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1960/04/12 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第16号
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1960/04/12 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第16号

#1
第038回国会 外務委員会 第16号
昭和三十六年四月十二日(水曜日)
   午前十時四十一分開議
 出席委員
  委員長 堀内 一雄君
   理事 北澤 直吉君 理事 竹内 俊吉君
   理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君
   理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
      愛知 揆一君    椎熊 三郎君
      正示啓次郎君    床次 徳二君
      橋本 龍伍君    松本 俊一君
      稻村 隆一君    黒田 寿男君
      穗積 七郎君    細迫 兼光君
      森島 守人君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
 出席政府委員
        内閣官房長官  大平 正芳君
        外務政務次官  津島 文治君
        外務事務官
       (アメリカ局長) 安藤 吉光君
        外務事務官
        (条約局長)  中川  融君
        大蔵事務官
        (理財局長)  西原 直廉君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (企業局次長) 伊藤 三郎君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
四月十一日
 日韓会談即時打切り等に関する請願(高津正道
 君紹介)(第二三二九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航
 海条約の締結について承認を求めるの件(条約
 第一三号)
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
#2
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
    ―――――――――――――
#3
○堀内委員長 まず政府側より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣小坂善太郎君。
#4
○小坂国務大臣 ただいま議題となりました日本国とフィリピン共和国との間の友好通商航海条約について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 フィリピン共和国とわが国との国交関係は、御承知の通り、昭和三十一年七月二十三日にサンフランシスコ平和条約が両国間に発効することにより正常化を見るに至ったわけであります。それ以来、政府は、両国間の貿易、通商関係を長期かつ安定した基礎に置くため、機会あるごとに通商航海条約の締結交渉の早期開始をフィリピン共和国政府に申し入れてきたのでありますが、フィリピンの対日感情も年とともに好転し、また、近年における両国間の通商関係の進展を見て、フィリピン政府も次第にわが国との通商航海条約締結の必要性を認識するに至りましたので、一昨年六月、日本側の条約草案を先方に提示して交渉開始を正式に申し入れた結果、昭和三十五年二月から交渉が開始され、約十カ月の折衝の後、十二月初旬案文につき合意を見て、十二月九日この条約及び議定書の署名調印を見た次第であります。
 この条約の内容は、入国、滞在、出訴権、財産権、内国課税、事業及び職業活動、為替管理、輸出入制限、関税、海運等の事項につき最恵国待遇を相互に許与することをその骨子としております。
 戦後わが国は、東南アジア諸国のうち、インド及びマラヤ連邦と通商協定を締結しておりますが、友好通商航海条約としてはフィリピンとの間の本条約が最初のものであり、また、フィリピン共和国にとりましては、独立後外国と締結する最初の友好通商航海条約でありまして、その歴史的な意義は深いものがあると思われます。
 この条約により入国、滞在、事業活動等の面において、両国間の関係が正常化するとともに、わが国の東南アジア貿易中重要な地位を占めている対比通商関係が円滑な発展を遂げるものと期待される次第であります。
 よって、この条約の締結について、御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
#5
○堀内委員長 本件に関する質疑は、次会に行なうことといたします。
     ――――◇―――――
#6
○堀内委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますから、順次これを許します。稻村隆一君。
#7
○稻村委員 実はガリオア、エロアの問題につきまして、最近新聞に、いよいよ政府はこれを借金として認めて、ライシャワー大使も来ることであるから、具体的に交渉を始める。池田総理大臣、それから小坂外務大臣は、六月十五日に渡米されるのだから、その前にこれを解決したい、こういうことが報道されております。ところがこの問題は、御存知のように、いろいろな問題を含んでいる。私は日本国民の一人として、どうしてもこれは納得することができないのです。これはよほど種々なる方面から検討して慎重にやるべきであって、総理大臣がアメリカに行く手みやげにこれを早く解決するのだというふうなことをやられては、国民はまことに迷惑千万な話なんです。
 そこで、この問題に対しまして予算委員会でも問題になった。わが党の横路節雄君、河野密君からいろいろ質問があったのですね。政府は払う、払う、こういうことを盛んに放送しておるのですが、大体額もよくわからぬような状態なんです。見返資金特別会計設定前の額などはよくわからない。アメリカのことしかわからない。アメリカは、これは総体で二十億五千万ドルある、こういっているのですね。それが、横路君の質問なんかのときにはよくわかっていないのです。そういうふうに、何と申しますか、はっきりしないものなんですね。それを急いで解決しなければならぬ、こういうふうなことは私は納得がいかないのです。
 そこで外務大臣にお聞きするのですが、新聞を見ますと、大蔵、外務、それから通産で打ち合わせをして、そうして大体アメリカに払う額まで決定した、こういうふうなことが新聞に出ておりますが、事実は一体どういうことになっているのですか。それをお聞きしたいのです。
#8
