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1960/04/14 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第17号
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1960/04/14 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 外務委員会 第17号

#1
第038回国会 外務委員会 第17号
昭和三十六年四月十四日(金曜日)
   午前十時五十一分開議
 出席委員
   委員長 堀内 一雄君
   理事 竹内 俊吉君 理事 野田 武夫君
   理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
      椎熊 三郎君    正示啓次郎君
      床次 徳二君    橋本 龍伍君
      前尾繁三郎君    勝間田清一君
      黒田 寿男君    帆足  計君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  津島 文治君
        外務事務官
        (条約局長)  中川  融君
        外務事務官
        (国際連合局
        長)      鶴岡 千仭君
 委員外の出席者
        外務事務官
        (経済局次長) 高野 藤吉君
        外務事務官
        (国際連合局管
        理課長)    太田 正己君
        通商産業事務官
        (通商局次長) 瓜生 復男君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とパキスタンとの間の友好通商条約の締
 結について承認を求めるの件(条約第五号)
 通商に関する日本国とキューバ共和国との間の
 協定の締結について承認を求めるの件(条約第
 一二号)国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
#2
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 日本国とパキスタンとの間の友好通商条約の締結について承認を求めるの件を議題といたし、質疑を行ないます。戸叶里子君。
#3
○戸叶委員 ただいま議題になりました条約につきまして、少し質問したいと思います。
 まず最初に、三条に「国際法の要求する保護及び保障」ということが書いてございますけれども、国際法はどういう保護と保障を与えているか伺いたいと思います。
#4
○高野説明員 一般的に申し上げまして、生命、財産、信教の自由、そういう一般的なものでございます。
#5
○戸叶委員 外国人の保護というのは、実体的には国内法で規律されるので、国際法は本質的には国家が拘束しないのではないかと思いますけれども、この点はいかがでございますか。
#6
○高野説明員 一般的に国内法によって保護するわけでございますが、国際法上、一定の水準の保護をお互いに与えられるというのが一般の国際慣行でございます。条約がない場合にはそういうふうになっております。
#7
○戸叶委員 そうしますと、条約がある場合には国内法というよりも国際法を適用するということなんでございますか。
#8
○高野説明員 国内法によって保護するということを国際法上相手の国に対して約束する、そういう二段階になって、実質的には国内法的に保護を与える、それが国際法上相手の国に約束する、そういうことになります。
#9
○戸叶委員 パキスタンの国内法律は外国人を強制軍事服役させることになっているのかどうか、この点を伺いたいと思います。
#10
○高野説明員 パキスタンの国内法ではっきり書いてはございませんが、この条約によりまして、日本人が向こうで軍事上の服役の義務を負うということにはならないと解釈しております。
#11
○戸叶委員 そうすると、結局軍事上の義務を負わなくてもいいということをこの条約ではっきりさせたというふうに了解していいわけですね。
#12
○高野説明員 そうです。
#13
○戸叶委員 それじゃ、それぞれの国の国内法で外国人を強制軍事服役させている国があると思いますけれども、たとえばアメリカとかイギリスとかブラジルとかソ連とかフランスとか東南アジアとか、そういうふうな国々で、どの国が国内の軍事的な義務を負わせているかを伺いたいと思います。
#14
○中川政府委員 これは一国がその国に住んでおる外国人に対して軍事上の役務を課するということはないのが原則でございます。今御指摘になりましたそれぞれの国々におきましても、そのような意味におきましての軍事上の強制措置、服役等を外国人に課している国はないと存じております。もっとも、いわゆる軍事服役ということでなくて、たとえば戦争になりました際に公債を強制的に買わすというようなことは、これは戦時中に各国が外国人にやらせたことがあるわけでありますが、兵役の義務その他直接の軍事的な義務、これは外国人に負わしてはならないという国際法上の原則でございますから、そのような措置をとっている国々はないと存じております。
#15
○戸叶委員 そういう措置をとっていないのにどうしてわざわざここに入れたのでしょうか。
#16
○中川政府委員 この通商航海条約――日パばかりではございません、それ以外の国との通商航海条約におきましても、国際法上当然のことを、念のために、なお条約上の義務として書くというものが非常に多いのでございまして、書いてありますれば、単に一般国際法によるという義務のほかに、条約に基づくはっきりした義務がそれぞれの国に課せられるわけでございまして、そういうように念には念を入れて、そういうことをはっきり規定するという趣旨の規定が相当多いのでございまして、軍事上の服役の点はむしろそのカテゴリーに入るものでございます。
 なお、先ほどの御質問のありました生命、財産等に対する保護、これも文明国であれば当然外国人にもするのが国際法上の義務でございますから、なおそれをはっきりこの条約に、しかも条約の初めの方にはっきり書いてある、原則でございますからはっきりしておく、こういう意味でございます。
#17
○戸叶委員 そうすると、どこの国にもその国の強制軍事服役というようなことをさせる国はないということをおっしゃったわけです。戦前の日米通商条約の一条には強制兵役の免除が規定されておりますけれども、戦後に締結された日米通商条約にはこの規定が取り除かれております。そこで、原則的には在米日本人は強制兵役に服する義務があることを認めたことになるのではないかと思いますが、そういうふうに理解してもよろしいでしょうか。
#18
○中川政府委員 今の戸叶先生の御指摘になりました点、これは非常な例外の点でございます。実は、アメリカにおきましては、戦後におきまして選抜徴兵制度という制度がございます。これはアメリカにおる人間につきまして、内国人――アメリカ人であると外国人であるとを問わず、法律上の義務としてはやはりこの選抜徴兵制度が適用されるということになっておるのでございまして、その関係上、理論的には、アメリカに住んでおります日本人でありましても選抜徴兵制度の適用があり得るのでございまして、その関係から、アメリカとの通商航海条約におきましては、戦前の条約のように強制的な兵役の義務を免除するという規定を入れることが、アメリカの国内法の建前から困難であったわけでございます。従って、アメリカにつきましては、先ほど私申しましたこととちょっと違うことになるわけでございますが、例外的にそのような制度が行なわれておるということでございます。
#19
○戸叶委員 そうしますと、今の通商航海条約ではその制度は依然として残っておるということになるわけでございますね。
#20
○中川政府委員 アメリカとの関係では残っておるわけでございます。
#21
○戸叶委員 そうしますと、そういう場合の保護についてはどういうふうな外交上の保護措置というものがとられるのでございましょうか。どういうふうになっておるのでしょうか。もう少しはっきり伺いますと、もし日本国籍の日本人がアメリカの軍隊に徴兵義務として服務するような場合に、その人の法的な地位というものはどういうふうになるのでしょうか。結局アメリカへの忠誠というふうなことをしなければならなくなるわけじゃないでしょうか。
#22
○中川政府委員 アメリカとの通商航海条約に直接関係いたしました太田課長から答弁させます。
#23
○太田説明員 アメリカの場合には、実際にさっき条約局長の申されました選抜徴兵制度の適用を見ますると、一応外国人も、長くおりました――一時の訪問というようなものでない場合には、昔の日本で申しますと甲種、乙種というようなものがございましたが、ああいうようなものの一番下の方の、たしか、私の記憶に間違いございませんければ、Aというのが日本の場合の甲種合格でございますが、Fだったと思いますが、名義上それに入れておるのでありますけれども、兵隊にとることはない。永住許可を受けますと――その永住許可を受けますのは当該外国人が希望してすることになりますが、永住許可を受けますと、非常に上がりまして、大体普通のアメリカ人と同様に徴兵されることになる。それ以外に外国人でも志願することができる。志願いたしますと永住許可とか市民権をとるということが非常に容易になりまして、そのために志願する外国人が多いように聞いております。
