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1960/04/18 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第11号
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1960/04/18 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第11号

#1
第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第11号
昭和三十六年四月十八日(火曜日)
    午前十時三十七分開議
 出席委員
   委員長 山口 好一君
   理事 菅野和太郎君 理事 齋藤 憲三君
   理事 中曽根康弘君 理事 中村 幸八君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 岡本 隆一君
      赤澤 正道君    有田 喜一君
      佐々木義武君    西村 英一君
      濱田 正信君    細田 吉藏君
      石川 次夫君    小林 信一君
      山口 鶴男君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       松本 一郎君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局長)    久田 太郎君
 委員外の出席者
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局科学調査
        官)      井上 赳夫君
        総理府技官
        (科学技術庁計
        画局計画課長) 橘  恭一君
        参  考  人
        (東京大学教授
        (生産技術研究
        所))     糸川 英夫君
        参  考  人
        (東京慈恵会医
        科大学教授、宇
        宙開発審議会委
        員、航空技術審
        議会専門委員) 杉本 良一君
        参  考  人
        (朝日新聞社科
        学朝日編集部
        員)      岸田純之助君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興対策に関する件(人工衛星に関す
 る問題)
     ――――◇―――――
#2
○山口委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 本日は、人工衛星に関する問題について参考人より意見を聴取することといたします。御出席の参考人は東京大学教授糸田英夫君、東京慈恵会医科大学教授杉本良一君、朝日新聞社「科学朝日」編集部岸田純之助君――岸田君はまだお見えになりませんが、おっつけいらっしゃると思います。以上三名の方々であります。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の調査のためわざわざ御出席を賜わりまして、まことにありがたく、厚くお礼申し上げます。
 ただいまより人工衛星に関する問題について、参考人各位より御意見を伺うことといたしたいと存じます。今般のソ連における人間衛星船の打ち上げ成功につきましては、科学技術の進歩のまことに驚くべきものあるを痛感いたしますが、世界各国のこの方面における進歩の趨勢、並びにわが国における現状、あるいはこれが人類に及ぼす影響などにつきまして御意見を承りたいと存じます。
 なお、糸川参考人におかれましては、多年御研究のロケット工学の部門より、杉本参考人におかれましては、御専門の航空医業の見地より、岸田参考人には、国際的な宇宙開発の現況並びにその将来の見通しなどについて、それぞれお述べ願えれば幸甚と存じます。
 なお、御意見は、糸川参考人、杉本参考人、岸田参考人の順序で伺うことといたし、時間は、お一人約十五分程度といたしていただきまして、そのあと、委員諸君の質疑があれば、これにお答えを願いたいと存じます。
 それでは、糸川参考人よりお願いいたします。
#3
○糸川参考人 御紹介いただきました東京大学の糸川でございます。
 今日、一口に宇宙と申しますけれども、宇宙を三つの角度から方面を分けまして、その研究が進んでいると申してよろしいと思うのであります。つまり、宇宙の研究には三つの柱があるということでございまして、その第一の柱は、宇宙の秘密を探るという事業であります。第二の柱は、秘密はどうでもよろしい、宇宙を利用いたしまして、まあ、一もうけできないかと考える利用面でございます。第三の面は、秘密利用に多少関係ございますけれども、それらと根本的に考えを異にいたしました、地球人類を地球から解放するという壮大な夢でございます。つまり、三番目の事業は、地球人類というものは、徳川時代の日本と同じ鎖国の状態にあるということでございまして、それを日本が開国したと同じように、地球的な意味で、宇宙に人類を開国したいという壮大な夢でございます。この三つは相互に関係はございますけれども、しかし、実際に担当している科学技術者は、あるいはかなり異なっておりまして、別々の事業として、別々の哲学に基づいて進められていると申してよろしいかと思うのであります。
 第一の、宇宙の秘密を探求する事業といたしましては、国際地球観測年の間に、各国が協力してこれを推進するということがきまりましたが、同観測年終了後は、オランダのヘーグに国際宇宙空間研究連絡委員会という国際委員会ができまして、国連の下部機構として、宇山の秘密を、国際的な事業として協力して探求をしようということが進んでおりまして、今日まで上がりましたソ連のスプートニク、アメリカのパイオニア、エクスプローラー、日本のカッパー・ロケットなどは、いずれもこの第一の柱である宇宙の秘密探求の事業に従事しているわけでございます。
 それから、第二の、宇宙の利用面でいち早く成果を上げましたのが、宇宙を通信のルートとして使う、つまり、人工衛星を用いました電話並びにテレビ中継の技術でございます。この面で今日到達いたしましたところは、地球のまわりに約三十個の衛星を上げますと、地球上九八%の個所で任意に国際電話がかけられる、テレビの方は、実はオリンピックまでに間に合うとか、間に合わないとかいう話がございますが、今日まだ技術的に多少解決を要する点がございますので、多少疑問符がついてございますけれども、電話の方は、すでにアメリカでは国内電話にこれを使用し、アメリカ、カナダの間の両国間の電話にも使用したことがございますし、アメリカ、英国の間の国際電話に使用したこともございまして、一九六二年から六三年にかけまして実用期に入るものと考えられるのでございます。この第二番目の事業の宇宙の利用面では、アメリカがほとんど独走態勢と申しますか、独占的にその地位を保っておりまして、今日アメリカ以外の国は何も手をつけておらないのでございます。ソ連もこの面では全く指を染めておりませんで、この面に今後ソ連がどう出るかということが、関係者にとりまして非常に大きな関心なのでございます。
 第三番目の、人間を宇宙の圏外に送り出すという計画は、今日ニュースになりまして、また、本日の議題になりましたソ連の人間衛星ということで第一歩をしるしたわけでございます。ソビエトのアカデミーは、この宇宙委員会の名前に航宙術委員会という名前をつけております。英語で申しますとコミッション・オン・アストロノーティックスという名前をつけております。ただノーティックスと申しますと航海術、海を渡る術になりますから、エアロノーティックスということになりますと、空気の中を渡る、つまり航空術になるわけでございます。それから、アストロノーティックスになりますと、天体の間を渡って歩くという意味で、宇宙を航行する航宙術という意味でございますが、初めから航宙術委員会という名前をつけておりますところが他国と大へん違うところでございます。アメリカの航空宇宙局あるいはその他の委員会の多くは、大体において宇宙科学委員会という名前がついておりまして、宇宙の秘密を探求する、また、最近は、アメリカ国際電電公社、ATTなどが中心になった宇宙通信、宇宙の利用面の委員会ができておりますけれども、ソ連のように、たった一つある宇宙委員会が航宙術という名前をつけている国はないのでございます。日本の学術会議にあります宇宙空間研究連結委員会なども、あくまで宇宙の秘密を探るという事業が中心になっておりまして、人間を地球から外へ運び出すというのを第一目的といたしました宇宙委員会ではございませんで、そういう意味で、ソ連のアカデミーの中に置かれました宇宙委員会の性格だけが最初から根本的に違っていると考えてよろしいんじゃないかと思うのであります。現に、いろいろな国際会議、たとえば、オランダのヘーグに本部があります先ほどの国際宇宙空間研究連絡委員会に出席いたします学者も、米国、日本あるいは英国、フランスなどは、いわゆる宇宙物理学者といわれる方々が出席するのに対しまして、ソ連側は、常に航宙術、人間を宇宙に運び出す、火星や金星に届けて、そこに地球の出張所を作るというような計画をまず最初に頭に置きまして、それの専門家を常に国際会議に出席せしめております。そのほか、ソ連の学術論文その他の傾向を見ますと、宇宙研究の中心が、人間を天体に運ぶということにございます。そういうことから、今日、人工衛星で人間を上げたということは、実は単なる一つのステップにすぎないのでございまして、この後、長期間にわたってこういう研究が進んで着々と成果を上げていくということが予想されるのであります。最終的な目標は、一応月にかなり多数の人間を送るということ、さらに進みまして、火星と金星にかなりたくさんの人間を送りまして、それがまた人間が交代できるような、そういうほんとうの宇宙時代でございますが、そういう事態を考えて、それに至る準備を着々進めておる。その第一歩として、人間を一時間四十八分空中に滞留させて、またおろしたということでございます。従って、今日乗りましたのはたった一人でございますが、今後はそれを複数にする、つまり、二人乗り、あるいは三人乗りの人工衛星にする、それから、今回のは滞空時間が二時間足らずで、つまり、時間のけたでございましたけれども、これを日あるいは週のけたにする、何日間、何遍間あるいは何カ月間滞空するというふうに、時間の延長をする。三番目には、地球から離れる距離が、今回の人工衛星は近地点が百キロメートル、それから遠地点が三百キロメートルくらいでございまして、地球のまことに近傍でございます。三百キロメートルと申しますと、四月一日に上がりました日本のカッパー九型が到達いたしました高度より低いのでございます。カッパー九型が秋田で到達いたしました高度は三百五十キロメートルでございますので、そのカッパー九型が上がりました高さよりも低いところで、一番高いところでも、それより低いところを回りまして、今回の場合は大へん低いところを回ったのでございますが、その地球からの距離をだんだん延ばしまして、バンアレン帯という放射能帯を飛び越して四十万キロメートルくらいまで放す、そういたしますと月に到達するわけでございます。
 もう一つ今後予想されることは、これらの研究と並行いたしまして、核エネルギーを使ったロケットが必ずソ連あるいはアメリカにおいて出てくるだろうということでございます。現用いたしております化学薬品を使うロケットは、多量の人間を惑星に運ぶのには少し金がかかり過ぎる、技術的に可能ではございますが、ロケットが非常に大きくなりますので、経済的な見地から、核エネルギーを使ったロケットに一九六五年――七〇年の間に転換が行なわれるだろうと思われます。この技術転換に成功いたしますと、多量の人間を長期間宇宙空間に滞空させ、しかも、惑星に届けることが経済ベースに乗るということでございます。つまり、今の化学燃料よりもコストが下がるということが最大の魅力でございまして、そういう点で、アメリカの計画では、これは岸田さんがあとで御報告になるかもしれませんが、一九六五年には、最初の核エネルギーを使いました、つまり、俗にいうところの原子力ロケットの飛翔実験が行なわれ、一九七〇年に人間を月に着陸させるという計画でございますので、ソ連はこれより早い時期に核エネルギーを使いましたロケットを完成し、また、一方において、月に人間を運ぶという計画をこれより早く進めるように計画を立てているのじゃないかと想像いたします。これが今日上がりました人間衛星の背景と申し上げてよろしいかと思うのであります。
 ソ連の人間衛星につきましては、また御質問なり何なり、私のお答えできることがありましたら、後ほどお答え申し上げることにいたして、先ほど委員長がおっしゃられました日本の宇宙研究の現状がどうなっているかという点に触れたいと思います。
 今日、日本が主として担当して実施しております研究は、さきに申し上げました三つの柱のうちの第一の柱だけでございます。つまり、宇宙の秘密を探究するという事業だけでございまして、宇宙の利用という面は、いささかおくれぎみであると申してよろしいかと思うのです。もちろん、この面につきましても、郵政省の電波研究所あるいは国際電電公社を中心として、宇宙通信時代に備えてどうあるべきかということがいろいろ議せられてはおると思うのでございますが、実質的には、まだ何も手がついていない、あるいはこれから手をつけようというところであると思うのであります。それから、三番目の、人間を宇宙の外に運ぶという計画は、今のところ全然ございません。今日までございます計画は、名古屋大学の環境医学研究所と東京大学がタイアップいたしまして、ハッカネズミあるいはサルをロケットに入れまして、主として無重力状態における宇宙生物医学の状態を調べようというので、これは本年の六月十七日に予定されております学術会議の中の宇宙生物学・医学特別委員会ですか、そのシンポジウムでこの計画が議せられることになっております。主として今日までの成果は、その第一の宇宙の秘密探究の事業にございまして、その面では、観測用のロケットとして三種類のものを今日日本は持っております。その第一はカッパー六型、二番目が八型、三番目が九型でございます。到達いたしました高度は、カッパー六型が七十キロメートル、それから、カッパー八型が四十キログラムの計器を積みまして二百キロメートル、カッパ九型が十キログラムの計測器を積みまして三百五十キロメートルというのが、いづれも到達した高さでございます。
