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1960/04/12 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第9号
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1960/04/12 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第9号

#1
第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第9号
昭和三十六年四月十二日(水曜日)
   午後一時三十三分開議
 出席委員
   委員長 山口 好一君
   理事 齋藤 憲三君 理事 中村 幸八君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 岡本 隆一君 理事 原   茂君
      有田 喜一君    西村 英一君
      細田 吉藏君    石川 次夫君
      田中 武夫君    山口 鶴男君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 池田正之輔君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       松本 一郎君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府事務官
        (科学技術庁振
        興局長)    原田  久君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   杠  文吉君
 委員外の出席者
        総理府技官
        (科学技術庁振
        興局管理課長) 佐藤 松男君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局政策課
        長)      井上  亮君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局原子炉規
        制課長)    佐藤  紀君
        通商産業技官
        (公益事業局技
        術長)     高村 善博君
        参  考  人
        (原子力発電株
       式会社副社長) 一本松たまき君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一〇六号)
 原子力損害賠償補償契約に関する法律案(内閣
 提出第一〇七号)
 科学技術振興対策に関する件(コールダーホー
 ル改良型原子炉の安全性に関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○山口委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 本日は、コールダーホール改良型原子炉の安全性に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。御出席の参考人は原子力発電株式会社副社長一本松たまき君であります。
 この際、一本松参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の調査のためわざわざ御出席を賜わりまして、まことにありがたくお礼を申し上げます。
 本日は、コールダーホール改良型原子炉の安全性に関する問題について御意見を伺うことといたしたいと存じます。
 直ちに質疑に入ります。質疑の通告がありますので、この際、これを許します。石川次夫君。
#3
○石川委員 一本松さん、大へんお忙しいところをおいでいただきまして、まことに恐縮でございます。質問をしながら、いろいろと最近のコールダーホール発電炉の実態について伺いたいと思います。
 まず、最初に、念のため伺いますが、原発のいわゆる資本構成は、一体現在どういうふうになっておりますか。
#4
○一本松参考人 お答え申し上げます。
 ただいまのところ、電力会社において四〇%強、正確な数字は四二%くらいになっていたと思うのでございますが、電源開発会社が二〇%、その他の三八%強を、全国の原子力に関係のあります会社から出していただいております。
#5
○石川委員 そういたしますと、開発の方からも出ておりますから、原発は純然たる民間会社ということではなくて、多分に公共性といいますか、政府とも密接な関係がある、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
#6
○一本松参考人 原子力発電会社のできますとき、いろいろ事情がございまして、電源開発会社から二割出す、その他は民間の企業から出す、こういうことにきまりまして、われわれといたしまては、もちろん、原子力発電という新しい仕事でありますだけに、プライベート・カンパニー、つまり、私企業でありますけれども、公共的性格を持ったものと考えております。
#7
○石川委員 原発でなされた仕事のうちで一番大きい仕事は、何といっても、コールダーホールの発電炉を現在契約をして着工しておるということであろうと思いますけれども、このコールダーホールについて、若干お伺いをしたいのですが、この契約は、多分三十四年十二月ごろに結ばれて、大体全部で三百五十億、そのうちで、二百億が英国のGECとの契約になっておって、これは契約後大体四年半が竣工期限と予定されておる、こういうふうにわれわれは承知しておりますが、それで間違いないでしょうか。
#8
○一本松参考人 契約しましたのは三十四年十二月でありますが、許可などの関係で、翌三十五年一月三十一日が契約発効の日でありまして、それから四年半の工期で完成することになっております。
#9
○石川委員 コールダーホールの原子炉全体の完成が三十九年夏ごろでありますが、若干ずれておるようです。原子炉本体の圧力容器、これは八センチメートルのスチールで、直径が二十メートルという、かなり大きなもののようでありますが、この炉材は英国から入れるけれども、この作業は日本の作業者がやって、これを溶接をして着工するということになるわけでございます。その着工がちょっとずれておりますが、初めの予定ですと、大体二月ごろに着工、こういうことになる予定のはずだと思うのですけれども、これは現存どういうふうになっておりますか。
#10
○一本松参考人 土木工事の方は一月、あるいは準備工事は三十四年の末ごろからかかっておりまして、詳細の各部の進行状態につきましては多少出入りがございますが、現在のところ、終局的にはそう大きな遅延はないものと考えております。
#11
○石川委員 それで、この契約の内容はよくわからないのですけれども、伝え聞くところによると、おくれれば一週間ごとに契約価額の千分の一を違約金として払うというような、CP5などと違うような丁寧な条件がついておるようでございますが、千分の一という違約金を払う場合に、たとえば、原子炉本体の溶接は日本の原子力第一グループが請け負うということになっておりまして、これがおくれた原因は、日本の作業がおくれたか、あるいは向こうから送ってくる仕事がおくれたかということの判定が非常にむずかしい場合が出てくるのじゃないか、その場合には、違約金の問題をどういうふうに処理するということになっておるのかどうか、この点をちょっと伺いたいと思います。
#12
○一本松参考人 違約金の問題は、契約では相当はっきり出ておるのでありますが、実際問題といたしましては、その工事の進捗につきまして、その工程がいろいろ前後する場合もあります。あるいはおくれるようなこともあります。その場合の責任が全部向こうにある場合には、契約に定められた通りの違約金を支払うことになっておりますが、こちらからの要求によってなされた場合には、その理由が検討されました結果、いろいろそれについて相談し合う、協議をすることによって、その違約金額等の決定がなされることとなるわけであります。
#13
