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1947/08/14 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第21号
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1947/08/14 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第21号

#1
第001回国会 司法委員会 第21号
昭和二十二年八月十四日(木曜日)
    午前十時五十分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 鍛冶 良作君
      榊原 千代君    安田 幹太君
      山中日露史君    打出 信行君
      中村 俊夫君    八並 達雄君
      岡井藤志郎君    花村 四郎君
      明禮輝三郎君    大島 多藏君
      小西 寅松君
 出席政府委員
        司法政務次官  佐竹 晴記君
        司法事務官   奧野 健一君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 民法の一部を改正する法律案(内閣提出)(第
 一四號)
 皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸
 籍に關する法律案(内閣提出)(第二十號)
 家事審判法案(内閣提出)(第三二號)
 民法の一部を改正する法律案審査のための公聽
 會における公述人の選定に關する件
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 會議を開きます。
 今月五日付託の皇族身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に關する法律案及び同月十一日付託の兩家事審判法案の両案につきまして政府の説明を願います。
#3
○佐竹政府委員 大臣お差支えでございますので、私よりただいま上程されました皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に關する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。
 日本國憲法の施行に伴い、舊皇室典範竝びに皇族親族令及び皇族身位令とともに、明治四十三年法律第三十九號「皇族ヨリ臣籍ニ入リタル者及婚嫁ニ因リ臣籍ヨリ出テ皇族ト為リタル者ノ戸籍ニ關スル法律」が廃止されましたが、これと同時に、現行皇室典範の施行を見るに至りました。そして、現行皇室典範の第二章には皇族がその身分を離れられる場合及び皇族以外の女子が皇族となられる場合について、数箇條にわたつて規定しておるのでありまして、このような場合には、その方の戸籍をいかに処理するかを定める必要があるのであります。すなわち、先に廃止されました前述の明治四十三年法律第三十九號に相當する法律が當然必要となつてまいるわけであります、この要請を滿たさんがため立案されたのが、この法律案でありまして、いわば、本法律案は、皇統譜令と戸籍法との橋渡しともいうべき法律案なのであります。次にこの法律案の内容の要點を申し上げます。第一點は皇族がその身分を離れた場合の戸籍に關する規定であります。まず、皇族が皇室典範第十一條の規定によつて皇族の身分を離れられた場合には、その方について新戸籍を編製することつといたし、さらにこれと同時に、皇室典範第十三條の規定によつて皇族の身分を離れられたその方の妃、直系卑属及びその妃がある場合には、それらの方々もともにその戸籍に入ることといたしました。第一條が、その規定であります。
 次に、皇族以外の女子で親王妃又は王妃となられた方が、その夫を失つた後に、皇室典範第十四條第一項または第二項の規定によつて皇族の身分を離れられる場合は、その方が離婚によつて皇族の身分を離れられる場合には、いずれも原則として婚姻前の戸籍に復籍し、また皇族女子で他の皇族の妃となられた方が夫を失いまたは離婚された場合に、それ以前すでにその直系卑属が皇族の身分を離れておられるがため、みずからも皇族の身分を離れられることがあるときには、原則としてその直系卑属の戸籍に入ることといたしました。第二條が、それであります。
 第二點は、皇族女子が天皇及び皇族以外の者との婚姻によつて皇族の身分を離れられる場合には、當然戸籍法の適用によつてその夫の戸籍に入られるのでありますから、これにつき特別の規定を設ける必要はありませんが、ただその方がその後離婚される場合には、復籍すべき戸籍がないわけでありますから、その方について原則として新戸籍を編製することといたしました。第三條が、その規定であります。
 第三點は、皇族以外の女子が皇后又は妃となられた場合には、その方を從前の戸籍から除籍することといたしました。第四條が、その規定であります。
 第四點は、以上のような皇族の身分の得喪があつた場合における戸籍の届出について規定したことであります、すなわち、皇族がその身分を離れられた場合には、その方から、皇族以外の女子が皇族になられた場合には、その四親等内の親族から、それぞれ所定期間内に一定の届出をなさしめることとしました。第五條ないし第七條の規定が、それであります。かかる届出に基いて、市町村長が戸籍法の規定に則り、それぞれ戸籍記載の手続をすることとなるわけであります。
 以上が、この法律案の大要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに可決せられんことを御願い申し上げます。
 次いで家事審判法案について提案理由の説明を申し上げます。
 日本國憲法の施行に伴いまして、個人の尊厳と両性の本質的平等の大原則に則り、民法中身分法の分野において一大改正を加えることとなり、すでにこれが改正法律案を提案を致したのでありますが、由來身分關係に基く家庭内や親族間の紛争につきましても、訴訟制度のもとにおきましては、夫婦、親子、兄弟、親族がお互いに原告、被告として法定に對立し、黒白を争はねばならず、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持をはかるという見地からは、理想に反する遺憾な點があるのでありまして、家庭内や親族間の紛争を理想的に解決いたすためには、裁判官に民間有識者を加えた機關が、訴訟の形式によらないで、親族間の情誼に適合するように紛争を処理することが望ましいのであります。つとに、各方面からかかる要請を充足する制度としてかつまた家庭内や親族間の重大事項について後見指導をする制度として家事審判所制度の設置が要望され、しばしばその趣旨の建議や請願があつたのであります。司法省におきましても、かかる要望にこたえるために、つとにこの家庭内や親族間の紛争と重大事項すなわちいわゆる家庭事件について、審判と調停を行う制度として、家事審判所制度の設置について調査研究を進め、その一環として昭和十四年に家庭事件について調停を行う制度として、人事調停法の制定を見、相當の成果をあげておるのであります。しかしながら、改正民法に從い國民が平和な家庭生活と健全な親族共同生活を営みますためには、この機會に、家事審判所制度を全面的に採用することを必要としますので、ここに本法案を提出して御審議を仰ぐ次第であります。
 次に、本法案の内容とする主要な諸點をあげて御説明いたします。
 第一は、家事審判所は、家庭事件のみを取扱い、その手続も訴訟手続によらないのでありまして、訴訟事件を取扱う裁判所とは、処理する事件及び処理する手続を異にいたしますので、家事審判所を、家庭事件のみを取扱う地方裁判所の特別の支部といたしました。
 第二は家事審判所が取扱う事件でありますが、家庭事件のうち、離婚事件、離縁事件等、その性質上訴訟手続によつて処理することを必要とする事件を除き、それ以外の家庭事件は、すべて審判事件とし、また禁治産事件、失踪事件等、その性質上調停に適さない事件を除き、それ以外の家庭事件はすべて調停事件といたしますとともに、この審判の對象とならない訴訟事件については、調停前置主義をとり、また調停に適する審判事件については、いつでも調停に付し得ることといたしまして、家庭事件はすべて一應家事審判所において処理することといたしますとともに、家庭事件を可及的に關係人の互譲によつて、圓滿にかつ自主的に解決するようにいたしました。
 第三は、審判は原則として家事審判官が参與員の参與によつて行い、調停は原則として家事審判官と調停委員をもつて組織する調停委員會が行うことといたしまして、法律専門家である裁判官と世故人情に通じた徳望ある民間人が一體となつて、親族間の情誼を考慮して、家庭事件を具體的妥當に解決するように措置いたしました。
 第四は、現行人事調停法に比し、調停を強化いたしました、婚姻または縁組の無效事件、嫡出子の否認事件等の調停におきましても、當事者間に合意が成立した場合には、必要な事實を職権で調査した上で、その合意に相當する審判をなし得ることといたしますとともに、家庭事件について調停が成立しない場合には、強制調停をもなし得る途を開きまして、可及的に家庭事件を訴訟によらず、調停によつて処理するようにいたしました。