 この国際的な位置づけを申し上げますと、ヨーロッパ諸国では、英国及びフランスが最も観測用ロケットの研究で進歩した国でございますが、英国が現在までに上げました最高の高度は百六十五キロメートルでございます。フランスもほぼ同等でございますので、ヨーロッパ諸国をすべて抜いた性能を今日持っておるわけでございます。そういうことから、昨年ユーゴスラビアと日本の間に、日本のカッパー・ロケットをユーゴスラビアに渡すという契約がまとまりまして、この四月八日、先方から技術者が三名参りました。目下秋田で技術修得中でございまして、日本のカッパー六型を受け渡すことになっております。続きまして、なお一、二の国からカッパー・ロケットを譲ってほしいという話がございますのは、いずれも、それは性能が米ソを除きましたその他の国を全部抜いているということからでございます。なお、ヨーロッパでは、ベルギー、オランダ、ノルウェー、スエーデン、英国、デンマーク、フランス、イタリア、スペイン、スイスという国が集まりまして、宇宙研究ヨーロッパ連合というものを画策しておりまして、以上申し上げました国がすでに調印済みでございます。まだ西独その他入ってないところもございますが、この宇宙研究ヨーロッパ連合の第一目標が、高度三十キロメートルから九十キロメートルまでの観測用ロケットを作ること、第二次計画が、高度九十キロメートルから二百キロメートルまで上がる観測ロケットを作ることでございます。この第一、第二の目標は、すでに日本が昨年度中に完成いたしておる技術でございます。
 それから、推力で申し上げますと、カッパー・ロケットという名前で使われておりますロケットのエンジンの推力は十トンでございます。それから、もう数日中に秋田で最初の地上実験が始まりますラムダという名前がつきました新しい型の今年度実施いたしますエンジン推力は四十トンでございます。それから昭和三十七年度、つまり、来年度に予算を計上いたしまして実施しようとしておりますエンジンの推力は約百トンの推力でございます。今申し上げました十トン、四十トン、百トンという推力を外国のロケットのエンジンの推力と比べてみますと、カッパー・ロケットが持っております十トンは、アメリカのバンガード・ロケットの十三トンときわめて近い数字でございます。それからラムダ・ロケットの四十トンは、アメリカが月ロケット、あるいはエクスプローラーという人工衛星を上げましたジュピターCの持っております推力三十トンとほぼ同じでございます。それから来年度予定しております推力百トンのロケットは、アメリカのICBMソアの推力七十トンを上回りまして、アトラスの推力百五十トンよりも少し下回っているということであります。つまり、固定燃料で持っておりますエンジンの推力といたしましては、かなり高いものであると申し上げてよろしいかと思います。
 しからば、そういうバンガードあるいはアトラス、ソアに匹敵する推力を持っているエンジンで日本が人工衛星を上げられるかどうかということが、当然皆さんの御質問として出てくるところではないかと思うのでございますが、その話はあと回しにいたしまして、この推力四十トンのラムダ・ロケットの最初の地上実験は、ここ数日のうちに秋田の実験場で行なわれますが、これが完成いたしますと、ことしの秋には、大体一段式のロケットで百キロメートルまでの高さで、しかも、計器搭載量は約一トン、直径は七十四センチというロケットができ上がるのでございまして、人間の一人や二人は楽に入るロケットであります。つまり、人間一人の目方は、装備品を入れまして百五十キログラムでございます。それに対しまして一トン近い積載量を持っております。直径が七十四センチでありますから人間が入りますが、これにサルを入れて上げたといたしますと、加速度が非常に小さいロケットであるために、サルが死なないで飛ぶ可能性がございます。悲しいかな、この計画が本年度青写真で終わらなければなりませんのは、技術はことしの秋までに全部完成いたしますが、予算がございませんので、このロケットを作ることができないのでございます。三十六年度に予算として申請いたしましたけれども、この大型の飛翔計画と、このロケットに使うべき発射台が本年度予算から落とされまして、地上実験だけにとどめよということでございますので、残念でございますが、このロケットは、ことしはすっかり青写真ができ、材料も何もそろって、技術は完成するにかかわらず、来年度予算がきますまで足踏みをせざるを得ない状態にございます。
 続きまして、日本が人工衛星を上げられるかどうかという問題に移りたいと思うのでございますが、今日、日本の観測ロケットが目標といたしておる高さは千五百キロメートルでございます。今日までに上がりました高度は三百五十キロメートルですけれども、ラムダ・ロケットになり、さらに、それを開発いたしまして、先般皆様方の御協力を得まして鹿児島の大隅半島に新しく実験場、宇宙観測所を設置することが決定いたしましたので、ここを発射場と想定いたしまして高さ正正百キロメートルまでは上げたい、千五百キロメートルという根拠は、鹿児島付近におけるバンアレン帯の高さでございます。バンアレン帯という放射能を大へん強く持ちました放射能帯の高さは、緯度が低いところへいくと高くなりますので、秋田あるいは北海道でやりますと千キロメートルでよろしいのでありますが、鹿児島まで南に下がりますと千五百キロメートルの高さになる、そこまでの宇宙の状態を調査したいということでございます。人工衛星打ち上げに必要なロケットは、垂直に打ち上げますと、ちょうど地球の半径にひとしいだけの高さに上がるのでございます。つまり、人工衛星打ち上げに必要なロケットは、垂直に打ち上げれば、ほぼ六千キロメートル上昇しなければいけない、六千キロメートルの上昇力を持ったロケットが必要とされるわけでございますが、今の計画では、日本では千五百キロメートルまで上げればよいということで、その目標高度のほぼ四分の一までの計画しか持っておらないわけでございます。この千五百キロメートルの高さに達するのを一九六二年から六三年と考えております。つまり、昭和三十七年から八年でございます。もっとも、それは一に予算がいただけるかどうかにかかっておりますので、どうぞ皆様方の御協力をお願いしたいのでございます。予算が得られれば、六二年から六三年にかけて千五百キロメートルまで飛ぶ、従って、それから先に日本が人工衛星を上げると、かりに計画を立てたといたしますと、それからさらに二年かかるといたしまして、一九六五年が日本が人工衛星を上げられる一番早い年になるのじゃないかと思うのであります。しかし、問題は、日本が人工衛星を上げる必要があるかどうかということでございまして、どういう目的を持って上げるかということにあると思うのであります。一九六五年現在では、地球のまわりを回っております人工衛星は百個をこえると推定されます。米ソ両国の今日の計画から、最低百個でございます。百個の人工衛星に加えて、プラス一個で百一個目の人工衛星を日本が上げて、それが人類の科学、文化にどれだけ寄与できるか、また、それに投じた費用が、それに対してふさわしいものであるかどうかということが、まず検討さるべきものと思うのでございます。一九六五年までに百個の人工衛星で宇宙の秘密は調査され尽くすと思われるのでございますけれども、なお、調査漏れのものがあろう、しかも、その調査漏れ項目に対して、日本の科学者が考えた技術だけがこの調査漏れのものを解決することができるという仮定が成り立つときに、初めて日本は百一個目の衛星を上げる必要があるのじゃないかと思うのでございます。今日までのところは、悲しいかな、そういう大穴みたいなものはなさそうでございます。しかし、これは六五年までに日本の科学者がいろいろ勉強しました上で、そういう必要があるということであれば、それに必要な技術といたしまして、球形のロケット、まるい形をしたロケットの開発がここ二年ほど進んでおりまして――これも数日中に実験が行なわれますが、これを使いまして、かなり低廉な費用で小型の人工衛星を軌道に入れることは技術的に可能だと考えております。しかし、これは最初に申し上げました通り、あくまで目的いかんによるのでございまして、これだけの国費を投じて、はたしてそれが世界の笑いものにならないように、一九六五年現在におきまして、なおかつ相当な成果を上げ得るという、こういう目的が確立しての話でございます。しかし、人工衛星はそうでございますが、宇宙の秘密を探求するという事業でも、現在の大穴は太陽の研究でございます。つまり、惑星ロケットができまして、先般ソ連が金星ロケットを上げて、成功はしませんでしたけれども、とにかく金星までは上げたのですが、太陽までロケットを上げた国はまだないのでございます。しかし、われわれの生活は、大陽の黒点、あるいは太陽の活動によって非常に大きな影響を受けているということが今日までの宇宙科学の結論でございますので、太陽自体に飛び込む、あるいは太陽のまわりを回る太陽陽の観測ロケット、宇宙ロケットがでできるといたしますと、これは世界の宇宙科学に一つ進歩をもたらすものでございますが、こういう計画はまだ各国ともないのであります。たとえば、日本がこれをするとすれば、これは相当な国費を投じましてもやる価値がある。つまり、人工衛星だけが宇宙ロケットのすべてではございませんので、日本がそのうちの何をねらって、そして、世界人類の科学、文化の向上に一番役に立つようにするにはどういう計画をすべきかということが問題であろうと思うのであります。今日カッパー・ロケットあるいはラムダ・ロケットを研究しているチームの中には十五の研究計画がある、その中にLD計画という計画がございます。これは、日本がここ数年間にあらゆる技術を投入いたしまして、直径幾らのロケットまで製造可能であるかということを研究いたしております。たとえば、直径百メートルというようなロケットまで日本でできるか、あるいは直径十メートルでストップになるか、そういう大きなロケットができましても、発射場までの運搬をどうするか、日本の道路の広さ、あるいはトンネルの穴の直径から申しまして限界があるのではないか、日本のロケットの直径の限界に壁があるかという研究をやっておる。今日までのところは直径三メートルあるいは四メートルくらいまでは可能であるという結論になっておりますが、かりに、これくらいの大きさのロケットができたといたしますと、太陽ロケットも可能であると考えられます。あるいは惑星ロケットも可能であると考えます。
 もう一つ、今後日本が考えなければならない問題は、十年先の見通しでありまして、核エネルギーを使ったロケットの開発であろうと考えております。今日われわれが研究いたしております。また、打ち上げておりますロケットは、すべてが化学燃料によるものでございますが、ここ十年先には、水平線の向こう側には核エネルギーを使ったロケットが続々登場する。今は水平線の向こう側にございますから、だれの目にも触れないのでございますが、これが十年という月日で地球が回りますと、水平線の向こうから続々と現われる。そのときにあわててもおそいのでございます。核エネルギー・ロケットの研究、開発をしようとすれば、今日がまさにその時期であろうと考えております。
 時間を超過いたしましたけれども、これで終わりたいと思います。
#4
○山口委員長 次に、杉本参考人にお願いいたします。杉本参考人。
#5
○杉本参考人 ただいま御紹介をいただきました杉本でございます。私は、航空医学の立場から、今度の人間衛星の問題についてちょっとお話ししたいと思います。
 人間を宇宙に飛ばすという問題は、もう動物実験を重ねて、最近、ソ連は犬を二回完全に回収することに成功しておりますので、私たちは、百パーセント安全な回収率でなければ人間は飛ばせないということでありましたが、ソ連はその自信を十分持ったものと考えられるわけであります。そこで、いずれは時期の問題として人間が飛ばされるものと考えておったのでありますが、それが予想よりも非常に早く実現したということになります。宇宙医学というものが新しく開発されつつあるわけでありますが、これは航空医学が発展して参ったということでございまして、私たちのからだは、大体一万八千メートルくらいの高度に参りますと、そこでもし気密室から何かの事故でほうり出されるとしますと、これは体液が沸騰しますから、瞬間に死んでしまわなければならない。宇宙を飛ぶ場合には、大体一万八千メートル以上の条件を考えれば同じことだと考えて差しつかえないと思うのでありますが、大体真空状態の中を飛んでいく。その中で、今まで航空医学で開発できなかった問題というのは、結局無重力状態というような問題、あるいは飛び出しと着地するときの非常に大きな加速度の問題、それから、生体に非常に危険であろうと予想されます宇宙線、あるいはその他の太陽系から出るエックス線といったような放射能の影響でございます。こういう問題も、今度の飛ばし方を考えてみますと、犬を飛ばしましたのは大体二百八十キロくらいのところ、今度は少し高くて、遠地点は三百何キロの高さになっているようでございますが、これは先ほど糸川教授のお話しになりましたバンアレン・ベルトよりもはるかに低いところで、そう濃厚な放射能がないという予想であります。しかし、今までの実験では、宇宙線などでも、脳の細胞に当たりますと、神経細胞がこわされるというような組織医学的な検討も行なわれるということで、当り場所が悪ければ、そのままあとに残る精神的な障害なんかも起こるだろうと予想されるわけであります。しかし、もちろん、そういうものはヘルメットや何かに防御的なものをつければ防げるわけであります。しかし、そういうようなものが、もし不運に頭の大事なところを貫通するというような状況が起これば、宇宙旅行というものはきわめて冒険であるというふうに考えられるわけであります。
 それから、無重力の問題でありますが、宇宙旅行に出かける人間を予備訓練いたしますのに、いろいろ無重力状態を再現して訓練をしておる。しかし、実際に無重力状態を地球の近くで再現しますのはなかなかむずかしいわけでありますが、飛行機で特殊な――急上昇したりなんかいたしますと、ちょうど地球の重力とつり合うようなところで無重力状態が出るわけであります。そういうのは、一番長くて大体五十秒から六十秒くらいの無重力状態が起こるわけでありますが、そういうことを積み重ねて無重力の影響を観察しておる、あるいは無重力にならすというような訓練をしておるわけであります。