○石川委員 今の問題は、なぜこういうことを伺ったかというと、すでに、もう報告によりましてもだいぶおくれる見込みだというようなことが出ておりまして、おくれた場合の違約金の問題が明確になっておりませんと、将来相当問題の種になるのじゃないかということを非常に心配したものですから、念のために伺ったわけなのでございますけれども、コールダーホールの安全性の問題については、非常に慎重に検討が重ねられて参ったわけでございます。私の知っておる範囲でも、合同審査会、これは安全審査専門部会と安全審査委員会――これは通産省の関係でありますが、この両方の委員会で二十七回ほどやっております。そのほかに、小委員会といたしましては立地グループ、気象グループ、それから耐震構造グループ、あるいは放射線グループ、原子炉グループ、発電グループ、全部を合わせますと合計百十回、そのほかに、原子炉安全審査専門部会の開催回数が十九回というようなことで、全部で大体百五十回にもわたって、ごくわずか一年足らずの短い期間に相当慎重な検討が重ねられた結果、いろいろの条件がつけられて、一応設置が認可されたということになっておるわけでございます。
 その中で、私がきょう伺いたいと思いますのは黒鉛の問題でございますが、これは御承知のように、耐震性の問題でもうすでに三回も設計が変更になった。イギリスでは地震がないけれども、日本では地震があるということで、地震はどんな大きな地震にも耐えられるような設計で、特に日本としては慎重な考慮を払わなければならぬということで、うず巻き型あるいはハチの巣型というようなことで設計が三回くらい変更になっておるという事情をわれわれは聞いておるわけです。専門家ではございませんから、あまりこまかい事情はつまびらかにいたしませんけれども、この安全審査部会の報告によりましても、その中の材質の黒鉛に対しましては、ウィグナー効果による黒鉛の膨張というふうに考えられておったものが、高温下においては、長期照射を受けた場合に、黒鉛は逆に収縮をするのだというふうなことがこの審査の過程で明らかにされて、われわれとしては非常に大きな問題として取り上げたことは、一本松さんも御存じだろうと思います。そのほかに、黒鉛の質量が移行した場合に、これは原子炉とか、熱交換器とか、燃料被覆に沈着することも予想されるということも検討され、さらにまた、材料の問題といたしましては、純度の問題、強度の問題、それから密度の問題、特に、その中で放射線照射によるところの影響を十分把握したものを使わなければならぬというような、いろいろこまかい規定が安全審査部会で報告をされて、そういうことを前提として、この黒鉛というものを英国のGECと契約をした、こういうことになっておると思うのですが、その点は間違いないでしょうか。
#14
○一本松参考人 ただいま仰せの通りと考えます。GECから供給をすることになっておりますが、これにつきましては、仰せの通り、英国に地震という経験がありませんので、この地震については特に慎重な検討を重ねて参りました。日本の事情、経験等をよく聞き、日本の専門家としばしば意見を交換しまして、お説の通り、いかなる地震がありましても大丈夫というふうに設計をいたして参っておる次第でございます。
#15
○石川委員 従って、黒鉛というものは相当大きな重要な要素を占める材料であるということで、安全審査部会の方でも慎重な検討をしたわけでございます。先般、聞くところによりますと、GECの副社長ミラーさんですか、三月十日から三月十七日までの間こちらにこられまして、いろいろと黒鉛の設計の変更といいますか、黒鉛の材質の変更といいますか、これについての御忠告があったということで、向こうの、ミラーさんと相談をした上で、変更について了承を与え、調印をしたというふうに聞いておりますが、その点は間違いないでしょうか。
#16
○一本松参考人 黒鉛の問題は、今おっしゃいますように、英国型の原子炉につきましては非常に重大な問題でございますので、GECもわれわれも非常な関心を持ちまして、最も厳重な調査研究を遂げて参ってきておる次第であります。この東海村の原子力発電所というのは、まだ日本に経験がないものでございますから、いわゆる短期コントラクト、GECが電気が出るまでの責任を負って建設してわれわれに渡してくれることになっております。しかし、契約によりまして、契約にあることは十分守り、さらに、契約は、さっきお話もありました三十四年の十二月でございます。その後、原子力関係にいろいろな進歩があります場合には、それを取り入れてデザインのインプルーブメント、つまり改良進歩を特にやる、そういうことの非常に多い性質のものである。そういうことで、今日まで、いい改良案ができますと、これを取り入れるという態度でやってきておるのであります。黒鉛につきましては、特に重要な問題でもあり、先ほどもお話がありました地震という問題もありますので、この点につきましては、GECも契約後に慎重な検討を繰り返しておったわけであります。三十四年十二月の当時におきましては、量産の実績等から考えまして、英国のグレードAという黒鉛が最もよかろう、こういうことであったのでありますが、その後、GECにおきまして、フランスのペシネイという会社の作っております無鉛が非常に優秀であるということから、この二つを相当長期にわたりまして比較検討をいたしましてその結果、ペシネイの方がいい、ことに、地震の面につきまして非常に強度が高いということの大きな長所があり、その他、核的な問題につきましても、十分これは英国のグレードAに匹敵し得るという見通しもつきましたので、われわれの会社に、グレードAからフランスのペシネイ会社の黒鉛にしたいという申し入れを、昨年末ごろにいたしてきていたのであります。しかし、われわれといたしましては、先ほど御指摘になりましたように、グラファイトというのは非常に重要なものでありますので、これに慎重な検討を重ねて参って、強度はなるほど強いけれども、はたして放射能を長く受けたときの結果がいいかどうか、そういう点を主といたしまして、慎重に検討を重ねて参ったのであります。そういたしまして、二月に私イギリスに参りましたときにも、このグラファイトの問題につきましてGECと相当意見の交換をいたしまして、そのとき、多少不明でありましたデータ等についても十分に向こうの専門家と話し合いをする機会があったのであります。そういたしまして、帰りましてその直後、今、石川先生のおっしゃいました三月の初めに、ミラーという向こうのジェネラル・マネージャーとして来ている者が参りまして、詳細な打ち合わせをいたしました結果、これならペシネイでも十分いけるという見通しがつきましたのと、しかも、向こうがはるかに地震にも強いし、総合勘案して、向こうをとるべきであるという考えになって参りましたので、さような約束ごとを取りかわしたわけであります。しかし、これにつきましては、会社内部におきまして相当検討を重ねたわけであります。御承知のように、第一の問題は操作でありまして、これは耐震に直接関係があります。第二の問題は、放射能に関して十分安全でいけるかどうか、この二つの点に要約できるのであります。会社の検討いたしましたところでは、最初の強度の点につきましては、約五割程度高いということで――英国のグレードAでも耐震上、安全上に問題はないと考えますが、さらに、それ以上五割も強いということになりますと、これは安全の上にも安全、つまり、安全度を著しく高める、こういう意味においてすぐれた点であると思った次第であります。
 次に、ペシネイの方の核的な性質につきましては、これはさっきお話のありました純度、密度、強度、いろいろ専門的な問題がございます。それらにつきましては十分のデータがございまして、それを英国のグレードAと比べて検討いたしました結果、まさるとも劣らないということがはっきりいたしたのであります。第二に、核的な特性であります。これは原子炉に使うものでありますから、原子炉の出力が十分に出なければならぬ。そういう核的特性と申しますか、そういうようなものにつきましては、実験の結果、大体グレードAと変わらないという数常が出ております。
 次に、照射の影響であります。先ほどウィグナー等につきましてお話がございましたが、その点につきましては、現在得られますデータを根拠といたしまして十分の検討、予測を行ないまして、その結果、当社が設計を完了するまでには十分のデータも得られる、見通しとしては十分にいける、こういうことから、このデータを十分に得られるという確認等を文書の形ではっきり取りきめまして、これなら大丈夫いけるというふうに考えましたので、この照射実験に対しては、やっていける、そういう結論に達したわけであります。
 ペシネイ会社は、フランスの原子力発電所EDF1、2等に使用いたしますクォリティーというグラファイトを作っておるのであります。実績といたしましては、原子炉に使います黒鉛を一ガトン以上はすでに製作した歴史を持っておりまして、安全審査委員会で御指摘になっておりますクォリティ・コントロール、多量生産に対して十分均質な黒鉛が供給できる、こういう点につきましても十分適合しておる、こういうふうに考えました。そういうふうな点を十分検討いたしました結果、総合いたしまして、フランスのものを使うことに同意をいたした次第でございます。
#17
