との関係を調整して、人的にも物的にも農業に対する保護を拡大しなければならぬが、この点で、政府案は、一般経済の成長を主とし、残された条件の中での農業の近代化を考えているにすぎないし、社会党案、民社党案は、農地の拡大、土地利用の高度化に触れているが、他産業との関係の調整という点には触れられていない、第三に、農業を中心としている者にとって、現在の農業は採算のとれない場合が多い、それを保障するためには価格と金融が問題であると考えるが、価格については、われわれは、従来から価格決定方式として生産費・所得補償方式を主張してきたが、いまだ米についてさえ完全には実現されていない、これは技術的問題であるというより財政負担に問題があるからであると考える、今後とも価格支持は絶対必要であるから、この点を修正されるよう希望する、金融については他産業に対するもの以上の財政投融資が必要である、政府案第四条にはそれらしい規定があるが、もっとはっきりした条項を起こすべきであるとの意見の開陳があり、結論としては、商工業は優良児であり、農業は劣弱児であるので、その点を考慮の上、一刻も早く農業基本法を成立させるようお願いしたいと述べられました。
 次に、横山貞雄君は、政府案はより現実的で妥当性を持っているがゆえにこれを支持するものであるとして、第一に、他産業への労働力の移動は必然的であって、そこから自立経営の育成も可能となり、各地に実現している法人化も政策の裏づけによって進展するであろう、第二に、政府案の生産の選択的拡大は零細自給農業から商品生産農業への発展に即応するものであり、第三に、価格政策は最も期待する問題であって、国の責任と政府の義務を確立し、総合的に諸般の政策を講ずることによって達成されるものである、最後に、基本法の制定によって作られる関連法が問題であり、適切な立法を期待するとされ、結論として、すみやかに今国会でよりよき法律の姿でその成立を期すべきであって、抽象的政策論は農民を迷わすものであると述べられました。
 田中定君は、日本の農業の統計的分析から考察すると、戦後、農地改革を契機として、農業経営は、工業等の兼業に依存するものと、それら兼業者の土地を買い受けて経営を拡大した階層に分かれている、このような運動に即して基本法の論議を見ると、自民党案による農業基本法の自立経営の育成は、日本農業の構造変化に即応するものと考えられるが、自立経営農家を他産業従事者と均衡し得るようにするためにはそれだけでは不十分である、社会党案では、近代的機械サービス・ステーションを置き、高度の技術の採用を通じて共同化を実施しようとしているが、これは自立経営のもう一つ先の考え方である、意欲的な自立経営は自分の判断で共同化を考え、高度な技術を取り入れ得る状態にあり、そこまできて他産業従事者と生活水準の均衡を考え得る、また、余力のない農民であるから、価格が変動し、外米の輸入の自由化が行なわれ、農業保護政策が捨てられると、農民的前進はストップすると述べられたほか、基本法の前文、農政審議会の構成等につき御意見の開陳がありました。
 工藤誠一君は、基本法は宣言法であるから、その具体化は農民の自覚と政治家の良識に待つこととして、一日も早く法を制定して骨組みを作るよう希望されるとともに、曲がりかどに来た農政の将来については、基本法の制定に非常な期待を持っていると述べた後、施策の国会に対する年次報告、生産基盤の整備開発、特に水資源の開発、災害対策、肥飼料等農業生産資材に関する施策等、政府案の各条文についての希望の開陳があり、特に価格政策を重視すべき旨を述べられ、また、社会党案による農業経営の共同化については、農民の意識がいまだそこまで至っていない旨の批判があり、最後に農民教育の必要性について述べられました。
 小宮市太郎君は、現在農業と他産業との格差が拡大する中で、農業を自由競争と国際競争にさらせば、零細農のみならず中層農家までが没落する、従って、農業の不利を補ない、農業の発展をはかるため、国の責任と政策の基本原則を明らかにするものとして社会党案に賛意を表され、構造改善に関しては、自民党の自立経営の育成は、農業就業人口の流出を前提とし、離農者の農地を自立経営農家に集めることを考えているが、外部への有利な機会は見つけがたいし、また、就業人口が減少しても農家戸数はそれに応じては減少せず、結局は零細農を追い出すことになる、また、農産物の選択的拡大については、酪農、果樹園芸等は成長部門ではあるが、たとえば生産者乳価は年々低落する一方、飼料価格は逆に上昇しており、これに対して何らの対策もなされていない、従って、主要農産物に対する生産費及び所得補償方式による価格安定対策及び十分な資材対策が必要である、結論としては、基本法案は今国会において急いで成立させる必要はない、慎重審議を行ない、必要な対策も用意した後でよいと希望を述べられました。