 第五は、参與員及び、調停員について秘密漏泄の罰則を設けまして、家庭内の秘密が世間に暴露されることを防止して、當事者が安んじてこの家事裁判所制度を利用し得るようにいたしました。
 以上諸點のほか、審判及び調停につきましては、非訴事件手続法を準用して、その手続を簡素にいたしまして、事件の迅速な解決と、費用の軽減をはかりました。
 ただいま申し上げましたのが本法案の概要でありますが、その他の詳細な點につきましては、御質疑に應じまして御説明申し上げます。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#4
○松永委員長 この際お諮り申し上げます。民法の一部を改正する法律案審査のための公聴會における一般申出以外の口述人の選定につきまして、昨日お諮りいたしました結果、ただいままでに委員長の手もとに提出されました御希望によりますと、候補者が多数に上りますので、選定に關し、これから御協議いたしたいと存じます。
    〔速記中止〕
#5
○松永委員長 それではただいま御協議の結果を申し上げますと、
 家督相続問題を、第一穗積重遠君、差支えあるときは、第二中川善之助君。
 親族間扶養を、第一川島武宣君、差支えあるときは、第二來栖三郎君。
 婚姻關係を、第一柳田國男君、差支えあるときは、第二千種達夫君、第三古川源太郎君。
 家督相続を、第一眞野毅君、差支えあるときは、第二中島弘道君、第三塚崎直義君。
 扶養を、第一井上登君、差支えあるときは、第二長谷川太一郎君、第三梅野普吉君。
 婚姻を、第一吉田三市郎君、差支えあるときは、第二佐久間耕逸君、第三水野東太郎君、第四永田菊四郎君。
 家督を、第一立石よしえ君、差支えあるときは、第二田邊繁子君。
 扶養を、第一一柳君、差支えあるときは、第二山本杉君。
 婚姻を、第一神近いち君、差支えあるときは、第二竹内茂代君。
 婚姻を、第一眞杉静枝君、差支えあるときは、第二奧の彦六君。
 以上が学識経験者として特に意見を聴こうとする公述人として選定せられることになりましたが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○松永委員長 それでは以上の諸氏に決定いたしました。
    ―――――――――――――
#7
○松永委員長 次に民法の一部を改正する法律案につきまして質疑を進めます。
中村俊夫君。
#8
○中村(俊)委員 あらかじめお断り申し上げておきますが、もしも私の質問について重複の點がございましたならば、政府委員においてきわめて簡單に御答辯願つて結構であります。まず民法改正案の第一條の「私権ハ總テ公共ノ福祉ノ為メニ存ス」この規定については、おそらく他の委員からも御質問があつたことだろうと思いますが、憲法第十三條によりますれば「せべて國民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する國民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の國政の上で、最大の尊重を必要とする。」という規定になつているのでございまして、私権はあくまでも個人の権利でなければならぬのでございます。しかも憲法第十三條に明定されてありますごとくに、「公共の福祉に反しない限り、」從つて公共の福祉に反する場合はこれは特別の場合でありまして、原則として「すべて國民は、個人として尊重される。」と明定されているのでありまして、從つて私権はあくまでも個人の権利でなければならぬにもかかわりませず、この重要なる新憲法に基く民法の改正法案の冒頭において「私権ハ總テ公共ノ福祉ノ為メニ存ス」という規定は、これは實に時代逆行を示すものではないかと疑われるのではございまして、先般全日本辯護士會竝びに第一東京辯護士會から出されております修正案をまつまでもなく、かくのごとき思想はすでに大部分の学者もこの點において主張されているごとく、むしろこれは共産主義思想が裏づけされているのではないこかと、われわれは考えるのでありますが、なぜかくのごとき「私権ハ總テ公共ノ福祉ノ為メニ存ス」という條項を個人の尊厳をあくまでも根底とさるべき新憲法に基いて改正されるこの民法の冒頭に入れられた趣旨をお伺いいたしたいと思うのでございます。
#9
○奧野政府委員 この點はもうすでにいろいろ議論もありましたのでありますが、司法法制審議會の議決に基づきまして、民事法に關する憲法の改正案の大原則を民法中に明文をもつておくことという決議に基づきましてここに入つたわけでありますが、その趣旨は言いかえれば主権は第一次的には個人の権利であることはもちろんであるが、しかしそれは公共の福祉に反する主権は認めないので、結局それは公共の福祉のために存するのだということを表わしておるわけでありまして、從つて憲法に規定しておりますように、公共の福祉に適合するようにこれを行使しなければならないということが、おのずからそれから流れ出てくる。もつとも主権だからといつて、自己のために認められたものではなくて、すべて公共の福祉のために認められたものであるということを押さえた意味で、ここに明文として表わした次第であります。
#10
○中村(俊)委員 次にお尋ねいたしたいと思つておりますのは、刑法上姦通罪が今の草案としては削除されておるのでございます。おそらくこの民法の改正案も同じ歩調をとつて要綱を定められたものだと考えるのでございます。從つて刑法上姦通罪がなくなれば相姦者の婚姻も自由だという趣旨であるかどうか。
#11
○奧野政府委員 裁判上の離婚といたしましては、刑法において姦通罪が処罰されるかどうかにかかわらず、いやしくも配偶者の一方に不貞な行為があつたときは離婚の原因となることに七百七十條の第一號で定めたわけであります。そこで刑法が姦通罪を罰するようになるか、あるいは全然両方とも姦通罪を罰しないことになるかは、民法としては關知しないところでありますが、かりに本案の建前といたしまして、姦通罪を刑法によつて処罰するようなことになりましても、從來ありましたようにいわゆる相姦者の婚姻の禁止ということはやらないことにいたしました。その理由は相姦者の婚姻の禁止という中には、感情的な相姦者の婚姻を禁止するという復讐的な考えも相當入つておるのみならず、相姦者の婚姻を徹底的に禁止するということになりますれば、もしその間にできた子供のごときものは永久に嫡出子であるということの身分を取得することができない關係になりますので、いろいろ考慮の結果、また不貞の行為ということにいたしました結果、相姦というふうに相手方が必ずしも明白でない場合も考えられますので、いろいろ考えた末、いわゆる不貞な行為のあつたような場合に、その相手方との婚姻を絶對的に禁止するという點はやめたわけです。
#12
○中村(俊)委員 次に未成年者の婚姻の結果成年者とみなされるという規定になつておりますが、先般來の政府委員の御答辯によりますと、婚姻後かりに未成年中に離婚があつても未成年にならないか。依然として成年者としての身分を取得するのだという御意見のように承つておりますが、そうしますと、その結果この改正案の第二節親権の效力というものはなお未成年者が婚姻をしたのち未成年期間に離婚があつた場合に、それが成年に達するまでは、年齢としては未成年でありますが、そういう政府委員の御解釈に基ずけば、その間は、その人にとつて第二節の親権の效力というものが及ばないと、もちろんこれは解釈さるべきでありますが、その點はいかがでありますか、從つてなお改正案の八百二十三條のごとき「親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。」という點も適用ないと了解してよろしゆうございますか。
#13
○奧野政府委員 この前も申し上げたようにその點は七百五十三條の解釈の問題でありますが、われわれとして考えておりますことは、一旦未成年者でも婚姻をすれば成年に達した者とみなされるのでありまして、從つてそれからあとは、離婚をするという場合でも、父母の同意等は要らないことになつてまいり、一たび成年とみなされて一人前と取扱われたからは、離婚してもやはり成年とみなされてしかるべきではないかと考えておりますので、お説のようにその後はやはり親権の行使ということはあり得ないことになる。
また八百二十三條によつて許可がなくなつても職業を営むという解釈になる考えてあります。
#14