○石川委員 詳細な御説明で大体わかって参りましたけれども、今お話いただいたことを要約いたしますと、強度の点と、それから、いわゆる核的性質の問題それから、照射によるところの影響の問題、こういうようなことでございます。実は、フランスのペシネイ会社というのは非常にりっぱな会社で、大量生産で純度あるいは密度がよいだろうということはわれわれも理解ができる。ただ、問題は、フランスで使う場合は、プルトニウムを軍用に供するというのが主であります。これは、そのデータが正確には公表されておらないとわれわれは理解をいたしております。従って、これは英国で使った結果のデータか知りませんが、フランスで出したデータがこちらに来ているのか、あるいは英国で使った実験の結果がデータとしてこちらに提供されているのか。これは、御承知のように、プルトニウムの場合には温度が違いますから、核の照射に対する影響度というのがコールダーホールの発電炉で使う場合とはかなり違って参る。さらに、先ほど申し上げたように、軍用でありますから、やはりデータというものは公表されておらない。にもかかわらず、これが確かにすぐれたものだというきめ手はなかなか得がたかったのではないか。これをどういうふうにして資料を入手されたか、どこから持ってこられたかという点を、念のために伺いたいと思います。
#18
○一本松参考人 フランスの原子力発電は、軍用の面もあると思いますが、G1、G2、G3と申しますのは、これは純然たる軍用と考えてよいものと思います、電気ももちろん出します。しかし、その後のEDF1、EDF2というのは、これは軍用ではない。電力会社の原子力発電所でありますので、純然たる軍用ということではなしに――民間ではありませんけれども、向こうのEDFというのは国のやっている会社であります。しかし、原子力発電を発電専用に近い形でもって将来発展せしめようというフランスの政策から生まれたものでございます。そのデータは、もちろん、われわれこれを供給されるものというふうに考えております。ペシネイを通しましてGECからわれわれの会社に供給されるという契約を先般結びましたので、これからの資料は全部入手できるというふうに考えております。
 それから、現在あります、さっき申しましたデータ、これはGECにおきまして実験したものが大部分であります。もちろん、フランスからもらったデータも相当あります。その得られたデータそのものから――クラファイトにはイギリスのものもあり、アメリカのものもあり、日本のものもあります。それら数種数のものを全部比較検討いたしますと、そこに類似のものは類似の性格が現われてきて、その実際の照射――これはもう、二十年にわたる放射能を受けた程度の強い照射を受けた実験も含んでおりますが、そういうものを含んで、照射の影響に対しての検討をわれわれいたしました結果、先ほど申しました大丈夫、そう危険な状態にはならないという見通しを今得ておるわけであります。しかし、これはさっき申しましたように、これから先に、向こうから供給されるデータによってそれを確かめるということによって、間違いのないことを期したいと考えております。
#19
○石川委員 そうしますと、先ほどの質問に明確にお答えにならなかったのでございますが、調印をしたということは、もう契約をしたのだというふうに理解をするわけです。だが、まだまだこれからデータを集めなくてはならぬ、そうして完璧を期するんだということの御答弁ですが、もし、これがどうしてもまずいというときには、また契約を変更するということも考えておられるおけですか。
#20
○一本松参考人 原子力というようなものをやっておりますとき、最終段階百パーセント大丈夫ということはいえないものが相当多いと思うのでありますが、グラファイトにつきましても、今私たちの考えておりますところでは、契約を変更して、もう一ぺん今度はイギリスのグレードAを使わなくてはならないというような事態は起こらないものと考えております。しかし、これはあらゆる実験をしまして、どうしてもいけぬということになれば、これは非常な仮定といいますか、そういうことが万々一にもあったとしましたら、そのときには、また契約を変えるということもあり得ると考えます。しかし、私たちの見通しでは、そういうことはないというふうに強く考えております。
#21
○石川委員 私から申し上げるのは釈迦に説法でございますけれども、原子力科学というものは、日本は立ちおくれて、何としても早く先進国に追いつかなければならぬのだということで、一本松さんも大へん御苦労なさっておるわけなんですが、その点については、やはり原子力の安全性というものを、徹底的に石橋をたたいてたたいて、しかる後に渡るというような安全性の確認ということが前提条件であるということは言うまでもないことだと思うのです。従って、いろいろ慎重に御検討された結果変更をされたというふうに理解はいたします。しかしながら、先ほど申し上げたように、合同審査会その他小委員会を合わせまして百五十回にもわたって、三十四年の三月から十一月までのわずかの期間にこれだけ慎重な検討を加えた、その中の大きな要素としては、材料としての黒鉛の問題が相当大きなファクターを占めておるということは言うまでもないと思います。
 ところで、この問題がそういう変更になった過程、また、その他にもいろいろ御質問したいことがあるのですが、原子力盗電会社の性格からいって、先ほど劈頭に申し上げましたように、公共性といいますか、政府の出資というものも含まれた非常に公共性を持った会社である。しかるに、この合同審査会の中の安全審査専門部会あるいは安全審査委員会、これは通産省の関係でございますが、原子力局長、それから通産省から公益事業局の方が見えておると思いますが、この調印は全然知らされておらなかったと聞いておるわけなんです。こういう変更についての経過報告を受けておらないと聞いておるわけですが、この点はどうなんでしょう。
#22
○杠政府委員 前回の当委員会におきましてもお尋ねがございましたし、その際にもお答えいたしましたように、私の方は、その当時におきましては相談を受けておりませんでした。その後、今日までの経過がございますから、今日までの時間の経過中には相談を受けております。従いまして、調印は前回御質問の当時以前に行なわれたようでございますが、その調印については、私の方は連絡は受けておりませんでした。
#23
○一本松参考人 このグラファイトの問題は、先ほども申しましたように、昨年末ごろから慎重にわれわれの方で検討をいたして参ったのでありますが、あらゆる面から考えまして、これが設計、デザインのよりインプルーブメントである、こういう会社の考え方から、これを会社の立場からきめたわけでありまして、その後、直ちに関係の官庁方面にも、そのきめました理由等を詳細に御報告いたして参った次第であります。
#24
○石川委員 これは何回も申し上げるようですけれども、安全性確保という問題は大へん重要な問題で、しかも、材料としての黒鉛というものが大きな要素を占めておるのに、原発会社単独できめられたということに関しては、どうしてもわれわれとしては納得がいかない。いろいろ私たち伝え聞くわけでございますけれども、原子力発電会社の中でも、英国製がいいかフランス製がいいかということで、相当いろいろな意見の相違があったというふうに伝え聞いておるわけです。さらに、また、イギリスのAEAと和音深い関係にありますヒントン卿あたりも、フランス製のものより――もちろん、自分の国の産業を育成するという使命感から出ておるのかもしれませんけれども、英国のものがいいのだというようなことを言っておるというふうに伝え聞いておるわけです。そういうふうなことをあわせ聞きますと、はたして今度の変更が正しかったかどうかということは、もちろん、われわれとしては専門家ではない関係もありまして、なかなか納得ができがたい点がある。また、相当大きな問題が、黒鉛としては今後とも残されておるということが、今の御答弁でも明らかにされておるわけでございますけれども、にもかかわらず、一方的にこれを変更するということが前例になりますと、今後とも、こういうふうに原発だけで安全性の問題を検討し、原発だけでいろいろな材料の変更を行なうということになるのではないかという点を非常に危惧しておるわけです。この点は、一体一本松さんはどういうふうにお考えになっておるか。また、実際、現存でも安全審査専門部会は、今度は法令によって常置機関というように先般なったばかりでございますが、安全専門審査会が法制的に設置をきめられまして、それから安全審査委員会はいつでも招集して開催できるということになっておるわけでございます。こういう場合に、この審査会が、そういう原発にまかせ切り、審査会はタッチしなくてもいいというふうに原子力局長並びに公益事業局長はお考えになっておるかどうか、その点を一つお伺いしたい。
#25
○杠政府委員 お答え申し上げます。
