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1947/08/13 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第20号
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1947/08/13 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第20号

#1
第001回国会 司法委員会 第20号
昭和二十二年八月十三日(水曜日)
    午後一時五十四分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 石川金次郎君 理事 鍛冶 良作君
      池谷 信一君    榊原 千代君
      安田 幹太君    山中日露史君
      打出 信行君    中村 俊夫君
      八並 達雄君    岡井藤志郎君
      佐瀬 昌三君    花村 四郎君
      明禮輝三郎君    大島 多藏君
 出席政府委員
        司法事務官   奧野 健一君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 民法の一部を改正する法律案(内閣提出)(第
 一四號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員 會議を開きます。
 民法の一部を改正する法律案に對する質疑を進めます。佐瀬昌三君。
#3
○佐瀬委員 民法第一條及び第一條の二の改正については、前に政府委員の提案理由の説明を承つたのでありますが、これを存置すべきかどうかということは、國會においても愼重に審議しなければならぬ問題であると思うのであります。今日はなおその參考のために、第一條の意義について若干政府委員にお尋ねしておきたいと思うのであります。第一條の第二項の條文の性格は、權利の行使あるいは義務の履行について、國民に對して單なる守るべきところの一般規範を示して、いわば訓示的な法として認めようとするのか、あるいはしからずして、權利義務の限界なり、あるいは性格なりをこれによつて規定づけて、もしこれに反する場合には、それを權利濫用として不法行為となし、あるいはまた義務についてはその履行を義務者本人に代つて國家機關が信義に從い、誠實にこれをなすように代行する。いわゆる強行法としての性格をももたせようとする趣旨であるかどうかという點について、政府委員の御所見を一應承つておきたいと思うのであります。
#4
○奧野政府委員 信義誠實の原則は、御承知のように、ドイツ等におきましても、最初債權債務關係の指導原理として認められ、その後すべての分野において、廣く基本的な原理として認められることになつたのでありまして、從いまして本案におきましても、單に債權債務關係のみならず、いやしくも權利の行使、義務の履行についての指針を示すという意味で、信義誠實の原則を掲げたのでありますが、これはお説のように一面において、その指導方針と申しますか、理想を表わすと同時に、他面法律論といたしまして、もし權利の行使が信義に反しておる。義務の履行が信義誠實に反しておるという場合につきましても、やはりこの規定の適用によつて、權利の行使がそういう違反の場合には認めない。場合によつては權利の濫用となり、あるいは不法行為というところまで進展する場合もあろうかというふうに考えておりますし、また義務の履行についても、同樣信義誠實に反しておるような場合においては、債務不履行というふうな法律的な効力ももつという點までも考えておるわけであります。
#5
○佐瀬委員 債務不履行として、場合によつては國家が當事者の費用負擔において代行するというような場合もあり得ることになるのでありましようか。
#6
○奧野政府委員 それはこの場合には格段考えてはおりません。一般に強制執行の手續によつて、あるいはまた債務者の費用で第三者に代行せしめるということは、一般民法の四百十四條でありますとか、あるいは民事訴訟法の二百三十三條でありますとか、そういつたような規定でやることになりますので、この規定としては、國家が債務者に代つて履行するというような點は考えておらないのであります。
#7
○佐瀬委員 では具體的な一つの事例をもつてお尋ねしたい。この改正案七百三十九條によりますと、婚姻についてはいわゆる事實婚主義を排して届出主義に則つておる。婚姻を社會的に一定の儀式をもつて濟ましても、届出がなければ新民法によつても有効な婚姻があつたとは認められないことになるが、その届出以前のいわゆる婚姻豫約の場合に、一方が届出をすべき義務を、信義に從わず、誠實に行わずして、婚姻豫約を破棄せんとしつつある場合に、この第一條第二項によつて、婚姻の届出あるいは届出に代るべき國家の意思表示を裁判によつて求めて、それによつて行つていくということができるか。これは他の債務不履行の場合にでも、いろいろ起り得る問題であろうと思いますが、まずわかりやすい例として婚姻の場合に、第一條第二項がどういう形、効力をもつて活用されるか、お伺いしておきたい。