○小坂国務大臣 このガリオア、エロアの問題につきましては、予算委員会等でも申し上げましたから、くだくだしく申し上げる煩を省略いたしますが、いずれにいたしましても、昭和二十九年に日米間の交渉がこの問題で持たれ、また三十年に重光外務大臣がアメリカに行かれた際に、この問題の早期解決についての共同声明を発せられました。われわれとしては、いつかこれを解決せねばならない問題だと思っておるわけでございます。戦後独立いたしましてから十年になっているわけでございます。賠償もビルマの再検討条項の問題が多少残っておるとはいうものの、大体において一段落した今日、われわれといたしましても、借りたものは返す、こういう考え方で処理をきれいにしたい。このことが将来の日本の地歩というものを高からしめ、またわが国に対する国際的な信用もこの面から非常によいのではないか、さうに判断をいたしているわけでございます。しかしながら、今お話にもありましたように、何分にも終戦後のあの混乱の時期を経過しておる問題でありますだけに、なかなかこの資料等につきましても、十分な精査をいたしますに困難があるわけでございます。そうしたことを十分頭に入れまして、われわれとしてはできる限りの努力をいたしまして、そうしてこの問題の解決をいたしたいと考えておる次第でございます。
 ただいま御質問のように、この関係者は、大蔵大臣、通産大臣、それに外務省も関係をいたしておりますので、その三省の間で最終的な問題については十分調整をいたしまして、政府としての額あるいは返済方法、その時期、そういうようなものについてきめなければならぬと考えておりますが、そうしたことについては、まだそこまで至っておらない、かような段階でございます。
#9
○稻村委員 ところが私どもはこれは借金じゃないというふうに考えておるわけなんです。これは御存じのようにアメリカ占領軍の占領政策遂行のために陸軍省から支出をしておる金なんです。それは二つの方法で支出されておる。第一は日本が必要とする物資を現物で支給した。第二は日本が輸入した品物の代金をドルでアメリカが支払う、しかもこの物資は業者に払い下げになったのです。国民は業者に代金を払った。ただでもらったのじゃないのです。当時は物資がなかったものですから、やみ値時代で、かなり高い値段で買っているわけなんです。この代金を払ったということは非常に重要なんですが、アメリカは、最初はこれは債権だと思っていないのですよ。三月二日の予算委員会でわが党の河野密君が指摘されたように、一九五一年のアメリカ国会における予算審議の際、ヴォルヒーズ陸軍次官は、日本が負担しているアメリカ占領軍の費用は多額だ。実際、終戦処理費というものは五十億ドルという多額だ。ですからこのガリオア、エロア資金というものは借金として取り立てるべきではない、こういう非常に話のわかった証言をしているわけであります。このように最初はアメリカでも日本でもだれも借金と思っていない。国会はこれに対して感謝をいたしまして、アメリカの援助に対して感謝の決議をしたわけなんです。それをこの前重光さんが行かれたときにそういった話が出て、さらに数年前に池田さんが行かれたときに池田・ロバートソン会談でこの話が出たわけなんです。そして債務として払うということになったわけですね。われわれは実にもうキツネにつままれたような気持になっておるわけなんです。最初は向こうでも取る気はなかった。日本でも全然そんな考えはなかったんですね。それを今、借りたのだから払わなければならぬというようなことは、少なくとも良心のある政治家のおっしゃることじゃない、極端なことですけれども、私はそう思うのですが、どういうことで払うことになったのか、その点私どもよくわからないのですが……。
#10
○小坂国務大臣 これはもらったもので借りたものではない、まず、こういう想定に立っておられるわけでございますが、政府はアメリカに対してこれはもらったものであるということを言っておりますことは、実は一度もないのであります。常に、これはアメリカに適当な時期において適当な方法で返すものであるという了解をいたしておるわけでございます。これについて国会の答弁で捨ってみますると、例の阿波丸に対する請求権を放棄いたしましたときに、当時の吉田総理大臣兼外務大臣が、これも衆議院の予算委員会で申し上げたことでございますが、これに対して参議院の本会議におきまして、阿波丸の請求権放棄に関する了解事項がございまして、その報告で、「このクレジット、或いはいわゆるガリオア、エロア・ファンド、費用と言いますか、或いは日本に対する棉花その他のクレジットというようなものが、恰かもアメリカ政府から日本が種々常に無償で以て貰っておるような誤解を与えておりますから、この機会に了解事項として附加えたのであります。こういう報告をしておるのであります。」政府のこの問題に対する態度は、受けたガリオア、エロア等のものはそのままそれを債務として負担したものではなくて、時期がくればその内容を確定し、そして外交交渉によって確定された内容というものについて債務を確定する。従来は債務と心得て、債務の額が幾らであるかということを外交交渉によって確定して、そして確定された先方の債権を、こちらにとりましては債務でございますが、これを国会の御了承を得て支払う、こういう態度で参ったわけでございます。ただいま御質問の中に、国民は当時非常に苦しくて、やみ値でもってこういうものを買ったというお話でございましたが、そうではございませんで、この物資というものは、やみ値時代に安いものを受けた、こういうことだと思います。私が御質問を聞き間違っておるなら私の答弁は無意味でありますが、そういうことであります。
 そこで、これについて国会で感謝決議をいたしております。その感謝決議については、国民はただでもらって感謝しておるのではなくて、国民はみな代金を払って感謝をしておるわけであります。従ってそれについて国民の代表である国会がただでもらったんでありがたい、こういう意味でなした決議ではない、こう言わざるを得ないと思うのであります。問題は、政府対アメリカ政府の関係でございますが、これは政府とアメリカ政府の間においては、時期がくれば払う、内容についてはあらためて外交交渉によって確定する、こういう態度で終始いたしておりますので、それはこの時期においては、時期も適当であるし、払わなければならない、こう考えております。
 それからなおもう一つ、われわれがこれについてどうしても債務と考えなければならぬ根拠がやはりあるわけでございます。これは御承知のように、当時スキャッピンといって司令部からの指令がありまして、それに基づいていろいろと日本政府は行動したわけでございますが、このスキャッピンというものをいろいろと分類いたしてみますと、そこにはたとえば支払い条件及び経理の方法については後日決定する、「タームス オブ ペイメントアンド アカウンティング ウィルビー ディサイデッド レイター。」という言葉が書いてあります。日本政府はその書いてあることを了承して領収証を出しておるのであります。時期は一九四六年七月二十五日、スキャッピン一八四四Aというものでございます。今第一類として申し上げましたのは、食糧とかその他生活必要物資であります。これについてスキャッピンが出ておるのであります。そのほかにも一九四六年三日二十二日付スキャッピン八三四、こういうものを見ますと、米軍の払い下げ物資、これはある種の生活必要物資及び廃品、スクラップ類の売却、こういうものについてでございますが、これは「かかる対日輸入計画に基づくものの支払い方法については後日決定する」「メソッド オブ ペイメント、アズ ア パート オブ ザプログラム フォア インポーツ インツー ジャパン、 ウイル ビーデターミンド レイター。」と書いてある。そういうふうに書いてあるものにつきましてはまだいろいろございますが、そういうことをはっきり先方が書いておりますものを、日本政府――これは終戦後いろいろな政府がございまして、必ずしも自民党ばかりの政府ではなかったと思うのでありますが、そういう政府が全部それを了承して、そしてこれをやはり配付しておるのでございます。そこで私は、何もそれがあるから全部が債務だと言っておるのではない。要するに、そういうものがある以上、債務と心得なければならぬ、そして心得て、債務の額は幾らだ、こういうことをわれわれは国民の負担能力、日本経済の実態、それから当時の事情、そういうものを勘案して適当な額をきめて支払うということがやはり堂々たる国の態度でなければならない、こう考えておる次第でございます。