 ところで、今度のガガーリン少佐が、無重力状態は非常に快適であったというようなことを言っておるが、これは私たち航空医学に興味を持っておる者は、今まで犬を飛ばしたり、サルを飛ばしたりしたのでは、実際にいろいろ高いところを飛んだときの体験を語ってくれないわけであります。人間が飛んでくれると、そのときのとうとい体験が、われわれの今後の研究の資料に非常になるわけであります。そういう意味で、ガガーリンがその飛行経験を、学術的にいろいろ分析できるような回答を与えてくれれば、われわれは非常に助かると思うのでありますが、まだ今は新聞記者とのインタビュー程度でありますから、これを科学的に分析するのはまだ無理だと思います。今までアメリカで無重力状態を四十七人くらいの人間に体験させまして、その中で二十二人くらいは気持がよかったという人間があるわけです。ところが、中には、もう非常に苦しくて、船酔いの非常に強いものが起こって、吐いたりするというような人もあるわけです。これは人間の個人差というものがあって、非常に船などに強い人、弱い人があるのと同じに、無重力に対しても、やはりそういう個人差がかなりあるんじゃないかと考えられるわけであります。
 それで、今後宇宙医学というものがだんだんに開発されて参ると思いますが、現に、アメリカでもエロ・メディカル・アソシエーションという学会がございましたのですが、それが昨年からエロ・スペース・メディカル・アソシエーション、航空宇宙医学協会というふうに名前を変え、それからヨーロッパの航空医学会も、やはりアメリカと同じに航空宇宙医学会というふうに改名をしております。そういうようなことで、今後は、そういうような宇宙医学の特殊な問題、人間を宇宙に旅行させる場合の諸条件を考なければならぬ。今度の人間を乗せましたカプセルというのは、大体地上における状態とあまり変わらないような状態を作って宇宙旅行をしておるわけであります。その研究は、実際には、これは工学関係の技術の発展に待たなければならぬわけでありますが、一番問題は、酸素を呼吸して、人間が吐き出します炭酸ガスを処理する、そういう問題と、それから、無重力状態で栄養をどういうふうにしてとるかというような、宇宙旅行の、なるべく量が少なくて、十分人間が活動できるような栄養の問題、そういうものも大きな研究課題になるわけであります。そういう問題といたしまして、たとえば、クロレラなどを利用いたします。クロレラをカプセルの中に培養しておりますと、人間の吐き出しました炭酸ガスを利用してそれが同化されて、糖とかアミノ酸のようなものに合成される。クロレラは食糧にも使えます。それから酸素を放出いたしますから、人間の吸う酸素がクロレラから補給されるというようなことで、クロレラの研究なども、宇宙医学と結びついて非常に興味のある問題になると思います。ただし、非常に時間の長い宇宙旅行になりますと、クロレラだけで発生する酸素で人間がもし忌をするとすると、クロレラを一トンくらい必要とする。そういうような計算になりますと、宇宙船の大きさというものが非常に膨大なものになるのではないかと考えられるわけであります。
 宇宙医学というものは、日本の現状ではちょっと手がつけられない。たとえば、無重力状態を作りますのに、アメリカでは非常に大きな爆撃機を使い、特殊な飛行をやって無重力状態を作っております。日本では、医学者がそういうような飛行機を利用させてもらうことはなかなかできません。たまたま特殊な海幕の哨戒艇などに乗せられて無重力状態が起こるようなこともあるのでありますが、そういうのは、あらかじめ予期して無重力状態の実験を考えてやるわけでなくて、偶然にそういうような無重力状態に遭遇するようなことがあるだけで、計画的にそういうような研究を進めるというのは、まだまだ日本では容易でありません。
 それと、今まで戦争中は陸軍、海軍が大きな航空医学研究施設を持っておられました。それが全部なくなってしまって、それから大学でも、昔は東北大学とか名古屋大学に航空医学研究所というものがありました。それが戦後なくなり、名古屋大学だけが、今度環境医学研究所と申しますか、その一部に航空医学の研究講座ができた。だんだんにそれも施設が拡充されて参ることと思いますが、先ほど糸川教授が言われました、六月にネズミを乗せたロケットを飛ばすという研究も、ただいま準備段階でありまして、ネズミの頭に電極を植えつけたり、あるいは胸の骨のところに電極を植えつけまして、テレメーターで脳波あるいは心電図を地上に発信させる、それを地上で受けるというようなことを今一生懸命準備しておられるわけであります。それによって無重力の影響、脳の方に対する影響その他がある程度観察できるのであろうと思いますが、小さい動物しか今のところはできないだろうと考えられます。こういう方面の研究は、どうしても多額な研究費が要りますので、どこにもそういうような研究室を設けるということはなかなか不可能であります。幸い、科学技術庁に航空技術研究所というものができました。ただ、あの研究所は、工学関係の研究が主体でありますので、医学、心理学の方ではなかなか利用させていただけなかったのでありますが、最近になりましてシミュレーターの設備が近く完成される。これは医学、心理学畑の者にも利用させて下さるようなお話もあります。これは主として飛行機の実験でありますが、将来は、またロケットの方に関しましても何かああいう研究所を利用して、われわれの研究開発に使わせていただけることをわれわれは熱望しておるわけであります。
 はなはだまとまりのない話でございましたが、これで私の話を終わります。
#6
○山口委員長 次に、岸田参考人より御意見を伺いたいと思いますが、岸田参考人には、特に、このたびのソ連の人間衛星船の打ち上げ成功を契機とした国際的な宇宙開発の研究と将来の見通しなどについてお述べを願いたいと思います。では、岸田参考人。
#7
○岸田参考人 最近の宇和開発を、アメリカとソビエトとの間でどういうふうに見ているかということから始めたいと思いますが、大ざっぱに言いますと、ミサイル・ギャップが解消して、そして宇宙開発のギャップというのが非常にはっきりとした形で現われてきたというふうに見ることができると思います。今から三年はかり前、一九五七年の十月四日ですか、初めてソビエトが人工衛星を打ち上げたころには、その人工衛星というのは、軍事的には全く何も目的を持ってないものなんですけれども、それを受け取る方の側では、その軍事的な意味というものを非常に強く感じ取ったわけです。そこでアメリカでは、ソビエトの人工衛星によって想像されるソビエトとアメリカとのミサイル・ギャップというものを急速に埋めなければならないというふうに考えて、そういう方向に向かった努力に力を集中してきたわけであります。そして、私たちの見るところでは、そのミサイル・ギャップというのは、もうすでになくなったというふうに考えます。ミサイル・ギャップというのは、ソビエトのICBMあるいはIRBMを潜水艦にくっつけた体型、そういった長距離の戦略弾頭ミサイルのことをいうのですけれども、そういった面での大きな開きは、今はなくなっているというふうに思うのです。その開きを幾つかの項目であげますと、まず、その数はどうなっているか、それから、その打ち上げの信頼性はどうなっているか、それから、打った弾頭の精度、正確さはどうなっているかということが、もしほとんど同じくらいになっているとすれば、ギャップはなくなるというふうに言えるわけです。そこで、その数ですが、ソビエトの方は数を発表していませんから、アメリカの方だけしかわからないわけですけれども、アメリカが今準備している、今言ったようなICBM、つまり、アトラス、あるいはタイタン、あるいは固体ICBMのミニットマン、あるいは潜水艦にくっつけて運ぶポラリスというものの数を総計しますと、四年あとの一九六五年までにはおよそ千三百発くらいになりますか、総計は、今数を申しますから、そちらでやっていただきたいのですが、アトラス、タイタンが、合計しましておよそ二百五十発、それから固体ICBMのミニットマンが十四個大隊で、一個大隊におよそ五十発ですから、七百発くらいになります。ポラリスは、今度ケネディが国防予算の追加の要求を出しまして、もしこれが承認されれば、総計ポラリス潜水艦が二十九隻ということになるわけですけれども、おそらく、それが承認されることは明らかだと思います。二十九隻のポラリス発射の原子力潜水艦、その一隻が十六発打ちますから、合計しまして四百六十四発です。こういったものの合計した数が一九六五年ころまでにはそろうわけです。このポラリスというのは、特にアメリカで力を入れているものなんですけれども、ポラリスの射程は、今までですと、一番最初の段階では二千キロに到達しなかったものが、A2という改良型のポラリスで、当初の予定であった二千四百キロをわずかにオーバーする射程になりまして、そうして、最近の国防予算の特別教書によりますと、ケネディは、A3のもっと射程を延ばした改良型のポラリス開発を急ぐことを要求しております。こういった数がそろってくるわけです。そこで合計しますと千三百発くらいですか、四年間くらいたちますと、それくらいの数になります。ソビエトの側はわかりませんけれども、この数は、ミサイル・ギャップというものを埋めるには非常に十分過ぎる数であるというふうに考えられるのです。たとえば、オルソップなどは、今のミサイル・ギャップという言葉を依然として使っているのですが、私は、ミサイル・ギャップはなくなっていると思うのです。
 数の点は、こういう点ではっきりわかるのですが、信頼性という点で申しますと、今までのアトラスあるいはタイタンの発射などを見ておりますと、発射の失敗に対して成功するパーセンテージが、最初の六〇%くらいから、最近では八〇%を越す、あるいはしばらくすると、それは九〇何%までになると思いますが、そういうふうに、打ち上げようと予定したものはほとんど全部打ち上げられるというふうに、急速に近づいてきておりますので、この点でも、ソビエトの方はわかりませんけれども、ともかく、一〇〇%に両方とも近づいているということは言えると思います。
 それから、今度は、打ったものが非常に正確に着くかどうかということなのですが、これもソビエトのICBMの精度の発表はないのです。アメリカの方でICBMの精度について発表したのは、去年の一月の年頭教護で、そのことについてアイゼンハワーがどういうふうに言ったかといいますと、去年で、最近十四回の試射でアトラスは平均して三・二キロ以内の地点に到達している、それで、そのときの射程は八千キロメートルであるというふうに言っております。そうしますと、三・二キロ以内に到達するというふうな精度は一万分の四くらいですが、それくらいの誤差で目標地点に到達することができるというふうになります。その前に、実は一九五九年の九月九日、初めてアトラスの実戦用の大隊が太平洋岸にできた。そうして、その日にウエーキ島の近くに目標地点を設けてアトラスの試射をやったのですが、そのときには七千キロ飛びまして、誤差が一マイル以内であったというふうに発表されております。そうしますと、それは精度にしまして一万分の二くらいになります。つまり、非常に正確に当たるということがわかるわけです。この程度の正確さはどういう意味を持つかといいますと、たとえば、相手方の地下発射のICBMの基地があるとします。こちらのICBMの弾頭に一メガトンくらいの大きさの水爆をつけまして、一万分の五くらいの精度ですと、せいぜい三発か四発かでその地下発射の基地がこわれてしまうというくらいの精度なんです。ところで、ICBMの弾頭は、一メガトンでなくて、最大五メガトンくらいのものがつくから、ICBMが一発で相手方のICBMの基地をこわしてしまうことができるという精度になったことがわかるのです。そこで、ソビエトの方の精度がそれくらいだということは、金星ロケットが金星に正確に向かっていく、これは大体十一・何キロかの初速にして一メートルくらいの誤差しかないという精度なんです。つまり、一万分の一くらいです。それから月に命中した場合は、あれが一万分の七とか八とかいう誤差だったと思います。従って、両方とも非常に似たような精度になっているということなんです。先ほど、数のことでミサイル・ギャップがなくなったというふうに言ったのですが、これだけの数がありますと、実は、地球の大きさは一定なものですから、この地球を全部こわしてしまうに必要なロケットならロケット、あるいは水爆なら水爆の数にはある限度があるはずなので、それ以上の数をそろえることは意味がない。そういうことで、数はある限度がある。その限度を幾らと考えるかという点ですけれども、一九五九年の五月に、アメリカでいわゆる水爆戦争公聴会というのが開かれたわけですが、そのときのアメリカの受ける水爆の数の仮定は、アメリカに二百六十三発の水爆が落とされる、それが合計千九百メガトンなんです。そのほか、アメリカ側のヨーロッパの前進基地なんかにも落とされるとして、全世界で四千メガトンの水爆が落とされるとして計算しているのですが、そういった仮定で、アメリカの国民が四〇%以上死傷する、そして家の倒壊が、やはり約半数くらいになるというふうな計算をしております。この二百六十三発という数よりは、先ほど私が述べた一九六五年までにそろう戦略弾道ミサイルの数の方がはるかに多いのです。従って、すでにあと何年かすると、ミサイルの数というのは、両方とも満腹の状態になるということが非常にはっきりしております。きのう新聞にも出ておりましたけれども、ポーリングは水爆、原爆をアメリカが現在保有している数は十二万五千発であるというふうなことを言っております。そしてソビエトはその半分である。この数にしましても、ポーリングはその次に説明して、このアメリカの持っている数は、ソビエトの全土を十六回全滅させる能力を持っている、ソビエトの場合も、もちろんアメリカを全滅させることができるというふうに説明しております。つまり、そういうふうに、兵器という点でいうと、すでに両方とも満腹の状態というのが近づいておりまして、そういう意味でミサイルのギャップはなくなっている。ミサイルのギャップがなくなってきているものですから、たとえば、おととしのアメリカの議会、あるいは去年のアメリカの議会では、このミサイルのギャップという問題は、予算を請求する必要上方々でいわれていながら、しかし、その真剣さは、一九五八年、つまり、ソビエトが人工衛星を初めて打ち上げた直後に行なわれた議会の真剣さと比べてはるかにのんびりしたものであったというふうに伝えられております。