#8
○奧野政府委員 なるべく一般の意思表示を求める場合、そういう意思表示をしなければならない義務がある場合、すなわち豫約に基いて本契約を締結しなければならないような場合においては、判決をもつてその意思表示にかえるという強制力は認めてよろしいと思いますが、婚姻については豫約をやつておるが、實行というか、正式な婚姻の届出をしないという場合に、これを強制して届出、國家の判決等によつてこれに代らしむるというところまでは、でき得ないのではないか。結局婚姻というのは、兩性のほんとうの合意によつて成立する、その合意が強制的にあつたものにするということは、ことの性質上できないので、その場合は信義に反してその婚姻届出を出さない場合には、債務不履行、婚姻不履行として、損害賠償の請求ができるということになろうかと考えております。
#9
○佐瀬委員 ただいまの例は、あるいは適切でなかつたかもしれませんが、第一條第二項の性格は、ただいまの御説明によつてたいへん明確にされました。私どもこれを今後研究資料としたいのであります。
 次に今度家族制度が全面的に廢止され、親族團體の統合がきわめて脆弱になつておるのであります。さような立法が提案されておる。もちろん私ども封建的な家族制度は新憲法下打破しなければなりせんが、社會的な意義において、家族制度のよい部分はこれを何らかの形において認め、かつそれを助長していかなければならぬと思うのであります。そこで家に代つて氏というものが重要な社會的、法律的意義と機能をもたなければならぬと思うのであります。そういう趣旨から、この民法改正案において、氏の制度について、これは戸籍の問題とも關連するでありましようが、どの程度にお考えになられたかどういうことを、全部の法條を通じてお伺いしておきたいと思うのであります。
#10
○奧野政府委員 お説のように、民法上、法律上の意味における家の制度というものは廢止することになつたのでありますが、實際生活における家庭共同生活というものは、決して否定すべきものではなく、これを維持しなければならないと考えておるわけでありまして、この點はこの前も申し上げましたように、たとえば七百三十條等の規定によつても、その趣旨を表わしておるわけであります。なおそのほかすでに提案になつております家事審判法によりましても、家庭生活の圓滿なる維持をはかるためにつくられた制度でありまして、決して實際上の現實の家庭生活の破壞というようなことを考えておるわけではないのであります。なお祖先の祭祀を守り、特に系譜、祭具、墳墓等に關する主宰者については、一般の遺産相續とは別に考慮を拂つておるわけであります。そこでしからばこの氏ということが家の制度に代るのかということになりますと、それはそうではないのでありまして、家をやめた代りに家に代るに氏をもつてしたという勸念ではなく、從來氏という勸念は、家の氏ということになつておりまして、家を廢止いたしました結果、家の氏ということはなくなりますが、その氏というものは個々人の私姓、名前の私姓ということになつて、今後も、存續してまいるのでありまして、いわゆる家はなくなりましたが、西洋でもあるようにフアミリー・ネームということは、やはり各國の法律等においても規定があるので、最少限度のいわゆるフアミリー・ネームについて規定をおく必要がある。しかしそれが家の代りに氏というものが家と同じような働きをするという考えではなくて、結局氏名、姓名ということは、どうしても缺くべからざるものである。しかして婚姻したような場合においては、同じような氏を名乘らなければならないし、また子供が生れた場合においては、どういう氏を名乘るかというようなことも規定していなければなりませんので、この點は各國の立法例におきましても、やはり最小限度そういう點は規定をおいておるわけであります。そういう各人の符牒と申してはいろいろ語弊もありますが、要するに家というのでなく、その各人を表わすという意味で、氏、姓名どういうことは必要であり、そのことは戸籍法と同時に、民法にもその頭を出しておく必要がある。これは各國もその例があるという考えによりまして、大體氏について規定をいたしておりますことは、婚姻すれば夫婦で男か女かどちらかの氏を稱する。今までのように、女が男の家に入る。從つて男の家の氏を稱するというのではなく、婚姻の際協議で定める氏、その氏は男か女かどちらか一方の氏でなければならないということを規定しておるのと、同時に婚姻が解消、離婚等になりますと、氏はまた婚姻前の氏に復するということがある。