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1960/05/18 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 商工委員会割賦販売法案審査小委員会 第3号
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1960/05/18 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 商工委員会割賦販売法案審査小委員会 第3号

#1
第038回国会 商工委員会割賦販売法案審査小委員会 第3号
昭和三十六年五月十八日(木曜日)
   午後零時四十三分開議
 出席小委員
   小委員長 岡本  茂君
      岡崎 英城君    笹本 一雄君
      首藤 新八君    板川 正吾君
      中村 重光君    春日 一幸君
 出席政府委員
        通商産業事務官
        (企業局長)  松尾 金藏君
 小委員外の出席者
        通商産業事務官
        (企業局次長) 伊藤 三郎君
        通商産業事務官
        (企業局商務
        課    長) 斎藤 太一君
    ―――――――――――――
五月十八日
 小委員大矢省三君同月十七日委員辞任につき、
 その補欠として春日一幸君が委員長の指名で小
 委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 割賦販売法案(内閣提出第四〇号)
#2
○岡本(茂)小委員長 これより割賦販売法案審査小委員会を開会いたします。
 都合により暫時休憩いたします。
   午後零時四十四分休憩
     ――――◇―――――
   午後三時二十三分開議
#3
○岡本(茂)小委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 割賦販売法案を議題とし質疑を続行いたします。中村重光君。
#4
○中村(重)小委員 弟七条の所有権の留保に関する推定でお尋ねします。先般の委員会でもこの問題に対しては触れたのですが、所有権の留保の推定というのは、これも訓示規定になっておるようでありますから、特約というものが販売者側と購入者側の間に推定をしないというようなことが行なわれるということになりますれば、もちろんこの留保の推定というものは効果がない、こういうことになると思うのですが、 この留保の推定ということは法的根処というものにもいささか疑問があるわけです。これは合法であり、合法でないというようないろいろな学説もあるということでありますし、また実際問題としても効果というのはきわめて薄いのじゃなかろうか、そういう感じがするわけですが、これに対する局長の法的な見解、また現実の問題としてこういうことがどれほどの効果というものを現わすという考え方を持っておられるのか、まずその点を一つ詳しく聞かしてもらいたいと思います。
#5
○松尾政府委員 所有権の留保の推定規定は、今お話がございましたように、文字通り推定規定でございますから、当事者間に特別のことがなかった場合、そうして現実に何かトラブルがあった際に、一応第七条の規定によりまして、販売業者の方に所有権が推定されますので、その場合にそれを否定しようと思えば、購入者の方でその反対の立証をしなければならぬ、法律の形ではそういうことに相なると思います。従来の実情では、御承知のように、現在行なわれております割賦販売の約款で、かなりあるいは相当程度、所有権留保の約款を入れておるものが多いわけであります。そういう意味から言いますと、すでに約款でそこをうたっておるならば、しいてそれ以上のことを法律でおせっかいしなくてもいいではないかということも考えられるのでありますけれども、私どももその点は検討いたしたのでありますが、実際には、場合によりますと契約書を全然作成していない、あるいは契約書の中に所有権留保の規定を入れていないものも若干ございます。そういう場合にむしろいろいろなトラブルが起こりやすい、またその起こった際の念のための規定と申しますか、としてこの第七条を用意することが適当であろう、こういうことでこの推定規定を入れたわけであります。従いましてこの規定が常にその効果を発揮するとは思いませんが、全体のこの法律が売り主、買い主間のいわゆる調整を主にして、このほかの規定は大部分が消費者保護の規定でございますが、売り主の側におきましても、万一よく事例にありますような悪意の購入者がおって、そのために思わざる損失を売り主側にこうむらせますれば、それがひいては善良な消費者に回り回って迷惑をかけるというこがないようにという意味の調整規定として、この第七条の推定規定を用意したわけでございます。
#6
○中村(重)小委員 この所有権留保の推定の規定を入れていない場合に非常にトラブルが多いのだ、こういう御説明だったのですが、これは観念的じゃなしに、実際に局長がその体験の中から申すことは商売へでないあなたに対しては御無理ですが、いろいろな意見を聞いてそのようにお考えになっておられると思いますが、何かの統計からそういう判断しておられるわけですか。
#7
○松尾政府委員 この問題について特にそういうトラブルがどのくらいあってというような統計はおそらくないと思います。私どももそういう意味で、この推定規程を入れるというようなことではなかったのでありますが、現実問題としてい今申し上げましたようなことが起こり得る――あるいは観念的ということになるかもしれませんが、この法律が全体として起こり得るようなトラブルをできるだけ防ぐ、法律的にはおのずから限界がありますけれども、できるだけそういう気持で立案されておりますので、統計上どうこうということではございませんが、こういう推定規定を用意しておくことが適当ではなかろうかということであります。
#8