 最後に、椎原敬四郎君は、農業基本法案が国会で論議されるにあたって、われわれは非常な関心を持ち、この機会を失することなく早期に成立させることを農民の声として希望され、次いで、国会に対する報告義務は、それによって停滞した農政が前進することになると賛意を表し、共同化と協業化の問題は、地域的な問題もあるほか、共同化は、それより前に耕地の集団化を徹底的に行なう必要があり、農民の土地に対する愛着心等を考慮して無理があるように思われる、人間関係を考えれば人の心のつながりを重視する政府案の協業化が望ましい、また、価格支持については社会党案がはっきりしているとされ、その他農民教育に関して意見の開陳がありました。
 以上で陳述者六名の意見の開陳を終わり、引き続き各派遣委員から陳述者に対し、主として基本法の成立時期、農業生産の選択的拡大、農業生産計画、自給度の向上、農産物価格対策、農業構造改善の方向、兼業対策、農地の開発整備、農業教育等の問題について熱心な質疑が行なわれ、それぞれ陳述者より答弁がございました。よって一切の議事を終わり、四時三十分無事に散会することができた次第であります。
 次に、大阪においては、まず渡辺庸一郎君は、両案の目ざすところは同じであるように見えるが、政府案が農業者の自由な意志と創意工夫を尊重し、国または地方公共団体がその自主的努力を助長するという自由経済の立場をとっているのに対し、社会党案は国が責任を持って諸般の施策を実施するという計画経済の立場をとっているという基調の違いがあると考えると前置きした後、両案ともその目標達成のための手段として包括的にあげている諸施策の大ワクの中でも幾つか問題がある、第一は、新しい施策と従来からの施策とを調整して連続性のあるものとしてもらいたいということ、第二は、施策の実施過程で生じてくる地域間・階層間の不均衡の問題を調整していく必要があること、それと関連して全国八ブロックぐらいを単位とした地域計画の調整に当たる機構が必要である、第三に、所得均衡は、わが国農業の場合、本筋としては農業の近代化による生産性の向上を通じて実現していくべきで、いたずらに価格政策にたよるべきでないが、しかし、生産性の向上が直ちに所得の増大をもたらすとも言えないから、総合的に施策を講じていくことが必要である、第四に、有能な農業のにない手を養成する必要があるが、特に直接農業に携わる者についてそうであって、そのため経営伝習農場の拡充や新しい専門技術の講習所を設けることが必要である、最後に、結論としては、農地改革以上の大きな変革期に直面している農業に新しい道を示すのが基本法であるから、すみやかに制定されることを望むと述べられました。
 小林良雄君は、まず、農業基本法は画期的な農業改革の内容を盛り込んでおり、所得均衡をそのねらいとするものであるから、一日も早く今国会で制定していただきたいと述べられた後、第一に、非常に整ってはいるが、農民が転換期に直面して将来に不安を抱いていることを考えると、もっと強い農本主義的な考え方、特に主要食糧の国内自給という考え方を盛り込んでほしい、第二、構造改善については、まず京阪神地方では経営規模が小さくても集約化することによって自立し得る場合もあるのだから、自立経営の内容も全国一律で考えず、地域の実情に応じて考える必要があり、また、協業化は農民が自主的にやるべきものだから、自立経営と協業化とのいずれをとるかは農民の自主性にまかせてもらいたい、さらに、自立経営、協業化のそれぞれについて地域の実情に応じたモデル・ケースを示し、それによって強力に指導していただく必要がある、第三に、融資についても考えられているようだが、もっと長期・低利なものにしていただかなくては、農業は生産が軌道に乗るのに長期間を要し、利回りもおそいのであるから、選択的拡大といっても困難である、第五に、価格政策については、生産が増大したからといって直ちに所得が増大するわけではないから、いろいろな条件を総合的に考えてもらう必要がある、最後に、今後は農業団体の自主的な活動が重要であるが、それには団体が活動しやすいよう指導助成を願いたいと述べられました。