#11
○稻村委員 私もただもらうなんということを考えておりません。だけれどもヴォルヒーズ陸軍次官も下院歳出委員会で一九五一年に証言しておるように、アメリカは賠償を取らぬ取らぬと前から言っておったのですから……。そこでこっちは終戦処理費を五十億ドルも莫大なものを負担しておるのです。そういうわけでただで何ももらうというふうな考えは全然ないわけなんです。そういう問題もありますから、そこでこれは借金であるというふうにはだれも思っていなかったのですよ。そういうあなたの言われたようなこともあるだろうけれども、現に国債であるならば、憲法第八十五条によって国会の承認を得なければならない。これから得るのでしょうけれども、今ごろまでほうっておいて全然国会の承認を得ておらないのだから、これはだれも最初から借金だというふうに思っていなかったのじゃないですか。国民は思っていないです。私どもも実際そういうふうに思っていなかった。ただでもらうなんてそんな虫のいいことは考えておらぬのですけれども、今申し上げました通り莫大な終戦処理費を負担しておる、これもやむを得ないことであったでしょうが、アメリカの援助は総額でもって、これは日本との開きがいろいろあるようですけれども、たとえば二十億五千万ドルあるというのですね。ところが朝鮮戦争が始ってその中で朝鮮に向けたりなんかしたものもあるし、多少そこで対米債権もあるいは対韓債権もできたわけだから、それを差し引けばもっと私は減ってくるだろうと思うのです。そういうふうなことでこれは何もただもらうなんというふうな虫のいいことをこっちは言っているのじゃない。法律的には借金じゃない。これは道義的に借金で、ずいぶん厄介になったから何とかしなければならぬということならまた話がわかるのですけれども、法律的に借金であるということはだれしも考えていなかったんじゃないですか。
#12
○小坂国務大臣 これはただでもらってしまえ、そういうことを言わないとおっしゃっていただいたわけでございますが、私どももさような気持で実はこの問題の処理に当たりたいと考えておるのであります。ただお言葉の中にありましたが、ヴォルヒーズ陸軍次官の名前が出ましたが、ついでに申し上げますと一九四九年ヴォルヒーズ陸軍次官は第八十一議会の下院歳出委員会公聴会におきまして証言をいたしておりますが、その中でガリオア資金はドイツ経済に対すると同様貸金となるが、これは日本についても同様である。こういうこともやはり今名前をおあげになりましたヴォルヒーズ陸軍次官自身が言っておるのでございます。そこでわれわれは何もガリオアあるいはエロアその他のファンドが全部借金であるというふうには言っていないのであります。債務と心得ておる、こう言っておるわけでございます。そこで繰り返しますが、その心得ておる額は一体幾らかということが確定いたしましたら、これは憲法八十五条による国会の御承認を得て、それがわれわれの債務として確定されるわけでございます。そのときまではその措置をとらないということは、これはそのものを全額債務であると確定しておることでないのでありますから、さような措置がとられておるものでございます。
 なお直接軍事費、終戦処理費を払ったという問題がございますが、これは平和条約の第十四条(b)項によりまして、直接軍事費を支払うということを約束いたしております。ただこれはあくまで直接軍事費でございまして、ガリオア、エロアというふうなものは、これは間接的に日本の経済復興、民生安定に寄与したものでございますから、これについてはらち外のものであると観念せざるを得ないと思います。
 さらに韓国等に対して持って行ったものがあるのではないか、これもおっしゃる通りでございます。そういう問題はわれわれは引いてもらうという気持でおります。
#13
○稻村委員 これはちょっとくどくどしくなるのですが、私は質問の順序として申し上げたいのですが、最初はガリオア、エロア資金は主として貿易の赤字埋めに使っておったのですね。ところがドッジさんがやってきて、そうして――つまり見返資金特別会計設置以前のエロア、ガリオア資金は、貿易資金特別会計の中で援助外の一般貿易と一緒に扱われていたのです。ところが当時の貿易は御存じのように国内から高く買って外国へ安く売っておったわけです。それから外国から高く買って国内に安く売っておった。こういうふうなことをやっておったわけです。それでその金をどんどん貿易の赤字を埋めるために使っていたわけなのです。これはしかも足らないで、日本銀行からの借入金まで使用しておったわけなのです。これは今あなた方の責任ではないのですけれども、池田さんはその当時責任者だから私は大いに責任があると思っているのですが、水田さんはそのとき大臣ではないですから、政府当局者ではないから責任はないのですけれども、こういうことをやっておったわけです。これを大平さんは大いに聞いてもらいたいのです。全くこれは無軌道なやり方だったと思うんですよ。ところがそこヘドッジさんがやってきて、これはいかぬというので見返資金特別会計を設定したんですね。それからこれは一々ドッジさんの指示によって出すことになったわけです。それはその通りですね。その金は主として債務の返還が一八%、国債の買い入れが一四・三%、公企業投資が二五・五%、私企業投資が三〇・八%、こういうふうにドッジさんすなわちマッカーサー元帥総帥のもとに支出されたわけなのです。しかしここで私ははっきり申し上げなければならぬことは、見返資金特別会計は援助資金だけではない。主食のように輸入価格より割安に払い下げるものについては国内払い下げ代金では不足だから、援助資金では不足だから、国民の税金である一般会計から輸入補給金を出して差額を埋めておった。従って割安になった分を国民は税金の形で支払っているわけなのです。そこでこういうことも考えられるわけなのです。かりにこれが債務だとしても、事実補給金として使用されたものは、その大部分はアメリカ民間企業に返済済みになっておるのではないかと私は思うのです。それから対日援助と引きかえに支出された、さっき申し上げました終戦処理費五十億ドルは援助資金の二倍半になっておる。それから援助資金代金は国民がすでに支払っている。こういう事情で私はこれは借金でないというふうに考えるのが適当ではないか、こういうふうに考えておりますが、この点どうでしょうか。大平さんでもいいし、水田さんでもいいのですが、どういうふうにお考えになるでしょうか、聞かしてもらいたいのですがね。
#14
○水田国務大臣 この対日援助物資の放出代金が輸入物資の価格差補給金として使われたとか、今おっしゃられたように国の債務の償還に充てられたとかあるいは公企業へ支出、そういう使途はたくさんございますが、しかしさっき外務大臣が言われましたように、これは将来債権債務であるという了解のもとに、この物資の授受が行なわれております以上は、やはり私どもは国の債務だと心得ざるを得ないものでございますので、今使途がいろいろの方面に使われたとかということで、アメリカに対して返済が済んだというふうな事実はございませんので、これは依然として債務として今残っておる、こういう性質のものだろうと思います。