○中村(俊)委員 次に改正案によりますと、継父母子關係、嫡母關係が一等親の直系姻族との關係に止まつて、いわゆる親子としての關係が廃除されることになつておるのでございます。これにつきましても御答辯があつたことだろうと思いますが、家というものが廃止された結果、こういう現行法が削除されたのだろうと思われますけれども、一方において養親子關係が認めれれておるのであります。大部分養親子關係は、血でつながつてはいないのであります。これに反して継親子關係、嫡母庶子關係は、いずれかに血が繋がつておるものであります。私の考えから申しますと、民主主義民主主義と言いうものは、だんだんに社会主義的になりつつありまして、それこそ揺りかごから墓場まで、人間の生活というものは保障されなくてはならないものであります。めいめい個々が財産を有するというようなことも、財産なくしても安心して生活ができるようになる。つて、日本の家族制度を全部民主主義の名のもとに廃止されようとする傾向であるのでありますけれども、民主主義は倫理を基調としない限りは、私は健全なる発達は期し得ないと考えております。さらに法律の民主化も、單にこれを社會化する、経濟化するということに止まらず、究極は倫理的な習俗的なものでなければならぬと私は固く信じておるのでございます。從いまして倫理や習俗の問題だからとして、家族生活を軽々しく法律のらち外におこうとするようなことは、法律自身の進化にも、またその民主化にも反する。かえつて保守的な退歩的な舊式な法律關係ではないかと考えるのでございます。從つて家族制度全廢論は、結局民主主義を標榜する反民主主義であるというつまり自己矛盾に陥つておるのではないかと考えるのであります。こういう意味から考えまして、一方において養親子關係を親子關係にしておきながら、他面においていずれかに血のつながりのある継親子關係、嫡母庶子關係を排除されるということはゆき過ぎではないこと思いますが、この點に對する政府の御意見を伺います。
#15
○奧野政府委員 御説のように、從來家というものを前提としてその家づきの子供であるとか、後妻との間において、親子の關係を特に認めていたのでありますが、これは當然親子をを擬制するということは、實はよろしくないのではないか。そこでその關係はちようど從來嫁とその夫の父母、舅、姑との關係と同じ關係において、いわゆる姻族一等親の關係におくことで十分ではないか、家というものをはずした以上、そういう結論になるべきものではないかということで、この案は継親子關係、嫡母庶子關係における親子の關係を擬制することはやめたわけでありますが、お示しのようにその間に自然に愛情が加わつてまいるという場合には、養子縁組の方法によつて、法律上親子の關係を結ぶことができる途は當然に與えられておるわけでありまして、養子することができるなら初めから親子の關係を認めておいてもいいのではないかということも御議論でありますが、やはり初めから當然に継親子關係を親子の關係とするのと、やはり双方の意思の合致で親子の關係を結ぶ養親子關係を締結するということとは、おのずから感じが違いますので、この案におきまして、その他いろいろの理由もありますが、継親子關係、嫡母庶子關係において親子關係を擬制するということはやめたわけであります。
#16
○中村(俊)委員 次に七百五十條についてお尋ねいたしたいと思いますが、これは夫婦間の契約に關する規定であります。これは一例でありますが、昨日ある委員の御質問に對してもお答えになつたと記憶しておりますが、私は具體的に例をあげて、こういう場合はどうなるかということをお尋ねいたしたいと思います。夫婦が結婚のときに夫婦財産契約をいたしますが、その場合に妻が第三者と契約する場合、たとえばダンサーになるとか、女給になるとかいうような第三者と雇傭契約のごとき契約をする場合には、夫の許可を要するというごとき契約をした場合は、これは取消し得るものとなさるのですか、當然無效だとなさるのですか、こういう規定は憲法に反するのか、言葉をかえて言えば、平等の原則に反するとお考えになりますか、いかがかということをお尋ねいたしたいのであります。
#17
○奧野政府委員 その點はおそらく解釈問題として相當な難しい問題になるかと思いますが。いやしくも夫婦財産契約等によつて、いろいろな契約をすることは認めておりますが、それ以外の場合において、両性の本質的平等に反するような契約は、この法律全體の趣旨からいたしまして無效になるのではないか。從つてたとえば妻が他に雇用契約にはいるような場合には夫の許可がなければはいれないというふうな契約を夫婦間において契約を締結するということは、両性の本質的平等に反して無效になるのではないか、そういうふうに考えております。
#18
○中村(俊)委員 次に七百六十七條によりますと「婚姻によつて氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつて婚姻前に氏に復する。という規定になつておりますが、これはもちろん絶對的な規定だと考えられますが、なぜ婚姻前の氏に復さなければならないと定めれたのか、言葉をかえて申しますると、離婚によつて婚姻前の氏に復して舊戸籍に歸るのですが、舊戸籍がすでに戸籍簿より除かれているような場合には、新戸籍が編製されるのでありますから、この場合に婚姻中の氏を稱してもいいのではないか、なぜ婚姻前の氏を稱さねばならないか。また離婚の際子を引取つた場合に、その子供の氏を残しておきたいというようなことがよくございますが、その場合にやはりその子供の氏もかえなければならないのか、私の申し上げることはご了解できましようか。
#19
○奧野政府委員 御説のように七百六十七條は當然に離婚によつて婚姻前の氏に復することにいたしまして、復するかどうか自由であるということにはいたさなかつたのであります。從いまして、もしかりに婚姻前の戸籍が全部除籍になつているような場合には新しい戸籍がつくられるということになるわけであります。
    〔委員長退席、鍛冶委員長代理著席〕
しからば何ゆえそういうふうに窮屈に當然に婚姻前の氏に復することにしなければならないかということにつきましては、やはり離婚しておきながら夫の氏を稱しておるということは、現在の國民感情からいつてぴつたり來ない。そういう意味において、あるいは、保守的なというおしかりを受けるかもしれませんが、現在における國民感情との妥協と申しますか、そういう一般國民感情に基いて、當然復氏ということにいたしたわけであります。
 ただ未亡人のような場合においては、やはり夫の氏を依然稱していくか、あるいは婚姻前の氏に歸るかは自由にいたしておりますが、離婚の場合だけは當然復氏するという建前であります。子供につきましてたとえば連れ子をいたしまして夫の氏を稱せしめた場合に、母親が離婚によつて婚姻前の氏に歸つた場合には、その子供の氏はどうなるかということにつきましては、當然に歸るというやり方をいたさないので、七百九十一條によりまして、その子供がまた母の氏に歸ることができるという途を開いておるのであります。
#20
○中村(俊)委員 氏に關連いたしまして、もう一言お尋ねいたしたいのでありますが、改正民法案は家を廃してこれにかえる氏をもつて親族団體の統合をはかるとされておるのでございますが、この條文を見ますると、氏の変更は縁組と婚姻等の場合にのみ限られておるように思われるのでありますけれども、われわれがこの改正案が発表されていろいろ質問を受けますときに、常に戸籍面におきましても、また民間一般社會におきましても、現行の親戚入籍、あるいは引取入籍というような制度がどうしてもなければ、今過渡期におけるわが國におきまして、この氏の変更の問題が非常に大きな影響を與えるのであります。たとえば離婚の際、母の氏を稱せしめた子を後日父の氏に変更せしむるとか、父母が子供の縁組先の氏に変更するとか、子の配偶者と扶養義務關係が生じますが、そういうような変更によつて氏をかえるというようなことを認められるような、弾力性のある氏の変更を政府としては認められるような意思はないのでありますか。言葉をかえて申しますと氏の変更はこの改正民法の規定にあります通り、縁組と婚姻等の場合にのみ限られるという原則を維持されていかれるのでありますか、どうですか。
#21
○奧野政府委員 お説のように親族入籍、引取入籍というのは、大體家を前提とした規定でありますがゆえに、それはやめたのでありますが、ただいま御指摘のような場合には、この改正案の七百九十一條で、広く子が父または母と氏を異にする場合には、子は家事審判所の許可を得て、その親の氏にはいることができるのでありますから、大體においてこれによつて賄い得ると思います。
#22
○中村(俊)委員 次に庶子の名稱が今しようし、離婚訴訟は起きないでありましようし、また配偶者の生死が三年以上明らかでなくとも、また配偶者が強度の精神病にかかつておりましても、まだ夫婦生活を続けて行こうという意思がありますときは、こういうことは問題にならないのでありますか般廃止されるのでありますが、その相続人はこの改正案の九百條の第四號にあります通りに、父母双方に對して嫡出子の二分の一とされておるのであります。從つて適法婚姻より生まれた子供と平等の待遇を受けておりません。これは憲法と原則である個人の尊厳と平等の立場からどうであろうかと考えるのでありますが、御意見を承りたいと思います。
#23
○奧野政府委員 その點もいろいろ語論があつたのでありますが、やはり正當の婚姻を重んずるという建前から、そういう結果になつてもやむを得ないのではないか。
    〔鍛冶委員長代理退席、委員長著席〕
それからまた嫡出でない子に相続権を與えるかどうかということも現在法律によつてきめ得ることでありますから、嫡出でない子供に嫡出である子供の半分の相続権を與えるということも、これは必ずしも憲法の平等の原則に反しない。たとえば配偶者を相続人のうちに加えるかどうかということも、法律をもつて初めてそういうことになるわけでありますから、嫡出でない子供を相続のうちに加えるかどうかということ事體が、やはり法律に留保されてしかるべきであるという議論から、やはり正しい婚姻の子供を――正しい婚姻を尊重するという思想と、今言つた考えと両方の考えから、大體現行法のように嫡出でない直系卑属の相続人に半分ということにいたしたわけであります。
