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1960/03/24 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 大蔵委員会 第20号
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1960/03/24 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 大蔵委員会 第20号

#1
第038回国会 大蔵委員会 第20号
昭和三十六年三月二十四日(金曜日)
   午前十時四十七分開議
 出席委員
   委員長 足立 篤郎君
   理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君
   理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君
   理事 山中 貞則君 理事 辻原 弘市君
   理事 平岡忠次郎君 理事 横山 利秋君
      天野 公義君    伊藤 五郎君
      岡田 修一君    金子 一平君
      田澤 吉郎君    高田 富與君
      高見 三郎君    津雲 國利君
      西村 英一君    藤井 勝志君
      坊  秀男君    有馬 輝武君
      加藤 清二君    佐藤觀次郎君
      田原 春次君    広瀬 秀吉君
      堀  昌雄君    武藤 山治君
      安井 吉典君    春日 一幸君
 出席政府委員
        法制局参事官
        (第一部長)  山内 一夫君
        法制局参事官
        (第三部長)  吉國 一郎君
        大蔵政務次官  大久保武雄君
        大蔵事務官
        (主税局税関部
        長)      稻益  繁君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (主税局税関部
        業務課長)   加治木俊道君
        専  門  員 抜井 光三君
    ―――――――――――――
三月二十四日
 委員石村英雄君辞任につき、その補欠として加
 藤清二君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員加藤清二君辞任につき、その補欠として石
 村英雄君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第三五号)
 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第三六号)
 関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正
 する法律案(内閣提出第五二号)
     ――――◇―――――
#2
○足立委員長 これより会議を開きます。
 関税定率法の一部を改正する法律案、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の三法律案を一括して議題といたします。
 質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。
#3
○堀委員 ただいま議題になっております関税定率法関係の問題につきまして、最初に法制局の方に少しその基本的な問題をお伺いして、それから問題の中に入って参りたいと思うのであります。
 御承知のように、憲法八十四条で租税法定主義というものが書かれておるわけでありますが、この法定主義という、ここに書かれております憲法の目的とするところは一体どういうところにあるのか、一つ法制局の方からお答えをいただきたいと思います。
#4
○吉國政府委員 憲法第八十四条は、新たに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によらねばならないという規定を設けております。この規定の意味は、新たに租税を設定したり、あるいは現行の税率を変更するには、原則として法律によらなければならないということを規定しておるわけでございますが、特に必要がございます場合には、法律で一定の条件を定めまして、その条件に基づいて政府限りで税率の変更等を行なうことができるということを規定したものというふうに解釈いたしております。この点は学界の通説とも申してよろしいと存じます。
#5
○堀委員 今おっしゃるのはその通りでありますが、その目的としておる意味でございますね。何を目的としてこういうふうに憲法に書かれておるのかということを、一つ伺いたいのであります。
#6
○吉國政府委員 これは現在の日本国憲法が基本としております国民主権の理念というものから発しておりまして、国権に基づいて租税を課徴するについては、国の唯一の立法機関である国会の決定によることを原則とするということを規定したものと考えております。
#7
○堀委員 国民の主権を第一に考えるということは、すなわち国民の利益をまず守るということが第一である。正当な選挙によって国民によって選ばれた者が、その権力を行使するのが国会でありますから、そういう意味で、国民の利益を守るためには、国会による決定が必要である、こういうふうな定めであると私は理解をしておるのでありますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
#8
○吉國政府委員 けっこうだと思います。
#9
○堀委員 そこで、この関税という問題は、私は二面的な要素を含んでおると思うのであります。一面は国民の利益を守るための要素を含んでおると同時に、一面は、産業界と申しますか、そういう業者と申しますか、そういうものの利益を守るという二つの要素を含んでおる。この点は他の租税とはいささか趣を異にしておる面があると思うのであります。そこで、ここで私どもが特に論議をしなければならないのは、国民の利益と、業者、産業界の利益とが競合する場合が生まれてくると思うのであります。この競合をする場合に、どこへ線を引くかということが、これは非常にむずかしい問題になるわけでありますが、憲法のこの理解からいたしますと、原則的には、まず国民の利益が優先するというふうに私は理解をするわけであります。もちろんそこには調和の問題はありますが、まず順序としては国民の利益が優先をするというふうに理解をいたしますが、その点は法制局はいかがでしょうか。
#10
○吉國政府委員 ただいまの堀委員のお説の国民の利益を第一に考えるという点は、私もその通りだと存じます。ただここで一つ申し上げておきたいと存じますのは、国民の利益と申しましても、関税を課せられましたために、その関税の賦課の対象になる貨物と申しますか、商品と申しますか、そういうものの使用者なり利用者なりの利益と、その関税が課せられましたことによりまして、同様の物品を国内で製造しあるいは加工するような事業者というものも、これもまた国民でございますので、この利用者たる国民と製造業者等である国民の利益の調和の問題として、お考え願いたいというふうに考えます。
#11
○堀委員 おっしゃるように、いわゆる製造業者も国民でありますから、当然そうでありますが、結局、広さの範囲で申しますと、そういう国民の広さよりも、需要者と申しますか、そういうものの範囲の方が一般的により大きいのではないかという感じ方もいたしますので、そういう表現を使ったのですが、ものの考え方としては、私は、需要者である国民の利益の方が原則的には重んじられて、しかし、その調和の関係で、製造業者である人の利益も守られなければならぬ。ひいては、その製造業者の利益が守られることが、全体の国民の利益につながるという面ももちろんあるわけでありますから、これを規定することがどこまで可能であるかという点は別でありますが、ものの考え方の方向としては、まず需要者の利益といいますか、そういう立場における国民の利益を第一義的に考えて参りたい、それが憲法八十四条の規定の原則的なものの考え方の土台である、こういうふうに私は一応理解をいたしたわけであります。
 そこで、ただいまお触れになりましたように、そうすると、例外規定として一定の条件を具するという、法律の定める条件によるということが次に出て参ります。そうすると、この条件なるものは例外規定であるというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
#12
○吉國政府委員 やはり原則は法律で定めるということで、条件の方は例外と考えるべきであろうと思います。
#13
○堀委員 例外規定であるならば、原則が守られないという特別の場合に限定をされてくるのではないか。原則が守られる限りにおいては、例外規定が原則の中まで入っていくわけにはいかないのであって、例外規定でありますから、少なくとも原則がそのままで履行されるときには、例外規定は成り立たない、だから限定されたものだ、こういうふうに私は理解をいたしますが、法制局いかがでございますか。
#14
○吉國政府委員 ただいまのお話の通り、租税法定主義で申しますならば、法律をもって規定することが原則でございまして、条件を定めて、それによって政府が税率を定めたり変更したりする方が例外ということで、原則をまず第一に適用して、原則通りいかない場合に例外規定ということは、まさにお説の通りでございますが、その例外によらざるを得ないような客観的な条件が熟している場合には、もちろん例外でいくということもあり得るということでございます。従いまして、原則であるか例外であるかと申しましても、その具体的事案の認定の問題によらざるを得ないというふうに考えております。
#15
○堀委員 もちろん、具体的な問題との関連でなければ、今の抽象的な論議では解決をいたしませんけれども、私は、特にこの原則的な問題に触れておりますのは、要するに原則をはっきりしまして、そのある一つのものさしの中で具体的なものをはかっていくということになりませんと、原則が野放しになっておっては、具体的なものをはかるはかりようがない、こういうことになりますので、まず私は、そういう意味で、この問題に入ります前に、原則の――もちろん原則についても、今申し上げますように、調和の問題がありますから、必ずしもその尺度が固定したということはないと思いますが、ある程度の概念として固定したものを考えない限りは、論議を前に進められないということで、まず法律で定められる可能な範囲を最大限に見る。これが最大限であって、しかし、どうもいろいろな客観的な情勢によって法律によることができない場合、まず第一はできない場合、第二は法律によらないことの方が望ましい場合、こういうふうに二つになると思いますが、そのできない場合ということは、非常にこれは私ははっきりしていると思うのです。法律によることができない場合には、当然これは例外規定は生きてくるということになる。ただその次の項ですね。要するに、法律によらない方が望ましいということの中には、いろいろな要素が私は入ってくると思う。その要素は後ほど具体的な問題の中で分析をいたしますけれども、その要素を、そういうふうな、第一項で述べたような決定的な、「よることができない」という条件ならば、これはだれが見ても例外として通用をいたしますけれども、その望ましいというような形になると、ここにはきわめて主観的な要素といいますか、立場におけるいろいろなものの考え方が入ってきますから、客観的にだれが見てもそれが正当であると言いにくい問題になってくると思います。そこで、順序として、今の例外という場合を、ちょっと今度は具体的な問題の中で法制局の方に伺っていきたいのでありますが、現在国会は大体十二月の中ごろに召集をされて、五月の終わりごろまでに終わるというのが、これが通常会の原則で、あとは臨時の国会が開かれない限りはまずないということでございますから、租税を定めるためには、少なくともこの通常国会にかけられる時期でないと、非常に問題はまずいということは、これはだれしもわかることであります。ですから、それ以外の国会の開かれていない時期に、そういう租税を緊急にきめなければならないということが起きたときには、私は、これは、最初に言う、客観的にだれが見ても法律によることが困難であるという判断を下し得る場合だと思います。そこで、問題は、そういう場合の緊急という問題でございますけれども、一体その緊急という法律上の言葉は、大体どの程度の時間的な切迫性といいますか、そういうものを持っておるのか、これは一般的な法律概念として一つお答えをいただきたいと思います。
#16
○吉國政府委員 緊急の度合いを具体的に説明せよというお話でございますが、緊急という文字を用いてございます当該法条の具体的内容に即して判定をいたしませんと、一般的に緊急というのはこういう度合いであるということは、一律には申し上げられないと存じます。
#17
○堀委員 もちろんそれはその場その場で使用は異なるでありましょう。たとえば刑法上では緊急避難ということがあると思うのですが、こういうふうな場合の緊急避難ということは、きわめて切迫した時間的な要素だというふうにわれわれは理解するわけですが、緊急避難が一カ月もの間通用するなどということは、だれも常識では考えないわけであります。そういうふうな意味で、緊急という言葉が使われる場合には、事態がかなり切迫しておるというふうに私どもは理解いたすわけですし、そういうふうな理解は私は当然だと思いますが、どうでしょうか。一カ月、二カ月と時間のかかるようなことも、問題の性質によってはもちろんそれも緊急である場合もあるかもしれませんが、しかし原則的には切迫しておる。もちろん、刑法上の問題については、きわめて短時間の問題になりましょうが、こういう経済条項について言っても、三カ月、六カ月先の問題を緊急だというふうには理解できないと私は思うので、一般的なお答えでけっこうですから、一つお答えを願いたい。
#18
○吉國政府委員 刑法の三十七条の緊急避難につきましては、ただいま堀委員のおっしゃいましたように、相当緊迫した事情ということになると思いますが、ただ刑法では緊急という文字を用いておりませんで、あれは学界の学説といたしまして緊急避難と言っておるわけでございますので、ただいまの具体的な事例には必ずしも該当いたさないかとも存じますが、一カ月、二カ月というような長い期間が緊急であるかという点を問題になさっていらっしゃいますけれども、今回の関税定率法の一部改正案の第九条の二で緊急の字を用いておりますのは、一定の期間について問題にしておるわけではございませんで、国民経済上緊急に必要があるという意味で緊急の字を使っておりまして、これも、抽象的には、まさに差し迫った必要、すぐに一定の措置をとらなければ国民経済上に重大な影響を及ぼすという意味でございますから、思想の根本におきましては、刑法の緊急避難の緊急という概念に相当するものであると考えております。
#19
○堀委員 今おっしゃるように、問題の性格が多少違いますから、もちろん別になりますが、緊急にともかく関税率を改正しなければならないという一つの要請が成り立ったとしまして、緊急の度合いのないもの、緊急と認められないものは、先ほど私が申し上げたように、はっきりした例外規定としては望ましくないと私は思いますが、その点についてはどうでございましょうか。
#20
○吉國政府委員 まさに第九条の二の第一項の規定は、緊急に必要がある場合に発動することを前提といたしておりますので、そのような必要がなければ、当該の場合にないということになりますので、緊急関税の制度は発動しないということでございます。
#21
○堀委員 緊急の場合に発動する、こういうことでございますね。そうすると、ここの法律の項目でいきますと、四ページの一行目まで全部を含めて、そういう場合は発動するということに法律上は理解されるでしょうが、緊急に発動されるものの例としては、一項と二項とは関連したものでありますから、これは緊急性があると認められる点においては、国会開会中であれば別だと思いますが、開会されていないときにおいては、これは当然例外規定になり得る、こういう判断をいたします。しかし、三項につきましては、この問題は相当な時間がかかってくる問題になると思うのでありまして、何カ月も、場合によったら一年以上もかかってくるものであって、自動的に一と二の緊急性の問題と三の問題とはつながらない、こういうふうに私は理解をするのですが、さっきおっしゃた発動というのは、この場合にはどこまでをそうすることによって発動と理解するのか。
#22
○吉國政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、第九条の二の第一項で「政令で定めるところにより、次の措置をとることができる。」と規定しておりますが、その「次の措置をとること」を簡単に発動と申したのでございまして、一項で基本的な緊急関税制度の中身である政府がとり得る措置を規定しておりまして、第二項は、第一項を受けまして、第一項の特に第三号の措置については、その措置をとる場合の政府の心がまえといたしまして、第三号は第一号、第二号とやや異なる点がございますので、特に規定をいたしたわけでございます。第三項は、第一項第一号でとった措置を相当の期間を越えて継続する必要がある場合には、これは法律によって別表の改正をしなければならないということを規定しただけでございまして、従いまして、もう一ぺん申し上げますならば、発動と先ほど私が申し上げましたのは、第一項の「政令で定めるところにより、次の措置をとることができる。」ということでございます。
#23
○堀委員 「次の措置をとることができる。」というのは三まででございますね。三というのは第一項の三と言えばよろしいのですか。
#24
○吉國政府委員 それは第九条の二の「外国における価格の低落その他予想されなかった」というところから始まりまして、三ページの2の前の行までが第一項でございます。
#25
○堀委員 そうすると、今私がちょっと緊急について申し上げたのは、第九条の二第一項は、これが一番本体でございますから、この一項で緊急性が生じてくる可能性があると私は思います。そうすると、一項で緊急性が生じて関税が動かされた場合には、現在われわれの方が関税及び貿易に関する一般協定に参加をしておりますれば、当然この部分についてまでは、自動的と申しますか、この行為を実体化するための必要条件として、第一号、第二号は緊急性の範囲で生じてくると理解をいたしますが、第三号は、その第二号による原因、結果的な問題の処理をしなければならぬということで、付帯的には生じてきますけれども、それ自体は、緊急性の問題ではなくて、時間が非常にかかってくる。次のガットの会議がない限りは、片方はガットの条項によってエスケープ・クローズされましても、その他の部分は緊急の取り扱いにはならないのではないか。次のガットの会合によって取り扱いが決せられるということになりますから、その点で私は緊急という言葉の関連の条項の中へ第三号が入っておるということは、法律上疑義があると思いますが、いかがですか。
#26
○吉國政府委員 第三号の措置は、わが国が一方的に措置をとりますならば、相手方から必ず報復的な措置がありますので、そこに第三号に規定してありますようなものといわば一体として、措置をとらざるを得ないということで、一体として措置をとることが緊急の必要があるというふうに私どもは理解しております。
#27
○堀委員 どうも今の法制局の理解は私全然納得できません。ガットは、第十九条の1で、次のようになっております。「締約国は、事情の予見されなかった発展の結果とこの協定に基いて締約国が負う義務の効果とにより、産品が、自国の領域内における同種の産品又は直接的競争産品の国内生産者に重大な損害を与え、又は与える虞があるような増加した数量で、及びそのような条件で自国の領域内に輸入されているときは、その産品について、前記の損害を防止し又は救済するために必要な限度及び期間において、その義務の全部若しくは一部を停止し、又はその譲許を撤回し、若しくは修正することができる。」これが1でありまして、これの関連としてあとの他の部分においてこれを取り扱い、片方が譲許の撤回をすれば、それに相対するものについては、片方の相手国としては撤回をする権利があるということになっておるだけであって、同時イコールにこれが自然発生的にすぐきまるものではない。要するに緊急事項であるから、緊急部分についての譲許の撤回その他を緊急的には許しておる。しかし、あとの部分は緊急的なものとしてガットの中には書かれていないわけでありますが、あなたの方では、そういう今の理解をガットの第十九条についてしておられるのでありましょうか。
#28
○吉國政府委員 あるいは先ほどお答え申し上げました点を実質的には繰り返すことになるかもしれませんが、第三号の規定は、特定の貨物につきまして第二号の措置をとった場合におきまして、ガットの第十九条2の規定に基づく協議によりまして、その前号二号かの措置をとりました以外の貨物で関税の譲許がされているものについて譲許を修正し、あるいは関税の譲許がされていない貨物について新たに関税を譲許し、その修正または譲許をした後の税率を適用するという措置を一体として行なわなければならない場合には、この第三号の措置をとるということでございまして、必ず第二号の措置をとった場合に第三号の措置が随伴するというたぐいのものではございません。
#29
○堀委員 第二号の措置をとった場合に、必ず随伴するものではないと今おっしゃったわけですね。私もそういうふうに理解しておるわけです。必ず随伴するものでなければ、そのものを含めて緊急であるという判断は、私は問題があるのではないか。法律上としては、第一号、第二号までは私は緊急の可能性を認め得るのでありますが、第三号はここを含めて緊急ということは当たらないのではないか。要するにこれは、私の理解によりますれば、他の物品のある緊急な問題のために処理する部分については、これはまたあとで触れますが、さっき申し上げた国民の利益の中の第二義的といいますか、順位としては二番目に当たるところの業者の利益を守る。それはひいては国民の利益になりますが、守るために第一号、第二号が発動されることは理解できますが、次の第三号は、今度はそれの取引の関係で他のものを上げることになるわけですね。関税を上げるということの取引を今度はしなければならぬというルールでありますから、今度はこれを上げるということは、私が最初に触れたところの第一義的な、国民といいますか、需要者の利害に非常に大きな関係を持ってくるわけです。そうして、需要者であると同時に、相対的にいえば業者にとってはプラスになるわけですね。競合しておるものがもしあれば、片方の関税率を緊急に下げなければならなかったために、こちらを上げたということになれば、こちらは業者にとってプラスになり、需要者である国民にはマイナスになる面ができて、それの選択については緊急性はない、こういう判断になるわけでありますから、そういう場合には、当然これは、法定主義の原則の中から見れば、例外規定として見られるほどの条件を満たすものではない、こういうふうに理解をいたしますが、法制局はいかがですか。
#30
○吉國政府委員 第三号の措置は、第二号によりまして、たとえば甲という貨物につきまして、関税率の緊急な必要があるということで、関税率を引き上げたという場合に、その代償といたしまして、第三号によりまして、乙という貨物について関税率の引き下げを行なうということが、第三号の規定の趣旨でございます。そうして、代償を伴わない一方的な発動は非常に問題がございますので、第二号をやるかわりに第三号の措置をとるということで、一体的に国際的な立場が適正に確保できるという場合に限って、第三号は発動するということでございます。
#31
○堀委員 ちょっと私思い違いをしておりました。第三号を発動するときは下げるわけでありますね。ですから、さっきの場合、上げる方は需要者の利得に関係をし、下げる方は業者の利害に関係をしてくるということであります。ちょっと私思い違いいたしましたが、その場合、第三号を下げる場合には、やはり業者の利益という面については選択性があるわけですから、今度は私は緊急ではないという理解をしておるのですから、次のガットで上げたものの見合いでどれを下げるかということになると、ここでは、緊急というものはある一つの条項に限るものである。そういう意味では選択性のあるものではない。だから、緊急なものを、ある一つの事項があって、これがいろいろな損害を与えるおそれがあるという関連で事項が一つにしぼられてきますから、問題は簡単ですが、これの代償として行なわれる関税率の引き下げ部分は選択的なんです。これは緊急との関連ですぐつながるものではなくて、現在譲許をしておるものの中のいずれを下げるかという選択性が中に入ってくるとすれば、そういう選択のあるようなものが、そういう緊急という事項の範疇の中で考えられてはならないと私は思うのですが、法律的な解釈はどうなりましょうか。
#32
○吉國政府委員 この第三号の措置は、第二号の措置をとった場合に、第三号の措置をとらなければ、第二号の措置がうまくいかないという場合に限って発動するわけでございますから、従いまして、あるAならAという貨物につきまして第二号の措置をとる場合に、どうしても、第三号の措置として、BなりCなりの貨物について関税率の引き下げを行なわなければいけないという場合に限って発動するわけでございます。従いまして、第二号の措置に随伴いたします第三号の措置が、両方合わせて一体として一定の措置になるわけでございますので、その措置をとることについて緊急の必要があるかどうかという認定の問題でございます。重ねて申し上げますと、第二号の措置と第三号の措置を一体としてとることについて、緊急の必要があるということでございます。
#33
○堀委員 どうもガットの条項の理解が法制局の方はちょっと不十分なように思うのでありますが、第九条は、いろいろなそういう国内産品に対する経済的な脅威があり、あるいはあると思われるときに、緊急に関税率を上げることを認めておるのが原則なんですね。エスケープ・クローズとしての原則がある。しかし、これは緊急だから一方的にやってよろしいということを認めておるわけです。ただ、しかし、一方的にやりっぱなしでは困りますよ、関税全体のバランスの中で問題を考えましょう、だから、一方的にやることは認めるが、ある時間的な要素の中で協議することによって他のものを下げなさいということは、一体的にあとにくっついているわけですね。だから、これは一体的でないと問題は処理できないということは、ガットに書いてない。まず下げることを認めたということは、これはもう緊急だから認めましょうということなんです。ただそのあとは、それだけではいけませんよということにガットはなっておる、こういうふうに私は理解しておるのですが、法制局としては、これは一体的なものだとしか理解できない、こうおっしゃるのでしょうか。
  〔委員長退席、細田(義)委員長代理着席〕
#34