 硲正夫君は、政府の農業基本法案に対して各種の疑問があり、法案の取り扱いについては慎重にすべきであるとして、第一に、当初原案では経済合理主義で貫かれていたのに、政府案では、前文で農本主義を強調し、小農経営に力点を置く二元論となっているとされ、次に、個別の問題として、農産物価格の安定に関する規定はあるが、価格支持に関する規定はなく、どの水準で価格を安定するのか疑問であり、このことは食糧管理制度の直接統制を間接統制に移すための地ならしではないかとの疑問があり、第二に、農産物の選択的拡大は、農産物価格の低下した場合の責任を農民自身に転嫁するおそれがあり、第三に、農業の体質改善は、農業が一定水準にあれば可能であるが、農業と他産業との格差の大きい現状でこれを行なえば、農業経営の破滅となるとされ、第四に、農業経営のコスト・ダウンのための政策があるかどうか疑問である、肥料等は値上がり傾向にあり、経営費は増大する傾向にあり、このままでは中農さえも危殆に瀕すると述べられ、最後に、構造改善については、農地価格の高騰が制約になるとの意見の開陳がありました。
 近藤正君は、第一に、政府案は決して完全なものではないが、基本法待ちの声が農村には強いから、いたずらに完全を求めて成立をおくらせるよりも、まず成立させて徐々に完全に近づけてほしい、原則的には政府案を支持するが、われわれはイデオロギーの問題として受け取っているのではないから、三党ともできるだけ歩み寄ってほしい、また、せっかくの法案なのに農民の中への宣伝が不十分だ、第二に、農村では共同化への熱意は強いが、漸進的にやる必要があり、現状では自立経営を中心に協業化を並行させるのがよい、ただ、自立経営の育成には離農が必要だが、その対策が不十分だし、自立経営の規模もあれでよいのか不安だ、第三に、山村農業は、今後山林を利用しての果樹、畜産の方向しかないが、それには採算を無視しての投資が必要だ、従って、抜本的な対策を講じてほしい、この点では社会党案、民社党案の方がすぐれている、第四に、長期・低利資金のワクを広げ、強化してほしい、農業近代化資金程度では二階から目薬だ、第五に、今のままだと、農村に人材がいなくなるということにもなるから、特に質の点に考慮して、農業高校、伝習農場の強化拡充、民間機関・施設への援助など、農業者教育の拡充強化に努めてほしい、第六に、財政的措置の裏づけを明確にする必要がある、社会党は数字を明らかにしているが、自民党はどうなのか、西ドイツの場合に負けないよう願いたいと述べられました。
 梅原昭君は、新聞報道によると、政府案の採択の日取りがきまっているといわれるが、それでいて公聴会を開くのは公聴会を無視するものだ。われわれの声をよく聞き、それを審議に取り入れて慎重審議すべきだと述べられた後、政府案の言う選択的拡大の趣旨にも矛盾するような形で、果樹地帯である大阪北部の丘陵地帯で、専業農家の反対を押し切って、大阪府による住宅地帯の建設が進められていることにも現われているように、農業基本法は独占資本の利益に従属するものであるとともに、このように土地利用計画も定められぬまま作られる基本法が農民の利益になるとは考えられない、また、離農といっても、農地から離れる農民はどうなるか、大阪のようなところでさえ安定した職につけないのが現状だから、純農村ではどうなるかと思う、だから、基本法の制定を急ぐのではなく、土地を離れてもやっていけるように社会保障、最賃制などを拡充強化するなど、基本法にまつわる幾多の問題の解決にまず努力を集中すべきだと思うと述べられました。