○中村(重)小委員 今局長の御答弁の中に非常に観念的だというふうに思われることは、売り主と買い主との間にトラブルが起こる。そういうことが焦げつきであるとか、あるいはいろいろな形において売り主の損害がかさんできた。そういうことが回り回って善良な買い主の負担がそれだけ大きくなってくるのだ。こういうことなのです。それは私もそのこと自体は認めます。結局それだけ利益がない。損害を売り主の方がこうむってきたことになると、何らかの形で売り主は事業の経営をやっていかなければなりませんから、やはり二割の利をかける場合には二割三分なり二割五分の荒利をかけていかなければならぬ。こういうことになってくるわけです。しかしそういうことと実際に物の売買と、こういう形で所有権が留保することが常識であるものを、所有権の留保の推定をしておくことが、そうしたトラブルを残さないことになるのだという一面解釈だけで、この所有権留保の推定をするということには無理が出るのだ。またそうした売り主に対するところの損害が生じてくる。ことは、所有権の留保の推定ということのみからとるのではなしに、実際は業者が信用調査の問題だとか、あるいは業務運営上の拙劣の問題であるとか、いろいろな面からそういう形が出てくると思う。ですからこの種の法律をお作りになるときに、あまり無理なことも何かひっかけて作っておったならばいいだろう、そういうことであまり無理な形で法律を作っていくことは、かえって逆効果が生まれてくるのではなかろうか、私はこう思う。それで実際問題として私は申し上げますが、こういう所有権留保の推定をしておくことは、売り主の方ではこの当該の品物は自分の方にあるのだ、購入者側の方に移っておらぬのだ。こういうことで購入者側の心理的な関係を利用してその焦げつきを少なくしていこう、こういういうことを効果としてはねらうと思うのですが、反面それは売り主の側に対して非常な信用調査の欠陥という形が生まれてくる。この品物は所有権の留保をしているのだから、まさかのときはこれを引き上げるのだ。販売者はこういう心理的なものがあるわけです。そういう場合には信用調査もおろそかになる。そうして簡単に物を売るという形が出てくる。そこで売上高はかさんで参ります。これに反比例して、先ほどあなたの御説明のようないろいろなトラブルが起こってくる。そういうことがむしろ焦げつきとかなんとかという形のものを大きく出して、その結果が善良な販売者に対して迷惑をかけることが起こってくる。ですから今あなたがこの所有権留保の推定という形で考え方としてお述べになりましたことは、実際の効果としては逆の結果が生まれてくるのだ。そういうことでなしに、むしろ売るときにこの品物は売ったのだ、所有権はここで移ったのだ、自分は売掛代金の回収をしていかなければならないのだ。従ってこの回収がスムーズに行なわれるように十分な調査等もやっていかなければならない。こういう考え方の上にこそ問額が起こるのが未然に防止される。売り上げ成績はいわゆる優秀な形において伸びてくる。そう思う。またそうすることが法的にも疑義が起こってこないし、そういうすなおな法を制定していく、そういう条文を作っていくことが、私は一番大事な点ではなかろうか、こう思う。そういう点はどうですか。
#9
○松尾政府委員 今お話のございました点は、実際の割賦販売が行なわれました場合の実情がものをいうと思いますが、売り主の側におきましてはおそらく割賦販売を、やって最終的には所有権が自分の方に留保されているから、いざという場合には取り返しができるからというような、そういう安易な考えで信用調査を怠ったり云々ということは、私はどうもそういうことではないと思います。と申しますのは、なぜかと申しますと、実際にはたとい所有権留保の取り返しをいたしましても、一たん販売されればその品物は当然いわゆる中古品になるわけであります。売り主の一番願っておりますのは品物を取り戻すことではなくて、代金回収を円滑にやって要するに割賦で物を売るということにあるのでありますから、所有権留保のことが売り主側の不安な売り方を助成するだろうということは、私はそういうことはあまりならないだろうと思いますけれども、かりに売り主が所有権留保の規定のゆえに、安易な物の売り方をいたしますと、所有権留保の規定があるからといって実際に物を取り返すということにつきましては、もちろんそれは法律の規定によりまして所有権は自分のものであるからということの強味もありますけれども、品物を取り返すこと自体にも、かりに相手の買い主がいわゆる善良な者でない場合には、所有権留保の規定だけで安易に物を売っていいほどの十分な保護であると考えられないのではないかと思います。もともとこの所有権留保の規定の一番効果がありそうだと思われますのは、非常に悪意の買い主が物を受け取って代金を、頭金その他若干のものを払ってすぐに転売をしたりその他やるいわゆる詐欺的な問題がしばしば起こっておると思います。その場合に所有権留保の規定が法律で明らかにされておりますと、その場合には当然横領その他の刑法の規定が働いてくるということが法律上明権でありますので、そういう悪質の買い主に対する保護ということが、この所有権留保の規定の一番のねらいでありまして、代金の支払いが滞って云々という場合には、所有権留保の規定云々よりは前にございます契約解除の手続を踏んで、順次物を取り返すということに相なるわけであります。そういうことから考えますと最悪の場合に、この規定が効果を発揮することがあるという、そういう用意の規定をここに掲げた次第でございます。
#10
○中村(重)小委員 今の局長が御説明になった非常に悪質な購入者があるのだ、いわゆる詐欺的なもの、そういうものは所有権留保の推定というような形で救済されるのではなしに、取り込み詐欺ということで当然これは刑罰に触れるのです。ですからそういう悪質なものを対象として所有権留保の推定をされるというならば、これは少数な悪質者のためにむしろ善良な買い主の心理的なものに非常に影響を与えてくると思うのです。そういう面から所有権留保の推をお定考えになったとするならば、これは当を得ていないのではないかと思う。とにかく売り主と買い主との関係というのは、割賦販売によって実質的に所有権は移転するわけです。そのことはお認めになるでしょう。どうですか、いわゆる貸借関係はなくなるということです。
#11
○松尾政府委員 動産の場合に売買契約が行なわれますれば、その場合に代金債務が完了しなくても所有権は動産でありますから、物の占有が移れば同時に所有権も移るのではないか、従来の法律解釈としてはそういうふうに言われておるようでありますが、従来私どもの調べました範囲では、その点は必ずしも解釈が統一していないようであります。これは私どものたまたま調べました例によりましても、所有権留保の規定を置いておるのは  これはむしろそういうものがなくても、代金債務が済むまでは販売者の方に所有権は常に留保されておるのであって、そういう所有権留保の約款は、ただ購入者に代金支払いを促す意味の単なる例文にすぎない、そういう判例もあるようであります。そういうことから見ますと、この点は法律解釈としては必ずしも統一されていないと思いますが、常識的には普通所有権は代金債務が済んでいなくても購入者の方に移るというふうに言われております。解釈上必ずしもはっきりしたものがございませんだけに、トラブルの場合を想定をして、特約がなければ最終的にはこの推定規定がありますよという意味の、万一に備えての意味であり映す。