 そこで、こういった状態で、実は宇宙開発のギャップが非常にはっきり出てきたというのが現状なんです。今ちょっと勘定をしてみますと、今までに地球の上に打ち上げられた人工衛星あるいは人工の惑星といったもあの総計は五十四発になるのです。一回の打ち上げで一個というふうに数えて五十四発になるのですが、そのうち四十九個が人工衛星である、それから一個は月に命中したもの、ソビエトのものです。それから四個が太陽のまわりを回る人工惑星であるというわけです。そのうち、太陽のまわりを回る四つの人工惑星は、おのおのアメリカが二つ、ソビエトが二つ、それから、地球のまわりを回る人工衛星では、ソビエトが十二個、アメリカが三十七個、ですから、数の上ではアメリカが勝つということになります。しかし、そういった打ち上げられた人工衛星を見まして、ここではっきりわかることは、ソビエトの人工衛星あるいは人工惑星の方がはるかに大型であるということです。そして、その大型ということは非常に致命的なことであるということを、実は第三者ではなくて、アメリカ自身が考えておるというのが現状です。アメリカは、最初、この大型の人工衛星あるいは大型の人工惑星を打ち上げることを別に必要と考えていなかった。なぜかといいますと、地球の大きさは一定ですから、アメリカからソビエトの国をねらうICBMを作るためには、ある程度の大きさ以上のロケットは必要ない、そこで、ロケットの大きさには、ある限度がある、それ以上のものは必要ない。特に、そのことがはっきりアメリカの人たちにいわれたのは一九五九年、ソビエトが月に命中するロケットを打ち上げたときですが、そのときにアルパ――アルパというのはアメリカの三軍を統合する宇宙開発機関ですが、この局長が、ウエーキ島に非常に正確なICBMを打ち上げた九月九日の翌々日、精度からいってもアメリカにはすでに月にぶつけるくらいの精度のものは存在している、それに地球の上では、そんな月にぶつける必要はないのだから、そんなものを打ち上げて何になるかという発言をしておった。しかし、アメリカのそういった考え方は、やはり宇宙開発のギャップは見過ごすことのできないものであるという考え方に徐々に移ってきておるように私は思います。そのことか非常にはっきり現われたのは、ことしの一月十二日にアメリカで宇宙に関する委員会の報告というのが出ておりますが、その委員長になったのはゼロ・ウイスナーで、このときは、この委員長であったにすぎなかったのですが、この報告が出たしばらくあとに、ケネディ大統領の特別科学顧問になっております。従って、ケネディ大統領の今後の科学技術の開発、特に宇宙に関する基調はこのウイスナー報告に盛られたところによることになると思いますが、このウイスナー報告では、宇宙に関して幾つかの重大な点を掲げております。まず第一は、国の威信の問題が宇宙開発には存在しておるというふうに指摘しております。少し長くなりますが、御紹介しますと、宇宙開発が世界の人々の心をとらえている、この数年間、アメリカの威信はある程度宇宙開発の面で示されることになるだろう、この宇宙開発に示されるリーダー・シップによってアメリカの威信というものが決定されることになる、この意味合いで人間衛星というものを考えなければならないということを言っております。第二番目には、やはり、宇宙圏発というものは国の安全保障と関連がある。第三番には、宇宙の科学開発ということは非常に重要なことであって、その点を決して忘れてはならない。第四番に、宇宙開発の実用面というものが存在しておる、たとえば、通信衛星あるいは航海衛星といったようなもの、あるいは測地衛星といったようなものであるということです。そして第五番目に、宇宙開発に力を入れることによって世界の科学の協力体制という可能性がより刺激されることになるというふうに言っております。とにかく、五つのうち、第一番に国の威信ということを掲げて、そして、その面でアメリカは非常に大きい努力をしなければならないのだということを言っております。こういったことが、実はケネディの今後の科学技術開発の一つの大きなモメントになるかと私は思うのです。ケネディが、先ほど言った国防予算の特別教書を出したのとほとんど同じ日に、原子力委員会と航空宇宙局との新しい債務負担行為の要求、つまり、新規の追加予算の請求をしているのですが、その原子力委員会の方の新規の請求の中には、先ほど糸川先生も言われた原子力ロケットの研究の推進というのが入っております。それから航空宇宙局の方の請求の中には、サタンC2の開発の促進というようなことが入っております。特に、サタンC2の開発促進のためには、一億トルの追加予算が請求されております。一億ドルというのは、NASA、航空宇宙局の予算としては決して少なくない額でして、サタンC2の開発を非常に急ぐということはこれでもわかるわけですが、そのサタンC2というのは、地球のまわりを回る人工衛星にする場合には、二十トンの大きさの人工衛星が作れるというほどのロケットです。ソビエトがことしの二月四日に打ち上げたイスポリン、巨人衛星というのは、重さが六・五トンの人工衛星なんですが、そのサタンC2が実現しますと、地球のまわりを二十トンくらいの人工衛星を飛ばすことができる。それから、これを月に送りますと、月にソフト・ランディングする、月に着陸するロケットで、一トンないし二トンの計測装置を中に入れたものを着陸させることができるというくらいの能力を持ったものです。そういったものを、最初は一九六七年ごろに初めて打ち上げられるという予定であったこのサタンC2を、一億ドルの追加予算請求によって、一年以上繰り上げて、一九六五年には何とか第一回の試射が行なわれるようにしたいというような目標が今打ち出されておるわけです。
 それから、もう一つ人間衛星のことでは、このウイスナー報告も同じように述べておるのですけれども、アメリカで現在進行されているマーキュリー衛星の計画というのは、基本的に計画に欠点があるということを指摘しております。それは、一つの非常にロング・レンジの、長期にわたる計画の中でなければならない、人間を地球上空に打ち上げるということ、それが最終の目的ではなくて、ただマーキュリーの場合は、地球上空を三回回すということが一つの目標なんですけれども、それはある一段目の目標にしかすぎなくて、最終的には、月に着陸されるとか、あるいは火星、金星にまで送るということが目標になるわけですから、まず第一に必要なことは、そういった長期の計画に耐えるロケットを作ることであるということを言っております。そこで、マーキュリー計画のように、そこだけが最終の目的になっておるような計画ではなくて、もっと全体的な計画を立てる必要がある、そのために大型のロケットということから基礎的に積み上げていかなくてはならぬということが、ウイスナー報告で触れられておることですが、そういった方針に従って、サタンC2というものの追加予算請求がケネディによって行なわれた。従って、ケネディがこれから打ち出そうとしておる宇宙の開発というのは、今までアイゼンハワー時代に行なわれていた宇宙開発というものとは相当違ったものになるのじゃないか。今のところ、宇宙開発のギャップというものは確かに大きいと思います。大きいというのは、今のままだと、ますます開く方向にあると思いますけれども、ここでケネディが特別予算教書を出した、あるいはその背景にウイスナー報告のようなものがあったということで、アメリカの今後の長期にわたる宇宙開発の計画というものが比較的――比較的じゃなくて、正しい軌道に乗って、だんだんと宇宙開発のギャップというものは、もし順調に進めば縮まる可能性があるというふうに考えます。しかし、ここで、実は人間衛星打ち上げのときに、アメリカのケネディもそう言っていたようですけれども、国連の大使、今スチブンソンが出ておりますが、そのスチブンソンの言った言葉は、よく考えなければならない。そのスチブンソンの言葉は、おもしろい言い方をしておるのですが、ソ連は人間衛星を国内から打ち上げることに成功した、そこで、ソ連が宇宙に関する話し合いを、この国連という打ち上げ場所から発射させることを望みたいということをスチブンソンが言っております。ケネディも同じように、両方の国の協力と国際協力が必要だということを言っている。それから、先ほど言いましたように、ウイスナー報告も宇宙開発の五つの観点というものの最後に、各国の協力態勢ということを言っておるのですけれども、ここで、確かにそういったチャンスが今出てきておるというふうに思います。
 大気圏外平和利用委員会というものが一九五九年の末にできたことは御存じの通りです。その前にもできていたのですけれども、ソビエトが入っていなくて、実質的には動かなかった。それが実質的にソビエトが入ってきて動くようになった。大気圏外平和利用委員会というものが国連の中にできたのは一九五九年の終わりなんですけれども、それにはもちろん日本も入っております。東側が七つ、中立国が五つ、西側の国が十二、つまり、西側の十二に対して、中立国と東側を合わせて十二というふうに、バランスのとれる格好になったので、ソビエトはそれを承認したわけですけれども、そういった格好の大気圏外平和利用委員会ができたのはおととしの暮れです。おととしの暮れにできたのですが、この委員会ができてからあとは開店休業、去年の三月に、アメリカの方が話し合いをしようじゃないかと言ったのに対して、小委員会の構成問題でどうもつまずいたらしくて、その辺の詳報はわからないのですけれども、開店休業の状態です。しかし、今この人間衛星が打ち上げられたという段階で、アメリカからもそういう呼びかけもあり、それからソビエトの方でもアピールを出しておりまして、あのアピールにはそういった内容の呼びかけがあります。そうしますと、この大気圏外平和利用委員会というものが動く一つの大きいチャンスを今得たのだと思います。その中にはもちろん日本も入っておるわけですが、日本の役割というものは、一つは、日本での科学技術の開発、こういった世界の情勢を見ながら日本での宇宙開発ということを考えていくということが一つ確かにあるのですが、世界の宇宙開発の協力態勢というものに対して、日本が日本の役割を果たすということが確かに存在しておると思います。そして、そのチャンスが今来ておるように思われます。従って、そういった点での役割を果たすことを私は大いに考えていただきたいのですが、それでは、この大気圏外平和利用委員会というものを動かしていくにはどうすればいいか、最初から政治的な話し合いで話を臨めていこうというのは非常にむずかしいと思います。やはり、先ほど言った宇宙開発というものは、どうしてもその五つの観点の中に言われているように、国家の安全保障とか、電解的な意味というものが全くないわけにはいかないものですから、最初から政治的な話し合いをするということは無恥かと思いますが、さしあたって、たとえば、そのいい実例としては、国連に科学委員会というものがございますが、国連の科学委員会では、放射能の影響に対して科学者たちが非常にたくさんのデータを持ち寄って、そのデータに基づいて話し合いを進めております。そのデータに基づいた話し合いで、一九五八年に核実験の停止が自発的に行なわれなければならないような報告を出したということがあります。それからまた、核実験停止会議というものが今行なわれておりますが、その停止会議が行なわれる前には、核実験停止の専門家会議という科学者の会議が行なわれまして、最初に、核実験の停止に必要な管理の問題とか、探知の問題とかいうものは科学的に可能なんだという結論を出した上で、今の話し合いが進んでいるわけです。従って、大気圏外平和利用という問題に関しても、政治的な話し合いの前に科学者たちの話し合い――大気圏外を平和利用するためにはどういうふうな考え方でいけばいいかということを科学者たちが話し合って、ある専門家の報告を出す、あるいは専門家の態度を打ち出すということはできると思います。そういったところから話し合いをもし進めていくならば、人間衛星の打ち上げというものは非常に大きな機会であるかと思うので、そういったイニシアチブをとる役割を日本の科学者あるいは日本の議会がやられることは、この段階で非常に大きい意義を持つものだと思います。
 まとまりのない話でしたが、これで終わりたいと思います。
#8
○山口委員長 以上で参考人各位からの御意見の開陳は一応終わりました。
    ―――――――――――――
#9
○山口委員長 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
#10
○岡委員 私は、全くのしろうとですから、お教えを願いたいと思ってお尋ねをいたします。
 糸川先生は、ロケットの方ではこの何年かの間大へん御努力を願って、そのつど実験が進んでいることについては、私どももいたく敬意を表しておるのでございますが、今度の人間衛星の打ち上げについて、私ども、ごく初歩的な物理の知識から考えまして、また、われわれ医者の一人から考えまして、この打ち上げは、静止の状態からおそらく百秒か二百秒の間に八千メートル以上の秒速に上がる、これをどういうふうに技術的に緩和し得たかという問題点が、まだ十分向こうの方の発表もございませんので、皆さんの御研究の立場から専門的に、こうやったのではないかというふうなお考えがあったらお示しを願いたいと思います。
#11
○糸川参考人 大体人間あるいは生物を入れますロケットの最大の加速度は、重量の加速を基準といたしまして五g以内に抑えております。結局エンジンの燃焼する時間を長くすれば、幾らでも少ない加速度で高い速度が出せる、そういうことで加速度の問題は解決するわけでございます。
#12
○岡委員 最近、先生の御研究のロケットも、燃焼を長く、そして加速度も、従ってできるだけgを少なくしようというような御研究を進められておるというようなことも承っておりまするが、その点についてはどの程度まで先生の御研究は進んでおりますか。
#13