それと同樣なことは、養子縁組の場合も同樣な規定をおきました。大體それらが、婚姻及び養子縁組の際の氏の問題でありまして、そのほかに子供が生れた場合に、大體父母の氏を子供が稱する。ただ嫡出でない子供は母の氏を稱するということにいたします。その後さらに父母が離婚になるというような場合を考えまして、子供がそういう場合に父母の氏に變更することができるという一般的の規定を七百九十一條におきまして、大體非常に簡單な規定でもつて、ただ民法の中にフアミリー・ネームというようなことが頭を出しておるという程度に止めて、いわば輕く取扱つておるわけで、家に代つて氏が非常に大きな勢力をもつて、氏を名乘るということが、あたかも同じ家に屬するというふうな勸念にできるだけ誤解のないように、いわば輕く取扱つておるわけでありまして、これに伴つて戸籍におきましても、同じ戸籍の者は同じ氏を稱する者でつくるという勸念でできておるのであります。
#11
○佐瀬委員 氏に對する認識いかんは、氏の取得變更の範圍だとか條件等を決定する上において、大きな意味をもつものと考えるのであります。政府委員の氏に對するお考えは、ただいまの御説明で私諒とするものでありますが、その考え方の適用は、各具體的の場合に、相當愼重にされなければならないではないかと考える。
 それから籍をわけるとかいうことはどういうふうに取扱うのが最も妥當か、いずれ戸籍法の改正等にも關連することでありましようが、根本的な方針とかそういうものについて、この際一應伺つておきます。
#12
○奧野政府委員 御承知のように、分家、家をわけるという考えは、家がなくなればおそらく分家という勸念がなくなつたのでありますが、ただ戸籍の面におきまして分籍というものを認めていこう、これは何も分家というような意味ではなく、やはり同じ戸籍の中で幾人もおる場合に、成年に達した子供の分籍を認めようということで、戸籍法においては成年者は分籍ができることにいたしたいと考えております。
#13
○佐瀬委員 婚姻の問題について若干お伺いしておきたいのでありますが、第七百三十九條は届出主義を採用しようとしております。これを前提といたしますると、第七百四十二條の二號の當事者が婚姻の届出をしないときは、婚姻は無効であるという規定は無意味なように考えられるのですが、これはどういう御趣旨でかような規定をおかれんとするのか、その點を御説明願いたいと思います。
#14
○奧野政府委員 この規定は現行法の第七百七十八條でありますか、それをそつくり踏襲してまいつた規定でありまして、現行法におきましては、第七百七十五條で届出主義をとり、かつ第七百七十八條で、ここにあります第七百四十二條と同じような規定をおいておりますので、その問題は現行法のもとにおける解釈と同樣であります。おそらくこれは他人が勝手に届出をしたような場合に、實際當事者が届出をしていないということで、それは無効ということを考えておるのではないかと解釋しております。
#15
○佐瀬委員 届出がなければ婚姻が成立しないということになつておれば、それ以後に起るべき無効とか有効とかいうことは、およそ無用なことではないかと思うのですが、ただいまの御説明のように、第三者が届出をした、形式的に届出があつた。しかし當事者の眞意に反しておるから、それは無効だと現行法のように解釋されるのであれば、またその意味の限りにおいて、あるいは存置する必要があるかと思うのですが、大體そういう場合には、私どもの考えからいうと、婚姻の届出がなかつたものであるというように解釋するのが、實態に即應した解釋であろうと思うのであります。そういう意味からいうと、第七百四十二條の二號とういうのは、およそ不必要な規定のように思われるのですが、これは私の意見でありますから、その點御了承願いたいと思います。
 次に婚姻の効果として、現行法のごとき妻の無能力を改正案においては否定して、男女平等の原則から妻にも能力者たる資格を附與するという御趣旨は、私どももとより贊成であります。しかしかような規定があつても、當事者の夫と妻との間に何らかの特約をもつて、妻の法律行為を制限しようというような場合には、それはどうなるか。夫婦財産制の中には若干それに關連する規定もあるようでありますが、私はせつかく妻の能力を認める限りは、やはりそれを阻止するような夫の行動に對しては、他の立法的措置をもつて防止するようなことが、概括的規定として必要ではないかと思うのであります。特に今日は男女の社會的地位、あるいは經濟條件、家庭生活における實情、そういうことを斟酌してみますと、そういうような立法的措置も必要ではないかと思うのであります。この點についてはどういうお考えをおもちになりますか。
#16