#12
○中村(重)小委員 全く今の御答弁の通りだと思うのです。法的根拠もきわめて希薄である。ただ従来の例として、割賦販売が行なわれたときに特約というのがある。そして所有権留保の推定というものがその特約の中に入っている。そういうものでないものもあるということですね。その売り主と買い主との間に契約が行なわれた、それは法的にも常識的にも妥当だというようには、おそらく政府としてもお考えになっておられないと私は思うのです。契約の中に非常に過酷なものがあるから、取引秩序の公正をはかるためのこういう法律をお作りになり、そしてこれに反するようないろいろな特約があっても、それは無効として否定をしていくということですね、この説明の中になされているのは。だから、今まで一つの例として行なわれてきたことは、これが正しいのだという考え方の上にお立ちになっておられないと、――まあそれは正しいものもありましようけれども、正しくないものも非常に多い。であるならば、従来やっておったからこれはやはり推定という形をとっていくのだというお考え方は、私は正しくないと思うのです。それで、確かに売買された代金の支払いが完了しない場合でも、その所有権は移っていったという見方が常識的であり、また法の建前からいってもそうだというお考え方であるならば、やはりそういうふうな法律を作っていく。そして売り主を救済することは、諸外国の例を見てもいろいろあると思います。いわゆる当該物品を担保に提供する、そしてこれが遅滞したならば直ちに契約の解除をやる、そして取り戻し権を発動してこの品物を取り戻す、こういうような効済の方法もあるわけなんです。これはアメリカにおいても、ドイツにおいても、その他の欧米諸国においてもそういうことが行なわれてきている。ただ所有権の留保の推定をやっているのはイギリスにすぎません。しかしこのイギリスでも選択権付の賃貸借法という法律があるわけですよ。ところが、今あなたの方でお作りになったこの法案の中には、そういう賃貸借的な形をおとりになっておられない。売買という形式をお取りになりながら、ただ所有権だけを留保する、こういうことをやろうとしておる。ここに私は問題があると思う。どうですか、これを貸借関係というふうに解釈しておられるのですか。
#13
○松尾政府委員 もちろん貸借関係ではございません。文字通り売買契約でございます。
 それから今お話の中で、現在行なわれておるいろいろな取引慣行、約款、そういうものの中で消費者のために不利なものを直そうというのが、この法律のおもなねらいではないかという御意見だと思いますが、私の申しておるのもその通りでございます。ほかの条文も、現在行なわれておる大部分の慣行、約款の中でも、消費者のためにあまり不利なものは直すという意味もあるのでありますが、しかし所有権留保は、これは先ほども申しましたが、大部分の場合に約款がありますから、一応取引慣行の相当部分を占めておると思いますが、この部分につきましては、もともとこの割賦販売の目的が、買い主の方は物を買って手に入れる、それに対して代金を払う、売り主の方は物を売って代金を取るということが割賦販売本来の契約当事者双方の一番望むところであるわけであります。従いましてそういう契約の両当事者が一番望むところに従って判断いたしますと、売り主の方に所有権が留保されておりましても、実際上要するに契約解除とかなんとかいうことを望むのでない限りは、この所有権留保の規定を売り主が不当に乱用して品物を取り返そうとかいうふうになるはずはない。むしろこれによって本来の目的通り、買い主の方も品物を取ると同時に代金を払うということを、よけいはっきり自分の方でも考えるであろうということで、この慣行に関する限りは、両当事者間の意思に反して、特に買い主をいじめるというようなことにはならないだろうというのが、私どもの現在まで考えておるところでございます。
#14
○中村(重)小委員 今のような考え方から、この法律の所有権留保ということを考えたのだとおっしゃるのですが、私は法律というのはやはり合理的な組み立て方でないといけないと思うのです。所有権留保の推定をなさるならば、これは英国式の選択権付賃貸借法という形式で、やはり一応そういう契約を踏まして、それが履行されない場合に初めて品物を取り返し、そしてこれは賃貸借にして初めて使用料というものがあるのですからその使用料を払わせる、そういう形式をおとりにならなければ、アメリカであるとかドイツであるとかスイスであるとかその他の諸国でやっているように、売買と同時に所有権も直ちに相手方に移る、それと同時に販売者側を守るためのいわゆる担保形式の権利を留保しておいて、そしてこれを実行していく、こういうような法律をやはり合理的にすなおな形でお作りにならぬと――あなたの今のお考え方は、何かひっかかりをつけてそれが心理的に効果があってそして問題が起こらないでいくだろう、こういうことは個人対個人の場合にはわかりますけれども、少なくとも法律という形でいく以上は、私はただいまの御説明は妥当でないのじゃないか、そう思うのです。だからして、割賦販売が非常に進んでおる欧米諸国の販売法を見ましても、私がただいま申し上げておるような形の法律ができ上がっておるのです。そのいずれもおとりにならないで、今この種の法律をお出しになる。ちょうどそのまん中をいったのが非常に合法的であればよろしいのですけれども、非常に無理がありますから、これは私どもは審議をする上に法的にもどうだろうか、あるいは実際上もどの程度の効果があるだろうかということも、大して期待できないものを、無理してこれを認めるということは、どうしてもできないと私は思うのです。
