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1960/03/10 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第8号
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1960/03/10 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第8号

#1
第038回国会 外務委員会 第8号
昭和三十六年三月十日(金曜日)
    午前十時四十六分開議
 出席委員
   委員長 堀内 一雄君
   理事 竹内 俊吉君 理事 福田 篤泰君
   理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
   理事 椎熊 三郎君 理事 正示啓次郎君
      床次 徳二君 理事 前尾繁三郎君
      松本 俊一君    稻村 隆一君
      穂積 七郎君    森島 守人君
      川上 貫一君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  津島 文治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (アメリカ局長)安藤 吉光君
        外務事務官
        (欧亜局長)  法眼 晋作君
        外務事務官
        (条約局長)  中川  融君
        外務事務官
        (国際連合局長)鶴岡 千仭君
        外務事務官
        (移住局長)  高木 廣一君
 委員外の出席者
        農林事務官
        (振興局拓植課
        長)      三善 信二君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
三月九日
 委員中曽根康弘君辞任につき、その補欠として
 松本俊一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
三月六日
 日中政府間貿易協定即時締結に関する請願外百
 十七件(穂積七郎君紹介)(第一一五七号)
 同外六件(春日一幸君紹介)(第一二三九号)
 日中国交回復等に関する請願(川上貫一君紹
 介)(第一二〇九号)
 同外十六件(志賀義雄君紹介)(第一二一〇
 号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 移住及び植民に関する日本国とブラジル合衆国
 との間の協定の締結について承認を求めるの件
 (条約第三号)
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
#2
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。川上貫一君。
#3
○川上委員 前の質問の続きがたくさん残っておるのですが、きょうは外務大臣は時間が非常に少ないそうですから、ごく一、二問だけ短い時間に質問しておきたいと思います。
 まず第一は、韓国が財産請求権の問題について、日本に対して九つの項目にわたって財産上の要求をしておるはずだと思うのです。その第一は、韓国国宝、歴史的記念物の即時返還。第二は、韓国地図原版及び海洋図の即時返還。第三は、太平洋戦中韓国人被徴用労務者に対する未払金の支払い及び弔慰金の支払い。四が、韓国人所有の日本有価証券の返還と処理。第五は、太平洋戦中韓国人戦傷病者及び戦没者に対し弔慰金の支払い。六、韓国内にて交換、回収した日銀券の代金精算。七は韓国人帰国者たちが旧日本官憲から強制寄託された貨幣代金の支払い。それから八が旧朝鮮総督府鉄道局共済組合及び在日財産の返還。九項目になっておって、旧朝鮮奨学会維持財団在日財産の返還、これに説明書がついておるはずですが、この九項目にわたる財産上の要求を、いつ日本の政府は受けたのか、この時期を知らしてもらいたい。
#4
○伊關政府委員 ただいまの御質問でございますが、先方の要求は今の九項目でなくて八項目でありまして、それから今おあげになりましたうちの半分ぐらいがその八項目に入っておりまして、あとの半分くらいは入っておりません。概略申し上げまして……。それから、この八項目というものは今後討議をするたびにその項目ごとに発表していこう、こう申しております。それから、最初にこの要求が出ましたのは二十七年二月二十一日であります。