 今回御審議を願いまして国会を通過いたしました安全審査会でございますが、安全審査会におきましては、設置の際に審査をするということに相なっておりまして、ただいま問題になっておりますところのグラファイトの問題は、工事認可の段階のことだろうと解釈しております。従いまして、工事の認可関係は、発電炉につきましては通産省にございますので、通産省の方からお答え願うべき筋だろうと思います。
#26
○高村説明員 通産省といたしましては、原子力発電所施設関係の認可につきまして、諮問機関といたしましてコールダーホール改良型原子力発電所審査委員会というものが持たれておりますが、この学識経験者からなりまするところの審査委員会にもお諮りいたしまして、認可にあたりましては十分慎重を期し、遺憾のないように原子力発電関係の認可を取り速めつつあるわけでございますが、ただいま問題になっております黒鉛の問題につきましては、実は、この次の段階に認可の対象となる事項でございまして、会社の方から認可の申請がございました際には、慎重に検討をいたして、遺憾なきを期したいと考えております。ただ、ただいまのところ、会社側の説明を聞いておりますと、私も技術者の一員でございますが、技術的にはまず大丈夫ではなかろうかという感じはしておりますが、官庁だけでそういうふうに一方的に判断してはいけないと存じますので、正式に申請のございましたときには、十分審査委員会で学識経験者の御意見も尽くしていただきまして、慎重に検討していきたいと考えております。
#27
○石川委員 そうなりますと、設計変更という場合には安全審査の対象になるけれども、材料変更については何らの規定もないということが一応の法律上での逃げ口上みたいな格好になっているわけです。しかし、これは不備だと思うのです。これだけ黒鉛の問題その他について慎重な検討を加えた重大な要素を持っておりながら、材質の変更については、一方的に、一会社の判断だけでできるんだという形になっているところに私は問題があると思うので、この点においては、政務次官も見えておりますが、委員会としても、将来の問題として取り上げなければならぬと思います。しかし、それがそうであってもなくても、道義的といいますか、そういう意味から、こういう常置機関としての安全審査部会があり、安全審査委員会というものがあって、原子力の開発、発展のために、前提条件としての安全性を徹底的に究明し、確保しなければならぬという観点から、せっかくこれだけの大規模な委員会ができておるのにこれを無視するということは、どう考えても私はふに落ちないのであります。
 そこで、向こうとの契約の問題でございますけれども、契約書につきまして、一つあとで資料として原子力発電会社の方から委員会に御提出をいただいて、一応検討してみたければならぬ、こう考えておるわけでございます。
 あと一つは、黒鉛の変更の場合に、強度試験、材質あるいは核的性格の問題、照射の影響というような問題についてGECといろいろ打ち合わせをされたと思うのでありますけれども、値段の点も、もちろん契約変更、材料変更の場合には大きな問題として取り上げられたと思います。従って、値段の点は、全体の中でどのくらいの金額になっておるか、二百億円のうちで黒鉛はどのくらいになっておるか、その点をお知らせ願いたい。
#28
○一本松参考人 今回の変更によりまして、値段の方には何らの変化もない、そういう契約にいたしております。大体グラファイトの値段は、なまの材料と加工賃とがございまして、その加工賃の方が六割くらいに当たります。それを一緒にいたしまして、原子炉のGECに注文した価格の一割三分五厘くらいに当たるわけでございます。
#29
○石川委員 一割三分五厘いうと、二十五億円くらいになりますか、相当大きな金額だと思います。これだけ大きな変更でございますから、なおさらのこと、慎重に検討しなければならぬし、また、検討はされたと思うのです。そこで、問題は、英国で作ったグラファイトを使う場合と、フランスから入れられる場合とのグラファイトの値段の違いということはお考えになったことがございますか。
#30
○一本松参考人 二十数億になりますが、その中で四割程度でございますから、十億程度のものが原料のグラファイトでございます。あとは加工賃であります。英国とフランスとの値段はよくわかりませんが、私の方での契約価格とては少しの変化もない、そういうことでやっております。
#31
○石川委員 私は、しろうとでよくわかりませんけれども、どうもフランスの方が安いらしいという見方があるのです。そうなりますと、英国のGECの方では、自分の国のものを使いたいけれども、材質がいいとかなんとか、いろいろと変更の理由があげられております。あげられておりますけれども、フランスから安いものを買えば、それだけ自分たちのマージンがふえるというような考え方ではなかろうか、こういうふうな見方も出てくるわけです。安全性の問題というよりは、むしろ利潤の問題ではないかという見方も出ておるわけです。そういう点については、御質問申し上げても御答弁はないと思うのですが……。
 そこで、一つ伺いたいのですけれども、日本と英国との間で契約書をかわして、今度黒鉛については変更の契約をしたのであります。その場合に、日本で決定をして指示をしたという形になっておるのか、それとも、GECでその責任を持ったという格好になっておるのか、その点をちょっと伺いたい。
#32
○一本松参考人 この変更は――先ほど申しましたように、電気が出るまで向こうのGECの責任ということになっております。そのGECから変更の申し出がありまして、こちらが、それではよかろうというようなアグリーメントといいますか、承諾を与えた、そういうことになっております。
#33
○石川委員 あと、またいろいろ御質問もあるようでございますし、一本松さんもお忙しいようでございますので、私このくらいで質問はやめたいと思いますが、何回も申し上げますように、これは原子力局長も公益事業局の方も相談を受けてない。しかしながら、受けなくてもいいのだというような意味で、大へん一本松さんをかばって御返事になっておりますが、どう考えても、これだけ重要な変更について、原子力局また通産省の方に全然通告なしにこういう変更を決定されたということは、今後に与える影響が非常に大きいので、今後は絶対こういうことをしないということを確約してもらわなければならぬ。この点については非常に手落ちがあった、事前にちゃんと了解を得てから、こういう材質の変更をなすべきであったというふうに私は考えるのですが、その点についてはどうお考えになっておりますか。
#34
○一本松参考人 御趣旨の通りに、安全に関しましてはあらゆる努力をいたしまして、安全の上にも安全、そういうことにいたしまして、決して御迷惑をかけないという会社の決意であります。今回のこのグラファイトの問題につきましても、さらに安全ということのインプルーブ、つまり、改善していく、そういう精神から出たことにほかならないのでありまして、今後、そういう点につきましてさらに十分注意をしていきたいと考えます。
#35
○石川委員 私、大臣もこられたので、念のために伺いたいのですが、英国製の黒鉛をフランス製に変えたというときに、われわれ科学技術委員会としては当然そうですが、科学技術庁長官としても、われわれの使命というのは、国産技術を振興するというところに置かれておるわけです。その場合に、日本の品物はどうなんだということが、この契約変更の場合に話題に出たかどうか、その点をお伺いいたします。
#36
○一本松参考人 もちろん、この契約には、最初から、できるだけ日本の品物を使ってくれるようにGECに申し入れてあります。そうして、グラファイトにつきましても、この問題はGECと十分打ち合わせをいたしたのでありますが、そのときのGECの考え方では、自分の方からは自信が持てないし、また量産の実績もない、そういう今の状態では、東海村の発電所に日本の黒鉛を使うということはむずかしいということでありまして、そのことは十分われわれとしましてもGECに責任を持たしておりまして、向こうがどうしてもいかぬと言うものを、日本のものをどうしても使えと言うわけにも参りませんので、それは一応の希望にとどめたわけでございます。
#37
○石川委員 最後に、一つ科学技術庁長官に伺いたいのですが、今、一本松さんから、いろいろコールダーホール型の安全性の問題、なかんずく、今度英国製の黒鉛を使うと予定されておったものがフランス製に変更になったということで、原発は原発なりの慎重な討議を経た結果、それが妥当であるということで、もうすでに契約の調印をかわしてしまったという御報告があったわけでございます。しかし、私、先ほどから申し上げておりますように、科学技術庁の安全審査部会、それから通産省の方にも安全審査委員会というものがございまして、そこでこれだけ慎重な、百五十回にも近いような慎重な討議を重ねてできた結果を、これが原発だけの判断でもって――これは原発としては悪意はなかったかもしれません。しかしながら、今後こういうことが前例になっては非常に因る。やはり、こういう重大な変更については、せっかく安全審査委員会というものがあるわけでありますから、との安全審査委員会に事前にちゃんと連絡をして、そこで、なるほど、それは原発としてやってよろしいという判断があればとにかく、そういうことがなしに、原発だけで判断されるということであって一体よろしいのかどうかという点を、科学技術庁の長官としての立場で御意見を伺いたいと思います。