 そこでお尋ねするわけですが、今あなたは、非常に悪質な購入者があった場合には、横領罪とかなんとかに問われるのだ、こういうことをおっしゃったのですが、それは私が申し上げたように、そういう悪質な者は取り込み詐欺という形において処罰される、刑法に触れるのだ、それはお認めになると思うのです。そこでそういう悪質な人でない購入者、そういう人はたまたま自分が物を買ったという考え方を持っていますから、その品物はどうも自分は好きじゃない、あるいはどうも不要になった、こういう考え方で人に物を売ってしまった。これは決して横領罪にならないのです。払うという意思があった以上、犯罪にならないのです。そういう犯罪は意思によって構成するのです。ですから、今あなたがお考えになっていらっしゃる横領罪という形が必ず起こってくるのだから、それによって守られるのだということは、私は決してそういう形にはならぬと思う。
 それから今度は、その品物を買う人、その人が売る人間とぐるになって物を売買しておらない以上は、これは善意無過失で、第三者が購入者からその品物を買った場合は、この品物は取り返しはきかないのですよ。そうでしょう。それはお認めになるでしょう。
#15
○松尾政府委員 その通りです。
#16
○中村(重)小委員 それならば、この法律によって、どこに販売者が保護され、その利益を守られるという道がございますか。少なくともそういう悪質な人間はちゃんと心得ていますから、自分が罪になるような、私は悪意でこの品物を売ったのですと言う人はおりません。いや、私は払う気持でした、こう言って、必ず言いのがれをする。ですからこれは法難上から言っても無理があるし、また実際上、法的な形においてそういうトラブルが起こらないように抑えていこう、こういう考え方を持っているとしても、その効果はない。むしろ私が冒頭に申し上げた、売り主の心理的なものがわざわいをしてくる。この品物はとるのだという予定を初めからして、物を売る者はございません。今言われたように、品物は売った、売ったけれども払わないときは取り戻しがきく、この所有権の留保というものはしてあるのだからということは、人間である以上、そういう心理は動きます。そういう心理の動き一は、物を売る場合、どうしても軽卒になって参ります。そうすると、その販売高が非常に増して参りまして、業績は上がって参りますけれども、これに反非礼して、そうした問題が起こってくる、こういう形が出て参ります。
 それからもう一つ非常に大事なことは、物を取り返す場合の自力救済の問題なんです所有権は留保されているのだ、相手はどうしても払わない、この品物は取り返さなければならぬ、こういう最悪の事態が必ず起こって参ります。そういうときに、取りに行ったら相手が渡さない。そこで主人だけが行けばいいのですが、番頭さんなんか、あの品物を取り返してこいと主人に言われると、これは取り返してこなければ、帰ったら主人からしかられるのだというので、相当無理をして取り返そうとする。相手はやるまいとする。そこで実力の行使というものがそこに起こってくる。非常に社会問題になるという危険性すら出てくるのですよ。そういうことが一つ問題です。
 それからもう一つは、取りに行った場合に主人はいなかった。奥さんとか子供がおった。そういう場合、にこういう契約もあるのだ、これは法律上こういうことになっているのだと、いろいろとその奥さんに言って、この品物は当然取り返すのだ、こういうので有無を言わせずに物を取り返してくる。そうすると、そこにまた問題が起こって参ります。その家庭内にも、何とも言えないような陰惨な問題も起こって参ります。ですから、こういう所有権の留保の推定というのを、何か観念的に、購入者側が、これは自分のものじゃない、払うまでは販売者側のものだからというような、そういう心理的な効果があるのだという、そういうことだけお考えになって、こうした無理な法律をお作りになると、いろいろ問題が起こって参ります。百害あって一利なし、極端に申し上げると私はそう考えております。そういう点はどうなんですか。
#17
○松尾政府委員 今の取り返し云々の、最後にお話のあった点でございますが、これは現在割賦販売に従事している人たちが、いわばいずれも割賦販売の商人でありますから、たとい所有権が留保されておっても、何も他人の家にみだりに立ち入って取り戻す権利があるわけではございません。従いましてそういうことは、悪質の購入者との間にトラブルがある場合は別といたしまして、通常の場合に、いわゆる割賦販売業者が、所有権留保の規定を振りかざして、お客さんのうちへ立ち入って、物を取り返すというようなことをもしやりますれば、それ体がいわゆる家宅侵入の問題になりますから、そういう点は割賦販売業者は、十分心得て現在もやっておると思います。従いまして、そういう事態に対して所有権留保の推定規定云々ということじゃなくて、やはり先ほどから申しておりますように、通常の契約約款にない場合に、もしトラブルがあれば、いやそれは通常約款にある場合と同じように、やはり所有権は留保されているのだということで、できるだけトラブルを防ぎたいということにとどまるのでありまして、現実にこれで取り戻し権の行使とかいうような問題は、 この法律の効果から必ずしも出て参りませんし、割賦販売業者も商人である以上は、その辺はよく心得ているはずであります。
#18
○中村(重)小委員 悪質な者なら別だけれども、こうおっしゃるわけですが、所有権留保の推定をしたという、この効果を発揮するのは、これは相手方が金を払わないという際品物を取り戻す、こういう最悪の事態のみしか効果は現われてこない。いわゆる善良な人ということになりますか、そういう人に対する心理的な効果は、物を担保にしたというすなおな形だけでも効果はあるのですすよ。何も所有権留保の推定というような形でなくて、法的にも無理がない、常識的にも少しも無理かないという、いわゆる買った品物は担保になっている、お金を払わなければ、この品物は当然返さなければならぬのだ。このことが善良なる人の心理的効果は十分ですよ。私はそれを申し上げるのですよ。トラブルが刑事事件とかいうような形で発展しなくとも、要するに民事の問題は民事で解決するような、そういうすなおな法律を作っておく方がいいのだ、こう申し上げている。これは皆さんもおお聞きでございますし、また懇談の機会もございますから、 十分あとでお話し合いをいたしまして、この問題に対しては、私の言うのが間違っている、無理があるということであるならば、これは原案の通りなると思いますけれども、あとで話し合いをして、この問題に対しては、適当な、修正なら修正という形にいたしたいと思います。
#19
○笹本小委員 今局長より答弁があった、これによってトラブルが起きた例がたくさんありますか。今のような問題で、今までの割賦販売の実績の上に……。
#20