○奧野政府委員 この法律案では、まつたく夫婦平等の精神に基いて、妻の無能力を廢止することにいたしたのでありますが、御説のように、妻の能力を制限するような契約は、これは無効であろうと思います。ただ夫婦財産契約等におきまして、個々的にある財産の管理を夫に契約で委託するというようなことは、夫婦財産契約としては認め得るかと思います。そういう契約でなく、いわゆる法定財産制に違反するような契約は無効でありますし、しかも夫婦間の契約は、いつでも一方から單獨でも取消し得るのでありますから、結局そういう契約の効力はなきに等しいということになるかと思います。ただ夫婦財産契約で、あらかじめ夫婦になる際に特にある財産、特定の財産について管理委託するというようなことは、この新民法のもとにおいても許されるかと考えております。
#17
○佐瀬委員 第七百五十條の問題でありますが、婚姻の効果として夫または妻の氏を稱するという規定でありますが、新しい氏を稱するということを認めないわけでありますが、その夫なり妻なりの氏に限定する御趣意はどこにあるか承りたいと思います。
#18
○奧野政府委員 御説のように、これは妻もしくは夫どちらかの氏を稱することを考えておるので、全然第三者の氏を自由に稱するということは認めてないのであります。それはやはり氏というものを認める以上は、そうたやすく自由に氏を選擇することは非常に社會生活の混亂を生じますので、氏の變更ということは、特に愼重に取扱いたいと考えております。もつともやむを得ざる事由がある場合においてのみ氏の變更ということは、今度は戸籍法におきまして認めていこうと考えておりますが、七百五十條におきましては、夫婦いづれか一方の氏を稱するという考え方であります。
#19
○佐瀬委員 ただいまの御説明で、私は先ほど申し上げましたように、やはり氏というものがきわめて重大な意義をもち、あるいは家に代るべき重要な機能をもつものであるというような勸念も働いて、七百五十條の立法を見るようになつたのではないかと考えておるのでありますが、戸籍法の上において、なおこれは關連して、ぜひ御説明の通り重ねて御研究をお願いしておきたいのであります。
 七百五十二條の同居の場合における居所の指定權と申しましようか、選定權と申しましようか、これはどういうことになるのでありましようか。
#20
○奧野政府委員 現行法におきましては、結局妻は夫と同居する義務があつて、夫は妻を同居せしむる義務を負うというようになつております結果、夫婦は同居するというのであるが、それは夫が住居の選擇權をもつておるということになるのであります。しかしそれは明らかに憲法二十四條の第二項で、居住の選擇についても兩性の本質的平等に立脚しなければならないということでありますので、新しく七百五十二條で同居する義務はあるが、そのどこに居を構うべきかということについては、まつたく夫婦平等でありまして、これは協議できめるという趣旨で、しからば協議がまとまらなければどうなるかという問題も起りますが、この七百五十二條というのは、夫婦間の關係を考慮に強く入れて、むしろ法律以上なものというふうに考えて、扶養の義務とか、同居の義務とかいうような、義務という言葉を避けて立案いたしたのであります。結局夫婦の互いの話合で適當に居住の場所をきめるという趣旨で、その點は明白にいたしておりませんが、おのずから夫婦の話合で同居すべき場所をきめるという含みでそれを夫がきめるとか妻がきめるとかいうことにしては、兩性の平等に反するという意味で、協議できめる趣旨で、その點は何ら規定してないわけであります。
#21
○佐瀬委員 離婚の場合でありますが、七百六十四條においては、七百三十七條を準用しない方針のように原案はなつております。結局離婚の場合には婚姻の場合と違つて、未成年者でも父母の同意を得ずに自由にできるという制度になさんとする提案理由のように思うのでありますが、その通り了解しておいて差支えないか、またもしそういう御趣旨であれば、婚姻の場合と離婚の場合と區別した根據はどこにあるかということについて承つておきたいと思います。
#22
○奧野政府委員 御説の通り、婚姻については、未成年者の婚姻は父母の同意を必要としておるのでありますが、協議上の離婚の場合においては、父母の同意が要らないということにいたしたのであります。未成年者でありましても婚姻をすれば成年者ということになりまして、そういう形式的な面からのみでもなく、要するにもうすでに未成年者でも、婚姻して實質上の夫婦の關係を生じている以上は、離婚の場合に父母の同意を與える必要もなかろう、できるだけ父母の同意というふうなものについて、干渉がましきことは避けたいという意味からして、婚姻にはいる場合だけについては、やはりその未成年の保護というために、父母の同意というものを必要としましたが、一旦婚姻關係を結んだ以上は、もう獨立の完成した人間として取扱うという趣旨にいたしておりますので、それが別れる場合におきましても、もはや父母の同意を必要としないという建前をとつたわけであります。