#5
○川上委員 半分はそうだというのですが、それは私の言うたうちの一、二、三、……のどれに当たるのですか。
#6
○伊關政府委員 これは討議するつど発表することになっておりますから、ただいま御質問の、どれがどうだということは今ここで申し上げかねるわけであります。討議するたびに発表いたしますが、大体申し上げると、九じゃなくて八項目、半分くらいが当たっておるということであります。
#7
○川上委員 何にも言えないというならわかりますけれども、半分は合うておる、しかし言えない。合うておるといったって、合うているか合うていないか、われわれは理解できぬ。どれが合うておる、違うと言ってもらわなければ、全部言えぬというならまだ話はわかるけれども、八項目であって半分はその通りだというのでしょう。そうしたら、どれがその通りか言わなければ、委員の審議にならぬじゃないですか。
#8
○伊關政府委員 それでは八項目発表するまでは全然申し上げないことにいたします。訂正いたします。
#9
○川上委員 それではというのはどういうことなんですか。委員が質問したら、それならやめたという答弁がありますか。
#10
○伊關政府委員 私は、これは発表しないことになっておりますけれども、各細目をあげて御質問になりましたので、半分くらいはこれに載っておるものがございますから、そういうふうに申し上げたのですが、建前としては発表しない建前なんです。
#11
○川上委員 これは時間を食うばかりだから……。この要求は半分はその通りだというのですが、これは日本政府としては正当な要求と認めておりますか、どうですか。
#12
○伊關政府委員 そういう点につきまして、これから討議をするわけであります。
#13
○川上委員 逃げることを考えている。それじゃもう一、二点聞きますが、この前伊關局長は、アメリカが旧日本人財産を韓国で没収して、そのものを処分をして払い下げをした、その代金は韓国へ渡してあると言われましたが、これは全部渡してあるのですか、一部渡してあるのですか。
#14
○伊關政府委員 処理いたしましてそれから渡しましたのは四八年の秋かと思いますが、そのときにありましたものは全部渡してあります。その間に財産を維持管理するために使用したというようなものもありましょうが、原則として全部渡してあるわけです。
#15
○川上委員 原則としてというのがわからぬので、その時分に、アメリカが払い下げ代金として握った金を韓国へ全部渡したのですか、一部渡したのですか。
#16
○伊關政府委員 払い下げ代金で引き渡しました時期、四八年の何月でありましたか、そのときに持っておるものは全部渡したのであります。
#17
○川上委員 持っておらぬものはどうなっておるのですか。もう一度聞きますが、その時分に持っておる残りを渡したというのでしょう、そうすれば、その時分に残っておらぬものはどうなっておるのですか。
#18
○伊關政府委員 私が申し上げましたのは、財産を売却しました代金等は、そのままおそらく銀行に預けておったと思います。帰属いたしたものをそのまま管理したもの等につきましては、管理費、維持費等がかかっておると思いますから、多少その間に変動はあると思いますが、初めの建前は全部渡すというのが建前でありますから、そういう維持費等に要したものは多少あるかもしれぬという意味で申し上げておるので、全部渡したといっていいと思います。
#19
○川上委員 韓国とアメリカの取りかわした文書にはそうなっておらない。使うた残りを渡したとなっておる、これを認めますか。
#20
○伊關政府委員 ですから、その使用という意味は、そういう財産の維持管理等に必要なものは使ったというように解釈しておるわけであります。建前は全部渡す建前でございます。
#21
○川上委員 そういういいかげんなことを言わぬ方がいい。そこの文書を見てごらんなさい。使用したものの残りだけを渡すとなっておる。原則としてはとかなんとか、あなたは何に使うたか知りやせぬ。知らないで答弁をしている。それは困ると思う。
#22
○伊關政府委員 これは金銭の問題をいっているのではありませんので、取得及び使用と申しますのは、韓国側に渡した財産の中からアメリカが買うものがあるのでありまして、これを取得といっておるので、使用と申しますのは、いわゆる日本における接収財産式に、韓国に権限は渡るけれども、アメリカ側で建物とか土地を無償使用する、そういう意味でございます。