○吉國政府委員 ガットの第十九条第二項におきまして、締約国は、本条の第一項の規定に従って措置をとるに先だって、できるだけ早目に書面によって締約国団に通告しなければなりません。また、その提案した措置について自国と協議する機会を、締約国団及び当該産品の輸出国として実質的な利害関係がある締約国に与えなければなりません。特恵譲許についてそのような通告を行なう場合には、その通告には、その措置を要請した締約国の名を掲げなければなりません。遅延すれば回復しがたい損害を生ずるような緊迫した事態におきましては、この第十九条の一項に基づく措置は、事前の協議なしで暫定的にとることを認めております。しかし、その措置を暫定的にとりました場合には、その措置をとった後直ちに協議を行なうことを条件にいたしております。従いまして、この第十九条の第二項におきまして考えておりますこと自体が、その第九条の二の第一項第三号の措置が第二号の措置と一体として行なわれなければならない場合に、第三号の措置が行なわれるという、この原案の基礎になったわけでございます。
#35
○堀委員 ここで問題はまた複雑になりますが、第三号の中で話がきまらない場合もあるわけですね。協議をしなければならぬとありますが、今の十九条の第三項に「前記の措置について関係締約国間に取極が成立しなかったときも、締約国は、希望するときは、その措置を執り、又は継続することができる。また、その措置が執られ、又は継続されるときは、それによって影響を受ける締約国は、その措置が執られた後九十日以内に、且つ、締約国団が停止の通告書を受領した日から三十日の期間を経過した時に、その措置を執っている締約国の貿易に対し、又は、本条1(b)に定める場合には、その措置を要請している締約国の貿易に対して、この協定に基く実質的に等価値の義務又は譲許で締約国団が否認しないものの適用を停止することができる。」要するに裏側の処置がくっついているわけですね。話し合いというものがそんなにうまくいくかどうかということにつきましては、過去の例においてそう簡単ではないと私は思っております。要するに、これは、緊急の場合における、「遅延すれば回復し難い損害を生ずるような緊迫した事態においては、本条1に基く措置は、事前の協議なしで暫定的に執ることができる。」それが私は本来的なエスケープ・クローズの一番肝心なところだと思っておるわけです。緊急という問題はこのように理解されなければ――非常に前からわかっていて、それからガットによって十分協議をして、それから発動するというような場合よりも、本来的な意味は、私が今申し上げた、遅延すれば回復しがたい損害を生ずるような急迫した事態をさしておるのであって、ただ、しかし、それだけでなくて、もっとゆるい問題も含めてここには取り上げられておる、こういうふうに私は理解しておりますから、この建前からするならば、今の緊急性の問題については、私は、一番、二番というものは、ここにいう重大な損害を与え、または与えるおそれがあるために、緊急に発動しなければならぬという条項に該当するけれども、第三号の場合については、それが緊急に処理できるものもあれば、できないものもあるのであるから、本質的には私は一、二と三とは法律的な性格を異にしておる、こういうふうに理解をするのです。これは実は関税当局のいろいろ論議をされておる経過の中で見ましても、第一、第二は緊急関税、第三は弾力関税の条項として考えられておることは明らかなんですから、その点について、法制局はそういうふうな理解で、関税当局すらも理解をしておることを、あなたの方は一方的にどうしてもここへくっつけなければならぬとおっしゃることは、私はどうも理解ができないのです。すらっと理解すれば、一、二は緊急条項、三は弾力条項だというふうに私は理解をするのですが、そこはどうでしょうか。
#36
○吉國政府委員 どうも先ほど来お答え申し上げました点を重ねて申し上げるようで恐縮でございますが、私どもの理解におきましては、第三号の措置も、第二号の措置をとるために第三号の措置を一体としてとらなければうまくいかないという場合に発動するものであるから、従って、その関係においては、緊急な必要があるという場合があり得るという考え方でございます。もちろん、一号の措置あるいは二号の措置と三号の措置とは、その間差異がございます点は堀委員のおっしゃいました通りでございまして、そのためにこそ、第九条第二項の、前項第三号の措置は、その効果が同項第二号の措置の補償として必要な限度をこえてはならないということと、また国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするような配慮をしなければならないということを――政府が政令をもって第二号の措置をとる場合にも、こういう点を十分に考えてやらなければならないということを、法律上の義務として規定をいたしたわけでございます。その意味におきまして、第二号の措置と第三号の措置とは、それだけの差はわれわれも認識をいたしておるわけでございます。しかしながら、第二号の措置をとるためには第三号の措置をあわせとらなければうまくいかないという場合には、第三号の措置がとり得るということをあわせ規定することが、この緊急関税制度として必要であるというふうに理解をいたしたわけでございます。
#37
○堀委員 今部長は「あり得る」という表現をお使いになっておるのです。緊急な場合、第二号の処理をするために第三号の処理が緊急に処理されなければならぬような必要があり得る場合はと、こうおっしゃった。そういたしますと、あり得ない場合もあると認定をしてよろしいわけですね。
#38
○吉國政府委員 まさにその通りでございます。
#39
○堀委員 そこで、今度は関税当局の方へちょっと伺っておきたいのですが、今の法制局の方は、第三号については二つの場合を想定をされました。二号との関係で緊急に処理しければならぬ場合と、それから緊急に処理をしなくてもよろしい場合と、二つ想定をされました。私は一つしかないのじゃないかと思うのですが、具体的な取り扱いとしては、ガットにおいて二つの取り扱いがあり得るのかどうか、お伺いしたい。
#40
○稻益政府委員 私ども実際に考えておりますのは、第一号、第二号の場合、つまり関税の引き上げを必要とするという場合に、緊急の必要で引き上げる、あるいは譲許の撤回をいたしますると、ガットの十九条の条項によりまして協議が必要になる。ただ、もしその場合に一方的な引き上げがさして大きなものでないといった場合、相手国もそれを納得する場合には、二号だけの引き上げで済む。もし十九条の規定によりまして協議をやりました結果、相手国でどうしても代償を必要とする、またこの代償をこちら側がのみませんと二号の引き上げが実現できないといったような場合もある。そのような意味で、二つの場合があるというふうにいたしておるわけでございます。
#41
○堀委員 そこで、今第二の場合として協議をしまして、向こう側が一体でないと納得をしないと今おっしゃったわけですが、一体でないと納得をしないという場合に、緊急性がありますから、緊急ならば協議をそう長時間にわたって継続していられないから、第十九条第二項の中の「遅延すれば回復し難い損害を生ずるような緊迫した事態」これは緊急だと思うから、そういう処理を一方的にすることを認めておるわけですね。だから、その場合には、一方的にぽんとやってしまって、あと協議をすることが認められておるわけですから、常に緊急であるという判断に立つならば、協議がととのうということを前提とする場合もあり得るでしょう。ととのえばそれが望ましい。しかし、私は、緊急ですから、現実の問題として見れば、多くの場合ととのわないだろうと思うのです。片方は緊急で起こっておる問題で、すぐ協議をして、すぐオーケーというふうに――関係締約国間が、全部いろいろな利害関係があるのであって、オーケーができるかどうか。これは将来の問題になるから、非常に問題がありますが、そうすると、緊急関税の本来の趣旨は、やはりこの九条の二に掲げられておる、今のような緊迫した事態というのが本来的なものである。それが緊急であって、それほど緊急でなければ、話し合いをゆっくりやればいいのです。協議をゆっくりやって、総体的に一体として処理しましょう。――しかし、一体として処理するということになると、時間的な経過が相当にかかってくるから、ここにいわれるような「貨物の輸入が増加し、当該貨物の輸入が、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある場合において、国民経済上緊急に必要があると認められるときは、」そういう要項が入っておるところでは、一般的なそういう協議というような格好だけで処理できない場合を相当想定しておるのじゃないかというふうに私は思うのですが、あなた方の方は、そうではなくて、こちらは緊急と言っておるけれども、片一方ではできるだけ協議をして一本でなければ発動できない、こういう格好ですか、税関の方では。
#42
○稻益政府委員 堀先生御承知のように、十九条のガットでありますが、十九条の二項で、最後にただし書きがありまして、「事前の協議なしで暫定的に執ることができる。但し、その措置を執った後直ちに協議を行うことを条件とする。」普通の場合には、仰せのようにこのただし書きが実質上行なわれておることは、比較的多いのじゃないかと思うのです。ただ、ガットの協定の建前といたしましては、そういう緊急の場合にも、事前に関係国間で協議をすることが建前になっておるわけであります。従いまして、私どもも、発動をいたしました場合にも、できるだけ原則に従いまして事前に協議を行ないまして、もちろん緊急の必要でありますから、いろいろ代償なんかにつきましても、かなりこちらも考えなければいかぬという事態は生ずるわけです。これは国民経済全般から見ましての比較考量の問題になろうかと思いますが、あまりにも代償が大きくて、国民経済全般としてながめました場合に、こちらのガットの譲許の撤回、そういったいわゆる一項の二号でありますが、それをやりますことが、代償との比較考量の関係で困るというようなところまで参りますと、これは発動できないわけです。従いまして、そういう意味で、現実の問題としましては、やはりどうしてもある程度代償というものをこちらものまなければ、一方的なことはできない。そういうことで、代償も非常に緊急な一体としての措置が必要になる、かように考えておるわけであります。
#43
○堀委員 ちょっとここで関連して税関当局に伺いたいのですが、このガットの十九条が発動されたのは、西ドイツで一件とアメリカで十三件しかないと思うのですが、その場合における取り扱いは、今のようにどの部分で行なわれたのか。西ドイツの場合は、やはり事前協議が成立した後に行なわれたのか。アメリカの一般的な十三件についてのそういう取り扱いの協議が行なわれなくて、今私が申したような「遅延すれば回復し難い損害を生ずるような緊迫した事態においては、本条1に基く措置は、事前の協議なしで暫定的に執ることができる。」ということになっておりますが、過去の例はどうなっておるのでしょうか。
#44
○稻益政府委員 お説のように、アメリカで過去に十三回、西独で一回緊急関税の発動がありましたが、いずれの場合も一方的に一応引き上げまして、事後に協議をやっておるというのが実情であります。
#45
○堀委員 過去における例も私は申し上げました。現実にこの条項によって行なわれているわけです。将来も、緊急性という問題については、こういう取り扱いになるだろうということを予測するならば、この条項でやって、あとはもちろん時間的な制約はありますが、第二段の措置として協議することになるわけです。これは一体でないという法律上の解釈からすると、まずぽっと片一方下げておいて、これは緊急であるから下げることをガットが認めているから下げておいて、そして三十日以内、九十日以内にこの問題の処理を第二段の段階としてやることを義務づけているわけですから、さっき税関部長がおっしゃったように事前協議をして、それをとりつけて発動するならば、これは私一体と理解できるのですが、現実に過去の世界においてそういう例しかないということは、ガットの事実上の運営適用は、何にしても私が申し上げた緊急なんですから、そうすると、この中の例外というか、私は変則だと思いますが、そういう部分によって発動される可能性の方が多いという判断に立たなければならぬ。そうすると、あり得るという事実は非常に量が少なくて、予測の見通しとしてもそうでない。要するに緊急性がない取り扱いの方のウエートが大きいのではないか。そういうことになると、この第三号というものをやはり緊急関税の要項として認めるべきでない。やはり弾力関税としての行政府に対する権限の委任なんだ、こう理解をするのが法律解釈上としては正当ではないかと思いますが、法制局はいかがですか。
#46
○吉國政府委員 ただいまの堀委員のお話で、第三号の措置というのは、第二号の措置がとられる場合に随伴することが非常に少ないのじゃないかというふうなお話が出たわけでございますが、もちろん、第三号の措置が、先ほど来申しておりますように、第二号の措置に当然随伴するということではございませんで、第三号の措置をとらなければ第二号の措置がうまく実行できないという場合に限るわけでございます。その意味におきまして、第三号の措置が第二号の措置に随伴して必ずとられるかどうかということについての頻度と申しますか、そういうものが低いことは否定できない事実でありますが、いざ第三号の措置が第二号の措置に随伴してとられなければ第二号の措置が適正円滑に実施できないという場合になりますと、そういう具体的な場合に相当いたしますならば、ますます第三号の措置をとることが国民経済上緊急に必要があるという場合に該当するわけでありますから、第九条の二の緊急関税の制度の中に含めて、緊急関税制度の一環としてこの法律の上で処理することが、立法政策上妥当であるという考え方でございます。
#47
○堀委員 私は、第三号を消してしまえということを言っているわけではないのでございます。要するに、緊急関税というものの法律的な角度から見るならば、第一号、第二号は、今の九条の二を受けて緊急処理という範囲に入ってもよろしいが、第九条の二の三号というもので新たな形で処理することができることを認めるというのであれば、法律の解釈として行政府にその委任をすることがいいかどうかの問題は、あとの問題ですから、ただここの問題だけに限るならば、緊急なものは緊急なもので処理しなさい、緊急でないものは行政府に委任して下さいという格好の処理をすれば、それは法律的な解釈として正しいのであって、あなたのおっしゃるように、過去においては一件もそういう例がない。あり得るかもしれないというごくわずかな可能性だけによって、これを緊急の中に入れるということ自体は、私は常識的でない。だから、一号、二号は少なくとも私は緊急関税のこういう処理の仕方でよろしいが、三号については私は緊急の処理ということをはずして、この部分については、二号の裏側の処置であるから、行政府に権限を委任してもらいたい。要するにそういう意味における例外規定として処理をしてくれと言われるのなら話はわかるけれども、そういう筋道をはずしておいて、便宜上ここに入れておいた方が簡単だからこれへ入れましょうというようなことでは、法律の適用という問題から、いささか疑義があろうかと私は思うのですが、そこはいかがでしょうか。
#48
○吉國政府委員 ただいまのお話は、第三号の措置を規定する場合において、第一号なり第二号なりについては、緊急関税制度として政令で定めるところにより次の措置をとることができるということで、行政府に委任することも場合によっては妥当であるけれども、第三号の措置というものを、緊急関税の一環として、ここにいわば挿入することは、立法政策上やや妥当を欠くではないかという御趣旨であろうと存じますが、私どもの理解では、もちろん第三号の措置は、今堀委員のおっしゃいましたように、第二号の措置のいわば裏側でございまして、第二号の措置をとる場合に、第三号の措置を伴って、いわば第三号の措置と並行して第二号の措置をとらなければ、第二号の措置をとることそれ自体が円滑には行ないがたいという場合に、第三号の措置がとれるということでございまして、もちろん、その第三号の措置につきましては、先ほど申し上げましたように、その効果が第二号の措置の補償として必要な範囲内でなければならないということと、その第三号の措置をとることによって、国民経済に対する影響はできるだけ少ないものにするようにしなければならないということを第二項に規定をいたしまして、その意味で第二号のまさに裏側であるという趣旨は、この第三号の「特定の貨物につき前号の措置をとる場合又はとった場合において、」という文言と第二項の規定の趣旨からいたしまして、第二号の規定の措置をとる場合の必要不可欠な随伴的な措置という意味に理解しておるわけでございますから、私どもも決して第三号の措置を第九条の二に意識的に挿入したというようなことではございませんで、第二号の措置に随伴する措置として第三号の措置をとらなければならない場合に、第三号の措置をとるという意味で規定したわけでございます。
#49
○堀委員 そうすると、もうちょっと具体的に申し上げますと、ガットの第十九条の2の緊急的な処理をして、協議をしないで一方的に関税率を引き上げたという場合に、一方的にやりますから、そうすると一体とならないわけですね。場合によっては、これは、ほっておいたら、向こうが勝手に好きなものを下げても文句は言えませんよという規定ですから、これは一体にしなくてもいいようになっているんです、ガットでは。片一方を上げたら片一方は話し合いをして下げなさい、けれども、向こうがその時間内に下げなければ、こちらは勝手に上げますよ、しかしこちら側は認めなければならない、こういう規定です。だから、これは、一方的に上げるということと、一方的に上げた場合にあとの問題を処理するのは――そうすると、今あなたは三号以外と理解するというような話をされたわけですね。裏側として必要である場合、不可欠であるものは三号で処理をすると、こうおっしゃったのですから、そうすると不可欠でない場合が起きますね。話をしても話がきまらなかったとか、まあやっている経過の中で時間的にもいろいろ問題もありましょうが、その理解として最終的には上げ下げをすれば一体になりましょうけれども、事前協議をしてやるときは一体だと思うんです。事前に協議をして、こちらはこれを上げますから、これを下げますから、これで御了承いただきたい、よろしいと言ってぴしゃっとやれば、これは一体だと思う。しかし、一方的に上げたやつは、これはあとはもちろん結果として裏側の処置になりますが、一体ではなくて、さっきおっしゃったあり得るでない部分に私はなる、こう理解するんですが、それでよろしいですか。そうすると、法律とはちょっと別に処理されることが起こると思うんですが……。
#50
○吉國政府委員 第三号の措置をとりませんで第二号の措置をとると、第二号の措置自体が円滑に実施できないと申しましたのは、こういうことでございまして、実は第三号で、相手国――第二号で甲なら甲という国のAという物資について譲許の撤回なら撤回をするという場合に、今度は第三号の措置としてBならBという物資について関税率を引き下げるということをやらないで、そのAならAの関税率を引き上げるという方だけをやりますと、今度は相手国から日本の当該国に対して輸出する貨物について報復的な関税引き上げが行なわれるということから、いわば関税上の争い、簡単に申しますと関税戦争というようなものを誘発するようなことになりまして、これこそまさにガットの精神に反する結果になるということから、第三号の措置によって他の代償となる措置をとることによって、第二号の関税引き上げの措置が円滑に実施でき、平和裏に実施できるという場合に、第三号の措置をとるというのがこの趣旨でございます。
#51
○堀委員 どうもそれは、とること自体、私は表と裏の関係は理解するのですが、私は、どうもそこが、あなたのおっしゃるように、緊急の問題とつながらないと思うのです。その緊急ということは、片方で上げるということが緊急なのであって、上げてしまって、あとこれはやはり円滑にしなければならぬことは当然でありましょうが、円滑であるとかないとかということは、緊急性の前に問題にならぬじゃないですかね。そうすると、円滑でなければもう上げられないということになりますか。そうじゃないでしょう。緊急だから、円滑であるとかないとかにかかわらず上げなければならぬ。だからこういう例外規定がガットの中にも設けてあるくらいです。過去における発動は円滑でない場合もあって、ただあとの処理として円滑にしましょうということで、その緊急の時点において円滑ではないですよ。そうすると、その緊急の時点において円滑であるとか円滑でないという問題ではなくて、緊急なものだけを処理して、あとは第二段の処理として、表裏の関係はあるが、緊急ではなしに、円滑にするためにあとの処理をするのだということですから、あとの処理は私は緊急ではないという理解をするのです。あとの処理は緊急ですから、あとの方はどうしても……。
#52
○吉國政府委員 第三号の措置をとりませんで第二号の措置をとったと仮定いたしました場合に、この相手国から非常に強度の報復措置をとられるかもしれない、とられるおそれが十分に見込まれるという場合には、第三号の措置をとらないで第二号の措置をとるということが、これは事実上不可能になるわけでございます。そういう場合を想定いたしまして、そういう日本の産業全体にとって重大な影響を及ぼすような報復措置がとられないようにしながら第二号の措置をとるというためには、第三号の措置が必要であるということで考えております。
#53
○堀委員 どうも話がすっきりいかないのですがね。おっしゃるように、第二号の措置をすることは、これは円滑にいくかいかないかは別として、国内条件によって緊急性があるかないかによって発動することですから、まず先に発動して、幾ら発動したって、みんな貿易を円滑にやりたいのですよ。貿易を円滑にやりたくないなんという人間は一人もいないのですから、当然あとは円滑にやるためにガットの三条に規定するような処理をするわけですね。だから、そのことはするのだけれども、そのすること自体は、緊急ではない話し合いをする中で、これでいいでしょうか、これを下げていいでしょうか、どれを下げていいでしょうかという話を、話し合いができる限りスムーズにいくように継続をしてゆっくりやっていくわけですから、そのこと自体は私は緊急ではないではないか、緊急というのは、一号と二号の急迫した事態において処理をされることが緊急であって、それを円滑にするための手段は緊急ではなくて、その部分は、しかし一応第二号を円滑にするために、政府にこれだけの権限を移譲していただけば、その取り扱いの方がよろしい、こういうことに私は理解をする。あなた方の方では、どうしても緊急の裏側にくっついた不可欠な条件だけだというふうにおっしゃるが、不可欠でない条件もあるなどと言われるわけだから、過去においては、今のような話の中でいくと、現実には第二号をぽうんと発動しておいて、あとで第三号の処理をかなり時間をかけてやっておると思う。だから、そういう部分は、あとで選択的な問題で時間をかけてやる部分までは緊急ではないではないかというふうに言うのですが、あなたの方ではそれもどうしても緊急だということでしょうか。どうも私そこのところがすっきりしないのですがね。
#54
○吉國政府委員 どうも同じ答弁を重ねるようでございますが、第三号の措置を第二号の措置と合わせとることは、全体として国民経済上緊急に必要がある場合にとるというふうに言わざるを得ないと思います。ただこれも先ほど申し上げましたが、第三号の措置は、第二項にございますように、あくまで第二号の措置の補償であり、かつ第二号の措置に随伴して第三号の措置を行なう場合に、それによってまた不測の国民経済に対する影響が出ることがあってはならないということを顧慮いたしまして、国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするように配慮をしなければならない、ということを規定したわけでございます。
#55
○堀委員 この問題は水かけ論になりますから、一応ここまでにしまして、次へ参りますが、そこで、今の緊急は、私は一番、二番しか緊急として認めません。三番目は緊急ではない。弾力関税的なもので、取り扱い上の便宜のために権限を移譲してもらいたいということは理解をしますが……。そこで、さっきの原則論にもう一回返りまして、いずれにしましても、国民の利益に関係をすることでありますから、国会の開かれていないときに事態が発生をすれば、緊急であると理解をしますが、国会が開かれておるときに事態が発生をした場合に、これを原則から曲げなければならないほどの何か理由があるかどうかを、法律的な解釈の面で一つお答えをいただきたいと思います。
#56
○吉國政府委員 緊急関税の第九条の二の規定の発動を、国会が開会されている間に行なうことはどうであるかというお話でございますが、同一の規定の運用につきまして、国会開会中である場合と国会が閉会中である場合とで取り扱いを変えることは、立法政策上妥当を欠くのではないかという点が第一点でございます。それから、次には、緊急関税は、その発動される場合のみならず、一たん発動した後においてこれを撤回する場合においても、機動的な運営が必要でございますので、立法手続によって発動された場合には、これは当然法律によって撤回をいたさなければなりませんので、その場合の機動性を失うおそれがあるということが第二点でございます。それから、第三点は、これは緊急関税制度の緊急の認定でございますが、迅速に発動される必要がありまするので、政府限りで運用するように規定する方が妥当であるというふうに考えましたわけでございまして、これがやはり、憲法八十四条の、法律で定めた条件に基づいて行政府が運用すべき例外的な場合であるというふうに、認定をいたしたわけでございます。
#57
○堀委員 私今のあなたの一番最初におっしゃったことがちょっと理解できないのです。法律は二つ書く必要はないのです。国会閉会中に次々の事情が起こった場合には、次の処置をとることができる、こう一言あれば、開会中の部分については当然国会において処理をされることでありますから、二つの処理をしなければならぬとおっしゃるが、二つの処理ではなくて、例外を例外として規定するだけのことであって、それは、私が最初に申し上げた法律の原則及びその例外規定という考えからするならば、私が最初に申し上げたように、法律によらざるを得ないような緊急なものですから、その緊急性というものは、そういう意味で理解をしなければ、国会が開かれておるけれども国会へかけたら時間がかかるからというようなことであるならば、それは私は国会に対する侮辱であると思うのです。緊急であるから国会で処理をしてくれといわれて、われわれが緊急に処理をしないということをあなた方は前提に考えて、そういうことをおっしゃるのでしょうか。
#58
○吉國政府委員 決して国会の審議が緊急の間に合わないということは、私どももちろん考えておりません。ただ緊急関税を発動いたしました場合に、その発動したものをさらに撤回することについても、機動的に行なわなければならないという点が、最も重要なポイントであろうと思いますが、法律でいたしましたものにつきましては、その緊急関税の発動を撤回するということ、たとえば、ある貨物の税率を引き上げたものを、さらにもとの税率まで戻すということについても、法律を要することになりますので、この発動と撤回とを一つの観念としてつかまえてみますると、やはり緊急関税制度の発動は、この原案の第九条の二のようにすることが妥当であろうというふうに考えております。
#59