○糸川参考人 生物は、実はここに杉本先生もいらっしゃるのですが、日本が初めてカッパー六型というロケットを作って、かれこれ四分か五分ぐらい無重力の状態を作れるという入れものを作りましたのは一九五八年の六月でございまして、ほぼ三年前のことに属しますが、それ以降、日本の医学者のどなたからも、この五分間の無重力状態を有効に使って宇宙生物学、宇宙医学の実験をしたいという申し出がございません。日本からはございませんでしたが、チェコスロバキアその他の医学者からは、先ほど杉本先生もおっしゃったように、航空機を使う無重力状態というのは二十秒ぐらいの無重力状態しかできないが、日本のカッパー・ロケットを使うと四百秒の無重力状態ができるから、これを使って研究をしたいという申し出がございました。日本からは、不幸にしてそういう御希望がございませんでした。従って、そういう宇宙生物学、宇宙医学のために特別なロケットを作るという計画が進んでおらなかったわけでございます。昨年の秋ごろからそのことを非常に残念に思いまして、いろいろ医学界の各位に呼びかけて、日本もそろそろ宇宙生物学、宇宙医学を始めたらどうか、それで名古屋大学の環境医学研究所の本林研究室がそれにこたえて、初めてハツカネズミまたはサルを入れたいということでございます。それに対して、初めてこちらは受けて立ったわけでありまして、それに対する今日の計画は、先ほど申しましたラムダ型のロケット、これは直径が七十四センチ、これくらいでございますが、それがことしじゅうに地上実験、運転を終了いたしまして、ことしの年度末には打ち上げられる、――先ほどの予算がつけばでございますが、これは高さは約百キロメートル上がりまして、gは六g以下でございます。十分人間が耐えられる加速度でございまして、それ以上の加速度が出なくて、百キロメートルで完全な無重力状態ができます時間は約五分間ぐらいでございます。七十四センチございますし、搭載量も最大一トンでございますが、少なくとも数百キログラムのものは乗せられます。人間を入れることは優にできるものであります。ただ、回収することの困難さから、最初殺すかもしれないので、動物で実験をするということで、加速度の問題は、そのカッパー・ロケットでも、ネズミはハツカネズミならば大丈夫でありますが、サル、人間、犬なんかを乗せましても、ラムダ・ロケットならば十分乗せられる加速度になっております。
#14
○岡委員 先ほど杉本先生の申された名古屋大学の本林教授ですが、この生物をカプセルに入れる、そして心電図もとれる、脳波の測定もやれる、そうしますと、カプセルの直往ももちろん大事ですが、これは測定器具を入れなければならないということになるわけですね。ソビエトは五トン前後のものを上げた、ソビエトでもアメリカでも、最近は通信衛星ですか、サモスあたりは、やがて二トン近いものを上げるということです。それでも計測器具を入れるのは非常に窮屈だ、特殊な小さなものを作らなければならぬ状態のように聞いておるのですが、大体高空あるいは宇宙生物学という立場から、今、糸川教授のおっしゃったカプセルで、そういう計測器具等を実験道具とともに積み込んでどれくらいの大体重さになるものですか、問題は、やはりそれと推力との関係が問題だと思いますので、御所見があれば、この際、杉本教授に伺いたいと思います。
#15
○杉本参考人 今お話の動物からの発信でございますが、テレメーターは、今非常に小型のものができまして、今主として運動生理の方の研究に使っておるわけでありますが、走らせながら心電図を送らせる、今できておるのはピースの箱の二倍ぐらいの発信機で済みます。これはアメリカなどでは、サイモンズ少佐は、この前そういうテレメーターの装置を持って参りまして、これはハッカネズミの背中にゆわえつけるくらいの非常に小さな発信装置であります。要するに、地上でキャッチする受信装置がかなり大げさなものになると思うのでありますけれども、発信の方は大したことはなく、非常に小さなものでできるようになっております。
#16
○岡委員 特に人間実験の場合、人間を乗っける場合には脳波の測定が私は必要だと思います。実は脳波のテーマというのは、私の現在大学での実験テーマですが、なかなか小型の脳波で的確なデータが得られないのではないかと考えますが……。
#17
○杉本参考人 ネズミの脳波は、まだ人間の脳波みたいに詳しい周波のあれが、いろいろな波などがきらめられておりませんので、この間、本林教授のところに参りましたときには、盛んに安静時のネズミの脳波をとっておりました。そういうので、異常環境になったときに、脳波がどういうふうに変わるか、無重力状態のときの変化がある程度わかるのではないかと思います。ネズミの脳波は、割合に簡単なリズムの脳波が出ております。それは、今そばでブザーを鳴らしたり、急に箱を振動させたりして、脳波がどういうふうに変わるかという実験をやっております。
#18
○糸川参考人 先ほどの御質問ですが、今日、日本にございます受信装置を使いまして、ラムダ・ロケット用に考えております原理もほとんどできておりますが、テレメーターは十チャンネルで、その一チャンネルがまた五つくらいに分かれますから、全体で五十チャンネルくらいになります。目方は三キログラムくらい。それから脳波の測定は、皮膚の外側からはかりますと、十マイクロ・ボルトとか、五十マイクロ・ボルトございますが、中に針を入れますと百から三百マイクロ・ボルトくらいになります。それよりももっとむずかしい観測をわれわれ電離層の観測で行なっております。その電離層のイオンの数をはかるということは、ネズミの脳波をはかるよりもっとむずかしい観測でありますが、それが今日全部テレメーターで受信されておりますので、そうむずかしいこととは思っておりません。
#19
○岡委員 これはしろうとのお尋ねかもしれませんが、軌道に乗せて回転させるということになると、やはり誘導というふうなことが必要になってくるのじゃないでしょうか、ただ高さだけを打ち上げるということでなくて……。そういう装置も積み込まなければならぬわけですね。
#20
○糸川参考人 ただいまの岡先生の御質問は、誘導装置の研究もやっているかどうかという御質問と解釈してよろしゅうございますか――先ほど申しました十五の研究計画班の一つに入ってございまして、かなり活発に研究が行なわれております。ラムダ・ロケットには多分この装置がつくと思っております。
#21
○岡委員 先般ガガーリン少佐が地上に帰られた直後だと思いますが、ソ連の科学アカデミーの医学者が申しておる中に、われわれは幾つかの困難を乗り越えることができた、また、解決することができた、しかし、ただ一つ大きな困難がある、それは、無重力状態における人間の大脳の反応がどうなるかということについては、まだ未知の世界だ、しかし、ガガーリンが生還をして、そしてカプセルの中から、あるいは空が暗かったといい、あるいは地球が青いといい、あるいは正確な電話連絡をしてくれたということで、一応ここに新しい成果が得られた、こういうようなことを言っております。幾つかの新聞にそれが出ておるわけです。そうすると、この無重力状態における人間の生理的な反応というものについては、ソビエトはデータを持っていなかった、非常に大胆な人体実験をやってのけたのだ。もちろん、犬や何かである程度までは類推をしておったかもしれないが、しかし、これは脳波測定をやれば犬やネズミと人間の脳の作用は全然違う。そこで、データがないから一つの大胆な人体実験をやったのではないか、こういうふうなことを、科学アカデミーの医学者の報告からは類推できるわけです。杉本先生、そういう点を、もう少し事を分けて、私どもの納得のいくような御説明を願えませんか。
#22
○杉本参考人 人間が起きておるということは、最近アメリカのマグーンという人の実験によると、間脳にあります網葉体が絶えず筋肉から受けるインパルス、それで、覚醒している。われわれ人間が寝ますときには、なるべく筋肉の緊張を解いた寝床で、だらんとした状態になったときに非常に眠りやすい状態が起こるわけです。それは結局われわれが絶えず一gの重力を受けている、それが筋肉から網葉体の方への刺激になる。そうすると、無重力の状態に置かれれば、そういう筋肉からのインパルスがこないから、あるいはその無重力状態では意識活動がなくなるような、半分眠ったような状態が起こりやしないかという予想があったわけでありますが、実際には、ガガーリンはいろんなものを見たり、あるいは地上との通信もやっておるわけであります。眠っていなかったと考えられます。そういう点で、これも私たちには非常にとうとい収獲だったわけでありますが、将来宇宙船がもっと発達すれば、スピンをかけまして人工的に重力を作ることもできるはずであります。そういうようなことで、今度の無重力状態は八十分ぐらい続いたと思いますが、もっと長くなったときにいろいろ影響が出てくるということが考えられるわけであります。しかし、人間の能力というものは、いろんな環境にじき適応できるような性能があるわけでありますから、無重力状態で字を書くこともできたという話ですが、これも私たち予想しますと、ちょうど水が一ぱい入っていると予想して、からのバケツを持ち上げたときには、非常に妙な心理状態になって、手の筋肉などを痛めるようなこともあるわけです。そういうようなことが無重力状態では絶えず起こるわけです。字を書くのでも、われわれは筋肉の感覚とか関節の感覚を利用して字を書いているわけですが、無重力状態で字を書かせますと、どうしても横に流れる字になってしまう。そういうことも、なれますと、そういう状態である程度修正できる適応性は人間は持っていると考えます。お答えにならなかったかもしれませんが……。
#23
○岡委員 やはりこれも科学アカデミーの発表を見ると、無重力状態におけるからだの均衡を保つ、あるいは備品の定位置を保つという意味で、非常に磁力を活用したのだということが報告されておりますが、それはさておいて、糸川先生にお尋ねしたいことは、回収したということは、何といっても大きな技術的な成果だと思うのです。これも新聞紙上にはあまり精細に書いてないのですが、具体的に、また、専門の技術的なお立場から、どういう方法で回収したということでございますね、どういうケースがあるのでしょうか。
#24
○糸川参考人 回収の仕方でございますか、全く想像の域を出ないのですが、アメリカなり日本なりがやっている方法と同じ方法をとるとすれば、まず、人工衛星の姿勢を、地平線に対して正しく並行になるようにいたしまして、それから適当な時期に逆噴進ロケットを働かせて速度を落とします。そうしますと、重力の方が遠心力に勝って、軌道はだんだんと螺旋型に地球に近づいて参ります。そのときに、空気層の表面に対してなるべくなめらかな角度で入れまして、それから、そのときに出る熱はいろいろな熱吸収材で吸収してしまいまして、人間にいかないようにする、漸次空気の抵抗のために速度が落ちて、それから十分速度が落ち、また、空気も濃密になりましたときに人間の容器だけを射出いたしまして、パラシュートを開いて落とすというのが一番普通のやり方なのでございます。もっとも、そのほかに、最後にグライダーみたいな羽根を使ったもので空気のあるところをおりてくるという方法もございます。最後まで逆噴進ロケットで地上におりることも可能でございますが、一番ありそうなのは、一番最初に申し上げた方法でございます。
#25
○岡委員 先ほど来、糸川先生や杉本先生の御意見を承っておりまして、さて、それでは日本としてどういうふうにやるべきかということが、いろいろ御批判が出ておるわけです。予算が足りないというようなお話もございました。あるいは生物学者、医学者の方では、せっかくの糸川さんのロケット・カプセルを利用していないというようなこと、いろいろあるわけでございますけれども、宇宙人第一号がわれわれの前に現われた、だから、もう今では国家主権、国と国が角突き合わす時代じゃないのだというような考え方も一般的にあるようです。しかし、問題は、先ほど岸田さんが御指摘になったように、ミサイル・ギャップは埋まったけれども、スペース・ギャップはあるのだ、なぜそのスペース・ギャップを作り上げたか、ソ連が優位性を現実にわれわれの目の前に派したかということになりますと、宇宙人ができたのだから、国と国とのけんかなんということは、もうそろそろやめにしようじゃないかという考え方と同時に、新しいスペース・ギャップを作り出したという国の体制というものが問題になってくると思うのですね。国の組織というものですね。そういう点で、現在の、せっかく昨年科学技術庁には事由審議会というものができたわけです。しかし、この機構が一体現実にどう動いておるのか、少なくとも、あるいはロケットの分野で、あるいは医学の分野で皆さんがそれぞれ御研究いただいておる。しかし、これが先ほどお話のように、糸川さんのロケットとカプセルは、そのまま無為に沖天高く打ち上げられた。一方では、航空試験所にいきましても、これはまた、宇宙生物学の研究というものが足りない。現にあるのだが、それが利用される道がないというようなこともあるわけですね。そういう点、これはやはりロケットの研究の立場から、あるいは医学のお立場から、あるいはまた、岸田さんは、総合的に政策的な立場から、これは宇宙開発ということを抜きにしても、日本の科学技術行政のあり方としての大きな一つの問題点を提供しておるのじゃないか。お二方のお話をお聞きしましてもそう思うわけですが、率直なところを一つお聞かせ願えればと思います。
#26
○糸川参考人 われわれ三人に対する御質問だと思いますので、最初に私の番をお答えいたします。
 宇宙医学、生物学は私の専門ではございませんが、しかし、ロケット工学という立場から考えまして、われわれ地球上の人数がほかの惑星に行く日が来るということは、もう疑うべからざることであると考えております。そのときには、もうすでに世界政府というものができていて、国家の単位では宇宙ロケットが地球を進発しないという仮定は少し早過ぎるのではないか。つまり、人間社会の国家というものがここ二十年や十五年、あるいは三十年の間になくなるとは私は思えないのでありまして、そのときになっても、まだ国家というものがある、従って、火星や金星に行きますロケットは、国という単位に基づいて地球を出発する可能性が多分にございます。また、それよりももっと国際的な協力態勢ができてきたといたしまして、かりに、日本の学者がだれも火星や金星に乗っていかないにしても、基礎医学という見地から、宇宙における新しい医学を研究する必要があるのではないか、こう考えております。日本の国力からいって、自力だけで火星や金星に人間を運ぶロケットを作らないにしても、広く地球人類の医学を進歩させるというためから、宇宙における人間とその生物を研究する必要があるのじゃないか、こういうふうに考えております。今までそういうアプローチが私どものところにございませんでした一半の責任は、われわれにあるのかもしれないのでございまして、カッパー・ロケットはすでに座席が満員であって、ハッカネズミやなんかが座席申し込みをしましても頭から断わられるのじゃないかという印象を新聞やラジオ、テレビその他によって伝えてしまったのかもしれませんが、およそ国税を払っておられる日本人ならば、どなたでもカッパー・ロケットを利用される権利がおありになるわけであります。これは国のロケットでありまして、一個人のロケットではございませんので、こういう研究をやりたいという情熱さえあれば、喜んで座席はいつでもあける用意がある。あるいはそういうことを今まで、ことに医学者の方にPRをしなかったのがけしからぬというようなおしかりも受けております。今後は、そういう意味で、広く――また、医学だけやりましても、ほかの方が落ちてくるかもしれませんが、どなたでもそういう研究をやろうという場合には、日本のロケットはどなたにでも座席を開いておりますので、どしどし御利用いただきたいと思います。