#15
○稻村委員 大蔵大臣は三月二日のわが党の河野密君の質問にお答えになって、二重払いをさせることは避けたい。そのためには見返り資金の回収金や運用益で支払うことにしたい、こう言っておると思うのです。それでその方法に対する具体的な資料を出しておったですね。
#16
○水田国務大臣 出ておりません。
#17
○稻村委員 出ておりませんか。そう答弁しておりますね、間違いなく……。
#18
○水田国務大臣 はい。
#19
○稻村委員 そこで私は、これは非常に筋が通ったお話だと思うのですが、この見返り資金特別会計は援助物資の払い下げ代金だけからなっているのじゃないですね。そのほかに税金である一般会計から繰り入れられた輸入補給金も構成要素になっておりますね。そうじゃないですか。これから見て見返り資金の返済財源については、やはり国民が二重払いをしているという問題は解決がついていないのじゃないですか。
#20
○水田国務大臣 二重払いという意味がいろいろあるようでございますが、今おっしゃられましたように、アメリカへ対して一ぺんもう払っているじゃないか。もう一ぺん払うのは二重払いだという御意見もあるようでございますが、これは今申しましたように、まだこの債務はアメリカに返済してございませんので、対米国との関係では二重払いという問題はございません。問題は国民の問題で、この物資についての代は払っている、その物資に関した債務を今度は国が米国へ返済する場合に、もう一ぺん国民から税金をとって返済に充てるということだったら、国民にとっては二重払いになりはせぬかというのが今言われている二重払いの問題だと思います。これはそういうような非難やまた懸念が国民にあると
 いうことは適当ではございませんので、私どもはこの積立金がどう使われたかという使途を十分に検討して、たとい国民が一ぺん払ったものでもこれが国民のために使われているというようなことでしたら、これは一般会計で負担するということも不合理ではないということはいえましょうし、そうでなくて、純然たる私企業というようなものに貸し付けられているというようなものは、この回収金をもって充てることが、支払いの方法としては適当だろうと考えますので、そういう点を十分に検討して、いよいよこれが解決して支払いをするという国内問題になった場合には、私どもは十分に国民の納得のいく方法でこれを払うようにしたいという気持を、この前の予算委員会で述べただけでございまして、それならこの支払い源をどこに求めるかというような具体的な問題は、まだ政府部内でも方針をきめているわけではございません。
#21
○稻村委員 二重払いをさせないとあなたは言われておるけれども、そういうことは実際上できないんじゃないかと思うのです。どうしても二重払いになるだろうと私は思うのです。それは援助が具体的に有形で残っている、見返り資金は産業投資特別会計に受け継がれているのです。そして現在の財政投融資の原資になっているわけです。そうするとこの場合、その三分の一の減少分を一般会計から繰り入れて埋めるならば、ガリオア、エロアを返済していることになるわけなのですね。そうするとやはり依然として二重払いになるわけでしょう。そうじゃないですか。だからあなたいろいろ誠意を持って言われたけれども、あなたの言うような方法でやるならば、これはどうしても二重払いにならざるを得ないのです。二重払いをなるべく回避すると言っているけれども、どうしても二重払いになるのです。
#22
○水田国務大臣 これは必ずしも二重払いになるときめてかかれる状態ではまだございません。私どもは二重払いを避ける方向で合理的な支払い方法は必ずできると今のところは思っております。
#23
○稻村委員 外務大臣にお願いしたいことは、いずれライシャワー大使が十九日に着かれて、そして具体的交渉に入るのですが、具体的な検討はそう簡単にいくものじゃないと思うのです。何もこれは急いでやる必要はないと思う。アメリカに行く手みやげのために急いでやるなどということが新聞に出ておるのですが、そういう気持はやはりあるのですか。急いでやらなければならぬということになっているのですか。アメリカに行くならそんなみやげを持っていかなくても、もっと重要な問題はいろいろあると思うのです。それをアメリカに行く前にしゃにむに片つけるというようなお考えになっておられるのでしょうか。
#24
○小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、この問題は長い間の懸案でございまして、できるだけ早く片をつけたいという従来の政府の一貫した方針があるわけでございます。しかし御承知のように、安保条約の審議等もございまして、その後選挙もございまして、選挙後は今度は予算の御審議をわずらわしたというようなことで、なかなか関係者の打ち合わせに手間取っております。ようやく予算も国会を通していただきましたので、われわれとしてはその段取りをする、こういうことだけでございます。もとより重要な交渉でございますから、われわれの主張すべき点は十分主張し、しかもまた大局的な見地に立ちまして、将来の明るい面も待望いたしながらやらなければいかぬと考えております。決して手みやげに持っていくとか、そういうようなけちくさいことをこちらは考えておりませんし、先方もそういうことは望まぬだろうと思います。交渉が早くできればそれでけっこうだし、なかなかできなければ時期がおくれるのは仕方がない。これは交渉でございますから、こちらの希望ばかりにもなりません。相手方の希望があるということを十分考えなければならぬと思います。
#25
○稻村委員 西ドイツ方式でやる、こういうわけで、これはたとえばどれだけのあれがあるか新聞を見ますと、借金が十七億何千万ドルになるというのですね。それが西ドイツでは三分の二を切り捨てて三分の一を払うというようなことで、これは産経新聞の十一日ですが、大体「四億三千万ドル程度に押える代りに短期間で返済する」と、大蔵省は十日決定をした、こういうことになっておるのですね。こういう問題などもはなはだあやふやなんですね。たとえばドイツと申しますけれども、ドイツなどはてんで日本とは違うと思う。何といってもマーシャル・プランの援助があったし、鉄、石炭は無限にあるのだし、基礎工業が違うのですよ。だから貿易も盛況でドルを持っているのも世界で一番、こういうふうなドイツのように、いろいろな対韓債権、対米債権があるから、それを差し引いて援助額は十八億弱あるから、そこで四億幾らやるなどというふうなことを――なるほど早く払わなければならぬとしても、そういう目の子算的な、どんぶり勘定みたいなことで簡単に解決されて――それは解決するのはいいですけれども、国民は少なくとも物資の代金を金で払っているのだし、やはり借金を払うとなると、またこれは大蔵大臣が幾らうまい方法をやってみたところで、これは一般会計から、つまり税金から払うよりないのですから、そういう重大な問題をまだよく計算もわからぬうちに早急に片づけなければならぬ一なるほど急いで片づけなければならぬ問題であるかもしれないけれども、具体的な数字もまだ出ていない、どういう方式でどうやって払うのか、まだよほど検討しなければならぬのに、それを急にやるなどということは、私はどうもふに落ちないのです。
#26