#24
○中村(俊)委員 次に相続する収支均分相続制について一應お尋ねしたいと思います。先般もこの點についていろいろと質問があり、さらに政府委員からお答えがあつたのでございますが、今般別に農業資産相続特例法というものがおそらく法律案として出されることと思うのでありますが、この収支均分制にいたしました結果、不都合を生ずることは必ずしも農村のみではございません。たとえば特許権に關する相続権あるいはのれんに對する相続権のごとき、商業、工業につきましても同じように不都合の點が多々生じてくるだろうと思います。從つて私は農業に限らず、家産――ホームステッドという言葉を使つておるようでありますが、これは一種の財団の性質を帯びておると私は思うのでありますが、これを経濟経営單位として、特にこれに對する相続について、あるいは過去の慣習によるとか、あるいはその他適當な、言葉をかえて言えば不都合を生ずることのないように、農業に限らず、いわゆる家産、これは経濟経営單位という言葉を使えるようでありますが、こういうものをひとつ認めておいて、そうしてそれに關する相続については、適當な規定を設けて、家産分散に對する不都合を防ごうというような御意思はございませんか。お尋ねいたしたいと思うのであります。
#25
○奧野政府委員 農業資産については、お説のような新しい法案を作ることになつておありますが、その他の相続財産につきましては、現在のところそういう計畫をいたしていないのでありまして、大體においてやはり分割を禁止する。遺言あるいはまた家事審判所の審判で遺産の分割禁止もできますし、また分割の方法いかんによりましては、1人に経営をせしめ、他のものは債務の形で分割を受けるということもできますし、そういうような運用で大體は適當な結果が得られるのではないか。ところがそれでもなおいろいろ實施の曉において支障があるというようなことになりますれば、ただいま仰せのようなことについても、今後十分研究していきたいと考えております。
#26
○中村(俊)委員 系譜、祭具及び墳墓の相続に關してお尋ねいたしますが、改正法によりますと、これすら放棄ができるようになつておるのでございますが、特に農村、漁村、いわゆる都會以外のところでは、系譜であるとか佛壇であるとか、墓であるとか、そういうものに對する執著は、われわれのとうてい想像できないほど濃厚なものであります。從つてこの系譜及び祭具に對する相續のごときは放棄を許さぬというような制度をおきめになつた方が私はいいのではないか。言葉をかえて言えば、あるいは場合によつては、佛壇が宙に迷うというようなことも決してまれでないと思います。収支均分制の結果そういうことが都會においても、地方においても起るであろうと思いますので、この系譜、祭具及び墳墓の相続のみは放棄ができないというような規定が特に必要なのではないかと考えられますが、いかがでありますか。
#27
○奧野政府委員 一般に相続の放棄ということは認めておるのでありますが、この系譜、祭具の所有権は、相続財産の中にはいらないという考えでありまして、從つて正面からいつてこれらの放棄ということを認めておらないわけでありますが、しかし一般財産権でありましようから、一般の原理に基きまして、所有権の放棄というようなこともなし得るかとも思いますが、おそらくいろいろそういう必要のある場合、たとえば一人娘であつて先祖の位牌、佛壇をもつておつて、それがどこかへお嫁に行きたいというような場合、佛壇をもつてお嫁に行くということもいかがかというふうな場合に、それをさらに第三者に承継して、そのまつりを見てもらうというふうな方法で、それが承継されていくのではないかと思うのでありまして、おそらくそれを放棄するというようなことはあるまいかと考えておる次第であります。
#28
○中村(俊)委員 次に生存配偶者に對する相続分の關係をお尋ねいたしたいのであります。これは一律に規定されておるのでありますが、ひとしく生存配偶者と申しましても、あるいは婚姻の期間、先に死んだ配偶者への協力の大小、再婚の期待の多少、あるいは固有財産の大小、實子その他扶養義務者のあるなし等について千差萬別でありまして、さらにまたこれが一律で規定されてありますので、あるいは結婚の神聖を害するということが起こり得るのではないかとも考えられるのでありますから、いま少し生存配偶者の相続分については、幅をもつた相続分のされ方をするのがいいのではないかと考えるのでありますが、いかがでありましようか。
#29
○奧野政府委員 御意見ごもつともでありますが、各場合場合についていろいろに規定をし、たとえば家事審判所等で、それらの今仰せになつたような事情を斟酌して相続分をきめるとうようなことも、一つの案かと考えますが、それはあまりに具體的な場合について、紛争の種を蔵しておるように考えられますので、一應はやはり畫一的にきめたわけで、その結果婚姻の長短等によつて、實質的に不都合な場合の起こることも豫想されるわけであります。もつともそういう場合には、もちろんこれには遺留分の制度もありますが、遺留分を減じない限度において、適當に遺言というふうなことで、その不合理を是正してまいるよりしかたがないというふうに考えて、一應畫一的に本案は規定した次第であります。
#30
○中村(俊)委員 最期に遺言に關する點でありますが、御承知の通り、今までわが國においては遺言、殊に要式行為を要求されておる民法上所定の遺言というものを履行する人々が非常に少いのであります。御承知の通り、まくらもとでいわゆる遺言という、何ら法理上效果のない遺言というものはなされておりますけれども、民法が要求しておるところの正式の遺言をつくることは――私は日本の缺點じやないかと思いますけれども、外國のように正式の遺言をつくるということが非常にまれなのであります。しかしながら、今後いろいろと民法の大改正によりまして、遺言というものが非常に大きな役割を演ずるのであります。從いまして私は、特にこれは希望になるのでありまするが、この法案が通過いたした後には、政府といたしましては、適當な方法をもつて、國民全體に遺言というものがいかに大切であり、しかもそれが今後非常に有用に行使されるべきものであるかということを、周知させる方法をお講じ願いたいと思うのでありまするが、これに關連いたしまして、この遺言の中で、署名捺印というものを拇印でもよろしい。つまり言葉をかえて申しますれば、遺言というものをながながめんどうくさがつてやられないが、この遺言は重大性を帯びてきたので、遺言をできるだけ簡略にいたさしめる方法から考えまして、この署名捺印を拇印にかえるということをはつきりと明文で書いていただいた方がいいのではないかと私は思うのでありますが、依然として今度の改正には署名捺印ということを書かれております。適否を言うのではありませんけれども、遺言が今後重大性を帯びる以上、できるだけ一般の人々に簡略に作成せしむるという意味において、しかも拇印というものは、おそらく――これは法令でも決められておるものでありますけれども、私は一般の印鑑よりもその模倣性のないことは議論のないところでありますから、むしろ拇印というものを重要視された方がいいのではないか。殊に遺言などのごとき特殊な場合において、あくまでも署名捺印ということを要求されずに、拇印も場合によつては可なりという趣旨の規定も加えられておつた方がいいのではないかと考えられるのであります。御意見を聴かせていただきたいと思います。
#31
○奧野政府委員 お説のように、從來は家督相続一方でありましたので、遺言というようなことについて、ほとんど關心をもたれていなかつたのでありますが、今度は共同相続を原則とすることになりまして、從つて遺言ということも、よほど重要な役割をもつことになりましてので、この共同相続關係及び遺言のやり方というようなことについては、これは今後根本的に研究をいたさなければならない問題であろうと思います。お説のように、現在の遺言が非常に厳格でありまして、これを守ることは普通の人にはなかなかむずかしい。法律家でなければ遺言がやりにくい憾みはあるのであります。と申しまして、あまり簡單にすぎることは、慎重なるべき遺言の制度ともいろいろ調和して考えなければならない點がありますので、御趣旨の點に對して、この次の根本的改正の際には、大いに研究致したいと思います。
#32
○松永委員長 午後一時まで休憩いたします。
    午前十一時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十一分開議
#33
○松永委員長 休憩間に引続き民法の一部を改正する法律案に關する質疑を継続いたします。
#34