#24
○戸叶委員 そういうふうな場合は、A項からF項まであれば一番下の位のF項くらいだというお話がございましたけれども、依然としてそういうふうな外国人の徴兵制度ということがあることはあるわけなんですね。ですからそういうふうな場合も考えられるわけですけれども、その場合の日本人の法的地位というものは一体どういうふうになるかということを伺いたいわけです。
#25
○太田説明員 理論上確かにございます。今の御質問にありましたように理論上とられる場合がございますが、実際上アメリカに滞在いたしました者が、本人が希望しないのにとられるということは事実上はない、このような制度になっております。
#26
○戸叶委員 そうすると希望しなければならないというふうに理解してもいいわけですか。
#27
○太田説明員 と申しまするのは、志願いたしまするか、あるいは永住許可をとるか、あるいは帰化するか――帰化したら日本国民じゃなくなりますから……。そうじゃないと実際は兵役を課することはない、そのようになっております。
#28
○戸叶委員 それじゃそういうふうなことを通商航海条約の中にはっきりさせたらいいじゃないでしょうか。そうじゃないといろいろな問題が起こると思います。たとえば私は、もう五年くらい前だったかと思いますけれども、アメリカへ行きました日本の青年で季節労働者というのがございました。その人たちが、自分が考えて行ったのと違って、非常に待遇なんかの関係で問題を起こしまして飛び出してきた人がございました。そうしたら、その飛び出した人に対して日本の外務省の出先の人が、何か判を押したものを見せて、お前はこれに署名しているじゃないか、これによるといざというときにはアメリカの兵役の義務を負わなければいけないのだぞということで脅迫されたといって私のところへ逃げてきた事実を知っているわけです。きょうは日パの通商航海条約でございますけれども、それに関連して、近いうちにアメリカとの通商航海条約の期限も切れますので、改定の問題もあると思いますから、この際にはっきりここで意見を述べておきたいと思いますけれども、そういうふうなこちらから望まなければ兵役の義務は負わなくてもいいのだ、あるいは帰化しなければ兵役の義務は負わなくてもいいのだというのであるならば、その辺をもう少しはっきりさせておく必要があるのではないかと思いますけれども、こういうふうな例を御存じないかどうか、それからまたそういうことは間違いであるというふうにお考えになるかどうか。それからもう一度念のために伺いたいのですが、長くいても絶対に徴兵の義務というものは、帰化するなり、あるいはまた希望するなりしなければ、ないのだ、こういうふうに了解してもいいかどうか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
#29
○太田説明員 アメリカの制度を見ますると――外国人を一応理論上強制的に兵役に服せしめるという制度を持っている国は非常に例外的ではございまするけれども、米国は第二次大戦中は、敵国人も徴兵したという非常にめずらしい国だそうでございます。大戦の末期に至りましては、ドイツ人、日本人も、志願しないで徴兵したそうでございます。そういうふうな法律構成を持っておりまして、それでそのような制度が今でも理論上残っておる。実際現実の場合は志願しなければございませんけれども、残っておる。そのために、アメリカの条約というのは大体私も承知しておりますが、通商条約は、そういうような徴兵は実際は行なわないが、国内法の抵触の問題がございまして、理論上国内法はそういう制度を依然持っておるものでございますから、条約においてもそういう型のが行なわれておるということでございます。
#30
○戸叶委員 何となく私すっきりしないような気がするのですけれども、中川局長そうお思いになりませんか。何となくはっきりしないですね。そういう根本的な原則は残っておるけれども、実際には、今までは志願しなければそういうことはなかった。原則があればやっぱり兵役に服させる権利というものは向こうが持っておるわけですね。そうじゃないですか。アメリカ側が持っておるわけでしょう。太田さん、そうでしょう。だから、法律的、原則的にはそういうものがあるのだ、だけれども、実際においてはそういうことは今までなかったというのですけれども、そのことは危険ですね。そういうことが根本的にある以上は、やはりそういうことをされても仕方がないのだということになるんじゃないですか。そうじゃないでしょうか。
#31
○中川政府委員 ただいま戸叶先生の御質問の点よくわかるのでありますが、ただいま太田説明員が申し上げましたように、アメリカの国内法では、今のところはまだそういう制度が残っておるということでございます。従って十年の期限がきまして、もしアメリカとの通商航海条約を改定するという問題が起きました際に、この問題をもう少しすっきりした形にできるかどうかという点は、非常に重要な点であると思いますので、よく検討いたしたいと思います。
#32
○戸叶委員 そういうふうにおっしゃれば筋が通るのですけれども、原則的にそういうものが残っていて、実際にはやらないのだと言われましても、原則論、法律論をとられてこられますと、やはり日本は負けになるんじゃないか。そういう意味で、さっき私が申し上げましたような事件が起きたのだろうと思います。この問題も、おそらく外務省の方まで御存じかどうか知りませんけれども、私はびっくりしたのです。船の中で署名しろと言われたから署名して来てみたら、兵役の義務まで負わされるということが書いてあったのだ。これは大へんなことだから、日本を出てくる人には、はっきりそういうことを教えておいて下さいと言われた。私前に一度そういうことを発言したことがあるわけでございますが、そういう点もどうぞよく今後調査して、条約局長がおっしゃったような趣旨でいっていただきたい、こう思うわけでございます。
 この第四条の四項に、「いずれの一方の締約国の国民及び会社の財産も、他方の締約国の領域内において、公共のためにする場合を除くほか、収用し、又は使用してはならず、」とあるわけですけれども、ここにいう公共の概念というものを明らかにしていただきたいと思います。たとえば国家の政策で、ある企業を社会化して国有化するような場合があるのでございますけれども、そうした場合、必ずしも公共のためとは限らないとも思えます。そこで、ここにいう公共とはそういうふうな国家の政策による国有化によって収用する場合にも該当すると理解していいかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
 さらにそういう場合の最恵国待遇についてはどうなっているかを伺いたいと思います。
#33
○高野説明員 公共のためにする場合に、国家が収用するということを含むか含まないかという御質問でございますが、一応含むと解釈しております。それからその場合には、もちろん第五項で最恵国待遇が与えられております。
#34
○戸叶委員 第八条にいう金銭証券とは、どういうものをいうのでしょうか。
#35
○高野説明員 これはあらゆる有価証券につきまして、それの授受につきまして、お金よりも悪い待遇を与えられたり、特別に手数料を高くしたり、そういうことをしないで、最恵国待遇を与えるということでございます。
#36
○戸叶委員 第十一条の(g)項は、第三国が所有、管理について支配的な利益を有する会社に対しては、この条約の利益を拒絶することができることになっているわけでございますが、わが国についてこの(g)項に該当するような会社があるかどうか、あったら指摘していただきたいと思います。
#37
○高野説明員 現状においては、そういう支配的な利益を有する会社は日本にはありません。
#38
○戸叶委員 今のところはないとしても、もしもそういうふうな会社ができた場合に、非常に不利益な立場に置かれるのであるけれども、それを救済する方法については、何か考えていらっしゃいますか。
#39
○高野説明員 この規定は、たとえば日本におきまして、パキスタン法人がございまして、その実際上の支配的利益を受けているのがその以外の国の場合には、実際の会社の利益はパキスタンではないわけでございますが、その場合には最恵国のあれをお互いに与えない。逆の場合に、パキスタンにおいて、日本が支配的な利益を受けておらずに、ほかの国のイランとかインドが支配的な利益を持っておる場合にはこの適用を受けない、そういうことになっているわけであります。現実的なお互いの支配的な利益を受けている場合にだけ待遇を与える、そういう規定でございます。
#40
○戸叶委員 たとえば資本の五一%以上が第三国の国民に所属するというような場合をいうんでしょうか。
#41
○高野説明員 その通りでございます。
#42
○戸叶委員 今日本の場合にはそういうものがないと言いながら、この規定をわざわざ設けた理由はどこにあるのでしょうか。今後そういうものを置こうとするお考えがあるんですか。
#43
○高野説明員 将来の予防ということが考えられますから、そういう場合には、この条項を適用する、そういう趣旨でございます。
#44