○松尾政府委員 具体的な場合の統計資料かあるわけではございませんが、割賦販売について、代金支払い、あるいはものの取り返しというようなことで、従来にもそういう例がしばしばあるということは聞いておりますが、特別の統計資料的なものはございません。
#21
○笹本小委員 これは販売上の契約はどういうことになっていますか。これは規則があっても、やはり月賦販売者と購入者との間に契約があるわけでしょう。この契約がこれを裏づけているのだが、これは最悪の場合の規定であって、その間に両方で納得いくなら契約があるでしょうが、そういうような何か参考になるものはありませんか。
#22
○松尾政府委員 契約款約に、所有権を留保するというのがあるのが大部分の場合でございます。必ずしも契約書をかわさない場合もありますし、それから、まれには約款ない場合もあり得るわけであります。
#23
○中村(重)小委員 先ほど小委員長にお断わりいたしましたように、実はきょうずぶんいろいろな会がつかえて、おりますので、これで打ち切らしてもらいたいと思います。
#24
○岡崎小委員 私、実は順序不同になるかもしれませんが、三十条の各章の件について二、三お尋ねしたいのですが、この商工委員会調査室から出したあれにもある昭和三十五年の二月一日に産業合理化審議会の流通部会で出した「割賦販売に関する取引秩序法の作成について」という答申案の中に、「チケットの譲渡および質入の禁止」、「割賦販売あっせん業者の登録」こういうような意見か出ている。これはいろいろこの法案を作られる前の参考の部会等の、有識者が集まった会だと思うのですが、それがそういう答申をしているのに、この三十条の条章では、譲渡や質入れをするということはちっとも禁止してない。「何人も、業として」云々と書いて、チケットを業として受け取ることを禁止している。ですから、チケットを譲渡したり、質入れすることに対してはどういうふうな考えを持っておりますか。
#25
○松尾政府委員 答申の中の表現は法律的なきちんとした書き方をいたしておりませんが、譲渡、質入れ禁止――もともとチケットというものはものを買うための一つの証票であって、それを譲渡、質入れをするというようなこと、くだいて申しますと、転々流通するような性格のものではない。そういう転々流通するようなことはやめさせなければならぬ。こういう一般的な表現になっておるのですが、その場合、チケットを譲渡するあるいは質入れを禁止するということか一番徹底した方法であろう、と思いますが、譲渡、質入れの場合にも、たとえば友人間で、あるいは親戚の者同士で、自分がチケットを持って買いに行くかわりに、これをあなたにやるから買うて来いという場合でも、厳密に言えばやはり譲渡、あるいは極端な場合は質入れというようなこともあるかもしれません。そういう個人間のものまで禁止をして云々ということは、法律としてはあまりにも行き過ぎであろう。また、答申もそういうことまで云々する意味でないので、譲渡、質入れというよりうなことについて、この法律に書いてありますように、そういうチケットの譲渡、質入れ等が営業目的でしばしば行なわれることになりますと、相当範囲が広くなり、弊害も大きくなるので、最大限度その辺だけを押えておけばよいということで、法律に直しますと、業としてやる場合だけを押えるという表現になってきたわけであります。
#26
○岡崎小委員 そうすると、チケットだけ集めて金融をすることを業とするということに局限すると、普通の質業として通す場合はどうなんです。
#27
○松尾政府委員 チケット金融を専業としておらなくとも、兼業としてであっても、要するに業として営利の目的で繰り返しやりますれば、当然これにひっかかっつて参ります。
#28
○岡崎小委員 たまたま一ぺんくらい持ってきて、それをちょっと金融したというのはかまわないですね。
#29
○松尾政府委員 一ぺんくらいという表現でありますけれども、今例におあげになりました、たとえば質屋さんはものを担保にとって金融することを本来業としております。その質屋さんがチケットを質にとって一回でもやりますれば、これは質屋さん本来営業形態から申しまして、一回しかやらなかったからこれは業としていないということは言い切れないと思います。これは実際問題として、最終的には裁判の判断だと思いますが、私ども常識的に考えますならば、本来そうい営業行為をやってい質屋さんでありますと、やはりひっかかると思います。
#30
○岡崎小委員 割賦販売のあっせん業者は、今までも委員会で同僚委員からいろいろ御質問かあったかもしれませんが、こういうチケットを発行するからいろいろな形態が起こるのであって、月賦販売自体は、ものがあって月賦販売があるのです。あっせん業が証票を出すということからこういうことが起こるのであって、健全な月賦販売からいったならば、購買力をそそるというようなことが健全な月賦販売の業態ではないと思います。あっせん業というものは世界の各国にもあるのですか。
#31
○松尾政府委員 現在日本で行なわれておりますチケットと全く同じものという意味では、世界各国に例があるということは承知しておりません。しかし、消費者金融の形として最近特に行なわれておりますクレジット・カードは、実質的にはチケット販売に近い内容のものを持っていると思います。チケット販売とクレジット、カードが違いますところは、クレジット・カードは、その代金の取り立てを分割しないで一回にとってしまいます。チケットの場合はそれを分割してとるというところに特色があります。日本特有な月賦とクレジット・カードとの結びついた形というふうに考えられるではないかと思いますが、日本にはこれが自然発牛的にといいますか、戦後の現象として現在相当広く行なわれている。それ自体私どもは弊害があるとは必ずしも考えませんが、それに付随して今の金融その他で本来の用途以外にチケットで金融がつく。そのためにチケットを発行してもらって、そして当面の金融をつけてもらうというようなところまで参りますと、これはやはり弊害があるのではないか。そういうことも審議会、流通部会ではいろいろ論議がありまして、そういうふうにきまったわけであります。
#32