#38
○池田(正)国務大臣 これは、かねがね私も申し上げておりますように、何といっても、まず第一に、安全性というものが重大なんでございますので、法律的には通産省の所管に属することでございますが、そういう重大な変更という場合には、当然事前に原子力委員会に相談をしてもらうようなつもりでおります。
#39
○石川委員 それでは、最後に、先ほどちょっと資料を要求しておきましたけれども、GECとの契約書の写し、それを参考にあとで資料として配付してもらいたいということを要求いたしまして、まだいろいろこまかい問題点はありますけれども、それはまたの機会に譲ることとして、一応私の質疑を終わります。
#40
○山口委員長 他に御質疑がなければ、一本松参考人からの意見聴取はこの程度にとどめます。
 一本松参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間にわたりいろいろ貴重な意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。ここに、委員会を代表して、私から厚く御礼を申し上げます。
     ――――◇―――――
#41
○山口委員長 引き続き、原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償、補償契約に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。齋藤憲三君。
#42
○齋藤(憲)委員 時間もおそくなっておりますし、長官少しかぜぎみだということも承っておりますので、なるべく大臣に御答弁をちょうだいいたしたい点にだけ局限をいたしまして、簡潔に御質問を申し上げたいと存ずる次第であります。
 この原子力損害の賠償に関する法律案は、原子力平和利用を推進して参りますにつきましては、どうしてもこれを制定しなければならない重大法案でございまして、日本の原子力平和利用の推進の最初から、なるべく早くこの法律を制定して、一般国民大衆に安全感を与えなければならないということをわれわれも考えておったのでございますが、なかなか問題がむずかしいために、今日までまだ制定を見ないでおるものだと思うのであります。この提案の理由を拝見いたしますと、あくまでも安全性の確保を前提として原子力平和利用というものは行なわれなければならないのだが、原子力そのものが、まだ未知の分野を大きくかかえている、従って、あらゆる観点から安全性の確保を考えてこれを行なっても、なおかつ、そこには不安全の分野が残るのだ、そこで、災害が起きた場合に対する賠償の責めをどこかで負わなければならないという観点からこの法案が必要だというので、もっともな提案説明だと私は思うのであります。この原子力損害の賠償に関する法律案の第一条には、そういう趣旨から、「損害賠償に関する基本的制度を定め、もって被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」という制定の眼目が書かれているのでありますが、これに対しましては、提案の御説明にもございました通り、原子力委員会におきましても、昭和三十三年以来、この問題について鋭意検討を続けられて、昨年の三月には原子力損害賠償制度の確立についてという決定を行なわれた。ずいぶん長い間、その専門的な見地に立って検討を加えられたのでございますから、私は、この法案がその目的として掲げております、被害者の保護をはかり、原子力事業の健全な発達という点に対しましては、現在において考えられるあらゆる条件を検討して、万違算なきを期せられた、こういうふうに善意に解釈して、この法案の根本的な趣旨というものに対して、私は疑義をはさまないことにして御質問を申し上げて参りたい、こう思うのであります。
 そこで、大臣にお伺いをいたしたいのは、この賠償法の第二条第二項のただし書きで、従業員の業務上受ける損害が除外されておるのであります。すなわち、「ただし、次条の規定により損害を賠償する責に任ずべき原子力事業者の受けた損害及び当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」これはどういうような御趣旨に基づいておるのであるか、これを一つ大臣に御答弁を願いたいと思うのであります。この法案を見ますと、一般の被害者は無過失損害賠償を受けられるという規定になっておる。ところが、実際その仕事に従事しておる者は、この無過失損害賠償から除去されて、労災給付しか受けられないという、いわゆる従来の一般的な仕事に従事している労働者の建前でもって被害というものに対して定められておる。こういうことは、法案を読んでみますと、何か非常にアンバランスな感じがするのであります。私らの考え方からいきますと、一般の被害者が受けるところの損害よりも、実際仕事に従事しているところの従業者が受ける被害というものは比べものにならないほど大きい、そういうふうに私は思うのでありますが、どうして「当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」というふうに規定をされたのか、これを一つ伺っておきたいのであります。
 また、ついでに、諸外国においてはどういうようなことをやっておるか、これも簡単でよろしゅうございますから、事務当局から御説明願いたい。
#43
○池田(正)国務大臣 この法律は、第三者に対する損害賠償の確保をはかることを本旨としております。しかし、一方、従業員諸君の損害は、御指摘のように、労働基準法、労働者災害補償保険法等の一貫した体系で補償がはかられておるのでありまして、この法律から除外してあります。
 それから、外国の例でございますが、アメリカにおきましては、御承知のように、従業員の損害の場合は、労災制度で補償するという建前になっておるのであります。同時に、また、西ドイツにおいても、アメリカと似たような、補償は労災制度によることになっておりまして、損害賠償措置からは除外されておるというような実情であります。ただ、イギリスの場合だけは特別に扱っておる。つまり、災害補償体系というものはその中に入っておりますけれども、実際においては労災制度との調整をはかって、内容的には、労災制度でやっておるといったような形になっております。従って、この法律による原子力災害補償制度と労災補償制度とを比較して見ると、賠償責任の性質については、従業員も労働基準法上無過失損害賠償を受けることになっており、この点においては、両者の間に相違はないのでございます。また、損害賠償措置については、従業員の方は、労災法上、いわば一人の被害者当たりの限度であるのに対して、一般の第三者は、この法律上、一事故当たりの損害総額について限度があるので、いずれが有利であるかということは、これは画一的には言えない問題じゃないかと考えられます。従って、諸外国における実際の運用もあわせて参考として、これからさらに慎重な検討を行なっていきたい、かように考えておるのでございます。
#44
○齋藤(憲)委員 ただいまの御答弁によりますと、労働基準法、労災法等によって従業員の業務上受けたところの原子力損害は十分に賠償される、償われる、これは今お答えになりましたように、この法案によって一般の被害者が損害の賠償を受けるのと、それから、労働基準法その他労災法によって従業員がこうむった損害の賠償を受けるのと、どっちがどっちだか、実際問題にぶつかってみなければわからないというような――業務上受けた従業員の損害を徹底して賠償するというようなことになっておるから、これは心配要らないんだ、この原子力損害の賠償に関する法律案は、そういう賠償の規定がこの法律以外にあるから、これは第三者の被害だけに限って賠償の責めを規定した、こういうことに考えてよろしゅうございますか。
#45
○池田(正)国務大臣 その通りでございます。
#46
○齋藤(憲)委員 それでは、その次に一つお尋ねを申し上げておきたいのでございますが、それは、第三条第一項のただし書きでございます。「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」すなわち、異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたところの、原子炉の運転等の際に起こった損害に対しては賠償の責めを負わないでよろしい、こういうふうに規定されておるのでございますが、異常に巨大な天災地変というものは、一体どういうことを意味しておるのか、また、社会的動乱によって損害の賠償が免除されるということは、一体どういうことを意味するのか、これを一つ具体的に御説明をお願いいたしたいと思います。