○榊原(千)委員 第七百三十條の「直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。」という條文がございまして、これに對しましての同僚の佐瀬委員の御質問に對しまして、政府委員は、これは道徳的な規定のようなものであるが、あえて民法にこれを掲げることもよいだろうというような御趣旨から、ここにお示しになつたというふうに御説明になりましたが、そういうわけでございましたならば、かえつてお除きになつた方がよいのじやないかと思うのでございます。道徳的また人道的な立場に立ちますと、同居の親族のみならず、その家に長くばあやとして、女中として、あるいはその他の關係においてその家のために盡くしてくれた人々に對しても、お互いに助け合わなければならないというようなことはあたりまえだと思うので、そういうような意味合から、むしろこれはない方がよろしいのじやないかと思いますが、いかがでございましようか。
#35
○奧野政府委員 これはこの前にも御説明申し上げましたように、このたび家の制度をやめるということになると、いかにも從來の實際の家庭生活、親族共同生活の實際の生活をも否定するがごとき誤解を招いてはいけない。從來の實際のわが國の美風である親族共同生活を営んでおる家庭生活というものを維持するべきものであろうというようなことを、民法の中に織りこんではどかということを法制調査會あたりが決議になりましたのを、ここに取入れたのでありまして、こういう法律的な拘束力のないいわば道徳的な規範を、法律というふうなものの中に規定するのはよろしくないというお考えも、一つのお考えかと思うのでありますが、いろいろな何というか、そういう方面の要望等、いろいろ各方面の調和、妥協というような意味で、これがはいつてきたというようないきさつになつておるのでありまして、厳格な意味から言いますればあるいは法律手続に中にそういつたような道徳的規範をいれるということはおもしろくないという考えも、一つの理由かと思いますが、一應政府案といたしましては、こういういろいろな要望を取入れて、ここに加えたというふうに御承知を願います。
#36
○榊原(千)委員 第七百四十二條の第二號の「當事者が婚姻の届出をしないとき。但し、その届出が第七百三十九條第二項に掲げる條件を缺くだけであるときは、婚姻は、これがために、その效力を妨げられることがない。」この但書のそのあとの意味が明瞭でないように思いますが、御説明を願いたいと思います。
#37
○奧野政府委員 第二號はこの前申し上げましたように、よくわからない規定で、届出主義をとつておる以上は、届出がなければ婚姻は成立しないのでありますから、ほとんど意味がないようでありますが、ただ二號の但書を引出す意味で二號全體が意味があると言われておるわけでありまして、要するに届出ということにおいて效力を生ずる。その届出の要件に缺けた場合があつても、すなわち七百三十九條のいわゆる證人等の署名というふうなものがなくても、これをもし受付けて受理されれば、その婚姻が有效であるかというふうに解釈しております。
#38
○榊原(千)委員 第七百六十條の「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分擔する。」という條文がございますが、これは實質上は妻は家にあつて、家庭のいろいろな事柄を処理しておりまして、自分みずから働きに出ましてお金をもうけるというようなことがございませんでしたが、こういう條文をお入れになることは、その意味でおかしいのではないかと思いますけれども、どういうふうにお考えになりますか。
#39
○奧野政府委員 御承知のように、從來は夫のみが婚姻によつて生ずる費用を負擔することになつております。もつとも女戸主の場合には女が費用を負擔することになつておりますが、夫婦平等という原則を立てます以上は、夫のみが、あるいは女戸主のみが費用を負擔するということは、やはり夫婦の平等ということに牴觸するのではないか。すなわち夫婦間の婚姻の費用というものは、結局双方で分擔する。もつとも双方で分擔するからといつて、二人が半分半分分擔するということは實情に副わないので、多く夫が働き女が内助の功をするというようなことで、男が収入を得るというような場合は、自然その収入に應じて男が負擔するということになりましよう。しかしまた女の方が非常に資産家であつたような逆の場合もありましよう。要するに夫婦で分擔するということ、しかしそれは平等に分擔するということは適當ではないので、やはりそこはお互いの資産、収入を考慮して、要するに共同に負擔すべきものだという趣旨であります。
#40
○榊原(千)委員 第七百六十一條の「夫婦の一方が日常の家事に關して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。但し、第三者に對し責に任じない者を豫告した場合は、この限りでない。」という條文がございますが、日常家事に關しまして、たとえばにんじんを買つたり、ごぼうを買つたりすることに對して、第三者に對して責に任じない旨を豫告した場合はこの限りでない、こういうような但書は不必要ではないかと感じられますが、どういうふうにお考えになりますでしようか。
#41
○奧野政府委員 御承知のように、今までの法律では、妻は日常の家事に關しては夫の代理になるとみなされておるのでありますが、これは夫婦平等の原則からいきますと平等でない書き方であるので、これを改めて、夫婦の一方が家事に關して法律行為をしたときには連帯して責に任ずるというのが、七百六十一條の本文であります。しからば但書の場合はどういう場合であるか、その必要がないのではないかというお話でございますが、たとえば女が衣類をどんどん買うというふうなことも、結局日常の家事に關する法律行為と見て差支えないと思うのでありますが、そういう場合に、夫が連帶責任を負うということでは困るというような場合に、その呉服屋なら呉服屋、百貨店なら百貨店にあれを賣つたて責任がないというようなことを豫告した場合には、連帯の責任がないという趣旨であります。
#42
○榊原(千)委員 續いて七百六十二條「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。」という條文がございますけれども、「婚姻中自己の名で得た財産」という意味はどういうものでございましようか。
#43
○奧野政府委員 たとえば婚姻中妻がほかの人から贈與を受けるとか、あるいは妻が特にほかの仕事によつて月給を得たというふうに、自己の名で得た財産は共有にならないでその人の特有の財産になるという意味であります。
#44
○榊原(千)委員 その様な場合、妻が他から贈與を受けるというような場合は極めてまれでありまして、原則といたしましては、夫が外に出て働いてそうして収入を得て歸るのでありますけれども、そういうものはすべてその夫の特有財産となるのだろうと思いますがが、いかがでしようか。
#45
○奧野政府委員 いずれか明らかでない場合は、また共有に推定をいたしますが、はつきり男の方が収入を得て、男の名前で預金をしておるというような場合は、これは男の特有財産というふうに見ております。もちろんその収入に應じて費用の負擔はおのずから夫にもありましようし、また離婚のような場合におきましては、財産分離といようなことになつて、結局その間の調和をはかつておるわけであります。
#46
○榊原(千)委員 そういたしますと、はつきりとした夫名義による月給などはすべて夫の特有財産となるのでございますけれども、家庭における妻の労働無くしては、また妻の内助の働きなくしては、ほとんど夫は外へ出て安心して働く事が出來ないのでございます。その場合における妻の家庭労働、これは今日の労働力などで見積られますと、あるいは夫が二千圓かせぐに對して妻の家庭内における労働力が三千圓くらにも見積られるものだとある人は言うのでございますけれども、そういう家庭における妻の労働力に對しては、どういうふうに見ていらつしやるのでございましようか。
#47
○奧野政府委員 夫婦の財産はやはり夫婦の協力によつてでき得るというふうに見るのが適當であります。もつともそういう場合に、男が事業なり、あるいは労働力によつて俸給なり収入を得た場合に、はつきり男の名において取得しておるものは、これは夫婦財産の共有制をとらない以上はやはり別産制をとらざるを得ないので、本案は原則として夫婦別産の制をとつたのであります。ところがただいまお話のように、男の財産といえども、女の内助の功によつて得たものと見るのが適當であるのでありますから、もし夫婦が別れるというふうな場合においては、先ほど申しましたように男の方から女に對する財産の分與というような制度を認めておりますし、また男が死亡して相続を開始したという場合には、妻は必ず第一順位において三分の一の相続分によつて常に相続人になるということにしましたわけは、やはり夫の財産というものは妻の協力を得たものであるという前提のもとに、一種の分割という意味で、相続についても、あるいは離婚の場合について妻もの位置を非常に高く評価しておるわけであります。
#48
○榊原(千)委員 そういう場合にもう少しここに具體的なるものが表されませんと、離婚の場合におきましても、いつも女が損をするというような立場に立ちはしないかと思うのでございます。婚姻中における財産の分割方法、持分というものが規定されておりました方が、離婚などの場合においても、妻の立場が守られることになりはしないかと考えるのでございますが、いかがでございましようか。
#49