○水田国務大臣 今昨日の新聞記事を引用されましたので、この機会に御了解を得ておきたいと思いますが、これは大蔵省の中で年数を二十年にするとか、金額をそうするとかというふうなことをきめたことも全然ございません。そういう記事が新聞に出ましたから、記者会見において、全く事実ないことだからと私から申したいきさつもございまして、それは誤報でありますので、その点御了承願いたいと思います。
#27
○稻村委員 これは四月十二日の読売新聞の朝刊ですが、やはり小坂外相が「対韓債権、対米債権などを差し引いた純粋の債務となっているものは、当然返済すべき債務性を有するものである。これまでの経過から返済方法は、“西独方式”が常識となっているがそれだけがすべての処理方法ではなく、最終的な方針はまだ決定していない。しかしできるだけ早く解決したい、」こういうふうに出ておるのですが、外務大臣はこういう方針ですね。
#28
○小坂国務大臣 先ほど申し上げたことで御了解を願えると存じますが、問題は国対国との関係と、日本国と国民との関係、これはやはり二つ分けて考えなければならぬと思います。先ほどから大蔵大臣も言われておりますように、日本政府とアメリカ政府との間にはまだ何も金の支払いということはやっていなわけでございます。従ってこれについては従来の経緯もあることであるからケリをつけなければならぬ、こう考えておるわけでございまして、幾ばくのものにするかということは、関係各省との間で十分慎重に研究しなければならぬ問題だ、こう思っておるわけであります。
#29
○稻村委員 私はこれで質問を終わりますが、外務大臣に希望したいのは、いずれにせよ正確な債務が幾らであるかということがまだ出ておらないのであるし、幾ら払っていいかということも、これはよほど検討を要すると思いますので、アメリカへ行く前に片づけようなどとそう急いでやらないで、慎重に検討してもらいたい。これはみんな国民の負担で、しかも国民は自分では債務ではないと思っておったし、さっき言った通り国民は物資の代金は払っておるのだし、そういうときにまた国民の負担になるようなことは近代政治家のやることではないのです。近代政治というものは、封建時代の税金が足らなくなったから、今度またすぐ取ってしまおうというような封建時代の政治と違うのです。そういう点は、アメリカのきげんをとるというのではないでしょうけれども、アメリカと仲よくする方法というものはもっとほかにあると思う。この問題はむろん早く片づけることはいいけれども、さっきも言った通りまだ数字も出ていないときに――どれだけ支払うか合理的ないろいろな基礎というものがまだ算定できる段階に私はないと思う。それですから、これは慎重に検討して、国民の迷惑にならぬように一つやっていただきたい。それには今まだすぐ解決するような段階ではないと思います。その点一つ折衝に当たる外務大臣に特にお願いするわけであります。
#30
○小坂国務大臣 問題をありていに申し上げますと、日本政府はアメリカの当時の軍からもらった品物を放出しまして、日本の国民からその金を受けておるわけであります。従ってその金は日本政府に入っておるわけであります。これを日本政府はアメリカ政府との間で何か解決しなければならぬわけです。これを日本政府がネコババしておってためておけば、この方がむしろ封建的なやり方であって、やはり国際信用というものを考えますと、われわれはそのことについては誠意を持って外国に対処しなければならぬと思います。誠意を持ってやりますけれども、しかしそれについてはわれわれも自分の経済力あるいは国民の負担能力とかいろいろな点を十分に考えてやらなければならぬ、かように思っておるわけであります。ただいたずらに延ばせばいいじゃないかと言われますと、かえって誠意を疑われるだけマイナスの面もあるということを考えなければならぬと思っております。
#31
○稻村委員 ただ延ばせと言うのではない。どれだけ払っていいか、これはまだ数字も出ておらない。そう急ぐ必要はないから、国民に迷惑のかからないようにと言うのです。私はネコババせよなんということは言っていませんよ。そう言うことば、みずから卑下するのもはなはだしい。とにかくアメリカ占領軍の費用は、何べんも言った通り五十億ドルも払っているのですが、これは当然かどうか知らないけれども、これはやむを得ない。誠意を持って払っているのだから、その問題と引きかえに私はものを言っているのです。何もネコババせい、借りた物を返せぬというような無責任なことを言っているのではない。みずから卑下する必要はないのです。とにかく日本の国際地位というものは、今ではそう卑下すべきものではないと思う。アジアには幾多の問題があるからアメリカと対等に交渉することが、ほんとうに対米親善のためだと思うのです。何でもアメリカの言う通り、はいはいと聞くことは何も親米ではないので、アメリカの政策を誤らしめるものだ、そういう意味で言っているのです。ネコババせいなんというばかなことは言いませんよ。そんな言葉は使わないようにして下さい。これで私の質問は、終わります。
#32
○堀内委員長 戸叶里子君。
#33
○戸叶委員 私は、稲村委員の質問に関連いたしまして、ガリオア、エロアの問題について、特にそのガリオア、エロアに関係の深い阿波丸事件の当時のことに関連いたしまして二、三の質問をしたいと思うのでございます。
 先ほどのお話を伺っておりますと、稲村委員は、アメリカからの戦後放出されたいろいろな物資、ガリオア、エロアは、感謝決議まで行なっているのであって、これは一応今になって借金だから払うというのはおかしいではないかというその根拠の上に立って質問をされましたけれども、政府は、初めからこれは債務と心得ていたというふうなことを言っていられるわけでございます。ところが昭和二十二年ころの、感謝決議を国会でした当時を見ますと、各党の人がたくさん感謝決議をしておりますけれども、その内容は、いずれもアメリカの国、アメリカの国民に対して、非常にありがたい、その高い人道精神に感激をするというような最大の感謝の言葉を使っております。周東さんも、その当時賛成演説に出られまして、今の農林大臣でございますが、世界十数カ国に対して食糧を供給されている立場から、人類愛に基づいて、国内における食糧を節約されてまでも、わが国に多量の食糧を輸入されて、国民を飢餓と窮乏から救って下さった、まことにありがたいことだということを、自民党の方も皆さんがそういうふうな発言をしておられるわけでございます。今度西ドイツの例をとられまして、西ドイツもガリオア、エロアは債務として払うのだから、日本もそれにならったような形で支払わなければならないというふうなことも時おり言われておりますが、その払う方法は、はっきりしておりませんけれども、その根本にさかのぼって考えてみましたときに、日本は、最初は私どもはこの感謝決議の内容を見ましても、一応アメリカが日本の飢餓を救うためにくれたものだというふうに、その当時は考えておりました。ところが西ドイツに対するアメリカの援助は、わが国と異って、早くからドイツの債務として確定していたということが、いろいろな文献を調べてみるとあるわけでございまして、その出発点において西ドイツと日本とは私は違っているのではないかということを考えるものでございます。その文献を申し上げますれば、レファレンスの四十号、東京銀行月報の一九四六年の一月号、そういったいろいろなものを見ますと、そういうふうなことがあるわけでございまして、私どもは、これらの問題から見ましても、どうも今になって債務と心得るというふうに言われるのは割り切れないものが感じられるのです。昭和二十一、二年のころは、まあうやむやのうちであったけれども、昭和二十四年の阿波丸事件に対しての感謝決議をするころから、そろそろこれは債務とすべきだというふうにお考えが変わったのではないかと思いますが、この点の御意見を伺いたいと思います。