○戸叶委員 これはあまり希望しないところであるけれども、あった場合に、こういうものを置いた方がいいというお考えなんでしょうか。
#45
○高野説明員 先ほど来日本にそういう会社があるかどうかという御趣旨で私は返事をしておりましたが、普通の場合はございません。
#46
○戸叶委員 パキスタンの場合には、これに適用するところがある、しかし日本の場合には、この項に適用する会社はない、こういうわけでございますね。
#47
○高野説明員 さようでございます。
#48
○戸叶委員 パキスタンと日本との間の貿易は、大体どのくらいになっておるのでしょうか。ついでに伺いますが、主として輸入されているものはどんなもので、輸出されているものはどんなものか、伺いたいと思います。
#49
○高野説明員 昨年の一九六〇年におきまして、輸出が五千八百万ドルで輸入が三千百万ドル。しかし五九年、五八年は逆にわが方に輸入が多くて、輸出が少なく、わが方の入超になっておりましたが、昨年から出超に転向しております。
 それからパキスタンから輸入しているおもなものは、大体綿花とジュートでございます。綿花は大体千七百万ドル、ジュートが千万ドル、合計で大体二千七百万ドルですが、ほとんどそれで占められております。それから日本からパキスタンに出ている輸出は、繊維、加工繊維、金属、鉄鋼、機械、繊維機械、大体機械類、鉄鋼類、そういうものがおもに出ております。
#50
○戸叶委員 大体これでけっこうです。
#51
○堀内委員長 他に御質疑はありませんか。――質疑がないようでありますから、本件に対する質疑は、これをもって終了いたしました。
    ―――――――――――――
#52
○堀内委員長 引き続き討論に入るのでありますが、本件に対しては別に討論の通告もないようでありますから、直ちに採決いたします。
 日本国とパキスタンとの間の友好通商条約の締結について承認を求めるの件、本件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#53
○堀内委員長 御異議なしと認めます。よって本件は承認すべきものと決しました。
 なお本件に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#54
○堀内委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#55
○堀内委員長 通商に関する日本国とキューバ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題とし質疑を行ないます。帆足計君。
#56
○帆足委員 その前にちょっとお断わりいたしておきますが、一昨日人類を乗せた衛星が初めて飛びましたので、後ほど一言外務大臣の所見を伺いたいと思っておりますが、十二時ごろ外務大臣がおいでになるよしでございますから、そのときは五分か十分だけに限って時間をいただきたいと思います。
 さてお許しを得まして、引き続きキューバと日本との通商条約について御質疑を申し上げますが、前会におきまして私は、キューバにおけるこのたびの政変は、アジア、アフリカ並びに中南米を流れる一つの歴史の流れとして深い理解と友情を持ってこれを認識すべきであるということをるる申し上げまして、その論理の筋道と実際の認識につきましては外務省当局においても御異論もなく、また外務省当局の種々なる御調査も大へんよくできておることを申し上げましたところが、外務大臣もまことに御満足の様子でございまして御同慶の至りに存じた次第でございます。
 キューバの革命は、長い間半植民地であった民族が自由と独立を取り返したのでありますから、一時的には多少の混乱や行き過ぎがあることも理解いたさねばならぬことであろうと存じます。またキューバの状況に対しましては、各党各派からいろいろなニュースが流されますので、その実情、ほんとうの真相を把握することも、困難でございますけれどもきわめて大切なことであると思います。結局歴史の流れの大局から判断を見失わないことが必要であることを私は御注意申し上げたのでございます。民族のやむにやまれぬ独立と自由への要求から出発いたしましたこのキューバの独立の精神は、かつてのアメリカの独立宣言やまた偉大な大統領ジェファーソン等の思想にも相通ずるものでありまして、不幸にしてキューバとアメリカとの国交関係はアイゼンハワー、ダレスの線においては非常にむずかしくなっておりますけれども、しかしケネディ大統領のもとにおいてチェスター・ボールズ、スチブンソン氏などの線からすれば、私はここにまた、やがては話し合いと平和共存の余地も発見し得るのでないかと期待しておる次第でございます。あたかもアルジェリアの問題が、フランスにとってはガンと同様に処置のつかない問題であると考えられておりましたのが、ドゴールの良識によりまして、一進一退しつつも次第に合理的解決に近づいておるのと同然であると考えておる次第でございます。キューバの革命は、当初はバチスタの暴政に対する、そして他国の半植民地支配に対する自由、独立、平和の叫びとして全国民的な規模で新政権が樹立されましたことは御了承の通りでございますけれども、最も貧困な状況にあったのは言うまでもなくキューバの農民でございますから、ちょうど日本においてマッカーサーの農地革命が行なわれましたように、キューバにおいてもまず行なわれたのが農業の改革でありました。カストロ首相は賢明にもそれを協同組合と結びつけまして、孤立分散した農民に小さな土地を分かち与えただけでは生産力の増大にならない、同時に協同組合によって得た土地を互いに助け合って近代化することが必要であるという見地から、協同組合主義がとられまして、農業生産におきましては非常なスピードをもって効果が上がりつつあることを昨年まで私どもは聞いていたのでございます。ところが、その後革命はさらに一歩進みまして、ダレス外交の生硬な線のために、インドと英国が対立をはらみつつも協調し合って要領よくやっておるというふうには参らずに、ダレスやまたアイゼンハワーの動脈硬化的な外交が若い民族との正面衝突になりまして、遺憾なことには経済及び政治の国交断絶にまでなったことは御承知の通りでございます。この大きな変化が起こりましたのは、去年の夏からでありまして、その後七月には石油会社の接収が行なわれ、報復としてアメリカの砂糖の輸入停止が行なわれ、さらに八月には共産圏がアメリカの肩がわりをして砂糖を買うというふうに、情勢は急転直下し、アメリカ系の電力、電話、製糖、製油、ゴム、銀行等が国有に移されました。時の勢いをもってして、さらにキューバにおける主要産業四百数社もまた国有になりまして、全面的にやがてアメリカと断交状況になっておるのでございます。過渡期の現象でございますにしろ、非常にドラスチックな改革に事態が進みましたために、一時的に経済の混乱と停滞が起こったであろうことは、だれしも想像のつくことでございます。その余波を受けまして、日本とキューバとの貿易も昨年の中期以後におきましては円滑に進捗していない。せっかくのこの通商条約にもかかわらず、現状は停頓の状況にあるということも政府当局の御承知の通りでございます。アメリカの著名な評論家のヒューバーマン、スウィージーの両氏が、キューバを昨年の三月視察いたしまして、岩波新書としてわが国でも翻訳されておりまするけれども、キューバ革命についての解説と現地視察の報告を出しております。さらに、昨年の九月から十月にかけまして、再び変革の過程にあるキューバを訪問いたしまして、最もキューバの困難なるときの事情を詳細に報告いたしておりますのが、日本ではジャパン・プレスというニュースの国際情報の三百八十三号に詳細に掲載されております。これらの著名な国際評論家の現地視察の状況を見ましても、キューバの若い政権が今産みの悩みの中にある実情がまざまざと看取されるのでございます。従いまして、通商条約はこうしておそらく近く批准されるでありましょうけれども、せっかく政府の御善意と日本、キューバ両国当事者の御協力によってできましたこの通商条約を、わが外務委員会において慎重に討議し、これに批准を与えるとするならば、その実施についても私どもは責任を持ちまして、深い理解と聰明な洞察力を持って、日本とキューバとの関係を一そう合理的平和共存の関係に置き、通商の拡大をはかるために、適切なる行政措置、並びに適切なる業界の御努力が必要であるということが痛感される次第でございます。