 桑原正信君は、まず、政府案の自立経営の育成は、その前提として相当な規模の農地面積が必要であるが、最近の労働力の移動の傾向にかかわらず、兼業農家が増加するのみで、離農者はきわめて少ない、このため、自立経営の規定の意義が空虚なものとなっている、一方、社会党案では、共同化を唯一の柱としている点、幻想的なものと考える、これは両案とも兼業農家の実態に考慮を払っていないからである、政府案では、農民の他産業への流出に対し何ら対策がないし、社会党案ではこのことに全然触れていない、離農が困難で兼業化するのは、他産業の賃金の低位性、将来の生活に対する不安、土地価格の高騰に由来する、従って、現在、農村労働力の工業化とともに、労働対策、農地価格対策、社会保障等の離農促進対策を進めることが最も必要である、次に、農産物価格ないし生産対策については、両案は統制の差にすぎないとされ、政府案では、なぜ食管制度を法案の中に規定しなかったかについて疑問があり、社会党案のごとく麦、なかんずく大・はだか麦についてまで価格支持をする必要があろうか、しかし、政府案のごとく現に植え付けられている三十六年産麦まで規定するのは言語道断であると述べられ、結論として、農業基本法の必要性は認めるが、単に政略的な目的でなく、農民の発意による農民のための基本法という立場で審議されるよう希望されました。
 原田歳男君は、基本法の制定は必要だと思うが、どのような認識に立っているかが問題で、その点政府案は歴史的なとらえ方の点で不十分であると述べられた後、第一に、社会党案は政府の責任を明確に打ち出しているから農民は信頼感を持つが、政府案は触れてはいるが明確でないのではっきりされたい、第二に、生産については、政府案の選択的拡大は当然のことで、入れる必要がない、また、国土資源の開発は構造問題と関連して重要であるが、社会党案では農用地の拡大を言っているのに反し、政府案は一応これに触れているが社会党案ほど意欲的ではない、これには林地所有との関係などむずかしい問題もあろうが、積極的な立場をとられたい、また、災害対策については、社会党案はきわめて明確であるのに対し、政府案は抽象的である、第三に、価格政策については、政府案は経済合理主義に立った需給均衡価格の立場だが、わが国農業の現状を考えるとそれだけでは割り切れない、社会党案、民社党案の生産費・所得補償方式を基調とする価格支持政策を要望したい、ただ、そのことが需要にマッチした生産を阻害することにもなりかねないので、その実施には慎重な考慮を要する、第四に、構造政策について、政府案はあまりにも現実の姿にとらわれ過ぎており、もっと前向きの姿勢で考えるべきであって、この点不十分である、また、社会党案をもって強制で共同化を進めようとするものだと言うのは当たらない、そして、共同化を考える場合には、農業就業人口が減っても農家戸数が減らない現状を考慮して、資本的に参加する者にも道をあけておくことは離農しやすくするための現実的なやり方だと思うと述べられました。
 吉成俊二君は、農民として、農業委員会の組織の一員として、農業基本対策推進のためには農業基本法の早期制定が望ましいと前置きし、第一に、総括論として、政府案は団体の意向も十分取り入れられているのでおおむね妥当である、ただ、具体的施策の実施が重要であり、政府、地方公共団体、農業団体が打って一丸となった総合対策の実施を要望する、第二に、生産政策については、農産物需要の変化に即応してすでに生産転換が行なわれているが、転換先作物の生産調整につき指導を行なうべきである、第三に、価格・流通対策については、食管法による米麦以外は安定施策が不十分である。今後生産が増大するので、流通対策、価格安定対策を強化すべきである、第四に、構造政策については、多額の資本投下及び国の強力な指導援助、すなわち財政援助、低利資金の確保及び農地価格対策が必要である、第五に、農業教育、農村の人材確保について努力されたい、第六に、農政審議会は強力な権限を持つ機関にすべきである旨述べた後、早急な法律の制定を要望されました。遠藤寿雄君は、政府・与党は農業基本法を月末までに強行採決するという新聞記事があるが、採決の日取りを決定してただ形式的に公聴会を開くというようなことは、公聴会を無視するものである、公聴会の意見を十分参酌して慎重審議すべき旨要望された後、第一に、政府案の前文は、格差がある程度存在するのは当然で、ただ格差がひどくなったから是正するという考え方に立っているが、これは百姓は生かさぬよう殺さぬようという封建政治そのままである、社会的・経済的不利を除去し、格差を解消するという社会党案のような考え方をすべきである、第二に、基本法に規定する施策の具体化には莫大な財政金融措置が必要である、法律の規定が画餅にならぬよう十分の措置が望ましい、第三に、政府案の選択的拡大は安い米麦の輸入を促進するという経済同友会の農業政策のまるのみである、国民の国産米に対する需要の強さを無視している、独占資本のための基本法でなく、農民のための基本法であることを忘れるべきではない、第四に、価格政策については、需給均衡が保たれればいいという政府案に反対で、社会党案の生産費・所得補償方式に賛成である、第五に、農民が共同化を要望していることは、最近自分が受ける相談がほとんど共同化の相談であるのを見ても明らかである、共同化により所得格差を是正すべきである、家族経営の維持は低賃金労力の確保という資本家の要望に忠実な政策である、第六に、農業基本法はその成立の一、二カ月を争うような法律ではないので慎重審議すべきである旨述べられました。