#34
○小坂国務大臣 阿波丸事件の前後になって政府の考えが変わったのではないかということでございますが、そうではございませんで、政府は一貫して債務と心得ておったわけでございます。これは国会の答弁にもそう出ております。今までずっと国会の答弁を繰ってみましたが、政府側から一度も、これは全部ただ贈与を受けたものであるというような趣旨のことは申しておりません。なお阿波丸事件のこの感謝決議もございますが、それと同時に、先ほど申し上げたように、阿波丸協定をいたしますと同時に、文書の交換をいたしまして、これがやはりそのまま、ガリオア、エロアというものはもらったものじゃないという了解事項に一方においてまた署名しておるわけでございます。政府の態度は、全く一貫しておるわけでございます。
#35
○戸叶委員 今のところ、ちょっとはっきりしませんでしたが、阿波丸事件に対しての請求権放棄の決議を国会でいたしましたが、そのころからはっきりとアメリカとの間に了解事項を設けているわけですけれども、その前にははっきりと債務とは考えていられなかったのではないか、このときからいろいろアメリカとの折衝の上に債務ということにしたのではないか、こういうふうに考えますが、いかがでございますか。
#36
○小坂国務大臣 先ほど申し上げましたスキャッピン、これは一九四六年ですが、その当時からその支払い方法については後日決定する、こういうただし書きがございまして、日本政府はそれを承知で物資を放出した、かようなことになっているわけでございますから、この点は残念ながらずっとそういうふうに観念しておった、こう言わざるを得ないと思います。
#37
○戸叶委員 私もあの当時国会におりましたが、あのころは国会議員全体の空気としても、これは債務と心得るなどと考えていた人は一人もなかった。ですから、国会議員全部が超党派で感謝決議をしたというふうに考えるわけでございますし、アメリカの国並びにアメリカ国民に対する最高の賛辞を呈して感謝をし、救ってもらってありがとうというような言葉が至るところにあるわけで、今考えると何ということだろうということを考えざるを得ないわけでございますが、この問題は、政府の言われるところと私どもと意見が違いますので、あとにいたしまして、それでは伺いますが、この阿波丸事件の請求権の処理のための日本国政府及び米国政府の協定というものが昭和二十四年の四月十四日に東京で署名されまして、同日効力が発生いたしております。そしてそれの内容を見ますと、阿波丸事件に対する請求権放棄の決議案の内容と似通ったようなものを協定の内容としております。さらに了解事項をつけまして、日本ははっきりと占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負うている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものであることと了解されるという了解事項をつけているわけでございます。この協定は国会に諮られなかったはずでございますけれども、いかがでございましょうか。
#38
○小坂国務大臣 これは了解事項でございますから、国会にかける必要はない、こういうことでやられたようでございます。ただ先ほど申し上げましたように、参議院においてこの点について質問がありまして、政府側から答弁があったわけでございます。
 なおこの感謝決議の時期をお考え願いたいと思いますが、当時は世界的な食糧不足の時期でございまして、対日輸入確保のための努力を払われた総司令部の好意というものに対して非常に大きく感謝したわけでございます。感謝決議にただでもらってありがとうということはないのでございまして、ただその当時の時期を勘案して感謝した、こういうことでございます。ただ誤解があってはいけませんが、われわれはあくまでガリオア、エロア総額を債務と確定しているわけではないのでございます。それを債務と心得て、幾ばくを債務とするかということを今後において交渉してきめたい、こう言っていることを十分御承知願いたいと思います。
#39
○戸叶委員 了解事項は、国会にかけられなくてもいいというふうなことでございますが、こんな大事な了解事項ですから、私は当然国会にかけらるべきであると思いますが、それは百歩譲ったといたしましても、その前に日米の政府間協定があるわけでございます。従ってこれは憲法によっても当然国会にかけられなければならない問題であると思いますけれども、これをかけられなかったのは、憲法七十三条に違反するものではないかということを考えますが、いかがでしょうか。
#40
○小坂国務大臣 その前に両院で、その了解事項を報告せよという決議がございましたので、その決議に基づきまして、その了解事項というものは国会に報告された、こういう事情でございます。
#41
○戸叶委員 了解事項ではございません。協定の問題を言っているわけでございます。
#42
○小坂国務大臣 協定を報告したわけであります。
#43
○戸叶委員 協定なり条約というものは国会の承認を得なければいけないということが、憲法の七十三条の三号に書いてあるわけでございますけれども、これに違反するものではないかというわけです。
#44
○中川政府委員 条約関係のことでございますので、私から御説明させていただきたいと思いますが、この問題は相当前から何回も国会でいろいろな御質疑があって、政府側も答弁しておるのでございますが、この協定のもとになりますものは、四月の六日に衆参両院でおのおの同趣旨の御決議がございました。その決議の内容は、戸叶先生よく御承知だと思いますが、阿波丸請求権は放棄するのが適当である。必要な措置を政府がとって、その結果を国会に報告せよという内容の御決議があったわけでございます。政府といたしましては、両院でおのおのありました決議の通りのことをいたしまして、アメリカとの協定を結びまして、それを国会に御報告したのでございます。
 従って、これが憲法との関係はどうなるかという点も前から問題があったわけでございますが、結局国会で事前にそういう決議をなさいましたので、これは憲法七十三条にいうところの条約としてではなく、行政事務、政府がなし得る行政行為ということに解釈いたして、それによって政府で協定を結びました。しかし、国会の御決議にある通りこれを報告せよということでございますので、その通り御報告した、かようなことになっておるわけでございます。
#45
○戸叶委員 私は少なくともこの委員会ではこれを問題にしていないと思うのです。初めてだと思いますが、それはいずれにいたしましても、今の条約局長のお話では四月六日――私は七日だと思いますけれども、二十四年四月七日に両院で決議をいたしました。そして岡崎外務大臣が趣旨の弁明をされているわけでございますけれども、しかし、それは国会の決議案というものに基づいて協定が結ばれて、そうして協定は国会の承認を得ないでもいいんだ、決議案さえ国会で通っていれば、それに見合った協定をどこと結んでもいいんだというような解釈になってくると、これから非常にいろんな問題が起きてくるのじゃないか。しかも国の財政に影響のある内容を含んだ決議案、その決議案によって一つの協定が国会の承認を得ないで結ばれるというようなことは、一体許されてもいいものかどうかということを私は疑問に思いますけれども、この点はいかがでございますか。