○岡本小委員 私は今座談みたいな小委員会だから感じをちょっと申し上げるのですが、割賦購入のあっせん業というものを認めて証票を出していくということは、その証票を農林省なら農林省の役人にみな出すとか、あるいはどこかの会社に出すというふうにして出して、そしてやって、買わせて、それを融通しているように思うのです。それで融通してあらゆる中小企業の各商店なんかにみんな加入させる。私も自分の選挙区の中にそういう業態があるので、その実情を若干知っておりますが、そうなれば自然、その札を持てば、困った人はその札を金にかえようとすることは人情だと私は思うのです。大体そういうような状態であれば、こういうものを質入れしたり、あるいは金にかえたりというようなことが起こると思う。月賦販売の実態からいうと非常に不健全な状態ではないかと思うので、今の日本では月賦販売あっせん業の人を登録というだけのことにしてやっているように思うのですが、この点もっと制肘を加えてよくしなければ、証票を譲渡した者を罰するとかなんとかいってもなかなか跡を断たないのではないか、私はこういうように懸念するのですが、当局のお考えはどうですか。
#33
○松尾政府委員 チケットの発行者に対しましては、この法律の内容にうたっておりますように、登録の際には資産その他の内容を見ていわゆる制限登録をいたします。実際の事業の資産等につきましても、その後事業の資産が非常に悪くなれば、この条文の格好にありますようなかなり重要な制限を受けます。と申しますのは、割賦販売あっせん業者の資産状態は、そのまま割賦販売加盟店に対する支払い能力と関係がございますので、そういう意味でかなり厳重な制約を受けることになるわけであります。問題は、今お話しの、それではその発行されたチケットというのは、割賦販売あっせんに加盟している加盟店に対して、片方に割賦販売あっせん業者の資産その他について監督が行なわれておるから、そのチケットは十分資金の裏づけのあるチケットである。従って加盟店に行けば問題なく購入する能力といいますか、価値のあるものであるから、そういうものであっせん店に融通する、むしろその方が便利ではないだろうかということもあるいは考えられるかとも思いますが、もともとこのチケットは本来チケットを発行してもらった購入者が物を買うためのチケットである。実際には、御承知のように購入者は、加盟をすれば会員証が渡されておりますが、買うたびに記名捺印をしなければならないわけであります。記名捺印して、会員証を見せて初めてそのチケットで物が買えるという仕組みになっているということは、そのチケットは、あくまで自分は将来割賦販売あっせん機関を通じて代金の分割払いをいたしますということを立証するいわば証票でしかない。しかも当人がそういうことを立証する証票であるというふうに法律上の仕組みでは非常にはっきりいたしておりますので、それを他人が譲渡されて、その人は会員証をどうするのか、判こをどうするのか、サインをどうするのかわかりませんが、そういう形で使われることは確かに不健全な形であるわけであります。それも友人かあるいは親戚同士の間でまれに起こることであれば、これはまだ見のがせると思いますが、いつでもチケットを買います、いつでもチケットで金融をいたしますということで、片方に営業が行なわれておりますことは、そういう不健全な形を非常に助長することになります。現実にそういう形で買い取られたあるいは質流れになったチケットを、一括買い取るブローカーもあるという実情もあるようであります。そうなりますと、いよいよ本来の目的を離れて、いわば転々流通する貨幣類似証券ではないかというようなことも流通部会で相当議論されて、大蔵省の見解をただしましたところ、これがかりに転々流通すれば貨幣類似のものになる危険が相当あるというようなことも、大蔵省の見解として披瀝されました。そういうことを考えますと、少なくとも業としてそういうことをやられることは、やはりまずいということで、こういう条項を置いたわけでございます。
#34
○岡崎小委員 当局の御説明で御趣旨はよくわかりましたが、今まで特別な法令もなくこういうようにやってきて、そうしてあった状態なんだから、それを業としておった――質屋さんあたりが相当多いらしいのですが、それらの人が前の問題を整理したり何かするについては、ある程度の期間を置いてこれを実施していく、その整理をぴしっとやらしてやった方が経済の混乱を来たさないで済むのではないかと思うのですが、そういう点についてはどういうお考えですか。
#35
○松尾政府委員 この法律の施行期日は、公布の日から六カ月をこえない日に施行するということをいっております。従いまして、およそ六カ月の猶予期間は現在のあれでもあるわけであります。現在チケット金融の行なわれておる場合に、そのチケット金融がなくなって、大体この六カ月なりなんなりの経過期間内に現在貸してあるものが回収できないというような事態になりますと、これは確かにお話のように、現在行なっておる者が不測の損害をこうむるのでありますから、そこは十分考えなければならないと思いますが、私どもの調査では、大体チケット金融での金融の場合には、一人当たり、いろいろありましょうが、平均五千円くらいだという資料を持っております。一人当たり、五千円くらいの回収であれば、大体六カ月くらいの期間があれば、これをなしくずしに返してもらうということが一応できるのではないか。これはいいことではありませんが、かりに回収ができなければ従来のものをブローカーに渡すということで回収し整理してしまうということも、六カ月くらいの猶予期間があればできるのではなかろうかということは考えております。しかし、最終的には、これを将来とも認めるということは、どうも今の実情ではまずいのではないかと思います。
#36
○岡崎小委員 大体今の局長のお話で実情は了承しましたが、どのくらいの期間で正常の状態に戻せるかということについては、懇談の席でいろいろお話し合いをして、私も調査をしいろいろ検討さしてもらいたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。
#37
○岡本小委員長 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#38
○岡本小委員長 速記を始めて。板川正吾君。
#39
○板川小委員 今岡崎小委員から三十条について発言がございましたから、関連して質問したいと思います。
 チケットの譲渡を禁止するという項目でありますが、チケットを護り受け、または資金の融通に関して提供を受けてはならない、こういうのが三十条の趣旨ですが、このチケット金融を禁止した考え方を一つ説明していただきたいと思います。
#40