○奧野政府委員 持分をはつきりきめるということは事實上なかなか困難であります。そこで結局夫婦が仲よくやつておる間は、まあ別にそういう點についても問題が起るわけでもなく、お互いに夫婦生活を営んでおるのであるから、その點について、むしろ半分は云々というふうなことを規定しなくても、問題は、夫婦わかれをするような破目に陥つた場合に問題が生ずるわけでありまして、この場合には、先ほど申しましたように、財産の分與の請求ができる、しかもその分與はどういう標準できめるかということにつきあましては、七百六十八條に規定を設けておりまして、特にその末項におきましては、家事審判所がそれをきめる場合に、當事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分與をさせるべきかどうか、竝びに分與額及び方法を定めるということになつておるので、これに對しても夫婦の財産は當事者の協力によつてできたものであるということを暗黙の前提にいたしておるわけであります。
#50
○榊原(千)委員 このことにつきましては、されにまた後に御質問申し上げることにいたしまして、續いて第七百六十七條「婚姻によつて氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によつて婚姻前の氏に復する。」これは先ほど中村委員も御質問になりましたけれども、協議上の離婚をいたします場合には、絶對に平等な立場にたつておるものと考えられます。殊に妻の場合にいたしましても、もう幾年が婚姻中の氏によつて生活し、またその氏によつて活動をしてきまして、その氏が社會的にも相當に大きく働いておりますときに、これをまたもとの氏に返すことによつて非常な損をする場合があるのでございます。たとえば代議士などに出ておりまして、もう婚姻中のその名前によつて世間に名が通つておりますときに、離婚をしたことによつて、またもとの氏に歸らなければならないということは、ある意味では影響が大きいのでございますけれども、婚姻前の氏に復歸することができるというふうにお改めになつていただくことはできないものか、お伺いいたします。
#51
○奧野政府委員 あるいは特殊な場合において、そういう實情もあろうかと思いますが、どうも一般國民感情といたしまして、これは妻の場合だけではなく、夫が妻の氏を稱した場合も前の氏に復氏するということになつて、これは平等の建前であります。しかし多くは女の方が男の氏を稱する場合が事實上多かろうと思いますが、夫婦わかれを正式に離婚をしておきながら、やはり女が男の氏を稱しているということは、どうも現在における國民感情としては、やはり大多数の人の考えとしては不自然なのではないだろうか、まだ婚姻が継続しているのか、あるいは婚姻が解消しているかということが、第三者にとつてやや惑わしいことになるのではないか。この點についてはドイツ等の立法例におきましても、場合によつては離婚後も夫の名を稱することができる制度があることはありますが。しかしそういう場合でも、もし妻が重大な過失がある場合は、夫の方から夫の氏を稱することを禁止することができるというふうな規定がありまして、そうなると複雑な關係を生じてくるので、實は氏というものにはそれほど重きをおかないで、家に代つて氏が家族生活を支配するというような誤解を招いては非常に困るのでありまして、いわば人の符牒といえばあまり卑近になりますが、人を認識する標準でありますので、あまりにそれにこだわつて規定をいたしたくなかつた感じなのであります。それかといつて全然氏の點を民法に觸れないというのもいかがかと思いまして、なるべく簡單に少く氏の關係を民法の中に取入れたわけでありまして、そういうわけで大體現在における社會感情といたしましては、婚姻で氏を改めた結果は、やはり離婚になればもとの氏に復するというのが穏當ではないかと思つて、こういう規定にいたしたのであります。しかしこういう點はすべてのこの委員會において、もしそういう例外の場合を認める方がよろしいということでありますれば、十分その點御協議願いたいと思います。
#52
○榊原(千)委員 第七百七十條でございます。裁判上の離婚の問題についてでありますけれども、第三項の「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。」ということがございますが、三年以上というのは、どういう根據からおきめになつたことでございましようか。
#53
○奧野政府委員 これは現在の八百十三條の第九號に「配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ」という規定をそのまま踏襲したのでありまして、おそらくこれは失踪宣告にならない。失踪宣告の場合は通常七年間分明ならざるときは初めて失踪宣告ができる。三年では特殊の場合でなければ失踪宣告の請求ができない。しかし三年間も生死わからず死亡したかもしれないと思われるのを拘束しておくということは適當でないという考えから、おそらく三年以上ということをとつたものと考えられます。
#54
○榊原(千)委員 三年以上何の音信もなくて捨てておかれるということは、ある意味において苦痛なことだと思われるのであります。そして現民法がきめられましたときとは、大分世の中の事情も変わつておりまして、交通事情なども、昨日の日本タイムスには三日で世界を一周したというような記事が出ていました。そういう時代になつておりますので、これはもう少し年限を少なくしても差支えないのではないかと思うのです。今の時代に三年も消息がわからないなどということは、ほとんど考えられないことだと思いますけれども、いかがでございましようか。
#55
○奧野政府委員 失踪宣告のうち、普通の場合は七年それから戰地に臨むとか、あるいは沈没船におつたというような場合は、三年で失踪宣告ができるということになつておるので、その少い方の三年というのをとつてまいつたものであろうと推測しますが、今お示しのように、こういう交通機關の発達しておる時代に、三年も夫婦關係を束縛しておくことはよろしくないではないかとう御意見もごもつともと思います。しかしおそらく死んだであろうと、とうてい歸つてきそうもないということが明らかでありような場合は、おそらくこの七百何十條の第五號等を活用して、婚姻を継続しがたき重大な事由があるものとして、離婚の請求がおそらく實際の運用上できるようになるだろうというふうに考えております。
#56
○榊原(千)委員 私はむしろ第三號において年限を少くし第二號においてそれを適當に考慮した方がよいのではないかと思うのでございますが、いかがでしようか。
#57
○奧野政府委員 そういうことも、一つの案かと思いますが、この委員會でよく御審議願いたいと思います。
#58
○榊原(千)委員 第四號の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき。」というのがございますが、なぜただ精神病に限つたのでございましようか。たとえば癩病なども非常に苦痛な問題でございますが、いかがでございましようか。
#59
○奧野政府委員 これは外國の立法例等も差上げてありますが、それにはいろいろな離婚を列挙しております。精神病以外の病気等の場合でも、婚姻を継続しがたき重大な事由があると認められる場合には、もとよりその規定によつて離婚の原因になろうかと考えますが、これはいわば例示的なものでありまして、四號は一つの例を示したのにすぎないのでありまして、それが結局五號にいつてその締括りがあるわけでございます。そういうわけで、ひとつの例示にすぎないこととご了解願いたいのであります。
#60
○榊原(千)委員 今度協議離婚などが認められまして、離婚の事由が保障されるように至つたかと思いますけれども、たとえば一方にもう愛情がなくなりましても、他の一方は依然として婚姻生活を續けていきたいというような場合、すでに一方において夫婦生活をしていくだけの愛情がなくなつたというようなときには、第五號の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」の中に含まれて離婚することができるのでございましようか。いかがでございましようか。
#61
○奧野政府委員 それは具體的な場合にいろいろ違つてまいるかと思います。たとえば婚姻を継続していく愛情がもうなくなつたといつても、場合によつてはまた愛情が回復することも豫想されますし、これは具體的な場合において決定さるべきもので、一概に一方に愛情がなくなつたからただちにこれによつて離婚の請求の原因になるというふうに断定はいたしかねると思います。
#62
○榊原(千)委員 これは結婚生活をする者にとりましては重大な意味をもつものだと
思うのでございます。たとえばもうこれ以上この人と一生にいたのでは、自分の才能も伸びないし、また趣味も違う。いろいろな角度からいつて、知性においても差異がひどいし、とうてい愛情をもつこともできないというような場合に、それが自由に離婚出來るようにしておいていただきませんと、余儀なくしてそこに姦通罪というようなものが現れるのじやないかと思いますから、このことをもう少しはつきりと御答辯を御願いしたいと思います。實は今までの法律におきましては、絶對にそういつたような意味での離婚の事由というものがなかつたのであります。この點をお伺いしたいと思います。
#63