○堀委員 さっきお答えの中の第一項の一番目の問題は、そうすると、私は取り除かれると思います。それから、機動性のことは除いて、敏速という問題も、国会開会中であっても敏速に処理はできるのだとあなた方は理解されるから、敏速ということも国会開会中における問題としては除かれますか。機動性の方は、要するにあとは法律条項として除く分はあとに残しますが、二様に規定はできないということと、敏速の問題はあなたは訂正されますか。
#60
○吉國政府委員 先ほど申し上げました第一点の、同一の規定について国会の開会の間と閉会の間とで規定の運用が異なることは適当ではないと申しましたのは、もしも、堀委員の今おっしゃいますように、国会閉会中に限りということになりますれば、当然その点は問題ないということになると思います。ただ、私どもの考えましたのは、この第九条の二の第一項の各号にございますような措置は、いわばここで具体的な規定が設けられたとほとんど相違がないのでございまして、第一号の措置といたしまして申し上げまするならば、当該貨物について、別表の税率、関税定率法で、法律によって定まっております税率による関税のほかに、「当該貨物の課税価格とこれと同種又は類似の貨物の本邦における適正と認められる卸売価格との差額から別表の税率による関税の額を控除した額以下の関税を課する」ということでございまして、これが客観的には本来きまるべきものでございますので、その額を単に賦課するというだけの権限でございまするので、一般的に税率を広く変更するというような――これは諸外国の例にはそういうものもございますが、そういうようなものとは違いまして、いわば比喩的に申し上げまするならば、ある所得を認定するとかいうようなものとほぼ同様な関係で、この第一号にありますような具体的な額を認定して、それをアプライするという意味でございまして、税率を政府限りにおいて非常に広い範囲にわたって変更するというような広範な権限ではございませんので、この程度のものは、法律をもって定める条件のもとにおいて行政府が運用してもいいという、憲法第八十四条のいわば例外の場合に該当するものと考えたわけでございます。
#61
○堀委員 今おっしゃること、そこの第九条二の一号の技術的な問題についてわれわれは論じているのではないのです。要するにこの判断が生ずるわけですね。緊急関税を、どの場合に、いつ、どの項目について発動するかという判断、その判断が私は国民の利害との関係で問題があるということであって、その値幅とかなんとかのことを私は申し上げておるわけではないのです。そこで、今あなたのおっしゃったような、そういう技術的な考え方に立つならば、私は憲法第八十四条の精神はそこなわれておると理解をする。要するに憲法第八十四条を最初に私が論議をしておりますのは、需要者であり、あるいは幅の広い国民の利益を守るためには、できる限り許す範囲で法律によれということが原則なんですから、そうすると、その中の例外規定というものは、それによらなければならぬ、その法律ではできないという前提があったときに、初めて例外規定がはっきり生きてくる。そうすると、その例外規定で、あなたが必要としてあげられたものの一の最初の分は撤回されました。それから、敏速の問題については、あなたも国会は敏速に処理ができないとは思わないとおっしゃるわけですから、そうするとあとの撤回問題ですね。一回法律できめたものを取り除くときの機動性の問題があとに残ってくると思うのです。
 そこで、ちょっと税関当局にお伺いしますが、さっき触れました西ドイツ及びアメリカの十三の項目についての緊急関税は撤回をされておるものがあるのか、そして撤回をされておるとすれば一体いつなのか、そういうことをちょっと伺っておきたいのです。
#62
○稻益政府委員 現在までのところまだ撤回された事例はございません。
#63
○堀委員 現実の例は撤回をされた例はまだないわけです。撤回をするときに緊急を要する撤回ということは私はないと思うのです。撤回ということは大体その必要がなくなったという諸情勢の判断によってやることであって、これは緊急性のものではないから、そこに機動性を求めなければならぬとおっしゃることは、私は事の重要性から見れば問題にならない。そうすれば、最初におっしゃった国会開会中においては、当然法律事項として処理をしても何ら支障はないと思うのですが、積極的な支障のある事実があればおっしゃっていただきたい、開会中に限って。
#64
○稻益政府委員 諸外国の例では、ただいま申し上げましたように、まだ撤回された事例がないわけであります。私ども考えておりますのは、緊急の事態は、改正案の第三項で出ておりますように、「当該措置を相当な期間をこえて継続する必要が生じたときは、すみやかに別表の改正をしなければならない。」この場合におきましても、私ども、やはりはっきり一年をこえてというふうに書くこともあまりに計画的になる。場合によっては一年二、三カ月続く場合もありますし、一年半くらい続くという場合もありましょう。私どもの考えとしましては、一年をこえて続くようであれば、これは国会の御承認を得まして別表を変えたい、かようなつもりでおるわけであります。諸外国でたまたま事例がまだかなり長く続いておりまして撤回をしておりませんが、考えられますことは、私どもとしては、撤回していいという事態が参りました場合は、やはりすみやかに撤回すべきだ。それでこそ、初めて緊急関税であり暫定措置であるいとうことが言えようかと思うわけであります。私どもの実際の運用の場合は、さような考え方で当たって参りたいと考えておりますので、撤回につきましても、やはり場合によりましては国会の閉会中ということも十分考えられるのじゃなかろうか、かように思います。
#65
○堀委員 そうすると、法制局の方にお伺いをいたしますが、特定の法律について法律事項で定める。しかし、その法律の事項が、今度はそれを撤回するといいますか、法律を取り除くという場合には、時限立法というような時間を限らないでも、要するにその部分についての委任を行政府にする。その法律を作るときは立法府がやる。しかし、閉会中に限り、それを、今の機動性を生かすためには、急に臨時国会を開くわけにはいきませんから、その条項については行政府に権限を移譲するということは、法律上としては可能か、不可能なのか。
#66
○吉國政府委員 そういう制度は、制度の議論といたしましては不可能ではないと存じます。
#67
○堀委員 制度としては不可能ではない。そうすると、私は、今税関部長もおっしゃいましたが、どうもこの論議をずっと見詰めておりますと、緊急という問題が必ずしも緊急という格好ではないという場合が、事実上の問題として割に多いのではないか。なぜかというと、アメリカの場合は、大体何らかの判断をして、関税審議会でございますか、関税委員会ですか、そういうところで決定をして公聴会を開いたりして、大体最短六カ月間くらいは、それを動かすためにでも時間がかかっておるということでありますししますから、そんなに五日や十日で処理ができるような性格のものではないし、また事態がダンピングであるならば、意図して安売りをするのだから、急激に一時的に起こると思うのです。ダンピングは報復関税が法律にあるわけですから、そうすると、ここではその規定をされておるのは、「外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化」、ちょっとあとの方がよくわからないのですが、価格の低落などというものは突然としてざっと暴落をしてきて、そしてたくさんのものがどんどん入ってくるなどということは、私は一般の経済現象としては考えにくいのではないか。ということになると、事実はいろいろな関係でだんだん下がりつつある、それとの関係で、これはどうしてももういかぬということを見計らって処理をするということなのであって、私はその間一週間とか十日で処理をしなければならぬというものではないというふうな感じがいたします。諸外国の例を見れば、おおむねこれに対する制度については相当時間がかかるような仕組みになっておりますから、そういう例を見れば、時間的な要素というものはかなり幅がある。その幅があるのならば、私が今申し上げたように、開会中のものは開会中に処理をする、閉会中は閉会中の処理をする。そうして、開会中に作った法律を、もし――だから今度逆に、こっちへ競争力ができてきて、機動性によって撤回しなければならぬものも、ぱっと下がってぱっとまたこっちで処理ができるというのではなくて、ある程度カーブがあっても、なだらかにきて、またなだらかになるということで、切迫性、緊急性というものはない、なるたけ早いに越したことはないけれども。そうすると、私は、今税関部長がおっしゃったように、なるたけ早いことが好ましいけれども、それは一カ月とか二カ月とかを争うほどのものではないし、だから、その時期にもし国会が開かれていなければという特例を設けさえすれば処理のできることではないか、こういうふうに思うのですが、税関部の方は、どうしてもこれを国会と切り離さなければならぬ、行政府にまるまる委任をしてもらわなければならぬという積極的な理由があれば、その点について一つ。また、三点については、法制局は、機動性の問題は残りましたが、一点と三点の方は取り消されておるのですが、どうですか、積極的な理由……。
#68
○稻益政府委員 ただいま法制局から説明がありましたように、主たる理由はやはり撤回についての機動性ということであろうかと思います。ただ、先ほど来の堀先生の御議論の中で、緊急関税という中で、特に第一項の第三号の場合、この点についても、ちょっと補足して私どもの見解を申し上げたいと思います。引き上げる方が緊急関税であって、代償として引き下げる方は緊急ではないのじゃないか、一たん引き上げておいて、あと交渉すればいいのだ、これは事後の措置を円滑にするための措置なのだから、緊急措置ではないというお話であったわけでありますが、言葉の表現にもなろうかと思うのでありますけれども、私ども、ガットの解釈といたしましては、十九条でそういうことを規定しておる。先ほどちょっと触れたわけでありますが、十九条の中に二つありまして、事前に協議をして、それが整ってからやるのが原則である。これは緊急関税の原則なのであります。同じ十九条の中に、二項のただし書きで、場合によっては協議なしに暫定的に先にやることができる。しかしこれは協議をやることが条件だ。この場合も緊急関税であるということで、十九条の中に一括して入れてあるわけであります。もしこれによりませんと、事後にやります協議が普通の協議であるということになりますと、これは、ガットの仕組みといたしましては、別途に二十八条のいわゆる再交渉という部類に入るわけなのでありまして、この点におきまして、私、先ほどの引き下げの方は緊急性がないのじゃないか、これをしも緊急関税と言うのは行き過ぎではないかという御議論に対しましては、一応現行のガットの仕組みとしましては、そういうものも緊急の措置であるという意味におきまして、十九条の中にこれを包含さしてある、かように解釈いたしておるわけであります。
 それから、撤回だけのために、何と申しますか、国会から授権を受けるということは行き過ぎではないかという御議論でありますが、緊急関税自体は、なるほど第一並びに第三の理由としてあげられましたような同一の措置が国会開会中と閉会中でもって異なるというのは、これは絶対の問題ではないわけなんであります。まあできますれば、そういうことも一応そろった方がいいのではなかろうか。それから、私ども国会にお諮りしまして、これが時間がかかるというようなことを気にするわけでは少しもないわけなんです。ただ、緊急の事態が、私ども実際問題としてはそう再々起こる問題だとは思っておらないわけであります。非常にまれな例だろうと思っております。でありますが、不況でありますとか、あるいは外国の為替のレートが急に変わったといったようなことから、やはり急激に輸入品の価格が変わって参るというようなことも予想されるわけです。そういたしますると、従来設けられておりまする規定によりますと、さような場合に、不当廉売関税なり、あるいは相殺関税なり、報復関税といったようなことがとられないわけでありまして、やはり一般的な価格の低落によりまして、非常に急激に日本の産業が影響を受けるとかいう場合が全然ないということも言えないわけなんです。どちらかと申しますと、私どもそうひんぱんにこれを発動するといった性質のものではないと考えておりますので、そういった例外的な、非常にまれなと申しますか、そういう事態に対しては、やはり対処する措置といたしましてかような規定が必要である、かように考えておるわけなんであります。
#69
○堀委員 おっしゃることは私実はわからぬことはないわけですよ。そのあなた方の立場として考えておられることは、私はそれなりに理解をいたしますが、憲法の租税法定主義という原則は、やはり――私は、最近国会に出まして、違憲に関する問題にしばしばぶつかっておるわけです。この委員会では特に問題があるのが、あともう一つあるわけです。ところが、そうでなくて、かつて、私、文教委員におりましたときも、社会教育法の改正についても非常に違憲のおそれがあるという問題があったし、そういう問題が比較的安易な解釈のもとにしばしば行われておるというのが、私は、今の政府の非常に大きな欠陥である、こういうふうに判断をしておるわけです。そこで、やはり憲法がある以上は、それが便利であるとかないとか、現状に合うとか合わないとかは別として、憲法を正しく守るということに始まらなければ、あらゆる法律を正しく守るという精神がつながってこないのじゃないか。そうすると、まず現状にあるこの憲法の中で、その憲法の意図しておる精神を正しく生かすような方向に最大限の努力をして、なおかつその場合にどうもうまくない部分についてあとの処理をするというのなら話がわかるのですが、ややもすると、現実はこうだからこうしたいとかいうことが、憲法九条を初めとしてしょっちゅう出てくるわけですね。だから、私は、そういう観点に立ってみると、私が最初から八十四条に触れておりますのは、法律によるというのが原則であるならば、法律によれる時期は法律によったらいいじゃないか、法律によれないときは法律によらない処理をすることが、私は憲法の定めておる精神だと思うのです。で、さっき私が伺ったようなことで、二様にきめることはおかしいとおっしゃるんですが、二様にきめておるわけではないのですよ。要するに、法律できめるというのが原則なんであって、そこで、緊急だから例外規定を設けて、閉会中にはこういう処理ができるということであるならば、それは憲法に書かれておる租税法定主義の原則に合うものではないか、それを否認しなければならぬ積極的な理由というものが、単に今の機動性の程度であるということならば、その法律の、憲法の精神、そういうものとの関連で、その積極的な理由はいささか根拠薄弱に過ぎるのではないか、こういうふうに思うわけなんです。
 だから、諸外国の例を調べてみても、法定によらないのは、緊急関税の問題以外に、緊急関税でないものがありますから、イギリスその他の場合には、権限が移譲されておりますからいろいろありますけれども、厳密に調べてみると、国会と全然ノー・タッチで処理ができそうだというのは、アメリカの例が一番ノー・タッチのように思う。あとは追認事項があったり、あるいは短期間の処理であっても、西ドイツのような処理がされたり、少なくとも形式としては租税法定主義の原則が貫かれておるのだから、この今度の条項ほどその点において例外的な要素としての権限移譲を強く求めておるのは、どうも私は、私が調べた範囲では他にないように思うのです。だから、その他にないことをやるためには、私は、非常に積極的な何かの理由がなければ、諸外国すらやっておらぬことをやるというならば、われわれ国会としては、われわれが十分納得できる積極的な理由を出してもらわなければ、単にそれを撤回するときの機動性などというような、緊急とは似ても似つかぬことだけで、問題の処理として、それによって法定主義の原則を一つ例外にして下さいなどというようなことでは、私は納得はできない。ことに、それは、私が野党の立場ということではなくて、おそらく、国会議員である者ならば、私は与党、野党を問わず納得ができることではないと思うのです。だから、われわれ国会議員が、なるほどそれはやむを得ないと納得ができる積極的な理由が、今申し上げた単なる機動性だけなのか、さらにあるのなら、あらためてもう一回私は伺っておきたい。
#70
○吉國政府委員 ただいまの堀委員の租税法律主義に関する御見解は、憲法の解釈原理といたしましては、まことに傾聴に値する議論であろうと考えております。しかし、私ども考えましたのは、先ほど来るる申し上げましたように、緊急関税制度は、その運用の範囲が合理的かつ最小限度のものでありまするし、その発動の場合も、国民経済上緊急に必要があるという場合のみに限定されておりまするし、また、第三項におきまして、第一項第一号の措置をとった貨物について、その措置を相当期間継続する必要があるような場合には、法律を改正すべき旨を定めておりまするし、また、先ほど申し上げましたように、行政府に与えられました裁量の範囲というものも非常に限定されております。狭いものでございますので、全体といたしまして、憲法の定める租税法律主義に反するものではないというふうに考えたわけでございます。
 なお、関税につきましては、その性格上外国との関係に制約される面が非常に多い点からいたしまして、対外関係の状況に応じて、行政府限りで税率を変更するような必要が、内国税に比べましてははるかに強いということは言えると存じます。わが国の現行の関税定率法におきましても、たとえば第六条の複関税制度、第七条の報復関税制度、第八条の相殺関税制度、第九条の不当廉売関税制度等につきましても、政令によって別段の定めをするようなことを現にお認めいただいておるわけでございまして、今回の緊急関税制度は従来の例のいずれに近いかと申しますと、第九条の不当廉売関税制度に非常に似通った制度でございまするので、関税定率法の中に第九条の二の規定を設けまして、このような措置をとることも、関税定率法全体の法体系といたしまして、十分に説明ができるものであるというふうに私どもは考えております。
#71
○堀委員 これまでの、今おあげになったものは、上げるという部分は、これは相手方が正常でない行為の場合をさしているわけですね。あとみな下げるんですね。主要食糧関係の減免とか製造原料の減免とかは、大体その相手方に問題がない場合は下げる方が規定されておる。それから、相手方に問題のあるダンピングだとか報復関税とかは、相手方に問題があるわけですから、この場合について今のような自然な経済現象として起きたものと同一視するわけにはいかないと思う。前段の方はきわめて限定されたものなのですね。今おっしゃった引用されておるもの、これについてもわれわれは論議がありますけれども、これはわれわれが国会議員であるときにきまったものではないから、今さらこれをすぐはずせと言うわけにもいきません。しかし、あなたがこれと今の緊急関税とを同列に並べて議論をなさるということならば、私はそれはちょっと納得できないと思うのですが、その部分についてはいかがですか。
#72
○吉國政府委員 これはあるいはものごとの考え方が少し私ども違っておるかもしれませんが、私どもの理解におきましては、現在の制度と申しましても、複関税制度のごときは非常に範囲が広うございますし、それから第七条、八条、九条の場合と同様に――第九条等の場合は、今回の第九条二の第一号と同様に、これを引き上げる場合がございますし、第九条の二の規定も、七条、八条、九条と同様に、非常に限定された場合にのみ発動するようになっておるのでございます。また、第九条等は相手方が不当な行為をした場合に限るべきではないかというお話でございますが、第九条の二の発動の場合といたしましても、これはいわば異常な国際経済事情によりましてかような事態が発生した場合になるわけでございまして、通常の国際経済の推移におきまして、非常に長い経過を経て価格が低落するというような事態に、第九条の二を発動するということは全く予想いたしておりませんので、通常の経済の推移によっては予想されないような国際経済上の変化があったためにかような事態が生じたという場合に発動するものでございますので、その発動の場合も、また発動の態様といたしましても、現在ございます規定と相応ずるものであろうというふうに私どもは考えております。
#73
○堀委員 私はそういうふうに理解をいたしません。発動の状況はあまりないであろう、こういうふうにおっしゃるのですが、しかしこれはわからないことですね。法律がきまっておって、政府がどういう判断をするかによって――今税関部長は、あまりそういうことはないだろう、なるたけ数を少なくやりたいとおっしゃっておられますが、しかしそれはわからないことですよ。あなたはここでもう絶対発動は少ないと断言できるかどうかというと、法律ができてその発動が多いか少ないか、少ないことを予想するなどと言ったところで、あなたが予想したところで、法律自体がある以上は、どういう運営がされるかは、これは予測できないことです。だからそういうことは私は問題にならない。
 さらに、ダンピング関税のようなものは、平時でも向こうがある意思を持ってダンピングしようと思えば、しょっちゅう起こってくることですね。恣意的にやれるのだから、これに対処するためには予測されない可能性が一番多い。ダンピングなら、ぽんと下げて売り込んでやろうということになれば一方的にできるけれども、自然な価格の変動、さっきおっしゃった為替のレートの変更などという問題は別です。レートの変更などがあると、私は大へんな緊急関税をやらなければならぬ場合が出てくると思う。向こうが下げるときには、こちらも為替レートについて対策を講じない限り、保護関税でやろうとしたら一つや二つでは足りません。そういうことになってくると、私はそう簡単な問題ではないと思う。今予測されておるようなことがその通りにいくかどうかわからない。少なくともわれわれが法律を審議する場合には、一番少ない場合もあるけれども、最大の場合までも範囲として考えなければ、常に最小の部分だけにピントを合わしておいて法律を作るなどということは、私は大へんなことだと思います。そういうことは議論にはならない、こういうふうに私は理解をいたします。
 そこで、過去の例にあるからとおっしゃるけれども、過去の例が全然適正かどうかということについては、私は卒直にいって問題があると思う。こういう問題であっても、国会開会中は一応国会における――それは事後の承認であろうとなかろうと、ともかく承認を受ける程度のことを省いてあるということ自体は、私は、租税法定主義の原則に反するのではないか、少なくとも事後における承認程度は取りつけてしかるべきであろうと考えるのですが、遺憾ながらこれはすでに法律になっていますから、今さら事後の承認を取りつけろと言ったところで問題になりませんが、新たに出てくるものについては、私どもは、少なくとも国会が、こういう格好で出されておる点については、軽視をされておるという感じを強くするわけです。国会にまかしておったのでは間に合わぬから、われわれ行政府にやらせてくれればうまくいくからやりたいのだ、そういう底意を意地悪い言い方かもしれませんが、こういう書き方では感ぜざるを得ないのであります。だから、私が今申し上げておることは、租税法定主義の原則というものは、少なくとも原則がある以上は最大限にこれを守りましょう、この原則にはずれた部分についてだけは、こういう例外規定で処理させてもらいますということは、これは憲法の建前だし、少なくともわれわれは、国会の論議の中を通じて、正しいことであるものに対して言いがかりをつけて引き延ばしたり、いろいろすることはあり得ない。国民経済、国民全体の利益に関するものであるならば、行政府は緊急にこれを処理してもらいたいといわれれば、これは当然緊急に処理をするし、機動性の点についても、国会の閉会中も、その必要がある場合には、その権限を行政府に委任をしても、法制上差しつかえないということを今法制局が言っておられるならば、そういう条件を満たせば足りるのであって、それ以上になおかっこのような処理をしなければならないという部分が一体残るのかどうか。積極的な理由を、法制局でも税関部でもけっこうですから、もう一回伺っておきたいと思います。
#74
○稻益政府委員 緊急関税の必要性でありますが、私ども直接して参ります行政当局といたしましては、先ほど来若干議論が出ましたように、一つは関税の性格と申しますか、根本はそこから参っていると思います。お説のように、憲法八十四条で租税法定主義ということが大原則で掲げられておりまして、例外は、その条件を定めて、その条件によった場合ということになっておるわけでございます。関税の性格からいたしまして、多分に機動的な運営をある程度必要とするような性格を若干持っておるものという点が、第一点だと思います。従いまして、その関係から、各国におきましても、こういった緊急関税は、いろいろ制度上の若干の仕組み上の違いはございます。先ほどお話がありましたように、たとえばアメリカでありますとか、あるいは豪州、カナダといったようなところは、非常に条件をきびしくしまして、行政府に委任しております。また、たとえばイギリスでありますとか、フランスでありますとかいう国は、かなり条件が広いわけでございます。ゆるやかでありまして、そのかわりに国会に事後の承認を求める。西独の場合でありますと、これまた非常に広い範囲でありますが、これは完全な授権でありませんで、国会の審議を非常に機動性を持つように、ある程度規制をしております。
  〔細田(義)委員長代理退席、委員長着席〕
 いろいろな――いろいろと申しましても、おおむね三つの型があると思います。私ども、今回、第一と申しますか、アメリカなり、カナダなり、豪州なりがとっております一つの型を選んだわけであります。各国が関税のそうした本質的な問題からそういった制度を採用しておるといった点、それからまた、国際的な規定でありますガットにおきましても、十九条で非常に条件を限定はいたしておりますが認めておる。かようないろいろな事情を勘案いたしまして、私どもとしましても、関税の持っておりますそういった役割を、このいろいろな変動の激しい国際経済の中で、できるだけ適正にうまく運用していくためには、やはりこの程度のものはどうしても必要ではなかろうかという行政的な判断から、実はかような制度を考えたわけであります。
 問題は、もちろん先ほど来御指摘がありましたように、憲法八十四条の租税法定主義とこれがどうマッチするかというところに、一番問題があったわけであります。法制局当局から先ほど御答弁がありましたように、さような条件の限定をするならば、八十四条の租税法定主義にも違反することもあるまいということで、実はこのような制度を考えたわけであります。かようないきさつであります。
#75
○堀委員 その問題については、税関部の方としては法制局の意見に従った、こういうことでございますね。いろいろな機動性その他の問題は、要件としてはわかりますが、この取り扱いについては、この程度の要件であれば八十四条に違反することはないという法制局の見解に従った、こういうことでございましょうから、問題はやはり法制局に参る。そこで、法制局の方で今度は、さっきから何回も議論をしておりますが、国会開会中に起きた事項についても行政府の委任がなければ処理ができないということについての積極的な理由を、そこへくるともう一回はっきり伺っていかなければなりません。さっき三つおあげになりましたが、大蔵省は法制局の見解に従って、これでいいだろうということでやりましたということがはっきりしましたから、あげてその問題は法制局にあるわけですから、もう一回その点を重ねてお伺いいたします。