#23
○佐瀬委員 未成年者が離婚後に再婚する場合には、父母の同意を必要とされているように思うのでありますが、いかがでございますか。
#24
○奧野政府委員 その點はやや疑問があるのでありますが、われわれの解釋といたしましても、一旦婚姻をして成年者とみなされました以上は、たとえ離婚してもやはり成年者として取扱わるべきものであるというふうに考えております。
#25
○佐瀬委員 かなりその點は解釈論としても問題になる餘地があると思います。
 七百七十條の裁判上の離婚に關する原因として、第五號に「その他婚姻を繼續し難い重大な事由があるとき。」いわゆる相對的な原因を掲げられてあるのでありますが、具體的にはどういう場合を豫想してかかる規定を設けられんとするのか、承つておきたいと思います。
#26
○奧野政府委員 この點は現行法の八百十五條にいろいろ列擧しております。たとえば重大な犯罪を犯した場合とか、あるいはまた虐待を受けるような場合とか、しかしそれを一概に必ず離婚の原因にするというふうになるかどうかは、具體的な場合々々によつて決定すべきものであるので、一概に列擧的に掲げるということは、あまり弾力性がなさ過ぎるということで、この例示は簡單に列擧して、第五號によつて包括的に規定いたしたのでありますが、おそらく大體現行法の八百十五條に列擧していることで、今度の七百七十條の各號に該當しないようなものがそれに該當することになろうかと考えております。
#27
○佐瀬委員 いわゆる生活難という場合はどういうことになりますか。
#28
○奧野政府委員 それは一概に申せませんが、これは協議で離婚をするということになればともかくでありますが、ここに「繼續し難い重大な事由」ということに、經濟的なただ生活難というようなことは何らはいらないのではないかというふうに考えております。
#29
○佐瀬委員 法律的に申し上げますと、扶養義務の履行が不可能であるというようような場合を含めてお伺いしておきたいのであります。
#30
○奧野政府委員 それは具體的な場合に、一方の當事者がいかにも何ら働きがなくて、ほとんど白痴にひとしいような場合にあつては、そういうことも具體敵な問題においてはこの中に入るべき場合もあろうかと思います。
#31
○佐瀬委員 同じ離婚理由として、第四號に「強度の精神病」ということがあげられております。これは現行民法の制定當時も、これをもつて離婚理由となすべきかどうかということについては、かなり歴史的な論爭があつたことを承知しておりますが、この案にこれを入れるについては、その後なお何か新しい根據でもおありになつたか、その點を御説明願いたいと思います。
#32
○奧野政府委員 この點はアメリカ等の立法例にも大體こういう立法例がありますので、それを參照いたしたのであります。なお現行法におきましては、この七百七十條の第二項のような緩和規定と申しますか、そういつたような弾力性のある規定がありませんので、それを入れるということになると、必ず別れなければならないということになるのでありますが、このたびは第二項を設けました結果、具體的な場合において、やはりわかれるのが適當と認められた場合ということになりますので、これを入れることによつて、今までのように、畫一的な離婚原因にならないということにも、考え方によつてなるわけでありますので、そういう趣旨を含めて、この點を挿入したわけであります。
#33
○佐瀬委員 浄瑠璃のいざり勝五郎のことを思い合わせると、どうもかような規定はおくこと自身があまりにも形式的な男女平等の原則にとらわれすぎて、正しいしかして健全な日本の人情風俗というものに反するような規定が、いろいろな點において、民法やその他の法律にこれから織りこまれようとするのではないかという懸念を私どもはもつのであります。從つてこの場合についても、同樣な角度から、やはり相當檢討する必要があるのではないかと思うのであります。ただ政府委員の御説明の通り、第二項によつてこれが適當に運用されるということであれば、もちろん缺陥は補い得るのでありますけれども、とかく平等の原則は社會の實生活に濫用されやすいのでありますから、立法の分野においては、なるべくそれを引締めるというところに目標をおいていくということが、現代に處する立法政策のあり方ではないかと思います。
#34
○松永委員長 速記を中止して下さい。
    〔速記中止〕
#35
○松永委員長 速記を始めて下さい。
#36
○佐瀬委員 養子制度が家族制度の廃止にもかかわらず、新民法にも認められようとされておりますが、家族制度維持以外の目的をもつての養子制度というものは、そこにおのずから他の目的、動機に基くものがあり、從つて養子制度は社會的には濫用される危險性があるのではないかと思います。これに對する改正民法における對策上の御意見はいかがなものでありますか。