 そこで、まずお尋ねいたしいことは、キューバに新しいナセルのような民族の革命が起こっておるということは国民すべてよく承知しておりますけれども、日本とキューバとの貿易関係がかくも大きく、そうして重要な内容を持っておるということについては、ほとんどまだ一般には理解されておりません。キューバと日本との貿易関係は、最も多かったときには三百億円近くにも輸入総額が達し、しかも輸出はわずか二十億円にも足らないという状況であります。しかし、いわばアメリカの満州国であったキューバが、今や独立国になったわけでございまするから、キューバといたしましては、今後は日本とキューバとの関係は、特殊の国に、また特恵関税、差別関税に依存せずに、互恵平等でやりたい。従いまして、日本がキューバから砂糖を買う以上は、その買いました金額の五割ないし七割五分くらいは日本からの輸出を歓迎するということも、ゲバラ氏その他キューバの行政当局は明言しておるのでありますから、現在一時的に停頓いたしましても、前途は洋々たるものがある、ここに私は着目せねばならぬと思います。今、自民党政権は所得倍増ということをスローガンにして御努力なさっておるようでありまするけれども、かりに所得倍増ということになれば、日本は日本国というよりも日本丸と言った方が適切なくらい船と貿易の国でありますから、どうしても原料の輸入がこれに伴って倍増しなければならぬことは言うまでもないことでありまして、わが国におけるインフレーションのかぎは、国内の問題にあるよりも、むしろ端的に国際収支の問題にかかっておるのでございます。インフレーションのかぎは御承知のように、一つは財政の均衡、二つには国際収支、最終的には物資の総合的需給均衡、この三つがインフレーションのかぎでありますけれども、そのかぎの中で一番痛切なるものは、すなわち国際収支のかぎでございます。もし国際収支が保たれまして、ゴムも、砂糖も、石油も、ガソリンも、塩も、円滑に豊富に国内に入るとするならば、悪性インフレーションということには容易にならないのでございますけれども、もしそれらの輸入物資が確保されておりますならば、うどんのインフレが起きたとか、てんぷらのインフレが起きたとかいうようなことも起こらないのでございますけれども、もし、国際収支の面において赤字が続きまして、一たび均衡が破れまして、ガソリンの輸入統制をする、ゴムの割当をする、砂糖、塩の割当をするというような気配でも見えましたならば、決河の勢いをもってインフレーションにそれは発展する。そうして、最もその惨害をこうむるものは産業資本家と中小企業者と、究極的には労働者、庶民階級でございまするから、生産の倍増、経済の伸展はだれしも欲するところでありまするけれども、島国日本といたしましては、何といっても貿易がかぎであるという認識を失ってはならないと私は思うのであります。ところが、その国際収支に対しまして、どうしても海外から塩と砂糖は買わねばならぬ。買わねばならぬものである以上は、これをポンドかドルで買わねばなりませんけれども、しかもその金額が、一昨々年にはキューバに三百億円も、八千万ドル近くも外貨を払っている。しかるに、その払った外貨は全部消えてしまって、輸出はわずかに十五億円程度、四百万ドル程度にすぎなかった。わずか一割にもなっていないというような状況でありましたのが、今後は、政府の行政指導よろしきを得るならば、五割ないし七割五分というものを見返りの輸出で穴埋めをすることができるわけでありますから、単に貿易の振興のためのみならず、国際収支の均衡上稗益するところは実に大きいと私は思うのでございます。
 同時にまた、砂糖の消費量から見ますると、日本は欧米諸国のまだ何分の一というような状況でありまして、決して砂糖の消費が多過ぎるというような段階になっておりませんのに、砂糖がいろいろの事情から不当に値段が高くて、砂糖はこの国では貴重品のようになっております。従いまして、これは商工委員会等で論ずべき問題でありましょうけれども、砂糖を正常なる国民的な値段にいたしまするならば、もっと多くの砂糖を日本は輸入せねばなりませんし、人口の増加、文化の向上、生活の向上を考慮に入れまするならば、砂糖の輸入というものはまだ伸びるべき性質を持っているというふうに私は思うのでございます。だとするならば、キューバと日本との関係は、キューバにおいて民族解放の、社会科学、歴史の注目すべき事件が起こったということだけでなくして、日本の貿易政策上から見ましても、まさに中共貿易に匹敵するほどの大きな課題がキューバと日本との間にあって、その行政指導よろしきを得るならば、これは非常なる国益になる。これは超党派的に考えて、非常な国益になる課題をはらんでいるということに対して一段の注意を振り向けるべきであって、昨年の四月にできた日本、キューバ通商条約が今日まで批准がまだ延びていたということを私は残念に思う次第でございます。もっと多くの人たちの注目と、経済界の人たちの注意をキューバの正確なる認識に向けていただきたいと思うのでございます。通商条約はせっかくできましたけれども、今年の状況は過渡期の悩みとして現実が全然これに伴っておりません。従いまして、私はまずキューバと日本との貿易の各項目につきまして政府に御質疑いたしまして、そして問題の所在を明らかにして、さらに隘路の打開策について御注意を促し、官民、各党派相協力して、これから努力次第でどのようなよい関係をもつけ得る若い国に対しまして有効適切なる手を打たねばならぬ、そのための通商条約の審議であると思うのでございます。
 まず第一にお尋ねいたしたいことは、キューバの砂糖の世界の砂糖界における地位と、日本はキューバからどのくらいの砂糖をこの四カ年間に買い、そしてキューバにとって何番目のお客様であるかということを一言お尋ねしておきたいと思います。
#57
○高野説明員 日本は、御承知のように毎年砂糖を百十万ないし二十万トン輸入しております。今年度は百三十万トンくらいに上るのじゃなかろうかと思っております。その輸入先は、キューバ及び台湾、あとブラジル、豪州等がございますが、このキューバと台湾がそのおもなものであります。
 それからキューバの砂糖の産額は大体六百万トンで、今まではその半分の約三百万トンくらいをアメリカに輸出しておりました。それから百万トンばかりが国内消費、あと二百万トンは砂糖協定によってアメリカ以外の国に売っておったわけであります。今申し上げましたアメリカ以外の二百万トンの輸出先は、おもな国を申し上げますと、イギリスが三十五万トン、西独が十三万トン、フランス十三万トン、ソ連が二十七万トン、以上から見まして日本は大体キューバの砂糖を第二位の国として買っております。
#58
○帆足委員 私もそのように承知いたしております。革命直前の五八年度におきましては、英国の四十八万トンに対して日本は五十五万トンも輸入しておりまして、御承知のごとく日本はキューバにとって第二の貿易国でございます。従いまして、キューバと日本との通商というものは大いにこの外務委員会において論議する価値のある問題でありまして、日韓会談などといいますけれども、とうてい韓国などの比ではないのであります、日韓会談などに使いますあのエネルギーを、もう少し日本の貿易の役に立つ方面にお使いになった方が、経済上の観点からいえばいいのでないかということを私は痛感する。それは極端な例の一つではないかと思うくらいでございます。
 五十五万トン、多いときは八千万ドル近くも輸入した砂糖に対して、われわれの輸出はわずか十七、八億円程度にすぎない、三百億円近くも輸入しながら十五、六億しか輸出ができなかった、私はよくぞこういう状況を長い間ほっておかれたと思うのですが、その原因はどこにあったのでございましょうか。従来まことに非常識なアンバランスであったと思うのです。それの原因が明らかであり、それを非常識とお考え下さるならば、これはステップ・バイ・ステップでけっこうでございますけれども、急激に改めねばならぬ。そのために必要なる行政上の措置も、また業界の御努力もまじめに考えねばならぬ。あまりに私は極端な例だと思うんですね。三百億円輸入しながら、輸出わずかに十八億円でしたか、こういう状況にあったのはどういう理由であったでしょう。
#59
○高野説明員 御説の通り、一九五七年には日本の輸出が四百万ドル、輸入が約八千万ドル、二十分の一という状態でございます。政府といたしましても、この片貿易を是正するために今回のような協定を結んだわけでありまして、その前には暫定的な貿易協定がございまして、一応関税上の便宜措置を与えてもらっていたのですが、繊維につきましてはやはり最高関税をとられておったのが、今回の協定によりまして、向こうは繊維についても最低関税を与えるということで、この協定ができますれば、日本も貿易の関税上の障害はなくなる。もう一つは、やはり今まで革命前は、アメリカとの関係が非常に多うございまして、アメリカからの輸入が非常に多くて日本が伸びられなかった、そういう関税上の障壁とアメリカとの貿易が伝統的に強かった、そういう二つの理由で伸びなかったのでございますが、昨年度はまだ革命時の混乱であまりこちらも伸びておりませんが、砂糖もまた従って買い方が少なかったのでございますが、片貿易は漸次解消されて、今後は輸入砂糖もコマーシャル・ベースに乗りまして買うと同時に、日本といたしましても、輸出を協定の批准と同時にどんどん伸ばしていきたい、そのように考えておる次第でございます。
#60