#76
○吉國政府委員 この第九条の第一項の措置はあくまで限定された場合に限っておりまして、ただいま堀委員から、諸外国の例と違うじゃないかというお話がございましたが、たとえば、西独におきましては、緊急関税として付加し得る関税の範囲が非常に広くなっておりますし、アメリカにおいても同様でございます。そういう場合には、その発動後の措置につきまして国会が関与するように、アメリカでも西独でもなっておりますが、わが方の第九条の二の規定におきましては、その発動する場合も発動の態様も、いずれも非常に限定された場合でございまして、先ほど来申し上げておりますように、現行の関税定率法におきまする政令に委任せられた制度と同様な程度のものであると、私どもは考えたわけでございます。そして、積極的に緊急関税の発動を国会開会中においても政令に委任する必要があるかどうかという点でございますがこの点は、先ほど申し上げましたように、法律をもって緊急に関税を変更するということをいたしますならば、その撤回についても当然法律でやらざるを得ないということになりますので、全体として緊急関税制度は政令に委任する方が妥当であろうというふうに考えたわけでございます。
 重ねて申し上げますが、現在の関税定率法の全体の制度としての租税法定主義というものについて、現在の法律が制定せられます際に、国会がこれで租税法定主義の限界内であると御理解になった範囲内のものと同様のものであろうと、私どもは考えたわけでございます。
#77
○堀委員 どうも、緊急関税は限定をされた場合だ、内容もそうだということをおっしゃっておるわけですが、これはあなた方の判断であって、これはまたあとから逐次触れて参りますが、だれが限定をするか。やはりここにはいろいろな範囲があるわけです。だから、その範囲の判断というもののとり方いかんによっては、限定されてくるのかどうかはわからないということを、私はさっきから申し上げておるわけです。そこで、もう一つの議論は、あなたは、関税定率法第六条、第七条、第八条、第九条でしたか、こういうものは法定主義の例外であるから、これも一つ並べましょう、こういうふうな意味で支障がないものだろうと思ったということは、私に言わせれば、積極的な理由ではなくて、消極的な理由となろうと思うのですが、今回この問題を提起するにあたっての積極的な理由は、私はこれでは不十分だと思います。そうすると、残ってくるのは、今の機動性というか、撤回の機動性だけが残ってくるのでありますが、あなたはその辺は閉会中は行政府に委任することを法制上として妨げないと言われるなら、そういう処置を私はとるべきではないかと思うのでありますが、とらぬ方がよいということですか。法律的解釈としては、とることが可能ならば、憲法の法定主義の原則に照らしてとるべきだと私は思いますが、それはとれないのではなくて、とりたくないということですか。とりたくないというならば、一つの恣意的の判断が入るのですが、その理由を一つ……。
#78
○吉國政府委員 法律をもって定められた措置を政令をもって変更するということも、制度的には先ほど申し上げましたように不可能ではないと存じますが、そういう制度はまた他の法令上の制度とも関連して参ると思います。すべてそういう制度にすることがいいかどうかにつきましては、これはよほど慎重に検討をする必要があると思います。結局、関税定率法全体の制度として、どういう形をとることが立法政策上妥当であるかという問題であろうかと思います。憲法の八十四条の規定に反するということでありますならば、われわれとしてはもちろんそういう処置をする考えはございませんが、従来の国法のあらゆる体系の上から見まして、このような限定された委任の例は従来とも枚挙にいとまがないくらいあるわけでありまして、この辺の委任をすることが実際的にも相当必要があるということでございますので、私どもとしてはかような制度をとったわけであります。
#79
○堀委員 枚挙にいとまがないそうですから、枚挙にいとまがないほどあるかどうか、少しあげて下さい。そういうことをおっしゃるならば、一項々々聞きましょう。
#80
○吉國政府委員 憲法で法律をもって規定しなければならない事項と申しますのは……。
#81
○堀委員 私はそんなことを言っておるのではない。租税法定主義のことを言っておるのですから、枚挙にいとまがなければ言って下さい。
#82
○吉國政府委員 先ほどから申し上げておりますように、関税定率法の場合におきましては、第五条の便益関税以下第七条まで並んでおるものがございます。
#83
○堀委員 それ以外にありますか。ずっとあげて下さい。
#84
○吉國政府委員 関税定率法第十二条の「主要食糧の減税又は免税」で、「輸入される米、もみ、大麦又は小麦について左の各号の一に該当するときは、政令で定めるところにより、これらの貨物及び期間を指定し、その関税を軽減し、又は免除することができる。」それから、第十三条においては、製造用原料品について政令に委任しております。それから、第十四条の十一号、十六号等も、政令で定めるものによりまして関税の免除をいたしております。第十五条の特定用途について免税をいたします場合も政令に委任しております。また、第十七条の「再輸出免税」の規定におきましても、政令に委任を認めております。
#85
○堀委員 性格はみんな違いますね。
#86
○吉國政府委員 そのような例があることを私は申し上げたわけであります。
#87
○堀委員 枚挙にいとまもないほどはないと思います。あなたは一般論として憲法の問題と法律の委任事項をおっしゃったかと思いますが、八十四条につきましては今おっしゃったことに限られていると思います。これは、あなたの言う限定された問題の中でおのおの処理される性格のものであって、さっきからあなたはこの法律はきわめて限定をされておるとしきりにおっしゃるが、これはしかしここに書かれた範囲――私は、特に今後の問題として、これは委員長に一つ御要望をいたしておきますが、政府が出して参ります法律条項は、そこの中に政令に定めるところによりとありますから、自今、大蔵委員会においては、その政令を合わせて出していただかなければ、われわれとしてはその法律の審議に応ずることができないと思うのです。一体何を政令できめられるかわからないことを、白紙委任で、政令によって定めるところによるという格好で出してきて――法制局は限定した部分、限定した部分とおっしゃるが、政令によってはどういう限定をされるのかわれわれ全然わからない。
 そこで、政令に対するものの考え方はあとで全部伺いますが、法制局としては、非常に限定されておるとっしゃるけれども、あなたのおっしゃるその限定というのは、第一項に書かれておるのを限定だと思っておられるようですが、私はそうは思ってないのです。要するに「政令で定めるところにより、次の措置をとる」ということになって、その政令の内容がわかってこなければ、限定がどうなるか一向にわからないと思うが、その政令がどうなっておるか、法制局の方では御存じなんでしょうかね。その一項々々を検討された上で、そこであなたはそれを限定されたというふうに理解されておるのか、そこをちょっと伺っておきたい。
#88
○吉國政府委員 私が先ほど来限定された場合に発動すると申しておりますのは、第九条の二の第一項の本文にございますように、緊急関税制度をとるかとらないかということを判定する場合の規定といたしまして、「外国における価格の低落その他予想されなかった事情の変化により、特定の種類の貨物の輸入が増加し、当該貨物の輸入が、これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある場合において、国民経済上緊急に必要があると認められるとき」に発動するという点が、まず第一点でございます。それから、第二点は、その措置の内容といたしまして、第一号、第二号及び第三号が規定してございますが、その第一号について申し上げまするならば、これは一定の価格の差をつかまえまして、その差額以下の関税を課するということに、措置の内容は限定されておるわけでございます。第二号、第三号についても同様な限定がございまするし、第三号については、特に第二項に規定を置きまして、前項第三号の措置はこれこれの配慮のもとに行なわなければならないということで、行政府の権限の行使については法律がその場合を限定し、措置の内応を限定しておることからいいまして、限定されておるというふうに申したわけでございます。
 それから、政令の定めるところによりということで、政令の内容を見なければどういう措置がとられるかわからないではないかという御質問でございますが、この政令では、当該具体的な場合につきまして貨物の品目を指定し、その貨物について、第九条の二の規定によって付加すべき関税の額を定めるということが内容になるわけでございます。従いまして、今後このような場合が起こって参りました場合に、政令の内容は、たとえばAという貨物、Bという貨物というふうにきまって参るわけでございまして、現段階におきまして具体的な政令のまさに具体的な規定をお目にかけることは不可能でございまして、内容といたしましては、一号、二号または三号の措置をとりまする貨物の品目と、その貨物につきまして課する関税の額を定めるというのが政令の内容でございます。
 また、そのような権能を政府に委任することは不当ではないかというような御趣旨でございますが、もちろん、国会は、憲法に定められました国政調査権によりまして、政府のとりました措置につきましては十分に御監督をいただくわけでございまして、政府といたしましては、決してこれによって不当に広い権能を得て、それによって行動するというようなものではございませんで、先ほど来申しておりますように、限定された場合について、限定された内容の措置をとるというだけでございます。
#89
○堀委員 ちょっと税関部の方に伺いますが、今のような政令の内容、そんなことでいいのですか。品目と額だけですか。私は額となるとまだ問題があると思うのですが……。
#90
○稻益政府委員 法律で授権されました通常の範囲内の政令事項でありますから、大体この場合に、予想と申しますか、考えております政令の主たる内容は、品目の問題、それからその内外価格差のとり方、いわゆる税率を付加税としてどれだけ課せられるかという問題、それからなお手続関係の問題、そういったことを大体主たる内容とするということでございます。
#91
○堀委員 ちょっと時間があれですが、私だいぶん続きますので、ここらで休憩にしていただいてするか、もう少しやってもよろしいですが、本会議が二時だそうですけれども、どうしますか。
#92
○足立委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、本会議散会後まで休憩いたします。
   午後零時四十六分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時三十九分開議
#93
○足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
 静岡県由比町における地すべりについて、必要がありましたならば委員を現地に派遣し、実情を調査することとし、議長に対する申請の手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#94
○足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#95
○足立委員長 次に、午前の会議に引き続き質疑を続行いたします。堀昌雄君。
#96
○堀委員 午前中に、法制局の見解としては、この問題はきわめて限定をされた要件の条件というふうに申されておるのでありますが、ちょっと私ここで少し具体的な問題に触れたいと思います。外国における価格の低落、この低落が特定の種類の貨物の輸入に関係して増加をして、これが本邦産業に重大な損害を与え、または与えるおそれがある場合、国民経済上緊急に必要があると認められる条件、ずっとこう重なって書かれておりますけれども、その関連の中で私はやはり問題が出てくると思うのは、まず第一は、重大な損害ということは、これはこの形では行政府の一方的な認定にゆだねられておると思うのでございます。抽象的な表現でありますから、どの程度からを重大な損害というかということになると、必ずしも限定をされた要件ではない、こういうふうに理解をするわけでありますが、法制局はこの重大な損害という抽象的なものをどのように理解をしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
#97
○吉國政府委員 この認定の問題は、具体的の場合にあたりまして、それぞれ個別の要件に従って判定すべきものでございますから、この規定の仕方といたしましては、抽象的に書かざるを得ないことはやむを得ないことであると存じますが、この重大な損害という重大な損害の範囲はどの程度のものかということを、あらかじめ解釈の指針といたしまして考えてみまするならば、これは、この制度の趣旨からいたしまして、本邦の産業に属する企業の相当な部分についてその存立を危うくしていく、従って、その産業の存立のみならず、その産業に雇用せられる労働者の地位にも影響を及ぼし、あるいはその産業によって生産をせられるところの製品の利用者にも重大な影響を与えるというような場合と、一応抽象的には考えられると思います。
#98
○堀委員 存立を危うくするというと、これまた抽象的になるのですが、一体その企業の存立を危うくするというのは、そうするとどういうことをさすことになりますか。破産するということですか。どういうことになりましょうか。
#99
○吉國政府委員 その当該貨物の生産に関する産業というものがございますが、その産業はそれぞれの企業によって成り立っておるわけでございます。その企業の存立を危うくすると申しますのは、その企業がもう企業として立ちいかなくなる、場合によってはすでにもう破産に瀕して、あるいは破産宣告に至る場合もございましょうし、あるいはまた、そこまで参りませんでも、ほとんど破産寸前ということで、生産は停止し雇用は解除せられるというような状況になる場合もございましょう。これらそれぞれの具体的な場合に即して考えなければなりませんが、結局は、国民経済上の観点から、わが国の国民経済の正常な運行というものに重大な影響を及ぼすというような観点から、重大な損害の認定はいたすことになると存じます。
#100
○堀委員 実はちょっと税関部の方にお答えを願いたいのですが、アメリカには、この問題の適用に関しては、少しこまかい規定があるように思うのであります。たとえば生産の状況であるとか、消費の能力の関係であるとか、在庫量の動きであるとか、輸入量の動きであるとか、輸入量と国内全消費に占める割合であるとか、雇用の状態であるとか、その企業の損益はどうであるとか、いろいろとこまかい規定があって、それに該当するかどうかによってこの問題の処理がされる、このように大体私が調べたところではなっておりますが、わが国の場合は、そういう規定が、この現状で見ると、さっきの政令内容については品目と税額ということに触れられただけであるが、その重大なる損害というものの一つの条件が規定されてしかるべきではないか。法制局の言われるような限定された条件ということであるならば、ここに現われておりますいろいろな抽象的な表現については、特に問題のある部分については相当こまかい規定があるということになるならば、法制局の限定された要件ということを満たすことになると思うのですが、この点についてアメリカのそういう規定の内容はどういうふうになっておるのか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
#101
○稻益政府委員 アメリカの事例で見ますと、ただいま堀先生のお話がありましたように、次のような事項をそういう判断の際に考慮すべきであるという意味におきまして、関係国内産業の生産、雇用、価格、利潤ないし賃金の下降傾向、あるいは売上高の減少、あるいは輸入の絶対的な、または国内生産に対する相対的な増加、在庫の増大、国内市場に国内生産者が供給する比率の低下といったようなことを、考慮すべき要素としてあげておるわけであります。私どもの方で考えておりますのも、具体的に判定いたします際には、大体こういったことが考慮の要素として判断される対象にはなると思うのでありますが、この中で、問題は、結局こう書きましても、まだ実は抽象的でありまして、しからばどの程度の雇用の減退があった場合にそう判断するかという問題が、実は残るわけであります。そういう点につきましては、私どもといたしましては、できますれば行政府だけの一方的な判断によりませんで、この緊急課税制度自体の運用を関税率審議会――あるいは現在の審議会そのままの姿がいいかどうかには若干問題があるかと思うのでありますが、そういう学識経験者の集まりにも十分御判断願いまして、運営の万全を期したい、かように考えておるわけであります。
#102
○堀委員 アメリカの事例についてそちらで書いておられるものについても、なるほど抽象的な規定でありますけれども、それについては不適であった例というものが二、三つけ加えられて、おります。やはり私は、今お答えになったように、それのいわゆる運用上の問題としては、関税率審議会のようなものということになるかと思いますが、今度関税率審議会の内容を拝見してみると、今もちょっと部長もお答えになっておりますが、必ずしもこれをもってただいまの適正な運営というものが行なわれるかどうかについては、全体の率の例の場合はこれでいいのかもわかりませんが、個々のこういう具体的な問題については、私は少し問題があろうかと考えるわけであります。そこで、やはり私どもとしては、問題は非常に私ども国会の立場から見れば重大な問題であります。法定の原則を例外規定として行政府に移譲するわけでありますから、それについては、やはり、起こるべき危険という言葉がいいかどうかわかりませんが、望ましくないようなことが起こらないように、できるだけ法制局の言われるような、限定された状態の中で問題を処理してもらいたいということになるのでありますから、これらの点については、私は、特に、政令で定めるところによりという政令の内容については、もう少し、ただ品目とかあるいは税率とかいうことではなくて、たとい今のアメリカのような状態が少し抽象的であるにしても、やはりそれを一つ検討して、その中で問題を処理するという程度のことは、当然私は政令の中に書き加えるべきである、かように考えられるわけでありますが、これについて、限定との関係で、法制局の考えを一つ承りたいと思います。
#103
○吉國政府委員 この第九条の二の第一項の規定は、「政令で定めるところにより、次の措置をとることができる。」と規定いたしておりますので、先ほど午前中の答弁で申し上げましたように、政令ではまず最小限度品目なり税率を書くべきことは当然でございますが、その運用に関しまして、政令で、いわばこの法律に書いてございます抽象的な条件をもう少し具体化したもの、あるいはその抽象的な条件の判断になる要素を政令の中で規定をいたしまして、そういうことを比較考量した上で具体的な発動をするのだということを政令で書くことは、可能ではございます。政令の立案は、当然所管当局である大蔵省において原案を作りまして、これを閣議に出す前に法制局に協議される格好になるわけでございますが、当然大蔵省においても、自主的に、そういう必要を認めますれば、政令案の中にそういうような事項を盛り込むことは予想されると思いますので、そういう場合に、私どもといたしましては、この第九条の二の第一項の発動のための手続的な規定と考えまして、その政令に規定することは可能であると存じます。
#104
○堀委員 法制局の方ではそういうことで可能であるということですが、大蔵省としてはどうでしょうか。
#105
○稻益政府委員 けさほど御答弁申し上げました際に、大体政令の内容としましては、一応貨物と申しますか商品名、それから税率、その他手続事項ということを申し上げたのでありますが、手続事項の中に、場合によりましてはそういうアメリカ式の、判断する際の考慮すべき要素と申しますか、そういったことを盛り込むことは、十分考えられると思うのでございます。慎重に検討いたしたいと思います。
#106
○堀委員 そこで、今度は、この問題について「貨物の輸入が増加し、当該貨物の輸入が、」という表現がなされておるわけですが、「貨物の輸入が増加し、」ということは、すでに貨物が国内に到着して、だんだん到着しておるものがふえてきた、こういうふうに理解をいたしますが、法制局の見解はいかがでしょうか。
#107
○吉國政府委員 この「当該貨物の輸入」と申しますのは、同系統の法律である関税法の第二条第一号に掲げてございます輸入と同義と解しておりますので、外国から本邦に到着した貨物を保税地域を経て本邦に引き取るという意味でございますから、ただいま堀委員の仰せられた通りの結果になると思います。
#108
○堀委員 そういたしますと、たとえば貨物は今の関税法の定義がございますから、私も輸入の定義については当然関税法の定義によるということになると思いますから、そうすると輸入が行なわれてその後に発動されるということになる、こう理解してよろしゅうございますね。
#109
○吉國政府委員 これは、当該貨物は国内に引き取られているという事態が発生した段階において考えるということで、けっこうであろうと思います。
#110
○堀委員 税関部もそれでよろしゅうこさしますか。
#111
○稻益政府委員 ただいま法制局の答弁の通りでございます。
#112
○堀委員 そこで、もう一つ問題がございますのは、「これと同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する」、こういう項目が出てきておるわけであります。これは、日本の場合に具体的に考えますと、片方に石炭産業がある、重油の輸入が非常に増加してきたために、これと競合関係にある石炭の価格が変化をしてきた場合には、緊急関税をとりたいということになってくると思うのでありますが、その場合における石炭価格の動き方といいますか、これは非常に問題が複雑ではないかと思うのです。というのは、それそのものと競合するものであれば、これは非常に簡単なわけです。要するにふえてくれば下がるということですが、石炭のようにすでに斜陽産業ということで、いろいろな条件で下降状態にあるというところに、重油の輸入が増加してきて、その増加による値下がりというものとの関連というものは非常に微妙な問題が出てくる。そうなると、次の第一号の中の「当該貨物の課税価格とこれと同種又は類似の貨物の本邦における適正と認められる卸売価格」この適正の判断というものは、単に同じ貨物であればきわめて簡単だと思いますが、これと競合する貨物という場合における物の動き方で、どこで適正というものを逆に出してくるかということについては、これは非常に問題があるのではないか。同種のものは比較的簡単だと思いますが、この点については税関部はどう考えられますか。
#113
○稻益政府委員 緊急関税を課します際の内外の価格差、この場合の海外の価格は、緊急事態が発生しまして緊急関税を発動する直前における、貨物の輸入のCIF価格というものを一応とるわけです。これと比較されます国内の貨物でありますが、たとえばお話しのような石炭と石油といったような場合でありますと、用途が直接競合するわけでありますが、比較いたしまする国内の貨物は、やはり油の方をとりまして、油のそういう緊急事態が起こります前の正常な姿における国内での卸売価格、これをもって内外の価格差を算出するという考えであります。
#114
○堀委員 そこのところは少し問題があるのではないかと思うのです。石炭の価格のどこかである瞬間を規定して、その瞬間に見合うところの重油の価格ということのお話だと思うのです。だから、重油の価格のきまり方は二次的なのであって、問題は石炭の方の動き方できまるのじゃないか。その問題は価格だけではないかもしれません。これは産業の存立というような関係になるのかもしれませんが、今の石炭のようなものについては、おそらく現実には、ここに書いてある「重大な損害を与え」ではなくて、「与えるおそれがある場合」ということに適用されてくるのじゃないか。そうすると、与えるおそれがある場合においての時点をどこで切るかということは、問題が非常に複雑になってくるのじゃないか。要するに単純なものであるならばそれだけの影響が出ますけれども、斜陽産業の格好で下がりつつあるときにプラス・アルファが加わってくるわけでありますから、プラス・アルファがここだけで加わるというのじゃなくて、逆から考えれば、片方がカーブになって下がってくるし、また一方もカーブになってくる。そしてこれがクロスするような格好になる。そうすると、一体どの時点をとってその間の価格差を見るかということの判定が非常に困難ではないか。ここらについては、同種のもの以外にもう少しきめのこまかい判断の基準というものがないと、ほんとうにあなた方が処理する場合に、どこで処理するかというふうに問うても、あなた方自身運用上も困るのじゃないかと思うのです。こういう場合に運用上どうすれば可能かということについて、一つ大蔵省の見解を伺いたい。
#115
○稻益政府委員 ちょっと言葉が足りなかったかと思うのですが、要するにここに規定しておりますのは、「同種の貨物その他用途が直接競合する貨物の生産に関する本邦の産業に重大な損害を与え、」云々とありますのは、たとえば重油の海外の価格が低落しまして、輸入が急増して参る、その結果、国内の石油産業はまだ倒産だとか失業だとかいう問題は起こっておらない、しかし非常に用途の競合しております石炭産業がこのために非常な被害を受けておる、従って、石炭鉱山で失業者が非常にふえて参ったというような場合に、本文の規定は適用できるということをいっておるわけでありまして、その際に比較さるべき価格は、海外から入って参ります重油と国内の重油の卸売価格、これを比較してやるのだ。そういたしますると、国内の重油の価格と国内におきます石炭の価格との間には、なるほど御説のように、だんだん石炭が、言葉は悪いのでありますが、斜陽と申しますか、非常に苦しくなって参る。価格の関係は、徐々にではありますが、変わってくるということは考えられるわけであります。しかし、ある時点において考えますると、この国内の油と石炭との間には、ある比率、価格のバランスというものがとれて、国内の産業というもののある価格秩序が保たれておる。そういたしますると、そこに海外から安い重油が入って参りまして、国内で倒産を起こしたり失業したりするのは石炭産業である場合にも、そういう緊急関税の発動が必要になる。そのときに価格の比較をいたしますると、国内の石炭と海外から入って参ります油との比較ということは、直接では困難なんであります。従いまして、ある価格秩序ができておると思われます国内における油と石炭、これがある価格秩序が保たれておるといたしますと、その際海外の価格と比較するには、やはり同種の貨物である油をとりまして価格を比較する、こういう考えでございます。
#116