○松尾政府委員 法律的な問題といたしましては、先ほど申し上げましたように、このチケットは本来割賦販売で物を買う一つの証票であって、会員証を持って、しかも自分が買うときに会員証を示し、記名捺印をして、それで初めてチケットの法律的な効果が発生するような性質のものであります。従いまして、そのようなチケットがかり譲渡、質入れという形で他人の手に移ってそれが使用されます場合には、これは法律の形式論で申しますと――形式論に過ぎるかもしれませんが、申しますと、それを譲り受けて、記名捺印、それをどうするかわかりませんが、いわば他人がこれを使えば、本来の、いわゆる本人の名義を偽って使用したということに、法律構成としてはなるわけであります。そういう問題は一応別といたしまして、現実問題としては現在私どもの調査で、最近はだいぶチケット金融の専業者の数は減りつつあるというふうに聞いておりますが、流通部会でこの問題を取り上げられました当時の実情から申しますと、チケットを買います、チケットで金融をいたしますということが盛んに新聞広告に出る。しかもそのチケット金融の行なわれておる場所というのが、やや不健全な、あるいは相当不健全な競技の場所等で、その近くで小さな立て看板程度で、その営業の場所というのはせいぜい五、六坪くらいの小さなところでやられておる。金融の形として実質的にもかなり不健全だ、そういうものが本来の割賦販売に付随して非常に盛んになるというようなことを考えれば、その弊害は非常に大きいではないかというようなことが非常に議論されました。そういうことから実情をだんだん調べてみますと、現実には金融業者はこれによりまして、大体月七、八分くらいの利息を利息天引きで貸して融通をしておるようであります。そしてその際に、先ほど申しました本来のチケットには記名捺印しなければならないわけでありますが、おそらく大部分の場合は全部記名をさせて捺印をとっておくか、あるいは契約書の中に――私どもの入手しましたチケットの譲渡契約の中にも「購買券で任意に券名義人の名を以て額面金額の物品を購入されても異議なく、券名義の印鑑が必要の場合は何時でも御申出次第持参捺印すべきは勿論、券行使期限の関係上その暇なき場合は、適宜調製の上」、適宜というのは名前を書いて、適宜判こを押して「御使用下さるも差支ありません。」というような契約書になっておるわけでございます。いかにも不健全な仕組みになっておると思います。そういう形で、その金融をしたものが返ってこない場合には、どういうふうに行なわれておるか、具体的な場合はいろいろあると思いますが、切符には大体二カ月の使用期間があるわけであります。従いまして二カ月の使用期間までに金が返ってこないときには二カ月を待つわけには参りませんから、大体一カ月くらいでまたそのお客さんの方に催促をして、新しい切符と差しかえてもらう。金も持ってこられない、差しかえもできないという場合は、一月カくらいで質流れという形になりますから、それをブローカーに渡す。ブローカーはそれを買い集めて――これはいろんな場合があると思います。さらにお客さんを探すという場合もあると思いますが、それよりはむしろ一括して、どうせブローカーは割引して買いますから、割引で買って、しかも券面金額で、私ども聞きましたところではウイスキーとか酒類を買い、従って安く買ったウイスキーその他洋酒をバーその他に卸しておるブローカーもあるそうであります。もともとそのチケットは券面金額の七割しか貸さないわけでありますから、そのまま質流れとなれば七割でそのまま売れるし、ディスカウントできるわけであります。そういう弊害がある。またそういうことでなければチケット金融というものは成り立たないということになっております。またある場合には、チケット金融業者の店に行けば、ディスカウントされて安く買えることもあるということを承っております。そういうことを考えますと、本来の用途以外にそういう不健全な取引を業として助長するようなことは、この際法律で改めるべきであるということに相なったのが従来の経緯であります。ただ現実問題としましては、先ほど岡崎先生のお話もありましたように、現実にやっておる者がこれで当面不測の損害をこうむるようなことだけは防がなければならない。一応法律的には六カ月くらいの猶予期間がございますので、その間に一人当たり五千円くらいの代金を回収して従来の営業そのものに不測の損害を与えるようなことを防ぐことは必要であろうと思います。
#41
○板川小委員 そうしますとこれによって半年間は猶予があるわけですね。半年間猶予があれば、現在やっておるチケット金融業者の損害は回避できるということになりますか。期間は十分ですか。
#42
○松尾政府委員 私どもは大体そうだと思います。
#43
○岡本小委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#44
○岡本小委員長 速記を始めて。
#45
○板川小委員 チケット金融業者というものは大体何軒くらいあるのですか。
#46
○松尾政府委員 ことしの二月ごろの調査でございますので、若干の異動はあると思いますが、これは大都市だけの問題でありますが、一応専業者といわれるものは東京で五十店くらい、大阪で三十店くらいということであります。しかし質屋その他で兼業的にやっているものだといわれておりますのは、東京、大阪それぞれ四、五百店くらいあるのではないかといわれております。この辺は調査が必ずしも十分ではございません。店舗の規模は先ほど申しましたように、専業者の場合には五、六坪くらいの立て看板程度で行なわれておるようであります。
#47
○板川小委員 チケット金融を利用している人はどのくらいあるのですか。そう大した人数じゃないですか。
#48
○松尾政府委員 利用者の頭数はちょっとわかりませんけれども、推算をまじえて申し上げますと、専業者の一店当りの貸付高は平均五百万円くらいじゃないかといわれております。少ないのは二百万くらいの規模であるようであります。今の店舗の数等からいたしますと、貸付残高からいって東京で約五億、大阪で約二億というくらいの金額に上ると推算されておりますけれども、最近の傾向といたしましてこの種の営業者の数は、急速にという言葉は必ずしも当たらないかもしれませんが、どんどん減りつつある。事業もどんどん縮少されておるというふうに聞いております。もう一つは、このチケット発行機関の一番大きな日本信販の場合――最近の日本信販のチケットの出し方は、金額を初めから印刷しませんで、そのチケットの購入者というか使用者が、自分で金額を書き込んで記名捺印するというふうな仕組みになっておるようであります。そうなりますと転々流通するというのが、いわゆる文字通り金額の定型化したチケットではないということになりますので、何となしにやはりなじまないという傾向もあると思います。全体的にはかなり減りつつあるというふうに聞いております。