#47
○池田(正)国務大臣 異常な事態と申しますと、大地震でありますとか、たとえば、関東大震災といったような場合、あるいは大震災以上のもの。また、社会的な動乱とは、どういう表現をしたらいいですか、国家的に重大な不幸な事態とでもいいましょうか、われわれが予測されないような重大な不幸な事態が起こった場合、こういうふうに私どもは解釈いたしております。
#48
○齋藤(憲)委員 そうすると、大震災のごとき地震より以上の地震。地震にたとえてみれば、そういう地震というものを巨大な天災地変と考える。そうすると、今まで日本なら日本に発生した天災地変というものは損害賠償の対象になる、今までレコードになかったものが発生した場合には損害賠償の対象外に置く、こういう考えですか。
#49
○杠政府委員 ただいまお尋ねの点の前半のことでございますが、ただいままで私たちが考えておりますのは、おそらくは、関東大震災ほどの地震はなかったのではなかろうかと考えます。しからば、ただいままでの関東大震災よりも多少とも規模の大きい地震があった場合には、この異常に巨大な天災地変と言うかどうかという後半のお尋ねだろうと思うのでございますが、そのことにつきましては、現在、コールダーホール等の審査におきまして、先ほど来問題になっておりますように、耐震ということに十分に気をつけておりまして、関東大地震の二倍ないしは三倍程度の地震がありましても耐え得る安全度というような審査をいたしております。従いまして、関東大地震よりも多少とも出ればというようなふうにわれわれは考えておりませんで、実に想像を絶すると申しましょうか、先ほど申し上げましたように、安全審査の点でも、関東大地震の二倍ないし三倍の地震に耐え得るという非常な安全度をとっておるわけであります。それさえももっと飛び越えるような大きな地震というふうにお考えいただけばいいのではなかろうか・われわれはそのように解釈いたしております。
#50
○齋藤(憲)委員 ただいまの局長の御答弁でございますが、そういう判定は一体どこでやるのです。
#51
○杠政府委員 その判定の件につきましては、法律には、御承知の通り、それぞれ所管行政庁がございますから、所管行政庁としての科学技術庁において一応判定するということに相なろうかと思います。ただし、それについて異議がございました場合には、御承知の通りに、裁判所に訴えて解釈を統一するというようなこともあろうかと思うのでありますが、第一次的には、この法律を所管しておる行政庁の科学技術庁が判定するということに相なろうかと思います。
#52
○齋藤(憲)委員 これは、事、原子力に関することでございますから、こういう損害賠償の対象にならないような異常な天災地変という認定は、原子力委員会にかかるのですか。原子力委員会の議を経て科学技術庁が処断をするというふうになるのか、原子力委員会というものを抜きにして、科学技術庁が単独にこれを裁定するのか、これはどうですか。
#53
○杠政府委員 お尋ねの件でございますが、十九条によりまして、原子力委員会が当然関与いたすということに相なります。と申しますのは、第十九条の二項におきまして、原子力委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出するというような措置がとられなければならないということに相なっておりますから、従いまして、その判定の際に、当然に原子力委員会が意見書を出されるということに相なろうかと思います。
#54
○齋藤(憲)委員 原子力委員会で意見書を出す、そのときに、これは損害賠償の対象になるとか、あるいはならないとかという意見書を、どっちか出した、それに対して、客観的に、いや、それは原子力委員会の意見と違う、そういうような反論が盛んに起きたときに、この十八条にあります原子力損害賠償紛争審査会というものは、そういう場合に仲裁の労をとるとか、あるいはどっちかに決定する権限は持っておるのですね、これはそういう意味ではないのですか。
#55
○杠政府委員 もちろん、異常に巨大な天災地変の判定におきましても、原子力委員会というものはノー・タッチではない、やはり意見書は出すというように考えております。それと同時に、異常に巨大な天災地変の判定ではなくても、損害が起こったという場合には、当然に意見書を出す、だから、二つの任務を原子力委員会は損害賠償に関しましては持っておるというふうに解釈いたします。従いまして、損害につきまして、賠償の件で損害額の多寡その他につきましての紛争等が起こりましたおりには、紛争審査会にかかることは当然でございますが、今の異常に巨大な天災地変であったかどうかというようなことについての紛争、これにつきましても、先ほど申しましたように、すでに損害が発生し、それを異常に巨大な天災地変によるものでないとした場合の紛争と同じように、紛争審査会に関与してもらうということは当然の措置ではなかろうか、行政庁としては当然にそのような措置もとるべきではなかろうかと解釈しております。
#56
○齋藤(憲)委員 今の問題につきましては、速記録を一ぺん拝見して、さらに機会あるときに御質問申し上げたいと思います。
 その次に、社会的動乱というのは、戦争とか、それから戦争に準ずべき内乱、こういうことを意味しておるのですかどうですか。
#57
○杠政府委員 その通りでございます。戦争またはそれに準ずる内乱ということになっております。
#58
○齋藤(憲)委員 それでは先に進みまして、この求償権の問題ですが、求償権の問題は、ここに明記されておりまする通り、「第三条の場合において、その損害が第三者の故意又は過失により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。」こうありまして、故意でやった場合に求償権がある、過失であった場合には第三者に対する求償権はない、こう明記してあるから、そういうことはないと思うのでありますが、巷間伝うるところによりますと、外国のサプライヤーが、この第五条かあるいはその他の条文からかよくわかりませんが、とにかく、サプライヤーが何か損害に対しての責任を問われるから、日本は自分たちの考えとよほど違った考え方を持っているのではないかということを言うておる、そういうことを私は聞くのでありますが、こういうことは、私の調べましたところによりますと、故意でやらざる限り求償権もないのでありますから、外国のサプライヤーが損害賠償の責めに問われることはない、こう思うのでありますけれども、この点に対しては、一体大臣はどうお考えになりますか。
#59
○杠政府委員 私からお答えさしていただきたいと思います。
 外国におけるところの立法におきまして、ただいまお尋ねの通りに、サプライヤーに対して求償するというような例がございます。そこで、日本におきましては、ことにその点をはっきりさしておく。たとえば、アメリカなどにおきますところの制度におきましては、責任集中制がとられ、そしてサプライヤーというものは免責されるというようなこともあります。そういうことがございますので、日本におきましても、その点は、外国等と調子を合わせたと申しましょうか、はっきりさしておきたい。責任を集中さして、すなわち、原子力事業者のみが負うというようなことにいたしますことによりまして、日本にも安心して資材等の提供をはかり得るというふうにいたしたいということでございまして、外国のサプライヤーのためのみにそのようなことを考えておるというのではございません。もちろん、故意がありますときの求償権というものはございますが、その場合には、特約いたしまして、免除することもできるというようなことを制度としておるわけでございます。従いまして、故意によるところの求償権があったとしても、特約によって外国のサプライヤーは免れるというような措置を第五条第二項に講じているということでございます。
#60
○齋藤(憲)委員 この原子力損害の賠償に関する法律案提案の御説明の三ページの第二というところに、「第二に、原子力事業者の賠償責任につきまして、民法の不法行為責任の特例としてこれを無過失責任とし、かつ、原子力事業者に責任を集中することといたしております。これは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上困難と認められるからであります。また、原子力事業者が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想される点を考慮したものであります。」とある。でありますから、この原子力平和利用の過程において発生する損害というものは、一切原子力事業者が集中的に負う体制を作ったのだというのが、この立法精神のように見られるのです。ですから、そういうところから参りますと、サプライヤーが故意にやったものは求償権が発生するけれども、故意にあらざる限りは絶対にサプライヤーは損害の責めに任ずることはない、こう思うのですが、その通り解釈してよろしいですか。