#23
○川上委員 私のは一、二問という最初の約束でしたから、時間をとりません。もう一問だけ聞いておきます。
 政府は答弁なさるのですけれども、これは実にいいかげんな、自分の考えだけを答弁なさっておると思う。これは外務大臣も聞いておいて下さい。数字もわからなければ基礎もない、こう思うということだけなんです。一体そういう態度で請求権問題で日韓会談ができるのかどうか。そこで具体的に、在韓国の旧日本人財産を没収して処分をして、それを韓国へ渡すとメモランダムには書いてある。政府の答弁は、大部分渡したという伊關局長の答弁であった。きょうは詳しい数字はまだ出しませんが、ここでは残しておきますが、われわれの資料では、大部分渡しておらぬ。韓国へ渡しているものはごく小部分なんです。実際はアメリカが非常に膨大なものを奪略しておる。この資料をあとで出します。そこで、あなたの方の答弁とわれわれの調査したところは、はなはだ開きが大きい。これは今後どうしても明らかにしなければならぬと思う。ところが、こういう抽象的なことでは、あなたの方はまた言を左右にされるから、ここで私の方が要求するのは、この事実を明らかにするために、没収してアメリカが処分した財産の種類、数量、それから、その中でアメリカが韓国へ引き渡した財産の種類と数量、この数字を出していただきたい。これは一覧表でもよろしいし、どういう形式でもかまいませんから、これをこの委員会に出してもらいたい。私の要求です。このことなんです。
#24
○伊關政府委員 なかなか膨大な資料になると思います。それから、これは韓国側並びにアメリカ側、というよりも韓国側にわれわれは要求しているわけであります。いずれ今後請求権の討議の過程においては、当然こういう資料がこちらも要るわけであります。韓国側にかつて要求したことがありますが、そのときは出しておりません。今後要求いたすつもりでおります。ですから、そういうものが全部出そろいますには相当時間もかかると思います。資料もかなり膨大なものだと存じますので、全部そろって発表できる段階になれば差し上げたいと思います。
#25
○川上委員 そうすると、今わからぬということです。日本の政府では、どうなっておるやら、ほんまのところはわからぬ、もう一度詳しく私の意味を――在韓国の日本の財産をアメリカは没収した。それをアメリカは処分しておるのです。払い下げもしておるし、持ち帰ってもおるし、アメリカがじかに使ってもおるのです。そこで、そのうちで韓国に渡したものが大部分とあなたはおっしゃる、われわれの調査ではごく小部分なんです。大部分は韓国に渡っておらぬ。アメリカが処分したり、持ち帰ったり、いろいろやっておるのです。この数字は今のところわからぬとおっしゃるのか。この点だけでいいのです。簡単でいいです。
#26
○伊關政府委員 細目はわからぬのでありまして、われわれはアメリカが持ち帰ったとは思っておりません。アメリカは全部のものを韓国に渡しました。渡す際に表が出ております。アメリカと韓国との間に、日本の財産を渡しますときの協定がございまして、その付表に、アメリカが渡してまた買い取ったものと、それからアメリカが当分無償で使わしてもらう、ちょうど接収家屋みたいなものです。そういうものの付表が出ております。その表に多少の変更があるかと思いまして、今調べております。これはアメリカ側について調べております。ですから、そういうものは例外的に付表についております。大部分のものは渡ったことは間違いありません。
#27
○川上委員 そういう表があれば、その表もあわせて資料を出してもらわぬと、どうしてもわからぬ。われわれの方の資料では、渡しておらぬという資料なんですから、あなたの方は渡しておるとおっしゃるのですから、あなたの方の渡しておるというその資料をお出しになれば、私の方は渡しておらぬという資料を出しますから。この資料を出せますか。
#28
○伊關政府委員 ここにアメリカ合衆国政府と大韓民国政府との間の財政及び財産に関する最初の取りきめという発表された条約文がございます。これを差し上げますと、これに付表がついております。
#29