○帆足委員 砂糖の輸入八千万ドルに対しまして輸出わずか四百万ドルであった、私はこの数字のあまり極端なのに実は驚く次第でございます。もちろんキューバとの関係は砂糖が中心にならねばなりませんし、また日本の砂糖メーカー諸君の御努力や要望を十分理解して、その上に貿易政策を立てねばならぬことも申すまでもないのですけれども、しかし貿易というものはただ輸入だけにあるのでなくて、輸入と同時にまた輸出も考えねばならぬ。従いまして、私は輸出の振興策に対する努力が、当時としてはやむを得ない事情であったにしろ、まことにこれは不十分なものであったということを痛感いたす次第でございます。ましてや、日本の国際収支にとって八千万ドルというドルを、購買力を、むざむざかわりに買ってもらうものなしに従来使っていたということは、必ずしもそれがキューバの利益のためであったかというと、今伺ってみれば、それはアメリカの消費、アメリカとの間の特恵関税を強制されて、キューバの民族産業も苦しみ、日本の輸出もともに苦しんでいる。だとするならば、このたびアメリカの満州国たる不名誉な地位からキューバが独立いたしました。そして植民地が独立するということは、もはや、日本政府が最も尊重しているところの国際連合において、若干の棄権した国はありますけれども、満場一致植民地解放決議を国際連合は昨年の秋しているのでございますから、キューバが独立することによって自国の民族産業を養成し、そして今度は日本からも相当のものを輸入し得る自主性を持ったということは、私は日本の通商政策にとって非常に有利なる条件ができたと思う。しかも国際場裏においては、多少は他国を追い越してまで競争するくらいの迫力が必要でありますけれども、この問題については別に他国を押しのけるという問題よりも、まず自分が八千万ドル輸入していたそのワク内においてでも、相当輸出を伸長し得る。どこの国にも恨まれず、干渉せず、過去の利益を侵害することなくして、自分の力を使い得るという問題でありまするから、私はこれは日本の輸出振興にとって絶好のチャンスであり、外貨節約にとっても非常によいチャンスである。もちろんキューバ国としては創立早々のことでございますから、日本からもらったドルの全部を日本のみに使うということは困難な事情もありましょうけれども、しかし幸いにして日本の産業というのは非常にバラエティがありまして、薬であれ、化学工業であれ、医療器械であれ、工作機械であれ、トラックであれ、バスであれ、オート三輪であれ、キューバの民族が自立するために必要な商品というものは、良品にして廉価なるものが全部できるわけでありまするから、私はそのことをキューバ政府がよく理解せられるならば、ごくわずかの分量だけをドルとして融通性のあるものとして確保しておいて、大部分のものは、それでは日本から買おうという関係を作るということは、これは客観的に見て、私は努力次第で可能性のあることである。外務省の事務当局もこの点に思いをいたされて非常な努力をいたされまして、初年度において日本の輸出をまず倍の目標にされたという御努力のほどに私は非常に敬意を表しており、またこのことを理解しつつあるところのキューバ当局の理解に対しても、私はこの際敬意を表する次第でございます。
 しからば第二には、アメリカが三百万トンないし四百万トン買っていた砂糖が一挙にストップしてしまった。他国のことを批評することはどうかと思いますけれども、言論は自由でありますから、美人は美人と批評し、それからぶ男はぶ男と批評したところで、それは言われた方が怒るのは度量が狭い証拠である。言論の自由は特に胃の障害などにはこれは非常に良薬でもございますから、健康上の見地からかんがみて申しますと、一体アメリカは――アルゼンチンでもメキシコでも、それからもうアルジェリアですらが天下の大勢として植民地支配を脱却しておる。そのときにその産業はその民族からわずかの公債でもって接収される。これは時移り星変わるのであって、ちょうど日本の農地改革みたいなものでありますから、こういうような植民地の独立に興奮するとしたら、その興奮神経というものは前時代的神経であって、近代的センスとは私は言えないのじゃないか。従いましてこういうことのために興奮してアメリカがキューバと国交を断絶したということは、これは行き過ぎでなかったか。植民地政策についてはもと七つの海を支配していた英国が狡猾といえば狡猾、聰明といえば聰明でしょうけれども、分かれたかつての属領諸国に対しても、前はめかけにしていたかもしれないけれども、今はガール・フレンドとして比較的よい関係を結んでおる。インドなどでは、ネール首相は数年も監獄に入れられ、聖雄と言われるガンジー氏は、日本でよく不逞鮮人と言ったように不逞インド人とまで言われている。そのインド人に独立を与えてしかもその後インドと英国との関係はまあまあ親戚づき合いをしておる。過去の因縁は悪因縁であったけれども、今後はよい友だちになろうというようなふうに言っておるし、ドゴールすらが今そのために悩んでおる、こういうときに自由の女神をもって国是とするアメリカが、興奮してしまって全面的断交になってしまったということは、私はこれは愚かなことであって、ケネディ大統領もこの跡始末にはさぞかし御苦労なさっておられるであろうと推察するのですが、この御苦労にまた泥を塗るような政策をアメリカが続けることは、私は非常に残念なことである、遺憾なことであると観察しておる次第でございます。しかしそれは他国のことでございますが、そうこうしているうちに、全部その砂糖の注文を中国と英国にとられてしまった。アメリカのある新聞を見ますると、なに中国が百万トンも砂糖を買うと約束したところで、いつまでも砂糖をなめられるはずのものでなしと言いますけれども、御承知のように中国には六億の人口がありまして、中国における砂糖の産額というのはあまり多くないわけです。従って今後年々百万トンの砂糖を買いまして、そうしてキビだんごや中国特産の豆でおいしいみつ豆でも作ることになれば、百姓たちは非常に喜んで、キューバからの砂糖の輸入をむしろ今後とも歓迎するであろう。一度なめた砂糖の味はなかなか忘れがたいものであって、接吻の味のごときものであります。従いまして中国、ソ連の援助は一年きりのものであるから、やがてキューバが頭を下げてくるだろうなぞという一部の甘い観測は、それこそ私は少し甘過ぎる観測であるまいかと思います。このように考えてみますると、やはりアメリカが砂糖の断交をしたことをもってカストロ政権がこれで致命傷を受けて、そうして政界不安を来たしそうして新政権がつぶれるなどという見通しは、それは少し甘過ぎる見通しであるまいか。どこの政権を見ましても、まず革命後十年くらいはいろいろ問題があります。今日はスピードの早い時代でありまするから、一年が十年の早さで進んでおります。明治御一新のあと西南戦争が起こったのが明治十年ですけれども、十年は今では一年ないし二年のスピードでありまするから、おそらくことし一ぱいくらいがキューバにとっては一番苦しい年であろう。しかし青年はすべて向学心に燃えておりまするから、私はことしの暮れから来年にかけては接収した工場をマスターすることをキューバの青年たちは大体体得するのではあるまいか。アメリカの社会評論家の、先ほど名をあげましたスウィージー並びにヒューバーマンの報告を見ましても、若いキューバが今非常に苦しい状況におることを私も認める。しかしそのためにこの若い政権がくずれるという一般に流布されておる伝説については、私は否定的見解をとる。何となれば青年たちは成長し、自覚した民族の力というものはやはり着実に成長する性質を持っておるからであります。こう書いておりますけれども、この著名なるアメリカの社会評論家の意見は、私は大いにこれは傾聴すべき意見があるということを痛感いたします。そういう観点から見ますると、アメリカとしては私は損なことをしたものである。ああまでキューバを怒らせずに、財産は、管理について技術を若いキューバの幹部に修得させながら徐々にこれを譲って、そうして適切なる公債をもらって、償還してもらうというような方針をとった方がよかったのに、ちょっとまずいことをした。まあ、日本のまずい外交をさておいてよその国の外交の批評をすることもなんですけれども、私は非常にこれは残念である。いわんやアメリカのこのしくじり外交を根拠にして、キューバの新政権はちょっと育つまいというような観測を立てることは、私は間違っておるのではあるまいか、こう観測いたしております。
 そのような観点から、キューバの現状を見ますと、なるほど今日の状況におきましては、数百の工場を接収いたしまして、新幹部の養成はまだ緒についたばかりでありますし、アメリカのすぐれた技術者たちは国に帰るし、また若干の経営幹部たちは、従来の高い生活水準や、アメリカナイズされた思想に幻惑されておる人たちは、あるいは中南米に、あるいはアメリカに逃避した。その数も相当おびただしいものに及んでおるということも伺っておりますけれども、しかしやがて半年たち、一年たてば安定の方向に向かうのであるまいか。従いまして、ここ当分の間はキューバから砂糖を買いますことについて、日本の砂糖の輸入業者並びに砂糖のメーカーさんたちはいろいろの御苦労があると思います。たとえば規格の不統一、品質に保証なきこと、船積み、受け渡しの不正確なること、事務における多少の混乱や不安のあること、そういう問題がありますから、私営商社としてのキューバとの取引が今年度停滞の状況にあることは、大いに了察し得るのでありますけれども、しかし大局を考えて、国家百年の計をもって考えるならば、そういうときにこそ、キューバと日本との相互間の理解を深めまして、一方わが国の側から申しますならば、日本の砂糖業並びに製糖業並びにあらゆる分野において優良品を作り得る工業の状況、日本の輸出能力をキューバの政府に送り返してもらう。他方において日本のメーカー並びに貿易業者のキューバに対するいろいろな希望を正確にキューバ側に理解してもらいまして、こちらのピッチャーに対して、キューバ側はキャッチャーとして大いに至急訓練し、もっと仕事を系統的組織化してもらう。こういうことに対して、やはり行政当局もあっせんをし、民間の業界や政治家たちも党派を離れた立場からあっせんして、貿易が早く軌道に乗るような方向に協力することが、私は必要なことであるまいかと思うのでございます。