○堀委員 それはその通りなんですが、こういうことなんです。現実には今石炭の価格は非常に安くなっておる。合理化されて安くなれば別ですが、重油の方が便利だということは、これはもう明らかにあるわけですね。そうすると、全体の趨勢として、なるたけ、今ある石炭をたいておるかまはともかく、新設のかまは重油にしたいというようなことで、石炭というものは、本質的に、そういう重大な損害を与えられるおそれが、価格低落でなくて、すでにあるわけですね。はっきり言って、低落してなくても、今の条件でも重大な脅威があるわけです。そういうすでに重大な脅威があるところへ、さらに少し価格が低落をして、自由化をされるということになると、もっとどっと入ってくるということになれば、どこの時点からがその直接の影響なのか、価格低落の直接の影響がどこであるのか、本来的なそういう競合関係のために影響を受けておる部分をどこで切るかということは、非常にこれは石炭のような場合にはむずかしくなるのではないか。だから、そうすると、どこか何らかの規定の仕方をきめておかないと、ちょっと値段が変われば、もう重油のような場合はすぐ出てくる条件じゃないかと私は思いますから、そういう場合に、あなた方としては、答弁のことはいいのですが、実際には一体どうするのかということです。そういう場合に、それを実際にどうするかということを、石炭についてだけ特に伺っておるのです。今すでに石炭は斜陽で、今のままで産業上これは重大な損害を与えるおそれがあるということは、価格の低落でなくても、実は本質的な問題としてあるわけですから、その上に価格の低落が重なってくるときには、比較的直線的なものの値段のところにひょっときて、そこからこう下がり出したというその時点をとらえれば非常に簡単ですが、初めから斜面になってきておるところへ、それの程度なんだから、非常にこことここの区切り方がむずかしくなるのじゃないかということです。こういう斜陽産業のような場合には、そうすると、そういうものを出してくるためには、何らかのやはり基準がないと、周囲からは恣意的な判断だと言われはしないか。早い話が、石炭業者としては、早く発動しろということになるでしょう。石油業者としては、いや、もっとゆっくり発動してくれということになるでしょう。両者が競合してきたときには、それを判断する何らかの尺度をあなた方が持っていなければ、緊急関税を発動する場合には論議が出てくると思う。それは、国民大衆の需要の面からいうならば、重油の方でけっこうだという場合があるだろうと思う。しかし、石炭産業の雇用の関係などを見れば、まだわれわれとしては石炭産業の存立というものはやはり重要として考えていかなければならぬ。両方が非常に競合してくる場合には、何らかの基準を設けておかないと、さっきの程度だけでいけるかどうか。そこを今政令の中に一つ書こうとおっしゃったから、それならば、具体的には、そういう問題が出てきたときにはどうされるのかということを、ちょっと伺っておきたいと思います。
#117
○稻益政府委員 御説のように、具体的な判断は非常にむずかしい場合が出て参ろうかと思いますし、特に御指摘の石炭の場合、これは一般的に困難な事態が徐々に進行して参る、そこへ海外から安い重油が入って参って、それがきっかけでさらに非常に重大な損害と思われる事態が起こる、かような場合が一応想定されるわけであります。この場合に、単純に国内の油の産業でありますと、御説のように判断が割に簡単でありますが、石炭産業自体に、海外からのそういう価格低落による輸入の増加ということがなくても、起こっておるという一つの事態があるわけでありますので、この間の関係は、御説のように非常に判断がむずかしいとは思うのでありますが、私どもとしましては、やはり一応問題を切り離しまして、もっぱらこの緊急関税として取り上げます際には、国内における別個の原因によるものは一応除きまして、輸入の増加があった、これによって石炭産業が困る事態に至った、もともとそういう困る事態が徐々に進行している産業であるということになりますると、比較的早くそちらの産業からは――ほかの物資でありますと、いましばらくもっと言っては語弊がありますが、あとでもよろしいと思われる緊急関税の発動が、そういった弱い面を持っておる産業の場合には、比較的発動を早く要請されるという事態は出て参ろうかと思います。ここらの点は、やはり総合的に考えまして、非常に抽象的にはなりますが、国民経済全体をながめて、その緊急の度合いを判定するという以外にはなかろうかと思いますので、あらかじめそういう場合にはどの程度の基準といったものを考えておいて発動するのだというふうなことは、事前に予定することが非常に困難ではなかろうか、かように考えるわけであります。非常に抽象的ではありますが、こういう問題はやはり総合的に考えまして、なお政府だけでなく、学識経験者の意向も十分聞きまして、そういう判定をする以外には道がないのではないか、かように考えております。
#118
○堀委員 おそらく税関側としても、私その際非常に判断に苦しむことが起こってくるのではないか、そこで関税率審議会のようなものに一つかけたい、こういうことになると思うのです。そこで、私は、やはりそのためには、今アメリカで行なわれているような、はっきり具体的とはいえませんが、多少抽象的なものであっても、いろいろな項目的な基準を設ける際には、特にこの石炭と石油との問題は起こる可能性のあるものとして予想しておかなければならぬ問題ではないかと私は思いますので、一つ具体的な検討をよく進められて、やはりある程度の基準なり、そういうものを政令の中へできるだけ書き込めるような検討を進めていただきたいと思うのであります。ということは、出たとき拍子で、それを関税率審議会というようなものにかけたんでは、私は問題がさらに紛糾する可能性があるということを感じますので、その点についてはあらかじめ一つ十分な検討をしておいていただきたいと思います。
 その次に、これはそういうことがあるかどうかわかりませんが、安くなったというのでどっと輸入をする、一種の思惑輸入といいますか、どっと輸入をするという問題が起きてきますね。まあ、輸入をして入ってからでなければ発動できないわけですが、そこの時間的な経過はあなた方は一体どういうふうに考えておられるか。アメリカあたりでは、緊急関税を発令するには大体六カ月くらい、それからイギリスの場合でも、通商公報による告示の関係もあり、六カ月ないし一年を要する。ただしグルタミン酸ソーダの例は数カ月、また染料については一年を要している。諸外国の例を見ると、緊急とは言いながら、いずれもかなり時間がかかっております。アメリカでは大体エスケープ・クローズ発動のための調査は六カ月とされておるが、大統領の再調査命令が出される事例もあり、一般的に見れば六カ月ないし一年を要している。英国でも六カ月ないし一カ年、フランスでも大体数カ月、ベルギーが六カ月、西ドイツは国会の審議期間が入るのでこれは別であります。イタリアも二カ月ないし三カ月ということでありますが、当面あなた方はこの事態に対する緊急関税の発令、そういう事態の発生とその発令との間における時間的な幅というものをどのくらいに考えておられるのか、ちょっと承っておきたいと思います。
#119
○稻益政府委員 緊急事態がどういう姿で起こるかということが、まず第一に問題であろうかと思うのでありますが、為替の変動みたように非常に急激に参ります場合ですね、そういう場合でありませんで、比較的徐々に、何と申しますか、価格の低下による輸入の増加が現われまして、ある時点になるとそれが相当騒がれる、というような事態が参ろうかと思います。通常の場合でありますと、そういう場合にはいろいろ関係方面からの要請も出て参ると思うのでありますが、御承知のようにアメリカの場合におきましては、緊急関税の場合には公聴会を開くといったような手続があるわけです。それにかわるものと申しては、あるいは語弊があるかと思うのでありますが、私どもの現在考えておりますのは、関税率審議会に諮問をしたいということを考えております。その前に関係各省で十分相談をいたしまして、緊急の度合いにもよるわけでありますが、たとえば為替相場の変動によって急激に、ほんとうに突発的にきたといったような場合には、私どもとしましても、事態は非常に明白でありますから、これは早急に審議会を開きまして、諮問をして発動をする。こういう場合には比較的短い期間で済むのではないか。それから、そういう場合でありませんで、じわじわと日本の産業が損害を受けるという事態が発生したというような場合でありますと、けさほど来御答弁申し上げましたように、緊急関税というものは、国会から非常に限定された範囲内で委任を受けるわけでございますので、そうむやみに発動すべき性質のものではない。従いましてかなり慎重な調査が必要であろう。いつの時点からその事態が起こったかということを見ることによりまして、審議にどれくらいの時間を要するかということは、おのずから変わってこようかと思うのでありますが、一応関係各省でそのような事態が認められるという一致した見解に達しますれば、あとの手続の問題としましては、私どもそう長い期間は要しないで済むのではなかろうか。ただ、これは一般的な国定税率の問題でございまして、ガットの場合でありますと、これはまた、先刻来御答弁申し上げましたように、相手国との交渉もございます。そういう関係で若干時間がかかると思うのでありますが、国内手続としましては比較的そう長い期間を要しないというように、私ども実は考えております。
#120
○堀委員 当局としては、国内の国定税率を上げておいて関税交渉をやるのか、国内の国定税率を上げるのは、関税交渉ができたそれと同じところで国定税率をやるということになるのか、それはどうなんですか。国定税率もこの関係で出てくると思いますからね。それをさっと上げて、まずこれがさっきの例外規定によれば緊急関税だと思うのですが、ガットの譲許のそれで、それをすぐ届けて、これでやりましたということになる。だから、そのあとの協議関係をはずしていくと、順序として国定税率が先へ出て、それからガットの譲許をとって、エスケープ・クローズによるガットの譲許をとって、それからあとは交渉する、こういうことになるのではないですか。そこのところの順序はどうなるのですか。
#121
○稻益政府委員 この法案の第一項の一号、二号に該当する場合でありますが、一号の場合はガットでありませんで、ガットで全然譲許していない貨物の場合であります。この場合は、一方的に国定税率を上げればよろしい。それから、二号の場合は、ガットの税率でございまして、ガットの税率の場合は、現に譲許しておるという事態があるわけです。その事態を撤回いたしますると、その貨物につきましては、ガットの税率がありますものはすべて国定税率があるわけです。国定税率の線までまず戻るということが通常の場合であります。それから、国定税率がありましても、その国定税率でもまだ足りないという場合には、さらに国定税率を上げて、その線まで撤回を求めるというような交渉に移るということに、順序としましてはなるわけであります。
#122
○堀委員 そうすると、さっきから議論になりました中で、どうもほんとうに緊急な場合は、為替相場の変動の場合以外にはないような感じがするのですが、予測せられるものがありますか。実際に為替相場の場合は、これは緊急関税というべきか、ともかくそれに対抗するものは、こちらのレートを変えないとするならば、相当広範囲に一品目、二品目にとどまらないと思うのです、ガット全体にくるのですから。それを緊急関税で受けとめられるかどうか、私はちょっと問題がありはしないかと思うのですが、その場合は、なるほど緊急です。突然としてレートは動きますからね。これは予測される事態だと思うのですが、それ以外に、今のようにきわめて緊急に処理しなければならないという具体的な例は、どういう場合でしょう。
#123
○稻益政府委員 為替相場の変動以外の原因で起こります場合でも、一応私どもの予測なんですが、たとえば最近起こっておりますような産業で石油化学関係のものでありますとか、これは具体的な例として必ずしも適切でないかもしれませんが、たとえば合成ゴムといったようなものがアメリカで急速に生産が拡大されて参った。ああいう装置産業でありますので、操業度が非常に高くなりますと急激に価格が下がってくる。ところが、日本の場合でありますと、まだ幼稚な段階であるので、これに対して私ども一応現在の段階で適切であると思われる国定税率でやっておるわけです。またガットでそれを譲許しておる。そういたしますと、ああいった装置産業が非常に急激に操業度が上がりまして、価格が数カ月の間に、あるいは二、三カ月の間にぐんぐん下がって参るといったような事態が起こりますと、たとえば発展途上と申しますか、非常に揺籃期にある日本の合成ゴム工業としましては、非常に急激な痛手を受ける。せんだってからの事態が緊急関税を必要とする事態かどうかという点については、私ども具体的には問題があるわけなんですけれども、一部には、ああいった合成ゴムがアメリカから価格がかなり下がって輸入されて参ったという場合には、せめて五%でも緊急関税というものをかけてほしいというような要請も若干出たような事例もあるわけです。何も為替相場の変動に限りませんで、そういうことも一応私どもとしては事態としては予想されるということであります。そういう場合にはどの程度の審議を必要とするかは、先ほど申しましたように、若干そういう場合には慎重な審議期間が必要であろうと思います。一応予想されるという意味におきましては、ただいま申し上げたようなことになります。
#124
○堀委員 具体的な例に入ってきますと、実はほんとうのところでは非常に緊急な場合というものは例外的なものであって、やはり二カ月、三カ月――アメリカでもし合成ゴムができるとしても、突然としてできるわけではなくて、その合成ゴムの工場が建てられて、そして生産がされて、それが市場に出て、輸入をされてという経過ですから、私はかなりの点で予測され得る条件があるだろうと思うのです。それは、値段の変化については、生産量との関係で、必ずしも生産が三倍になったから値段が何分の一になるかということは、そうしかく簡単には参らないかもしれませんが、一般的経済状態の中では、予測され得るものが比較的多いのじゃないかと思うのです。為替問題だけは別です。これだけは予測はできないけれども、その他のものは、一般的な経済現象の中で、そんなに緊急に下がるものはない。大体アメリカで取り上げられたものを例にとってみましても、日本の体温器なんか向こうはあれをやってますね。あれはどうなったのか私はっきり知らないのです。これは交渉中だと思いましたが、エスケープ・クローズを向こうはやろうとしているわけでしょう。これだって体温器を日本が一ぺんに作ったわけではなくて、体温器がどんどん入るということで、向こうは、それではエスケープ・クローズでいこうということで問題を取り上げている。大体一般経済現象の中でそういう急激な変化はないのじゃないかということになってくると、私はまた前に戻るのですが、その時間的ないろいろな経過から見ても、どうも国会との関連というものは何らかの措置をされる必要があるという感じがいたすわけであります。
 そこで、緊急関税の部分についての最後ですけれども、乱用防止については、うしろには今の第三号についてだけ「同項第二号の措置の補償として必要な限度をこえず、かつ、その国民経済に対する影響ができるだけ少ないものとするような配慮のもとに行なわなければならない。」というように、この第三号の部分については制限規定のようなものがくっついているわけですが、第一号と第二号にはそういうものはついてないんですね。ここは一体どういう関係なのか。第三号はこうなければいかぬけれども、第一号、第二号については、もうこういう必要はないのか。もちろん表現の問題は別ですけれども、そういう制限的なものを課する必要はないのか。ここのところを法制局はどうお考えになっておるのか、一つ伺っておきたいと思います。
#125
○吉國政府委員 第九条の二の第二項につきまして、第三号の措置についてのみ一定の制限措置を発動する場合の配慮の規定があって、一号、二号についてはそういうような規定がないのは権衡を失するではないかという御趣旨であろうと思いますが、一号、二号については、その一号、二号の規定それ自体で内容が非常に限定されておりますのに対しまして、第三号の場合には、この文言から申しましても「その譲許を修正し、又は関税の譲許がされていない貨物につき新たに関税の譲許をし、その修正又は譲許をした後の税率を適用すること。」で、一号、二号と違って、幅の限定がございませんので、そういうことも考慮をいたしまして、第二項の規定を置きましたということと、もう一つは、午前中の議論とも関連して参りますが、第三号の措置をとるのは二号の措置をとるのと一体としてとらなければならない、付随的な措置としてとらなければならないという、実態的な理由がある場合でなければいけないということを、はっきり二項で規定した意味でございますので、実質的には一号、二号、三号と発動の場合の限定は同様にされているものと考えております。
#126
○堀委員 私は、行政権にこういう委任がされる以上は、どこかでチェックする部分があってしかるべきではないかというふうに考えますので、それはまた後刻いろいろと検討さしていただきます。
 さっきちょっと税関部長も触れられましたが、一番最後の「相当な期間をこえて」というこの問題は、これはここではっきりさせておかないと、非常に慾意的な判断になると思います。さっき一年がいいか一年三カ月がいいかというお話がずいぶん出ておりますから、一体大蔵当局は「相当な期間をこえて継続する必要がある」という、相当な期間というのはどのくらいに考えられておるのか。これは基準になりますので、政務次官からはっきりとお答えをいただきたいと思います。
#127
○大久保政府委員 ただいま堀さんからお尋ねの期間は一応一年程度と考えております。
#128
○堀委員 一年程度ということであります。そこでちょっと今度問題になるのですが、一年のときに、通常国会が終わる場合もある。ことしで言うならば、五月二十四日に終わる。そうすると、一年程度ということになると、その一年程度が六月になるという場合に、次に国会がありません。そうするとまた次の通常国会の十二月か一月までは延びていく。これは国会との関連で出てくると思う。それは法定ですから、別表の改正ですから。そこで、私は、少なくとも「相当な期間」というのは、基準一年ということに固定をしないで、やはり国会があって、その場合に、すみやかに定率を改正すべしという客観情勢が考えられるならば、すみやかに来たるべき国会においては別表の改正をすべきである。一年というようなことを基準とすべきではないと思うのですが、それはもちろん、最初のお話のように、機動性の問題があって、いつはずさなければならぬかもわからぬということはあるでしょうけれども、経済問題は、株がぐっと上がったり下がったりするように、大体予測されないことであって、原則的にはかなりゆるいカーブで問題が処理されてくるわけでありますから、大体これは税率を変更しなければならぬというときには、何も一年を待つ必要はないのではないか。三カ月、六カ月でも、当然別表改正をしなければならぬという場合には、国会があれば、これは時間の短縮をして、来たるべき国会で処理をする、臨時国会があればそこでもよろしい、そういうことでなければ、租税法定の憲法第八十四条との関係で、どうも納得しがたいのですが、政務次官いかがですか。
#129
○稻益政府委員 実は、緊急関税の発動につきまして、私ども、ただいまのお話がありましたような、これはかなり長く続くんじゃないかというふうなことが初めから予想されますような場合には、この緊急関税の発動でやるという意思はないわけなんでありまして、当然別表の改正は国会の御承認を得べきだというふうに考えております。これが第一点であります。それから、非常に短期に、緊急の事態でしかも暫定的にこれが済みそうだという見通しの場合、この場合には、けさほど来申し上げましたように、発動自体も非常に緊急な事態が予想されまするし、それから非常に暫定的で、数カ月でその事態がなくなるであろうというような場合に、主として緊急関税を発動するわけであります。かような場合には、その事態が、私どもの当初の予想と違いまして、一年以上にもわたるようなものになりそうだということがはっきりいたしますれば、国会の開会中でありますれば、当然緊急関税から別表改正の方に切りかえるべきだ、かように考えておるわけであります。
#130
○堀委員 重ねてお伺いいたしますが、そうすると一年内外、一年ぐらいというのですが、そういう場合はこだわらないというふうに理解してよろしいわけですね。
#131
○稻益政府委員 数カ月で済むような事態の場合には、一年以上というようなことを考えませんし、それから一年以上と申しましても、私どもの当初の予定としては、一年程度で済むと思っておりましたものが、それよりも少し長くなるというような事態になりますると、その判断がつく限り、それに最も近い国会におきまして御承認を仰ぐようにいたしたいと思います。一年以上長く続くようなものでありますれば、それに最も近い機会の国会にお諮り申し上げて、別表の改正を行なうべきだ、かように考えております。
#132
○足立委員長 安井吉典君。
#133
○安井(吉)委員 ただいままでの堀委員の御質問の中で、緊急関税の問題について相当部分尽くされているようでありますが、なるべくダブらないような問題を取り上げながら、二、三お尋ねをいたしたいと思います。
 初めに緊急関税発動の要件の問題でありますが、第九条の二に「その他予想されなかった事情の変化」というふうな表現があるわけです。これはどういうことなんですか。予想されなかったものを今予想してくれというのは少し無理かもしれませんが、どういうようなものが一応考えられるか。
#134
○稻益政府委員 今具体的には実は価格の低落以外には考えておらないわけでありますが、予想されないような事態ということで、このような大体価格の低落に近いような、それと類似の原因によりまして起こる事態、こういう場合を救いたいために、こういう字句を使ったわけであります。
#135
○安井(吉)委員 予想することがなかなかむずかしいから、こういう表現になったのだろうと思うのです。それは特に突っ込んでお尋ねはいたしませんが、ここで低価格品ですね、これはどの程度のものを価格が低いものというふうに判断されるか。というのは、今の段階でもすでに差があるのです。そういうような物品がたくさんあると思います。
  〔委員長退席、細田(義)委員長代理着席〕
 そういうようなことも考えますと、この表現は、低落ですか、つまり価格差の問題ですね、どの程度までを当てはめようとお考えですか。
#136
○稻益政府委員 ここで申しております外国における価格の低落と申しますのは、御指摘のような内外の価格差ではありませんで、一応、私どもは、現在の関税率を算定いたします際に、内外の価格差を必ずしも全額埋めるというわけじゃないのでありますが、大体内外の価格差をできるだけ狭める、詰めるというような意味で、関税率を考えておるわけなんであります。そうしまして、現在のそうしてきめられました関税率では不足だという事態の場合が、この緊急関税になるわけなんでありまして、従いまして、現在の価格差をはるかにこえまして外国でもって外国品の価格が下がる、その結果内外の価格差が、たとえば今までこの程度であるといたしますと、向こうの価格が低落しまして、価格差がずっと大きくなる、こういった場合に、この価格差の増加いたしました分だけを関税でカバーしたい、こういう考えなんであります。
#137
○安井(吉)委員 さっき合成ゴムの話が出ましたが、今の段階で緊急関税に当てはまりそうな品目というのはどういうものでしょう。
#138
○稻益政府委員 現在は具体的にこういう品目だということは、私どもまだ予想しておりません。ただ現在は為替の割当で輸入を直接制限できるのでありますが、今後自由化が進んで参りますと、その際においてこういう緊急関税の必要が出て参るのではなかろうか、かような配慮のものとに設けたわけであります。
#139
○安井(吉)委員 さっき法制局の方から存立を危うくするというような表現がありましたけれども、この設定の場合、そこまでいきますと、緊急関税というような事態はよほどの場合でない限りないと思いますが、先ほど来の質疑応答の中から考えられますことは、ごく簡単に適用ができるというふうな気もするし、こういうような事態はもうほとんどきやしないのじゃないか、そういうような気もするわけです。どうもその辺めどの置き方がきわめてあいまいだと思うのですけれども、どうでしょうか。
#140
○吉國政府委員 第九条の二の第一項の規定が発動いたしますような場合は、もちろん制度としてもまさに緊急関税でございますので、当然非常に頻度が高く予想せられるというようなものではございませんで、ここに書いてございますような要件、本邦の産業に重大な損害を与えるとか、またその次に、国民経済上緊急に必要があるという要件でしぼっておりまして、この場合は、この法律を解釈する上から申しましても、非常に限定された場合であるというふうになりまするので、まあ予想いたしますれば、発動する場合は非常に少ないのではないかというふうに考えております。
#141
○安井(吉)委員 つまりゆるめた解釈じゃなしに、ごくシビヤーな行き方でいく、そういうことですね。
#142
○吉國政府委員 仰せられた通りでございます。
#143
○安井(吉)委員 私は、この緊急関税の問題が出てきたのは、何か貿易の自由化というような問題で、これによって関税が下げられる、何か非常に不安だ、だからこういうようなものを作るんだから自由化を納得しなさい、関税を少し下げるのも、こういうのがあるのだから一つ納得しなさい、そういうようなゼスチュアでお作りになったような気がするのですけれども、どうでしょう。
#144
○稻益政府委員 ゼスチュアというのは私ども非常にあれなんでありますが、現実問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、現在のような外貨割当といった直接的な制度手段がありますると、その必要が全然ないのでありまするが、自由化されますと、通常考えましてやはりこういう事態も予想されるということでありまして、関税率審議会におきましても相当慎重に御審議、御討議をいただきまして、この程度のものはやはりどうしても必要ではなかろうか。もちろん、先ほどからお話がございまするように、どの程度にこれを発動するかという問題は、具体的に当たってみませんとなかなかむずかしいわけでありますが、私どもとしましては、やはり立法府である国会から、こういう税率についての改正なり設定なりというものにつきまして意見を出していただくという建前からいたしまして、相当慎重にやるべきである、かように考えておるわけであります。ただ、そういたしましても、自由化が進みますると、こういった緊急な事態ということも一応予想されますので、そういう事態に備えてこの程度の規定は必要であろうという考えであります。
#145
○安井(吉)委員 緊急性はわかるわけですが、いずれにしても、国の産業経済の上に、あるいはまた国民生活の上に非常に大きく影響のある問題ですから、そう軽々しく処理される問題ではないと思うのです。その点は今のお答えの中から明らかになったわけであります。
 そこで、適用の期間の問題でありますが、ガットでも必要な期間というような言い方をたしかしてあったと思うのですが、実際は最初から期間をきめた例はないようであります。ガットもその点期間をきめるということは要求していないようですね。