#49
○岡崎小委員 関連して。この割賦行為にあっせん業、いわゆる日本信販とか東京信販というような会社で、チケットを購入する会社を作るというような評判があるようなことを私らのところに言ってきますが、そういうようなことはありませんか、どうですか。
#50
○松尾政府委員 東京のある大きなチケット発行機関で別会社を作って、そこでいわゆる信用組合的な機能でチケットで金を貸しておったという例が、かつてはあったようでございます。しかしそれはよほど以前にその制度をやめまして、現在は普通の証書で金を貸しておるようであります。
#51
○板川小委員 陳情書等を見ますると、この人たちが言うのには、勤労者には金融機関がない。しかし金がぜひ必要だという場合もある。チケット金融が一つの勤労者の金融の役割を社会的に果たしている。決して有害の面ばかりではない、こういうことを強調しておるわけです。たとえば二万円に対して質屋へ品物を持っていった場合には、新品でも三千円しか金を貸してくれない。またチケットで買った物を売った場合には、一万円の物が四千円ぐらいにしか売れないだろう。チケット金融だと手取りが先ほど局長は七割と言ったのですが、これでは八割五分、八千五百円貸すのだ。そういう意味で勤労者の公営質屋もない、労働金庫も利用できない、こういう人たちには一つの役割を果たしておる。だからあまりいじめないでくれということにもなると思うのですが、こういうことを言っておる。これに対してどういうお考えを持っておりますか。
#52
○松尾政府委員 現在行なわれておりますチケット金融の具体的な事例を全部当たってみますれば、おそらく今例にあげられておるようなものもある程度ないと、断言はもちろんできないわけであります。そういう意味では便利ではないか、こういうこともあると思いますが、しかし同時に便利であるだけに、必ずしもそういう不時の疾病その他のような意味でなくて、要するに物を買うためのチケットを、金を借りるためのチケットである、金を借りたいからチケットを発行してもらうということに非常に流れやすい。結局今のお話のところは、私は全然それがないという否定はできないと思います。しかしそういうことのためにむしろ弊害の多い面を、この際不健全な制度がそのまま認められていくというわけにはいかぬだろう。消費者金融の道は別途考えるべきである。法律の全体の考え方を見ますと、そう考えざるを得ないのではないかと思います。
#53
○板川小委員 もう一点。この人たちの気持を申し上げると、チケットを譲り受ける者ですね、われわれ業者に対してこういう禁止の規定は過酷じゃないか。善意の第三者だ。本来からいえば、持っている物を質入れなりしてはいかぬ。こういう禁止をすべきではないか。それには触れないで、業者だけをこういうように取り締まるのは過酷ではないか。たとえば恩給法の場合なんかでもそういう扱い方をしていないではないか。法の前に平等ではない。こういう主張をしておるのですが、これに対してどういう局長のお考えですか。
#54
○松尾政府委員 チケット金融の場合に、実際にこの法律の禁止なり罰則を受けますのは、先ほど申しましたように、そういう不健全な取引関係、金融関係を業としてやられますことは困ります。現実にある人が先ほどの例ではございませんが、自分の家族の突発的なことのために、現存たまたまチケットを持っておった。そのチケットを提供して親戚なり友人に金融を頼むという程度のことであれば、これは別にそこまでのことを追っかける必要はないと思います。しかし業としていつでも買います、いつでも金融いたしますということで、大っぴらに行なわれていると、たまたま困った場合に現在持っているチケット、本来家計が困ることを予想すれば、そういうチケットを買わないであろう。しかしすでに買っておったチケットで金融をつけたいというような場合ではなくて、もともと何らかの必ずしも不健全な用途でないために金がほしい、そのためにチケットを発行してもらいたい、いつでも買います、いつでも金融をしますというところにいつでも行ける。そういうことだけは防いでおく必要があるのではないかということで、確かにチケットを質入れして金融を受けるその人の方は正しいのかということになりますと、もちろん正しいのではないかもしれませんけれども、決していいことではないかもしれませんが、法律制度ということになりますと、営業としてやるような特に影響の大きい場合だけを制限しておくことになるのではないかと思います。
#55
○板川小委員 こういうのですよ。金融業者を取り締まるのに、割賦販売法で取り締まるのはどうも片手落ちじゃないか。それはたとえば大蔵省の金融何とか業取り締まりとか何かの方の法律で取り締まるならそれはそれでいいが、割賦販売法で金融業者の方を取り締まるというのは、法の立て方として不合理じゃないか、こういう主張をしているのです。たとえば恩給の質入れについてはこれと違う制限をしておりますね。その間のことを不合理だと言っているのですがね。
#56
○松尾政府委員 割賦販売法は本来割賦販売に従事する者及び消費者との間に秩序立てることが、第一の目的ではございますが、しかしそれに付随的に割賦販売の一つの形態であるいわゆるチケット割賦販売が行なわれております際に、そのチケットについて不健全な取引を助長するような制度が現実にあるものでありますから、法律体系とすれば、それはそれで別途の法律でやるということはもちろん考えられると思います。しかしやはりチケット割賦販売の健全な成長のために、そういうわき道から不健全にされるということを防いでおく必要があるというので、ある程度便宜論かもしれませんが、便宜こちらの法律で、一緒にやっていくということに相なっております。
#57
○板川小委員 この点、三十条については岡崎小委員の御質問がありましたので関連して申し上げますが、ここは、これでけっこうです。また他の項で質問したいと思います。
#58
○岡本小委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日金曜日午前十一時より開会することとし、これにて散会いたします。
    午後四時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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