○奧野政府委員 この點は一概に申し上げることは、いろいろ差障りもあろうかと思いますが、要するに各場合場合によつて、そういう場合に婚姻を継続しがたい重大な事由があると、結局は裁判所がいろいろな事情を調べて見て、納得されるような状態であれば、離婚の原因になるということができますが、單に一方の愛情が無くなつたという抽象的なことをここに規定するということは、そうただちに抽象的に断定はいたしかねるというふうに思われます。
#64
○榊原(千)委員 すべてここに掲げられております離婚原因は、ある意味では夫婦生活を續けていく意思がなくなつたと見て差支えないのではないかと思うのであります。配偶者に不貞な行為があつても、まだそこに愛情が残つておりますときには、おそらく離婚というものを願い出ないでありましようし、離婚訴訟は起きないでありましようし、また配偶者の生死が三年以上明らかでなくとも、また配偶者が強度の精神病にかかつておりましても、まだ夫婦生活を續けて行こうという意思がありますときは、こういうことは問題にならないのでありますから、すでに一方においてその意思がなくなつたものと考えられます。すでに結婚生活の重大なモメントであるところの、そういう愛情がなくなつたりいたしました場合に、裁判所が第二項におけるごとく強制しても、それはむしろ第三者的なものが介入することになるおそれはないかと思うのでありますけれども、どういうふうにお考えでありますか。
#65
○奧野政府委員 この七百七十條の離婚の訴えは、この條文では裁判所が扱うことになつておりますが、一方家事審判法をご覧になればわかりますように、こういう事件は一應その前に調停にかけなければならない、いわゆる調停前置主義をとつておるのでありまして、こういう場合に訴訟が起きても、裁判所はまず調停を試みるということになつておりますので、そういう場合に、一應惡意で遺棄されたような場合であつても、あるいは不貞な行為があつたような場合でも、いろいろそこで話し合つて、裁判所なりあるいは調停委員なり、あるいは審判官等が關與して、お互いの心をよく話し合つて、いろいろ誤解を解くというふうなことで、また一應は表面的にはこういう事實があつても、結局またもとのさやに収まるということも考え得るのでありまして、形式的に一旦一時の迷いで不貞ない行為があつたとか悪意でしたというような場合であつても、場合によつてはいろいろな事實を斟酌して、婚姻継続を相當とするような場合があろうかというふうに考えますので、第二項をおいたわけであります。
#66
○榊原(千)委員 ともかくも第五號の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」というところにおいて、すでに一方にもう結婚生活を續けていく意思を喪失したものに對しては離婚の事由を何とか認めていただきたいと思います。そうでないと、つい姦通という不貞な行為を起し得る原因がここに醸成されるだろうということを憂慮するのであります。
 それから續いて「嫡出でない子は、母の氏を稱する。」という第七百九十條の第二項でございますが、これに關連いたしまして、婚姻中の妻と他の男との間にできました子供は母の氏を稱するとの申しましても實は母の氏というようなものはないのでございます。
#67
○奧野政府委員 婚姻中にできた子供は父母の氏を稱するのでありますが、婚姻してない女にできた、嫡出でない、父母の同意をしないものは女親の氏を稱する。もつともこの場合に父親がそれを認知いたしますれば父の氏を稱するように変更することは同じ七百九十一條でできることになつております。
#68
○榊原(千)委員 もしも婚姻中の妻が夫でない男の子供を産み、それが當然父母の氏を稱する。これが嫡出子の地位に立ちましたときに妻が夫の子でない、他の男の子であることをみとめてもらいたいというような場合に、どうしたらよろしゆうございましようか。夫の子供でないことを保証してもらいたいような場合は、どうなるものでございましようか。
#69
○奧野政府委員 それは男の方が自分の嫡出子であることを否認することによつて、男の子でないということが確定します。しかしこの場合は夫婦同じ氏を稱しておるわけでありますから、母の氏といつても結局その父と推定されておつた氏と、母の氏が同じであるということでありますから、この場合は一應は母の氏、すなわち父母の氏ということになりましよう。しかしさらにその子供が、ある他の男の子であるということがはつきりいたしまして、その者から認知をするというふうなことで、その他の父親が明確にできていつた場合においては、その父の氏を名のる途もあるわけであります。
#70
○榊原(千)委員 たとえば婚姻中であつても、實際において婚姻生活をしていない場合に、他の男の人の子供ができまして、それが成長いたしますと、實は嫡出子となつて夫婦の戸籍面には現れると思いますが、そのとき子供に對する親権というものが、本當の父でない夫の籍にありますというと、非常に困る場合があるのじやないかと思いますけれども…。
#71
○奧野政府委員 それは一應は婚姻中に懐胎した子供は、その夫婦の子供、いわゆる夫の子供と推定されるわけでありますが、先ほどから申したように、夫は自分の子ではないということで、否認することができる。否認すれば、先ほど言つた結果になりますが、なおそれが否認をしないで成長した場合はどういうことになるかということではありますが、おそらくその事實關係は証明がますます困難になろうと思いますが、この場合にはほんとに夫の子でないということが、何らかの証明によつてきわめて明白であるというようなが場合は、親子關係が存在しないという、非存在確認の訴訟というふうなことも、父との間においては起し得るではないかというふうに考えております。そういう判決が確定いたしますれば、やはり戸籍の訂正をし、さらにほんとうの父の氏を稱する途もあるわけであります。
#72
○榊原(千)委員 次に財産相続の問題についてであります。今度は均分相続ということになりましたが、もしも兄弟のうち、三人までは一人前に成長し、また学校も出ておるが、あとの一人はまだ学校も出ていないという場合、財産が均分化されましたのでは、實は均分でないと思いますけれども、そういう場合はどんなふうになるでしようか。
#73
○奧野政府委員 その場合は九百三條で、おそらくそういう学資のようなものも、やはり「生計の資本として贈與を受けた者」という中に含めて考えていいのではないかと思います。從つて、相続分の計算の面において、すでに出してもらつた金を考慮に入れて、計算をやつていいのではないかと考えております。
#74
○榊原(千)委員 第六章の扶養の問題でございます。八百七十七條には「直系血族及び兄弟姉妹、互に扶養をする義務がある。」ということがありまして、それからそれがすべてうまくいかなかつた場合は、家事審判所が何でも取扱うことになつておりますけれども、實はこの扶養の義務というものは、わが國の家族制度を支えておるところの大きな柱であると思うのでございます。そしてそれがいかに國民生活の上に暗い影を投げかけておるかということを私は考えるのであります。この法律からよいものが生まれてこないのではないかと思うのであります。たとえば今後はおそらく隠居制度もなくなりまして、死ぬまでめいめい財産をもつておるでありましようし、死ねば財産は配偶者にまずわけられ、そして兄弟には均分されるのでありまして、その意味からも、こういう扶養の義務というような法律的なもので、お互いを拘束し合うということは、新憲法の精神からも、どんなものかと考えるのであります。血で血を洗うような裁判沙汰というものは、今日までも多く扶養の義務に關してであつたということであります。たとえばこのような法律がありますために、わが國には社會制度、社會保障というものが発達しませんでしたし、現に今度の戰争のような場合におきましても、いかにこういうものが見えざる拘束となつて、そうして實は國家が世話すべき多くの引揚者、戰災者、復員者などが、縁故關係に追いやられまして、自分の一家さえ支えることがやつとこさの無力な家庭の人たちが、こういう多くの人々を引き受けて、そうしてお互いに苦しみ合つておるというような事實もあるのであります。私はこういうようなことこそ、お互いの愛情によつて処理されなければならんらい問題ではないかと思うのでございますが、いかがでありましようか。
#75