 高橋英夫君は、第一に、農民を豊かにし農業の生産性を高めるため、第一線で活躍している者からすれば政府案の方が実現性に富んでいる、第二に、共同経営か家族経営かは農民の自発的選択に待つべきで、地域の特性に応じて決定さるべきである、社会党案はイデオロギーに忠実なあまり飛躍がある、共同化の実現にも人材の養成、指導者の確保が必要である、第三に、輸入を抑制するという社会党案はあまり鎖国的ではないかと思う、第四に、自立経営を経営規模の拡大のみによって実現しようとすることはなかなかむずかしい、実現の手段としては、土地の拡大のみでなく資本装備の増大によっても可能であるから、長期・低利資金の確保に努力すべきである、次に、政府案に対する疑問点として、まず第一に、政府案に規定する生産見通しの責任はだれがどういう責任を負うか不明確であるので明確にすべきである、第二に、地域格差の是正といった考えを閑却している、この点は三党とも同様である、第三に、政府案では構造政策における市町村の役割は大きなものであるが、構造改善事業実施のための起債、農林漁業金融公庫資金の貸し出し等の施策を講じてほしい、最後に、経済が激動し農民の考え方も激動している今日、何らかのよりどころが必要である、大乗的見地から議論を調整してすみやかに基本法を制定されたい旨述べられました。
 石水伴清君は、農民は従来からたびたび政府に裏切られてきており、基本法の宣伝も不十分なので、基本法ができてもわれわれには無関係であろうというような気持でいるくらいだと前置きして、第一に、前文における農業の役割の規定は、政府案において不明確であり、社会党案のように明確化すべきである、第二に、生産政策について、政府案は農地の造成について積極的意図が見られぬ、その点について明確に規定のある社会党案を支持する、選択的拡大というのは、外国の安い農産物でまかなって足りぬところを国産しようとするにすぎない、食糧の自給を原則とすべきである、長期見通しについては責任のある生産計画が必要である、その点では社会党案の方がすぐれている、第三に、価格政策については、農業の社会的・経済的・自然的不利を補正するためには価格支持が必要である、第四に、構造政策については、政府案は農民を困らせて離農させようとするものであり、共同化によってのみ構造改善の実現が期待できる、最後に、農業基本法は難解であるが、農民に基本法の宣伝が不十分である、十分論議を尽くして農民の英知を取り入れるべき旨の意見を述べられました。
 以上で各意見陳述人の陳述を終わり、それより、各派遣委員から、主として農林漁業基本問題調査会の答申との関係、基本法の成立時期、食糧農産物の輸入と自給度の向上、農業生産基盤の整備、農産物価格対策及び価格対策と食糧管理制度との関係、農地の所有形態と経営形態、農地価格、農業構造改善の方向等の問題について熱心な質問があり、それぞれ陳述者より答弁がございました。以上により第二班の調査はおおむね計画通りきわめて平穏裡に一切を終了いたしまして、三時三十分散会いたしました。
 終わりに、このたびの福岡市及び大阪市における会議開催にあたり、福岡県及び大阪府当局から賜わりましたなみなみならぬ御協力に対しまして、この機会に深甚の謝意を表する次第でございます。
 以上、御報告を終わります。(拍手)
#7
○坂田委員長 農業基本法案についての派遣委員よりの報告に関しましては、これをもって終了といたします。
 暫時休憩いたします。
   午後二時五十九分休憩
     ――――◇―――――
   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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