#27
○岸田参考人 先ほども少しそのことについて触れたのですが、日本の宇宙開発ということを考える場合に、日本が孤立してそれを考えることは非常に回りくどい、あるいはむだをすることがあり得るというふうに考えます。ソビエトは、ソビエトで宇宙開発ができるのですから、自前でやろうとするでありましょうし、アメリカも、またアメリカで宇宙開発ができるのですから、自前でやろうとするでしょうけれども、しかし、とにかく、呼びかけだけは一応今度お互いに協力の呼びかけをやっている。ところで、日本の場合は、自前で今のところソビエトやアメリカに並んでできるということはあり得ないので、その場合、日本はよその国に呼びかけることはできる。そして呼びかけるためには、全く何もない国が呼びかけるということでは、その迫力がないわけですけれども、日本の場合は、たとえば、よその国の人工衛星に非常にすぐれた計器を積むという、その計器を作る能力は確かに日本には存在していると思います。そのほかいろいろの点で、日本ではある協力の態勢ができさえすれば、日本がその中のある部分を受け持ち得るような実力を持っておると思いますので、そういった意味で、日本は世界の協力態勢の中で自分が何を果たし得るかというふうなことを主張し、あるいは外国に要求することができる。そうして、また、そういう話し合いをする場は、とにかく今開店休業なんですけれども、国連の中に大気圏外平和利用委員会、そして日本もその中に入っているわけですが、そういった組織ができているのですから、そういったところに絶えず日本から呼びかけをすることが必要だと思います。そして、そういう呼びかけをして、各国との話し合いの中で、日本は何が得意だから何を受け持つか、あるいは何をしてもらいたいというふうなことを打ち出していくことが、今後の宇宙開発には非常に重要になってくると思います。そうして、そのチャンスは今来ているのだと先ほど申し上げたのですけれども、もう一度繰り返して申しますと、今はそういったことを相当強く考えなくちゃいけないと思います。
#28
○岡委員 これは久田君もおられるから、政府の方にもお尋ねしたいのだが、私がお聞きしていることは、このミサイル・ギャップは、津田さんの御説明のように、一応米ソの間にはなくなった。ところが、新しいスペース・ギャップが現に出てきておる。
  〔委員長退席、齋藤(憲)委員長代理着席〕
宇宙利用の関係ではアメリカの方が若干進んでいるのだというふうなお話もあるようですが、しかし、これは岸田さんも御指摘になったように、ことしのケネディの航空宇宙予算教書なんか見ますと、例のサターンC2にほとんど十三億二千五百万ドルの予算の七〇%をかけており、その中でも推力、いわゆるC2型に非常な予算的な裏づけをやるというようなことで、先ほど御指摘のように、何年後には地球を何回回るとか、何年後には土星や金星に行くのだというふうに、非常な張り切り方です。そういうように、事実上おくれを取り返そうとする努力があり、おくれておるということをアメリカのウェップ氏でしたかがはっきり公式に表明している。問題は、そういうふうに、ソ連邦が現在においては少なくともスペース・ギャップをアメリカにつけた。これは、宇宙人が現われたのだから、国と国との主権の対立などというけちなことは言うなというふうな俗論的な考え方もありますけれども、なぜソ連という国家がアメリカに優位を来たしたかということをわれわれは考えなければならぬと思います。何もそのために僕はイデオロギーを持ち出そうとするのじゃないのですが、しかし、それにもかかわらず、ソ連の国家体制というもの、あるいは科学技術政策というものが、その優位を結果として作ったんじゃないか。それと日本の現実を引き比べた場合、科学者としては日本の政策にどういう御要望が具体的にあるのか、また、日本のこの体制でいいのか、こういう点を率直に一つお聞かせ願いたい。国際問題としてじゃなく、国内における新しい今後の科学技術政策のあり方というものを率直にお聞かせ願いたい、こう思ってお尋ねしておるのです。糸川先生は、おれのところへ言ってくれば、ハツカネズミはあと二匹でも三匹でも入れてやろうとおっしゃるでしょうけれども、宇宙開発審議会というものができておる。そうして、宇宙開発に関する政策の推進については総合調整をやらなければならぬということになっておるはずです。これが開店休業しておるという状態が暴露されておる。そういう点で、政府はもっともっと考えなければならない点もあるし、また、科学者の方も、民主的な開発をはかる立場からは、どんどんせっかくできておる審議会を活用するというふうなことも考えなければならぬ。そういう点について、率直に御意見を承りたい、こうさつきお尋ねしたわけなんです。
#29
○岸田参考人 僕は日本の科学技術の外野席から見ているわけですから、今のお尋ねに答えることができるかどうかわかりませんけれども、まず第一は、日本の国は孤立していないのだから、日本の国だけで全部自前でやるというふうなことを考えないで、もっとよその国と協力するというような方向に絶えず考えていかなければならないと思う。それから、たとえば、去年の十月四日に、十年後を目標とした科学技術振興の基本方策というふうな報告が出たわけですけれども、ああいった報告を作る途中の過程というのが非常に大事だと思います。あれがどういうふうにして作られたか知りませんけれども、聞くところによると、私たちが考えているような取り上げ方というものはされておらないようで、もっとみんなの総意と衆知を集めるような努力と態勢を絶えず作ることを考えなければならない、国内的には、そういうふうに思います。
 それから、もう一つは、今の科学技術というのは、どうしても軍事的なものと関連が全くないということはできないですから、その場合に、一体自分がやっていることはどのような役割を占めるのかということを絶えず反省しながらいくように科学者が考えていくことが必要だ。科学者としては、そういう姿勢が絶えず要求されると思います。
 全体をごく大ざっぱに、一まとめに言うならば、科学技術の剛発というのは非常に総合的に、あるいは世界の協力の中で、いわゆるその研究のもたらす意味を常に忘れないように、常に総合的に科学技術の開発を考えていかなければならないというふうに思います。お答えになるかどうかわかりませんが……。
#30
○岡委員 具体的に申しますと、宇宙開発に関する予算にいたしましても、おそらく、糸川さんたちの研究予算は文部省から出ておると思うのです。それから郵政省ですか、電波研究所では通信衛星の研究ということで、これは二億ばかりの予算が出てパラボラ・アンテナをやっておられる。そうかと思うと、防衛庁の科学技術研究本部では、もう三十一年からこの五年の間に、本年度の予算を含めて、債務負担行為を抜きにしても約三十三億五千万円という金が出ておる。総体としての宇宙の平和利用の予算は、文部省の予算で二億五千万円しかありません。こういうふうに、予算の重点的な配分において、その予算が依然として各省がそれぞれ握っておるということ、そうして、一方では、総合調整をやろうとして下宿開発審議会ができたけれども、どうも現在は開店休業だというような、こういう日本の国内体制を一体どうしたらいいかということです。何も人間衛星を日本が飛ばさなければならないということを私どもは急ぐわけでもありませんし、主張するわけでもありませんが、しかし、今後の新しい科学技術の一つの分野がそこに現実に開かれつつあるときに、日本のこの体制ではだめではないか、どうすればいいのかということを、やはりジャーナリストの立場として、あるいはまた、科学者としての立場から、もっと率直な御意見があっていいのではないか。政府の方でも、一つ次官あたりから、大臣にかわってこの機会に御所見を聞かしていただきたいと思います。
#31
○岸田参考人 非常にむずかしい御質問なんですが、科学者がおのおの十分に自分の力を出せるような体制を作ることを絶えず考えていかなければならぬということがその基本だと思います。そういった点では、たとえば、人材の養成というふうな問題でも、非常にたくさんの問題があると思います。最近の問題でいいますと、科学技術庁の長官は、たくさん人材をという点でいうと、十年間に十七万人くらいの科学著、技術者が足りなくなる、だから、それを早く足りるような体制を作らなければならない、そのためには、たとえば、私立大学の設置基準をもう少しゆるめて大量生産方式を――大量生産とは言っておりませんけれども、そういう方式をとれということです。しかし、そういうことではなくて、もっともとへ返って、一体必要なのはどういう人間が必要なのか、そういう人間を作るためにはどういう体制が必要なのかということを考えていきませんと、ただ大量生産ということで考えていったら、卒業して確かに数はそろうけれども、その数だけでは何もできないということがここにできてくる。この数は、先ほど言った十年後を目標とした科学技術振興の基本方策の中に載っておる数字なんですが、大学の教官の数は、戦前の総合大学では、たしか学生六人に対して一人であったのが、今はその二倍以上の学生に対して一人の教官しかないというふうなことがあります。そうして今言った数は、戦前の専門学校の学生の数と教官の数との比と大体似たような割合なんです。つまり、早く言うと、戦前の専門学校くらいの教育のシステムになっておるということが、この数だけからは言えるのですが、そういった状態にあるにもかかわらず、もう少し設置の基準をゆるめて、早く人間をたくさん出すというようなことを考えるということでは実はだめなんで、もっと質を上げるといいますか、おのおのの個人の能力を伸ばすようなことを政府としては考えていかなければならないのではないか。一般的にいいまして、科学技術庁などのやり方は、大ざっぱに言ってしまうといけないのですが、どうも、ただ量を作ればいいという感じがいつでもあるように感じます。これは僕よりは、そちらで聞いておられる方にもっとよく事情を御存じの方があるのですけれども、もう一つは、何か事をやる場合には、そのものの役割をもっとはっきりとわきまえた上でやらなければならない。この例は適当かどうか知りませんけれども、たとえば、今原子力研究所で、動いていないといいますか、あまり好ましい状態で動いてはいないCP5型の原子炉、あれはアメリカから買った原子炉なんですが、アメリカからなぜ買ったかというと、それまでの第一号炉ではわずか五十キロワットの出力しか出ない、そうすると、日本での原子力の基礎実験というのが、それだけでは非常に不足である、出力が足りないということがあって、もっと大きい出力のものを必要としていたわけです。そこで、そのためにアメリカから早く輸入して、原子力研究所で実りの大きい研究をやりたいということで、次の原子炉を買うということに踏み切ったのだと思うのですけれども、そういった発想法があるとしますと、まず最初に必要なことは、すぐに動いてくれる原子炉であることが必要なわけです。まず、何かたくさんの金を投じてやろうとするときには、そのものがどういう役割を持つのかということを、もっとたくさんの人の衆知を集めて考える必要がありますが、そういった点で、衆知を集める体制というのができていなかったと思います。そこで買ってみると――買うときには、アメリカでは二千キロワットくらいのものしかできないのを、日本で初め大きい要求をするものですから、その要求に応ずるようなものが実はアメリカでもできないが、しかし、作る方は、自分のところで売れて金がもうかるものだから、注文を引き受ける。作ってみると、いけないというようなことで、日本の研究はかえって急いだためにおくれるということがあるわけですから、日本が急いで科学技術の振興をはかるということは非常に必要なんですが、急ぐためには、どこをどういうふうにするのがいいかというふうなことを、もっと抜けるところなしに、衆知を集めて考えていくという体制を早く作っていく。その体制を作るためには、もっとたくさんの人の声を吸い上げる方策を講じていくということが基本になければならない。それはそういう組織を作れという意味じゃなくて、その組織の中で、絶えずそういうたくさんの人の衆知を集めるようなことを考えていかないと、自分と反対の意見を出すものはみな切っていくというふうなやり方で一つ一つの方策が打ち出されてくることがあると、非常に間違った結果が起こることが多かろうと思うわけです。
  〔齋藤委員長代理退席、委員長着席〕
 どうもまとまりのないお話ですけれども、また何かありましたらお答えします。
#32