#37
○奧野政府委員 養子制度はお説のように、從來は多く家の繼續というために重點がおかれておつた制度のように考えますが、家の廢止とともに養子制度を全廢すべきかどうか、いろいろ議論のあつた點でありまするが、やはり各國の例を見ましても、もらい子をするということは認めておる制度でありますし、むしろこれは子供の保護のために孤兒を養育するとか、また子供のないものは親としての愛情の繼續を望むというようなことで、やはり養子の制度は純粹に子供のためというような意味で殘していつてよいのではないかということで、やはり本案におきましても、養子の制度を存續するとにいたしたわけであります。お説のように、養子制度をおくことによつて、その濫用ということも考えられるというお話でありますが、その點も十分考慮いたしたした。もつとも、濫用の場合における一番の惡い例は、養女に對して藝者をさす。いわゆる子供の人身賣買というようなことが主であつたようでありますが、この點については七百九十八條を設けて、この場合には家事審判所の許可がなければならないということにいたしまして、家事審判所がほんとうに子供をもらうつもりであるかどうかというようなことについて眞偽を確かめることにいたしまして、養子の形で人身賣買をするというようなことのなからしむるようにいたしたわけであります。
#38
○佐瀬委員 私がかつて司法部に奉職していた時代に、いわゆるもらい子殺しの裁判をしたことがありますが、その最も極端なのは二十七人からもらい子殺しをして、いわゆる扶助料の稼ぎをしたという事例があつたのであります。現在勞働賃金政策等に關連して、いわゆる家族手當制度というようなものもあります。未成年者たる子供を養子にして、そういつたような制度を運用しようというような社會的事弊も出てこないとは限らぬのであります。そういう意味におきまして、七百九十八條の家事審判所の許可という制度を十分に活用されるように、實際の面においても政府當局において、ごくろうあらんことを切望する次第であります。
 次に親權の問題でありますが、第八百十八條には親權者たる父母は共同してこれを行うということに原案はなつております。この父母というのは、婚姻中であれば氏が違つておつても、あるいは何らかの理由で實際上同居していないというような場合でも常に共同して行うという趣旨の立案になつておるのでございましようか。
#39
○奧野政府委員 これは婚姻中の場合を指しておるのでありまして、その場合には婚姻中は必ず父母が同じ氏を稱するわけであります。もし父母の氏が違うという場合はそれは離婚の場合になりまして、その場合には必ず一方を親權者ときめる。これは八百十九條第一項、第二項にあります。從つて夫婦が離婚によつて氏を異にする場合には、どちらか一方ということになります。また子供を認知した――實子でない子供を父が認知した場合でも、その母親と婚姻していなければ、母親と父親との氏が違つております。この場合はやはり八百十九條の第四項で、どちらか協議して父を親權者ときめない限りは、母が親權者であり、この場合は母かしからざれば父母の協議で父かということになつて、共同行使ということはないわけになります。すなわち離婚の場合あるいは認知の場合は、必ずしも共同行使にならない、從いまして結局は父母が婚姻中の場合に共同行使ということになるわけであります。
#40
○佐瀬委員 「但し、父母の一方が親權を行うことができないときは、他の一方が、これを行う。」というように但書がありますが、この「一方が親權を行うことができない」という場合はどういう程度に認められますか。
#41
○奧野政府委員 一番適例は親權喪失の場合、あるいは管理權喪失の場合、あるいは親權または管理權の辭任の場合、父母の一方がそういうことをいたしますれば、他の一方がこれを行うという場合となりましようが、事實上行使の不可能になるという場合も、そのうちにはいることになります。
#42
○佐瀬委員 親權の効力は相當廣汎に證められておるようでありますが、親權の濫用とか、あるいはそれに對する監督とかいう點については、いかにお考えになつておられるか、その點を御説明願いたいと思います。
#43
○奧野政府委員 それは八百三十四條で「父又は母が、親權を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家事審判所は、子の親族又は檢察官の請求によつて、その親權の喪失を宣告することができる。」ということにいたしておりまして、これによつで親權の喪失の宣告をするということにいたしておるわけであります。
#44
○佐瀬委員 第一條の第二項もかような場合に適用する御趣旨でございましようか。