#46
○中川政府委員 これは、もちろんアメリカとの協定の効力の問題といたしましては、日本の国内法上正当にできた協定であれば効力があることは当然でございます。なお、日本の国内法上これが正当にできたものであるかどうかということは、結局憲法の解釈になるわけでございますが、国会の両院で御決議のありました御趣旨から見れば、国会のそのときの御意思としては、これを政府が結んで国会に報告すれば、それで憲法の趣旨は達成されておる、憲法に違反していない、かような御趣旨であることは、両院で決議された内容から見て、当然さように解決すべきものと考えるのであります。政府といたしましても、その解釈によりまして、その通りの措置をとったわけでございます。従って、阿波丸請求権放棄に関する協定は有効に成立した国際協定である、かように考えております。
#47
○岡田(春)委員 関連して。昭和二十四年四月七日の決議案に基づくと、第四項に「政府は本決議に基いて執った措置の結果を本院に報告すること。右決議する。」とありますね。この報告はいつ行なわれましたか。
#48
○中川政府委員 四月二十六日であったかと思います。
#49
○岡田(春)委員 報告するということは、その条約それ自体は両国間の協定でありますから、当然報告の中にはこの条約の承認を求むるものとして案件を提出されなければならないと思いますが、報告ということであるから行政関係の協定でいいという、そういう解釈はどういうところから出てきたのですか。
#50
○中川政府委員 もしもこれを国会の御承認を得よという御趣旨であれば、当然承認を求めよという決議があるべきであるのでありまして、承認でなくて報告せよという御決議でありまして、従って国会の御意思ははっきりしておる、かように考えたのでございます。
#51
○岡田(春)委員 国会の総意としては、報告の中には承認を求むるものとしての報告という言葉を使っている。あなた方が勝手に報告と承認とは違うというような解釈をしたならば、それはどういう論拠に基づいているのか、内閣としてはどういう方針なのか、そこら辺をはっきり伺わなければ、われわれは了解できないわけです。
#52
○中川政府委員 国会の決議の内容は報告でございまして、承認を求めよということではないのであります。承認と報告とは、おのずから違う内容の観念でございます。なお、報告いたしまして、国会はその報告をお聞きになりまして、問題はそれで片づいておるのでございまして、この問題は法律的に少しも間違いはなかった、かように考えます。
#53
○岡田(春)委員 私関連ですから、これ以上やりませんけれども、報告という中には、何も承認という言葉を使わなくても、承認を含む場合だってあり得るわけです。あなたの方は、報告だからといって、行政事項であるとしてこれを国会に提出しなかったということ自体は、行政措置としての扱いは明らかに私は違法だと思う。両国間の、しかも権利義務を拘束するような条約の問題を国会の承認を求めないということ自体、これは国際法上の慣例、今までの慣例からいいましても、私は違法だと思う。報告と国会がきめたんだから、だから承認を求めなくてもいいのだということにはならない。報告の中に承認を求めるということも当然含まれている、こういうようにわれわれは解釈している。(「国会で了承したんだから」「そのとき言えばいいじゃないか」と呼ぶ者あり)報告の中には承認も含まれているのです。委員長、注意しなさいよ。
#54
○堀内委員長 お静かに願います。議員相互の発言は中止して下さい。
#55
○岡田(春)委員 この点は大臣はどういう解釈をおとりになりますか。私は関連ですからあまり言いません。
#56
○小坂国務大臣 条約局長の御答弁した通りでよろしいと思います。国会の意思によってやられたことで、国会がそれについて何もあとで文句がなければ、それを了承されたものであると思います。
#57
○森島委員 関連して。私は、この種の問題につきましては、数回本委員会においても政府当局に対して質問をいたしております。従来の条約局長の解釈によりますと、この憲法にいう条約というのは、条約という名前を使っても使わないでも、協定という名前を使ってもよろしいが、いやしくも国民に権利義務を生ずるものを実質的に条約と見て、これに対して批准を求めてきたということでございます。国会もその通りにやってきたと私は思いますが、その点が明らかでないので、私は形式上の問題と実質上の問題に分けて何回も質問いたしました。条約局長の答弁は、安保その他の条約を通じましても、この点については一貫しております。しかし、ただいまの中川条約局長の答弁を見ますと、従来の条約局の解釈とは本質的に異なっておる。国会の決議を尊重したんだからそれでいいのだということでは、不十分である。国会の決議といえども憲法に優先するものじゃございません。従って、私はこの問題については外務大臣のお考えも聞き、また批准を要すべき条約の範囲については、あらためて問題にすべき必要があると思うので、この点について中川局長に再度の答弁を求めておきます。
#58
○中川政府委員 今森島委員の御指摘になりましたいわゆる条約、憲法に書いてある条約の意味でございますが、これは形式上条約という名前がついておるかどうかによって、必ずしもきめるわけにいかないのでありまして、実質を考えてきめなければいけないと思います。条約の中には、憲章という名前の条約もございますし、いろいろな条約があるのでございます。その実質によってきめなければいけない。それではどのような国際協定、国際の取りきめが、いわゆる憲法の条約として国会の御承認を要するかという問題は、結局その実質の解釈の問題になるわけでございます。一つのスタンダードといたしまして、御指摘のような国民の権利義務に関連あるものというようなことも一つの基準でございます。それと同時に、たとえばそのほかの形式におきまして、すでに国会の御承認を得ておる、あるいは毎年の予算の形で、国会の御承認を得ておるというものであれば、すでに国会の御承認を得ておるということで、国際協定でありましても、あらためて国会の御承認を得るという措置をとらないものも幾つもあるのでございます。
 ただいまの阿波丸請求権の問題は、事前に国会で、こういう協定を結んで国会に報告せよという御決議があったのでございまして、従ってその場合は、これはいわゆる憲法にいう形式的な条約として国会の御承認をあらためて得る必要はない。実質的に申しまして、すでに国会が事前に十分内容を御承知で、この内容の協定を作れという国会の御決議があったのでありますから、これは憲法にいうあらためて国会の承認を要する条約ではなく、外交事務として取り扱う範囲、かように考えたわけでございます。
#59
○森島委員 関連質問ですから、私簡単にやりますが、ただいまの御答弁は実質と形式とを混淆したあやまちがあると思うのでございます。たとえば条約という名称がついておりましても、国民の権利義務に関係のないものは、承認を求める必要がないというふうな解釈を外務省ではとっております。しかし今回のものは、阿波丸事件の了解事項にいたしましても、これは完全に権利義務に影響があるのであります。たとい国会の決議でこれを事前に承認をしておりましても、私は憲法上の解釈といたしましては、少なくともこれは国会の承認を経べきものと思うのでございまして、もしこれをそのままに放置いたしますと、将来憲法上の大きな問題が生じてくるおそれもある。外務省としては、その取り扱いにおいて、そのときの都合によって、便宜的な取り扱いをされるおそれもあると私は思いますので、この点についてはもう一度御検討願って、過去におけるあやまちはあやまちとして、やむを得ません。しかし、これが誤っておれば、将来の取り扱いといたしましては、かくのごとき取り扱いをしないということにお改め願いたいと思うのでございます。これは国会の了解事項、決議とかいうよりも、それに優先する憲法上の問題ですから、私は非常に重要な問題だと思っておるのでございます。