#61
○杠政府委員 その通りでございます。
#62
○齋藤(憲)委員 それでは、その次の第七条でございますが、第七条では、損害賠償の金額を最高五十億円ときめておられるようであります。これは五十億円の下でカッコをして「政令で定める原子炉の運転等については、五十億円以内で政令で定める金額とする。」ということがございますから、小さな研究用の百キロの炉であれば幾らとか、あるいは五百キロは幾ら、十キロは幾らとかいう規定は政令で定められると思うのでありますが、最高五十億円という原子力損害の賠償をきめておられるのは、これだけで十分と考えておられるのか、また、なぜ最高額を五十億円と決定されたのか、その根拠と、これで十分とお考えになっておるのかという二点について御答弁願います。
#63
○杠政府委員 お答え申し上げます。
 まず、五十億円という最高をきめました根拠でございますが、日本におきますところのこの種の保険というものは、初めての事例でございます。従いまして、日本の損害保険各社がプールを作っております。その原子力損害保険プールの消化能力というものが、ただいまのところ七億五千万円しかございませんので、ロンドンの保険プールに対しまして、原子力の保険プールに対する再保険をいたしております。そこでの消化能力が四十二億五千万円ということにただいまのところ相なっております。従いまして、これを合計いたしまして、五十億円までは保険プールにおきまして引き受けることができるということから、五十億円ということをきめたわけでございます。すなわち、保険プールの引き受け能力の限度でございます。
 それから、次に、しからば、五十億円以上の場合にはどうするのかということでございますが、五十億円以上の場合におきましては国が援助をするというような措置を第十六条において設けております。それはどういうことかと申しますと、もちろん、原子力事業者が責任は集中して無制限に負うということになりますが、実際問題として、保険の限度は五十億円でございますから、幾ら責任を集中、あるいは無制限の責任を課しましても、実際問題の補償ということは行なわれません。と同時に、これでは原子力事業者が破産をしてしまうということも考え得られますので、そのような際には、第十六条におきまして、国が原子力事業者に対して援助をするというような規定を設けておりまして、被害者の方は、原子力事業者に対する国の援助等によるところの資金をもちまして、泣き寝入りのないようにしていきたい、すなわち、五十億だけで打ち切るのじゃないというようなことになっております。
#64
○齋藤(憲)委員 そこで、この援助をしてやるということから、どれだけの援助をしてもらえるか戸惑っておる原子力事業者もおるでしょうが、一体援助というものは、具体的にどういうことを意味するのか、援助というものを解剖して、はっきりしていただいた方が私はいいと思うのです。一つこれを御説明願いたい。
#65
○杠政府委員 ただいまの御質問に対しましては、事柄が非常に重大なことでございますから、科学技術庁長官の方からお答え申し上げるつもりではございますが、事務当局としての解釈をまず申し上げておきます。
 解釈といたしましては、ただいま齋藤先生のお話の中に、たしか五十億円が原子力事業者の限度かのごとき御発言があったかと思うのでございますが、私がただいま御説明申し上げましたのは、保険においてめんどうを見るのが五十億円であるということを申し上げたのでありまして、五十億円をこえましても、原子力事業者というものは相変わらず無制限に責任を負う、従いまして、その人たちがどういうような資金の作り方をして第三者に補償をするか、これはいろいろなやり方があるだろうと思います。原子力事業者そのもののやりくりにおいていろいろあるだろうと思いますが、もしも五十億円の保険で足りない分を、いわば四苦八苦して作る際に、原子力事業者が破産してしまうかもしれない。そうすると、実際問題として払えなくなることもある。と同時に、原子力事業者の事業の円滑なる発展も期しがたいということになりますので、その際には国が援助する。その援助という意味の解釈ですが、援助の内容は、たとえば、補助金を原子力事業者に出すということ等が考えられるわけでございます。
#66
○齋藤(憲)委員 その第十六条に「前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。」こういう第二項があって、これは必要な援助の内容を規定しておられるのだと思うのであります。ですから、その五十億円をこえて、なおかつ無限に原子力事業者が損害賠償の責めに任じなければならないというのを、それはあくまで追及したって原子力事業者がぶっ倒れる、だから、それ以上に及んだ原子力事業者が負うべきところの無限の損害賠償については、今度は国家が肩がわりをしてやる、しかし、国家が無限に肩がわりをするというわけにはいかないので、この第二項にある「国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。」こう私は規定してあるのだと思うのであります。ですから、これは、総括的に、総論的に「国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内」ということをいかに大臣に御質問申し上げても、御答弁をいただけないと私は思うんです。それは、そのつどに損害の状況というものは違うのだから、その起きた損害のそのつどの状況によって、国会に付与せられるところの権限というものは私は違ってくるのじゃないかと思うんです。けれども、大体普遍的に通用する条件というものがあるんじゃないか、それはやはりその損害の状況により、及び原子力事業者の資力ないしは立場というようなものを考えて、低利の融資を行なうとか、利子補給をしてやるとかなんとか、適切な道を講じて、原子力事業者も立っていくし、それから、一般被害者も一人としてこの原子力災害によって恨みを残すとか、泣き寝入りをするというようなことがないようにしてやるという立法精神を盛ったものではないか、こう思うのでありますが、その点に関しまして、これは重大な問題でありますから、一つ長官から御答弁をお願いしたいと思います。
#67
○池田(正)国務大臣 これは、今、齋藤委員の御指摘になった通りでありまして、政府の援助は、この法律の目的、すなわち、被害者の保護をはかり、また、原子力事業者の健全な発達に資するために必要な場合には必ず行なうものとする趣旨であります。従って、一人の被害者も泣き寝入りさせることなく、また、原子力事業者の経営を脅かさせないというのが、この立法の趣旨でございます。
#68
○齋藤(憲)委員 そういうふうに五十億と最高額を決定しても、それ以上の災害が万一起きた場合に、原子力事業者も立ち行くし、災害者も泣き寝入りをしないようにできているというとの法律のこの項は、非常に大切だと思うのでありますから、ただいまの大臣の御言明のごとく、十分この点に対しては一つ御考究を願いたいと思うのであります。
 なお、これは私の老婆心でございますが、この第十七条の「第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」というようなことも、書きっぱなしでなく、絶対そういうことはないだろうと思うけれども、原子力の災害というものは、いろいろ予測すべからざるところの状態が私は出てくると思うのです。特に放射能の障害のごときは、一体どうして防御するのか、そういう点に対しましても、一つ十分御考究をお願いしたいと思うのであります。
 まだたくさん御質問申し上げたいことがございますが、第一回目の質問でございますので、きょうは原子力損害の賠償に関する法律案につきましてはその程度にとどめ、次に、原子力損害賠償補償契約に関する法律案について、ただ一点だけ御質問申し上げて、私の本日の質問を終わり、その他は他日に保留したい、こう思うのであります。
 賠償法によりますると、補償契約は、責任保険契約によっては埋めることができない原子力損害を補償するものとなっており、この趣旨からすれば、政府の補償する損失は、責任保険契約によっては埋めることができないすべての原子力損害とすべきものと考えられるのでありますが、一方、補償契約法第三条は、政府の補償する損失を列挙し、その他は政令にゆだねている。この政令では、どのようなものを規定する意向であるか、これを一つ御説明願いたいと思うのであります。