○岡委員 私のお尋ねしているのは、どうも私の言い回しが悪いかと思うのですが、これは糸川さんにも、杉本さんにもお答え願いたいのです。たとえば、一九五七年でしたか、スプートニク第一号が打ち上げられました。ちょうど私はそのときにウイーンにおったのですが、大へんなセンセーションを起こしました。やがて、二十日ほどしましてワシントンに来たところが、ワシントンの国会はやはり大へんなショックを受けておりました。アメリカ流に、きわめて間髪を入れざるスピードで大統領には科学補佐官をつける、大学教授の給料を上げる、研究費はうんと高める、そして理工科へ進む者については奨学資金を出すのだというふうなことをやっておりました。さて、その後三年、四年の間、スペース・ギャップといものが依然として今日われわれの世の中にある、これはなぜかということですね。これは昨年、一昨年あたりのアメリカの政界の大きな問題になっておった、いわばNASAというものをほんとうの宇宙開発の統一期間にするのかどうか、現状のように人工衛星の打ち上げを陸軍、海軍、空軍にまかしておくのはどうかという問題、組織の統合の問題が二年かかり、三年かかったということが、私は、今日におけるアメリカのスペース・ギャップを甘受しなければならない一つの原因じゃないかと思うのです。あるいは、おそらく陸軍、海軍、空軍にすれば、これはあったかないか知りませんけれども、やはりロケットに転換されたんではお出入りの飛行機会社はお手上げだというので足を引っぱったかもしれないが、そういうような体制ではいかぬ。だから、日本は宇宙開発審議会を作って、宇宙開発は今後の科学技術政策の重点目標だと政府みずからが掲げている。ところが、予算の配分は、さっき申し上げたようになっている。宇宙生物学を研究してくれといっても、糸川先生は、カプセルには座席を設けてある、ところが杉本先生は、航空試験所は、どうもあれでは十分やれない、これでは現にあるものが何にもならない、一体審議会は何をしておるかというわけですね。そういう意味の組織としての総合、それを通じての協力体制、こういうものが必要でないのかどうか、現状でいいのかということを私はお尋ねしておるわけなのです。その点について、糸川先生なり杉本先生なりの御所見をお聞きし、同時に、次官も、こういう御発言があったことだから、今後どうしていくか、どうしたいのかという点について、大臣にかわって一つ御所見を承りたい。
#33
○糸川参考人 宇宙開発審議会はりっぱにその任務を果たしていると私は考えております。たとえば昨年度の予算で、宇宙開発審議会がちょうどできました第一回の仕事として、最初に、各省からばらばらに出ます予算を、宇宙開発という線で一本の目から見渡すという仕事は、宇宙開発審議会ができて初めてやった仕事でございますし、そのために、現に昨年度の予算は、われわれが出しました予算は少し少ないだろうという文部省の御配慮から、ふやしていただくということが可能になっております。それからまた、その後、各分科会が非常にたくさんできまして、着々とその成果を上げておりますが、何分にも、非常に専門分野が広いし、また、できたばかりの審議会でもございますから、あまり早期に成果を望むのは無理かと思います。しかし、決して怠慢であるとか、あるいは開店休業で何もしてないというわけではございませんので、われわれ研究者として、りっぱにその役目を果たしつつあると申し上げてよろしいかと思います。
 それから、先ほど、カッパー・ロケットが上がっているにかかわらず、生物を入れる容器があるのにかかわらず、生物学者からそのアプローチがなかったということは、私は、必ずしも宇宙開発審議会自身の責任とは考えておりませんので、宇宙開発審議会はそういう役目でなくて、そういう研究意図を持った学者があるときに、その学者が研究をやりやすくするように体制を考えるということでございまして、私の感想では、今まで過去三年間にはそういうアプローチがなかった、その原因は、これもまた、日本の学者の怠慢ということではなくて、戦後ポツダム条約によりまして日本の航空の研究は一切禁止され、その際に、航空医学の研究も一蓮托生で禁止されたわけでございますが、その敗戦によっての研究の禁止のワクというのが今日までまだあとを引いていたわけでございまして、そういう影響がなくなれば、また日本の医学者、生物学者も立ち上がって、おくればせではございますが、宇宙生物学、医学の面でりっぱな業績を上げて下さると確信しております。
#34
○松本政府委員 大臣が出席してお答えするとよろしいのですが、参議院の方に出ておりますので、かわってお答えいたします。
 科学技術振興、ことに宇宙開発につきまして、わが国が残念ながら非常におくれておる、何とかしてこのおくれを取り戻したいということで、政府も閣議で予算決定の基本方針を立てて、三十六年度予算を御審議いただいた通りであります。しかし、三十五年度の科学技術関係総予算の二百五十一億に対して、本年度は二百八十五億、一三%増、一般政府予算の二四%増から見ますと、残念ながら幾分見劣りがいたします。ただ、このたびの施策の重点を減税、公共投融資、社会保障、この三つの柱に置きましたので、私どもの立場からいけば、願えることなら、科学技術振興も入れて四本の柱ぐらいにしてほしい、こう思いましたけれども、やはり減税にしても、公共投融資あるいは社会保障にしても、それぞれ重要な国民の御熱意で、それにこたえた、こういうことになります。いずれにしましても、最近のソビエトの人間宇宙船の成功、こういう偉大な進歩を目のあたり見ますとき、わが日本はあまりにもおくれていて恥ずかし過ぎる、こういうことも考えられますが、何がためにそうなったかといえば、御承知の通り、いわゆる無暴な戦いをして敗戦という憂き目を見たわが日本民族、片方は戦勝国、この大きな違いは今日になって現われましたが、しかし、幸いなことに、国民生活もやや安定してきた、これからは一歩前進して、科学技術振興に一つ全速力を、こういうことは当然政府も、また私どもも考えておりますが、しかし、今としては残念なことですが、まあこのようなところであります。しかしながら、科学技術の振興には、先ほどの岡委員の御質問にお答えいたしますが、三つの条件が必要だ、こう考えます。まず、その一つは、国の予算の裏づけ、予算措置であります。でありますから、あまり貧弱な予算で、何をやるにも不徹底であるということは御承知の通りで、できますれば、次の年度あたりからは予算を大幅に増額する、その次に何をやるか。結局人の問題でございまして、この人は、まず第一は科学技術者を養成する、ところが、残念なことには、科学技術者が非常に不足してきております。外国の状況等も調べますが、まず第一は、学校の教育からその施設、いま一つは建物、いま一つは教授、残念ながら、わが日本は施設も建物等も不十分であるのみならず、第一教育者が不足しておる。しかし、民間企業には相当優秀な科学技術者も多いのに、なぜ教育者としてとどまらないかといえば、要するに待遇の問題だ、こう考えます。しかし教育者をにわかに作ることは容易なことではありますまいから、できれば、民間会社からも優秀な教授をいま一度学校に戻らせる、それがためには待遇をうんとよくする、そうすれば戻り得るのです。そうして不足せる教授を早く充足するということも考えなければならぬ。いま一つは、いわゆる生徒の問題でございますが、まず優秀な頭脳の持ち主は、小中学校から高等、大学、あるいは短大と、いずれにしても、小学校あたりから、教育は機会均等だといいますけれども、科学技術に適性のある生徒は、努めて奨学資金あるいは官費をもってしてでも養成していくということが今後大いに必要じゃないか、こういうことも考えております。現在におきましては、残念ながら技術者においては十七万人不足しておる、五万九千人は今の計画で充足できるが、十万人余りというものは不足だ、これで十カ年所得倍増計画が立つか立たぬか、文部省と科学技術庁との間でいろいろ意見の調整が重ねられておりますことは、御承知の通りでございます。こういう問題を十分今後は努力して解決をはかりたい、こう考えております。
 いま一つは、先般のガガーリンのあの成功を見ても、何をガガーリンが語ったかといえば、科学者あるいは技術者、または労働者、ソビエト国民の信頼に私はおこたえしたい、これが一念だ、こう答えておることであります。問題は、私は精神だと思う。いわゆる責任感だ、大きくいえば愛国心です。この責任感と愛国心のない民族は、残念ながら、幾ら教育しても、幾ら予算をつけても、科学技術の進歩は私は十二分の効果が上がらぬ、こう考えますので、終戦後やや失われつつある責任感、愛国心をいま一度よみがえらすということにして、総合的に科学技術の振興をうんとはかりたい、こう考えております。特に、先ほどの宇宙科学の問題につきましては、宇宙開発審議会が昨年できまして、その後いろいろ協議をいたしておりますが、何をおいても、海外の先進国の宇宙科学の状況を視察してくる必要がある、こう考えまして、兼重団長を中心に四名の人を選んで、二カ月前から欧米を視察調査に参らせました。幸い明日帰ります。帰りましたら協議をいたしまして、この六月ごろ政府に対して答申を出させて、政府はこの答申に基づいて一そう宇宙開発に努力をする、こういうことに相なっておりますので、どうか御了承をお願いいたしとう存じます。
 はなはだ言葉が足りませんので、また、よけいなことを申したかもしれませんが、御答弁といたします。
#35
○岡委員 一人で長く時間をとるのも恐縮ですから申しませんけれども、松本次官のお説も、まことに古色蒼然たるものもありますが、まあ一応了といたします。
 問題は、近代科学というものは、言うまでもなく、人工衛星なりロケットを打ち上げるとすれば、燃料についても、やはり学問、あるいは天体物理学とか地球物理学とか、よくわからぬが、そういうもの、あるいは摩擦熱を防ぐための材料工学、あるいは軌道計算のための電子計算機も要るでしょうし、そのほか、電子工学もうんと発達しなければならない、そういう総合された、しかも、基礎分野における深い検討の上に積み上げられた総合的な研究の集約されたものが、この人工衛星なり、あるいは宇宙人衛星船という形に出てきておると思う。ところが、どうも今のやり方では、日本の審議会というのは元来そうなのだけれども、ただつけたりだけで、少し外国ではやっておるから看板を上げなければなるまいというような体たらくのものしか作っておらぬ。これでは、ほんとうの日本の科学技術というものは進歩できない。外国を見て回ることも必要だが、見て回らなくたって、しなければならぬことはわれわれたくさん指摘できると思うんだ。そういうことで、兼重さんがあした帰られれば、ぜひ一つ委員会に来てもらって、私ども注文をつけるつもりだが、政府の方でも、やはり糸川先生なり杉本先生なり、また、広くこの問題について見識を持っておられる方なりの運営にまかすような、そういう総合的な共同研究所なりというものを作らなければならない。京大の基礎物理学の研究、名古屋にはプラズマ研究所ができる、蛋白研究所も成果を上げようとしておる、原子科学の研究所なんか、なかなかりっぱな国際的な業績を上げておる、そういうものを作って、そして日本の科学者が一つ共同して、協力態勢で研究できるようなプログラムを、ぜひ一つ役所の方でも考えてもらいたいと私は思う。
 それから、これは岸田さんの御発言に関連して、私は特に糸川先生にお尋ねをいたしたいのでありますが、昨年三月、通産省からロケットの調査団が参りました。報告書を私読みました。現実に、この科学技術の発展は、何といっても人間の英知の進歩そのものなのだが、こういうものは、いわゆる東方とか西方とか――ソ連の衛星船は東方号などといいましたけれども、やはり東西両陣営ということにこだわりなく、政治体制やイデオロギーを越えて、当然資料の公開もしてもらわなければならないし、科学者間の交流もやるべきではないか、その点、私は、日本の科学技術外交というものにはどうも若干の偏向があるのではないかと思うのです。ロケット調査団の報告書なんか見ると、あれはアメリカ一辺倒だ。おくれたアメリカと手を握るよりも、進んだソビエトの資料も手に入れる、科学者も協力をやる、そういうほんとうに人間の英知の進歩という大きな旗じるしのもとに、政治的なイデオロギーというふうなものにとらわれない体制を科学者自身が進めていただきたいと思う。今原水爆禁止運動と同時に、世界の平和運動も、やはりアピールの中心にはすぐれた科学者が立っておる。宇宙開発というような、今後の新しい科学の分野においても、先ほど岸田さんは、宇宙の平和利用というようなものは今がチャンスだ――そのイニシアチブはもちろん国会の仕事ではございますが、日本の科学者がそういう大局的な見地で立ち上がってもらいたい。そして、国会もまた呼応して、この宇宙の平和利用について――南極探険はああして国際地球観測年を通じて国際的な協力をやって、南極条約ができた。あれなんかでも、もともとは南極一帯にそれぞれ軍事基地でも作るんじゃないかということさえも非常に懸念されておった。ところが、南極条約では、軍事基地にはしない、兵器の実験もしないということを東の陣営も西の陣営もみなちゃんと約束をして、南極というものは世界の平和地域としてこれを設定している。そういうように、宇宙も大気圏外も、やはり人類の平和地域として設定する。これは当然国会の任務ではあるか、同時に、日本の科学者が、湯川さんや茅さんが七人委員会の名において、常に原水爆禁止を中心とする平和運動の先頭に立っておられる。これからは、宇宙の医学、あるいはまた、ロケット工学などについていろいろこれまで丹念な御労作を願っておる宇宙関係の科学者たちにも、そういう方向にぜひ立ち上がっていただきたいと思います。これは私の希望として申し上げる次第です。
 これで私の質問は終わります。
#36
○山口委員長 石川次夫君。
#37
○石川委員 本会議の予鈴が鳴って時間がないようですから、簡単に二問だけ伺います。非常にしろうとの質問でございますから、その点は一つ御了承を願いたいと思います。
 先ほど糸川さんからいろいろ懇切なお話がございましたが、われわれとしては、人工衛星を日本で飛ばせるかどうかというふうなことに、非常にしろうとの国民の一人としても関心を持っております。それに対しまして、垂直で六千キロメートル上げて人工衛星が可能になる年が大体一九六五年ごろであろうというふうなお話がございました。これは、われわれ国民の一人として、そこまで行き得るのかということで、一つの安心感を持ったわけでございます。しかし、それにしては予算がない、予算がこれに対しての一つの障害となっておるというお話もございました。それと、あと一つは、一九六五年になりますと、アメリカとソビエトでもって百個くらい打ち上げてしまうので、われわれ国際的に協力をして、宇宙のいろいろな資料をもらえばよろしいので、はたして上げる必要があるかどうかというふうなお話もございましたけれども、われわれとすれば、一つには、日本でも人工衛星が上げられるんだというふうな、面子といいますか、国民的な名誉心というふうなことになるかどうか知りませんが、どうしても上げたいという気持は、子供みたいでありますけれども、持っているわけです。おそらく国民の一人々々も持っていると思う。そういうことが一つであります。