○川上委員 時間をとりますから、この問題はあとへ残します。これはとても三分や五分では解決せぬと思いますが、事はきわめて重大だと思う。われわれの方では、アメリカが没収した財産が韓国に行っておらぬという結論を持っておるのです。政府の方では大部分行っておる、こういうことを言っておられる。ところが私の方はまだ具体的にここへは資料を出しておりません。政府の方も出しておらぬのです。そこで私が要求したら、政府の方は出さぬ、これでは幾ら論争してもこれは切りがつかない。そこで私は政府の方に資料の要求は今後も続けてしますが、これは具体的に理事会にはかって、正式に要求してもらうようにします。私の方もこれについては、政府が出してくれば、私の方はこれに対する反対の資料を持っておるのですから、これを提出します。これでいかなければ、この重大な問題、どの程度日本の請求権が消滅したか、どの程度充足されたかは話し合いできめるという、こういう重大な会談に、数字がちっともわからないというようなことでは、大体会談ができるはずのものではない。やみ取引になるか、やみくもの会談になる危険がきわめてあるのです。そのほかにも危険はありますけれども、重大な問題ですから、日韓会談の問題、なかんずく財産請求権の問題は続けて質問をさしてもらいたいということを留保しまして、きょうの質問はこれで打ち切ります。
#30
○堀内委員長 資料に関しては、まことに重大な問題でございまするから、理事会において決定いたします。理事会に一応諮ってからお答えいたします。
     ――――◇―――――
#31
○堀内委員長 次に、移住及び植民に関する日本国とブラジル合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行ないます。戸叶里子君。
#32
○戸叶委員 今の川上委員の要求いたしました資料の点でございますが、私どもも参考にしたい面もございますので、委員長はただいま理事会に諮ってからということでございましたが、外務省の方でどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、一応伺ってみたいと思います。
#33
○伊關政府委員 先ほども申し上げましたように、相当膨大な資料でありますし、そしてこれは韓国側に一度要求しまして、まだ韓国側は出しておりません。今後請求権の実質的討議をやりますれば、当然こういうものが要るわけでありまして、われわれは韓国側からもとりますし、アメリカ側の方にも要求いたしております。それらがそろいましたならば発表いたしたいと、こう申しておるわけであります。
#34
○戸叶委員 それでは大体いつごろおそろいになる見通しでございますか。なかなか時間がかかるわけでしょうか。
#35
○伊關政府委員 これは請求権の討議の進行の状況にもよるわけでございますが、私たちは事務的な折衝はここ二、三カ月以内と、こう思っておりますが、その間には当然こういうものが出て参らなければならぬものだと、こう考えております。
#36
○戸叶委員 今の外務省の御答弁でございますが、大体そういうふうなことも勘案いたしまして、あとは委員長のおっしゃったように、理事会でこの問題を討議したらいいかと思います。
 私は、次に移住協定の問題に入りたいと思いますが、事務的な問題につきましてはあとから伺うことにいたしまして、外務大臣に二、三の点だけお伺いしたいと思います。「海外移住の問題点と施策」という中で、高木移住局長が、戦後移住不振の原因というものが、先ごろの大戦のときに、満州とか支那大陸で移住者が非常に悲惨な体験をしたためであったということを指摘されておりますが、まさにそのことは核心の一端に触れたということを考えます。私は、移住政策というものは日本の国の基本的な国内及び対外的な政治につながる問題であると考えるわけでありまして、すなわち国家の政策というものがほんとうに平和政策であって、どういう形でも戦争に介入しない、そういうわが国の憲法の命ずる政策を現実政策で国民に納得させない以上、あの悲惨な事態をおそれておる国民に、移住の積極性というものを説いても、これは私はむだだと思うのでございます。今まで歴代の保守党内閣はどうも憲法をまげて解釈をして、何となく戦争介入の機会を与えようとしているような気配が見えまして、先ごろの日米安保条約も、私はこういう意味で非常におそれを持っておるものでございます。移民政策を積極的に推進させる、またそれに協力をさせるためには、何といってもこの憲法九条というものを、その憲法がきめられたときの精神に戻って、そして移住者が安心して海外で実を結ぶことができるというような状態にするべきであると思うのでございますが、外務大臣として、この点どうお考えになりますか。