#69
○杠政府委員 お尋ねの第三条の列挙主義でございますけれども、一号、二号、三号というようなものは非常に具体的に列挙してございます。すなわち、一号におきましては、「地震又は噴火によって生じた原子力損害」となっております。二号におきましては、「正常運転によって生じた原子力損害」、三号におきましては、いわゆる後発性障害によるところの原子力損害というふうに相なっておりますが、四号におきまして「前三号に掲げるもの以外の原子力損害であって政令で定めるもの」と書いてございまして、その政令の内容をお尋ねだと思うのでございますが、ただいまのところは、ほとんど一、二、三号によりまして補てんできる、損害の補てんは可能である。あるいは保険約款にございますが、その保険約款の穴を埋めているのが一号、二号、三号であるというふうに考えております。しかしながら、四号を設けまして政令にゆだねている趣旨は、そのほか、保険約款によっても、あるいは補償契約の、今申し上げました明確なる規定によるところのものによっても埋められないようなものがあり得た場合のために、政令できめていくということを規定しているわけでございます。ただいまのところ、われわれの検討の結果によりますと、この政令の内容なるものには、原子力事業者が約款できめております事柄を通知しなければならぬ、あるいは、それを変更したような場合に通知をしなければならぬというようなことがございますが、その通知を怠っているような場合が起こり得るのではなかろうか、従いまして、通知義務違反をやったような場合に、保険としてはめんどうを見ない、保険会社としては、当然に通知してもらうべく約款に載っているにもかかわらず、通知してもらわないものは支払えないという立場でございます。それじゃ、第三者は泣き寝入りではございませんけれども、その損害の持っていきどころがないということに相なりますので、補償契約でもって、その通知義務の違反がある場合にも、それは埋めてあげましょうというようなことでございます。ただいま、事例としては、通知義務違反ということは政令で規定してございます。そういうことであります。
#70
○齋藤(憲)委員 そうすると一、二、三と書いた以外の第四の政令できめるというのは、法律違反とか義務違反とかやった場合を、この政令できめるということですね。
#71
○杠政府委員 その通りでございます。
#72
○齋藤(憲)委員 あと、質問をやめますが、念のために一つ伺っておきたいと思います。
 この第三条の、契約により補償する損失の各号、この第一は私にもよくわかるのです。「地震又は噴火によって生じた原子力損害」というのですから、これはだれでもよくわかるのです。ところが、その次にいきますと「正常運転(政令で定める状態において行なわれる原子炉の運転等をいう。)によって生じた原子力損害」一体、正常運転で原子力損害が起きるというのは正常運転ではないので、正常運転をやっておって原子力損害が起こるということは、一体どういうことをいうのですか、頭がいい人が書いたのだと思うのだが、そこがわからぬから説明してもらいたい。
#73
○杠政府委員 まことにその通り、普通に考えますならばその通りでございますが、原子力というようなものにおきましては、正常な運転をいたしておりましても、累積的なといいますか、そういうような損害が起こり得るかもしれない、あるいは、まだ今まではわかっていないが、何らかの損害が、運転としては正常な運転をしておりましても起こらないとも限らないというようなことでございまして、そのような際にも、ほったらかしにしておくことはしないということをここに規定しているわけであります。従いまして、御説明申し上げる方も、未知の点はそれじゃどんなものかということは、具体的にはどうも現在の時点において御説明できませんけれども、その未知の点あるいは累積的な損害ということですね、この累積的ということは、これは御想像願えるだろうかと思いますが、そういうような、そのときどきにおいては損害がないけれども、だんだん積もってきますと損害として起こってくるんじゃないか、たとえば、放射能禍というようなものは、とかく累積的なものがあり得るというふうに考えております。たとえば、原子炉ではありませんが、フォールアウトなどにおきましては、当然に累積的なものが考えられようとしているというのが現状であります。
#74
○齋藤(憲)委員 そうすると、正常運転かどうか、これは法律的に取り締まるのに非常な支障を来たす。しかし、正常運転と認めておっても、正常運転でない場合も不測に出てきて、そして損害を及ぼすかもしれない。厳密に言うと、正常運転と認めらるべき運転によって生じた原子力損害ということですね。一応正常運転と認められるのだ、しかし、それは正常運転だと思っておったけれども、そうでなくて、不測の災害が起きる場合も当然ある。原子力の問題は、行く先はわからぬのだから、今の御説明によるとそういうことも予想される。たくさん原子炉があって――今は一つしかないけれども、第二号、第三号、第四号とずっと原子炉が並んで、こっちは許容量以内だ、こっちも許容量以内だ、だから正常運転だ、正常運転だといっているのが、どこかで許容量が一緒になって、知らないうちに大きな放射能がばっと出てきて損害を与える、そういうことですか。
#75
○杠政府委員 やはり、そういうような事態も予想しております。おそらくは、正常運転と申します限り、そういうような事態はないものと奪えますけれども、やはり万々が一の場合の損害につきましても、被害額に対しては手厚い保護をすべきだというために、この規定を設けたわけであります。
#76
○齋藤(憲)委員 もう一つ、この第三ですね、これは私は何回も読んでみたけれども、とにかく回りくどくて、何のことが書いてあるのかわからない。「その発生の原因となった事実に関する限り責任保険契約によってうめることができる原子力損害であってその発生の原因となった事実があった日から十年を経過する日までの間に被害者から賠償の請求が行なわれなかったもの」これは一体正体は何ですか。
#77
○杠政府委員 先ほど、私は第三号についてはしょりまして御説明申し上げたので、おわかりにくかったと思いますが、いわる後発性障害のことを意味しておるわけでございます。なぜ、このような表現をとったかと申しますと、責任保険契約におきましては、当然に後発性障害におきましても、十年の間においてはその適用になります。ですから、それを前半において言っておるわけであります。ところが、その発生の原因となった事実があった日から十年を経過する日までの間の被害者側の賠償請求が、当然に行なわれるべきだと予想しておるわけですけれども、そういうものが行なわれないことが、被害者によってはあるわけです。これは、十年前にどこの炉の運転に従事しておったか――その人は従業員ですが、その炉の周辺におって、それから受けた損害であるということを、的確にだれしもが気づくというような、実際問題としては考えられないこともございますので、その人が十年間請求し得るわけですから、その請求期間内において気づいて請求しなかったような場合にどうするかというと、保険会社の方から申しますと、やはり十年間ということで一応打ち切ったにもかかわらず、その事実が十年内に発生しているということで、その請求権をその後にまで及ぼしてもらうのは約款上困る。要するに、どこで締め切っていいのかわからない。十年間の契約期間でありますから、そういう際には被害者は泣き寝入りしなくちゃならない、そういう場合には補償契約に該当するということであります。そういうことを表わしております。これは法律的に正確を期する表現のために、今の後発性障害が十年内に起こっても、そのときに請求しなかったものを救済する、こういうように砕いて書けばいいのですけれども、法律用語として正確を期するために、このような表現をしたわけであります。
#78
○齋藤(憲)委員 今の御説明によって大体わかったのですが、そうすると、後発性障害を十年の間自分は気がつかなかった、だから何も賠償の請求をしなかった、ところが、十一年目にぽこりと放射線障害が起こってきて、白血球がべらぼうに減ったりふえたりして、そうして、明確に放射線障害だ、それが、自分が原子炉の近くに住んでおって、そのために、これは原子力による後発性障害だということが医学的に立証されたときにはこの対象になる、こういうことですか。
#79
○杠政府委員 その通りでございます。
#80
○山口委員長 本日は、これにて散会いたします。
   午後三時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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