#60
○小坂国務大臣 この問題はただいまの問題じゃなくて、過去の問題でございます。しかし今、森島委員の外務省に対してのいろいろな御質問は、これは外務省としては、こう解釈するのが当然だと思います。ただ国会が決議をして、こういう内容を盛った条約を作れということがいいか悪いかという問題ならば、これはまた別の問題だと思いまして、これはむしろ国会の御決定になるべき問題だと思います。
#61
○戸叶委員 今の質疑と答弁を聞いていたのですけれども、それじゃ今後におきまして、国会において、ある決議をして、そしてこれを報告せよという内容があるならば、適当に協定なり了解事項を結んで、そうして国会に諮らなくともいいというふうにお考えになるかどうか、この点も念のために、今後のこともありますから、お伺いしておきたい。はっきり申し上げますけれども、私どもはこの阿波丸事件に基づく日本国の請求権の放棄に関する決議案というものと、河波丸請求権処理のための日米協定とは、法律的に別個に考えるべきものであるというような観点に立っておりますけれども、政府は今後においてどういうふうにお考えになるかを念のために伺っておきたいと思います。
#62
○小坂国務大臣 私が申し上げたように、国会でこうした決議があって、その決議の内容を盛ったものを政府において作れといわれれば、政府はこれに従うというふうに思います。だれから、そういうことをするかどうかということは、国会で御決定なさるべき問題である、私はかように思うと申し上げたのであります。
#63
○戸叶委員 大蔵大臣が来ていらっしゃるので、ちょっと念のために伺いたいのですが、この阿波丸事件につきまして国会で決議案が通りましたけれども、この決議案の内容には損害賠償その他の日本の債権の放棄という内容を含んだ決議案でございますけれども、それの決議案が、国内法を出さずに先に出たというようなことは、財政法の第八条に違反ではなかったかどうかということを念のために伺っておきたいと思います。
 なぜならば、この財政法の第八条に「国の債権の全部若しくは一部を免除し、又はその効力を変更するには、法律に基くことを要する。」こういうふうになっているわけでございますけれども、法律はこの決議が通ったあとから通っておりますが、昭和二十五年にこの決議案に基づいての法律が出たわけです。そうすると決議案の内容そのものが国の債権、国民の権利義務に関係するものであるのにかかわらず、決議案を先に出してしまって、そうしてあとから法律というようなことは財政法違反でないか、ちょっと伺います。
#64
○水田国務大臣 私はあまり法律の専門家ではありませんが、国会が政府に行政措置をいわば決議で命令したようなものでございますから、政府がそれに従って行政の措置をとり、必要な法案を出して、国会の承認をあとから求めるということも別に私は違法じゃないじゃないかと思います。
#65
○戸叶委員 法律を無視したような内容を持っている決議案というものが先に出されている。これがいいものかどうか、大蔵大臣の御意見を伺います。
#66
○水田国務大臣 国会は国権の最高機関でございますから、結局法律も国会の作るものでございますが、他日こういう法律を作って処理せよ、しかしこういうことをやれという決議も、国権の最高機関としては別に私は違法なことじゃないと思います。
#67
○戸叶委員 決議案というものが、ほんとうに国権の最高機関である国会できめられた決議案の権威というものが保たれないのですけれども、そのつど政府の解釈によって、ときには決議案が守られなかったり、また都合のいいときには、これは決議案なんだから、どうしてもこれを守るのだというふうに解釈されている例が、今までたくさんあったものですから、そういう観点から見ましたときにも、何かここに割り切れないものが感じられるわけでございますが、この問題につきましては、いずれほかの例をよく研究して参りまして質問してみたいと思います。
 そこで外務大臣に最後にお尋ねしたいのは、先ほどから稻村議員との質疑応答を用いておりましたが、まだ大蔵大臣の方も外務大臣の方も、ガリオア、エロアの金額については、大体どのくらいかということもきまっておられないようでございますけれども、いつごろまでにこれはおきめになるつもりか。新聞などによりますと、ライシャワー大使が来られたのを機会にこの話を進めて、池田さんが渡米の前にきめて、そうして今度ははっきりさせてくるというようなことも伺っておりますが、いつごろの時期を目途にしてこれをおきめになろうとしているか、この点を伺いたいと思います。
#68
○小坂国務大臣 大蔵大臣、通産大臣とよく御相談いたしまして、誠意をもって結論を得たい、かように考えております。
#69
○戸叶委員 大体の目途は池田さんが渡米の前に置いておられますか、どうでしょうか。
#70
○小坂国務大臣 誠意をもってということは、無理におくらせるという考えでなくという意味も含んでおります。できるだけ早い機会に結論を得たい、こう考えております。しかし結論を得るまでには、十分納得の得る結論でなければなりませんので、それについては十分の話し合いをしなければならぬ、こう思っております。
#71
○戸叶委員 水田大蔵大臣のこれまでの国会の答弁を伺っておりますと、このガリオア、エロアは日米の共通の利益になるようなことのために使いたいというふうなことを言われておりますけれども、たとえばどういうふうなものにこれを充てようとされる構想を持っておられるか、伺いたいと思います。
#72
○水田国務大臣 私はまだ日米共通の利益のために使われるということを言ったことはございません。
#73
○戸叶委員 だれでしたか。――済みません。池田さんでした。
 では外務大臣にその点を伺いたいと思います。
#74
○小坂国務大臣 大蔵大臣からおっしゃった通りでございます。
#75
○戸叶委員 きょうは総理大臣の代理として官房長官おいでになっていらしたので、官房長官が今それをよく御存じだと思ってお聞きしようと思ったのですが、いらっしゃらなくなってしまったのですね。
 そうすると外務大臣は、日米共通の目的のために使うのだということをたびたび政府が答弁されておりますけれども、この点は御存じないのでしょうか。それとも知っているけれどもそれは今言えないとおっしゃるのでしょうか。ちょっとこの点だけ確かめておきたいと思います。
#76
○小坂国務大臣 要するにわれわれ閣僚は総理大臣の指揮下にございますから、総理大臣のお考えに従ってやりたいと思っております。しかしもちろんこういう問題ができるだけ有効に活用、解決されるということは望ましいことであると考えております。
#77
○戸叶委員 まだありますけれども、この次にいたします。
#78
○堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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