#37
○小坂国務大臣 わが国が平和愛好国として立つという決意は、これは不動のものでございます。と同時に、世界各国にも、平和を愛好し世界全体が平和に推移していくことを呼びかけておるのは御承知の通りでございます。そういう方針で参りたいと考えております。なお移住の問題は、これはわが国のためばかりでなしに、移住者の行った相手国のためにもなる、移住者が行って先方の経済の発展に協力する、その移住を通じてお互いの経済協力がなお進むようにという積極性を持たせたいと考えておりまして、その面で農業のみならず、各種の工業、商業その他の面において、できるだけ政府としても移住者の教育その他を考えていかなければならぬ。また先方の必要とするそうした仕事についても、外務省としまして常に接触を保ちまして、適宜適切なる場所に移住者を送るということに努めたいと思っておるのであります。
#38
○戸叶委員 外務大臣はただいま平和愛好国として日本の発展を考えているということを言葉ではおっしゃいますけれども、具体的な面におきましてそうでない面が多くあるわけで、そういう点が非常に海外の国においてもおそれられているわけであり、また日本から海外へ移住しようとする人たちも、向こうへ行ってまたひどい目にあうんじゃないかというような懸念を持っているわけでございまして、やはりこれは言葉だけではなくて、ほんとうに憲法九条の精神に基づいて、日本の国の平和を守っていくんだということをぜひ考えていただかなければならないと思います。ところが一方におきまして、防衛庁などにおきましては、どんどん防衛二法案というようなものを出して、日本を昔の軍国的な方向に持っていこうとしている。こういうことが私は移住というものの妨げになるのではないか、こう考えますので、なお十分に考慮していただきたい、こう思います。
 さらにまた、移住というものは相手国のためにもいいのであるから、相手国のためにもなるように、いろいろな面で協力をしていくんだということでございますが、まことにそれはけっこうではございますけれども、その前に根本的な国内の平和政策というものを確立してでなければ移住する人もないし、また向こうからもおそれられてその実を結ばないということがあるわけでございますので、どうかそういう点は十分に考慮していただきたい、こう考えますが、いかがでございましょうか。
#39
○小坂国務大臣 私は日本が具体的な軍国主義の復活あるいは他国を脅威するような政策を持っているとは思いません。何らそういう事実はないのでありますので、どうぞ戸叶委員におかれても安心せられて、われわれお互いに平和日本を作り上げるということに進みたいと思っておるのであります。(「安保条約の)ことを言っているんだよ。」と呼ぶ者あり)安保条約のことを言っているんだということでございますが、あれはしばしば繰り返して申し上げておるように、わが国の安全を確保するということが目的であるのでありまして、何ら他国を脅威するようなそうした性格のものではないということは、しばしば申し上げておる通りであります。
#40
○戸叶委員 安保条約のことを議論しましたらたくさんあるわけでございますけれども、今外務大臣のおっしゃるように、安保条約は日本の平和を守るんだというような、そういうお考えの上に立っているから、私は移住そのものが発展しないというふうに考えるわけで、この点を議論していきましたら何時間もかかりますから、この程度にいたします。
 第二の問題に入りますが、中南米ではわが国の移住者を好意的に受け入れております。ところが、最大の友好国と自他ともに認めているアメリカ合衆国では、依然として移住者というものはきわめて制限をされているわけでございます。アメリカ合衆国が日本人の移住を歓迎しない理由というものは一体どこにあるかを私は伺いたいと思います。白人系の人たちよりもたしか日本の人たちの方が待遇あるいは条件というものが悪いように聞いておりますけれども、そういうふうな違いのある理由はどこにあるか。たとえば日本人がアジア人であるというために人種的な差別を受けているのではないか、こういうふうに考える人さえあるわけでございます。この点を伺いたいと思います。
#41