 それと同時に、岡さんからもお話がありましたように、人工衛星というものはいろいろな基礎的なこまかい資料、科学的な技術というものを積み重ねて、一つの事実として上げられるものである、科学の集約的な一つの成果であるというふうなことでありますと、やはり一九六五年に上げられるものならば上げたい、上げるべきではないかというふうに素朴にわれわれは感じるわけです。上げるということが、やはりそれだけ国際的に協力をする分野が広がることになるのではなかろうか、だから、上げられるものなら、ぜひ上げたいという気持を持っておるのですが、この点について、上げるということそれ自体が一つの科学的な進歩に役立つということにならないのかどうか、また一つには、国民的に科学技術に対する関心を持たせ、そして、一つの刺激剤になるというようなことになるのではないか、こう考えるわけなんですが、その点についての御意見と、もし、そうであるとすれば、当局としては、予算が非常な障害になっておるという点をよく考えていただいて、この目標が一九六五年に可能であるならば、何としてもそこまで持っていくのだという気力を一つ見せてもらいたい。この点についての次官の御意見を伺いたい。
 あと一つは、これは岸田さんに伺いたいのですが、実は、われわれは、憲法で戦争を放棄し、武器を放棄している建前で、核兵器というものがなくなることを望むという立場でありますので、東西両陣営の軍備力の差というもの、あるいは比較というものがどうだということを考えることは邪道でもあるし、ヤジウマ的な興味であるかもしれない。しかし、今お話を伺いますと、大体ミサイル・ギャップというものはなくなったというふうな御説明のようでございましたけれども、実は、われわれいろいろな人からいろいろな軍事的な講演だとか、科学者の御意見だとか伺いまして、われわれしろうとでよくわからないのですが、しかし、岸田さんから聞いたようなミサイル・ギャップがなくなったというふうな話は、あまり実は聞いておらないわけです。と申しますのは、力というのは、重量と速度をかけ合わせて表示されるわけでございますが、そのとき、一つの偏見か、一つのある特定の立場を守ろうとする意見かどうか知りませんが、私の聞いた意見の中で、大体ソビエトのものは十六マッハから二十五マッハぐらいになるのだ、アメリカのものは〇・九か一ぐらいのマッハにしかなってない、あるいは重量はソビエトのものは二トンから、今度は四トンぐらいのものを飛ばすようになったわけですが、アメリカはまだまだトン単位まではいかないのだというふうな説明を私聞いたことがある。しかし、これは私、それをそのまま信じているわけではございません。特定な立場に偏した、一つのためにせんがための話ではなかったかというふうに考えますけれども、結論的に言いますと、およそ百対一ぐらいだ、数もソビエトの方が絶対に多いのだというふうな説明を、実は私はあちこちで聞いたことがあるわけです。それと、今の岸田さんのお話でいいますと、大体正確度からいっても、数からいっても、アメリカの方がむしろ凌駕しているくらいで、ギャップはほとんどないだろう、岸田さんは非常に公平に両方のあり方というものをごらんになっておると思われますので、岸田さんが見て、私が聞いた話というものは非常なしろうと的な誤りを犯しておると思うのですが、その点について、一つ子供に教えるように御説明を願いたいと思います。
#38
○岸田参考人 まず、そのギャップの問題で、基本にあるのは、兵器のことを考える場合には、その兵器が攻めようとしているのは地球の上のどっかの地点だということなんです。そこで、地球の大きさというのは、ある大きさ、つまり、六千四百キロという半径を持った球なんですから、地球の大きさはそれ以上大きくなりようがないわけです。従って、地球の大きさでものを考える限りは、もう腹一ぱいで、これ以上は要らないという限度があるはずなんです。そこで、まず、原爆とか水爆の例をとってみますと、原爆は確かにアメリカの方が一九四五年に作りまして、その年に、広島、長崎の原爆投下を含めて三発実験をやったわけですけれども、それに対して、ソビエトは一九四九年に初めて原爆を実現した。そこで、原爆だけを見ますと非常におくれているわけです。そして、現在でも、その保有の数は、先ほどあげました数が正しいかどうかは知りませんけれども、ソビエトの数の方が確かにまだ少ないのです。水爆を見ますと、水爆の点では、一番最初の、兵器としては使いものにならない水爆を一九五二年の十一月にアメリカが実験をして、そして実用型のものは、今度ソビエトの方が先に一九五三年に爆発させたということですから、あるいはアメリカとソビエトとの間には数の点でも違いはないかもしれませんが、とにかく、いずれにしても原爆、水爆というのは、地球の規模で考える限り、ある数以上のものは、もうギャップとしては見ないわけです。ある数以上のものが、たとえば、十二万五千発と、ソビエトはその半分しか持っていないというふうな数の相違があっても、地球の大きさの規模で考えるときには、ある数以上のものは意味がないものですから、ギャップと考えないわけです。そこで、ミサイルの場合にも、ある特定の性能、ある水準の性能とある水準の数とがそろったら、その先には、もうギャップというものはないわけです。先ほど御質問の中にマッハという言葉が出てきましたが、ICBMの速度というのは毎秒七キロメートルくらいの速さで、つまり、人工衛星にするにはちょっと足りないのですけれども、まあ、その程度の速さになるわけです。マッハ数にしますと、二十五くらいのマッハ数ですか、二十幾つかですね、そういった数になるわけですから、その点ではアメリカもソビエトもICBMというものを作る限りは同じなわけです。射程が八千キロですと、もうマッハ数は自動的にきまってくるわけです。それから、それが運び得る水爆の大きさというのは、五メガトンとか十メガトンとかいう大きさのものになるわけですが、それはすでに両方の国ともできていまして、それ以上の大きさの水爆を運ぶ必要はもうないのです。なぜかといいますと、ニューヨークのような大きな都市でも、二発の十メガトンの水爆が上空で爆発すると、ほとんど全滅するわけですから、それ以上大きい水爆を運ぶようなロケットはもう必要ない。地球の規模で考える限りは、従って、その威力にしても数にしても、ある限度がある。その限度を二体幾つと考えるかということなんですが、先ほど申しましたアメリカの水爆戦争公聴会で、アメリカに二百六十三発の水爆が落ちる、その水爆は一メガトンから十メガトンくらいの間、各種のものがあるのですけれども、それだけ落ちると考えて、そのときの死者または負傷の数が、アメリカの総人口の四割を越すのですから、先ほど言ったアメリカのICBMあるいは原子力潜水艦で運ぶIRBMの数を合計して千三百発があと数年間でそろうという段階になりますと、それが二百六十三発という数の五倍くらいになるわけです。従って、もうその辺でミサイルの数は満腹の状態になるわけです。満腹以上は、幾ら作ってもそれは意味のないことなんで、花火のように上げるなら、また別なんですが、それ以上の数には確かに差があったとしても、ギャップというものはもう存在しないというふうに考えなければならぬ。そしてまた、それは私がそういうふうに言うのじゃなくて、すでにアメリカはそういうことを考えている。アメリカでは、ミサイル・ギャップの問題は、もうほとんど議会では問題にならないのです。そして、そういう段階になったということもあって、ケネディ大統領が就任したときに、ウイスナーの宇宙に関する報告の中では、今後の宇宙開発というものは、ほんとうに宇宙というものを対象にした開発を考えなければならないと言っている。宇宙は地球の大きさとはだいぶん違いますから、その点では、まだ幾らでも差がつき得るのです。ほったらかしておけば差がつく。だから、差がつかないようにするためには、この宇宙開発というもののプロパーに考えた長期の総合計画が必要なんだということをアメリカでも考えるようになって、そういった方針がこれからだんだんはっきりと打ち出されてくるだろうと思うわけです。
#39
○松本政府委員 ただいま御質問の、いわゆる予算措置の問題でございますが、残念ながら、先ほどお答え申し上げた通り、本年の予算は二百六十五億でございます。しかし、国民所得から見ますと、大体〇・三%、外国の科学技術の予算は一%から多きは三%、一%と仮定しても一千三百億という予算が計上されなければならぬはずです。しかしながら、科学技術の進歩と戦争準備、戦争兵器と不可分の関係を持つ点が多うございますので、いわゆる戦争をやることを、ときにはやむを得ず憲法に規定しておる国々はいざ知らず、戦争を放棄した、いわゆる平和憲法を制定した世界に例のないわが日本は、戦争とか兵器とかいうものとはもう全然縁がない、関係がない。従って、科学技術は、あくまでも平和の分野において進歩向上をはからなければならぬ。また、これが経済とも結びつき、国民の生活の向上も考えなければならぬ。従って、国民生活の安定向上は、科学技術の他の分野との関連で十分慎重に検討していく、バランスを保ちつつ科学技術の振興をはからなければならぬというような観点から本年度の予算などになって現われた、こういうことになりますが、しかし、いずれにしても、ただいまのような予算では、これは十分とは申しかねますので、でき得べくんば、必要によっては予備費などから特別支出をする場合もありましょうし、また、来年度の予算では努めて努力をする、こういうことをお約束申し上げて、この由大臣なりあるいは総理にも伝えたい、こう考えております。
 なおまた、近く出される、まず六月と予定されます宇宙開発の答申につきましては、もしも、その答申に相当大幅な予算の要求等も必要とする場合もありましょうし、また、気象ロケットのみならず、通信用の人口衛星というような面も、もうすでに必要に相なってきておりますので、答申などで相当高度の通信用ロケットの打ち上げが必要だというような結果が出ましたならば、これについては特別に予算措置を考えて、ぜひ御期待に沿いたい、こういうふうに考えております。ただいまのところ、政務次官の立場でお答えをいたしますので、この程度で御了承願いとう存じます。
#40
○糸川参考人 石川さんのお話に、人工衛星を日本が上げたら何となく気持がいいだろう、プライドが満足されて鼻が商いだろうというお話がございまして、そのために上げろというふうに聞こえるような御発言だったのですが、実は、私どもはムード派という名前をつけておりますけれども、そういう何となく気持がいいから上げろ、ムード派で上げたいという方が大へん多いのでございます。もし、日本は民主主義国ですから、マジョリティ・プリンシプルで、多数決原理で、日本国民の大部分がプライドを満足するためには税金が高くなってもいい、人工衛星を上げる分だけ税金が高くなるのをがまんするという結論が出ましたら、私どもは喜んでその仕事をさせていただきたいと思います。しかし、そのプライドを満足させるということは、大てい劣等感がありまして、その劣等感をカバーするために、何か人と違ったことをやりたいという結果が出てくるのです。劣等感に関する限りは、松本政務次官も一諸に聞いていただきたいのですが、先ほど、日本の宇宙科学が外国に比べて非常におくれているように聞こえるような御発言がございました。しかし、先ほどから何度も申し上げますように、米ソには及びませんけれども、それを除きました世界じゅうのすべての国と比べまして、日本が一番進んでおると考えております。これは私が当事者の一人として言うのではなくて、公平な第三者として、いろいろな国際会議の結論でもございますし、外国の雑誌をごらんになれば、ことごとくそういう言葉で満ちておりますので、今日までの少ない予算をもってしても、米ソを除いては、その他のすべての国をしのいだ成果をあげておるということに十分なプライドを持っていただきたいと思うのです。今日それが持てないならば、一九六五年に百一発目の人工衛星を上げましても、やはりそれだけのプライドを持てない。どれだけの科学技術上の功績を科学者がしたかということを、一般の政治家の方が正しく認識していただくということがプライドではないかと思うのです。そういう意味で、岡先生にもお願いしたいのですが、今日いろいろわれわれ参考人に対しまして御質問もございましたけれども、日本が少ない予算でよくやったという言葉が一つもございませんでしたことは、日本の科学技術者の代表といたしまして大へん残念に存じます。また、ラムダ・ロケットが、ことし計画がありながら上げられないという話があったときに、この衆議院の科学技術振興対策特別委員会は、それならそのためのラムダ・ロケットの予算をつけるように考えてやろうというお言葉がなかったのも大へん残念でございますし、また、われわれの話を聞くのに、二十五名ございますこの委員会が、最後には数名しかお残りになっていただけなかったことについても大へん残念に存じました。
 大へん失礼でございましたが、感想を述べさせていただきました。
#41
○山口委員長 他に御質疑もないようでありますから、参考人各位からの意見聴取はこの程度にとどめます。
 この際、参考人各位に申し上げます。
 本日は、長時間にわたり、しかも、有意義な御意見を承りまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して私から厚くお礼を申し上げます。
     ――――◇―――――
#42
○山口委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。
 すなわち、原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案について参考人より意見を聴取いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、参考人の人選、出頭日時など、その手続につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#45
○山口委員長 この際、委員各位に申し上げます。
 本会議散会後、一時半ごろになると思いますが、別館五階講堂におきまして原子力関係映画の映写を行ないますので、多数御出席を願います。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後一時十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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