#146
○稻益政府委員 お説の通り、ガットでもあらかじめきめるということは規定しておりません。
#147
○安井(吉)委員 アメリカの場合に、たしか二年たてばレビューを一回して、問題を一応解明して、その結果によって、あとを続けるかどうかということをきめる、そういうような慎重な態度があるようであります。その点どうでしょうか。そういうような考え方をこの中にお入れになるというふうなお考えはないか、その点一つ伺いたい。
#148
○稻益政府委員 アメリカの場合に、二年たちましてレビューするということは、私どもの調べました限りでは、さような規定はないようであります。
#149
○安井(吉)委員 これもどこかの抜粋ですからよくわかりませんが、先ほど解除復帰したのはないというようなお話でしたけれども、私の調べでは、五二年適用の帽子製造用の皮が五八年に戻るという記録があるのです。さっきのお話とちょっと違うようですが、その点はあとでお調べをいただきたいと思います。
 それはそれとして、日本の場合は期間のきめがないのですから、適用のしっぱなしでいつまでもいかれるのですか。その点どうですか。
#150
○稻益政府委員 その点は、改正案の第三項におきまして、先ほど来御説明申し上げましたように、その緊急措置が一年以上も続くというような事態であります場合には、緊急関税そのものはやめまして、関税定率法の別表の改正を行なうという考えでございます。いわゆる本法に切りかえるというわけでございます。
#151
○安井(吉)委員 国内法措置はそれはいいですが、ガットの関係もそれでいかれるということですね。
#152
○稻益政府委員 ガットの関係では、本来は十九条におきまして非常に暫定的な措置であるという趣旨が出ておるわけなんであります。一項を読みますと、「その産品について、前記の損害を防止し又は救済するために必要な限度及び期間において、」という表現になっておるわけでありますが、これを越えて継続して行なわれるという場合には、通常の解釈でありますと、やはりガットの譲許税表そのものが修正されるという事態があとに予想されておるわけであります。たまたまこれをどの程度の期間でガット関係で切りかえておるかという点は、今日のところでは、ガットの十九条の発動によります税率の改正は、いわゆるガットの譲許表そのものの修正にはまだ切りかえられておらないわけであります。私どもとしましては、国内の法的措置といたしましても、一年をこえて続くというような場合には、すでに暫定とは言えないのじゃないかという考えで、本法を改正するという措置をとりたいと考えておるわけなんであります。ガットの譲許税表の場合におきましても、一応私どもとしては、やはりガットの税表の修正、いわゆる二十八条の交渉に移るわけでありますが、そうした交渉によりまして、国会の御承認を得るというような姿に切りかえるべきではないか、かように考えております。
#153
○安井(吉)委員 あとこまかい問題はありますけれども、一番問題になりますのは代償譲許の修正の問題だと思うのです。これは先ほど来堀委員から繰り返し言われた問題で、第一号あるいは第二号措置というのはある意味で納得し得る点がずいぶんあると思います。しかし、問題はやはり第三号の代償としての譲許の修正あるいは新譲許の設定、この問題であると思うわけです。
 その前に、今おっしゃった第三項ですか、約一年というふうなことをお考えになっておられるそうでありますが、相当な期間を越えて継続する必要がある場合は別表の改正をする。これは第一項第一号の措置についてだけなんですね。第二号あるいは第三号の措置は、ガットの関係でいずれにしてもこれは国内税率は変わっているわけですね。これはどうなんですか。
#154
○稻益政府委員 第三項で掲げております「当該措置を相当な期間をこえて継続する必要が生じたときは、すみやかに別表の改正をしなければならない。」とありますのは、お話の通り第一項一号の場合でありまして、いわゆる国定税率の場合であります。二号と三号はいずれもガットの譲許税率の問題であります。これにつきましては、ただいま申し上げましたように、これまた相当期間を越えまして、つまりガットの十九条にありますような必要な期間を越えてこれを行なう必要があるという場合には、別途ガットの譲許税表の改正ということで考えるべきだと思うのであります。
#155
○安井(吉)委員 そうすると、一時ちぐはぐになる場合が出てきますね。どうなんですか。
#156
○稻益政府委員 御質問の趣旨がちょっとわかりかねるのでありますが、国定税率のございますものは国定税率だけでやっていくわけなんであります。それから、国定税率があるものに、いわゆるガットの譲許ということが加わってあるわけでございますね。従いまして、ガットの方で譲許しておりますようなものにつきましては、ガットの方の修正をすることになるということでありまして、ガットの譲許がないものにつきましては、国定の税表だけを変える、こういうことになるわけであります。
#157
○安井(吉)委員 その条約問題はあとでもう少し触れることにいたしたいと思います。
 そこで、政令をお出しになるわけでありますが、これは施行令でいかれるのか、それとも一つの具体的な問題についての単独政令でいかれるのか、どういうおつもりですか。
#158
○稻益政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、政令で規定いたします事項が対象となる貨物、税率、さらに手続関係の規定を盛る必要があるわけであります。これを個々の発動の際に出しますか、立法上のやり方の問題としていろいろあるわけなんでありますが、手続関係につきましてはやはり一般的に先に出す必要があるのではなかろうか。それから、個々の貨物につきましては、発動の必要があります際に、そういう政令を出すということになろうと思います。
#159
○安井(吉)委員 つまり一般的なものは施行令のようなものでいって、問題のやつはその事態に応じて政令を出す、そういうような二段がまえでいくということですね。
#160
○稻益政府委員 先ほど御説明いたしましたような二段がまえになって出るということであります。
#161
○安井(吉)委員 その政令で定められるべき手続でありますが、大体においてこういうような問題があるというのを、国の方でそれを使うのか、あるいは申請というような手続にされるのか、その点も一つ問題だと思うのですが、どうでしょう。
#162
○稻益政府委員 現在、私どもは、別に業界でありますとかそういう方面からの申請といったような姿は考えておりません。いろいろ物資によりまして所管の官庁もございまして、そういうところから大蔵大臣に対して発議の要請も出て参る場合もありましょうし、あるいはまた主管大臣であります大蔵大臣の方で、そういう発動の必要を認めて、審議会に諮るという場合もあろうかと思います。アメリカなどで行なわれておりますような、そういった申請があって発動を取り上げるというようなことは、現在は考えておりません。
#163
○安井(吉)委員 第三号の代償譲許の品目をどういうふうにしておつかみになりますか。
#164
○稻益政府委員 これは代償でありますから、ガットの交渉相手国からいろいろ要請が出て参るわけであります。緊急関税でガットの譲許をわが国が撤回するといった事態において考えますと、そういう場合には、けさほど来議論がありましたように、十九条で一応交渉しなければならぬ。そうしますと、こちら側としても、代償がおそらく必要であるという場合ははっきりするわけなんであります。こういった重要な品目について譲許の撤回をするということが必要な事態になりますと、相手国がただでは承知しない。従っておそらく代償を要求してくるであろうと予想されるわけであります。そういう事態が予想されます際には、わが国として譲り得る。こういう貨物について税率の引き下げをやりたいといったようなことを、こちらからの提案として出すわけであります。向こうからは、逆にそれに対して、そういう貨物のその程度の税率の引き下げでは困るといったようなことで、別個の物資がまた要求として出て参る場合もあるわけであります。これらは、交渉の際に、結局いずれも自分に有利な方を主張して参るわけでありますが、その妥結の結果によりまして、代償となる貨物と、それから引き下げの税率の幅がきまる、かようなことになるわけであります。
  〔細田(義)委員長代理退席、委員長着席〕
#165
○安井(吉)委員 そこで、緊急関税が設定されるというふうな場合に、これは今のうちに入れておかなければということで、どんどんその関係の貨物の輸入が進んでしまって、国の中に入ってきてしまう、これはだいぶ時期的なズレがあるから。それではかえって意味がなくなるので、せっかく緊急関税でとめようというのを、かえって無理やり――無理やりというのはおかしいですが、好んで向こうのやつを入れるようなことになってしまうおそれがあるわけであります。そういう思惑輸入というふうな逆効果になるというおそれがあるわけです。それでは保護すべき産業にかえって損害を与えるということになるわけであります。そういうようなことについてはどうお考えになっておりますか。
#166
○稻益政府委員 お説のような事態が予想されるわけでありますが、ただいまのように為替管理をやっておりますと、別途に制限ができるわけであります。自由化いたしました場合におきましても、おそらくそういういわゆる思惑輸入を防止するための最少必要限度の輸入の制限措置というものは、何らかの形でやはり残される必要があるのではなかろうか、かように考えております。
#167
○安井(吉)委員 現在はいいですね、管理貿易というような姿の中にありますから。それでは、いわゆる自由化されましたあとにおいて、何らかの輸入制限措置というのを一体どういうふうにおとりになりますか。何らかといっても、これはだいぶ問題があると思いますが……。
#168
○稻益政府委員 そういう事態を予想いたしまして、関係方面、特に通産省方面ともいろいろ協議をしたのでありますが、一応予定されておりますところでは、自由化を進めて参りましても、完全に貿易管理を全面的にはずしまして、何らの留保措置もとらない、こういうところまではいきかねるのではないかと思うわけであります。そういう思惑輸入につきましては、緊急の措置として輸入制限をはかり得るというような規定が一応残るのではなかろうか、こういうことを一応前提といたしまして、そういう事態については別途そういう措置で思惑輸入を防止してもらいたい。緊急関税はやはり輸入が現実に入って参りませんと発動できないわけであります。その間の調整は別途そういうことで行なうということに予定をいたしておるわけでございます。
#169
○安井(吉)委員 そういたしますと、何か特別な立法をされるというお考えですか。
#170
○稻益政府委員 どういう姿になりますか、ちょっと立法の姿としては、まだここで申し上げるほどに熟しておらないわけでありますが、現在の為替貿易管理法規が全面的になくなるといたしましても、私申し上げましたのは、最小限そういう緊急事態と申しますか、思惑輸入といったようなものを防止し得る程度の、貿易の規制措置といったものが法的にできる程度には残されるべきではないか、一応そういうことを前提として考えたということであります。
#171
○安井(吉)委員 ガットでは、それは緊急事態ですから、ある程度認められるにいたしましても、問題は国内法措置です。役所の皆さんの方は政令がお好きだが、しかしこれは政令ではちょっと無理な問題だと思うのです。やはり特別立法か何かされなくてはいけない。問題はそれだと思う。その特別立法まで持っていくお考えかどうか、その点です。そのやるという方向はある程度わかりますけれども、具体的にどういうふうになさるか、その点を伺いたいと思います。
#172
○吉國政府委員 ちょっと今の大蔵省からの答弁を補足して申し上げますが、現在は外国為替及び外国貿易管理法が現行法として施行になっておりまして、この第九条の取引の非常停止というような規定によって、国際経済の事情が急激に変化したというような場合には、取引の停止ができるようになっておりますし、そこまで参りませんでも、一般的な為替の制限禁止の規定と輸入貿易管理令に基づきます輸入承認の規定で、現在は全くそういう事態が防止できるような措置が講ぜられておるわけでございます。これは二、三年来大蔵省と通産省の間で外国為替及び外国貿易管理法の全面的な改正というものが議題に上っておりまして、種種の審議会等を設けて検討を続けて参ったわけでありますが、今の段階では、まだ最終的な結論を得ておらない状況でございます。一応対外経済取引法あるいは対外取引法というような仮の名称をつけました法案も、事務的には試案としてできておる段階でございますが、そのような対外経済取引法というような法律にいずれ変わるにいたしましても、その中には最小限度現在の外国為替及び外国貿易管理法の第九条、取引の非常停止というような制度は、おそらく盛り込まれることになるであろうというのが、通産省なり大蔵省なりのただいまのところの見通しでございます。そういうふうに私どもは見ております。
#173
○安井(吉)委員 自由化をいつどう進めてどういうふうな体制にするかということは、大きな政治問題になると思うのです。政務次官がいらっしゃるからお尋ねするのですが、どうなんですか、自由化はいつ完成するのか、その点どうでしょう。
#174
○大久保政府委員 ただいまのお尋ねは非常に広範な要素を含んでおりますが、政府といたしましては、なるべくすみやかに自由化を達成いたしたい、かような方向で進んでおります。
#175
○安井(吉)委員 管理法の範囲の中からはじかれても――ですから、はじかれるものとはじかれないものとは、一応ずっと並列して当分の間いくわけですね。ですから、その場合に、今はじかれてしまったものについては、今のお話でいくと、対外経済取引法ですか、そういったような措置を当面早く急がれなくては、今の緊急関税なんかも生きてこないのじゃないかと思いますが、どうですか。それは急いでなさるというお気持はお持ちなんですか。
#176
○吉國政府委員 現在自由化と申しておりますのは、外国為替及び外国貿易管理法に基づきます輸入貿易管理令によりまして、いわゆるAA、オートマティック・アプルーヴァルという自動承認制に乗っけましたものを自由化と称しておるのでございますが、これを全く規制なく自由にするというところまで今直ちにいくというふうには、通産省も大蔵省も考えていないのだろうと思います。そのAA制度に取り入れるものの割合をどんどんふやしていくということで考えておるようでございます。ただ外国為替及び外国貿易管理法によります為替なり貿易なりの規制の仕方が、まず非常に制限を課して、例外的に許容するという法律の格好になっておりますので、貿易自由化、為替自由化の線からいって、そういう体制よりも、むしろ原則は自由であって、その自由なものに対して特に必要がある場合に制限を課するという方向に立法を切りかえるべきじゃないかというような頭で、先ほど申し上げました対外経済取引法の立案が進められておるわけでございますが、その結果として出てくる自由の幅というものは、現行法によりましても、AAのワクをふやすことによって、実質的には経済的に自由に行なえるわけでありますから、その点は差異がないと考えております。
#177
○安井(吉)委員 だんだん問題がはずれてきましたが、この場合は、一応今言いました思惑輸入はこれを食い止める措置を必ず緊急関税に添えて行なう、そういうようなお考えであるということですね。
#178
○稻益政府委員 仰せの通りであります。
#179
○安井(吉)委員 そこで、いわゆる租税法律主義とか法定主義とかいう問題と、この緊急関税との調和の問題でございますが、きょうの午前中はほとんどこの問題に堀委員と政府側との応答が費やされたわけであります。私もこの制度の必要性というのはわかります。また、ある程度政令に委任しなければいけないということ、これもわかります。しかし、いかなる場合にいかなる条件で発動されるか、あるいはまたその乱用がどう防止されるか、そういうような点に問題があると思うし、そして憲法八十四条のその規定とどこで調和がとれるかということであろうと思います。それも、単に形の上で合憲というようなことではなしに、その憲法の規定は、国民の権利を守る、そういう立場で書かれているわけですから、その規定の趣旨、内容に忠実である方向において、この緊急関税と憲法の問題は結論を出さるべきだと思うのです。この内容をずっと見てみましても、一種の緊急避難的な仕組みになっているような気がするわけでありますが、事態がそういう緊急を告げました際に、全体的な国民経済を守るということ、そういうようなところに焦点が置かれているわけであります。しかし、一方の側では必ずだれかの利益を踏みにじっている、そういう措置も同時にここできめられているわけです。単に国民の利益を守るというわけじゃなしに、他の面においては、たとえば代償譲許の面で、あるいはまたせっかく安いものが入ってきて、これで助かったと思って喜んでいる国民の側は、そこでまたその措置がなければ、そのままその人たちの利益になっていたのも、そこでシャット・アウトされる。そういうような意味で、一部にはプラスになるかもしれないが、他の方にはマイナスの面が非常に多い。それだけに、やはりこの憲法の、税金は必ず法律できめられなければいけない、こういうようなものの考え方を、この際この問題に当てはめる際にやはりじっくり考えてもらわなければならないと思うわけです。
 そこで、ガットの第十九条の第三項の(a)でありますが、その後段では、緊急関税の協議がととのわない場合には――これは必ずととのうとは限らないと思いますね。その場合には、相手国も等価値の譲許を停止することができるというふうな規定がたしかあると思うのです。ですから、緊急関税の影響が、国際的にも、日本の貿易に対して非常に大きな影響があるということも、われわれは理解しておかなくてはならないと思いますが、その点私の今の解釈は間違いないですか。
#180
○稻益政府委員 お話の通りでありまして、一方がそういう緊急措置としてのガットの譲許の撤回あるいは引き上げといったようなものをいたしまして、協議がととのわないという場合には、他方はこれに対して報復的にそういう対抗措置ができるということであります。
#181
○安井(吉)委員 だから、私は問題が重大だと思うわけです。これも相手国の方が勝手にとめるのですから、何を停止されるかわからないわけです。おそらくこの規定を発動する側に有利なものを適用するにきまっていると思うのです。しかも、その報復的な行為は、条約上の当然の権利として相手国はすることができるわけであります。譲許の修正だとか新譲許の設定というのは、普通の場合はみずからの選択に立って防衛的な方向からなされるというような場合が多いわけでありますけれども、この場合はそうじゃないわけですね。こちらがそういうふうな行動に出ることによって向こうのやつを誘発してくるわけです。ですから、このような緊急関税の発動というのは、軽軽しく、単に政令で委任されているから勝手に政府限りでできるのだ、というふうなことであってはならないと思うわけです。これは日本の貿易全体の上に非常に大きな影響のある問題だと思う。そういうふうな理解に立ってこの問題を処理されなくてはならないと思うわけですけれども、どうでしょう。
#182
○稻益政府委員 全く仰せの通りでありまして、ガットの譲許税率の撤回といったことを緊急関税でやります際には、必ず事前に協議をして、ととのうという一応の目安を持って発動すべきだと思いますが、協議がととのいませんと、お話の通り報復的な措置を受けるわけなんであります。しかし、報復的な措置は決して望ましくないわけであります。従いまして、できるだけそういった報復的な措置はとられないような協議をして、ある程度協議がととのうような形で、そういうことを前提にしまして緊急関税を発動したい、かように考えております。
#183
○安井(吉)委員 既存の複関税だとか、あるいはまた報復関税、相殺関税、不当廉売関税ですか、そういったようなものがすでにあるんだし、これとの均衡上からいっても、この緊急関税が政令措置で十分だというふうな趣旨のお答えもさっきあったわけであります。しかし、これらの関税は、実際は従来ただの一度も適用された例はないはずです。特に反ダンピング関税なんといったって、それは日本の方がすねに傷持つ身ですから、それどころのことじゃないと思います。これらの今までありましたような特別な関税は今後発動されることがあるとお考えでしょうか。あるいはそういうお気持がおありでしょうか。
#184
○稻益政府委員 現在の定率法に掲げておりますような、政令に委任されておりますような報復関税、相殺関税あるいは不当廉売関税というものは、まだ発動された事例がございません。現在までそのような事態がなかったということであります。
#185
○安井(吉)委員 特に日本の場合は貿易の促進というようなことが至上命令だというふうにだれもが理解しているわけです。そういうような意味からも、この適用というものは慎重でなくてはいけないし、一方の法益を守ろうとして、他方の需要者の利益を害し、取引の安定を阻害するという内容を持っているわけですね。その点において、単に租税法律主義の言葉の上の解釈からは、これは免れぬというふうな先ほど来の御答弁でありましたけれども、私どもは、そういうような趣旨の上からいって、国民経済にこれくらい大きな影響がある問題を、単に政令だけにまかせ切りにしてしまうというふうな考え方そのものに同調することはできないわけです。今までの報復関税だとか反ダンピング関税などというようなものも政令だけでできたじゃないか、というふうに言われるし、そういうふうに昔の法律は作られているわけです。しかし、それがあるから今度のやつも当然政令措置だけでいい、そういう理屈にはならないと思います。昔のものが誤りだったら、それを直せばいいのです。そういうような気持で、われわれは慎重な態度でこの問題に当たらなくてはならない、そういうふうに思うわけであります。
 そこで、ガットの譲許の引き上げ撤回の問題でありますが、ガット十九条第一項の措置、これは対外的にはこれで済むわけでありますが、たとえば定率法の二号の場合の措置ですね。ちょっと表現がおかしくなりましたが、ガットの引き上げ譲許、これはガット協定内の措置であります。先ほども御答弁があったと思いますけれども、国内法措置としてはそれでいいわけです。別に国内法でその条約承認措置をする必要はない、そういうことですか。
#186
○稻益政府委員 その通りであります。
#187
○安井(吉)委員 その意味は暫定的だからという意味ですか。
#188
○稻益政府委員 十九条におきましてガット譲許税率を撤回したりあるいは修正いたします場合は、一応一般的に御承認をいただいておりますガットの運用ということになるわけであります。ただ、ガットの運用になりますが、今回この定率法の九条の二にこれを掲げましたのは、内容が本来であれば国内では法率事項に属する問題であるということから、政令に委任する規定を定率法の中に盛ったということであります。
#189
○安井(吉)委員 協定が結ばれれば、法律よりもそちらの方が優先するのではないですか。
#190
○稻益政府委員 通常の場合に、ガットの税率を協定いたしますると、御承知のように条約として国会の御承認を得ておるわけなんです。ただ、このような緊急の場合には、緊急措置としてガットの譲許税率の撤回あるいは修正ができるという規定がありまして、それを運用して行なうという意味におきましては、新たに条約を結ぶのではない、こういう解釈であります。
#191
○安井(吉)委員 そういたしますと、条約さえ結ばれれば、法律で別に規定がなくてもいいわけですね。
#192
○稻益政府委員 緊急の場合にガットの税率を修正する、撤回するということ自体は、先ほど申し上げましたように、私どもこれは一応条約の運用だということで考えておるわけなのでありますが、ただ問題は、その中身がいわゆる租税法定主義といわれます重要な国民の権利義務に関する租税でありますので、従いまして、国内的には、これを行政限りでやるという場合には、法律でもってその委任を受けておくべきである、こういう解釈のもとに規定を設けたわけであります。
#193
○安井(吉)委員 そういたしますと、条令を結ぶ権利を法律できめて委任を受ける、そういう趣旨ですか。
#194
○稻益政府委員 緊急の場合に、ガットの譲許を撤回したり、ガットの税率を変えるということでございます。そのことを法律でもって政府が委任を受ける、こういうことになるわけであります。
#195
○安井(吉)委員 そこで、第三号のいわゆる代償譲許の措置の問題でありますが、ガット第十九条第二項では、できるだけ早目に協議をしなければいけない。しかし、協議がととのわなくても、暫定的に、もう向こうが承知しなくてもばっとやってしまうことができる、そういう規定であると思います。ところで、この代償譲許の品目の問題でありますが、この品目そのものはちっとも緊急性はないのですね。ただ代償として、第二号の措置を実行するには、それがなくてはいけないという道連れになるだけなんです。そばづえなんです。そういうものがこの第三号の代償譲許の問題であると思うわけです。それで、この第二号、第三号の二つの措置というものは、先ほど来の説明でも表裏一体のものだ、これはよくわかります。第三号の措置がなければこれはもう勝手にやったようなことで、いわゆるガットの精神に反してしまって、ガットをめちゃくちゃにしてしまうのだ、そういうような考え方からすれば、合わせて一本の緊急措置だということはよくわかります。しかし、単にその発動について必要な限度、それから国民経済への影響云々、これだけのあいまいな限定だけで、そのそばづえを食うような品目を勝手に政府限りできめられる、そういうところに一つ大きな問題があると思うわけです。その点どうでしょう。
#196
○稻益政府委員 お話の通り第三号の場合は全くそばづえでありまして、これ自体は望ましいことではないのでありますが、先ほど御説明申し上げましたように、何分にも二号の、その税率の撤回なり引き上げをいたしますためには、どうしてもこういう代償が必要になって参るわけです。ちょっと先ほども触れましたが、代償なしに済む程度のものでありますれば、三号の問題は起こって参らないわけです。そういう場合も全然ないわけではないのでありますが、多くの場合には代償を必要とする。その代償をこちらで提供いたしませんと、二号のこちらの最も必要とする引き上げの方の緊急関税の措置ができないということになるわけでございます。その際に、この法律の二号におきましては、できるだけその道連れになる方の受ける被害を小さくいたしたいという趣旨におきまして、あるいは抽象的という御非難があろうかと思うのでありますが、大体その効果が、同法第二号の措置の補償として必要な限度を越えないということを一つの条件といたしまして、また両者を彼此勘案いたしまして、国民経済の立場からできるだけ影響の少ないように品目も選ぶべきであるし、その引き下げの限度も考えるべきであるという趣旨におきまして、かような二項の規定を設けたような次第でございます。
#197