○小坂国務大臣 これは日本の歴史的な移住政策にさかのぼらなければならないと思いますけれども、結局日本の移住政策というものが世界の各国に対して出おくれておったということが一つの大きな問題でございましょう。大体アメリカ合衆国も建国の初めは移住によって作られた国でございますから、その当時参りました種族の関係者というものはどうしても入りよいわけであります。日本はそういうことに関係なかったということが根本的な問題ではないかと思います。その後において、アメリカも建国以来のモンロー主義というものがだんだん揚棄されまして、いよいよ国際的なものの考え方になった。しかし、日本のその間における政策というものが、先ほど戸叶さんもおっしゃったように、その当時は軍国主義的であり、はなはだ民族融和的でなかったという点もございましょう。要するに日本人そのものに対する理解の不足ということも大きな問題ではないかと思います。最近の問題といたしましては、アメリカにおいても日本人というものについての理解が非常に深まりまして、御承知の季節的な派米労務者という問題も取り上げられまして、これは各国で一律になってきておるわけであります。しかしやはり何といいましても言語によるところの不自由さというものはなかなかおおいがたいものもあろうかと思うのです。たとえばイタリアあたりから入ってくる者は、どうしても日本語から英語というよりイタリア語から英語という方が若干楽な点もあるのではないかと思います。そういう点、言語の障害というようなものもございます。しかしやはり何といっても日米間の相互理解というものがより深くより広くなるということが必要であろうかと思います。御承知のように最近のギャラップ・ポールなどを見しまても、九月に行なわれましたものは、まことに日本人に対しての気持というものは、例の安保騒動の結果もあるかもしれませんと思いますが、とにかく全体の五六%は日本人は信用ならぬというのが出ておるのであります。そんなような点もございますので、われわれは非常に注意深くアメリカ国内における日本に対する世論というものも考えていかなければならない。総合的な移住はなぜ伸びないかという点についてはいろいろな問題がございますが、根本的には民族と民族の理解をもっと深くしていくということが必要だと思います。
#42
○戸叶委員 ただいま大臣がおっしゃったように、日本がおくれていたという面も、あるいはまた日本が理解されなかったという面も認めるわけでございますが、なぜ理解されなかったかというような根本的な問題にさかのぼって考えてみますと、やはり日本の昔の軍国主義的な侵略的なものに対する危惧の念というものがまだ消え去っておらないのじゃないかということを、私は非常におそろしく思うものでございます。こういうふうな日本のかつての軍国主義的な侵略的な考え方を一掃させるためには一体どういうふうな努力を今後なさろうとするか、この点をもう一度伺いたいと思います。
#43
○小坂国務大臣 政府の面におきまして、できるだけ政府対政府の間で接触を深めまして、日本の移住政策に対して理解を深からしめるということも非常に必要だと思います。なお在米のいろいろ活躍している諸君にもたまには日本に帰ってもらって、その労もねぎらい、またその成功した実情なども郷里に帰って話してもらうというようなことなども非常に有効ではなかろうかと思います。お宅の方の田原さんの御質問などにもあったように、非常に有効な御示唆をいただきまして、学校の関係者、あるいは新聞が出ておりますがその社長さんというような人でも一つ呼んでみたらどうかというようなお話もございました。これらの人たちを勇気づけるということも非常にけっこうだと思います。また一方においてそういう人たちが先方にレパーカッションを起させないようにするということも必要かと思います。やはり日本がああいうばかげた戦争をしてしまったということは、われわれとしては悔いても悔い足りない歴史的な事実でございます。われわれはもうそういうことをしない国民だということをできるだけわからせることが必要だと思います。それにつけましても、安保条約の騒動の際のなには、私は若干アメリカ国民の世論に影響があると思います。そういうことがないように、今後その傷もなおしていくということに努めたいと思います。
#44
○戸叶委員 外務大臣は根本的なことをそらして、安保条約の騒動がアメリカに傷を与えたというような答弁をされましたが、そういう点はぜひ取り消していただきたいと思っています。