 そこでお尋ねいたしたいのですけれども、ことしはそういう一時的混乱のあとを受けまして、キューバから買います砂糖が、せっかく条約では三、四十万トンを目標になさったということでございますけれども、一向実績が上がっておりませんように承っておりますけれども、通商条約における一応の努力目標に対しまして、昨年及びことしの砂糖の輸入の実績並びにすでに契約した見通し及び輸出の実績及び見通しは、この通商条約の条文に照らして現状はどういうことになっておって、どこに困難な点があるかということをお伺いしておきたいと思います。
#61
○高野説明員 両国の貿易が相互の利益のために伸長していくべきだという御説は私同感でございまして、そのラインで今後とも努力いたしていきたいと存じております。それで御説のように、昨年は革命後のいろいろな事情で貿易が思ったよりも進みませんでしたが、今後政局の安定とともに、だんだん貿易の成果も上がるということを期待しております。と同時に、砂糖は二、三年前に四十万トンないし五十万トン買っておりましたが、昨年は減りまして約二十万トン足らずということになりましたが、これはやはり相手国の政情を反映いたしまして、集荷ないしデリバリーが規則的にいかなかった、品質がふぞろいであった、それから値段もほかの砂糖に比べて高かったといういろいろな事情がかみ合いまして、昨年度は思ったより少のうございました。ことしはそういう状態がだんだん改善されていくことを望んでおりますし、また改善されております。ことしはキューバからどのくらい砂糖が買えるかということはまだはっきりいたしませんが、現にすでに商社は十万トンの買付が約束されておるということでございまして、今後とも向こうの政情の安定、価格の安定、その他取引条件の正常化とともに、砂糖の輸入は上がってくるのじゃないかということを考えております。それと同時に、わが方からの輸出もこれを伸ばしていきたい、そういうふうに考えております。
#62
○帆足委員 この困難の打開策についての対策は、後ほどまた御質問申し、われわれの意見も申し上げることといたしまして、本年度における砂糖の輸入がふるいませんことは、まことに遺憾なことでございますが、御努力によりまして辛うじて十万トンの砂糖の輸入の予約ができたということですが、承るところによりますと、それもやむなき事情のために、英国のブローカー、仲介者を通じて日本の輸入業者が輸入しておるというように承っておりますが、それはおそらくヴェテランぞろいの輸入業者各位が苦労してなさったことでありますから、私はむしろ御努力と御苦労の結果とは思いますけれども、なぜ英国商社の仲介を待たねばならなかったかということもお尋ねしておきたいと思います。
 なお一部には、キューバの政権が苦労しておる。キューバの新政権が建設のために苦闘しておるということと、キューバの新政権が不安定であるということとを混同いたしまして、苦労しておる、同時にあの政権はいずれつぶれるであろうというような雑音が相当流布されておることも私は承っております。そこで試みに調べましたけれども、ニューヨーク・タイムスの記者が解説しております世論調査を見ましても、キューバの新政権支持は八六%、御承知のように、世論調査というものは最近非常に科学的になりまして、大体はどこの国でも当たっておるのでございます。八六%のうち、熱心なる支持者が約五〇%、反対派は約一〇%、最近多少動揺派がこれに一〇%ほど加わったのではあるまいかというような観察をしておるようでございますが、昨日キューバの楽団が日本労音の招聘で参りまして、プリンス・ホテルでカクテル・パーテーをいたしました。私はそのキューバの音楽を聞きまして、実は非常な感銘を受けたのでございますが、世にもこれほど愉快な音楽はないのでありまして、あげくのはてにはお客さんも全部踊り出して、謹厳実直をもって知られる音楽評論家の山根銀二君までがとうとう奥さんの手を引いて、マンボを踊り出したような姿でありまして、まことに愛らしい風景でありました。私は、非常に適当なときに民間外交として、キューバの音楽を招待したものである。これは全国で公開されますし、また次々とラジオ、テレビで公開されると思いますけれども、大へんよいことであったと思います。どうか政府各位もむずかしいことばかりいつも御論議なさったり、お考えにならずに、ときにはキューバのマンボをお楽しみあらんことを要望する次第でございます。
 さて、それは余談といたしまして、先ほどのように、英国の仲介業者に頼んだという理由は、大体どういう理由でございましょうか、御承知でありましたら、その事情を伺いたいと思います。
#63
○高野説明員 先般来二、三、日本に持ってきた砂糖の所有権の問題でごたごたが起きたわけでございます。英国のブローカーを通じて買ったということは、そのリスクを避けて、リスクを相手のブローカーに負わせて確実に契約したらそれだけはごたごたがなく買い入れるというために、輸入業者がやったものであると理解しております。
#64
○帆足委員 過渡期の措置といたしましては、私は適切な措置として御努力のほども了解いたすのでございますけれども、キューバがすでに接収いたしました砂糖に対しまして、アメリカ側の方からとかく文句がつきまして、それが不安で民間の商社としては、手が出ないということが一つの問題になっているように伺っておりますけれども、その点についてただいまのところの政府の御研究なり御見解はどのようなものでございましょうか。
#65
○高野説明員 これは日本はある程度の砂糖を商業ベースで買えればよろしいので、現在キューバ政府ともとの所有者のアメリカ人の所有権の法律上の争いがございまして、日本といたしましてはそのむずかしい問題につきまして、現在介入するつもりもございませんし、これは普通の商業ベースで商慣行によってやればよろしいものと考えております。従ってそういうインポーターといたしましてはむずかしい問題はできるだけ避けて、安全な方法でやっていくということがしばらく続くのではないかと思いますが、だんだん政情も安定して参れば、また直接に買い入れる道も出てくるかと存じます。
#66
○帆足委員 ただいまのアメリカ側からの苦情は、アメリカ政府の方から公式に苦情を言ってきているのですか。それともアメリカの民間の商事会社として苦情を申しておるような事情でございましょうか。
#67
○高野説明員 アメリカ政府といたしましては、日本政府に対してそういうことは申しておりませんで、民間の会社がこの砂糖は自分のものだということを言っているわけでございます。
#68
○帆足委員 先日も外務大臣から伺いまして、外務大臣もそうしたことはないというお話でしたけれども、一部では日本とキューバとの貿易についてまじめな努力をするのは、アメリカを刺激しやしないかというような気をもむ方もおるわけです。御承知のように、この国では昔から事大主義の思想がありまして、やたらに社員が社長をこわがったり、専務をこわがったり、必要以上のおべっかを使ったりするというような悪習があるのでございますけれども、私はキューバと正常な貿易をいたすということについてはだれにも遠慮は要らないと思っておりますが、キューバとの貿易につきましてあまりやってくれるなというようなニュアンスのあるようなアメリカ側の発言なり干渉なりが、これまで日本に対してあったことがあるのでございましょうか、事務当局からも一つ事務的に伺っておきたいと思います。
#69
○高野説明員 そういう事実は過去にございません。
#70
○帆足委員 その言葉を外務大臣からも伺い、事務当局からも伺いまして、当然なことながらまことに私は明朗であることを愉快に思う次第でございます。
 ところで、しからば、この通商条約を実行に移す上において具体的に隘路となっております諸問題、日本側の隘路並びにキューバ側においても考慮してもらわねばならぬ主たる隘路はどういうものでございましょう。
#71
○高野説明員 キューバと日本との貿易は、結局砂糖を中心として動いておるわけでありまして、国際的な市場においてキューバの砂糖が価格も品質も非常に競争できるという事態がまずできれば、日本といたしましても安いところからいい品物を買うわけでありますから、キューバからの砂糖の輸入はできると考えております。それからそれ以外に先ほど来お話があったようにいろいろなことがございますが、それも政情の安定、事態の進展とともに、だんだん解決されれば、価格の安いということとともに砂糖の輸入がふえてくるということに相なろうと思います。それから、それに従いまして日本と協定ができますれば、最低関税をきめるわけでありますから、関税の障壁がなくなって、日本から繊維、陶磁器、その他機械類がどんどん出ていくということをわれわれとしては希望しております。
#72
○帆足委員 本日ここに上程されております日本・キューバ通商条約は、両行政当局の非常な善意と御努力でできておるように、私も読みまして印象を受けましたけれども、あのときはああであったけれども現在はキューバがアメリカと断交して苦しい状況にあるから、キューバ政府は前途不安であって、あまり当てにならない。政変でもあることを期待して、現状ではこの通商条約の実施についてはどうもあまり積極的熱意を持つわけに参らぬというような偏見なり空気なりが、政府当局にあるというようなことはありませんですか、その辺のお気持を伺っておきたい。
#73
○高野説明員 両国の代表が署名いたしまして今、国会に御審議を願っておるので、それがスムーズに批准されまして、それに従って両国間の貿易が伸長することをわれわれは期待しております。