○安井(吉)委員 一体どの品目がその犠牲品目になるのか。そういうような点については、これは協定ももちろん制限がありませんし、法律はただ単に必要な限度だとか、国民経済云々といったような、その対象になるものの犠牲の限度については触れております。しかしながら、一体何が犠牲として選ばれるのかという、その選定の基準については何もないじゃありませんか。ここで国会は一応委任事項としてきめてしまえば、オーソドックスの意味合いからすれば、国会はもうこれでタッチできない。国民の声をわれわれがもし代表しているとすれば、その声を反映する機会はこれで終わりなのです。どの品目かがこれから犠牲になる。その犠牲になるのを国会は黙って見ていなくてはならない。そしてまた、国会が開会されている間においても、そういうような犠牲産業はどこかから出てくる。それをやはりわれわれは一言も言えないで黙って見ていなければならない。憲法の租税法定主義という輝かして規定があるにもかかわらず、そういうことにわれわれはなるわけです。しかも国会の論議の中ではいろいろな意見がたくさん出て参りますけれども、それは役所の中に入ってしまうと、日本の行政機構というのは一般大衆にはきわめて強いのですが、独占資本には非常に弱いという特殊な性格をお持ちです。ですから、何もかもおまかせをしてしまえば、あとは一体どういうことになるのか。こういうことです。それは、当面運用される大蔵省の方々や通産省の人たちは、そんなことはないというふうに言われるかもしれません。しかしこれは一人々々の人たちがそうだということじゃないのです。行政機構というものはそういうものです。そこで、やはり問題になりますのは、この必要な限度とか、あるいは国民経済に対する影響のできるだけ少ないものとか、そういうようなごく抽象的な限定だけではどうもおまかせしにくいような気がする。そういうような点につきまして、一つお考えを伺いたいと思います。
#198
○稻益政府委員 代償として選びます品目があらかじめ予定できない。これは、先ほど来御説明申し上げましたように、外国との交渉の結果きまるものでありまして、わが方としては、たとえばこういう物資を代償として出したいというオファーをいたしまして、できるだけこちらに有利なものをオファーするといたしましても、相手国がなかなかそれで承知しないという場合があるわけであります。そういたしますと、事前に日本側だけの事情で決定いたしましても、これが実行できないという場合が多いわけでありまして、一般的にそういうような外国との交渉に待たざるを得ないというような問題につきましては、ある程度やはり法律で具体的に書くことが不可能であります。できるだけそういう悪い点を防ぎたいという趣旨におきまして、できるだけしぼりました結果、ここに二項として掲げたようなわけであります。特にこれは緊急関税というような非常事態の場合でありますので、その場合における国民経済全体のバランスと申しますか、相互的な観点からの判断を適正に下すという以外にはないのじゃないか。法律としてできるだけ私どもとしても具体的に書くことができますれば、さようにいたしたいという所存でありますが、大体ここに掲げましたのが限界ではなかろうかというように考えるわけであります。
#199
○安井(吉)委員 それはまたあとで議論をすることにいたしますが、このそばづえ組の譲許の問題であります。これはガットのエスケープ・クローズの規定の中にあるわけではないのですね。一般規定の中の問題ですね。
#200
○稻益政府委員 ガットの十九条の規定から結局こういうものが出て参るということになるわけであります。
#201
○安井(吉)委員 しかし、具体的には十九条にはないでしょう。
#202
○稻益政府委員 具体的には十九条で協議をしなければならないということがございます。そこから出て参るわけであります。従いまして、必ずしも代償を出さなければならぬというふうには具体的に書いてございません。協議をするということから多くの場合に代償が要求される、こういうことでございます。
#203
○安井(吉)委員 そこで、私の疑問が誤りかどうか一つ御判断を願いたいのでありますが、そういう解釈だとするならば、第三号の譲許の問題は、一応定率法の第二号の譲許のものと一体的なものであるか。分離されたものとして扱われる場合もあるわけですか。
#204
○稻益政府委員 三号に関する限りは二号と一体のものであります。これだけが独自に出て参るということはないわけであります。
#205
○安井(吉)委員 そういたしましても、二号の方は十九条の規定ではっきり条約事項に入りますが、三号の場合には、これは新協定ではないのですか。どうでしょう。暫定的かもしれませんけれども……。
#206
○稻益政府委員 この点は私どもこういう解釈をとっているわけであります。緊急関税で譲許の撤回をいたします。その際に必ず十九条では締約国と協議をしなければならぬ。協議の結果出て参りますのが、この代償措置であります。従いまして、これまではガットの条約の運用である、かように解釈しておるわけであります。
#207
○安井(吉)委員 これはガットの規定の問題かもしれませんけれども、そういたしますと、いわゆる私の言うところの、第二号措置というのは暫定的だから、ガットの税率表は改正にならないわけですね。ならないで済むのでしょう。その場合、従って第三号も税率表の中に修正を加えなくてもいいという規定はガットの中にどこかにあるのですか。
#208
○稻益政府委員 これは、私先ほども触れたかと思うのでありますが、十九条全体が緊急措置ということでありまして、いわゆる緊急関税なのであります。この関係のものは、本来のガットの譲許税表とは別個に、それを修正しないでそういうものができるわけであります。暫定措置としてできるわけであります。従いまして、この関税定率表でありますが、二号の場合も三号の場合も、いずれもこれはガットの上ではいわゆるガットの譲許税表を修正しませんで、税表そのものはそのままになったまま、暫定措置としてこういう措置がとれる、こういうことになるわけであります。
#209
○安井(吉)委員 私は、どうも第二号措置の方は問題ないような気がするのですか、第三号措置は――第二号、第三号というのはちょっと言い方がおかしいかもしれませんが、この法律条文でごらんいただきたいわけですが、何か別協定のような気がして、だから国会承認手続なんかも要るんじゃないか。一体的なものであるということはわかる。ガットの場合はこれは一体的ですよ。それはわかります。しかし、国内法的にはやはり別措置が要るんじゃないでしょうか。国内法としての手続というものが別に要りはしませんか。どうでしょう。
#210
○稻益政府委員 二号の場合と三号の場合は、全く国内的には同じであります。ガットの場合におきましても、この十九条から出て参っておるという意味におきまして、いわゆる本来の根拠法と申しますか、ガットの譲許税表は修正しないでそういう暫定措置がとれるわけでありまして、国内的にも、この二号と三号は、いずれも同じ性質のものであるということで、この法律によりまして政府にそういう授権をしていただきたい、こういうような考えであります。
#211
○安井(吉)委員 一時的にも一応条約は条約なんですね。条約の中の協議に基づいた新しい条約、そういうような解釈はどうですか。
#212
○吉國政府委員 この三号で新たに関税の譲許をしたり、あるいは従来やっております譲許を修正する措置を政府限りでとれるということを、この第三号は規定しておるわけでございますが、それをやることは、これは条約ではございませんで、条約の一般協定第十九条の2の規定から出て参ります、いわば条約の運用であるというふうに考えております。従いまして、条約に基づく条約ということではなしに、条約に基づくいわば行政協定的なもの、政府間協定的なものというふうに考えられると思います。
#213
○安井(吉)委員 それはいいのです。条約の内部的な問題はそれでいいのだけれども、しかし、国内的には、政府だけの話し合いによって国民に非常に大きな影響を与えているわけです。ですから、その点、国内法措置とそれから国際的ないわゆる条約措置と、その点もう少し区分をして考えなくちゃいけないような気がするのですが……。少しわかって参りましたけれども、その点どうですか。
#214
○吉國政府委員 国内的には、ただいま申し上げたようなことでございますが、国内的にどういう措置をとるかということは、この第九条の二の第一項第三号の規定でございまして、これによって政府にそういう権能が与えられまして、政府が、与えられた権能に基づいて、この第九条の二の本文の末尾にございますように、「次の措置をとることができる。」という権能に基づいて、この措置として第三号の譲許の修正なり、あるいは新たなる譲許をするということでございます。
#215
○安井(吉)委員 それにしても、第二号の方は納得しやすい方向にあると思いますが、しかし第三号の方は――この二つのニュアンスというか、こちらの方は、何かそばづえを食っただけで、緊急性も何もない。ただ一方の産業を助けるために犠牲になっている。それだけに、たとえば条約の認証措置とか、また法律上も単に簡単な委任規定だけではなしに、もっと犠牲になるものに対する思いやりのあるような表現なり、取り扱いなり、そういうものがあってしかるべきだと思うのですが、そういう取り扱いはどうですか。
#216
○吉國政府委員 実体問題につきましては、大蔵省からあるいは御説明申し上げた方がいいかもしれませんが、今の第一号なり第二号なりは、いわば税率を引き上げるわけでございますが、第三号は税率を引き下げるわけでありまして、引き下げた結果として、ある産業が影響をこうむることはもちろんございます。また、その結果として、付随してその貨物の需要者には一定の利益を与えることもございます。そのようなことが第二号の措置に伴って第三号の措置をとらなければならないという実体的な必要がある場合にとられるわけでございますが、その実体的な必要がある場合においても、第二項にありますように、必要な限度をこえないばかりでなく、国民経済に対する影響をできるだけ少ないものにするような配慮をしなければならないということを規定してございまして、第三号によって今おっしゃいましたような犠牲になる産業というものについても、できるだけその影響が少なくなるように、また国民経済全体に対してできるだけ影響が少なく行なわれるようにということを、第二項で限定しているわけでございます。
#217
○安井(吉)委員 この論議はだいぶ長くなりますから、委任立法のあり方の問題について若干お尋ねしてみたいと思います。
 このような緊急措置は国会で長々と審議をしているのに適当でないということで、こういう措置になっているのだろうと思います。なるほど、国会の審議というのは、時間的にもだいぶ長期を要するし、何としても公開主義ですから、その公開している間にスペキュレーションも入ってくる、また特定の産業にひもがついた議員が何か暗躍するということもあるかもしれない。そういうことがおそらく今度の委任規定というような姿になったのではないかと思うわけです。しかし、諸外国の立法例、これは私この間本会議の質問のときにもあげたのですが、どこの国を見ても、西ドイツは事前承認だし、英国は、あの国の特殊な立法措置ですが、事後承認、アメリカあるいはカナダ、オーストラリアなどは、関税委員会がかっちりとしていて、公聴会を開いたり、いろいろ緻密な事前措置のあとに発動しておる。こういうような仕組みの中にある中で、ただ日本だけが国会を全く無視するという新しいスタイルをお作りになろうということです。これは限定がたくさんあるからと、そうおっしゃるでしょう。しかしながら、アメリカだって法律の委任の内名においてもっと限定があるし、ドイツだってあるわけです。英国は全体的に委任はしているけれども、最後はびしりと承認というようなことでケリをつけている。フランスもそうです。日本の国会だけが一番日本の官僚諸君から信用がないというふうな扱いになっているような気がするわけですし私は、日本の国会に関する行政機関のそういうふうな先入観がもしあるとすれば、これは困ると思うのです。そのように国会が信用が置けないのかもしれませんけれども、しかしながら、国会という機能は、これはあくまで国民の代表として、これはもう子供の話じゃありませんので、憲法で規定されておりますそういうふうな権限を持った一つの立法府だというこです。ですから、私は、そういうような点、この法律案をお作りになった大蔵省の方が積極的だったのか、あるいは通産省の方がむしろ積極的にこの問題をプッシュされたのか、これはよく知りませんけれども、そういうふうなものの考え方が裏にあるとすれば、これは重大なことだと思うのです。この点どうでしょうか。
#218
○稻益政府委員 けさほどから申し上げたかと思うのでありますが、決して私ども国会を軽視するとかいう考えは毛頭ございません。私どもの考えとしましては、こういう緊急な事態におきましては、どうしても租税法の範囲内で最小限度の授権をしていただきたいということでありまして、その論拠は、これは先ほど来申し上げたのでありますが、関税は、何と申しましても、租税ではありまするが、国際経済と申しますか、そういうものと非常に密接な関連を持っておりまして、国際的な変動、いろいろな意味の変動に、機動的に対処していかなければならないといったような機能を持っておるわけなんであります。そういった点から、私どもとしましては、必要最小限度のものを授権をしていただきたいという趣旨でありまして、決して国会に対してそういうあれをいやしくも軽視するとか、そういったことは毛頭考えておりません。
#219
○安井(吉)委員 私は、国会がこの問題にタッチをして、この問題を引き受けて立法措置にすれば何もかもうまくいく、そういう言い方で言っているわけじゃ決してありません。また、そういうやり方、政令でやって政府限りで失敗をすれば、あとで国会がしっぺ返しに政府をいじめる、そういうつもりでそういう前提として今ここで言っているわけじゃありません。これはやはり民主政治のあり方の基本的な問題だと思うのです。民主主義というものはやっぱり時間がかかるし、あるいは金がかかるものなんです。しかし、民主主義というものは、そういうふうなことでも、それの方がいいということで、今の議会主義をとっているのです。能率主義がよければ、これはもう独裁主義に移ればいいんで、それは大蔵大臣が大将になっても何でもかまいません。とにかくそういうことになれば、それは一番能率的でしょう。しかし、それよりも、やはり手間がかかっても、ひまがかかっても、金がかかっても、民主主義の方がいいというので、今の議会政治というものがあるはずです。その民主主義の最高の約束である憲法の規定を、私どもはないがしろにするわけにいかないと思うわけです。
 そこで、委任立法の問題がありますけれども、英国の法制と日本の法制とは違いますが、しかし、これはもう与党対野党の問題じゃなしに、これは特に与党の諸君に聞いておいてもらいたいのですが、英国の委任立法の法制の一般的な傾向は、政令にまかせても必ず事後承認をとっている。これは伝統的な国会優位の思想、これはあそこの国の歴史的な背景からくるものでしょう。そういうようなものがあるわけです。つまり最終的な確認の権利を必ず国会は保有する。ですから、統制権を持っているし、委任事項の制限、修正、取り消し、あるいはまた大臣の命令、草案の作成前に議会の方が諮問を求める、あるいは定期報告をとる、こういったような仕組みまで持っております。これは、あの国の歴史的な背景からくる問題だし、あるいはまた特殊な法制の中から出てくる結論かもしれませんけれども、われわれは、やはり、委任立法という問題について、今まであまりに無関心であり過ぎたという感じがするわけです。ずっと法律を読んでみますと、先ほども法制局の方からいろいろ解釈論をお聞かせいただきましたが、しかし実に大まか過ぎて、きめるときはそれでよかったけれども、あとでこれじゃあんまりひど過ぎるなという事項がずいぶんあるような気がするのです。そういう意味で、私はこの緊急関税の問題に関心を持たざるを得ないわけです。そこで、私どもは、今言いましたような趣旨を織り込むような修正をお受けになるお気持はないかどうか、これは一つ伺いたいと思います。これは政務次官から……。
#220
○大久保政府委員 けさ来、堀さんの御質問に対しましても、また安井さんの御質問に対しましてもお答え申し上げておりますように、今回の立法は決して国会を軽視いたしておるものではございませんし、またおおむね一年間と予定はいたしておりますけれども、しかし、時期によりまして、国会の開会等にあたりまして、十分国会に御相談を申し上げるということも、御答弁を申し上げたような次第でございまするし、今回の改正の趣旨にかんがみまして、さような考え方でおります緊急関税の措置でございますから、どうかその点は提案の趣旨を御領得をいただきますように、お願い申し上げる次第であります。
#221
○足立委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#222
○足立委員長 速記を始めて。加藤清二君。
#223
○加藤(清)委員 私は、ただいま上程されておりまする関税定率法の一部を改正する法律案について、質問をしたいと存じます。
 基本問題につきましては、同僚議員がそれぞれの立場からお尋ねのようでございまするので、時間を有効にするために、私は、各部門、特にずばりそのものの繊維部門についてお尋ねをいたします。従いまして、あくまで具体的に、簡便にお答えが願いたいと存じます。そこで、その繊維部門も数多くございまするが、それほどたくさんなものを十分や二十分で質問せいと言われても、とうていできかねる問題でございまするので、主として繊維製品のうちの毛製品について質問をいたします。
 この際、この毛製品の関税は、この改正されんとする法律案によればどのように相なりまするか、まずその点から……。
#224
○稻益政府委員 お答え申し上げます。
 毛製品でありますが、毛製品のうち概略毛糸と毛織物とございまして、毛糸につきましては現行税率従価税一〇%、毛織物は二〇%であります。今回の改正案におきましては、本税はそれぞれ従来通り一〇%と二〇%でありますが、それぞれ毛糸、毛織物につきまして暫定税率を設けまして、毛糸につきましては、暫定税率としまして三十番手未満のもの、つまり太番手でありますが、これにつきましては従来の一五%またはキログラム当たり百五十円という、従価従量の選択課税にいたしたわけでございます。その趣旨は、大体太番手のものはイタリヤ方面から安値のものが入って参る。これに対して若干日本のこういった毛糸の産業が、何と申しますか国際競争力が弱いということであります。ただその事情もそう長期にわたるものではないということでありまするので、今回は一応暫定措置としまして若干の引き上げをはかったわけであります。同様の考えでありまして、毛織物につきましては、本税は二〇%の据え置きでありますが、暫定税率といたしまして平方メートル当たり二百グラムをこえるもの、これはやはり織物にいたしましていわゆる厚手のものであります。このようなものにつきましては、二〇%の基本税率に暫定的に平方メートル当たり百七十円の従量税を加えまして、これをもちまして暫定的にある期間だけ保護をはかりたいという考えであります。
#225
○加藤(清)委員 現行の定率ですね、毛製品のうちの毛織物については一五%から二〇%になっておりますが、毛糸については一〇%、現行がそうなんですね。これは大体高いのか安いのか。世界の毛製品生産国の関税と比較して、高いとお考えになっていらっしゃるか、安いとお考えになっていらっしゃるか。
#226
○稻益政府委員 各国の税率をただいまちょっとここに持ち合わせておりませんが、一般的にただ税率だけで比較いたしまして、高い安いということも言いかねるかと思います。
#227
○加藤(清)委員 いや、税率を聞いているのです。時間の都合上、わからなければこっちで言うてあげます。――委員長、こういうふうになるから時間が延びる。与党の皆さんしんぼうして聞いておるので、お気の毒ですから、協力する意味において私が答えましょう。世界の毛製品の最高の生産国イギリスにおきましては、毛糸については七・五%、毛織物は一七・五%、間違いでございますか。欧州共同市場におきましては、これよりももっと安い六%従価税です。毛織物については一六%でございます。しかるに日本国内においては二〇%でございました。なぜこれが二〇%になったかといえば、御承知の通り日本では純毛ならばよろしかろうという、純毛に対する国民的なノスタルジアがあった。そのために化繊の製品、合成繊維の製品、これらの育成にある程度困難を来すおそれがある。従って、なるべく輸入毛製品については世界以上の高率なものをかけよう。こういうところに二〇%が生まれた原因があったはずでございます。私は、すでにこの問題に関連してから三十有余年たっておりまするから、その当時の状況もよく心得ております。そこでお尋ねするのでございますが、私の申し上げました数字が間違いでないとするならば、これは日本の現在の関税率は高い、こういわざるを得ないと思いますが、いかがでございますか。
#228
○稻益政府委員 お説のように、イギリスなりイタリアと申しますか、欧州共同市場と比較いたしますると、比較的高い方かと思います。ただ、ほかの例でありますが、私の記憶では、アメリカの場合は三二%とか五%になっておろうかと思います。ただ一言申し上げたいのは、今回の関税もさようでありますが、一般に保護の必要の程度におきましてこういう関税は考えるべきだということでありまして、先ほど申し上げましたように、たとえば厚手のものあるいは太番手のものといったようなものが比較的安いというような場合には、ある程度の保護措置をするという考えであります。
#229
○加藤(清)委員 私の質問に答えていただきたいと思います。なるほど、アメリカのお答えが出ましたから、私は申し上げましょう。それもそらんじておりますから……。アメリカと日本とは比較にならないのでございます。なぜかならば、アメリカはオール輸入国なんです。あなた方が日本の毛製品を輸入国として扱われるならば、それはアメリカと比較していただきましょう。ところが、日本の毛製品は、今や輸出でございます。従いまして、輸出している量と輸入している量と比較してごらんなさい、明らかな事実がわかりまするから。これはどうなっております。
#230
○稻益政府委員 お話のように、一方に日本で毛織物で輸出いたしておりますのは大体薄手のものでございます。従いまして、今回は薄手のものについては引き上げは考慮いたしておりません。
#231
○加藤(清)委員 輸入量は、大体一昨年で輸出の量の八分の一、三十五年度は十三分の一です。輸入される量は国内生産の百分の一に当たらないのです。アメリカのようにたくさんの量を輸入する国と比較されちゃ、比較にならないわけなんです。
 そこで、私が次にお尋ねいたしたいのは、今度、ただいまあなたがお答えになりましたように、毛製品については、従価税二〇%に従量税が加えられることに相なっております。従量税は、二百グラムをこえるものについては、従価税として二〇%のほかに、方メートルについて百七十円、こういうことになっております。あなたは、あくまで薄手のものは大丈夫だ、厚手のものを守る、こうおっしゃいましたけれども、この従量税がかけられることになりますると、方メートルについて、あるいはスクェア・ヤールでもけっこうでございます。基準はどれでもいいですけれども、一体かけられた結果はどういうことに相なりまするか。あなたの方の計算を承りたい。
#232
○稻益政府委員 ちょっと、ただいまの御質問でございますが、従量、従価併課になっておりますが、それを従価一本に換算して何%ぐらいになるかという御質問でございますか。
#233
○加藤(清)委員 そうです。
#234
○稻益政府委員 従価に換算いたしますると大体三五%程度になります。
#235
○加藤(清)委員 それはそういうものもありまするけれども、従量税でしょう。重いものほどよけいかかるということになっていましょう。あなたのそのお答えじゃいけないから、私の計算したところを申し上げましょう。それが間違いであればすぐ指摘して下さい、たとえて申し上げますると――たとえというよりも、まずこういうことをわかってもらわぬといかぬです。同じ毛製品でも目方の軽いものと重いものがございまするが、軽いものは割合に材料や質が高級なものでございます。重いものは大体質が悪いか、ないしは反毛糸と申しまして再生糸を使ったもの、従って重くなるわけでございます。これは下級品、一般大衆が使う品物でございます。今度は値段について見ますると、方ヤールあるいは方メートル――方メートルの方がおわかりやすいようですから、方メートルにしましょう。今までは方メートルにして七百五十円程度のものが二〇%かかっておりましたですね。ところが、今度の改正によって従量税をかけられますると、五三%課税に相なるのでございます。千円程度のものでございまして四五%、あなたのおっしゃいましたところの三四%というのは、千七百五十円程度のものでございます。これはあくまで原価、コストを申し上げております。方メートルについて、三千円程度の品物でもって二八%ということに相なるのでございます。二〇%でもなお高きに過ぎるではないかと思われておりまするやさきに、七百五十円程度――一般大衆の使うものでございます。これに五三%かけられるというその理由を承りたいのでございます。私の計算に誤りがあれば直ちに指摘して下さい、ここで計算し直しますから。おわかりにならなければ繊維局長を呼んでいただいてもけっこうです。繊維局長も私の意見は納得しているんですよ。
#236
○稻益政府委員 ただいまお話のございました数字、それぞれの平方メートル当たりの場合の従価の加算額は、私どもの方では、総体的なものを平均した数字しかございませんで、総体的なものを平均いたしますると、三五%ということを申し上げたわけでございます。
#237
○加藤(清)委員 従価税ですよ。と同時に重量につきますよ。どこの平均をとりました。あなたは、そういうことを言うなら、あなたの着ていらっしゃるその服にかかるかかからないか、一ぺんやってごらんなさいよ。第一、二百グラムということになっている。二百グラム以上はかけるということになっているのです。としますると、方メートル二百グラムというのは一体何かというと、オンスに直したら七・一八オンスなんです。そうでしょう。七・一八オンスと申しますと、これはサージの半分の目方ですよ。何にかかります。何だったらかからないのです。しかもこのサージは輸出用のサージです。内地用のサージであったならば、これはポンドづきですから、十六オンスか十五オンスついておりますよ。七オンス以上は全部つくのですよ。一体のがれるものは、毛製品にして何と何があります。平均をとったとおっしゃるけれども、どこの平均をとられたか。
#238
○稻益政府委員 平均と申し上げましたのは、輸入されますもの全体を平均いたしたわけでございます。
#239
○加藤(清)委員 方メートルについて二百グラム以下はかからぬことになっていますね。そうでしょう、これでいくと二百グラム以上はかけるのだから。二百グラム以下という毛製品を、輸入されるものでは私は見たことがないのです。あったらお示し願いたい。もしかりにあるとすれば、それはトロピカルかパーム・ビーチなんです。まあ絹織物に近いようなもののことなんです。毛製品にして方メートル七オンス以下というものがありますか。教えてもらいたい。
#240
○稻益政府委員 現在輸入されておりますものでは、平方メートル当たり二百グラム以下というものはほとんどないわけでございます。