 先ほどから何か人種的な差別はないというようなことをおっしゃいますけれども、たとえば小笠原などに帰島を望んでいる人が非常に多いにもかかわらず、わずかに欧米系の人といいますか、そういう人たちだけの帰島を許して、日本人を許さないというような面を見ましても、非常に人種的な差別が多いように思うのです。そういうふうな問題があるにもかかわらず、そしてまた多くの問題があるにもかかわらず、なおかつアメリカとの間の移住関係はさらに発展するというふうにお考えになるかどうか。そしてまた発展するというならば、どういう方面で発展する可能性があるか。この点を伺いたいと思います。
#45
○小坂国務大臣 人種的な若干の偏見というものもこれは残存しておると思います。そういうものをなくしてもらうように、日本人はまことに尊敬すべき国民であるということをお互いがみな努力して、さような方向に持っていかなければならぬと思います。
 小笠原の帰島の問題に触れられましたが、一部の欧米系の人を帰したというのは、これはまさに終戦直後のことでございまして、あの当時とすれば、旧敵国に対する憎しみなども非常に残っておった時代で、今日はあのようなことはないと思います。しかしこの問題は、全体の問題といたしまして今いろいろと折衝しつつあるわけでございます。
#46
○戸叶委員 今の御答弁の中で、小笠原の問題は、あれは終戦直後だったから仕方がないと思う、今はそういうことはないとおっしゃいますけれども、現実の問題として純粋の日本人は帰れないわけでございまして、そういうふうな問題は私どもとしてはやはり人種的差別というような面から考えられるのではないかと思うのです。もう戦争も終わってだいぶたったのですが、一体今後帰島できるという見込みが立っておられるかどうかということが一点と、先ほど私が質問いたしました、今後アメリカの移住関係ではどういうふうな方面でどの程度の発展性があるというお見通しを持っておられるか、この点に対する答弁がなかったように思います。
#47
○高木政府委員 北米への移住の問題でございますが、移住に関しましては、人口問題の解決というようなことで、日本から一方的に押しつけるということができない状態でございますことは御存じの通りでございます。従って相手の国が必要とする人、こちらがこれに応じ得る資格の人を出すということが結局移住の本義であり、これは国際協力の精神にも沿っておると思うのであります。そういう点でアメリカでは現在の移住のワクが日本にはかなり少ないのでできるだけ広くしたいという空気もございます。アイゼンハワー政権の末期におきましても、これを画期的に多くするというような考えもございました。しかしながらヨーロッパ移住者を根幹とするアメリカにおきましてアジアの日本人をどれだけ入れていくかということは、やはりアメリカの国内のインテグレーションの問題と申しますか、統一問題あるいは経済問題、労働問題、あらゆる角度から検討されなければいけないわけでございます。そういう点で今すぐにこのワクの拡大ということはなかなかむずかしいと思いますけれども、アメリカでもそういう動きは強うございますので、今後ともわれわれといたしましてはアメリカにおける日本の認識をさらに深める。そして現在やっております短期派米労働者のごときも、アメリカでは今のような失業の多いときでも、できるだけこれを残していくというような空気もございますので、いろいろのできる面から日本の移住者についての認識を深めるように努力したい。これは繰り返して申しますけれども、先方の十分な認識と先方の国内事情というものもにらみ合わせていかないといけませんので、今すぐにどうこうすることはできないと思います。
#48
○戸叶委員 外務大臣に先ほどの答弁で欠けておりました点だけを確認いたしまして、参議院の方でお呼び出しがあるようでございますので、私の質問を打ち切りますが、小笠原島民の帰島に対する見通しの点が答弁としてなかったようでございますから、その点だけお答え願いたいと思います。
#49
○小坂国務大臣 小笠原の問題は沖繩問題と一緒にしまして、沖繩、小笠原に対する施政権の返還ということで交渉いたしておるわけでございます。この問題につきましてはただいまのところそういう努力をいたしております。しかしながら見通しについてはこの場で申し上げることは何ともできかねるわけでございます。
#50
○戸叶委員 不満ですけれども、仕方がないです。
#51
○堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午前十一時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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