○奧野政府委員 扶養の關係が非常に重大な問題であることは御指摘の通りであります。ただ現在扶養に關する訴訟事件は、きわめて少いのでありまして、實際は扶養の規定はあるけれども、これを活用して扶養の請求ということは、事件としては非常に少いのであります。今後どういうふうなことになりますかは、ちよつと豫測がつきませんが、從來直系血族、兄弟姉妹のほかに、配偶者の直系尊属との間に扶養の義務が法定されておつたようでありますが、そういうように畫一的に必ず自分の配偶者の尊属を見なければならないということにいたすことはいかがなものであろうかということと、竝びに從來の法律におきましては、その扶養の義務の順序、あるいは扶養の権利者の順序等が、すべて法律で畫一的に順序がきめられてあり、また扶養もきわめて生活ができないような場合に限つて扶養しなければならないということに限定しているようなこともあり、その他扶養の規定があまりに畫一的主義で、實際の親族共同生活というようなものに適合しない憾みがあり、また同じ意味におきまして、全然親族血族關係において扶養の義務を否定するということは、これはできないものではなかろうか。わが國としては、やはり親族共同生活によつて、相寄り相助けていつているのが、わが國の一つの美風であつて、これを否定すべきものではなく、從つてお互い金のあるものが金のないものを助け合つていくという點は、これは否定さるべきものではない、ただ扶養の順位とか、あるいは程度方法等について、あまりに法律で縛つていくことは適當ではないのであります。その點改正案におきましては、家事裁判所に相當権限を広く與えまして、實情に應じて―法によつて順位がきまつておつても、實際の資力等を勘案しまして、適當に、また扶養の程度方針等につきましても、相當家事審判所が實情に即して、扶養の關係を処理していく。しかも家事審判所が關與する前には、必ず一應當事者の間において協議を進めるというやり方にいたしまして、實際に親族共同生活の美點を、できるだけ維持したいということにいたしているわけでありまして、また親族間で相助け合おうというようなことを認めておりますから、國家あるいは社會施設による生活保護というような設備が組まれておるというようなことも、あるいは一つの眞相かと思いますが、この親族間の一つの扶養の義務を認めると同時に、大いに社會國家の公な施設において、扶養、生活の保障をしていくということは、両立せしめて進めていくべきではなかろうかというふうに考えたのであります。
#76
○榊原(千)委員 今政府委員會の御答辯を伺つておりましても、扶養の権利者あるいは義務者の順位、あるいはその程度とか、いろいろなことを法律で規定になつたのは、ある意味では私はこの扶養の義務というものが揺ぎ出したのではないかと思うのであります。實際に世の中の傾向というものは、だんだんに社會主義的になりつつありまして、それこそ揺りかごから墓場まで、人間の生活というものは保障されなくてはならないものであります。めいめい個々が財産を有するというようなことも、財産なくしても安心して生活ができるようになるというふうに、世の中は向つておると思うのであります。この扶養の義務があることによりまして、あるいはある程度の人のためにも用意をしなくちやならないなどということにもならないとも限りませんし、またそれが法律で強制されることによりまして、政府委員のお答えしますように、金がある者がない者をみてやるというようなおことが、さぞ美しいように聞こえますけれども、實際においてはそれが負擔になりまして、めいめいの生活を壓迫する面が多いのではないかと思うのであります。ただいま大抵の勤労大衆というものは、自分たちの生活を維持するのにやつとでありますのに、さらに法律の扶養の義務によつて、またその負擔を負わされるということになることは、おもしろくないことだと思います。さらに自分が勵んで一生懸命に働いたために、多少余裕ができたという人は、なおさらそれによつて負擔の義務が重くなるというようなことになるということも考えられるのでありまして、むしろこれがないために社會保障制度を急速に発達させなければならない立場に私たちは立ち至つてると思いますが、それが個々の人間の自由を尊重するというような建前からも、かえつてよいのではないかと思うのでありますけれども、どうお考えになりますか。
#77
○奧野政府委員 結局その點は議論のわかれるところと思われますが、この案におきましては、結局どの程度の扶養を要し、どのような方法で扶養するかというようなこと、すべて話合いでまずきめる。もしそれがきめられないときには、家事審判所が扶養義務者の資力その他一切の事情、あるいは扶養の権利者の扶養の必要性というふうなこととにらみ合わせて、具體的な場合に適當にきめるので、それがためにかえつて扶養義務者も生活ができないというふうな結果に陥入らしめるようなことは、おそらくなかろうというように考えるのでありまして、現在のような社會状態におきましては、他人のために自分の資力を割いて扶養するということは、おそらく、事實上不可能でありましようし、可能視し得るようなことはもちろんあり得ないのでありますから、少くとも現在のような状況におきましては、社會的生活の保護という方に國家としては全力を注ぐべきもので、親類縁者のお互いの愛情、あるいはお互いのそういう義理といつたようなものに依存せしめて、國家が何にもやらないということであつてはならないというふうに思います。
#78
○榊原(千)委員 私はただいまの政府委員のお話は諒といたしましたけれども、やはり當事者の間で話し合いが整わない、それを裁判所である意味では強制することになるのでありますけれども、義務として扶養の制度をおき、そうしてそれを家事審判所のようなものの力で強請するというようなことによつて、かえつて相互間の親族としての美しい意情が抹殺されるのではないかというようなことが恐れられるのでありますので、私の考えといたしましては、こういうようなものは法律から抹殺したいと思うのでありますが、このことは意見になりますから、ただ一こと考えを申し上げまして、私の質問は今日はこれで打切ります。
#79
○山中委員 ちよつと關連して質問があるのです。簡單なことですが、改正民法案の七百三十條に「直系血族及び同居の親族は、互に扶け合わなければならない。」という規定があるのでありますが、これは現行民法には全然ない規定でありまして、特にこういう規定をここに設けたのは、どういう法律上の關係を規定しておるのか、こういう質問であります。
#80
○奧野政府委員 この點たびたび問題になつた點でありますが、要するに家という制度を法律の上からは制度として認めない、戸主、家族といつたようなものの封建的な法律關係を否定いたしたのでありますので、それが誤解によつて、これらの今までの實際の共同生活というものも否定されるのではないかという疑いをもつ者が非常に多いという考慮から、特に法律的な效力はとにかくとして、やはり親族による共同生活というものが、これはお互いに助け合つて家庭生活を営むということについて否定しないという道徳的規範を掲げることが適當ではなかろうかというふうな要望に基きまして、實は法律的にはほとんどいかなる效力があるがということについては、先ほど榊原委員からもお話があつたように、これも削除してはどうかというような議論もある點でありますが、法律的な效力がなくても、道徳的な一つの規範として掲げることも、必ずしも例のないことではない。それが社會風致の上においてそういう意味で效果があれば、あえてこれを抹消しなくてもいいということで、これがはいつたわけであります。
#81
○山中委員 もう一點でありますが、協議上の離婚の場合に、夫婦の一方から財産の分與の請求ができる、そうしてそれは家事審判所に對して協議整わざる場合においては、その審判によつて定めるということが規定されておるのでありますが、そこで裁判上の離婚の場合に、從來でありますと、離婚の請求と同時に、相手方に對して慰藉料、すなわち損害賠償の請求が同一の裁判所においてできたのであります。當時は金銭賠償を主としておりましたが、今度は離婚の請求の場合において財産分與の請求ができると規定されておるのでありますが、そういたしますと、離婚の請求だけは地方裁判所の管轄に屬し、財産分與の請求の場合においては、これは家事審判所に屬するということになりますと、實際訴訟手続の上において非常に煩雑になりはしないか、こういうことが考えられるのですが、この點についてどうお考えになりますか。
#82
○奧野政府委員 實はこの案では、その點はやや明らかではありませんが、民事訴訟法の改正も今考えておりますので、その民事訴訟法において、離婚の請求があつた場合、家事審判所でなく、普通の裁判所においても財産分與等の判決が併せてできることの規定にいたすつもりであります。しかしながら、大體この離婚請求というのは、訴訟の形をとりますから、家事審判所ではなく、普通の裁判所にいく建前に考えております。家事審判法をごらんになつて御了解になるだろうと思いますが、そういう場合においては、一應、必ず調停に付することになつておりまして、調停は家事審判所が行うことになつて、恐らくはすべてのそういう離婚訴訟も一應家事審判所の調停にかかることになると思いますので、その點は裁判所と家事審判所と二重になるというようなことのないように留意いたしておるのであります。
#83
○山中委員 調停において大體話がまとまる場合はよろしゆうございますが、それがどうしてもまとまらないで裁判を受けなければならないという場合に、初めは地方裁判所でやる、財産の分與は家事審判所でやる、こういうことでは、實際上不便だと思うのであります。調停ができない場合のことを考えたときに、どうしてもそういう何かを考えたときに、どうしてもそういう何か便法を講じないと、非常に不便ではないかと考えるのであります。
#84
○奧野政府委員 その點ごもつともでありまして、家事審判所になつておりますが、訴訟のかかつておる地方裁判所においても、財産分與の判決が併せてできる途を今考慮しておるわけであります。
#85
○松永委員長 本日はこれにて散會いたします。
    午後三時四十四分散會
ソース: 国立国会図書館
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