#74
○帆足委員 ただいまの御意見を伺って安心いたしたのでございますけれども、ある国の経済建設が非常に困難であるということ、そうして困難と苦闘しておるということと、その政権の社会的基礎が弱くなったということは別問題として一応考うべきことだ。先ほど私は幾つかの例を引き、またヒューバーマン、スウィージー等の報告書等を御紹介いたしまして、その点御注意申し上げ、また世論調査の数字なども申し上げたのでありますけれども、若いキューバが建設のために今悪戦苦闘の状況にあるということと、それから今の若い民族的政権の基礎が弱いということは別問題でありまして、私どもが集めたあらゆる情報を総合いたしますと、カストロ政権の社会的基盤は非常に強い。しかし訓練された技術幹部が比較的少なく、開発の緒についた国として、今非常な建設への苦闘を経つつある、こういうふうに私どもは認識しておる次第でございます。ところで、業界から伺いましても、また政府御当局の調査報告などを拝見いたしましても、まずキューバ糖は、従来アメリカが市場を独占いたしましたために、特恵関税でキューバへの輸出はほとんどアメリカで独占されて、キューバの民族産業の勃興すらそれによって停滞させたくらいでございますから、その代償としてキューバ糖を従来一、二割高く買っていた。そういうことがありまして、キューバ糖の国際値段がなかなか折り合わなかったということも起こりましたけれども、これも国際価格が折り合わなければ商売はできるはずもありませんから、行政当局の御努力、先方の通商部との接触等を通じ、また業界の交流を通じまして、御努力を続ければ、これはもう当然国際価格または若干それよりも有利に――大量に買うのですから、有利に買うというようなことになることは可能であると私は思います。しかし品質の保証、船積みの能率化その他諸般の受け渡しの正確を期しますためには、これはキューバ政府当局並びに実務当局の御認識を大いに深めていただかねばならぬという日本の業界の御意向は、キューバ当局に十分に理解していただかねばならぬと私は思っております。
 せっかくお忙しいところを外務大臣がお見えになりましたから、これをもちましてキューバに対する質問は、この次に建設的対策についての政府当局との意見の交換を最後に残すことにいたしまして、外務大臣への質問に切りかえさせていただきます。
     ――――◇―――――
#75
○堀内委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、小坂外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣小坂善太郎君。
#76
○小坂国務大臣 十二日、ソ連の宇宙船ボストーク号が打ち上げられまして、初めての人間の宇宙旅行に成功したというニュースは、人類の科学的進歩の成果を示すものでありまして、きわめて喜ばしいことであり、この偉業を遂げましたソ連科学者たちに深く敬意を表する次第であります。
 また、日本政府といたしましては、人類の宇宙開発に画期的な一歩を進めたこの科学的成果が、もっぱら平和と人類の福祉ということのために利用されまして、将来の人類永遠の繁栄のために役立ちますることを深く希望いたすものであります。
 なお、この趣旨につきまして、昨日、池田内閣総理大臣よりフルシチョフソ連首相あてに祝電を打っておいた次第であります。
#77
○堀内委員長 ただいまの小坂外務大臣の発言に対し、質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
#78
○帆足委員 一昨日の人類として記念すべき重要な事件につきまして、外務委員会が無関心でおられる理由もないわけでございます。従いまして特に外務大臣の御出席をわずらわしまして、外務大臣としての御所見のほども伺おうと存じまして、同僚委員諸兄とともに御多忙中にもかかわらず御出席を要求したのでございますけれども、時間をお差し繰り下さいまして御出席下され、早くもそれと察してただいまのような明るい建設的な御感想の一端を伺うことができましたことを、われわれも喜びに存ずる次第でございます。
 この世紀の痛快事に対しましては、すでに池田首相からも祝電が発せられ、また今日世界の二大陣営の一方の極といわれるアメリカのケネディ大統領から、懇切にして適切なる祝辞がフルシチョフ首相に寄せられましたことも、私は人類共同の運命のために喜びにたえないという思いをもって新聞報道を読んだのでございます。
 ところがちょっと気になりますことは――大平官房長官にきょうは来ていただく予定でしたが、大平官房長官のお言葉の中に、もしそれが事実であるならば驚くべき進歩であるということがありましたけれども、私どもは今日の時代が原子力とミサイルに人工衛星、原子力と人工衛星、二つを枢軸にして世界は動いていると思っているのでございます。人類における偉大なる発明、飛躍的発明が歴史の上に影を落として万人に理解され、社会、人心、政治まで影響いたしますには、概して成果が表に現われてくるには数年かかるのでありまして、たとえばB29が大量生産されましたときには、すでに日本における古代的なアジア的偏見というものは消えるべき運命にありましたけれども、それが消えたのはB29の模型ができてからちょうど十年目でございました。第一番にそれが各国大統領の頭脳に反映しますが、従来の経験ではそれが二、三年内に反映し、第二に外務大臣の大脳にそれが反映しますのには遺憾ながら四、五年かかる。最後に最もおくれた軍部にそれが反映しますのには七、八年かかるというのが過去の例でございます。しかし今は一年が十年、百年の早さで流れている時代でありますから、このような発明ないし発見というものは直ちに世界の外交、国際政局に影響するわけでありますから、これに対して外務大臣から正確な時局認識が述べられましたことを喜びとするものでありますが、これについて各界からいろいろの感想が寄せられております。
 たとえば福田恒存さんですか、自由主義的な評論家の方ですが、この人の発言などを読むと少しへそ曲がりでありまして、それによって何も人の心に対して影響を与えるのでないから別に驚くに当たらないという言葉がありまして、この人の知性の限界を知るようなさびしい思いがいたしました。また軍事評論家が、月ロケットだけで十分であるのに人まで乗る必要はないじゃないかと言っている。軍事評論家などというものは、概してあまり高尚な人物でない場合が多いわけでありますから、多少の例外はありますけれども、そういうような意見もありましたので、外務大臣の御所見をぜひとも伺っておくことは、外務委員会として必要なことであると思っていた次第であります。
 私は、単に軍事的というだけであるならば、一万四千キロミサイルが飛んだだけで事足りると思うのです。それで軍事の終着駅と言える、究極兵器と言えると思うのです。しかし人が乗ったということは、もはや軍事の問題ではないと思うのです。軍事の問題ならば、一万四千キロミサイルの成功をもって兵器の終着駅である、こういうべきだ。軍事の問題ではなくして、これは人類の新しい宇宙のあけぼのが始まった。すなわち人類の進化と平和の面において意義が大きい、そういう点において外務大臣の御所見を特にきょうは承りたい、こうわれわれは要求したわけでございます。これが人類に与える影響は、福田君の言うように、人の心が変わるものでもないということではなくて、私は、人の心まで影響し、それから政治にも、社会にも、教育にも、哲学にも影響する問題を含んでおると思います。それによって第一、人間の視野は広大なものになっていきます。これによってイデオロギーを離れて、これは保守とか革新とかいうことでなくても、平和への人間の願望は一そう強く確信を持つようになり、そして、もはや基地は要らない、軍備はもう全廃されてよいという意識は、私はいよいよ大きくなると思うのです。軍備がなくなり、基地がなくなると、保守政党は何だかさびしくなる、おれの政策を攻撃しているのじゃないかとおとりになる方もあるかもしれませんけれども、そうではございませんで、基地が要るというのは、歴史の一定の段階において、それが技術的に必要があったから要るというふうに保守政党の方が主張しておっても、何も基地そのものに執着しているものではなかろうと私は思う。すなわち人類全体にとって平和というものが確保される可能性がますます強くなってくるならば、基地のない保守党というものはあり得るわけですし、安保条約のない保守党というものは大いに繁栄し得るわけでございますから、この問題について政党政派のことを離れて、平和のために、そして人類がやがて軍備を全廃する道がいよいよ開ける、軍備が全廃されておっても、保守党もあり革新政党も十分に存在するわけですから、保守党の諸君とともに私はこれを人類共通の課題として喜びたい。それからさらに人類合衆国というか、世界連邦への見通しは、これによってついてくる。とにかく行こうと思えば、どかんと打ち出されて、もう一時間後にはわが家の吉祥寺に帰るよりも早くロンドンに着いておるわけですから、地球というものはいよいよ小さくなってしまいました。やがてはこれがジェット機のかわりに使われることも――これは経費のかかることですから、急用の人だけに使われるでしょうが、緊急のときにはロケットで行こうかなということになる。小坂外務大臣などは非常に大事な人物ですから、英国の外務大臣に会うのに、僕はロケットでちょっと行ってくるよと言っている間にもうこっちへ戻ってこられて委員会で発言される、こういうことにもなるわけでありますから、軍事の問題でなくて、平和を愛するわが外務委員会の課題としてやはり一昨日は記念すべき日であった、こう思いまして、大臣の御出席をお待ちしておったわけでございます。ただいま公式に読み上げられました御趣旨はきわめて抽象的なものでありましたけれども、これをもって人類の発展と平和のためによいことであるという御意見と伺いましたが、外務大臣はこれを軍事的よりも、これが人類の平和、人類の共同体のためにさらによいことであったというふうにお考えでございましょうか。くどいようでございますけれども、もう一言だけ伺っておきたいと思います。