#241
○加藤(清)委員 そうでしょう。お答えの通りです。ということは、全部にひっかかるということなんです。しかも、この結果はどうかというと、目方にかかるのですから、重いものほどよけいにかかるのですね。そうでしょう。そうすると、重いものは下級品なんです。モヘア・ヤーンであるとかアルパカであるとかラクダであるとか、こういうものについては割合にかかり方が少ない。反毛糸というガーネット・マシンにかけた、わかりやすく言うと古綿を打ち直したようなもの、こういうものにはよけいにかかる、こういうことになりますね。というと、私はここでまことに不可思議なことを感ずるのです。およそ税金というものをなぜそんな下級品にたくさんかけて高級品に少なくかけなければならないのか、この意味がわからないのです。
#242
○稻益政府委員 あるいはお答えが適当でないかと思いますが、関税の場合には、物品税と違いまして、負担能力という点だけでかけるわけのものでもないわけであります。そういたしますと、保護関税という建前を貫きます場合に、現在の日本の羊毛工業を調べますると、糸で申しますると二番手、織物で申し上げますと厚手の、いわゆる紡毛製品が日本の場合には非常に競争力が弱くて、コスト高になっておる。現在は、いろいろ輸入の制限その他為替の割当がありまして、そういった日本の羊毛工業に被害を与えるといったようなものを直接防過しておるわけです。毛製品の輸入の自由化ということを前提にいたして考えてみますると、そういう一番ウィークな点を保護する必要があるということから、お説のように、厚手のいわゆる大衆向きと申しますか、そういったものに逆に重い関税が課されます結果になっておるわけであります。趣旨はどこまでもそういう国内産業で一番弱い面を保護していく、必要最小限度で保護するという趣旨で設定されておるわけであります。
#243
○加藤(清)委員 あなたは業界の実態をお調べになったことがございますか。
#244
○稻益政府委員 私の方でも聞いておりますが、大体今回の関税率改正については、あるいは通常の場合にもそうでありますが、直接それを所掌しております通産省方面、繊維局でどういう見方をしておるか、そういう点も十分織り込みまして検討いたしたわけであります。
#245
○加藤(清)委員 繊維局の意見あるいは通商局の意見、現在はほかの局長になっておりますけれども、もとの繊維局長等々の意見がおそらくあなたの耳に入ってこうなったのだろうと思っておりますけれども、その原因は何かというたら、これはほんの生産業界の一部の意見なんですよ。なるほどそれは、あなたのおっしゃる通り、今日の毛製品業界におきましては、梳毛製品を扱っているのは強い。紡毛製品を扱っているのは弱い。つまり目方の軽い方は強くなっている。目方の重いものを作っている方は弱い。しかし、はたしてこれが、輸入が自由化になったからというて、紡毛製品が殺到しますか。どこから殺到するのですか。日本へ殺到するとお思いですか。ただで来るのじゃございませんよ。特にこれは柄物、季節物なんですよ。重いものはみんなオーバー生地なんですよ。こんなものを勝手に輸入できるとお思いでございますか。これは業界を知らざるもはなはだしいといわざるを得ない。意見があったらどうぞ。
#246
○稻益政府委員 私ども、この税率を算定いたします際にいろいろ検討いたしましたところでは、ただいま申し上げましたような厚手のものが、イタリアから、自由化されましたときに、輸入される可能性が非常に多いということであります
#247
○加藤(清)委員 はたしてイタリアの趣味と日本の趣味と合致すると思っていらっしゃいますか。なるほどアメリカには殺到しました。それが原因のようだ。アメリカには殺到した。ところが、アメリカは、これは全部既製品にするんです。全部既製品じゃございませんか。日本のはどちらかというと注文洋服にする。しかも会社からただでもらうのじゃない。自分が趣味で買うのです。イタリアでできた趣味と日本の国民が嗜好するところが一致する、そんなばかげたことを考えている流通部門は一つもございません。ただ、あなたたちがこれを行なわれるにあたって、一部業界、あえて名前を伏せますけれども、一部業界の意見を聞いて、流通部門であるとか、貿易部門であるとか、輸出部門の意見は、全部無視されておる。従って、こういう間違いがでてきたわけです。しかも、国民の意見というものは聞いていらっしゃらない。これでも、なお、あなたはあなたの原案が正しいとおっしゃるならば、私は次にこういう質問をしなければなりません。これが発効されると四月一日から変わりますね。そうですか。時期はいつですか。
#248
○稻益政府委員 実施は六月一日の予定であります。
#249
○加藤(清)委員 これが何のために行なわれるかというたら、AA制になる、毛製品が自由化されるからだと、先ほどあなたはおっしゃいましたね。それは間違いですか、間違いでないですか。
#250
○稻益政府委員 今回の関税率の改正作業は、一応自由化を前提として作業をいたしたわけでございます。その意味におきまして、自由化の際にこの程度に上げる必要があるということで考えたわけでございます。
#251
○加藤(清)委員 毛製品のAA制、いわゆる自由化はいつ行なわれますか。
#252
○稻益政府委員 一応三年以内の期間であるという前提であります。
#253
○加藤(清)委員 そうなんです。少なくとも、どんなに早くても計画は三十七年十月以降なんです。私の言うことが間違いだったらぴしゃっと間違いだと言って下さいよ。三十七年の十月から行なうものを、何がゆえにきょう、あす、こんなにずさんなものをこんなに急いで通さなければならないのですか。
#254
○稻益政府委員 ちょっと言葉が足りなかったかと思いますが、今回の関税率改正作業は、全体の全面的な改正でありますので、一応貿易の自由化というものを前提として作業をいたしたわけであります。その関係で、ただいまの毛織物につきましても、その時期においてはこういう率が必要になるであろうということでございまして、現在では、先ほど申し上げましたように、こういうものは輸入もほとんど行なわれておりません。従いまして、直ちにこれが――今はもう外貨割当で一応そういうものが制限されておるわけなのであります。従いまして、自由化と申しましても自由化の時期が、今のところ、政府の自由化の計画におきましては、はっきり、たとえば綿花、羊毛のようにこの四月からというふうにきまっておるものもございますが、多くの物資が非常に漠とした期間で考えられてきておるわけでございます。そういった関係からいたしまして、一応自由化を前提に、日本の産業としてどの程度保護が必要であろうかということを検討いたしたわけでございます。その結果、特に、直ちに自由化しないのに税率を引き上げることは、需要者にとって非常に不当な不利益と申しますか、そういうものがあるといったことにつきましては、暫定措置法でこれを救済しておるわけでございます。毛織物の場合におきましては、お説のように自由化は若干おくれるわけでありますが、これは大勢としましてどの程度おくれることになりますか、あるいは繰り上げになりますか、この点も実はまだ確定的に申し上げることが不可能なような事態でございます。一応現在は外貨割当で規制をしておる、そういうことを前提といたしまして、自由化の際にはこのくらいの税率が必要になるということで、算定をいたしたわけであります。
#255
○加藤(清)委員 今日は外貨割当で規制している。これはあなたのおっしゃった通りなのです。にもかかわらず、法律だけは自由になった場合を想定して改正をして、高い関税をこれにひっかける、こういうことでございますか。それとも、そうではなくして、AA制になったときに初めてこの高い関税率を発動させる、こういうことですか。どっちです。
#256
○稻益政府委員 現在私どもが予定いたしておりますのは、AA制よりも若干早いと思いますが、この六月一日からこの税率は実施いたしたい。ただ問題は、この審議会でもいろいろ議論があったのでございますが、自由化との関連におきまして、今回税率改正を検討いたしました際に、自由化がおくれるから、そういうものはいずれまた来年もあるじゃないか、再来年もあるじゃないかという議論も一部あったわけなんでございますが、これは非常に微妙な問題でございまして、たとえばガットの税率の問題などを考えますと、自由化の際に、自由化はするが、関税を引き上げるというような措置をとりますことは、非常に外国からの抵抗が強いわけなんでございます。そういった点から、この際は、一応大義名分としまして、産業構造の変化に応じて全面的な関税の改正を日本としてはやったのだということでやりまして、それで自由化がある程度早まりましても、それに応ずることができるようにしたい、かような考え方であります。
#257
○加藤(清)委員 答弁は慎重に答えて下さいよ。あなたのおっしゃることそれ自体の中に矛盾を包含している。私は、あとで、そういうお答えならだんだんこまかく聞いていきすが、よろしゅうございますか。このことをすることによって、すでに外国との関係において非常に通商局も繊維局も難渋をいたしておる。すでにイギリスの大使館からは再三にわたってサゼスチョンもあるわけでございます。あなたは、外国の関係を円満にしたいがために今これを行なうとおっしゃいました。しかしながら行なうことそれ自体に矛盾がある。外貨割当の最中から一年半も先だって、高い関税率を外貨割当のものにひっかけていこう、このことはやがて、すでに契約をしておりまする品物についても遺憾ながら減少せざるを得ない、つまり契約を破棄しなければならない原因と相なっておるわけなんです。ここにイギリス政府から日本政府に対して大いなるクレームなり文句をつけられる原因があるわけです。ほんとうは、日本国民としては、かかるやさき、私どもも国内産業を守る立場から、ちょうどアメリカの労働者がやっておるように、イギリスの製品などは失礼ながら裁断いたしません、こういうことまでやりたいぐらいの祖国愛と業界を愛する気持は持っております。これは失礼ながらあなたよりもはるかに長い期間にわたって私は持ち続けておる。にもかかわりませず、このことがやがて輸出振興に阻害を来たしたと相なりましたならば、あなたはどういう責任をとりますか。
#258
○稻益政府委員 ちょっと誤解を招いたかと思うのでありますが、私が申し上げましたのは、一般的にたとえばIMFのコンサルテーションの結果、自由化がだんだんスピードが早まっていく、そういたしますと、ガットの場合でもって輸入制限強化にかかってくるわけであります。そういう際にウェイヴァーを求めるということは、ドイツなりイタリアなりの例に徴しますと、非常に困難なわけでございます。そういうときに、今度は逆に、そのかわりに関税を引き上げて国内産業を保護したいということを申し出ましても、一般的にはそういう場合には外国としては非常に強い抵抗と申しますか、そういうものを示すわけなんでございます。今回は、この関税引き上げと申しますか、改正の法が出ましたあとで、イギリスの方からお説のような何と申しますか、注文が出ておるわけなんでありますが、一般的にそういった考えで今回の関税改正を考えておりまするのと、それから、特にイギリスから出ておるという意味は、むしろ、私どもとしましては、輸入制限の今のワクがあるわけなんです。そのワクに対する非常に強い、何と申しますか拡大の要請がある、これが背景になって出ておるのだ、かように思っております。
#259
○加藤(清)委員 質問に答えていただかないといけない。私も実はイギリス大使館と会いました。会って再三にわたって話をしております。ワクの問題じゃございません。ワクの問題は異動いたしておりません。今回抗議が出てきたのは関税の問題からなんです。たまたま関税の問題とひっかかってワクの問題も話に出ておるだけの話なんです。あなた、原因と結果を逆転させておってはいけません。ここへ臨んで質問する限りにおいては、私も十分とはいえないかもしれぬけれども、ある程度調査をして臨んでおります。従って、あなたの方も私の質問に答えていただきたい。ここをうまくのがれたらあしたは通るのだからと、そういう気持で行政をおやりになるのでしたら、決して輸出振興はできません。毛製品の輸出市場はすべてイギリスとの関連において競争市場でございます。私の質問しているのは、すでにこのことが行なわれておる、関税障壁をべらぼうに高く引き上げ過ぎた、引き上げ過ぎただけでなくて、もっと間違えば、外貨割当がある最中から、このものが自由化されるのであろうという想定のもとに、五〇%も余分にひっかけてくる。ここに問題があるわけなんだ。一年半の長きにわたってここに矛盾があるわけなんです。そこから生ずる日英間のトラブル、その結果生ずる毛製品の輸出不振、これに対してどう責任をとりますかと尋ねておる。
#260
○稻益政府委員 毛製品の輸出の問題となりますと、私ども直接責任と申されましても、これは私どもが責任をとれる問題でもございません。ただ申し上げたいのは、総合的にそういうことも考えまして、国内の保護を必要とする産業とその保護を必要とする程度等十分検討いたしました上で、関係のそういう通商なりあるいは経済外交なり、そういった面の配意を一応加えました上で、関税率審議会でも答申をいただいたような次第であります。私がここでそういう輸出の問題につきまして責任のある答弁を申し上げるということは、差し控えたいと思うのでありますが、そういうすべての考慮が一応関係各省の間で相談もされ、この審議会で議論もされた上で一応答申があったものである、こういうことを申し上げておきたいと思います。
#261
○加藤(清)委員 私はこの際大臣にお尋ねしたいのですが、大臣がいらっしゃらないようですから、次官に伺っておきます。
 すでに、本件に関する限りは、英国の大使館からも、あるいは英国内にある日本の大使館に対して、英国からも大使館としてではなく、英国として抗議が再三にわたって行なわれております。この状況から見まして、なぜそうなるかと言う必要はもうないでしょう。なぜかなれば、輸入毛製品は主としてイギリスからだからであります。ところが、先ほど税関部長の答弁によると、イタリアが殺到するからこういうものをかけたというお話です。ところが、二百グラム以上は全部税金をかける、五〇%、六〇%ふやすということに相なりますと、これはイギリスから輸入されるものに多くかけられる、こういうことになるわけだ。そこでイギリス政府もこれはほうっておけないということで、抗議がきているわけでございますけれども、英国並びに英連邦の対日輸入に対して報復手段がとられるであろうことは、あの抗議からしても明らかなことだと思います。その結果、日本の毛製品のみならず、英連邦諸国に対する輸入に対して報復手段がとられた場合に、さなにきだに赤字が続いているところの日本貿易は、一そう難渋しなければならぬと思うのでございます。この点について次官の御所見を承りたいのでございます。
#262
○大久保政府委員 お尋ねの点はごもっともと存ずる次第でございますが、本法を提案するにあたりましても、政府部内におきましても、関係省とは十分協議をいたした次第でございまするし、またイギリスからの日本に対する抗議に対しましては、ただいま外務省の出先を通じまして、日本の立場を十分了解していただきますように交渉をいたしておる次第でございます。お尋ねのありました日本に対する悪影響が極力かからないように、今後とも努力いたしたいと考えております。
#263
○加藤(清)委員 ただいま次官のお答えの通りでございます。それは正しい答えです。日本の外交機関を通じ、通産省を通じてただいま了解の取りつけを折衝中でございます。その通りでございます。そのやさきに――了解が成立をしておれば問題はございません。していない今日、これを一方的に押し通すということはいかがなものかと存じまするが、これについて次官はどうお考えでございますか。
#264
○大久保政府委員 外交交渉のことではございまするけれども、わが方といたしましても誠意を持って交渉いたしておりますので、イギリス側の了解を得るもの、かように判断をいたしておる次第であります。
#265
○加藤(清)委員 交渉をやっている最中に――これではいけませんという抗議が来ているのです。その抗議を納得させるための交渉をやっている最中に、片方を押し通してしまったら、あとどうやって了解をつけるんです。つけられますか。もしつけられるとおっしゃるなら、あすこの法案が通る前に、イギリスの大使館へあなたと私と一緒に行ってみましょうか。私は、個人的な立場において、再三にわたって交渉しております。それは、日本の業界を愛し、日本の輸出振興を念願し、と同時に海外市場においてイギリスと競合するところの毛製品なるがゆえにでございます。あなたが了解を取りつけるとおっしゃるなら、あなたとおそろいであすイギリスの大使館に出向きましょうか。取りつけられますか。
#266
○平岡委員 議事進行。
 バルク・ラインだかバルク・グループだか知らぬけれども、全体的に見てこの関税定率法は早期に発足させるという趣旨であった。その反面には、具体的な問題としてはかなり問題があるかもしらぬということは、暗に御容認ではないかと思います。ただいま加藤さんから提起された事案だけを見ましても、あなたの言う三五%が平均なんだということは、計算しますと千百三十円ということになりますね。千百三十円のもののアベレージなら三五%。ところで、実際にイギリスから入るものは、それ以下の比較的安いものが入るのですから、パーセンテージとすれば三五%をはるかに上回るという実情です。つまりイギリス製品に対して関税障壁を日本がかまえ過ぎるのです。そういうことから報復関税が予想せられるというこの実際の見通しを加藤さんは言われておる。そこで、このアイテムだけの検討もできるのならば、これは法案通過の前に是正する必要がある。なおかかる矛盾撞着のある関税率が全豹の一斑を示すものであるとするならば、われわれはそう急に関税三法を拙速主義をもって通す必要もないと思うのです。通すとか通さぬとかいって意地悪を言っているのではなくて、もう少しやる必要があると思いますね。そこで、委員長、少なくともこの現実に出てきているアイテムに対して、これだけでもあした少し具体的に、通産省の繊維局なり何なり関係者も呼んで、ちょっとやったらどうですか。そして直せるものなら直していく。具体的な問題として提起されて、そしてイギリスの報復関税というようなことが予想されるようなことは、出発点においてやはり是正していった方がいいように思うのですが、その辺のところを一つ広い視野からお取り上げ願いたいと思います。
#267
○足立委員長 ただいまの平岡委員の動議でございますが、あす通産、外務両省の関係者に出席を求めまして、御発言の点を明確にいたしたいと考えております。
#268
○安井(吉)委員 資料要求で……。あした十分に一つ一つの細部に入る時間がないかもしれませんので、二つばかり資料をお願いしたいと思います。
 一つは、最近年度の関税徴収実績。それは九百何品目従来のものでもあるのですから、一つ一つといったら大へんですから、適当な分類でお調べをいただきたい。それから、第二番目は、輸入減免税額です。それもいろいろな減免の種類があると思いますから、その項目別に。特にMSAの関係だとか、駐留軍関係だとか、それから主食の関係だとか、そういったたくさんの項目があると思いますので、項目別に一つ調べていただきたいと思います。その二つをお願いいたします。
#269
○足立委員長 ただいま御要求になりました資料は、明朝までに用意ができるそうでありますから、御了承いただきます。
#270
○加藤(清)委員 ぜひこの際、外務省それから通産省も特に繊維局あるいは通商局の責任者に出席していただきまして、そして審議を進めることが、最も妥当な結論を得ることだ、公正な結論を得ることだ、かように思っておる次第でございます。本件に関しては、通商局、繊維局とはすでに再三にわたって話し合いを進めておりますが、特にイギリス関係に詳しいただいまの繊維局長、これはついこの間イギリスから帰ってきたばかりですから、そして帰ってきたといっても、三年も向こうにおって帰ってきたのです。それでこれは非常に困っておる。ただあすとおっしゃられますと問題があるわけなんです。これはちょっと速記をやめていただけませんか。
#271
○足立委員長 速記をやめて下さい。
  〔速記中止〕
#272
○足立委員長 速記を始めて下さい。
#273
○加藤(清)委員 それでは、次に、明日論議されるであろうところの問題について、一応申し上げておかなければならぬことがございます。それは、通産省繊維局が本件に関して誤解をしておる点がございますので、その点だけ申し上げます。
 それは、私の考えからすれば、関税障壁を設けることは、単純に考えればあたかも国内同業産業を保護するがごとき印象を与えるのでございますけれども、これは木を見て森を見ざるのたぐいでございまして、このことは、やがて、国内産業と申しますよりも、国内物価を高騰させると同時に、非常に輸出を難渋させる結果が招来されるのでございます。それで、その点について質問をいたしたいと存じまするが、通産省繊維局は、このぐらいの関税は輸入毛製品の利幅が非常に多いので、そこへ消化され、埋没してしまって、小売価格には影響がない、こういう考え方でございます。全員ではございませんけれども、一部そういう考え方を持っておる人がございます。繊維局長はこれに対してはどっちかわからぬというところらしい。しかし、あすはわからぬとは言えぬから、私の言った前者をとられるでございましょう。そこで、私は申し上げておかなければなりませんが、私が調査というよりも体験から考えてみますると、これは必ず小売価格に影響がくるといわざるを得ないのでございます。なぜかならば、インポーターと卸との関係におきましては契約が行なわれております。ことし取引されるものは、去年契約が行なわれております。一年前かどんなに短くても半年前には行なわれます。それは、イギリス毛製品を注文する場合には、でき合いを買ってくるのではないからでございます。一年前に注文、生産をするわけでございます。その結果、その契約内客の中に、もし関税が上ったならば、これは問屋持ち、関税その他の間接関係が下がったならば、これは値引きする、こういう取引関係があるのでございます。繊維局はそこまで調査いたしておりません。従いまして、関税が上がった場合には、必ずこれは問屋値段を上げる結果になるのでございます。このことはやがて小売価格を一そうつり上げることになるわけでございます。しかも、今度の現行に対する改正増加率を調べてみますると、最初申し上げました七百五十円のものについては、一六五%増になるわけでございます。それから、あなたがおっしゃいました中間の三二%のものにしても、なお六〇%の増加率を示すわけでございます。もうほとんどかからないであろうと思われておりますもの、つまりずっと軽い高級なものにしましても、四〇%の増加率に相なるわけでございます。これが小売価格に影響を及ぼさぬとは、どんなくろうとでも言えないことでございまして、過去の業界流通部門の経験からいけば、これは小売価格に影響があるのが当然でございます。
 そこで、輸入毛製品の小売価格が高くなるということは、どういう連鎖反応を及ぼすかと申しますれば、過去におきましては、国内でできた毛製品の販売価格をつり上げる作用をいたしておるのでございます。そこで、その結果、今日でも材料は豪州の七七Bにして、八十ペンスあるいは八十五ペンスのものが日本へ参りまして加工されますと――加工賃はイギリスよりは安いのでございます。なぜかならば、労賃が四分の一以下だからでございます。高いのは燃料だけでございます。機械はほとんどは日本製品で行なわれ、日本のパテントがイギリスでまでとられておるという状況でございます。にもかかわりませず、この毛製品の値段が、紡績から三品市場に出ますと、イギリスにおいてはポンドはポンドということでございます。一ポンドは千円でございます。ところが、内地の毛製品は、ポンドが安くなったと申しましても千三百円でございます。自由化の声に驚いて千三百円になりましたが、これが自由化の声がなかったときには、二千円もしておったものでございます。そこで、施政方針演説の質問に対する池田首相の答弁に、二千円のものが千三百円になったものだから、これで物価は下がったのだと言って、下がった例にとられたわけでございますが、下がるのがあたりまえの話でございます。これは後に予算分科会におきまして私が質問いたしましたのに対して、通産大臣も経企庁の長官も、ごもっともな話だから今後一そうこれについては努力をすると言うておられるのでございます。ところで、これが輸出が難渋する原因に相なっていたのでございます。なぜかならば、二千円に売れるものを、何が悲しうて難儀をして外国に千円前後で出さなければならないか、こういうことになる。外国市場においてはイギリスと競争するのでございますから、これは出血輸出ということになるし、輸出意欲を減退させ、中には輸出すると称して羽田の飛行場やあるいは名古屋港から、あるいは香港から逆戻りをして内地売りにされて、これが高く売りつけられていたのでございます。つまり内地のコスト高はやがて輸出を難渋にさせる結果を生じていたのが過去の実態でございます。これがやがて昭和三十七年十月以降においては自由化される。そうすれば、これが柄の点におきましても、組織の点におきましても、あるいは値段の点におきましても、内地に影響を及ぼしてくる。これは温室育ちではいけない、一人前になりなさいという政府の方針に合致するところだった。と同時に、国内の消費物資を引き下げる原因になるというので、流通部門においては歓迎をされていた。ところが、ここで大きいものが一六五%から一二五%も関税が増加されることは、やがてイギリス製品を国内においては高く売るということになる。このことはやがて内地の毛製品を高くすることになり、その結果輸出は難渋するのでございます。ところが、出血輸出と称しましても、過去におきましては、自由化でないがゆえに報奨制度がございました。その結果、報奨、ボーナスに魅力を感じた業者は、難渋しつつも輸出開拓をしていたわけであります。ところが、今度の自由化はやがてその報奨制度もなくなるわけだ。そうなりました場合に、はたして輸出ができるかできないかという問題だ。内地の値段に悪影響を及ぼすか及ぼさないかということに相なりますると、これはもう私が答えるまでもないと思います。これについて大臣の名代の次官の御所見を承りたい。
#274
○大久保政府委員 加藤さんの御質問は非常に広範なる関連政治部門を持っておりまして、大蔵省といたしましても、国内物価の影響ということは極力防止いたしたいと存じておるのでございますが、明日委員長の御裁断によりまして、通産省関係も本委員会に参るわけでございますから、明日全部そろいまして加藤委員の御質問にお答えをいたしたい、かように存ずる次第でございます
#275
○足立委員長 なお、委員長より大蔵省当局に申し上げますが、ただいまの加藤委員の御意見はなるべく詳細に通産当局に大蔵省から事前にお伝え願いまして、その趣旨をくんで明日通産省から答弁あらんことを要請いたします。
 次会は明二十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
  午後六時五十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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