#45
○奧野政府委員 これは第一條は廣く債權にかかわらず、それらの身分上の權利の行使についても當然適用があるものと考えております。
#46
○佐瀬委員 最後に相續の點についてお伺いしておきたいのでありますが、分割相續制度を採用し、しかして遺留分制度が規定されております。私どもの最も憂うるところは、家族制度が廃止され、從つて家族的紐帶というものが非常に薄くなつておる。社會の經濟活動における單位としての家というものがなくなり、從つて農業の場合にはフランス流の家産制度とかいつたようなものを特別に立法して、農業なり、あるいは商工業なり繼續する上において、財産的基礎を確立しておく必要があると思いますが、この相續制なり、遺留分制度なりの適用から見ると、その逆をいくような結果になる、さいわいにして農業資産相續については、特例を認めようとする立法があるようでありますが、これはひとり農業資産についてのみならず、ただいま申しましたように、あらゆる産業についても同樣なことが言い得ると思います。それについて、この制度をもつて臨んで、何ら弊害なり不安なりがなくて濟むかどうか。それに對する御所見を承りたいと思います。
#47
○奧野政府委員 憲法の要請に基いて、庶子均分相續をとることにいたしたのでありますが、それでは日本のさなきだに零細な農地が、さらに再分割され、さらにまた相續があると、それをまたさらに再分割するということになつては、結局農業の經營ができなくなつて、日本の農業というものが破滅することを防ぐために、農地についてただいま御指摘のように、農業資産の相続に關する特例を設けて、言いかえれば農業資産は一人に相續せしめて、その分割を禁止することにいたしておるのであります。しからばそういつたようなことが他の商業であるとか營業等についても、必要があるのではないかというお説はごもつともでありますが、その必要性は、わが國における再分割された農地ほど、ただいまのところ切實に感じてないのでありまして、そういう特に一般的な特例を設けなくても、個々の場合におきまして、財産の分割というものは、必ずしも現物の分割を意味するのではなくて、適當な人に全部承諾せしめて、他の相續人に對しては金で分配する。分配できなければ借金の形で他の者にわけてやるというような方法も分割である。のみならず、その他家事審判所におきましては、一定の期間を設けて分割を禁止することの途をとられておりますから、そこは適當に今後處理されていくのではないか。もし實施の曉、そういうことでは不十分出であつて、何らかの法的措置を必要とする。農業のように法的措置を必要とすることになりますれば、さらにまたその際考える。結局一應憲法の要請といたしましては、平等の原則に基いて庶子均分相續ということになりますが、さらに一方農業を全滅せしむるような結果は、やはり公共の福祉から言つて、そういうことは避けるべきである。
 その兩方の調整をはかつたのが、農業資産に關する相續の特例でありますが、他の一般の營業等についても同樣なことになるかどうかは、現在のところは未だその程度に至らないものとみております。今後相續法の實施の曉を見て、適當に考慮していくべきものかと考えております。
#48
○佐瀬委員 自由平等あるいは民主主義というものに基いた立法なり法の解釋なりが、今後特に必要であるということは、何人も異論のない點であります。ただ私どもの最も懸念するところは、日本においてそれらをそのまま適用する社會的條件なり、經濟的條件なり、あるいは文化上の諸條件なりが、熟していないと思われる點が多々あるのであります。であるから、せつかく自由平等民主主義の適用をなさんとしても、その結果は、いたずらにすべてのレベルを引下げる、勢力を分散する。國家社會の發展の上から見ると、むしろ退歩するという結果を導きやすいように思われるのであります。そこに今後の立法政策のあり方として、私どもは相對的に考えて、いたずらに新奇を好むというような行き方は、嚴に愼しまなければならぬと考えておるのであります。今後司法當局も特に新事態に即應して、各角度からの立法提案が多いのでありましようが、私どものさような懸念をも、今後の提案の際に御一考願つて、なるべく健全な自由平等の思想と、民主主義的立法を編成していくという上に、協力賜りたいということを希望いたしまして、私の質問は終りたいと思います。
#49
○松永委員長 この際本案の公聽會指定公述人の適當なる候補者として、皆さんの希望する方がありましたら、どうぞ委員長までお申出下さるようにお願いいたします。
 それでは本日はこれにて散會いたします。明日は午前十時より開會いたします。
   午後三時六分散會
ソース: 国立国会図書館
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