#79
○小坂国務大臣 人知の進歩というものは、これが社会科学の面と自然科学の面と、両方について進歩していくものでございますけれども、現在のところこの関係が均衡を失しますると非常な危険なことになるというふうに私どもは思わざるを得ないのであります。やはり深く人類愛の哲学に根ざした考え方というものが普遍的な人類の原理となりまするように、われわれとしてもそれぞれの立場から努めなければならぬと思っております。実は御承知のように、国連の第十三回の総会におきまして、大気圏外の平和利用ということに各国非常に熱心になりまして、そして日本はこの議長を相勤めたことは御承知の通りでございます。そのときの参加国は十八カ国でございましたが、昨年の総会におきまして、私は特にこの大気圏外の平和利用ということについて強調をいたしました。大気圏外というものを利用することはいいけれども、これが軍事目的のために使われるようなことになると、人類全体のために非常におそるべき事態であるから、何としてもこれは平和的に考えるべきであるということを申したのでありますが、昨年の総会におきましては、これは二十四カ国になりました。ソ連も前回のときは入っておらなかったのでございますが、ソ連も新たに加入いたしました。主として大気圏外をいかにして人類福祉のために利用するかということをお互いに考えようじゃないかということを討議することになったのは御同慶にたえない次第でございます。
 なお私は施政方針の演説でも申し上げたように、核実験の停止協定というものを、まず人類の平和のためにことしこそはやらなければならぬ、こう思っておるのであります。アメリカ側におきましても、その点につきまして新ケネディ政権が非常に建設的な案を提示いたしまして、ソ連側に呼びかけていることは御承知の通りでございます。ソ連側におきましても、これに対するいい反応を示されつつあるように聞いておりまして、これまた喜びにたえないところでございます。ともあれ人知の進歩というものが、その知識というものが、今まで未開発であったところのいろいろな問題に対して、われわれ人間の手による新しい手段を開発して参りつつあるのでありますが、これがやはり人類全体が栄える方向に向こうことこそ、この開発の意義あらしめるものである、かように考えているのであります。
#80
○帆足委員 ただいま大気圏外における平和利用並びに宇宙法の問題等につきまして貴重なる示唆に富む御発言がありまして、有益に承りましたが、過般月世界にソ連邦がペナントを打ち込みましたときに、地球上の慣例によりますと、先取特権としてソ連の勢力範囲になるけれども、月世界の場合はどうかという質問に対して、フルシチョフ首相は淡々として、月世界まで人間の強引な所有欲を及ぼさなくてもいいじゃないかという答えをしたことを私はラジオで聞きまして、まことに軽妙にして酒脱、よい答弁であったと思っております。このたび人の乗った衛星が成功いたしましたことに対するソ連邦の声明を読みますと、いささかも高ぶらず、これを軍事的に使うようなにおいを全然示さずに、人類平和共同の財産としてともに喜ぼうではないかという風潮が強く表われておりますことは、これまた御同慶の至りで、また一方の雄ケネディ大統領もミサイル・ギャップにおいて多少立ちおくれはしておるけれども、しかし宇宙探険のことになれば、宇宙に足をとどめるという問題になれば、もはや人類平和共通の課題として喜びの祝電を打たれておる。この雰囲気はまことに喜びにたえぬところであると思いますが、大臣は国際連合におきまして大気圏外の平和利用につきまして委員会ができましたときに、日本が議長の光栄を勤めた、そしてその心組みのほどは、あくまで平和第一でいきたいということを伺いましたが、将来国際連合においてただいまのような趣旨で、すなわち大気圏外にはもう絶対に平和でいく、過去のやましき人類の歴史の貧欲を大気圏外には持ち込まない、そういう趣旨の宇宙法というものにわれわれは同調していき、考えていくというようなお考えと承ってよろしいでしょうか。また宇宙法につきましてそういう御精神で御研究され、また世界諸国の平和順守に御協力なさる意思があるかどうか。もし事をあやまりますると、人間のやましき争いを月のカツラにまで持って参りまして、かぐや姫の争奪戦が起こるようなことにでもなれば大へんでございますから、私はやはりぼつぼつ宇宙法のことを考えねばならぬ段階であると思いますが、重要な問題でありまするから、外務大臣の御所信のほどをこの際承っておきたいと思います。
#81
○小坂国務大臣 大気圏外、アウター・スペースの平和利用のことにつきまして先ほど私どもの意欲を申し上げたのでありますが、これと同様に――同様と申しますか、それより以前に南極の平和利用ということにつきまして、私どもの先輩がかなり意欲的にしてくれまして、御承知のように南極におきましては、その領土的な現在の国家間の問題は一切持ち込まないということになっておるのは御承知の通りでございます。むしろ南極の問題よりさらにさらに大きな問題として大気圏外の問題が実際必要な問題として登場の段階、とば口まできたと思われるのであります。今私どもは、先ほど申し上げたような大気圏外というものはあくまで平和的な利用にまかせられなければならぬ、こういう趣旨でもって国連の中において相当意欲的に行動しておりますつもりでございます。なおこれは御承知のように今回の国連におきましても現在の国家間の対立がその新しい分野に及ぶのを回避することを希望しという一句が入っておりますが、私どもは、これは希望ではない、これは非常に切実なる必要である、人類のための必要欠くべからざる問題である、かような気持でこの問題を進めて参りたいと思います。
#82
○帆足委員 宇宙法のことがおそらく近く日程に上ると思いますが、南極につきまして、これを平和圏として列国が取り扱おうという取りきめができましたことは、あれだけでも私は非常な人類の成功であって、それに対して外務大臣が関心を怠らず、日本の外務省が相当の役割を演じたということを伺いまして、非常に喜びにたえない次第でございます。いずれ宇宙法の問題は急速に日程に上る問題であろうと存じますので、ただいまのような御精神で、平和の問題については超党派的でけっこうでございますから、せっかく御研究、御努力のほどをお願いいたしまして質問を終わります。
#83
○戸叶委員 一点だけ。今回のソ連の人工宇宙船の成功につきましては、日本の政府といたしましても、総理大臣初め、今外務大臣からの御意思の表明がございましたし、帆足委員との質問の間でいろいろ伺いましたが、私ただ一点だけお伺いいたしておきたいことは、今回のこのことに対して、今後ますますこういうふうな科学の進歩、そしてまた平和、人類の発展に寄与するようなことが、各国におきましても研究されるというような意味から考えましても、今回の成功に対して国会が、今後ますます平和発展に寄与されるようにというような決議案を出そうとする動きがあるわけでございますが、これに対して外務大臣はどのようにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
#84
○小坂国務大臣 政府としての意思表示は、先ほど帆足委員の御質問もあり、その内容について、明確に御了解願えたと存じます。国会に関する問題は、私ども政府の一員としてとかく言うことを差し控えておりますから、その点を御了承願いたいと思います。
#85
○戸叶委員 政府の今の御答弁を伺っておりますと、そういうふうな内容を盛り込んだ決議案であるならば、おそらくそれはけっこうなことであるというふうにとれると思いますけれども、国会で出されます決議案については知らぬ顔をしているというお考えでございますか。
#86
○小坂国務大臣 三権分立の精神によりまして、私は、国会のなさることに、政府の一員として、とかくの批評を差し控えたいと申したのであります。
#87
○戸叶委員 議論じゃありませんから私はこれ以上申し上げませんけれども、小坂外務大臣も衆議院(しゅうぎいん)議員でいらっしゃいますから、そういう立場からどういうふうにお考えになるかということを伺ったわけでございますが、まあその点はけっこうです。
#88
○堀内委員長 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時四十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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